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1972/07/10 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 法務委員会 第14号
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1972/07/10 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 法務委員会 第14号

#1
第071回国会 法務委員会 第14号
昭和四十八年七月十日(火曜日)
   午前十時二十分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         原田  立君
    理 事
                後藤 義隆君
                原 文兵衛君
                佐々木静子君
                白木義一郎君
    委 員
                中西 一郎君
                増原 恵吉君
                山本敬三郎君
                吉武 恵市君
                竹田 現照君
   政府委員
       法務大臣官房長  香川 保一君
       法務省民事局長  川島 一郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   参考人
       日本公認会計士
       協会相談役    尾澤 修治君
       日本税理士会連
       合会副会長    北川  孝君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○商法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
○株式会社の監査等に関する商法の特例に関する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係
 法律の整理等に関する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
 商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案、及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の審査のため、本日、日本公認会計士協会相談役尾澤修治君、及び日本税理士会連合会副会長北川孝君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(原田立君) 御異議ないと認めます。
 なお、その手続につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(原田立君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(原田立君) 商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案、及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案を便宜一括して議題といたします。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の方々には、御多忙中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、厚く御礼を申し上げます。
 本日は、ただいま議題といたしました商法の一部を改正する法律案ほか二法案につきまして忌憚のない御意見を賜わりたいと存じます。
 議事の進め方につきましては、大体十五分程度で御意見をお述べ願い、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。よろしくお願いします。
 それでは、まず北川参考人にお願いいたします。
#6
○参考人(北川孝君) 私は、日本税理士会連合会副会長で商法問題を担当している北川孝であります。
 本日、ここに参考人として意見を陳述する機会を与えられましたことは、まことに光栄であり、深く感謝の意を表するものであります。
 すでに御承知のことと存じますが、本会では数次にわたって陳情書を提出して、改正に反対の意向を表明してまいりました。
 その骨子は、第一に、会計監査人制度を商法へ導入することは、監査基準の大幅な後退と、会計監査人の独立性が保障されていないため、会計監査の充実にならないことであります。
 第二は、公認会計士監査の第三者性と、税理士の税務代理とは本質的に異なる制度であるにかかわらず、これに対する適切な措置が講じられていない。具体的には、税理士業務は明らかに特別の利害関係に該当するのでありますが、これが明確に規定されていないので、税理士の職域が不当に侵害されることになります。
 第三に、親会社の監査役、会計監査人に子会社の業務及び財産の状況を調査する権限を与えることは、子会社の独立性をそこない、また子会社に関与する税理士の職域を第二に掲げた理由によって侵害されることになります。
 第四に、粉飾決算、逆粉飾決算あるいは株価の不正操作等は、業務を執行する取締役がこれを行なうのでありますが、これを直接監査する取締役会の機能強化の措置等を講ずることなく、第二次的な監査制度を先に改めることは、本末転倒のきらいがあります。また、監査役が事実上取締役会で選任されること、及びその人を得ることが困難であること等からして、効果が期待しがたいのであります。
 第五に、株式会社の実に九九%を占める資本金一億円未満の会社に特例法を設けることは、株式会社法を空洞化するものであります。
 第六に、零細な小商人に商業帳簿、貸借対照表および損益計算書を公正な会計慣行をしんしゃくするよう義務づけをして過重と思われる負担をしいる一方、大会社に対しましては反対に、企業会計原則を修正することによって、継続性の原則を形骸化し、特定引き当て金を導入し、資本取引を損益取引の区分による剰余金概念を放棄する等によって、きわめて恣意的に財政状態及び経営成績の内容を表示し得るようになるのであります。
 以上が、日本税理士会連合会が従前より掲げてまいりました商法改正反対の主たる理由であります。
 幸いに、衆議院の法務委員会におかれましては、私どもの主張の正しさが大幅に認められまして、その多くを附帯決議に入れられ、また法案の一部が修正されましたことを多とするものであります。ただ附帯決議でありますために、法律の施行に直接の拘束がないので、政府におかれまして運用せられる場合の責任を一そう明らかにするための具体的な御措置を当委員会にお願い申し上げたいと存じます。
 第一に、税理士の職責について御理解を深めていただきたいのであります。
 御高承のとおり、税制の改廃、創設及び税務行政の運用は、国民の最大関心事でありまして、世論もきびしく、ために国内の政治情勢をすら左右するに至りかねない国家の最も重要な政策にかかわるものであります。それは国民の権利義務を直接規制するからにほかなりません。税理士は納税者の信頼にこたえ、法律に従ってその適正な納税義務を実現する職責を有するものであります。立ち入って考察いたしますと、法律によらなければ徴税されることのない国民の権利を確保し、法律に定められた租税債務を履行しようとする納税者の二面的な要請にこたえて、税理士はこれらを代理するのです。税理士の職域が侵害せられることに対して、私どもが反対いたしますのは、職域が保証されることなくして職責を果たし得ないからであり、その職責は実にこのような社会要請に発しているからであります。単なる職域エゴイズムではありません。今日、税に関する各種各様の運動が活発に展開されているのは、国民にとって切実な問題であるからであります。税理士の職域が顧慮されることなく法令の改廃が安易に行なわれるとするならば、その結果は重大であります。
 以上御賢察くださいまして、税理士法に規定する税理士業務が、証券取引法による特別利害関係、公認会計士法にいう著しい利害関係に当たることを、法律で明確に規定せられるよう御審議賜わりたく存ずるのであります。特に監査法人については、その社員が税理士業務を行なっていてなお会計監査人となるがごとき不合理はぜひとも明確に排除せられるようお願い申し上げます。
 また、会計監査人の独立性を確保する措置を講ぜられるとともに、税理士の税務代理を確立し、納税者の権利擁護に資するよう、税理士制度改善のための税理士法の早期改正を行なわれるようお願い申し上げます。
 次に、会計原則の修正にあたっては、真実の財務内容の公開を妨げないように留意することとありますが、このことは、日本税理士会連合会が声を大にしてかねてから主張してまいりましたところであります。
 すなわち、従来の主張第六後段において申し述べましたとおりでありますが、事が重要でありますから重ねて詳しく申し上げることをお許しくださいますようお願い致します。
 その一つは、継続性の原則の修正についてであります。権威筋からは次のように解説されております。「会計処理の原則、手続をみだりに変更しないようすべきであるという訓示的な規定が置かれ、かつ特定の場合における変更については注記することとされ、今までのように正当な理由による変更かどうかという問題は回避されるに至ったと解せられる。極言すれば、企業による会計処理の変更は、変更に関する注記を行なう限り任意になったのであって、企業会計原則はきわめて重要な退歩もしくは改悪を提案したものといえる」とされています。また、変更があった決算期以後相当期間影響額を注記することとなっていた修正試案が、重要な変更へと改められ、相当の期間をその決算にかかる期間においてのみとされたばかりか、公認会計士が現在付している限定意見が無限定となるのであります。継続性の原則を空洞化することは、より真実の財務内容の公開とはおよそかけ離れたことになります。
 その二は、引き当て金についてであります。
