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1972/06/18 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第21号
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1972/06/18 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第21号

#1
第071回国会 本会議 第21号
昭和四十八年六月十八日(月曜日)
   午後一時三分開議
    ―――――――――――――
○議事日程第二十三号
  昭和四十八年六月十八日
   午後一時開議
 第一 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再
    建促進特別措置法の一部を改正する法律
    案(趣旨説明)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#2
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 日程第一 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 本案について、提出者の趣旨説明を求めます。新谷運輸大臣。
   〔国務大臣新谷寅三郎君登壇、拍手〕
#3
○国務大臣(新谷寅三郎君) 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 国鉄は、過去百年間国内輸送の大動脈として国民生活の向上と国民経済の発展に寄与してまいりましたが、今日その役割りは、都市間旅客輸送、大都市通勤通学輸送、中長距離大量貨物輸送等の各分野においてますます重要性を増しており、過密過疎の解消、国土の総合的開発のための中核的交通機関として将来にわたってその使命の遂行が強く期待されるところであります。
 一方、国鉄財政は、経済社会の変動と輸送構造の変化に伴い、昭和三十九年度に赤字に転じて以来急速に悪化の傾向をたどり、国鉄が今後国民生活、国民経済において果たすべき使命を全うすることができなくなるおそれが生じてまいりました。
 このため、政府といたしましては、第六十一回国会において成立した日本国有鉄道財政再建促進特別措置法に基づき、昭和四十四年度以降十年間を再建期間として、各種の財政再建対策を鋭意推進してまいった次第であります。
 しかしながら、その後の推移を見ますと、自動車輸送の発達等による輸送量の伸び悩み、人件費の大幅な上昇等のため、国鉄財政はさらに悪化し、昭和四十七年度には約三千六百億円の欠損を生じ、累積欠損は約一兆二千億円に及ぶ見通しとなり、きわめて憂慮すべき事態に立ち至りました。
 このような実情にかんがみ、政府といたしましては、現行の財政再建対策が十分にその目的を達成できなかった原因について反省し、あらためて昭和四十八年度以降十年間を再建期間とする抜本的な財政再建対策を策定し、これを推進する必要があると考えております。
 このため、今回の財政再建対策におきましては、将来にわたり国鉄がわが国の基幹的公共輸送機関としてその果たすべき役割に応じ得る近代的経営体制を確立しつつ、財政の健全性を回復し得るよう、今後十年間にわたり政府出資、工事費補助の増額、過去債務についての財政再建債及び同利子補給金の対象範囲の拡大等財政措置の大幅な拡充を行なうことといたしましたが、なお、その実現のためには、国鉄自身が労使相協力して収入の増加と業務運営の合理化に最大限の努力をいたしますとともに、あわせて利用者各位の御理解と御協力のもとに、必要最小限度の運賃改定を行なうことも真にやむを得ないものと考え、このたびこの法律案を提案することとした次第であります。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 まず、国有鉄道運賃法の改正の内容について申し上げます。
 第一に、鉄道の普通旅客運賃につきましては、その賃率を、おおむね二二%引き上げるとともに、遠距離逓減制を是正することとし、現行賃率では営業キロ一キロメートルごとに五百キロメートルまでの部分については四円二十銭、五百キロメートルをこえる部分については二円五十銭となっておりますのを六百キロメートルまでの部分については五円十銭、六百キロメートルをこえる部分については二円五十銭に改定することといたしております。
 第二に、航路の普通旅客運賃につきましては、鉄道の普通旅客運賃とほぼ同程度の改定を行なうことといたしております。
 第三に、貨物運賃につきましては、制度の合理化をはかるため、車扱い貨物運賃の等級数を現行の四等級から三等級に圧縮するとともに、その賃率をおおむね二五%引き上げることといたしました。
 また、小量物品輸送の合理化をはかるため、小口扱い貨物を小荷物に統合するとともに、近年飛躍的な増加を続けておりますコンテナ貨物の運賃につきまして、従来は小口扱い貨物運賃の一種とされておりましたものを新たに国有鉄道運賃法上の貨物運賃とすることといたしております。
 なお、これらの改定により、実収一五%増の運輸収入が得られることとなっております。
 次に、日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の改正の内容について申し上げます。
 第一に、昭和四十八年度予算案編成を契機として今後十年間にわたり助成策の大幅な拡充を行なうこととし、新たに、昭和四十八年度以降の十カ年間を再建期間とする国鉄財政再建に関する基本方針及びこれに基づく再建計画を策定することといたしております。
 第二に、国鉄が今後新幹線鉄道の建設、在来線の複線電化の促進等輸送力の増強及び輸送方式の近代化のための工事を推進し、その体質の改善をはかるため、政府は、再建期間中の毎年度、国鉄に対し、工事資金の一部に相当する金額を出資するものとしたほか、工事費にかかる利子負担の一そうの軽減をはかることとし、工事費補助金の対象工事年度を昭和五十七年度まで延長するとともに、交付期間を十年間に延伸し、その交付年度を昭和六十七年度までとすることにいたしております。
 第三に、過去債務の利子負担を軽減するため、財政再建債及び同利子補給金の対象を現在の昭和四十三年度末政府管掌債務から昭和四十七年度末政府管掌債務及びすべての鉄道債券にかかる債務に拡大することといたしております。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
#4
○議長(河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。江藤智君。
   〔江藤智君登壇、拍手〕
#5
○江藤智君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました国鉄運賃法及び国鉄財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案について質問をいたします。
 まず、総理大臣にお伺いいたします。
 国鉄は昨年、開通百年を迎えました。その間、国鉄が、わが国文化、経済の発展の上に果たした役割りはきわめて大きなものがあります。特に、従来の鉄道政策は、目前の打算にのみとらわれることなく、長期的視野に立って、社会の進展に寄与してまいりましたので、国民は鉄道に対し、深い信頼と親しみを抱いてきたのであります。したがって、職員もまたその信頼にこたえて、責任と誇りを持って働いてきたと思います。
 しかるに近時、この国鉄に対する信頼と親しみの情が漸次低下しつつあるのではないかと思われますことは、まことに憂慮にたえないところであります。その原因は、近ごろ、国鉄の財政悪化のため、国民の要望に十分こたえきれないで、いろいろな不満を与えているためであろうと思います。そのために国鉄の社会的地位も漸次低下し、労使間の不信、職員の働く意欲にも影響を与えていると思われます。したがって、今回の国鉄の財政再建にあたっては、単に赤字のつじつまを合わせるということだけでなく、まず国鉄に対して、総合交通体系の上で、将来にわたってその果たすべき役割りを明示するとともに、立ちおくれた現在の国鉄を近代的な鉄道に生まれ変わらせることによって、公共の福祉を増進するという目標と、使命とを明確に与えることが必要であると思います。これについて総理の御見解を伺います。
 次に、労使の問題についてお伺いいたします。
 国鉄財政は、いまや直接列車運行に要する経常の経費すら、みずからまかなうことができないという状態にあります。常識的に考えれば、この際、労使は一丸となって、その能率的運営に努力し、その再建に当たらなければならないときだと思います。しかるに、ことしに入ってからも、相次ぐ違法なる順法闘争や政治的ストなどがひんぱんに行なわれ、国民に対しましては、物心両面にわたってはかり知れない損害を与えました。ついには憤激した乗客によって上尾事件まで引き起こしたのであります。これらの違法行為はまことに目に余るものがあります。(拍手)
 また、ある駅で生じた不祥事件におきましては、その扇動者が国鉄の組合員であったり、スト明け直後の東海道新幹線において、ストに参加した国鉄の職員が超満員の旅客をしり目に二両の客車を占拠し、ゆうゆうと着席して帰京するなど、まことに驚くべき事態も発生いたしております。これらは、いずれも国鉄職員としてのモラルの低下と職場規律の弛緩を示すものであります。
 私は、国鉄財政再建の基礎的要件として、まず労使間の信頼を回復し、職場規律を正し、労使一丸となってサービスに徹するという体制をつくらなければならないと思います。そのためには、職場における管理体制を確立し、信賞必罰の実をあげるべきであると思います。総理並びに運輸大臣の御所見をお伺いいたします。
 次に、運輸大臣にお尋ねいたします。
 国鉄財政がここまで悪化した要因はいろいろ考えられます。しかし、最大の原因は国鉄の運輸収入の増加が、人件費の増加にとうてい追いついていけないところにあることは明白であります。試みに、昭和四十六年度と四十七年度との収支を比較してみますと、運輸収入の増加が四百七十一億円であるのに対し、人件費の増加は、実に一千百二十億円でありますから、それだけで六百四十九億円の赤字が増加したことになります。また、四十七年度収支の内容を見ますと、運輸収入に対する人件費の割合は実に七七%、物件費の割合は二六%、利子の割合は一八%で、償却費を除いても合計一二一%となり、したがって、利子はおろか経常経費の一部さえ借金にたよらざるを得ない状態であります。もし民間企業であったなら、すでに倒産していると言わざるを得ません。現実には政府からの助成金と借り入れ金で食いつないでおりますが、それにも限度があることは当然であります。
 現再建法が所期の目的を達成し得なかったのは、人件費増加の見込み違いが最大の原因であったと思います。このたびの改正案では、これらの点に関しまして、十分自信が持てるものであるかどうか、特に今年度の仲裁裁定による人件費の増加分だけでも一六・五%、一千二百八十六億円に達しております。このようなことも考え合わせた上で、はたしてだいじょうぶであるかどうか、御答弁をお願いいたします。
 次に、総理大臣に対し、総合交通政策の推進についてお伺いいたします。
 国鉄収入の伸び悩みの一つの原因は、国鉄の輸送シェアが著しく低下しているということにあります。交通機関にはそれぞれの特性がありますから、そのシェアは競争原理のもとにおいて、ある程度おのずからきまるものであります。しかし、そのためには、同じ条件のもとで競争をさせなければなりません。ハンディキャップをつけては適切なシェアが定まらないで、結局国民経済的に見ましても大きな損失になります。
 鉄道は建設、維持、管理を全部みずからまかなってきました。ことに国鉄は、戦災と荒廃の復旧も含めまして、すべてこれを借り入れ金によってきたのであります。これに対し、道路、航空、港湾などの公共施設には、大幅な国の助成が行なわれておりますから、これらを使用する他の交通機関は著しく有利な条件となります。これでは、各交通機関が公平な競争をしているとは言えません。今後は、鉄道に対しましても、公平な競争ができますよう、また適切なシェアが確保できるよう、財政及び税制上の配慮を加えまして、総合交通政策を推進すべきであると思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。
 次に、大蔵並びに運輸大臣にお尋ねいたします。
 私は、現在国鉄がになっている公共負担について、再検討をなすべきであると思います。現在国鉄は、通勤定期平均五六%、通学定期平均八二%をはじめ、多数の大幅な旅客運賃の割引をいたしております。さらに、貨物については、生活必需物資六十一品目に対し政策等級割引を、荷物においては新聞八一%、雑誌七三%の大幅な割引を行なっておりまして、その総額は年間約五百億円に達しております。これは、かつて国が鉄道を直接経営し、かつその財政が豊かな時代の遺物とも言うべきものであると思います。
 現在のように、必要最小限度の運賃改定を求めるときにあたりましては、これらはいずれも文教政策、社会保障政策あるいは国民生活に関する割引でありますから、これらの負担を一般鉄道利用者に負わせることは理屈に合わないように思われます。
 現に、ドイツ連邦鉄道、あるいはフランス国有鉄道においては、社会政策的旅客運賃による損失に対する補償、あるいは無償または割引強制に対する補償及び特定貨物輸送に対する補償などの形において、国庫補償をいたしておるのであります。
 私はこの際、これらの割引を再検討するとともに、その割引については国庫補償をも考慮すべきであると思いますが、政府の御見解を伺います。
 また、国鉄に対する市町村納付金についても、私はどうも理解に苦しむのであります。この制度は、二十年前、地方財政の窮迫を救うため、まだ財政余力のあった国鉄に対して、固定資産税の性質で、その半分を地方自治体に納付することになったのでありますが、現在のように国鉄財政が逼迫して、大幅な国の助成を受けるようになった場合には、現実に合わないように思われます。まして、その地方の便益を増進するために、強い要請にこたえて国鉄が複線や電化をした場合、たちまちその地方に対し、その部分についての納付金を納めなければならないということは納得しかねるのであります。また、国鉄と競争的立場にある道路には、有料、無料を問わずこれが適用されていないことからしても、この制度は総合的に再検討すべきであると思いますが、政府の御見解を伺います。
 次に、国鉄の合理化努力について運輸大臣にお伺いいたします。
 大幅な税金を投入し、運賃改定を行なおうとする以上、まず国鉄自身が能率的経営に最大の努力をなすべきことは言うまでもありません。国鉄はただ、いまきわめて効率の低い経営をいたしております。大体の趨勢を見るために、昭和四十六年度の各種大企業の年間一人当たり売り上げ高を見ますと、おおむね一千万円ないし二千万円程度であります。しかるに、国鉄はわずかに二百四十六万円にすぎないのであります。その原因は、運賃の低いことも大きな原因と思いますが、いま一つの原因は、国鉄の近代化がおくれて旧態依然たる労働集約型の経営をしているからであります。ただいまの進歩した技術を導入すれば、諸外国の例を見ましても、労働強化を伴うことなく大幅な人員の削減は可能であると思われます。また、これを行なわなければならないと思います。しかし、再建案が示すように、十年間に十一万人の実員を削減するということを考えますると、職員の配置転換や再教育、特に新規採用を差し控えるために生じてくる平均年齢の高齢化などに対しましてはいかに対処されるのか、お伺いいたします。
 最後に、今回の運賃改定の必要性と物価に対する影響についてお尋ねをいたします。
