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1972/09/20 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第26号
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1972/09/20 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第26号

#1
第071回国会 外務委員会 第26号
昭和四十八年九月二十日(木曜日)
   午前十時八分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         平島 敏夫君
    理 事
                木内 四郎君
                佐藤 一郎君
                田  英夫君
    委 員
                杉原 荒太君
                山本 利壽君
                加藤シヅエ君
                羽生 三七君
                森 元治郎君
                星野  力君
   政府委員
       外務政務次官   水野  清君
       外務省アメリカ
       局長       大河原良雄君
       外務省国際連合
       局長       鈴木 文彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
   説明員
       警察庁警備局参
       事官       中島 二郎君
       外務省アジア局
       北東アジア課長  妹尾 正毅君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国際情勢等に関する調査
 (ミクロネシア島民に対する補償問題に関する
 件)
 (金大中事件に関する件)
 (わが国と南ベトナム臨時革命政府との関係に
 関する件)
 (国連における朝鮮問題に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○田英夫君 最初に、すでに一部の新聞で報道されておりましたけれども、ミクロネシアの問題についてちょっと伺いたいのですが、ミクロネシアとの関係は、四十四年にいわゆるミクロネシア協定を国会で承認をしたという形になっているわけなんですけれども、そういう中で、政務次官も御存じのようなミクロネシアのダニエル・ロペス・ドサルアという人が昨年から日本に来まして、戦争中に自分の父親が日本軍に徴用をされて戦死をしたと、ニューギニアで戦死をした、仲間十七人とともに戦死したということを訴えて、政務次官にもお会いいただいたようでありますけれども、日本政府に謝罪並びに何らかの補償をしてほしいという要求を続けていたわけでありますが、政務次官や大河原アメリカ局長、いろいろお骨折りいただいたわけですけれども、この問題をどういうふうにお考えになるか、その点まず伺いたいと思います。
#4
○政府委員(水野清君) いま田先生御指摘のロペス・ドサルアさんの件でございますが、ことしの、ちょっと日にちは正確には忘れておりますが、――一月十五日に、旧南洋群島の管理をしておられまして、いま南洋協会の理事をしていらっしゃる塚原さんという方が、私の非常に親しい、もと検事をしておられた方でいま弁護士をやっておる方の紹介で、二人でお出でになりました。それで実情を、先生のところへ行って話されたと同じような話で、実情を話されたわけであります。私はそのときに、同時に外務省の担当者をわきに置いて話を聞いたのでありますし、いま御指摘のように、ミクロネシア協定というものがありますけれども、これはまあ、私、政務次官をしていてそういう考え方をするのはおかしいのかもしれませんが、個人的に、第二次大戦でおとうさんが日本の軍属でとられて亡くなって、ミクロネシア協定の中で当然補償はされるようになっておりますけれども、心情的にお気の毒だと思いまして、いろいろな事情を二時間あまり伺ったわけであります。で、これはいろいろ実は、週刊誌や何かにいろいろなことが間違えられて伝えられておりますので、この際正確に申し上げたいんですが、そのときにどこに泊まっているかという話を聞いたら、アジア協会の何か外国の人が泊まるところがあるんですが、そこで泊まっているんだが、毎日――小づかいもなくなってしまったし、うどん一ぱいか二はいぐらい食ってがまんしているという話もあったものですから、ちょっと気の毒なんで、じゃあ私の持っている、私の個人の金で三万円をそこで封筒に入れて差し上げて、ともかくめしだけ食いなさい、あなたのお話はよくわかるけれども、個人的にはよく心情的にわかるけれども、これは日本とアメリカ合衆国との間の問題であって、直接ミクロネシア島民に接触することについては、今度はこれは国際的な問題があるから、いま直ちにお答えはできない。しかし、私のできる限りのことはしてみてあげましょうというお話をして、そのときは帰っていただいたわけです。それからまあ何度か、会いたい、会いたいという話があったんですが、私自身の行動から申しますと、外務省の関係者を集めまして、これについては何か補償措置ができないだろうかという省内の検討を加えさしたのでございますが、問題の壁は、日本とアメリカとの間に御承知の通称ミクロネシア協定というものができております。そして日本は十八億円、これは物資及び役務という形でございますが、これを提供し、アメリカは五百万ドルという金を提供して、あわせて――これは十八億というのは御理解できると思いますが、三百六十円レートでございます。その中で補償することにもなっているし、ことしの十月十五日までに、ロペスさんにしましても、あるいはロペスさんの言っておられる十九人のほかの方々にしましても、いまのミクロネシアにミクロネシアン・クレイム・コミッションという役所がありまして、第二次大戦中の戦争被害についての申請を出せば、もちろん出してそれがそのまま通るということじゃありませんが、その審査を受けた上で補償はされる、こういう道ができているんで、これを無視して日本政府が、もしできるにしても、何らか直接ロペスさん以下の方に手を差し伸べるということは、逆に言えば、いま主権問題が騒がれておりますが、一種のアメリカの信託統治の問題に近い、アメリカの主権に手を突っ込むような形にもなりかねないということで、その事情をロペスさんに再度来ていただきまして、三月になりまして私の部屋に来ていただきまして、それで、私もいろいろやってみたけれどもどうしてもむずかしいということで、その際に、ミクロネシア協定の説明をしましたが、もちろん御本人は承知である、御本人はそのときに自分たちは、自分たちというのは、ロペスさんのおとうさんは日本のために戦って死んだんであるから、日本から補償をもらいたいんだと、アメリカ政府の手からもらえないんだ、もらいたくないとおっしゃるし、私どもはそうおっしゃっても、日本の政府から直接渡すような仕組みになっていないからという話をしまして、十分わかっていただけたとは思いませんが、その塚原さんという南洋群島協会の理事さんも同席をしていただきまして、その方は、自分がかつて管理をしておったということで、非常に旧南洋群島ですね、に対して愛着も持ち、その後の旧南洋群島の島民に非常に同情を持っているものですから、その方も間に入って、どうしてもむずかしいからということでお引き取りを願うということにしたわけであります。その際にロペスさんに、ただ帰ってもらいたいと言っても旅費もないであろうということで、外務省の中で十万円のお金をくめんをいたしまして、それで航空券を買って、まあ少しお金が残るんだそうです。そのお金で、もし宿舎その他の借金でもあれば払って帰っていただいたらどうだろうということで、御本人はそのときは承知をしてお帰りいただいた。これはそこにお出でになった塚原さんという方も、もしお聞きになっていただければおわかりになるわけであります。まあ私はそれで、非常にお気の毒であったけれども、これは私の個人的な心情だけで解決がつく問題ではないんで、わかってくだすったと思いましたら、しばらくしたら何かまた東京に帰ってこられたのか、何かその辺のいきさつはわかりませんが、ある調べによりますと、ミクロネシアに帰らないで、一ぺん韓国へ出て、またビザを取り直して来られたとかというような話も聞いておりますが、その辺のいきさつはさだかでありませんが、ともかく引き続いて同じ運動をやっておられるわけであります。私としましては、個人的にいろいろやってみたけれども、どうにもならないことであるし、その後何か私が渡したお金の金額を間違え、ちょっと私が、個人的ですが、この委員会で席のわきで田先生に申し上げたことが話が混雑しちゃっていて、御本人はその金額の違いを非常に憤慨して、私について個人的にも何か私を攻撃するようなビラを印刷して外務省の前やなんかにまいておりましたけれども、私とすれば、そういうことをやる前に、私にこういう内容で間違いないかということを言ってくれればいいのに、ビラをまいておいてから私に会えと、こういうふうな態度だったものですから、私はもうその後お目にかかる必要がないと思って、いまだにお目にかかっていないと、こういう経過でございます。
