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1972/06/29 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第24号
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1972/06/29 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第24号

#1
第071回国会 本会議 第24号
昭和四十八年六月二十九日(金曜日)
   午前十時八分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二十六号
  昭和四十八年六月二十九日
   午前十時開議
 第一 国立学校設置法等の一部を改正する法律
  案及び国立学校設置法の一部を改正する法律
  案(趣旨説明)
 第二 生活関連物資の買占め及び売惜しみに対
  する緊急措置に関する法律案(内閣提出、衆
  議院送付)
 第三 中小企業信用保険法の一部を改正する法
  律案(内閣提出、衆議院送付)
 第四 国際経済上の調整措置の実施に伴う中小
  企業に対する臨時措置に関する法律の一部を
  改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第五 開拓融資保証法の廃止に関する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
 第六 通商産業省設置法の一部を改正する法律
  案(内閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 日程第一 国立学校設置法等の一部を改正する法律案及び国立学校設置法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 両案について、提出者から順次趣旨説明を求めます。奥野文部大臣。
   〔国務大臣奥野誠亮君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(奥野誠亮君) 国立学校設置法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明します。
 この法律は、新しい構想に基づく筑波大学の創設を含む国立大学の新設、学部の設置その他国立学校の整備充実について規定するとともに、大学の自主的改革の推進に資するため必要な措置等について規定しているものであります。
 まず、筑波大学以外の大学の設置等について御説明申し上げます。
 その第一は、旭川医科大学を新設し、山形大学及び愛媛大学にそれぞれ医学部を設置するとともに、東北大学医療技術短期大学部を新設することであります。これは、近年における医療需要の増大と医師の地域的偏在に対処し、医師養成の拡充をはかり、医学の研究を一そう推進するとともに看護婦などの医療技術者の資質の向上をはかろうとするものであります。
 第二は、埼玉大学及び滋賀大学にそれぞれ工学及び経済学の修士課程の大学院を新たに設置するとともに、現在なおその病因等が解明されていない難病についての基礎的研究を推進するため、東京医科歯科大学に難治疾患研究所を設置し、大気水圏環境の構造と動態に関する総合的な研究を推進するため、名古屋大学に水圏科学研究所を設置し、千葉大学の腐敗研究所を生物活性研究所に改組し、さらに、これまでの南極観測十八年の成果を踏まえ、極地の総合的、科学的研究及び極地観測の一そうの推進をはかるため、国立大学共同利用機関として国立極地研究所を新設することといたしております。
 以上のほか、国立久里浜養護学校を設置し、国立特殊教育総合研究所との相互協力のもとに、心身に障害を有する児童、生徒のうち、特に障害が重度であり、あるいは重複している者の教育に当たらせることといたしております。
 次に、後ほど御説明申し上げます筑波大学の新しい構想の実現と各大学における自主的な改革の推進に資するため、学校教育法を改正し、大学制度の弾力化をはかることといたしております。
 第一は、大学成立の基本となる組織を従来認められてきた学部のみに限定することなく、それぞれの大学における教育、研究上の必要に応じ、学部の設置にかえて学部以外の教育、研究のための組織を置くことができるようにすることであります。
 大学の学部は、特定の学問領域について教育と研究を一体的に行なうための組織でありますが、今後教育研究上の多様な要請に柔軟に対処して、大学の充実発展をはかるためには、その基本的な構成要素を学部のみに限定することなく、教育研究上の必要に応じ、それぞれの大学の判断するところによりさらに弾力的な組織形態をとり得る道を開くことが、大学改革を推進する上で、この際特に必要であると考えた次第であります。
 筑波大学の構想はその一つの例でありますが、筑波大学の構想に限らず、今後、大学がみずからの発意により積極的に新しい適切な組織によることを希望する場合には、その内容を十分検討の上それが実現できるようにしてまいりたいと考えております。
 第二は、医・歯学部における履修方法の弾力化をはかることであります。
 最近、医・歯学部において、六年間を通じた弾力的なかつ効率的な教育課程を編成する必要性が医・歯学教育に携わる多くの関係者から指摘されるに至っております。そこで、各大学の判断により、従来のとおり、進学課程と専門課程を区分して履修させることも、あるいは六年間を通ずる一貫した教育を行なうことも、いずれの方式をもとり得るようにすることといたしております。
 第三は、大学に必要に応じ副学長を置くことができるようにすることであります。大学の規模が拡大し、組織、編成が複雑化するとともに、これを有機的な総合体として教育、研究の両面にわたり適確に運営してまいることは、学長にとってまことに容易ならぬ職責となっております。このような学長の負担を軽減し、大学の機能的な運営をはかるため、その補佐役を設ける必要があるという指摘が各方面からなされているところであり、このような観点から、大学がその事情により必要があると判断した場合には、学長の職務を助けることを任務とする副学長を置き得ることといたしたのであります。
 以上御説明申し上げました諸点は、いずれも国・公・私立を通じてすべての大学に適用される規定であり、かつ、大学がみずからの判断によってその採否を決定し得る事項であります。このような制度の弾力化を通じて大学自身の手による自主的な改革が一そうの進展を見ることを強く期待するものであります。
 次に、この法律は、以上の大学制度の弾力化を踏まえた新しい構想に基づく国立の大学として筑波大学を新設することといたしております。
 この筑波大学は、東京教育大学が自然環境に恵まれた筑波研究学園都市へ移転することを契機として、そのよき伝統と特色は受け継ぎながら、これまでの大学制度にとらわれない新しい総合大学を建設しようとするものであり、かねてから東京教育大学との緊密な連携のもとに、同大学における検討の成果を基礎としつつ、他大学などの学識経験者の参加も求めて検討を進めてまいったものであります。
 この大学の特色は、第一に、従来の大学に見られる学部、学科制をとらず、学群、学系という新しい教育、研究組織を取り入れていることであります。すなわち、これまでの学部が教育と研究を同一の組織で行なっていることに対し、学群は学生の教育指導のための組織としてもっぱら教育上の観点から編成されているものであります。また、これらの学群の教育に当たる教員の研究上の組織として、学術の専門分野に応じて編成する学系を置き、研究上の要請に十分対処し得る条件を整備することといたしております。
 第二に、大学が開かれた大学として適切に運営されることを確保するため、その管理運営に当たる組織について、次のような措置を講ずることといたしております。
 すなわち、学長の諮問機関として参与会を設置し、大学の運営に当たり、必要に応じて学外の有識者の意見を取り入れることができるようにすることといたしております。
 また、副学長のほか、学群、学系などの教員会議と緊密な連携のもとに、評議会、人事委員会等の全学的な組織を設け、全学の協調を基礎とした機能的な運営をはかることといたしております。人事委員会は、学群、学系制度による教育、研究の機能的分化に対処して、教育、研究両面からの要請を勘案しながら、全学的、総合的な見地に立って適正な人事を確保することを目的とするものであります。
 このような大学の管理運営方法の改善を通じて、真の総合大学にふさわしい大学の自治の確立を目ざそうとするものであります。
 なお、筑波大学は、昭和四十八年十月の開学後、年次計画をもって整備を進めることといたしております。また、さきに申し上げましたとおり、同大学は、一面において東京教育大学の移転を契機として創設されるという側面を持つものでありますので、筑波大学の整備と並行いたしまして、東京教育大学については、年次的に閉学措置を進めることといたしております。
 その他、この法律におきましては、以上のことと関連して所要の規定の整備をはかることといたしております。
 以上が国立学校設置法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
#5
○議長(河野謙三君) 安永英雄君。
   〔安永英雄君登壇、拍手〕
#6
○安永英雄君 私は、日本社会党、公明党、民社党及び日本共産党の四党を代表して、ただいま議題となりました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨並びに内容の概要を御説明申し上げます。(拍手)
 最近、政府は、しばしば一つの法律案の中に、幾つもの異質の問題を混在させて提出し、国会審議を不必要に混乱させ、ひいては国民の不利益を招いております。このような措置は断じて許されないところであります。とりわけ、先般衆議院において行なわれました国立学校設置法等の一部改正法案に対する野党の分離要求に対して政府与党がこれを拒否したように、国民の切実な医療等に対する要求に対して、法制技術上あるいは国会対策上の要請で踏みにじるという愚かなことを、参議院では繰り返さないために、国民の立場に立って、ここに強い抗議を含めて本法律案を提出した次第であります。(拍手)
 御承知のように、政府の提出しました国立学校設置法等の一部を改正する法律案は、私ども全野党が国民の切実な要求に基づいて提出しました本法律案とは、表題の上では一字違いで「等」の字があるかないかの違いでありますが、立法の精神におきましては雲泥の相違があるのであります。(拍手)
 私が、いま野党四党を代表して本法案を提出しましたゆえんのものは、参議院における自主的な立場に立って、本来の立法府のあり方に立ち返り、国民の立場に立った、国民の多様な要求を真剣に受けとめ、その切実な緊急性の度合い及び国民的合意の形成に沿って、一つ一つ着実に立法化していこうというのであります。
 以上の提案の趣旨を御了解いただき、本院におきましては、良識をもって、国民の切実な願望であります旭川医科大学の新設、山形大学及び愛媛大学の医学部設置などを、国民の反対が強くその成立について世論の熟しない筑波新大学設置の問題と分離した本法案を早急に審議し、その成立をはかるべきと考えるものであります。
 何とぞ、与党の諸君も、参議院の良識と自主性の立場に立ち、また、新設医学部等の入試を待望している学生の心情に思いをいたし、私どもの提案の趣旨を生かすよう御協力賜わりたいと思うのであります。(拍手)
 以上で本法案を提出しました趣旨と精神とを申し上げ、次に、本法案の内容の要点のみを御説明申し上げます。
 この法律は、国立学校の一そうの整備充実をはかるため、国立大学の新設、学部の設置等を行なおうとするものであります。
 その第一は、旭川医科大学を新設するとともに、山形大学及び愛媛大学にそれぞれ医学部を設置し、もって近年における医療需要の増大と医師の地域的偏在等による医師不足の事態に対処しようとするものであります。
 第二に、これまで大学院を置かなかった埼玉大学及び滋賀大学にそれぞれ工学及び経済学の修士課程の大学院を新たに設置し、当該大学の学術水準の向上と研究能力の高い人材の養成を行なおうとするものであります。
 第三は、看護婦、臨床検査技師、診療放射線技師等の医療技術者の資質の向上をはかるため、東北大学に医療技術短期大学部を併設するものであります。
 第四は、附置研究所の設置及び改組についてであります。
 東京医科歯科大学に治療法等が確立されていない難病についての基礎研究を総合的に推進するための難治疾患研究所を、名古屋大学に大気水圏環境の構造と動態に関する総合的な研究を行なうための水圏科学研究所をそれぞれ設置するとともに、千葉大学に付置されております腐敗研究所につきまして、腐敗という現象の究明から発展して生命科学の一分野としての生物活性全般に関する研究を一そう推進する必要があるため、これを生物活性研究所に改組しようとするものであります。
 第五は、国立久里浜養護学校の設置についてであります。
 一昨年開設されました国立特殊教育総合研究所における重度または重複の心身障害児の教育の方法、内容等に関する実際的研究の実験教育の場として、新たに国立久里浜養護学校を設置しようとするものであります。
 第六は、国立極地研究所の設置についてであります。
 本研究所は、南極観測十八年の成果を基礎として、さらに極地の総合的、科学的研究と極地観測を推進するため、国立大学共同利用機関として、新たに設置しようとするものであります。
 なお、この法律は、公布の日から施行することといたしております。
 また、昭和四十八年度に旭川医科大学、山形大学もしくは愛媛大学の医学部、埼玉大学もしくは滋賀大学の大学院、東北大学医療技術短期大学部または国立久里浜養護学校に入学した者は、在学年数の計算に関しては、昭和四十八年四月一日から当該大学等にそれぞれ在学していてものとみなすなど、必要な経過措置等を規定しています。
 何とぞ、十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
#7
○議長(河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。楠正俊君。
  〔楠正俊君登壇、拍手〕
#8
○楠正俊君 私は、自由民主党を代表して、ただいま趣旨説明のありました国立学校設置法等の一部を改正する法律案について、総理並びに文部大臣に質問をしたいと思います。
 まず、冒頭に伺いたいのは、この法律案の仕組みと形式に関しての問題であります。
 本案は、旭川医科大学等の新設並びに新構想に基づく筑波大学の創設を規定したもので、そのために、国立学校設置法、学校教育法、教育公務員特例法等の一部を改正しているものでありますが、何か、法律形式上おかしいとか、筑波大学の関係は分離して、別の法律によったほうがよいというような議論もありますので、最初に、この点を明らかにしておかなければならないと思うのであります。