 政府は、国鉄の財政再建のためには、政府も国鉄もそれぞれの立場におきまして最大限の努力をした上で、必要最小限度の運賃改定は真にやむを得ないところであると言っております。また、諸物価と比較してあまりにも低いところに運賃を押えることは、結局、大きな税負担、あるいは将来さらに大幅な運賃改定として国民にその帳じりが回ってくるとも申しております。しかしながら、一方においては、運賃改定はこの物価高に際して国民生活をさらに圧迫するものであるとの理由から、強い反対の意見もあります。つきましては、総理並びに関係大臣から、この際、運賃改定の真にやむを得ない理由と、その国民生活に与える影響についてどのようにお見通しをしておられるのか、納得のいくように御説明をお願いいたしたいと思います。
 以上をもちまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(田中角榮君) 江藤君にお答えをいたします。
 国有鉄道再建に対する将来の基本方針をまず第一に御発言になりましたが、国有鉄道は国民の足であり、輸送の大動脈であります。明治から百年余、わが国経済の拡大が鉄道の発展とともにあったことは、歴史の示すとおりでありますし、また、戦後復興に果たした鉄道の使命は、高く評価さるべきものだと考えるのであります。
 御指摘のように、国鉄の役割りは、都市間旅客輸送、大都市通勤輸送、中距離貨物輸送の三つでありますが、地形、地勢上、特に降雪地帯が全国土の四九・五%、約半分もあるという制約のわが国では、鉄道が最も効率的な輸送機関であることは何人も認めるところであります。特に、東京の中央線新宿・四ツ谷間の朝の輸送を見ますと、一時間に約十万人を運んでおるのであります。この十万人を運んでおるという、この新宿と四ツ谷間を道路で運ぶということを仮定して計算をしてみますと、幅四百メートルの道路を必要といたします。乗用車なら片道六十車線、バスなら片道八車線、幅六、七十メートルの道路を必要とする計算になるわけでございます。そういう意味で、鉄道が国民生活の上で必要な大量輸送機関として不可欠なものであることは申すまでもないのでございまして、その健全化は焦眉の問題であると考えます。
 国鉄財政再建のため、政府としては、再建期間中に一般会計から三兆六千億、鉄道公団に出資をする一兆円を合わせると、四兆六千億になるわけでございますし、財政投融資から九兆三千億円の助成を行なうことにいたしておるのであります。国鉄自身の合理化努力とあわせ、必要最小限の負担増を利用者に求めざるを得ないと考えておるのであります。なお、再建期間中の国鉄の新規投資は、新幹線鉄道の整備、複線電化、貨物輸送の近代化等を合わせて、十兆五千億円を予定をいたしておるのでございます。
 それから国鉄の労使関係の正常化についての御質問がございましたが、国鉄の再建におきましては、労使が十分に理解をし、相協力をする体制を確立することが何よりも重要であることは申すまでもないことでございます。私としては、国鉄の労使双方が、国民の足としての国鉄の社会的責務を十分に自覚し、高い次元に立って真剣に話し合い、合意に達するよう努力することを衷心から求めたいのであります。
 第三は、総合交通政策推進の必要性でございますが、わが国は、鉄道、道路、内国海運、航空等の輸送機関がございます。昭和六十年を展望いたしますと、貨物輸送量は、最低でも現在の三倍ないし四倍になるわけでございます。これを一体どうして運ぶのかという問題が総合交通政策の基本にならなければならないわけでございます。海運は、いま貨物を四〇%運んでおりますが、これを五〇%に引き上げる必要があります。なお、道路網の整備費を、現在五カ年間、十九兆五千億という膨大なものでございますが、現在の約二倍程度に拡大をいたしましても、鉄道が負わなければならない荷物は非常に大きいのであります。
 私は、日本列島改造論で指摘をしました数字そのままで申し上げると昭和六十年――しかし、それとほとんど同じような状態で現在貨物量がふえつつあることは、これは否定できない事実でございます。そうしますと、昭和六十年に国内の貨物の移動量は一兆三千二百億トンキロになるわけでございますが、鉄道で運べるものはわずか二年間、六百億トンキロでございます。そうすると、四〇%のシェアを五〇%に海運を上げても、ちょうど半分でありますから六千六百億トンキロ。六千六百億トンキロから鉄道の今年度分六百億トンキロを引きますと、鉄道の十年分の貨物を陸上か何かで輸送しなきゃならないというのは、これは算術計算として、当然の数字として出てくるわけでございます。ですから、道路を現在の二倍にしても、運べるのかどうかというと、これは運べないのであります。それは運ぼうとしても、自動車が二千七百万台も必要になるわけでございますが、その時点における交通労働者として確保できる人員は五百五十万人でございますから、運転手に振り向け得る人間の数は、三百五十万人が最高なのであります。そういう状態を考えるときに、一体、それに合うように国民生活を押え得るかどうかということが逆に計算をされるわけでありますが、それを押え得ないのであります。そういうことになると、どうしても鉄道で運ぶ以外にはありません。でありますから、新幹線をつくることによって人を運び、そしてなお、在来二万キロの鉄道を複線電化することによって、近距離の通勤輸送と大量の貨物輸送を常時行なわなければならないのは、これは事実でございまして、今日、総合交通体系の中で鉄道がいかに大きなウエートを占めるかは、申すまでもない事実なのであります。その意味で、鉄道がいかに国民生活の上で重大であるかが理解されるところでございまして、新幹線の整備と在来幹線の複線電化の整備の急なることは、この面からも御理解いただけると思うのでございます。
 それから物価の問題でございますが、昭和十一年を一とすれば、これは、はがきは六百六十七倍であります。新聞は八百八十九倍であります。東京都の消費者物価は六百十四倍であります。それに引きかえて、鉄道運賃は二百六十九倍なのであります。どう考えてみても少ないのであります。これは、昭和十一年を基準にして申し上げておるからこんなことになるわけでございますが、委員会ではもっとこまかい数字を申し上げるはずでございます。明治五年、鉄道が初めて敷かれたときの基準料金は、一人の一キロの基準は二銭であります。この二銭を基準にして考えますと、三百倍以下でございます。明治五年に比べても三百倍以下であります。米は安いというけれども、米は四千九百何十倍、約五千倍になっておるのであります。そういう意味で、鉄道運賃がいかに戦後の経済復興のために低く押えられてきたかは、この数字で明らかなとおりでございますし、そのために国鉄の労使双方が大きな苦労をしてきたということは、この数字が一面をあらわしておるのであります。ですから国鉄の現状を、ただ労使のみをもって責めるということは当たらないわけであります。これは一つの戦後の政策として押えられてきた鉄道運賃の現状というものを真に理解する必要があると思うのであります。
 鉄道運賃改定によって消費者物価に与える影響は、旅客、貨物あわせて〇・四%、旅客運賃の改定が家計支出に与える影響は〇・二%と推計をせられるわけでございます。
 いずれにしましても、この法律を通過せしめていただくということは、国鉄の財政を健全化するということよりも、国民全体の生活を確保するというために不可欠の法案であることを理解していただきたい。(拍手)
   〔国務大臣新谷寅三郎君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(新谷寅三郎君) 私に対してお尋ねのありましたことについて、お答えを申し上げたいと思います。
 人件費の問題でございますが、お説のとおりに、現行再建計画を変更するのやむなきに至りました原因は、運賃収入が伸び悩みましたり、設備投資が増大いたしまして、それに対する利子負担が増大したこともございますが、このほかに、年々予定した人件費の上昇率を上回る人件費の上昇にあったことは事実でございます。現行の計画でいきますと、人件費の上昇率は毎年九%と予定しておったのでありますが、四十四年には一三・四%、四十五年には一五・一.七%、四十六年には一四・〇四%であったのであります。
 今回の再建計画におきましては、本年二月、政府が決定いたしました経済社会基本計画を基礎といたしておりますが、この計画では、四十八年度から五十二年度までの実質経済成長率は九・四%、一人当たりの雇用者所得は年平均伸び率一二・三%と見込んでおるのでありまして、再建計画におきましても、前半の人件費上昇率は一二・三%と見込んでおる次第でございます。また、経済社会基本計画は五カ年計画でありまして、再建計画の後半期に見合う賃金の上昇率は示してはおりませんが、活力ある福祉社会の基盤が形成されて、経済成長率も再建計画の前半期よりも若干低下するのではないかと見込まれておるのでありまして、再建計画における後半の人件費上昇率は、一〇・三%と見込んでおるのであります。
 今回の仲裁裁定によるベースアップについてお触れになりましたが、これは、仰せのように一六・五四%でありまして、予定をはかるに上回っておることは事実でございます。今後、こういった問題をとらえまして、国鉄はこれに対応いたしまして、経費の節減、企業努力等のあらゆる施策を講じまして、これに対応するような措置をとっていかなければならぬと考えております。
 次に、公共負担及び市町村納付金についてお尋ねがございましたが、通勤・通学割引等のいわゆる公共負担の額は、たとえば四十六年以前十カ年間をとってみますと、六千七百九十八億円になります。これを政府が負担しておりますれば、国鉄の財政が現在のような悪化の状態にならなかったことは事実であろうと思います。これは御承知のように、国鉄がその独占的な体制を維持いたしました時代には、通勤・通学の大幅割引等の公共負担を負担し得たのでありますが、自動車輸送が非常に増加いたしまして、国鉄がすでにその独占性を失った今日におきましては、年間五百億円に達する従来の公共負担の制度の是正をはかるのも一つの方法ではないかと考えますが、これを一挙に行ないますことは、国民生活に及ぼす影響も少なくありませんので、私どもは漸次その是正につとめているところでございます。
 それから市町村納付金の問題でございますが、国鉄は、昭和三十九年度以降毎年度大幅な欠損を出しておりまして、極度に窮迫した財政事情にありますので、市町村納付金につきましては、昭和四十四年度の納付金の分から軽減措置がとられております。運輸省といたしましては、市町村納付金の創設の経緯、国鉄財政の現状からいたしまして、その免除が望ましいと考えておりますけれども、地方財政の現状から申しまして、その免除につきましてはきわめて困難な事情にあるものと思われます。
 市町村納付金の廃止が困難でありますれば、それを国が負担すべきであるという御主張のように承りましたが、政府といたしましては、今回の国鉄の財政再建にあたっては、国鉄の公共負担とか、地方閑散線の維持とか、個々の項目につきまして助成を行なっていくという考え方をとっておりません。全体といたしまして、包括的に国鉄の財政を十カ年で再建するためには、どのような助成を行なうべきかという観点からいたしまして、政府の出資、工事費の補助、過去債務の負担の軽減をはかろうとしておるのでございまして、したがって、市町村納付金につきましても、この際、別個にこれを切り離して国が負担するという考え方をとっていない次第でございます。
 それから、国鉄の合理化、特に、人員の削減について御質問がございましたのでお答えいたします。
 今回の再建計画における合理化の考え方は、従来と変わりはございません。技術革新の成果の積極的な取り入れ、設備の近代化等によって、国鉄を従来の労働集約的産業から装置産業へ脱皮させまして、良質で低廉な鉄道サービスを国民に提供させるために不可欠のものであると思うのであります。その内容は、たとえば営業体制の近代化の推進でありますとか、車両近代化、各種部品の性能向上に伴う検査周期の延伸と検査方式の簡素化、スラブ軌道の導入、コンピューターの導入による指令業務、資材業務の簡素化等が考えられます。これによりまして、業務、輸送全体が徹底的に合理化、省力化されるのでございまして、将来の業務量の増加を吸収しながら、五十三年度までに、自然退職者を中心として十一万人の要員の縮減を行なうことが可能であると考えております。このように合理化投資による省力化効果に即応しつつ、要員の縮減は行なわれる予定でございまして、これが実施にあたりましては、輸送の安全の確保はもとより、不当な労働強化にならないように、国鉄に対して十分指導をしてまいりたいと考えておる次第でございます。(拍手)
 〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(愛知揆一君) 私に対する御質問は、運輸大臣からお答え申し上げたところで尽きておると思いますが、補足して申し上げたいと思います。
 公共負担の問題でございますが、いわゆる運賃の割引、貨物の割引等は、ただいま運輸大臣から申されたとおり、沿革的に考えれば、国鉄が独占的な輸送機関であった、そういう時期に社会政策的な要請に基づいて実施されてきたものでございます。国鉄が、現在、独占的な地位に非常な変化を生じておりますような状態になり、また、経営が極度に悪化しておる現状におきましては、財政の健全化をはかるためにも、また、利用者の運賃負担の公平をはかるという見地からも、可能なものについてはできるだけその是正につとめるべきではないかと、かように考えておる次第でございます。
 なおまた、そのかわりに、国鉄に対して国の助成でこれらの穴を埋めてはどうかと、こういう御意見でございますが、特定の公共割引等から生ずる直接的な国鉄の負担に着目して、それにストレートの助成措置を講ずるということよりは、やはり全体として国鉄の公共性に着目して、工事費に対する出資や補助や、過去の債務の利子負担軽減やあるいは利子補給といったような、全体としての助成措置を適切に組み合わせて、国鉄全体の財政基盤の健全化をはかるということがより適切であると、かような考え方に立っておる次第でございます。
 なお、御参考までに申し上げたいと思いますが、道路との関係にお触れになりましたが、たとえば、直接鉄道と競合する有料道路等について例をとりますと、有料道路の場合は、資金コストが約六%程度となるように政府が出資いたしておりますほかは、料金収入で償却することになっております。一般国道につきましても、揮発油税等によりまして、間接的に利用者がその建設費のかなりの部分を負担しておるわけでございまして、四十八年度で申しますと、利用者が負担しておるものが六四%というような状況になります。かくのごとく、有料道路等について、あるいは一般道路について、全額を一般財源の負担となるようにはなっていない、これが現状でございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(小坂善太郎君) 江藤議員にお答えを申し上げます。
 今回の運賃改定が国民生活に及ぼす影響についてでございますが、消費者物価指数の上昇率は、平年度ベースで約〇・三四%と見ております。また、貨物運賃の改定が消費者物価に及ぼす影響については、貨物運賃が消費者物価指数の指数採用品目でないために、ゼロということに直接効果においてはなるわけでございますが、間接効果を産業関連表を使用して試算いたしますと、貨物運賃のアップ分がすべて末端価格に転嫁されたと仮定いたしまして、平年度ベースで約〇・〇九%程度と見込まれる次第でございます。国鉄運賃の改定か消費者物価に与える影響を考えますと、その改定は十分慎重でなければならないことは当然でありますが、国民生活におきまして国鉄の果たす役割りの重大性を考えてみますると、国鉄の財政再建は急務でありまして、今回お願いいたしておりまする改定案は、財政措置の大幅な拡充と、国鉄自身の合理化努力とあわせて、必要最小限度の範囲内で利用者に負担を求めることといたしておりますものでありますので、真にやむを得ないものと考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(河野謙三君) 小柳勇君。
