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1949/04/04 第7回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第007回国会 法務委員会 第19号
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1949/04/04 第7回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第007回国会 法務委員会 第19号

#1
第007回国会 法務委員会 第19号
昭和二十五年四月四日(火曜日)
    午後二時二分開議
 出席委員
   委員長 花村 四郎君
   理事 角田 幸吉君 理事 北川 定務君
   理事 小玉 治行君 理事 田嶋 好文君
   理事 山口 好一君 理事 猪俣 浩三君
   理事 田中 堯平君
      押谷 富三君    眞鍋  勝君
      武藤 嘉一君    三木 武夫君
      世耕 弘一君
 出席政府委員
        法務政務次官  牧野 寛索君
        刑 政 長 官 佐藤 藤佐君
        検     事
        (刑政長官総務
        室主幹)    關   之君
        法務府事務官
        (矯正保護局
        長)      古橋浦四郎君
        民事法務長官  田中 治彦君
        検     事
        (中央更生保護
        委員会事務局
        長)      齋藤 三郎君
 委員外の出席者
        專  門  員 村  教三君
        專  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
三月二十七日
 委員田万廣文君及び林百郎君辞任につき、その
 補欠として石井繁丸君及び加藤充君が議長の指
 名で委員に選任された。
同月三十一日
 委員高橋英吉君及び石井繁丸君辞任につき、そ
 の補欠として水田三喜男君及び田万廣文君が議
 長の指名で委員に選任された。
四月一日
 委員水田三喜男君辞任につき、その補欠として
 高橋英吉君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
三月二十九日
 国籍法案(内閣提出第一三八号)
 国籍法の施行に伴う戸籍法の一部を改正する等
 の法律案(内閣提出第一三九号)
 更生緊急保護法案(内閣提出第一三五号)(
 予)
 保護司法案(内閣提出第一三六号)(予)
同月三十一日
 土地台帳法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出第一四六号)
同月二十七日
 岡山地方法務局津山支局庁舎建設工事促進の請
 願(若林義孝君外一名紹介)(第一八六三号)
 田上町唐湊に決定の少年観護所設置位置変更に
 関する請願(床次徳二君紹介)(第一八八五
 号)
 名古屋高等裁判所及び同高等検察庁の金沢支部
 昇格独立に関する請願(鍛冶良作君外五名紹
 介)(第一八九三号)
 不良図書取締対策に関する請願(松澤兼人君紹
 介)(第一八九四号)
 めいてい(酩酊)者取締法制定に関する請願(
 武藤運十郎君紹介)(第一九九一号)
の審査を本委員会に付託された。
同月二十九日
 商法の一部改正に関する陳情書(大阪市北区絹
 笠町五十堂ビル内関西化学工業協会長中野靜
 夫)(第六六九号)
 同(東京都千代田区丸の内三丁目十四番地東京
 商工会議所会頭高橋龍太郎)(第六八四号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 公聽会開会承認要求に関する件
 矯正保護作業の運営及び利用に関する法律案(
 内閣提出第八八号)
 国籍法案(内閣提出第一三八号)
 国籍法の施行に伴う戸籍法の一部を改正する等
 の法律案(内閣提出第一三九号)
 土地台帳法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出第一四六号)
 更生緊急保護法案(内閣提出第一三五号)(
 予)
 保護司法案(内閣提出第一三六号)(予)
    ―――――――――――――
#2
○花村委員長 これより会議を開きます。
 本日はまず公聽会開会要求の件についてお諮りいたします。ただいま本委員会において審議中の商法の一部を改正する法律案は、一般的関心及び目的を有する重要なる法案であり、国民生活に及ぼす影響がきわめて大でありますので、商法改正に関し、一般国民の声を十分に聞くことが肝要であると考えられます。従いまして本委員会といたしましては公聽会を開くことにいたしたいと思いますが、衆議院規則第七十七條により、あらかじめ議長の承認を得た後にその決議をしなければなりませんので、公聽会開会承認要求書を議長に提出いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○花村委員長 御異議なければさようとりはからいます。
 なお議長の承認を得ましたときは、改めて決議をいたさず、議長に対する公聽会開会報告書の提出、開会日時及び公聽会において意見を聞こうとする案件の告示等、衆議院規則第七十九條による手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○花村委員長 御異議なければさようとりはからいます。
    ―――――――――――――
#5
○花村委員長 これより土地台帳法等の一部を改正する法律案、国籍法案、国籍法の施行に伴う戸籍法の一部を改正する等の法律案、保護司法案及び更生緊急保護法案について、順次政府の提案理由の説明を求めます。
    ―――――――――――――
#6
○牧野政府委員 土地台帳法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
 現在の土地台帳及び家屋台帳は、土地家屋の状況を明らかにし、地租及び家屋税を徴收するために必要な事項を登録する課税台帳でありますと同時に、地籍、家屋籍に関する台帳といたしまして、不動産登記制度の基礎ともなつているのであります。しかるにこの土地台帳及び家屋台帳に登録する賃貸価格の調査決定は、税務署においてこれを行うこととなつております関係上、その台帳の事務は税務署の所管とされていたのでありますが、地方不動産登記の事務が登記所の所管でありますために、不動産制度の見地から考えますならば、いたずらに手続を煩雑にし、事務処理の円滑を欠くうらみがあつたのであります。今回、税制改革の一環といたしまして、地方税法の改正が行われようとしておりますが、これによりますと、地租及び家屋税は市町村がこれを徴收することといたしますとともに、その課税は右の賃貸価格を基準とせず、毎年市町村において認定する土地家屋の価格を基準として行われることになりますが、その結果は、賃貸価格の登録をする必要がなくなり、従つてまた税務署において台帳事務をつかさどる理由も消滅することとなるのであります。ここにおいて、土地台帳及び家屋台帳の事務は、これと最も関係の深い不動産登記の事務をつかさどる登記所に移管し、あわせて土地台帳及び家屋台帳の事務と不動産登記の事務との間に、ある程度の手続上の簡易化をはかりますとともに、従来通り市町村に土地台帳、家屋台帳の副本を備え、市町村の課税上支障を生じないように相互の連絡をはかることといたしたのであります。以上申し述べました趣旨によりまして、土地台帳法、家屋台帳法、不動産登記法その他関係法律の規定に所要の改正を加えるため、この法律案を提出いたした次第であります。
 以下この法律案の要点を申し上げますと、まず土地台帳法の改正におきましては、第一に、土地台帳の事務を登記所に移管いたします結果、登記所に土地台帳を備え、その登録の事務は、当該土地につき登記の事務をつかさどる登記所がつかさどるものといたしました。
 第二に、今後は土地台帳に賃貸価格を登録する必要がなくなりますので、土地の賃貸価格に関する規定は、全部廃止することといたしました。なお、市町村におきましては、土地台帳の副本に、課税の基準となる土地の価格を記載することとなりますので、今後は土地台帳にも市町村長の通知により、土地の価格を記載するものといたしました。
 第三に、土地の異動に関する所有者の申告は、現在ではすべて市町村を経由してすることとなつておりますが、今後は直接登記所に対してすることもできるものといたしました。
 第四に、法令により登記名義人またはその相続人に代位して、不動産の表示の変更その他の前提登記を申請し、または嘱託することができる場合でも、従来は、土地台帳法による申告を代位してすることができませんでしたため、種々手続上の不便を生じましたので、今後は代位してその申告をすることができるものといたしました。
 第五に、現在土地台帳の閲覽は許されないこととなつておりますが、今後土地台帳が登記所に移管されますと、登記との関係が現在以上密接となり、その閲覽の必要を生じて参りますので、従来の謄本の交付の制度のほかに、新たに土地台帳の閲覽を認めることといたしました。
 第六に、現行の土地台帳法は、申告、土地台帳の副本等に関する重要な事項をも、その施行規則においてこれを規定いたしておりますが、これらの規定を整理しまして、土地台帳法中にとり入れることといたしました。
 第七に、罰則につきまして、必要な整備を行うことといたしました。
 次に家屋台帳法の改正におきましては、土地台帳法の改正と同様の趣旨によりまして、第一に、登記所に家屋台帳を備え、その登録の事務は、当該家屋につき登記の事務をつかさどる登記所がつかさどるものとし、第二に、家屋の賃貸価格に関する規定を廃止するとともに、家屋台帳には、市町村長が通知した家屋の価格を記載するものとし、第三に、家屋台帳法施行規則中重要な規定を家屋台帳法中に取入れることといたしまたほか、家屋に関する申告、家屋台帳の閲覽、罰則の整備につきましても、土地台帳法とほぼ同様の改正を加えることといたしました。
 さらに不動産登記法の改正におきましては、第一に、現在、登記所が土地の所有権、質権もしくは地上権または家屋の所有権の得喪変更等に関する事項の登記をしました場合には、これを税務署に通知して、税務署はこれに基いて土地台帳または家屋台帳の登録を修正することとなつておりますが、今後はその必要がなくなりますので、その通知を廃することといたしました。
 第二に、現在不動産の所有権の保存の登記及び不動産の分割、合併その他表示変更の登記を申請する場合には、土地台帳または家屋台帳の謄本を添付することとなつておりますが、今後はその必要がなくなりますので、これらの謄本の添付を要しないものといたしました。
 第三に、不動産または登記名義人の表示が、登記簿と土地台帳または家屋台帳と符合しない場合には、その一致をはかるための措置としまして、当該不動産または登記名義人の表示の変更の登記により、まずこれを符合させた後、他の登記をすべきものといたしました。
 第四に、登記申請の手続の簡易化をはかる意味におきまして、土地台帳法または家屋台帳法による申告をする場合に、別に登記の登録税の納付があれば、その申告のほかに、不動産の表示もしくは登記名義人の表示の変更の登記または所有権保存の登記の申請があるものとみなして、その登記をすることといたしました。
 以上申し上げましたのが、この法律案の概要であります。次に国籍法案及び国籍法の施行に伴う戸籍法の一部を改正する等の法律案について、提案の理由を説明いたします。
 現行国籍法は、明治三十二年の制定にかかるものでありまして、その中には新憲法及び改正民法の趣旨に沿わない規定が含まれておりますので、これを改める必要があるのでありますが、改正を要する條文が多数に上ります関係上、現行国籍法を廃止して、新たに国籍法を制定することといたしたのであります。またこの新たな国籍法の施行に伴つて、戸籍法その他の関係法律を整理する必要があるのであります。以上の理由によりこの二つの法案を提出いたしたのでありますが、まず国籍法案の内容について、現行法と異なる点の概要を説明いたします。
 第一に現行法では、国籍を離脱することができる場合を狹く限定し、かつ国籍の離脱に伴つて法務総裁の許可を必要とする場合があるのでありますが、これは国籍離脱の自由を保障した憲法第二十二條第二項の規定に牴触いたしますので、この法案におきましては、外国の国籍を有する日本国民は、すべて法務総裁に届け出ることによつて、自由に日本国籍を離脱することができることといたしました。
 第二に現行法では、第二條その他民法の家の制度に立脚する規定があるのでありますが、家の制度は両性の本質的平等及び個人の尊嚴を宣言した憲法第二十四條の精神に反するものとして、すでに民法の改正を見た次第でありますので、この法案では、現行法のこれらの規定を廃止することにいたしました。
 第三に現行法は、国籍の取得についても、また喪失についても、妻は夫の国籍に従うという原則及び子は父または母の国籍に従うという原則を採用しており、婚姻、離婚、養子縁組、離縁、認知等の身分行為に伴い、あるいは夫または父母の国籍の得喪に伴つて、当然に妻または子の意思に基かないでその国籍の変更を生ずることになつているのでありますが、これまた憲法第二十四條の精神と合致いたしませんので、この法案におきましては、近時における各国立法の例にならい、国籍の取得及び喪失に関して、妻に夫からの地位の独立を認めて、その意思を尊重することとし、また子についても、出生によつて日本国籍を取得する場合を除いて、子に父母からの地位の独立を認めることといたしました。
 第四に現行法では、帰化人等に対しましては、国務大臣その他国家の重要な官職につく資格を制限いたしておりますが、これは、国民はすべて法の下において平等であることを宣言した憲法第十四條の精神に反しますので、この法案では、帰化人等に対するかかる資格の制限を撤廃いたしました。
 第五に現行法では、日本に特別の功労のある外国人につきましては、勅裁を得て帰化を許可することができることとなつておるのでありますか、憲法第四條の規定によつて、天皇には国政に関する権能がないことになりましたので、この法案では、国会の承認を得て帰化を許可することができることといたしました。
 その他この法案では、二重国籍の発生を防止するため、外国で生れたことによつてその国の国籍を取得した日本国民は、戸籍法の定めるところによつて日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失うものとし、また現行法における国籍回復の制度を帰化の制度に統一し、なお帰化及び国籍離脱の効力の発生の時期を明確にするため、帰化及び国籍の離脱は官報に告示された日から効力を生ずることといたしました。
 以上説明いたしました諸点を除きましては、この法案は、現行法の規定の趣旨を踏襲いたしております。
 次に、国籍法の施行に伴う戸籍法の一部を改正する等の法律案の内容について、その概要を説明いたします。
 第一に、新国籍法の施行に伴いまして、国籍の取得及び喪失に関する戸籍の手続にも変更を生ずることとなりますので、戸籍法中国籍の得喪に関する規定に所要の改正を加えることといたしました。
 第二に、新国籍法の施行に伴いまして、法務局及び地方法務局に法務総裁の管理いたします国籍事務を分掌させる必要がありますので、法務府設置法に所要の改正を加えることといたしました。
 第三に、明治六年第百三号布告改正法律は、外国人を養子または入夫とする場合の條件を規定いたしておるのでありますが、入夫婚姻の制度は、現在すでに廃止され、また新国籍法では、養子縁組は、日本国籍取得の原因とはならないこととなつて、右の法律はその必要がなくなりますので、これを廃止することといたしました。
 以上簡單でありますが、国籍法案及び国籍法の施行に伴う戸籍法の一部を改正する等の法律案について、その内容を説明いたしました。
 次に保護司法案の提案理由について御説明申し上げます。
 いわゆる刑余者等のよき相談相手として、何ら報酬を目当とすることなく、ひたすら奉仕の精神をもつてこれら社会の落伍者の更生補導に当つて来ましたわが国司法保護委員の制度は、昭和十四年九月現行司法保護事業法施行の以前から、その献身的な努力によりまして幾多の犯罪者を更生させ、犯罪の防遏に大きな功績を築いて参つたのでありますが、別途この国会に上程になりました更生緊急保護法案を実施のあかつきは、これに伴いまして、司法保護事業法と、これに基く司法保護委員令が廃止されることと相なります。ところが一方この司法保護委員は、犯罪者予防更生法による保護観察その他犯罪前歴者の改善更生並びに犯罪の予防活動等に必要不可欠の重要な任務を帶びておりますので、ぜひともこの種事務に従事する者の組織、権限に関する法律を新たに制定する必要が生じたのであります。よつて本法案は、この機会に犯罪者予防更生法その他の関係法令と完全に調和した独立法を制定することといたし、従来の司法保護委員にかえて、その任務にふさわしい名称の保護司を置き、これに適用すべき各般の基準を定めまして、同法の円滑な実施を期そうとするものであります。かような本法案の趣旨は第一條に法の目的として掲げたところでありますが、以下その他の條文の内容について重要な点を概略御説明申し上げます。
 第一に、保護司の職務の執行区域、服務、監督、事務の執行に要した費用の支給及び表彰について規定いたしておりますが、これらはこの法案第一條の法の目的及び後述の保護司の任期に関する規定と相まつて、保護司の公的な身分と責任の範囲を明かにいたすものであります。保護司は大体従来の司法保護委員の性格を受継ぎまして、その服務の基本態勢は社会奉仕の精神をもつて職務を遂行するものであり、またこれには給與を支給いたしません。けれども現実に職務の遂行上要した費用にいきましては、これを全部保護司の負担にまつことは、事務の性質及び実効の点等から見て当を得ませんので、国が予算の範囲内でその費用の両部または一部を支給できる道を開くことにいたしております。保護司は、以上のごとくまつたく奉仕的にこの国の事務に従事する篤志家でありますから、職務上特に功労のあつた方々に対する表彰の道を法文上明確にいたしますことは、国としていささかその労に報ゆる当然のことと存ずるのであります。なおこの保護司の性質、すなわち国家公務員法案または刑法との関係についてでありますが、保護司は、それぞれ実社会で現に活動中の方々にお願いして、その本職のかたわら無報酬で奉仕的にこの仕事に携つていただくのでありますから、これに国家公務員法を全面的に適用することは妥当でないのでありまして、人事院もまた同様の解釈であります。しかし、その身分はこの法案による委嘱をまつて発生するものであり、またその従事します事務は本法案及び犯罪者予防更生法に規定するものでありまして、すなわち保護司は法令により公務に従事する職員にほかならないのでありますから、刑法上は公務員として取扱うべきものと解するのであります。第二に、保護司の推薦及び委嘱、欠格條項、保護司選考会、保護司の任期並びに保護司の解嘱について規定いたしまして、全保護司が常に適任者のみで充実されることを期しております。法務総裁が司法保護委員を任命または解任する従来の形を改めまして、この法律による保護司は、中央更生保護委員会が委嘱または解嘱するものとし、その委嘱または解嘱にあたつては、各地に置かれる保護司選考会の意見を聞き、また解嘱の場合に当該保護司に弁明の機会を與えることにいたしましたのは、法の運用を犯罪者予防更生法の規定に調和させ、かつ保護司の進退に特に愼重を期する意図にほかならないのであります。第三に、保護司の設置区域及びその定数と保護司の種別に関する規定を設けておりますが、これは、保護司の従事します事務が、広く全国的に発生散在し、かつその内容、対象ともきわめて複雑多岐多様にわたりますのにかんがみまして、保護司の最も適正な配置に意を用いているのであります。以上が本法案の要旨であります。
 最後に更生緊急保護法案の提案理由について御説明申し上げます。
 最近犯罪の累増、凶惡化が国民生活の平穏を脅かし、平和国家建設の前途に大きな暗影を投じまして、社会寒心の的となつておまりすことは御承知の通りでありますが、この憂うべき犯罪現象の陰には、多くの場合、すでに犯罪の経験を過去に持ついわゆる前歴者がおどつているのでありまして、その者があるいは新しい犯罪集団の中核となり、あるいは自暴自棄に走り、または一層無謀大担な犯行に出るなど、その現象に大きな役割を演じておりますことを考え合せますと、この前歴者の再犯を完全に防止することが今日の社会不安を一掃し、国家再建の基礎を確立するためにきわめて重要な事柄であると存ずるのであります。しかしてこの再犯防止の大きな一つの基本的措置といたしまして、去る第五国会で御審議可決を得まして、昨昭和二十四年七月一日から施行に相なつております犯罪者予防更生法があるのでありますが、同法によりますと、その保護観察の対象は、仮釈放中の者、仮退院中の者、少年法により家庭裁判所において地方少年保護委員会観察の保護処分を受けた者、及び少年時刑執行猶予の言い渡しを受け猶予中の者の四者に限定されておりまして、これに漏れたいわゆる満期釈放者、起訴猶予者または大半の成人の刑執行猶予者等のうちにも、その再犯防止に何らか的確な保護の措置を必要とするものが少くありませんにもかかわらず、これについては現在ほとんど放任の状態にあり、国の施策といたしましては、わずかに今日すでに無力に近い状況に陥つている司法保護事業法(昭和十四年法律第四十二号)が存するに過ぎません。またこの犯罪者予防更生法も、国の財政等を考慮して、専用の收容保護施設に関する規定が設けられておりませんため、同法による保護観察中の者に対する応急の救護の措置に万全を欠くうらみがあるのであります。
 そこでこの法案は犯罪者予防更生法の適用を受けないいわゆる満期釈放者、起訴猶予者等のうち再犯率の最も高いと認められる状況にある、すなわち刑事上の手続によつて身体の拘束を解かれた後一定の期間内の者に対しまして、強制力を伴わない緊急適切な更生保護の措置を講じて、その再犯防止に遺漏なからしめることを期し、あわせて犯置者予防更生法の規定する保護観察中の者に対する応急の救護を円滑に実施するとともに、さらにこれらの更生保護に関する事業の健全な育成発達をはかりますために、現行司法保護事業法を廃止いたしまして、新たに生活保護法、職業安定法その他の関係法令とも十分に調和し、また実効の期待できる法律を制定しようとするものであります。以下この法案の内容の重要な点につき概略申し上げます。
 第一に、ただいま申し述べましたこの法律の目的のほか、更生保護及び更生保護事業の定義、更生保護の責任と範囲、事業経営の許可と届出、国の委託費支弁とその他の費用補助及び附則等にわたりまして規定を設け、更生保護措置の内容及びその措置に対する国の責任と範囲を明らかにし、またこの種の事業の運営上、特に重要で、かつ関連の多い他法律との関係に意を用いまして、犯罪者予防更生法を初め刑事訴訟法、監獄法はもちろん、生活保護法、職業安定法及び労働基準法等との間の結びつき及びその適用関係を明確にいたしております。これらの規定の中で、更生保護の措置を国の責任で行うことの原則を明確にいたしますとともに、国みずからの機関で直接これを行い得ない場合に処するため、一定の国費支給の裏づけを持つた委託の制度を開き、その委託先を国の監督が適切に行き届く地方公共団体、または更生保護会に限定しておりますが、これは本来この事務が、その性質上国の刑事政策の一環として行われるべきものとする考え方に基くものでありまして、つとに旧監獄則当時から官営の保護事業たる別房留置制度等の姿で認められ、その後国家財政等の理由により国は一歩後退し、わずかに奬励金の支出をもつてこの種事業の経営をもつぱら民間篤志家の手に依存する近状にありましたものを戰後の経営困難その他諸般の事情にかんがみ、ここにその本然の姿に帰そうとするものであります。
 第二に、保護の開始手続及び更生保護会の行う更生保護について規定いたしまして、更生保護の措置は本人の申出があつた場合にのみ適用が考慮されること、及びその当面の事務の取扱い責任者たる保護観察所長を初め、関係機関のとるべき保護の手続、委託の場合の保護措置の内容を明らかにし、あわせて犯罪者予防更生法の規定による提護観察中の者に対する応急の救護に、更生保護会を容易に活用できる道を開いております。
 第三に、更生保護事業の経営の認可と認可事項の変更、変止、更生保護会または地方公共団体の営む事業の監督、事業経営の制限停止、認可の取消し、事業の運営監督に関する重要事項審議のための更生保護事業審議会、寄付金の募集の監督及び罰則等について詳細な規定を設けておりますが、これらはただいま申し述べましたこの事業の本質及び今日の経済その他各般の事情にかんがみまして、従来比較的ゆるやかな監督のもとに置かれてきた司法保護団体運営の方式を一擲いたしまして、新たなる構想のもとに、この法案による更正保護事業が真に社会の信頼にこたえ、また治安の確保に寄與できますように事業の認可その他各般の監督を適正に行い、もつて国がみずから直接この事業を全面的に行う場合と実質上ほとんど異ならない支配のもとにおいてこれを管理しようとするものであります。
 第四に、費用の徴收及び表彰について規定しておりますが、これは前述の厚生保護開始の手続の規定と相まつて、国と被保護者との関係を明らかにし、また報酬をも度外に置き、この困難な事業に献身される更生保護会またはこの事業の従事職員に対し、特に国として表彰の道を開く旨を法制上明確にいたすものであります。
 以上が本法案の要旨であります。新憲法の公布後、その精神を具現するため、犯罪前歴者の再犯防止に関する拔本塞源的な法的措置は、刑事政策の一環として、まず第二国会において新少年法及び少年院法が、次いで第五国会において犯罪者予防更生法及び同法の施行法がそれぞれ可決成立し、すでに実施に移されて、逐次その実効をあげているのでありますが、本法案関係と別途提案の保護司法案関係の分野に関しては、事務の性質上その他各般の事情から今日までその改廃が遅延しいていたものであります。今回この両法案の法制化によりまして、初めてここに前歴者の再犯防止に関する法制が総合的な体系として整い、すでに実施されております右の各関係法令も、全面的にその効果を発揮することと相なるのであります。
 何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
#7
○花村委員長 以上をもちまして政府の提案理由の説明は終了いたしました。何か御質疑はございませんか。
#8
○猪俣委員 一点だけお專ねいたします。土地台帳法等の一部を改正する法建案について、私は内容をまだよく検討しておりませんから、條文の微細にわたつての質問は後日に讓りたいと思うのでありますが、概略的に見まして、農地調整法、自作農創設特別措置法に基きまして、自作農の創定が登記手続上非常に遅れているということは、一つの大きな問題に相なる。そこでさような際におきまして、こういう登記方面の法規が改正せられます際に、そういうことに影響を及ぼして、なおその登記が遅延し、自作農の土地の所有が確保せられないような状態が起るやいなや。さようなことに対して多少の危惧の念があるのでありますが、さようなことに対しては何ら心配はないという政府の御確信があるのかどうかをお答え願いたいと思うのであります。
#9
○花村委員長 ただいまの猪俣浩三君の質疑に対する答弁は、民事局長がおりませんので、後に讓りたいと存じます。
    ―――――――――――――
#10
○花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。――別になければ、本法案の審議はこの程度にとどめ、次に矯正保護作業の運営及び利用に関する法建案を議題といたし、質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。小玉治行君。
#11
○小玉委員 私は本法案についてまず総括的にお聞きしたいと思います。今中小企業が仕事がなくなつて非常に苦境にあることは、法務府当局もよく御認識のことと思うのでありますが、この法建を施行する段階になりますと、いわゆる官公需の仕事はまず優先的に刑務作業にとつてしまうという結果になりますために、民間の印刷業でありまするとか、木工であるとかいつた部面の仕事を非常に圧迫する結果になるのではないかと思います。むろん法律で、懲役に科せられた者については国家においてこれに職業を與えなければならぬということは当然のことでありますけれども、一面その結果非常に民間企業を圧迫して、失業者が続出するという結果に相なりますと、またゆゆしき問題だと考えるのであります。この矯正保護作業の運営及び利用に関する法建案の提案理由を拜見しますと、この点についてかようなことを申しております。「さらに考慮すべきは、現在のごとく矯正保護作業の確保を、まつたく一般企業との自由競争に放置しますれば、その当然の結果として矯正保護作業は、仕事を手に入れることができず、ために受刑者の中に不就業者が続出し、受刑者の矯正保護はもとより、刑務所の治安維持の上からも、まことに憂慮すべき事態を来すことがおそれられるのであります。」ところが配付になりました法務府矯正保護局からの資料によりますと、印刷の方は昭和二十二年度に三千二百六十五万五千四百五十九円という收入高になつております。それが昭和二十三年度は七千四百二十五万八千八百三円、昭和二十四年度は六千九百二十四万九千四百七十四円、これは註によりますと、二十四年度は十二月末現在であるということになつておりますから、これを年度末の三月まで加算すれば、やはり二十三年度と同様あるいはそれ以上の額に達するのではないかと思う。また洋裁縫については、二十二年度は千二百六十六万三千七十九円、二十三年度が二千二百八万五千四百三十五円、二十四年度が二千九百五十四万五千九百八十円、こういうに非常に收入がふえておる。さらに金層工は昭和二十二年度が二千二百五十八万五千二百五十七円、二十三年度が四千三百三十七万二千四百五十六円、二十四年度は一月から三月までを除いても四千百九万四千八百八十二円、こういうふうになつて大体ふえておるようですが、この表から見ると、この提案理由にありまするように、このまま自由競争に放置しておくと、当然の結果として仕事の入手が困難になるというようなことはちよつと見当らないように思われるのであります。しかのみならず大体刑務所が仕事をすることは、仕事の性質はやはり私企業であろうと思うのでありまして、だんだん自由競争時代になりますれば、一般の民間の私企業と刑務所の企業とは同じ立場において、同じ地位において競争してしかるべきではないかと思うのであります。特に刑務所作業について優先的にこれを保護するということは、職業の自由の原則から申しましても適当でないと思うのであります。かような観点から、私はまず第一点として今申し上げました通りに、この表がら見れば、だんだん刑務所作業の收入は三年間の統計を見ても増加しておるような実情にあるにかかわらず、かような法律をつくつて特に刑務所作業を保護しなければならぬというのは、いかなる理由に基くのであるかという点についてお伺いいたします。
 第二点といたしましては、今日刑務所作業をかようにして強化いたしますると、民間企業を圧迫する。その当然の結果として印刷業であるとか、あるいは洋裁縫その他について非常な失業者が出て来るということも考えられるのでありまするが、それに対してはいかなる対策を講ぜられる考えであるかというこの二つの点についてまず私は御質問申し上げたいと思うのであります。
#12
○古橋政府委員 ただいま御質問でございまする提案理由のうちで、刑務所はこのまま放置いたしますれば、作業が少いために漸次就業が惡化して、治安上はなはだ困難になるということを書きました点について、参考資料として出しました表における作業收入の漸次高まつたこととにらみ合せて理解ができないという仰せでございます。その点についてまず申し上げます。御承知のように戰争中に刑務所が施設を失いましたのは、全施設の約三分の一でありまして、しかも当時約五万の人間を收容し得る施設であつたのでございます。ところが終戰後非常に收容者がふえて参りまして、現在では十万に達しております。終戰後舎房その他の建築を第一番にいたしまして、それにつれまして漸次工場等に手をつけて参りまして、ただいまようやくその七分通り、あるいは六分通りまでの工事を進めておるわけでございまするが、しかしまだ工場に至つては、戰前程度には復旧いたしておりません。従いまして昭和二十三年ごろの就業者の数並びにその当時の工場の関係、また昭和二十四年度におきまする就業者の数とその工場との関係などが、この作業收益にも非常に影響して参つております。なお物価の高騰ということもございまするし、また作業によりましては、たとえば非常に材料の少いマッチ箱を張らせるとか、封筒を張らせるとかいうような仕事をやらしておりますれば、作業收益というものは非常に少いので、表の上では少くなるわけでありますが、これをある程度組織いたしますれば、どうしても材料を注ぎ込みますから、その材料代はそのまま数字に出て参つております。従いまして、この表でもつて刑務所の作業経営が非常に整つて来たということをただちに断定することには参りませんで、むしろ私どもといたしましては、收容者が倍にもふえましたにかかわらず、作業を與えるということは事実上刑務所におきましては非常な困難を加えておるのであります。現地の刑務所におきましては、毎日ほとんど一万に達するような夫業状態にある人々を收容しておるのでございまして、その数は決して減少しておるというわけではございません。もつとも最近私どもにおきましては、受刑者を遊ばしておいてはいけないので、いろいろむりをして何でもかんでも少しでも仕事をつけろというぐあいに指導いたしおりますために、現地の努力によりまして、ある程度の仕事はつけるようにしておりますが、その仕事を得ることの困難ということにつきましては、非常に大きなものを加えて来ておるのであります。
 なお御質問の第二点でございますが、この法律は中小企業の圧迫になつて、この法律実施のために夫業者を増大するということを考えなかつたか、またそれに対してどういう措置を講ずるつもりであつたかという御質問でございますが、私どももちろん刑務作業をやります上につきましては、この法律の必要だけではなしに、中小企業に対する関係も、われわれの知識の範囲内において十分考慮いたしました上に、なお政府部内の各機関の御意見も徴しまして、この法律の草案を進めたつもりでございます。刑務所の作業が日本の全体の経済にありますその地位というものは、非常に小さいものでございます。また全国の官公庁に層するいわゆる官用主義の線に入つております工業に対しまする刑務所の作業の比例、これも数字で申し上げますると、大体私どもは一パーセントぐらいと承知いたしておるのでございます。そうしてこの一パーセントに当る刑務所作業が中小企業に対してどういうぐあいに影響を與えるかということも考慮いたしまするに――これはもちろん刑務所作業が今日民間作業ばかりに依存しておつて、直ちにこれを官用主義に振りかえるというのではございまんが、すでに刑務所作業の経営は実質的にある程度官用主義の線に向けられて参りました。今日では全作業を通じますると、約五十パーセントぐらいが官用主義の線に入つて来ておりまして、そのほかの約五十パーセントが民需ということになつております。従いまして将来この法律を実施いたして参りまする上に影響があるとすれば、刑務所がこの五十パーセントの民需作業をやめて、官用に振りかえるという点に影響があると思います。私どもが聞いておりますところによると、中小企業庁におかれても、この刑務所作業の官用主義が中小企業にいかに影響するかということつきまして御調査の上、影響がないようにに御決定になつたということを聞いておるのでございます。御必要がございますれば、そちらの方から資料をお取寄せになれば、その点は私が申し上げるよりはつきりいたすと思うのでございます。
 それから印刷工と木工について御質問がございましたので、大体の御説明を申し上げたいと思います。印刷作業は約七十パーセントがすでに官需に振りかわつております。そのうち約五十パーセントが他の官庁、二十パーセントが自治庁、法務府関係というぐあいでございまして、あとの三十パーセントが民需にその道を求めておるのでございます。大体それが今日の作業の状態でございまして、将来においてもこの程度はあまり増大いたしません。
金額で申し上げますと、本年度の印刷の收入は大体一億二千万円程度までになる予定でございまするが、そのうち三千六百万円程度が民需になつておりまして、将来これが官需になつて来る程度でございます。その金額が印刷工業全体のパーセンテージでどういう数字を持つておるかと申しますると、大体昭和二十四年度の全国印刷業は、官需、民需合せて二百四十億と推定されております。従いましてそのうち約三千六百万円程度が将来官需になる部分に当るわけでございまして、パーセンテージから申しますれば、ほとんど問題にならぬ数字のように承知いたしておるのでございます。
 木工につきましては、大体これと同じようなことが申し得るのでございまして、民間作業に対して一%にも達しない、〇・三%程度の全作業能力でございまして、その中の約半数の民需の分が振りかわるという程度の影響を及ぼすわけであります。従いまして私どもは官用主義の法律ができました上において、社会に大きな経済的な影響が参り、失業者がふえるということは、とうてい考えられないと承知いたしておるのでございます。
 なおしかしながらこの法律の実施の上におきまして、もちろん刑務所作業を厖大なものにいたしまして、生産本位にいたすということになりますれば、いろいろな影響もあることはもちろんでございまするが、当局といたしましては、矯正を本位にいたしまして、生産作業につきながら職業の訓練ができるようなぐあいに考えまするために、刑務所作業の拡張ということも、私どもといたしましては必要の程度を越さないようにやつて参りたいと思つております。そのために私どもがただいま考えておりますることは、官用主義の法律がもし制定せられることになりますれば、その実施のためには私ども法務府以外におきまして、各関係官庁並びに業者の代表という方の協議会を持ちまして、それによりまして刑務所作業の運営におきまして、中小企業との関係を遺憾なく調節するようにいたしたいと考えておるのでございます。
#13
○小玉委員 いろいろお伺いしたのでありますが、この表にある最近三箇年の業種別の作業收入高という面から見れば、逐年刑務所作業收入はふえておる。ところがこれはいろいろ刑務所の方で、当局は苦心して、受刑者に職業を與えることに努力しておる。それが何とか失業せずにやつておるのだということを先ほどもおつしやいましたが、これは民間の企業者といえども、現在の経済不況についてはまつたく血と涙をもつて、やつと鬪つて生活をしておる現状でありますから、刑務所当局におかれてもほんとうに民間企業の方々と同じように、仕事を與えることに努力するのは当然のことであると思うのであります。でありますから、もしこの法律をつくつた結果、刑務所の関係の方々がこの法律に依存して、今まで続けておる努力を放擲するような結果になりますと、これはゆゆしい問題だと思うのであります。でありますから今の状況を続けて行つても、御説明によりますと、全体としてはわずかに一%ぐらいしか民間企業に食い込まないということでありますから、それならば私は刑務所当局が真劍にこの民間企業の方々と同様に、ほんとうに努力されたなら、わずか一%くらいの仕事はとり得て、かような法律は設ける必要はないのじやないかと考えるのですが、その点について御説明をお願いしたいと思います。
#14
○古橋政府委員 もちろんこの法律に通りましても、刑務所側で十分な努力をいたさなければ、とうてい收容者に適当な作業を與え、訓練を全うすることは困難であります。数字の上におきまして、現在まである程度やつているのであるから、それでたくさんだという御議論でございますが、しかしながら私どもの見ておりますところでは、今日このまま推移いたしますれば、私は遠からずして刑務所の作業が非常な困難にぶち当つて参ると思うのでございます。のみなず、さような仕事を探すために狂奔して、一般の自由市場において競争をするということは、かえつてまた一般の生産者に対する影響がどうかと思うのでございまして、私どものねらいますことは、一石二鳥と申し上げましようか、刑務所の作業を一定の規格のもとにおきまして、一定の範囲から出らないようにして、私企業との競合ということを避けます。その半面刑務所におきましても、適当な仕事をある程度得まして、それによつて矯正訓練にさらに一層努力して、受刑者をして、出てから再び職がないとか、あるいは職につけられない、能力がないというようなことで、舞いもどつて来ることのないようにいたすことが必要であると思つているのでございます。
#15
○小玉委員 先ほど印刷関係について、全国の印刷の收入と申しますか、それは統計によると二百四十億、そのうち刑務作業は三千六百万円とおつしやいましたが、この二百四十億という統計ですが、これはどこからの統計でございましようか。
#16
○古橋政府委員 この統計は、本年の二月に日本印刷工業会が通産大臣あてに提出した諮問の答申書に、その数字が出ているのでございます。
#17
○小玉委員 この法案を立案するにあたりまして、印刷であるとか、そのほかここに掲げてある幾多の業者の御意見は御聽取になつたのでありましようか。その点をお伺いしたいと思います。
#18
○古橋政府委員 草案中には、直接生産関係者には御意見を承りませんでしたが、通産省の御意見は十分承つております。
#19
○小玉委員 大体かようなことは、民間企業者に直接影響のある問題でありますから、立法にあたつては、そうした方面の意見を徴されることが、あるいは妥当ではなかろうかと思うのであります。いわゆる通産省だけの意見を聞いて、一般民間企業の意見を聞かなかつてということは、いかなる経過に基くか、その点をお專ねしたいと思います。
#20
○關政府委員 この法案を立案するにあたりましては、ただいま古橋局長から申し上げたように、民間の方には直接御意見を伺わなかつたのであります。その点でありますが、刑務作業をどう考えるかというと、基本の問題は民間企業との競合の問題でありますから、私どもとしては非常に苦心いたしたのであります。直接民間の業者に伺うのがいいか惡いか、あるいはそれの行政面を担当している関係各省の御意見を伺うのにとどめるのがいいか惡いか、いろいろスタートするについて苦心いたしたのであります。私どもとしましては結局いろいろ考えまして、これはその各部面を担当されている行政庁にお伺いをいたそう、こういうことにきめたのであります。
 そこでなでそういう考えをきめたかと申しますと、刑務所の作業は概略今二十五種類から三十種類ありてまして、それを一々聞くことになりますと、これはたいへんなことでありまして、しかも中小企業については中小企業庁、あるいは労働面については労働省、それぞれの各主管の省がありまして、十分に各業界の実情を把握しておられるわけであります。私どもとしては、印刷の問題はこれこれ、木工の問題はこれこれ、皮革の問題はこれこれというふうに、私どもの刑務所の作業施設、作業能力、将来の見込みなどを、すべての数字を差上げまして、これに基いて率直な御意見を伺いたいというふうに申し上げて、それらの問題について、去年の春ごろから数回にわたつて会議を開きまして、こちらとしては大体こういう法案をつくりたいという気持で事に臨み、別に案を確定せず、各省の御意見を伺いまして、そのうちにだんだんこういうものを固めて行つたのであります。私どもとしては、立案について個々の業者の御意見を聞かなかつたのは、そういう理由からであります。関係各省においてその個々別々の中小企業、あるいは労働面等の御意見は十分そこで反映して、私どもの方へ御通告いだだけるものであると思つて、直接お伺いすることはししなかつたわけであります。
#21
○小玉委員 私の質問は今日はこの程度で終ります。
#22
○角田委員長代理 次に山口好一君。
#23
○山口(好)委員 大体本日私が質問しようと思いましたところは、小玉委員より御質問になつておりますので、大体の当局の見方はわかつたのですが、一つだけお尋ねしたいと思います。
 刑務所の作業をして民間企業をできるだけ圧迫しない。すなわちこれとよくつり合いを保つて競合するところを少からしめるためには、普通の民間企業でやらないような部面をなるべくやらせるという方針をとつて行つたならば一番いいのではないかと思うのであります。たとえば通常の人のいやがる作業道路の修理にしても、困難で、普通の人ではこれをきらつてやらないという部面、あるいは開墾作業とか、あるいは戰時中で例をとりますれど、船舶のびようを打つような作業、これは普通の企業者ではとてもやり得ないところを、刑務所の労力によつて非常に能率的に優秀にやるという例もありますので、こうした面に今日まで刑務所の作業としてどの程度どういうような方面に、どの程度こうした作業が行われておるかというようなことを、お調べになつておつたら承りたいと思う。
#24
○古橋政府委員 刑務所の作業の運営におきまして、民間作業との競合を避ける上におきましては、どうしても受刑者の仕事が勢い困難な仕事に向けられて参るのでございます。しかしその仕事も、このような仕事の中に矯正的に見て非常に有効な仕事も多々あるのでありますから、私どもといたしましては、そういう点に特に重点を置いて刑務作業を経営して行く方針でやつて参りまして、ただいままでに、北海道の開発作業にはすでに二箇年引続いて多数の受刑者を送りまして、特に辺鄙な山の奥であるとか、あるいは水の中に入つて働くというような相当困難な仕事でありますが、その仕事に従事をさせております。本年もまた引続き北海道にその作業を実施いたしたいと計画しておるのであります。そのほかなお全国的にこれに類するような作業がたくさんありまして、それにはやはり一万くらいの人間を出す予定になつております。
#25
○山口(好)委員 それにつきまして、そうした大部分は重労働に層すると思うのですが、そういう重労働に従事し得る受刑者に対してはこれができましようが、重労働に服し得ないような受刑者、この両方の比率はどのように相なつておりますか。
#26
○古橋政府委員 ただいま御質問になりました点が、私どもが刑務作業の経営の上に非常に困難を感じておる点でございまして、受刑者の中には身体強壯な者ばかりではございません。特に身体的な欠陷がある、あるいは弱いというようなことのために犯罪に陷る者も相当ございますので、私どもが構外作業などに出しまして、土木あるいは河川工事などに従事させます者は、全体の收容者のうちからは約四分の一くらいの者であります。なおそのほかに低格者としまして、きわめて労働能力その他に身体的あるいは精神的な欠陷を有します者は、全体のうち約四〇%を占めております。これらのものに対する適当な仕事を見つけることが、非常に私どもの苦心しておるところでありまして、そのためにはどうしてもある程度構内におきまして、一般の普通の仕事を覚えさせるというような方向に進んで行かなければならぬのであります。
#27
○山口(好)委員 構外に出して、人のいやがるような仕事をさせる。これは受刑者に対して最も適した仕事を與えるということになりますが、今言つた低格者の約四〇%、これはどうしても刑務所の内部で、これに適するところの職業補導をいたしまして、そうしてその改過遷善をはかつて行くという必要があるだろうと思うのでありますが、この四〇%のものに大体一年を通じて内容と量において適当な仕事をやらせて行くということになりますと、先ほど言われたようにに、民間の企業に対して約一%というような比率になりますか。
#28
○古橋政府委員 構外作業におきましても、実は自由労働者との関係もありますので、その点からの制約もあります。従いまして構外作業につけ得るものも、その就業場所その他について、十分な考慮を拂つてやらなければならないのであります。、また受刑者の全部が構外作業等によりまして、身体的な訓練をすることが必要であるかということも問題でありまして、中には一定の職を持たせて、肉体労働以外のある程度の技術を持つた仕事につかせることが、本人の善導のために最も適当だと思われるものもあるのであります。またそのほかに身体的な事由で、先ほど申し上げました約四〇%ほどのものは肉体労働には適しないものであります。それらのもののためには、どうしても所内作業におきまして最も適正な仕事を與えまして、それを通じて訓練して行くという方法を必要とするわけであります。一年中それらのものに対してある程度の作業を與えるというためには、どうしてもかような法律によりまして、訓練と同時に生産につけるという方法をとつて参る必要があるわけであります。なお受刑者の善導ということは、どうしても生産作業につけるということが一番効果ある仕事であります。もちろん技術のない者、あるいは少年たちにつきましては、学科的な訓練、その他の教育方法を講じますけれども、最もよい訓練の方法は、人の自然的な状態のもとで生活し得るような方法で訓練をして行くことが望ましいのであります。従いましてある程度熟練した者に対しましては、どうしても生産作業に従事させながら、社会生活に適応するような訓練をして行くというために、構内作業におきましても、各種の作業を取入れた経営を意図しなければなりません。
#29
○山口(好)委員 その民需の事業に対しまして、そうした計画で行きましたときに、民間企業に食い込む率は約一%という計算になるのですか。
#30
○關政府委員 ただいまの点はきわめて重要な問題でありますからして、少し数字に基きまして、やや長くなつて恐縮でありますが、詳細に御説明してみたいと思うのであります。通産大臣官房統計課の資料と、こちらの資料等によりまして、刑務所作業と民間作業との比率を一応とつてみました。それは要するに現在において両方の力がどのくらいあるかという比であります。それは各木工、印刷、金属、皮工、洋裁等、これだけの部面について一応とつてみたのであります。大体従業者の数と生産額と両方にわけてとつてみました数字は、何人という数字は省略いたしまして、パーセントで申し上げることにいたします。木工については、民間の力を九八・一%といたしますと、刑務所の数は一・九%に当るのであります。これが従業者の数であります。生産額の数から申し上げますと、民間の方は九九・七%、刑務所は〇・三%になるのであります。次は印刷ででありますが、従業者の数から申し上げますと、民間が九七・六%、刑務所が二・四%になるのであります。生産額の方から申し上げますと、民間が九九・七%刑務所が〇・三%という比率になるのであります。次に金属でありますが、従業者の数から申し上げますと、民間は九八%、刑務所は二%になるのであります。生産額から申しますと、民間が九九・九四%、刑務所は〇・〇六%になるのであります。次に皮工についてでありますが、従業者の数から申しますと、民間が九二・四%、刑務所が七・六%であります。生産額の点から申しますと、民間が九九・五%、刑務所が〇・五%となるのであります。次に洋裁でありますが、従業員の点から申しますと民間が九七・六%、刑務所が二・四%、生産額から申しますと、民間が九九・九%、刑務所が〇・一%、大体こういう数字を示しているのでありまして、これが従業者及びその生産額の上から見て、民間の企業と刑務所の企業のウエイトを調べたものであります。大体こういう点から見て、従業者から見まして、多くて二%前後である。そうして生産額から見ますると、一%まで行つているものはよいのであつて、中には〇・〇六%というような、全体から見ますると、ほとんど言うに足らないというような数字を示しておるのであります。これらの基礎の上に立ちまして――もとより刑務所の一つの企業でありまして、この法律によつて若干官の仕事をこちらの方にいただくことになりますれば、今まで民間へ流れたものがこちらに来るということになりまして、その部分が若干の影響はもとよりあることでありましようが、それはしかし重大なものではない。しかも私どもといたしましては、従来刑務所においても苦労して民間の仕事をとつていたわけでありまするが、今度は従来刑務所においてとつた民間の仕事は刑務所でもらわないことになつた。今度その仕事が民間の方に流れて行く。トータルの上から見れば、彼此相殺されて、結局仕事の量から見れば同じことになるというふうに考えられまして、しかし重大なる影響を與えないものであろうというような大体の測定を、この問題については考えていたわけであります。
#31
○山口(好)委員 今の統計は大体いつを基準としてお調べになつたのでありますか。
#32
○關政府委員 両方とも二十三年度の数字を元にいたしまして作成いたしたものであります。
#33
○山口(好)委員 今日は大体この程度にいたしまして、またいろいろ調べた上御質問を申し上げます。
#34
○押谷委員 この法案の提案理由の説明の中に、矯正保護作業は民需よりも官公需の仕事をなすことが適当だというお考えのもとに説明せられておるようであります。その御説明の要点を考えますと、民需に基いた作業を課するということは、受刑者は一私人の利益に奉仕して、その労働が私利に供せられておるという感を抱きがちである。こういうようにお考えになつておるようであります。私人の私利の追求のため、利潤追求のために自分が奉仕しておるということは精神上おもしろからざる影響を與える、こういうようにまた御説明になつており、これに反して官公需に基く仕事を課すれば、受刑者は自分の労働が一般公共の用に供せられておると考えて、作業上、矯正上よい結果を来す。こういうのでありますが、かように精神的の方面から考えられましたことは、何かそこにそういうお考えをお抱きになる根拠があるのですか、もしあればその材料をひとつお示し願いたいと思うのであります。
#35
○古橋政府委員 ここに申し上げました精神的利益の実例につきましては、材料を申し上げることはできないのでありますが、かような考え方は各国とも同じになつておりまして、低い賃金でもつて受刑者を酷使する、利用するということをよく人が口にしがちでありまするし、また受刑者などがさような点につきまして、事実に反する疑いを持つおそれが、強制労働についてはつきものでございます。さような点を特に考慮いたしまして、なるべく公共の仕事につけることが望ましいとされておるのでございます。
#36
○押谷委員 今各国例がこういうような考え方であるという御説明がありましたが、各国の文化の程度も違います。受刑者の気持ももとより違つて来ると思うのであります。また御説明の中に、一般にそういう安い賃金でこき使つておるというような感じを持つておるという、一般人の考え方を御説明になつたようでありますが、ここにあるのは受刑者の精神に及ぼす影響ということが基本になつているのです。私どもの考え方では、日本の行政制度が行われてから今日に至るまで、刑務所で働いている受刑者が、その仕事が私人の仕事であるから、私人の利潤追求のために奉仕しているのだ、官公の仕事であるから、私は公のために奉仕しているのだというような、纎細の気持を使つてやつているようなことはまずないと思います。そこでこういうように断定を下されたのは、何か刑務所で統計でもおとりになつて、そしてなるべく精神的にこういうような大きな影響を與えていたのだということの材料から出たかどうかを私は聞いたのですが、お手元にそういう材料がなければ、あなた方らのお考えから出たと考えなければならぬと思うのですが、そう考えていいですか。
#37
○古橋政府委員 一例をとりますると、先般長野の刑務所におきまして、長野市の洪水のときに收容者を出さしたのでございまするが、そういうような作業におきましては非常な働きがなされまして、一般の社会から感謝されていることが多いのございます。長野におきましては、副知事さんがわざわざ法務府までお出向きになりまして、私どもに感謝を申されたのであります。当時の收容者の働きぶりは、実に驚くべき自己犠牲の発揮であつたということを申されたのであります。これに類するような仕事は各地で行われておりまするが、それは多くは、公共の仕事に奉仕する場合にそれが発揮せられるのでありまして、そういうような点を特に強調する意味で書いた次第であります。
#38
○押谷委員 同じようなことを繰返しておるわけなのですが、結局なるほど何か災害の場合に受刑者が奉仕をすれば、第三者からは非常な感謝でしよう。しかし受刑者としてはたしてそれがどの程度に公共の奉仕をしたといういい影響を與えたたかということは、多少の疑問があると私は考えております。それよりも、特にこの提案理由の中に、私人の仕事を刑務所でさすと、受刑者に対しては精神上おもしろからざる、思わしからざる影響を與えるからである、こう断定をせられた、この言葉に私は大きな疑義を持つのであります。個人の仕事に受刑者が協力したら、その受刑者に精神上おもしろからざる影響を與えるのだというような考え方は、まつたく官僚独善です。こんな考え方をもつて進んだら、日本のお互いが産業復興に協力をしているその人たちの――中小企業者全部の人たちの仕事は国家公共の福祉のためには奉仕しておらぬというような考え方を持つておる官僚独善な考え方がこの言葉になつて現われたのではないか。こういうようなことがもしも片鱗だにあるならば、この法律は私は大いに考慮をせなければならぬ、こう言うのです。国実や社会や経済は、全部申すまでもなく一つの総合的な有機体的なものだと考えております。従つてどの面においての協力でも、これはやはり国家にも協力し、社会にも協力し、一人の私人の企業に協力したからというて精神上おもしろからざる、思わしからざる影響を與えるのだというような当局の提案理由の説明にあることを、私は非常に意外に思い、しかも遺憾に考えるのです。この点についてどう考えられますか、その点をもう一ペン伺います。
#39
○關政府委員 この点につきましては、結局受刑者が強制的に労働を科せられるというか、自由を拘束して、強制力によつて苦役を科せられる、この点におきまして非常な圧迫を感じて仕事をしているわけでありまして、その結果といたしまして、自分たちがこんなに苦労して――重苦を強制して、自由を奪つて仕事を科せられているこの仕事のでき上つたものはこうだというふうな考え方を抱いていがちである。これは別に私ども統計を一々とつたわけでもございませんが、受刑者がそういう気持を抱いているであろうということは、現場の看守の諸君、あるいは所長の皆さんなどのときどきの御報告などにもうかがわれることでありまして、要するに自分が自由を奪われて仕事をしている、そのできた仕事はこうではないか、こういうふうな不満を持つている。この点は行刑の実際についている看守の諸君などから聞きましても、疑い得ない一つの事実だろうと思うのであります。それでそれが結局いろいろな不満となつて出て来る。その看守から聞いた事実を私どもはかように考えて、この理由を書いてみたのであります。
#40
○押谷委員 自由を奪われて作業をすることは、観念的にすでに当然のことでありますから、その点についての不平は受刑者にはないと私は思うのです。しかしそれからやはり精神的に思わしからざる影響を與えているというその断定をお持ちになつているのですか。そういうことを聞いたとおつしやるのですか。
#41
○關政府委員 この問題は比較の問題でございまして、かりにここに民需の作業と官需の作業と二つあつた場合に、どちらがいいかという比較の問題であります。もとより私どもも民需の作業が全然不適格だと申すわけじやありません。ここに官の作業と民の作業と二つあつた場合に、どちらが精神的な圧迫か、また訓練矯正の上にいい結果を與えているかと申しますと、かような理由からやはり官需の作業が受刑者の矯正上は適当な仕事である、かように考えているのであります。それでもとよりすべての受刑者がさような感じを抱くというわけでもございませんでしようが、中にはまたそういうふうな感じを抱くものも相当多数いるであろうということは、現場の看守諸君の報告を聞いても私どもは感じているわけであります。その点から見て、官需の仕事、民需の仕事二つ並べてみたときにどちらかということになりますと、やはりかようなことも一つの理由となつて、官需の方がより適当なる矮正保護の仕事である、かように考えているのであります。
#42
○押谷委員 大体わかりましたが、納得はできません。私はこういう希望を持つております。別に御答弁をいただかなくてもいいのでありますが、もし受刑者にして私人の、民需の仕事に対して、それに奉仕することが精神上何か惡影響を受けるような受刑者があるならば、行刑に関係せられる役人は、そのあやまちをむしろ是正すべきである。いかなる私経済に協力しても、それは国家公共のための協力であるというように指導せらるべきであると考えます。それを、そう考えることは思わしからざる影響を與えるのだから、民需に対しては受刑者に仕事をさせないようにしようと考えられることが、私は役所の皆さんとしては官僚独善的な考え方だということを、断言してはばからぬのであります。従つて今後においては、そういうような考え方があるならば、この際さつぱりと改めてもらつて、刑務所の仕事は民需の仕事をやつても、やはりそれは国家公共のために協力するものであるというように指導を願いたいと思います。いずれまた調べまして、あとの質問は次の機会にいたします。
#43
○小玉委員 今の押谷委員の質問に対する当局の御説明では、私もはなはだ納得ができないのでありますが、大体囚人に仕事を與えて改過遷善に導くという根本的の理由は、これは仕事を與えずしてぶらぶらさしておくということは、無聊な日を送り、従つて更生の道に資するところではない、これに適正な仕事を與えて、そうして勤労の風習をつけ、また仕事に対する興味と申しますか、それに熱中して、そうして自然自然に教化して行くというところに私は根本的の眼目があるのではなかろうかと考えるのであります。官の仕事であるからして、それには非常な興味を持つて、そのために民需の仕事よりも改過遷善の率がよろしい、また民需の仕事はそれほど熱が入らぬということを聞きますと、何か囚人にイデオロギー的の考えがあつて、そうして一般公共の仕事であれば熱を出してやるが、私企業であれば、共産主義方面から行くというと、資本に奉仕するというような見地から、熱が入らぬという見地に立つように受取られました。それはこの囚人に刑務作業をさして、それによつて囚人を矯正するという本道、本体を私は見きわめざるところの見方ではないかとかように考えるのですが、その点についてちよつとお伺いしたいと思います。
#44
○古橋政府委員 この法案の第一の目的は、ただいま御指摘がございましたように、收容者に矯正に適する仕事を與えるということが最も大事な点でございます。そうしてそれをねらつてこの法案を出したものに違いないのでございます。そういたしまして、しからばその作業をどういうところに求めたらいいかということになりますると、国家が刑罰に処して労役につかしている以上、国家がやつておるのだから、国家がそのまま自分の仕事をやらせるのがいいという説明になつて参ります。またその国家の仕事をやらせるのがいいという説明に付加いたしまして考えますると、二つの仕事があつた場合どちらがいいかという場合には、その国家のやらしておる仕事をやるということが、自己の贖罪というような点と、国家に対する贖罪というような点の結び方が最も自然であるというように考えられるわけであります。さように考えております。
#45
○小玉委員 これは私率直に申しますが、かようなむずかしい説明をされなくても、いわゆる官公需の仕事であれば仕事は得やすい、民間の仕事であれば仕事は得にくいということから、まず官用主義というものを第一点において、そして民需というふうに移る。こういつたような仕事が得やすいか、得やすからざるかという便宜論から出発しておるのではなかろうかと思うのですが、この説明はどうもふに落ちないのですが、ほんとうの率直のところはいかがですか。
#46
○關政府委員 結局申しますと、要するに仕事をどうしてもさせなければ刑務所としては失業者が氾濫いたしますから、治安維持上困るから、どうしても仕事がほしい。その場合に、刑務所の初めからの問題でありますが、これを官に求め、あるいは民に求めて今まで来たのであります。仕事があれば両方の仕事のどちらでもよろしいという一つの考え方と、それからさらに民需の仕事の場合と、官需の場合といろいろ考えてみますと、かようなことも事実として一応感得されるというようなことから、官需の方から出たものがベターな一つの仕事であるというように考えられると思います。
#47
○小玉委員 そうしますと、私企業に奉仕する、一私人の利益に奉仕するということは、思わしからざる惡影響を與える。その労働が私利に供せられるという感を抱いて、そして思わしからざる精神上惡影響を與えるということを、この立法理由にお書きになつておる。そうすると、この印刷の仕事でも、民間人の印刷を引受けられるということは、一私企業に奉仕する結果に相なるわけであります。でありますから、この法案を施行すれば民間の仕事も引受けられるとおつしやるのでありますが、そうしますと、その仕事を囚人にやらせることは、あなた方のお考え通りであるとすれば、いわゆる受刑者の精神に思わしからざる影響を與えることになつて、結局あなた方の御主張と衝突して自殺論になるのではないかという質問でございます。
#48
○關政府委員 この法律の建前といたしましては、官の注文と民の注文と同じような仕事について注文があつた場合において、まず官の注文を受けて、民の方の仕事をするということが法律の建前でありまして、官の方だけで仕事がまかなえないときには、民の方も引受けてやるという法律上の建前であるのであります。これは今までも再々御説明いたしましたように、刑務所の仕事を大きくわければ、官と民と二つがあつて、どちらかといえば官の方がベターである。しかしそれでは民の仕事がいけないからして、仕事を受けないで受刑者を失業のままに放置しておきましては、これは惡の惡でありまして、民であろうが官であろうが、どんな仕事であつても仕事をさせることは絶対の要件であります。官の仕事があれば官の仕事をやらせる、もし官の仕事が全体の仕事の量をまかなうことができないことになりましたならば、また民の仕事も引受けてやる。大体こういう意味合いにこのことを考えておつたのであります。
#49
○小玉委員 議論にわたりますけれども、それならば民の仕事も引受けられることを予定されておる法案だと思うのです。そうすると民需に基いてこの作業を課することは、一私人の利益に奉仕し、その労働が私利に供せられるというような感を抱きがちでありまして、受刑者の精神上思わしからざる影響を與えるという説明がどうも私は納得が行かないように思うのでありますが、それはどういうふうにお考えになつておるか。なお御説明願いたい。
#50
○關政府委員 大体この法案をつくりました結局の目的といたしましては、刑務所の仕事は全部官の仕事でまかないたい、こういうような気持であるわけであります。それでその完全なる理想の型を実現するまでには二年、三年ないし五年くらいの歳月を予定しなければならないことであろうと考えておるわけであります。それで何と申しましても、実際の第一線の作業実施の結果を見ますと、官の仕事の方が、そのほかの仕事の種類などから見まして、適格であることは私どもとして疑うことはできません。そのでき上つた末のことを思いますると、やはり官の仕事をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
#51
○小玉委員 もうこれで終ります。
#52
○田中(堯)委員 今の点の関連でありますが、たとえば印刷につきまして、民間の印刷を引受けて受刑者にやらした、官の仕事をやらしたという場合に、またそういうことは今まであるわけですが、そこで何か精神的な影響が非常に重大なように書いてあるのでありますが、その重大な精神的な影響について何か確証を持つておりますか。それは統計でなくても一つ二つの例でもよろしゆうございますから、そういうものがありますか。單なる政府委員諸氏の所見によつてのお話でありますか。
#53
○關政府委員 この問題は受刑者の矯正保護上一つの問題でございます。しかしそうかといつて表立つてこういう仕事はどうか、ああいう仕事はどうかと言つて受刑者に聞くことは、かえつていろいろな問題を包蔵いたしますし、こちらとしてその点を積極的に統計的に調査するということは、今までいたさなかつたのであります。しかしこれは先ほども矯正保護局長からのお話の通りに、災害のために川の土手がくずれて、相当まとまつた労働力がどうしても得られない場合に、受刑者にこういう仕事かあるから行かないかと申しますと、率先してすベてが一致団結して、一名の逃亡者も出さずにその仕事に従事する。これなどはこの例としてはあまりふさわしくないものかもしれませんが、要するに受刑者が公の仕事をやつておるのだというくらいの感じを持つておりますと、逃亡もしないで專心その仕事に一生懸命になる、その結果晴れ晴れとした気持ちになつて、いいことをしたという気持で、人間的な良心をそこに感ずるというようなことを、私どもはしばしば今の災害などの場合を通じて知るのであります。これは昨年の秋に長野市内に大きな川の氾濫がありまして、軍政部の建物が水の中に埋まつてしまつた。県として非常に困りまして、軍政部の方からここ二、三日うちに流れをとめてしまえという嚴命が下りました。そうかといつて労働者は集まらない。そこで長野刑務所が晝夜兼行で千人近くの総動員をいたしまして、そこの復旧に当つたのであります。雨の中をびしよぬれになつて、危險にさらされてまでも奮闘したのであります。その間に千人の者がわずかの看守に連れられて、一名も逃げずに、みんなきわめて愉快な気持で仕事をしてそこを往復していた。そのためにあとの結果から見ますと、やはり受刑者もいいことをしたのだという気持で、各受刑者に人間的な良心を感じさせたという意味におきまして、非常にいい結果を来したということは現地の報告から見ても私どもは知るのであります。これは通常一般の仕事に対する例として申し上げることは不適当であるかもしれませんが、さような事例は種種あるわけでありまして、それらの事例またそれにつけ加えまして現地の各刑務所などへ参りまして、受刑者の賃金は今日はそうではありませんが、かつてはやはりきわめて安い賃金にあつたわけであります。そういうときに、特に経済的な問題に関心を持つておる受刑者などにおきましては、とかくそういうことを漏らしがちのことは私ども伺つておるわけであります。そういうようなところから見まして、やはり官公の仕事をやつておるということは、受刑者に精神的な意味からもいい影響を與えるであろうというふうに私ども考えておるわけであります。これは私どもそう思つておりますと同時に、外国などの文献にも同じようなことが結論づけられておりまして、われわれ日本の行刑のみならず、外国においても同じであるという感を深くしておるのであります。さようなことからこれを提案理由の一つとしてあげてみたのであります。
#54
○田中(堯)委員 今示されたような例はそれは事実でありましようし、受刑者の心理としてそういうことは考えられるわけであります。ここで受刑者の心理をつべこべと論ずるわけではありません。その点については後刻といたしますが、一時的な土手くずれとか、風水害で人手がなくて困つているというときに、受刑者が平生は拘束されているが、彼らが外へ出されて、みんなと顔を合せて同一な資格で働いて、しかも人からも一応あがめられるというようなことであれば、これは大いに喜ぶに違いませんが、しかし所内で継続的な地味な仕事をやるという場合、たとえば印刷なら印刷をやる場合に、その仕事が官の仕事であるか、あるいは私の仕事であるかということによつて、どうも今の風水害の場合の受刑者の心理、それがそのまま今の所内の靜かなる仕事に適用されるものとはちよつと考えにくいのであります。先ほどの御説明によると、官用主義ということであと四、五年か、二、三年後には大体基本の原則でやつて行きたい、官だけでやりたい。それまでは民の仕事も請負うというような御説明であつたようでありますが、私どもの考えとしては、一体官の仕事というものは限られておるし、いつでも民の仕事の方が創意工夫をこらして先へどんどんと進んで行くものでありまして、従つて犯罪階級といつてはおかしいのですが、犯罪者層というものも日常社会の生きた社会から入つて来るのですから、すべての仕事にいくらか直接間接関係のある連中が入つて来るのですから、官の仕事、すなわち型にはまつた、時代より一歩遅れたものではとうてい物足りないので、五年たとうが三年たとうが、どうしても官用主義一点張りで事は解決しない。どうしても受刑者の必要とするような仕事の類型を満たし切るものではないと思うわけなのです。ここで官用主義をどうしても実現しなければならぬとされる理由が、どうも精神主義的な御説明であつたり、あるいはいろいろな説明がありますが、十分な納得の行く説明がないわけであります。私は今日はこれで質問を打切ります。
#55
○押谷委員 先ほど関政府委員の御説明を聞きますと、三年、五年後には全部官公需で満たすように計画をするのだ、こういうようなお話なのです。そういうことになると、前に質問いたしました先輩に対する御答弁の際に、この法律が民間企業を圧迫しないか。民間企業の分野を侵害して失業者を出すのじやないかというときに、現在の統計によりまして大丈夫だというような御説明があつたわけです。現在は民需、官公需併用せられている。そういう形において民間企業に対する圧迫はないと言われる。しかし数年後には刑務所の矯正作業は全部官公需になつてしまううということになりますと、中小企業者に対する圧迫も非常に大きくなる。あなたの御説明を、そのまま政府の方針であると承つていいわけでありますか。
#56
○佐藤(藤)政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に、先般来提案理由の説明の書き方につきまして、いろいろ御指摘を受けたのでありますが、民間の企業について受刑者を用いることは、受刑者に思わしからざる影響を與えるというような断定的な言葉で説明されてありますので、この点の御指摘につきましては、はなはだ遺憾に存ずるのでありまして、表現の仕方については、御指摘のようにまことにまずい言い方であるとも考えられるのであります。実はかような表現をいたしましたのは、先ほど政府委員から説明いたしましたように、災害の際における構外の作業であるとか、あるいは北海道の開発作業のような場合に、公共の仕事をする際には、民間の仕事をする際よりも受刑者が非常に喜びを感じて精を出して仕事をなす。従つて仕事の能率も上つておるのであります。また構内の作業にいたしましても、社会一般における仕事に対する報酬、対価というようなものと違いまして、一定の作業をなした者に一定の割合の作業賞與金を出す。それはごく率の低いものでありますが、そういう制度になつておりますために、所内の作業につきましても、民間の仕事をする場合と官公需の仕事をする場合とについて比較して考えますと、受刑者の仕事に対する熱意と申しますか、精の出し方が幾分違うということが往々見受けられるのであります。全部がそうだというわけではないのでありますが、さような傾向から見て、民間の企業と官公需の需要と両方ある場合には、どつちが受刑者の矯正作業として適当であろうかということになりますと、官公需の方が適当であろう、より望ましい。そういう観点からかような説明をいたしたのでありまするが、どうも表現の仕方がまずかつたために、皆様の御指摘を受けてまことに遺憾に存ずるのであります。
 なおただいまの御質問に対してでありますが、この法律が通過いたしましてさつそく施行いたすのでありますが、現在の刑務所の作業を全部官公需のみの一本にするということは、これは相当遠い将来でなけば、そういろ理想の姿は達せられないのであります。できるだけ官公需一本にしようという趣旨がこの附則の第二項にも「矯正保護作業によつて生産される品物及び受刑者の労務が、すみやかに、国及び地方公共団体の機関の需要のみに供せられることになるように、努めなければならない。」そういうふうに努力目標を定めておるのであります。従つて将来刑務所の作業が全部官公需になつたという姿は、これは何年先のことかはつきり予定もつきませんので、先ほど本法の施行によつて民間の中小企業にさしたる影響もなかろうということを申し上げましたのは、昭和二十三年あるいは昭和二十四年の民間の生産状況と刑務所の生産状況を比べまして、昭和二十三年及び二十四年におきましては、刑務所の作業は六分民間の仕事をしており、四分官公需の仕事をしておるのでありますが、その六分の民間の企業に使つておる生産力を全部官公需のみに費したとしても、それは全体として官公需の仕事のうちの約一パーセントくらいしか刑務所では生産能力はない。それであるから官公需の需要だけの一本にしてしまつても、官公需全体の生産高の約一パーセントぐらいにしか当らないから、民間の中小企業の作業に対しては大した影響がなかろう、こういう結論を下しておるのでありまし、そういう理想的な姿になりますと、現在刑務所において民間企業をやつておる分が、全然刑務所においては手を出さなくなるのでありますから、民間企業の分は全部民間にまかされることになるのでありまして、その点においてはプラス、マイナスになると考えるのであります。
#57
○押谷委員 ただいま佐藤政府委員の御説明を承りますと、矯正作業が官公需一本になるのは遠い将来だと言われた。関政府委員の御説明では大体三年か五年先だと言われたと思うのですが、大体どちらの方が正しいのですか。
#58
○佐藤(藤)政府委員 事務当局の考えといたしましては、なるべくすみやかに官公需の一本にいたしたいという理想を持つておるのでありまして、この法案の附則にも示されておるように、努力目標としてはなるべくすみやかにやろう、そうして今後の刑務所の施設の整備、また作業指導者の充員、また官公需の注文の出方等、いろいろな條件がありますので、こういう條件が備わるのが二、三年先であるか、あるいは五年先であるか、あるいはそれ以上かかるか、ちよつとはつきりした年数を申し上げかねるのでありますが、できるならばなるべく早く官公需一本にしたい、こういう努力目標を持つておるのであります。
#59
○角田委員長代理 次に世耕弘一君。
#60
○世耕委員 私は簡單に数点お尋ねいたしたいと思いますから、簡單にお答えを願いたいと思います。
 受刑者が仕事をする場合に、能率を向上せしむる意味において、請負事業とかいうことをやらしておるかどうか。それから刑務所内の機械その他の設備が新しい構想のもとに行われておるかどうか。また能率の向上につきまして、新しい計画を持たれているかどうかという三点についてまずお答え願います。
#61
○古橋政府委員 收容者の作業意欲を高揚するために、刑務作業におきましても、場合によりましては請負作業をやつておるのでございます。ただいま具体的な数字は承知いたしておりませんけれども、各所でそういうことをやつたことがございます。次に機械の設備でございまするが、御承知のように施設が燒けましてから刑務所がつくられまして、それに応じて逐年ある程度の復旧と、さらに收容者のふえました分の就業に要する機械の設備は続けて参つております。またその次の工場の点でございますが、これも舎房の建築ができるにつれまして、工場の建築も漸次進めております。機械の点につきましては、昭和二十五年度としまして、作業予算のうちで備品費、機械器具その他に一億七千八百万円ほど敷設することになつております。敷設いたしまする所は、主として昨年度新たにできました加古川刑務所あるいは久里浜刑務所、愛知少年刑務所、それから笠松刑務所その他なお復旧のできました各刑務所に少しずつわけてやろうと思つております。
#62
○世耕委員 御説明で一応了解いたしました。あまり新しい設備がおありになるような感じを與えられないのでありますが、これはまた別の観点からお尋ねいたしたいと思います。
 なお最近各国の行刑施設並びにそういうような所をば調査に出る御計画がございますか。
#63
○古橋政府委員 法務府におきましては、さきに二名アメリカに参つておりますが、近くまた三名ばかり向うに参りまして、主として行刑施設等を視察して参ることになつております。
#64
○世耕委員 日本の行刑施設並びに受刑者に対するいろいろな指導方面のことが非常に遅れているように私は考えるのでありますが、幸いにすでに二名が派遣さされ、なお三名逐次御派遣になつて新しい施設を御研究なさるということは、まことにけつこうであります。
 次に刑務所の内容を見ますと、予算が非常にでこぼこでありますが、これはどういう点から年度によつてでこぼこがあるのですか。予算年度の最初において大体の事業の計画性というものをお待ちになつているかどうか、この点について伺います。
#65
○古橋政府委員 刑務作業の予算の支出につきましては、当局としては、刑務作業の経営に非常に困つておりますために、またいろいろ予算措置について計画性を比較的欠いておりますために、民間の事業に比べて違つておると思います。
#66
○世耕委員 受刑者の職能の選択権並びに性能試験などというものは、それぞれ研究され、実施されておりますか。
#67
○古橋政府委員 受刑者につきましては、最初收容いたしますと、その人の全人格につきまして、いろいろな方面からその人の力を測定いたします。私どもはそれを分類と申しておりますが、社会学的に、生物学的に、心理学的に、精神的な方面から、その人の全人格について考査いたします。また同時に作業の能力につきましても測定をいたしまして、作業を與えますときには、本人の希望とか、本人の将来の計画等とにらみ合せまして、それを適当にしんしやくした上作業につかすようにいたしております。
#68
○世耕委員 受刑者の労働によつて得た收入はどういうふうに使われておりますか。私は刑務所の收入は刑務所の方に充てるべきであると思いますが、この点はどうなつておりますか。
 また受刑者の中に発明等のあります場合には、どういうような待遇をしてやつておるか、またそういう指導方法について何か計画がおありになりますか。
#69
○古橋政府委員 受刑者の労力によつて獲得いたしました收入は、すべて日本銀行を通じて大蔵省に参ることになつておりまして、刑務所には直接まわつて行かない仕組みになつております。なお外国の例について述べますと、こういうような場合には特別会計制度がありまして、それによつてある程度收容者の待遇の改善とか、更生資金の付與というようなところにまわし得る制度のところもあるやに聞いておりますが、日本におきましては、先ほど申しましたような財政制度に従来からなつております。
 それから受刑者の発明に対しましては、法務総裁から賞金を出すことにいたしまして、奬励いたしておる次等でございます。
#70
○世耕委員 発明品あるいは発明等に関する賞品がこれまでどういう形式で出されておるか、この問題はあるいは法務総裁がおいでになつてからお尋ねした方がいいかとも思いますが、事務関係にも一応頭に入れておいてもらいたいと思います。私は刑務所收入は特別会計にして、これをもつて充てるのが最も理想的じやないかと思うのです。これについて新たな御計画があつてしかるべきだ、かように考えるのであります。
 それからもう二点ほど簡單にお尋ねいたしたいことは、受刑者中の男子に比較して女子が非常に少数であるが、何かここに統計的に説明できる材料をお持ちであるかどうか。それからこの表にも出ておりますが、最近における死刑者の数であります。戰前に比較してどういう数になつておるかをお聞きしたい。
#71
○古橋政府委員 受刑者の発明に対しましては、賞金を法務総裁から出す方法をとつて奬励いたしております。なお特許などの出願がありました場合には、当局の手を通じてその手続をとるようにいたしております。ただいまのところあいにくどの程度に実績が上つたかという点につきましては、表を持ち合しておりません。
 なお刑務所作業の特別会計制度は、当局としては望ましいことに考えておりまするが、まだ今日刑務所作業自体の十分な活動も開始していない状態でございまして、その実施に至るまでに準備もできておりません。それから死刑囚につきましては、ただいま正確な数字は持ち合せておりませんけれども、ただいま全国の刑務所におりまする者は全部で八十二名でございます。
#72
○世耕委員 その八十二名の職能別がおわかりであつたらちよつと御説明願いたいと思います。資料の方はあとでけつこうであります。
 それからもう一つお尋ねいたしたいのは、受刑者中の男女の比較で、非常に女子が少数であることはどういうところから来たのだということの御判定を願いたいと思います。
#73
○古橋政府委員 女子の犯罪者の数は、男子に比較いたしまして非常に低率でございます。その原因につきまして、私どもはまだ十分なる調査を遂げておりませんけれども、私が考えておりますところで申しまするならば、第一番に、女子に対しては比較的家庭その他の保護の制度が強いのと同時に、また検事局の起訴の率もおそらく男子に比して少いという点があると思います。なお社会的活動の状態等に根本的に差違がございまする点も影響があると思つております。
#74
○世耕委員 この男女間の犯罪の数が非常に差があるということは、精神的に、あるいは日本の家庭的な実情、新憲法下におけるところの今後の状況等を勘案して、当然これは新しく研究すべき性質のものだと思うのです。こういう点について何か御計画がございますか。
#75
○古橋政府委員 女子の犯罪につきましては、実は戰前におきましては、非常に数も少うございましたので、その関係で比較的調査が男子ほど十分にはなされていなかつたのでございます。しかし戰後やはり男子の率が高度になりますと同時に、女子としてもある程度少いながらに高率になつて参つておりますので、今日女子の犯罪に対する調査につきましては、相当現地におきまして調査もいたしておるのでございます。なお将来女子の犯罪につきましては、一層の調査を必要とすると思つておるのでございます。
#76
○世耕委員 最後にもう一点お尋ねいたしますが、刑務所内のいわゆる情操的指導、この点についてどういう方法をやつておられるか。なお先ほどお尋ねいたしました職業の選択権があるかどうかという問題についてですが、たとえば文士が刑務所へ入つた、そういう場合にどういう指導をなさるか、あるいは作曲家が刑務所に入つた音楽家が刑務所に入つた、そういう場合にどういう指導をするか、こういう点は当然それぞれ性格に応じて指導さるべき性質のものであつて、またそれを生かしてやるべき筋のものじやないかと思う。こういう計画について何かお考えがおありになるかどうか、理想でもけつこうでありますから、お伺いいたします。
#77
○古橋政府委員 刑務所の生活は一般社会と非常に違いまして、情操方面が欠けておるのでございます。そこで收容者が長い拘禁生活の間に荒廃した精神を持つて出ることを避けるために、どうしても十分な情操的な訓練教育を必要とすると思うのでございまして、最近の行刑におきましては、その面につきましても特に注意を拂つておるのでございます。そのためには全国の各刑務所等におきまして、各種の企画を持つておるのでございまするが、一般的に申し上げ得ることは、各刑務所は、大体收容者の中から文学的な趣味のある者につきましては文学的な面、たとえば俳句とか和歌とか詩その他につきまして、毎月一回ぐらいの雑誌を発行させております。そのほか活動冩真、幻燈その他の視覚による方法により、情操的な教育をいたします。また音楽、音盤、ラジオ等を利用いたしまして情操教育に努めておる面がございます。
 なお刑務所に入つて参ります人は非常に多種多様でございまして、まつたく社会の縮図でございます。その中には、各種の技能を持つた人が入つて来られるのであります。その人たちに対しましてそれに適する訓練を與えるということは、非常に困難なことでございますけれども、刑務所にいる間に、少しでもその技能の役に立つような方法をとるように、各刑務所とも心がけておる次第であります。
#78
○世耕委員 御説明を承つたのですが、私の感じは、どうも十年一日の感で、少しも進歩性がない。そこに理想が織り込まれていないということは、はなはだ遺憾に思うのであります。実はきよう各観点からお尋ねしたのは、行刑事務組織等について理想を伺えばけつこうだと思つたのですが、この点は私のお尋ねする観点が違つておつたから、お答えができなかつたかと思います。いずれまた別の機会にお聞きすることにいたしまして、この程度にとどめておきますが、おそらくお読みくださつただろうと思いますが、ドストエフスキーの「死の家の記録」ですか、監獄生活をした中の記録的な小説が出ているようであります。私も一、二度読ましていただいたのですが、こういう観点から見ますと、日本の今日の受刑者の生活にはなお多くの改良を加えるべき必要があるのではないか、かように私実は考えるのであります。ことにあのドストエフスキーの小説の中に出て来るのは、趣味のない仕事を與えられるくらい苦しいことはない。また毎日同じことを繰返されるような仕事くらい苦痛なことはない。だから近所にまきの山があつて、まき山へ行つたり、あるいは森林に行つて、木をたくさん切ることができるにもかかわらず、すぐそばに船がこわれていて、その船底を苦しい思いでぶち割つて、まきをつくらせられることが毎日続いたことくらい、まつたく苦しいことはなかつたというような感想も、受刑者の一人として、幾分文学的には現われておりますが、私は受刑者の心理をうがつたものではないかと思うのであります。往往にして法律はむしろ監督するものの便利のためにつくられたのが、日本の弊害であつたのであります。あたたかい気持で、受刑者に何を與うべきか、いかにして幸福に導くべきかというあたたかみが、日本の行刑制度の中に欠けているのではないかと私は考えるのであります。この点特に御考慮を願いたい。なぜ特別会計にした方がいいじやないかということは、いろいろな点について考えられることと、今御説明になつた中に、特別会計となれば、独立会計だから、收支計算も独立会計としてやらねばならぬ、今独立はできぬのだというような感じを私受けましたが、独立会計でも経営が十分立たなければ、一般予算から計上される例もあるのですから、いやしくも特別会計の收支が赤であるならば、私は一般会計から持つて来ることもさしつかえないと思うのであります。この点については受刑者の幸福と、今後日本の受刑制度に一大進歩を画されるように、御努力あらんことをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
    ―――――――――――――
#79
○角田委員長代理 他に御質疑はありませんか――御質疑がなければ、この際お諮りいたします。土地台帳法等の一部を改正する法律案の施行期日が四月一日になつておりますので、これをこの法律は公布の日から施行するというように修正したいと思いますから、この修正意見について関係方面と折衝したいと思いますが、御異議ありませんか。
#80
○角田委員長代理 御異議なければ、さようとりはからいます。
 本日はこれにて散会し、明日午後一時から開会いたします。
    午後四時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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