#5
○田英夫君 これは一人のミクロネシア人の問題というふうに私は実は考えていないわけであります。いままさに政務次官言われたように、これは日本とアメリカの問題であるというふうに言われたところに、そういう感覚に私は基本的な問題がある、問題点があると思います。日本とアメリカとの関係を大事にされる政府の方針というのは私どもはそれなりに理解いたしますけれども、しかし、この人がいま訴えている問題というのは、日本とアメリカが戦争していたときの、しかも日本軍に従軍をして、むしろかり出されて死んだ、その人の子供が訴えている問題であって、純然たる日本とミクロネシアの住民との間の問題である。日本政府に謝罪をしろ、補償をしろといっておるのは、アメリカは関係ないんですよ。アメリカはそのときにミクロネシアの人たちの頭の上に日本軍を攻撃するために爆弾を落としていた側なんですから、アメリカは全然関係ないわけですね。それを現在の時点で日本とアメリカとの関係がどうだこうだということをお考えになってこの人に対して補償をしない、謝罪をしないと、こうおっしゃるのは非常におかしいですね。根本的に間違っていますよ。そういう意味で、四十四年、残念ながら社会党の先輩の皆さんも含めて野党側が反対したにもかかわらずミクロネシア協定というものを結ばれたわけですね、政府が。これがまたそもそも基本的に間違っている。その基本的な間違いの上に、基本的に間違っていたからこそこういうロペスさんのような問題がここにあらわれてきたというふうに思います。ですから、ロペスさんの場合は、そういう基本的な間違いがあったからこそここに表に出てきた一つのケースである、表にあらわれた問題である、こういうふうに考えるべきであって、基本的にはミクロネシア協定を結んだ政府の姿勢が間違っているわけですよ、四十四年に。
 これはその問題から触れていきますけれども、これはすでに残念ながら自民党の多数でもう押し切られた協定ですから、承認されてしまっているわけですけれども、間違ったことははっきりやはり正すべきだと思うので、蒸し返すようですけれども申し上げておかなくちゃいかぬと思うのです。現地のミクロネシアの人たちに全然相談もなく、そのミクロネシアに対して戦争中に迷惑をかけたから、日本がいわば自発的にお見舞い金を出すのだというような言い方で、これははっきり当時の高島参事官、現アジア局長が国会で言っておられますけれども、そういう言い方でこの協定を結ばれた。しかも五百万ドルずつ――もっとおかしなことには、なぜかアメリカはキャッシュで出すけれども日本は役務と物資で出すと、こういう全く理解できないやり方で協定を結ばれておるわけですね。そういう非常におかしな協定を結んでおいて、だから、それがあるからロペスさんには補償ができないというのは、これはまことに不都合な話です。間違った協定を結んでおきながらそれをたてにとって、しかも戦争中日本が――ここに写真がありますけれども、この写真、どう見たってこれは日本軍の姿です。南方における当時の日本軍の姿ですよ。それに現地の住民をかり出して殺したわけですよ、日本軍が。ニューギニアまで強制的に引っぱり出しておいて死んでしまった。まさに日本が殺したわけですよ。それを現地の人たちがおこるほうがあたりまえじゃないでしょうか。まさにこういうのを私人道的な問題というふうに言うんだろうと思うのです。それを、一片の間違って結んだ協定をかさに、その人たちに会いもしないで追い帰す、わずかの見舞い金で片をつけようという、ここのところに基本的に間違いがあるので、私はそういう意味で心からこの問題に対して怒りを感じているんです、政府の態度に。一人の人間の問題ではなくて、政府の基本的な問題ですよ、この点に対してはいかがですか。
#6
○政府委員(水野清君) 田先生のおっしゃることは一つの道理でございますけれども、私はいま外務省の政務次官として、日本とアメリカとの間にミクロネシア協定というものが厳然として存在をしておって、これがこの中で同時にいまお話のような人たちに対して、戦争の補償とするという規定になっております。これは私はロペスさんの心情は、先ほど申し上げたように、日本からもらいたいという気持ちはよくわかります。しかし、あるいはロペスさんの言っていることは金額じゃないということかもしれません。金の問題じゃないということかもしれません。しかし日本政府が、いま正式にこのロペスさん外十何名の人に、私は、ミクロネシア協定というものは厳然としてあるわけなんですから、それをたてにとって云々ということではなくて、そのワク内で処理をしていただくと、それを納得していただくということ以外はないと思います。
 それからいま先生のお話で、わずかな見舞い金でということですが、これは見舞い金という意味でもないんです。ともかく日本におられて、そしておられてもこれはいつまでたっても結論が出ませんと。私どもは幾ら――はっきり申し上げると、このミクロネシア協定という協定の窓口として外務省がアメリカ政府と交渉したことでありますが、本来こういう業務は私は政府のほかの役所、厚生省あたりでやるべき仕事だと思います。しかし、厚生省の中にも実は旧日本国民ということでなかったという、これも私もこれは法律というものは非常に非情なものだと思います。旧南洋群島は信託統治領であったために、あそこの人たちは昔の法律で島民ということに、島の人、島民ということになっておったそうです。日本国民でなかった。台湾や朝鮮の方よりも一段と違った資格にあったと、だから厚生省でも対象にならないと、こういう非常に皮肉な、皮肉といいますか、冷たい立場にあるわけでございます。これはどうしても打開の道がないと。私はそのときロペスさんにも申し上げたのですが、私も個人的に同情すると。しかし、これはやるとするならば、私はこれは私はいま一人の国会議員として申し上げるのですが、それこそ議員立法で、こういうものを、まだおそらく私は第二次大戦のいろいろなまき散らした戦争被害というものは、まだアジア各地にたくさんあると思います。いままで日本が賠償を払ったとか何とかいっても、それだけで拾いきれない問題もあろうと思います。そういうものを含めて議員立法か何かでやって救済をする以外は、要するに新しい法律をつくってこれに対処する以外はないだろうと、だから無理なんだという話も私は御説明をしたはずであります。いま先生のお話で、わずかの見舞い金で会いもせずという、私は二回会っております。そしてきちんと御説明をして、それ以後は私の説明をともかくそのときはいやだと言わないで、納得してお帰りになったわけでありますから、その以後、これはちょっと私は個人的なことでありますが、いろいろな問題を飛躍して、私に対して個人的な中傷のビラをまかれたので、私はそれでお会いをしないんです。ロペスさんの言っておられることの中に、私はいまでも心情的に気の毒だという気持ちは持っておりますが、それとこれは別だということで会わない。ひとつ混同なさらないでいただきたい。
#7
○田英夫君 いやこれはお互いここで水野さんの個人的な問題を取り上げているんじゃないんですよ。政務次官としてであろうと、水野個人であろうと、そういうことを言っているんじゃないんです。そこはむしろそちらのほうが混同しておられるので、政治家として、また政府の責任ある地位にある方として、この問題をどういうふうにお考えになるかということをお聞きしているんで、そういう立場でお答えいただかないと困るんですが、いままさにおっしゃったように、日本がまさにあの間違った戦争でアジアにまき散らした太平洋地域やその他にまき散らした、そういう禍根というものがいまだに残っている。あとでお聞きしようと思っておりましたけれども、韓国はいま樺太に残っている朝鮮の人たちの問題を取り上げております。そういうふうにたくさんの問題まだ残っているわけです。議員立法でということをおっしゃるなら、それもたいへんけっこうだけれども、何も議員立法である必要はないので、政府が間違ったミクロネシア協定を結んでしまったなら、それを打ち消すような協定あるいは法律を政府自身の手でおつくりになって一向かまわないんですから、訂正なさればいいんですから、そういう道もあるでしょう。それからまた、いま厚生省の問題についてまことに冷たいとおっしゃったけれども、そのとおりであります。島民という名前がついていたから、日本人じゃないからだめだと、こういうふうな態度というのは、一体あれだけの戦争をやって、ミクロネシアの人をはじめ、多くのアジアの人なんかにあれだけの迷惑をかけた日本の政府がそういうことをよく言えると思いますよ、私は、人間として。これは御存じかどうか知りませんけれども、たとえばこのロペスさんという人はどうしても靖国神社へ行きたいといって私に相談をするから、私は初めその意味が理解できませんでしたよ。しかし彼は靖国神社へ出かけて行ってその十七人の人をここへ祭ってくださいということをお願いをしたわけですね。こういう心情になっているということを、これは自民党の皆さんもよく御理解できると思いますよ、そういう心情、むしろわれわれよりも。そういうことをお考えになってやるのが政治じゃないですか。私は行政官は法律のもとで、協定のもとで行動しなければならないというふうに縛られていることを理解できますけれども、政治というものはそうじゃなくて、そういう心情や過去のあやまちというものを正していく。法律があったり協定があって、それがもし間違っているなら、あるいはその範囲の中ではなかなかできないならば、それを乗りこえてやっていくというのがほんとうの政治じゃないですか。