   〔小柳勇君登壇、拍手〕
#11
○小柳勇君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案趣旨説明されました二つの法案に対しまして、総理並びに関係大臣に質問を行なうものであります。
 第一の問題は、国鉄運賃値上げと物価政策の問題であります。
 国鉄が今日まで果たしてまいりました役割り、その使命、その功績については、国民各位も十分承知しておられるものと考えるところであります。しかるに、昨年政府から提案された運賃値上げ及び国鉄再建法案が廃案となり、今日の改正案に対しましても、国民こぞって強い反対の意向を示しておるところであります。
 その第一の原因は、物価暴騰に対する国民の怒りと恐怖から来ているものと思うのであります。国鉄運賃値上げを許したら、直ちに米価、私鉄運賃、バス、タクシー、電気、水道など、他の公共料金に一斉に波及することを、国民は過去の経験から本能的に察知いたしておるところであります。(拍手)
 今日、国民の最大の要望は物価の安定であります。しかるに、最近の物価動向を見ますと、景気上昇の加速化に加え、土地投機を皮切りに、株式や一部商品に対する投機により、卸売り物価を高騰させ、国民生活に直接関係を持つ消費者物価を急騰させております。本年五月の東京都消費者物価は、対前年度比一一・六%高と、全く異常な値上がりを続けておるところであります。このまま推移いたしますならば、本年度経済見通しの目標となっておる対前年度比五・五%の実現はとうていできない。また、本年度からスタートする国の基本的経済指針である経済社会基本計画に示されておる消費者物価の上昇率を年平均四%台にとどめるという構想も、初年度から大きな狂いを生じてくるのであります。これは、田中内閣の企業利潤を確保し、高度成長を達成しようとするインフレ政策に起因するものであり、田中内閣にはもはや物価政策はないと言っても過言でございません。このような物価高騰の中では、今日示されておる国鉄再建十カ年計画は、その根底から崩壊する要因を抱いておるのであります。この際政府は、公共料金を抑制し、インフレの進行をとめ、物価の安定をはかることこそ先決であると思うが、総理の見解をお伺いしたいのであります。
 なお、あわせて、異常な物価騰貴の現状から推移すれば、本年度の経済見通しに大幅な狂いを生じ、経済社会基本計画の改定が必要と思うが、経済企画庁長官に所見をお伺いいたします。
 また、最近、生活関連物資を運搬する輸送コストがばく大に膨張いたしております。その原因は、自家用トラックのはんらんであります。国鉄の運賃収入が年二千五百億円、営業トラックの運賃収入が約二兆円であります。これに対しまして自家用トラックは国家予算とほぼ同額の約八兆円の輸送コストを消費いたしておるところであります。自家用トラックの台数は営業トラックの約十五倍であります。これはしかも一〇〇%物価に組み込まれております。物価は物流抵抗と物流速度の相乗積に比例するという学説も最近出ておりますが、現在の日本の統計に出ていないこのばく大な輸送コストを掌握して規制しなければ、物価の安定はないと確信するのでありますが、経済企画庁長官及び運輸大臣の見解をお聞きいたします。
 第二は、総合交通政策についてであります。
 ただいま江藤議員も質問いたしました、総合交通政策の樹立なくしては国鉄の再建はないと、今日まで方々で言われてまいりました。昭和四十六年、当時の福田大蔵大臣、橋本運輸大臣は、総合交通政策の樹立をまって国鉄再建の抜本策を講ずるとしばしば言明してまいったところであります。
 昭和四十七年の十二月、臨時総合交通問題閣僚協議会が総合交通体系について協議した結果、国鉄輸送分野として、都市間旅客輸送、中長距離大量貨物輸送及び大都市の通勤・通学輸送を国鉄の役割りとすると発表いたしましたが、この役割りを果たすための効果ある各交通機関別調整措置がとられていないのであります。また、輸送機関別輸送分担率が明確化されていないのであります。特に、今日貨物輸送の比率は、昭和三十二年五二%あったものから、一八%に低下いたしております。総合交通体系を樹立して、バランスのとれた有機的な陸海空の輸送体制がとれるのはいつの日であるか、運輸大臣にお伺いいたしたいのであります。
 経済社会基本計画によれば、昭和四十八年度から向こう五カ年間に、道路には十九兆円、鉄道には七兆八千五百億円、港湾には三兆一千九百億円、航空には七千七百億円の社会資本の投資がなされるのでありますが、これは総合交通体系を基礎にした計画であるかどうか、経済企画庁長官にお伺いいたします。
 第三は、国鉄経営の基本方針についてであります。
 国鉄は、昭和三十九年以来赤字に転落して、以後その経営は悪化の一途をたどり、昭和四十七年度には、累積赤字一兆二千億円、長期債務三兆八千億円となって、今日ではもはや破局的段階に到達した。ただいま江藤議員も言ったとおりです。その原因と責任を徹底的に究明しなければ、今後の再建策はあり得ないのであります。
 昭和二十四年に国鉄が公共企業体として発足して以来、今日まで、政府は一体国鉄に対してどのような援助をしてきたのでございましょうか。工事補助金は昭和四十三年度五十四億円から始まり、また、利子補給金は昭和四十四年度から十三億円、政府出資は昭和四十六年度三十五億円、ようやくこの時代から本格的に継続されることになったのであります。その間、インフレの中で国鉄は借金政策で運営してきたのであります。独算制のワクの中で、しかも政策赤字路線を経営し、公共負担を押しつけられてまいりました。今日の赤字の原因は外部的要因に基づくものが大きく、交通政策の貧困に基因するものでありまして、政府の責任に帰すべきものがほとんどであると思うが、総理大臣の見解をお伺いいたしたいのでございます。
 次は、国鉄の独算制と公共性の問題であります。
 過去の国鉄運賃値上げに際し、また、国鉄をめぐる諸問題の解決に際して常に論議されるのはこの点であり、今日まで何回となく論議が繰り返されましたが、政府の方針は必ずしも明確でなく、独算制の強制により、公共性が失われつつあるのが現状であります。この際、公共性優先を明らかにし、その結果国鉄財政に負担がかかる場合は、国庫から助成するという基本方針を明らかにすべきであると思うが、総理大臣の見解をお伺いをいたします。
 あわせて、次の具体的な四つの問題について質問いたします。
 一つ、先進国でも行なっておるように、国鉄の基礎施設の建設及び改良費は国の出資でまかなうこと。
 二つ、過去の建設費の長期債務に対する利払いは国の負担とすること。
 三つ、地方ローカル線の赤字は、公共交通機関の優先整備の立場から、国によって必要な補償を行なうこと。
 四つ、公共負担、たとえば、通勤割引、通学割引、身体障害者割引、新聞輸送、交通安全のための諸施設の建設などは国の負担とすること。
 以上四つの提案に対する総理大臣及び大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
 第四に、今回の国鉄再建対策についてお伺いをいたします。
 現在、昭和四十四年度以降十カ年の再建計画が進められておりますが、もろくも三年で改定の必要に迫られ、政府は昨年、実収一五%増の運賃値上げを含む再建策を国会に提案いたしましたが、国民世論の反対にあい、廃案になったのは御承知のとおりであります。今回また同様の運賃値上げ案と、一部政府の助成を拡大しただけの十カ年の再建計画をここに提案いたしております。昨年廃案になった発想と同じその案を、再び今日ここに出しておるというその態度、国民を愚弄するもはなはだしいと思うが、政府の見解をお聞きしたい。
 提出された試算表を見ますと、最終年度の昭和五十七年度の国鉄の財政の状況は、累積赤字が二兆六千億円、長期債務は十一兆円となって、現在の財政状況よりさらにかえって悪くなるのであります。しかも、その間、四回の値上げを実施することになっております。このような再建対策をもって国鉄が再建されると考えておるのかどうか。しかも、今回の経済政策の指針である経済社会基本計画は、第一年度から物価高騰の要因のためにその変更が余儀なくされている状況であり、十年間も先の推計を、一体だれが信ずることができましょうか。それは、現在の再建対策が三年間で崩壊していることで明らかに証明いたしているところであります。運輸大臣は、この計画をもって国鉄再建が達成されると本気で考えておられるのかどうか、責任ある答弁を求めるものであります。
 第五に、運輸制度の矛盾についてお伺いいたします。
 その一つは、旅客運賃と貨物運賃との関係であります。国鉄の昭和四十六年度の総収入中、旅客収入の割合は七八%、貨物収入は二二%でありますが、貨物部門から生じた欠損額は、ほぼ国鉄の総欠損額にひとしい現状であります。国鉄経営の重大な体質上の欠陥を、ここに露呈しておると言わねばなりません。過去の実績を見てみますと、昭和三十九年、東海道新幹線が開業、四十一年から黒字になっておりますが、これは、新幹線の黒字で在来線の旅客の欠損をカバーしておるのである、貨物の欠損がそのまま国鉄の欠損となって今日に至っておるのであります。そうであるのに、なぜ今回旅客運賃の大幅の引き上げをするのか、国民には納得できぬのであります。また、十カ年の再建期間内に国鉄貨物運賃を黒字に転化させる具体案があるのかどうか、二つあわせて運輸大臣にお伺いをいたします。
 以上のような実態から見て、今後の国鉄再建策の中では、貨物輸送対策が重要な施策の一つであると考えますが、今日までの国鉄は、旅客が中心で、貨物輸送に対する設備投資が不十分で、輸送の近代化が著しくおくれました。加えて、トラック輸送の急激な伸びにより、その経営が悪化してきたのは事実であります。今日、わが国のトラック輸送は、自家用トラックのはんらん、過積みの横行、運賃ダンピングと、全く無秩序に放置されており、このことが交通事故を引き起こし、交通公害をまき散らしているのであります。この際、政府は、これらのトラック輸送の秩序の維持をはかるため、道路運送法を守る立場から各種の規制を強化すべきだと思うが、運輸大臣の所信をお伺いいたします。
 次に、国鉄貨物輸送の内部的要因でありますが、先ほども述べましたように、貨物運賃は原価の半分で奉仕していることになっております。しかもその上、セメント、石油、鉄鋼などには割引制度があります。ところが、反面、国民生活に直結した物資輸送については、順次割引制度が廃止され、今日ではその制度は全然ありません。全廃されたのであります。
 今回の改定案によりますと、生活物資の運賃値上がりは、米では宮城−東京間で二九・四%アップ、鮮魚では釧路−東京間で二九・六%アップとなります。このような実態から、世間では、貨物運賃は大資本に奉仕するものであるとの批判が巻き起こっております。政府は、大資本、大企業に奉仕する割引制度を廃止するとともに、貨物運賃制度そのものを根本的に再検討すべきであると思うが、運輸大臣の所信をお伺いいたしたいと思います。
 第六に問題といたしますのは、適正要員と安全確保についてであります。
 今回の再建計画の一つの柱として、昭和五十三年度までに十一万人の要員削減が行なわれることになっております。ところが、国鉄の業務量は昭和三十八年以降五〇%の増加になっております。また、国民の国鉄に対する安全性の要求はますます強くなっておるのであります。また、国鉄は、貨物駅の廃止、無人化などを国民の意思を無視して強行しており、その結果、サービスの低下を来たし、国民のひんしゅくを買っておるところであります。江藤議員は上尾事件を例にとりましたが、人口が二・五倍に増加したときに、通勤電車の増発がないならば、朝晩の通勤がどれだけ混雑するか想像にかたくないのでありまして、このような新幹線建設が先行して、在来主要幹線の増強が後退しておるのではないか、通勤、通学時の混雑をどうしてくれるかという国民の怒りが爆発したのであると思うのでありまするが、運輸大臣はどうお考えになるか、見解をお聞きしたいところであります。
 このような見地から、国鉄は安全確保とサービスの向上をはかるべきであり、事故防止のためには労働条件の緩和をはかるべきであります。適正な要員の配置と人員増こそ今日必要ではないかと思うのであります。四人に一人を整理するという十一万人削減計画は、この際撤回すべきであると思うがどうか、運輸大臣の所信をお伺いしたいのであります。
 さらに、国鉄労働者に対する労働基本権の問題についてお伺いいたします。
 昭和二十四年、マッカーサー指令によってストライキ権を剥奪され、公労法が施行されました。それ以来、仲裁裁定すら完全に実施されず、労使関係は不信感に満たされておるのであります。政府は、公務員制度審議会を隠れみのにして、この問題を避けようとしておりますが、国際労働機構でも日本のこの問題が重大問題となっております。一日も早く労働三権を完全に与え、公労法を撤廃して、一般労働関係法に移行させることについての労働大臣の見解をお伺いいたしたいのであります。
 第七に、国鉄の経営制度についてお伺いいたします。
 今日の国鉄経営機構はマンモス化し、官僚企業化して、きわめて硬直化しております。運営については運輸省、財政的には大蔵省などの強い支配下にあります。弾力性もなく、当事者能力を失っております。このような経営体制の中で、地域社会との連携を欠き、国民大衆との遊離を来たし、国民のための国鉄という意識がなくなっております。このような状態で政府、国鉄が再建策を唱えても、国民が共鳴するものではありません。国鉄の現状と将来に対し強い発言権を持つところの民主的な経営協議機関として、自治体代表、利用者代表、労働者代表などを加えた国鉄経営会議ともいうべき新しい機構をつくるべきだと思うが、運輸大臣の所信をお伺いいたします。
 最後に私は、総理、大蔵大臣に重ねてお伺いいたします。
 今回の再建計画は、三本の柱からなっております。一つは国の助成、一つは国鉄の合理化、いま一つは国民負担の運賃値上げであります。その中で一番負担の重いのは利用者である国民であります。十年間に四回の値上げで、その負担総額は八兆円になります。政府も一兆五千億円の出資と工事費の補助、利子補給などの助成を行なうことになっておりますが、その総額は約四兆円にすぎません。その間に新幹線の建設、あるいは在来線の強化など、工費事用は十兆五千億円を押しつけております。これはすべて国鉄の借金であります。したがって、十年後の国鉄財政は、単年度黒字に転向しますが、累積赤字、長期債務は、今日の時点よりさらに大幅に増加するのであります。そしてその根底には、利用者負担の強化と独算制の堅持が支配的役割りを果たしております。政府は、現行助成制度を思い切って拡大し、運賃値上げを回避すべきであると思うがどうか、その決意をお伺いしたいのでございます。
 以上で私の質問を終わりますが、いままで述べてきたとおり、今回の両法律案の改正は、国民経済と国民生活に重大な影響を与えるものであります。四回の運賃値上げと十一万人の労働者の削減、すなわち、一部の国民の犠牲によるこの国鉄再建案は、直ちに撤回して、出直すよう要請して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(田中角榮君) 小柳勇君にお答えを申し上げます。
