くにさくロゴ
1972/09/18 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第25号
姉妹サイト
 
1972/09/18 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第25号

#1
第071回国会 外務委員会 第25号
昭和四十八年九月十八日(火曜日)
   午前十時十三分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         平島 敏夫君
    理 事
                木内 四郎君
                佐藤 一郎君
                八木 一郎君
                田  英夫君
    委 員
                杉原 荒太君
                矢野  登君
                山本 利壽君
                加藤シヅエ君
                田中寿美子君
                羽生 三七君
                森 元治郎君
                渋谷 邦彦君
                松下 正寿君
                星野  力君
   国務大臣
       外 務 大 臣  大平 正芳君
   政府委員
       外務省アメリカ
       局長       大河原良雄君
       外務省条約局長  松永 信雄君
       外務省国際連合
       局長       鈴木 文彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
   説明員
       警察庁警備局参
       事官       中島 二郎君
       外務省アジア局
       北東アジア課長  妹尾 正毅君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国際情勢等に関する調査
 (対ソ外交の基本的姿勢に関する件)
 (金大中事件に関する件)
 (国連における朝鮮問題に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 国際情報等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○森元治郎君 それじゃ、少しの時間お尋ねしたいと思います。
 最近ソビエトが中心になって集団安全保障、ヨーロッパ安全保障とか、安全保障というものが非常に大きな関心を呼んでいる。お互いの国々が平和な関係にあれば安全保障問題は出てこないんですね、そういう地域を見ると。フランスとスイスあるいはフランスとイタリアで安全保障二人でやろうなんというのはない。相互間の懸案を解決していくという問題がなくなれば、あえて集団とか相互の安全保障の約束をしましょうという動きにはならないわけですね。日ソ間の関係見ていると、従来は、こちらは相対的に懸案の解決方式、向こうは大きい原則で押してくるというようなのが、歴史を大別するとそういう傾向にあるんです。こっちは懸案解決すればもういいじゃないかと、たとえば近いところでは満州国なんという時代があったときには、ソビエトと満州の国境問題が解決すればそれで終わり。そうすると、向こうのほうはそれで足りなくて、不可侵条約をやりましょうと、大きくかかってくる。いまの日ソ関係でもそうなんですね。懸案解決主義と原則論が今度も日ソの話し合いにはいろいろな形で出てくると思うんです。懸案さえ解決しちまえばそれ以上何も深い約束しなくても、それそのものが両国の関係改善になるんじゃないかという行き方もあると思うんですね。どっちの、懸案解決方式、それから大きな原則をきめて、その原則のもとに一つの問題を片づけていくという行き方が、ことに日本の対ソ外交には、従来、型があるんですね。今日はどっちの方向に向かって進むんでしょうか。
#4
○国務大臣(大平正芳君) いま政府のとっておる立場は、もろもろの懸案の解決を通じて安定した友好関係を維持培養していくということでございますが、それにいたしましても、先方からいろいろ問題の提起がございました場合は、それはそれとして討議してまいらなければならないのではないかと考えております。
#5
○森元治郎君 やはり交渉ごとにあたっては、従来は大体において日本が懸案解決主義で外交が進んできたように思うのですが、やはり議論をするときには何本立てかの、大きな外交には原則論はやはり打ち立てる必要があると思うのですね、大きな原則を三本なら三本。その原則のもとに国々によって、自由主義国に対してはこう、お隣の中ソに対してはこうというような、その原則から引き出されてくるそれぞれの国々に対応したまた政策、こう二段階になると思うのですが、いまの日本の外交の基本原則はどういうことを主張しておられるのか。この間の田中さんの施政方針の演説を見ても、どちらかというと問題の解決の羅列であって、太い柱の原則が少ないように思うのですね。そういう印象が強かったので、あらためてこれから大きな外交に取り組む政府としての大方針、これに伴う、たとえばソビエトに当たるときの原則から引き出された一応原則といいますか、そういうものをどんなふうにまとめておられるのか、これは聞きたいと思うのですね。向こうは向こうなりに四原則なり五原則、七原則というものを立てている。したがって、あの原則を読んでいけば、魚の問題について、あるいはシベリアの開発についての具体的な問題を考える場合にでも、天然資源のその国における主権の尊重、この資源というものはおれのものであって、おまえが云々するべき筋合いのものじゃないという強い訴え、こういうところから具体的な交渉に入ると、問題が出てきた場合に、向こうの態度というものはそこではっきりしているわけですね、天然資源は他国の容喙を許さぬという。そこからシベリア開発にしても、すべて向こうは態度で出てくる。これに対してどういうふうにやるかという、こういう意味で大原則がどういうことか、世界に対する大原則、その原則のもとに対ソビエト、今度の場合どういう方針が打ち出されていくのか。この私は原則原則と言うのは、日本の外交にとかく原則というものについての考え方が浅いのですね。国会の議運、国対あるいは外交おやりになっていても原則的には賛成。大平さんがパリにこの前行かれたときにちょうどキッシンジャー構想があって、あそこで趣旨には賛成というような発言があって、尾を引いて国会でも議論されたわけです。この原則ということ、あるいはその趣旨に賛成だということは非常に慎重にやるべきであって、かりに原則オーケーとなると、あとは原則に縛られて動きがつかなくなるのですよね。日本はそこのところ軽く考えて、いや御趣旨はわかったんだと、しかし反対なんだと。向こうから見れば、うそつきとか、あるいはどっち向くかわからぬという不信感を醸成するので、趣旨、原則を賛成だとうかうか言うことは厳に慎しまなければならないと思うのです。それで大平さんは責められたら、ぼくは、たとえばキッシンジャー構想に例をとれば、全文は見てないが、要約をパリ大使館で聞いておった、そして記者団に、大体趣旨は賛成のようなお話をしておられた。ああいうことは私はそのときに何もわからなければわからないで過ごしてよろしいと思うのです。これは今度のソビエトの交渉におかれても、原則論で向こうは押してくることがしばしばいろいろな問題であると思うのですね。こういうときに返事が軽率であったり、もたもたしたり、いいあんばいにするということは、かえってソ連の不信を高めるので、イエス、ノーというようなことははっきりし、御趣旨はわかったが、よく帰ってから考えましょうなんという独得の日本式外交はこの辺でもうはっきり分けたほうがいいと思うんですね。こういう点がはっきりしていないところに、日中国交回復はしたが、台湾も日中航空協定なども割り切れないで外務当局苦慮されている。向こうはあの原則を共同声明において承認した以上、日本はむずかしかろうと、中国代表政府と認める北京の言うとおりに動いてくれるんだと待っている。こっちはその間適当に泳げるんだなというような解釈を一方的にとって、その結果が今日まで苦慮なされているというようなことで、原則というものはどこの国とやる場合でも軽率ではなく、慎重にやられるべきだと思うんです。そこでもとへ戻って、日本の原則、田中内閣の対外外交政策の三原則――四つ六つでもかまいません、要約をし、対策をするに当たってもどういうソ連向きの政策を、根本政策を持っておられるか、こまかいことは伺う必要はありませんので、そういうことをやっぱりこの際われわれも承知しておきたい。特にソビエト、中国との外交は向こうは原則論です、こちらは懸案解決論。そこで私はきょうは政府の原則論を伺っておきたいと思うのです。
#6
○国務大臣(大平正芳君) たいへんむずかしい御質問で当惑するわけですが、わが国は戦後四分の一半世紀、まず戦争の終結、そして経済の自立達成ということに当たってきたわけでございまして、世界の外交から申しますとたいへん受動的な立場であったわけでございまして、ようやくこの戦後の経済の自立もどうやら曲がりなりに達成の段階にきましたし、戦後処理もあらかた終えてまいりました段階で、仰せのようにわが国がみずからの主体的な姿勢を持つべきであるということは当然だと思うのでございます。その場合、私どもが考えにゃならぬのは、まずみずからの力をはかるということでなければならぬと思うのでございます。われわれはいかに力みましても、自分の力以上のことはできないわけでありまして、われわれはこういう事態で何ができるか、何ができないかという見当はつけてかからなければならぬのでございますが、森先生が言われる壮大な一つの外交原則を打ち立てて、それを軸にしてわが国が主体的な外交を展開していくということはたいへん望ましい方向でございますが、私どもまだそういうアンビシアスな姿勢にはなかなかなれないのでありまして、こういう世界に処して日本みずからがどういう道を選択していくべきであるかということを静かに検討しなければならぬことは当然でございますし、そしてそれはわが国の力量の及ぶ範囲で鋭意追及していかにゃいかぬと考えておるわけでございます。しかしあなたが言われたように、日本の態度があいまいで賛成か反対かわからない、あるいはイエスかノーかわからないなんという状態は一番いけないわけでございますので、その点は世界に対して明確にしてまいる必要があると思うんでございまして、したがって、各種の構想が打ち出されてまいって、日本の見解を問われた場合は、もとより仰せのようにイエスかノーかははっきりいたしてまいることが当面のわれわれの責任であると考えておるのであります。いま世界に問うべき日本外交の大原則は何かと問われた場合に、にわかにお気に召すような返答ができないわけでございますが、御専門家であられる森さんでありますので、重々そういう点は御承知の上お聞きただしいただいておるのではないかと思うのであります。
