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1972/07/13 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第38号
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1972/07/13 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第38号

#1
第071回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第38号
昭和四十八年七月十三日(金曜日)
    午前十時四十三分開議
 出席委員
   委員長 佐野 憲治君
   理事 菅波  茂君 理事 登坂重次郎君
   理事 林  義郎君 理事 渡部 恒三君
   理事 小林 信一君 理事 島本 虎三君
      小澤 太郎君    田中  覚君
      村田敬次郎君    阿部未喜男君
      岩垂寿喜男君    土井たか子君
      木下 元二君    岡本 富夫君
      坂口  力君    小宮 武喜君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (環境庁長官) 三木 武夫君
 出席政府委員
        環境庁長官官房
        長       城戸 謙次君
        環境庁企画調整
        局長      船後 正道君
 委員外の出席者
        環境庁長官官房
        審議官     橋本 道夫君
        特別委員会調査
        室長      綿貫 敏行君
    ―――――――――――――
七月十二日
 東京湾の埋立て中止による干潟の保全に関する
 請願(小川省吾君紹介)(第八四五〇号)
 同(佐藤観樹君紹介)(第八四五一号)
 同(細谷治嘉君紹介)(第八四五二号)
 同(久保三郎君紹介)(第八五五五号)
 同(山田太郎君紹介)(第八五五六号)
 鳥獣保護政策の確立に関する請願(大石武一君
 紹介)(第八四五三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 公害健康被害補償法案(内閣提出第一二三号)
     ――――◇―――――
#2
○佐野委員長 これより会議を開きます。
 この際、暫時休憩いたします。
   午前十時四十四分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時五十八分開議
#3
○佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます内閣提出の公害健康被害補償法案を議題とし、審査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小宮武喜君。
#4
○小宮委員 長官にまず質問しますが、この法律案が国会に提出されたのが六月十九日で、中公審からこの問題に対して答申のあったのが四月五日ということで、われわれもこの法案については、ぜひともひとつ今国会で成立をさせたいということで一生懸命取り組んでおるわけでありますが、何さま時間がございませんので非常に苦労しておるところですけれども、この法案の提出が当初の予想よりおくれたという理由はどこにあるのか、ひとつ長官から説明を求めたいと思います。
#5
○三木国務大臣 との法案の提出がおくれて、非常に短期間の間に御審議を願わなければならぬということを恐縮に考えておるわけですが、われわれは、公害による健康被害の現状にかんがみ、どうしてもこういう制度を早急に実現させる必要があるということを考えて、この法案の作成に取りかかったのですが、一つには費用負担の具体的な方法、あるいはまた徴収機構というものの内容、あるいはその他の法制度との関連、この法案は従来あまり類例のない法案であっただけに、小宮さん御想像がつくと思いますが、政府部内の調整にもたいへんに時間がかかったわけです。そういうことで、この内容がいままでにあまり類例のない法案であっただけに、われわれももっと早く調整はつくと思ったのですが、非常に長く時間がかかったために予定よりもおくれまして、審議日数の少ないことは、遺憾に思っておる次第でございます。
#6
○小宮委員 したがいまして、衆議院のほうではこれは何とかなるにしても、なかなか参議院のほうでも審議日程もないというような非常にむずかしい問題でございますが、われわれも、この制度そのものについては、一応やはり高く評価をしたいと思います。しかしながら、なおこの法律案の内容を見てまいりますと、相当納得のいかない点もございますから、以下その点について質問をしたいと思います。
 まず慰謝料の問題ですが、この慰謝料の問題について、今回の法律案の中にははっきりと明記されておらない。この慰謝料の問題については、中公審の答申の中でもいろいろ民事訴訟にゆだねるとかいうことにしておりますけれども、この法律案の中にも、やはり慰謝料の問題についてもある程度の要素を含めておるというようなこともいわれておるわけですが、この法案の中でその慰謝料というもの、いわゆる精神的損害に対する補償というものをどういうような形で織り込んでおるのか、その点ひとつ明らかにしてもらいたい。
#7
○船後政府委員 慰謝料は通常精神的な損害に対して支払われるものでございまして、このような精神的な損害というものの中には、肉体的、精神的な苦痛でございますとか、あるいは家庭生活の破壊、社会的犠牲といったような問題のほかに、なおまた加害者のほうに対する制裁というような意味合いも含まれておりまして、こういう性質の損害を定型的に定めることは非常に困難でございまして、通常、制度的な給付におきましては、慰謝料という項目はこのような事情から立てることができないわけでございます。そうでございますので、この制度におきましても慰謝料という給付項目は立てなかったのでございますが、中公審におきます論議の過程におきましても、やはり公審問題の特殊性にかんがみまして、慰謝料というものをどのように扱うかということは大きな問題になったわけでございます。基本的には、慰謝料の先ほど申し上げましたような性格にかんがみまして、やはり具体的に当事者間において決せらるべき問題でございますので、基本的には民事の問題にゆだねるべきではあるが、しかし、この制度を組み立てるに際しまして、できる限り慰謝料的な要素を織り込んで、制度全体の中でその要素を生かすという方向で検討すべきである、かような結論に達したわけでございます。
 そこで、具体的にどのようにその要素が織り込まれているかという御質問でございますが、遺族の補償費にいたしましても、これは死亡いたしましたことに対する損害をてん補するわけでございますが、その損害の中には、公害病によりまして死亡いたしました被認定者の相続分相当分と遺族の固有の損害分というものを含めたものとして構成する必要があるわけでございまして、こういった観点から、遺族補償費の給付レベルにつきましては政令に譲っておりますけれども、政令で定めます場合には、一般の労災保険その他の諸制度に比較いたしまして、このような慰謝料的な要素を含めて相当高い水準で決定いたしたい、かように考えております。
 同様の考え方は障害補償費についても言えるわけでございまして、通常の社会保険あるいは社会保障等の制度におきましては、所得の六割補償というのを原則にいたしておりますけれども、この制度におきましては、六割よりは高い水準でもって給付レベルを考えたいと思っております。
 さらにまた児童補償手当につきましては、本来、児童につきましては逸失利益というものが存在しないわけでございますので、児童につきましては医療費の支給のみでよいのではないかという一つの意見もあるわけでございますが、しかし、公害病にかかりました児童につきましては、やはり成長がおくれるとか、学業がおくれるとか、あるいはまた養育者のほうで手間がかかるとかいったようないろいろな要素があるわけでございますからそういった要素をくみ取りまして、新たに児童補償手当という性格のものを設けておるわけでございまして、このように制度全体の中で、できる限り公害事犯の実情に即し、しかもこの制度が精神的、心理的な給付であるという性格の範囲内におきまして、慰謝料的な要素をできる限り含ませたいと考えております。
#8
○小宮委員 補償給付が平均賃金の八〇%ですね。そうしますと、補償給付の八〇%の中にも慰謝料的な要素が含まれておるというふうに言われるのですが、たとえば遺族補償にしても、大体私が漏れ伺うところによれば千日分。千日分といったら労災でも遺族一時金は千日分なんです。そうすると、そんな抽象的なことで言われても、ほんとうにどこに具体的にどう含まれておるのか、明らかでないのですね。まあそれは、児童手当だって慰謝料的な要素としてとらまえておるかもしれませんが、そういうようなことが慰謝料としての精神的損害に対する補償だとは私は考えていないのです。それでは、その意味では遺族補償費は、一応政令にゆだねられるようになっておりますけれども、大体考え方としてはどれくらい考えておりますか。
#9
○船後政府委員 遺族補償費につきましては、一時金として支給する制度におきましては、ただいま先生御指摘のように、労災の場合には千日分という基準がございます。この制度におきましてはそのような考え方をとっておりません。遺族補償費にいたしましても、原則といたしまして、被認定者である患者の死亡によってこうむった遺族の損害でございますから、やはり遺族の生活の安定度あるいは破壊された生活の回復度という点に重点を置くべきでございまして、定期的支払い金として支給いたしたい、かように考えております。
 その場合に、そのような定期的支払い金の水準でございますが、これは法案でも述べておりますように、まず障害補償費と同様に、全国労働者の平均的な賃金水準ということを基礎といたしまして、これにその死亡いたしました被認定者がもし生存していたならば必要としたであろうようなもろもろの生活的な経費を差し引きまして構成することになりますから、具体的に申し上げますと、裁判例等におきましても、そういった差し引き要素は大体三分の一あるいは三割程度でございます。したがいまして、この制度におきましては、一般的な考え方としましては、賃金水準に対しまして七割程度の給付レベルを考えてまいりたいと思っております。
#10
○小宮委員 中公審の費用負担部会でも、この慰謝料についてどの部分に含めるか、これは訴訟が提起された場合、裁判所にこれをまかされているというように書いておるのですが、具体的に民事訴訟を起こされた場合に、たとえばいまの法律体系の中にも慰謝料が含まれておるということになると、そういうような訴訟をした場合にかえって混乱が起きるのではないかということも考えられます。また水質汚濁系の患者の場合は、やはり汚染源が明らかになっておれば、それも慰謝料としての請求なり、また訴訟なりが明らかになってやれる、争われるわけですけれども、大気汚染の場合はあらゆる企業の複合汚染でございますから、そういうような意味では慰謝料というものはどこでだれに請求していいのか、汚染源が複合汚染ですからなかなかわからない。水質汚濁系のほうは汚染源がはっきりすれば、たとえば水俣病ならチッソ、東洋高圧、日本合成化学とわかれば、そこでの話し合いはされましょうけれども、大気汚染の場合にはそういった汚染源がなかなかつかみにくいでしょう。そういうような場合は、この法律案からいけば、慰謝料というものはどこに含まれておるのか。また、特に慰謝料というものの規定を明らかにしないと、ただ裁判所にまかせるとか、また政令でこの給付の中に含めるとかいってみても、やはり国民の、被害者の立場から見ればどうも明確でないので、この際、そういうような慰謝料に対する規定をこの法律の中に明記できないのかどうかという点について、これは長官にお答えを願いたいと思います。そうしなければ、これはやはり大きな問題で、肉体的な苦痛と精神的な苦痛は一体ですから、こっちはこっちだ、こっちはこうだというふうに分けることができないような問題ですから、その点、長官から、いや、こうして慰謝料というものの規定は明記することはできないのだと、私が納得するような答弁があれば私も引っ込みますから、ひとつ答弁を願います。
#11
