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1972/07/12 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 法務委員会 第15号
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1972/07/12 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 法務委員会 第15号

#1
第071回国会 法務委員会 第15号
昭和四十八年七月十二日(木曜日)
   午後一時二十四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 七月十一日
    辞任         補欠選任
     加瀬  完君     杉山善太郎君
     鈴木  強君     松本 英一君
 七月十二日
    辞任         補欠選任
     松本 英一君     鈴木  強君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         原田  立君
    理 事
                後藤 義隆君
                原 文兵衛君
                佐々木静子君
                白木義一郎君
    委 員
                中西 一郎君
                増原 恵吉君
                吉武 恵市君
                杉山善太郎君
       発  議  者  佐々木静子君
       発  議  者  白木義一郎君
   政府委員
       法務大臣官房長  香川 保一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   参考人
       弁  護  士  林  宰俊君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○連合審査会に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○刑事訴訟法及び刑事訴訟費用等に関する法律の
 一部を改正する法律案(佐々木静子君外一名発
 議)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 連合審査会に関する件についておはかりいたします。
 商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案、及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案について、大蔵委員会からの連合審査会開会の申し入れを受諾することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(原田立君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(原田立君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(原田立君) 参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
 刑事訴訟法及び刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日、弁護士林宰俊君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(原田立君) 御異議ないと認めます。
 なお、その手続につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(原田立君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(原田立君) 刑事訴訟法及び刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、林参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 林参考人には、お忙しいところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は、ただいま議題といたしました刑事訴訟法及び刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、忌憚のない御意見を承りたいと存じます。
 議事の進め方につきましては、大体十五分程度で御意見をお述べ願い、その後委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。
 それでは、林参考人にお願いいたします。
#9
○参考人(林宰俊君) 約十五分ほど意見を述べさしていただきます。
 私は、本法案に心から敬意を表し、全面的に賛成するものでございます。
 そこでその理由を、私が国選弁護人をしました体験から、体験的なことをもとにいたしまして御説明申し上げたいと思います。
 最初に、謄写ということでございますけれども、謄写にはどういうようなものがあるか、その実物見本というのはこちらに持ってまいりましたので、後ほど質疑の際に、機会がございましたらごらんいただくことにいたしまして、謄写にも、手で直接書きますいわゆる手書き、その手書き一も、弁護人あるいはその使用人が直接書きます場合と、半ば専門的にやっておられる方がいらっしゃいますので、この方たちに頼みます場合、いずれにいたしましても手書きの場合、それから、写真でとるということもこれは謄写の範囲に入っているということが前から認められておりまして、写真をとるという方法がございます。それから、御承知のとおりにゼロックスで、機械でとるということもございます。大体そういう三種類のものがあると思います。
 そこで、その謄写の対象になる書面、普通に書類でございますけれども、そういうようなのにはどういうようなものがあるかといいますと、大きく言いまして、訴訟に関する記録及び証拠物、これは公判になってから裁判所でやるものでございます。それからもう一つは、公判になる前に、事前に検察官の手持ちの証拠書類及び証拠物、こういうものを謄写するということがございます。大まかに言ってそういう二つのものがございます。
 そこで、いま言いましたような方法で、こういうような謄写の対象になるものが、私どもが具体的に刑事弁護人、特に国選弁護人としてやる場合にどういうような順序で展開してくるかと申しますと、私どもは、まず第一番目に弁護士会を通じて国選事件の依頼がございます。会によりまして特定のものが来る場合もありますし、あるいは一定範囲で選択があることもございます。いずれにしましても、大体において、原則として順序よく事件が来たのを受任するということになるわけでございます。受任しますと、私どもは裁判所に行きまして正式に選任書を受け取り、それから起訴状を受け取り、それから被告人に面接をするということになります。被告人に面接をいたします場合にも、すぐに被告人に会ったほうがいいのか、あるいは一応事案の概容を頭に入れてそれから被告人に会ったほうがいいのか、それぞれにいろんな長短があるようでございます。いずれにしましても、被告人に面接をする。それから事案の内容をつかむために、検察官のほうで証拠書類及び証拠物というものを公判の前には必ず弁護人に見せることになっておりますので、その手持との証拠を私どもが検討をするという必要があるわけでございます。その場合に、いま言った謄写ということが非常に重要なことになってくるわけでございます。
 その謄写の書類の中でも、警察官の面前で調べましたもの、検察官の面前でとった調書、そういう供述調書もございますし、そのほかに手続に関する、現行犯の逮捕手続であるとか、あるいは物を領置いたしましたときには領置調書であるとか、こういうようないろいろ手続面に関するものもございます。いずれにしましても、そういうようなのはそれぞれに重要でございまして、供述調書でも、ただ要点だけ閲覧しさえすればそれでこと足りるというものでも必ずしもないわけでございます。もっとも、これは事案の性質によりまして、否認をしている事件、それから自白をしている事件というのでは、多少その重要性の程度に違いがあるということにはなると思います。しかし、いずれにしましても、事件といいますものは、捜査の段階からさらに公判を経て判決のところまでいかなければ真相というのは明らかにならないわけでございますし、裁判の性格が、そもそも捜査と弁護権、防御権がお互いに力を尽くしまして、そこに事案の真相というものが明らかになって初めて裁判所は公正な裁判をすることができるということになっているのでございますから、弁護人、被告人側といたしましては、検察官の手持ちの証拠について十分に検討を加えるということが必要でございます。
 これもこまかく申しますといろいろありますけれども、かりに自白というふうに見えていましても、実際によく検討してみると自白ではないという場合があるわけでございます。これは人間の心理の必然といたしまして、被疑者、被告人という立場になりますと、自分で何か悪いことをしたんだというような気持ちに打ちひしがれていますからそのまま、別にそこに強制、拷問を加えるということはなくても、何となく、そこで自分の弱い立場に置かれている場合には、自分に不利になることをそのまま認めていくということがあるのはこれはもう公知の事実でございます。そこで、かりに自白の事件だといたしましても、その調書をなおざりにしていいということにはならないわけでございます。その点の重要性が非常にあるということでございます。
 それからなお、私どもがその供述調書なんかをただ一読すればいいというようなものではございませんので、たとえば、かりに、そこに電話番号の一つが書かれていましても、その電話番号が被告人の関係者の電話番号であるとかあるいは被告人が前につとめていたところの電話番号であるとか、そういうようなのがいろいろありますけれども、こういうようなもの一つでありましても、実際には事件に非常に重要な関係があるわけです。電話番号一つにいたしましても、実際には警察官が何日もかかって捜査した結果であるかもしれないわけです。そういうようなものを私どもがあとで利用しようというように考えましても、それだけの時間と労力をさくということはなかなか並みたいていのことではございませんので、たとえ電話番号の一つにしましても、調書に書かれてあるというのは非常に重要なものなのでございます。そこで、供述の内容だけではなくて、そこに書かれたいろいろなものが非常に重要な意味を持ってくるということが起こり得るのでございます。
 最高裁判所の附属に司法研修所というのがございまして、そこで判事、検事、弁護士の資格を得るために研修をさせるわけでございますけれども、その中に、たとえば、昭和四十一年二月に司法研修所が発行いたしました「刑事弁護実務」というのがございます。これはむろん、弁護士である司法研修所の教官がおつくりになったものでございますけれども、たとえば、そこには非常に要領よく、いま私が申しましたことがこういうように書かれてあります。「書証・証拠物は殊に綿密に検討を加える必要がある。文字の一字一画或は印影の汚点一個から、事件の全貌がその様相を変ずることもあり得るのである。商業帳簿または計算書類伝票等も細心に検討し疑問があれば再検算を試みる等注意せねばならぬ。帳簿類は多く君大であり、内容も門外漢には難解であって、殊に細かい数字の計算は困難であるが、これをきらって、細密な検討を怠ると、有利な材料を見落すことがあり、そのため証拠として提出しなかったことから、みすみす無罪となるべき被告人に刑責を課すような結果となることがないとも限らない。数字や商業帳簿から真実を発見することは、骨の折れることではあるが時には有罪、無罪の決め手となるような重要証拠となることもあるから注意すべきである。証拠物に加えられた何等かの作為、工作等は精密な証拠の検討によって必ず発見されるものである。」こういうように書いてありますけれども、これは、少しでも刑事の実務をおやりになった方ならば、何らかの意味におきましてぴんとくるというところがあると思います。そういうような意味におきまして、謄写ということは非常に重要な意味を持ってくるわけでございます。
