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1972/06/21 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第14号
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1972/06/21 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第14号

#1
第071回国会 外務委員会 第14号
昭和四十八年六月二十一日(木曜日)
   午前十時六分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         平島 敏夫君
    理 事
                木内 四郎君
                佐藤 一郎君
                田  英夫君
    委 員
                岩動 道行君
                杉原 荒太君
                八木 一郎君
                矢野  登君
                山本 利壽君
                加藤シヅエ君
                小谷  守君
                羽生 三七君
                森 元治郎君
                渋谷 邦彦君
                松下 正寿君
                星野  力君
   国務大臣
       外 務 大 臣  大平 正芳君
       労 働 大 臣  加藤常太郎君
   政府委員
       外務省条約局長  高島 益郎君
       外務省条約局外
       務参事官     松永 信雄君
       外務省国際連合
       局長       影井 梅夫君
       労働大臣官房長  藤繩 正勝君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  北川 俊夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
   説明員
       警察庁刑事局調
       査統計官     谷口 守正君
       科学技術庁原子
       力局次長     大坂 保男君
       法務省入国管理
       局資格審査課長  吉田  茂君
       外務大臣官房領
       事移住部長    穂崎  巧君
       外務省アジア局
       外務参事官    中江 要介君
       厚生省医務局国
       立病院課長    佐分利輝彦君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関
 条約(ATA条約)の締結について承認を求め
 るの件(内閣提出、衆議院送付)
○職業用具の一時輸入に関する通関条約の締結に
 ついて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送
 付)
○展覧会、見本市、会議その他これらに類する催
 しにおいて展示され又は使用される物品の輸入
 に対する便益に関する通関条約の締結について
 承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結に
 ついて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送
 付)
○電離放射線からの労働者の保護に関する条約
 (第百十五号)の締結について承認を求めるの
 件(内閣提出、衆議院送付)
○機械の防護に関する条約(第百十九号)の締結
 について承認を求めるの件(内閣提出、衆議院
 送付)
○国際情勢等に関する調査
 (国連憲章改正の批准に関する件)
 (韓国における日本人の保護問題に関する件)
 (ラオスにおける日本人の保護問題に関する
 件)
 (在日米軍基地からの南ベトナムヘの補給問題
 に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)の締結について承認を求めるの件
 職業用具の一時輸入に関する通関条約の締結について承認を求めるの件
 展覧会、見本市、会議その他これらに類する催しにおいて展示され又は使用される物品の輸入に対する便益に関する通関条約の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
 以上三件を便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。大平外務大臣。
#3
○国務大臣(大平正芳君) ただいま議題となりました物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)の締結について承認を求めるの件につきまして提案の理由を御説明いたします。
 この条約は、関税協力理事会におきまして一九六一年十二月六日に採択され、一九六三年七月三十日に効力を生じたものであります。この条約の目的は、一時輸入が認められる職業用具等の物品について通関手帳の制度を採用することによりその通関手続を簡易化することにあります。
 近時、わが国に一時輸入される物品が増加し、この種物品に関するわが国の通関手続の簡易化に対する諸外国の関心も強くなっておりますところ、わが国がこの条約の締約国となりますことは、これらの物品を用いるわが国国民の国際的な活動を容易にし、また、関税制度の国際的な調和と統一をはかる上で望ましいことと考えられます。
 よって、ここにこの条約の締結について御承認を求める次第であります。
 次に、職業用具の一時輸入に関する通関条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案の理由を御説明いたします。
 この条約は、関税協力理事会において一九六一年六月八日に採択され、一九六二年七月一日に効力を生じたものであります。この条約の目的は、各種の職業的活動のため締約国に一時的に入国する者の職業用具について一時免税輸入等の便益を与えることにあります。
 わが国は、従来より職業上必要とする用具について一時免税輸入を認めておりますが、この条約に規定する職業用具の範囲よりも狭いので、わが国がこの条約の締約国となりますことは、この範囲を広げて国際的な要請にこたえますとともに、わが国国民が他の締約国へその職業用具を輸入する場合の便益を拡大する上でも望ましいことと考えられます。
 よって、ここにこの条約の締結について御承認を求める次第であります。
 最後に、展覧会、見本市、会議その他これらに類する催しにおいて展示され又は使用される物品の輸入に対する便益に関する通関条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案の理由を御説明いたします。この条約は、関税協力理事会において一九六一年六月八日に採択され、一九六二年七月十三日に効力を生じたものでありまして、この条約の目的は、展覧会、見本市、会議等の催しにおいて展示されまたは使用される物品について一時免税輸入等の便益を与えること等にあります。
 わが国は、従来より国際的な催しに関して通関上の便益を与えておりますが、わが国がこの条約の締約国となりますことは、これらの催しの開催を一そう容易にし、ひいては経済、文化等の分野における国際交流を促進する上で望ましいことであると考えられます。
 よつて、ここにこの条約の締結について御承認を求める次第であります。
 以上三件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
#4
○委員長(平島敏夫君) 引き続き補足説明を聴取いたします。松永条約局参事官。
#5
○政府委員(松永信雄君) ただいま提案理由の説明のございました三件につきまして若干補足説明を申し上げます。
 まず物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約でございますが、この条約は、国際条約または国内法により一時輸入が認められる職業用具等の物品について国際的な通関手帳、ATAカルネと称されますが、この制度を採用し、もつて、一時輸入に関する通関手続の簡易化と統一をはかることを目的としております。この通関手帳は、通関用の書類となると同時に、一時輸入の条件が守られない場合に納付しなければならない輸入税等の担保となる効果を持つものであります。
 次に、職業用具の一時輸入に関する通関条約でございますが、これは附属書に定められております報道用具、ラジオ及びテレビ放送用具、映画用具等の職業用具について一時輸入を認めることを目的とするもので、ATAカルネ条約が発効いたしますれば、簡素化された通関手続の適用を受けることとなるものであります。
 最後に、展覧会、見本市、会議その他これらに類する催しにおいて展示され又は使用される物品の輸入に対する便益に関する通関条約でございますが、これは各種催しにおいて展示されまたは使用される物品について一時輸入または免税輸入を認めることを目的とした条約であり、一時輸入が認められる物品とは、催しにおいて展示または実演に供される物品等であり、免税輸入が認められる物品とは小型見本等催しに関連して消費される物品でございます。一時輸入が認められる物品につきましては、前述の職業用具の場合と同じように、簡素化された通関手続が適用されることとなります。
 なお、これら三条約を採択しました関税協力理事会は、ブラッセルに所在し、加盟国の関税制度の調和と統一をはかることを目的とする国際機関であり、わが国はこれに一九六四年六月十五日に加盟しております。
 以上でございます。
#6
○委員長(平島敏夫君) 以上三件に対する質疑は後日に譲ることにいたします。
    ―――――――――――――
#7
○委員長(平島敏夫君) 国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件
 電離放射線からの労働者の保護に関する条約(第百十五号)の締結について承認を求めるの件
 機械の防護に関する条約(第百十九号)の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
 以上三件を便宜一括して議題といたします。
 前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は御発露を願います。
#8
○渋谷邦彦君 まず初めに、現在わが国において電離放射線を扱っている業種、大別すると六種類ぐらいあるように言われております。その中で最も広範囲に、またひんぱんにこの業務に携っている実態を調べてみますと、第一位は医療従事者、第二位は工場関係、第三位は原子力関係、原子炉を操作する、それに関連する従事者というような順になっているようであります。特に、原子炉の場合には、原子力委員会等の報告にもございますように、従業者が逐年増加の一途をたどっていると、こういう状況でありますので、当然ILO百十五号に盛られておりますこの規定というものは、そのまま誠実に順守されていかなければなりませんでしょうし、また、その防護の面においては格段の配慮をしながら、事前の事故防止に鋭意努力をしなければならないことは当然のことだと思います。
 そこで、まず最初に伺っておきたいのは、第六条の一項、二項等に示されておりますとおり放射性物質の最大許容量という問題が出てまいりますが、具体的にはその最大許容量というものはいかほどであるかということは明記されていないわけであります。これは、古い資料になりますけれども、米国の基準局の資料によりますと、待にベータ線やガンマ線を出す種々の物質が混在するとき、そしてまた、二、三カ月飲用するとした場合を例といたしまして、水中のその際の許容濃度は、一リットルにつき一万分の一マイクロキュリー、それから、空気中においてはもっと厳格な規制が設けられておりまして、一リットルについて百万分の一マイクロキュリーという、そういうものは全部有害だと、しかし、それでもまだ確定的ではないと、こういう議論が、意見が出ているわけです。
 さて、そこで日本の場合、その最大許容量というものをどういうところに基準を置いて設定しているのか。その扱う業種、内容によってもいろいろとその差異があろうかと私は思うのでございますけれども、特に医療従事者あるいは工場、原子炉に限定してみた場合、その辺の基準というものはどうなっておりましょうか。
#9
○政府委員(北川俊夫君) いま渋谷先生お話しのILOの百十五骨条約の中には、第六条で最大許容量を定めるというふうに抽象的に定めてございますけれども、この条約の裏づけといいますか、補足をいたしますものとしまして、ILOの勧告といたしまして百十四号勧告がございます。その中に、電離放射線の最大許容量を定めるに当たっては、国際放射線防護委員会、ICRPといっておりますけれども、そこで定める基準を考慮して定める、こういうことになっております。で、ICRPでは、青年男子につきまして、年間に受ける許容量その他につきまして詳細にきめておりますけれども、日本の関係国内法は、ICRPの勧告に従いまして、各労働者別に許容濃量、許容線量、最大許容量、こういうものを定めております。
 なお、ちなみに現在日本でとられておりますこの量について若干申し上げますと、一般の放射線従事労働者につきましては、年間平均いたしまして五レム、ただし三カ月三レムをこえてはならない。女子につきましては、三カ月につきまして一三レム以内でなければならない。妊娠中の女子につきましては、妊娠期間中一レム以下でなければならない。それからそういう従事労働者以外の随時、たとえば看護婦さんであるとか、あるいはX線の監督者であるとか、そういう随時立ち入り者につきましては年間一・五レム、あるいは何か原子炉等で故障が起きました場合に、緊急にそういう故障を直すための作業を行なう緊急作業に従事する労働者につきましては、先ほど言いました年間五レムということにかかわらず、その場合には十二レム以内というような許容量が国際的に定められておりますけれども、日本の国内法規もそれに準じて、それと同数値を定めておる次第でございます。
