くにさくロゴ
1972/06/13 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第19号
姉妹サイト
 
1972/06/13 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第19号

#1
第071回国会 本会議 第19号
昭和四十八年六月十三日(水曜日)
   午前十時八分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二十一号
  昭和四十八年六月十三日
   午前十時開議
 第一 緊急質問の件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、故元議員一松定吉君に対し弔詞贈呈の件
 以下 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 さきに院議をもって永年在職議員として表彰されました元議員一松定吉君は、去る八日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
 つきましては、この際、同君に対し、院議をもって弔詞を贈呈することとし、その弔詞は議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
 議長において起草いたしました弔詞を朗読いたします。
   〔総員起立〕
 参議院はわが国民主政治発展のため力を尽くし特に院議をもって永年の功労を表彰せられました元議員正三位勲等一松定吉君の長逝に対しましてつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます
    ―――――――――――――
 弔詞の贈呈方は、議長において取り計らいます。
     ―――――・―――――
#5
○議長(河野謙三君) 日程第一 緊急質問の件
 鈴木強君、宮崎正義君、中村利次君から、それぞれ中曾根通商産業大臣の発言に関する緊急質問が、岩間正男君から、中曾根通商産業大臣の発言等に関する緊急質問が提出されております。
 これらの緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。順次発言を許します。鈴木強君。
   〔鈴木強君登壇、拍手〕
#7
○鈴木強君 私は、日本社会党を代表して、中曾根通産大臣の日本とイランは同じ王制の国という発言と、このことに関連する日本国憲法の基本について、田中総理大臣並びに中曾根通産大臣に緊急質問をいたします。
 中曾根通産大臣は、六月五日の本院内閣委員会において、過般、イラン国を訪問し、ホベイダ首相と会談した際、「日本はアジアの東にあって王制の国です、あなた方はアジアの西にあって同じく王制の国で、ともに古い伝統を持っておる国家です、この二つの国が東と西で手をつないで経済協力をし、お互いに繁栄して、アジアの安定、世界の平和のために貢献するということは非常に欣快なことであると思います、そういう返事をしたら、ホベイダさんは、これまた私らが考えると、思いがけないぐらいほっとした喜びの表情をしました」と述べたのであります。
 この発言の中で、日本は王制の国です、あなた方は同じ王制の国です、という部分については、わが国の憲法にまっこうから違反し、わが国の憲法を冒涜する重大な発言であり、絶対に見のがすことのできないものであります。
 また、この部分の発言全体からにじみ出る感じは、率直に言って、同じ王制の国ということばを巧みに、しかも意識的に利用して、相手方の関心を引こうとしたことがありありとうかがわれるのであります。
 もし、中曾根通商産業大臣が、イラン国の憲法とわが国の憲法との相違を十分理解していたとすれば、いかなる理由があったにせよ、このような発言をすることはないはずだと思うのであります。
 御承知のとおり、イラン帝国は、憲法上立憲君主国の国家体制をとり、日本とは根本的に異なった体制をとっている王国であります。すなわち、イラン帝国の行政権は皇帝に属し、立法上においても、皇帝は大きな権限を持っているのであります。これと比較して、わが国においては、天皇は憲法第一条にいう象徴だけの地位であり、その地位も、主権者たる国民の総意に基づくものと規定し、また、その権能については、憲法第四条に、「国政に関する権能を有しない。」と明定されており、天皇は、政治については、全く何らの権能を持たないばかりでなく、天皇の国事行為は、純然たる事務的、手続的、儀礼的なものに限られているのであります。また、この国事行為のすべてが、内閣の助言と承認を必要とし、その責任は内閣が負うことになっています。
 わが国における天皇は、日本国並びに日本国民統合の象徴であり、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づくと憲法第一条にうたわれており、象徴天皇、国民主権の国家であり、その意味において天皇は、日本国民の敬愛の的となっているのであります。
 このように、皇帝が国政のすべての権能を有するイラン国と主権在民の民主憲法を持つわが国とは、その国家体制において、さきにも述べましたように、根本的に大きな相違のあることは自明の理であります。しかるに、いやしくも日本の国務大臣たるものが、外国を訪れ、外国の首相と会談の席上、このような間違った国家観を、日本の国情を十分に理解していない相手国に植えつけるがごときは、もってのほかであります。不見識きわまる軽率な言動と言わなければなりません。
 中曾根通産大臣は、記者会見で、日本とイランが皇室をいただいている点に着目して、外国人に対してわかりやすく説明するために王制という表現をしたと述べていますが、そんなことで、憲法を冒涜した国務大臣としての重大な責任をのがれることはできません。しかも、このことに対して、何ら反省することなく、本院内閣委員会において、得々として質問に答えてしゃべりまくるというに至りましては、まさにあきれてものが言えないのであります。
 中曾根通産大臣、あなたはいまでもイランと日本は同じ王制の国と思い込んでいるのでしょうか。間違った発言だとすれば、そのあやまちを改めるべきであります。事は外交上の国際信義にかかわる重大問題でありますから、あなたがこの本会議場で陳謝し、あるいは発言を取り消したとこうで、イランまで行って、憲法違反のイラン発言をした事実は消滅することにはなりません。逆に国際信義と威信を傷つける結果となりましょう。イランの首相に対しては、何らかの方法で釈明し、誤解を解く必要があると思いますが、この点をどうなさるのか、明らかにしていただきたいのであります。
 中曾根通産大臣の王制発言は、国会を混乱させ、多くの国民に憲法上大きな疑惑を与え、国際的にも悪影響をもたらしたことは、疑いのない事実であります。もしあなたが、一片の良識と、正しい憲法認識を持たれるならば、いさぎよく国会で謝罪し、その責任を感じて、みずから進んで、すみやかに辞任すべきであります。中曾根通産大臣の御所見を承りたいのであります。
