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1972/07/20 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第42号
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1972/07/20 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第42号

#1
第071回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第42号
昭和四十八年七月二十日(金曜日)
    午前十一時十三分開議
 出席委員
   委員長 佐野 憲治君
   理事 菅波  茂君 理事 登坂重次郎君
   理事 林  義郎君 理事 渡部 恒三君
   理事 小林 信一君 理事 島本 虎三君
      田中  覚君    羽田野忠文君
      土井たか子君    木下 元二君
      岡本 富夫君    坂口  力君
      小宮 武喜君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (環境庁長官) 三木 武夫君
 出席政府委員
        環境政務次官  坂本三十次君
        環境庁長官官房
        長       城戸 謙次君
        環境庁企画調整
        局長      船後 正道君
        労働省労働基準
        局長      渡邊 健二君
 委員外の出席者
        環境庁長官官房
        審議官     橋本 道夫君
        特別委員会調査
        室長      綿貫 敏行君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 公害健康被害補償法案(内閣提出第一二三号)
     ――――◇―――――
#2
○佐野委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の公害健康被害補償法案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
#3
○島本委員 いろいろ公害健康被害補償法の議論が進んで煮詰ってきたわけですが、なおいろいろな点で疑問があるわけであります。われわれもいまただしてみましたところが、やはりいい点は多いのであります。まだ改正すべき点はそれよりも多いのであります。したがって、その一つ一つはこれから詰めていかなければなりませんので率直に聞いていきたい、こう思うのです。
 まず一つ、公害病患者というのは、これは自分で好んでなる人は世界に一人もいないわけです。そういうような実態から、今度新しくこの公害健康被害補償法ができたといたしますと、その運営は世界注目の中にあるわけであります。それで、障害補償費、介護加算、療養手当、この支給は何カ月をまとめて支給するようになりますか。まず簡単ですが、この点から詰めていきたいと思います。
#4
○橋本説明員 支払いは定期の給付で、毎二カ月ごとに支払います。
#5
○島本委員 それはいま聞いたばかりなんであります。それからもうすでに何分かたっているわけでありますが、その間においても考えの変化はない、こういうようなことであります。
 それで長官、公害の患者、すなわちこの適用を受ける人です、被害者です。公害健康被害補償法を適用される人、これはほとんどあまりあってほしくない人たちです。そういうような人たちがもしあった場合には、これはもう責任をもってでも早く回復させなければならないのであります。
 それから、この制度の中にはいろいろないい条件も盛られているようでありますが、生活費であります。療養費であります。毎日必要な介護費でありますから、そういうようなのはやはり月々がいま標準になっているのであります。国民全部というならば、月々はこれは煩瑣な手数ということになるかもしれません。特定の人に対して毎月やり得ないような理由がないのでありますから、隔月ごとにというのじゃなく、これは長官の裁量によって今後毎月でもこれを支給してやる、こういうふうに当然すべきであります。長官、ここに進歩的な片りんを見せてもらいたいと思いますが、長官の意見を伺います。
#6
○三木国務大臣 われわれとしてもできるだけ公害病患者の人たちには敏速な給付をしたいと考えて、地方自治体ともいろいろ相談をしたわけですが、療養費とか介護手当ですか、これは毎月出るわけですが、ほかの給付は自治体とも相談をしてみると、やはり隔月でないといろいろ事務上もどうしてもぐあいが悪い。ほかの給付は二カ月ではないのですね。ほかの制度の給付は三カ月ぐらいになっているわけであります。これは何とか早く給付をできないかということで二カ月ということにしたわけでございますから、現在のところこれを毎月というわけにはいかぬということでございます。
#7
○島本委員 ほかの制度のまねをしなくてもいいのです、これは。ほかの制度のどこに公害というのがありますか。公害というのは一つのこれはもう何というのか、かかってはならない病気なんです。こういうようなのは他の制度にありませんよあったら教えてもらいたい。ないような公害病患者に対する給付ですから、この介護手当は毎日必要なんです。たとえ一万円でも二万円でも、毎日にしてみればほんの少しなのです。この二万円でも、これで来てくれる人はないのですよ。それでも他の介護手当より少しは高いという程度。医療費にしても、これは長官、ほとんど毎日使う。まして障害補償費、これは生活費がかかりますから、二月に一回なら、他の制度のどれよりもたとえよくても、患者にとっては毎月もらうほうがなおいいのです。もしできなければ――やったならばそれでいいけれども、できなかったならば患者の身になってそれをどこかから給付を受けられるような手段、借りられるような手段、国民金融公庫なりまたは自治体なりまたは自治体の指定する機関からなりこれは必ずもらえるのですから、そういうようなものに対しての配慮はあってもしかるべきだと思うのであります。これに対して、長官、それくらいやらないといけませんよ。
#8
○船後政府委員 この制度におきましては、療養手当はこれは入通院期間に対して支給いたしますので、毎月毎月額の変動があるわけでございますから、これは毎月支給するということで現行の特別措置法と同じでございます。しかしその他の定期的な給付につきましては、これはその年の額として定まるわけでございますので、変動がないという問題と、いま一つはやはりこの種の給付というのは地方公共団体における給付事務の実情ということを考える必要があるわけでございます。私どもは決して他制度のまねをしておるわけではございません。むしろ他制度におきましては三月ごとあるいは四月ごとにまとめて支給するというのが他制度の例でございますが、先生がおっしゃいますように、私どもは何とかして公害の場合には早く支給したい。そこで地方公共団体ともずいぶん折衝したのでございますが、事務の実情という点を考えまして二月、前月と前々月分をまとめて支給するということにいたしたのでございます。しかしこの制度は、申請がございまして、それから認定がある。そして申請にさかのぼって支給するということになっておりますので、現実の支給といたしましては申請から認定の間に一月以上の期間はあるわけでございますから、現状におきましても。実際の実情としてはさほど被害者の方々に御迷惑をおかけすることはない、かように考えております。
#9
