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1972/07/05 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 法務委員会 第13号
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1972/07/05 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 法務委員会 第13号

#1
第071回国会 法務委員会 第13号
昭和四十八年七月五日(木曜日)
   午後一時十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月二十九日
    辞任         補欠選任
     辻  一彦君     加瀬  完君
 七月二日
    辞任         補欠選任
     鈴木  強君     松本 賢一君
 七月四日
    辞任         補欠選任
     松本 賢一君     鈴木  強君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         原田  立君
    理 事
                後藤 義隆君
                原 文兵衛君
                佐々木静子君
                白木義一郎君
    委 員
                木島 義夫君
                鈴木 省吾君
                中西 一郎君
                吉武 恵市君
                鈴木  強君
                竹田 現照君
       発  議  者  佐々木静子君
       発  議  者  白木義一郎君
   衆議院議員
       修正案提出者   大竹 太郎君
   国務大臣
       法 務 大 臣  田中伊三次君
   政府委員
       法務政務次官   野呂 恭一君
       法務大臣官房長  香川 保一君
       法務省民事局長  川島 一郎君
       法務省刑事局長  安原 美穂君
       法務省入国管理
       局長       吉岡  章君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局事務次長   牧  圭次君
       最高裁判所事務
       総局総務局長   田宮 重男君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   説明員
       警察庁刑事局参
       事官       小林  朴君
       法務大臣官房審
       議官       田邊  明君
       法務大臣官房訟
       務部長      貞家 克己君
       厚生省児童家庭
       局育成課長    阿部 正利君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (兵庫県の堀木訴訟に関する件)
 (刑法改正に関する件)
 (未承認国の出入国に関する件等)
○刑事訴訟法及び刑事訴訟費用等に関する法律の
 一部を改正する法律案(佐々木静子君外一名発
 議)
○商法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
○株式会社の監査等に関する商法の特例に関する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係
 法律の整理等に関する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○鈴木強君 前回大臣に御質疑をと思っておりましたが、大臣の御都合で私の質疑ができませんでしたので、保留をしておきました未承認国からの入国の問題、それから堀木訴訟の控訴の問題、国が指揮権を発動したというその問題、それから尊属重罰の刑法二百条の削除の問題、この法律改正の問題に関連しまして、それから、山梨県甲府市においてこどもの国のジャンボすべり台から子供が落っこちましてなくなられた事件がございましたが、その問題について、ごく簡単に質疑をしたいと思います。
 最初に、甲府の愛宕山こどもの国ジャンボすべり台というのを県の開発公社でこれをつくりまして、工事に若干修正すべき点があるためにその改善工事をしているさなか、小学校六年生の北村通弘という子供がこのすべり台から転落をしまして死亡するという事故が起きまして、大きな社会問題になったのでございます。
 それで、この事件は設計施行等工事の管理上に手落ちがあったとして、山梨県警と甲府署は管理者の刑事責任を追及しておりました。そして、結果的には四人の関係者は業務上過失致死の容疑があるということで、甲府地検に書類を送検したんでございますが、その後甲府地検のほうでは、いろいろと取り調べをなさいまして、さらに当時補修工事をしていた竹内工業会社の鮎川という現場代理人にも容疑がありということで、前の四人と同じように刑事責任を追及していたのでありますが、先般の六月三十日に、甲府地検は、これら五人に、全員が容疑不十分ということで不起訴の処分をいたしたのでございます。
 私は、これは警察なり検察がそれぞれの立場でお取り調べになりましてそれぞれの御決定をなすったわけですから、そのことについて私はここでとやかく言おうとは申しません。ただ、ここにも新聞がございますが、地元の山梨日日新聞というのに大きく取り上げられておりますが、その中に、不幸にして自分のかわいい子供を失った北村通弘君のおかあさんの談話が載っておるんですけれども、それを読んでみますと、「突然不起訴と聞いてびっくりし、胸がつまる思いです。起訴処分になるものと主人とも確信していただけに、意外だとしか言いようがありません。だれも責任が問われないなんて通弘の死はいったいなんだったんでしょう。」という記事がございます。その横に県の岩下厚生部長の談話が載っておりますが、それを見ますと、「不起訴になったが、全体的には責任を強く感じている。施設の理想を十分生かすためにも今後、安全措置については万全を期したい。月曜日」――これは七月一日の新聞で三十日に不起訴の処分が出たわけですから――「(二日)に地検に行って内容を聴き、早期に改修工事に着手する。年内には完成、使用を開始出来るだろう。改修工事としては、保護ネットの取り付け、踊り場の拡張、階段への手すり取り付け、スピード、幼児用、本線の各コースの区分け――を考えている。」という記事が対照的に載っておりました。
 おそらく不起訴という知らせを聞きましたおかあさんにとってはまことに意外であったと、こう思うでしょう。また県のほうも、確かに不起訴にはなったが責任を感じているというデリケートな事件でございまして、私は、この事件を契機にして、この幼い子供の死が無にならないように、完全な安全対策というものをしてほしいと思うんですね。一体そういうこどもの国というような遊園地が、どこの所管でどういう基準によって設けられているのかよくわかりませんから、きょうは厚生省からも、おそらく担当の省だと思いますのでおいでをいただいておりますから、そういう点を中心にして、私はきょう意見を聞きたかったわけですが、まず警察側から、この事件を取り調べ、書類を送検するまでの経過について説明をしていただきたい。それから検察側からは、警察から書類送検されて不起訴の処分にされるまでの概要について伺いたい。特に警察としては、この地検の不起訴処分に対して何か感ずることがあったらひとつ述べていただきたい、こう思います。
#4
○説明員(小林朴君) 事件の捜査の概要につきまして御説明を申し上げます。
 事件は、昨年の五月の二十日の午後三時十分ごろに、甲府市の北八反田という山梨県の県立のこども遊園地の中におきまして起こったわけでございますが、小学校の六年生になる北村通弘君が、当時十一歳でございますけれども、友人一名と一緒に、工事中のために使用禁止になっておりました、総延長が四百七十七・一メートル、特にこれは支線と本線とに分かれておりまして、本線の長さが三百二十四・六メートルございますが、その通称ジャンボすべり台、これで遊んでおりましたところ、上方より約二百三メートルの地点ですべり台の外にほうり出されてしまったということで、ちょうど岩場でございまして、そこに転落をいたしまして頭部を強打して、同日の午後五時ごろに死亡したという事件でございます。
 本件を認知いたしました甲府の警察署におきましては、すぐに県の捜査一課、それから鑑識課員の応援を受けまして、現場の実況見分等を行なって、捜査を開始したわけでございます。この事件は、五月の二十三日の日に山梨大学の工学部の教授で北御門良夫という方に対しまして鑑定を依頼をいたしたわけでございます。内容は、設計の適否、それから設計に対する施工の適否、それから回転角度と傾斜に対する速度と安全性というようなものにつきまして鑑定を嘱託したわけでございます。その結果、すべり台上の設計が、最も重要な部分でございます摩擦係数の測定ということにつきまして十分な実験がなされておらない、あるいは設計上最高速度が時速二十キロメートルぐらいというふうにされておるわけでございますけれども、実験データでは三十キロメートルをこえるというような現実になっておる、あるいは設計上の勾配より急勾配に現実の施工のほうではなっているというようないろんな問題が出てまいりまして、結果的には、安全性を十分に配意いたしました慎重な工事の設計であろうか、あるいはその施行であろうかというような疑問が生じたわけでございます。
 そういうようなことで、過去にも、過去にと申しますのは、五月の七日でございます。一度、五月の七日の日でございますが、一般に公開をいたしまして、子供がすべったわけでございますけれども、そのときにも飛び出したというような例もございまして、どうも設計上十分ではないんではないかというような問題もあった。同時にまた、当時使用の禁止をしたわけでございますけれども、その禁止のしかたも十分ではなかったんではないかというようなことで、一応それを現実に、県のものでございますけれども、県が施工を委託をいたしました県の開発公社、それからさらにその設計等を請け負いました、東京の渋谷にございます環境デザイン研究所、そこの所長ほか担当の技師の方というような方々の監督上、あるいは設計なり、工事の管理というような点における責任を追及いたしまして、まあ警察側では、先ほど御質問にもございましたように、四名の者を一応業務上過失致死罪ということで、同年の七月の十四日に一応調べを終わりまして、甲府地方検察庁に対して事件を送致したというような次第でございます。
#5
○国務大臣(田中伊三次君) 御質問の事項につきまして、五月二十日になくなられた北村通弘君の霊に対して、つつしんで哀悼の誠をささげたいと存じます。
 そこで、どういう事情で起訴できなかったかという問題につきましては、刑事局長から御報告を申し上げます。
#6
○政府委員(安原美穂君) 鈴木先生のお尋ねは、まず、検察庁でどのような捜査をしたかということでありますが、詳しい報告は受けておりませんけれども、検察庁におきましても、遊園地で子供が死んだという事件でございますので、これを重視いたしまして、本件発生の報告を受けたとき、直ちに東検事という担当検察官を指名いたしまして、五月二十二日に、警察と共同いたしまして事故現場の実況検分を実施するというほどに重大な関心を払って、当初から捜査について全力を尽くして、過失の有無という点についての捜査を尽くしたわけでありまするが、結局、先ほど御案内のとおり、約一年たちました本年六月三十日に、関係者をすべて嫌疑不十分、過失の嫌疑が十分でないということで不起訴処分にしたわけでございます。そこで、検察庁におきましては、事件を受けましたあとで、警察からの送致は、先ほど小林参事官お話しのとおり、環境デザイン研究所所長ら三名という設計担当者が中心の被疑者として送致されてきたほかに、検察庁でさらに、この現場におきましてこの工事を施行し、そして当時使用を中止して補修工事中であったわけでありますが、このすべり台の安全管理責任者としては、当時そのような工事を施行しておりました竹内工業有限会社の現場代理人もやはり過失の嫌疑があるのではないかということで、あわせて四名の被疑者につきまして本件の過失犯の成否を捜査したのでございます。そして、その間におきまして、先ほど北御門教授の鑑定ということを警察でなさったわけでありまするが、そのほかに検察段階におきまして、さらに三浦助教授という方の鑑定も求めまして、そして本件が設計のミスに基づくものであるかどうかということにつきましての捜査も鋭意尽くしたわけでありまして、事柄が相当にむずかしい判断の問題でございましたので、約一年を経過したわけでありますが、結局におきまして、先ほど申し上げましたように、嫌疑不十分ということでございます。
 端的にその理由を申し上げますと、報告によりますと、甲府地検が本件につきまして犯罪の嫌疑が十分でないとする理由といたしましては、本件の事故は、被害者の少年である北村通弘君十一歳が、当時、先ほども申し上げましたように、使用禁止となって、その旨の立て札がすべり台の入り口に表示してあり、ロープ等で入り口がふさいでありました本件すべり台を、あえて友だち五、六人と一緒に階段を上がって使用し、しかもこのすべり台を使用するにあたりましては、滑降の姿勢――すべりおりる姿勢についての注意書きがございまして、いわゆるすわってすべるというような注意事項がありましたのに、その所定の滑降姿勢をとらずに、雨が降ってすべり台の滑走面の摩擦係数が減少していたのに、ゴムぐつのまま中腰になって滑走を開始したために異常な滑走スピードを生じたことに起因するものであるということであって、本件の発生は、使用禁止の表示を無視して、しかも使用の方法に従わないですべった、たまたまそれが不幸にも雨のあとであったので、中腰ですべったために、異常なスピードが出たために脱落して死んだということに原因があるのである。反面におきまして、この先ほどの被疑者らには本件事故に直接に結びつく設計上あるいは工事施行上、または現場管理上の過失を認めることは困難であるということで、不起訴ということになったのでございます。
#7
○鈴木強君 警察側で、不起訴になりましたこの事件に対して、参事官、何かあれですか、感じていることがありますか。
#8
○説明員(小林朴君) 捜査側といたしましては、一応捜査を遂げて送りましたものでございますので、それの処分につきまして検察側が慎重に検討なさったという形であれば、私どものほうとしては何にも申し上げることはないわけでございます。
#9
○鈴木強君 それでね、両当局の見解は、経過はわかりました。それで、ただ一つここで、まあ県立のこどもの国で、この担当に当たる岩下という県の厚生部長の話を先ほど申し上げましたが、不起訴になったが、全体的にはその責任を強く感じている、さっき言ったように、一回オープンして、そして事故があってまたやめておった、そういうようないきさつがあるので、その間の管理的な責任についてぼくは感じているんだと思うんですね。子供のことですから、立入り禁止って書いてありましても、ロープぐらい張っておったって、やっぱり子供ですから、すべりたい一心でやるかもしれませんね。ですから、そういうことを考えれば、もう少し完ぺきな、オープンを中止して改修工事をするということになっておったんですから、その間、もっと厳重な、私は立ち入り禁止をもっとしっかりやってもいいんじゃないかというふうに思うんですね。ですから、その意味において、むしろ当事者である県当局が率直に、不起訴になったけれど責任を強く感じているという、こういう私は考え方を出したことはりっぱだと思いますね。やっぱり人間、あやまちはあるでしょう。そして再びそのあやまちを繰り返さないというところに大事なところがあるわけですから、しかもここに施設の理想を十分生かすためにも、今後安全措置については万全を期したい、そして改修工事に着手して年内に完成したいが、改修工事として、一つは保護ネットの取りつけ、踊り場の拡張、階段への手すり取りつけ、スピード、幼児用、本線の各コースの区分け、こういうことをやはりやらなければいけないんだということを自認しているわけですね。一体、これは厚生省に来ていただいておりますが、これはひとつの遊園地だと思いますけれども、こういうものは、安全対策について根拠法規はどこにあるのか。そして厚生省としてはどういう指導や助言や監督をしているのか、これをひとつ明らかにしてもらいたい。
#10
○説明員(阿部正利君) 今回の山梨県の県立の愛宕山のこどもの国は、設備あるいは規模等から見まして、児童福祉法上の児童厚生施設というような形にはなっていない施設でございます。したがって、こういった子供の遊び場につきましては、児童福祉法に児童福祉施設の一つの種類として児童厚生施設というものが規定されておるわけでございまして、この児童厚生施設の中に、いわゆる子供の遊び場、児童遊園と私ども称しておりますが、こういう規定があるわけでございます。
 山梨県の場合は、こういった、これは知事の認可を必要とするような施設、たてまえになっておるわけでございますが、規模その他からいって児童厚生施設という形にはなっていないわけでございます。しかし、したがってその県の独自のひとつの施策として、こういうふうな子供の遊び場といいますか、健全育成のための施設が整備されているという形になっておるわけでございます。しかし私どもの立場としまして、この子供の健全な育成をはかるというような見地から、この施設が多大の寄与をなされているというふうなことでもございますので、この安全管理なりあるいは事故防止といったような観点から、しばしば各地方のほうに、公共団体のほうに注意を喚起して、児童の事故防止の万全を期するようにということをお願いいたしているわけでございます。たまたま昨年の七月にも、こういった面について児童家庭局長の名前で各都道府県知事のほうに、子供の遊び場の安全確保あるいは事故防止といった点について注意を喚起し、指導いたしておるような状況でございます。