 そこで、そういうような検察官の手持ちの証拠などを検討し、いよいよ公判に臨むわけでございます。そこで、第一回の公判期日には、まず冒頭手続と称しまして、被告人に対する人定質問があり、次に起訴状朗読をいたします。それから裁判官の、被告人の黙秘権その他の被告人の持っている権利の告知があり、そしてその次に起訟状に対して意見を聞くわけでございます。どの点は認めるとか認めないとかいうようなことも、その際に述べられるわけでございます。それが冒頭手続でございまして、その次にはいよいよ証拠調べの手続に入るわけでございます。それで、証拠調べの手続に入りまして、一番最初に検察官のほうから証拠の請求をいたします。こういうような、(資料を示す)ここに書いてあるのがいろいろございますけれども、こういうようなのを検察官のほうで提出をするわけでございます。そこで、ここに書かれましたのは、たとえば、ここで言いますと請求番号が一番からずっとつけられていまして、それで供述者がだれそれ、標目がどれである、たとえば「害」と書いてある被害届け出であるとか、「員」と書いてある警察員の調書でありますとか、領置の調書でありますとか、こういういろいろのものがございます。これが、先ほど申し上げました事前準備として弁護人が検討しているものがここに書かれて出されてくるわけでございます。
 そこで、この証拠を出されましたときに、弁護人といたしましては、この証拠の書証でございますね、書面に対して、同意をするとかあるいは同意しないというようなことを裁判官のほうから意見を求められますので、それに対して明確に答えなければいけないわけでございます。これは御承知のとおりに、同意書面――その書面の調べに同意をいたしますと、そのまま、その供述者を証人として呼ばないで、書類によって証拠として採用し、それが取り調べられるということになりますので、要するにその書面が任意に成立をしまして、そうして内容面についても弁護人のほうで反対尋問をする必要がないということであれば、その書類をそのまま同意する同意書面としてこれが裁判所に証拠として提出されるわけでございます。ですから、その意味におきまして、弁護人といたしましては、先ほど言いました事前の書類の検討ということはこれは欠くべからざることでございまして、その場合にも、ただ単に要点だけを筆記していましたならば、いまの書面の同意にいたしましても、その書面の何ページから何ページの何行までは不同意です、あとは同意ですと、そういうように特定をして、どこからどこまでが同意、不同意ということを言わなければ正確ではありませんので、それはむろん書面全体を不同意ということにしてもよろしゅうございますけれども、そうなりますとはなはだ裁判の非能率というのが生じますので、できるだけ、同意、不同意を述べる場合にもどこからどこまでということを特定して意見を述べるということになっているわけでございます。その場合に、先ほど言いましたように、書面を正確に把握しておりませんとそういうことができないわけでございます。ひいてはそれがその後の裁判の進行にも差しつかえる、弁護人が真相をつかむということがなかなか困難になってくるということにもつながりかねませんので、その辺がまた重要なことになってくるわけでございます。
 それから、裁判がそのまま進行いたしまして、それならば証人を、どういうことの立証のためには証人を呼ぶということになりまして証人を呼ぶ、そういたしますと、今度はその証人について供述調書というのが裁判所でできるわけでございます。その供述調書を今度は次回期日前に、弁護人といたしましては、どういうような内容の供述をしたかということを知る必要があるわけでございます。ここでまた再び謄写の問題というのが起こってくるわけでございます。刑事訴訟法の四十条の証拠、訴訟に関する書類というものがそこで生きてくるわけでございます。そこで、その場合にも、先ほど言いましたように、手書きをするとか、あるいはゼロックスを頼むとか、写真をとるとか、いろいろな方法がございますけれども、要するに、そこでそういうような謄写をいたしまして、そうして裁判の進行上重要な資料として活用するということになってくるわけでございます。
 そういたしまして、いよいよ証拠調べが終わるということになりますと、最終に今度は検察官のほうで論告求刑をし、それに対して被告人、弁護人というものがいわゆる最終弁論というのをするわけでございます。その最終弁論をいたします場合にも、いままで謄写した書類というものが手元にあれば、それを参考にしてもろもろの供述というものを対比して、どの証拠は信用するに足る、どの証拠は信用するに足りない、事案はどういうように把握すべきであるというような意見が最終弁論としてそこに出てくるわけでございますけれども、そういうようなものがないと、いま言ったようなことはとうていできないということになるわけでございます。
 そこで、いま言いましたように、訴訟の始まる前から訴訟の終結に至りますまで書類及び証拠物の謄写ということは非常に重要な意義を占めているわけでございます。ところで、現在この謄写の費用というものはどれくらいかと申しますと、ゼロックスの場合には、裁判所で東京の場合にやっていますのが、一枚三十円でございます。こういうようなのが、一枚とりますと三十円でございます。それから、ここにありますのは、これは写真でとったものでございますけれども、これは普通の記録のちょうど二分の一の大きさにとったものでございまして、専門の写真家がとっていますので、これも小さくありますけれども非常に見やすいものでございます。これが大体、原価が三十五円ぐらいかかるそうでございますが、もちろん頼みますと、そこにいろんな手数料がかかりますから、これが四十五円から五十円ぐらいでございます。それから手書きの場合にも、大体、人によって違うようでございますけれども、大体四十円くらいというようなことでございます。そこで、そういうような費用をかけましても、これは先ほど言いましたように、非常に重要なことでございますので、それだけのお金をかけまして、きっちりした書類を持っておくということが必要になるわけでございます。
 ところが、現在、国選弁護人に関しましては、この非常に重要な謄写料というものが必ずしもすぐに支払われるというような根拠がないし、完全には行なわれていないという実情でございます。完全には行なわれていないと言いますのは、運用の面におきましては、裁判所でも、いま言ったように非常に重要な問題でございますから、それをカバーすべく、裁判所が非常に必要と認めた場合には謄写料にかかったものを参照にしてきめるというようなことになってはおりますけれども、実際に国選弁護人になった人に経験的に聞いてみますと、それは出てないというところもあるようでございます。
 このことはもうだいぶ前から、十年以上も前から問題になっていたと見えまして、日本弁護士連合会が昭和三十五年に、「自由と正義」という日弁連の機関誌でございますけれども、そこで座談会をいたしまして、出席者は、司会者が小野清一郎編集委員長、それから東京地裁から、当時の伊東秀郎判事、岸盛一判事、伊達秋雄判事、横川敏雄判事、それから東京地検から、佐藤忠雄検事、谷川輝検事、弁護士会側から、日弁連会長の岡弁良会長等々がここに出席をいたしまして、「国選弁護制度の実状」ということで、相当詳細な座談会をしていろんな問題を検討しております。その中でのおもなるものは、国選弁護の費用の問題でありまして、その中に、やはりいま言いました謄写の費用のことが出ております。そこで、当時の岸盛一判事などもその発言の中で、「記録の謄写は裁判所の方で費用を出してやることがあるんだそうですね。」という佐藤検事の問いに対しまして、岸判事は「特殊といいますか、やはり強盗殺人で死刑になるかどうかというようなときは、弁護人の方から申し出があれば、一応自費で謄写していただいて、そしてその受取を出していただいて、報酬額に加算するようにしております。」こういうように答えております。さらに続けて佐藤検事のほうで、「ところが問題は、そういう事件じゃない場合ですね。」岸刑事「簡単な事件のときは、これは全部謄写の費用まで出しておったら、それこそ……。」小野編集委員長は、「予算が足りないですね。」それから佐藤検事「そういう強盗殺人というような事件じゃないけれども、相当複雑な事件であって、謄写をしなければならないというようなときは、いかがですか。」岸判事「そういうときには、やってよろしいと思いますね。」いろいろ談話がそこに続いております。こういうようなことで、謄写の費用というのは、事案の性質というものによってよほどむずかしいもの、否認事件という場合には認めてもよろしい、それも弁護人のほうで一応自費で立てかえをいたしておきまして、その後に裁判所のほうで適当と認めた額を出すというようなかっこうになっているわけでございます。
 そこで、こういうようなことではどうしても国選弁護人の活動というものに非常に支障を来たしますし、いまここで問題になっておりますのは、弁護人の報酬そのものではございませんけれども、実は現在でも、この謄写の費用が報酬額の中に加算をして払われる。支払われる例外的な場合でも、報酬の中に加算をして支払われるということでございまして、これは純然たる費用であるべきでありますけれども、報酬額の中に入れて支払われるというような形になっているわけでございます。
 そこで、どうしてもこれは、先ほどもちょっと申しましたけれども、重要なことでございますので、ちょっと重複したことを述べさせていただきますが、否認事件とか自白事件というのは、必ずしも明確に分けられない場合がある。よく記録を検討してみなければ、そこにどういうような真実が隠されているかわからないというようなことがございます。そうでないといたしましても、情状の面でまた非常に重要でございます。情状と申しましても、単なる間接的な事実というだけではなくて、たとえば窃盗であるとか横領であるとか、いろいろなそういう財産犯の場合には、示談をして被害弁償ということが非常に重要な問題になってまいりますけれども、その被害額を被害者に対して支払うというような場合にも、いま言ったような証拠書類というものがきっちり自分の手元にありませんと、第一どこに何を、どれだけの金額を持っていっていいかわからない。私どもの経験から申しましても、何件も窃盗をいたしまして、それの被害弁償を一々回って歩くわけでございますけれども、東京あたりですと、新宿だの池袋だのいろいろ盛り場がありますから、よく引っ越しをいたしますし、お店なんかも時間によって締まっているところがありますし、さがすだけでもなかなかたいへんだという場合がございます。そういうような場合にも、先ほど申しました電話番号とか住所とかその他のものがそこに書いてあれば、それを手がかりにして見つけて、やっと何とか損害賠償をするというようなことがございます。そういうような広い意味での情状というような問題にも関係をしてまいりますので、どうしても謄写というものを重要視をいたしまして、国選弁護が実質的にほんとうに、憲法の三十七条が規定している弁護人依頼権というようなものに役立つような形に持っていかなければならないんじゃないかというふうに考えます。
 話があちこちいたしまして必ずしも要領を得なかったと思いますけれども、一応これで私の意見を終わらせていただきます。
#10
○委員長(原田立君) どうもありがとうございました。
    ―――――――――――――
#11
○委員長(原田立君) 委員の異動について報告いたします。
 昨十一日、加瀬完君及び鈴木強君が委員を辞任され、その補欠として杉山善太郎君及び松本英一君が選任されました。
    ―――――――――――――
#12
○委員長(原田立君) これより林参考人に対する質疑に入ります。
 御質疑のある方は順次御発言を願います。
#13
○佐々木静子君 本日は、林参考人にお忙しい中をお越しいただきまして、いろいろと貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。
 非常に詳しく具体的に御説明をいただきましたので、実は私がお尋ねしようと思っていたことも中にあったわけなんでございますけれども、若干私は補足的に、いまの御説明に対してお伺いさせていただきます。
 この刑事弁護をするにあたって、謄写ということがこれが不可欠である。記録の謄写ということがなければ十分な弁護ができないということがいまの御説明で十分わかってきたわけでございますけれども、国選弁護の場合、この謄写料がほとんど支払われておらない。これは先生は東京の弁護士会に、東京で弁護士をしていらっしゃいますので東京のことがお詳しいのじゃないか、あるいは全国的なことを御存じでございましたら、全国的に教えていただけたらいいと思うのでございますけれども、大体謄写料は全額裁判所が支払ってくれているようなケースが多いか少ないか、現在の問題でございますね。また、統計的なことは、個々の弁護士さんの問題ですので非常にむずかしいと思うんでございますけれども、先生が把握してらっしゃるところでは、何者といいますか、何割と申しますか、どのくらいの割合で謄写料を裁判所が、全額ですね、支払ってくれているかどうか、そこら辺の見当をちょっと御説明いただきたいと思うんでございますが。
#14
○参考人(林宰俊君) 実は残念ながら。パーセントとしてはどれくらい支払われているのかということはわからないわけでございます。しかし経験的にいろんな人に、私もここに参りますにつきまして、ほかの弁護士にもいろいろ聞いてみましたけれども、これは数で幾らというふうには言えませんけれども、非常に比喩的なことで恐縮でございますけれども、たとえば十人に一、二件という割合じゃないか、これも正確な数じゃございませんので、非常に比喩的なことでございますが、そういうような感じでございます。それから特殊の事件といたしましては、昭和四十五年ごろ、安保闘争の関係でいろんな公安事件がありまして、それが国選事件に回ったことがございますけれども、この公安事件の場合には、裁判所のほうでも謄写費用というものを大体十人のうち七、八割方、つくられて請求なさった方にはほとんど支払われたんじゃないかというふうに思います。
#15
○佐々木静子君 いまのお話は、大体十人のうち一人か二人とおっしゃるのは、東京の弁護士さんの比率でございますか。全国的なことでございますか。
#16
○参考人(林宰俊君) 東京の場合でございます。
#17
○佐々木静子君 請求しないで謄写料が支払われたというケースはあまりないわけでございますね。全部これは請求をした分について支払われているわけでございますか。
#18
○参考人(林宰俊君) そうでございます。
#19
○佐々木静子君 というのは、請求をする人が十人のうち一人ないし二人で、請求した場合は支払われているということになるんですか。それとも十人請求したうちで一人か二人が支払われているということになるんですか。そこちょっと、どちらとも解釈されますので、御説明いただきたいんですが。
#20
○参考人(林宰俊君) 請求した場合にも払われない場合もあるわけでございます。ですから、請求しても支払われないという場合はのけまして、とにかく現実に支払われるというのが十に一、二の割合じゃないかと、こういうように私は考えております。
#21
○佐々木静子君 この請求するというのを、実はここにも、最高裁判所あての国選弁護の請求書と東京地方裁判所あての国選弁護の請求書というものを、私ここに持っているわけでございますけれども、これを見ましても、謄写料が幾らかかったかというようなことを記載する欄がございませんですね。これは謄写料を請求する場合には、別に謄写料請求書というような書面でもつくって、そして謄写屋さんの領収書あるいは写真屋さんの領収書でも添付して別に請求するわけでございますか。手続的にはどうなっているわけでございますか。
#22
○参考人(林宰俊君) いまの点でございますが、そちらにいま先生のお持ちになっておられるのは正規のものだと思いますけれども、謄写料というものを請求するのは、正規ではなくて運用上ということになっていますので、いま言った正規のものには載っていませんで、謄写料を請求します場合には、その請求する弁護人が自分で、上申書というような形で、謄写屋さんに支払った領収書をつけて特に請求していると、こういう形でございます。
#23
○佐々木静子君 そうして、上申書を添えて謄写屋さんの領収書までつけて請求しても認めないケースというのもあるわけですか。あるとすればどのぐらいの割合でそういうことがあるというふうにお考えになりますか。
#24
○参考人(林宰俊君) その割合が、私としてはちょっと数字的に申し上げられないのでたいへん残念でございますけれども、経験的に私が聞きましたのでは、数年前にある弁護人が非常に、最高裁判所でどうしても書面が必要だ、これはまあ上告事件の場合には必要なのが原則ですけれども、ということで、自分で自費で支払ってそして請求をした、ところが最高裁判所のほうでは、そういうのを支払った例がないということで、その人は認められなかったということを一つ聞きました。それからもう一つは、一、二年前に東京地方裁判所のほうに、やはり先ほど申しましたように上申書という形で請求をしたけれども、これも認められなかったというようなことを聞いたことがございます。
#25
○佐々木静子君 そうすると、これは実は最高裁判所のほうから通達で、謄写料の請求があった場合には、原則としてこれは国選弁護士に報酬額の中に含めてお支払いするようにというふうな通達が出ているようなんでございますが、これは、そうすると、そういうことがまだ完全に最高裁のほうで履行してくださっておらぬということになるわけでございますね。
#26
○参考人(林宰俊君) まあ現実問題としては必ずしもすんなりいっているものではないというふうに見られます。いま御指摘のありました最高裁判所の通達というのは、毎年物価なんかが上がりましたときには、それにつれて大体年に一回ぐらいそういう通達を出しているようでございますが、最近のものでいきますと、裁判所時報六一七号、四十八年五月十五日の発行でございますが、その六ページに「国選弁護人に給すべき報酬額について(昭和四八年五月二日最高裁刑二第五八号高等裁判所長官、地方裁判所長および家庭裁判所長あて刑事局長および経理局長通達)」というのがございます。その中で別表をつけまして、一番で簡易裁判所の一件の開廷回数が三回のときに一件の報酬が一万一千八百円、これはあくまで基準でございますが、それから地方裁判所で三回の開廷で一万六千四百円というのが、報酬というのが出ています。その本文の中におきまして「具体的報酬額の決定にあたっては、弁護人が訴訟の準備の励行に努め、そのため開廷回数が減少したと認められる場合、あるいは訴訟の準備のためにとくに必要な経費(たとえば、必要な交通費、記録の謄写がとくに必要と認められる事案におけるその費用等)を支出した場合には、その事情を適当に参しやくするのが相当であると考えられます。」と、こういうように書いてあるわけです。ですから、あくまでも裁判所のほうでその事情を適当に参酌するという程度にしか運用上配慮されてないことがありますので、先ほど言ったような実際上の問題が生じてくるのではないかというふうに考えます。
#27
○佐々木静子君 これは毎年、いま先生おっしゃったように「訴訟の準備のためにとくに必要な経費」ということで「必要な交通費、記録の謄写がとくに必要と認められる事案におけるその費用等」ということを最高裁の通達で表示はしているんですけれども、それであっても、その上申書を添えて、しかも領収書を添えるというのは、すでにもう弁護士が立てかえて払っているということになるわけですが、それを認めないで削っているケースが相当あるということにほかならないわけでございますね。
#28
○参考人(林宰俊君) そういうことでございます。
#29
○佐々木静子君 これ、かりにこの謄写料を全部支払ってもらうということになるとしても、謄写料というかっこうではいまは支払っておらずに、この最高裁の通達によっても、その弁護士報酬というかっこうで支払っているのがすべてでございますね。謄写料として独立して払ったというケースは取り扱い上やっておらぬわけでございますね。
#30
○参考人(林宰俊君) そのとおりでございます。謄写料ということで支払われたことは、私の知る限りございません。
#31
○佐々木静子君 これは実は先生もお読みかと思いますが、一九七一年の五月号「自由と正義」に「ある国選弁護人の日記」というのがございまして、この弁護士さんがある強盗強姦と強盗殺人事件の国選弁護を担当されて、これはまる一年かかっていらっしゃるんですけれども、法廷回数だけで三十回法廷に出られて、非常に印象の深い事件である、そのほかにもむろんあちこち何回も足を運ばれて活動された、そしてその結果無罪判決をかちとることができて、これは下級審ですか、下級審の刑事判例集にもこの事件は載せられたという、まあ国選弁護人として非常に生きがいがあるといいますか、たいへんに御努力なさって無罪をとり得た事件ということで「自由と正義」に載せておられるわけなんですけれども、実は私、この弁護士さんに、この事件の報酬ですね、これが幾ら裁判所が認定されたかということをお尋ねしてみましたところ、これは裁判所が非常に好意的に特別に、まあこれは特別にと言うと多少語弊があるかもしれませんけれども、いろいろと弁護活動に費用が要っただろうということをお考えになって、これは経理局ですか、経理局とも御相談なすってくだすって、十三万円を報酬として支払われた。これは異例のことをやってくだすったということなんですが、その中で先生のほうが謄写費用で払われたお金が九万円なんでございますね。ですから純粋の報酬というと四万円になるわけなんですけれども、もちろんその中には、活動するための交通費とか調査費用その他が要るから、実際のところは十三万円で何にも――足が出るだけじゃない、もう持ち出しのほうがずいぶん多くなったけれども、この裁判官は非常に好意的で、謄写料九万円もまず含めて、十三万円という裁判所の言う大金を支払ってくだすった。これはしかし、まる一年間をこの弁護士はこの事件に費やしているわけですね。それで、その裁判所では非常に大金を国選弁護人に払った例外的措置であると言われるけれども、謄写屋に払ったお金だけでも九万円要っている。一年で四万円。ほかの交通費とか何とか全部かりになかったとしても、月にすると三千円ほどですね。こういうふうなことが、先生お考えになってこれは非常に好意的な、例外的にたくさん国選弁護料を払ったケースということで、これは先生、ほかの私選弁護の費用とか、あるいは別に弁護士じゃなくっても一般知的労働者の報酬額などと勘案されて、これが正当な対価とお思いになるかどうかですね。これは報酬額全部を支払われたケースですけれどもね。その点について、先生はどういうふうにお考えになりますか。
#32
○参考人(林宰俊君) いまの御質問でございますけれども、全く先生の御質問のとおりでございまして、実は私もその記事を読みましたけれども、その中で特に御注意いただきたいと思いますことは、その弁護人が、たしか大崎先生という弁護士だと思いますが、その弁護士がそれだけの事件に対して打ち込むことができましたのについては、その先生自身がその報告論文の中に書いておられますが、その先生は、当時ほかの先生の事務所につとめていると申しますか、要するにほかの弁護士のところで働いていたわけでございます。そのときに実際にはほかの事件ももっとやらなければいけないんだけれども、その弁護士のもう一人の先生が非常に理解をもってくださって、その時間をあけて快くそれに協力をしてくださったということが書かれておるわけです。ですから、いまのは報酬が安いということはもうおっしゃるとおりでございますけれども、それ以外のほかの事件をほんとうはしなければいけないわけです、依頼されている事件があるから。それでなければ弁護士が生活は成り立っていかないわけです。ですが、そのときにはたまたま幸いにもそのほかの弁護士の先生のところにつとめていて、その給料か何かあったと思います。そしてその先生も非常に好意的に計らって、いまの事件に精力をつぎ込むということが許されたのだからそういうことができましたので、その点につきましては大崎先生御自身が、こういうようなむずかしい事件であった場合には、何人かの人が実際に手分をしてやるということでなければとてもできないということを書いております。ですから、これは国選弁護の報酬が安いというだけではなくて、実際ならば、その弁護人がほかの事件にもっと力を入れてやって、ほかの事件で得べかりし利益というものがあった、その利益までも放棄してやっているということでございますから、その損失というのは、金額の面だけでいきますと、相当なものだと思います。
#33
○佐々木静子君 これは参考人のおっしゃるとおりに、これは私も大崎先生からじかに――一般的な国選弁護は全部そうですけれども、大体独立して事務所を持っている者は国選弁護を引き受けることができない。これは事務所の経営が成り立たないから、弁護士の義務だとは思っても、現実には引き受けられない。結局、そこの事務所につとめて給料をもらって働いているいわゆるいそ弁が、事務所から給料をもらって、そして事務所の仕事をやる時間の一部なり大部分をさいて国選弁護をやるから、国選弁護というものをやっても食べていけるだけの話であって、これは実際のところは、全く弁護士の持ち出しの問題である。
 で、これは国選弁護のあり方ということについてもいろいろ考え方があって、弁護士であれば、持ち出しても当然義侠的にやるべきだという考え方もこれはあるかもしらないけれども、憲法で当然に国選弁護をつける権利がある、また国選弁護をつけなければならないというふうに、憲法並びに刑事訴訟法にはっきりとうたっているのに、それに対して、それに必要な報酬を、ましてや報酬どころか、弁護活動に必要な実費弁償も裁判所がしないというふうな実情であって、これはけしからぬということで、日本弁護士連合会が毎年声を大にして、裁判所当局あるいは法務当局に、少なくとも弁護活動するための立てかえた実費ですね、実費は払ってもらわないと話にならぬじゃないかということで運動をやっているわけですけれどもね。いま先生がちょうどおっしゃいましたように、この国選弁護で相当持ち出しがある、持ち出さざるを得ない実情である。そういうことは、現在の東京の弁護士会、三弁護士会においてもそういう状態がいまなお依然として続いておって、ほとんど改善されておらぬというふうにお思いになるわけですか。少しぐらいはよくなっているとお思いになるわけですか。ますます悪くなっているということなのか。そのあたりをちょっと御説明いただきたいと思うのです。
#34
○参考人(林宰俊君) これは特に悪くなったかどうか知りませんけれども、裁判所なんかでも、先ほど言いました運用上考慮をしようということは、私どもが、裁判所、検察官なんかと国選弁護の連絡協議会というのが年に一、二回ございますので、そのときに要望いたしますと、おっしゃるのですけれども、そうして、事実その努力もなされないわけではないと思いますけれども、しかし実情は、やっぱり物価も上がりますし、国選弁護人としては特によくなったとかいうことはとうてい言えないというふうに考えます。
#35
○佐々木静子君 それから、いまの立てかえた謄写料実費を国選弁護の報酬として払うということになると、そのとき全額裁判所から弁護士に、あるいは弁護士会を通じてのかっこうになりますけれども、現実に弁護士に支払われるのか。あるいは、そのときに裁判所が一〇%源泉徴収をして、その残りを弁護士に支払うのか。この実情はどうなっておりますか。
#36
○参考人(林宰俊君) これは一律に一〇%の源泉徴収をして、その残額を弁護士会を通じて渡すわけでございます。
#37
○佐々木静子君 そうすると、実費の立てかえですね。報酬について一〇%引かれるということはやむを得ないというか、当然としても、謄写屋に払ったお金の取り次ぎをするだけでも、これは一〇%頭から引かれている。結局、こちらは、たとえばいまのケースで言うと、九万円払ったのに、こちらに返ってくるお金は九千円引かれた八万一千円というお金で返ってくる。これは国選弁護でもかなり謄写料の多い場合も――一般の私選弁護ですと、一つの事件で、大きな事件だと五十万円とか七十万円とか謄写実費が要るわけですけれども、そんなものを弁護士が全額謄写屋に払っているのに、裁判所からおりてくるときには一〇%引かれている。これは非常に不合理だとお考えになりませんか。どういうふうにお思いになりますか。
#38
○参考人(林宰俊君) これは当然経費とすべきものですから、それから源泉徴収するということは、その限りでは矛盾していると思います。
#39
○佐々木静子君 きょうは税理士さんの傍聴の方もたくさんいらっしゃるのですけれども、あとできっちり精算すれば返ってくるはずだと裁判所なり当局は言われるわけですけれども、現実の問題として、一年間も月三千円やそこらで国選弁護をやらされて、そのあとまたこまかい計算をして税務署と交渉せんならぬとなると、めんどくさいから、もう災難とあきらめて、もうそのまま泣き寝入りしているというのが大体の弁護士の実情じゃないかと思うのですけれども、このあたり、私選弁護の場合ですと、謄写料というものは、これは依頼者が直接謄写屋に払うから、弁護士のほうには税金も何もかかってこない場合が多いのじゃないかと思うのですけれどもね。そういうふうなバランスから考えても、この謄写料を実費として、実費弁償のかっこうで裁判所から、報酬の中から謄写料の実費だけを別勘定にしてこれを弁護士に払うというようにしてもらわないと、やはり弁護士とすると、不当な迷惑というか、要らざる不利益を招くというようなことに――これは一人の弁護士にすると、そのたびに、一万円とか五千円とかのことであっても、これを全部の弁護士にすると、これはたいへんな大きな額になってくるし、そういう問題についてはやはり実費弁償というかっこうで別に払ってもらわないと不合理じゃないかというふうに、これはだれしも考えるのですけれども、そのあたりについてもう少し説明していただきたいと思うわけです。
#40
○参考人(林宰俊君) いまおっしゃるように、これは当然私選弁護の場合でありますと、依頼者が直接払う場合もございますし、それから弁護人が受け取った場合にも、これは当然経費として出しますから、その辺の矛盾はないわけですけれども、国選弁護の場合には、私どものほうで立てかえて、そうしてそれがかりにうまくいって全額認められた場合にも、それは報酬の中に入るということで、それから源泉徴収をされるということですから、まああとあと全部の精算をするということは、それは当然可能ではございますけれども、その辺のところは、経費は経費として正確に法文上なりに明示すれば、これは問題の起こる余地はないのでございますから、その辺のところは本法案のようにはっきりとさせたほうが国選弁護の活動上も非常にいいというふうに考えます。
#41
○佐々木静子君 そうすると、先生もそういうふうなことで、ちゃんと報酬の中から別ワクに実費弁償のかっこうで支払うというふうにすれば、税金関係の面でもむだな――むだなというよりも、払わなくても済むものを差し引かれたりする必要もなくって正当な権利が守られる、そういうふうにお考えでございますね。
 それから、いま先ほど私、通達のことを申し上げましたけれども、毎年最高裁はあのような通達を――
  〔委員長退席、理事白木義一郎君着席〕
通達自身も非常に不完全な通達だと思うのですけれども、何か非常に職権主義的な、いわゆるお上が認めればというふうな権威主義的な通達の内容になってはおりますけれども、一応そういう通達で必要な謄写料は払うようにということは言うているのに、なかなか履行されておらぬというようなことから考えても、法律になっておれば、各裁判官がその点もしんしゃくしてちゃんとやってくれるのじゃないか。そういう意味で、やはり法律にする必要があるというふうにお考えになっているわけでございますね。通達では追っつかぬというふうにお考えになるわけでございますね。
#42
○参考人(林宰俊君) それはもうまさにおっしゃるとおりでございまして、ぜひともこういうような法案を通していただきたいというふうに念願する次第です。
#43
○佐々木静子君 実はこの間、この件について他の法務委員の先生から法務大臣に御質問があったんですけれども、そのとき大臣は、これはもう当然な、こうしなければならない、当然だと思える法案だということで、率直に賛成の意を示されているわけなんでございますけれども、現実に裁判所なりあるいは法務当局で御心配になるのは、そうなったならば何でもかんでもみんな謄写屋へ回して水増し請求をするんじゃないかというふうなことを危倶されているわけです。私自身は、これは、思いますのに、国選弁護人ですから、弁護士が請求するわけですから、そんなみみっちい、要らぬものを二枚つくって水増し請求するようなそういうつまらぬことをやるのは、少なくとも弁護士の中にそういうことをやる人間はおらぬと思うわけですし、かりに一枚余分にとってみたところで、これは全部謄写屋へ入るわけで、弁護士自身は一銭のもうけにもなるわけでもないので、ましてやそんなことをやる人はないんじゃないかと思うわけなんですけれども、その点について先生はどのようにお考えになりますか。
#44
○参考人(林宰俊君) いまの点でございますけれども、これはちょっとそういう余地はないんじゃないか、御心配の余地はないんじゃないかというふうに考えます。と申しますのが、先ほど冒頭に私が申し上げましたとおりに、大体証拠書類として出てくるのは、検察庁の手持ちのものこれこれを証拠として請求する予定のものを弁護人に見せるわけでございますから、これはもう検察官のほうで予定されている分量というのはその事件によってきまっているわけでございます。そして、それが先ほど申しましたとおりに、証拠調べの裁判所の段階におきまして、先ほどお見せしましたとおりに、こういうような検察官請求証拠目録ということできっちり出てくるわけでございます。これが提出されるわけでございますから、裁判所のほうでこれをごらんになれば、どういうような請求されている証拠があるということはわかりますから、いまおっしゃったような御心配というのは絶対にない、これは裁判の実情をよく御存じないから出てくる話ではないかと思いますけれども。
#45
○佐々木静子君 それから、私も考えるのですが、先生おっしゃるとおりだと思いますし、特に私も弁護士の一人といたしまして、そんなことは絶対にないというふうに同僚らのことを考えても思うんですけれども、特に、国選弁護は自分の所属している弁護士会の所在地にある裁判所の国選弁護をやるのが普通でございますから、そういう謄写を三枚で済むところを五枚したからというようなつまらぬことで信用をわざわざ裁判所に対して失墜するようなことをあえてやるような人はまずおらぬじゃないか。私も全くこれは笑止千万な御懸念じゃないかと思っているわけなんです。
 それから、この謄写業者ですね。いま謄写の種類に手書きとゼロックスと写真とあるというふうにおっしゃいましたけれども、これはだれでもがその裁判所なり検察庁へ入ってその謄写屋をやるということができるわけじゃなくって、これはそれぞれの官庁で指定された人がやっているわけでございますね、大体。どういうふうになっておりますか。これは、私の知っている範囲では、大体、そこの裁判所とかそこの検察庁で信用ができると認めた謄写屋が出入りしておって、その謄写屋の値段というものは大体一枚幾らときまっておるので、かりに、これはどうせ国から取れるのだからたくさん請求しようというようなことで、別の謄写屋が入ってきて金もうけをして荒かせぎをするというふうなことは、これは特定の謄写屋だけしか入れないように普通どの官庁でもなっておるようですけれども、そういう心配も起こり得るわけなんでございましょうか、どうなんでしょうか。
#46
○参考人(林宰俊君) 一つは、特定の謄写屋が入っているかどうかという点につきましては、私は必ずしも正確なお答えはできないのですが、ただ私は東京におりますので、東京の地方検察庁とかあるいは東京の地方裁判所、東京高等裁判所、こういうところでゼロックスの機械を据え付けまして、それによる謄写をしているという人は、これは確かに限られていると思います。そうでなければ機械の置き場所が大体困りますし、それから、いまおっしゃったような信用の問題もあるのかもしれませんけれども、そういうゼロックス機械による謄写というのは確かに特定の人にやらせている。しかし、手書きとか写真とかそういうようなものは必ずしも特定されていないんじゃないかと思います。ただ、事実上そこで業者が大々的に専門的にやっているということになりますと、それは専門化していて非常に手順もいいわけですし、そういう事実上大規模な引き受けをしているという方はいると思いますけれども。ですからだれが行ってやってもいいことはいいわけです、機械を除きますと。そういうように考えますけれども。
#47
○佐々木静子君 そうすると、たとえば大体写真が、東京の場合を例にして、一枚四十円ないし四十五円というふうに聞いているのですが、たとえば一枚百円の業者が入ってきて、そしてそれが百円の請求書をつけて、国選の費用を請求する、ということもあり得るわけですか。そういうふうな場合については、先生はどういう措置をとったら一番いいとお考えになりますか。
#48
○参考人(林宰俊君) 先ほど申しましたように、ゼロックスでやるのが大部分でございますし、それから大規模にやっている業者というのも事実上きまっているというようなことでございますから、ことさらに、四十円くらいが妥当なものが百円になるとかなんとかいうことは、これは考えられないというふうに思います。
#49
○佐々木静子君 そうすると、現実には大体値段というものは、これは日々の幾つかの事件があって、その業者が連続してやっているのが普通であって、一枚幾らの値段は固定しているので、そういうふうに不当にたくさんの請求が出てくるということは、これは先生としても、その点、法務当局あるいは裁判所当局御心配になっているのですけれども、そういう点は全然心配は起こらないというふうにお考えですね。
#50
○参考人(林宰俊君) 先ほど申し上げましたような情勢から、そういう心配はないと思いますし、まあかりにそういうようなことがあるとしますれば、これは本件のことに限らず、弁護士会の自律権によりまして、弁護士会内部で懲戒の問題とかなんとかということが起こりますから、その点の御心配は要らないというふうに考えます。
#51
○佐々木静子君 それから、この法案自身の中に「裁判所が相当と認める」範囲という表現が使ってあるのですけれども、そういうふうな場合も含めて私は考えておるわけなんですけれども、そういう面でも十分に規制できるというふうにお考えでございますね。
#52
○参考人(林宰俊君) そのとおりでございます。
#53
○佐々木静子君 ただ、これは今後の方向として、訴訟費用に、何といっても、ほかの交通費、調査費用などもずいぶんかかるわけでございますが、一番身近などの事件にも共通な問題としての謄写料について、これは毎度、裁判所と弁護士と検察庁の間で毎年行なわれる司法事務協議会でもいつでも問題になっているのですけれども、何とか検察官が証拠として出す書類について、これはもうそのときに副本を、民事訴訟と同じように、つくって弁護人に渡していただけないか、そのことが毎度問題になっているのですけれども、そういうふうにでもすれば、これはさしあたりは検察庁のほうに多少紙代ぐらいは、あるいは手数料が要るかもわからないけれども、調書をとるときに複写にしてとってもらうとか、あるいは薄い紙にしてリコピーを――ゼロックスだと高くつくから、リコピーにして渡していただくとか、そういうふうにすれば、一番安上がりでしかも訴訟促進にも役立つ、そのように先生お考えになりませんか。その点はどういうふうにお考えになりますか。
  〔理事白木義一郎君退席、委員長着席〕
#54
○参考人(林宰俊君) その点はいま先生のおっしゃったとおりでございまして、刑事訴訟と民事訴訟とはそれは本質において確かに違いがあるかもしれませんけれども、しかし現在の刑事訴訟は当事者主義訴訟ということをとっていますし、そして、判決があるまではすべての人間は無罪というふうに推定されているということでございますので、この点につきましては、いま先生がおっしゃいましたとおりに、刑事訴訟におきましても当事者主義という点、それから被告人とされた人の人権ということをひとしく確保する――金のある人は私選でも謄写でもできる。しかし、たまたま金がないために、その人が罪もないのに罪におとしいれられるという可能性が万が一にでもあるとするならば、これはたいへんなことですから、そういう点からいたしましても、先生がいまおっしゃったような方策というものは非常にいいことだというふうに考えます。
#55
○佐々木静子君 これは実は大阪の司法事務協議会で去年もおととしも問題になっているのですが、そこをお願いしたいんだが、とりあえず一審の場合は起訴状だけでも写しをほしい、控訴審を担当する場合は原審の判決文だけでも写しをほしいということを毎年弁護士会が言っているのに、それに対して裁判所なり検察庁は予算の上でできないと言っているのですけれども、先生その点についてどのようにお考えになりますか。起訴状なんで普通一枚だけの紙ですね、たいていの簡単な事件だと。
#56
○参考人(林宰俊君) いまの点につきましては、東京の実務では国選弁護人に対して起訴状は写しを渡しております。以上でございます。
#57
○佐々木静子君 これはしかし、渡してくれるケースもあるが、なかなかそこまでいってないケースが全国的に多いわけなんですけれども、東京のほうは渡していられるケースが多いか知らないけれども、これは昭和四十五年の司法事務協議会、これは大阪高裁管内の司法事務協議会ですが、これでも毎年そのことが問題になっている。昭和四十五年度も六年度もそういうことになっており、かつ了承という返事になっておっても、翌年またそれと同じことが提案されているところを見ると、了承という返事はしているけれども、実現されておらぬということになっているんじゃないか。そういうふうな点についてどういうふうにお考えになりますか。
#58
○参考人(林宰俊君) これは、いまさっきの謄写の問題以前に、もっともっと基本的なことでございまして、もしおっしゃるとおりであるといたしますならば、たいへん遺憾なことだというふうに考えます。
#59
○佐々木静子君 それから、この謄写について、先生先ほどから、争いのない事件についても謄写が相当必要なことがある、私もそれは非常にそういうふうに思うわけでございまして、実はいま、一審で死刑の判決を受けて二審東京高裁で、殺人事件ですね、殺人事件で無罪を争っている、たとえば狭山事件というのがあるんですけれども、それなども、一審などは、これは本人が自白させられているわけなんですね。形の上では自白事件なんですね。だけど、その自白の内容を検討してみると矛盾だらけで、だから、これおかしいんじゃないかということでいろいろ調べてみると、矛盾が非常に多い。調べれば調べるほどおかしいということで、そしてよくただしてみると、実は全然事実が違うんだ、だまされて、自白さえしておれば早く出してもらえるということを聞いたので、これ以上苦しい思いをするんならもう自白して、しばらく恥をしのんでも早く出してもらおうと思って、何でもいいからもう警察の言うとおりにおまかせするというようなことでこうなったんだという事件も、これは形の上では自白事件なんですね。こういうふうな、自白事件だということで調書をとらずにおったならば、これはもうまっすぐ絞首台に行ってしまうわけですね。無罪の確定したあの松川事件なんかでも、自白しているわけなんですね。八海事件でも自白しているわけなんですね。これは警察で自白して、全部検察庁では否認になっておりますけれども、しかし自白事件だからといって、刑事事件では全然油断ができない、自白事件の中にこそ最も刑事事件らしい刑事事件がたくさんあるんじゃないか、自白の任意性とか、あるいは自白の信憑性を争おうと思えば、そういう事件こそ一番記録を必要とするんじゃないか、私はそういうふうに思っているのですけれども、先生はその点について、先ほど来お話を伺わしていただきましたけれども、さらに補足的に御意見を聞かしていただければ幸いだと思うわけです。
#60
○参考人(林宰俊君) いま先生がおっしゃったことに尽きていると思いますけれども、なお、死刑事件とかなんとかということになりますと、これはまた取り組むほうも、かりに自白しておりましても、そういう死刑事件については慎重の上にも慎重をもってやるわけでございます。しかしまた考えようによりますると、窃盗を何件もやっている、これは小さい事件だし併合罪でやるからそのまま見過ごせばそのままに通るというような場合にも、実はほんとうはあの事件はやってないのだ、ただ、まあこれはいまさらそんなことを言ったって信じてももらえないだろうからというようなあきらめの気持ちから認めるということもございます。ですから、これは罪の大小を問わず、自白の有無を問わず、やはり刑事事件というものに対しては、どこに、一〇〇%の中の一%でも無罪のものが有罪になるということがあってはたいへんでございますから、その点の一つの有力な資料、条件といたしまして、いまの記録の精査、そのための謄写ということが非常に必要であるというふうに考えます。
#61
○佐々木静子君 それから、これは国選弁護に限らず、この法案の第一条の後段の部分ですね、三百六十九条、これは検察官のみ上訴した場合、そして無罪判決を得た場合の分ですね。これも宿泊料とか旅費とかはあるのですが、謄写料がないわけです。これは、検察官のみが上訴している事件というのは主として争いのある事件ですね、たいていの場合は一審で、検事が起訴したけれども無罪が出たとかいうふうな事件が非常に多うございまして、この検察官のみ上訴している事件というのは、主として記録を全部とらなければいけない場合がほとんどじゃないかと思いますし、また相当記録が大部にわたる事件も多いのじゃないかと思うのですけれども、そこに謄写料が抜けている。これらの訴訟活動の中で一番大きな比重を占める、金額的にも一番大きな要素を占める謄写料が抜けているということは、これははなはだ不合理じゃないか、これを弁護人なり被告人の個人の負担としてやるということは、やれというのはこれは全く国家の一方的な、しかも一審、まあ多くある例では一審無罪になって検事が控訴したような場合で、しかもそれがやはり無罪であったというふうな場合ですからね、こんなのは謄写料だけ弁償してもらったって済むような問題じゃほんとうはないわけなんですけれども、そういうようなケースについても謄写料が抜けている、そういう点についてどのようにお考えになりますか。
#62
○参考人(林宰俊君) これは、私はこういう大きな事件というのは取り扱ったことはございませんので、体験的に申し上げることはできないのですけれども、まさにいまおっしゃったように、この点についても非常に重要な問題であるというふうに考えます。
#63
○佐々木静子君 それでは、いままでいろいろと御意見を伺わせていただいたわけでございますが、結論的には、先生とすると、早くこれを、最高裁の通達ではなかなかこれは実際に徹底しないから、これはやはり国民の権利義務に関係のあることでもあるので、はっきりとこの法律で明定してもらうほうが、はっきりときめてもらうほうが、もらわないと困るし、しかもいまお話にあったように、謄写料だけは報酬の中から別に区別して実費弁償として支払ってもらうように早急にしてほしいという御意思であるというふうに承ったわけです。
 なお、それと関連しまして、いま言いましたように国選弁護料というものが非常に低額である。一つの事件を解決するには長い年月がかかって、それを日割り、月割りにすると、全く頭脳労働者の報酬という名にも値しないような、まるで持ち出しのような現状であることから考えて、やはりそれにふさわしいだけの報酬の増額ということを、特に先生とするとこれにあわせて強く御希望なさっているのじゃないかと思うのですが、そのあたり、最終的に、本法案に関連して先生なりあるいは先生御所属の日本弁護士連合会の御意見というものをお述べいただきたいと思うわけです。
#64
○参考人(林宰俊君) いろいろ御質疑がございまして、答えさせていただきましたが、最後に、この問題といいますのは、要するにこれは刑事弁護というものが、ただ単に弁護人をつけたというだけでは足りないんだ、実質的な弁護ということが言われますけれども、その実質的な弁護ということに至らなければこれは弁護人をつけたということにはならない、実質的な弁護をつけないで、ただ形式的に弁護をつけたという場合には、これは憲法三十七条三項の弁護人依頼権に違反するということで、上告理由たり得るということが理屈の上では前々から言われているところでございます。それが現実にいまこういうような法案が出まして、そして実質的な弁護が実現できるような条件が備わってくるということは、たいへんに意義の深いことだというふうに考えます。そうしてこれは何も弁護人だけの問題ではございませんので、国民全体の権利がどの程度に守られるか、保障されているかというまさに人権の問題でございますので、この点から、ぜひともこういう法案でお進めを願いたいというふうに考えられるわけでございます。
#65
○佐々木静子君 どうもきょうはありがとうございました。私の質問は終わります。
#66
○白木義一郎君 たいへんありがとうございました。林先生も佐々木先生も専門家としてたいへん立ち入った詳しい実情を伺いまして、ありがとうございます。
 一つ二つお伺いしたいのは、これはごくしろうとの素朴な質問ですが、国選弁護人制度の活用といいますか、必要とする状態といいますか、あるいはどういうときに国選弁護人が選定できるか、まずそれをお伺いしたい。
#67
○参考人(林宰俊君) 国選弁護人の制度は、大体三つほど国選弁護人を請求されるという場合があると思いますが、一つは、罪の重い軽いを問わず、その被告人が、私は弁護人をつけてほしいんだというふうに言いました場合には、これは刑事訴訟法の上では「貧困その他の事由」がある場合というふうになっておりますけれども、要するに「貧困その他の事由」で、被告人のほうがつけてもらいたいということを、意思を表明しさえすればこれはつけなければいけないということになっております。それが一つの場合でございます。それからもう一つは、罪の重い軽いということによってきまっていまして、懲役三年以上だったというふうに思いますが、刑事訴訟法上きまっておりまして、そういう一定の罪の重いものに対しては、被告人が希望しようとしまいとつけるというのがございます。これが強制弁護とかあるいは必要的弁護というふうに呼ばれている事件でございます。それからもう一つは、刑事訴訟法の三十七条に、職権による弁護人の国選というのがございまして、「被告人が未成年者であるとき。」「被告人が年齢七十年以上の者であるとき。」「被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。」「被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。」「その他必要と認めるとき。」、これを先ほどの必要的に対して任意的というふうにいっている場合もありますけれども、大体いま言った三つの場合に国選弁護人がつけられるということになるわけでございます。それで、なおつけ加えて申し上げますと、先ほど私が一番最初に申しましたのは、刑事訴訟法の三十六条に、請求による弁護人の国選、「貧困その他の事由により」という場合がありますが、こういうのは、これは直接に憲法三十七条三項の弁護人依頼権というところに結びついておりますけれども、なお、そのあとのほうでございますね、強制的弁護、それから職権による弁護人の国選というようなものも、これはやはり究極においては被告人の人権、国民の人権を守るために国選弁護人をつけるのだというように説明されているわけでございます。
#68
○白木義一郎君 そうしますと、先ほど最後に林先生が、この法案はぜひ人権問題としてもやらなければならない、そういうお答えがあったわけですが、そこで部たちは、弁護士の先生方は――要するに権力には、弱者を守る権力とそれから強者を守る悪い権力と、こういうふうに両面あるだろうと思います。そこで、皆さん方はあくまでも弱者の立場を守るいわゆる弁護をしていくという立場にあられるのは当然だと思います。そこでその皆さん方が十分活動ができない、またその力を出し切れないということであっては、弱者である国民は非常に悲しい思いをするわけです。
 と同時に、いまお話を伺っていますと、何だか皆さん方が謄写料の水増しをするおそれがあるからこういうことはしないほうがいいのだというようなそういう考えの人がいるなんてことは、とんでもないことだと私は伺ったのですがね。非常に悲しいことです。まさか皆さん方が謄写料を水増しするからとかなんとかいう、これはもう皆さん方としては最大の侮辱だろうと思うのですね。それはそれとしまして、裁判弁護活動の経過において、裁判長も国家的な立場ですし、また検察官も同じような立場です。それで国民が皆さんに弁護をお願いして、それは結局国が選んで弁護人を選定して、そして国民の権利を擁護する立場をとっているわけです。そうしますと、裁判長もそれから検察側も記録を持っているわけです。それは全部国が負担しているわけです。ところがその国民の立場に立つ皆さん方が、国から言われて弁護に立つときには、全部ほとんどが自腹だ。少し何とか考えてくれないかということ、いや水増しのおそれがあるからそういうことはできないのだ、これでは話にならないわけです。今度は、われわれにしても政府与党にしても、ここでやっていることはいま全部記録をしているわけです。これが記録となって出てくるその場合に、おまえたちは記録がほしかったら自分で謄写して、謄写料を払って、それで文句を言いたければ言えというようなことになったらこれはたいへんなことで、これは非常識もはなはだしいということから、この謄写料の問題はこういう席で云々するようなことじゃなくて、当然国として皆さんから言われる前にやっておくべき問題じゃないか。しかも法務大臣はこれは大賛成だ――ところがなかなか現実はこれ以上進まない。
 先ほど佐々木先生は知的労働者なんておっしゃいましたけれども、われわれは皆さん方についてそういうような感じは毛頭持っていないわけです。日本人の中でもエリート中のエリートだと尊敬しているわけです。その皆さんが水増しをするとかというようなことを、みみっちい話をここでされると、ほんとうに悲しい思いでいるわけですけれども、そういうことで、当然大きく言えば人権の問題、その問題じゃなくて、先ほどの話を伺っていれば、一年間裁判をされて、報酬が十三万円。十三万円のうちで九万円が謄写料。じゃあ一体弁護士の皆さん方は生活はどうなんだということになると、それが今度は普通の弁護のほうに、弁護料のほうにしわ寄せが来やしないか。幾らでもみみっちい話になっちゃうわけです。ですから、これは当然国として、もう最初に国選弁護人制度の発足のときにすでにそういうことはできていなくちゃならないようなことだろうというように私は思うわけです。ですから、これは何とかじゃなくて、ごく常識的な問題として、すんなり早く、しかも裁判長あたりが、裁判長のような要職にある方が、一体この謄写料は適正かどうかなんていうところまで神経を使っていたんじゃナンセンスのように思うんですね。
 そういうわけで、佐々木先生からも一緒にというあれもありましたので、伺ってみれば、いま申し上げたようなことで、これは当然しなくちゃならないというようなことで、私たちもぜひこの法案の成立には当然としてあらねばならないと、そういう発議者の意見であるわけです。実際問題として、皆さん方と政府とちょっとお話し合いをすれば、それはそうだなあと、抜かっていたなあというようなことで済むようなことだと思うんですが、なかなかこれは現実としてむずかしい問題で、今後とも皆さん方の後援を得つつぜひやっておかなきゃならない問題だ、そのように考えておりますので、よろしくお願いします。
#69
○参考人(林宰俊君) いまおっしゃった御趣旨で、ぜひともこの法案が通りますようにお願いしたいと思います。
#70
○原文兵衛君 林参考人にちょっとお伺いしたいんですが、先ほどの御意見の開陳のときでございましたか、現在は謄写料も報酬の中に含まれるというお話でございましたが、その場合でも、実際に謄写を依頼して謄写料を支払ったその領収書ですかを添えて出しても、その報酬の中にそれが認められない場合もあるというようにお話があったように私ちょっと聞いたんですが、聞いたような記憶がするのですが、その点は、そういう場合が実際にあるのでしょうかどうか、それをお伺いしたいと思います。
#71
○参考人(林宰俊君) そういう場合があるようでございます。私個人はそういう経験はありませんけれども、ここに参りますにつきまして、何人かの弁護人に聞きましたら、先ほど申しましたとおりに、五年くらい前に最高裁で認めなかった、それから一、二年ぐらい前にも東京地裁で認めなかった、請求したけれども、ということでございました。
#72
○原文兵衛君 林先生の場合には具体的な例はなかったそうですが、そういう場合、私実はあまりよく知らないのです、この謄写料のことをですね。そういう場合に一体どうして、当然支払い領収書があるような謄写料を認めないなんというようなことがあり得るか、ちょっと私も非常に疑問に思うのですが、どうしてそういうことがあるんだろうという、何かこう、これは御意見なり、また推察でもけっこうなんですが、お考えがあるでしょうか、お伺いしたいと思います。
#73
○参考人(林宰俊君) 先ほど私がちょっと御紹介申し上げましたけれども、昭和三十五年に日弁連の「自由と正義」という機関誌の中で、小野清一郎委員ほかが「国選弁護制度の実状」ということで座談会をやっております。この中にもこういうようなことが出ておりまして、ここに御出席の岸盛一判事、横川敏雄判事は、自分の部では認めているんだ、請求があれば必要に応じて認めていると。ところが検察官のほうから話が出まして、検察官が、自分が弁護人から聞いてきた話では、やっぱり払っていないところもあるんだと。そしてこれは昭和三十五年当時の話でございますから、現在そういう話があるかどうかは知りませんけれども、非常に苦肉の策といたしまして、ある部では、謄写料は出せないもんだからもう一回開廷する、公判期日をよけいにするわけですよ。そうすると公判期日の出頭日当というのが出てきますね。ですからそういうので苦肉の策でこういうことをやっているところもあるんだということが、ここに、座談会に、こうはっきり出ているのでございますね。ですから裁判官によっては、通達があるにもかかわらず、やっぱりそういう謄写料というのは出しちゃいけないのじゃないかというようなことがございまして、そういうようなことをやっている。それで岸判事は、いや自分は開廷日数を延ばすことまではやりませんよということで「(笑)」ということで出ていますけれどもね。実際に出ていなかったということがあって、そういうような苦肉の策をやっていたということがやっぱりあるようでございますね。
 それから私の聞きましたのは、理由まではどうか知りませんけれども、最高裁のほうでは、いやそういう最高裁で出した例はないということを言って五年前には断わられたということを弁護人が言ってました。
 それで、私はことしの三月に、弁護士会と裁判所、検察庁との連絡協議会というのがございましたので、そのときに聞きましたら、最高裁の刑事局長の代理の方だと思いましたけれども、その方の御発言で、いや最高裁というのはしばしば灯台もと暗しというか、自分が出した通達でもあんまりよく知らないものがあるから、最高裁そのものがときどきそういうことをやることがあるかもしらぬということでお笑いになっていましたけれども、そういうことでございます。
#74
○原文兵衛君 もう一点教えていただきたいのですが、いまの報酬の中に、まあ現在の制度では謄写料は一応報酬という中に含まれて支払われる――支払われない場合もあるというようなお話でございますが――で、報酬の中には、いまは謄写料のほかに何かそれに類似したようなものがいろいろこう含まれているのかどうか、ちょっとその辺教えていただきたいのです。
#75
○参考人(林宰俊君) 報酬の中には交通費とか日当とかは含まれていないのじゃないかというふうに私は思っていますけれども……。
#76
○原文兵衛君 刑事訴訟法でも「旅費、日当、宿泊料」はありますわね、項目が。それで「及び報酬」ですか、その報酬の中には謄写料などが含まれているわけですが、謄写料以外にも――旅費、日当、宿泊料は別になっているが、報酬の中には謄写料以外に何かそういう費用的なものが含まれているかどうかという点、ちょっと私よくわからないのですが、もし御存じなら教えていただきたいと思いまして……。
#77
○参考人(林宰俊君) ちょっといまのところ私はっきりは思いつかないのでございますけれども、たとえば遠隔地に電話なんかかけるということはよくございます。東京なんかで事件を引き受けても、実際には親類やら親は北海道にいるということがございます。ですから電話料だってばかにはならないのでございますけれども、そういうものはもう国選弁護の場合には請求していませんですね。ですからいま言ったようにもう謄写料という非常に大きなもりが一つ浮かび出てきたのじゃないかというふうに思っていますけれども……。
#78
○原文兵衛君 ありがとうございました。
#79
○佐々木静子君 ちょっと参考人、済みません。
 いまの報酬の中に旅費、日当は含まれておらぬというお話でしたけれども、この国選弁護のほうのこの明示してある旅費、日当というのは、これは裁判所の証拠調べとか裁判官とともに出張する場合の旅費、日当であって、たとえば現場検証などで弁護士が先に現地へ行って調べてくる、むろん現地調査で裁判官が現地へ行くという場合は、必ずと言っていいぐらい、弁護士が先に行って調べた上でもう一ぺん行くわけですね、それから遠隔地に弁護士としての調査に足を運ぶ、あるいは拘置所へ面会に行く、そういう費用は、この報酬の中に入っているというふうに私は思うのですけれども、そうじゃないんですか。
#80
○参考人(林宰俊君) それは事実上そういうことになっておりますですね。そのとおりでございます。
#81
○白木義一郎君 いま伺っていたら、謄写料の出しどころがないというので法廷をよけい開かれたことにして、その報酬を出して、それを謄写料に充てる。これは何でもないようなことですけれども、普通の一般社会で、会社でいえば粉飾決算ですね、これは。しかもそれが独立して、そういうことを法律をもとにして的確にさばかなければならない世界でそういうことが行なわれているとなると、これは聞いていて私はますます悲しくなるのです。そうなると、判決等についでも不安が出てくる。事と次第によっては、場合によってはいろいろと幅を持たせていってしまうという裁判なんかになりはしないかというような懸念をするわけです。ですから、これは後藤先生もよくおわかりのことでから、法務大臣もよく知っているし、これは当然の常識的なことなんですから、これが日の目を見ないで流産してしまうというようなことになると、これは衆議院も参議院も政府も要らないじゃないかというようなところまで発展していきはしないか。そうすると、すでに謄写料の水増しどころじゃない、裁判所の中の水増し、こんなことは世間にとても聞かされないものである。こんなことを二度と繰り返さないという意味からも、ぜひともこれはぴしっと法律できめて、まあ多少皆さんも御不満な点があっても、謄写料は請求書に応じて、だれも頭を使わずに、国家的な予算から言えば予算というまでの金額じゃないはずだろうと思うのですね。まあ伺っていて非常にショックを受けました、私、実は。それでちょっと感想を申し上げた次第でございます。
#82
○参考人(林宰俊君) 裁判所の名誉のために私申し上げておきますが、おそらく期日を全然何もやらないのに開いたというんじゃないんだろうと思いますね。やることはやったんだけれども、要するに回数をふやしたということだと思います。それは内容の点においては、水増しといえば水増しですけれども、そういうことだと思います。
#83
○後藤義隆君 ちょっとお伺いしますが、御承知のとおり、この法律は日本全国に適用される法律でありますから、ただ東京の三弁護士会だけを中心として考えずに、でき得ることならばやはり地方のほうも含めての参考人の御意見を伺いたい。しかし、わからないものはそれはそこまで追及――追及というか、お聞きするわけでもないから、それはまあやむを得ません。
 そこで、国選弁護について記録を謄写する率ですね。大体何%ぐらいは記録を謄写しておると思いますか。あるいはまた、もうしない事件も相当あるんじゃないかと思う。それから、私選弁護の場合に全部記録を謄写するかどうかというのも、これもやはり私は疑問だと思っておりますが、国選弁護の場合には何%ぐらい、それから私選弁護の場合には何%ぐらいかというような点をお聞きいたしたいのです。
#84
○参考人(林宰俊君) 全国的にちゃんと調査してパーセントを出すべきだと思いますけれども、いままでのところそういうデータがございませんようですので、残念ながらそれをお答えすることができませんが、ただ経験的にいろんな弁護士のほうに聞いてみましたら、やっぱり先ほど申し上げましたように、これはほんとうの勘ですけれども、認められているのが一、二%で、請求しているのは二、三割という程度じゃないかと思います。そうして非常にまじめな、頭の下がるような活動をしていまして、つい一月ぐらい前にも、弁護人の名前は出ませんでしたけれども、酔っぱらって心神喪失におちいって殺人を犯したという事件がございまして、これが一番最初検察官の捜査のときには、全く心神喪失というところまではいってはいないんだということで、責任能力というのは認められまして、それで、もちろん起訴されたわけですけれども、裁判をやりまして、そうしてその弁護人の活動が非常にありました結果、やっぱりアルコール中毒ということによる心神喪失だというようなことになって、それが無罪になったというのが新聞に出ておりましたが、それを担当したという国選弁護人にも会って聞きましたけれども、その場合に記録の謄写を全部やりましたかということを聞きましたら、やっぱり全部はやらなかったというんですね。どうしてやらなかったかといいますと、やっぱり国選弁護だから遠慮がちになって、ごくごく重要なところだけやったんだと。それにしては幸いにして無罪をかちとったからよかったですけれどもという話になったんですけれども、そういうようなことでございまして、出しても認められないというのがいままでありますので、なかなか遠慮してやらないというような風潮がありますし、それから、実際にとってもまた請求をしない、自分の負担にしてしまうというようなこともあるようでございます。
 それから、最後に先生のほうからおっしゃられました私選と国選の場合でどういうように違うか、私選でもやれない場合もあるんじゃないかということでございましたけれども、それはそのとおりで、私選の場合でも必要がないとかということでやらない方も当然いると思います。
 それで、これも先ほど御紹介しました昭和三十五年の座談会による谷川輝検事がここで東京の場合を調査して、昭和三十四年の九月から三十五年の八月までの東京地検公判部の場合の調査というものを出してありますけれども、弁護人が閲覧、謄写に来られた事件の数は合計五千三百三十件、私選、国選の別に分けてみると、私選のほうが二千五百六十七件、国選のほうが多くて二千七百六十三件という数が出た。閲覧と謄写の区別をとってみると、私選の二千五百六十七件という数字の中で閲覧が千二百七件、謄写が千三百六十件、謄写のほうが多い。国選弁護人のほうは、二千七百六十三件のうち、閲覧が二千六百五十九件、謄写が百四件ということになって、謄写がきわめて少ないです。こういうような事実がございますので、やはり、先ほどわれわれ経験的に言っているように、遠慮してか、あるいは請求してもしようがないということで控えているということもあるんじゃないかと思います。
#85
○後藤義隆君 先ほどあなたの御意見の中にあったんですが、ちょっと聞き漏らしましたからもう一ぺんお聞きしますが、国選弁護の場合に、大体何%ぐらいは記録の謄写料の請求をされておるか。これはもちろん大体でいいですが、大体何%ぐらいですか。
#86
○参考人(林宰俊君) いままでのでやっぱり二、三割ぐらいじゃございませんでしょうか、請求しているのは。
#87
○後藤義隆君 それから、この法律の中で一番問題になると思うのは謄写料の意義、謄写料というものがどういうようなふうなものをさしておるのかというその意義が非常に問題になると実際は思うんです。それで、先ほどからあなたのおことばの中にもあったのでありまするが、国選弁護人が記録の中で自分が必要と思われる部分を抜粋したり、またそれから自分の雇い人が行って、そうしてしかるべく記録を抜粋するか、写してきた、こういうようなふうなものまでもやはりこれは謄写料として請求するのが相当だというふうにお考えか、それともそうでなしに、やはり謄写業者に依頼して代金を支払ったその部分だけが、やはりこれは謄写料というようなふうに認むることが相当であるというようなふうにお考えか、その点をあなたにお伺いしたいんですがね。
#88
○参考人(林宰俊君) これは全くの私見でございますけれども、謄写業者に払うのはこれはもう当然認められると思いますが、自分なりあるいは補助者がやった場合でも、実費でございますね、たとえばこちらのほうでフィルムを持っていって――私もときどきやりますけれども、カメラで写してくるわけでございます。その場合には、それは当然その実費、フィルム代、現象代なんかはそれは当然謄写代というふうに考えるべきじゃないかというふうに考えますが、そうでなくて、ただメモをとってくるのは、これはもちろん謄写代に入らないと思います。
#89
○後藤義隆君 先ほどというか、いまあなたのお話の中にありましたようなふうに、国選弁護人が記録を自分が見て必要な部分を抜粋したり、あるいはまた自分の使用人が行ってそういうようなふうな行為をしたことは、これは弁護の準備行為、国選弁護の準備行為の中に含まれるものであって、当然これは報酬の対象になるべきものであって、これをやはり謄写料として別な項目をあげて請求するのは、私はあまり適当じゃないじゃないかというふうにも考えますが、その点どうでしょうか。
#90
○参考人(林宰俊君) ですから、いまさっき申し上げましたように、メモをとってくるとかというようなことは、これは当然謄写料に入らないと思います。ですが、謄写業者には頼まなくとも、自分自身でこの完全なものをカメラを持っていってとってくるとか、それから簡単にひっさげるコピヤがありますけれども、あれはいま認められておりませんので使っておりませんけれども、一時認めたことが、あるところではありましたので、そういう場合にはやっぱり用紙の代金とか、そういうようなのは当然謄写代に入るんじゃございませんでしょうか。
#91
○後藤義隆君 それから、さっき記録はぜひ国選弁護人が必要だと、自白の有無にかかわらず必要だというお話があった。もちろんそれは記録があったほうが非常に適正を期せられていいと思いますが、自白をした事件で、今度は公判でその後に至って自白をひるがえす事件というのは大体何%ぐらいはあるもんでしょうか。
#92
○参考人(林宰俊君) これはちょっと統計なんかも調べてみましたけれども、自白の事件のところまでは裁判所の統計も出ておりますけれども、自白が出てからそれをひるがえすというようなことはちょっと出ていませんので、お答えいたしかねますが、なお直接にお答えできなくて失礼でございますけれども、念のために自白事件というのを申し上げておきますと、これは最高裁判所の一番新しい概況報告で、「昭和四十六年における刑事事件の概況(上)」というのが法曹時報の二十五巻の一号に出ております。その一一七ページによりますと、自白事件の割合は昭和四十五年に総数で八〇・八、それから法定合議事件で――失礼しました。この内訳は申し上げないことにします。総数だけを申し上げますと、昭和四十五年に八〇・八、四十六年には八一・四、それから簡易裁判所の既済事件中に、昭和四十五年は七九・三、四十六年に七八・二というような数字が出ておりまして、ここで申し上げました自白というのは、この定義によりますと、「終局の段階においてすべての公訴事実について自白していた場合をいい、「否認・その他」には、終局の段階において公訴事実の全部もしくは一部を否認し、または公訴事実を認めながら法律上犯罪の成立を妨げる理由もしくは刑の減免の理由となる事実を主張していた場合、および黙秘していた場合のほか、被告事件の陳述に入らずに終局した場合等を含む。」ということになっておりまして、よく自白事件がもう九〇%以上もあるというのは、数字の上で必ずしも当たらないように思います。
#93
○後藤義隆君 それから、まあ現行法でも、謄写料の請求並びに支払いですね、これは報酬の中に含まれて支払われておるのが実例でありまするが、そうすると、現行法を改正して、いまのままでもってこれは非常に不都合で、改正しなければ弁護人に、国選弁護人に何か特に不利益になるようなことがあるのかどうか。その点はどの点が一体不利益になるのかというようなふうなことをお聞きしたいんですが。簡単でけっこうです。
#94
○参考人(林宰俊君) 要するに、いまの運用だけということになりますと、先ほど申し上げましたように、実情が実際には謄写料はもう支払っていないというほうが多いわけです。一、二割はそれは支払われているかもしれませんけれども。それで、結局法律を改正してそこに明文を置いて、謄写料を必要とした場合にはそれを支払うというようなことにすれば、これは弁護人としてはもう実質的な弁護ができるという条件が備わるわけでございますから、その点で、やっぱり法文で明文化したほうがいいというふうに考えるわけでございます。
#95
○後藤義隆君 それから現在、先ほどからお話もありましたようなふうに、謄写料を報酬ということでもって請求し、またその中に含まれて請求し、支払っておるのでありまするが、これは裁判所が相当と認めるものということになっておりますが、この法律を改正して今度は謄写料という項目を掲げたならば、でもやはり裁判所が必要だと認めた部分だけを支払うのであって、現在とは違わないのじゃないかというようなふうに考えるが、その点はどうですか。裁判所がかりに不必要だと認むれば、そういう項目をあげてもやはり支払いを拒絶してもいいのじゃないかと、こういうようなふうに考えるが、その点はどうですか。
#96
○参考人(林宰俊君) それは、まあどういう法文を設けても、結局運用の問題というのは残りましょうから、それを極端に弁護人の謄写を押えるという方向で運用されるならば、これはもう幾らいい条文を設けてもだめだと思いますが、しかし法律上そういうのがやっぱりちゃんとした項目として出てき、それを請求できるんだということが明示できますならば、それは非常に意義のあることじゃないかというふうに考えます。
#97
○後藤義隆君 それから、先ほどこの所得のことがあったわけですが、これは非常に私は重要な問題だと思っておりますが、所得税法の二百四条に源泉徴収のことが書いてありますが、これは弁護士が謄写人に謄写料金を支払ったときには、五十万円までは当然その一〇%を差し引いて支払わなければならない。税金に引き当てて、これはその部分だけは減額して支払わなきゃならないことに、さっき申しました所得税法の二百四条にそうなっているんじゃないか、こういうようなふうに……。そうすると、裁判所のほうから決定して国のほうから報酬を受け取るときに一〇%引かれても、自分のほうでもってすでにそれはもう払ってあるから、差し引いて、渡してないから、それだからそういうふうにはならぬのじゃないか、これはいわゆる所得税法との関係でありますが、その点はどうですか。まるまる損になりますかどうですか。損にはならないのじゃないか。
#98
○参考人(林宰俊君) どうも私もいまの所得税法のそのことは不勉強で、よくわかりませんでしたので、御趣旨がちょっとよくわかりかねますけれども、いまの差し引かれるという場合でも、最終的の場合には、それは損得というのは出てこないかと思いますけれども、しかし、実際上はこちらのほうが経費として支払っている、五十万円ない場合が多いわけでございますけれども払っておる、そして裁判所から支払われる報酬は源泉徴収を引かれて支払われるということで、その点を、先ほど申し上げましたように、源泉徴収されておる限りでは不合理があるというふうに思うというふうにお答えしたわけです。
#99
○後藤義隆君 いまの点でありますが、私も非常にこれは疑問に実は思ったわけなんです。そこで、国が公務員を使って給料を支払うときに、一〇%を差し引いてするとか、あるいはまたいろんな企業が使用人に給料を支払うときに、一〇%は差し引いて、これは源泉徴収として差し引いて払う。それと同じでもって、弁護人が記録の謄写を依頼して謄写人に代金を支払うときは、当然やはりこれは一〇%は減額して払わなきゃならぬというのが二百四条の規定だと思うんですが、そういうようなふうな、この条文どおりにやったならば、いわゆるこの国選弁護人は謄写料の一〇%というのは損失にならぬのじゃないか、こういうようなふうに私は考えるんですが、その点どう思いますか。
#100
○参考人(林宰俊君) ちょっと私はその辺のところをよくわかりませんので、いま的確なことをお答えできませんけれども、非常に推測で、それは結局弁護士が五十万円以上こえた場合には一〇%を源泉徴収をして取るということじゃないんですか。そして納めるわけじゃないんでしょうか。
#101
○後藤義隆君 いや、こうした場合じゃなしに、五十万円までは、金額で五十万円までは一〇%、五十万円をこすと二〇%の源泉徴収をせなきゃいかぬというのがあるわけですよ。まあその点は、これは条文を見ればわかるからその点はどうでもよろしゅうございますが。
 それでは、その次に、先ほどからいろいろお話があったのでありまするが、国選弁護人が謄写人に謄写料を一応自費をもって立てかえて支払うというようなふうな、これが非常に不合理だというようなふうな、直接そういうことばとは違うけれども、何かあまり適切でないようなふうな意味の私どもはなにを受けとったわけでありまするが、ところがその場合に、国選弁護人が記録の謄写料を御自身でもって立てかえて払うか、もし払わなけりゃ、謄写人に、しばらく待ってもらいたい、国選弁護料がまだ入らぬから待ってもらいたいというようなことを言って待ってもらう方法もあるかもしらぬが、そういうことは少ないんでしょう。そこでもって、そういう場合には、一体その方法が悪ければ、国からあらかじめその謄写料を支払ってもらいたいと言って支払わせる方法はないから、どうしてもやはり現在のような方法によらなけりゃならぬのじゃないか、こういうようなふうに思うが、ほかに何か適切な方法がありますか。いわゆる国選弁護人が金を払う以外に何か適切な方法がありますか、謄写料を払う。
#102
○参考人(林宰俊君) どうしても国が払うまでの期間があるから、その間に何か適切な方法がないかとおっしゃられると、私どもちょっとそれは、その辺のところは、じゃ、こういうふうにしたらいいんじゃないでしょうかという案はないのでありますが、ただ、実は謄写屋さんも謄写をしてそれで生活をしているわけでありますから、われわれのほうが払わないと非常に困るということで、どうしても弁護人に対して――謄写屋さんのほうに払うということになるわけです。そうして国選弁護というのは、これは弁護士になったばかりの人でも、それからずっともう弁護士として大家になっている人でもみんなひとしくやるわけでございますから、大家になれば余裕がありますから、その点を立てかえてもいいかもしれませんけれども、実際に弁護士になりたてのころに、お金もなくて困っているときに、熱意だけは人一倍あって非常に一生懸命やる、しかし残念ながら金がないから謄写費用も払うことができないというときには、私自身もまだかけ出しの部類ですから、非常に残念な思いをしたことがありますけれども、そういううようなこともありますので、どうしてもこれは、いますぐじゃあどういう案かと先生におっしゃられても、ちょっと私ないのでございますけれども、何らかの方法でそこを解決していかなければならないのではないかというふうに考えます。
#103
○後藤義隆君 お伺いいたしますがね、それから謄写料の件でありますがね。謄写料は結局支払わなければ、だれかの手によって支払わなければならぬものだと思いますがね。ところが、いま謄写料を含めて国選弁護の費用ですね、それは結局は国の負担というよりも被告人自身の負担じゃありませんか。特殊の場合にはそれはやむを得ず国が負担するけれども、しかし原則としては被告人自身の負担ではありませんか。
#104
○参考人(林宰俊君) それは結局最後の裁判の判決のときに、訴訟費用を被告人に負担させるかあるいはさせないかということは判決できまるわけでありますけれども、この国選弁護人を頼む人でも非常に貧困の人も多いので、実際上は被告人に負担させるという判決をつけても取れないということが非常にあるようでございますね。そして先ほど御紹介しました座談会によりますと、これは三十五年当時の話でございますけれども、四千円、五千円というのがやはり取れない。取れないために、検察庁のほうではほうっておくわけにもいきませんから、毎月とかあるいは三カ月おきとかにそれを督促をする、強制執行をすればいいかもしれませんが、強制執行したって出ないような人が多い。ですからその点で非常に苦心をするということで、裁判官のほうもそういう検察官の話を聞きまして、これはやはり訴訟費用の負担ということについてはもともと考えてやっているつもりだけれども、そういう実情を聞けばもっとなお考えてやらなければいけないということで、訴訟費用をやはり国選を頼むような人には負担させないというようなのも相当あるというふうに思います。
#105
○後藤義隆君 はい、わかりました。別にありません。
#106
○委員長(原田立君) 他に御発言もなければ、以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 林参考人に一言、お礼を申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず、長時間にわたりまして御意見をお述べいただき、なおかつ質疑に対する御答弁をいただきましてありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。
#107
○参考人(林宰俊君) どうもありがとうございました。委員長はじめ各委員に対し厚くお礼を申し上げます。
#108
○委員長(原田立君) 本案に対する質疑は本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時二十九分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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