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1949/02/28 第7回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第007回国会 法務委員会 第10号
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1949/02/28 第7回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第007回国会 法務委員会 第10号

#1
第007回国会 法務委員会 第10号
昭和二十五年二月二十八日(火曜日)
    午後二時三十一分開議
 出席委員
   委員長 花村 四郎君
   理事 北川 定務君 理事 高橋 英吉君
   理事 田嶋 好文君 理事 石川金次郎君
   理事 田中 堯平君
      佐瀬 昌三君    松木  弘君
      眞鍋  勝君    山口 好一君
      猪俣 浩三君    大森 玉木君
      加藤  充君    世耕 弘一君
 出席国務大臣
        法 務 総 裁 殖田 俊吉君
 出席政府委員
        検     事
        (法制意見第一
        局長)     岡咲 恕一君
 委員外の出席者
        議     員 福田 昌子君
        法務総裁官房長 柳川 眞文君
        法務府事務官
        (中央更正保護
        委員会事務局少
        年部長)    池田 浩三君
        專  門  員 村  教三君
        專  門  員 小木 貞一君
二月二十七日
 委員大西弘君、金原舜二君、佐藤親弘君、中川
 俊思君及び林百郎君辞任につき、その補欠とし
 て小玉治行君、古島義英君、山口好一君、吉田
 省三君及び加藤充君が議長の指名で委員に選任
 された。
同月二十八日
 委員稻葉修君辞任につき、その補欠として大森
 玉木君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 小玉治行君が理事に補欠当選した。
    ―――――――――――――
二月二十七日
 商法の一部改正に関する陳情書(名古屋市中区
 大池町四丁目一番地名古屋商工会議所会頭三輪
 常次郎)(第四七五号)
 同(京都市中京区烏丸通り夷川上る京都商工会
 議所会頭中野種一郎)(第四七七号)
 同(東京都千代田区東京商工会議所会頭高橋龍
 太郎)(第四七八号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 理事の互選
 小委員長及び小委員の補欠選任に関する件
 商法の一部を改正する法律案(内閣提出第六四
 号)
 派遣委員の調査報告に関する件
    ―――――――――――――
#2
○花村委員長 これより会議を開きます。
 本日の日程に入ります前に御報告及びお諮りいたしたいことがあります。
去る二月二十四日委員
   鍛冶 良作君  小玉 治行君
   古島 義英君  山口 好一君
   吉田 省三君  北村徳太郎君
がそれぞれ辞任され
   押谷 富三君  大西  弘君
   金原 舜二君  佐藤 親弘君
   中川 俊思君  稻葉  修君
が同日それぞれ議長の指名で補欠選任せられましたが、しかし二十七日
   大西  弘君  金原 舜二君
   佐藤 親弘君  中川 俊思君
   林  百郎君
がそれぞれ委員を辞任せられ、同日議長の指名で
   小玉 治行君  古島 義英君
   山口 好一君  吉田 省三君
   加藤  充君
がそれぞれ補欠選任せられたことを御報告申し上げます。
 つきましては二月二十四日辞任せられた委員はそれぞれ小委員でありましたので、この際小委員の補欠選任を行いたいと存じますが、小委員の補欠選任は選挙の手続を省略し、委員長においてそれぞれ御指名いたすことに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○花村委員長 御異議なければ、鉄道犯罪に関する小委員といたし加藤充君を、司法書士に関する小委員及び弁護士法による大学指定に関する小委員といたしまして小玉治行君を、株主総会招集規定等に関する小委員及び弁護士法による大学指定に関する小委員といたし山口好一君をそれぞれ御指名いたします。
 小玉治行君は弁護士法による大学指定に関する小委員長でありましたので、再び小玉治行君を小委員長に選任いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○花村委員長 御異議なければさよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#5
○花村委員長 なお小玉知行君は理事でありましたので、その補欠選任を行わねばなりませんが、補欠選任はその選挙の手続を省略し、委員長において御指名いたしたいと存じますが御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○花村委員長 御異議なければ小玉知行君を理事に御指名いたします。
    ―――――――――――――
#7
○花村委員長 これより本日の日程に入ります。まず商法の一部を政正する法律案について政府の提案理由の説明を求めます。殖田法務総裁
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
#8
○殖田国務大臣 ただいま議題になりました商法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
 現行商法は、明治三十二年に制定せられ、昭和十三年の大改正を経て、現在に至つたものでありますが、終戰後わが国の政治、社会、経済の各般にわたりまして、着々その民主化が実現せられつつありますことは御承知の通りでありまして、国民の経済生活、ことに企業に密接なる関係を持つ商法の分野におきましても、経済の民主化に対応いたしまして、その改正が考慮せられなければならないことは当然の趨勢であります。一昨年七月まずその一端といたしまして、法律第百四十八号をもつて株式会社について、株金分割拂込制度が廃止せられました。これは経営者の恣意的な支配の制限と投資大衆の保護とを目的といたしましたものでありますが、反面、これによつて会社は自己資本のプールを失い、その限度におきまして、資本調達の便宜を失うに至りましたことも、またいなみがたいところであります。政府といたしましては、すでに当時からこの欠点を補い、会社の資金調達の便宜をはかるための法的措置の必要を認めていたのであります。
 企業資金ことに自己資本の調達を容易ならしめるということは、現下のわが国の産業復興にとりまして、不可欠の要請とされるところでありますが、財閥解体以後は、企業資本は広くこれを大衆の投資に仰ぐこととなりますので、この資金調達の便宜の問題は、同時にこれらの投資大衆、株式会社について申しますれば、株主の保護のための配慮を必要とするのであります。政府はこの資金調達の便宜と株主の保護との観点から、この際株式会社を中心とする現行商法の規定に全面的検討を加える必要ありと考えまして、英米に行われてをります資本調達に便宜なオーソライズド・キヤピタル・システムいわゆる授権資本制度及びノン・パー・ストツク、すなわち無額面株式の制度並びに一般株主保護の方策を考究することといたし、一昨年五月当時の法務庁に商法改正準備調査会を設けまして、学界、実業界、官界の学識経験者を委員にお願いし、調査を進め、検討を重ねました末、法律案要綱作成の運びに至りましたので、昨年八月十三日、これを公表いたしますとともに、朝野の権威者を委員として、同年六月新たに発足いたしました法制審議会にこれを諮問いたしました次第であります。
 法制審議会におかれましては、特に審議の愼重を期せられるため、商法部会を設け、部会はさらに小委員会を設置の上、要綱発表以後広く学界、実業界等より寄せられました多数の御意見を十分参酌しつつ、愼重審議されました結果、原要網に若干の重要なる修正を加え、昨年十二月二十三日商法の一部を改正する法律案修正要綱を答申されたのであります。よつて政府は、この修正要綱に基き、法務府におきまして、鋭意審議立案いたしまして、本年一月下旬立案の完了を見、過日商法の一部を改正する法律案として国会に提出し、本日ここにその御審議を願うことと相なつた次第であります。
 以上がこの法案の立案の趣旨及び経過の大要でありますが、次にその内容の要点を御説明申し上げたいと存じます。この改正案は株式会社につきまして、いわゆる授権資本制度及び無額面株式の制度を採用いたしまして、会社の資本調達の便宜をはかるとともに、株式の讓渡性、新株引受権、株主の議決権、株主の書類閲覽権、取締役の責任、少数株主の保護、外国会社及び罰則等に関する現行商法の規定に改正を加えたものであります。この法案におきまして採用いたしました授権資本制度は、大陸法系の株式会社法の基本原則の一であります資本確定の原則に修正を加え、会社の設立に際しては、必ずしも資本総額に当る株式の引受けを要するものとせず、総株式数の四分の一以上の引受け拂込みによつて会社は成立するものとし、その余の株式につきましては、会社成立後、そのときどきの資金の需要と経済情勢に応じて、原則として、取締役がその権限におきまして、必要とする数の株式を発行し得る制度であり、無額面株式の制度は、株式が企業に対する均等な比例的持分であるという性質に着眼いたしまして、従来の額面株式のほかに、券面額の定めのない株式、すなわち発行価額が券面額に拘束されることのない株式を、市況に応じ公正な価額で発行し得るものとする制度でありまして、ともに会社資本の調達にきわめて大なる利便を提供するものであります。このように授権資本制度のもとにおきましては、会社は現行法における複雑な増資手続によることなく、取締役の裁量により、随時株式を発行して資金を獲得し得るという利便がありますが、他面におきまして、取締役の権限はすこぶる大となり、企業の興廃は一に取締役の良識と材幹とにかかることとなりますので、改正案は新たに合議体たる取締役会の制度を採用して、企業の経営方針は原則として取締役会の專決するところとし、この決定に基き代表取締役が業務の執行を担当することといたし、これに伴つて、監査役制度を廃止して、監査役による業務監査をやめ、ただ会計の監査のために、新たに会計監査役を設けることといたしたのであります。また、取締役の職責のきわめて重要なるにかんがみまして、その選任及び解任につきましては、その要件を嚴重にし、かつ取締役の責任を明確にいたしますとともに、株主に対しまして、直接取締役の越権行為を阻止し、その責任を追求する道を開くことといたしました。