#7
○森元治郎君 いやそれはね、いつでも人の原則を借りものにして、日中共同声明を見ても、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対しては不干渉、互恵平等、平和共存、これにプラス国連憲章の原則と、向こうの言っているのをみんなこう並べているんですね。これじゃちょっと恥しいんで、日本は日本のやっぱりこれに相応する、コレスポンドするものが当然あっていいと思う。アンビシャスではなくて当然国が立っている以上、やっぱりその原則がなくちゃいけないと思うんですね。この原則が立ってれば相互で話し合うときにも話し合える原則が、基盤ができると思うんです。こういうことが決してアンビシャスじゃなくて当然のことでなければならないと思う。そのことは顧みれば、私、具体的な問題伺いませんが、支那事変を振り返ってみてどこにわれわれが間違いがあったかというと、あの古くさい九ヵ国条約、支那大陸の門戸開放、機会均等を約したああいうものは、あれは単なる原則だというようなものでどんどんかってなことをやっていったわけですね。向こうはあれをがっちり、アメリカ側はもう原則として九カ国条約をもって日本に迫ってきたが、日本はその原則論にはあまり縛られないで各論のほうで反応を示し、結局最後はアメリカはどうしても日本のかっては許さないという方針はあの条約の根本精神から出てきて日本と戦おうとしたんだと思う。こっちはいろんな点で中国大陸から撤兵すればアメリカは何とか承認するんじゃないか。南仏印から下がれば向こうのメンツも立つんじゃないかといったようなこまかいことで対応したところに、われわれの大東亜戦争へ入っていくあやまちがあったと思う。やはりこの原則ということはこの際確立して世界に示し、国々に対応してそれに伴う政策を明らかにするということを国民に明示し、世界に明示することが私は日本の外交を安定した上に発達させていくと思うんですね。たとえば自民党の立場でおやりになるとすれば、自由主義ということも、一項目入るでしょう。自由主義でいくんだということも入るでしょう。いずれにしてもそういうことを立てていかないと、国民は何をやるんだろう、技術論、各論ばかりを考えるような始末になると思うんです。ぜひともなければならないと思うんです。これがなければ政府が考えている太平洋会議、まだ実現はいたしておりませんが、これをリードするにしても、やはりバンドン会議の十原則といったような何らかをもって指導しないでは、どの国もついてこないと思うんです。原則のない――方針がわかりませんから、腹が。そういう意味ですみやかに来年の通常国会にあたっては、やはりそういうことを明快に打ち出すということが国民に外交を知らせ、世界の共感を呼ぶ手だてになるんだろうと思うんです。各論になれば日本と朝鮮という一番近くのところはさっぱり外交の演説の中に出てこない。何といったって遠くの、中ソも近いとはいうけれども、一番近いのは朝鮮の国々でありますから、こういうところとの善隣関係を強めるんだというようなことも一項目入っていかなくちゃならないということをつくづく感ずるわけであります。もう一ぺんひとつお答えを願います。
#8
○国務大臣(大平正芳君) まあ田中構想、あるいは日本の外交の大原則というようなものをこの際明らかにするという意味においては、まだそういうアンビシャスな姿勢をとるには十分の自身を持ち得ないということをくどくど申し上げたわけでございますけれども、しかし日本の外交の貫いておる精神は、申すまでもなく一つには徹底した平和主義でいきたいということは、われわれの日々の外交実践の中に貫かれておることでございますし、内外に宣明いたしておるわけでございまして、平和を助長すること、定着させること、そういうことにわれわれは勇敢であり、精力的でなければならぬと思っております。これを侵すことに対しては勇敢にまたこれ排除していかなけりゃならぬ、平和主義に徹すること。それから第二に、こういう中流国家といたしまして、そういうものは力を合わせてやっぱり世界の平和に寄与するためには国連というもの、現在決して満足すべき状態にあるとは思いませんけれども、経済社会の分野におきましては相当の業績をあげておりますけれども、平和維持の局面におきましてはまだ見るべき働きをいたしていないわけでございますけれども、この国連はどうしても盛り立てなけりゃならぬという意味で、従来から国連重視の精神で貫いておるつもりなんでございます。
 それからわれわれは、単にわが国の一億の民が、この四つの島で安穏に高密度の経済を維持して高い福祉を享受することを究極の道標としているわけでは決してないわけでありまして、世界の中で世界とともに繁栄と平和を享受せにゃならぬという意味合いにおきまして、世界の不幸な方々、貧しい方々、発展途上国に対しましては、われわれが頼むところがあってやるわけではなくて、当然の責任としてそれに可能なお手伝いをするということで貫いておるつもりなんでございます。そういったことがもっと鮮明に世界の世論に訴えるだけのことをやれという御趣旨でございますれば、私も森先生に御同感でございまして、われわれが努力が足らないところは十分戒めてかからなければならぬと考えております。ただ、冒頭にも申しましたように、一番大事なことは、われわれのできることできないことを十分わきまえてかからなければいかぬということでございまして、わが国のいままでの歴史を見ましても、その力の評価とその行使を誤ったときに国運が危殆に瀕しておるわけでございますので、そういうことは十分これまた戒めてかからなければならないことであろうと私は考えております。
#9
○森元治郎君 十分お考え願ってこれは打ち出してもらいたいことと、どうも外から見ておりますと、従来の外交は思いつきな手の打ち方が多いと思うのです。対ソ関係の例をとってみても、私は言いたくはないけれども、それぞれ、表面には出ておりませんが、過去において、そのときの内閣、そのときの内閣がかってなことを思いつきでやっている。その思いつきで言ったことはもう種切れくらいにやっているように伺っておるのです。これは私がさっき言う、原則論のないところにそういうかってな思いつきをやっている。領土の問題を一つとっても、あれを貸さないかとか、銭で売らないかといったようなこともそれぞれ適当に言っている。そういうことは、やはり原則をしっかりと、外交会議といいますか、総理の諮問機関というか、外務大臣か、しっかりしたもので練り上げて、党としてあるいは政府として一貫したものがないところにかえって事態を混乱していると思うのですね。いろいろな人が大平さんのところに暮夜ひそかにたずねて、こうしたらいいだろう、ああしたらいいだろうなんて言ったり、これはうんとあるはずですね。そういうことに迷わないで、自分は自分できめた方針で政府は進むという形がやはりとられないと、外から見ていてきわめて醜態だと思うのです。
 ところで、平和条約という問題は、お互い日ソ間でも平和条約をやりましょうと福田さんと去年一月グロムイコ外相で話ができましたが、平和条約とは一体どういうふうに理解をしておるのでしょうか。それからグロムイコさんと福田さんが去年お会いになったときに、ただそれはよかろうと、こう言って、それじゃしかるべき時期に会合を持ちましょうと、ふわっとしてしまったのか。念押しをして、日本の平和条約の理解のもとでの要求と向こうの考えている平和条約、日ソ共同宣言そのままを宣言を条約化する、条約の基礎に立てようというだけの考えもあったろうと思うが、向こうはそれを言い出して、お互いで大体話が折り合って、それじゃ相談を始めましょうかとなったのか、何もない、ただ平和条約と。これ、かねがね五六年の鳩山さんの訪ソのとき以来、平和条約という字は両者の交換公文の中にもあらわれているから、いまさら言う必要もないから詰めなかったということもあろうかと思うが、その間の事情。平和条約とは何と日本側は理解し、ソ連側は理解しているのか、その点を伺います。
#10
○国務大臣(大平正芳君) 私の理解する限りにおきまして、日ソ双方とも平和条約の解釈につきまして相違はないと考えております。日ソ共同宣言のときに、いわゆる平和条約に盛り込むような内容も若干入っておりますが、これに平和条約という衣を着せることができなかったのは、領土問題で折り合わなかったからだと承知いたしております。で、領土が確定して初めて平和条約は成り立つものと考えておるわけでございますが、問題は、その領土の範囲ということについて双方に意見の軒輊があるということだと私は承知いたしておるわけでございます。
 条約論的解釈は条約局長から説明させます。
#11
○森元治郎君 その前に、その平和条約というのはいろいろ過去にたくさんあるわけですが、平和条約とは、紛争があり戦争がありしたあとの当事国間の平和の回復に伴う善隣、もとどおりの友好の関係にしましょうという条約である。紛争がある。けんかしないで平和条約はないので、ですから領土問題というようなことが当然入って、初めて平和条約という形になると思う。そういうものなしの、仲よくしましょうという平和条約が過去においてあったのかどうか、平和友好条約という友好という字でも入ってしまいますと、これは少し水をさして、若干違う意味のように思うのですが、ピーストリーティとなれば、その問題が入るんじゃないか。
 それから条約局長もう一つ。この間モスコウへ行ったときに、通訳が間違ったんですね。講和条約を早く結びたいと言うので、私はちょっと待ってくれと、講和条約というのは、宣戦布告などがあったあとのあと始末だと思うのだが、ソ連との間に講和ということばは適当でないと思うと言ったらば、平和条約でもいいですと、こう言い直されちゃったので、こっちは引き下ったんだが、講和条約的感覚を持たれたのでは、これは話は全く別だと思う。講和条約と平和条約というものを、日本の法制局なり外務省はいかに理解しているか。サンフランシスコのは、われわれ平和条約と言って講和条約とは言わない。会議は講和会議と言っている。この二点を御説明願います。
#12
○政府委員(松永信雄君) 日ソ間で締結まだされておりませんところの平和条約につきましては、ただいま森先生が御指摘になられましたように、伝統的な考え方に基づきます平和条約と申しますものは、両国間にいわゆる戦争状態が存在をしていた、その戦争状態を終結させ、同時に戦争状態の結果発生いたしましたいろいろな状態、事態を処理するための取りきめを内容といたしますものが平和条約として締結されるというのが一般的な通念的な考え方であろうと存じます。しかるところ、日ソ間におきましては、いわゆる日ソ共同宣言が締結されまして、これによって戦争状態そのものは終了するという合意がなされております。また同時に、領土問題以外の諸問題につきましては、共同宣言の中でおおむね手当てがなされております。したがいまして、共同宣言の第九項によりまして、両国が平和条約の締結交渉に同意いたしておりますその平和条約においては、残されております領土問題の解決が実体的な内容となるべきものであると私どもは考えておりますし、またその点については、先ほど大平大臣が申されましたように、日ソ間に解釈、了解の食い違いはないと、こう考えておるわけでございます。