○船後政府委員 まず慰謝料の算定方法でございますが、これは、いろいろな裁判事例におきましても明らかではございません。たとえば四大公害裁判でございますが、この場合には原告側が、ある場合には慰謝料と逸失利益という二本立てで訴訟を提起したケースもあり、慰謝料一本立てでもって訴訟を提起したというケースもございます。一番典型的なのは四日市裁判でございまして、この場合には、慰謝料と逸失利益と別立てで原告は請求いたしております。判決もそのとおりとなっておるわけでございますが、この場合は平均いたしまして、両者を合計して約一千万円程度でございますが、慰謝料部分が半分、逸失利益部分がおよそ半分、こういうことであります。これに対しまして、ほぼ同じ時期にございましたイタイイタイ病の第二次訴訟、控訴審でございますが、この場合には慰謝料一本でございまして、裁判所は慰謝料一本として、死者について約一千万円という程度の損害賠償を命じておる。新潟の裁判あるいは、つい先ほど行なわれました水俣病の裁判におきましては、慰謝料一本で請求いたしておりますが、しかし、判決の中では裁判官は、逸失利益については、原告はこれを現在及び将来も請求する意思のないことが明らかであるが、しかし、裁判所は慰謝料を算定するにあたって、各患者のいろいろな症状のほかに収入とか生活条件とかそういったものを考慮して、そういう要素も総合勘案してこの慰謝料をはじいたということで、具体的には千八百万かの慰謝料を出しておるわけであります。
 このように裁判例を見ましても、慰謝料部分がどうであるか、あるいは逸失利益部分がどうであるかということは、非常に分別がむずかしい問題でございます。
 また、具体的な訴訟におきましては、これは原告が被害を受けたことに対して全損の回復を要求するわけでございますが、かりにこの制度でいかなる名目の給付をいたしましょうとも、裁判所は拘束されるはずはないわけでございまして、裁判所は裁判所としての判断に基づきまして、ある場合には慰謝料一本でいく、ある場合は慰謝料、逸失利益という形でもっておそらく損害額が裁判で確定すると思います。そういたしました上で、この制度と裁判との関係は、少なくともこの制度で先に給付したものがありますれば、その部分に関しましては、すでに損害がてん補されたことになるわけでございますから、それを差し引くということになるわけであります。その関係は、あたかも四日市裁判におきまして、例の問題になりました見舞金契約について、裁判所が、これは公序良俗に反するから無効である、このような見解を示しつつも、なおもこれは実質的には被害者の損害をてん補するものである、すでに支払われた見舞金の金額は、これを判決額から差し引くというようなことをいたしているわけであります。おそらくこのようなやり方で今後の裁判が行なわれるのではないか、かように私は考えております。
 以上が、裁判とこの制度との関係でございますが、この制度に慰謝料という給付項目を独立的に設け得ないのは、先ほど申し上げましたように、慰謝料というのは非常に具体的、個別的な問題でございまして、この制度が考えておりますような定型的、類型的な給付には含まれていない、かつまた算定方法も明らかでないということでございます。しかし、私どもといたしましては、全体としてのこの制度の給付項目、給付水準を考える場合に、公害の特殊性に立脚した平均的な意味における慰謝料的要素というものは十分織り込んで考えたいと思っております。
#12
○小宮委員 慰謝料を算定することは非常にむずかしいということは、そのとおりです。したがって、その慰謝料をどれくらい払うとか、どれだけとするとかいうような問題は一応おいても、やはりこの慰謝料を払うのだというような字句をこの中に明記することができないかどうか。やはり慰謝料も払うのだ、その額は別ですよ。しかし、いまの補償費とか遺族補償、障害補償、児童手当いろいろある中で、やはり慰謝料も支払わなければならぬというような、何かそういうようなものができないのかどうか、私の聞きたいのは。額の算定のむずかしいのは、そのとおりです。
#13
○三木国務大臣 小宮さんの言われること、私どもにはよくわかるわけです。ただしかし、慰謝料というものを独立の項目にしますと、いま局長から御答弁をしましたように、算定の基準というのがむずかしいと思います。その項目の中に入れるそれなら一体金額の内容は、慰謝料というものはどういうことになっているのかということの説明が非常にむずかしい。だから、全体としてのいろいろな給与水準をきめるときに、その慰謝料というものも背景に置いて考えるということがやはり実際的ではないでしょうか。算定の基準のなかなかむずかしいものを独立した項目に分けたときに、一体その内容はどうなっているかということの説明を求められたときには、非常に説明がしにくい点がある。だから、いろいろな給付の場合におけるその背景の中にやはり慰謝料的なものも頭に置きながらきめるというようなことが実際的だと思うのです。言われることは、私どもよくわかります。
#14
○小宮委員 この法律案によりますと、補償費が全労働者の性別、年齢別の平均賃金の八〇%になっておりますが、この八〇%の中には慰謝料的な要素が含まれておりますかどうか。局長、どうですか。
#15
○船後政府委員 障害補償費の給付水準は、八〇%とこの法律できめているわけではございません。これは、法律におきましては、中央公害対策審議会の意見を聞き、政令で定めることになっております。ただ、中公審で示されました考え方といたしましては、この制度の給付水準といたしましては、一方におきまして労災保険制度でございますとかあるいは健康保険制度でございますとか、そういった社会保険制度における一つの給付レベル、これは先ほど申しておりますとおり六〇%でございますが、そういう給付レベルと、判決例で示されておりますようなレベル、これは一〇〇%でございますが、そういったレベルとの中間程度ということをいっておるわけでございまして、やはり私ども今後も、そのような線からいたしますれば八〇%というあたりが妥当な線ではないか、かように考えておるわけであります。
 そこで、六〇と八〇の差を何と理解するかというのは、これは説明の問題でございますが、私どもは、四日市裁判でもいわれておりますように、労災のケースと違いまして、公害事犯におきましては、被害者は一方的に被害をこうむるばかりであるといったような事情、これを考えますれば、当然、雇用契約のもとに立っておる労働者の災害の場合よりは、制度的な給付といたしましても公害にかかわる健康被害の補償制度のほうがより高い給付水準であるべきだ、かように考えておるわけであります。
#16
○小宮委員 それでは、今後政令でいろいろな補償費をきめる場合に、慰謝料的な精神的損害に対する補償も含めてきめるのか、それともそれはあくまで除いて、理論的な立場から補償費はこれだというような立場できめるのか。私は、例を平均賃金の八〇%で申し上げましたけれども、たとえば遺族補償費千日分とか、たとえば児童手当が幾らだときめる場合に、それは慰謝料的なものを含めてきめるのか。政令でどうなるかわかりませんから、私も質問の方法に困りますけれども、考え方として、そういうように政令できめた場合は、補償費が幾ら、遺族一時金が幾らときめた場合に、それは慰謝料的なものを含んでおるというふうに理解していいですか。
#17
○船後政府委員 政令で定める場合は、お手元の説明資料でも申しておりますように、これは非常に技術的なきめ方をするわけでございまして、いわば一種の算術というものを法文形式に直したものになろうかと考えております。
 どうしてそのような算術が出てきたのかというものの考え方の根拠には、やはり先ほど申しましたように、一般的に、労災にいたしましてもあるいは自賠責にいたしましても健康保険にいたしましても、そういった制度的な給付レベルよりは高いレベルにきめるというのでございますから、その高いレベルになぜするかということの説明の中には、先ほど来申しておりますような公害事犯の特殊性というもの、あるいは公害事犯には特に精神的な苦痛というもの、そういったものがあるという特殊事情を勘案して高いレベルにきめるということになるわけでございます。
#18
○小宮委員 それでは、平均賃金の一〇〇%とかりにしても、われわれから見れば高いレベルじゃないと思うのですよ。しかも今回は平均八〇%だということになると、これが高いレベルで、そういった慰謝料的なものを含めてきめたんだということになると、やはり問題を感じます。
 しかし、その慰謝料の問題は別におきまして、平均賃金の八〇%というのは、いままでの公害判決から見て一〇〇%補償している、労災は六〇%だ、そういうような意味で中間をとって八〇%、それぐらいが妥当ではなかろうかというような判断か、それとも労災と同様の考え方に立って二〇%ぐらいは高いレベルだというように考えておられますか。
#19
○船後政府委員 この制度の特殊性は、労災と異なる点が一つあるわけでございます。労災の場合には、因果関係は通常きわめて明確であります。労働者が職務上疾病にかかるあるいは障害を受けるということにつきましては、個々の労働者につきまして、それが業務上のものであるかあるいは業務外のものであるかを判断をする仕組みになっております。しかし、この制度におきましては、特にこの制度の最も対象の多い大気系の疾病につきましては、これは非特異的な疾病でございまして、個々の患者につきましてその疾病と原因物質との因果関係を医学的にきわめることはほぼ不可能に近いという現状でございます。したがいまして、地域指定、指定疾病、暴露要件という三つの要件を導入いたしまして、この三つの要件に該当する被害者は、それが医学的に見て実際はどうであろうと、ともかく公害病であるというように認定する。そのように、いわばゆるやかな因果関係の認定というものを大幅に制度的に取り込んでおるという点におきまして、労災におけるやり方と違うわけでございます。
 一方におきましてはこのような事情も考えねばならぬわけでございまして、公害問題の特殊性ということと、この制度がどうしても制度として給付を行なう以上は、制度的に割り切らざるを得ないという問題、こういった点を種々勘案して給付水準を考えるというのが、中公審の議論の出てきた結論でございまして、私どもはそういったことも考え、労災のレベル、それから裁判――裁判と申しますのは、これはやはり具体的なケースに即して、ほんとうに因果関係があるのかないのか、訴えられた被告がほんとうに民事上の責任があるのかないのか、これを個々に確かめた上で出したものでございますから、そういうものとの中間あたりで考えることとしたわけでございます。
#20
○小宮委員 労災の場合と違うことはもう当然です。しかも公害被害者というのは、ただそこに住んでおったとかそこに通勤しておったとかいうことでの被害ですから、むしろ労災の場合より、その意味では補償を高くするのは当然なんです。しかしながら、その場合に、ただ労災の上に上積みするような――八〇%ということはあまり言いませんが、皆さん方の場合は一〇〇%するかもしれませんから言いませんけれども、当然私は平均賃金の一〇〇%ぐらいにすべきだ。しかも補償金について、喪失度の状況においてランクを設けていますね。しかし、少なくともこの人が長期にわたって労働能力を喪失した場合、また永久に労働力を喪失した場合、これはやはり当然、私は平均賃金の一〇〇%支給すべきだと思う。それを八〇%に考えるとか六〇%に考えるということは、企業負担をそのことで軽くしようとしておる考え方からではないか、企業負担を軽くしようという配慮じゃないのか、そうではないと思いますけれども、結果的にはそう見ざるを得ないような形になってくるわけです。その意味で私は、この八〇%というのも、きまったことではなくて、いまから政令できめるということですから、政令できめるならば、労災とは当然性格が違うんだから、企業にそういうような制裁的なきびしい反省を求めるためにも、何も遠慮して労災の六〇%に二〇%上積みするということでなくて、当然一〇〇%負担させるという考え方を持ってもらいたい。そのことが今後の公害防止にも大きく役立つと思います。一〇〇%にしてもらいたいと思いますが、どうですか。政令できめるなら、当然意見として反映させてください。
#21
○船後政府委員 労災と違う点は、先生がおっしゃいましたように、労災は雇用契約にある特殊な地位にある。公害の場合には一般住民に被害が及ぶという点もございますし、先ほど私が申し上げましたように、労災におきましては個別的に因果関係は比較的明らかであるのに対し、この制度におきましては、特に大気系の場合には制度的に因果関係を割り切っておるという点も違うわけでございます。やはりこういった事情を勘案いたしまして、この制度では、いままで日本の社会的な通念とされておりました六〇%補償水準というものに対しましてより高い水準、しかし裁判のように個々の被害者につきまして因果関係が明確になるしかも加害者サイドのいろいろな特殊事情も明白であるといったようなケースとは、やはりこれは制度的な給付でありますから違うわけであります。そういった事情を勘案して、両者の中間程度の線で中公審は答申をしておるわけでございますから私どもといたしましては、今後中公審に具体的な給付レベルをおはかりするわけでございますが、(小宮委員「その場合にどうする」と呼ぶ)その場合に、もちろん先生のような御意見もあることは十分にお伝えいたしました上で、中公審で御審議をお願いいたしたいと思います。