#11
○鈴木強君 児童福祉法に基づく児童福祉施設としてこの施設は該当するんですか、しないんですか。また、もししないとすれば、そういうものは一体だれが権限で、どういう企画でやるか、そういう安全対策等に対する基準というものは一体だれがどうきめているんですか。厚生省の手がこれは届かないんじゃないんだね。やはりあなたのほうで通達を出して安全対策についての注意を喚起しているというんですから、やはり監督責任というのは厚生省にあると、こう判断していいわけですか。
#12
○説明員(阿部正利君) 山梨県の場合の施設は、先ほど申し上げましたように、児童福祉施設としての認可は得ておりませんので、児童福祉法に該当する児童福祉施設ということにはなっておりません。ただ、私ども、広く子供の健全育成というような、利用する側の立場から、こういったような公共的な施設の子供の利用というようなことから、絶えず事故防止なり安全対策というものについての注意を喚起している、こういう形でございます。
#13
○鈴木強君 児童福祉法上の認可をしないものでも、かってに県知事の権限でつくってもいいなら、そのつくる場合に一番問題になるのはやはり安全ですよね、これは。ですからそういう基準というものはそれじゃだれにまかしてあるんですか。一つの方針を国が示してやるということでなくて、それはかってにやる、県がかってにつくってやっていいと、そういうことですか。そういうことであれば、そういう通達を出すこともおかしい。これは法律の盲点ですか。少なくとも児童の、これは子供の遊び場ですからね。児童福祉法による施設にやはりすべきですよ、これはちゃんと。そして厚生省が責任持ってやはり地方自治体を監督して、安全性についてのきびしい基準をはめていく、もし地方の条例なり知事権限でやれるとしても、その場合には全国画一的なやはり基準を設けて、基準だけを厳守すべきだというそういうものを与えるべきじゃないでしょうか。もしそれがやってないとすれば、これは怠慢だね。そういうところに法律の裏をくぐってつくる、こういうものがいいことですかね、これは。私もつくることについて反対しているわけではないんだが、せっかくつくったものが、事故が起きて子供が死んだり、そして一年以上も使えるものが使えないでいるわけだ。これは県の財産の浪費ですよ、これは。そうでしょう。だから、もう少しその辺を国としてきちっと私は対策を立ててもらいたいと思う。
#14
○説明員(阿部正利君) 山梨県のこどもの国の場合は、御案内のとおりこのこどもの国の中に、いま言ったようなすべり台等の遊具施設、それから宿泊訓練施設、それから少年自然の家あるいは広場といったような、こういったいろんな施設が総合的に整備されているものでございまして、したがって、これが全体的に児童福祉施設という範疇からははみ出す形の、規模の大きいものでございます。したがってそういう意味で、この施設についての児童福祉法上の認可というものはなされていなかったというふうに解するわけでございます。このすべり台等の遊具の安全性の問題でございますが、これは設置する場所、あるいは利用する対象児童年齢等の関係、そういったことでいろいろと規模が違ってくる場合が多いわけでございます。したがって、その構造とかあるいは形態、材質といったようなものについて、なかなか一般的な安全基準というものはむずかしいのじゃなかろうか。そこで、私のほうにこういうふうな面で子供の遊び場の面での御相談等があった場合に、私どものほうとしては、それぞれ設置主体におきまして、いまいったような利用する対象児童等の状況なり、設置する場所、位置等、そういうふうなものを十分考慮していただいて、そうして県において安全性なり事故防止の対策といったようなことを十分頭に置きながら、場合によってはその経験者等の、専門家等の意見を聞いて、そういう上で遊具等の設備、構造、こういったものを配慮するような、こういうような指導を行なっているという形でございます。
#15
○鈴木強君 話としてはわかりましたが、児童福祉施設の範疇からはみ出した施設である。しかしながら、そういう施設が全国的にあるということは厚生省は知っているわけですね。したがって、それらの施設についての安全性ということについては、局長からも通達を出して厳重にしてくれよと、こういうのを出しておったということもわかりました。したがって、おかあさんが沈痛に明け暮れして、一体通弘の死は何だったのでしょうかという、こういう悲痛の叫びをあげているわけですから、私はこの通弘君の死に報いるためにも、再び帰ってこないこれは命でございますからね。この死をむだにしないためには、やはり今後絶対にこういう事故が再び起こらないという保障をちゃんとすべきだと思います。
 それから、法律的には不起訴になりまして、責任は施工者や設計者や県のほうにないということになったのでございましょうが、やはり道義的には、この子供さんに対するお見舞いをどうするかということも、当然これは県としても考えられていると思います。私は詳しいことは聞いておりませんけれども、先ほど法務大臣からも哀悼の意が表明されまして、私もともに御冥福を祈ったわけですけれども、こういう意味で、ひとつ厚生省としましても、できれば一度現地の実情をよく見るために甲府にも行っていただいて、そしてなお県当局が考えている、さっき申し上げたようなこの四つの安全対策等についても十分にひとつ相談に乗っていただいて、そして再びこの種の事故が起こらないような措置をとってもらいたいと思うんです。きょうはまあ大臣がいらしておりませんけれど、ぜひひとつそういうふうにしていただきたい。
 それからもう一つは、やはり法律の盲点というとおかしいのですけれども、法律からはみ出てしまうそれらの施設に対し、一体どういう法の規制をするか、こういうことも重大なことだと思いますよ。児童福祉施設に入るものと入らないものとの選別がどうなっていくのか、この辺ももう少し詰めた論議をしていただいて、できるだけ法律的にこれを保護し、あるいは規制していくという、これは安全の問題ですからね。また地方がもしやるとすれば、地方にちゃんとした安全対策というものを国が示して、一片の通達でなくて、今後つくるときにはこうしなさいと、もう一回点検して、こういう点が不十分であったらこうしなさいということをひとつやってもらいたいんですよ。いまここで全国に幾つこういう例外なものがあるかお聞きしたいと思うんだけれど、時間がありませんから資料ででもまた出していただいて、そういう施設についてももう一回点検していただくと、こういうようなことをひとつぜひやってもらいたいと思いますよ。これはまあ法務大臣には御迷惑ですけれど、ひとつ厚生大臣にも、きょうの質疑のありましたことを大臣からもひとつお伝えいただいて、そして、いま私が申し上げたようなことについて真剣にひとつ考えていただくように田中法務大臣にもお願いをしたいと思いますが、ひとつ御所見をお二人からお伺いして、これはこれで終わります。
#16
○政府委員(安原美穂君) 先ほど御報告申し上げましたように、刑事上の過失責任は問えないということでございますが、別途、鈴木先生の御心配いただいておりますことは山梨県においてすでに実施しておりまして、昨年三百五十万円を遺族に支払いまして、示談が成立済みでございます。そして、それは県議会の議決を得る必要がある事項でございましたので、その三百五十万円の支出についての県議会の議決を得る際の提案理由といたしまして、この事故は県有施設内で発生したものでありますので、施設者の設置者としての責任から、被害者の遺族に対して慰謝することとし、示談により損害賠償することとしたいという提案理由のもとに議決されております、ということをついでに御報告申し上げます。
#17
○国務大臣(田中伊三次君) ただいまのお話、承知をいたしました。私から厚生大臣に、明日閣議前に責任をもってお話をいたします。
#18
○鈴木強君 それでは、次に堀木訴訟の控訴の問題でお伺いしますが、けさ私は新聞を見まして、例の、おかあさんが障害福祉年金を受給しているからということで児童扶養手当の受給を禁止した規定は違憲だという例の堀木訴訟の問題で、今月の七日に大阪高裁で第三回の口頭弁論が開かれるようになっておりますが、この控訴について、法務大臣の権限によって、兵庫県側はむしろ第一審の判決を受諾するというような態度をとったにかかわらず、国のほうから控訴をしろという指示があって、県側はやむを得ず控訴したというような記事を拝見いたしまして、これは地方自治法との関連で、少し私は国側のやり方について行き過ぎがあるんじゃないかというふうに実は思うんです。したがって、いずれこれはもう一回詳細に私は大阪高裁の口頭弁論が終わりました段階で伺いたいと思います。
 きょうはもう非常に時間がありませんから、簡単に、法務大臣の権限等に関する法律、これによってまあ一つの指揮権的なものを発動して控訴を兵庫県に指示した。これはいわゆる地方自治法にいう、普通地方公共団体の執行機関は、当該普通地方公共団体及び国などの事務をみずからの判断と責任において執行する、こういう地方自治法百三十八条の二と憲法第九十二条の地方自治の基本原則、こういうものに反するのではないか、こういう意見がありますから、この際法務大臣の見解を承っておきたい。
#19
○説明員(貞家克己君) お尋ねの問題に対しまして、まず法律上の根拠から御説明申し上げたいと思います。
 堀木さんの起こされました訴訟は、御承知のとおり児童扶養手当の受給資格についての認定を申請されましたのに対しまして、兵庫県知事が却下の処分をしたその処分を争う訴訟でございます。そこで、これは都道府県知事がそういう処分を行なうわけでございますが、その事務は児童扶養手当法及びこれに基づく政令の定めるところにより、受給資格者の受給資格及び児童扶養手当の額を認定するという事務になるわけでございまして、この事務はいわゆる都道府県知事が国の機関委任事務として行なう事務でございまして、このことは地方自治法の百四十八条それから同法の別表第三の五十号の二というのがございまして、ここに明らかにいわゆる機関委任事務であるということが明示されているわけでございます。
 ところで、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律というのがございますが、この法律の六条及び五条によりますと、行政庁を当事者または参加人とする訴訟につきましては、行政庁は法務大臣の指揮を受けるということが明定されているわけでございまして、ここでいいます行政庁の中には、国の機関委任事務につきまして都道府県知事が行なう場合、この知事もまた行政庁に当たるというふうに解されているわけでございます。したがいまして本件の場合に、兵庫県知事は訴訟につきましては法務大臣の指揮を受けるということになるわけでございまして、兵庫県知事が指示を求めたのに対しまして、法務大臣が控訴すべきことを指示したという関係になるわけでございます。
 そこで具体的な経過を申し上げますと、この堀木訴訟の第一審判決は、昨年の九月二十日に一部勝訴の判決、原告の一部勝訴の判決があったわけでありまして、これに対しまして兵庫県知事のほうから、これは被告でございますので、兵庫県知事のほうから、この判決に対します控訴の要否について法務大臣の指示を求められたわけでございます。その指示を求められました文書の中には、自分の参考意見、つまり兵庫県知事としての参考意見が付されておったわけでございます。その参考意見は、結論から申しますと、控訴しないことが適当であると思量するという意見がございました。
 そこでこの求指示を受けました法務省といたしましては、この兵庫県知事の御意見も参酌いたしましたし、所管の行政庁でございます厚生省当局の意見も伺い、種々検討をいたしましたが、ともかくも、一言で申しますと、国会で制定されましたこの児童扶養手当法という法律が違憲と判断されましたことは非常に重大な問題でございまして、一審限りで判決を確定するということは相当でない、やはり上級審の判断を仰ぐ必要があるという結論に達したわけでございまして、そこで、先ほど申しました権限法による指揮の権限に基づきまして、兵庫県知事に対して上訴すべき旨を指示したわけでございます。そこで兵庫県知事のほうではこの指示に従いまして控訴することに決定いたしまして、法務大臣あてに控訴審における訴訟遂行の協力方を依頼されてきたわけでありまして、その結果、法務大臣がみずから指定いたしました代理人と兵庫県知事が指定いたしました代理人が共同いたしまして、この事件についての控訴提起の手続をとったと、かような経過になっているわけでございます。
#20
○鈴木強君 あなたのお述べになった見解、要するに法務省がおとりになった見解も、一つの法的根拠に基づく見解ですから、それはそれとして私は聞いておきますがね。しかしまた、兵庫県知事が最初に法務大臣あてに、控訴しないことが社会のニードにも当てはまる、一審判決を確定させたとしても現行制度が根本的にくつがえることにはならないというので、控訴はしないのが適当と、こういう判断を立てられておるわけだし、また、そのことに対しては、先ほど申し上げたような、地方自治法百三十八条の二と憲法九十二条というものがやっぱり出てくる。したがって、これは法律的な見解の相違になりますから、いずれこれは裁判で争われるでありましょう。
 ただ、私がここで申し上げたいのは、少なくとも、この障害福祉年金を受給しているおかあさんというのは、やはりからだの不自由な気の毒な方だと思うんですね。そういう方のお子さんに対して扶養手当の受給を禁止する、こういうことは酷ではないかというのが私は第一審の判決であったと思うんです。ですからこれは、国の大きな政治問題とのからみで、やっぱりある程度考えないといけないことだと思うんですね。その点は、私は、兵庫県知事の坂井さんのおとりになった態度はりっぱだと思いますよ。そういう気の毒な人たちに対する社会福祉、そういうものに対する私は一つの当局者の考え方にあると思うんでね、これを見たときに、非常に残念にそういう意味で思ったわけです。
 ひとつ法務大臣から、ただしゃくし定木に法律的な解釈だけで処理していい問題かどうか――これは法律的にはいろいろ争いがあって、裁判所が少なくとも違憲だということを言っているわけですから、本来ならばそれに従うというのが筋でしょう。しかし、法律的には高裁なり最高裁まで争える道はありますから、おっしゃるように、重大な問題だから一審だけのあれではいけないので、国のために二審まで持っていったというようなふうにもとれるようなお話で、事務当局としてはそう言わざるを得ないと思いますけれども、もう少しこれは政治的な判断を加えてしかるべき時期に私は来ているし、内容のものだと思いますからね、大臣としての所見はどうでしょうか。
#21
○国務大臣(田中伊三次君) 理の方面と情の方面と、両面を持つ事件でございます。私はそう見たんです。
 それで、その情の面で見ますると、先生仰せのとおり、これは上訴したくない、堀木さんの仰せになることを通してあげたい、たいへんそういう気持ちが深く動く事件でございます。
 しかるところ、この児童扶養手当法というものが違憲の立法だという、ここがひっかかるのですね、これが。裁判所が、違憲の立法、ことに下級裁判所が、違憲の立法をやったと。これはひとつ明らかにしておきたい、明らかにしておかなければ今後の秩序が立つまいということから、理の面で、これは訴えやむを得ない――肝心の知事がそうでなくていいと言ってきておるじゃないかということもあるんですけれども、そこが法務大臣の権限法による私の重大な責任で、やっぱり憲法上そう疑いをかけられては困るという重要問題については、天下社会のために明らかにしておきたい、それは上の裁判所の御判断を仰いでいきたい、こういう気持ちが強くなりまして、上訴すべきものだという所見を返していったわけでございます。
#22
○鈴木強君 これはまたあらためて取り上げたいと思います。
 次に、尊属殺の場合、一般殺よりも重罰に科すという刑法二百条ですね。これは最高裁から明確に違憲の判決が出しましたね。したがってこれは、大臣も、もう死んでいるということをおっしゃっておるし、死んでいるものなら、これを早く措置するのが当然ですから、われわれとしては法改正を直ちにやるべきであるという意見を出してあります。それで、党としてはすでにそういう趣旨の改正案を提案してございます。そこで、法務省当局としても、あるいは政府としても、五月の何日だか、一応、与党自民党の了承を得るという見解に立って一つの案をまとめてございますね、削除するという。これは、刑法全体をいま論ずる刑法部会でもそういう論議が長い間やられてきておるわけですから、いまや論議をする余地はないと思うんですよ。ですから、私は、党も出しておりますしね、この際大臣の御勇断で、すでに決定している方針に基づいて、すみやかに改正の、この分だけ切り離して出してもらいたいと思うんですよ。
 何か聞くところによると、衆議院のほうでも、前尾前法務大臣も――いま議長をされておりますが、たいへん御心配なさっているように聞いておりますけれども、大臣としては、この際どういうふうにされるのか。われわれが何回もあなた方にお願いをし意見を述べてきた、切り離して直ちにこの国会で改正していただきたい、こういう意見に対して、やってくれますかね。どうですか。
#23
○国務大臣(田中伊三次君) 私の英断だけではやれない段階に来ております。
