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1972/06/21 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 交通安全対策特別委員会 第15号
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1972/06/21 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 交通安全対策特別委員会 第15号

#1
第071回国会 交通安全対策特別委員会 第15号
昭和四十八年六月二十一日(木曜日)
    午前十時四十分開議
出席委員
   委員長 久保 三郎君
   理事 大竹 太郎君 理事 唐沢俊二郎君
   理事 左藤  恵君 理事 中村 弘海君
   理事 野中 英二君 理事 井上  泉君
   理事 太田 一夫君 理事 紺野与次郎君
      足立 篤郎君    越智 通雄君
      加藤 六月君    佐藤 守良君
      斉藤滋与史君    板川 正吾君
      野坂 浩賢君    平田 藤吉君
      沖本 泰幸君    松本 忠助君
      渡辺 武三君
 出席政府委員
        内閣総理大臣官
        房交通安全対策
        室長      秋山  進君
        運輸省自動車局
        長       小林 正興君
 委員外の出席者
        警察庁交通局交
        通指導課長   加野久武男君
        警察庁交通局交
        通規制課長   久本 礼一君
        環境庁大気保全
        局自動車公害課
        長       小林 育夫君
        大蔵省銀行局保
        険部長     安井  誠君
        厚生省医務局総
        務課長     山高 章夫君
        運輸省自動車局
        保障課長    西村 英一君
        自治省税務局府
        県税課長    山崎 英顕君
        消防庁総務課長 角田 直方君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 交通安全対策に関する件(自動車損害賠償責任
 保険に関する問題等)
     ――――◇―――――
#2
○久保委員長 これより会議を開きます。
 この際、交通事故死者にかかる損害賠償に関する調査報告について説明を求めます。秋山総理府交通安全対策室長。
#3
○秋山政府委員 このたび、交通事故死者にかかる損害賠償に関する調査報告書ができ上がりましたので、簡単に御報告申し上げます。昨日お配りしました報告書の抜粋をお手元にお配りいたしましたので、それにより御報告申し上げたいと思います。
 まず調査目的でございますが、申すまでもなく、この調査によって損害賠償確定の方法とか金額とか、あるいはその他の状況、遺家族の生活状況、こうした実態を把握しまして、それぞれの関係機関において交通事故被害者の救済施策を効果的に推進するための資料を得たいということで実施いたしたわけでございます。
 調査対象は、一昨年一年間の全国の交通事故死亡者一万六千二百七十八名の遺族につきまして追跡調査をいたしました結果、住所、氏名の判明いたしました一万一千八百九十二名のうちから約半数の五千四百五十九名を抽出しまして、往復はがきによってそれぞれの御協力の意思を照会いたしました。その結果、回答が参りましたのが千八百七世帯の遺族でございました。
 調査期間は、昨年の暮れの十一月二十八日から十二月二十八日までの一カ月間行ないまして、調査員がそれぞれの遺家族に直接面接いたしまして回答を得たわけでございます。
 調査の対象となりましたうち、不在とかあるいは病気のため応接できなかったとか、あるいは中間で、いろいろいやな思い出はもうこれでたくさんだということで、あるいは金額の問題でそこまでこまかく聞くのならいやです、こういう拒否がありまして、結局回答を得られたものは千四百四十二世帯でございました。
 次に、本調査の対象となった死亡者でございますが、これは性別では男が七二%、女が二八%となっております。
 それでは、調査結果の要旨について、抜粋してございますので、これを御説明申し上げます。
 まず、損害賠償の請求先でございますが、八六%は請求先が確定しておりますが、残りの遺族は、自損事故のため請求する相手がいないというものが五%、死亡者自身に過失があったので請求できないというのが五%、それから、ひき逃げ事故のために相手が不明だというのが一%、その他二%は、事故原因が身内、親戚にあるので請求しにくいというようなのがございました。
 それから次は、損害賠償の確定状況でございますが、調査を昨年の暮れに行ないまして、調査の対象が一昨年一年間でございますので、事故のときから大体一年ないし二年たっている時点でございますが、この時点で対象遺族の五四%が損害賠償額を確定しておりまして、三三%が未確定者であるというような状況でございます。その他二%は、先ほど申し上げましたようなことで請求できる相手がいないというようなものでございました。相手と損害賠償問題についてすでに話し合いを行なっているものが七二%ございますが、このうちの三八%は交渉中、二四%は訴訟中、それから五%は交通調停の進行中、それから三%が不調に終わって訴訟を起こす予定というようなものでございます。やはり死亡者の収入が多かったものほど訴訟に持ち込むケースが多いようでございます。
 次に、自賠責保険の受領状況ですが、先ほど申し上げましたように、損害賠償を確定しているのは五四%、半数ちょっとでございますけれども、自賠責保険の受領状況につきましては、全体の八一%がすでに受領しており、さらに自動車損害賠償保障事業の保障金を二%が受領しております。つまり八三%が受領しているというような状況でございます。損害賠償を確定、未確定別にいたしますと、確定者は、自賠責保険が九四%、それから自動車損害賠償保障事業の保障金が二%で、九六%、確定者は大部分が受領している。未確定者につきましては、八四%と一%で、八五%が受領しているというような状況でございます。
 賠償確定の方法といたしましては、示談が八八%で、大部分が示談でかたまっておりますが、交通調停によるものが九%、訴訟によるものが三%でございました。
 確定した賠償金額でございますが、五百万円台が一番多く、次いで三百万円台、四百万円台と六百万円台、七百万円台、八百万円台、九百万円台というような状況でございますが、一千万円以上のものが九%おります。さらに、三百万未満のものが五%いたという状況でございます。
 次に、確定した賠償金額の受領状況でございますが、一括払いが七七%、分割払いが二三%という状況でございました。
 次に、交通調停に対する意見でございますが、交通調停を利用したものの理由を見ますと、直接話し合うというのでは解決が不可能と思ったというのが四五%で一番多く、次にそれのほうが円満に解決できると思ったというのが二七%、それから早く解決したいと希望したものが二四%という状況でございます。調停の問題で、三四%は結果に満足しておりますが、やはり不満はございまして、一番多い不満は、やはり金額に対する不満でございます。その次には相手方の誠意や態度に対する不満、あるいは調停制度の運用面について不満が若干ございました。
 次は、損害賠償問題の解決に際して困った問題は何かということでございますが、対象遺族の五六%は損害賠償問題を解決するのに困った問題があると答えております。その内容は、相手方との交渉上の困難をあげたものが三〇%、たいへん期間が長引いて困ったというのが一五%、それから補償手続で困ったというのが二%、非常に補償手続がややこしくて、いろいろの書類をととのえなくちゃなりませんし、そういうようなことで困ったというのが一一%でございました。
 それから、公的な相談所の利用状況でございますが、相談所を利用した者が四八%ございましたが、そのうちで利用した公的な相談所としては、都道府県の交通事故相談所が二二%で最も多い。四八%のうちの二二%でございますから、半数近くが都道府県の交通事故相談所を利用している。次いで市町村の交通事故相談所・住民相談室あるいは警察の相談所、日弁連の事故相談センター、交通安全協会の相談所等がございます。ただ、この数字は一カ所の相談所でなくて、数カ所行っている方もございますので、やや重複している面もございます。そのほか、賠償手続、自賠責を受けたりあるいは保険を受けるために、保険会社に相談したようなものは入っておらないような状況でございます。
 相談した内容としては、相手方との交渉のしかた、これが一番多いわけでございまして、次は自賠責保険の請求手続が二三%、交通調停申し立て手続が五%、訴訟手続が四%という状況でございます。
 次に、遺家族の生活状況でございますが、本調査の対象となりました十五歳以上の交通事故死亡者の七四%が有職者でございました。その五九%は家族を扶養する立場にあった。有職者を失った世帯の四五%は死亡者の生前の収入で生活費のほとんど全部をまかなっていたというような状況でございます。さらに、死亡者の生前の収入で生活費の半分以上をまかなっていたものが一九%ございますので、いいかえますと、有職者を交通事故でなくした世帯のおよそ三分の二が一家の柱を失ったということになると思います。
 最後に、公的機関に対する要望事項でございますが、国や地方公共団体に対して出された要望といたしまして、自賠責保険の保険金の増額が二二%、それから自賠責の受領手続の簡素化、これが一六%、そのほか事故相談所等の公的機関のPRや運営の改善、あるいは公的な補償問題解決機関の設置等を要望するものが一〇%でございました。そのほか、夫を失った婦人からは、職業訓練や職業紹介の充実、生活費の援助、住宅費の援助等がございました。
 この資料につきましては、さらにこれを関係省庁にそれぞれ送付いたします。また、都道府県及び都道府県警察等にもお送りしまして、それぞれの事務改善施策推進の参考に供したいと思っております。
 以上でございます。
     ――――◇―――――
#4
○久保委員長 交通安全対策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田一夫君。
#5
○太田委員 最初、総理府にお尋ねをいたします。
 いまの御報告ですが、「遺家族の生活状況」というところですね、いうならば十五歳以上の交通事故死亡者の七四%、これは職があり、約六割が家族を扶養する立場にあって、その大事な人をなくした遺家族は、三分の二が一家の柱を失ったということになっておる、こういういま御報告でございました。
 一家の柱をなくしたというのは、人間がなくなったということでなくて、収入がとだえたというような内容を持つわけでありますが、そこでちょっとお尋ねしたいのは、「昭和四十八年度において実施すべき交通安全施策に関する計画」というのが出ております。これの二七ページに、「損害賠償の確保等」そしてそれば「自動車損害賠償保障制度等の充実」とこうあるのです。これを読んでみましたところ、これには自動車損害賠償保険の保険金限度額の引き上げというようなことが書いてない。非常にふしぎに思いまして、四十八年度において実施すべきものでありますから、本年度予算がなかったから書けなかったということであろうかと思いますが、それならば、「交通安全基本計画」は「損害賠償の適正化」がその重要な業務の一つになっておりまして、「自動車損害賠償保障制度の充実」がうたわれ、「不断に検討を加え、被害者救済の充実に資するよう改善を図ることとする」と書いてありますが、この交通安全対策基本法に基づく「交通安全基本計画」の7の条項にもそむくことになろうと思いますが、これに対して総理府の見解はいかがでございますか。
#6
○秋山政府委員 「四十八年度において実施すべき交通安全施策に関する計画」におきましては、先ほど御指摘の分について項目としてはあげてございませんが、一応最初のところに「引き続き自動車損害賠償責任保険金等の支払の迅速化、適正化を図るほか」、こういうことで一応抽象的に盛り込んだつもりでございます。
#7
○太田委員 それならば、その「迅速化」はよくわかりますが、引き続き適正化をはかるということになりますと、どこで引き上げの動きをあなたのほうは示していたのですか。限度額引き上げということをあなたのほうは一度でも言ったことがあるのかどうか。
#8
○秋山政府委員 私ども総理府といたしましては、それについて具体的なことを申し上げていることはございません。ただ、関係機関がそれぞれその点について検討願っている状況について、いろいろとお聞きしているということでございます。
#9
○太田委員 それでは、関係機関が引き続き引き上げについて検討しておるという情報をつかんでいらっしゃるとするならば、その内容はいかがなものでありますか。
#10
○秋山政府委員 まだ具体的内容については存じておりません。
#11
○太田委員 それならば、ここに書いてあることの意味が単なる逃げ口上になるわけであって、いまの実態調査、追跡調査からしてみましても、ずいぶん一家の柱を失って路頭に迷っている人たちがある。三分の二あるということは、七割。七割は困っておるという実態が明らかになっております。それは、かつてここにおいて交通事故対策センター法案を審議した際に、母子家庭等の遺児の育英資金を中心とする議論の中で明らかになりました。貧乏ということが、遺家族の貧乏と貧しさということがクローズアップされて明らかになってきたのでありますが、それがたまたま今度の追跡調査の中にも同じようなことが出ておるということになれば、この際、自賠保険の制度そのものについて何をまず急がなければならないかということになりますと、限度額の引き上げをすみやかに行なって、それで遺家族の生活を守るということであろうと思います。そこに帰納していかなければいけないと思います。ところがあなたのほうは、各省庁がいかなる計画をし、計算をし、議論をしておるかもまだつかんでいらっしゃらぬということになると、総理府としてはうかつではないでしょうか。
#12
○秋山政府委員 具体的なものにつきましては、それぞれ専門のところで御検討されていることでございまして、その結論が出ないままにおきまして、私どものほうで具体的につかむわけにはまいりませんので、御了承いただきたいと存じます。
#13
○太田委員 それはつかむことはできない、目の前を通り過ぎなければわからないというような、あなたコンピューターにならないで、あるいは写真機のレンズにならないで、中に入っていかなければ、総理府は、あなたのほうの任務は全うできませんよ。あなたを責めてもしようがないですね。
 そこで、あなたの報告の中から出てまいりました結論は、確定した損害賠償額というのは六百万円以上において大体四割あるわけですね。ですから、五百万円をこえておるものからいったらあるいは五分五分でございますね。これは五百万円台が一括されておりますから、五百九十九万円まで五百万円台となっておりますから統計上明らかになりませんが、六百万円以上のものが約四割あるとするならば、それが確定しておるというところからいって、今日の自賠保険五百万円、責任保険五百万円という制度は、すでにもう過去のものになって実態に合っておらぬということは、これは証明されると思うのです。その点どうでしょう。
#14
○秋山政府委員 現在、任意保険制度と、それからそれぞれの資力の問題もあろうかと思いますが、それとあわせて五百万円以上のものが先生の御指摘のような数字になっておりますが、これによって御判断いただきますのは、それぞれの主管の専門の方々に御判断いただきたいということで、この資料をそれぞれのところに差し上げて御検討願っておるところでございます。
#15
○太田委員 きょうは、この数字からあなたのほうは意見はないんですか。総理府としては意見がないのであって、この花はカボチャの花かアサガオの花か見るほうがかってに見ろという、ちょっとそれ無責任じゃありませんか。
#16
○秋山政府委員 それぞれ運輸省あるいは大蔵省、あるいは厚生省も若干の関係があろうかと思いますが、そういうところでそれぞれの御意向をお出しになりまして、その集大成したものを見ましてからでないと私どもとしては意見が申し上げられない立場でございますので、御了承願いたいと思います。
#17
