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1972/01/30 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第3号
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1972/01/30 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第3号

#1
第071回国会 本会議 第3号
昭和四十八年一月三十日(火曜日)
   午前十時三分開議
    ―――――――――――――
#2
○議事日程 第三号
  昭和四十八年一月三十日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 以下 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 この際、おはかりいたします。
 田中茂穂君から病気のため、三十日間請暇の申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(河野謙三君) 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 去る二十七日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。占部秀男君。
   〔占部秀男君登壇、拍手〕
#6
○占部秀男君 私は、日本社会党を代表して、田中内閣の施政方針をただし、総理をはじめ各大臣の率直な所信を伺いたいと思うのであります。
 第一に、外交・防衛問題についてであります。
 ベトナム和平協定は調印されまして、停戦は実現いたしました。あらゆる苦難に耐えながら民族の尊厳を守り抜いてきましたベトナム人民に対しまして、わが党は、心から敬意を表するとともに、この協定が確実に順守され、ゆるぎない平和がつくり上げられることを強く強く期待しております。
 田中総理は、今度の施政方針においては、勢頭、このベトナム問題を取り上げられておるのであります。新しい平和の幕あけであると絶賛され、国際政治は、力による対立の時代を経て、話し合いと協調へ移行した、と高く評価をされているのであります。そして、さらに、こうした緊張緩和の情勢の中で今後わが国はいかにすべきかという点に触れて、新しい平和の創造に進んで参画し、その責務を果たすべきであると、積極的な役割りを強調されておるのであります。
 ところが、どういう立場でどう具体的にこの役割りを果たすかという点になりまずと、新しい平和の幕あけであると絶賛し、力による対立の時代は終わったとする総理の認識は、たちまち姿を消しておるのであります。依然として、日米安保体制のワクの中で、核軍縮への努力、経済援助の強化、アジア及び太平洋諸国による平和のための国際会議の可能性の検討など、旧態依然とした自民党外交のもとの姿に返っておるのであります。そこには、総理みずからが言う国際的な転換期に臨んでの時代の動きに対応しようとする変革期の外交姿勢は、片りんだに見出すことができないのであります。
 すでに、国民は、長きにわたるベトナム戦争の進展に伴い、安保条約そのものが、日本の平和と安全を守る条約ではなくて、アメリカを中心とした戦争と侵略のための軍事同盟であることを数々の事実をもって教えられてきたのであります。特に、最近の相模原におけるベトナム向け戦車輸送への協力、そのための国内法令の改悪の強行、岩国からの米軍機出動への援助、沖縄基地へのB52の飛来をはじめとする数々の軍事行動は、この条約が、実は、アメリカの力の政策のアジアにおける道具であり、冷戦構造の骨組みの一つであったことを国民は目の前ではっきりとわからせられたのであります。
 しかも、この戦争の終結は、ドルショック以来の緊張緩和の方向に急転した国際情勢の動きの中で初めて生まれているのであります。特に、中国の国連への登場、中国包囲政策に破れたニクソンの訪中、平和共存のための訪ソ、南北朝鮮の自主的な平和的な統一への歩み、そしてまた日中国交回復など、アメリカの力の政策の後退と冷戦外交の破綻を物語る一連のできごとの一つとして生まれたのでありまして、このこと自体、安保条約の土台がすでにくずれつつあることを端的に物語っておると思うのであります。
 今日、日本を取り巻く世界の情勢は、ヨーロッパにおきましても、東南アジアにおきましても、太平洋諸国におきましても、あるいは足もとの朝鮮半島におきましても、緊張緩和の傾向は引き続き進んでおりますが、ベトナム戦争の終結はこの方向に拍車をかけておるのであります。
 力の政策と冷戦思想という土台がすでにくずれつつある安保条約は再検討すべき時期にきておると思いますし、アメリカ一辺倒の日本外交を世界の動きに対応して大きく転換すべき絶好の機会であると思うのでありますが、田中総理のこの問題についての率直な見解を承りたいと思います。
 もちろん、アジアにおける責任の分担を日本に押しつけることによりまして力の後退をカバーしようとしておるアメリカのことでありますから、私が申しましたような方向での安保条約の再検討には難色を示すことは明らかであります。しかし、ニクソン大統領自身が、すでに去る二十日の就任演説におきまして、米国が他国の紛争を自分の紛争としたり、他国の将来をみずからの責任問題としたり、他国にどうしろと教えたりする時代はすでに過ぎたのであると述べているのであります。米軍のアジアにおける存在がこの地域の安定にとって大きなささえであると積極的に自負しておりました一九六九年の共同声明の当時に比べて、アメリカ自身の方向もまた大きく変わりつつあるのであります。アメリカの軍事力による抑止理論が成り立たぬ日の到来したことは、ベトナム戦争の終結が米軍の全面撤退による和平であるというこの事実をもって雄弁に実証されているのではないかと思うのであります。
 しかも、このことにまして一そう大事なことは、緊張緩和の国際情勢の中での日本が持っておる主体的な条件であります。いまわが国は、敗戦以来の懸案でありましたアジアの平和に欠くことのできない日中国交回復を実現したのであります。日ソの平和条約交渉も進められようとしておるのであります。その上、国際政治におきましても、政治力の基礎は経済力にあるといわれておりますが、いま日本は東南アジア諸国への経済援助にたえ得るだけの経済的な実力を持つに至っておるのであります、いまこそ、力の政策を維持することが緊張緩和を促進することになるというアメリカの冷戦体制を脱却し、ベトナム戦争終結後のアジアにおける新しい平和と安定をつくり上げるためのその先達の役割りを果たすことのできる条件は、日本自身の中に十分整っているのであります。
 ただ問題は、時代の流れに逆行する安保体制を日本が自主的に脱却できるかどうかということにかかっております。かつて、無謀な戦争によって三百万人のとうとい犠牲を払い、敗戦の体験の中から国際紛争解決の手段としての武力の行使を放棄したわが国は、いまこそこの平和憲法の原点に返り、自主・中立の道を確立するととも、日中共同声明においてアジアに覇権を求めずと約束した平和五原則の確認の上に立って、力の外交ではなく、平和共存外交の道を勇敢に切り開くべき時期であると思うのであります。田中総理は、この歴史的なアジア情勢の転換期にあたり、わが国のこれまでの外交姿勢を反省するとともに、時代とともに進む日本の将来への進路を冷厳に洞察すべきであると思うのであります。
 わが日本社会党は、安保条約の廃棄を主張しておりますが、少なくとも田中総理は安保条約を再検討し、平和憲法と平和五原則の精神に沿った新しい日本外交の道を切り開く決意を持たれるべきであると思うのでありますが、総理の率直な御意見をお伺いしたいと思います。
 ベトナム戦争の終結にあたって、政府は、何よりも先に、この戦争が持つ歴史的な意義を深く掘り下げるとともに、日本のいままでとってきた行動について反省すべき点があれば、率直に表明すべきであります。ところが、施政方針の中では、総理も大平外務大臣も形式的な意義づけだけで済ませて、特に反省すべき点については一言半句も述べられていないのであります。
 昨年、日中国交回復実現の際には、田中総理は、過去の戦争で中国国民に対し重大な損害を与えたことを深く反省するとの態度を表明したのでありますが、ベトナム戦争については全く逆であります。
 安保条約をアメリカの意のままに拡大解釈し、国内法を一方的に改悪してまで侵略戦争に協力をし、ベトナム向け戦車輸送を強行したり、岩国からの出撃機に協力するなど、ベトナム人民の大量殺戮に事実上手をかしたのは田中政府であります。さらに、アメリカの北爆再開にあたっては、ナチの残虐に比べたスウェーデン首相をはじめ各国の非難の中で、田中内閣はこれを支持したのであります。ハノイにある北ベトナム最大の病院であるバクマイ病院が爆破されたときも、世界の各国はきびしく非難し、フランスもデンマークもスウェーデンも直ちに病院救済のための政府援助を送ることをきめたのでありますが、ひとりわが国だけは、北爆に反対しないばかりでなく、逆に協力の姿勢を示したのであります。
 ベトナム戦争に手をかした道義的な責任を痛感し、深い反省を率直にすべきであると感ずるのでありますが、田中総理の誠意ある答弁をお聞きしたいと思います。
 同時に、こうした反省の上に立って、ベトナム人民が受けたはかり知れない被害に対し、戦後復興への協力を惜しんではならないと思うのであります。
 日本政府は、これまでの南ベトナムに片寄った一方的な政治経済援助を改め、経済協力の原則を根本的に立て直して、和平協定とベトナム人民の平和・自主・自立の経済発展計画を尊重した経済技術の協力を進んで実行すべきときであると思うのであります。また、日本政府がベトナム民主共和国に対しいままでとってまいりました敵視と差別の政策をやめて、ベトナム民主共和国と平和五原則に基づく国交関係を樹立すべきときであると思うのでありますが、大平外務大臣の御意見を伺いたいと思うのであります。
 次に、ベトナム以後のアジアにおける新しい平和と安定をつくり上げるための努力についてお伺いをしたいと思います。
 力の政策がアジア・太平洋諸国にどう受けとられているかは、いまさら言うまでもないところであります。ベトナムを含む東南アジア諸国が、日本からの経済援助と協力態勢を期待しながらも、軍事的には四次防による軍事力の強化、国際関係においては日中国交回復による大国政治への疑惑、そして経済的には巨大な資本の進出という三面からわが国に対する警戒を強めておりますことは周知の事実でありまして、田中内閣の閣僚の中にもこの動きを真剣に心配されておる方があると聞いておるのであります。したがって、アジアに新しい平和と安定を築くためには、安保体制を脱皮した日本が、アジア・太平洋地域の非同盟・中立化を促進することが第一であります。