 まあ私、多くを申し上げませんけれども、そこで、最後にお聞きしたいのは、このロペスさんはおととい大河原局長に外務大臣あての書簡をお渡ししておきましたけれども、彼の住んでいるポナペ島のいわゆる大酋長という人五人が、このロペスさんの行動は一人の行動ではなくて、十七人の家族をはじめ全島民の気持ちであるということを伝えてきているわけですね。そういうことになると、これから先、いま信託統治という形になっているけれども、日本に対して非常に心情的に信頼感を持っているミクロネシアの人たちを、これ今後突き放すことになりますよ。そういう政治的なことも配慮して、ロペスさんが希望している日本政府に謝罪をしてほしいという問題、彼はこういう表現で大河原さんの前でも訴えておりました、私にもしばしば言っておりますが、すみませんと一行書いて、その中に十円玉一つ入っていていいんだ、そういう手紙を日本政府の外務大臣なり責任者からいただきたい。やや浪花節のように聞こえるかもしれないけれども、こういう心情をくみ上げるのが政治じゃないですか。確かに技術的に外務大臣が、じゃ一体だれに出すのだ、私は十七人の家族でいいと思いますよ。日本政府の責任者が、外務大臣が出すとアメリカ政府に気がねがあるとおっしゃるなら、官房長官でもいいじゃないですか。日本政府の責任者がただ一言、ほんとうに一行、過去の罪をわびるというそういう手紙を出せないはずはないと思いますよ。それをさえできないとおっしゃるなら、私は日本政府は人道的に許せない、こう断定せざるを得ないのです。どうですか。
#8
○政府委員(大河原良雄君) 一昨日、九月十八日に私は田先生と一緒に来られたドサルアさんにお会いいたしました。その席でポナペ島の五人の大酋長の署名のある外務大臣あての手紙の、あれはどういうことでありますか、コピーを受け取りました。その席でいろいろこの問題についてお話しいたしましたけれども、先ほど政務次官言われましたように、私も心情的には非常にお気の毒な問題であると、こういうふうに考えますので、その手紙を含めて、従来のいきさつを承知しておる身といたしまして、この問題をもう少し検討させていただきたいというふうに申し上げたわけであります。ただその際、私申しましたのは、田先生はミクロネシア協定は非常におかしな協定であるというふうなことを御発言になっておられますけれども、政府といたしましては、四十四年に米国との間に締結しましたミクロネシア協定を国会の承認を経まして成立させていただいておりますので、法律的にはこのミクロネシア協定のワク内でしか解決できない問題である。また現実にはミクロネシアの地域は現在アメリカの信託統治としての施政が行なわれているものでありますから、いわばミクロネシアの住民の方々はアメリカの施政権下にあるという意味において、日本政府としては法律関係においてはアメリカ政府との関係においてのみこの問題を処理する立場にある、そういう事実もまた申し上げたわけでございます。したがいまして、この問題をどういうふうに考え得るかということになりますと、政府といたしましては、ミクロネシア協定が日米間に締結されております以上は、この問題に関して法律的にはミクロネシア協定に従い、またそのワク内における処理以上のことはできない。しかしながら、心情的にはお気の毒だという気持ちはあるゆえに、検討をお約束した、こういうかっこうでございます。
#9
○田英夫君 局長の立場からそういうふうに言われるのは、私わかりますよ、さっき申し上げたとおり。行政の立場からすれば協定、法律のワクの中で行動されるということですから。
 そこで伺いますが、いまの政務次官、局長のお答えを聞いていると、非常にアメリカの信託統治にあるということを気にしておられる。しかしこの問題起こったのは、日本の委任統治領時代のあの戦争中のことなんですね。冒頭申し上げたように、アメリカ関係ないのですよ。そこでこのダニエル・ロペスさんの問題について、たとえばアメリカ側に接触してみたことがあるのかどうか、アメリカ大使館にこの問題を日本政府から聞くというのはおかしな話かもしれませんけれども、何らかの打開の道についてアメリカと相談をされたことがあるかどうか伺います。
#10
○政府委員(大河原良雄君) ミクロネシア協定にうたわれておりますように、この協定は、そもそも平和条約第四条(a)項に基づく協定でございます。平和条約第四条において平和条約に基づいて日本が放棄いたしました第二条に掲げる地域の住民の対日請求権の処理が規定されているわけでございまして、その意味におきましては、ミクロネシア協定によりまして日本とミクロネシアの施政を行使しておりますアメリカとの間に、旧委任統治領のもとにあったミクロネシアとの関係の法律的な処理を行なった、こういうかっこうにあるわけであります。
 それでこのドサルアさんが十七人の遺族の問題を昨年の秋に提起してまいりまして以来、われわれといたしましては米側に対しましても逐次、累次この問題についての発展を米側に通報いたしております。と申しますのは、これがドサルアさんがアメリカの施政が行なわれている信託統治領の住民であるという関係であるからであります。で、ドサルアさんが十七人の遺族に対する補償の要求をしているという事実に対しまして、米側としては先ほど政務次官から御答弁がありました現地の戦時補償、戦時請求権委員会に正式に申請を出してもらえば、その委員会において正当な手続を経て正当な請求、金銭的な賠償をすると、弁償をするということを言っているわけでございまして、そういう意味で、ドサルアさんをはじめ現地の関係者に対して、この委員会に対して申請書を出すことをおすすめすると、こういうことを言ってまいりましたので、私どもとしましては、かねてドサルアさんにそのことを伝えてあります。現実に十七人の遺族の中で十六人の遺族の方はその委員会に申請書を提出し、すでにそのうちの二人は米側から正式な手続を経て見舞金を受領していると、こういう事実関係にあるわけであります。ただ、この申請書の提出期限がことしの十月十五日というふうにきめられておりますので、私どもとしましては、かねて現地の方々がこの期日におくれないようにという希望はドサルアさんにも伝えているわけであります。
#11
○田英夫君 私がミクロネシア協定はおかしいというのは、当時の国会の審議の中で出てきてなかった問題ですけれども、なぜアメリカと日本が同額の金額を支払わなくちゃいかぬのか。これはアメリカが議会で問題にしたところですよ。むしろアメリカが問題にするのはあたりまえだと思います。戦争中にあそこで住民に迷惑をかけたのは日本であって、アメリカはその日本軍を攻撃するために確かに爆弾を落としましたから、それは若干の迷惑ということも言えるかもしらぬけれども、そもそもあそこを委任統治という形で占領をしていた日本軍があそこに軍事基地をつくってああいう戦争をやった、これが基本的な原因でしょう。ですから、補償しなくちゃならないのは日本ですよ。金銭的にも物資的にも経済的にもミクロネシアの人たちに謝罪をし、補償をし、援助しなければいかぬのは日本の責任ですよ。そうじゃないですか。それを、いまたまたまアメリカが信託統治にしているからということでアメリカも金を出す。しかしそれは、同額であるということは、アメリカ人が納得しないのはあたりまえです。アメリカの議会で現に問題になって、金の支払いが三年もおくれたじゃないですか。ようやくことしから出始めたわけですよ。ほんとうは四十四年に協定が日本の国会では批准されているのですから、四十五年から支出するはずが四十八年度から支出することになった。それはその問題がアメリカで取り上げられたからでしょう。こういう――大体その辺がもうそもそもおかしい。そこへもってきてなぜ日本がキャッシュで払えないのか。日本がキャッシュで払えるような仕組みになっていれば、今度のドサルアさんの希望だってある意味でかなえられたじゃないですか。この辺に、また例によって企業と結びついて、こういう援助とか協定を結ぶときに、かつての賠償にもあったように、ビルマやフィリピンの賠償にあったように、日本の企業が賠償の名のもとに金をもうけたという、これは隠れもない事実がありますよ。金額はわずか十八億円だけれども、そういうことをやろうとしたんじゃあるまいかという取り上げ方をしている人もある。私はそれも無理はないと思うのですよ。なぜ日本が物資、役務でなくちゃいかぬのか、キャッシュをどうして日本が払えなかったのか、この点はどういうことですか。
#12