○島本委員 何の公害病にもかかったことのないあなたが、他のほうは三カ月だから二カ月のほうにしたらこれでいいだろうと考えるのもあなたなんです。長官は水俣まで行ってあのような植物的生存を余儀なくされているその子供も抱いてみた経験さえおありなんです。あの人たちの場合はいま解決された。解決される前のこの悲惨さは、長官も十分もう身をもって知っているはずなんです。そうだった場合には、生活費というやつは何らかの方法によってでも必要なだけ必要な額をやはり給付するような方法を講じなければならない。二カ月にしておいたんだからこれでいいなんというのはだめですよ、そんな考え方は。二カ月にして支給しても、なお自治体のほうその他の方法によって、もし一カ月ごとに必要ならばそれももうできるような手段をこれから考えて患者に不便をかけないようにしたい、これくらいは当然行政機関としても考えなければならないのじゃありませんか。二カ月にしたんだから他のほうは三カ月、四カ月になっているんだから、これは進歩的なんだからもういいんだ、この考え方は公害というこの特殊の疾病に対しては不遜な考え方です。そういう不遜な考え方があっちゃならない。もし毎月必要ならば、必要なような手段を何らかの方法で今後は考えていくようにしたい、また今後研究したい、こういうのがほんとうじゃなかろうかと思うのです。自治体はそういうような機関も持っているし、必要ならばやれると思いますから、その点等は十分配慮すべきだ、こう思います。これはもう隣と相談なしに長官の意見を聞きます。
#10
○三木国務大臣 こちらのほうも自治体の事務能力でできるということならば何も二カ月ということでなくていいのですけれども、現在までの自治体との交渉ではどうしても困るということでありますので、こういうことにいたしたわけでございます。むろん将来の問題として研究をいたすことにやぶさかではございません。
#11
○島本委員 将来の問題として検討することにやぶさかではないだけでは、ことばとして不足です。患者が困らないようにこれは直ちにこの問題に対して対処したい、この辺まで積極的でないとだめなんです。将来といったって百年、二百年も将来でしょう。こういうような考え方、私は少し不満です。すぐこれ患者に不便ないようにしてこれは当然対処すべきだ、こう思いますが、いまの長官の意見は私のことばのような意味を含むのでしょう。もう一回……。
#12
○三木国務大臣 いま申したように自治体の事務的な処理能力ということともにらみ合わせてこういうことになったわけでございますから、これは文字どおり将来の研究にいたしたいと思います。
#13
○島本委員 さて、次へ入りますが、この補償給付の種類、これは七つあるようであります。療養の給付及び療養費、障害補償費、これは介護加算を含みます。遺族補償費、遺族補償一時金、児童補償手当、これにも介護加算を含みます。それと療養手当、葬祭料、こういうようなことになっているわけです。そうなりますと、当然これは一企業当たりの年間何万円程度になりますか、そういうような負担金の賠償基金として積み立てておいて、そしてそれを財源として直接加害者からでなくて、その制度から被害者に補償金を支払われるこういうような仕組みじゃないかと思いますが、大体こういうようなことになるわけですね。
#14
○船後政府委員 この制度に要する給付の費用の財源はすべて原因者から賦課金として徴収するわけでございますが、まずいわゆる固定発生源につきましては、汚染負荷量賦課金という形で、毎年度のSO2あるいはNOxといったような有害物質の排出量に応じて取るわけでありまして、これは年度初めから四十五日以内の間に申告納付を原則として取るということになっております。
#15
○島本委員 労働省の渡邊基準局長も来ておられるようであります。これもあわせて今後意見を伺っていきますが、社会保障的色彩を持ったこの被害者救済制度というような意味でわれわれは解釈しておったわけです。ところが、やはりこれでは民事責任を踏まえた損害賠償保障制度、そしてこの制度から給付が行なわれる場合には、当然答申にもあったように、加害企業はその額を限度として被害者に対する自己の賠償責任を免れる、こういうような性格なものなんでしょう。そういうような性格のものだとすると、むしろ公害企業に対しては共済制度的なものであり、公害保険制度的な性格が強いということは考えられませんか。この点は、局長、どうですか。
#16
○船後政府委員 まず、この制度による給付と、それから民事的に解決した場合の給付というものとの調整の問題でございます。中公審の答申におきましては、この制度で給付額の限度において民事上免責されるということを述べておりますが、法案作成段階におきまして検討いたしました結果それは裁判上の問題として当然でございます。つまり、給付いたしました理由は何であれ、現実に損害はてん補されるわけでございますから、そのてん補されました損害額につきましては裁判所は当然民事上考慮するということでございますからその旨の規定は特に設けておりません。
#17
○島本委員 この制度そのものは、公害企業の共済制度あるいは公害保険的な性格が強い、こういうようなことが言い得るのじゃないかと思います。そうなると、労災保険との性格がやはり問題だと思うのです。これはあくまでも労災の各自の賃金の六〇%、それから裁判例によって全国労働者の平均賃金の一〇〇%、この間をとって八〇%、これが基礎になるわけです。そうすると、片方の基礎は労災ですから、労災についてはこれはやはりはっきりした考え方、これを確立しておかないことにおいては、これはただ単にどっち向いた法律かわからないのにそれを適用した、こういうようなことであってはいけないわけです。この労災保険の場合には、業務上疾病または負傷、障害、こういうようなもので死亡またはけがをした、こういうような人に与えられるわけです。そうなると、これは使用者から労働者または遺族にいくわけです。それは療養費、休業補償、障害補償、遺族補償、葬祭料、こういうようなことになっているだろうと思うのです。そうなると、これは戦前からの一種の無過失責任制度、これが工場に誘導されたものである。使用者は少額の保険料を定期的に支出することによって補償責任が免れる、これが労災保険の制度でしょう。この労災保険のいまの制度がそういうような性格だとすると、あくまでも労災そのものは使用者の少額の保険料の定期的支出によって補償責任が免れるのである、こういうようなのは一種の特質になっているわけです。いままで労災、これに対していろいろ不満があったのは、私も社労委員ですから聞いております。裁判ざたになったことがございましたか。
#18
○渡邊(健)政府委員 労災保険はただいま先生おっしゃいましたように、使用者の従業員に対する無過失賠償責任、これに基礎を置きまして、それを保険制度によってその責任を保険が果たすことによって労働者の円滑な保護をはかろう、こういう趣旨でございます。したがいまして、労災の場合には無過失賠償責任ということから申しまして、損害額のうち一定のものを保険から補償することに相なっておるわけでございます。したがいまして、使用者がさらに労働者にそういう損害を与えたことについて故意、過失があります場合には民法上の損害賠償責任というのがあるわけでございまして、労災から給付がなされた場合にその民法上の労働者の損害賠償請求権を否定しておるわけではないわけでございます。したがいまして、労働者の方がこれは使用者に故意、過失があったというふうに考えられた場合には民法上の損害賠償請求をされた事例はかなりございまして、それに対しまして裁判所で損害賠償を支払うべき判決が出たこともあるわけでございます。ただその場合には基準法の八十四条というのがございまして、基準法に基づく災害補償、労災法の補償はそれに当たるわけでございますが、それがなされた場合には民法による損害賠償の責任はその価額の限度において免れることになっておりますので、民法上の損害賠償からは労災から出ました補償の額は引かれる。残りの損害について裁判で損害賠償の支払いの判決が出ました事例はかなりたくさんございます。
#19
○島本委員 労災のほうはそういうようになっているわけです。自動車賠償制度では行政罰、刑事罰もあるわけです。そうすると、労災の場合にもいま言ったようにそれがあるとすると、港則法でもこれ保安庁、四日市でもうすでに検挙をした例もあるわけです。