 もともと、この国立学校設置法は、学校教育法第一条に基づくすべての国立学校の設置を規定した国立学校の戸籍簿のようなものであります。今回の筑波大学は、特殊法人とか公社とかいう、そういったものではなく、れっきとした国立大学でありますから、この国立学校設置法の改正によらなければ設置できないのが筋であることは、きわめて明らかであります。(拍手)
 ただ、いままでのやり方と違っているのは、現行の学校教育法に定める学部の規定を弾力化して、筑波大学に新しい教育研究の組織をつくったこと、また、すでに私立大学等に置かれている副学長の制度を、学校教育法と教育公務員特例法を改正して明確にし、この副学長を筑波大学にも置いたことに相違点があると思うのであります。つまり、何ら法律上、形式的な問題としては起こらないと思うのであります。
 そこで、文部大臣から、法案がやや複雑になっておりますので、その仕組みについてわかりやすく御説明をいただくと同時に、提案に至るまでの慎重な調査研究と手続など、経過について御報告を伺い、なお、この筑波構想を他の大学にも当てはめようという意図があるかどうか、お答えを願いたいのであります。
 特に、この案は文部省の発想によるものではなく、東京教育大学みずからの企画によるものと聞いておりますが、その点についても明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 次に、内容についてでありますが、私は、最も争点になっておる大学の自治の問題、筑波における教育、研究の問題、管理運営の問題、この三点について十二分にただし、国民の理解と支持を得たいと願うものであります。
 そこで、第一に伺いたいのは、大学の自治の問題であります。今回の構想がまるで大学の自治を破壊し、学問の自由をじゅうりんし、例によって大資本に貢献し、戦争につながるものだなどとデマを飛ばしている人々が一部におりますので、この問題点については、この際、明らかにしておく必要があると思います。(拍手)
 まず、最初に指摘したいのは、これまで大学自治のシンボルとして神聖侵すべからざる、神聖不可侵なもののようにいわれてきた学部教授会自治とは、一体どういうものでありましょうか。私の理解しているところでは、これまでの大学は非常に強い独立性を持った学部の集合体にすぎなかった。学部こそが大学の中心的存在であり、これが教育と研究と管理運営を一体的に統轄すべきであるというたいへん保守的で独善的な考え方が支配していたのであります。こうした学部の実態は、教授、助教授、講師、助手というきびしい身分制の頂点に立った少数の教授団による学部自治であり、その特権に安住して、時代の変化と社会の新しい要請に適応せず、これが大学紛争の火の手を燃え上がらせたのであります。かりに、Aという先生は、若いときに大いに勉強して業績をあげた結果、教授に昇格したが、その後は怠けて権威ばかり振り回すようになったとします。しかし、教授会自治のもとでは、そんな先生でもまず定年まで安泰であります。こういう制度のもとでは、若い優秀な人材は民間や海外に流れてしまいます。いわんや新しい血を外部からどしどし大学に取り入れて刷新をはかるなどということは容易にできないことでありましょう。また、この学部優先の大学自治の方式は、独善的、利己的傾向に流れやすいために、大学の紛争処理、改革、移転など、全学的な課題に直面いたしますと、意思統一がなかなかできず、解決の時機を見失ったり、調整不能のまま混乱が長引くという事態がしばしば発生するのであります。大学の中枢機能が麻痺し、環境に対して適応不全症状を起こすわけで、このことは、何よりも老化した体質によるものと診断を下さざるを得ないのであります。
 しからば、新しい大学の自治の理念は一体どこに求めたらよいかという問題であります。私どもの見解では、大学とは、真理を探求し、人類の福祉と平和に貢献する使命をになうものであるから、大学自治の理念は、きびしい自己規律によって研究と教育を行ない、社会からの批判にも耳を傾け、時代の変化に応じてみずから改革していく存在でなければならないと信ずるのであります。そうした大学であればこそ、国民は大学を尊敬し、進んで巨額の財政投資を行ない、その発展に協力することでありましょう。こうした共通の理解と認識が育ってこそ、初めて大学の自治は国民の支持を受けるものと信じます。筑波大学はそうしたビジョンのもとに構想されたものではないでしょうか。ヘルメットに覆面という姿で鉄パイプを振り回す暴力学生がいまなお幾つかの大学であとを断たないという現状は、国民の一人として全くやり切れない気持ちであります。大学には理論家は多いが、実践家は少ないせいか、改革は遅々として進まないのが今日の姿ではないでしょうか。こういうときであればこそ、大学改革のあり方の一つを示すものとして積極的に筑波構想が提案されたことに私は大きな意味を認めたいのであります。
 田中総理は、今大閤といわれたように、大学教育をお受けになっておられませんが、しかし、自力で勉強し、努力をされて今日の地位を得ておられます。そのことが働きながら学ぶ青少年たちにどんなにか夢と希望と勇気を与えたことでしょう。そのような総理であればこそ、教育の真の意味についても体験的に深く考えておられるだろうし、今日の大学の姿をどう見ておられるのか、これに対して日本の未来を切り開く大学とはどんな大学でなければならないか、また、その実現のための抱負、決意について率直な見解と所信を伺いたいのであります。
 第二にお尋ねしたいのは、筑波大学における教育と研究のあり方についてであります。現行の学校教育法では「大学には、数個の学部を置くことを常例とする。」と規定しておりますが、今回の法案では、これを改正して、「学部以外の教育研究上の基本となる組織を置くことができる。」としております。そしてさらに、これを根拠として、国立学校設置法を改正して、筑波大学には、「学群及び学系を置く。」と規定しております。
 これについて一部の反対論者は、現行制度における大学では、教育と研究が一体的に行なわれ、その運営は学部が当たることに定められている。ところが、筑波大学では、教育と研究の組織を学群と学系に分離しているので、教育効果は下がるにきまっていると言っております。これは事実に反する暴論ではないでしょうか。反対論者の主張のように、従来の学部、学科、講座がただ一つの理想的な仕組みであり、やり方であったとしたら、おそらく大学に対する不満も生まれることなく、紛争も起こらなかったでありましょう。そこで筑波大学では、学問分野別に分けられた数多くの学系を、すべての先生方の所属する研究組織としており、他方では、教育目的に応じて学生の教育本位に編成された多様な学群  その下の組織である学類――たとえば人文、社会、自然、比較文化、人間、生物、社会工学、情報といった学類で多くの学系の先生方が協力して、学生の教育を行なう仕組みにし、いままでのような矛盾を解決しようとしているのであります。つまり、今回の筑波の学系、学群、学類という新組織は、教育と研究をばらばらにするのではなく、むしろより機能化し、弾力化し、総合化して、その結果は、より深いところで教育と研究を一体化するねらいを持っているものと理解するものであります。この点、私どもの認識のしかたが正しいかどうか、文部大臣の明確な御答弁をお願いしたいのであります。(拍手)
 第三の問題として、筑波における管理運営について伺いたいのであります。
 すでに申し上げましたとおり、これまでの大学は、学部教授会自治のもとに学部が主体となって教育、研究、管理運営のすべてを取り仕切り、その結果さまざまな批判を呼ぶようになったのであります。これを要約して申し上げるならば、大学管理運営の責任の所在と事務の執行上の役割り分担が不明確かつ非能率であったために、大学自治が形式化し、空洞化してしまったのであると思うのであります。
 筑波大学では、このような問題点を反省し、学部教授会にかわる機関として、学群、学系などにはそれぞれすべての先生で構成する教員会議を置き、組織内の主要事項を審議するとともに、全学的な問題については評議会を中心として、各種の委員会と審議会がこれに当たることになっているようであります。これらの機関は、すべて先生方の代表で構成されているわけで、むしろ責任分担を明確にし、機能化しているのではないでしょうか。こうした改革構想に対して、大学の管理強化だとか、大学自治の破壊だなどと批判が一部でなされておりますが、これはたいへんな間違いであります。この反対のおもな点は、副学長、人事委員会、参与会の三つに集中されているのでありますが、この点についても明らかにしたいと思います。
 まず副学長の問題でありますが、筑波大学のような大規模大学が一つのまとまった有機体として活動するためには、すべての教員の意見の吸収と多くの学群、学系間の意見調整という、いわば縦横のパイプ組織の充実が大切であります。二つの委員会と四つの審議会を通してその調整をするのがこの五人の副学長であります。
 次に人事委員会についてであります。大学の人事の閉鎖性を打破し、広く内外に人材を求める努力をすることは、大学の使命からいって当然のことではないでしょうか。そのために全学的な立場から、公平、適切な結論を得るよう、人事委員会は、学群や学系の教員会議の意見を十分聞きつつ対処することになっているのだと思うのであります。
 また参与会は、地域社会や他の大学、研究機関の関係者、卒業生の代表などの学外者で構成し、大学の運営について学長の相談を受けるものとされておりますが、大学が進んで学外者の意見を聞くということはきわめて意義のあることだと思うのであります。これらの措置をもって大学の自治が侵害されるなどというのは、とんでもない妄想でありまして、人事をある程度開放し、学外者の参考意見を聞くというだけで戦々恐々とするような自主性も見識もない人間では、大学の先生としてどうでありましょうか。(拍手)そこで、この管理運営機構の私の理解になおつけ加えることがありましたならば、文部大臣からお述べいただきたいのであります。
 ところで、何と言っても、新しい大学を建設されるためには、筑波に集まるすべての教職員と学生が一体となって、理想的な学園をつくるのだという意気込みに燃えて協力し、努力する心こそが何よりも大切ではないかと思うのであります。私は、かつて、クラーク博士が学生とともに大きな理想を掲げて札幌農学校をつくられ、それが基礎となって今日のりっぱな北海道大学ができた事実を思うのであります。
 四番目に、締めくくりとして私は、総理並びに文部大臣に対して、日本の未来のために今後の大学教育の拡充整備についてどのような計画を持っておられるか、その御決意を伺いたいと思うのであります。
 そこで、まず第一には、これまでの大学の質的充実、特に私立大学に対する助成についての強化が大きな課題であります。第二に、今後の入学希望者の増大に対して、新しい大学をつくるという課題があります。国の根本は教育にありという古今東西に誤らない真理、大原則に立って、勇気ある教育優先の政策を実行してもらいたいのであります。
 総理並びに文部大臣、私の切なる希望に対して、大胆率直な御答弁をお願いいたしたいのであります。
 これをもちまして、私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角栄君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(田中角榮君) 楠正俊君にお答えをいたします。
 まず第一は、今日の大学の姿をどう評価し、日本の未来を切り開く大学をどのような大学と考えるのかという御質問でございますが、現在、わが国には約九百の大学があり、百八十万人に近い学生が在学をいたしております。進学率は約二八%に達しておりますので、三人に一人の青年が大学に学んでおるということになるわけであります。このような高等教育の普及、拡大の傾向は、今後とも続くことが予想せられるのであります。この傾向は、複雑高度化しつつある社会におきまして、より高度な教育を求める国民の強い意欲のあらわれであり、これらの国民の要請にこたえ得る体制を整えることが必要だと考えておるのであります。
 このような情勢を踏まえ、それぞれの大学自体のあり方についても、旧来の象牙の塔的な閉鎖的な大学自治の観念にとらわれることなく、広く社会公共の機関としての目的、使命を明確にした、新しい時代の要請にこたえる大学のあり方が求められなければならないことは当然であります。(拍手)
 今後の大学は、高度な学術研究を推進し得る柔軟性のある体制の整備をはかり、真に社会に開かれた大学として国民の期待にこたえ得る大学を目ざすことを強く期待するものであります。(拍手)
 次に、大学教育の拡充、整備計画等についての御質問にお答えをいたします。
 先ほど申し上げましたとおり、九百の大学、百八十万人の学生と申し上げましたが、昭和六十年を展望してみますと、進学率の向上等により、学生数はその上になお六十万人の増加が見込まれておるのであります。一校二万人といたしましても、新たに三十校の大学を必要とするわけであります。したがって、高等教育機関の計画的整備による全国的適正配置を進めていくにあたりましては、大都市における大学の新増設を抑制して、地方における大学の拡充をはかること、また、地方の環境のよい都市に大学を整備し、あるいは既存の都市にとらわれないで、全く新しい視野と角度から、環境のよい湖畔、山ろくなどに、十分な敷地を確保して、新学園を建設する構想を推進する必要があると考えておるのであります。(拍手)
 なお、戦後の大学制度につきましては、発足以来すでに四半世紀を過ごしております。大学制度はどうあるべきかというような、大学に対する国民の希望と意見は数多く存在するのであります。大学は教師と学生だけのものでないことは申すまでもありません。次代の国民を育てるところであります。大学は入ればいいのだ、卒業すればいいのだというところではなく、真に学ぶところであります。そのためには、真に教師が教えられ、真に学生が学び得るよき環境を提供しなければならないわけであります。(拍手)
 政府は、国民の声に耳を傾け、世界に誇り得る大学、そして真にわが日本人の特性を生かし得る大学を拡充していくために、精力的に努力を続けてまいりたいと考えます。(拍手)
   〔国務大臣奥野誠亮君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(奥野誠亮君) 国立学校設置法は、あらゆる国立学校を網羅して規定している法律でございまして、国立学校の設置と、その組織及び運営についての基本的な事項を定めているものでございます。筑波大学も国立学校として設置するものでございますし、同時に十月に開学を目ざしているものでございます。したがいまして、当然、国立学校設置法に旭川大学等と同様に規定するのが当然の姿でございます。