 改正案は、さらに前に申し上げました一般の投資大衆保護の要請に応ずるため、一般に株式会社機構の民主化、株主の権利の強化をその重要な改正点といたしておりますが、そのうち特に重要な点を申し上げますと、
一、投資の回收を容易ならしめるため、定款による株式讓渡の制限を禁止し、かつ讓渡の方式を明確にするとともに、株式の名義書かえを容易ならしめましたこと。
一、定款による議決権の制限を認めないものといたしましたこと。
一、株主の会社企業に対する関與の機会を確保するため、通常総会の定足数につき、規定を設けますとともに、特別決議を愼重にいたし、その決議要件を嚴格にいたしましたこと。
一、少数株主の資格を緩和いたしましたこと。
一、少数株主の希望する者の中からも取締役を選出し得るようにするため、取締役の選任について、株主の請求により、いわゆる累積投票の方法によるべきことといたし、定款をもつて累積投票制度をとらない旨を定めることはさしつかえありませんが、この場合におきましても、発行済み株式数の四分の一以上にあたる株式を有する株主から請求がありますれば、累積投票によらなければならないことといたしております。
一、取締役は、決算期ごとに、会社の業務及び財産に関する明細書を本店及び支店に備え置くことを要し、株主はいつでもその書類の閲覽謄写をなし得ることといたしますとともに、発行済み株式数の十分の一以上にあたる株式を有する株主は、いつでも、会社の会計帳簿及び書類を閲覽謄写できることといたし、取締役は、株主の請求が権利の濫用にわたるような特定の場合においては、その請求を拒絶できるものといたしましたこと。
一、取締役が会社の目的の範囲外の行為または法令定款違反の行為をいたし、これによつて会社に回復すべからざる損害を及ぼすおそれのある場合及び取締役が不公正な株式発行によつて、株主に不利益を與える場合には、株主は、その行為の差止めを請求することができるものといたしましたこと。
一、従来の少数株主の請求による訴えの制度を廃止し、株主が会社のため、みずから取締役の責任を追究する訴えを提起することができるものといたしましたこと。
一、合併、営業讓渡等の場合において、これに反対する株主は、一定の手続に従い、会社に対して自己の持株の買取りを請求することができるものといたしましたこと。
一、株主間の対立抗争あるいは会社財産の管理処分の著しい失当等のため、会社の運営が停頓状態に陥り、その続行が不能または不適当な場合に、発行済み株式数の十分の一以上に当る株式を有する株主は、会社の解散を裁判所に請求することができるものといたしましたこと。
等でありますが、以上のほか、改正案は、外国会社に関する現行商法の規定の整備をはかつておりまして、外国会社は、他の法律、たとえば税法、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律その他の法律の適用につきましては、原則として内国会社と同一の地位を有する旨の一般的規定を設け、その法律上の待遇を明らかにいたしますとともに、日本において外国会社が継続的に取引を行うには、必ず営業所及び代表者等の登記をしなければならないことといたしております。
 以上申し述べましたところから見られますように、このたびの商法改正におきましては、授権資本制度及び無額面株式の制度の採用といい、株主の書類閲覽権その他の規定といい、従来の大陸法系の会社法から英米法系の会社法への転換が企図せられているのでありますが、異なる法制的地盤におい立ちましたこれらの制度の採用にあたりましては、いかにすれば社会事情、経済状態に差異のあるわが国の実情に最もよく適合するかは、特に愼重な配慮を要する点でありまして、政府といたしましても、要綱原案につきまして、広く一般の批判を求め、また法制審議会の御審議にあたりましても、特にこの点に意を用いられ、実業界その他の御意見を十分しんしやくされましたことは、さきに申し上げた通りでありまして、改正案はこの点におきまして、よくわが国情に合致するものと存ずるのであります。
 なお本改正案の施行につきましては、政令をもつて、明年七月一日以前の日を施行の日として定めることといたしておりますが、本改正案は、現行会社法に根本的な改正を加えておりますので、幸い御可決を得られますれば、一日も早く改正法律の周知徹底をはかる必要がありますとともに、その施行のためには、別に改正法律の施行に関する法律、非訟事件手続法、有限会社法及び関係法令の整備に関する法律等を立案いたさねばなりませんので、これらの事情もお含みいただきまして、何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたす次第であります。
#9
○花村委員長 提案理由の説明はこれにて終了いたしました。
    ―――――――――――――
#10
○花村委員長 本案に対する質疑は後日行うことといたし、この際福田昌子君より委員外の発言を求められておりますので、これを許すに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○花村委員長 御異議なければこれを許します。福田昌子君。
#12
○福田(昌)委員 私は誘拐事件につきまして一、二お尋ね申し上げたいと思います。実は二週間ほど前でありますが、約二年ほど前に当時十才になる男の子を誘拐された両親が面会を求めに参りまして、話の内容を聞いたのでありますが、その事件の内容及び約二箇年間というもの、わが子を求めて悄然としております両親の姿というものに対しまして、胸につまされるものがございましたので、この委員会に、委員外発言をお願い申し上げる次第でございます。
 事件の概要を申し上げますとこうでございます。時は二十三年七月十一日の書でございまして、当時十才になる伊藤務という子供、愛称はトンちやんというのだそうでございますが、この子供が浅草観音様の横で、ちよつとお便所に行つて来るといつて、鈴木なる友達とわかれたまま行方不明になつたという事件でございます。もちろんこの事件の発生当初におきましては、上野署の少年係におかれまして積極的な御調査をいただいたのでありますが、その御調査も漸次下火になりまして、その後は何ら手がかりもなく迷宮入りしておるという事件でございます。
 その後の経過を簡單に申し上げますと、この伊藤務の両親が個人の名前におきまして、薄謝進呈の捜査願を七月十七日に広告いたしたのであります。その後二十三年の七月二十日、七月二十五日、七月三十日、八月の初旬、この四回にわたりまして、はがきをもちまして、金五十万円を持つて東京駅に来いとか、大阪駅に来いとかいつたような脅迫状が参つたのであります。従つて家人はそのはがきの指定通に指定のところに参りましたが、それらしき人物に会わないままであつたというのであります。そのほか七月の二十七日にその伊藤さんの家の近所の壁に、トンちやんが永眠した、お気の毒だ、なぞの男という署名の落書きが発見された。あるいはまた名古屋でトンちやんが書いたと思われる、トンちやんの署名入りであつたそうでありますが、百円札の裏に、私は惡者につかまつています云々といつて、以後は読めないところの百円札が発見された。またさらには八月中旬におきまして、大阪の梅屋旅館の便所の壁に、トンちやんは今なお健在であるという落書きが発見されたというようないろいろな報告が入手されたのであります。そのほか新聞広告をいたしましたことを、また二十四年の秋には、この伊藤トンちやんの母親が婦人世界に、誘拐された子供を尋ねてという記事を出したためもあつたと存じますが、田所なる男が、トンちやんを誘拐した男は伊藤さんの知人であつて吉川という人だということをわざわぎ伊藤さんの宅に申して参りました。しかしこれを調査してみましたところが、まつたくこの謝礼金ほしさの詐欺事件に類するものであつた。そのほかまた二十四年の十一月の上旬におきまして、江口なる男が、同様トンちやんを福岡で見かけたというような情報を持つて参りまして、まことしやかに伝えたのでありますが、これもでたらめであつたということであるのでございます。そしてこの事件に対しましては昭和二十三年七月、誘拐されました当時から二、三箇月の間は警察当局も非常に積極的なお調べをいただいたそうでありますが、その後は何らの御調査もいただいていないというのであります。そして母親が最後に申しますには、このトンちやんは学校の成績も非常に優秀な方であり、家出をするような放浪性もない。これはどうしても誘拐されたのであるが、警察当局がその当初にだけ調査して、あとは全然これに対して積極的な御援助を願わないということは非常に遺憾である。それから、いわゆる民間の捜査の御援助をお願いしたいと思つて、ラジオ放送をお願いしたところが、放送当局が、そういつたような誘拐事件に対しての放送はお断りするといつて、聞き入れてくれなかつた。こういう事件に対して民間の援助を願うためには、ぜひラジオ放送というようなものを活用するようにしてもらいたい。また、自分は多少財産を持つていたから、こういう誘拐事件に対しても警察当局の手を離れて、個人の資格において相当程度の調査ができたけれども、自分と同じような子供を誘拐されたが、財力を持たないで、子供の行方を尋ねるにすべのないという親が日本全国にも幾人かあるに違いない。こういう涙の明け暮れを迎えている母親に対して、もつと積極的な同情と援護をもつて、捜査当局は熱意を持つてやつてもらいたい。こういうような自分の事件は、誘拐事件または少年の家出事件に類するものの、ほんの一部にすぎない、ちようど氷山の一角にすぎないものであつて、今日の国民生活の不安の現状からすれば、これに類するものが多々あるに違いないというような涙の訴えを聞いたのであります。
 翻つて今日のこの国民生活の不安といつた面から起つて参りますところの青少年の犯罪の増加、不良の増加、またこういつた誘拐罪の増加というようなことにかんがみまして、私はこの問題に関連いたしまして一、二お尋ね申し上げたいと思います。まずこの伊藤務なる当時十歳のこの子供の誘拐事件に対しまして、御当局がどの程度の御調査をしていただいたのでございましようか。
#13
○殖田国務大臣 お話はまことにお気の毒なことでありますが、それは警察にお聞き願つた方がよいと思うのでありまして、検察当局はその話をまだ何も聞いていないと思います。検察当局が聞いておりますれば、相当の手だてをいたしたものと思うのでありますが、普通の場合、警察にお願いになるだけでありまして、警察も十分手を盡すのでございましようが、力及ばずというところでとどまつているのではないかと思います。
#14
○福田昌子君 実はこの両親が上野署の少年係にお願いして、いろいろと御捜査をお願いしました。その状態につきましては私も概略聞いているのであります。また私はその少年係の方にお尋ねに参りまして、多少その捜査の内容も聞いているのであります。私が伺いました点においては、きわめてその捜査の態度というものは不満足な残念な状態にあつたということをお話申し上げたいと思います。これは当局は、町に起つた一些事とお考えになるかもしれませんが、これは先ほども申し上げましたように、治安の不安に対する氷山の一角にすぎないのでありますから、そういう意味におきましてその調査内容の全貌を、機会をあらためて御調査いただいたものを御報告願いたいと思います。
 それから次にお尋ね申し上げたいのは、こういつた誘拐事件はこの戰争を境にいたしまして、戰争前と今日ではどういう状況におるかという一般状態をお伺いいたしたいと思います。それからその事件の性質、またそういつた事件に対しまする捜査成績というようなものを聞かしていただきたいと思います。
#15
○池田説明員 お答え申し上げます。終戰後の誘拐事件の数字、それを前と比較したもの、これはある程度出て参ると思いますが、ただいま数字を持ち合せておりません。帰りましたらさつそく調査いたしました結果を御報告するようにいたしたいと思います。
#16
○福田昌子君 私が記憶いたしております範囲におきましても、この伊藤さんの事件、また青砥の四才になる子供の事件、あるいは住友吉左衛門さんのお孃さんの誘拐事件というような事件があつたように記憶しているのでありますが、こういつた事件に対しまして、これを誘拐したところの誘拐犯人が見つかつたということを私は聞いていないのでございます。後刻詳しい御報告があるというお話でありますから、その報告を私はお待ち申し上げたいと存ずるのでございます。従つてその捜査成績というものに対しては今回触れないでおきますが、私どもは終戰後、新しい憲法のもとにおいて人権が尊重され、人権の保護を受けている。ことに兒童に対しましては、兒童福祉法あるいはまた少年法というものが成立し、まただんだん改正修正されまして、予算もだんだんと増額されつつある状態にあります。そして法の上におきましては、いかにも兒童というものは保護され、青少年の犯罪は防がれつつあるかの姿をとつているのでありますが、しかしそのことは残念ながら法律体系だけに現われた姿でありまして、実態はこれに反しまして、実に青少年の犯罪が激増している。終戰後の青少年の犯罪は、ざつと見積つても約戰前の三倍に増加している。また家出、浮浪兒に至つては約二十倍、そのほか不良行為に至つては三十数倍の多きに増加しているということが統計に示されているのでありまするが、こういつた現象は、その法の運営において非常に大きな欠陥があるのではないか。もちろん今日の国民生活の逼迫、経済不安というようなものが、こういつた青少年の不良、犯罪の温床になるのでありますけれでも、法の運営においても大いに考えなければならない点があるのではないかと懸念されるのであります。また兒童の保護という点から見ましても、この誘拐罪のような、ほんとうに刑法自体におきましても最小限度の要求でありまする、こういう誘拐事件に対しまして、当局の御調査にかかわらず、一向に犯人があがつて参らない、こういう状態を私たちは考えてみまする場合に、いかに憲法において人権擁護が叫ばれ、また兒童保護のために兒童福祉法、あるいはまた少年法ができたといつても、何が人権保護であり、何が兒童福祉かということを言いたいのであります。こういつた誘拐事件というものは、町に起りましたところのまつたく小さい些事にすぎないかもしれませんけれども、こういつた誘拐事件に対する捜査成績がさつぱりあがらない。またその捜査態度がきわめて消極的であるということは、私は当局がいかに御答弁なすつたといたしましてもその語らざる暗黙のうちに、こういつた法の運営に対して、また人権の擁護というものに対して、当局の積極性心構えが非常に劣つているということの、歴然たる証拠があると思うのであります。こういうような当局の処置でございますので、はなはだ失礼な申分でありますが、青少年の犯罪というものは、法律をいかにつくつても激増の一路にある。兒童福祉法ができても、兒童は一向に保護されない状態にあるのではないかと考えるのであります。アメリカなんかにおきましては、だれもこれは周知の事件でありまするが、かつてリンドバーグ大佐の息子さんの誘拐事件がありました。ああいう誘拐事件に対して、アメリカでは大々的な捜査陣営をもつて捜査をした。またこれは最近の朝日の天声人語に載つておつた記事でありまするが、日本が人権擁護というものに対しまして頭が切りかえられていない。アメリカでは子供が井戸に落ち込んでも、その子供を救い上げるために、町の消防隊なんかも繰出して、たつた一人の子供を救い出すために大々的な、その間至れり盡せりの処置をとつたというような記事が載つておつたのであります。こういつた記事を読みまして、私はつくづくアメリカの富というものに対しての羨望はさておきまして、そういつたアメリカ人の人権擁護、人の命をいかに大切にするかということに対する、その心構えの積極性と当局のまじめな態度、また民衆のこれに協力する態度というものに対しまして、非常にうらやましいものを感じます。こういつた点は日本においても、早急に取入れて、学ばなければならない点ではないかということを考えさせられる次第であります。そこで私は、今日におけるところの一般の誘拐罪に対して、当局はどのような対策と心構えを持つておいでになるかということを承りたいのでございます。
#17
○殖田国務大臣 犯罪全般にわたつて、手落ちなくこれに対して処置を講ずるのでありまして、誘拐罪だけについて特別の処置は考えておりません。ただいまお話のごとき誘拐罪、ことに青少年の犯罪というようなものは、社会情勢の弛緩から来る。これはむろん捜査あるいは法律の適用ということも大事でありまして、それもおそらく弛緩しておりましようから、それを今われわれは鋭意引締めているところでありますが、何といたしてもそういうような犯罪につきましては、社会の協力、国民全体の協力がなければ、とうてい成果をあげ得ないのであります。国民が弛緩しているからそういう犯罪ができ、国民が弛緩しているからそういう捜査の成績があがらないのであります。ことに先ほどお話がありましたように、アメリカと違いまして、日本は貧乏であります。貧乏でありますから自治警察にも、国家警察にも、多くの費用を出せません。従つて電信を打つこともできなければ、自動車を走らせることも、人を走らせることもできないというような状態で、はなはだあわれむべき状態にあるのであります。われわれはこれら全体を整備いたしまして、そうして国民の協力を得て、犯罪を少くし、犯罪が出たならば必ずこれを摘発するという域にまで達したいと思うのであります。どうぞ政府の方、また官憲においても大いに努力をいたしますが、国会におかれましても、また国民全体といたされましても、これらの点につきまして一層の御協力を願いたいと思うのであります。
#18
○福田昌子君 ただいまの法務総裁の御答弁を承りまして、私非常に満足に感ずるのでありますが、どうか当局におきましては、そういつた心横えにおきまして、十分こういつた事件の捜査に対して、まじめに当つていただきたいとお願い申し上げます次第であります。
 それから引続きまして、ただいま総裁の御答弁にありましたように、民間人の協力が必要だということでありましたが、私もさように考えるのであります。民間人はこういつた事件に対して、非常に協力したいと熱望いたしておりますが、こういつた協力を促す一つの方法といたしまして、たとえばラジオ放送といつたようなことをお許し願いたいと思うのであります。先ほど事件の概要を御説明申し上げましたときにちよつと申し上げたのでございますが、この伊藤某の両親はラジオ放送を放選局に懇願したが、そういつた放送はまかりならぬといつて許してもらえなかつたということを申しております。このラジオ放送ということに関しての御考慮をお伺いいたしたいと存じます。
#19
○殖田国務大臣 ラジオは放送局の自主的に経営しておるところでありますから、これに干渉することはできませんが、私は毎朝聞いておるのでありますが、引揚者でありますか、未帰還者でありますかの住所を調べたり、あるいはその様子を知らせたりするために、一定の時間をさいてやつておるようでありますから、お話のようなごときことも、将来一括してこれをやつてもらえるようなときがあるのではないかと思うのであります。これはその方面の方にもお話をいたしまして、考慮願うことにいたしたいと思います。
#20
○花村委員長 福田君なるべく簡單に願います。
#21
○福田昌子君 どうか放送局と御相談の上で、そのような民間の協力を求めるに便宜な方法を講じていただきたいと存じます。
 次にお伺いたしたいのは、日本の誘拐罪というものと外国の誘拐罪というものの罰則規定におきまして、簡單に申し上げますと、軽重においてどのような差があるかというようなことを、例をあげてお示し願いたいと思います。
#22
○池田説明員 詳細に後ほど資料を整えて御連絡申し上げることにいたします。
#23
○福田昌子君 私は外国の事情をあまりよく存じませんけれども、しろうととして單純に考えてみました場合に、こういう誘拐罪に対する罰則規定、またはこれを幇助いたしましたえ幇助罪としての罰則規定というものが、あまりに軽きに過ぎるのではないか。ことに営利を目的とした誘拐事件に対する罰則が軽きに過ぎるのではないかということをうらむのであります。従つて政府当局におかれましても、十分この点を御考慮いただきまして、罰則規定というものをもう少し嚴重に御考慮をいただきたいと存ずる次第であります。
