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1972/02/15 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第5号
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1972/02/15 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第5号

#1
第071回国会 本会議 第5号
昭和四十八年二月十五日(木曜日)
   午前十時二分開議
    ―――――――――――――
#2
○議事日程 第五号
  昭和四十八年二月十五日
   午前十時開議
 第一国務大臣の報告に関する件(国際通貨情
  勢に関して)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、鉄道建設審議会委員の選挙
 以下 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 この際、おはかりいたします。
 小笠原貞子君から病気のため、二十二日間請暇の申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(河野謙三君) この際、鉄道建設審議会委員一名の選挙を行ないます。
#6
○竹田現照君 鉄道建設審議会委員の選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#7
○桧垣徳太郎君 私は、ただいまの竹田君の動議に賛成いたします。
#8
○議長(河野謙三君) 竹田君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、鉄道建設審議会委員に田中一君を指名いたします。(拍手)
     ―――――・―――――
#10
○議長(河野謙三君) 日程第一 国務大臣の報告に関する件(国際通貨情勢に関して)
 大蔵大臣から発言を求められております。発言を許します。愛知大蔵大臣。
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(愛知揆一君) 去る一月二十二日のイタリアにおける二重市場制の導入及び同二十三日のスイスの変動相場制移行に端を発した今回の国際通貨危機は、その後、二月に入りましてから、西ドイツへの大量のドル流入となり、重大な局面に発展いたしました。
 このような状況から、米国は、みずから国際通貨危機の収拾をはかるため、わが国をはじめ欧州関係諸国と協議を行なう一方、欧州諸国間におきましても、事態打開のため、蔵相間の協議が精力的に行なわれました。
 その結果、米国が国際収支を改善してドルの信認を回復することが、米国自身のみならず、国際通貨情勢全体の安定のための基本的要件である、との認識のもとに、まず、米国自身がドルの一〇%切り下げを決定し、これに対応して、各国は、それぞれ自国の置かれております国際環境のもとで適切と考える措置をとることと相なりました。
 わが国といたしましては、欧州主要諸国とともに、今回のドルの切り下げを歓迎するとともに、円の為替相場は、当分の間フロートさせることといたしたのであります。
 わが国が、切り下げられたドルに対する為替相場を直ちに決定しなかったのは、ここしばらくの間は、今回のドル切り下げの効果と国際通貨情勢の推移を慎重に見守った上で適切な水準を見出すことが適当であると判断したからであります。今後適当な時期に固定相場に復帰いたしたいと考えております。
 なお、政府といたしましては、今後とも国内経済の安定的成長を確保するとともに、特に中小企業に対しましては、必要に応じ十分な配慮を行なう所存であります。
 また、わが国の対外均衡を達成するための努力も引き続き怠らない所存であり、さらに国際通貨体制の長期的安定をはかるため、新しい国際通貨制度の確立に積極的に貢献してまいりたいと考えております。(拍手)
#12
○議長(河野謙三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。佐藤一郎君。
   〔佐藤一郎君登壇、拍手〕
#13
○佐藤一郎君 私は、自由民主党を代表しまして、先般の国際通貨危機の収拾に際しましてわが政府が決定した円の変動相場制移行と今後における経済政策の運営に関しまして、総理並びに関係各大臣にその所信をお伺いしたいと思います。
 約二週間にわたり世界をゆさぶりました国際通貨不安は、米国のドル切り下げ、西ドイツ・マルクなど欧州通貨の実質的な切り上げによる固定相場制の堅持、円の変動相場制移行ということで一応の収拾を見ました。この結果、東京為替市場が昨日から再開されまして、為替取引の混乱が早期に解決できましたことは喜ばしいことであります。
 しかし、当面の通貨不安が一応回避されたとはいえ、問題の根本的解決にはほど遠いものがございます。わが国及び欧州諸国通貨の切り上げとドル切り下げという多国的通貨調整を実現した一昨年末のいわゆるスミソニアン合意は、わずか一年二カ月で事実上崩壊いたし、今回の通貨調整も暫定的なものに終わる可能性が強いのであります。しかも、二十カ国蔵相会議において検討を進めております国際通貨制度改革の具体化には、かなりの日時を要するものと思われます。
 さらに、わが国の円は、変動相場制に移行した結果、ドルの切り下げと相まって、実質的には切り上げと同様の事態となったわけであり、一定期間の変動相場を経て、最終的には切り上げ幅を確定して固定相場制度に復帰せざるを得ない情勢であります。
 私は、このような新事態の中で、日本経済と国民生活に対する国民の不安を一掃するとともに、日本の進む方向を内外に宣明する必要があると考え、以下の諸点につきまして、総理、大蔵大臣、通産大臣並びに経済企画庁長官に質問したいと思います。
 第一に、かくも急激に円の変動制移行を決定した政府の判断とその経緯につきまして、総理の見解を伺いたいと思います。
 もとより、今回の措置が、欧州に発生しましたマルクを中心とする通貨危機を早急に収拾すべしとする国際的な動きと、この機をとらえて一〇%のドル切り下げを行なった米国の措置に対応するものであり、かつまた、西独マルクやフランス・フラン等が平価維持の名のもとに実質的にはドル平価に対して切り上げに追い込まれた事実を考え、同時に、これら一連の措置が本来米国ドルの根本的弱さとわが日本の異常な黒字に基因するものであることを考え合わせますとき、危機の拡大を最小限にとどめるための迅速果敢な措置として、変動相場制への移行は真にやむを得ないものであると理解するものであります。と同時に、わが国が、この切り上げられましたドルに対する為替相場を直ちに決定することをせず、変動相場制に移行しましたのは、今回のドル切り下げの効果を見、今後の国際通貨情勢の推移を見きわめた上で、円の為替相場につき適正な水準を見出すという観点からいって、一応適切な措置であったと考えられます。しかしながら、政府は、今日まで円の再切り上げを極力回避することを基本方針とし、昨秋以来、資本・貿易の自由化、関税の引き下げ、輸出規制等、いわゆる円対策を推進し、生産輸出第一主義を福祉重点主義に転換するとともに、国内景気の回復と拡大によって貿易バランスの回復に努力してきたのでありますが、遺憾ながらその実績は十分なものとは言えません。また、再切り上げは行なわないというたびたびの声明も、いわゆる政府としての立場からやむを得ないものがあったといたしましても、今回各方面に大きな戸惑いを与えた結果になったことはいなめません。この辺に、今日の国際通貨問題のはらむ危機的な事態に対する政府全体の認識の甘さが指摘されるゆえんがあるのではないか。このことは、今回の措置がなお過渡的措置であるだけに、今後の本問題に対する基本的考え方の問題としてぜひ考慮を促すとともに、国際通貨情報網の整備と国民に対する国際通貨問題に関する認識の浸透徹底をはかられるよう、一段のごくふうを願いたいのであります。
 第二に、今後における正しい国際競争条件の確保という見地から、変動相場制の運用について、その基本方針を大蔵大臣に伺いたいと思います。
 変動相場制下における相場がどのような動きを示すかは、輸出関連産業を中心に国内経済一般に広範な影響を及ぼすものであり、また、固定相場へ復帰する際の目安を与えるものであるだけに、国民のひとしく注目しておるところであります。したがって、今後における相場がどうなるかは、きわめて重要な意味を持つものと言わなければなりませんが、政府はどのような方針で対処しようとしているのか、相場に対する介入の考え方とその運用方針を伺いたいと思います。
 同時に、この機会に、固定相場復帰の見通しはどうなのか、大蔵大臣に伺いたいと思います。
 すなわち、変動相場制はどのくらい続けられるおつもりか、固定相場制に復帰するタイミング、またその場合に多角調整を期待できるか、あるいは円の単独行動もやむを得ないか、その展望を伺いたいと思います。
 また、切り上げに際しましては慎重な配慮が必要であります。ドル一〇%切り下げによる円の自動的切り上げ幅一一・一%を大幅に上回る切り上げは避けるべきだと考えますが、蔵相の見解はいかがでありましょうか。また、米国は二〇%近い円切り上げを要求していると伝えられておるのでありますが、このような事実があるかどうか伺いたいのであります。
 第三に、今回の措置により、わが国の経済がいかなる影響をこうむるか。したがって、また、政府の施策に大きな変更が加えられるかについて、総理並びに関係大臣に伺いたいと思います。
 円の最終的な切り上げ幅が予想をあまり越えるような場合には、輸出入関連事業に相当なショックを与えることが考えられ、特に切り上げを織り込む余裕を持たなかった中小企業等に対しては財政金融面で格段の配慮を必要としますが、いかがお考えですか。
 また、現在上昇基調にあり、一部ではやや過熱ぎみを憂慮せられておる現在の景気の基調に対して、今回の措置がいかなる程度の抑制効果を持つかについても十分検討を加え、特に現在とりつつある金融政策について慎重な配慮が必要であろうと思われるが、いかがでありますか、大蔵大臣に伺いたいと思います。
 これと関連して、今回の措置により、政府の経済見通しがいかなる影響を受けるか、その取り扱い並びに目下国会審議中の予算案の取り扱いについて、経済企画庁長官と大蔵大臣に伺いたい。
 もとより、目下変動制のもとにあり、今後における推移を見ながら日銀が介入するという状況のもとにおいては、事態はきわめて流動的であり、率直に言って現段階での明確な予測は困難であります。したがって、予算案のごときは、修正せよという意見もあるが、むしろ一刻も早くその成立を促進することとし、必要な対策は、予備費の活用、補正予算の編成等によることが適当と思われますが、いかがでありますか。
 第四に、今回の措置が一面多大の犠牲を払いながら行なわれた反面、物価抑制的効果をもたらすことは明白であり、現に前回の変動相場制移行と多国間通貨調整によっても、四十六年八月からの一年間に円建て輸入価格は八・二%の低下を示しているのであります。また、物価安定政策会議も輸入インフレの防遏のための為替政策の運用を提唱しております。わが国の景気回復がここにきて急激かつ全面的となり、卸売り物価の上昇が年率六ないし七%台となり、
   〔議長退席、副議長着席〕
一部にインフレ過熱ぎみと憂慮されつつあるところへ、最近における海外インフレの影響から全面的な輸入物価高を迎えつつある現状において、切り上げにより海外インフレを遮断する必要はさらに高まっておると言えます。しかし、この効果を十分にするためには、自由化の促進、関税等の引き下げとともに、流通機構に手を入れる必要があり、特に内需の強い現在、切り上げによる引き下げ効果がいたずらに中間段階に吸収されることを極力防止し、消費者に還元されるためには、格段の努力が必要でありますが、総理の決意並びに通産大臣、経企庁長官のお考えを承りたいと思います。
 第五に、今回の措置により、はたしてわが国の経常収支の不均衡を是正し、大幅な黒字の縮小を期待することができるか、通産大臣にお伺いしたいのであります。
 今回の措置により通貨危機は一応回避されましたが、国際収支の均衡をはかるには、単に通貨面、為替面だけの措置だけでなく、開放経済体制への移行のための総合対策を進めるとともに、大幅黒字を定着させているわが国の経済構造の転換を長期にわたってはかることが基本的に必要である。為替レートが一〇%以上も上がるのだから、もはや円対策は要らないんだというような考え方でおりますと、今回のような事態が二回も三回も来ることを覚悟しなければならないと思います。特に、産業構造転換のための財政金融面の援助を思い切って行ない、日本経済のデパート式何でも経営の転換を行なう必要があると思われるが、通産大臣の所見はいかがであろうか。
 特に、日米間の不均衡調整は、この問題が今回の措置の基本的原因をなしているだけに、われわれも真剣に考える必要がある。もちろん米国に対しては当方の主張を十分ぶつけ合う必要があり、特に今回のドル切り下げを武器に鼻息の荒い米国側の主張には保護貿易的色彩がますます顕著になりつつあるおりから、わが国は彼に対し自由主義の大原則を譲ることなく主張すべきであります。伝えられる米国の課徴金構想あるいは新通商法に対し、今後のわが国の通商政策をいかに運営される方針か。さしあたって六月に予定されている日米経済貿易合同委員会はこの問題の正念場と考えられますが、日米貿易経済関係の改善についての総理並びに通産大臣の見解を伺いたいと思います。
 第六に、今回の措置により国際通貨ははたして安定を取り戻すのかどうか、今後における国際通貨改革と円の将来について大蔵大臣に伺いたいと思います。
 今回の通貨措置が過渡的なものであり、一応当面の国際通貨危機を乗り切ったものであるにすぎないことは明らかであります。米国がドルの一〇%切り下げに踏み切ったことは、その通貨問題に対するなみなみならぬ熱意を評価させるものがありますが、その巨額にのぼる赤字と過剰ドルをかかえて、ドルの交換性を回復しないままに切り下げたことだけでは、ドル問題の解決はまだまだほど遠いことを思わせます。
 インフレの懸念を強めているドルの今日の実情では、わが国の大幅黒字を適正化し、円の立場をすっきりさせることを、ますます困難にさせています。米国のインフレ抑制を中途はんぱに終わらせることなく、米国に対してキーカレンシーとしての自省を強く求めなければ、遠からずまた今回のごとき経緯をたどることになります。国際経済において重要な地位を占めるわが国としても、目下検討中の国際通貨制度の根本的改革に、より積極的な役割りを果たされるよう、大蔵大臣に強く要請し、その所見を承りたいと思います。
 以上であります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(田中角榮君) まず、円の変動制移行についての政府の判断についてという御発言に対してお答えをいたします。
 一昨年十二月、多国間通貨調整による円平価の調整が行なわれましてから、わが国は、関税の引き下げ、輸入ワクの拡大、輸出の適正化、大型補正予算による内需の拡大など、国際収支改善対策を強力に進めてまいったわけであります。世に、平価調整の効果があらわれるには一、二年を要するといわれておるのでございますが、輸出も著しい増大からようやく鈍化傾向を示し、輸入は増加傾向をたどり、両三年以内には基礎収支の均衡を保ち得るように、せっかく努力中であります。なかんずく、対米収支均衡のためには、黒字国であるわが国の努力はもちろんでありますが、ドルの価値維持をはかるアメリカの努力と相まって、初めて均衡が回復されるものであることは、常に指摘を受けておるとおりでございます。
 ベトナム戦の終息などによりまして、ドルの価値は漸次強化されるものとの見方が一般的であったわけでございますが、本年に入ってから欧州市場における大量のドル流入の事態が起こり、これに対処してドルの一〇%切り下げが行なわれたわけでございます。国際通貨安定対策の一つとしては、黒字国の努力はもちろんでありますが、赤字国の対策も求められておったわけでありますが、今度のドル一〇%の切り下げは、アメリカの責任においてドルの切り下げという形で行なわれたわけでございます。本措置によりまして、日米間の不均衡は均衡の方向に一歩を進めるものであると評価をいたしておるのでございます。
