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1972/09/17 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第34号
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1972/09/17 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第34号

#1
第071回国会 本会議 第34号
昭和四十八年九月十七日(月曜日)
   午前十時五分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三十七号
  昭和四十八年九月十七日
   午前十時開議
 第一 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再
    建促進特別措置法の一部を改正する法律
    案(内閣提出、衆議院送付)
 第二 健康保険法等の一部を改正する法律案
    (内閣提出、衆議院送付)
 第三 厚生年金保険法等の一部を改正する法律
    案(内閣提出、衆議院送付)
 第四 日雇労働者健康保険法の一部を改正する
    法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第五 児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法
    の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
    議院送付)
 第六 有害物質を含有する家庭用品の規制に関
    する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第七 覚せい剤取締法の一部を改正する法律案
    (衆議院提出)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 日程第一 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長長田裕二君。
    ―――――――――――――
   〔長田裕二君登壇、拍手〕
#4
○長田裕二君 ただいま議題となりました国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
 本案は、日本国有鉄道の財政の実情にかんがみ、その再建を強力に推進するため、運賃を改定するとともに、昭和四十八年度以降十年間を新たな再建期間とし、あらためて国鉄財政の再建に関する基本方針及びこれに基づく再建計画を策定し、国のとるべき援助の措置を強化しようとするものでありまして、そのおもなる内容は次のとおりであります。
 まず、国有鉄道運賃法の改正内容は、第一に、旅客運賃については、鉄道の普通旅客運賃の賃率をおおむね二二%引き上げるとともに、遠距離逓減制を是正することとし、航路の旅客運賃については、鉄道の普通旅客運賃とほぼ同程度の改定等を行なおうとするものであります。
 第二に、貨物運賃については、車扱い貨物運賃の等級数を四等級から三等級に圧縮するとともに、その賃率をおおむね二五%引き上げるほか、小口扱い貨物を小荷物に統合し、小口扱い貨物運賃を廃止することとし、また新たにコンテナ貨物運賃を設け、その運賃は、日本国有鉄道が運輸大臣の認可を受けて定めることとしております。
 次に、日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の改正内容は、第一に、日本国有鉄道の財政再建期間を昭和四十八年度以降の十カ年間に改定しようとするものであります。
 第二は、政府は再建期間中の毎年度、国鉄に対し工事資金の一部に相当する金額を出資するものとしたほか、工事費補助金の対象工事年度を昭和五十七年度まで延長するとももに、補助金の交付期間を十年間に延伸し、その交付年度を昭和六十七年度までとしたことであります。
 第三に、財政再建債及び同利子補給金の対象を昭和四十七年度末政府管掌債務及びすべての鉄道債券にかかわる債務に拡大することとしたことであります。
 委員会におきましては、公聴会の開会、地方行政委員会外四委員会との連合審査会を開く等、慎重な審議が行なわれましたが、その質疑のおもなる点は、国鉄運賃値上げと物価政策との関係、総合交通体系から見た国鉄の位置づけとその役割り、十カ年の再建対策の妥当性と達成の見通し、そのほか国鉄をめぐる各般の問題について質疑が行なわれ、採決を行ないましたが、国会正常化の趣旨に沿い質疑を続行いたしました。
 そのおもなる内容は、国家助成の方式とその基準、国鉄の持つ公共性と独立採算制との調整、新幹線の今後の建設計画及びその公害対策等であります。
 なお、社会労働委員会外四委員会との連合審査、武蔵野線の現地調査を行ないました。
 かくて質疑を終わり、日本社会党瀬谷委員、公明党阿部委員、民社党栗林委員、第二院クラブ青島委員よりそれぞれ反対、自由民主党岡本委員より賛成の意見が述べられ、さらに採決を行ないました。
 以上が本法律案の審査の経過であります。
 本法律案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしましたので、ここに御報告申し上げます。(拍手)
#5
○議長(河野謙三君) 本案に対し、米田正文君外一名から、成規の賛成者を得て、修正案が提出されております。
 この際、修正案の趣旨説明を求めます。米田正文君。
    ―――――――――――――
   〔米田正文君登壇、拍手〕
#6
○米田正文君 私は、ただいま議題となりました国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 今日の国鉄財政は累積赤字一兆一千四百億円余に及び、きわめて憂慮すべき事態にあります。一方、国民生活と国民経済の発展に寄与する国鉄の使命はきわめて重要であり、その財政再建は一日も放置できないのであります。
 しかしながら、最近の物価動向、経済情勢の実情にかんがみ、国民生活に与える影響の緩和をはかることもまた必要であり、運賃値上げ及び一部制度の改正の実施時期を、公布の日の翌日からとなっているのを、昭和四十九年三月三十一日に修正しようとするものであります。
 何とぞ本修正案に御賛同の上、可決くださるようお願いいたします。(拍手)
#7
○議長(河野謙三君) 本修正案は、予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。新谷運輸大臣。
   〔国務大臣新谷寅三郎君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(新谷寅三郎君) ただいま御提案の修正案につきましては、政府としては、やむを得ないものと認めます。(拍手)
#9
○議長(河野謙三君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。瀬谷英行君。
   〔瀬谷英行君登壇、拍手〕
#10
○瀬谷英行君 私は、日本社会党を代表して、ここに議題となりました国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案並びに米田議員提案の修正案に反対の討論を行ないます。
 反対の一般的な理由は、田中内閣発足以来の異常な物価高をさらに刺激をし、促進をするということが明らかだからであります。いま国民が望んでいるところは、物価の安定であろうと思います。国民が悩んでいるのは、打ち続く物価の上昇であります。卸売り物価も消費者物価も、特に田中内閣成立以来、遠慮なしに上がり続けております。ここで公共料金、なかんずく運賃の引き上げを行なうことは、物価の値上がりに拍車をかける結果となることは火を見るよりも明らかであります。
 次に、反対の何よりの理由は、この法案の看板と内容が全然違っておるということであります。このことは長い審議の結果明らかになりました。看板のほうは国有鉄道の財政再建を促進しよう、十年後には黒字にしてやろうということになっておりますが、中身のほうは、とてもそうは問屋がおろさないようになっております。なるほど、累積赤字が一兆をこした、民間企業ならとうに破産であるということは、しばしば耳にすることばであります。しからば、何がゆえに国鉄がこのようなとほうもない赤字を生み、気の遠くなるような債務をしょい込まなければならないようになったのか、それを追及しなければなりません。
 高利貸しから借金をして慈善事業をしたり、仕入れの値段より安い値段で品物を売っている限り、どんなに一生懸命働いても金が残るはずはないのであります。だれがやっても残るのは借金だけであります。国鉄は独立採算制で多くの公共負担を余儀なくされております。貨物の割引運賃で大企業に出血サービスを行ない、日本国中に散在する赤字ローカル線を維持し、さらに市町村納付金であるとか、新聞雑誌の割引、通学通勤等々、およそ採算の合わない仕事をことごとく引き受けるような仕組みになっております。つまり、絶対赤字になるような仕組みになっているのであります。この独立採算制のワクの中で、公共負担を全部しょい込んでなお黒字を生み出すということは、手品師でなければできないことであります。この仕組みをそのままにして、職員に企業努力を要請しても効果があがるかどうか疑問であります。なぜならば、底に穴のあいたおけに幾ら水をくみ込んでも、しょせん、水はたまらないということはみな承知をしているわけであります。企業努力というのは、おけの底の穴はそのままにして、もっと一生懸命に水をくめということであります。借金の利子だけで一日に五億も六億も払わなければならないような財政の状態に、企業努力がついていけるかどうか、もっと冷静に考えるべきであります。
 計画によりますと、昭和五十七年度には国鉄財政も黒字になるということでありますが、十兆五千億を投ずる計画のうちで、新たなる政府出資は一兆五千億であります。新幹線の整備計画が四兆八千億でありますが、委員会の審議で明らかにされたところによれば、青函トンネルだけで二千億、さらに、青函トンネルで結ばれた東北・北海道新幹線が、概算で二兆何百億の巨費を要し、北陸新幹線、これまた一兆一千億ということであります。東北・北海道新幹線と北陸新幹線だけでも三兆をこすことになりますが、かりに昭和五十二年度に完成をしたとしても、五年で元を取るためには、年に六千億の収益をあげなければなりません。東北、山陽新幹線等の場合と異なり、従来赤字の線区が、新幹線の完成によって急に黒字に転ずるというようなことがあり得るでしょうか。北海道か北陸に首都が移転でもしない限り、常識的には考えられないことであります。