#22
○小宮委員 この制度が逆に今度非常に心配されるのは、企業側が金で済ませる、金さえ払えばものごとが片づくのだというようなことになって、企業努力を引っぱるような形になっては非常にまずいので、企業が公害防止に使う費用より被害者を出した場合はむしろ高いものにつくのだというような措置くらいとって、それよりはやはり公害防止のほうに金をつぎ込んだほうがいいのだというような姿勢を企業には持たせるべきだと私は思うのです。その意味で、私はあえて言いますけれども、四日市の公害判決でも一〇〇%の判決が出ているわけですから、やはり中公審が答申する場合はぜひひとつ一〇〇%の給付をするように、特に強くお願いしておきます。
 それから、補償金額は全労働者の男女別、年齢別の平均賃金をとっておりますが、全労働者ということになりますと、全国の労働者の性別、年齢別の平均賃金ですか、確認しておきます。
#23
○船後政府委員 この障害補償費は、やはり逸失利益を中心にいたしまして算定いたしたいわけでありますが、ただ、公害による被害者の場合には、賃金労働者と違いまして、中には無職の方もいますし、主婦もいます。あるいは収入のある方でも、利子収入とか不動産所得でありますれば、これは病気とは関係なく、収入は減らないという面もございます。こういうさまざまな方々を対象とするわけでございますから、それでどうしても制度的に割り切りまして、一つの基礎額というものを出す必要がございます。このような基礎的な一つのものさしといたしまして、私どもは全国労働者の平均賃金というものを使用いたしたいと考え、また、このような考え方は、四日市裁判におきましても支持されているところでございます。
#24
○小宮委員 大気汚染が発生する都市といえば、全国でも大都市あるいはそれに準ずる都市にかなり多く発生しているわけですが、そういうところの労働者の賃金というのは、私はやはり一般的に高いと思うのですよ。その場合に全国労働者の平均をとるということになりますと、結局、平均賃金そのものが低くなってくるというような心配もするわけです。
 それで、全国の労働者の平均賃金と、たとえば東京都の労働者の平均賃金、公害が出ている川崎なら川崎市の労働者の平均賃金とは、どれだけ違っておりますか、資料があったらひとつ説明願いたい。
#25
○船後政府委員 最近、賃金の地域格差は縮小の方向にはございますけれども、依然として地域格差は残っておるようでございます。四十七年の毎勤調査の資料でございますが、これによりまして府県別賃金を指数に直して考えてみますと、全国平均を一〇〇といたしますと、東京は一一五・三それから千葉が一〇二・二、神奈川が一〇八・二というように、いわゆる過密地域におきましてもかなりの差はございます。それから、比較的汚染が少ないと考えられます。たとえば新潟県は八四・五、そういうことになりますが、しかしまた、四日市を含んでおります三重県では九一・二というような形になっておりまして、府県別の賃金格差は、必ずしも汚染状況とはさほど相関関係はない、かように考えております。
#26
○小宮委員 先ほどから答弁がありましたように、その答弁は私も理解できないではないのですが、しかし、やはり補償というのは、その人の個々の損失に対する補償でなければならないということを考えますと、こういうような全労働者の全国一律の平均賃金を用いたほうがいいのかというと、私はやはりベターではないと思う。個々の損失者の平均賃金が幾らであったのか、それをやはり調査して、その個人個人の所得に応じた平均賃金によって損失を補償するというのが、一番現実に適した方法でもあるし、いろいろな問題を起こさないやり方だと思うのです。そういうような個々の補償を一〇〇%補償するということが一番私はベターだと思うのですが、それは個々の算定をしなければなりませんので技術的に問題はあろうかと思いますが、私は考え方としては、やはり補償というのは、その個人個人の所得の補償ということを考えれば、個人個人の平均賃金を出してそれを補償していくということがたてまえであり、それが当然だと思うのですが、どうですか。
#27
○船後政府委員 補償を何を基準にして行なうかという場合に、先生のおっしゃることも、私きわめてごもっともだと考えております。ただ、労災のような制度におきましては、個々の労働者の障害にかかる前の賃金というものは個人別にはっきりしておるわけでございますから、これを用いて制度を組み立てることができます。しかし、公害におきましては、先ほど申しましたように、無職の方もいらっしゃるわけでございまして、無職の方は、病気になろうがなるまいが収入はなかったわけでございますから、そういう意味では損害がないという、これは変な結論でございます。あるいはまた収入があるといたしましても、不動産収入で、すわっておっても収入が入るという方につきましても、現実に収入の減少が起こらないという点があるわけでございます。これもまた変でございます。そういった特殊性がございますので、どうしても全住民を対象といたします場合には制度的な割り切りが必要になります。
 この点は中公審でも種々議論のあったところでございますが、四日市の判決におきましては、この点をやはり労働能力の喪失という点でとらえていく、現実の損害をてん補するよりは労働能力の喪失という点をとらえ、そして労働能力の喪失度というのは全国平均の賃金によるという原告側の主張を、四日市の判決は支持したわけでございます。したがいまして、私ども、いろんなものさしのつくり方は考えられますけれども、人の健康に対する被害というものには個人差も地域差もあり得る問題ではございませんから、労働能力の喪失、しかもそれをとらえる指標としては、全国的な平均賃金というものでとらえるのが一番妥当であるという結論に達したわけでございます。
#28
○小宮委員 毎年賃上げがありますから、平均賃金は上がっていきますね。その平均賃金の上昇に応じて補償費は毎年スライドしていきますか、賃金スライドになりますか、その点を確認しておきたいと思います。
#29
○船後政府委員 私どもはあえて賃金スライドという表現は用いたくないのでございますが、この制度におきましては、毎年毎年、全国労働者の平均賃金によりまして障害補償費等を算定することにいたしております。結果的には先生の御指摘のとおりになります。
#30
○小宮委員 労働能力喪失はどういうふうにして判断するのですか。何か基準がありますか。中公審の答申によれば一〇〇%と五〇%と三〇%というふうになっておりますが、どういうふうにして判断するのですか。局長、大事なことは、いまの中公審の付属資料から見ましても、たとえば男で四十五歳の場合、給付基礎月額は平均賃金の八〇%の場合に八万九千円になるわけですね。そうすると、労働能力を一〇〇%とした場合は八万九千円もらえるわけです、全部もらえるわけではないのですから。そうすると、五〇%になりますとその半分ですから四万四千五百円。三〇%になりますと結局二万六千七百円にしかなりません。そうすると、これくらいの給付で生活できるかどうかという問題がありますので、特に労働能力の喪失というのはどういうように判断するのか。たとえば労働能力が五〇%というのは、就労状態にある人をいうのか、半就労状態にある人をいうのか、その辺の能力喪失度の判断がよくわかりませんので、そうしなければ生活問題と給付問題とかかってきますから、その点どうなんでしょうか。
 それから、特にもう一つつけ加えて申し上げますと、たとえば一〇〇%と五〇%と三〇%にした場合、この労働能力喪失の度が一〇〇%、半分なら五〇%、この中間に位する人も出てくる。そうした場合、この人たちは五〇%とするのか一〇〇%とするのか、その辺の判断もありますので、たとえば八〇%としたものも一〇〇%に、一〇〇%労働能力を喪失したというふうにみなしてするのか。七〇%くらいの人だったら、五〇%なら半分労働能力を喪失したというふうにして五〇%とするのか。そのことによって、本人の受ける給付ががたっと変わってくるわけですから、その意味で中公審が出しておるこの三ランクには問題があると思うのです。たとえば七五%、五〇%あるいは三〇%ということもあっていいと思うのですが、そういうようなランクの格づけの問題が三段階だけなのか、それともいま申し上げましたように、労働能力喪失度はどういうようにして判断するのか、その点ひとつ説明を願いたい。
#31
○船後政府委員 まず、労働能力の喪失度というのが、症状等級をきめます場合にも一番のものさしでございます。なおそのほかに、やはり日常生活の困難度といったような要素も加味する必要があろうと考えております。
 いずれにいたしましても、症状等級の区分をどの程度のランクに分けるかというのがやはり大きな問題でありまして、もちろん最重症を一〇〇といたしました場合に、その次には九九、九八と連続的に続いておる、このように考えるべきでございましょうが、こまかくいえば各人ごとに差があるのかもしれません。しかし、これは制度的な給付でございますから、定型的にそこをまとめざるを得ない。どの程度にまとめるかにつきましては労災保険なりあるいは健康保険なり、すでに実施しておる制度におけるいろいろなランクづけ、しかもこれは外部障害ではなくて内部障害でございますから、そういった内部障害の派生度におけるランクづけ等を参考にいたしまして、今後中公審で御決定願うわけでございますが、いままでの中公審の審議過程におきましては、おおむね三、四程度が妥当ではなかろうかという意見は出ておりますけれども、はたして三、四程度になりますかどうかは、さらに専門的に詰めねばならぬ問題でございます。なお、そういった場合に一〇〇、五〇、三〇、ゼロというのは、四日市の裁判の際に示されたランクづけでございまして、私どもは必ずしもそれをそのまま採用しようとは考えておりません。
 なお、このようなランクづけをどのような考え方で行ないますかは、高度に専門的なことでございますから、橋本審議官から、さらに説明させます。
#32
○橋本説明員 いま局長から基本的な考え方は御説明いたしましたが、四日市の場合は、第一種の地域にかかわる大気汚染の場合の労働能力の喪失という考え方だというように、私たちは基本的には考えております。そういうことで、第二種の問題で水銀という場合には、また別の分類があります。それには水俣の判決あるいは調停の問題等があるということを参考として考えるべきだというぐあいに考えております。
 そこで一例といたしまして、この四日市の場合にどういうぐあいに判断されているかという骨子だけを申し上げますと、これは京都大学の内科の佐川という教授がおやりになりましたが、一つは病気と申しましても、たとえば慢性気管支炎と肺気腫とがまざっているとか慢性気管支炎とぜんそくとがまざっているとか、そういうように病気の中にも、一人の病人に幾つかかの病気があるということで、病人さんにつきまして幾つの疾病を持っているかということを佐川先生は分類しております。そういうことも一つの重要な問題ではないかと思います。
 第二番目に佐川先生がやっておられますのは、全く喪失がないというのと、それから先ほど申し上げました労働能力の喪失を三つの段階に分けておりまして、荒く申しますと、何らの損害がない、あるいはほとんど何の制限もされない、あるいはきわめて低下をしている、それから非常に能力を喪失しているというような、そのようなランクを一々条件をつけて、それにつきまして、三〇%ロスであるとか五〇%ロスであるとか一〇〇%ロスであるとかいうような分類をつけております。そして、それを何かやはり客観的な判断資料をつくらなければむずかしいということ、これも当然考えられますので、その場合には肺機能検査ということを先にして、肺機能検査で身体障害者関係で使われている肺機能のテストの分類をお使いになりまして、これもやはりいま申し上げましたゼロから一、二、三の三つのランクに分けるというようなことをしております。そしてこの肺機能テストと、それから労働能力との関係をどういうぐあいにするかということ、これは医学的なある程度の割り切りをもってつくっております。