 公害の場合には、これはどういうふうなことになりますか。
#20
○船後政府委員 公害の場合におきまして有害物質を排出いたしまして、それによって他人に損害を与えたという場合でございますが、これにつきましては、一つには規制法の体系におきましてそのような排出が規制法規上の規定に触れる、つまり排出基準に違反しておるとかいったような場合には、これは規制法による行政罰の規定が一つございます。
 それからさらにそれが犯罪行為になるといった場合には、御承知のとおり公害犯罪に対する特例の法律がございますから、それによりまして刑事罰がかかるということになります。
 さらに、そのような行為が他人に損害を与えたという場合には民法上の不法行為となるわけでございまして、損害賠償の責めに任ぜねばなりません。しかし、この点につきましては、先国会で大気汚染及び水質汚濁につきましては事業者のいわゆる無過失賠償責任というものが認められましてただいま労働省からお述べになりましたような労働基準法上の無過失賠償責任と同様の法律関係に置かれることになっております。
#21
○島本委員 これは労働省のほうへいまお伺いしますが、この労災補償について直接これは民事訴訟を起こした例というものが、これはいままでありますか、ありませんか。
#22
○渡邊(健)政府委員 かなりの件数ございます。
#23
○島本委員 最近ではどういうようなのがありますか。あまりないはずだよ。
#24
○渡邊(健)政府委員 そうきわめて多数ということはございませんけれども、最近でもばらばらそういう民事訴訟事件が労働災害について起きておるわけでございまして、全部の事例を申し上げることは困難でございますが、手元に持っております例でも、四十七年におきましても判決が出ましたものが六件ほどあるわけでございます。
#25
○島本委員 この労災保険財政で国庫負担の割合はどういうようになっておりますか。
#26
○渡邊(健)政府委員 労災保険は、先ほども申しましたように、使用者の無過失賠償責任を基礎といたしておりますので、それに要する費用は原則として使用者の納める保険料、こういうことになっております。したがいまして、国庫負担という制度はとっておらないわけでございますが、昔労災保険がすべて一時金でございましたときに一時金を上回るけい肺と脊損等の保護につきましてけい肺等特別保護法臨時措置法といったような労災を上回る制度がございまして、それに国庫補助がございました。それを吸収いたしまして労災が三十五年に年金制度になりましたときに、そういう経緯もございまして、労災にも国庫から予算の範囲内において補助することができる、こういう制度になっております。したがいまして何%といったような国庫負担ではございませんが、予算の範囲内で毎年若干の国庫補助はいただいておるわけでございます。
#27
○島本委員 この労災保険の給付水準です。これは最近改正の動きが出ておるやに聞いておりますが、どういうようになっておりますか。
#28
○渡邊(健)政府委員 労災保険法につきましてはこれまで数次の改正によりまして逐次保険給付の改善をはかってまいっておりまして、一応ILOの百二十一号条約の水準にも達しておりますけれども、なお、この給付改善についてはいろいろな御意見、御要望が出ておるところでございます。そこで私どもは、それらの御意見あるいは今回公害につきましてこの法案のような制度ができましたこと、いろいろなその後の新しい事情の進展にかんがみまして、労災保険全般について再検討する必要があると考えまして、ことしの一月、労災保険審議会に労災保険全般の再検討をお願いいたしまして、現在審議会の中に基本問題懇談会というものをつくって、労、使、公益の三者で全般的な再検討をされておるところでございまして、その中におきましては、もちろん現行の給付を改善すること等も含めまして御検討を願っておるところでございます。
#29
○島本委員 では、基本となるところの労災自身がそういうふうにして給付水準の引き上げをいま検討中だ。検討中の現在のものを基礎にして、いまの世界に冠たる公害立法であるところの公害健康被害補償法をいまつくろうとしておるわけです。もし労災のほうが、本法が改正になってそして給付水準が上がる場合には、労災のいわゆる各自の賃金の六〇%として算出の一つの基礎になった患者への支給割合基礎、これが変わることがあり得ますか、変わりませんか。
#30
○船後政府委員 この制度における障害補償費等の給付レベルをどうするかという点につきましては、中公審の答申において考え方が示されておるわけでございまして、その際に一つの基準といたしましては、労災保険等その他社会保険、社会保障制度における給付水準というものを考えてみるということになっておるわけでございますので、したがいまして、労災保険をはじめとする社会保険の給付レベルが変更ございますれば、この制度におきます給付水準につきましても、そのような事情を参酌いたしまして当然検討すべきものと考えております。
#31
○島本委員 初めて答弁らしい答弁をしたのですよ、あなたは。いつもそういうような答弁をしたらいいのです。なぜかというと、三十八年十一月の三井三池鉱山の爆発、あれは死者が四百五十八名ですね。CO中毒が八百三十九人、そしてこれがいわゆる労働災害の最大の闘争といわれて、これも十年以上になっておるわけです。いまでも患者がいるわけです。その患者の中から、一人百万円の弔慰金の支給だったんです。水俣のほうが当時三百万円出たということで、裁判にわざわざ訴えた人がいるんです。いまでも二人ほどいるはずです。この基礎になった労災自身もこういうような状態なんです。したがって、これはもっともっと十分検討してやらないといけない、こういうような一つの私の発想の根拠はそこにあるんです。そして保険制度として、これは使用者のほうでやっておくと。この企業の公害保険を編み出したのは通産省なんです。通産省は患者のためにこれをやるというような発想に立っておらないのですそれを受け取っていま皆さんが立案されているから、その基礎に流れるものは十分わかる。低きに押えようとすることがないようにせいという私の要請なんです。これをわかってもらえばいいのです。ですから、基礎になっているものはみんな低い。低いものばかりとっているからそういうふうになっているということです。この点は十分考えておいて、今後これを運用する上においては全きを期しておいてもらいたいんだ。これですよ。その点はいいですな。これは答弁は要りませんが、――答弁しますか。しない。よし、それならいい。
 それで次に移りますが、この「第六節補償給付の制限等」の「補償給付の制限」第四十二条です。「重大な過失により」という補償給付の制限をやっておりますが、公害にはすべて被害者の責めによるというようなものはあり得ないのです。加害者と被害者しかないのです。それが公害の特徴なんです。これは法曹界でも認めるところなんです。ところがここに補償給付の制限として麗々しく重大な過失による云々というようなことが載っけてあるのです。ほとんどこういうようなのはあり得ない。実例があるかというと、たばこの吸い過ぎだという具体例、とんでもございません。こんなものは例にならない。したがって、これがあることによって、あるいは裁判になった際に患者に不利になるような足がかりを置かれるおそれがあるこれです。そういうような意味において、これは全然必要のない条文である。そしてそれによって民法にはこれにかわる条文もありますから、ちゃんとそれによって補てんできます。したがって、四十二条は必要ない、こういうように思うわけでありますが、長官、こんなの入れちゃいけません。そっちはいいから、長官どう思います。
#32