○政府委員(大河原良雄君) アメリカとこの協定を交渉いたします際に、日本側の考えとしましては、戦争中にこの地域の住民がこうむった苦痛を念頭に置きながら、戦後二十数年を経まして、なおかつ、まだ第二次大戦中の惨禍を受けたまま経済的に立ちおくれていると、そういう生活を送っておられるこの地域の住民の向上と、それから住民の福祉のためにできる限りの拠出をいたしたいと、こういう考え方が基本であったわけでありますが、そういう考えに立ちました場合に、現金の拠出というよりは、むしろこの地域の将来への経済的な発展、一般的な住民の福祉の向上ということに役立つためには、むしろ生産物、あるいは役務の提供ということのほうがより長く、また意味のある仕事になると、こういう考え方をもって日本側の希望として役務並びに生産財の提供と、こういうことを考えた経緯があるわけであります。
#13
○田英夫君 もうこの協定の問題については、残念ながらすでに承認をされてしまっているので、私は全く不満でありますけれども、これはやむを得ないと思いますが、明らかに間違っている。いまの局長の御答弁にもかかわらず、私は全くどうして日本が物資並びに役務で払って、アメリカはキャッシュで払うのか、納得できません。しかし、その後アメリカは別の形で国内立法によって二千万ドルをここへ支払うということをきめたという話を聞いておりますが、これは事実かどうか。そうしてこれはどういう使途に使われるのか、この点はいかがですか。
#14
○政府委員(大河原良雄君) 米国政府といたしましては、戦後の信託統治の施政を引き受けて以後のこの地域の補償の問題について議会に対して支出の権限を求めておりまして、その総額が二千万ドルということでございますが、現在議会のほうからは、行政府の要請にもかかわらず、いまだこの支出の法律が通っておらない、こういう状況に推移してきております。米側の話によりまして、いま、いつの段階において議会からこの法律についての承認が得られるか、ちょっとまだ見通しはつかないと、こういうことを言っているわけであります。
#15
○田英夫君 この問題はこの程度にしますけれども、問題は、いまアメリカが二千万ドルの支出も議会で承認しないという背後には、ミクロネシアの状態というものが非常に複雑に変化しつつあるということが底流にあるわけですね。これは政務次官ひとつ政治の、日本の外交の問題として非常に重要な問題だと思うので、お考えいただきたいと思うのです。
 一つは、いまベトナム戦争に負けたアメリカが、アジアの戦略体制を立て直して、あそこにB52も発着できるような大きな軍事基地をつくりつつあることは、これはもう周知の事実であります。これに対して島民の中から反対運動が起こっている。これがいま独立運動に、火に油を注いでいるということになってきていますね。一方でビキニの被爆の問題もある。これは島民の反米感情にも発展をしつつある。しかし同時に、島民の生活というのは貧しいわけですから、経済的に援助がほしい。これはどちらかといえば心情的に日本に頼りたいという気持ちが島民の中に多いという、こういう実態があるわけですね。そこで、アメリカもそういうことは承知ですから、軍事的に非常に重要な地域であるあのミクロネシアを何とか確保しておきたい。世界で信託統治領というのはいまや一つになったわけですね。最初十一あったものが、たしかいま二つですか、一つですか。ミクロネシアはその一つになったわけです。そういう状況の中で信託統治をいつまでも続けるわけにいかないから、あそこをアメリカのプエルトリコのような自治領にしようと、あるいはサイパンの辺で住民投票を三年あたり前にやってデモンストレーションをやって、あれをアメリカの一つの属領にしようというような動きをしている。そのあらわれが二千万ドルになっているのだと思います、アメリカ政府としては。こういう複雑なからみの中で、政府はだからアメリカに対して、アメリカが気にしているミクロネシアのことをつつきたくないと、こうお考えになるのかもしれない。しかし、このダニエル・ロペス・ドサルアという人に象徴されてあらわれてきた日本とアメリカとミクロネシアの関係というものは放置しておけないと思いますよ。私もこれに対して重大な関心を持っています。できたら現地に行って、ほんとうの現地の人たちの気持ちを聞いてきたいとさえ思っていますよ。ぜひ外務省は、あるいは政府は、この問題を小さな問題として取り扱っていただきたくない。先ほど局長は検討すると約束をしてくださったわけですけれども、まずそういう中で政府がやるべきことは、何らかの形で責任者の十七人の遺族に対する謝罪の書簡を書くということ、これが当面まずおやりいただきたいことだと、この問題はこの辺で終わりますけれども、お願いをしておきたいと思います。
 次に、当面問題になっている金大中事件について伺いますが、政務次官御存じかどうか、金山元大使が急遽帰国をされて、一時は行くえ不明とさえいわれていた。おととい夜、ホテルに荷物を残したまま急遽帰ってこられた。これはどういう事態で帰ってこられたのか、いかがですか。
#16
○政府委員(水野清君) 昨日の衆議院の決算委員会でも同じような御質問を、御指摘をいただいたわけでございますが、金山前大使は、これはまことに紋切り型のお話になりますが、いま、外務省の大使でも顧問でも何でもないわけでございます。金山さんは、家庭の御事情で、お嬢さんが韓国の方と結婚していると、こういった事情でたびたびソウルへ、この金大中事件が始まる前にも、あるいは始まったあとからもたびたび韓国に行っておられます。そして非常に韓国のいまの当局者とも、元大使をしておられたと、あるいは金山さん特有の、非常に相手国政府といろんな気のおけない話をされられるという御性格から、まあこの事件前後にわたっていろんな方と会っておられるということは聞いております。しかし、外務省としては、金山さんに、新聞紙上伝えられるように、特使をお願いするとか、あるいは密使であるとかというような考え方は全く持っていないわけであります。この事件の筋から申しましても、日本政府が韓国のほうに特使を出したり、密使を出してこの解決をはかるという姿勢は、私は間違っていると思います。もしそういうことをするなら、韓国のほうがなさるべきであって、私は、日本政府がそういうことをしているとも思っておりませんし、金山大使がその衝に当たっているということは全く聞いておりません。
 なお、金山大使がソウルにいるかいないかというような御質問でございますが、きのう、韓国のソウルの半島ホテルというところへ止宿しておられながら、きのうの午後、これはやっぱり衆議院の決算委員会で確認をせよと、こういうことでございました。ソウルの大使館を通じて、ホテルに電話を入れてみたりさせましたが、そのときには、金山さんはホテルにおられなかったということだけが事実でございまして、急遽帰国をしたと、そういったことについて私どもは存じておりません。
#17
○田英夫君 韓国の政府側から、日韓の間で捜査員の交換をやりたいという希望が伝えられてきたというふうにいわれておりますが、これは事実ですか。
#18
○政府委員(水野清君) まだ、そういう提案はございません。
#19
○田英夫君 これは中島参事官に伺いたいんですけれども、日本側からそういう希望をされたことがあるかどうか、あるいはこれからもそういうことを要求されるかどうか、この点はいかがですか。
#20
○説明員(中島二郎君) 私どものほうからそういう要望をいたしたことはございません。現在のところ、そういう希望は持っておりません。
#21
○田英夫君 現在、金大中氏を再来日さしてほしいと、あるいは梁一東、金敬仁氏も再来日さしてほしいということを政府は言っておられるわけですが、この委員会でも、外務大臣は繰り返して、それは捜査に協力をするためだ、こういうふろに答えておられるわけですけれども、この点は間違いないでしょうね。これは私どもは本来人道的な立場と、同時に、主権が侵害をされたということに関連をして、原状に復帰すべきだ、もとの姿にすべきだという意味から再来日を求めるべきだというふうに考えているんですが、それはくみしない、そうではないと、正しい捜査が行なわれるために再来日してほしいんだということを外務大臣は繰り返して言っておられる。この点は変わっておりませんか。
#22
○政府委員(水野清君) 基本的には全く変わっておりません。日本政府は、外務省は、警察からの要請によりまして、金大中氏を捜査協力のために日本に戻してほしいということを、何度も続けて韓国政府に申し入れをしております。ただ、その際、韓国政府のほうで、これは後宮大使が金鍾泌国務総理に面会をしました際に、金大中氏の捜査協力の点については回答を得られませんでしたが、これは私はおそらく日本の新聞紙上その他あるいは衆参両院にわたって、田先生はじめ多くの皆さんが人権問題を云々していられることに対する一つの反応だと思いますが、決して韓国側はそう言ってはいないわけでありますが、別件逮捕はしないと、金大中氏に対して。その他の犯罪人として取り調べるというようなこともしないということを後宮大使に確約をしております。ですから、事実上は、いま先生の御指摘のような懸念に対して効果を生じているというふうに私は理解をしております。
#23