 すでに御高承のこととは存じますが、引き当て金の問題は、企業会計原則修正案で大幅に変更されようとしています。修正案をおつくりになりました当事者の方々の御発言をお借りして負債性引き当て金と特定引き当て金との区別について明らかにしますと、「まともな引き当て金というその引き当て金の解釈を少し拡大解釈しようという話を取りつけました。負債性引き当て金を厳格に解釈すると、あれもだめこれもだめということになるが、修正案では、これもいいあれもいいというふうに、まともな引き当て金の概念を拡大することによって、そこのところを吸収しましょうということで目をつぶっていただいたのです。そこで、まともな費用というよりも、損失的なものを引き当て金計上ということもなるべく認めるようにしようという了解があったわけであります。」そして税金に関連して、次のように述べられているのであります。「この際、有税をもってでも会計原則が例示した負債性引き当て金を広く計上して、税法としてもこれを認めざるを得ないようにすることが必要であると思われる。」さらに、「特定引き当て金につきましては、これまで逆粉飾に利用されるということで、引き当て金の中で利益性の引き当て金の疑いのあるものについては、限定の対象になるものが多く、常に公認会計士との間における紛議のもととなっていたわけであります。今回の改正におきましては、これを負債性の引き当て金と区別することによりまして、将来の特定の目的のために引き当てられる特定引き当て金については、幅広く計上ができることになりました。そこで、この点につきましては、すべて公認会計士は限定しないということになったわけです。」
 これらの発言に見られるとおり、負債性引き当て金を拡大し、特定引き当て金を導入する企業会計原則の修正は、真実の財務内容開示に反することはきわめて明瞭であります。大企業の社会的責任が、公害、物価、土地、株式の公開等をめぐって、今日ほど世上で問われたことはいまだかわってありません。このたびの商法改正にともなう企業会計原則の修正は、その内容がきわめて専門的であるため一般に広く理解されていないので、大きく世論として盛り上ってはおりません。しかしながら、やがては大企業の姿勢がきびしく問われるに至るであろうことは必至と考えられます。
 商法改正に際して、以上のような企業会計原則の修正は、与野党の各先生が一致して要請されました、企業の財政状態と経営成績に関して真実な報告を提供する財務内容の正しい開示に反することは明らかであります。
 よろしく御審議のほどお願いいたします。
 最後に、会計帳簿の作成について、零細な商人に複式簿記を強制しないよう当連合会の意見骨子第六前段において申し上げた事項についてでありますが、税理士は、中小企業、零細企業と消長をともにいたしている実情に御理解を賜わり、特段の御配慮をわずらわしたくお願い申し上げます。
 その他、会社の社会的責任、株主総会のあり方、取締役会の構成及び政府各行政機関の連絡についても申し述べたいところでありますが、この際は差し控えたいと存じます。
 大体、以上で意見の陳述を終わらせていただきます。御清聴くださいましたことに対しまして厚くお礼を申しあげます。まことにありがとうございました。
#7
○委員長(原田立君) どうもありがとうございました。
 次に、尾澤参考人にお願いいたします。
#8
○参考人(尾澤修治君) 日本公認会計士協会の尾澤修治でございます。本日は、参考人として意見陳述の機会をお与えくだされ、まことにありがたく、厚くお礼申し上げます。
 さて、当院で御審議中の商法改正関係三法案の内容はかなり広範多岐にわたっておりますので、私ども公認会計士が特に深い関心を払っておりまする株式会社の監査制度についてのみ、私どもの考えているところを述べさせていただきます。
 まず第一に、商法監査制度に対する私どもの所信を申し上げます。
 御高承のとおり、特例法案によれば、資本金五億円以上の株式会社は会計監査人の監査が義務づけられ、会計監査人としては、公認会計士または監査法人がその衝に当たることとされております。
 この制度は、多くの利害関係者を擁し、経理内容も複雑な大企業の計算書類については、株主総会の前に、職業的専門家の会計監査を受け、株主総会は、監査の結果によって計算書類の適否を判断し、決算案を承認する、という順序でことを進め、監査の結果を決算に反映せしめて、利害関係者の利益を保護することを目的としております。
 かかる制度は、諸外国においてはつとに広く行なわれているところで、国際的にはこれが常識であると申しても過言ではありません。それが、ひとりわが国においてはいまだこのような制度が確立されておらず、その点は現行の証券取引法監査といえども、残念ながら、株主総会終了後に行なわれるいわゆる事後監査で、私どもが監査の結果、適、不適の意見を表明してみてもあとの祭りで、決算の確定には役に立たないのが実情であります。この点、今回の改正法案によれば、いわゆる事前監査となって、監査意見のいかんが決算案の承認を左右することになりますので、経理の適正化、健全化のために実効あるものとなり、監査はここに初めて前向きに活用され、建設的な役割りを果たすことが可能となるのであります。
 顧みれば、昭和二十三年、証券取引法と公認会計士法が制定され、昭和二十七年から公認会計士による証取法監査が実施されて自来二十余年、経験を積み、研さんを重ねてきた職業専門家による会計監査は、会計のあるところに監査ありとの思想の浸透と相まって、次第にわが国の風土になじむものとなってまいりました。
 このたびの法改正が実現すれば、公認会計士制度発足以来二十五年を経た今日、ここにようやく、従来の証取法ほのかに、新たに商法監査の会計監査人としての使命をになうこととなり、その責務はまことに重かつ大と考えます。私どもはこのことを十分に自覚し、法改正の暁は全力をあげて商法監査制度の運用に努力し、社会の負託にこたえるべく一そうの精進を誓うものであります。
 第二に、特例法案によって会計監査人の監査が義務づけられることとなる会社の範囲について申し上げます。
 これは、法制審議会の答申によれば、資本金一億円以の上株式会社でありましたが、昨年は資本金三億円以上の線が取りざたされ、本年、法案となった段階では、五億円以上とされております。
 法制審議会答申以来三年余を経た今日、諸般の状勢は大きく変化している実情にかんがみまして、私どもは、答申どおりに資本金一億円の線を固執する意図はありません。それにしても、資本金五億円以上に引き上げられたことは、この制度を取り入れる趣旨からして遺憾と言わざるを得ません。これは、主として、被監査会社の数と公認会計士の数とのバランスを勘案考慮した結果と察せられ、そこには、別に職域調整という配慮が加えられていることも否定できません。
 ところが、衆議院においては、さらに調整を加え、証取法監査の適用されない資本金五億円以上十億円未満の会社については、別に法律に定める日まで適用しないと修正され、実質的には十億円未満の証取法監査の適用されていない株式会社はたな上げされたのであります。これはただただ意外というほかなく、遺憾に存ずる次第であります。最近、大企業については、その社会的使命と経営のあり方に批判の強いおりから、本法案の企図する基本的理念に思いをいたせば、強化こそはかれ、決して緩和の方向に進むべき筋合いではないと考えます。しかしながら、私どもといたしましては、でき得べくば、別に法律に定める日については、当院において附帯決議などによってある程度のめどをお示し願いたく、監査制度の充実強化のために、特別の御配慮のほどをお願い申し上げたいと存じます。
 第三に、会計監査人の独立性について申し述べます。
 会計監査人が常に適切な意見を表明し、信頼を確保するためには、不覊独立の立場と公正不偏の態度を保持せねばなりませんが、同時に、そのような地位が保障されていることが肝要であります。
 法案によれば、会計監査人の選任、解任は、ともに、監査役の過半数の同意を得て、取締役会の決定によって行なわれることとされております。会計監査人の任免を単純に取締役会の決定事項とすることは、会計監査人が職務を厳正に執行するための独立性確保の観点からすればもの足りないものがあります。ことに解任ついては、取締役としては、株主総会に解任の旨を報告し、もし会計監査人が望むならば、その解任についての意見の要旨を報告しなければならないとする程度で、不当な解任に対する歯どめとしてはまことに微弱と申さざるをえません。証取法監査においては、監査人が独立性を保持し、公正な意見を表明した結果、会社の意に沿わぬとのゆえをもって敬遠された事例は決して少くありません。私どもは、商法監査においても、会計監査人の独立性を擁護するために、その任免について法制上いまひとつ確たる措置を講ぜられたく、規定整備の望まれるところであります。なおこの点は、日本公認会計士協会においも、正当な理由なくして本人の意志に反して解任された場合における監査人の交代には、監査人の独立性を擁護するために、何らかの措置を講ずべく、さらに検討を進める所存でおります。
 次にまた、会計監査人たる者は、被監査会社との関係において、身分的にも経済的にも独立性を保持し、特別の利害関係を有しないことを要請されております。改正法案によれば、まず特例法で、会計監査人の資格とその欠格条項を定め、次に公認会計士法によって、公認会計士に対し特別の事項について業務制限を加え、さらに、公認会計士法の政令によって「著しい利害関係」を規定して、欠格条項を明らかにせんとする法体系がとられております。
 まず、特例法第四条の規定について言えば、御高承のとおり、衆議院においては、その第二項第三号を修正して、監査法人については、社員に一人でも被監査会社及びその親子会社の役員または使用人があれば、商法監査には従事し得ないとされました。これまた、私どもの全く予期しなかったことであります。
 通常監査法人においては、関与社員が自己の監査意見を形成するりあたりまして、他にその被監査会社との利害関係者が多少存在していたとしても、それによって関与社員の意見形成がゆがめられるがごときことはあり得ないのであります。また、監査業務執行社員のほかに、これを審査する別の機構があって、公正な監査意見を確保するためのチェックシステムも備わっているのであります。
