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1972/06/26 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第15号
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1972/06/26 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第15号

#1
第071回国会 外務委員会 第15号
昭和四十八年六月二十六日(火曜日)
   午前十時九分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         平島 敏夫君
    理 事
                木内 四郎君
                佐藤 一郎君
    委 員
                岩動 道行君
                大竹平八郎君
                杉原 荒太君
                八木 一郎君
                山本 利壽君
                加藤シヅエ君
                小谷  守君
                羽生 三七君
                森 元治郎君
                渋谷 邦彦君
                星野  力君
   国務大臣
       外 務 大 臣  大平 正芳君
   政府委員
       外務省アジア局
       長        吉田 健三君
       外務省欧亜局長  大和田 渉君
       外務省経済協力
       局長       御巫 清尚君
       外務省条約局外
       務参事官     松永 信雄君
       外務省国際連合
       局長       影井 梅夫君
       労働政務次官   葉梨 信行君
       労働大臣官房長  藤繩 正勝君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  北川 俊夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
   説明員
       外務省アメリカ
       局外務参事官   角谷  清君
       外務省経済局次
       長        西田 誠哉君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結に
 ついて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送
 付)
○電離放射線からの労働者の保護に関する条約
 (第百十五号)の締結について承認を求めるの
 件(内閣提出、衆議院送付)
○機械の防護に関する条約(第百十九号)の締結
 について承認を求めるの件(内閣提出、衆議院
 送付)
○国際情勢等に関する調査
 (在韓国連軍の撤退問題に関する件)
 (米ソ核戦争防止協定と日本の安全保障に関す
 る件)
 (領海問題に関する件)
 (国連における朝鮮問題に関する件)
 (ムルロア環礁におけるフランスの核実験に関
 する件)
 (SR71米軍戦略偵察機の嘉手納基地駐留に
 関
 する件)
 (南ベトナム沖石油開発への入札に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件
 電離放射線からの労働者の保護に関する条約(第百十五号)の締結について承認を求めるの件
 機械の防護に関する条約(第百十九号)の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
 以上三件を便宜一括して議題といたします。
 前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は御発言を願います。――御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(平島敏夫君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより三案件について一括して討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#4
○委員長(平島敏夫君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、電離放射線からの労働者の保護に関する条約(第百十号)の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#5
○委員長(平島敏夫君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、機械の防護に関する条約(第百十九号)の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#6
○委員長(平島敏夫君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、三案件についての審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(平島敏夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(平島敏夫君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
#9
○森元治郎君 きょうは、いわゆる国連軍に関連した質疑をしたいと思います。
 御承知のように、南北朝鮮もたいへん大きな、平和的な方向へ動くし、米中関係は、お互いに連絡事務所を置くようになり、五三年のあの朝鮮休戦協定の当事者であり、戦いの当事者でもあった中国との間にアメリカはいまや承認への方向へ向かっている。ソ連との関係は、ブレジネフ・ニクソン会談でもおわかりのように、たいへん友好関係が促進されている。この中にあって、二十三年前のいわゆる国連軍というものが朝鮮半島の中に駐留しているということは、何かこうくつの中に石が入ったような異な感じ、非常にきわだって見える、そういう情勢になってきたと思うのです。この国連軍ですが、普通国連軍と言い、いわゆる国連憲章でいう厳密な意味のこれは国連軍ではもちろんない。四十三条でしたか、特別協定によって兵力を供給するという、あの条項による国連軍でないことは周知のことですが、いろいろ名前の使い分けをやっている。たとえば休戦協定のときには、サインしたクラーク大将でしたか、国連軍総司令官と外務省の翻訳は書いてある。それからまた、日本における国連軍の地位に関する協定などでは、国際連合の軍隊、こういうふうに書いてある。あるいは国連軍と言わず統一司令部と言ってみたり、非常に用語が、一発簡単にできないところはどういうふうですか、まずそれを聞きたいと思う。
#10
○政府委員(影井梅夫君) いわゆる在韓国連軍でございますが、この法的基礎は、一九五〇年六月二十七日の安全保障理事会の勧告に基づくものでございます。ただいま森先生御指摘のとおりに、国連憲章で予定しておりましたいわゆる四十三条の特別協定に基づいて成立いたしました国連軍ではございませんで、第三十九条、安全保障理事会の一般的権能、そのうちの勧告の権能に基づきまして成立したのがいわゆる在韓国連軍でございます。
#11
○森元治郎君 いや、それだけでは不十分で、私の聞いているのはいろいろな、はっきりと国連軍総司令官と、ザ・コマンダー・イン・チーフ・オブ・ユナイテッドネイションズ・コマンドという訳を国連軍総司令官と訳しているのですよ。それからまた条約で使うときには国際連合の軍隊といってみたり、はっきりしない性格が非常に私目に映るんですが、その答弁、時間がきょうは少ないようですから……。
 そこで、国連軍の撤退ということをよくいわれる。撤退というのは一体どういうことを言うのか、国連軍の撤退。統一司令部の解消、いわゆる統一司令部の解消だけを言うのか、国連軍は同時にまた米軍であり、米軍は国連軍であるという二重性格があるが、撤退というのは何が撤退するのですか、どういう形のときに撤退というのか、いろいろな場面で撤退が出てきます。たとえば吉田・アチソン交換公文に基づく日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定でも、二十四条及び二十五条に国連軍の撤退は云々という条項がある。撤退とはどんな形か、なかなかこれは簡単に理解するようではっきりしないので、事情を聞きます、国連軍の撤退。
#12
○政府委員(松永信雄君) いわゆる国連軍の直接的な根拠になっておりますところの一九五〇年七月七日の安全保障理事会の決議、これを見ますと、その具体的な内容といたしましては、「安全保障理事会の決議に従って、兵力その他の援助を提供するすべての加盟国がこれらの兵力その他の援助を合衆国の下にある統一司令部に提供する」ということが書いてございます。それから「合衆国に対し、このような軍隊の司令官を任命する」ということが書いてございます。もう一つ、統一司令部が、その裁量によって、北鮮軍に対する、作戦中に国際連合旗を使用するというのがございます。したがいまして、その撤退と申しますのは、統一司令部が解消される、そして米国の任命します司令官がそれによって解任され、国際連合旗の使用をやめるという三つの態様がいわゆる国連軍の撤退ということになるのじゃないかと思います。
#13
○森元治郎君 この撤退とは何だということはなかなか理解できない。統一司令部を、まず、五〇年七月七日の決議で統一司令部を解消すること、したがって、司令官も任命を解かれること、それからもう一つは国連旗の掲揚を取りやめる、これはたいへんな必要条件ではないと思うのだが、それじゃ統一司令部が解消すれば、司令部でしょう、ヘッドクオーターですね。軍隊、フォーセスではないわけですね。ですから、国連軍の撤退といった場合にはフォーセスですよ、日本における国連軍も撤退するようなことがはっきりきまった場合には、すみやかに日本から撤退するのだ、これはフォーセスが撤退すると書いてあるのですね、そこはどういう関係になります。
#14
○政府委員(松永信雄君) いま申しましたように、派遣国がその兵力を提供しているわけでございますから、その統一司令部が解散されるという事態になりますると、派遣国がみずから、それぞれその提供しております、派遣しております兵力を引き揚げるということになるのだろうと思います。
#15
○森元治郎君 十五カ国くらい最初は派遣国はあったと思うんですが、現在はアメリカのみになり、タイの部隊が若干、五十七名とかいうものがいる。日本内地には、国連の連絡室といいますか、そういうところに大使館付武官が兼任した者が連絡室に行っているだけで、実際はほとんど引いちゃったんですよ。ただ、アメリカ軍だけがいま三万八千ばかり残っている現状。ですから、ほんとうに撤退というならば、韓国にいる三万八千のアメリカ軍が引かなければ、やっぱり国連軍の撤退にならないんじゃないか。いやあれは米韓条約によって駐とんしているアメリカ軍だから、国連軍じゃないんだから引かない――どうなりましょう。二重の性格を持っていて、統一司令部は解消してなくなったとしても、ドナルド・ベネット将軍ですか、いまあそこに行っている人は。ドナルド・ベネットの軍隊が駐とんしていれば、撤退ということは何が撤退、ひとつも撤退しないで済むんじゃないか。その点がはっきりしないんですね。この安保条約では、派遣するほうは忙しかったが、撤退のほうについての内容ははっきりしないんですよ。それを私は伺っているんですがね。