 また、このことについて、大臣の任命権者である田中総理に伺っておきたいことがございます。
 総理は、中曾根さんを通産大臣に任命し、今回の事件についても、中曾根支持の態度をとっておられるようでございます。中曾根通産大臣は、六月七日の記者会見で、「十分に意を尽くさなかった、必要ならば国会で釈明し、遺憾の意を表したい」と、のんきなことを言っておられますが、失礼ですが、中曾根通産大臣の憲法を軽視する日ごろの言動は、つとに定評のあるところであります。古くは自民党の憲法調査会における発言をはじめ、最近におきましては、六月十日の毎日新聞の社説にも取り上げられておりますが、「日本は天皇の大きな求心力でもっている。天皇があることが、どれほど日本を統合させ、内乱を防いでいるかを知らなければならない」、これは毎日新聞の社説の中に載っております。――と報ぜられている大阪発言、国会の混乱で審議がストップしているさなかに六月十一日の東商ホールで開かれた東京商工会議所会員懇談会における発言等々、取り上げれば枚挙にいとまがありません。
 もう一つ、国会内で問題となった過去の例をあげてみますならば、昭和四十五年五月八日、この本会議場で日中国交回復に関する緊急質問が行なわれた際、わが党羽生三七議員の質問答弁中、航空自衛隊、海上自衛隊を空軍、海軍と発言して問題となり、この処理が議院運営委員会に移されて論議されましたそのときに、当時防衛庁長官であった中曾根さんは、私の不注意で迷惑をかけた、以後憲法を守り、慎重に言動すると国民に誓ったことはあまりにも有名であります。(「もらやめたらどうだ」と呼ぶ者あり)失礼なことを言うな。
 今回の王制の発言についても、われわれは単にことばじりをとらえて問題にしているのではありません。私は、これら一連の発言は、政治家中曾根さんの体質から出てくるものではないかとおそれるのであります。今回の中曾根発言は明らかに憲法違反のものでありますが、総理は責任を感じておられるのでございましょうか。当然のこととして通産大臣の辞任の勧告ないし罷免の措置をとるべきだと思いますが、その御決意がありますかどうか、お答えを願いたいのであります。
 次に、田中総理に対して、現行憲法に対する基本的態度についてお伺いしたいのであります。
 わが国の憲法は、明治憲法の封建的残滓などの後進性要素も若干混在しているように思いますが、その基本として、国民主権の原理、絶対平和主義、最大限の人権尊重の原則は、他の資本主義国家の憲法と比較してきわめてすぐれた特質と内容を持っているものであります。
 われわれ社会党は、戦後一貫して、日本国憲法の基本理念を厳密に解釈し、憲法のすぐれた諸原理を現実の政治と国民生活の上に実現すべく積極的に努力してまいりました。こうした私どもの努力によって、ようやく国民各層の中に広く、深く、正しい憲法意識が定着しつつあると自負しているのでございます。
 ところが歴代自民党内閣の態度は、憲法第九条を無視した再軍備の増強をはじめとして、労働基本権の侵害、社会保障など生存権に対する消極姿勢に見られるように、憲法のすぐれた部分の空洞化をはかり、政治の反動化をねらっているように思われるのであります。そして鳩山、岸両内閣時代には内閣に憲法調査会を設置して、積極的に改憲の行動がとられたことは御承知のとおりであります。特に田中内閣成立以来、閣僚の中から憲法の精神を踏みにじる発言が続発しておりまして、国民は、田中内閣が憲法の基本理念を正しく理解していないのではないかとの一そうの疑問を深めているのであります。
 われわれは、今回の中曾根発言を単なる偶然の失言として扱うわけにはまいりません。少なくとも日本国憲法に照らして大きな疑惑を持たれるような閣僚の発言がたびたび行なわれることは、田中内閣の護憲の姿勢に問題があることの何よりの証拠であります。特に天皇の地位、日本国の政治体制の基本である主権在民、内閣の責任制についてもこの際明確にすべきだと思います。
 私は、田中総理に対し、今日までの閣僚の不謹慎な発言は、憲法軽視、憲法無視の行為であり、特に増原問題は、増原氏が防衛庁長官を辞任しただけで片づけられる問題でないことを指摘しておきたいのであります。
 天皇の国事に関するすべての行為は内閣がその責任を負うことになっておりますから、増原問題は、当然田中内閣全体の問題であり、田中総理自身の責任に帰すべきものだと思います。しかし、田中総理は、憲法第三条に定められたこの内閣の責任をとられようとしないのでありまして、まことに遺憾に思います。この点、総理の御見解を承っておきたいのであります。
 田中総理は、一体、日本国憲法の基本精神をいかに理解し、尊重し、擁護して、憲法上の義務を全うしようとしているのか、また、現行憲法改正の意図を持っているかどうか、明確にお示しいただきたいのであります。
 次に、天皇へのいわゆる内奏と公的行為についてお伺いします。
 政府は、内奏と公的行為についてきわめてあいまいな態度を示しておりますが、天皇の行為は憲法の基本精神に沿って厳格に限定し、本来、憲法に規定する国事行為と純然たる私人としての行為だけに限るべきだと思います。政府は、天皇の行為を、国事行為、象徴としての公的行為、純然たる私的行為の三つに分けておられますが、このうち公的行為の範囲はどこまでなのか、その基準をはっきりさせていただきたいのであります。
 また、憲法上、内奏という規定はありませんが、内奏とはどのような内容のものであるのか、明らかにしていただきたいのであります。
 私は、天皇の公的行為や内奏について否定する考え方はありません。ただ、これらのことは内閣の考えによって行なわれるものでありますから、一たびその解釈と運用を誤りますならば、天皇を政治的に利用されるおそれなしとしないのであります。したがいまして、内閣は、内奏と公的行為については明確な規定を設け、かりそめにも、天皇が政治的に利用をされることのないよう特段の配慮をすべきだと思います。総理の御所見を承りたいのであります。
 なお、この機会に、憲法上皇室はどういうものが正しいのか、そのあり方についてお示しをいただきたいのであります。
 最後に、天皇は元首であるかどうかの点についてお伺いします。
 田中総理は、六月七日の衆議院内閣委員会において、元首は学問的にはいろいろあるが、統治権を持った元首という意味では天皇は元首ではないと言いながらも、しかし、国民統合の象徴として天皇をいただいており、外国から見ると、日本の元首は首相でなく、天皇ということになるようだ、また、憲法上も元首ではないとの規定はないとの発言をしております。この答弁には、巧妙に天皇を事実上、元首化しようとする意向が隠されていると言わなければなりません。
 田中総理が、もし憲法上天皇が元首でないという規定がないから天皇が元首だとの解釈をとっているとすれば、これは中曾根発言以上に重大でございます。
