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1972/07/03 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 地方行政委員会 第13号
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1972/07/03 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 地方行政委員会 第13号

#1
第071回国会 地方行政委員会 第13号
昭和四十八年七月三日(火曜日)
   午前十時四十一分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月二十九日
    辞任         補欠選任
     菅野 儀作君     高橋 邦雄君
 七月三日
    辞任         補欠選任
     高橋 邦雄君     橘  直治君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長        久次米健太郎君
    理 事
                柴立 芳文君
                寺本 広作君
                河田 賢治君
    委 員
                片山 正英君
                斎藤 寿夫君
                原 文兵衛君
                増田  盛君
                秋山 長造君
                神沢  浄君
                戸叶  武君
                上林繁次郎君
                藤原 房雄君
                村尾 重雄君
   政府委員
       自治大臣官房審
       議官       森岡  敞君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        伊藤  保君
   参考人
       亜細亜大学教授  細野日出男君
       法政大学教授   広岡 治哉君
       国民生活研究所
       会長       松隈 秀雄君
       日本都市交通労
       働組合連合会書
       記次長      内木場忠巳君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○地方公営交通事業の経営の健全化の促進に関す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(久次米健太郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る六月二十九日、菅野儀作君が委員を辞任され、その補欠として高橋邦雄君が、また本日、高橋邦雄君が委員を辞任され、その補欠として橘直治君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(久次米健太郎君) 地方公営交通事業の経営の健全化の促進に関する法律案を議題といたします。
 本日は、本案につきまして、亜細亜大学教授細野日出男君、法政大学教授広岡治哉君、国民生活研究所会長松隈秀雄君、日本都市交通労働組合連合会書記次長内木場忠巳君、以上四名の参考人の方々から御意見を伺います。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
 皆さまには、御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。皆さまからの忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査の参考に資したいと存じております。
 これより参考人の方々に順次御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進行上、お一人十五分程度でお述べを願い、参考人の方々の御意見の陳述が全部終わりました後、委員の質疑を行なうことにいたしますので、御了承願います。
 それでは、まず、細野参考人にお願いいたします。
#4
○参考人(細野日出男君) 亜細亜大学教授細野日出男でございます。
 私は本法案につきまして、第四条と第七条の修正を含んで賛成するものでございます。
 地方公営企業は、昭和三十五年ごろからだんだん赤字がふえてまいりまして、三十八年ごろかなりひどくなりましたので、三十九年、四十年には地方公営企業制度調査会という調査会が設けられまして、その答申に基づきまして四十一年に地方公営企業法が改正されまして、そこで、赤字をたな上げして再建債にするという趣旨の、財政再建の章というのが第七章として追加されたのでございます。
 昭和四十年度末の公営企業の赤字につきまして財政再建計画を立て、財政再建債を発行するということであったのでありますが、地方公営企業の中では、交通事業がやはり一番その当時でも成績が悪かったのでございます。そのほか、水道、病院――まあ電気あたりが一番いいほうであったのでございます。
 この地方公営企業法の改正の柱と申しますのは過去の赤字を再建債にする、それに対して、国が三分五厘以上八分までのところの利子補給をするという件と、それから料金改定を進めるということ、それから経営合理化をするということの三つが柱でありまして、四十一年度からは単年度赤字をなくすということがこれが大前提であったのでございます。水道等ではこれがほぼ達成されたようなことでありますけれども、病院と交通事業とは成績が悪くて、ことに、交通事業は初めからこの単年度赤字をなくすという線がくずれてしまいまして、赤字が毎年累増する。ついに、路面交通だけでもって千十億円というような赤字になっておるような状態でございます。
 その交通が悪かったことの一番の原因は何かと申しますと、私は、やはり水道や電気等に比べまして、独占が崩壊しておるということのために、料金改定をいたしましても思うほど増収が出ないということ、お客が減りぎみであるということ、根本的にはこの現象は世界的でございまして、都市交通のいわば成長産業でなくなった、斜陽化するという点であるのでありますが、そのほかにもう一つ非常に大きなことは、道路交通の状況が非常に悪くなった、環境が悪くなったために経営の能率があがらなくなった、お客に見捨てられるというような面が出てきておったことがこれが非常に大きな原因でございます。ただし、この原因は民営交通も同じことでございます。ところが、公営交通が特に悪いということは、これはやはり料金改定がおくれたということと、上げ方の足らなかったということ、もう一つは、営業費の中でもって人件費の割合が民営に比べますと著しく高いということが原因であったと思うのであります。交通事業は、水道や電気等に比べますと非常に労働集約型でございまして、人件費のウエートが非常に重いわけでございます。この人件費が、毎年のように、結局インフレにつれましてベースアップしなければならないということになりましたことが、やはり交通事業の立ち直りをさせなかった重大な原因だと考えております。
 再建債の利子は、三分五厘をこえる分については国庫補給が行なわれたのでありますけれども、しかしながら、三分五厘以下は企業で持て、元金償還も企業で持てということであったのでありますけれども、このほうは実は過去の赤字の資本化に過ぎませんので生産性を持ちません。したがって、運賃収入、料金収入からこの三分五厘以下の利子と元金償還分を支弁するという出所がほとんどないというようなことで、これが赤字を累増するということになった主因であると思うのでございます。
 そこで今回は、公営路面交通事業だけにつきまして、特別に財政再建、経営の健全化の特別法、単独立法ができたのでございますが、四十一年度以降の失敗の愚を繰り返さないということが絶対に必要であろうと考えておる次第でございます。
 そこで、本法案の第七条によりますと、再建債利子は国庫補助が大幅に認められまして、修正によりますと、公営企業金融公庫の基準金利までのところを三分五厘を超えるものについて、あるいは政令の定めるところによって全額もしくは一分七厘五毛以上を国庫が補給する、補助する、これは非常に大きな柱でございます。前のときは、利子は三分五厘以上しか補給されませんでしたが、今度はそれ以下でも補給される、補助されるということになりました点が、非常に再建にとって有利な点でございます。
 それから第八条のほうでは、再建債の利子の残りの分、国庫が補給してくれない残りの分と、元屋償還の分は、これは地方公共団体の一般会計から補助する これもたいへんな発展でございまして、公営交通の経営健全化のためにはたいへんありがたい規定であると思うのでございます。つまり、地方公営交通は、料金収入でまかなわなけれぱならないものは全経費ではなくて、人件費、物件費を主とするところの純営業費用、あとは何がしかの生産資本、そのうちの借り入れ資本の元利払いを負担すればよろしい。ところが、ことしの予算によりますと、バスの購入費に対して十四億円も国庫補助があるというようなことでございますから、生産資本でも補助を受けるというようなことになっておる点も、たいへんこれは再建のためには有利な条件だと存じます。で、膨大な赤字再建債の元利償還というものから解放されたということになります。ごく簡単に申しますと、いわゆる全面的独立採算制というものから、ほぼ営業費独立採算制とも言っていいようなものになってきたということでありますが、今度はこれを十分に守って単年度赤字を出さないようにやっていくということが何よりも必要であろうと考えるのであります。
 次に、二条には、「事業運営の効率化と利用者負担の適正化」ということがうたわれておりますが、「事業運営の効率化」ということは、収入の増加をいかにしてはかるかということ、それからいかにしてコストダウンをはかるかということの二つに尽きるわけでございますが、二のほうの、「利用者負担の適正化」、これは端的に申しますと、料金改定と料金の引き上げ――適時適率に引き上げを行なうということでありますが、このことは、これはいままで十分に行なわれていなかったことでございまして、このことはぜひ達成する必要があると考えておるのでございます。民営に比べまして、公営のほうは、特に首長や地方の議会というものが関係いたしまして、非常に民営に比べますと政治的に取り扱われるということが多いきみがあるのでございます。去年の十月の東京都のバス料金改定などにもその例が見られるわけでございます。
 それから第三条には、「国の配慮」ということが規定してございますが、「経営の健全化が円滑に推進されるように配慮するものとする。」ということになっておりますが、このうちで非常に重要なことは、やはり料金改定認可の促進、適時適率の認可をすみやかにやるということが、これがこの三条にうたわれていることの大事な内容だと考えます。それからバスについては、道路混雑の解消、道路交通環境を改善するということも、これも企業の手では何もできないことでございます。やはり国の配慮にまつところが非常に大きい次第でございます。
 四条には、「交通事業再建計画の策定」ということがうたわれておりますが、今度の再建計画は、前はほぼ七年という計画でございましたが、今度は十五年という非常に長期の計画になりました。これは元金償還を地方自治体の一般会計で持つというたてまえから、そういう長期化することはやむを得なかったのだと思いますが、それだけに、これから先十五年という長期にわたってのことでありますから、途中の変動ということがずいぶん多いと想像されます。この辺のところでもって、再建計画というものを十分に練ったものをおつくりになる必要があると思うわけであります。
 それから第五条には、自治大臣はこの再建計画について必要な条件をつけて承認することができるとなっております。この条件というものが非常に重要な意味を持つだろうと考えます。
 そうして第九条には、再建計画の執行を確実にするということのために、自治大臣は、業務執行の改善が再建計画に合わない、適合していないと認める場合にはいろいろ要求することができるという規定が入っておりますし、また、再建計画の条件に従わずまたは大臣の求めに応じなかった場合には、期間を定めて利子補給をとめることができる。もう一つ、計画達成が困難となったと認められるときには、計画承認の取り消しをやって、補助をやめる。これは前の再建計画のときには、こういう一種の罰則的規定はなかったわけでございます。今度はこういう規定ができましたので、再建計画を進めるということのためには一つの大きな担保になっていると考える次第でございます。
 それから十条関係では、関係行政機関の長に対して、いろいろの措置をしてくれるように申し出るということが出ておりますが、これはやはり道路交通環境が非常に悪くなっております。これは企業の手ではどうもできないことでございますので、国の行政機関もしくは地方の行政機関のほうでもってできるだけのことをやってくれるということが必要で、そのことの規定でありまして、これもけっこうな規定だと考える次第でございます。
 最後に結論として申し上げますが、今度の健全化促進法案というものは、要するに過去の赤字についてはみんな国庫もしくは地方公共団体の一般会計で持つということをきめておるわけでございまして、言いかえますと、国の納税者と地方の納税者が過去の赤字は一切しょい込んでくれるということになっております。こうなりました以上、納税者に対して、そういう重い負担をしてもらった以上、企業の経営関係者――経営当局も、従業員もでありますけれども、公営の真義、なぜ企業を公営するのかということの真義に徹するということが非常に必要だろうと思います。他の条件にして同じければ、公営は民営企業に比べまして安くていいサービスができるはずなんでございます。なぜかと申しますと、税金を納めないでよろしい、配当をしないでよろしい、借り入れ資本の利子が安くて済む、少なくもこの三つの大きな特権を持っておりますのですから、他の条件が同じければ、民営より公営のほうがいいということは当然のことでございます。これが公営――私はいわゆるミックストエコノミーにおきますところの公営の真義だと考えております。この公営の真義というものに徹して今後の公営交通の経営が行なわれることを心から念願するものでございます。
 これで私の公述を終わります。
#5
○委員長(久次米健太郎君) どうもありがとうございました。
 次に、広岡参考人にお願いいたします。
#6
○参考人(広岡治哉君) 法政大学の広岡でございます。専門は交通政策を研究しております。
 今度出されました法案は、過去の公営交通事業の経営にかかる累積債務、これをたな上げすることを主眼にした法案であるように見受けられます。私は公営交通事業が置かれている困難な状況から見て、そういった措置は当然とられるべきやむを得ない措置だというふうに思います。
 ただ、問題になりますのは、不良債務に対して再建債を発行した場合、その元本の償還とそれから利子負担でございますが、これについて、元本とそれから三分五厘までの利子が地方公共団体にかかるように見受けられるわけですが、その点については、私はそれほど地方の都市の財政の実情をよく承知しておりませんが、かなり地方財政を圧迫するもとになるんではないかという心配を持っております。で、その点については賛成しかねるわけであります。
 それからもう一つは、過去の債務の処理についてはいたしかたがないといたしまして、今後、ほんとうに公営交通事業を健全な運営のもとに確保するということのためには、もう少し、こう積極的な都市の公営交通経営の理念あるいは具体策が示される必要があるんではなかろうかというふうに考えているわけであります。その点については衆議院の附帯決議でかなり問題が取り上げられているようでございますが、ここでは、私自身の考えを若干述べさせていただいて、委員の先生方の御審議の参考にしていただければありがたいというふうに思っております。
 都市の公共交通サービスというものは、私は、今日の都市の市民が生活していく上で欠くことのできない不可欠なものであると。市民の生活自体が、もちろん市民の自立心、自立的な市民を基礎としなければならないわけでございますけれども、同時に、市民の共同と連帯なしには都市は成り立たないわけであります。それは、ことばをかえて言いますと、市民の活発な交流、これが都市の実体であるというふうに考えるわけであります。でその市民の交流を可能にするものが実は交通の施設であり、交通手段であるというふうに考えております。したがいまして、道路であれあるいは鉄道であれ、あるいは道路の上を通行する公共交通機関であれ、これは非常に高度に社会的な、共同的な性格を持つものである。で、これからの都市の将来というものを考えます場合、市民ができるだけ平等にチャンスを与えられるということが欠くことができないだろう。それは市民大多数の要求であるわけでありまして、そういった平等度の高い、文化水準の高い都市を求めるという市民の欲求を実現していくということが、私は政治であるというふうに考えているわけであります。そういう意味では、過去の大正時代、あるいは戦前に通用したものが、今日通用するというふうに考えることはできないのでありまして、常に直面する時代の課題を解決していくという姿勢が必要であろうというふうに考えているわけであります。
 で、そういったいわば都市についてのビジョンなりあるいは目標の設定なりをいたしていきますと、その中で都市の交通サービスというものを考えますと、独立採算制を固守するということは適当ではなかったというふうに考えるわけであります。で、理念的には、もっと市民全体の共同の生活手段あるいは生産手段として公共交通というものをもっと早く位置づけて、それにふさわしい責任を国や地方公共団体がとるべきであったというふうに思うわけでございます。
 しかし、ともかく前回の地方公営企業法の改正以来、財政再建に取り組まれてきたわけでございますが、そこで、その再建計画は結局失敗に終わったというふうに思っているわけですが、その結果として、今回こういう法案が出ると同時に、本年度の予算案においては、地下鉄の建設についても、またバス事業についても、助成措置の前進が見られたということについては、私は積極的に評価したいというふうに考えているわけでございます。
 で、独立採算制の問題点、それではいかにあるべきかということについて、少し私の考えを述べさせていただきたいと思いますが、過去に独立採算制が適当でなかったということについては先ほど申し上げましたけれども、公営交通事業の財政危機が進化していったその直接的な原因として、二つの問題があげられるのではなかろうかというふうに思っております。
 一つは、インフレーションの影響ということであったと思います。現在、インフレーションは世界的な規模で起こっておりまして、最近の物価騰貴は座視していることはできないわけでございます。市民生活を根本から不安定にする原因になっているわけでございます。実はしかし、この一、二年において、卸売り物価も消費者物価も大幅に騰貴しているのですが、それ以前から、実は消費者物価やあるいはそのサービス料金というのは非常に騰貴しております。これはやはりインフレの原因が、不均等にそれぞれの商品やサービスのコストアップを進めるということの結果であったと思われるわけですが、公営交通事業の場合には、どうしても人件費のコストに占める比率が高いものですから、インフレーションの影響を受けやすい体質を持っているわけであります。ところが、公営交通事業は、市民に必需的なサービスを提供しているものであるがゆえに、公共料金として抑制されざるを得ない。つまり、インフレーションが進んでいるときにはまさに物価安定上この料金を抑制する必要が政策的に生ずる。そうして料金の引き上げが抑制されながら、しかもその負担はその交通サービスを提供している企業自体に帰着させられてしまう。それに対して、たとえばヨーロッパの諸国でやっておりましたような、値上げを抑制したことに対する補償、償いというようなものが財政的にはとられてこなかった。この点は長年続いてきたために、非常に公営交通事業の体質を悪化させてきたというふうに思うわけであります。
 それからもう一つの原因は、何といっても環境の変化、特に混雑の問題であったというふうに思えるわけです。それは大体、大量の自動車の交通を前提としていない都市の構造、都市の道路の体系、その中へ急激にふえる自家用車が進入してくるわけですから、それがどうしても道路の容量から見て適正な――これは時間速度を含めた適正交通量という意味でありますが、それを越えて自動車が進入するものですから、そこで混雑が発生する。混雑が発生しますと、バスのように、停留所ごとにとまっていく、しかも比較的短距離に停留所がございまして、そこに毎停留所とまっていくというような運行方式をとる事業の場合に、非常にこの混雑の影響を受けて速度が下がる、速度が下がれば、車両や乗務員の生産性も下がっていくコストは上がっていく、しかも、乗客の側から見れば、いつバスが来るのかわからない、非常に不規則になってしまう、しかも時間がかかるということで、バスの乗客は減ってくる。路面電車が通った道をバスもまたたどるということになるわけです。こういった環境からくる経営の圧迫要因、これも直接の原因であったと。ですから、インフレーションと、それから都市の道路環境、この二つの問題について、過去の趨勢を逆転させるような、そういう政策がとられるのでなければ、実は今後、健全な経営を確保するということについて成算をわれわれは持つことができないわけなんです。もちろん、たとえば施設あるいは設備、これを公共財源でまかなう、そして料金で運営費をまかなうことにすると、現在の政府案はそこまで徹底しておりません。かなり中途はんぱでございますが、方向としてはそちらの方向に向いてきていると私は考えるわけですが、かりに、そういうふうに市民の共同の生活手段として公共交通機関、特に公営交通事業を位置づけて、そういった施設あるいは設備部分に公共財源を投入するとしても、このインフレーションと道路の混雑をこのままにしておいたのでは、今後の健全な経営というものはむずかしかろうと思う。その点におきましては、インフレ対策について、政府がもっと総合的な政策を大胆に行なうことが当面の急務であるというふうに思うわけです。その点は、ぜひ委員会の御審議の中で、この法案そのものではございませんけれども、公営交通事業の健全な経営を確保するという目的からいえば、重要問題として取り上げていただきたいというふうに思っております。
 それから環境の問題でございますが、いずれにしましても、大都市の交通におきましては、自家用車の利用を無制限に認めるということはもうできない。これは世界じゅうの――アメリカを含めて、ヨーロッパの諸都市を含めて、共通の認識が得られている結論でございます。したがいまして、都市の空間を有効に利用する、都市の限られた空間を有効に利用して、都市の全般の福祉のレベルをあげていくということのためには、どうしても効率的な利用というものをわれわれは考えなければならない。そのためには、新しい交通技術の導入を含めて、公共交通機関を軸にした都市の設計、都市の運営というものを考えざるを得ないわけであります。そういう意味では、たとえば住宅の団地なんかを開発します場合に、公共交通の計画と整合した計画をつくるべきでありましょうし、およそバスも鉄道も利用するのに不便だというようなところに住宅地を開発することを認めるべきではないのであります。そういうような、都市計画においてもそういう配慮は必要でありますし、すでに現在、存在して混雑しております道路につきましては、当然、乗り合い輸送、公共乗り合い輸送を優先するというふうな道路利用の割り当てを行なう必要がある。それは具体的にはバス専用レーンを拡充するとか、あるいは優先レーン、あるいはまた専用道路というようなものをつくっていくということになるだろうと思います。そういう政策を並行して進める。さらに、バス事業につきましては、従来のように不規則に運行しておるということでは、旅客の信頼も得られませんので、たとえばバス・ロケーション・システムを導入するとか、あるいは場合によってはデマンドバス方式も含めて新しい改善を考える。あるいは身体障害者や老人や子供の乗りやすいような車両の構造を考えるとか、あるいは停留所に屋根をつけるとか、いろいろなやはり改善を要する点があろうかと思います。