○船後政府委員 本法案の第四十二条の規定でございますが、これはやはり制度として一定の定型化のもとに給付をいたします以上、給付を受ける側におきまして重大な過失があった場合には給付を制限するという規定でございます。これにつきましては、民法七百二十二条と同じような考え方ではございますけれども、民法はあくまでも民法でございまして、先国会で御審議をお願いいたしました民法の特例としての無過失賠償責任ということになりますと、これは特別の規定を設けなくても七百二十二条がそのまま適用になるという法律構成にはなりますけれども、このような行政法の体系におきまして、一定の要件のもとに一つの給付をするといった場合には、民法七百二十二条はそのまま適用にもなりませんし、また準用もされないということでございますから、第四十二条の規定は必要であると考えております。
#33
○島本委員 見解の相違です。具体的な例も考えられない、ただ法文上つけておくとていさいがよろしい、こういうふうなだけならば、公害の場合は必要ありません。まして基本的に被害者の責めに帰すべき理由、こういうようなものは公害行政にありませんから、その点だけははっきり念頭に入れておいてもらいたい。これをきびしくすることによってチェックされるものがまた次々と出るおそれがあるからです。たとえば隠れ水俣、参考人の意見も聞いたでしょう。ほとんどこういうような人が散在しているのです。そういうような状態のときに、今度はその子供が嫁に行くような状態になったとする、なった場合には当然それを隠すことはあり得るわけです、うちはじょうぶだといって。そして私もなってない、子供もそうなんだと隠す。そうすると病院にも行かない、受くべき治療もしない、だいじょうぶなんだということは、当然患者側の故意、過失によって病気をなおさら悪くしたということに、足がかりにされるおそれもある。しかし心情としては、自分の娘を嫁にやる場合には、こんなことがあってはいけないんだけれども、実際はあり得ることですから、その際に、こういうようなのはおまえの重大な過失によってやったんだから補償を打ち切るぞ、足がかりにされないということを言われますか。ですから、そういうことがないようにしなければならないということです。これは幾ら答弁しても見解の相違ですから、これは厳重に私から、こんなものを今後考えなさんなということを警告しておきます。警告に従おうと従うまいとかってですが、今後その業績によって私自身考えます。
 四十三条の、これは「被認定者又は被認定者で第二十五条第一項の政令で定める年齢に達しないものを養育している者が、正当な理由がなく療養に関する指示に従わなかったときは、都道府県知事は、補償給付の全部又は一部を支給しないことができる。」「正当な理由がなく」というのは、これはどういうことですか。
#34
○船後政府委員 社会通念上正当とされるような理由がないという場合でございまして、これと全く同様の規定は現行特別措置法第二十三条においても設けております。
#35
○島本委員 「正当な理由がなく」というのは、どういうような具体例がございますか。
#36
○船後政府委員 第四十三条は療養に関する指示でございますから、お医者さんが具体的にこの病気をなおすにつきましては日常生活においてかくかくのことをしなければならないといったようないろいろな指示があるわけでございますが、その指示を守るというのがこれは患者としては当然のことでございますけれども、それを守らないということにつきまして、社会通念上正当な理由がないというケースを考えておるわけであります。
#37
○島本委員 いま大気汚染で四日前ぜんそくになって空気清浄室に入院している。生活費が出ない。したがって夜、自分が寝ていなければならないのに、そこへ来て自分は静養しながら、生活のためにまた漁に出る、また働きに出る。そうして終わってきたならば、またそこへ来て療養している、空気清浄室の中で。この人は医師の指示に従わないのです。だけれども、そうしなければ生活できないのです。それがいまの制度なんです。正当な理由なく、補償給付の一部または全部はこれを支給しないことができるのです、これをやれば。そのようなことはございませんか。心配なんです。
#38
○船後政府委員 現在の特別措置法におきましては、先生御指摘のように被認定者に支給されますのは療養費とそれから療養手当だけでございます。したがいまして、生活上の問題からあるいは先生がおっしゃいますように、どうしても働かねばならないから医師の指示も無視して病室を抜け出すということもあり得るかもしれません。しかし現行法におきましても第二十三条の規定を発動いたしまして、そういう方には医療費の打ち切りをしたということはないわけでございまして、そのような場合には社会通念上やはり給付制限をすべきでないということのもとに、現行法の第二十三条を動かしておるわけでございます。しかし医師の指示に従わないことにつきまして、全くたとえば個人の娯楽であるとかあるいは酒を飲みたいとかそのようなことがございますれば、第二十三条の問題として考えねばならぬケースもあり得るのではないかと思っております。
#39
○島本委員 これもやはりあまり、前条ほどじゃなくても必要がない条文じゃなかろうか、こういうふうに思います。この地域及び疾病の指定にあたっては、過去のいきさつにとらわれることがなくて、広く公害患者の救済を行なうようこれもすべきであるということは当然であると思うのですが、この点に対する見解はいかがですか。
#40
○船後政府委員 新しい制度による地域指定につきましては、いままでしばしば御質問にお答えいたしましたように、大気の汚染状況それから有症率等の客観的な基準を中公審で専門的に御検討願いまして、それに基づきまして指定をいたしたいと考えておるわけでありまして、現行制度におきまして指定地域になっているものあるいは現行制度では指定地域にならなかったもの、こういったものもすべて新しい制度のもとで調査をいたしまして指定の問題を考えたいと思っております。
#41
○島本委員 同時に、患者の認定にあたって主治医の意見が尊重されるようでなければなりませんが、その点等についてはいかがです。
#42
○船後政府委員 やはり患者につきまして病状を一番よく知っております者は日常診察に当たっておる主治医であろうと考えます。したがいまして、この制度におきましてもまず認定の申請をする場合に、問題は昨日もあったのでございますが、お医者さんの診断書というものの御提出も願うわけでございまして、認定にあたりましては主治医の御判断というものを十分に尊重してまいりたいと考えております。
#43
○島本委員 なかなか進歩的な意見もこの公害健康被害補償法の中に散見されるのです。しかし療養手当の額、この点についてだいぶ苦労もされているようでありますけれども、しかし何としても実費支給をはかれるようにこれをしたほうがなおさらいいのじゃないか、こう思われますが、その点についてはどうですか。
#44
○船後政府委員 療養手当の性格はやはり御指摘のように実費弁償的なものだと思います。療養に伴いまして直接の医療費というものは療養の給付ということになるわけでございますが、それ以外に、やはり療養に伴う雑費が要るわけでございます。そうしたものに着目いたしまして療養手当を考えておるのでございますが、しかしやはり制度としての支給でございますから、どうしても平均的なところでもって定型化して支給せざるを得ないと思っておりますが、定額のきめ方にあたりましては、実情というものを十分調査いたしまして決定いたしたいと考えております。
#45
○島本委員 これは最後に、まだ私は不十分でありますからこの点は伺っておきたいのですが、障害補償費及び遺族補償費、これは標準給付基礎月額の算定の一〇〇%支給を基本に病状に応じて段階を設けるようにするというのが一そう合理的じゃなかろうか、こういうようなことであります。やはりその点が私どもとしては、一つの基準をとるならばその辺じゃなかろうかと思いますが、この考え方はどうです。
#46