 それはどういうことかといいますと、最高裁が、二百条を違憲の立法だと称して判決を下しました。その判決はとうに確定をしております。確定と同時にこれは無効になるわけで、これはもうだれが見たって無効になる、どんなじょうずな理屈を言うたって無効は免れぬ、こういうことでございます。で、無効になりますので、無効のものを削除をしたいという意見をまずまとめました。
 もう一つの意見は、それは何も削らぬでもいいじゃないか、無期、死刑というやつを、四年以上なり五年以上、死刑にするということで改正をしたらいいじゃないか、親に対する子供のそういう行動というものに対しては別の法律があっておかしくないではないかという一つの、これはまたりっぱな意見でございますが、意見がございます。意見がございますが、私の判断は――これは法務省の判断というより私の判断が先に立ったわけでございますが、私は、結論は、どういう事情があろうとも、違憲立法だとして無効の判決が下っておるじゃないか、無効の判決が下ったものをほっておくわけにはいかぬから、違憲とおっしゃる以上は削る以外に道はない。これは改正でいき、二百条を残せ、改正して残せという意見は、違憲立法にこたえる道とは違う、違憲立法にこたえる道は削除あるのみだ、よって、削除しろということを部下に命じまして用意をいたしまして、法制審議会にかけて、法制審議会は満場一致でそのとおりでよいということにおきめをいただきました。
 ただし、法制審議会の意見だけではいけませんので、政党政治が進んでおりまして、法案を提出いたします手続といたしましては、政党の、私の属する政党の与党の御了解を得ないと出すわけにいかない。そこで、大体の用意ができましたので閣議に相談をいたしまして、与党の御了解が得られた場合はすみやかに提出をせよとの条件づき閣議決定をいただきまして、閣議決定を済んでおります。で、与党のいま了解をいただくべく盛んに苦心努力を払っておるというのが現段階でございます。私の微力のいたすところ、まだこの段階では、よろしいという御許可をいただくところにいきかねておる、時間がかかっておるということが真相でございます。
 そういうことでありますので、この問題は私のひとつ英断によって断固やれというおことばでございますけれども、これは、断固やれない、どうにも動きようがないということで、たいへん苦労しておるところでございます。
#24
○鈴木強君 まあ、正義感に燃えて、正しきはやっぱり断固実行するという田中法務大臣の御所信を私は非常に高く評価し信頼しておったんでございますけれども、閣議でもきめて、それは条件はついておりますが、しかし、あなたもおっしゃるように、最高裁の判決が出て、違憲だという以上は、やっぱり削除するほかにないというのは、私はやはりそのとおりだと思います。要するに、ですから、そうであれば、政党政治といってもやっぱり議院内閣制ですから、その党から出た閣僚がそういうことでいいじゃないかというので、閣議の決定もしているわけですから、あとは与党である自民党のほうでそれを理解すればいいわけでしょう。きのうあたりたしか参議院自民党で反対だというような決議をしたとかということも新聞で報ぜられておりますけれども、これは私は、時代センスのなさもはなはだしいと思いますけれども、これは他党のことですからあまり深くここで申し上げることは遠慮しますけれども、どうも一体自民党は、これを反対する人たちはどういう考え方を持っているのか、あの最高裁の判決をもう一回読み直してもらいたいと思うのですよ。
 ですから、まあ聞くところによると、衆議院の法務委員長を中心にして議員立法を起こすというような動きもあるようですけれども、かりに衆議院は通っても、参議院のほうでどうなるかわからないというようなことで、二の足を踏んで大臣もお手上げだと、こうおっしゃるんだと思いますけれども、もう一段とひとつ勇気を出して、大臣の持ち前の正義感で、正しきことはやっぱりおそれずに訴え続けて、そして国民の期待に沿えるような方法をとってもらいたいと思うんですよ。
#25
○国務大臣(田中伊三次君) 私は、妙に聞こえるかもしれませんが、いやしくも違憲立法が起こりまして、そして親子の関係を規定しておるかに見える刑法二百条並びにその関連の三つの法律の条項を、その明文を削除するかどうかという、まあいわば大問題、刑事法規の基本法という刑法をめぐる大問題、その大問題をめぐりましては、大臣の意見はいま申し上げたとおり――私は自分の意見だけここで申し上げるわけでございますが、その私の意見に対して、そうではない、それは削除の必要はないのだ、改正でいけという意見も、鈴木先生、これは私は一つの意見である、有力なる見解の一つであると思うのですね。それで、私は、自分の主張をしながら、えりを正してこの意見を承っておるのでございますが、やっぱり時間をかけてしっかり意見を戦わしまして、花の咲くような意見を展開して、そうして落ちつくところ、こうしようということに落ちついて、そこでその決定に従って大臣が行動するということが私の責務であるように思うので、私はここで無理にこれを押し切ってどうしようという意図を持たぬのでございます。しっかり論議をしてくれ、もっと論議せいという態度のほうが正しくはないかということでございます。
 それで、方針といたしましては、下級裁判所はすでに、これは私の京都で起こった事件でございますが、親に傷害を与えましたる場合、もうすでに憲法違反という判決が下っております。これは一審でございます。こういうことでございまするし、妙な結果を来たしますというと、収拾できない状態が起こるのではなかろうかということを私は非常に心配をしております。たとえばこれを削除しないで、訂正でこの条文を残しておくということになると、その訂正された二百条の改正された条文が無効だという判決がまた起こるおそれがあるのではなかろうか、第二、第三の無効判決が起こってくるのではなかろうか、そのつど国会がびっくりしなければならぬのではなかろうかということを、私は専門的な知識の上から非常にこれを心配をしておる。心配をしておりますが、せっかくの皆さまの御議論でありますから、しっかり議論をしていただいて、私もその御議論に対してはえりを正すという考え方で対処をして、無理はすまいと、こういうふうに腹をきめておるのでございます。
#26
○鈴木強君 そうすると、今度の国会はとても無理だと、こう判断しているんですか。
#27
○国務大臣(田中伊三次君) 党のほうからよろしいと御許可が出ましたら、もう直ちに、会期末になっておりましても、直ちに出したい、そうすれば、この法案は一日か二日で両院を通していただく見通しは立ちますので、どんなに切迫しておっても、どんなに会期末に近づいておりましても、党の御許可があれば直ちに出したい、御審議をいただきたいと思っております。
#28
○鈴木強君 なおひとつ最後まで大臣の御所信を曲げないでやっていただきたいと思います。
 それから、もう時間がだいぶおそくなりましたので、未承認国からの入国問題については、きのう田中法務大臣が全国の入管事務所長会議で、未承認国からわが国への入国については積極的に取り組むようにという御指示をなさったようでして、これは従来の政府の態度からすると大きな転換ではないかと思います。私たちは、この大臣の御見解を心から歓迎をし、ぜひ今後もやっていただきたいと思うのであります。それからきのうは、大平外務大臣も、衆議院法務委員会で、朝鮮民主主義人民共和国との交流を拡大するという柔軟な態度をおとりになっておりまして、最近における国際間の、国際情勢の転換に即応する体制をつくっていただいていることは同慶にたえません。
 そこで、きょうは少し突き詰めた話を聞きたかったんですけれども、時間がありませんので、ただ一つだけここで伺っておきたいんですが、日本電波ニュースのハノイ特電というのがけさの新聞に出ておりましたが、これによりますと、南革命政府の代表の入国で先般認められて、これらの方々がきのうの午前五時半にハノイ駅を出発したと、こういう報道がされております。この入国を認めた場合には、たしか新聞で見ますと、大臣は、南ベトナム革命政府の代表については、北ベトナムの政府の発行する何か査証ですか、そういうものによって認めるとかという何か条件をつけておるように聞いているんですけれども、そういう考え方は、今度の未承認国からの入国問題に対するあなたの見解によって、今度は南ベトナムにおける臨時革命政府ということでずばりそのまま、もし入国をしたいというときには認めるようにその点はなるのでございましょうか。前回の点がちょっと私も明確にあれですけれども、何か北ベトナムの政府ですね、という考え、解釈でもって入国を認めたというような条件がついておったというように思うんですけれども、その点と、今後はどうなるか、これだけ一つ。
#29
○国務大臣(田中伊三次君) その点がたいへんむずかしい。臨時革命政府を相手にしないという壁を越えて、まあことばですけれども、壁を破って入国をしていただくようにするためには容易ならざるそこに苦心がいるわけで、この人はチリーの大使もした人で、臨時革命政府さんの大使をおつとめになっておるという人で、したがってだれが見たって臨時革命政府の要人であるということまさに間違いはない。それが日本へお入りになるときに、北ベトナムの政府の旅券をお持ちになってくるということですね。それは一体、そういうことがないことはないでしょうが、自国民以外の他国の国民に自国のパスポートを与えるということはままあることで、しかしそれは国際法によりまして、そういうことをした場合においては、自国のパスポートを出した以上は、他国の人であっても自国人同様に交通の安全に協力して守ってやってくれというのが国際法の原則になっている、こういうことでございますから、まあどこの旅券を持ってきたかということ、一つの事実としてこれは参考になるのでありますが、私がとらえましたのはそういうことでなしに、南ベトナムにおける民間団体、何々委員会と称する民間団体、その民間団体を代表して日本へ来て、戦災の復興援助について御相談を申し上げたい、むろん観光もなさるでしょうし、いろんな人にお会いになるでしょうが、中心はそれでおいでになるんだと、こういうことでございますので、私の考え方を貫いたわけでございますが、それは復興援助という人道以上の問題について、人道ケースといいますが、人道以上の人道ケースでございますから、そういうことについておいでになる場合は、北ベトナムであろうが、南ベトナムであろうが、臨時革命政府であろうが、いかなるものであろうが、人道以上のケースというものを扱う場合においては国境を越えた考え方で扱わねばならぬ、日本が将来道義の国家日本ということを言いたいのならば、その考え方がなければ、承認国はいいんだ、不承認国は許さぬのだ、単なる民間団体は許さぬのだという考え方に立ったのでは、道義国家日本の看板が泣くじゃないか、だから、どうしてもそれを貫いていこうというためには、一民間団体でも差しつかえないんだ、国境を越えるんだ、人道ケースは国境を越えて処理をするんだと、こういうひとつ原則を、レールをしきたいというふうに考えまして、これを貫いて、南ベトナムにおける何々委員会所属の皆さんが委員会を代表しておいでになると、こういうことで北ベトナムの旅券を持っておいでになる、北ベトナムの旅券ということに重点を置かないで、民間団体を代表して人道ケースでおいでになるということに重点を置いて許可を与えるという方針をとったものでございます。
 将来はどうするのかというおことばでございますが、将来もこの方針で貫いていく。人道ケース、人道ケース以上のいわゆる人道ケースでおいでになる場合においては、少なくともこれに右へならえをする処置をしたい。そういう考え方で、ケース・バイ・ケースという便利なことばを政府は使うのでございますが、ケース・バイ・ケースは私は否定をいたしませんが、ケース・バイ・ケースで扱うやり方は、それはいま申し上げましたような方法で、人道問題については国境を越えてやるんだ、こういう考え方を将来ともに貫いていきたい、こう考えております。
#30
○鈴木強君 そうすると、きのうの御訓辞が多少私たちわからなくなったんですけれどもね。問題は、人道問題という、これに限定しては、形は北ベトナム発行のパスポートであっても、現に南臨時革命政府の何々委員会というものの要人である、あるいは民間人である、そういうことに立ってやるんだと言う。形式的にはしかしやはり北ベトナム人だという、そういう形になっているわけですね。ですからそこが今後、かりにそれならそれで、南ベトナム臨時革命政府という、そういうところに所属する国民である、人民である、こういうことにならぬと、あなたのおっしゃる考え方は考え方としてわかりますけれども、形式上おかしくなりますね。
 それからもう一つは、それでは人道問題以外の、政治問題や経済問題、あるいは文化問題等について入国の申請がもしあったとしたら、希望があったとしたら、こういうのは許さぬということになりますね、あなたの考え方では。その辺は、もう少し詰めた話ですけれども、伺っておきたい。
#31
○国務大臣(田中伊三次君) 人道以外の場合でございますが、具体的にはスポーツ、音楽、一般の文化、特に重要なのは医学の研究その他学術の研究、そういうものはできるだけ、ケース・バイ・ケースということは否定しませんが、できるだけお入りをいただくように処置をしていきたい。人道ケースほどではないが、まあ人道ケースに次いでお入りをいただく方向にこれを指導していきたい、現にそういう考えでやっております。昨今もそういう処置をするわけでございますが、そういう考えでやっていきたいと考えております。
#32
○鈴木強君 すると、パスポートの形式は変えられないんですか。
#33
○国務大臣(田中伊三次君) このパスポートのことは、入国をしていただく日本国の立場からはいろいろなことが言えないんですね。向こうさんの御都合で、北ベトナムさんの御都合で、南ベトナム臨時革命政府さんの所属の人をパスポートを出して、いわば他国の人に自国のパスポートを出して日本へ行けと、こういうことなんですから、それは一体どういう事情でそんなことをなさるのか聞きたいのです、ほんとうは。何でそういうことをなさるのですかと。原則は自分の国のパスポートを自分が出すんじゃないか、他人さまのパスポートまでお出しになるのは、どういう御事情で、どういうことをお頼まれになったのですかということを聞きたいのでありますけれども、まあそんな要らぬことを聞くことはなかろうということで、そこのところはわかったようなわからぬような顔をしておるわけであります。
#34
○鈴木強君 わかりました。だから、そうすると、南ベトナム臨時革命政府ということで来れば、ずばりそのまま政府としては認めると、こういうことですね、向こうが言ってきた場合ですよ。
#35
○国務大臣(田中伊三次君) それは、そこが非常にデリケートな表現でありますが、臨時革命政府で許したんじゃないんです。それは許さぬと言わぬ、許すと言わぬのです、むずかしいので。どういうことなのかというと、南ベトナムにおける民間団体の代表で来られたということで許しておる。しかし、それは臨時革命政府の人ではないかということには、結果はなるのでございます。民間団体の代表で許しておる。国境を越えるのだから、国境を越えるといえば、民間団体を許しておるくらいだから臨時革命政府だっていいじゃないかということに当然なるわけですがね。それはわざとことばの表面では言いませんので、いろんな方面を刺激することにもなるということになりますから、それは申しませんが、一民間団体でもよいというのですから、どんな国でもよいんだと、こういうふうにお考えいただいてもたいへん大きな間違いはないと思います。
#36
○鈴木強君 あなたが予算委員会で御発言になって、それからたいへん火がついて問題になって、とにかくここまで参りまして実現したわけでして、形式その他もまだ問題があると思いますけれども、向こうさんの申請でそうなったということですから、あなたも言うように、聞きたいということは私も同感です。ですから将来は、やっぱり南ベトナム臨時革命政府という、そういう方々も、民間人と同じように、いらっしゃるのなら、やっぱりちゃんとそういう自国のパスポートで来れるような方法をおとりになると思いますから、それならば、そういうことになれば解決すると思いますから、わかりました。
 これで終わります。
#37
○委員長(原田立君) 本件に対する質疑は本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#38
○委員長(原田立君) 刑事訴訟法及び刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#39
○鈴木強君 私は、ただいま議題になりましたこの法律案について、提案者である佐々木静子先生とそれから白木義一郎先生並びに法務大臣に対して若干の質問をいたしたいと存じます。
 それで、大臣の衆議院の御都合があるようですので、最初に、ちょっと失礼ですけれども、順序がおかしいんですけれども、大臣に、弁護人の地位とその職務と、その報酬の問題について伺いたいのであります。
 まあここで申し上げるはもう釈迦に説法ですが、弁護人の地位とその職務につきましては、憲法第三十七条に「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」というふうに明定されておりまして、被告人が十分な弁護を受ける制度というものは憲法で保障されている制度だと思います。したがって、この国選弁護人として弁護に当たる方々に対しては、その弁護人の地位と職務に相当する報酬、それからまた必要とする経費というものは当然国が責任をもってお支払いになることであると私は思います。