 最後に私はお願いいたしたいのでございますがいろいろな人権擁護の法律ができるということは、私たちといたしましては非常に喜ばしく感謝するところでありますが、ただその運営に当りまして、魂の抜けた運営がなされておるうらみがあるということを、この際申し上げたいと思うのであります。そして今後そういつた魂の抜けた運営をなるべく防ぐように、まじめに、誠心誠意をもつてこの法の運営に当つていただきたい。こういつた誘拐事件に対しましても、もう少し許される範囲内におきまして、積極性を持つていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終ることにいたします。
#24
○花村委員長 この際田中委員より法務総裁に対する質疑の通告がありますので、これを許します。田中堯平君。
#25
○田中(堯)委員 法務総裁がのつぴきならぬ用事であと幾ばくもここにおられないということでありますから、私が質問したい点をずつと列挙して、そして最初の質問だけにぜひ答えていただきたい。あとはどうしても時間が許さないということならば、かわりの方を御指名願いたいと思います。四つばかりありますが、総括して人権蹂躪に関する質問であります。
 第一は、今朝の新聞で報道されております法務府並びに東京地方検察庁の日本共産党細胞十三名が不当、さらに不法に馘首された、この点に関する質問であります。
 第二点は、検察庁並びに特審局が憲法、ポツダム宣言、あるいは極東委員会の十六原則を無視して、民主団体に対するスパイ政策を行つている事実の一端が暴露しましたので、これを質問いたしたいのであります。そのスパイというのは池田正善という男であります。
 第三点は、先年行われました朝鮮人連盟の解散に関連しまして、昨日東京地方裁判所がこの行政措置に対する不服の訴え、取消しの訴えを提起したのに対して、法務総裁のとられた態度に対する質問であります。
 第四点は、日本共産党の下部組織が解散のための告発を受けておりますが、これに関連して、しからば右翼諸団体の未届手続違反の部分に対してはどういう処置が行われているか。私どもの調査によると、実にあまたの反動団体が法規違反を犯しておりながら、不問に付されている点を質問したいと思います。
 私の質問したいのは以上四点でありますが、第一点だけはぜひとも法務総裁から御答弁願いたいのであります。
#26
○殖田国務大臣 今朝の新聞に出ておりますように、法務府共産党細胞が十三名一斉に馘首されました。その理由とするところは、人事院規則並びに公務員法に違反をして、ビラ宣伝等によつて、公務員たるものが政治情動を行つたというにあります。
#27
○田中(堯)委員 実際にいかなる政治活動を行つたかを調査してみると、ここに証拠があるのでありますが、わずかに四、五枚の宣伝ビラを庁内に流したというだけであります。その内容はすでにごらんの通り、何ら政治活動というほどのことではない。ただ共産党の細胞ができたというあいさつ、それから待遇が非常に劣惡であつて、苦しいという待遇改善、それから何だか戰争にでもなるような模様であるが、われわれはもう戰争はいやだ。軍事基地化反対という程度のことが書いてあるにすぎません。こういうふうなビラを流したからといつて、これは従来でも各種民主団体がやつていることでありまして、そのために首になつたという例を聞いておりません。結局政府のやつていることは、人事院規則に違反したとか、あるいは国家公務員法に違反したとかいうことを言つているけれども、これは單なる口実であつて、ともかくも共産党その他の民主団体の手足を職場からみなもぎ取つてしまつた。民主団体の勢力を滅殺する、そしてもつぱら反動的なる政治組織の力をもつて独裁専制的なフアツシヨ体制といいましようか、そういうものの樹立を急いでいるとしか見られない。元来この人事院規則やあるいは、公務員法というようなものが成立するときも、われわれは極力これに反対いたしました。というのは、この法規自身がすでに憲法あるいはポツダム宣言の趣旨にまつこうから反対する、違反するものであるので、こういうふうなものを通過さしては、まつたく占領政策にも違反をするというので、徹頭徹尾われわれは反対して来たのでありますが、にもかかわらず、多数をたのんでとうとうこれを強引に突破してしまつた。そしてそのときわれわれは予見をいたしました。これは民主主義の仮面をかぶつた反動政策を遂行するためである。必ずこの法規がものを言つて、極端なる反動政策が行われるぞということを予見いたしました。それが早くもここにもう現われている。こういうふうにして、次から次へと進歩的なる、民主的なる人々をがんじがらめにして全然活動できないように仕向ける、そういう方策であつて、反動政策であるとしかわれわれには考えられない。この点について法務総裁の意見を伺いたいのであります。
#28
○殖田国務大臣 法務府に属しまする十三名の共産党細胞を懲戒免職にいたしましたのは、これは共産党細胞であるからというためではありません。御説明のありました通りに、国家公務員法第百二條第一項のいわゆる人事院規則に違反したからであります。人事院規則第十四條に該当する文書多数を作成、配布して政治活動を行つた、従つて国家公務員法によりまして懲戒免職にいたしたのであります。これは田中さんと私どもと見解の相違かもしれませんが、どういう政治活動をしたか、そのまいたビラをここで読み上げてみます。「日本共産党法務府細胞の結成にあたつて、法務府の皆さん、今度私たち七名は日本共産党に入党しました。このような反動的時勢にばかなやつだと思われる方もあるでしようが、しかし私たちは決して軽はずみに入党したのではありません。幾度も議論を闘わし、熟慮したあげく、今真に日本を愛する者はこの道を選ぶほかはないと考えて入党したのです。日本は軍事基地化されつつある。一九五〇年は日本の運命を決する重大な年です。戰争の痛手がまだ直り切らないのに、新たな戰争の恐怖が重苦しくのしかかつて来ています。法務総裁は日本人が外国の義勇軍に参加してもよいと答弁しています。また各地に軍需工場や軍事基地がつくられていると伝えられています。私たちの知らぬ間に日本人のだれもが欲していない軍事基地化が、戰争挑発者の手先となつた吉田内閣によつて、絶対多数を背景に進められているのです。法務府も戰争準備。軍事基地化政策は法務府にも現われて来ています。自由主義的、官僚や学者は中央部から追い出され、また自分から法務府を出て行くほかないような圧迫を受け、そのあとへ検察フアツシヨが次々とすべり込んで来ています。特審は民主団体や社研にまでスパイを送り込んで、昔の特高さながらの役割を果しています。法制意見や検務局では法律を人民彈圧の武器として使うために、いかにひん曲げた解釈がされているでしようか。刑務所には武装された警備隊がつくられました。かつて勇敢に戰争と闘つた進歩的分子に対して、迫害とテロルで死の彈圧を加えた張本人らが、再びわが物顔にのさばり出て来ています。イエス・サー以外に何も言えない人々の手で、日本人の利益を無視して憲法蹂躪、人民彈圧が露骨に行われているのを、だれよりも皆さんが一番よく御存じと思います。このように法務府の中でも植民地化、フアツシヨ化、そして戰争準備を日毎に進められているのです。そのために生活も苦しい。戰時中七五%もつぎ込んだ軍事予算がなくなつた現在、いかに敗戰とはいえ、私たちの生活がなぜこんなに苦しいのでしようか。吉田内閣の政策は私たちの給料は少しも上げようとしないかわり、軍事基地化の資材や資金、外国の恐慌の分担のためには莫大な金額が使われているのです。もう戰争はいやだ。原子爆彈で大量虐殺のうき目にあつたわれわれには、一切の戰争反対を要求する権利があると思います。妻や夫や子供や家を失う戰争はもうこりごりです。私たちはもうこれ以上日本の荒廃を望みません。なぜ共産党に入党したか。私たちは一日も早く奴隷の身から解放されたい、そしてゆたかな文化と明るい平知に輝く社会をつくりたい。そのためには、過去二十七年の間終始戰争に反対し続け、勤労階級の利益を守つて勇敢に闘つて来た輝かしい歴史を持つ共産党に入党する以外に、民族独立と自由と平和をかち取る道はないとかたく信じて入党したのです。今後私たちは皆さんの先頭に立つて、職場のあらゆる問題について権力と闘い拔く覚悟です。皆さんの職場の幹部の不正や横暴その他どんな小さいことでも私たちに知らせてください。皆さんが必ず私たちを支持してくださることを信じ、かたく手をにぎり合つて、ともに法務府の民主化のために前進しようではありませんか。私たちのスローガンは次の通りです。戰争絶対反対、日本の軍事基地化絶対反対、全面講和の即時締結、法務府からフアツシヨ官僚を一掃しよう、不正は徹底的に摘発しよう、九千七百円ベースの獲得、職場に楽しい歌声を、自由と平和と民族独立のために、法務府の民主化万歳、日本共産党万歳、日本共産党法務府細胞」、こういうビラをまいたのであります。まだ検察庁の皆さんへというビラもありますが、同じようなものであります。
 そこでこれらが、人事院規則の十四條にいろいろありますが、いわゆる「特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること。」「特定の内閣を支持し又はこれに反対すること。」それからまた「政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聽取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること。」というような、各般の條項に該当すると考えまして、これを懲戒免職に付したのであります。
#29
