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1972/09/23 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第37号
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1972/09/23 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 本会議 第37号

#1
第071回国会 本会議 第37号
昭和四十八年九月二十三日(日曜日)
   午前十時三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第四十一号
  昭和四十八年九月二十三日
   午前十時開議
 第一 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正
  する法律案(内閣提出、衆議院送付)(前会
  の続)
 第二 特定市街化区域農地の固定資産税の課税
  の適正化に伴う宅地化促進臨時措置法案(内
  閣提出、衆議院送付)
 第三 公害健康被害補償法案(内閣提出、衆議
  院送付)
 第四 瀬戸内海環境保全臨時措置法案(衆議院
  提出)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一
     ―――――・―――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 日程第一 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(前会の続)を議題といたします。
 本案に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。片岡勝治君。
   〔片岡勝治君登壇、拍手〕
#4
○片岡勝治君 私は、日本社会党の立場から、いま議題になっております防衛二法に関しまして、若干の質問を申し上げたいと思うわけであります。
 本来ならば委員会において数時間の時間をいただきまして、じっくり審議するところでありますけれども、それが許されないということについて、まことに残念しごくに思うわけであります。
 私は初めに、次のことを総理に申し上げたいと思うわけであります。去る七月十七日の強行採決に始まる一連の反民主的国会運営に対しまして、自民民の総裁でもある田中総理に強く抗議し、きびしい反省を私は求めたいと思うわけであります。
 そもそも、法案審議は十分な時間をとり、微に入り細に入り質疑応答を行なうことによって、政府の見解や考えも明らかにされるであろうし、また、問題点が浮き彫りされて、そこから具体的な政策が生まれ、政治の発展を期することになると思うわけであります。しかるに、このように委員会審議を打ち切り、強引にこうした形で、形式的と思われる審議で決着をつけようとすることは、まさしくそれは議会の死滅にも通じることでありまして、きわめて異常な事態と言わざるを得ません。このような事態に追い込んだのは、毎度のことでありますけれども、ほかならぬ自民党であるわけであります。しかし、自民党の諸君は、一連のこうした政治行動に対して、これは上のほうからの絶対命令だと、公然と口にいたしておるわけであります。それはどこの命令かといえば、いや、実は田中総理なんだ、こういうことを言うわけであります。つまり、田中総理のヒットラー的な命令のやり方、そのことがこのような事態を招いているといってもいいだろうと思うわけであります。もっとも、このような議会制民主主義をゆるがす暴挙が、さしたる抵抗もなく実行に移されるという自民党の体質にももちろん問題はあります。いずれにいたしましても、総理の反民主的な政治行動が、今日の議会制民主主義と、参議院の民主的改革を危機におとしいれるということだけは確かなものであると思うわけであります。この際、総理の深い反省に立った弁明を、この参議院を通じて国民の前に明らかにしていただきたいと思うわけであります。(拍手)
 さて、九月七日、全国民注目のうちに自衛隊の実質的憲法裁判の判決が行なわれ、自衛隊の憲法違反があざやかに国民の前に映し出されたのであります。昨日の討論にもありましたように、このような事態は、おそらく世界にその例を見ないでありましょう。だから、全く異例のことだ、異常なことなんだとして政府は受けとめているようでありますけれども、そこに大きな誤りがあると思うのであります。世界に例を見ない日本の平和憲法なるがゆえに、このような当然の裁判の判決を下したのであります。このことを踏まえて、これを正しく受けとめることが憲法に忠実な態度といえると思うのであります。
 われわれ日本社会党は、憲法の差し示す平和路線を一貫して主張してまいりました。したがって、この判決を正しく評価し、いまこそ憲法の原点に立ち戻り、日本の進路を、軍事大国への道を転換いたしまして、憲法の示す平和路線へと、これを機会に邁進すべきだろうと思うわけであります。
 もちろん、この違憲判決に対して、異なる意見のあることも私どもは十分承知いたしております。ただ、ここで大切なことは、この判決と同時に、報道あるいは言論界が一致して訴えたことは、この際、この違憲判決を契機にして、平和憲法とは何だったのか、また、日本の安全保障の道はいかにあるべきか、憲法の原点に返って、全国民が謙虚にもう一度考え直すときが来たのではないかということを、一致して言明しているのであります。当然のことであります。国会においても、直ちにこの課題を中心にして論議を深めるべきでありました。しかし、政府・自民党は、衆議院あるいは参議院の緊急質問を拒否し、あるいはまた、私どもが要求いたしました衆参両院内閣委員会の合同委員会、あるいはまた、参議院における関係委員会の連合審査等、ことごとく拒否してきたのであります。都合の悪いことは問答無用、聞く耳を持たぬの態度であったわけであります。私は、かりに国会の側がこのような態度に出ようとも、総理は率先して本会議の開催を要請し、委員会の連合審査を要請して、みずから積極的に出向いて国民の疑惑にこたえるような、積極的な政治姿勢があってしかるべきであろうと思うわけであります。しかし、よく聞いてみると、どうやら総理御自身が、本会議を開くことも、緊急質問も、連合審査を開催することも拒否されておったやに聞いたわけであります。まことに遺憾千万の話であります。事は憲法の基本にかかる問題でありまして、このような責任回避の総理の行動は、きびしく糾弾をされていかなければならないと思うわけであります。私は、この際、どうして総理はそのような政治行動をおとりになっているのか、この点、とくとお伺いをしたいと思うわけであります。このような総理の行動が、結局は、総理の憲法感覚の実体を露呈しているものと私たちは考えざるを得ないわけであります。
 次に、判決そのものについて、この際、総理の基本的な見解を承りたいと思うのであります。
 日本の防衛の基本である自衛隊が憲法違反であるという判決は、まことに重大であります。総理は、この判決に対してどう評価されておるのか、どのようにこれを受けとめて、今後の政治の上にこれを考えていくのか、この点、ひとつ総理の見解を明らかにしていただきたいと思うわけであります。私は、この憲法違反の今回の判決このものに対する政府の受けとめ方が、すなわちシビリアンコントロールのパローメーターになるであろう、そういう立場から、総理のこれから行なわれる答弁を注目していきたいと思うわけであります。
 さらに、次は、この判決にかかる自衛隊の将来展望についてであります。今日でも膨大な欠員は、かっこうだけはつけておりますけれども、形式的な部隊編成を余儀なくされ、定員は既得権の確保という性格を色濃くしております。いまのうちに定員だけはふやしておけ、これから法律改正をして定数をふやすことは非常に困難になるであろう、このような考え方から、とりあえず定数だけは十八万体制を確保していく、これが政府の自衛隊の考え方であるわけであります。しかし、この違憲判決によって自衛隊応募者は急激に減少するでありましょう。あるいは現在隊員である諸君も続々と離隊していく傾向があらわれてくるでありましょう。すでに市町村においては、違憲判決のあった自衛隊の応募の事務は、高裁あるいは最高裁の判決があるまで見合わせよう、こういう決定をした市町村もあります。あるいはまた自治労の諸君は、自衛隊応募の事務をこの際拒否していこう、そういう運動がすでに広がりを示しておるわけであります。委員会でも、この問題については相当深く論議をされました。その席におきまして、かてて加えて適齢人口が急激に滅っていく、あるいは高校全入、また大学入学率の上昇等、この違憲判決に拍車をかけ、好むと好まざるとにかかわらず欠員は増大し、人員構成の縮減は避けられない現実となっていくということは、火を見るよりも明らかだろうと思うわけであります。だとするならば、この点からも、政府はこれまでの自衛隊の拡大増強政策を根本的に転換し、軍縮政策をとるべき時期に直面をしていると私は思うわけであります。政府は、このような隊員の応募状況、そして将来の悲観的な材料に対してどのように考えておるのか、その見解を承りたいと思うわけであります。
 さらに、この問題に関連して重大な政府の見解が表明をされました。いま申し上げましたように、陸上自衛隊のうち、昔流でいえば歩兵に当たるものは、成規の編成十一人に対して現状は七人であるという。しかし、さきも触れたように、かっこうだけはつけるということで編成の数は整っておるわけであります。しからば、いざというときに、一体、十一人編成が現実に七人でどうするのかという質問に対して、久保防衛局長は次のようなことを答弁いたしました。世調調査によると、約三〇%の国民は、いざというときには自衛隊と行動をともにする、そういうことが出ておりますので、そのことに期待をして、いざというときに備えたいと、こう答えたのであります。こうなりますと、いざというときには民兵を組織して自衛隊と行動させるつもりでありましょうか。一体、四人の欠員を一般民間人から充当して、どうして自衛隊の機能を果たすことになりましょうか。一体それはどういう状態で、どういう姿で戦闘行動が行なわれるのであろうか、私はこの答弁を聞いてほんとうに驚いたわけであります。しかし、これはきわめて重大である、少なくとも政府の防衛局長の答弁ということになれば、これは明らかに政府の方針であろう。われわれ国民としても、この答弁をこの際明確に、どのような姿でやるのかということをこの席で明らかにしていただきたいと思うわけであります。
 次に、自衛隊はすでに専守防衛の域を脱して膨張の一途をたどっておるわけでありますけれども、しかし一方には、いま申し上げましたように、かっこうだけつけて内容は全く欠陥自衛隊である。このような大きなアンバランスがあるのが、今日の日本の自衛隊の実体であります。私たちは、しかるがゆえに、先ほどの憲法違反の判決を契機にして、この際自衛隊とは何か、そしてその実体をつまびらかに分析をして、自衛隊のあり方について政府自身もメスを入れるべきであろうと思うわけでありますが、この点政府はどのように考えておるのか、お伺いをしたいと思うわけであります。
 次に、専守防衛論と安保との関係について政府の見解をただしたいと思うわけであります。
 政府は、防衛二法の審議にあたっては、もちろん、いついかなる場合も、日本の国防方針は専守防衛だ、日本の防衛は専守防衛だ、口ぐせのように言っておるわけであります。そして、そのことばによって憲法体制からのがれようとし、一方において国民のコンセンサスを求める手段にしているわけであります。なるほど自衛隊の機能は、わが党をはじめとするきびしい追求によって、ある程度のコントロールが行なわれていることは認められるわけであります。百歩譲って、自衛隊は専守防衛だとしたとしても、日本の国防方針は、日本の軍備は、自衛隊のみがになっているわけではありません。むしろその主体は、あの巨大な米軍と言ったほうが適当でありましょう。その存在に触れずして、日本は専守防衛だ専守防衛だ、そういうことを言うことは、まさしくナンセンスと言うべきでしょう。かりに自衛隊はたての役割りを果たしているとしても、米軍は明らかにやりであり、一朝事あれば、日本の意思として自由に出撃し、やりの役割りを果たすのであります。こうした相互に補完し合う機能にありながら、日本は専守防衛と言っても、それは虚構になるわけであります。もし専守防衛ということばをお使いになるなら、それは安保条約を廃棄したあとならば、まあまあと言えるかもしれません。日米一体の今日の日本の軍事体制の状況を正しく表現することは、ごまかしのない政治の上できわめて私は重大だろうと思うわけであります。政府は、こうした日本の軍事状況を正しくとらえ、いたずらに誤った認識を与える専守防衛オンリーの表現は適当ではなく、実体に即した表現を使うべきだろうと思うわけであります。きっといいことばがあるでありましょう。この際、政府のほうから適当な日本の実態に合った国防の実体を表現することばを披露していただきたいと思うわけであります。
 次に、安保そのものについて、その後の状況の推移もこれあり、この際政府の考えをただしておきたいと思うわけであります。
 とにもかくにもベトナム戦争が一応の終結を見たことは、力の政治の破綻として、今後の世界の政治の上に明るい展望を持ち得たことは、ともに喜びたいと思うわけであります。しかし、このアメリカのベトナム侵略戦争は、日米安保条約の本質を明らかにさせてきました。それは事前協議の空洞化、いや、すでに有名無実化といったほうがいいでありましょう。その実体が証明されたわけであります。日本の基地が実質的に戦闘作戦行動の機能を果たし、直接出撃していることは周知の事実、また、直接戦闘行動のための補給活動も事前協議の対象とされながら、昨年の米軍戦車輸送問題にあらわれているがごとく、ただの一度もその対象になりませんでした。まさしく、日本不在の日米安保になり果てているのであります。
 私はこの際、政府に提言をしたい。それは、いまこそ日米安保条約の再検討の時期だと思うからであります。もちろん、われわれは安保そのものの必要を認めるものではありませんが、その立場はさておいても、いまこそ再検討の時期が到来してきているのではないか。それは、アメリカにとってもベトナム戦争が一応終結した時期であり、日中国交回復、中国の国連加盟、田中総理もソ連を訪問される、北ベトナムとの国交回復、朝鮮民主主義人民共和国との交流の拡大等、アジアの情勢は、私は大きく平和の道に前進していると思うわけであります。自衛隊が拡大増強を続け、一方において、日米安保条約によって米軍の巨大な戦力と補完し合う日本の軍事体制は、決してこのアジアの情勢にすでになじんでいないと私は思うわけであります。そして、激しい、無謀なまでの日本の経済進出は、日本の軍事力の存在とともに、アジア諸国民に深い憂慮の念を抱かせておるわけであります。私は、そういう意味で、この際、日米安保条約を再検討をし、もし、そのことの是正の必要があるとするならば、積極的にその内容を国民の前に明らかにして、論議を呼び起こすような措置を講ずべきであろうと思うわけであります。
 ベトナム戦争が昨年一時期激しくなったときに、政府も次のことばを繰り返して言いました。安保を洗い直してみよう、そのことばの内容は必ずしも明らかではありませんでしたけれども、一体、その後政府は、この洗い直しということばが具体的に何をやってきたのか、この点もあわせてこの際明らかにしていただきたいと思うわけであります。
 次に、基地問題について二、三の具体的な例を申し上げながら、政府の考えをお聞かせいただきたいと思うわけであります。
 いま申し上げましたように、ベトナム戦争の終結により、米軍の引き揚げと基地の解除が近いと思うのは当然であります。多くの市町村や住民がこれをたいへん期待しているのは、まさに当然だろうと思うわけでありますけれども、実は、それとは逆な現象が日本の各基地にあらわれているということであります。つまり、基地の解除どころか、かえって増強されているという現象が出ております。たとえばタイ国から米軍が引き揚げて岩国の基地に帰ってくる。何も岩国に帰らず、アメリカに帰ればいいのに、岩国の基地に駐屯をするということであります。また、ほとんど接収解除間違いなし、きょうかあすかと待ちこがれておりました神奈川県の池子弾薬庫に、突如として大量の弾薬が再び運び込まれ、ついせんだっても多数のトラックで弾薬が運び込まれて、この池子弾薬庫の解除という見通しが全くなくなってしまったわけであります。ベトナム戦争が終わったのに、こうして一部日本の基地はますますその機能を強化されているということについて、国民のだれしもふしぎに思うのは当然だろうと思うわけであります。おそらくこの弾薬も、ベトナムから引き揚げたその弾薬であるということはおおむね想像できるわけでありますけれども、こう考えてみますと、アメリカのベトナム地域あるいはその周辺からの引き揚げは、結局は、日本の基地に集結され、その機能を強化されるということにあらわれているわけでありまして、私どもは全く納得のいかない問題と思うわけであります。
 こうした具体的な問題に対して、政府は何の積極的な施策もとらず、ただただ米軍の言いなりになっております。自治体や住民は、この政府の態度についてきびしい批判を寄せているわけであります。ベトナム以後の日本の米軍の存在について、政府は一体いかなる考えを持っているのか。このような米軍の行動に対して、それをよしとしているのかどうか、この際はっきり言明していただきたいと思うわけであります。また、米軍基地の解除について、具体的にどのような展望を持っておるのか、これもひとつぜひお聞かせいただきたいと思うわけであります。
 次に、米軍基地と自衛隊との関係であります。
 最近、米軍基地の自衛隊との共同使用が増加しております。口に専守防衛と言いながら、米軍と共存しているところに日本の防衛の本質があるわけでありますが、この問題はさておき、他の要素として、基地解除即自衛隊の使用をはかるため、その実績化あるいは既成の事実化の手段として手をつけておく方針がとられているのです。おそらく、どこの基地も解除の話が浮かび上がると、きまって自衛隊の使用がうわさされ、それが次第に事実となってあらわれてくるのであります。基地県と言われる神奈川県においてもその例外ではありません。厚木基地においては、長い間住民や自治体の基地撤去運動、解除運動が進められているにもかかわらず、すでに自衛隊が一部駐とんし、既成の事実をつくり上げているのであります。また、先ほども触れました、全国にその名をなした米軍戦車輸送阻止闘争が行なわれた相模補給廠も、現在米軍戦車修理の作業は行なわれず、広大な土地と施設が遊休をしておるわけでありますけれども、そして政府は、あの闘争のさなかに、すみやかに戦車修理機能を移転あるいは廃止し、その解除をほのめかしたのでありますけれども、最近ここでも、自衛隊の移駐使用がうわさをされているわけであります。長い間、住民と自治体がその解除と平和利用に苦しい戦いを続け、政府もまたその要求にこたえる口吻を漏らしながら、裏ではこっそりと自衛隊と結託し、解除が間近になると自衛隊に共同使用させ、解除後の自衛隊の使用に充てるということは、実に陰険な手段と言わざるを得ないわけであります。自治体や住民に対する背信行為と言わざるを得ません。やれ専守防衛だ、これ以上の増強は考えていないなどと言いながら、こうしてどこまで進むかわからぬ自衛隊の増強に、関係住民は深い憤りを覚えているわけであります。政府はこうした問題に対しましても、市町村やあるいは住民の側にたまには立ってその声に耳を傾け、住民や市町村の要求の実現に対して献身する努力があってしかるべきであろうと思うわけであります。政府よ、この基地解除と自衛隊の問題について一体どう考えているのか、この席を通じて関係住民にお答えいただきたいと思うわけであります。
 次に、米軍基地の強化の問題であります。
 近くアメリカの空母ミッドウェーが横須賀に寄港されるということがうわさをされております。いま申し上げましたように、今日の状況は、端的に言えば冷戦構造の崩壊によってアジア情勢は大きく転換しつつあるときです。このようなときに、空母の母港化という基地機能の強化は、明らかにこの大勢に反するものであり、関係住民にとって全く理解に苦しむ問題であります。このミッドウェー米空母の横須賀寄港の問題に対しても、政府はただアメリカの言うまま、なすがままになっております。ベトナム戦争も終わったのだ、これ以上の基地の機能強化はごめんだ、なぜそういうことがアメリカに言えないのでありましょうか。専守防衛というならば、あの巨大な空母がなぜ横須賀に必要なのでありましょうか。そもそも、この米空母ミッドウェーの横須賀母港化は、在日米軍基地の質的な変化を象徴する問題なのであります。すなわち、ベトナム戦争の後方基地ではなく、一転して戦略基地、抑止力としての基地として、横須賀が、日本の基地が変質していく具体的な例であるわけであります。こうした日本の基地の質的変化に、日本の政府が傍観をしているということは許されないはずであります。まさにそれは極東の戦略基地とし、力の誇示を示すことになり、冷戦構造の再生復活となることを私どもは憂慮するわけであります。しかもこの横須賀の基地化、ミッドウェーの母港化によって、これに関連した基地の機能も大きく変わってまいります。つまり厚木基地の性格も変わり、そして厚木基地の解除が半永久的に不可能になってまいるわけであります。あるいはまた、横須賀においては、この空母の乗り組み員家族一千人の住宅の問題があります。そうでなくても住宅問題に苦しんでいる市民が、米軍の軍人及びその家族に対して大量の住宅を供給しなければならないということは、今日の日本の住宅事情からすれば、全く重大な問題と言わざるを得ないわけでありまして、この点からも、空母の母港化は断固として拒否すべきことが必要と思うわけであります。しかるに政府は、こうした問題に対しても何らの検討も加えず許諾しているのであります。この際、この問題に対して、すなわちミッドウェーの母港化問題に関しましては白紙に返して、ベトナム後の米軍のあり方を、安保再検討とともに進めるべきだと思いますけれども、政府はどのように考えておりますか。
 また、空母ミッドウェーの横須賀母港化は、その軍事的、技術的な面からも、原子力空母エンタープライズと入れかわる可能性を持っていると言われておるわけであります。米軍にしてみれば、空母ミッドウェーの母港化の確保は、この原子力空母の権利を確保したとしているのであります。この際、エンタープライズ原子力空母の寄港について政府はどのような態度をおとりになるか、あわせてお答えを願いたいと思うわけであります。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(田中角榮君) 片岡勝治君にお答えをいたします。
 まず第一点は、国会運営について私の考えをただされたわけでございますが、その第一点は、私の自由民主党の総裁としての立場からの考え方をただされたわけでございます。この問題につきましては、国会運営はできるだけ、国会の役職がございますので、各党と十分お話をし、各党の御意向も尊重しながら、円満に、効率的、能率的に国会が運営せられるようにという基本的な考えだけを指示しておるだけでございまして、具体的には私は指示しない方針をとっておるのでございます。(拍手)
 もう一つは、内閣の立場でございますが、内閣は、国会の運営に対して申し上げる立場にはございません。しかし、議案を提案し、審議を求めておる立場でございますので、慎重審議の結果、すみやかに議案の成立をこいねがっておるということは事実でございます。しかも、二百八十日という非常に長い国会でございます。戦後二十七、八年間の間には何十回か国会が開かれておりまして、私もこの間ずっと勉強いたしましたが、百日間で二百法通ったというような事実もございます。そういうような問題は、その間に予備審査の制度が利用され、参考人、公聴会の制度も完ぺきに行なわれておるという過去の例もあるわけでありますから、私は、ただ完ぺきな状態において政府提案の議案が慎重に審議をせられて、国民に、審議の過程、政府が企図しておることが知っていただけて、そして成案が得られるようにこいねがっておるわけでございます。これからもそのような考えでございます。
 次は、長沼判決は緊急質問等で究明すべきであるということでございますが、良識の府、参議院の運営に関する問題でございまして、私が意見を申し上げられる立場にはございません。私は、こういうことをやってはならない、やることに反対をしたというような事実は全くありません。私はまた参議院内閣委員会に出席をいたしまして、長沼判決等に関する御質問を一時間半余にわたって受けておるわけでございますし、誠心誠意お答えをいたしておることは御承知のとおりでございます。
 次は、長沼判決の意義をどう受けとめるかという趣旨の御発言でございますが、憲法の平和主義は、決して無防備、無抵抗を定めたものでないことは御承知のとおりでございます。いかなる意味におきましても、自衛隊は憲法に違反するものではないと、政府は確信をいたしておるのでございます。したがいまして、この判決に対して、九月十二日に札幌高等裁判所に控訴をいたしたわけでございます。この判決に示された重大な判断の誤りは、控訴審において必ずや是正されるものと確信をいたしておるのでございます。(拍手)政府としましては、この判決があったからといいまして、自衛隊の運営や防衛力整備の方針に変更を加えるつもりは毛頭ありません。(拍手)
 防衛二法は凍結せよ、また、来年度の予算等についても検討するような考えはないかという趣旨の御発言でございますが、国政の責任を負う政府といたしましては、国防の備えは一日としてゆるがせにできない問題であります。この判決があったからといって、自衛隊の運営や防衛力整備の方針に変更を加えるつもりはありません。したがいまして、防衛二法を再検討のため凍結するというようなことや、来年度予算に対して概算要求を再検討する考えはないのでございます。
 安保条約を再検討せよということでございますが、米軍が、ベトナム地域での紛争との関連で、わが国の施設・区域を補給、修理等のために使用することは、事前協議の対象となるものではなく、御指摘のような安保条約の空洞化の事態は生じておりません。したがって、安保条約を再検討の必要はないと考えておるのであります。
 安保条約の見直しが必要ではないかという御発言もございましたが、間々申し上げておりますとおり、日米安保体制は、アジアにおける国際政治の基本的なワク組みの最も重要な柱であります。この柱が動揺することは、国際的不安定を助長することはあっても、アジアの平和とわが国の安全に寄与する道ではない、こう考えておるのであります。このような国際情勢のもとにおいては、政府は安保条約を再検討することは考えておりません。
 在タイ米軍の岩国基地への引き揚げや、米軍基地の問題に対しての御指摘がございましたが、米軍基地につきましては、これは安全保障条約を締結しておる日本の立場として、米軍に基地を提供するという義務を負うていることは、いまさら申し上げるまでもないわけでございます。安保条約を堅持してまいるという立場に立っておりますわが国でございますから、基地は提供してまいるということにいささかの変更もありません。ただ、現実問題といたしまして、基地に対してはいろいろな問題が存在をしておることは御指摘のとおりでございます。かつて基地が提供せられた当時は適地であっても、その後の都市の過密化によって、地域住民との利害が対立するような問題もございます。そのような現状に即して、政府は、米国との間に個々の問題に対して折衝を重ね、かつて、関東地方の基地が大幅に整理をせられたり、沖繩の基地も徐々に統合整理が行なわれておるということは御承知のとおりでございます。そのような意味で、基地は必要であるということを、国民の理解と認識を深めながら、基地がより住民からも理解をせられるように、統合できるものは統合していただくように努力を積み重ねてまいりたいと考えます。
 また、最近、タイから岩国基地へ飛来をしました航空部隊についての御発言がございましたが、四十七年四月から七月にかけて岩国から南方に展開していた部隊が、再び原隊に戻ったものでございます。政府としては、かかる部隊の帰来は安保条約上何ら問題はない、こう考えておるのであります。
 最後に、ミッドウェーの横須賀母港化等に対する政府の見解をただされたのでありますが、委員会でも申し上げておるとおり、いわゆるミッドウェーの母港化は、乗り組み員家族を横須賀基地及びその周辺の民間の借家に居住させるということでございます。右措置は、地元の同意を得て実施をされたものでございます。政府としては、かかる措置は安保条約上何ら問題はないと、こう考えておるのでございます。
 残余の問題につきましては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
   〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(山中貞則君) 現在、お話のように、陸上自衛隊において十八万定員を一応今国会にお願いをしておりながら、一方において二万五千名ぐらいの欠員があるという点は事実であります。そして、お話のように、今後の適齢人口も逐次減少の方向にここ数年向かっていくだろう、高校、大学進学率も一方にふえるだろう、この見通しも事実でございます。したがって、私たちはその自衛官をいかに充足するかについては、御指摘を待つまでもなく、非常に率直に申し上げて頭の痛い点でございます。私たちとしては、今後、自衛官の任期制をとっておりますこと等に対する、通常の国家公務員と違う形態の募集にあたって、継続雇用をした場合の特別退職金の制度その他をいろいろと考えながら、わが自衛隊に応募してくれる隊員諸君が充足されるように努力をいたしてまいりますが、一方において、これに関連をして、日本が侵略を受けたような場合において、そんな状態で、久保局長が答弁したような、一般の青少年に呼びかけるなどということでできるものかというお話でありますが、あの場合の質疑応答の場合には確かにそういう感じで受けられたと思いますが、しかし、一朝有事の、侵略を受けた際のこの欠員の補充は、一義的には、そのために予備自衛官というものが三万九千人になるわけでありますから、それによって一義的な充足を行ない、そしてまた、かつて自衛隊に在隊し退官をいたしております諸君に呼びかけて、装備その他の訓練にも習熟いたしておるわけでありますので、それらの者をまず一義的、二義的に考えていくべきである。その他の一般の国民の憂国の青年が集まったとしても、それはやはり半年ぐらい訓練をしなければなかなか実戦の用に供し得ないだろう、そのように考えているわけであります。
 次に、専守防衛ということばにかわる適当なことばはないのかというお話でありますが、これは、専守防衛がそういう表現であっても、私たちは、現在の程度の自衛力でもってわが国の独立と平和を守り、国家、民族の生命、財産を守る、その範囲をわれわれの使命として遂行し得る。なぜならば、われわれの足らざる点は、米軍の核を中心とする大きな軍事力を日米安保条約によって担保していることによって、われわれはその程度のもので国民の安全を保障し得るという表現のために使っているわけでありますから、したがって、専守防衛でもって自衛の任務が遂行し得るということもございまして、いまのところ、これを正確な法律用語として使っておるわけではございませんが、一応、専守防衛ということばにかわることばをいま急につくる気もございません。
 それから米軍との基地の共同使用というお話でありますが、確かに私たちとしては、共同使用について必要最小限、不可欠のものにしぼるべきであろうと考えます。
 さらにまた、返還された基地について自衛隊がするすると入り込んでおるじゃないかというお話でありますが、私は、就任と同時に、返還された基地に自衛隊が権利として入り込むことは許されないということを明言いたしております。したがって、その後は、返還される基地については地元の公共団体あるいは地域住民、それらの方々の意思を十分承り、大蔵省の国有財産払い下げの審議会等の場において、私どもも使わしていただかなければならない場所がかりにあるとしても、それは十分に意見の尊重をし、開陳をし、そしてお互いが一致した点を見出すために努力をした後に、払い下げ処分を決定してもらうように努力をするつもりであります。