#16
○政府委員(松永信雄君) ただいまも御指摘になりましたように、韓国におります米国の軍隊は、二重の地位と申しますか、性格を持っているわけでございます。在韓国連軍の構成部分でありますところの米国の軍隊、それから米韓協定に基づいて駐留しております在韓米軍という二重の地位を持っているわけでございます。したがいまして、その前段のほうの、国連軍の解体、撤退によりまして、国連軍の名称のもとにある米軍はいなくなるわけでございますけれども、米韓条約に基づく米国の軍隊はそのまま引き続き駐留することになるということになると思います。
#17
○森元治郎君 そうすると、撤退というのは、ちょうど着ている国連軍の外套を脱げば今度はアメリカ軍になって、撤退という声明だけが撤退であって、いわゆるユナイテッド・ネーションズのフォーセスの人であり、物の移動というものはなくても済むと、こういうことですか。
#18
○政府委員(松永信雄君) 米国の軍隊につきましては、御指摘のようなことになると思います。すなわち、国連軍の名前において行動するということはあり得なくなるわけでございます。
#19
○森元治郎君 もうほかの国はほとんど引いちゃって、タイの人が空輸部隊で横田基地あたりに若干、二十七、八名おられる以外は、全部で五十七名ぐらいという資料をもらっているが、そうすると、国連軍の撤退というのは、統一司令部の解消、司令官の任命解除ということを、たとえば、安保理事会がこれはきめたんですから、安保理事会でこれを決定すれば、即韓国における国連軍の撤退ということになるわけですね、アメリカに関する限り。
#20
○政府委員(松永信雄君) 韓国にも米国以外の数カ国が、これはもうほとんど連絡将校だけでございますけれども、置いておるわけでございます。したがって、そういう連絡将校的な軍隊を出しております派遣国の兵員引き揚げということも当然同時に行なわれることになるだろうと思います。
#21
○森元治郎君 このフォーセスというのは、オフィサーが、タイの大使館はあそこの駐在武官がこの連絡室を兼任しているようです。一人はこれはフォーセスじゃないと思うんだな。軍隊というのは集団でなきゃならぬ。それはたいへんな意味はないと思うんですね。だから、撤退というのは、私たち、よく外国の電報なんかを見ても、アメリカ軍が引くことが国連軍の撤退だというふうに受け取って、国連軍引け引けと言っているんですが、いまの御説明によれば、統一司令部の解消と司令官の任命解除という措置が、手続きは別にして、なくなればそれは即もう韓国には国連軍はないんだと、撤退したんだという意味になるという御説明ですね。そうすると、日本にいる二十七人、これはもう部隊と数えられませんから、撤退云々ということの客体にはならないと思うが、ただ、統一司令部の解消と司令官の更送があれば国連軍は撤収したんだというふうに理解してよろしいんですね、現実に部隊が動かなくても。
#22
○政府委員(松永信雄君) 恐縮でございますけれども、オーストラリア、カナダ、そのほか数カ国が韓国にも連絡将校という形では統一司令部に提供しているわけでございます。ですから、これらの人たちも撤退する。それから日本におります五十数名でございますかの数カ国の部隊、兵員も撤退する。そのほかは、いま御指摘がございましたように、司令部の解散、司令官の解任ということが撤退の実体になるであろうと、こう考えております。
#23
○森元治郎君 ここにいわゆる細かく、日本にいたりソウルに駐在する国連派遣国の若干の連絡将校などというのは、これはフォーセスじゃないんで、実際問題としては統一司令部が解消になれば自然これはなくなることになる。日本にいる、残っている若干の連絡将校ももちろんここに存在するあれが必要でなくなって、存在がなくなるわけですね。これは紙っぺらの撤退だということがそこでわかるんですが、ただおかしなことは、ここの一九六九年十一月二十五日の国連総会決議二千五百十六号の第六条の後段、「国際連合軍の唯一の目的はこの地域の平和と安全を保持することであること及び関係国政府は韓国政府の要請があったとき」、その次です、「又は総会が定めた恒久的解決の条件が満たされたときにはいつでも朝鮮からその残存兵力を撤退させる用意があることに注目する。」と、「残存兵力」というのがここにあるんですね。単なる統一司令部の解消と司令官の解任だけではなくて、ここには何ものかの集団的な兵隊、一人一人の兵隊が集まって小隊、中隊を構成している、そういう意味のものを撤退させるというんですから、いまの説明と違うんですね。「ゼア・リメイニング・フォーセス」と、「リメイニング・フォーセス」とあるんですね。この関連、どう関連づけられますか。
#24
○政府委員(松永信雄君) 名目的ではございますけれども、いま提供しておりますごくわずかな、それは実質的には兵力とは申せないようなもの、この引き揚げをするということを、やはりこの決議の「残存兵力を撤退させる用意がある」という、「リメイニング・フォーセス」に含めて考えているのではなかろうかと思います。
#25
○森元治郎君 少し自信がなさそうな答弁だが、また次回やることにして、そうすると、国連軍の撤退を何かアメリカも引きそこなっているような感じがしているんですね。中共の義勇軍は撤退し、こっちは一人だけ、休戦協定の当事国である一方が下がったのに、片方は下がりそこなっていまうろうろしている。ですから、国連軍を引かせるという意味ならば、この統一司令部解消、一九五〇年七月七日のあの決定を、何らかの取り消しをやる手続きをして、オーケーになれば、これは通過すると、こういうことですね。こういうことをだれがイニシアチブをとってやるかは別として、私はそういう時代に来ていると思う。国連安保理事会にかけてもう駐留軍がいて北からの脅威とか破壊行動とかということはないことはもうだれもわかっていることで、武器を持って向こうのほうを向いている必要はないから、この際、これを解消しようということを安保理事会にだれかがこれは言い出す。もう、アメリカをなだめるために、持ちかけよういかんによっては、アメリカは拒否権を発動しないで、これに応ずるんじゃないかと判断するんですが、どうでしょうか。
#26
○政府委員(松永信雄君) 現在の在韓国連軍の法律的な根拠は、一九五〇年七月七日の安全保障理事会の決議でございますから、この決議がなくなる、あるいは改正されるという事態が出てまいりますれば、それに伴って、当然国連軍の解散という問題が出てくるわけでございます。したがいまして、安全保障理事会の決議そのものをどういうふうに取り扱って処理をするかということは、安保理自体の問題だろうと思っております。
#27
○森元治郎君 大臣、もうどういうふうな手続でいくかは別として、このままこう出るにも引くにもちょっとアメリカが困ったような形で、あそこに国連軍という形で居すわり続けられないような状況になってきたんで、これはしかるべき機会に、穏やかに、平和に、これを解散するようにすべきだと思うんですが、べきだと思うんですが、どんなお感じをお持ちですか。
#28
○国務大臣(大平正芳君) この問題は、基本的には南北の間柄がどのように進展してまいるか、南北の対話の中でこの問題がどのように取り扱われてまいるかということだと思いますが、国連における手順というものは、それを受けて処理されることになるのではないかと思います。この問題は、確かにいま御指摘になりました問題は、いまのイシューである。いま南北間の一つの現実のイシューであるという感じを持っております。
#29
○森元治郎君 私は、これは条約文を見ていて、どうも、吉田・アチソン交換公文に基づく日本国における国連軍の地位の協定という長い条文のものがあるんですね。それで朝鮮における国連軍にあらゆる便宜供与のために日本が協力するんだということがうたってあることは、こんなものにまだわれわれが拘束されていることはたまらないんで、早くかような地位協定は解消するような情勢に持っていってもらいたいと思うんです。いまのところは、だれも援助する国はみんな帰っちゃって、アメリカ軍が残って、うしろにいるのは平和日本――朝鮮戦争のときにはまだ独立もしない時代で、平和条約、安保条約、吉田・アチソン交換公文とともに、この日本における国連軍の地位の協定を力のないときに結ばされたものがまだ残っているということは、これは私は非常に不愉快なんで、早く大きな、日本を含む、朝鮮を含む平和な傾向に向かってきたときには、国連軍の統一司令部の解消、司令官の解任という文書、口頭で実害なくできるんなら、すみやかにこれをアメリカをしてやらせ、そして日本もこの協定からの義務履行の責任から解除されるということが望ましいと思うんです。これは御同感だと思うが、いかがでしょうか。
#30
○国務大臣(大平正芳君) その問題は、先ほど申しましたように、まず、南北間でお話し合いが行なわれるということが私は一番大事なことじゃないかと考えておりまして、私どもその進展を注視しておるところでございます。
#31
○森元治郎君 まあそれは大臣の記者会見その他、いつでも情勢――待ちの大平外交、――待ち、大山名人みたいに、待っていて向こうが出てきたらそれに乗っかっていこうというのじゃ、テンポが早いのですね、このごろ動き方が。やっぱりこれに対応していくという外交も大平さん、とっくり考えてもらいたいと思うんですよ。
 そこで、これがきょうの私の聞きたいポイントなんだが、私は国連の旗、これは早くおろすべきだと、旗を。国連の旗、これはその他の派遣国の旗と一緒に掲げることを許可するという安保理事会の決議でいま立っているのだが、この旗はおろしたらいいんじゃないか。いま、せっかく南北対話、ときにけんかをしながらも南北対話を続けているときに、しかも両方が同時オブザーバーになるかもしらぬ、同時国連招請、加盟ということになるかもしらぬというときに、おまえは敵だという前提で三十八度の南に国連旗が立っているということは、朝鮮の人々にとっても、われわれから見れば、少し時代おくれ、間が抜けたような感じ、地元の人から見たら、変な敵がい心を旗を見るたびに北側は持つだろうと思うのです。ですから、これをおろすということ、使わないということ、これ一つでもきめることは、なかなかこの朝鮮問題、国連軍撤退ともからんで、松永条約局参事官の言う意味での国連軍の撤退にもからんで、小さいようだが大きい問題だと思うんです。しかも、この五〇年七月七日の、例の有名な安保理の決議では、北鮮軍に対する作戦中に、イン・ザ・コース・オブ――作戦中に、国際連合旗を参加する諸国の旗とともに使用することを許可する。作戦は終わったんでしょう。どうですか。これは大臣でも答えられるでしょう。北鮮軍に対する作戦中に、国際連合の旗を、タイとか、ニュージーランドとか、トルコとか、よその旗と一緒に立てることを許可すると安保理はきめたが、作戦はないでしょう。この点だけは大臣も御同感だと思うんですが。
#32
○政府委員(影井梅夫君) 朝鮮半島における軍事行動は、一九五二年の停戦協定によりまして、現実の軍事行動は現在行なわれておりませんけれども、しかしながら、まだ朝鮮半島に完全な平和がきたというふうには考えられていない。現在は、まだこの休戦協定下における状況であるというのが国連の認識であろうかと考えております。