 なお、東京教育大学はキャンパスが幾つにも分かれておりまして、たいへん不便でございますし、同時にまた環境が非常に悪化しておるものでございますので、昭和三十七年に、東京教育大学が統合移転候補地の調査をすることを決定をしたわけでございます。四十二年に、東京教育大学が総合大学として発展することを期し、条件つきで筑波に土地を希望することを決定をいたしました。四十四年には、東京教育大学は、筑波における新大学のビジョンの実現を期して、筑波に移転することを表明いたしました。四十六年には、東京教育大学は筑波新大学に関する基本計画案を決定をいたしました。これらを受けまして、四十七年に、筑波研究学園都市に新設移転する研究教育機関として、筑波大学等四十二機関を閣議決定をし、そして今日の法案の提出に至っているわけでございます。
 この東京教育大学の新構想、これを実現させようとして法律案を提案しているわけでございまして、この構想の実現をはかることこそが、大学の自治を守る政府の基本的な姿勢であると、かように考えておるものでございます。(拍手)
 同時にまた、先ほど来お話がございました学群、学系の組織、あるいは人事委員会、あるいは参与会の組織は、筑波大学のみに規定をしておるわけでございまして、他の国立大学に押し及ぼそうとします場合には、新たに法律案を国会に提出しなければならない性格のものでございます。
 現在、学部を中心にいたしまして、教育、研究が一体として行なわれている。そのことはそのこととして意義のあることではございますけれども、今日の事態から考えますと、いろいろな無理な面も出てまいってきているわけでございます。研究の面で申し上げますと、研究はますます深く掘り下げていかなければならないけれども、その態度をそのまま教育に持ち込んで、いまの学生の理解が得られるだろうか。もっと広く学んで、変化に対応する力を身につける、そのことを目ざして大学に進んできているわけでございますので、そのままでは問題が起こるわけでございます。
 同時に、また、学際領域の学問がどんどん発展を見つつございます。同時に、また、各学部協力をして対応しなければならない問題も幾多起こっているわけでございまして、公害に一つ例をとりましても、これは医学部、薬学部、法学部、農学部、理学部、工学部、みんな協力をしなきゃならないわけでございますだけに、やはり学部の割拠を、学部のへいを取りはずさなければ十分な研究体制を整備できない、こういう問題もございます。そういうことから学部の壁を取りはずしまして、研究の組織として学系組織をつくる、教育の組織としては学群、学類の組織をつくる、こういうことになったわけでございます。しかしながら、いずれも大学の中におきまして研究も教育も一体として行なうわけでございます。学部割拠の大学自治を全学的な大学自治に発展させることを通じて、教育と研究とをさらに発展させていきたい、時代の要請に合うように進めていきたいということが真意でございますので、御理解を賜わりたいと考えるわけでございます。(拍手)
 なお、お話しのように、人事委員会、参与会、副学長等の問題を通じまして、管理強化でありますとか、大学自治の破壊だとか言われておるわけでございますけれども、私は、管理の強化じゃなしに、研究も教育もその使命を適正に発揮させるための管理の適正化、こう考えるべき性格のものだと、かように考えるわけでございますし、大学の自治の破壊でなしに、それぞれの効率を高度に発揮して、社会から負託された責任を全うする、そのような仕組みにつくり上げていこうとするものであると、かように考えておるものでございます。
 大学の拡充整備につきまして、質的な問題として私立大学への助成の強化の御主張がございました。私も全く同感でございまして、私立大学の社会に対しまする役割りが国立大学と同じでありまする限りは、国立大学に対する財政負担と同じような考え方で私立大学に対して財政負担をしていくべきものであると、かように存じておるものでございます。
 量的な問題につきまして総理からもお話がございました。違った角度で数字を申し上げますと、六十年代当初には四〇%の人たちを大学に収容していきたい、としますと、現在の国立大学の平均定員が九百五十人、約千人でございますから、それまでの間に二百校の国公私立の大学をつくっていきたいという考え方を持っている、それを地域的に均衡のとれた姿において整備していきたい、こういうようなことで努力をしてまいる考えでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(河野謙三君) 宮之原貞光君。
   〔宮之原貞光君登壇、拍手〕
#12
○宮之原貞光君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案をされました国立学校設置法等の一部を改正する法律案について、強く反対をする立場から、総理並びに文部大臣に対して質問を行なうものであります。
 この法案は、緊急にその実現が望まれている旭川医大の創設や、山形、愛媛大学の医学部設置等、国立学校設置法の一部を改正することのみでこと足りる部分と、わが国高等教育のあり方の根本にかかわる筑波大学の創設という、まさに国民的な合意を得るために慎重に審議をされなければならない部分を意図的に抱き合わせて提出をされておるのでありますが、この二つの部分が全く異質のものであることは、だれの目にも明らかなところであります。それだけに、このことを承知の上で、あえて提出をしてきておるところの政府の魂胆は、医大等の設置を強く求めておる国民の声を、問題のある筑波大学賛成に転化させようとするきわめて悪質なものだと断ぜざるを得ないのであります。そしてまた、それは筑波大学の創設に反対をするわれわれを、すべて医大等設置にまで反対をするものとのレッテルを張って、国民の目を欺こうとする陰謀でもあるのであります。もしそうでないというならば、総理、先ほど提案説明のあったわが党をはじめとする野党四党の共同提案による国立学校設置法の一部を改正する法律案に政府も直ちに賛同すべきだと思うのであります。いかがでございましょうか。まずそのことをお伺いいたしたいと思います。
 新設をされる医大、医学部等々に大きな希望を託して、受験準備に余念のない学生諸君の上に思いをいたすときに、私はまさに断腸の思いがいたすのであります。法案が成立をし、入試を経て大学に入学をするまでには、最低二カ月を要するというのが常識であります。しかも、本日提案をされましても、本法案は慎重審議を旨とし、かつ良識と自主性をお互いの誇りとしておるところの本院では、実際の審議期間がきわめて短いだけに、会期内に成立するとはおそらく与党の皆さんでさえ思っておられないだろうところの事態の中で、総理、あなたは、それでも国民の声を無視して、医学部等の新設を筑波法案と無理心中させるつもりですか。これこそ、党利党略のためには教育を犠牲にして省みない態度といわなければなりません。まさに国民の名において糾弾をされなければならない愚挙であるのであります。総理、あやまちを改めるのにやぶさかであってはなりません。いまからでもおそくないのであります。あなたの一枚看板である決断と実行は、四党提案の分離法案に賛同してこそ国民の共感が得られるのであります。この点、総理のメンツにとらわれない謙虚な御答弁を期待いたすものであります。
 なお、だから早くこの法案を成立させてもらいたい云々の御答弁でしたら、それは責任転嫁もはなはだしいことだということをあらかじめ念のため申し添えておきます。
 次に、本法案の核である筑波大学構想について重点的にお尋ねをいたしたいと思います。
 衆議院本会議におきます総理及び文部大臣の答弁を要約をいたしますと、「複雑にして高度化している今日の社会情勢では、現在の大学ではもはや対応できなくなっている。時代の進展に即応し、弾力的な研究活動を確保し、かつ多様な人材の確保をはかるために筑波大学を創設した」とか、「開かれた大学、筑波」等々としきりに強調されておるのでありますが、一体、総理及び文部大臣は、大学の大衆化とか、時代の要請にこたえる大学のあり方ということをどのようにお考えであるか、この点の見解を承わりたいと思うのであります。
 およそ、どのように科学、技術の研究が大学を広く越えて展開をされようとも、社会における大学の役割りは不変であります。いな、むしろ大学を越えて科学、技術の研究や開発が進み、大学以外で社会事象の検討が進めば進むほどに、大学におきます基礎的な研究と教育に対する社会の要請は強まるものであります。今日の大学の進学率の上昇は、このような科学、技術の全領域にわたる急速な発展と、それに基づく社会構造の変化に対して、より高度な教育を受け、高い知識と判断力を持ちたいという国民の要求のあらわれであり、国民の教育を受ける権利行使の広がりであるのであります。いわゆる大学の大衆化現象は、このような国民の知的要求の増大と民主主義の発展の結果でありまして、歴史的に見ましても、人類社会発展の必然的な傾向にほかならないのであります。ですから、わが国高等教育の今日的緊急課題は、これにこたえるための大学間の格差の是正と、教育の機会均等をはかるための大学への積極的な投資と、私学への公費援助の拡大こそが急務であるのであります。ところが、筑波構想は、このことを全く等閑視して、先述のような理由で創設をするというのですから、これは、むしろ国民の大学に求めている本旨にもとるものと言わなければなりません。
 およそ大学は、長期、巨視的な社会展望と、その要請にこたえてこそ存在価値があるものであります。そして、社会奉仕や社会還元は、大学の主たる機能ではなく、研究、教育の副次的結果として社会的な種々の有用性が伴ってまいるのであります。したがいまして、今日の社会は、研究と教育、社会的責任と、それぞれの使命の達成の道が多元的であり個性的であるから、大学の格差と多様化は当然であるという考え方は誤りであるのであります。機能分化した社会であればあるほど、専門化と同時に人間的な全体性ということはきわめて重要でございまして、大学は、今日、そのことを強く求められておるのであります。それを、多様な人材確保と称して、大学を就職の手段とし、企業の要請にこたえる職業人づくりをねらう筑波大構想は、大学の大衆化を口実に、その実、大学の格差を助長し、学問の内容を卑俗化させるものだと断ぜざるを得ません。
 さらに、開かれたところの大学というのは、国民に向かって開かれたところの大学の意味であって、筑波大のように、大学の独善と閉鎖性の打破というもっともらしい旗じるしを掲げておりながら、実際は、大学の自治と引きかえに、権力や資本の側に開かれた大学では、国民を愚弄するもはなはだしいといわなければならないと思うのであります。これらの諸点について、総理並びに文部大臣の御所見をお伺いをいたしたいと思うのであります。
 次は、研究と教育の分離でありますが、文部省の宣伝パンフは、大学教育の急激な拡張と学問研究の専門分化が著しくなって、従来のような学部、学科、講座というワクの中でははまらなくなった、従来の大学では研究中心で、学生の立場に立った教育を考えることがあと回しになりがちであった等々の理由をあげて、研究と教育の分離をはかって、学群、学系を組織をしたと説明をしておりますが、この見解は、衆議院本会議における文部大臣の控え目な答弁とは違いまして、きわめて大胆にその本心をのぞかせておるのであります。このことと、筑波大創設準備調査会の報告「筑波新大学のあり方」の研究と教育の主目的は知的能力の開発と新しい型の技術人の養成であるという、高度経済成長論に基づく教育理念をあわせ考察をいたしましたときに、この筑波大構想のねらいは、大臣がどのように弁明をされようとも、資本の要求する技術者を養成するところの教育と、技術開発の研究とにあることは間違いございません。したがいまして、文部大臣の言う適時研究プロジェクトをつくり関係者が集まって研究をするという仕組みは、しょせんは資本のための自主技術開発や産軍共同体に組み入れられることは必至であります。大学院の修士課程も、そのための職業人の再教育となるのが落ちであるのであります。言うならば、研究と教育の分離という筑波大学構想は、一部の大学を除いて多くの大学では、学力低下に合わせたところの水準の職業・技術教育をやればいいということを意味し、そこでは、教育を学問の体系に従ってではなく、社会的な企業の要請にこたえて行なえばいいということになるのであります。これではもはや大学の自殺行為であります。教育基本法第一条に立脚した学校教育法第五十二条の、「大学は、学術の中心として、広く知識を授ける」云々という大学の目的は一体どこにいくのでしょう。確かに現在の大学のあり方にも問題はあります。また、学問が非常に発展をしておる今日、世界に誇るべき研究成果をあげることと、人材を育てるために教育内容、方法をくふうし実践をすることは、同一人の教授が安易に調和しがたいほどの困難な任務のあることもよくわかります。しかし、にもかかわらず、両者は同一人が遂行しない限り大学としての役割りは十分果たし得ないのであります。大学における教育は、学問による知性の練磨でありますから、第一線に立って研究活動を行なっている者の手によってなされることが必要不可欠であります。また、第一線の研究を遂行するためにも、広い視野に立った教育のための研究を行なうことがますます必要になっております。さらに、学生との接触が研究に有益な刺激となることも少なくないのでありますから、研究と教育は、大学においては不離一体なものであるのであります。このことは、大学のあり方の基本にかかわるところの問題でありますだけに、日本学術会議もたびたび総理に勧告を行ない、国大協や東大をはじめとする多くの大学もまた、それぞれ同様の見解を表明をしてきたのであります。しかし、政府はこれに全然耳をかすことなく、ただひたすらに中教審答申の路線に忠実に法制化をはかってきておるのがこの法案の骨格でありますだけに、これらの理由と根拠をあわせて明らかにしていただきたいということを総理並びに文部大臣に御答弁をお願いしたいと思います。
 続いてお聞きしなければならない問題は、新しい大学管理の問題であります。
 この問題は、大学の自治、ひいては大学における学問・思想の自由にかかわるきわめて重要な問題であります。大学の歴史は、学問の自由を保障するためには大学の自治が絶対に必要であることを私どもに教えておるのであります。大学の自治とは、大学人みずからが人事権を持つことであり、研究や教育の内容を自主的にきめることであり、さらには、財政面でもある程度の自主性を持つことであり、大学の施設、設備を自主的に管理することを内容といたします。そして、大学の機能である研究と教育及び管理は、基本的には同一主体によって行なわれるのが大学の特色で、大学の自治は、本来このような目的を果たすために存在をするものであります。