○田英夫君 これは仮定の問題になるかもしれませんけれども、金大中氏の再来日は、なかなか韓国側の事情からむずかしいと、逆に、日本の捜査員をソウルに派遣してほしいと、そうすれば金大中に会わせようと、こういう提案があった場合には、これは結果として、大臣が言っておられることをそのまま解釈しますと、捜査に協力……、捜査上金大中氏を調べたいと、こういうことを要求しているわけですから、それなら再来日しなくても――私どもは人道的に、そして主権が侵されているから原状回復という形で再来日をと求めていますから、捜査の問題だけじゃありませんから、これは別ですけれども、捜査の問題に限って再来日を政府は求めておられるのですから、それなら結果として同じだから、日本の捜査員どうぞ来てください、こういうことを言われた場合には、政府としてはこれをのまざるを得なくなると思いますが、この点はどうお考えですか。
#24
○政府委員(水野清君) まだ、日本政府の捜査協力のために再来日を要請しているということに対して、実は、そういう具体的な提案も出ておりません。これは先ほど申し上げたとおりでございます。
 ただ、日本政府としては、金大中氏を調べるにしましても、非常に自由な条件のもとに、拘束されない条件のもとに取り調べたいわけでありまして、そういう提案がもしあったとしましても、これはかなり私どもは慎重に検討してからでないと、その提案に応じるということは非常にむずかしかろうと思います。
#25
○田英夫君 いま、外務省からそういうお答えありましたが、捜査当局のほうとしてはどうですか、やはり当事者である金大中氏にぜひ話を聞きたいという、これは非常に強い要求だと思うんですけれども、ソウルでということになったら、この点はどうですか。
#26
○説明員(中島二郎君) ただいま外務省のほうからお答えがありましたように、私どもといたしましても、捜査の観点から申しますれば、任意性の保証された状況下において取り調べをすることが――取り調べというか、事情を聞くことが必要でございますので、ぜひとも金大中氏の再来日を得て、事情を聴取したいという考えを貫いてまいりたいと思います。
#27
○田英夫君 その点は私も同感でありますが、実は、金大中氏自身から連絡がありまして――これルート、方法はちょっと明らかにするわけにはいきませんが、連絡がありまして、その中に、日本の捜査員がソウルに来て私と会うということはやめてほしいと、ただそれだけ書いてありますので、その意味は、いま政府側でお答えになったことを意味しているんだと理解せざるを得ないわけです。つまり、いまは自分は自由な身ではないと、こういうことを表現しているんだと思うんで、その点はひとつ重要な問題として、いまの態度を貫いていただきたいと思います。
 次に、きょうから韓国の国会が始まるわけですね。ここでかなり議論が出てくる。金大中国会であろうといわれているようですけれども、韓国の世論と関連をして、この問題はかなり政治的に重要だと思いますが、政務次官、どういうふうにお考えになりますか。
#28
○政府委員(水野清君) これは、日本の世論は日本で現在あるような状態でございますし、韓国の世論は、これまでも伝えられたとおり、日本とは違った情勢にあるようでございます。
 韓国の国会がきょうからどういうふうに開かれて、どういう議論がされるかということは、私どもまだ予測もつきませんし、また軽々に判断をするということは差し控えたいと思いますが、傾向として、私はこういうふうに聞いております。これは韓国の国会における議論じゃなくて、韓国の世論としてこういうふうに聞いております。
 それは、私ども日本の一般社会として、この事件は日本の主権が侵されたおそれがある。私どもは非常に重大だということで、これは政府もそう思っておりますし、国会で与党、野党を問わず、先生方からもそういう御指摘をいただいているわけでございます。その事実をたとえば日本のマスコミも大々的に取り上げておりますが、こういうことが非常に屈折して韓国には伝わっている。われわれは全くそう思っていないのに、韓国では、何か、日本人がかさに着て韓国に圧力をかけていると。また、昔の何か日本の統治時代を思い出すような圧力であるというふうに受け取っているということを、私はいろんな方面から聞いております。
 これは全く、先生もそういうつもりで御議論なすっておるんじゃないと思いますし、私もそう思っておりますけれども、ここが日本と韓国の非常にむずかしいところであろうと。ともかく、私どもに一番近いお隣の国家、お隣の民族でありまして、この韓国にある朝鮮民族と私ども日本人とは、長い将来、これは何千年たってもおつき合いをしていかなければならないだけに、また、過去において日本が朝鮮半島を統治したという、私どもの先輩その他の持っている、やったことに対して、私どもはやはり重大な宿命というようなものを感じながら、この問題を理解をしていかなければいけないんじゃないかと。非常にやりにくい、いやな、しかし避けることの同時にできない問題だというふうに思って、私は韓国の世論の傾向を判断しております。
#29
○田英夫君 具体的なことでひとつ、妹尾課長来られたんで伺いたいんですが、けさの新聞に出ておりますけれども、崔昌一君という広島大学を出た青年が、韓国で逮捕をされているという問題ですね。きのう、そのおねえさんが、ついに決心をして、公にされました。私も、十日ほど前にこのことは伺ったんですが、やはり、いまこのことを公にするというのはたいへん勇気の要ることだということをまざまざと見せつけられたわけです。もうここ二カ月間悩んできましたと言っておられました。
 この問題、外務省でどのくらい把握しておられるのか。容疑内容とか、いま現在どういう状態になっているか、これ御存じですか。
#30
○説明員(妹尾正毅君) 正直なところを申し上げまして、実はけさの朝日新聞を見て私ども初めて知ったわけでございます。私どものところにはこの問題については全然従来連絡がございませんでしたし、ですから、肉親の方からも、韓国からも、そういう連絡は受けておりませんでしたので、この記事で初めて知ったというのが実情でございます。
 それで、もちろん私どもとしましては、日本におられる肉親の方から御依頼があれば、現状どうなっているのかというようなことにつきまして問い合わせることはできますし、上司にはかった上、そのように措置したいと考えますけれども、いわゆる保護という点から参りますと、韓国籍の方でございますし、日本側としては外交保護という問題は起こり得ない種類の問題であるということでございます。
#31
○田英夫君 この問題、確かにほかの、私はこの委員会で幾つか取り上げたわけですけれども、そういう在日韓国人の人たちの、まあ私はあえて不当な逮捕と言っていいと思うんですけれども、完全に全部でっち上げだと思いますが、そういう問題に比べて、この事件だけは、なぜか韓国の新聞にも報道されていないんですね。
 普通こういうケースは、家族の皆さんが、行くえ不明になったといって心配をしておられると、韓国の新聞に載って、それを日本の報道機関が特派員電として転電をしてきて、そして家族の皆さんも初めて知るということにほかの場合はなっているんですが、この場合は、あれ、金大中事件が起きてこういうことが明るみに出てきましたから、おねえさんもついに決心されたわけですが、全然韓国の新聞にも載っていない。
 容疑内容についても、おねえさんのほうから弁護士さんに頼んで調べてもらったけれども、ほとんど詳しいことはわかっていないようです。スパイ容疑ということの程度であって、あと、北へ行ったというようなことももちろん入っている。大体ほかのパターンと同じ状況ですけれども、裁判がどうなっているのか、身柄がどうなっているのか全くわからないんで、これは確かに、課長言われるように、韓国の方ですから、向こうにいる人を保護するということはこれは日本政府から要求するわけにいかないと思いますけれども、同時に、これはきょうだいともに日本で生まれ日本で育った人でありますから、過去のいきさつはもう私繰り返して申しませんけれども、在日韓国人、在日朝鮮人という人たちのことは、ほかの外国人にも増して、ことさらに、日本人として、日本政府として、その安全としあわせというのは考える必要があるわけですから、そういう立場から、ぜひ、この崔昌一という人の容疑その他を韓国政府当局――これは、いままでわかっているんでは、いわゆるCICにつかまっているようです。この点をぜひ外交ルートを通じてお調べいただいて、少なくとも家族が安心できるようにしていただきたい。
 もう一つは、その奥さんはソウルにおられるそうです。現地で結婚をしたんだそうですが、名前も、言うと向こうで非常にいやな目にあうだろうと。で住所も最近変えてしまったんだそうです。したがって、私どもも住所を知りません、名前も知りません。したがって、ちょっとこれ調べにくいんですけれども、おねえさんの希望としては、その保護ということはぜひお考えいただきたいというふうに希望しておられます。その点をお伝えして、同時に容疑内容その他をお調べいただきたいということをこの場でお願いをしておきたいと思います。これはできますか。
#32
○説明員(妹尾正毅君) 上司にはかりまして、私としてはできるだけそういう方向で処理したいと考えております。
 ただこれは、私どもは、先ほど申し上げましたように、田先生も御指摘のとおり、日本の保護権はないわけでございますから、韓国政府の好意によってこちらが知り得ることのできる限りのことを知るという以上のことはできないと思いますので、その点は御了承いただきたいと思います。