#10
○渋谷邦彦君 ただいまの説明を軸にして、実際に取り扱っておられる方々の状態について、確実に管理され、そして運営されているのかどうか。もちろん過去において、そういう事故の発生というものはあまりなかったようであります。しかし、電離放射線はわれわれの目に見えませんし、水銀中毒による場合でも同じように、十年、二十年というぐあいに体内に蓄積してから初めてその影響があったのではないかということになったのでは、これはもう手おくれだと思いますね。したがって、その辺の将来のあり方というものも十分踏まえながら、そしてさらには、自分のみならず、子孫にどう遺伝をするかしないか、また、そういう要素というものがあり得るかどうか、そういう可能性というものは、絶対ないと現在の管理体制の中では確信していいものかどうなのか、その点はいかがですか。
#11
○政府委員(北川俊夫君) 原子炉関係の事業所につきましては、御指摘のように、非常に設備あるいは技術というものが日進月歩でございまして、それに対応してそれに伴う作業あるいは周辺の一般市民、そういうものの安全を確保する、そのために最大の努力を払わなければならないと思います。御承知のように、従事する労働者につきましては、被曝が目でわからないということでございますけれども、法律の規制によりまして被曝線量の測定、たとえばフィルムバッジをからだにつける。フィルム線量計をつけるということで、毎月その労働者がどのくらいの被曝を受けておるかということは詳細に把握することを義務づけておりますし、年に一回健康診断の際に、総括でありますけれども、その被曝量につきまして官庁への届け出、報告というものも規制をしております。したがいまして、これによりまして、この法規以上に被曝をするということの規制を十分チェックをできますけれども、それに合わせまして、監督官庁としましては、労働者保護の観点からは労働省、あるいは一般に電離放射線障害防止という広い見地からは科学技術庁が立ち入り検査をしておるわけでございまして、先生御指摘のように、従来も原子炉関係で、たとえば四十六年の七月に東海原子力発電所、あるいは四十六年の八月にも東電の福島原子力発電所というようなところで若干の事故が起きておりますけれども、いずれもいまのところまで発生しましたのでは、許容線量以下というような事故でございまして、それほど重大な事故には至っておりません。ただ、業務の性格上、われわれといたしましては、さらに監督の強化、あるいは趣旨の徹底ということを今後も進めてまいりたいと思っております。
#12
○渋谷邦彦君 本論から若干はずれるかもしれませんが、関連する問題としてお尋ねをするわけでございますけれども、先ほど申し述べましたように、従事者の中では医療従事者が一番多いという結果が出ております。特に、病気をした場合、あるいはけがをした場合、その患部を精査するための一つの手段としてレントゲンを使用される場合が非常に多い。これは医者あるいはその他の物理療法をやる従事者については、それなりの注意と配慮が払われて、また、管理もそれなりに行なわれているという感じがいたします。しかし、今度実際逆の立場において治療を受けるほうの患者の場合には一体どうなのか。しかもそれがおとなと子供と、あるいは老人という場合に、ずいぶん違いがあるのではないか。最近一部の学者の中においても、できるだけレントゲンを使わないで、もっとそれに近い方法でもって診断ができるというようなことに切りかえるべきではないかという意見もあるわけでございます。子供の場合には、たとえば肺をとる場合は、からだが小さいですから、全身にあるいはレントゲン放射があたる場合がある、危険性がある。それも一回や二回じゃなかなかわからない。何何かそれを使用することによって、患者自体に思いがけない副作用というものが起こり得る可能性というものもあるんではないだろうか、その辺の実態的な問題と実際のチェックのしかた、そしてまた、病院における管理というものはどういうふうになっておるか。
#13
○説明員(佐分利輝彦君) まず、医療用放射線に従事する職員の問題でございますが、これは国際放射線防護委員会の基準に従いまして、医療法の施行規則で放射線照射機器とか、あるいはそれを使用する部屋の構造、設備の基準を定めております。したがいまして、その基準を十分に守っていただければ、放射線の防護ができるものと考えております。
 次に、患者とか一般国民の被曝の問題でございますが、これは現在、国際的にもまだ明確な基準がございません。端的に申しますと、放射線を使用いたしまして診断や治療をする場合のメリットと、それによって起こるデメリットとのかね合いによって判断しなければならないことかと思われますが、現在、WHOにおいてもその問題を検討中でもあり、また、厚生省も委員会を設けて検討いたしておりますので、近く適切な基準を作成いたしまして、実施に移したいと考えております。
#14
○渋谷邦彦君 今度その場合、まあ病院の規模、あるいは国立の場合、公立の場合、それから私立の場合、これやはり規模も違いますし、取り扱うそのあり方というものもいろいろな意味でのその格差というものがぼくはあると思うのですね。そういう格差がある点については、具体的にチェックができるのかどうなのか。確かに、国際的にきめられたその精神にのっとってそれを取り扱わなければならない――当然だと思いますけれども、具体的にはたして現実の問題としてそういったものが十二分にチェックできるのかどうなのか、その点はいかがなんですか。
#15
○説明員(佐分利輝彦君) まず、百万電子ボルト以下のエックス線照射機器につきましては、これは厚生省が医療法に基づいて医療監視を行なっております。また、百万電子ボルト以上のエックス線機器その他アイソトープの照射機器、器具などにつきましては、厚生省と、また、科学技術庁が放射線障害防止法に基づいてチェックをいたしております。
#16
○渋谷邦彦君 そういうチェックのしかたで絶対にだいじょうぶだという確信がありますか。いまアイソトープの問題も出されましたけれども、過日、東大においての事故がございましたね。そうしたことを考えた場合に、絶対に、従事者はもとよりですけれども、患者の立場においても、その防護措置というものは完ぺきを期することができるのかという問題は残されますね、一つの疑点として。その問題はどうですか。
#17
○説明員(佐分利輝彦君) 絶対にだいじょうぶということは申し上げられないかと存じますけれども、われわれとしても、チェックについてはできるだけの努力をいたしておりますし、また、医療機関の側におきましても、医療法、放射線障害防止法の基準に基づいてできるだけの努力をいたしておりますので、特別の場合を除いては問題はないと考えております。
#18
○渋谷邦彦君 先ほど御説明がございました、現在国際的にもまだ検討の段階であるというお話がございましたね。そうすると、まだ検討の段階であるにかかわらず、実際国内ではそういう治療の方法というものが行なわれている。患者自体に、もしそういう障害が起こっても、それはやむを得ないと、これはまあ可能性の問題ですから、そういうことを論ずることはどうかと思いますけれども、申し上げたいことの趣旨は、そういう放射線を浴びるような措置をするよりも、何かそれにかわるべき方途というものを考えて、実際に確定的な結論が出てからでも、そういう治療の方法というもの、あるいはそのレントゲンを使用するというようなもの、あるいは継続的に、しょっちゅう使うということじゃなくて、というような操作は当然おやりになっているのじゃないかと思うのですが、その点はどういうふうに現在行なわれているかどうか。
#19
○説明員(佐分利輝彦君) 患者とか国民に対する被曝につきましては、現在医学界においてもそのような問題を強く認識いたしまして、いろいろと医療機関に対してできるだけ被曝を少なくするような指導をいたしております。そういう関係で、たとえば病院とか保健所等におきましても、できるだけ被曝を少なくするような努力はしておるわけでございます。ただ、たとえばガンの患者の精密診断とか、あるいは放射線治療とかいうことになりますと、これは人命を救うということでございますから、被曝量をあまり云々できないわけでございまして、問題はガンの健康診断あたりから問題が起こってくるわけでございます。ただ、ガンの健康診断の場合には、かなりの高年齢から始まるわけでございますので、若年齢ほどの悪影響はあまりないのじゃないかと思われております。問題は、現在かなりたくさん行なわれております青少年に対する結核の健康診断、こういったものが問題になろうかと存じますが、その場合もできるだけ肺にだけ放射線を照射するように、また、その回数もできるだけ少なくするようにという努力はいたしております。
#20
○渋谷邦彦君 今日まで、医者及びレントゲン技師と限定してもよろしいかと思いますけれども、この発生件数というものは、先ほども私がちょっと触れましたけれども、そう多くはないと思いますけれども、どのくらいの数字になっておりますか。
#21
○説明員(佐分利輝彦君) 医療関係の放射線従業者の放射線障害の発生状況でございますが、私どもの握っておりますところでは、あまり数は多くございません。二十名から三十名という程度でございます。
#22
○渋谷邦彦君 それから最後にもう一点だけ確認をしておきたいのですが、具体的に、実際に防護措置の一環として、どういう予防措置がとられているか、まあ伺うところによりますと、あるいは一週間に一ぺんぐらい、あるいは一月に一ぺんぐらい放射線を浴びている、その状態について検査をする、そして何もなかったということの確認をしながら仕事を続けるというふうに伺っておりますけれども、その辺はいかがでございますか。
#23
○説明員(佐分利輝彦君) まず、放射線の被曝量の測定でございますが、先ほども御説明がございましたように、フィルムバッジだとか線量計を使いまして、毎月一回ずつ被曝量を測定をして記帳させております。また、健康診査でございますが、血液につきましては三月に一ぺん、その他の検査については半年に一ぺん健康診査をいたしております。
#24
○渋谷邦彦君 次に、先ほど取り上げました中で、電離放射線を扱っている業種の中では三番目に位置すると思われる原子炉関係がございます。さっき従事者も、学者あるいは研究者、あるいはそれに伴う従業員でございますね、職員、逐次ふえてきている。したがいまして、その安全については特段に配慮がなされつつ、今日までの運営というものがなされていると思うわけでございますけれども、原子力委員会が指摘されております中にもございますけれども、特に一般的に申しますと、作業に従事する従事者の事故の未然の防止のために機械、機器でございますね、機器等の開発は当然としても、またさらに、安全に関する教育訓練の充実とはかかることが必要だというふうにいわれております。ただ、従事者の中には下請でもってやっているような場合もありましょうし、もう相当広範に考えた場合にそこに出入りする人等も含めて、その辺の管理体制というものは十分に行なわれているのかどうなのか。
#25
○説明員(大坂保男君) ただいま先生御指摘のように、原子炉の運転に伴う安全保安の管理につきましては、原子炉規制法に基づきまして万全を期している次第でございまして、たとえば場所といたしましては原子炉の周辺に管理区域を設けて、そこには一般の人を立ち入らせないというようなことで管理しているほか、保安教育その他のことは、たとえ下請従事者でありましても、原子炉設置者の義務として、一般従業員と同様の保安管理及び保安教育を行なうように義務づけしておりまして、そのように指導しておる次第でございます。
#26
○渋谷邦彦君 さらに、これからの検討を迫られる問題の一つとして、被曝線量の一元的な登録管理制度というものが当然必要になっていくんだろうと思いますが、具体的にその点はどういうふうに進んでいるのか。
#27
○説明員(大坂保男君) 個人被曝の登録管理につきましては、たしか昭和四十五年度から毎年どういう方法で登録管理するかという方法論を、予算の裏付けをもちまして研究してまいりまして、たとえば被曝線量をはかるときに、何によってはかったらいいか、ガラス線量計とか、フィルムバッジとかいろいろございますけれども、そういうものについてのはかり方等のマニュアルをまずつくりますことが必要だろうということで、そういう基礎的な積み上げをもちまして、ようやく今年度に至りまして、サンプル的にこういう登録システムでやったらよかろうということまでこぎつけましたのでございまして、ことしの二月十四日に、原子力局長の諮問機関といいますか、個人ひばく登録管理調査検討会というものの報告が出てまいりましたので、この報告に基づきまして、四十九年度中にどういう機関でこれを実施したらよかろうか、その場合における機構の問題、金の問題等につきまして、たとえば原子力委員会の専門部会等で検討して、できるだけ結論を得た上で早急にこれを実現させたいというふうに考えているわけでございます。
#28
○渋谷邦彦君 特に問題になることは、被曝をした場合に身体に受ける影響ですね、これが一番問題だろうと思うのです。そうしてまた、先ほども申し上げたように、将来ともにその影響というものが絶対出ないものなのかどうなのか、あるいは生理学的に、医学的に、実際にあらゆる角度から分析検討をもちろん進めなければならないでしょうし、いままで伺っている範囲では、まだその基礎的な調査の段階を出ないと、あるいは私の誤認識かもしれませんけれども、そうしますと、実際に取り扱う従事者の立場からいえば、常にその危険な状況のもとにさらされながら仕事をしなければならないということが非常に心配になるわけでございますね。そうした結論的な、また系統的な、安全に対する結論というものが出されて、そうしてその従事者に対しても不安感のないような啓発指導というものがどういうふうにこれから具体的に進められていくスケジュールを持っているのか。
#29