 元首とは、国の首長であり、対外的に国家を代表する資格を有する国家機関をさし、外国との条約締結の権能、全権委任状や信任状を発する権能を有することが通説でありますが、日本の天皇は、前にも述べたとおり、これらの権能は有しないのであります。したがって、日本の天皇は、憲法上、元首でないことは明確であります。明治憲法は、第四条に「天皇ハ國ノ元首」と規定しておりましたし、諸外国においても、元首の地位は憲法に明記しているのが通例であります。田中総理の言う、憲法上も天皇が元首ではないとの規定はないという考え方は、こじつけ元首論でありまして、容認することはできません。総理の明快な御見解を承りたいのであります。
 私はこの質問を終わるにあたり、田中総理に訴えたいのであります。
 憲法は国の基本法であり最高法規であります。日本国憲法は、昭和二十一年十一月三日公布され、翌二十二年五月三日施行されたものでありますが、この憲法は、旧帝国憲法を全面的に改正したものでありまして、国家再建の基礎を人類普遍の原理に求め、自由に表明された国民の総意によって確定されたものであり、主権が国民に存することが宣言され、明定されているのであります。しかし、この崇高な憲法の基本理念を正しく理解しようとしない風潮が一部に見えますことは、非常に重大問題だと思います。憲法を守り、憲法に従うことは、全国民の最高の義務であります。政府は、憲法九十九条によって、憲法順守と擁護の義務を特別に強く負わされているのであります。国民は、いま異常な物価高や公害によって苦しみ抜いています。田中内閣に対する国民の批判は頂点に達しているように私は思うのであります。総理が、日本国憲法を忠実に履行をされるならば、憲法第二十五条の、国民に対する健康にして文化的な最低生活の保障はできるはずであります。
 私は、総理と閣僚は、あらためていま一度日本国憲法全文を読み直して、日本国憲法擁護の精神に徹していただくよう、大いに勉強していただきたいことを忠告して質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(田中角榮君) 鈴木強君にお答えをいたします。
 第一番目は、中曽根発言で、日本は王制であると述べた点について、所見と認識について見解を求められたわけでございますから、まずこの問題からお答えをいたしたいと存じます。
 王制ないし君主制ということばの意味は、君主自体の概念が歴史的に変化していることに伴いまして、今日では、学問上も必ずしも一義的にとらえがたくなっておることは御承知のとおりでございます。そして今日の近代的国家における君主については、実質的な統治権は、これを持たないかあるいは制限されたものとなっているのが普通でありますが、なお、国民の尊貴の対象としての地位にあって、かつそれが世襲制である場合に、その存在を今日的な意味の君主としてとらえ、そのような君主が存在する国家をもって君主制とすることも可能であるとする見解も多くあるところでございます。したがって、要は定義のしかたいかんによるわけでありますが、中曾根発言も、このような見解のもとになされたものであって、誤りであるとは考えておりません。
 第二は、中曾根発言をどう認識し、任命権者としてどう思うか、こういう発言でございますが、中曾根大臣は、社交的な会話の場において、日本、イランともに皇室または王室をいただき、古い伝統を誇っておる共通性に着目して発言をしたのにとどまっておるのであります。同大臣が、主権在民、象徴天皇について定める日本国憲法について、正確な認識を持っておることは申すまでもないことであります。
 次は、イランにおける中曾根発言を訂正する必要があるかないかという趣旨の御発言でございますが、中曾根大臣は、日本、イランともに皇室または王室をいただき、古い伝統を持つ共通性を強調したものであり、また、外国人に対してわかりやすいように表現したものであり、これを訂正する必要はないものと考えております。
 次は、憲法に対する基本姿勢と改憲の問題について申し上げます。
 憲法第九十九条の規定に従いまして、政府は憲法を順守することを常に国政運営の基本としてまいっております。今後とも、この基本姿勢にはいささかの変わりもありません。憲法改正の問題は国民の総意のおもむくところに従うべきでありまして、政府としては現在憲法の改正は考えておりません。
 次は、天皇の公的行為の性格、いわゆる内奏など天皇を政治的に利用するものはやめるべきではないかという趣旨の御発言と理解をいたしますが、いわゆる天皇の公的行為というのは、憲法に定める国事行為以外の行為で、天皇陛下が象徴としての地位に基づいて、公的な立場で行なわれるものをいうのであります。これは、象徴たる地位にあられる天皇の御行為としては当然のことだと考えております。天皇の御行動、御発言には、国政に影響を及ぼすようなことは一切ありません。なお、天皇に対する所管事項の御説明は、象徴である天皇が一般的な知識、教養を高めるために行なわれるものでございまして、いささかも政治的な意味を持つものでありませんので、政府としては、これを取りやめることは全く考えておりません。(拍手)
 なお、内奏についての問題に対して御発言がございましたが、御承知のとおり、親任式及び認証式を行なう前に、立ち会う国務大臣その他が事前に御説明を申し上げることを内奏と称しておるのでございます。
 最後に、天皇は元首かどうかという問題について申し上げますが、現在の憲法のもとで天皇が元首であるかどうかについては、要するに元首ということばの意味、内容をどうとるかということにかかっておると思うのであります。昔のように、元首とは内事、外交のすべてを通じて国を代表し、行政権を掌握しておる存在であるという定義によるならば、現在の憲法のもとで、天皇陛下は元首でないとの議論も起こるのでございます。しかし、現在の憲法のもとでも、天皇は国の象徴であるという面、さらには、ごく一部ではございますが、外交関係において国を代表する面を持っておられるのでありますから、そういう面をとらえて元首という定義によるならば、天皇は元首であるということにもなるわけであります。
 以上。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(中曽根康弘君) 私の不用意な発言によりまして、国会に混乱を起こし、御迷惑をおかけいたしましたことに深く遺憾の意を表します。
 イランにおきまして、私は要人との対談中、王制云々ということばを用いましたが、これは日本、イランともに皇室または王室をいただき、古い伝統を誇っている共通性を強調して、親善友好の雰囲気を盛り上げるために用いたものであります。特に外国人に対して簡単にわかりやすいように表現したものでありますが、ことばが足らず、不正確の発言につき、遺憾の意を表するものでございます。
 日本の象徴天皇とイランの王制との間には、著しい相違がございます。ともに皇室または王室をいただいてはおりますが、天皇と皇帝の間には、その権限並びに国家体制等においてかなりの相違があると認識しております。
 憲法を冒涜したその責任はきわめて重大であるとの御指摘がございますが、友好親善の雰囲気を盛り上げることに熱心なあまり、不正確な表現をして誤解を与えるおそれがあったことにつきましては、遺憾の意を表している次第でございます。