#33
○森元治郎君 国連の認識というけれども、それは国連という名を使ったアメリカの政治的な考えであって、休戦協定ができて、相手国、少なくも中共の義勇軍は撤退をした。撤退をしたからいつでも中華人民共和国は、アメリカに対して、おまえの軍隊、いつまでそこにとどまっているんだと強く言える権利を持ち、いつもそう言い続けているわけですよ。そこでその休戦協定は――現実の戦闘は終わったんですから、私は中共の軍隊が引いたように、義勇軍が引いたようにこちらも引く、旗をおろすということは当然だと思うんです。また私は、いま前に直接御質問申し上げた北朝鮮軍に対する作戦中に掲げることができるというこの安保理の、これに対する御答弁がないんだが、どう解釈しますか。
#34
○政府委員(影井梅夫君) 現在、休戦協定下にありまして、幸いに軍事行動がないのでございますけれども、しかしながら、休戦協定の違反その他ということは予想される状態にまだあるかというふうに考えております。
#35
○森元治郎君 いや、私が言うこの第五項、「統一司令部が、その裁量によって、」「北鮮軍に対する作戦中」に、作戦中にというのは、旗を立てることを許可するということは、作戦が終わったら旗をおろせとまでは書いてないが、少なくも戦っているときは世界の平和と安定を願ってつくられた国連の旗と、こういう意味で高く掲げよという気持ちでしょう、これは。作戦中にだから、作戦がなくなれば自然、旗はひらひらとひるがえらないで、すうっと下がってきてもおかしくないですよ、これは。下げて悪いことはないですよ。
#36
○政府委員(影井梅夫君) 一九五〇年七月七日の安全保障理事会決議第八十四号でございますが、その第五項、この北鮮軍に対する作戦中であるかいなかということは、これは安全保障理事会自身が判断する事項かというふうに考えます。
#37
○森元治郎君 作戦中であるかとか、安全保障理事会が――まだ作戦中なんですか。その七月七日の安保理のこの解釈が悪ければ、安保理事会へ行って聞いてこいと言うの。
#38
○政府委員(影井梅夫君) ただいま申し上げました安全保障理事会決議、ここで申します作戦中というその範囲でございますが、これが休戦協定成立後の状態、これは作戦中ではないというふうに排除しているかどうか。現在安全保障理事会は、休戦協定後の状態、これもこの第五項に申します作戦中という中に含めて解釈しているものというふうに判断しております。
#39
○森元治郎君 そうすると、七月七日の安保理事会は、少なくも北朝鮮における軍事的な紛争というものは、休戦協定以後の事態で判断すべきで、前のこの安保の決議は死んじゃった、ただ、紙の上に残っているだけなんですか、これは。北と南との対峙している状態というのは、休戦協定以後からを配慮すべきであって、これはもう死んでしまったのですか、七月七日の決議は。
#40
○政府委員(影井梅夫君) この七月七日の安保理決議、これは現在死文化しているというふうには考えておりません。
#41
○森元治郎君 そこで国連の旗をおろす、作戦中でないということ、休戦であるということ、しかも、最近の激しい平和的方向へ大きく動いているときに、ちょうどアメリカも引きそこなっているようだから、せめてこの国際連合の旗をおろすということは、この地域における平和と安全及び平和的情勢を促進する上で非常に大きい力を発揮するだろうと思うんです。しかし、これは安保理の決議もあります。たまたま私見ていたところが、古い新聞、昨年ですか、昨年の国連総会で、中国とソ連など二十八カ国がそろつて、韓国駐留の外国軍隊に与えられている国連旗の使用権利は廃止さるべきものとみなすと、こういう決議案を朝鮮問題が討議されたときに出そうと用意したのだが、おととし、去年と国連総会で朝鮮問題たな上げになってしまったので、これを出しそこなったんです。私はこれは中ソ――北朝鮮をひいきするほうの国々の言い方でありますが、たいへん現実的な、やわらかい、挑戦的でない、妥協的な表現だと思う。普通なら国連軍出ていけ、外国軍隊即時出ていけと言うのに、韓国駐留の外国軍隊に与えられている――外国軍隊、国連軍なんて言わない、外国軍隊に与えられている国連旗の使用権利は廃さるべきものである。これがもし出たらば一体どうなるか。ことしの秋の国連総会でこれが出るかどうかまだわかりませんが、これどうお考えになりますか。もう二十八カ国も共同提案国としてこれ出そうとしているのです、おろそうじゃないかと。七月七日の、第五項に書いてある、許可するというやつをやめさせて廃止しようと、こういうことを出そうとしているのですが、これは案外受けるのじゃないかと思いますが、どう判断しますか。
#42
○政府委員(影井梅夫君) これは今後の情勢の進展によりますので、現在の時点でどうであろうかということは差し控えさせていただきたいと思います。ただ、昨年の審議におきまして、ただいま森先生御指摘のとおりに、そのような決議案提出の動きがございましたが、それに対しまして、この朝鮮問題、これは一年間審議を延期したいということが表決に付されまして、昨年の総会におきましては、審議延期賛成七十、反対三十五、棄権二十一ということで、昨年の総会におきましてはそのような決議案――中国、ソ連側が用意いたしました決議案を提出して審議される余地はなかったというのが昨年の状況でございます。
#43
○森元治郎君 それで私は、それじゃあ廃止する場合の手続として一つ考えられるのは、第五項の中にも――第五項ごらんください。「統一司令部が、その裁量によつて、」アット・イッツ・ディスクレッションというのがありましょう、裁量によりますからね、統一司令部であるアメリカ合衆国政府が、自分でこれを下げようと思えばアメリカ自身もできる道が一つあること。その「裁量によつて」、ということが一つと、これは安保理事会できまったんだから、旗を立てることを許可されたんだから、かりにこの二十八カ国、あるいは賛成国が総会で、それはそうだ、旗をおろせときめても、これは安保理事会の七月七日の決議によって許可された旗だから安保理事会にかかると思う。アメリカはそこで拒否権は発動しないんじゃないか。かりに、総会で旗をおろすことに賛成というのが多数になる。しかし、問題は安保理できめたんだから安保理にかける。そうするとアメリカとしては、事と次第では、腹の虫がほかのほうに向いていればおもしろくないと言って拒否権やるかもしれないが、国際世論がそっちに向けば、あるいはおろすということになるかもしれない。そこで、このおろすということは即国連軍の、いわゆる国連軍の解消につながると思うのですがどうですか。単なる旗おろしか、それは統一司令部のなくなることを意味するのか、その関連。旗と統一司令部は別かどうか。
#44
○政府委員(影井梅夫君) まず、総会と安全保障理事会の関係でございますが、ただいま森先生御指摘のとおりに、かりに、国連総会がそのような決議を採択いたしました場合、総会といたしましては、それを安全保障理事会に、このような行動、言いかえますと、国際連合の旗を使用しないようにということを安全保障理事会に勧告することができる。これを受けまして、安全保障理事会の場におきましてどのような審議がされるか、これはどうも現在の段階におきましては、私ども何とも判断がつかないということでございます。
 それから、国連の旗をおろすということが、すなわち、統一司令部の解消を意味するかどうかという点でございますが、これは国連旗を使用するということ、それから統一司令部が設置されてあるということ、これは別問題と考えますので、したがいまして、国連旗の使用をかりに中止いたしましても、それが直ちに司令部が解消されたということを意味しないのではなかろうかというふうに考えます。
#45
○森元治郎君 さっき松永条約局参事官の説明では、私の耳の理解では、この国際連合旗をおろすということは国連軍の解消につながるような御説明だったと思うのですが、違いますか。
#46
○政府委員(松永信雄君) 先ほど私が申し上げましたのは、国連軍が撤退解消するという事態の中に、国連旗の使用を停止するということが含まれるということを申し上げたわけでございます。したがいまして、国連旗の使用を停止するということはその一部であろうと思いますが、それがすべてではないと思います。いま国連局長のほうから御説明がありましたように、国連旗を使用するということはここでは権限として与えられているわけでございますが、それはその一部でございますから、国連旗の使用をやめたから直ちに国連軍が撤退解消という事態にはならないのじゃないかと、こう考えます。
#47
○森元治郎君 この第五項の、「その裁量によつて、」というのですから、ここにも、アメリカ自身でも、旗を立ててもよし、あるいはおろしてもよしというような意味だとこれは思うので、アメリカにやる気があれば、これをさげたからといって、その他の国々が文句言うことはないと思うのです。
 そこで大臣、もう時間きましたから、最後に締めくくりとしては、やはり国連軍の撤退ということは人間の集団、物量がそのまま引き下がる、たとえば三万八千のアメリカ軍が全部下がらなくても、統一司令部という、安保理の決議によってできたアメリカを代表とする統一司令部の解消と司令官の解消があれば、それが即国連軍の解消撤退につながるということ、したがって、日本もそういう撤退というようなことになれば、日本のわれわれ約束している地位協定――国連軍の日本における地位協定もおのずから自然に消滅していく。これは非常にいいことだから、これをぜひ、たいしてむずかしいことじゃないと思うのでやるべきだと思うんです、日本が。そういう意見がどこからか出たならば進んで賛成すべきことが一つ。
 もう一つは、国連旗の使用、これは私は国連旗の使用停止は統一司令部の解消につながるかと思ったんですが、そうじゃない、それとこれとは別で、旗をおろしても統一司令部の存在はあるんだというなら、せめていまの情勢、先ほど来長くしゃべっておりました客観情勢から見て、国連の旗がソウルの空から見えなくなったというだけでも明るい情勢づくりに役立つのじゃないか。この二点を伺って終わりにいたします。
#48
○国務大臣(大平正芳君) 国連軍の撤退という問題はすでに長い課題、北側が要求いたしておる問題であると承知いたしております。しかし、この国連軍の実態は在韓米軍であると。それで在韓米軍は米韓条約に基づいて存在しておるという立場もあることは承知いたしております。で、この国連軍の撤退問題というのは、南北の間で朝鮮問題を取り扱う場合の一つの大きなイシューでございまして、今後、南北の会話並びに国連においてもし朝鮮問題が取り上げられるということになりますと、その場面におきまして一つの大きな問題になると承知しております。で、問題の一番大事なところは、在韓米軍が朝鮮半島で引き続きプレゼンスするかどうかということが大きな問題だと私どもは考えておるわけでございまして、今後の南北の会話の進展に応じましてこの問題が両当事者の間でどのように取り扱われてまいるのか、その点を先ほど申しましたようにわれわれは終始注視いたしたいと考えておりまして、申すまでもなく、朝鮮半島が平和と安定の方向に向かうようにわれわれは期待いたしております。