○船後政府委員 その点につきましては、しばしばお答えいたしましたことを再び繰り返すほかはないのでございますが、これは制度といたしまして一定の定型化のもとに認定患者を認定し、そして給付をするという性格のものでございます。したがいまして、中公審の答申で考え方を示しておりますように、一方におきましては労災保険等その他社会保険制度における給付水準を考え、他方におきましては判決例等で示されておる水準を考え、その中間において妥当な水準を考えたいと思っております。
#47
○島本委員 初めから終わりまで微動だにしない変わらないのはその考え方だけであります。その考え方はことばとしては理解できますが、その内容は十分私どもは納得し得ないところであるということだけはこの機会にはっきり申し上げます。
 最後に、三木長官、公害被害による生業補償についてこれはやはり何としてもこの問題だけは早急にきめてやらなければなりません。瀬戸内海その他は議員立法でできても、その中で肝心なのはひとつこの生業補償という点が抜かれてあります。政府はなぜこれさえもできないのか、こういう疑念さえ持つのであります。この生業補償のこれを早急に制定するように要請したいと思いますが、これに対して長官どうですか。
#48
○三木国務大臣 生業被害に対しての何らかの補償の必要というものは、現にそういう問題が起こっておるわけでございますから、政府としてもこの問題を見のがすわけにはいかないということで、いま真剣に取り組もうということでございますので、できるだけ早く成案を得たいという考えでございます。
#49
○島本委員 長官もできるだけ、できるだけと言ってさっぱりできないのであります。今度だけはそういうことがないように、ほんとうにできるようにしてもらいたいと思います。そして長官を含めまして二転、三転することがないようにだけはお願いしておきたい。公害健康被害補償法というのが出てきた、あなたの構想、前々長官の大石長官の構想も、生業被害を含む財産までこの中に入れるという発想でありました。ところがこれができてみたらこの中には入れられないような構造になっている。いつの間にかはみ出してしまっている。そうなった場合には別に定めるよりしようがない。別に定めるからこれもそのままにしておくということがあってはならないのであります。二転、三転して、そして公害行政に画竜点睛を欠くことのないように十分この点は留意してもらいたい。このことだけはきつく要請して、もっともっとあるんですけれども、きょう何か一時からの関係でおまえやめろと言われてやめるんですから、そこだけは考えておいてください。これでやめます。
#50
○佐野委員長 木下元二君。
#51
○木下委員 時間が三十分しかないそうですから簡単に質問いたしますが、まず確認をいたしておきたいことは、この公害健康被害救済補償制度、これが民事責任を踏まえた損害賠償の制度であるということを言われるんですが、その民事責任というのはどういうことでしょうか。
#52
○船後政府委員 民事責任を踏まえた制度として御説明いたしておりますのは、この制度における給付が単に療養の給付ということにとどまることなく、損害を、公害によって健康を害されたことによって引き起こされた損害をてん補しようという考え方のもとに給付項目を考えているわけでございます。
#53
○木下委員 だからそこで言う民事責任というのは、民事つまり民事上の損害賠償制度ということだと思うのですが、その損害賠償制度というのはどういうものでしょうか。
#54
○船後政府委員 民事問題といたしましては、民法の不法行為の規定によりまして、被害者が損害を受けたというものにつきましては、これはいかなる理由と申しますか、いかなる算定あるいはいかなる範囲というものもすべて被害者の考え方によりまして請求することになっておるわけでございますが、しかしこの点は労災法と労基法との関係と同一でございまして、労基法における無過失損害賠償責任というものを踏まえまして現在の労災保険ができておるわけでございますが、労災保険として支給します際にはこれはやはり一定の定型化のもとに給付項目、給付額というものをしぼっておる、それと同じ関係にあるわけでございます。
#55
○木下委員 いま初めにいわれました民事責任というのは、これは不法行為によるもの、いわゆる民事上の損害賠償制度というものは債務不履行による損害賠償か、あるいは不法行為による損害賠償かこの二つしかないわけですから、それはどちらかというと、いまあなたが言われたように、不法行為による損害賠償制度、これを踏まえたものだ、そういうふうに理解していいわけですね。いまあとから追加して言われましたけれども、労災上の問題労基法上の労災の問題、これは少し民事責任とは性格が違うと思うのですよ。これは不法行為でしょうか。企業の側の不法行為責任を認めたものでしょうか。違うでしょう。労災が不法行為に該当する場合もあるでしょう。しかしそうではなくて、もっとより広い概念で労災の概念というのはあると思うのです。
#56
○船後政府委員 労働基準法におきましても無過失責任を定めておりますのは、労働者が業務上負傷しもしくは疾病にかかったという場合でございまして、これは故意、過失の立証を要することなく負傷しまたは疾病したという損害を考えておるわけでございまして、このような無過失責任を制度的に保障する仕組みとして労災保険がつくられておる、かように了解いたします。
#57
○木下委員 そうすると、いまあなたが初めに言われた民事上の不法行為による責任を踏まえたものじゃないのですか。そうでしょう。いま言われましたですよ。不法行為責任を踏まえたという意味であるというふうに言われたのです。違うのですか。
#58
○船後政府委員 私、よく了解できないのでございますが、労基法におきましても第七十五条で「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。」という規定は、通常民法不法行為における故意、過失の立証を要することなく事業主の不法行為上の責任を負わせておる、かようにわれわれは了解をいたしております。
#59
○木下委員 それはあなたの理解が違いますよ。労災制度というもの、この制度と民法上の不法行為制度というものは性格が違うのです。この民法上の不法行為というのは損害賠償制度としての不法行為ですね。これをきめておる。労災の場合の制度というのは、もちろん不法行為に当たる場合があるでしょうけれども、不法行為という概念よりももっとこれは広いのです。労災の制度というのは、むしろ労働者の健康と生活を守るという観点からつくられておる制度でしょう。それが企業の側の不法行為に当たろうが当たるまいが、そういうことは問わずに救済をしようという制度でしょう。だから、労災制度のことをあなたはすぐ持ち出すから私は言っているのですが、あなたが初めに御自分のほうで言われたように、民法の不法行為による責任を踏まえた損害賠償の制度、もちろんその民法上の不法行為そのものではありませんけれども、これを踏まえた損害賠償の制度であるというふうに理解していいんじゃないですか違いますか。
#60
○船後政府委員 私どもの制度も、これはあくまでも行政法の体系でございまして、一定の要件に該当するものには一定の給付をするという行政法の体系に入っておるわけでございます。しかしこういう給付をするということの考え方は何か、こういうことでございますので、それはあくまでも事業主が公害ということによって健康被害を起こしたといった民事責任を踏まえた制度である、こう御説明申し上げておるわけでございます。その点につきましては、労働基準法の規定はあくまでもこれは民法の特例であると私どもは考えております。このような無過失責任ということを制度的に担保しようという意味から労災保険の制度がつくられておる、それと似たような関係にあると申し上げたわけでございます。
#61
○木下委員 そうしますと、民法の不法行為とは関係がないと言われるのですか。あなたが初めにいわれたことと矛盾いたしますよ。民事責任を踏まえたという意味は、不法行為責任を踏まえた意味だというふうに言われたでしょう。あなたは言われたことを取り消しますか。
#62