#13
○森元治郎君 私は終わります。
#14
○田英夫君 問題の金大中事件も、どうやらいわば膠着状態という状況になっております。国民の多くは非常に大きな関心を持っていただけに、これがうやむやになってしまうんではないだろうか、そういう心配をしていると思います。そういう観点からお聞きしたいわけですが、最初に警察庁中島参事官おいでになりますから、ほかの委員会との関係もあるようですから、先に捜査関係のほうを御質問いたしますけれども、きのう韓国側がいはゆる中間発表というものを出したようでありますけれども、韓国語で、日本の大使館のほうではまだ現地では発表されなかったようでありますけれども、当然警察庁にも報告が入っておると思いますが、その内容がどういうものであるか、まずお聞きしたいと思います。
#15
○説明員(中島二郎君) 捜査資料の内容は十七日現在の捜査状況ということで、特別捜査本部がいつ設置されて、以来捜査員何名が捜査に従事をしているということ、それから捜査状況として金大中が家に帰るときに使用した容疑車両の捜査の状況、これについては金大中が家に帰る状況を目撃した者は現在まであらわれていない。特異な車両も発見できていないということでございます。それから金大中、金敬仁、梁一東に対する調査につきましては、数次にわたり調査をしたということ。で、この内容には触れておりません。証拠物の調査につきましては、金大中が家に帰るときの包帯であるとか、下着であるとか、運動ぐつであるとか、ばんそうこうであるとかといったようなものの鑑定依頼をしたが、特異な状況を発見できない。それから警告文なり、妻に郵送された脅迫書信等については、筆跡鑑定をして引き続き捜査中である。船の捜査につきましては、八月八日午後一時から九日の午後十二時までに日本から出港した全部の船舶で、外国を経由しないで国内十六の港に直接入港した七十そうの船を対象に捜査をしたが、五十九そうについては現在まで金大中拉致容疑点を発見できない。残りの船舶十一そうについて引き続き捜査中であるということ。それから金大中の陳述を土台とする上陸地点ということで、いなかの家、二階建ての洋館及び犯人、医者等に対する捜査をやっているということが出ておりますが、結果については特別のことに触れておりません。
 それから金東雲に対する捜査といたしましては、九月九日金東雲に対し捜査したところ、犯行に加担した嫌疑がない。それから金大中、金敬仁、梁一東に対しても金東雲の犯行加担のいかんを調査したところ、犯人らとは全く違うとそれぞれ陳述した、こう述べておるわけです。
 最後に、救国同盟行動隊及び愛国青年救国隊の正体を把握するため多くの団体を対象に情報を収集したが、知っている者がなくて、現在引き続き調査中である、こういう内容になっております。
#16
○田英夫君 どうですか、率直のところ、その韓国側の報告というのは日本の捜査当局にとって参考になるかどうか、役立ちますか。
#17
○説明員(中島二郎君) 特に日本警察の捜査に参考になる点はございません。
#18
○田英夫君 そうだろうと思います。いまお聞きした限りでも、全く何もわかっていないということでありますし、一番問題の金東雲の調べについては嫌疑がないというふうにいま言われたわけですが、これはいわゆるアリバイがないというふうに報道されておりますが、そういう表現はありますか。
#19
○説明員(中島二郎君) そういう表現はございません。
#20
○田英夫君 どういう調べをしたのかさえもわからない。そして金大中、梁一東、金敬仁各氏に対して聞いたところが、金東雲は知らん、関係ないと、こういうふうに言ったと、こういうことになってくると、日本の捜査当局が割り出された数字とは全くまっこうから対立をする。これは世界的なといいますか、捜査技術の常識として指紋が一致するということは動かしがたい証拠であるというふうに考えられるわけですけれども、この点を含めて、韓国側のこの金東雲は関係ないというこの発表に対して、どういうふうにお考えになりますか。
#21
○説明員(中島二郎君) 私どもといたしましては、繰り返し申し上げておりますように、金東雲書記官が本件の犯行に加担したであろうという容疑につきましては、現場に遺留された指紋と金東雲書記官の指紋とが一致すること、それからエレベーターの中で金大中氏及び犯人と思われる一行を目撃している人の証言等からいたしまして、自信を持っておるわけでございまして、今回の捜査資料の発表を見まして、指紋などのことには全く触れておらないという点で、私どもといたしましては、金書記官が容疑がないということであれば、任意出頭をして日本警察の捜査に協力をしていただきたい、かように考えております。
#22
○田英夫君 その点でこれはこまかいことのようですけれども、一番きめ手となる指紋の照合が行なわれたそのもとになったほうは、金東雲書記官がかつて記者として入国したときの登録証の指紋だというふうに聞いておりますが、現場で採取されたものはどういう状況の指紋で、非常に確度の高いものであるかどうか、現場指紋というのはしばしば非常にむずかしい状況の中で採取されますんで、確度に高低があるわけでしょうけれども、この点はいかがですか。
#23
○説明員(中島二郎君) 現場のどこでどういう状況で採取したものであるかということにつきましては、現在金東雲書記官の任意出頭を求めておる段階でございますので、申し上げることは差し控えさせていただきますが、この指紋につきましては、肉眼で鑑定をしても一致するというふうに見られるわけでございますが、さらに精密な鑑定もいたしまして、私どもとしては絶対間違いがないという確信を持っております。
#24
○田英夫君 実は金東雲書記官以外にも当然捜査線上に多くの人たちの、これは政府機関であるなしにかかわらず、すでに浮かんでいるというふうに考えられますけれども、私どもの調べでもいろいろ情報を聞いているわけですが、そうした人たちの中で、特に政府機関に関係する人たちが相次いで帰国をしているという事実があるわけですね。この外交官リストに載っている人たちで私どもが情報として名前を聞くと、調べてみると、もう日本にいないという状況が相次いでいるわけです。あえて名前あげませんけれども、この金東雲書記官の名前が書いてあるこの同じページだけで私どもの調べで三人名前があがって、それが全部いない。こういうことですが、警察ではどういうふうにつかんでおられますか、その点。
#25
○説明員(中島二郎君) どういう人の名前が浮かんでおるのかわかりませんが、いずれにいたしましても、現在鋭意捜査中でございますが、残念ながら容疑者を特定するまでの段階に至っておりません。
#26
○田英夫君 それは金東雲氏の場合だけが指紋というような、あるいは目撃者というような確定的なものがあって、他はそれがまだつかめないということなのか、あるいは総合的な捜査の中で、まあはっきり言えば政治的な判断も加えて金東雲氏だけを表に出してほかの人は出さないのか、この辺はどうですか。
#27
○説明員(中島二郎君) 政治的な判断を加えて金東雲氏以外の氏名の特定ができていないと申し上げておるのではなくて、純捜査的に申し上げまして、現在金東雲書記官以外の氏名を特定するに至っていない、こういう段階でございます。
#28
○田英夫君 いわゆる捜査をやっていて壁にぶつかったときには現場に帰れというのが古くから言われている捜査の原則だそうですけれども、そういう言い方で表現されたときに、いまの金大中事件の捜査は現場にまた立ち帰らなければいけないというような、一種の捜査技術的な壁にぶつかっているのか、捜査のほうは順調に進んでいるのか、この点はそういう表現でけっこうですから、いかがですか。
#29
○説明員(中島二郎君) 現在被害者である金大中氏がいない、それから現場におられた梁一東、金敬仁両氏が日本にいない。金東雲書記官は任意出頭を拒否しておると、こういうことで捜査は大きな制約を受けておるわけでございますが、現在、地下駐車場から出たであろう車の捜査もなお三十台を対象に進めておりますが、十九台について本件と関係がないということがわかった、残りの十一台につきましては、これも下四けたのナンバーで調べますので、東京だけで百何十台とあるわけでございまして、大部分の車については白になっておるのですが、その下四けたの数字全体の車が白になるという段階になっていないということで、十一台については黒か白かを言うことができない段階でございます、そのほか船の関係であるとか、アンの家と言われている家の捜査であるとか、いろいろと進めておりますので、特に壁にぶつかったとか、特別の進捗があるとか、そういう状況ではございませんが、着実に地道に捜査を進めているという段階でございます。
#30
○田英夫君 ひとつ具体的なことで捜査当局でおつかみかどうか伺いたいのですが、いま地下駐車場の車のことが出ましたが、事件当日の八月八日の日に梁一東氏も地下駐車場にいたということが情報としてあります。そのときに大阪の坂本紡績の坂本栄一社長が梁一東氏と一緒におられた。これは事件に関係があるということで言うんじゃないですが、梁一東氏と一緒におられたということですね、どっち側か別として。その坂本社長は自分の会社の車に大阪から乗ってこられたんではないか、こういうふうに言われている情報がありますが、警察ではこのことは御存じですか。
#31
○説明員(中島二郎君) 現在まで私の承知しているところではそういうことは聞いておりません。
#32
○田英夫君 まあ私のほうに入っている情報ですからこの機会に申し上げると、坂本栄一さんという人は韓国名徐甲虎という名前で、韓国人として非常に成功されて大阪のいわば財閥といいますか、財界といいますか、そういう経済活動をしておられる方だそうですが、この人の、坂本紡績の車の中に下四けたが四七八七という車があるようですが、ただしこれはライトバンだそうです。社長がライトバンに乗ったとすればちょっとおかしいんですが、これは捜査当局の当日あった車の下四けたの中に四七八七というのがあるんじゃないですか。いまわからなければいいです。
#33
○説明員(中島二郎君) いまわかりませんので、調べてお答えいたします。
#34
○田英夫君 まあこれ、この機会にそういう情報をお伝えしておきますけれども、この坂本社長が梁一東氏と一緒に地下駐車場に八日の午前九時ころおられたということを伝えてきたものがあります。そういうことで事件は別に壁にぶつかってないという御判断のようですけれども、同時に相次ぐ帰国というようなことで捜査当局としてはやはり一つの難点もある、こういうふうにお考えのようですけれども、そこで、大平外務大臣に伺いますが、この事件がどうやらいわば膠着状態に陥っていると、こう考えざるを得ないんですけれども、そうなりました直接のきっかけは、どうやら金東雲書記官の任意出頭を求めたあたりから韓国側が非常に硬化してしまった、こういうふうに見られるわけですけれども、そういう事実はありませんか。
#35