 それから第二の点の国連旗の問題でございますが、これは森先生の言われることも理解できるわけでございますけれども、国連軍の処理という問題がまさに現実のイシューでございますので、それを分解してこれからぼつぼつやっていくという問題なのか、それとも一体として処理していくべき問題なのか、そういう点はいわばテクニックの問題であるのではないか。問題は、南北朝鮮の間並びに国連等におきまして国連軍自体の処理の問題という問題が究明されて、それが――その過程をよくわれわれは注視したいと思っておりまして、日本がイニシアをとって国連旗の処理というような問題について何かアクションを起こすべきかどうかということについては、せっかくのお話でございますけれども、まだそこまで踏み切る用意はないのであります。
#49
○森元治郎君 いい質問したのに、もっといい答弁してくれなくちゃ困るな。
#50
○羽生三七君 時間がないので、要点だけ申し述べたいと思いますが、今回の米ソの首脳会談、これはある意味においては、非常に歴史的なことであったと思います。一方、ソビエトからいえば、アメリカは帝国主義の巨頭であったし、あるいはアメリカからいえば、ソビエトは共産主義の悪玉の最たるものであったと。その米ソが、さきにニクソンの訪ソということがあったにしても、今回の二度目の会談はきわめて歴史的であったと思います。なかんずく、核兵器の相互使用を抑止しようというこの協定は、一番大きな問題であったろうと思います。この米ソ会談の、外相の評価は新聞で拝見をいたしましたが、ここで一点だけお伺いしたいことは、今度の協定の米ソ会談の中の、特に問題を核兵器に限定していうならば、日本としては核兵器を意識する場合に、相手はソビエトと中国ということだろうと思います。ところが、主として問題はソビエトにある。この場合、今度の協定で、アメリカもソビエトも、双方、核兵器を使うことのないようにお互いに努力をしようと、また、そういうことを恒久的なものにするために、あらためてまた、会議も開こうとしておるわけです。そういう新しい情勢が出てきたのですから、また同時に、つまりソビエトの核を意識しても、ソビエト自身が使うことはまずなかろうと思うし、また、日本がアメリカの核のかさに依存するといっても、そのアメリカもまた核を使わないかもしれない。米ソ双方核兵器の使用を抑止しようという、自省をしようという、これが今度の協定の一番大きなポイントだろうと思うんです。そうなると、日本がアメリカの核の抑止力にたよって日本の安全を保つという、アメリカの核のかさのもとに日本の安全を保とうというようなこの抑止理論というものは、何らの説得力を持たないことになったんではないかと思います。もちろんこの形式はまだ残っております。双方、核兵器を廃止したわけでもないし、製造をやめるわけでもありませんから、形式はまだ残っておるけれども、しかし、現実にこういうような取りきめが行なわれた以上、実際には核抑止理論というもの、特に日本のアメリカの核のかさに依存するというこの論理というものは、非常に説得力を失ったことになるんではないかと、こう思いますが、外相のお考えはいかがでしょうか、お伺いいたします。
#51
○国務大臣(大平正芳君) 今度の米ソの間で結ばれました核戦争防止協定でございますが、これは国際政治の仕組みに新しい要素を加えたものと私は考えていないんです。あれはどういうことかというと、本来、国連憲章にもそういう精神は盛り込まれておるわけでございまして、今度の協定は、米ソ両国の間での政治的な一つの姿勢を誇示し、かつ、両国の間の信頼関係というものを打ち出されたものでございまして、そういう意味で意義があるわけでございますけれども、国際政治の仕組みそのものにこの協定が何か新しいものを加えたかというと、そのように評価できないんじゃないかと考えておりますので、この協定によって、いままでわれわれがとってまいりました安全保障政策というものは、一ぺん考え直さなければいかぬのではないかということには直ちにつながらないんじゃないかというように考えます。
#52
○羽生三七君 今度の協定が、米ソそれぞれの国内事情、あるいは政治的条件によってもたらされたものであったにしても、私は、いまの外相のように過小評価はしないんです。いわゆるこれは重要な一歩前進であると、それが他国に、たとえば大国間の取引であるとか、いろいろな説もあるようですが、どうあろうとも、つまり核を抑止しようということは歓迎すべきことであります。その他の、他国に対する関係については、これは別の問題として、あらためて考慮の対象とすべきものでありましょうが、少なくとも、すべてをマイナス要因として――マイナスといいますか、プラス要因は何もないという観点に立つのではなしに、もっとしかるべき評価を与えていいんではないかと思います。ですから、ある意味においては、私は、米ソ両国とも核兵器を持つことが大国的地位の象徴的存在条件であるにしても、同時に、いまや時間の経過とともに、これがやがて重荷になる時代となりつつあると、だから、日本のように核を持たないことが新しい外交の中に、新しい時代における外交の一つの方向を示すことのできる立場にもあるといえる。そういう時代にまさに入ろうとしているのではないかと思います。そうなるならば、安全保障、日米安全保障条約を日本としては守り本尊、まあ象徴的なものにしておるんですが、きょう私は、ここで安保の是非を論ずるつもりはありません。ただ問題は、その安保の中心は、やはりアメリカの核抑止に依存するということです。ところが、その核というものが現実に使われる可能性はおそらくない。これは私、いずれ時期を見て、あらためて外務大臣の所見を伺いたいと思いますが、きょうは時間の関係でこの問題には触れませんが、私は、核が現実に使用されるというような状況はもはや起こり得ない。したがって、おどしの役割りも果たすことができない時代に進みつつある。したがって、ある意味においては、核に依存するということは、一種の神話に近いものになりつつあるのではないか。まだ、巨大な力を核というものは持っておるし、また、それが大国の一種の象徴にはなっておるが、しかし、時代は大きく変わろうとしておるし、また、変わらせなければならない。そういう意味で、私は、核抑止理論というものは、いまや神話の域に近づきつつある。また、そういう時代を築かにゃいかぬと思いますね。そういう意味で、私は、やはり日本がアメリカの核抑止――、アメリカも核は使わないといえば核で抑止するはずはないし、また、片方も核を使わないといえば、そこに核戦争の起こる可能性というものもおそらくない。ですから、そういう意味で、私はもう一度、やはり日本がほんとうにアメリカの核抑止に依存することが、何か安全保障の中核的存在であるような考え方そのものは、あらためて考慮の対象にしていいんではないか、また、十分考慮の価値ある問題ではないか。したがって、今度の米ソ会談の核協定に関する問題をあまり過小評価するのはどうか。他国に対する影響の問題は、これは別であります。他国という場合は、まあ中国等がどう評価するかはこれは別として、日本自身としては、もっとしかるべき評価を与えていいんではないかという気がするんですが、いかがでしょうか。
#53
○国務大臣(大平正芳君) これをことさらに過小評価するなんという気持ちは毛頭ないんでございます。たいへん高く評価し、これを歓迎しておるわけでございます。米ソ二大軍事大国の間に信頼回復の芽ばえが出てまいりまして、それがああいう協定に具体化してまいったということは、世界にとりましても、わが国にとりましても、これは歓迎すべきことである、その政治的意義は非常に大きいと評価いたしておるわけでございます。
 ただ、この協定にも書いてありますように、国連憲章五十一条に認められた集団安全保障体制は、これはその改廃を求めるものではないという意味で、既存の条約のワク組みというものは、洋の東西を問わず触れていないわけでございます。そういうことでございますので、この協定の成立が既存の条約の仕組みの改廃、それに直ちにつながるという意図のものでないというように見ておるということを先ほど申し上げたにすぎないわけでございまして、その意義を低く評価するなんという気持ちは毛頭ございません。
 それから、核に対する見方につきまして、私は、羽生先生と全く同様に、核戦争というものはもう神話になったんじゃないかということはよく理解できますし、私どもも神話になることを心から希求いたしておるわけでございまして、その点につきましては、全く御指摘のとおりに考えております。
#54
○羽生三七君 この問題はこの程度にいたしますが、確かに、中国もソ連も、最近は、日米安保について論評を加えることを差し控えております。したがって、ある意味においては、現状を肯定しながら緊張緩和、東西協力、平和共存をはかろうとしておる。そういうことは事実のようでありますが、しかし、そうかといって、私は、日本の外交がこれに安住して、この世界の大きな流れの本質というものをよく見きわめながら、さらにこれを発展さしていくという意欲なり努力を持たないと、ただ、中ソとも安保に対する攻撃を差し控えておるから問題はないんだということでは済まされないところへきておるということだけ申し上げて、次の問題に移ります。
 次の問題は、報道によると、政府は、懸案の領海問題について、領海十二海里、領海を十二海里として、それから以遠についても沿岸国の優先を認めるという方針で対処しようとされておるというように聞いておるんですが、これはどうでしょう、これ事実でしょうか。そういう方向が確立されてきたわけですか。
#55
○政府委員(松永信雄君) 御承知のごとく、明春、第三次海洋法会議が開催されることになっておりますが、そのためのいろいろな準備会議が先般来たびたび開かれておりまして、この夏、七、八両月にジュネーブで再び準備会議が開かれるわけでございます。これらの準備会議におきます意見交換等を通じまして見られますのは、領海幅員につきましては十二海里とするという意見が多数になりつつあるという状況でございます。政府といたしましては、十二海里という線で国際的合意が成立するということであれば、従来の三海里の立場にとらわれることなく、これを支持していってしかるべきであろうというふうに考えております。
#56
○羽生三七君 そこで、その十二海里説は、大勢がそうなれば日本も同じ方針ということですが、その場合、新聞報道なんかで見ると、十二海里から先についてはある程度の優先権を認めるという程度で日本は話をまとめたいというように伝えられておるんですが、しかし、諸外国は、二百海里説を唱えておるところもだいぶあります。これはかなり極端のようですが、しかし、そういうことを主張する国はかなり多いように思われますので、そういう場合に、ある程度の優先権というようなことで話が片づくのかどうか。その辺の見通しはどうでしょうか。
#57
○政府委員(松永信雄君) 領海の外側におきますいわゆる経済水域の議論ないし主張というものが最近漸次強まりつつありますことは、もう御指摘のとおりでございます。ただ、その内容につきましては、非常に多くの意見、主張がなされておりまして、そのコンセンサスと申しますか、多数の合意を得られるという見通しになっております内容のものというものは、まだ固まっておらないというのが現状ではないかと考えております。
#58
○羽生三七君 かりに、そういう領海十二海里説、あるいはそれ以遠をどうするかというような問題もあるわけですが、そういうような場合に、日本の漁業にはどういう程度の影響が及ぶのか、何かそういうことを計算されたことがあるでしょうか。
#59
○政府委員(松永信雄君) 領海外の経済水域につきましては、特に御指摘のごとく、漁業が非常に大きな影響を受けるわけでございます。わが国の漁業が、そこに出ていきます経済水域に対する沿岸国の管轄権の内容がどういうことになるかということによって、非常に大きな影響を受けることはもう当然のことでございまして、この問題につきましては、水産庁その他の関係省とも実は十分協議を重ねながら検討を進めている段階でございます。
#60
○羽生三七君 次に、時間の関係で、朝鮮問題にちょっと一言だけ触れてお尋ねしたいと思うんですが、御承知のように、朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮、それから韓国、それぞれ両首脳が見解を表明されました。韓国のほうが先ですが。私は、ここで、この両者の主張を論評する意思はありません。それは非常に内政に関する点が多いので、私は、特にそれに触れようとは思いませんが、ただ、日本としては一体何をなすべきであるか。この場合に、正当性がどちらにあるかを私自身はいまここで主張する意思はありません。ありませんが、必要なことは、北朝鮮も国連の常駐オブザーバーとして国連に出席ができて、そうして韓国と同じ立場で、平等の条件のもとにその主張ができるような機会をつくるという、これが非常に大事なことじゃないかと思うんです。韓国はいままでもいろいろな発言をする機会がありましたが、北朝鮮もそこに出て、そして十分その見解を披露することができるという、そういう条件をつくりながら、同時に両者が接触を深めて、さらに対話を一そう発展させるという、そういう条件をつくることが、当面まず第一番に重要なことではないかと、こう考えるのでありますが、日本国外相としてはどういうふうにお考えなのか、その辺をお伺いしたい。
#61
○国務大臣(大平正芳君) 仰せのような方向で、北朝鮮におかれてもそういう考えが固まってまいりますならば、日本としては歓迎すべきことだろうと心得ております。
#62
○羽生三七君 その場合に、この韓国の主張が、東西ドイツのように、二つの朝鮮、これを永久に固定化するものであるかどうか、これは必ずしもそうとも言い切れない点もあるようですが、まあ当面は分裂を固定化するような形になっていると思います。北のほうは、御承知のように、やはり分裂固定化に反対して、当面高麗連邦共和国、そういう形で統一の展望を持った主張をしているようですが、いずれがいいか、私はいまそれを論評するいとまがありませんけれども、いずれにしても、両者が接触をして、対話を深めて、相互の話し合いの中でいい結論の出るようなことを希望するわけですが、それには、片方だけが国連に出て、片方が、これは正規のメンバーではない、オブザーバーにしても、片方だけが出て、片方が出ることができないような条件にいつまでも置くことは適当ではない。そういうことで、来たるべき国連総会では、たぶん大勢はそうなるだろうと思いますが、北の常駐オブザーバー――これは決議とかそういうことじゃなしに、これは事務総長の権限であろうと思いますが、日本としてもそういうことになるような努力をすべきではないかと思うし、また、そういうことを通じて、さらに南北両朝鮮が一そうの平和的な形での融和、最終的には統一という方向に持って行けるように、日本も側面から十分な配慮をすべきではないか。したがって、従来のように韓国中心の考え方というものは修正さるべきじゃないかと思うんです。だから、いますぐに何をどうするかということを言っておるんじゃない。大まかな意味において、私は従来のような韓国中心で、朝鮮を一体として見ないような考え方というものは修正されなきゃならぬと考えますが、そういう意味で、そういうことも含めて、国連に臨む日本の立場、この秋の国連総会に臨む日本の朝鮮問題に対する基本的な考え方はどのようなものか、外相の見解をお伺いしたいと思います。
#63
○国務大臣(大平正芳君) 基本的には、先ほど森先生の御質疑にもお答え申し上げましたとおり、南北の話し合いが実質的に進展することをこいねがっておるわけでございます。で、国連におきましても、羽生先生おっしゃるように、南北朝鮮が招請されて、国連の場におきましても話し合いが進んでまいるということは歓迎すべきことだと思っておるわけでございまして、両方が望むならば、日本としてはそういう方向に側面的に御協力を申し上げるにやぶさかではございません。
#64
○羽生三七君 最後に、これは小さい問題かもしれませんが、もう一つだけお伺いして終わりますが、これも新聞報道ですが、十月に東京で開催が予定されておる東南アジア閣僚会議にマレーシアが欠席するかもしれないという、これは、日本が合成ゴムの生産の縮小に無関心である。東南アジアの諸国の経済開発に理解を持たないということがその実態のように伝えられておりますが、実際にそういうことがあるのかどうか。そうなると、これも報道ですが、このマレーシアがフィリピンやタイやインドネシア、シンガポールにも欠席を呼びかけるかもしれないと言われておるが、その辺の事情はどうなのか、お伺いいたします。
#65
○政府委員(御巫清尚君) 御指摘の報道は、マレーシアで発行されておりますストレート・タイムスという新聞がございまして、それの二十五日付の新聞に報道された記事でございますが、それによりますと、マレーシアは、東京における第八回東南アジア経済開発閣僚会議をボイコットするかもしれない、これは日本が当該地域諸国の経済開発に冷淡であるためである、消息筋によれば、マレーシアの政府は本件会議に参加するかいなか考慮中である。全般的な感じとしては、日本が何か侵略的な経済政策を続けるのであれば、本件会議は何の役にも立たないということである。そういうようなことを言いまして、そのあとで、日本の冷淡さの一例は、日本のばく大な合成ゴム生産を停止せよとのASEAN諸国の訴えに日本が冷淡な回答をしているからだというようなことを消息筋が語っておるという記事でございます。これにつきまして、わがほうの在マレーシアの大使館から入っております報告によりますと、マレーシア政府自身もどこからこういうことを聞いてきて報道したのか全くわからない。マレーシア政府としては当惑しているんだというようなことを言っておりまして、この報道は全く根拠がないということを言っておりますので、御指摘のように、マレーシアが本件会議をボイコットする、あるいはまた、その他の諸国に呼びかけて、ともにボイコットするというような考えは全くないということでございます。
#66
○渋谷邦彦君 先ほども質疑の中にございましたが、今回のニクソン・ブレジネフ会談を通じまして調印されました核戦争防止協定、そのほか何件か協定があるようでございますが、こうした世界環境の急速な変化、いままでのむしろ冷戦構造というものから緊張緩和へと、そしてまた、米ソの急速な接近というものが今後新しい一つの方向を生み出すのではないか、そういう意味では大いに歓迎される今回の会談ではなかったかと、このように私どもも判断されるわけであります。こうした一連の今後の世界の動向というものを考えました場合に、やはり先ほども問題になりました、引っかかってくるのは日米安保条約、実際は形骸化されつつある、そういう状態ではないかと考えられつつも、たえずやはり頭を持たげてくるのはこの日米安保条約、これは日本の将来にとってむしろ危険な存在ではないかということがしばしばいままで繰り返し議論されてまいったわけでありますけれども、こういう機会に、日本もそれに即応しながら、新しいやはりそういう世界の方向に対応できる行き方を示すものとして日米安全保障条約というものを考え直すと。ちょうど六月二十三日は自動延長といいますか、になってから三年目を迎えておるわけですね。その間、だいぶいま申し上げたように、国際間の情勢変化というものもございましょうし、やはり日本としてはたえずそういう面でのむしろイニシアチブをとるくらいの積極的な姿勢があってしかるべきではないだろうかと。もうベトナム戦争もパリ協定が締結されて、あるいは漸次、まだわれわれが満足する方向ではないにしても、平和の方向へもう始動が開始されていると、こういうふうに考えた場合に、一体日米安全保障条約の存在価値というものがはたしてあるのだろうかというような疑問がやはり出てこざるを得ない。この辺で政府は、むしろそれにかわるべき、日米あるいは日ソあるいは日中、こうした日本を取り巻く大国との間に不可侵条約を締結していくことのほうが、むしろより緊張緩和というか、世界平和に寄与するメリットが非常に高いのではないかと、このように考えられるわけでございますけれども、現段階のこうした趨勢の変化にありましても、依然として政府の考え方は変わらないのか。特に、田中総理が国会終了と同時に訪米もされる、訪ソもされる。おそらくたいへんきびしい情勢下にあって対話の機会というものが設けられるんではないだろうか。そうしたときに、やはり日本としても、今後の一つの外交姿勢として、将来を展望した、そうした観点に立っての基本的な方向というものをもう一ぺんここで再修正すべきではないか。こうした私どもにとっては考え方が出てくるわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
#67
○国務大臣(大平正芳君) 渋谷委員御指摘のように、一連の国際的な動き、それをめぐる潮流というものが、冷戦体制から脱却しつつあると。そして、全体として緊張緩和の方向をたどっておるということにつきましては、私も全く認識を同じうするものであります。そこでしかし、考えなければならぬことは、安保条約その他既存の、われわれの言うところの既存の条約のワク組みというものが危険なものでありましたならば、そういう情勢も出てこなかったわけでなかろうかと思うのであります。すなわち、既存の条約のワク組みというものの存在の中からそういうものが生まれてきたと。言いかえれば、既存の条約のワク組みはそういう状態を生み落とす上におきましてじゃまにならなかったということは最小限度主張できるのではないかと、まず思っておるわけでございます。
 で、そういう状況のもとで、既存の条約というものの改廃に手を染めるかどうかという選択の問題を御指摘になったわけでございますが、結論から申しますと、私どもといたしましては、これを従来から申し上げておりますように、手軽に改廃をするというつもりはないと。何となれば、そういうことはむしろいまの緊張緩和の定着化に寄与するようにはどうも思えないわけでございますので、これは手軽に手を染めるべきものでないと政府は考えておると、従来から申し上げておるとおりでございます。ただ、われわれは、安保条約について米ソ、米中両国が、羽生先生御指摘のように、反対を述べなくなった、反対を言わなくなったからわれわれはあぐらをかいておるなんていう気持ちは毛頭ないのでありまして、また、国内の世論が火をふいていないからこれでいいんだと、これで安心しておるわけでも決してないのでありまして、条約の運営ということにつきましては、くれぐれも注意いたしまして、新たな緊張を生むようなことにならぬように、十分気をつけてまいることは当然と考えておるわけでございまして、この安全保障政策というものの将来の姿をどうすべきかという問題につきましては、常時検討を怠ってはならぬと思うのでありますけれども、いまの段階におきまして軽率に手を染めるということに対しましては、どうしても賛意を表するわけにはいかないというのが、政府のいまの立場でございます。
#68