 また、発言訂正云々の点でございますが、さきに申し述べましたように、イランにおいて、私は要人との対談中に王制云々ということばを用いましたが、これは日本、イランともに皇室または王室をいただき、古い伝統を誇っている共通性を強調して親善友好の雰囲気を盛り上げるために用いたものでございまして、理解していただけると思うのでございます。
 以上のような意味と意図で用いたものでございますから、発言の訂正をいたさなくても、相手側も十分その趣旨を理解してくれるものと考えております。
 なお、主権在民であるとともに、象徴天皇をいただく独特の体制であるわが国家の性格をよく認識し、一貫して日本国憲法を順守するものであります。(拍手)
#10
○議長(河野謙三君) 内閣総理大臣から答弁の補足があります。田中内閣総理大臣。
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(田中角榮君) 御質問が一つ落ちておったようでございますから、あらためて申し上げます。
 皇室のあり方、皇室のあり方についての政府の所見、また政府と皇室との関係いかんという御質問でございましたから、申し上げます。
 皇室のあり方については、憲法が第一条に「天皇は、日本國の象徴であり日本國民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本國民の總意に基く。」と定め、第四条に「天皇は、この憲法の定める國事に關する行鳥のみを行ひ、國政に閲する権能を有しない。」と定めるところに尽きておると思います。政府としては、皇室を政治的に利用するなどということは毛頭考えず、象徴天皇制の定める憲法の規定を国民とともに順守してまいる所存であります。以上。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(河野謙三君) 宮崎正義君。
   〔宮崎正義君登壇、拍手〕
#13
○宮崎正義君 私は、公明党を代表して、中曾根通産大臣の王制発言の重要性にかんがみ、総理並びに通産大臣に対し、その責任を明確にし、厳重に究明するものであります。
 去る六月五日、内閣委員会で私は通産大臣に対し、サウジアラビア、イラン、クエート、アブダビの四産油国を歴訪された詳細の報告を求め、なお、通産大臣の帰国談の中で日本は消費国同盟に参加しないと言われたその理由を明確にされたいことを質疑したのであります。中曾根通産大臣はそれに答えて、消費国同盟に入らない経緯の説明があり、もう一つは、大西洋同盟に日本が入るかということをイランのホベイダという首相に聞かれたそのときに、「日本はアジアの東にあって王制の国です、あなた方はアジアの西にあって同じく王制の国で、ともに古い伝統を持っておる国家です、この二つの国が東と西で手をつないで経済協力をし、お互いに繁栄して、アジアの安定、世界の平和のために貢献するということは非常に欣快なことであると思う」との答弁がありました。この答弁は、わが国の主権在民の平和憲法、民主憲法の否定につながるきわめて重大な発言であります。
 そこで、問題となる第一は、中曾根通産大臣の発言が、まさしくわが国の主権在民の平和憲法に違反するということでございます。すなわち、通産大臣は、王制の語源を明確にせず、帝政イラン国とわが国の政治体制を同一視した点であります。申し上げるまでもなく、イラン国は正式にはイラン帝国であり、君主国であって、皇帝の権能は、立法権、行政権を有し、大臣の任命及び罷免、下院及び上院の解散、法律の裁可及び勅命の発布、三軍の総帥、宣戦布告及び講和のほか、大赦、栄典授与を行なう等、イランの現憲法はわが国の旧帝国憲法に類似した性格を持つものであります。
 一方、わが国は、憲法第一条に、「天皇は、日本國の象徴であり」「この地位は、主権の存する日本國民の総意に基く。」とあり、イラン帝国のような君主国ではないことはきわめて明確であります。
 また、天皇の権能については、第七条に「内閣の助言と承認により」と制約されており、国家意思の形態に関しては、実質的に参加されないのであって、国権行使の態様にあっては、イランとわが国では全く相異なっているのをどう考えているのか、中曾根通産大臣の所見を伺いたいのであります。
 また、中曾根通産大臣の発言は、イラン国首相に、「日本国はアジアの東にあって王制の国です。あなた方はアジアの西にあって同じく王制の国」と言って迎合し、わが国の制度を事実に反して話したことは、日本政府の現閣僚としてはなはだ軽率であり、国会における食言とは異なり、外交上の問題であります。そのことは、考えようによって、イラン国首相に誤った日本の認識を与えたことになるのではないでしょうか。通産大臣は、この重大な発言の誤りをイラン首相に何と訂正しようとするか、この点、明確なる答弁をしていただきたい。
 第二は、中曾根通産大臣の潜在意識が問題でございます。
 かつて中曾根通産大臣は、昭和四十五年、第六十三国会の本会議――先ほどもお話がございましたが、その中の答弁で、わが国の自衛隊を空軍、海軍と発言したことが問題となったこと、さきに報道された大阪発言等に見られるその本心の奥底にあるものは、一貫して常に旧帝国憲法精神が宿っているのではないでしょうか。今回の発言も、イラン君主国を訪問し、かつてのわが国の軍国主義時代を思い、現憲法を無視した発言であると言わざるを得ない。この点の中曾根通産大臣の本心が那辺にあるか、お伺いをいたしたいのでございます。
 次に、紛糾を起こした王制発言に対して、通産大臣の報道による弁解で、「国際的にわかりやすい表現を用いたため、意を尽くさないこともあると思う」と言われている。その意を尽くさないことをなぜ発言したのか。さらに、「日本とイランはともに古い伝統をもち、皇室をいただいているという点に着目して」と言うが、「ともに古い伝統をもち」と言われたその表現の中には、旧帝国憲法時代の様相を通産大臣は思い浮かべながら、わが国の政体の誤った認識を永久にイラン首相に与え、イラン国の制度と同様に受けとめさせたことになる。この点はどうお考えか。また、「外国人に対してわかりやすく説明するため、王制という表現をした」と言うが、これではかえってイラン首相に誤解を与え、イランとわが国の外交関係にも重大な影響を与えないとも限らない。中曾根通産大臣の率直な答弁をお願いをいたしたい。
 次に、田中総理にお伺いをいたします。
 この機会に、まずわが国の現憲法のあり方、政治体制について明確にし、国際的にも発表すべきであると思うが、どうでしょうか。
 次に六月七日、衆議院内閣委員会で、王制に関する質問に対しての答弁で、総理は、「皇室中心というような考えで、平たい意味での王制、こう述べたのだと思います」 平たい意味での王制とはいかなる意味か、理解しがたいのであります。
 また総理は、「国会の質問に対して述べたのではなく」云々と言われております。それでは外国で何を話してもよいというのでありましょうか。
 さらに総理は、「相手との雰囲気の問題もありますし、いろいろな立場があると思いますので」と答弁をされたが、わが国の現憲法のあり方等を雰囲気等でゆがめながら話し合えることができるものなのでしょうか。その点について総理のお考えをお伺いをいたしたいと思います。