 次に、衆議院における附帯決議によれば、監査法人の社員が税務書類の作成などの税務業務を行なっている会社については、その監査法人は商法監査を行なわないよう規制することを検討すべきであるとされておりますが、元来、税務業務は、中正の立場から租税法律主義に基づいて執行するものであり、監査人が監査と同時にその会社に対して税務業務を行なったとしても、理論的には監査上の独立性に阻害されないというのが国際的通達であります。それゆえに、欧米諸国においても、税務と監査業務の両立を法令規則等で規制している事例は見当らず、パートナーシップに対していささかの疑いもなく、監査、税務併営を認めているのであります。
 もしわが国においてかかる規制を行なえば、資本の国際交流時代に、わが国の公認会計士と監査法人は、業務上の信用と競争力に大きな制約をこうむり、今後進出をはからねばならない国際業務には著しく不利となることは避けられません。思うに、この問題は、本来会計監査人の独立性、利害関係としてよりも、公認会計士、税理士の二職業分野の職域調整として解決すべきものと考えます。
 そこで、私は申し上げたいのであります。本法案の実施によって新たに被監査会社となるものは、百万をこえる株式会社のうちわずか五百社前後、〇・〇五%程程にすぎません。しかも、そのうち相当部分については、関係会社等としてすでに任意監査が行なわれているのであります。そして、現行証取法監査会社においても、公認会計士と税理士とが友好に同一会社でそれそれの業務に当たり、共存共栄、何の摩擦も生じていないのであります。でありますから、職域調整策としては、公認会計士に対してのみ譲歩を求められたものであります。他方に、公認会計士の監査は税務を離れてはあり得ないのであり、また、現行法令の前提条件のもとに結成された監査法人の一部社員にとっては、すでに安定した職業上の地位をゆるがすことにもなりかねないのであります。その辺の実情と影響をよく見きわられまして、政令制定の際には十分に御配慮を加えられんことをお願い申し上げます。要するに、利害関係の細目についは、従来は証取法の下部規定たる監査証明省令によっていたものが、今回は政令によって定められることに改められました。この点は、私どもといたしましては、立法形式のいかんを問いません。ただ願うことは、その内容が現行法令と基本的には変わるところなく、それ以上の制限が加えられるべきではないということでございます。
 最後に、企業会計制度と監査制度の充実は、国内的には企業の社会的責任を強化し、その経営姿勢を正していくためにも、国際的には彼我の企業が相互に資本交流を円滑ならしめるためにも、喫緊事とされております。そのときに、職域調整上必要はあるにしても、その範囲を逸脱した業務制限を加えて、わが国公認会計士制度の健全な育成強化と組織化をはばみ、そのために企業の社会性の向上と国際化の進展に支障を来たすことのないように御配慮を願いたいのであります。
 以上に対する御理解を賜わった上で、三法案の成立を切望いたしまして、私の陳述を終わります。御清聴まことにありがとうございました。
#9
○委員長(原田立君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの御意見は全部お述べいただきました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#10
○佐々木静子君 きょうは両参考人の先生方、お忙しいところ貴重な御意見を承らせていただきましてほんとうにありがとうございます。非常に専門的なことが多うございますので、きわめて素朴な質問かとお思いになるところがたくさんあるんじゃないかと思いますが、若干参考人の先生方にお伺いさしていただきたいと思います。
 まず、先ほど来両先生からのお話にもございましたように、今次の商法改正というものが、現在の企業の社会的使命といいますか、企業のあり方というような事柄につきまして、この監査制度の充実をはかるということが主たる目的のように承っておるわけでございますが、今次の改正におきまして、これで企業の行き過ぎと申しますか、それに対する監査制度の充実というものがはたして十分にはかることができるかどうか、どのようにお思いになりますか、北川先生からお答えいただきたいと思うわけでございます。
#11
○参考人(北川孝君) ただいまの佐々木先生の御質問に対しまして、私どもはかねてから、本問題がその御指摘のように役立たないということを主張してまいりました。ただいま意見陳述の機会にも申し上げましたように、企業会計原則の大幅な後退、たとえば継続性の原則を空洞化し、引き当て金については利益性引き当て金及び損金性引き当て金の区分をあいまい化し、なおかつ会計監査人の独立についてその保障がない。いわばはなはだ監査基準をあいまいにするとともに、監査に当たる人の独立を保障されなくて、しかも会計監査人の任免は取締役会において任免される、かようなことであって、ほんとうに監査制度の充実になるかどうかということを私どもはなはだ遺憾ながら疑問に考えざるを得ないのであります。ほかにも申し上げたいことはございまするが、要約いたしますると、監査人の独立が保障されていないこと、及び監査基準が後退を重ねてその目的と逸脱するに至っておる現状にかんがみ、効果的な監査制度の施行ははなはだむずかしい、かように考えます。
#12
○佐々木静子君 どうもありがとうございました。
 同じ問題につきまして、尾澤参考人のほうから伺いたいと思います。
#13
○参考人(尾澤修治君) 監査制度の充実によりましてある程度までの有効な歯どめに役立つことは私どもは信じて疑いません。現在証券取引法の監査に従事しております経験から申しましても、これがもしなかったならば、なお多くの企業がどんな暴走をしているか、これは想像に余りあるものと存じます。いかなる制度といえども、一〇〇%の効力を発揮するという制度は私はあり得ない思います。そのためには、ある程度の効果があるならば、さらにそれを補完する制度を別に考えまして、それによってこの制度の充実運用をはかるべきであろう、こういうように思っております。
#14
○佐々木静子君 尾澤参考人にお伺いさしていただきますが、この商法改正の問題は、歴史をさかのぼりますと、山陽特殊鋼事件などから順番にこの監査制度の必要というものが取り上げられまして、それに伴いまして、おくればせながら商法の一部改正というようなことが行なわれてきたわけでございますけれども、それにもかかわらず紛飾決算というような問題があとを断たないわけでございますが、それはやはり、若干の修正にもかかわらず、その効果があまりあがっておらなかったということになるのじゃないかというふうに思われる節があるのでございますが、そのあたりはどのようにお考えでございますか。
#15
○参考人(尾澤修治君) 確かに粉飾の事件はたくさんございまするが、粉飾についてひとつ御認識をいただきたいことは、粉飾決算は公認会計士がいたすものでなくて、企業側がいたすものでございます。その企業側のいたした粉飾決算を公認会計士が発見いたしまして、そうしてその事実を指摘する。これがいろいろ社会の問題になっている事例が多いのでございます。そういうわけでございまして、もし公認会計士の監査なかりせば、この粉飾決算はなおそのまま地にもぐっていたかもしれない、そういう意味では、私どもは建設的な役割りをしておると思います。同時に、私どもの業務といたしまして見ておるところでは、ある程度は、多少のこの浜の真砂的な粉飾がこの多数の会社の中にはどうしても出てくる可能性があるのでございます。そこで、やはりその辺のところは、この制度を十分に充実さしていくことが肝要であり、私どももその意味では、先ほど申しましたように大いに自己研さんもいたしまして、われわれの能力をさらに向上させる、それからさらに企業側に対して強い指導能力も発揮していきたい、そういう意味からいきますと、どうしても事前監査であることが必要でございます。現在の監査におきましては、公認会計士が粉飾の事実を発見したときには、すでに後手でございます。商法監査におきましてはそれが前向きになるので、今後は公認会計士の監査の指導性を発揮することによって、粉飾決算はさらに私は少なくなるように、予防的効果を発揮し得るものと信じております。
#16
○佐々木静子君 いまのお話で、公認会計士の方々の非常に粉飾決算を摘発するために御努力なさっていらっしゃるということはよくわかったわけでございますけれども、今度の商法改正におきましても、監査人の地位というものが非常に保障されているようでありながら、きわめて弱い立場である。これは両参考人の御意見にもこのことがあらわれておったわけでございますが、たとえばその選任方法、特にその解任の問題につきまして、取締役会における解任というようなことでございますと、これは監査人が十分に自分の所信を良心に従って述べることができないということに帰着するのではないかと思うわけでございますが、その点に関しまして何か積極的な御意見をお持ち合わせでございましたら、お述べいただきたい。これはいまもお話にもございましたように、不当な解任というものに対する救済方法が後日裁判で争う以外ないのではないか、それも非常に正当であるかどうかという範囲が確定しておらないのではないかというふうに考えるわけでございますが、そういう点につきまして、この身分的な監査人の保障ですね、その点につきまして何か積極的なお考えがございましたらお述べいただきたいと思うわけでございますが、北川参考人いかがでございましょうか。
#17
○参考人(北川孝君) 全く佐々木先生の御質問の趣旨に同感でございまして、私、先ほど本制度は役に立たないと申し上げたその一つの理由にあげたわけでございまするが、この会計監査人の独立性を保障する具体的な方法について意見があったら述べよということでございまするが、まず第一に、経済支配からのがれることがまず必要である。直接報酬をもらいながら、これに対して監査を行なう、独立不羈の第三者性を持つところの監査を行なうということは事実上きわめてむずかしい。職業倫理に基づいてやればできるんだとおっしゃいますが、現実にむずかしい。しかも解任権を持ち、報酬を得ている相手さまに対しまして、この決算は間違っていますということを述べることは非常にむずかしいということはまず間違いないと思います。