 過去三回にわたり対ドル切り上げを行ない、また、今次流入に対しては、六十億ドル余に及ぶといわれる大量のドル買いささえを行ないました西ドイツは、マルクの据え置きを言明しておるのでございますが、スイス、イギリス、イタリーなどは、変動相場制もしくは二重相場制の中にあります。フランスもまた二重市場制を維持して事態の推移を見守っておるわけでございます。このような状態でありますので、わが国も、変動相場制に移行し、各国通貨の状況などを見守ることが適当と考えたわけでございます。
 第二の、自由化等円の総合対策、円対策推進の考え方についての御発言にお答えをいたします。
 政府としては、今後とも、輸入の拡大、対外投資の促進、経済協力の拡充等、総合的な対外経済政策を積極的に推進して、対外均衡の確保をはかってまいりたいと考えます。
 また、国内産業面におきましては、輸出指向の産業構造を、国際的に調和のとれた福祉指向型構造へ転換することが重要であり、このため、公害対策の推進、週休二日制の普及、高加工度化・知識集約化の促進などにつとめてまいりたいと考えております。
 また、円の変動相場制への移行に伴いまして、今後の事態の推移を慎重に見守る必要がありますが、わが国の貿易収支、なかんずく対米貿易収支の不均衡は相当程度縮小するものと考えておりますが、これからもこれが均衡のために努力を続けなければならないと考えます。
 世界貿易の発展に重大な影響力を持つ米国においては、一部に保護主義的な主張が強まりつつあることは、御承知のとおりでございます。米国がかかる主張に流されることとなると、他国の保護主義的な動きをも誘発しまして、世界貿易の縮小を招くおそれがありますので、かかる事態を回避するために、各国とも十分協力をしていかなければならないと考えるのでございます。
 わが国経済に対する影響や、今後の景気動向、政府の経済見通し、その他に対して申し上げます。
 現在、わが国経済は本格的な景気上昇過程にございますので、変動相場制移行に伴うデフレ効果はかなり吸収されるものと考えておるのでありますが、今後なお流動的な要因が多く、現段階で年度を通じた経済全体に及ぼす影響を把握することは困難なわけでございます。
 四十八年度予算につきましては、今回の措置が国内経済面に及ぼす影響を回避するためにも、ぜひともその早期成立をはかりたいと考えておるのでございます。
 また、金融政策につきましては、さしあたり流動性の調節を主眼とする現在の方針を大きく変更する必要はないと考えております。
 輸出関連中小企業につきましては、今後その実情を十分に把握いたしますとともに、金融面その他万全の措置を講じてまいるつもりでございます。
 輸入品価格の引き下げ等につきましてのお答えを申し上げます。
 今回の措置は、物価の観点から見ても、輸入品の直接的な価格低下をはじめとして、その安定に寄与し得るものであります。政府としては、今回の措置により輸入品価格の低下が消費者物価によりよく反映いたしますよう、輸入の自由化、関税の引き下げ、輸入総代理店対策、輸入品にかかる流通機構の改善などの各種の対策をさらに推進してまいりたいと考えます。
 残余の問題については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。
 まず、第一は、変動相場をなぜとったか、これからどうする見込みであるかというお尋ねでございます。
 一言にして申しますと、ここしばらくの間は、今回のドルの切り下げの効果と国際通貨情勢の推移を慎重に見守った上で、適切な円の水準を見出すことが適当である、また、こうした態度をとることが国益を守るゆえんである、こういう考え方で変動為替相場に踏み切ったわけでございます。そして、したがって、適当な時期の間に円の実勢というものを変動相場の推移の中でとらえてまいりまして、適当な時期に適当な水準を参考にいたしまして円の実勢というものを決定する、ここしばらくの間はこうした態度をとりますことが国益を守るゆえんである、こういうように考えたわけでございます。
 変動相場と申しますものは、御承知のとおり、需要・供給の原則に沿いまして、自然の成り行きを見ることでございますけれども、お尋ねがございましたけれども、介入との関係でございますが、市場の状況が乱高下してはいけませんから、その乱高下をしないで秩序よく市場の機能が発揮できますように、ある程度の介入ということは、これは各国とも容認しておる当然のやり方でございます。しかし、大げさな、大幅な政府の介入ということは控えるべきでありますことは当然のことであり、また、そういう態度をとることによってこそ円の実勢というものが見守られるゆえんでもあろうと、こういうふうな考えで今後やってまいるつもりでございます。
 次の御質問は、国際的にどういうふうにこれからなるのであろうか、また、やるべきであるかという御質問でございますが、長期的な国際通貨体制改革の問題は、御承知のように、先般来、二十カ国委員会を中心にして検討が進められておりますけれども、なかなかむずかしい問題で、思うような進捗ができませんでした。しかし、今回のようなこうした通貨危機をお互いに経験いたしますと、各国ともほんとうに真剣にならざるを得ない、長期的な制度改革の緊要性というものをあらためてお互いに認識したことと思います。日本におきましても、特にさような考え方を強くいたしたわけでございまして、あらためて、自由で無差別な原則のもとに一つの世界の実現を目標といたしまして、世界経済がブロック化されないように、保護主義が台頭しないように、そういう基本的な態度で国際的な通貨の安定ということにほんとうに真剣に取り組んでまいるように、日本は特にやってまいりたいと思います。
 米国ドルの交換性の回復ということは、わが国としても特に望みたいところでございますし、また、世界的な要望でもございます。
 また、他面におきまして、一国の通貨が世界の通貨の基準であるというようなあり方というものは批判さるべきことであり、また、これについては改革を必要とすることであると思います。したがいまして、SDRを魅力あるものにすることをはじめといたしまして、日本は主導的な立場に立って世界の通貨の安定に対して応分の努力をいたすべきものと、私はかように考える次第であります。(拍手)
 その次は、四十八年度予算との関連をどう考えるかという御質問でございます。これには、私は、三つの点からお答えをいたしたいと思います。
 まず、一つは、歳入の面でございます。円が変動相場制に移行いたしました結果、国際収支のほか、たとえば輸出関連産業等を中心に国内経済面にも影響を生ずることもありましょう。しかし、変動相場制のもとでのレートの水準については、ただいま御説明いたしたとおりでございます。また、変動相場制をどの期間続けるかということも、ただいま御説明したようなことで、要するに、流動的な要因が多いわけでございますから、現在の時点におきまして長い期間にわたっての経済全体に及ぼす影響を年度全体にわたって見通すということは、現在の時点においてはまことにむずかしいことでございます。税収入等につきまして、その見積もりを現在の時点で的確に掌握するということが困難であるということは、私は御理解いただけると思います。したがいまして、歳入、税収入の見積もりを現時点において修正するということは、私は不適当であると考えるわけでございます。
 第二は、歳出の面でございます。歳出につきましては、こうした予算に組まれているような歳出を現在執行させていただくということが、現在の日本経済を安定させるゆえんでもありますし、国民に御安心を願えることであると思いますけれども、さらに、こまかく申しますれば、歳出につきましては、基準外国為替相場自体には変更がないのでございます。そして、歳出予算の執行については支障はないのでございますから、歳出につきましても私は修正をする必要はないと考えておるわけでございます。
 このようなことを御理解をいただきたいと思いますし、第三点は、しかし、変動相場制に移行したというようなことから、緊急対策を特に中小企業等に対してはどうしても必要であると思います。したがいまして、これらの中小企業対策等につきましては、四十七年度中にも必要な手段を講ずることとし、予備費の支出、財政投融資の弾力的な運用等で事態に対処できると思いますが、必要があれば、適当な時期に、適宜予算補正等、万全の措置をとりたいと考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(小坂善太郎君) 為替相場の変動が経済見通しに対してどういう影響を持つかという点でお答えを申し上げますが、政府の経済見通しは、単なる経済の予測ではなくて、経済の実勢を考慮に入れながら、政府がとる政策の効果を織り込んだ経済の見通しでございまして、政策的目標ともいうべき性格のものでございます。われわれは市場メカニズムというものを前提にいたしまして経済を考えておるので、この点は社会主義国における計画経済とは違うわけでございます。
 四十八年度の経済の見通しも、四十七年度後半からの経済の強い上昇基調のもとに、財政金融政策、また、貿易政策等の適切な運用によって、総需要を適正に保ち、経済の行き過ぎなどを押えながら、安定した成長を確保することを経済運営の基本といたしまして、この前提のもとに見通しが立てられておるわけでございます。また、国際収支につきましても、輸出の調整、輸入の促進等の政策努力により、極力対外均衡の促進をはかることを前提といたしております。
 最近の経済の実勢は、機械の受注等が増加いたしまして、設備投資にもかなりの動意が見られまして、卸売り物価の上昇が見られるなど、経済の上昇基調がかなり明確になってきておりまして、また、輸出の増勢にもなお根強いものがあるわけであります。こういう時点で、変動相場制移行による影響はかなり吸収されるというふうに見られるわけでございます。
 このような最近における経済の実勢と、さらには政府の経済見通しの性格等から見まして、変動相場制に移行いたしました現段階においても、見通しを改定する必要はないと考えておるわけでございます。
 次に、輸入品が安くなってくるという点で、消費者にこれをいかに均てんさせるかということについて、これは総理から御答弁がございましたわけでございますが、その御答弁とあわせて、私どもの役所といたしましては、追跡調査を行ないまして、この輸入品の為替変化による値下がりの影響が消費者に均てんされるようにつとめる考えでございます。
 また、何と申しましても流通機構に手を入れなければならぬのでございまして、その意味で、四十八年度の予算には、卸売り市場の整備をはじめ、各種流通機構改善のための予算が多く計上されておることは、すでに御承知のことでございますので、われわれといたしましては、一刻も早くそうした事態が招来できまするように、流通機構の改善に十分の手が入りまするように予算の成立をお願いしたい、こう考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(中曽根康弘君) 今回の通貨調整は、相当な影響がわが国中小企業に来るものと懸念して、万全の対策を講ずるつもりでおります。
 まず、第一に、金融関係を円滑に行なうように、政府関係機関並びに民間銀行に対しまして臨時・緊急の融資を指示または要請いたしました。
 それから下請企業に対するしわ寄せを防止するために、昨日、公取委員長と連名で、約百三十団体の親企業に対しまして通達を発しまして、各地の通産局においても実情を監視するという行動に移らせました。
 さらに、中小企業の為替の問題がございまして、為替の予約等につきましては、大蔵省と相談いたしまして、為替取引が円滑になるような便宜の措置を講じつつあります。
 なお、信用保険につきましては、この措置を強化することにいたしております。
 この変動相場制に伴いまして、各地の地域あるいは業種による中小企業に、一週間後あるいは二週間後、一カ月後、二カ月後と、刻々と影響が加重されてくるわけでございます。この実情を的確に把握するということと、各地域地域、業種別に的確な手を打つということが非常に重要であると思いまして、来週、通産局長を招致いたしまして、そのような報告と、実情の調査と、本省との連絡等について、いろいろ指示し、協議するつもりでおります。
 このような状態に対しまして、日本の産業構造をどう転換するかという御質問でございますが、やはり、日本の産業構造を福祉型、知識集約型に転換していく一つのチャンスでもあると思います。労働集約的なものはできるだけ発展途上国の方向に移していく、そして、日本はさらに高度のあるいは高級品を製造するという方向に強力に進めていきたいと思っております。
 最後に、アメリカの通商政策に対してどういう通商政策をもってこたえるかという御質問でございますが、私は、今回のニクソン大統領の一〇%ドル切り下げという報道を見まして、異常な決意をもって出てきているという予感がいたしまして、相手の意図を的確に把握することが非常に重要であると感じております。おそらくニクソン大統領は、第一期においてベトナム戦争を終結させて、第二期においては、やはり、国内の治安とか、あるいはドルの信認の回復とか、アメリカの内政を充実させて、一九七六年の独立二百年祭にアメリカの栄光を回復するという野心で出てきているのではないかと想像されます。そうなりますと、かなり強い政策をもって日本や外国に対して出てくるということも想像されます。そういうことを頭に置きながら、日本としては、言うべきことは言い、また、当然受け入れるべきことは受け入れながら、非常な柔軟性と適応力とをもって国益を守っていきたいと思うのでございます。
 われわれは、アメリカに対して言うべきこともあります。たとえば、多国籍企業の問題もございますし、インフレ的傾向の政策もございますし、ドルのたれ流しの問題もございますし、あるいは八百億ドルに及ぶユーロダラーが怪獣のようにヨーロッパを俳回しているということもあります。これはアメリカが責任ないとは言えません。
 また、日本自体が反省すべきこともございます。それは、輸出入の自由化の問題、資本の自由化の問題、あるいは対米貿易バランスの問題、こういうあらゆる問題について、お互いで検討すべきものは検討し合って、協調のもとに事態を解決して、通貨戦争とか貿易戦争というような事態を引き起こさないように、お互いが注意しながら配慮して解決していきたいと思うわけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○副議長(森八三一君) 竹田四郎君。
   〔竹田四郎君登壇、拍手〕
#19
○竹田四郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいまの政府からの報告に対しまして、田中総理以下関係大臣にただしてまいりたいと存じます。
 第一は、今後の国際通貨情勢についてお尋ねをいたします。
 今回の変動相場制は円の切り上げに連なるものであると思いますが、どうであろうか。政府は、円の再切り上げではないと、このように言っているわけでありますし、ただいまも、円の適正な水準を保つためだと、こう言っておりますが、それでは、はたして、アメリカの一〇%のドルの切り下げは円の対ドル一一・一%ということに相なるわけでありますが、この対ドル一一・一%に上積みをするつもりなのか、どうなのか、この点をひとつ明確に答えていただきたいと思うわけであります。
 現実に、アメリカも、EC諸国も、あるいは国内においても、対ドル一五%あるいはそれ以上の切り上げがあろうというふうに予測をしているわけであります。また、アメリカ、EC諸国の日本への圧力も今後一そう強まるであろうと思いますが、
   〔副議長退席、議長着席〕
いままでの政府の態度はきわめて甘かったし、また、今日もそのきびしさを理解していないというふうに判断をされるわけであります。また、今後の固定相場制への復帰は、一体いつごろまでには果たさなければならないのか、この点も明確にしていただきたいと思いますが……。
#20
○議長(河野謙三君) 竹田君、ちょっとお待ちください。
     ―――――・―――――
#21
○議長(河野謙三君) この際、御紹介いたします。
 来日中の国際連合事務総長クルト・ワルトハイム氏が、多忙な日程をさかれて本院に来訪され、ただいま貴賓席にお見えになりました。
 ここに、諸君とともに、心から歓迎の意を表します。
   〔総員起立・拍手〕