 また総理は、「王制というその部分だけ抽出しながら、日本憲法上の解釈を誤っておるということを論ずるに当たらない」という答弁に至っては、言語道断でございます。その部分だけ抽出しながらと言われますが、その部分が重要であるからこそ、私は取り上げたのでございます。その部分、つまり日本の王制とイランの王制とが同じだということばの表現が違法をしておることにもなると思われるが、この点はどうなのでしょうか。
 また総理は、中曾根通産大臣の発言は、外交上の辞令の中で軽く話した程度であるというようにお考えになっておられるのではないでしょうか。もし外交辞令でやったとすれば、ますます重大なことになると私は思います。総理のお考えをお尋ねをいたしたいと思います。
 以上申し上げましたように、中曾根通産大臣の感覚は、たとえあとからの釈明がどうあっても、旧帝国憲法を思わせるような不用意な発言としか受け取れないのであり、こうした考え方が田中内閣閣僚の中にあって、憲法改悪の動きとさえなっているのではないでしょうか。それらについて総理の所見をお伺いいたします。
 最後に、総理にお伺いいたしますが、今回の中曾根通産大臣の発言のみならず、江崎自治大臣が小選挙区の問題について、国会を延長しての想定のもとに云々のごとき、行政府の一閣僚の身でありながら、立法府の権限に立ち入った発言、中村前衆議院議長の、強行採決は絶対にしないと言っているわけでなく、慎重に対処すると野党をごまかしたという放言、増原前防衛庁長官の天皇を政治的に利用した発言といい、連鎖反応的な現職大臣の失脚は、まさしく田中内閣の指導力を失った末期的症状をさらけ出したものと言わざるを得ないのでございます。昨年七月発足以来わずかに十カ月、この現状をどうとらえられておられるのか伺いたいのであります。
 また、行政面においては、田中総理が御自慢の日本列島改造論が、思わぬ土地価格の大暴騰を招き、国民はマイホームの夢を失い、大企業のPCBや水銀公害により、日本列島は公害列島と化し、われわれの命のかてとなる米や魚まで汚染され、全く食品総汚染の状態で、国民は何を食べてよいのか、不安の極に達しているではありませんか。
 また、大企業、商社等の買い占めと、政府の無能なインフレ政策により、卸売り物価の上昇も消費者物価の上昇もとどまるところを知らず、まさに史上最悪の悪性インフレの様相を呈し、生活を窮迫にさせている無策ぶりは、すべて総理の責任であると私は断ずるものでございます。(拍手)
 やはり田中内閣は庶民宰相ではなかったとの声が、ちまたに充満しているのであります。田中総理、あなたはその声が聞こえるでありましょうか。
 いま、一日も早く解決をしなければならない多数の生活法案をかかえ、かかる閣僚の失言、放言により、またまた国会を空白化させたこの責任は、まさしく田中内閣全体の責任であると断じ、総理並びに通産大臣はすみやかに退陣し、国民にその不明を陳謝すべきであるが、どうか。
 総理の明快なる御答弁を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(田中角榮君) 宮崎正義君にお答えをいたします。
 イランは立憲君主国であり、国権の様態もわが国と異なっておるということは、そのとおりでございますが、これを無視した通産大臣の発言に対してどう考えるかということでございますが、王制という問題に対しては、先ほど鈴木強君にお答えをしたとおりでございます。
 中曾根通産大臣の発言の真意は、両国間の憲法上の相違は十分認識しつつ、両国が同じように世襲的に継承される尊貴な地位にある方を持つという共通点に着目をして、「ともに王制の国」と言ったものでありまして、その意味するところは、主権在民であるとともに象徴天皇制であるというわが憲法の原則を無視したものではありませんから、違憲であるというような御批判は当たらないと、こう思うのでございます。
 外国人にわかりやすく説明する便宜主義、便利主義は許せないという趣旨の御発言でございます。また、国会の場での「日本は王制である」との発言には問題があると、こういうことでございますが、外国人にものごとをわかりやすく説明をしようとする努力をもって便利主義ときめつけることは、妥当でないのではないかと考えられるのであります。
 イランにおける発言を国会でまた述べたことにつきましては、言わずもがなのものであったと考えますが、問題はないと考えております。
 それから物価騰貴、公害問題、土地問題等についてでございますが、物価騰貴等に対しましては、政府は諸般の政策を実行しておることは、御承知のとおりであります。全力をあげてこれと取り組んでおる次第でございます。それにつけても、生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律案はじめ国土総合開発関係諸法等、物価に重大な関係のある法律の早期成立を期待いたしておるのであります。
 また、内閣が発言に慎重でなければならない、国会に対しても十分注意をした発言をすべしということにつきましては、御注意を感謝いたします。以後、発言には注意をいたします。
 ただ、注意が、――あまり注意をして何もしゃべらない、お答えをしないようになっては民主政治の根本を破壊することにもなりますので、そういうことに対しては、可能な限り最大、誠意をもってお答えをしておるということを御理解を賜わりたい、こう思うのでございます。失言はしないように、十分注意をいたします。
 田中内閣は閣僚とともに退陣すべしということでございますが、退陣する意思はありません。国民のためになさなければならない責任はまだ山積をしておるのでありますから、正面から取り組んでおりますので、野党の皆さんにも十分な御協力を切に願います。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(中曽根康弘君) 私の不用意な発言によりまして、混乱を起こし、御迷惑をおかけいたしましたことについて、重ねて遺憾の意を表する次第でございますが、イランにおきまして私が発言いたしました真意は、両国の親善友好の雰囲気を盛り上げるために用いたものでございまして、特に外国人に対して、短い時間に簡単にわかりやすいような意味で表現したものでありますので、相手方には真意は理解していただけるものと考えております。
 さらに、私の発言は以上のような意味と意図をもって用いたものでございまして、表現において必ずしも正確なことばでなかったことにつきまして、遺憾の意を表するものであります。
 私は、日本国は主権在民であるとともに、象徴天皇制をいただく独特の体制であることを強く認識し、一貫して日本国憲法を順守するものであり、この見地に立って国政に精進したいと存じます。
 また、日本の象徴天皇制とイランの王制との間には著しい相違があります。ともに皇室または王室をいただいてはおりますが、天皇と皇帝との間には、その権限並びに国家体制等においてかなりの相違があると認識しております。