 新幹線公害が、いまややかましい問題となって住民の関心を集めるようになってまいりました。いまの計画では、高架で、側道わずか四メートルを残すのみで市街地に割り込むことになっております。住民の側からいえば、最悪の場合、わずか四メートルを隔てて高さ十メートル以上の高架橋ができ上がり、朝から晩まで、二百キロのスピードで電車が走り続けることになるのであります。反対ののろしが上がるのも当然と言わなければなりません。線路と民家との間隔をもっとあけたければ、自治体で持てと、こういうことでございますが、それでは地方自治体の財政が持ち切れなくなります。市街地の沿線住民にとってきわめて深刻な新幹線公害を十分考慮しない計算で、なおかつ五兆に及ぶ予算でありますから、今後、関係地域住民の理解を得られる条件や、とどまるところを知らない土地価格の暴騰を考慮に入れるならば、さらに新幹線建設資金はふくれ上がるものと見なければなりません。これからの新幹線整備費が、ほとんど元の取れない投資になるだけではなく、安全、公害をはじめ、大都市通勤や在来線輸送改善等のために投ぜられる五兆七千億の、どちらかといえば見返りの期待できない国家的投資の性格を持っておりますところの予算も考えなければなりません。工事費に対する利子補給は、三%以上に及ぶ部分について行なうということでありますけれども、三%であろうとも利子は利子、借金は借金で、けたが大きいだけに、財政上の大きな負担になるということは、これまた明白であります。
 狭い日本何でそんなに急ぐのか、こういう交通標識が、参議院の議長公邸の前にも立っております。これから予定されている新幹線は、いずれも簡単に収支の償う見込みは立たない線区であります。それだけに、その建設は慎重を期し、いたずらに公害問題だけが残ることのないようにすべきであります。しかし、それだけに、合理化を至上命令とする考え方で強引に建設を進められるならば、必ず問題は残るであろうことを心配せずにはおられません。
 さらに、この法案の中の十一万人合理化の思想は、十月のダイヤ改正にもはっきりとあらわれております。いたずらに特急列車のみを増発をさせ、料金かせぎをやって、通勤通学輸送は相変わらずなおざりにされております。上尾事件、首都圏の暴動事件等は、通勤輸送に対するふんまんが背景にあったのでありますけれども、このような教訓は一向に生かされていないのであります。
 このように指摘をしただけでも、今回の法律案によって約束をされることは、今後十年間に運賃値上げだけを四回も続けるということだけであり、その結果は、なお二兆六千億の累積赤字、十一兆に及ぶ債務であり、要員の合理化によるサービスダウンということになります。このような無責任な結論しか予想できないプランに、われわれはとうてい賛成できません。
 国鉄の財政は、確かに破局に直面をしております。思い切った大手術をしなければならないのであります。ところが、政府は、手術を避けて、おまじないと痛みどめでもって当座をしのごうとしております。真に国鉄を国民の足として、さらに、日本の動脈としてその機能を発揮せしめようとするならば、鉄道、飛行機、船舶、自動車等、あらゆる交通機関の役割りを、今後の輸送需要に応ずるように計画をするところの総合交通政策をまず確立すべきであります。そのような基本的な計画がないまま、当座しのぎの運賃値上げ案が、旅客運賃、貨物運賃のアンバランス等、多くの矛盾をはらんだまま提出されたことはきわめて遺憾であります。政府の見解によれば、今回の政府補助は画期的だということでありますけれども、今日までがゼロにひとしかったのでありますから、なるほど画期的かもしれません。しかし、赤字の内容が今日まで当然行なうべき政府の投資の怠慢によることを考えれば、スズメの涙ほどの投資がカラスの涙になった程度にすぎないのであります。国鉄は国民の足であり、政府も、わが身の足である、人の足ではないという認識を持って進められるよう強く再考を促し、反対討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(河野謙三君) 木村睦男君。
   〔木村睦男君登壇、拍手〕
#12
○木村睦男君 私は、自由民主党を代表して、ただいま報告のありました国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案並びに動議のありました修正案に対し賛成の討論をするものであります。
 日本国有鉄道は、百年の輝かしい歴史の中で、かつては国の予算のドル箱とまで言われたのでありますが、昭和三十九年度には黒字経営から一挙に三百億円の赤字に転じ、その後、さらに悪化の一途をたどり、昨年度の決算におきましては赤字が三千四百億円、累積赤字は実に一兆一千四百億円、長期借り入れ金は総額三兆八千億円となり、その利息の支払いだけでも毎日六億円を要し、いまや国鉄経営は崩壊寸前と言わざるを得ない状況なのであります。政府は、昭和四十四年短期再建計画に次いで、昨年運賃改定を含む長期十カ年の再建計画を立てたのでありますが、残念ながら関係法案が不成立に終わり、一年繰り下げて今回の提案となったのであります。
 再建計画は三本の柱からなり、その第一は、政府の大幅な助成であります。すなわち、再建期間中の工事費の一部として一兆五千七百億円の出資を行なうほか、工事費に要する利子負担を三%に押えるため一兆五千二百億円の補助金を交付し、過去の長期債務については、その利子相当額一兆七千億円を貸し付け、その利子五千三百億円を補助するなど、合計十年間に三兆六千二百億円の補助金及び出資を行ない、その上、九兆三百億円の財政融資を行なうのであります。この政府の大幅な助成は、なお十分とは言えないまでも、きびしい国家財政の現状を考えますとき、従来に比較してかなり思い切ったものでありまして、これによって、新幹線の建設、複線電化、通勤通学、貨物輸送力の増強が行なわれるのであります。
 世間では、国鉄に比較し、同じ輸送施設であります道路や空港の整備は、大部分が国費でまかなわれておるのに、国鉄に対しては助成が不十分であるとの批判があります。しかし、その国費たるや、ガソリン税など、運賃と同様利用者負担によるひもつき国費が大部分であるのであります。また、道路公団の高速道路の建設に対し、国は資金コストが六%になるよう助成しておりますが、今回の国鉄工事費については、資金コストが三%になるよう補助することになり、この点では国鉄のほうが優遇されていると言えるのであります。
 再建計画の第二は、経営の合理化の徹底でありまして、ここでは特に人件費が問題であります。国鉄はすでに昭和四十四年以来五十三年度までに十一万人を縮減すべく実施に入っておりますが、五十三年度以降も、再建期間中は特段の措置を講じ、人員の縮減をはかることになっておるのであります。
 現在の国鉄は、運輸収入の七〇%を人件費に充当しなければならないという異常な経営の実体でありまして、人を養うために交通事業をやっていると極言されてもしかたのないような状態であります。再建計画では前半一二・三%、後半一〇・三%のベースアップを見込んで組み立ててありますが、ことしの公労委の勧告は一六・五%でありまして、ここらにきわめて容易ならぬ国鉄再建の難関があるのであります。十一万人の縮減は、首切りなしの減耗不補充という穏健な方法によるのでありますが、ベースアップによる人件費の増加分だけでも、運賃値上げによる増収分でまかなってなお足らないという現在の状態から早く脱し、五十七年度には、運輸収入に対し人件費が四九%以下になるよう合理化計画の実施に努力することを強く要望するものであります。
 再建計画の第三の柱は、運賃値上げであります。再建計画におきましては、今年を第一回とし、三年ごとに四回、毎回実収一五%、ただし最終回は一〇%の値上げを行なうことになっております。今回の値上げ率は旅客二三%、貨物二四%であります。この運賃値上げについてはいろいろの反対論が戦わされております。その一つは、現在の物価高にさらに拍車をかけ、インフレを助長するということであります。もとより、交通運賃は安いほどよく、値上げなどやらぬことが一番に喜ばれるにきまっております。しかし、国鉄経営の現状は崩壊の危機にあり、その改善のためには、利用者からも協力を仰がねば再建は不可能であります。国鉄を利用する交通費が家計消費に占める割合は〇・七三%程度と言うものの、心理的な影響は見のがすことはできません。その上げ幅は極力押える必要があります。今回の再建には、四兆円にのぼる国の大幅な助成をすることによって、値上げの幅も実収は一五%程度になりましたが、もしこの助成がなければ、値上げ幅は四六%にもなる計算でありまして、この程度の値上げは真にやむを得ないものと言わざるを得ないのであります。(拍手)
 国鉄は新聞、食糧品、通勤通学等、輸送上政策的割引を行なっておりまして、今日のような国鉄が大赤字をかかえておりながら、このような社会政策的あるいは文教政策上の公共負担をしいられることは、適当とは言えません。これらの点をまず見直すべきであります。ただ、利用者が長きにわたってなれ親しんでまいった沿革的経緯もありますので、この点は国または地方公共団体が肩がわりをするなど、あわせ考え直していく必要があります。今回の値上げの中で旅客が二三%、貨物が二四%というのは、旅客が黒字で貨物が赤字であるという一般通念から適切を欠くという意見もありますが、両者の経費の区分は正確にできるものでもなく、物価に対する影響は、貨物運賃の場合特に考慮する必要があること、総合原価主義のたてまえからもやむを得ないものと認めざるを得ないのであります。
 以上、今回の二法案による国鉄再建十カ年計画が、国の大幅な助成、経営の合理化、運賃値上げ、この三本の柱からなっていることは、国鉄の使命と経営の現状、国の財政状況等から勘案し、まずまず妥当であり、再建に対してもこの三通りのシェアがおおむね均衡がとれて適切であると判断し、賛意を表するものであります。
 しかしながら、今日の憂うべき国鉄財政の現状を立て直すためには、単に財政面の措置のみでは足りるものではありません。国鉄は管理者であると一般職員であるとを問わず、一丸となって再建の意欲に燃え、その体制を整えなければなりません。しかるに、今日の国鉄労使の関係はこのような状態にあるとは言えず、まことに寒心にたえないものがあります。国鉄の危機に際し、窮状打開のため、国会においても真剣に検討審議が行なわれておる事態にもかかわらず、国鉄労使間では十分な話し合いも行なわれず、信頼感に欠け、一部組合の中には運賃改定反対と称し、順法と偽って違法ストを繰り返し行なって、国民に多大の迷惑をかけておることは言語道断と言わざるを得ないのであります。(拍手)