 ところが、現在、国選弁護人に対する報酬は全くその実情に私はそぐわないものであるというふうに考えます。特に私が疑問に思うのは、日弁連からも法務大臣のほうに強く要請が出ておると思いますが、いろいろとこの実務をおやりになって痛切に感じるのは、国選弁護人を受任して、そしていよいよ仕事にかかる場合に、訴訟の記録を謄写するということはもう絶対的なことだと思うんですね。その謄写費用というものが法的に明確になっておらない。だからこれを刑事訴訟法上明確にしていただいて、そして予算にもちゃんと計上してもらいたい、こういうことが私はこの提案をされた趣旨だと思うんです。で、これがいままで何回か国会で論議され、質疑がかわされておるにかかわらず、今日まで実現しておらないということは、非常に私は残念だと思うんです。そこで今回社会党は、公明党とも相談いたしまして、議員に付与されております立法権を使ってここに議員立法を起こして、参議院先議で御審議をいただくと、こういうことになったのでございますが、本来からいうともう法務大臣が、特に大臣はその道の権威者でもありますし、実務もやられてきたたいへんな私は権威者である、専門家であると思います。ですから、私が申し上げるまでもなくその事実関係はよく御承知だと思いますが、まあ大臣としていま法務、司法の最高責任者の職責を果たしている場合に、いままでいろいろとお考えになったこともあると思うんですけれども、野党に議員立法で出されちゃって、どうも先を越されたような気がしないですか、大臣。むしろこれはみずからあなたが提案して、そしてよき制度を、慣行を確立して、弁護人が国選弁護のために全力を尽くして公平な裁判所における審理ができるように協力できる体制をつくるということが私は絶対必要だと思うんですよ。大臣として、この提案に対して、われわれがあとから提案者に聞いてからのほうがよかったんですけど、いま私が簡単に述べたような趣旨もあると思いますから、大臣として、この提案された法案に対して、基本的にこの謄写料というものを設けて、そして弁護人の報酬というものを相当な、だれが見てもこれならいいというような、こういう報酬制度に変えていくということについて、基本的な考え方を聞かしてもらいたい。
#40
○国務大臣(田中伊三次君) 鈴木先生お尋ねのこのことに答えをいたしますのは、裁判所であろうと思います。私から答えがしにくいのでございますが、しかし、まあ法案を取り扱うということになりますと私の所管になりますので、できた法案の実施をなさるということになるとこれは裁判所ということになります。本件は議員立法として参議院がお取り扱いになっておるんですから、そういう意味で私に無関係ではございませんので、まあおそるおそる意見を申し上げますと、一体その、私選弁護人であろうが国選弁護人であろうが、訴訟記録なしで、少なくとも訴訟記録というものを念頭に置かないで弁護せよというようなことはナンセンスでございます。それはできないことでございます。まことに無理でございます。そういう趣旨から、国選弁護人に与えておる報酬の中でまかないなさいと、それも含んでおるんだなどというようなことは言わないで、ひとつこれははっきりした法律の規定によってこの訴訟記録というものを国が持つたてまえをつくりまして、それを法律に明記する、法律ができますれば、この法律に基づく予算を組み上げる、こういう方針をとることは私は賛成であります。
#41
○鈴木強君 たいへん力強い、大臣として、まあ職責にあずかる大臣からそういうわれわれの提案に対する趣旨の賛成をいただきまして、たいへん心強く思います。
 で、私は、現在私選弁護人と国選弁護人との間の報酬というものがどういうふうになっておるのか、この点をあとからいろいろ伺いたいんですけれど、いずれにしても、そうしますと大臣、私は裁判の公平を期すということは、やっぱりその弁護体制というものが十分であるかどうかというところにかかっていると思いますね。かつて極東裁判のときに、私の先輩の近藤儀一という弁護人が、裁判長のパール博士を中心とする向こう側さんの弁護体制というものは、りっぱな庁舎の中に入って、冷暖房がついて、白いパンを食べて、そうしてタイプライターを使って、十分な要員を配置してやっておられた。ところで日本のほうは、地階の寒いところで、火もない、炭もない。黒パンを食べてそうして弁護をやっておった。そのときに、近藤儀一先輩はマッカーサーのところに行って、こんなことで極東裁判の公平な審理ができるか。少なくとも食糧なり、その環境整備についても同じようにやってくれ。私の先輩で、私にちょっと話されたことがあります。あるいは首を切られるかもわからないという覚悟で言ったけれども、マッカーサーは率直にその考え方を聞いてくれて、白いパンをくれたというのです。それから暖房も入れてくれたというのですね。
 ですから私は、裁判というのは弁護団が平等な立場に、平等な立場というか、同じような、やはり同じ裁判をする場合には、弁護団というものが非常に重要ですから、私選の弁護人の場合は金のある人たちがふんだんに費用を出してやるかもしれませんね。しかし国選の場合は、経済的には弁護士をつけられない気の毒な人なんですよね。そういう人たちに対して、少なくとも私選弁護人の例外を除いた一般的なやはり報酬に匹敵するようなものをちゃんと保障してやらなければ私はいけないと思う。だから日弁連でも長い間要求をし続けてきたのでしょう。大臣がそういう必要性をお認めになるなら、私がさっき申し上げたように、むしろ政府側が積極的にこういう法律を出して、そうして弁護団の労苦に報い、ほんとうにその地位と立場にふさわしいような報酬をやはり差し上げて、そうして一生懸命弁護に当たっていただくという体制をつくることこそ私は大臣の責務ではなかったか。これはあなたに言わせると、それは裁判所のほうのことだから、法案が出てくればおれの責任だとおっしゃるけれども、裁判所も牧事務次長が来ておりますから伺いたいのですけれども、そういうことがどうしてできないのでしょうか。幸いここに佐々木先生や白木先生が御発議になって、野党が出したものですけれども、これは野党が出そうがだれが出そうが、やはりいいことはいいこととして実現できるようにするのがわれわれ国会議員の任務でありまして、自民党の先生方にもぜひ私はお願いをして、この国会で成立をさせていただきたいと思うのでございますけれども、大臣もひとつ協力をしていただけますか。
#42
○国務大臣(田中伊三次君) これは理屈を言うようでございますが、参議院さんが議員立法でお出しになっておるという案件でございます。一応私はその趣旨には御賛成だということまでは申し上げてよろしいのでございますが、積極的協力をせよというおことばはちょっとまごつくのですね。これを取り扱われるのは参議院における法務委員会、やがては本会議においてお取り扱いになるべきもので、どうも国務大臣、法務大臣である私が積極的にちょっとこう乗り出して何とかするという……。よいかげんな答弁ならここで何ぼでもできるのですよ。私はよいかげんなことは言えぬ男でございますから、どうも私の積極的態度で協力のしようがない。おまえの意見はどうかと、こう先生お聞きになりますから、私の意見は理の当然で賛成だ、これは反対というのはおかしいですよ、これ。それで、それを申し上げておるわけでございます。
#43
○鈴木強君 協力のしかたというのはいろいろありましてね、裏表ということもあるでしょうし、陰に陽にということばもあるし、使い方はいろいろあると思うのですけれども、大臣の賛成であるという明確なお答えがありますから、陰に陽に、裏表においてずっと御協力をいただけるものと私は確信します。これは予算も若干、まあ一億足らずのものですけれど、必要になりますので、大臣としてもよろしくひとつ御協力をお願いします。都合があるようですから、大臣はこれでけっこうです。
 それで、牧事務次長に、さっきの基本の問題についてちょっとお尋ねしておきたいんですけれど、謄写料の必要性ですね、法制化することに対する必要性について大臣もお認めになったわけですけれど、その点いかがでございましょうか。
#44
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 私どもは法案を所管いたしておるわけではございませんので、まあ、運用に当たっている者といたしまして、少し述べさしていただきたいと思います。
 現在の国選弁護人に対する支給は、一応刑事訴訟法の三十八条二項で旅費、日当、宿泊料及び報酬ということできめられておるわけでございます。ここできめられている報酬というのは、弁護活動を一つのまとまった全体としてながめて、それに対して報酬として支払えということの趣旨と理解しておるわけでございまして、その弁護活動を評価いたします際に、いろいろの必要な出費がございました場合には、それが弁護活動に反映されたという意味で報酬の中の算定の要素となるものだというふうに法文を私どもは理解いたしておりまして、そういう趣旨で、従来も、必要とされた謄写料は報酬の中に含めてお支払いしてきておるわけでございます。
 現在の刑事訴訟法ができまして、いわゆる当事者主義ということが非常に強く打ち出されましたので、現在の訴訟といいますのは検察官、弁護人両当事者の訴訟活動にまって初めて正しい裁判ができるということになるわけでございましょうから、弁護の活動をされるのに十分なだけの費用をお支払いしなければならないということは、私どももそのように考えて努力いたしておるわけでございます。
 それでは、先ほどもお話がございましたように、私選弁護に比べて報酬が非常に少ないではないかというお話でございます。確かに一件当たりの金額ということを考えてみましたならば、私選弁護人の方よりは少ないかとは思います。ただ、私どもといたしまして、国選弁護の方にどの程度の報酬をお支払いすべきかということの基準を立てるときに非常に悩むわけでございますけれども、まあ、そのうちの一番有力なモメントになりますのは、やはり私選弁護人の方の報酬がどういうふうになっておるかということだろうと存じます。ところで、私どもは私選弁護人の方の報酬の実態というものを把握をする方法がございませんので、一応一つの基準といたしまして、日本弁護士連合会で刑事事件の弁護についての報酬の標準というものをおつくりになっておられます、その標準を一応参酌いたしまして、従来国選弁護の報酬ということを考えてまいったわけでございます。そしてこれまでのところはようやくその報酬、日本弁護人連合会でおつくりになっておられます報酬にやや近いところまで参ったわけでございますが、最近連合会のほうでもその標準報酬規程を改正されまして、引き上げられましたので、今後またその引き上げられた額を一つの参考資料としまして、これの増額ということには努力してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#45
○鈴木強君 牧さんね、私の質問は、謄写料というものの必要性をあなた方が認めるかどうかということを聞いているのです。だからあとのことは、また私、全体の報酬の引き上げについてはそれはそれなりにまたお伺いするのですけれど、この謄写料の必要性は認めているんでしょう、あなたも言っているように。
#46
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほど大臣が仰せられましたけれども、弁護の場合に記録を見ないではできないだろうということは私も十分承知いたすわけでございます。ただ、その記録を見るということが当然に記録を謄写するということに結びつくというふうには私どもも考えないわけでございまして、実際問題といたしまして、国選弁護の事件の実態を見てまいりますと、約九〇%は自白事件ということになっておろうかと思います。そういたしますと、その事件についての弁護の活動の主眼といいますのはやはり情状的なことの立証にあろうかと。そういうような事件については、記録をごらんになることは当然必要であろうかとは存じますけれども、ものによりましては、記録を謄写するまでの必要はないような事件もあるのではなかろうかと思います。でございますので、それらは全部報酬ということで、弁護活動の内容としてとらえることのほうが現行法のたてまえとしては合っているのではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
#47
○鈴木強君 あなたはあれですか、事務的なお答えしかできないのですか。そうであれば、私はもう少し――その法律改正に対して現行法にこだわって、現行法の解釈だけで答えてもらうなら、要らないですよ、これはね。そういう政治的な判断はあなたここでお述べになれぬのですか。
#48
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 裁判所は結局この法律の運用を法律上まかされておるわけでございまして、やはり法律についての解釈をして運用をしている官署でございまして、改正の点についての御意見というのは、これはもちろん立法府の御意見によるところだろうというふうに私としては理解いたしております。
#49
○鈴木強君 たとえばね、この刑事訴訟法なりあるいは刑事訴訟費用等の法律ですね、こういうものを変えようとするときに、その法律を提案するのは法務省、法務大臣がお出しになると思うのですけれども、さっきも大臣がおっしゃっているように、憲法に保障された弁護制度というものに対して弁護人の地位と責任というものについてお答えを願ったときに、本来これは裁判所のほうのことであって、おそるおそる答弁するとおっしゃた。だからその法律改正するときに、一体発議をするのは、そうするとあんたのほうでなくてだれがするのですか。
#50
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) まあ政府ということでございますれば、法務省ということになろうかと存じます。
#51
○鈴木強君 いや、形式はそうだよ。だけれども、実際に法律を改正してもらいたいということの意見はだれが出すの。
#52
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 発議をされるということは、法務省ということに考えております。
#53
○鈴木強君 そうすると大臣のさっき――大臣いらっしゃらないからですけれども、どうなんですか。たとえば予算をあなた方が編成する場合に、実際の作業は全部裁判所がやりますわね。そうして、国会への提案というのはこれは法務省にあるわけですから、法務大臣を通じてやるのかどうなのかわかりませんけれども、そういうふうな、要するに立法府は国会ですよね。それから三権分立ですからね、行政、司法、立法と、こう分かれていますわね。ですからその辺の、要するにたとえばこういう弁護料をどうしようとかというようなことに対して、現行の法律によっては非常に不合理だ、額を上げようとかいうようなことは、能動的に意見を出していくのは裁判所じゃないんですか、形式的にはその提案を政府がやることになるのですけれど。だから私は最初から、この法務委員会の質疑の問題についてもそうなんですよね。これは国会法なり規則によって、われわれが要求した場合に裁判所は出てくるとかということになっているわけですよ。ですから、いつもここで質問する場合に困ることがあるんですね。衆議院のほうでは、毎委員会で決議をして、あなたのほうに出てくださいと、こうなっておるわけですね。これはおそらく三権分立のたてまえからそうなっておると思うのですね。参議院のほうでは、何か要求すれば出てくると。それから質問すると、これは私のところでよくわかりません、裁判所のことでございます、この前も予算の問題について、そのために質疑が一日延びたことがある。まことにこれは困るのですけれども、だから実際に裁判所が、裁判官が報酬をきめるわけですね。そういう場合に、今度は少し上げたいと、この報酬をね、一万二千円を一万五千円にしたいとか二万円にしたいという発議をするのは裁判所じゃないですか。そして法律的にはそれを費用法を変えて幾らにするとか、そういうふうな手続的なことで実際に運用する場合というのがあるのですね。だからその辺をもう少し明確にしてもらわないと、たとえば公共企業体などの場合には、これは説明員といいまして、その監督官庁であるたとえば郵政省なり大蔵省なり運輸省なりというものが予算を提案をする、法律を提案する。しかしその人たちに質問してもわからない。だから電電公社のときには電電公社が来る。政府委員よりも電電公社のほうが専門的な答えをしてくれる。運輸になればそうですよ。やっぱり運輸省が来て並ばなければ済まないというような。だから私はその辺の使い分けというのは、形式論じゃなくて、実際に報酬を上げ下げ――下げるということはないでしょうけれども、まあ上げてやろうというような発議をするのは私は裁判所じゃないかと思うのですよ。そういう意味で大臣は、これは裁判所の考えがあるだろうと、こういうふうにおっしゃったと思うのですよ。だからそれが明確にならなきゃこれは質疑しません、私は。だれにそんなこと聞けばいいんですか。
#54
○政府委員(安原美穂君) いわゆる司法と行政との接点の問題でございまして、非常にデリケートな問題でございますが、鈴木先生お尋ねのように、発議をするのは裁判所かというお尋ねになると、裁判所としては、発議をするのは裁判所だということは司法権のたてまえからして言いにくいだろうと思いますので、それを法律論からいえば、こういう裁判所に関する法案の立案をするのは法務省の所管になっておりますので、発議をするのも法務省であるということになりますが、司法制度の運用に密接な関連のある事柄の場合におきましては、法務省はその改正の要否につきまして裁判所に意見を聞きまして、要否の判断をするについての有力な意見として裁判所から意見を求めるというのが法律にも合い、実際にも合った運用のしかたであると、かように理解しておりますので、発議をするのはどこかとおっしゃれば法務省であるということになると思います。
#55