 イランにおいて、要人との対談中、友好親善の雰囲気を盛り上げることに熱心なあまり不正確な表現をして、誤解を与えるおそれがあったことを遺憾に存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
#16
○議長(河野謙三君) 中村利次君。
   〔中村利次君登壇、拍手〕
#17
○中村利次君 私は、民社党を代表して、去る五日、当院内閣委員会でなされた中曾根通産大臣の発言について、その真意をただし、責任を追及するとともに、田中内閣の政治姿勢について質問します。
 最近、憲法に関連する国務大臣の重大発言が相次ぎ、国会の問題となっていることはまことに遺憾というべきであり、痛憤のきわみであります。
 わが国の憲法は、その第一章において、天皇の地位、国事に関する行為、権能、その他を明確に定めています。すなわち、「天皇は、日本國の象徴であり、日本國民統合の象徴であって、」国事に関する行為を内閣の助言と承認によって行なわれ、国政に関する権能をお持ちにならないことになっています。
 民社党は、天皇が政治権能に御関係なく、永遠に民族統合の象徴として国民にひとしく尊崇されることこそが真にわれわれの求めるものと考えますが、田中総理の御見解はいかがでしょうか。
 しかるに、さきに増原防衛庁長官は、記者会見において国務大臣にあるまじき発言をし、その発言が国会において問題となるや、発言そのものの事実がなかったとして不実発言の責めを負って辞職されたのであります。いやしくも、一国の国務大臣がみずから行なった会話を正しく第三者に伝える能力を欠いた結果、天皇に御迷惑を及ぼし、国会審議に重大な支障を来たし、あわせて国民に不信感を与えた責任は、ただ単に当該大臣の辞職のみで果たされるものかどうか、内閣の責任、なかんずく、閣僚の任免権を持つ総理の政治責任に関係はないのか、政治姿勢の問題として総理にお尋ねをいたします。
 このたびの通産大臣の発言は、象徴天皇をいただく日本と、行政、国政に権能をお持ちの国王をいただくイランとを同じ王制の国として、イランにおいてのみでなく、当院の内閣委員会において繰り返し発言をし、これを当然とする姿勢に重大な問題があるのであります。総理は、先ほどから、中曾根通産大臣のこの王制発言は問題なしという御答弁をされておりますけれども、これはきわめて重大な問題でありまして、まさに一貫性がないわけであります。象徴天皇として、国政の権能のない現行憲法を守るとおっしゃりながら、片方で、中曾根通産大臣もお認めになっておりますように、日本の天皇とイランの国王が全く違った権能をお持ちになっておるのを、同じ王制の国ととらえたことを間違いがないという御答弁は、どこから出てくるのか。まさに一貫性を欠くものと断定せざるを得ません。
 私は、前防衛庁長官、通産大臣ともに、憲法を尊重し、擁護する義務を負う国務大臣にあるまじき言動であると思います。憲法順守の最高責任を有する政府の中に、これを尊重し、擁護する義務感がないと思われる発言が相次ぐという異常な事態を、一体どのように受け取ればよいのか。明治維新を王政復古といいますが、これら一連の発言の性格からすれば、そのような王政復古を含む憲法改正の意図が自民党と政府にあるものと受け取れますが、総理のこの点についての明確な御答弁をぜひともお伺いいたします。
 また、わが国の憲法解釈は、学者間においても、国民論議の上でも必ずしも統一されたものとはいえない点もあります。憲法の解釈が分かれた場合、政府ははたしてどのような立場をとられるのか。この点についても総理のはっきりしたお答えをいただきたいと存じます。
 次に、中曾根通産大臣にお尋ねいたします。
 あなたの内閣委員会での御発言によれば、過般の中東四カ国訪問の際、イランのホベイダ首相との会談にあたって、「日本はアジアの東にあって王制の国です、あなた方はアジアの西にあって同じく王制の国で、ともに古い伝統を持っておる国家です、」という発言をされています。その後の新聞報道によれば、イランとの親密性を強調し、わかりやすい外交用語として、外国人に対してもわかりやすい王制という表現をしたという意味の釈明をされているようであります。私は、通産大臣が資源外交の上でイランとの親密性を強調し、わかりやすい外交用語をお使いになることは一向に差しつかえないと思いますが、しかし、それはあくまでも憲法にはずれないという大前提が必要であり、いかなる理由、いかなる場合でも憲法に反する言動は断じて許されるものではありません。日本の天皇とイランの国王の関連で両国の親密性を強調する表現に通産大臣がお困りのはずは断じてありません。それをあえて憲法に反し、憲法を侵す表現を用いられたのはなぜか、大臣の真意を承りたい。
 マックスウエーバーは政治家の要件の一つとして雄弁をあげていることは有名ですが、雄弁とは正しいことば、正しいレトリックを意味します。通産大臣はかつて防衛庁長官として当院本会議で、空海の自衛隊を「空軍」「海軍」と呼び、陳謝をされたことがありますが、雄弁をもって聞こえ、頭脳明晰な通産大臣が、不用意にこれらの失言をされるはずはありません。大臣のこれらの発言こそは、あなたが本質的に憲法改正の意思をお持ちのところから発するものと思いますが、いかがでしょう。率直な御意見を国民の前にお示し願いたいと存じます。
 あなたは自民党の単なる一国会議員ではありません。行政府の責任者、国務大臣です。その国務大臣の無自覚な発言の結果、国会において天皇に関する論議が行なわれなければならないことを、私はきわめて遺憾に思います。これは不用意、無自覚で済まされる問題ではありません。あなたたちは最高の引責をなさっても、辞職すればそれでよろしいでしょう。しかし、長く国民の中に残るであろう影響をお考えになったことがありましょうか。私は、通産大臣の日本国民としての良心に訴えて伺いたい。この責任をどのように考え、どのような責めを負われるのか。明確なお答えをいただきたい。
 中曾根通産大臣は田中内閣の重要閣僚の一人であり、将来の総理の呼び声すら聞かれる人であります。そのあなたが、ここでどのような釈明をなさろうとも、現実に当院の審議は数日間空転をし、生活法案を含む重要法案を国民の立場に立って審議せよという声にこたえ得ない結果を招来したことをどのように認識をされるのか。みずからの責任を痛感されるなら、その責任をどのような形でおとりになるのか、きびしくお伺いをして私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(田中角榮君) 中村利次君にお答えをいたします。
 第一は、天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、国民からひとしく尊崇さるべきものであると思うがどうかという基本的な問題に対しての御発言でございますが、憲法第一条が、「天皇は、日本國の象徴であり日本國民統合の象徴」であると定めておるのは、天皇の存在を通じて一そこに日本国と日本国民統合の姿を見ることができるという日本国民の総意をあらわしたものだと考えます。象徴としての地位にあられる天皇が国民からひとしく尊崇さるべきことは、もとより言うまでもないのでありまして、私は、内閣の首班として、今後とも、国政運営のすべてにおいて、象徴天皇制のよって立つ国民の総意がいささかもそこなわれることのないよう努力をしてまいります。(拍手)