 まず、日中友好を一そう深めるとともに、中国との平和友好条約を結ぶことであり、日ソ間でも平和条約を一日も早く締結することであります。さらにまた、朝鮮民主主義人民共和国との友好関係を進めて、すみやかに国交を樹立することが必要であると思います。そして、中国、ソ連、朝鮮との間に相互不可侵条約を結び、さらに日・米・ソ・中・朝を含むアジア諸国と、アジアの平和保障体制を確立するために、日本は積極的な役割りを果たすべきであると思うのでありますが、大平外務大臣の見解を承りたいと思います。
 次に、防衛問題であります。
 今度の施政方針でまことにふしぎなことは、四次防問題については一音半句も触れていないということであります。必要最小限の自衛力を持つことは独立国としての平和と安全を確保するための義務であり責任でもあると、一般的な短い文句が申しわけ的に羅列されておるのでありますが、四次防問題そのものについては施政方針のどこにもなく、全く無視されておるのであります。一体、四次防は、今度の国会ではそれほど軽い問題でしょうか。四十七年度の通常国会劈頭から先取り問題をめぐって紛糾し、昨年一年間、国会ごとにもめ抜いてきたというこの事実は、この問題が平和な福祉国家を目ざすわが国にとりましては七〇年代の政治の動向に決定的な影響のある重大な問題であることを示していると思うのであります。しかも、今日、国民の間には再検討を要求する声が非常に強くなっておりますし、特に昨年末の総選挙以来、四次防を中止せよとの声は国民の世論とさえなりつつあるのであります。にもかかわらず、あえて施政方針から無視された真意はどこにあるのか。田中内閣が持つ軍事優先の姿勢と、問答無用と押しつけてくる専断的な性格が、端的に暴露されているとしか思えないのであります。田中総理は、まずこの点を明らかにしていただきたいと思います。
 国民は、四次防については、苦い経験を持っておるのであります。田中総理が北京から帰るやいなや、あっという間に四次防の正式決定を強行したことであります。国民は、今日なお、流れを変えると公約したはずの田中内閣に、やみ討ちを食ったような不信感を抱き続けていることは事実であります。いま、日中国交回復に次いで、ベトナム和平停戦と、日本を取り巻く国際情勢は、特にアジアにおいては緊張緩和の進展は目をみはらせるものがあるのであります。田中総理も言われますように、話し合いで済ませる時代に移りつつあるというのに、これ以上けんか道具をふやす必要がどこにあるかというきわめて常識的な疑問は、今日、一億国民のほとんどが共通して抱いておるところであります。その上、今度の予算案に盛られました防衛費は、四次防分も含めて一兆円に近くふくれ上がっておるのであります。
 政府は、国民総生産比わずか〇・八五%であって、前年度の比よりも低く、諸外国に比べても決して過大ではないと主張されておりますが、この十年間のふくれ上がりは、一々数字をあげるまでもなく、世界で群を抜いているほど膨張しているのでありまして、さらに、今度の予算案に盛られております内容も、陸・海・空にわたって新装備の質的な強化と人員の増加という、およそ緊張緩和の情勢に逆行した内容ばかりであります。三次防まででさえ世界十二番目の軍事力といわれる日本が、アジアに平和の春が訪れつつあるいま、八位にのし上がる必要がどこにありますか。国民の常識的な疑問の前に、総理は何と説明されますか。
 きのうの衆議院本会議でのわが党の石橋書記長の質問に対して、総理は、昨年十月国会での成田委員長への答弁と同じく、憲法が許す範囲の最小限度の自衛力であると、判を押したように同じ文句を述べているのでありますが、この問題に対する条件は総選挙のあとと前とでは国内的にも国際的にも大きく変わっていることを総理は故意に無視されていると思うのであります。
 国際的には、アジアにおける緊張緩和は、アメリカの北爆が強行されていた総選挙以前とは、今日、比較にならないほど進展していることは言うまでもございませんが、国内的にも、国民の多数の意思は、四次防を中止せよと明確に示されているのであります。総選挙の結果は、野党四党の得票率合計は四七・八三%であり、自民党の得票率四六・八六%を上回っていることは、これは否定できない事実であります。野党四党の間に政策の違いがあることは当然でありますが、少なくとも、四次防を中止せよとの一点だけは、四党の主張は全く共通して一つであります。つまり、四次防を中止せよとの国民の意思が自民党を支持している意思よりも上回っているという事実であります。
 総理、あなたは、佐藤内閣の閣僚時代に、国民の声なき声を聞いて誤りなきを期するのが政治の道であるとお答えをされたことを覚えておると思うのでありますが、今度の四次防を中止せよという国民の声は、声なき声どころか、国民の権利としての投票によって明示された声であります。なぜ耳を傾けることができないのか、率直にお答えをいただきたいと思います。また、四次防を中止できぬ理由として、他国の脅威が加わっているというならその事実を、脅威がなければないでそのことを明らかにし、それにもかかわらず軍事力の増強をしなければならない理由を端的に示していただきたいと思うのであります。
 第二は、内政問題についてであります。
 すべての国民が、いま、最も大きな不安を感じ、その対策を渇望しているのは、言うまでもなく物価問題であります。経済企画庁の計算によりますと、一組の夫婦が平均寿命まで生きると仮定し、定年から死ぬまでの生活費総額は、インフレを計算に入れますと、一億八千四百二十九万円かかるというのであります。今日、定年までに一億八千万円の金を貯金できるサラリーマンが、一体、何人いるでしょうか。インフレの脅威は、いまや、人生の終着駅まで人間を追い詰めているのが事実であります。
 昭和四十六年現在で、国民の銀行定期預金は三十五兆円、郵便貯金の定期預金は七兆六千万円、各種年金積み立て金が八兆円ありますが、これらの零細な預貯金は、インフレによって確実に実質価値が落ち続けているのであります。反対に、法人の長期借り入れ金は四十二兆円に及んでおりますが、この借り入れ金で土地や設備に投資した大会社、大法人は、インフレによる資産の値上がりと借り入れ金の負担の軽減で二重にもうかる仕組みになっているのであります。これがインフレの実態であります。
 ところが、十四兆二千八百億円に及ぶ今度の予算案を見てみますと、田中内閣は、インフレを抑制するどころか、意識的にインフレ政策をとっているとしか思えない数々の事実があるのであります。
 景気回復が確実になりましてから、伸び率で戦後最高といわれる大型予算を組んだこと自体が問題でありますが、その上、二兆三千億円にのぼる公債を発行しておるのであります。いやでもインフレにならざるを得ません。わけて見のがすことのできないのは、国鉄運賃の値上げ、健康保険料の引き上げをはじめ、諸物価の上昇へ直接連鎖反応を引き起こすところの公共料金の値上げを強行しようとしていることであります。これと並行して、歳出面では、高速道路や新幹線など、産業優先の公共事業費を大幅にふやして、鉄鋼、セメントなど卸売り物価をつり上げ、地価の高騰を促進さしているのであります。どこを見てもインフレ促進の姿勢であると言わざるを得ないのであります。
 特に指摘しなければならないことは、政府の四十八年度経済見通しでは、物価の上昇を五・五%として、預金利子の五・二五%よりも高く見積もっていることであります。物価の値上がり幅が初めから預金利子より高くなっていることは、いままでの経済見通しではかってなかったことでありまして、このこと自体、政府みずからがインフレ強化を認めておる証拠ではないかと思うのであります。いずれにしても、五・五%の上昇でおさまるはずはないというのが、今日、一般の見方でありますが、田中総理は、四十八年度予算でインフレにはならないと強弁されております。卸売り物価が年間八・五%も上昇していますから、そのはね返りは半年から一年後には消費者物価に当然あらわれてきますし、地価が半年で八%、六大都市では一〇%も値上がりをしておりますときに、インフレは来ないなどと何を根拠にして言われるのでありますか、私はその根拠の点を明らかにしていただきたいと思います。消費者物価を五・五%以内に押える自信があってそう言われておるのか。もしそうなら、押えられなかったときにはどんな政治責任をとるというのか、この点もあわせてはっきりしていただきたいと思います。(拍手)
 次に、総理が当面最大の政治問題と言われました地価対策についてお尋ねをしたいと思います。
 最近の土地ブームと地価の値上がりは、ほかならぬ田中総理の「日本列島改造論」を契機に一そう誘発されたことは、世間周知の事実であります。その総理が、いま、地価対策をどろなわ式にまとめようとしておりますが、すでに手おくれの感が強いのであります。建設省の推定では、四十八年度の道路整備事業費二兆円のうち、実に四分の一の五千億円は用地費だけにかかるといわれておりますが、こうした傾向は、公共事業の問題あるいは公共施設の問題には普遍的にあらわれてくる問題でありまして、必ずこれから後の国家財政、地方財政の上に決定的な問題となる問題であります。いずれにしても、土地の値上がりは、田中内閣みずからの首を絞めるところまで突き進んでおるのであります。
 政府の土地新税の実施時期は昭和四十九年度からであり、列島改造に基づく開発事業は四十八年度からというのでありますから、土地新税の発足までには地価は十二分に上昇してしまうことは明らかであります。政府は、特定地域を指定して、このような投機的な売買を防止し、開発規制を行なうと言っておりますが、その特定地域とは、列島改造の開発予定地域であり、産業開発地域でありますことは当然であります。したがって、大企業の進出のための土地の確保には大きな役割りを果たすことができますが、国民がいま求めておる宅地の地価の抑制については、特定地域に住まう人々を除いては、ほとんど役に立たないのが現実であります。
 地価を抑制する方策の一つは、大法人が投機を目当てに買い占めた土地を吐き出させることにあると思うのであります。建設省の調査では、大法人七百社が所有する土地の面積は、全国土の約一%、三十三万ヘクタールに及んでおるといわれております。その多くは、値上がり待ちの未利用地であるといわれておるのであります。したがって、この未利用地に対して高率の未利用地税を課税することであります。ところが、政府は、税制調査会試案の中にあった未利用地税を採用せず、きわめて税率の低い保有税にすりかえようとしておるのであります。技術的困難は理由にはならないのであります。土地問題を解決するための最も大事な急所を田中内閣はわざと避けて通っておるのでありまして、「決断と実行」のキャッチフレーズが泣こうというものであると私は考えます。なぜ高率の未利用地税を法人所有地に課することができないのか、総理大臣の明確な御答弁をいただきたいと思います。
 次に、社会保障の問題について一言したいのでありますが、時間がございませんので省略をいたします。
 最後に、私は、昨年末の総選挙で示されました国民の意思を総理はどう把握し、今後の政治の上にどう扱っていこうとされておるか、田中総理の政治的姿勢についてお伺いをしたいと思います。