 しかも大学の自治は、従来、講座制を基盤とした教授会を中心とする自律的な研究、教育体制の確立を前提として運営され、教授会は管理機関の役割りをも果たして、大学の主体性を維持するために今日まで大きな役割りを果たしてまいったのであります。この仕組みは、今日ではすべての大学で定着をし、慣習化し、学部自治ということばが通用しておるのであります。学校教育法の第五十九条は、このような教授会の役割りを規定し、これを基盤とした評議会が大学の意思決定の最高機関であることを明確にしているのであります。
 ところが、筑波構想は、この学部教授会自治の解体を主たる内容とし、研究と教育と管理の統一を否定をいたしておるのであります。教育の機能の組織的な単位としての学部を廃止して、これにかわるに学群、学類を、研究の基本的組織として学系を置き、管理は教師、研究者の手から奪い去って、管理のための固有の組織として、学長を頂点に新たに五名の副学長を配して中枢的管理機関を置くとしておるのであります。しかも、学長はもとより副学長も学外者から導入できるようになっておりまして、副学長は、執行部でありながら審議機関である評議会、人事委員会の中心メンバーを兼ねることができるなど、管理のための特別の人的スタッフと特別の組織を設けて、大学の管理体制を強めるところのやり方であるのであります。言うならば、このようなやり方は、例の悪法である大学運営臨時措置法の管理方式の筑波大への適用と言わなければなりません。
 新しい審議機関として学外者で構成をされる参与会のあり方も問題であるのであります。大学の閉鎖性、排他性の克服策とか、開かれた大学という口実のもとに学外から人を入れるというやり方は、中教審メンバーの例からして、その実際は財界、官僚、御用学者で占められ、結局は強力な資本や政治権力に牛耳られる参与会となることは目に見えておるのであります。外部の人を参与に入れれば、それで大学の閉鎖性が除去されると思うくらい愚かな考え方はないのであります。このような管理機構のもとでは、たとえば製薬資本の代表者を薬科大の参与に入れて、ききもしない薬の宣伝を大学の教授にやらせるような結果にしかならないのであります。
 さらに重大なことは、人事権までが教授会の手を離れて人事委員会の手に移ることであります。教授会の人事権の自主性、主体性が大学自治のかなめであることは、戦前の森戸、滝川事件、戦後のイールズ旋風の事例をあげるまでもなく、はっきりいたしておるのであります。教育公務員特例法に、教員の採用及び昇任は教授会の議に基づき学長が云々と規定をし、教授会が実質的に人事権を持っていることを明確にしておるのも、このためであるのであります。筑波構想は、この権限をすべて人事委員会に吸収し、教授会は有名無実になっておるのであります。このように、大学の自治の根幹であります教授会が実質的に消滅させられているということは、大学の自治破壊そのものではございませんか。おそらく文部大臣は、人事委員会も全学的な大学の機関であるから、大学の自治は侵されないと反論をされるかもしれません。しかしながら、その反論は、およそ大学を知る者にとってはそれは詭弁としか受け取られないのであります。筑波大創設準備調査会は、人事委員会は必要に応じて学外の学識経験者を加えた業績評価委員会を設けると説明をしているのでありますが、これは人事についても学外者の介入があることを示唆したものと言わなければなりません。また、一千人をこえる全教員のうち、わずか十五人程度で委員会は構成をされ、しかもその三分の一は副学長で占め、その他の委員も、学長の意向が強く反映をされるという人選の仕組みにも大きな問題があるのであります。
 現在筑波大学の母体でありますところの東京教育大では、文学部が移転に反対をしていることの報復のためか、家永教授ら三教授に対する辞職勧告事件や、「教官選考規準に関する申合せ」に基づく文学部教授会の議決による五人の教官人事が、学長によりまして二年近く握りつぶされている事態が起きているのであります。人事委員会に人事権が移ってしまえば、このようなことは日常茶飯事となることは必至であるのであります。
 文部大臣、これでもあなたは、筑波大学構想は全学の教師の意向は正しく反映され、大学の自治は守れると言い切れますか。とくとお伺いをいたしたいのであります。
 教授会自治のあり方に問題があるからとして、大学自治の基盤である教授会を実質解体をするというやり方は、まさに角をためて牛を殺すたぐいの暴挙であるのであります。
 以上、総理、私は具体的に指摘をしてまいったのでございますが、大学の自治とか、学問の自由という、いわばカニの甲らにも匹敵する決定的に重要なものを大学から奪い去って、あなたは日本の大学教育をどこに持っていこうとされているのでありますか。総理、あなたはさきに、小選挙区制を強行することによって、日本の政治を自分の思いのままに壟断をしようと策して、世論の袋だたきにあって断念したのでありますが、今度は教育を同様に壟断をしようと策して、このようなきわめて反動的な筑波大学法案を提案されたのですか。とくと総理の存念をお伺いをいたしたいのであります。
 総理に、平和憲法と教育基本法の理念に基づくところの、平和と民主主義を基調とするところの教育の哲学がもしおありならば、小選挙区法案同様に、この筑波大学法案も断念をされるよう御忠告を申し上げまして、私の質問を終わるものであります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(田中角榮君) 宮之原君にお答えをいたします。
 第一は、法案を分離せよという問題でございますが、国立学校設置法等の一部を改正する法律案は、筑波大学の創設を含む国立大学の新設、整備及びこれに関連する大学制度の改善措置について規定をしておるわけでございます。
 国立学校設置法は、国立大学等の設置、組織及び運営に関する基本的事項につきまして統一的に定めることを目的とする法律であります。今回の改正案は、現行法制の体系上何ら疑義はないわけでございます。したがいまして、政府としては、この法案を分離する考えは全くありません。(拍手)
 第二は、時代の要請にこたえる大学のあり方について御発言がございましたが、大学制度も戦後四半世紀の歴史を経て、いろいろ改革を要する点があることは事実であります。このような観点から、大学教育の正すべき点はこれを正し、これからの激動する社会に適切に対応できるよき社会人を育成し得る大学をつくり上げていかなければならぬことは当然でございます。すなわち、新しい大学は、高度の学術研究を推進し得る柔軟性のある体制を整備するとともに、真に社会に向かって開かれた大学として、国民の期待にこたえていくことが必要であると考えるのであります。
 次は、筑波大学構想は、大学の自治を奪うものである趣旨の御発言でございますが、次代の望ましい国民を教育するためにふさわしい大学はどうあるべきかについて、いま、国民全体は真剣に考えておると思うのであります。今度の筑波大学設置に際しまして、この理想達成のために、幾つかの新しい試みを盛ろうとする姿を理解していただければ、このような大学をつくることが、学問の自由と学園の自治を侵すものでないことは、十分御理解願えると思うのであります。(拍手)
 次は、大学において研究と教育は不離一体のものであるとの御説でございますが、大学において教育と研究とが一体となって行なわれなければならないことは、御指摘のとおりでありまして、このことは筑波大学につきましても全く同様であります。筑波大学の構想において、従来の学部制にかえて、学群、学系という新しい組織を置きましたのは、教育組織と研究組織とを分離し、それによって大学における教育と研究が最も適切な目的と内容によって行なわれることを期待したからであります。
 最後に、平和と民主主義を基調とする哲学があるなら、本法案を断念せよという趣旨の御発言でございますが、高等教育の大衆化と学術研究の高度化の要請にこたえて、高等教育の多様化、教育研究組織の合理化、大学の閉鎖性の是正等の措置を講ずる必要があることは何人も否定しないのであります。このような要請にこたえるため、新しい制度の採用を機会に、いろいろな問題に対して具体案を添えて御審議をいただいておるのであります。このやり方は、まさに平和と民主主義を基調とするものであり、よりよい開かれた大学をつくり上げるための必要不可欠なものであることを御理解いただきたい。
 以上。(拍手)
   〔国務大臣奥野誠亮君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(奥野誠亮君) 今後の大学のあり方等についてお尋ねがございました。戦前の大学といまの大学とを比較して申し上げますことが端的であろうかと思うのでございます。
 戦前は、大学は国家枢要の人材を育て上げるんだというたてまえをとっておりましただけに、いわゆるエリート大学等ともいわれておったわけでございます。そういう大学の性格からいたしまして、ごくわずかな、国民の中のほんの数%が学んだだけでございまして、同時にまた、しばしば象牙の塔にこもるなどの批判もあったわけでございます。今日では三〇%から四〇%の人が大学に学ぶ時代を迎えようとしているわけでございまして、国家及び社会の中核になります形成者、これを育て上げていかなければならない時代に入っているわけでございます。そういうまた大学でございますだけに、特に社会の変化に対応できるものも持っていかなきゃならない。そういう意味合いにおきまして、象牙の塔にこもることなく、積極的に社会のあり方に目を開いていく、また社会の要請にこたえる努力を大学自身も続けていく、このことが非常に大切だと考えられるわけでございます。同時にまた、大学に今日求められている、あるいは期待されている点も非常に多いわけでございまして、公害の問題にしましても、環境保全の問題にいたしましても、あるいは情報科学の問題にしましても、あるいは物価や国際金融の問題にしましても、いろんな問題が大学の活動に広く期待されているわけでございますだけに、全学的にそういう問題と取り組めるような大学でなければ、そのような要請にこたえることが困難ではないだろうかと、こう考えておるわけでございます。
 研究と教育の分離につきまして、総理からいろいろお話がございました。同時に、研究を行なっている者が教育をすべきだという立場での御主張もございました。
 筑波大学におきましては、全くその点は変わりはないわけでございまして、すべての先生方が研究の組織であります学系に属されるわけでございます。教育の見地からどのような教育を行なうことが適切であるか、どのような学系から出向いていただいて教員構成をとることが適当であるか、そういうことを考えて教育を行なっていく。言いかえれば、学部割拠の研究や教育を、全学的な立場で研究や教育を構成していこうというところにねらいがあるわけでございます。研究を行なっている者が教育に携わるんだという点は、何ら変わりはない点を御理解いただきたいと思います。
 この研究と教育の分離の問題は、大学紛争以来、多くの大学が改革の中心課題としてまいったところでございます。東京大学もそうでございますし、その他の多くの大学がこのような点に着目をしてまいったわけでございまして、東京教育大学が初めてみずからの構想として決定した、その決定を今回実現させようとしているところであることについても御理解をいただきたいと思います。
 大学管理のあり方につきまして、いろいろ具体の点を指摘してお話がございました。
 一つには、学部教授会の自治、これが解体するのじゃないかというお話がございました。従来の仕組みでありますと、大学に教授会を置くということは、学部に教授会を置くということで行なわれてまいってきているわけでございます。そのことが学部割拠の大学自治を生み出しているわけでございます。この学部の壁を破りまして、やはり大学には教授会を置くわけでございますから、学群組織に教授会を置く、あるいは学系組織に教授会を置くということになってくるだけのことでございまして、そういうことを通じまして全学的な大学自治を実現しようとねらっているところに御理解をいただきたいのでございます。
 二つ目には、副学長の点についてお話がございました。副学長のことで申し上げますと、たとえば東京大学におきましても、学長補佐というかっこうで、まだ制度化されておりませんのに、みずからそういう仕組みを教授の中から持ってきているわけでございます。副学長を置くことができるということにいたしまして、そういう職を設けてあげようという考え方でございます。筑波大学の希望を受け入れまして、そして、他の大学も希望する場合には、これを置けるようにしてあげたいということでございます。
 第三には、参与会について御意見がございました。参与会は学外者をもって構成するわけでございますので、大学の自治を破壊するのじゃないかという御心配があるようでございます。しかし、法律に明記しておりますように、参与会は助言、勧告の機関でございまして、諮問機関でございまして、意思決定機関ではございません。大学陣営が、大学自治に干渉を試みるようなものは決然としてこれは拒否すればよろしいわけでございまして、それだけの決意は持っていただかなければならない、こう考えるわけでございます。
 第四には、人事委員会について御指摘がございました。いまの人事のあり方につきまして、やはり私はこのままでよいとは思っていらっしゃらないのだろうと、こう推測したのでございます。閉鎖的な人事でありますとか、また、すべての大学人事がそうなっているとは言いませんけれども、ところによりましては、封建的過ぎるじゃないかという批判さえも起こっていることは御理解いただいていると思います。今回は、学部というものをやめましたために、いままでは学部教授会で人事をきめておった、学部がなくなりましたので、新しい仕組みをとらなきゃなりませんので、研究の組織からも先生を出してもらう、教育の組織からも人を出してもらう、そういうことで人事委員会を構成をして、そこで人事を行なうわけでございますが、個々具体の人事につきましては、やはりそれぞれの関係の教員が集まりまして専門委員会を構成する、その専門委員会が、具体の教員人事をきめましてこれを総会に上げる、それをそのまま人事委員会で承認されていくという経路を経るものだろうと、こう考えるわけでございまして、これらの運営はいずれも大学の自治にゆだねているわけでございます。大学人にゆだねられておりますだけに、大学がいろいろな学内規則をつくったり、あるいは慣例の積み上げをしながら、りっぱな大学自治をつくり上げていただけるものだと、かように期待をいたしているものでございます。
 最後に、東京教育大学の文学部が反対していることについて御批判がございました。私も、たいへん残念な東京教育大学の姿だと、かように考えているわけでございます。四十二年に東京教育大学が移転を決定したわけでございまして、これにに対しまして文学部が不満を持たれまして、評議会に参加しておられました評議員の更迭を行なわれました。自来、大学移転に関する問題については、一切文学部は何ら関係者を出席させないという態度をとり続けてきておられるわけでございます。五学部のうちの一つの文学部だけが、四十二年、その決定以後は一切参加しないという態度をとっておられる。私はたいへん残念なことだと考えております。一〇〇%の先生方が全部賛成というような姿になることが最も望ましい姿でございますけれども、しかしまた、四十二年に移転を決定したにかかわらず、評議会で決定したにかかわらず、自後は一切学部として参加しないというあり方、これもまた、私は批判されるべき姿ではなかろうかと、かように考えているものでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(河野謙三君) 内田善利君。
