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1972/03/08 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第3号
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1972/03/08 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第3号

#1
第071回国会 外務委員会 第3号
昭和四十八年三月八日(木曜日)
   午前十時六分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         平島 敏夫君
    理 事
                佐藤 一郎君
                長谷川 仁君
                山本 利壽君
                田  英夫君
    委 員
                岩動 道行君
                木内 四郎君
                杉原 荒太君
                八木 一郎君
                加藤シヅエ君
                小谷  守君
                羽生 三七君
                森 元治郎君
                渋谷 邦彦君
                松下 正寿君
                星野  力君
   国務大臣
       外 務 大 臣  大平 正芳君
   政府委員
       外務省アジア局
       長        吉田 健三君
       外務省欧亜局長  大和田 渉君
       外務省中近東ア
       フリカ局長    田中 秀穂君
       外務省経済協力
       局長       御巫 清尚君
       外務省条約局長  高島 益郎君
       外務省条約局外
       務参事官     松永 信雄君
       外務省国際連合
       局長       影井 梅夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
   説明員
       外務大臣官房領
       事移住部長    穂崎  巧君
       厚生省薬務局麻
       薬課長      本橋 信夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○千九百六十一年の麻薬に関する単一条約を改正
 する議定書の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出)
○国際情勢等に関する調査
 (ブレジネフソ連共産党書記長に対する田中総
 理大臣の親書に関する件)
 (日ソ平和条約締結に関する件)
 (日ソ経済協力問題に関する件)
 (ベトナムの和平協定及び援助問題に関する件)
 (日中正常化後の実務協定及び日台問題に関す
 る件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、千九百六十一年の麻薬に関する単一条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(本院先議)を議題といたします。
 本件につきましては、前回の委員会におきまして、趣旨説明及び補足説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○田英夫君 この麻薬条約、今回の改正は、一言で言えば強化するといいますか、取り締まりを強化するという精神だと思うんですけれども、なぜそういう状況になってきたのか。アメリカの状況とか、いろいろあるんだろうと思うんですけれども、これは強化すると考えていいですか。これは担当の方でいいです。
#4
○政府委員(影井梅夫君) お答え申し上げます。
 全般の趣旨といたしましては、御指摘のとおり、従来のこの麻薬取り締まり、六一年の条約に比しまして、これをさらに強化したい、御指摘のとおりの趣旨でございます。
#5
○田英夫君 今回の強化ということの内容は、おもな点は、アヘンを生産する、その生産のほうの、いわば開発途上国が多いでしょうけれども、そっちのほうが問題なのか、あるいは麻薬禍が蔓延している、アメリカなんか特にそうだと思いますが、そっちのほうの問題が重点なのか、どっちと考えたらいいでしょう。
#6
○政府委員(影井梅夫君) 六一年のいわゆる単一条約、これはどちらかと申しますと、規制の重点を需要と申しますか、消費のほうの面に置いておりました。しかしながら、この麻薬の取り締まりを世界的にと申しますか、効果あらしめるためには、ただいま先生御指摘のとおりに、生産の面においても規制を行なうことが必要であろうという趣旨で、今回のこの改正議定書におきましては、その生産の面につきましての規制に手をつけたと申しますか、そちらのほうに、生産の面にも規制を及ぼしたいと、それがこの趣旨でございます。
#7
○田英夫君 これ、まあいま国連局長言われたように、開発途上国のケシを栽培するというような生産側の国ですね。これを規制しようということのようですけれども、これ、ただ規制だけやってみても、なかなか、それが一つの大きな収入源であるというような国があるだろうと思いますし、この辺のところを、具体的にこの条約の改正のあれを読んだだけでは、なかなかわからないんですけれども、そういう実態はどうなんですか、やれるんですか。
#8
○政府委員(影井梅夫君) 御指摘のとおりに、国際的にこの規制をほんとうに効果あらしめるというためには、まだまだ尽くすべき手は多いかと思いますけれども、しかしながら、その第一歩といたしまして、従来、生産面については規制が行なわれていなかった。しかし、この生産面についても規制を始めるべきだろう。ただいま先生御指摘のとおりに、アヘンの生産国、これは開発途上国が多いというその事情は、今回のこの改正議定書作成にあたりましても、十分に考慮されたところでございまして、実は、当初の案におきましては、かなりきびしい生産国に対する規制というものが考えられておりましたけれども、審議の過程におきまして、生産国側、まあ大部分は発展途上国でございますが、この発展途上国側の事情も十分しんしゃくする必要があろうと、そういう意味におきまして、この改正議定書の審議の過程におきまして、生産国側と常に協議をするという条項を設けまして、まあ漸進的と申しますか、生産国側の事情も十分に考慮に入れるという要素がかなり加わって、ここにこの改正議定書の成立が見られたという事情がございます。
#9
○田英夫君 これは、そういう開発途上国の実情、わからないわけですけれども、どうですか、これ、規制だけしてほかの手を打たないと、たとえば、その農地をケシの栽培に多く使っているというふうなところは、それを規制するとそれがつくれなくなるというふうなことで、その国においては混乱が起きるというふうな、そういうことは起こらないですか。
#10
○政府委員(影井梅夫君) これは、今回の改正議定書の条項にもございますとおりに、確かにケシの栽培、この作物転換をはかるという必要、これは今回の改正議定書でも認めております。そこで、この生産国、大部分の発展途上国に対しまして、たとえば国連の麻薬委員会、あるいは麻薬統制委員会、その他の機関から、そういった国に対しまして援助を与えるということも考えておりまして、また、そのために、現に麻薬基金が発足いたしまして、目標どおりの金額は集まっておりませんけれども、その面の努力はすでに開始されているという次第でございます。
#11
○田英夫君 これは、麻薬を取り締まるということは、反対する人はいないわけですけれども、今度のこういう取り締まり強化ということに至ったその発想が、これは私の推定だけれども、たとえばアメリカのような国が、アメリカが非常に麻薬が蔓延して困っているということから、アメリカが、自分のところが困るもんで、これはひとつ世界的に強化しろというようなあれだったのではないかという気がするのですが、その辺の実情はどうなんですか。
#12
○政府委員(影井梅夫君) 私ども必ずしもその正確な事情をつかんでおりませんけれども、先生御指摘のとおりに、アメリカ合衆国がこの麻薬の被害を非常に強く感じているということは、御指摘のとおりでございます。ただ、これはアメリカ合衆国にとどまりませんで、ヨーロッパの国もこの麻薬の被害というものを感じ始めている。それからわが国自体につきましても、従来、麻薬の取り締まりということは、日本におきましては非常に有効に行なわれておりましたので、いままでは、被害は比較的少なかったかと思いますけれども、しかし、やはり、これは国際的協力というものを通じて、日本のためにもこういった規制を強化するということは必要であろうというふうに考えております。
#13
○田英夫君 いま、日本の話が出てきたわけですけれども、厚生省の方おいでになると思いますが、どうなんですか。日本は麻薬取り締まりについては、いわば模範国と言っていいと思うんですけれども、それにしても、最近ベトナム帰還兵というふうなことで、基地の麻薬問題なんかが出ているけれども、やっぱり日本でも相当ふえていると考えていいんですか。
#14
○説明員(本橋信夫君) 日本におきましては、一番麻薬問題がしょうけつをきわめましたのは、昭和三十七、八年ごろでございます。そのころが大体検挙人員が三千名をちょっとこえておりました。その後、麻薬取締法の改正等がありまして、漸減をいたしまして、現在一年間の麻薬取締法等の違反者が千名ちょっとでございます。麻薬につきましては減少をしておりますが、むしろ、現在日本におきます問題としては、覚せい剤の問題のほうがはるかに強いわけでございまして、この問題が一番現在の私どもにしましては頭の痛い問題でございます。
#15
○田英夫君 いま一番問題なのは、その千人というのは、つまり麻薬常習者というほうの人なのか、それとも麻薬をいわゆる密輸する、そっちのほうの人なのか、どっちですか。
#16
○説明員(本橋信夫君) 麻薬取締法の違反の中には、いわゆる密輸入とか製造とかあるいは販売、それから施用、いわゆる服用でございますが、そういった犯罪をすべて含めまして、そして千人程度の違反者があるわけでございますが、そのうちの大部分は、いわゆる不正取引に関するものでございます。いわゆる乱用によります中毒の関係は非常に少のうございまして、ここ数年来、百名以内でございます。
#17
○田英夫君 つまり、取り締まり当局としては、入ってくる、入れる、密輸する人とか暴力団の販売とか、そういうことを根絶しなくちゃいかぬと考えられるのは当然だろうと思いますし、また、いわゆる麻薬常習で、注射したり飲んだりしているほうの人は、なかなかこれは実態をとらえにくいということで、千人という数字の中で、当然それは飲んだりするほうが少なくて、取り締まりの対象としては輸入したりするほうが多いというわけなんでしょうけれども、実際はもっと麻薬常習者というほうはいると見ていいですか。
#18
○説明員(本橋信夫君) 私どもは、いま先生御指摘のような、実際に麻薬乱用者は数が多いんだけれども、取り締まりの網にかかってくるのは少ないではないかというふうなことは考えておりません。私ども、実際に麻薬中毒者というのは多くても百名以内、日本全国で百名以内というふうに、これは内地の問題でございますが、日本内地におきましては百名以内というふうに考えております。
#19
○田英夫君 まあ百人という数字になると、これはもうほんとうに、極端な言い方をすればないにひとしいと言ってもいいくらいなことで、そういう意味では、日本はほんとうに模範国だという気があらためてするんですけれども、しかし、最近問題なのは、沖縄とかあるいは岩国とかいうあたりで、アメリカ兵による麻薬犯罪というものがだいぶマスコミなどで報道されているし、聞くわけですけれども、これはいまの千人というような問題とは別のことになるわけですか。
#20
○説明員(本橋信夫君) 昨年五月、沖縄が日本に復帰しましてから、私ども厚生省といたしましても、麻薬取締官事務所の沖縄支所というようなものを設けまして、十五人の取締官を配置をしております。沖縄県におきましても、麻薬取締員を三人置いております。それからもちろん警察では麻薬関係の取り締まりの専従の職員を置いております。そういった取り締まり体制を強化いたしまして、昨年復帰以後約二百五十各の麻薬違反者を送致をしております。そのうちの大体百五十人程度がヘロイン関係の事犯でございます。
#21
○田英夫君 アメリカ兵に限らないけれども、軍属もあるでしょうけれども、アメリカ軍関係の麻薬違反というのが、さっきの話だと、日本の常習者というのは百人しかいないんだということからすると、どうも日本を舞台に、アメリカ兵が持ち込んで、アメリカ兵の中で、基地で問題があるというふうに思えるんですけれども、この辺の実態はつかんでますか。
#22
○説明員(本橋信夫君) 昨年の、昭和四十六年度におきます統計では、日本におきます麻薬取締法関係の違反者が千百四十八名でございまして、そのうち米国国籍を有する者が二百三十名でございます。
 一方、沖縄におきましては、昨年度の統計、まだはっきり集計がされておりませんが、私ども厚生省の麻薬取締官事務所関係で取り扱いました事件のうち、六割方が米国軍人あるいはその軍属、家族といった関係でございます。
#23
○田英夫君 外務大臣、いまお聞きになったようなことで、日本人そのものの麻薬中毒患者というのは百人ぐらいだと、年間千人取り締まりの対象になっていて、百人がその結果として麻薬中毒だということになると、どうも主たる対象、主たる問題点というのは、日本においてはアメリカ軍基地じゃないかという、沖縄とか岩国とかいうところの問題じゃないかということにならざるを得ないと思いますが、この問題について、アメリカ側と何らかの接触の中でなされたことはありますか。
#24
○国務大臣(大平正芳君) 去年の九月、ベンジャミン事件というのが起こって、十二月にドイル事件というのが起こりました。こういうときに、私どものほうから米当局に厳重に注意を喚起いたしました。しかしまあ、地位協定におきましては、ちゃんと施設区域内の犯罪につきまして措置する規定がございまするし、また、日米が協力して、捜査あるいは証拠の掌握等に協力し合うことになっておりまして、その共同捜査体制はだんだん強化されてきております。私どもとしては、その仕組みが円滑に機能するように、側面からの対米折衝を続けておるわけでございまして、いまの体制で、特にもっともっと仕組みを変えなけりゃいかぬとは考えていないんですけれども、要員そのものは漸次警察当局も充実してくれておりますから、協力捜査体制は逐次充実しつつございます。