○太田委員 そこで、その確定した損害賠償額でさえももうすでに半分以上が五百万円以上になっておるのに、請求権のほうからいったら、被害者の気持ちからいったら、五百万円未満というのはほとんど一割しかないでしょう。五百万円未満というのは一割しかない、そういう中で一千万円以上が二三%もあるということからいいまして、一千万円なんて人間の命の代償から考えたって、しごくあたりまえの数字だと思う。その一千万円説さえもなかなか出てこないというのはけしからぬ話だと思うのでありますが、そこで、カボチャの花かアサガオの花かわからぬ総理府に話を聞いておってもわからぬから、運輸省と大蔵省に伺います。この現実の報告からあなたのほうは限度額引き上げについてどのようにお考えになっておるか、それぞれお答えいただきたい。
#18
○小林(正)政府委員 ただいま被害者関係からの強い御要請があるという資料が示されましたが、この問題につきましては、もう昨年の秋以来、関係方面で限度額引き上げというようなことが強く要請されるに至っております。現在の限度額は、御承知のとおり昭和四十四年、傷害につきましては四十一年と非常に古く設定されたままでございますので、一般論といたしましては当然限度額を引き上げる方向で今後対処していくべきである。特に、最近の自賠責保険の収支の状況から、四十八年度末には累積赤字も償却できるのではないかという見通しもございますので、今後この問題につきまして積極的に対処していきたいと思っております。
#19
○安井説明員 自賠責の保険の問題につきましては、先生御承知のように、昭和四十四年度に非常な赤字があったわけでございます。二千三百億をこえるような赤字がございました。昨年九月に自賠責審議会を開きましたときに、ちょうど四十六年度の警察の事故統計がわかりまして、それに基づく非常な推算ではございますけれども、やってみましたところ、四十六年度末で、この契約年度ベースと申しますか、それで千四百億くらいの赤字になるだろう、縮まるだろう。つまり単年度で約五百五十億くらいの黒字が四十六年度にでき、四十五年度も三百五十億くらいの黒字になるだろうということがこの段階でわかったわけでございます。
 私ども運輸省とも御相談いたしまして、自賠責審議会にその計数を御報告申し上げまして、いまのところまだ千四百億くらいの赤字だけれども、四十七年度の事故率の下がり方いかんでは、今後の傾向として自賠責の赤字の解消が当初考えていたよりも進むかもしれないということを御報告申し上げたわけでございます。
 その際、実は委員をしておられます警察関係の交通局長からも、非常に強く自賠責限度額の引き上げをやれ、御意見としては、計数を見た上で、引き上げのほうがどうも大事じゃないかという御意見が強かったわけでございます。中には保険料の引き下げのほうも考えろ、と申しますのは、四十四年度に相当金額上げたものでございますので、そういう御意見もございました。したがいまして、自賠責審議会では、それではこの事故率の推移を見た上で検討していこうじゃないかということになったわけでございます。
 私どもその御趣旨に沿いまして、現在その作業をいたしておるということでございます。私どもの気持ちといたしましては、この委員会でも申し上げましたように、限度額の引き上げについては、いま先生御指摘のこの資料をまつまでもなく、前向きに引き上げてまいらなければいかぬだろうというふうに考えているわけでございます。
#20
○太田委員 大蔵省にお尋ねをいたしますが、損保関係といたしましては、限度額引き上げに対してどういう動きをしておるか、あるいはどういう受け取り方、考え方を持っているか、おわかりでしたらお示しをいただきたいと思います。
#21
○安井説明員 損害保険会社の関係の意見が別にまとまっているわけではございませんが、一部の意見として聞いておりますのは、自賠責保険の限度額が引き上がりますと、その結果任意保険の普及率に影響を与える。これは現に、四十四年度に引き上げをいたしましたときに、この限度額引き上げだけではないと思いますけれども、それまで四六%の対人賠償の普及率が四〇%に下がっておるわけでございます。保険会社にいたしますと、任意保険の普及で、やはりこの交通安全といいますか、被害者救済ということの役割りをになって、たとえばサービスをよくするために人員を投入するとかあるいは施設をふやすとかいうような作業をいたしているやさきでございますので、この自賠責の限度額が大幅に引き上げられて、任意保険の分野がなくなると申しますか、縮小いたしますと、この経営に非常に不安が生ずるというような意見が一部にあることは事実でございます。しかし、私どもといたしましては、確かに自賠責保険は、御承知のようにノーロス・ノープロフィットという原則でやっておりますので、保険会社にとってプラスにはならない。しかも現在、実は付加保険におきまして赤字になっておりますので、ノーロスではなくて有ロスになっておるわけでございまして、それの改定は当然私どもとしてはしなければならないわけでございますが、しかし、いずれにいたしましても、自賠責保険の限度額の引き上げの要請が社会的に非常に強いわけでございますから、この自賠責審議会に四十四年に答申をいただきましたときに、自賠責の限度額は最低保障である、あるいは他の社会保障制度との関連を考えながら限度額を引き上げていけという御答申をいただいておるわけでございまして、私ども、現在各方面にございます限度額引き上げの要請は、そういう最低保障としても、あるいは他の社会保障とのバランスから見ても、限度額は低きに過ぎるという御判断だろうと思っておりますので、前向きに処理してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#22
○太田委員 ノーロスの原則からいうたならば、保険会社にも損させないということになろうと思いますが、保険会社がいまはある程度赤字であるということになりますと、自賠責保険というものに対して興味を示さない、関心を示す度合いが減ってくるということであるとすればたいへんだと思うのですね。
 それで、保険会社に対するあなたのほうの配分といってはなんですが、手数料というのは、ある程度の定率をもって交付されていると思うのでありますが、それの使い方をきびしく言われ過ぎるのか、取り上げられ過ぎるのか、あるいは保険会社のほうが自発的にいろんなものに使ってそれで赤字になっているのか、その辺はどうなんですか。
#23
○安井説明員 自賠責保険の営業保険料と申しますか、全体の保険料のうち、純保険料と付加保険料があるわけでございます。純保険料のほうは損害賠償金の支払いに充てられるわけでございまして、事務経費のほうは付加保険料に含まれているわけでございます。その中の付加保険料の中に、代理店の手数料とそれから損害保険会社自身が扱います社費の部分とがあるわけでございます。あとの社費の部分がまた分かれまして、そのうちの損害査定費の部分が、自動車保険料率算定会のほうにございます調査事務所のほうの査定の費用に回っているわけでございます。
 いま先生御指摘の、損害保険会社が損をしておるということの問題点と申しますのは、実はこの付加保険料をきめましたのが、ちょうど自賠責の限度額を引き上げましたときに保険料を引き上げました際、つまり昭和四十四年にきめておるわけでございまして、その後の人件費その他の動きが中に含まれていないわけでございます。したがいまして付加保険料につきましての赤字が現在出てきているというのが現状でございます。
 ただ、自賠責保険は御承知のように強制保険でございますから、その保険会社にいたしますと、自動車を購入された方は必ず保険をつけていただかなければいかぬという意味で、その保険をつけることに対する営業努力がない、ということはないわけでございます。ただ、いま申し上げましたようなことから、赤字であるために損害査定のサービスが落ちはしないかということを私どもとしても心配はしておるわけでございますが、それは、保険会社としてほかの事業もやっておるわけでございますから、その中からやりくりをしているというのが現状でございますし、また保険会社のほうも、かつて四十四年度に引き上げをいたしましたときに、やはり相当の赤字が付加保険料にあったわけでございますが、それは埋めておりますので、いずれは埋めてもらえるという気持ちを持っているわけでございますし、私どもとしても、この次の自賠責保険の限度額の引き上げという際には、この付加保険料は、損害保険会社が少なくとも損をさせないようにということだけはしなければなるまいと考えているわけでございます。
#24
○太田委員 その保険会社赤字論というのがほんとうとするならば、保険会社が自賠責保険に熱を入れるということはあり得なくなってくる。なるべく手数を省いて、先ほどおっしゃった自動車保険料率算定会ですか、あるいは調査事務所等があるようですが、そういう調査機構を縮小するとか、あるいは被害者のためにならないような不当な算定を、ただ能率的なとか、合理的とかいう意味において、形式的な算定を行なうというようなことになっていく傾向を心配するのですが、運用益というもの、この間、百億ほど保険会社もいま黒字で持っているようなお話があったと思うのですが、違うのですか。
#25
○安井説明員 運用益の残高は約百億現在ございます。これは、将来この保険料率の引き下げ、その中にはいまの赤字を埋めるということも含まれると思いますし、また、救急医療体制等にも、有効な施策に使えるということになっておるわけでございます。
 ただ、先生に御理解をいただきたいのは、自動車保険を、少なくともこの自賠責保険を損害保険会社が扱っております限り、赤字だから仕事をしないということは一切させておりませんし、また保険会社もそういう体制にはございません。たとえば、自動車がふえ、事故がふえてまいるにつれまして、調査事務所の機構は広げてまいってきております。それはやはり最低限、それをお預かりしている以上その責任は当然果たさなければいかぬということでございます。
#26
○太田委員 社団法人日本損害保険協会の発表によりますと、自動車保険請求相談センターというのがたくさんあるのですね。こういうセンター等をつくりまして、それぞれ相談員を置き、弁護士までそこに張りつけまして相談に応ずるということもやっておるところを見ますと、この自動車保険に対する異常な関心があるように見える。ところが、それは任意保険のほうであって、責任保険、強制保険のほうは、どちらかというとあまりありがたくないということであるのか、その辺はどうでしょうか。
#27
○安井説明員 この制度ができましたときの経緯から見まして、保険会社のほうも、自賠責保険を自分のところで引き受けると申したわけでございます。そのときには、諸外国の例から見ますと、こういう形での、つまりいまの自賠責保険のように、ノーロス・ノープロフィットという形で行なわれている国はないわけでございます。民間の保険会社が自動車保険をやっておりますのに対しまして、国としては二千万であるとか三千万円であるとかの限度だけを強制する、あと、利潤は適正な利潤だけしか認めないということはしているようでございますけれども、わが国でこの制度が発足いたしました昭和三十年では、まだ保険会社のほうも実は自動車保険についてそれだけの責任を引き受けるだけの自信もなかった、しかし、われわれとしてはやらしてほしいということの意見がございまして引き受けたわけでございますので、これが損害保険会社にとっての仕事の上で荷物になっているというような感覚は持っていないと思いますし、また現に、保険会社のほうもこれにウエートをかけているわけでございます。
 と申しますのは、非常に利益に直接結びつくようなことを申し上げて恐縮でありますけれども、同時にやはり任意保険の普及をはかっていくのが、何といいましてもこの自賠責保険とつながるわけでございますので、そういうところに保険会社としては力を入れている理由があるんだろう。もう一つは、赤字であってもあとで埋めてもらえるということを保険会社としてもよく知っているということもあろうかと思います。
 それで、いま御指摘の相談センターのほかに、各保険会社の窓口が全国に大体二千三百店舗くらいございます。そこにも相談員を置きまして自動車保険の相談を受けておりますが、その中でも自賠責保険の相談件数のほうが、任意の自動車保険の相談件数の倍以上あるというのが現状でございまして、彼らなりに努力をしているというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。
#28
○太田委員 限度額の引き上げは急がなければならぬのでありますが、そのためには、任意保険が減るから自賠保険の責任保険の限度の一千万円以上の引き上げについては抵抗するというような保険会社の意向があるとすれば、たいへんだと思うのです。そんなことのないように私どもは願っておるわけですが、そのためにも、保険会社と国との関係というものが合理的でなくちゃならぬと思うのです。先ほど五・五%か何か、事務費の問題について、これももうけてはいけない損してはいけないという原則ではなかったのでしょう。これは手数料に、損してはいけないの得してはいけないのという、そんな原則をやるわけじゃありませんでしょうから、それはその中でもうけると申しますか、費用はちゃんと支弁をして、なおかつ若干は潤っておるはずだと思いますが、承るところによると、四十六年度決算は五十億赤字になっておったというのですね。だから、それはほんとうだろうか。それは会社側だけの宣伝ではないのか。監査やったことあるのですか。
#29
○安井説明員 自賠責保険の付加保険料につきましては、これをどのように計算の根拠を立てて算定をしたかというのは、私どものほうも全部見まして、それを自賠責審議会にも御報告いたしましてきめたものでございます。
 私ども、赤字になるだろうと考えておりますのは、人件費の増加が激しいわけでございます。にもかかわりませず、四十四年度にきめたまま置いておきますれば、当然赤字にならざるを得ない。ただ、いま御指摘の五十億というのは、ほんとうにおまえたちが監査したのかと言われますと、そこまでは監査しておりません。しかし、保険会社の経理の上で、この自賠責につきましては区分経理を厳格にいたしておりますので、経費の配分方法等につきましても一定の基準でやっておりますので、まず大きな違いはなかろうというふうに私どもとしては考えているわけでございます。
#30
○太田委員 限度額を引き上げてくださいよ。そうすれば、この問題のパーセントの問題であなたのほうはまた何か考えられることになろうと思いますし、これは保険金の限度額引き上げをすみやかにやることによって、もう一度、わが国の自動車保険制度の最も合理的な面というのを打ち出してもらいたいと思うのです。そのためには、先ほどの総理府の御報告書というのは、これは尊重してもらわなければならないし、熟読玩味しなければならぬところだと思いますが、この中にありますところの一番大事なところは、被害者が実に貧しいということ、一家路頭に迷っておるというその姿がありありとこの中に浮かんでくるわけなんでありますから、すみやかに大蔵省は、その実態に対応して、新しい保険金引き上げの策を策定してほしいと思います。
 そこで、運輸省にお尋ねをいたしますが、運輸省といたしますと、保険金引き上げに対してになう役割りというのは、大蔵省と合議してその作業をおやりになるのですか、検討は審議会に一任という態度でございますか、どちらでございますか。
#31
○小林(正)政府委員 自賠責の強制保険は、保険会社が元受けをいたしまして、その六割が国に再保険をされておる。この再保険の業務を運輸省がいたしておるわけでございますから、この強制保険についてのいわば実施事務を行なっている官庁でございます。したがって、この自賠法の精神にのっとりまして、今後の限度額がどうあるべきかということについては、運輸省としては、この自賠責再保険の業務をいたしておる立場から、これについて積極的に取り組むべき立場にあるわけでございます。
 ただ、自賠責審議会に問題がかかるというような点につきまして、正確に申し上げれば、大蔵大臣から自賠責審議会に諮問をされる、こういうような手続の面については大蔵省の所管だと思うわけでございますが、この事柄の内容、本質の問題につきましては、運輸省といたしましては、主務官庁の一つといたしましてこの問題に取り組んでおるわけでございます。
#32
○太田委員 そうすると、運輸省としては、たとえば一千万円なら一千万円に引き上げるべきだとかなんとかいう具体的な意見も打ち出されることがあり得るのですね。
#33
○小林(正)政府委員 当然あり得ます。そのとおりであります。
#34
○太田委員 大蔵省にお尋ねしますが、農協の共済におきましては非常に成績がよろしいということなんですね。何かに、農協の自動車保険についてはさらに一そう指導をして充実させるとかいうようなことが書いてあったのを拝見した覚えがあるのですが、農協共済に対して、あなたのほうは特殊な何か御見解があるのでありますか。
#35
○安井説明員 農協の自賠責保険が黒字だというのは、先生御指摘のとおりであります。これは一番大きな理由が、農協の自動車共済、自賠責に相当いたします強制保険の部分でございますが、主たる保険対象、つまり自動車が農村地域に多いものでございますから、現在までのところ農村地域の事故率のほうが都会地域の事故率よりも低いために、自賠責の共済におきましても黒字が出てきているということになっているわけでございます。