 次は、増原前長官が責任をとって辞任したが、内閣にも責任があるのではないかという趣旨の御発言でございますが、増原前長官は、新聞記者に対する説明が意を尽くさず誤解を与えたことの責任を負って辞職をしたものであります。かかる事態に立ち至ったことはまことに遺憾であります。内閣は、憲法を守っており、天皇を政治のために利用するという考えは毛頭ありません。したがって、内閣としての責任をとるべき筋合いのものとは考えません。
 次は、象徴天皇制と行政権を持つ国王制を同列にした外交辞令を、国会で再確認をしたのが問題であるという趣旨の御発言でございますが、中曾根大臣は、日本、イランともに、世襲の皇室または王室をいただいておるという共通点に着目をし、外国人に対して簡単にわかりやすいように表現したものであって、憲法論を展開したものとは考えておりません。しかし、これを国会でまた発言をしたことは、言わずもがなのものであったように思われるのでございます。
 なお、王制の学問的問題については、先ほど申し上げたとおりでございます。
 自民党政府には、憲法改正の意図があるかどうかという問題でございますが、憲法九十九条の定めに従い、現憲法を順守してまいることは申すまでもないことであります。なお、憲法改正の問題は、国民の総意のおもむくところに従うべきものであり、政府としては、現在、憲法改正を取り上げる考えはありません。
 以上。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(中曽根康弘君) まず、王制ということばの不用意さを御指摘なさいましたが、まことにそのとおりでございまして、遺憾の意を表する次第でございます。
 私の真意は、親善友好の雰囲気を盛り上げるために用いたものでありまして、御指摘のように、もっと正確な表現を用いたほうが望ましかったわけでありますが、短時間の間に、熱心なあまりに不正確な表現を用いたものでありまして、遺憾の意を表するものであります。
 また私は、日本国は主権在民であるとともに象徴天皇をいただく独特の体制であることを強く認識し、一貫して日本国憲法を順守するものでありますし、国政に精進したいと思っております。御質問のような改憲を頭に置いていることは全くございません。
 私の今回の発言の趣旨は冒頭に述べましたとおりでございまして、天皇を政治的に利用しようというような意図は全くございませんので、この点については御理解をいただきたいと思います。
 最後に、生活関連法案等の審議の点につきまして、私の発言のために今国会の審議に御迷惑をおかけいたしましたことにつきましても、遺憾の意を表します。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(河野謙三君) 岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇、拍手〕
#21
○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、若干の質問をいたします。
 天皇と政治に関する憲法論議は、憲法に明記した国民主権の根幹にかかわる重大問題であります。
   〔議長退席、副議長着席〕
わが党が、いま特にこの問題を重視するのは、天皇制の是非という次元の論議でなく、現憲法の基本原則である主権在民の立場に立って、平和的、民主的条項が厳格に実施されているかいなかを徹底的に究明するためであります。したがって、総理は、さきの衆議院での答弁のように、事態を糊塗隠蔽し、虚構の論議で国民の目をごまかすことなく、国会の場を通じて、天皇と政治の正しいあり方について責任ある答弁をすることであります。このことこそ、いま、政府と国会に負わされた重大な責務であり、私はまずこのことを指摘して、以下質問に入ります。
 最初に伺いたいことは、中曾根通産大臣のいわゆる王制発言についてであります。
 中曾根通産大臣は、イランを訪問した際、同国の首相に対し、主権在民を明記した憲法を持つわが国と、国王が強大な権限を持っているイランとを同一視する発言をしました。いやしくも一国の閣僚が公式の場でこのような発言をしたことはきわめて重大であります。あなたは日本をイランと同じような王制の国と考えているのか、明確な答弁を求めるものであります。
 また、中曾根通産大臣は、六月二日大阪での発し言で、「日本という国が二千数百年も続き、まとまってきたのは天皇があったからだ」「田中内閣が何だかんだと言われても、内閣が倒れ、めちゃめちゃになるでしょうが、天皇の大きな求心力で日本はもっている」とまで述べております。ここに示されている中曾根通産大臣の思想は、国の存立の基礎を国民に置くのではなく天皇に置くということであります。これは憲法の主権在民の精神を根本から否定するもので、まさに閣僚の資格に欠けるものと言わなければなりません。中曾根通産大臣はこの点についてどのように考えているのか、明確な答弁を求めるものであります。
 田中総理は、六月七日の衆議院内閣委員会で、天皇が国政に関与するようなことはなく、これは旧憲法時代から一貫していたという趣旨の答弁をしましたが、この発言はきわめて重大であります。
 第一に、旧憲法時代には、天皇は、その第四条で、統治権の総攪者として立法、司法、行政のすべてを掌握し、さらに陸海軍の統帥権をも掌握していました。そして、第二次世界大戦で三百万人もの日本国民の生命を奪い、アジア諸国民に多大の被害を与えた悲惨な侵略戦争が、天皇の直接召集する御前会議で計画、決定され、天皇の名にお・いて始められたのであります。総理は、これらの明白な歴史的事実を否定するのでありますか。それでもなお、天皇が旧憲法時代に政治について意見を述べなかったと言われるのですか。第二に、総理のこの発言は、旧憲法時代と現在と天皇の地位が変化していないという前提に立つものであります。これは主権在民を規定した現憲法の精神を根本から否定することになると考えますが、総理の明確な答弁を求めるものであります。第三に、総理は、現行憲法のもとでも天皇の国政関与の発言はないと言うが、これは全く事実と反するものであります。わが党が天皇の開会式におけるいわゆる「おことば」問題で指摘したように、たとえばサンフランシスコ条約を賛美したり、また田中内閣の成立時に、民生の安定向上にその成果をあげつつあると述べるなど、自民党政府の政策を事実上たたえる発言をしているではありませんか。総理は、これを国政関与の行為とは考えないのかどうか。明確な答弁を求めるものであります。
 次に、増原問題について、総理は、天皇の国政関与の発言がなかったと言われるが、それは天皇の発言それ自身が存在しなかったということ、すなわち増原氏が虚構のことを述べたと言うのか、それとも天皇の発言自身はあったのだが、それは国政に関与するものではないと言われる意味なのか、そのいずれであるかをここで明確に答えていただきたい。