#25
○田英夫君 問題は、繰り返すようですけれども、日本自体の中では、百人といえば、一億の中の百人ということになれば、これはもう、根絶しなくちゃいかぬことは事実ですけれども、実に少ないし、全く模範的な状況になっている日本です。そこで、アメリカ兵、アメリカ軍基地、これが麻薬の問題点だということになってくる、そこに問題があるんじゃないかと思います。
 それから、今度の条約改正というもの自体も、さっきも国連局長が言われたように、アメリカ側が非常に麻薬の蔓延に手をやいて、国際的に条約の強化を期そう。つまり、日本の場合はもうすでにりっぱに行なわれているけれども、アメリカのほうが困るから、この条約改正をせざるを得ないというような、そういうことに、そう言われてもしかたがないような状況ではないかと思うんですね。ですから、もちろんアメリカの麻薬というものを根絶するために、世界的に協力し合うというのは当然のことですけれども、ここに一つ非常に大きな問題があるし、日本の場合はアメリカ軍基地というところが麻薬問題の根源になっている。これはやはりアメリカのほうでしっかりひとつしてもらわないと困るわけですね。
 そこから、今度は、基地から日本の中へさらに広がってきて、百人が千人になるというような形で広がってくる可能性もないわけではありませんから、これはよほどアメリカ側にしっかりしてもらわなければいかぬという気がします。いま大臣言われたように、すでにそうした接触の中で、アメリカ側に事件が起きたときには抗議をしておられるということですから、その点は了解いたしましたけれども、ぜひそういうアメリカ側の体制というものをきちんとしてもらわないことには、非常に危険じゃないか。せっかく条約をこうやって強化してみたところで、アメリカのほう自体がしっかりしなくちゃいかぬ、そういう気がしますが、厚生省の専門の立場から、アメリカというのはどうしてそういう状況になっちゃっているのか、これは原因はどういうことだと思いますか。やっぱり、ベトナムあたりから流れ込んでくるにしても、アメリカの国内自体がどうなっているのか、この辺どういうふうに考えますか。
#26
○説明員(本橋信夫君) アメリカにおきましては、わりに戦前からも麻薬中毒者が数多くあったように聞いております。アメリカの、いわゆる国内の麻薬取り締まり関係の法制は、かなりきびしいものでございまして、いわゆる取り締まり当局は非常に努力をしておるようでございます。しかしながら、アメリカの地理的な条件と申しますか、そういったようなことから、トルコあるいはヨーロッパを経由いたしましてアメリカに入ってくる麻薬、それから東南アジアからアメリカに入ってくる麻薬というものがかなりたくさんあるようでございまして、取り締まりが手ぬるいということではないように私思いますけれども、かなり量的に多いんじゃないかというふうに感じております。
#27
○田英夫君 厚生省でつくられた、これは四十六年度の調査結果のようですけれども、これ見ても、実例ずっとあがっているのは、ほとんど何かアメリカの関係ですよね。沖縄の問題、それからアメリカのタンカーの乗り組み員がヘロインを持ってきたとか、外国人ヒッピー、これはアメリカ人でしょうけれども、二十三歳のアメリカ人ヒッピーというような、あるいは岩国のアメリカ軍基地の米兵の問題、アメリカ軍の海軍の軍人が持ち込んだという問題、もうずっと読んでいっても、ほとんどアメリカ兵の関係、アメリカの関係ということになっているわけですね。これはひとつ、この条約を強化すること自体は、国際的に協力して取り締まりを強化しようということは非常にけっこうだけれども、日本においては、そこに非常に問題があるんじゃないか。厚生省その他関係当局の御努力で、せっかくいままでうまくやっているところへ、アメリカの基地があるために麻薬が蔓延してくるという、そういう状況が生まれていることは事実だと思いますので、これは条約の強化とひとつ並行して、アメリカ側との接触の中でぜひ――もちろん日本も協力しなければいかぬでしょうけれども、ここに問題があるんじゃないかという気がいたします。
 けっこうです。
#28
○委員長(平島敏夫君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#29
○委員長(平島敏夫君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#30
○森元治郎君 きょうは大臣に日ソ関係についてお伺いしたいと思います。
 私は、きのう休んでおったのですが、新聞で見ると、田中総理がブレジネフ書記長に親書なるものを提出したということが出ておりましたが、その内容は、新聞では承知しておりますが、差しつかえない限り、もう一回内容を伺いたいと思います。
#31
○国務大臣(大平正芳君) 去年の秋、衆議院の外務委員長の福田さんが訪ソされたときに、ブレジネフ書記長に対しまして田中総理からの親書を御携行いただいたことがございます。で、それに対して、在京大使を通じまして返書がまいりまして、しばらくたったわけでございますが、私としては、いま首脳外交時代でございまして、最高首脳の間の意思の疎通をしょっちゅうはからなければならぬ。この時点が一応タイムリーな段階ではなかろうかと判断をしてお願いしたわけでございます。
 それで、内容は、特に変わったことはないわけでございます。日ソ関係を安定した基礎の上に置くということで、日ソ双方が合意いたしておりまする平和条約締結交渉をやるということを再確認いたしたこと、それから目下日ソ間で進められておりまする経済協力案件につきましても、当事者の間で案件自体の吟味が行なわれておりますけれども、これに対して政府の持っておる気持ちを表明いたしたこと等を主たる内容とするものでございまして、いままで問題になっておる以外に、新しいアイテムが含まれているわけではございません。
#32
○森元治郎君 いずれにしても、中国とはいよいよこれから平和友好条約締結の交渉に入ることが確定しておる。一方は、ソビエトとこれから平和条約交渉の入り口にかかろうとしている。ことしはたいへんな歴史的な年になると思う。その責任を大平さんが当面の役者としておやりになる。たいへんな光栄でもあるし、やりがいのある仕事だと思うのだが、こういうアジアの平和に大きな展開を見せようとするときの、これに取り組む外務大臣の所感、感想を伺いたいと思います。
#33
○国務大臣(大平正芳君) 日本のやれることは、日本の力量以上のことはやれませんし、また、力量以下であっては困ると思うのです。そこで、私どもあらゆる外交の局面で一番大事なことは、日本が信頼に値する国であるということを貫かなければなりませんので、申し上げたことが実行できないのも困りまするし、申し上げたこと以下であっては困るし、したがって、まず、約束事については、日本の力量にふさわしく、また、実行可能なことを申し上げて、それを、約束いたしました以上は、必ず実行するという姿勢でやってまいりたいと基本的に考えておるわけでございます。
 それから第二は、いつも申し上げますとおり、体制、信条、そういうもののかきねをこえての交際というようなものが、信頼関係に根ざして活発にできるような姿勢でいかなければならぬと思っております。たいへん幸いに、十六年前の日ソ共同宣言も、去年の日中声明も、この安保条約を生んだサンフランシスコ体制というものと一応かかわりなく結ぶことができたわけでございまして、したがって、現在の体制を根本的に一ぺん改めて、それからでないとできないということでございますと、非常に国の内外を通じまして摩擦が多いわけでございますけれども、私どもが指向する平和外交をやってまいる上におきまして、たとえばソ連にいたしましても、中国にいたしましても、相当の理解を示してくれておるということは、われわれの外交の推進にあたりまして、たいへんしあわせな環境にあるように思っておるわけでございまして、体制、信条をこえて、できるだけ活発な接触等を持ち、理解を深めて協力の実をあげてまいらなければならぬと考えておるわけでございます。
 しかし第三に、多くの国々とのつき合いでございますから、親疎――あちらに親しくてこちらに疎遠であるというようなことになってはいけませんので、その点は神経質にまで気をくばりながらやってまいらなければならぬのでございますが、われわれ精一ぱいがんばっておるつもりでございますけれども、なかなかいろいろな御批判があろうかと思うのでありますが、私どもとしては、その間に親疎の別をつくらぬように、誠心誠意やってまいりたいと考えておるわけでございます。
 この地域の安全をどうして保障していくかというような大きな問題につきまして、それでは大きな構想があるかというと、なかなかむずかしくて、構想らしい構想は出ませんけれども、いま当面私どもとしてはできるだけつき合いを密にいたしまして、理解を深めてまいりまして、何でも話ができる間にまずなることが第一であって、そして、何をすべきであるか、何をすべきでないかというような点について、帰一するものをだんだん模索してまいりたいと、そういう考え方でおります。
 お答えになるかどうかわかりませんけれども、気持ちを申し上げますと、以上のような点でございます。
#34
○森元治郎君 この田中親書をお出しになった以上、要するに平和条約締結に関して、少なくも万全の用意はできていると、こういうふうに解釈してよろしいですね。
#35
○国務大臣(大平正芳君) 当然のこととして重い責任を感じております。
#36
○森元治郎君 重い責任じゃなくて、その用意は、いつでも会談すれば言いたいことはこれこれこれでやれるという用意ができておるわけですね。
#37
○国務大臣(大平正芳君) いま鋭意やっておるとおりでございます。
#38
○森元治郎君 そこで、いま大臣から御答弁もありましたが、対ソ外交、これは戦前から戦後にかけて、今日までそうですが、とかくソビエト関係となると水くさいというか、そらぞらしいというか、何か事があれば話をするが、それ以外は一向に接触がないというような関係を今日まで持ち続けてきた、これが日ソ関係の特徴だと思うんです。
 そこで、いま大臣が申されたように、平和条約というような、両国の関係を法律の上に乗せて、永久平和の基礎を築くんだというような大事業の場合には、やはりその大きな根回しが必要だと思う。ということは、大臣にも個人的に申し上げたが、高い段階で政府の責任のある人、共産圏は責任ある人以外はだめですから、責任ある巨頭といいますか、この人と話をすれば日本のことは十分責任を持って理解できるのだというような人が、ソ連側と隔意なき意見の交換を、大きな、高い次元でする。そこで根本的な原則の深い理解を得られるならば、おのずから、経済問題であろうと、平和条約問題であろうと、領土の問題であろうと、落ち着くべきところに落ち着く手だてができると思うのですね。それなしに、ただぶつかって、大使が行ったり引っ込んだり、手紙出したりしただけではだめです。こういうことをなぜいままでやらなかったか。大臣は構想がないとおっしゃったが、早く構想は立てるべきです。場当たりはやめるべきです。そうして、そういう会談を開いた際には、安全保障の問題もあるでしょう。何といっても隣の国は核保有国であるし、日本は核を持たないという国、この安全の保障については、いろいろと言いたいこと、聞きたいこともあります。経済問題もある。こういうことを議題にして、深く意見を交換し合うという機会をこれまでになぜ持たない、持とうとしなかったのか、そらぞらしくやっておったのか。新聞なんか見ますと、どの新聞にも、たとえば田中総理大臣が国会を終わったら海外に旅行に出られるのだという記事があります。そうすると、終わりのほうに、平和条約あるいは領土問題なんか進展が期待されないから、ソビエトにはいかないだろうというようなことがちらっとある。そうじゃなく、まず、これまでにも高い次元でやって、また、実務的な話は別の機会にすべきだ。いまからでもおそくないのですが、これまでにそういう高い次元の話し合いを行なうべきであったと思うのですが、大臣の御感想はいかがですか。
#39
○国務大臣(大平正芳君) ごもっともなお話だと思うのです。ただ、その場合、やはり時と人を得なければいかぬと思うのであります。私ども非常に適当の方が得られれば、森さんがおっしゃるようなことをやることにちゅうちょはしないわけでございますが、現実の問題といたしまして、帯に短したすきに長しということでして、なかなか適当な人材を見つけ出す、発掘するということ、これ自体がたいへんむずかしいことでございますけれども、考え方としては、私はあなたがおっしゃるようなことは望ましいことで、やりたいことだと思います。
 それから時期といたしましては、現在の日ソ関係は、いろいろ御批判がありましたけれども、十六年間たちまして、私は非常に画期的な進展を見ておると思うのでございます。相当交流も激しくなりましたし、相互の理解も相当進んできておりまするし、貿易も十億ドルのオーダーをこえてきたわけでございまして、今昔の感があるわけでございまして、現在あなたがおっしゃるような方向で、新しい外交を考える時期として、決して私は不適当な時期ではないと思うんでございます。だから問題はまあいろいろな、人を得ることが第一だと考えております。
#40
○森元治郎君 そういうふだんからの接触が大事で、しかも、気持ちをまず合わせるということが大事なんですね、ことにソビエトの場合。そういうことが全然なしに、いつ相談しようなんでいう実務的な交渉ばかりやっていることが目立つんです。
 それから平和条約の交渉は、大平さんが昨年十月二十二日ですか、グロムイコに会って、あるいはコスイギンに会ったのが。あのときに、来年の定期協議――ことしの定期協議に話し合おうということになったように私は記憶しているんですが、田中親書と比べてみると、そうやって話があるのに、さらに追っかけて話し合いを継続しようということを言っているところを見れば、なに、秋を待たずとも、国会の関係もありましょうが、秋を待たずとも、都合によってはその前でもよろしいと、こう急いでいるような感じを受けるが、いかがでしょうか。
#41
○国務大臣(大平正芳君) 去年の秋の第一回の交渉におきましては、来年中にやろうという合意を見ているわけで、秋と限ったわけではないのでございます。ただ、日本側の都合が、前半が国会に拘束されるという事情にあることは先方に伝えてあるわけでございまして、あとはフリーハンドで、あなたがおっしゃるように、私も早ければ早いほうがいいと考えております。
#42