○渋谷邦彦君 今回の協定の全部をまだ詳細に検討しておりませんけれども、まあインドシナ、なかんずくベトナムの問題については若干触れておるものの、アジア全体については一言も触れていないという特徴があるようであります。その反面に、欧州については、近い将来全欧安保会議というようなものを強力に推進をしたい。おそらく国際的な集団安全保障というものを何らかの形で想定しながら、今後そうした突破口を開くのではないかというような考えも出てくるわけでございますが、その反面、いま申し上げたように、まあアジアにおいては、まだその緊張緩和への具体的な足がかりというものがないのかどうなのか。つまり米中あるいは中ソ、あるいは日米、日ソ、こうした関係というものを考えた場合に、いろいろ整理していかなければならない問題というものがまだやはりあるだろうと思います。まあそうしたことを踏まえつつ、あえてアジア問題に触れなかったのか。しかし、何といっても国際外交の焦点ともいわれるこのアジアを除いて、将来の安全保障というものが考えられるかどうかということになりますと、これまたやはり問題点が残るような気もいたします。そうしたことを想定しながら、想定ではいけないのかもしれませんけれども、どうしてもそういうようなニュアンスがあるように思えてなりませんが、おそらくそういう背景を考えつつ、いま大平さんは、政府の方向としては、まだやはりアジア全体の流動性というものを考えつつ、安保体制というものは堅持しなければならないというふうに理解すべきなんでしょうか。
#69
○国務大臣(大平正芳君) ヨーロッパにおきましては、御指摘のように、安全保障会議の準備会議が開かれたり、これが本会議に移ることが合意されておりまするし、一方において、兵器の均衡削減交渉が行なわれたりしておるわけでございまして、安全保障の領域におきまして具体性を持った問題が討議されるような状況がヨーロッパにおいては芽ばえつつあるわけでございます。一方、アジアでございますが、確かにソ連もアジア安保構想というものを打ち出されました。一九六九年の六月に世界党大会で、アジア安保構想というようなものを考える時期が来たのではないかという意味のブレジネフ氏の提言があったわけでございますが、これはそういう御提言があったにすぎないわけでございまして、安全保障の具体的な構想というものはまだ明らかにされていないわけでございます。今度の米ソの首脳コミュニケの中でも、アジアについて触れたところを見ると、双方はベトナム、ラオス、カンボジアの政治的将来は外部の干渉なしにきめらるべきものであるとの立場を再確認したということが述べられておるにすぎないわけでございます。一方、日ソ関係におきましても、日中関係におきましても、日中関係におきましては、過去を一ぺん清算いたしまして、これからいろいろ実務協定を取り結んだり、平和友好条約をひとつ締結するというようなことを考えようじゃないか。日ソ関係におきましても平和条約の締結というものを急ごうじゃないかというような段階でございまして、まだわれわれの外交の領域におきまして、アジアの安保構想というようなものをアジエンダにしまして、お互いに積極的な構想を語り合うというようなところまできていないわけでございます。言いかえれば、私は、アジアがあなたの言われるような安保構想というようなものについて話し合えるような段階ができるだけ早くくることを願っておるわけでございますけれども、いままだその時期でないわけでございます。だからそういうことに至る前に、われわれといたしましては、それぞれの国との間に信頼をつなぎとめ、交流を拡大してまいるということをじみちにまずやるべきじゃないかと考えておるわけでございまして、なるべく早くそういうことを考える、お互いに討議できるような段階を迎えたいものと思っておるわけでございます。そういう段階でございますので、いま、あらたまって、日本が独自の自信のあるアジアをめぐる安全保障体制を打ち出して、日本はこういう立場をとるというようなことをいま提言するというようなことには、まだ私は時期尚早じゃないかと、こういう時期は手がたく足元を固めつつ、各国との間の信頼を固めていく、交流を拡大していくというようなところに専念すべき時期じゃないかと考えております。
#70
○渋谷邦彦君 おっしゃることも理解できないわけではございませんが、ともあれ、今回は相当思い切った協定の内容が盛られておりますし、将来に向かってそういう方向に積極的に向かうであろうと、米ソ両国を軸にいたしまして当然考えられるわけです。そうなりますと、アジアにおきましてもこれは例外ではなくなる。はたしてこのままの状態でいって、日本が、極端な言い方を言えば、あるいは取り残されてしまうおそれはないのか。いま御答弁の中にもございましたように、なるほど一九六九年の六月にソ連が初めてアジア安保構想というものを提起いたしました。それから、自来四年たっているわけですが、こうして考えてみた場合、先ほども御指摘があったようでございますが、絶えずこちらが受けながら立つと、対話の場所を模索もするだろうと私は思うのです。しかし、与えられてから初めて行動を開始するのか、積極的にこちらが対話の場所を設けて、世界平和のために寄与する一つの行動に出るのか、この辺が今後の日本外交の転機と私は考えたいわけであります。
 先ほど少し述べましたように、田中総理が近々訪ソされるわけであります、訪米されるわけであります。何らかの形で、あるいはこれに関連するか、そうしてまた、今度はアジアを中心とした政治課題、軍事課題というようなものがおそらく当然のことのように表面化する可能性は十分にあり得る、こういうふうに考えられるのですけれども、なおかつ、大平さんとしては、いま御答弁なさった、やはりじみちにあらゆる状態というものをつくり上げながら進むのか、それともそうした新しい一つの田中訪ソ、訪米という問題を通じて局面の展開というものをはかるチャンスがそれでもなおかつ来ないとおっしゃるのか、その辺いかがでございましょう。
#71
○国務大臣(大平正芳君) 先ほど申しましたようなアジア情勢でございまして、具体的にアジア全体を踏まえた安全保障構想というようなものをいま構想していくという条件が整っていないわけでございますので、今度の田中総理の訪米、訪ソという段階におきまして、安全保障の領域におきまして新たな提言をするとか何とかという、そういう野心的なプラグラムはいま持っておりません。
#72
○渋谷邦彦君 少しく観点を変えて申しますと、ヨーロッパにおきましては、核戦争防止に関する問題、あるいは戦略兵器の制限についての問題、これは言うならば米ソ二大国においてなされた話し合いでありまして、肝心の主たるヨーロッパの国々がこれに参加をしていない。そこでだいぶフランスをはじめ主要国家においては、この問題に対してもたいへん疑惑を持っているというようなことが伝えられているようでございますが、訪米の帰途フランスにも立ち寄ってポンピドー大統領とも会見をするというようなスケジュールが組まれているようでございます。相当今回のブレジネフ書記長の政治的な行動というものを考えますと、おそらくいままでになかったような、きわめてダイナミックな、そして柔軟性のあるこうした姿勢というものがとられているんじゃないかというふうにも考えられる。ところが、受け取る国にしてみれば、いわゆる第三国と申しましょうか、これはアジアを含めてのことでございますけれども、あるいは中近東、あるいはヨーロッパ、非常に微妙な反応を示している。まあ極端な言い回しをすると、この二大国間が将来また支配的なそういう存在になるのではないかというおそれすらもささやかれているというようなことも伝えられておるようであります。そこで、先ほど冒頭に、たいへん私自身もこうしたひとつのあり方というものは歓迎すべき一つの方向である。しかし、そういうまた一方においては、いろいろな国々においての受け取り方がさまざまである。こうしたときに、一体はたして、軍縮にしても、核戦争防止にいたしましても、理想どおりいってもらいたいわけでありますし、またいくであろうと。こういうときに、日本としてさらに高次元な立場に立っての、あるいは国連を中心としたそういう役割りというものが何らかの形で果たせないものだろうか。せっかくいま足がかりができた。足がかりができたはいいけれども、なかなかそれに対して受け入れることができないというような、いろいろな国によって差が出てくると思うのですね。そうしたときに、何も大国意識をするわけではありませんけれども、政府自身もいままで国連中心というような基本的なそういう方向を持っていらっしゃる以上は、さらにこれを実りあるものにするための今後の外交戦の展開というようなものを、また別の面から果たせないものだろうかというふうに考えられますけれども、その点はいかがでございましょうか。
#73
○国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおり、精力的に外交活動を、国益を踏まえてダイナミックに展開していかなければならぬ責任をわれわれは持っているわけでございまして、しかし、そのことは直ちに、先ほど森さんからも御指摘を受けて、待ちの外交ということではもの足りないじゃないかというような御指摘でございましたけれども、問題は成果があがることが目的なんでございまして、飛んだりはねたりすることが芸ではない。事を達する場合にどういう手段を配列してまいりますか、それはわれわれ外交当局が常にくふうをしていかなければならぬことと思うのでありまして、はでにふるまうことだけが芸でないということだけは十分御理解をいただいておると思いますけれども、われわれが因循姑息だからそうだというように受け取らないようにひとつお願いしたいと思います。
 それから、国連等を通じてのやり方もいろいろあるじゃないかということは、私も御指摘のとおりだと思うのでありまして、国連政策について、先般も申し上げましたように、日本みたいな中流国家というのは、外交政策をやる場合に、国連を育てて、国連をささえて、国連を通じて展開していく領域が私は非常に広いと思うのでありまして、国連の場というものを活用するということは、とりわけ大事なことだと考えておるわけでございます。そういう点につきましては、全く私は同感に感じます。
#74
○渋谷邦彦君 少しく前後するようでございますけれども、今回の協定というものを通じまして、確かに画期的な一つのできごとであったろうと思いますし、ぜひともそうした方向に立っての実現を世界が見せてもらいたいものだと、こう思います。確かに、こうした一連の動きというものは、緊張状態から緩和の方向へ向かっていることは事実でございましょう。
 そこでまた、くどいようでありますけれども、この安保条約というよりも、むしろ現在日本を中心とするこの安保体制、日米安保体制というものを、やはり、おそらく大平さんの頭の中、いままで御答弁あった、過去においてもお答えがあった、それを整理して考えますと、近い将来、あるいは検討しなければならない場合がくるかもしれないと。しかし、それが早いかおそいかという問題もございましょうし、日本の緊張緩和への大きな役割りを果たす一環として、何としてもやはりその具体的な一つの方途といたしまして、現在まだ日本の国内にあります基地というものをさらにもう縮少するか、全面的にもう解消するか、そこらあたりまでやはり思い切った、あるいは日米安全保障条約そのものは残るにしても、地位協定、いろいろなものがございましょうけれども、条約そのものは残るにしても、具体的に緊張緩和という方向ならばむしろ形骸化する必要もございましょうし、そのためには、米軍も日本の基地から全部撤退をしていただきたい、撤退すべきがむしろこういった方向にかなう日本の外交姿勢ではないだろうかと、こう思いますけれども、その辺のこれからの取り組み方というものは、やはり従来どおり変更はないものでございましょうか。