○説明員(大坂保男君) 先ほどからお話のございました許容線量として、一般人は五百ミリレム、それから従事者は五レムという数字は、国際放射線防護委員会においてきめられたラインでございますけれでも、このICRPにおきましても、その五レム――従事者、それから五百ミリレム一般公衆という数字に至りますまでは、かなり高い線量であったというふうに聞いております。そういたしますというと、やはりぐあいが悪いだろということが長い経験によって出てまいりまして、現在の五レムあるいは五百ミリレムというのは、かなり許容し得る線量だというふうに結論づけられておるわけでございますけれども、同時にその線量で絶対ということはないというので、まあアズ・ロー・アズ・プラクティカルということで、できだけ低くするという、同時にそういう要請も、行なっております。したがいまして、いかにこれを低くするかという努力を、御承知のように、原子力関係で行なっておるわけでございますけれども、その場合におきましても、どの程度ならだいじょうぶかということになりますと、これは国際的な問題として取り上げて検討されているわけでございますけれども、いわば閾値といいますか、一定の閾値があって、その閾値以下であれば、人間の回復機能等を考えると、まず絶対といいますか、そういう線があるのじゃないかということで、各国の学者が研究しています。わが国におきましても、おくればせながら低線量――高線量でございますとはっきりと因果関係わかりますけれども、低線量の被曝によりまして人体に遺伝的影響あるいは晩発障害の関係、そういうものにどういう影響を及ぼすかということについて探求する必要があろうということで、おくればせながら、今年度からかなり大規模に放医研を中心といたしまして取り上げるという体制で進めておりまして、一応十カ年計画で十年以内にはそういうめどをつけたいということで進めているわけでございます。
#30
○渋谷邦彦君 十カ年ということは、それなりの理由と、現在進められている分析、検討というものを軸にしながら、どうしてもそれだけの時間の必要があるんだろうと思いますけれども、具体的にもう稼動しているわけですね。そうした場合に、その十年の間に起こり得るいろんな可能性というものが考えられないのかどうか。十年ぐらい待った上で原子炉の作動というものをやってもおそくはないんじゃないかという問題が一つありますね。
 それに関連してもう一つは、原子炉から排出される温排水の問題、この中にも、多量というか、その状況によっても異なると思いますけれども放射線物質が混入されておる。こうなりますと、従事者のみならず、あるいは漁業に従事している労働者、これは間接的になりますけれども、そこにも影響が及んでいく、そういうことも十分考えられる、予測される、そういうことでずいぶんいままでも議論されてきました。そうしたことを包括的にやはり考えて、放射線に対する防護措置というものの完全というもの、やはりこれだけは非常にアレルギーが強い問題でございますだけに、不注意だとか、あるいは最後の一%ぐらいのところでもって起こらないと判断していたものが起こった、九九%安全だと思いつつも、最後の一%だけは、あるいはという一つの不安がある。しかもわれわれの感じとしては、特にこの種の問題については将来にわたっての影響を考えた場合に、しろうとはしろうとなりに非常に不安が伴うということになりますと、学者の方々はそれを絶対言いませんね、絶対ということは。おそらく学者の良識としてそれを言わないんだろうと思いますけれども。しかし、受けるほうの立場から考えた場合に、絶対保証してもらいたいという気持ちがあるわけです。それに向かって取り組まれていることもわからないわけではございませんけれども、そういうあらゆる段階を踏まえた上で原子炉の問題というものを取り扱ってもよろしいんではないか。それには現在の社会情勢の中でおそきに失する場合もあるという、いろんな二律背反するような問題が介在して、なかなか思うようにいかないということも承知しているつもりでございますが、やっぱり安全という問題と、その事前の防護措置というものは当然のことでございますし、そうした、いま申し上げました一般漁民あるいは一般農民という場合もあるかもしれません。そうしたような広範囲にわたって放射線をチェックするだけの現在の管理体制というものが十分にとられているのかどうなのか、この点どうですか。
#31
○説明員(大坂保男君) ただいまの御質問の前に、先ほど、よくわからない状態では、たとえば十年間たつとよくわかるというならそれまでというようなお話もございましたけれども、繰り返すようでございますけれども、ICRPの勧告の数字は、従事者に対して五レム、一般の公衆に対して五百ミリレムということで数値を出したわけでございますけれども、この数字は、世界じゅうの学者が従来の経験に基づいて検討した結果、この程度であればだいじょうぶということで、閾値の問題も先ほど申しましたけれども、閾値があるかどうかわからない状態では、閾値はないということで、非常にきびしい条件のもので検討した結果、これでまずだいじょうぶ――まずと申しますのは、よくわからぬ点もありますので、低ければ低いほどいいんだという考え方も同時にあるわけでございますけれども、そういう基準に対して、現在原子炉の運転に際しまして、あるいは一般公衆に対しましても、それをはるかに下回るような数字でやっておりますので、私どもとしては、十分安全であるというように考えておるわけでございます。
 また、最後の御質問でございますけれども、私どもとしましては、先生の御指摘のように、安全管理につきましては、法律に基づく規制を行なって万全を期しているわけでございますけれども、この監視の点につきましては、一義的には事業者に監視、測定の義務を負わせ、それを国がチェックしているわけでございますけれども、特に福井とか水戸とか、あるいは福島というような、いわば集中原子力地域につきましては、直接国の機関を置きまして、そこで国が地か公共団体と協力し監視にあたっているというのが現状でございます。
#32
○渋谷邦彦君 もう一つ。たとえば原子力発電所そのほか研究所等に出入りするいろんな方がいますね。こういう方々に対しての事故に対する啓発指導はどんなふうに、そしてまた、具体的に安全防止の方策がとられているのか。
#33
○説明員(大坂保男君) このILOの勧告にございますように、日本の原子力法体系におきましても、従事者が就業する前に当然かなりの保安教育を行なっておりますし、また、作業中におきましても、実際の実物教育その他によりまして教育を行なっておるので、まあその点につきましては、必ずしも十分と言えない点もあろうかと思いますけれども、今後ともそういう点につきまして万全を期すように、指導してまいりたいと思っております。
#34
○渋谷邦彦君 事故というのは、いつの場合も、申すまでもなく、考えもしないようなときに起こるという、そしてまた、そのときには必ず不注意だとかそういう問題がいつも指摘されておりますね。したがって、不注意では済まされない。特に、原子炉の問題はそういう立場に置かれているだろうと思うんですね。あのときこうすればよかった、あのときにこういう方法もあったんではないかということでは私は手おくれだと思うんですね。万全の措置、当然のことであろうと思いますけれども、やはりいま特に国民的な関心を集めている問題でございますだけに、これはもう監督官庁である科学技術庁といたしましても十分なやはり配慮をもって、事故が全く起こらないと、皆無であるという方向に立っての管理体制というものを十分にとっていただきたいと、こう考えられます。
 それから次に申し上げたいことは、これは問題がまた違いますが、条約が三本ありますので、次の問題に移りますけれども、機械の問題ですね、これは労働省になりますか。いろいろこまかく事故防止のための内容というものがここに取り上げられております。当然適切な意味を持った内容ではないかと思います。ただ、いつの場合でも、こうした条約を締結する場合に問題になりますのは国内法であると。その国内法の運用にあたっては、当然それが合理的に行なわれるということがたてまえでございましょうけれども、間々やはり人のやることでございますので、見落としがあったり、十分手が回らないというおそれが出てこないとは限らない。特に、機械等を扱っている業者というのは、大企業、中企業、小企業というふうに、大きく分けてもその三つに分類することもできましょうし、大企業の場合には、事故防止のための管理体制というのは、それなりにその一つのセクトとしてそれぞれの企業体に設けられて、十分にその管理運用の上においては万全を期されているだろうと思うんです。しかし、問題はやはり、これまたいつの場合でもそうでありますけれども、目の届かない中小企業の業種に対してどういうチェックの方法をやりながら事故防止のための安全がはかれるのかと、これはもちろん労働週間だとかそれぞれのそういうようないろんな行事を設けながら趣旨の徹底というものをつとめている場合もございましょうけれども、往々にして役所のやることは啓発宣伝については、お金はかけるけれども、具体的に実効があがらないというおそれがあることは、われわれがひとしく体験をしている例がございます。その点について特に管理体制の十分でない、目が届かないというものについては、これからどういうチェック――これからということよりも、従来もそうでありますし、これからもこういう条約を結ばれた機会にさらに一段の配慮というものがなされていかなければならないであろうと、こういうふうに思いますけれども、その辺はどういうふうに一体、これからも管理の上において、事故が全くないということを念願としながら進めていく、また指導されていく、そういう計画なりお持ちになっていらっしゃるかですね。
#35
○政府委員(北川俊夫君) いま全国に基準法の適用のあります事業所が約二百六十万ございます。その中で、災害の発生の状況からいいますと、先生御指摘のように、大企業ではやはり自主的管理能力あるいは災害防止のためのいろいろの努力というものがかなり払われておりまして、災害減少の傾向にございますけれども、やはり問題は中小企業でございまして、中小企業の災害の発生というものは、たとえば数字でいいますと、百人未満の小企業と千人以上の大企業の災害の発生率を見てみましても、大企業に比べて中小企業が六倍の発生率にあるというような現状でございます。したがいまして、今後、いままでもそうでございますけれども、今後も新しい労働安全衛生法のもとで中小企業の災害をどう減らすかということを最重点にいたしたいと考えております。そのためには、一つは、やはり基準監督というものを厳正に行なうということでございます。現在のところ基準監督の完全実施といいましても、先生御承知のように、基準監督官の数が二百六十万の事業所に対しまして三千足らずでございますから、なかなかすみからすみまで見るということはできませんけれども、私たちは監督実施の方針といたしましては、災害の起きやすい業種、あるいは規模の事業、したがいまして、中小企業とか建設業とか製造業、そういうところに重点を置きまして監督を今後とも行なっていきたいと思っております。
 それから、それとともに、中小企業とそういう監督的立場でいろいろ接するほかに、指導援助をすることでなければ、中小企業の災害は減らないんではないかということで、今度労働安全衛生法に基づきましてコンサルタント制度、中小企業で災害防止のための指導援助を行なう、民間の有識者、そういう制度をつくっております。こういうものの活用、あるいは安全衛生のための融資というもの、いわゆる国が中小企業の災害を減らすためのお手伝いもするというような、監督と指導、援助と、そういうものの両用の立場で中小企業の災害の減少につとめてまいりたいと思います。
#36
○渋谷邦彦君 これはしばらく前に、この労働基準監督官がおそらくいま申し上げた立場に立っていろいろ督励もし、指導もなさる位置に置かれているのだろうと思うわけです。ところが、その取り扱う業種を見ると、相当多岐にわたるんですね。この問題だけじゃないわけですよ。ほかにも仕事があるわけです。しかも、何百万という業種をともあれ担当しなければならない責任があるわけですね。それにはもうこれは不可能といってもいいくらいに近い現在の数字が示されたわけです。そういう点で、野原さんが労働大臣のころにもこの点を指摘したことがあります。前向きに善処しますと言うんですよ。よろしゅうございますか。少しも善処されてないです。いま伺ってみますと、あのときの数字と変わってませんよ。したがって、はたして現在の能力でもって、機能、体制でもって十分な効果をあげ得ることができるのかどうなのかと、これが非常に問題だと思うんですね。いまコンサルタントのお話も出ました。しかし、それはこれからつくる問題でありまして、それも時間がかかるんではないかと思われます。そうすると、いま最も適切な手段を講じられるものは、やはり多少でも監督官をふやすとか、そうしてまあ、重点的にというふうに先ほどもおっしゃられた、しかし、重点的にと言っても、案外重点的に監督指導したところには事故が起こらなくて、見過ごされていたようなところに事故が起こると、それはもう日常のマスコミを通しての報道を見ましても、またかというような、そういう問題がございますね。われわれ、はだで感じてます。そういうところに働いている労働者というのは保護されていない、実際問題は。それが一番問題じゃないか、せっかくこういう条約を締結するにあたって、国内においてもそういうことのないように万全を期するのは当然としても、あまりにもいままで多過ぎる傾向はないかということなんですよね。そこで、この問題については、いまさっそくふやせと言ったって、千人も二千人もふやせるわけじゃないと思います。総定員法に定められたワクもございますので、しかし、どうしても必要だというその人たちが要るわけでございますから、そこら辺のところを何とかやりくりをして、多少でも前向きのそういう姿勢というものがとられないのかどうか、こういうふうに思いますけれども、加藤さんいかがですか、これは。
#37