 しからばいかにすればいいかといえば、まず経済支配からのがれるためには、他会のことを申して失礼でございまするが、個々の公認会計士が会社から報酬を得るんではなくて、たとえば協会に対して一括監査費用相当額が払われまして、それを監査に従事した仕事量に応じて支払うとか、何しろ経済支配関係を分断することがまず第一に必要であろうかと思います。
 第二番目には、この解任、選任権は、佐々木先生が先ほどおっしゃいましたとおり、取締役会にある。かくては、取締役会そのものの構成が従業員重役で、ほとんど社長の独壇場になって運営されておることは大会社といえども今日否定のできない事実です。社員重役ばかりなんです。したがいまして、その取締役会において解任、選任されることになりますれば、おのずからその支配下に、身分上の支配下に屈せざるを得ない。したがいまして、この任免は取締役会において行なわれるのではなくって、株主総会において行なわれるのが至当かと、かように考えます。
 とりあえずこの二つの手段が講ぜられますならば、その独立性がある程度保障されるんではないかと、かように考えます。
#18
○佐々木静子君 どうもありがとうございました。
 尾澤参考人、いかがでございますか。
#19
○参考人(尾澤修治君) 会計監査人が取締役会において選任されるということは、この業務が委任ないしは準委任と見られている関係上、取締役会の業務執行の一端であるためにそうなっているんであろうと私は理解しております。したがいまして、これを株主総会で選任するというようなことは法理上だきないんではないかと思います。要するに、取締役会において選任したる者をさらに株主総会において承認をするというような制度をとることならばできるんではないかと私は思っておりまするが、まあ今回の立法においてはそういうようになっていないようでございまするが、相なるべくはそういうことが望ましいというのは申すまでもないことでございます。
 それから、いまの監査制度につきましては、証券取引法を実施以来二十五年の歴史を経まして、ようやく日本の風土になじみ、地についてまいりました。そこで、監査というものに対する企業の受け取り方というものが非常に徹底してまいっております。したがいまして、そこでいいかげんな決算をやったり経営上の問題を起こしますと、そうすると社会的にもたいへんな責任を持たないといけないということの自覚が浸透しておりまするので、そこで一方では、会計監査人によりましてあるいは監査役によって、そのことを裏づけしてもらうことが彼らの責任を解放してもらう一つの方法ではないかと思います。私は、単純に、取締役が業務の運営をいたしましても、そのことについて確かに間違いがないんだということを専門家によって裏づけ、保証してもらうことは、彼らの責任を解除する意味において非常に有意義であろうかと思います。これを現在の法律におきましては株主総会によって行なわれることになっておりまするが、その辺はなお一そうこの監査制度の充実によりまして補なうことができますので、決して監査というものがあとからついていく無意味のものであるとは理解しておりません。
 それからもう一つ。北川参考人からお話がございましたが、監査報酬を企業から受け取っているということについて、それが独立性を阻害するというような御意見がございましたから、この際申し添えさしていただきまするが、監査報酬は、私どもの専門的能力と実務経験を必要としているこういう業務に対して支払われるものでございます。それは恩恵的に支払われるところの個人的なものではございません。したがって、こういうものを受け取ることによって私は独立性が侵害されるとは考えておりません。それから、監査報酬というものは一つの標準がございます。たとえば証券取引法監査につきましては、経団連側と打ち合わせをいたしまして標準報酬規程というものがございまして、その線に従ってやっておりまするので、多くもなければ少なくもない適正なものをちょうだいしているのでございます。それから、もし、監査報酬を契約締結機関とか報酬受領機関とか、そういうようなものを通じてちょうだいするというようなこと、あるいは契約をするというようなことになりますると、責任の所在があいまいになりまして、私はかえって独占的統制支配を招くのではないか、そういうように思っておりまして、これこそ実務上の障害になるのではないかと思います。
 それで、監査人の独立性ということにつきましてしばしば申し上げておりまするが、結局これは精神的な独立性でございます。お金をもらうからもらわないからというような、そのもらい方のいかんによって私は独立性がぐらぐらするというようには考えておりません。これは精神の問題でございます。したがって、被監査会社から報酬をちょうだいしているということは、決して独立性を侵害するものではないということは国際的な通説になっているのでございます。アメリカにおいてはこれはすでに判例まであるのでございます。そういうようなことで、伝統的な一つの自主的、自由職業であるわれわれのあり方につきましてはぜひ御理解を願いたいのでございます。
 それから、もし一つの受領機関ないし契約機関というようなものをつくったといたしますと、そうするとこの監査契約者はどういう立場になるが。非常にむしろ独立性が私は後退するような結果になるのではないかと思います。まずその点から申しますと、監査人を選任する法が非常にむずかしいのでございます。どういう人に監査をさしたらいいか。要するに適材適所とか、あるいは会員間の公平とか、それから能力、経験の差、そういうようなものがいろいろございますので、選任順序をきめていくことが事実上は不可能でございます。それから今度は、監査というものは現在は非常に組織監査を必要といたしておりまするが、このチームを組むことがなかなかむずかしいのでございます。やはり一緒に仕事をしていくのでございまするから、十分に気心が通じ、気脈が通じ合った人と仕事をしていきませんと、デリケートな線がなかなか進めることができないということでございます。そしてその場合に、だれを責任者とするか、あるいはだれを補助者とするか、われわれの世界には階級がございませんので、この序列をつくることもできません。結局組織的監査を実施していく上ではむしろ障害になる、こういうように思っております。それからもう一つ大切なことは、監査人と被監査会社との間の関係になりまするが、これはやはり相互信頼関係がないと業務の遂行を円滑にすることができません。押しつけられた監査人であっては、やはりその辺のところでかゆいところに手の届くような監査が実施し得ないというようなことも考えられます。結局監査というものがたいへん弾力性を失った形式的なものに流れはしないかということをおそれておるのでございます。
 それで申し上げたいのは、現在は世界各国すべて自由契約主義によっておるのでございます。これが共通なスタイルでございます。そしてそれによって監査人の独立性は侵害されていない、こういうようにすべての国で見ておるという事実でございます。御参考までについでに申し上げました。
#20
○佐々木静子君 いろいろと両参考人から貴重な御意見を伺ったのでございますが、実は私も、公認会計士さんあるいは税理士さんとよく似た職業であるところの弁護士を仕事としておりますので、やはり依頼者から報酬をいただきましてそして事件の処理に当たる、あるいは顧問を担当するというようなこことがあるわけでございまして、そういう意味で非常によく似た性質の職業じゃないかと思うわけなんでございますが、弁護士の場合は、依頼者との関係は主として法律的には自由に、委任契約のようなものになっているわけでございますが、非常に尾澤先生のおっしゃっていらっしゃることはよくわかるんございまして、またそれは理想、あらねばならぬ姿であろうと思うんでございますけれども、私は種類は違いますが、こういう同じ自由職業をいたしておりました者として感ずるんですが、欧米はそうであっても日本の場合はなかなかそこまで、一般の国民の意識と申しますか、この場合ですと依頼する会社あるいは被監査会社ということになると思うんでございますけれども、そういう意識がそこまでなかなかなっておらない。やはり報酬を自分が出しているんだからこれはある程度自分の思うとおりになるのがあたりまえだと思うような意識がまだ日本の土壌の中に多分にあると思うわけなんでございます。そういう点で、いまにわかに、監査人の報酬はその専門的知識と実務の報酬であって、被監査会社に対して従属的な地位は全然とっておらないとおっしゃるけれども、現実にはやはりそういうふうな問題がいろいろ起こってくるんじゃないかと思うんでございますが、こういう点で、尾澤先生、理想のあるべき姿と現実のいまの状態というものについてかなりやはりギャップがあるようにお感じになりますか。その点いかがでございますか。
#21
○参考人(尾澤修治君) 公認会計士の業務は――公認会計士ということばはアメリカのサーテイファイト・パブリック・アカウンタントというところから出たんでございますが、日本ではそのパブリックが略されてしまったんでございますが、これはあくまでも公共のために監査をするという意味を多分に含んでいるんでございます。そこで、ただいま佐々木先生のおっしゃいましたように、弁護士のお仕事と私どもの仕事と違う点は、責任が依頼人だけに対して負えばいいのか、あるいは投資者保護、証券取引法においては投資者保護でございまするから、投資者に対して責任を負わなきゃいけない、あいは利害関係者に対して責任を負わなければいけない、そういう非常に広範な範囲にわたる責任を負うように義務づけておるのでございます。そこが弁護士の方々といささか違うところでありまして、したがって、そこで独立性というものがかなり強くまた要求されているわけでございまするが、しかしながら、いま申しましたように、契約のしかたによりましてまず責任のあり方が違ってきてしまいはしないかということなんです。私どもは証券取引法の目的に従って監査をし、監査報告書を出すということを契約しているのでございまして、その企業のために監査をすると言っているのではござません。したがいまして、お金をもらうといたしましても、それはそういう外に向かって私どもが責任を負うことに対する報酬でございまして、しかもそれにはある程度の一つの基準があるわけでございます。それに従ってもらっているのでございまするから、たくさんもらったからとか少ないからとかというようなことではなくて、やはりリーズナブルの報酬を受けることによって適正に仕事を執行していくということに相なるのではないかと私は考えております。
#22
○佐々木静子君 北川先生に伺いたいと思うんですが、いまの問題につきまして、公認会計士の業務と税理士さんの業務というものが多少その職分において違ってきていると思うんでございますけれども、企業の監査を企業のためにやるんじゃなくって公共のためになさる、その公共のために監査をする場合に、やはりその監査の報酬というものを企業から受け取る、そういうことについて、それが素朴な気持ちでいうとわれわれ若干矛盾を感ずるわけなんでございますが、そのあたり、税理士の先生方ら見ると、そういう問題はどのようにお考えになりますか。
#23
○参考人(北川孝君) 尾澤参考人のおっしゃいますことも一応わかるんでありまするが、たいへん失礼な実例を、事実を申し上げて恐縮でございまするが、現在の公認会計士監査が行なわれる場合に、たとえばそれが解任になった、死亡になったといった場合に、その志願者が殺到するという事実がございます。その社会公共性のために監査をする、まさにそのとおりではあろうと思いまするが、現実に経済支配を受ける場合に、単なる職業倫理でもってこれが克服できるかどうか。たとえば、それができがたいことはこの商法改正法案の中に現実にあらわれておる、監査役の独立性を保障し、あらゆる支配からのがれて独立を保障するというのがこの立法の趣旨であるにかかわらず、親子会社の関係なんかまさにその点をいっておるんですね。子会社の監査役の独立性なんかてんで考えもしないで、親会社はこれは信用できないから監査するというのは、これは経済支配を受けておる、現実に経済支配を受けておるということ、この経済支配そのものをこれは肯定して親子会社の規定を設けておる。これはわき道にそれて恐縮なんですが、要するに素朴な意味においても、あるいは理屈を言っても、経済支配というものから脱しなければほんとうの意味の独立ができないというようなことはもうすでに社会常識であろうかと、かように考えます。
#24
○佐々木静子君 いま親会社、子会社の問題について北川参考人から御発言がありましたけれども、この親会社の監査人が子会社に対する調査権を持つという点、これは粉飾決算の防止などについて、そういう事案もいままであったということも承っておるんでございますが、その点、子会社の独立性という問題について尾澤先生はどのようにお考えでございますか。
#25
○参考人(尾澤修治君) 親会社が子会社について調査をするということは、今回商法においてはっきりおきめになられることだと存じまするけれども、すでに証券取引法監査におきましては、関係会社の監査は監査基準におきましてはっきりきめられておるのでございます。これはどういうことかと申しますると、やはりかつて昭和四十年ころ、非常に問題の会社が多かったころに、監査実施準則をどうしても変えなければいけない、なぜ変えなければいけないかというと、子会社を通じましていろいろの経理操作が行なわれた事例がたくさんあったのでございます。そのために、やはり関係会社、子会社に対しまして、必要があるときには、すなわち親会社側の監査において何らかの操作がないかどうかというようなことを確める必要がある場合だけに限りまして、子会社、関係会社に対して一つの質問をする、質問をしてなお納得できない場合には、その上で質問を重ね、最後には、必要に応じまして往査をしまして、必要部分だけを見せていただくと、こういうことでございます。子会社の経理について全面的にすべてを見るというのではございません。御承知のとおり子会社につきましては、親会社は、持ち株関係を通ずれば別な法律的ないろいろ権限を持っておりまするが、今回の商法上の子会社調査権というものはそういう意味の調査では私はないと思っております。むしろ非常に限定された調査権であって、必要があってどうしてもわからないときだけ、ある程度の調査をするというにとどまっておるのでございまして、かなり私は控え目である、そしてまたこういうことをある程度やらないと、親会社の経理操作とかあるいは営業上のいろいろの操作というようなものの実質が見きわめられないので、そういう必要から起こっておるのでございまして、子会社の経営全般に対するいろいろの批評とか指導とかという意味でこれが行なわれるのではないと私は思っております。
#26
○佐々木静子君 この点について、北川先生に伺いたいんでございますが。
#27
○参考人(北川孝君) 親子会社の関係につきましては、私ども重大な関心を払っておるわけでございまするが、先ほど会計監査人の独立に関連して、その例証として申し上げたわけでございまするが、親子会社関係の粉飾の実態を見ますと、たとえば期末にあたって親会社が、その商品価値がないにかかわらず高額でもって子会社に売りつけた取引を行ないまして、架空の利益を計上するのが従来の例でございます。
 それで、今度の改正案について、そういう事例があるかどうかということを親会社の監査役なり会計監査人が子会社におもむいてこれを調査する、必要に応じて調査するということは、子会社の監査役を全然信用していない。この会計監査人の経済的な独立は職業倫理でもって保障されるという尾澤参考人の御意見でございまするが、すでにこの法案自体は、全然子会社の監査役が、子会社自体の取締役会の支配から独立し、独立的な立場で監査するという立法の趣旨から見ますれば、親会社の子会社に対するこういう理不尽な押しつけに対しては、取締役の不当行為とか、あるいは忠実の義務違反とか、そういう行為差しとめ権があるわけです。しかるに、そういう機能は全然信用していなくって――要するに押しつけられる子会社がこれをはねつければいいわけなんですね。粉飾決算は、親会社の子会社利用による粉飾決算は不可能になるんですよ、はねつければ。そういう期待を子会社の監査役に持たせるというのがこの立法の趣旨なんです。しかるに、そういうことは全然経済支配を受けるから信用ができないという――親会社の監査役なりそれから会計監査人が往査に行かなければいけない。これはまるっきり子会社の、特に監査役の独立性を全然認めていない、かように考えます。これは、しかも、こういうことを行なわれることによって、子会社の独立性は現実にこの往査そのもので否定されていると私どもは考えております。
#28
○佐々木静子君 どうもありがとうございました。時間の都合がございますので、次の問題に移りますが、この衆議院におけるところの附帯決議の第五項のことが先ほどから論ぜられておるわけでございますが、「監査法人は、その社員が税務書類の作成などの税務業務を行なっている会社について、本法の監査業務を行なわないよう規制する」ということがうたわれておるんでございますが、この税務書類の作成ということが、表現としてもう一つはっきりしないというような感じを受けるんでございますが、北川参考人はこの点どのようにお考えでございますか。これをさらに修正するとすれば、どういう表現、どういう事柄にするのが適切であるとお考えか、お述べいただきたいわけです。
#29
○参考人(北川孝君) まさに私どももそこに核心があると考えておるわけでございまするが、現行法によりますと、税理士業務は税務代理と税務書類の作成及び税務相談、この三つが具体的に税理士法第二条に規定されておるんでありまするが、御案内のとおり、税理士業務は委任代理関係に立つ。したがって、第三者性を要求されるところの公認会計士と本質的にその職務は異なる。したがいまして、監査法人の中に、同一人格の中に、いわば平たく表現いたしますと検事さんと弁護士さんが同居するというような不合理はぜひともこの際排除していただきたい、かように考えまして、しかも税理士の業務は三つの具体的内容を持っていることは、先ほど申し上げたとおりでありまして、税務書類の作成というあいまいな表現をもってしては決してこの問題の解決にならない。したがいまして、これは税理士業務と明記せられて初めてその趣旨が生きるんでありまして、ぜひともそのようにお取り計らい願いたい、かようにお願いいたす次第でございます。
#30
○佐々木静子君 それから、この点は両先生に伺いたいんでございますが、今度の法案では、この企業会計原則というもの、この企業会計は「その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない」ということがうたわれているにもかかわらず、この継続性を否定しているというところでまあ御批判が多いわけでございますけれども、その点について、尾澤先生はどのようにお考えでございますか。
#31
○参考人(尾澤修治君) 継続性の問題につきましては、いろいろとそういうような誤解が私はあるように思っておりまするが、決してこの企業会計原則修正案は継続性を否定しているのではございません。継続性を否定してないことは、みだりに変更してはいけないと、いわゆるみだりというのは、理由なくして、すなわち正当な理由なくして変更することはまかりならぬということをはっきりいっているわけでございます。それも、みだりに変更してはならないというところを、たまたま正当の理由というようなことばを、前にあったのを取ったために、そういうような誤解が生じたと思っておりまするが、もともと継続性というのは、ある会計書類について二つの方法が許されている場合、その場合にいずれかを取っていい、それはやはり継続して進めていかなければいけないと、こういうことでございまするから、それをAの方法をBのほうに切りかえ、BのほうをCのほうに切りかえるとかいうようなことを安易に理由なくして行なうということは、これは全然認められてないので、これは会計の世界においては常識でございます。どこの世界へ行きましても、継続性の原則を否定してるるようなところは私はないと思います。私どもの日常の業務の執行にあたりましては、もうこれはその常識のもとにすべてを進めていく所存でございます。
#32
○佐々木静子君 ありがとうございました。
 次に、北川先生から同じ点につきまして、特に継続性の問題についての御所信を、お考えを聞かしていただきたいのでございますが。
#33
○参考人(北川孝君) ただいま尾澤参考人が申し上げましたとおりならばですね、どうしてこの「正当な理由によって、会計処理の原則又は手続に重要な変更を加えたときは、これを財務諸表に注記しなければならない。」まことにりっぱなものですね。これを削除する必要がどうしてあるか。継続性の原則が曲げられていないのだと言うなら、何も訂正する必要はない。そうでしょう。しかもですよ、両方とも合理的な、まあたとえば減価償却について言いますと、定額法、定率法という二つの方法がある。これはいずれも正しい。これを選択するのは、それは最終的には正しいのだからこれはいいんだ。しかし、事実問題として見ますと、新日本製鉄が定額法と単にこの減価償却の方法を変更したとかりに仮定いたしますと、年間三百億円ぐらいの利益が違ってくる。これを両方とも正しい方法だからといって、やって、しかもこの変更した結果これだけの影響額が出たというのを、当初の会計原則修正試案では、相当期間、債権者、株主が見て弊害が出ない――十分にこの内容が認識できるように、相当の期間影響額を注記しろとあったのを、それも削除されておる。その変更した期だけでよろしいという。しかも、このりっぱな「正当な理由」云々というのをなぜ削除しなければならないか。私どもは、これはまさに継続性の原則を空洞化したもので、大企業の恣意的な決算を容認するこれは一番大きな原因であり、かつ、引き当て金の原則をあいまいにしたことと並んで、今回のこの修正案がまことにその所期の目的を達成するにはあまりにも実質的に後退が多過ぎるということを申し述べておるわけであります。
#34
○佐々木静子君 両参考人から貴重な御意見を伺ったんですが、非常にこの点などは双方の先生方の御意見が対立しているところでございまして、できましたらさらに突っ込んでいろいろとお話を聞かしていただきたいと思うのでございますが、時間の関係もございますので、続きまして、先ほどお話にありましたこの引き当て金の問題でございますね、その点につきまして、尾澤参考人はどういうふうにお考えかということを伺いたいと思うわけです。
#35
○参考人(尾澤修治君) 引き当て金と申しましても、これは特定引き当て金のことをさしていると存じまするが、特定引き当て金というものは、企業の将来の損失、または支出に備えるためにリザーブされるもんであります。したがって、これは負債性引き当て金であるかどうかというところにいろいろの問題があるのでございます。しかし、商法におきまして特定引き当て金が許されるのは、法律によって認められているものに限っているわけでございます。そして、多くの特定引き当て金は、税法によってきめられているものでございます。で、私どもは、この特定引き当て金につきましては、やはりいろいろの考え方がございまするけれども、もともとこれはどちらかというといわゆる利益性剰余金に属するもんであるというたてまえから、でき得べくば利益処分においてとっていただきたいということをかねがねから主張しているんでございます。で、ただ、監査証明省令の中に、税法上損金算入を許されるものについては一般に公正妥当の会計処理と認めてよいというのがありまするので、特定引き当て金をとっている多くのケースについては限定をつけていない場合がございまするけれども、本来は、私は負債性引き当て金でないならば、これは一種の利益の留保である、ならば当然にひとつ今後とも利益処分によってやるべきである、またそういう表示が行なわれるべきである、こういうように考え、これが日本公認会計士協会の特定引き当て金に対する前々からの考え方でございます。ただ、たまたま監査証明省令上そういうふうになっておりますのとからみ合わせまして、その辺が、従来から私どもとしてはそういうことを主張はしておりまするが、まだまだ是正されてないというようなことでございます。
#36
○佐々木静子君 同じこの引き当て金の件につきまして、特に特定引き当て金というものが逆粉飾に利用されるおおそれがあるなど、監査制度に逆行するものだというふうな御意見だと思うんでございますけれども、もう少し具体的に北川参考人の御所見を述べていただきたいと思うわけでございます。
#37
○参考人(北川孝君) 先ほど公述の際に引用したわけでございまするが、御指摘のとおり、特定引き当て金が逆粉飾に利用されるということは、たとえばトヨタ自動車においては、先般の決算において、公認会計士から、明らかに利益の留保に類する引き当て金計上がたしか九十億円に及ぶという指摘があったように記憶いたしておるわけでございまするが、このように逆粉飾に安易に利用されるものが多いんでありまするが、先ほど申し上げましたように、これは常に公認会計士との間に紛議のもとになっていたわけですね。それだから今度の改正に御賛成になる――公認会計士協会のほうでは御賛成になっておるんでございまするが、ほんとうの意味の社会の負託にこたえて厳正な監査を行なおうとお思いになるんならば、なぜこれに御反対にならないのか、私どもはふしぎでならないんでありまして、いわばこの負債性引き当て金の範囲を拡げ、特定引き当て金制度を従来認められなかった会計のほうへ無理やりに引っぱり込むというようなことは、本来私どもの所管外でございまするが、公認会計士協会こそまつ先に反対して、厳正な監査をやることを、みずからの権威のために反対されるべきなんです。この改正案自体の実態を、先ほどの会計監査の独立といい、それから継続性の原則あるいは負債性の引き当て金等、こういうものの解決がなくしてどうして厳正な監査ができるか。私はまあ公認会計士協会さんがこういうものに強硬に反対されてこそ公認会計士制度の権威があると、私どもは、まあよそのことはあまり言ってもたいへん失礼なんですが、そういうふうに私どもは公認会計士協会に期待しているわけです。まあはなはだ抽象的なあれでございまするが、先ほど陳述の際にも、これをこしらえられた方の談話を発表したらきわめてその実質が明らかだと思って長々と引用さしていただいたんですが、実質は、実態はまさにこのように思います。
#38
○佐々木静子君 どうもありがとうございました。
 結局、この商法改正問題というものが、一面公認会計士の方と税理士の方との職域争いのように世上受け取られている面があるわけでございますけれども、私はやはりそうういことじゃなくて、企業というものの社会的使命、特にいま企業がいろんな形での社会的使命に反する事柄が行なわれていて国民を苦しめているという現状に立ちまして、これを十分に監視していくための商法改正ということに立たなければ、単にそういう視点から取り上げられるといいますか、そのように考えられているとすると、それは誤解であろうと思うわけなんでございますが、何はともあれ、会社の監査が行なわれる、企業の監査が十分に行なわれるということは、これはだれのためでもない、株主あるいは債権者、特にそこの会社に働いている従業員にとってたいへんに重要な問題ではないかと思うわけでございますので、その点、この監査の強化という点につきまして、どういう方法が一番効果があるのか、また今日の改正であればそれがほんとうに期待できるのか、あるいは逆行するのではないか、そういうふうな事柄について、まあいろいろと両先生から貴重な御意見を伺わせていただいたわけでございます。特に、両先生の御意見にもございましたように、現在被監査法人というものが百万をこえている。ところが、その中で、今度の修正案によると〇・〇五%ぐらいの率になるというお話がございましたけれども、現実にいま問題となっている企業というものは、その〇・〇五%ぐらいに入るんじゃないか、あるいはもっと少ないんじゃないか、〇・〇五%よりもっと少ない、ほんとうの数から言うと一握りの企業がいまの経済界を支配し、またわれわれ国民生活を大きく支配しているんじゃないか、そのように考えるわけでございまして、これは〇・〇五%といっても数の上の問題でございまして、そこに働いている従業員の数及びその企業の社会に与える影響度というようなことを考えますと、これはこの被監査、今度の修正をもっときびしくしても、といいますか、この資本金の額をもっと上げてもいいんじゃないかというふうな考え方も成り立つわけなんでございますが、その点において尾澤参考人はどのようにお考えでございますか。
#39
○参考人(尾澤修治君) 先ほどから承っておりますと、北川参考人からいささか私どもの協会に対する内政批判的なおことばもございましたが、私どもは職域闘争を、あるいは職域に対して拡張をしようとかいうような意味で今回の商法改正をお願いしたことは一度もございません。私どもはあくまでも日本の企業会計と監査制度の充実ということで今回の商法改正の一翼をになわせていただく、そういう意味で私はさっき所信といたしまして、われわれは非常に責任が重大であるということを自覚しているということを申し上げたのでございます。その点をまず御理解をいただきたいと思います。
 それから、まあ反社会性の非常に問題になっているときでございまして、先生ただいまおっしゃったように、確かに五百社前後、〇・〇五%程度の会社でございまするが、それは確かに従業員とか、生産高とか、日本全体の経済界の中において占めるウエートでございまするが、これに従事するところの公認会計士の数あるいは税理士の数というものは、決してこういう企業の規模に従って多数の者が従事しているわけではございません。もしそうであるならば、新日鉄にはおそらく何百人か何千人か、あるいはわれわれの全会員を投入しなければ監査できないというような理屈になってしまうと思います。でございまするから、私は公認会計士の数あるいは税理士さんの数の中で比較的影響度が少ないということを申し上げたかったのでございます。
 その辺を御理解していただきまして、それからもう一つ、私はさっき意見陳述をいたしましたときに申しましたが、こういう大企業の中にもたくさんの税理士の方が、それぞれやはり御自分の使命を負いまして、税務業務、税務上の相談とかあるいは税務書類の作成とかあるいは代理とかいうようないろいろの受け方はございましょうが、とにかく多数の税理士の方方が各企業にそれぞれ入っていらっしゃって、そして私どもと一緒に共存共栄をしながら仕事をしていくという事実をよく御認識いただきたいのでございます。私は、もし必要があるならば、私の監査している会社で何人ぐらいのものがあるかというぐらいのことも大体の想像ができておりますので、まあそんなことは申し上げたくはございませんが、そういう事実もありまして、決して私どもは税理士の方方と職場を争っているというようなことではなくて、むしろそれぞれの専門知識において企業に役立ち、結局は日本全体の経済界のために貢献したいと、こういう役割りをになっておると存じておりますので、さよう御了承いただきたいと存じます。
#40
○佐々木静子君 それから、ちょっと追加いたしますが、この零細会社ですね、零細商人ですね、会社は株式会社というふうに一応名前はなっておりますけれども、まあ実際は二、三人しかおらないような零細企業に現在複式簿記というものを期待するということは、現実の問題としてたいへんに困難なことではないか。これは北川参考人の御意見にもございましたのですが、その点について尾澤参考人はどのようにお考えでございますか。
#41
○参考人(尾澤修治君) この点につきましては、複式簿記が零細企業にも適用されなければいけないという御説はしばしば私は承っておりまするけれども、これは全然どういうわけかわかりません。複式簿記を零細企業に適用しなければそれが認められないというような事実はどこにもございません。単式簿記でもけっこうでございます。必要に応じては、ある程度の大福帳的であっても、その事実さえ間違いのないように記録されていれば、十分これで役立つものではないかと思います。その程度のもので、零細企業に対してはそれ以上のことを決して要求してない。結局複式簿記というのは、複式簿記を適用しなければその会社の経理内容、実態がつかめないような相当規模の企業に対しては大いにそれを適用すべく望まれていると思いまするけれども、零細企業までそれを強制しようというのは、どこからもそんな声は出ていないはずでございます。
#42
○佐々木静子君 北川参考人にお伺いさしていただきますが、最初法制審議会で、被監査会社の対象を一億円となっていたところが、法案では五億円以上となり、その後五億円以上十億円未満の会社については、法律で別に定めるというふうに修正案が出たわけでございますけれども、これは一部には、日本でいま多くの従業員をかかえ、日本の経済界を動かしているのは、これはいわゆる上場会社が問題なのであって、上場されてない会社というのは数が多くても実質はもうほとんど取るに足らない取るに足りないというと何でございますけれども、問題は上場会社であるという論もかなり出ているわけでございますが、その点北川先生はどのようにお考えでございますか。
#43
○参考人(北川孝君) まさに私どもは佐々木先生の御質問の趣旨のそのとおりに考えております。大体この日本の経済界を支配しているのは大会社であり、かつ管理価格が行き届いて物価高の今日を招来している、これは私どもが言うのではなくて、新聞に書いてあるわけでございまするが、そのように批判されておるわけですね。したがいまして、私どもこの資本金基準が一億円になり、三億円になり、五億円になりあるいは十億円まで凍結というようなことは、いわばこの線引きと申しますが、これに合理的な理由がないと思っております。なぜならば、私どもは広く資本を社会から求める公開会社においては、これはやはり社会責任から、ある程度の監査を受忍する義務があろうかと思います。これに反しまして同族の閉鎖会社は、いわば資本と経営が分離されていない、会社の運営にかけてはこれはもう全個人資産を投じてやっておるのであって、粉飾決算をして、増資して食い逃げをするとか、株式の公開でべらぼうな利益をふところに入れる、そういうことは不可能なんです。そういうことを、不可能なものをみそもくそも一緒にして、資本金基準で大会社、小会社を区別するのではなくて、私どもは、量質両面にわたってその会社が社会に及ぼす影響の多寡によって、しかももう一つは、その会社自体の、何と言いますか、本質が違うのですね、公開会社と非公開会社とは。こういう事実に御着目になって、大会社は証取法によって監査を受ける会社ということになれば、これは一つの筋が通るのでありまするが、三億だ、五億だ、一億だという線引き自体がこれは合理的な基準ではないと、かように考えております。
#44
○佐々木静子君 どうもありがとうございました。
 それじゃ、もう時間がございませんので最後に伺いたいのでございますが、先ほど、この商法改正に伴いまして、また税理士の職責の問題などについても、北川参考人のほうからお話があり、国民のための日本の現在の申告納税主義をとっている現在におきまして、この税理士がほんとうに国民のための税理士としてその職責を全うするために、税理士法の改正というものについても取り組んでいらっしゃるというお話がございましたが、もう時間がございませんので、簡単に、どういうふうなことを税理士会としてお考えになっていらっしゃるか、お述べをいただきたい。
#45
○参考人(北川孝君) それでは、御質問に簡単にお答え申し上げたいと存じます。
 現在の税理士法においては、税理士が納税者の代理をして税務当局と交渉をする場合に、その相手方に監督権があるわけです。いわゆる自主権が与えられていない。これでは、かつて弁護士さんが検事の監督下にあったというような事態と同じでありまして、自主権がなくして納税者の代理を十分果たし得ないということは、平たく言えば相手に首を切る権限があって、こちらが遺憾なく、その自己の法律解釈等々について誤りなく、何ものもおそれることなくその代理権を果たすということは事実困難、相手に監督権があってそういうことはできないのじゃないかということでもって、私どもは、税理士法の改正は、まず自主権の確立をすると同時に、これは納税者の皆さまから委任を受けて税理士業務を行なうのであるから、納税者のための税理士制度確立を目ざして私どもはいま要望書を各方面にお配りしておるわけで、言いかえるならば、口幅ったい表現が許されるとするならば、従来は財政資金調達のための一つの制度視された戦事立法にかえて、今日の社会情勢に適合したところの国民のための税理士制度確立を、税理士法改正によってぜひとも実現したい、かように考えております。どうか御理解を賜わりたいと存じます。
#46
○佐々木静子君 どうも貴重な御意見をありがとうございました。本日はたいへんにお忙しいところを両先生からいろいろ御意見を伺わせていただきまして、非常に参考にさしていただきましたともに、いま北川先生からお話がございましたように、国民のための税理士法の確立、そうして国民のための商法のあり方ということについて、私ども努力していきたいと思いますとともに、また、日本では往々にして執行機関が強過ぎる、監査制度が弱過ぎる、そういう面につきまして、この正しい監査のあり方というものを、これからまた監査の職業専門的立場にお立ちになる公認会計士の方々に大いにまた日本の国民のための監査という点に立ちまして御活躍いただきますよう両先生にお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
#47
○後藤義隆君 ごく簡単にお伺いいたしますが、まあ尾澤参考人に主としてお聞きしますが、先ほどから問題になっております監査人の身分の保障と申しますか、独立というようなふうなことがさつきから非常に問題になったのでありますが、これについて北川参考人は、会社から報酬を受けなくて、そしてこれはまあ一例ですが、たとえば会社から報酬を受けなくて協会から報酬を受けるようなことをしたならば、なお独立性が維持されるんじゃないかという御趣旨の発言があったのでありますが、あなたはそういうようなふうな点を、現在のこの改正されるところの監査人制度でもって身分の保障がないかどうか、そしてこれ十分でないかもしれぬけれども、これをどんなぐあいにしたならばもっともっとあなた方の身分の保障というか、独立の保障ができるかというようなふうなことを、あなたのお考えを承りたいと思いますが、それについて、まあ私どもこれは十分でないかもしれませんけれども、この法案を見ておりますと、まず監査人を選任する場合に、株主総会の決議できめなくても、これにありますようなふうに監査役の過半数がきめるんだ、監査役の過半数の同意を得てそうして取締役会できめるんだと、取締役が自分かってに好きな者をだれでもきめるんだというようなふうな、いわゆる取締役に従属しておるというようなふうな立場とは非常に違うというようなふうに私は考えておるわけであります。それからまた、いまのは選任の場合でありまするが、今度は解任の場合にも、同じようなふうに、取締役の気に入らないからといってかってに取締役会でもって監査人を解任するというようなふうなことはできなくて、やはりそれには監査役の過半数の同意が必要だというようなふうな特別のそこにワクをはめて、まあむずかしい条件がつけてある、のみならず今度はそれよりほかに、会計監査人は次の株主総会の三日前に書面を出して、自分を解任されたがそれに対して自分が意見を述べることができると、これは株主総会においてそういうようなふうな意見を述べるというようなふうなことができておって、そして相当そこに権限をやはり私は持っておるんじゃないかというようなふうに考えておって、まあこの程度ならやむを得ないんじゃないかというようなふうに私は考えたのでありまするが、これよりほかにあなた、やっぱり身分を独立というか保障するというか、それをもっとどうすればいいか、もうこの程度でもっていまのところじゃやむを得ないというようなふうに考えておるのかどうかというようなふうなことと、それから、もしそれがあなた方のほうでもって非常な不正な行為が、監査が行なわれるというようなふうな心配があれば、まあ私はそういうようなふうに――公認会計士、この監査人の人格を信じておるから、そういうようなふうなぐあいには思いたくない、また思ってもおらないわけでありまするが、不正な行為が行なわれたようなふうな場合には、いわゆる任務を怠ったときは会社に対しても損害賠償をするというようなふうな特別の条文がございます。それから今度は会社以外の第三者に対しても、いろいろ提出するところの、いわゆる監査人が書類を作成する、それに対して不正なものが書類の中にあったならば、不正な報告書があったりそういうようなふうな不正な監査が行なわれておったならば、自分に過失がないということを立証せなければ、いわゆる無過失であるということを自分のほうで立証せなければ、これはやはり監査人は損害賠償について無限の責任を負わなければならぬというようなふうな規定があって、非常に強いあなた方に対する監督というか損害賠償の義務を負わしてあるから、取締役の言うこと、あるいは会社の言うことはどんな不正なことでも見て見ないふりをして通すというようなふうなことはあり得ないのじゃないか、もしそんなことをするならば、あなた方の身分をかける――身分と言うとおかしいのでありまするが、公認会計士としての地位をそれはかけてそういう不正でもやれば格別でありまするが、それでなければ、普通の状態ではそういうようなふうな不正なことは行なわれないんじゃないかと、こういうようなふうに私は考えているんです。これは万全だとは考えませんけれども、まあまあこの程度の改正ならやむを得ないのじゃないかと、こういうようなふうにも私どもはいま考えておるわけでありまするが、そういう点についてあなたはどういうようなふうなお考えを持っておりましょうか。
#48
○参考人(尾澤修治君) ただいまの御質問でございまするけれども、公認会計士の立場というものは、会社から選任され解任される場合に、そこに身分的保障がなければ十分な監査ができないと、これが理屈でございまするが、ただいまのところは、この法律案によりますると監査役の半数以上の方々の承認ということになり、それから取締役会には報告されるということにとどまっているわけでございます。私はできればこれについてより強い保障がほしいと申し上げたのでございまするが、おそらくこれはまあ万に幾つか、たいへん少ないケースでございまするが、何か特異のケースが起こった場合に、やはりそれに抵抗する方法がないかというようなことを考えまして、より強い保障があれば一そう望ましいという意味でございます。現行の方法によりまして公認会計士が、全然私どもの立場がぐらぐらしている、したがって十分な仕事ができないということを申し上げているのではございまん。現在まで私どもは証取法監査をすでに二十何年かやってきておりまして、その経験によりましても、私どもの態度がき然としておれば、そしてまたき然としておったことによりまして、しばしばこのわれわれの立場を守ることもできましたが、同時にまた一方では、会社側から断わられたような事例もございます。ございまするが、これはひとつ御記憶におとめいただきたいんでございまするが、日本公認会計士協会は御承知のとおり特殊法人でございます。公認会計士法によって設立をした特殊法人でございますので、会員の業務については一種の統制をいたしておるわけでございまするが、そこで、そういう事態が起こりましたときには、やはり納得できるまでその事由を研究あるいは調査検討いたしまして、そして後任の監査人を――業務の引き継ぎをいたしますときに、やはりその前任者及び後任者のそれぞれの監査人としての独立性をどうやって保護していくかということについてのいろいろの手だてを講じているわけでございます。いままでもそういう意味では幾らかの措置を講ずることによりまして、私どもは私どもなりに自主統制的にこの問題を解決してきております。やはり日本公認会計士協会を一つの特殊法人とした意味はここにあろうと思います。特殊法人になりましたのは、実はやはり昭和四十年――あの少し前から研究されていたんでございまするが、あれが一つの大きな契機であったことも、御参考に申し上げたいと思います。
 それから、監査人の責任の問題でございまするが、これは先生おっしゃったとおり、たいへん重たいものでございます。で、日本公認会計士協会におきましても、商法監査が行なわれるといいましょうか、法律案要綱になって出たあのころに、私どもはどこまでこの責任を負っていけるか、非常に重たい責任でございまするが、すでに現在私どもが証券取引法によって負っているところの責任、それをさらに制限するようなことはわれわれの立場からはいたすべきではない、そういう意味におきまして、証券取引法と同じ責任ならばひとつ勇んでこれはしょっていこうじゃないかということに相なっているわけでございます。諸外国においては、ある程度の限度も設けられておりまするが、わが国においてはこれは無限連帯的な責任にまでなっているような次第でございまして、私どもとしては、実はこれは非常に重たいので、その点は実は会員の中にもこれはたいへんだという声がありますが、誤りなきを期すことによってこの点は解決していきたいと、こういうように思っております。
 それから、取締役どの従属的関係がそこにどうしてもできてくるではないかというお説も、これも一つは監査役がはたして取締役に対してどれだけの強い発言ができるか、いわんやまたその下の――下といいましょうか、別の立場にある会計監査人がどの程度まで強い立場を発揮できるかということになろうかと思いまするが、これは監査役につきましては、いままでは確かにあるいはそういうことがあったようでございまするが、やがて次第に人を得ることによりましてこの制度は確立されていくんではないかと思います。ただいまのところ、そのことについて急に強い保障を求められましても、あるいはこれは無理かもしれませんが、これは制度運用の問題であろうかと思います。その意味におきましては、私どもは証券取引法監査の経験を十分に生かしていくことができると、こう思っております。
#49
○白木義一郎君 たいへん長い間ありがとうございました。
 われわれ、国民の一人として、貴重な御意見として承った次第ですが、いろいろお話を伺ってますと、私どもとしても、いま御質問がありましたように、監査制度という問題と、それから皆さん方の独立性の問題という点についてずいぶん認識を改め、非常に今後研究をしていかなければならない、また、率直に言って一まつの不安も感じたわけですが、現時点では、いまお話がありましたように、特殊法人というワクの中でできるだけそれをカバーしていこうということも伺って、いささか感じ入っている次第でございます。
 そこで、率直に一つだけ、これは素朴な国民的な質問ですが、この今回の法改正によって、現在巷間行なわれているところの、大企業の買い占めとか、あるいは不当な投機規制というような企業の自主規制にまで皆さん方の努力が及ぶものかどうか、それにどのような効果があるかどうか、その一点だけお尋ねをしたいと思います。両参考人から伺えばたいへんけっこうだと思います。
#50
○参考人(尾澤修治君) ただいまの御質問に対しましてお答えを申しますが、大企業においては、最近いろいろの反社会性の問題がございまして、これに対して監査制度がどの程度まで役立つかということでございまするが、これは監査役の場合と会計監査人の場合と分けて考えなければいけないと思いまするが、監査役の場合には、当然これは業務監査でございまして、それは法令、定款に違反しているかどうか、それからまた不当行為があるかどうか、そしてその場合に、不当行為といいますと、著しく不当な行為がありまして、それによって企業の経営にいろいろの問題を生ずるというような場合には、取締役の善管注意義務に反するということで、場合によれば、監査役は業務の執行を差しとめをすることもできる、仮処分もできるというようなことになっておりますので、これは監査役の能力に応ずるものであろうかとは思いまするが、とにかく監査役はそれだけの立場を与えられている。でありますから、これが十分にその機能を発揮するならば大いに役立つものになろう、こういうように理解しております。
 それから会計監査人の場合には、私どもは一般的には、これを日常の監査の過程におきまして、監査役が参考になるようなある事項については報告もいたし、監査役とある程度の連携も保ちながら仕事を進めていくということになると思います。ただ、必ずそういうことを発見して、そして通告しなければいけないというようにされますと、もし落ちる、そこまで手が回りかねるということもあり得るわけでございますので、そこで私どものほうの立場といたしましては、当然これはやはり違法であることはもちろん、不当の行為、あるいは取締役の善管注意義務に反しているような場合、そういうことを発見した場合には、直ちに監査役にそのことを報告いたしまして、そしてこれを是正する方途を講ずる、こういうような方法によりまして、企業の反社会的行為についての規制をはかることに役立つ、貢献をいたしたいと、こういうように考えております。
#51
○参考人(北川孝君) この買い占め、投機、あるいは株式公開に伴う株価操作等々に関しまして、この監査役に与えられておる権限は二百七十五ノ二関係でありまして、会社の目的の範囲内でない行為その他法令または定款に違反する行為をなし、これにより会社に著しい損害を生ずるおそれのある場合には、監査役は取締役に対してその行為を差しとめることができる、これでもってはたして、買い占め、あるいは投機、あるいはその他いま批判を受けておるもろもろの行為そのものが、これはとてもじゃないが、押えられないのじゃないか。むしろ私は、監査役にそういう権限を与えるよりは、取締役会というのは、大体業務執行取締役の業務監査をする固有の権限を持っているわけでございまして、やはり私は、監査役とか会計監査人にそういう期待をするよりは、直接その業務執行取締役を監査するところの機関である取締役会にりっぱなたとえば社外重役を入れるとか、その独走する社長以下の業務執行取締役の行為をチェックできるようなりっぱな取締役を取締役会の中へ入れて、取締役会でもってそういうものをチェックするならできるのじゃないか。それもあぶないものですが、それのほうがより可能性がある、かように考えております。
#52
○委員長(原田立君) 他に御発言もなければ、以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御礼を申し上げます。
 皆さま方には御多用中にもかかわらず、長時間にわたりまして御意見をお述べいただき、なおかつ質疑に対する御答弁をいただきまして、ほんとうにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時十分散会
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ソース: 国立国会図書館
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