 以上お答えいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(河野謙三君) 鈴木力君。
   〔鈴木力君登壇、拍手〕
#8
○鈴木力君 私は、日本社会党を代表して、先ほど報告のありました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について若干の質問をいたします。
 質問の前に一言申し上げますが、この法案については内閣委員会において熱心に審議を続けてまいりました。与党内には審議がおくれたなどの不当な発言をする方もおりますが、内閣委員会は、農林省設置法、経済企画庁設置法、通産省設置法等の一部改正案、恩給法等の一部改正案などなど外四件、国民生活に重大に影響を及ぼす計八件の審議を精力的に行なってまいったのでありまして、防衛二法以外は法案にあらざるような態度をとる自民党とは、基本的に見解が異なっているのであります。しかし、その自民党の主張もいれ、いわゆる防衛二法案に対する審議も積極的に推める手はずになっていたのであります。しかるに、七月十七日、わが党の上田哲君が野党の第一質問者として質問に入ると間もなく、自民党によって強行採決がなされ、そのために国会は混乱、空白を続けたのであります。その後、河野議長立ち会いのもとに国会の正常化の協定確認が行なわれ、参議院改革の線に従って審議が再開され、その後は定例日外を含めてきわめて熱心に審議を続けてまいったのであります。
 申すまでもなく、防衛問題は、基本的な政治問題や、具体的な自衛隊の実体、その運営のあり方、防衛庁の政治姿勢など、問題はきわめて広範に存在いたします。したがって、私たちは、河野議長を中心に推めてまいりました参議院改革の精神にのっとって、委員会において十分問題を掘り下げて問題点を明らかにし、議論を深めることに努力してまいったのであります。私も数々の問題の解明をいたすべく準備をし、質問の機会を待っていたのでありますが、九月二十二日までに委員会審議議了の方針が出され、とうてい参議院改革の従来の考え方と違ったその方針のあおりを受けて、ついに私の質問の機会を失ってしまったのであります。
 私は、いま、参議院改革とは何なのか、議員が委員会での審議を制限されたり、そしてただ政府の方針に基づく法案を通過させることが、時間の長短をもって参議院の正常化のごとくに言われていることに、きわめて残念な気持ちで一ぱいでございます。そうしていま、本会議での質問の機会を与えられはしたものの、私の意図した詳細な質問、明らかにしなければならない諸問題は、明らかにすることはとうてい不可能でありましょう。むなしい気持ちでこの演壇に立っておるのであります。
 さて、まず高田浩運内閣委員長にお伺いいたしますが、昨夜の報告を聞いて、七月十七日、質疑打ち切り、採決の動議によって可決したと言うのでありますけれども、野党質問者九名中、一名が質問に入ったばかりで、審議が十分であると判断されたのかどうか、その理由を承りたいのであります。採決の時期としてきわめて不適当であるということは聞くまでもないことでありますが、そうなら、なぜあの挙に出なければならなかったのか。その間の事情を詳細に、しかも正直に説明願いたいのであります。また、報告によりますと、本会議における報告まで適当にごまかそうとするような態度は、あの会議録の中身についてもきわめて疑問が多いのでありますけれども、この件については一応さておくといたしまして、委員長は院の役員として、あくまでも公正でなければならないはずであります。それなのに、議長に対しての委員会の審議状況報告を与党の理事のみを同行し、野党の理事には何ら連絡もしなかったのはどういうわけでありますか。これは審議状況報告に名をかりて、与党の立場から議長に一方的な意見具申をしたものとしか考えられません。公正であるべき委員長の行動として、きわめて不当であると思いますが、御所見を承りたいと思います。
 次に、今国会のさなか、長沼判決によって、自衛隊が憲法に違反する存在であることが白日のもとにさらされました。事ここに至ってなお、黒を白と言いくるめ、自衛隊は軍隊ではないとか、自衛のための軍隊は憲法違反でないなどという詭弁がいかに白々しい詭弁であるかは、もはや子供にさえ明らかになったところであります。にもかかわらず、政府は、自衛隊を憲法違反でないと断定なさるのかどうか、それはいかなる根拠によるものか、この本会議の場における明確なる答弁を求めます。
 長沼判決において自衛隊が憲法違反であるとされている今日、国会においてその自衛隊の増員を定めた法律を強引に制定するということが、はたして民主主義国家に許されてよいことでありましょうか。この長沼判決についての先ほどの片岡君に対する総理の答弁では、私は絶対納得できません。あらためて明確な御答弁をお願いいたします。
 総理は、内閣委員会において、憲法第九条の解釈について、日本語としての国語的解釈のみでは適当でないという旨の答弁がありました。そして、この解釈についての統一見解が吉田内閣時代から大きく変化してきたことについては、吉田内閣時代のことはさだかでないなどと、言を左右にしながら明らかにしませんでした。私は、この問題はもちろん、防衛問題については今後もなお議論が深められていくものと思いますし、また、そうしなければならないものと思っておりますけれども、政府の統一見解がそのつどくるくる変わったり、日本の法律が日本語として読めないなどということが議論のたびに出てくるようであれば、それらの議論は実りあるものとはなり得ません。しかも、それが国民の意見に対する政府のすれ違い答弁用として準備されるというものであるならば、これほど日本の将来にとって不幸なことはないでありましょう。
 そこで、この際、将来の議論を実りあるものにするためにも、憲法九条の解釈のように、政府が日本語の解釈だけで読めないなどとする法律は、外交、防衛に関するもののうち他にあるのかないのか、この際、はっきりとしていただきたいと思います。同時に、外交、防衛に関する法律、条約についても、政府の統一見解が今後変化し得るものがあるならば、それを明らかにしてもらいたいと思います。
 重ねて申しますが、これは今後の議論、審議を実りあるものにするために重要なことでありますから、この本会議で、将来はくるくる変更しない、あるいは統一見解は変えない、日本語として読める法律である、そういうことを総理の口から明らかにしていただきたいのであります。
 さて、私どもは、世界の歴史から多くの教訓を学ばなければなりませんが、中でも、憲法に基づく選挙によって選出をされたチリのアジェンデ大統領とその政府が、軍隊のクーデターによって倒されたことは、私ども深く他山の石とせねばならないところであります。日本においても、自衛隊が増強される中で、三矢計画を氷山の一角として、自衛隊のクーデターによる民主政治の圧殺が検討され、計画されているという疑いが濃厚になってきたといわれております。そのような性格を持った自衛隊が、この防衛二法の強行採決によってさらに増強されるなどということを、国民ははたしてよしとするでありましょうか。
 例の二・二六事件における青年将校の軍事行動は、ファシズム支配に道を開きました。日本軍の対外侵略と、国内におけるファシズム支配とが、どのように深刻な、取り返しのつかない悲劇をもたらしたか、どれほど多くの勤労国民が命を奪われ、父親を、夫を、兄弟を奪われ、財産を焼かれたか、どれほど多くのアジア諸国民が命を奪われ、家を焼かれたか、田中総理をはじめ自民党の皆さんも含めて、よもやお忘れになってはおりますまい。二・二六事件そのものは、少数の青年将校による、さほど大きくない行動であるかに見えました。しかし、それが端緒となって生起した一連の歴史的悲劇は、はかるすべもなく大きなものとなりました。現在の平和憲法は、このあまりにも大きな悲劇を経験した日本国民が、二度と軍隊によるファシズム支配がもたらす悲劇を繰り返さぬために、総意をもって、切なる平和の願いを込めて支持し、制定したものにほかなりません。その憲法を、ほごのごとく踏みにじって、軍隊を増強する防衛二法案の可決採決を強行しようとしている姿を見て、いま日本の、そしてアジアの、もの言えぬ幾百万、幾千万の英霊はどう感じているでありましょうか。
 チリの民主的政府を圧殺し、何千、何万もの国民の命を奪い、ファシズム支配によって全国を悲しみにおとしいれたチリの軍隊は五万人でした。それに対し、日本の自衛隊はすでに二十八万人に達しています。この自衛隊がさらに増強されるとき、日本の民主主義の運命、平和憲法の運命はどれほど重大な脅威にさらされるかは、もはや詳しく申し上げるまでもございません。正常な頭脳の持ち主であるならば、だれもがそのおそれを見抜き、心を痛め、自衛隊は解体せねばならぬことに思い至らずにはおれないでありましょう。
 私は、このような見地に立って、田中総理大臣に次の点についてお伺いをいたしたいと思います。
 その一つは、まず、チリの軍部クーデターについてどのようにお考えになるか。軍隊による政府の圧殺を正当とお考えになるのか、不当とお考えになるのか、お伺いいたします。
 次に、過去の日本における軍隊によるファシズム支配と対外侵略とについて、どうお考えになっておられるのか。
 さらに、自衛隊の三矢計画等、クーデターによる民主的政府の圧殺計画について、総理はどうお考えになっていらっしゃるのか。自衛隊の数が増強されるとき、クーデターが起こされる危険性は増大するとお考えになるのか、それとも減少するとお考えになるのか、お伺いいたします。
 さらに、自衛隊を解体せずして、これらの危惧を除去するための手だて、構想があるなら、詳細にお伺いいたしたいと存じます。内閣委員会において防衛庁長官が、シビリアンコントロールの制度の中にある日本の自衛隊は、そのようなことはあり得ないという御答弁でありました。私は、そのようなことはあり得ないという、責任者である長官の御答弁は、それなりにわかりますけれども、しかし、その御答弁だけでは納得できません。仕組みがこうなっているから、あるはずがないということでものごとがきまるならば、いま世界に、外国を侵略するたてまえにある国は一つもございません。そういう論理でいうならば、日本は侵略される心配もなし、ここに自衛隊が不要になるという論理に通ずるのであります。
 重ねて申し上げますが、私は、こういう危惧が日本の自衛隊にあるし、可能性は十分にあると見ております。しかも、現行の法律組織体系のみでは、これを防止する保証はないと思うのであります。これが対策についての所見を具体的に総理からお伺いいたします。
 次に、北富士演習場をめぐる諸問題のうち、若干の点についてお伺いいたします。このことをお伺いいたしますのは、単に北富士だけの問題ではなしに、軍事基地にかかわる防衛庁の姿勢の基本問題だからであります。
 まず、総理大臣及び防衛庁長官に伺いますが、北富士演習場の米軍から自衛隊への使用転換についての三月三十日の閣議了解で、政府が山梨県及び地元市町村に対し尊重すると約した百三十億円の周辺整備事業の内容は、どのようなものでありますか、明らかにしていただきたいと思います。事業内容を国会にも公表せずに、閣議了解で百三十億円前後の予算を先取りし、事実上周辺整備事業の助成を約束した措置の法的根拠及びそれをやらなければいけなかった事情について御説明を願いたいのであります。政府は、長沼判決批判の中で、自衛隊の合憲、違憲を裁判所が判断するのは適切ではない、国権の最高関機である国会を通じて国民が判断するのだと言っているが、そのようなことを言いながら、なぜ北富士演習場関係の百三十億円の周辺整備事業の内容を国会に提出しなかったのでありますか、国会軽視ではないかと思われますが、防衛庁長官にお伺いいたします。
 若干の事例によって具体的にお聞きいたしますが、民生安定事業助成のうち、道路関係の事業が非常にたくさんあげられております。その助成を必要とする理由、目的は、提出された事業計画書にはどう書かれているのでありましょうか、お伺いいたしたいのであります。
 と申しますのは、私が現地調査をいたしました限りにおいては、これらの道路関係の事業は、周辺整備事業とは無関係のように思われるのであります。あんな道路を米軍、自衛隊は使用してはいないし、今後も使用しないことは明らかであります。しかるに、米軍、自衛隊の使用を理由に改良、舗装しようというのであります。米軍が北富士演習場を使用するときに使う道路は、演習場内を走る軍用道路であることは周知のとおりであります。自衛隊の場合も、軍用道路または国道百三十八号線を通っております。軍用道路を別とすれば、国道にしても、米軍、自衛隊による使用よりも一般車の使用のほうがはるかに多いのであります。いわんや助成対象のこれらの道路は、ほとんど市町村内を通るものばかりでありまして、この道路を数年間のうちに米軍、自衛隊の車両が使用したケースはありません。
 周辺整備事業法第四条による民生安定施設の助成については、本年三月二日付の政府答弁書は、防衛施設の運用と住民の生活または事業活動の阻害との間に相当の因果関係が認められなければならぬ、かつ、その阻害状態が客観的かつ具体的に認定されるような状態にある場合にのみ、その助成が認められるとしておりますが、この道路のどこにそれが当てはまるのか、全くわからないのであります。同様のことが富士吉田市のコミュニティーセンター、勤労青少年センター、保育施設、山中湖村の住民体育館等々についてもいえると思います。私は、もちろんこうした施設がなくてよいというつもりはありません。こういうものはどしどしつくるべきでありますし、つくられてしかるべきでありますが、しかし、演習場を認めれば、その代償として、周辺整備法に該当しようがしまいが直ちに建設されるのに、そうでなければ予算がないといってなかなか建設されない。そういう軍事優先の予算の使い方、文部省や厚生省などからは金は出ないが、防衛施設庁からは金が出て、教育関係施設や社会福祉施設がつくられていく、この政治の姿勢が問題なのであります。
 以上、総括して、本年度の事業は、事業内容の不適正、法令違反の事業、相当の因果関係のないものがほとんどであるように見受けられますが、防衛施設庁は一体これをどうお考えでありますか。もう一度再調査すべきではありませんか。それとも、一たん予算のついたものは、どのようなものもなりふりかまわずに実行しようとしておるのでありますか。防衛庁長官の基本的な態度をお伺いいたしたいと思います。
 以上の事実は、補助金等適正化法がきびしく禁止しております関係当局と当事者とのなれ合いなしにはできるはずがありません。防衛施設庁と県、市、村、恩賜林組合が相結託して、偽りの文書を作成した節があるのであります。両者のなれ合いを疑われるものは、たとえば富士吉田市が政府に提出をいたしました防衛施設周辺整備事業等についての要望書であり、また富士吉田市、山中湖村、忍野村、恩賜林組合が結成した北富士演習場周辺整備事業推進連絡協議会が提出した防衛施設周辺整備事業等の促進についての要望書であります。これらの要望書の中には、本年度事業については、現行法令の拡大解釈など、政府の最大の努力を期待し、来年度以降の事業については、解釈運用ではとうてい困難なので、関係法令改正の促進を要望する趣旨の文面が記載されております。現行法令では、現行法令の拡大解釈で政府の努力を期待し、来年度以降はそれが無理であるから法改正をしてくれ、こういう趣旨の要望書を出させておるのであります。私は、この文面を見ましたときに、これは要望をする側がつくったものではなしに、政府との連絡の上につくったのではないかと疑われてしようがないのであります。この際、先ほども申し上げましたように、政府はき然たる態度をとって、法の拡大解釈等によるなれ合い的な事業等は直ちに中止すべきであります。なおさらに再調査をすべきであることを重ねて申し上げる次第であります。さきに申し上げましたように、これらのことは、ただ単に北富士演習場の問題ではなしに、基地問題については、全国至るところにこういう事例が出てくる危険性があるだけに、はっきりした態度を防衛庁長官からお示しいただきたいと思います。
 最後に、昭和四十七年度の高級自衛官の就職状況を見ますと、数字はあげませんけれども、三菱重工業を最高として、防衛庁の物資調達額と正比例して大企業に集中をしております。また自衛官の募集宣伝チラシによりますと、小さなことのように見えますが、退職後は援護協力企業があって、一流企業に有利な条件で就職することができる旨が記載されております。私が、この二つの例をあげましたのは、明らかに今日の自衛隊、今日の軍需産業とが、いろいろなところで相提携をし、複合をしている姿がはっきりしていると思うからであります。しかし私は、これらの現象のみ言うのではありません。こうしたことが、本質的にきわめて危険性をはらんでいると思うのであります。申すまでもなく、昨年の四次防計画の第一年目の予算において、兵器の輸入が取りざたされたわけでありますが、結局はFsBの輸入、T2やT2改を国産しないことが、簡単にほごにされまして、国産ということになった。すでにT2改にいたしましても、C1も、何十億という血税をつぎ込んで、技術開発費だけでなく、先行設備投資をしているのであります。兵器の国産化が追求され、民間企業からの強い圧力のもとに国産化が強力に要求され、兵器の量産体制が拡大していっていることは、まさに日本的な産軍相互癒着の関係が確立していることを示しているのであります。これは、軍事的要請と軍国主義的侵略とともに、軍需産業の経済的な圧力により、しかも技術開発と称した軍事研究を推進し、兵器産業を一つの戦略産業として育成し、強化させていこうとする政策のあらわれであると思うのであります。
 現在、自衛隊員の充足は定員に満たない状態になっております。また、自衛隊で技術を取得すれば、民間産業へ移ってやめていく人がたくさん出てきています。航空機などはパイロット不足がゆゆしい問題になっております。そこで、隊員の不足があったとしても、それがあればあるほど、人間が少なくても軍事力が強化をされる方法として高度の兵器が調達されていくという、二重の矛盾に直面しているということは注目しなければならないと思います。この一方では、現実に産業と防衛庁の癒着が兵器国産化として定着し、その体制的な整備が整った段階での人員をいま多数にまかせて押し通しておこうとする態度は、自衛力に名をかりた侵略的かつ危険な軍事拡大の思想ではありませんか。世界第一の高度成長のもとでGNPがふくれ上がり、高い軍事生産能力が保持されれば、GNPに対する比率は低くとも、その絶対額が増大していくことはきわめて明確であり、アジア第一の軍隊に育っていく危険は十分であります。
 いま日本の進むべき道は、先ほど以来申し上げましたように、まさにこのような軍国主義、軍事大国への道ではないはずであります。この際、政府は、民間企業との癒着をはっきり断ち切り、さきに申し上げましたような、企業を利用する自衛官の天下り、募集にまで利用する等の行為を中止すべきであると思いますが、御所見を伺いたいと思います。そして、人材を平和と真に人間の幸福のために生かせるように、無理な自衛隊増強を取りやめるべきであると思いますが、総理大臣並びに防衛庁長官の御所見を承ります。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔高田浩運君登壇、拍手〕
#9
○高田浩運君 まず、七月十七日のことについての鈴木君の質問についてお答え申し上げます。
 本来、委員から提出されました動議につきましては、委員長として裁量を加えないのが本旨でございますし、私もその方針に沿ってやってまいったのでございますが、それはそれとして、鈴木君の御質問は、事の重大性にかんがみてのお尋ねだと思うのでございます。質疑が十分であったか、なかったかという点につきましては、私も十分でなかったうらみがあると考えております。ただ、七月十七日といえば会期末まで一週間、しかも定例日といえば十九日の木曜日と最終の二十四日の火曜日、残すところ二日でございます。一方、法案は、防衛二法案を含めましてすでに四件が滞留をいたしております。さらに衆議院から送付される見込みでございましたので、この問題について決着をつけることが必要と考えまして、動議を取り上げた次第でございます。さよう御承知をいただきたいと思います。
 それから第二に、議長に対しまする委員会の審議の経緯についての報告の件でございますが、私は、委員会の審議の経緯を事実に即して客観的に申し上げるつもりで議長にお目にかかった次第でございます。したがいまして、本来からいえば、委員長のみがお目にかかってお話しすることで十分であったわけでございます。たまたま内藤理事がそばにおられましたので、御一緒いただいたのでございます。全く他意ないことを御了解いただきたいと思います。なお、内藤理事はその際、一言も発言をしておられないことを申し添えておきます。(発言する者多し、拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(田中角榮君) 鈴木力君にお答えいたします。
 第一は長沼判決についてでございますが、裁判所が政府の見解と異なる見解をとることがあっても、それは三権分立のたてまえからいって当然あり得ることでございます。また、いわゆる級審制度をとるわが国の裁判制度のもとにおいては、下級審の判決に不服があるときは、さらに上級審の判断を待つべきことも当然であります。今回の事件のような重大な憲法解釈にかかる問題につきまして、司法機関の最終決定を待たずに何らかの措置をとるというようなことは、むしろ、政府としてその責任を全うするゆえんではありません。自衛力の整備は、わが国の平和と安全を維持し、国民の生命と財産を守るため、ゆるがせにできない事柄であって、政府としては、従来からの方針について何ら変更する考えはありません。
 また、私が、先ほど御答弁を申し上げましたように、長沼裁判において誤りがあると考えておりますのは、政府はこれと異なる見解を明らかにいたしております。しかも(「誤りとは何だ」と呼ぶ者あり)誤りでなければこの判決に服さなければならないわけであります。誤りでありますから、政府は当事者として控訴を行なっておるのであります。そして、これが三権分立であります。初級審の判断だけが正しくて、政府の考えは正しくないという考えは、この考えが誤りであります。(発言する者多し、拍手)
 憲法第九条の解釈につきまして申し上げます。
 憲法第九条は、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しておりますが、これによって、わが国が主権国として持つ固有の自衛権までも否定されたものではありません。無防備、無抵抗を定めたものではありません。したがいまして、この自衛権の行使を裏づける自衛のための必要最小限度の防衛力を保持することは、同条の禁止するところではありません。このことは、従来、政府が国会を通じてしばしば表明をしてきたところでありまして、今後ともこの統一見解を変える考えはありません。およそ憲法なり法律の解釈にあたりましては、単にいわゆる文理解釈のみでは不十分なのでありまして、憲法、法律全体の趣旨に基づく合理的な論理解釈がなさるべきことは当然であります。このことは、憲法第九条の解釈についても何ら異なるものではありません。(拍手)
 第三は、チリのクーデターについてでございますが、これは外国でのできごとでございまして、とやかく申し述べることは差し控えさせていただきます。
 第四は、自衛隊のクーデターの危険に対しての御発言がございましたが、自衛隊は国の専守防衛に専心をしておりまして、クーデターの可能性は全くないと確信をいたしております。防衛は文民統制でございますので、国会も、この実を上げられるべく努力をいただきたいと思います。
 なお、自衛隊の任務の重要性を十分お互いが確認をすることによって、自衛隊がクーデターなどを起こすというような一分の考えさえも持たれないように、配慮すべきであることは言うをまちません。このような問題に対する最も重要なことは、自衛隊に対する国民的理解が深まることによって、このようなおそれを全くなくすることができることは申すまでもないのであります。(拍手)
 第五は、北富士演習場にかかる周辺整備事業経費の支出についてでございますが、北富士演習場の使用をめぐる問題につきましては、かねてから、政府は山梨県知事ほか地元関係者と協議を進めてまいりました結果、基本的了解に達しましたので、去る三月三十日、閣議了解を行ない、北富士演習場の使用転換をはかったものであります。
 この際、本演習場の使用と地元民生の安定との両立をはかるため、周辺整備事業として山梨県が要望していた事業費約百三十億円について、政府はこれを尊重することにしたものであります。政府は、四十八年度から山梨県と協議の上、具体的計画を樹立し、防衛施設周辺整備法に基づき、予算の範囲内において実施に移してまいる考えであります。
 残余の問題については関係閣僚から答弁をいたします。
   〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(山中貞則君) 総理からも一応お答えがございましたが、防衛庁長官も答えろということでございましたので、わが国の自衛隊が、世にいうクーデターを起こすおそれがないかという御質問に対してでありますが、総理御答弁のごとく、国会を国権の最高機関とする最終のシビリアンコントロールのもとに、制度として存在いたしておりますし、総理が最高の指揮監督権者であります。私は、さらに、憲法で定められた文民としての閣僚として、防衛庁長官の職にあって隊務を統括しております。したがって、人事権を含む一切の直接の指揮権が文民の手に、内部的にも、国会を含む機能の面においても、確立されておりますので、わが国の自衛隊がクーデターの挙に出るがごときことはありませんし、隊員の教育についても、民主主義を基調とする、わが国の平和と独立を守るという使命の自覚を徹底させるために努力をしておりますので、そのような不心得なことはないと考えます。(拍手)
 総理から御答弁のございました北富士演習場の百三十億円の事業の内容はどうかという問題でありますが、今後具体化していきまする場合に尊重するたてまえの山梨県案では、障害防止事業が五十億円、道路改修事業が三十億円、民生安定事業その他が五十億円でございます。
 そこで道路事業その他を具体的に例をあげられて、これは周辺整備法の事業の範囲を越えるものではないか、ことに第四条関係が拡大解釈されているのではないかという御意見でありますが、私どもは、現在の計画の道路その他の事業は、いずれも障害の防止あるいは緩和等について、これは法の範囲内であると考えておりまするし、他面においては、公的に衆参両院の内閣の附帯決議において、防衛施設周辺整備法の運用にあたっては十分に弾力的に地元の意向を尊重せよという、全会派一致の附帯決議のあることも念頭に置いて努力をいたしておるところであります。(拍手)
 さらに最後に、産軍癒着の問題についてお話がいろいろとございました。私どももそういうことを考えて、そういう心配のないようにしたいと考えまして、いまお願いをいたしております二法案の中に、自衛隊の高級幹部の、俗にいう天下りの場合における、そう思われるケースについて、審査会をつくって慎重なチェックをいたしたいということもこの法律の中に含まれておるわけであります。さらにまた、全般的には、競争原理の導入につとめる等のことはいたしますが、まず李下に冠を正さず、いままで各地の企業内に防衛庁の制服の監督官の事務所がありましたものを、それを来年度予算で全部きれいさっぱり企業外に出して、姿勢を正すことにいたしておるわけでございます。(拍手)
 さらに、チラシの問題でお話がありましたが、いま言われたような表現はございませんで、「任期を満了し就職を希望する場合、規律ある団体生活で鍛練された人格、責任感、根性及び技能教育等で身につけた各種の技術は、一般会社からも高く評価されております。また就職時の条件を優遇することなどに協力してくれる企業が多数あります。」と書いてあるだけでございまして、いま言われたように特定な企業を指定したりなどもいたしておりませんし、このようなことは、これは実はあたりまえでありまして、自衛隊で規律ある生活にたえ得た若者の諸君が任期満了で退職いたしました場合に、現在の社会である意味において希少価値のあるそのような青年諸君を、ぜひほしいという会社が一ぱいございます。そういうことをそのまま申し上げているだけでございます。(拍手)
#12
○議長(河野謙三君) 鈴木力君。
   〔鈴木力君登壇、拍手〕
#13
○鈴木力君 私は、ただいまの総理大臣並びに山中防衛庁長官の御答弁を伺いまして、全く不満でございます。
 私が一番先に申し上げましたことから最後まで、私が言いたかったのは、たとえば憲法第九条の解釈などを、日本語の解釈ではだめだと言ってみたり、あるいはくるくる統一見解が変わったことについては、前のことは知らないと言ってみたり、こういう形で幾ら議論をしておっても実りがないということから申し上げたのであります。少なくとも政府自身が、国民のコンセンサスを求めなければいけないということを何べんか言っておる。それならば、あえてみずからすれ違いを準備した統一見解なり、そういう形で切り抜けようとしている態度に、私はきわめて不満であります。
 いろいろな問題について不満でありますけれども、特にそのうちの、先ほどの総理の長沼判決に対する見解の答弁で、あの判決に対して政府は見解が違うということは私は承知しておったのであります。しかし、いまだかつて、その見解が違うという理由を説明されていない。どういう観点からあの判決と見解が違うのか、見解が違っておるのはどことどこなのか、これは少なくとも政府の見解として明らかにすべきであると思います。
 私があえてきょうこの見解を求めましたのは、何べんか議論されましたように、私どもはあの判決が出ましたときに、本会議で緊急質問を要求をいたしました。しかし、これはだめでありました。また、衆参両院の内閣委員会の合同審査も要求をいたしました。これもだめでした。参議院内のそれぞれの委員会の合同審査を要求したが、これもだめでありました。わずかに、参議院の内閣委員会に田中総理大臣が、たった一時間半、若干時間に違いはあるにしても、形式的にわれわれの質問を受けて、これで事済まそうとしておる。政府の見解をみずから進んで国民の前に明らかにしようとしない態度に、私はきわめて不満でありますし、この際あらためて、立場が違うあるいは見解が違うというだけであとは手続の説明では承知できません、その手続をとった理由を、判決について具体的に、政府の見解としてこの本会議で明らかにしていただきたいと思うのであります。
 その第二は、総理の御答弁の中に、あの福島判決が誤りであるということばが聞かれたことであります。少なくとも、見解が違うということまでは私はわかります。しかし、一国の総理が、日本の司法機関である、下級であろうが中級であろうが、その司法機関の判決に対して誤りであると断定をするということには納得できません。手続的に政府は被告でありますから、被告の代表として上級審に上訴するという手続は認めます。それにしても、誤りであると国会で断定をするということは、裁判権を踏みにじるものではなかろうか。司法権に対して政府が出過ぎた態度ではなかろうか。三権分立の立場を踏みにじるものとして、きわめて憂慮にたえません。この点につきましても、総理からもう一度はっきりと伺いたいと思います。
 さらに、次は、私が憲法九条の解釈に関連をしてお伺いしたがったのは、先ほども申し上げましたいろいろと政府の統一見解が変わったり、私どもは日本の法律である限り日本語の解釈が正当であると読んでまいりましたけれども、憲法九条は日本語の解釈ではだめだという総理の答弁が内閣委員会でありたのです。それならそれで、それの是非を私はきょうここで言うつもりはありません、この種の問題が将来議論として深められるときに、その議論に従ってくるくる変わっていったのでは、この議論はどこまでいっても平行線であり、実りのあるはずがありませんから、この際政府の責任者として、総理大臣が、将来変わり得る統一見解を、統一見解の変わり得るべきものは何々か、なければないとはっきり明言をしていただきたいのであります。法律につきましても、外交、防衛に関する法律につきましては、日本語として読めないものがもしあるとするならば、それはここで御指摘をいただきたい。なければないとここで明言をしていただきたいのであります。そういうところから、私どもは、今後この問題についての討論をさらに深めてまいりたい、こういうことを申し上げているのであります。