 第一は、公共料金の引き上げを全面的にストップする決意がないかという趣旨の御発言でございますが、公共料金につきましては、従来から、その引き上げについて極力抑制してまいっておることは、御承知のとおりでございます。ただ、国鉄につきましては、国民の足として期待されている役割りを十分に果たし得るよう、その財政再建の一環として、国鉄自身の合理化、画期的な政府助成、必要最小限の運賃改定を行なうということで、いま御審議をいただいておるのでございます。政府としましては、今後とも、具体的な事情を十分に審査をいたしまして、真にやむを得ないものを除き、公共料金の引き上げについては、きびしく抑制をしてまいる、こう考えております。
 それから今日、国鉄の赤字の原因は、独算制のワクの中で、公共負担を押しつけられてきたのではないかということでありますが、私は、端的に申し上げて、そういうところもあると思います。
 国鉄が鉄道省から、戦後、三公社五現業、いわゆる公社制度になったわけでございます。一時は、国鉄を二分割しなさい、また、電力のように相当なものに分割をするほうがいいという案もありました。一部を民営にしなさいという意見もあったわけでございますが、しかし、現状のままでまいりました。しかも、先ほども申し上げましたように、戦後、他の公共料金の引き上げに比べては、あるものに対しては半分、あるものに対しては三分の一という低い料金で押えられてきながら、しかも、金繰りを見てもらっても、直接大きな政府出資を行なうとか、税金でまかなうというような面が小さかったにもかかわらず、昭和三十年代の後半まで国鉄が黒字経営を続けてきた、しかも、戦後の経済復興に対して大きな役割りを果たしてきたということは、高く評価さるべきだと考えておるわけでございます。しかし、いつまでもいまのように、政府も金を出さない、料金も上げない、そして増大する輸送力に対応せよ、しかも、明治につくったれんがの上を、毎日何百万人の生命が運ばれておるのであります。そういう現実に徴するときに、やはり国鉄の合理化だけに責めを求めることはできない。そういう事態が来たと私は思います。そういう意味で、去年から国鉄再建法というものを国会に提案をして、御審議をいただいておるわけであります。そうして、政府も出しましょう、しかし、政府の出す金は国民の税金をもって充てるのでありますから、一般の社会保障のような考えでやれるわけはないわけでございます。そういう意味で、三公社という制度に見合った立場において、政府は負担をいたします。もう一つは、国鉄の合理化、効率化を行なってほしい、そして必要最小限のものは利用者負担に求める。それ以外に、この制度を維持する方法はないのであります。ですから、国鉄というものを、一体もとの鉄道省に戻すのか、現在の公社の制度をそのまま維持していくのか、民営にするのか。民営にすれば、言うまでもありません、全部を料金でまかなうということになるわけであります。これは、いま、ガスや電力や水道までそのようになっておることを考えれば、国有鉄道が利用者負担を大宗としなければならぬことは、言うをまたないわけであります。
 国鉄の施設基盤の整備は、それだけでも国庫負担にしてはどうかという御提案がございました。四つの御提案がございましたが、これは先ほどからお答えを申し上げておりますとおり、一つ一つのものに対して、やっておるものもあります。地下鉄に対しては建設費の何十先と、こういう法律案をいま御審議もいただいておるわけでございますし、そのようなものはございますが、国鉄に対しては、総合交通体系の中の国鉄の位置をさだかにして、そして膨大化する交通需要というものの中における国鉄の責任と位置というものを定めて、この国鉄の公共的使命が果たされるように、国と国鉄との間の負担をきめていくのがいいことであると思いまして、個々の問題、新しい施設に対して、こういうものに対しては負担すべしというようなことよりも、いま考えておりますように、過去の債務に対しては孫利子補給を行なうとか、十年たてば自然に収入によって償還できるというようないわゆる企業の独立性、特殊性というものを生かしつつ、国と地方公共団体と利用者と、三者が国鉄を維持する、このような方向が一番いいと考えておるのでございます。でございますので、十年間に鉄道建設公団を含めて四兆六千億、しかも先ほど大蔵大臣が述べましたように、有料道路はコスト六%というのでございますが、国鉄はその公共性を考え、しかも現在の財政状態を考え、利子が三%になるように押えておるわけでございますから、合理的な案だと評価をいただきたいと思うのでございます。
 それから、国民負担による再建策ではないかという意味の御発言でございますが、それはいま申し上げましたとおり、私は、政府が全部税金で持つならば、これはもう鉄道省であるわけでございます。かつてあったわけであります。そうではなく、企業性を生かしたものでなければいかぬということで、五現業でもなく、三公社の制度をとったわけでありまして、公社は一つだけじゃありません。しかも国鉄を除く他の公社は、政府から、一般会計からの支援も受けておらない、金繰りだけつけてもらえばいいというようなものもあるわけでありますから、公社という制度を維持する限りにおいては、政府が助成するものに対しても、おのずから限界があることを御承知をしていただきたい。
 そして私は、去年の仲裁裁定分とことしの仲裁裁定分を合わせれば、ことし運賃の引き上げをお願いしている分よりもはるかにこすのであります。しかも、十年間の増収は八兆円だといわれますけれども、私はあえてこれを申し上げるわけではありませんが、十一万人の整理が行なわれる、自然退職が行なわれるということを前提に、しかも年率一〇%でこれから給与が引き上げられることを考えると、十カ年における給与の増は七兆四千億になるわけであります。ですから、今度四回も値上げをして、そしてその総額が八兆円であり、その間に一〇%という最低を押えても、給与の上昇分だけでも七兆四千億になるというのでございますから、私はやはり国鉄の公共性ということを考えると、国民に最低限の負担をしていただくのは真にやむを得ないことである、こう考えておるのであります。
 過去の建設費の長期債務に対する利払いの問題等、ただいま申し上げたとおりでございます。
 なお、新しい投資につきましては、十兆五千億の新規の投資に対して九兆三千億円の財政投融資を行なうということでありますので、以上で御理解いただきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣新谷寅三郎君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(新谷寅三郎君) お答えいたします。
 まず第一に、自家用トラックと物価との関係についてお尋ねがございましたので、その点について申し上げます。
 物価の上昇の要因として考えられますものは、需給関係でありますとか、市場の競争条件でありますとか、コストの上昇というように、いろいろありますことは言うまでもございませんが、現実の物価上昇は、これらの諸要因が複雑にからみあいましてもたらされるわけでありまして、物資にもよりますけれども、一般的には、貨物の輸送力が大きな要因であるとは言えないと思います。
 確かにお説のとおりに、流通経費の中のトラックの輸送費、特に自家用トラックの輸送費がかなりの部分を占めてきていますことは事実でございまして、この製品価格の上昇につながるという御指摘は、物資によりましては、これはある程度首肯できるところであると私も考えます。しかし、一面、自家用トラックには販売活動に用いることによりまして、顧客のサービスの向上がはかられるとか、集配等の人力の節約によりまして、中小企業等の経営合理化に役立つなどのメリットがあることも事実でありまして、したがいまして、輸送効率の面だけをとらえて自家用トラックを抑制するという考えにつきましては、これはもう少し大局的に、あらゆる角度から慎重に検討したいと思うのであります。
 それから総合交通体系の確立に関する問題でトラックのことをお尋ねでございましたので、お誓えいたします。
 国鉄の貨物輸送のシェアが低下してきましたのは、貨物輸送設備の近代化がおくれまして、荷主の要求する速達性、定時性のあるサービスを供給できなかったことにあるのでありまして、これが国鉄貨物部門の赤字の要因にもなっておると考えます。総合交通体系の観点からは、貨物輸送の分野におきましても、各交通機関がそのサービスの特性、たとえば鉄道につきましては高速性、大量性、自動車につきましては機動性、小口性、随意性、海運につきましては経済性、大量性といったような特性に見合った分野において、その役割りを十分発揮できるようにすることが必要であると考えます。政府といたしましては、このような観点からいたしまして、国鉄貨物輸送については、大量性、高速性という鉄道の特性を十分に発揮させ、荷主の求める輸送サービスを供給することが、まず何よりも大事であると考えております。このために、現段階におきましては、国鉄貨物収支の改善のためには、鉄道と代替的な面があります自動車輸送を規制するというような手段ではなしに、フレートライナーによる自動車との協同一貫輸送でありますとか、物資別の適合輸送の推進などによりまして、荷主の要求する速達性、定時性のあるサービスを供給できるようにすることが、総合交通体系の観点からは適切であると考えております。今回の再建計画におきましては、このような貨物関係投資が十分行なえるように、政府助成を抜本的に強化することといたしております。
 御承知のように、貨物輸送におきましては、流通革新が進行しておりまして、一般の物資につきましては、複数の交通機関の長所を適切に組み合わせた協同一貫輸送方式、また大量定型貨物につきましては、物資別の専用輸送方式が普及しつつあるのでありまして、その方向に誘導していくことは、貨物輸送体系効率化の観点からも必要であり、今後ともその推進につとめてまいりたいと考えております。
 なお、総合交通体系の確立につきましては、昭和四十六年の十二月に決定されました総合交通体系に関する政府の基本方針に基づいて、関係各省庁がそれぞれの所管に応じて鋭意努力をしておるところでございまして、今回の国鉄財政再建計画も、この方針の趣意によって進めようとしているものでありまして、計画期間中には、できるだけこれを前進せしめなければならないと考えております。
 それから、今度の計画で国鉄の再建ができる自信があるのかと、こういうお尋ねでございました。
 今日の再建計画は、これまでの計画が改定を余儀なくされました原因につきまして、十分に反省をいたしました結果、国鉄が過去における投資不足のために、所得等の向上とともに高度化する輸送需要に十分追随できる輸送サービスを提供できなかったことに、財政悪化の最大の原因があるものと考えまして、新幹線網でありますとか、複線電化の拡充強化でありますとか、貨物輸送のシステム改善等を行ないまして、鉄道サービスの質的な改善をはかるとともに、あわせて過密過疎を解消する国土開発政策に対応する等、陸上交通の大動脈としての国鉄の役割りを十分に果たせるように、十兆五千億の投資を行なうこととしたものでございます。しかしながら、これらの投資は、懐妊期間が長く、かつ採算性が低いために、財政状況が悪化している現在の国鉄が行なうことは困難でございますので、その過去債務に対する措置とともに、工事費については、その資金コストが出資と合わせて三%になるように、画期的な補助を行なうことにいたした次第でございまして、この結果、再建期間中に国鉄の諸施設は近代化、合理化せられまして、その輸送サービスも十分な競争力を回復することを期待しておるのでありまして、それ以後、わが国の陸上交通の大動脈としての国鉄の使命を十分果たしつつ、財政の再建も行ない得るものと信じておるのであります。
 次は、運賃制度のことでございますが、お尋ねの、旅客運賃は新幹線に負っているといいながら、黒字であるのになぜ旅客運賃の値上げをしなければならないのかというようなお尋ねであったと考えますが、国鉄の運賃料金体系は、今日まで沿革的に、貨客を合わせまして、また全国二百六十の線区を合わせました総合原価主義の計算方式をとっておりまして、貨客別、線区別あるいは列車別等の個別原価対応の運賃料金の立て方にはなっておりません。旅客及び貨物運賃の水準は、それぞれにつきまして全国一律でございまして、また、全体としての収入で全体の原価をまかない得るような形で、サービスの質、市場の条件、従来の沿革あるいは社会経済情勢等の諸点を勘案してきめられているものでございます。その結果といたしまして、貨客別あるいは線路別に収支を見ますと、これらの間に内部的な補助関係が生じておることは事実でございますが、このような総合原価主義に裏づけられた受益者負担の考え方というものは、電報、電話でありますとか、新聞とか雑誌等、全国一律の料金制を採用している部分にも見られることでございまして、この点は利用者の方々も、利用者一体性の観点から御納得を得られるものと考えております。
 また、貨客別の収支につきましては、同じ線路施設を貨客で共用しておりますので、これを正確に明らかにすることは困難であります上に、貨物輸送を行なっていない新幹線につきましては、御指摘のとおりにこれを別に考えるべきものであって、新幹線の黒字一千八十八億円を別にいたしますと、在来線につきましては、旅客、貨物とも大幅な赤字になります。このような前提条件のもとではありますが、貨物の収支が逐年悪化を見ていることは確かでありまして、その原因は、トラック輸送の発達、産業経済構造の変革等の環境条件の変化の中にあって、これまで国鉄が投資面におきましても、またダイヤ設定等の営業面におきましても、常に旅客中心の施策を行なわざるを得なかったというような事情から、貨物輸送の近代化が立ちおくれまして、荷主の要求に十分こたえられるような良質のサービスを提供し得なかったことによるものでございます。このような状況のもとで貨物運賃の大幅な改正を行なうことは、国鉄貨物輸送の競争力をさらに弱め、かえって減収をもたらすことになると思います。したがいまして、貨物収支の改善をはかるためには、今後われわれは約一兆八千五百億円の投資をしたいと思っておりますが、これによりまして貨物輸送の設備の近代化をはかり、特に新幹線の設備に応じて、在来線を貨物優先により活用し、拠点貨物駅間の直行輸送体系の整備でありますとか、あるいはコンテナによるトラックとの協同一貫輸送の推進によりまして、荷主の要求するような速達性、定時性のある高度の輸送サービスを低コストで提供し得る貨物輸送にシステムチェンジをはかることが必要でありまして、こうした内容を織り込んだ再建計画の達成時におきましては、貨物収支の不均衡は非常に大幅な改善を見ることができると信じておるのであります。
 それから、現在の自家用トラックの規制を強化すべきではないかという御質疑がございました。
 自家用車の輸送効率は、営業用車に比べまして低いことは事実でございます。しかし、トラック輸送に対する需要の内容は多種多様でありまして、物の輸送のみではなく、商取引活動とも一体として利用できることなどの利点が自家用車にありますので、直ちに効率性だけで自家用車に対する規制措置を講じるという考えはございませんが、公害でありますとか、交通混雑等の問題に対処する観点からいたしましても、今後激増する自家用車に対する対策は、これは真剣に検討しなければならぬと考えております。
 また、自家用トラックによる営業車との同様の行為、これに対する運賃ダンピング等の道路運送法違反行為、過積み運転等の道交法違反行為などにつきましては、これは輸送秩序を確立する上からいきましても、引き続いて、この監査体制の充実強化をはからなければなりません。関係省庁と十分連絡をとり、この取り締まりを強化したいと考えております。
 それから運賃制度のことでございますが、大資本に奉仕する運賃制度だということがございましたが、そのようなことはございません。国鉄は、鉄道営業法の定めるところによりまして、荷主のいかんにかかわらず、平等の運送条件によりまして運送をしておるのでありまして、特定の荷主を優遇するようなことは行なってはおりません。