○国務大臣(大平正芳君) 本件は申すまでもなく日韓両国にまたがる事件でございまして、本来そういう捜査上の制約もありまするし、また事態を収拾する上におきまして外交的な手順を踏んでまいるという必要がございますので、まあ隔靴掻痒の感を免れないのでございます。で、現在の状況は、捜査上必要であるからということで幾つかの御協力を韓国側に求めてあるわけでございます。金大中氏並びにほか二名の方につきましては、捜査中のゆえをもってまだ応諾の返事をいただいておりません。それから金東雲氏につきましては、外交特権を援用されまして応じがたいという御返事をいただいております。外交特権の援用につきましては、この前にも参議院の本会議であなたとのやりとりがありましたように、その国の外交官は刑事管轄権から免除されておりますので、それでその犯罪の性質の種類を問わないわけでございますので、援用されてまいりますと、それでもという手段はないわけでございます。したがって、今後この解明にあたりまして、どの程度、どういう姿で韓国側に協力が得られるかという点につきましては、まず本日の午前十時に発表されました、そしていま警察庁側から御披露になりました中間報告というものは最近いただいたものでございますけれども、それ以上出ていないわけでございます。
 それから事態の収拾でございますが、これはわれわれといたしましては、国の内外に納得のいく解決をはかりたい、うやむやにするつもりはないということで国会の内外に申し上げておるわけで、その態度に変わりはございません。先方におかれては、この不幸な事件で日韓関係にひびが入るということは、亀裂が入るということは望まない、納得のいく解決をしたいと思うのでしばらく時間をかしてほしいというのがわれわれに届いておる先方の反応なんでございます。したがって、先方がそう言われておる以上、しばらく先方の反応を見守る以外にいま手だてがないというのが今日の時点における私どもの立場でございます。
#36
○田英夫君 中島参事官がほかの委員会に行かれるようですから先に伺いますけれども、金山元大使がいま韓国に訪問されて、行っておられますし、私どもも予想するところなんですけれども、さっきの中島さんの御答弁にもありましたが、韓国側は金大中氏あるいは梁一東氏、金敬仁氏にこの金東雲問題を突き合わしたところが否認をしていると、そういう人は知らぬと言っていると、これはどういう状況の中でやられたかは憶測しかできませんけれども、私どもがほんとうに人道的な立場ということを中心にして金大中氏の再来日を求めている。これはあくまでも条件つきであってはならないんで、先日もこの委員会で羽生さんから大臣に繰り返し御質問がありましたけれども、捜査に協力するためというんでは実は非常に危険ではないだろうか。これは人道的な立場という原則から踏まえてもおかしいし、さらに捜査技術的に私は非常に危険じゃないだろうかというふうに考えているわけです。つまり、金大中氏が再来日しても何らかの条件がつけられ、日本の捜査当局が調べるときにも韓国側の人がそばについていると、自由に発言ができないというような状況の中で、あるいはその場は自由に発言ができても、帰国するとき、すでに一つの口かせといいますか、そういうものをはめられて来ている可能性も十分考えられる。そういう状況の中で再来日したと喜んで、そして日本の捜査当局が自由に捜査したと、その結果は金東雲書記官を否認するということを日本の捜査当局に対してやられた場合には、これはもう日本の捜査当局は打つ手がなくなると思います。完全に指紋も何も吹き飛んでしまうという、これは捜査の技術といいますか、そういう点からすれば、それは指紋の一致あるいは目撃者、そういうところからどんなに日本の捜査当局が自信を持っていても、当事者である金大中氏自身が金東雲氏はあの中にいなかったということを言ってしまうと決定的にならざるを得ない。ですから、金大中氏の再来日というものはどうしても早急に求めなければいけないけれども、それは単に形式的に捜査に協力をするという条件で帰されたらとんでもないことになる、こういうふうに私は考えるんですが、捜査当局としてはその点はどういうふうにお考えですか。
#37
○説明員(中島二郎君) 私どもは、現在金大中氏がどういう状況にあって、今回の調べがどういう状況のもとで行なわれたかということを存じておりませんので、この捜査資料についてあれこれ申す段階ではないと思いますが、その供述が特に信用すべき状況のもとにされたものであるということが刑事訴訟法上、日本の訴訟手続上証拠として採用するためには必要でございまして、したがいまして、来日するということであれば、当然自由な環境で発言していただけると、こういうもとで来日していただくということを期待いたしておるわけでございます。
#38
○田英夫君 これは当然だと思いますんで、その意味から、先日の大平外務大臣の羽生さんに対するお答えには若干私やはり気になる点が残るわけです。大臣は、日本の捜査に協力するためと、こういうふうに表現をされているわけで、私はこの点は、いま警察側が言われたことを含めて、自由に供述できる、こういうことで当然言っておられるんだと思いますが、それで間違いありませんか。
#39
○国務大臣(大平正芳君) 警察当局におかれまして捜査上の必要から、被害者の方々の任意な陳述を必要とするという意味で、私どものほうを通じて先方に要請してもらいたいということで要請しておるわけでございます。それがありのままの事実でございまして、問題は先方がそれにまず応ずるかどうか、そういう金大中氏等にパスポートを発給するかどうか、出入国管理の上からどういう制約があるのか、それは私よく存じませんけれども、身柄が先方にあるわけでございますので、そういう点は先方の政府の判断にかかってくると思うのでございますが、おいでいただける場合に、当然捜査の必要を満たすものでなければこれは意味がないわけでございますので、私ども任意の陳述性がなくても、ただおいでいただければいいんだというようにぞんざいには考えていないわけでございます。
#40
○田英夫君 そこで、さっきの中島参事官のお答えにありました中間発表なるものを見ても、何か韓国側の捜査というのはもっといろいろあるべきじゃないか、もっといろいろなことがわかっていてしかるべきじゃないか。ところが中間発表に関する限りは、こういうことをやっているけれども結論はないというようなことばかりで、結論が出ているのは金東雲書記官を否定している、嫌疑はないと言っているところだけが具体的なんですね。非常にふしぎな中間報告ですけれども、そこで一方もっとふしぎなことは、おとといですか、韓国の法務部長官が野党の新民党の代表と会われたときに、金東雲書記官にはアリバイがある、また韓国捜査当局は事件の全貌をつかみつつあるというふうなことを言ているわけです。事件の全貌をつかんでいるなら、捜査の内容というものはもっと進んでなければいかぬわけですね。事件の全貌をつかむためには、韓国側の上陸してからの問題や船の問題だけでは事件の全貌をつかむはずがないので、日本国内におけるグランドパレスホテルから船に乗せるまでの道程についても当然捜査が進んでいなければ、事件の全貌をつかんでいるという、犯人も浮かびつつあるというようなことは出てこないはずなんです。この法務部長官の発言というものは、金山前大使は少しオーバーだというようなことを言っておられるようですけれども、この点は政府のほうは、外務省あるいは捜査当局はこの法務部長官発言をどういうふうに理解しておられますか。中島さんどうですか。
#41
○説明員(中島二郎君) 私どもといたしましては、この法務部長官の発言につきましては、新聞報道を通じて承知をいたしておるだけでございまして、外務省を通じての正式な報告に接しておりませんので、論評は差し控えたいと思います。
 なお、途中で恐縮でございますが、先ほどの四七八七番という車のナンバーでございますが、いま手元の資料を調べましたところ、事件前後に地下駐車場にいた捜査対象車両三十両の下四けたのナンバーには該当がございませんので、つけ加えておきます。
#42
○羽生三七君 一つ関連して伺いますが、このまま事件が際限なしに遷延しそうな状況になってきたわけですが、その場合に、大臣は、内外の納得いく処置をしたい、こうおっしゃっておりますが、いまも田委員からお話があったように、先方側が、金東雲氏はアリバイがあるとか、あるいは金大中氏、梁一東氏、それから金敬仁氏等は何か否認しておるようなことを言っておるわけですね。そうなってきて、実際問題として韓国が根本的にこの問題の本質を否定するような事態が起こった場合に、その場合に、大臣は先日私の質問に答えられて、日本の警察当局を中心にして客観的に見て正当な判断を基礎にして問題の解決をはかりたいということを再三にわたっておっしゃったわけですが、しかし韓国が公式にそういう態度をとって、すべての日本の考え方を否定するような、日本の考え方とは合致しないような調査結果なり態度をとった場合に、はたして内外の納得のいくような処置ができるのかどうか。私はこれは非常に疑問だと思います。そうなるというと、この前私が申し上げたような政治的な判断に落ち着く可能性がなしとしない。でありますから、私はやはりこの際、結局総理、外務大臣が一連の外国訪問から帰ってこられるまで――帰ってこられてあともすぐ片づくかどうかわかりませんが、帰ってくるまでこれ遷延ということになるわけですけれども、やはり日本として、出発する前にでも、もっともう少しちゃんとした方針というものをとらないと、私は大臣の再三の御説明にもかかわらず内外を納得させる処置がとられるかどうか、非常に杞憂するわけです。それからもう一つは、やはり金大中氏自身の無条件原状復帰ということがないと、非常にこの問題の本質の究明ができないのみならず、条約つきでは問題の究明は私はできないかと思います。これは田委員が指摘されたとおりです。ですから、やはり国連あるいはその他一連の外国訪問にある程度の時間がおかかりになるにしても、それはそれとしながらも、やはり金大中氏の無条件原状復帰というものは、やはり強く、間断なく要求をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
#43
○国務大臣(大平正芳君) 金大中氏等の再来日は求めてあるわけでございます。捜査中のゆえをもちまして、捜査中は応ぜられないというのがわれわれが接しておる先方の反応でございます。われわれといたしましては、警察当局といたしましてそういう必要があるということでございますので、仰せのとおり引き続き求めていくつもりでございます。
 それから、内外に納得がいく解決をしなければならぬのは政府の本来の責任と心得ておるわけでございまして、日本政府といたしましては、その基本をうやむやにするというようなことがあってはならぬと考えております。ただ先ほども田さんにお答え申し上げましたように、両国にまたがる事件でございまして、韓国側の十全な御協力が得られないとすっきりとした解決にならぬわけでございまして、それが得られるかどうかということでございますが、いましばらく時間をかしてくれということでございますので、われわれといたしましては、先方の反応を待つということ以外にいまとるべき手段がないということを申し上げておるわけでございまして、羽生先生の御質問はそれでも得られない場合にどうするかということでございますが、いまそういうことを私考えたくないわけでございます。