○船後政府委員 私は、民事責任を踏まえたというのは、この制度をつくった考え方を述べたわけでございまして、この制度そのものはあくまでもこれは行政的な行政法規の範疇に入るわけでございます。
#63
○木下委員 私はその考え方を聞いているのですよ。何もこれが民法の制度だというようなことを言ってないのですよ。考え方を聞いているのです。民事責任を踏まえたという意味は、その不法行為の制度を踏まえたという意味ではないのかと聞いているのです。そうでしょう。
#64
○船後政府委員 民法の不法行為上の民事責任を踏まえたという考え方でございます。
#65
○木下委員 初めからそう言ってもらえぱこんなに議論することはないのです。
 そこで伺いますが、この認定は申請の日にさかのぼって効力を生ずる、これは四条五項に規定があります。補償給付は請求のあったときから支給をする、そしてこの請求は認定の申請のとき以降できる、こういうたてまえになっておるようです。それは十条に規定があります。つまりこの認定の申請のとき以降は請求をできるという仕組みのようであります。通常考えますのに、公害病にかかってすぐに申請することは少ないと思うのです。ほとんどないと思うのです。病気にかかってから申請まで相当な期間を経過して、場合によっては数年間、あるいはそれ以上経過をして申請をするという場合が多いと思うのです。その間精神的に肉体的にはたいへんな苦しみを経て、やむにやまれず申請に及ぶ、これが普通だと思うのです。その間の補償請求はできないということでありますが、この点もたしか前に言われておったと思いますけれども、どうもはっきりしなかったようでありますから、その理由を述べていただきたいと思います。
#66
○船後政府委員 この制度は、保険と違いまして初めから保険関係にある受給権者というものはないわけでございます。したがいまして、給付の対象になりますものはその患者さんの申請の日からということでもって支給の期日を定めておるわけでございまして、認定の申請があった以前の状態というものにつきましては、やはり制度的には対処し得ないと思います。
#67
○木下委員 いま言われますように、なぜ制度的に対処できないのか、理由がわからないのです。どうしてですか。
#68
○船後政府委員 公害病にかかったと思われる方はすみやかに申請していただけばいいわけでございまして、制度といたしましてはその申請のあった日というときからいろいろな制度上の受給権というものを構成するのが当然であると考えております。
#69
○木下委員 あなたはそんなふうに言われますけれども、公害病にかかってすぐその瞬間、その直後に申請に及ぶなんということは現実問題としてないのですよ。さっきも言いましたように、相当苦しみ抜いてそのあげくに申請をするというのが実態なんですよ。だからそんな冷淡な言われ方をしたら議論にならないのです。そんなこと言われたら、たとえば裁判の場合ではどうですか。調停でも裁判でも訴え提起をしたとき、あるいは調停の申請をしたとき、そのときから以降のものは請求ができるのだ、損害があったらすぐ請求したらいいじゃないか、そういう理屈でしょうが。裁判や調停の場合でも、これは当然その損害が発生したその時点からさかのぼって金額を計算して請求するのです。あまり古くさかのぼると時効の問題が起こりますけれども、不法行為の場合は三年間さかのぼって請求できる、これは当然のことですよ。だからこれが不法行為を踏まえた制度であるという以上、当然やはり私は損害が発生したときからさかのぼって請求できる、こういうふうにすべきでしょう。いかがですか。
#70
○船後政府委員 私は民事上の問題といたしましては、その損害があったときあるいは本人が知ったとき、これはもう当然民事上の原則でございますから、そのこと自体はこの制度は何ら否定もいたしていないわけでございまして、ただ制度的な給付であります以上、一定の要件に該当すれば一定の給付をするという構成をとっております関係上、申請の日をもってそういった受給関係を定めるということは、私どもの制度のみならず、これは労災保険におきましても全く同じでございます。
#71
○木下委員 あなたの発想が非常に官僚的なんですよ。行政がこういうふうにきめるのだ、制度としてこうきめるのだからこうなるのだ、それ以上の説明はないじゃないですか。これは内容を見まして、こういう点が不合理ではないか、こうしたほうがいいじゃないかということを合理的に私は話をしておるのですが、いやそうではない、こちらのほうがよりベターであると言われるなら、その理由をもう少しわかるように説明願わぬと、行政がこういうふうに制度としてきめるのだから、これはもうやむを得ぬ、それでは何のために論議をしておるのかわかりません。特にこの問題は行政的な運営の面からいって迅速に事を運ぶ必要があるというようなこともあろうと思いますけれども、しかしいつから公害病にかかったかということは、これは医学上証明できると思うのですよ。証明できるのが普通だと思うのです。あるいは中に困難な場合があるでしょう。しかしそういう場合は別といたしまして、証明できる場合は、大体いつごろから公害病にかかっておるということが証明できる以上は、そのときから請求できるというふうにすべきだと思うのです、これが被害者救済の制度である以上は。申請のときまでは知りません、それは裁判で請求しなさいというのは、これは私はほんとうの救済にならないと思うから聞いておるのです。いかがですか。
#72
○船後政府委員 まず一つの問題は、個々の方で申請の日と発病の日が違うということ、これはあり得ると思います。しかし個々に発病の日というものを確かめるとなりますと、これはおそらく制度的な処理としては非常に繁雑な問題になるというのが一つございます。いま一つは、この制度は法施行前の損害に対しては対処し得ません。法施行後の指定地域において一定条件に該当した方に給付するわけでございますから、したがいまして、法施行後、指定地域に指定されました場合に公害病の患者であるという方は、私どもは行政的にも早く申請されますように、そういった努力を尽くしまして、先生がおっしゃいましたようなことができるだけないように、運営につとめてまいりたいと考えております。
#73
○木下委員 その点はどうも納得しがたいですが、もう一つの問題に進みます。
 この四十四条というのがありまして、補償給付の額について、「他の原因があると認めるときは、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、当該他の原因を参酌することができる。」ということになっております。この点も非常に問題で「他の原因を参酌する」、もともとこの因果関係というのは、それがあるかないかという問題であります。あると認定をされる以上は、当然その給付レベルあるいはその給付内容において差別を受けるべきではないと思うのです。特にいまあなたは初めの問題で、つまり申請のあったとき以降において請求できるんだという問題の理由として、そうしなければ処理が繁雑になるということを言われた。ところが、他原因、ほかの原因をしんしゃくするということが一体どれほど繁雑なことなのか、これは因果関係認定の段階でいたずらに事を紛糾させる以外の何ものでもありません。もっと迅速に事を行政的に処理しようとすれば、こういうふうな制度を置くことがおかしいということになってくるのですよ。迅速な救済の理念に反する結果となります。この点はいかがでしょうか。
#74
○船後政府委員 第四十四条の規定は、実際医学上非常にむずかしい問題があることは御指摘のとおりでございまして、むしろ第四十四条の規定は医学専門家の強い御意見によりましてこのような規定を設けたのでございます。逆のことを申し上げますと、このような規定がない場合には、黒と白とをいずれかを区別しなければならないといったことから、むしろ認定が非常にきつく片寄り過ぎるというような御意見もあったわけでございまして、この点につきましては橋本審議官からさらに詳細御説明申し上げます。
#75