   〔内田善利君登壇、拍手〕
#16
○内田善利君 私は、公明党を代表して、ただいま提案されました国立学校設置法等の一部を改正する法律案に対し、強く反対の意を表する立場より、総理並びに関係大臣に対し若干の質疑を行なうものであります。
 教育は国家百年の大計であり、全国民の合意により行なわれるべきものであります。全国民のコンセンサス形成のための環境づくりこそが政府の役割りであると思うのであります。しかるに、本法案に関しては、当事者である国立大学の先生方さえ強い反対を表明しているのであります。私の手元にも、国立大学の教授会等による数十に及ぶ本法案に対する反対声明が届いております。その中の一つを、ここで結論の部分を読ませていただきます。「この法案は、大学の自治と憲法に保障された学問の自由を侵す恐れがあり、大学を時の政治権力の支配下に置くことを可能にするものであって、国民の幸福と相容れないものであると考える。よって、この法案の成立に強く反対するものである。」と。また、国立大学内のみならずその他の大学人及び一般の方々の陳情、反対、請願等も非常に大きな盛り上がりを見せているのであります。そのような状況の中において、過日、政府自民党は、衆議院文教委員会において強行採決という暴挙を行ないました。国民の声が反対へと盛り上がっている中で、こうした暴挙を行なうことは、政府みずからその墓穴を掘ることにならないでしょうか。真に日本の教育の将来を考えるならば、全大学人、国民の賛同が得られるまで慎重に対処すべきであると思うのであります。
 私たち公明党は、真の学問の自由を守り、大学の自治を尊重する立場から、学園民主協議会を中心とする新たなる大学構想を提案し、その実行を主張し続けてまいりました。しかるに、本法案は、大学人による自主的大学改革を押しつぶし、行政府による政治権力に都合のよい大学改革を目ざしたものであり、あの悪名高き大学管理法案の代案であることは明瞭であります。
 私は、こうした観点に立って、次の五つの点について質疑をいたしますので、総理並びに関係大臣に明確なる御答弁をお願いいたします。
 第一には、本法案はまさしく学問の自由を根底よりくつがえすものであるという点であります。この点に関し、研究と教育の分離、副学長制、参与会の三つの点より質問いたします。
 憲法第二十三条にうたわれている学問の自由は、具体的には大学の自治により保障され、また、大学の自治は学部の自治によりささえられてきたのは周知の事実であります。すなわち、研究と教育とが学部の中で一貫されてきたところに学問の自由があったわけであります。真の教育を行なうためには、その根底に深い研究があって初めてなされるものであります。しかるに、本法案に見られるように、教育と研究を分離する学系、学群構想は、教育と研究との効率化のみを指向するものであり、大学教育の本来の姿からははずれ、専門職業教育化をもたらし、学部の自治を破壊するものであります。学部の自治なくして自由な教育環境はつくられ得ません。みずから自由社会の守り手といっている政府自民党が、みずからの手によって学問の自由を踏みにじっているのが本法案であります。総理及び文部大臣の所信をお伺いしたい。
 さらに、中教審路線の先導的試みの一つである学長、副学長に大学の管理運営のすべてを集中する方式には、大きな疑問を持たざるを得ないのであります。集中された学長の大きな権限は、そのまま行政権力により左右されるように仕組まれているのであります。すなわち従来、学問の自由をささえてきた教授会、自治会等の合議制機関を可能な限り諮問機関化し、骨抜きにするものであります。そして、一般行政組織ないし企業経営方式を学内に導入し、実権はすべて政治権力に移行した形で大学を管理し、さらには、学問の統制をすら行なおうとする意図は明らかであります。このような方式で大学を管理することに対し、総理及び文部大臣はどう考えておられるのか、お伺いしたいのであります。
 また、本法案には参与会という新しい制度が導入されているのでありますが、参与会は、学長の助言、勧告機関としての機能を有し、そして、その人選については、「学長の申出を受けて文部大臣が任命する。」となっており、従来の大学の評議会の任命の「申し出に基づき」と異なり、文部大臣の拒否権すら留保しているのであります。そうした文部大臣の意中の人によって構成された参与会には、大学の運営に関する重要な事項すべての審議がゆだねられているのであります。すなわち、ここにおいても、文部大臣による上から下までの管理体制は完ぺきにでき上がるわけであります。教育基本法第十条には、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行なわれるべきものである。」とあります。この「直接に」ということは、教育機関や教師が何らの公的・私的機関を通ぜず、直接国民に責任を負うという意味であります。すなわち、文部省――行政府や政治権力の一切の介入なく、教師や教育機関の自主的判断によって責任を負うということであります。本法案に見られる、文部大臣を頂点とした学外者の大学管理への介入は、教育基本法を踏みにじるものと断ぜざるを得ないのであります。かつて中教審は、大学は産業社会の要請にこたえるべきだとさえ公言しておりましたが、本法案による筑波大学は、まさしく中教審路線を踏襲したものであり、国民に開かれた大学ではなく、政界、財界にのみ開かれた大学、すなわち、産学協同への道をまっしぐらに進まんとしているのは、明らかであります。政界、財界にのみ貢献する大学は、もはや大学とはいえないのであります。
 以上、本法案が学問の自由を破壊する具体的な例を述べてまいりましたが、個々に対し、総理及び文部大臣の具体的かつ明確なる御答弁をお伺いしたいのであります。
 第二には、大学改革の主体者はあくまで大学人みずからであるべきであり、行政が介入すべきではないし、行政のなすべき役割りは他に山積しているという点であります。
 大学紛争以来、政府自民党は、大学改革は学者にはできないと宣伝し、各大学の自主的改革案を無視してまいりました。そればかりか、大学紛争の導火線であった私立大学の授業料の問題には、何らの抜本的解決策は打たれていないのであります。私立大学に対する国庫補助は非常に少なく、大学運営費の大部分は学生納付金によっているのが現実であります。大学生を子弟に持つ一般サラリーマンの年収は、平均して百五十万から二百万前後でありますが、一人の子弟を私立大学に出すことは、父兄にとって、全生計費の三分の一から四分の一を支出しなければならない現状であります。私立大学に対する助成を大幅に引き上げるべきであると思いますが、総理、文部並びに大蔵大臣は、この現状についてどう反省し、どのように対処されるのか、お伺いしたい。
 また、私立大学の教員数の現状においては、マンモス大学等云々され、私立大学では水増し定員、また千人もの学生を一教室に集合させてのマンモス授業等、教員数の不足は目に余るものがあります。こうした私大における財政難、教員不足等に対しては、まさに政府は無策以外の何ものでもないのであります。
 教育基本法第十条に、教育行政の役割りを「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立」にあるとしているのであります。いままで述べてきたように、教育の目的遂行のための諸条件の整備確立を何らなすことなくして、何の文部行政でありましょうか。総理、文部及び大蔵大臣の明確なる御答弁をお伺いしたいのであります。
 第三には、数多くの大学人の反対、国民の反対の声の中で、筑波大学を強行設立させる意図は、一体どこにあるのかということであります。
 文部省当局は、この筑波大学法案は一部の大学人の自主的な計画に発したものであると公言していますが、筑波大学設立のための推移を見てみますと、母体である東京教育大学の総意すら取りつけることもせず、東京教育大学を従来の大学と全く異なった筑波大学にしようとする暴挙きわまりないものであります。もしあえて一歩譲って筑波大学をつくるとしても、その設立趣旨に賛同する者だけが集まってつくればよいのであり、国立大学にする必要もないし、また、東京教育大学を廃校にする理由もないのであります。この設立のための推移でもわかるように、筑波大学設立を文部当局が強引に急ぐその裏には、何が隠されているのでしょうか。すなわち、本法案成立後は、この筑波方式を全大学に波及させ、大学自治への行政介入を行ない、教育基本法を踏みにじり、教育内容の制御まで介入していこうという意図が明白なのであります。国民世論を裏切ってまで本法案を成立させるその意図はどこにあるのか、総理並びに文部大臣にお伺いしたいのであります。
 第四には、本法案は廃案となった大学管理法案の実質的再現であることであります。また、国民の意思を無親した強行採決で成立した、あの悪名高き大学の運営に関する臨時措置法案の期限が、四十九年すなわち来年八月に期限切れになることを考えれば、まさに筑波大学という一つの大学の設置に名をかりた政治権力による学園自治の破壊の第一歩であるということであります。
 昭和二十六年、二十八年に、政府は大学管理法案を提出しました。しかし、これは本法案と同じく、大学の管理運営を強化し、学問の自由を否定するおそれがあるとし、当時の国民世論のきびしい批判を見て廃案となったのであります。今回政府自民党は、直接的な大管法にかえて、実質的面でそれ以上の権力介入を可能にするためのモデル校を設置することを企図したわけであります。すなわち、強力な管理体制を持つ筑波大学を設置し、やがてこれを全大学に波及させるもくろみをもって第二の大管法としようとしているのであります。本法案が学校教育法、教育公務員特例法を同時に改悪し、他大学へもこの管理方式を可能ならしめた点からも明らかであります。この筑波方式が何ゆえ他の大学へも可能な形をとったのか。また文部大臣は、現在のところ筑波大学だけに限ると言っていますが、他の大学に波及されないという歯どめはどこにもないのであります。この点に関し、文部大臣の明瞭な答弁をお伺いしたいのであります。
 最後に、本法案提出にあたり、何ゆえに旭川医科大学、山形大学医学部、愛媛大学医学部等の設立等、地元住民にとって、また国民にとってどうしても必要なものを抱き合わせにしたのかという点であります。しかも、これらの大学は、ことし四月一日入学させる大学であり、筑波大学は、来年の四月一日入学予定の大学であります。もし政府自民党が、筑波大学設置に対し、何らやましい点がないとするならば、そうした必要な法案とは切り離して提案するのが当然のことであります。にもかかわらず、抱き合わせにした意図は、反対を少しでも弱めようとのもくろみ以外の何ものでもないのであります。医科大学等の設置がおくれることは、大学関係者、受験生、父兄、地元民にとって深刻なことであります。なぜ本法案を分離して提案しなかったのか、文部大臣にお伺いしたいのであります。
 以上の点から、本法案が一大学の問題ではなく、政府自民党の、未来の大学に対する陰険な意図を持った悪法であることは明白であります。私は、学問の自由を守り、教授、学生、職員等、大学人による自主的な大学改革こそ、真の大学改革であることを表明し、政府案のすみやかな撤回を求めるものであります。
 以上で、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(田中角榮君) 内田善利君にお答えいたします。
 第一は、筑波大学設立により学問の自由が侵されるのではないかということでございますが、大学制度も、戦後四半世紀の歴史を経ていろいろ改革を要する点があることは先ほど申し上げたとおりでございます。大学が教師だけのものでないこともまた当然でありますし、また、学生だけのものでもありません。日本国民全体のものなのであります。その意味で、次代の望ましい国民を教育するためにふさわしい大学はどうあるべきかを、いま国民全体は真剣に考えておるのでございます。本改正案は、筑波大学設置に際して、大学の理想を達成するために幾つかの政策を盛ろうとするものでございまして、学問の自由や学園の自治を侵すものでないことは御理解いただけると思うのでございます。
 次は、大学改革の主体者は当然大学人であるべきだという御説でございますが、今回設置する予定の筑波大学は、東京教育大学が自然環境に恵まれた筑波研究学園都市へ移転することを契機としまして、同大学で自主的に検討された改革構想を基礎とし、有識者の意見をも取り入れて創設しようとするものでございます。また、筑波大学の創設と関連をして学校教育法の一部を改正し、大学制度の弾力化をはかることとしておりますが、これらの事項は、いずれもこれまで各方面でその必要性が指摘をされていたものであります。各大学がそれぞれの実情に即して、自主的な判断によりその採否をきめるべき事柄であります。これにより各大学の自主的改革が、より一そう促進されることを期待するものであって、特定の形を画一的に押しつけようとするものでないことは御理解願えると思うのでございます。
 残余の問題については文部大臣からお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣奥野誠亮君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(奥野誠亮君) 国立大学の一部の御意見の御披露がございました。国立大学協会は会長談話の形式をもちまして、国立大学協会としての意見を表明いたしております。その中では、筑波大学の「このような試み自体に異議をさしはさむものではなく、これを見守っていくこととしたい。」という態度をとっておりますことを、御了解をいただいておきたいと思います。
 学問の自由との関連におきまして、大学の自治が学部の自治にささえられてきた、これが破壊されるじゃないかという御指摘がございました。従来は学部の組織しか認めておりませんでしたので、大学の自治が学部の自治にささえられてきたことは当然のことだと思います。この学部のあり方について多くの批判が出てまいってきておりますし、大学紛争の多くの原因もそういうところに介在しておったわけでございます。そういうところから、新しい仕組みをとったわけでございますので、新しい仕組みのもとに大学の自治がささえられていくのだと、こう御理解を賜わりたい。大学人は当然そのような態度で努力をしてくれるものだと、かように存じておるわけでございます。