#44
○田英夫君 いまの羽生さんの質問に関係することなんですけれども、もう大臣御出発まであと一週間ないわけですが、国連その他回られるとなると、その間は最高責任者が日本におられないわけですから、なかなかこの外交的な解決というのはむずかしいだろうということにならざるを得ないんですが、二十三日までにということはもはやあり得ないのかどうか。それまでに何らかの手をお打ちになる御意思があるのかどうか。実はこの事件起きましてから、まあ私どもいろいろ提案めいたこともいたしましたけれども、実際に外務省当局でおやりになったのは、後宮大使の二度にわたる帰国、それから妹尾課長がこの間事務連絡ということのようですが、日帰りで韓国に行かれたという程度のこと、あと金山元大使が、これは非公式ということで接触をしておられる、こういうことだけなんですね。この点は非常に私どももあるいは国民もまあ不満に思っている。これはなぜ具体的な手をお打ちにならないのか。具体的な手は私どもが考えてもいろいろあるわけですから、外務当局でお考えになる手段というのはいろいろあると思うのですが、むしろふしぎに思うんです。何も行動にお出にならない。そういう計画はありませんか。
#45
○国務大臣(大平正芳君) いま田さんから、その具体的な手というのはどういう……。
#46
○田英夫君 たとえば大平さんこの前行かれたらどうだと私は本会議では言いましたけれども、これは……これも含めてです。
#47
○国務大臣(大平正芳君) まあいまの状況といたしまして、政府が特別の手段を講ずるつもりは当面ないわけでございます。それは何も本件について早期に解決の熱意がさめてきたという意味じゃ決してないわけでございまして、私どもといたしまして日本の本件の処理についての方針、考え方というものは先方に重々お伝え申し上げておるわけでございまして、先方におきましていつでもわれわれとお話し合いに入るということでございますが、きょうでもあすでもいいわけなんでございますけれども、いましばらく時間をかしてもらいたいということでございますので、私どもとしていまこの際特に、それでもこういうことをやる、こういうことをやるということについては当面考えていないわけで、そのほうが事態の収拾にとつて賢明であると私ども考えておるんです。
#48
○田英夫君 けさの新聞で一部報道されておりましたけれども、ニューヨークで日米韓外相といいますか、キッシンジャー氏あるいは金溶植外相と接触をされるのではないかと、こういう記事が出ておりましたけれども、これは当然予想されることだと思います。金外相と会われる点については、先日の委員会では否定をされたというふうに思いますが、日米韓同時なりあるいは個別なり公式、非公式を問わず、ニューヨークでそういう行動に出られる計画はおありになりますか。
#49
○国務大臣(大平正芳君) 国連におきましては、キッシンジャー国務長官はじめ多くの方とお目にかかる手はずを漸次整えつつあります。しかし韓国からは会談の申し入れをただいままで受けておりません。私のほうから特に会談を求めるつもりはありません。しかし、もし先方から会談をしたいという申し出が今後ございますならば、それは私はお目にかかるにやぶさかではないわけでございます。
#50
○田英夫君 これはひとつ大切な機会だと思いますし、国連のあの舞台、場所はきわめて非公式に、まあ大臣が立ち話というのはおかしいかもしれませんけれども、非公式にお会いになる場所としてはきわめて自然ですね、サロンがありまして。顔を合わせられる機会というのはきわめて自然に生まれるだろうと思いますので、どっちかの代表部を訪問されるというようなことなしに、国連のあのサロンで自然に会われるというような舞台ができるというふうに実は思うんですが、いまの大臣の御答弁からするとそういうことは非常にあり得ることだと、こう理解してよろしゅうございますか。
#51
○国務大臣(大平正芳君) いまこういう段階で私のほうから会見を特に求めるというつもりはないということを申し上げたんで、先方から会いたいということであれば、私どももお目にかかるつもりでございますし、また仰せのように国連は多くの代表が一堂に会することでございますので、お目にかかる機会がないとは言えないと思います。
#52
○田英夫君 重ねてお聞きしますけれども、それは日韓両国の外務大臣があの国連の場で一つの場所に会われる、これはもう非常に可能性の濃いことだと思いますし、そういうところで顔を合わせてそっぽ向いてるわけにはいかないと思うんで、そこではまず一〇〇%近くそういう場が生まれてくると、そこで話題としては当然この問題が登場すると、こう考えざるを得ないんですけれども、いまの御答弁からもそういうふうに理解していいですね。
#53
○国務大臣(大平正芳君) お目にかかることをちゅうちょする理由はないと思います。
#54
○田英夫君 そこで問題は、まあ困ったもんですねと二人でおっしゃるわけにはいかぬと思いますからね、その内容ですよ。大臣としてはそういう話題になったらやっぱり一番先に何を言われるんですか。金大中さんを帰してくれということですか。
#55
○国務大臣(大平正芳君) 私は国会に対しましてもプレスに対しましても、どこに対しましても同じことを申し上げておるし、それ以外に申し上げられないわけでございます。内外に納得のいく解決を早期にはかりたいという熱意はいずれの場合も表明しなけりゃならぬと思っております。
#56
○加藤シヅエ君 関連。
 外務大臣、この前、経済閣僚会議がいまストップされている状態、これを韓国側では向こうに都合よく、ていさいよく、田中、大平両大臣の外遊ということがあるので、そういうお差しつかえがあるのでこれが延びているという、そういうようなことを言っておりました。これに対しては私前々回質問いたしましたときに、それが理由ではなくて、いまの金大中事件が懸案になっているというそういう空気の中で閣僚会議は継続できないからストップしていると、こういうような意味の御答弁があったと思います。ですからいま田委員がおっしゃったように、まあ国連の廊下なんかでお会いになったときに、閣僚会議もどうぞお帰りになったらまたお開きくださいというようなことを言われるかもしれないわけです。そういうときにはどういう答弁をなさいますか。
#57
○国務大臣(大平正芳君) どうも試験を受けているようなことでございますけれども、閣僚会議につきましてはこの間お話し申し上げたようなわけで、その際としては開くことは適当であるまいということで、両国合意の上延期したわけでございまして、私どもが外遊から帰国後なるべく早い時期に考えましょうということになっているんでございます。それがいままで公式のやりとりでございまして、参議院の本会議でもお尋ねいただいたわけでございますが、これを無期延期するという考えはいま持っていないわけでございます。われわれ今後の状況を見ながらどのようにしていくか考えていかなければならぬと思っておりまして、いまいつごろこれが開けるであろうかという確たる成算を、展望を私はまだ固めるに至っておりません。
#58
○加藤シヅエ君 もう一つ。いまの御答弁で無期延期する意思はないとおっしゃった。それはそうかもしれません。ですけれども、いまのような事件が一つも解決しない、懸案が解決してない、うやむやである、こういうような状態の中でもお続けになることがあり得るんでございますか。そこだけははっきり伺いたい。
#59
○国務大臣(大平正芳君) こうお答えすれば御理解いただけるのかと思いますが、まあそれはあらゆる政府のやる仕事がそうでございますけれども、やっぱり国民の理解と協力というものがつながれなければなかなか成果をあげにくいわけでございます。私どもといたしましては、何事をやるにいたしましても、そういう点につきましては十分配慮していかなけりゃならないと考えておるというところからひとつ御判断をいただきたいと思います。
#60
○田英夫君 実はいまそういうことをお聞きしたのは、大臣がこの問題解決のために何を一番大切だと考えておられるかを知りたかったので、金溶植外相と接触される場合に何を一番先に話されるのかという聞き方をしたわけです。実はたいへんうがったことを言うようですけれども、この問題の解決というものの一つの大きなかぎは、韓国国内の政治情勢がいまのままであっては解決がむずかしいのじゃないか、こういう点があると思うのですね。つまりもっとはっきり言えば、韓国国内の政治の中で、かなり政争といいますか、争いがあるという状況の中で、解決がむずかしくなっているのではないだろうか。つまり韓国政府機関、KCIAがこの事件に関与をしているという結論が出てしまえば、その責任者である人が責任をとらざるを得ない状況になってくる。こういう点が非常に鋭く関連をしてきていて解決が長引いているのじゃないか、またそうだとすれば、われわれとしては非常に残念なことだと思うわけであります。そういう状況だと、いかに外務大臣が金溶植外相とニューヨークで話し合われても、これは実はむだなことなんで、問題の所在は別のところにある、こういうふうに、これは全部じゃありませんけれども、解決できない一つの大きな要因だと。そうなってくると、日本のわれわれのほうの手の届かない向こう側の事情のためにこの問題がこじれてしまう。そうすると、金鍾泌首相が時間をかしてくれと言っている意味も、別のところにあると考えざるを得なくなってくると、この問題はうやむやの方向に進む可能性がきわめて濃厚にならざるを得ない。KCIAが関与していたという結論を出してはならないという韓国側の事情が優先をしてくる。金東雲書記官は関係ありませんと、嫌疑がありませんという結論が先に出ていて、それに沿って向こう側の話が進められている。こういうことになってくると、最後、とどのつまり、日本側が非常に困った立場に立たされる。特に日本の捜査当局は非常に困った状況になる。そうしてそのことは、ひいては外務当局、政府全体も非常に窮地に立たされることになると思います、日本の国民世論の前に。こういうことまで当然お考えの上、いま対策に苦慮しておられるというのが現状ではないかと思うのです。そういう状況の中ですから、遷延をしていけば、事態を引き延ばしていけば解決が出るというふうには考えられない。もしそれが出るとすれば、それはうやむやという解決でしかない。どうも筋書きはその方向に韓国側によって進められているように思われてならないわけです。これは大臣からはお答えにくいことかもしれませんけれども、いま私の申し上げたような見通しについて、大臣はどうお考えになりますか。
#61