○国務大臣(加藤常太郎君) 御指摘のとおり、私も大臣に就任いたしまして、もう御意見どおり痛感で、本年度の予算の場合にも、せめて五百人ぐらい基準監督官を増員してもらいたいと相当折衝したんでありますが、なかなか大蔵省はいろいろな関係で、われわれの希望が達成できなかったんでありますが、労働災害の防止と職業病など健康障害の防止、予防、こういうような面を考えましても不足であるところへもってきて、先ほどから御指摘のように、最近まあ大企業もそうでありますが、中小企業までも相当工場の科学技術は進歩いたしまして、電離放射線の問題が出ておりますけれども、その以外に、PCBだとか粉じんだとか、いろいろ多岐多様にわたって今後安全衛生の問題を完全に遂行するのには、御指摘のとおり、これはなかなか困難な点が、もうわれわれも同感であります。本年は基準監督官、安全専門官、衛生専門官、まあ八十五名だけを増員いたしたんでありますが、この法案、この条約をまあ契機といたしまして、今後せめて来年度はこれから予算の折衝、予算のまあ原案ができますが、これに対しましては、従来からの労働行政が相当大転換を来たしておりますので、これに対しまして御指摘のような面に全力をふるって対処いたしたいと思います。
 なかなかこれ人を雇っても、人をふやしたとしても、まあ専門的な知識も必要でありますし、研修も必要でありますし、いろいろの点から言って、御指摘のように、それは現在まあ一千名ほしいんでありますけれども、なかなかそういかなくても、来年度は何百名というのを、ぜひとも毎年毎年ふやさなくちゃならぬと思いますが、今後その方針でいきます。
 また、この医学と言っても、臨床医学は相当日本は発達いたしておりますけれども、工場関係の問題が相当特殊な医学なり特殊な技術の研究も必要でありますので、これは実現いたすようになりましたが、産業医科大学をつくって、かようないろいろ安全衛生の面を担当する係官を養成したいと、これはまあ二百億円か三百億円かかると思いますが、これができましても、結局その監督官がふえなくちゃならぬので、ほんとうにきょうはいい御意見を聞かしていただいて、われわれも意を強ういたしますが、今後ただ当面だけでなく、この面に重点的に対処いたしたいと思います。
#38
○渋谷邦彦君 先回りをして答弁されたようでございますけれども、まあともかく数年前から少なくとも私は社労でもってもそれを指摘した経験がありますのでね。数だけふやせばいいという問題じゃないかもしれない、むしろ。そしてまた、いまコンサルタントの、まあいろいろ英知をしぼったその集約として、コンサルタントの問題も出てきたんだろうと思います、発想の過程において。それはやはり、こうした機会に一つの手がかりを、足がかりを得たわけですから、条約締結という。こういうときに本気になって取り組みませんとね。前向きに取り組むと言いながら、また一年たち、二年たち、三年たち、四年たち、一向に変わらない。もう四、五年変わってないんですからね、いま答弁を受けましたように。全然変わってないと言ってもいいんです。それで企業体はふえる。それで事故は相も変わらず起こっている。これじゃ何のための条約の締結かというふうにもなりかねませんね。条約は順守しなければならぬということは憲法にもちろん規定されておるわけですから。ですから、その点をいま加藤さんがおっしゃったとおりの方向で、われわれとして、願わくば、この条約の内容に盛られているような事故が起きないような、そういう管理体制をはじめとして、今後の事故防止につとめてもらいたいもんだと。それで、いまお約束されたわけですから、それを具体的に、四十九年の予算編成に当たっても十分それを考慮されて、そういう体制をとることが望ましいんじゃないかということを申し上げておきたいと思います。
 次にまた、話題を変えてお尋ねをしておきたいと思うのですが、労働機関憲章等々、今回三本の条約締結が提案されておるわけでございますので、これを一括して申し上げたいんですが、最近特に発展途上国が加盟国となってきている。そうすると、いろいろな問題で、たとえば総会においていろいろな議題が採択される場合に、矛盾はないんだろうかという問題が考えられるのです。それで、先進国には共通した内容であっても、あるいは発展途上国における国においては、社会情勢もちろん違いますし、現在行なわれておるその労働条件だとかいうものも極端な違いがあるんではないだろうか。そういう異なった違いのある国柄が集まって一つの条約の採択をするということは、今後も矛盾が起きないのかどうなのかという問題が、まず一つの原点的な問題として考えられるのですが、この辺はどういうふうに整理してわれわれが理解したらよろしいですか。
#39
○政府委員(影井梅夫君) ただいま御指摘の発展途上国といわゆる先進国との間でものの考え方が違うので、その間にいろいろ問題が起こるのではないかという点でございますが、この労働機関憲章を離れまして、最近私ども顕著に感じております一例といたしまして、環境問題に関する見方があるかと思います。先進国の側では環境問題と申しますとこれは主として公害という観点からこの問題を見がちである。これに対しまして、いわゆる発展途上国の側から見ますと、環境問題、これはむしろ貧困である。生活程度の低いこと、あるいは経済発展がおくれているというふうな見方をしなけりゃならぬ。今日の国際社会の現状におきまして、これはまことに現実を反映した姿だと思いますが、私どもこの国際機関の場におきまして、このようないろいろ違う見方というものが提示されまして、それぞれの見方を十分に理解を求める。それを通じまして何らかの国際的な合意と申しますか、というものを見出したい。この国際的な合意を見出すということは、実際問題といたしましては、決して容易ではございません。しかしながら、方向といたしましては、このようなことが国際機関に課せられておる大きな任務ではなかろうかというふうに考えております。
#40
○渋谷邦彦君 現在、まあ日本においてもILO条約、批准されてないものが百三十六のうちまだ相当数にのぼっておりますね。まだ二十九ございますか、批准されたものは。こうしたその、それぞれの国情に応じて直ちに批准できるものと批准できないものと、それから国内法等の関連もございましょうし、いま御説明がありましたように、ものの考え方、それからその国柄の社会情勢の違い等々、いろいろな要素が介在して、直ちにその批准ができない。せっかくそういう条約が総会において採択されると、しかし、それがその国によって批准されない。むしろそういう要素というものを、もう少しく採択される前に意見の交換、そしてもっと採択――普遍的にということは、これはたいへんむずかしい問題だろうと思います。百何カ国もあって、同じような国情といえものはもちろんあるわけがございませんけれども、しかし、まあ先ほど申し上げたように、大きく分ければ先進国と発展途上国と、その最大公約数をやはり求めて、そして各国がそれに十分に矛盾を、ある程度矛盾があっても批准ができる、そういう方向にむしろ持っていくことのほうが望ましいんじゃないかという逆の考え方が出てくるわけなんですよ。そういう点でね、日本の場合も、百三十六もあって、二十九しかまだ批准されてないという、こうした問題があるわけですけれども、その辺はわれわれはどういうふうに理解したらいいのかという問題ですね。
#41
○政府委員(藤繩正勝君) ただいまの問題は、ILOでも非常に大事な問題でございまして、おっしゃるとおり加盟国が多数でございまして、しかも、先進国と発展途上国の間では国情も異なるということで、ILOが主として課題といたしております国際基準としての条約というものが、場合によって必ずしも各国の実情に合わないということが考えられるわけでございます。そこで、ILOでは、本来、このILO憲章に第十九条の三項というのを設けまして、「一般に適用する条約又は勧告を作成する場合には、総会は、気候条件、産業組織の不完全な発達又は他の特殊事情によつて産業条件が実質的に異なる国について充分な考慮を払い、且つ、これらの国の事態に応ずるために必要と認める修正があるときは、その修正を示唆しなければならない。」という条項を設けておるわけでございます。で、具体的な例といたしましても、一昨年批准、承認もいただきました例の最賃条約で、特に百三十一号でございますが、開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約、百三十一号条約というのがございました。わが国も批准をしたわけでございますが、そういう条約をつくったり、最低賃金につきましては、基本条約は二十六号というのがございますが、特にそういう条約をつくったり、それから個々の条約につきましても、それぞれの条項についていま申し上げましたILO憲章の十九条の三項による配慮をするというような努力をいたしておることは事実でございますが、御指摘のような点は、ただいま外務省からもお答えがありましたように、一般的にはこれからの非常に重要な問題であろうと思います。
#42
○渋谷邦彦君 最後に、もう一つだけ確認をしておきたいと思うんですが、現在日本から国連に派遣されております職員の数でございますけれども、非常に少のうございますね。で、これではたして国連においての日本側の意思を代表するようないろいろな行動が十二分に発揮できるのかどうなのか。少なくとも、まあアメリカはこれは論外でございますけれども、四百三十七名という人を派遣しているようです。それからまあフランス、ソビエト、英国等々におきましてもわが国のもう倍以上と、こういう状況が資料によって明らかにされておりますけれども、日本はそれに反して現在五十名前後ですか、非常に少ない。これではたして機能が発揮できるかどうかという問題が考えられるんですけれども、この点はいかがでございますか。
#43
○政府委員(影井梅夫君) ただいま御指摘のとおりに、この国際機関の事務局に働く日本人職員の数が少ないということ、御指摘のとおりでございます。たとえて申し上げますと、国連に働きます専門職員の数、大体三千人でございますが、現在日本人職員の数はそのうち六十七名でございます。特に、日本がこの国際機関に支払います分担金の率、これが逐次高まっているというところから考えましても、この日本人職員の数はふやすべきであるということ、私ども全く同感でございます。
 また、先生御指摘のとおりに、この国際機関の事務局におきまして、それぞれの立案その他企画等に当たるということを考えますと、特に上級の職員の数、日本人の職員の数をふやしたいということ、私ども全く同じ考えでおります。ただ、最近の実績といたしましては、日本人の職員の数のふえ方、これは他国に比較いたしまして数のふえ方の率におきましては、日本は急速な伸びを示しているということは申し上げられるかと思います。
 また、日本の国内体制でございますが、なるべく国際機関に働きたいという要望をお持ちの方の実情をとらえ、また、国連を初めといたしまして、各種の国際機関において、どういうふうなあきと申しますか、があるかということも組織的にとらえまして、これをうまく結び付けるための方策を現在進めている段階でございます。
 なお最後に、この日本人職員の数が少ない一つの大きな理由といたしましては、御承知のとおりに、日本は、国連を初めといたしまして各種の国際機関へ参加したのがおくれた。戦後、外交関係をとめられておりまして、その間外部との接触がなかった。その間に、国連を初めといたしまして各種の国際機関の事務局の職員というものは、ほかの国によってもう大体、大体と申しますか、すべて埋められてしまった。そういう状況のところに、いわば後発国といたしまして参加せざるを得なかったということが一つの理由かと思います。しかしながら、過去は過去といたしまして、今後私どもこの国連、国際機関に働きます日本人職員の数をふやすということは、今後とも具体的な努力を重ねていきたいと考えておる次第でございます。
#44
○渋谷邦彦君 確かにいま御説明あったとおりじゃないかと思うのです。急速にふえたというのは、いままで足りな過ぎたから急速にふえたということも考えられるでしょうし、やはりいま率直におっしゃられたとおり、これからの機能というものを万全を期するためにはふやさなければならぬ、これが一つでございます。
 それからもう一つは、おそらく外務省の職員が中心になって、あるいは出向という形で行くのか、全然それはもう一ぺん退職という形で行くのか、いろいろあるんだろうと私は思います。ところが、今度日本へ帰ってきた場合に身分の保障が全然なされていないという問題があって、そういうこと等もあって、なかなかなり手がないというようなことも聞いております。そういうようなやはり問題というものは相当考えてあげて、かりに、国連の職員をやめて日本へ帰った場合に、きちんとした身分保障、生活の保障ができるというような連関関係を確立をしてあげるならば、まだ、聞くところによると、国連職員のシェアとしては二百人ぐらいは日本人として採用できるという余地が残されていると、こういうことも言われております。そういう立場に立って、これから国連中心という外交関係の戦いを展開するとするならば、当然そういうような問題というものも整備されていかなければならぬ、こういうように思いますが、最後に、大平さんにその問題点を、今後どういうように日本としてはそういう職員の問題を、身分保障や生活保障も含めて、そして合理的に国連の場に送り出すことができるかどうかということを伺って終わりにしたいと思います。
#45
○政府委員(影井梅夫君) 大臣のお答えに先立ちまして、現在日本の国内で、外務職員に限らず、国家公務員に関しましては、これは昭和四十五年の法律第百十七号でございますが、国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律という法律によりまして、ただいま渋谷先生御指摘のような懸念というものは大幅に解消されているということを申し上げられるかと思います。
 それから公務員以外の方についてでございますけれども、大企業におきましては、この国際機関で日本人職員として働くということの意義を広く認めていただきまして、やはり復職された後についても不利のないようにというふうなお取り計らいをいただいておるというふうに私ども承知しております。ただ、このように国家公務員ないしは大企業等のバックを持たない方につきましては、今後、御指摘のような問題点に対処していかなければならないかと考えております。
 なお、一般的に私ども、一たん国際機関に就職されました日本人の方で、その後いわゆる定年まで国際機関で働きたいという御希望をお持ちの方につきましては、私どもいろいろ非公式な形でその御希望に沿えるようにお力添えしていくつもりでございます。
#46
○国務大臣(大平正芳君) わが国の場合は、国際機関に慣熟いたしておりませんで、そこに生涯を託するということについて、安んじて生涯を託するという状況にないこと、さらには、全体として終身雇用制でございますので、一たん国内におきましても既往の職場を離れた場合に、再就職ということが非常に容易じゃない。そういう状況でございまするので、とりわけ国際機関に出た場合、出ようという意欲をたいへん減殺する環境にあるように思うわけでございます。で、いま御指摘がございました、国連局長も答えましたような、制度的なバックアップをしなければなりませんが、国際機関自体におきましても、たとえば定年までは安んじてそこに勤務ができる、機関自体の保障措置も何かお考え願わなきゃいかぬと思うわけでございます。先ほどお話ございましたように、国連におきましても、進んでミッションを日本に派遣していただいて、そういう機会をとらえることに協力をいただいておりますし、ワルトハイム氏も来まして、積極的な姿勢で御要望に沿うというコミットをいたしておるような状況でございますので、先ほど政府委員がお答えいたしましたようなラインに沿いまして、今後一そう努力してみたいと思います。
#47
○委員長(平島敏夫君) 以上三件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#48
○委員長(平島敏夫君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#49
○森元治郎君 この前の質問、すなわち第二十国連総会、一九六五年、昭和四十年の総会で採決された国連憲章百九条の改正について国会の承認を求めるという手続がとられていないことがわかった。今度は、同じ国連憲章の同質の、同じ質の内容である国連憲章の改正は国会の御承認をいただきたいというので、「国連憲章改正の批准について、日本国憲法第七十三条第三号ただし書の規定に基づき、国会の承認を求める。」ときている。前は出さない。今度は出した。それはちょっと解せないのじゃないかといったら、大臣は、よく検討してみようということで分かれたので、その後いろいろ御検討もしたようだから、その間の事情を聞く、それだけで私の質問は終わります。
#50
○政府委員(松永信雄君) 法律技術的な問題が含まれておりますので、私からお答え申し上げます。御指摘がございました二十総会の国連憲章の改正は、一九六五年に行なわれました憲章第百九条の改正でございますが、これにつきましては、もう御指摘のごとく国会に提出いたしませんで発効を見ております。なぜ国会に提出して承認を求めなかったかという理由につきましては、前回も若干申し上げましたけれども、この改正はその二年前に行なわれました憲章改正の際に当然に技術的、論理的な当然の帰結として行なわれるべきであった改正を、国連事務局のミスによりまして改正漏れとなっていたもの、それを六五年に拾ったものでございます。内容がそういうものでございまして、わが国として当然その改正の発効につき異論があったわけじゃございませんけれども、その改正について、積極的に批准の意思表示をすることについて政府として重要性を認めなかったということがそのおもな理由でございます。で、なぜそういうことになるのかということを申し上げますと、国連憲章の第百八条の場合のごとく、三分の二の加盟国が受諾したときにすべての加盟国について効力を発生するという仕組みになっております改正の場合におきましては、加盟国による批准ないし受諾の行為というものは、三分の二カ国に達するまでは、その改正が発効いたしますために必要な要件としての法律的な性格を持つわけでございます。しかし、改正が一たん発効いたしますと、これはわが国につきましても、最終的な拘束力を持つということとなり、したがいまして、条約締結ということについて、法律的な効果を持たせるとすれば、それ以後の受諾ないし批准というものは法律的には意味のない行為ということになるわけでございます。したがいまして、このような仕組みを持っております国連憲章については、一部の国が受諾ないし批准の手続をとらないということを予想しているということは申せるかと思います。他方、批准ないし受諾という手続、すなわち、条約締結の一つの段階でございますが、行為は、行政権の作用に属するものでございます。したがいまして、このようなことから、政府としまして憲章の改正について、その締結手続をとらなかったという場合において、憲章上の義務を怠ったということはいえないのではなかろうかというふうに考えます。
 そこで、それではどういう場合に国会の承認を求めるのか、あるいは求めないのか、その基準はどういうことかということが次に問題になるかと存じます。これにつきましては、たとえば憲章改正が総会で採択されます際に、その改正に反対であるというような態度をとった場合、あるいはその内容について反対ではなくても、特に大きな関心をわが国として持たなかったもの、あるいはその改正について積極的な意思表示をする必要性を認めなかったもの、こういうものは、国会に提出して承認を求めないという場合があるかと存じます。
 他方、国会に、じゃ提出すべき改正の内容は何か、どういうものであろうかということを考えますと、国連憲章の本質的な部分と申しますか、基本的な事柄、たとえば安保常任理事国の数や構成を変更するような改正、あるいは安保理事会の権限を修正するような改正、そういったような、国の基本的な事柄にかかわる改正、これは当然国会に提出いたしまして、その諾否につき、国会の承認を仰ぐという手続をとるべきであろうかと思います。
 また、今回の改正、先般御承認を得ました改正の場合のごとく、経済社会理事会の構成国が非常に増加するということによって、主として開発途上国の意思を経済社会理事会に大きく反映させるというような改正につきましては、これを積極的に批准するということについて政府として重要性を認めた、こういうことであろうかと存じます。
#51
○森元治郎君 長々とお話しになったが、要するに、あなたのことばをいまちょっと見ると、この前の二十総会で採択された憲章再審議のための加盟国の全体会議の件ですが、これは当時政府としては重要性を認めなかったと、重要性を。すなわち、後ほど言われた、憲章の本質にかかわるような、安保理事会の数とかそういうものと違って――常任理事国をどうするかとかといったようなそんな大きな問題、基本にかかわる問題であるならばともかく、この二十総会、昭和四十年の、あれはやらないでもたいして悪いことでもないようだというふうに聞こえたんですが、考えてみると、当時、一九六五年、日韓会談、大平さんがそのころやめたあとかな、椎名さんになってからか、でも、頭がかっかとなっていたんで、どうせこの改正は黙っていても常任理事国は賛成するし、三分の二は批准してくれるだろうと。日本がそうあせらなくても、これは確かにそうなりそうだと。うっちゃっておいても、それだけの基礎的条件ができれば日本も拘束される。すなわち、賛成したと同じような効果が出るもんだからといって、私はふっと忘れたんだと思うんです。真剣でなかった、少なくとも。それで、今度あわてて、ただいま松永参事官の御説明のように、今度は、きわめて有意義であるというようなことばをつけ加えて、この外務省の説明書の一番しりっぽのほうに、本件改正を積極的に批准することが望ましいと考えられると。内容は同じなんですよ。国連憲章の改正というのは、国連としては大きな問題なんです。内容が小さくあろうとも、国連憲章の改正ということは、特にチャプターを設けて、一章を設けてやってんですから、これは、私は、あやまって、当時少し手抜かりがあったような感じもすると言ったほうが、こまかい技術の説明よりよっぽどいいと思うんですが、大臣どうですか。
#52
○国務大臣(大平正芳君) 森委員から御指摘を受けたことに対しましては、政府としてもこの種の案件の処理につきまして周到な配慮を怠ってはならぬというお示しでございまして、私どもも、御指摘に対しまして敬意を表しますとともに、今後の処理について十分配慮しなければならぬと考えております。ただ、私も、事務当局が鋭意誠実に仕事をいたしておることに信頼をいたしておるわけでございます。横着をかまえて国会を迂回するというようなこと、そういう気持ちでなかったとは思うのでございます。いま松永君からお話を申し上げましたとおりの気持ちであったことを信じておるわけでございます。
 しかし、御指摘の点につきましては、今後、この種の案件の処理につきましては、十分周到な配慮を加えて、間違いのないようにいたしたいと思います。
#53
○森元治郎君 そもそも、この私のいま問題にしている決議の採択について、日本は賛成であるし、すでに効力を発生してしまったんですから、何にもこれについて私は文句はないが、この前大平さんに御質問した――いまからでも批准してもいいんじゃなかろうかということに対しての説明をちょっと聞きたいと思うのは、もう発効してしまったんだ、あとのほうからのそのそ紙持ってきても、もう発効しているからいいですよと言われるのか、受理してくれるのか。どうなんですか。
#54
○政府委員(松永信雄君) 国連事務局におきます手続といたしましては、発効後批准書が寄託されれば、それは、国連事務局としましては、受託と申しますか、寄託を受け付けます。ただし、それは、事実行為として受け付けているわけでございまして、その批准書の寄託が効力発生について何らの影響、効果を持たないわけでございますから、法律的には意味のないことであろうと思います。
#55
○森元治郎君 きょう現在何カ国になりました、これの批准通告になったのは。
#56
○政府委員(影井梅夫君) ただいま御指摘のは、第二十総会における改正の批准書の意味でございますか。
#57
○森元治郎君 そうそう。
#58
○政府委員(影井梅夫君) それは、ちょっといま手元に資料がございませんので、調査いたしまして……。
#59
○森元治郎君 足元にあるか――手元になければ足元にあるのかって聞いているんだ。
#60
○政府委員(影井梅夫君) なるべく早く調査さしていただきまして御報告……。
#61
○森元治郎君 いや、ちょっと待て。
#62
○政府委員(松永信雄君) それは、六月十五日現在で、日本を含めまして七十七カ国が批准書を寄託しております。
#63
○森元治郎君 そうすると、過半数は八十八だから、あと十ちょっとあれば効力発生するわけですね。
#64
○政府委員(松永信雄君) さようでございます。
#65
○森元治郎君 何か、聞けば、アメリカはまだ批准していないんで、常任理事国が批准しなければこれは発効しない、数が多くたって、三分の二こしたってね。だが、それはともかく、少しもたもたしていると、アメリカはさっときょうやったと仮定して、あと十カ国があした入れちまうと、また日本はおくれちまうんですね、これは。あぶないせとぎわでしたかな。
#66
○政府委員(松永信雄君) 理論的にはそういう可能性もあるわけでございます。ですから、政府といたしましては、十分間に合うように、できる限りすみやかに批准をお願いしていたわけでございます。
#67
○森元治郎君 それじゃ今度は、国会に出している内にこの種のもの、国連憲章に限らず、出しているうちに自分の調印し、あるいは参加しているものが効力を発生しちゃったと、日本の国会の承認手続がおくれたために国会中にもう条約できちゃったというときには、その条約というものはどういうステータスに、空中に浮かんでいるのか、御審議を願いますと出したものは一体どういうことになるのでしょうか。これは一応例があり得ますからね。それは法政局とのいろいろ話もあるだろうが、将来のために、それをちょっと聞いておきたいと思う。
#68
○政府委員(松永信雄君) いまの、法律的あるいは理論的な問題として可能性があるわけでございます。先ほど申し上げましたように、わが国につきまして、この方式で発効いたしますと、最終的に拘束力が確定しているわけでございます。したがいまして、国会の御審議中に効力が発生いたしますれば、その後、締結手続を進めるということの法律的な意味は実はなくなるわけでございます。実際にその場合に、手続中の条約案件の取り扱いをどうすべきかということは、なお若干法律的に詰めなければならない問題じゃないかと思って、検討中でございます。
#69
○森元治郎君 それは検討中だがね、これは国会の権威もあるし、内閣の権威もあるし、外務省も当然責任を問われるし、出したものを一体どうするか、審議するのかしないのか、失礼しましたと引っ込めるのか、これは十分研究の題目になると思う。
 最後、一問で終わりますが、大平さん、佐藤内閣は、七年八カ月でしたかね、長かった。大平さんもおられたが、国連第一主義ということを施政方針で毎回でかくうたっておって、大平さんもおっしゃったと思う。このごろ国連主義というのはどこにもなくなっちゃったが、国連に対してはどういう態度ですか。
#70
○国務大臣(大平正芳君) この前も、本委員会で申し上げましたが、国連の果たしておる役割り、機能という面は、社会経済分野におきましては、われわれも相当高く評価いたしておるわけでございますが、平和維持機能という点につきましてはいまだしの感を持っておるわけでございます。しかし、国連が地球上に存在するということ、そしてほとんどの国が加盟しておるという事実は、平和にとって非常に大事なことだと思うのでございます。われわれといたしましては、国連が健全な発展と充実をみることを念願いたしております。しかし、日本は超大国ではございませんで、国連の外で十分みずからの力を発揮できるというような国とは違うわけでございまして、やっぱり国連に結集した姿で世界のための行動が行なわれるために日本が貢献するということを十分考えていかなければならない。とりわけ、日本のような憲法を持った国といたしましては、そういう国柄であろうと思うのでありますので、国連中心主義といいますか、大国第一主義という精神は忘れたことはないつもりでございまするし、国連に対する協力も漸次充実したものにいたすべく努力中でございます。
#71
○田英夫君 きょうは、先日北朝鮮の問題について森委員から質問がありましたけれども、それを含めまして、いうまでもなく、われわれにとって一番近いところである朝鮮半島全体についての政府の方針ということで伺いたいのですが、先日外務大臣は金鍾泌韓国首相と会談をされたわけであります。ずばり、これは大臣の口から、なかなか言いにくいかもしれませんけれども、現在の韓国政府の態度、これは昨年の七年四日に南北朝鮮の統一についての共同声明というものが出されて、話し合いが行なわれているわけですけれども、その一方で、韓国政府のほうは、非常事態宣言から戒厳令という形で、国内体制を非常に固くしております。そういう状態で、朝鮮半島が、一方で平和の話し合いが行なわれながら、南の半分では非常に緊迫したような空気が出てきている。日本国民とすれば、朝鮮半島が平和であるということが、これは最も近い場所ですから望ましいに違いないわけですけれども、韓国政府の態度ということに対して、大臣はどういうふうにお考えですか。
#72
○国務大臣(大平正芳君) 第一に、いま御指摘のように、去年の七月四日の、北鮮との対話が持たれるようになったこと、また、そういうことを決意されたこと、そのことはわれわれも評価するものであります。しかし、この対話は、実質的に進展を見ているのかどうか、よくつかみ切れないわけでございます。その間、御指摘のように、だんだん周辺の国際環境が変化をしてまいりまして、北鮮を承認する国がふえてまいりましたことは、御案内のとおりでございまするし、国連の専門機関にも北鮮が加盟するという事態が起きたわけでございます。しかし、いま韓国の態度につきまして、特に私どもが重大な関心を持っておりますのは、北鮮と南鮮の両方を承認した国が今日二十二あるわけでございます。このことは、北鮮当局も南鮮当局も了承しなければできないことなんですね。だから、そこに私は韓国当局、政府の態度に一つの前進が見られておるように思うのでございまして、今日こういう局面で現状をどうとらえておるか、今後どのようにされていくかということにつきましては、韓国自体がお考えになっておることと思うのでございます。私どもとしては、朝鮮半島が平和と安定の方向に、両当事者が分別を出していただいて、そういう方向に進んでまいることを期待いたしております。
#73
○田英夫君 確かに、いま大臣の言われたような情勢の変化が起こっているわけなんですけれども、いま韓国のほうが、北朝鮮をも承認する国がふえていることを暗黙に認めているということが進歩だという意味のお話がありましたけれども、私は、実はこの日本と直接かかわりのある具体的な問題を取り上げて、韓国側が非常に危険な状態になっているのじゃないだろうか、つまり、一方で平和の話し合いをしながら、一方で非常にかたい態度を固めつつある中で、それが日本にも影響を与えているという現実の問題を一つ提起をしたいと思うのです。
 実は、私のところに、この四月に二通の投書がまいりまして、発信人は名前は書いてあります、住所もありましたけれども、実は調べましたところ該当人物がおりませんので、まあ仮名というふうに考えざるを得ないのですが、その内容は、一言で申し上げれば、ある一人の日本人が、――調べてみると、これは実は昭和十年に日本に帰化した元韓国籍の人でありますけれども、現在は日本人であります。この人物が東京に住んでいて、この人が韓国の中央情報部の人間に強制的に連れ去られた。そしてソウルで取り調べを受けているということを、これは明らかに人権じゅうりんであると同時に、日本人に対する重大な問題だということで投書がありました。それでこれについて調べてみましたところが、この人は日本の名前になりましてからは沢本参二という名で、会社の社長をやっております。ドリームカットという会社の社長をやっている人物でありますけれども、現在六十二歳。現にそういう人物がいることもはっきりわかりました。同時に、その同じ会社の取締役をやっていた、これは韓国籍の人ですが、日本名は金井全吉という人も取り調べを受けている。その後また、この沢本氏の愛人という関係のようですが、これは明らかに日本人、初めから日本人の女性がやはりソウルで取り調べを受けている。こういう結果が、事態がわかってきたわけでありますけれども、この辺のところについて、外務省あるいは警察庁の方もおいでになっていると思いますが、どういうふうに把握しておられるか、伺いたいと思います。
#74
○国務大臣(大平正芳君) 委員長ちょっと。
 先ほど私の田さんに対する御答弁の中でちょっと訂正さしていただきたいのは、私は二十三の国が両方を承認しておると、そしてそのことを両当事者も、何と言うか、承諾しておるという意味のことを申し上げましたけれども、つまり、承認ということは一方的なことでございますが、両方外交関係を持っておるものも若干あります。そしてそのことはやむを得ないと韓国当局も認めておるということに私は関心を持っておるという意味で、承認自体は、承認する、了承するしないの問題ではございませんから。その点ちょっと私の発言が正確でございませんでしたので、訂正しておきます。
#75
○説明員(中江要介君) ただいま御指摘の事件でございますが、外務省として知り得ている事実を簡単に申し上げますと、ことしの三月六日に、韓国の中央情報部が、ただいま先生のおっしゃいました沢本参二とおっしゃる日本人を逮捕したわけでございますが、その容疑になっている事実に適用される法律は三種類ございまして、一つは国家保安法の一条二号、二条、三条一号、つまり国家保安法。それから第二番目が反共法、これが六条四号。それから刑法の九十八条第一項、第二項。この法律に照らしまして逮捕されたわけでございますが、その妻は、三月十日にソウルにあります日本の大使館に正式に通報してまいりました。で、これは当然のことですが、さっそく現地の日本大使館は、在外の日本人の保護という見地から、その容疑者についての取り扱いが人道的に行なわれるように、そしてまた、公正な裁判が保証されるようにということを申し入れて、以後何回か大使館員も本人に面会しておりますし、また、本人の希望する弁護人のあっせんもいたしまして、現在に至っているわけでございますが、いま御指摘の、内妻といわれております西部綾子さんという人につきましては、御承知と思いますけれども、四月十二日に起訴猶予ということで、起訴されずに、四月十三日に沢本参二という人と、それから在日韓国人でありました金全吉というこの二人が起訴されて、五月三十日にソウルの地方裁判所で第一回公判が行なわれた。で、その間、先ほども申し上げましたように、館員が何回か面会を求め、いろいろ本人の事情を聞いたりしておりますけれども、韓国側はきわめて好意的に協力してくれておりまして、毎回三十分前後の面会が許されて、いろいろの――先ほどの弁護人のあっせんもそうでございますけれども、日本との連絡、それから自分の属しておられた会社のあと始末の問題、そういった問題について十分打ち合わせをしながら、現在裁判に服しておるわけでございます。で、政府といたしましては、冒頭に申し上げましたように、何分これは韓国の法域内で、韓国の法の適用を受けて裁判を受けているわけですから、それに介入するわけにはまいりませんけれども、裁判が公正に行なわれるように、また、本人の扱いが人道的であるようにという点では、細心の注意を払っておるというのが現状でございます。
#76
○田英夫君 沢本さんが逮捕されたときの状況というのが、実はこの事件は新聞にはすでに報道されている事件ですけれども、新聞によって状況が違います。ある新聞は、商用で韓国に行っているときに、帰途ソウル空港で逮捕されたというのもあれば、向こうに到着した瞬間に逮捕されたという報道もありまして、到着した瞬間に逮捕されたということになれば、日本ですでに何らかの形で沢本氏を韓国側がフォローしていたというふうに考えられるのですが、この辺のことはどういうふうに聞いておられますか。
#77
○説明員(中江要介君) ソウルの日本大使館が受けておる情報によりますと、商用で韓国におもむいたときに逮捕されたということで、その商用自身は韓国に新たな会社を、栄一食品合資会社という会社を四十七年でございますか、昨年の八月から創設しておりまして、この会社の用向きで何度か韓国に行っておるというふうに聞いておりますが、韓国側の調べでは、この会社を創設して韓国に往復していること自身が一種のスパイ活動を行なうための方便であったというふうに見なしておるわけでございます。逮捕されましたのが、いまおっしゃいました空港で逮捕されたということは聞いておりますけれども、到着してすぐであったのか、あるいは日本に帰るときであったのかということについては、ちょっと私詳細を存じておりません。
#78
○田英夫君 その辺がたいへん問題なところなんで、外務省も、これ日本人ですからね。私、きょう伺っているのは、日本人の、この間も星野委員からもビエンチャンの問題が提起されましたけれども、在外公館というのは、日本人の保護についてはきわめて重大な責任を持っているはずなんで、その辺のところは、どういう状況で逮捕されたかさえつかんでないというのは、たいへん私不満ですが、それはそれとして、この問題についてはたくさん不審な点があります。きょう時間があまりありませんから、全部を提起するわけにいかないかもしれませんが、この五月三十日の第一回公判、同時にそこで三、四百人の韓国の記者を集めて、韓国政府がきわめてはでに記者会見で発表しておるということですね。キャンペーンという感じがするわけです。おりから、北との話し合いが行なわれるという状況の中で、いま中江さんが言われませんでしたけれども、実はその容疑は北朝鮮のスパイであるという容疑だ、こういうふうに言っているわけです。その日の韓国の新聞を見ると、いま言いました三人の関係者以外に、なお二人の人間を指名手配していると、こういうことも出ているのですが、そのうちの一人は純粋の、というのはおかしいですが、日本人である。これは指名手配になっているということになれば、当然国際刑事警察機構を通じて日本の警察に、その人は日本にいる人ですから、日本人で、これは何か連絡がありますか。
#79
○説明員(谷口守正君) 私、ICPO関係を担当しておりますけれども、現在のところそのような事実、手配事実につきましては何らの連絡に接しておりません。
#80
○田英夫君 その辺が非常に問題だと思いますね。日本人を外国の政府がかってに指名手配して、しかも日本の警察に連絡がないという状況の中で、逮捕できるはずがないと思いますけれども、同時に五月三十日に、これは実は起訴状というのは秘密だということで、ついてる弁護士の人もわからないような状況のようですから、たいへん全貌をつかみにくいのですけれども、いま中江さん言われた容疑によると、一応発表された容疑によると、国家保安法と反共法と刑法ということですけれども、日本人が韓国のこういう法律によって逮捕することができるのかどうか。特に、反共法とか国家保安法というのは、もう御存じのとおり非常に、つまり北朝鮮に行ったことだけで不法であると、違反であると、さらには行ったことを、北側と接触をして北側の、何といいますか、この法律によればそそのかしのような意味のことが書いてありますけれども、そういう形で行ったとなれば死刑だという、これはちょっと民主主義の国家としては考えられないような法律であるわけですね。この国家保安法とか、それをさらに詳細にした反共法という。で、今度の沢本さんが問われている反共法の三条とか六条とか、六条の一項、四項となっておりますけれども、反国家団体の支配下にある地域に脱出した者はこれに問われるわけですね。反国家団体が支配しているというのは、つまり北側のことを言っているわけです。そこへ行っただけで違反だ、現に起訴状では、東ベルリンを通って平壌へ行ったと、これがけしからぬということになっているわけですけれども、そうなりますと、私も去年北朝鮮に行っておりますけれども、日本人で北朝鮮に行った人はみんな逮捕されなくちゃいかぬということになるわけじゃ争いですか。この辺は、日本人と反共法と逮捕の関係というのはどういうことになりますか。
#81
○説明員(中江要介君) ただいまの御質問にお答えする前に、先ほどの御質問で逮捕の時点の問題で、私ちょっとうっかりしておりまして、中央情報部からの連絡、これは三月十日、当初の連絡では金浦空港到着時に連行して取り調べが始まった、こういうふうになっております。到着時ということであります。
 それから、ただいまの御質問の点ですが、適用される法律が、日本の場合ですと国外犯まで含むような法律であれば、その国外で行なわれたものでも、またそして、自国民に限らず、第三国人でも、法に触れるというような場合には、その法域に入った場合に逮捕されるということは、一般論としてあり得ることかと思います。ただ、その適用される法律が、非常に一般国際慣行なり国際の常識から見てけたはずれで納得しがたいものである、あるいはまた、その適用に当たって故意に曲げて適用している、そういうことがあれば、これは問題でございますけれども、いまの沢本さんの場合を見ますと、ただ北朝鮮に行ったということだけではないようでございまして、いろいろの事実があげられております。この事実は、実は取り調べの当初から沢本さんはすべて認めておられまして、そういうことがありましたということなんです。ただ、ここで問題があるといいますか、沢本さんのケースではこういうことが裏にあった。というのは、沢本さんは、先ほどもお話がありましたように、朝鮮半島の御出身ですが、北朝鮮にふるさとを持っておられます。で、その北朝鮮に残っておられる肉親の方、三人のきょうだいがおられるそうですけれども、そういう肉親の方と会いたいという気持ちがあったところへ、在日の北朝鮮工作員から働きかけがあった。そして昭和三十九年に北朝鮮行きの勧誘を受けて、それから北朝鮮に東ベルリン−モスクワ経由で行かれたのでございますが、そして向こうでスパイ教育を受け、指令を受けられ、そしてマカオ、シンガポール、カイロなどに数回行かれまして、北鮮のスパイと接触して、北朝鮮からの指令と、工作費として現在まで三十万ドル受け取ったというような事実、その指令の内容その他いろいろございますが、先ほど私がちょっと申し上げました、昨年の八月から栄一食品合資会社を創設して、今度は南における、大韓民国における、いろいろの事情を約六十回にわたって暗号の手紙その他で北朝鮮に報告しておられた。まあそういった事実がありまして、それについて沢本さんは、これを率直に認められまして、いまはその事実のもとで公正な法のさばきを待っておられるという形のように理解しております。
#82
○田英夫君 中江さんのお話聞いていると、韓国の検察側の言っていることをそっくりそのまま言われたにすぎないので、私の調査でもそのとおりであります。これは、韓国側の検察当局の発表はそのとおりであります。三十万ドルではなくて四十万ドルということが正しいようですけれども、そういう、これは韓国側の言っていることであって、沢本さんが言っていることではないということだけは、私はっきりしておかないと非常に問題だと思うのですね。しかも、日本人である沢本さんを保護する立場にある政府が、基本的に韓国側の言っていることだけをうのみにしていたんでは、初めから私問題だと思います。これはまた別の問題として、一つ伺っておきたいのは、さっき指名手配になっている人間がなお二人いるという報道で、韓国の新聞にはその写真まで出ているんですよ。ですから五人分の写真が出ているわけです。これは一体韓国の新聞社が、日本にいる一介の市民の写真をそう簡単に手に入れることはできないわけですからね。これは韓国の警察側が持っていたものをわざわざキャンペーンの意味で提供したというふうに考えざるを得ない。日本の新聞社の方もおられるけれども、私は、名前言いませんけれども、ここで名前を言えばその人はいま市民として通常の仕事をしておる人ですから、そういう人の写真までここに出ているというところに非常に私は疑惑を持つんですが、私が調べた限りでは、この日本人の人は、この沢本さんの会社の取締役であったんですけれども、この人のところに、東京の韓国大使館の朴載京という人があらわれて取り調べをしている事実がある。外務省でこの在日韓国大使館に朴載京という人物がいるかどうか、いまおわかりになりますか。
#83
○説明員(中江要介君) 韓国大使館は数十名の名簿がございまして、ここに名簿を持ち合わせませんが、私の記憶では、ちょっとその名前をすぐには思い当たらないんですけれども、調べさしていただきたいと思います。
#84
○田英夫君 これは調べていただくと同時に――私の調べではおります。一等書記官です。で、私が調べていただきたいのは――いることは事実であります。ことしの四月現在の外務省でおつくりになっている在日外交官名簿の中にちゃんと載っております。問題は、この人がどういう資格の人であるか。一等書記官というのはその大使館における肩書きであって、おそらくこれは中央情報部の人ではないかというふうに考えられるわけで、それは中央情報部の人が大使館にいてはならないということを申し上げるんではなくて――現にソウルの日本大使館には警察庁の方もおられるようですから、それはかまいませんけれども、どういう出身の人であるか、これを含めてお調べいただきたい。
 そこで、先ほど中江さんは、沢本さんもそういう事実を認めていると、こういうふうに言われて、そして自分の希望した弁護士をつけて人道的に扱われているというふうに言われたけれども、私の調べでは、ちょっとそこは違うんで、弁護士についても日本人の弁護士がついていない。で、日本本人の弁護士でつく希望を持ってソウルまで行ったにもかかわらず、法廷にも出してもらえない、こういう状況であって――その人の名前もわかっております。同時に、向こうでつけられた韓国人の弁護士というのは、いま申し上げた警察庁から出向している手島さんという一等書記官があっせんをして、呉制道という人を弁護士としてつけたそうでありますけれども、この人は、実は元韓国の高検の検事であって、検事当局はアカ狩りで有名な人であったということであります。こういう人を、警察庁の出先の日本人の保護をすべき人が、わざわざ、日本人の弁護士がつこうとしているのを排除してこういう弁護士をつけたというのはたいへん問題じゃないかという気がしますが、この辺の状況をつかんでおられるかどうか。
#85
○説明員(中江要介君) これは三月三十日に沢本さんからの会いたいという要求に応じまして、ただいまおっしゃいました手島書記官が西大門の刑務所に行きまして、午後零時半より約三十分間、担当の検事、あるいはソウルの地検の方の立ち会いのもとに、沢本さんと面会しました。そのときに、沢本さんが弁護人を選任してほしいという御希望がありまして、その御希望の内容は、おっしゃるように、日本人の弁護人一人と、それから大使館のあっせんの弁護人一人ということで、さっそくその弁護人の選任をいたしました。そのときに日本の弁護人については、家族と相談の上できめてください。こういうふうに言われましたので、外務省では、日本におられる家族の方と相談いたしまして、先ほど申し上げました沢本さんの会社の顧問弁護士――ドリームカット株式会社の顧問弁護士の方を選びまして、韓国におもむいていっていただいておりますが、これは向こうの制度でございまして、私もその詳細なところまで必ずしもつまびらかにいたしませんけれども、まあ主任弁護士というのか、まず第一の弁護士というのは韓国人の弁護士――これは弁護士の資格その他があるんだろうと思うんですが、呉制道という方が弁護士として選任された。日本から行かれた会社の顧問弁護士の方も一緒に、まあ相談相手という形だろうと思うんですが、その後このお二人の弁護士が同道されまして、先ほど申し上げました西大門の刑務所に行って、午後の五時半から六時まで――これは四月六日のことですが、沢本さんと会っていろいろ会社の経営引き継ぎの問題だとか、そういった問題のアレンジなどをされております。したがって、日本から行かれた日本人の弁護士の方が全く沢本さんと会えないとか、沢本さんの意向を体して弁護活動ができないという状態ではないと私どもは理解をしておるわけですが、それでは韓国人の呉制道という弁護士を選任された経緯として、わざわざそういう方を選んだのかどうかという点については、私はまさかそんなことはないと思いますけれども、その選任の経緯については別に聞いておりません。
#86
○田英夫君 これは呉制道という人を取材しました日本人の記者によりますと、この問題については日本大使館から箝口令がしかれているので言えないと、こういうふうに言っておられるそうですし、それから大使館の手島さんも記者に対しては一切この問題については言えないと、こういうふうに言っておられるそうです。これはまあこの種の事件については新聞記者に話さないということはあり得ないことではありませんけれども、いずれにしても非常にその辺のところは疑惑があります。わかりません。
 そこで法務省の方、おいでになりますか――伺いたいのは、さっき沢本氏が東ベルリンから平壌へ行ったということが出てきましたけれども出入国管理の立場からそういうことをつかんでおられるかどうか。
#87
○説明員(吉田茂君) この事件につきましては、本年の三月に新聞報道をされまして実は初めて知ったわけでありまして、入国管理局といたしましては、外国人であるということで金全吉さんは関係あるわけなんで、その後この方の身分関係それから出国の時日、渡航目的等を調査いたしました。沢本さんにつきましては、出入国記録を調べましたが、昨年二月から十二月までの間に十二回、大体月一回ぐらいの割りで出国いたしまして帰っております。これは行く先につきましては入管で調べておりませんので、出入国の事実だけはつかんでおります。最終的には本年の三月一日に出国いたしましてそのまま帰っておりません。
#88
○田英夫君 時間がありませんので、きょうは問題を提起して、これからひとつ政府で、日本人を保護するという立場から、関係各省庁で十分慎重に御検討いただきたい。と同時に、大平外務大臣にお願いをしたいのは、こういう事件は実は韓国に関連をして至るところで起こっております。たとえば、一九六七年の春に、西ドイツとかフランスから韓国人留学生が多数蒸発をしたという事件があって、当時新聞でも大きく報道されたわけですけれども、たとえば西ドイツからは同時に五十六人の韓国留学生が下宿からいきなり姿を消す、あるいは御夫婦で行っていて、奥さんにも告げずに姿を消すという形で、一斉にいなくなって、大騒ぎになって、そのときに西ドイツ政府は敢然として韓国政府に対して――つまりこれはあとでわかったことは、韓国の中央情報部、韓国CIAの人たちが、よその国の領域の中に入ってかってに逮捕にひとしい行動をして本国に連れ去っている。結果的にはこの中の二人が死刑になった。こういうことを韓国は過去にもやっている。これに対して西ドイツ政府は非常に厳重な抗議をしております。自国の中でそうした警察行動をやっていることに対して非常に厳重に抗議をしているということをひとつ外務大臣十分お考えいただきたい。こういうことをすぐ隣の韓国は過去にやってきたわけです。これは私一つの例を申し上げたにすぎない。今回の例がそれに当てはまるとは、私まだ調べが進まない段階で申し上げませんけれども、こういうことが起こっているということになれば、ほんとうにさっき法律関係のことを詰めて申し上げませんでしたけれども、これも法律の専門家によく研究をしていただかぬといかぬと思いますが、韓国の反共法というものをああいう形で日本人に適用されたら、北朝鮮に行った人は全部逮捕されますよ。私だってこれで韓国へ入っていったら逮捕されるかもしれぬ。北朝鮮へ行っているんです。北朝鮮に行っちゃいかぬという法律なんですから。こういうことが許されるかどうか。しかもそれを、外国に韓国の官憲が入ってきて連れ去っていくという西ドイツでのやり方、これは明らかにそうだということがはっきりわかっております。そういうこともお考えいただいて、この問題は私もなお調査いたしますけれども、政府において十分お調べいただきたいということをお願いをして質問を終わります。
#89
○説明員(中江要介君) 先ほどの答弁を補足かたがた一言だけ申し上げておきたいと思いますので、特に発言のお許しを得たいわけですが、先ほど田先生がおっしゃいました、現地のソウルの大使館であまり多くを語ってくれないという趣旨のことがございましたが、これにつきまして御参考になるかと思いますのは、三月二十三日に先ほどの手島書記官が沢本さんに会ったときに、御本人がこういうことを言っておられるんです。こういう事件で自分がいろいろ取り調べを受けるようなことになったのは、非常に自分の恥だと思っている、自分の恥になるので、できるだけ静かにというか、あまり騒ぎたてないような扱いをしてほしいという、本人が懇願されたということがございまして、この辺は公正な裁判を確保するためにいろいろすることとともに、御本人の意思もくんで、日韓両方とも不当にそういう御本人の意思に反することのないようにしたいという希望がございますので、そういう御本人の気持ちがあったということをちょっと参考までに申し上げます。
#90
○田英夫君 そういう話があるなら、一言、言っておきますが、沢本さんという人は元韓国の方だということをゆめゆめ考えていただいては困るということです、一つは。あれは日本人ですから、昭和十年以来の日本人になった方ですし、そんなことを言って、過去のことを言えば日本人はいろいろなところから帰化しているのですから、それは年月の差だけのことですから、そういうことはゆめゆめ考えていただいては困るということと。もう一つ公正な裁判という話がありましたけれども、過去の事例を考え合わせたときに、そしてきょうはあえて言いませんでしたけれども、最近この日本人スパイ事件といわれている沢本さんの問題を含めて、済州島の北朝鮮武装スパイ事件、これは三月です。あるいは非武装地帯の衝突事件とか、調べてみるとどうも一方的だと思われるような事件が韓国の側から相次いで非常に大きく発表されているという事態の中の一つの事件です。そういうことをお考えいただきたい。このことだけ申し上げて終わります。
#91
○星野力君 先週私が質問しまして、御答弁がなかったので資料を要求しておった辻政信元参議院議員の消息についての問題であります。辻氏が行くえ不明になる直前に接触があったといわれる在ビエンチャン日本大使館員の赤坂勝美氏について、当時の辻氏との関係を調査されておると思うが、その調査結果についてということでございます。御答弁願いたいと思います。
#92
○説明員(穂崎巧君) 先週御質問のございました辻議員と、それからラオスのわが大使館におります赤坂との接触につきまして調査いたしました結果、辻議員はビエンチャンにまいりまして、一たん単独でパテトラオ地区に潜入を試みましたが、失敗いたしまして、辻議員はどうしても一人ではだめだということで、東銀の支店長を通じまして――当時赤坂は東銀につとめておりましたので、その東銀の支店長を通し、赤坂に何らかの助力をしてくれということを要望してきたわけでございます。赤坂は、それまで全然辻議員と何の面識もございませんで、当時の支店長の命を受けまして、たまたま東銀の隣にありました寺院にトンプウンという僧侶がおりまして、東銀は隣合わせなものですから知っていたわけでございましょう、その支店長の命によりましてその僧侶に頼み、その僧侶を同議員の案内として世話をしたということがございます。この僧侶のきょうだいのだれかが、たまたま向こうの人と関係がございまして、そういう関係で四月十九日ごろの朝、赤坂は辻議員とそれからそのトンプウンという僧侶と、もう一人別の僧侶を、東銀のジープによりまして、ビエンチャンから約五キロばかり離れている部落まで送りまして、そこで赤坂は自動車をおり、そこから辻議員といまの二人の僧侶が下車して北のほうへ向かって行ったということでございます。赤坂と辻議員との接触の関係は以上のとおりでございます。
#93
○星野力君 いまの御発言の中にありましたトンプウンの弟が向こうと関係があるということでございますが、向こうというのはどこでございますか。
#94
○説明員(穂崎巧君) これは、話によりますと、トンプウンの兄か弟かわかりませんが、それがビエンチャンの近くのゲリラ隊に何か関係をしておった、こういうことでございます。
#95
○星野力君 いまのような辻氏の行動がありまして、そのあと辻氏はヘリコプターでどこかへ連れ去られたと、こういうふうに伝えられております。当時、ラオス愛国戦線の側にはヘリコプターは所有されておらなかったと思うのでありますが、どこのヘリコプターによって連れ去られたのか、その辺のことは調べておられるのか。トンプウンという人物は現存が確認されておるようでありますから、調べる手がかりもあると思うのでありますが、その辺調べておいでになるかどうか。これは先週私も問題にしました日本人の生命財産を守ることが現地大使館の任務であるという問題にも関連することでありますが、その辺の御調査はございましょうか。