○森元治郎君 大臣のグロムイコとの会談に関連して思うんですが、きわめてその、低い次元のお話に終始したのは残念だと思うのですね。何を話されたかと思うと、二十二日ですか、午前と午後やって、墓参の問題とか、文化協定とか、漁夫を早く帰せとか、漁夫の釈放、カラフトの帰還したいという日本人を早く帰してくれなどなどの問題で午前中は終わった。せっかく行ったのに、どうも少し問題が小さい。午後は、今度は開き直って、領土問題一本でぶつかっていったように伺っておるのですがね。こういう機会に、もう少し、私がずっと初めごろ申し上げたように、日ソ恒久平和を築くにはどういうふうにしたらよかろうかという高い話もあわせて行なわれればよかったと思うんです。
 ソビエトへ私は去年福田篤泰君と一緒に行ったんですが、こんな感じを受けたんですよ。平和条約というと、日本は領土問題、領土さえ片づけばもうあとは何もないんだと。ソビエトのほうから見ていると、領土問題も、もちろんやるというほど明確ではないが、もちろん領土問題も議題の一つにはなるんだと。がしかし、その他の日ソの経済、文化などの広い親善関係を進めていきたいという全面的な日ソ関係の考え方、友好関係を考えている。ズレがあるように感ずるんですね、ズレが。これは、私はやっぱり全般の中の領土問題というふうな、全般の友好親善関係の樹立の一環として領土問題が入るべきなんだと、こういうふうに考えるんです。何か、もう日ソ共同宣言で賠償の問題はなくなっちゃった、戦争状態は終結した。両方で大使館を相互に設置しましょう、あとは何もないと、ただ領土問題さえこれに入れれば、もうできちまうんだから、ただ領土さえ返せばいいんだと、こういうことではいけないんじゃないか。取り組み方ですね、これをもう一ぺん伺いたいのですがね。
#43
○国務大臣(大平正芳君) 取り組み方としては、仰せのとおりだと思うのでございます。機械的に考えておるわけでは決してないのでありまして、日ソ関係を、今後、将来長きにわたって安定したベースに置くということは、全体としての日ソ関係でございまして、ひとり領土問題だけではないわけでございまして、とらえ方といたしましては、仰せのとおりだと私も考えております。
#44
○森元治郎君 取り組み方ということがお話に出ましたから、一つ申し上げたいんだが、やはり人のつき合いでも、国のつき合いでも、それぞれのルール、心得というものがあるんですよね。大平さんは風貌、内容ともになかなか庶民的で、すべての問題を人情反覆の間に在りといったような調子とお見受けするんだが、やることは案外実務的なんですね。たとえば、あなたがモスコーに行ったあの行き方が私は気に食わないんですよ。人の家を訪問するときには、ちょっとそこへお墓参りに来たからついでにあんたのところへ寄ったでは、寄られたやつはいい気持ちはしないんですね。ちょっとそこまで来たから寄ったというのと、こんにちは、しばらくですと、こうくるのとでは、これは受ける人は違います。日中国交回復という、ソ連から見れば非常に関心の大きな問題を決行して、そのあとワシントンに飛んで、ワシントンの帰りにあそこへ立ち寄った。これじゃやっぱり受けるほうも、まず受ける気持ちが平らじゃないと思う。ソビエトという国は、御承知のように、なかなか形式――案外紋つきはかまを着たようなところがありますから。こういうところがへただということ。しかも行って言うことは、実務的な漁船員を帰せの、あんな話。その次は、今度は領土問題をどうする。これでは、取れるものも取れなくなっちまうと思うんです。これは外交の心得としてやらなくちゃならぬ。
 もう一つは、ソビエトといやしくもこれだけの大問題をやろうと言うんならば、向こうとの気持ちを通じ合わなければならぬ。とすれば、いい機会はあったと思う。たとえば、ニクソンが中国を訪問したときに、頭越しだというので、佐藤内閣は頭に来ちゃって、かっかとした、不愉快だ。ところが、この間キッシンジャーが北京に来て、アメリカと中国で相互に大使館に相当する連絡事務所を設置しようといったような話をした帰りに東京へ寄って、大平さんなんかと懇談されていった。たいへんみんな気分いいんですね、寄ってくれたと。ですから、日中の問題を話し合っているとき、ソ連は非常に聞き耳を立てて緊張しておるということは、だれでもわかることでありますから、そういう機会には、いま中国と話をしているのは、こういう国交回復のつもりであるぐらいのことは、適時に向こうに知らせてあげても……極秘でも、秘密でも何でもないんですから。そういうことがあるならば、向こうの心をほぐし、日ソ提携へのムード的な条件は非常によくなってきたと思うんです。やっぱりこれは小さいようなことですが、大事なことで、ほんとうに仲よくして、しかも、むずかしい問題を解決しようというなら、それぐらいの気の配りが必要じゃないかと思うんです。あにソビエトのみならずでありますが、外交の心得についての外務大臣の御所感を伺いたい。
#45
○国務大臣(大平正芳君) 仰せになられたこと、一々ごもっともだと存じます。
#46
○森元治郎君 それだけですか。(笑声)
#47
○国務大臣(大平正芳君) あともう弁解になりますから……。(笑声)
#48
○森元治郎君 弁解ではなくて、やっぱり親しい国はアメリカだけなんだと、ほかはBクラスなんだというようなことなく、やはり情勢を見ていて、日ソで今度は話をすれば、中国のほうも非常な緊張をして聞いているでしょう。そういう意味で、やはり気の配りようが必要だということを申し上げているんです。やはり大平さんもやがて総理候補ですか、書記長候補とか、候補の位置におられる方で、内外ともにお忙しいでしょうが、人柄はそこらのところは気がつく人ですから、十分今後とも配慮していってもらいたいと思う。
 そこで、いま日ソ平和条約締結の交渉の交渉に入ろうとしている段階。中ソの関係はなかなかこれは平らではないような節も見える。日本の動き方というのは、両方から注目されている。この間に処して、あちらを立てればこちら立たぬなんというようなこともあり得るかもしらぬ。これに処する日本政府代表大平外務大臣はどういうふうにいかれるか、正を履んで動かないとか、いろいろありますわな、お答えにも一つの形式は。なかなかこのやり方によっては、誤解というものはさらに誤解を生むというようなことになりますが、大臣のかじのとり方ですね、伺います。
#49
○国務大臣(大平正芳君) これは、もう当然のこととして、日本の国益を踏まえてやる以外にないわけでございます。で、それをどのように相手側がとってくれるかという問題でございますが、これは私が先ほど申しましたように、まあ日本の国は、言うたことは間違いなくやるんだという信頼があれば、だんだん解けていく問題だと思うんです、相当時間がかかりますけれども。当然日本の国益を中心に、それぞれの国に対処していかなきゃいけないことだと、私は心得ております。
#50
○森元治郎君 たとえば、新聞で拝見しただけで、その後あまり記事が出ていないのでわかりませんが、後に触れますが、チュメニ油田の開発に関連して、チュメニからパイプラインで中ソ国境を通ってナホトカへ持ってくるという計画があります。これは、中ソ国境の近いところを通るんで、中国はこれを脅威に感じているんじゃないかというような問題について、中曾根大臣が周恩来と話し合って、了解を得たとか得ないとかということの真相をこの際聞かしていただきたい。
#51
○国務大臣(大平正芳君) 中曾根さんの中国におけるそういうお話の御報告は、私、受けていないんですけれども、いま言った資源問題は、資源開発のプロジェクトは、現実にもう日ソ間の課題になっておるわけでございます。で、私としては、日本の今後の資源需要の展望に立ちまして、また、現在の資源の供給が一地方に非常に偏重しておると。しかし、今後の需要の展望を見ますと、できるだけグローバリーに、すそ野を広く供給源を確保せなきゃならぬことは、もうどなたが考えても当然の道行きだと思うわけでございます。その場合にシベリアの資源という問題も、そのシェアがどれだけになるかは別として、重大な関心を払わなけりゃならぬことでございまして、いまから前広にこういう問題について処置しておくということは、私は大切なことだと思っております。したがって、これは外交政治問題として取り上げる場合に、それ自体としてたいへん意味があることだと思うわけでございますので、いま申し上げておりますことは、領土問題というのが一方にありますけれども、これとからませるようなことはしないと、これはこれとして、そのフィージビリティーなるものを十分究明して、満足すべきものであればこれはやるんだということを申し上げておるわけでございまして、この日本の置かれた立場というものについては、どの国も私は御理解いただけるんじゃないかと思って、よく事態を御認識いただければ御理解いただけることには違いないと、私は考えておるんです。
#52
○森元治郎君 御理解いただけることに違いない――それを周恩来さんの口――お話しをして、御理解を得られたのですか。思うばかりでなくて、中曾根君が口に出して御理解を得られたかどうか。
#53
○国務大臣(大平正芳君) だから、それは冒頭に申しましたように、中曾根さんからそういうお話しを私は聞いていないんですけれども、中国も含めて、諸外国の理解が得られるに違いないと私は思っておるということを申し上げたい。
#54
○森元治郎君 それは後に触れますが、平和条約と一口に軽く言いますけれども、平和条約って、日本が結ぼうとする平和条約というのは、一体どういうことを言うのか。それと同時に、ソ連の言う平和条約というのはどんな内容のものを言うのか。その間が、わかったような、わかんないような感じがするんですね。先ほど申したように、平和条約、いわゆる普通の平和条約、戦争のあと始末、交戦国間のあと始末という場合の平和条約の内容として書くんならば、日ソ共同宣言のあの文句そのままずっとこう並べて、日本側からすれば、領土問題一つそこへ入ればこれは形がつくようなものだと思うんですが、平和条約というものの日本とソビエトの理解。それと、ソビエトの理解といったって、あなたの接触した範囲での、何を結ぼうとするのか、平和条約で。その感触と、日本政府の態度を聞いておきます。
#55
○政府委員(大和田渉君) 大臣にかわって御答弁申し上げますが、日本が考えております平和条約と、ソ連の考えております平和条約とは、それほどの差があるとは思いません。通常の平和条約で申しますと、両国間の領土の確定、あるいは請求権についての合意その他が含まれますが、領土の問題を除きましては、日ソ共同宣言及びその後に結ばれました通商条約、領事条約その他で、ほぼ実務上は交際が通常になっております。で、問題は、その平和条約に盛らるべき領土についての合意がいまだにできていないということが、平和条約が結ばれていない原因であると、こう考えております。
#56
○森元治郎君 ソ連側の考えている平和条約は、一体どういうものと接触1いままで接触をしていて、向こうは、一体、平和条約という形式はどういうものを考えているのか、その点の説明を。
#57
○政府委員(大和田渉君) 平和条約の形式として、特に先方から提示されたものはございません。ただ、先ほど御説明申し上げましたように、そこに盛らるべき一番重要な領土問題についての考え方が、ソ連側と日本側と食い違っているということのために、いまだに結ばれていないという結果になっております。
#58
○森元治郎君 その領土条項、その領土の内容についての合意がないということですね。
#59
○政府委員(大和田渉君) そのとおりでございます。それで、具体的に申し上げますと、ソ連側が現在示しております態度は、一九五六年、つまり日ソ共同宣言の考え方に変わりはないというようなラインを示しております。
#60
○森元治郎君 この前モスコーに行ったときに、向こうの人と、向こうの国会議員の方と懇談したときにも、やはり領土問題は平和条約の一つの項目にはなるだろうということを言っておりましたから、内容の問題だけ、形式は領土の問題だけ、領土の内容だけが残っているだけだと、こういうことですね。領土の、どの領土、北方の領土のどの島、どの島というような話はきょうはいたしません。
 そこで、田中さんが親書に盛られている、あるいは国会でお述べになった、また、大平外務大臣も外務大臣演説でお述べになったシベリアの資源開発の問題、特に、いま早急の問題としてクローズアップしているのはチュメニ油田の開発にしぼられていると思う。これはいよいよ政府は決心をして、ソビエトがかねがねうるさいように言っている政府の保証、すなわち輸銀の資金によるバンクローンの供与に政府は介入すると、この話に、十億ドルの借款ですね。これについての最終的腹はきまったんですか。ただ、新聞では前向き、前向きと。私が大きらいなことばで、前向きというので、お互い話をしているのに前向き以外に話はないんですね。もっぱらうしろ向きでいきましょうということは口から出るわけがないんですよ。前向きじゃなくて、そこまでの決心をなされたかどうか。ソビエトは、私も向こうの貿易次官やなんかとたくさんお会いした感触では、いかに日本の大企業がたばになっても、これだけの大きいプロジェクトは容易じゃない。やはり政府がこれに保証するということが最も望ましいんで、その決心を早く聞きたいんだとかねがね言ってるわけですね。政府は、バンクローンの十億ドルの供与、これに対して腹がきまったんですか。
#61
○政府委員(大和田渉君) シベリアの開発のプロジェクトは、われわれが知っておりますだけでも四つございます。いま仰せのとおり、チュメニの油田開発という案件がかなり進んでいることも承知しております。ただ、チュメニに限らず、ほかの案件につきましても、従来行なわれておりました経済協力案件と比べまして非常に大きなスケールのものである。したがって、当然資金も非常に要るということもよく了解しております。現在政府が、しからばそれに対してバンクローンを供与する、あるいは引き取り保証をするということに決心したかどうかという御質問でございますが、これは外務大臣がかねがね仰せられておりますし、また、田中親書にもそういうラインで述べておりますけれども、さらに、われわれとしては、具体的な話し合いが詰まるのを待っているという状況でございます。話が詰まった段階で、それを検討して、最終的な腹をきめたいという考えでございます。
#62
○森元治郎君 そういうお話は前からずうっと聞いていたんですが、日ソ経済合同委員会のこちら側の代表が再三行ったり帰ったりして、話はだいぶ煮詰まり、石油の性質もよろしいようだと、埋蔵量も確かなようだと、大体文句はないようだと、あとは政府の御決心次第だということであり、また、その代表が、新聞によれば、官房長官のところまで行って、政府の決断を早くやってくれというようなことを言ってるようですが、バンクローン方式というものに異存はないんですね。
#63
○政府委員(大和田渉君) バンクローン方式そのものについては異存はないというふうに大蔵省が言っております。
#64
○森元治郎君 もっと話を煮詰めてと言って、残るのは何ですか、残っているのは。
#65
○政府委員(大和田渉君) たとえば世上十億ドルという数字が出ておりますけれども、その十億ドルの中身が何であるのか。十一億ドルになるのか、あるいは九億ドルになるのか、その積算の根拠というものをわれわれは実は承知しておりません。ばく然と申しますれば、たとえばパイプは当然必要だし、そのパイプを輸出するための金融であるということは了解できますけれども、具体的に、しからばパイプにどれだけ金がかかるのか、あるいは、あれだけの石油がもし来るとすれば、港のファシリティの問題が当然出てくる。そのために一体どれだけ金が要るのかというようなこともわかっておりませんですし、それからそれだけの分量のものが来るとなると、先方は当然供給を保証するはずのものだと思いますし、また、先方はわれわれに引き取りの保証を求めているわけでございます。それがどういう形で保証を与えるべきなのか。直接日本政府が石油を引き取るわけじゃないわけでございますので、当然間接的にならざるを得ないと思いますが、その辺のところは、まだ詰まっていないということでございます。
#66
○森元治郎君 そういう交渉のしかたもある一方、原則的に、なるほど民間の銀行が集まって、団体組んで金貸すったって、とてもそんな資金がありませんから、当然これは政府にお願いをしてくるだろうし、そういう状況ですから、原則的に政府はこの計画に応援するにやぶさかでないということを言っても決して悪くはないと思うのです。その原則を立てておいて、あとで価格の問題だ、港湾のファシリティの問題、調べればいろいろ問題はたくさんあります。それをあとからやったっていいんじゃないか。あるいは、それを交渉の道具に使っているのかなとも思う。あるいはまた、中国のほうの顔を見て、明快な答えは渋りつつやっているのじゃないか。いろいろ御苦心もあるだろうと思うが、それは了解できます。少なくも、原則的に政府はこの開発計画に対して保証する用意があるというだけを私言って一向差しつかえない。相手を裏切ることにも何にもならないのじゃないかと思うのです。たとえ話が不調に終わっても。いかがですか、大臣。
#67
○国務大臣(大平正芳君) たびたび申し上げますとおり、そのプロジェクトのフィージビリティーをいろいろ検討しておられるわけでございまして、遠からず当事者間で基本契約というものが締結されるわけでございますが、それが満足すべきものであれば、われわれとしては協力いたしますと、そう申し上げておるわけです。
#68
○森元治郎君 大平さんと話をすると、とても大人物なんだな、どうしても抜けちまってね、まことにやりにくい。外交交渉にはいいでしょう。しかし、ものをやっぱり固めていくときには、ときにはぱしっとしてもらわないと困るのですね。
 そこで、田中親書に戻りますが、こういうチュメニ油田の開発などを含めてお話し合いをしよう、どういう返事が来るかしりませんが、こっちの希望するような、いわゆる下品なことばですが、色よい返事があった場合は、乗り込むのは私はやはり総理が乗り込んで、全般の大きな問題を話しながら、チュメニ油田もやり、平和条約もやる。やはり総理が行くべきである。必要によっては、事前にキッシンジャーのような役割りとして、あるいは外務大臣がしっかりした根回しをされて、きまったものの上に総理が乗っかっていくという手順もあろうかと思いますが、いずれにしても、この日ソ間の関係打開、平和条約の問題促進には、総理みずからが当たるべきだと思うのです。この点どうでしょう。
#69
○国務大臣(大平正芳君) 一般的な問題として、私は、総理大臣にできるだけ精力的に各国を歴訪してもらいたいと思っております。事情が許せば、総理に進んで外遊していただかなきゃならぬと思っておるわけでございまして、ただ、いまちょうど国会中でございますから、総理の任務としては、国会に全力投球をする責任がありましょうから、これを終えますと、その段階で、どういうところに行っていただくか、十分協議してきめたいと思っておりますが、訪ソの問題も一つの計画として吟味をいたしたいと考えています。
#70
○森元治郎君 いまのような情勢、ようやく、ブレジネフのソ連邦結成五十周年記念の演説などを見ても、なかなか含みのありそうなお話をしておられるようで、おもしろい段階にきていると思うんです。したがって、こういうときには、やはり決断と実行の人、街頭演説じゃないけれども、決断と実行の人――田中角榮総理大臣がやっぱり行って、あそこでばしっと話をすることが大事だと思う。そして相手はもちろんブレジネフでなくてはならぬと思う、ブレジネフでなくては。今度は新関君がブレジネフに会ったことは画期的なことだなどと新聞に書いてあるが、ソビエトと一九五六年国交回復以来、政府の要人、一人も会ってない。まことに日ソの関係をよく証明していることだと思うんですね。向こうも会おうとしないし、こちらも会おうとしなかったんでしょう、そらぞらしいから。しかし、今度はやはり大ものと会って、勝海舟と西郷隆盛じゃないけれども、ああいう大ものがぴったりと、磐石の基礎を築く話にはこの機会が一番よろしい。重ねて、その田中総理みずからの出馬をきめるべきです。発表をもたもたする必要はないと思うのですね。だれに遠慮することはない。先ほど大臣も日本の国の利益、もちろん、大臣は申されなかったが、アジア、世界平和に貢献する大きなことですから、発表して何ら、どこに向かっても差しつかえない。また、やるべきだと思うんですが、重ねて伺います。
#71
○国務大臣(大平正芳君) 私としては、総理の訪ソ問題というものを総理に上げて、検討を求めたいと考えております。
#72
○森元治郎君 大原、一つ、小さい、小さい問題ですが、コンコルドという飛行機ありますね、英仏が開発した。あれを日本が買ってくれそうもないというんで、イギリスとフランスの大使が大臣を訪問して、いろいろ陳情していったようですが、こまかいことをお尋ねする時間もありませんけれども、少なくも安全性というような一番大事な問題でも十分に充足するようなものであるならば、やっぱり窮地におちいったECの中の二つの国、これのメンツを買う、日本は金持ちですから。そこらの腹も必要だと思うが、どんなふうにお考えですか。
 コンコルドという名前はやっぱりいい名前ですからね。これは一致とか仲よくするとかという意味ですから、コンコルドはいいと思うんですがね、どうでしょう。(笑声)
#73
○国務大臣(大平正芳君) まあ、これを買うのは政府でございませんので、航空会社のほうの問題でございますが、仰せのように英仏両国、大使まで、私なり運輸大臣を訪問されてのお話でございまして、なるほどまあコンコルドにはメリットもありますけれども、デメリットもある。そういった点について十分購入者側に吟味を願っておるところでございまして、目下の段階はコマーシャルな問題、段階でございます。
 しかし、仰せのように、英仏両国が異常な執心を示しておる問題であるということは、私どもよく意識しておるわけでございます。
#74
○岩動道行君 森先生からチュメニの問題についていろいろ御質問なさったんですが、それに関連して、私、基本的な問題一つだけ伺っておきたいと思います。
 いろいろパイプラインを引くとか、バンクローンをどうするとか、そういうような具体的な話がかなり進んでいるようなんですけれども、ほんとうにチュメニの油田というものが日本が期待するようなそれだけの油を産出できるのかどうか、この点について、実は私どもが耳にしておるところでは、アメリカ側のあるグループが調査に行った。しかし、現地は見せてくれないで、あした、あしたと言いながら、それでもうしびれを切らして、それじゃもう帰ると言ったら、ようやく、それじゃお見せしますというので、飛行機でその上空を飛んで、ここですといったようなことで、アメリカの代表団は帰ったというような話を聞きます。
 それから、日本側で調査に行ったこのときも、ほんとうの専門家がついて行ってない。せいぜい商社の油を担当しておるような方々が行かれたというような話を聞く。一方、相当の油の専門家が一応いろいろな資料から考えると、たいへんなまあ恐しいところではないか。非常な湿地帯であって、そこから油を出すためには、技術的には相当の圧力を注入しなければ出てこないであろうし、それにしても、それがちょろちょろしか出ないかもしれない。だから、よほど具体的に現地で調査をして、そうして確実に相当の量が出るというようなことが、専門家から見るとまだまだ確信が持てないという話も、専門家の技術者からも聞いているわけですが、そういったようなことについては、もうすでにだいじょうぶなんだという確信を持って、その上でいまのような話になっておるのかという、そこは外務省にお聞きするのは実は筋違いかもしれませんが、そういう話をもとにして、外務省もいろいろな折衝に当たらなければならないと思う。その点についてはいかがでございましょう。
#75
○政府委員(大和田渉君) いま仰せのように、昨年六月下旬から七月初めにかけまして、民間専門家の調査団というものが派遣されたわけでございます。これは現地へ参りました。その際、政府としてもやはり非常に重要なプロジェクトであるということで、通産省及び外務省からその専門家の一行の一員として派遣しております。
 その報告書は出てまいっておりますが、それによりますと、御指摘の点は三つ問題があると思います。一つは分量がはたして確保できるか。いまの予定によりますと、年間千五百万ないし四千万トンの油が入る。それが二十年間にわたってはたして供給可能かどうかという、分量の問題が一つございます。
 それから、油の性状の問題。われわれとしては、低硫黄の油が欲しいというわけでございますが、はたして日本の期待するような低硫黄の油がそれだけの分量採取可能かどうかという点がございます。
 それから、いわゆる技術的な問題といたしまして、湿地帯であり、また、冬になると零下五十度にもなるというような、寒暖の差の非常に激しいところに、はたして技術的にパイプが引けるかどうか。
 大ざっぱに分けますと、その三つの問題があると思います。で、最初の分量の問題につきましては、結果としては、供給可能であるという結論が出ております。で、ソ連側の五カ年計画によりますと、日本側に、その程度出てまいります暁、その時期には、全体の産出量、約二億三千万ないし二億四千万トンという数量を考えておりまして、それは可能であるというふうに考えております。
 それから、油の性状でございますが、これは現在すでにたくさんの油井がチュメニでもう開発されておりまして、油をすでに産出しております。その中には、硫黄分のかなり多いものもありますが、また、中には、かなり硫黄分の少ない油もございます。技術的には、それをまぜまして、日本の期待するような低硫黄のものを供給することは可能であるという結論が出ております。
 それから、パイプが技術的にはたして可能なのかどうか、そういう寒暖の差の非常に激しいところでございますので。これは現在すでに――口径はいま考えられておりますよりも若干細いパイプでございますが、すでにソ連側からはチュメニからイルクーツクまで敷設済みでございまして、この技術を応用することによって、同じ、パイプの口径が少し太くなりますけれども、技術的に可能である。要するに、全体を通じましてフィージビリティー、開発の面から見たフィージビリティーはだいじょうぶであろうという専門家の報告に接しております。
 以上でございます。
#76
○岩動道行君 いまのお話で、確信を持っておられるようですけれども、なお私は、ごく最近も相当の専門家ないし実務家からも話を聞いたのですが、あの程度の調査でほんとうに信用してやっていくということは、なお十分な検討がやはり必要ではないか、少し話に乗り過ぎているのじゃないか、というような警戒的な話をしてくる人もまだあるわけでございますので、なお一そう精密な調査、これをやっぱりおやりになっていただいて、その上でやはりこの話を進める。並行しておやりになる必要があろうかと思いますので、この上とも政府においてはその基本的な問題をまず十分に調査されることを希望いたしたいと思います。
#77
○田英夫君 実は、昨日の沖縄特別委員会でも大臣にベトナムの問題を伺いました。やや引き続きという形になりますけれども、ベトナムの問題をお聞きしたいと思います。
  〔委員長退席、理事長谷川仁君着席〕
 きのうも申し上げたのですが、一月二十五日に発表されましたベトナム和平協定第一条に、アメリカ及びその他のすべての国は、一九五四年のジュネーブ協定で認められたベトナムの独立、主権、統一及び領土の保全を尊重しなければならないと、こうあるわけなんですが、きのう、なぜアメリカだけがこの名前を特別に書かれているか。アメリカ及びその他のすべての国は、と書いてあるのはどういうふうに考えたらいいんだろうかということを伺い、議論をしたわけですけれども、この点、もう一回確認をしておきたいのですが、条約局長、これはいわゆる条約とか協定とかいうものの常識からいうと、きのうも申し上げましたけれども、非常にふしぎな文章じゃないかと思いますが、これは通常はこういうふうに書かないのじゃないですか。
#78
○政府委員(高島益郎君) 田先生の御指摘のこのベトナム和平協定の第一条の書き方でございますが、この趣旨は、これは和平協定の当事者のみならず、つまり、世界のすべての国がベトナムの統一、あるいは独立、主権、そういったものを尊重すべきだという、一つの法律的な権利義務の関係だけではなくて、一般的な精神的な規定としてあげたものだと思います。こういう場合に、確かに先生の御指摘のとおり、私たち通常、条約協定等で、すべての国を何らか拘束すると申しますか、精神規定を書きます場合に、ある特定の国及びその他の国というふうに書くということは、通常はしない例だろうと思います。ただ、私、昨日もお答えしたと思いますけれども、こういうふうになった背景につきましては全く承知しませんので、どういう意味かということについて責任のある答弁はできかねる次第でございます。
#79
○田英夫君 そういうたいへんふしぎな書き方をしてあるわけですけれども、まあ私の解釈では、これはアメリカはすでにジュネーブ協定を批准しなかったという前科があって、しかも批准しなかっただけでなく、それを犯してああいう侵略戦争をやった。その結果として、侵略戦争に失敗をして引き下がらざるを得なくなった。その結果この和平協定である。だからアメリカ、おまえさんは特に前科者だからひとつ名前を書いて、はっきりおまえさんは守れ、こういうふうに言っているのだというふうに私は思えてしかたがないわけですけれども。