○田中(堯)委員 人事院規則や公務員法というものに、しやくし定規に当てはめて、これが馘首に値するかどうかということを、今私は詮議をするわけではありません。問題は、いかなる法律があろうとも、この法律を適用する精神というものが重大であります。今日本共産党、あるいはこの細胞のある民主的な労働諸団体、勤労諸団体というようなものが、これがはたして日本を何か破滅に導くとか、何か暴力的な社会の不安を巻き起すというような、そういうおそれも何もありやしない。それにもかかわらず、ただ一介の法、しかもその法は先ほど申しましたように憲法違反の疑いさえも――疑いどころじやない、私は憲法違反を確信しておるのでありますが、そういうふうないわくつきの法律がここにあるからといつて、それ待つてましたとばかりこの法律を適用し、そうして民主的な傾向を片つぱしから踏みつぶして行こうという、そうした精神がここに問題になるのでありますが、こういうふうな態度をもし押し進めて行くということになるならば、それは結局占領軍が日本に来て、日本を民主化しようとして大きな努力を拂つているわけでありますが、こういうような努力も、またわれわれ国内における民主的な活動家の努力も、みんな水泡に帰してしまうということになるわけであります。
 そこで一つお聞きしたいことは、そういうふうな態度をこれからもどんどんとつて行くつもりであるか。ことにもう一つお聞きしたいことは、この法規があるからというて、何ら警告も與えず、ビラを流したという事実をつかまえて、警告もなしにただちに首にしたのであるかどうかという点をひとつお尋ねいたします。
#30
○殖田国務大臣 田中さんは仕事柄を非常に拡大されまして、私どもが何か非常に大きな計画をもつて、かように法規を濫用しておるというふうにお考えのようでありますが、決してそうではありません。ただ憲法違反の疑いがある、この法律は憲法違反の疑いがあると仰せられますが、私どもは憲法違反の疑いは毛頭持つておりません。これは憲法に従い、国会の議決したりつぱな法律であります。また人事院規則もこれに基いて発せられました規則でありまして、まことにりつぱな規則であると考えております。ただその法規を嚴正に適用いたしただけでありまして、さようなある一定の意図を持つて、そうして法規の解釈を拡大し、あるいは不当に現実を歪曲して法律を適用するというようなことは決して考えておりません。また先ほどもお話になりました右翼団体等の結成がある。それはほつておくじやないかというお話でありましたが、決してほつて置きやいたしません。今どんどん調査を進めております。調査いたしまして、その結論を得次第、処分すべきものはどんどん処分しております。
 それからただいまお話のごとく、あらかじめこれに警告を発したかという仰せでありまするが、特にこの細胞に警告を発しておりませんが、法務府におきましては、常時警告を発しております。ことに法務府は法律の府でありまするから、法律の適用については間違つてはならないし、また法務府の職員が法律の命ずるところを怠つてはならないので、常に注意をいたしておりまして、法律に違反しないように、法律に触れないようにたえず注意しておりますにもかかわらず、これは若気の至りかもしれませんが、執拗にかような運動をし続けて参りました。今度に限りません。もう前々からしばしばビラまいて、しばしばいろいろな風説を流布しておる事実はあるのであります。しかしながら従来は、それをなるべく寛大にして見ておりまして、反省のときを待つておつたのであります。しかるに今度の事件におきましては、その効果がなく、逆な結果を見ましたので、断然これは庁内の秩序維持の上から、やむを得ず懲戒免職いたしたのであります。
#31
○加藤(充)委員 今の処分をした理由は、人事院規則第十四條とかいうのですが、それはさておきまして、結局特定の政党の名前を出したということと、現在の吉田民自党政府を攻撃したというようにとられる点がけしからぬので、これが首切りに値するということが馘首の理由の中心だと思うのですが、残念ながら現在の民自党の吉田内閣がやつている実際の事実が、そこのビラに書かれてあるような戰争への狩り立て、あるいは警察政治の再現、あるいは一部少数の連中のべらぼうなもうけの半面には、多数の人間が非常な生活の破滅と貧困に突き落されておる。失業者はどんどん町にあふれておる。先ほど福田君が質問したように、非常な犯罪が――四つの島ですが、風靡している。こういう事実は殖田さんの見解の相違かもしれませんが、国民の大多数には、どうしてもそういうことをやつているとしか見られないのです。しかもこの中に敢然と立つて愛国運動を進めて、人民にその真相を知らせて闘つているのは、これもまことに遺憾であり、残念きわまるものであるのですが、共産党を中心にした政党であり、団体であるということは、これは各人が国民であるならば、日本人の血潮を持つているならば、だれもが了承しているところだと私どもは考えております。従つてこういうような政府が堂々として国をつぶし、国を売るような政治をやつているときに、その政府に反対をすることができないという――国が売られて行くような問題をみすみす国民が、日本人の血潮を持ちながら指をくわえて見ていなければならない、見ていないということが犯罪になる、首になるのか。私どもはこの点を一つ明確にしてもらわなければ、十四條の特定の政党の名前を出した、あるいは吉田内閣の攻撃をしたということだけで首切りの正当性を承認することはできないと思いますが、この点を一つ明確にしてもらいたい。
#32
○殖田国務大臣 現在の国政がどうであるか、政治がどうであるかの御批判は自由でありますが、それは国家公務員でない方、一般民衆がさような批判をするのは随意であります。いかなる批判をされようとも随意であります。ただ国家公務員法におきまして、国家公務員はかような批判をする自由を持たないのであります。批判が政治活動に当る以上それはできないのであります。これが現在の法律制度の、つまり確定した規則であります。従つてこれに反しますから、やむを得ず懲戒にいたしたのであります。もし批判をしたかつたら、国家公務員をおやめになつて批判をすればよろしい。私どもそれは一向異存がないのであります。
#33
○加藤(充)委員 そうすると、問題は国家公務員が労働者の一人であるということは間違いがない。しかも国家公務員といえども国民の一人――とりわけて現在日本民族七千万の一人であるということには違いないと思うのですが、こういうものがさつき言つたようなときに、役人をやめなければ、そういうような愛国の運動や憂国の赤誠ほとばしる発言もできないということになるならば、国家公務員法みずからが最もおそるべきところの民族の血潮をからして行くような、恐るべきところの性格のものじやないか。こういうような面からも、殖田総裁は公務員法の規則になんじやかんじやということを言う前に、国家公務員法の撤廃なり改正なりを日本人の血潮でもつと考えてもらうべき必要があると私は確信するのですが、その点についての殖田総裁の答弁を聞きたい。
#34
○殖田国務大臣 国家公務員法は公共の福祉のためにやむを得ずかような法律ができているのでありまして、これが行き過ぎであるとお考えになりますならば、国会において自由に御改正になつてしかるべきことだと思います。
#35
○加藤(充)委員 私は公共の福祉という開き直つた言葉を法律学者の殖田さんから聞くのですが、民族の運命以外に公共の福祉はない。民族の運命以外に日本人の公共の福祉は断じてあり得ないという確信を持つのであり、国滅びて山河ありという有名な言葉がありますけれども、民族滅びて何の日本人の公共の福祉ありや、私はこの点についても殖田総裁の御答弁を聞きたいのですが、もう一つこの際法を守るということを殖田君はおつしやるのですが、先ほど同僚の田中委員からも発言があつたのですが、法をみずから無視しているもの、蹂躪しているものこそが法務府ないし検察庁方面ではなかつたか。これは釈迦に説法かもしれませんから簡單にいたしますが、スパイ政策をやつたり、あるいはまた秘密警察の再現をやつたりすることは、基本的な日本の管理政策として連合軍から嚴重に禁ぜられておるのであります。しかも池田正善という男をスパイに使つておる。これは大体において、終戰のときには峰山海軍航空隊の特攻隊員で、二十三年三月から東京地方検察庁に勤めた者であが、在職中に天皇制でなければ日本は救えないと考えるほどの者であつて、しかも彼は二十四年の一月ごろに、全国にわたつて以前の仲間である特攻隊員に檄文を飛ばし、共同で反民主主義、軍国主義運動を展開することを提唱し、これはまた有名な防共新聞という町のごろつき新聞に、何回となく載せろといつて投書をしておる。この男を昨年の九月ころから東京地検の佐藤勝美という事務局長がスパイ活動に利用し、そうして報酬として月額二千円ずつを支給している。しかも驚くべきことには、さらに同年十月に入つて銀座の喫茶店の某店で、前記の佐藤から法務府の特審局の第四課の係長である田口という事務官に紹介されて以来というものは、田口の指図で引続き組合及びいろいろな民主団体、あるいは民主的なメンバーの動き方をスパイをしておつた。これも同じく同額二千円ほどの給料をもらつておつたということであります。しかも抜き差しならぬことには、それらと連絡するときには、ちやんと原田三郎とか丸山健治とか関などという変名を用いて、巧妙に、意識的にこれと連絡しておつたという事実、これこそまさしくポツダム宣言に違反し、日本の管理政策の基本に違反し、同時に憲法に違反し、ふてぶてしくも法律の名前に隠れて権力を握りながら、日本の恐るべきところの軍国主義的な警察政治の再現をたくらむところのフアシヨの徒輩でないとは言い切れないと思う。法を守れと人民に強制しながら、こういうことをみずから犯しているということについて、責任のある確答をお願いしたい。
#36
○殖田国務大臣 加藤さんは民族が滅びるじやないか、この民族の滅びる際に愛国的行動が何で惡いとおつしやいますが、私は民族が滅びているとは思いません。民族は今や再建復興の途上にあると考えます。決して滅びておるとは思わない。ですから、その点は全然反対であります。従つて私は必ずしも愛国者だとは思いません。愛国者であるならば、法の秩序を守つて、法の命ずるところに従うことこそ愛国者であると考えております。ただいまお話の池田何んとかいう話は、私は初めて伺つたのでありますが、私はスパイ政治というか、秘密警察をやろうとは決して思いません。それは何かの仮定であろうと思いますが、それはよく調べましてお答えいたします。私ちつとも知りません。
#37