#33
○田英夫君 最後に、金大中問題から離れますけれども、あしたですか、政務次官、北ベトナムとの国交樹立という調印がパリで行なわれるということですけれども、この点について最後に二、三、伺ってみたいと思います。
 今度の交渉の結果調印されるものは、大使館の設置、大使の交換という、そういった非常に、形式的といいますか、そういうものになるようですが、それで間違いないかどうか。そして、そうなったら早急に大使館を開設されるということになるのか、その段取りですね、それを聞かしていただきたい。
#34
○政府委員(水野清君) 北ベトナムとの国交樹立は、明日、日本時間で八時に発表されるはずでございます。しかし、それまでも新聞において予測記事がございましたり、あるいは国会で御質問という形で外務大臣に、昨日、衆議院の外務委員会でございますが、質問もありましたので、外務大臣もその見込みであるということを発表しております。国交樹立の条件とか、その他につきましては、明日の午後八時まで、これは両国の間で一切公表しないという約束ごとになっておりますので、その内容については、発表を、ここで申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思いますが、当然、国交が樹立されましたら、両国の間で大使館の設置、あるいは大使の交換ということが行なわれるはずでございます。その際、時期その他についてはまだきまっておりませんが、いずれ当委員会におきましても、大使館設置は外務省の設置法に関連してまいります。大使その他の派遣につきましても御審議をいただくつもりである、こういう予定でございます。
#35
○田英夫君 今度の協定、国交樹立の内容を、あした発表ということですけれども、一時伝えられましたように、北ベトナムはこの問題について、賠償の要求と南ベトナム臨時革命政府の承認ということを条件にするんじゃないだろうか、こう言われてきたわけですけれども、いずれも要求をしていないというふうに伝えられておるわけですが、内容がきょうは言えないということだと、そこも触れられないのかもしれませんが、しかしどうもそういうことのようですね。なぜ賠償を請求しなかったのか、あるいは南ベトナム臨時革命政府の承認という、これはある意味でたいへん重要な問題だと思いますが、これを国交樹立の条件にしなかったのか。この問題についてはどういうふうに理解しておられますか。
#36
○政府委員(水野清君) この両国の国交樹立については、私も当事者でございませんので、細かい報告までは聞いておりません。その交渉の過程については聞いておりませんが、日本政府の希望が、いま先生の御指摘のように、臨時革命政府というものの承認ということはことはしたくない、また賠償問題についてはすでに解決がしているという考え方を日本政府が主張してきたことは、当初の経過では事実でございます。その過程で、結論がどうなって、明日どういうふうに発表するかということについては、きょうのところは申し上げるのをかんべんしていただきたいと思うわけでございます。
#37
○森元治郎君 関連。
 政務次官、いま御答弁になったとおりですね。間違いない――はい、ありがとうございます。
#38
○田英夫君 そういう状況ですから、これ以上お聞きしてもと思いますけれども、問題は、南ベトナム臨時革命政府をどう考えるかということがこの国交樹立後のベトナムの問題を考えるときの一つの焦点になると思いますね。この点について、南ベトナム臨時革命政府は認めないと、政府として認めないということは、同一地域に二つの政府を認めることができないというふうに言われていたわけで、これはある意味でそうかもしれない。しかし、日本政府はパリの和平協定を承認をしている、この立場を支持しておるということになると、パリ和平協定の第一条には、アメリカ及びすべての国は、という書き出しで、ベトナムの独立と統一を尊重しなければならない、こういう項目が第一条にあるわけです。そしてあの協定全体の精神を貫いているものは、その背後には臨時革命政府の存在をはっきりと認めておる。現にあの協定には臨時革命政府代表が署名をしておるわけです。こうなってくると、日本政府としては、これから臨時革命政府をどう取り扱うか、存在は認めるのかどうか、この点はいかがですか。
#39
○政府委員(水野清君) 手元に資料がありませんので正確を欠くと思いますが、パリ協定の条約全体は臨時革命政府についての一つの政府として、私どもは政権をして存在しているというふうに理解をしております。そして現在のサイゴンにある政府と一緒になって、いずれ総選挙を行なって、合体して一つの南ベトナム地域において政府をつくると、こういうふうに理解をしているわけでありまして、南ベトナムの地域に、現在のサイゴンの南ベトナム政府と臨時革命政府と、この二つの政権ではなくて政府が同時に存在するのは、私どもはそういうことについては理解をしていないわけであります。
#40
○田英夫君 いまの政務次官の御答弁で、実は政府がはっきりと南ベトナム臨時革命政府の政権としての存在を認められたわけですよ。これは、私は重要なお答えだと理解をしたいんです。この点は、従来の政府の御答弁にはなかったことなんですね。従来は南ベトナム、いわゆるグエン・バン・チュー政権が南ベトナムを代表する政権であると、こう言ってこられた。それ以上のことはなかったんですね。しかし、これは明らかにパリ協定の精神に違反している理解のしかたであると、こう私どもは申し上げてきたわけで、これに対して、いま政務次官のお答えは、政権として存在をすると、こうおっしゃった。これは大きな進歩であり、私はたいへん正しい、完全に正しくはないけれども、一歩前進の御理解だというふうに理解をいたします。となると、いま当面、今度国交樹立ということを皮切りにして、ベトナムに対する経済援助ということも当面の問題として出てくるわけで、すでに南ベトナムのグエン・バン・チュー政権に対しては五千万ドルという経済援助をしようという御計画のようであります。いま政務次官、まさに御指摘のとおり、五千万ドルをグエン・バン・チュー政権に投入しても、それは南ベトナムの一部にしか効果がない。むしろより広い部分を支配している臨時革命政府にどういう経済的な支援をするか、援助をするか、北ベトナムは国交樹立できるわけですから、これは当然だと。あとは規模、内容の問題だということになるでしょうが、問題は、大臣に繰り返して言っておられた、全ベトナムに経済援助をするんだと、こういう前提に立つと、政権として存在する以上は、それに対してどういう形でアプローチをし、接触をし、どういう形で経済援助をするのかというのが次の実は一番の大きな問題になると思いますが、この方途はどういうふうにお考えですか。
#41
○政府委員(水野清君) 先ほど申し上げましたことの意味を少し田先生に正確に御理解をいただけなかったと思いますが、日本政府はいまサイゴンの政権を、これは政府を承認をしております。で、臨時革命政府は、同じ地域にかぶさってはおりませんが、一つの政権、勢力として存在しているということを承認している、認めているわけであります。これは政府の承認という意味の認めではなくて、あるという認識をしていると、こういう意味です。
 私どもは、パリ協定の中でも、あるいは将来統一選挙をやるということを言っておりますが、決して私の申し上げたことは南ベトナムに現在日本が承認している南ベトナム政府と別の形で承認しているとか承認するとか、そういうことではないわけであります。平和的な手段で選挙をやって一つになってくれればいいということを願っていると、こういう形でございます。ですから、私どもの今後の南ベトナムに対する援助は、当然いま日本政府が承認をしております南ベトナム政府を通じて行なうと、それが同時に、同じ地域にある、先ほど申し上げた臨時革命政府の地域にも浸透していくであろうというふうに理解をしているわけであります。
#42
○田英夫君 それは政務次官、全然現状認識が違うんですよ。南ベトナムの現状というものはそういうものではないし、グエン・バン・チュー政権の現状、実態というものはそういうものではないわけですね。私は、なぜ政府が五千万ドルもの援助をグエン・バン・チュー政権にそれだけなさるのか、それさえも理解に苦しむわけでありますけれども、まあそこは別として、グエン・バン・チュー政権に支援をすれば、それが一つになろうとしているのだから臨時革命政府のほうに浸透していくだろうというのは、これはもう明らかに間違った見方ですが、そういう方法ではとても支援、経済援助なんというものはできるはずがないと。臨時革命政府支配地域のほうが広いんですが、その地域に日本の国民の税金から出される支援というもの、あるいは民間から出される支援というものはいかないと、こういう結果になる。この点はひとつもう少し理解を深めていただきたいと思いますが、私が伺ったのは、そういうことですから、グエン・バン・チュー政権に支援を送ったって、それは臨時革命政府のほうにいくわけないんで、政権として存在を認められる以上は、そこへ直接アプローチをし、連絡をとり、支援をすべきだと、この方途はどういうふうになさるのかということです。ですから前段お答えになったことといまの経済援助の部分のお答えとは非常に矛盾するんですが、政権として存在することを認めておられる以上は、しかも全ベトナムに支援を送ると大臣は繰り返して確約をしておられる以上は、臨時革命政府と何らかの形で、これは政府として認めていなくても、政権として存在をして、その支配地域のほうが広い以上は、そこに接触をしない限り全ベトナムへの支援ということはできないはずだ。そうでないとすれば統一するまで待ちますという、南に統一政権ができるまで待ちますという言い方以外にないはずですね。グエン・バン・チュー政権に援助すれば浸透しましょうという、これは通用しません。繰り返してその点いかがですか。