#75
○国務大臣(大平正芳君) かねて申し上げておりますとおり、安保条約の運営にあたりまして、基地問題というのは、国内政治との関連におきまして非常に重要な課題だと考えておるわけでございます。これは、一つには国内におきまして都市化がこのように進んでまいりますし、従来基地が設けられた当時とは環境が一変してしまっておるわけでございまして、土地経済もいま異常なまでの緊張を呼んでおるときでございますので、何としても基地を最小限度に、安保条約堅持の上に立ちながらも、基地を最小限度に縮小整理していくことは、国内的な要請から見まして当然の道行きであろうと考えております。
 一方、アメリカにおきましても、ベトナムの戦争は終わりまして、アメリカ軍のアジアにおける存在というものは、どういう程度、どういう態様においてやるかということは、彼ら自身もいろいろお考えになっておると思うのでございまして、さらに拡大するなんということはまず考えられないことでございまして、どのように統合してまいるかということが現実の課題であろうと思っております。
 基地整理の問題は、日米両国の間でも原則的に合意いたしておるわけでございまして、できるだけこれを促進しようじゃないかということで、関東平野計画から始めたわけでございますが、沖繩復帰とともに、沖繩の基地というのはまたべらぼうに多過ぎるわけでございまして、あのままの姿ではとても正常な経済活動、開発計画なんて立つはずがないと思うのでありまして、そういう意味で、この御指摘の点につきましては、相当精力的に進めなければならぬし、現に進めておるわけでございまして、この合意がつき次第、逐次発表してまいるつもりでございますが、相当の規模において実現いたしたいと考え、また、それはできると私は考えておる次第であります。
#76
○渋谷邦彦君 念のために確認をしておきたいんですが、いまも御答弁ございましたように、だんだん基地の形態というものが集約型になってきて、沖繩、岩国を中心としたところにもう集中をされておる。またそれに伴ういろんな問題が起こってくる、公害をはじめとして。決して好ましい状態じゃないことは当然でございますし、いまお話がございましたように、今後精力的にその解消につとめる。ということは、近い将来に全面撤退を含めた考え方で進めるというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
#77
○国務大臣(大平正芳君) そこまで考えていないわけでございまして、安保条約を維持するというたてまえ、それで安保条約の持つ機能というものをそこねない範囲内において考えているわけでございますので、全面的な基地の撤去というようなドラスティックなことを考えているわけではございません。
#78
○渋谷邦彦君 実際問題として、現在戦争が起こり得る可能性というものは、まず当面考えられない。考えられないどころか、それは起こしてはならない。確かに日中、日ソ関係につきましても、平和条約締結というようないま段階に踏み込もうとしておる。こういうことを考えますと、一体基地の存在というものは何のためにあるんだろうという素朴なまた疑問が返ってきます。それで、まあ日米安保条約の取りきめに従ってということではありましょうけれども、これがあるいは近い将来段階的に解消されるものとしても、近い将来いまの勢力の半分ぐらいに減るとか、あるいは三分の一ぐらいに減るとか、やっぱりそのくらいの目標といいますか、先ほどから申し上げているように、いま世界が削減の方向へ向かっていこうとするときに、日本においても、やはり同じようなそういう考え方に立った行き方というものが望ましいんじゃないかということからいま申し上げているわけでございますので、はたしていまおっしゃられた精力的にということは、現在の米軍基地、米軍の兵力、米軍の軍備、こういったものが半分ぐらいに減るのか、三分の一ぐらいに減るのか、その辺はどのように受けとめたらよろしいのでございましょうか。
#79
○国務大臣(大平正芳君) 半分にするとか三分の一にするとかいう目標は、なかなかこれ立てにくいわけでございまして、一つ一つ基地を点検いたしまして、じみちに、あるいは返還、あるいは統合を進めていくわけでございまして、私どもは相当な規模にしたいというつもりでおりますけれども、その限度をどういうところをいま目安にしておるかということに対しましては、大ざっぱなことを申し上げることは慎まにゃいかぬと思います。相当規模、とりわけ、沖繩についてはより精力的にやらにゃいかぬというようなところで、ひとつ御理解をいただければと思います。
#80
○渋谷邦彦君 最後に、これは問題点が全然違うんでありますが、フランスのムルロア環礁における核実験の問題につきまして、日本政府としてもフランス政府に対して抗議をなさったようでありますが、残念ながら、国際裁判の裁定があったにもかかわらず、フランスはこれを強行しようとしているやに伝えられております。もしこれが強行されるということになりますと、たいへん残念なことになろうかと思いますし、特にオーストラリア、ニュージーランドあたりはたいへんなけんまくといいますか、強い姿勢でこれに対する反対をされていると、この点については、日本といえども、これは例外でございませんので、強力な阻止のための申し入れ、あるいはそれによって生ずる――先般ですか、日本とフランスにおける原子力平和利用についての協定が結ばれた直後でございますだけに、今後そうしたような学術交流というようなものに、そういう抗議を強力にやることによって障害が出るのか出ないのか、むしろ出る出ないはかかわらず、この点を強力に推し進めて、実験というものは絶対に行なわないような方向で食いとめるわけにはいかないだろうか、その可能性はどうだろうか、この問題を最後に伺いまして、終わりにしたいと思います。
#81
○政府委員(大和田渉君) 御高承のとおり、日本の核実験に対する基本的な考え方、これはいわゆる、あらゆる国の実験にも反対という態度を過去から現在にかけて常に貫いてきてまいっております。
 フランスの南太平洋における核実験の可能性は、かなり差し迫っているのではないかという判断で、去る二十一日に、駐仏大使から先方に抗議を申し入れております。この抗議の内容は、差し迫っているやに思われるので、ぜひこれをやめてもらいたいという趣旨のものでございまして、にもかかわらず、かりに行なわれた場合には、その生じ得べき損害についてフランスは責任を負わなくちゃならぬということもあわせて述べております。
 その後、御承知のように、国際司法裁判所の中間裁定と申しますか――下りまして、われわれとしましては、その趣旨に沿ってフランスが実験をやめるということを期待するという意味で、この裁定を大いに歓迎しております。ただ、具体的にどういう措置をとってこれを絶対にやめさせるかという点につきましては、豪州あるいはニュージーランドのように、一部実力行使をも辞さないという行き方もありますでしょうし、また、日本は日本の独自の立場に基づいて、過去においてもとったと同じような抗議をするという行き方もあると思います。そのやり方は個々に違っていてもやむを得ないと思いますが、日本のぜひやめてもらいたいという希望だけは十二分に伝えたというふうにわれわれは考えております。
#82
○星野力君 ベトナム民主共和国との間に政府間の交渉をいよいよきわめて近いうちに始められるという話を聞いておりますが、そうでございますか。
#83
○国務大臣(大平正芳君) われわれといたしましては、先般パリ協定の実施につきまして、パリ共同声明が発出されて、協定当事者四者の間で新たな合意が見られたこと、このことは、ベトナムの平和が定着していく一つの方向を示すものでございまして、歓迎いたしておるんでございます。で、この共同声明発出後の事態の成り行きを見ておりまして、適当な時期に接触を持ちたいと考えて、いま検討いたしておりますが、まだ具体的な日時と場所をきめるまでには至っておりません。
#84
○星野力君 いずれにしても、近いうちに交渉は始まると見ていいようでありますが、それまで――その前に、もう少しそれに関連した問題についてお聞きしておきたいと思います。
 ベトナム民主共和国の政府が、在日米軍基地を利用しておるアメリカのパリ協定違反というものに神経をとがらしておることは、前回も申し上げたことであります。兵器、弾薬その他の軍事資材の供給が在日米軍基地から行なわれておるということのほかにも、多くの在日米軍基地を利用した協定違反がベトナム側からあげられておりました。たとえば、ベトナム民主共和国領空への航空偵察、これは領空侵犯でありますが、そのことは、先ほど大臣述べられたパリの共同声明、あそこでもアメリカは今後それをやめると、こう確認されておりますんでわかるわけでありますが、この航空偵察はアメリカの有人、無人の偵察機をもってやられておったのでありますが、その中に、戦略偵察機SR71の北ベトナム領空の偵察ということが問題になりまして、ベトナム側は何回かそれについて発表もいたしております。このSR71は、いまも沖繩の基地に駐留しておるんでございましょうか。
#85
○説明員(角谷清君) 先生御指摘のとおり、五月十三日のパリ共同コミュニケにおきまして、北越の上空に対する米軍偵察機の偵察は停止するということになっております。それで、SR71が沖繩にあるかどうかという御質問でございますけれども、SR71は、沖繩に駐留しておるということは、非公式にわれわれ了解しております。ただ、先生のおっしゃる意味は、本件に関しましては、四月半ばごろでございますか、一部の新聞に、沖繩からSR71が北越に偵察に飛んでいるというようなニュースが――失礼、沖繩でございません、SR71という飛行機が北越の上空を偵察に飛んでおるという記事がございまして、われわれといたしまして、アメリカ側にそういう事実があるかどうかという確認を求めましたら、アメリカ側といたしましては、それについては何ら確認できないというように申しております。したがいまして、われわれといたしましては、何らその点につきましては申し上げる立場にないということでございます。
#86
○星野力君 ベトナム政府は、この問題について何回か発表もいたしております。高くて速くてなかなか落とせないんだというような話もいたしておりました。私は、これが沖繩にあるかどうかをお聞きしたんでありますが、あるというお答えでございますね。これは嘉手納の基地におるわけでございますが、アジアでは、この嘉手納基地以外には駐留しておらない、こういうふうに聞いております。だから、SR71をアメリカ政府は確認しておらぬそうでありますが、これがそういう領空侵犯の偵察飛行をやっておるという事実があるとすれば、これは嘉手納以外にないわけです。嘉手納から飛び出している以外にないんでありますが、こういう事実について、大臣、どうお考えになりますか。
#87
○説明員(角谷清君) SR71なる飛行機が一体このアジア地域のほかにどこにあるかという点につきましては、われわれつまびらかにいたしておりません。それからまた、沖繩からSR71が飛び立ったというようなことは、これは先ほど申し上げましたとおり、アメリカ側から何ら確認いたしておりませんので、われわれといたしましては何ら申し上げる立場にないということでございます。
#88