 それでは、農協のほうの共済掛け金をその部分だけ下げるという形での調整をいたしますと、全国一律の保険料率で損益計算をとっているわけでございますから、事故率の低いところだけというわけにもまいりませんものですから、あとでできました農協の共済につきまして黒字が出ましたときにも、これは技術的には、四年ばかりたちました調整準備金という形で留保いたしまして、掛け金の引き下げに充てないで、それを現在農協がおやりになっているような形でのリハビリテーションセンターであるとか、そのほかの救急医療施設等に充てられるということで処理をされているわけでございます。
#36
○太田委員 その運用益は、そういうことでいろいろな、消防車の寄付もよろしいでしょう。よろしいでしょうけれども、保険勘定そのものにおいて最近黒字になっておる現状から、四十八年度の施策として総理府の中にありますがごとくに引き上げの動きはございませんけれども、この報告を契機にして、少なくとも急いで限度額を引き上げることによって、多くの泣いている家庭を救ってほしいと思います。
 それからいまのお話の中に、どうも損保会社が今度引き上げの場合に手かせ足かせになるのじゃないかという心配もありますので、私ども思うのでありますが、先回、たしか五百万円に引き上げたときも、任意保険が減るのじゃないかというお話があったが、やがてそれは復元してさらに伸びてきたという点がありますから、決して損保会社がそう反対するようなことはないと思いますので、大いにひとつ引き上げの作業を進めてほしいと思います。
 ただ、引き上げる場合に、私どもおそらく三けたの金額で終わるなんて思っておりませんが、四けた金額を望むということは世論ですから、これはお忘れないようにお願いしたい。何百万円じゃない、何千万円ということであります。
 それから、内容のことでこの際ちょっとお尋ねしておきたいのですが、遺族の中で非常に気の毒なのは、自動車運転手自身がみずからの車の事故によって死亡した場合に、その遺族には何ら責任保険としては払われない。任意保険か傷害保険をつけておれば別としまして、自賠責保険のほうでは払われないために、その遺族は非常に困っておるわけですが、これに対しては何らか改正の手でも考えていらっしゃるかどうか。
#37
○小林(正)政府委員 自賠責保険は、自動車の保有者が他人に対して加えた損害をてん補いたします責任保険でございます。したがいまして、みずからの行為でみずからこうむった損害というようなものにつきましては、現在の自賠法第三条の規定は働かないわけでございまして、自賠責保険の対象とならないわけでございます。御指摘のようないわゆる自損事故というものを強制保険の対象にするかどうかということについては、これは非常に異なるものといたしまして、責任保険の本質にかかわる問題でございますし、また諸外国の例等においてもあまり見ないわけでございまして、今後の検討課題だと思うわけでございます。ただ、現在、任意保険におきましては、自損事故も対象とするような特約というようなこともあるわけでございまして、いわゆる傷害保険的なものとして実質的にはカバーされておるという場合もございます。
#38
○太田委員 それは現状でございますけれども、そういう自損事故の場合の責任保険の及ぶ範囲というのが非常に狭いように思う。たとえば自損事故で、自分みずからが、ドライバーみずからが死んだ場合には、いまのところは任意保険しかない、そういうことです。これはある程度事情というのがわからない、死人に口なしですから、対向車が猛烈なスピードで来たために左へよけたらがけ下へ転落して死んだという場合に、自損事故というような意味で、自分の責任だということで払われないということはあり得ないと思う。
 それからもう一つは、同乗者の死亡の場合です。一緒に乗っていた人が死んだ、これもなかなかきびしい基準があって、夫婦ともにドライバーであったとか親子ともにドライバーであったとかいう場合においては、自賠保険の及ぶ範囲にあらずという御解釈のようですが、同乗者の事故死についても払うべきではないかという意見が多いのですが、それはどうでしょう。
#39
○小林(正)政府委員 同乗者が夫婦であるとかあるいは親族であるというような場合に、従来、他人という範囲に入るかどうかという点でいろいろ問題があったようでございますが、先般、この点については改正をいたしまして、親族間の事故でありましても、これは他人として損害をてん補する、こういうことにいたしてございます。
 ただ、前段の自損事故について保険の対象とするかどうかという点は、事柄といたしまして、先生御指摘のとおり考えられないわけじゃございませんが、これを強制するかどうかというところに問題があろうかと思います。
#40
○太田委員 そうすると、同乗者の場合は、いま局長がおっしゃったように、それが友人であろうと子供であろうと親であろうと夫婦であろうと何であろうと、これには例外なしに全部適用されるものと理解してよろしいですか。
#41
○小林(正)政府委員 自動車運行者と、先生御指摘の同乗者との関係でございますが、たとえば妻が自動車を運行の用に供する者とみなせる場合、たとえば夫婦で交互に運転するというような場合もございます。こういった際には他人ということに相ならないかと思います。
#42
○太田委員 そういうところがいまのところでは非常に窮屈になって、同乗者の死亡に対して払われる自賠保険の条件というのはきびしいですね。非常にきびしゅうございますが、私は他人とみなしていくべきだと思うのですよ。それは判例ができない限りは云々じゃなくて、解釈上すみやかに積極的に解釈して、同乗者の死亡に対しては自賠保険を適用すべきだということにしてほしいと思うのですが、いまのお話ですと、適用する場合あり適用せざる場合あり、運行供用者でないときでなければいけない、運行供用者であったならばだめだということで、夫婦の場合もだめだ、親子の場合もだめだ、社長と従業員の場合もだめだということになったら、払う場合が非常に減ってきやしませんか。この辺のところはさらにひとつ、自動車事故によってなくなったそういう死亡者の遺家族の生活が非常に困窮しておるということを報告されておるだけに、限度額等も引き上げると同時に、適用の条件においても理屈の合うように、常識に合うようにしてほしいと思うのですが、いかがですか。総括して局長……。
#43
○小林(正)政府委員 自賠法の本質が、事故のために自動車を運行の用に供する者が他人の生命、身体を害したというような場合に、損害を補償する責任が生ずるわけでございまして、ただいまの点は、事故のために、自動車を運行の用に供しているかどうか、いわゆる自損事故に当たるかどうかという問題でございまして、そういった点につきまして、従来他人というものの範囲をできるだけ常識的に広く解釈するように指導いたしてきておるわけでございます。
 自損事故という問題につきましては、今後の問題として検討いたしたいと思います。
#44
○太田委員 時間がありませんから終わりますが、それは局長さん、いまの法律解釈並びに実例の上からきびしい御答弁しかできないかもしれませんが、夫婦は他人の始まりであるか兄弟が他人の始まりであるか知らないけれども、とにかくお互いは親子であろうと兄弟であろうとあるいは夫婦であろうと、主従関係であろうと、被用者、雇用者の関係であろうと、相手と相手とはお互いに他人、一人一人の別々の者だというふうに解釈するのがほんとうじゃありませんか。それが世間の常識に合う道ですよ。それをかれもこれもともに同一人物である、そのほうが理屈は合うかもしれませんが、常識に合いません。ぜひその点は何かのおりに改正していただくことを要望しておきます。
 終わります。
#45
○久保委員長 平田藤吉君。
#46
○平田委員 自動車損害賠償責任保険の最高限度額、いまも問題になりました死亡の場合五百万円、傷害の場合は五十万円となっていますが、これはあまりにも低過ぎるというように考えるわけです。死亡の場合、多くは一家の大黒柱を失うという場合が多いわけで、精神的にも経済的にもその打撃はことばに尽くせないものがあるというふうに考えるわけです。しかも、遺児や遺族の生活の問題、それは事故の起こったときから根本からくつがえされてしまうわけです。こうした事態に立ち至ったときの賠償が五百万円を限度というのでは、生活の立て直しはとてもできないというように思うのです。また、傷害の場合でも、五十万円限度では、医者の治療費にすら満たないというのが今日の実情だと思うのです。死亡五百万、傷害五十万という限度額は、それ自体が社会的に一つの目安にされているというのが現状ですから、被害者の困難を一そう増大させるわけです。
 一例をあげてみますと、これは雇い主が丸磯運輸というところですけれども、足立区の本木町にあるのです。この運転者はこの雇い主の使用人で、京極さん、三十三歳ですけれども、この人の運転によって渡辺さんという人が死亡したわけですね。家族は妻と子供二人ということなんです。これは埼玉県の鳩ケ谷市の坂下というところで、国道一二二号線ですけれども、トラックが岩槻方面から東京方面に向かって六十キロくらいの速度で走っていたのです。走ってきますと、中央分離帯のところに人が倒れて、自転車がころんでいるので、あぶないというふうに考えたわけですけれども、前を走っているトラックとの関係で、うしろから走ってきたいまの運転手のトラックがこの人の頭をひいてしまったのですね。そうして死亡させた。警察としては運転手の業務上過失致死ということで一晩警察に泊めたようです。自賠責のほうの加害者請求を行なったわけですけれども、これは丸磯運輸というのが行なったわけです。このときに、丸磯運輸が被害者のほうの手続もとってやったという方法をとったわけです。ところが、この問題が浦和の査定事務所へ持ち込まれまして、そして検討された結果、被害者に二割の過失が認められるので全額支払うわけにいかない。過失相殺ということで八〇%だから、五百万円の八〇%、四百万円だということになったわけですね。
 ここで問題になりますのは、査定事務所がこういう査定をしたものですから、丸磯運輸のほうは、補償については、とにかく被害者に過失があるわけだから、それ以外一切の補償はできないというように出てきているのですね。
 ですから、この一つをとってみましても、金額そのものに一つは問題があります。同時に、過失相殺というのがあとの補償をめぐる問題でもってやはり重大な問題にひっかかってくるというような事例が出ているわけです。私は、過失相殺をしたという理由について明らかにしておりませんけれども、できればあとで調べていただいて、資料を出していただければ幸いだというふうに思うのです。
 こうした問題が少なからずあるのですね。五百万という金額が低過ぎるということと同時に、過失相殺が行なわれているために、被害者が非常な困難に当面するということが数多く見られるので、これはやはり考えなければならない問題ではないかというように思うのです。
 死亡の場合、同じ発達をした資本主義国の場合を見ますと、イタリアで千三百万円、タクシーの場合は二千五百万円というふうになっています。フランスで三千二百万円、西独で二千四百五十万円から五千万円になったわけです。イギリスでは上限がないという状況で、これはいずれも強制保険のわけです。
 これらと比べてみても、日本の五百万円はあまりにも低過ぎるというふうに考えるわけですが、死亡、傷害ともに最高限度額を思い切って大幅に引き上げるべきだというふうに考えるのですが、この点どうお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
#47
○小林(正)政府委員 諸外国の自賠責制度というものにつきましては、ただいま先生お示しのような保険の限度額というものも非常にまちまちのようでございます。また、一事故当たりの限度額があるかどうかというようなこと、中には物損を含むかどうかというようなこと等、国によって制度に非常に相違があるわけでございます。また、特にこの保険制度のもとをなします保険料の水準がはたしてどういうふうになっているかというような点、そういった点まであわせ考えてみますと、各国その点は非常にまちまちだと思います。
 こういった点について、現在詳細な資料は持っておらないわけでございますが、限度額の引き上げの問題が当面非常に重要な課題になっておるわけでございますので、ただいま御指摘の点を含めまして、今後詳細に諸外国の実情等も調査してまいりたいと思います。
#48
○平田委員 さまざまであるというふうに言われましたけれども、私、ここで重視しなければならないのは、死亡の場合の最高限度額が、日本の場合これらの国々と比べてみて非常に低い。人の命には変わりないと思うのですよ。そういう意味で、検討する場合、参考にする場合でも、十分考えていただく必要があるだろうというように思うのです。今日のようにインフレが進み、物価高で生活苦が増大しているという状況のもとでは、死亡の場合は少なくとも限度額を千五百万円以上に引き上げるべきではないかというように思うのです。傷害の場合でも、単純骨折の状況でもほぼ百万円はかかるわけです。少し複雑な骨折になりますと、二百万円以上かかる場合が少なくないわけです。こうした事態に見合う額に引き上げるべきだというように私は考えています。この点、大幅に引き上げるという問題についてどうお考えか、お聞かせいただきたい。
#49
○小林(正)政府委員 外国の例は当然よく参考にいたしまして、今後限度額の引き上げの問題に対処いたすわけでございますが、先ほども申し上げましたように、一人当たりの最高限度額という問題それ自体といたしましては、確かに、たとえば西ドイツあたりは二千五百万円というように高い限度額になっておるようでございますが、一事故におきましても二千五百万円という制限がございまして、一人当たりに直した場合にそういうふうになるかどうかというようないろいろな違ったケースも出てくるわけでございます。そういった点から、一事故当たりの最高限度額というようなものも、ある制度のもとで一人当たりがどうなっているかという点も詳細に内容を吟味いたした上で、外国の例ではありましても、いい点は当然取り入れるべきでございますので、今後限度額引き上げについて、前にも申し上げておりますが、積極的に、前向きに対処していきたいと思います。
#50
○平田委員 いま私は、死亡の場合に限度額を少なくとも千五百万円以上に引き上げるべきだ、そして傷害の場合でも状況によっては百万、二百万はかかるんだから、そういう大幅といった場合には、そういう規模も考慮に入れて引き上げるべきだと思うが、そこをどうお考えか、お聞かせいただきたい。
#51
○小林(正)政府委員 被害者保護の観点から、当然、限度額を大幅に引き上げることがいいということについては、先生と意見としては全く同じでございます。ただ、外国の例の二千五百万が直ちに参考になるかどうか、これは制度のもとの規定がいろいろ違っておるわけでございまして、制度自体が違っておるわけでございます。そういった前提条件が違った上での二千五百万でございますので、二千五百万と一千万というような比較、これは直ちにできないということを申し上げたわけでございまして、できるだけ大幅に引き上げる方向で検討していきたいと思います。
#52
○平田委員 私が外国の例を引いたのは、一人に対してこれだけのものを外国では見ているが、人の命は西ドイツだって日本だって変わりないじゃないかという意味で言った。まずこれが一つ。それからもう一つは、少なくとも限度額を死亡の場合千五百万以上に、それから傷害の場合でも百万、二百万とかかるんだ、そこを考慮した大幅な引き上げを考えられないのかという点を聞いているわけです。
#53
○小林(正)政府委員 できるだけ大幅な引き上げが望ましいということは、先ほど申し上げたとおりでございますが、その際に、保険でございますので、当然保険料をどういうふうにするかという保険料の水準アップの問題もあるわけでございます。七百万とか八百万とか、あるいは先生の御指摘のように一千五百万とかあるいは一千万以上であるべきだといういろいろ御意見がございますが、そういった際に、保険料へのはね返りといいますか、保険料をどういうふうにするか、水準をどのくらい上げることがいいのかということも一方においては検討すべき問題になっておるわけでございます。
#54
○平田委員 その財源をどこから出すんだという問題だろうと思うのですが、これはあとでまた論ずることにいたします。
 次に、救急体制をめぐる問題についてお伺いしたいのですが、事故が発生したときから、救急車で運ばれ、病院で応急の処置がとられるまで、この間の救急体制のいかんによって、一命を取りとめるかどうか、健康の回復が早いかどうかがきまると言われております。この重要な体制は一体どうなっているんだろうかということであります。