     ―――――・―――――
#22
○議長(河野謙三君) 竹田君の質疑を続けます。
#23
○竹田四郎君(続) 大蔵大臣は、去る十三日、変動相場制移行への決定を発表をしたときの最初の記者会見においては、なるべく早く固定相場制に返りたい、こういうふうに述べました。その後、自民党首脳との会議後の記者会見においては、当分の間変動制はかなり続くと、こういうふうに報道をされたわけでありますけれども、わずか数時間にどうしてこういうような心境の変化があったのか、この間の事情について具体的に詳しく説明を求めます。
 また、固定制に戻っていくためには、具体的にどういう手続をもって戻っていくのか。国際的な会議で多国間調整をするのか、日本単独の決意でもってやっていくのか、この際明らかにしていただきたいと思います。
 この際、経企庁長官にお尋ねをいたします。
 あなたは、十三日の経済社会基本計画の閣議決定後、新聞記者会見をいたしまして、今度の新しい基本計画には円の切り上げ等の通貨調整済みである、こういうことを記者団に発表になっておりますが、この円の再切り上げは基本計画の中に具体的にどのくらい調整をしてあるのか、はっきりと答弁をしていただきたいと思います。
 第二にお尋ねしたいことは、スミソニアン会議からわずか一年余りで円の切り上げに追い込まれたことについて、田中総理の反省をお尋ねしたいと思います。
 私は、田中内閣が国際経済政策において完全に失敗したと断言してはばからないと思います。しかも、今回は、日本が特に攻撃の主目標にされたことであります。今回の通貨危機の主要な原因の一つは、確かにアメリカの財政経済運営の節度のなさにあります。他の一つは、日本の輸出優先、生産第一の経済貿易構造にあったことは間違いのないところであります。先ほど通産大臣が申しましたように、ベトナム戦争を中心として、アメリカはドルのたれ流しをやりました。多国籍企業をたくさんつくりました。インフレ政策をやりました。これが今日の国際通貨危機を招いた主原因であります。しかし、日本は、このアメリカに対し、戦車輸送なり、あるいは軍事基地を貸すなり、こうしてベトナム戦争に協力をしてきたではないですか。このベトナム戦争への積極的な協力によって、まさにドルは紙っぺらにしかすぎなくなってまいったのであります。私は、いままでの間に、日本政府は、アメリカに対して財政経済の運営の節度を要求し、その節度を守るために金・ドルの交換性を当然アメリカに要求すべきであったと、このように思いますけれども、総理の考え方を聞きたいのであります。
 国内においては、口では発想の転換だ、やれ福祉の充実だと、こういうことを言っていながら、実際には超大型のインフレ予算を編成し、生産基盤の整備と拡大をはかり、それが輸出への圧力となり、大きな黒字基調を定着させてしまったのであります。福祉充実といっても、せいぜい予算の伸びの範囲内においてしかやらなかったのでありますし、その上に列島改造論を上のせして、まさに生産基盤の拡大へと財政運営をやったのであります。この結果、インフレは高進し、所得格差は拡大し、いまにも社会不安が生まれそうな国民生活になってしまったのであります。田中総理は、今日の現実と、このきびしい通貨危機について、どう反省をしておられるのか、お尋ねをいたします。
 第三番目には、現在審議中の四十八年度予算案についてであります。
 私どもは、今日の国際通貨危機は根本的な変化であるし、それに対応して日本の財政経済の運営のあり方も根本的に変えていかなければならないと思います。今日の予算原案は、対ドルレートの変更を考慮していなかったことからいたしまして、当然これは撤回し、新たに編成し直しまして再提出をすべきであります。予算案と経済見通しとは一体のものであり、企画庁の計算におきましても、経済成長率あるいは卸売り物価指数、消費者物価指数は、これによって変動をするという計算をしているわけであります。また、今回の予算も、いままでの理念で組まれているわけでありますから、大いに発想の転換をこの際しなければならないのであります。
 また、歳出につきましても、先ほど御答弁がありましたけれども、政府間のものもありますけれども、たとえば、防衛関係費の武器、車両、航空機の購入費、あるいは経済協力費、食管会計、産投特別会計、こうしたものは当然に予算の修正を行なうべきであるわけでありますし、歳入見積もりにおきましても当然減額になるし、地方財政計画とかあるいは地方交付税の補てんも必要になってまいりますし、先ほど通産大臣が申されましたように、中小企業の関係費もただ融資だけでたえられるような事態では私どもはないと思います。現実に補助金を出して救済をせざるを得ないというようなものもあるわけでありますから、この際、予算案を撤回して、組み直しをすべきであろうと思います。
 政府は、補正によって切り抜けよう、こういう考え方のようでありますが、私どもは、予算の性格そのものを変えなければならないという観点でございますから、補正によっては予算の性格を変えていくことが不可能であると思いますから、組み直しを要求いたします。
 第四番目には、総理の政治責任についてであります。
 政府・自民党は、円の変動相場制への移行は、ドルの一方的な切り下げであるから、円の切り上げではない、こういうふうに強弁をしておりますが、国民はだれもこの政府の言を信ずる者はありません。むしろ、その言い分に私ども国民は怒りをさえ持っているのであります。現実にきのうの東京の市場を見ましても、ドルの切り下げよりも高い二百七十一円という相場になっておりますし、米国は露骨にも一〇%の円切り上げを要求しております。日本国内におきましても、先ほども申しましたように、一五%前後というのが常識になっているのであります。政府は、日銀がこれに介入をしてダーティ・フロートをやる、こういうふうに言っておりますけれども、まさに先ほどの政府報告は責任のがれの詭弁であると言うほかはありません。田中首相は、最近まで、円の切り上げに対して外圧はない、こういうふうに言っておりました。しかし、今回、円の切り上げ方向に追い込まれてまいりますと、豹変して、わが国には責任はない、外圧だと、こうして自分の責任をたな上げにしているのであります。総理は、昨年十一月の九日、本院予算委員会において、わが党委員の質問に対しまして、日本経済は円切り上げにたえられる状態ではない、円切り上げが避けられなかった場合には相当な政治責任が生ずる、相当なものであると、繰り返して政治責任を負うと答弁しておられます。また、さきの国会の施政方針演説においても、回避にあらゆる努力をすると述べたばかりであります。一昨年の八月以来責任あるポストについていた総理が、この間に、切り上げ回避のために一体どれだけの努力をしてきたか、明確にしていただきたいと思います。
 また、今回の措置につきましては、日本は全く主体性がなかったと言わねばなりません。通貨危機の責任を負うべき、被告席に立つべきアメリカが、多国籍企業を使ってドル売りをしているのを放任し、西欧各国を攻撃し、最終的には国民を孤立させ。攻撃目標にしてきているわけであります。このアメリカにかき回され、その上一〇%のドル切り下げというあいくちを突きつけられて、ギブアップという状態に現在押し込められてしまっているではありませんか。金・ドル交換性が停止されている今日、この措置は実質的に他国の通貨の切り上げをやったのと同じ結果でありまして、名を捨てて実利主義をアメリカは発揮したのであります。円切り上げが現実問題となった今日、首相はどういう政治責任をとるつもりなのか、それとも、へ理屈を並べて責任を回避するつもりなのか。発想の大転換をはかるために、あなたは総辞職をして野党に政権を担当させてはどうですか。政治責任について具体的にお尋ねをいたします。
 第五は、日銀の相場介入について、大蔵大臣にお尋ねをいたします。
 円の実勢を見るために、そしてまた、ドルの切り下げに上積みをするために変動相場制にするというような御説明でありますが、円の実勢を探るためであるならば、なぜ日銀の介入を許すのでありますか。一昨年の変動相場制においても、西欧諸国は、日本はダーティ・フロートだといって非難したことは、御存じのとおりであります。日銀と政府の態度は、相互に矛盾しているのではありませんか。政府・自民党のメンツを捨てて早く実勢相場を見出し、日銀のきたない変動制は避けるべきではありませんか。
 さらに、大蔵大臣にお尋ねをいたします。
 十三日の米国のシュルツ財務長官の声明の中で、日本の一〇%以上の円切り上げを期待する、こう述べておりますが、これについては日本政府は暗黙の了解を与えているというワシントン電がありますが、真偽のほどは一体どうなんですか。ボルカー次官との会見の席上か、あるいは細見代表を通じてか、その点を明らかにしてほしいと思います。
 第六は、円・ドルレートの調整によるドル圏からの輸入物質の価格についてであります。これは当然低下するはずであります。この差益は当然に一般消費者に還元し、価格の引き下げをはかるべきであります。しかしながら、前回の場合は、全くそれがありませんでした。総代理店制や商社、メーカーがそのメリット分をネコババをして、消費者に全然還元をしなかったと言ってもよいのであります。たとえば、小麦は安く入ってまいります。その小麦について、私は、それを学童給食の場合にその差益を還元しろ、こう申しました。当時の大蔵大臣は、それを承認をいたしました。しかし、これも一向にやっていないのであります。今度の場合にも、私はこうしたことがたいへん心配になります。差益を国民に返す措置を具体的にどうとるのか、この点をひとつ企画庁長官に明確にしていただきたいと思います。差益でもうけた者に対しては、ペナルティを課するとか、あるいはその差益を全額国庫に納入させるとか、こういう措置をとるべきであると思うのであります。
 第七に、産業貿易構造の転換のために、次の措置をとることを要求いたしますので、御答弁をいただきたいと思います。
 第一は、二重価格制を解消すべきだと思います。輸出の価格は引き下げて、その分を国内価格を引き上げるというようなことが公然と行なわれているわけでありますが、これを即刻解消させるべきだと思います。
 二番目は、商社や大企業が、下請企業、中小企業のコストを無視して合理化をさせ、あるいは契約をする、こうした措置をやめて、中小企業がコスト・プラス適正利潤で経営ができるようにすべきだと思います。
 日本の労働者の低賃金は、きのうも衆議院でお話がありましたけれども、労働時間から見ましても、年間を通じてアメリカの労働者より一カ月半、西独の労働者よりも一カ月、余分に働いているわけであります。こうした低賃金構造をやめて、少なくとも最低時給制度を法制化し、現在のところ時給五百円程度のものにはさすべきだと思います。また、週休二日制を義務づけるべきであると思います。
 四番目に、公害等につきましてはP・P原則を厳守して、公害無過失賠償責任制度を確立し、企業の責任において公害の被害者の医療や生活費を保障するようにすべきだと思います。
 五番目には、老齢年金については積み立て方式から即時賦課方式に改め、年金額も一般雇用者水準に引き上げるべきであると思います。
 以上の項目はほんの一部分でありますが、このくらいは実現をしてもらわなければ、貿易産業構造の改善の手始めにもならないと思いますけれども、関係閣僚の決意を伺いたいと思います。
 最後に、大企業優先からの転換をはかるために、資本金一億円以上の大法人の法人税率を西欧水準並みに引き上げるべきであると思います。かつまた、租税特別措置を廃止すべきであると思います。政府の資料によりますと、法人の実効税率は、国・地方を合わせて四五・〇四%になっておりますが、アメリカはこれが五一・六四、フランスは五〇・〇〇、西独は四九・〇五、イギリスが四〇・〇〇でありますが、日本の法人税率は確かに安いのであります。その他、全法人の所得顔と法人税とを比較してみまして、法人の租税負担率を見ますと、平均三一・四七%であり、大法人になりますと、三〇%を割っているのであります。租税特別措置による減価償却分を所得とみなしてみますと、この割合はさらに低くなります。さらに、階層別に見てみますと、資本金一千万円から五千万円程度の負担率が一番高く、百億円以上の企業百五十九社について四十五年度で見ますと、平均二八・七八%が実際の租税負担率で、減価償却分を含めますと二五・〇五%、こういう低水準にあるわけでありますから、一億円以上の大法人の税率を引き上げて、いままでの企業優先の経済構造を変える、このようにいたすべきであると思います。
 以上につきまして、各閣僚の明快な答弁を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(田中角榮君) お答えをいたします。
 大幅な円切り上げを招いた政府の責任を問うという趣旨の御発言でございますが、先ほども申し述べましたとおり、多国間平価調整が行なわれましてからわずか一年余しかたっておらないのでございます。先ほども述べましたように、平価調整の効果というものは一年ないし二年、言う人は二年ないし三年たたなければ効果はあらわれないと、こう言われておるにもかかわらず、政府は昨年十月に関税の一律二〇%の引き下げ、輸入ワクの拡大、輸出の適正化、大型補正予算の編成など、政府は一貫して国際収支の改善、不均衡是正に努力をしてまいったことは、御理解を賜われると思うのでございます。しかも、現在なお、資本の自由化や、物の自由化や、いろいろなことを検討いたしておるのでございます。たいへんだと言われる三十三品目残っておる自由化に対しても、一つずつ、どういうふうな対策をすれば自由化できるのか、また、自由化できないとすれば輸入ワクをどう拡大して対米不均衡を是正できるのかと努力を続けてきたことは、事実において御理解が願えると思うのであります。
 また、現在審議をお願いいたしております四十八年度予算及び財政投融資も、国民福祉の向上に重点を置くとともに、国際収支の均衡回復を重要な柱といたしております。それは、このような物価高と言われるようなときにこのような大型予算を組むことは、国際収支均衡といういわゆる対米均衡をはかるための予算ではないかということを代表質問で御指摘をされるような状態でもおわかりになるとおり、政府は従前これが改善に努力を続けておることは、ひとつ御承知をいただきたいと思うのでございます。
 今回は、黒字国の責任だけを追及することによって国際通貨の安定はできない、まず赤字国が責任を果たすべきだという御議論でございました。しかも、国際的にもそういう議論はたくさんございまして、二国間で話をするよりも多国間調整をすることがいいのだということになったのは、お互いが前向きに努力をしないで国際通貨の安定はできないんだということに基因しておるわけでございます。その意味で、今回は、まずアメリカ自身が一〇%のドル切り下げを決定し、これに対応して、各国がそれぞれ自国の置かれておる国際環境のもとで適切と考える措置をとることになったのでございます。先ほども述べましたように、イタリーも二重相場制と変動制をあわせた制度をとっておりますし、また、イギリスその他も変動制を維持しておるわけでございます。そういう状態を見ながら、わが国としては、昨日から当分の間、円をフロートさせることにしたわけでございます。今後とも、国際収支を妥当な規模におさめる努力を続けてまいらなければならないことは当然でございます。
 それからドル価値の維持は、わが国にとりましても重大な関心事でございます。これは常にアメリカ側にも申しておるのでございますが、一年間に百四十億ドルから百五十億ドルもある商売の相手でございますから、この決済をするドル価値が不安定であるということでは、日本も困るわけでございます。また、ドル価値が維持されないということは、日本の不利にもつながるわけでございます。かつてキーカレンシーとしてのドルが基軸通貨としての面目を回復するように、アメリカ側に再三要請をいたしておるわけでございます。そのためには、アメリカの無制限な海外投資そのものも規制をしてもらいたいというような、相当突っ込んだ話し合いもいたしておるわけでございます。また、ドルが金との交換性を回復するということは望ましいことでございますし、ドルを対象に大きな貿易を続けなければならない日本としても、ドル価値の維持は望ましいことでございますので、アメリカには十分わが国の意思を通じておるわけでございます。その意味で、今回、アメリカが、国際通貨情勢の安定のために、みずから一〇%のドルの切り下げを決定したということは、評価しなければならない事実だと考えるものでございます。今後とも、機会あるごとに、アメリカに対し、輸出振興の努力などを通じてドル価値を維持していくことを要請してまいりたいと考えるわけでございます。