 もう一つだけ、私は重ねてお伺い申し上げたいのは、自衛隊のクーデターについてであります。あるいはクーデターばかりではなしに、ある部隊が政府の命令に違反を犯し、あるいは政府の方針に背反をして外国を侵略するという行為があったらどうする。先ほどの御答弁では、今日のこの国会が最高のシビリアンコントロールの機関であるから、そして内閣総理大臣が責任者であり、文民の防衛庁長官が直接の指揮監督をするのであるから、そういうことがあり得ないという御答弁をちょうだいいたしました。それは、今日の制度は、あり得ない制度であるというにすぎません。制度上からいいますと、どこの国のクーデターであっても、あるいは日本のかつての二・二六事件にいたしましても、制度上認められた事件は世界にどこに例があるでありましょう。制度上あり得ないということで、そこで何らの手を打たなければ、そうした心配をしないということが私は非常に危険だということを指摘申し上げたのであります。そういう点から、制度上そうなっているということは百も承知である。しかし、この制度を万誤りなしに運用するために、どういう点がいま考えられなければならないのか、どういうことが具体的に施策として実施されなければならないのか。私は自衛隊を解体する以外にその道はないと思うのでありますけれども、そうした点についても、解体をしないという立場に立つならば、その歯どめをどうするかを具体的にもう一度お聞かせをいただきたい。
 軍事基地につきましては、これはもうやりとりをすると長くなると思います。ただ、私が申し上げたかったのは、たとえば周辺整備事業は弾力的に行ない、その地域の住民の意思を聞け、そういう立場でやっているということについては私も賛成であります。ただ、それをやるために不公平があってはなりません。たとえば北海道の長沼基地と、圧倒的に自衛隊が多い千歳と、周辺整備事業の予算は長沼のほうが圧倒的に予算の高が多いのであります。自衛隊がたくさんいて、周辺整備事業がこここそ多くしなければいけないというところは、すでにもう基地として定着したところには、この事業の予算が少ない。新たに獲得をしようとする地域については、どこまでも予算をつけている。このことが、この姿勢が、あめとむちをもって軍事基地と引きかえに金を出していく、この姿勢を私どもは改めるべきであると思うのであります。そういうことについての――他に事例をあげれば、しかも法律違反の疑わしい例は数限りなくございますけれども、いまそういうことは言いません。そういう点についての再検討をする用意がないか。少なくとも再検討すべきであると思うがどうか。もう一度お伺いをしたいと思います。
 なお、御答弁をいただきまして、若干時間があると思いますから、不満であればもう一度御質問させていただきます。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(田中角榮君) 鈴木君にお答えをいたします。
 憲法九条の解釈につきましては、政府は、従来一貫して申し上げておることは御承知のとおりでございます。憲法九条は戦争を放棄しておりますし、いわゆる戦力の保持を禁止をいたしておりますが、これは平和憲法と言われるゆえんでございまして、人類の理想とする平和の希求を高らかにうたったものであるし、もう一つは、侵略をするというような戦力を持ってはならない、国際紛争を武力で解決をしないという崇高な理想を明らかにしたものでございまして、世界に例のない、平和憲法と言われるゆえんだと思うわけでございます。しかし、それが無防備、無抵抗というものを意味するものでないことは、これは言うまでもないことであります。いかに平和を希求しても、国も民族も自滅をしてもいいのだというような前提に立つ憲法であろうはずはありません。そういう意味で、現に保有いたしております自衛隊は、憲法九条範囲内のものであって、違憲性のあるものでは絶対にないということは、過去長い間、警察予備隊、保安隊、自衛隊という歴史の中で一貫して政府は述べてきておることでございまして、国民の間に私は定着をしておる解釈だと信じておるのであります。そういう意味で、自衛隊は、独立を確保し平和を守って、国民の生命財産を確保していくために不可欠の機関である、こういう解解をとっておるわけでございます。それに対して今度の長沼判決では、自衛隊が憲法九条による違憲のものであると、こういう判断をしておるわけでございます。私たちは、この判断は重大な誤りである、こう思っておるのであります。(拍手)でございますから控訴をいたしておるのであります。これは(「誤りとは何だ」と呼ぶ者あり)誤った判断を行なっておることは事実であります。だから政府は、その見解に立って控訴をしておるということを申し上げておるのです。
 また自衛隊の問題に対してのお話がございましたが、自衛隊のクーデター等に対しては、解体をしないでどうしてクーデターの歯どめができるかということでございますが、先ほども申し述べましたように、文民統制の実をあげ、そして自衛隊が真に国民に必要なものであるということを理解をし、自衛隊の自覚を求めるということに努力を続けることによって、そのようなおそれを除去すべきであると、こう考えておるのでありまして、私は、現に自衛隊にクーデターを起こすようなおそれは全くないと信じておるのであります。(拍手)
   〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(山中貞則君) 一部の部隊であっても、外国を侵略する心配はないかということでありますが、ちょっと、日本は島国でございますし、そういうことは考えられないということで、外国侵略の、もう全然そういう兵器の性能も装備も何もないわけでありますから、前提として考えることが不可能な状態の力が日本の自衛隊である、そのように考えます。
 なお、クーデターの問題は総理からお話のありましたとおりでありますが、さらに申し上げますならば、戦前のごとく統帥権が行政権の外にあった場合と違って、現在は総理が最高の指揮監督権者でありますし、したがって全然、本来の存在する根源が、源が違っております。完全な文民統制の実が行なわれておるわけであります。私は、自衛隊を追い詰めていかないで、開かれた集団にしたい、閉鎖集団にしてはならない、明るい開かれた、国民のために存在し、国民のためにのみ自分たちがあるという、国民のための、国民のためのみに存在するという、そういう自衛隊というものにしたいということでいま一生懸命やっておるところであります。
 それから周辺整備事業で、長沼の例をとられて、不公平があるというお話であります。千歳と比べられたのですが、事実関係はそうではございませんで、四十四年度から四十七年度までの実績は、千歳関係で約十四億四千万円であるに反し、長沼関係は約六億三千万円でございます。しかし、長沼のほうは代替施設として、すでに済んでおります保安、涵養のその他の代替施設分が十憾ありますから、ほぼバランスはとれておりますし、特別なことにはなっておりません。ちなみに、四十八年度の計画額で見ますれば、千歳関係は約八億六千万円でありますが、長沼はそれに対して約二億九千万円というのが予算上の実態でございます。(拍手)
#16
○議長(河野謙三君) これにて午後一時三十分まで休憩いたします。
   午前十一時五十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時四十五分開議
#17
○副議長(森八三一君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対する質疑を続けます。鈴木力君。
   〔鈴木力君登壇、拍手〕
#18
○鈴木力君 私は、午前の二回の質問にわたりまして長沼判決に対する政府の見解をただしましたが、それに対する田中総理の答弁のうちに、この判決の「判断は重大な誤りである、こう思っておるのであります。」、最後には「誤った判断を行なっておることは事実であります。」、こういう答弁をされておるのでありまして、私は絶対に承服ができません。少なくとも、たとえば長沼判決におきましても、政府は憲法の解釈は、統治行為論をとっておりましても、解釈は最高の国会が解釈をすることができるという説は政府はとりましたけれども、これはもちろん長沼判決で退けられましたけれども、その説に立ってみても、その国会に対して行政府の長である総理大臣が、「誤った判断を行なっておることは事実であります。」と、最高の判断をすることができるという説をとっておる国会に対して、この答弁もまた、まことに行き過ぎた答弁であると思います。不遜な態度であると言わなければなりません。行政府の長が、しかしこれは被告の立場でありますから、判決と見解が違う、だから承服しかねるから上訴をする、そこまでは、私も先ほども、わかる、了とするということを言いました。しかし、行政府の最高責任者である総理大臣が、判決に対して司法の独立を無視したようなこういう断定をすることは、独裁政治につながるというおそれさえ私は感ずるのであります。この際、田中総理に、いさぎよくこの「誤った判断」であるという答弁を取り消すことを要求をいたします。同時に、不遜な態度であった点につきましては、国会に対しましても陳謝をするべきだと思います。
 以上要求をして、私の再質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(田中角榮君) 長沼判決について、私が「誤りである」というように申しましたが、その真意は、同判決には憲法九条の解釈について重大な判断の誤りがあるという、異なった見解を持つということであり、政府としては、訴訟の当事者としてこの判決に承服できないので、控訴の手続をとった次第であります。(拍手)
#20
○副議長(森八三一君) 黒柳明君。
   〔黒柳明君登壇、拍手〕
#21
○黒柳明君 私は、公明党を代表しまして、防衛二法案に対し、総理、また関係大臣に質問したいと思います。
 午前中も指摘がありましたように、本来この審議は、委員会において審議を尽くされるべき性質のものであります。本来ならば、私と総理がこう面と向かって対陣して、さながら厳流島の武蔵、小次郎の一騎打ちを見るごとく、防衛論争で火花を散らす、これが本来の私のこれから質問する趣旨であります。残念ながら、この本会議で一方通行の質問をせざるを得ない、こういうわけでありますが、ひとつ総理も、私、本会議で総理とじっくり、委員会で総理とじっくり質問しているようなつもりでこまかい質問をしたいと思いますので、その点、御留意いただきたいと思います。
 本防衛二法案は、昭和四十六年、四十七年、過去二度も廃案のうき目を見ている事実は、一体何を物語っているのでしょうか。一国の防衛に関して、四次防、五次防と、とめどない政府の詭弁とごまかしによる法の拡大解釈により、軍隊としての自衛隊及び防衛力増強計画等の既成事実をつくり、その正当性を一方的に国民に押しつけるなどは、まさに、独裁政権による国民不在の防衛政策であると断ぜざるを得ないのであります。総理、そして各大臣は、国民がいま何を政府に期待しているのか、御存じでしょうか。歴代内閣の失政による住宅難、物価高、交通問題、公害、社会保障の立ちおくれ等、国民は一日も早い内政問題の解決を待っているのであります。それにもかかわらず、防衛予算の先取りを行なうなど、国民無視もはなはだしい、まことに嘆かわしい事態であります。本来ならば、先ほど申しましたように、本法案は委員会において徹底した審議を尽くすべきであります。しかし、きょうは残念ながら総理と同方向を――仲がよくて同方向を向いているわけじゃありません。同一線上で質問しなければならない。しかし、私はここに七十五のこまかい質問を用意しました。政府の答弁は、国民の納得のいくように、懇切丁寧に、かつまた具体的な誠意のある答弁をまずお願いして、私の質問に入りたいと思います。
 まず、自衛隊の防衛出動、治安出動、災害出動等についてお尋ねいたしたいと思います。
 一九六九年のいわゆる佐藤・ニクソン共同声明において、台湾、朝鮮の平和と安全はわが国の平和と安全にとって不可分のものであるとし、それ以後、たびたび国会においてこのことは確認されておりますが、これは、台湾、朝鮮地域において紛争が発生した場合に、自衛隊の出動もあるということを意味するものかどうか、まずお尋ねいたしたい。また、かつて法制局長官は、朝鮮で紛争が起きた場合、在留日本人の生命財産の保護のみを目的として自衛隊が出動する場合、相手国すなわち朝鮮側政府の要請がありさえすれば問題ないとの見解を披瀝していますが、それでは、万が一、朝鮮半島において不幸な事態が発生した際には、日本の権益保護という意味も兼ねて自衛隊の出動は可能と考えられるのかどうか、お尋ねいたします。
 また、自衛隊の防衛出動に関しては、自衛隊法七十六条で規定されております。そして同条三項では、防衛出動を規制する規定があります。この七十六条第三項と日米安保条約第五条の関係について、政府はどのようにお考えになっているのか。すなわち、自衛隊法第七十六条第三項は、安保条約第五条の上位規範と考えられるべきではないでしょうか。安保条約を優先するならば、当然安保の存在によって、平和日本が欲せざる戦争に巻き込まれることになり、わが党がかねてから懸念していたことが現実のものになると思うのでありますが、政府はどのような見解をとっているかお尋ねいたします。
 また、第四次防計画には「防衛の構想」という項があります。その中にはこううたわれております。「万一、侵略が発生した場合には、間接侵略および小規模の直接侵略に対してはわが国が独力で、それ以上の規模の武力侵略に対しては米国の協力を得て、これを排除する」旨が述べられております。そこで、ここにいう間接侵略とは、一体いかなる状態をいうのか。また、どういう角度からこれを判断するのか。政府のいう間接侵略の具体的な内容を、その規模、質など、基準もあわせて御説明願いたいと思います。
 次に、間接侵略と治安出動をしなければならないような状態とでは、どう違うのか。間接侵略に関して自衛隊が出動するような事態においては、防衛出動という名目のもとに出動するのかどうかもあわせて明らかにしていただきたいと思います。
 さらに、自衛隊法におきましては、自衛隊の任務として防衛出動、災害出動、そして治安出動等が規定されているのでありますが、自衛隊が治安出動をするような事態はどのような場合なのか。これもまたその基準を明確にして御説明いただきたいと思います。
 さらに、そのような事態においては、警察との関連、指揮系統はどうなるのか。その際の自衛隊の装備はどういうことになるのか、具体的に示していただきたいと思います。
 また、自衛隊が災害出動以外、すなわち防衛出動や治安出動の場合は、いわば非常時というべきときであります。その際、非常時立法というような点はどうなるのでしょうか。自衛隊法でこれらの任務がはっきりしている以上、当然こうした事態も考えられると思うのでありますが、伺っておきたいと思います。
 さらに、自衛隊法第七十八条、「命令による治安出動」についての第一項では、「間接侵略その他の緊急事態」ということが書かれているのでありますが、「その他の緊急事態」というのはどのような状態をさすのか、お尋ねいたします。
 これまでの世論調査によりますと、国民は自衛隊の災害出動を高く、ある意味では評価しております。ところが最近では、災害出動等に名をかりて防衛訓練を行ない、国民のひんしゅくを買っている面もあり、阿賀野川における渡河訓練はそのよい一例であります。災害訓練を名目とした軍事訓練は、当然国民の目をごまかすものといわざるを得ないのであります。災害訓練と軍事訓練の関係においては明確な一線をつけるべきであると思いますが、この点どうお考えになっているか明らかにしていただきたい。
 また政府は、自衛隊の地震災害時における実際の行動計画を国会に提出するといっておりますが、その時期はいつごろになるのか、あわせて承っておきたいと思います。
 次に、防衛計画についてお尋ねいたします。
 三次防の大綱にはこのように述べられております。「有事の際すみやかに事態に対処し、行動能力を継続的に維持しうるよう弾薬の確保等後方体制の充実を図る。」こうであります。これは有事即応体制をとっていることをうたっておりますが、四次防においてもこの体制を維持していくことには変わりないのか、お伺いいたします。
 また、四次防計画の中には、「小規模の直接侵略」ということで、これに対しては、先ほども申しましたように、独力で対処すると、こうなっておりますが、「小規模の直接侵略」とはどの程度の内容、規模を想定しているのか。さらには、このような直接侵略に対して、現在の自衛隊はどの程度に対応できることを目標にしているのか、お尋ねいたします。たとえば、ガソリン、弾薬、食糧等については、現時点においては何日間たえ得るだけのものがあるのかということも、あわせてお答えいただきたいと思います。
 次に、前佐藤内閣は、三次防段階におきまして、自衛隊を「抑止力として有効な防衛力」、こういう目標に沿って強化拡充してきたことは事実でありますが、政府は、現在の自衛隊では、侵略に対して抑止力どころか、自衛の力にもなり得ないという発言を行なっております。それでは三次防で言った目標とは矛盾があると思いますが、いかがでしょうか。また、この抑止力について政府はどのような見解をお持ちになっているのか、明快に御答弁をいただきたいと思います。
 また、従来政府は、通常兵器による局地戦に対処するということを明言しております。これは四次防計画中の、いま申しました「小規模の直接侵略」これと異なるものか、あるいは同意義のものか。もし異なるものであれば、その差異はどのようなものかを明らかにしていただきたいと思います。
 また、政府は、昨年十月、四次防を決定しましたが、今後将来の防衛計画についてどのような考えを持っているのか、明らかにしていただきたい。たとえば五次防、六次防についてはどのように考えているのか、また、欠員のはなはだしい自衛隊員の定員増については、今後どのような構想を持っているか等について御説明いただきたいと思います。
 特に、自衛官の募集が限界を迎えている今日、残された最後の手段は徴兵制以外にはないということもささやかれていることは事実であります。かつて法制局長官は、徴兵制について、「平時に国民を強制的に徴し、軍隊に編成して訓練し、戦時に備えるものが徴兵制であるとすれば、憲法の許容するところではない」としております。このことは、逆に有事徴兵制は違憲でないということになるのではないでしょうか。政府の徴兵制に対する見解を承りたいと思います。
 次に、沖繩自衛隊の実態、また、自衛隊の余剰兵器の問題についてお尋ねいたします。
 現在、沖繩に派遣されている自衛隊の実態について、隊員数、装備などについて、陸・海・空別に明らかにしていただきたい。さらに、沖繩への自衛隊の今後の増加計画についても、あわせて具体的に御答弁をお願いいたします。
 次に、自衛官の充足問題について、現在の充足状況を陸・海・空に分けて説明していただきたい。今日の状況は、自衛官の充足はきわめて困難であると聞いているのでありますが、これに対応する具体的な対策をお述べいただきたいと思います。先ほど長官は、このことは頭が痛い、こうおっしゃいまして、給与待遇面での改善と、こうおっしゃいましたが、根本的には、青年の愛国心をいまの自衛隊に託する、これは非常に無理である。そういう事態が自衛隊である。ここに充足率が非常に問題になる点があると思います。給与面あるいは待遇面での改善だけで、はたして長期的な、いわゆる政府のことばをかりると、国を守る自衛隊たり得るかどうか、私は疑問であると思います。また、現在の予備自衛官の実数はどのぐらいになっているのか。この予備自衛官の活用法、あるいは出動の方法等についても、具体的に示していただきたいと思います。
 また、陸上自衛隊の現在の定員十七万九千人に対して、その充足率は八七%といわれておりますが、問題は、兵器に関しては定員数どおりに確保されているため、小銃で五万八千丁、短機関銃で四千四百丁、六〇ミリ迫撃砲で七百門、五七ミリ無反動砲三百五十門、七五ミリ無反動砲八十門が余っているといわれているのであります。このような余剰兵器がありながら、小銃等は毎年九千丁ずつが新規に調達されるという計画が四次防であります。小銃等の更新は、具体的にはどのように実施しているのか。また、使用されなくなった兵器及び余剰兵器はどのように処理されているのか。また、装備品の編成表の改正はどうなっているのか、それぞれ明らかにしていただきたいと思います。
 次には、兵器の国産化についてお尋ねいたします。
 四次防におきましては、その主要の一つは兵器の国産化であります。最近、防衛産業界や経団連の防衛生産委員会などにおいては、政府に対して兵器国産化の比率をもっと高めるべきであるとか、兵器の輸出を認めるべきであるとかとの要求が出ております。産軍複合の危険な芽が生まれつつあるといわねばならないのでありますが、政府は、これに対しどのようにお考えになっているか、お伺いいたします。
 また、武器輸出禁止法案をこの際成立させるべきではないでしょうか。いかがでしょう。さらに、小銃など輸出された軍事物資の状況を、ここ三年間、克明に報告をしていただきたい。
 米軍基地の返還が実施されているにもかかわらず、返還された米軍基地は、自衛隊による肩がわり使用がされている実態があります。先ほども質問にあったとおりであります。返還後の米軍基地は自衛隊が使用せず、住民の福祉に還元させるという大原則を明らかにすべきでありますが、政府は、この点どのように考えているのか。また、過去三年間に返還された米軍基地で、自衛隊が使用しているところの場所、面積、使用状況等についても具体的に説明いただきたいと思います。
 あわせて、私は、航空自衛隊の木更津飛行場にある約五十万平方米に及ぶ九ホールのゴルフ場について指摘したいと思います。なお私は、この問題を取り上げる前、長官のほうにこのことを事前に通告しておきました。いまここで問題になっている自衛隊が、たとえ米軍がつくったゴルフ場であるにせよ、五十万平方米、九ホールにも余るこのゴルフ場でゆうゆう自適のプレイを楽しむなんということは、それこそ、国民感情として絶対に許せないわけであります。私はいつもこのゴルフのことを言うのですが、私はゴルフも自分でやれるような身分になりたいし、また、やる機会をつくりたいと思いますが、貧乏ひまなしということでありまして、する機会がない。しかしながら、各省庁で国有地にゴルフ場を持って、そして一つの省庁がこのゴルフ場を管理しているという省庁があったら、総理大臣、お聞かせ願いたい。
 まず、いま問題になっている防衛庁だけじゃないでしょう。防衛庁が国有地のゴルフ場を管理しているなんということは、これこそたいへんな問題であります。私はいま申しましたように、この事実は事前に防衛庁長官のほうに言っておきました。これについての感想と、当然きびしい処置をすることは間違いないと思いますが、その処置についてもお聞かせ願いたいと思います。
 また、さきの日米安保条約運用協議会で大量の米軍基地の返還が決定されましたが、その後の在日米軍基地の整理統合の進捗状況を示してもらいたいと思います。なかんずく、関東計画、また、沖繩における遊休施設に対し返還期日が明確ではありませんので、具体的にその予定及び返還状況もあわせて明確にしていただきたい。
 具体的な問題としては、赤坂にあります山王ホテルの契約についてであります。東京地裁の判決で国側の敗訴が決定いたしました。明け渡すためには代替施設がない、こういうことでありますが、どのようにこれを解決するのかもお聞かせいただきたいと思います。
 次に、横須賀基地の第七艦隊母港化が進捗しているわけであります。先ほども若干質問がありましたが、その状況を御説明いただきたいと思います。なかんずく、一千万世帯にものぼるといわれている家族の移住状態はどうなっているのか。また、空母ミッドウェーは――申しわけありません。一千世帯でございます。たまには間違えることもあります。一千世帯にのぼるといわれている家族の移住状況はどうなっているのか。また、空母ミッドウェーの寄港はいつごろに予想されているのか、お教えいただきたいと思います。
 また、核兵器積載の有無についてであります。従来ならば、アメリカがノーと言うと、日本はオウム返しにノーと言う、こんな「脳」のない話はもうやめたらいいと思う。もうこの際、核に対する国民の疑惑を抜本的に晴らすためには、いままでの答弁あるいは政府の姿勢を改めるべきであると思いますが、この点について、政府の考えをお聞かせ願いたいと思います。
 さらに、先ほども触れられましたが、このまま進めば、エンタープライズの寄港という既成的な容認事実もつくるのではないかという危惧がありますが、この点の政府の見解もお聞かせ願いたいと思います。
 次に、自主防衛についてお聞きいたします。
 政府は、これまで機会あるごとに、自主防衛強化の必要性を訴えていますが、政府のいう自主防衛の強化とは、具体的に何をさすのか、説明していただきたい。また、政府の言い自主防衛の範囲は、戦闘爆撃機が入るのか。これまで、戦闘爆撃機は持たないという態度を明らかにしているが、これは将来とも不変なのかどうか。あらためて、この際答弁をいただきたいと思います。さらに、日本の周辺海域には、他国の原子力潜水艦がかなり潜行しているのでありますが、これに対応するため、わが国も原潜を持つべきだという考えが自衛隊の中にあると聞いておりますが、これは自主防衛の範囲に入るのかどうかも御答弁を願います。
 最後に、シビリアンコントロールの問題についてお尋ねいたします。
 いわゆるシビリアンコントロールについては、前佐藤内閣の時代にも問題とされたところであり、シビリアンコントロールの確立こそ急務であります。ところが、先月上旬、自衛隊制服組による政治的発言が防衛庁の認可のもとに公表されました。これは、昭和四十年の三矢研究事件と同様の性格を持つものであります。すなわち、制服組がわが国の防衛政策に触れ、その大きな転換を要求する発言を行なったことは、明らかに文民統制から逸脱した行為であり、制服組による政治介入のあらわれであると言わざるを得ません。このような制服組による政治介入問題について、どのような考えを持たれているのか、所信をお伺いしたいのであります。また、このような問題が繰り返し発生していることは、すでにシビリアンコントロールが形骸化していることを示していると思うのでありますが、いかがでありましょうか。
 さらに、政府は、昨年四月の四次防予算の先取り問題、沖繩への自衛隊物資の搬入の際、わが党をはじめとした野党側の追及により、文民統制の確立を国民に公約いたしました。ところが、一向にその実があがっていないのでありますが、政府は、文民統制の確立のため、どのような措置をとられ、またとられていこうとするのか、この際、あわせて明らかにしていただきたい。
 また、今回の制服組による政治的発言の中には過視できない問題を含んでいますので、一、二政府の見解を確認したいと思うのであります。
 まず、従来から政財界の一部で主張されておりますマラッカ海峡防衛論を肯定する、わが国周辺海域以遠の効果的な海上交通保護の必要性が強調されておりますが、この問題について、政府はどのように考えているか。
 また、武器輸出禁止三原則の再検討、さらに東南アジア諸国からの軍事的支援の取りつけ等についても述べられておりますが、これについても、政府はどのように考えているか。
 さらに、平和目的である海洋開発への自衛隊の参加についても発言されておりますが、あわせてこの問題についても、どう考えられているか、所見をお尋ねしたいと思います。
 従来から、わが党は、シビリアンコントロールの確立を確かなものとするため、衆参両院に安全保障常任委員会の設置を強く主張してまいりましたが、この際、安全保障常任委員会の国会設置について政府はどのように考えているかも御答弁いただきたいと思います。
 次に、長沼判決についてであります。私、委員会におきまして若干総理に質問しました。ここでは、その補足の質問の意味で、若干の質問をいたしたいと思います。
 四年数カ月もの長い年月にわたって争われてきた長沼ナイキ基地訴訟で、自衛隊は違憲であるとの明確な断を下されたことは、実に意義深いものであることは言うまでもありません。憲法第九条の解釈を歪曲、拡大解釈してきた政府の従来の自衛隊合憲論が明確に違憲であるとの法的解釈により、いま自衛隊の存在自体が疑問視されているとき、四次防の遂行、そして防衛二法案を成立させようということは、今回の判決を無視した許しがたい暴挙であると思いますが、重ねて、再三再四、再五再六、この本会議場において総理の所見をお伺いしたいと思います。
 また、自衛隊を合憲とする学者は一二%ぐらいしかいないといわれております。第九条の条文を率直に読めば、自衛軍を持てるという解釈は絶対できません。さらに、憲法の条文に軍の編成や統帥に関する規定が全くないことから見ても、憲法が自衛軍を想定していないことははっきりしているのでありますが、この点の総理の御見解はいかがでございましょうか。長沼判決により、安全保障政策をもう一回根本的に考え直す気はないか。これも私先般聞きましたが、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。
 国会で安全保障論議が十分尽くされないために、司法で争わなければならないということになっております。国会の場に安全保障特別委員会を設け、国防論議を活発に行ない、そして、最終的には、国民にその方法は判断をゆだねることが大事であります。たとえ裁判所の判決が最終的にどうきまろうとも、この判決は尊重し、正面から政府がまじめに取り組み、国民の意見を反映する国会の場において十分審議を尽くすべきであると思うわけでありますが、いかがでしょう。
 さらに、自衛隊の公益性の問題であります。第三次防計画に基づいた航空自衛隊が装備するナイキ八一キュリーズの基地設置は、明らかに公益上に合致しないことであることは間違いありません。政府の「公益上」という根拠を伺いたいと思います。
 また、戦力にあらざる自衛力なんておかしいというのが一般庶民の常識であり、憲法を法律的に解釈すれば、違憲判決は当然の結果であります。しかし、政府は上訴の結果には楽観的であり、一般的にも上級審に行くほど政治裁判だと受け取られておりますが、総理は、高裁あるいは最高裁でこれは政府が絶対勝つんだと、こういう確たる自信があるかどうか、この際お伺いしておきます。また、あわせて、特に判決直後の関係閣僚及び党の要職にある者の談話等には、まことに無節操な発言が多く見られました。防衛庁長官の訓示にもその事実があったわけでありますが、これは、裏では司法を尊重すると言いながら、行政が司法に介入するという言語道断の態度であります。これらについて、総理は国民にどう釈明するのかも、あわせてお伺いいたします。
 今回の判決の結果、鎌倉市、釧路市等では、同市に委託された自衛隊の募集業務を最終判決が出るまで停止する動きがあります。判決を尊重すれば当然の処置と思われますが、政府はこれにどう対処するおつもりなのですか。
 次に、保安林指定解除による洪水防止等の代替工事は、判決文の中に、「保安林の機能に代替する機能を果たすべき施設は不備である」と述べられておりますが、政府は、現地のその不備の疑問点について調査されましたか、あるいはどのような処置をとられましたか。あるいは一方的に、この判決文をそうじゃないと、こう否定するおつもりでしょうか。
 さらに、最後に、私が懸念している一つには、今後も行なわれる数多くの自衛隊に関する裁判があります。間もなく判決が予定されている百里基地裁判、小西裁判等がありますが、具体的にこの近況をお聞かせいただきたいとともに、これに対しての見通しについて、政府の考えをお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、わが国の防衛と密接な関連を持つ国際情勢についてお伺いいたします。