 第一に、通報があってから救急車が出動し、病院に運ばれるまで、平均どれくらいの時間がかかるんだろうか。
 第二に、通常、救急車の要員は何名で、どんな職種の人が当たっているのか。
 第三に、いわゆる救急指定病院にいつでもベッドの用意があり、けがの状況によって対応できる体制を持っているところはどれくらいの比率なんだろうか。
 以上三点についてお伺いいたします。
#55
○角田説明員 救急業務についてお尋ねがございました。通報があってからどのくらい時間がかかるかというこのお尋ねに対しては、状況によっていろいろ問題があり得ると思います。手元に持っております資料でお答えしかねますので、これは後ほどまた調べてお答えを申し上げることにいたします。
 それから、要員がどのくらいおって、そういう人間がどれだけの資質を持っているか、こういうお尋ねでございました。救急隊数は、四十七年四月一日現在で千九百九隊ございます。隊員数で申し上げますと、一万九千八百三十八という数字になっております。それで、大体この職員が二千百二十六市町村に配置されておるわけでございますが、二千百二十六市町村と申しますと、町村数で申しますと六五%にとどまりますけれども、人口数で申しますと全国人口の九〇%をカバーしている、こういう状況になっております。
 ただ問題は、私どもこの救急業務に携わる職員を確保することが実は非常にむずかしい問題でございます。先ほど申し上げました一万九千幾らの隊員を持っておるわけではありますけれども、私のほうの実施基準で定めております資格を持っております職員がどれだけありますかと申しますと、この約四分の一でございます。したがって、私のほうでは関係機関にもいろいろ御協力を願いまして、私のほうで持っております大学校あるいは各県で持っております消防学校、こういうところに救急の専科を設けまして、職員の資質向上をはかっておるところでございますが、特殊な業務でございます関係上、この仕事を進めてまいります上で実はいろいろな隘路がございます。そういう点につきましては、今後なお検討を続けて、関係各機関とも御協力を願った上でこの業務の遂行をはかってまいりたい、こういうふうに考えます。
 なお、指定病院の関係は、これは厚生省のほうからお答えをいただきたいと思います。
#56
○山高説明員 救急病院のベッドの比率についてのお尋ねでございますが、告示救急の指定病院、診療所全部についての調査はございませんが、病院についての調査の結果について申し上げますと、優先病床を確保している医療機関が、全体の告示病院で申し上げますと八三・五%ございます。ただ一般的に申し上げまして、病院は診療率が平均して大体八〇%になっております。おおむね病床の点ではある程度充足されているんじゃないかというふうに思いますが、ただ問題は、やはりこういった病院が地域的に偏在しているという点が一つ問題でございまして、そういう点、私ども、今後地域格差の解消につとめたいというぐあいに思っております。
#57
○平田委員 私が第三点としてお伺いしたかったのは、救急車で病院へ運ぶのですね、そうすると担当医がおりません。次の病院へ運ぶ。そうすると医者がいました。見て、ああこれはうちじゃ手に負えません。それから次へ運ぶ。大体この間になくなる人たちの数も相当数にのぼっている。最初に行ったところできちっと処理できれば助かったものをという状況が数多く見られると言われているわけでしょう。そういう点から私は、対応できる体制はどうなっているんだろうか、そうした問題についてあなたのほうでいろいろ検討されているんだろうかという点をお聞きしたがったわけなんです。
#58
○山高説明員 ただいまの点は、救急隊の搬送と病院との連携がうまくいっていればそういうことがないわけでございまして、その点が一つ問題であるというふうにお答えできると思います。
 消防署と病院との連絡の関係でございますが、これは、先ほど申し上げました調査の結果によりますと、当直医との連絡を消防署と病院でしておりますのが五六・一%になっております。それから、先ほど御答弁申し上げました空床の関係では五四・七%ということになっております。この点が一番問題でございまして、消防署と私どもで共同して連絡会を持っておりまして、可及的すみやかにこういう点のシステム化をはかっていきたいというぐあいに思っております。
#59
○平田委員 私もそれだけでは納得できないわけですよ。現実にこれはむしろ消防署のほうできっと全く困ったという体験をたくさん持っておられるのだろうと思います。病院へ持ち込んだけれどもどうにもならぬという事例がたくさんあるのだろうと思うのです。そういう意味で、この体制についてはやはり十分検討していただく必要があるというふうに私は思うのです。いま申し上げたような点は、検討されて改善策を示していただかなければならないだろうというように考えるわけです。
 さらに重要な点は、脳外科が非常に少ないのですね。そのためになくなられてしまうという方が相当数にのぼるわけですよ。その点で、東京とその近県で一体どれくらいあるのだろうかと考えますが、その数と、それから非常に少ないという状況にあるのだと思うのですけれども、そのことについての対策は一体どうなっているかということをお聞かせいただきたい。
#60
○山高説明員 脳外科を標榜している数がどのくらいかというお尋ねでございますが、お話のように脳外科は確かに数が少のうございまして、東京近辺というお尋ねでございますが、東京近辺についてはデータをいま持ち合わせておりませんので、全国のあれでまいりますと、昭和四十六年の調べがございますが、毎年医療施設調査というのをやっておりまして、その結果でございますが、昭和四十年末で二百六十五名でありましたのが、四十六年で標榜している施設でございますが、千六十二施設になっております。
 なお、脳外科の充足につきましては、実は非常に腐心しているところでございまして、昭和四十三年度から救急医療対策の一環としまして、脳神経外科の医師の研修を毎年いたしております。ただ、これは何ぶん非常に高度の医療を取り扱うものでございますので、一度に多人数もできませんし、また期間も長くかかるわけでございます。現在までに百名近く養成してございます。この点につきましては、今後とも養成施設を拡充してまいりたいというぐあいに思っております。
#61
○平田委員 これはまた医療体制全体との関連で論じなければならない問題だと思います。とにかくいまお話を聞いて、どうも自信がなさげだということを感じるわけですよ。さらに十分検討していただいて、力を注いでいただかなければならないだろうというように思います。
 次に、自動車事故の場合に、労災保険と健康保険と自賠責保険との連携の問題ですね、これは一体どうなっているのだろうか。この点について、つまり通常交通事故になりますと、健康保険じゃ見ませんとか、それから健康保険組合の了承が必要ですとか、いろいろややこしい手続が必要になるわけです。その点で、この関連は一体どうなっているのだろうかということについてお聞かせいただきたいと思うのです。
#62
○西村説明員 お答えいたします。
 自動車事故が起きまして事故の被害者が病院にかかる場合に、健康保険の適用が制度の上で規定されてはいないわけでございます。先生御承知のように、健康保険でなくて自由診療でやってほしいというお医者さん側の要望が多いことも事実でございます。ただ、健康保険の適用を現に受けておられる方もございまして、そうした場合には、健康保険の管掌者のほうから自賠責保険へ、第三者の加害行為によるものでございますから、求償が後ほど参ることになっております。
#63
○平田委員 これは一つの問題なんですけれども、結局、自賠責の限度額が非常に低い。健康保険で見てもらう。健康保険で見てもらうと、医者にかかった費用は全部自賠責のほうから健康保険のほうが先に取るという結果であとが残らないですね。しかも医者のほうは、健康保険で見た場合にはどうも自賠責で治療をしただけの費用は取れないというような問題がありまして、医者も好まないし、結局健康保険でかかっても、自賠責のほうから健康保険が取ることになりますから、その他の諸経費が被害者のほうに回らないというような事情がよく起こるわけです。こういう点について、やはり健康保険は健康保険として自動車事故であってもちゃんと見ること、しかし、自賠責のほうに請求して被害者よりも先に治療費を取るというようなことではなく、健康保険は健康保険としてまかなって、自賠責のほうではその他の補償に充てていけるような道を開くべきではないかというように考えるのですが、その点どうですか。
#64
○小林(正)政府委員 医療費の問題については、医療のしかたあるいは額等について非常に問題が大きいかと思います。そういった点については、運用上の問題あるいは制度上の問題、いろいろあろうかと思いますが、今後よく検討してまいりたいと思います。
#65
○平田委員 医者が健康保険では自動車事故については見たがらないという問題については、これは制度そのもの全体の中に問題を含んでいるわけですけれども、やはり医者の技術料が非常に安いのですね。したがって、どうしても健康保険では病院の経営の上でも困るということでなかなか見たがらない。自賠責のほうでまかなってくれというふうに言うのだと思うのです。そういう意味では、これは健康保険のほうで医者の技術料を十分に正当に適正に引き上げるべきだというように考えるわけです。そうすることによって初めて、医者が健康保険でもよろしゅうございますといって見てくれる状態をつくり上げることができるのだというように思いますが、この点どうお考えですか。
#66
○小林(正)政府委員 医療費の問題につきましては、確かに御指摘のとおり、単価であるとかあるいは診療報酬の問題だとかいろいろあろうかと思いますけれども、これは医療全体の非常に根本の問題でございまして、そういった点については、保険の立場からも医療費の適正化というようなことについては非常に多くの問題がございますので、関係方面に十分連絡をとりまして、今後検討してまいりたいと思います。
#67
○平田委員 これはずいぶん無難な御返事で、厚生省のほうからでも御返事があるかと思ったのですけれども……。
 時間もありませんから次に進みます。
 自賠責保険の制度の内容の幾つかの改善点をあげてみたいと思うのですけれども、さきの例でもあげましたように、現在は事故原因に基づいて過失の相殺という方法がとられております。また、いわゆる加害者には何の保障もないわけですね。支払い能力のない多くの人々にとっては、この上ない困難をつくり出すことになるわけです。こういう点は、あらためて被害者の保護に徹すべきである。したがって自賠責が過失相殺などということはなくすべきだというように思うのです。それから、加害者の責任があるとないとにかかわりなく、被害者の過失があるとないとにかかわりなく、事故による被害に対して支払われるというような災害保険の方向に向けて、この制度をやはり改善していくべきではないかというように思うのです。この点どうお考えか。
 それから、自賠責は加害者請求が優先しております。被害者請求もできるけれども、加害者はそれを中断させることができます。これも加害者も被害者も対等で請求できるようにすべきだというように思いますが、この二点についてお答え願います。
#68
○小林(正)政府委員 自賠責保険の考え方は、御承知のとおり無過失損害賠償責任保険までには一挙にいっておりませんけれども、挙証責任の転嫁といいますか、責任を推定いたしまして、損害賠償責任というものを自動車運行供用者に課しておるわけでございます。その損害賠償責任をてん補するためにこの保険制度があるわけでございまして、そういった点で、なおいろいろな基本的な制約があるかと思いますけれども、そういった点については、損害賠償そのものの問題に触れる問題でございますし、そういったもののあり方、それが非常に法制的にむずかしい問題、法理論としてもむずかしい問題だと思いますので、なお今後その問題と保険の制度の問題ということは、あわせてよく検討していきたいと思っております。
 それから、なお自損傷害保険的な考え方をとるべきではないかというような点についても、あるいは自損事故というようなものを強制すべきではないかというお考えかと思うわけでございますが、これも現在の強制保険の制度が、他人に加えた損害の賠償責任というものを保険する制度でございますので、はたしてそういった傷害保険というようなものを強制保険として取り扱うことがいいかどうか、これまた一つの大きな問題でございます。今後検討いたしたいと思います。
 なお、第二点の、加害者請求あるいは被害者請求というような点については、現在の制度におきましても両方の道が開かれておるわけでございまして、制度の運用の問題で、いろいろな御不便な点も運用の問題で解決するのじゃないかと思っております。
#69
○平田委員 次に、この査定上の問題にかかわり合いを持つわけですけれども、査定事務所には、多くの場合、医学的な知識を持った人が配置されていないのではないか。したがって、たとえばむち打ち症にかかった場合などの補償について、やはり画一的に処理されていくというような傾向が見られる。こういう点も考えると、当然のことながら医学的知識を持った人を配置して、適正な査定ができるようにしていく必要があると考えますが、この点の見解を聞かせていただきたい。
#70
○小林(正)政府委員 医療費の額の適正であるかどうかという問題につきましては、確かにいろいろ問題はあろうかと思いますけれども、これは実際にかかった医療費というようなものを前提といたしまして、実費と申しますか、それを前提として考えていくということでございます。
 なお、画一的にという点につきましては、これはまた保険金の支払いの迅速化というような点から、慰謝料とかあるいは休業補償とか、そういうような問題については、むしろできるだけ画一的と申しますか、基準を定額で明らかにしておいて、そして保険金の支払いの迅速化をはかることがむしろいいのではないかと思うわけでございます。
#71
○平田委員 保険の請求をした際に、医師の側からの診療報酬についての請求が出ますけれども、これらの中身についてもやはり十分検討できないでしょう。大体、言われたなりに払います。そうすると、医者のほうへ払うと、あと残りはなくなるのですよ。通常、市によって、地区によっていろいろ違いはありますけれども、交通事故の場合は通常診療の二倍半ないし三倍というふうに申し合わせているところも少なくないようですね。こういう問題についても、やはり適正にしていく必要があると思うのだが、その場合でも、医学的な知識がなければ、これは請求されたまま支払うという結果しか出てこないわけですよ。
 そういう意味で、医者の中にもいろんな人がいましてね。私の知っている関係でも、骨折があった、入院させた、単純骨折だから、大体当て木をしておけば済む。ところがそのけが人は、当て木をしてどんぶりでごはん食べているわけですよ。どんぶりめしを食っているその患者さんにリンゲル注射を打っているのですね。あれ一本、当時七百円くらいの原価でしょう。そこへ栄養剤を一、二本入れて、それでリンゲル注射を打っているわけです。で、一日二万三千円ですよ。あと何もしてないのですよ。それでも二万三千円取るというようなことが、請求どおりすっと通るのですね。
 ですから、そういう意味では、私はやはり、医学的な知識を持った人を配置するなり、方法は検討する、体制上でも検討する余地があるのじゃないかというように考えるからお伺いしているわけです。いまのような点で、それはまたひとつ十分現実を見ていただいて、検討していただく必要があると思います。
 次に、最初に申し上げましたように、限度額を大幅に引き上げるということ、それから、そのあとにもかかわり合いを持ってくると思うのですけれども、過失相殺をめぐる問題をなくしていくということ、それから、被害者の場合も加害者の場合も補償されるような、災害保険の性格を帯びたものに発展さしていくということが必要になるわけですけれども、いま改善を大胆に実行していこうとすると、どれもこれもいろいろな障害にぶつかるわけです。私は、やはり全体を通じてここで大切な問題は、自賠責保険を国の事業に移す必要があると考えるのですが、この点どうお考えか、お聞かせいただきたい。
#72
○小林(正)政府委員 自賠責保険が強制保険というたてまえをとっておりますので、この保険に国が関与して、できれば先生御指摘のような国営保険であるべきじゃないかという考え方も、確かにあろうかと思います。この制度を昭和三十年に始めます際にも、そういった点については十分検討いたしまして、元受け保険といたしましては現在の各損害保険会社がこれを取り扱いますが、そのうちの六割という大部分のものにつきましては、国が再保険という形でこの保険を取り扱うという制度にいたしたわけでございます。再保険という制度を通じまして、保険会社の運営の状況、支払いの状況、収支状況、そういった点につきまして十分実態が国においても明らかに把握できるわけでございまして、こういった方法を通じて、強制保険の公共性というような点を十分担保していきたい。こういう現行制度におきましても、すでにそういうことになっておるわけでございまして、先生御趣旨の国営であるべきであるという点は、相当程度貫かれておるわけでございます。