 そのほか、病気の症状というもので、呼吸器系の場合でございますと呼吸困難があるとか、あるいはぜろぜろというぜん鳴があるとか、あるいはチアノーゼと出血の状態が起こるとか、あるいは意識に異常を来たすとか、あるいはせきの非常な発作があるとか、あるいはたんが出るとかいうように幾つかに症状を分けまして、この症状でその苦しみ方が違うわけでございますが、この症状分類というものが、これまた幾つかの段階に分けられる。
 そういうものを全部からみ合わせまして、四日市の場合には最終的に一〇〇と五〇と三〇とゼロというようなランクに分けられております。
 このようなことは実はきわめてむずかしい問題でございまして、一年間に新しいことが何か検討して出るかということは、正直に申し上げましてきわめてむずかしい問題だと存じておりますが、現在、私どもことしの予算で全国千数百人の患者さんを調べたい。これは大気感染だけでございまして、この四日市の佐川先生のおやりになったことは、貴重な、しかも裁判の基礎にまでなったデータでございますから、これを一つの参考としながら、一つは主治医の先生から、できるだけこまかく患者さんについての、佐川先生のおっしゃったような形での評価を知らせていただく、もう一つは肺機能の専門家から、そのテストをしてどの数字を使うかということの整理を願う、これは比較的できることであるかと思います。もう一つは公衆衛生のほうの関係者から、家庭やあるいは仕事という点で、実際その患者さんはどういう状態であるのかということを詳しく調べていただきまして、そしてそれらをあわせて、佐川先生のやられたことも資料にしながら、最終的には三つになるか四つになるか、第一種の地域のほうの大気汚染のほうの場合のクラスをきめたい、そういうぐあいに思っております。
 そのほかの厚生年金保険の制度であるとか国民年金とか労災補償の場合の分類もございます。また先日、参考人でおっしゃいました笠松先生のお考え方もございますので、十分先生のおっしゃるような面も注意をしながら検討してきめたい、こう考えております。
#33
○小宮委員 先ほどの局長の答弁にもありましたように、たとえば無職の家庭の主婦の方、不動産収入のある方もおるでしょうけれども、きのうの参考人の供述の中にありましたように、たとえば病院に入院しておるけれどもいつの間にかいないようになった、調べてみたら、もう生活ができぬから、結局やはり病院を抜け出して漁に行っておるというような問題もあるわけですね。そうしますと、やはりこの人たちの生活の保障というのは給付という問題と直接密接に結びついて非常に大事な問題になるのですが、そういうような漁業をやっておる人は、漁業をやっておる人の収入の補償ということも考えられましょうし、たとえば家庭の主婦の方々の補償はどうするのか、あるいは六十歳以上の老人の方々の収入のない人の補償をどうするのかということは、中公審の資料に出ておる全国の性別、年齢別の平均賃金で支払うということになりますか。
 それとさらにもう一つは、給付に対しての所得制限ですが、いま不動産収入の問題が出ましたので、所得制限があるのかどうか、その点いかがですか。
#34
○船後政府委員 まず障害補償でございますが、これは先ほど来申しておりますとおり、無職であろうと所得があろうと、いずれにいたしましても、この制度として決定いたします一つの基準月額というものを基礎にして一律に支払うということになるわけであります。
 それから、この制度は当然民事責任を踏まえた制度でございますから、所得制限というような社会保障的考え方は一切ございません。
#35
○小宮委員 先ほど遺族補償費の話が出ましたが、それでは、これも政令できめられることになると思いますが、児童手当、介護手当、葬祭料、これはどういうような考え方でおられますか。幾らぐらいにその額を考えておりますか。
#36
○船後政府委員 手当の額をどの程度の水準にきめるかという基本的な考え方は、先ほど申したとおりでございまして、具体的な額の決定は、今後中公審で御審議を願った上で決定することになっております。
 ただ、一つの手がかりになります現行制度でございますが、これは介護手当は最高一万円、それから医療手当は、これは入院の場合の最高でも現在のところは六千円、それからこの十月から七千円になる、この程度の、他の社会保障制度的なレベルのいわゆる低水準でございます。今度考えております制度におきましては、基本的には、実費弁償の性格を持っておる手当につきましては、やはり平均的な実費弁償的なものを考えてまいるわけでございます。おおむね、ただいま申しました額の倍程度、介護につきましては、これは介護加算という形になりますけれども、二万円程度というものを想定いたしております。また葬祭料につきましても、最近の一つの水準ということを考えまして十五万あるいは二十万といったようなことが一つの基準になるのではないか、かように考えております。
#37
○小宮委員 財源負担の問題ですが、この法案では、補償給付に必要な金は全額原因者が負担する、それから公害保健福祉事業費については、これは原因者と公費で半々負担する、そのほか協会職員の制度実施のための事務費は全部公費負担、この問題についてのきのうの参考人の方々の意見も、この問題については若干意見が食い違っておりました。もちろん私たちは、こういうような公害保健福祉事業費についても、これは加害企業が全部負担すべきではないのかという考え方を持っておりましたけれども、きのうの参考人の話でも、やはりそれで公害が発生してきたということは国も各地方自治体も責任があるんだ、そのためにはそれぞれ応分の負担をするのは当然だろうというような意見の供述もあっておりましたけれども、それにしても、まあ補償に要する金は全額原因者負担、半額とか全部公費負担というのは、これは言われてみれば、なるほど国も地方自治体も責任があるわけですから応分の負担は必要ですけれども、しかし、国や地方自治体が負担するといっても、その金は当然国民の税金ですから、その意味では、それは全額とまでいかぬでも、やはり企業者に四分の三負担させるとか三分の二負担させるとかいう意味での企業の負担を――半額を原因者負担だという考え方を変えて、もう少し企業のほうに多く負担させるというような考え方を持つべきではなかろうかというように考えるのですが、その点についてはいかがでしょうか。
#38
○船後政府委員 先生の御意見も非常に傾聴すべき御意見だと考えております。
 この公害保健福祉事業の性格が、やはり失なわれた健康を回復するという性格の強い事業もございますれば、あるいは今後被害が起こらないとかあるいはそういうために健康を増進するといったような、本来国なりあるいは地方なりが行なうべき保健福祉行政の一環としての性格を持った事業というように、幅広く考えておるわけでございます。そこで、すべてを事業者の負担とするわけにもまいりませんし、すべてを公費とするわけにもまいりません。そこで、どちらの性格に強い事業になるか、これはやはり地域のニードに基づきまして具体的に決定していくわけでございますが、そういうような不確定要素も非常に多い内容でございますので、やはりそこは割り切りまして二分の一といたしたわけでございますが、私どもは、こういう公費負担制度を導入いたしましても、これは国民の税金を投入するわけでございますから、やはりこの事業が被害者の健康回復とそれから被害の予防というものにほんとうに役立つという事業にひとつ集中的に実施したいと考えております、
#39
○小宮委員 納付金の財源について四十九条に、「汚染負荷量賦課金のほか、別に法律で定めるところにより徴収される金員をもって充て、」と書いてありますが、別の法律というといまから新しくつくるわけでしょう。そうしますと、特に移動発生源からの賦課金の徴収がやはり一番問題だと思うんです。固定発生源からの賦課金の徴収はわりあいにやすいと見ても、その場合に自動車の問題ですが、自動車の重量税の一部を充てるのか、それとも、きのうもお話がありましたように石油だとか重油だとか、そういった原燃料から賦課金を取るのか。その点、いまのところまだきまっておらぬようです。したがって、今後法律で定めるということで逃げておるようですけれども、考え方としてはそのどちらから取るお考えなのか。きのうの参考人の供述あたりでも、自動車をつくっておる、製造しておるところから取れというような、いろいろ一長一短があるのでそちらから取ったらどうなんだという意見も出ておりましたが、いままだ、どちらにするかはさまっていないようですけれども、考え方としてはどうなんですか。
#40
○船後政府委員 この制度の費用負担は、考え方といたしましては、汚染原因者の汚染に対する寄与度に応じて費用を負担させるということでございます。そうでございますので現実に汚染の負荷というものを測定いたしまして、それに応じて取るのが理論的に正しいわけでございますが、しかし、これはやはりかなり大きな発生源でないと事実上不可能でございますから、固定発生源の中の大きなものにつきましては、個々に有害物質の排出量というものを測定いたしまして、それを基礎に汚染負荷量賦課金を取るということは決定を見たわけでございます。ところが、固定発生源の中でも非常に零細な発生源、それから御指摘の自動車等の移動発生源につきましては、およそ個々に排出量を測定するということは技術的にも経済的にも不可能に近いわけでございます。どうしても汚染に対する寄与度というものにより近似的な一つのものさしを持ってこなければならぬわけでございます。そこで中公審の審議過程におきましても、大気汚染の原因物質を出しておるもとの原燃料というものに着目して、その使用量に応じて取れば比較的近似的に汚染に対する負荷度がわかるではないかという議論と、いま一つは、やはり個々に自動車というものに着目いたしまして、自動車一台ごとにたとえば重量税に準ずるような方法で取ることも可能ではないかという、いろいろな議論があったわけでございます。これはいずれの方法をとりましても、汚染に対する寄与度により近似的なという程度のものしかないわけでございます。しかも技術的にもかなり複雑であり、かつ原燃料負荷といたしましても重量税方式といたしましても、すでに現在類似の税制があるわけでございますから、これら税制並びに財政制度との関連から問題を詰める必要もございます。そのためには、予算時期でない現段階でとうてい詰まるものではございませんから、法律におきましては、まことに残念ではございましたけれども、別項に譲るということにいたしたのでございますが、四十九年度予算編成の際には、これは税制、財政制度との関連も考えました上、最終的な結論を出したいと思います。いずれにするかは、環境庁といたしましては目下白紙の状態でございます。
#41
○小宮委員 この制度を運営するための初年度の基金はどれくらいと考えておられますか。
#42
○船後政府委員 先ほど来申しておりますようにまず、この制度のもろもろの給付のレベルをどうするかというのが一方においてまだ未定でございますし、他方におきまして、一番被害者の多い大気汚染につきまして指定地域をどの程度の範囲まで含めるかという点も、一切不明でございます。そうでございますので、ただいまの御質問でございますけれども、現段階におきまして、初年度にどの程度の費用総額に乗るか、申し上げることができない段階でございます。ただ、これは数十億程度のオーダーではないかという程度の予想がついておるだけでございます。
#43
○小宮委員 固定発生源からの賦課金の徴収の問題ですが、これは一定規模以上の事業所に対して賦課するというふうになっておりますが、一定規模以上の事業所というのはどれくらいの規模の事業所ですか。
#44
○船後政府委員 一定規模以上の事業所を汚染負荷量賦課金の対象とする趣旨は先ほど御説明申し上げたわけでございまして、これはあくまでも技術的な見地、同時に徴収コストとの関連から決定したいと思っております。でございますので、一つの試案といたしましては、一時間に排ガスの排出量が一万ノルマル立米といったのが一つの線として浮かんできておりますけれども、どうするかは、今後中公審の審議を待って決定したいと考えております。
#45
○小宮委員 この制度が発足するようになりますと、各地方自治体で公害被害者に対する救済制度を設けておるところがありますね、そういうようなところの制度というのはこの制度の中に吸収されることになるのか、いかがですか。
#46
○船後政府委員 現在、地方公共団体で、国の特別措置法とは異なる地方独自の制度をしいているところは多数ございます。ただ、その内容を検討いたしますと種々さまざまでございまして、国の指定地域と全く同じ対象に対しまして上積みの給付をしておるところもございますし、あるいは給付内容は国の特別措置法に準じておりますが、地域を広げておるというところもございます。あるいはまた東京都で行なっておりますように、都下全域の十八歳未満の児童等につきまして医療費の給付をしておるというところもございまして、さまざまでございます。あるいはまた最近、四日市あるいは尼崎等で考えておりますように、内容といたしましては生活補償的なもの、いわゆる金銭給付をかなり大幅に取り入れた制度を考えておるところもございます。このように各地方の制度がばらばらでございますので、一がいには申せないのでございますが、この制度と地方の類似の制度との関係を原則的に申し上げますと、この新しい国の制度ができたからといって直ちに地方の制度が吸収されるという筋合いのものではございません。しかし、地方の制度の中で国の制度と給付内容なりあるいは目的なりが同一のものにつきましては、私どもとしましては、でき得る限り国の制度に吸収されることが望ましいのではないかと考えております。
 なおまた指定地域の問題につきましては、これは地方の指定地域がそのままこの制度に引き継がれるわけではなくて、やはりこの制度独自の考え方で、一つの基準のもとに新たに指定地域を考えていくことになります。
#47
○小宮委員 いまのお話によりますと、この制度が発足しても、各地方自治体の現在実施しておる公害被害者に対する救済事業は吸収するのだというお考えのようではないようですね。そうしますと、川崎市の場合にしても、企業から金を集めている。この制度ができますと、これはこの法律が通ったからといってあしたからやるわけじゃありませんけれども、二重にそういうふうに負担するということになると、またいろいろな問題が起きてくると思うのですが、その点がどうかということと、私も、いま言われたように、各地方自治体でやっておられる非常に特色のある、きめのこまかい、各地域に応じたこういった救済事業というのが、この制度を実施することによってやはり全部吸収してしまうということになれば問題があると思いますので、そういった点については、そういうような人たちがいままでよりは不利にならないような形を残しておくべきだ、こういうふうに考えます。
 それで、いまのお話では、指定地域の問題は、いま国が指定している地域だけを再指定をするのか、各地方自治体でいまやっておるところがありますね、こういうようなところは全然指定しないということなのか、そこまで広げて指定をするということになるのか、その点いかがですか。
 それと疾病の問題もそうですね。指定疾病の問題でも、国が指定しております疾病がありますねそれ以外の疾病に対しても、各地方自治体でそれぞれの救済をやっておる。そのやっておるのをやはり国として指定することになるのか、国は国として従来指定しておる指定疾病だけに限るのか、その点の考え方。指定地域と指定疾病に対する考え方、いかがですか。
#48
○船後政府委員 まず、現行特別措置法による認定患者でございますが、これは本法の附則によりましてそのまま本法に移行することになります。本法の経過規定では、特別措置法による地域指定がそのまま移行するとは書いておりませんが、しかし、認定患者がそのまま移行するということは要するに、現在の特別措置法に基づいて指定しております指定地域が、新しい制度による指定地域として指定されるということでございます。これは経過時の措置でございます。そこで、新しくこの制度に基づきまして地域指定ということが行なわれるわけでございまして、そのような場合には地方公共団体で現に地方独自の制度を実施しておられるところであろうと、そうでなかろうと、それはこの制度としてはいわば関係ないわけでございまして、この制度として、種々の汚染度あるいは有症率等から定めます一つの基準に照らし指定地域とすべきところは、これを逐次指定していくということになるわけでございます。
 それから次に、一番初め御指摘のございましたように、たとえば現在、特別措置法に上積みいたしまして企業から特別の拠出を取り、それによって何らかの見舞い金、弔慰金あるいは補償費、名目のいかんを問わず何らか生活補償的な定期的支払いをしておる、あるいはそういう計画のあるところがございます。こういったところにつきましては、この制度との関係を基本的にどうされるかは、それぞれの川崎なり尼崎なり四日市の御判断でございますが、先ほど申しましたように、この制度と目的なり給付種目を同一にするものにつきましては、やはりこの制度に吸収されるのは望ましいであろうとわれわれは申せるだけでございまして、それは各地域の実情に従って御判断願いたいと思います。
 なおまた、各地方におきまして、現在非常にきめこまかい施策として、あるいは市バスの無料券とかいったような措置をしておられるところがございますが、そのような地域の特殊事情に即した制度というものは、この制度に引き継ぐことは困難ではなかろうかと考えております。
 それから指定疾病につきましては、現在地方が独自でやっておられます指定疾病は、いずれも国の指定疾病である慢性呼吸器疾患等の四疾病に限られておりますが、その点につきましてはあまり問題がないのではないかと思います。
 なお、東京都では学生、生徒の光化学スモッグに着目いたしまして、一種の医療費の支給制度をやっておりますけれども、これは四十七年度の実績は一人という程度のことでございますが、これにつきましてはやはり個別ケースとして考えたいと思っております。
#49
○小宮委員 指定地域の範囲についても、きのうの参考人からの供述によっても、たとえば川崎の場合もそれから四日市の場合も、何か線路一つ隔ててこちらは指定になっておる、こちらは指定になっておらぬということでやはり問題が起きておる。そこで大気汚染の場合、煙突を各工場で高くする、そのために、なるほど落ちてくる汚染物は薄められてくるけれども、それは広く拡散されていままで指定されていない地域でも患者が発生しておるということで、きのうもかなり指定地域の範囲について、指定する場合は十分そういうような現状をよく調査の上指定してほしいというような意見も、何人かの参考人からも出ておりましたが、今回指定地域をきめる場合に、そういった現状に照らして十分現実に合うような地域を指定するように見直しをやるのかどうか、その点いかがですか。
#50
○船後政府委員 大気系疾病、いわゆる非特異的疾病をこの対象とするためには、どうしても地域指定制という制度的割り切りが必要でございまして、そういう意味におきましては、いかなるところに線を引きましょうと、線の外と内という問題はやむを得ないと考えております。ただ、そのやむを得ない度合いをできるだけ合理的にするというのはわれわれのつとめでございまして、この制度ができますれば、客観的な大気汚染度と有症率といったことから照らして、そして一つの基準のもとに指定地域というものを考えていく。とりあえずは、先ほど申しましたように、経過的には現在の特別措置法による指定地域を引き継ぎますけれども、これは経過時の問題でございまして、すべてにつきまして新しい一つの基準でもって見直していくということになります。
#51
○小宮委員 それから、この認定患者の問題ですね。患者は、やはり国が現行法で指定しておる認定患者をそのまま引き継ぐことになるのか、その点いかがですか。それで数はどれぐらいになるのか。
#52
○船後政府委員 現行特別措置法によりまして認定患者とされております者は、これは法律の附則によりましてこの制度に引き継ぐことになります。その数は約一万人でございますが、詳細には橋本審議官からお答えいたします。
#53
○橋本説明員 四十八年五月末現在の救済法の指定地域におきます認定患者の総数は、一万一千二百九十四人でございます。
#54
○小宮委員 厚生省、来ておりますか。
#55
○佐野委員長 呼んでないですね。
#56
○小宮委員 それでは、これはこの前からも生業補償の問題、いろいろ言われておりましたけれども、この人たちの生業補償についての救済措置ですね。長官も再々、予算委員会あたりでも、四十九年度中にひとつ検討をするということを言われておりましたが、ここではっきり確認しておきたいことは、四十九年度にやるということになりますと、次期の通常国会あたりにその法律案を提出するのかどうか、その点ひとつ確認をしておきたいと思いますが、いかがですか。
#57
○三木国務大臣 私が申したのは、四十八年度は健康に関する損害補償、これを軌道に乗せたい、四十九年度から真剣に検討にかかりたいということで、現在のところ、これは次の通常国会に提出をいたしますという約束をすることは軽率だと思います。しかし、四十九年度からこれを実現させたいという方向で取り組むということでございます。
#58
○小宮委員 質問を終わります。
#59
○佐野委員長 田中覚君。
#60
○田中(覚)委員 ただいま提案されておりまする法律案は、今後数多くの政令や別途の法律にその解決をゆだねておる重要な問題が山積いたしておりまするけれども、これだけの法案を限られた期間におまとめをいただきました大臣はじめ政府関係当局の御努力には深く敬意を表するものであります。私も、かつてこういった公害問題の紛争にあたりまして、その当事者となったりあるいはあっせん等をいたしましたときに、こういう制度が確立されておらないために、全く針のむしろの上にすわっておるようなきびしい感じを抱いたこともたびたびございまして、そういう意味におきまして、今回こういう新しい制度ができますことは、私どもといたしましてすみやかにその成立を期すべきである、そういう基本的な立場に立っておるものであります。しかしながら、その内容あるいは運営等につきましてはいろいろお尋ねしたいこともございまして、御質疑に立ったわけでございますが、ただいまの小宮委員の御質問をはじめといたしまして、これまですでに質問をせられました方々に対する答弁によりまして相当明らかになった点もございますので、そういったことは重複を避けて、残された問題で私が尋ねたいと考えておったことだけにしぼって、質疑をいたしたいと思います。
 その御質疑に入ります前にまず副総理に伺いたいと思いますことは、副総理は、今回のこの法案は画期的な法案である、あるいはいままでに類例のない法案である、またときには、世界的な法案だということを、たびたびおっしゃっておられるわけでございますが、かく言われる具体的なポイントというものをひとつお教えをいただきたいと思います。
#61
○船後政府委員 長官が世界に類例がないと申しておりますのは、これは決していばった意味ではございませんでして、むしろ私ども、かかる法案をつくらざるを得ない日本の現状というものにつきましては残念に思っておるわけでございます。ただ、日本の現状におきましては、環境汚染というものが人の健康被害にまで至っておるのが現状でございますから、そういう現実に立脚いたしまして、これを裁判等の手続によることなく制度的に救済を急ぎたいというところから、この法案をつくったわけでございまして、そういう意味におきましては、これと同じような法律は、世界各国にはその例を見ないわけでございます。ただ、たとえばオランダ等におきましては、大気汚染防止法の系統の中で、大気に対する負荷量に応じて一定の課徴金を徴収し、これをファンドとして、その中から健康被害も含めまして損害が生じた場合にはこれに給付するということを考えておるようでございますが、これもそういう法律の規定があるだけでございまして、制度そのものはまだ動いてないように承知いたしております。
#62
○田中(覚)委員 ただいまおっしゃったような趣旨におきまして、私も、今回のこの法案の作成につきましては高い評価をいたすものでございますが、ただ、ただいまお話しのように、外国では、これだけまとまった公害健康被害の損害補償措置というものは、まだ実施に移されておらないことは事実でございますが、しかし、外国の場合は従来、こういった公害問題の発生にあたりましてケース・バイ・ケースで解決がなされておる、そういう事例が相当あることを私仄聞いたしておるわけでありまして、そういう意味で、こういった制度の発足の必要性というものがそれほど痛切でなかったといったような事情があるのではないか。たとえばイギリスなんかは公害裁判の即決制度などもあるようでございまして、日本の裁判のように長い間かかって多大の労力を使わなければならぬというような事情がないということが、外国におけるこういった制度の発足をおくらせておるのではないかというふうに思うのであります。
 したがいまして、こういった法律につきましては先進的であることは、確かに間違いないわけでございますが、しかし、必要性から見れば必ずしも先進的とはいえない。むしろ実態は、わが国の四大公害裁判の判決の結果によって促されたといいますか、導き出されたといったような事情が相当強いのではないか、かように見ておりまして、したがってこの法案作成の評価というものは、今後これがほんとうに迅速かつ公正に公害被害者の保護をはかり得るかどうか、そのためには今後に残されておる政令のきめ方であるとか、あるいはこの制度の具体的な運用のしかたいかんにかかっているというふうに思うわけでございます。本日この政令の説明資料という大部の資料を御配付いただきまして、いまそこでずっと通覧をさせていただいたわけでございます。ある程度のお考え等はこれでわかるわけでございますが、しかし、具体的な問題は今後に残されているということは明らかでございますので、関係審議会あるいは専門家、関係方面の意見などもひとつ十分聞いていただいて、せっかくできたこの制度が、なるほど国民の期待にこたえるものであったというふうにぜひしていただきたい、そういう気持ちで一ぱいでございます。
 そこで、第二に申し上げたいのは、この健康被害のほかの、農林漁業の生業被害とかあるいは財産被害等に対する損害補償の成案のめどは、実はいま大臣から伺いましてよく承知をいたしたのでございますが、こういった健康被害あるいは生業ないしは財産被害といったものについての損害補償にあたりまして、その間の基本的な考え方というものには一体変わりはないのか。つまり共通の原則というものに立脚して処理をされるのか、あるいはそれぞれの特色に応じまして別個の考え方等が当然に必要だというふうにお考えになっておられるのか、その辺のところの御構想の一端をお漏らしいただければたいへんありがたいと思います。
#63
○船後政府委員 いわゆる公害による被害は、これは健康の被害であれあるいは財産上の被害であれ、被害者にとりましてはやはり一方的に受けた被害でございまして、その損害は当然原因者の負担において償われねばならない。こういう意味におきましては、健康被害も財産被害も、いわゆるPPPと申しますか、同じ考え方に立つべきものだと思います。ただその場合、原因者が何であるかということにつきましてはやはりむずかしい問題があるわけでございまして、特に財産被害になってまいりますと、赤潮被害におきますように、赤潮という現象を発生させた原因はほんとうに何であるか、これはやはり科学的にはまだ定説がないということがございます。そういった意味におきましては、原因者のきめ方というものはなかなかむずかしいと思います。また健康被害におきましては、これは人の健康の被害ということでございますので、疾病にかかっておるということでもって判断がつくわけでございますが、しかし財産被害になってまいりますと、屋根が腐るとか洗たくものがよごれるというように目に見えた被害もあると同時に、最近のPCBあるいは水銀汚染魚の問題に見られるようにいわゆる経済的損失の範疇に入りますので、因果関係をどのように考えるかという点で非常につかみにくい問題があるのも事実でございます。また健康被害におきましては、先例といたしまして労災保険とかあるいは健康保険等の制度がございますので、制度的な給付といたしましてはある程度の定型化は可能でございますが、財産被害になってまいりますとそういった意味における定型化はきわめて困難ではないかというように、制度の具体的な仕組みになってまいりますと、両者はきわめて違ったものになるのではないかと考えております。
#64
○田中(覚)委員 それでは、同じ健康被害につきましても、現在提案されておる法律案では大気の汚染と水質汚濁というものが取り上げられておるわけでございますが、公害審議会などでも指摘されておるような騒音による健康被害、これはあまり深刻性を持たないかもしれませんけれども、一つの問題点であるし、また最近やかましくいわれておる食品公害ですね、いろいろな食品について。こういったものについての健康被害に対する救済策というものは、どのようにお考えでございましょうか。
#65
○船後政府委員 騒音によりまして生理的な機能障害が起こることは明らかでございますけれどもこれが疾病として直ちに把握し得るという点につきましては、なお問題があるわけでございまして、今回の法案作成の過程におきましては中公審の議論になったところでございますが、疾病としてとらえる本制度では、騒音による被害は除外したわけでございます。
 しかし、騒音問題もやはり非常に大きな問題でございまして、この場合には睡眠ができないとか、いらいらするとかといったような問題から、二次的なやはり身体的な障害が起こり得る可能性があるわけでございますから、そういった問題は当然取り上げねばならぬのでありますが、他方における生活妨害的な要素、こういったものとまた切り離して一つ制度を立てるというのも無理ではなかろうかと思います。
 なおまた騒音の場合には、空港でありますとか、新幹線でありますとか、あるいは高速道路というように、いわゆる原因が明らかでございますから、それぞれの原因ごとに一つのまとまりのある対策の体系というものを立てるほうが早道ではないかというようなことも考えられますので、今後このような方向で検討させていただきたいと考えております。
 なお、いわゆる食品公害あるいは薬品公害といわれる問題でございますが、これは被害者の受ける被害という点から見ますと、公害による健康被害と類似した点があるわけでございます。しかし本法による被害は、あくまでも大気の汚染あるいは水質の汚濁という環境汚染を経由いたしました健康被害としての疾病を問題としておるわけでございまして、食品あるいは薬品から直接に被害を受ける問題は、あくまでも食品衛生法あるいは薬事法なりの体系において解決すべき問題である。現在厚生省におきましては委員会をもって検討しておると聞いておるところであります。
#66
○田中(覚)委員 以下、ごく簡単にこの法律案の条文を追いまして、二、三の点だけちょっとお伺いをいたしたいと思います。
 まず第一は、この第二条のいわゆる地域指定の問題でございますが、この点につきましては、すでにほかの委員の方々からもたびたび御質問もあったところでありまして、私も、この中で第一種地域というものが、汚染の状況や有症率等によりましてあるところで線引きがなされなければならないということは、もうよくわかるわけでございますけれども、昨日も参考人の方々が異口同音に言っておられましたように、この法律のめざすところはあくまでも人の健康被害に対する救済が目的である。そういう関係で、指定地域からはずされた隣接の地域等におきまして存在をしておる患者の救済がそのためにできなくなってしまうという点につきましては、何らかの知恵を出して御処理を願いたい、こう思うわけでございます。これは別の機会にもお尋ねをしたこともございまして、政府のお考えは大体推察しておるわけでございますし、また、いまいただきました政令の資料等によりましても、従来の考えをそのまま踏襲していくというような考えが強く出ておるようでございますが、この点については何とか少し考えを改めていただけないものか。これにつきましてのお考えをひとつ伺いたいと思います。
#67
○船後政府委員 地域指定の問題は、個別的に因果関係を確定し得ない非特異的疾患をこの制度の給付対象とします関係上、どうしても制度的にはとらざるを得ない次第でございまして、そういう意味におきましては、この指定地域をいかに定めましょうとも、やはり線の内外という問題は生ずるわけでございます。私どもとしましては、先ほど小宮先生にも申し上げましたように、その線のきめ方をできるだけ合理的にしたい、かように考えております。
 現在の指定地域につきましては種々問題の存するところでございまして、さしあたりこの経過措置といたしましては、現在の指定地域をこのまま取り込むということになりますけれども、しかし新しい法律の精神に照らして、客観的な大気の汚染状況あるいは有症率の問題等の基準に照らして地域指定という問題は考えてまいりたい、そういった意味で、現行地域指定につきましても見直しということはあるわけでございます。
#68
○田中(覚)委員 たいへん御理解のある御答弁をいただきましたので、ぜひひとつ実りのあるような対策を打ち出していただきたいと思うのでございますが、それに関連いたしまして、実はきのう私も参考人に質問をいたしたのでありますが、そしてまた、いま局長からお答えがございましたように、とにかくどこかで線を引きますから、その境界のところではいつもそういう問題が生ずる、理論的にはそのとおりでございますけれども、実際に問題の起きているところは無限に拡大をしていくというわけでは実はないのでございまして、現実に公害患者とおぼしき者が相当多数存在をしており、そして当該の市町村がそれに対してすでに独自の措置として何らかの救済措置を講じておる、講ぜざるを得ないような、そういう具体的な事情が存在をいたしておるわけでございます。そういうことでございますので、私は、まあ白と黒との間に灰色の地域をひとつ指定してもらえないか、そしてその地域については、これはもちろん疫学的な調査に基づいてやらなければいかぬと思いますけれども、そういった灰色地帯に対する補償措置というようなことを考えられないものかということも、実は尋ねたような次第でございます。そのときに笠松参考人からは、一つの考え方といたしまして、割合的認定制度というような構想が出ました。これはいろいろな原因によって病気になっている、そのうちの何割かがいわゆる大気の汚染等の公害によるものであるといったような認定が可能であるというようなお話も実はございました。そういったこともぜひお含みいただきまして、前向きの御検討をぜひお願いをしたい、こう思っておりますので、つけ加えて申し上げておきたいと思います。
 次に、第三条の補償給付の種類の問題でございまして、先ほど小宮委員から慰謝料の問題、かなり掘り下げて御質疑がございました。大体政府の意のあるところは私もよく理解をいたしたのでありますが、ただ、なお若干疑問に思いますことは先ほどの局長の答弁でございますと、たとえば障害補償費でも、慰謝料というこういう給付は特掲はしておらぬけれども、慰謝料的要素も加味しておるというような御説明であったかと思いますがそうでありますと、たとえばこの十三条に規定されておりますように、同一の事由について、損害のてん補がなされた場合においては、その価額の限度で補償給付を支給する義務を免れるということになっておりますので、現在すでに財団あるいは県、市等の措置をもちまして実施をしておる補償給付の中に、慰謝料というものがはっきり出ておる、あるいはいま四日市の公害財団のごときは一律に三百万円の慰謝料を患者が要求し、これが実は争点になって非常に紛糾をしておるというような事実があるわけでございますが、もしこの七つの特定されました補償給付の種類の中に慰謝料的な要素がやはり加味されているということになりますと、いまの十三条のいわゆる補償給付の義務を免れる関係から、企業側としては、かりにこの制度が発足して踏襲をされた場合のことを考えますと、慰謝料的な要素はすでにこちらの国の制度に入っているというふうなことも言い得るわけでありますが、その辺のところは一体どういうふうに理解をしたらいいものでございましょうか。
#69
○船後政府委員 まず、この法案の第十三条でございますが、この条文は、この制度で行ないますところの給付に慰謝料があろうがなかろうが、全く関係はございません。あくまでも同一事由について、損害がてん補されたときは、その価額の限度でこの制度が補償給付の義務を免れると書いてあるだけでございます。したがいまして、すでに他の理由、つまり民事的に損害をてん補されたとか、慰謝料という名目であるか、あるいは逸失利益という名目であるか、あるいは見舞い金という名目であるか、それは問うところではありません。
 なお、かりにこの制度の給付の中に慰謝料的要素が含まれておるということを理由といたしまして、企業側が民事の問題として被害者からの慰謝料の請求を拒否するというようなことは、事実問題としてあり得るかとも思いますけれども、法律的にはそれは全く問題にならない点でございます。
#70
○田中(覚)委員 それでは角度をちょっと変えまして、先ほど、慰謝料についてのいろいろ御議論の中でも触れられておりましたが、たとえば、きのう笠松参考人の言われた意見の中で、労災は八時間労働が障害の対象になっておるけれども、公害患者の場合は四六時中、すなわち二十四時間まるまる障害の対象となるんだから、労災と比較して八〇%にするというのはいかがかというような意見がございましたが、これは見方を変えていえば、慰謝料的な障害の給付、補償の給付というものを逆に認めておる発言じゃないかというふうな感じがいたしますが、その点はいかがでございますか。
#71
○船後政府委員 労働者が職場で病気になります場合には八時間労働であり、それから一般住民が大気汚染による被害を受けるのは二十四時間であるというのは、まさにそのとおりでございます。しかし、それは健康被害としての疾病が生じたという一つのプロセスにすぎないわけでございまして、この制度で考えておりますのは、そのような結果として生じた一つの疾病という損害、これをいかにして補償するかという問題でございます。したがいまして、八時間と二十四時間ということは、疾病が生ずる経過の説明にはなりますけれども、結果として生じました疾病を、どのように損害を補償するかという問題とは直接に関係がない。ただし、公害というのは、四日市の裁判でも申し述べておりますように、労働者ならば、みずからの意思によって雇用契約を結び、そして一つの職場に働いておって病気になるというような事情があるのに対し、一般住民は、二十四時間全く自分の意思に反して被害を受けておるという特殊性があるわけでございますから、このような事情というものは、やはり労災とこの制度の給付レベルを考える際には十分考慮する必要があるというふうに考えております。
#72
○田中(覚)委員 時間がございませんので、次に進めたいと思います。
 次に、第七条、「認定は、指定疾病の種類に応じて政令で定める期間内に限り、その効力を有する。ただし、政令で定める指定疾病に係る認定については、この限りでない。」という規定がございます。これは指定疾病の認定をする場合に有期の認定をするということでございまして、これはいま政令の説明資料によりましても、当然に回復見込みによって疾病ごとにきめられる問題だということはよくわかるのでありますが、有効期間中は再認定のための診断というようなことは一切ないというふうに考えていいのでございましょうか。それと同時に、この期間をきめない、いわゆる永久指定といいますか、そういったものももちろん政令で定められることになっておるわけでありまして、これは結局、なおりにくい病気ということかと思います。したがいまして、たとえば水俣病のように脳神経が侵されて回復できない、イタイイタイ病のように骨をやられてしまって回復がおぼつかない、そういったものになるかと思いますが、有期にするかあるいは無期にするかという点につきましては、疾病の特性に応じてきまる問題であることはよくわかりますけれども、その辺のところは一体どういう考え方で御指定になるのか。たとえば子供の場合なんか、同じ病気でも非常になおりやすい、なおる可能性が高いということもあろうかと思いますが、そういった点は一体どういうふうにお考えでございましょうか。
#73
○橋本説明員 ただいま先生の御質問にございました認定につきまして、認定したあとでまたそれを更新することがあるかどうかという御質問でございますが、この法律の中では認定の更新というものがございまして、満期でなおる見込みがない場合にはそれを延ばすことができるというものもございますし、また、これは障害等級――非常に問題になるのは障害等級のほうで重くなった場合でございますね。有効期間の間で、さらにその有効期間に満たない間に重くなった場合にどうなるかという問題が一つの問題になろうかと思いますが、それはこの二十八条のところに、やはりその期間内にさらに増進したことを理由にして額の改定を請求することができる、これは二十八条の三項でございます。そういう条項がございますし、またその前の二項をごらんになっていただきますと、その途中でも、この障害の程度が政令で定める程度に該当しないときには打ち切ることができる、そのいずれの側でもできるようになっております。そういう意味で、有効期間内に病気の症状が変わったというような問題が起こった場合にはこの法律は対処し得る条項を持っておるということでございます。
 それからもう一つは、先生の御質問はこの無期認定の問題でございますが、無期認定は、この症状が固定しているあるいは不能状態が固定しているというような場合には無期認定にしなければならないだろうということを考えておりまして、具体的には先天性水俣病の方でなおる見込みがないという方、これは当然無期というようなものになってくるのでございましょうし、また肺気腫で肺の細胞組織が破壊されている。なおる見込みがないというようなものは、これは無期認定になってくるということになってまいります。ただ、どういうぐあいにきめるかといいますのは、従来概念的にはそういうぐあいに実際患者さんを見て、ちゃんとそのような考え方がございますが、はたしてどのようなケースに無期認定にするかという点につきましては、これは非常に重大な問題でございますので、この審議会が発足いたしまして、医療の専門家が寄って、どういう場合に無期認定にするかあるいは期間をどのようにするかということをきめたいと思います。実は現在救済法の患者さんの中で有病期間がどれだけかという詳細なデータを私どもはとれておりません。それは私ども今後調査の上とって、それからそれを基礎にしてこの審議会の先生方に御審議願ってきめるということになりますので、現在の段階ではおのおのの期間について具体的な案を持ち合わせておりません。
#74
○田中(覚)委員 お配りいただいた政令の説明資料では、無期認定対象をきめる場合はいわゆる疾病を政令で定めるというふうに書かれておるものですから、疾病と同時に症状によってきめるというお考えですね。
#75
○橋本説明員 いま申し上げました疾病と同時になおる見込みがないという条件をどのようなぐあいにからみ合わせるかという問題は当然起こるものかというぐあいに考えております。
#76
○田中(覚)委員 それを伺いましたのは、四日市ぜんそくの場合でも四日市市が単独にやっておりました時分には、認定の有効期間一年で実はやっておりました。その期間中はもちろん認定患者はふえてくるわけでありますけれども、他面においてなおって認定の指定からはずれてくる患者もあるもんですから、結果的にはそう認定患者の数がふえなかったのでございますが、その後四十五年に新しい制度に移行いたしましてからはいわゆる有効期間ということをつけないで認定をいたしました。そういたしますと、やはり毎年ふえる一方というような結果になった事例もあるもんですから、そのようなところをちょっと御参考に実は伺ったわけであります。
 次に第二十二条、「診療方針及び診療報酬は、環境庁長官が中央公害対策審議会の意見をきいて定めるところによる。」と書かれておりますが、これは現在の保険制度に準じたことになるのか、あるいは公害の健康被害に即応した別個の新しい措置がとられるものであるか、この点を伺いたいと思います。
 と申しますことは、実は従来保険点数をそのまま四日市等の場合で踏襲をいたしておりました。その間にわれわれはたびたび聞いた声は、第一番に、保険と同様な手続では手続が煩瑣でやり切れない。もっと手続を簡素にやってもらえないかといったような強い要望もございましたし、それからまた重症患者の場合は特別の病室だとか特別の付添人などもつけなければならぬ場合もあるわけでございますが、これらにつきましては、もう少し現在の保険制度でも条件を緩和してもらいたい、こういうような要望も実は出ておりましたし、さらに先ほどちょっと御答弁がございましたが、空気清浄室というような特別の病室に収容をいたしておりますけれども、県立病院でも市立病院でもこれについて差額ベッド的なものは何ら徴収しておらぬわけでございますが、今回こういう新しい診療報酬等の制度が発足するのであれば、そういったことが十分にカバーできる措置にしてもらいたい。これは四日市ぜんそくばかりじゃなしに水俣病なんかでいえば、特殊なリハビリの措置などが必要だというふうに聞いておりますが、そういったことも含めますとやはり新しいやり方をぜひ考えてもらわなければならぬのじゃないか、こう思っておりますので、お伺いをいたしたわけでございます。
#77
○橋本説明員 診療方針及び診療報酬の問題でございますが、本制度は概念的には社会保障制度と異なりますので、健康保険の例によるということをとっておりません。そういう意味で健康保険とは別の制度ができるというのが基本の立場でございます。
 この制度は一年後に発足させようというわけでございますから、一年の間にどの程度の問題の検討ができるかということも当然一つの条件でございますし、それからもう一つは、第一種の非特異性の疾患と申しますのは、別に大気汚染の地域だけでなく、どこにでも慢性気管支炎もぜんそくの患者さんもいる、こういうこともございまして珍しい病気ではないということでございます。そのような問題もございますので、非特異性の大気汚染系の疾患におきましては、現行の健康保険制度のやり方をどの程度モディファイしなければならないかというようなところが一つの基本になろうかというように思われます。そこの中で先生の御指摘になりました空気清浄化病棟というような問題などは当然私ども考えなければならないというような考え方を持っております。
 しかし、第二種のほうのイタイイタイ病、水俣病というような病気は非常に特殊な病気でございまして、このほうの問題になりますと、現在の健康保険制度で一体どのように対応できているのかどうかということになりますと、これはなかなかいろいろ問題があるのではないか。特に健康保険制度は、リハビリテーション等においては労災ほどもカバーしていないというような点もございます。そういう点で第二種の場合にはかなりな手直しを要する公算が高いというぐあいに思っております。
 そういうような基本的な考え方を念頭に置きまして、実は今年度の予算で二つの調査をして、一つは現在までの救済法でやられた保険医療をすべて疾病別に洗います。そうして保険医療の実態というのを洗いまして、疾病別あるいは年齢別、性別、病状別にどのような医療の実態だったかということをはっきりつかまえます。それを基礎にしてどうモディファイするかという議論をします。もう一点は、医師会に研究委託費を出しまして、これは現地で治療をしておられるお医者さん、医師会のメンバーの方あるいは現地の病院の方を中心にして現在の健康保険医療でどこができなかったのかということを具体的に整理をしてください。それを素材として二つの社会保険医療の実態と現地で実際医療をやられた方々が社会保険では見られなかったといわれておるものとをあわせてみて、そうして新しい制度をできるだけ合理的につくりたい。
 また、御意見にございました手続を簡素化するということは、私どももできるだけ簡素化したいということを思っております。しかし、どうしてもある程度の手続は必要ということでございますが、従来のような一つの疾病が二つのところに請求するということはなくなるわけでございますが、続発病をどうとるかというところ、これはお医者さんとしては非常に複雑化するところの一つの問題だということを、私ども時間を見てはいま現地のお医者さんと話をしております。そのような点はやはり先生方と十分話をしながら整理をいたしたいというぐあいに考えております。
#78
○田中(覚)委員 時間がございませんのでその次に入りたいと思いますが、二十六条の障害補償費の額につきまして、先ほど平均賃金と労災保険の中間をとって八〇%にされようとしておる考え方の基本について局長のお話は大体私わかりました。結局厳格な因果関係を基礎にしておるのじゃない。つまりゆるやかとおっしゃいましたか、ゆるやかな因果関係を基礎にしてやっておるということが八〇%程度に押えた最大の理由というふうに受け取りましたが、間違いございませんか。
#79
○船後政府委員 中公審の答申におきましては、結論といたしまして労災保険等の社会保険の給付レベルと裁判例に見られる給付レベルの中間程度といたしております考え方は、一方におきましては労災の障害とは違う公害の特殊性がある。他方におきましては、この制度がやはり一つの因果関係を制度的に割り切りまして、一つの給付体系をつくっておるというような事情、そういったことから勘案いたしまして、両者の中間というふうにいたしたものと考えております。
#80
○田中(覚)委員 ただ、そうだといたしますと、この非特定疾患の場合は八〇%でもやむを得ないかと思いますが、特定疾患の場合は、むしろ因果関係はきわめて明確でありますから、これを八〇%に押える理由はないじゃないか、一〇〇%にすべきじゃないかというふうな感じもいたしますが、その点はいかがですか。
#81
○船後政府委員 特定疾患の場合には比較的因果関係はつかみやすいと思いますけれども、この制度といたしましては、あくまでも民事的な責任者というものを確立するわけではございません。それを確立しようといたしますれば、やはり水俣裁判にいたしましても、イタイイタイの裁判にいたしましても、数年間という期間がかかるという問題があるわけでございます。この制度はそれを迅速にやるために、原因者と目されるものにつきましては強制的に特定賦課金というものを課しまして、それを財源として給付をするという意味におきましては、因果関係の問題については、やはり基本的に第一種地域と変わりはないかと思います。