 まず、北ベトナムとの国交樹立についてですが、このたび、日本とベトナム民主共和国との間に正式な外交関係が樹立されましたが、これはインドシナはもとより、アジアの平和前進に寄与するものであり、心から歓迎するものであります。また、これによって、インドシナ問題がより安定的な平和に向かうことを期待するものであります。ただ、今後の問題として、まずインドシナ和平の早期実現と、復興のための経済援助の強化でありますが、従来わが国は対米追随に堕し、アメリカのインドシナ戦略に加担してきたことは明白でありますが、まず、この従来の姿勢を十二分に反省することからインドネシアへの経済援助も始めなければならないと思いますが、これに対する反省の意思があるのかどうか、お伺いいたします。この反省の上に立って、ベトナム和平協定の完全実施のため、政府は全力をあげ、経済復興と発展に積極的に協力すべきであると思うのですが、いかがでしょうか。また、ベトナム民主共和国に対する援助の具体的構想も、あわせて示していただきたいと思います。
 また、在日米軍基地から南ベトナム向け武器補給が行なわれておりますが、北ベトナムと国交が樹立された現在、このようなことが行なわれていることは矛盾していると思いますが、今後の方針をお聞かせいただきたい。
 そもそも、このような矛盾が発生し、かつまた、今後の日本外交にとってマイナス要因となっているのは、結局、日米安保条約が存在するからであります。したがって、日米安保の長期堅持の姿勢は、この際再検討すべきであると思いますが、いかがでしょう。先ほど総理は、現時点においては、再検討の意思はないと、こうおっしゃっておりますが、しからば再検討をする、あるいは再検討を余儀なくされるであろうような国際的な情勢の変化、あるいは国内的な情勢の変化の要因とはどういうことであるかも、ひとつお聞かせいただきたい。これは事前に通告しておりません。ひとつ即答をお願いしたいと思います。
 また、現在、政府は、南ベトナム臨時革命政府との外交関係を拒否しているのであります。また、南ベトナム臨時革命政府との国交樹立については、ベトナム協定の趣旨からすれば当然のことではありますが、せめて百歩譲って、往来の自由だけでも早く認めてもいいのではないかと思いますが、いかがでしょう。
 次に、朝鮮問題に移ります。
 世界における分断国家のうちで、東ドイツ、北ベトナムと国交樹立を行なった今日、残っているのは、朝鮮民主主義人民共和国ただ一つになっております。政府は、この朝鮮民主主義人民共和国との国交樹立について、どのような計画をお立てになっているのか、所信のほどをお聞かせいただきたいと思います。
 また、国連問題ですが、去る十八日より第二十八回国連総会が開催されました。この総会の最大の焦点は朝鮮問題であるといわれております。この総会の席上、大平外相は、南北朝鮮の国連同時加盟を主張するようでありますが、これは、わが国として南北平和統一をはばむことになるのではないでしょうか。この点、所信はいかがでしょう。
 さらに、南北両朝鮮の国連同時加盟は、朝鮮民主主義人民共和国が反対しているのであります。この事実を政府は一体どう受けとめて、そして同時加盟を主張しようというのでありましょうか。一方の国家が反対している事実を知りながら、なおも同時加盟を強要する政府の行為は、南北平和統一をはばむ行為と言わざるを得ないのであります。さらには、内政干渉にも通ずる行動であります。その上、なお悪いことには、南北同時加盟に対して、アメリカ、イギリスとともに共同提案を行なおうとしているようですが、一体政府は、南北朝鮮の平和的統一を心から願ってそのような行動をとっているのでしょうか、お伺いいたします。
 また、このたびの国連総会の焦点は、国連軍の撤退問題もその一つであります。現在二十五カ国が共同提案国となっている、中国、ソ連など北朝鮮支持派提案による国連軍撤退の決議案に対し、政府はどのように考えているのか質問したいと思います。
 この国連軍撤退決議案に対し、日米など韓国支持派の共同提案による事実上の現状維持決議案は、十三カ国が提案しているのみで、否決される可能性が大だといわれております。したがって、現状維持決議案が否決され、国連軍撤退決議案が採択されたとき、政府は国連の決定を尊重することは間違いないと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、キッシンジャー構想として提案されている新大西洋憲章についてお尋ねいたします。
 この憲章は、軍事、経済両面にわたる米国主導の新世界秩序を形成するに際し、いわゆる世界政治秩序に衝撃を与えるまでになった新しい日本に対して責任分担を課そうというものであり、米国の利益のために、日本の利益をあるいは従属させようとする意図があるのではなかろうかという危惧があります。政府は、このような憲章に参加することをすでに決定しているのでしょうか、お尋ねいたします。あえてこの憲章に参加するならば、わが国は軍事及び経済の両面にわたって、日本が欧米の責任分担を肩がわりするようなことには決してならないようにしなければならないと思いますが、いかがでしょう。
 ところが、政府は、防衛問題については参加しない、と。元来、政治、経済と防衛とは密接な関係があるのであります。このため、この二者間の区分は非常に困難ではないかと、こう思います。政府が防衛に参加しないと断言するならば、その歯どめはどこに置くのか、具体的にお教えいただきたいと思います。
 最後に、間もなく総理が訪ソするわけであります。長年の懸案であった北方領土問題について、当然話し合うことになると思いますが、政府はどのような基本姿勢で臨もうとしているのか、お伺いしたい。ソ連の領土問題に対する姿勢に柔軟性が見られたという報告もありますが、国後、択捉、歯舞、色丹の四島を返還させるのだという姿勢には絶対変わりないというのかどうか、この際お聞かせいただきたいと思います。また、その際、この四島返還が平和条約締結の前提となるべきだと思いますが、総理の所信をお尋ねしたいと思います。
 また、これら四島のいわゆる北方領土については、返還後も日米安保に基づく米軍基地並びに自衛隊などの軍事基地は一切設置しない旨、この際明らかにして交渉に臨むべきであると思いますが、この点も所信をお聞かせいただきたいと思います。
 日ソ首脳会談においては、長年ソ連政府が言い続けてきた、いわゆるアジア集団安保構想がまたもう一つの議題になることも予想されますが、このアジア安保の内容については必ずしも明確なものはないわけでありますが、ソ連との交渉に臨む総理としては、基本的な考えがなくてはならないことは言うまでもありません。その基本的な考えをここに示していただきたいと思います。さらに、このアジア安保構想に対し・中国の参加が不可欠の条件であると思いますが、この点についての総理の見解を明確にしていただき、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(田中角榮君) 黒柳明君にお答えをいたします。
 まず第一は、台湾、朝鮮地域において紛争が発生した場合、自衛隊の出動はあり得るのかという問題でございますが、わが国の自衛権の行使は、いわゆる自衛権発動の三条件、すなわち、わが国に対する武力攻撃が発生したこと、この場合に、これを排除するために他に適当な手段がないこと及び必要最小限度の実力行使にとどまるべきことをもって行なわなければならないことは、これまで政府の見解として申し上げてきたところでございます。したがいまして、台湾、朝鮮地域において紛争が発生したということで自衛隊が防衛出動をするということはあり得ないわけであります。
 朝鮮における日本の権益保護も兼ねて自衛隊の出動は可能かということでございますが、現行の自衛隊法上から、そのような派遣は認められておりません。
 次は、自衛隊法七十六条第三項についての御質問がございましたが、国会が不承認の決議をした場合には、国会の意思のとおり自衛隊を撤収すべきものと考えておるのでございます。
 抑止力について申し上げますと、「侵略に対する抑止力として有効な防衛力の整備」は、わが国の国防の基本方針を述べたものでございまして、現在の四次防も同一の基本方針を掲げて、必要最小限の自衛力を漸進的に整備しようといたしておるものでございます。なお、抑止力とは、一般的に言って、万一侵略が行なわれた場合、侵略者に手痛い打撃を与える力を持つことにより、侵略の意図を思いとどまらせるような防衛力のことでございます。今後の防衛計画についてどのような考えを持っているかという御指摘でございますが、四次防以後の防衛力整備をどのように行なうかについては、今後慎重に検討してまいりたいと、こう考えております。徴兵制についての御発言にお答えをいたしますが、しばしば政府が申し述べておりますとおり、平時においてはもちろんのこと、有事の場合でありましても、徴兵制度という限りは、憲法の許容するところではないと考えておるのでございます。
 産軍複合問題に対しての御発言がございましたが、わが国工業生産に占める防衛生産の比率は、間々申し上げておりますとおり、〇・四%と諸外国に比べて非常に小さいのでございます。その意味で、産軍複合といわれるような事態はないと考えておるのでございます。将来ともそのような弊害が生ずることのないよう、十分な配慮をしてまいりたいと考えます。
 武器輸出禁止法案を成立させるべきではないかという御指摘がございましたが、わが国からの武器の輸出によって国際紛争を助長することは、厳に避けなければならないことでございまして、政府は、従来から武器輸出三原則を設定するなど、きわめて慎重な態度をとってきておりますことは御承知のとおりでございまして、今後ともこの方針に変わりはございません。
 最近三年間の武器輸出の状況について述べよということでございますが、日本からの武器輸出は、昭和四十五年度七十万円、四十六年度一億三千万円、四十七年度は実績ゼロでございます。輸出されたものは、警察用あるいは護身用のものでございます。
 制服組がわが国の防衛政策に関する提案を行なっていることは、文民統制を逸脱するものではないかという御指摘でございますが、御指摘の件は、防衛研修所研究資料「ソ連海洋戦略のわが国防衛に及ぼす影響について」であると思われますが、本論文は、防衛研修所職員伊藤一等海佐の所内限りの研究報告でございまして、部外に公表したものでもございませんし、また、防衛研修所あるいは防衛庁の見解を示すものではないのであります。
 文民統制につきまして、いかなる措置をとったかということでございますが、昨年十月の九日、文民統制確立のための措置として、国防会議の議員を増加して、その運用に充実を加えることを定めましたほか、一定の防衛の装備等については、国防上の重要事項として国防会議にはかるべきことを決定いたしたわけでございます。また、特定の事項のためには、国防会議事務局に専門家の会議を設ける等の措置を講じております。
 安全保障常任委員会を国会に設置すべしというお考えでございますが、シビリアンコントロールの根源は国会にあると考えておりますので、国会に安全保障を所管する常任委員会が設けられ、広く安全保障の諸問題が論議されることが望ましいということは、間々申し上げておることでございまして、ぜひ設置をしていただきたいと、こういうことも考えておるわけでございます。
 長沼判決についての御質問でございますが、先ほども申し述べましたとおり、裁判所が政府の見解と異なる見解をとることがあっても、それは、三権分立のたてまえからいって当然あり得ることでございます。また、いわゆる審級制度をとるわが国の裁判制度のもとにおきましては、下級審の判決に不服があるときは、さらに上級審の判断を待つべきこともまた当然なのであります。今回の事件のように、重大な憲法解釈にかかる問題について、司法機関の最終決定を待たずに何らかの措置をとるというようなことは、むしろ、政府としてのその責任を全うするゆえんではありません。自衛力の整備は、わが国の平和と安全を維持し、国民の生命と財産を守るため、ゆるがせにできない事柄でございまして、政府としては、従来からの方針について何ら変更する考えはございません。
 憲法の条文に軍の編成や統帥に関する規定が全くないという御指摘でございます。政府といたしましては、憲法第九条は、わが国が主権国として持つ固有の自衛権まで否定したものではなく、したがって、この自衛権の行使を裏づける自衛のために必要最小限度の実力の保持を認めるものであると解しておるわけでございます。旧憲法にあったような、一連のいわゆる軍事規定が現憲法にないということと、自衛のための必要最小限度の実力の保持を憲法が認めていると解することとは、何ら矛盾するものではないと、こう考えております。
 長沼判決により安全保障政策を考え直すべしという御発言でございますが、今回の事件のように、重大な憲法解釈にかかる問題につきましては、司法機関の最終決定を待たずに、国の安全保障政策を再検討するようなことは、むしろ内閣としてその責めを全うするゆえんではありません。
 裁判所の最終判決がどうきまっても、これを尊重せよということでございますが、最終判決は、これを尊重することが当然であり、その結果を踏まえて、国会でも審議を尽くしていただきたいと存ずるものでございます。
 ベトナム和平協定の完全実施のため、政府は、その経済再建に積極的に協力をすべしという旨の御発言でございますが、政府としては、南ベトナムの民族自決を確認したパリ協定の成立を歓迎しており、今後、対インドシナ外交を行なうにあたり、パリ協定の尊重が大前提であると考えておるのであります。わが国として、南ベトナムを含むインドシナ全域を対象に、戦災よりの復旧、民生安定、経済開発のために、できる限り協力をしてまいります。
 在日米軍基地から、南ベトナム向け武器補給が行なわれておるという旨の発言でございますが、わが国としては、米国が南ベトナム政府に対し武器等の補給を行なう場合には、損耗した武器等を国際監視のもとに、一対一のベースで補給することを認めているパリ協定に従って行なわれるものと考えており、この原則によって行なわれる限り、米国との安全保障条約上問題はないと考えておるのであります。
 次は、北ベトナムとの国交が樹立された現在、日米安全保障条約を堅持する姿勢を再検討せよという旨の御発言だったと思いますが、日米安保体制は、アジアにおける緊張緩和をもたらした基本的ワク組みの最も重要な柱であり、この柱が動揺することは、国際的不安定を助長することこそあれ、アジアの平和とわが国の安全に寄与する道ではありません。したがって、政府としては、軽々に安保体制を再検討するという考えは持っておらないのでございます。
 政府は、南ベトナム臨時革命政府との外交関係を拒否しておるという旨の御発言でございますが、政府は、ベトナム共和国政府を南ベトナムにおける唯一の合法政府として、これと外交関係を結んでおることは御承知のとおりでございます。いわゆる臨時革命政府支配地域の人々との交流につきましては、これまで同地域に対する復興援助の必要性、緊急性等を考慮して、ケース・バイ・ケースで検討いたしておりまして、今後とも、情勢の進展を踏まえ、適切に対処してまいる所存でございます。
 朝鮮民主主義人民共和国との国交樹立についての御発言でございますが、朝鮮民主主義人民共和国との国交樹立につきましては、南北対話の進展ぶり、南北両朝鮮と諸外国との関係等を総合して検討する必要がございます。現在のところ、具体的展望を持っておりません。
 北方領土問題についての姿勢、四島返還を日ソ平和条約の前提とすべしとの意味の御発言でございますが、わが国固有の領土である北方領土、すなわち歯舞、色丹、国後、択捉の返還を実現することによって、日ソ平和条約を締結するとの態度で臨みたいと考えております。過日、衆議院では決議をいただいておりますし、参議院の委員会におきましても御決議がございましたので、両院の御意思を十分体して折衝に当たりたいと、こう考えておるわけでございます。
 返還後の北方領土に米軍基地を設置しない旨と、アジア安全保障構想等に対するお考えがございましたが、これらは、まだ具体的な問題となっておりません。特に、アジア安全保障構想は全く内容が明確になっておりませんし、今後、内容を十分検討した上で慎重に対処しなければならない問題だと考えます。これらは日ソ首脳会議の段階において、隔意のない意見の交換を行ないたいという旨を考えておるわけでございます。
 まだたくさん御指摘がございましたが、残余の問題に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
   〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(山中貞則君) まず、間接侵略とは、一または二以上の外国の教唆または干渉によって引き起こされた大規模な内乱または騒擾をいうものと解しておりますが、その態様についてはさまざまな場合があり得るので、特定の事態を想定することはきわめて困難であると考えます。また、間接侵略は一または二以上の外国の教唆または干渉による大規模な内乱または騒擾をいうものと解しておりますけれども、このような間接侵略は、原則的には外部からの武力攻撃の形をとることはないであろうと思われますが、この場合には、国内における治安上の緊急事態として、治安出動をもって対処することとなりましょう。しかし、その干渉が不正規軍の侵入のような形態をとり、わが国に対する計画的、組織的な武力攻撃に該当するという場合は、自衛隊法第七十六条「(防衛出動)」の適用を受ける事態であると解しております。外部からの武力攻撃に当たる間接侵略として防衛出動をもって対処するか、国内における治安上の緊急事態として治安出動をもって対処するかは、個々具体的な事態に応じて判断、決定いたされるべきものであります。
 自衛隊の治安出動には、命令によるものと要請によるものとの二つの行動態様があります。御承知のとおりでありますが、命令による治安出動は、間接侵略その他の緊急事態に際し、一般の警察力をもっては治安を維持することができない場合、内閣総理大臣の命令により出動するものであります。要請による治安出動は、治安維持上重大な事態につき、やむを得ない必要があると認られる場合、都道府県知事の要請に基づき内閣総理大臣が出動を命ずるものであります。
 治安出動の際における自衛隊の行動の基準は、法令の定めるところに従って行なわれなければならないのであって、まず自衛隊法上、次に掲げる規定がそのおもなる基準となります。一は、自衛隊法第八十九条によって準用される警察官職務執行法の規定、すなわち質問、保護、避難等の措置、犯罪の予防及び制止、武器の使用。二には、同じく第九十条及び第九十五条の武器使用に関する規定。三は、同法の第九十六条の警務官の権限に関する規定。以上でありますが、これらのほかに、さらに具体的に行動の基準となるものは、警察との間に結ばれている治安出動の際における治安の維持に関する協定で定めた任務の分担及び、出動部隊の隊員は適正妥当な方途を尽くし、あらゆる困難を克服しすみやかに出動の目的を達成すること、部隊指揮官の命令がなければ武器を使用してはならないこと及び武器使用にあたっては法令を順守し、損害を最小限度にとどめること等を定めた自衛隊の治安出動に関する訓令等であります。
 警察との関連については、防衛庁長官と国家公安委員長との間で締結した協定等により示されておりますが、まず任務分担については、治安維持の第一次的責任は警察にあるので、自衛隊は警察の支援後拠となるほか、必要がある場合には、重要な施設等の警護及び実力をもってする暴徒の鎮圧に当たることとしております。指揮関係については、双方、相互に指揮命令せず、緊密に協力することといたしております。治安出動時における自衛隊の使用する武器については、一応自衛隊法第八十七条の規定により自衛隊の保有する武器でありますが、武器使用の根拠である警察官職務執行法第七条並びに自衛隊法第九十条及び第九十五条は、いずれも「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。」と定めていますので、使用武器の範囲も、事態に応じおのずから制約されるものであります。
 さらに、その際における非常時立法の問題でありますが、いわゆる戒厳令もしくは国家総動員法というような非常時立法の制定は考えていないということは、従来政府がたびたび答弁しているところであります。有事の際に自衛隊が任務を達成するためには、現在の法制だけでは不備な事項もあり、所要の法令の整備を行なうことが必要でありますけれども、他省庁の所管事項にわたる事項も少なくなく、また、現在の情勢にかんがみて特にその必要性があると考えられませんので、現在のところ、具体的なそれらの案の作成等は行なっておりません。
 その他の緊急事態でありますが、自衛隊法第七十八条第一項でいう「その他の緊急事態」とは、外国の教唆または干渉と関係なく発生する大規模な内乱その他で、たとえば数都道府県にわたり同時発生する形態の騒擾事態、または著しく長期にわたり継続するような騒擾事態、さらに警察の装備する武器等では対処し得ないような凶器類を暴徒が使用しているような騒擾事態というものを考えております。
 さらに、災害訓練の問題でありますが、自衛隊はその任務を完全に遂行できるよう練度の向上を目的として平素訓練を奨励しておりますが、災害派遣訓練は、あくまでも天災地変その他の災害に際して、人命または財産の保護のため実施しているものでありまして、防衛目的のため実施しているものではありません。
 なお、阿賀野川の渡河訓練について触れられました点は、誤解があるようでございますが、これはあくまでも演習、すなわち普通科連隊の渡河訓練でございまして、その意味で、その地域の近くでいままで行なっておりました防災渡河訓練とは、ややその態様を異にしておったわけであります。
 関東南部に大震災が発生した場合の、自衛隊の独自の救援活動その他の具体的な計画というものを国会に提出すると言ったが、いつごろ出せるかという話でありますが、現在資料を整備いたしておりますので、なるべく早く提出をいたします。(「議事進行」「山中長官らしくないわね」と呼ぶ者あり)一つでも落とすとたいへんなんです、たくさんありまして、
 次に、「有事の際すみやかに事態に対処し、行動能力を継続的に維持し得るよう弾薬の補給等後方体制の充実を図る。」として三次防でやっておりますが、その有事即応体制というものは、四次防においても変わりないかということでありますが、表現はいたしておりませんが、その姿勢は変わりございません。
 なお、現在の日本の防衛力においては、完全に有事即応がみずからだけの力でできるかどうかについては、なお整備中でございますので、そのようにしておりますけれども、姿勢としては、当然の姿勢として変わっていないと思っていただいてけっこうであります。
 次に、小規模の直接侵略でございますが、それはわが国の防衛力をもって排除し得る程度のものを一応考えておりまして、規模、内容等を具体的に示すという問題は、侵略の事態がきわめて複雑な様相を予想されまするし、なかなか問題が多うございますし、一つ一つの推定によってこの程度のものということがきわめて表現が困難であると考えます。
 それに対して、いまの自衛隊がどの程度に対処できるかということでありますが、その能力は侵略の態様、準備期間の長短等いろいろ変わるということがございますし、現在の能力で一律にどの程度と申し上げることがなかなかむずかしゅうございます。
 さらに、ガソリン、弾薬や食糧等の備蓄は一体どれくらい、何日間ぐらい持ちこたえられるかということでありますが、一応弾薬の備蓄量等を申し上げれば、四十六年度末を例にとりますと、陸において六万三千トン、海において八千トン、空において三千トン、合計七万四千トンでありますが、しかし、弾薬の種類によってずいぶん違っておりますために、これでもって何カ月戦えるという推定は、攻撃する側の問題も、一応の想定を、どこにどういう程度を想定するかということにかかわってまいりますので、何カ月と、あるいは何日間と申し上げるのはきわめてむずかしゅうございます。なお、ガソリン等は、陸において一万七千キロリットル、海において十五万八千キロリットル、空において十一万九千キロリットル、合計二十九万三千キロリットルの一応の在庫を四十七年度末で持っております。食糧については、非常用の糧食として、陸においては一応四十七年度末で二十日分、海において十五日分、空において五日分程度でございます。
 次に、通常兵器による局地戦ということでございますが、小規模の直接侵略とどのような差異があるのかということでございます。通常兵器による局地戦とは、核兵器が使用される世界的規模の全面戦争に対立する概念のものでありますが、その規模、程度等については、先ほども申しましたような概念で千差万別であると思われます。一方、四次防では、三次防と同じく、わが国の防衛力は通常兵器による局地戦以下の侵略事態に対応するものとしておりますけれども、特にその中でも、小規模の直接侵略に対しては、わが国が独力でこれを排除することとしております。なお、通常兵器による局地戦であっても、小規模の直接侵略以上の規模の武力侵略に対しては、米国の協力を得てこれを排除することもあり得ます。
 次に、三次防、四次防ときて、引き続き五次防、六次防と進めていくのかという話でありますが、前にも御答弁申し上げておりまするように、定員に関する経常費的な予算その他等は、今後は単年度的な計算をしていってもいいのではなかろうかと思いまする反面、兵器、ことに艦船あるいは航空機等は、長期にわたって契約の上、調達に至るものでありますから、それらは、やはり国会にその装備、規模の全容を知っていただくためにも、長期的な計画が必要であろうということで、いまのところ一応私の見当として、そういうことを他動的に、あるいは自動的に、三次防から四次防になったのだから、四次防の次は五次防だという考えはいかがなものであろうかということで、一応検討をしておるところでございまして、結論はまだ得ておりません。
 欠員の問題は、先ほども御質問がございましたとおり、ことに陸においてたいへん多いわけであります。したがって、これに対して、私どもは、欠員をどのように充足するかということは、先ほども御質問でも理解していただきましたように、たいへん困難を感じておる。それについて、御指摘のありましたような、いろいろな考え方というものをもって対応していかなければならぬだろうということは、私も考えておるわけであります。単なる給与や退職金等で努力をしただけでは、精神面の問題がない限りむずかしいという御指摘はごもっともであると考えて、努力をしてみたいと考えます。
 沖繩に派遣されている自衛隊の隊員数、装備などを、陸・海・空別に明らかにせよということでありますが、陸においては約一千八百二十名で、主要装備は、ヘリコプター六機、多用途ヘリコプター二機、連絡偵察機二機、海においては約四百二十名で、支援船三隻、空においては約二千六百三十名で、戦闘機二十一機、練習機二機、練習機T33A一機、救難艇二機、救難ヘリ二機、以上の主要装備のもとに、計四千八百七十人でございます。
 今後の見通しでありますが、四十八年度末までには、既定計画として海上自衛隊のP2J対潜哨戒機三機を追加配備して、九機とする計画があります。四十八年度末の配備予定人員は、したがって約五千六百三十名になりますが、四十九年以降の計画はまだ決定しておりませんけれども、沖繩配備について大きく増加する見通しはございません。
 自衛官の充足状況について、陸・海・空に分けて説明しろというお話がございました。先ほども申しましたとおりたいへん困っておりますが、陸については、充足率は八五・三%で、欠員は二万六千二百七十一名ございます。海については、充足率九九・一%で、三百五十八名の欠員であります。空は、充足率九八・一%で、欠員七百九十九名であります。これの充足については、先ほどお話しになりましたように、努力をしてまいるべき責任が私たちにあると考えます。
 予備自衛官についてでございますが、予備自衛官は、陸上自衛隊の予備自衛官の場合にあっては、有事の際、師団等の主動部隊が転用されたあと地に、軽普通科連隊を編成配備し、小規模な戦闘及び道路等の復旧、住民の保護等に当たらせるほか、兵たん支援部隊に充当したり、戦闘間の人員損耗補充に充当する計画でありますが、今回の海上自衛隊の予備自衛官は、すでに編成されておりまする航空陸上部隊の強化及び後方支援、基地、港湾防備に充当する計画であります。その出動の方法については、防衛出動が発せられた場合において、防衛庁長官より防衛招集命令を受けて招集され、自衛官としていま述べたような職務を遂行するわけであります。なお、その充足状況は、陸海合わせまして三万四千四百八十八名に対し九五%でありまして、欠員が千八百十二名でございます。
 次に、装備の問題で、小銃の更新についてでありますが、小銃の更新の順序は、方面隊、師団等の戦闘部隊、戦闘支援部隊、教育部隊等を最初に充足し、逐次補給処等の小銃を更新する計画でございますが、四次防中に、定数である約十七万丁全部を更新し、若干の予備自衛官用を更新する計画でございます。
 余剰兵器の処理については、御承知のように、日米相互防衛援助協定及びこれに基づく返還取りきめによって、米国政府に返還することになっております。それについては、米側に返還通報することもいたしておりますし、米側から注意を喚起する方法もあるわけであります。米側のほうでは装備品の状態を確認し、あるいは再配分の、日本以外の国に対する照会をしたり、非軍事化の処理がなされるかどうかの確認等、いろいろ手続に長期間を要するために、順調になかなかまいらない点がありまして、私も米側に対して、すみやかにこの取りきめを守って、取りきめのもとの返還すべき兵器は引き取ってほしいということを申し入れておるわけであります。
 さらに、編成表の改正でありますが、小銃については旧式のM1ライフルと国産の六四式小銃とを区別しておりませんので、定数は小銃の更新に応じて編成表を改めることはありませんが、一般的にそういう場合は対戦車砲の無反動砲を対戦車ミサイルに更新、近代化する場合、もしくは高射砲を装備する特科大隊を廃止してホーク部隊を編成、新編する場合等があげられると思います。
 返還後の米基地と自衛隊使用の問題でございますが、これは午前中も答弁いたしましたように、私たちが、自衛隊が使わしていただく場合においては、わが国の防衛力整備のために必要最小限にとどめる努力をすべきだと考えますし、ましてや、私たちが、自衛隊が優先的にそこに入る権利があるのだなどという考え方を持ってはならないことは、就任当初から私の明確にしておるところであります。したがって、その返還されたものの利用計画、その他払い下げのしかた等についても、主管省である大蔵省の国有財産の処分のしかたについて、十分に関係地元自治体等の理解と納得を得てやっていきたいということでありますが、過去三年間の返還状況及び自衛隊の使用状況を全部言えということでありますが、四十五年度には十三件、七十三万平米でございました。そのうち自衛隊が使用させていただきましたものが四件、そのうちの一件は一部使用でありますが一万平米でございます。次の昭和四十六年度には十九件、一千五百四十九万平米でございますが、自衛隊の使用さしていただきましたものは、一部使用二件を含む五件でございまして、三百八十万平米でございます。昭和四十七年度は四十六件の二千六百八十七万平米でございますが、自衛隊の使用いたしましたものは、一部使用五件を含む十七件で、六百六十六万平米でございます。昭和四十八年度、六月一日まででございますが十二件、一千八百六十一万平米でございますが、自衛隊は八件、百四十三万平米でございます。
 なお、木更津のゴルフ場の九ホールの処理についてでありますが、私がこれを知ったのが九月の初旬でございました。したがって初耳でございましたし、ほかにもあるだろうと思って調べましたところ、三カ所ほどございました。したがって、自衛隊が今日、米軍の二4(a)によって管理使用しているといっても、私ども自衛隊というものが、体育訓練といっても、そのような特殊な条件の、ゴルフをやれるような環境を許されているとは思いませんので、相談の結果、全部これを廃止し、バンカーもグリーンも全部草っ原にして、あとは訓練の場として体育で使う場合、何をやろうと野球場その他はけっこうであるということで、全部九月の初旬にすでに使用も停止いたしております。米軍のほうと、木更津の問題はこれについて廃止をし、普通の草っ原にすることについての同意を得る手続をとっておりますが、これは確実にとれると思います。今後、自衛隊がゴルフ場をみずからのみが使用して持つことは、あり得ないということをはっきり申し上げておきます。
 次に関東計画でございますが、返還期日が明確でないというお話でございますが、この返還期日につきましては、立川飛行場全部、関東村住宅地区全部、水戸対地射爆撃場全部、ジョンソン飛行場の大部分百六十四万平米、府中空軍施設の大部分五十六万平米、キャンプ朝霞南部地区大部分の百二十三万平米で、六施設、合計二千二百十八万平方メートルでございまして、これは三カ年計画で返すわけでございますが、そのうち返還済みのものは、立川飛行場の一部四十八万平米、ジョンソン飛行場の百六十四万平米、キャンプ朝霞南部地区の百十六万平米、水戸対地射爆撃場の一千百四十八万平米、以上はいずれも六月、八月等においてすでに返還されているものでございます。その後の残りの部分は、三カ年計画で逐次返還される予定であります。
 沖繩についてもはっきりしろというお話でありましたが、沖繩についてはボローポイント射撃場は四十八年の、ことしの六月三十日、天願通信所は九月の十五日、平良川通信所は六月の三十日、トリイ通信施設は九月の十五日、西原陸軍補助施設は六月三十日、泡瀬倉庫地区は六月の三十日、牧港サービス事務所は六月の三十日、浦添倉庫は六月の三十日、空軍海軍補助施設の一部二万六千平方メートルについては七月の三十日、いずれも返還されております。なお、那覇空港地区の海軍航空施設並びに空軍、海軍補助施設については、五十年の海洋博開催時期をめどに返還を急いでおりますし、那覇空軍、海軍補助施設及び牧港住宅地区については、代替施設の完成を待って返還されるよう、いま急いでおります。
 山王ホテルで東京地裁によって国が敗訴いたしました問題についてお答えいたしますが、国はその後九月の十二日、東京高裁に控訴いたしております。山王ホテルについては、かねてからほかの適当な場所に移転したほうがいいということを私どもも考えまして、米側ともおりおり相談の上でその適地をさがしておりますが、向こう側のそれにかわる条件を満たすような場所がなかなかその付近にございませんし、したがって、この検討を早急に、急いで結論を出したい、さように考えております。
 自主防衛というのは何かという話でありますが、これは日米安保体制を基調としながら、憲法の許容する範囲内で、みずからの国はできるだけみずからの手で守るということでありまして、これは従来からわが国の防衛の基本的な方針になっておるわけでありますが、四次防においても、この方針に基づいて、自衛のため必要最小限の防衛力の漸進的な整備をはかるものであります。特に自主防衛の強化を強調しているわけではございません。
 その範囲の中に戦闘爆撃機が入るのかということでありますが、戦闘爆撃機ということばは、現在はあまり使われていないと思われますけれども、従前は、対地攻撃を主任務とする戦闘機という意味で用いられていたようであります。典型的な戦闘爆撃機と言われていたF105やF111のように大きな爆弾搭載量と長い行動半径を持つ航空機は、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えると言えるかもしれないのであります。わが国の場合はそのようなものを持つわけではございませんで、わが国の新しく予定しております新支援戦闘機であるFST2改のようなものは、自衛上必要最小限の装備でありまして、足も短くて、行動半径から見ても他国に脅威を与えるようなものでもございませんし、巨大な脅威を与える爆弾を搭載する能力もございません。
 原子力潜水艦を持つべきだという意見があるが、どうかということでありますが、これはもうたびたび明らかにしておりますように、政府の方針として、船舶の推進力としての原子力の利用が一般化、普遍化した場合以外、それ以前に、自衛隊の艦船、原子力潜水艦だけにそれを優先採用していくということを考えていない。ことに、それは原子力基本法上も認められていないことをたびたび申し上げているところでありますから、そのような意思はないということであります。
 マラッカ海峡防衛論でございますが、そのようなことについて確かに触れた点がありますけれども、私どもは、せいぜい一千海里くらいが精一ぱいの、そこまでたどり着いたわれわれの国に対する輸送物資の艦船の護送能力であろう、しかも、それは二航路帯しか守れないということをたびたび申し上げておりますが、それより長大な海上交通路というものを守ろうという構想がそもそも間違いでありますし、アメリカも、自力でもってマラッカ海峡は守れないことを認めておるぐらいであります。したがって、そういうことは不可能なことでありますし、考えてもおりません。しかしながら、やはりそれらの関係諸国との友好関係を維持していこうとする努力は、これはまた当然外交努力によって必要とされる分野であることは、私が申し上げるまでもありません。
 次に、武器輸出三原則でございますが、御承知のとおりの総理が御答弁になりました範囲でございますが、そういうことで、きちんと三原則のもとに管理されておりますし、さらに、通産大臣の許可を得なければ輸出ができないということになっておりますから、貿易管理令でございますから、したがって、日本の武器産業というものは、輸出産業になり得ないということは明確であります。
 次に伊藤論文を取り上げられたわけでありますが、東南アジア諸国からの軍事的支援の取りつけというようなことについては、私たちはそのようなことを考えておりませんし、第一、具体的な軍事力支援取りつけというのが、わが国の専守防衛で他国に対して何ら、日米安保を除き、提携のしようのない自衛力でもっては不可能なことでありますし、われわれはやはり外交努力を優先さすべきである。したがって、論文の性格もそのようなオーソライズされたものではありませんし、そういうことは考えておりません。
 海洋開発に対する自衛隊の参加ということを述べられたのでありますが、防衛庁では、海洋の調査研究関係の業務は確かに行なっております。これは、海上自衛隊の重要な任務である対潜水艦作戦及び対機雷作戦等を効果的に行なうために必要不可欠なものであるからでございますが、必要に応じ、現在でも、海上自衛隊が観測して得たこれらに関するデータは海上保安庁に提供しております。しかし、それはわが国の海洋開発に自衛隊が直接参加しているというようなものではございませんで、そういうことは今後も考えておりません。
 次に、これは私から答弁いたす範囲かどうか、きわめて疑問でありますが、長沼のミサイル基地設置が森林法二十六条の公益上の理由に該当する根拠ということでありますが、一応答弁をさせていただきますならば、私どもは、われわれはその立場から、日本の防衛というものは必要最小限、憲法の許容する範囲内の自衛力を持ってしかるべきであるし、また持つべきである、そう思っておりますから、したがって、おっしゃるように、百三十キロしか飛ばないようなものであっても、迎撃用としてはやはり強力な威力を持つものでありますし、専守防衛のために必要でありますし、当長沼は、北海道道央部の心臓部を守るための、ほかにかけがえのない場所として選んだものでありますが、しかし、裁判上は、自衛隊は憲法違反であるからその存在を認めない、したがって、憲法で認められないものが主張する公益上の根拠ということは全くナンセンス――ナンセンスとは書いてありませんが、そういうばかなことはないという意味の、いわゆる憲法違反の存在が公益上の理由を主張することは認められないということでありますけれども、逆に言うと、もし憲法上合憲であるということになれば、当然それは公益上の性格を持つものであると、私どもはそのように一審の判決からも考えるところでございます。
 さらに、この裁判の結果として、鎌倉市、釧路等をあげられて、自衛隊の募集業務を判決が最終確定するまで停止する動きがあるがどうかということでありますが、私どもは、そのようなことのないように一生懸命努力をしていかなければなりませんし、現実には、具体的に募集業務の停止を申し出てまいりました市町村は、現在のところございませんが、そのようなことがありますならば、私たちとして、まず自治法、自衛隊法のそのような法律上の権限を云々するよりも、やはり自衛隊の持つ任務を理解してもらいつつ、その業務の継続をお願いするとともに、私どもの直接の募集努力でもそれをカバーする必要があると考えておるわけでございます。
 次に、保安林解除に伴うことの洪水防止その他等の代替工事について不備であるという判決があるということで、どうしたかということでありますが、直ちに判決文を読んで、不備であるという、一体何だろうかということで、いろいろとあげられておりまする限りのことばの上から検討してみました。しかし、私たちの検討の過程においては、それは十分に調査され、十分に計算され、そしてまた慎重に設計、着工、施工されたものである。したがって、代替機能は完全であるという結論を得たわけであります。
 農業用水対策としては、用水路の漏水防止及び堰堤の建設、飲料水の対策としては、町水道の関係地域に対する延長及び各戸給水をやり、砂防対策として砂防堰堤の七基の建設、洪水対策としてダム堰堤建設等を行なっております。これについては、先ほど申しましたように、機能は大体完全に整備されておると考えられます。(「うそよ、水浸しになっているのよ、畑」と呼ぶ者あり)あれは水系が違うんです。
 次に、百里裁判、百里基地の裁判についてはどうかということでございますが、これは現在係争中でございます。御承知のように、国が石塚力氏を相手として訴えを提起して以来、現在までに九十二回の口頭弁論を終了しておりますが、結審の見通しは立っておりません。国としては、すみやかに公正な判決が下されるよう期待をしております。
 なお、小西裁判の問題をおっしゃったのでありますが、これも四十四年十一月二十二日、新潟地方裁判所に公訴の提起が行なわれまして、本年九月二十一日まで、二十八回の公判が行なわれました。この間の公判内容は、自衛隊の合憲性、自衛隊の訓練内容等について、弁護人側からの釈明要求、意見陳述等が行なわれました。第二十五回以降は、被告の上司二名についての証人尋問が行なわれております。これについてもすみやかなる完結を願っております。
 以上、取り残しはなかったと確信をいたしておりますが、以上をもって一応の答弁といたします。(拍手)
   〔国務大臣二階堂進君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(二階堂進君) お答えいたします。
 米軍基地の返還、日米軍事基地の整理統合の件につきましては、山中長官からお答えがございましたので、省略させていただきます。
 横須賀の基地の第七艦隊の母港化に関するお尋ねでございましたが、第七艦隊につきましては、旗艦オクラホマシティの乗り組み員の家族約三百八十世帯及び第十五駆逐隊の乗り組み員の家族約六百世帯が、現在すでに横須賀及びその周辺に居住いたしております。ミッドウェーについては、現在約二百九十世帯が居住しているものと承知いたしております。
 なお、ミッドウェーの寄港の時期等につきましては、現在のところ情報を受けておりません。
 米原子力潜水艦が核兵器を積載しているかいなかについて、ノー、ノーというようなことはけしからぬというお尋ねでございましたが、核兵器のわが国への持ち込みは、すべて事前協議の対象とされておるのでありますから、米原子力潜水艦が、わが国との事前協議なしに核兵器を搭載してわが国に寄港することはございません。事前協議に関する交換公文に示されている約束を順守することは、米国にとって安保条約実施上の義務であり、その条約が日米両国の信頼関係に基づいている以上、政府として、米国のかかる約束が履行されていることに対し、何ら疑いを有しているものではありません。
 将来、横須賀米軍基地へのエンタープライズの寄港という事態が生じた場合、政府はこれを認めるかということでございますが、エンタープライズの横須賀寄港については、米側より何ら具体的要請を受けておりません。政府といたしましては、御質問のごとき事態を想定してお答えすることはできません。
 今回の国連総会において、南北朝鮮の同時加盟を主張するようであるが、これは南北平和統一を拒むためではないかというお尋ねでございます。政府としては、朝鮮半島における平和と安全が確保され、平和的統一が一日も早く実現されることを願っておるが、右実現に至る過程における措置として、南北両朝鮮が国連に加盟するのであれば、国連の普遍性を高める見地からもけっこうなことだと考えております。しかし、韓国が、国連加盟の多数が望むならば、国家統一への妨げとならないことを条件に、北朝鮮とともに国連に加盟することに反対しない旨表明しているのに対して、北朝鮮は、現在までのところ、即時同時加盟に反対し、高麗連邦共和国という単一の国名で、一つの国家として加盟するほうが望ましい旨表明をしており、国連に加盟するかいなかの問題は、最終的には当事者みずからが決定すべきものであることは申し上げるまでもございません。政府としては、この問題に対する当事国の最終的な意向や各国の態度等を見きわめつつ、本件に対処いたしてまいりたい所存でございます。
 南北両朝鮮の国連同時加盟は、朝鮮民主主義人民共和国が反対しておるのにもかかわらず、アメリカ、イギリスとともに同時加盟の共同提案国となっておるのは、南北朝鮮統一を拒む内政干渉であると思うがどうかというお尋ねでございますが、わが国が共同提案国となって提出いたしました決議案は、南北朝鮮が、一つには普遍性の精神にのっとり、二つには朝鮮の平和統一を促進する手段として国連加盟を考慮するよう、希望を表明しておるものであります。最終的に加盟するかどうかは、当事者が自主的判断で決定すべき問題であることは申し上げるまでもございません。したがって、本件決議案が内政への干渉であるという御指摘は全く当たらないと考えております。
 中国、ソ連など北朝鮮支持派二十五カ国提案による国連軍撤退決議案に対する政府の考え方はどうかというお尋ねでございますが、政府といたしましては、朝鮮問題が一日も早く平和的に解決され、朝鮮半島における国際の平和と安全が確保されることが望ましいと考えているが、同問題は、いまだ最終的に解決されておらず、同地域の平和が完全に回復されていない現状においては、国連の平和維持のための活動は依然重要であり、国連軍司令部の取り扱いは慎重を要するものと考えます。いずれにしても、最終的には国連のきめる問題であり、わが国としては、このような基本的な立場に立って、今次総会の決議案の共同提案国となっている次第でございます。
 日米など韓国支持派十三カ国の共同提案による軍事上の現状維持決議案が否決され、国連軍撤退決議案が採択されたとき、政府は国連の決議を尊重するかということでございますが、政府は、朝鮮半島における国際の平和と安全の維持が重要であるとの立場に立ち、この点で、国連軍が一方の当事者となって締結された休戦協定により保障されている現在の同地域における休戦体制の維持確保は、きわめて重要であると考えております。また、国連軍司令部は、安保理事会決議により設立されたものであり、国連軍の取り扱いは安保理事会の権限に属する問題でございます。以上の点を考慮して、わが国が共同提案国となった今次総会決議案は、安保理が朝鮮問題のうちその責任に属する部面について、休戦協定の堅持及び朝鮮半島における平和と安全の維持を確保するとの見地に立って検討するよう希望を表明しておる次第でございます。いずれにいたしましても、政府としては、国連軍の問題について権限を有する安保理事会の決定があれば、それを尊重することは申し上げるまでもございません。
 キッシンジャーの提案いたした新大西洋憲章につきまして御質問がございましたが、いわゆるキッシンジャー構想の目的は、日本、アメリカ、西欧諸国等工業化の進んだ民主主義諸国の間で、今後の相互の協力関係について、共通の一般原則を確認し合おうということにあると理解をいたしております。したがって、これらの関係国が、互いに協議の上、共通して受け入れることができるような具体的内容のものとなるべきであって、特定の国の意思を一方的に他の関係国に押しつけるような種類のものではない。政府はこの構想に対し積極的関心を持っており、上述のような、その本来の目的に沿った具体的内容が固まっていく過程で、米国をはじめ関係各国と十分に意見の交換をしていきたいと考えております。さしあたって、本日、国連総会に出席するため出発いたしました大平外務大臣が、ニューヨークにおいて関係各国の外務大臣と、この問題につき十分協議をする予定でございます。
 なお、防衛の分野におけるわが国の立場が他の関係諸国と異なるところがある点については、米国及び西欧諸国は十分理解をしておるようであり、先般のキッシンジャー国務長官の米国議会における発言も、その点を明らかにいたしておるところでございます。
 以上でございます。(拍手)
#25
○副議長(森八三一君) 二階堂国務大臣。
   〔国務大臣二階堂進君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(二階堂進君) ソ連の提唱するアジア安保構想は、内容が必ずしも明確でないが、少なくとも、領土の現状固定という考え方が基本にあると思われるので、ソ連との間に領土問題を有するわが国としては、慎重に対処する必要があります。かりに、アジア地域においてこの種の安全保障体制をつくるとするならば、当然中国参加は不可欠であると考えます。(拍手)
    ―――――――――――――
#27
○副議長(森八三一君) 中村利次君。
   〔中村利次君登壇、拍手〕
#28
○中村利次君 さきに質問をされました議員各位がすでに指摘をされたところでありますけれども、私もまた、本来ならば、委員会で十分きめのこまかい討論を尽くして採決の上本会議にかけられるべきこの法案が、こういう形で本会議で質疑をしなければならないということをきわめて遺憾に思うものであります。
 二百八十日という前例のない長期国会であったにもかかわらず、委員会において審議を尽くすことなく、こういう形で質問を行なわなければならないというのは、これはなぜか。議長が提唱される参議院改革の趣旨に沿うものでは断じてないと思います。七月十七日、本院の三委員会で起きた事態は、本院の正常な運営に汚点を残しましたし、七月二十三日、衆議院で行なわれました会期延長の単独採決もまた、議会制民主主義に重大な汚点を残したものと考えます。このようにして異常状態となった国会は、前尾衆議院議長のあっせんによってようやく正常化をされ、本院もまた、八月の二十一日、自民党、社会党、民社党、二院クラブによる確認書の調印を契機として正常化されました。以来一カ月余、今日のこの事態を迎えているわけでありますが、少なくとも、全党が同意した前尾議長のあっせんは、この延長国会を参議院における重要法案処理に充てることとし、その他の法案は、与野党合意するものに限定されたわけでありまして、参議院四派間の確認書がこのことを前提としたものであることはきわめて明白でありますから、委員会において円満な法案処理がなされ、われわれも十分な質疑が行なえるものと考えたのはまた当然であります。しかし、そうはならなかった。しかも、この質問は、河野議長の特段の御配慮をもとに実現したことを考えますときに、参議院改革は、まさに日暮れて道遠しと言わざるを得ません。
 その結果、こうして皆さんのお顔を見ますと、ほとんどの方たちがこれはたいへんお疲れになっている。国務大臣にしても、議員にしても、必要があれば連休をつぶすのは当然でございましょうし、夜おそくまで審議をするのも当然でございましょう。しかしながら皆さん、一番やはりお気の毒なのは、私は報道関係の皆さんじゃないかと思う。連休をこういう異常な国会に巻き込まれて、考えてごらんなさい。新聞なんていうのは一年に何回もない休刊日なんです。いろんな計画があるでしょう。こういう異常国会につき合わされることに対する、私はやはり切歯扼腕ぶりがよく理解できるわけでありまして、このような異常な事態が再び繰り返されることのないよう、私は諸兄とともに強く期待いたしたいと存じます。
 先ほどから黒柳議員から、これはもう七十項目にわたると称する質問がございまして、防衛、外交の問題は非常に幅が広く、限りないものでありますけれども、七十項目から指摘をされますと相当に重複するものが出てくるわけでありますので、私は政府の答弁を納得する、しないにかかわらず、できるだけ重複を避けたいと存じますので、したがって、質問時間もいささか短くなるものと想定をいたします。(拍手)
 先般、いわゆる長沼裁判で、自衛隊を違憲とする一審の判決が示されました。そこで、この際、私は、日本の自衛権に関するわが民社党の見解をまず明確にしておきたいと思います。
 自衛隊を違憲とする長沼判決も、わが国が独立国としての自衛権を持つことを否定してはいません。自衛権がある以上、自衛手段、自衛措置を講ずるのは当然でありまして、わが党のいう、憲法九条のもとで必要最小限度の専守防衛力はいかにあるべきかを求めようとするのは、これまた当然と言わなければなりません。私は、その意味で国民の合意を得るための防衛論議が、国会において十分に尽くされていない現状をきわめて残念に思います。
 そういう状態の中で、自衛隊は政府の手によって現実に増強され続けています。憲法九条は、憲法の前文もそうでありますけれども、特に憲法九条でも、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」することを前提としていますので、国際平和を誠実に希求する外交の展開こそ政府の責務でなければなりません。自衛力の論議がこのことを前提とされるべきは、また当然であります。政府の四次防策定に際しての情勢判断は、緊張要因の存在や、紛争要因、紛争の可能性等を強調し、平和外交の積極的姿勢、その意欲に乏しいことは、決して国民の共感を呼ぶものとは思われませんが、いかがでございましょうか。言いかえれば、わが国の安全の保障は、他国からは与えられないという政府の見解は、しからば他国の公正と信義を求めるためには、どのような平和外交を展開し、その結果にどのような確信と責任をお持ちになるのか、具体的に総理及び外務大臣にお伺いをしたいと存じます。
 総理の訪ソが近づいてまいりまして、ソ連では、もうすでにブレジネフ書記長及びコスイギン首相等が相次いでアジア集団安保の実現を提唱していますが、先ほどの御答弁を私が聞く限りでは、このアジア集団安保については、日ソの首脳会談の重要な課題になるであろうということと、隔意のない意見をかわしたいという御答弁がございましたけれども、少なくともソ連側では、書記長あるいは首相によって、具体的に、たいへん明確にこの問題に対する提唱が行なわれておるわけであります。私はそういう点が、やはり日本の総理大臣及び国務大臣は、まことに、たとえば外交問題等については慎重な姿勢をおとりになる。しかしながら、日本は平和外交を進めていく上に、世界の緊張感をなくしていくためにはこうしていくんだという、積極的かつ具体的かつ強力な、そういう方針というものをお持ちになり、それを堂々と国会の内外に、あるいは国の内外に発表されるのが好ましいと存じますし、当然であろうと存じますが、この点について、私は総理から、できれば、日ソの首脳が十分の意見交換をしたいということだけでなく、もっと積極的な首相の解明を、この問題に対する意思をお聞かせ願いたいと存じます。
 また、中国は、中南米非核武装地帯条約を実現させ、世界で類似した地帯を設置することを希求するとしていますが、アジアの非核地帯実現の可能性はどうか。わが国の役割りをどのように考えておられるのか。これはソ連が提唱するアジア集団安保に関連をいたしまして、中国を抜きには、このアジア集団安保も考えられないことは明らかな事実でありますので、そういう問題を関連させて、わが国の役割り及びその可能性について政府の見解をお伺いをいたします。
 現在、陸上自衛隊の定員は十七万九千になっておるわけでありまして、政府は、この十七万九千の自衛隊を千名増員をして、いわゆる長い間の構想であった十八万陸上自衛隊体制をつくり上げようとしておるのでありますが、現実には、定員は十七万九千でありますけれども、これはもう国会で常に指摘をされておりますように、現員は約十五万四千程度、すなわち二万五千人程度の欠員をかかえておるわけであります。ところがこの内容は、これもすでに指摘し尽くされておりますように、幹部、曹のクラスでは比較的充足状況が良好でありますけれども、士の欠員はまことに目をおおうものがあるわけでありまして、第一線等においては、四〇%にものぼる欠員が士の段階ではあるということが言われておるわけであります。
 陸上自衛隊の定員増の経過を見てみますと、昭和三十年に十五万、三十一年に十六万、三十三年に十七万、三十六年に十七万一千五百、四十二年に十七万三千、四十四年に現在の十七万九千になっておるわけであります。ところが、最近五カ年間の充足状態を見てみますと、昭和四十三年に九一・七%の充足率であったのが、四十四年には激減をいたしまして八八・六%、四十五年に八八%、四十六年八七%、四十七年には八六%と、漸減の傾向をたどって現在に至っているわけであります。そして現在の実人員は、実に十七年前の三十一年度の定員に満たない約十五万四千人となっているわけでありますが、この実情を防衛庁長官はどういうぐあいにお考えになっておるのか。まことに、いろいろな角度から定員増の必要性を説いていらっしゃいますけれども、何としてもこれは正常な感覚をもってしては理解のできないところでございまして、この実情について明確な御見解を伺いたいと存じます。
 この欠員が、第一線部隊の編成、能力にどのように影響しているのかを見てみますと、これは衆議院で、わが党の永末議員の質問に答えて、政府がその実情を明らかにされていますけれども、たとえば普通科連隊の場合には、その充足率は六〇%台であります。大体六六、七%。このことは、普通科中隊では六五%ぐらいとなり、中隊の編成は四個小隊編成でありますけれども、これを四個小隊に編成をすれば、三個班で編成されるべき小隊が二個班の編成しかできないという、しかも、一個班は本来の十一名の定員であるにもかかわらず、実員は七名でしかないというわけであります。特科連隊を見ますと、充足率はほぼ普通科連隊と同様でありまして、その結果、第一線部隊の機能はまさに手の施しようもないほどになっておるといわれております。射撃中隊を例にとりますと、訓練の際、陸士の不足でたま運びがいないので、あらかじめ砲のそばにたまを運んでおいて、たまがなくなると射撃を中止をして、また、たまを運ばなければならないという状態である。これでは有事の際役に立つものとは全く思われません。だからこそ、政府も有事即応の体制になっていないことを認めているものだと思います。
 ところが、三次防は、先ほども指摘されましたけれども、その三次防の大綱では、「有事の際すみやかに事態に対処し、」云々といって、いわゆる有事即応体制を強調していたのであります。四次防では、これが教育訓練体制の強化という表現に変えられていますが、その変更理由が全く納得できないのであります。国際情勢の変化に対する認識と評価、一定のきびしいワクの中での重点の置き方等々がその変更理由となっておるようでありますけれども、少なくとも有事即応体制から教育訓練体制への表現変化の説明にしては、お粗末と言わざるを得ないのでありまして、これは言いわけにはなり得ても、とうてい解明にはなり得ないものと考えます。隊員の充足状況だけから見ても、三次防の有事即応体制は、まさにまぼろしであったと言わなければなりません。四次防においてまた、しかりであります。五次防、六次防と続くのか、先ほどの長官の御答弁のように、単年度式に変更されるものと併用をするのかは別にいたしまして、部隊編成を広げてみても、部隊そのものの実情は、穴だらけの人員不足で、有事の際の役には立たないという実態を、一体どのようにお考えになるのか。
 太平洋戦争中、当時の国民は軍艦マーチの大本営発表の大戦果を信じさせられて、祖国の勝利を疑いませんでした。ところが、ふたをあけて敗戦になってみますと、その軍艦マーチの大戦果は、そのほとんどが偽りであったということが国民に知らされたわけであります。私は、やはり自衛隊の現状についてはこれを国民の前に明らかにして、一切を含めて・自衛隊はいかにあるべきかということを真剣に考える必要があると存じます。その意味からは、私は、このような政府の姿勢を国民とともに糾弾しなければならないと存じます。長官の御所見を承ります。
 隊員の充足が行き詰まっておるのに比べれば、装備等はかなりな充足状態にあります。十五万四千名の陸上自衛隊の持つ火砲等は、騎銃、小銃、狙撃銃、自動銃、短機関銃の合計だけで十九万七千九百三十二丁、機関銃、重機等が六千九百七十八丁、ロケット発射筒七千九百六十二、迫撃砲二千百六十四、りゅう弾砲、加農砲九百、高射砲等二百四、その他の火砲八十、数字を並べただけでも、人員に比べまことに多量の火砲を整備されているわけであります。戦車、自走砲車、装甲車等も現在一千七百五十一台が装備されておりますけれども、四次防においてさらに二百八十両の戦車を新たに増強しようとされておるわけであります。こういうものを見てみますと、隊員の充足率に比べて、はるかに高い兵器装備の充足状況を見ることができるわけであります。これはどのように解釈すればよろしいのか。装備を使いこなせる隊員がいないのに、装備のみが増強されるということは、一体どう解釈すればよろしいのか。
 そして、大蔵大臣にお伺いをいたしますけれども、(「大蔵大臣はいないぞ」と呼ぶ者あり)いや、ちゃんと大臣代行が来ております。お伺いいたしますけれども、大蔵省は、ややもすると国民の福利に資するべき金については、さいふのひもを締めるといわれておりますけれども、こういう問題についてはどういうぐあいにお考えでしょうか。少なくとも、表面的に見る限りでは、たいへんに多額の血税がむだなことにつぎ込まれていると思われるような節がある。こういう使途について、国防会議の決定だからということで、これは大蔵大臣も国防会議の議員の一員でございますけれども、支出をされておるのかどうか、大蔵省の、所管省としての大蔵大臣の見解をお伺いしたいと思います。
 旧軍時代、徴兵制度がございました。先ほどの質問の政府答弁では、旧軍時代の徴兵制度に類することは憲法違反であって、やらないという明確な御答弁がございましたが、そうでなければ、どうも自衛隊の人員充足というものは、まさにこれは不可能に近いのではないかと思われます。装備を使いこなせる人員確保の確信がはたしておありかどうか。そういう中で、来年度の予算の概算要求は、一兆一千億をこえているわけであります。まさに、国鉄の累積赤字といわれる一兆一千億余りにほぼ近い数字なんです。国鉄の場合には、国民の足であるから必要最小限度の値上げをして、国民の負担をお願いをするという。十年間に四回の値上げをしますと、物価にはね返る、いろいろのひずみによって国民生活が容易でないことでもおやりになる政府が、一兆一千億、一兆二千億、一兆五千億、二兆五千億、三兆とエスカレートしていくこの防衛予算を、どのようにお考えになっているのか。そういう中で、装備の充足と人員の関係、このアンバランスをどのようにお考えになっているのか。明確な御答弁を伺いたいと存じます。装備のための自衛隊、防衛産業のための防衛庁という印象を、断じて国民に与えてはならないと存じますが、自衛力の限界等を含め、国民の合意を得られるような自衛力の見直しをすべきであると思いますが、いかがでしょうか。
 防衛庁長官は、防衛産業内にある駐在官事務所を工場外に出して、艦船、航空機等の調達方法を、現在の随意契約から競争入札に切りかえる意思をお持ちということが報じられておりますけれども、これはきわめて国民の共感を得られるものと存じますが、看板だけで実があがらないようでは困るわけでありまして、具体的にどのような方策を講じて、どのような成果をおあげになるおつもりか、防衛庁長官の御答弁をお伺いをしたいと存じます。
 防衛産業の巨大化は、歴史に照らして、これは断じて重要な問題として対処さるべきであると存じます。田中総理は、さきに兵器の国産化を裁断されましたが、日本の防衛産業の将来の姿をどのようにお考えになっておるのか。また、アメリカがベトナム戦争を終結したことによって、アメリカの軍需産業は一体どうなるのか、日本の自衛隊に対して武器、軍需品の売り込み等の影響はどうなるのか、こういう点の見通しについても、あるいはその対策等についても、政府の明確な御答弁を求めたいと存じます。
 最後に、自衛隊の離職者就職審査会の新設がこの法案の一つの要点になっておりますが、これはもうたびたび指摘をされておりますように、産軍癒着に対する疑惑を国民に持たせないためにも、私は、原則として、高級自衛隊関係者の退職後の就職先を防衛産業に求めるのは、おやめになったほうがいいのではないかと思うわけであります。こういう問題に対しては、政府はやはり何らかの対策を講じなければならないとお考えになるからこそ、離職者の就職審査会を設置して、そこで審査をしようとなさるのでございましょうけれども、しかし、少なくとも疑惑のあるものははっきりと対処をされるのが、私は一番手っとり早くていいと思う。高級自衛隊関係者の防衛産業に対する再就職は原則として行なわないという、明確な姿勢をおとりになるか、あるいは御検討になる意思がおありかどうか質問をいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(田中角榮君) 中村議員にお答えいたします。
 第一は、政府は積極平和外交の姿勢を国民に示さなければならないというお考えでございますが、わが国は、平和主義と国際協調主義を外交の基本姿勢といたしておりまして、政府はあらゆる機会をとらえ、あらゆる場において、世界にわが国の平和外交の姿勢を鮮明にし、世界の平和を訴えてまいりました。今後とも、かかる外交姿勢は不変であります。
 なお、安全保障の問題につきましては、間々申し上げておりますとおり、国連中心で集団安全機構が完備されることが望ましいのでございますし、そういう方向に対して、わが国も全力をあげて協力態勢をとっておるわけでございますが、現実は理想には遠い状態でございます。その意味で、地球上の各地に集団安全体制がとられておりますことは、御承知のとおりでございます。日米安全保障条約の体制下にある日本の安全保障も、このような世界の情勢の中の一つの姿と、こう理解をしていただきたいと思います。しかし、平和を希求することは人類の悲願でもございますし、理想でなければなりません。そのためには、新しい平和憲法を持っておる日本でございますので、国際的な合理的機構が完備するために平和外交を進めながら全力を傾けてまいりたいと、こう考えております。
 アジア集団安全保障に対する政府見解についての御発言がございましたが、先ほど外務大臣臨時代理からも述べましたとおり、ソ連の提唱しておりますアジア安保構想は内容が明確になっておりません。そういう意味で、私が訪ソしまして首脳会談が行なわれる過程においては、これらの問題、ソ連が何を提案し何を目標としているのか、日本がこれに対してどう対処できるのかというような問題に対しては、十分意見の交換をしてまいりたいと、こう考えます。しかし、現状維持とか現状是認とかというような問題、特に領土問題というものが日ソの間にはございますので、そういう状態から考えると、必ずしも、いま伝えられておるようなアジア集団安全保障の構想に日本が直ちに賛意を表し得るようなものでないようでもあります。しかも、あくまでも報道でございまして、まだ話をしたり接触をしたわけではございませんので、お互いに隔意ない意見の交換を行ないたいと、こう考えております。
 それからアジア全体の集団安全保障ができる場合には中国が含まれなければならないという問題、先ほども御指摘がございましたが、すべての国が入ることが一番効果的でございます。しかし、アジアは非常に複雑でございますし、地域も大きいし、国も非常にたくさんございますし、開発途上国もございますし、また、かつての旧宗主国との関係も複雑でございます。宗教上の問題その他ございまして、そう簡単に方程式どおりのアジア安全保障機構が完備するというような態勢でないということは御理解いただけると思います。しかし、日本はあくまでもアジアの平和のためには精力的にこれに対処しておるわけでございますので、御理解を賜わりたいと存じます。
 なお、同じ観点から、アジアの非核地帯の実現等が言外に含まれておるわけでございますが、アジア地域における非核地帯設置につきましては、アジア地域の特殊条件及び世界全体に及ぼす影響を十分考慮しつつ、その実効性という観点から慎重に検討する必要があることは御承知のとおりでございます。わが国としましては、関係国の考え方も聞きながら、この問題には対処してまいらなければならないと、こう考えております。
 キッシンジャー構想につきましてあらためて御指摘がございましたが、世界の情勢は、かつての東西対立の時代から、東西間の対話と緊張緩和に向かって大きく動き出しておることは事実でございます。この間にあって、日本、米国、西欧諸国等、工業化の進んだ民主主義諸国は、通商、通貨、公害、環境、エネルギー、都市問題等の分野で新しい共通の課題に直面をいたしております。これは日本だけの悩みではないわけでございます。インフレ問題もそのとおりでございます。その解決のために、協力をして対処していく必要が感ぜられるわけでございます。わが国としましては、いわゆるキッシンジャー構想がこのような情勢に即応した形で具体化されることを前提として、本構想に積極的に関心を示しておる次第でございます。
 さきの日米首脳会談のおりにも、本件に触れて討議を続けたわけでございますが、NATO条約のようなものではないかというような批判も一部紙上等で散見をされるわけでございますが、そういうものには、憲法の制約のある日本が防衛問題で参加できるはずはありません。しかし通貨や、いま申し上げましたエネルギーの問題等、お互いが話し合うことによって、事前に調整することによって、混乱を未然に防止し得る問題は山積しておるのでございますから、そのような問題に対して日本が基本的な姿勢において参加の意思を表明いたしておるわけでございます。しかし、まだこれらは具体的な問題になっておりません。ヨーロッパ三国の首脳との首脳会談が行なわれるわけでございますから、この過程においてこれらの問題を十分検討してみたいと、こう考えております。
 防衛産業と自衛隊との関係についての御発言にお答えをいたしますが、装備の国産化につきましては、国土国情に対する適合性、維持補給上の便宜、さらには技術波及効果等の長所がある反面、生産数量が少ない場合には価格が割り高になるという短所もあることは、申し上げるまでもないことでございます。防衛上の観点、費用対効果等を総合的に勘案をしまして国産化の可否を決定することといたしておりまして、画一的に国産をするという姿勢はとっておらないわけでございます。
 それから産軍複合の問題については先ほどもお答えをいたしましたが、現在のわが国の工業生産に占める防衛生産の比率は〇・四%でございまして、諸外国に比べてきわめて小さく、産軍複合と言われるような事態は全く考えられない、こういうことはひとつ御理解を賜わりたい。
 最後に防衛庁長官に御質問がございました、防衛庁に籍を置いた人々が防衛庁と関係のあるような産業に就職をすることはやめたらどうかと、こういうことでございました。これは予算委員会でも御質問ございました。しかし、いま申し上げましたように、工業生産に占める比率が〇・四%であるという面から考えてみますと、産軍複合というようなマイナス面は考えられないということと、もう一つ、防衛庁の人たちが防衛庁を去ったときに、どこへ一体就職するのかということを考えてみますと、防衛庁に籍を置いたゆえをもって、特別な制約を課するということはむずかしいことでございます。そうでなければ、防衛庁の職員は一生涯、身分や給与をどこかでもって保証するということであるならばこれは別でございます。ですから、私はいま御指摘になられた中村さんのお気持ちの前提はわかります。何か問題が起こったり、国民が不愉快な思いをしたり、そういうことになっては困るので、そこを厳重に考えなさいということだと思います。そういう意味では、国会の御審議の状態やいろいろなお知恵をおかりをして、かつて防衛庁に籍を置いた者が、関係のありそうだという産業に絶対に就職をさせないということは、これはなかなかむずかしい問題でございます。これはひとつ現実の問題として、政府も十分検討をいたしますが、御理解を得たい、こう思います。(拍手)
   〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(山中貞則君) 欠員と増員、今回の防衛二法の問題、あるいはその増員する姿勢の問題、あるいは充足の状況と幹部、曹の階級において比較的よく、士の階級が少ない、あるいは訓練にだいじょうぶか、いろいろとそのようなことで御質問がありましたことについて、一連の問題としてお答えを申し上げてまいりますが、まず、今回お願いしております防衛二法案の定員増は、陸上におきましては千名増の十八万名でございまして、これはもう来年度予算の要求については、陸上には予算要求をいたしておりません。すなわち定員増は十八万名をもって打ちどめといたしておるわけでありまして、したがって、これはわが国の防衛のための陸上の編成定員であるということでいつもお話し申し上げているところでありますが、さて一方において、二万五、六千名にのぼる欠員が常時おるではないかという問題については、たびたびお答えいたしておりまするとおり、この充足率を高めるための努力をいたさなければなりませんが、それをいたしてもなお問題があるとすれば、編成定員と平時の定員とを区別するような何らかの方法も将来は検討せざるを得ないのではないかと、そう思いますが、海空等においては、これは計画され、あるいは予算で決定いたしました艦艇、航空機、こういうものの就役に伴う必要な定数でございまして、海空においては、ほぼ充足が満たされておるところであります。
 なお、この幹部、曹の階級の充足率は、まあまあ陸上においていいとしても、士の階級の欠員が多ければ訓練もできない状態であるということを、具体的に普通科連隊、小隊等の例を引いてお話しになりました。私どもも、その点は確かにそのような点があることを認めるわけであります。この欠員が絶えず充足されないという原因には、募集難の問題が一つと、一つには、せっかく自衛隊に入ってくれました若者たちが、一期の二年、三年を終わりますと、ことに陸上において、二期目に継続しないで、一期目の終わりには、途中で離れていった者を含めて、二分の一あるいはときにはそれを越えるような者が隊を離れていくというところに問題があるのではないかと思います。その問題点も、やはり二期目に継続雇用した者に対する特別退職手当の百日分を二百日分に上げる配慮などをいたしながら、環境の整備、あるいは再就職、これは総理の先ほどお話しになりました高級自衛官ではございませんで、幾らつとめても四十三、四十五で定年のまいります特殊な自衛隊の定年制を背景にした者たちに対するめんどうをみてあげなければなりませんし、また、その間においていろいろと、いわゆる腕に覚えをと言いますか、再就職のための技能訓練習得等にも特に配意をして、一般社会人として出ていってもりっぱにやっていけるような立場をつくりあげてやりたい。そういうふうに考えておるわけでございます。
 有事即応体制を、三次防と四次防とにおいて防衛訓練の強化ということで変えておるのはどういう意味だ、明確でないというお話でありますが、三次防においては、有事即応体制ということを前提にはっきりしておりましたけれども、しかしながら、先ほども答弁しましたように、現在は装備等の整備の途中でございまして、これがまだ日本の有事即応に完全に、日本自体でもって対処できる範囲でも充足し得ないという現状を踏まえて、教育訓練の強化ということに変わっておりますが、しかし、あくまでも有事即応体制を前提としていない限り、その存在の意味がないわけでありますから、努力を続けるつもりであります。
 なお、火器や火砲等の装備品の充足率は、隊員に比べて非常によろしい、一体使い切れるのかというお話であります。なるほど、小銃等については、これは充足いたしておりますが、弾薬の備蓄あるいはその他の戦車、火砲等については、一応の装備定数になかなか満たされていない状態でありますし、現在のそれらの装備については、一応不足する定員でありましても、装備を操作する必要最小限の定員だけは確保されておるわけであります。小銃等の個人火器については、これは定員の一〇〇%を充足すべきは当然のことでありますが、さらに予備自衛官等のためにも、これを保有していく必要のあることはお認め願えることと思うわけであります。
 来年度の予算の要求が一兆円をこしたということでございますが、ただいま申し上げましたような武器、装備、海空等の艦艇や航空機等について、特別に来年度ふやしておるわけではございません。それは、四次防の三年度に当たるそれらのものを忠実に履行いたしておりますが、もし問題があって議論が分かれるとすれば、新型戦車の三年分を一括発注、これは国庫債務負担行為でありますが、一括契約をしようとすることがコストを下げるためによろしいという判断と、それぞれ取得年度が異なるものを一ぺんに契約するのは、国庫債務負担行為としてもどうかという御議論がある程度であると思います。それらの問題以外の問題は、内政の年として、隊員の処遇あるいはまた居住環境、あるいは防衛施設周辺等の思い切った新規立法による対策等のために予算をお願いしておるものでございまして、これはまだ概算要求でございますから、この時点において最終的な論議はできないことでございます。
 さらに、駐在官事務所を事業所の外に出す、あるいはまた、装備品の契約方法を積極的に変えていくということは認めるけれども、具体的にはどうするのだということでございますが、一応そういうことを具体的にやっていくわけでありまして、一ぺんに目新しいことはなかなかできませんし、今回の法律の中に離職者の就職審査会というものをお願いしておることも御承知のとおりでございますが、高級幹部の自衛官の天下りはやめろという御意見でございますけれども、総理の御意見にもございましたような点もございますし、また、現在の自衛隊法の中できちんとされておるものですけれども、それが外部から見て、長官の決裁できまるということに問題があるのであろう。したがって、だれが見ても客観的な再就職に対して、この自衛隊法の六十二条に定められた「隊員は、営利を目的とする会社その他の団体の役員若しくは顧問の地位その他これらに相当する地位につき、又は自ら営利企業を営んではならない。」「2 隊員は、その離職後二年間は、営利を目的とする会社その他の団体の地位で、離職前五年以内に従事していた職務と密接な関係のあるもので総理府令で定めるものについてはならない。」、こういうふうになっておりますが、これを今回は、「長官の承認を受けた場合には、適用しない。」となっておりますものを、審査会で客観的にきめてもらいますので、そのような癒着といわれる点も最大限に排除できるものと考えておる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣二階堂進君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(二階堂進君) 私に対する二、三の質問がございますが、すべて総理大臣がお答えになりましたので、それにつけ加えることはございません。御了承をお願いいたします。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(小坂善太郎君) 中村議員にお答えを申し上げます。
 私に対する御質問は、防衛費の査定方針、特に装備と実人員の関係についての大蔵省の方針をお聞きいただいたように思います。
 そこで、お答えでございますが、自衛隊の部隊の定員は、有事に際しまして、わが国防衛のために必要な各種の機能及び能力の観点から算定されております最低限のものでございますので、小銃のような個人の持つ基本的な武器については、実員に関係なく一〇〇%を保有しておく必要があると考えます。しかしながら、車両とか通信機、被服等、短期間に市場において調達し得るものについては、部隊の人員の充足率や、あるいは経済性を考慮いたしまして、必要最小限の装備を充足することにいたしておるものでございます。防衛費の査定にあたりましては、防衛庁の要求の合理性や、あるいは妥当性を十分に検討いたしまして、他の諸経費の査定にあたってと同様に、厳格な方針をもって臨んでおる次第でございます。
 以上お答えいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#33
○副議長(森八三一君) 岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇、拍手〕
#34
○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、防衛二法改正案に対し質疑をいたします。
 われわれは、委員会での審議が拒否され、本会議だけでは詳細な審議が尽くせないことをまことに遺憾に思います。国会の審議がこのような党利党略的な運営に終始することは、断じて許すことができません。まず、最初にこの意見を表明して、総理並びに関係大臣に以下質問するものであります。
 そもそも本案は、内閣委員会で期日があるにもかかわらず質疑は打ち切られ、表決もされないまま本会議に上程されているのであります。このような政府・自民党の暴挙が許されるでありましょうか。私は、まず本論に入るに先立ち、国政の最高機関である国会において、憲法で保障された議員の審議権、表決権を踏みにじった政府・自民党をきびしく糾弾するものであります。総理、あなたはこの事実をどうお考えになっていますか。憲法違反の自衛隊の大幅な増強、アメリカのアジア侵略の拠点としての沖繩に南西航空混成団を配備するなど、本法案の内容について国民の疑問を徹底的に明らかにして、納得するまで十分時間をかけて審議を尽くすことこそ国会が国民の負託にこたえ、その責任を果たす道ではありませんか。それとも、怒号、喚声で速記もとれない状態の中で、多数で可決したと称する審査報告書をただ一つのよりどころとして、委員会での審議が尽くされないまま、しゃにむに期日までに本案の成立を強行し、議会制民主主義を破壊して、国の唯一の立法機関である国会を行政府に従属させることが正しいと考えておられるのでしょうか。自民党・田中内閣こそ、今回のまさに暴挙の最大の責任者であります。総理あなたはその責任をどのように考えておられるのか。このような異常な状態でも、なおかつ、あえて本法案の成立を強行しようとするのでありますか。答弁を求めるものであります。
 さて、まず私の質問の第一は、憲法と自衛隊についてであります。
 去る九月七日、札幌地方裁判所が行なった長沼事件判決は、わが国の裁判史上初めて、自衛隊の存在そのものが違憲であることを明らかにした画期的な判決であります。すなわちこの判決は、自衛隊は明らかな軍隊であり、それゆえに陸・海・空各自衛隊は、憲法第九条第二項によってその保持を禁じられている「陸海空軍」という「戦力」に該当するものと言わなければならないと述べ、これまで歴代の政府が、自衛力は合憲だという強弁によって国民に押しつけてきた二十年余にわたる自衛隊の非合法的存在に明確な断罪を下したのであります。さらにこの判決は、防衛庁設置法、自衛隊法、その他これに関連する法規はいずれも憲法に違反し、その効力を有しないと述べ、今日政府が、国民の強い反対を無視して防衛二法を強行成立させようとしているまさにそのことが、憲法への重大な挑戦であることを明らかにしているのであります。しかも、今回の長沼判決が下した憲法九条解釈や自衛隊違憲論それ自体は、現に憲法学者の九〇%までがこれを支持している通説であるばかりではございません。国民大多数の意見の反映でもあります。このことは、各新聞の投書によってもはっきりとあらわれております。たとえば、この画期的な判決に対して、「暗い、長いトンネルをやっと抜け出て青空を仰いだようなさわやかな感動」として受け取り、また「この判決は大部分の国民の意思の集約であり、もの言わぬ戦争犠牲者の声だ」と、圧倒的な支援を寄せているではありませんか。ところが、政府・自民党は、長沼判決が出されると、直ちに二階堂官房長官が、この判決は重大な判断の誤りであり、はなはだ遺憾、との談話を発表しました。橋本自民党幹事長は、偏向判決だと、敵意をむき出しにした攻撃を加えております。また田中総理も、さきの内閣委員会で、この判決は政府の見解と異なり、判決に従う意思は毛頭ないと言明し、また、先ほどの答弁でも、判決は誤りだ、このようなことばを言っております。今回の自衛隊違憲判決には何ら拘束されない、防衛二法、四次防推進による自衛隊の大増強、軍国主義復活の道をしゃにむにこのようにして突き進もうとしておるのであります。このような政府の憲法否定の態度は断じて国民が許すものではありません。
 そこでまず、総理並びに防衛庁長官に伺いたいのは、今回の自衛隊の違憲判決は、たとえ一審判決であり、控訴の手続をとったとはいえ、憲法八十一条等に基づく違憲審査権を持つ裁判所が、わが国で初めて示された公式見解であります。政府は、この判決の精神を尊重し、これまでとってきた自衛隊の増強、防衛政策そのものが、はたして正しかったかどうかをあらためて謙虚に反省してみるつもりがあっていいと思うのでありますが、どうでしょう。
 さらに、政府は何ら具体的検討もせず、この判決をいたずらに誤った判断と非難する前に、判決が提起した憲法の原点に返って、国民とともに、自衛隊の存在そのもの、わが国の全安保障政策のあり方を根本的にここで問い直すことこそが必要と思いますが、その意思がおありかどうか、国民の前に明らかにしていただきたいと思うのであります。
 次に、長沼判決と関連して、政府の憲法九条解釈と戦力、軍隊の定義についてお伺いいたします。
 歴代の保守党・自民党政府の憲法九条解釈を振り返ってみるならば、一九四六年の制憲議会当時の吉田首相は、「近年の戦争の多くは、国家防衛権の名において行なわれてきた。したがって正当防衛権を認めることは戦争を誘発する」として、憲法上、わが国は自衛のためであれ、何であれ、戦争に必要な一切の手段を持てないことを内外に明らかにしたことは、まぎれもない歴史的事実であります。ところが、一九五〇年、アメリカが朝鮮侵略戦争を開始し、占領軍司令官マッカーサーの直接命令で、アメリカの後方支援部隊としての役割りを持つ警察予備隊で発足するとともに、害法は自己防衛の権利を否定したものではないとか、戦力とは今日の世界の戦争の常識に照らして判断する以外にないなどと、解釈改憲への大きな一歩を踏み出したのであります。それ以来、政府の見解は、自衛手段としての戦力は禁じていない、自衛隊は戦力なき軍隊である、座して死を待つより敵基地をたたくことも自衛の範囲だ、核兵器も自衛のためなら合憲、などなど、アメリカの指図に従い、際限のない解釈改憲によって自衛隊の大増強を推し進めてきたのであります。その結果、総兵力二十八万人を擁する陸海空自衛隊は、いまや軍事費で世界第七位、侵略可能な最新鋭の装備をした、世界でも有数の戦力に成長していることは周知のとおりであります。これでどうして必要最小限の自衛力などと言い抜け、軍隊でないなどと言ってごまかすことができるでありましょうか。このことば、アメリカの元駐日公使であったジョン・K・エマーソン氏が、ある雑誌の論文で次のように述べています。「憲法上の合法性が明らかに挑戦を受けているという形で軍隊を保持している国は、世界じゅうさがしても日本以外にないだろう。」よく聞いていただきたい。「日本の自衛隊は憲法第九条の戦力保持禁止規定にもかかわらず、厳として存在するのである」と、はっきり指摘しているところであります。
 そこで、政府に端的にお聞きしますが、戦力とは何か、軍隊とは何か、その定義を明らかにし、自衛隊と軍隊とは一体どこが違うのか、長沼判決という新しい時点に立って、国民の納得できる政府の統一見解をあらためて発表することが非常に重要であり、このことを強く要求するものであります。
 また、先ごろの法務委員会で、法制局の角田第一部長は、わが党の渡辺議員の質問に対し、対外戦闘に役立ち、自衛の限界内のものであれば、自衛隊を陸海空軍と呼んでも差しつかえないと述べ、さらに、わが国の自衛隊と外国の軍隊の違いは、わが国が憲法九条の規制を受けているだけであると答弁しましたが、これは政府の正式見解として確認してもよろしゅうございますか、答弁を願いたいと思うのであります。
 第二にお聞きしたいのは、日米安保体制のもとでの日本側の防衛分担の強化問題についてであります。
 このほど防衛庁は、海上交通路の防衛範囲は、太平洋二百海里、日本側百海里とし、輸出入船団の防衛は、一千海里の範囲内を目標とするという基本構想を明らかにしております。ところが、一方、アメリカ側からは、これまでしきりに日本に対して、日本周辺海域での日本側の防衛範囲の分担を要求してきておりますが、日本とその周辺での対潜哨戒パトロール責任をどの範囲まで引き受けたのか。第七艦隊の費用分担と協力はどうなっているのか。以上の点について明確なる答弁を求めます。
 また、防衛庁は、純防衛的見地からと称して、F4Eファントムの改造機であるF4EJファントムを沖繩基地などに配備していますが、同戦闘機の性能はマッハ二・四という高速で、その航続距離は四千キロに達し、朝鮮半島はおろか、ウラジオストック周辺まで偵察行動が可能といわれる戦闘爆撃機として知られております。一体、このような性能を持つ航空自衛隊の防空範囲はどうなっているのか、明確なる答弁を求めるものであります。
 第三に、長沼判決によって積極的に明らかにされた平和的生存権の問題について伺いたい。
 政府は、憲法の平和主義については十分尊重すると言っていますが、長沼判決では、この憲法の平和主義が、民主主義の思想、つまり国民主権の思想と、さらに基本的人権尊重の思想と密接不可分に融合して、「われらは、全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と憲法前文にも明白に規定しているように、平和的生存権は、国民一人一人の権利としてはっきりこれを確認しているのであります。総理、あなたも憲法の平和主義をこのように理解されているのでありますか、どうですか。九月十七日付サンケイ新聞の報道によりますと、「自衛隊違憲判決、政府反論の要点」、この中では、平和的生存権は一歩誤ると住民のエゴイズムを放任することになるとし、国家はそれでは成り立たないと書かれていますが、これは政府の見解かどうか、明確に答弁されたいのであります。
 ところで、長沼判決の証人たちの証言によりますと、一たん有事の際には、相手国はまっ先に戦闘爆撃基地を攻撃し、さらにレーダー基地、ミサイル基地、戦闘機基地、重要海軍基地や港湾を攻撃する、これは近代戦の常識であると明言しております。すなわち長沼のナイキ基地は、作戦上相手国の攻撃目標として常にねらわれ、絶えず不安のもとにさらされているということになるのであります。したがって、この不安を解消し、平和な生活を獲得するためには、ナイキ基地の撤去を求めることが憲法の平和的生存権に基づく当然の国民の権利であると思います。どうこの点についてお考えになりますか。
 しかも、水源涵養保安林という、水害、洪水から地域住民を守るという公益性より、地域住民の平和的生存権を脅かすナイキ基地のほうがより高度の公益性であるとする政府の判断は、まさに軍事優先、滅私奉公の旧憲法的な発想と言わざるを得ません。これは長沼だけの問題ではなく、福岡の岡垣射爆場、厚木、三沢、北富士基地など、枚挙にいとまがないのであります。まさに今日、憲法に示された平和的生存権を現実に侵害しているのは、米軍と、それに従属する自衛隊の存在そのものであることは、これは明らかです。総理は、あくまで地元民を犠牲にしても基地増強を目ざそうというのですか。これでは、憲法前文の、しかも憲法の全条項を貫いて規定されておるところの平和的生存権は一体どうなるのか。この生存権との関係においてはっきり総理の見解をここで明白にされることを私は要求するものであります。
 第四に伺いたいことは、自衛隊員の基本的人権を守り、政治活動の自由を保障する問題についてであります。
 今日、自衛隊員は、政治活動はもとより、イギリス、フランス、西ドイツをはじめヨーロッパ先進諸国で広く認められている団結権、さらには退官の自由さえ奪われるという、まさに無権利状態に置かれているのであります。しかも、今回の長沼判決に際して、陸上自衛隊幕僚監部がパンフレットを隊員に配布しました。その中で、違憲判決は笑止千万などという一方的な憲法判断を押しつけ、隊員の正常な政治的判断を不可能ならしめる反共的、反国民的隊内教育を徹底して行なっているのが現状であります。
 そこで、山中防衛庁長官にお伺いします。今回の長沼判決全文を全国のすべての自衛隊員に配布し、自由にこれを読ませ、討論の場も保障すべきだ。これは当然憲法に保障された自衛隊員の権利だと思いますけれども、この点についてはっきりそうお考えになりますかどうか。この返答いかんで、あなたの憲法に対するバロメーターがはっきりするわけです。また、この際、憲法に明記された基本的人権である思想、信条、言論、出版、結社の自由を保障すべきだと考えますが、総理並びに防衛庁長官の見解をただしたいのであります。
 さらに、この際あらためて伺っておきたいことがあります。それは自衛隊と、憲法を守る、この問題であります、憲法順守の問題であります。かつて、一九六二年五月、防衛庁研修所の一教官が、共産主義といえども合法的手段によって、すなわち現憲法の原理である自由民主主義、議会主義の原則によって、国民の総意を代表して政府を結成するならば、自衛隊は、政治的中立の原則と、合法かつ正当な命令の服務規律に従って、この政府のもとに防衛に参加するであろうという当然の内容の論文を発表したところ、右翼の抗議を受け、当時の防衛庁長官は、この教官を解任したばかりか、みずから粛軍の決意まで表明し、逆に防衛研修所長の名で次のように訓辞している。共産主義政党が暴力革命によらずに政権を獲得したとしても、それは合法政権とは言えない、自衛隊はそのような政権の指揮に服する理由を持たないとの反論をしたのであります。政府は、このような憲法無視、反共クーデターの合法化とさえ言える見解を放置せず、政府の責任において正式に取り消すべきだと考えますが、いかがでありましょうか。さらに、選挙によって合法的に革新政権が成立した場合、自衛隊はその政府の指揮に従うことは当然であり、これに反する行動は憲法に対する重大な挑戦であると考えられますが、総理並びに防衛庁長官の明確な答弁を求めるものであります。
 第五にお聞きしたいのは、自衛隊と韓国軍の提携強化と、経済援助の名による政府の対韓国軍事援助の問題であります。
 政府は、一九六九年の日米共同声明で、韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要であると述べ、さらに、今年八月のあなたとニクソンの共同声明では、朝鮮半島における平和と安定の促進のために貢献すると述べ、韓国への軍事的、経済的肩入れを積極的かつ具体的にすることを表明しています。重大な問題は、現在、金大中事件をめぐって、日韓関係があらためて問い直されているときに、日韓両国が軍事的に密接な結びつきを強めていることであります。
 最近、防衛庁が、わが要求によって提出した資料によりますと、陸・海・空の各幕僚長、幕僚監部をはじめ自衛隊高級幹部などが、一九七一年に四十三人、七二年に三十六人、ことし七月までに十一人と、相次いで訪韓し、軍事情勢、軍事施設、技術開発状況などを調査、視察しております。一方、韓国からは、この間に国防長官、陸・海・空各参謀長をはじめ高級幹部、これが七一年に五人、七二年には八人、ことしすでに十二人がそろって来日しているのであります。彼らは友好親善とか、表敬とか、視察などの名目で、防衛庁や全国の三自衛隊基地や軍需生産工場などを回っておることは周知のとおりであります。特に、本年五月来日したオク・マン・ホ空軍参謀総長は、三菱重工名古屋航空機工場、川崎重工岐阜航空機工場を視察し、さらにキム・ジョン・ホ国防部軍需局長らは松戸の補給処を視察し、日韓両国軍隊の装備の規格統一化研究、協議を行なった事実があります。これこそ日韓両国の密接な軍事提携、共同作戦体制の重大な進展と言わなければなりません。一体、防衛庁は何の目的で、このような日韓軍幹部の緊密な交流を進めているのか、また表敬、視察の内容ははたして何なのか、具体的にこの議場を通じて明らかにされたいと思うのであります。
 また、このような日韓軍事同盟強化の道は、アメリカとともに南北朝鮮の分断を固定化し、朴反共軍事独裁政権を助け、日本国民を再び戦争に追いやる危険な道であり、断じて許すことはできません。政府は、直ちに韓国軍と自衛隊の一切の結び付きを断つべきであると考えますが、その意思があるかどうか、はっきり御答弁をいただきたいところであります。
 次に、このような日韓の軍事連携の強化と表裏一体で進められている問題に、対韓経済援助の問題があります。政府は、韓国への経済援助が民生の安定と国民経済の発展に寄与するためのものと弁明していますが、そもそも、日本に援助の肩がわり強化を要求している当のアメリカ政府は、軍事援助とはっきりわかる経済援助は日本の国会で問題を起こすが、経済援助という名目で実質は支援援助と呼べる種類の援助であるなら、日本も供与可能である、こう述べております。また、防衛庁も、今年五月の日米安保協議委員会で米側に提出した資料の中で、国内事情から事実上、兵器援助は困難であるが、軍以外の政府機関または民需用のトラック、通信器材等を援助し、当該国がそれによって得る財政的余裕を、必要とする分野に回すことを考えると述べ、経済援助が実は軍事援助であることを公言しているのであります。
 そこで、具体的にお聞きしますが、アメリカは一九七一年から韓国軍の近代化五カ年計画を実施中であります。この計画は、アメリカが十五億ドルをつぎ込み、陸・海・空軍を大増強するもので、陸軍は戦車、ミサイルの増強、通信器材、車両の更新、海軍は駆逐艦、高速舟艇、対潜哨戒機の供与、空軍は戦闘機の増強による韓国軍近代化を進めるというものであります。ところが、この計画の途中、アメリカ政府の軍事予算が会議によって削減され、計画のスローダウンを余儀なくされ、その肩がわりを日本に求めてきているのであります。さきの日米会談で、アメリカは日本に対し、高速舟艇、トラック、通信器材を韓国に供与することを要求したと伝えられています。また、これに先立つ五月、クレメンツ米国防次官は、訪米した日本財界の代表に、トラック、通信機、ヘリコプターなど年間一億ドル相当を日本が韓国に供与することを打診しているのであります。これらは、まさに韓国軍近代化計画への日本の協力の具体的中身ではありませんか。政府は、このような事実があるのかないのか、包み隠さず公表することを私は強く要求するものであります。また、政府は、今後韓国軍に対する援助は一切やらないと、はっきりこの議場で確約することができるかどうか、明確な答弁を求めるものであります。
 さらに、朴軍事独裁政権によって軍事目的に転用される可能性のある援助はやらぬと約束できるかどうか、明快な答弁を求めます。
 次に、韓国軍近代化五カ年計画と浦項製鉄所の関係について伺いたい。
 浦項製鉄計画は、当初欧米借款グループが断わったにもかかわらず、政府は突如受け入れたものであります。その背景の一つは、兵器廠三菱重工をかかえた三菱グループの圧力であり、いま一つは、韓国軍近代化五カ年計画の重要な側面である兵器の国産化計画であります。特に、この計画は、朴大統領が一九六九年以来強く念願し、現在建設中のM16小銃製造工場の建設を基礎づける総合製鉄所を兵器生産の重要な柱であると韓国では位置づけているものであります。このように明確な軍事援助としての浦項製鉄援助が、さらに朴独裁政権の政治生命を守るという内容も含まれていることは、まことにゆゆしい問題であります。政府は、これでも浦項製鉄所援助を軍事援助ではないと断言することができますか。また、日本からの援助がいかなる軍事生産にも利用されないと断言できるか。さらに、このような疑惑を持たれている対韓援助は直ちに打ち切るべきと思いますが、関係大臣の明確な答弁をお願いしたいのであります。
 さて、最後に、私は田中総理の先ほどの失言問題についてただしたいと思います。
 田中総理は、自衛隊は軍隊だという長沼判決は誤りだと断定して大きな物議をかもし、一応は釈明されたが、問題はことばのあやではない、その真意であります。上訴中の政府の立場としては、意見が違うので目下上級の裁判所で判定を仰いでいるというのが、これが事実ではないですか。それを一国の総理として、また、行政府の最高責任者として、しかも最高裁判所長官の任命権をさえ持った総理が、このような断定をするのは、明らかにこれは行き過ぎではないか。これでは、まさに指揮権発動の疑いがあるとさえ言われてもしかたがない。今後の裁判に大きな影響を持つ問題でありますから、ことに、総理のお立場としては冷静に、あくまで慎重に、しかも興奮せずに、静かにこの問題を論議するのが今日国民に対する義務ではないかと思います。いかがですか。このことをつけ加えて私の質問を一応終わり、時間の余りはこれは再質問します。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(田中角榮君) 岩間正男君にお答えをいたします。
 第一は、本法案の委員会質疑を打ち切り、表決もしないまま本会議に上程したことは議員の審査権や表決権のじゅうりんのような御発言でございましたが、これは国会のことでございまして、政府として、本件に対して申し上げる立場にはないわけでございます。先ほど申し上げましたように、私が与党である自由民主党の代表者であるという面から申し上げますと、こういうような個々の問題に対しては、議会関係、国会運営の諸君にまかせ、その自主的な判断によっておるわけでございますので、これからもひとつ従来どおり十分御相談をしていただきたい、こう思うわけでございます。
 それから審議時間が不足だったということでございますが、この問題は、その後段の立場で申し上げますと、衆議院は、四十五時間四十分審議をしていただいておりますし、参議院では四十一時間七分、長沼判決の質疑分を入れますと、八時間四十分でございます。いずれにしましても、これはただ事実を、御指摘がございましたから私の立場で申し上げるだけでございまして、その他の国会の運営に対しては、議院の自主的な御判断で効率的にやっていただきたい、こう思います。
 第二は、長沼判決についてでございますが、裁判所が政府の見解と異なる見解をとることがあっても、それは三権分立のたてまえからいって当然あり得ることであります。また、いわゆる審級制度をとるわが国の裁判制度のもとにおきましては、さらに上級審の判断を待つべきことも当然でございまして、この点は、国または国の機関が当事者となっている訴訟についても全く同様であります。今回の事件のような重大な憲法解釈にかかる問題について、司法機関の最終決定を待たずに何らかの措置をとるというようなことは、むしろ、政府としてその責めを全うするゆえんではないと考えておるのであります。
 自衛力の整備は、わが国の平和と安全を維持し、その存立を全うするため、ゆるがせにできない問題であり、従来からの方針について何ら変更する考えはありません。
 安全保障政策についても同様でございます。
 次は、戦力、軍隊の定義についてでございますが、政府が従来国会において答弁をしておるとおり、戦力とは、広く考えると、文字どおり戦う力ということであります。憲法第九条第二項が保持を禁じている戦力は、ことばの意味どおりの戦力のうちでも、自衛のための必要最小限度を越えるものであり、それ以下の実力の保持は、同条項によって禁じられておりません。(「どこに書いてある」と呼ぶ者あり)それはもう当然のことでございます。軍隊にはいろいろな定義がございますが、諸外国の軍隊は外敵と戦いを交えることを任務とし、その活動は交戦権の行使に当たるものであると考えます。自衛隊は、交戦権の行使は認められていない等憲法上その他の各種の制約下にありますので、このような自衛隊は諸外国でいう軍隊とは異なるものと考えております。(拍手)
 憲法に対する平和主義の問題で一言ございましたから申し上げますと、わが国の憲法は、平和主義を基調としていることは言うまでもございませんが、自衛隊は、自衛のための措置をとるための必要最小限度の自衛力であると考えていますので、自衛隊が憲法の平和主義に反するものとは毛頭考えておりません。
 それから憲法の平和主義、国民の生存権についての御発言でございましたが、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」をしておるのでありまして、武力による侵略のおそれの全くない理想的な国際社会が実現するに至っていない今日、外国による侵略に対し、国を守る権利を憲法が放棄したものでないことは明らかでございます。「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」の最大の尊重を命じておる憲法の趣旨からいたしましても、自衛のため必要最小限度の自衛力を用意することは当然のことだと考えておるのでございます。
 自衛の限界内なら自衛隊も陸海空軍といってよいかと、同じような御質問でございますが、憲法第九条第二項は、陸海空軍と例示してわが国が戦力を保持することを禁止しているが、同項の戦力については、再三申し上げておりますとおり、政府としては、自衛のため必要最小限度を越える実力と解しておりまして、わが国の自衛隊がそのような意味における陸海空軍その他の戦力に当たらないことは明らかでございます。このことは、政府が従来から一貫してとってきた見解であります。
 お示しの政府委員の発言について申し上げておきますが、かりに外国からの侵略に対処することを任務とする実力組織を陸海空軍と言ったものとすれば、自衛隊もこれに該当することになるという趣旨のものと思われますが、憲法上のきびしい制約のある自衛隊と、このような制約のない通常の軍隊とは異なることはもちろんでございまして、同視すべきではないということで御理解をいただきたい、こう思います。
 自衛隊が革新政府、革新政党の政府――自民党以外と言うのだろうと思いますが、自衛隊が自民党にかわる政権ができた場合に反逆することは許されない。これはもう言うまでもないことでありまして、自衛隊は内閣の統轄のもとにあり、直接侵略及び間接侵略に対してわが国を防衛することを主たる任務とするものでございまして、このことは、政権の交代によって何ら変わるものではない、こういうことでございまして、これは申すまでもないことでございます。
 韓国軍、自衛隊幹部の相互交流についての御発言がございましたが、現在自衛隊幹部が訪韓して、韓国軍人が訪日するのは、職員の研修、体育その他記念行事の参加、国防事情及び施設の視察、表敬等のためでございまして、軍事同盟とは何のかかわりもないのでございます。したがって、これを中止する必要はないと考えております。
 最後に、韓国軍近代化五カ年計画への日本要請はあったかというような意味の御発言でございますが、わが国の協力要請といったものは全くありません。
 対韓経済援助の問題について申し上げますと、日韓両国は歴史上特別に深い関係があったことは御承知のとおりであります。また、隣国であります韓国が、経済発展によりましてより豊かな韓国として成長することをわれわれもまた願っておるのでございますし、わが国にとってもそのことは重要なことなのございます。政府は、有効な援助はこれを続けてまいります。
 残余の問題に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
   〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕
#36
○国務大臣(山中貞則君) 憲法と自衛隊との問題を中心に総理から答弁されました問題は、私からは答弁をいたしません。それは、自衛隊の最高の指揮監督権者は総理大臣であるからでございます。
 次に、海上自衛隊、航空自衛隊の防衛の範囲を示せということでありますが、すでにお話しのように、沿岸哨戒に当たる場合は二、三百海里、太平洋において二本の航路帯を想定した場合においてもせいぜい千海里以内ということでございまして、その程度のものであって、それ以上は考えてもおりませんし、能力もありませんし、さらに、米第七艦隊との分担区分を、任務分担を示せということでありますが、そのような任務の分担も全くいたしておりません。さらに、航空自衛隊の要撃の範囲でありますが、防衛範囲でありますが、それは侵入機の高度とかあるいは速度とかというものによってずいぶん違ってまいりましょうけれども、防空任務を果たすために必要なわが国周辺の高空上で侵入機を要撃することがあり得る、これは当然のことだと考えます。それ以上に、相手国の領空とか領海上にわが国の航空機が行かないことは当然のことであります。
 自衛隊員の政治的自由を保障しろという問題でありますが、これは政治的自由は一般公務員並みに制限もされておりますし、一般公務員並みでございます。また、基本的人権を認めろということでありますが、基本的人権は保護されております。長沼判決を読ませろということでありますが、すでに要旨をちゃんと印刷いたしまして配布しておりますし、それに向かって隊員が論議をするであろうことも想像できますし、論議することは自由であります。
 以上です。(拍手)
   〔国務大臣二階堂進君登壇、拍手〕
#37
○国務大臣(二階堂進君) 韓国軍の近代化五カ年計画の問題と、韓国への経済援助の問題につきましては、総理が御答弁になりましたので、つけ加えることはございません。
 浦項の製鉄所の援助のことにつきましても、経済援助は総理がお述べになりました趣旨どおりでございまして、その趣旨に沿う意味で協力をいたしておるものでございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(中曽根康弘君) まず第一に、韓国に対する経済協力が軍事目的ではないかという御質問でございますが、軍事力増強を目的にして経済協力をしておるのではありません。これは民生安定と国民経済発展を目的として、両国で合意して、そのもとに計画的に行なわれているのでありまして、軍事力増強のためには行なっておりません。
 第二番目に、浦項の製鉄所の問題でございますが、これは第三次五カ年計画達成のための経済近代化のために行なわれておるのでありまして、これはインドその他発展途上国に対して製鉄所建設に協力しているのと同じような性格でやっておるので、やはり国民経済発展のための協力でございます。
 第三番目に、経済協力を打ち切れという御質問でございますが、前に申し述べました理由によりまして、打ち切ることは適当でないと考えております。(拍手)
#39
○副議長(森八三一君) 岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇、拍手〕
#40
○岩間正男君 ただいまの本会議答弁というものは、私が最初に指摘しましたように、これは審議を尽くさない典型的なものになると思います。全く簡単な答弁で、事実ございません、それでもう平行線をたどっておるということの国会審議のあり方というものは、非常にこれは問題になるわけであります。そういう点が先ほどの四閣僚の答弁の中に出てまいりました。その中で、時間の関係もありますから、私は次の点にしぼって再質問をしたいと思う。
 第一に、田中総理の先ほどからの答弁を聞いておりますというと、自衛力はある、これはわれわれも認めておるわけです。ところが、あなたの論理はいつか飛躍して、自衛力は直ちにこれは自衛隊だ、こういうことになっておるんですね。この点は非常にやはり問題を飛躍させている。そうして、この問題の飛躍によって、不明瞭になっている重大な点だと思います。この点について、ひとつ明確にしていただきたいと思います。
 第二には、自衛のための軍隊、こういうことを言っておるわけですが、世界のどこをさがしても、私は、侵略のための軍隊である、自衛のための軍隊でない、そう言うところは一つもないだろう。どの国も全部これは自衛のための軍隊でありますと言っております。そうしますと、そういう点から考えるなら、日本の自衛隊というものは、これは世界の国のこれらの軍隊と比べて、一体、単に憲法によって外部に出ないんだ、自衛のためだという歯どめがあるんだということを言っておりますが、ここのところは非常にこれはあいまいになってきます。そこでお聞きしますけれども、世界に、自衛のためでない、そのような軍隊というものはあるのかどうか、この点をはっきりさせていただきたいと思います。したがいまして、このような前提に立って、この自衛隊が違憲の判決を下され、そうしてしかもそのような違憲の時代というのは、二十数年間続けられてきたのであります。
 私ははっきり申しておりますのは、このような違憲の判決が下されたということは、これは裁判史上初めてだ。そうしてしかも非常にこのことについては国民は大きな関心を寄せている。そういう点から考えて、明確にこれに対処するということが政治的にも重要になっていると思うのです。私は先ほど、だから国民を納得させる戦力、軍隊の定義というものを明白にしてほしいと。しかし、先ほどの総理の答弁では、非常にその点はあいまいであり、何ら国民を納得させることはできない問題だと思うのです。国民は、こういう問題とも関連していま非常に問題にしているのは、この国会のわれわれの論議の問題です。違憲の判決がすでに出された。いわば防衛二法は、その中でははっきりらく印を押されたところの、そのような法案。それをどうして一体ゴリ押しして通さなければならないのか。ことに、このような異例な審議で、きょうは祭日です。この祭日にもかかわらず、これは審議を強行しなきゃならない、こういう形で通すことに、これは非常に納得しないものを持っていると思う。この点について、はっきり国民にこれを一体了解させることができるかどうかという問題です。この点について答弁を願いたいと思います。
 第三に、私はここで考えたいと思うのは、防衛二法の問題というのは、単にこれは防衛二法だけの問題でしょうか。私はそうではないと思う。九条二項が、御承知のように改憲解釈をされまして、そうして防衛二法がまかり通り、それに基づいて自衛隊がどんどん増強されてまいりました。そういうことによって、実は日本の政治路線が全面的に私はゆがめられてきたと思うのです。一切の日本の政治のゆがみ、ことに軍国主義の復活の問題、さらに、これに伴うところの小選挙区制、あるいは憲法改悪の問題、そうして最近のこのやり方、最近のこの暗黒政治につながる一連の政治路線というものは、まさに防衛二法を強行した、この違憲に基づくこのような政治のやり方が、大きく日本の政治路線を変えてきたと思う。暗黒政治の根源も、まさにここに求めることができると思うのです。そういう点から考えますと、私たちのいま当面しておる防衛二法の審議というものは、実は日本の政治全体とも深い関係があり、この政治路線をほんとうに正すことができるかどうか、少なくともその第一歩を、原点に立ち戻って長沼判決は明確にしたという点で、非常に大きな意味があると思います。二十数年ゆがめられてきたところの政治路線でありますから、これを元に戻して修正するということは、非常に困難な問題かもしれませんが、この点で、大きく国民はここで力を合わせて、このようなことを、この防衛二法の審議を見守っているというふうに考えられるわけです。こういう点からの、一体、政治路線との関係で、これは総理はどのような反省をお持ちになるのか。防衛二法が最後の段階になっている、こういう中で、私はそのことを最後に、特に、総理にこの見解をはっきり表明していただくことを要求して、私の再質問をこれで終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(田中角榮君) 長沼判決という新しい裁判所の判断が下されたのであるから、この判断が下されたという事実を認識をして、政府は防衛政策を改めるか、もしくはストップしたらどうかと、こういうことでございます。しかし、先ほどからるる申し述べておりますとおり、政府は、裁判所で一つの判断が行なわれたという事実は認識をいたしております。政府が当事者でございまして、政府は言うなれば敗訴をしておるわけでございます。その意味で、政府は、法律の定めに従いまして、この下級審の判断を不服として控訴をしておるのでございます。でございますから、しかもこの憲法判断というような非常に重要な問題というものを、最終審の判断を待たないという状態で防衛政策を変更したり、戸惑ったりしたら、それこそ政府の責任を果たすゆえんでないということを、先ほどからるる申し述べておるのでございます。(拍手)るる申し述べておるのでございます。ですから、そこはひとつ十分御承知をいただきたいと思います。
 いま岩間さんも述べられたとおり、独立国である限り、自衛力はある、これはもうあたりまえのことだということを認められたわけでございます。自衛力というものは、すべて自衛隊というような組織だけが自衛力であるとは考えておりません。相当広い広範な意味で民族の、独立国家の持つ自衛力というものが評価さるべきことは知っておりますが、自衛隊というような現に存在する組織は、その自衛手段の中の有力な手段であることは事実であります。そして、そこが憲法に背反をしておると言うところが、共産党と自民党の違うところでございます。(拍手)
 それは、外国の軍隊は交戦権を持っておることは事実であります。日本の自衛隊は交戦権を持たないということを、何度も言っておるではありませんか。それは憲法九条という、平和憲法の明示する九条の範囲内のものであるということを、私はるる申し上げておるのです。それを、憲法九条そのものは自衛権さえも否定しておるというものの考え方には、遺憾ながら首肯いたしません。(拍手)
#42
○副議長(森八三一君) これにて質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#43
○副議長(森八三一君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。前川旦君。
   〔前川旦君登壇、拍手〕
#44
○前川旦君 私は、日本社会党を代表し、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論をいたします。許された時間が短いので、簡潔に申し上げます。
 反対理由の第一は、今回の改正案はもとより、防衛庁設置法、自衛隊法そのものが憲法違反の法律であるということであります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 私は、何よりもまず憲法をすなおに読み、かつ長沼判決を詳細に熟読するならば、今日の限りなき武力の増強が明らかに憲法に背反することを、だれしも否定し得ないと思います。しかるに政府は、自衛力は戦力でないと言われます。しかし、諸外国の憲法において戦争放棄の規定はかなり多いのであります。たとえばフランス一九四六年の憲法、ブラジル一九六七年の憲法、スペイン一九三一年の憲法、フィリピン一九三五年憲法、ビルマ一九四七年憲法、タイ一九四九年憲法、ドイツ民主主義共和国、束ドイツですが、一九四七年憲法、同年のイタリア憲法、大韓民国一九六二年憲法、そして一九四九年の西ドイツ、ドイツ連邦共和国基本法など。念のため申し上げますと、大韓民国憲法第四条では「大韓民国は国際平和の維持に努力し侵略戦争を否認する」と規定され、イタリア共和国憲法第十一条は「イタリアは国際紛争を解決する方法としての戦争を否認する」、西ドイツでは「侵略戦争の遂行を準備する行動は違憲とする」などと明記されております。したがって、政府解釈に従えば、これらの国の軍隊はすべて自衛のための必要最小限の武力であって戦力ではないということになり、一体、日本の自衛力とこれらの国の戦力とはどこが違うのか、まことにあいまいなものとなるわけであります。このように、自衛力と戦力の違いが明らかでないままに、ひたすら憲法違反の軍備増強が強行されることを、私は決して容認することができないのであります。
 次に、法案の中身についてでありますが、まず沖繩航空混成団については、すでに基礎部隊として二千五百人近くが派遣され、航空機もF04J一飛行隊などが配備され、レーダーサイト、ナイキ等の引き継ぎも着々と進み、その実態はすでに航空混成団となっており、機能的にも、本年一月一日からアラート体制を引き継いで、自衛隊法別表で定める航空団以上の機能と規模を持つに至っております。これは明らかに法律違反と言わざるを得ません。法治国であるはずの日本で、法律で許される前にこのような配置が行なわれる。それも、自衛隊に限って許される。これではシビリアンコントロールの精神が泣くことになります。法律を無視ないしは軽視する風潮が武装集団に広がるとき、その結果がいかにおそろしいものであるかを思えば、私は今回の措置を絶対に認めるわけにはいかないのであります。
 次に、この法案では、新たに防衛医科大学校を新設することになっております。現在、一般国民は、老人、乳児を含めて九百十九人につき医師一人の割合になっておりますが、この大学校ができますと、自衛隊員のみは三百十人に医師一人の割合で専属の医師を持つことになるのであります。今日、数百万人の国民が無医村や医師不足で不安な日々を過ごしているのに、健康な若者ばかりの集団で、しかも、かりに病気になっても万全の輸送手段を持つ自衛隊にだけ、なぜそんな手厚い配慮がなされるのか。また、防衛医科大学校の基本方針をきめた設置懇談会の意見書によりますと、この学校は「自衛隊における医学研究センターとしての機能」を持ち、「自衛隊の特性を考慮したテーマのもとに大型プロジェクト研究に重点を置く」とされています。法的な禁止事項が法案に盛り込まれていないがゆえに、この「自衛隊の特性を考慮したテーマ」には、ガス、細菌、ビールスなどを使う生物・化学兵器に関する研究が含まれることになります。公開の原則が守られない防衛庁の学校で、BC兵器の開発研究が行なわれないという保証はないわけでありますが、本来、人を助けるための医学が人を傷つけ、人を攻撃するために使われるなら、それは医学ではない。私は、防衛医学の名のもとに医学が軍事に従属することを許すことができないがゆえに、このような構想には断固反対するものであります。
 反対の第三の理由は、私は、武力では日本を守れないと信ずるがゆえであります。
 政府が強引に防衛二法を押し通すからには、あらためて政府は、武力増強で日本を守り得ることを国民の前に証明してみせなければなりません。わが日本列島は、残念ながら国土まことに狭小であり、資源は乏しく、過密な人口が太平洋ベルト地帯に集中し、そのため戦争に耐え得ないという宿命を負わされております。核攻撃はもちろんのこと、通常兵器によるものであっても、もし大規模な武力攻撃が日本に加えられた場合を想定しますと、国土が狭いがゆえに、うしろへ下がって態勢を立て直し、やがて反撃に転ずるというゆとりを持ち得ません。資源乏しきがゆえに、損害を上回る生産と補給を続けることができません。人口と生産設備の集中は、わずかな攻撃で多大の損害を巻き起こすことになります。空からの攻撃を仮定すれば、全国二十八ヵ所のレーダーサイトや数少ない戦闘機用の滑走路を破壊されると、戦闘機はあっても飛び立つことはできず、かりに飛び立っても、レーダー誘導がなければ侵略空軍と接触することさえ不可能であります。その上、今日では、飛行機から地上を攻撃するミサイルは格段の進歩を遂げ、戦闘機の守備範囲の外からさえ地上攻撃が可能になっているのであります。
 海の場合で例をあげますならば、日本の生命線である海上交通を軍艦で守り切ることはとうていできません。まず侵略国の原子力潜水艦を探知して、これを捕捉、撃沈することは、およそ不可能であります。現に、世界第一の海軍国アメリカでさえ、対潜水艦作戦能力はゼロに近いのです。攻撃は潜水艦のみならず、空からも、海上からも自由に加えられるのでありますから、これを防ぐ手だてはありません。次に陸はどうか。陸上自衛隊はもっぱら国内で戦うことがたてまえになっています。これは本土が戦場になるということであります。この本土には一億の国民が生活しているのであります。この前の戦争の沖繩決戦やサイパン島の悲劇を思い起こすまでもなく、この本土で数千台の戦車を走らせ、大口径砲やロケットを撃ち合うことは、国民の命を大切に考えるならば、とうてい成り立ち得ない戦略であります。
 そこで政府は、日本の自衛力では守り切れないから、米国にたよる、一日も早い米軍の来援を待つというのであります。だが私は、はたしてこの支援が確実なものかどうか、一〇〇%米軍の直接の来援はあるのか、それは単なる願望にすぎないのではないかという疑問を投げかけざるを得ません。いかなる国といえども、同盟国のために自己の国益を犠牲にするということはありません。かりに米国が支援するとしても、一、直接武力で支援する、二、武器だけを援助する、三、国連等で外交のみで支援する、四、ことばと同情だけで支援するなど、直接介入から傍観まで、どの手段によるかは、そのときの内外情勢によって千差万別であり、窮極の選択権は向こうにあり、こちらにはありません。したがって、私は米国来援を前提としての現在の政府の防衛構想は、仮定と願望の上に築き上げられたものであって、まさに架空の防衛構想と言わざるを得ないのであります。政府は、何ゆえにかかるきびしい現実を直視しようとしないのか。もし政府が、おそれることなく冷静にこの真実を判断され、武力の限界を知り、弄しろ武力にたよらざる新しい防衛構想、たとえば憲法に忠実に従いながら、外交面での努力を積み重ね、アジアの緊張緩和、日ソ、日中、日朝間の不可侵、武力不行使、平和共存の定着化、日本の非核武装と中立の国際的保障、核を含む国際軍縮、国連の強化等々の道を探求していくならば、日本の安全に対する与野党間の新しいコンセンサスと対話が生まれるでありましょう。しかるに、かかるナショナルコンセンサスに背を向け、日米安保条約に執着する政府の態度はかえって日本の安全を危うくし、国民間の亀裂を広げるのみであり、私はとうてい認めることができないのであります。
 最後に、私は、ベトナム戦争とは一体われらにとって何であったかを問うてみたい。
 米国はベトナムに五十四万の大軍を投入し、第二次大戦に使用された弾薬の三倍の爆弾を投下し、十年を戦ってなお、敗れ去らざるを得ませんでした。世界最強の軍隊と近代的兵器も、三千九百万人のベトナム人の心と精神に打ち勝つことができませんでした。それは力の政治、力の外交、力の信仰が劇的にくずれていく大きな歴史の節ではなかったでしょうか。アジアの緊張緩和は、米軍のベトナム撤退、米中和解から、つまり、力による封じ込め政策の敗北から始まりました。そして、いま私たちのなすべきことは、この緊張緩和をゆるぎなきものに定着させる努力ではないでしょうか。換言すれば、戦争に備えるための金と物とエネルギーと人を、戦争に備えるのではなく、戦争を防ぎ、戦争をなくすることに集中して使うということが日本国憲法の精神であると信じます。そのゆえに、私は、いまだに冷戦構想の遺物である軍備拡大を強行しようとする政府の時代錯誤に対して、深い憤りをもって抗議するとともに、平和を愛する人間の良心にかけて、防衛二法に対して絶対反対の旨強く訴え、日本社会党を代表しての反対討論といたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#45
○議長(河野謙三君) 中山太郎君。
   〔中山太郎君登壇、拍手〕
#46
○中山太郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、賛成の意見を表明するものであります。
 今日の国際情勢の大きな特徴は、対決から対話へという方向に移行しつつあります。昨年の米中、米ソの首脳会談の実現は、相互信頼の回復を示す対話のとびらが開かれたということを意味し、世界各国は緊張の緩和に貢献する動きとして歓迎したところであります。このような緊張緩和の傾向は、米、中、ソにとどまらず、政治信条や社会体制の相違を乗り越えて、各国が互いに国際間の問題を話し合いによって調整しようとする努力が始められ、一部の国々を除いては、世界全体の傾向としては緊張緩和に大きく動いていると申せましょう。このような動きが、わが国にとっても、また世界各国にとってもきわめて好ましいことであることは言をまたないところであります。
 しかしながら、米中、米ソの雪解けムードによって、直ちに世界の平和と安定が達成され、定着したと見るのは早計であり、このような緊張緩和がもたらした背景やその基本にあるものを考えなければなりません。かつてのべトナム紛争に見られるとおり、紛争状態を力によって解決できないから、お互いが現状を認め合って共存しようとする姿勢であり、お互いに破局的な武力対決を避けようという点では一致しているものの、最近の報道にもありますように、同じ社会主義体制下にある中華人民共和国とソビエト連邦の間ですら、イデオロギー論争に端を発し、その国境線に相互が数百万の軍隊を展開させ、周辺海域に艦隊を遊よくさせ、相対峙し、お互いに非難をしながら自国の軍事力を維持強化する努力を続け、政治的な影響力を競い合っているのが今日のアジアの現状であります。多くの日本国民は、同じ社会主義体制の国家同士が、なぜ外交交渉によって意見の相違を解決せずに、それぞれの軍隊を国境線に展開をさせて相対峙しているかということについて、不可解な気持ちを持っておるのであります。
 このように、その底流に変転流動の要素をはらんでいる現在の世界情勢のもとにおいては、いかなる国といえども、自衛のための努力なしには、その存立を全うし得ないのが国際社会の現実であり、永世中立を国是とするスイスの強固な防衛体制がそれを明らかに物語っております。(拍手)
 このような国際社会の実態を踏まえて見るときに、自由民主党政府が、日本の独立と一億国民の生命、財産の安全をはかるため、安保体制のワク組みの中で、平和憲法の認める必要最小限の防衛力を持つことは当然の責務であります。わが国は、これまで専守防衛を基本理念として、世界の主要国の中では最も低い水準の防衛支出と、それを補完する日米安全保障条約によって日本の平和を保ち、民族の繁栄を続けてきたのであります。
 最近、一部の国民の間には、戦後二十八年間の日本の安全と平和を維持してきたものは、自由民主党政府のとった防衛政策の成果であることを正当に評価することなく、交戦権を放棄した平和憲法のもとでは、平和は空気のようにいつでも無料で手に入れることができ、平和な日常生活は、国民に与えられた平和憲法上の当然の権利であり、日本を侵略してくるような外国軍隊は決してあり得ないと盲信している傾向があるのであります。また、国民にそう信じ込ませようと努力をしている人々もあります。すなわち、防衛力は不必要であり、防衛費をすべて福祉に回せという主張がそれであります。また、一部には理想的な非武装中立を主張する考えがあります。非武装中立論は一つの自衛理論として傾聴に値する見識でありますが、現実的な国際社会には、このような理論に基づく非武装中立国は存在しておらず、一方、数回にわたる過去の選挙の結果を見ても、非武装中立政策を掲げて選挙戦に臨んだ政党に対して、圧倒的な多数の国民の支持が得られなかったことからも明らかであります。このような現実を離れた理想論には、われわれは一億民族の運命を託するわけにはまいりません。
 また、日米安全保障条約は、冷戦時代の残滓であり、一日も早く安保条約を破棄して、積極的中立外交政策をとることが平和憲法の精神であるという意見もありますが、日米安全保障条約が締結されたその前年、すなわち一九五〇年二月十四日に締結された日本を対象とした中ソ軍事条約は、有効期間三十年で現在なお有効であり、また、中華人民共和国と朝鮮民主主義人民共和国との相互防衛条約、ソ連と朝鮮民主主義人民共和国との相互防衛条約が現存しております。これらの事実から、日米安保条約が日本の防衛上、今日なおきわめて有効に作用しており、過去の残滓であることとは決して考えられないのであります。わが国のとるべき安全保障政策は、今日のアジアの情勢が続く限り、今後とも、日米安保条約の堅持が最も賢明な策であると考えるものであります。
 現実の平和と緊張の緩和が力の均衡の上に築かれている以上、ここまで経済的に発展した日本が、自衛のために必要な自衛力を維持するようみずから努力することは当然であります。日本の防衛政策について、必要最小限の自衛力と、それを補完する日米安全保障条約を堅持するという防衛政策を、民主的選挙において主権者たる国民に公約し、圧倒的な多数の支持をもって推された自由民主党政府が、その公約に基づいて防衛政策を推進することは、主権者たる国民に対する最大の政治責任にほかなりません。(拍手)
 今回提案されました防衛二法案の骨子は、自衛官の増員と防衛医科大学校、自衛隊離職者審査会の新設をおもな内容といたしております。この防衛二法案は、現在の国際情勢のもとにおいて、わが国の防衛整備の観点からまことに必要でありまして、国民の大多数の支持を得られることと確信をいたしております。一国の防衛は、全国民の支持と理解が何より必要であります。その点に関して、与野党の間において防衛に関する基本政策に根本的な対立があり、国の安全保障を論ずるにあたり、国論の一致が見られぬことは、国家、民族にとってまことに悲しむべきことであろうと考えております。安全保障に関するより広範な合意を得るためにも、自衛隊自身も国民から信頼されるよう一そうの努力を期待するものであります。
 最後に、私は、憲法と自衛権及び自衛隊との関係について一言触れてみたいと思います。
 先般行なわれた長沼判決の中で、自衛隊が違憲であるという判決が出たことをはなはだ遺憾に存ずる一人であります。自衛権とは、言うまでもなく、これは人間の生存権とともに、独立した主権国家には固有の権利で、国際法上、国家に認められた正当な権利と解釈されております。すでに最高裁の砂川判決においても、憲法の平和主義は決して無防備を定めたものではなく、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとることは、国家の権能の行使として当然であるとしており、わが国が独立の主権者として固有の自衛権を持っていることをきわめて明白に示しております。また、このことは、すでに憲法制定当時の意向、憲法議会における第九条二項の修正、すなわち「前項の目的を達するため」という文言を加え、自衛のための措置が許されることを明確にしたことからも明らかであります。それにもかかわらず、今回の長沼判決は、憲法九条二項の「陸海空軍」の戦力に該当し、違憲であると、全く先例を無視した恣意的な解釈をなし、司法権の優越の名のもとに、国家存立の基本に関する自衛隊の存在を否定する判決を下したことは、司法権の乱用と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 また、自衛隊は、国の自衛のための措置として、主権者たる国民の総意を代表する国会において、慎重かつ十分な審議を経て設置され、かつ毎年度の予算、自衛隊の基本を定める防衛二法の審議を経て整備されてきたものであることをわれわれは銘記すべきであります。自衛隊は、申すまでもなく、国家の存立に重大な関係を持つ自衛権の行使の任に当たるものであり、これの設置、規模、装備、能力等をいかなる程度にするかは、国家の安全保障という、国の存立の基礎にきわめて重大な関係を持つ高度の政治性を有する問題であることは明白で、最高裁の判例にもあるとおり、司法裁判の審査になじまないものであり、統治行為に属するものであります。したがって、その判断は当然主権者たる国民に対して最高の政治責任を負う……
#47
○議長(河野謙三君) 中山君。
#48
○中山太郎君(続) 国会の判断に……
#49
○議長(河野謙三君) 中山君、中山君、時間がだいぶ経過しました。
#50
○中山太郎君(続) ゆだねられるべき問題と考えます。この判決の重大な憲法解釈の誤りは、上級裁判所において必ず是正されるものと信じて疑いません。
 以上申し述べて、自由民主党の賛成討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#51
○議長(河野謙三君) 上林繁次郎君。
   〔上林繁次郎君登壇、拍手〕
#52
○上林繁次郎君 私は、公明党を代表して、今回提案されました防衛庁設置法並びに自衛隊法の一部を改正する法律案について反対の討論を行なうものであります。
 わが国の安全保障の目標は、憲法第九条の戦争放棄の精神、恒久平和主義に基づく国民的合意を確立し、全世界に平和憲法の精神を宣揚して、世界平和を目ざすものであると考えるものであります。したがって、安全保障政策は、国際緊張を醸成している諸要因を除去するために、多面的な平和外交を最も重視しなければならないにもかかわらず、政府の姿勢には、新しく胎動しつつある歴史的な国際情勢の動きに対し、何ら積極的に対処する気魄もまた熱意も全く感じられないばかりか、国際情勢逆行の軍事力増強政策をとっていることを率直に指摘しなければなりません。このことは、このたびの長沼ナイキ基地訴訟における札幌地裁の判決が如実に示しているのであります。すなわち、去る七日、福島裁判長は、自衛隊は戦力であり、憲法違反であると、自衛隊に対する初の歴史的違憲判決を行なったのであります。これは、たとえ一審判決とはいえ、平和憲法を解釈改憲によってなしくずしに空洞化し、自衛隊を肥大化させてきた自民党政府に鉄槌を下すとともに、わが党がとってきた、自衛隊は違憲の疑いがきわめて強いとの主張をより明確に裏づけたものとして、高く評価されるのであります。政府は判決に対し、偏向判決などと誤った宣伝を行ない、高裁に控訴するなどとはもってのほかであり、これこそ国民が希求する平和への純粋な願いを踏みにじるものであり、政府は直ちにこのような姿勢を改めるべきであります。
 今回の判決を見るまでもなく、これまでも裁判所が自衛隊に対して憲法判断を下す機会は幾たびもあったのでありますが、それが今日まで引き延ばされてきたことは、おそきに過ぎたのであり、これは、あたかも自民党政府の解釈改憲による憲法九条の空洞化に手を貸したと見られてもいたしかたがないことでありましょう。従来、政府は、自衛隊違憲論と高度に政治的な問題は司法審査になじまないから、裁判所の判断の外に置くべきだという統治行為論を主張してきたのであります。そもそも、統治行為論とは、判決にも述べられているように、憲法体制や国家組織の理論的帰結というより、むしろ、各国の歴史的、社会的諸事情のもとに形成され、発展してきたのであり、そのため、この考え方の内容は各国各様であり、統一したものを見ないのであります。したがって、国民は、政府が上訴した上級審においては、統治行為論が排され、上級審なりの憲法判断を下すことを強く願い、期待しているのであります。
 次に、憲法第九条について述べてみるならば、今回の判決によれば、憲法第九条の解釈は、その前文に示された基本原理の一つである恒久平和主義に従ってなされるべきであるとし、憲法九条は、第一項で侵略戦争を放棄し、第二項で戦争の危険を根絶するために一切の軍備、戦力を放棄し、かつ、交戦権をも否認したものであると述べているのであります。この前提に立って、福島裁判長は、陸上、海上、航空各自衛隊は、現在の実態から見て、憲法第九条第二項にいう陸海空軍に該当し、違憲であるとの画期的な判決を下したのであります。
 言うまでもなく、昭和二十一年の憲法改正議会における政府の第九条の解釈は、その一項で自衛戦争を禁止していないが、二項で一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛戦争をも放棄したものであると、今回の判決同様の見解をとっていたのであります。それが、米ソの冷戦激化、サンフランシスコ講和条約の調印、日米安保条約の締結と進む中で、事実上の再軍備の一歩である警察予備隊が創設され、さらに保安隊、そして自衛隊へと発展させ、規範としての九条を完全に空洞化してしまったのであります。その結果は、日米安保条約によってアメリカの極東戦略に組み込まれ、米軍と連動した自衛隊は、F4Eファントムやミサイル兵器に代表される攻撃的兵器を持ち、戦略守勢の名のもとに、外国基地までを攻撃範囲に含めるまでに肥大化したのであります。また、防衛予算も、三次防、四次防と逐次倍増を続け、最近提出された四十九年度防衛予算概算要求は実に一兆円をこえる膨大なものであります。こうした政府の独走に対し、憲法違反との判断が下ったいま、政府はこの審判を深刻に受けとめると同時に、判決の趣旨を尊重し、少なくとも四次防などの軍事力増強政策を即座に撤回すべきであると強く主張するものであります。
 しかも、このたび政府が提案している防衛二法案は、まず第一に、自衛官の定数を約七千名近く増員しようとするものでありますが、現在、陸上自衛隊においては、恒常的に二万五千人近くの欠員をかかえているというのが実情であります。その上、一千名の定員を増員し、十八万体制を維持しようとする防衛庁の意図は全く理解に苦しむものであります。かつて増原前防衛庁長官は、現定員ですら充足困難と見て、自衛隊の簡素化、省力化を中心とした十項目の基本方針を骨子とした四十九年度の業務計画に見られるごとく、定員増は撤回すべきであると強く主張するものであります。
 第二には、航空自衛隊のもとに南西航空混成団の新設であります。これが自衛隊の沖繩派遣を正当づける根拠となっておりますが、実際には、久保・カーチス協定によって、臨時派遣という名称で、すでに本年四月までにその主力部隊四千人以上の自衛隊員が地元の反対を押し切って沖繩に派遣され、配置されているのであります。国会の意思とは関係なく、一防衛庁長官の訓令等によって、臨時という名のもとに先取り的に実践部隊が配備されるということは、シビリアンコントロールの見地からも、また、国会軽視という見地からもきわめて重大な問題であります。このような先取り的暴挙は断じて許せないのであります。
 第三に、防衛医科大学の新設についてであります。教育基本法に基づかない大学校の卒業者に対して、学校教育法所定の医学コースを経た者と同様に医師国家試験の受験資格を与えることは、現行教育体系を著しく破壊するものであり、とうてい容認するわけにはまいりません。
 政府にとって、いま必要なことは、新しい平和への幕あけの時代を迎えて、わが国がとるべき平和保障政策の方向が、外においては、軍事力だけが唯一必要不可欠なものであるかのような一面的な考え方をとるのではなく、国民一人一人が確固とした平和への決意と自覚に立ち、国の平和問題を正しく認識し理解するとともに、絶えず、近隣諸国の公正と信義を信頼しつつ、社会体制の異同を越えたこれら諸国と友好関係を保つための積極的平和外交政策の確立にあるのであります。また、内にあっては、物価、公害問題等をすみやかに解決し、社会保障、社会福祉を充実して、明るい豊かな国民生活を築くことが何よりも重要なことではないでしょうか。
 したがって、以上の理由により、今回提案されている防衛二法案は軍事力増強をはかるものとして強く反対し、私の討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#53
○議長(河野謙三君) 中村利次君。
   〔中村利次君登壇、拍手〕
#54
○中村利次君 私は、民社党を代表して、ただいま上程されております防衛二法案に対して反対の討論を行ないます。
 きわめて遺憾ながら、わが国の防衛に対する国論は明らかに分裂の状態にあります。憲法九条の解釈にいたしましても、現行の自衛隊を違憲とする解釈、合憲とする解釈、あるいは自衛隊そのものを違憲とする解釈、合憲とする解釈等々、法律論としても政治論としてもわが国の国論は二分されておる状態にあります。少数、多数にかかわらず、遺憾ながら分裂の状態にある。したがいまして、私は、さらにここで私ども民社党の見解を明確にしておきたいと存じますけれども、私は、自衛隊違憲論をとる向きも、独立国としての日本の自衛権を否定する人はないと思う。これは長沼判決におきましても、独立国としての自衛権は否定をしていないわけであります。独立国としての自衛権があって、自衛手段がない、自衛の方法が否定されるということは、まさにこれは矛盾撞着のきわみでありまして、私どものとり得ないところであります。したがって、民社党がつとに提唱をしておりますのは、自衛方法、自衛手段、自衛力のあり方をどうするか、国民とともに真剣にその議論を進めるべきであるということを提唱しておるのであります。最近の新聞論調等におきましても、わが党のこの主張は大方によって支持されているということを私は確信して疑いません。
 私が防衛二法案に反対する理由は、そのように国論が二分をして、最小必要限度のわが国の自衛力はいかにあるべきかということを求めなければならない実態にあるにもかかわらず、政府の手によって自衛隊が増強をされ、とどまるところを知らないという状況にあるところに、私どもが政府の提案をする法案に賛成できない決定的な理由があるわけであります。
 具体的には、たとえば十七万九千の陸上自衛隊を十八万に定員増をするという、質疑の中でも明らかにされましたように、いまですら欠員によって兵器、装備のまともな使用すらできないという状態にある定員を増強しようとする。これはまさに兵器、装備のための定員増であり、あるいはもっと言うならば、防衛産業のための定員増、自衛隊の増強ではないかという疑いをすら持たれるわけでありまして、私どもの断じてとり得ないところであります。政府は、よろしく私ども民社党が提唱してまいりました防衛委員会を国会に設置をして、国民とともに日本の自衛手段、自衛方法、それに基づく自衛力の限界はどうあるべきかを、国民の立場に立って真剣に討論をして、結論を出すべきであると存じます。
 要約いたしますと、現在政府がとっておりますいわれのない自衛力、自衛隊の増強に対しては、断じて賛成することができませんし、与野党の間あるいは国論の間にも、いろいろな言論分裂あるいは法律の解釈における分裂がございますけれども、何としても、これはいろいろな意見が、見解があるにいたしましても、私は発想そのものは、日本をどう平和の中に日本という国を維持するのか、あるいはその平和の中で、安全の中で日本国民の生命をどう維持するのかというところに発想の原点はあると確信いたしますがゆえに、政府は、よろしく国論二分の中での歯どめのない自衛隊、自衛力の増強をやめて、国民合意を得るための真剣な努力をすることこそが、わが国の真の平和と国民の生命、財産の安全を守る道に通ずるものであることを確信いたします。
 ここに反対理由を説明して、私の討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#55
○議長(河野謙三君) 岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇、拍手〕
#56
○岩間正男君 討論に入るに先立って、私の先ほどの発言の中で、自衛カイコール自衛隊だというふうに言ったところがありますが、「自衛力」ということばを、これは「自衛権」と訂正します。
 私は、日本共産党を代表して、防衛二法案に対する反対討論を行なうものであります。
 まず、最初に指摘しなければならないことは、田中内閣・自民党が、この法案を、広範な国民の反対を無視し、あくまで成立させるために、手段を選ばぬ数々の暴挙を重ねてきたことであります。衆議院内閣委員会での強行採決に続いて、参議院においては七月十七日、自民党は、審議日程に合意し、天地神明に誓って強行採決はいたしませんとまで言いながら、野党の質問がその日始まったばかりのところで強行採決の挙に出たのであります。このような暴挙が成規の議事手続を全くじゅうりんした不法、無効のものであることは、何人にも明らかであります。しかも、この採決が、いわゆる確認事項なるものによって事実上合法化され、その上に、再開された委員会での私の質問さえも一方的に封殺されるに至ったのであります。私は、自民党・田中内閣によるたび重なる議会制民主主義破壊の暴挙を、怒りを込めて糾弾するものであります。
 次に、防衛二法の内容に触れます。
 今回の防衛二法の改正は、大量の自衛隊員の増員、装備の飛躍的増強、自衛隊の沖繩配備、防衛医大の新設などを内容とするものであり、日本の安全とアジアの平和を願う日本国民にとって、とうてい許すことのできない危険な内容を持つものであります。
 まず第一に、自衛隊員の増員の問題についてであります。
 今回の内容は、過去二回にわたる防衛二法案の廃案で実現できなかった自衛隊員増員計画に新たに二千八十人を上乗せし、総勢七千人の大増員をはかろうとするものであります。周知のように、自衛隊の定員が法案どおりに充足されたことはほとんどなかったのであります。それにもかかわらず、政府・自民党は一貫してその拡大に狂奔してきました。今回も全くこれと軌を一にするもので、当面、四次防推進に要する人的保障体制づくりをはかりながら、建造費が二百五十八億円もする海上自衛隊の艦対空ミサイル搭載護衛艦の建造や、戦闘爆撃機FST2改用の空対艦ミサイル開発など、対潜作戦能力の急速な強化に見られるように、自衛隊全般の侵略的な装備の強化、近代化と相まって、憲法違反の自衛隊の大幅な増強をはかろうとしているものであります。しかも、今回の七千人増員は、その大半を久保・カーチス取りきめに基づき沖繩に配備し、アメリカの極東戦略の必要と要請に進んで協力し、その緊急出撃態勢下にある沖繩米軍基地を自衛隊の手で直接防衛するという危険きわまりないものであります。
 第二に、今回の防衛二法改正の中心的内容である南西航空混成団を中心とする沖繩への自衛隊配備の問題であります。
 南西航空混成団は、総勢二千数百人からなる航空方面隊にも匹敵する大がかりなものであります。政府は、これを沖繩に派遣することについて、沖繩防衛のための当然の措置であるなどと称しています。しかし、事実は、沖繩における米軍の防空体制の肩がわりであり、アメリカのアジア侵略の拠点である沖繩の米軍と米軍基地のガードマンの役割りを果たすこと、これが自衛隊沖繩配備の最大のねらいなのであります。このことは、これまでの不十分な国会審議を通じても明白であります。このような目的と任務を持つ沖繩への自衛隊配備が、アメリカの極東戦略に一そう深く組み込まれ、日米共同作戦体制を新たな危険な段階に推し進めるものであることは、もはや多言を要しません。しかも、重大なことには、田中内閣がアメリカの強い要求を受けて、久保・カーチス協定に基づき沖繩への自衛隊配備を、防衛二法案の成立を待たずに、すでに実行してしまっているという点であります。まさに防衛二法の先取りであり、国会無視もはなはだしいと言わなければなりません。これに対して政府は、沖繩への配備の先行は臨時のものであり、違法でも先取りでもないなどと弁明していますが、その実態を見れば、このような言いがかりがいかに欺瞞に満ちたものであるか、一目りょう然であります。すなわち、すでにスクランブル態勢、ナイキ、ホークの要撃が可能である体制がとられ、防空管制指揮所及び七月一日以降は防空戦闘指令所の存在する防空管制所が米軍から引き継がれたことにより、南西航空混成団司令部は事実上機能し、その防空機能はフル回転しているのであります。
 第三の問題は、防衛医科大学校の設置についてであります。
 政府は、防衛医大の設置は、自衛隊における医官不足を補うための医官の養成だと説明していますが、中曽根元防衛庁長官の訪米報告でも明らかなように、その真のねらいは、アメリカの近代軍事医学、軍事技術を吸収し、米軍の援助のもとに人民殺傷を目的とする生物・化学兵器開発など、自衛隊による軍事医学研究者の養成とその研究体制をつくり上げることにあることは明らかであります。アメリカの近代軍事医学がどんなものであるかは、それはアメリカのあの残虐なベトナム侵略戦争が端的に証明しております。また、防衛医大の新設は、憲法、教育基本法の保障する学問・研究の自由を奪う違法なものである点でも重大な問題であります。
 以上、私は防衛二法案に反対する理由を簡単に指摘しました。いま田中内閣と自民党によって、議会制民主主義をじゅうりんするゴリ押しに次ぐゴリ押しによって強行されようとしている法案が、いかに危険なものであり、平和を求める国民の願いといかに鋭く対立するものであるかは、疑問の余地なく明白であります。去る九月七日に行なわれた札幌地方裁判所における長沼訴訟判決は、憲法と自衛隊の関係を真正面から究明し、わが国裁判史上初めて自衛隊の違憲性をきびしく指摘しました。これはきわめて重大であります。
 わが党は、自衛隊の違憲性については、その前身である警察予備隊の創設以来一貫して主張してきましたが、この札幌地方裁判所判決は、憲法学者を含め圧倒的多数の国民から当然のこととして受けとめられております。ところが、田中内閣と自民党は、この判決に対し、敵意をあらわにして気違いじみた攻撃を加え、下級審判決なるをもってこれを平然と無視して、衆参両院で相次ぐ強行採決の暴挙を重ね、あくまで防衛二法案の強行を策し、四次防推進と自衛隊の増強、日米軍事同盟の強化に狂奔しているのであります。このような態度は絶対に許すことはできません。日本共産党は防衛二法案に強く反対するとともに、違憲の自衛隊の解散と隊員の平和産業への転職を国が責任を持って保障することを要求し、反対討論を終わります。(拍手)
#57
○議長(河野謙三君) これにて討論は終局いたしました。
 これより採決をいたします。
 表決は記名投票をもって行ないます。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票願います。
 議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#58
○議長(河野謙三君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れはないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#59
○議長(河野謙三君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#60
○議長(河野謙三君) 投票の結果を御報告いたします。
  投票総数        二百二十七票
  白色票          百二十八票
  青色票           九十九票
 よって、本案は可決されました。(拍手)
     ―――――・―――――
  〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名     百二十八名
      今  春聴君    熊谷太三郎君
      温水 三郎君    濱田 幸雄君
      森 八三一君    小山邦太郎君
      中村 登美君    松岡 克由君
      斎藤 十朗君    中西 一郎君
      君  健男君    細川 護煕君
      原 文兵衛君    橋本 繁蔵君
      中村 禎二君    棚辺 四郎君
      竹内 藤男君    中山 太郎君
      永野 鎮雄君    山崎 五郎君
      長屋  茂君    若林 正武君
      桧垣徳太郎君    小林 国司君
      亀井 善彰君    長田 裕二君
      石本  茂君    佐藤  隆君
      林田悠紀夫君    安田 隆明君
      源田  実君    二木 謙吾君
      丸茂 重貞君    河口 陽一君
      玉置 和郎君    山内 一郎君
      宮崎 正雄君    木島 義夫君
      小笠 公韶君    堀本 宜実君
      大森 久司君    白井  勇君
      植木 光教君    青木 一男君
      植竹 春彦君    木内 四郎君
      杉原 荒太君    上原 正吉君
      松平 勇雄君    剱木 亨弘君
      古池 信三君    塚田十一郎君
      重宗 雄三君    鬼丸 勝之君
      鈴木 省吾君    大松 博文君
      増田  盛君    矢野  登君
      志村 愛子君    高橋 邦雄君
      柴立 芳文君    古賀雷四郎君
      黒住 忠行君    河本嘉久蔵君
      初村滝一郎君    渡辺一太郎君
      山崎 竜男君    世耕 政隆君
      斎藤 寿夫君    星野 重次君
      上田  稔君    高橋雄之助君
      菅野 儀作君    佐田 一郎君
      佐藤 一郎君    中津井 真君
      寺本 廣作君    久保田藤麿君
      木村 睦男君    柳田桃太郎君
      船田  譲君    町村 金五君
      橘直  治君    高橋文五郎君
      岡本  悟君    徳永 正利君
      鹿島 俊雄君    米田 正文君
      柴田  栄君    大谷藤之助君
      大竹平八郎君    江藤  智君
      伊藤 五郎君    平井 太郎君
      安井  謙君    西田 信一君
      後藤 義隆君    郡  祐一君
      迫水 久常君    吉武 恵市君
      塩見 俊二君    鍋島 直紹君
      山本敬三郎君    稲嶺 一郎君
      寺下 岩蔵君    川野 辺静君
      金井 元彦君    片山 正英君
      梶木 又三君    嶋崎  均君
      今泉 正二君    山本茂一郎君
      藤田 正明君    平泉  渉君
      楠  正俊君    土屋 義彦君
      内藤誉三郎君    西村 尚治君
      平島 敏夫君    山本 利壽君
      山下 春江君    新谷寅三郎君
      前田佳都男君    増原 恵吉君
      田口長治郎君    八木 一郎君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名      九十九名
      塩出 啓典君    喜屋武眞榮君
      野末 和彦君    山田  勇君
      内田 善利君    藤原 房雄君
      栗林 卓司君    藤井 恒男君
      青島 幸男君    原田  立君
      沢田  実君    中村 利次君
      上林繁次郎君    矢追 秀彦君
      三木 忠雄君    阿部 憲一君
      峯山 昭範君    田代富士男君
      柏原 ヤス君    黒柳  明君
      松下 正寿君    中沢伊登子君
      中尾 辰義君    渋谷 邦彦君
      鈴木 一弘君    宮崎 正義君
      田渕 哲也君    高山 恒雄君
      山田 徹一君    二宮 文造君
      多田 省吾君    白木義一郎君
      小平 芳平君    向井 長年君
      村尾 重雄君    田  英夫君
      上田  哲君    工藤 良平君
      戸田 菊雄君    前川  旦君
      沢田 政治君    野々山一三君
      大橋 和孝君    杉山善太郎君
      松永 忠二君    森中 守義君
      西村 関一君    林  虎雄君
      中村 英男君    阿具根 登君
      森 元治郎君    山崎  昇君
      羽生 三七君    藤原 道子君
      鶴園 哲夫君    鈴木  強君
      片岡 勝治君    辻  一彦君
      佐々木静子君    須原 昭二君
      沓脱タケ子君    小谷  守君
      神沢  浄君    鈴木美枝子君
      宮之原貞光君    加藤  進君
      竹田 四郎君    安永 英雄君
      小笠原貞子君    田中寿美子君
      川村 清一君    中村 波男君
      鈴木  力君    森  勝治君
      村田 秀三君    塚田 大願君
      星野  力君    松本 賢一君
      小林  武君    瀬谷 英行君
      矢山 有作君    茜ケ久保重光君
      渡辺  武君    須藤 五郎君
      占部 秀男君    横川 正市君
      戸叶  武君    小柳  勇君
      河田 賢治君    岩間 正男君
      加瀬  完君    吉田忠三郎君
      小野  明君    田中  一君
      成瀬幡 治君    藤田  進君
      秋山 長造君    野坂 參三君
      春日 正一君
     ―――――・―――――○議長(河野謙三君) 本日はこれにて延会することとし、次会は明日午前十時より開会いたします。
 これにて延会いたします。
   午後六時二十七分延会
ソース: 国立国会図書館
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