 このような状態が起こったというものに対して政治責任をどうするかということでございますが、これは日本の易貿収支の均衡を保つこと、国際収支の均衡を維持しなければ、先ほども述べましたように、保護貿易主義の台頭によって、提案をしておる新国際ラウンドにも相当影響があります。しかも、縮小均衡路線を排除するためには、日本はやはり国際収支の均衡に十分な配意をしなければならないことは、言うまでもないのでございます。そういう意味で日本政府が国際収支均衡のために全力を傾けなければならないという、基本的な政治姿勢を述べたものでございます。その意味では、私たちは、いままでも、また現在も、将来も、国際均衡を守ることによって拡大均衡を維持してまいらなければならない責任を痛感いたしておるのでございます。相当の政治責任と言ったことは、円平価の調整ということが行なわれてわずかでございますから、また、日本もこのような努力をしておるわけでございますので、国際収支の均衡を維持するために格段の努力をいたします、円平価の維持のためにはなみなみならぬ決意を有しておるという姿勢をあらわしたものでございます。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(愛知揆一君) 御質問の第一点は、固定相場制への復帰はいつごろか、また、その際、円の対ドルレートは幾らにするのか、こういう御質問と存じます。
 先ほども申しましたように、変動為替制と申しますのは、市場における需要と供給とによって相場形成が行なわれる仕組みでございますから、ここしばらくの間は、今回のドルの切り下げの効果と、これに対応した国際通貨情勢の推移を慎重に見守った上で、適正な水準を見出すことが適当であると、かように判断いたしまして変動制に移ったわけでございます。したがいまして、今後における市場の動向を見きわめまして、適当な時期にこれを行ないたい、こういうふうに考えているわけでございます。
 適当な時期とは何であるか、なるべくすみやかにと言ったり、適当な時期と言ったではないか、こういうお尋ねがその次にございましたが、適当な時期と申しますのは、たとえば市場を閉鎖するというようなときには、なるべくすみやかに、すなわち、せいぜい数日間ということを予想して申したわけでございますけれども、それと同じようにとられては、この変動為替相場というようなものはもっと長い適当な時期でございますから、文字どおり適当な時期と申したほうがよりよく理解されると思いましたから、適当な期間と申したわけでございます。さように御了解をいただきたいと思います。
 その次の御質問は、それならば、たとえば日銀が介入するというようなことは、市場の実勢をあらわすことにならないではないか、いわゆるダーティ・フロートということになるではないか、こういう御質問でございます。
 御指摘のように、変動相場制度の本質というものは、市場の需給に相場の形成をゆだねるやり方でございますから、大幅な介入というようなものはやるべきではございません。しかし、いずれの国におきましても、かくのごとき場合に、一時的な要因によります乱高下を防ぐために若干の介入をすることは、これは各国の常識でございます。したがいまして、大がかりな介入はいたしません。しかし、乱高下の防止ということは、適正な秩序の維持のためにいたしますということは、これは日本の場合におきましても自然のやり方である、かように御理解をいただきたいと思います。
 それからその次に、アメリカは日本にどのくらいの切り上げを求めているのだろうかと、こういう御質問でございましたが、これは、アメリカに限らず、他国は、日本がより多くの切り上げ幅をしてくれたほうがよろしいと願望は持っておるでございましょう。しかし、これをいかにするかということは、今後適当な期間フロートをやって日本が自主的にきめるべきものであることは、当然のことであると思います。(拍手)
 その次は、今後の国際通貨交渉、長期的な交渉に臨む方針はどうするのであるか、あるいは、米国のやり方がけしからぬ、多国籍企業は規制しなければならない、金・ドル交換性は回復を要求すべきである、いずれもごもっともな御質疑であると思います。
 通貨改革の問題につきましては、政府といたしましては、かねがね次のような考え方を持っております。たとえば、一つは、いずれの国も、国際収支の不均衡の是正ということは、インフレをそれぞれの国が起こさないように抑制することに最大の努力を払うことである。まずそれぞれが国内政策に重点を置いて、それぞれの国がインフレ抑制に重点を置くべきであるということをわが国は主張をいたしております。それから資本の移動規制は必要と考えられるということも主張いたしております。また、米ドルの交換性の回復は、各国ともこれを望んでいることであるので、どうかして、アメリカがこの努力に対して最善の努力をすべきであるということも主張いたしておりますが、今後、今回のような経験を通しまして、さらに一段と強力に積極的な主張を行なってまいりたいと思います。
 多国籍企業の問題につきましては、OECD等の場を通じましてこの処理について善処をいたしてまいりたいと思います。
 それからその次の御質疑は、大企業の問題に対しまして、税制等においてもっと積極的に大企業優先にならないようにやってほしいという御質疑でございました。これもごもっともでございますが、同時に、この法人の税負担を高める道は、税率の引き上げだけではございませんで、課税所得そのものを拡大するということがまずこの際取り上げるべき問題であると考えまして、四十八年度の改正におきましては、いわゆる特例措置を大幅にやめることにいたしておりますことは御承知のとおりでございます。まず、この特例措置の廃止ということ、それから御案内のように、固定資産税が非常な増徴になります。こういったような点は、法人の税負担がきわめて現在に比して過重になるということは御承知のとおりと思いますが、さらに、今後の日本の税制のあり方ということにつきましては、いろいろ前向きに考えなければならないと思っておりますが、今後の問題といたしまして十分研究させていただきたいと思います。
 最後の御質問は、昭和四十八年度の予算についての御質疑、御意見でございますが、この点は、ただいま総理からも御答弁がございましたとおりでございますが、私から一言補足させていただければ、税収、歳入というようなものは、いわゆる見積もりの問題でございます。なるほど、こうしたフロート制を採用するというようなことによって、将来、長い目で見れば、いろいろと見通しが違うこともございましょうが、しかし、現実の時点、今日の時点において、この年度の歳入の見積もりを変えるというようなことは、見積もり自身もできないと私は考えるわけでございまして、さような点で、まず、歳入についての政府としてあるいは私としての意見を先ほども申し上げたとおりでございます。
 それからその次は、歳出の面でございますが、なるほど外貨建ての支払いのものもございますけれども、これはレートが変更されたわけではございませんので、予算の執行には何ら支障がないわけでございます。
 そして第三に、お互いに非常に心配でありますところの中小企業につきましては、その対策についてあらゆる措置を講じようということについては、先ほど、佐藤一郎議員の御質問に詳しくお答えをいたしたとおりでございますから、どうか御了承をいただいて、四十八年度予算というものは、国民生活に一日も欠くべからざるものでございますから、この御審議を早くしていただきたいということを心からお願いを申し上げる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(小坂善太郎君) 私に対する質問は、今回の為替措置と物価の関係であったと思いますが、これは前回の四十六年十二月の一六・八八切り上げましたその経験がございますので、これを生かして極力そのような方向で努力しようと思っておるわけでございます。
 具体的に申し上げますと、まず政府が関与しておりまする物資の売り渡しの価格を引き下げることであります。小麦の点について言及されましたが、もちろん小麦を含めまして、外国製たばこというようなものは、これは政府の関与物資でございます。
 第二に、主要輸入物資の価格の動向等に関する追跡調査をいたしまして、そして消費者に情報を提供するということであります。
 第三は、輸入総代理店というものがこれは独占的な地位を持っておるわけでございますので、独禁法の監視規制の強化をいたしますと同時に、第三者による真正商品の輸入を並行して競争させるということでございます。
 第四には、輸入政策の活用等の諸施策を講じてまいる。
 さらに、外国のインフレーションを遮断するということが必要であるわけでございまして、その意味で、こうしたドルの切り下げによる物資の低価、その利益が消費者に還元されるように、流通段階等において吸収されることがないように、極力努力してまいりたいと、こう思っておる次第でございます。
 さらに、経済計画あるいは経済見通しに関して御質疑がございましたが、これは、先ほどお答え申し上げましたように、私どもは市場メカニズムというものを中心にして経済を見ておるわけで、いわゆる計画経済をやっておるような社会主義国の場合とは違うわけでございます。そういう点で、大きな一つのファクターであることはいなめませんが、今回の為替措置というものは現在フロートしておる最中でございますから、これは大蔵大臣が言われましたように今後が非常に大事なのでございまして、この行き先を見なければなりませんが、それと同時に、財政金融対策あるいは貿易政策、そういうものを十分勘案いたしまして、望ましい経済安定と社会的な公正の行き渡るような社会をつくるためのそうした施策を強力に推進してまいりたい、こう思っておる次第でございます。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(中曽根康弘君) 中小企業対策と産業構造転換につきましては、先ほど御答弁申し上げましたが、ただいま小坂大臣がお答えになりました輸入品の価格の引き下げの問題でございます。
 前回行ないましたあとで通産省で調べましたところ、大部分が値下げを示した品物は、乗用車、エアコン、腕時計、ゴルフクラブ、万年筆、書籍等がございました。それから一部値下げしたが大部分は値下げしなかったものとしては、化粧品、ネクタイ、カラーフィルム等がございます。値下げが見られなかったものは、ライターや安全かみそり等がございます。ウイスキーはなお値下げが行なわれました。今後も、このように商品別にトレースいたしまして、値下げが行なわれるように監視してまいりたいと思います。
 なお、二重価格制、それから出血受注等について御指摘がございましたが、この点につきましては、下請代金支払遅延等防止法を活用いたしまして、立ち入り検査あるいは勧告、あるいは必要に応じて公取の措置を要求する、そういうことによりまして監視体制を厳にしきまして、間違いのないようにいたしたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣加藤常太郎君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(加藤常太郎君) 最低賃金制と週休二日制についてお答えいたします。
 最低賃金制については、すべての労働者に実効性のある最低賃金を適用するよう、現行法に基づき今後もその推進に極力つとめる所存であります。
 週休二日制については、その普及促進をはかるため、今後とも行政指導を強力に進める考えであります。(拍手)
#29
○議長(河野謙三君) この際、答弁の補足があります。愛知大蔵大臣。
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほどの御質疑の中で、暗黙の了解を得ているかどうかという御趣旨の御質疑に対しまして、答弁が十分でなかったという御指摘でございまして、まことに恐縮いたしました。
 私といたしましては、自主的にきめるべきものであると御答弁を申し上げて、それが御答弁のつもりでございましたが、もちろん暗黙の了解云々というようなことはございません。あらためてお答え申し上げます。(拍手)
#31
○議長(河野謙三君) 小坂国務大臣。
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(小坂善太郎君) 先ほど経済計画ないし経済の見通しの中でいろいろな政策手段を用いてこれを達成したいということを申し上げましたのでございますが、やはり、経済計画の中にどのくらいの為替の変更を見込んでおるかということを答えよという話のようでございまして、たいへん失礼いたしました。
 この点に関しましては、経済計画というのは、御承知のように、経済社会基本計画というものを本年度を起点といたしまして五年後の姿を想定しておるわけでございますが、これにつきましては、経済の成長率を九%程度、それから消費者物価を大体四%台にして持っていきたいと、こういうことを言っているのでございまして、これを達しまするためには、財政的な、あるいは金融的な、あるいは貿易的な、また場合によっては為替という問題も出てくるかもしれぬということは想定しているわけでございますが、これを何%円を切り上げるというようなことは実は申しにくいのでございます。しかも、なお、いまフロートしている最中でございまして、日本の政府が何%切り上げるということを考えておるということを申しますことは、この場からは不適当かと考えておるわけでございます。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#33
○議長(河野謙三君) 鈴木一弘君。
   〔鈴木一弘君登壇、拍手〕
#34
○鈴木一弘君 私は、公明党を代表いたしまして、ドル切り下げ及び円の変動相場制移行について質問を行なうものであります。
 総理は、円の再切り上げが避けられない場合、それは相当な政治責任が生ずると答弁をしております。今回、変動相場制に移行したということは、いかに政府が弁解をしようとも、実質上の円の再切り上げになったということであります。しかも、経済・国民生活へ多くの不安と混乱を呼んでいるのであります。外圧によって押しつけられたものという弁解ばかりをするのでなく、内閣総辞職をして国民に責任を明らかにするべき事件でありますが、総理はどう責任をとられるのか、明らかにしていただきたいのであります。
 政府による経済見通しも、これによって大幅に変更しなければならないはずであります。四十八年度国民総生産の成長率において、名目成長率一六・四%を見込んでおりますが、これが大幅に低くなることは必至であります。したがって、法人税収の減少は避けられず、歳入減となってくるのであり、四十八年度予算の基礎は大きくくずれたとしか言えないのであります。また、歳出面でも、地方交付税の減少が余儀なくされ、さらに中小企業対策費を増加させねばならないはずであります。一昨年の円切り上げショックのときは、商工中金に五十億円、中小公庫で二十億円の増資を実施していることから見ても、今回の変動相場制移行に伴って当然これらを含めた措置をしなければならないでありましょう。したがって、四十八年度予算と財政投融資計画の修正をするべきと思うのでありますが、どう思うか、お伺いをいたします。また、経済見通しなどの改定は必ずするべきと思いますが、いかがでありますか。
 政府は、いままでも円対策として種々の施策を講じてきたと言っておりますが、実際には、輸出は増大を続け、外貨保有高は一月末で百七十八億ドルになっております。このことは、輸出優先、貿易立国の産業経済の体質を持っているということであります。その上に、政府の施策が輸出奨励に走ってきたために、今回の事態を招いたとも言えます。したがって、産業体質に総体的な変革をとるべきときが来ていると思われるのであります。輸出生産第一主義から、公害防止、物価安定、福祉優先の経済への産業構造、経済構造の変革がなされるべきであります。総理は、日本経済のあるべき方向を明確に国民に対し示すべきであると思いますが、どうお考えになっておられるか、伺います。