 それから人員の合理化の問題についてお尋ねがございましたが、先ほど江藤議員に対しましてお答えしたと同様でございまして、要するに、省力化、合理化等が可能でございますから、五十三年度末までには、自然退職者を中心といたしまして十一万人の要員の縮減を行なうことが可能であると考えるのでありまして、しかしながら、これはこういった合理化、近代化が進むのでありますから、これによりまして、お示しにあったような安全の確保には、不当な労働強化ということはこれはもちろん避けなければならないと考えておりますが、それが可能であるということを信じております。
 それから国鉄の経営機構の問題でございますが、国鉄を再建し、国民生活の向上、国民経済の発展に貢献させるためには、各界各層の御意見を十分に伺いまして、経営の上に反映させることは必要であると考えております。したがって、これまでも、機会のあるごとに一般利用者の要望は十分に把握するように努力をしてまいりました。今後も、一般の方々の御意見を十分参考にいたしまして、一そう国鉄の運営を民主化するように、さらに検討をしなければならないと思います。
 大体、以上が私に対するお尋ねだったかと思います。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(小坂善太郎君) 小柳議員の三点の御質問に対してお答えいたします。
 まず第一点は、経済社会基本計画を改定する必要があるのではないかという点でございます。
 目下の卸売り物価、消費者物価の上昇率は、経済社会基本計画の目標値を上回っておるのは事実でございますが、計画の目標値は、あくまで期間中の平均値を示しておるものでございまして、今後五カ年間の計画期間を通しまして、物価安定を最優先の政策とすることによりまして、ぜひこの目標を達成したいと考えておる次第でございます。したがいまして、経済社会基本計画を改定する考えはございません。
 第二は、自家用トラックの問題でございますが、この点につきましては、運輸大臣から詳細お答えがございましたので繰り返しませんけれども、要するに、主務省でございまする運輸省において、今年度調査費をとられまして調査を実施されることにしておられまするので、その実態の把握や、自家用トラックの効率的な使用、ないしは他の効率的な運輸機関との権衡の問題等について、種々私どもとしても検討させていただきたいと考えている次第でございます。
 それから第三点は、経済社会基本計画と総合交通体系の関係でございますが、これは結論から申し上げますと、総合交通体系の基本方針を十分考慮したものでございます。たとえて申しますと、総合交通体系におきましては、交通の安全性と無公害性を重視するとともに、全国幹線交通網の整備、通勤、通学を主とした大都市圏交通網の整備等がうたわれておりまして、経済社会基本計画においても、安全対策と環境対策に重点を置くとともに、国土空間の再構成をはかるために、幹線交通ネットワークを整備し、また大都市における通勤・通学輸送の効率的な運営を基本方針としている次第でございますので、この間に斉合性を見ておる次第でございます。
 以上お答えいたします。(拍手)
 〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(愛知揆一君) 御質問の第一点は、国鉄の基礎施設の建設、改良費は全部国の出費でまかなってはどうかという御質問でございますが、これに対する政府の立場並びに態度は、国鉄は独立の企業体として、能率的な運営を行なう公社のメリットを発揮していきながら、十年間で改善をしていきたい。この点は総理大臣からも強調せられたところでございますから、全部を国の出資で云々というようなことは考えておりません。しかし、政府としても、国鉄の持つ高い公共性ということにかんがみまして、今回の再建対策では、相当思い切った財政措置を講じたわけでございます。すなわち、工事費に対する出資や補助を――御承知のとおりでございますから一々数字はあげませんけれども、大幅に拡大しております。
 それから、御質問の第二点に関連いたしますのでお答えいたしますが、債務負担の軽減をはかるということは絶対に必要なことでございますから、財政再建債を発行しまして、その利子を全額補給するなど、思い切った助成措置を講じたわけでございまして、過去の建設費の長期債務に対する利払いを全部国の負担にすることはできないかというお尋ねでございますが、いま申しましたような方策によって、この長期の債務負担の軽減を徹底的にはかる助成措置を講ずる次第でございます。
 第三は、地方ローカル線の問題のお尋ねでございましたが、いわゆるローカル線については、地元の同意が得られるものについては道路輸送への転換をはかることとしておりますが、存続するものにつきましては、運営の徹底的な合理化をはかって、赤字を最小限度にとどめるようにいたしたいと考えておるわけでございます。
 御質問の第四点は、いわゆる公共負担の問題でございます。
 その中で、たとえば割引運賃等に関する助成については、直接国が助成すべきじゃないかということでございますが、これは先ほど江藤議員の御質問にお答えしたとおりの考え方でございますが、要するに、ローカル線の問題にしても、あるいは公共負担の問題にいたしましても、その一つ一つに対する直接の対策というのではなくて、国鉄全体に対する財政助成等の中でこれらを解決をいたしたい、こういう立場に立っておる次第でございます。
 最後の第五点は、政府は、三本の柱で国鉄再建をやろうとしておるようであるが、利用者の負担、運賃改定に対するロードが多過ぎはしないかというお尋ねでございますが、これは国の助成と国鉄の努力と利用者の負担と、三本柱で解決したいと考えておることはそのとおりでございますが、これは考え方の問題であって、数字の上で、ぴしっと三者が三分の一ずつというわけではございません。
 現在の計画によりますれば、国の助成は、一般会計負担が約三兆六千億円、財政投融資が九兆三千億円ですが、その中に再建債が一兆一千億円入っておる。利用者の負担、運賃の改定分がおおむね八兆円と、御指摘のとおりでございますが、国鉄の努力、要員の縮減や資産の売却を中心として二兆六千億円、かくのごとく、数字はいろいろ違っておりますが、概して言えば、一般会計と財政投融資の負担が圧倒的に多い。ここにおいて財政当局の国鉄再建に対する意欲をお見取りいただきたいと存じます。(拍手)
   〔国務大臣加藤常太郎君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(加藤常太郎君) 小柳議員にお答えいたします。
 国鉄のスト権の問題、公労法の改正並びに労働組合法を適用する、これらの問題は、御趣旨は十分わかるのでありますが、この問題は、国民の日常生活、国民経済にも重大な影響があり、かつ、この影響するところは、これまた重要な問題でありますので、各方面の意見を十分聞き、また、いろいろな立場の御意見も十分聞きまして、妥当な取り扱いをいたす所存であります。
 たびたびお答えいたしてまいりましたように、御承知のように、政府としては、現在、公・労・使三者構成の公務員制度審議会で審議をお願いしているところでありますので、この審議がすみやかに結論を得て、国民大多数が納得する公正妥当な結論を出されることを政府は期待いたしておるところであります。
 公制審の所管は総理府でありますが、この審議会においても、皆さんも御承知のように、最近は、十分誠実かつ熱心に審議を重ねておられ、結果は、最近においては公益委員が中心となって結論をまとめておる段階と聞いております。さような意味で、お話しのように隠れみの云々の意思は政府には毛頭ありません。
 また、最後に、各国の実情なり、国際的な機関を大いにひとつ活用したらどうか、こういう御質問でありましたが、諸外国も、国によっては民有あり、国営あり、また伝統あり、労使の関係もさまざまでありますが、参考にいたしますが、さっそくどの国の機構を取り入れたらいいかということは、これはなかなか困難な問題があります。
 また、国際労働機関のILOの意思、ILOも公制審の審議を通じて円満な解決を期待しておると私も承知いたしておりますので、この問題もかように答弁をいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(河野謙三君) 阿部憲一君。
   〔阿部憲一君登壇、拍手〕
#18
○阿部憲一君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました政府提出国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案に対し、田中総理並びに関係閣僚に質問を行なうものであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 まず、今回提案されましたものは、昨年、第六十八国会において廃案になったものを、そのまま無修正で提出されたものでありまして、国会軽視もはなはだしいと断ぜざるを得ません。
 昨年審議された幾つかの検討事項につきましても、運輸当局は有効な具体策を何ら示すことなく、そっくりそのまま提出されたことは、無定見きわまりないと言わざるを得ないのであります。
 したがって、本案も国鉄財政再建の根本的解決法ではなく、一方的に国民に犠牲をしいるものと言わねばなりません。最大の国内輸送機関としての国鉄は、国民経済にとっても、国民生活の上においても、大きな役割りを演じています。それだけに、国鉄の使命はまことに重要であり、その財政の再建も必要でありまするが、今回の計画ではたして再建が可能でありましょうか。
 国鉄の再建は、国鉄だけを見ての単純な再建案では不可能であります。まず、総合交通体系を樹立して、その中に占める国鉄の役割りを規定することです。すなわち、航空、海運、陸運等の交通機関の中に国鉄の位置づけを行ない、それに適応した再建を行なうべきであります。
 かつて政府は、自動車重量税を設ける際、総合交通体系をつくると約束しました。それに基づいて出されたのが、昭和四十六年十二月の「総合交通体系について」でありますが、その総合交通体系についてすらも、真に総合交通体系にふさわしいものではなく、単なる作文にすぎないではありませんか。しかも、政府のとろうとする交通政策、特に国鉄に関しては、この総合交通体系にさえ矛盾したものであります。すなわち、鉄道の特性からいって、むしろ道路へ転換することになっていた地方線が、逆に拡充開発されたり、高速道路や航空機との競合についての検討もなされずに、新幹線の建設が決定されたり、また大都市通勤通学に国鉄が手を抜くというような政策をとっていることを指摘したいのであります。
 また、国鉄が赤字だということは、独立採算の前提からすればゆゆしいことですが、実はこの独立採算という前提は、国鉄が独占的輸送機関であった時代に成り立つもので、総合交通体系を必要とする今日の時代においては、かえって自縄自縛におちいることになります。
 もう一つ、国鉄の経営は依然官僚的であり、前時代的で、親方日の丸的な考え方が根強く残っていることであります。そして、総合原価主義のたてまえに固執して、各部門の責任が確立していないため、大切な企業マインドが欠除しているのではないでしょうか。
 また、労使の対立抗争は、政府の失政によって半永久化し、常時順法闘争を繰り返し、いたずらに利用者である国民を苦しめているのであります。
 以上列挙いたしましたこれらの国鉄の実情を、総理は、どのようにとらえ、どのように対処なさろうとしているのか、お伺いいたします。
 今回の財政再建策は、再建期間十年を経て、なおかつその間に四回も運賃値上げを行なって、しかも得られるものは、ただ最終年度の収支のバランスだけではありませんか。政府の国鉄財政再建策は、国鉄財政悪化のほんとうの原因を正確に把握してつくられたものとはいいがたいのであります。今日の国鉄は利子支払いの重圧に苦しめられており、四十八年度は毎日毎日七億円余りの利子支払いをしいられております。この点は、鉄道収入が必要経費もまかなえない欧米の鉄道と根本的に違っているところであります。政府は国鉄財政の悪化を人件費の増高にあると宣伝しておりますが、四十七年八月、国鉄監査委員会の発表した監査報告書により、四十年度以降の経営指数を調べてみますと、人件費はこの間二倍になっておりますが、利子支払いは二倍半であります。しかも、各年度ごとの数字の急増カーブは、人件費の比ではありません。国鉄は、名は国有鉄道でも、四十五年度までは国の出資がたった八十九億円であり、四十六年度から若干出資をふやしたとはいえ、四十八年度末で一千五百億円足らずにしかなりません。これに対し国鉄の長期、短期の負債総額は四兆七千五百億円となります。これだけ申し上げれば、借金経営の実態は明らかでありましょう。今回政府が提案しておりまする国鉄再建案は、これまでの国鉄の借金経営を改善するものであるかといえば、決してそうではありません。政府は十年間に一兆五千七百億円の政府出資を約束してはおりますが、この間の国鉄の工事規模は十兆円をこえる膨大な金額が見込まれておるのでありまして、この工事費の主要部分が借金でまかなわれることは必至であります。したがいまして、国鉄再建とはいっても、借金による経営の拡大と利払いによる経営難といったこれまでのパターンを変えるものではありません。
 その結果は、四十七年度末で一兆二千億円にも達する赤字累計額はそのまま十年間も持ち越されるだけでなく、再建期間十年間には新たに赤字が一兆四千億円も出て、合計二兆六千億円という巨額になります。しかも長期負債は、実に十一兆円をこえる巨額になりました。なおかつ、十一万もの国鉄労働者を大整理によって路頭に迷わせようとしております。このような、国鉄財政の再建にとってもメリットのない、しかも国民を苦しめ、国鉄従業員の犠牲をしいた上での再建計画を総理はどのように評価なさっているのか、お伺いいたします。
 次に、この再建案のささえになっている運賃値上げについてでありまするが、旅客二三・二%、貨物二四・一%の大幅値上げ、しかも十年間に四回もの値上げを前提とするに至っては、全く利用者である国民を無視した暴挙であると断ぜざるを得ないのであります。運賃値上げは、申すまでもなく、直接に国民にとって大きな負担となるだけでなく、物価高騰を引き起こして国民生活の上に大きな影響を及ぼします。国鉄運賃の値上げは直ちに私鉄運賃やバス代等交通料金の値上げを招来し、さらに一般諸物価の便乗値上げへと波及していくことは火を見るよりも明らかであります。現実に前回、昭和四十四年五月に国鉄運賃値上げが行なわれましたが、消費者物価指数は、一年後の四十五年五月には前年比実に七・六%と、異常な上昇をもたらしました。ただでさえ昨年来、政府のとったインフレ政策により国民生活が破綻を来たそうとしている現状を直視するならば、物価暴騰への新たな引き金となる国鉄運賃の値上げは絶対に避けるべきものと考えますが、総理並びに企画庁長官の御所見をお伺いいたします。
 次にお尋ねしたいのは、運賃値上げの内容があまりにも不合理の点です。素朴に考えまして、何ゆえ黒字になっている旅客部門において貨物の赤字を負担しなければならないのか。言いかえるなら、何ゆえ旅客に貨物の損失を背負わせるのか。
 国鉄では貨客合わせた総合原価主義で運賃を考えると言いますが、いやしくも、公営とはいえ、国鉄のような巨大な企業において、そんな大福帳的な経営が許されると思いますか。旅客と貨物だけでなく、他の経営部門もそれぞれの原価収支計算を実施した上の再建計画でなければならないと思いますが、いかがですか。
 不合理の点をさらに指摘するならば、貨物運賃は平均二四・一%の値上げと言いますが、鉄鋼、自動車とか機械、電気製品など、いわゆる大企業の製品は六%から七%の値上げ率であります。米、麦、肉類、野菜等の国民食生活に欠くことのできない貨物は三〇%と、大幅な値上がりになることでございます。その理由として、貨物の等級によって算出されると弁解をなさいますが、大きな矛盾であるとお考えになりませんか。また、一般国民と大手荷主との格差のひどさを申し上げますと、たとえば東京から仙台へ自動車を送る場合、一般国民は一台一万七千二百円もかかりまするのに、自動車メーカーなら一台四千七百円程度の実に四分の一の安い運賃で済むというのはあまりにも大手企業優遇ではありませんか。運輸大臣の御所見を伺います。