○橋本説明員 基本的には、いま局長がお答えしたようなことでございますが、中央公害対策審議会の医療分科会におきまして、医学の人が損害賠償というような概念をもとに置きながら現在の医学で公害病を診断して制度化するということには、実は当初非常に抵抗がございました。医学的にはきわめていろいろの病気が重なっているものがある、そして医師の診断したものが、それを割り切ってきめられるということになると、非常に医師としてはその科学的な立場から見ると心苦しいことが多い、そういう点で、医師としてもやはり良心的にちゃんとやれるようにしてほしいということがございまして、そういうことで、例の認定審査会のところは、認定審査会自身が最終的な決定をするのではなく、医師が認定審査会の意見を聞いて都道府県知事または政令で定める市長が、その行政の長としての責任できめるということを強く要望されたことと、もう一つは、この死因に関しまして、一つだけの疾病で単純に死ぬというような場合も確かにあるが、そのほかにいろいろな病気がある。医師としては、どうしてもちゃんとそのことを科学的に書かざるを得ないということでございます。そういうことをこの認定審査会で議論した場合に、必ず議論の対象となるものは中にはある。実際上の運用は、これは非常にむずかしいということをはっきり言われております。どれほどこの規定が生きるかということはきわめてむずかしかろうが、どうしても医師としての良心ではっきり医学的に書いた場合に、それが制度上参酌すべきような場合も起こるかもしれないというようなことでこのような規定を設けてくれということでこの規定が入ったわけでございます。そういう意味で、医学のほうと法律のほうとの両方の歩み寄りの結果としてこの規定が入ったというぐあいにお考え願いたいと思います。
#76
○木下委員 私が心配いたしますのは、ほかの原因があるかないかというようなことをいたずらにせんさくをして、そういうようなことでこの認定が非常におくれるという事態が起こりやすいということを心配するわけなんです。ほかの原因があるということが明らかな場合には、それは当然それをしんしゃくするということは、私はこれを否定するわけではありません。だから、この点は、これは日弁連の意見書にもはっきり出ておりますけれども、こう書いてありますね。「強いてこの点を問題とするのであれば、給付認定及び現実給付段階においては何等の制限を設けず、これを別途に他の特別な事情による影響が加わっていることが明らかに証明されたときは、給付の全部、又は一部の返還を求めることができるとすることが望ましい。」、こういっておるんですね。ですから、私は制度としてはこういうふうに立てるべきである、少なくともこのように運用されるべきであるということを申しまして、この点は終えたいと思います。
 実はもう制限時間が来ましたので、もう少し簡単にお尋ねいたしまして終わりたいと思います。
 長官にお尋ねいたしたいのですが、この第一種認定地域の問題であります。その認定地域の周辺、これはよくいわれますように、道路一つ隔てまして認定地域外ということになっておりますが、そうした実情をつぶさに知っておるわけでございます。もう詳しく申しません。ただ、確かに認定地域を設定する以上は、認定地域と認定地域外とを区分することは、これはやむを得ないと思うのですね。だから、問題はどこにあるかと申しますと、できるだけ広くこの認定地域を設定することによってこのような矛盾をなくするということだと思うのです。現在の認定地域の設定のしかたというのが、非常に不合理なこうした矛盾が起こるような設定がなされておるというところに問題がある。したがいまして、私はこの認定地域を抜本的に洗い直して新たにこれを設定することが必要である、こう思うわけでございますが、この点は強く要請いたしますとともに、長官の御意見を承りたい。
#77
○三木国務大臣 結局地域指定は、汚染度、有症率という見地から検討いたすわけでございますから、いま御指摘のようなたくさんに公害病患者がおるような地域は、これは地域指定に拡大をいたします。
#78
○木下委員 それから公害病の認定ということはこれは相当厳格な手続を踏んだ上のことであります。認定を受けますと、この制度によって、十分とはいえないけれども、一応の救済がされる。ところが、認定を受けるまでに至らないけれども、大気汚染の結果、付近住民の健康がずいぶん悪化いたしております。大気汚染のひどい地域では、もう住民全体が被害者であります。尼崎の南部の町々など見ましても、これはこの周辺一ぺん長官、おいでになったらわかるんですが、この付近歩きますと、ちょっと歩いただけでもう鼻の穴がまっ黒になるんです。顔がどす黒くなってしまう、そういう状態でございます。その地域の住民全体の健康がもう一日一日むしばまれておるという状態であります。一体これをどうするのか。これはこの補償法では救済されないということになるんですね。結局厳格な手続によりまして認定を受けた公害病患者だけが救済をされる、十分ではないけれども。そういうことでありますので、これは何といたしましても、公害法の抜本改正が必要である。そうしてまた、たとえば認定患者ばかりではなく、被害住民に対して医療の無料化のような制度が必要であると思うのです。それとも、健康が害されてもがまんせよと言われるのか、この点についての御所見を承りたい。
#79
○三木国務大臣 認定病患者といえども、やはり地域住民の健康ということは第一に考えなければならないわけでありますから、この問題については、環境の保全、たとえば排出量の規制を強化するとかいろいろ環境を整備して、そういう環境の汚染というものをできるだけ防ぐということでございます。そうして健康を守っていくという以外にはこれは方法はないわけであります。そういう点で、今後とも環境の保全という見地から総合的な施策を推進していく考えでございます。
#80
○木下委員 被害住民に対して、汚染地域のひどいところですよ、私の言っているのは。そういうところで、認定患者以外の住民に対して健康診断であるとかあるいは医療の無料化といったこういう制度をお考えになっていただきたいと思うのですけれども、いかがでしょう。
  〔委員長退席、登坂委員長代理着席〕
#81
○三木国務大臣 そういう御指摘のようなひどい地域もございますから、これはやはり一つの大きな課題だと思います、いま提起された問題は。こういう問題については厚生大臣とも相談をいたすことにいたします。
#82
○木下委員 ひとつ前向きに進めていただくことにしまして、最後にお尋ねしますが、この法案はもうたびたび指摘をされますように、政令委任事項がきわめて多いのであります。中にきわめて重要な事項が政令にゆだねられておるということであります。この政令の中身をどのようにするかということがこれから残された一つの課題でありますが、これはこれまでこの委員会の中で参考人あるいは公述人から貴重な意見や報告がございました。またこの委員会の貴重な論議がありました。これらを十分に踏まえて、こうした意見や論議を生かした政令をつくっていただきたい、このことを特に強く要望する次第でありますが、いかがでしょうか。
#83
○三木国務大臣 いろいろこういう制度は新たなる制度でございますから、これを実施していろいろな意見も聴取し、この立法のねらいである公害病の患者をできるだけ急速に救済をしたいという精神に合致していくように、法の運営をいたしたいと思います。
#84
○木下委員 私まだ慰謝料の問題とか、ぜひ聞きたいと思っておった問題があるわけでございますが、時間が来たので終わりたいと思います。
#85
○登坂委員長代理 岡本富夫君。
#86
○岡本委員 わずかな時間でありますから簡単明瞭にお答えを願いたいと思います。
 そこでまず最初に申し上げたいことは、この公害健康被害補償法案ができまして、それでこれが動くようになった。そのときに各企業から賦課金を徴収いたしますね。そうすることによって加害者側、要するに企業の危険分散、要するに免罪符になってしまう、こういうことになっては私はならないと思う。したがってこの点についてまず長官からきっちりと御答弁をいただきたいと思います。