○加藤(充)委員 知つていて、いけしやあしやあとやられる殖田総裁の押しの太さと、あつかましさにただ驚嘆するばかりでありますが、池田正善というのはあなたの方のスパイですよ。本人も来ています。きのうあなたの方に連れて行つて、特審局の連中だの、あるいは法務府の連中だのが首切られない前に――首切られると思つておりませんが、あなたのところに御注進に行こうと思つたら、遺憾ながらあなたは急用繁忙にまぎれて自動車にお乗りになつてしまつた。首切られた跡の始末で泣き声のように聞えますが、断じて泣き声でない。あなた知つているはずです。ひとつこの次のあれに正確に責任をもつて答弁してもらいたい。
 それでもう一つこの際に申し上げたいのは、こういうことをやつていること自体がいかぬことなのですから、こういうことをやつた人間は――池田正善を首切れとかなんとかいうことは言いません。しかし今名前をあげたぺン・ネームを使わせて連絡して、二千円ずつ給與を沸つておつたような東京地検の伊藤勝美という事務局長、それから法務府の特審局第四係長田口、こういうような者はひとつ責任をもつて処断をしてもらいたいと思う。
#38
○殖田国務大臣 私は実は今初めて伺つたのですが、よくひとつ取調べてお答えすることにいたします。
#39
○田中(堯)委員 その次にお尋ねしたいのは、朝連の解散問題であります。この朝連につきましても、これがやはり暴力的な団体ということで、団体等規正令に違反するという口実のもとに解散の告発が行われたのであります。そうして同じく朝連の財産の接收ということも行われたのであります。ところでこの行政処分が不法なものであるということは、今私はここで法理上の争いをするわけではありませんが、われわれはこれは不法であることを確信しておる。そして今問題にしたいというのは、この不法の行政処分を取消してもらいたいという裁判を東京地方裁判所に請求したのであります。ところがこの訴訟が起るや、殖田法務総裁は答弁書と題するものを裁判所に送つて、そうしてこの事件に関する裁判権は日本の裁判所にはないはずであるから、この訴えは却下してほしいという趣旨の答弁書が出ております。そこでここでお伺いしたい、問題にしたいのは、政府が解散の告発をしておる。そういうふうな行政措置をしておいて、これに対する不服の訴えを起した場合に、そういう行政訴訟を裁く裁判権がないというようなことを言われるのは、一体どういうわけか、これをひとつ御答弁願いたい。
#40
○岡咲政府委員 私からお答えするのは、ちよつと筋違いのように考えますので、いずれ今お尋ねの案件は民事法務長官の主管でございまするから、その方に連絡いたしましてお答えいたすようにいたしたいと思います。
#41
○田中(堯)委員 筋違いでもけつこうです。法律上の争いはここではやりませんから、感じだけを言つてください。ちよつと考えてみますと、なぐられたというので、そのなぐられた者が、何をしやがるかと言つて見ると、いや、おれがなぐつたんじやない、おれの手がなぐつたんだ、こういう言い方、手がなぐつた。だからおれは責任をとらぬ、文句があつたら手に言つてくれ。解散という行政処分を日本の政府がやつています。そしてこれが不当であるということを、暴力で訴えたのではない、日本の裁判に訴えたのだ。そうしたら裁判権がない。そんなあほうな話がありますか。だからどういうお考えか、感じだけでもいいから御答弁願いたい。訴える場所がないではありませんか。一体どこに訴えるのだ。法治国民というのは、いかなる行政措置に対しても最後の救済の手があるはずだ。裁判とかなんとか、何か救済措置がなければ、不服を申すことを許さぬというのならば、切捨て御免ではありませんか。そういうむちやな話はありません。どういうお考えか、感じだけ……
#42
○岡咲政府委員 田中さんのお話ですが、そういうことは全然存じておりません。ことにお尋ねの途中、ちよつと席をはずしましたので、要点がよくわかりませんが、おそらく民事局におきまして解散の処分をされたことに対する、不服の訴松をお起しになつておられる。ところがそれに対して行政訟務局の方で応訴いたしまして、裁判権がないとかいつたような答弁をいたしておられるのではないかと思うのですが、はたして訟務局のその答弁がどうい答弁であるか私もよく存じませんし、その答弁が不当な答弁であるのかどうか、実は案件がよくわかりませんので、非常にお答えしにくいのでございますが、さつそく連絡いたしまして、責任局なり、責任局の長官をしてはつきり御答弁をいたさせるようにいたしたいと思います。
#43
○田中(堯)委員 先ほどそのために私はお断りしておいた。ちやんと事件を四つ並べて、これこれについて御質問をする。第一点は総裁に聞く。あとは代理でもけつこうだからというふうにちやんとお断りしてあつた。だからあらかじめ質問の要旨はわかつておるので、それのわかる方を残していただきたかつたのでありますが、今ここでそんなことを言つてもしかたがないから、それまでとしまして、ついでにそれでは参考までに申し上げておきますが、こういうふうに団体等規正令に違反するという判定をくだすのも政府、そしてそれに解散を命令して財産は接收をする。それに対してそれは違法なる行政処分だから何とかかんべんしてくれということの訴えを出すと、日本の政府には裁判権はないのだというて門前拂い、いわゆる却下ですね。これをやつて来るとなるとどういう結論になるかというと、政府は団体等規正令を一方的に解釈して、あいつはしやくにさわるから解散してやれ、財産をひつたくつてやれ――ことにひどい例は朝連が借りておつた人の家が接收された例があります。そういうようなむちやをやつておる。それでは全国民の財産の安全ということは保障されぬと思います。財産保障については、新憲法が最も力こぶを入れておるのに、この団体等規正令を悪用することによつて、まるでもぬけのからにしてしまう。こういう不都合な結果になるので、非常に重大なことでありますから、そのおつもりで十分なる御答弁を願いたいと思います。
#44
○加藤(充)委員 ちよつと関連質問があります。この点に関連して、私がじかに経験したことを訴えて答弁をお願いしたいと思うのです。昭和二十二年の春だと思いますが、御承知の通り大阪、神戸を中心にしまして例の朝鮮人教育学校問題が起きたのであります。これは見解の相違で、取締るのはかつてだと仰せになるかもしれぬのですが、やつたこと自体の正当、不当の問題はさておきまして、やり方自体があまりひどいというので、私ども依頼を受けまして損害賠償の訴訟を提起すべく、その他の訴訟手続に訴えるべく、神戸地方裁判書に証拠保全の仮処分の手続をやつたのであります。ところがなけなしの金一万円ほどを納付いたしまして、やつと裁判所がそれを取上げて、現地に出向いて証人、写真あるいは図面、検証等、いわゆる証拠保全の手続が国内の裁判所としては完了いたしたのであります。私どもはあとの裁判手続の準備のために、事前にそういう仮処分をお願いしたのでありますから、その書類の閲覧等を神戸の地方裁判所に求めたのでありまするが、そのときになりますると、神戸の地方裁判所は、その書類は進駐軍関係から裁判所に置いてはいけないという文書による命令があつたので、進駐軍に渡してしまつた、それで手元にはないと言うのです。そこで私どもは命令とあればいたし方がないかもしれないが、その命令はどういう命令であつたのか、文書で来たのならその文書を見せてもらいたい、読ませてもらいたいと言つたのですが、その命令は見せるわけにはいかないというのでありまして、命令があつたのやら、文書であつたのやら、口頭であつたのやら、全然なかつたのやら、疑心暗鬼のままに残されております。しかもなけなしの金一万円は出しつぱなしで、何ら報いられることがなかつたのであります。その直後において裁判所は責任をもつて回答するということでありましたが、いまだに回答がない。こういう問題は朝鮮人連盟の解散、行政処分に関連していろいろ裁判所には理由があるようであります。しかも裁判所みずからが一部においては審査、批判する裁判権を有することは当然であると明らかにうたつてありますが、その直後に裁判所が裁判権を有するか有しないかということを判定することは、明示のない限りは実に困難であるということを、わざわざ断り書きをしておるのであります。それで国内の国家機関というものは間接占領といいますが、間接管理の建前に立つ限りは、明示のものがない限りは、判定がひどく困難であるという問題については、やはり四の五のぬかして、ごちやごちや苦労するよりも、むしろ日本の国内法規が認めておるところのものを国家機関としては遂行して行き、そうして遂行する過程に明らかなサゼスチヨンなり、あるいは何らかの指示なりがあつたとき、初めてそれは中断さるべきものではないか。こういうようなことになりますると、これは日本国民の法的治安、法的信頼、法的確信、法的秩序という問題に関連して、何の権利があるのか、何の権利がないのかさつぱりわからなくなつて、非常にゆゆしい重大事になると思うのであります。従いましてこの裁判権の管轄の問題は、同僚田中委員の質問に関連しまして、私が神戸の実例、これは九牛の一毛にすぎないような一例でありますけれども申し上げたのでありまして、これもあわせて御答弁を願いたいと思うのであります。
#45