 国鉄は使用者のものでもなければ、一部労働組合のものでもありません。私は、本二法案の成立に際し、国鉄労使、特に一部組合幹部の諸君が深く反省をし、あらためてその使命を自覚し、打って一丸となって本再建計画の実施に邁進し、真に愛される国鉄になるよう広く国民的立場から要望して、賛成の討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(河野謙三君) 阿部憲一君。
   〔阿部憲一君登壇、拍手〕
#14
○阿部憲一君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案並びに修正案に対し反対の討論を行なうものであります。(拍手)
 わが党がこの法案に反対する第一の理由は、国鉄の再建は、国鉄だけを見ての単純な再建案では不可能であるということであります。まず、総合交通政策を樹立して、その中で、航空、海運、陸運等の交通機関の中に国鉄の位置づけを行ない、それに適応した再建を行なうべきであります。しかるに、政府の総合交通政策の欠除は、国鉄財政を赤字に転落させる原因をつくってきたのであります。すなわち、モータリゼーションの急速な発達をはじめとした各交通機関の輸送構造の変化に対処できず、国鉄の近代化の立ちおくれをもたらしてきたものであり、政府の無策に基因しているのであります。したがって、国鉄をめぐる総合的な社会要因を根本から改正し、早急に具体的な総合交通政策の確立をはからなければならないのであります。それが行なわれない限り、ひっきょう根なし草であり、その脆弱な基盤の上にどのような財政再建計画を立てたとしても、実を結ぶわけはないのであります。このままでは、国鉄は膨大な投資財源の調達と赤字の穴埋めに追われ、また、国民は運賃値上げの負担を、国鉄労働者は人員削減による労働強化を強要されることになるのであります。したがって、政府みずからが国鉄の赤字財政の原因をつくりながら、その責任を放置して、国民と国鉄労働者に犠牲をしいる今回の国鉄再建計画には絶対に反対するものであります。
 次に、反対する第二の理由は、この再建案のささえになっている運賃値上げについてであります。すなわち、旅客二三・二%及び貨物二四・一%の大幅値上げであります。しかも、十年間に四回もの値上げを前提とするに至っては、全く利用者である国民を無視した暴挙であると断ぜざるを得ないのであります。運賃値上げは、言うまでもなく直接に国民にとって多大な負担となるだけではなく、物価高騰を引き起こすことは必定であります。ただでさえ、いま国民は異常な物価騰貴によって生活を脅かされております。田中総理は日本列島改造論を提唱しましたが、そのために過剰流動性を背景に、土地の投機に火をつけ、地価の暴騰を促し、次いで商品の買い占め、売り惜しみへと新たなる投機を誘発し、急激にインフレマインドを醸成したことは、疑うことのできない事実であります。このような物価高騰に悩む国民生活の実情を深刻に受けとめるならば、さらにインフレを推し進める公共料金の値上げは行なえないはずであります。国鉄運賃の値上げが、他の交通料金や諸物価の値上げに波及することは明らかであり、すでに昨年から値上げ申請を行なっている私鉄各社は、国鉄運賃値上げを手ぐすね引いて待っている状況であります。政府のとってきたインフレ政策によって国民生活が破綻を来たそうとしている現状を直視するならば、それに拍車をかける国鉄運賃の値上げは絶対に行なうべきではないのであります。
 反対の第三の理由は、旅客運賃の値上げを行なうことによって利用者に貨物部門の赤字を負担させようとすることであります。すなわち、旅客運賃は貨物とほとんど同じ値上げ率であるのは、利用者にコスト以上の負担をしいるものであり、理不尽この上もないことであります。まして旅客部門は黒字であり、貨物部門の赤字を総合原価主義という会計技術論的な口実で隠し続け、それを公表されたあとも、客観性に乏しいなどと釈明することは、国民を愚弄するもはなはだしいと言わねばなりません。国鉄がいかように弁解されようと、貨物部門の赤字は、国鉄の貨物輸送近代化の立ちおくれが原因であり、その根底に総合交通政策の欠除があったのであります。この失敗のしわ寄せを、一方的に国民に押しつけるようなやり方を認めることはできないのであります。
 反対の第四の理由は、国鉄の独立採算制の問題であります。国鉄の赤字財政の原因は、時代に即応しない独立採算制に固執し、国鉄への財政援助を怠ったためであります。この独立採算制の前提は、国鉄が独占的輸送機関であった時代に成り立つものであって、総合交通政策を必要とする今日におきましては、かえってみずからの足かせになるだけで、国鉄の財政危機を深めるものでしかないのであります。この独立採算制は、無謀な借金政策によってまかなうほかなく、多額の債務とその支払いに狂奔せざるを得なくなったのであります。今回、政府の提出した再建案では、十年間に一兆五千七百億円の政府出資金を約束しておりまするが、この間の国鉄の工事規模は、十兆円をこえる膨大な金額が見込まれているのでありまして、この工事費の主要部分が借金でまかなわれることは必至であります。したがって、国鉄再建といっても、借金による経営の拡大と、利払いによる経営難といったこれまでのパターンを変えることはできないのであります。
 そこでわが党は、国鉄財政の健全化をはかるためには、過去の債務を一時たな上げし、国鉄が投資する財源と利子に対し、大幅な財政援助を行なうとともに、総合交通政策をより具体的に確立し、時代に対応できる国鉄にすべきであると提案してきたのであります。それにもかかわらず、政府・自民党は、これらの提案を無視し、また、法案の審議も十分行なわれなかった一カ月前の十七日、運輸委員会で強行採決までして押し通そうとしたのであります。これでは、政府・自民党の政治感覚を疑わざるを得ないのであります。
 反対する第五の理由は、国鉄当局の再建に取り組む姿勢が示されていないことであります。国鉄再建の根本をなすものは、国鉄当局の企業努力であり、労使の人間関係の改善であります。国鉄の再建は決して財政問題だけではなく、それと同じ比重で職場の人間関係の改善がなされなければなりません。ところが、国鉄経営の官僚制は、いまだ遺憾ながら改善されておりません。国鉄当局が国民に多大な負担を課し、国鉄労働者に合理化を要求しながら、みずからは国鉄の再建に取り組む姿勢を正そうとしないならば、国民にどのような理解と協力を訴えたとしても、それはむなしい幻想でしかありません。さらに、労使間の非常識なあつれきと、無秩序な闘争の繰り返しは、国民生活に重大な支障と損害を与え、国鉄に対する国民の信頼は漸次失われつつありますし、また、新幹線の住民は、日夜の騒音等の公害によって、生活権を脅かされているにもかかわらず、一向に解決されていないのであります。このような国鉄当局の企業努力の欠除、国民軽視の姿勢に対し、強く反省を求めるものであります。
 以上、列挙した理由により、わが党はこの法案に絶対に反対であり、すみやかに撤回することを要求いたします。そして真に国民本位の、国民生活に寄与する抜本的な国鉄再建案をもって出直すことを主張して、私の反対討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(河野謙三君) 田渕哲也君。
   〔田渕哲也君登壇、拍手〕
#16
○田渕哲也君 私は、民社党を代表して、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案並びに米田議員の修正案に対し、反対の討論を行ないます。
 反対の理由の第一は、国鉄運賃の値上げが最近の異常な物価上昇にさらに拍車をかけるおそれがあるからであります。
 七月の全国消費者物価指数は、前年同期と比べ一一・九%、また卸売り物価においても一五・七%と記録的な上昇を続けております。そして相次ぐ公定歩合の引き上げ、金融引き締め政策によっても、依然として物価の上昇はとどまらず、国民生活を不安のどん底におとしいれております。このようなときに、公共料金の中でも横綱格といわれる国鉄運賃の値上げを行なうことは、インフレマインドをますますあおり、物価上昇の火に油を注ぐ結果となることは明らかであります。たとえ実施期日が来年三月末日まで延期されたとはいえ、物価鎮静のめどがつかない現在、値上げを決定することはまさに暴挙と言わざるを得ません。また、国鉄財政再建計画によれば、今後十年間に四回もの値上げが行なわれ、十年後には現在の二倍以上の運賃となることが方針として定められております。これが一般物価の上昇の牽引車とならないはずはありません。政府がもし物価抑制、インフレ鎮圧を現在最も緊急を要する政治課題と考えるならば、このような国鉄運賃の値上げや国鉄財政の再建計画は、絶対に行なうべきではないのであります。
 反対理由の第二は、国鉄再建の基本方針が明確にされていない点であります。
 最近の交通革命ともいうべきモータリゼーションの進行や、航空機の発達、利用の増大等に見られるごとく、交通手段は多様化し、国民の交通需要も高度化しつつあります。今日の国鉄の経営難を招いた大きな理由は、これらの情勢の変化に対応し得る機敏で柔軟な経営施策がとられなかったことであります。そしてその原因は、国鉄経営についての責任の所在が明確でない点にあります。特に国鉄は、公共性と独立採算制という二つの要素を要求されております。公共性を重視するならば、採算を度外視しても国民の足は確保しなければなりません。一方、独立採算制を維持するには、経済効率を高めることが必要であり、経営の合理化を優先させねばなりません。国鉄にはこの二つの、ある意味では相矛盾する要素が混在してきたところに問題があると思います。一方では、公共性の名のもとに国鉄の犠牲において不採算政治路線を押しつけられ、他方では、企業体として当然しなければならない経営合理化努力が、公共性という隠れみのに隠れてサボられるという結果を招いております。これらの矛盾や不合理をなくすためには、公共企業体としての国鉄経営のあり方をもっと合理的にし、責任分担を明確にすること、具体的にいうと、公共性すなわち政治責任と、独立採算制すなわち経営責任をはっきりと分離し、政治責任は政府あるいは地方公共団体が、経営責任は国鉄がとるというふうに明らかにすべきであります。すなわち、公共的使命のために不採算がしいられる場合、たとえば地方開発路線や公共政策割引などはできるだけ明確な線を引いて、政府、地方公共団体が財政措置を講ずるとともに、一方、国鉄は独立採算制に徹して経営の効率化をはかるべきだと思います。私は、本会議及び委員会における質問を通じて、この点についての政府の見解をただしましたが、明確な答弁は得られませんでした。この基本的な問題をあいまいにしたまま国鉄の再建が実現できるはずはありません。四十四年の国鉄財政再建計画、また廃案となりました昨年の計画、今回提案された計画をそれぞれ比較してみますと、確かに政府助成額は増加されております。しかし、その根拠は明確ではありません。無原則な助成額の拡大は、国鉄の独立採算制の原則をくずすと同時に、国鉄の財政状態がそのときどきの政治的、政策的要素に左右されるというきわめて不安定な状態を招くことになります。このようなやり方は、行き当たりばったりの、その場限りのつじつま合わせと言われてもしかたがなく、恒久的な国鉄再建につながるものとはとうてい考えられないのであります。