 次に、三者負担の問題についてお伺いいたします。政府は赤字克服の方法として、利用者、政府及び国鉄の三者負担をあげておりまするが、実際には国の助成、国鉄の企業努力に十分な検討を加えることなく、三者負担の中でも利用者負担、すなわち国民負担を主要原則とする安易な政策をとっているのであります。すなわち再建計画の財源十七兆百億円のうち、政府負担二二・八%に対し、利用者負担は二倍以上の四六・七%を占めていることからも明らかであります。そもそも利用者負担の原則は、国鉄経営が公共性を優先するという政府の定めた大原則に立つ限り補助原則にすぎません。したがって、国鉄財政の主要な負担原則とはなり得ないものであります。それにもかかわらず、赤字だからといって安易に利用者に高率の負担をしいることは矛盾きわまることと思いますが、総理及び大蔵大臣の御見解をお伺いいたします。
 さらに、国鉄の企業努力といっても、公共性が優先する以上おのずから限界があります。すなわち普通列車の整理縮小や駅の無人化などは、国民に大きな不便を与え、また合理化の名のもとでの人員整理はサービス低下をもたらすと同時に、労働強化につながり、安全性の低下、事故多発を招来すると思いますが、運輸大臣のお考えを伺います。
 国鉄は国民大衆の足であります。国鉄利用者は、マイカーを持っていない多数低所得者にとっては大切な輸送機関であります。したがって、運賃値上げは国民大衆を脅かす暴挙でありまするから、絶対にこれを認めることはできません。
 それならば、運賃値上げによらないで国鉄財政を再建するにはどうしたらよいか。私は社会資本の投資に当たる部分を公共投資に移したらよいと思います。国鉄は列車を運行する業務に当たる。すなわち国有の鉄道施設とした上で、その委託によって経営に当たる会社を国鉄公社とすることであります。具体的には、四兆円にのぼる国鉄の債務を一般会計に移し、それに見合う国鉄の投資した固定資本を一般会計の行政財産とすることであります。国鉄は、国の委託を受けて旅客貨物を輸送し、輸送原価に比較して運賃収入の不足する路線については、国の政策上維持すべきであるならば補給金を支払うこととします。また、今後の国鉄の投資は一般会計の公共事業として行なうこととします。
 以上の措置によって、国鉄は約四千五百億円の経費減となり、単年度の赤字は解消いたします。こうした抜本策をとることにより真の国鉄の再建ができると考えまするが、総理、大蔵大臣、運輸大臣はいかがにお考えですか。各大臣の御所見を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(田中角榮君) 阿部憲一君にお答えいたします。
 まず第一は、今回の計画ではたして再建ができるかということでございますが、先ほど申し述べておりますとおり、三本柱といたしまして、国と国鉄の合理化と運賃の値上げということで、十年間には国鉄の会計もペイするようになっておるわけでございますから、最小限、この案、いわゆる四回の運賃値上げが行なわれ、しかも、政府が皆さまに申し上げておるような財政援助を行なえば、国鉄の財政はペイラインに乗るということは、確信をいたしております。
 ただ、私が一言申し上げておきたいのは、いまの十カ年間の計画が、一体これでいいのかという問題はあると思います。それは先ほどもちょっと申し上げましたが、道路をいまの十九兆五千億を倍にしたとしても、なかなか貨物量がまかなえないということでございますし、しかも、六十年までに新幹線の七千キロをやり、残った二万キロの中の主要部分を複線電化にして、通勤輸送及び貨物輸送でフル回転をして、一体、六十年展望まで待たなくても、十年後に、完全にこの計画だけでもって国鉄がたえ得るだろうかという問題はあります。もっと投資が必要になるのじゃないかという感じがいたしますが、それは、もっと広範な立場で、こまかい積み重ねをしなければならない、このように考えております。現在企図しております十カ年間の国鉄の再建は、十分この計画でできると考えておるわけでございます。
 それから、総合交通体系の中での国鉄の役割りということに対しては、先ほど申し上げましたが、どうしても国鉄、道路、内国海運、この三つは、合理的に、人においては何十%、しかも物においては幾らずっという、負荷される量を大体考えて総合交通を立てなければならないということは事実でございます。
 いままで鉄道が、道路が整備されておらなかったときの鉄道として、鹿児島から北海道まで品物を送る、いわゆる遠距離逓減などという制度をやっておりますが、これは時代の要請として、鉄道というものは、都市間の旅客輸送、大都市の通勤通学輸送、中距離の輸送ということに局限さるべきものだと思います。陸上輸送もそのとおりでございまして、当然、一日一万円も一万円五千円もするような運転手が、十トンや二十トンの貨物をトラックで運送できる限界はもうすでに来ておるわけでございまして、いまトラック輸送でたえておる品物は、自動的に国鉄の貨物線に移しかえされなければならない状態にあることは、申すまでもないのでございます。遠いところは船にならぬといかぬことは、もうこれは経済原則でございます。そういう立場で政府は、十カ年の国鉄再建計画と総合交通体系を見ておるわけでございますが、しかし、これらの問題も、十分国民の総意、英知を傾けて、絶えず勉強してまいらなければならない問題だと考えます。
 第三点は、国鉄の経営、その根本に親方日の丸的な考え方があるのじゃないか。これは、あってはならないことでございます。国鉄の公共性、その重要性から考えてみても、どうしてもそのようなことがあってはならないわけでございまして、最善の経営努力を求める、効率化、合理化を求める。そのかわりに、政府も国民の税金の中から相当部分の負担をいたす。また、当然公共企業体としての性格上から、利用者の応分の負担を求める。政府が税金から出し、しかも、利用者に負担を求める立場にある国鉄が、親方日の丸であっていいはずはありません。私は、そんな考えはないと思います。
 今日までの実績を見れば、よくやってきたな、ほんとうに戦後の相当な困難な仕事にたえてきたということは評価さるべきことだとは思っております。今度は、このようにして税金を一部入れ、そして値上げをするというのでありますから、やっぱりしっかりしてもらわなければいかぬ、こうは心から考えております。
 それから、国鉄の職員整理という問題でございますが、これは御承知のとおり、業務、輸送全体の徹底的な合理化や省力化をやるわけでございますから、これは業務の増量を吸収しつつも、五十三年度ぐらいまでには十一万人の要員の縮減が可能である、このように考えております。
 これは、率直に申し上げると、国鉄もたいへん苦労してきたという実情を私は知っております。それは戦前、軍事力増強というときに、非常に人間をたくさん採ったわけであります。それともう一つは、海外から帰ってきた人たちを、戦後のあのぼろぼろの国鉄の企業体に全部吸収をしてしまった、全部吸収をしてきたということでございます。それで現実的には、国鉄の再建をはかりながら、非常に数の多い状態から自然減も行ない、そして一面においては、省力化、近代化を進めてきたのでありますから、これは、私はやはり世界の国鉄に比べてみて相当なものであると考えます。変わっておるのはどこかというと、運賃が先進工業国の運賃よりも半分であるということであります。そこに問題があるのです。
 いずれにしても、先ほど大蔵大臣が述べたとおり、鉄道に対しては、有料道路と同じ――有料道路が金を借りておって、そして利息は六%になるようになっておるのであります。財政投融資から貸している。国鉄は、今度その半分に、三%になるように税金から出しましょうと、こういっているのでございますから、私は、そこらが公共企業体としての限度であるということは、もうどうしても考えざるを得ないのであります。
 米というものは、もうほんとうに主食であってどうにもならないものであるにもかかわらず、先ほど申し上げたとおり、昭和十一年に比べて六百倍、七百倍というふうになっておるわけでございますが、しかし、鉄道は半分以下であるということを考えてみても、応分の負担はどうしても必要だと、こう考えます。安易な利用者負担は、もちろんこの意味において考えておりません。
 それから公共投資とせよということでございますが、これは公共投資としないということで、まあ公共投資という、いわゆる鉄道省、長い明治から鉄道省であったものを、三公社にしたほうがいいと。そしてこれを民営にしろという議論はありますが、鉄道省に戻せという議論はないわけでございまして、これは少なくとも有料道路とか、港湾とか、それ以上に、代替輸送機関を持つ現在、国有鉄道に対するものを全部公共投資として税金でまかなうということは不適当だと考えます。これは最後に一言申し上げますが、関東は国鉄中心でございますが、関西は私鉄中心でございます。そうすると、私鉄の建設費までみな税金で持つのかということになるわけでございまして、それはもう、そういうことが三公社の制度の中で起こり得るはずはないのでございまして、これはもういまの制度がやはり適当である、こう考えております。(拍手)
   〔国務大臣新谷寅三郎君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(新谷寅三郎君) 大体、重要な部分につきましては総理からお答えがありましたので、私に対する御質疑の点だけをお答えいたします。
 運賃の総合原価主義か個別原価主義かという点についてのお尋ねでございましたが、国鉄の運賃料金体系は、先ほども申し上げましたように、沿革的に、貨客を合わせまして、また全国二百六十の線区を合わせました総合原価計算方式をとっておりまして、貨客別、線区別、あるいは列車別というような、個別原価対応の運賃料金の建て方にはなっていないのでございます。旅客及び貨物運賃の水準は、それぞれ全国でこれは一本でございまして、全体の収入で全体の原価をまかなうというような形で、サービスの質とか、市場の条件とか、従来の沿革とかいうようなものを勘案して定められてきておることは御承知のとおりでございます。
 その結果といたしまして、貨客別あるいは路線別に収支を見ますと、その間に、内部におきましては、内部的な補助関係が生じておることは事実でございますが、このような総合原価主義に裏づけられた受益者負担の考え方というものは、先ほどもちょっと申し上げましたように、電報とか、電話とか、あるいは新聞など、全国一律の料金制を採用しておる部門にも見られるところでございまして、このことは利用者の一体性という観点から見まして、国民の方々も、この点については御了承をいただいておるものと考えるのでございます。
 で、国鉄の貨客別の収支の非常な違いが出てまいりましたのは、先ほど来いろいろ申し上げましたような事情によるものでございますが、これまで国鉄が投資面におきましても営業面におきましても、こういった先ほど申し上げたような事情がございまして、貨物輸送の近代化がおくれた、また荷主の要求に十分対応できなかったというようなことから、貨物のほうの赤字が大きくなっておるのでございまして、このような状況のもとで貨物運賃の大幅な改定を行ないますことは、これは非常に危険でございまして、かえってこれは減収のもとになるのじゃないかと思うのでございます。これを改善いたしますのには、貨物の輸送体制を整備することが一番大事だと思っております。低コストで、荷主の需要するような点を十分考えに入れまして、このサービスを向上させるということが非常に大事であると思いまして、今度の再建計画におきましては、この点に特に重点を置きまして、貨物輸送の近代化、合理化をいたしまして、荷主の方々に対するサービスを強化して、御満足を得るようなところまで持っていきたいということを考えておる次第でございます。
 その次は、少しこれは長くなりますが、こまかいお尋ねでございましたから数字をあげて申し上げます。
 国民生活に密接な関係のある貨物は三〇%の値上がりであるが、大企業の製品は六、七%ぐらいの値上げであって、大企業に奉仕するのじゃないか、こういうような趣旨のお尋ねであったと思いますが、国鉄の貨物の等級制度、現在やっております等級制度は、個々の貨物の価格に応じまして運賃負担に差異を設けているもので、価格に応じて運賃に差異を設けておるものでございまして、価格の高い貨物につきましては割り高な運賃、価格の低い貨物については割り安な運賃を受け取ることにしておるのであります。この制度は、かつてはそれなりの意義もあったと思います。しかし、鉄道の独占性が失われました現在におきましては、いわゆる高等の貨物は、重量に従った一本運賃制度を採用しておりますところのトラックに比べまして、非常にこれは不利でございまして、そのほうに荷物が移転していく危険がございまして、この従価制度は国鉄財政の悪化の非常な大きな原因になっているといわれておるのでございまして、総合交通体系の中におきまして、国鉄が適正な輸送シェアを確保する上からも、これは考えねばならぬと思うのでございます。このために、従来から運賃改定のつど、この等級数の縮減をはかってまいりました。その上下の賃率指数の幅を縮めてまいりましたが、今回の改定に際しましても、貨物等級数を現在の四等級から三等級にした。それから賃率指数の差を従来の一〇〇から一五〇、それを一〇〇から一二四に圧縮するというような措置をとったのでありまして、この結果は、一等級の運賃は六・八%のアップ、現在では一次産品等に適用される三、四等級運賃は二九%程度のアップとなっておりますことは、御指摘のとおりでございます。しかし、貨物運賃の等級制度は、それぞれその物資の単位重量当たりの価格によって区分されているものにすぎませんで、アップ率が小さいといわれる一等級の貨物にも、水産品とか畜産品などのいわゆる生活物資が含まれております。同時に、アップ率が大きいといわれます三、四等級の貨物にも、石油でありますとか、鉱石でありますとか、鋼材でありますとか、セメントというような大企業の製品は多いのでありまして、また、今回の改定によりましても、依然として新しい一等級の貨物は、新しい三等級貨物の二四%増しという運賃を負担することになっておるのでありまして、そういう事情でございますから、おっしゃるように、これは大企業に奉仕するような運賃制度ではないということを御了承いただきたいと存じます。
 それから人員の整理の関係について、それはサービスの低下を招くじゃないかという御質問でございました。
 先ほども申し上げましたように、これは国鉄の省力化、近代化、合理的をはかりまして、自然退職者を中心にいたしまして、五十三年度末までに十一万人の人員の削減をしようということでございますが、さっき申し上げましたように、このために労働強化があったり、あるいはサービスの低下があったり、安全性を阻害するようなことがあってはならないと考えておりまして、この点は、特に、運賃値上げをお願いをしておるのでありますから、サービスの低下を来たすようなことは絶対にこれは避けなさいということを、国鉄に対しまして強く指示をしておるところでございます。
 最後に、これは総理からも御答弁がございましたが、社会資本の投資に当たる部分を公共投資にしたらどうか、こういうことでございましたが、これは総理の御答弁のとおりでございますけれども、一言申し上げますと、現在のままでまいりますと、営業収支面では、利子、償却費はもちろん、人件費、物件費というような通常の営業経費さえも国鉄の収入ではまかなえないというような状況になりまして、これは財政の非常な危機になっておるのでございます。したがいまして、今度私どもの提案いたしておりますのは、あらゆる面におきまして検討を加えまして、こうすれば十カ年の再建期間中には国鉄が自立できて、とにかく営業収支面で黒字が出るだろう、また、出し得るだろうということを考えまして、あらゆる面におきまして助成いたしますと同時に、その施設の充実に力を入れておる次第でございます。補足をいたしておきます。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(小坂善太郎君) 阿部議員にお答えいたしまするが、私に対しての御質問は、国鉄運賃の値上げは、一般物価高騰への引き金にならないか、過去の例で見てもそう思えないかということであったと思います。
 この消費者物価指数の上昇率は、先ほどもお答えしたように、旅客運賃の場合、平年度ベースで〇・三四%、貨物運賃の場合、間接的効果を産業連関表で試算したものでございますが、〇・〇九%上がるということを申し上げたのでございますが、過去の例で見ますと、昭和四十一年に旅客が三二・三%、貨物運賃が一二・三%上がったのが、これが一番大きな例でございますが、そのときの総理府の「消費者物価指数年報」で見ますると、四十四年は五・一%。これは四十年、前年が六・六%上がっているのに対して、その上がった四十一年度が五・一%、その翌年が四・〇%に落ちております。その次の年の四十三年が五・三%。これはまた旅客運賃だけ五・四%上げておるわけでございますが、そういうことで、どうも国鉄運賃が上がるということは、これは先ほど申したように、全然関係がないことではもちろんありませんけれども、やはり他の政策の影響のほうがむしろ大きな関連があるということは、この実態で見て言えると考えておる次第でございます。
 以上お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(愛知揆一君) 第一は、国鉄の資産、負債を一般会計に移して、工事費やローカル線の赤字はすべて国の負担とすることはどうであるかという御質問ですが、要するに、国鉄というものは、公社として、独立の企業体として能率的な運営を行なってもらう必要がある、そして国民に対して良質な輸送サービスを提供してもらう性格を持つものと思います。そのためには、やはり企業体としての能率的な特色を発揮していただくことが適当であると思いますから、これを、国鉄の資産、負債を全部国の管理に移したり、赤字補てんはもう無条件で国が補てんするというようなことば適当でない、かように考えます。
 しかし、同時に、高い公共性を持っておる国鉄でございますから、こうした性格のものではあるが、ぎりぎりのところまで現状に対して財政的にも援助をしようというわけで、工事費に対する出資、あるいは工事費に対する補助というものも大幅に拡大しておりますし、それから、先ほども御質疑がございましたが、債務負担の軽減ということのためには、財政再建債を発行して、かつ、その利子を全額補給するというようなことは相当な財政上の助成措置であると思うのでございまして、こういうことをやって、十年間たちますれば国鉄が公共企業体として十分成り立ち得るように経営基盤が強化される、かように確信をして、財政当局としても御協力をいたしておる次第でございます。
 それなら、さらに政府が負担して値上げをやめたらどうかというのが第二の御質問でございますが、一言いたしたいと思いますけれども、交通機関のように、その利用者あるいは利用の回数というものが明確に把握できるものについては、その整備や運営の費用は受益者に負担していただくことが、公平の原則にも適応するのではないかと考える次第でございます。先ほども申し上げましたように、大幅な財政負担と比べて、それに至らざる程度において、かつ、消費者物価等においては軽微な影響の度合いにとどめる程度において運賃の値上げということを考えていただくことは、あらゆる面から言って国民的な御理解をいただけるものと、私はさように信じておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#23
○副議長(森八三一君) 田渕哲也君。
   〔田渕哲也君登壇、拍手〕
#24
○田渕哲也君 私は民社党を代表して、ただいま趣旨説明のあった法律案に対し、総理並びに運輸大臣に対して質問をいたします。
 昨年の第六十八国会に提出された国鉄関係二法案は、野党の批判と世論の反対の前に、ついに審議未了、廃案となったことは、御承知のとおりであります。ところが、今回政府の提出している二法案は、運賃値上げは昨年と全く同じであり、財政再建計画も、幾らか援助額をふやしてはいるものの、昨年と同工異曲のものであります。国鉄のかかえる基本的問題点に対する解明と、それに基づく抜本的対策は何ら立てられておりません。昨年の国会における論議の内容や世論の動向を政府はどのように受けとめ、また、どのように今回の提出法案に反映させているのか、まずこの点について、総理の明確な御答弁をお願いいたします。
 質問の第二は、物価と公共料金についてであります。
 四月の全国消費者物価指数は、前年同期と比べ九.四%と、昭和二十九年以来の異常な高騰を示し、また、卸売り物価においても一一・四%と、これまた記録的な上昇を続けております。このような物価高の原因は、経済政策の誤りによる過剰流動性の創出、四十八年度の大型予算によるインフレムードの促進、さらに、田中総理の日本列島改造論による土地投機の誘発等、政府の政策の失敗にあることは言うまでもありません。いま国民生活を不安におとしいれている物価高を、政府は最も緊急を要する政治課題として認識しているのかどうか。もし、物価問題を緊急課題と考えるならば、公共料金の中でも特に諸物価の高騰に大きな心理的波及効果を持つ国鉄運賃値上げは、この際やめるべきではありませんか。この点について総理の見解をお尋ねしたいと思います。
 質問の第三は、国鉄再建の基本方針についてであります。
 最近の交通革命ともいうべきモータリゼーションの進行や、航空機の発達、利用の増大等に見られるごとく、交通手段は多様化し、国民の交通需要も高度化しつつあります。今日の国鉄の経営難を招いた大きな理由は、これらの情勢の変化に対応し得る機敏で柔軟な経営施策がとられなかった点にあります。そして、その原因は、国鉄経営についての責任の所在が明確でない点にあると思います。国鉄総裁は、国鉄の管理、運営の責任はとり得ても、経営の責任はとり得ません。なぜならば、新線建設その他経営の基本事項に対する権限を持たないからであります。そして、国鉄経営の責任の所在があいまいな中で、選挙対策用の政治路線の建設はどんどん進み、反面、肝心の体質改善はなおざりにされてきたのであります。総理は、国鉄の今日の状態を招いた責任はどこにあると考えるか、権限との関係においてその所在を明らかにしていただきたいのであります。
 次に、国鉄は、公共性と独立採算制という二律背反のものを要求されております。公共性を重視するならば、採算を度外視しても国民の足は確保しなければなりません。一方、独立採算制を維持するには経済効率を高めることが必要であり、経営の合理化を優先させねばなりません。国鉄には、この二つの要素が混在してきたところに問題があると思います。一方では、公共性の名のもとに国鉄の犠牲において不採算政治路線を押しつけられ、他方では、企業体として当然しなければならぬ経営合理化努力が、公共性の隠れみのに隠れてサボられるという結果を招いております。これらの矛盾や不合理をなくすためには、公共性すなわち政治責任と、独立採算制すなわち経営責任をはっきりと分離し、政治責任は政府あるいは地方公共団体が、経営責任は国鉄がとるというふうに明らかにすべきであります。すなわち、公共的使命のために不採算がしいられる場合、たとえば、地方開発路線や公共割引などはできるだけ明確な線を引いて、政府、地方公共団体が財政措置を講ずるとともに、一方、国鉄は、独立採算制に徹して経営の効率化をはかるべきだと思いますが、この点について総理の見解をお伺いいたします。
 質問の第四は、総合交通体系と国鉄再建計画との関係についてであります。
 政府は、昭和四十六年に総合交通体系を作成しております。国鉄の今後の経営方針も総合交通体系との関連において立てられるべきだと考えますが、今回の再建計画にこれがどのように反映されているのか、お答えいただきたい。特に、今回の再建計画では、赤字ローカル線に対する考え方が、日本列島改造論に便乗してあいまいになっている点は問題であります。総理は、衆議院本会議におけるわが党河村議員の質問に答え、国鉄の使命から考えて、赤字路線だからといって廃止するわけにいかぬと述べておられます。私は、赤字路線はすべて廃止せよと主張しているわけではありません。しかし、赤字路線を存続し、あるいは建設する場合、基本になる考え方や一定の基準がなければならないと思うのであります。ナショナルミニマムの確保といっても、全国民が均等に鉄道の恩恵を受けることは不可能であります。そして、交通手段が多様化している現在、ナショナルミニマムは鉄道のみにたよるべきではなく、各交通機関の組み合わせで考えるべきであります。とすると、赤字路線の場合も、何でも残す、何でもつくるのではなく、資源の有効配分の原則に基づく一定の基準がなければならないことは当然であります。無原則な赤字路線の存続や新設は、国の資源の浪費以外の何ものでもありません。総理の、この点に対する明確な答弁をお願いいたします。
 また、鉄道新線の建設を審議する鉄道建設審議会のメンバーは、二十八名中十名が国会議員であります。これがいわゆる政治路線につながるおそれもあり、また、かりにそうでないとしても、国民からそういう目で見られがちであります。この際、鉄道建設審議会の改組を考える必要はないか、政府の見解をお尋ねいたします。
 質問の第五は、国鉄の経営姿勢についてであります。
 国鉄再建のために、国と国民の援助を求めるならば、国鉄は労使をあげて、まず、みずからの近代化、合理化に邁進すべきであります。しかるに、現状はどうでしょうか。
 まず第一に、今日の国鉄労使は、国民の足としての公共サービス精神が欠除していると思うが、どうですか。
 第二に、かつてのマル生運動は論外としても、正しい意味の生産性向上は、国の資源をより有効に活用するため必要と思うが、これについて、いまだに労使の合意が得られないのはどういうわけか。
 第三に、国鉄の職場において、一部の極左分子によって、まじめに働こうとする職員が、暴行やいやがらせを受けるという事件が、日常茶飯事のごとく起こっております。このような職場規律の紊乱や暴力事件の頻発について、政府はどういう対策を打ち、また経過はどうなっているのか。
 第四に、国民に多大の迷惑を及ぼす順法闘争が依然としてあとを絶たないが、このような違法行為が堂々と行なわれているようで、はたして再建はできるのか。
 第五に、国鉄当局の経営姿勢が一貫性を欠き、労使関係は混乱し、現場管理者は意欲を喪失している。政府は、これらに対しどういう対策を考えているか。このような状態を放置して、国民に運賃値上げを認めてくれと言っても無理であります。
 総理並びに運輸大臣は、以上の諸点に対し、いかに認識し対処されんとするか、具体的かつ明確な答弁を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
 〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(田中角榮君) 田渕哲也君にお答えをいたします。
 まず第一番目は、国鉄運賃法案の、昨年の国会審議や世論をどのようにくみ取ったかということでございますが、これは運賃改定を行なわず、すべて税金で必要経費をまかなうのだというような意見については、これは採用できないわけでございます。そういう意味で、十カ年という国鉄の長期的見通しに立って、政府が負担しなければならないもの、企業の合理化でもって負担しなければならないもの、最小限利用者に負担をしていただくものという区分を明確にして、国会の審議を求めておるのでございまして、少なくとも、現在の公共企業体としての国鉄の制度を生かしていく限りにおいては、やはり私は、最良に近いものである、こう考えております。
 それから、政府は物価問題とこの運賃問題をどう考えておるかということでございますが、物価問題については、先ほど申し上げたとおりでございます。なお、一般的物価については、金融の引き締めとか、政府の短期証券の発行とか、公共事業の繰り延べとか、また、輸入政策の積極的活用とか、生活関連物資の需給及び価格動向等に対する情報の提供とか、諸般の措置をとっておることは、御承知のとおりでございますが、やっぱり、その中で一番私がいま希望いたしておりますことは、生活関連物資の買占め売惜しみに対する緊急措置法というのを御審議いただいておるわけでございますし、また、地価に対しては一番有効であると申し述べておる国土総合開発法の一部改正法というのをお願いをしておるわけでございますので、まず早急に成立に御協力を賜わりたいと、こう考えております。
 それから、運賃の値上げということは、先ほども申し上げましたが、国鉄運賃は、昭和十一年を一として二六九、はがきの六六七、新聞の八八九、東京都の消費者物価指数は六一四でありますから、国鉄がいかに低く押えられてきたかということは、もう申すまでもない、数字で歴然たるものでございます。そういう意味で、どうしてもこの運賃改定というものは、最小のものとして御理解をいただきたい、こう考えております。
 それから、公共的使命のための不採算性、不採算になる部分は公共負担としなければならぬ、これは常に議論をされておる問題でございますが、区分的にどこをどういうふうにして補助するかというようなことはなかなかできませんので、総合原価主義をとっておる国鉄に対して、政府が財投の投入と一般会計の負担ということを考えております。特に地方の開発線等については、鉄道建設公団に対して一兆円の投資を行なうということでありますから、いまの御意思に沿う政策をとっておるわけでございます。
 それから、もちろんペイするところだけをやるならば何も国有鉄道とする必要はないわけでございます。これは私鉄でやればいいわけでございます。政策目的を達成するために必要な場合は、赤字であっても、採算が合わなくともなさなければならない。これはもう敷設されてから今日まで、相当な大きな累積赤字を持つであろう北海道とか東北とかいうことを考えてみれば当然でございますが、鉄道のない北海道などは考えられません。鉄道の赤字などというものの何万倍も北海道が開発をされ、国の経済拡大のために資しておる。そこらに国有鉄道の存在価値があるわけでございますので、そういう面を十分認識をしながら政府も財政支出に乗り出しておるわけでございまして、その他の最小限の問題に対しては利用者負担をお願いせざるを得ないわけでございます。
 それからローカル線という問題でございますが、これは不採算線、閑散線という問題に対しては、三千四百キロにわたってこれを道路等に変更できるものはしていこうということでございます。またこれからも、地形、地勢上の問題がございまして、道路に代替できるもの、地元の了解が得られるもの等に対しては十分転換をしてまいりたいと思いますが、しかし同じ国民の利用するものでございますし、道路の冬季間における除雪等が公費において行なわれるということを考えますと、鉄道のほうが、地形、地勢上の制約のある日本としては合理的であるという面もございます。そういう意味で、鉄道や道路やその他の交通機関との比較を十分考えながら、国民負担が低く、しかも効率的であるように考えなければならないというのが閑散線に対する考え方でございます。(拍手)