#73
○平田委員 なぜ、全面的に国に移すことができないのですか。
#74
○小林(正)政府委員 保険という制度を、新たに国が元受けの段階から契約の段階からすべてを取り扱うというようなことは、考え方としてどうこうということじゃなくて、実務上もそれが非常に煩瑣になってくるわけでございまして、損害保険会社が全体として保険の契約、その後の支払い等について実務に当たるというたてまえというのが非常に能率的であろうかと思うわけでございます。そういった点で、国営であるべきだという趣旨というものも、最も能率的に全体として考えを生かしたのが現行制度だろうと思っております。
#75
○平田委員 あなたはそうおっしゃるけれども、実際に損害保険業界はこれまで自賠責保険をどう見てきたか、あなた御存じでしょう。この事業は、当初、窓口としての手数料だけで採算が合いませんから、業界はさほどうまみのないものというふうに考えていたわけですよ。ところが、さきにもあげましたように、自動車生産の急増、それから道路事情など交通安全対策の欠如、こういうものが伴って交通事故が急増する結果を生んだのですね。自賠責による損害賠償限度額が低く押えられているために、一たび事故が起こると、自賠責だけではとても賠償しきれないという事態が発生してきたのですよ。そこで勢い、損保業界が発売する任意保険が急速に伸び始めた。任意に入っておけばだいじょうぶですよ――なかなか、これは任意というやつはくせ者なんですよ。めんどう見やしませんから。任意に入っておけば絶対心配ないんだということで任意をずうっと売り出した。これは、自賠責の最高限度額が低いところにいわば赤字がある。保険会社が商売をやっていく上で都合のいい面があるのですよ。そういうぐあいですから、保険料で見ると、昭和三十七年を一〇〇として、四十六年には実に一一二二・八六という、十一倍以上にもなってきたわけです、任意保険の発売が。これは急速に伸びたわけですよ。民間保険の総保険の中で、自動車保険は昭和三十六年が一六・四%、四十五年には実に三五・三%を占めるようになったわけです。こうして損保業界は、自動車損害賠償保険、任意保険ですね、これを獲得する窓口として、これはやはり自賠責を扱っていたほうがいい、これをステップにして任意保険を売り込んでいける、こういうふうに位置づけてくるようになったんですよ。これが事実だと私は思うのです。
 ですから、国へ移していく、そして最高限度額を引き上げていくということが、業界にとってはかなり重大な問題になるわけですよ。私は、おそらくそこのところのほうが問題なんだ、あなた方がいろいろ言っているけれども。自賠責の限度額の大幅引き上げと、制度内容の抜本的な改善に政府がためらいを見せるのも、ここにあるのではないのか。自賠責限度額の大幅引き上げと制度の改善は、任意保険の存在価値を低めるのですよ。それはそうでしょう。相当補償をされるとなれば、任意に入る必要はないのだから、任意保険の売れ行きが急速に鈍るようになるのですよ。そういう結果を生む。先ほども何か答えの中に出ておりました、昭和四十四年からですか、若干の鈍りが出たというふうに言っておりましたけれども、あれは限度額を引き上げることと関連して出てきた。いままたあなた方のほうでこれを検討される、検討をされてくることとの関連で、これは任意の伸び率というものが鈍ってくるのですよ。極論すれば、任意の自動車保険そのものの存立にかかり合いを持ってくる、そういう性質を持っていると思うのです。だから、あなた方のほうがいろいろとちゅうちょしていろいろな理屈をくっつけて、そうして限度額を大幅に引き上げる問題についてもやはりあいまいな態度をとるということが出てくると思うのですね。さらに、資本の自由化によってアメリカの資本などが業界に進出してくる、商品が進出してくることも予想されます。当然、業界の競争は激化せざるを得ないわけです。政府自身がこのことをちゃんと見抜いているんだろうと思うのですよ。
 だから、事故によって犠牲を受けた被害者、また間違って事故を起こした加害者、国民の中のかなりの部分を占める人々に対して、ほんとうに役に立つものにしていこうとすれば、当然国に移して、そして財政的な措置もとるべきだというように私は思うのです。いま言ったように、保険会社のほうを見ていると、そうすると、限度額の引き上げもちゅうちょせざるを得なくなるのですよ。あなた方の説明をいろいろ聞いていますと、今度は業界では示談保険なんというものを出して、事故が起こったときのいろいろな手続のめんどうも見るようにするんだというようなことも言われているようです。こういう点を考えてみますと、私はやはり国民の側を見て、国民の利益を中心に考えて、そうして抜本的な賠償保険の制度を発展させていくというふうにすべきだと考えるわけです。
 さっきの財源の問題についても、私はやはり一番大事な問題は安全の点で、また不幸にして事故が起こった際の損害補償の点で最も重大なことは、自動車事故を少なくする、さらに根絶していくということが大事だと思うのです。この点はおそらく異存はないだろうと思う。これは限度額を引き上げる財源を確保する上でも大事なものでありますね。そのためには自動車事故の要因の一つを取り除いていかなければならないと思うのです。
 その第一は、やはりモータリゼーションをやめることです。無制限に自動車をつくり出していくというあのやり方はやめるべきだということです。
 第二には、道路舗装、この道路舗装率が七二年に二四・二%という状態なんですが、これを急いで克服することだ、歩道や横断橋、交差点の立体化や信号機、街灯など歩行者の安全と事故防止の対策を立てることが必要だと思う。自動車の交通量を道路の容量に見合ったものにしていく必要がある、こういうことなど事故の要因を取り除いていかなければならないと思うのです。
 第三には、自動車運転労働者を労働強化に追い込む歩合い制度を柱とした賃金制度を改めさせること、トラックの過積みを生み出している諸要因を取り除くなど、無理な運転をしなくてもよいようにすることが必要だ。
 以上のような大きな三点を中心にして事故防止対策を立てなきゃならないというように思うのです。そうすれば事故が減り、支出が減ってくる。財源は確保できるから大幅に引き上げていくということも可能になるのですよ。
 さらに、国の自動車関係の税収、これは総額相当額になっているわけですけれども、取り立てた税金、これをやはり道路だけに使うのじゃなくて、こういう交通事故の災害補償の面にも適用していくようにすべきじゃないのか。高速道路をつくるために、高速道路を中心にする道路網建設のために、七兆七千億もかけるお金はあるのですよ。ですから、こうしたものから支出していくことも可能なわけです。
 また、トヨタ、日産などの自動車生産メーカーの利益の伸びも非常に大きいものがあります。一九六二年には四百九十二万台であった自動車台数は、七二年には二千百二十二万三千台と四倍以上に急増しております。これは代々の自民党政府の高度成長政策によってアメリカ式のモータリゼーションの波をあおってつくり出したものだというふうに思うのです。これがまた事故を激増させてきているのですから、当然のことながらトヨタ、日産などの生産メーカーはばく大な利益をあげているわけです。この十年間で資本で見ても十倍から二十倍になっておりますよ。自動車事故のほうはどうかといえば、年々死亡者が一万六千人を含めて約百万人の犠牲者をつくり出しているわけです。
 したがって、損害賠償金の限度額の引き上げのための財源は、保険料を据え置きにして、自動車事故発生の原因をつくり出している自動車の生産メーカーや道路管理者、特に国の負担によってまかなうべきだと思うわけです。この点をどうお考えか。さらに自動車事故の根絶を目ざして、事故を防止することによって支出を少なくして財源を確保することができると思うのですけれども、どうお考えか。
 以上二点をひとつお聞かせいただきたい。
#76
○小林(正)政府委員 被害者保護の観点から限度額をできるだけ大幅に引き上げるということが、現在非常に大事な問題になっておるわけでございます。その際に、保険という制度でございますので、保険料をどういうふうにするかということが当然問題になるわけでございますが、ただいま先生御指摘のように、できれば保険料はできるだけ引き上げないで、そして限度額をできるだけ引き上げる、こういうことができることが最も望ましいことは申すまでもございません。その際に、保険料をできるだけ引き上げないで限度額を上げるということのためには、ただいま先生非常に詳細に御指摘がございましたけれども、事故防止対策というようなものを積極的に進めるということが非常に大事なわけでございまして、このことはこの保険会計にも直ちに影響をいたすわけでございますので、今日黒字化になってきたというのも、事故が減ってきたというようなことでなってきておるわけでございますので、今後事故防止対策、安全対策というようなものに、関係の省庁において強力にこれを推進するということは当然でございまして、これについては、国の安全対策でございますので、先生御指摘のとおり、一般会計負担によってこういった強力な施策を今後推進いたすべきことでございます。このことがひいては保険の会計にも好影響を与えるという関係に相なるかと思うわけでございます。
#77
○平田委員 以上で私の質問を終わりますが、くれぐれもとにかく被害者であれ加害者であれ、事故によって起こった被害を救済して多くの人々の困難を取り除いていくということを中心に置いて、限度額の大幅な引き上げその他の指摘をしてまいりました諸施策を、大胆にやっていただく必要があるというように思うのです。その際に、やはり私は損保業界との関係がかなり大きな問題になろうかと思うのです。これはやはりどっちを向くかによってきまるわけでありますから、ぜひひとつ国民の側を向いて、国民の利益を守る立場をしっかり踏まえて対策を立てられることをお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
#78
○久保委員長 松本忠助君。
#79
○松本(忠)委員 去る六月十九日の衆議院の本会議におきまして、自動車事故対策センター法案が採決されました。参議院に送られまして審議待ちという状態でございます。一日も早く参議院においても審議が終了されるということをわれわれも望んでいるわけでございますが、そこで、本案が衆議院におきまして採決のおりに、附帯決議がついているわけでございます。これについては、共産党を除く四党の共同提案という形になりまして、これに対しては、原案に対して棄権の意思を表明されました共産党も賛成をしているわけでございます。いわば与野党全部がこの附帯決議については賛成の態度でございますが、一から五項目までございましたが、その中で特に三項において、自動車損害賠償責任保険制度について、保険金給付限度額の引き上げ、さらには損害査定基準の改正、保険料率の合理化の検討等、附帯決議の中に盛り込まれているわけでございます。いろいろと社会党さんあるいは共産党さんからもこの話がございましたが、何としてもいま給付の限度額の引き上げというのが当面の大きな問題であろうと思うわけでございます。
 そこで、御承知のように、自賠責の給付限度額については、本法が制定されました昭和三十一年二月以来、当時は三十万ということで始まったわけでございますが、四十四年十一月の現行五百万円になるまでに五回の改定があったわけでございます。最近インフレの傾向が高まりまして、いわゆる貨幣価値が下落してくる、こういう現状からしまして、給付の限度額の引き上げは当然であろう、そういうふうにわれわれ野党は考えておるわけでございます。
 こうした点におきまして、われわれのほうでも、党の政策といたしましては、昨年の第十回党大会におきまして決定しました活動方針の中でも、自賠責の死亡の場合の限度額、これを引き上げて一千五百万円にしたわけでございます。一千五百万円にすることについては分科会でもいろいろと議論がありましたが、とにかく被害者の救済の強化をはかるという意味からも、あるいはまた貨幣価値が低落している、インフレ傾向のこういう時代としては実情にかけ離れている、また、諸外国の例から見ましても、諸外国で給付している実態、こういうものから考えても、日本は低過ぎるのではなかろうか、あるいはまた、任意保険をかけている人が五〇%を割っているという状況からして、むしろ強制力のあるところの自賠責に一本化して、支払うべき保険料については税制上の所得控除措置を行なうべきだ、こういうふうな意見が非常に強くて、一千五百万にしようということになりまして、党として決定をいたしたわけでございます。
    〔委員長退席、太田委員長代理着席〕
先ほども申し上げましたように、一千五百万にするとすれば保険料率の引き上げもするんじゃなかろうか、そういうことは現在好ましくないとか、あるいはまた純粋の傷害の場合の給付金を五十万円、こういうことであるけれども、一千五百万円に死亡の場合の給付限度を上げるならば、この純粋な傷害の場合も五十万を上げるべきじゃないか、こういういろいろな意見が出たことは事実でございます。しかし、そういうこまかい点はさておきまして、党といたしましては、自賠責の中心というか目安というか、この死亡の場合の給付限度を一千五百万にしようということにきまったわけでございます。
 そうして今回、附帯決議の中にも、具体的な数字は触れておりませんけれども、引き上げについては大かたの意見がここに一致を見ております。自民党以下全党あげてこの問題には取り組むべき、そういう状況である。なるべく早い時期においてこれはわれわれの決議としてもやらなければならぬじゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
 そこで、担当でございます大蔵省といたしまして、この限度額の引き上げについて、いろいろといままでに御両者から御質問がありましたが、上げることについては異存がないと思いますが、どのようなお考えでいるのか。まあ具体的にその金額を明示することは不可能かもしれませんけれども、一応大蔵省の考え方を聞きたい。同時にまた運輸省としては、いずれ大蔵からも御相談があることと思いますけれども、どのように考えられておるのか。大蔵省の保険部長並びに自動車局長から、その辺について簡単なお話を承りたいと思います。
#80
○安井説明員 自賠責の限度額の引き上げにつきましては、別に大蔵省の担当と申しますよりは、運輸省と御一緒に検討いたしているわけでございます。運輸大臣もこの委員会の席上で極力引き上げてまいりたいという御答弁がございましたし、私ども全く同感でございます。しかも、時期にいたしましても、何と申しましても保険数理にかかわる問題でございますので、事故率が四十七年度から四十八年度にかけてどうなるか、引き上げましたときにどれだけの財源を必要とするのかというようなことの作業を現在詰めてやっておる段階でございます。私どもといたしましても、その作業ができ上がり次第、自賠責審議会に運輸省と御相談しておはかりした上で処置してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
#81
○小林(正)政府委員 ただいま先生お話しのとおりのような情勢でございますので、保険金の限度額の引き上げというようなことについて積極的に前向きに今後検討していきたいと思っております。
    〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
#82
○松本(忠)委員 六月十九日の毎日新聞の記事があるわけでございますけれども、これによりますと、「大蔵、運輸両省は十八日、」という記事が載っておりますが、新聞記事の前日になるわけでございます。自賠責の給付限度額を死亡の場合七、八百万円にするべく方針を固め、検討を始めたという記事が載っているわけでございます。これは正式に記者会見等で発表したものなのかどうなのか。この新聞の記事を、私見まして、今度の御両所の御答弁からすると、まだまだ金額の点なども未確定であるし、これから始まるんだといういまの御答弁、ところが六月十九日の記事では、金額も具体的に七、八百万円というようなことで出ているわけですが、これについて記者会見で正式に発表したものなのか、どうなのか。この点いかがなんでしょうか。
#83
○小林(正)政府委員 その新聞記事については、全く運輸省としても関知しておりません。
#84
○安井説明員 大蔵省も全く同様でございまして、全く関知いたしておりません。
#85
○松本(忠)委員 御両所がそうやって国会の場で正式に否定されるのですから、私はそれ以上言いませんけれども、この記事の中を見ましても「交通事故で死傷するケースがうなぎのぼりなのに、現実に支払われる損害賠償額はこの物価高の中で安過ぎる」なんということが書いてありまして――ウナギ登りに事故がふえているということは現実じゃないわけですね、実際問題として減っているのですから。昨年の実績も一万五千九百十八人ということが発表になっております。これも実際問題とすれば、五月十八日に発表になっているのですから、一カ月もたっているのですから、そういう点からすれば、この記事に私ちょっとどうも解せない点もあるわけでございますが、それでは、この記事については全く大蔵、運輸両省は関知しない、こう言われるわけですね。
 それではもう一つ、古いことで聞きますけれども、昨年の九月十七日の朝日新聞には、強制保険金の支払いを死亡事故には約一千万円にしよう、これは「来秋」といいますから、結局四十八年の秋という目標で大蔵省で発表している記事がありますが、これについては大蔵省はどうなんですか。
#86
○安井説明員 昨年の秋の自賠責審議会で保険金額の限度を引き上げるべきであるという御議論が出たわけでございます。その議論が出まして、私どもが来年度の事故率等の算定ができました上で、その金額の限度の引き上げあるいは保険料の引き下げという問題を検討するという作業をした段階でございまして、いまお話しございました新聞の記事を私どもが発表したとかいうことでは全くございません。
#87
○松本(忠)委員 いずれにしましても、この新聞の記事については全く御両所は知らない。知らないということなんですが、上げるということについてはお二人とも認めていると思う。それからその作業も、どうしてもことしのうちにやらなければならない、これはお認めになるだろうと思うのです。
 いずれにしましても、この死亡の場合の限度額引き上げというのは世論でございます。数字についてはたいへんどうも大蔵省の方はめっぽうかたいことは評判でございますので、なかなか数字についてはおっしゃらないということはよく私も理解できます。理解できますが、その作業はぜひとも、たいへんお気の毒ではございますけれども、われわれの要望とすれば、この夏休みの間休暇を返上しても、ぜひ大蔵省でこの案を詰めてもらいたいし、また運輸省のほうも、自動車局長以下精を出してやってもらいたいと思うのですけれども、こういうことはあまりあつかましくお願いするということはどうかと思いますけれども、やはり国民の世論であるし、いまの社会党さん、共産党さんの御意見もいずれもそこにあるわけです。民社党さんもやはり同じ意見だろうと私は思います。そういう点から考えますと、これはどうしても早い時期においてやっていただかなければならぬと思いますので、この作業をおやりになるについての決意をひとつお聞かせを願いたい。ことしのうちに、何月の何日までにどういうスケジュールでやっていって、どういうふうにやりますというようなことを、御両所から決意のほどをお聞きしておきたいわけです。この点をどうかひとつ明快な答弁をしていただきたいと思います。
#88
○小林(正)政府委員 限度額引き上げの方向でいろいろ検討をいたすわけでございますから、ただいま先生お話しのとおり、事務的にそれがフォローできないということがないように、事務的にはデータの収集、内容の検討等を鋭意進めてまいりたいと思います。
#89
○安井説明員 自動車局長のお話がございましたとおり、大蔵省としても全力をあげてやってまいりたいと思います。
#90
○松本(忠)委員 全力をあげてやられるお気持ちはよくわかるのですけれども、どうですか、ことしの秋までには何とかそのめどがつきますか。その点、もう少し明確にお答えできませんか。
#91
○小林(正)政府委員 四十八年度内に累積赤字が消せるという収支状況になっておるわけでございますので、年度内、できればなるべく早く年内にも自賠責審議会を開くことができるように、事務的な準備を鋭意進めたいと思います。
#92
○松本(忠)委員 繰り返しの答弁になりますからこれはそれ以上求めませんけれども、そこで問題は、こういう物価高でございますし、支出がかさむということについてはいずれも反対の空気です。そういう点で、限度額は五百万円から引き上げてもらいたい、しかし、その保険料の料率のほうも上昇するということについては反対の機運が強いわけです。こういうことになりますので、これは当然のことだろうと思うのです。いわゆる限度額の引き上げはここまでできる、しかし保険料率も上がるということではならぬのでありまして、なるべく保険料率のほうを上げないで限度額のほうだけ上げられることがわれわれとしては望ましいわけだし、ぜひそうしてもらいたい、こう思うわけでございます。
 これはどうも全く予測のことになりまして、答弁も非常にむずかしいのじゃなかろうかと思いますが、料率を改定しないで給付限度額をどこまで上げることができるかということですが、これは大蔵省どうでしょう。たいへんむずかしい計算だと思うし、また時間をかけなければできないと思いますが、しかし、あなたの目安として、この辺までは料率を上げないで保険金限度額だけは上げられると思うがというような私見は、目の子でどうでしょうか。
#93
○安井説明員 ただいま先生の御指摘のとおり、非常にむずかしいことでございまして、とにかくその前提となります事故率がどうなる、それが保険にはね返ってまいりましたときの保険金と保険料率との比率がどうなる、それから今度は、いままで五百万円のものをかりに百万上げたときにはいままでの階層からどれだけ上がっていく、七百万円ならどう、八百万円ならどう、一千万ならどう、あるいはそれ以上こえた場合どうというような階級区分を全部個別に資料として整備いたしませんと、非常にあやふやなことで作業をいたしますとかえって国民に御迷惑をかけるわけでございますので、いま先生が目の子でとおっしゃったのでありますけれども、目の子で申し上げるだけの資料もないということでお許し願いたいと思います。
#94
○松本(忠)委員 自動車局長どうですか。これは大蔵省のほうがいわば本元なんで、もちろんそちらに御相談をかけることは当然なんですが、あなたとしてはどうですか。
#95
○小林(正)政府委員 詳細な内容を私自身まだ見ておりませんので、目の子でどの程度上げられるかということはわかりませんが、ごく大ざっぱにあれをいたしまして、ようやく単年度での黒字、全体の収支がバランスできる程度という状況でございますので、保険料据え置きのままどのくらい上げられるかという際に、さして大幅に上げることは不可能かと思います。
#96
○松本(忠)委員 これは、なかなか責任あるお立場でございますから、むずかしいだろうと思います。
 そこで、もう一点大蔵省にお伺いしておきたいのですが、アメリカでノーフォールト保険という、いわゆる自損事故の場合の保障制度、こういうことが考えられているということを私伺ったわけでございますが、これは車を使う限り事故というものは全然ないわけにいきません。必然的に事故は起こるわけですし、その事故の原因が過失の有無にかかわらず、とにかく車の利用者全体でカバーしていこうという思想だという話でありますが、これの詳細について御存じでしたらひとつお聞かせを願いたいわけです。
#97
○安井説明員 先生からいま御指摘のございましたノーフォールトの保険でございますが、実はことしになりましてからもニューヨーク州がそれを採用したということは、私ども承知しております。その内容につきましては、どうもアメリカの不法行為法の体系が日本とだいぶ違いますので、どういう形でノーフォールトが行なわれているかということにつきまして、いま調査している最中でございます。ただ、いままでやっておりますノーフォールト、これは完全な無過失保険のようでございますが、無過失保険の場合には限度額が非常に低いわけでございまして、マサチューセッツの場合に五十万くらい、ほかの州も百数十万という程度のもののようでございまして、ニューヨーク州の場合も限度額そのものはそれほど高くはないというふうに承知しております。
 いま御指摘の自損事故がこれに含まれるかどうかも実は調べてみたのでございますが、現在手元の資料では、どうも法体系が違いますので、第一当事者の事故についても支払うということまではわかったのでございますけれども、その中に入るのか入らないのかわかりかねているという状況でございます。
#98
○松本(忠)委員 運輸省のほうでは何か情報が入っていますか。
#99
○小林(正)政府委員 アメリカの一部の州ではノーフォールトの保険が行なわれているというようなことを聞いておりますが、その詳細については、できるだけ調査はいたしておるわけでございますが、現在の段階で十分調査が済んでいるということじゃございませんので、今後検討していきたいと思います。
#100
○松本(忠)委員 それでは、自賠の問題は一応私の質問の点は終わりますが、この機会にもうちょっと時間をいただいてただしておきたい点がございます。
 けさの新聞に、運輸省の発表で、自動車の安全基準が強化されたという発表がございました。この内容についても詳しい御説明をいただきたいと思いましたけれども、時間を倹約する必要もありますので、要点については私も一応新聞で拝見しましたので、それでとどめておきますが、やはり歩行者対策というものにまだまだ欠けているのじゃなかろうかというような気がするわけです。運輸省の守備範囲としてはあの程度でやむを得ないのじゃなかろうかと思いますけれども、要するに今回の改正でも、バックミラーの改善、やわらかい材質でつくるとか、普通トラックの車体の下のサイドガードの義務づけ、この程度しか私たちとしては受け取れないのですが、今後まだやらなければならない点としても、要するにぶつかってボンネットの上にほうり上げられる、それがまた進行中にボンネットから下にたたきつけられるということがあるので、ボンネットの表面の材質の研究、こういうことを考えるというようなことも当然やらなければならないことじゃないかと思いますし、それからよくバンパーではねるわけです。このはねるのが、かたい材質の場合とやわらかい材質の場合ではどうか、こういうものもありますけれども、いずれにしてもそういったことをやらなければならないと思いますが、いわゆる歩行者の安全をはかるという意味から、もう少し全体観に立って――これは運輸省のことを言っているわけじゃないのですよ。全体観に立った場合に、いわゆる歩行者の安全を守るためには、歩車道の分離ということが何といっても一番の問題であろうと思うのです。これをやらないで――いままでやったことが決して悪いということじゃありませんけれども、やはり安全確保のためにはどうしても歩車道の分離ということが一番だろうと思うのです。これを徹底するということをまずやらなければいかぬと思うのです。もちろん、これは運輸省の守備範囲じゃないことはわかります。建設省のほうの関係ですから、当然そっちのほうでやってもらわなければならないのでしょうが、しかも、それに対する答申も出ておりますから、当然やることと思うのですが、もう一点、ガードレールも――私、自分の地元でいろいろな事故が、ガードレールによって損害がかなり救われている点認めておりますので、一そうガードレールをつくるというような点、それからまたガードレールがないようなところは追い越しを認めない、こういった方向までいかないと、歩行者のほんとうの安全確保ということにならないのじゃないかと思うのです。こういった点で、きょうは建設のほうにおいでいただいてないわけでございますが、交通安全対策室のほう、それから運輸省、警察、この御三者にそれぞれの立場から、もっと歩行者の安全対策という点を考えてみたときにどうあるべきかということについて、簡単にお伺いしたいわけです。
#101
○秋山政府委員 ただいま先生御指摘のとおりでございまして、歩行者の安全対策は何よりも大切でございますし、車と人、さらには自転車、これの混合交通をできるだけなくするということが最も重要なことと存じておりまして、関係機関とよく打ち合わせまして、これを推進してまいりたいと存じております。
#102
○小林(正)政府委員 自動車の保安の関係は、自動車行政の最大の眼目でございまして、従来から運輸省といたしましては、毎年、ほとんどやらない年はないというくらいに保安基準の改正、強化をやってきたわけでございます。先ほど先生御指摘の、今回の保安基準の改正によりまして、約十七項目ほどの保安基準の強化をいたしたわけでございますが、これが歩行者保護の観点よりかむしろ車対車の事故に重点があるのではないかという御批判かと思うわけでございますが、この点は、最近の事故の実態がそういうことになっているということで、あるいはそういう御批判も成り立つかと思うわけでございますけれども、運輸省といたしましては、当然、従来の保安基準の改正というものは、この事故の実態にかんがみまして、歩行者保護という観点から保安基準の改正をやってきておるわけでございます。
 また具体的にお示しのボンネットの問題、そういうような問題も、現在私どもが長期計画として今後の保安基準改正で考えております項目に入っておるわけでございまして、歩行者保護というような点を運輸省としても当然重大な対象項目として取り上げておるわけでございます。
 ただ、御指摘のとおり、歩行者保護の観点からは、車自体の保安の問題よりかも、ガードレールとかあるいは道路の改良等の問題、歩道橋等の問題、いろいろあろうかと思います。そういった点に重点が置かれるというようなことから、あるいは今回の項目についてその二つの点から御批判があるかと思いますけれども、これは決して保安基準において歩行者保護を考えてないということではございません。
#103
○久本説明員 警察の行ないます歩行者の安全対策について御説明申し上げます。
 歩行者の安全の確保は、当面交通警察が最も重点を置いて実施しなければならない対策であるというふうに考えております。交通規制の立場からは、歩行者が安心して、車の脅威を感じないで歩けるような環境づくりということが、交通規制の最も重要な役割りであるというふうに考えておりまして、当面、都道府県警察に対しましてもこのような形で指導し、指示しておるわけでございますが、最も重要な対策といたしましては、スクールゾーン対策で表現されますような、生活地域の規制であるというふうに考えております。そのための手段として、歩行者用道路を、裏道、生活街路の密集しております地区にできるだけ多く設定しまして、そのようなところでは歩行者が安心して歩けるように車をなるべく入れない、通過物を入れないという地域にしていく、そのために、地域の中に車庫があるもの、あるいはどうしても用事があって入ってくる車だけを入れるような形の規制が歩行者の道路でございまして、これを極力推進したい。その時間が、たとえば朝の通学時間だけに行なわれるようなものにつきましては、できるだけ時間を午後あるいは終日に延長して、一日、通学のみでなく、買いものあるいは子供たちが裏道で遊んでいるような状況に対しても、できるだけ安全を確保していくという対策を推進したいということでございまして、規制量といたしましても、このような規制はかなり伸びているところでございますが、さらに規制の拡大並びに内容の向上を期してまいりたいと存じます。
#104
○松本(忠)委員 あとちょっと騒音の問題について伺いたいと思いまして、自治省それから環境庁にも来ていただいておりますので、簡単な答弁でけっこうでございます、要点だけでけっこうでございますから、ちょっと時間をいただいて、私その問題だけ片づけたいと思います。
 いま騒音の問題というのは、当然、公害対策並びに環境保全対策特別委員会においてお尋ねするべき筋かとも思いますけれども、ちょうどいい機会でございますので伺うわけでございますけれども、要するに、排気ガスの対策というのは非常にいままで考えてやってきた。だけれども、なかなか騒音という問題に対してはあまり重きを置いていないといいますか、やらないできたんじゃなかろうか、こう思うわけです。もちろん、騒音という問題についても、タイヤ自身が道路と接触するところから起きてくる音、これも多いし、マフラーの状況によっては、かなりの騒音があるわけであります。こういったものを考えてみたときに、やはり騒音対策というものも排気ガス対策よりも重大な問題じゃないかと思うわけです。私、東京の北区に住んでおりますが、要するに区のまん中を環七が通っているわけです。環七のぜんそくといわれる話がだいぶありまして、最近もその傾向は少しも減っておりません。しかし、夜間の大型車、路線トラック、ダンプカー、こういうものの騒音に悩まされるということは事実でございます。
 そこで、環境庁では、自動車騒音についてその対策を練るために自動車騒音調査委員会を設置したということを聞いておりますが、この自動車騒音調査委員会の研究の成果といいますか、それについて簡単にひとつ環境庁から伺いたいと思います。
#105
○小林説明員 お答え申し上げます。
 先生御指摘の調査委員会と申しますのは、私どもが昨年の十月に設置した委員会のことかと思います。この委員会は、目的といたしまして二つございまして、一つは、自動車が使用過程で、だんだん使っていくうちにどの程度音が悪くなってくるかということをはかるということが一つの目的。それから二つ目には、現在中古車の音の測定と申しますか、測定する方法が新車と同じ方法でございます。これは道路上とか狭い場所で音を測定するのには非常に適しておりません。したがいまして、もっと路上なり狭いところで簡単に測定する方法があるかないか、あるとすれば、その方法と新車のときにやっている測定方法との相関はどうなっているかということをやる目的でやったわけでございます。実際に調査いたしましたのは、十月、十一月の二回にわたりまして、東名高速の足柄サービスエリアに入ってくる車をつかまえた、というと失礼でございまして、御協力をいただきまして調査を行ないまして、二回にわたって七百二十八台の車、これは軽自動車からダンプまでございますが、そうした車について調査を行なったわけでございますけれども、その結果、使用過程に入りましても、それほど音の劣化はないということがまず一つわかったわけでございます。
 それからもう一つ、測定法につきましては、いろいろ車の大きさとかあるいはリヤエンジンかアンダーフロアかというような条件によりまして相当違いがございますので、まだ測定法としては確定しておりませんけれども、ある程度そういうような方法でいけるというようなことが大体つかめたというのがその結果でございます。
#106
○松本(忠)委員 警察庁に伺いますが、東京都内の環七のいわゆる騒音取り締まり、これにつきましていろいろ対策を練って実施に移されているようですけれども、その効果についてひとつ伺いたいわけです。
#107
○久本説明員 お尋ねの点につきましては、警視庁が三月三十一日からいわゆる都内の環七道路において行なっている対策のことだと存じますが、これは実施後まだ三カ月に満ちておりませんので、今後も十分フォローする必要があると存じますが、いままでの結果につきまして警視庁から報告を取り寄せたところによりますと、内回り外回り若干様子は違いますが、平均して六ホンから八ホン程度の騒音の低下を見たというふうに聞いております。
 なお、それを確保するためには、警察官が規定時間に街頭に進出いたしまして、指導、警告、取り締まりをやっている由でございますが、平均して十四、五件の違反の検挙を見ているというふうに聞いております。このような取り締まりと並行いたしまして、現在警察としてはできるだけこの規制の効果を保持するような努力をしてまいりたいということでございます。
#108
○松本(忠)委員 問題は少し変わりますが、いわゆる低公害車というのがさっき言われております。これなども、民間に使ってもらうためにはまず率先して役所側が使わなければならない、こう思います。そうしたためにも、民間に普及していくためには、低公害車を購入するという人に対するある程度の恩典と申しますか、その処置をしてやらなければならぬと思うのです。税制の面で、物品税あるいは自動車取得税、こういったものの軽減の措置はできたと思うのですが、問題は、自動車税の問題ですが、これも軽減するような措置を私は講ずる必要があると思いますが、これに対して自治省の見解はいかがでしょうか。
#109
○山崎説明員 低公害車の普及促進をはかるために、御指摘のように、自動車取得税につきまして本年度から軽減措置を講じておるわけでございます。この考え方は、自動車の低公害化に伴いますところのコストの上昇分を、企業努力と物品税及び自動車取得税、これの軽減措置によってカバーしようというのがこの考え方でございます。したがいまして、自動車税につきましては、一回限り課税されます自動車取得税とはその性格を異にいたしております。それぞれの用途に応じて自動車がその所有者によって使用されております以上、低公害車であるからといって自動車取得税と同じような措置を講じるということは、自動車税の性格や負担の公平の見地から考えまして適当ではないのではないかというふうに考えておるところでございます。
#110
○松本(忠)委員 以上で私終わるわけでございますが、騒音の問題についても、また低公害車の問題についても、いま自治省の見解も伺ったわけですが、やはり少しでも騒音をなくし、そしてまた公害をなくすということが国民の保健のためにも必要なことでございますし、当然この問題については一そう各官庁が協力してやっていただかなければならぬと思います。そういった点で一そうこの協力体制というものの必要性があるのではなかろうか。自分のなわ張りだけに固執しているとなかなかできない、やはりそういうものについて交通安全対策室あたりが音頭とりをして、通産省、建設省、あるいは自動車の税金の問題は自治省と、いろいろ関係のところとほんとうに密接な連絡をとって、何としてもこの問題の解決に当たっていただきたいと思います。そういう点からぜひひとつ一そう前向きの検討をしてもらいたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
#111
○久保委員長 渡辺武三君。
#112
○渡辺(武)委員 私は、この場所で異なる体制の立場で演説をしようとは思いませんから、なるべく私の質問に対して的確に答えていただきたいと思います。そうすれば短時間で質問を終わりたいと思います。
 まず第一に、自動車局長がたいへんお急ぎのようでございますので、局長に御質問をいたしますが、前々回の局長の時代だったと思いますが、この前の自賠法の改正のときにいろいろ問題点として出されました中で、懸案事項として残されておった問題点があったと思います。それらの問題について現在どのような方向で検討されておるのか、お伺いをしたいと思います。
#113
○小林(正)政府委員 四十四年十月に自賠責審議会から出された答申につきまして、そのうち休業補償費の限度額の設定、それから死亡事故の場合に自動復元制を廃止するということ、それから自家保障制度の廃止、重複保険金支払いの防止ということにつきましては、現在すでに措置済みでございます。
 また懸案となっているものにつきまして以下申し上げますと、一つは治療費支払いの適正化の問題があろうかと思います。この問題につきましては、基本的には医療制度の問題とも関連いたすむずかしい問題があるわけでございますが、運営上の問題でできるだけこの適正化をはかるということで、保険会社の指定の診断書の提出を求めるというようなこととか、診療報酬明細書の提出を義務づけるとか、自動車保険料率算定会に医療費調査室を設け医療費の分析調査をいたすとか、その他非常にこまかいことでございますが、この医療費の適正化についてある程度の措置をいたしたわけでございます。根本問題につきましては、なお今後医療行政全般と関連いたす問題でございますので、引き続き検討をいたすことになっております。
 それから二番目に、メリット・デメリット制度の導入の問題がございますが、この点につきましても、その後関係者間で検討をいたしておるわけでございます。特に今後、限度額の引き上げの問題とからみまして、単に保険料の水準アップでなくて、こういう保険料の制度の改善というようなことにつきましても積極的に取り組む必要があるのではないかということに、現在なっておるわけでございまして、この問題につきましても検討を進めておるわけでございます。現在の段階では、前提となる車ごとの事故歴というようなものをどういうふうに把握するかということで、事務的といいますか、技術的に困難な問題もございますが、警察等関係方面の協力も得まして、この問題についてはできるだけ早急に結論を得たいと思っております。
 それから、答申にございました三番目に、免許証保険、ドライバー保険という問題がございますが、これについても、運輸省としてこの専門家の研究会をつくりまして鋭意検討を進めたわけでございますが、この点につきましては、自動車事故による損害賠償責任者に運転者を引き出すということになるわけでございまして、これは、近代法の報償責任論という法律論の考え方があるわけでございますが、これに反するのではないかという問題が基本的にはございます。また、労使間の責任関係のあり方というような非常に複雑な問題にも触れることでございます。その他いろいろ技術的に困難な点等もございまして、このドライバー保険の問題について新しい制度の設定ということは非常に困難な点が多いんじゃないかということで、一そうなお今後慎重に検討を進めるということになっております。
 それから最後に、滞留資金の運用益の問題でございますが、これについても、滞留資金の運用益は保険料の軽減に充てるほか、自動車事故対策に充てるべきであるという答申になっておるわけでございまして、先般の当委員会で御採決を願いました自動車事故対策センターという、新しい一つの運用益の活用方策ということもこのたびお認め願ったわけでございまして、この運用益の問題につきましては、国の自賠責保険の運用益の問題、あるいは並行いたしまして損保各会社の運用益、農協共済の運用益というようなものについて、全体といたしましてこの運用益を交通事故対策に充てるような方向で今後これを強化していきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
#114
○渡辺(武)委員 局長がお帰りになって、あと運輸省の方だれか残られますか。――保険会計の全体は黒字に転じてきているわけですが、赤字の場合は、いまもいろいろ懸案になっておりました事項等をやはり相当早く検討し、結論を出さなければいけないという必要に迫られて、検討が急がれるかと思いますが、黒字に転じてまいりますと、ややもするとそのような問題点がなおざりにされていくおそれがある。したがって、いつ質問をいたしましても、前向きで検討いたしております、一生懸命努力をいたしますという回答しか返ってこないきらいがございましたから、私は、たとえ黒字に転じようとも、基本的な問題についてはやはり相当に早急に検討を進めていただいて、早く結論を出していただくように特に要望しておきたいと思います。
 そこで、この自賠責保険そのものはたいへん複雑でございまして、運用面そのものは運輸省が管理をし、会計面は大蔵省が担当し、医療面はさらに厚生省が担当をする。この三省に分割運営がされておるわけでございます。その中で、いわゆる総理府が受け持つ役割りというものは、この自賠責に関してはどのようなものでございましょうか。
#115
○秋山政府委員 現在のところ、各関係機関と意思の疎通は十分にはかられておりまして、総理府としてこれに対して総合的に調整するという段階ではございませんけれども、しかしながら、総理府といたしましては、さらに被害者の救済という大きな問題を総合的に検討しまして、各省それぞれの資料を集め、あるいは各省の役に立つような資料を提供して、そしてそれによって各省の事務が進むように、協力あるいは推進するというような立場でございます。
#116
○渡辺(武)委員 私はたびたび長官にも要望しておることでございますが、せっかくできております交通安全対策室というものが、各省にまたがる交通行政の会議場を提供しておるだけ、これでは私はあまり意味をなさないと思いますので、やはりどうしても調整をするという機能をより強固にすべきではないか。もうここ数年来、この発足以来、どうも総理府の交通安全対策室というのは、調整をし、やっておるやっておると言われるけれども、いろいろ調べていくと、どうも会議場を提供しておられるだけではなかろうか。各省庁を集めて話し合いをした、こういう実績しかないようでございまして、まことに遺憾に思っておるわけでございます。そういう意味では、私はもっともっと調整機能を発揮されるように、これもひとつ強く要望しておきたいと思います。
 それから、大蔵省のほうにお伺いいたしますが、保険会計がことしあたりから大体黒字に転ずるであろう、従来の累積赤字を解消をして今年度から黒字に転ずるであろう、こういうことが言われておるわけですが、本年度末に予想される黒字、さらにこの赤字が解消したあとにおける単年度における黒字は一体どのくらい出るものでございましょうか。
#117
○安井説明員 自賠責保険の収支の問題でございますが、先生も御承知のように、現在の自賠責保険の収支は、その契約年度と申しますか、その一年間にとりました、かけました保険につきまして、将来五年間にわたりましての収支見込みを推計するわけでございます。つまりその年度の四月一日から翌年三月三十一日までの間にかけられました自賠責保険につきまして、その後五年間、たとえば後遺症その他の問題もあるわけでございますので、推計をするわけでございます。そういたしますと、たとえば四十六年度の自賠責保険の収支見込がまずまずわかるというようなところまでまいりますには、実は四十七年度の事故率が固まってこなければいかぬわけでございます。つまり四十六年度の末に入りました保険というのは四十七年度中、この保険がカバーしているわけでございます。そういたしますと、私どもとして現在のこの数字も決して確定したものではございませんけれども、見込みといたしましては、四十六年度末でその収支残が大体千四百億くらい、これも昨年見積もったものでございますから、四十七年度の事故率いかんによってはまたこれも変わるわけでございます。したがいまして、四十七年度、四十八年度は運輸省から再保険特別会計の積算の根拠として推計の数字を出されて、四十八年度中にまず赤字がなくなるだろうとおっしゃっておられますのは、あくまでもそのときの状態を前提にいたしまして、四十七年度を見越し四十八年度を見越し、さらに四十九年度まで見越すようなことでございますので、特別会計の収支見込みとしてはそれ以外に推計の方法はないわけでございますけれども、私どもが保険料率をあるいは保険金額をどうするかということについて問題にいたしますと、その収支見込みがよほど確定してまいりませんと、その引き上げあるいは限度額の引き上げというのは結論を出し切れないというのが現状でございます。したがいまして、先生のお尋ねの本年度末あるいは来年度どうなるかといいますのは、現在極力資料を集めて、どのような事故率が来年度見込まれるのかということについての検討をしているというのが現状でございます。
#118
○渡辺(武)委員 確かに複雑な事情があって、簡単にその計算値が出てこない、これはこの前の改定のときにも論議をしたわけです。しかし、単年度、単年度の収支は出ておるはずだ、こういうふうに追及をしていきますと、単年度は黒字になっておるがというのがこの前の回答であったわけです。ところが、そのような支払いの限度が伸びていきますと、全体的に見るとやはり相当な赤字になるのだ、こういう説明で、どうもわかったようなわからないような状況なんです。単年度、単年度で収支をしていって黒字になれば、それで赤字になるはずないじゃないか、こういうふうに考えられますわね。ところが、実際には相当大幅な赤字だ、こういうふうに説明がされるわけで、そのまま私は疑問点としていまだに実は残っておるわけなのです。したがって、お伺いをいたしたわけですが、私ども見込み額としては、今年度大体黒字百億程度出るのではなかろうか、こういうふうに言われておるわけでございまして、したがって、給付内容が先ほど来から問題になっておりますが、この死亡事故等に対する補償額を相当引き上げるべきである。もちろん私どもも、その引き上げということについては大いにけっこうであるし、また引き上げられなければならない、こういう立場で見ておるわけですが、しかし問題は、この引き上げにあたって相当慎重にやはり考慮をしなければいけない問題がある。つまりいま傷害の場合、限度額五十万円として支給をされますが、これはやはり乱診乱療につながっておるのでございまして、どうしても、救急車が飛んできた、ああ五十万円のお客さまがころがり込んだというような、こういう実は問題点があるわけなのです。したがって、非常に過剰診療が行なわれています。この前の改定のときにも問題になりました。注射代をいろいろ調べてみたら、十秒に一本ずつの注射を在院期間中に打っていなければこんな注射を打てるはずがないというようなことまで、実はいろいろと問題にされてまいったわけでありまして、本来、健康保険でいきますと、その健康保険を医者が健康保険組合に請求をする場合には、その診療内容についてチェックをする機構が実はあるわけでございます。ところが、残念ながら任意診療になって、自由診療になってまいりますと、このチェック機構がない。したがって、医者が請求をしたそのものがそのまま支払われていってしまう。実はこういう弊害が生じておると思うのです。したがって、医者のほうとすれば、そのしちめんどくさいチェック機構のない任意診療にして、それで相当もうかるように請求さえすれば自賠責のほうから入ってくることが、実は弊害があるわけでございまして、その辺でやはり相当慎重に考えなければいけない問題が残っておるんではないか。もちろんほんとうに必要な補償額というものは上げなければいけませんが、そのために、ほんとうはもっと少ない補償額で治療ができるにもかかわらず、たまたま限度額があるために過剰診療が行なわれてしまう、この問題が依然として残っておると私は思います。したがって、その問題を防ぐには、どうしてもその診療内容についてのチェック機構、つまり健康保険と同じようなチェックを行なわなければならない、こういうふうに考えるわけですが、この辺についてはおわかりの方おられますか、おられませんか。――おられませんね。それではよろしいです。
 そういうことで、そういう問題が厳然として残っておると思いますから、補償額の引き上げ、これはきわめて大切なことでございますから大いに引き上げていかなければいけません。いけませんが、特に傷害の限度額引き上げにあたっては、従来から問題とされておった乱診乱療の問題が依然として私は残っておると思いますから、たとえば八十万円にこの傷害の限度額を引き上げた、そうしたらまた八十万円の限度一ぱいまで過剰診療が行なわれてしまうということになりますと、これはたいへんなことになる。一方ではほんとうに診療を受けなければならない方が受けられないという結果にも通じてくると私は思うのです。そういう意味では、この医療体制というもの、特にこの自賠責保険における医療体制というものを、やはり限度を改定される場合に、相当慎重に考慮していただかなければならない重大な問題が含まれておるのではないか、私はこういうふうに考えますから、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。
 そこで、警察庁にお伺いをいたしますが、この保険に関係をして、つまり自賠責の損害賠償を受けるときには、警察のいわゆる事故調書というものが重大な影響を持っておるわけでございます。結局は警察の調書によっていろいろ保険会社が査定をし、それから料率算定会が最終的な決定をしていく、こういうことになっておりまして、ほんとうに正しく警察の調査ができておるかどうか、これによって非常に重大な影響をこの賠償支払いのときに受けてまいるわけでございます。
 そこで、従来警察がいろいろやっておられます事故調査について、その後異議申し立て等が相当出ておるかと思いますが、ほんとうに事故調査をやり直さなければならないというような件数はどのくらいあったでございましょうか。
#119
○加野説明員 保険の支払い等に関しまして警察の書類がどの程度の役割りを果たすかというようなことからお尋ねがあったわけでございますが、実は警察は、交通事故証明書という簡単な一枚の用紙を差し上げるだけでございまして、しかもその内容は、当事者の住所、氏名であるとか、あるいは事故発生の年月日、時間等簡単なものでございまして、過失の度合いがどちらがどうだというような詳しい内容は差し上げておりません。そういう簡単な証明に基づきまして、保険会社のほうでさらに詳しい事実を御調査になるということに相なっております。
 なお、この調査が必ずしも十分でないので再調査をやった件数はどのくらいかというお尋ねでございますけれども、これにつきましては、一般的に申し上げますならば、この事故現場の調査というのは、一般的には刑法の業務上過失致死傷事件の捜査として行なうわけでございまして、私ども綿密な捜査を遂げてこれを検察庁に送る、それで裁判になるということでございまして、再調査というのは、おそらくはその当事者の間で主張に食い違いがございまして、裁判所あたりで検証されるということになるんじゃないかと思いますが、その数についてはただいまつまびらかにいたしておりません。
#120
○渡辺(武)委員 たてまえはそうなっておりましても、現実にはこの警察の調書というのは相当重大な影響を持っておるわけですよ。これは片岡交通局長がお見えになればすぐおわかりですが、私もほんとうに重大な問題に実は関与したことがございます。それで、保険会社の調査員あるいは料率算定会の人々に会って聞きますと、いや、警察の調書ではこうなっておりますから、私どもはほかの方々の証言よりも何よりも警察の言われることを一番信用するんですよ、実際にはこういう態度なんです。あなた方は非常に安易に考えられて、ただ形式上その書類を整えてやればいいのだ、こういう態度かもしれませんが、しかし、その書類が実は一番重要な判定要素になっておるということなんです。これは料率算定会の方にでも、あるいは保険会社の方にでも聞いてごらんなさい。私も聞きました。ほかの人はそんなことを言ってないじゃないか、当時見ておった目撃者もこういうふうに言ってないじゃないか、こういうふうに追及していきますと、いやこれは警察の調書がこういうふうになっておりますから、私どもは警察の言われることを一番信頼しております、こういう返事が返ってきたのです。しからば警察の調べ方がおかしいのだということで、私は片岡局長にお願いいたしまして再調査をしてもらった。そうしたら、確かに警察の調べ方がおかしかった、調書のつくり方がおかしかったということでやり直してもらった事実があるのです。ところが、そういうふうに警察にまで文句を言ってやり直してもらうような心臓の強い人ばかりじゃないのですから、警察がそう言つておるならしようがないなということで陰で泣き寝入りをしている人が相当多いのではないかというふうに私は考えておるのであります。したがって、警察がまあ簡単なものだからというふうにお考えになるそのことが、実は被害者にとっては非常に重大な影響を及ぼしておるということをよく御理解をいただかれて、そうして事故調書がほんとうに正確に間違いのないものができていないと、そのために泣く人が相当出てきておるのではないか、表面にはあらわれてないけれども現実にあるのではないか。たまたま私が非常に重要な間違いのものに関係をいたしましたからそのときに気づいたわけでございまして、いろいろこの自賠責の、最終的には料率算定会がきめるわけですが、その場合に、ここにも免責条項がありますように、これは免責三条件にかなって、警察がそう認めておるんだから、自賠責では賠償する責任はありません。しかも六人も死んでおるような重要な死亡事故、ほんとうにその事故がそうであったかどうかといろいろ調べていきますと、どうも警察の調書がおかしいということになった。再調査をした結果はやはり警察の調書はおかしかった。こんな重大な問題でもこういうことがあるのですから、もっと軽傷な問題になってまいりまして、本人のたとえば過失責任が何ぼくらいだろうとか、あるいは加害者のほう、被害者のほうと比べてどちらが重たい責任を持ったであろうかというようなことがもしも安易にやられたとするならば、これは非常に重大な影響をこのあとの賠償額に及ぼしておるということ、こういうこと自身をもっと警察当局がよく御認識をいただいて、相当慎重に事故調書というものをつくり上げていただくような指導をしていただかないと、実はたいへんにそのために泣く国民が非常に多いということでございます。私が取り上げました例を若干申し上げますと、ダンプカーとマイクロバスがぶつかった。国道八号線の幅は六メートルのところだった。調書を見ますと、ダンプカーは完全に右側の通行帯に入ってしまっておる。そういうところでそのマイクロバスとぶつかったのだ、つまりマイクロバスがセンターラインをもう完全にオーバーしてしまっておるのだという調書ができておる。ところが、道路の形状からいきましても車の幅からいきましても、そういうことはあり得ないのではないか。いろいろ調査いたしていきますと、最終的にわかってきたのは、センターラインから三十センチをオーバーした、こういう事実が判明してきたわけですが、実際には、もう完全にオーバーしてしまってマイクロバスが逆行しておる、こういう調書になっておる。御丁寧に図面までつけられておったわけでございまして、これはいかに車の大きさからいったってそんなふうに道路に入るわけがない。しかも、その左側にまだ相当な余裕があると調書に書いてあるんだから、幅を見ると全幅で六メートルですから半分にすれば三メートルしかない、こういうわけですから、その中に大型ダンプカーが入りますればそんなに余裕があるわけがありません。にもかかわらず簡単にそういう調書がつくられておったという事実を私は知ったのでありまして、そのために保険会社から一銭の賠償金もとれない。賠償金の支払いが免責条項に当てはまるということでそういう悲惨な例が実はありました。いろいろ調べましたら、実は事実と相反した調書がつくられておった。こういうことでございますから、これは重大な問題です。死亡者にとってみますれば、たまたま免責条項に該当するからそれで保険会社としては免責だ、賠償の必要なし。それで料率算定会に上がっていって、料率算定会もそのとおりだ。そして申請者に対しては却下の通知が行った。そこまでの書類を全部私も見ました。その事実関係をずうっと調べていきますと、たいへん問題があった。そこであえてきょう警察庁の方に来ていただいて私はお尋ねをしておるわけですが、自賠責が、せっかくこの制度ができておりましても、この運用次第。警察の調書というものが相当重要視をされておる。しかも警察そのものが、いまおっしゃっておるように、私どもの調書というものは簡単なものでございまして、そうたいした影響はありませんからというような認識でおやりになっておるとしたら、これは実際はたいへんなことなんですよ。私が直接料率算定会の方にお会いし、あるいは保険会社の調査員の方にお会いして、どうなんですか、ほんとうにそうなんですか、こちらの言い方とは違うじゃありませんか、いろいろ追及していきますと、いや私どもは警察の言っていることが一番正しいと思いますから、警察の言っておられることを一番最大に信用しておるのです。こういうふうに、判定の一番重要な基礎に置かれているわけです。だから、これは簡単なことじゃないのですよ。保険金額を決定する一番重要な基礎は何か。警察の調書だ。ところが警察のほうは、これは簡単な形式的なものでございますからというふうな認識では、陰で泣く人が相当多いのではなかろうか、私はこういうふうに考えますから、今後ひとつ認識を改めていただいて、ほんとうにそのために、あるいは事故調書等ももっと改善しなければならないことがあろうかとも思います。そういう意味では、もっともっと警察はそういう面で改善、改革を加えていただきたい、かように考えるわけでございます。その辺の今後に処するお考え方をあらためてお聞きしておきたいと思います。
#121
○加野説明員 私どもが申請者に対して差し上げますところの交通事故証明書の内容は簡単でございますが、捜査そのものは非常に慎重に、綿密に、実態の真実の解明に間違いがないように今後とも努力してまいりたい、かように思います。
#122
○渡辺(武)委員 それから再度大蔵省にお尋ねをいたします。
 先ほども問題になっておったと思いますが、保険会社が国に再保険をいたしておりますけれども、その残り四割は保険会社が滞留さしておる。したがってその保険料、つまり保険料資金の運用益でもって従来はその保険会社の事務費等がまかなわれておった。つまり保険会社の会計帳簿を見ますと、この運用益というのは計上されていない。そしてなぜかといって追及していきますと、実は運用益でもって保険会社の事務費等がまかなわれておったんだ、こういう答弁が実は前回の法改正のときにあったわけでございますが、そのときにやはりわれわれとしては、それは不明朗ではなかろうか、運用益は運用益ではっきり計上をし、事務費は事務費で支出のほうにはっきり計上をすべきだ、こういうふうに論議をされたことがあるわけでございますが、その後この問題はどのようになっておるのでございましょうか。
#123
○安井説明員 先生御指摘の四十四年度の改正のときまでは、実は付加保険料は赤字でございまして、その付加保険料の赤字に見合うものとしてその当時ございました運用益で相殺してしまおう、つまり保険料をそこで引き上げないで、その運用益で充てましょうということにしたわけでございます。その後は運用益は、先生いま御指摘のように、当然自賠責収支の中で、純保険料部分、それから付加保険料部分、運用益部分、全部分けて計算させるようにいたしております。
#124
○渡辺(武)委員 そうなりますと、今度、いま賠償額の引き上げを検討しておる、こういうことでございますが、その辺の契約手数料なりあるいは保険代理店なり保険会社の事務費等々の引き上げ、こういうことも並行的にお考えになっておるのでございましょうか。
#125
○安井説明員 ただいま申し上げました自賠責の会計の中で、付加保険料がいまの事務費に相当するわけでございます。付加保険料の中が代理店の手数料と社費とに分かれまして、その社費がまた二つに分かれまして、損害査定費であるとかあるいはその他の一般の営業経費というものになるわけでございます。この付加保険料が、実は会社側の計算によりますと、一応五十億程度の赤字に単年度でなっておるようでございまして、したがいまして、これは先ほど太田先生からも御指摘があったわけでございますが、やはり赤字だけはカバーをしなければなるまいというふうに考えておりまして、どのような形で過去の赤字を処理していくか、将来どの程度の付加保険料の値上げを考えていくかという問題は、今後検討してまいりたい、かように考えております。
#126
○渡辺(武)委員 そうしますと、いま運用益ははっきり計上され、事務費は付加保険料によって支払われておる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
#127
○安井説明員 そのとおりでございます。
#128
○渡辺(武)委員 それから、保険料率がこの前上がったわけでございまして、その保険料率を上げたときに、車種別の事故率をいろいろ調査されたと思います。そしていろいろ保険料率引き上げの基礎にされてきたわけですが、当時、保険料率引き上げのパーセンテージとマイカーの事故率等々がいろいろ問題になりまして、実は実際にはマイカーの事故率以上に保険料率というのは引き上げられたと思います。が、いずれにしても、基本の保険料率が引き上げられる基礎、この辺の数字がどうもつまびらかでなかったわけでございますが、いまそれらは明確に、つまびらかにできるでございましょうか。
#129
○安井説明員 四十四年度の改正のときの資料ちょっと手元にございませんが、昨年の秋に営業用の自動車につきまして保険料率の改定をいたしたわけでございます。地区別区分の改定をいたしたわけでございますが、これはこういう根拠によってこういうふうにいたしましたということを全部計算をいたしまして、この事故率の推定はこうである、それから地区別にはこう見ましたということを全部つくりまして、自賠責審議会にかけておりますので、おそらく四十四年度のときもそのような方式で資料を全部提出して御審議いただいたんだろう、かように考えております。
#130
○渡辺(武)委員 一律に引き上げられるような話は、車種別に見ていきますとえてして事故率以上に引き上げられてしまうという問題も実は出てくるわけでございます。引き上げられたあと見ますと、こうこうこういう理由によってこうなったとわかるわけですけれども、しかし、そうなってくる基礎、原因といいますか、この辺が実はつまびらかでなかったわけでございまして、もしもつまびらかにできるならば、その辺も一度つまびらかにしていただきたい、かように考えるわけでございます。
 いずれにいたしましても、いまの自賠責そのものが本来的な目的を達成するためにはほど遠い状態になっておる。これは各委員も指摘をしておったとおりであると思います。したがって、非常に多くの問題点を含んでおるように思います。ところが、実際には、私が指摘をいたしましたように、この保険そのものは、運用は運輸省で、会計のほうは大蔵省で、あるいは医療のほうは厚生省で、こういう三省の管轄になっておりますから、そこで初めて総理府が相当重要な調整機能を果たさなければいけない問題が非常に残存をしておるということを指摘をしておきたいのです。ただ単なる会議場の提供ではなくて、こういう重要な問題がたくさん残っているのです。ところが各省庁間でいろいろ立場がありまして、まだまだこれからやっていかなければならない問題が非常に多く残されておる。そういうときにこそ総理府が調整機能を強めていただいて、一日も早く適正な運営がなされ、適正な方向で補償がなされ、国民をして安んじて生活ができるという方向に向かうために果たさなければならない総理府の責任、これはまことに重大である、こう思いますので、再度総理府の御決意をお聞きをして、私の質問を終わりたいと思います。
#131
○秋山政府委員 先生の貴重な御意見を体しまして、今後努力してまいりたいと思います。
#132
○渡辺(武)委員 終わります。
#133
○久保委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後一時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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