 次に、昨日、日銀がドルの買いささえを行なっているようでございますが、過度の介入は円のほんとうの価値を見きわめることを困難にさせるのみであります。政府は過度の介入は避けるようにするべきであると思うのでありますが、どうなさるおつもりか。
 次にお伺いしたいのは、アメリカに対する政府の態度についてであります。
 今回のドル切り下げ、円の変動相場制の採用も、もとをただしてみれば、アメリカ系の多国籍企業がドルを大量に売り、マルクを買ったことから始まっているのであります。言いかえれば、アメリカがみずからドルを不安定にし、ドル価格を引き下げ、全世界に迷惑と混乱をかけたわけであります。このアメリカ国内以外に流れているいわゆるユーロダラーは総額七百億ドルとも八百億ドルともいわれ、アメリカの金準備高が百二十五億ドルしかないことから見ると、ちょうど当座預金が百二十五万円しかない商人が七百万円の手形を振り出していると同じことであります。しかも、一昨年暮れのスミソニアン体制確立のときに、この手形、つまりドルは現金化しない、すなわち金にかえないことを米国は宣言して現在に至っているのであります。わが国はスミソニアン体制堅持を宣言して、後生大事にドルをため込み、国民が汗水流して勤勉にかせいだドルの値打ちが日々下落し、しかも、黒字国責任論の立場から世界じゅうから非難されるという情ない被告席という迷惑な立場に立たされております。政府は、この不合理なドルの力による政治をどのように理解し、また、どのように対抗する考えなのか、総理から国民の納得のいく御説明を願いたいのであります。
 また、一昨年まで続いたブレトン・ウッズ体制は、ドルが永久に黒字基調を続けるという米国の自信を基礎にすべてがきめられております。したがって、そこでは国際収支の赤字国がいわゆる悪の根源でありまして、すべての責任をとる仕組みになっておりました。たとえば、イギリスはそのために何回かポンドの切り下げを断行し、それと同時に政府支出の大幅削減を無理じいされてきております。つまり、当時は、赤字国責任論が支配的な見解であったのであります。しかるに、ベトナム戦争、多国籍企業の進出などを契機として、アメリカは、ブレトン・ウッズ体制が予想もしなかった大幅赤字国に転落をいたしました。赤字国責任論の原則は、アメリカにとってはなはだ都合の悪いものになってしまったのであります。しかし、ドルが金と連動していた当時には、ゴールドラッシュという赤字国アメリカにとって手痛い制裁手段が残されていたのであります。ジョンソン前アメリカ大統領は、そのため大統領へ再選することを辞退する羽目におちいったともいわれているのであります。
 しかるに、一昨年八月十五日、ドルを完全に金から自由の身にしたニクソン大統領は、同時に赤字国アメリカの制裁手段からも解放されました。アメリカの論調が赤字国責任論から黒字国責任論へ大きく転換したのもそのころからであります。いままでの体制のままならば、赤字国責任で当然アメリカがかぶるべきものを黒字国責任にすりかえたのは変節きわまりなく、この点を総理は一体どうお考えになっているか、伺いたいのであります。黒字国責任を押しつけられ、唯々諾々と国民の犠牲で円の再切り上げに向かうのは無定見きわまりなく、その点、総理の責任はどうお考えになっていらっしゃるか伺いたいのであります。
 また、今回の米国の打った手段は、金交換を停止したまま、米国に都合のよいように他国の為替レートを調整させるというのが究極のねらいであります。つまり、ドル本位制下の迅速な為替レートの調整であり、金平価は現行体制では有名無実になってしまっておりますけれども、これをさらに制度的にも金の廃貨の方向へ進もうというのが、今回のアメリカのドルの、SDRに対しての切り下げの真意であります。しかも、今回のドル切り下げと同時に、七四年末までの対外投資規制の撤廃が発表されたため、黒字国だけ責任を押しつけておいて、赤字国のアメリカは膨大なドルのたれ流しを続けようとするということになるのであります。このようなアメリカの身がってなふるまい、不信行為は、断然認めることはできないと考えるのでありますが、総理大臣並びに大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。
 また、したがって、本来ならば、米国系多国籍企業のドル売りなど、今後やめさせるようにしていくべきでありますが、アメリカは、その点、通貨混乱の張本人でありながら、一向に努力のあとがないのであります。さんざんもうけたあげく、自国内の賃金高や、設備の老朽化に困って、海外へ資本をしゃにむに投下し、非能率と低生産性の設備を本国に残して、みずから輸出競争力を弱くしておきながら、わが国をはじめ、各国に、競争力が強過ぎるから、それを弱めるために為替レートを調整操作するというのでは、全くの論外であります。
 シュルツ財務長官の声明には、海外投資規制をゆるめるとともに、その上、関税率の引き上げにフリーハンドを持って関税障壁をつくろうとしております。この声明には、自国の経済政策の失敗について何も反省がありません。みずから国際通貨危機と混乱を引き起こしながら、関税引き上げまでも自由権を持とうというのは、全くひとりよがりにほかなりません。貿易収支で黒字となっても、資本収支でくずれるかもしれず、またいままでと同じケースを繰り返すことになると思うのであります。それに対して、政府は、なぜ抗議をしないのか。アメリカに追随しているばかりでなく、傲慢なアメリカ合衆国にもっとき然たる態度をとって、みずからきびしく改めさせるべきであると考えますが、総理の所見はいかがでありますか。
 また、今後のドルを基軸としない新しい国際通貨を指向すべきと思うが、わが国としてどんな考えがあるか、これは大蔵大臣にお伺いをいたします。
 次に、私は、中小企業対策についてお伺いいたします。
 今回のドル切り下げショックは、繊維産業、雑貨などの中小企業にきびしく、それだけに対策を急がれるのでありますが、いま、繊維産業を例にとると、インフレショックに加えてのドル切り下げショックであり、それだけに政治の責任が大きいのであります。すなわち、原材料費の上昇は、ここに至って実に三〇%ないし五〇%も上がっております。たとえばウール――梳毛糸は、一キログラム八百円のものが、実に四千円と四倍から五倍になり、綿糸は、百八十キログラムの一行李当たり昨年十月に八万五千円であったものが、十一月からは十二万五千円と五割も高くなっております。政府の説明では、米綿一五%の減産とか、豪州で羊を一割から二割減らしたからと言っておられますが、実感としては、市場へ出回っているのが、本来回るべき数量の一割か二割しかない。つまり、買い占められて出回らず、価格が急上昇したとしか考えられないのであります。しかも、アクリルの四十八番手双糸などは、一キログラム当たり五百五十円のものがすでに買いたくても値がきまらず、四月ごろには八百円にまで上昇するだろうといわれております。
 このように、すでにはなはだしいインフレショックで、利益はなく、工場を動かせば赤字が生まれる現状であります。そこへもってきてのドル切り下げショックでは、全く、ただただ座して倒産するのを待つしかないのであります。こうなったのも、政府の物価対策の無為無策にほかなりません。日本列島改造ですべての物価を押し上げ、そしてすべての商品の買い占めを大商社、大資本に許しているからであります。この責任は、総理、どうお感じになっておられますか。このままでは業者は倒れるしかないではありませんか。倒れろと言うのかどうなのか、はっきりしていただきたいのであります。
 また、通産大臣は、この中小企業者の声をどのように聞き、どのように対策をするのか、先ほどの答弁にあった金融の円滑化などの程度のものではない強力な対策をお伺いしたいのであります。
 最後に、物価に及ぼす影響についてであります。前回の円切り上げの際、政府は、輸入品価格の値下がりにより物価抑制効果があると言っておりましたが、消費者物価は、切り上げからの一年間に全体で五・六%も上昇しており、輸入品の値下がりもほとんど影響していなかったのであります。今回も、経済企画庁では、物価抑制の効果があると述べておるようでありますけれども、はたしてそのように断言できましょうか。前回の円切り上げのときは、景気が停滞気味で、円切り上げによる不景気到来が盛んに言われたにもかかわらず、一向に物価は下がらなかったのであります。それに対して、今回は、強いインフレ経済の様相がある中であり、物価への効果は全く期待できないと考えられますが、どうなのか。この際、国民生活を最も重視して、生活関連物資の関税引き下げ、数量ワクの拡大、輸入自由化の促進などによる物価対策はどのように考えているのか、お伺いをいたしまして、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(田中角榮君) 変動相場制に至った政府の責任についてまずお答えをいたします。
 政府は、一貫して国際収支の均衡を目ざして努力をしてまいりましたことは、間々申し上げておるとおりでございます。昨年十月には、第三次円対策を決定し、関税の一律二〇%の引き下げ、輸入ワクの拡大、貿管令による輸出の適正化、
   〔議長退席、副議長着席〕
大型補正予算による内需の拡大などを行なってまいったことは、御承知のとおりでございます。また、現在、審議をお願いいたしております四十八年度予算及び財政投融資も、国民福祉の向上に重点を置くとともに、国際収支の均衡回復を重要な柱として編成したものでございます。今回の措置は、国際通貨制度の危機を打開するため、関係国間の協議を通じて、ドルの切り下げを中心に対応策が講じられたものでございます。
 なお、このような事態になったら相当の政治責任と言ったのはどうかということでございますが、相当の政治責任とは、先ほども申し述べましたとおり、一国際収支均衡対策になみなみならぬ姿勢を示したものでございまして、そのように御理解を賜わりたいのでございます。
 この種の問題に対しては、国際的に、わが国の通貨をどうしますなどということは、絶対に言ってはいけないのでございます。また、そういうふうな、ぐらぐらする姿勢がどのように影響するかは、もう論をまたないところでございまして、各国でこのような発言がせられておるのでございますから、これは御了承を賜わりたいと思うのでございます。
 内閣は総辞職をしなければならないというような、激越な、また御激励とも承る御発言がございましたが、内閣は、引き続きまして、今後とも、国際収支を妥当な規模におさめる努力を続けてまいらなければならない、こう考えておるわけでございます。御理解を得たいと思います。(拍手)
 国民福祉最重点の経済構造に転換すべきであるということでございますが、政府は、経済社会基本計画にも明らかにいたしましたように、輸出優先の経済構造から国民福祉指向型の経済構造への転換をはかることが基本的に必要であると考えておるわけでございます。このため、経済成長の成果が、より一そう社会のすべての階層に行き渡り、国民がひとしくゆとりと潤いのある生活ができるように、社会保障の充実、生活関連社会資本の整備、豊かな自然環境の確保、産業構造の知識集約化などにつとめてまいらなければならないと考えておるわけでございます。
 不合理なドルの力による政治をどう理解するかという趣旨の御発言でございますが、今回の措置は、先ほども述べましたとおり、多国間協議を通じて、まずアメリカ自身がドル切り下げを決定し、これに対応して、各国がそれぞれ自国の置かれておる国際環境のもとで適切と考えておる措置をとったものでありまして、力によるアメリカの圧力というものではないのでございます。また、今回の措置は、日米間の貿易収支の不均衡是正にも資するものでありまして、これはさきのホノルル会談の精神にも合致するものと考えております。
 アメリカに対して、赤字国の責任をどうするのか、もっと追及しなさいということでございますが、これは、追及するとかしないとかというよりも、戦後長いこと、四半世紀にわたって世界の基軸通貨として、いわゆるキーカレンシーとしてのドルの重さというものは、各国とも認めておるわけでございます。しかも、日本は、戦後はドルのささえによって今日の繁栄を築いたわけでございます。全く何にもなかったドルというものの時代に日本の経済がどうあったかということは、申すまでもないのでございます。昭和の初年、私たちはまだ子供の時代でございましたが、一ドル対二円、一ドル対二円五十銭、一ドル対三円というときがあったわけであります。そういうふうに、円平価が切り下げられるような状態において、日本経済は疲弊こんぱい、ついに戦争に突入したような歴史があることも事実であります。そういうものがずっと二十年間も三十年間も続いて、円は、ついに、一ドル対三円などではなく、一ドル対三百六十円になったわけであります。三百六十円をピークにして、この前やっと円平価が上がるような方向に戻ってきたわけでございます。ですから、そういう状態において、円とドルとの関係というものは、しかく簡単なものでないということは、十分理解しなければならないと思うのであります。(拍手)
 しかも、一年間に百四十億ドル、百五十億ドルという貿易を考えてみますと、ドル価値の安定ということは、日本の立場を守るためにも必要なのであります。その意味において、アメリカに対して、一ドル価値の維持ということに対してあらゆる角度から要請を続けておることは、国益を守ることにもなるわけでございます。今度は、いま御指摘がございましたように、多国間調整という形において行なわれたものではございますが、しかし、世界各国が、黒字国の責任だけではなく、赤字国の責任もまた果たさなければならないということに一つにはこたえた措置であります。アメリカ自身が、まず、切り上げを欲する前に、人に求める前に、話がつくならばということで、西ドイツを中心とした西欧諸国との話し合いの過程において、みずからドルを一〇%切り下げます、そうして各国通貨は、みずからがフランのように切り上げをしなければならないか、ドイツのように現状据え置きになるか、それからイギリスのポンドのように幾らか切り下げをしなければならないかというようなことは、お互い御相談しておきめください、こういうことで、アメリカ自身の責任で一〇%の切り下げが行なわれたわけでありますから、その意味においては赤字国の責任を果たしたことになるわけであります。
 しかし、これは将来においての私は一つの国際通貨の安定ということに大きく資するとは思いますが、やはりアメリカのドル価値の維持が行なわれて、基軸通貨としての位置をまた取り戻すような努力が、これからも続けられることが望ましいのであります。その意味においては、ベトナム戦争が終わったので、今度はドルも強くなるだろうという一般の見方でございます。そういう意味で、日本はいま百数十億ドル、二百億ドルに近いドルをかかえておるわけでございますから、ドルが下がることは望ましいことではないのであります。私たちは、そういう意味で、アメリカ自身のドル価値の維持、金との交換性の回復等に対しても協力もしていきたいと思いますし、また、アメリカ経済の回復、ドル価値の維持ということに対してはこれからも要請をし続けてまいるつもりでございます。
 中小企業対策について、私からも述べなさいということでございますから申し上げますが、政府といたしましては、今回の措置に伴い輸出関連中小企業が受ける影響の実態を十分把握した上、金融、為替取引安定などの面で適時適切な対策を講じてまいります。この前の一六・八八%切り上げが行なわれたときも適切な措置をやっておりますし、その措置はそれなりの効果を奏しておることは、御理解を賜われると思うのでございます。その当時の法制で残っておるものもございますし、その当時の数字は全部現在ございますので、中小企業に対しては万遺憾なき体制をとってまいりたいということでございます。
 輸入品価格の引き下げ等につきましては、経済企画庁長官等から御答弁を申し上げたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#36
○国務大臣(小坂善太郎君) 最初に、経済見通しを改定すべきではないかという御所論でございましたが、これは、先ほども、申し上げましたように、この見通しというものの性格が、いわば経済の望ましい姿という性格もございますし、政策的な努力の目標ということでございまするので、それと、最近の経済実勢が非常に強含みである、その中において今度の為替変動というものが吸収せられるであろうという点から見まして、この改定は、目下変動制をとっておる際でもあり、必要はない、こう見ておるということでございます。