○国務大臣(大平正芳君) これは対等平等の独立国の間に起こった事件でございます。私ども外交当局といたしましては、相手国に対しまして最大の敬意をもって対処せにゃならぬわけでございますので、先方の内政上の問題について言及することは私は差し控えたいと思います。しかし問題は、日韓間における非常に不幸な事件であって、この問題の処理を誤れば日韓関係というものが今後その運営がたいへんむずかしくなるという性質の事件であることは間違いないと思うのでございまして、そういうことにつきましては、先方におかれましても、いろいろ憂慮されておるに違いないと私は思うわけでございまして、私といたしましては、今後の日韓関係をフェアな公明な関係にするという意味で、本件の内外に納得がいく公明な解決をはかるということで臨みたいと考えておるわけでございまして、先方におかれて、これにどういう反応をお示しになるか、これはまだ決定的な反応が出ていないわけでございますので、いま羽生先生にもお答え申し上げましたように、私どもはひたすらそういう意味で、早期の公明な解決をということを念願といたしまして、これからも精力的に対処していこうと考えております。
#62
○渋谷邦彦君 今回発生しました金大中氏事件、これがいままで表面化していないときには、KCIAの動き等についてもさほど問題にされないままに今日まできたわけでございますけれども、しかし類似したような問題が先般もいろいろな角度から指摘されておりますように、実はずいぶんあったというようなことが言えるわけであります。ところで、そうした類似問題について、外務省でどのように掌握をされているかということについて一つお尋ねをしたい問題がございます。
 伝えられるところによりますと、去る七月十六日付、韓国の文教相ですから日本の文部大臣でございますね、名による日本人教員招請に伴う協力依頼というのが韓国の各関係方面に要請が出されておる。この事実については、どのように掌握されておりますか。
#63
○説明員(妹尾正毅君) お答えいたします。
 ただいまの韓国文教相からの各国内関係当局に対する便宜供与の要請につきましては、大使館にも写しといいますか、一部送っておりますので、わがほうも大使館を通じてこのことについては承知しております。
#64
○渋谷邦彦君 あらためて確認をしておるわけでございますから、その具体的な内容についてはどうなっておるのか。
#65
○説明員(妹尾正毅君) 内容を概略申し上げますと、日本にいる韓国人の子女教育を担当している日本人の教職員の方を韓国に招待して、韓国の新しい建設と発展の様子を紹介するということで、そういう日本人教員の方を招待したい。それでその招待についていろいろの方面で協力をしてほしい、そういう趣旨でございます。それで、日本大使館につきましては、そのうち一時間、八月十三日月曜日の午後でございますが、大使館に向こうの方がお見えになりたいということで、大使館にも連絡が来ているということでございます。
#66
○渋谷邦彦君 その協力を要請した先にはいろいろなところがあるようですけれども、その点についてはどういうふうに受け取っておられるんですか。どういう個所に要請がなされたかどうか。
#67
○説明員(妹尾正毅君) こういう場合、いろいろのところが関連するということでございまして、たとえば出入国の手続について法務部に便宜供与の依頼がいっておりますし、たとえば国立博物館に一行が行かれるということで博物館の協力を要請しておりますし、それからいろんな文化施設を見に行くということでそれぞれの関係のところもございますし、それから各種の、ソウルとか釜山等の教育関係の学校とか施設の訪問についてそういう教育委員会に要請がいっているというようなものが、学校関係者に対する要請もございます。それからそういう中の一つとして、中央情報部に対して日本人教員の滞韓中の身辺保護について協力要請というのがいっていると承知しています。いま申し上げましたもの以外にも若干ございますが、こまかくなりますので省略させていただきます。
#68
○渋谷邦彦君 いま答弁された最後のくだりでありますけれども、依頼先の中に中央情報部長が入っているんですね。しかも協力依頼内容というのがいま述べられたように、日本人教員の滞韓及び帰国後身辺保護及び諸般事項分析、これが原文になっているそうですね。このとおりなんだそうですが、その点はどうですか。
#69
○説明員(妹尾正毅君) 原文はそうなっておりますが、ただ、最後の帰国後という点につきましては、その後、この部分はミスタイプであるという連絡を受けていると承知しております。その点につきましては期間がずっと全部何日というのが入っておりまして、たとえばいまの博物館の場合でございますと、八月十二日、日曜日の二時半から四時半までというふうに書いてございまして、ただいまの中央情報部のところは八月十日から十九日までということで、つまり一行の韓国滞在期間を通しての期間ということになっておりまして、帰国後のところは誤りであると、ミスプリントであるというふうな連絡を受けていると承知しております。
#70
○渋谷邦彦君 ミスプリントであれば、そのとおりわれわれとしても理解したいところなんでございますけれども、そういう指摘があってからミスプリントと言い直したのか、非常に奇怪な問題ではないかと、日本人教員が帰国したあとにもその身辺を保護するという、その意味というものが全然納得ができないし、今回の金大中氏事件の発生と相まってあるいはという疑惑が当然起こるのであろうことは言うまでもないということで、いまその点についての問題を確認をしたわけです。それは、いまあなたが答弁されたとおりそれは正確なものですか。
#71
○説明員(妹尾正毅君) 正確とおっしゃいましたのはどの点をさしておっしゃったのかわかりませんが、私の申し上げたことは正確でございます。
#72
○渋谷邦彦君 つまり帰国後における身辺保護についてはこれはミスプリントであって、それは全く誤りであると、このように理解してよろしいかどうか。
#73
○説明員(妹尾正毅君) そうだと思います。
#74
○渋谷邦彦君 この問題については当然現地の駐韓日本大使を通じて申し入れもされたわけですか。それで確認をされたわけですか。
#75
○説明員(妹尾正毅君) 確認いたしております。
#76
○渋谷邦彦君 こうした、たとえそれがミスであったとして理解はできるにいたしましても、何となくこの気持ちの上ですっきりしない問題が一連の関係性をもって日本の国内において起こっていたんではないかというような感じがしてならない。たまたまこの金大中氏事件が表面化したということになって、おそらく韓国政府としてもその収拾方についていろんな手段を講じ、日本国民の感情を害してはならない、そういうことで、あえていま言われたその問題に触れますと、それはミスプリントであったというようなことになったんではないかという勘ぐりすらも出てくる。こういうことが今後も起きないという保障がはたしてあるのかどうなのか。日本にとってもたいへん迷惑なことでありますし、たとえささいなことであるかもしれませんけれども、決してささいなことではないと、その持つ意味というものは。こうした事柄について、先ほど申し述べたように類似行為というものが、いろいろな中身は違うかもしれません、しかし実際にあったことは事実でありますし、すでに十数件も指摘されておる、こういうことを考えた場合に、残念ながら現在のところ金大中氏事件については解決の曙光すらも見えない。と同時に、日韓関係というものがたいへん憂慮されるような暗影を将来においても投げかけていくんではないかという点から、おそらく大平さんがしばしばいままでの答弁を通じましても、納得のいく筋の通った解決のしかたをしたい、こういうふうにおっしゃられたんであろうと思うわけでございます。しかし、いずれにしても今後こうした不幸な事態というものが起きないためにも、先般来からしばしば指摘されておりますように、やはりもっと外務省当局がいま申し述べたような類似行為、たとえどんな小さな類似行為であっても絶対に認めるわけにはいかんという、そうしたやはりきびしい姿勢というものが今後においても必要ではなかろうかと、今回のこうしたきびしい教訓を前にして、大平さんとしては今後に臨むこの種の問題の絶滅を期するためにどういうお考えを持っていらっしゃるか、集約的に整理をして、いままでのことを全部整理して結論的に伺っておきたい、こう思います。
#77
○国務大臣(大平正芳君) 申すまでもなくそれぞれの国はそれぞれの個性、歴史、伝統、文化、またそれにまつわる体制を持っているわけでございまして、それはそれとしてそれぞれの国民が選んだ体制でございますので、私どもとしてそれをとやかく言う立場にはないと思うのでありますが、私どもが一番苦心がございますのは、それぞれの国と日本との間柄、外交関係というものが相互の十分な理解の上に立ちまして、すっきりとした公明なものでなけりゃならぬと思うわけでございまして、そういう意味から、私どもとしてそれに悪い影響があるというようなことにつきましては、政府としてそれ相応の処置を講じていかなければならぬと考えております。問題は、日本におきまして外国の方々が日本の国の国法を侵した場合におきましては、これは一つの犯罪行為として処断されるわけでございまして、私どもの仕事ではないわけでございますけれども、外交関係を担当する立場におきましては、そういう関係に至らないものにつきましても、公明な両国の外交関係をすっきりしたベースに置いていこうという趣旨の上から、不断の注意を怠らないようにしていきたいと考えます。
#78
○渋谷邦彦君 重ねてこの問題もう一点だけ、これも確認ということで伺っておきたいんですが、問題の最も焦点とされていることは、主権侵害がなされたかどうかという解明にあろうかと思います。これは二点あるんじゃないかと思うんです。その一つは、一九六七年に西ドイツにおいて発生しましたスパイ事件、このときには韓国政府が主権侵害と認めたということで解決がなされている。こういう方法の解決のしかた。それから第二点は、容疑者が捜査当局の取り調べに応じた上、上からの命令を受けてやったという自供を結局待つ以外にないけれども、これがなかった場合に、一体日本独自の捜査当局の最終的な結論によって結果を出すのかどうか。まあ田中法務大臣の法務委員会における答弁では、政治的にはこれは国際的に見ても主権侵害になるという、これは理解がいただけるだろうという表明がなされております。したがって、その自供が得られるとか得られないとかいう問題が非常にいま難航しているわけでございますので、得られなかった場合、結局は日本の捜査当局のいま申し上げたように判断と結論に待つ以外にはないという二つの解決方法しかないと私は思います。しかしまあ、おそらくいま前段で申し述べたことについてはなかなかこれは認めがたいという、それには相当時間もかかるかもしれないということが考えられるという、そういう答弁も伺っております。しかし、あまり遷延させてはならないという国民的な感情もございます。そうした両面を大平さんとしては十分踏まえながら、いずれにしても近い将来、一カ月後とか二カ月後というふうな時間を切ってのことは言われないにしても、やはりこれは早期に解決しないと今後の日韓関係というものを考えた場合に非常に憂慮する事態が起きないとは限らない。やはりできるだけ早い時期にということになると、二者択一を迫られることになりはしまいかと、その点はどのように判断なさっておられるんでしょうか。