 もし、天皇発言それ自身が存在しなかったというのであれば、そのような総理の説明は、国民のたれをも納得させることはできないでありましょう。私は、この際あらためて、増原氏が責任をもって事の真相を国民の前に明らかにするよう強く要求するものであります。
 もし、伝えられたような天皇発言が事実とすれば、これは明らかに、憲法第九十九条に規定する天皇の憲法順守義務に違反するものと考えますが、この点についての総理の責任ある答弁を求めるものであります。
 言うまでもなん、天皇の国政関与の禁止は、現行憲法の定める大原則であります。この前提に立つならば、閣僚が内奏と称して天皇に所管事項を説明することそれ自身が不必要なことであるばかりでなく、このようなことを続けることは、結局は、天皇に政治関与の機会を与えることであって、許されないことであります。そして、今回の増原発言はそれを端的に示したものにほかなりません。憲法上の何ら根拠のないいわゆる内奏は、当然廃止されなければならないと思いますが、いかなる根拠に基づいてこれを続けるというのか、総理の明確な答弁を求めるものであります。
 次に、天皇の国事行為に関連して、田中総理が衆議院内閣委員会で述べた天皇の国事行為以外の公的行為についてお尋ねをいたします。
 総理の言う天皇の公的行為なるものは、憲法のどこを根拠としているのか、まず明確にされたいと思います。もしも、憲法上根拠のない天皇の公的行為に問題が起こった場合、一体、だれがその責任を負うのか。公的行為の中に違憲行為がある場合、それは天皇の責任になるのかならないのか。また、その場合、政府は責任をどう負うのか。総理の明確な答弁を求めるものであります。
 最後に私は、天皇に関するこれら一連の憲法無視の発言は、民主主義の精神とかけ離れた歴代自民党内閣の体質からにじみ出たものであり、いま政府・自民党がねらっている小選挙区制の強行、憲法改悪の策動と軌を一にしているものであることを指摘して、質問を終わるものであります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(田中角榮君) 岩間正男君にお答えをいたします。
 第一は、憲法否定の発言をする閣僚を閣内にとどめておくのはおかしいという意味の御質問でございますが、憲法第九十九条により、国務大臣、国会議員は憲法順守の義務を負っており、憲法を否定するような閣僚は閣内には一人もおりません。
 総理は、天皇が国政に関して発言をしたことは、過去、現在、将来もないと答弁をしたが、第二次大戦は天皇の御前会議で決定されたのではないかという御発言でございますが、これはおかしな御発言だと思います。私は、そんな意味で答弁をしておりません。問題が、旧憲法時代のことを含めて議論をされておったのじゃありません。憲法下における天皇制と政府との問題が議題になっておるのでありまして、もちろん、答えは新憲法下における天皇に対して答弁をしたのであって、旧憲法は対象になるはずはありません。新憲法下、天皇が国政に関して発言されたことはないという、私の確信には変わりはありません。御前会議を持ち出してくるなどというのは、それこそ問題をすり違え、すりかえるということであります。
 それから、天皇の開会式におけるおことば等対して、これは国政関与の行為ではないかという趣旨の御発言でございますが、天皇の開会式におけるおことばは、国会の要請に基づき、天皇が日本国の象徴たる地位に基づくいわゆる公的行為として御臨席をされ、いわば儀礼的な意味でごあいさつをされるものであります。天皇の行為は、いやしくも国政に影響を与えるようなものではなく、おことばについても、何ら政治的な意味を含まれておらないことは、申すまでもないことであります。
 次は、天皇の国政に関する発言はなかったと断定をしているが、増原氏に対して内奏の内容等をただしたのか云々の御発言でございますが、増原氏は、辞任にあたって、天皇陛下から国政に関係するような御発言があったという事実は全くありません、ただ、私の新聞記者に対する説明が意を尽くさなかったため、誤解を与えたことはまことに申しわけなく、この際、その責任を負って辞職いたしますと言っておるのであります。増原氏は、国務大臣の職をかけて真実を述べたものであり、私の立場として、増原氏のことばを信ずるのは当然であります。(拍手)
 次は、閣僚の所管事項の内奏は憲法違反であり、廃止をすべき旨の御発言でございますが、天皇陛下に対する所管事項の御説明は、各省大臣が認証官任命式等に出席をする際に、たまたま行なわれるものであり、いわゆる内奏とは関係のないものでございます。それは象徴である天皇が、一般的な知識、教養を高められるために行なわれるものであり、天皇が、その際、国政に影響を与えるような御意見を述べられるようなことはありません。政府としては、所管事項の御説明を取りやめることは全く考えておりません。(拍手)
 最後は、天皇の公的行為の憲法上の根拠及び天皇の公的行為についての責任の所在というものに対しての御質問でございますが、いわゆる天皇の公的行為というのは、憲法に定める国事行為以外の行為でございまして、天皇が象徴としての地位に基づいて、公的な立場で行なわれるものをいうのであります。
 天皇の公的行為につきましては、憲法上明文の根拠はありませんが、象徴たる地位にあられる天皇が、公的行為を行なわれることは当然のことであります。
 天皇の国事行為につきましては、内閣の助言と承認に関する憲法の規定がございますので、その責めは、当然内閣にあることは申すまでもないことでございます。によりまして、天皇の国事行為につきましても、その責任はすべて内閣にあるものと考えておるのであります。
 以上。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(中曽根康弘君) 私のイランにおける発言の真意は、先ほど申し上げたとおりでございます。親善友好の雰囲気を盛り上げるために用いたものでございまして、両国の国家体制の相違や、天皇または皇帝の権限の相違については、よく認識しております。
 また、親善友好の雰囲気を盛り上げるために、外国人に対して、簡単にわかりやすいような表現を用いたものでございまして、この点につきましては先ほど遺憾の意を表明したとおりであります。
 次に、御質問の六月二日の大阪での私の発言の件でございますが、あれは、憲法制定議会において金森国務相が説明した象徴天皇論を解説したものであります。それは日本の歴史的事実を説明し、主権在民、象徴天皇の意義と地位を解説したものであります。
 わが国は主権在民であるとともに、象徴天皇をいただく独特の体制であることを強く認識し、日本国憲法を順守するということは、私の一貫した信念でございます。(拍手)
#24
○副議長(森八三一君) 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十人分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト