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1949/04/17 第7回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第007回国会 法務委員会 第30号
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1949/04/17 第7回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第007回国会 法務委員会 第30号

#1
第007回国会 法務委員会 第30号
昭和二十五年四月十七日(月曜日)
    午後二時三十四分開議
 出席委員
   委員長代理理事 角田 幸吉君
   理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君
   理事 山口 好一君 理事 猪俣 浩三君
      古島 義英君    松木  弘君
      眞鍋  勝君    武藤 嘉一君
      田万 廣文君    大西 正男君
      三木 武夫君    世耕 弘一君
 出席政府委員
        検     事
        (法制意見第四
        局長)     野木 新一君
 委員外の出席者
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局民事局
        長)      關根 小郷君
        專  門  員 村  教三君
        專  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
四月十七日
 委員小玉治行君辞任につき、その補欠として淵
 上房太郎君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 民事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第六九号)
    ―――――――――――――
#2
○角田委員長代理 これより会議を開きます。
 委員長が所用のため、理事の私が委員長の職務を行います。
 本日は、まず民事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑の通告があります。これを許します。猪俣浩三君。
#3
○猪俣委員 先般委員会におきまして、供述人の御意見を承つたのでありますが、そのときに私が質問いたしました点についての御答弁が、実はあまりぴつたり来なかつたのであります。しかし答弁者である眞野裁判官は、当日御病気のようで、たいへんお苦しそうな様子でありましたから、私も詳しくお聞きすることができなかつたのでありますが、本日裁判所側及び法務府側から御出席がありまするから、重ねてお尋ねをしたいと思うのであります。
 第一は、本民事訴訟法の改正案は、その提案理由といたしまして、最高裁判所の判事の負担を軽からしめるということが中心課題になつているように見受けられるのであります。そこで、こういう観点からこの改正案が出されたものなりといたしまするならば、われわれはここにいろいろの疑問が出て来る。そこで最高裁判所あるいは法務府関係におかれまして、本案を提出される以前において、裁判所の負担も軽からしめ、しかも国民の上告権というものの範囲をせばめないような、法律的あるいは技術的な研究がなされたかどうか、この点につきまして、ここに至るまで十二分なる研究を積んだのであるが、これ以上やむを得ないからというお考えの提案でありまするならば、その御苦心のほどをひとつここで披瀝していただきたいと存ずるのであります。
#4
○野木政府委員 一応提案者側であります法務府として、ただいまの御質問に対してお答えいたします。なお足りない点は最高裁判所側からお答え願いたいと思います。
 御承知のように新憲法が施行せられまして、最高裁判所が憲法上の非常に重要な上級機関として規定され、それに対応いたしまして、裁判所法が新しく定められたわけであります。その際、最高裁判所の使命なり構成に関しまして、いろいろ考えられたわけでありますが、最高裁判所が違憲立法審査権という重大な使命、その他ルール制定権、裁判官の名簿作成権という、これまでの大審院の持つておらなかつたような権利を持つており、それから違憲立法審査権などを行使する上におきましては、裁判官の人数というようなものも、旧大審院のように三十数名ないし四十何名の大勢では、どうも適当でない、やはりせいぜい十五名程度がよいのではないかというようなことで、今の裁判所法はその構成がきめられたわけであります。そうしてみますと、裁判所で取扱う事件を旧憲法当時のようにしておきますと、一定の人数で前と同じような事件を取扱うということは、かえつて事件の審理が迅速を欠くようになりまして、民事、刑事を問わず、正当な権利者の保護というものが欠けるようになりはせぬか。それで、ある程度国民の正当な権利を守るという究極の意味におきましても、最高裁判所の事務を調整する必要があるということにおきまして――刑事訴訟法の方はその後アメリカの制度などをならいまして、ある程度上告の範囲を調整したわけでありましたが、民事訴訟法は依然として旧民事訴訟法のままにその点はなつておつたのであります。ところが当時は、民事の事件が戰争等の影響のため非常に少かつたから、現実の問題にはなりませんでしたが、だんだん世の中が治まつて来るに従いまして、民事の事件がどんどんふえて来ておる。この分では、ことしの末あたりは戰前に近くなるだろう。そういたしますと、最高裁判所の裁判というものも渋滞してしまつて、正当な権利者の迅速な保護という点にも欠けるようになりはせぬかということが非常に憂えられるような見通しになつて来たわけでございます。そこで直接裁判事務を担当しておられます最高裁判所事務当局といたしましても、その点を非常に苦心いたしまして、会同等を催された際に、その点の問題をどう考えるかという点につきまして、下級の裁判官、裁判所等の意見を聞いたようでありますが、その際非常にたくさんのいろいろな案が出たようであります。そのうちの一つの案を法務府の方に連絡いたしまして、こういう方向でひとつ政府の立場としても考えてみてくれというので、民事局の方から連絡があつたわけであります。そのときにはまだ案がすつかり固まつたわけではありませんでしたが、一応の当時の案としましては、最高裁判所への上告の範囲は、大体新刑事訴訟法ないし今度の政府提出の案のような方向で、ただこれから漏れる普通事件と申しましようか、重要でないような法令の解釈を含む事件については、大体東京高等裁判所というのが有力な意見でありましたが、そこに特別上告部というようなものを設けて、そこで扱わしたらどうかというような案を有力な意見としてつけて、そして法務府の方でも最高裁判所が民事事件についてどうあるべきかという点を研究してくれということでありましたので、法務府側としましても、当時設けられました法制審議会にこの点を議題に供したわけであります。法制審議会では民訴部会を設けまして、そこで数回にわたつて研究していただいたわけであります。その際いろいろ意見が出ましたが、この特別上告案に対しても、部会においては学者側から相当有力な反対意見もありましたが、結局部会においても多少の差で、特別上告案を考えてもいいだろうということになつたわけでありましたが、その後関係方面と連絡していろいろ研究しているうちに、どうも特別上告案というものは、次の三つの点において、この際すぐとる案としては好ましくないということになつたわけであります。その三つの点といいますのは、一つは、特別上告案をとりますと、特別上告に行つた方の事件は、さらにそれが憲法違反といつたような場合には、最高裁判所にさらに上告をする道を開かなければなりません。そうしないと憲法違反のきらいがありますので、そういうふうな方向をとりますと、どうしてもその点が二審制度になるきらいがある。こういうことは世界のどこにもあまり例がないことであるから、やはり日本の民事訴訟制度は一つの世界的方向――世界的方向と申しましても、現在では英米法にならつたような方向に大体歩んで行くということから見ますと、大勢としてはおもしろくないという点が一つ。それからいま一つは、特別上告のようなものを設けますと、最高裁判所が二つできるようなことになる。本来の最高裁判所のほかに、小さな最高裁判所ができるようになつてしまう。そうすると、最高裁判所の権限が二つにわかれるようなことになつてしまう。そうなりますと、ほんとうの最高裁判所の方の権威というものが少し脅かされることになりはせぬかということが第二の疑問の点であります。それから第三の疑問の点として考えられましたのは、新刑事訴訟法の少くとも上告審は、アメリカの最高裁判所の制度などを参照いたしましてできたものであるわけでありますが、あれとあまりにかけ離れてしまうことになつて、どうも将来の大方向としてはおもしろくない、なお慎重に研究してみなければいかぬというような結論が最有力になりまして、そこで政府といたしましては、審議会の答申もありましたが、その後の研究の結果のそういう有力な意見を参考といたしまして、技術的に今度の案をつくつたわけであります。
 なおその点に関連いたしまして、二、三別の考え方があつたわけでありますが、それをちよつと御紹介いたしておきますと、最高裁判所をして司法行政事務を取扱わせないようにしたらどうであろうか。そうしたら最高裁判所が裁判事務にいま少し精力を出すことができる。そうすると民事の上訴権という点は考えなくてもいいのじやないかというような意見もあつたわけでありますが、この点につきましては、最高裁判所側において、最高裁判所の裁判官がはたしてどの程度司法行政事務にタツチするのかということを、詳細に取調べて報告をしてくださつたわけでありますが、それによりますと、最高裁判所が発足してから現在まで、最高裁判所において司法行政事務に裁判官が直接関与するのは、原則として一週一日の裁判官会議においてのみであつて、その会議の所要時間は平均一週間に三時間にすぎない。時間的に見ても、そう外部で思つているほど――外部の一部の者が、最高裁判所は司法行政事務の方にむしろ沒頭しておるというようなことを言う者もあるやに聞きますが、そういうようなことは全然ないというようなことが統計的にもわかつたのであります。のみならず、最高裁判所が司法行政事務を取扱うかどうかという点につきましては、憲法七十七條の裁判所の自治の根本精神にも触れることにもなりますので、裁判所法施行後三年くらいの短日月で結論を出すのはなお少し早過ぎはせんか、もう少しく運用の実情を見たらどうかというようなことになつたわけであります。
 次に、最高裁判所の調査官をふやしたらどうかという議論もあつたわけでありますが、この点につきましては、現に最高裁判所の調査官は定員が二十名でありまして、調査官の増員は、いま少し適当な人があればふやしてもいいのじやないかと思いますが、裁判官自体の事件負担量を調整する方法を講じない限り、調査官の人数を増しても、調査官の調査した事件が裁判官の手元に積み上げられる結果となるにすぎないのであつて、そういたしますと、裁判自体が調査官によつて左右せられるというような、いわゆる調査官裁判の非難を招く結果にもなる心配がある。これだけでは根本的な解決はむずかしいではないかというような議論になつたわけであります。結局この際、やはりある程度上告事件を調整する必要があるだろうということになつたわけでありますが、その調整の仕方はどんな方法があるかということを、各国の立法例などを参照して、いろいろ考えてみたわけであります。
 その方法の二、三をここで紹介してみますと、まず金額による制限をするものがあるわけであります。この方法は上告申立て金額、これはドイツでありますが、また訴訟物の価額、これはスイスでありますが、それらの価額が一定額以下のものについては上告を許さないとするわけでありますが、これは少し階級的な色彩が出るばかりでなく、価額というものは偶然な事柄できまることでありますので、あまりおもしろくないということになります。また事件の種類によつて制限するものもありますが、これは事件の種類を選択するについて、理論上困難を伴うばかりでなく、戦時中事件の種類を限つて控訴審を省略したこともあつたわけでありますが、運用上いろいろな疑義を生じ、結局控訴審省略を全事件に及ぼすということになつたことから考えましても、いろいろ運用上の困難が来るだろう。
 第三に、第一審、第二審の判決が同一の場合に上告をせないことにしたらどうか。この案はオーストリアにおいて実施しておるようでありますが、この案も結局高等裁判所ごとに特別の判例ができて来るおそれがありまして、結局法律解釈の統一を害することになろだろう。
 次に、上告許可制を採用してはどうかという案もあつたわけであります。この案はノールウエー等において行われておるそうでありまして、理論上は反対すべき点は少いようでありますが、許可すべきかどうかということを決定する手続の段階が増加することによつて、当事者及び裁判所、いずれの側から見ても訴訟経済に反する点はなお研究を要することであろう。なおこの許可制を採用することは、新刑事訴訟法の上告制度及び下位裁判所民事事件の上告制度等から考えましても、今後の研究をまつ必要がありますので、この点はこの際とらなかつたわけであります。
 次に、最高裁判所への上告の範囲を憲法違反に限つたらどうかというような意見もあつたわけでありますが、この案は最高裁判所を一般の審級制度から切り離した、いわゆる憲法裁判所とするものでありまして、下級裁判所との連繋が稀薄となるばかりでなく、上訴範囲が狭きに失して、かつ法理解釈統一の機能を最高裁判所から奪うことになるので、この点はそういう意見もありましたが、ほとんど少数でありました。
 次に、最高裁判所への上訴の範囲を判決理由中における法律適用の違反に制限したらどうか、こういう案も有力な人によつてとなえられましたが、この案につきましては、手続上の過誤が上訴の対象となり得ないという非難が生ずるわけであります。
 それで、最高裁判所への上訴の範囲を憲法違反、判例抵触、法令の解釈に関する重要な事項に限つて一、二については義務管轄、三についてはいわゆる裁量管轄にしたらどうかという案もあるわけであります。この案は大体新刑事訴訟法においてとつてある案でありますが、今度この案が非常に有力に述べられたわけであります。この案によりますと、上告理由がはたして上告範囲に属するかどうかという点を上告人において判断しなければならない建前になつておるわけでありますが、民事訴訟については、上告理由自体には制限を加えず、裁判所側で上告の範囲に属するかどうかを判断する建前をとつた方が、むしろ国民の負担と責任は軽くなつて、民事としてはさしあたつていいのじやないか。それから上告範囲に属しない民事は受理しないことに、刑訴の建前で行けばなるわけでありますが、上告状に貼用すべき印紙のことなどを考えますと、この案を採用するくらいなら、むしろ上告許可制に進んだ方がいいのではないか。また簡易裁判所民事事件について上告制限を行わないこととあわせ考えると、地方裁判所の民事事件についても上告制限はできる限り最小限度にとどめるべきであろういうことなど、かれこれ比較して考えると、この新刑訴式の案よりも、むしろ今度政府側が提案した案の方が、民事事件についてはかえつて適切ではないかというように考えられたわけであります。
 究極においては、新刑訴の上告の線と民事訴訟法の一部を改正する法律案の上告の線とは、ねらいは大体同じでありますが、技術的立場では一応異なつておるわけであります。どちらがいいかということは、いま少し両者を運用してみた結果を参照して考えたらよいだろうと思うわけでございます。
 なお、いま一点つけ加えますと、刑訴式でありますと、受理されなければ、事件は上告審に係属しないわけでありますが、今度の民訴の改正案の方式によりますと、一応事件は上告審に係属しますので、かりに当事者が主張した理由が、この民訴四百二條の改正案に該当しないような場合でも、最高裁判所の職権調査の働く余地ができて来ますから、当事者の保護という点から言うと、民訴の案の方が職権調査が働き得る余地があるだけ救済が厚いということになるだろうと思います。
 以上で一応立案並びに提案に至るまでの経過なり、いろいろの考え方御紹介したわけでありますが、ついでに四百二條の改正趣旨の内容について、いま少しく明確にいたしたいと思います。
 この民訴の四百二條は、元来上告裁判所は、不服の申立ての限度を越えて調査し、判断を示すことはできないということと、それから不服申立ての限度内における上告理由に基いて調査し、判断を示すということ、二つの点を包含しておるものと解せられるわけでありまして、今度の改正では但書を附加いたしまして、右の二の点、すなわち不服申立ての限度内における上告理由に基いて調査し、判断を示すという点について、最高裁判所における上告事件については、この上告理由中、憲法違背、判例抵触及び重要な法令解釈に関するものを除いては、調査し、判断を示すことを必要としないということにして、最高裁判所の事務の調整をはかつたわけであります。この前の参考人の陳述の際にも、いろいろ問題になりました「法令ノ解釈二関スル重要ナル主張」とはどういう意味かと申しますれば、これはやはり立案の趣旨といたしましては、法令の解釈の統一上重要なものという意味であつて、上告理由の主張がこれに当るかどうかという点は、結局最高裁判所の判断に帰着することになるものと思います。たとえばまだ新しい法律で、最高裁判所の解釈、判例がないというような場合なども、法令解釈の統一の重要なものということで「法令ノ解釈二関スル重要ナル主張」ということに当ることはもちろんだと思います。なお上告して不利な判例などのある場合でも、上告理由が、慶応の宮崎教授が言われたように、非常にりつぱなことを述べておつて、十分それを判断してやらなければならない、すなわちそういう有力な反対解釈もあり得るというような場合には、やはり法令の解釈を統一する必要がありますので、この重要なる事項の主張に入るものという解釈になると思うのであります。
 それからなおついでに触れておきたい点といたしましては、現在のいわゆる絶対的上告理由、三百九十五條との関係はどうであろうかという点でありますが、三百九十五條は「判決ハ左ノ場合二於テハ常二法令二違背シタルモノトス」ということでありまして、三百九十五條一号ないし六号に当る場合には、当然法令違背が一応あるわけであります。ただこのうちこれが全部重要なる事項の主張になるかどうかという点になりますと、このうちでも法令の解釈の統一上、重要なもののみがいわゆる今度の改正案の「法令ノ解釈ニ関スル重要ナル主張ヲ含ム」という点になるわけでありますが、しかしここに掲げてある大部分は、いわゆる職権調査事項に属するものでありますので、すなわち三百九十五條第一号ないし五号は職権調査事項であります。しかし六号も、たとえば責問権の放棄のできるような法令違背が問題になるという場合以外は、大体職権調査事項に属しますので、三百九十五條に該当する場合の大部分は、職権調査事項として最高裁判所によつて取上げられて、救済を受け得ることになるものと考えられるわけであります。こう考えてみますと、今度の改正案ができますと、その運用がよろしきを得ますれば、当事者や、あるいは下級裁判官等が一日も早く適正な最高裁判所の判決を得たいというような場合には、非常に迅速にその判決を得られるし、他面今見られるように、つまらない理由をつけて最高裁判所へ上告してくるというような、つまらない事件は、もう簡単に処理できることになります。要するに最高裁判所は、真に最高裁判所の判断に値する事件と四つに組んで、十分にそれに力を注いで、最高裁判所たるの機能を十分に発揮できるようになる、そういうふうに考えるわけであります。
#5
○猪俣委員 今の改正の経過の御説明に関連いたしまして、ちよつとお尋ねいたしますが、この最高裁判所の司法行政の部分、そのうちのまた大きな部分を占めるのは人事行政だと思いますが、この人事行政は、実際問題としてどういうふうに取扱われておりますか、最高裁判所の方からちよつとお聞きしたいと思います。
#6
○角田委員長代理 お諮りいたします。最高裁判所より発言を求められておりますから、国会法第七十二條によりこれを許したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○角田委員長代理 御異議がなければさよう決定いたします。最高裁判所民事局長關根小郷君。
#8
○關根最高裁判所民事局長 ただいま猪俣委員からのお尋ねでございますが、人事行政が最高裁判所の取扱いまする司法行政のうちで、かなり重要な内容を持つことは当然のことでございます。ただ人事行政のうちでも、下級裁判所の裁判官のほかに、裁判所の職員数千名のうちの下級職員の分についてまで裁判官会議がこれに関するということは負担にたえない。これは下級裁判所にまかせる場合がございますし、また司法行政事務の事務当局としての裁判官会議のもとにおきまする事務総局、このうちの特にまた人事局において大部分を取扱います。ただたとえて申し上げますと、高等裁判所の判事、それから長官、こういつた方々の氏名を内閣に差出すにあたりましては、特に慎重を期して、裁判官十五名のうちから特別に人事委員を選びまして、この人事委員にあらかじめ諮りまして大体の大綱をきめる、そういつたぐあいに進んでおるわけでございます。大体以上でございます。
#9
○猪俣委員 いま一点お尋ねいたしますが、この調査官の任命というものはどういうふうにやつておりますか、私のお尋ねせんとする点は、ある甲の裁判官に所属いたしまするところの調査官は、甲の裁判官がその選任に主として当られるのであるか、あるいは事務当局で人選いたしまして、その調査官を甲、乙、丙、丁の裁判官に配属せられるような組織になつておりますか、ちよつとお尋ねいたしたいと思います。
#10
○關根最高裁判所民事局長 ただいまお尋ねの調査官の任命につきましては、これは調査官の配属の問題と関連いたしますので、その方を先に申し上げますと、調査官の仕事は、結局事件の順転できまることになつておりまして、特定の裁判官に属する調査官というやり方ではございません。そして調査官の仕事の内訳は、刑事関係の調査官と民事関係の調査官にわかれておりまして、民事、刑事の事件が全部順転的にまわります。事件が順転的に各裁判官のところにまわりますと同様に、調査官も順転的にまわるということになつております。ただ今最高裁判所の法廷は、小法廷が三つ、それから大法廷が一つ御承知の通りにございますが、その小法廷ごとに調査官室をわけております。ただ民事の調査官だけは、これは一つの民事調査官室ということになつておりまして、民事に関する限りは、三つの小法廷及び一つの大法廷に参ります事件を順転的に取扱うことになつておるわけでございます。またそういつた仕事のやりぐあいから考えまして、任命につきましても、あらかじめ個々の裁判官が自分の適当と思う調査官を選ぶということではなしに、先ほど申し上げました最高裁判所の事務総局、ことに人事局において案を立てまして、そしてこれは全体の裁判官会議において決定する、そういつた仕組みになつており、実際の運用もそういつた状況になつておる次第でございます。
#11
○猪俣委員 今の調査官の配属の状態は、アメリカあたりの調査官の配属の状態と違うやに承つておるのでありまして、アメリカあたりでは、甲の裁判官なら裁判官が自分の最も信頼する人を調査官として採用する。これにもいろいろの長短、利害がありましようけれども、かような甲の裁判官の最も信頼する者を調査官として、裁判官と調査官が不離一体の関係になつて活動する。そこで事が非常に能率的に上り、真に調査官が裁判官の手足となつてその事務が進展して行くという長所があると思うのであります。日本の今の御説明のやり方であると、どうも調査官と裁判官としつくり行かないと思う。事実どうもしつくり行つておらぬということを私聞くのであります。そこで非常に事務の渋滞があり、能率的でない。真に裁判官の股肱となつてその裁判官を輔佐し、手足となつて活動して行くという状態において欠いておる、有機的になつておらぬ。これが非常に事務の渋滞のある一つの原因をなしておる、こういうふうにも考えられるのであります。また裁判官が自分の信頼する者を採用することになると、そこに一つの人的な派閥がつくられるような傾向もあるということで、さような調査官と裁判官との有機的結合の方面を犠牲にされたのじやないかとも考えられるのであるが、かようなことにつきまして、最高裁判所においては御研究されておることがあるかどうか、また今のアメリカ式のようなやり方の長短につきまして、御意見があつたら承りたいと思うのであります。
#12
○關根最高裁判所民事局長 ただいまの猪俣委員のお話、ごもつともの点が多々ございます。実は調査官制度の採用は、日本におきましてはまつたく新しい制度でございまして、これをどういうふうに運用すべきかということは、幾多の研究すべき問題がございます。それで一人の裁判官に一人の調査官をつけるということも、考えられないことではなかつたのでございますけれども、結局行政事務と違いまして、裁判事務でございますので、機密を要するという問題もないし、それからやはり何と申しましても公明ということが大事であるから、調査官と裁判官との緊密性は、ちようど大臣と秘書官との間のような緊密性というものに触れて来るようなことでは困るのじやないかといつた含みで、結局調査官室と裁判官室と別にいたしました。それから一面最高裁判所の裁判は調査官裁判なりという非難が出て来ることを極力警戒しなくてはならない関係から、やはり調査官室と裁判官室とを別にするといつた運用でただいま参つておるのであります。そこでアメリカの行き方がどうかということにつきましては、実際の運用状況が書類などに出ておりませんので、ただいまアメリカの方にも、その方を專門に調査するために、事務総局の総務局長が行つておりまして、もう帰ることと思うのであります。その結果事情がわかるわけでありますが、ただ調査官と裁判官との緊密性を強くすると、どうしても調査官裁判になりやすいといつたきらいから、やはり祕書官並に扱われない方がいいのではないかといつたぐあいで、ただいま進んでおります。なお今後十分研究した上で、それらの運用上の措置を講じなければならないと考えておる次第でございます。
#13
○猪俣委員 次に、これも先般委員会のときに質問したのでありまするが、この法令の解釈に関する重要な主張を含むと認めるものに基いて調査すれば足りるということに相なつております。そこでこの法令の解釈に関する重要な主張であるかどうかということ自体を、最高裁判所で認定するということになりますると、この改正法案の立法趣旨が、裁判官の負担を軽からしめるというところに重点が置かれておるやに見受けられるのでありますから、そこに重点を置いてこの改正案を見ますると、重要な法律の論点であるかどうかということを、裁判官自身の裁量にまかせてあるというような解釈では、ややもすれば裁判官はその負担を軽からしめる意味におきまして、たいていのものは、これは重要な法律観点ではない、軽微なものだと認定して、上告を許さないということに陥るのじやないか。それを負担を軽からしめなければ、重要ならざる法律処置を含む上告をたくさん認める結果になり、それをまたたくさん認めれば、重要であるかどうかを一々慎重に考えるということになつて、負担を軽からしめることにならぬ。どうもこれは二律背反的な関係に立つというふうに思われるのでありますが、これはどういうふうに解釈したらよろしいですか、御意見を承りたいと思うのであります。
#14
○關根最高裁判所民事局長 ただいまの猪俣委員のお話、まことにごもつともな点が多々あるのでございます。実は先般の参考人の御意見を、私もここで拜聴させていただいたのでございますが、その点が非常に問題になるわけでございます。結局裁量ということは裁判ではないのではないかといつたお言葉がございました。これはなるほどごもつともな点でございますけれども、裁判におきまして、裁量でまかなえる分野がかなり訴訟法で認められております。これは憲法の精神からいいまして、妥当ではないと言われるかもしれませんけれども、一体裁判に理由を付すべしということは、憲法上の要請ではなくて、各訴訟法に規定がございます。しかも訴訟法自体で、理由を省いてもいいのだという規定もございまして憲法違反というものには直接触れないと存じます。しかし憲法の精神からいいますれば、なるべく納得の行くように、いい裁判をしてやるということが、裁判官としては常に考えなくちやならない点でございます。それで憲法の精神から申しますれば、なるべく詳しく書いてやるのが正当であり、また妥当であろうと存じます。従つて裁判官は、常に裁判をいたしますときに、適正――正しいということをまず考える。訴訟が遅れるということは第二義になつてしまうのでございます。それでよく笑い話に言われるのでありますが、訴訟が遅れてしかたがない、病院で医者が非常にうまい手術をしてくれた。精緻巧妙をきわめた手術で、部分的、個々的にはうまかつたが、よく見てみると病人はその間に死んでしまつていた。そのようなぐあいに、訴訟の遅延ということに常に非難があることについて考えなくちやならぬ。そういつた譬喩的な言葉で訴訟の遅延を非難されるわけでございます。それでもなおかつ裁判官は常に裁判の適正の方に頭が行つてしまう。そういたしますと、結局ただいまの最高裁判所におきましても、民事の事件につきましては適正が主になつてしまつてて、事件の解決がどうしても延びてしまいます。大まかに申しまして、四十五人の裁判官が十五人に減りましても、事件数は大体前と同様でございますので、結局三倍の手間がかかり、延びることも三倍になつてしまうということになりますと、やはり今申しましたように、手術は丁寧でも病人は死んでしまうといつたようなことになつてしまう。そうするとどこかで手を打つて、その病人を生かさなくちやならない。その手を打つのには、どうしてもある限度でがまんをしなくてはならないというので、やむを得ない限度として、この程度で認めていただきたいという趣旨でこの法案が提出されたわけでございます。何と申しましても、重要なりやいなやということは結局のところ裁判官の裁量に帰着するのでありますが、やはりこれは重要かどうかは、社会常識できまることでございまして、結局法規裁量――自由裁量ではございませんで、法規裁量でございます。従つてその重要であるものを重要ならずとしてもし裁判をいたしますれば、これは法令違背ということになりますし、さらにまた最高裁判所の裁判に対して異議の申立てができるということになつております。従つて異議申立てで法令違背なりと認定されれば、それが破られてしまうということになるわけでございます。それからなおある事項が、一つの小法廷では重要なりと判定され、他の小法廷では重要ならずと判定される。そういつた場合が出て来たときにどうなるか。これは現在の判例集では、大体において重要な分だけしか出しておりませんが、今後は別途の方法で、あらゆる事件について周知徹底する方法を講ずべきであるということになるわけでございまして、アメリカの判例集などは、どの事件も全部一般に出されているそうでございます。そういたしますと、もし一つの事項が、一方では重要なりと判定され、一方では重要ならずと判定されるようなことがあれば、その問題がその後に出て来るときは、重要な問題として取上げるといつた結果になるわけでございます。それからなおこの前参考人の方のお話の中で、重要でない場合には重要でないと言い放して、切捨てるということでございますが、しかしこれは疑問が少しでもありますれば、その説明をしている部もございますが、非常に簡単で、上告理由自体重要でないことがはつきりしておるものにつきましては、重要でないと言つて、それ自体が理由になる次第でございます。あまり譬喩的に申しまして恐縮でございますけれども、要するに病院の医者が四十五人いたのが、十五人になつてしまつたというときに、入院を求めて来た者のうち、入院を必要としない者についてまで入院を必要とする者と同じように診断を下していては、結局病人全部が廊下にころがつてしまう。全部が治療ができなくなつてしまうといつた結果になつてしまう。でき得ればその病院の門の中に入つて来た病人――中には病人でない者もいるわけでございますが、その全部について丁寧な診断を下してやりたいという気持は、やはり最高裁判所の裁判官としても同じだと思いまするが、そうなりますると、従前の大審院当時の三倍の事件を三分の一になりました裁判官で処理することになりまして、どうしても病人を廊下にほうり出さなくちやならぬという結果になつてしまう。これは数字で申し上げますと、大体民事上告事件の四割以上を廊下にころがすといつた現状でございます。そうしてしかもこの四割以外の六割は非常に簡単な事件でございまして、結果において、高等裁判所の判決を最高裁判所で破つてしまうという事件は、ただいまは非常に少いのでございます。そうして破棄しなくてはならないというような重要な事件、これが次第にたな上げになりつつありまして、その重要な事件について判決が破られれば勝つべき権利者が、その保護を待つのに時間がかかりまして、結局嘆いている事件が非常に多いわけでございます。最高裁判所といたしましてこういつた措置をとることは、事件の当事者に対しまして、まことに申訳ないわけでございますけれども、全体のためにはやむを得ない。入院を必要とする者を入院させるにつきましては、入院を必要としない者に対しましてはある程度診療を簡単にせざるを得ないということになつたわけでございます。しかし今後できる限り、この入院を必要としない者に対しましても何らかの措置を講じて、そして万全の措置が講ぜられれば、それに越したことはないと思います。先ほど猪俣委員からお話がございまして、こういつた案を出す前に、どんな準備がしてあつたかというお尋ねでございましたが、実は最高裁判所事務当局といたしましては、昨年の三月に全国の裁判官――各地方裁判所、高等裁判所の判事全部を東京に集めまして、この問題を討議してもらいました。そのときに案が二十以上出ました。それのうちどれが一番いいかということをいろいろ検討いたし、各地の弁護士会にもお問合せをいたしまして、結局のところ最高裁判所の事件の調整は、こういつた案で行つたらどうかということで、だんだん事件を調整いたしました結果、入院を必要とする者と同じような診察をしてもらえない者に対しては、下級裁判所に上告部を置いたらどうかといつた案で、各地の弁護士会にも御相談をいたしまして、大体同意を得たわけでございます。しかしこれは先ほど政府委員からのお話もございまして、その上告部を置くかどうかは、今後もう少し研究したらどうかという関係方面の示唆もございまして、この最高裁判所の事件の審理、判断の調整ということだけになつたわけでございます。
 それからなお最高裁判所の裁判官の負担の調整ということが全面的に大きく浮び上つたような感じがありますので、非常に恐縮しておるのでございますが、要するに最高裁判所の裁判官の負担ということは、国民の権利の保護をどうしたらいいかということと同じことでございます。国民の権利の保護を全うせんがために上告事件を調整する。簡単な事件と複雑な事件とをえりわけするといつたことでございまして、最高裁判所の裁判官の負担を調整するということは、とりもなおさず上告事件の適正な処理、それをまた言葉をかえて申しますれば、国民の権利の保護を十分にする、適正な保護を与えるといつたことに帰着するわけでございまして、非常に言葉の使い方から実体を逆にお考えになるのではないかといつた感じが、この前の参考人のお方の御意見の中にもありまして、最高裁判所側の十分な気持がおわかりにならなかつたのではないか、これは言葉が過ぎるようでございますが、そういつた感じが私いたしました。まあなるべくならこういうことをしない方がいいとはいいながら、全体のためにやむを得ないといつたところから出発したわけでございます。
 それからなお関係方面では、最高裁判所の負担の調整ということは、アメリカの最高裁判所、これは連邦でありますが、同時に州の高等裁判所、これも同様な方法でやはり法規裁量の形でやつておりまして、関係方面ではむしろ刑事訴訟法と同じような歩調をとるならば全面的にいいじやないかといつた考えが最初ありましたのを、実はそれでは民事は事実審が一審になつてしまつて、どうしても困るというので、事実審はやはり従来通り二つにするということで今の案ができたわけであります。
 それから事実審が二つあるといつても、第二審はやはり――第一審も同様でございますけれども、事実の認定の問題と法令の審査をあわせてやつておるわけでございますので、その点事実の認定だけやるのじやないかというお疑いがあるかもしれませんが、これはそういつたことはないわけでございまして、刑訴より十分丁寧な手続になるといつた状態になるわけでございます。
 それからなお先般の参考人のうちで、中村教授のお話の中で、民事訴訟法は市民社会の法律であつて、刑事訴訟法とは違うという御意見がございました。これは昔の民事訴訟なら、金を貸した者は自分の力で金をとりに行つて、返すように強制するわけでございます。こういつた社会では確かに市民社会の法律でございますけれども、ただいまでは、自分で強制執行することは許されておりません。従つて国家がどうしても中に入つて来る。そうするとやはり市民社会の法律とは言えなくなつて参るのでありまして、これはやはり国家が入る法律――公法上の法律と言わざるを得ないというわけになりますので、やはりこの前の中村教授のおつしやつた市民社会の法律ということについては、相当疑義があるのではないかという気がいたします。
 大体そういつた趣旨でこの案ができまして、今後なお下級審の充実その他につきましては十分考慮せざるを得ない。また最高裁判所初め下級裁判所といたしましても団結して、その点だけは十分に国民の権利が保護されるように努めたいと考えておる次第でございます。
#15
○猪俣委員 これで私打切りますが、今の法規裁量の問題でありますが、そうすると実際問題といたしまして、重要ならずとして取上げなかつた事件については、理由は別につけないわけでございますか。
#16
○關根最高裁判所民事局長 それは実は先般こちらの委員会で参考人の真野裁判官から、理由をつけないというお話がございまして、実は私裁判所に帰りまして各小法廷の裁判官の方に伺いましたところが、小法廷によりまして、書いているところと書いてないところとあるそうでございます。しかしその事件についてこれは刑事訴訟法の問題になりますが、幾分でも疑いを持たれるようなものについては、重要でないという理由を書いているそうでございます。
#17
○猪俣委員 そうすると、甲の小法廷では重要ならずと認め、乙の小法廷では重要だと認めたというようなことが起つて来ると思いますが、そこで甲の小法廷で重要だとして取上げた問題と同じような問題を、乙の小法廷では重要ならずとしたような場合は、さつき御説明のように、異議の申立てができると思うのでありますが、しかしそれは判例集に載つて出ましようか。
#18
○關根最高裁判所民事局長 その点は、現在の判例集には重要なものしか載つておりません。それで私ども事務当局の方といたしましては、全部の事件についてやはり周知徹底させる必要があるというので、特別に判例特報というものを出しております。これは最高裁判所出発以来の全部の事件について、ただ要旨だけでございますけれども、出しておりまして、今後刑事訴訟法にしろ、民事訴訟法にしろ、やはりこういう問題が出て参りますので、全部を載せるようにやつて行きたい。それからそれがいろいろな経費の関係その他からできませんといたしますれば、要点だけの特報式なものを一般に出すようにいたしたい、こう考えておる次第であります。
#19
○角田委員長代理 他に御質疑はありませんか。
#20
○松木委員 これは猪俣君が今質問されたのですが、どうもこの但書が問題になつておるので、重要であるとかないとか、法令の解釈に関する重要なる主張というようなことを一々判断すれば、結局やはり上告事件がたいへん輻輳して来て、やはり判断を加えなければならぬということになれば、事件について上告理由を制限した趣旨が徹底しないように思われるのです。この但書は民事訴訟法の第三百九十四條によりますと「上告ハ判決方法令二違背シタルコトヲ理由トスルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得」と書いてある。そうすると、法令違背でなければ上告理由とすることができないという原則がここに書いてあるように思われるのです。その次に、先刻政府委員からも説明があつた三百九十五條に「判決ハ左ノ場合ニ於テハ常ニ法令ニ違背シタルモノトス」と、こう書いてあるのでありまして、この三百九十四條と三百九十五條を調節したのが、この改正案の但書のように考えさせられるのでありますが、そうではなくて、この規定が最高裁判所にも生きておるとすると、この改正法案というものは意味をなさないことになるのではないかと思うのであります。先刻政府委員の方から、第三百九十五條の場合でも職権調査に属するから、これはやはり職権調査として判断され得るというように御説明になつたようであります。このうちで一番問題になるのは「判決ニ理由ヲ附セス又ハ理由ニ齟齬アルトキ」というのが一番問題であつて、この点は最高裁判所に上告の理由にならぬ、こういう意味に私は解釈されるように思われる。もしこの三百九十五條が全部最高裁判所への上告理由であるということならば、この改正法案は、何ら最高裁判所と高等裁判所とで上告理由にかわるところがないと言つてよい、こう思われるのであります。ここでいわゆる法規裁量という一件が出るのじやないかと思うのですが、結局三百九十四條も三百九十五條も最高裁判所の法規裁量に属するのである、こういうふうに解釈してよいのかどうか、この点を承りたいと思うのであります。
 先日真野裁判官に私が質問しまして、高等裁判所がいかに事実を誤断しても上告の理由にならぬとすると、非常に不都合だと言つたところが、それは実験則によつて判断されるからさしつかえないと思う、こういうお答えでありました。なるほどそう考えれば考えられるのでありますが、しかし刑事訴所法には、四百十一條でありますが、判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があるときには、上告裁判所は原判決を破棄することができる、こういう規定があります。こういうふうに明白になつておればわかりますけれども、この改正案のようでありますと、事実の誤認がいかに重大であつても最高裁判所は取上げないということになるのか、やはりそういう問題は、法規解釈ではありませんが、実験則と申しますか、経験則によつて判断される、こう解釈してよろしいのか、その辺を承つてみたいと思うのであります。
#21
○關根最高裁判所民事局長 ただいま松木委員からのお尋ねでございますが、大体三点に帰着するようでございますので、三つにわけてお答えしたいと思います。
 まず第一点は、重要でないという理由を書くのならば、ちつとも負担の軽減にならぬじやないか、事件を早く片づけるというわけに行かぬじやないかというお話。これは、重要でないという理由を実際書いているのは、やや疑問のあるやつだけでございまして、疑問のないやつは簡単に行けるのじやないか。これは私実は疑問がございまして、この案がいよいよ政府案とし提出されますときに、裁判官、調査官の方にいろいろ聞いてみましたところが、これは打明け話でございますが、判決を書くとなると実にたいへんなのだ、口で言えば何でもないようなことでも、簡単なことほど、それを大原則のように判決に書くのはたいへんなことだ、非常に手がはぶけるどころではないということを申されておるのであります。
 それからなお第二点といたしまして、三百九十五條の六号と、それから今度の四百二條の但書の関係でございますが、これは三百九十五條の第一号から第五号まで、たとえて申しますと、判事でない者が裁判をしてしまつたとか、それから専属管轄に違反して裁判がなされたというような場合には、職権調査の問題でございますので、これは重要であろうが重要でなかろうが、そこは論点外でありまして、必ず裁判所としては調査しなくてはならぬのでございます。それは四百二條で、四百五條の職権をもつて調査すべき事項には四百二條を適用しないという規定がそのままになつておりますので、職権調査の事項に関する限りは、全部調査せざるを得ないのでございます。そして残りますところは三百九十五條の第六号でございまして、ただいまお話がございました判決に理由を付しない、また理由に齟齬あるとき、これとの関係でございます。これは四百二條では、上告人が上告理由としていろいろ述べて来た、その限度で調査するという規定でございます。述べて来ないところに理由齟齬がある、理由を付しないといつても、これは三百九十五條の問題にはならない。それと同じように、いろいろ上告人が申立てて来ても、それが法令の解釈上重要な問題でないということになりますれば、主張がなかつたと同じような結果になつて結局三百九十五條の六号には行かないということになるわけでございます。
 それから第三点といたしまして、事実認定の場合の実験則の違反。これは実験則、経験則が法令に入るかどうか疑問でございますけれども、実際の最高裁判所のやり方は、やはり法令と同様に取扱つておりまして、結局その実験則が重要なものとなりますれば、やはり重要なものとして扱うことになると存じます。従つて、ただいま刑事訴訟法の四百十一條のような規定がないがどうだというおそれは、今度の改正案が通りましても、ないと考える次第でございます。
#22
○松木委員 将来どうなりますか、ただいまのお答えではわかりませんが、これで打切ります。
#23
○角田委員長代理 他に御質疑はありませんか――御質疑なければこの機会に、議員各位の御同意を得て、私は最高裁判所にお尋ねを申し上げます。
 最近最高裁判官において、司法行政のための裁判官会議に非常な時間をとつておるということを伝えられておるのでありますが、そのために実際の裁判事務の方が滞る、こういうことをおつしやられておる方もありますが、一体司法行政事務について、最高裁判所の裁判官がその裁判官会議等にどのくらいの時間を費されておるものか、一週間にどのくらいの時間を費されておるのであるか、もしお答えができまするならば、お答えを願いたいのであります。
#24
○關根最高裁判所民事局長 実はただいま委員長からのお話で、司法行政事務に裁判官が相当首をつつ込み、時間を使つているのではないかという疑いが相当世間にも広まつておりますし、また相当の専門家の方からもそういうお話を承るのでございます。それで実はこの案を法務府で討議いたしまして、法制審議会の議題に上りましたときも、われわれその資料を出せというので、そのとき調査いたしました。これは実は法制審議会におきまして調査を命ぜられまして調査いたしました。これが最高裁判所出発以来の調査であります。平均いたしまして、一週間に一回ないし二回、そして時間的に申しますと、合せまして三時間にすぎないのでございます。それで法制審議会におきましても、三時間とは少いじやないかという御疑問があつたようでございますが、これは出発以来裁判官会議の開始時刻と、終りました時刻を記録にとどめておりまして、それを全部調査いたしました結果でございます。時間的にはほんとうに少いわけでございます。これは皆様がおいでいただいて、実際の事務をごらんいただけば一番よくわかるのでございますが、平均三時間とちよつとでございます。それで最近いろいろな問題があるから、裁判官会議には時間は少いかもしらぬが、その陰にはかなり頭を使つているのではないかというお話もございますけれども、結局その三時間以外に使うということは、ほとんど裁判の合議自体に使つておるわけでございまして、私ども裁判官の部屋に参りましても、ある裁判官の部屋に行くといないのが多いのであります。どうしてかと申しますと、三人、五人の小法廷の合議をほとんど常にやつておられて、合議の部屋に集まつておられる、そういつた状況でありまして、司法行政のための裁判官会議に要する時間は、まことにわずかな次第でございます。
#25
○角田委員長代理 他に御質疑はございませんか――他に御質疑がなければ、本日はこれにて散会いたします。
    午後三時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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