#79
○国務大臣(大平正芳君) 本件に関連して考えておかなきけりゃならぬことは、わが国におきましてこの種の外国人による犯行が行なわれるということ、そういうことのないように配慮するためには、この事件そのものをわが国の捜査当局が究明いたしまして事態を明らかにするということが第一だと思うんでございまして、わが国の捜査当局もそういう観点から努力をされておると私は思います。しかし本件が両国にまたがる国際的な事件でございまして、いま渋谷先生が御指摘になりましたように、間然するところなくもう十分の材料が整って、それで判断を下し得る状況になるかならぬかという問題につきましては、まことにいろんな制約があるわけでございます。そういう場合に一体納得がいく解決というのは何だということでございますが、これは世論の判断といたしまして、日本政府としては最善を尽くして、日本がとった措置は国の内外を通じて理解もされ共感も受けられるというようなものでなければならぬと思うのでございます。われわれはそういうことのために最善を尽くさにゃならぬと考えております。政府が独断で、まあこのあたりでひとつ手っとり早く解決をはかる、手軽にやるというようなつもりはないわけです。そういうことをすると政府の威信が問われるわけでございますので、私はそういうことをやるべきでないと考えておるのでございまして、万事国民が納得できるということが何かということを十分念頭において、いまあなたが御質問になられた事態に対して対処せにゃならぬと思っております。
#80
○渋谷邦彦君 まあ明確な結論というものはなかなかむずかしいかと思います。
 この問題は一応さておきまして、今回国連総会に臨まれる大平さんとしては、いろんなやはり臨むべき問題というものをかかえていかれるんだろうと思います。おそらく朝鮮問題も例外ではないんではないかというふうに想像されるわけでございますけれども、今回最も重要な課題として何を提起され、そして日本として今回の総会を通じて果たす役割りというものに、非常に抽象的な言い方ですけれども、何をお考えになって臨まれるのか。この基本的な考え方、これをお聞かせいただきたいと思います。
#81
○国務大臣(大平正芳君) 国連総会でございますので、あくまでも基調はわが国の国連対策、国連政策というものであるべきだと思うのでございます。国連がこういう緊張緩和のきざしが見えておる世界に対して何をなすべきであるか、そういうことについて日本はどう考えているかということをまず訴えなければならぬのではないかと考えております。
 それから第二は、その問題は同時にわれわれがアジアの一国といたしましてアジアには多くの問題をかかえておるわけでございますので、日本のアジア政策というものにつきまして国連との関連におきましてわれわれは何を考えておるか、それで国連に何を望んでおるか、そういう点を明らかにいたしたいと思っております。
 第三には、しかし国連国連と言いますけれども、国連というものも各国の支持があり協力があり確固たる財政的基礎があり、そしてすぐれた人材と機構が備わって初めて機能し得るわけでございますので、国連に協力するという日本といたしまして、現在の国連に対しましてどういうことをなすべきであるか、加盟各国に何を望むか、そういう点も明らかにいたしたいと考えております。
 まあそういった点を中心にいたしまして、わが国の外交的姿勢というものを、平和を希求するわが国の政府と国民の意思が国連を通じて鮮明にされるように努力いたしたいと考えております。
#82
○渋谷邦彦君 そこで、昨年はたしか朝鮮問題決議についてはたな上げされたと思いますが、今年またこの問題が表面化して、あるいは相当議論を呼ぶ問題になりはしまいか、また提案される可能性があるんではないか。こうした場合に、日本としてはまたこの決議に対してどういう考え方でもって臨むのか、この点はいかがでございますか。
#83
○国務大臣(大平正芳君) 朝鮮半島につきましては国連が戦後ずうっと国連の立場で関与してまいったわけでございまして、この南北の対話が始まりまして、また韓国におきまして新しい外交政策が打ち出された状況を踏まえて、国連がこの際朝鮮半島問題についてどういうことを指向して、考えてまいるのが朝鮮半島の平和的統一と安全の維持に役立つかというような観点から、すでに二つの決議案が出されておると聞いております。で、わが国といたしましては、その一つの決議案に対しまして賛成もし、そして共同提案の責任を分かちながら推進いたしたいと考えておるわけでございまして、わが国が考えておる内容につきましては、あらまし国連局長から御説明させます。
#84
○政府委員(鈴木文彦君) いま大臣からお話のございました決議案につきまして、簡単に御説明を申し上げます。
 先ほど大臣の述べられました朝鮮問題に対する日本の基本的な考え方、同時に南北の対話をはじめとする朝鮮半島の情勢の変化に対応しまして、ニューヨークの場で関係国と協議の上、この問題に対する対処方針を検討しました結果、大体次のような趣旨の決議案がわが国の基本的な考え方に合致するし、また新情勢にも適合するという判断に立ちまして、その決議案の共同提案国になったわけでございます。
 決議案の内容の要旨を簡単に申し上げますと、四つの点からなっております。第一は、南北朝鮮間に行なわれている対話を歓迎し、対話の目的達成を希望する。それから第二にUNCURK、これは国連朝鮮統一復興委員会ですが、UNCURKが最近発表しました報告書の中に、UNCURKは解体されるべきであるという趣旨の勧告を承認する。それから第三点としまして、南北朝鮮が国連の普遍性の精神にのっとりまして、また朝鮮半島の平和安全の維持及びそれを通じての平和的統一促進の手段として国連加盟を考慮するよう希望する。第四の点、最後の点としまして、安全保障理事会が朝鮮問題のうち、その責任に属する部分、それは具体的には国連軍の処理等の問題を意味しておりますが、そういう部面につきまして、休戦協定の堅持及び朝鮮半島における平和と安全の維持を確保するとの見地に立って検討するよう希望するという、この四つの点が先ほど申しました決議案の主たる内容でございます。
#85
○渋谷邦彦君 最後に一点だけ伺って終わりにしたいと思いますが、大平さんが十一月ごろと記憶しておりますけれども、再び中国を訪問する、日中間の外相交換訪問と言うべき画期的な一つの新しいあり方が開けるんだろうと、こういうように思いますし、われわれとしても積極的に取り組んでいただきたい。で、先回も私、日中航空協定の問題について確認をしたんでありますが、あのときには結論を得られないままに終わってしまいました。おそらく中国側といたしましても相当この問題については積極的の態度がしばしば表明されておりますし、日本としてもいろんな諸条件はあるだろうとは思いますけれども、日本側としても、早い時期にこの日中航空協定の締結というものが結ばれなければならない、非常に切迫したような事態になってきておるわけですけれども、大体十一月ごろ訪中をされる際に、あるいはその前後になるのか私はわかりませんけれども、大体そこらあたりをめどとしてこの問題の解決を考えていらっしゃるのかどうなのか。いずれにしても、日中国交正常化ができてからもう一年以上少なくともその時点では過ぎてしまうわけであります。その点についてやはり意のあるところを示すもう時期に立たされているんではないかという気もいたしますし、今後中国側からも数多くの訪日されるいろんな種類の団体もありましょうし、日本側からもまたひんぱんに訪中をされる向きもあるんではないか。そういうようなことを踏まえつつ、一刻も早くそういう障害を取り除くことが望ましいと、こういう観点に立ちまして、いままでしばしばこの問題の確認を私実はさしていただいているんですけれども、最後にその点だけをこの機会に明らかにしていただければありがたいと思います。
#86
○国務大臣(大平正芳君) わが国といたしましては、米国、カナダ、韓国、豪州等とは定期的な閣僚会議を持っております。英独仏はじめソ連、イタリーその他とは外相の定期協議というのを持っておるわけであります。日本と中国の場合、どういう接触のしかたを今後やってまいるかということは、今後相談せにゃいかぬと思っておるんでございまして、私といたしましては、当面の懸案があるとかないとかいうことにかかわらず、両国の外務大臣というのはひんぱんに往来してしかるべきものと思っております。そういうことがないほうが不自然だと思っておるわけでございまして、したがって、都合がつきますならば訪中もしてみたいと考えております。したがって、これは懸案の打開とか何とかいう一つの目的を持った訪中というようには私は考えていないわけでございまして、ひんぱんな相互訪問が望ましいと考えております。
 それから第二の日中航空協定でございますけれども、この点につきましては、正常化後、双方で予備折衝を行なってきたわけでございますが、問題は本協定そのものに大きな問題があるわけではございません。協定の案文に載らない日台路線を事実上どういう姿でやるかということが問題なんでございまして、これは日本が処理しなきゃならぬ問題と心得ておるわけでございます。それはしかも、正常化の原則を踏まえた上でそのラインに沿った措置をしなければならぬと思います。それをどのように実現してまいるかということにつきまして、日本政府部内でいろいろ検討を進めておるわけでございまして、仰せのようにできるだけ早くこれは解決しなきゃならぬと思っておりまして、私の訪中と関連して考えておるわけでは決してないんでして、これは従来から努力をいたしておるわけでございまして、引き続き努力をいたしまして、早期の措置に踏み切るようにいたしたいと考えております。
#87
○星野力君 今度の国連総会で南北朝鮮の同時加盟を希望する意味の含まれた決議案の共同提案者になるということを先ほど申されましたが、金大中事件がどういう状態にあるかということはいまさら申すまでもないことでありますし、そういうときに一方的に韓国を支持する決議案の共同提案者になるということは、日本の国民世論をさかなでするようなものでもありますし、そういうことでは、日本政府が金大中事件においてもますます足元を見すかされることになりはしないかと思うのであります。それからまた、北の朝鮮民主主義人民共和国は国連同時加盟には反対いたしております。それなのに、そのような決議をするということは、平和的統一を促進するといいながら、統一を妨害する結果になるであろうし、また、朝鮮人民に二つの朝鮮を押しつけることになると思うのでありますし、さらには、内政干渉にわたるようなことであると思うのでありますが、その点についてはどういうふうにお考えになりますか。
#88