#43
○政府委員(水野清君) パリ協定の精神、規定の中にもございますとおり、私実は何カ月というのはちょっとおぼえておりませんが、あれは非常に早い時期に南ベトナム全土で平和的な手段で統一選挙をやるということを期待をしております。その道は現在もあるわけであります。私はこの際に、臨時革命政府も南ベトナムにおける平和的な手段の合法的な選挙に参加をして、南ベトナムの現在の政府の中に入ってもらうことが、私は日本が南ベトナムに対する援助を受け取ってもらう一番の早道であり、これが一番正しい方法だというふうに思っております。
#44
○田英夫君 いまのパリ協定の問題、これは現実はなかなかむずかしいわけでね、なかなかそういう統一の方向へ進もうとしない、これはグエン・バン・チュー政権がこれを妨げているわけですけれども。それはそれとして、そのグエン・バン・チュー政権にだけなぜ金額まできめてまずやるのか。それで国交樹立されたら北ベトナムとはやるということになってくれば、現実の問題として臨時革命政府支配地域に対する援助というのは、日本からはいかないことになる、こう私は理解せざるを得ない。それで全ベトナムに支援をしているというふうにおっしゃるのはやめていただきたい。臨時革命政府の政権としての存在をお認めになる以上は、早急に接触をして、これは北ベトナムを通じてなりできるわけですから、あるいは現にその代表団が日本に来日をしたいということを社会党を通じて要望をしているわけですから、これは政府の御決心一つでいつでも可能なことですから、この点をむしろここではお答えをいただいても、そういういままでの御答弁からすると、新しい決心というようなことが出てくるとは思えませんので、この点はこれからの状況の推移を見きわめていただきたいと。ぜひ現状をしっかりとつかんでいただきたいということをお願いをして、時間がきたようですから質問を終わりたいと思います。
#45
○政府委員(水野清君) 私の答弁について御理解をいただけなかった面があるようでございますが、南ベトナムに臨時革命政府という政権あるいは勢力があるという認識を持っております。こういうことを申し上げたわけであります。これを承認して、日本政府が今後接触をする。あるいはこの取り扱いについて、特に問題の出入国の問題でございますが、いま私どもが積極的にやっていくということとは、私が申し上げたことはちょっと違うんで、御了解――私の申し上げたことについて御了解をいただきたいと思います。
#46
○星野力君 政務次官、先ほど南ベトナム共和国臨時革命政府を政府としては、日本政府は認めていないが、政権として認識しておる、こう申されたがそのとおりでございますか。
#47
○政府委員(水野清君) 政権といいますか、勢力があるということについては認識をしている。
#48
○星野力君 政権として認識しておられるということですか。
#49
○政府委員(水野清君) 私は、政権と勢力ということを、同じような意味で申し上げているわけであります。あるということは、これは事実だというふうに見ております。
#50
○星野力君 せっかく政権として認識しておるという一歩前進した見解を示されたかのように見えたのに、また後退してあやふやになってしまいましたが、これ、きょうここでやってもらちがあきそうもありませんので、これは保留して先へ進みます。
 金大中氏は現に身体の自由を拘束されております。事件の解決が長引いたら生命の危険が迫るのではないかと心配もされておるわけでありますが、日本に滞在しておって拉致された金大中氏の身体生命の安全については、日本政府が責任を負うておると思うんでありますが、そうでございますね。
#51
○政府委員(水野清君) 日本の国内にある外国人の生命財産を保護するという義務は、日本政府にあることはもちろんでございます。
#52
○星野力君 私、時間が非常に短うございますから、簡潔にひとつお答え願いたいと思うんですが、先ほど、韓国政府は金大中氏を別件逮捕はしないと、こう約束したと言われたのでありますが、実際に身体の自由を奪われ、生命さえも危ぶまれておる。また、韓国政府のそういう意思表示にもかかわらず、逮捕、投獄の心配も持たれておる状況なんですが、そういう事態に対して日本政府としては金大中氏の身体生命の安全について何もしないでこのまま見送っていかれるのかどうかということでございます。
#53
○政府委員(水野清君) これは先ほど田先生にもお答えいたしましたとおり、金大中氏について日本政府が韓国政府に要求しておりますのは、捜査協力に応じて日本に戻ってきてもらいたい、戻してもらいたいということを要求しているわけであります。しかし私は、この日本政府の強い意思が実際上、先生方の御心配のような点にも効果を及ぼしていると、こういうふうに思っております。また、そういうことを金鍾泌国務総理が後宮大使に、先ほど申し上げましたように、別件で逮捕をするようなことはしないということを言っておるのは一つのあらわれだというふうに思っております。
#54
○星野力君 単に金大中氏の再来日を要求する、捜査のために、捜査上の協力を求めるために再来日を要求するということであってはならないと思うのであります。単に捜査に協力を得るためというなら、私は金大中氏が一時的に再来日したところで、必ずしも目的は達せられないのではないかと思うのであります。家族を人質にして、迫害が家族にまでも及ぶ韓国の実情から見まして、また、再来日したとしましても、金大中氏の証言次第では帰国後に、自身に迫害が及ぶことも考えられるような状況では、真実の証言というものは得られるかどうか、きわめて疑問だと思うのであります。でありますから、再来日要求、私たちが心配する点も含めて話してはおるんだと、こう含みのあるような御発言でございますが、これをもっとはっきりと、何よりも主権侵害に対する原状回復措置として、また、金大中氏の安全に対して日本政府として責任をとる立場から再来日を強く要求し、それを実現さすべきではないかと思うんでありますが、もう一度その点を。
#55
○政府委員(水野清君) この事件については、新聞紙上伝えられておりましたり、あるいは諸先生の御指摘のように、日本政府が主権を侵害されたおそれがあるという事件でございます。そういう重大性については日本政府は十分承知をしております。しかし、韓国政府に折衝する方法として、私どもはあくまでも日本の捜査当局がいまいろいろな面でこの事件を解明中でありまして、その完全な解明が終わるまでは主権が侵害された、これは疑いは現在あるわけでありますが、その証明がつきかねるわけであります。その証明をつけて初めて主権が侵害されたということを私は韓国政府に抗議することができると思う。その以前の問題として捜査に協力をしてもらいたいということを重ねて強く要求している、こういう段階であります。
#56
○星野力君 私は、主権侵害の問題と、もう一つ金氏の身体生命の安全について日本政府が責任を負う立場からの再来日ということも申し上げたのですが、おそらく答弁同じことを繰り返されるんじゃないかと思いますから、先へ進みますが、新聞報道によりますと、十九日ソウルで維政会とかという朴正煕支持派の韓国国会議員の団体が総会を開いて、日本の一部の政治家と言論界が金大中問題をめぐって韓国に内政干渉をやっておる、こう非難したということであります。去る八月二十五日には、韓国政府自身が日本政府に対して金大中問題に対する日本の国会論議、報道を非難する申し入れを行ないましたし、また、日本の与党の一部の政治家の中にも、金大中問題に対する国会論議や報道を韓国に対する内政干渉であるかのように言う者もあるのでありますが、金大中氏の事件を主権侵害であるとして韓国政府を非難したり、それに対する措置を政府に要求したり、あるいは金大中氏の再来日を要求する、こういうことが内政干渉であると政府は考えておられますか、簡潔でよろしいです。
#57
○政府委員(水野清君) 日本の国内でいろいろな議論があり、いろいろな議論をすることは日本の国のいまの言論が自由という情勢から、私は内政干渉だとは思っておりません。ただ、いろいろな発言が、先ほども田先生にも申し上げましたように、非常に屈折してとられやすい関係にあるということを私は感じております。
#58