#82
○田中(覚)委員 いろいろ伺いたいんですが、時間がないので、次に四十六条の「公害保健福祉事業」ですが、これは実施主体は都道府県知事または政令で定める市の長、これが環境庁長官の承認を受けてやるというシステムになっておるわけでございますが、白木参考人の意見などを聞いておりますと、この公害保健福祉事業というものは、もっと大規模な、徹底した施設などを整備する必要があるということを非常に強調されておるわけでありまして、そういう点から申しますと、財政力の弱い地方自治体、しかも企業は半分しか出さない、そういう財源構成のもとでこの公害保健福祉事業を推進するというのは、何かどうも片手落ちじゃないかというような感じがいたします。もちろん国の場合は、別に法律の規定がなくたって、予算上の措置等で当然できる道もあるかと思いますが、この点についてのお考えはいかがでございましょうか。
#83
○船後政府委員 第四十六条の公害保健福祉事業は、一方におきましては被害者の健康の回復という、原因者の責任に非常に近い面の事業と同時に、被害の予防といったような、福祉行政あるいは保健行政というものに近い性格の事業まで広範に含んでおるという事業でございますので、財源構成の点につきましては、公費と原因者と折半といたしたのでございます。しかし、個々の事業の内容になりますと、これはある場合には治療施設でございますとか、ある場合にはリハビリテーションの施設というようなことになるわけでございまして、それぞれの治療施設、たとえば病院をつくるということになりますと、これはまた国なり地方なりが当然別個の観点から、ある地方につくるということはあり得るわけでして、その場合に公害病患者は絶対入れないということには相ならぬわけでございまして、そういう意味におきましてもこの事業と全く同一内容の事業は、それぞれの体系におきましては今後も積極的に進めてまいる。ただ、こういう特殊な財源構成を持った事業を、このような福祉事業と称して、根本制度のいわば付帯的な事業として事業責任も加味しつつ、このほうもまた積極的にやっていこうということになっているわけでございます。
#84
○田中(覚)委員 この点につきましては、地方自治体に押しつけるというとたいへん失礼な言い分でございますが、そういうことではなくて、国のほうももっと積極的な姿勢を逆にひとつ打ち出していただきたい。どうも私は、参考人の意見などを聞いておりますと、そういう声が相当強いように拝聴しておりますので、ぜひお考えをいただきたいと思います。
 それから、次に四十九条、納付金の財源の問題でございますが、この協会の納付金に充てるべき汚染負荷量賦課金ですか、それと別に法律で定める移動発生源からの徴収金、この後者につきましては別途の法律にゆだねられておりまして、若干おくれておるわけでございますが、来年の七月ごろこれがいよいよ発足できるという予定のように聞いておりますけれども、それまでには、同時に発足できる運びにこれはなるものでございましょうか、その点をまず伺いたいと思います。それから、この両者の配分の比率ですね。これは状況は毎年当然変わってくるので、したがって毎年この配分の比率は変わるというふうに承知していいものでございましょうかどうか、その点をひとつまず伺いたいと思います。
#85
○船後政府委員 まず、本法は公布の後一年以内に施行いたします。他方、事務機構的な部分、たとえば協会の設立等は九カ月以内として、三カ月の差を置いてあります。その趣旨は、協会を先に発足させまして、そして三カ月の間に汚染負荷量賦課金の徴収を行なうというためのものでございます。
 なお、別に法律で定めるところにより徴収される金員が、どのような形の徴収方法になるかによって違いますけれども、いずれにせよ、これは四十九年度予算編成時の問題といたしまして、その際にどのような形態で、だれからだれが徴収するかということをきめるわけでございますから、これもまた本法施行までには間に合うように事務を進める問題であります。
 それから第二点でございますが、汚染負荷量賦課金と別法で定められます金員との配分比率でございますが、これはやはり客観的な大気の汚染、その中身である有害物質の排出量というものに応じて配分するわけでございますから、理論的には毎年変動するわけでございますが、それを小数点どの程度までするかということとも関連いたしまして、なお別法の定め方とも関連し、政令でもって具体的に考えたいと思っております。
#86
○田中(覚)委員 この法律の規定から見ますと、第一種地域と第二種地域の経理運用、これはおのおの独立の会計として別個に処理をされるものか、あるいは両者有無相通じて運用されることになるのか、その辺のところはどういうことになるのですか。
#87
○船後政府委員 まだ協会の財務手続の詳細までは検討いたしておりませんが、考え方といたしましては、第一種地域にかかわる費用負担者と、第二種地域にかかわる費用負担者とは別でございますから、あくまで経理は別にすべきである、かつまた第二種地域におきましても、それぞれの疾病地域ごとにこれまた費用負担者が異なるわけでございますから経理は別にすべきである、かように考えております。
#88
○田中(覚)委員 次に、第五十二条、汚染負荷量賦課金の汚染の原因物質は政令で定める物質につきまして徴収することになっておるわけでございますが、この「政令で定める物質」というのはさしあたり亜硫酸ガスとNOx、こういうふうに理解をしていいのでございましょうか。
#89
○船後政府委員 閉塞性呼吸器疾患の原因物質といたしましては、医学的に種々の物質があげられておりますが、やはり大宗をなすものは亜硫酸ガスと窒素酸化物であろうと考えます。したがいまして、政令におきましてもこの両者は指定することになろうかと思いますが、ただ、窒素酸化物につきましては現在測定に関するデータがございません。それで、各企業別にこの汚染負荷量賦課金を算定するに足るだけのデータは現状においてはございません。したがいまして、四十九年度につきましては、とりあえず町でもってこの賦課金計算をせざるを得ないのではないかと考えております。
#90
○田中(覚)委員 次に、百三条に「協会の解散については、別に法律で定める。」と書いてございますが、この協会の解散ということは、こういう制度による公害健康被害の救済制度の終えんを意味するというふうに理解をしなければならぬかと思いますが、どういう条件が充足されたとき、あるいはどういう状況になったときに一体解散が考えられるのか。当分解散などはないと思っておりますけれども、御参考までにひとつ伺っておきたいと思います。
#91
○船後政府委員 やはり本法の目的を達成いたしまして、協会の存在意義がなくなるというときに解散が行なわれるわけでございます。それを「別に法律で定める。」といたしておりますのは、財務上の清算をどうするかといったような問題はその時点でなければわかりませんので、解散の条件等は別に法律に定めておるわけでございます。ですから、どういう状態になればということは、いまのところばく然と、ともかくこのような協会の存立が要らなくなるような、そういう事態になりますれば当然解散という以外に、お答えのしようがないのですが、御了承願いたいと思います。
#92
○田中(覚)委員 私がお尋ねした趣旨は、つまり環境基準はだんだん強化されると思いますが、環境基準が達成されても、公害患者が存在しておる間は当然これは存続しなければならぬのじゃないかと思ったわけでございます。しかし、これ以上お尋ねする必要もございませんので、この点はもうこれでとどめておきたいと思います。
 さっきちょっとお尋ねするのを忘れたのですが、先ほど小宮委員の御質問にもございましたけれども、第十三条の問題になるかと思います。同一事由に基づいて損害の補償をしておる地方の単独措置ですね。県、市が特別会計でやったり、あるいは財団方式でやったりしておる単独措置というものは、この国の制度が発足したからといって直ちに吸収されるものではないというふうなお答えが先ほどございました。しかし、目的や給付内容の同一のものは吸収されることが望ましい、こういうお話もございましたけれども、われわれの理解するところでは、こういった類似の地方の単独措置というものは、少なくとも国の制度に吸収できるものはこの際当然に吸収をしてもらうべき筋合いのものではないか、こう実は受け取っておるわけでございます。先ほどお話しのように、直ちに吸収されるわけじゃないということになりますと、この制度が発足したときに、現在やっておる、あるいはやろうとしておる地方の単独措置というものは一体どういう手続をとって国の制度に乗り移ればいいのでございましょうか。
#93
○船後政府委員 法律的に申し上げますと、地方の条例なり、あるいは当事者間の契約によって存在しております制度をこの法律でもって一方的に吸収するとかいうことはできないわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、地方の制度の目的なり給付内容がこの国の制度と同一であるあるいは類似するというものにつきましては、やはり費用負担の関係とか事務の点とかを勘案いたしますれば吸収されることが望ましいと考えます。吸収されるかいなかは、これはむしろ地方の制度におきまして、この国の制度が実施された場合に自分たちの制度の存続をどうするかという観点から御判断願いたいと思います。
#94
○田中(覚)委員 その場合に、同一の原因に基づく同一の公害病についての補償措置が全国的にあまりアンバランスがないほうが望ましいように思います。しかし、他面におきましては、従来それぞれ地方独自の経緯もあり、あるいは地方の特色を発揮したほうがいいというふうな御意見もないわけではございませんけれども、もしアンバランスがあまりないほうがいいということであれば、かりに国の制度が発足した場合、国の制度に乗り移れるものは乗り移って、あと乗り移れない、つまりそれをオーバーする措置は当然地方単独の措置で残りますけれども、それらにつきましても国としてはどういう態度で今後指導をされることになりますか。
#95
○船後政府委員 地方が単独で実施いたしております制度も千差万別でございまして、たとえば現行特別措置法と地域指定の範囲も全く同じである。ただ給付内容につきまして、国の療養手当に対して若干の上積みをしておるというにすぎない程度の制度ならば、これは吸収されることはさほどの支障がないのではないかと私考えております。しかし、地方独自に、原因者グループと被害者グループとの間でやはり具体的な事情がございまして、そういう具体的な事情を踏まえて何らかの給付をしておられるというふうな場合には、この制度との関係はどうなるかという点につきましては、地方ごとに御判断を願うほかはないのではないかと思います。それからまた、この制度ができましても、地方ごとに非常にきめこまかい措置をとっておられる制度がございます。先ほど小宮先生にも申し上げましたが、たとえば市バスの無料パスを配るとかいったようなたぐいのきめこまかい施策につきましては、これはやはり国の制度とは別個に地方として存続されるという場合は大いにあり得るのではないかと考えております。
#96
○田中(覚)委員 最後に、もう一つだけ伺っておきたいと思いますが、きのう、白木参考人でございましたか、この健康被害者の救済にあたりまして、ただ単にこういう金銭的な救済だけでは足りない、民事責任に合わせて刑事責任も追及すべきであるというような御意見がございまして、これはまことに重大な御発言じゃないかと、実は承ったわけでございますが、これについて環境庁の御所見を承ることができれば、ひとつ伺いたいと思います。
#97
○船後政府委員 この制度は、刑事、民事を問わず、最終的な原因者というものをきめつけておる制度ではございません。したがいまして、刑事上の刑事罰に相当するものあるいは民事上の損害賠償の責めに負うべきもの、これはあくまでも裁判という手続によって最終的にきめられるべきものである、かように考えております。
#98
○田中(覚)委員 これで私の質問を終わらしていただきます。
#99
○佐野委員長 次回は、来たる十六日月曜日、午前十時公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後五時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
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