 それから、私ども基本計画等を策定するにつきまして感じておりますことは、やはり、七〇年代に入って、われわれは資源とか環境というものは有限のものであるということを自覚しなければならぬということでございます。われわれが努力して大いに生産しても、それに要する資源というものは世界的に限りがある、また、それによって汚染される環境というものはある基準を越えてはならないということでございます。そういう意味で、先ほど綿花値上がりとか羊毛の値上がりの話がございましたけれども、われわれの経済活動というものは世界的な範疇において連動しておるということだと思います。その意味で、平価の問題も、やはり他国に対してわが国として意見を言うべきことは十分申しますけれども、また反省を求めますけれども、また、わが国自身も反省をしなければならぬ。自由化を進めるとか、関税を、非関税障壁を含めて、非常に障害を来たしておるという点があれば、これについては十分考慮しなければならぬということであろうかと思っておるわけでございます。
 最後に、切り上げが行なわれた場合の消費者物価に対する影響の問題でございますが、一般的に申しまして、平価の切り上げというものはデフレ的な効果を持ちますことは申し上げるまでもございません。そこで、一昨年の十二月の円切り上げの効果がどうだったかということでございますが、御承知のように、昨年の十二月の消費者物価の上昇率が前年に比べまして四・五%にとどまっておるわけでございますが、これはやはり円切り上げの効果があったものと言ってよろしかろうと思います。
 今回のドル引き下げと円の変動相場制への移行と輸入価格低下の問題でございますが、これは、私ども、極力この引き下げ的な効果を期待いたしまして、これを十分消費者の利益に還元させまするように、また、今後とも流通機構の改善、輸入自由化の推進等、各般の物価対策を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#37
○国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。
 私への第一の御質問は、変動制と予算の関係でございます。
 先ほど来申し上げておりますように、まず、歳入面について申し上げますと、変動相場制に移行いたしました結果、国際収支のほか、輸出関連産業を中心に、国内経済面にも影響を生ずることもありましょうけれども、変動相場制下でのレートの水準、変動相場制の期間など流動的な要因が多うございますので、現段階で年度を通じた経済全体に及ぼす影響、したがって、税収を中心とした歳入の見積もり等に及ぼす影響を的確に把握することは困難でございます。
 次に、歳出の面でございますけれども、円が変動相場制に移行いたしましても、基準外国為替相場自体には変更がございませんので、外貨建て支払いにかかる歳出予算の執行については支障は生じないわけでございます。こういうわけでございますから、四十八年度予算は修正する必要がないというのが政府の見解でございまして、むしろ、変動相場制移行に伴って、国内経済面への影響などを回避するためにも、ぜひ予算の空白が生じないような、さような御考慮をお願いをいたして、予算の早期成立をはかりたい、この考え方に御協力をお願いいたしたいと切に考えておるわけでございます。もとより、変動相場制への移行に伴いまして、中小企業等に対して緊急対策を必要とするに至ります場合におきましては、四十七年度中にも必要な手段を講ずることとし、予備費の支出、財政投融資の弾力的運用等、事態に対処するよう万全の措置を講じたいと考えておりますことは、先ほど佐藤一郎議員にお答えいたしたとおりでございます。
 次に、これは先ほどもお答え申し上げましたが、変動相場制のやり方でございますけれども、ダーティ・フロートということはやるべきでない、これはもとより政府もそのとおりに考えているわけでございまして、変動相場制の本質は、政府が介入を行なわずに、市場の需給に相場形成をゆだねるところにその本質があると思います。したがいまして、政府といたしましても、原則として市場介入は行なわない考えであります。同時に、一時的な要因による相場の乱高下を防止して市場の秩序を維持する、そうして為替取引の安定性を確保いたしますためには、必要最小限の介入は必要であろう、こう考えております。この点は国際的な常識であると考えまして、いわゆるダーティ・フロートとするのは当たらないと考えておる次第でございます。
 次の御質問は、米国の多国籍企業体制、あるいはその他の米国の政策についての御質疑でございます。
 総理から詳細にお答えございましたから、簡単に申し上げたいと思いますが、まず、多国籍企業の問題は、先ほども申し上げましたが、主としてOECD等の場におきまして日本側として今後とも十分の検討あるいは主張をいたしまして、御趣旨に沿うようなやり方をいたしてまいりたいと思っております。
 また、アメリカとの間には、いろいろの機会に、経済政策等については協議をし、討議をし、あるいは自由に話し合う機会もたくさん持っておりますので、ただいま御意見のございましたような点は、政府におきましても同感の点が多々ございますが、御趣旨を体しまして今後とも十分努力を重ねてまいりたいと思っております。
 要するに、最近のアメリカの立場といたしましては、国際的なアメリカとしての責任、あるいは通貨不安などが起こるようなことに対してアメリカとしての分かち合うべき責任ということも、相当に従来よりは理解や判断が進んできたように思っておりますが、この上ともにそういう姿勢が強くなり、また、協力の態勢が十分出てくることを期待してまいりたいと思います。
 それからそれに関連いたしまして、先般のアメリカとしての海外の投資規制の緩和、関税引き上げのいわばフリーハンドを持つようなことを内容にする最近の財務長官声明等にも触れての御意見でございましたが、こうした問題については、一般論といたしましては、もともと各国それぞれの意見や立場もございましょうから、一々これに対してコメントするのもいかがかと思いますけれども、ただいま申しましたように、特に公式の場としては二十カ国委員会あるいはガットといったような場で討議をしたり交渉をいたしたりいたしたい。いまも繰り返して申し上げましたように、十分日本側の考え方を主張してまいりたいと思います。
 今後の国際通貨体制のあり方について政府はどう考えているか、この点につきましての御質疑も、先ほどお答えをいたした点で触れておるわけでございますけれども、従来の国際通貨体制は米ドルが中心になっておりました。今後の問題としては、この体制を長く続けることに無理があるのではなかろうかと、こういう反省は各国から起こってきておるようでございます。したがいまして、通貨制度改革の最近の討議におきましては、準備資産の中でSDRの役割りをできるだけ増大させていくことについての考え方の支持が多くなってまいりました。わが国といたしましても、従来から準備資産としてSDRを育成強化する、SDRというものを魅力のあるものにしたい、これに対して積極的な意見を出しておるわけでございまして、米ドルの国際通貨体制の中における責任と役割りを減少させていくことに役立つように、まずこの辺から考えていくべきではないかというのが日本政府の主張でございますが、こうした考え方が、今回の通貨不安などにも関連いたしまして、なお今後各国の支持を受け、こうした意見が建設的に前進ができるように努力を続けてまいりたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(中曽根康弘君) 今回の通貨調整で最も打撃を受けると思われますのは、御指摘のとおり、繊維、雑貨、機械及び非鉄金属等であると思います。先ほど御指摘になりました繊維原料の騰貴等につきましては、先般来、証拠金を引き上げまして、大体現物価格と同じ価格の丸代というところまで引き上げまして、これが鎮静につとめました。この通貨変動等によりまして、原料価格は下がってくるものだろうと思います。
 当面、われわれが最も大事に考えておりますことは、輸出関係の中小企業を滞貨その他で持ちこたえてやるということであると思います。そのために、滞貨金融等について政府系三機関及び民間銀行に対しましても特に要請をいたしまして、特別の配慮をしてもらうようにしてあります。
 もう一つは、先行き不安のために為替の相場が見通しが立たないということであります。このために、手形の買い取り及び予約制度を受け付けてあげる、こういう形によりまして為替安定化ということに政府として最大限の努力をしていくつもりでございます。このために、必要あらば外為銀行にドルを貸してあげる、そういう制度も考えているところでございます。
 それからもう一つ大事なことは、大企業は抵抗力がありますが、結局、時間がたつにつれて中小企業にしわ寄せがくることをいかに防いでやるかということでございます。この問題については、先ほど申し上げましたように、法律がございますから、この法律を全面的に発動いたしまして、各下部の通産当局等において厳重に監視を行なう、それからその当該組合とよく連絡をいたしまして、こちらから立ち入り検査をすることもあれば、先方からの匿名の通告に基づいて親企業を調査する、そういう形によって公正な運営をびしびしやっていくようにしていきたいと思います。総じて、内需に転換をして輸出で出血輸出しなくも済むように、やはり景気をある程度維持していくという、このことは非常に基本的に大事ではないかと思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
#39
○副議長(森八三一君) 栗林卓司君。
   〔栗林卓司君登壇、拍手〕
#40
○栗林卓司君 私は、民社党を代表して、円の変動相場制移行と、これに伴う諸問題について、総理並びに関係大臣にお伺いをいたします。
 当面の問題は、言うまでもなく、円の変動相場制をいつまで続けるのか、また、円の再切り上げ幅をどのようにきめていくのか、この二つであります。
 しかし、私は、この問題に入る前に、日米関係にかかわる基本的な問題について総理の見解を求めたいと思います。
 今回の国際通貨不安は、ヨーロッパ市場にその発端があり、日本はその飛び火を受けたような時間的経過をたどっております。しかし、一〇%という大幅なドルの切り下げを考えると、その経過はどうであれ、ほんとうのねらいが円の再切り上げにあったことは明らかであり、いまや、われわれは、飛び火どころか、火事のまっただ中に立たされていることを知らなければなりません。
 今回米国がとった態度は、いわば腕ずくの強引さで円の再切り上げを巻き込もうとしたものであり、日米両国の将来に決して明るい展望を与えるものではありません。しかし、ひるがえって考えるとき、わが国にその責任の一半がなかったと、はたして言えるのだろうか。昨年の日米経済交渉において、わが国政府は、日米貿易黒字について楽観的な見通しを提示いたしました。しかし、結果は、それを大幅に上回る黒字を記録するに至りました。前向きに検討すると約束したはずの自由化問題も、はかばかしい進展を見せておりません。米国からのたびたびの催促にも、結果としてはその日暮らしの時間かせぎに終わってまいりました。
 米国政府が、わが国政府のことばと政策遂行能力に深い疑いを持ち、力による説得しか方法がないと思い込んだからといって、わが国政府のだれがこれを責められましょう。問題は、できることとできないことをはっきりさせてこなかった政府の態度にあります。そして、わが国政府が明確に打ち出したと言えるものは、円の再切り上げを絶対に回避するという田中総理の発言ただ一つと言っても過言ではありますまい。
 いま、米国は、ドルの大幅切り下げにとどまらず、輸入課徴金、あるいは輸入制限と、道具立てをそろえながらわが国に迫っているかに見えます。ここで心配されるのは、今後の日米関係であり、日米両国の対話の欠除であります。この点について、田中総理はどのように判断しておいでなのか。総理が就任早々にニクソン大統領と行なったハワイ会談の成果はどこへ行ってしまったのか、御所見を承りたいと思います。
 ところで、これまで、田中総理は、たびたび円の再切り上げを回避すると言明してこられました。しかし、それが総理の真意であったのかどうか、念のためにお伺いをしておきます。
 なぜなら、貿易黒字の増加によってもたらされた過剰流動性は、今日の耐えがたいまでの土地価格や株価の高騰を招き、また、物価高の大きな原因となってまいりました。加えて、木材、繊維、大豆など、国民生活に大きな影響を及ぼす海外製品の値上がりを考えると、円の再切り上げは、外圧を待たずして実施すべき重要な内政問題だったと言わなければなりません。そして、この場合の円の切り上げ幅は、関税政策や輸出政策、さらには中小企業の動向を配慮しつつ、わが国にとって適度の水準とすることが可能だったでありましょう。また、かりにそれが小幅なものであるとはいえ、わが国が単独切り上げに踏み切ることは、国際関係にも好ましい影響を与えるものと言えたでありましょう。この間の事情を田中総理が全く考えなかったと信ずることは、きわめて困難であります。むしろ、逆に、円の再切り上げは避けられないものと認めながら、それが複雑な国内政治問題を誘発する問題であるがゆえに、転換のきっかけとして外圧を期待し、当てにしてきたというのが実相ではなかったのでしょうか。そして、その結果、円の切り上げ幅をどの程度に押えるかという重要問題を、外圧のるつぼの中にたたき込む結果となったのではありますまいか。もし、そうでないと言われるのなら、従来回避できるとしてきた確信の根拠を、国内外の事情に照らして伺いたいと思います。
 さて、問題は、今日の困難な状況のもとで、円の変動相場制をいつまで続けるのか、そして、最終的に円の新平価を幾らにするかという問題であります。
 言うまでもなく、通貨問題と通商問題は一つのものであり、もっと正確に言えば、通商問題を解決する手段の一つとして通貨問題があるということでしょう。対米貿易黒字を縮小する方法の一つとして、円の再切り上げ問題が提起されている理由でもあります。
 では、一体、この上、円をどれくらい切り上げれば、対米貿易黒字が解消するのか。その答えは簡単であります。すなわち、幾ら切り上げても、基本的な問題の解決にはなりません。なぜなら、日米の貿易構造そのものが、日本の黒字型、米国の赤字型になっているからであります。すなわち、わが国は、米国から原材料や農産物などの一次産品を輸入し、工業製品などの二次産品を輸出しております。大まかに言えば、わが国の国民が働いて付加価値を高めた分が黒字となる勘定であります。この仕組みが改善されない限り、黒字幅縮小の基本的解決はありません。一八・八八%という大幅な円の切り上げを行ないながら、依然として対米貿易黒字が続いてきた理由の一つもそこにあります。
 では、一体、わが国の中小企業は、一六・八八%の切り上げをどのようにしてしのいできたのでありましょうか。内需に転換できた幸運な例は別として、そのほかは、政府の補助金への依存、下請企業へのしわ寄せ、労働時間の延長、そして工賃の切り下げであったと経済白書は伝えております。このような実情にもかかわらず、黒字解消の解決策をいたずらに円の切り上げにのみ求めたとすれば、それは間違いなく円の再々切り上げ、再々々切り上げへの道であり、国民は働けば働くほど貧困への道をばく進ずることになりましょう。そしてまた、この道は、従来からわが国政府が歩いてきた道でもあります。まさに悲劇であります。
 では、この事態を解決するために、日米両国はいま何をすべきなのか。事は米国の産業のあり方にもかかわる問題であります。米国に対し何を求めていくのか、総理の所見と対策をお尋ねしておかなければなりません。
 一方、わが国は、いま何をなすべきなのか。一言で言えば、国際競争場裏において公正にふるまうということでありましょう。言い直せば、これまで著しく立ちおくれてきた国内の福祉政策の積極的推進であります。いわゆるトリレンマの解消は、円の変動相場制移行によって意味を失うどころか、一そう緊急度を増してきたと言わなければなりません。同時に、自由化政策の確立と推進であります。そして、財務当局は、これらの諸対策の効果に配慮しつつ、妥当な円の再切り上げ幅を求めていくべきであります。変動相場への日銀の介入は、やむを得ざる処置と言わざるを得ません。では、一体、日銀はどのような基準と方針で介入するのか、また、いつまで変動相場制を続けていくのか、大蔵大臣に伺います。