○田中(堯)委員 それでは四番目に移りますが、総理府は日本共産党の四委員会、それから細胞を合せて六つほど解散をするために告発をしたのであります。もちろんこれは訴訟になるわけでありますから、黒白は訴訟で争いますので、ここでそれを云々しようとは思いませんが、問題はこれがみな届出がまだしてなかつたということが一つの理由になつておるのであります。さてそれならばこの届出が遅れておる、法的手続が完備しておらないという理由で解散をするというのならば、解散しなければならない団体は実は天下に充満しておるのであります。今全国の統計をここで申し上げるわけではありません。ここに現われたのは山形県における一応の調査であります。山形県においてもこれ以外にあるはずでありますが、一応の調査したのを申し上げますと、日の丸同盟というものがあります。これは昨年秋より山形県内で活発な反共フアシヨの活動をやつております。大量のビラ宣伝をやつたり、街頭演説をやつたりというような運動を活発にやつておりますが、これは全然届出をしておりません。同じく山形県の精華会で、これは山形県を中心に全国的に多くの下部組織を持つております。その中には旧東亜連盟員及び東亜連盟同志会員が多数参加しております。これらはみな解散団体であります。その主張は多分に暴力主義であり、その活動は政治的なものであります。これは全然届出を行つておりません。また同じく山形県に日本人民党というのがある。これは昨年中に活発な活動、たとえばビラ張りとか街頭演説、宣伝活動、組織活動ということを行つており、統領制度を用いておりまして、ビラの責任者は工藤忠雄、山形県西村山郡谷地町というところに住まつておりまして、この人間がビラの責任者になつておりますが、こういうはつきりした政治活動をしておる団体も、全然届出はないのであります。第四番目には自由青年隊、これも山形県の西置賜郡長井町の秋元南城という者を首領として、一種の暴力団体の大同連盟の外廓的な青年団体でありますが、これも全然届出はしておりません。まだほかにもありますが、いろいろな関係上これは省略しておきます。その他まだ三、四の団体は、やはり政治活動をしておるにもかかわらず、届出はしておりません。これらに対しては何らの措置が今もつて行われておりません。これは單に山形県における一例でありますが、私どもは今全国の調査をしておる。もうすでに明らかになつた部分もありますが、こういうふうに実に多数の団体が届出という手続を完了しておらぬにもかかわらず、共産党と同じような処置は受けておらぬ。まことに不公平であり、私が最初申し上げましたように、ただ共産党であるがゆえに、あるいは民主的な運動をやつておるがゆえに、あるいは民族の独立を叫ぶがゆえにじやまになる。自分の政治活動、民主自由党、あるいは吉田政府の政策上じやまになるという理由だけで、一片の法律を口実に解散命令を出してみたり、あるいは財産接收命令を出してみたりする。そうとしかわれわれには解釈できない。この辺に関してどういう見解を持つておられるか。なぜこういうふうな右翼団体に対しては、同じく手続が不備があつても処置をされないりかという点について、御見解を承りたいのであります。
#46
○岡咲政府委員 これもまことに申訳がございませんが、主管局長が在席しておりませんので、責任のあるお答えができません。今田中委員の仰せになりました点はとくと主管の特別審査局長に伝えまして、お尋ねのような差別的な、非違の取扱いがないように私からも申し伝えておきたいと考えます。
 それから先ほどの加藤委員のお尋ねでございまするが、裁判所の措置につきましては実は何も存じておりません。最高裁判所の事務局からも説明員がいずれお見えになる次第でございますから、裁判所関係の法案が審議せられます際に、あらためてお確めになりますると、あるいはその間の事情が明白になると考えます。念のため申し添えておきます。
#47
○花村委員長 田中君に御注意申し上げますが、かねてお約束の時間が経過いたしましたので、残りの質問は次会にお願いをいたします。
#48
○田中(堯)委員 それでほきよう並べましたこの四つの件に関する質問は、これをもつて一応きようは打切ることにいたします。
 ところで委員長にお願いしたいことは、実は前会問題になりました佐藤昇事件につきまして、われわれはもう少しく調べたいという考えがありますので、次会にはぜひ田中警視総監、坂本刑事部長、松本捜査第二課長、それから検察庁の特捜部長の岡嵜格、それから殖田法務総裁はもちろん、東京地方検察庁の屋代検事、岩城検事、それから次席検事の馬場検事、以上を参考人としてお呼び願いたいのであります。
#49
○花村委員長 ただいま田中君よりの御提案は、いずれ理事会に諮つた上善処いたしたいと存じますから、ご了承を願います。
#50
○田中(堯)委員 たいへんけつこうですけれども、しかしこれは先ほど出しましたような国政調査の要求ではありませんので、ただ質問をしたいというだけでありますから、これは理事会を用いず、委員長の専断によつて召喚を決定していただきたいと思います。
#51
○花村委員長 十分考鷹いたします。
    ―――――――――――――
#52
○花村委員長 次に栃木県喜連川町における人権蹂躪問題に関する調査の報告を求めます。北川定務君
#53
○北川委員 過般当委員会を代表いたしまして調査いたしましたいわゆる喜連川事件の中間報告をいたしたいと思います。
 喜連川町は栃木県塩谷郡にある人口一万ぐらいの小さい町でありまするが、由来政争の激しいところであります。この事件の発端は、喜連川町の公安委員の深尾法順、手塚鉄平、この両氏を罷免いたしましたのにつきまして、これを不法として栃木県知事に訴願をいたしてその救済を求めたのであります。ところが県知事は法規上の根拠なしとしましてこれを受理しなかつたので、やむなく地方自治庁に陳情いたしたのであります。ところがこれまたその権限事項にあらずとして受理せられなかつたので、遂にこの事件の法律的解釈を当法務委員会に求めて参つたのであります。
 当法務委員会におきましては、昨年科学的捜査問題の調査以来、自治体警察と公安委員会との関係は、両制度自体に欠点がありまして、これがために市町村民の受ける被害は非常に大きいものがあることを認めましたのみでなく、この種の事件は漸次全国的に発生しておりまして、また発生する可能性のあることを認めたのであります。すでに栃木県下におきましては、喜連川、石橋、矢板におきまして発生いたしておるのでありまするが、このうち喜連川事件を取上げまして調査究明することと相なつたのであります。そして松木、石川、上村、私の四委員が派遣された次第でございます。私たち派遣団は調査の目的を次のように定めました。第一に町民に被害があるかどうか、ことに人権蹂躙の事実がありやいなや、ボス側と警察官による被害、犯罪、不正行為等を町民の側から調査する。第二には警察署内の二派対立の原因及びその状況及びその事由を警察官の不正行為あるいはボス側の支配力の方面から調査する。第三は町会議員、警察幹部に犯罪及び不正行為なきやいなや、ボス側から町会議員、警察幹部等に対する裏面からの操縦の事実の有無をもつて調査する。第四はボスの政治的活動の有無、前述調査の結果を集約してボスの政治的活動の全貌をまとめ上げ、この際特に追放人物で、旧ボスと言われる笹沼多三郎及び新しいボスに対して着目をする。第五に公安委員の訴願事項、深尾公安委員などの罷免の事情を調査する、これもボスの町内政治に干渉する一面として調査する。右の目的をもちまして、現地派遣団は二月十七日、十八日、十九日の三日間にわたりまして、現地において大草喜連川町長を初め、三十人あまりの方々の調査を済ませたのであります。
 事件の全貌を一般的に申し上げますと、小さい喜連川町に旧ボスと新ボスとが対立抗争し、これが自治体警察署、公安委員、町会議員等とそれぞれ気脈を通じ、互いに対立し、そのために町民側は多大の被害や人権蹂躙を受けております。そして犯罪は頻発するが、一向に検挙せられないで、町民は晏如として生活を営むことができないという現状にあるということが言えるのであります。
 次にその概要を申し上げることにいたします。まず第一は町民の被害状況及び犯罪の概要であります。一は中里牛乳店ほか一軒の放火事件、昭和二十二年一月四日の午前一時ごろ喜連川町の中里一雄方の牛舎一棟が全燒いたしたのであります。同時に牛舎に入つておりました牛一頭も燒死いたしたのでありまするが、現状は火気のまつたくないところであります。しかも牛舎内には何ものも入れてなかつた。ところが燒か跡を見ますと、わら様のものを牛の下に敷いた形跡があるのであります。笹沼清一の家に雇われておるところの澁江等について調査いたしましたところが、同人がその火災の数日前に笹沼清一から、牛に硫酸銅を飲ませたら牛は殺すことができるかという奇問を発せられたことがあるのであります。そして笹沼清一と被害者でありますところの中里牛乳店とが平素から非常に仲が惡かつた。部落の人々は異口同音に、あの火災は清一が人を使つて放火したものであるというようなことをうわさしておるのであります。また佐藤という牛馬商の家で、福田某が放火の事実を語つたこともうわさをされておるのであります。この事件は單なる失火などではなくして、放火の疑いが十分にあるのでありますが、何ゆえかこの事件はいまだに迷宮入りになつておるのであります。このほかに同町の羽黒坪にも数軒の家が燒けまして、しかも原因不明の怪火事件として、これまた検挙せられておらないのであります。
 次に笹沼清一の肥料やみ取引事件であります。笹沼清一は肥料の配給店を営んでおりまするが、昭和二十三年八月ごろから十二月ごろまでの間に、硫安約百二十袋のやみ取引をいたしておる。その超過額は百万円以上に及んでおるとのことであります。この事件は目下宇都宮の検察庁で取調べ中のものでありまするが、笹沼清一が部落において語るところによると、この事件は問題にならない、また近く肥料配給統制が廃止されるので、その廃止を待つて処置されるのだというようなことを口外しておるのであります。部落の人人は笹沼に対する当局の態度を不審に思つているとうわさしておるのであります。そのほか同人はやみ清というあだ名を持つておりまして、町の人々は同人が、常にやみ行為をしておるといううわさをいたしておるのであります。さらに同人は葉タバコ運搬を請負うておるものでありますが、昭和二十二年ごろ雇人の澁江、伊藤の両名を使いまして、專売所から葉タバコ十六俵を盗み出して、それを手巻にするとか、あるいはトラツクに積んで多方面に持ち出したということに相なつておりまして、澁江証人はこの事実をつぶさに語つておりまするが、笹沼清一はこれを否認しております。この事件につきましても何らの捜査もなされておらないのであります。
 次に農地改革における不正行為でありまするが、ある農地委員が山林六町歩を農地開放の対象となるということを言いまして、いまに政府で買い上げられるから早く売つた方がいいと言つて、安い価格でこれを買いつけて、しかもこれをやみ価格で他に売り渡している事実があります。この種の事件はこのほかにも、二、三件あるのであります。
 次は喜連川町内における窃盗事件でありまするが、同町は窃盗の非常に多いところでありまして、町内の人々は一日平均一件くらいの窃盗事件がある。しかしこれはほとんど検挙せられないという現状にありまして、人々は安んじて生活することもできない不安の状態にあるのであります。警察の統計では、昨年中八十一万円の被害のうちに六万円が回復しているだけだ。犯罪の検挙率は三四%という数字を出しております。しかしこれは警察官に届け出た犯罪だけでありまして、部落の町内の人々の言うところによりますと、もつと犯罪件数も多いと申しておつたのであります。