 副学長につきまして、何か中央集権的な運営が行なわれるじゃないかという御心配の御意見がございました。全く基本的なことを法律に規定しているだけのことでございまして、あとは全部大学の自治にゆだねてきているわけでございます。今後も筑波大学が多くの学内規則をつくっていくわけでございますし、また慣例の積み上げを通じまして、大学自治の実体をつくり上げていってくれるわけでございますので、私たちはそのような努力に待っていきたいと、かように考えておるわけでございます。
 参与会のことにつきまして、文部大臣は拒否権を持っているじゃないかという式のお話がございました。現在、学長、副学長等につきましては、大学の申し出に基づいて文部大臣が任命する。そのとおり任命しますよと、たいへんきびしい姿勢をとって、大学の自治を守ることを明確にしているわけでございます。参与会は諮問機関でございまして、同じような表現を使いますと、せっかくの学長等の人事についてのきびしい姿勢と同じじゃないかということになってしまいますので、片方の姿勢のきびしさをより強く反映しますためには、若干ニュアンスを変えたほうがいいんじゃないかということで、学長の申し出を受けて文部大臣が任命する、こういう表現をとらしていただきました。しかし、学長の申し出どおりに任命していくべきだと思いますし、そのような決意でおりますことを御理解いただいておきたいと思います。
 私立大学の助成についてお話がございました。四十五年から私立大学の経常費助成を始めたわけでございまして、専任教員の五割は助成をしたいということで計画を進めてまいりまして、四十八年度で、医学部、歯学部、理工学部、すでに五割の助成、その他四割の助成、そうして当初の計画が四十九年度で完成するということになっているわけでございます。ぜひ、この計画に従って進めていきたいと思いますし、また、その計画が達成した暁においては、新しい計画を文部省としてはぜひつくり上げていきたいものだと、こう考えておるところでございます。
 さらに、東京教育大学の総意を取りつけていないということについて御批判がございました。まことに残念なことでございます。先ほどお答えをしたとおりでございまして、この大学の移転問題は、十一年来の懸案でございます。その間に、文学部の同意が得られないままに混乱が生じておりますことはたいへん残念なことでございますけれども、今後とも、東京教育大学が円満に発展的に解消して、筑波大学に行けることについて一そうの努力を続けていきたいと、かように考えておるところでございます。
 大学運営臨時措置法との関係において、何か権力介入を考えているじゃないかという式の御意見がございました。先ほど来たびたび申し上げておりますように、学群、学系の組織、あるいは参与会の組織、人事委員会の組織、すべて筑波大学に限定をいたしているわけでございまして、それじゃ他の大学に波及する歯どめは何かと、こうおっしゃいますれば、これは国立大学に関しまする限りは法律案を国会に提出しなければなりませんので、国会が、歯どめということばは適当でございませんけれども、国会でおきめいただくことじゃございませんでしょうかと、こう申し上げたいのでございます。
 他の大学に関係を持つものと申し上げますと、医学部、歯学部におきましては、六年一貫の教育を行なうことができるということ、あるいは副学長を置くことができるということでございます。副学長も置こうとしますと、評議会の定める基準により学長の申し出、これに基づいて文部大臣が任命するわけでございますので、大学の同意なしに文部省がかってに推し進めていけるものでもございませんし、また、そんな意思も毛頭持っていないところでございます。
 学長が強い権限を持つじゃないかというお話がございました。特段に変わったところはないわけでございますが、同時にまた学長が、他の国立大学の学長と同じように、大学がきめて申し出てこられるわけでございます。筑波大学も全く同じことでございます。のみならず、筑波大学では学長や副学長についてのリコール制をつくりたいと、こう考えておられるようでございます。そういうものを学内規則できめたいと考えておられるようでございまして、大学自身が、そのような学長の専断がもしあるとすれば、リコール制もみずからその権能を持っておりたいと、こう考えておられるようでございますので、私は、やっぱり筑波大学の大学自治に、筑波大学の先生方皆さんたちにおまかせいただいていいのじゃないだろうかと、かように申し上げたいのでございます。
 分離提案の問題については先ほど申し上げたとおりでございますが、国立学校設置法は、あらゆる国立学校を網羅的にこれに規定をしておる、その設置と、組織運営に関する基本的な事項、これをきめることにしておりますので、国立大学として設置する、しかも十月開学を目ざす以上は、これに規定することが当然のことでございまして、分離するほうがむしろその理由に私は苦しむのじゃないだろうか、かように考えておるのでございます。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(愛知揆一君) 私学の経営につきましては、私学自身が責任を持つということがたてまえであると存じます。したがって、その主要な財源が学生納付金に求められるということはやむを得ないことであると存じますが、しかし、私学の学生納付金が今日相当な高額になりつつあるのが現状でございますし、したがって、また、私学の経営が困難な状況にあることは政府といたしましてもよく認識いたしております。
 このような状況でございますから、政府としては、私学の教育研究水準の充実向上をはかりますために、各般の財政措置を講じておりますことは御案内のとおりでございますが、特に、ただいま文部大臣からも御答弁がありましたが、私立大学等に対する経常費の助成ということを四十五年度から踏み切ったわけでございまして、これを年々計画的に大幅に拡充いたしております。
 試みに四十八年度予算で申し上げますならば、専任の教員給与費の補助積算率を、理工学部等につきましては十分の五に引き上げましたし、文科系につきましても十分の四に引き上げたわけでございます。また、教官の経費や学生経費の単価の引き上げ率を従来の八%から一二%に引き上げたこと等によりまして、全体で申しますと、前年度に比べまして四四%増の四百三十四億円を計上いたしておるわけでございます。これは三カ年間を見てみますと、ちょうど三カ年間で三・三倍に広がったことになるわけでございます。
 このほか研究設備、新設の理工系統の学科の理科教育設備についての補助、財投資金等を原資にします日本私学振興財団からの有利な貸し付け等、諸般の施策を行なっておる次第でございます。
 今後におきましては、政府としての私学に対する助成の方針に基づきまして、財政当局といたしましてもできるだけの協力をしてまいる、かような方針でいるわけでございますが、さらに私学経営の合理化、健全化等の努力や、高等教育における私学の役割り等についても、よく検討を尽くしていただきたい、財政当局といたしましても、さような要請をあわせていたしておるわけでございます。
 要するに、それらの総合的な結果として、父兄負担の増大ということを招かないように、その充実については、十分財政当局としても考えてまいりたい、これが私どもの基本的な考え方でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(河野謙三君) 萩原幽香子君。
   〔萩原幽香子君登壇、拍手〕
#21
○萩原幽香子君 私は民社党を代表いたしまして、ただいま提案されました国立学校設置法等の一部を改正する法律案、とりわけ筑波大学法案について、総理並びに文部大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。
   〔議長退席、副議長着席〕
 大学の使命が、教育と研究を通して社会の平和と発展に貢献するにあるととは、いまさら申し上げるまでもございません。しかし、現状は、その使命が達成される状態とはまことにほど遠く、教職員の数は定員に満たず、本年文都省から約五千六百名の教職員の増員が要求されたのにもかかわらず、予算化されたのはわずかに二千七百名、その半数にすぎません。また、常勤形態でありながら非常勤扱いの者も数多いというありさまで、まことに残念だと存じますが、文部省はその点をどのようにお考えになるのでございましょうか。教育軽視ということをお考えにならないのでございましょうか。ために、教育はマスプロ化し、学生の意思は全く反映されず、大学に対する学生の不信と不満はその極に達し、紛争の源にもなりましたことは、国民周知のところでございます。大学の使命に対して、この現状を、総理はどのようにお考えになりますか、承りたいと存じます。
 全国津々浦々で起きました大学紛争は、大学の自治の名のもとに、象牙の塔と化していたわが国の大学のあり方が、あらためて問いただされることになり、大学制度の改革と、その充実策は、いまや緊急の問題となりました。
 わが党は、この世論にこたえるべく、昭和四十四年五月、大学基本法案を国会に提出し、庶民のための、いわゆる開かれた大学像を示し、これを世に問うたのでございました。しかし、この案は一度の審議をいただくこともなく、あえなく廃案の憂き目をみましたことは、いまもってまことに残念でございます。その間にも、大学は、早稲田のリンチ殺人事件にも見られますように、紛争はますます陰湿化し、問題は深刻の度を深めてまいりました。
 一体、政府は、日本の将来をどう考え、どのような人づくりを目ざしておられますのか、また、望ましい日本人育成のためのふさわしい教育、とりわけ、大学はどうあるべきと思考されておられますのか、総理の御所見を承りたいと存じます。
 次いで、筑波大学法案についてお伺いをいたします。
 政府が大学混迷の現状の中で、新しい大学改革の一つの試みとして、この法案を提案されましたことに対して、わが党は評価することにやぶさかではございません。だからこそ、法案についてはつぶさに検討も加えたわけでございます。しかし、この法案をつくるにあたって、どのような人々が選任され、大衆化された大学にするために、どのような配慮がなされたのか承りたいのでございます。
 つまり、同じような考え方の人々によって、幾ら論議が尽くされても、意見は常に一方的になり、真に新しいものは生まれないと考えるからでございます。広く会議を興し万機公論に決すべしとは、総理をはじめ文部大臣、またここにおられる大多数の方々にはなじみ深いことばだと存じます。私は、この精神こそ民主主義の基本であり、特に教育制度の改革にあたって最も必要なことと存じますが、総理、いかがでございましょう。
 民社党は、この法案について党をあげて検討した結果、以下申し述べる四点については、ぜひ修正すべきだとの結論に達したわけでございます。
 まず第一点は、筑波大学の副学長は三名以内にとどめるという規定を設けることでございます。政府の構想によりますと、五名の副学長を置き、実務的な面で管理に当たることになっております。これは管理体制が著しく強化されることになり、賛成するわけにはまいりません。特に教育や研究担当の専任副学長を置けば、教育、研究の自由をそこなうことは必至であります。副学長は学長を補佐し、学生の福利厚生部門を担当すれば足り、その数も三名以内にとどめるべきだと考えます。
 修正の第二点は、参与会任命に関する規定についてであります。参与会は、国民一般から広く意見を聞き、真に開かれた大学としての機能を発揮するため、地域住民の代表はもちろん、各層各界の代表を任命することを法律に規定すべきであります。
 第三点は、筑波大学に学生協議会を設け、大学の管理運営、教育課程、教職員の人事、その他大学に関する事項について協議し、その決議に基づき、学長に建議することができるよう法文に明記することでございます。
 学生は、単に教えられる者として考えるべきではなく、学問を修め、社会に出て貢献する人物として、また、若い成人として、一般市民として、公私にわたる事柄について決定できる権利を持つ人間として、大学社会の中で正しく位置づけられなければなりません。大学における学生の人格的存在は正当に評価されるべきであり、また、教育が信頼と愛情の上にこそ成り立つものであることに思いをいたせば、当然の措置と考えるわけでございます。
 修正の第四点は、学長選考の際の評議会の構成員の中に、学生協議会の代表を加え、その数は全体の四分の一を下回らぬ程度にするということでございます。民主的なルールによって選ばれた学生協議会の代表者が、大学の管理運営をはじめ、大学の全分野にわたって責任を持つ学長の選考に参加することは、民主主義の原理からいっても当然なことではございませんか。先進諸国におきましても、フランスでは、高等教育基本法十三条において、評議会のメンバーの中に学生を加え、学長選挙のみならず、大学の管理運営、教育課程についても参加させており、ドイツのヘッセン州もまた同様の形で、協議会の三分の一は学生となっております。学生参加はもはや世界の趨勢ではございませんでしょうか。
 以上、四点について、わが党は衆議院に修正案を提出いたしましたが、お取り上げいただけなかったのはまことに残念でございますが、その理由はどこにあるのでございましょうか。やはり文部省の基本姿勢の中に、唯我独尊式のお考えがあるからではございませんか。ここであらためて、わが党の提案いたしました四点の修正につき、各項目ごとに文部大臣の御見解を承りたいと存じます。
 先ほどからるる申し述べてまいりましたように、事教育にかかわる問題は、政党政派にとらわれることなく、国民の願いを踏まえて虚心坦懐に話すべきだと考える次第でございます。そのためには、文部大臣は、議長と同様に党籍を離脱して、文教行政の最高責任者としての任を果たしていただきたいと存じますが、総理並びに文部大臣の御所見を承りたいと存じます。
 また、権力の座にある政府は、大局に立って、可及的に多数の異なる意見に耳を傾け、その長所を取り入れる雅量と冷静さが必要だと存じますが、いかがでございましょう。
 このたび、四野党が共同提案いたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきましても、私は同様のことを考える次第でございます。前質問者との重複を避けますが、国民、ひとしく待ち望み、与野党の合意も得やすい旭川医科大学、並びに山形、愛媛の医学部の開設にかかわるものと、教育制度の基本にかかり、慎重審議を要する筑波大学法案とは分離して審議すべきは当然であり、わが党としても、これは強く要望するものでございます。
 最後に、第七十一国会の冒頭におきましての施政方針演説の中で、総理は、教育の重要性を力強く述べられたわけでございます。私は、その話を聞きながら、非常に喜んだ一人でございます。ところが、引き続きの施政方針演説は、大蔵、経企庁、外務の三省庁にとどまり、人づくりの根源である文教政策が伺えなかったことは、ものと人に対する政府のウエートのかけ方が思われて、まことに遺憾しごくでございました。