 ところで、アメリカ及びその他のすべての国は、ということが書いてあるわけですが、条約局長言われたように、その他のすべての国は、ということになれば、世界じゅうの国ということになるわけで、この協定自体は、実は四当事者で調印をされ、結ばれたわけでしょうけれども、大臣、やはりこれは日本政府の気持ちとしては、当然日本も入っているのだ、こういうふうに思っておられますか。
#80
○国務大臣(大平正芳君) 私どもこれを尊重すべきものと考えております。
#81
○田英夫君 そうなりますと、一つ伺いたいのは、いま当面世界じゅうの国、特に日本も大きな関心を持っているのは、あれだけ荒廃をしたベトナムに何とかひとつ援助をしようじゃないか、こういうことだと思います。きのうもお話がありましたけれども、今度三宅課長以下複数の人を北ベトナムに派遣するために準備中であるということのようですけれども、これはそう考えてよろしゅうございますか。
#82
○国務大臣(大平正芳君) そのとおりでございます。
#83
○田英夫君 これはつまり回答待ちということですか、北ベトナムの……。
#84
○国務大臣(大平正芳君) そうです。
#85
○田英夫君 つまり回答があれば、すぐにも三宅さん以下数人の人がハノイを訪問するということになるわけでしょうけれども、その際の話し合いのおもな問題点というのは、援助の問題になるのか、あるいは国交回復というような問題にまで触れていくのか、話し合いの内容というのはどういうことになりますか。
#86
○国務大臣(大平正芳君) 特に内容を限定してございませんで、双方関心のある諸問題をノンコミッタルなベースと申しますか、隔意なくひとつ話し合ってくるということでございまして、これからベトナム政策を展開するにあたりまして、私ども北越側の意向を十分承知しておきたいということでございます。
#87
○田英夫君 そうなりますと、三宅課長が行くのが皮切りで、北ベトナムとの国交を回復――回復ではなくて、これは新しく結ぶわけでしょうけれども、ベトナム民主共和国と国交を結ぶという方向に向かって、さらに三宅課長のあと、モスクワなりパリなり、そういう場所で大使クラスの接触があるというようなことも考えられますか。
#88
○国務大臣(大平正芳君) これは復交を待ってということになろうかと思います。
#89
○田英夫君 当然三宅課長の話の中には、援助の問題も最も具体的な問題として出てくるんじゃないでしょうか。
#90
○国務大臣(大平正芳君) あり得ることと考えます。
#91
○田英夫君 ベトナム援助ということを、これはもう政府もすでにいろいろな場でベトナム援助を日本も積極的にやりたいということを示されておられますけれども、これは先日のパリ会談でも明らかなように、北ベトナム側は国連という舞台を拒否をしている。多国間の共同援助という形も拒否をしている。二国間援助を望んでいる。こういうことのようですけれども、なぜ北ベトナムが二国間援助を望むのかという点について、日本も当然援助をされるということになれば、そういったこともお考えにならなきゃいかぬと思いますけれども、これはなぜだというふうにお考えですか。
  〔理事長谷川仁君退席、委員長着席〕
#92
○国務大臣(大平正芳君) 私どもはそういう情報を伺っておるだけでございまして、まあそういった点、北越側の考え方もよく聞きただしていきたいと思っておるんです。
#93
○田英夫君 これも、私、ハノイに行った経験の中からの推測になるわけですけれども、ベトナムの人たちは、いわゆる自主独立ということばで言っていいと思うのですが、そういうことを非常に強い気持ちを持っているということで、つまり、多国間でこう、みんなでどっとやってくる。あるいは国連を舞台にするというようなことになると、何かこう、自分のほうに主導権のない形で援助が行なわれるということを非常におそれているんじゃないだろうか。先日のキッシンジャー氏のハノイ訪問で、アメリカとの間ですでに二国間援助というような形の援助が行なわれようとしているようですけれども、そういうことではないかと。自分たちの、北ベトナム側が主導権を持った援助を望んでいるんじゃないだろうか、こういうふうに思うわけですけれども。まあ三宅課長行かれるなりしてそういう点をお確かめになるでしょうけれども。
 もう一つの問題点は、解放戦線ですね。南ベトナムの解放戦線、これは昨日伺ったところだと、アメリカのニクソン大統領は和平協定が結ばれた際の演説で、南ベトナムにおける唯一の合法政権は、グエン・バン・チュー政権であると、こういうことを言っているわけですね。私はそれは今度の和平協定の精神に違反するものだと思いますけれども、この点もう一回確認したいんですが、日本政府としては、やはり南ベトナムにおける唯一の政権はグエン・バン・チュー政権であるという態度をとり続けるのですか。
#94
○政府委員(高島益郎君) 和平協定におきまして、この和平協定に署名いたしました当事者といたしましては、先生御指摘のとおり、南越の政府のみならず、臨時革命政府及び北越政府があるわけでございますが、この事実と、各国がこの和平協定の当事者との間にどういう政府間の外交関係を、あるいはその他の関係を持つかということは、おのずから別個の問題であろうかと思います。先ほど先生御指摘のとおり、私どもすべての国の一員といたしまして、ベトナムの統一、ベトナムの主権、ベトナムの独立というものを尊重するということが大前提でございますが、それに至るまでの、つまり再統一に至るまでの過程の問題といたしまして、この、現在ございますベトナムにおける各種の勢力と申しますか、あるいはエンティティーと申しますか、そういったものとの各国との関係というものは、法的関係というものは、それぞれ各国がきめるべき問題ではなかろうかと思います。ひるがえりまして、わが国といたしましては、南ベトナムにおきます合法政府は南越の政府であるというふうに私ども考えております。それからまた北ベトナムにおける政権、これにつきましては、ただいま大臣からのお話にございましたとおり、これから日本政府がきめるべき問題でございますので、いま私から日本政府の方針なり態度を申し上げる立場にございませんが、いずれにいたしましても、南越政府は南越における合法政府というふうに考えておりまして、この南越におきまして二つのエンティティーと同時に関係を取り結ぶということは、法的にもまた政治的にも不可能な問題であると、こう思います。もしかりにそのようなことがどこかの国で行なわれるといたしますれば、必ず他方からの反発を買いますし、全く動きがとれない事態になると考えますので、そういった観点からも、私ども日本といたしましては、南越については南越政府のみと関係を持つ、法的関係を持つというふうに考えております。
#95
○田英夫君 非常にそこのところが問題だと思います。今度の停戦協定の中で、いま条約局長言われたように、日本もすべての国の一つとして、その精神は尊重するということで、大臣もそういうお答えがありましたけれども、そうなりますと、この第一条に、これは精神規定ですけれども、はっきりと、ベトナムの独立、主権、さらに統一、こういうことを尊重しなければならないということがうたわれているわけで、そうなってくると、ベトナムというのは一つなんだと、統一ということを目ざすんだ、これを日本政府としても、日本としても尊重しなければならぬ。こういうふうに世界中の国がベトナムは一つなんだと、その方向にみんなで持っていこうじゃないか。それをどういうふうに統一するかはベトナムの人が自分たちできめることだ。これがもうはっきり今度の和平協定にうたわれていて、アメリカ自身がそれに調印をしている。グエン・バン・チュー政権もそれに調印をしている。こういうことになって、このアメリカとグエン・バン・チュー政権は全くそれに義務づけられていると言っていいわけで、日本の場合は精神規定、それを尊重するという中に加わっている、こういうことだろうと思いますね。そうなってくると、いま高島局長言われたことはわかりますけれども、そういう状況の中で、世界的にこういう和平協定がせっかくできて、みんなでこれを統一という方向を目ざそうというときに、相変わらずニクソン大統領が言い、そして日本政府も、南における唯一の合法政権はグエン・バン・チュー政権だということを言っているということは、まさしくこのベトナム和平協定を踏みにじることになる。せっかくこういうものを当事者の間でおつくりになったのに、そしてすべての国が一緒に守ろうじゃないかと、こういうことを言っているときに、その精神を踏みにじることになる。あえてこんなことを言うべきではないと。ニクソンもまことにおとなげがないと思いますが、それをまた日本政府が、南における合法政権はグエン・バン・チュー政権であるということを繰り返しおっしゃるということは、まことに私は残念なことだと思うのですよ。実際上、手続上といいますか、あるいは現実の問題として、南べトナムに二つの政権があるということは、これは現実の事実ですから、その両方と外交関係を結ぶということが不可能なことは、これはわかります。わかりますけれども、そうなってくると、じゃあ一方とだけ結んでおけばいいということ、しかもそれが統一ということを目ざす中で、そのまた一方とだけ結んでおくということは、これはまことに不都合なことである。これをわざわざ強調するということは、非常にこの精神からいっておかしなことだと思うのですよ。
 で、そこで具体的に伺いたいのは、援助という場合には、いまのお話を伺っていると、グエン・バン・チュー政権とは正式に認め合っている仲だからこれは援助なさるんでしょう。北ベトナムとは接触をお始めになるという状況の中で援助なさるんだろうと思う。ただ臨時革命政府、いわゆる解放戦線のほうに対しては全くしないのかどうか。この点は大臣から伺いたいと思います。
#96
○国務大臣(大平正芳君) 国会でも申し上げておりますとおり、援助はベトナム全域を対象として考えますということを申し上げておるわけでございます。それをどういう道筋でやってまいるかという場合、南越側が支配するところでは当然南越政府がいろいろ心配すると思います。北越についても同様のことがいえると思うのでございます。日本は解放臨時革命政府とは接触を持たないということでいっているわけでございますが、それにいたしましても、いろいろ第三者、すなわち国際赤十字社等を媒体にいたしましていろいろな援助が行なわれているわけでございまして、それは何もそういう支配地域に制約なく行なわれていいはずのものだと私は考えておるわけです。
#97
○田英夫君 実際問題としては、大臣おっしゃるとおり、北ベトナムは北ベトナムの支配地域がある。南のグエン・バン・チュー政権もひとつの支配地域がある。同時に臨時革命政府もかなり広範な支配地域があるわけです。この点、これはこういうところであえて申し上げる必要もないかもしれませんけれども、私も先日のローマのベトナム支援のための国際会議に出ておりましたけれども、そこに来たグエン・バン・チェンという臨時革命政府の首席代表もはっきり言っておりました。日本ではしばしば、これは日本でもと私にその人は言っておりました。よく知っているようですけれども、日本ではしばしば南ベトナムの状況をヒョウの斑点のようだと、こういうふうに報道しておられるようだけれども、これは間違っている。ヒョウの斑点というのは、つまりそういう表現が使われるときには、ヒョウの黄色い部分がグエン・バン・チュー政権の支配地域であって、黒い点々にあたるところがわれわれの支配地域というふうにいっているんであろうけれども、それは事実と違う。むしろそういう言い方をするならば、黄色いところがわれわれのところであって、しかもヒョウの斑点よりもはるかに少ない黒い部分が、点が、グエン・バン・チュー政権の支配地域であると考えるべきでしょうという話をしておりました。これは一方の側の話として聞かなければならないかもしれませんけれども、南ベトナムにおける支配地域の部分の中でより多い部分が臨時革命政府側にあるということは私は事実だと思うんです。そういう中で、ほんとうに最も荒廃しているところは全ベトナムの中で実はその地域である。アメリカの猛爆を受けている地域だ。こういうことになれば、ほんとうに支援をしなければならない、救済をしなければならない地域というのは、実はこの臨時革命政府が支配しているところであると思うんです。この援助というのは当然人道的な立場から日本政府もお考えになっていると思いますので、そうなると、臨時革命政府の地域を無視してベトナム援助ということは考えられない。当然日本政府は臨時革命政府と接触をなさって、その支配地域にも援助が直接及ぶような形でなされなければ、援助というものの意味は私は半減どころかなくなってしまう。こう言っても過言ではないと思うんですけれども、そういう現実の中で実際問題としてベトナム援助というのは臨時革命政府の地域についてはどうなさるつもりなのか。
#98
○国務大臣(大平正芳君) それは、日本だけが当面している問題じゃなくて、全部の国があなたが疑問にされているような問題に逢着していると思うんです。現に、南越政府を七十二の国が承認いたしておりますし、臨時革命政府を三十一の国が承認しておるようでございまして、両方やっているところはないんです。どちらか一つ選んでおるという現実でございまして、日本政府がかた意地にやっているわけじゃないんでして、そういう取り結び方を常識的にやっているということでございまして、高島君がお答えいたしましたように、外交関係をどう持つかというのは、その国々が考えることであるということで各国がやっているわけでございまして、それはそれとして、現実の援助にあたりまして、支配が入り乱れて、境界がはっきりしないというような現実は依然として残っておるわけでございますけれども、私どもとしては、ベトナム全域にわたって人道援助を考えようという態度を堅持しておりまして、なるべくそれが要請があればまんべんに行き渡るように考えたいと思っているのでございまして、実際問題としてどのようなことになりますか、国際赤十字社なんかからは熱心な要請がございますけれども、まだそれぞれの政府からはこれという要請を受けておりませんので、現実にできるだけ人道援助にふさわしい効果を発揮するように、実際上考えていかなければいかぬと思っております。
#99
○田英夫君 ベトナムの全域にということはまことにけっこうだと思うので、ぜひそうすべきだと思いますが、そうなってくると、先ほどから申し上げているように、臨時革命政府というのをどうするか、これは北ベトナムとの関係はもちろん非常に密接でありますけれども、あの人たちの表現でいえば親しい友人であるという関係を保っていて、北ベトナムに援助したから、それが臨時革命政府の地域に回るというふうにお考えになるのは間違いだろうと思います。そうなってくると、臨時革命政府の地域というのはどうしても欠落してくる。私は、日本政府もぜひ臨時革命政府のほうと何らかの形で、これはいろいろ方法があると思いますので接触をおとりになって、今度ローマ会議に出ましたグエン・バン・チェン氏はぜひ日本を訪問したい、こういう意向も持っております。日本政府側がお認めになれば、この人たちは日本を訪問することも可能なわけなんですから、そういう機会も持たれたら、これは不可能なことではないと思います。きのう伺ったのですけれども、はっきりしたお答えがありませんが、あらためて伺いますけれども、たとえばグエン・バン・チェンという人は、目下ハノイ駐在の臨時革命政府代表、つまりこれはまあ別の政府に一応なっているわけで、大使という肩書きではありませんけれども、一応通称は大使というふうに呼び合っているようでありますが、代表でありますが、こういう人がもし日本に入国をするということが起きた場合には、入国をお認めになるつもりがあるかどうか、この点いかがですか。
#100
○国務大臣(大平正芳君) そういうことをいま考えておりません。
#101
○田英夫君 もう時間がありませんのであまり詳しくはお聞きできないのですけれども、もう一つ、いま南ベトナムにおける非常に大きな問題、人道的な立場から非常に大きな問題は、グエン・バン・チュー政権が逮捕している普通の政治犯の問題その実態については、時間がありませんので詳しく申し上げるいとまがありませんけれども、先日ローマで開かれた国際会議でも、実際に自分自身がつかまっていたフランスの青年二人が出席をいたしまして、その自分の目で見た南ベトナム政治犯の実態というのを紹介していました。いわゆるトラのおりという刑務所の中の実態を話しておりましたが、人間が立てないような天井の低いおりの中に多数の人間を押し込めるようにして入れて、文字どおり目の玉をくりぬいたり、石油ストーブで熱したくぎの出たいすの上にすわらせたり、あらゆる拷問をやっている。これは目撃者の証言でありますが、そういう実態があって、しかも、昨年の十二月にそのフランス人が釈放されているわけですが、この十二月という段階になってますます逮捕者がふえて、しかもそれが一部の殺人犯などの一般犯とまぜこぜにされて、従来収容されていた刑務所から移されて、まぜこぜにされてどこかへ運び去られていったということも言っておりました。結局政治犯であるか、一般犯であるかわからないような状態にして、その一部は消していろ、殺している。こういうふうに推測されるという報告もあったわけですけれども、これは日本政府としてどう手を打つということは直接はできないかもしれませんけれども、グエン・バン・チュー政権と外交関係を持ち、グエン・バン・チュー政権を強力に支持して、これが唯一の合法政権だとあえて言っているニクソン政権、アメリカ側と非常に密接な関係にある日本政府として、その問題についての大臣のお気持ちを伺っておきたいと思います。
#102
○国務大臣(大平正芳君) いま御指摘の問題は、パリ協定にきめられたラインに沿って当聖者が措置すべき問題だと心得るわけでございまして、パリ協定が忠実に履行されることを私どもは期待しております。
#103
○委員長(平島敏夫君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#104
○委員長(平島敏夫君) 速記をつけて。
#105
○渋谷邦彦君 初めに伺いたいのは中国問題です。けさ報道された中で、周恩来首相と、西園寺氏との会談内容がきわめて含みのある示唆に富んだ、そういうものであったという印象を強く受けておるわけですが、もうすでに外務省に対しても出先から、あるいは何らかの形で公電も入っておられるだろうと思うんですが、昨日の会談を通してはっきりされたことは、大型の訪日団、それがきまったということのようでございます。そのためには、いろんな、おそらく懇談的な雰囲気の中での話のやりとりでしょうから、思い切った話も出たかに受けとめられるわけです。その中の一つとして、羽田に直接行きたい、乗り入れをしたいと、こういう意味のことから、多岐にわたる、今回の航空協定等の問題に至るまで各般にわたってのお話があったようであります。今回あらゆる階層の、しかもたいへんレベルの高い方々が代表として日本を訪れるということは、戦前戦後を通じて、おそらくは、かつてなかったくらいの規模でありますだけに、心から歓迎を申し上げたい、こう思うわけであります。まず、政府として今回のそうした表明についてどう正確に受けとめていらっしゃるのか、そして同時に、そうした親善等を含めた友好使節団に対する受け入れ対策の一環として羽田に直接乗り入れたいという希望等に対しては、どんなふうにお考えになっていらっしゃるか、まずその辺からお伺いをしていきたいと思います。
#106
○国務大臣(大平正芳君) 中国から要人が訪日されるということはたいへん歓迎すべきことでございまして、政府といたしましても心から歓迎の実をあげるようにいたしたいと思います。
 それから、どういう経路を通ってという問題になりますと、その日程をお示しいただいて、政府としてあらゆる便宜を供与しなければならないと考えます。
#107
○渋谷邦彦君 そういう御意向であることはたいへん望ましいことだと思いますし、いまおっしゃられたように、あらゆる便宜を供与いたしたいということは、各般にわたってそれが含まれるものと理解してよろしいんでございましょうか。
#108
○国務大臣(大平正芳君) さように御承知いただいてけっこうです。
#109
○渋谷邦彦君 もう一つの問題として、小川大使も近く赴任されると思うのでありますが、香港を経由して北京に入るということについては非常に残念がっておられたような趣旨の話向きが周恩来首相を通じてなされたようであります。なぜ直接北京に入らないのか、それには日中航空協定等の問題もありましょうし、現在、外務省、運輸省等の混成でもっていま向こうへ行かれている方々とのこれからの話し合い等も十分踏まえながらという前提があったように思うのでありますが、そうした話のやりとりの中に台湾問題というものを非常にやはりきびしく主張されていた。日本政府は、昨年の田中訪中以来一応の足がかりができた、日中国交正常化に対するそういう手がかりができたということで、別に、全面的に安心してしまって手放しで、何も手を打たないというわけでもないでしょうけれども、暗にそういうことを指摘するかのごとき含みのある発言があったやに聞いております。つまり、その中で、いま申し上げたように、台湾問題に対してはどういう一体、政府自体が、あるいは航空協定を締結する前段として、条件として考えておるのかというようなこともあるのではないだろうかと推測されるわけでありますけれども、この辺は、その後、田中さんが行かれてからもうかれこれ半年になろうとしておるわけですけれども、実際に具体的にどういうふうに――これからの日中平和条約の締結もあることでございましょうけれども、それに先立っていろいろな実務協定、いま申し上げた航空協定、通商協定、業務協定等々があるだろうと思いますが、進んでいるのか進んでいないのか。そしてまた、いま申し上げたような非常にきびしい原則に立って、日本政府として、やはり中国の意向を十分くみ入れながら進めている、こういうふうに判断していいのかどうなのか、その辺、周恩来首相の指摘を通しまして、もう一ぺんやはり確認しておいたほうがいいんじゃないかと思っていまお伺いしておるわけでありますが、いかがなものでございましょうか。
#110
○国務大臣(大平正芳君) 国交正常化後の懸案の進め方でございますが、順序といたしまして、まず実務協定――航空協定をはじめといたしまして実務協定の締結を急ぎたいと考えております。それで去年、先方に航空協定の案はお示しして、ついこの間それに対する対案が提示に相なったわけでございまして、きのう出発いたしました交渉団に命じまして、両方の案文を突き合わせまして一つのものにまとめていく作業をいたすようにと言っておきました。私は順調に進んでおるものと思っております。
 それから貿易、漁業その他の協定があるわけでございますが、これにつきましては、つくる以上十分実効のあがる協定でなければなりませんので、双方の慣行、制度、そういったものに十分理解を持ってかからなければなりませんので、去年の秋、各省から応援をいただきまして、大きなミッションを出しまして、隔意なく先方と意思の疎通をはかったわけでございます。このことにつきましては先方もたいへん多としておりましたし、当方のミッションも認識を深めて帰ったわけでございまして、そういう理解を基礎に、目下それぞれの担当部局で協定案の作案にかかっておるわけでございます。決して私は、何らかの理由でこれが延びておるなんとかいうような懸念は一切持っておりません。
 それから第二の問題である台湾問題でございますが、台湾問題というのは、中国側に、こうしていただきたい、こうしてもらいたいというようなことを交渉する立場に日本政府はないわけでございます。日中関係でございますから、中国と日本との間の関係を律するわけでございますから、それは一つしかないわけでございまして、したがって、台湾問題というのは事実上の関係しかないわけでございます。で、事実上の関係といたしましては、それはなるほど物理的に多数の人が往来をいたしておりますし、たくさんの貿易が行なわれておるという現実があるわけでございます。で、日本政府の希望といたしましては、新しい日中関係をそこなわないというワク内におきまして、でき得ればこういう実務関係は存続いたしたいという希望を持っておるわけでございます。で、それに対しまして、先方はそれでよろしいとおっしゃる立場にないことはよく承知しておるわけでございます。いままで日台関係というものの実務関係が続いておるというのは、事実上航空機が往来したり、商船が寄港したり、人が往来したり、貿易が行なわれたりしておることは事実上の関係としてあるわけで、それを中国政府としては精一ぱい理解を示してくれておるということだと私は了解しておるわけでございます。で、日台航空路線にからまる問題もその範疇の問題でございまして、航空協定のミッションが北京に参りまして交渉するという性質の問題ではございませんので、新しい日中関係、信頼関係をそこなわない範囲内においてできればこれをある程度維持いたしたいという希望を日本政府が持っておる。で、日本政府は、しかしながら日中関係を基本の関係をそこねてはならぬというきびしい格律を身に持って日本政府が処置すべき問題なんでございまして、そういう性質のものとして御理解をいただきたいと思うのであります。
#111
○渋谷邦彦君 まあ、その辺の経過、また、いまおっしゃられた日本政府としての希望等、よくわかるつもりでございます。ただ、やはり相手があることでございますので、必ずしも私どもの描いているその希望というものが、あるいは少しわがままに過ぎないかというふうな受け取られ方をしないでもない。非常に原則を重んじる国であることは広くもう知られているところでございますし、従来日華条約等をはじめとして、いろいろな協定等が結ばれておったわけであります。大平さんが先般訪中されましたときにも、そうしたものについてはもうすでに形骸化しておるものと受け取っていいんではないか、そういう御趣旨の表明があったわけであります。ただ、そうしたような条約にしても協定にいたしましても、いままで台湾との間に結ばれていたそういうつながりというものが、単に私どもが、形骸化、空洞化されたものであって、それはもう事実上効能を発揮するものではないと、はたして受けとめられるべき筋合いのものであるかどうかという非常に疑問が起こるのが一つと、それからもう一つは、やはり先ほど来から申し上げておりますように、特に三原則というものについてたいへんきびしく中国政府はいまでもその姿勢は絶対くずしていない。しかも、いま大平さんがおっしゃったように、日中関係のこれからの友好ムードというものを阻害することは絶対避けていきたいという、避けなければならないというようなお気持ちもある。その辺をどう一体これから整理をしていかなければならぬかという、非常にまた大きな課題と取り組む場面が出てきはしまいか。あるいは、このままでなしくずし的に、時間の経過とともにそれが事が済んでいくものなのか、その辺はどういうふうに受けとめて、これから日中関係の、いまおっしゃられたように阻害条件をそこに配慮しながら、そしてそのつながりを持たしていくことができるのか。日華条約の問題は前々からしばしば国会でも議論された問題でもありますし、そのほかのいろんな協定等の問題についても、一体どういうふうに台湾との関係については日本政府がそれを処理していかなければならないか、また、処理していくためには今後どういう考え方、どういう姿勢を持って臨もうとしているのか、その辺、もう一ぺんお聞かせいただけませんでしょうか。
#112
○国務大臣(大平正芳君) 前段のあなたの言われたような日台関係でございますが、政府間の取りきめは一切ないわけです。私が先ほど申しましたように、事実関係だけがあるわけでございまして、新しい日中関係をそこなわない範囲内において節度を持ったことをいたしておるにすぎないわけでございます。条約、協定が何か形骸のようになったようだがまだ余ぜんを保っておるのではないかという御理解ではなくて、そういうものは一切ないわけで、事実関係だけがあるというように御理解をいただきたいと思うのであります。
 それから第二の点につきましては、復交三原則その他の問題でございますけれども、これはもう共同声明に厳粛にうたわれておるとおりの態度をもちまして、双方の理解と信頼の上に立って今後の日中関係を誤りないようにやってまいらなければならぬわけでございますので、あの共同声明をもって一切の暗い過去は清算したと、できたということが双方の合意でございます。で、今後は、われわれに残された道は、これからの日中関係を不動の基礎に置かなければならぬわけでございまして、そのためには日本の政府も国民も全力をあげて共同声明の趣旨を体して事に当たっていく以外に分別はないわけでございますし、私どもそういう精神をゆめゆめ忘れずに対処していき、誤りのないようにやりたいと考えております。
#113
○渋谷邦彦君 この問題については、もう一つだけ確認をして次に移りたいと思うのですが、先ほどちょっと触れましたが、周総理のことばをかりて申し上げるならば、今回大使交換にあたってそれぞれ直接北京なり羽田なり乗り入れをすることが自然ではないか、そうでなければたいへん不自然な姿だということを強調されたやに伝えられておりますけれども、どうでしょうか、大使交換がいつになるかわかりませんけれども、まあ今月の末になるのか、あるいは来月にまたがるのか、おそらくまあここ一カ月前後で行なわれることは前からのいろんな方針に従って考えられるわけでありますが、大体その可能性があると見てよろしいんでございましょうか。周総理はたいへんその点を気にしていらっしゃるようでございますね。大使交換の際には直接小川平四郎大使についても北京に乗り入れるべきじゃないかと、また、おそらく中国側も日本に来られる場合強くそういうことを希望すると――その間に航空協定が成立するかどうかわかりませんよ、成立するしないにかかわらず、そういう可能性があるものかどうなのか、それだけ一応締めくくりとして伺っておきたいと思います。
#114
○国務大臣(大平正芳君) 幸いに航空協定ができて、対中国路線というものが、直通の路線ができますると、たいへんしあわせだと思います。しかし、それができないときにどうするかという問題でございますが、私の立場では小川大使だけに特別の便を用意するということはできないと考えております。
#115
○渋谷邦彦君 次に、ちょっと気になる問題がありますので、これも確かめておきたいと思うんですが、ベトナムが和平を実現いたしましてからまだそう時間的にも経過してないわけでありますけれども、まあ世界各国がベトナムの今後のいわゆる真実の和平実現というものについては非常に関心を持っていることは間違いないと、こう思うんです。ところが、和平後においても日本の基地から兵器、弾薬というようなものが輸送されているんではないだろうかという疑いがある。これはわが党の地方議員の手によって調査の結果その疑いが非常に濃いということで指摘をしているわけなんですが、かいつまんで申し上げますと、最近入港――もう入港しているんですか、グリーン・ウエーブ号という、一万五百六十二トンですか、これがバンコクから呉港に入港して、さらにダナンへ向けて出発をする、その期日が大体三月十七日ごろになるだろう、そのグリーン・ウエーブ号というのは兵器、弾薬輸送船としていままで常時使用されていた経歴を持っているという船舶である、ところが川上という弾薬庫からしきりに何回も日にしげく呉港に向けていわゆる軍事物資と、まあ一口に言えばですね、そういうものが輸送されて船積みを待っていると、こういうことでございます。言うまでもなく、和平協定七条には明確にそうしたことがあってはならないという禁止条項があるわけでありますけれども、この点については外務省としてはまだ確認をなさっておられませんでしょうか。
#116
○国務大臣(大平正芳君) まあ、御指摘の点につきましては、けさの新聞で承知したわけでございまして、事実関係がどうなっておるか、さっそく米側と防衛施設庁のほうに調査を求めたところでございます。
#117
○渋谷邦彦君 いま私もここにそれを裏づける書類を持っておりませんので、それ以上の追及はここではいたしませんけれども、まあ過去においても、横須賀においてもそうした事実関係があって、予算委員会でわが党の同僚議員がきびしく政府のそうした怠慢を追及した事実がございます。過去にあって、今回初めてそういうことが発生したとは思えない節もございますし、その辺をきびしくやはり御調査を願って、もうそういう――かりにその数量の多い少ないという問題はこれは論外だと思うんですが、たとえ少ない場合であっても、兵器、弾薬というものに関する限りについて、日本の基地からベトナムに向けて輸送されると、その使用方法がどうあろうとも、これはやはりたいへん今後ベトナム和平を確立する上から好ましくない条件であることは論より明らかでございますので、すみやかにこれを御調査いただきまして、そしてその事実関係を明らかにされながら政府としての考え方をまた次の機会に、あるいは予算委員会になるか、どこの委員会になるかわかりませんけれども、明確にしていただきたい。これだけきょうは注文をしておきます。
 それから次にお尋ねしたいことは、先ほどもちょっと森議員のほうからお触れになっておられましたが、新しいこれからの外交課題の一つとして――新しいわけでもないでしょうけれども、急速に日ソ関係というものの接触が強まっていくだろう、これはもう当然予測されることであり、平和条約締結までの間にそうしたことを踏まえつつ往来もひんぱんになるであろうと、しきりにいままでいろいろな形で伝えられている情報というものを整理してみれば、日本に対してもソ連としては相当大きな期待をかけているということが伝えられております。特にシベリア開発ということについては、むしろ米国よりも日本に依存したいという、そういう気配がきわめて濃厚である。ただ、中ソ関係、これからの日ソ関係、いろいろ国際的に微妙なときでありますだけに、この辺も慎重に対応してまいりませんと、せっかくできたいろんな友好ムードというものをまた原点に戻すというようなことになりかねないということを、われわれは、しろうと目かもしれませんけれども、そういうことを心配する場合がございます。
 特に先ほども御指摘がありましたように、チュメニであるとか、あるいはヤクーツクの天然ガスの開発であるとか、そういうことがこれから非常に大きくクローズアップされていくんではないか。なぜこの問題を特に取り上げなければならないかというと、アメリカでもすでにもうエネルギー源が枯渇しつつあるという現状でありますし、中近東の石油、あるいはこれから新しく開発を予定されているシベリア地域の石油というものがやはり脚光を浴びることは当然であろうと、そこに日本がどう位置づけられながら今後友好関係を各国と保ちつつお互いに協力をし、また開発すべき要請があれば積極的か、あるいは現状維持なのか、あるいは控え目にやるのか、その辺がこれから日本政府としてもたいへん大きな試練に立たされるのじゃないだろうか、こういうふうに考えられるわけでありますが、そういうエネルギー源というものの枯渇状況を踏まえつつ今後そういうシベリア開発というものに積極的に政府自身が取り組むのかどうなのか。これは企業だけにまかせられない問題があると私は思うんですね。いままでのいろんな形で伝えられておりますところによると、いままでの日ソ関係の交渉の要素の中には、経済問題が五〇%、政治問題が必ず五〇%からんでくるというふうに評価されているやにも聞いております。こうした問題も十分踏まえて、必ずしも企業体だけに全面的にまかせるというわけにもいかない面があるでしょうし、むしろ、政府自身がイニシアチブをとりながら今後の日ソ関係、そういうシベリア開発を踏まえつつ積極的に推し進めていかなくちゃならぬということについて、総合的に、今後そういう問題を踏まえつつ日ソ関係というものをどういう展望に立っておられるか、それをお伺いしておきたいと思います。
#118
○国務大臣(大平正芳君) 資源問題というのは、最近急速に緊張を増してまいりました。産油国、消費国、それぞれの立場がございまして、従来からもいろいろな問題があったわけでございますが、これは国際的な一つの協力を打ち立てながら、資源の安定確保をはからなければならぬのじゃないかという機運がだんだん出てまいりまして、私ども資源のない日本といたしまして、この動きに対しまして、おくれをとらぬように十分配慮をしていかなければならぬと思います。いままで漫然商業的手段で確保できたわけでございますけれども、これからの資源需要の展望を見ますと、相当多量の資源を必要とするようになりましょうし、それから資源の限界ということも、いろいろ云々されるような状況になってまいりまして、容易ならぬ課題になってきたと思うわけでございます。したがって、資源政策、その一環としての資源外交という点につきましては、これまでも若干のことはいたしておりますけれども、本格的に当たらなければならぬ段階にきたと考えております。そういう背景から考えてみた場合に、そういう側面からも、日ソ関係というものはたいへん隣接の国といたしまして、また、豊富に資源が賦存する地域との関係でございますので、日本として非常に重視してかからなければならぬ課題であると思うわけでございまして、先ほど森委員の御質問にもお答え申し上げましたように、こういう立場に置かれた日本といたしまして、そういう方面に相当周到な手を打ってまいるということに対しては、私は十分な理解を各国から得られるに違いないと思いますので、そういう方面、一そう積極的に事に当たらなければならぬと考えております。
#119
○渋谷邦彦君 そうしますと、念を押して伺っておくんですが、今後日ソ間のいろんな接触の中で、当然シベリア開発というものが強力にソ連側から要求されてくるであろうことは想像にかたくないわけでありますが、いまの御答弁でございますと、より積極的にそういう要請に対応できるような日本としても路線を歩んでいきたい、こういうふうに伺っておいてよろしいでございましょうか。
#120
○国務大臣(大平正芳君) ソ連からの要請を待つばかりでもなく、こちらからもお願いせにゃいかぬケースが出てこようかと思うわけでございます。積極的な取り組み方をしなければならぬと私は考えます。
#121
○渋谷邦彦君 最後に、もう時間がありませんので伺っておきたいのですが、これは全然論点を変えた問題でございますが、海外移住の問題についての、まず基本的な、現時点に立った政府としての考え方をお伺いしておきたいと思います。
#122
○説明員(穂崎巧君) 海外移住の問題につきましては、御承知のように、移住者の数は、昭和三十五、六年ごろから下回ってはおります。ただ、最近の移住者、依然として出ておられるわけでございますが、特徴は、青年が多いということと、それから農業移住者が相対的に減りまして、技術を持った人の移住者が多いということでございます。戦前はいろんな労働力その他が過剰でございまして、そういう面から移住が取り上げられたこともございますけれども、最近の移住はむしろ戦前と変わりまして、こういう、主として若い人々が自分の発意と責任のもとに海外に新しい可能性を求めていくということに特徴があると考えられます。戦前から現在まで出た移住者が、現在百三十五万人以上おりますけれども、これらの移住者が海外で活躍しておりますことは御承知のとおりでありますし、同時に、これらの移住者が現地で非常な名声をあげますことは、わが国とこれらの相手国、移住先の国との関係を促進する上に非常な役割りを果たしておることも御承知のとおりであります。したがいまして、こういう出先の移住者とそれから新しい移住者がまいりますと、この新しい移住者は、これは百三十五万の移住者と日本とを結ぶ非常に重要なパイプであるということでございまして、これによりまして、日本の新しい知識とか技術とかいうものが伝わるばかりでありませず、御承知のように、現地へ花嫁としておいでになる方もあるという意味におきまして、新しい日本の血が入っていくという一つのつながりにもなっておるわけでございます。
 このような見地からいたしまして、政府は、移住者を送り出すことにつきましては、やはりこれを続けていかなければいかぬということから、側面的に援助はしていく方針でございます。ただ、移住政策全体の見地から申しますと、すでに移住した移住者の定着と、それから生活の安定をはかるということは、御承知のとおり、きわめて大事なことでもございまして、これが移住政策の中で一番大事なことであろうかと存じます。
 この移住者援護といたしましては、営農の指導をいたしますとか、医療、教育、それから必要に応じまして土地改良をしたり、営農の機械化をいたしましたり、それからいろいろな資金の貸し付け等をいたしまして、移住者の基盤の確立につとめておるわけでございます。しかしながら、これらの移住者は、同時に、向こうの国に住んでおるわけでございまして、その国の発展に寄与すべきであることは当然でございますので、これらの移住政策を行なうにあたりまして、こういう点も十分に勘案して実施しておる次第でございます。
#123
○渋谷邦彦君 移住問題というのは、とかく日陰に置かれている場合が非常に多うございまして、だんだん景気がよくなってきますと、なかなか目がそちらのほうまでそそがれていかない。しかし、いまブラジルを中心とし、あるいはハワイを中心とし、移住された方々の営々として努力された今日までの基盤というものは、高くその国においても評価をされてきている。しかし、一方においては、移住者の実態をいろいろな資料を通じて見ますと、いまだしという感じをぬぐい切れない面がたくさん出てきているわけであります。それにはやはり、今後日本が、世界各国と、とにかく親善友好はともかくとして、その国に日本という国はすばらしい国だという非常にいい意味での評価を受けるためにも、いわゆるエコノミックアニマルなんという悪評を得ないためにも、今後の経済交流あるいは文化交流を非常に積極的にやっていかなければならぬ面もございましょうし、それにつけても、せっかく希望を持って勇躍移住地に入られた方々が、思う存分能力を発揮して、その国のために貢献もしていく。また、個人としても繁栄をしていくという方向に、やはりもうその国に行ったんだから、その国のいろんな秩序に従って生活をしなきゃならぬし、また働いていかなきゃならぬということじゃなくて、やはり日本政府として可能な限り、あとう限り、側面的にまだまだ援助を惜しんではならないという問題があるんではないだろうかという点が一点。その点を通じて、いま移住部長が言われたことについては、私は百も承知しております。むしろ大平さんから、今後のそういう基本的な考え方をもう一ぺん、いま申し上げたことを踏まえつつ伺いたいことが一つ。
 それからもう一つは、最近非常に移住者間において希望がございます。たとえば学校問題ですね。日本人は非常に優秀でありますから、行きたいと思っても学校へ行けないという悩みをかかえておる子弟が非常に多いということを聞いております。ブラジルあたりでも、医科大学を、何とか日本政府の力でもってつくってもらえないかと。いろんな日本とブラジルとの関係で、なかなかむずかしい問題もあろうかとは思うけれども、何とかできないか。金の面にしても、設備の面についても、日本のほうがはるかに優秀である。そういう問題も提起されています。また農業移住者についても、いま農産物はあり余って困る。座してもう死を待つ以外にないというみたいな状況に――これは極端じゃないんです、実際に。そして加工工場でもできれば、そういう過剰農産物の処理についても十分考えられる。かん詰め工場とかなんかをつくれば。ところがお金がない。その国の政府にたよるわけにもいかない。銀行もやはりなかなか融資の道を開いてくれない。中には悪い移住者もいるだろうとは思いますけれども、総合的にやはりそういうような問題を考えて、今後日本の国情というものをよく見きわめつつ、この移住問題というものをやっぱり今後そこに焦点を合わせながら考えていく必要があるんではないか。きょうはあまりこまかい問題まで立ち入れませんので、その二点だけを伺って、私の持ち時間ちょっと過ぎましたけれども、質問を終わりにしたいと思います。
#124
○国務大臣(大平正芳君) 移住政策につきまして、御鞭撻をちょうだいいたしまして、感謝いたします。御提示のような方向でその内的充実をはかりながら、新しい活路を開いていかにゃいかぬと考えます。