   〔国務大臣新谷寅三郎君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(新谷寅三郎君) 鉄道建設審議会についてお尋ねがございましたので一言お答えいたしますが、これは鉄道敷設法に基づきまして、国会議員が十名、政府関係者十名、学識経験者八名で構成されておりまして、これは今日まで新線建設その他につきまして、諮問機関といたしまして十分な活動をしてこられた審議会でございます。学識経験者など八名は、国会の同意を得てこれは任命されていることは御承知のとおりでございます。
 これの改組を考えたらどうかと、こういうことでございますが、運輸省といたしましては、今日までのこの鉄道建設審議会の機能は十分果たされているというように認識しておるのでございまして、いま直ちにこれを改組する考えはございません。
 それから、お尋ねの国鉄の経営姿勢について、経営理念が欠除しているのじゃないか、あるいは生産性向上についてもっと努力すべきじゃないかとか、暴力事件の頻発についてどう思うかとか、順法闘争等の違法行為が行なわれているが、どうするのかとか、それから経営姿勢が一貫性を欠いているじゃないかというようなことにつきまして、一括してお答えを申し上げたいと思います。
 国鉄の再建をはかります上に非常に大事なことは、正常な労使関係を早く樹立するということにつきましては、全く同感でございまして、国鉄労使双方が使命感を持って、労使一体となって十分その職責を果たしまして、国鉄の機能を早く回復するように、あらゆる努力をしなければならぬということにつきましては、われわれも常々痛感をしておるところでありまして、この点につきましては、国鉄当局に対しまして絶えず指導を行なっておるのでございます。願わくは、労使双方が一体となりまして、国鉄の現在置かれておる非常な財政危機に当面して、ほんとうに国鉄の機能が失われるかどうかというせとぎわにあるのでありますから、労使一体になってこの使命の達成のためにあらゆる努力をして、労使がこの国民の期待にこたえられるような姿勢を早くつくられることを私は心から希望するものでございます。(拍手)
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#27
○副議長(森八三一君) 春日正一君。
   〔春日正一君登壇、拍手〕
#28
○春日正一君 私は、日本共産党を代表して、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係閣僚に質問します。
 この法案は、膨大な赤字をかかえた国鉄の再建整備のためと説明されていますが、実際には、全国の工業基地と東京など中枢管理機能を結ぶネットワークづくりや、大資本本位の貨物輸送体系の整備など、国鉄を、田中総理のいわゆる日本列島改造計画を実現する手段として改造し、大企業優先の国土利用と産業基盤づくりに利用しようとするものであります。新幹線の建設も、昭和六十年に一兆三千二百億トンキロと予想される貨物輸送量をさばくために、旅客は新幹線で運び、在来線を貨物輸送中心に切りかえることをおもなねらいとしておるのであります。ここには、交通、通勤難、公害や物価値上がりに苦しむ国民の命と暮らしを守り、生活環境を改善し、住みよい国土をつくるという見地は全く見られません。
 そこで、まずお聞きしたいのは、物価問題に対する政府の態度についてであります。
 今日のすさまじい物価値上がりは、国民生活を極度の不安におとしいれ、物価の安定は国民の最も切実な要求となっています。にもかかわらず、政府みずから重要な公共料金である国鉄運賃を大幅に引き上げ、さらに、今後十年間に四回もの値上げを決定することは、物価値上げを制度化し、恒常化するものであって、断じて許すことのできない暴挙であります。政府、国鉄当局は、今回の運賃値上げによる物価への影響は〇・四%にすぎないと強弁しているが、これは全くの欺瞞であります。この数字は、国鉄運賃の物価全体の中で占める比率に運賃上昇率を掛け合わせただけの、単純な機械的な計算によるものであって、他の公共料金への影響や、十兆五千億というばく大な国鉄設備投資がもたらす地価の暴騰や建設資材の値上がりなどのインフレ効果をすべて無視しておるものであります。特に現在、大資本の土地投機、商品投機や膨大なインフレ予算の悪影響が全面的にあらわれ、二度にわたる公定歩合の引き上げも、物価安定に何らの効果も発揮できず、日銀総裁が、公共料金の抑制と公共投資の繰り延べが必要であると述べているまさにそのときに、最も重要な公共料金である国鉄運賃の値上げと、きわめて大きな波及効果を持つ国鉄関連投資を強行することは、政府が率先して物価値上げを促進するものと断ぜざるを得ません。したがって、政府がまじめに物価の安定、国民生活の安定を望んでいるならば、当然運賃値上げを撤回すべきであると考えるが、総理並びに関係大臣の答弁を求めます。
 次に、国鉄輸送の安全及び安全問題と不可分な国鉄労働者の十一万人削減の問題について質問します。
 七百四十四人もの死傷者を出した北陸トンネル事故や、新幹線の脱線事故など、国鉄の事故はあとを絶たず、国民の不安を強めています。国鉄の危険個所は上野管内だけでも百六十六カ所もあり、全国では三千カ所をこえていますが、国鉄当局は人減らし合理化で危険個所の補修も十分行なわず、徐行運転すらしようとしていません。しかも、政府、国鉄当局は赤字を理由に、さらに人減らしを強行し、減らされた労働者の数に合わせて安全基準をつくるという、本末転倒のやり方すら行なっています。これでは輸送の安全は保障できません。国鉄輸送の安全を確保するためには、安全施設の整備も必要ですが、何よりも無謀な十一万人合理化計画を撤回して、国鉄労働者の生活を安定させ、ストライキ権を含めて労働基本権を全面的に回復し、真に働きがいのある職場をつくるべきであります。この点について総理並びに関係大臣の答弁を求めます。
 第三は、国鉄赤字の内容と再建計画の反国民的性格に関する問題であります。
 政府は、赤字だから運賃値上げはやむを得ないと言っています。しかし、衆議院での審議を通じてわが党議員が明らかにしたように、旅客は三百七十一億円の黒字、貨物は二千百五十三億円の赤字で、国鉄の赤字は大資本の貨物輸送に対する出血サービスによって生じたものであります。また、国鉄の累積赤字の七〇%に当たる五千六百三十六億円が、過大な減価償却など不当な経理操作によってつくられたものであります。さらに、公共機関である国鉄に政府がほとんど出資せず、大銀行その他からの借金で設備投資を行なってきたため、利子負担が年間千六百三十一億円にも達し、赤字を激増させているのであります。国鉄の赤字は、このように政府の大資本本位の政策と作為的な水増しによるものであって、運賃値上げの根拠にはとうていなり得ないものであります。これでもなお政府は、値上げが正当であると言えるのかどうか、明確な答弁を求めます。
 さらに、政府のいう十年後の財政再建とは、四十六年度で三兆八百七十一億円の長期債務を、十年後に十兆九千八百十九億円へと、三倍にもふくれ上がらせることであります。これは、列島改造計画に基づく大資本のための輸送体系づくりの投資計画であっても、国鉄再建計画などと言えるものではありません。総理は、これで国鉄財政の再建ができると本気で考えているのかどうか、明確な答弁を求めます。
 また、政府は、衆議院において必要な資料を提出しないばかりか、国鉄首都圏本部の貨物課長が各現場に対し、国会議員が調査に来ても荷主別輸送実績は公表するなと口どめの通達をおろすなど、むしろ国会審議を妨げる姿勢をとっていますが、なぜ資料の提出を拒むのか、総理並びに運輸大臣にその理由を伺いたいものであります。
 公共企業体としての国鉄の再建とは、大資本のためではなく、だれでも、どこへ行くにも、安くて便利、安全で快適な国鉄をつくり上げることです。そのためには第一に、国鉄のすべての費用を国鉄に負担させるやり方を改め、線路や、駅の建物その他の設備投資は、すべて利子のつかない国の出資でまかなうという費用負担の原則を確立することが必要であります。
 第二に、大企業本位の運賃体系を抜本的に改め、黒字の旅客運賃の値上げをやめ、営業割引など大企業の貨物運賃割引を廃止することであります。
 第三に、十兆五千億円の巨額な投資計画を縮小し、さしあたり現行再建計画の三兆七千億円程度の投資規模をとり、投資のやり方と順位を住民本位に民主的に決定しなければなりません。
 第四に、長期債務を減らし、国による利子補給などによって国鉄の負担を大幅に軽減することです。
 第五に、国鉄理事会、各種審議会から大企業の影響を排除し、消費者や国鉄の労働組合代表を参加させ、国鉄の運営を民主化することであります。これこそ、国鉄再建の名のもとに国民にたえず運賃値上げを押しつける悪循環を断ち切り、国鉄の真の再建を実現する道であります。政府はこの道を選ぶ誠意があるかどうか、総理の見解を求めて私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(田中角榮君) 春日正一君にお答えいたします。
 まず第一番目に、国鉄運賃の引き上げを撤回せよということでございますが、先ほどからるる申し上げておりますとおり、国鉄の公共的使命を果たすために、どうしても三本柱によって国鉄の再建をはからなければならないということで、政府も財政資金の投入を計画をいたしておりますし、また、国鉄自体の経営合理化についても努力を求めておるわけでありますので、この国鉄運賃法の改正案は、最小必要やむを得ざるものでございます。ことしは千人百億円にのぼるということでございますが、もうこれは施行期日が延びてもおります。これは、去年とことしの仲裁裁定の額を合わせれば、ことしの運賃の引き上げ額よりもはるかにオーバーをするということでございますので、この程度はどうしても負担をしていただかなければならないと、こう考えておるわけでございます。
 それから、国鉄労働者十一万人の減員など、合理化はよろしくない意味の御発言でございますが、これは、国鉄の合理化というものは当然なさなければならないわけでございますし、また、増員の要素等を吸収しながらも、整理ができるような冗費に対しては、整理をすることも当然要請されることでございます。これは、利用者である国民に料金の引き上げをお願いしているわけでございますから、やっぱり三者が努力をするということであって、国鉄も合理化に対して努力を、前向きの姿勢を示すことは当然でございます。ただ、一括これをどうしようというのじゃありません。自然に減耗していく退職者の不補充ということで、十年間でこういうことになるということでございますから、するというのではなく、なるというふうにひとつ御理解を賜わりたい、こういうことでございまして、この程度のことを考えないで、それは政府の税金を出しなさい、利用者に負担をしてください、それではとても、国鉄が公共企業体として国民の理解と支持を得られるはずはないわけでございます。
 それから貨物に対する問題でございますが、これは運輸大臣からもるる申し述べておりますし、こまかい問題は委員会でまた申し上げますが、これはちょっとわかりそうな問題で、実際はよく御説明をする必要がある問題であります。これは貨物の赤字を旅客に転嫁するのだということでございますが、そうじゃないのです。これは、いまの鉄道の施設では、どうしても旅客を重点的にしなければなりません。旅客を重点的にやるためには、一日で着く東京−大阪間でも、旅客を優先して同じ路線の上を通すために、貨物は側線に置くために三日も四日もかかるのです。そういうために、高いけれどもトラックでもって直送したほうが間に合うということで、五〇%、四〇%、三一%、その国鉄の貨物シェアが一八%にも落ちたのでございまして、モータリゼーションが発展したからということだけではなく、やっぱり増大する旅客を優先したところに貨物運賃収入というものが赤字になっておるということであって、貨物を優先すれば旅客のほうが赤字になるにきまっておるわけであります。ですから、総合原価主義をとっておるのはそういうことでございます。
 閑散線もそのとおりであります。閑散線の区間だけをとって計算すると赤字だといいますが、これは国鉄本線の培養線であることは私が申すまでもないことで、専門の方々はたくさんおられるのですから。培養線がなくて東海道線が黒字になるはずはありません。川と同じこまなんです。大きな川は水が多いけれども、それは谷川の細いちょろちょろとする流れが集まってくるからこそ大河になるわけでございまして、全国の培養線がなくて東海道線だけが黒字になると考えるような考えで国鉄の経営を論ずるわけにはまいらないわけでございますから、これはひとつそういう意味で、専門的に御検討を賜われば十分理解いただける問題でございます。
 それから、衆議院において資料を出さなかったということでございますが、法案等の審議にあたりまして、必要とする資料を提出し、十分な御審議をいただき、国民の理解を得なければならぬことはこれは申すまでもないことでございます。その意味で、国鉄運賃法の衆議院における御審議の際にも、委員会において要求のあった資料はすべて提出をしており、不当に資料の提出を拒んだような事実は全くありません。これは、何でも出せと、こう言ったら、議員でありますれば何でもはいはいと出せるものではないことは、これはおわかりいただけると思うのです。所定の手続を経て、要求をしていただかなければならぬのであって、一人に出せば全部出さなければならないというものでもないし、企業の秘密保持の上で、委員会の決定がなければ提出ができないものもあることは、これは御承知いただかなければならぬことでございます。そういう意味で、委員会が正規に要求されたものにつきましては、全部提出をいたしておるということでございます。
 最後に、共産党の提案がいろいろございましたが、この時期において運賃値上げを含む国鉄の十年間再建計画を御審議いただくのでございますから、政府も自由民主党も十分検討いたしたわけでございます。そうして有料道路の利率六%というものをその半分の三%にして、そうして国民の税金も入れ、財投の資金も入れ、しかも国民に最小限負担をしていただいて、国鉄自体も合理化を行なうということで御審議をいただいた案でございますので、共産党の案に対しては勉強させていただきます。勉強させていただきますが、いずれにいたしましても、政府が提案しておるこの再建案を、ぜひ御審議の上、成立させていただきたい。お願いいたします。(拍手)
   〔国務大臣新谷寅三郎君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(新谷寅三郎君) 総理から大体お答え願いましたので、ただ一点だけ補足をさせていただきます。
 それは、国鉄の貨物運賃の問題、それから減価償却の問題等でございます。
 これは先ほど申し上げましたように、国鉄としましては、鉄道営業法の定めるところによりまして、荷主のいかんにかかわらず、平等の運送条件によって運送をいたしておるのでありまして、特定の大企業の荷主に対してのみ特別の条件を提供しておるものではないということは、御承知のとおりでございます。
 国鉄の減価償却の問題でございますが、これは、原則として法人税法にきめられました一般企業の減価償却と同様な方法によって行なっておるのでありまして、これは決して過大なものではございません。(「答弁漏れあり」と呼ぶ者あり)
 資料の問題と、各現場に何か口どめをしたというようなお尋ねでございますが、口どめのことは私は存じておりません。
 それから資料の問題につきましては、先ほど総理からお答えになりましたとおりでございまして、委員会におきましては、法令及び慣例によりまして、委員会の理事会の決定いたしたものはすべて提出しておるのでございます。(拍手)
#31
○副議長(森八三一君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時八分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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