 では、そういう改善が企業の料金収入でもって今後可能であるかというふうに考えますと、現在の非常に弱体化し、疲弊した公営交通事業の現状を見ておりますと、自力でもってそれが直ちに可能であるとはいえない。ですから、そういったバスサービスを改善するための設備資金、これは一部分は、都市計画道路であるとか、駅前広場であるとかといったような、そういう土木的な公共施設でありますし、一部分は、そういったバスターミナルであるとか、バスの停留所であるとかいうような、バス事業に直接関係のある固定施設でありますが、また、一部分は車両でありますけれども、そういったものについても、要するに改善して経営の拡大を可能にするような、そういう投資について、国や自治体が積極的に援助していく、それが実は体質を強化していくカンフル注射の役割りを果たすんだろうというふうに思うわけです。そういうこともあわせてやっていただきたい。
 時間もございませんので、結論になるわけでございますが、基本は、市民の共同生活のために公共交通サービスというものは欠くことができない。だから、地方自治体は、その都市の公共交通を市民の最後の足として確保する責任を持っていると。それについては、単に企業経営者として終始するのではなくてその外部も含めて環境を整備する責任を持っているんだということを明確にしていただきたい。で、事は、かなり道路行政あるいは都市計画行政、あるいは交通行政全般にかかわりますので、そういう点につきましては、そういった全般的な改革を検討していただいて、その中で公営交通事業の再建そのものの精神が生きてくるような発展を期待したいというふうに考えているわけであります。
 かなり私の意見の、何といいますか、大ざっぱな陳述に終わりまして、法案そのものについてこまかい言及をすることができませんでしたが、もし御質問がございましたら、またお答えするということにしまして、これで私の陳述を終わらしていただきます。
#7
○委員長(久次米健太郎君) どうもありがとうございました。
 次に、松隈参考人にお願いいたします。
#8
○参考人(松隈秀雄君) 参考人としてお呼び出しにあずかりました松隈秀雄でございます。
 皆さん、すでに御承知かと思うのでありまするが、全国の三十九の都、県、市が会員になっておりまする公営交通事業協会というものがございます。たまたま、その協会の中に都市交通整備調査会というものが設けられまして、十四人の委員が任命されておるわけでございます。たまたま、私がその会長をいたしておりますので、今日もその関係でお呼び出しがあったんではないかと思うのでございます。その調査会に、四十七年の五月八日に、公営交通事業協会会長さんから「公営交通事業の経営悪化の現状にかんがみ、その財政の健全化をはかるための方策を示されたい」と、こういう諮問がございましたので、十四人の委員の方が相当時間をかけて勉強をいたしまして、答申を取りまとめまして、四十七年の八月の二十五日に提出いたしました。
 今回、提出されておりまするところの地方公営交通事業の経営の健全化の促進に関する法律案並びに政府の予算案、さらにはまた、衆議院の附帯決議等を拝見いたしまするというと、幸いにいたしまして、この調査会の答申が、一〇〇%とは残念ながらまいりませんけれども、かなりな部分が採用されているということは、調査会の面目から言っても非常にありがたいことでございます。
 それでは、内容はどんな答申をしたかということについて簡単に申し上げたいと思います。
 まず、公営交通事業の経営の悪化ということは、公営ばかりでなくて、民営にも関係のあることでありまして、それからいたしまして、都市交通の一元化という問題にまで入るべきかどうかという議論が出ましたけれども、時間の関係で、今回は企業形態論のほうは見送ることにしたわけでございます。
 答申の内容は、総論と各論に分かれておりまするが、総論といたしましては、都市交通における問題でございます。これは結局、産業および人口の都市への過度集中ということと、それからモータリゼーションによる私的交通機関の過度の増大から引き起こされていると。つまり、公営交通事業の経営の内容の問題であると同時に、外的条件が非常に変わってきておる、そういうことが公営交通事業の採算を悪化させ、赤字問題に当面してきたと、こういうことになるということを申しておるわけでございます。つまり、第一には、路面交通機関の運行の速度が鈍って、定時性、規則性が失われ、利用者の信頼感の減退とともに、輸送需要が相対的に減少しておる。それから、路面交通機関の状態からして、大都市においては重要性を増している高速鉄道の建設、特に都心部における地下鉄の建設に非常に多額の投資を必要とするという状態になってまいっております。しかも、路面交通機関も高速鉄道も、朝夕のラッシュ時に備えまするために車両や要員を持つ必要がある、片荷輸送というような状態になっております。これがコストアップにも相当影響があると、こういうようなわけでございます。
 それらの状況が重なり合いまして交通事業の経営が悪化しているということは、すでに皆さん御承知のことと思うのでございます。公営交通事業協会に属する全国の三十九都県市の公営交通事業の四十六年度末の累積赤字額が千九百億円をこえておると、こういうような状態でございます。
 次に、「公営交通事業の重要性」でございますが、公営交通事業は都市交通の中できわめて重要な位置を占め、いわゆるシビルミニマムを維持するために大きな役割りを果たしております。しかも、私的経営による公共交通機関の活動が、一般的な都市交通事業の採算難という状態の中でおのずから制限されざるを得ない、こういうことのために、今後公営交通の役割りはますます増大するという傾向にあるわけでございます。
 そこで、財政の健全化のための基本的な考え方をする必要があるのでありますが、そのためには、たとえば、既存道路の利用方法を改善し、バスの走行を優先するような外部環境の整備を勇敢に推し進めることを前提として、経営合理化の徹底、それから利用者負担原則の確立、利用者負担の貫徹が公共機関として適切でない場合には、地方公共団体の一般会計もしくは国家財政による助成、それから過去の不良債務の処理という四つの点が必要であるということを答申しております。
 第一の経営合理化につきましては、人件費の割合が多いという公営事業の欠点を改めて、人件費の割合を抑制するということ、つまり、事業管理者が責任を持って経営の合理化に努力することを求めたいと言っております。
 それから、利用者負担については、運賃がコストを完全に回収するとともに、適正な利潤を確保するものでなければならないという原則を打ち立てております。物価政策的な意図などから、原価をまかなえないような低い運賃を押しつけるということは、結局、不足分を租税で埋めることになって、利用者以外にも負担を求めることであるから公平とは言えない、つまり、公営交通事業は企業として原価を運賃でまかなう独立採算制に徹することが原則であると、こう言っております。
 それから運賃の決定につきましては、諸条件の変化が激しいときには機動的に行なわれることが望ましい。ところが、現在の運賃決定方法は非常に欠点がある。そこで将来の方向としては、アメリカの公益事業委員会のような、政治とは切り離された機関が中立的に運賃を定めるような仕組みに改める必要があるということを示唆しております。それから、さしあたっては、運賃決定のための二軍行政を改めて、地方公共団体が地方議会の同意を得て独自に決定できるように制度を改めるべきであるということを言っております。さらに交通施設は、利用者に対して直接的な便宜を与えるばかりでなく、沿線の住民や都市の事業者なども間接的な利益を受けまするんで、これを課税などの方法で吸収して、交通施設整備のための財源に繰り入れることを検討すべきである。その例といたしましては、アメリカのサンフランシスコの例あるいはフランスのパリの例なんかを引いておるわけでございます。
 それから過去の不良債務の処理につきましては財政再建計画を持つ地方団体はそれを練り直し、財政再建計画を持たない団体は新たに再建計画をつくって、計画的な不良債務の処理をはかる必要がある。この際、再建債の元利償還につき、当分の間、国及び地方公共団体の一般会計が全額を補給するなどの措置を講じなければならないと、こういうふうに申してあります。
 以上が総論でありまして、次は、公営バスと地下鉄を各論として取り上げておりますが、公営バスの経営改善につきましては、第一が、コスト引き下げのための経営の合理化であります。さらにその内訳は、人件費の削減、それから運行路線系統の画編成、バスの車種と規格の統一という三つをあげております。
 それから二番目として、需要増大のためのサービス改善。これは、営業時間を改善する、始業時を繰り上げるとか終業時を繰り下げるとかいったようなことでございます。それから、バス・ターミナル及び停留所を改善する。それからバスの車両の改善。これは先ほどもお話がありました。
 それからバス優先のための道路利用の改善が三番目でございます。国や地方の公安委員会は、バスの優先レーンや専用レーンの設定に積極的な姿勢をとって、道路行政はそれを容易にするように道路改善対策を進めるべきであると、こう答申しております。それから、これも先ほどお話が出ましたが、道路交通の混雑を緩和するため、自家用車そのものへの規制を強化し、路上駐車のきびしい取り締まりや、間接的な自家用車増加抑制策としての租税の重課、自動速度制御装置や、自動過積みですね――よけいに積む――過積載防止装置の義務づけなどを考えたい、こう申しております。
 それから、四番目としまして、運賃の適正化と間接受益者負担でございます。運賃というのは、合理化された経営のもとで総括原価――これは何かというと営業費用プラス公正資本報酬、その総括原価をまかなうものでなければならぬ、こういうふうに定義しております。それからして、利用状況の悪い線とか、特に終業時間をおくらせること等のような場合には、割り増し運賃ということも考える必要がある、こう申しております。
 それから、間接受益者負担といたしまして、たとえばバス路線の開設が不可決な住宅団地などにつきましては、その開発者に、バスの運行上必要な用地、つまりバスターミナルあるいは建物、さらには車両などなんかについても負担させていいと、一種の間接受益者負担を考慮する必要があると、こう申しております。それから、行政バス路線に対する財政負担問題であります。行政バス路線については、さきに四十五年の十二月にも提案したのでありまするが、やむを得ず行政路線を認めるというような場合には、行政路線への財政負担を国及び地方公共団体がすべきであると、こう申しております。しかし、行政路線については割り増し運賃を採用する必要もあるんで、そちらで押えることができるかもしれませんが、しかし、また節度に欠けた行政路線化が際限なく広がるのを防ぐ意味で、行政路線の基準をあらかじめ定めておく必要性というものを前回も答申しましたが、今回も強調しております。これは衆議院の附帯決議を見ましても、行政路線について触れておられるようであります。
 最後に、地下鉄事業の経営の改善でございまして、調査会といたしましては、四十四年の十月に、大都市においては地下鉄の公共大量輸送機関として不可欠であることの認識から、その建設費のうち、地下及び高架の構築物の部分を財政負担とすることを提案しました。四十五年度から地下鉄建設への財政負担が実現しましたが、必ずしも十分とは言えなかったのでございますが、ことに建設費の五割程度であって、しかもその支払いが八年間にわたる分割負担、こういうことでありましたが、それでは困るんで、建設費に対する補助額の引き上げは、地下鉄の建設費に対する国及び地方公共団体の負担を地下及び高架の構築物の費用の全額とすべきである。そして、財政負担分の資金の支出を迅速にし、工事完了時までに支出が終わるようにして、建設に伴う利払い負担の軽減をはかるべきである、こう申しております。それから、低利、長期の資金の供給としては、公営企業金融公庫資金を充当するとして、その公庫債の利率を引き下げてほしい。償還年限も延長してほしい。これらは衆議院の附帯決議等にも取り上げられております。それから最後に、この地下鉄建設は都市づくりと共同立案をすると。わが国の欠点といえば、この都市計画の総合性という点に欠けるところがある。これがやはり経営面にも影響してくるんで、都市づくりと地下鉄建設の共同立案の場をぜひ設定してほしい、こういうような趣旨でございます。きわめて商用ではございましたが、内容を説明申し上げ、先ほども申し上げましたように、かなりの部分が今回の法案及び予算で実現を見ようとし、それからなお衆議院の附帯決議等においても、この趣旨がかなり生かされているということを付け加えたいと思います。
#9
○委員長(久次米健太郎君) どうもありがとうございました。次に、内木場参考人にお願いします。
#10
○参考人(内木場忠巳君) 都市交通の内木場です。腰かけて発言をすることをお許しをいただきます。ただいままで、三人の学者先生の方から、きわめて高邁な御意見が出されておりますけれども、公営交通の事業に従事をする職員の一人として、私は地方公営交通事業の経営の健全化の促進に関する法律案に対して意見を申し上げたいと思います。特に、発言の機会を与えていただきました委員会の委員長さんをはじめ、関係の皆さま方に心から感謝を申し上げる次第であります。本法律案は、すでに衆議院で審議をされました。一部が修正をされて本院に送付をされていますが、私は、この審議過程で明らかにされた点も含めて、私たち公営交通事業に働く者にとって最も重要であると思われる幾つかの点について触れてみたいと思います。まず、第一の点は、公通事業の赤字の原因についてであります。先ほど、松隈先生のほうからもいろいろとお話がございましたけれども、御承知のとおり、公営交通事業は、昭和四十六年度末において千九百二十九億円にのぼる膨大な累積欠損金を生じております。一方、国鉄においても、同年度末において八千億円をこえる欠損金を計上しておると聞いておりますし、また、民営バス事業でも、地方過疎交通におきましては、ほとんどの企業が深刻な経営危機におちいっていると聞いております。このように、経常主体のいかんを問わず、すべての交通事業が経営危機におちいっているという事情は、とりもなおさず、その原因が共通する企業外の原因によるものであることを証明していると思うのであります。
 政府は、昨年の七月、大都市交通の再建に関する文書を発表いたしまして、従来の再建対策が財政対策にのみ重点が置かれたことを反省をして、徹底した企業環境の整備が確立をされねばならないと指摘をしております。このことは、交通を取り巻く現状を見るとき、いささかおそきに失した感がしないでもありませんが、まことに当を得た指摘であったと思うのであります。しかるに、今回の法律案を見てみますと、その指摘が積極的に盛り込まれていないと痛感をするものであります。たとえば、法律案に「国の配慮」とされている事項などは、当然、国の責務としてその内容が明確に義務づけられてしかるべきであると考えるのでありますが、このことは、同法案の第十条との関連において考える場合、私の申し上げたような措置をすることがいかに重要であり、かつ、必要なことであるかを御理解をいただけると思うのであります。
 私はこの機会に、すべての交通事業、なかんずく、最も深刻な影響を受けている大都市並びに地方中核都市の公営交通事業の経営悪化の要因、いわゆる企業外要因について若干申し上げたいと存じます。
 御承知のとおり、昭和二十七年、地方公営企業法が制定をされまして、独立採算制をたてまえとする公営企業が誕生をいたしました。問題の根本的な原因はこのことにあると思うのでありますが、その後、昭和三十五年ごろから経済の高度成長政策が進められ、その結果、現在では経済大国に発展をいたしました。このことは、国民の生活水準を高めるためにかなりの効果をもたらしたことは否定をできませんが、しかしながら、メリット以上のデメリット、すなわち成長政策のひずみのほうが大きいのではないかと思うのであります。このひずみは、物価あるいは税金、公害、都市環境など、全般にわたっていると思われますが、成長政策と交通とのかかわり合いは、環境悪化の問題としてとらえることができると思うのであります。
 私が申し上げるまでもなく、高度成長政策は、企業と人口を極度に都市に集中をする結果を生み出しました。産業の拡大発展は輸送システムの変化をもたらし、モータリゼーションの発展と基幹道路の整備拡充を引き起こしました。経済の発展による国民生活水準の若干の向上は、マイカー時代を呼び起こす原因となっておりますし、加えて、都市活動の長時間化あるいはまたスピード化は、前述の傾向に拍車をかける結果となっております。このような状況の中で、無原則といわれるような拡大を続けた都市は、ますます外縁化をし、新しい団地をはじめ、公共的諸施設が、交通とはほとんど無関係に開発整備されている実情を見のがすわけにまいりません。
 一方、地方都市においても、過疎化が進行する中で、地方の中核都市は、交通に関する限り、大都市とほぼ同様の現象を呈しているのであります。極度の交通渋滞による表定速度の減退、輸送距離の長大化による輸送効率の減少、交通規制措置の不十分さが引き起こした交通環境の悪化、路面交通にかわる新交通機関建設の余儀なきに至り、そのために建設をした地下高速鉄道の膨大な建設資金調達、都市再開発と住民要求による行政路線の増大、経済情勢の変動による物価高騰がもたらした経常経費の増高など、現在、公営交通事業の深刻な経営危機を引き起こしたものは、その大部分が、前に申し上げたような企業外の要因によるものであることを十分御理解をいただき、その解決に必要な措置を、ぜひとも国の責任において講じていただきたいのであります。
 特にこの機会に申し上げたいのは、赤字の原因と国の責務との関係であります。いままで申し上げたように、赤字の原因の大部分が企業外にあることはすでに述べたとおりでありますが、その解決策として、住民生活に直結をした公共輸送機関を優先して取り扱う交通規制の強化でありますが、これをぜひとも全国的に早急に実施をしていただきたいのであります。大都市における規制措置は近年見るべきものがありますが、地方に行くほどその規制が緩慢になっているようであります。また、車庫確保に関する法律など、現行法規の厳守なども、ざる法というそしりを受けることのないようきびしく適用されるべきであります。
 第二の点は、国による財政負担の問題であります。私は、公営交通事業が、地域住民の要求にこたえ、地方自治の確立に寄与する目的で設立をされている以上、それに要する経費を全額国が負担せよなどという考えはないのであります。しかし今日的な危機の原因が明らかになり、また現在の税制との関係における都市財源の実態から見て、発生している赤字について、国が責任を持って措置するのは当然のことと考えております。
 たとえば地下高速鉄道については、現在一キロ当たり九十億円の建設費を要するといわれておりますが、これにつきましても、路面交通の極度の混雑の結果、地下にもぐらざるを得なくなったものであり、都市住民の通勤、通学その他必要な生活条件確保のための交通としての使命を果たすための手段である以上、少なくとも、実質国道並みの助成がなされるべきではないかと思うのであります。現在国の助成も改善をされ、本年度形式六六%となったことを評価いたしますが、さらに改善の必要があると考えられます。
 次に申し上げたいのは、地方債償還に対する国の措置であります。このことについては、衆議院の審議の過程で政府の見解が一応明らかにされておりますが、なお不十分の感を抱かざるを得ません。さらに付言をしたいことは、行政路線に対する助成であります。確かに、行政路線の基準を作成することはきわめてむずかしいことと思いますが、公営交通事業の危機要因のおもなものの一つとして行政路線があることを考える場合、放置することはできません。本年度は、行政路線に対する措置として、バス購入費の補助十四億円が形を変えて計上されておりますが、私はこの政府による努力を多としながらも、なおこれは基本的に解決をされるものでないということを指摘をし、一日も早く解決策を立てていただくよう、本委員会にお願いを申し上げる次第であります。
 以上の財政に関することなどは、本来なれば企業の側が指摘すべき問題でありますが、そこに働く私たちといたしましても、重大な関心を持たざるを得ないのであります。なぜかならば、それは、われわれ職員の労働条件と密接不可分の関係を持っているからであります。以下、私たちの労働条件について若干の意見を申し上げます。
 法律案第四条三項二号は、衆議院で修正をされ、その表現が「合理化」から「効率化」と変わりましたが、私たちはこの点になお重大な関心を持つものであります。すでに御承知のとおり、再建団体に指定をされている都市はもちろん、すべての都市で合理化が進められ、一部の都市においては、給与表に至るまで改悪がなされております。諸手当あるいは日常の労働諸条件についても、多くの改悪がなされて現在に至っているのであります。
 よく都市交通労働者の賃金は高いといわれておりますが、賃金の比較は、勤続の年数あるいは労働者の平均年令、労働時間をはじめとする一連の諸条件、福利厚生施設、男女構成比など、多くの要素がからみ合っておりますから、これを正しく分析をしない限り、単純比較をすることはきわめて危険であり、不合理であります。むしろ、比較をするのであるならば、基本的に同じ身分で律せられている当該地方公共団体の一般職員や、あるいは公営企業の職員と比較をすべきであると考えますが、私の所属をしている都市におきましても、同じ条件のもとでは、交通職員のほうが、他に比して二号俸程度給料が低く押えられている事実を私は御報告を申し上げ、御理解をいただきたいと思うのであります。
 このような実情は、再建指定下における計画遂行上の合理化のいわゆる所産として生じていることをば訴えたいのであります。換言すれば、交通事業の中には、もはや合理化するものはほとんど残されていないと言っても過言ではありません。それにもかかわらず、衆議院の審議の段階では、なお、依然として従来同様の合理化を企業職員に求める声があったというふうに聞いておりますが、このような経過を見るにつけても、たとえ「合理化」という字句が「効率化」という表現に変わったとしても、深刻な危惧の念を払拭することができないのであります。何とぞ慎重な御審議をばお願いを申し上げたいと思います。
 また、本法案の全部を通じて受ける感じとして政府による指導、悪くいえば介入の強化というものが懸念をされます。労使間のいわゆる労働協約及び確認事項は、いずれの場合においてもそこなわれてはならないと思うのであります。
 いうまでもなく、事業を再建をし、健全化する原動力は、そこに働く労働者の力以外にはないと思うのであります。職員が労使間の慣行を信頼をし、事業の将来に、きざなことばでありますけれども、夢と希望を持って働くという、そういったシステムが確立をされるときに、真の再建への道筋が私は求められる、確立をするものと考えるのであります。衆議院の審議過程におきましても、このことは重要な事項として討議をされたことでありますが、労使間の協定あるいは確認事項、過去における慣行が今後阻害されることのないよう、配慮されることをば強く御要請を申し上げます。
 私は、限られた時間の中で、赤字の原因と国の責任、あるいはまた国による財政負担の問題、職員の労働条件という三つの事項について、きわめて概括的に申し上げました。何とぞ十分な御審議をお願いを申し上げます。特に、私ども職員は、他のだれよりもこの職場をば愛し、そしてこの職場の将来を一番心配をしている、そういったことを強く訴えたいのであります。どうかひとつ、皆さま方の慎重な御審議をいただきまして、住民の足として、りっぱにその使命にこたえることができるような交通事業を律する法律案をつくっていただきたいことをお願い申し上げまして、私の意見にかえます。ありがとうございました。
#11
○委員長(久次米健太郎君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人各位の御意見陳述を終わります。
 それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○神沢浄君 参考人の皆さんにはいろいろ貴重な御意見を聞かせていただいてたいへんありがたく思います。
 時間の関係もありますから、私は、御意見を聞きながら率直に感じたような点について、それぞれ一問ずつお伺いをいたしたいと思うんですが、最初、松隈参考人、広岡参考人、お二人に同じ質問をさしていただきたいと思うんですけれども、今度、利息は国がめんどうを見る、それから、元金については、地方公共団体でもって始末をしろというようなたてまえになっているようでありますが、地方公共団体に始末をしろということになりましても、いまの地方行財政の制度の中におきましては、それじゃその始末をするところの財源はどうするのかというような問題が当然起こるわけでありまして、これは、やはり国の責任として、他の行財政分野から見てもそうですけれども、国がめんどうを何かの形でもって見ていかなければらちはあかない、こういうことだと思うわけであります。あるいは企業環境の整備をやらなきゃだめだと。これもしかし、やっぱり行政の分野の問題でありまして、当然、国の行政の責任として考えていかなきゃならない問題だと思うわけであります。そうなってまいりますと、実は先ほども、あれは三条ですか、「国の配慮」というような点について、参考人のどなたかから御意見の触れられている部分もありましたけれども、私は、やはり第一次再建計画の失敗の経緯等にかんがみてみましても、この際、はっきりと国の行政の上の責任というものを明らかにする、たとえば自治体に始末をさせる元金の問題についても、それは実は裏からは国も責任をとるんだと、こういうようなことがきっぱりしませんと、この法律というものはほんとうに生きないんじゃないかというような感じが率直にするわけでありまして、これをひとつ両参考人から御意見を承りたいと思うわけであります。
 それから、細野参考人にもお伺いをしたいんですが、御意見を聞いておりますと、独立採算制という考え方は確立をされるべきであるという、徹底をされるべきであるというような御意見だったように承ります。しかし、それに加えて、たとえば沿線開発などというような分野がありますからそれは税金取っても、税金といいますか、いずれかの措置を公営交通に協力させるためにとってもいいんじゃないかというような御意見なども加わっておりましたし、それから同時に、企業環境の整備というものが伴わなければならないというような御意見もあったように思います。そうなりますと、独立採算制という考え方は、一つのたてまえ論としてはあるかもしれませんが、実際にはいまや公営交通、特に都市交通の分野におきましては、独立採算制という考え方というものは、実際にはもう存在し得ないというような感じを私は率直に受けるわけでありまして、その辺の御所見を承りたいと、こう思います。
 それから、内木場参考人にお尋ねをいたしたいんですが、「合理化」が「効率化」に衆議院でもって修正をされた。私ども、これからの審議の中でもって、大体それは内容的にどういうふうな定義上の違いがあるかというような点も詰めていきたいと、こう考えているところでありますが、しかし、先ほどの御意見の中でも、非常に私なども懸念をいたしますのは、皆さんの御意見の中にも出ておりますが、やっぱり人件費の問題というようなものに触れられるわけであります。そうなってまいりますと、今後の公営交通の再建の途上におきましては、どうしても従業員の方たちに、いわゆる労働者の皆さん方にしわが寄せられていくんではなかろうかというような懸念が残るのでございまして、そういう点の参考のためにひとつお尋ねをしたいと思うのですが、第一次再建の計画の実施の段階におきまして、職員の労働基本権なんかにかかわる問題とか、あるいは労働協約などにかかわる問題だとか、あるいは労働条件の改悪といいますか、これらにかかわる問題だとかというふうな点について、もし、簡単に私どもが承知ができますような実例的なものでもありましたら、それらも含めて御意見を承りたい、こう思います。
#13
○参考人(松隈秀雄君) 先ほども申し上げましたように、公営企業の赤字の原因の大部分というものは、外的条件の変化によるものである。それならば、全然、企業内部には問題がないかといえば、企業内部においても合理化の余地はあると。ことに民営と比べた場合に人件費の割合が高いと。これは先ほどお話が出たように、平均年齢が高いとか、あるいは勤続年数が長いということであるけれども、それらを考慮しましても、たとえば合理化をするというときに、配置転換等によりまして行政職のほうにかえて現場職員の平均年齢を下げるとか、そこにくふうはあるはずである。しかし、外的条件の悪化によっていままで累積してきた赤字というものは、これは利用者負担にするということになると、利用者の負担が過重になって、結局、それはまた需要の減少につながるからして、料金は適正のところにきめざるを得ない。そうして、したがって、外的条件の悪化によって生じたことに過去の不良債務については、これをたな上げする意味において、その元金及び利子は国及び地方公共団体において負担すると。その場合に、国は財政が一本であり、かつ大きいから負担しやすいが、地方団体の負担が増すということについての心配があることはたしかであります。で、これにつきましては、私、たまたま地方制度調査会のほうの委員もしておるんでありますが、地方制度調査会におきまして、国民の福祉増進については地方団体の責任がますます重大になってきておる。その場合に、地方団体が財源難に苦しんでおるから、国、地方の財源の再配分というようなことを検討すべきであるという意見が出ております。やがてそういう答申も出るかと思うのでありまするが、この公営交通は、先ほど来お話がありましたように、国民のシビルミニマムを達成する最小限度の福祉行政、したがってこの福祉行政のために地方団体が財政上苦しむならば、これを援助するということは当然言えると思うのであります。
 それから、いわんや病院とか水道等についても赤字が出ておる。地方団体の福祉行政に対応する財政支出に対する財源難をどう緩和するかということは、他の面においても目下検討をされておるので、いずれは答申が出て、政府においても十分その点は考慮していただけるものかと思います。
#14
○委員長(久次米健太郎君) なお、ちょっとこの際、細野参考人が、会議の前から、十二時までになるべくはというようなお話もございますので、細野参考人に対する御質疑の方がございましたら……。
#15
○参考人(細野日出男君) ただいま御質問がございましたのですが、独立採算制についてでございますけれども、私が申し上げましたのは、いわゆる完全独立採算制ではないわけでございます。今度の案ではほぼ営業比独立採算制という程度の、これはぜひやる必要があるというふうに考えておるのであります。といいますのは、日本経済はいわゆるミックストエコノミーでございます。民営と公営とが並び行なわれている。しかも、東京のようなところでは、同じところに十のバス事業が走っておりまして、これが公営は都営が一つである。九つは民営である。この民営のバス事業というのは、これは御承知のとおりみな独立採算制でやっているわけであります。それに対しまして、公営は、過去の赤字については補助金が出るということになりましたですけれども、まだ自動車購入費の十四億円の予算がことしはつくというようなことでして、これでも、民営から見ますと公営はうまくやっているということになるわけでございます。ですから、私はミックストエコノミーにおいては、公営と民営というものはやはり同じ運賃でやっていかなければならないというところから見ましても、独立採算制というものが必要だと思いますし、また、これを完全にはずしてしまいますと、ワクがなくなってしまいまして、のべつまくなしに――たとえば行政路線にしてもそうでございますけれども、一応私は原則としては行政路線の場合でも営業比独立採算のワク内でもってやるべきである。それ以上やらなければならないというものに対しては、特別一般会計補給金というようなものを出す必要が出てくると思いますけれども、原則はやはり独立採算のワク内で行政路線を考慮する。これは第一次行政路線だろうと思うのであります。そういうふうに考えておる次第でございます。
#16
○委員長(久次米健太郎君) それでは、神沢委員の御了解も得ましたので、細野参考人に対するだけを、ひとつ、もしございましたら委員の方から……。
#17
○村尾重雄君 いまお答えいただいたことをお聞きしたがったのです。このことはひとつ省かしていただきます。
 ただ、一番最後の御意見の結論として、公営企業精神に立て、また徹するようにというお話がございましたが、そのことでちょっとお伺いしたいのですが、公営企業の精神に立て、徹しなければならぬということは、公営企業を負担する人に精神的にお話しなさっておるのか、公営企業全体になおひとつ公営企業ということに立つようにという御意見かということなんです。この点につきましてはいまお話伺いましたように、企業全体について、独立採算制については現在も変化しつつある、これは認めると、その上、いま御意見がありましたような、営業面を含めた一つのワクに制約されたひとつの国及び一般会計の営業権であるという御意見があったと思います。これはよくわかります。これは、最初の、私が申し上げました公営精神に徹せよという点についてのもう少し御意見を伺いたいということが一つ。
 いま一つ、御意見の中で、人件費の負担についてのお話を伺いましたが、端的にもう一度お尋ねしたいと思いますのは、いままでの問題になっている累積赤字が、その重要なウエートを人件費が占めたと、こういう御意見なんですか。それとも今後の再建計画の進め方に対して、やはり人件費というものは一つの大きなウエートになるという御意見なのかどうかということ。当然、これが地下鉄企業の今後であり、また、高速鉄道の今後というものに対しての人件費における負担というものは非常に少ないのですが、いま問題になっています路面交通、とりわけバス事業については、当然人件費というのが中心になるべきなんです。そういうふうな点で、従来の赤字は人件費がウエートが大きかったということだけのおことばなんですか。今後においても、これが一つ大きなウエートを占めるから、これにもつと考慮を払えという御意見をお持ちなんですか、この点をちょっと伺いたいと思うのです。
#18
○参考人(細野日出男君) 私は公営の真義ということ――ミックストエコノミーの国において、いわば自由資本主義体制でもって、そこに企業の民営が原則であるところへ公営もある程度並び行なわれているというところで、なぜ企業を公営にするのかということの理由を考えてみますと、
   〔委員長退席、理事寺本広作君着席〕
先ほど申し上げましたように、公営のほうがよくて安いサービスができるからというところにあると。ですから、悪くて高いサービスをするのだったら、これは公営の真義が失なわれているということになる。その点を関係者はみな十分に認識をしてもらいたいということなんでございます。つまり、民営のほうがいいじゃないかということになったんじゃ公営の意味がないじゃないかということになるわけであります。
 それから、人件費につきましては、実は公営交通で見ますと、昭和三十二年、三年ぐらいまでは――鉄道でございますけれども、バスも大体そうであったと思いますけれども、むしろ、民営のほうがやや高くて、公営のほうがやや安かったのであります。ところが、三十五年ぐらい、人事院の勧告というものがどんどん出てくるようになりましてからあと、だんだん公営の人件費が高くなってきまして、鉄道なんかでは、二割ないし1平均一人の月収というものを比べてみますと、民営と公営とでは相当の格差が出ている、これが直らずに、その格差がほぼ維持されているというような状態にあるのであります。ですから、結局、利子補給をしておりますけれども、現実には、実際は人件費の――実はハス事業なんかの平均コスト――車キロあたりのコストを見てみますと、物件費のほうでは、公営も民営もほとんど変わりはないのです。多少の出入りはありますけれども、ほぼ似たようなものです。人件費だけが格段に高いという結果になっております。ですから、それはやはり税金で、赤字債の利子補給という――形は利子補給になっておりますけれども、実際は人件費を納税者が補給しているというふうに見てもいいというようなものだと思っているわけでございます。したがって、過去にも問題ですけれども、これからも毎年ベースアップのあることでございますから、やはり相当問題になるだろうと思っている次第でございます。
#19
○藤原房雄君 参考人の方々におかれましては、本日、たいへん御苦労さまでございました。
 時間もありませんのであれでありますが、広岡参考人につきましては、先ほど、交通政策という観点から貴重な御意見がございました。この第一次の再建計画が失敗に終わった原因、いろいろあるわけでございますが、このたびの措置につきましても、政府の考えておりますことはわからないわけじゃありませんが、今日のこの高度な経済成長の中にありまして、このぐらいの、今回の政府のとる措置ぐらいでは、これはもうとても、たちまちまた同じことが繰り返されるだろうと。やっぱり抜本的な改革がなければならない、こういうことから、先ほど広岡参考人のおっしゃっておりました、この改善に対しては、より積極的な理念がなければならないということについては、私も非常に同感とするところでありまして、このことについて詳しいお考えをお聞きしたいのでありますが、時間もありませんから……。また、先ほど何点かおあげになってお話しございましたが、やはり第一次、第二次、同じことを繰り返すということは、あまりにも能のないことでありまして、やはりこういう時代の推移というものは私もある程度予測できるわけでありますから、それ相応の対策というものも現時点でも考えられるわけでありますので、まあ先生のお考え等も含めて、今回のとられた処置、そしてまた今後に対するお考えを、わずかな時間でほんとうに申しわけないんでありますが、お聞きしたいと思います。
 それから、内木場参考人に対しまして、企業努力ということが言われるわけでありますが、これは当然なさねばならないことと思います。しかし、現実お仕事に携わっておる立場からいたしまして人件費が高いとか何とかいろいろなことが言われておりますが、この企業努力というものは現在までもずっとしてきたわけであります。今日考えられる何点か、お話もあったわけでありますが、どのぐらい、今後この企業努力という問題につきまして、具体的にどのぐらいというか、どういうことについてできるのかという可能性の問題なんですけれども、特に第一次の再建計画のときにはワンマン運行についてのお話が、強力な指導があったわけですが、実際、一人の方が多くの方々の人命を預かるといいますか、非常に重要な仕事をなさるわけでありますので、ワンマン運行につきましては、運転なさる方に非常な労働の強化といいますか、疲労を増すといいますか、こういうことになりはしないかという、そういうことからいたしまして、このワンマン運行につきましても非常に――私は専門外でありますからよく詳しいことはわからないわけでありますが、負担をかけることになるのではないか、こういうことからいたしまして、企業努力ということにもまず限界があるのではないかというような気がするわけであります。先ほど、まあ従業員の方々が非常に高齢な方々が多いとか、配置転換しろとか、いろいろなことがありましたけれども、現実問題、この企業努力ということについて、内木場参考人の立場でどのようにお考えになっていらっしゃるのかという、その点をちょっとお伺いしたいと思うのですが。
#20
○参考人(内木場忠巳君) 先ほど、神沢先生のほうからも御質問がございましたけれども、あわせて私の考え方を申し上げてみたいと思います。
 まず第一の、神沢先生の御質問でありますけれども、そのことは、たとえば一つの結果が非常に非常識なものであるか、あるいはきわめて不適切であるかどうかという判断というものは、これはある意味では主観の問題でもありますから、見解の分かれるところでありますから、こういったものが介在してくる以上、かなりむずかしい問題ではありますけれども、そこに働いている労働者としての立場で申し上げますと、たとえば昨年の賃金の問題をきめる場合に、労働組合との間には一応合意が成立をした。組合流に申し上げますと、賃金に関する確認を取りつけた。たまたま再建指定を受けている団体でありますから、そうなってまいりますと、計画の変更というものを手続をしなければなりません。きまりに従って事前協議をしようとしたところが、それはきわめて非常識あるいは不適切ではないかと、こういうふうに指摘をされて、そしてこのことがたいへん難航をしたという事実も発生をいたしております。しかし、職員の側から見ますと、正常な団交権を行使して企業管理者との間に取りきめを行なったことでありますから、やはり受ける感じとしては、労働権を侵害をされたという、そういうきわめて大きな憤りをもって今日に至っているという事実もございます。
 また、私が所属をいたしております都市も再建指定団体でございますが、過去六年の間に、基準内賃金に関する部分等におきましてもいわゆる減額をいたしまして、そのことは、この期間にたとえば退職をする人たちにとっては、退職金の算定基礎にもなって、結局不利益をこうむりながらやめていくという事実もございますし、あるいは、近隣の再建指定団体でないところにあります手当等について、同じような企業環境を持っているのであるから、こういった手当等についても、やはり復活をすべきでありあるいは新設をすべきであるという要求を起こしましても、再建指定団体である限り、新しい手当などというものを持っていくというと、中央官庁に大きな目玉を食らうということで、すでにその段階から、やはりこの団交権の正常な行使というものが著しく阻害をされるということは、数多く実は起こっているのであります。このことが一つでございます。
 それからもう一つの御質問に対しまして私が申し上げたいのは、たとえば路面電車の問題でございますが、路面電車は斜陽であるから早急に撤去すべきであるという意見が一時支配的になったことがございます。しかし、最近では、運輸省の方々の御意見を聞きましても、たとえば路面電車の撤去は非常に時期尚早であったという意見も最近聞かれるようになってまいりました。そして、今日残っている路面電車というのは、やはり路面電車はそれなりに、たとえばある都市においてはまだまだ主幹交通的な役割りというものを持ちながら機能をしているということもございますのでそういうものを、企業努力という形で早急に撤去するということは私は当を得ていないと思うのであります。
 また、ワンマンカー等につきましても、正確なパーセンテージを存じませんけれども、昭和四十八年度末においては、おそらくその普及率が九〇%をこすのではないか、事業計画において。そういうふうに聞き及んでおりますが、御承知のとおり、私どもの交通事業というものはほとんど都心部にそれが片寄っておりますから、たとえば狭隘な市道、こういったものなどがあります現状を見てみますと、これ以上ふやすということはかなり無理なことではないかというふうに考えます。したがいまして、ワンマンカーを一〇〇%に持っていくということは、これまた当を得ていないことではないかというふうに考えざるを得ません。
 さらに、先生御質問の点についてでありますけれども、ワンマンカーの疲労度と申しますか、そういったものについて、私どもなりに、関西を中心に実は実態調査を行なったことがございます。特に大学の先生方の御協力や指導もいただいてやった経過がありますけれども、残念ながら、その結論を得ることができませんでした。きわめて困難な、あるいは複雑な条件が介在をいたしておりますから、データとしてここに御報告申し上げることはできませんけれども、職場で働いている労働者の実感からするならば、なれというものが手伝ってやむを得ずワンマンカーの運行に従事いたしておりますが、でき得るものならワンマンカーというものは運転をしたくない。なぜならば、非常に疲れる。そして慢性的な疲れがそこに病気の発生率を高くしている。たとえば関節炎、胃腸病、あるいは神経系統の病気といった、こういったものがやはり発生をするということが職場の中で非常に強く言われているのでありまして、こういったものからいたしますと、でき縛るものならばやはりこのワンマンカーというものをこれ以上ふやすということは、私は当を得ていないのではないか。
 しかし、構造的に交通というものを変革をしていくということについては、それは時代の趨勢でもございますし、そういったものについてはわれわれも十分対応していかなければならないと考えておりますが、これと、見のがしてはならないことは、やはり労働条件の整備、あるいは職場環境の整備、拡充、こういったものが相備わらなければ、企業努力というものの名において、一方的に先ほど先生御指摘のようなことをばやっていくということは、私はたいへん大きな問題があるところだと考えております。
#21
○理事(寺本広作君) ちょっと待ってください。
 細野参考人がお急ぎのようでございますから、細野参考人に御質疑のある方からお願いいたします。
#22
○河田賢治君 ちょっと細野先生に聞きますが、先ほど、他の委員がちょっと聞きましたけれども公営企業における人件費の問題これはのちに内木場さんから私も詳しくは聞こうと思っておりますけれども、なかなか人件費と申しましても、大体、政府関係あるいは地方自治体関係では、いわば年功序列の賃金体系というものが大体中心になっておる。したがって他の民間企業のように、経済の非常な発展期に、あるいはその企業の発展期には、新しい人をどんどん入れる。したがってそういうときには比較的高給を支払う。現在でも私鉄あたりは若干若い人は高いようでありますけれども、公営よりも。しかし、事、公営企業が、このようにいわば四面楚歌の状態でだんだんと整理の時代にきている。企業をやりましても、ワンマンカーをほとんど一〇〇%にし、あるいはまたいろんな財産を売り、あるいはまたその他のいろんな整理をやって、ほとんど今日では企業内の努力を続けてもそう大きな変化がないほど今日整理をされてきているわけですね。しかし、これをもってまだ人件費が高いといってこれを減らすということになれば、それこそ、人の乗らぬ電車をつくるか、それとも現在の人々を総入れかえするか、これしかないわけですね。普通、公営企業でも、専売とか、その他婦人の方の多いところでは、お嫁にいくころにはやめて交代もしますから、比較的人件費は全体としては高くならぬと思いますけれども、しかし、公営企業はだんだんと――もう新しい人は入れてないんですね。そうすると、古い人ばっかりになる。一年、一年、勤続年数も多くなる。一年、一年、年齢も――高給になる。定年になれば、これはそれなりに職場を去っていくわけですけれども、ここで企業の努力、あるいは人件費が高いということを言っても、私は無理ではないかと思うのですね。若干、それは地方自治体でも、他の職場等々が、少しは人も最近はふえております。だから、その中で配置転換なんかの可能なものもありましょうけれども、また、本人が希望し、労働組合もそれを承認すれば、そういう処置もとれるでしょうけれども、全体としては今日の公営企業の状態を見ますと、これはとうてい人件費を減らしてそして経営の効率化をやるといっても、かなり無理なところへきているのではないか。特に、先ほど来から外的条件、すなわち他の条件によって今日の公営企業が電車がかわりまた今度はバス自体も電車と同じいま運命にあるわけですから、こういう場合にどのように人件費なんかの問題を中心にお考えになりますか。これは数字の上や何かでははっきりそれは言えますけれども、現実の問題としてどういう処置をとるのが正しいと思われるか、その辺を聞いておきたいと思います。
#23
○参考人(細野日出男君) お答え申し上げます。
 いまおっしゃいましたようなことが日本的現実でございます。そして、昭和四十一年の財政再建のときに、行政職一号俸的な給与体系を改めて企業職的な体系にするようにというような趣旨のことが自治省からも出たと思いますが、それが七年たちましても実現しないでしまっているわけでございます。これは結局日本的実情であって、まあやむを得ない状態だというふうになっているのだと思いますが、私はしかしながら、これは市民のコンセンサス、利用公衆のコンセンサスを得た上であるならばそれでもしかたがないということを考えております。つまり、東京都のような場合は民営も公営も同じところを同じ運賃で走っているわけであります。したがって、平均の運賃というものをとりますと、民営ならば何とかやれる、ところが、公営だけは赤字が出る、人件費が高い分だけ赤字になるという結果になるわけであります。その赤字はだれが補給をするかといえば、東京都民に補給させる、つまり都の納税者に補給させるということをはっきりさせまして、それを市民の世論に訴えて、選挙等の題目にもしまして、その上でもって市民がそれを認めてくれるという場合に、これは私はいわば公式化されるものだと考えている次第でございます。
 それからもう一つは、アメリカ等では、都市交通はやはり公営が少し出ておりますけれども、公営と民営とが同じ労働組合をこしらえております。実情に合った運営ができるのは地方の自治体であしたがって、地域格差はありますけれども、公営と民営との間の格差というものは出てこないのであります。日本の場合はそうでない。民営と公営との労働組合が別々になっております。公営の労働組合はいつでも行政職のほうを向いておる、同業のほうは向いていないというところが今日の結果になっているのだと思うのであります。高いことは現実でありますけれども、これが市民が承認したものであるということならば、私は引っ込むつもりでございます。それだけでございます。
#24
○理事(寺本広作君) それじゃ細野参考人、まことに御苦労さまでございました。ありがとうございました。
 なお、神沢委員と藤原委員の質問に対する広岡参考人の答弁が残っておるそうですが、お願いいたします。
#25
○参考人(広岡治哉君) それでは、最初に神沢先生の御質問にお答えしたいと思います。
 御趣旨は、国の責任を明記すべきじゃないかという御趣旨であったと思います。同感でございますが、まあ簡単に私の考えを述べさせていただきます。
 最近では、市民の自治意識が非常に高くなってきているわけでございますから、私としてはできるだけ地方自治を徹底したい。したがって、都市の運営についてはそれぞれ個性があっていいというふうに考えているわけです。その都市の、自治体を構成する市民の合意があれば、たとえばその都市交通の運賃を無料にしたってそれはかまわない。無料論というのは現実にあるわけです。私個人は無料論に対しては賛成でありません。
   〔理事寺本広作君退席、委員長着席〕
施設や設備を公共財源でまかなって、運営費用は料金で徴収するのが一番よかろうというふうに考えているわけでございますけれども、その辺は実は市民の自治にまかせるべきではないか。それはどこから出ているかと言いますと、市民のそういう交通の必要を最もよく理解できる、その都市のるという考え方であります。ただしかし、そういう基本精神を生かしていくためには、現在の行政それから財源の配分、そういったものについて根本的な改革を行なわないとできないわけでございます。また、そういうふうに地方自治を徹底いたしましても、なお全国にはいろいろ発達の状況の違い、あるいは自然的な条件、歴史的な条件の違いもございます。国民的なレベルでナショナルミニマムを確保しようということになりますと、当然国としてやらなければならない財源の再分配ということも残ろうかと思います。ですから、そういう抜本的な改革をした場合には、私は国としては一般的な指導と助言、あるいは一般的な基準に従っての援助にとどまるべきだというふうに思うわけですが、現在は何しろ非常に中央集権的でございまして、地方の各分野の行政は中央政府の非常に強い介入のもとに行なわれている。過去に公営交通事業の経営を悪化させた――主として外部の要因でございますが、外部の要因も、国の政策に基づいて生じたというものがほとんどでございます。先ほど私は、インフレ政策と道路環境の悪化、これが二つの直接的な原因であるということを申し上げたわけですけれども、インフレ政策にしましても、これを押える、物価を少しでも安定させるための努力をしようとすれば、中央の政府の努力なしにはできないということでございます。
 それから、特に道路の問題について、先ほどの公述を補足しておきたいと思うのでございますが、一応自由な消費者の選択に従って、つまり、消費者の好みに従って自動車が選択されていると、その結果、バスなり路面電車が使われなくなる、これはやむを得ないのじゃないかというふうに言われるわけでございますが、実はその背景には、非常に国の道路重点、というよりも、自動車を通すための道路の道路政策というものが重点になってきた。そのために、本来道路というものは、実はいろいろな生活目的のために使われる多面的な空間なんですが、これは自動車のために占領された。自動車によって起こるさまざまな公害とか環境侵害、そういったものも放置されたまま自動車はふえてきたというのが現状でございます。ですからそういう意味では、自動車は十分道路なり環境を保全するための費用を負担しないで、地域社会に被害を与えながら、つまり、現在の公害企業が、ちょうど公害を発生させてきて、たれ流しにしてきたと同じような条件のもとに自動車がふえているわけです。これでは都市の福祉を上げることはできない。逆に都市の環境は悪化するばかりである。そこで、自動車を制限しなければならないということになっているわけなんです。
 そこで、その際に当然市民の交通の必要を満たすためには、それにかわり得るできるだけ効率的な公共交通の便利なシステムを確保しなければならない。それを確保するばかりじゃなくて、これまでのように非常に混雑した乗り心地の悪いものではなくて、もっといいものを都市に入れていかなきゃならぬということになる。そういうものを整備していくためには、単に利用者の料金では負担し切れないわけであります。それに対しては、たとえばアメリカの場合には、百億ドルという非常に巨額の都市交通の改善のための資金を連邦政府が用意して、都市交通の改善に乗り出しているわけです。各国についてもそういう積極的な姿勢が見られるわけであります。
 日本も当然、現在の機構でいえば、中央政府も地方自治体も積極的に取り組むべきだと思うのですが、その際の財源は、やはり現在の自動車、その主としてガソリン税によって現在になわれているわけです。そのほかに税金がございますが、自動車に負担させる税金を公共交通整備の財源として活用すべきであると、これが私の一つの考え方。それは当然なんだと、これは実は自家用車がふえてきたことによる被害を公共交通機関が受ける、公共交通機関の、実は乗客と労働者が受けるということでございまして、これを放置しておきますと、だんだん公共交通の能率が下がってサービスが悪くなって、しかも一人当たりの費用は上がっていきますから、結局、被害者がだんだん高くなる料金を負担しなきゃならぬという被害者負担になっていくわけです。これは現在の競争システムの弊害でありまして、これは経済学の教科書で非常に簡単なモデルで、競争によって合理的に資源が配分されるというような結論を導きますけれども、実際には社会的ないろいろな制度のもとで競争が行なわれているわけでありまして、その社会的な制度は、必ずしも自由な競争が最適の結果をもたらすというふうな仕組みにはなっていないということでございます。ですから、社会的な環境に応じた対策をわれわれとしては当然発見しなければならない。
 それからもう一つの論点は、やはり公共交通施設、たとえば地下鉄のようなものを念頭に浮かべていただければ適切だと思うんですが、鉄道が敷設されますと、駅前の広場はものすごい土地の値上がりをします。それを目ざして土地の買い占めも行なわれる、こういう状態があります。あるいは都心に霞が関ビルのような建物ができると、どっと通勤者がふえる。そのために地下鉄を建設して運ばなきゃならぬ。その際に、一体利益を受けている者はだれなのかといいますと、毎日乗車している利用者ばかりが利益を受けているわけではなくって、実際には非常にまとまった利益を入手することができる、それを資本として運用することができるところに非常に大きな利益が発生するわけです。で、これは、公共施設の整備のほうは一般の市民あるいは乗客の負担で整備しておいて、そこから得られる果実だけはある特定の人が独占するということは、非常な社会的な不平等をそこでつくり出すことになる。で、最近の商社の買い占めに対して非常に市民が憤慨しているわけですけれども、こういった公共的な事業が一部の人に非常にばく大な富を与える。それは本来は都市の市民の全体の努力の結果なんですが、それが少数の人に落ちるというようなことは、市民の連帯といいますか、市民みんなの力で都市をつくっていくという、そういう市民の精神に非常なマイナスをもたらすのですね。こういったものは当然手をつけて、間接受益者の負担金として徴収して、それを公共交通施設の整備の財源に回すということが必要であろうと思う。当然、たとえば東京都で現在そういう事業所に対する財源構想なんかを検討しておりますけれども、実は中央政府がやはりもっと積極的にそれには取り組まなければならないというふうに考えているわけでございます。で、実は中央政府の段階の各種の審議会の答申でも、それは検討すべきであるという結論は数年前から繰り返し出ているわけですけれども、ちっともそれが具体化しないということで、市民はその点についてはしびれを切らしている状態ではないかというふうに思っているわけです。
 簡単で、まだ足りないかと思いますが、神沢先生の御質問に対しては以上でお答えとさせていただきます。
 それから藤原先生の御質問ですが、要するに、私自身は、今度の法案は過去の累積債務、そのうちの流動負債の流動資産をこえる部分を不良債務というふうに考えて、それをたな上げするということを骨子としているようです。私は現在から今後、公共交通機関の置かれている立場からいって、過去の重荷はやっぱり除かなきゃいけない。これを企業の収入でもって返していくということは不可能だと、もしそういうことをやれば、公共交通のサービスはますます悪くなって、かえって市民の利用を妨げることになるだろうと思いますので、そういううしろ向きの債務の処理も、これ当然必要だというふうに思っております。しかし、今後そういう事態を再び起こさないためには、やはりもっと経営の健全化できるような内外の政策をとるべきであろうというふうに考えているわけです。
 で、そういう改革としてあげられるのは、もう時間がございませんので簡単に申し上げますけれども、まず第一に、公共交通を優先する原則を確立する、これが何より大事だろうと。で、公共交通を優先するためには都市そのものを計画する段階からセットしていかなければだめだと。これはハンブルグ運輸連合で運輸連合をつくった一つの目的は、ハンブルグが都市計画と交通計画、特に公共交通を中心にした計画と一体化するということに運輸連合結成の一つのねらいがあったわけです。その点は、非常に向こうの幹部も強調しておったところでございますが、日本ではその点が非常に悪いわけでありまして、その点をまず公共交通を軸にした都市というものを考えていく。それはあらゆる段階で、都市を計画し、建設し、運営するあらゆる段階でそれを考えていくということが必要だろうと、これが第一点でございます。
 それから第二点としては、何しろ、公共交通のサービスは、そのほかの面では市民の生活というものはどんどん向上してきているわけですが、事住宅と交通に関する限りは非常に悪いわけです。ですから、これをこのままにしておきますと、自家用車はふえるばかりだというふうに思います。
 そこで、公共交通のサービスを改善する必要がある。で、その改善の一端については、先ほども申し上げたわけですけれども、車両とか、ターミナルとかあるいは運行方式とか、そういったものを改善すると同時に、たとえば運賃の制度にしてもやはり考える必要があるわけですね。現在のように、鉄道とバスは全く連絡がない。あるいは鉄道と鉄道でも、会社が違えば運賃はもう併算制で二本建てになってしまうと、こういうことでは非常に使いにくい。また、接続して乗ろうという者は不利になってしまう。あるいはハンブルグとかミュンヘンでは、地帯性運賃で、ある地帯の中では、ある二時間なら二時間の範囲内では、鉄道でもバスでも自由に乗りかえができるというふうな切符が発行されていますが、当然そういう公共交通機関をもっと利用しやすいものにしていくというくふうが必要なわけですね。たとえば国会あたりは、自家用車でおいでになるのには便利かもしれませんが、バスで来ようとしますと非常に不便なところなんですね、この辺は。それから地下鉄を利用する場合にも、かなり銀座あたりに比べて不便でございます。こういうところへたとえば来ようという場合に、どこの会社のバスでも、早く来たものに乗っていけて、自由に乗りかえができるということになれば、これはもっとバスの乗客がふえるわけです。昔の路面電車というものは、そういうネットワークで乗りかえが可能であったわけですから、お客さんは便利であったわけで、まさに市民のげたとして使われてきたわけです。ところが、現在は非常にその点でおくれた状態にあるわけですね。その点で、交通調整を含めてサービスを改善する必要がある、これが第二点でございます。
 それから第三点は、技術革新を積極的に導入する。技術革新を積極的に導入するためには、現在の公営交通事業の企業努力だけでは、財政そのものが非常に悪いためにそれが不可能でありますから、これを改善するための基金を中央政府がっくりまして、そして都市に援助する。それからまた、開発研究について、国のレベルでもって積極的に努力するということが必要であろう。まあこの三点。柱をあげるとすれば、この三点が柱になるんではなかろうか。
 最後の結論として申し上げますと、これは国鉄の再建でもそうなんですけれども、ともかく、財政がこれほど悪くなって、つまり人間にたとえていえば、かなりの重病人でございますから、こういう重病人が立ち上がるためには、やはり本人が再建するという意欲に燃えることが必要ですね。本人が再建するという意欲に燃えるということは、やはり自分自身の仕事に対して誇りを持つ、将来に対して希望を持つということが何より先決の問題だと思うのですね。ですから、働いている人に勇気を与えるようなやっぱり理念ですね、これが示される必要がある、これが私の結論でございます。
#26
○村尾重雄君 ごく簡単に、一点、内木場参考人にお尋ねしたいと思うのです。
 路面交通事業は、特にバス事業ですね、このような運営について人が大きなウエートを占めるということは、先ほど御意見があったように、これはわれわれもわかります。したがって、賃金なり労働条件が、労働意欲を高めるためにもこれが必要であるということもわかるんです。そのことも触れられておりますが、われわれはそのまま了承します。
 ただ問題は、先ほど帰られました参考人の御意見の中に、過去においての累積赤字は人件費が相当な部分を占めたと、しかもその人件費が相当な部分を占めた理由の一つとして、民間交通労働の従事者と公営従事者との賃金差があったという点この点一つと、それから今後、とりわけ民間バス事業もなかなか東京都においては盛んですし、地方においてもこういう影響があろうと思いますが、今後の路面バス事業の運営について、現在も実際に民間企業との賃金差というのはどういう状態なんでしょうか。あなたの御記憶になっておる点でお答えいただけたらけっこうだと思います。
#27
○委員長(久次米健太郎君) ちょっと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#28
○委員長(久次米健太郎君) 速記を始めて。
#29
○参考人(内木場忠巳君) ただいまの御質問に対して、私どものほうの見解を申し上げます。
 その前に、委員長のほうからお話しありましたけれども、簡単に申し上げますと、昭和二十三年に人事院ができまして、そしてストライキ権、そういったものを結局禁止したかわりに、いわゆるこの代償機能としての人事院勧告制度というものが適用をされたわけでありまして、昭和二十七、八年ごろ、私どもとしては、都市交通労働者にふさわしい――当時、業種別賃金と言っておりましたが、この賃金体系というものをつくるべきではないかということで、企業管理者の側に申し入れをしたことがあります。そのときに企業管理者の側からのお答えというのは、少なくとも地方公務員であるから、賃金の基本的な部分については公務員一般職と同じようにいきたい、そして、その特殊性については手当をもって処理をするということで、このことが今日に至るも修正をされずに実は生きているわけでありまして、そういう立場で考えますというと、私どもの理解としては、あくまでもわれわれの賃金というのは地方公務員としての基本的身分によって律せられ、そして今日、その給与表というものが現在に至っていると、こういうことなんでありまして、少なくとも、職場の中における限り、賃金が高いという考え方というのは全然持っておりません。したがいまして、他のことを私はとやかく申し上げる気持ちはありませんけれども、やはりわれわれとそういう単純比較をしてこちらが高いというのであれば、逆に申し上げて、そちらのほうが安過ぎるのではないかと、こういう意見も実は出てくるわけでありまして、この辺のところを十分ひとつ御了察をいただきたいと思うのであります。
 したがいまして、私どもとしては、このような経過がありますから、貨金に対して高いという指摘をそのまま肯定をし、あるいはまたそうかと言って、これを今後の企業努力の目標として、言ってみれば労使協調の中で据えるということには、はなはだ同感できません。これははっきりひとつお答え、私どもの見解として申し上げておきたいと思います。
 したがいまして、今後のやはり問題としては、少なくとも、同じ産業に働く労働者の賃金というものは同一レベルを持つことが望ましいということは、細野先生の御意見の中にもありましたけれども、そういった立場を指向するとするならば、これは今後の問題でありますけれども、民間企業の方々とも十分にやはり話し合いをしていくという課題になろうかと考えております。
#30
○河田賢治君 広岡先生にお尋ねしますが、料金はいま自治体が承認する、それから運輸省がさらに承認する、こうしてきまるわけですね、若干のズレができますが。本来はこれは自治体が独自にやるべきだと私たちは考えておりますが、ところが、おくれればそれだけ運賃収入が減る。何か、私まだよく調べてないのですけれども、外国でも何か実施しておるところがあるらしいのですが、おくれた場合にその損失額を国が補償する制度があるというようなことをちょっと聞いたのですが、そういう事実がありますか。つまり、国家賠償ですね。ちょうど無罪の判決をした場合には被告に対して賠償すると同様に、運輸省がそういうふうにおくらせた場合、地方自治権の侵害じゃありませんけれども、いわば侵害しておくらした場合には、国はそういう営業期間を補償する、そういう制度があるかどうか、このことをひとつお聞きしたいと思います。
 それから、あと、連合会の書記次長さんですね、内木場さんにお聞きしますが、大体、人事院勧告が出て地方公務員も一応きまりますが、公営交通はやっぱり一つの特殊な企業となっておりますので、よく十賃制とか、十一賃制とかいって、ずいぶんおくれたりすることがあるんですが、おくれる場合、大体どのくらいあるのか、それらの処置がどのようにまた元へ戻る一元へ戻るというよりも、決定されるのか、その辺のところをちょっと詳しく――詳しくはいいんですが、簡単にひとつお願いしたいと思います。
#31
○参考人(広岡治哉君) 河出先生の御質問にお答えしますが、フランスの場合には、運輸大臣が、物価政策上、料金の値上げが必要であるにもかかわらず値上げを押えた場合、これに対しては国が補償する、そういう補償が一項目起こされておりまして、それで援助が行なわれています。これは補償という意味での財政援助です。そのほかに財政援助の項目ございますけれども、たとえば社会政策的割引の分であるとか、あるいは通勤割引の分につきましては、フランスは一昨年公共輸送機関便益税という税金をつくりまして、それで税金を事業所にかけまして、その財源でもってその分を援助するというような制度を行なっております。そのほかの国でも、たとえばイタリア等でも、これは赤字補償という形で、イタリアの場合には非常に料金を抑制しておりまして、それに伴う損失については市が補償する、市に対して国が援助するという制度を講じております。西ドイツ等でも、明確に項目として値上げ拒否に対する補償という項目は私は見たことはございませんが、実際の運用ではそういうことがやられているように覚えております。
#32
○参考人(内木場忠巳君) 先生御指摘の点は二つに分けられると思います。一つは再建団体の場合それからもう一つは非再建団体の場合。非再建団体の場合は、いろいろ多少のでこぼこはありますけれども、大体その年の十二月から翌年三月の議会等で財源措置がされる。そうしますというと、ほぼこれで完了と、こういうことになります。再建団体の場合は、御承知のとおり、当然賃金改定をした場合に計画変更というものが伴いますからまず、団体交渉できめるということについてかなり時間がかかる。その時間がかかる一つの目安が、やはり大筋、大綱妥結といいますか、お互い合意に達するといいますか、それはやるように努力をする、こういう話が出てくるのがほぼ翌年の三月ごろということになろうと思います。それからいろいろとお互い協議をしていきますから、どうしても完全に制度化して、いわゆる給料表に基づいて給与が支給されるということのその段階までは、大体国家公務員なりあるいは当該地方公立団体の一般職員ないしは他の公営企業職員が給与確定して一年ないし一年半後になる、こういうふうに考えます。したがいまして、この間におきましてはきわめて不規則な、たとえば貸し付けだとかいうことによって、何といいますか、局面を糊塗するといいますか、こういったことで、精神的にもあるいは事実上の生活設計をつくる上でも、非常に大きな不安が伴うということでございます。
#33
○委員長(久次米健太郎君) それでは、参考人の方々には、非常に御多忙な中にもかかわりませず、長時間にわたりまして御協力賜わり、しかも有益な御意見の御発表をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。
 これをもって参考人に対する質疑は終了いたしました。本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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