 次は人権蹂躙の事件であります。笹沼清一の叔父にあたる笹沼多三郎というのがありますが、同人は昭和二十二年の夏祭の際に、青年どものかついでおつたみこしで同人方のガラス窓を破つたというような事実がありましたが、その際笹沼多三郎は、年中行事の一つであるところのこのみこしかつぎをやめさせてしまつたというので、青年の中には非常な不平が起つているのであります。
 さらに同町内にある鈴木藤一郎に対しまして、これを町内はぶきと称して、その家の門に、この家の者と交際してはいけないという立札を立て、またその家の父が死亡した際には、この笹沼に気がねをいたしまして、附近の人も会葬をしなかつたという事実もあるのであります。その他町内には各種の犯罪があるのでありまするが、いずれその点は書面で詳しく御報告いたしたいと存じます。
 次は第二の警察署内の対立及び闘争であります。昨年七月十二日喜連川自治警察署の森島署長は、刀劍の横領、すなわち供出されました刀劍を不法に所持しておつたというかどによりまして、銃砲等所持禁止令で検挙せられ、辞職するのやむなきに至つたのであります。そうしてその署長代理として公安委員は、同署の込山巡査部長を推薦したわけであります。元来同署の込山巡査部長は、同僚の小口巡査部長と非常に仲が惡いのであります。その仲の惡くなつた原因と申しますると、昨年の二月ごろ東京の人が木炭のやみ取引をなすために同町に通りかかつたところが、トラツクがたんぼにはまつてしまつた。そのために同署員に検挙せられたことがあつたのであります。その際に小口部長はこの事件につきまして、二万円のわいろをとつたということを即断しまして、込山巡査部長がこれを取調べをなさしめたことがありました。取調べの結果、さような事実が全然なかつたというので、このことから両巡査部長は非常に仲が悪くなつたわけであります。そうしてこれが署内の内紛を起す原因と相なつているのであります。森島署長ほ笹沼多三郎と懇意の間柄でありまして、常に同人方に出入しておりました。同署長のあとを受けまして署長代理となつた込山巡査部長もまた笹沼多三郎の支持を受けているものと認められるのであります。この署長の刀劍の事件がありましてから、間もなく公安委員を辞任いたしまして、そのあとに福田、深尾、手塚の三公安委員が任命されたのであります。この公安委員は、昨年九月七日に小口巡査部長を署長代理に任命いたしまして、そうして込山巡査部長をやめさした理由につきましては、福田公安委員長は込山部長がやめたいと言い、小口部長が署長代理になりたいというので申請したのだと証言いたしております。小口巡査部長が署長代理となつたのでありまするが、小口は笹沼多三郎一家とは仲があまりよくないのであります。込山部長は、間もなく小口部長の排斥を始めたのであります。すなわち署員八名と相談しまして、小口部長の非行をあばいた陳情書を作成しまして、九名がこれに連署して、町長初め各方面にこれをばらまいて、排斥運動をなしたのであります。しこうして右陳情書を作成するにあたりましては、九名の者が町長とともに町内の魚義というところで酒を飲みながら作成せられたものであります。そうして昨年十二月十三日の日付で、喜連川町の公安委員会にあてた書面と相なつておりますが、自治体警察署の巡査が九名連署して、署長代理排斥運動をなすこと自体が署内の秩序の紊乱を物語るものであります。これらの内紛が結局は放火事件も迷宮入りとなり、あるいは頻発するところの窃盗事件の検挙ができないところの原因のおもなるものと認められるのであります。昨年十二月初めに、各新聞社は一齊に署内の紛争を取上げたのであります。そうして警察の内紛の背景には町の新旧勢力の対立を指摘し、さらに自治体警察のあり方についても盛んに論議するようになつたのであります。一方公安委員会は、小口を署長代理から二階級進めて署長に推薦せんとしたのでありますが、込山部長外八名の巡査は、小口を署長にするならば、九名は総辞職をするといきまいて、紛争はいよいよ拡大して、遂に十二月十六日町民大会を開いて、小口部長の署長昇格に反対いたしました。翌日十七日には、福田公安委員長も辞任することに相なつたのであります。なお右町民大会は込山派の者の大会であつて、小口部長ら一派の者は参加せなかつたといつておるのであります。一方手塚、深尾公安委員は、大草町長とはからつて、込山、小口両部長の問を牛耳ることのできる署長を外部から迎えようとしたのであります。これにある警部と某氏が推薦したところの警部を大草町長に話しましたところが、町長はこれはあちらでだめであるからいけないと言つて断つたという事実もあるのであります。かようなことから署長は推薦はいよいよ暗礁に乗り上げてしまつたのであります。
 次いで本年一月十二日緊急町議会を招集しまして、大草町長は劈頭深尾、手塚の公安委員を罷免し、新たな公安委員によつてこの紛糾している警察問題を解決したいと提議したのであります。しかしここにもまたいわゆるボスの力が加わつていると言われております。十五対三で可決して遂に両委員を罷免することに相なりたのであります。両委員はその罷免を拒絶しまして、遂に知事に訴願するということに相なつたのであります。さらに新たに三人の公安委員が任命せられまして、本年二月一日には小口部長は署長代理を罷免せられまして、そのかわりに込山部長が再び署長代理に任命せられたのであります。
 一方小口部長はその罷免を拒否しまして、小口部長は込山部長その他の巡査の非行を指摘して懲戒処分を求めておりました。現在双方は争いを続けておるのであります。
 以上のような次第でありまして、喜連川町には新旧の公安委員と新旧の署長代理があつて、二組の公安委員と二人の署長代理があるというような悪口まで言われておる現状であります。双方の確執は未解決のまま現在に及んでおるのであります。
 第三は町会議員らの不正行為であります。警察の内紛に伴いまして、ボスをとりまく町会議員が暗躍しまして、農地改革に際して、農地委員たる町議が不正手段をもつて山林や開放土地をみずから領得したり、他人に領得せしめた事件があるのであります。これらの町会議員はいずれもこれを否認いたしてはおりまするが、相当嫌疑の濃厚なものがあるのであります。またやみ清とあだ名をせられたとこらのボス笹沼清一が、人を使つて他派の町会議員の立候補を妨害したという事件もありまするが、これは中里という証人がこれを認めております。しかし笹沼はこれを否定しておるのであります。ロボットと言われる大草町長のいすをねらつて、大森谷町会議長が小口巡査部長と画策したという事件もあります。かような次第で町政もまた混乱の状態で、これらの事件も今調査中でありますので、近くその正邪を決定したいと思うのであります。
 第四はボスの政治的活動であります。旧ボスと言われておる笹沼多三郎及びそのおいの笹沼清一は、多年喜連川町の政治や財界に最も大きな勢力を有する者で、肥料、繊維の配給店、葉タバコの運搬業などの重要な職業を占めております。特に多三郎氏は追放人物でありながら、政治的活動をしておるのであります。たとえば新制高校の落成式に出席したり、加藤助役の行動を難詰したり、小口警察署長代理に向つて署長をやめろと勧告したり、あるいは警察署内の内紛をしずめんとしておる事実もあります。これらの点につきましては法務府の特審局でも調査をしておるということでありますから、これらを参照したいと思うのであります。
 第五は公安委員の罷免問題であります。さきにも一言いたしましたように、大草町長は町議会の同意を得て深尾、手塚両公安委員を罷免いたしたのであります。しかしながら罷免には一定の理由がなければならない。この罷免された公安委員両名の非行については、法律上十分なる根拠を発見することができないのであります。また町議会の同意を得て罷免することに相なつておりまするが、町議会の同意を得るにあたつて、十分なる審議が尽されておらないうらみがあるのであります。罷免せられました両公安委員は行政裁判を求めてでも争うといきまいております。大体以上のような次第でありまして、最後に調査団として次のような談を発表したのであります。
  今回の調査により痛感することは、まず第一に町の治安はその自治警察の手によりては一向保たれていないということ。町には平均毎日一件ぐらいの窃盗事件等がひんぴんと起きているが、ほとんど検挙されていない。実にひどいことである。喜連川自治署は署内一致協力、この際町の不当勢力あるいは一切の情実等に煩わさるることなく、誠心誠意この治安の維持に邁進しなければならならない。
  第二に、調査項目のうちの町に起きた幾多の不正事件、人権蹂躪事件等につきては、関係証人の証言が必ずしも一致しない点もあるので、さらに国会において再調、その真否を追究したいと思う。
  第三に、町の有力者に関する事件等にて検挙せられざる者あるいは検挙取調べを受けたが、その処分定まらざる者もあるようであるが、これも十分調査したい。
  第四、ボスの影響力、喜連川の富豪笹沼一家の伝統的経済並びに社会的勢力は、町の行政その他の面に今日なお相当の影響力あることを認む。
以上をもつて調査の結果の概要の御報告を終りまするが、証言の食い違い等もありますので、いずれさらに調査をなし書面をもつて御報告いたしたいと存じます。
#54
○花村委員長 御質疑はありませんか。――別に御質疑がなければ、ただいまの派遣委員の報告基き、委員会の調査報告書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#55
○花村委員長 御異議なければさようとりはからいます。
    ―――――――――――――
#56
○花村委員長 この際お諮りいたします。ただいまの喜連川町における人権蹂躙事件については、証人等を喚問して本委員会が直接調査を継続いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#57
○花村委員長 御異議がなければさようとりはからいます。
 本日は大分時間も経過いたしましたのでこの程度にいたし、次会は明後三月二日木曜日午後一時より開会いたしたいと存じます。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時四十分散会
ソース: 国立国会図書館
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