 あらためて総理の教育に対する御熱意を承って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(田中角榮君) 萩原幽香子さんにお答えいたします。
 大学の使命についてまずお答えをいたしますが、大学は、最高の学校教育機関として、高度の知識、技能を広く、かつ深く教授するとともに、学術研究の中心としての役割りを果たすところであります。しかし、大学の大衆化や科学技術の急速な進歩などの社会情勢の変化に対応して、それぞれの大学のあり方についても、旧来の閉鎖的な大学自治の観念にとらわれることなく、広く社会公共の機関としての目的、使命を明確にした新しい大学のあり方が求められなければならないと思うのであります。
 今後の大学は、高度な学術研究を推進し得る、柔軟性のある体制を整備いたしますとともに、真に社会に向かって開かれた大学として国民の期待にこたえていくことが必要であると考えます。
 大学紛争の頻発を招いている現状では、大学はその使命を果たし得ないではないかとの御指摘でございますが、大学の現状につきましては、御指摘のような問題が数多く存在することは事実でございます。広く高い知識を吸収し、人格の陶冶を求めて大学に学ぼうとする国民の希望に正しくこたえることができるよう、必要な施策は、随時適切に考慮を払ってまいらなければならないのであります。このような観点から、大学教育の正すべき点は正し、これからの激動する社会に適切に対応できる、よき社会人を育成する大学とするよう、大学関係者の自主的な努力を促しつつ、大学の教育環境の改善を含めて、大学教育全般の改革を進めてまいりたいと考えておるのであります。
 次は、望ましい日本人の育成のためいかなる教育をなすべきであるかという趣旨の御発言でございますが、私は、教育は次代をになう青少年を育て、民族悠久の生命をはぐくむための最も重要な課題であると考えておるのであります。申すまでもなく、教育の任務は、民族的伝統の継承と民主社会の規範の体得の上に個人の可能性の豊かな開花をはかることであります。平和な国家社会の構成員を育成いたしますとともに、国際社会におきましても、信頼と尊敬を受け得るりっぱな日本人を育成することだと思うのであります。このためには、長期的な展望に立って、教育全般の総合的な拡充、整備をはかる必要があり、特に、大学教育の改革は喫緊の課題であると考えておるのであります。
 なお、本法案策定にあたり十分検討を重ねたか、教育制度の改革にあたって異なる意見にも耳を傾けよという趣旨の御発言でございますが、筑波大学の構想は、東京教育大学における改革構想の実現をはかるという性格を持つものでありまして、東京教育大学において長年にわたって練り上げられた構想を基礎となし、さらに多数の学識経験者の参加を求めて、これを取りまとめたものであることは御承知のとおりでございます。
 これらの構想につきましては、それぞれの時点で広く公表され、各方面で議論のあったこともまた御承知だと思うのでございます。しかも、ここで構想されている問題は、いずれも多くの大学に共通する問題であり、かねて各大学や国立大学協会その他の関係諸団体から、その実現が強く求められてきたものも少なくないのでございます。教育の問題のように、国家百年にわたる問題については、広く国民各層の合意のもとに進めるべきであるという御意見はごもっともであります。各界の良識ある意見をもとに取りまとめられた今回の法案は、大学当局者はもとより、国民各界の積極的な支持を得られるものと確信をいたしておるのでございます。
 学問は政党政派にとらわれることのないようにという御指摘でございますが、全くそのとおりでありまして、同感でございます。
 文部大臣が党籍を離れてはどうかということでございますが、文部大臣が党に籍を持っておりましても、公平無私でございますし、長い将来に向かって理想的教育環境をつくるべく、専心努力をしておりますことを御理解を賜わりたいと思うのでございます。
 なお、民社党提案の四項目にわたる修正案等に対する見解は、文部大臣からお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣奥野誠亮君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(奥野誠亮君) 大学教授の資質を高め、その員数を拡充していくことは、当然私の特に力を入れなきゃならない責任だと考えておりますので、今後とも一そうの努力を払ってまいりたいと思います。
 具体の御提案であります一つの、副学長を三人以内としろというお話がございました。教育といいましても、第一学群から第三学群まで、しかも医学専門学群、体育専門学群、芸術専門学群、たいへん広いものでございます。研究の学系といいましても、二十六学系を一応予定されておるようでございますので、それらの連絡調整をはかっていくという意味においてはやはり必要ではないだろうか、こう考えておるわけでございます。
 自由をそこなうという意味の御心配がございましたが、もし、かりにもそういう場合には、筑波大学の中で、先ほどちょっと申しましたリコール制まで用意をして、そうして自由濶達に研究と教育とを行なっていこうというふうに考えられておりますので、私はそれに期待していいのじゃないかと思います。しかし、決して政府が押しつけようと考えておるわけじゃございませんで、教育大学の構想に従ったものでございますので、教育大学の構想が変わってまいりますれば、柔軟にこれには対処していきたいという気持ちでございます。
 参与会に地域代表者を加えることを法定しろというお話がございました。東京教育大学がいま参与会の構成について考えておりますのは、やはり一つは、地域の代表者に入ってもらいまして、筑波大学の体育施設でありますとか、あるいは大学会館でありますとか、そういうものを地域の人たちに利用してもらう、地域の人たちと一体になって大学の運営に当たっていきたいという気持ちがあるようでございます。さらにまた、高等学校長の代表者に入ってもらいまして、入学試験のあり方について学校側からの意見も聞きたい、また、高等学校教育と大学教育との関連についても積極的な意見を聞き入れていきたい、あるいはまた、東京教育大学の同窓の代表に入ってもらいまして、先輩から母校を見た場合にどういう感じを持つか、そこから積極的な建設的な意見を見出していきたい、こう考えておられるようでございます。あるいはまた、関係大学の代表者に入ってもらいまして、他の大学から見た場合は、筑波大学にいろいろ批判があってしかるべきだ、そういうことにも謙虚に耳を傾けていきたい、いろんなことで努力されているようでございますので、やはり私は、これは大学の自治にゆだねてしかるべきものではなかろうかと、こう考えておるわけでございます。
 また、学生協議会の法定について御意見がございました。私も、学生がみずから学ぶ意欲を持たなければ教育の効果があがらないわけでございますので、学生の意見を積極的に取り入れる努力を学校当局は当然していくべきだと、こう考えるわけでございます。現状におきましては、大学の状況が非常に区々でございます。非常に区々でございますだけに、いまここで法定することについては若干ちゅうちょを感ずるわけでございます。やはり大学それぞれの状況に応じたそれぞれの取り扱い、それにゆだねていきたい、こういう考え方を持っておるわけでございます。
 学長選考権を持った協議会の構成員に学生を参加させろというお話がございました。これも将来にわたる研究課題だと思うのですけれども、やはり学長選考というようなものは、教育と研究に責任を持った人たちで選考させる、これが大切じゃないだろうか。大学の自治というものは、研究と教育を主体に考えられているわけでございますだけに、これに責任を持った人たちで選考をさせる、こういうたてまえをやはり貫いていきたい、こういう考え方を持っておるところでございます。
 党籍離脱についてのお話がございました。私は、文部大臣として大切な問題は、教育諸条件を整備していくことだと心得ております。教育諸条件を整備していきますために、やはり政治の責任を持っております責任政党、自民党に所属しますことがそれを一そう達成しやすいと、こう考えております。しかしながら、文教政策につきましては、各党の合意を得てこれを推進していくことがきわめて大切なことでございますので、心がまえとしては、おっしゃるとおりの心がまえで努力を続けていく決心でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○副議長(森八三一君) 加藤進君。
   〔加藤進君登壇、拍手〕
#25
○加藤進君 私は、日本共産党を代表して、野党四党共同提案になる国立学校設置法の一部改正案に賛成し、政府提出のいわゆる筑波大学法案の撤回を強く要求する立場から、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 政府提出の筑波大学法案は、反動的大学改革のモデルとして筑波大学を押し立てつつ、学校教育法や教育公務員特例法の改正とあわせて、強力な行政的、財政的誘導によって、このモデルに従って全国の国公私立の大学を反動的に再編成し、憲法と教育基本法に基づく学問の自由と大学の自治を踏みにじり、戦後四半世紀、自民党政府がその成立を果たすことができなかった大学管理統制法を形を変えて実現させようとするものであります。
 他方、医学部、医科大学、養護学校等の設置を定める第一条部分は、国民の要求を反映したものであり、すでに基本的に国民の合意ができているばかりか、本年四月に実施さるべき緊急な課題であります。
 この性質を全く異にする二つの問題を、一つの法案に抱き合わせにしたのは、はなはだ不当だと言わなければなりません。これは明らかに、筑波大学法案の反動的性格をおおいかくし、これに反対する国民の運動を分裂させようとする政府自民党の党利党略に基づくものと言わなくてはなりません。当然、この二つは分離して提出すべきものであります。
 総理は、政府提出法案の一条部分を分離して、すみやかにその成立をはかってほしいとの、関係者、地元住民、受験生などの強い要望を聞いておられると思います。総理はこの国民の要求にこたえて、野党四党共同提出法案に賛成する用意があるかどうか、決意のほどをまずお伺いいたします。
 第二にお聞きいたします。
 政府は、筑波大学法案は東京教育大学の構想と計画に基づいて立案されたと再三言明しておりますが、衆議院の審議の過程ではどうでしょう。筑波移転を積極的に推進してきた東京教育大学の多くの教員までが、この法案に対して大きな疑念と不安を抱いていることを明らかにしたではありませんか。しかも、最近、東京教育大学の理学部長が、「何百億の金を出すのは政府・自民党だから、医学担当副学長には政府・自民党の要求をいれなければならない。」と語った旨が、文部省の筑波大学創設準備会医学部会主査によって証言されたという事実は、筑波大学が政府・自民党大学ではないかという国民の深い疑惑をさらに裏書きしたものと言わざるを得ません。(拍手)
 政府は、これでもなお今日、筑波大学が東京教育大学の自主的改革であるなどと強弁されるつもりかどうか、明確な答弁を求めるものであります。
 第三にお尋ねします。
 一体筑波大学とはどのような大学でしょうか。筑波大学では、教育と研究と管理は全くばらばらに解体され、教育、研究の専門家である教員から、教育と研究についての自主的決定権を奪っているものであります。そして、必ずしも教育、研究の専門家でもない少数の管理者が、教育、研究と、教員人事をも含めて、大学の管理権を握るのであります。その結果、筑波大学においては、行政的官僚的な管理運営が日常化するようになり、学問の府としての大学にふさわしい管理運営は、根本からそこなわれるおそれが十分にあるのであります。
 このようになるなら、学問の自由も、大学の自治も否定され、憲法、教育基本法の精神は全くじゅうりんされることは明らかであります。教育と研究について、教員が自主的に決定する権限も責任もない筑波大学で、どうして国民の期待と社会の進歩に奉仕する教育と研究ができるのでありましょうか。
 こうした政府・文部省の反動的な意図は、最近の一連の重大な発言に端的に示されています。筑波大学法案が全国の大学のあり方に大きなかかわりを持ち、大学の自治を守ろうとし、その未来に憂いを抱く全国の大学人、教授会の真摯な批判、反対声明に対して、筑波大学のことに口を出すくらいなら、もっと勉強してからにせよとか、反対しておるのは劣等感を持っておる大学であるなどとの暴言を吐くがごときは、文教行政の最高責任者としてまさに言語道断と言わなくてはなりません。
 このことは、筑波大学が政府、財界にのみ開かれ、教職員、学生及び国民には固く閉ざされた大学であることを重ねて明らかにするものであります。
 文部大臣、あなたは全国の大学の教職員、大学関係者の意見に全く耳をふさぎ、その援助と協力を抜きにして、筑波大学でどのような教育と研究を行なわんとするのか、明確な具体的な答弁を求めるものであります。
 第四に、大学改革の問題であります。
 政府は、筑波大学法案を自主的大学改革に資するために提出したと言っていますが、衆議院での審議で明らかにされたように、本法案の内容は、むしろ大学の自主的改革を法的に制約する内容となっており、しかも、筑波大学方式を全大学に及ぼそうとするものではありませんか。これはきわめて重大であります。国立大学協会や日本学術会議など、多くの諸団体が、本法案について、大学改革の将来の方向を示すものであるかのごとき考え方がもとになっている、と批判しているのもそのためであります。
 大学改革は、憲法と教育基本法に基づく民主主義的原則をしっかり踏まえて、大学の社会的責務の自覚のもとに、直接国民に責任を負い、社会進歩に奉仕し、大学の自治を守り、全構成員の参加による自治を確立して、学内に民主主義を徹底する立場で行なわれなければなりません。これこそが真に国民の意見を大学に正しく反映させる道であります。このために、緊急に求められるものは何でしょうか。学園から暴力を一掃することであり、次いで、大学の各構成員の権利を認め、教員がその責務を自覚し、その権限が十分に保障され、学生の多数を代表する自治組織を公認し、その民主的、自主的活動を保障することであります。このことを抜きにして、いかなる改革案もその実現の保障はございません。
 さらに、大学における教育面を重視し、教育学の成果に依拠しつつ、教育の内容、方法を改善充実するとともに、大幅な助成によって国公私立大学問の格差を是正し、マスプロ教育をなくし、地方の国立大学の充実と総合大学化をはかることにあります。
 総理並びに文部大臣、あなた方はこのような立場から、当面緊急の大学の諸課題を、大学の意思を尊重しつつ、その解決のために努力する用意があられるかどうか、明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角栄君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(田中角榮君) 加藤進君にお答えをいたします。
 まず第一は、第一条を分離し、すみやかに成立をはかれと、こういうことでございます。
 国立学校設置法等の一部を改正する法律案は、筑波大学の創設を含む国立大学の新設、整備及びこれに関連する大学制度の改善措置について規定をしておるのであります。国立学校設置法は国立大学等の設置、組織及び運営に関する基本的事項について、統一的に定めることを目的とする法律であり、今回の改正案は現行法制の体系上、何ら疑義はないわけでございます。したがいまして、政府としては、この法律案を分離する考えは全く持っておりません。
 次は、野党提案に賛成をしないかということでございますが、政府は本案を御審議をいただいておるわけでございます。そういう立場からも、野党四党提案には遺憾ながら賛成はできないわけでございます。あしからず御了恕賜わりまして、すみやかに政府案の成立によりまして、本法の成立の一日も早かれとこいねがっております。関係者の期待にこたえていただきますよう、心からお願いをいたしたいのであります。(拍手)
 第三は、大学の民主的改革についての御発言がございましたが、お答えをいたします。
 大学教育については、急速な普及と社会の複雑高度化に伴って、大学の内外からさまざまな新しい要請が出てきておるのであります。筑波大学は、東京教育大学の改革構想を基礎として、有識者の意見をも取り入れて創設しようとするものでございます。政府は、東京教育大学を中心とする関係者の努力が実を結ぶよう、力を注いでおるのでございます。大学教育に対する新しい要請にこたえるために、新しい制度の採用を機会に、いろいろな問題に対して具体案を得て御審議をお願いをいたしておるわけでございますが、これこそ、よりよい大学をつくり上げるために、また、大学の民主的改革を行なうために必要不可欠なものだと考えておるわけでございます。
 残余の問題に対しては、文部大臣から答弁をいたします。(拍手)
   〔国務大臣奥野誠亮君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(奥野誠亮君) 筑波大学は、十月開学を目ざしているわけでございまして、非常に大きな大学でございますし、いまの東京教育大学の五倍の二百四十五ヘクタールの土地を確保しているわけでございます。教員の確保や施設の整備に非常に大きな努力を要するわけでございますので、旭川医科大学等と同じように急ぐことを御理解を賜わっておきたいと思います。反対であるから分離しろということならわかるわけでございますけれども、理論的には、私たちは分離は納得できないわけでございます。
 東京教育大学の関係者の発言についてお話がございました。私も、その内容、たいへんおもしろくない発言だと思います。先般、衆議院の文教委員会で、本人を参考人として招致して野党の方からお尋ねになりましたら、その発言はない、新聞社に抗議を申し入れたいんだと、こういうお話がございましたことを御報告申し上げておきます。(拍手)
 筑波大学反対の学部教授会のアピールなどに対しまして、私は、他大学の新しい構想について反対意見を表明するなら、その新構想をよく研究し、よく勉強してからにしなさいよと、こう申し上げたわけでございまして、私は、それは当然のことではなかろうかと、かように考えているものでございます。(拍手)
 全国の大学の援助なしにこの大学の推進はできないというお話がございました。先ほどちょっと読み上げたわけでございますが、念のために国立大学協会会長談話、関係のところをもう少し広く読ませていただきます。「大学改革は、もとより各大学の自主的な努力に基づいて多様な可能性を含みつつ推進さるべきものである。筑波大学も、その計画が関係者の協力によって進められるかぎりにおいて、その試みの一つと見るべきものである。」「このような試み自体に異議をさしはさむものではなく、これを見守っていくことにしたい。」と、こういう意見になっておりますことを御理解いただきたいと思います。
 同時にまた、大学の学部教授会が反対の意見をアピールしてこられた、それに対しまして、その関係の教授から私のところへ、また、こういう意見をよこしてきておられるわけでございます。こんなことを多数決できめて、そしてアピールしていいものだろうか、憲法十九条には「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」と書いているじゃないか、自分は賛成であるにかかわらず、自分まで反対のようにとられる。学部教授会というものは、そういう権限、責任以外のことにまで多数決でアピールを外にしていくべきものではないのだというような意見の表明のあったことも、ひとつ御報告をさせていただきます。(拍手)
 大学から暴力を一掃すること、これは大賛成でございます。大賛成でございまして、そういう意味では、学外の政治団体が学内に拠点を持ち込んで自派勢力の拡大をはかったり、活動を競い合うことによって混乱をかもし出している例が、早稲田大学その他において見られるわけでございまして、このような学外の政治団体が学内に拠点を持ち込んで自派勢力の拡大をはかろうとするいまの姿については、お互いに反省をすべきところがあるのじゃなかろうか、かように考えるものでございます。(拍手)
 各大学の自主的な改革につきましては、謙虚に耳を傾けながら、必要なものにつきましては積極的にそれが達成されますように努力を続けていきたいと考えます。(拍手)
#28
○副議長(森八三一君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#29
○副議長(森八三一君) 日程第二 生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。物価等対策特別委員長山下春江君。
   〔山下春江君登壇、拍手〕
#30
○山下春江君 ただいま議題となりました法律案について申し上げます。
 本法律案は、現下における経済情勢にかんがみ、国民生活の安定をはかるため、生活関連物資の価格の異常な上昇を招来するような買い占め及び売り惜しみに対する緊急措置を講じようとするものであります。
 そのおもな内容は、第一に、生活関連物資の価格が異常に上昇し、または上昇するおそれがある場合、その物資の買い占めまたは売り惜しみが行なわれ、または行なわれるおそれがあるときは、政令で特別の調査を要する物資として指定することができることとし、内閣総理大臣及び主務大臣は、指定物資の価格の動向及び需給の状況に関し、必要な調査を行なうこと。
 第二に、内閣総理大臣及び主務大臣は、指定物資の生産、輸入または販売を行なう者が買い占めまたは売り惜しみにより、その物資を多量に保有していると認められる場合、一定の基準に従い、適当と認められる売り渡し先及び売り渡し価格を指定し、期限を定めて、その物資を売り渡すべきことを勧告することができるとともに、勧告に従わなかった者に対しては、その旨を公表すること。
 第三に、内閣総理大臣及び主務大臣は、必要な限度において、指定物資の生産、輸入、販売の事業を行なう者に対し、その業務に関し報告をさせ、または経済企画庁及び主務省に設けられる価格調査官に、これらの事業者もしくは特定物資を保管していると認められる者の事務所、倉庫等への立ち入り検査等を行なわせることができることとするほか、罰則等所要の事項を定めているものであります。
 委員会におきましては、最近の物価、地価上昇の要因と諸対策、過剰流動性の吸収と当面の財政金融政策、商社の買い占め、売り惜しみの実情と対応策、企業の社会的責任と行動基準、企業の異常利益に対する課税方法、本法の運用、解釈等執行上の諸問題等について質疑が行なわれましたが、それらの詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 質疑を終了し、討論なく、採決の結果、本法案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#31
○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#32
○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。
     ―――――・―――――
#33
○副議長(森八三一君) 日程第三 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案
 日程第四 国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上両案を一括して議題といたます。
 まず、委員長の報告を求めます。商工委員長佐田一郎君。
   〔佐田一郎君登壇、拍手〕
#34
○佐田一郎君 ただいま議題となりました二法律案について商工委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
 まず、中小企業信用保険法の一部を改正する法律案は、中小企業者に対する事業資金融通の円滑化をはかるため、保険限度額を普通保険については、一般の場合は現行の二千五百万円から三千五百万円に、組合の場合は五千万円から七千万円に、また、特別小口保険については、八十万円から百万円に、それぞれ引き上げるとともに、公害防止保険のてん補率を現行の七〇%から八〇%に引き上げようとするものであります。
 また、国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案は、さきの円の変動相場制移行に伴い、事業活動に支障を生じている輸出関連中小企業者に対して、その経営の安定と事業の転換の円滑化をはかるため、中小企業信用保険について、別ワク設定の特例等を設けるとともに、設備近代化資金の償還期間の延長、事業転換の円滑化等の措置を講じ、あわせて法律の有効期間を三年から五年に延長しようとするものであります。
 なお、衆議院において無担保保険の限度額について、四百五十万円をさらに五百五十万円に引き上げると修正が行なわれております。
 委員会においては両案を一括して議題とし、いわゆるドルショックの中小企業への影響及び現在までに講じられた対策、今後の輸出関連中小企業のあり方等について質疑が行なわれましたが、詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終わり、討論なく、両案について順次採決の結果、両案とも衆議院送付案どおり全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#35
○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。
 まず、中小企業信用保険法の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#36
○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#37
○副議長(森八三一君) 次に、国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#38
○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#39
○副議長(森八三一君) 日程第五 開拓融資保証法の廃止に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長亀井善彰君。
   〔亀井善彰君登壇、拍手〕
#40
○亀井善彰君 ただいま議題となりました開拓融資保証法の廃止に関する法律案につきまして、委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
 本法律案は、開拓者の営農状況の進展にかんがみ、開拓者が必要とする営農資金の融通を一そう円滑にするため、開拓融資保証法に基づき行なわれている債務保証等を、一般の農業者等を対象とする農業信用保証保険の制度により行なうこととするため、開拓融資保証法を廃止するとともに、開拓融資保証協会の権利及び義務を農業信用基金協会及び同保険協会が承継することに関して、所要の措置を定めるものであります。
 委員会におきましては、本案の前提となる開拓営農状況、離農家、離農地の実情及び開拓行政の一般農政への移行のためとられてきた諸施策の効果をはじめ、開拓融資保証制度の一般制度への移行にあたっての得失、保証協会の求償権残高等の財務状況、不良債権の実態と負債対策、開拓地の道路補修、基盤整備等にわたって質疑が行なわれました。
 質疑を終局し、別に討論もなく、本法律案は原案どおり全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
 なお、政府に対し、開拓融資保証制度の一般制度への統合及び統合後の運営等に関し、留意すべき事項として、開拓者の意向の反映の確保、開拓保証協会の職員の身分の安定、統合後における開拓者に対する融資措置の円滑化、開拓地の道路補修事業等、七項目の附帯決議を全会一致をもって行ないました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#41
○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#42
○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#43
○副議長(森八三一君) 日程第六 通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長高田浩運君。
   〔高田浩運君登壇、拍手〕
#44
○高田浩運君 ただいま議題となりました通商産業省設置法の一部を改正する法律案は、最近における内外の経済情勢に対処するため、通商産業省本省の内部部局を全面的に再編成して、現在の一官房九局を大臣官房、通商政策局、貿易局、産業政策局、立地公害局、基礎産業局、機械情報産業局、生活産業局の一官房七局及び外局の資源エネルギー庁とするほか、通商産業審議官、特許技監を設置すること等の改正を行なおうとするものであります。
 なお、衆議院において施行期日について修正が行なわれております。
 委員会におきましては、機構改正の理由のほか、エネルギー資源、電源立地、産業公害等の諸問題について質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#45
○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#46
○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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