 反対の第三の理由は、国鉄再建計画は、総合交通体系と無関係につくられたものであるという点であります。
 政府は、昭和四十六年に、総合交通体系についての指針を作成しております。国鉄の経営方針も、当然それとの関連において立てられなければなりませんが、今回の再建計画にそれがどのように反映されているのか、全く理解に苦しみます。特に、赤字ローカル線に対する考え方が、日本列島改造論に便乗して、あいまいになっておる点は問題であります。総理並びに運輸大臣は、国鉄の公共的使命から見て、赤字路線だからと言って廃止するわけにいかぬと述べておられますが、私は、赤字だから廃止せよと主張しているわけではありません。赤字路線を存続し、あるいは建設する場合、基本になる考え方や一定の基準がなければならぬということを言っているのであります。ナショナルミニマムの確保と言っても、しょせん全国民が、鉄道の恩恵を均等に受けることは不可能であります。そして交通手段が多様化している現在、ナショナルミニマムは鉄道のみにたよるべきではなく、各交通機関の組み合わせで考えるべきであります。とすると、赤字路線の場合も、何でも残す、何でもつくるというのではなく、資源の有効配分の原則に基づく一定の基準がなければならないことは当然であります。無原則な赤字路線の存続や新設は、国の資源の浪費以外の何ものでもありません。この点について私は繰り返し質問しましたが、ついに抽象的答弁しか得られませんでした。
 私は、このことは、新幹線建設についても当てはまると言えます。これからの日本列島の動脈として新幹線の持つ役割りの重要性は、私も認めるのにやぶさかではありません。しかし、ばく大な国の資本の投資である新幹線建設には、それなりの慎重さが必要であります。将来にわたっての交通量、投資効率、採算などの検討はもちろん、現在建設が進められている高速自動車道との関係等、多角的な検討が必要なことは言うまでもありません。しかし、新線建設を審議する鉄道建設審議会では、ある新幹線の建設はわずか一時間そこそこの審議できまった事実でも見られるように、きわめておざなりな論議しか行なわれていないのが実態ではないでしょうか。このようなことから見ても、私は、政府がほんとうに国鉄の再建を真剣に考えているのかどうか、疑問を禁じ得ません。
 反対理由の第四は、国鉄の経営姿勢の問題であります。
 国鉄再建のために、国と国民の負担を求めるならば、国鉄は、労使をあげて、まず、みずからの近代化、合理化に邁進すべきであります。しかるに、現状はどうでしょうか。
 まず第一に、今日の国鉄労使は、国民の足としての公共サービス精神が欠除しておる点をあげなければなりません。そして再三の指摘にもかかわらず、それが改善されつつあるとは思えないのであります。
 第二に、かつてのマル生運動は論外としても、国の資源をより有効に活用するための、正しい意味の生産性向上は必要と思うけれども、いまだにこれについて労使の合意が得られないということはどういうことか、納得しかねます。
 第三に、国民に多大の迷惑を及ぼす順法闘争が依然としてあとを断たず、また、職場では、順法闘争に参加しない職員が拉致されたり、いやがらせを受けるといった事件が、日常茶飯事のごとく起こっております。これについて国鉄当局は何らなすところなく、国鉄の職場規律は乱れに乱れている現状であります。以上のような状況を放置しておいて国民に運賃値上げを認めてくれといっても無理であります。
 以上四つの反対理由をあげましたが、私はこのような点から考えて、たとえ、今回の法律案を政府・自民党が無理やり成立させても、それで国鉄再建ができるものとは考えられません。
 以上の点に対する運輸大臣はじめ政府関係大臣の再考を要請して、私の反対討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(河野謙三君) 河田賢治君。
   〔河田賢治君登壇、拍手〕
#18
○河田賢治君 私は、日本共産党を代表して、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案並びに修正案に反対の討論を行なうものであります。
 まず最初に私は、政府・自民党が、国民生活に重大な影響を与える本法案の成立をはかるために、手段を選ばず、憲法、国会法を踏みにじり、強行採決、大幅会期延長をあえて行ない、さらには、運輸委員会に対するわが党議員の再三にわたる委員外発言の要求を拒否するなど、議会の民主的運営を踏みにじって省みないファッショ的態度に対し、強く抗議し、糾弾するものであります。
 本法案に反対する第一の理由は、国鉄運賃の大幅引き上げが、今日の異常な物価高に一そう拍車を加え、いわば火に油を注ぐことになるからであります。
 現在、消費者物価の上昇は、すでに連続三カ月も一〇%をこえ、特に八月の卸売り物価は一七・四%と、朝鮮戦争以来の暴騰を示すなど、悪性化するインフレは国民生活に重大な打撃を与えているのであります。このようなときに平均二三%をこえる国鉄運賃の大幅引き上げを断行することは、国民の絶対に容認できないものであります。しかも今回の引き上げは、十年間に四回予定された値上げの出発点であり、公共料金の制度的引き上げに道を開くものではありませんか。政府は、物価への影響はわずか〇・四%にすぎないなどと強弁しています。しかし、国鉄運賃値上げを引き金として、すでにメジロ押しとなっている電気、ガス、私鉄、航空料金、さらには郵便料金に至る一連の公共料金大幅引き上げがまさに実施されようとしているのであります。いまや、政府の宣伝がまっかな偽りであったことは、天下に周知の事実と言わねばならないのであります。
 第二に、国鉄の運賃体系が、ますます国民には重く、大企業には軽いものになっている点であります。
 国鉄は公共企業体であり、その運賃は、国民生活に打撃を与えるような運賃であってはなりません。国鉄運賃法第一条も、「賃金及び物価の安定に寄与すること。」を運賃決定の原則として規定しているではありませんか。ところが、現実の運賃体系は、四十六年に、旅客輸送で三百七十一億円の黒字を出し、貨物輸送では二千五百億円をこえる大幅な赤字を出していることが明白に示しているように、旅客に不当に高く、大企業の貨物には不当に安く設定され、これこそが国鉄財政赤字の最大の原因となっているのであります。しかるに、この運賃体系を何ら改めず、貨物輸送の赤字を旅客運賃に肩がわりさせ、依然として大企業奉仕の政策を続けることは断じて許されないのであります。
 しかも政府は、わが党が強く提出を要求した大企業に対する特別割引、大企業からの資材調達や工事発注状況などを示す資料を最後まで拒否し、大資本奉仕の実態を国民の目からおおい隠したのであります。まさに、言語道断と言わねばなりません。
 わが党は、このような国鉄の運賃体系を根本的に転換し、旅客運賃は据え置き、大全業貨物への不当な割り引きをやめ、貨物運賃を適正化することを要求するものであります。これこそが公共企業としての当然あるべき運賃体系であり、また、国鉄の赤字を、真に国民の立場で解決する道であります。
 第三は、今回の投資計画が、大企業の貨物輸送力増強を第一とし、国民のための安全かつ快適な輸送の確保をないがしろにしている点であります。
 十年間で十兆五千億円にのぼる国鉄の投資計画は、四兆八千億円が新幹線の増強に、三兆五千億円が在来線の貨物輸送力増強に向けられており、大都市通勤対策はわずかに七千億円にすぎないのであります。これでは国民の通勤地獄の解消は全く不可能であり、旅客は高い運賃の新幹線に追いやられ、その上、ローカル線の改善の放棄、貨物駅の廃止、旅客列車ダイヤの間引きなどによってその足を奪われるばかりであります。ひとり、大企業の貨物輸送力のみが大増強されているではありませんか。このような投資計画が、日本列島改造計画が強調している大企業のための全国輸送ネットワークの確立を最大の眼目とするものであり、国民を犠牲にしたものであることは、だれの目にも明らかであります。
 本来、公共輸送機関である国鉄の任務は、国民に安く、安全で、便利な輸送を提供するところにあります。この任務を全く放棄して、国民に重大な打撃を与える大企業奉仕のこの投資計画を、わが党は断じて許すことはできません。
 第四に、今回の財政再建計画が、何らその名に値しない財政破綻計画にすぎない点であります。
 もともと、国鉄がその公共性を保つためには、線路、駅などの基礎施設の建設、改良などの費用を国が負担すべきことは、イギリス、フランスなど諸外国の実例に照らしても明白であります。ところが政府は、今回もまた総投資額のわずか一五%を出資するにすぎず、このために国鉄は、大幅な運賃値上げにもかかわらず、十年後の累積債務は十一兆円になり、年間支払い利子が六千四百億円に達するという惨たんたるありさまになるのであります。
 わが党は、国鉄財政を破綻させた歴代自民党政府の責任をきびしく糾弾するとともに、国鉄の基礎施設の建設は国の負担とし、ばく大な債務と金利負担の解消措置を国の責任でとること、今回の過大な投資計画は圧縮して、投資順位を通勤通学列車やローカル線の改善、増強などを第一とするものに変えることを重ねて強調するものであります。
 第五に、この計画は、国鉄労働者十一万人を削減し、輸送の安全を一そう脅かしている点であります。
 国鉄が、三方一両損の国鉄側の負担として強調している十一万人の人員削減と合理化は、政府、国鉄、大企業奉仕の政策の最大の犠牲を労働者に強要するものであり、また、労働者の犠牲によってかろうじてささえられている国民のための輸送の安全を、一そう危険に導くものであります。
 わが党は、このような人員削減計画を中止して、十分な定員と生活できる賃金を確保し、スト権をはじめ民主的権利を保障してこそ、労働者の知恵とエネルギーが結集され、国鉄の安全輸送と真の再建が可能となることを強く指摘するものであります。
 最後に、私は、国鉄運賃値上げに反対して展開された広範な国民各層の抗議運動をはじめ、圧倒的な世論の批判に対して耳をかさず、手段を選ばぬ暴挙を重ねて本法案の成立をはかってきた政府・自民党の反国民的な態度をきびしく糾弾して、反対討論を終わるものであります。(拍手)
#19
○議長(河野謙三君) これにて討論は終局いたしました。
 これより採決をいたします。
 まず、米田正文君外一名提出の修正案の採決をいたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#20
○議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本修正案は可決されました。
     ―――――・―――――
#21
○議長(河野謙三君) 次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案の採決をいたします。修正部分を除いた原案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#22
○議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
 右の結果、本案は修正議決されました。(拍手)
     ―――――・―――――
#23
○議長(河野謙三君) 日程第二 健康保険法等の一部を改正する法律案
 日程第三 厚生年金保険法等の一部を改正する法律案
 日程第四 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案
 日程第五 児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案
 日程第六 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 日程第七 覚せい剤取締法の一部を改正する法律案(衆議院提出)
 以上六案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長大橋和孝君。
    ―――――――――――――
   〔大橋和孝君登壇、拍手〕
#24
○大橋和孝君 ただいま議題となりました六法律案につきまして、委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
 健康保険法等の一部を改正する法律案は、健康保険、船員保険、国民健康保険等の改正を含んでおります。
 まず、健康保険については、第一に、医療給付の改善として、家族療養費の給付率を五割から六割に、さらに四十九年十月からは七割に引き上げるとともに、高額な医療については、一定限度を越える自己負担額を保険から給付すること。
 第二に、現金給付の改善として、本人分べん費の最低保障額と配偶者分べん費を四万円に、家族埋葬料の額を二万円に引き上げること。
 第三に、標準報酬の区分を二万円から二十万円までの三十五等級に改定すること。
 第四に、保険料について、政府管掌健康保険の料率を七%から七・三%に改定し、あわせて従前からの定額国庫補助を定率制に改め、保険給付費の一〇%を補助すること。
 第五は、いわゆる弾力調整措置であります。すなわち、政府管掌健保の保険料率について、給付の改善と診療費の改定が行なわれる場合に限り、厚生大臣が社会保険審議会の議を経た上、八%を上限として調整できる規定を設けることとし、同時に、この措置によって保険料率が引き上げられた場合は、国庫補助の率を保険料〇・一%について〇・六%ずつ増加すること。
 第六に、健康保険組合について、保険料率の調整上限を九%とし、被保険者の負担料率の限度を四%に改定することを内容といたしております。
 次に、船員保険は、その疾病部門について健康保険に準ずる改正を行なうことといたします。
 また、国民健康保険については、健康保険に準じた高額療養費の支給制度を新設いたします。
 なお、衆議院修正によって、政府原案にありました特別保険料を徴収する条項は削除されてまいりました。
 委員会におきましては、慎重審議を続けて、十四日、質疑を終了いたしたところ、自民党から修正案が提出されました。
 その要旨は、第一、家族療養費の給付率を七割とする実施期日を四十八年十月一日からとすること。第二に、本人分べん費の最低保障額及び配偶者分べん費を六万円に引き上げること。第三、本人埋葬料の最低保障額及び家族埋葬料を三万円に引き上げること。第四、弾力調整措置によって保険料が引き上げられる場合に、国庫補助が増加される割合を、原案より〇・二%引き上げて〇・八%とすること。第五、保険料率を原案より〇・一%引き下げて七・二%とすることなどであります。
 次いで討論に入りましたところ、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党はいずれも修正案及び原案ともに反対、自由民主党は修正案及び修正部分を除く原案に賛成の意見が述べられました。
 採決の結果、多数をもって原案を修正議決すべきものと決しました。
 なお、医療制度の抜本的対策の樹立、政府管掌健康保険の運営に対する助成措置の強化、合理的な診療報酬、調剤報酬体系の確立、保健予防体制の確立、薬価調査のあり方及び薬価基準の算定方式の抜本的な検討、国民健康保険組合に対する助成、船員保険(疾病部門)に対する国庫補助の増額等を内容とする附帯決議を全会一致をもって付することに決しました。
    ―――――――――――――
 次に、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案は、厚生年金と船員保険の改正のほか、国民年金の改正を含みます。
 まず、厚生年金及び船員保険にあっては、第一に、改正後新たに受給する標準的な老齢年金の水準について、最近の被保険者の平均標準報酬の六〇%に相当する額にまで引き上げる目途として、基本年金額の定額部分を大幅に引き上げるとともに、配偶者の加給年金額を引き上げます。また、従前の受給者については、その比例報酬部分の算出基礎となる四十六年以前の標準報酬を最近の水準をもとに再評価することとしております。その他障害年金、遺族年金の最低保障額の引き上げ、在職者に対する老齢年金の支給範囲の拡大をいたします。
 第二に、スライド条項を新設して、年度平均の消費者物価指数が五%をこえて変動した場合には、年金額を自動的に改定することとしております。
 第三に、標準報酬を賃金の実態に即して改定するとともに、保険料率を男子については千分の十二、女子については千分の十引き上げることといたしております。
 次に国民年金にあっては、第一に、拠出年金については、二十五年加入の場合の年金額を、附加年金を含めて、厚生年金の標準的な年金額に見合う水準にするとともに、現に支給されている十年年金の額を四十九年一月から月額一万二千五百円に、五十年から支給が開始される五年年金の月額を八千円に引き上げることとし、その他、附加年金の額の引き上げ、障害年金の最低保障額、母子年金等の額の改善を行なうこととするほか、厚生年金に準じて物価の変動に見合う年金額の自動的改定の制度を導入いたします。他方、保険料を月額九百円に引き上げて、五十年一月以後も段階的に引き上げを行なうこととしております。
 第二に、福祉年金については、老齢福祉年金を月額五千円に引き上げるほか、障害福祉年金を月額七千五百円に、母子福祉、準母子福祉年金を六千五百円に引き上げることとしております。
 なお、衆議院において、六十七歳から六十九歳までの老人に対し、月額三千五百円の老齢特別給付金を支給する制度が新設され、また、障害等級が二級に該当する場合にも、障害福祉年金月額五千円を支給する制度が新たに設けられたほか、年金給付を担保に供する道を開くこととしております。
 委員会においては、慎重審議の結果、老齢特別給付金の月額を四千円に増額すること等の修正を行なうこととし、多数をもって原案を修正議決すべきものと決しました。
 なお、年金の財政方式に対する検討、財政再計算期の繰り上げ、各年金についての一そうの改善、積み立て金の管理運用の改善、厚生年金基金制度の合理的改善、二級障害者に対する障害福祉年金の支給を昭和四十九年一月を目途とすること等を内容とする附帯決議を全会一致をもって付することに決しました。
    ―――――――――――――
 次に、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案は、療養給付と傷病手当金の給付期間を延長し、傷病手当金、出産手当金、埋葬料及び分べん費の給付額を引き上げるとともに、保険料日額を改定することを内容とするものであります。
 委員会におきましては、十四日、質疑を終了しましたところ、施行期日を昭和四十八年十月一日に改める修正案が提出され、採決の結果、全会一致をもって修正議決すべきものと決しました。
 なお、健康保険の給付水準にまで引き上げ、財政状況の推移による国庫負担の検討等を内容とする附帯決議を全会一致をもって付することに決しました。
    ―――――――――――――
 次に、児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案は、児童扶養手当及び特別児童扶養手当の額を増額するとともに、他の公的年金との併給について制限の緩和措置を講ずることを内容とするものであります。
 委員会におきましては、十四日、採決の結果、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決しました。
 なお、児童扶養手当及び特別児童扶養手当の増額、所得制限の緩和を内容とする附帯決議を全会一致をもって付することに決しました。
    ―――――――――――――
 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律案は、各種の化学物質が繊維製品等の家庭用品に使われるようになり、これら家庭用品の使用に伴う健康被害が発生しつつある事態に対処するため、家庭用品に使用される有害物質の含有量について必要な基準を定め、その基準に適合しない家庭用品の販売を禁止し、必要な場合はすでに販売されたものを回収できる措置を講ずることを内容とするものであります。
 覚せい剤取締法の一部を改正する法律案は、最近における覚せい剤犯罪の増加と悪質化にかんがみ、覚せい剤そのものに対する現行の規制に加えて、覚せい剤の原料に対しても規制を加えることとするほか、覚せい剤犯罪に対する罰則を麻薬取締法並みに引き上げることを内容とするものであります。
 委員会におきましては、採決の結果、二法案とも、いずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決しました。
 以上報告申し上げます。(拍手)
#25
○議長(河野謙三君) 健康保険法等の一部を改正する法律案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。須原昭二君。
   〔須原昭二君登壇、拍手〕
#26
○須原昭二君 私は、日本社会党を代表いたし、ただいま大橋社会労働常任委員長より報告がありました政府提出の健康保険法等の一部を改正する法律案並びに自民党提出の同修正案に対し、強く反対の意思を明らかにするとともに、その討論を行わんとするものであります。
 顧みますると、昭和三十年以来、わが国の高度経済成長は国民の健康にどのような変化をもたらしてきたか。すでに政府統計によって明らかなように、過去十五年間で、たとえば大気汚染の拡大が引き金となっていると見られる呼吸器系の疾患、あるいはまた、過密都市の息詰まるような生活環境、職場の急激な変化による劣悪な労働条件などがおもな誘因と思われる精神障害は、その発生率においてほぼ四倍になっているのであります。
 さらに驚くべきことには、心身障害など先天性異常の発生率が何と五倍近くにふえていることは、すでに最近の若い夫婦の間で深刻に取りざたされているのであります。このような事態は、畜産における牛や豚、漁業におけるところの近海魚などの間で奇形が多発している傾向と決して無縁であるはずはございません。
 これらの因果関係には、いまだ十分な解明が得られないとしても、企業による有害物質のたれ流し、農村労働力の不足を補う農薬や人工肥料の大量使用、規制の手ぬるい食品添加物や人工着色料の乱用、さらに売薬医療とまで酷評される薬剤依存の医療のもとで、薬の大量投与、過剰投与などに見られるように、収益をあげるためには自然の環境や人間の健康に与える影響など、全く配慮するいとまを与えない現在の産業中心のメカニズムそのものが、最大の原因であると考えないわけにはまいりません。まさに生存の危機ここにありと言わざるを得ないのであります。
 いま私たちは、かりに家族の中に一人の病人が出たと仮定いたしますときに、それがだれであろうと、看護が必要とあらば仕事を休んでもそれに当たり、金がなければ借金をしてでも、家財を投げ売ってでも、愛する肉親の命を取りとめ、かつ、その健康回復にすべてをかけて期待をするでありましょう。一つの家も、一つの国でも同じことであります。はたして、わが国の政治の中に、国民の命と健康を、他のすべての政策に優先させていくという哲学がどこにあるでありましょう。はたして、その原則が確立しているといえるでありましょうか。
 今日の政府が、この原則を打ち立てるために直ちに行なうべきことは、まず第一に、国民の健康阻害の要因を科学的に突きとめることであります。第二には、突きとめた健康阻害の要因を取り除くとともに、すでに健康を害している者に、有効適切な医療を保障し、かつ、国民の健康水準を全体的に引き上げるためのマスタープランを策定し、これを実行に移すことであります。第三に、国民の健康保全の見地から、あらゆる企業活動や行政を民主的にチェックする機構をつくることであります。そして第四には、これらのために必要な財政支出を、いわば借金をしてでも、家財を投げ売ってでも断行するという、き然とした態度が不可欠と考えるのであります。
 かかる観点に立ちますと、このたびの政府提案及び自民党修正案をあらためて吟味いたしますと、その決定的な欠陥が浮き彫りにされてくるのであります。
 すなわち、それは一つには、国の財政支出を極力節約しようとするあまり、保険料率の引き上げさえ行政権限で行なおうとする弾力条項の採用、このことは、負担先行、給付あと追い型のモデルというべき恥知らずの政策であり、第二には、医療機関と製薬企業とが、薬剤の大量使用を手だてとして利益を追求し得る構造こそが健保財政を破綻させている元凶であるにもかかわらず、これにメスをふるうことなく、いたずらに収入の面のみ追求することは、あたかもザルに水を注ぐがごときものであって、健保財政の赤字解消につながらないどころか、患者の健康と各種医療担当者の技術とを全く無視した政策といわなければならないのであります。
 わが党は今国会で、このような政府の施策の重大な欠陥を余すところなく指摘してまいりましたが、実はこのような問題は、政府もまたつとに認めているところであります。たとえば、昭和四十二年の健保特例法の審議に際して、当時の佐藤総理は、健保制度の抜本改正を公約し、自来毎国会、歴代の総理大臣並びに厚生大臣が、医療供給体制の改革まで含めた総合的抜本的改正案の立案を約束してまいったのであります。
 このような経過を顧みますると、政府は昭和四十二年以来、実に七年間という長きにわたって、公約を履行しないまま、保険あって医療なしと呼ばれる状態に国民を置き去りにしてきたのであります。国民と国会を、かくも愚弄した政府の態度は断じて許すわけにはまいらないのであります。
 この間、わが党は、政府の怠慢に憤って、ただ単なる批判ばかりを重ねてきたわけではございません。昨年の通常国会以来、医療保障基本法案をはじめ、医療法改正案など、公明、民社両党の賛同を得て提案し、いわゆる総合的、抜本的改革の具体的内容を、医療の社会化の方向において差し示したことはすでに御案内のとおりであります。
 片や政府は、昭和四十九年度を初年度とする社会保障長期計画を立案すると言明し、このため厚生大臣の諮問機関として社会保障懇談会を発足させ、また、ごく最近に至っては、自治体病院研究会なるものを設けました。私は、これらの政府の努力が、見せかけだけのものに終わったり、あるいはまた、実効ある政策立案を回避するための隠れみのになったりすることを、断じて避けなければならないと考えるものであります。
 このため、政府に対しては、わが党が示した改革案を十分に尊重しつつ、実効ある計画案を促進することを強く要望するとともに、この際、この機会を通じて、各党に対して、本院に、仮称医療問題懇談会を発足させることを提案いたしたいと存じます。
 この懇談会は、国民に広く公開された運営をしつつ、医療の総合的抜本的改革をめぐる国民のコンセンサスを求めることによって政府施策のおくれを取り戻し、その促進をはかることを主たる任務といたすものであります。
 環境と健康の破壊が著しく深刻化している今日、本院が国民医療の問題に専門的に取り組むことの意義は、すでに御理解がいただけたものと深く信じ、ぜひ御賛同を賜わりたいと存ずるものであります。
 最後に、いま、三年越しの健保改正案がたとえ成立いたしましても、このままでは遠からず、わずか三年を出ずして、必ず健保財政の赤字問題は再び燃え上がることでありましょう。そして引き続き、三時間待って三分診療はあとを断たないでありましょう。ただ、救われないのは国民、被保険者であることをここに厳粛に予言をいたし、ひたすら政府、自民党の激しい反省、猛省を促しながら、私の反対討論を終わるものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#27
○議長(河野謙三君) 丸茂重貞君。
   〔丸茂重貞君登壇、拍手〕
#28
○丸茂重貞君 私は、ただいま議題となっておりまする健康保険法等の一部改正案につきまして、自由民主党を代表いたしまして賛成の討論を行なうものであります。
 いまさら申し上げるまでもなく、今回の改正案は、政府原案が、衆議院におきまして、政府管掌の被保険者、家族に対しまして一そう有利な一部修正がなされまして、送付されたものでございます。したがいまして、このころから国民の多数は、ぜひとも本案は成立させてほしいという熱望がわき上がっておりますることは、皆さますでに御承知のとおりであります。(拍手)
 特に、豊かな財源をもってほとんどの家族の十割給付を行なっておりまするところの組合管掌健康保険あるいは各種共済組合健康保険の被保険者、家族に比べまして、恵まれなかった中小零細企業の従業員で構成されておりまする政管健保の被保険者、家族に対しましては、今回の改正は、私は一大福音となることを確信しておるものであります。これらの人たちにとりましては、衆議院送付の法案ですらたいへん歓迎されておるところでありまするのに、参議院におきましては、さらに与野党が熱心に審議し、立場、主張の違いはありましても、究極的には、恵まれない中小企業の被保険者、家族のためということを合いことばにいたしまして、謙虚に意見の交換を密に行なった結果、七割給付を四十八年十月一日よりとし、あるいはまた弾力条項については、国庫負担の連動調整率をさらに〇・二%ふやしまして〇・八にする。また分娩費は、四万円から大幅にさらに六万円に引き上げます。埋葬料につきましても、二万円を三万円にいたします。また、被保険者の負担能力にさらに思いをいたしまして、原案の保険料率よりも千分の一を減額いたしたものでありまして、特に、私は、病人をかかえておりまするところの政管健保等の家族にとりましては、おそらく今回の改正は、心の中で泣いて感謝をしている思いであろうと信ずるものであります。(拍手)
 もともと国民の福祉増進を目的とする本法案のようなものは、本来、与野党の対決というパターンで処理すべきものではないと考えております。したがいまして、この結論に達しまするまでには、各方面の血のにじむような御努力があった次第でありまして、とりわけ、修正による財政負担の増高に対しまして、粒々苦心の結果、最終的に協力された政府、特に終始あたたかい御配慮を加えられた厚生大臣以下厚生省当局には深甚の謝意を表するものであります。(拍手)
 また、当初の既定方針にもかかわらず、常に真剣に、被保険者、家族のためということで、大局的にわが党が提案いたしました修正案に対しまして深い御理解を示された野党各党にも、心から謝意を表する次第であります。私はここに、ほんとうの参議院の良識とはいかなるものかということを今回内外に示したものとの自負を痛感をするものであります。(拍手)
 おそらく、重病人をかかえ、悪戦苦闘されておりまする家庭は、三万円以上の医療費の重圧から免れて、どんなに感謝しておられるか、はかり知れないものがあると思います。また、臨月を間近に控えた新婚夫婦にとりましては、六万円の手当がどんなにお産を勇気づけるか、考えれば考えるほど、私自身ほんとうにほのぼのとした気持ちになるのであります。実は、先日ある人が、私の家内も妊娠中で、どんなにこの法案の通過を待っていたかわからなかったのでありますが、残念ながら先月生まれてしまって、みすみす四万円損をしてしまいました、できるなら押えつけてでも待たせたかったと、ユーモアまじりにこの話をされたときには、思わず私も笑ってしまったのですが、まことにごもっともなことと思うのでありまして、全国にはこのような例がたくさんあるのではないかと思っておる次第であります。
 家族給付が七割になりまするならば、今後はずいぶん医療費負担が軽減されまして、早期受診が励行されて、疾病の治癒率が一段とよくなることが考えられるのであります。どこから見ましても、被保険者、家族にとりまして、このようによいことづくめの法律でありますので、たとえ保険料の千分の二の負担増はありましても、それを上回りまするところの国庫負担、給付の改善等がありますので、本案は画期的なものと言えるのであります。
 私は、この意味におきまして、政管健保等の被保険者、家族の方々の気持ちになり、再び関係各方面に深甚の感謝の意を表しつつ、賛成討論を終わらしていただきます。(拍手)
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#29
○議長(河野謙三君) 柏原ヤス君。
   〔柏原ヤス君登壇、拍手〕
#30
○柏原ヤス君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案並びに同修正案に対し、反対の意見を表明するものであります。
 反対の第一の理由は、政府の医療に対する姿勢が、国民の生命と健康を守ることよりも保険財政の赤字対策を優先させているという点であります。
 国民は、いつ、どこでも、だれもが、容易に、医療の恩恵に浴することを心から願っております。それに反して、現状は、医療行政の無策と貧困の結果が至るところにあらわれております。看護婦不足で、せっかく建てられた病院が満足に活用されていなかったり、入院に際して、差額ベッド料や付添看護料があるため入院できなかったり、辺地の公立病院や良心的な診療所が、経営困難のため閉鎖の危機にあっている一方、いまだに多数の無医地区が存在しております。無医地区は過疎地帯だけかと思えば、夜間、休日には都会においても同じであり、救急医療体制が不備なために、助かる命も助からず、目をおおうばかりの現状であります。
 健保改正が国会の議題になっているときはもちろん、絶えず、私たち公明党は、より根本的な制度の欠陥是正こそ緊急の課題であると、数多くの提案をしてきたのであります。たとえば、社会保障の長期計画を策定すべきこと、その中でも、特に医療保険制度については、まっ先に長期的な抜本対策を立てるべきことを提案し、あるいは診療報酬体系の是正、医療制度の確立、医療従事者対策の充実などを取り上げてきました。また、最近、医療のミスや薬の害により、健康をおかされている例も数多く発生しております。さらに、原因不明の難病や、治療方法もない公害病も、交通災害や職場の災害とともに切実な問題として、国民の身近に迫ってきております。このように、医療に関する山積した諸問題に対して、政府は責任と熱意を持って取り組まなければならないのに、それを避けて通ろうとするひきょうな、無慈悲な態度は、国民の命と健康をないがしろにするものとして、生命尊重を第一とする公明党としては、断じて許すことはできません。したがって、憲法第二十五条に保障された生存権に即した医療保障あるいは健康保障を前提とした健保の改正でなければ、本末転倒であり、これに賛成できないのであります。
 反対の第二の理由は、医療の原則は平等であるべきなのに、この法案は、格差を縮小する一面はあるが、これを固定化するおそれがあるということであります。
 この政管健保の加入者は、中小零細企業に働く人たちであり、大企業に働く人たちに比べて、平均給与額で二〇%は低く、労働条件や職場の環境にも恵まれず、その上、中高年齢者が多い実情であります。今回の改正案は、この社会的弱者の立場にある人たちに、政府はむしろどの保険よりも援助してこそ当然であると言えるのに、それを、相互扶助と受益者負担の原理を強調し、前時代的な保険主義を貫こうとしているのであります。つまり、国庫補助率を一〇%にとどめ、保険料率を上げることによって財政立て直しをはかっているのであります。このように相互扶助と受益者負担を主張するのであるならば、政管健保内での操作よりも、八つに大別されている各種保険の格差是正をこそ行なうのが先決であります。また、その格差是正のために国庫補助を行なっているとするならば、それにふさわしい二〇%前後の定率補助をするのが、医療を平等に受けられるようにする政府の責任として当然ではないでしょうか。それを行なわずして、中小零細企業に働く人たちにのみ〇・二%の保険料値上げを決定づけ、その四倍以上の料率引き上げを弾力調整で可能にしたことは、他の各種保険との格差をさらに大きくするものとしてとうてい賛成できないのであります。しかも、この弾力調整には絶対反対です。今回に限らず、いままでの国会では、〇・二%とか〇・三%の保険料率を引き上げることで審議をしてきました。それを〇・八%の範囲という大幅な料率の改定が、国会にかけずに、一厚生大臣の行政権によってできることは、国会審議軽視もはなはだしいものと言わざるを得ません。
 反対の第三の理由は、保険財政の健全化をはかるとしながらも、それを裏づけるものは何一つとしてないということであります。
 健全財政にするという改正の趣旨でありますが、財政の安定というのは、収入面の措置とあわせて支出面の対策があって初めて成立するわけであります。ところが、今回の改正案は、ただ単に保険財政における総支出と総収入のつじつまを合わせる算術以外の何ものでもありません。これでは社会保障制度審議会の指摘を待つまでもなく、一両年のうちに均衡を失することは明らかであります。診療報酬改定が大幅に行なわれた場合には、弾力調整を〇・八%全部使っても赤字は吸収できないとさえ言われているのです。過去十数年にわたる健保財政の構造的欠陥を放置し、赤字になる根本問題を解消せずして、場当たり的な収支計算の本案、しかも、中小、零細企業に働く人たちの負担がふえたというデメリットだけが残る今回の改正案であるということを主張して反対いたします。
 反対の第四の理由は、国民の健康管理、予防等に対して配慮がきわめて不十分であります。
 近年、疾病の構造が著しく変化し、死亡順位を見ると、結核とか肺炎、気管支炎といった炎症性の病気が上位であったのが、脳卒中、ガン、心臓病といういわゆる成人病に変わっています。その成人病に加えて、難病、公害病、職業病等、これらの現代病はすべて長期療養を必要とし、しかも治療のために非常に医療費が多くかかります。この成人病は、早期発見、早期治療が最も重要なことは言うまでもありません。しかるに、この改正案には、早期発見、早期治療のための予防、健康管理に対する配慮が一切認められていません。そのことが、かえって財政悪化の原因になっているのであります。将来の保険財政正常化の基本に、予防、そして健康管理の対策をまず健保改正に取り上げるべきであると思うのであります。
 最後に、給付の改善についてであります。
 家族給付の七割実施、分べん費、埋葬料の改定、高額療養費の新設等、一歩前進として、これらはそれなりに評価したいと思います。しかし、家族給付の場合、病気にかかりやすい子供や老人こそむしろ十割給付にすべきであると考えましたとき、今日までなぜこのような低い状態に据え置かれていたかを十分に反省するとともに、今後、より一そう充実、改善を要求するものであります。
 以上、政府の医療に対する基本姿勢の誤り、医療行政の無策ぶり、さらに予防給付に対する無認識をあげ、医療全体にわたる抜本改正に着手することが急務であることを強く要求し、健全財政をはかるとしながらも、その保証のない今回の改正案に対して、大局的な立場から反対の意を表明して討論を終わります。(拍手)
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#31
○議長(河野謙三君) 中沢伊登子君。
   〔中沢伊登子君登壇、拍手〕
#32
○中沢伊登子君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となっております健康保険法等の一部を改正する法律案及び修正案に対し、反対の討論を行ないます。
 御承知のとおり、わが党は、立党以来一筋に福祉国家建設を目ざしてまいりました。政府におきましても、ようやく最近、人間尊重、福祉優先を目ざし、ことしは福祉元年だと宣伝をしてまいりました。そもそも福祉国家の第一の要件は、国民の生命と健康でございます。今日、その国民の健康と生命はきわめて憂慮すべき環境のもとにありながら、これを保障すべき医療供給体制が危機に直面をいたしております。
 わが党は、今日まで健康保険制度の改正については、まず医療制度の抜本的な改革を先行すべきだと強く主張してまいったのでございます。これに対して政府は、数度にわたって医療制度の抜本改正案の提出を公約しながら、いまだにその公約を実現しておりません。これは、まさしく国民の福祉を無視した政府の無策と怠慢の結果であると断ぜざるを得ないのであります。このため、わが国の医療制度は、国民にひとしく、いつでも、どこでも、最新の医学進歩に即応した医療を保障するという本来の使命を果たし得ないほど荒廃し切っているのであります。たとえば、国民皆保険下にありながら、医療サービスから全く見放されている国民が全国三千カ所に約八十八万人もおります。他方、都市部では、いまなお、三時間待って三分診療という状況下にあります。医師、看護婦をはじめとする医療担当者の極度の不足が一段と深刻になっておるのであります。数年前から、社会労働委員会においても、各党こぞってこの問題については常に論議をし、政府を督励し、要望してきたのにもかかわらず、依然として解決を見ないばかりか、さらに深刻の度を増しております。こうした医療担当者の不足は、病人にとって生死にかかわる重要な問題であるだけではありません。看護婦不足から、公的医療機関でさえ多数のあきベッドがある現状で、入院したくても入院のできない病人もあります。さらに、救急医療、休日、夜間医療はほとんど機能していないと言っても過言ではない実態にある今日、健康体の者にとっても、交通事故をはじめとして、いつ、いかなる事故や急病に遭遇しないものでもありません。考えてみればきわめて深刻な社会問題でございます。にもかかわらず、政府は、医療制度の抜本的改革に勇断をふるうこともせず、国民の切実な要求に背を向け続けています。私は、このような政府の無責任な姿勢を容認できないのであります。
 次いで、今回の改正法案の具体的な内容について反対の理由を申し上げます。
 その第一は、若干の給付改善がかなえられた部分についても、修正点についても、その施策が不十分だということであります。
 政府は、今回の改正案には、かつてない改善策を盛り込んだと宣伝しています。確かに、家族給付率の七割実施、分べん費、家族埋葬料の大幅引き上げ、高額医療費の健保給付等の改善策が盛り込まれはしました。しかし、これはわが党をはじめとし、野党各党の激しい追及と国民的要求があったればこそであります。さらに、医療保障の理念からすれば、本人と家族を差別すべきではなく、当然、家族の十割給付を実施すべきでありますし、分べん費についても全額健保から給付すべきであります。また、家族の高額医療費について、月三万円以上は保険から給付するこことしておりますが、高額医療を要する疾病の多くは、本来長期の治療を要する疾病であり、一般勤労者の家庭の経済実態から考えますと、毎月三万円の負担がきわめて過重となることは明白な事実であります。政府が真に高額医療費負担であえいでいる国民のための施策を講じようとする姿勢があるならば、三カ月経過後はさらにこれを軽減、免除する等の積極的措置を講ずべきであります。同時に、今日的課題として大きな問題とされている差額ベッド、付添看護制度の改善をはからなければ、せっかくの高額医療制度も十分な機能を果たし得ないと言っても過言ではありません。大多数の入院患者は差額ベッド、付添看護料の高額負担に苦悩しているのでございます。しかるに差額ベッド等の調査について、昭和四十三年度の資料しか持ち合わせがないと伺っては、あ然たるを得ないのであります。早急に差額ベッド料の改善をはかり、付添看護料を保険適用にすべきです。すなわち、今回の措置は、国が当然果たすべき責務をおくればせながら部分的に遂行せんとするにすぎず、多くの改善すべき問題を残しているのであります。
 その第二は、国庫負担を低く押えて、逆に国民負担の増大をねらっていることであります。
 今回の改正案では、従来の定額補助制度を改め、保険給付に要する費用の一〇%を国庫補助とする定率制に踏み切っておりますが、わが国の医療保険制度を真に社会保障の実態に沿った制度に組み直すためには、少なくとも二〇%の定率とすべきであります。かかる観点に立ってわが党は、今国会を通じて二〇%の国庫補助を実現し、国民負担となる保険料の引き上げ、特別保険料及び弾力条項の削除をはかるべきだと強く主張したのであります。しかるに政府は、特別保険料の削除、保険料率の引き上げ幅の縮小を行なうにとどまり、弾力条項については、国庫補助率を若干引き上げたり、発動条件をきびしくするこそくな修正に終始し、肝心かなめの国庫負担の引き上げには一言半句も触れようとはしないのであります。これは、あくまでも財政負担を回避し、国民負担の増大によって健保財政の健全化をはからんとする政府の意図が露骨にあらわれている証拠でありまして、一段と国民負担を強化せんとするものであり、とうてい国民の期待できないものと言わざるを得ないものでございます。われわれの賛成できないゆえんでございます。
 私は、単なる財政対策ではなく、抜本的な健康保険制度の改革をはかると同時に、国民が安心して受けられる医療制度の確立を目ざし、医療制度改革の早期断行を強く要求して、反対討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#33
○議長(河野謙三君) 沓脱タケ子君。
   〔沓脱タケ子君登壇、拍手〕
#34
○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表いたしまして、健康保険法等の一部改正案並びに自民党修正案に反対の討論を行ないます。
 反対の第一の理由は、いまでさえ多額の保険料負担をしいられております中小企業労働者に、さらに重い負担を押しつけるものであるからでございます。
 今日、国民の健康が、大企業とこれに奉仕する自民党政府の高度成長政策がもたらした労働強化、公害、交通戦争などによりまして、根本的に脅かされており、厚生省の調査におきましても、十年前と比較をいたしまして病人が二倍以上にふえ、ついに九人に一人が病人となっているということでも明らかなところでございます。したがいまして、社会保障の重要な柱である健康保険については、国と資本家こそが全面的に責任を持たなければならないことは当然のことであります。ところが政府は、自分の健康は自分で守れという自己責任原理や、社会保障の費用負担を相互扶助に求めるとした、自民党の医療政策大綱の立場を貫いているのであります。したがって、次々に引き上げられてまいりました保険料を、今回も引き上げるというふうなことは断じて許せないのであります。
 さらに、保険料の負担割分を見てまいりますと、国際的には、フランスやイタリアでは労働者の負担が軽減されておりますし、日本国内におきましても、労働者の負担軽減の方向が出てまいっております。それにもかかわらず、政府管掌健康保険におきましては、法律により、依然として労使折半を押しつけ、国民の負担割合軽減の要求を拒否しておるのであります。
 反対の第二の理由は、弾力条項の創設と厚生保険特別会計法の改悪であります。
 弾力条項は、国会の議決を経ずに政府が一方的に保険料を大幅に引き上げることができる非民主的な制度であります。厚生保険特別会計法の改悪は、弾力条項を発動して保険料を引き上げる場合のほかは健康保険勘定への借り入れを制限するものであります。したがって、保険財政が赤字になった場合には、支払い基金から医療機関への医療費の支払いストップをするか、保険料値上げを認めるかの二者択一を国民に強要する結果になるのであります。
 そもそも、家族給付率の引き上げや保険料率の変更というのは法律事項であり、保険財政を含めて国会で十分審議をするべきものであるにもかかわらず、保険料率の決定を政府の一方的権限にしていくことは明らかに国会の審議権を侵害するものであります。組合健康保険、共済組合などの弾力条項は、不十分とはいえ、保険料決定には、被保険者の意思が反映できることになっているのでありますが、政府管掌健康保険の場合におきましては、国会以外には、被保険者の意思を反映する場がないのであります。したがって、このような弾力条項、厚生保険特別会計法の改悪は、被保険者の権利を擁護する立場から言いましても絶対に認められないものであります。
 反対する第三の理由は、保険財政の赤字の主要な原因となっている薬剤費に対して、政府が適切な対策をとらないことについてであります。
 いまや、薬剤費は保険給付費の半分近くに達し、保険財政を大きく圧迫をいたしております。一方、わが国の製薬大企業は、他産業に比べて高率の利益をあげているのは周知のことであります。このことは、製薬大企業が医療保険に寄生をして、ばく大な利益をあげていることを示しております。たとえば、外国におきましては、英国ロッシェ社に対するイギリス政府あるいはEC諸国の価格引き下げ命令、また、原価公表を求めているアメリカのキーホーバー委員会などの例があるのであります。しかるに自民党政府は、自由経済だから介入はできないとの理由を口実にいたしまして、大企業の原価や不当な利潤にメスを入れることを拒否しているのであります。製薬大企業の独占利潤を放置し、赤字だからといって保険料を引き上げることは、まさに政府の国民不在、大資本優先の姿勢を端的に示すものであります。(拍手)
 以上が本改正案に反対するおもな理由であります。
 なお、本改正案には、国民の強い要求に押されて、家族給付は、七〇%の実施時期を本年十月実施への繰り上げ、分べん費、埋葬料の引き上げなど、政府原案に比べて若干の給付改善が行なわれましたが、なお国民の期待にこたえるものとは言えないのであります。
 また、高額医療実施にあたって療養費払い制を導入するということは、健康保険制度の抜本的改悪に通ずるものであり、これは当然現物給付にするべきであります。また、老人医療など公費負担医療の三万円以上を保険に肩がわりをさせていくということは、保険財政を圧迫していく原因をつくるものであります。公費負担医療は保険財政から切り離すべきであります。さらに、病気中の生活保障として切実な要望がある傷病手当金の給付期間や給付率の改善には全く触れられていないばかりか、ILO百二号条約、百三十号条約の批准の要件となる予防、リハビリテーションなどの給付もおくれているのであります。
 以上、本改正案は、若干の給付改善と引きかえに保険料の値上げを行ない、しかも、弾力条項等により、将来も値上げを国民に押しつけようとするものであり、国民の要望する医療保険制度の抜本的改善とは無縁のものであります。
 わが党は、政府管掌健康保険の当面の措置として、第一に、国庫補助率を二〇%以上にすること、第二に、製薬大企業の蔵出し薬価を二〇%引き下げること、第三に、保険料の労使負担割合を三対七とし、中小企業の負担増は政府が肩がわりをすること、第四に、家族給付をさしあたり八〇%とすること、第五に、診療報酬を適正に引き上げ、医療従事者の待遇と医療機関の経営を改善すること、また、国公立病院の独立採算制を廃止して十分な財政援助をするなどの改善を直ちに実現することを強く要求するものであります。
 いま国民は、だれでも、いつでも、どこでも、必要で十分な医療が受けられる医療保障制度の根本的改善を痛切に要求をしているのであります。わが党は、国民の切実な要求実現のために今後も引き続き戦うものであることを表明をいたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
#35
○議長(河野謙三君) これにて討論は終局いたしました。
 これより採決をいたします。
 まず、健康保険法等の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法等の一部を改正する法律案を一括して採決いたします。両案の委員長報告はいずれも修正議決報告でございます。両案を委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#36
○議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、両案は委員長報告のとおり修正議決されました。(拍手)
     ―――――・―――――
#37
○議長(河野謙三君) 次に、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案の委員長報告は修正議決報告でございます。本案を委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#38
○議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって委員長報告のとおり修正議決されました。
     ―――――・―――――
#39
○議長(河野謙三君) 次に、児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案並びに有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律案を一括して採決いたします。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#40
○議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、両案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#41
○議長(河野謙三君) 次に、覚せい剤取締法の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#42
○議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時十二分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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