 この選挙は、七〇年代としては最初の総選挙でありまして、七〇年代の日本の政治の動向をきめる歴史的な意義を持った選挙でありました。しかも、物価、公害、土地、住宅や四次防、基地問題など、課題は山積していたのであります。国民は、政治の流れを変えない限り、これらの問題を解決することはできないし、また、おのおのの生活と権利を守り抜くこともできないことをはっきりと自覚していたのであります。このことは、前回を上回る投票率が端的にこれを示していると思うのであります。そして、歴代の自民党の政府が続けてきた大企業中心、軍事優先の政治は批判され、国民生活の福祉を優先した政治が強く強く望まれたことは、皆さまも御存じのとおりであります。この情勢に、田中総理と自民党の諸君は、政治の流れを変えると国民に呼びかけ出したのであります。生産第一主義であったいままでの自民党のあり方を、福祉中心に変えるというのであります。これは、総理の言うことであり、自民党さんの主張でありますから、私はこれ以上立ち入りません。ただ、今日、この公約の行くえは一体どうなっているかということであります。
 私は、いままで、田中内閣の内政、外交にわたって諸般の質問をしてまいりましたが、十四兆二千八百億円に及ぶ予算案の内容をはじめ、田中施政のあとは、相変わらずの大企業中心、軍事強化でありまして、福祉問題は言いわけ的に盛り込まれているにすぎないことを明らかにしたのであります。物価は押えず、円対策のための調整インフレへ走り、土地問題は大企業にもうけさしたまま対策の急所をよけて通り、年金や福祉は低福祉高負担の政策を相変わらずまかり通しているのであります。せめて四次防ぐらいは中止をして福祉予算にこれを回すならば、それなりに流れを変えたと言うことができるでしょうが、国民の世論の反対を押し切ってもあくまで強行しようとしておるのであります。
 一時、あれほど大騒ぎをしました日本列島改造の具体化にしても、今度の予算に各項目別に並べられておるところを調べればはっきりしますが、社会開発の一つの面であります産業基盤の開発に集中して、もう一つの面であります国民福祉のための生活基盤の開発は、断片的にその場その場の対策しか打ち出されていないのでありまして、池田内閣以来の大企業中心、産業優先の自民党の開発政策の流れは、今日少しも変わっていないのであります。一体、どこに田中内閣は政治の流れを変えたと言えるでしょう。あなたの公約は一体どこへ行ったんでしょうか。どうか、田中総理、明らかにさがし出していただきたいと思うのであります。(拍手)
 総理は、施政方針の中で、今度の総選挙では国民の不満と要求を痛いほど知らされた、と述べておりますが、総選挙の結果を正しく受けとめることも大事であると思うのであります。今度の総選挙の結果は、言うまでもなく、議席数では自民党が勝ちました。しかし、投票率では、先ほども述べましたように、野党四党の合計が四七・八三%となって、自民党の得票率四六・八六%を上回っているのであります。野党各党の政策には問題ごとに異なる場合と一致する場合があることは当然でありますが、今回の場合におきましては、少なくとも、四次防を中止するということをはじめ、年金を引き上げて財政方式を賦課方式に改めること、大幅な所得税減税を実施すること、公共料金の値上げをストップすること、こうした点では、野党四党の政策は寸分違わぬほどに共通していたのであります。これらの政策は国民の意思としては多数によって支持されておることを今度の投票の結果は表明をしておるのであります。確かに、自民党の獲得した議席は、この得票率を正しく反映はしていませんが、いずれにしても多数を占めておることは事実であります。したがって、多数決による力の政治で強行することもできるわけであります。しかし、私は、投票という権利の行使で国民の多数が求めている事実については、議席の多少にかかわらず、国民の声を謙虚に聞く場合もあってよいのではないかと思うのでありますが、総理の政治姿勢をこの点について国民の前に明らかにしていただきたいと思います。こうしたことこそ、議会政治に対する国民の信頼を得る最も早い、最も確実な道ではないかと考えるからであります。
 最後に、私は、総理に、正しく国会を運営するためにも、選挙区の定数是正をやること、さらには、多年の懸案である政治資金規正法をあなたの決断によって実行させ、まず選挙害を清掃することによって日本の政治を明るく清いものにしていただきたいと思いますが、あなたは、選挙法の改正と政治資金規正法の改正を断行するだけの気持ちと度胸があるかどうか、この点をお伺いして、私の代表問質を終えたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(田中角榮君) まず第一に、ベトナム和平到来と安保条約等の問題についてお答えをいたしたいと存じます。
 ベトナム和平は心から希望したことでございまして、歓迎をいたしております。和平によりアジアにおきましても緊張緩和の傾向が出てまいりましたが、今後、かかる傾向を一そう促進するためには、緊張の緩和をもたらした国際政治の基本的ワク組みの中で着実な努力が続けられなければならないと思うわけでございます。
 日米安保体制は、まさに、このような意味でアジアにおける基本的ワク組みの重要な柱であり、この柱が動揺することは、アジアにおける安定に寄与するゆえんのものではないと信じておるのでございます。安全保障条約があるから日本が緊張し戦争に巻き込まれるというような議論が長いこと行なわれてまいったわけでございますが、日本が過去に平和に暮らすことができ、しかも、この平和を確保できたことは、現実的に安保条約が存在をしておったからだと、こういう考え方をとっておるのでございます。その意味で、国民の負担を最小限度に押えながら独立と自由を確保してまいる日本としては、自衛力の補完的な任務を持つ安保条約は維持していかなければならないと、こういう考えでございます。(拍手)
 また、日米安保条約と日中共同声明等の問題に対しての御質問でございますし、また安保条約が侵略的なもののようなお考えでございますが、日米安全保障条約は、わが国の自由と独立を守るために必要なものでございまして、侵略的なものでは全くない、こう考えております。また、アジアに覇権を求めるためでもないことは御承知のとおりでございます。
 わが国存立の道は平和の探求に尽きるのでございます。ベトナム和平後の民生の安定、経済復興に対しましては、わが国も進んで協力をしてまいるつもりでございます。
 安保条約に対しては、これは人の国のことではなく、お互いの生命、財産を守り、独立と自由を確保するということでございますから、私は真剣に議論をしていただくことはけっこうだと思いますし、国民の理解を得なければならない問題であり、政府もこれを得るために最善の努力をしなければならぬと思うのであります。
 ベトナム和平というものは一応の道は開かれましたが、結実するにはたいへんであろうということはすべてが認めておるのであります。これを結実させるために長い長い努力をたゆみなく続けなければならないと、こう言っておる現状に徴しても、日本が現時点においてベトナム戦争が終わったから、日中の国交が回復したから安保条約も要らぬのだ、四次防も要らぬのだということは、政府はとらないのでございます。(拍手)
 それから四次防を中止せよという問題でございますが、わが国の防衛力は、いま申し上げましたように、日米安全保障体利の維持を前提としてつくっておるのでございます。自衛のため必要最小限のものである。自衛のため最小限のものであるためには、補完的な任務を持つ日米安全保障条約というものを前提にしておる。これがもしなかりせばと考えれば、いまよりも防衛力が大きくなるであろうということは、これはだれが見てもそう考えざるを得ないのでございます。(拍手)
 それから攻撃的なものでなく海外派兵等も全くありませんので、日本の自衛力が攻撃的なものだと考えるのは間違いでございます。また、四次防がアジア諸国に脅威を与えておるかどうか。これはもう全く与えておらないということでございます。また、四次防を含めた防衛予算が過大であるということで、四次防の中止を求められたのでございますが、これは世界にはたくさんの国がございますが、この国の中で、私はいろいろ調べましたところ、歳出に占める国防費というものの最大のものは四〇%をこしております。また大国は三〇%をこしておるのであります。日本よりも小さい国は、中立国であっても、求めがたいのでございます。いかに自由と独立を守るためにその国やその民族が努力をしておるかということは、この数字を見ても明らかなとおりでございます。わが国におきましては、もちろん憲法の制約もございますから当然のことでございますが、国防費の歳出に占める比率は、四十六年に七・一%、四十七年度には六・九%、四十八年には六・五五%と、逐年その比率を下げておる事実も御理解を賜わりたいのでございます。(拍手)
 インフレ防止が必要であるということは、もう申すまでもないことでございます。しかし、先進工業国はインフレに悩みつつございます。それは、コスト圧力を生産性の向上で吸収できないという面があるわけでございます。日本は、幸い、生産性を上回ると言われたようなときもございますが、年々給与も上がっておりますけれども、合理化によって、コンベア化、機械化、オートメーション化というような問題により、また、量的拡大によって、これらのコスト圧力を吸収してまいったわけでございますが、しかし、めんどうな事態も到来しつつあると思います。しかし、私は、先進工業国のようにインフレを招かないようにほんとうにことしは最善の努力をしなければならない、こう考えておるわけでございます。
 しかし、一面におきましては、施政演説で述べましたとおり、国際収支を安定させなければならないという大きな問題もございます。輸出を押え輸入を拡大するということは、すなわち、内需の拡大によって輸出を内需に振り向ける以外にはないわけであります。生産量をうんと下げれば、給与の引き上げにも、また国民生活にも響くことになりますから、輸出圧力を内需に振り向けるようにするためには、どうしても内需の振興をはからなければなりません。しかも、輸入が拡大されるには、内需が拡大されなければ輸入は拡大しないわけであります。
 そういう意味からいうと、国際収支問題の解決と物価抑制の問題は、相反する問題のようでございますけれども、しかし、当面する重要な問題としてこれが抑制に最大の努力を傾けなければならないと思います。
 特に、もう一つございますのは、ことしを社会保障の年としたいということでございまして、四十八年度予算の中心的課題として社会保障の拡大を取り上げたわけでございます。そうすれば、すなわち、内需の拡大ということには通ずるわけでございまして、国際収支対策にはなりますけれども、物価抑制という問題から考えると、相反する問題となるわけでございます。
 そこで、三つの相反する問題を解決しなければならないので、ことしの政治課題はたいへん困難な問題に当面しておるといわれておるわけでございますが、しかし、インフレ抑制、国際収支の合理化、そして社会保障の拡充の三つの問題は、いかに相反しておるとしても、日本人がいまよりもよりよい日本をつくるためにはどうしても避けて通ることのできない現実でございますので、具体的施策をあげて対処してまいりたいと考えます。
 インフレの防止問題の根本は、財政金融政策が一体になって行なわれなければなりません。しかも、余剰資金が土地や株式に対し投資をせられておるという事実にもかんがみまして、金融の面においては強い調整政策を行なっておるわけでございます。
 公共料金については、極力抑制してまいりますが、人件費等のコスト上昇の要因もあり、公共料金だけを特に長期に固定化することは困難な状況もございます。国鉄等、公共性の高いものにつきましては、大幅な財政援助を行ない、負担増を極力押えてまいるつもりでございますが、最小の負担は利用者にお願いせざるを得ないことを御理解賜わりたいと存じます。
 また、地価対策に対しての御発言がございましたが、地価対策に対しては、いまも申し上げましたとおり、余剰資金が土地等に投資をせられておるために地価が上昇しておることもまた事実でございますので、税制及び新しい法制を整備することによって地価対策の万全を期してまいりたいと、こう考えております。
 また、地価対策の中におきまして、未利用地の問題に対して高率課税をするようにという御提案がございましたが、この未利用地という観念そのものの定義が非常にむずかしいわけであります。現行法制というものは、この未利用地税というようなものと逆な法制になっておるのでございます。御承知のとおり、都市計画法を見てもおわかりになるとおり、空地をよけいとることを前提といたしておるわけでございまして、緑地や空地というものを確保するために住宅地域の中における建物の建蔽率を定めておるような状態でございまして、未利用地の定義ということが非常にむずかしいということと、個々の土地について未利用地であるかどうかの具体的判定が困難であるという問題で、未利用地に対する税制問題等は解決をしなかったわけでございます。しかし、地方公共団体を中心にした土地の供給、また農地のレンタル制度を活用するために農協等の利用、農協法の改正、また特定地域を指定をしてその特定地域内の土地の流動や開発を押えるというようなことをあわせて行なわないと、税制だけで地価問題が解決できないことは、御承知のとおりでございます。政府は、その意味において、新しい制度と税制とをあわせて土地問題に効果をあげてまいりたいということでございます。
 また、いまの御質問で、宅地に対してはどうかということでございますが、宅地に対しては農地のレンタル制度その他を活用いたすということを申し上げましたが、宅地に対してはこの税を除外をするということにいたしておるのでありますから、税を設けることによって宅地の供給が阻害をされるということはないわけでございます。皆さんが御発言になっておられる中で、いまの税では低過ぎるからもっと上げなさい、こういう御議論がございます。いまの税でも、いまの税に二〇%、三〇%を加算をするというようなものでも、一面においては地価を押し上げるんじゃないかと言われながら、逆にもっと取りなさいということでございまして、おのずから調和の点を見出さなければならぬことは現実的には当然でございます。
 それから総選挙を通じての政治に対する基本的な考え方、国民の声を謙虚に聞く誠意があるかという御質問でございますが、施政方針演説でも述べましたように、私は、さきの総選挙を通じて、国民の政治に対する期待や不満を痛いほどに感じておるのでございます。内に外に変革期の課題は山積しております。私は、国民の声にすなおに耳を傾け、衆知を結集して、新しい時代の課題に挑戦し、決断し、実行してまいらなければならないという基本的な姿勢をとってまいります。
 なお、経済運営に対しましては、御指摘にもございましたように、生産第一主義から生活優先へと切りかえてまいらなければなりません。また、輸出第一主義から内需へと転換をせざるを得ないのでございます。大企業や軍事優先ではありません。今年度の予算が社会福祉を重点としておることをもってしても御了承賜われると思うのでございます。特に、鉄道や道路の拡充は産業振興のためだという御判断でございますが、鉄道や道路は国民の生活向上と安定のためには不可欠なものである、また、鉄道や道路という輸送力の増強は物価問題の中の大きな柱であるということをひとつ御理解を賜わりたい、こう思うのでございます。
 また、経済の基本的運営の長期的見通しにつきましては、近く長期経済計画でお示しをしたいと思います。長期経済計画の中には、これから五年、六年間にわたる将来の展望に立った社会保障の位置づけを行ないたいと考えておるのでございます。
 最後に、選挙区別定数等の問題について申し上げますが、選挙区別定数をどう改めるかということは、両院議員の総定数、選挙区制、選挙制度をどうするかという問題と切り離して結論を出すべきものではなく、選挙制度全体の根本的改善の一環として検討すべき性格の問題と考えておるのでございます。政府としては、このような考え方をもとにして、世論の動向、各政党の御意見等を十分聞きながら慎重に検討してまいりたいと思うのでございます。
 この選挙区制に対しては、自由民主党においては、小選挙区制を採用すべしという議論がございます。政党活動を中心として運動が行なわれ、政治活動が行なわれる限り、小選挙区でなければならないという議論があるのでございますし、かつてこの案を提案したこともございます。しかし、それらの多数の与党の意見を押えて、いま申し上げた御答弁のようなことをしておりますのは、皆さんの御意見、国民の衆知を集めなければ、この問題は民主政治、議会制民主政治そのものの根幹に触れる問題でありますので申し上げておるのでございますから、御理解のほどをお願いいたします。自民党が小選挙区制でも出してゴリ押しをするというなら、おしかりを受けてもいいのでございますが、皆さんの御意見を集めようという考えでございますので、どうぞひとつ共同の責任で御勉強いただきたいと思います。
 また、政治資金規正法改正の問題につきましては、政党政治の消長、わが国の議会制民主主義の根本と将来にかかわる重大な問題であります。幾たびか改正法案が国会に提案されましたが、廃案になった経緯があることは御承知のとおりでございます。今後は、政党本位の金のかからない選挙制度の実現への動向も踏まえつつ、さらに、政党法のあり方なども含めて、徹底した検討と議論を積み重ねてまいりたいと存じます。
 なお、落ちている問題がございましたら、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(大平正芳君) 私に二点御質問がございました。
 第一点は、インドシナ地域に対する経済援助の方針でございますが、これにつきましては、ただいま和平交渉が署名されて停戦が実現されつつある段階でございます。その次は政治的な収拾の段階に入るのでございましょうが、それと並行いたしましてまず考えられますのは、戦争犠牲者、罹災者等の緊急援助の問題でございます。これにつきましては、現地から御要望がございましたならば、私どもとして迅速にこれにこたえなければならないと存じまして、所要の予算措置をすでに講じてございます。
 その次の段階におきまして、戦闘行為が終わったあとの現地の経済をともかく維持すること、そしてさらに復興開発計画を編み出してまいることでございますが、こういったことは、私は、大がかりな国際協力のワク組みの中で考えられるべきことであろうと考えますが、日本といたしましても、これに対しまして、これに参画して応分の貢献をしなければならないと考えております。その際、私どもといたしましては、停戦協定がまじめに守られる限り、南北を問わず、ベトナム全域について考えてまいりたいと考えております。
 それから第二のアジアの平和、安全保障機構についての考えをただされたわけでございます。
 私どもといたしましても、アジアの安全保障をどのような仕組みで確立してまいるかは重大な関心でございますけれども、アジアの現状は、いま御案内のように、米・ソ・中等大国の利害が複雑に錯綜いたしております等、今日そういうことを考える基礎的な条件がまだ熟していない段階でございますので、この構想につきまして政府といたしまして具体的にこう考えておると申し上げるような段階でないことは、御了解をいただきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣増原恵吉君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(増原恵吉君) 防衛問題に関しまするただいまの御質問につきましては、内閣総理大臣から各項目にわたり詳細に御答弁がございましたので、私のほうで特に蛇足を加える必要がないように考えます。
 総理大臣の申されましたように、四次防を中止するという考え方は持っておりません。これはあくまでも憲法に基づく防衛的な自衛力の整備をしていこうということでございまして、諸種の有効な条件のもとに無制限に大きくなるようなものではなく、四次防としての論議をさきの臨時国会においても相当御論議を願っておるということであるのでございます。したがいまして、安保条約を日本の将来の平和確保のアジアにおける安定のワク組みの重要な柱として持つことを総理はただいま御答弁になりました。そうしたものを背景としての四次防であり、日本の防衛力であるわけでございまして、御質問にありましたように他国に脅威を与えるというふうなものでないことを御理解願いたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(愛知揆一君) 総理の答弁を多少補足してお答え申し上げたいと思います。
 第一が、予算とインフレの関係の御質問でございますが、国民総生産が百兆をこすような非常な大きな成長でございますから、それとの関連において、内需を中心に、また福祉国家建設という国民的な輿望にこたえたいということから申しまして、国民総生産に対する一三%の一般会計の規模というものは妥当なものであると存じます。と申しますのは、四十七年度で申しましても、補正後と比べますと、やはり国民総生産に対する比率は一二・九%でございまして、ほとんどその間には相違はございません。特に、財貨サービス購入の伸びは、今回の予算の見込みは一六・六%のようでございますから、やはりGNPの成長率の見込みとこれまたほぼ同様でございます。
 次に、公債でございますけれども、これは国際的な黒字が累積しております関係で国内に資金が過剰でございます。この資金を活用し、これを吸収して適正な公債を発行することによって、いわゆる公私両部門への資源の配分ができるわけでございます。私どもとしては、生活環境の整備などを重点に福祉国家建設の方向へこの資金を配分するということは、国民的な輿望にこたえるゆえんでもありますし、またインフレを基本的に防止するということにも通ずるものである、かように考えるわけでございます。しかも、なおかつ、公債の発行の限度は十分考えまして、一般会計に対する寄与率は一六・四%であります。これも前年度の補正を込めました公債の依存度は一九%でございますから、公債の発行の規模としてもきわめて適度であろうかと、かように考える次第でございます。