○鈴木強君 そうすると、大臣のさっきおっしゃったのは、憲法上の弁護人の地位と責務、それに対する報酬はどうあるべきかということについては裁判所の側のほうで見解を述べるべきで、私の言うのはちょっとどうかという、おそるおそるということばを使いましたけれども、そのおそるおそるというのが、いまあなたがおっしゃったような考え方だと一応ここでは理解しましょう。それなら裁判所のほうにもそういうつもりで私は聞きますけれども、いずれにしても、法務省からあなたのほうに相談があるか、あるいはあなたのほうから積極的に法務省と相談をするか、いずれにしても発議権のある法務省に対して最高裁判所はいろいろと接触をしていくと思うのですね。ですから、形式的には私はいま刑事局長がおっしゃったことだと思いますけれども、実質の行為というのはやはり裁判所のほうで判断をされるんだと思うんです。そうしなければ法務省のほうだって出しようがないわけですから。そこに三権分立と国会との関係が微妙になっているんで、だからそういう場合に、あなたが、いま私が聞こうとする政治的な問題に対して、いまの立法にこだわらずに、謄写料というものの必要性は認めますか、認めるとするならば一体これはどうなっておるか。それはいまのような局長通達でやるのも一つの方法でしょう。それは認めているからです。通達というのは非常に不十分だから、もっとこれを制度化していったらどうですかという私は質問したわけだ。それに対してあなたが、事務当局で現行の法制の範囲内でなければ答弁ができないというなら、これはできる人を連れてきてもらわなければ質問はできないと、こう私は言っているんです。これは当然ですよ。あなたにそれができますか。できるならこれから質問を続けます。
#56
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほどお話にございました点のうち、いわゆる弁護人の報酬を上げるということで予算の問題になってまいります分は、これは現行法のワク内でございまして、その運用を裁判所にまかされている分でございますので、裁判所が予算要求の増額をいたしまして、それを内閣から国会に請求してお認めいただくというたてまえになるわけでございます。そうして今回のように法の改正を要するという点になりますと、先ほど法務省の安原刑事局長も申し述べましたように、法律の提案権としては政府の、実際上は内部的には法務省が持つという形になりますので、ただ、私どももそれの実際の運用に当たる関係上、運用上困るというようなことであればいろいろ御意見も申し上げますし、また、私どもはこういうふうにしてほしいというような場合もあろうかと思います。そういう意味で、事務的には法務省と密接に連絡した上で法案の改正案を提出するということになるであろうと存じます。
 そして、今度は先ほどのお尋ねでございますけれども、現在の訴訟法で弁護人の地位というものが非常に大事になっているということは私もそのとおりに考えておるわけでございまして、それにふさわしいような報酬を差し上げるように努力すべきであるというふうに考えております。そしてそのためには、謄写料というのももちろん必要な場合があるということを十分認めておるわけでございまして、その分は現在のたてまえとしては一応報酬の中に含めて考えていくべきだということでございます。それをあらためて謄写料というような形で出したほうがいいのかどうかということは、これは立法の政策の問題でございまして、裁判所がそういう立法政策について御意見を述べるということは、これは差し控えざるを得ないのではないかというふうに考えておるということでございます。
#57
○鈴木強君 どうもこれはわからないな。速記ちょっととめて……。
#58
○委員長(原田立君) 速記をとめて。
  〔午後二時四十六分速記中止〕
  〔午後二時五十六分速記開始〕
#59
○委員長(原田立君) 速記を起こして。
#60
○後藤義隆君 関連で。
 最高裁のどなたがお答えになってもけっこうですが、さっきのあなたの答弁の中に、謄写料は国選弁護の報酬の中に含まれておるのだというふうなふうに言うたが、それは間違いありませんか。
#61
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 国選弁護の報酬は、先ほども申し上げましたとおり、弁護活動の全体に対しての評価としてお支払い申し上げておるわけでございますが、その場合に、弁護活動をするに必要な費用というのが当然予定されるわけでございます。あるいは被告人と接見をする、あるいは通信をするとか、あるいは、いまの問題になっております記録を写すとか、そういう費用が出てくるわけでございます。そういう分の必要なものにつきましては、当然報酬の中に含めてお支払いすべきだというふうに考えております。現実にお支払いしておるわけでございます。
#62
○後藤義隆君 そうすると、さっき、自白をしておる者がある、そういうようなふうなものは謄写する必要がないものも、何か大部分あるような――大部分と言ったかどうかは覚えないが、相当な率あるようなことを言いましたが、国選弁護でもって謄写料を支払っておらないというか、弁護人から請求を受けないというものが相当ありますか、どうですか。
#63
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 謄写料について個々的に統計はとっておりませんので、正確な数字ではございませんけれども、むしろ大部分の事件の国選弁護人の方々の場合には謄写料の請求がございませんので、ごく少数の分についてのみ謄写料が支払われているというのが実情かと存じます。
#64
○後藤義隆君 それから、さっきお話があったのですが、私は非常にこれは疑問に思っておるんですが、国選弁護人に支払う報酬の中に謄写料が含まれておるということになると、いわゆる裁判所が報酬額を決定する場合に、内訳というか、報酬幾ら、このうち謄写料幾らというようなふうに、謄写料の対報酬の内訳を書いてないと、報酬ということでもって、その弁護人は、当然いわゆる所得税をやはり謄写料にもかけられるような、負担しなければならぬというようなことになりはせぬかと思うが、その点はどうですか。
#65
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 確かに報酬ということでございますと、一応それが課税対象ということになろうかと思います。ただその場合に、もちろん謄写の費用あるいは交通の費用というようなことが出てまいりますと、それは必要経費ということに当たろうと存じますので、それは申告していただいて、控除した上で税額は別にまた計算していただくということになろうかと存じます。
#66
○後藤義隆君 お尋ねしますが、申告してというが、その申告というのは税務署に対する申告じゃないかと思うが、やはり私は報酬決定の中に、単純なる報酬と、いま言うような必要経費幾らというような、やはり内訳を、それは宿泊料とか、旅費は幾らとか、あるいは謄写料が幾らというふうに、内訳をこまかく書けばそれにこしたことはないが、しかしそうじゃなくても、まあ単純に、報酬とそれより以外のもの、必要経費幾らというふうに、少なくとも二つに分けなければ、やはり私は税務署のほうに一々それを申告しても、税務署のほうで認めるというのか認めないというのかわからぬから、それはやはり裁判所が、国選弁護人の報酬決定の際に、決定書の中に、このうち必要経費幾らということを、やはり内訳は書く必要があるんじゃないか、こういうようなふうに思うが、その点はどうですか。
#67
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) お話のとおり、申告と申しますのは、税務署に対する申告の際ということでございます。それで、まあ裁判所のほうといたしまして、報酬の内訳をということでございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、一応現在の報酬というものの性格は、弁護活動全体ということでございまして、謄写料がそのままネット報酬に含まれているということではなくて、そういうことが弁護活動に影響したということで、それを含めて報酬という形でお支払いしているということでございますので、内訳として書くということも非常に技術的に問題もあろうかと存じますが、もう一つ、また内訳を書いたといたしまして、それの認定はやはりもう一つ税務署の判断があろうかと存じますので、直ちにそれでお話のような結論になるかどうか、ちょっと税務当局のほうのお考えがわかりませんので、申し上げかねるわけでございます。
#68
○後藤義隆君 それは、いま最終的にはあなたのお話のとおり、税務署の最終認定はどうなるかわからないというのは、少なくとも報酬なら、国選弁護料とこういうようなふうに裁判所が最後の決定をする場合に、このうち必要経費幾らということを、まあ裁判所が書いてあれば、これは私は税務署が認めないなんというようなことはあり得ないことだ、あくまで税務署を相手にして争うても、これは要するにその争った弁護士のほうが勝つ、こういうようなふうに考えるが、それをいま見たようなふうに、報酬幾らという総額だけを列記しておいて、内訳が書いてないと、これは争うと言ってもなかなか困難ですよ。だから、やはり私は報酬額を決定する場合には、いろんないま言うようなふうな、謄写料を払った場合と払わない場合があるから、払ったら謄写料これこれ払いましたという領収書か何かでもつけて出して請求をするでしょう、当然。だから、そのときにやはり、私は、それを必要経費の中に計算する、また謄写料の請求をしないときは、もう必要経費の中にはそれは入れなくていいわけですから、私は、報酬額を裁判所が決定する場合には、それをやはり入れたほうがいいのじゃないか、税務署なんかそういうようなふうなわずらわさなくていいのじゃないかと、こう思うからです。こういうようないま出ておるような法律をつくればそれでいいかもしれないけれども、つくらなくて、現在のままなら、少なくとも内訳をしたほうがいいのじゃないかと、こういうようなふうに考えるんですがね。
#69
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 現状はいま後藤先生がおっしゃったような形になっておりませんけれども、参酌した必要経費というようなものを何らかの形で表現する方法を十分検討してみたいというふうに考えております。
#70
○鈴木強君 提案者にちょっと一つだけ、いままでの論議の経過がありますからね、承って、ぼくも大臣がおりませんとやっぱりはっきりした御所信が聞けません、率直に申して。ですから、きょう私は自後の質問はやめたいと思います。それで、一つだけ最後に伺いたいんですが、この次はひとつ委員長、法務大臣がいらっしゃるように御配慮いただきたいと思います。
 佐々木先生、提案者としてこの提案理由の説明を伺いましたし、それから、さっきも法務大臣にお尋ねしたように、謄写料の必要性ということは大臣も全く、実務家としてやってみて、まずその訴訟記録を知るために謄写をするということはもう絶対的なもんだと思うとおっしゃっている。私はそのとおりだと思うんですね。ところが牧次長のお話を聞いておりますと、若干そこに、裁判所側の考え方の中に、理解できないというか、実情の認識についてずれている点があるような気がするんですね。というのは、牧さんは何も一々謄写しなくたっていいんだと。簡単な事件で、閲覧すればいいんだというようなことをおっしゃるんだけれども、われわれが見ておる弁護人の仕事というのは、たくさんの事件をかかえて、朝は早い、きょうは法廷だ、きょうはあっちへ行ってと、なかなかつかまらないんですね、どなたの弁護士さんと連絡してみても。それほど私は弁護士の仕事というのはたいへんなことだと思うんですね、幾つも幾つも事件を持ちますから。ですから、結局、自分が行ってよく読めば、それはあなたもおっしゃるように、ずうっと目を通してですね、時間があればそれも一つの方法でしょうけど、実際問題としてそういうことができない、時間的な余裕がないではないかと思うのですね、佐々木先生。と同時に、またたくさんの事件を扱いますからね、こまかい数字もあるでしょうし、日時とかまあこれはね、そういうものであるからして、やっぱり記録というものは私は弁護人にとっては必要だと思うのですよね。ですから、その辺の実際の弁護人の活動というものに対して、裁判所側の牧さんの意見を聞いてみると、何か一つの事件だけをやっているような印象を受けるような、私がそう受けたんです。ですから、それじゃ謄写料の必要性なんというものは、とてもちゃんと法務大臣と同じように認めるわけにいかぬということに、答弁がなっているように思うのですよ。だから、それを制度化することも必要ないし、いままでのように通達で出して、実際に必要であったものだけが払えばいいんだというようなことに聞こえるわけですね。
 そこで、私がさっき議事進行でちょっと中断していただいたんですが、問題は、そういう考え方でなくて、実際に日弁連という組織があるわけですから、その先生方がいろいろな体験を通じてですね、公安事件もだいぶこのごろは多くなってきておるでしょうし、事件が複雑になってきておりますから、そういう面からして、やはり弁護人が弁護活動がしやすいように、やっぱり謄写して、そうして記録として保管し、法廷に行ってもそれをいつも見てやる。記憶は誤りがあります、これは。コンピューターでも間違いがあるようですから。そういうようにするのが私はほんとうに弁護人の立場からすれば当然の要求だと思うのですね。そこに若干の私は裁判所の御発言の中にズレを感じました。だから、佐々木先生は弁護士であり、実務家としてずいぶんいろいろな事件をお取り扱いになってきていると思いますから、先生がこれを提案するにあたって、ほんとうに必要やむを得ざる最小限度の謄写料を法制化したいということで提案されたと思うのですよ。これは全日本の弁護士諸君が心から期待しておったことだと思いますから、今後公平な裁判を期するためにどうしてもやりたいということで、私は熱烈に支援していると思いますよ。先生のこの点に対する御所見だけ承って、次にまた機会を待ってやりたいと思います。
#71
○佐々木静子君 お答え申し上げます。
 いま鈴木先生の御質問にもございましたように、この憲法で保障されているところの弁護人として、弁護士が被告の人権を守るために十分に活動しようと思えば、これは最小限訴訟の記録というものがどうあっても必要なわけでございまして、これなくして弁護をやれと言われても、これは先ほど来文部大臣のお話にもございましたように、これはどの弁護人であっても、記録なしに弁護をやれと言われても、これは十分な良心的な弁護ができないのは言うまでもないところでございます。
 いま牧事務次長の御答弁にもございましたが、次長さんも刑事裁判につきましては非常に御造詣の深いベテランの方でございますけれども、ただ弁護人としての立場と弁護人の活動ということについては十分に御理解いただいてないのではないか。これは九〇%が自白事件であるから、謄写はあまり必要でないという趣旨の御答弁があったわけでございますが、まず、これが自白事件であったら、なぜ謄写が要らないのか、そこにも非常に問題があるわけでございまして、これは次長自身が、主として情状論になるからというお話でございましたが、これは情状論であっても、十分に弁護活動しようと思えば、これは記録を精密に読まなければ、この情状論も展開できないわけでございますし、あるいは自白事件といいましても、本人はめんどくさいから、あるいは裁判所の心証を少しでもよくしようと思って自白することがありましても、あるいは精神的に多少異常な人も多うございまして自白する場合がございましても、弁護人がこの自白調書を綿密に調べますと、この自白は間違っているという場合が非常に多いわけでございます。
 たとえば、いま東京高裁で争われております死刑事件の狭山事件などというようなものも、これは本人は最初自白しているわけなんでございますが、そういうふうなことでも、自白しているからということでうのみにしたのでは、これは弁護人としての活動は全然できておらないわけでございますし、また、たくさん窃盗事件をやっておるような場合に、まあもう自分と関係ない、警察でわからなかった事件なども、ちょうどたくさんやっている人間がつかまりますと、それも全部ひっつけて捜査するような場合がございまして、それなどもよく調べてみると、自白したことになっておっても、調べてみると、日時的にその日に窃盗することは不可能だというようなことで一部無実であるというようなことがあることは、これはもう往々にして実務上あることでございますので、自白事件だから謄写をしないでいいというようなことは、これははなはだ暴論ではないかと私思うわけでございます。
 なお、先ほど鈴木先生の御質問にもございましたように、謄写をせずに閲覧でもいいとおっしゃいましても、閲覧するとなりますと、場所が検察庁の閲覧室、あるいは裁判所の書記官室というふうに、非常に限定されておりますことと、時間的に非常な制約を受けておりますので、弁護人が昼間は法廷活動をして、朝とか夜とかに自宅でゆっくり記録を見たいというようなことが普通一般の弁護人のあり方でございますので、これはやはり弁護活動をする意味におきましては、どういう事件であれ、最低限記録というものは謄写しなければならない、そういうことで、私はぜひとも弁護活動に必要な謄写をするための謄写料というものをこれは法改正によってお認めいただきたいと、特にお願い申し上げるようなわけでございます。
#72
○後藤義隆君 ちょっと佐々木先生にお伺いしますがね、これ現在のことですが、実際にどうやられておるか存じませんが、国選弁護人がこれこれの謄写料を支払いましたということを申し出れば、国選弁護料の報酬を支払うときに、裁判所は当然それを加算して払うんじゃないか、それを拒否するようなことはないのじゃないかと思うのであるが、それがどうかということとですね、それから、さっき次長の話で、謄写料の請求というのはきわめて少ないという話があったわけです。国選弁護の場合でもって、弁護の場合で謄写料の請求をなさる人が全国でどのぐらい率があるか。何千件という、そういうことじゃなしに、率が大体何%ぐらいが請求するのか、それもひとつ日弁連にお確かめを願いたいと思います。
 それから謄写料のもう一つ、これはまあ気になるのでありますが、謄写料は全部政府の負担というわけでなしに、謄写料は元来は被告人の負担であって、それで謄写料を払うことになると、被告人がそれだけやはり負担が多くなるんじゃないか、こういうようなふうにも考えますからね、そこでもって、そういう点をひとつお確かめいたします。いまわからなきゃ後日お調べになってけっこうです。
#73
○佐々木静子君 いま後藤先生の御質問で、私も詳しいパーセンテージというものがちょっとわかりかねますので、それはできるだけ私のほうで日弁連その他に問い合わせましてパーセンテージを調べたいと思いますが、ただ、さっき牧事務次長のおことばではございますが、謄写料は現在では報酬の中で十分に支払われておらないというのが実情でございまして、弁護人の中でも、請求しても十分に認められないからというようなことで、もう請求しない人もおる、あるいは中には、まあこの国選弁護というのは弁護士が義侠的な気持ちでやっているんだからということで、謄写料まで一々請求しない人もいるというようなことで、これがきっちりと法制化いたしましたならば、当然にはっきりと出てくるんじゃないかと思うわけでございます。それからまた、事実上謄写しても十分に払っていただけないからということで、謄写せずに、いま御答弁にもありました閲覧だけで国選弁護を済ましているというケースもこれはままあるんじゃないかというふうに思うわけでございます。
 それから、あとの御質問の件は、ちょっともう一度おっしゃっていただけますか。
#74
○後藤義隆君 請求の率が大体どの程度か、日弁連でお調べくださればわかりますから、請求、実際はそう多くの人が請求しておらぬということで、わずかの人しか請求していないんじゃないかと思うから、その率をちょっとお伺いしたかったのですが、それ、後日でけっこうです。
#75
○佐々木静子君 じゃ、これ私のほうでできるだけ調べてみまして、また次の機会にでも御答弁させていただきます。
#76
○委員長(原田立君) 委員長として田中法務大臣に一言、お願いでありますが、先ほど本件を審議しているときに、法大務臣は衆議院のほうに行かれましたが、鈴木委員のほうより、審議に支障を来たすので、次回審議のときには必ずいるようにしてもらいたい、こういう強い要請が委員長にありましたので、お願い申し上げておきます。
 本案に対する質疑は本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#77
○委員長(原田立君) 商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案、及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案を便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。田中法務大臣。
#78
○国務大臣(田中伊三次君) 商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案につきまして、その趣旨を便宜一括して御説明を申し上げます。
 商法の一部を改正する法律案は、現下の社会経済情勢にかんがみ、株式会社の運営の適正及び安定をはかり、あるいはその資金調達の方法に改善を加える等のため、早急に改正を必要とする事項について、商法の一部を改正しようとするものであります。
 第一に、株式会社の業務が適正に行なわれることを確保するために、監査役は、会計監査のほか、業務監査をも行なうものとし、このために必要な権限、たとえば取締役会出席権、取締役の違法行為の差しとめ請求権などを認めるとともに、その地位の安定その他監査機能の強化のための措置を講ずることとしております。
 第二に、株式会社の運営の安定をはかるため、定款をもって、取締役の選任につき累積投票の請求を完全に排除できることといたしております。
 第三に、株式会社の資金調達の便宜をはかる等のために、新株の発行にあたっては、法定準備金を資本に組み入れ、株主に対して発行価額の一部の払い込みを要しない株式を発行することを認め、また、転換社債の発行については、原則として取締役会の決議によってすることができるものとし、なお、株主の利益を保護するため、この場合における株主の引き受け権等に関する規定を整備することといたしております。
 第四に、株主の便宜等を考慮して、営業年度を一年とする株式会社について、いわゆる中間配当の道を開くことといたしております。
 最後に、取引の安全をはかるため、すでに営業を廃止しているいわゆる休眠会社を整理する方途を講ずることといたしております。
    ―――――――――――――
 次に、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案は、株式会社の実情にかんがみ、特に大規模の株式会社及び中小規模の株式会社の監査制度について、それぞれ改正後の商法の特例を設けようとするものでございます。
 この法律業の要点を申し上げますと、
 第一に、大規模の株式会社にあっては、株主をはじめ、従業員、取引先、下請企業者などの利害関係人の保護のために、その経理の適正を期することが特に重要でありますので、資本金五億円以上の株式会社は、計算書類については、定時総会前に公認会計士または監査法人の監査を受けるものとし、その会計監査の充実をはかることといたしております。
 第二に、中小規模の株式会社については、その実情から見て、ある程度監査に関する基準を軽減する必要があると思われますので、資本金一億円以下の株式会社において、監査役は会計監査のみを行なうものとし、監査報告書の記載事項については特に法定はしない、こういう措置を講ずることといたしました。
    ―――――――――――――
 最後に、商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案は、商法の一部を改正する法律案等の施行に伴いまして、非訴事件手続法のほか三十二の関連諸法律について、改正することが必要となっております。
 以上が商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案、及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重に御審議をいただきました上で、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
#79
○委員長(原田立君) 次に、補足説明を聴取いたします。川島民事局長。
#80
○政府委員(川島一郎君) それでは、ただいまの説明に補足いたしまして、商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案、及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案につきまして、その内容を御説明申し上げます。
 最初に、商法の一部を改正する法律案でございますが、改正項目が多岐にわたっておりますので、説明の便宜上、事項別に説明をさせていただきます。
 まず第一は、監査役に関する改正であります。
 御承知のように、現行法では、株式会社の監査役は、会計の監査を行なうことをその職務といたしております。改正案は、これに対し、監査役の職務を、会計の監査を含む業務の監査に拡張することとしておりまして、この点が今回の改正の主眼点の一つとなっております。そのために、まず、第二百七十四条を改正し、その第一項において、監査役は取締役の職務の執行を監査するものとし、いわゆる業務監査の職務を規定するとともに、同条第二項及び第二百七十五条にも所要の改正を加えることといたしております。
 また、これに関連して、監査役の権限を拡張する必要がありますので、第二百七十四条ノ二、第二百七十四条ノ三、第二百七十五条ノ二から四までの規定を新設するなどいたしまして、取締役には、監査役に対する緊急事態の報告義務を認め、監査役には、子会社調査権、取締役の違法行為の差しとめ請求権、監査役の選任及び解任について株主総会で意見を述べる権利、会社と取締役との間の訴訟等について会社を代表する権利などを認めることにいたしております。
 それからまた、監査役が業務監査を行なうことになりますと、取締役会に出席して意見を述べることをも認める必要が生じてまいります。この関係から、第二百六十条ノ三その他の取締役会に関する規定に所要の改正を加えることにいたしております。
 さらに、現在では監査役には認められておりませんが、株主総会決議取り消しの訴え等を提起する権限や整理開始等の申し立てをする権限も、今後は監査役にも認める必要がありますので、第二百四十七条をはじめ、関係規定を改正して、これらの権限を監査役にも与えることにいたしたのであります。
 ところで、監査役の職務が拡張されましても、計算書類の監査が監査役の重要な職務であることには変わりがございません。改正案は、計算書類の監査が一そう適正に行なわれるようにするために、次のような改正をすることにいたしております。すなわち、第二百八十一条を改正して、計算書類のみならず、その付属書類についても監査役の監査を受けさせることにするとともに、第二百八十一条ノ二から四までの規定を新設して、監査役の監査期間を伸長し、同時に監査報告書の記載事項を法定して監査が形式に流れることのないように配慮したものであります。また、第二百八十三条を改正し、定時株主総会における審議の適正をはかるため、その招集の通知には計算書類及び監査報告書の謄本を添付しなければならないこととしております。
 なお、監査役の監査期間を伸長したことに伴いまして、第二百二十四条ノ三を改正して、株主名簿の閉鎖期間等を現行の二カ月から三カ月に伸長することといたしております。
 ところで、監査役に適正な監査を行なわせますためには、その地位を安定させておくことが必要であります。そこで、第二百七十三条を改正して、監査役の任期は、原則として就任後二年以内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時までとし、現行の一年を二年に伸長することとしております。また、他面において、監査役の独立性を強化するため、第二百七十六条を改正して、監査役は子会社の取締役や使用人を兼ねることもできないことといたしております。
 第二は、中間配当の制度でございます。
 改正案は、いわゆる中間配当の制度を認めることにしております。この制度は、営業年度を一年とする会社が、その年度の中間において、半年決算の場合の配当と同じように、株主に金銭の分配をすることを認めようとするものであります。そのため、第二百九十三条ノ五の規定を新設し、その第一項において、営業年度を一年とする会社は、定款で定めた場合には、一営業年度中一回に限り、取締役会の決議で株主に金銭の分配、いわゆる中間配当をすることができるものとしております。また、この金銭の分配につきましては、前期末の貸借対照表の純資産額から、最後の決算期における資本、法定準備金等を差し引いた残額を限度として行なうこと、その期末に配当可能利益が出ないこととなるようなおそれのあるときは、金銭を分配してはならないことなどの制限を同条第二項以下に規定いたしまして、不当な経理が行われないよう配慮いたしております。
 第三は、累積投票の制度の改正であります。
 御承知のとおり現行商法は、第二百五十六条ノ三及び第二百五十六条ノ四において累積投票の制度を認め、二名以上の取締役を選任する場合には、株主は累積投票の請求ができることとし、定款で累積投票を排除している場合でも、発行済み株式の総数の四分の一以上の株式を有する株主の請求があるときは、累積投票によらなければならないことといたしております。改正案は、第二百五十六条ノ三の規定を改め、かつ、第二百五十六条ノ四を削除することによりまして、累積投票の制度を採用するかいなかは、会社が自治的に定款で定めることができることにいたしております。
 第四は、準備金の資本組み入れによる有償無償の抱き合わせ増資の制度の新設であります。
 改正案は、第二百八十条ノ九ノ二の規定を新設してこの制度を認めることといたしております。
 すなわち、その第一項において、準備金を資本に組み入れた会社が券面額を発行価額として額面株式を発行する場合には、株主に新株引き受け権を与え、かつ、その引き受け権の譲渡を認めることを条件として、発行価額の一部の払い込みを要しない新株の発行、いわゆる有償無償の抱き合わせ増資を認めることとし、第二項から第五項までにおいて、この新株を株主に割り当てるについて生ずる一株未満の端株及び申込期日に申し込みを失念した失権株は、会社がこれを処分してその一定割合の金銭を株主に支払うべきことを定めております。
 これに関連して、第二百八十条ノ二第一項に第九号を加え、この抱き合わせ増資による新株の発行を行なうこと及び発行価額中払い込みを要する金額は取締役会において決定しなければならないこととし、また、第二百八十条ノ七を改正して、新株引き受け人の有償部分の払い込み義務を規定することにいたしております。
 第五は、転換社債の発行についてであります。
 現行法では、会社が転換社債を発行するには、定款または株主総会の特別決議によって転換の条件等を定めなければならないことになっておりますが、改正案は、第三百四十一条ノ二の規定を改正して、原則として取締役会の決議で転換社債を発行することができるように改めることにいたしております。もっとも、第三百四十一条ノ二第三項において、株主以外の者に特に有利な転換の条件を付した転換社債を発行するときは、株主総会の特別決議を要することと定め、あるいは、第三百四十一条ノ二ノ二から二ノ五までの規定を新設し、転換社債の発行に関する株主への通知または公告、株主の転換社債引き受け権等について、新株の発行の場合に準ずる取り扱いを定め、株主の利益の保護についても十分に配慮することといたしております。
 第六は、休眠会社の整理であります。
 改正案は、第四百六条の三の規定を新設して、すでに営業を廃止したものと認められるいわゆる休眠会社を整理する道を開いております。すなわち、第四百六条ノ三の第一項は、過去五年間何らの登記もしていない株式会社は、法務大臣が官報で公告してから二カ月以内に、まだ営業を廃止していない旨の届け出をしないときは、解散したものとみなすことにしております。なお、法務大臣が官報に公告をしたときは、登記所から該当の会社にその旨の通知をすること、解散とみなされた会社は、三年以内であれば、株主総会の特別決議で会社を継続し復活することができることとし、第二項及び第三項においてこれを定めております。
 第七は、商業帳簿に関する規定の改正であります。
 まず、第三十二条から第三十四条までを全文改めることにいたしております。すなわち、第三十二条は、第一項において、商人は、会計帳簿、貸借対照表及び損益計算書をつくらなければならないこととし、現行法の財産目録を削除して新たに損益計算書を加え、第二項において、商業帳簿の作成に関する規定の解釈については、公正な会計慣行をしんしゃくすべきこととしているのであります。
 第三十三条は、会計帳簿の記載方法等並びに貸借対照表及び損益計算書の作成方法等について定めております。
 また、第三十四条は、流動資産、固定資産及び金銭債権についての評価の方法を合理的なものに改めようとするものであります。
 以上のほか、株式会社の計算についても、第二百八十五条ノ六を改正し、親会社の所有する子会社の株式の評価については、現行の低価法を原価法に改めるなど若干の改正をいたしております。
    ―――――――――――――
 次に、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案について御説明いたします。
 第一条は、総則でありまして、この法律の趣旨を定めたものであります。
 第二条から第二十一条までは、第二章として、資本の額が五億円以上の株式会社に関する商法の特例を定めたものであります。この特例は、資本の額が五億円以上の株式会社は、特にその経理を適正にする必要がありますので、計算書類について、株主総会の前に、会計監査人の監査を受けなければならないことをその内容とするものでありまして、第二条において、まず、そのことを明らかにいたしております。
 第三条は、会計監査人の選任に関する規定でありまして、会計監査人は監査役の過半数の同意を得て、取締役会が選任することなどを定めております。
 第四条は、会計監査人は、会計の監査の専門家である公認会計士または監査法人でなければならないこととし、なお、一定の欠格事由をも定めております。
 第五条は、監査法人が会計監査人となった場合に、その職務を実際に行なうべき社員について定めたものであります。
 第六条は、会計監査人の解任の手続を定めております。
 第七条は、会計監査人の権限として、帳簿及び書類の閲覧権、会社業務及び財産状況の調査権、子会社調査権などを定めたものであります。
 第八条は、取締役に不正の行為等があることを発見したときの会計監査人の監査役に対する報告義務について定めたものであります。
 第九条から第十一条までは、会計監査人の責任について定めております。
 第十二条から第十八条までは、監査の手続等について定めたものでありまして、まず、第十二条は、取締役が監査役及び会計監査人に提出する計算書類の提出期限について定めております。第十三条及び第十四条は、会計監査人及び監査役の監査報告書について定めております。また、第十五条は、計算書類の付属明細書についての会計監査人及び監査役の監査について定めたものであります。さらに、第十六条は、会計監査人の監査報告書の備え置きについて、第十七条は、その謄本を定時株主総会の招集の通知に添付すべきことを定めたものでありまして、第十八条は、会計監査人の定時株主総会における意見の陳述権及び陳述義務について定めております。
 第十九条は、本法に特則を設けましたため、商法中適用を除外する規定を定めたものであります。
 第二十条及び第二十一条は、会社の資本の額が五億円を上下する場合における第二条から第十九条までの規定の適用についての経過措置を定めたものであります。
 次に、第二十二条から第二十七条までは、第三章といたしまして、資本の額が一億円以下の中小規模の株式会社に関する商法の特例を定めたものであります。
 第二十二条は、資本の額が一億円以下の株式会社の監査役は、現行法と同じく、会計監査のみを行なうこととし、その権限もそれに必要な範囲に限ることとしたものであります。
 第二十三条は、取締役が監査役に計算書類を提出する期限及び監査役が取締役に監査報告書を提出する期限について商法の特例を定めたものであります。
 第二十四条は、会社と取締役との間の訴訟につき会社を代表する者は、現行法と同じく、原則として、取締役会が定めることとしたものであります。
 第二十五条は、中小規模の会社の実情にかんがみまして、商法中適用を除外する規定を定めたものであります。
 第二十六条及び第二十七条は、会社の資本の額が一億円を上下する場合における第二十二条から第二十五条までの規定の適用についての経過措置を定めたものであります。
 第二十八条から第三十条までは、第四章といたしまして、罰則を定めております。
 最後に、商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案について御説明申しあげます。
 この法案は、非訟事件手続法の外三十二の法律を改正しようとするものでありますが、大部分は実質に関係のない改正、すなわち商法改正に伴う形式的な整理であります。そこで、形式的な整理以外の点を説明することにいたします。
 まず第一条は、株式併合等の場合における端株の処理について裁判所の許可を得る場合の手続を定めるため、非訟事件手続法に所要の改正を加えようとするものであります。
 第六条は、地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市における商号専用権の効力を生ずる区域を改め、また、計算書類の付属明細書の記載事項を命令で定めることとするため、商法中改正法律施行法に所要の改正を加えようとするものであります。
 第九条は、基金の総額が五億円以上の相互会社について会計監査人の監査を受けなければならないことなどを定めるため、保険業法に所要の改正を加えるものであります。
 第十三条は、公認会計士等の業務の制限について公認会計士法に所要の改正を加えようとするものであります。
 第三十六条は、休眠会社の整理について、所要の登記手続を定めるため、商業登記法に改正を加えるものであります。
 以上をもって、補足説明を終わります。
#81
○委員長(原田立君) 局長のただいまの補足説明を後ほど当委員会に御提出願えましょうか。
#82
○政府委員(川島一郎君) 提出いたします。
#83
○委員長(原田立君) この際、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案の衆議院における修正部分について、修正案提出者、衆議院議員大竹太郎君から説明を聴取いたします。大竹君。
#84
○衆議院議員(大竹太郎君) 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案中衆議院の修正にかかる部分について御説明申し上げます。
 第一点は、会計監査人の欠格事由に対する修正であります。
 原案は、第四条二項三号で、監査法人について、会社の取締役、監査役など会計監査人としての欠格事由に当たる社員が過半数を占める場合を欠格事由としていたのでありますが、監査のより一そうの公正をはかるため、監査法人は欠格事由に当たる者を一人でも社員とする場合を、欠格事由とするよう修正したものであります。
 第二点は、会計監査人の職務を行なうべき社員の資格に対する削除修正であります。
 原案第五条第二項の削除は、第一点の修正として申し上げました第四条二項三号の修正に伴う整理であります。
 第三点は、適用日に対する修正であります。
 原案は、附則第二項において、資本金五億円以上で証券取引法の適用のない一般会社及び資本金五億円以上の銀行等に対する適用日を、それぞれ昭和五十年一月一日及び昭和五十一年一月一日としているのでありますが、会計監査人たる公認会計士、監査法人及び監査の対象となる会社の、監査制度に対する準備等のため、相当の期間をおくことが適当であると考え、資本金五億円以上とあるのを資本金十億円以上に修正し、資本金十億円未満の一般会社及び銀行等に対する適用日を、別に法律で定める日に修正したものであります。
 以上が衆議院における修正の趣旨及びその内容であります。
#85
○委員長(原田立君) 以上で説明は終了いたしました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#86
○原文兵衛君 商法の一部を改正する法律案と関連法律案について質疑いたしますが、質問事項がかなりございますので、簡潔に明快にお答えをお願いしたいと思います。
 まず最初に、商法の一部改正でございますが、その一番大きな点が監査制度の改正であろうと思います。そこで、昭和二十五年の商法改正の際に監査制度についてすでに大幅な改正がなされておりますが、いままた監査制度を改正するということは、この二回にわたる改正の経緯とその理由について簡単に御説明願います。
#87
○説明員(田邊明君) 今回の監査制度改正のまず動機になりましたのは、御案内のように、昭和四十年、前年から不況期に見舞われて、四十年にわが国最大の粉飾決算と言われた山陽特殊鋼の事件が発生いたしました。
  〔委員長退席、理事白木義一郎君着席〕
この事件を契機にいたしまして、まず会社更生法の改正がもくろまれました。と同時に、商法上も監査制度のあり方が問題となったわけでございます。その後、四十二年には会社更生法の一部改正ができ上がり、そのころ同時に、商法につきましては、法制審議会の商法部会が監査制度の問題点を取り上げて審議をいたしてまいりました。この審議の結果は、昭和四十五年の三月に、法制審議会といたしまして、株式会社の監査制度の改正要綱というものをつくりまして、法務大臣に答申がなされたわけでございます。これを踏まえて政府において立案いたしましたものが、今回国会の御審議を受けている商法及びこれに関連する二つの改正案でございます。
 この改正作業のまず最も大きい論点となりましたものは、山陽特殊鋼をはじめとする経理上の不正粉飾事犯にかんがみて、それぞれ株式会社法上の監査役というものがありながらこの種の事犯を防止できなかったという点について商法としてはどう考えるかという問題点でございます。この解決方法として二つの方向が示されました。一つは、会社の業務運営を決定し執行する取締役会の制度をどのように改めるか、第二が……。
#88
○原文兵衛君 質問したことだけに簡潔に答えてください。
#89
○説明員(田邊明君) はい。第二が監査役の権限改正の問題でございました。その結論として、今回提案いたしておりますような、株式会社の監査制度について、現行の監査役をそのまま置くと同時に、その権限を、会計の監査の権限のほか業務一般に関する権限を与える、その地位を保全するための適当な措置を講ずる、こういうことを一つの改正点に持っておるわけでございます。その他、大会社につきましては、経理の適正を期するために専門の公認会計士の監査を義務づけるという措置をとった案となったわけでございます。
#90
○原文兵衛君 質問したことだけを簡潔に答えてください。
 いま山陽特殊鋼の例が出たんですが、四十年の不況で山陽特殊鋼の粉飾決算というのが大きな問題になったわけですが、それから今日までに粉飾決算の事例はどの程度あるのか、簡単に説明してください。
#91
○説明員(田邊明君) その後年を経まして依然として粉飾決算のあとは断たないわけでございますが、最近でも著名な事件としては、御案内のような三共その他の粉飾事例が発生しております。件数は、私ども正確に現在持っておりませんが、年々減少はいたさないような傾向にあると考えております。
#92
○原文兵衛君 件数は、後ほどでけっこうですから、資料でもけっこうですからお出し願いたいと思います。
 それから、いまの御説明に若干あったんですが、昭和四十五年の三月と四十六年の三月に、法制審議会で、主として監査役の権限強化その他の内容を有するところの法律案の改正要綱が決定されているわけです。それに基づいているといいますが、どうも、今回の改正案の中を見ますと、この法制審議会の要綱が必ずしも全部入っているようでもございません。そこで、今回の改正案と法制審議会の答申と異なっている点があるのではないかと思います。それは、異なった点があるのかどうかという点、もしあれば、その理由は何であるかという点、簡単に御説明願います。
#93
○説明員(田邊明君) 法制審議会の答申と法律案の内容で異なる点がございます。異なる点は、監査役の権限に関しまして法制審議会の答申で設けておりました、監査役が取締役の解任のためにする株主総会の招集請求権というような権限は法律案には盛られておりません。その他、法制審議会の答申で監査役の任期を三年という答申をいたしておりますが、法律案では二年という任期になっております。そのほか、監査役の責任に関する規定を、法制審議会の答申では、挙証責任の転換を伴う過失責任という新設規定を答申いたしておりましたが、法律案ではこれを盛っておりませんので、現行の責任規定のとおりとなっております。そのほか、技術的な点では、監査役の報酬、費用等についての規定も、法制審議会の答申とは異なって、改正案には含まれておりません。で、その他の点でございますが、先ほど申し上げました公認会計士の監査を適用すべき対象会社を、法制審議会の答申は資本金一億円以上の株式会社といたしておりましたが、改正案では資本金五億円以上という線で立案されております。
 なお、粉飾の件数についてでございますが、昭和四十一年以降、四十一年で五十二社、四十二年で二社、四十三年で三十二社、四十四年二十三社、四十五年四十八社、四十六年四十八社というふうな数字があがっております。著名な事件は、四十五年の河合楽器製作所、芝電気、汽車製造、四十六年のヤシカ、それから先ほど申し上げた三共等の事例がございます。
#94
○原文兵衛君 いま御質問した中で、法制審議会の改正案要綱と異なる点をあげていただいたのですが、その理由、全部は要りませんけれども、ことに一億円以上というのを五億円以上と今度したわけですが、その理由はどういう点でございましょうか。
#95
○説明員(田邊明君) 会計監査人の監査適用会社につきましては、法制審議会の決定当時の株式会社の数、これと現在法律案を審議いただいております現在の数との比較から、法制審議会の予定した監査対象会社というものが現在では非常に多くなった、つまり株式会社が現在百一万五千余りございます。で、法制審議会の答申どおりで押えますと、約一万社がこの対象になるわけでございます。これに対して、この監査を担当いたします公認会計士登録有資格者が約四千五、六百名と、こういう陣容でございます。これがまず監査を実効的に法制審議会の結論どおりに行なうためにはたして十分であるかという問題点が一つ。
 もう一つの問題は、日本税理士連合会から、この公認会計士の監査が資本金一億円以上の株式会社に適用された場合に、従前から税理士としてこれらの会社の業務に関与しているが、これらの職域を侵犯されるおそれがあると、こういう主張が強硬になされたわけでございます。
 で、これらの理由も勘案して、原案は資本金五億円以上という線で一応の区切りをいたしまして、その対象会社を約二千七百社というふうに限定したわけでございます。
 で、もともと巨大会社の経理適正を期するという趣旨から申しますと、おおむね資本金五億円以上の会社というものの規模から考えて、この法案、制度が考えている株主及びその他の債権者等の利害関係者が非常に多いクラスとして、この対象にするのに適当であろうという判断で、五億円という線で区切りをいたしたわけでございます。
#96
○原文兵衛君 今度の改正案では、監査役の監査を実効あらしめるというような目的で、新たに監査役に株式会社の業務監査も行なわせようとすることもよくわかるんですが、この改正法案の二百七十四条の表現ですと、監査役は広く取締役の職務執行一般について監査できるというように受け取れますが、監査役の業務監査というのは、一体どんな場合に、どんな方法で行なわれるかという点。
 それからもう一つは、改正法案二百七十五条の二は、監査役に取締役の行為の差しとめ請求権を与えることを定めていると思いますが、その対象となる範囲は、この取締役の行為の対象となる範囲は違法行為だけなのか、あるいは不当な行為にも及ぶのか、その辺について聞きたいのですが、特に、違法行為と不当行為ということになると判定が非常にむずかしいと思うんですが、適法性であるとか妥当性であるとかいうような判断はだれがするのか、監査役がするのかというような点について簡単に御説明いただきたいと思います。
#97
○説明員(田邊明君) 第一点の業務監査の対象でございますが、これは監査役が業務全般を監査いたしますという場合には、日常の取締役の業務執行全般というものを対象といたします。これは広く会社の業務運営全般にわたるわけですが、第二点の取締役の違法行為の差しとめ請求権との関連で申し上げますと、本案の監査役の監査権限は、適法か違法か、いわゆる違法性の監査に一応限定されていると考えております。その理由は、法案によります監査役に対する法律上の権限の裏づけといたしましては、いま御指摘になりましたような取締役が違法行為に及ぶときの差しとめ請求権、事実上の差しとめ及び裁判上の差しとめ請求権というふうなものを規定しておりますが、すべて取締役の行為が法令もしくは定款に違反する場合というふうに限定されておるわけでございます。ただ、お尋ねの違法性以外の、妥当かいなかの点に関しましては、取締役の義務といたしまして、商法上は会社に対する忠実義務を持っております。これは法令上の義務でございますが、その忠実義務に違反するような著しく不当な行為というものは、今回の法律案の考えでは、それは法令違反に該当する。したがって、原則は違法性の監査をいたすわけでございますが、取締役の行為の当不当について、その不当性が著しい場合、つまり著しいことによって取締役に課せられている法令上の義務違反ということになるような著しい不当の場合も監査の対象に含まれていると、こういうふうに考えておるわけでございます。
#98
○原文兵衛君 このたびの改正案では、親会社の監査役に子会社の調査権を認めているというふうになっておりますが、その理由は何であるかということ、これはいわゆる子会社の独立の法人格を無視するというようなことにはならないのかどうか、これらの点についてお伺いします。
#99
○説明員(田邊明君) 子会社の調査権を認めました理由は、従前から、親会社の業務運営の不正事例に照らしますと、子会社を利用しての不正事例がきわめて多い。簡単に申し上げますと、子会社に対して製品を販売して、親会社はまことに業務の運営が適正かつ利益をあげているというかっこうになっておりながら、子会社にはそれらの製品が山積みになって外へ出ていない。いわゆる押し込み販売などという例が多うございます。そこで、今回の法改正の趣旨にのっとれば、親会社の監査をいたします場合に、はたして親会社の業務運営が適正に行なわれているかどうかということについて、取引に利用される子会社、特に今回の改正案では、過半数の株式を持たれているものを子会社と規定いたしましたので、この種の子会社に対して、その事実関係をまず照会することができるという権限を認めております。いまの例で申しますと、はたして親会社が販売済みと称する製品は間違いなく子会社に入っておるのか、子会社においてはそれを販売済みであるかというような事項を照会いたすことを認めております。これに対して子会社が正確に答えを出してきました場合には、重ねて立ち入りの調査ということを認めているものではございません。しかし、報告をいたさない、もしくはその報告の信頼度が非常に疑わしい、つまり監査役としては、直接子会社に当たってみないと、親会社の監査について確信が持てないという場合に、初めて子会社に対して調査権の行使ができる。しかし、この場合も、最初に照会を発した事項に限定して調べられるという制度になっております。そこで、子会社は、御指摘のとおり、会社といたしましては独立の法人格を持つものでございますけれども、この立案の趣旨から申しますと、親会社の不正というものを防止しようとする意味から、子会社に対してまず報告徴収権の行使があり、これに対してこれを拒否し、あるいは不正確な回答をした場合に初めて、照会部分に限って、親会社の監査役が調べるという趣旨の趣旨でございます。ただ、巷間誤って、これは子会社を監査するのではないかという疑問が出されておりますが、これは子会社の監査ではございませんので、調査にすぎない、このように考えております。
#100
○原文兵衛君 まあ最近大企業の中には、いろいろと世間から非常に強い非難を浴びているようなものが少なくなくて、その社会的責任ということが強く要請されているわけです。そういうような意味で、この執行機関である取締役の行為を違法とかあるいは不当としてチェックする、そういう目付役的な意味での監査役の権限を増大するということ、これは時宜に適したものだと思うのでございます。ただ、実際問題として、従来の感じからすると、取締役と監査役の比重の関係が、どうしても監査役のほうが低いといいますか、そういうふうにわれわれも感じてきているわけです。そういうようなことで、この改正の趣旨はけっこうだと思いますし、また監査役がしっかり監査してもらわなければいけないと思うんですが、実際問題として、監査役にそのような大役を期待できるのかどうか、その効果がほんとうに期待できるのかどうかという点について、やや不安に思う点もあるわけですね。そういうようなことで、たとえば監査役の地位を高めるための選任、解任の方法というようなことで、いままでのようなことでいいのかどうかというような点について、私もよくわからない点もあるわけですが、御説明いただきたいと思います。
#101
○説明員(田邊明君) おっしゃるように、新制度の監査役がきわめて強大な権限を持つ地位の機関でございます。ところが、現行法では、御存じのように、取締役の選任に関しましては、株主総会の定足数というものを法律で定めております。にもかかわらず、監査役についてはこの定めがございません。そこで改正法では、まず監査役の選任方法も取締役と同様として法律改正をいたすことといたしました。それから、選任及び解任につきまして、取締役と異なって、監査役に関してはこの改正案では、選任、解任に関する意見陳述権というものを与えてございます。これは監査役の不当な解任あるいは不適当な監査役の選任というふうなものを、機関である監査役自身にその種の権限行使によって防止させようという趣旨でございます。そのほか、その地位保障の方法といたしましては、この任期の伸長もまさにその一つでございますが、先ほど二年と申し上げましたのも、実は取締役の任期と同任期でございますが、取締役の場合は二年をこえることを得ずという法律の規定でございます。これは会社の自治によりまして、定款で一年の任期も定め得るという制度でございますが、監査役に関しましては、二年目の最終の定時総会の終結まで、つまり定款でもこれ以下には減縮できないというふうな法律上の最長、最短期を定めた改正になっております。
 で、この種の規定を設けてはおりますけれども、先生の御指摘のとおり、この制度を実効あるように運用するためには、会社自身の監査役に対する心がまえ、企業自身の心がまえというものが非常に重要なポイントになろうかと思います。幸い最近の経済界の実情からは、この改正法の新監査役というものをあらかじめすでに人事の対象になすって、それらしい実力ある者を置こうという動きが出てきておるように拝聴しております。したがって、この制度が実施されるときには、この制度にふさわしい実力ある監査役というものが備わってくるのではなかろうかと、このように考えておるわけでございます。
#102
○原文兵衛君 改正案の中のこの監査制度以外の点について若干御質問したいと思います。
 まず、その三十二条の二項でございますが、「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」というふうに定められておりますが、この「公正ナル会計慣行」というのは、具体的には何をいうのかという点。
 それからもう一つは、中小企業などでは、その実情からいって、記帳義務をあまりこうむずかしいことをしいるのはまだ必ずしも実情にそぐわないんじゃないか、実態に即していないんじゃないかというような批判も出ているんですが、これについてどういうふうにお考えになるか、これをひとつ。
#103
○説明員(田邊明君) 商法総則三十二条以下の改正でございますが、これは商業帳簿の改正で、その中に御指摘の第一点、商業帳簿の作成の規定の解釈について、公正な会計慣行をしんしゃくすべしという規定が置かれました。これを置きました理由は、今回の改正で商法の一部改正以外に、いわゆる特例法で、公認会計士が大規模会社に関して会計監査を商法上の義務としていたします。その場合に、現在公認会計士は、御案内のように、証券取引法に基づいて監査をいたしております。この場合の監査の基準というものが、大蔵省の企業会計審議会の意見になります企業会計原則というものを踏まえて監査をいたしております。で、改正法による商法の監査は、商法に予定されております計算規定を基準として監査をいたすわけでございますが、この企業会計原則が現在修正されて、その案が示されておりますが、修正前は商法の規定とそごする部分がずいぶんございました。そこで、商法と企業会計原則の調整作業が進められまして、昭和四十四年の十二月に企業会計原則修正案というものが示され、同時に商法の側についても修正すべき点について意見が述べられて、今回の改正案で、三十二条及び、先ほど局長が説明いたしましたような子会社株式の評価規定というような技術的な点についても改正を遂げることになったわけでございます。そこで、しんしゃく規定を置きました趣旨は、企業会計原則というものが、現在企業会計の一般にならわしとして行なわれているものの中から公正なものを要約したものが企業会計原則だとなされております。したがって、会計士監査におきましても、修正された企業会計原則というものを踏まえて従前と同じように監査を行なえば、商法の会計基準にも合した監査ができる、その趣旨を明確にするための規定として、しんしゃくという趣旨の規定を置いたわけでございます。ただ、法文上は「公正ナル会計慣行」という表現になっておりますが、それは、申し上げた企業会計原則の修正案等を含む一般の会計のならわし、そのうち商法のたてまえから見て公正だと思われるものに準拠する、あるいはそういうものをくみ入れて監査をするということを明らかにするための規定でございます。
 それから第二点の、中小企業者あるいは零細な企業者に関する記帳義務の問題でございますが、現在の商法総則では、一般の個人商人を始めとして会社すべてに商業帳簿の作成を義務づけておりますが、株式会社については、別に法律で明確にいたしておりますように、損益計算書、貸借対照表、財産目録、商業会計帳簿、これらの作成を命じているわけでございます。しかし、個人商人につきましては、日記帳それから貸借対照表、財産目録、こういうものを作成しなければならないという規定になっております。今回の改正では、そのうちの財産目録を削除いたしまして、これにかえて損益計算書というものを作成すべきように改正になりました。しかし、現在でも一般の商人が会計帳簿を作成し、貸借対照表をつくっているという前提から見ますと、損益計算書というものの作成を義務づけても、特に大きい負担を課すことにはならないのではないか、ただ損益計算書と申しましても、株式会社についてはすでにその書式等を法定いたしておりますけれども、一般の商人につきましてはそれぞれの営業の規模に応じた損益計算書というものがつくられることとなろうかと思いますので、特段に大きい負担をかけることはないと思います。過般衆議院におきましても附帯決議で、この点につきましては行政指導として、過酷な記帳義務、表現といたしましては複式簿記を強制するようなことにならないようにという御趣旨の決議をいただきましたので、政府としては格段の努力をするつもりでおります。
#104
○原文兵衛君 累積投票制度を改正するわけでございますが、その理由をお伺いしたいのです。それは、わが国における累積投票制度が、一体その実情はどんなふうになっているか。それから、外国ではこういうようなものはどういうふうに運用されているのかという点について、簡単に御説明願いたいと思います。
#105
○説明員(田邊明君) 累積投票制度は、昭和二十五年の商法改正で商法に入ったものでございますが、その制度は、御存じのとおり二人以上の取締役を選びます場合に、一株一議決権の原則を広げて、その選任すべき取締役の数に応じて議決権がふえる、ふえた議決権を、一括して同一人もしくは分散して二名以上に投票してもよいという制度でありまして、ねらうところは、少数の株主の代表者も取締役会に送り込めるという制度でございます。これを取り入れましたときの情勢は、主として占領軍の意図というものが相当強く働いたそうでございますが、またその背景に、アメリカにおけるこの制度が、過半数の州でこの制度をとっておったという背景があったようでございます。
  〔理事白木義一郎君退席、委員長着席〕
取り入れについてはいろいろな問題があったわけでございますが、現在この制度の運用の状態を見てみますと、法改正後にこれを使ったという実例が非常に少のうございます。反面、それぞれの会社では、ほとんどの会社がこの累積投票制度を採用しないという趣旨の定款をつくっているのが実情でございます。ただ著名な新聞社等で、一社ございますが、この累積投票の制度が使われているという実例はございますけれども、一般の会社では非常に少ない。今回の改正の理由といたしましては、要望といたしましては、外資の導入が活発になった場合に、外国資本が日本に入って日本の株式会社に投資を始めた場合には、この累積投票の制度を現行の法のままで残しますと、外国支配に屈するようなことになりかねない、これが改正の要望点でございましたが、法制審議会の結論としては、この制度そのものは存置しても差しつかえない、しかし、その制度の採否は企業の自治にゆだねていいのではないか、それぞれの体質によってきめさせてよろしい、これがまあ改正の理由でございました。現行法では、いま申し上げましたように、すべての企業ほとんどがこの制度を排除いたしておりますけれども、現行法では四分の一、つまり発行済み株式総数の四分の一以上を持つ株主が請求いたしますと、排除しておった場合にもこの制度を使わなければならないということになっておるわけで、今回の改正では、この四分の一以上の請求という部分を削除することとなったわけでございます。制度は残りますが、その採否は会社の定款できめさせよう、こういう改正でございます。
#106
○原文兵衛君 商法改正についてはもう時間もありませんので、その程度にいたします。
 そうて株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案について若干御質問いたしたいと思いますが、特例法によると、会計監査人が取締役会によって選任あるいは解任されるということになっております。また、監査される会社から報酬を受けるというようなことになっているわけでございますが、それはまあ、とりもなおさず業務執行取締役の影響のもとに置かれるというようなことになろうかと思うのでございます。そうなりますと、せっかく粉飾決算防止のための監査の厳正化をはかろうというのが改正の趣旨であろうと思いますが、はたしてその趣旨を全うすることができるのかどうかという点について、たいへん疑問に思うわけでございます。この点についてひとつ御説明いただきます。
#107
○説明員(田邊明君) 御指摘のとおりでございまして、当該企業から選任されて報酬を受ける者が適正な監査ができるかという問題点でございますが、まず、世界の各種の立法例をも調べてみましたし、世界における各会計監査制度の上でこの種の専門会計士の報酬のあり方というものを見てみましても、おおむね一律に、自由職業人としては、その監査を依頼される相手方から報酬を受けるけれども、その精神的な独立を貫くだけの資質を持っている、そういう前提で、国家あるいは社会が厳正な選抜によって特別の業種として認めている職業人の集団である。日本におきましても、おっしゃるように、企業から報酬を取りますけれども、外部第三者的な地位の独立性というものは当該監査人の職業的な特別の義務によって担保されるというふうに考えるべきであろうかと思います。この制度につきましては、極端な場合を考えますと、むしろ企業からでなしに、国家からでもその種の報酬を支給してこの種の仕事をさしてはどうかという議論も出たわけでございますけれども、やはりこの会計監査人というふうな専門家の職業制度を維持するためには、自由職業人の地位というものを確保しながらその精神的な独立性に依存してこの制度を動かすほうがわが国の実情に合うのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。ただ法制上は、今回の会計監査人の選任及び解任に関しましても、取締役会の決定の前に監査役の過半数の同意が必要であるという法制にいたしました。これは、同じく監査を会社の機関として担当する人たちの意見というものをいれて、これによって会計監査人の不当な解任あるいは不適当な会計監査人の選任というものを阻止するというたてまえにいたしたわけでございます。ただ、衆議院の附帯決議におきましてもこの点に触れられて、おっしゃるような独立性を確保するために、選任その他の方法についてさらに適当な方途を講ずるようにという決議をいただきましたので、この制度についてはさらに独立性を確保するための措置というものを十分検討いたしたいと思っております。
#108
○原文兵衛君 いまのこの会計監査人監査を創設するわけでございますが、そうしますと、監査役の会計監査権と会計監査人の会計監査権とが競合するようなことが考えられないか、その競合によって会社運営に支障を生ずるというようなおそれがないのかというような点、さらにまた、監査役の権限強化をはかろうとする商法改正の趣旨と反するんじゃないのかというようなことを感じるわけでございますが、この点についてはどうでしょうか。
#109
○説明員(田邊明君) 今回の改正で、資本金五億円以上の株式会社に関しましては、公認会計士等からなる会計監査人の参加がございます。同時に監査役につきましては、従前の会計監査の権限から、これを含む業務一般の監査権限を与えられることになります。その面では、会計監査の面に関しては監査役と公認会計士等が重複して監査をすることになるわけでございますが、法律案の趣旨といたしましては、これらの巨大会社につきましては専門の会計監査人の監査というものを正面に押し出して、そして監査役自身はむしろ一般的な業務監査のほうに力を注いでもらうようにしたい、こういう立案の方向をとっております。その具体的なあらわれは、監査報告書の記載事項にも示されましたように、まず専門の会計士が監査をいたしました会計監査に関する意見を監査役に伝えることといたしまして、監査役は独自の立場でその監査意見を審査して、みずからも同意見でありますときには、その監査報告書にはその部分を省略して報告書を作成してよろしい、ただし、意見の異なるときには、その部分に関して独自の監査をいたすというふうなたてまえにいたしてございます。多くの場合には、両者の意見が食い違うというふうなことはきわめてまれだと思いますが、監査役と会計士の関係が、いま申し上げましたように専門家のほうから事前にまず意見を示すという形をとっておりますために、おそらくその決算の結果が法律に反するような不当なものである場合には、事前に監査役みずからも動いてその決算内容が修正される、もしそれをしないで両者の意見、片っ方が適法であり、片一方が違法であるという意見を付しました場合には、株主総会自身がその決算を承認しないというふうな結果となることになろうと思いますので、事前に経理不正というふうなものは防止される、それがまた改正のねらいでもあると申し上げていいと思います。
#110
○原文兵衛君 これは最後にお伺いしますが、先ほどもお答えの中にちょっとあったんですけれども、税理士会連合会で、今度の商法関係の改正によって会計監査人による会計監査を導入することが税理士の職域を侵すということにならないかというようなことで、かなり強い反対が前々からあったわけです。そのような心配があるならば、これに対してどういうような手当てを施したらどうか、先ほども五億円以上にしたということ、さらにまた衆議院の修正でこれを十億円以上の一般会社にしたというようなことも、これに対する一つの手当てかと思うのでございますけれども、これらの点について最後にお伺いしたいと思います。
#111
○説明員(田邊明君) 御指摘の点につきましては、原案がまず五億円で切ったという重要な点が、御指摘のようにやはり対象会社をしぼっていくという方法によって、これらの反対意見に対してこたえをした。で、基本法の改正によって特定のある業種の方々がその職を奪われるということになれば、これは非常に重大なことでございますから、その配慮をいろいろしたわけでございますが、もう一点税理士の危惧される点は、現在公認会計士が当然に税理士の仕事もできるというたてまえになっております。このことから問題が出てまいりまして、個人としての公認会計士に関しましては、監査をする会社から税務業務によって報酬をもらっているというふうな関係のある場合には、もう監査そのものをしてはならない、この制度で確立しているわけでございますが、監査法人の場合が問題であるとされたわけでございます。監査法人は五人以上の公認会計士である社員が集まって形成しておるわけでございますが、現在の規制では、そのうちの二分の一以上の者、つまり三名以上の人がその会社から公認会計士の仕事以外の仕事で報酬をもらっている場合には、その会社の監査をしてはならない、こういう規制のままであれば、依然として監査法人に関しては、税金の仕事もやり、そうして法人としての監査の仕事をするではないかという反論がございましたために、衆議院における附帯決議でも取り上げられましたように、監査法人の社員の行ないます税務業務についても厳正な規制をするというふうな措置を講ずることといたしましたので、実質的にも法制的にもこれらの団体で危惧されるような問題は残らない、こういうふうに私どもは考えております。
#112
○委員長(原田立君) 三案に対する質疑は本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十九分散会
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ソース: 国立国会図書館
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