 次に、通産大臣に伺います。
 中小企業の救済措置をどうなさいますか。しかも、いま問われているのは、産業構造の問題であります。単に古いものの温存では、ほんとうの中小企業対策にはなりません。また、国内非鉄金属鉱山のように国の資源政策として格段に配慮すべきものについては、どのような対策を講じていかれますか。また、これらの諸対策について、昭和四十八年度予算案の内容は十分と御判断になりますか。
 同様の趣旨で、農林大臣に伺います。
 特に農業の場合、輸入自由化をこれ以上進めていけるのか、また、国際市場を対象にした国内農業の振興がほんとうに可能なのか、もうできることとできないことを国の意思として明確にしていかなければなりません。具体的な判断と対策をお伺いしたいと思います。また、あわせて総理にも基本方針をお尋ねしておきます。
 次に、労働大臣に伺います。
 週休二日制、定年延長、あるいは労働分配率の向上、これらについて、どのような具体的対策を講じておいでになりますか。また、多国籍企業の労働問題について、どのような問題意識と対策をお持ちでございますか。
 最後に、総理にお尋ねをいたします。
 政府は、円の大幅切り上げという手痛い経験を持ちながら、なぜ同じ誤りを繰り返そうとされるのか。その結果、国民は、幾ら働いても楽にならない悪循環から脱出できません。円の切り上げとは、平たく言えば、国民が働いて得たもののピンはねであります。にもかかわらず、総理は、昨日の衆議院本会議において、円の切り上げは、円が強くなることであり、したがって、国民として喜ぶべきだという趣旨の発言をされたようであります。同じあやまちを繰り返した総理としての責任をも省みず、しかも、今日の国民の不安と動揺をよそに、よいことだと開き直るのは、いかなる政治信条に基づくものでありますか。きわめて不謹慎であり、無責任であります。その発言を取り消し、責任の所在を明らかにして今後に対処されることを強く要望し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
 日米対話の欠除ではないかということでございますが、これは間々申し上げておりますとおり、多国間通貨調整が行なわれてから、まだ一年とちょっとしかたっておらないわけでございます。歴史上初めてだといわれた多国間調整が行なわれ、その効果を実際に見きわめるには一年ないし二年、言うなれば二年ないし三年かかるかもしもないというのが論じられておるわけでございます。そういう意味で、ハワイ会談におきましては、日本の国際収支改善の目標を両三年以内に置いたわけでございます。両三年以内に置いて、私は、その当時述べましたのは、両三年以内に経常収支の黒字幅をGNPの一%以内に押えたい、こういうことを述べたわけでございます。この考え方に対しては、アメリカ大統領も、アメリカ当局も、是認をしたわけでございます。これが大体常識であろうということでございます。
 しかし、その後、資本の自由化、物の自由化等も考えたわけでございますが、百工、三十品目から、三、四年間でもって三十三品目になり、しかも、残っておる農産品というものを全部自由化しても、年間五億ドルにしかならない。しかも、それは対米貿易のプラスになるかならないかということはさだかでない。そういうことよりも、米国向けのクォータを拡大するということのほうがいいのではないかというような具体的な問題にまでメスを入れて、対米貿易の改善、国際収支の均衡化に対して努力をしてまいったわけでございます。
 それだけではなく、去年の、景気が上昇ぎみにあるにもかかわらず、何であんな大きな補正予算を出すのかと言われて、国会でたいへんな御指摘を受けたような努力まで続けておるわけであります。ですから、日本がこのような努力を続けることは、赤字国であるアメリカの責任を追及しなければならない日本が、日本だけ努力しておるのはおかしいじゃないかという御発言があった、その経過を見ればわかるとおり、政府はあらゆる努力を続けてきたことは事実でございます。ベトナム戦争がとにかくアメリカのドルを弱くしておるのだということが通例でありましたので、ベトナム戦争が終われば今度はドルは強くなるだろう、これは世界的に考えてそういう考えであったわけでございます。私は、アメリカ自身もそういう期待を持っておったのではないかと思うわけでございます。ですから、日米間の対話の欠除ということはございません。これは、アメリカに対しても、言いにくい話ではございますが、という前提は置きますが、しかし、ドルが強くならないと日本も困るのだと、ドイツも日本もたくさんのドルをかかえておって、金にかえておらないのだから、これはもうドルを強くすることに対してアメリカは責任を持ってもらわなければ困るのです、そのためにはアメリカが海外投資をとめなければならぬじゃありませんか、なぜ海外投資が行なわれるのですかと、鉄鋼の生産がどうにもならないような状態でありながら、日本から鉄鋼の輸入を抑制しなければならないような状態にありながら、鉄鋼の賃金アップが行なわれる、港湾ストが行なわれる、このような事態でもってドル安というものをみずから招いておるのじゃありませんかというところまで私は発言しておるのでございます。私とコナリー財務長官との間に議論したのも、こういう問題に対して声を大きくして議論しておるわけであります。ですから、日米間において、ただアメリカのことを責めるというようなことではなく、日本の国益を守るためにも、日米間に意思の疎通をはかってまいったことは事実でございます。
 第二に、円再切り上げの回避論、外圧を待たず円を切り上げるべきであったではないかというような御発言でございますが、これは、先ほど申し上げたように、調整後時間がたっておらない。日本は均衡対策に重点を置いていろいろな施策を行なっておる。輸出は激増からだんだんと抑制される方向にございますし、輸入は、けさの新聞をごらんになってもおわかりになるとおり、最大の輸入ということでございます。また、もう一つは、中小企業や零細企業というもので、再切り上げにたえないような部面、やはり国際化、開放化に対応するためには施策を行なわなければならないような部門もございます。そういう意味で、補正予算や年度予算でそういうものを拡大し増強しなければならないという過程にあったわけでございます。
 しかも、国際通貨というのは、二国間とか自分だけでもってぽんと切り上げるというには、日本の地位は大き過ぎると思います。この間、オーストラリアが一方的に切り上げました。切り上げましたが、しかし、日本は、やはり世界じゅうから注目されておるような状態でございますし、新国際ラウンドを提唱しておる日本の立場から考えてみても、やはり通貨調整というものは国際間、多国間できめらるべきものである。少なくとも五カ国とか十カ国とか、できればIMFの二十カ国――この前は十カ国の蔵相会議が中心になったわけでございますが、五カ国、十カ国、二十カ国、こういうものによってでないと、日本だけが切り上げて、その上にすぽんとアメリカで切り下げられたら、今度はもう一ぺん切り下げなきゃならないようなときも起こるわけでございます。しかも、アメリカだけではなく、ポンドとも、フランとも、マルクとも、いろいろな問題との調整が行たわれるわけでございますから、そういう問題に対しては非常に細心な判断をしなければならぬことは、言うをまちません。
 その意味で、ドルが基軸通貨であった当時と違って、ドルが金との交換性を確保できないような状態にある現状においては、多国間において通貨調整を行なうということが最善の道でございまして、日本だけがすばやくどうするというような問題ではないわけであります。そうでないから、三回も切り上げを余儀なくされてやっと基礎収支の均衡まで持っていきました。基礎収支の均衡まで持っていくためには経済成長率をほとんどゼロにしなければならないというような努力を続けてきたドイツ・マルクが、六十億ドルも買いささえなければならなかった。ドルとの現状維持の価格を守るためには六十億ドルでも百億ドルでも買わなきやならなかったということを考えてみても、これからの国際通貨調整というものが多国間調整を場としなければならないということに対しては、御理解がいただけると思うのでございます。
 それからこれから何をなすべきかということでございますが、これは、国内的には、生産・輸出中心主義から福祉指向型へ行かなければならないし、重化学中心、生産第一主義というようなものから生活中心主義へ移行しなければならないということは、新しい予算にも明らかに示しておるとおりでございまして、御理解を得たいと思います。
 外に対しては、当然、日本は原材料の輸入国でございますし、これを輸出しなければ生きていけない国であったことは事実でございます。今度は、生産力を活用して国民福祉ということでございますが、しかし、やはりある程度の正常な貿易は続けなければなりません。ある預金だけを出して使えといって、使ってしまったらどうにもならない。外国からは原材料を入れてくるわけでございますから、外国に製品を売るということで日本の国力や財産がふえるのであって、入れてきて、原材料の代金は払って、日本でつくったものは日本人が全部使ってしまうということを長く続けて、輸出は全然しないでいいという状態ではないわけであります。どうしても国際ラウンドを推進しなければならないのでありますから、国際協調による長期的な国際収支均衡ということを進めてまいりたいと思います。
 それから、同じ誤りを続けておるのじゃないか、切り下げ論よりも切り上げがいいというような考え方は誤りだということでございますが、これは切り上げられるということはどういうことか。これは、私が申すまでもないことでありますが、戦前は切り下げが行なわれてきたわけであります。今度は、切り上げが行なわれるような状態、切り上げなくとも向こうが下げれば実質的に切り上げになるわけでございます。それは、日本の輸出力、国際競争力が拡大をすれば、相手が切り下げ、こちらが切り上げることになりますし、そうして国際競争力が低下をすれば、日本の円そのものの価値維持ができなくなることは、言うまでもないわけでございます。だから、いままで三ドル払わなければならなかった原材料が、少なくとも現時点で、もうアメリカが一〇%下げただけで、二七、八%下がっておるわけでありますから、そういう意味では、三分の二で物が買えるわけであります。そういう面で、日本の持っておる円が強くなるということは、旅行者だけの問題ではありません心原材料を買い入れなければならない日本としては、よくなることは間違いありません。
 ただ、それに耐えない国内における中小企業や零細企業や特殊なものがあります。繊維産業などそうであります。はきものもそうでありますし、雑貨もそうでありますから、そういうものは国際競争に耐え得るような産業形態に直すべく政策を行なわなければならないわけでございます。
 そういうことであって、少なくとも円の切り上げが行なわれるような日本と、ドルを切り下げなければならないアメリカとの立場がどう評価されるかということをお考えになればよくわかることでございまして、国内的な対応政策に万全を期さなければならないということは事実でございますが、いずれにしても、日本の円価値が下がることよりも、上がることがいいことは、これはもう申すまでもないのであって、取り消すわけにはまいりません。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#42
○国務大臣(愛知揆一君) 私へのお尋ねは、市場のことであったかと思いますから、その点にしぼりましてお答え申し上げます。
 政府が介入を行なわずに、市場の需給に相場形成をゆだねるというのが、先ほども申しましたフロートの本質でございます。したがいまして、原則として介入は行なわないことになっておりますけれども、一時的な乱高下というものについては、取引の安定性を確保するために必要な最小限度の介入を行なうということは、これはもう各国ともお互いに理解し合っていることでございますから、そういうふうに日本の場合も行ないたいと思っておるわけでございます。そういうわけでございますから、一定の水準をめどにしてそこでぺッグするために介入をするというようなことを考えておるわけではございませんから、どの辺をめどにしているかということについては、これは実勢を静かに見守っていこうという態度でございますというお答えになるわけでございます。
 それから固定相場制への復帰の時期はどのくらいであろうかと。これは先ほど来申し上げておりますように、適当な時期と申し上げておりますが、フロートいたしましたからには、そうして実勢を見たいという態度でありますからには、そんなに短い期間では実勢は見られないと思います。そうかといって、非常に長い期間ということも考えているわけではございません。適当な相当な期間と。これは、一昨年、フロートいたしましたときの前例は、四カ月ということも、御承知のとおりでございます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(中曽根康弘君) 中小企業政策につきましては、先ほど申し上げましたから、特に御指摘のありました非鉄金属鉱山の対策について申し上げます。
 非鉄金属鉱山は、従来国際価格が低迷しておりまして、非常な苦境にございました。そこに今回の通貨調整が来たことでございますから、わが国においては、特に銅、鉛、亜鉛等の業界が非常な深刻な立場になると思っております。これに対する対策として、従来は探鉱の促進、鉱害の防除の助成等をやっておりましたけれども、こういう事態になりますと、非鉄金属関係は製錬事業だけしかやれないという状態になる危険性もございます。それで、はたしていいのかどうか。日本の資源保存、資源確保という面もまた考える必要があると思います。したがいまして、この相場の情勢をよく見まして、必要に応じてさらに新たなる政策を検討していきたいと思っております。(拍手)
   〔国務大臣櫻内義雄君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(櫻内義雄君) 今回の措置に伴うこれからの農政はどうするというお尋ねでございました。
 こういう通貨調整あるなしにかかわらず、農政は、生産性を高めつつ、良質な食糧を効率的、安定的に供給するということが一大眼目であろうと思うのであります。そこで、完全自給、ないし八割自給の品目、あるいは五割程度の自給の品目、大部分は輸入に依存するけれども、しかしその場合でも、一定量は自給するという長期の方針に基づきまして、この目標実現のため、生産基盤の計画的整備、農業団地の育成をはじめとする構造政策の推進など、各般の施策を講ずることとしております。
 また、農産物の輸入について触れられましたが、今回の措置に伴いまして、一般的には農産物の輸入価格の低下が考えられますが、しかし、それが直ちに国内農業に影響を出すとは私は思いません。なぜかと申し上げまするに、わが国の主要農産物については、価格支持対策が行なわれ、必要な国境保護措置がとられておりまするので、大きな影響は避けられると思うのでありまして、従来の方針を特に変える考えはございません。(拍手)
   〔国務大臣加藤常太郎君登壇、拍手〕
#45
○国務大臣(加藤常太郎君) 週休二日制の普及と定年延長の問題については、先ほど竹田議員にお答えしたとおり、労働者の福祉の向上をはかるため、今後とも労使の自主性を尊重しつつ、各企業の実態に即して積極的に推進する考えであります。
 多国籍企業など外資系企業の労使問題については、これらの企業が増加し、種々問題が生ずることも考えられますので、労働省としては、これらの実態を把握し、的確な対策を講ずるようにいたします。
 なお、外資系企業については、わが国の労働法規並びに労使慣行を尊重することによって、円滑なる労使関係が行なわれることを期待するものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#46
○副議長(森八三一君) 渡辺武君。
   〔渡辺武君登壇、拍手〕
#47
○渡辺武君 私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 今回のドル切り下げと、それに伴う円の対ドルレートの自動的な大幅切り上げ、さらには変動相場制によるそれに上のせした円の事実上の切り上げが、国民の暮らしと経営に前回以上の深刻な打撃を与えることは、衆目の見るところであります。