 もう一つ、税の問題についても御質疑がございましたが、御案内のように、平年度で申しますれば、所得税等で四千三百五十億、また住民税等を入れますと千六百九十億で、合計すれば六千四十億というような減税の幅になりまするし、また、法人税についても御意見がございましたけれども、法人税については、単に税率の問題だけではございませんで、課税所得を拡大するということが当面必要なことでございます。したがって、産業関連とか輸出関連とかいうような特例措置を廃止いたしますから、その方面の負担増が相当法人においては多くなります。また、固定資産税が御承知のように調整されますから、これらの点で法人に対しましても相当の重課になるということは、御案内のとおりでございます。
 土地と株の問題につきましては、私どもも重大な関心と強力な対策が必要と考えますので、税制についてはただいま総理からお答えのあったとおりでございますが、ただ、一点だけ、土地の未利用税というものは、税調におきましても非常に熱心に検討されたわけでございまして、ただいま総理からお答えをいたしましたようなことで、これは、やはり、税率はともかくとして、一般の土地全体にかけたほうがよろしいというのが税制調査会の結論と申しますか、大多数の御意見、これに従いまして、地方税として土地の保有税を創設することにいたしました経過がございます。
 それから土地と株価につきましては、金融上も、御案内のように、準備率の引き上げ等から始まりまして、次々と措置を打っておりますが、実は、本日も新たに通達を出しまして、全金融機関の土地に関連するあらゆる貸し出しにつきましては、これを総貸し出しの増加率まで押える、これによって相当の効果を期待しておるような次第でございます。
 また、公共料金の問題でございますが、一点だけ念のため申し上げますが、たとえば国鉄の十年間の再建計画にいたしましても、五十七年度までに、一般会計では三兆六千億円、財投では九兆三千億円、これは単純に加算をして申し上ぐべき問題ではございませんが、かりにこれを算術的に加算いたしますれば、十三兆円にのぼる一般会計及び財投から援助をいたすわけでございますから、国鉄自体の合理化の努力を期待すると同時に、ある程度のところは利用者に御負担を願うというのは、国鉄の再建のために私はとるべき措置であると、かように考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(小坂善太郎君) 総理の御答弁に若干加えてお答えを申し上げますが、物価の特に消費者物価の問題でございますが、全般に騰勢――押し上げる要因といたしまして、まず景気の上向きの状況、それから昨年の秋ごろに見られました卸売り物価の高騰の影響、それから海外のインフレ傾向の影響、この三点が考えられるわけでございます。
 われわれ、何とかひとつ物価の騰勢を押えたいということでいろいろ考えておるわけでございますが、大蔵大臣からもお答えがありましたが、まず、最近の地価、株価の上昇を食いとめる問題でございまして、これには過剰流動性というものをどうして吸収していくかということで、先般、預金準備率の引き上げをやったり、あるいは輸出手形の割引の制限をしたり、あるいは、きょうはまた、土地に対する金融貸し出しの制限をやったりという措置をとっておるわけでございます。
 それから第二は、生活必需物資を中心といたしました輸入の自由化、あるいは関税の引き下げなど、輸入政策の積極的な活用でございますが、これには、先ほど申し上げた海外のインフレというものが若干このごろ影響を見てきておるわけでございます。
 それから第三点は、野菜の指定生産地制度の充実、肉などの生産団地の育成、あるいは卸売り市場の整備などによる生鮮食料品の安定的供給でございます。これにつきましては、幸いに天候等も影響いたしまして、四十七年の暦年の小売り物価は四・五%ということで予定どおりにまいりましたので、これを四十七年度として五・三%に押えたいと考えておるわけでございます。四十八年度を五・五%としたいということを申し上げているわけでございますが、過去の実績で見ますと、四十五年が七・三%上がっております。それから四十六年度が五・七%上がっておるわけでございますので、非常に努力をしなければならぬと思っております。
 それから第四点としまして、独占禁止法の厳正な運用による競争条件の整備、それから第五点としまして、公共料金をできるだけ抑制していこう、これについては、国鉄は、先ほど大蔵大臣からもお答えになったような理由でこれは本年ぜひお願いしたいと思っております。
 それから第六点として、経済状況を考慮して、必要のある場合には財政金融措置をいわゆるポリシーミックスというものをできるだけじょうずに運営いたしまして、総需要を適正的に押えてい費たい、こういうふうに考えておるわけでございます。極力努力したいと考えております。(拍手)
#12
○議長(河野謙三君) 占部秀男君。
   〔占部秀男君登壇、拍手〕
#13
○占部秀男君 私は総理に再質問をしたいと思います。
 それは、先ほど総理は、安保条約と日本の自衛力の問題に触れまして、安保条約があるから日本の自衛力はこの程度で済むのであって、もし安保条約がなかったら、自衛力はもっともっと大きくなっていたであろうと、かような答弁をされたのであります。これは衆議院における答弁が、憲法が示す最小限度の軍備の範囲をするために、安保条約でアメリカの抑止力をかりておる、したがって、それができるのだと答弁されたことと軌を一にしておると思うのであります。しかしながら、この答弁は非常に問題を含んだ答弁であります。なぜならば、われわれが自衛力をどの程度に置くかということは、アメリカとの安保条約があるかないかは問題ではなくて、日本の平和憲法の規定に従ってする問題であります。つまり、総理の言動をそのままふえんすれば、アメリカとの安保条約がなくなれば、日本の自衛力は無限に拡大していくということでありまして、そのこと自体は平和憲法の否定であります。少なくとも本末転倒であると私は思うのであります。あくまでも自衛力の大前提は平和憲法であって、平和憲法に規定された自衛力でなければならないと思います。この点について、社会党は社会党の立場はありますけれども、ともかく自衛力問題でありますから、政府側としてのいまの点について明確な御答弁をいただきたいと思うのであります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(田中角榮君) 自衛力がわが国の憲法で認められておることは御案内のとおりでございます。しかし、日本の保有する自衛力が自衛のためのみであり、最小限に限らるべきことは言うをまたないわけでございます。
 また、日本の自衛力そのものが憲法の許容する範囲内であり、しかも最小限のものであり、他国に脅威を与えたり攻撃的なものであってはならないことは、間々申し上げておるとおりでございます。
 四次防もこの憲法の許容する範囲内のものであり、しかも最小限に必要である防衛力の範囲内であると、こう考えておるのでございまして、防衛力がどこまでも拡大をされていいというのではありません。これは、現在日本が国の安全確保のためには最小限、憲法で許容する、しかも最小限の自衛力を持って、しかも日米安全保障条約は、日米安保条約はこれが補完的な意味を持って、合わせ日本の防衛が完璧になっておるということを申し上げたのでございまして、誤解があれば、その点はただいまの発言で御理解を賜わりたいと、こう思います。(拍手)
   〔発言する者多く議場騒然〕
#15
○議長(河野謙三君) 内閣総理大臣から答弁の補足があります。田中内閣総理大臣。
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(田中角榮君) ただいま申し上げましたことを補足してもう一ぺん再答弁をいたします。
 わが国の防衛につきましては、憲法の許容する自衛のため必要な最小限度内においてこれを整備してまいることは申すまでもありません。
 四次防も憲法に許されるところを厳に守ってまいりたいと考えます。安保条約の有無にかかわらず、わが国の防衛力は自衛のため必要最小限度にとどめるべきことは当然でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(河野謙三君) 米田正文君
   〔米田正文君登壇、拍手〕
#18
○米田正文君 私は、自由民主党を代表いたしまして、今回の政府の施政方針演説について、総理並びに各関係の大臣に対し若干の質疑を行ないたいと思います。
 第一質問は、田中総理の政治姿勢についてであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 昨年暮れの衆議院選挙は、田中内閣誕生後、初の総選挙として、その結果いかんは国民注視の的でありましたが、わが自由民主党は、改選前に比しましてやや減少を来たしたとはいえ、依然として国民大多数の支持を得ることができました。二百八十四議席という衆議院の絶対多数を確保し、政治の安定勢力としての地位を保つことができたのであります。
 田中総裁の率いる自由民主党は、国民の信任を得た責任政党として、今後いよいよ国民の期待にこたえるため、全党あげて選挙公約の実行に最大の努力をいたさなければならないのであります。特に、人間優先の福祉社会の建設、公害のない日本列島改造などの大政策は、英断をもって進めなければなりません。
 田中総理は、施政演説の中で、私は国民のための政治を決断し、実行し、その結果について責任をとると断言せられました。われわれは、その情熱と信念に対し、深い感銘を受けたのであります。国民のわが党、田中内閣に望むものは、その決断と実行であります。
 田中内閣が、国民の信頼をもとに引き続き政権を担当するにあたっての新しき政治姿勢をここに田中総理にあらためてお伺いをいたします。
 第二に、外交・防衛の問題について、総理、外務大臣並びに防衛庁長官にお尋ねをいたします。
 昨年秋の日中国交正常化によりまして、北方領土の問題は別といたしまして、戦後わが国の外交の大きな懸案は、ほとんど解決をいたしました。また、長い間続いてきたベトナム戦争も、当事者の間の粘り強い交渉が実を結びまして、ついにその終結を見るに至りましたことは、まことに喜びにたえません。これが極東情勢の緊張緩和に大きく寄与することを期待してやまないものであります。しかしながら、ベトナムの和平協定は、平和への道の入り口であり、ベトナムに真の平和が訪れるのはまだまだ先のことだと言われております。それは、なお多くの困難な問題が残されておるからであります。極東情勢は、なお流動的であると言うべきでありましょう。したがって、野党の諸君が、ベトナム戦争の終結によって極東情勢は緊張緩和に大きく動き出した、日米安保条約はこの情勢にそぐわないとして、その改定ないしは廃棄を主張しておるのは、非現実的な主張と言わなければなりません。かかる意見は、われわれ責任政党のとらざるところであります。日米安全保障条約こそは、わが日本国土と一億の日本人の平和と安全をゆるぎなく保障しておる重大な条約であります。したがって、日米安保体制は、簡単にベトナム情勢の変化を理由にその存在の意義を問われるようなものではないのであります。流動的な要素をなお多くかかえておる極東情勢のもとで、もし万が一、日米安保条約が消滅するような事態が生ずるならば、それこそアジア諸国に大きな不安と動揺を与えることになりましょう。太平洋の二辺を占める日本と米国とが緊密な協力関係を維持していることが、日本自身にとってのみならず、今日のアジアにとっていかに重要なことかを十分に認識すべきであります。(拍手)
 総理も外務大臣も、日米安保条約はわが国にとって不可欠のものであると言われたのでありますが、その点について、政府として、世界の集団安全保障の現況をよく説いて、国民の理解をさらにさらに深めるような努力をこの際あらためてなすべきではないでしょうか。
 国際情勢の緊張緩和に関する野党の諸君の過大評価は、わが国の防衛力の整備に対する反対の理由ともなっております。国際緊張は緩和したのだから、四次防などは必要ないではないかというのがその言い分であります。しかしながら、防衛力の整備は、もともと一朝一夕にでき上がるようなものではありません。それは、国際情勢の一張一緩に惑わされることなく、世界の大勢に即応しつつ、国力、国情に応じて着実に行なわれるべきものであります。総理は、わが国が必要最小限の自衛力を保持することは独立国として義務であり責任でもあると言われました。まさにそのとおりであります。だが、わが国の自衛隊は、独力ではとうてい国を守り通すことのできる程度のものではありません。四次防は、必要最小限の防衛力へ近づくための過渡的な整備の一段階にすぎないのであって、他国から脅威として受け取られるようなものでは決してないと思いますが、この際、総理の御見解をあらためてお伺いをいたします。
 ところで、最近、基地の設置、運用等をめぐって各地でいろいろな問題が発生しております。そのよって来たる原因は、地域住民の環境改善の要求にあると思いますが、さらに、これらに加うるに、防衛力の維持そのものに反対する政治的意図がうかがわれるのであります。基地は、本来、独立国として国の安全を維持する上にも、また日米安保体制の上からも、必要欠くことのできないものであります。それについて広く国民の理解を得るとともに、基地周辺の環境整備に関する諸対策を進めることによって、地域住民の利益との調和をはかることが必要であります。
 なお、現在、立川や那覇において自衛隊員の住民登録拒否が行なわれておるようでありますが、もしこれが長引くと、子弟の学校入学等にも影響し、基本的人権が無視せられることになり、ゆゆしき大事になると思います。これからの基地対策をいかに考えておられるか、防衛庁長官のお考えを承りたいと思います。
 第三に、経済外交と対外経済の諸問題について、総理、外務大臣並びに大蔵大臣の御所見を伺いたいと存じます。
 これからのわが国の経済外交の諸問題の中で最大の比重を占めるものは、申すまでもなく対米通商問題であります。一九七二年一年間の米国の貿易収支は六十四億ドル余りの赤字で、前年に比べて三倍も大きな赤字を記録いたしております。米国に関する限り、七一年十二月の通貨調整の効果はほとんどあらわれておらないように見えます。この赤字の克服を目標とする対外通商交渉がニクソン政権の大きな課題になるものと予想されております。その赤字のうち、対日貿易収支の赤字は、四十一億ドル余りと、全体の六割をこえる大きさであります。わが国が、貿易収支の黒字縮小のため、なし得る限りの努力を払ってきたにもかかわらず、この始末であります。対米貿易収支の不均衡が日米間の深刻な交渉案件となることは、火を見るよりも明らかであります。この問題は、単なる外交案件ではなく、より多く経済問題であり、わが国の産業構造そのものにかかわりのある問題であって、総理も申されたとおり、その解決は容易なものではありません。わがほうとしては、すでに資本の一〇〇%自由化の方針も打ち出され、関税の大幅な引き下げも行なわれようとしております。また、円の再切り上げを行なえという要求は、非公式ながらアメリカ側から出されておるとも言われております。わが国の経済学者の中にも、基礎的不均衡があるのだから、早目に再切り上げを行なったほうがよいと主張する向きもあります。しかし、田中総理は、円の再切り上げは極力回避したいとたびたび言明をせられております。日米貿易の不均衡問題がいよいよ重大化しつつある今日、政府がどのような態度で米国政府との通商交渉に臨むおつもりであるか、交渉にあたってわがほうとしてどのような具体案を用意しておられるのか、できるだけ詳細にお伺いをいたしたいと思います。
 経済外交において特に留意すべきは、東南アジア諸国であります。これら諸国との経済関係はますます緊密となってまいりますが、わが国が工業製品の輸出国であるのに対し、東南アジア諸国が原材料の供給国であるという関係は、なかなかに改めることができません。今後とも急激な変化は予想されにくい状態であります。その結果としての著しい片貿易、それをどうやって改めていくのか。それはまた、わが国の経済協力のあり方とも関係しております。これが第一の問題であります。
 次は、東南アジア諸国におけるわが国企業の姿勢についてであります。
 企業利益の追求に熱心なあまり、往々にして現地住民の反感を招いておることは、御承知のとおりであります。タイにおける日貨排斥も、主としてそうした理由によるものと思われます。他の諸国でも同じような事態が生じないという保証はございません。現状は直ちに改めなければならないのでありますが、政府としてどのような措置をとるおつもりか、総理から御所見をお伺いいたしたいと思います。
 次に、今後における対インドシナ外交について外務大臣にお尋ねをいたします。
 ベトナム戦争の終結を迎えて、わが国は、アジアの一国として、今後アジアにおける平和維持のために、なし得る限りの積極的な貢献をなすべきであるという使命感は、わが国朝野を問わず、ますます高まってきております。政府としてインドシナの安定と復興のために具体的にどのような協力をなすつもりであるか、お伺いをいたします。
 総理は、ベトナム和平を定着させるために、アジア諸国をはじめ太平洋諸国を網羅した国際会議開催の可能性を検討したいと申されましたが、私はきわめて適切な方針だと存じますので、その早急なる実現に努力せられんことを切望いたします。
 第四に、政府の経済政策について、経済企画庁長官と大蔵大臣にお尋ねをいたします。
 わが国の経済は、昨年の春以来、長い不況を脱して回復に向かい、現に着実な上昇過程にあります。一方、世界経済も日本経済と同様に好調に推移することが予想されておりますが、同時に、世界的なインフレーションの傾向も強まるのではないかと言われております。こうした中で最も警戒をしなければならないのは、インフレであります。これまでかなり長い間、一方で消費者物価が上昇を続けたにもかかわらず、卸売り物価はきわめて安定していたことが、わが国の物価の特徴でございました。ところが、昨年来、この傾向に異変を生じました。卸売り物価が急激な騰貴をいたしました。昨年後半の卸売り物価の急騰に最も大きく寄与したのは木材でありました。木材は、国内の供給がそれほどふえないのに、海外のインフレで輸入材の価格が上がったことと、不況で一時鈍化した住宅建設が再び復調してきたことが重なり合って高値を呼んだと推測されております。だが、責任は木材だけではなく、繊維も鉄鋼も上がっております。卸売り物価の上昇は、全く一時的な現象でしょうか。それとも卸売り物価上昇の季節が始まったのでしょうか。卸売り物価安定の時代はすでに終わったという見方も一部にあるようであります。もしそうだとすれば、それはたいへんなことでありますが、それはまたいかなる原因によるものでありましょうか。その原因を除き、卸売り物価を安定させる手段は、いかなるものがあるかをお伺いいたします。
 また、それでなくても、消費者物価は毎年五%台の率で上がってきております。卸売り物価の騰勢がとまらないとするならば、それが消費者物価にはね返ってくることは、たびたび言われておるところでございます。これを防止するためにいかなる物価対策を講ずるおつもりであるかをあわせてお伺いいたします。
 以上の諸点、経済企画庁長官の御所見を伺いたいと思います。
 次に、予算とインフレについて、また財政と金融のかね合いについて、大蔵大臣にお尋ねをいたします。
 新年度の一般会計予算は、その規模十四兆二千八百四十億円、前年度当初より二四・六%増、財政投融資は六兆九千二百四十八億円、二八・三%増と、わが党の公約を織り込んだ積極大型財政であります。大蔵大臣は、この大型財政の柱として、福祉の向上、物価の安定、国際収支の均衡の三つをあげておられます。世上、この三つの柱を評して、三兎を追うものとさえ申しておりますが、たいへんむずかしいこの問題を大蔵大臣はどう処置していかれようとするのか、お伺いをいたしたいのでございます。
 新年度予算が決定した翌日の一月十六日、その内容を報じた新聞記事は、口をそろえて、この大型予算がインフレを誘発するおそれがあることをあげておりまして、インフレ対策こそが新年度の大きな課題であるということを強調しております。私どもも、まさにその心配はいたしております。大蔵大臣としては、このマスコミの批判に対して、国民のだれもが納得のいくような反論をこの際加えなければなりません。
 私は、予算規模もさることながら、財源の配分がどうなっておるかということが、より重要な問題だと思います。新年度予算は、福祉重視の予算であります。事実、国民の福祉を向上させるため、わが党の公約に従って社会保障の充実と社会資本の拡充には大幅な経費の増額が行なわれました。このことは、民間設備投資が経済成長のにない手であった段階から脱却して、財政主導型の福祉優先経済へと軌道を修正するという当面の要請にこたえるものであります。しかしながら、公共投資は、相当な需要誘発効果を持っておるとされております。公共投資の大幅な増額が景気に対し刺激的な要因を含んでおるとするならば、その刺激的効果を相殺する役目をになうべきは、おそらく金融政策でありましょう。財政の大型化に伴って金融は引き締めぎみに運営するというのがポリシー・ミックスのあるべき姿でありましょう。金融政策の基調をどこに置くのか、大蔵大臣の御所見を承りたいと存じます。
 金融政策のことを述べる以上、最近の株価の高騰に触れないわけにはまいりません。最近の株価は異常であります。預金準備率の引き上げも焼け石に水であります。配当の利回りのごときは、全く問題になっておらない状態であります。大蔵大臣として、最近の株価の高騰をどう見ておられるか、この過熱とも言える状態をどうやって冷却させるのか、具体的な対策がおありであったら承りたいと思います。
 第五に、福祉政策について総理にお尋ねをいたします。
 昭和四十八年度は、年金の年とも言われ、福祉元年とさえ言われております。わが党の福祉政策がいよいよ第一歩を踏み出す年であります。社会保障関係費は、前年度当初比二八・八%増と大きく伸びて、二兆円の大台をはるかに突破いたしました。
 その内容は、一、五万円年金の実現、二、老齢福祉年金の大幅増額、三、老齢福祉年金及び老人医療無料化の扶養義務者の所得制限の大幅な引き上げ、四、生活扶助料基準の引き上げ、五、看護婦の夜勤手当の大幅増額など、わが党の公約を完全に実現をいたしました。
 公共事業につきましても、生活環境施設の整備が特に重視されて、六一・四%という大幅な増額が行なわれました。すなわち、下水道は五七・七%増、公園は七六・一%増、環境衛生整備は七一・一%増と、いずれもいままでにない画期的な伸びであります。まさに田中総理の提唱する福祉元年にふさわしい予算であります。
 産業面におきましても、小規模企業の経営改善のために、百万円まで無担保、無保証の融資制度を新設して、小規模企業に対しあたたかい措置を講じております。
 このように、予算全体を通じて、経済的に力の弱い人々への手厚い援助についてわが自由民主党の深い配慮がなされておることに注目をすべきであります。(拍手)
 ところが、一部に、健康保険の料率が若干引き上げられることなどをとらえて、福祉政策の前進そのものの意義をさえ無視するような論議を行なう者があります。福祉の向上は要求するが、そのために負担がふえることは一文たりとも許さないというようなごときは、あまりに虫のよすぎる話であります。社会保障の先進国であるイギリスの例を引くまでもなく、高福祉は高負担にささえられておることを忘れてはならないのであります。今後とも福祉の一そうの向上をはかろうとするわが国において、その長期展望とそれに伴う経費をどうやってまかなうかという問題について、政府の考え方をお伺いいたしておきたいと存じます。
 最後に、第六として、日本列島改造問題について総理にお尋ねをいたします。
 総理の提唱された日本列島改造、すなわち国土の総合開発は、人口、産業の大都市地域への過度集中を是正し、過密と過疎の同時解消をはかり、地域社会の福祉と自然環境の保護に徹した住みよい公害のない日本国土を建設しようという世紀の大事業であります。日本列島改造事業は、この七月に国土総合開発庁とその事業を実施する公団を整備して、いよいよ本格的に発足することとなったようであります。田中総理の日本列島改造に関するなみなみならぬ決意を示すものとして高く評価をいたします。
 日本列島改造は、今回の選挙を通じて国民の大多数の支持を得たものと確信いたします。いよいよ、これから計画全体の目標をすみやかに設定することが必要であります。目標の設定にあたりましては、経済成長率をいままでのような高いものでなく、やや低目の安定した成長になるように想定することが肝要であると思います。そうでないと、再び高度経済成長の弊におちいるおそれがあるからでございます。
 政府は、昭和四十五年に決定した経済社会発展計画を近く改定するということでありますが、この計画において今後の経済成長をいかに誘導するお考えであるか、経済企画庁長官からお伺いをしたいと思います。
 経済成長率とともに最も重視すべきは、公害対策であります。公害につきましては、この際、思い切って官民一体の徹底的な総合対策を用意すべきであると思います。そもそも、人口、産業を大都市から地方に分散しようとする日本列島の改造は、なまやさしい問題ではありません。従来提唱された地域格差の解消論や過密過疎対策論が十分な効果をあげなかった原因は、そのための適切な目標設定がなかったからであり、また、政府の指導助成が弱かったからであります。地方開発のための道路、鉄道等の整備も、時代の要求におくれがちであり、土地や水の供給も十分に行なわれず、また、これらについての政府の助成策、税制上の措置等が足りなかったからであります。これは大いに反省材料にすべきであります。
 総理は、強力に本問題に対処せんとする意図をお示しになりましたが、この際、さらに総理の御方針をお伺いいたします。
 なお、列島改造には各種の公共事業が大規模に行なわれるわけでありますが、現行の会計年度のもとでは、公共事業の執行が秋から冬場に集中することになり、積雪地帯等では多くの支障を来たしております。その点をも考慮されて、総理は、昨年夏、会計年度を暦年制に改めることを検討するよう指示せられたと伝えられておりますが、その検討はどの程度進行しておるのでありましょうか、大蔵大臣にお伺いをいたします。
 列島改造問題に関する質問の締めくくりとして、最も緊急かつ重大な問題として、政府の土地政策について総理にお尋ねをいたします。
 急激に高騰しつつある地価を抑制しなければ、日本列島改造は行き詰まりになるおそれがあります。政府は、土地問題の緊急性にかんがみて、先般、閣議において一連の土地対策を決定したようであります。土地保有税と土地譲渡利益税の新設、土地利用計画の設定、土地取引の届け出制と投機的な土地取引の中止勧告、開発行為の規制、土地の賃貸を促進する措置等、新しい土地政策はまさに画期的な内容を含んでおります。私は、ここに田中内閣の勇断を高く評価いたしたいと思います。
 新しい土地対策は、地価の高騰を抑制し、土地の供給をふやすことを目標とするものでありますが、実施にあたって具体的にどのようなやり方によってこの目的を達成しようとするのか、この際、政府の方針をお伺いいたします。
 以上をもって私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(田中角榮君) まず、第一の政治姿勢に対してお答えをいたします。
 内に外に変革期の課題は山積をしております。この中にあって、私は、ことしの重点的政治目標といたしまして、平和外交の推進、国際収支の不均衡の是正、社会保障の充実と生活環境の整備、物価安定、国土の総合開発の推進などを掲げておるわけでございます。私は、国民各位の期待にこたえまして、これらの課題を解決するため、あえて困難に挑戦し、議会制民主主義の確固たる基盤に立って国民のための政治を決断し実行してまいりたいと考えておるのでございます。
 第二は、ベトナム和平はなお流動的である、日米安全保障条約の消滅はアジア情勢を不安定にする、国民の理解を深めるべきだという御発言でございますが、ベトナム和平に伴う緊張緩和の傾向を促進するためには、緊張の緩和をもたらした国際政治の基本的ワク組みの中で堅実な努力を続ける必要がございます。日米安保体制は、まさにこのような意味でのアジアにおける基本的ワク組みの最も重要な柱でありまして、この柱が動揺することはかえってアジアに不安定をもたらすものだと考えております。政府としましては、国民各位が以上申し上げた点を十分理解をしていただけるように努力する所存でございます。
 防衛力の整備は着実に進めるべきだという御指摘に対しては、わが国が必要最小限度の自衛力を保持することは、独立国として平和と安全を確保するための義務でもあり、責任だとも考えております。四次防は、このような自衛力を整備をしていくための計画でございます。
 住民登録拒否についての御発言がございましたが、立川市等が住民登録を拒否いたしておりますことは、自衛隊員の選挙、就学等の公権の行使を制限し、印鑑登録等の私権の享有をも断つことにもなります。これは、まさに、憲法が国民に保障しておる基本的人権そのものを侵害する行為であると思うわけでございます。政府としましては、このような事態が一日も早く解決するよう関係者の良識に訴えておるわけでございます。
 対米貿易不均衡の是正策、東南アジ諸国との片貿易の是正策等に対して詳しく述べよということでございますが、政府としましては、米側における対日輸出努力の奨励をいたしております。また、わがほうからの輸出の適正化、輸入の拡大、経済協力の拡充、国内景気の振興による輸出の内需への転換等に総力をあげておるわけでございますが、その上なお貿管令の発動等も実行いたしておるわけでございます。今後とも、関税の引き下げ、輸入・資本の自由化を一そう推進してまいりますことによって日米間の貿易不均衡を直してまいるため全力を傾けなければならない、こう考えておるのでございます。
 東南アジア諸国の大半も、わが国に対しまして大幅の入超であることは事実でございます。わが国といたしましては、関税の引き下げ、特恵関税制度の拡充などを通ずる輸入の拡大、開発輸入の促進、政府間の援助の拡大等をはかってまいるつもりでございます。また、政府間の貿易会議の開催等も間々行なうことによって貿易不均衡の改善につとめてまいりたいと、こう考えるわけでございます。
 わが国企業の活動に対する批判等に対してどうするのかということでございます。御指摘のとおり、わが国企業の現地における企業活動等についていろいろ批判があることは、御指摘のとおりでございますし、はなはだ遺憾なことでございますが、わが国企業の海外活動が相手国に歓迎され、円滑に進展していくために努力を傾けなければならぬことは、言うをまたないわけでございます。現地人の雇用の拡大、登用、相手国側の資本参加、わが国の海外企業活動に携わる人々の態度等について十分改善、反省をはかっていくことが肝要である、こう考えておるのでございます。
 それからベトナム和平定着化のために国際会議の実現に努力をせよということでございますが、和平合意成立によりましてアジアは大きく安定に向かって第一歩を踏み出したと存じます。しかし、四半世紀余も続いた紛争でございますから、事態は容易ではないと思うわけでございます。せっかくつかんだ平和を定着させるために、国際会議を含むあらゆる平和努力を続けてまいりたい、こう考えます。
 福祉充実の長期展望、福祉向上に伴う経費についての御質問がございましたが、政府は、新しい長期経済計画の中で、国民福祉の充実を考え、その位置づけを考えておるわけでございます。
 社会保障の充実につきましては、計画期間中のできるだけ早い時期に、社会保障に関する諸施策の長期計画を策定いたしたい、ころ考えております。
 社会保障に関する費用負担のあり方等につきましては、十分検討を行ない、国民各位の合意が得られるようにルールを確立してまいらなければならない、こう考えております。
 列島改造について、目標の設定を急ぎ、政府の指導、助成等を強化せよという御所論でございますが、国土の総合的均衡ある開発と利用がおそきに失したために、大都市への集中が急速であり、土地、公害、生活環境の破壊混乱等が起こっておる面がたいへん多いのでございます。その意味で、国民的理解と協力を得ながら列島改造は適切強力に推進をしてまいるつもりでございます。
 なお、当面、近く策定いたします新しい長期経済計画や新全国総合開発計画の総点検などを通じましてその主要目標を明らかにしてまいりたい、こう考えるわけでございます。さらに、昭和五十年度を初年度とする総合的な開発計画を策定いたしまして、美しい自然と人間性豊かな高度福祉社会の建設プログラムを明らかにいたしたい、こう考えておるのでございます。
 なお、他の質問に対しては、関係大臣からお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(大平正芳君) 私に対する御質疑は、インドシナに対する経済外交についてでございました。
 まず、第一に、日本の経済の急激な進出に伴いまして、各地に、危惧や不安、一部に摩擦も生じておる事態でございますので、民間側の協力を得まして、力におごることなく、理解と信頼をつないでいく姿勢に終始したいと考えます。
 第二に、おしなべて日本とインドシナ各国との貿易関係は片貿易でございます。特恵制度の拡充等によりましてその是正を今後はかってまいりたいと思います。
 経済協力の推進でございますが、あくまでも相手側の立場に立ちまして、その量の拡大、質の改善、アンタイイングの推進等につとめてまいるつもりでございます。
 当面のベトナムの援助につきましては、占部議員にお答えしたことで御理解をいただきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣増原恵吉君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(増原恵吉君) 基地対策についての御質問にお答えをいたします。
 御質問にありましたように、基地に対する反対の考え方は、大きく分けますると、日米安保条約を廃棄すべしという考え方に基づくものと、その基地の周辺の地域開発の進展に伴う必要からのものとが現在はあるわけでございます。日米安保条約の目的を維持していくため必要な施設・区域はこれを確保してまいることは政府の方針でございまするが、周辺地域の開発計画等との調整をはかる観点から、政府としては、従来から施設・区域の整理統合に取り組んでおりまして、今回の第十四回日米安保協議委員会においてもその推進をはかったところであります。
 また、引き続き必要な施設・区域については、周辺住民の理解と協力を得るために、今後とも、周辺整備法等の活用その他を通じまして、積極的に必要な対策を講じてまいりたいと考える次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(小坂善太郎君) ただいまの御質問に対してお答えを申し上げます。
 まず、昨年の夏以来、卸売り物価が急上昇いたしましたのでございますが、その原因につきましては、まず景気の回復に伴う需要の増大、それから不況カルテル等の市況に対する影響等が考えられますのでございますが、なかんずく一部の商品――木材、羊毛、鉄鋼等が上がりましたわけでございますが、これは御承知と存じまするけれども、今日、卸売り物価を構成するいろいろな比重がございます。その中で、非食料農林物資、ただいまの木材であるとか、あるいは原木、木製品、あるいは皮革、羊毛、そういうようなものは全体の上昇率の中で五一・三%を占めておるのでございます。その他、繊維類が一三・二%、それから鉄鋼が八・七%でございまして、これらが非常に大きなウエートを占めておりますので、あいにくこの商品ばかりが非常に高騰してまいったということから、卸売り物価が非常に高いような感じがするわけでございますが、しかし、幸いなことに木材が下がってまいりましたので、状況はだいぶ変わりつつありますし、それから国際収支の黒字によって生じておると考えられる過剰流動性、これを急速に吸収しようということで、先ほど来申し上げたようないろいろな手を打ちました結果、だいぶ市況が落ちついてきておるのであります。
 今後の見通しでございますが、これを恒常的なものにしてはたいへんでございますわけですが、私どもはこの傾向は続かないというふうに見ております。それは、いまの経済の実体面からいたしますと、一部のものの供給力にかなりまだ余裕がございます。また、設備が相当遊んでいるものもあるわけでございます。それから不況カルテルというものは大半終止いたしました。その点からの影響はなくなってくるわけでございます。そこで、こうした傾向については落ちつきを示すものと思っておりますけれども、しかし、なかなか予断を許しません。ことに海外の市況が強いということは非常な問題でございますのみならず、また、部分的に一部の商品について需給関係が逼迫してそれが非常に高値を呼ぶというようなこともございます。そういう点については、非常に注意深く手を打ってまいりたいと思っております。また、今後の問題点といたしまして、賃金の上昇が生産性を上回るという問題がどういうふうな影響を持つか、これもまた注意していなければならぬところだと思うのでございます。
 要しまするに、今後は、総需要というものについても相当監視の要がある。ことに、過剰流動性からするインフレマインド、過剰流動性からする株、地価等に見られた、あるいは一部の商品市場に見られた過剰投機、インフレマインド、こういうものを何とか抑制するように強力に措置してまいりたいと思います。
 それからあわせまして輸入を積極的に拡大する必要があると考えております。また、低生産性部門や流通機構を近代化する、あるいは競争条件を整備する、あるいはまた労働力を流動化するというような措置が必要であると考えております次第でございます。
 また、こうした卸売り物価の消費者物価へのはね返り、これを何とか抑制せねばならぬわけでございますが、これにつきましては、社会党のほうの御質問にもお答えしたわけでございますが、預金準備率の引き上げ等による過剰流動性の吸収や、総需要の適正化、輸入の積極的活用、競争条件の整備、生鮮食料品の安定的供給の確保、流通機構の近代化促進、そうしたものによって極力このはね返りを押えてまいりたいと考えております。
 それから最後の御質問で、例の新経済社会発展計画、これは四十五年につくりましたわけでございますが、あのままの状態では最近の公害の問題やあるいは国際協調に関する問題等がございますので、本年を初年度とする五カ年計画を策定いたしておりますことは、御承知のとおりでございます。この新しい経済計画につきましては、大体、いまの環境の悪化をさらに強めることがないように、また、国際社会からの反発を招くようなことがないように、活力に満ちた福祉社会をつくっていこうということで考えておるわけでございますが、経済の成長率は五年平均といたしまして九%程度がよいのではないかということになろうかと考えております。いずれにいたしましても、二月の中ごろまでにこれを皆さまに発表することができるというふうに考えておる次第でございます。
 以上、御了承願います。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。
 インフレにつきまして非常な御懸念を持っておられますことについては、私といたしましても、何とかしてインフレを押えたいということで、予算の編成、また財政金融政策を考えておるつもりでございます。たとえば、いま、輸出が非常に伸びて、国際的に黒字が累積し、そしてこれが今日の日本の金融市場に大きな問題を提起をしているわけでございますから、これをやはり財政のほうからも吸収をいたしまして、それを通じて生活環境等を中心にした公共事業等に配分をするということが福祉国家建設の道に通ずる、あるいは、もっと理屈の上で申しますなら、資源の有効な配分、政策的に福祉へ傾斜するような配分をする、そして一面にインフレを抑止しつついく、こういうことになろうかと思います。
 もう一つ重大な点は、国民経済に対する政府の総支出のウェートがどういう姿になるか。特に、その中で、いわゆる振りかえ支出のウエートというものをどういうふうにしたらいいか。実は、この点につきましては、現在推計いたしておりますところでは、本年度予算ではこれが五・一%になります。これは、年金その他、主として個人に対して政府が支払われるいわゆる振りかえ支出でございますが、これは将来の福祉国家建設のためにはこのウエートが徐々に広がることが望ましいわけでございます。また、現在の五・一%というのは、数年来から見ますればかなり上がっておるわけでございまして、これが一つの特色ということも言えるのであろうかと思います。こうして、社会資本の充実、社会福祉を充実させたいという予算の支出面におきます効果は、私は総じて国際収支の黒字解消にも役立つものかと考えるわけでございまして、これがいわゆる内需中心あるいは輸出優先の経済構造を究極においては変えていくことに通ずるのではなかろうか。そうして、同時に、ただいま企画庁長官のお話しのように、予算の歳出面でも、直接、特に消費者物価抑制に役立つようなくふうが従来にましてきめこまかく考えられておりますから、これは歳出予算の総計から申しましても一兆三千億をこすというふうに考えられるわけでございます。こうした予算を中心とした面での物価対策というものも、ひとつこうした考え方がまっとうに実行されていくように最善の努力を払ってまいりたいと思います。同時に、これは予算の執行だけの問題ではございませんで、輸入の活用、それから資本の徹底した自由化、それから金融政策とのポリシーミックスということは御指摘のとおりでございまして、これらの点にますます重点を置きましてインフレムードというものを解消してまいりたいと思います。
 先ほども言及いたしましたが、きょう決定いたしました土地に関連するあらゆる貸し出しの抑制というようなことは、金融機関に対する一般的監督権に基づいて実施いたしますものでございますけれども、これは、私どもとしては相当思い切った措置でございます。かなりの成果が期待できるのではなかろうかと思います。
 株価に対しましても、信用取引の保証金率の引き上げをはじめ、適当と考える措置につきましては、行政的な手も打っております。また、関係の業界その他の方々に対しましても協力をお願いしておりまして、それなりに効果をあげておると思いますが、秩序ある市場形成に今後ともつとめたいと思います。
 対外的に申しますと、通貨調整の効果というものは二、三年かかるというのが列国の定説でございます。わが国におきましては、一昨年の暮れの通貨の調整でございますし、また、自来、円対策については相当の政策を次々と打ち出しておりますので、それなりの効果もだんだん出てまいっておるわけでございますから、現在は、円の――現在はと申しますか、ただいま、こうした政策の成果を期待いたしながら円の再切り上げなどということは極力回避すべきものである、かような確信を持っておる次第でございます。
 なおまた、先般は対米債務の繰り上げ償還というようなことも政府としては決意をいたしました。所要の法律案につきましては追って御審議を願いたいと思いますが、対米経済調整については考え得るあらゆる措置を今後とも実行してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。(拍手)
#24
○副議長(森八三一君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○副議長(森八三一君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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