○国務大臣(大平正芳君) 国連における朝鮮問題の討議について、わが国が一つの立場を鮮明にいたしたいと考えております。そのことは金大中事件とは関係ございません。金大中事件という不幸な事件は、それ自体として早期の公明な解決をはからねばならぬと、そのようにつとめておるわけでございます。国連における朝鮮問題は、朝鮮半島の実質的、平和的な統一をどのようにしてもたらすかということについて、国連の立場について、国連がどういう見解を表明し、どういう措置を講じられることが適当かということを日本が述べるということは、ちっとも私は差しつかえないと思います。それからこれが一体内政干渉になるなんということは星野さんと私、全然見解が違うのでございまして、国連に加盟するかしないかは、これは主権国家がお考えになることでございまして、私どもがそういうことをとやかく言うべき性質のものではないのでありますが、希望を表明するということは、ちっとも私は差しつかえないと考えております。
#89
○星野力君 国連の問題は金大中事件と関係ないと、こう申されるのですが、そういう論法でいきますと、日韓定期閣僚会議もこれは関係はないとも言い得るかと思うのです。現実に閣僚会議は延期せざるを得ないような状態になっておりますし、関係ないとおっしゃるけれども、少なくとも時期的にはこれははっきり関係があるわけでございます。しかし、この問題に深入りするだけの時間がございませんから、金大中事件自体についてお聞きしたいと思いますが、その前に、在日韓国大使館の金在権公使の問題、彼が国家防衛の目的から物的証拠を得るために、公館がみずから任務遂行の行為として盗聴録音をやったという事実についての調査結果をお聞かせ願いたいのです。私は再三これはお願いしていることです。
#90
○説明員(妹尾正毅君) ただいま御指摘の問題は、裴東湖事件の問題であろうと承知いたしておりますが、その点につきましての調査の結果は次のとおりです。
 その事実関係につきましては、外務省といたしましては、その当時のことでございますが、新聞にも大きく取り上げられた事件ということで、非常に関心は持っていたというふうに承知しておりますが、それでそういうことではございましたけれども、関係者からの申告もないし、民団の内部の問題という形で理解していたということでございます。
 それから召喚状の問題につきましても、現物を入手できなかったために、調査を行なうことができなかったということでございます。ただ、かりに国内の韓国人に韓国の国家機関から韓国の刑事訴訟法にいう召喚状が直送されたとすれば、国際法上の問題があり、今後こういうことのないように、韓国側に申し入れをする必要があると考えております。
 それから同じく事実関係につきまして、警察庁へ捜査依頼の申し出がございましたのでいたしましたところ、結果といたしまして、事件発生当時関係者から申告もなかった、そういうことで事実関係については掌握していない。それで、二年前の古い事件であるので、現時点で捜査することは不可能に近いということでございました。
 それから新聞記事では録音問題となっておりまして、盗聴の点は明らかでなかった。かりに盗聴行為があったとしても、それ自体としては刑事法令に触れる行為ではない。以上の諸点からいたしまして、警察としては積極的に捜査する必要もその理由もないという回答を得ております。
 それから先生の提出されました資料の金公使から命氏に送った書簡の、「国家防衛目的上、物的証拠が必要とされたので公館は自らの任務を遂行しているうちに、全く予測もできない民団幹部を歴任した現団員が現われ、対話しているのが録音され、意外にも反国家的な発言をしている事が明るみになった」云々という個所につきましては、これがかりに真実と仮定しても、この文面だけからは金在権公使のかかる行為が捜査活動であるとは断定できない。ただいま詳しく申し上げたような次第でございまして、事実関係がはっきりしないというのが現状でございまして、国を代表している外交官を呼び出したり事情聴取することは適当でないと考えております。
#91
○星野力君 金在権公使の、先ほど私が申し述べましたような、国家防衛目的から公館がみずからの任務を遂行するために盗聴、録音をやったということが、それが事実であっても差しつかえないんだと、こういうお答えのようでありますが、この問題、私きょうで四回出すわけでありますが、最初の八月三十日のこの委員会におきましては、松永条約局長は、まあ仮定の問題としてでありますが、「いま仰せられましたような場合があったとすれば、それは私はやっぱり適当な情報ないし調査活動であったとは思いません。」と、適当な活動ではないということをはっきり申されておるのですが、私たちが見ても、これがどうして差しつかえないことかということを理解に苦しむのでありますが、大臣、いまの質疑応答をお聞きになっておりまして、外国の公使が日本の国内で、これはホテルかなんかでございますが、そういうところでその身体の安全について日本の政府が責任を持たなければならぬような在日韓国人に対して盗聴機をしかける、録音をとる、まあそれに類したことをたくさんやっておりますが、こういうことは一向差しつかえないというふうにお考えになりますか。
#92
○国務大臣(大平正芳君) そういう点、私専門家でございませんので、警察当局の御見解を求めたわけでございますが、いま係のほうから御報告を申し上げたとおりでございまして、私といたしましては、捜査当局の判断を信頼する以外に道はありません。
#93
○星野力君 先ほどの御答弁は、これはこの前言われた政府としての有権的な見解、その結論でございますか。どなたからでも。
#94
○政府委員(松永信雄君) 私どもは、前々申し上げておりますように、大使館の館員が一般的な情報活動あるいは調査活動をすること自体は認められているわけでございます。ただその際に、その調査あるいは情報の活動を行ないますにあたって、手段として用いますその盗聴機が適当であるかという問題はあるかと存じております。かりにそのときに盗聴機を使ってそういう情報活動のようなものを行なったとすれば、それは適当ではないと考えております解釈、見解は従来から申し上げているとおりでございます。
#95
○星野力君 いま述べましたような盗聴、録音という行為に基づいて、先ほどちょっと名前が出ました裴東湖氏へのKCIAからの召喚状というものも出されておるわけなんでありまして、これは明らかに警察行為をやっておると断定せざるを得ないと思うのです。金在権公使というのは、以前にも申し上げましたが、KCIAの七局長をやっておった人でありまして、日本国内に張りめぐらされておるKCIAの元締め、首領とみなされている人物であります。ここに写真もございます、最近の写真も、それから本国で金基完と名のっていた当時の写真もございます。どちらも同じ人物でございますし、この金基完という名前も朝鮮時代のには写真に書き込まれておる。そういう人のこういう行為に対して、それが差しつかえないと。いま局長は少し問題あるようなことを言われましたが、まあ問題があるとしたら、一体この事態、事実に対して何か対策をおとりになるお考えがあるかどうか。
#96
○政府委員(松永信雄君) 私は実はその事実関係を断定することはできませんので、どうしても仮定的なお答えしか申し上げられないわけでございますが、もしかりに盗聴機を使って情報活動を行なったとすれば、その盗聴機を使用したこと自体は適当でないと申し上げたのは先ほどお答えしたとおりでございます。したがいまして、そういう事実があるとすれば、それについては大使館に対しまして注意を喚起するという措置がとられるべきであろうと、こう考えております。
#97
○星野力君 事実かどうか確かめておらないので、仮定の問題として言われておると、こういうことでございますが、これは事実でございますね。事実であったらやらなきゃならぬ。あなたいま言われたような、少なくとも注意を喚起することはおやりになると、こういうことだと思うのです。これは大臣も三十日には在日韓国大使館について後ほど照会をしてみますと、こう言われておる。二回にわたってそういう意味のことを言っておられるんでありますが、これは手紙を受け取った人物も国内に実在しておりますし、原文の手紙も保存されておるわけでありますから、お調べになろうと思えば幾らでもお調べになることができるわけです。それをやっておられないんですよ。これは私は重大な問題だと思います。主権侵害などと何もいまさら始まったことじゃないわけでございます。この問題はさらにお調べを願って、注意を喚起して、されるならその結果も、それをやったということもお聞きしたいし、さらにもっと問題の本質について今後お聞きしたいと思いますが、また時間もございませんから、一点だけあとお聞きしたいと思います。
 今度の金大中事件で、私日本政府に何か弱みがあるのではないだろうかとさえ考えられるんであります。事件の発生当初いろいろのことが言われました。たとえば金大中氏の自作自演説というのもありまして、これは政府筋からもそういう情報が流れ出たようなことがあります。それからその一方では、日韓政府の共謀説さえあったわけであります。日本政府の了解のもとであの金大中氏の拉致ということが行なわれたという説から、この事件には日本の政府機関関係者や日本政府の息のかかった右翼分子などが協力しているのではないかという観測もありました。金東雲をまあ犯人の一人と日本の警察が発表したことなどで、日韓共謀説、日韓の政府の共謀説というのはほぼ消えたと思われたんでありますが、最近になりましてね、またその共謀説というのが出てきております。もちろん私はにわかにそれを信ずるものではございません。しかし、政府の態度を見ておりますと、少なくともこの事件の解決方法について、日韓両政府が共同謀議をやっておるということは否定できないのではないかと思うんであります。事件の真実を究明し、それに基づいて当然の外交措置をとるというのでなく、いわゆる政治的解決の道、韓国政府の立場を困難にしないような政治的解決の方法を探っておる。たとえば民間人ないし政府機関の一部のはね上がり分子がやったことであって、韓国政府はあずかり知らないことだということにする筋書き、しかも韓国側が自主的に適当な犯人を示すなどの方法を協力して探求しておるのではないか、そういうふうにも見られるんであります。またそういうことを口にしておる、書いておる者もおりますが、その辺についてどうお考えになりますか、大臣。
#98
○国務大臣(大平正芳君) たびたび申し上げているように、国と国との間というのは対等平等で公明な関係でなければならぬと思うのであります。不幸にいたしまして、国と国との間にまたがりましてこういう不幸な事件が起こったわけでありますので、まずこれを解明いたしまして、公明な両国の関係というものをそこなわないように処理しなければならぬと考えておるわけでございまして、ただいちずにそれを追及いたして、努力いたしておるわけでございます。共謀いたしまして手ぎわよい解決をはかるというような考えは毛頭ございませんし、そんな才覚も私にはありません。
#99
○委員長(平島敏夫君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後零時四十分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト