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1972/07/03 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第17号
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1972/07/03 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第17号

#1
第071回国会 外務委員会 第17号
昭和四十八年七月三日(火曜日)
   午前十時九分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         平島 敏夫君
    理 事
                木内 四郎君
                佐藤 一郎君
                田  英夫君
    委 員
                岩動 道行君
                大竹平八郎君
                杉原 荒太君
                八木 一郎君
                矢野  登君
                山本 利壽君
                小谷  守君
                羽生 三七君
                渋谷 邦彦君
                星野  力君
   国務大臣
       外 務 大 臣  大平 正芳君
   政府委員
       外務省アジア局
       長        吉田 健三君
       外務省アメリカ
       局長       大河原良雄君
       外務省欧亜局長  大和田 渉君
       外務省条約局長  高島 益郎君
       外務省条約局外
       務参事官     松永 信雄君
       外務省国際連合
       局長       影井 梅夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関
 条約(ATA条約)の締結について承認を求め
 るの件(内閣提出、衆議院送付)
○職業用具の一時輸入に関する通関条約の締結に
 ついて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送
 付)
○展覧会、見本市、会議その他これらに類する催
 しにおいて展示され又は使用される物品の輸入
 に対する便益に関する通関条約の締結について
 承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○国際情勢等に関する調査
 (田中内閣総理大臣の訪米、訪ソと日本の多極
 外交に関する件)
 (アジア集団安保構想、日ソ平和条約問題、安
 全操業等に関する件)
 (海洋法会議に関する件)
 (核兵器不拡散条約批准問題に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)の締結について承認を求めるの件
 職業用具の一時輸入に関する通関条約の締結について承認を求めるの件
 展覧会、見本市、会議その他これらに類する催しにおいて展示され又は使用される物品の輸入に対する便益に関する通関条約の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
 以上三件を便宜一括して議題といたします。前回に引き続き、質疑を行ないます。質疑のある方は御発言願います。
 別に御発言もなければ質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(平島敏夫君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより三案について一括して討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#4
○委員長(平島敏夫君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、職業用具の一時輸入に関する通関条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#5
○委員長(平島敏夫君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、展覧会、見本市、会議その他これらに類する催しにおいて展示され又は使用される物品の輸入に対する便益に関する通関条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#6
○委員長(平島敏夫君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、三案件についての審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(平島敏夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(平島敏夫君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
#9
○田英夫君 今国会が終わりますと、田中総理大臣の訪米、訪ソ、訪欧という一連の日程が予定されているようでありますけれども、きょうはこの問題に関連をして御質問をしたいと思います。
 まず、訪米にしろ訪ソにしろ、特にこの二つの国に対する総理訪問ということは、訪ソの場合は非常に久しぶりのことでもありますし、問題も山積をしていると思います。また、訪米のほうも、日米間の経済問題をはじめとするさまざまな問題が必ずしも円滑にいっていないという状況がある。こういう中での、だからこそ訪米、訪ソをされるわけでしょうけれども、そういう状況で、その前に大平外務大臣がそれぞれ事前に外相会談というような形で、準備といいますか、そういうことをなさるおつもりがあるかどうか、伺いたいと思います。
#10
○国務大臣(大平正芳君) 訪米、訪ソともに、先方の御招待がございまして、それに応じて参るわけでございます。御指摘のように、米ソ両国との間にはいろいろの問題が山積いたしておりますこと、御指摘のとおりでございます。本来ならば、私が参りまして地ならしをするということも考えられないわけではないのでございますが、国会その他の日程上、そういう時間をとることがたいへんむずかしゅうございます。
 ただしかし、この十六日、十七日には、アメリカの閣僚数名が、日米貿易経済合同委員会を東京で開きますので、ここで日米関係全体にわたりましての討議が行なわれるわけでございますので、特に私が参らなければならぬという筋合いのものではなかろうと私は思っております。
 ソ連の場合は、念を入れて私が参るべきであるかもしれませんけれども、なかなか日程の都合がつかないというわけでございますので、事務当局レベルにおきまして周到な用意をした上で訪ソをお願いしようと思っております。
#11
○田英夫君 アメリカのほうの場合は、日程的にも確かに迫っておりますし、閣僚の日米合同委員会がありますので、そういう問題もあるかと思いますが、ただ私ども考えまして、五月のニクソンの外交教書一つ取り上げてみても、まあアメリカ側の日本に対する態度というのは非常にきびしいと同時に、まあ、あのときに大平外務大臣も、日本に対する理解が不足しているようだということを帰国されてすぐの記者会見で発言されたわけですけれども、こういう問題があるだけに、はたして合同委員会の席で、あるいはその機会をとらえての接触で済むのか。もう一つ心配いたしますのは、ワシントンにおける体制が新しくなろうとしている事態に対し、こういう状態で、いま非常に重大な状況になっている日米外交関係を調整されるときに、そう言ってはあれですが、田中総理大臣は、内政の田中、外交の大平というふうにマスコミなどが言うように、必ずしも外交問題について深い御経験があるということではない。そういう中で田中さんが総理大臣としていきなり――いきなりと言うのはあれかもしれませんが、いきなり行かれて、いまのこの日米間の状況をうまく円滑に話し合いをすることができるのかどうか、それを非常に懸念するのですが、これは、そういう点は大臣はどういうふうに考えておられますか。
#12
○国務大臣(大平正芳君) 去年の総理訪米の場合は、御案内のように、たいへん日米経済関係が緊張に及んでおりまして、われわれもたいへん足取りが重かったのでありますけれども、去年問題になりましたラインにつながる問題は、だいぶ改善の徴候が見えてまいりましたことは御案内のとおりであります。問題は、むしろ新しい問題が出てきたように思うのでありまして、一つは、政治的な問題といたしましては、いま御指摘のように、アメリカが世界に向かってその外交姿勢を明らかにしたわけでございますので、まあそれに対してどういう取り組みをいたすかという問題。経済の面におきましては、各種の重要資源が不足がちになりまして、むしろ逆に日本のほうからアメリカに対して安定的な確保の保証を取りつけなければならないというような問題に直面いたしておるわけでございます。われわれとしては、前者の問題につきましては、あらゆる角度から日本の立場を踏まえた上で、慎重に取り組みたいと思いまするし、後者の問題につきましては、精力的に伝統的な友好関係、伝統的な顧客の立場を主張いたしまして、安定供給を可能な限り保証してまいることが国内の物価その他の経済政策との整合をはかる上で非常に大事だと考えておるわけでございまして、そういう方面に全力投球をしてまいらなければならぬと考えておりまするし、そのことにつきましては、総理もいま一番真剣に考えられておる方でございますので、私どもこれを補佐いたしまして、それなりの成果を期待できるのではないかと考えております。
#13
○田英夫君 天皇訪米の問題も何か――うやむやというとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、すっきりしない形でそのままになっているわけですが、これは、首相訪米の機会に何らかの形で再燃するのか、あるいは処理されるのか、その辺はどうですか。
#14
○国務大臣(大平正芳君) この問題につきましては、日米両国政府の間におきましては理解に狂いがないわけなんでございます。言いかえれば、いつ実現するかという問題を両国政府の間でやりとりしておる間に表に不幸にして出まして、外野席が騒いだわけです。つまり、事柄がきまっておってそれが延びたとか、あるいはきまっておったものをキャンセルしたとかいうことではないわけなんでございまして、そのことは日米両国政府の間ではよく了解がついておるわけなんでございます。しかし、このように、不幸にして外で問題になったものでございますから、一応本件をめぐる事情はちゃんとあいさつしておかなけりゃならぬと考えておりますけれども、問題も今度の首相訪米によってどうこうなるというような問題ではなくて、もともとある問題が続いておるわけでございますので、そういうラインの上で一そう理解を整えておくということがわれわれの任務であると考えております。
#15
○田英夫君 そうすると、話は消えたわけではないと、ただ時期の問題だと、こういうふうに考えていいわけですか。
#16
○国務大臣(大平正芳君) さようでございます。
#17
○田英夫君 話が変わりますけれども、いまアメリカの問題のお話の中で、資源問題に触れられましたけれども、この一つの問題をとっても、アメリカ、中国、ソ連、こういった中での日本という関係はどうしても出てくるわけで、アメリカも同様でありましょうけれども、大平外務大臣のよく言われる、いわゆる多極化の中に日本がいるという、そのまん中に日本がいるということを考えての外交ということを言われるようでありますけれども、その具体的なこれからの進め方ですね、非常に大きなあれですけれども、外交の基本ということになりますけれども、こういうことはどういうふうにお考えになっているのか。多極外交というものの基本をどうお考えになっているのか、この機会に伺っておきたいと思います。
#18
○国務大臣(大平正芳君) 去年までの問題は、日本が一億のこの市場をできるだけ開放するようにということが、つまりアメリカ側の絶えざる要求であったわけでございます。で、日本といたしましても、より自由な貿易体制のもとで経済交流が拡大していくことがわが国の国益でもあるという趣旨から、貿易や資本の自由化も漸次進めてまいったわけでございまして、その限りにおきましては、緊張がずっとトーンダウンをされたと思っておるのでございますが、先ほど私が申し上げましたように、新たな緊張が出てきたと、それは全然問題が逆な方向で出てきたわけでございまして、アメリカからわれわれは資源を確保せにゃならぬという立場になってきたわけでございます。で、御参考までに申しますと、いま日本の主要輸入品の中でアメリカの占める割合、一九七二年申しますと、小麦が四七・四%、トウモロコシが六九・七%、コーリャンが五十七・三%、綿花が一七・九%、鉄くずが七三・八%、皮――原皮ですね、皮が七三%、大豆が九一・五%、木材が三六・七%、粘結炭が四三・六%、針葉樹が六〇・三%、こういうようなシェアを持っておるわけなんでございまして、いままで外貨があれば確保できたわけでございますけれども、アメリカの国内の物価政策、インフレ対策等から、資源を大事にしなきゃならぬという立場で、規制の方向に向いておるわけでございますので、われわれとして他に供給源を、豊富な安定した、価格的にも数量的にも品質的にも、それから期間的にも、より安定した市場があればこの問題はそんなに、さして痛手ではないわけでございますけれども、いまのところ、あらゆる食糧、原料を見てみますと、代替市場というものは非常に狭いわけでございます。したがって、どうしてもアメリカに主眼を置いた資源確保策を考えていかないといけないわけでございます。多極化と申しまして、われわれは供給源をできるだけ分散することは賛成なんでございます。そういう方向には努力を怠ってはならないと考えておりますけれども、当面、残念ながらアメリカ以外、この種の食糧、原料につきまして安定した供給源というものが期待できない状況でございますので、何としてもアメリカからの安定確保の道を保証するということにまず全力投球をしなきゃならぬのじゃないか、そう考えておるわけでございます。近く御審議をいただく濃縮ウランにいたしましても、いまアメリカ以外に安定供給源がないわけでございまして、そういう立場から申しますと、従来の日米関係というものよりもっと日米関係が大事になってきたというような感じをいま強くいたしておるわけでございます。そういうことで精一ぱいやりまして、大きな支障のないようにどうしても持っていかなきゃならぬと考えておりまして、その点につきまして十分の理解を先方にも求めておりますが、相当の御理解はいただいておると思うのでございますが、問題は、一般的な理解だけでなくて、もう時期的に数量的に確保するというきめこまかい努力を間断なくやっていかなきゃならぬ、そういう感じを持っております。
#19
○田英夫君 おっしゃるとおり、日本からの輸出の問題が焦点であったと思われた日米関係が、逆の一つの大きな問題が出てきて、特に大豆の問題なんかは国民的な関心を集めているわけですけれども、そういう状況の中だからこそ、ある意味では大臣のおっしゃる多極化外交、多極外交といいますか、ある一国だけにたよる状況というものになると、相手の側はどうしても姿勢が強くなるということになる、これはまあ非常にしろうと的な判断かもしれませんけれども。たとえば濃縮ウランの問題にしても、ソ連のほうからも話があって、土光さんの団との話があったようで、大臣も土光さんにお会いになったという報道がありますけれども、これなんかはソ連ともそういう話がある中でのアメリカとの話し合いということになってくると、こちらの姿勢といいますか、背景が強くなるわけでしょうが、中国との場合もほかの問題で当然あり得ると思います。こういう点は、いまのその濃縮ウランの問題は、ソ連の問題はどうですか。具体的には実現の可能性があるのかどうか、お伺いします。
#20
○国務大臣(大平正芳君) あれは土光さんを団長とする原子力の視察団が先方に参りまして、先方との話し合いで濃縮ウランを供給してもいいというサゼスチョンがあったのでございますが、問題はソ連の供給能力はソ連の供給能力がまだ視察団には明らかにされておりません。つまりいままでソ連は海外に濃縮ウランを商業ベースで売り渡したという実績を私ども寡聞にして知らないわけでございまして、一体どれだけの分量がどれだけの期間にわたって、しかもどれだけの価格で確保できるかというような点になると、まだ全然そのあたりは究明されていないわけでございます。それから査察の問題も、どういうメカニズムで査察を実行するのか、そのあたりもまだ不明なのでございまして、そういった点を視察団が明らかにされたところは一ぺんよく聞くように、それからまあ外交ルートを通じましてソ連側にこっちのまだ不明なところは漸次教えていただくようにしたいと思っておりまして、いま直ちに政府間の協定にまでいくというような段階では私はまだないと考えておりまして、いまは残念ながらもう当面アメリカからの供給を確保するという以外にその道がないので、今国会で原子力協定をお願いしているわけでございます。
#21
○田英夫君 それも、濃縮ウランの問題も田中訪ソの機会の一つの話題といいますか、問題になりますか。
#22
○国務大臣(大平正芳君) これはしかし、去年の秋から交渉いたしまして、交渉妥結しまして、それで協定の姿はできておるわけでございまして、そのベースの上で今度は電力会社と向こうの原子力委員会のほうでその協定を踏まえて契約を結ぶ段階でございますので、総理にお願いするというような性質のものでは私はないと考えております。
#23
○田英夫君 いや、訪ソのほうです。ソ連のほうはどうなりますか。
#24
○国務大臣(大平正芳君) まあつまり、問題がもう少し明らかになってきて話題にのぼせられるまでになるかならぬか、それはこれからの問題だと思います。
#25
○田英夫君 その訪ソの問題につきましては、松前重義さん、元参議院議員を通じてのソ連側の連絡というのがあったようでありますけれども、まあアジア安保体制といったグローバルな問題を話し合おうじゃないか、北方領土というような具体的な問題はそのあとだという態度の表明があったというんですが、これは大臣も具体的にお聞きになっていますか。
#26
○国務大臣(大平正芳君) 松前さんから近く会いたいという御希望は漏らされておりますけれども、まだお目にかかっておりません。
#27
○田英夫君 すでにこの問題は報道はされておりますけれども、日本側として、政府として、そういうソ連側の態度をどういうふうにお考えになるのか。グローバルな問題だけを話そうということになりますと、だいぶ従来政府がお考えになっていた田中訪ソの態度と違ってくるように思うんですけれども、これはいかがですか。
#28
○国務大臣(大平正芳君) これはこの前の委員会でもお話し申し上げましたように、一九六九年の六月の党大会でブレジネフ書記長が言われたこと以上に私ども承知していないんです、内容については。その意味は、要するに、アジア安保構想を考えるような時期がきたんじゃないのかという一つの提言でございまして、それはどういうメカニズムを持っておるものか、それから既存のいろいろの安全保障のワク組みとの関係がどうなるものか、そういった点については一向明らかにされていないわけなんでございます。で、私どもの感じといたしまして、ヨーロッパにおいては一応安全保障構想というようなものが相当コンクリートな形で議論されておるのでございますけれども、アジアの場合は、まだ熟していない状況でございまして、アジア安保を議論できるようなアジアに早くなりたいものだと思っておりますけれども、まだそんなところまでいっていないんですね。たとえば、日中の国交を持ちましたけれども、まあ過去は一ぺん清算してこれからの新しい日中関係を、友好関係をつくり上げていこうじゃないかということで実務協定等から始めているわけでございますが、まだ日中間で、それじゃアジア安保体制についてお互いに意見の交換をしようじゃないかというところまでいっていないわけなんでございまして、問題は、とてもそういう段階になるというようなことはまた容易ならぬことだと私は考えております。ただ、ソ連にしても、中国にしても、米国もそうでございましょうけれども、アジアが安定するということを望んでおられると思います。だから当面撃ち合いなどがないようなまずアジアにして、現状を少し落ちつけて、それで、そういう方向にいっているわけでございますから、そういう中でアジア安保構想をみんなが探求しようじゃないかというような雰囲気が漸次手がたく出てまいることが私は望ましいと思っております。
#29
○田英夫君 おっしゃるとおり、いまの状況の中で、中ソの関係などを中心にして考えたときに、いまの状況でアジア安保体制ができるとはだれも思わないと思うのですが、そういう中でなぜソ連側が今度の日ソ会談、田中訪ソの機会にこの問題を話そうと、こういうふうに言ってきたのか、むしろ日本側が北方領土を含めた平和条約への道を話し合おうという態度でいるときに、非常に一挙に、まさにグローバルな問題へ飛んでいっているわけですが、それには何らかの意図があるに違いないと思うのですが、この辺はどういうふうに判断しておられますか。
#30
○国務大臣(大平正芳君) 正直に言ってよくわかりませんので、まあそういう問題も、先方の意図されておるお考え方というのは十分お聞きしてみなければならぬと思います。
#31
○田英夫君 ちょうどそういう話題になりましたので、この機会に伺いたいのですが、いままさに欧州では全欧安保会議が開かれているわけですけれども、これに対する大臣の御見解、アジアにある日本から見てあの状況、そしていまアジア安保体制ということがソ連から言われてきているこの状況の中で、あの問題をどういうふうにお考えになりますか。
#32
○国務大臣(大平正芳君) ヨーロッパにおきまして、第二次世界大戦後の状況というものが一応落ちついてまいりまして、全体としての安全保障、さらにその上に東西相互の兵力、兵器の削減というような問題を議題にして、それがどういう成果をあげるかはともかくといたしまして、そういう議題で取り組むことができるようになったことは私どもも歓迎いたしております。その成り行きというものを注目いたしておるわけでございますが、ヨーロッパを固めておいて、しかしアジアは別だというのも非常に困るわけでございますので、われわれはともかくアジアに事がないことをまず欲するわけでございますので、現在のアジアにおきまして、かすかながら緊張緩和のきざしも出ておるわけでございますし、大国筋もアジアの安定というものを少なくとも願っておるように思える今日でございますので、今日の状況をまず固めながら、用心深く、それをそこなわないで、どこまで次のステップが踏めるか、そういう点を慎重に考えていくべき段階であろうと思うし、そういうことについて大国筋はもとより、関係国みんなの理解を求めるように、日本としても応分の努力をしなければならぬと思っております。
#33
○田英夫君 どうも従来からの癖でといいますか、世界の動きを米ソ二大超大国を中心にして考える考え方がどうしても一般に抜け切れないのじゃないかということですね。全欧安保会議というようなものも、ソ連がヨーロッパを安定させておきたいという希望の中でというふうに、そういう要素がもちろんないわけではない、むしろ非常に大きいわけでしょうけれども、同時にしかし、ああいうものができてきた、ヨーロッパがああいうふうに固まってきた中には、ヨーロッパ諸国の非常な努力と配慮もあったし、特に西ドイツのブラントの東方外交というものが一つの大きな踏み台になってきたと、こういう考え方もできるのじゃないかと思うのですね。こういう世界の動きに対する考え方の基本みたいなものを変えてこないといけないのじゃないか。世界は中国を含めた三大国で動いているとか、三極外交だとかいうことじゃなくて、この意味でも多極外交だ、こう考えるべきだという意味で申し上げるのですけれども、そういう中で日本の外交はというふうに考えていきますと、アジアの中で、今度のアジア安保体制――ソ連が言っている意味とは別に、全欧安保体制というものとの関係が日本を中心といいますか、自主的な日本の立場を考えて出てくるのじゃないか、そういうことをちょっと大臣に伺いたかったんですが、そういう点はいかがですか。
#34
○国務大臣(大平正芳君) そういう壮大な外交を展開するような力は私どもにはありませんけれども、私どもはアジアの問題というのはスケールも大きいし、内容も複雑だし、これはもう手に負えない問題だと思います。したがって、アジアはアジア人だけで処理できると、遺憾ながらそういう問題ではないように思うのでございまして、したがって、米ソはもとよりのこと、ヨーロッパ各国も含めまして、多くの国の理解と協力がないといけないのじゃないかと、そういう理解と協力を取りつけていく仕事は日本にも相当私はあるのじゃないかと思っておるわけでございまして、まず、そういうアジア問題という問題についての世界的な関心、健全なアプローチというようなものをつくる零囲気、零囲気をつくるということに日本は日本なりの役割りを果たさなければいかぬのじゃないかということをまず考えます。しかし、アジアの当面の貧困の克服にいたしましても、戦禍に荒らされた地域の復興にいたしましても、これまた世界的な規模における協力がないといかぬわけでございますけれども、この面につきましては、奉加帳にやっぱり日本というのは相当巨額の記入をしなければならぬ国であると考えておりまして、そのことが他の地域の国々の協力を求める呼び水にもなるんじゃないかという意味で、その方面につきましては、われわれは武力を持たぬ国といたしまして、相当真剣に対処していかなければいかぬと思っておるわけでございまして、そういう努力の道程の中で、アジアはアジアに、アジアの状況に適した安全というもののブループリントがみなの間で徐々にでき上がってきて、それが固まる方向にまいることをわれわれは期待いたしております。
#35
○田英夫君 そういう意味で、大平さんのいまおっしゃったことを積極的にお進めになる。一つのムードをつくるとおっしゃいましたけれども、そういう意味でほんとうに外交は一つのムードをつくることが大事だと思いますが、一つの焦点は、国交回復ができた中国との関係をさらに眠った形にしてしまわないというムードですね、活気を帯びた状況に置いておくというムードづくりが一つ非常に大きな問題じゃないかと思いますが、その点で、まあはっきり申し上げればもの足りなさを感ずるし、航空協定一つとってみても、なかなかはっきりしないという気がするのですが、そういう状況の中で田中総理は訪米、訪ソ、欧州訪問と、こう予定をされているとなると、田中訪中ということはないわけですね。中国が欠落をしている。非常に大きな問題点が一つ落ちていると思いますが、この訪問外交ということを一つとってみても。どうもそうなると、大平さんが行かれる、少なくとも大平さんが行かれて、この積極的な状況を維持なさる必要があるのじゃないかと、こう想定をするんですけれども、そういうお気持ちがありますか。
#36
○国務大臣(大平正芳君) 私は、日中関係は先ほど申しましたように、過去を清算して、それで前向きの友好関係を長きにわたって固めていかなければいかぬわけで、そのためには、両国の十分のこなれた理解が要ると思うのです。いいことも悪いことも十分知り合うということ。そして十分フランクに話ができるということが望ましいと思っておるわけでございまして、国交正常化ができたからこれを次、これも次、これも次というように矢つぎばやに早くこれを仕上げにゃならぬという、私はあまり拙速主義じゃないんです。十分こなれた理解の上に立たぬと、せっかくできたものも問題をはらんだものでは困るわけでございますので、十分こなしてやりたいと思っておりまして、はたから見ておりますと、多少はゆっくりし過ぎるじゃないかという御批判は、十分私も皆さんのお気持ちもわかるわけでございますけれども、それでもなおやっぱり十分こなれた理解の上に立って、ワーカブルなものをつくっていきたいと考えておるわけでございます。
 で、そういうことは、政府といたしましてもいま努力をいたしておるわけでございますが、はでな首脳外交のスケジュールにいまそういう、のせる段階まできていないのでございますけれども、近くでございまするし、いつでもおいでもいただいたり、われわれも行ったりすることはちっともやぶさかでないわけでございますので、必要が生じますならば、訪中することは私はちっとも差しつかえないと考えております。田中総理の場合は、ほかの国々から、ソ連やヨーロッパの国々、東南アジアの国々、方々からいま御招待がたくさんきておるわけでございまして、逐次先方の都合を聞きながら、国内政治との関連もございますが、できるだけ時間をつくってお出ましいただきたいという意味で、こちらからせっついてお願いしておるわけでございまして、訪中をことさら考えていないとか何とかいうわけではないんで、まず御招待先で長い懸案になっておるものから逐次やっていくという、ごくあたりまえのアプローチをやっているということでございます。
#37
○田英夫君 きょうはどうも訪問外交から入っているものですから、見方がどうしてもそうなるかもしれませんけれども、まずアメリカの場合は非常にそういう点がはでに動きますんで、必ずしもアメリカのまねをする必要もないし、そういうやり方はまた独自のやり方ができるわけですけれども、中国との問題についても、一方でブレジネフとのああいうことが終わった直後に、キッシンジャーが間もなく北京を訪問するという発表をしているし、また、ニクソン大統領が黄大使ですか、これを西部ホワイトハウスに招くという発表もきょう報道されているようです。そういう形で、まあ何かこう非常に動きをいつも持っている。まあ大平さんのおっしゃる意味もよくわかりますが、日中関係というのは大きな将来を見通してあわてる必要はないということはわかりますけれども、同時に、やはり国交回復ができた、そのホットな燃えている状況をさめさせないということも当然人間同士の動きですから、考えなくちゃいかぬという気がしますので、そういう中で客観的に見てて航空協定一つ取ってみても、どうも冷え過ぎているんじゃないかという、まあ大使交換が終わったあと、廖承志さんの訪日というような形のことは、これはむしろ政府とは無関係にありましたけれども、政府間の動きは非常に静か過ぎるのじゃないかという気がするんですね。そこで伺ったわけですが、こだわるわけじゃありませんけれども、大平さんがおいでになるとか、あるいはもっと非常にはでかもしれませんが、周恩来首相の訪日を求める、お招きするというような、こういうことはあっても決してふしぎではないと思うんです。そんなことはいまのところは全くお考えになっていませんか。
#38
○国務大臣(大平正芳君) まあ近い国でございまして、首脳間の往来というようなものをあまり固く考えないで、必要に応じてやることは当然だと私は考えております。
#39
○田英夫君 そうすると、場合によってはといいますか、時期が熟せば周恩来首相の訪日を、まあ招くというようなこともあり得るというふうに考えていいわけですか。
#40
○国務大臣(大平正芳君) 当然、そう考えてしかるべきことと思っています。
#41
○田英夫君 さっき申し上げたんですけれども、大平さんが多極外交ということをおっしゃる意味を私も正しく理解したいと思うんで、ずっと伺ってきたわけですけれども、アジア一つとっても、やはり中国との関係というのはやはり中心的な柱になってくる。それが非常に活発な活気を帯びた状況が保たれているという状況にあってこそ、ソ連との関係も、あるいはアジア諸国との関係もそういう中でいい方向に行くんじゃないか。たとえば朝鮮半島の問題一つとってみても、前回の委員会まで続けてその韓国問題をかなりきつい形で申し上げましたけれども、やはり中国との関係が活気を帯びているという状況の中で朝鮮問題もいい方向へ進んでいくんじゃないかということが言えると思うのですよ。
 で、時間がなくなりましたので話が変わりますけれども、報道によりますと、北ベトナムとの国交樹立交渉を今月中にも開始したいという御意向だというふうに報ぜられておりますが、これは事実ですか。
#42
○国務大臣(大平正芳君) パリの新協定の行くえをこの間から見ておったわけでございますが、これもできたようでございまするし、遠からず接触をやりたいと思っておりますが、いま事務当局で検討していることと思います。遠からずやりたいと思っておりますが、まだいつごろからやるか、場所をどうするかというところまでは固まっておりません。
#43
○田英夫君 それは、パリで接触をしていくわけですか。
#44
○国務大臣(大平正芳君) 一応パリあたりが適当ではないかと考えておりますけれども、まだしかし、いよいよ接触を持ちまして先方の意向をよく聞かなければいけませんので、どこでやるかを。こちら側がひとりぎめでするわけにいかぬから。
#45
○田英夫君 話があちこち飛びますけれども、朝鮮の問題については、ニューヨークに朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮のオブザーバー事務所を開設することが二十九日ですか、承認されておりますけれども、こういう形の中で、いよいよ、前回も話に出ましたような国連を舞台にした朝鮮問題が具体的に出てくると思います。田中総理大臣が衆議院の外務委員会で、これも二十九日ですが、金日成主席の提案は積極的だと評価するという意味のことを言われたようであります。田中総理はどういう意味でこれを言われたのか、大平さんとしてはどう判断しておられますか。
#46
○国務大臣(大平正芳君) それは申し上げておりますように、統一の道標といたしまして、民族の統一を南北とも希求されておるわけでございまして、そういうことをああいう形で言及されたものと考えておりまして、その限りにおきまして、総理はそういう評価をされたと思います。
#47
○田英夫君 大平さんは、この前この委員会では非常に慎重な発言をされたと思うんですけれども、田中さんの発言は非常に積極的に受け取られるわけですよ。その辺のところですね、どう考えたらいいのか、非常に迷いますので。韓国との関係を考え、同時に、しかし金日成主席の提案というのは、高麗連邦共和国をつくるという問題と、そして国連加盟については――当面朝鮮問題についての討議にはそれぞれ代表を送って参加するけれども、加盟ということになると一つの朝鮮として、高麗連邦共和国として加盟をすべきだと、こういう発言でありますから、これを田中さんが積極的に評価するということを言われたとすれば、どの点を評価されているのか。具体的な問題まで評価されたとなれば、かなり大きな朝鮮問題に対する転換と考えなくちゃいけないと思いますが、その辺迷いますので、はっきりさせていただきたいと思います。
#48
○国務大臣(大平正芳君) まあ田中総理がどういう気持ちで言われたか、私もまだ聞きただしておりませんけれども、統一は朝鮮民族全体の希求される道標であるということには変わりはないと思っております。それから国連におきまして積極的に南北が出まして討議しようという姿勢になれたこと、これも評価に値すると私は考えております。しかし、いずれにいたしましても、国連加盟の問題にいたしましても、今後の南北の対話がどのように進展してまいりますか、これは両当事者の問題でございまして、われわれがいまの段階でとやかく言うべき問題ではないと思いますので、私といたしましては、今後、南北対話の進展を十分見守りながら、日本の朝鮮政策というのは考えていきたいと申し上げているわけです。
#49
○田英夫君 どうもありがとうございました。
#50
○渋谷邦彦君 前回に引き続きまして、きょうも、ただいま問題点になりました田中総理の外遊について若干お尋ね申し上げたいと思います。
 ただいまも質疑を通して伺っていたわけでありますが、今月末訪米を予定をされておるわけでありますが、先ほどの御答弁を伺っておりましても、いろいろ問題が山積をしているというふうに判断されます。こうした山積される問題がとかくすると非常に解決がおくれている。特に経済関係についてもそのようなことが明確に言えるのではないだろうかと思います。まあこうしたところに何と申しますか、コミュニケーションギャップといいますか、これもいままでいろんな角度から指摘されているとおりでありますけれども、何か見ておりますと手の打ち方が常に後手に回っているのじゃないか。先ほども問題になりました大豆の輸出禁止の問題にいたしましても、全然政府としてそういう見通しに立てなかったという問題もございましょう。それから当然これから引き続き問題になるであろう資源確保の問題についても同様のことが言えると思います。またここに、一方においては息の長い話し合い、他面においては即決を迫られる問題、両方私はあるのではないかと思いますね。
 そこで、昨日も外務省において日米安保運用協議会、これが開かれたそうであります。具体的にいろんな問題が討議されたというふうに思われます。しばしばこれも当委員会を通じて議論されてまいりましたように、基地の態様の変化、これに伴う基地の縮小等々、当然これらの問題を踏まえて田中さんは訪米されるであろう。しかも日程的には非常に短期間のように伺っておりますし、この短期間の間にどれだけの政治交渉というものができるのか。そのためには当然それに対応できるだけの材料を用意をして臨まれるに違いない。すでに、先ごろニクソン・ブレジネフ会談が終わったばかりのあとでもございますれば、またそういう面からの今後日本の置かれた立場を通じて世界外交にどう対応するのか等々、いま取り上げた問題だけでも非常に大きな要素を持っておりますだけに、何かもうすでに用意をされているんではないか。いま私が二、三例として取り上げた問題を通じまして、外務省を中心としたニクソン・田中会談に臨むその考え方というものが、やはりこうした委員会において発言されるということは、やはり日本外交の将来の方向を示すものとして必要なことではないかという観点に立っていま私は申し述べているわけでございますので、これをあらためてお伺いをしたいと、こう思うわけであります。
#51
○国務大臣(大平正芳君) 日米間のコミュニケーションのギャップを埋めて、こなれた理解を確保せにゃならぬということは仰せのとおりでございます。そのコミュニケーションギャップを埋めるということは、ことばでは非常にやさしゅうございますけれども、これはたいへんむずかしい仕事でございます。お互い夫婦の間でもなかなかそのコミュニケーションを埋め切るなんていうことはむずかしい、あるいは国内においてもたいへんむずかしいことで。いわんや外国との間にコミュニケーション、漏らすことなくギャップを埋めてやるなんていうことは、私はたいへんむずかしいことだと思いますけれども、ただ日米間、間断ない対話を通じて、理解をできるだけ深めていこうじゃないかということを、両方その必要を感じておるわけでございます。いま御指摘になりましたあらゆる事務レベル、民間レベル、首脳レベル問わず、間断なく私はやるべきじゃないかと思っておるわけでございます。先方からの要請もございましたので、まあ一年間、一年間の日米関係というもののバランスシートを一ぺん両者首脳に見てもらうと。で、これは改善の方向に向かったが、これはまだいいじゃないじゃないかと、どうすべえということについて、やっぱりフランクな話し合いを願うということをやってもらいたいと思っております。
 第二に、しかし、渋谷さんも言われるとおり、これは十分の用意をしていかなければいかぬと考えておるわけでございまして、先ほど田さんの御質疑にもお答え申し上げましたように、全体としての対米取り組み方につきましては、教書とか、あるいは、いうところのアトランティックチャーター、構想というふうなものに対しまして、日本がどのように取り組んでまいるかということは、十分心得ていかなければいかぬと考えておりまして、目下鋭意準備をいたしておるところでございます。
 それから経済問題といたしましては、いま御指摘の資源確保問題もございますけれども、なお従来から継続いたしております通貨あるいは貿易あるいは投資あるいは環境、まあいろいろな問題につきまして、こなれていないところは十分こなれた理解を相互に持たなければならぬと思っておるわけでございまして、そういった準備も一応十六、七日の合同委員会もあわせまして、いま作業を急いでおるところでございます。いわば間断ない対話の一環として、せっかくこの機会に御出馬いただいて理解が一段と進むように、懸案の解決が一段と促進されるように私は持っていかなければいかぬと考えております。しかしながら、このことは、日米間の問題の処理のしかたというものが日米間だけの御都合主義ではいけないと思うんでありまして、やっぱり世界が見ておりまして、日米間でやりとりをしておる問題はやっぱり十分理解ができるという説得力を持ったものでありたいと私は念願して、そういうラインでひとつ進めていきたいと思っております。
#52
○渋谷邦彦君 おっしゃるとおり、日米間においての意思の疎通、こうした点から欠けているかどうかは別問題といたしましても、やはりそういう話し合いのチャンスが乏しければ認識と理解は深まらない、これは当然の原理でございましょう。したがって、前総理の佐藤さんが行かれてからしばらく期間がたつわけでございますし、その間、たいへん急激な世界情勢あるいはアジア体制の変化というものがございます。いま御説明ございましたように、今回の会談に臨む準備として当然それは考えると、それは昨日行なわれた運用協議会あるいはいまおっしゃられた今月十六、十七でございますか、予定されている日米合同委員会等々において討議される、その結論を待った上で日本政府としての考え方を持って臨むというふうに理解してよろしいのですか。そのほかに、多年懸案になっております目玉ともいうべきこの日米安保体制についての変化と申しますか、今後のあり方といいますか、そうしたことを、あるいはもうすでにそういうような話し合いを通ずるまでもなく、当局において十分その検討を、いままで、もう加えるどころではない、もう煮詰まった段階にきているはずだという私どもは感じを持っておりますがゆえに、そういう問題を重点的に、今回の首脳会談において話し合う用意をもうすでにされているのか、その辺はいかがでございましょう。
#53
○国務大臣(大平正芳君) 安保条約運用問題というのは、もうすでに日米間で合意をしたラインに沿いまして着実に進めておるわけでございまして、今度の田中総理の訪米によりまして、その合意を練り直すということは私はないと思っております。で、いま御指摘の運用協議会もひんぱんに開きまして、いまの基地の整理統合を中心にいたしまして、いま精力的に打ち合わせをいたしておるところでございまして、これは逐次もう小口から、できましたものから日米合同委員会にかけまして発表していこうと思っております。これはすでにもう作業の流れに入ったものでございまして、今度の首脳会議の新たな問題に私はなるものじゃないと考えておるわけでございます。
#54
○渋谷邦彦君 いずれにいたしましても、日米間の最近の関係を考えますと、むしろたいへん冷ややかなそういう状態がますますエスカレートするのではないかという一方における見方も出てまいります。われわれとしては、そのいろいろな面での経済的な報復だとか、そういうふうな受け取り方はしたくはございませんけれども、やることなすこと何かこう日本に対するたいへんいやがらせ的な一連のその行為というものも考えられないではないではないか。それだけに、今回の田中訪米というものは非常に重要な意味を持つであろう、こういうふうにも考えられるわけでありますので、いま申し上げたような点は十分踏まえられた上でお出かけになるのだろうと、こう思われます。さらに、今後、政府がいままでしばしば繰り返し述べられてきましたように、日米間というものは緊密な連携をとりながらそういう体制は今後も堅持するということになりますと、これも多年の懸案であった、あるいは大統領の――ニクソン大統領になるかどうかは別問題にいたしましても、そういう最高首脳の訪日というものを要請するもう準備はございますか。当面はニクソン大統領でけっこうだと思います。
#55
○国務大臣(大平正芳君) 日本政府としては、ニクソン大統領の訪日というものを早期に実現いたしますことを歓迎したいと考えております。
#56
○渋谷邦彦君 その時期については非常に微妙だということも伝え伺っておりますけれども、おそらく、今回の田中訪米に際しまして、具体的にそういうような話が出されるんだろうというふうに推測されるわけですが、そうなれば、当然、ある程度時期などの問題等につきましても、こちらから要請をするという段取りになるのではないかというふうに考えられますが、その点はいかがでございましょう。
#57
○国務大臣(大平正芳君) 時期の問題は、双方が都合がよくなければいけませんので、こちらから指定申し上げる筋合いのものではないと考えておるわけでございます。原則として、日本政府の歓迎の意思は変わっていない。先方の都合がつきまして、訪日が実現することを期待いたしておるという態度に終始いたしております。
#58
○渋谷邦彦君 次に、訪ソの問題、十月ごろに――九月の末から十月というふうに予定されているようでありますが、これも先般お尋ねをした件でございますけれども、松前さんの二階堂官房長官に報告をされた内容が出ておりましたが、それを見る限り、たいへん姿勢が強い。特に、先ほども問題として指摘されましたように、ソ連のいわゆる提起されたアジア安保構想、この問題の解決が先決であると。その他、経済問題あるいは北方領土返還問題は、やはりグローバルな問題の解決がなされた後においてとり行なわれるべきであるというような趣旨の伝言があったやに伺っております。
 そうすると、先ほどもおっしゃられたように、六九年以来今日まで一貫してその姿勢は変わっていないというふうに受け取るべきではないかと思われますし、当然、今日まで約四年間経過した現在、一体ブレジネフ書記長の描くアジア安保構想というものは那辺にあるのかというような問題についての分析、検討というものが、当然あってしかるべきであったとも思われます。その意図がどこにあるのか、具体的な内容がわからぬでは、これは、これから対ソ外交を展開する上において、まことに不都合なことではないだろうか。それでなくても、しばしばいわれておりますように、最近の外交のテンポというものは非常に速度が速い。うっかりしていると、その問題の渦中に巻き込まれてしまう、あらゆる問題の。当然、手を打てばそういう渦中に巻き込まれなくてもいいはずの問題まで、あれよあれよということに、後手に回ってしまうというようなおそれが、いままでの政府の外交姿勢をうかがう限り、将来の展望に立てば十分考えられるのではなかろうかというふうな心配が出てくるわけです。
 で、この四年間、今回もまた明確にアジア安保構想というものが打ち出されておるという背景を考えた場合に、これはもうただごとではない。単なることば上の意味合いではなくして、ソ連としての基本的なアジアに対する構想の一環として今後も強力にこれを打ち出してくるであろうと受けとめるべきではないかと思うんですが、やはりこれは、何にも分析も検討も加えられないままに、そういう話があるんだという程度の受け取り方でございましょうか。
#59
○国務大臣(大平正芳君) 先ほど田さんの御質疑にもお答え申し上げましたとおり、アジア安保構想が打ち上げられたことは承知いたしておりますが、その内容は必ずしもさだかではないということでございますので、ソ連首脳との接触におきましては、先方の考え方というものはよく聞きただしてまいる必要が私はあろうかと思っておるわけでございます。
 おそらく、この考え方の基本には、現状をまず固定しようという考え方が基本にあるのではないかと、私は想像されます。しかし、日ソ間では、御承知のように、領土問題というものをかかえておるわけでございますので、この取り扱いとの関連で、そういう問題に対しましては、日本としては慎重に考えていかなければいかぬ課題だと思いまするし、それからまた、事柄自体が、アジアの安保構想というのですから、たいへん壮大な構想でございまして、アジアという問題はたいへん規模の大きい複雑な課題でございますので、これは手軽に、しかも簡単に論じるには問題がたいへん大き過ぎると私は考えておるわけでございます。
#60
○渋谷邦彦君 たいへん、ことばじりをつかまえて申し上げるのは恐縮なんですが、いまおっしゃられた現状固定ということは、どういうふうな意味でおっしゃられたんでございましょうか。
#61
○国務大臣(大平正芳君) 安全保障という限りにおきましては、その土台がはっきりとしていなければなりません。つまり、領土問題などというものがちゃんと固まった上で、その上で、安全を保障するメカニズムはどうするかということが論理的には推論されることでございまして、そういった点がはっきりしないで安全保障を論議しても、それにはおのずから限界があるんじゃないかと考えます。
#62
○渋谷邦彦君 昨年十月、大平さんは、グロムイコ外相と、日ソ平和条約のいろんな取りきめ方についてのまず最初の交渉に入られましたですね。それからもう八カ月も経過しているわけでございますが、依然として結論の出ない平行線をたどっていて、一体将来どういうふうにそれが結論としてまとまるのか、いまだに先の見通しも予測できないという現状が一つございます。
 おそらくその最大の焦点と思われますが、これはもう多年の念願であります北方領土の返還というものをどう一体その中に組み込んでいくかということも、当然無視はできない。さらに、先月の二十九日、田中総理は、衆議院の外務委員会におきまして、たいへん力んで、北方領土は絶対にこれはもうその主張を一貫して曲げない。この解決がなければほかの問題に応じられないという趣旨の御答弁をなさっていらっしゃいます。そうすると、今度のこのアジア安保構想、たとえその内容がどうであろうと、一方においてソビエトのほうはこれを切り離した形で北方領土であるとか経済問題を議題とすることには応じられないというような、たいへん強い意向があるということが伝えられているわけです。外務省としてはその辺をどこまで確認なさっておるかどうか、私はわかりませんけれども、かりに今度田中さんが向こうへ行った場合に、当然これが議題となることは火を見るよりも明らかである。すれ違いでございますね、完全に。向こうの主張はグローバルな問題で、こちらは、あるいはソ連の言うようにたいへん小さな、領土問題なんというのは小さいじゃないかというようなあるいは感覚があるかもしれない。こういうふうなすれ違って、はたして合意を得られるようなそういう話し合いというものが持たれる可能性というものは考えられるのかどうなのか。その辺は当然もう十月といったって、いまから十分、先ほどの訪米の問題に限らず、当然お考えになっているのではないだろうかと思うのでございますが、いかがなものでございましょうか。
#63
○国務大臣(大平正芳君) 田中首相の訪ソの議題というのは先方と期日もまだきまっておりませんし、議題もまだきまっていないわけでございまして、どういうものを取り上げるかはこれからまあ検討せなければならないと考えております。
 ただ、あなたが言われたことの中で、私はこう考えるのですが、ソ連が領土問題をどうでもいいと考えているわけでは決してないのでございまして、ソ連はおそらく歯舞、色丹で領土問題はきちんともうそれで解決した上で平和条約を結ぼうじゃないかと、それは論理的には領土条項をはっきりするわけでございますから、日本はそれでは足らないと、平和条約を結ぶということにつきましては、両方ともその努力をしようじゃないかということに一致しているわけでございまして、そして交渉が持たれておるわけでございまして、だから領土はどうでもいいということじゃなくして、領土のとらえ方が日ソ間に違っておるということでございますので、その点は依然としてソ連がそういう考え方を変えたという徴候はないわけでございますから、あなたがおっしゃるように、私は依然としてまだ平行線だと考えておるのでございます。田中総理は、この問題につきましては、日本の立場を堅持していきたいということを述べたわけでございまして、それがきまらぬうちはその他の問題は、あなたの御表現でございましたけれども、つまりそれがきまらぬうちは平和条約はできないという意味のことをおっしゃったと私は記憶いたしておるわけでございまして、日ソ関係というのは、それにもかかわらず、過去十七年にわたる間に非常に着実な前進を遂げてきておるわけでございまして、私は、日ソ関係は政治的にも経済的にもたいへん良好な状態にあると思っておるわけでございまして、こういう問題があるからといって固くなる必要はないので、よく双方の接触を通じまして、絶えずお話し合いをしていく必要はあると考えております。
#64
○渋谷邦彦君 いまおっしゃられた話を伺いましても、領土問題の面だけをとらまえて考えてみますと、確かに色丹、歯舞については向こうも同意を与えている。しかし、国後、択捉については、依然としてかたくななくらいまでにソ連は拒否しておりますね。おそらくそれは平行線でずっと今日まできておるだろうと思いますよ。とするならば、政治的に経済的にたいへん良好な状態にまできているということが非常に矛盾しているのじゃないかと、私は決してそれがいい状態、いろんな表現のしかたがありますから違うのであろうと思うんですが、やはり、そういう問題の解決がなされて初めて良好な状態になるというようになるのじゃないかと私は思いますし、日本政府としては、いまおっしゃるとおり四島を含めた返還を要求する。これが今日まですれ違いになってきた。さらに今回の場合、その次元を越えた観点に立って、ソ連は新たな提案をいましておるわけでございますね。なるほど色丹あるいは国後等々、返還できるほうと返還できないほうというような話がごちゃごちゃしながら今日まで続いてきている。しかし、四島をさらに含めた上での領土問題というのはまだ小さいというような向こうの評価があるんですね、あるらしいのです、私自身確かめたわけじゃありませんから。ですから、そういう問題はあとでも十分解決できるんじゃないか、こういうようなことになりますね。もっともっと根本的な問題の解決をはかってから、そういう問題はあとでも十分検討もし、解決ができるんじゃないだろうか。私はそういう点で、日本政府の考え方とすれ違いが起こるんじゃないかということを心配するわけです。いかがなものでしょうか。
#65
○国務大臣(大平正芳君) まあ、いまあなたの言われるアジア安保構想というものとの関連でございますが、アジア安保構想自体につきまして、先方の考え方は十分ただしてみたいと思っておりますが、私どもその内容がまだ十分明らかじゃございませんので、これについて云々するというのは若干熟しないんじゃないかと考えておるわけでございますが、まず、われわれの仕事は、先方がそれをあなたがおっしゃるように非常に重視しておるというのでございますならば、十分聞きただしていきたいと思います。
#66
○渋谷邦彦君 もちろん私は、ソ連のいま提起されたその問題をすぐどうこうするということにはまだまだ問題があろうかとも思います。たとえば、先ほども御指摘のあった問題の一つとして、中国の存在というものを当然無視するわけにはまいりませんし、そういう一連の関係というものを考えた場合に、日本としては非常に微妙な、むずかしい、そういう位置に置かれているのではないだろうかというふうにも考えられるわけです。おそらくいまの御答弁というのは、これは推測でございますので何とも言えませんが、大平さんはずいぶんそういう点にも御配慮をされて、やはり慎重に対応すべきである。中国の存在等もこれあり、そしてまた、その内容というものがどういうものであるかということを十分聞きただした上で対応する、こういうふうに理解してよろしいんでございますね。
#67
○国務大臣(大平正芳君) 当然のことと考えております。
#68
○渋谷邦彦君 もう一つ、おそらく今度も問題になるだろうと思うのですが、すでに米ソ首脳会談において合意に達したと見られますアメリカの企業進出、シベリアに対する企業進出等々がございますが、日本としては、だいぶこのシベリア開発という問題についても重大な関心を企業側も政府側も持っているだろうと私は思うのです。これも、おそらくそういう観点のみに立った場合に、日本は後手にやはり回ったんじゃないかというおそれが何となくしないでもない。はたして今後、先ほどの御答弁をどうこう言うわけじゃありませんが、はたしてそういうような事柄を考えた場合に、今後とも日ソ関係の経済交流というものは新たな発展、展開を見せる。十分米ソにおいてはそういう問題の行為があったにしても、まだまだその余地は残されている、こう見るべきなのか。とうとう窮地に追い込まれたと見るべきなのか。そうした問題も今回の田中訪ソにおいて話題になり得べき政治的な問題としてやはり取り上げられるのかどうかなのか。その辺も含めていろんな考え方、やはり臨む姿勢というものがあるわけですから、特に経済問題というものは、ソビエトのほうもしきりに日本と交流をしたいという意向があるやにしばしば今日まで伝えられておりますし、日本としてもやぶさかではないといういままでの政府の答弁もございました。しかし、情勢必ずしも楽観を許せないという、そういう面もございましょう。そういう観点も踏まえて、一体どういうふうに今回の田中訪ソを通じて切り出されるのか。
#69
○国務大臣(大平正芳君) いまの西独との間におきましても、またアメリカとの間におきましても、経済協力をソ連は進めておりまして、話し合い中のもございますし、実行中のもございますわけです。わが国も同様でございまして、実行中のもございますし、話し合いの中のもあるわけでございまして、あなた先手、後手とおっしゃいますけれども、私は先手とか後手とかいうことは考えていないわけでございまして、西独とも大いにおやりになったほうがいいと思いますし、アメリカとも大いにやるべきだと思いますし、ことさら特に問題は、プロジェクトは非常に大きな規模のものでございますし、それにからまる信用の量も相当な規模でございますので、そういう国際的な協力、ソ連と西独、ソ連とアメリカ、ソ連と日本、そういう形式もありましょうし、あるいはまた、マルチの、国際的な協力でシベリア等の資源の開発ということが行なわれることも、私は平和のためにも、経済のためにも、たいへんけっこうなことだと思うわけでございます。問題は、そのプロジェクトがわれわれ民間でフィージビリティー・スタディーをやっておりますけれども、それが満足すべきものであれば、そして日本がまかない得るものであれば、技術的にも資金的にもまかない得るものであれば、それは進めてけっこうだと思っておるわけでございますから、その点はあまり固く考えていないわけなんでございまして、よその国と大いにやられることは、私は歓迎でございまして、そこで対ソ資源開発を競争しようなんという、そういうつもりはないわけで、よその国と協力してやることをむしろ私は希望しております。
#70
○渋谷邦彦君 田中訪ソについて最後にもう一つだけ確かめておきたいんでありますが、先般、坪川総務長官が北方領土を視察されました際にも、海上保安庁のほうからの報告によれば、現在依然としてやはりあの近海における拿捕が続いておるということが述べられたそうであります。依然としてこの問題が未解決のまま今日まで続いているということは、非常に遺憾だと思うんです。領土問題の解決がまだ延引している現在、何とかこの問題だけでも保障ができないのかと、絶対にもうそういう拿捕というような事態に至らないという、そういう保障ができないものか、まあよしんば、拿捕されても、即刻釈放されるというような取りきめというものが考えられないのか、そうしたことも十分今回の訪ソを通じて話し合いの対象となって何らかの結論を得られるような日本政府としての用意はないのかどうなのか、その点はいかがですか。
#71
○国務大臣(大平正芳君) いま御指摘の点、案件につきましては、政府としても、昨年九月、ソ連側に具体的な案を提示いたしておるわけでございますが、再三の督促をいたしておりますけれども、ソ連側の回答にはまだ接しておりません。で、この提案の内容は、四島周辺のあなたが御指摘のその拿捕可能性の高い水域を選定いたしまして、対象を選定しての安全保障、安全操業を可能にする方式を考えたものでございまして、対象水域の規定にあたりましては、ソ連側の事情も考慮いたしまして、当面固有名詞は避けて、経緯度で表示いたしたようにいたしまして、昨年の九月提示いたしてあるわけでございまして、いま回答を待っておるところでごいます。で、当然のことといたしまして、日ソ首脳会談におきましては、こういう問題につきましても引き続き努力をしなけりゃならぬことは当然と考えております。
#72
○渋谷邦彦君 次に、問題をかえてお尋ねをいたしますが、昨日から国連の拡大海底平和利用委員会がジュネーブにおいて開催されております。これも日本にとってはもう最大の焦点といいますか、関心事といいますか、問題ではないかというふうに考えられます。特に最近、この領海幅の問題をめぐりまして非常にまあ議論の多い内容になってきているわけですが、ことに領海が拡大される、それが承認されるということになりますと、とりわけ海峡の運航にあたっては、日本はエネルギー資源を特に中近東あたりに仰いでいる関係等もありまして、たいへんなショックを受けるというふうになりかねない。しかし趨勢としてはもうそういう方向に動きつつあるというふうに伺っておりますけれども、この問題に対応するために、すでに各省編成の代表団がジュネーブに乗り込んで、それなりのこれからの議論の展開をされるだろうと思うんですけれども、必ずしも日本にとっては有利とはいえない現在の情勢であると、日本としてはこれにどう一体対応できるのか、その将来の見通しはどうなのか、この点はどのように政府としてはとらえていらっしゃるか。
#73
○政府委員(高島益郎君) 渋谷先生御指摘の国連主催の海底平和利用委員会における御審議は、いよいよ来年のチリ本会議を控えまして、今度は準備会の最終段階になっておりまするので、私ども領海問題を含めましてあらゆる観点からその万全の態勢を整えております。
 特に、領海の問題につきましては、幅員が大体コンセンサスといたしまして十二海里になるだろうという見通しを持っておりまして、これに伴っていま御指摘の海峡の問題、特に領海幅が十三海里になりますと、二十四海里より狭い幅の海峡はすべて沿岸国の領海ということになりますので、そういう場合に、海峡を従来同様に船舶が通航できるような措置を考えなければならないということで、いろいろ議論の対立はございまするけれども、わが国といたしましては、領海の幅員の拡大に伴いまして、そういう領海、海峡の通航を妨げなくできるような、各国の納得のいくような措置を考えたいということで、いろいろ対策を講じております。
#74
○渋谷邦彦君 ただ、いま私申し上げたように、世界の趨勢が必ずしも日本のほうに有利に働かないだろうと、特に開発途上国においては、むしろ二百海里説をとっているような国等もございますし、まあそうした点を整理して考えた場合でも、なかなか最近開発途上国の意見というものが非常に強くなってきておりますし、また、参加している国もふえてきているということになった場合、これは日本にとってももう安閑としておれないと、はたしていまおっしゃったような、具体的にいまどういう対応策かということはおっしゃられませんでしたけれども、十分処置できるのかどうなのか、絶対保証できるのかどうなのか、その点まだ不安が残るような感じがしますが、どうですか。
#75
○政府委員(高島益郎君) 問題を二つに分けて御説明いたしますが、最初の問題は、いわゆる海峡通過の問題であろうかと思いますが、海峡の通過につきましては、一部の国は領海の幅が拡大することによって狭くなる。つまり、領海となってしまう海峡につきまして、従来同様に、公海の場合だったと同じように自由な通航を認めるべきだという主張と、これに対抗いたしまして、そうではなくて、沿岸国にある程度の管轄権を認めるような、いわゆる無害通航、無害通航を認めるべきであるという両方の意見の対立がございまして、わが国といたしましては、両方のいろんなメリット、デメリットを考慮しつつ、各国の多数意見をさがしていくという立場で処理していっております。
 もう一つの問題につきましては、いわゆる領海の先の水域についての沿岸国の管轄権の問題でございますが、二つ主張がございまして、一つは、海洋の資源、つまり漁業資源と鉱物資源につきまして、沿岸国が二百海里までに及ぶ排他的な管轄権を持つべきだという主張と、もう一つは、海洋汚染の防止につきましても同様に沿岸国が排他的の管轄権を持つべきだという主張がございまして、この両方の主張は開発途上国の多数の国の力強い支持がございまして、現在、国連ではかなりな勢いを得ておりますので、わが国といたしましては、特に漁業資源に非常に食料を依存しております日本といたしまして、このような広大な沿岸国の排他的管轄権をどういうふうに制限していくかという点について非常に苦慮いたしておるのが現状でございます。
#76
○渋谷邦彦君 いままで日本は三海里説をとって、世界の大勢が十二海里説に傾いてきたということで、日本としてもこれに順応しなければならないだろうという判断だろうと思います。まあアメリカも同じような立場に立っておったようでありますが、アメリカの場合には、もっとストレートに、海峡通過の場合には、船舶あるいは航空機の通過を自由に認めると、そういう条件がのめなければ十二海里説を認めるわけにいかないというくらいのたいへん強い姿勢を持っているというふうに聞いております。日本としても、大勢は日本に有利だとはいうものの、やはりそういう対案を持って、もしそれが承服できないと、世界の各国が、という場合には、最悪の場合には一体どうするのか、そこまで当然考えて今回の、チリの第三回海洋会議に臨む前の準備委員会に、これはもうおそらく最終的な取りきめというふうなジュネーブにおける会議だろうと私は思います。それだけに非常に重要である。そこまでおそらくいろんなことを想定して、日本としては対応策を十分幾つも考えて臨まれたんだろうと思いますが、その点はどうですか。
#77
○政府委員(高島益郎君) いま先生の御指摘のアメリカの提案でございまするけれども、この提案につきましては、大勢は必ずしも支持ということではなくて、むしろ非常な少数意見でございます。わが国といたしましては、もちろん従来同様に、つまり公海であった場合と同様に、海峡を自由に通航できるということが確保できればこれにこしたことはないわけでございますけれども、他方、沿岸国の立場もございます。わが国のように、二十万トンもするような大きいタンカーを通航させるという場合に、完全に自由に通航してよろしいということはなかなか言いにくい面もございます。沿岸国の立場からいたしますと、沿岸国の安全、秩序、平和、これを確保できるような沿岸国の何らかの規制措置が認められるべきである。いわゆるこれが無害通航の制度でございまするけれども、こういう立場でございまして、わが国といたしましては、そういう観点にも十分傾聴し得る主張がございますので、そういう大勢を見ながら、要するにわが国のタンカーを含めての通航ができるだけ制限なく通航できるような、そういう方式を見つけていきたいということでございまして、現在のところ私たちといたしましては、完全な自由通航ということは確保できないにいたしましても、通航自体が制限されると、一方的に制限されるということがないように何らかの歯どめを求めながら妥協し得る方式を発見したい、こういうふうに考えております。
#78
○渋谷邦彦君 また一方、この海洋汚染防止というそうした観点に立って、カナダ、オーストラリアあたりがたいへんきびしい汚染防止規制権限というものを認めるべきじゃないかという条約案を出すやにも聞いております。これについては、その趣旨については、これは何も反対すべきものはないだろうと、こう思いますが、いま御説明あった問題を含めて、こうした件についても、日本としては承認されるべき問題なのか、それを承認すると、やはりたいへんな事態が起こり得るのか。また、そういうような提案が、条約案が出された場合に、日本としてはすなおにそれに賛成でき得るものなのか、この点はどうですか。
#79
○政府委員(高島益郎君) 海洋の汚染につきましては、もちろんわが国は大賛成でございまして、これは国際協力によって全世界の海洋の汚染を防止すべきであるという立場でございますので、趣旨にはもちろん賛成でございますけれども、問題は方法でございまして、現在のところは、いわゆる領海につきましては、沿岸国が完全な管轄権を持って汚染の防止をしておる。公海につきましては、いわゆる旗国でございます。船の国旗の属する国が管轄権を持って、国内法によって海洋の汚染を防止する措置をとっております。私たちといたしましては、その方法で十分可能ではないかと思っておりますけれども、いまカナダ、オーストラリアの提案にございますように、沿岸国が、旗国でなくて、沿岸国がそういう公海における海洋汚染の防止についても管轄権を持つべきであるという主張でございまして、問題は方法論でございますので、何らかの各国の納得のいくような方法によっての海洋の汚染防止は可能であろうというふうに考えておりますが、われわれといたしましては、できれば旗国主義と、要するに船舶の属する国が十分な措置をとって海洋の汚染を防止するということでいいのではないかというふうに考えております。
#80
○岩動道行君 関連質問……。
 私は、田並びに渋谷委員が、田中総理が訪米、訪ソされることについて御質問をされましたが、それに関連をして、一つだけこの機会に確認をさしていただきたいと思いますので、御了承いただいたわけでございますが、それは、昨日の読売新聞の夕刊の記事についてでございますので、お読みをいただいておるかどうかわかりませんが、この新聞記事によりますと、核防条約の批准について、政府は方針をきめて、次の通常国会に承認を求めるために準備作業に入ったと、こういうまあ書き出しでございます。そうして田中首相はアメリカ等を訪問をされたときには、いろいろなわが国としても要請をしなければならない重要問題がありますので、そのような問題と、まあこれは新聞記事の用語でございますが、「“駆け引き材料”にしたいとの判断だ」というような、私どもにとってはまことに理解しがたいまあ字句も使った記事に相なっておるわけでございます。
 そこで、まず私は、このようなことがほんとうに事実であるのかどうか、あるいは単なる観測記事であるかどうかという点を確認をさせていただきたい、かように思うわけでございまするが、それに関連しまして、核防条約の署名はいたしましたが、さらに保証措置協定、これの折衝が今日まで非常に努力を続けて政府はやっておられるわけでございまするが、これまた記事によりますと、IAEAとのいままでの話し合いはいわゆる予備的な折衝であって、条約に基づく、いわゆるギロチン条項に基づく本交渉ではないという態度で政府は今日まできておられると思いますが、これを本交渉に切りかえるというようなことも記事として出ておるわけでございまするが、これらについて、はたしてそれがそのように政府として現在お考えになっておられるのかどうか、この点を確認さしていただきたいと思います。
#81
○国務大臣(大平正芳君) 全然それは事実無根です。読売新聞の記事に責任を持つわけにまいりません。私どもが申し上げておりますのは、このNPTを政府が署名いたしたときに、三つの事項についてなお検討しなければならぬということを言うておるわけでございまして、一つは、核保有国が軍縮をどのように進めていくかということ、第二は、われわれのような非核保有国の安全保障について核保有国がどういう配慮をしていくものなのか、第三の問題は、いま御指摘の平和利用にあたってわが国が実質的に不当な扱いを受けないように、実質的には平等を確保しなければならぬというような意味の三つの事項について検討をなおしなければ批准というわけにもまいらないんだということでございます。その点はいまなお変わっておりません。
 それで、現在平和利用のための保証措置協定の予備交渉をIAEAとの間にやっていることは事実でございまして、しかし、この予備交渉がかりに成立いたしましても、予備交渉が終わりましても、それとNPT条約自体の批准とは別に結びつけて考えておりません。今後どのように進めてまいるかという具体的日程はまだ政府は考えていないわけでございまして、この前にもお答えいたしましたように、自由民主党におかれても、いろいろ御検討をいただいておるようでございますが、政府としても、なおこの留保された問題につきまして、慎重に検討を進めていきたいと考えております。
#82
○岩動道行君 関連質問でございますので、内容に立ち入ることは本日はいたしませんが、従来の基本的な政府の方針についてここで十分に確認ができたと思いますので、今後とも慎重にこの問題についての御検討を進めていただくことをお願い申し上げまして、私の関連質問を終わります。
#83
○渋谷邦彦君 締めくくりをさしていただきたいと思いますが、いま高島条約局長から、今回討議されておる問題についてはそう心配はないだろうというニュアンスの意味に私は受け取ったんですが、いずれにしても、これが日本として考えているような方向に向かなかったということになりますと、いま御答弁があったように、たいへんな事態を招かないとは限らない。いま条約局長が御答弁された点を通じて、この問題の処理は政府が考えている方向に向かって、日本としては決して不利な結果にはならないと、このように受けとめてよろしゅうございましょうか。外務大臣、いかがですか。
#84
○国務大臣(大平正芳君) いまもお話がございましたように、沿岸国の管轄権を一方的に拡大することに対しまして、主要海運先進国は、日本を含めまして、賛成できない立場をとっておりますけれども、沿岸国による資源管轄権の拡大、あるいは汚染防止のための支配権の拡大を支持する発展途上国の体制は十分頭に置いておかなければいかぬと思っているわけでございまして、条約局長がお答え申し上げましたように、どういう方法でわれわれの利益が守れるか、そういう点について一そう真剣に対処してまいらなければならぬと考えます。
#85
○渋谷邦彦君 最後に一点。
 昨日ニクソン大統領が、カンボジアの爆撃について八月十五日までは一切停止をするという声明を出されました。しかし今日まで、最近では特に一日に二百波という大量の攻撃が加えられまして、ベトナム戦争が終わったとはいうものの、依然としてインドシナ全体におけるところの戦争終結というものは予断を許さない。まことに見通しが暗い。けさあたりの報道を整理して考えましても、プノンペン筋あたりでは、ニクソン声明についてはきわめて疑心暗鬼である、一言にして言うならば。こういうことが伝えられております。非常に残念なことだと思います。一刻も早くインドシナ全体に平和がよみがえるという、これは同じアジアの一員として、日本としても多年のやはり願望でもあったわけであります。
 こうした問題を通じまして、先ほど冒頭に申し上げた田中訪米にあたっても、やはり何らかの表現でもって一刻も早くそれを停止し、今後そうした爆撃等をはじめとするインドシナ地域における戦争行為というものを停止すべきではないかというアドバイスは当然なさるべきであろう、このように考えられるわけですけれども、依然として継続的に続いております今日の情勢を考えると、暗たんたる気持ちであります。
 その点を最後に伺いまして、きょうの質問は終わりにしたいと思います。
#86
○国務大臣(大平正芳君) インドシナに平和のきざしが見えまして、当事国はもとよりでございますが、関係国の御努力がございまして、漸次事態が鎮静に向かっておりますことはたいへん歓迎すべきことと心得えておるわけでございます。私も渋谷さん同様、インドシナ地域に平和がよみがえり、かつ定着してまいることを希求いたしておるわけでございます。田中総理も全く御同感であろうと思うのでありまして、このために何をなすべきか、何をなすべきでないか、それぞれの国々がそれなりに心を痛めておることと思うのでございますが、いま渋谷委員の御提言はよく承りまして、そういう御趣旨に沿いまして、私どもといたしましても可能な限り努力はしていきたいと思います。
#87
○委員長(平島敏夫君) 本調査に対する質疑は、本日はこの程度にし、これにて散会いたします。
   午後零時十分散会
ソース: 国立国会図書館
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