○星野力君 SR71が世界のどこにおるかなんということは、これはあなた方外務当局として知っておかなければならぬことだし、調べればすぐわかることです。一昨年の沖繩国会におきまして、私もこの問題で質問いたしたことがございます。SR71というのは、戦略偵察機でありまして、社会主義国の上空へ侵入してその領土の偵察をやることだけが任務の飛行機でございます。そういうものが日本の国土に駐留することを認むべきではないということを申したのでありますが、当時の外務大臣の福田さんは、確かにそういう機能は有しておるが、沖繩施政権の返還後はそういう目的にはこれは使われることはない。領空侵犯などをやればこれは安保条約の事前協議などという以前の不法行為である。そんな目的に使われることはないんだ、その機能にワクがはめられる、こういうことを申されたのです。領空侵犯に使うなどということはもってのほかだ、こう大みえを切られたのでありますが、実際はやられておるわけであります。そうでないとしますと、SR71という戦略偵察機がどのような任務に従事するものとしてその駐留を認めておいでになるのか、私は重ねて、こういう国際間のトラブルを必ず引き起こすような偵察機は駐留さすべきじゃないと思うんですが、大臣いかがでございますか。これは大臣にお聞きします。
#89
○国務大臣(大平正芳君) いまお話がございましたパリ新協定におきましても、そういうことはしないという言明があるのでございますから、私どもその言明を順守されることを期待しております。
#90
○星野力君 私、それではいけないと思うんです。これは何もベトナム民主共和国に対する航空偵察だけに使われておるんでなしに、朝鮮民主主義人民共和国でもしばしばSR71の領空侵犯ということを発表いたしております。皆さんよく御存じのはずでございます。こういうものの駐留というものは、外交上の大きな問題としてやはり考えていただかなければならぬと思っております――お答えありませんか。
#91
○政府委員(松永信雄君) 安保条約上駐留しております米軍の行動の範囲は、条約上日本の安全保障及び極東の安全保障に資するためということはございますけれども、他方、いま御指摘がありましたような領空侵犯、あるいは国際法上ルール違反を構成するというような行為が、もしかりにあるとすれば、それが安保条約が合法化しているということはないと思います。しかし、日本におりますアメリカの軍隊がそういう国際法上の違反行為を行なっていると考えることはちょっとむずかしいと思います。
#92
○星野力君 私、この問題またお聞きする機会あると思いますから、きょうはSR71が目的ではないんで、ほかの質問に移ります。
 前にもお聞きしたことと重なりますけど、サイゴン政権を、南ベトナムにおける唯一の政権とサイゴン政権自身は言っておるのでありますが、それはパリ協定の認めるところとも違っておりますし、現実にも反していると思うのであります。そこで、南ベトナム共和臨時革命政府をどのような存在と思っておられるかを、もう一度外務大臣にお聞きしたいのであります。
#93
○国務大臣(大平正芳君) 南ベトナムにおける一つの政治勢力でありまして、パリ協定の当事者であると心得ております。
#94
○星野力君 いまのお答えは、南ベトナムにおける一つの政府、政権というふうにお考えになるということでございますね。
#95
○国務大臣(大平正芳君) 一つの政治勢力であると申し上げたわけでございます。
#96
○星野力君 それはおかしいのですよ。政治勢力であると認めたんであって、政府、政権としてこれを認めることをためらっておられるわけですね、明らかに。政府はパリ協定を尊重すると、こうはっきり言っておられる。パリ協定には何て書いてありますか。南ベトナムには二つの政府、二つの軍隊、三つの政治勢力と、こう言っておるのでありまして、確かに三つの政治勢力の一つを代表しておると思いますが、二つの政府の一つ、これをどうして御認識なさらないのか。その結果は、サイゴン政権に対する一方的な支持をずっと続けられるということでありますが、これはパリ協定が言っておるところのベトナムの平和、民族和合、これを妨害することになると、これははっきりしておるんではないでしょうか。チュー政権をどういうふうにお考えになっておるか知りませんけれども、チュー政権というのは、あれは早晩消滅する政権ではないでしょうか。好戦的な、ファッショ的な、あんまり人民にも好かれておらない。南ベトナムで戦争継続するのを望んでおるなどというのは、軍隊、兵隊だって望んでおらぬでしょう。グエン・バン・チューを先頭とする少数の将軍たちだけなんですから。そういう政権を一方的に支持なさっておるという態度はどうかと思うわけでありますが、さらに進みまして、ベトナム民主共和国の指導者たちはこういうことを言っておりました。アメリカは日本をいろいろの面で南ベトナムの新植民地主義実現のために奉仕させようとしておると。たとえば、日本の企業に南ベトナムにどしどし資本を投下させようとしている。それを私たちは警戒しなければならぬ。何人もの口からそういうことを聞いたんでありますが、それに関連して一つお聞きしたいのは、サイゴン政府はメコンデルタから大陸だなにかけての石油鉱区の採掘権、その入札を外国企業に行なわせて七月二日が締め切りになっておる。参加二十七社のうちには、日本から海洋石油開発が参加しておるのでありますが、この石油の鉱区の入札に対しては、先年臨時革命政府のグエン・チ・ビン外相がそういうものを認めないという声明をやっております。そういう状態の中でパリ協定が結ばれ、しかも、パリの共同声明が六月十三日に署名されておる。そういう事態の中で、少なくとも日本はこういう入札には参加を取りやめるべきではないかと思いますが、政府の御見解いかがですか。
#97
○説明員(西田誠哉君) 私どもといたしましては、わが国の、先生御指摘のように、海洋石油が他の石油会社とともに入札に参加しているということは承知しております。この南ベトナム沖合い地域は、有望な油田地帯というふうに見られておりますので、本件の入札の成り行きには非常な関心を持っておる次第でございますし、私どもも、外務省といたしましては、この入札のこまかい技術的な点については十分承知いたしておりませんが、わが国の企業がこういった石油利権の入札に参加するということは、非常に好ましい事態ではないかというふうに考えておる次第でございます。
#98
○星野力君 好ましいことだと、こうおっしゃるんですね。
#99
○説明員(西田誠哉君) そうでございます。
#100
○星野力君 私が言っておるのは、ベトナムの事態がこういうようにパリ協定ができ、また、パリの共同声明が発出されておる、こういう中で、パリ協定の実現を妨害するようなこういうこと、臨時革命政府の側がまっこうから反対しておるようなことに日本が参加すべきじゃないと、こういうことを言っておるんです。これは私大臣にお聞きしたい。
#101
○国務大臣(大平正芳君) パリ協定は、星野先生も御承知のように、南ベトナムの民族の自決権というものを認めて、そしてサイゴン政府と臨時革命政府と第三者と合わせて民族和解評議会というものをつくって、そしてみずからの政治的将来を決定するというブループリントをあすこにさし示しておるわけでございます。したがって、私どもはこの三者が話し合って、南ベトナムの政治形態というものをつくり上げていくことを期待いたしておるわけでございまして、そのことを、南ベトナム問題はそういう方々が御相談願ったらいいことなんでございまして、われわれが裁判官の立場になって、これがいい悪いなんて言う立場ではないわけで、パリ協定をベースにいたしまして、インドシナ政策は用心深く進めてまいりますという立場を堅持しております。
#102
○星野力君 海洋石油開発という会社は、政府とこれは無縁な会社ではないと思いますですね。石油開発公団が資本金の半額を出資しておる。石油開発公団は、これは全額政府出資の会社でありますよ。そういう会社が入札に参加してここに利権を設定する。大体南ベトナムの政治情勢を見通しても、こういう利権が維持できるかどうかもあやしいことだと思うんです。政府の態度としても、私はこれはそうけっこうなことで済まされる問題ではない、将来必ずわざわいがくると、こう考えます。
 時間もないのでございますから切り上げますが、ベトナム民主共和国の指導者たちは、日本政府との国交樹立の問題に関連して、先般も申し上げましたように、日本政府が南ベトナム共和臨時革命政府を正当に扱うことを求めておるんです。外務大臣の、臨時革命政府は南ベトナムにおける一つの政治勢力であるという認識では、これは私だめだと思うんです。ベトナム民主共和国がだめだと言うことじゃなしに、パリ協定そのものに照らしてもこれはだめだと思うんですが、一つの政治勢力という考え方、これはここで改めていただくわけにはいかぬのですか。大臣は、あれでしょう、衆議院での御答弁を見ましても、ときにはこれは政府として認めておられるんじゃないですか。いかがですか。
#103
○国務大臣(大平正芳君) パリ協定当事者の調印にあたって政府という名前が使われておることも承知いたしておるんです。問題は、日本政府がサイゴン政府それから臨時革命政府どちらか一つを選ぶか、両方を選ぶかというのは日本政府の問題でございまして、どこからもお指図を受ける筋合いのものではないと思うんです。現在両方を認めておる国というのは、私の承知しておる限りではないのでありまして、いずれか一方を選んでおるようでございまして、あなたの言う論理が正しければ、サイゴン政府だけを認めている国というのは全部パリ協定違反ということになるので、そんなばかなことはないと思います。
#104
○星野力君 大臣、そんなむちゃなことを言っちゃいけませんですよ。私はいまここで外交的にこの臨時革命政府を承認しなさい、こう申しておるんじゃなしに、事実の認識の問題として、あなたはこれは一つの政治勢力だ――政治勢力には違いないでしょうけれども、パリ協定が言っているような一つの政府である、政府でなければ大体ああいうパリ協定などというものもできるはずないわけなんですから、一つの政府という事実をお認めになるかどうかということをお聞きしているんで、外交的にこれは承認しろ、サイゴンと両方承認しろなどということは私全然聞いておりはしませんよ。
#105
○国務大臣(大平正芳君) たいへんよくわかりました。そういう意味でございますならば、私どもは政府の立場で政権を認めるということになりますと、政府の承認につながりますから、そういう表現は避けておるわけです。
#106
○星野力君 事実としてそういう政府があるということは承認なさるわけですね。
#107
○国務大臣(大平正芳君) 事実としてそういう政治勢力があることはよく承知しております。
#108
○星野力君 いや勢力じゃない、政府……。
#109
○国務大臣(大平正芳君) だから私がそういう政府があるということを認めておるのだということになると、これは政府の承認につながることになるから、そういう表現は私は差し控えておるということを申し上げておるわけでございますから、御理解をいただきたいと思います。
#110
○星野力君 これは時間があれですからこれでやめますが、これは続けますよ。
#111
○委員長(平島敏夫君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後零時三十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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