○星野力君 内政干渉とは思っておられない、当然のことと思います。私は韓国なり、朝鮮に対する内政干渉、先ほど政務次官が圧力ということばも使われましたが、そういう圧力行為というのは、むしろ別のところでやられておるのではないかと思うのであります。私、一昨日この委員会で大平外務大臣に日本政府が南北朝鮮の同時加盟希望を盛り込んだ国連決議案の共同提案国になることについて、朝鮮民主主義人民共和国が同時加盟に反対していることを承知の上でそういう決議案の共同提案国になるというのは朝鮮の自主的、平和的統一を妨害し、二つの朝鮮を朝鮮人民に押しつけるものであり、朝鮮への一種の内政干渉ではないかと質問したのでありますが、それに対して外務大臣は、そういうことを希望することがなぜ内政干渉か、こう反論されておりました。
 そこで、そのことに関連してお聞きしたいのでありますが、六月二十三日朴正煕大統領が南北朝鮮の国連同時加盟を言ったあの声明を発表した。あのあとで外務大臣の談話が発表されておりますが、その中に、かねてから、朝鮮半島をめぐる情勢について、韓国側と率直な意見の交換を行なってきたわが国としては、このたびの韓国政府首脳の勇気ある決断に敬意を表するとともに、これを心から歓迎するものであると、こういうことを述べておられます。このかねてより朝鮮半島をめぐる情勢について云々と、話し合ってきたわが国としてはと、こうなっておりますが、大臣おられませんけれども、これは外務省の見解でありますから政務次官にお聞きするのですが、これは一体どういう意味でしょうか、かねてより云々ということは。
#59
○政府委員(水野清君) これは外務大臣の声明のとおりのことでございまして、朴大統領の六月二十三日の声明がきわめて建設的な提案であると、高く評価しているということでございます。
#60
○星野力君 それなら勇気ある決断に敬意を表するとともにこれを心から歓迎するものである、それでたくさんなんですが、かねてより朝鮮半島をめぐる情勢について韓国側と率直な意見の交換を行なってきたわが国としてはというのは、これは一つの外務大臣のこういう問題に対する談話として読みますと、日本政府が南北朝鮮の国連同時加盟についてかねてから韓国政府と話し合ってきた。もう一つ突っ込んで言えば、説得してそうさせた、圧力をかけてそうさせたということがこれは言外に読み取れるのではないですか。いかがですか。
#61
○政府委員(水野清君) 日本政府が韓国に圧力をかけてそうしたという、そういうこともすべくもないことでありまして、私どもはそういうふうには理解をしておりません。しかし、日本と韓国とはきわめて緊密な関係にある隣国でございますから、相互にいろいろな考え方を述べ合ってきたということは事実であります。当然なことだと思います。
#62
○星野力君 圧力をかけたということばはそれじゃやめるとして、日本政府がそのように説得してきたというふうにはこれは読み取れるのではないでしょうか。また、事実としてもそうなんではないでしょうか。
#63
○政府委員(水野清君) 先ほど申し上げましたように、考え方を相互に話し合ってきたと、こういうことでございます。
#64
○星野力君 まあ政務次官、遠慮してそんなこと――遠慮してというのか、委員会の席だものですから率直に言えないのかもしれませんが、あなた新聞の座談会ではっきりそう申されておるんじゃないですか。
#65
○政府委員(水野清君) 私がある新聞の座談会で申しましたのは、当時のWHOに対して北朝鮮の加盟直後の国際情勢の中で――そこにそういうことは活字になっておりませんが、日本と韓国との間でいろいろな問題を話し合ってきましたと、あのころは非常に私どもの率直な意見もよく聞いてくれましたということを、まあそういう意味のことを言ったわけであります。座談会というものは、先生も御承知のとおり、私の発言したことを全部そのまま活字にしてくれるわけでもございませんので、少し意味が違っているように思います。
#66
○星野力君 九月七日の毎日新聞でございますね。いまあなたがおっしゃったように、WHO問題を話されて、そのあとでそれに続けて、「また六月の朴声明は、従来韓国政府が「一つの朝鮮」政策を進めていたのを「二つの朝鮮」に改めたこと、つまり北朝鮮の国連招請を認めろというので、率直にいって日本外務省が説得したものなのだ。」と、こうはっきり書いてあるのですね。また私はこう言われただろうと思うのですよ。あなたは外務政務次官という地位にもおられるので、こういうところには相当慎重であられるはずだと思うのですが、その方が言っておられる。これがほんとうなんでしょう。日本が説得してやらせたのでしょう、あるいはアメリカと一緒になって。
#67
○政府委員(水野清君) WHOに北朝鮮が加盟して以後の国際情勢については、先生も十分御存じだと思います。こういう問題を踏まえて日本と韓国が胸襟を開き合っていろいろな情勢を話し合った結果、韓国が自主的にそういう措置をとった、いわゆる六月二十三日の朴大統領声明に至ったと、こういうことであります。
#68
○星野力君 六月二十三日の外務大臣談話にしましても、公然とこういうことを大臣談話で発表する。また外務政務次官が新聞紙上で、日本の外務省が説得したのだということを公言するところまで日韓政府の関係は行っておると、こう見られてもいたしかたないが、こういう談話の表現なり大臣談話の表現、あるいは政務次官の座談会における発言なり、これは穏当なことと思っておられるかどうか。
#69
○政府委員(水野清君) 私は考え方を変えてみますと、もし韓国政府がいつまでも北朝鮮の地域まで含めて統一をするとか、韓国の立場で統一をするとか、そういうようなことを考えていることのほうが世界情勢として私は不合理であると、そういう中で、御承知のように、これは非常に誤解を受けやすいことでございますが、いまの世界じゅうにある幾つかのこれまでのあった分裂国家の情勢を見ても、韓国政府が世界情勢の中で正しい認識を持ってもらうことについて日本政府が胸襟を開いて話し合うということに、私は決してこれは、何か日本政府が韓国に圧力をかけて説得をしたとか強制したというふうにおとりのようでございますが、私は全くそうではないというふうに思います。
#70
○星野力君 おとりのようでございますがと言われるけれども、あなた自身、日本の外務省が説得したものなのだと、こう言っておられるのです。まあそのことはさておきまして、これらのことからも日本政府と朴政権との関係がまことに深いものであるということは証明できると思うのであります。日韓一体といいますか、国境の見さかいがつかないような関係が相互の間にできておる。それですから、こういうことを朝鮮の人たちが見ましたら内政干渉と、こう受け取られてもしかたがないようなことだと思いますし、またKCIAなんかが日本の国内で跳梁しておるのも別に主権侵害とかという感覚もなしに放置してきた、そういう関係が生まれたのだろうと思うのであります。そういう相手の朴政権を何とか不利にしないようにという立場があるものだから、金大中問題にしましてもはっきりした態度がとれない、私そう思いますが、いかがですか。
#71
○政府委員(水野清君) たいへん失礼でございますが、先生の前段のお話と金大中事件とは全く別の問題でございます。前段の問題は外交上の日韓の関係の問題、そして決して日本と韓国の関係が非常に重大であるということは、私どもはそのとおりに認識をしております。しかし、金大中事件について起こった日本の主権が侵された疑い――これはまだ疑いでございます。これについては、日本政府は重大な関心を持って、国家として当然の権利として、金大中氏の捜査協力という形で要求をしているわけであります。決してそれとこれとを一緒にして、日本と韓国の間が重大であるからということで私どもはこの事件をうやむやにする意思は全くございません。
#72
○星野力君 私、前回も大臣に、金大中事件をあいまいな政治的解決などで終わらしてはいけないということを申したんですが、その点まだ、重大とは言っておられますけれども、金大中事件というものを日本政府なり外務省なり安易に見ておられるのではないかという気もするわけであります。私は、この事件は日本政府の政治生命にもかかわるような重大な内容を持った問題であろうと思っております。国民はこの事件から、いわゆる対韓援助の、経済援助のあり方なども含めまして政府の対韓方式、対朝鮮政策の根本に目を向けてきておるのであります。今国会は間もなく終わりますが、一カ月なり二カ月なり経過すれば国内の世論が鎮静する、冷却するというような問題ではございませんし、もしそんなことも計算に入れてこの事件に対処しようとなさるならとんでもないことになるというふうに考えておりますが、政治的解決、安易な政治的解決の道を探ろうというような考えは持っておられないならば、そのことをもう
 一度はっきりさしていただきたいと思うんです。
#73
○政府委員(水野清君) 私どもは、これまでも日本の警察当局が懸命な捜査努力をしております。こういう事実にかんがみましても、あいまいな政治的な解決をとろうという考えは全く持っておりません。
#74
○委員長(平島敏夫君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午前十一時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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