 ところが、政府が並べ立てている緊急対策なるものは、前回の切り上げの際にもほとんど効果のなかったものばかりではありませんか。緊急に必要なものは、担保も金利支払い能力も乏しい小企業の救済であります。政府は、輸出関連の中小企業はもとより、被害を受けるすべての中小零細企業に対し、何よりも、補助金や、無担保、無保証人、無利子の緊急融資を中心とした大幅な財政措置をとるべきであります。また、下請単価の切り下げや、代金の支払い遅延を防止する実効ある強い措置、さらには、為替差損を補償する特別措置を緊急に講ずべきであります。
 また、前回の切り上げに伴う輸入価格の値下がりが物価安定に役立たなかったことは、事実の示すところであります。政府は、輸入価格の値下がりが消費者物価安定に役立つよう、大商社、大企業の買い占めや、価格操作などを規制するきびしい措置をとるべきであります。
 また、円切り上げによる農産物の輸入価格の値下がりが、その輸入を促進さして、国内農業に一そう大きな打撃を与えるおそれのあることも、経験の示すところであります。政府は、農産物の過度の輸入を制限し、国内のおもな農産物に対し、農民には生産費を保障し、消費者には家計の安定を保障する二重価格制度を中心とした価格保障制度を確立して、日本農業を保護すべきであります。
 さらに、大企業の円切り上げを理由とした首切り、採用中止などを防ぐ実効ある措置をとるべきであります。総理並びに関係大臣の答弁を求めるものであります。
 次に、このような事態をもたらした政府の責任についてであります。
 今日の国際通貨不安の最大の根源が、基軸通貨としてのドルの危機にあり、また、そのドル危機の最大の根源が、アジア侵略を中心とするアメリカの戦争と侵略の政策のための海外支出にあることは、すでに世界の常識であります。ところが、アメリカ政府が、昨年のIMF総会などで発表した政策は、黒字国の通貨の半ば自動的な切り上げを要求するなど、もっぱら他国の負担でドル危機を切り抜けて、力の政策を続けようとするものであり、国際経済政策におけるニクソン・ドクトリンにほかなりません。政府は、このニクソンの要求に従って、ドル危機の最大の根源であるアメリカのアジア侵略の責任を一言半句も追及せず、ついには国民に大きな打撃を与える大幅な円再切り上げの要求を甘んじて受け入れているのであります。このことは、結局は、日本の国民の犠牲でアメリカに協力することではありませんか。政府は、アメリカの力の政策に協力するためには、国民の生活を犠牲にしてもいいと考えておられるのか、総理の答弁を求めます。
 ところで、本来、自国の通貨の平価の決定は、一国の主権に属することであります。ところが、今回の変動相場制への移行が、ドルの切り下げと一体のものとして、アメリカ政府から日本政府発表の前に発表されていることからも明らかなように、政府の政策は全く自主性を欠いたものであります。総理が強調するこれまでの国際収支対策なるものも、貿易自由化や関税引き下げなどによる対米輸入の拡大、アメリカのアジア侵略を補完する経済援助の拡大などを中心とした、アメリカ本位のものではありませんか。三次にわたる政府の円対策が何の効果もあげなかった根本原因の一つは、ここにあるのであります。このような態度をとるのは、政府が日米安保条約によってアメリカのアジア侵略に協力すること、特にその第二条の日米経済協力の条項によって経済的にも協力することを義務づけられているからであります。繰り返される円の切り上げは、政府の宣伝する安保繁栄論なるものが完全に破産していることを証明しているのであります。ベトナム協定調印後も、アメリカは、力の政策を捨ててはおりません。政府は、対米追随の経済政策、特に日米経済協力政策ときっぱりと手を切り、アメリカに対しドル危機を自国の責任で解決すること、特に最大の根源である力の政策をやめることを要求すべきであります。総理の答弁を求めるものであります。
 また、円の相次ぐ大幅引き上げのもう一つの根源が大企業奉仕の政府の経済政策にあることは、前回の切り上げ以後もなお続いた大企業の過度な輸出増強と外貨の増大を見ただけでも明らかであります。日本の大企業は、たとえば鉄鋼の付加価値に占める賃金の比率がアメリカの半分程度であることでもわかるように、また、公害をたれ流し、国内には高く国外には安く製品を売っていることでもわかるように、国民を犠牲にした輸出増強に全力をあげ、しかも、歴代の自民党政府は、この大企業に対する税の特別な減免、融資、さらには産業基盤の大規模な造成など、至れり尽くせりの対策を行なってきたのであります。このような政策が続く限り、今後も円切り上げが繰り返される公算はきわめて大きいと言わなければなりません。政府は、このような政策をやめ、国民の暮らしをよくし、住みよい国土をつくることを第一とした政策をとるべきであります。総理並びに関係大臣の答弁を求めます。
 以上のことは、今回の事態に対する政府の政治責任が免れ得ないことを示しております。総理は、昨年、相当の責任をとると明言されましたが、どのような責任をとるのか、逃げ口上は許されません、明確な答弁を求めます。(拍手)
 最後に質問します。政府は頑強に四十八年度予算案の再検討の必要はないと言い張っております。しかし、予算編成の重要な根拠が変化したことは明らかにもかかわらず、従来のままでよいと主張することは、結局は、四十八年度経済見通しと予算案がまじめに審議するに値しないものであることを政府自身が認めていることになるのであります。その上、この予算案は、日本列島改造計画など大企業の高度成長政策を根幹としており、結局は円問題をさらに激化させる内容を持つものであります。国民の求めているものは、このような予算ではありません。私は、重ねて、政府が予算案を再検討すべきことを強く要求するものであります。
 また、日本経済と国民の生活に深刻な影響を与える今回の措置が国会にはひた隠しにされたままかってにきめられたことは、許すことはできません。政府は、国際経済政策の基本にかかわる政策や長期計画は、国権の最高機関である国会の議決事項にすべきであります。
 以上の点について総理の明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#48
○国務大臣(田中角榮君) 輸出関連中小企業対策について申し上げます。
 各産地の中小企業への影響につきまして、現在全力をあげてその実情把握につとめておるわけでございます。影響を最小限度にとどめるように、中小企業対策について、為替取引安定措置、金融、信用補完、下請対策の面で特段の配慮をしてまいりたいと考えます。
 農業保護措置について申し上げます。
 わが国の主要な農産物につきましては、価格支持が行なわれており、今回の措置が直ちに国内農業に悪影響を及ぼすことはないものと考えておりますが、今後の動向に応じて、必要な措置は十分講じてまいりたいと考えます。
 第三点は、労働者の首切りなどについてでございますが、政府としては、通貨調整に対処して経済の安定につとめるとともに、特に中小企業対策について強力な措置を講じ、失業の発生など労働者へ影響が生ずることのないよう、万全を期してまいりたいと考えます。
 対米追従という問題に対してでございますが、ドル価値の低下は、日本自体にとっても困難を招来するものでありますことは、間々申し上げておるとおりでございます。したがって、アメリカに対しては、機会あるごとにドル価値維持のための努力を要請してきたのでございます。今回の危機に際して、赤字国であるアメリカが、国際収支改善のためにドルの切り下げをみずから行なったことは、評価すべきであると考えます。
 それから経済政策を根本的に転換しなければならないということでございますが、これは、経済社会基本計画におきましても明らかにいたしておりますように、輸出優先の経済構造から、国民福祉指向型の経済構造へ転換をはかることが基本的に必要であると考えておるのでございます。このため、経済成長の成果がより一そう社会のすべての階層に行き渡り、国民がひとしくゆとりと潤いのある生活ができるよう、社会保障の充実、生活関連社会資本の整備、豊かな自然環境の確保、産業構造の知識集約化などにつとめてまいりたいと考えます。
 それから今回の事態の政治責任の問題でございますが、先ほども申し述べましたように、相当な責任とは、国際収支均衡対策推進になみなみならぬ熱意を示した表現であるということで御理解いただきたいのでございます。
 わが国といたしましても、今後とも国際収支を妥当な規模におさめる努力を続けなければならないわけでございまして、政府は、長期的な国際通貨の安定、また、日本の国際収支の均衡に対して全力を傾けてまいりたいと考えます。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#49
○国務大臣(愛知揆一君) 四十八年度予算の問題については、たびたび同じ御説明を繰り返してまことに恐縮に存じますけれども、重ねて御質問でございますからお答え申し上げます。
 まず、歳入面につきまして申し上げますと、円は変動相場制に移行いたしました。しかし、変動相場制のもとでのレートの水準というものはきまっておりませんし、まだ見据えがつきませんし、それから変動相場制をどのくらい続けたらいいであろうかということを現在政府としてもまだきめかねておりまして、相当の期間続けたいと思っておるわけでございます。こうした流動的な要因がございますので、現在のこの時点で、年度を通じた経済全体の影響があるかないか、さらに、そこから税収を中心とした歳入の見積もりを変更する必要があるかどうかということを現時点できめかねるというのが、これは事柄の性質を御理解いただけば、政府の立場に私は御理解がいただけると思うのでございます。そういうことが、歳入について率直に御説明し、またお願いするゆえんでございます。
 それから歳出のほうは、何としてもこういう時期でございますから、この執行を一日もすみやかにしていただきますことが国民生活の安定でもあり、また、政府としては国民各位の御期待に沿うゆえんであるということを強く信じておるわけでございますし、また、内容的に申しましても、外貨建てのものがわずかではございますがありますことも、御指摘のとおりでございます。しかし、外貨建ての支払いにつきましても、基準外国為替相場自体に変更が加わったわけではございませんから、予算の執行には何ら影響はないわけでございまして、歳出の面から申しますれば、むしろ、現在御審議をお願いいたしております歳出全体をひとつ執行できるようにしていただきたいということがお願いでございます。
 同時に、中小企業に対しては、たいへん政府といたしましても心配をいたしておる点でございますので、これも詳しく通産大臣等から御説明をいたしておりますように、すでに相当の具体的な手配をいたしておるわけでございます。
 大蔵省の関係からいたしましても、とりあえず行政としてできますことも、金融上の問題その他の点につきましても、すでに、たとえば金融で申しますと、局長通達も出し、あるいは全銀協からの協力を得て全銀協の通牒も全国各金融機関に通達をしてもらい、あるいは大蔵省の財務局長からの末端へまでの通達も昨日もいたしたようなわけでございまして、できる限りのことは、各省あげて現に配慮をいたしておるような次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#50
○国務大臣(中曽根康弘君) 中小企業対策といたしましては、政府は、来年度、小企業経営改善融資制度を特に新しくつくりまして、無担保、無保証の融資を約三百億円のワクにわたって行なうつもりでございます。なお、経営改善普及事業を特に強化いたしまして、商工会議所ないしは商工会等の指導員を思い切って増員することにしております。
 なお、税制上では、事業主報酬制度を今回は実施することにいたしまして、長い間の御要望におこたえいたしました。
 なお、中小小売商業振興法案を今回は国会に提出いたしまして、中小小売り商業のために特段の措置を講ずるつもりであります。
 その上、中小企業振興事業団の事業活動をさらに活発にいたすために、約三百八十億円の事業規模の拡張を行なおうとしております。
 第二に、輸入価格に見合うように消費者価格を引き下げろ、大商社を監視せよ、そういう御指摘につきましては、この点は同感でございまして、先ほど申し上げましたように、企画庁並びに通産省出先機関が協力いたしまして、実行して、追跡調査を精密にやっていきたいと思っております。
 それから輸入総代理店の問題につきましては、先ほどお答えしましたように、競争制度を導入いたしまして、価格を引き下げるようにいたすようにいたしたいと思います。
 それから下請代金の支払い促進の問題は、先ほど申し上げましたように、法律を適用いたしまして、現在は、法律によりますと、大体、繊維は九十日間、機械、鉄鋼、非鉄等は百二十日間を手形の期間としておりますが、これらが励行されますように、手形期間を延ばされることがないように、厳重に監視してまいりたいと思います。
 貿易政策は大企業偏重ではないかという御質問がございましたが、そのようなことはございません。貿易管理令の発動に対しましても、中小企業は特にこれは除外をいたしておりましたし、繊維対策等につきましては、主としてこれは中小企業対策でやっているわけでありますし、今回、輸出開拓準備金を廃止いたしましたが、中小企業だけは存置しておるのであります。このように努力しておるわけでございます。(拍手)
   〔国務大臣櫻内義雄君登壇、拍手〕
#51
○国務大臣(櫻内義雄君) お答え申し上げます。
 過度の輸入を規制することにつきましては、私も、国内農業に悪影響のあるような過度の輸入政策をとる考えはございませんが、国内生産で需要を満たし得ないものについては、輸入の活用で対処をしていくことはやむを得ないことと存じます。
 それから農産物の輸入価格の下がった品目につきまして、これを消費者価格に反映させることは、物価の安定の上に必要なことは当然だと思います。経済企画庁とも連携をとりまして、関係者を指導する等、必要な施策を講じてまいりたいと思います。
 二重価格制についての御意見でありますが、農業生産の安定的発展と農業所得の確保とともに、消費者物価の安定を考えまして、それぞれの農産物につき、需要、生産等の諸事情を勘案しつつ適正な価格水準を形成するようにつとめたいと、こういう考えでございます。(拍手)
   〔国務大臣加藤常太郎君登壇、拍手〕
#52
○国務大臣(加藤常太郎君) 総理からも答弁がありましたが、私から補足答弁をいたします。
 政府としては、先ほど総理並びに通産大臣から種々申し上げたとおり、経済の安定、特に中小企業対策を強力に講じ、労働者に影響が生じないことにいたす所存であります。しかしながら、なお離職者が発生した場合には、失業保険、職業転換給付金などを活用して離職者の早期再就職に万全を期する所存であります。(拍手)
#53
○副議長(森八三一君) 大蔵大臣から答弁の補足があります。愛知大蔵大臣。
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#54
○国務大臣(愛知揆一君) 答弁漏れがございまして、まことに失礼いたしました。
 為替問題の取り扱い、あるいはレートの改変等については国会の議決にすべきであると思うがどうかというお尋ねでございましたが、この種の問題は、為替市場等の混乱を防止する、あるいは機動的に処置する必要があるというような目的のために、政府の方針が決定次第、直ちに実施さるべき性格のものでございます。したがいまして、諸外国におきましても、こうした種類の問題は、すべて政府に一任されております。あるいは、法律上、議決事項となっております場合も、政府にその実施は一任されておるのが実情でございます。
 さようなわけでございますから、政府といたしまして、国会の議決事項にするということは、事柄の性質上、適切ではないと、かように考えておる次第であります。(拍手)
#55
○副議長(森八三一君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二十八分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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