 それから日本人進出地域における経済技術協力の問題でございますが、従来、渋谷委員も御承知のように、日本の経済協力は策南アジアにほとんど大部分がいっておりまして、中南米、アフリカ等については非常に乏しいものでございました。しかし、わが国の経済力の充実とともに、援助力もふえましたけれども、援助要請も増大しておりますので、今後中南米等におきましても、地域的な特性を十分考えながら、現地の要請をくみながら、その拡大に努力したいと思います。
#125
○星野力君 先般ベトナムの平和を保障する国際会議がパリで開かれましたが、会議の構成は、御存じのように、ワルトハイム国連事務総長を別としますと、戦争の当事者を除く八カ国の中で、アジアから参加したのは中国とインドネシアの二国だけでございますね。パリ会議は、ベトナム、インドシナの平和を保障する国際会議であり、アジアの将来にかかわる重要な国際会議であります。日本はベトナムとはいろいろな意味でこれまでかかわりの深い国であります。しかも、アジアの大国をもって任ずる日本の政府が、パリ国際会議に参加しなかったことをどう見たらいいのか、ひとつお考えを聞かしていただきたい。
#126
○国務大臣(大平正芳君) あの国際会議は、パリ協定にうたわれておる国際会議でございまして、いま御指摘がありましたように、十三名をもって構成されたものでありまして、当事国、当事者が四名、それから国連の安全保障常任理事国を代表する方々が、アメリカが当事国に入っておりますから四名、それから監視委員会のメンバー四名、それにワルトハイム事務総長、都合十三名でございます。
 このカテゴリーからまいりますと、日本の入る余地はなかったと私は思うのであります。しかしながら、この会議が、いま星野さんが御指摘のように、アジアの将来にわたっての構図を練り上げるという、そういうことを討議する国際会議でございますならば、日本が参加しないというようなことは、日本の国民といたしまして釈然としないものが残ると思うのでありますけれども、しかし、あれは和平協定を裏書きするというか、保証する任務でございまして、今後のインドシナ半島の復興、開発というようなプログラムは討議されていないわけでございますので、私としては、日本政府があれに参加しなかったことに対しまして、これはゆゆしい失態であったというようには考えておりません。
#127
○星野力君 私は失態であったという観点から申し上げておるのではないのでありますが、あの会議は、なるほどベトナム、インドシナの開発、復興について直接論議した会議ではありませんけれども、アジアの平和ということにとっては重要な意味を持つ会議だと思うのです。日本政府の首脳部や外務省では、あの会議に参加できなかったことに強い不満を感じておるということも伝えられておりますし、またアメリカやサイゴン政権が日本の参加を支持したということも伝えられております。真相は私存じませんけれども。そうしますと、参加できなかったことの裏にはどこかから強い反対が出たのではないかと考えられますが、その点はどうでしょうか。
#128
○国務大臣(大平正芳君) いろいろ情報はございますけれども、責任ある関係者からの言明は、私は伺ったことはございません。
#129
○星野力君 この問題をめぐっても、いわゆるポストベトナムをめぐる国際事情が日本にとって安易なものではないということがわかるのではないかと思います。
 ところで、前回のこの委員会で、ベトナム、インドシナの復興援助につきまして、大臣は、国際的な規模での援助計画でないといけない。その中で日本は応分の協力をするということを繰り返し述べられました。ところが、その後、ベトナム民主共和国は多数国共同の国際的援助に反対して、二国間援助を希望する旨を表明しております。ベトナム民主共和国に対して二国間援助でも協力する意思がおありかどうか。もちろん先方が希望した場合、話があった場合のことでありますが、どうでしょうか。
#130
○国務大臣(大平正芳君) 私は、ベトナムの復興というのは相当大きな規模になるだろうと思います。したがって、国際的な仕組みでやることが望ましいと考えておったわけでございますけれども、いま御指摘のように、北越は必ずしもそれに賛成でないというように漏れ聞いております。近く北越側と接触を持ってみたいと考えておりますので、先方の意向をよくただした上で、先方の御要請があったならば、二国間の援助というラインで検討してみたいと思っておるわけでございますが、とりあえずは、先方の意向をただすことが、まず最初の仕事ではないかと思っております。
#131
○星野力君 ベトナム民主共和国との接触、さらには国交樹立ということは、早いほうがいいと思うのでありますが、ベトナム民主共和国の復興に協力する、たとえ二国間援助という形でも協力する意思を真にお持ちになっておるならば、国交樹立以前でも、また政府レベルの援助の前にも復興のために援助できることがたくさんあると思うのであります。たとえば通商上の障害を取り除く問題があります。それはベトナムのためというだけでなしに、日本のためのことでもありますが、一つ、二つ例をあげますと、ココムの制限、もう今日となってはこんなものを残しておく意味全くないと思うのでありますが、ココム制限を撤廃なさるお考えはないか。
 また、ベトナム民主共和国への日本船舶の就航が事実上禁止されてきました。現在も実現されておりませんが、船舶輸送の正常化をはかるお考えはございませんか。
#132
○国務大臣(大平正芳君) いま御指摘のココム制限でございますが、これは北ベトナムを他の共産圏諸国と差別的な運用はされていないと私承知しております。
 御質問は、ココムによる輸出規制というようなものはやめたらどうだという全体の問題でございますが、いまこれをわが国だけでどうこうするという立場にもございませんので、御質問は御質問として承っておきます。
 それから、配船につきましては全然制約は私はないと聞いておりますけれども、何かお聞き込みのことがあるんでしょうか。
#133
○星野力君 だから私も、事実上禁止されておると、こう申したので、船会社が船員の要望によって交戦地域に行くのがいやだというようなことでとまっている形式になっておりますけれども、先年、実際に配船しようとした場合には、やはり政府筋からの妨害があったというふうに私たち経験いたしております。事実上、今日まで日本船の配船ということは行なわれておらないのですが、これが行なわれる方向に政府の態度をひとつ変えてもらいたいということを申しておるわけであります。
 時間がございませんから、続けて申し上げますが、国交樹立以前でも平和友好、互恵平等の立場で両国間の貿易を発展させるお考えがあるかどうか、ベトナム民主共和国に対して。たとえば関税差別を撤廃して輸入の拡大を促進する。それから輸出商品の延べ払いを認可する、そういうようなお考えを持っていただかなければならぬと思うのでありますが、どうでしょうか。
#134
○国務大臣(大平正芳君) 関税の問題でございますが、これは北ベトナムだけという問題でなくて、わが国の関税制度の上からの問題でございまして、わが国の産品が関税上有利な待遇を与えられておる場合に、わが国もまたそれに相互主義で便益関税を、協定税率ではなくて、便益関税を適用するというような措置はとっておるわけでございまして、これまた全体の問題になろうかと思います。
 それから、輸出入銀行の信用を使うかどうかというような問題は、これは案件が出てきた場合のケース・バイ・ケースで吟味していくべき問題だと考えております。
#135
○星野力君 まあ関税の問題は、これは個別の問題でなくて全般の問題だと言われますけれども、これは個別の問題でありますね。サイゴン政権に対する場合と比べてみれば、明らかにこれは差別的な関税が適用されておるということであります。それから商品の延べ払いについてはケース・バイ・ケースで今後考えていくと、こうおっしゃったと思うのでありますが、たとえば復興のために必要なプレハブ住宅その他いろいろな資材、物資の輸出なんかに対しては、復興を援助するという立場からは、当然これは延べ払いを認めるべきだと思うんですが、そういうお考えがないか、重ねてお聞きするわけです。
#136
○政府委員(吉田健三君) 具体的にそういう案件が出てまいりまして、経済的にも金額的にも可能であるかどうか、そういう案件を受けた上で検討してみたいと、かように考えております。
#137
○星野力君 それもケース・バイ・ケースでお考えになるということでしょうが、その場合積極的に前向き――ということばはいやな方もおられるそうですが――な立場で考えていくということでしょうか。重ねてその点だけをお聞きします。大臣、どうですか。
#138
○国務大臣(大平正芳君) ケース・バイ・ケースということばは、語感が非常に前向きにやる場合と、それから逃げ口上に使う場合と、いろいろ語感があるわけでございますけれども、私どももそのように申し上げたら、審査をして適当なものはやるべきであると思います。
#139
○星野力君 積極的な立場で検討すると、こうお答えになったものと私受け取っておきます。
 次に、先ほども話が出ましたが、三宅南東アジア第一課長をハノイに派遣する意向を早くから大臣はお述べになっておられた。まだ出かけておられませんが、準備中と言われましたが、それにしてはずいぶん時日がかかり過ぎるように思いますが、この問題、先方からは訪問を拒否してきておるというようなことはないのでありますか。
#140
○国務大臣(大平正芳君) そういうことはございません。
#141
○星野力君 ございませんか。
#142
○国務大臣(大平正芳君) はい。
#143
○星野力君 それならけっこうですが、ベトナム民主共和国の日本に対する考え方なんかも決して安易なものではないというような情報も私たち聞くものですから、心配してお聞きしたわけです。
 それから、大臣は南の臨時革命政府の問題に関連していろいろ御発言なさっておりますが、あくまでサイゴン政権だけを支持して、臨時革命政府とは接触を持たないということか、もうひとつ念を押しておきたいと思うのです。
#144
○国務大臣(大平正芳君) 南におきましては、サイゴン政府とのみ外交関係を持つ態度で終始したいと考えております。
#145
○星野力君 外交関係はそうとしましても、臨時革命政府と接触を持つ考えはないのかどうかということですね。
#146
○国務大臣(大平正芳君) これは政府間の接触は外交関係なんでございまして、政府間の接触をぞんざいに私できないと考えております。
#147
○星野力君 パリ協定が締結されたあと、ベトナム民主共和国を承認する国がふえつつあるのは御承知のとおり。それだけでなしに、南ベトナムの臨時革命政府と接触を持つ国もふえております。サイゴン政権と外交関係を持ちながらも、何らかの形で臨時革命政府と接触を持つ国がふえておる。正式承認ということには至らないまでも、代表部の設置を認めるとか、あるいは情報機関、記者やカメラマン、そういう報道関係者の駐在を認める、いろいろな形の接触というものが行なわれておる。そういう態度をとる国が、社会主義国以外でも、ヨーロッパの資本主義国、まあスペイン、ポルトガルはどうか知りませんけれども、その他の資本主義国はほとんどそういう態度をとっておるし、それから非同盟諸国もそういう態度をとっておる。だから、先進資本主義国の中では臨時革命政府の発行した旅券所持者が入国できないのはアメリカと日本だけだと、こういわれております。しかし、そのアメリカも事実上は接触しておる。初めは交戦団体として、あるいは事実上の交渉相手の政府として、いわば消極的な承認というものを臨時革命政府に与えておると思うのでありますが、日本だけががんこに接触を拒否しておる。こういうことは少し長い目で見ますと、日本、ベトナム両国人民の友好を築く上で有害になる態度である、こう思うのでありますが、先ほどもちょっと話が出ましたが、臨時革命政府の発行した旅券を持った者の入国を認めるお考えはあくまでもないのかどうかですね。さっき考えておらないというようなことをグエン・バン・チェン氏について言われましたけれども、これは考えていただかなければならぬ問題だと思うのです。国民の間で臨時革命政府区域からベトナムの人を招待したい、そういう希望もあり、運動も起きております。必ずしも政治家を招きたいというのだけでなしに、歌舞団などの文化関係の人たちを招きたい、こういう希望や運動も起きておるんですが、その点についてもう一度ひとつ考えをお聞かせ願いたいと思います。
#148
○国務大臣(大平正芳君) 誤解のないようにお願いしたいのは、接触を持たないということは、臨時革命政府を軽視したり敵視したりする意味ではちっともないんです。外交上のたてまえ上、多くの国がそうであるように、われわれも南ベトナムにおいては一つの政府を選ぶ、従来から関係を持っておりましたサイゴン政府を選ぶのでございますということを申し上げておるだけでございます。で、ああいう状態にある場合に、一方の側とどういう接触を持つか、事実上の接触を持つか、外交上の接触ではなく、事実上の接触を持つかという場合は、東独、ベトナム、朝鮮半島、いろいろなケースをわれわれは苦労してきておるわけでございまして、それぞれの条件に応じましていろいろ配慮してきて、ようやく東独は今度は正式の国交を持とうという、あるいは北越のほうは相当もう進んできておるというふうになってきておるわけでございまして、今後事実上の接触はどういう姿で出てまいりますか、その場合にどう判断すべきか、それは個々のケースを判断させてもらわないと、一般的に申し上げるのは非常に危険じゃないかと思いますので、今日のところは外交関係はサイゴン政府と持つつもりであって、臨時革命政府とは持つつもりはないんだということに御承知置き願いまして、事実上の関係が今後どのようになってまいりますか、私もさだかに予見はできないわけでございますけれども、そういうケースが起こった場合にはいろいろその場合判断しなければならぬ問題と思います。
#149
○星野力君 最後に一問だけ。
 それならば、たとえば臨時革命政府発行の旅券を持って日本への入国を希望するというケースが出てきた場合には、これは頭から拒否するということじゃなしに、検討する、こういうことになりましょうか。
#150
○国務大臣(大平正芳君) そういうケースが起こった場合は検討させていただきます。拒否するとか許すとかいうことを前もって私は申し上げられません。
#151
○委員長(平島敏夫君) 本調査に関する質疑は、本日はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後一時七分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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