#96
○説明員(穂崎巧君) 先ほども申し上げましたように、辻議員はビエンチャンの郊外、中心から五キロのところで降りて北に向ったわけでございまして、われわれの調査では、ヘリコプターでどこかへ行ったということは確認されてはおりません。
 それから第二番目にトンプウンにつきましては、われわれとしては現在調査しておりませんし、どこにおるか確認もしておりません。
#97
○星野力君 辻氏が外務省の発行した旅券を持っておられたのかどうかは、私、知りませんけれども、少なくとも、バンコクからはずっと日本大使館員が付き添ってここまで行動しておるわけですが、それから先、そういうような行動を放任しておったという日本の出先官憲の責任というものは、これはないでしょうか。大臣、どうでしょうか。
#98
○説明員(穂崎巧君) 当時の状況でございますが、辻議員は、ラオスにおいでになりまして、ハノイヘおいでになりたいということを現地の大使に漏らしたそうでございます。現地の大使といたしましては、もちろん当時の状況でございますから、この時期にハノイへ行くことは非常に危険だということで、何回もおとめしたわけでございます。しかしながら、辻議員の意思は非常に固く、どうしても行くんだということで、御自分で東銀のほうにいろいろ接触されまして、こういう一つのつてを求めておいでになった、かように聞いております。
#99
○星野力君 当時、大使館の人ではなかったにしろ、そういうようなことに関係された赤坂氏を日本大使館が採用して現在に至っておるということも問題がありますし、現地大使館の大使はじめ、とった態度にも私は問題があると思います。が、その問題はきょうはこれだけにとどめまして、次の問題に移ります。
 政府もすでに接触を始めておられますところの日本とベトナム民主共和国との国交交渉についてであります。今月二日から九日まで、私は社会党の西村参議院議員をはじめ、三名の国会議員とともにベトナム民主共和国に滞在いたしました。当時は、ベトナム労働党の政治局員が十名おると思いますが、その中で、御承知のように、レ・ジュアン第一書記、ファン・バン・ドン首相、レ・タイン・ギ経済担当の副首相、この人たちは中国を訪問しておりましたし、また、レ・ド・クト氏はパリでキッシンジャー補佐官と会談中、そのほか地方へ出ておった人もおって、ハノイにいたのはチュオン・チン国会常任委員会委員長やグエン・ズイ.チン副首相兼外相など、ごくわずかの政治局員だけでありました。
 私たち四人のベトナム訪問団は、チュオン・チン国会常任委員会委員長、ホアン・バン・ホアン同副委員長、この二人の政治局員と主として接触したのでありますが、私個人としては、前にベトナムム民主共和国に何年間か滞在した関係もありまして、他の指導者とも話し合う機会があったわけであります。私たちは、日本・ベトナムの国交樹立の問題についても意見を交換しました。それらの接触を通じて私自身の得た感触は、ベトナム側の態度は決してやさしくはないということであります。ベトナム側は、相手国の社会体制のいかんにかかわらず、平和五原則に基づいてどこの国とも国交を樹立する原則的方針をとっており、日本に対してもその方針で臨んでおる。問題は、日本政府の態度にかかっておる、こういうことでありました。基本的な問題として日本政府がベトナムの平和、パリ協定の実施に貢献する立場をとることを要求しておったのでありますが、それは当然なこととおもいます。そして日本との国交交渉の具体的な問題として三つの点をあげておりました。そのことは三宅氏を通じて政府はもう先刻御承知のことと思います。
 一つは、在日米軍基地がアメリカの南ベトナムへの内政干渉に使われておるという問題であります。
 二番目は、南ベトナム共和臨時革命政府に対する日本政府の態度であります。日本政府の態度があいまいだということではなしに、パリ協定に基づいて正当な扱いをしてほしいということであります。
 三番目は賠償の問題であります。詳しく申し上げなくても、大臣も御存じと思います。思いますが、それらについてどういう御見解をお持ちになっておられるか、ひとつ大臣、示していただきたいと思います。
#100
○国務大臣(大平正芳君) 第一の点につきましては、国会においても終始取り上げられた問題でございまして、わが国が安保条約を堅持いたしておる以上、ベトナムに対して安保条約のワク組みを通しまして間接的に関与を持たざるを得なかった事情は、そのつど、政府から説明、国会におきましてもお話しを申し上げたとおりでございますが、パリ協定ができまして、このパリ協定に対しまして政府はこれを尊重し、これをベースといたしましてインドシナ政策をやってまいりたいということもあわせて申し上げたわけでございます。そのことは十分配慮して処置いたしたつもりでございますし、今後も処置していかなければならぬと考えております。
 それから臨時革命政府がパリ協定の当事者であることはわれわれもよく承知いたしておるわけでございまして、そういうパリ協定を尊重いたし、それをベースにしてインドシナ政策をやるというたてまえは、われわれはくずしていないわけでございます。けれども、臨時革命政府とわが国が外交関係を持つかどうかということは、わが国の判断にゆだねられている問題でございまして、わが国が外交関係を持たなくても、パリ協定の違反になるというような性質のものではないと私は考えております。そのこともまた、委員会を通じてるる申し上げておるとおりでございます。
 第三の問題、賠償問題は、法的には過去完了の問題であると承知いたしておりますが、政治的な問題として割り切れないものがあることは、私もよくわかっておるわけでございまして、今後国交樹立交渉を通じまして、こういう問題につきまししては十分先方と話し合う機会があろうかと思いますので、慎重に対処していきたいと考えております。
#101
○星野力君 それらの問題について具体的にお聞きしたいと思っておるのでありますが、時間の関係できょうはどれだけお聞きできるかわかりませんが、あとまた続けてお聞きしたいと思っております。
 パリ協定第七条の規定によっても、兵器、弾薬その他の軍事資材をサイゴン政権へ供給するのは、明らかにこれはパリ協定の違反であると思うのでありますがどうか、その点が一点。それらが在日米軍基地から送り出されているのは、アメリカのパリ協定違反に日本政府が協力しておることになると思うのでありますが、その辺の御見解をもう一度明らかにしていただきたいと思います。
#102
○国務大臣(大平正芳君) それはやはり、先ほど申し上げましたとおり、われわれはそのように考えていないわけでございまして、パリ協定にうたわれた条件のもとでの武器の入れかえということ、しかもそれは、監視委員会がクリアーしたものでございますならば、パリ協定の違反にならないのではないかと考えております。それからアメリカがわが国の港を利用するということは、安保条約上容認されておることでございますので、そういう限りにおいて私どもは、いま御指摘のように、これがパリ協定の違反であるというようには理解いたしていないのであります。
#103
○星野力君 パリ協定では、武器、軍事資材の入れかえは認めておると、こうおっしゃいますけれども、あれは国際監視のもとにおいてそれをやる、一対一の入れかえがで着ると、こういうふうになっておるわけでございますね。国際監視委員会の機能というのは現在働いておるのでしょうか、働いておらないのじゃないかと思いますが、その辺のことをどういうふうに御解釈なさっておるのですか。
#104
○国務大臣(大平正芳君) 国際監視委員会の機能が十分果たされているか果たされていないかは、われわれ現地でその活動を見ていないわけでございますのでわかりませんけれども、アメリカ側に照会いたしまして、これはパリ協定のワク内における入れかえのものであるということについて御責任を持ってもらわなければ困ると。で、先方はそれに必要な条件を全部整えて、いつでも国際監視委員会はクリアーできる用意をいたしておりますから御心配はないという返答をいただいております。
#105
○星野力君 今度また、レ・ドク・ト、キッシンジャー会談でもって四者の共同声明が発表されましたね、十二日に。あそこでもパリ協定を厳密に守っていくということが再確認されておるわけでありますが、そういう中で、いまのようなあいまいな、これは北や臨時革命政府の側は、明らかにアメリカ側が不法行為を犯しておる、パリ協定に違反をして日本から軍事資材の供給をやっておると、こう見ておるわけでありますが、いまのようなアメリカの、これは私あいまいな逃げ口上だと思いますが、そういうものだけを一〇〇%信頼してこの事態にかかっておると、これはよくない結果になるのじゃないかと考えるわけであります。で、この問題にも関係しますけれども、四月九日の予算委員会第二分科会で、高島条約局長から御答弁があり、大臣も確認された問題でありますが、南ベトナムにアメリカの軍隊はいない、米軍に対する補給の必要はない。そういう状態においてもサイゴン政権に軍事資材を日本の米軍基地を使用して送るのは、安保条約上は差しつかえないのだということで、安保条約の第六条でございますか、あそこでは日本の安全と極東の平和と安全、これだけしか書かれておらない、相手国にはアメリカの軍隊がいようがいまいがということで、ちょっと違う問題かと思いますが、戦闘作戦行動のことを、朝鮮半島を引かれて言われましたが、そういうふうな御答弁であります。アメリカの軍隊がおらないところに対しても日本の基地を使用して、そういう軍事資材の供給ができるのだというような解釈、これは高島条約局長あのとき初めてやられたことじゃないかと思う。安保条約第六条の拡張解釈、それを外務大臣も御確認なさっておるというのは、これは私は重大な問題だとそう思っておるのでありますが、そういう解釈が許されるなら、在日米軍基地を使って第三国の軍隊を訓練することも、これは極東の平和と安全のためという理由で許されることになりはしませんでしょうか、どうでしょう。
#106
○政府委員(高島益郎君) 法的に申しますと、安保条約第六条に書いてございます日本の施設・区域の使用についての条件は二つございまして、一つは米軍が使用する。したがいまして、いま先生御指摘のとおり、第三国が使用することはいかなる意味でも許されないというふうに考えております。
 第二の条件は、ここに書いてございますとおり、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」と、こういう使用目的に合致しなければならない、これは第二の条件であります。それ以外には書いておらないわけであります。要するに、安保条約第六条できめられました二つの条件のもとで施設・区域は使用される。したがいまして、そういう条件のもとで考えますに、実際上、米軍がこの基地を使いまして、施設・区域を使いまして日本以外の国に補給活動を行なうという場合には、実際上はそこに米軍がおり、その米軍に対する補給であろうということは考えられます。事実そうであったわけでございます。しかし、いま申し上げましたとおり、法的解釈といたしまして、そうでなければならないということは第六条からは出てきませんで、第六条に書いてございますのは、依然としてこの使用目的に合致する範囲であれば、施設二区域の使用は認められるということでございますので、先ほど大臣が御説明いたしましたとおり、ベトナムに対する和平協定の第七条二項の条件に厳格に従った補給活動が行なわれるということは、安保条約上差しつかえなかろうというふうに考えるわけでございます。
#107
○星野力君 時間が来たそうでございますが、もう一問だけお願いしたいと思うのです。
 いま条約局長が御発言なさった中で、第一のほう、在日米軍基地をアメリカが使うのはいいけれども、第三国が使うのはいけない、こういうふうな意味に聞いておるのでありますが、第三国が使うのじゃなしに、アメリカが第三国の要員を訓練すると、これはアメリカが使っておる、それはいいんですか。
#108
○政府委員(高島益郎君) いま私が申しましたのは、先生が御指摘のとおりのような事態も含めて許されない。要するに、米軍だけが使用し得るというのが私たちの解釈であります。
#109
○星野力君 どうも米軍の訓練と、それから任意の地域に対する、米軍のおらない地域に対する在日米軍基地を使用しての武器の供給という問題、これは別々で、片一方はよくて片一方は悪いという、これはなかなかただいまの御説明だけでわれわれ納得するわけにいかぬと思うのですが、時間がありませんから、きょうはこれだけにしますけれども、さらに質問を続けていく上で資料をお願いしたいと思うのですが、これはあとで――それでは直接請求いたしましょうか。いまここで言いましょうか。
#110
○政府委員(高島益郎君) あとでけっこうです。
#111
○星野力君 どちらでも……。
 少し古い資料でございますが、一九四一年五月六日に日本・仏印経済協定というのが結ばれておりますし、それに基づいてと思いますが、それと、それから四二年七月十八日にやはり日本と仏印の間に交換物資についての取りきめというのがございます。それから、四三年の一月二十日に日・仏印経済協定がまた結ばれております。それから、すぐそのあと一月二十五日、この新しい経済協定に基づいて、米、トウモロコシについての協定というのがあります。この四つの協定ですね、協定並びに取りきめ、これをひとつ提供していただきたいということと、一九四一年から終戦までに、仏印――当時のことばで仏印から日本へ輸出された米、トウモロコシ、その他ヒマとかいろいろありますが、そういう農産物だけでよろしゅうございますが、その量ですね、これをひとつ調べて出していただきたいと思うのです。それだけでございます。これ、あるのですよ。
#112
○委員長(平島敏夫君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後零時五十三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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