#87
○三木国務大臣 この問題は公害病患者の方々に対して迅速に救済の措置を講じたいということが現在の状態ではやはり訴訟ということになれば、その裁判が判決がおりるまでの間に相当な期間を要して、結局はその間は患者の人々に対しても何ら十分な――特別措置法などのなにはございますけれども、十分なやはり手当てもできないということで、われわれはあくまでこの公害病患者の側に立って問題を処理しようとするわけでございますから、このことで企業が企業の責任というものを危険分散するというような考え方は立法の精神にないわけでございます。
#88
○岡本委員 次に、指定疾病の問題でありますけれども、これは私は当委員会でもたびたび現行法の場合に論議いたしましたが、そのときにも、大気汚染系の、ここでいえば非特異的疾患といいますか、これを拡大してもらいたい。要するに、この前私申しました鼻炎とかいうものについてもよく御検討していただきたい、こういうことで当委員会で要求いたしまして、これは厚生省のときも検討しますということであったのですが、いまだにそのままになっておる。したがって、私はこの本法案が動くについても、やはり疾病問題についてももう少し拡大していくという考え方はありますかどうか、これをひとつお聞きしておきたい。
#89
○三木国務大臣 これはできるだけ救済をしたいということが目的ですから、拡大をしていくということにやぶさかではないのです。ただしかしこういう問題は専門家等の意見も徴しまして、いま取り上げられた疾病ばかりでなしに、専門家の意見も徴して、拡大の必要があると巻にはできるだけ拡大したいというのが基本的な考えでございます。
#90
○岡本委員 拡大の必要があるときというのは、その必要はだれがきめるのか。何と申しましても小学校の例を引きましても、よそよりも五倍も鼻炎が多いとかいろいろ出ておるわけです。これは尼崎市のデータをとったわけです。また東京でもそういうデータがありました。そのデータをとって私は当委員会で論議をしたことがあるのですがその必要があるときというのは――やはり必要であるのです。実際に救ってあげなければ次代を背負う人たちですからね。そういうわけですから、その必要があるときというのはどういう解釈をしたらいいのか、それをちょっと聞きたい。
#91
○三木国務大臣 結局は汚染度と有症率です。そういうものが御指摘のようにたくさんの患者が出ておるというときには、それが指定の地域を拡大するかどうかというときの判断の基礎になるわけでございます。
#92
○岡本委員 これは船後局長にもう一ぺん聞いておきますがね。いまの指定地域の判断になる――私が言っているのは尼崎とか、いま指定されたところがありますね。その中でもすでに気管支ぜんそくとか以外にこういった鼻炎とかいうものが、大気汚染のために非常に出ている。これは医師会でも証明しているわけですがね。これは当委員会でも何べんも論議したのですけれども、検討いたします、検討いたしますと言ってそのままになっているのです。これは前々長官のときから私は言っているのですが、これについてもう少し前向きな答弁がほしい。
#93
○船後政府委員 まず指定疾病についての考え方でございますが、やはり先ほど長官が申し上げましたように、私ども気持ちといたしましては、これをできるだけ狭く押えるというような考え方は毛頭持っておりません。問題はやはり科学的な知見というものに基づかねぱならないところにあるわけでございます。先生御指摘の鼻炎等でございますが、これは大部分は続発症の問題として解決できる面もございますけれども、しかし大気系で現在四つの指定疾病がございます。この四つの指定疾病以外に、しからば大気汚染によって生ずるという病気があるかないかという問題は、これは可能性は否定できないわけでございまして、私ども今後ともたとえば光化学スモッグの問題も含めまして専門家の御意見、御検討というものを進めました上で考えてまいりたいと思っております。
#94
○岡本委員 次に、居住条件でございますが、この間ここへ参考人に来ていただいた方々も特に居住条件についてお話しておりましたが、まずそのうちの一点は、私、申し上げたいのは、指定地域内において、たとえば尼崎なら尼崎でいま公害病の認定をされておるわけです。それから他地域に移転する。とてもしんぼうできないというわけで移転した。その場合に公害病の指定を切られてしまう。それをやられると今度は医療費に困るというわけで、汚染の中にいて――あれですよ、大気汚染系統の病気は転地療養をすればどんどんよくなっていくのですからね。悪いところに置いて転地療養をさせない、あるいは移転させないようにしておいてそしてお金を払う、そんなばかなことはないと私は思うのですから、これはひとつむしろ転地療養あるいはまた移転をすすめるというのもおかしいのですけれども、そういう方々はできればそういう汚染地域でないところに変わらしてあげるというくらいのことが、私はほんとうの手厚い、またほんとうの行政ではないか、こういうように思うのですが、その点について。
#95
○船後政府委員 先生の御指摘はまことにごもっともでございまして、その点が現行特別措置法における一つの問題点であったわけでございます。現行特別措置法では、指定地域外に住居を移しました場合に、三年を限って給付を続けるといたしておりましたところ、その三年目がことしやってまいったわけでございます。そこで私ども根本的な検討をいたしておりましたけれども、結論が出ないまま、とりあえずの措置といたしましては、来年の三月末日までその期間を延長いたしまして、この新しい制度に引き継ぎたい、かように考えておったわけでございます。新しい制度におきましては、当然有効期間の定めがございますけれども、この指定地域におきまして認定患者と認定されますと、御本人が住居を移さないで転地療養される場合はもとより、住居を移されました場合でも引き続きまして患者として認定されますし、かつまた病気がなおらなければまた再申請もできるという仕組みにいたしておりますから、現在ありますような問題は解決すると考えております。
#96
○岡本委員 次に、この四十九条の「別に法律で定めるところにより徴収される金員」こういうことがありますが、これをひとつ説明してください。
#97
○船後政府委員 第一種地域にかかわる給付の財源といたしましては、大気の汚染に対して寄与しておる原因者に、それぞれの寄与度に応じて費用を分担させるというものの考え方でございます。そのうち大規模な固定発生源につきましては、それぞれ有害物質の排出量を測定することも可能でございますから、その排出量に応じて汚染負荷量賦課金を徴収するという仕組みにいたしたのでございますが、このような個々に測定可能な発生者以外の、自動車等の移動発生源でございますとかあるいは零細な固定発生源でございますとか、このような発生源は、個々の排出量は少なくとも、合計いたしますと無視し得ない量に達するわけでございますから、これにつきましてどのような方法でもって、冒頭に申しましたような考え方のもとに負担を求めるかという点につきまして、中公審でも種々議論をいたしたわけでございます。
 いろいろな案がございまして、一つには汚染物質である原燃料に着目いたしまして、その原燃料の使用量に応じて取ればそれがつまり有害物質であるSOあるいはNOというものの排出量を推定できるではないかというような御意見もございましたし、あるいはまた、直接の発生源であるたとえば自動車、自動車について申し上げますと、現在自動車重量税のように、個々に、車種ごとに何らかの負担を課するという仕組みもあるわけでございますからこれに準じたような方法はどうであろうか、いろいろな意見があったわけでございますが、しかしいずれにいたしましても、これらの油とかあるいは自動車につきましては現在種々の税制があるわけでございまして、その税制との関連において問題を詰める必要があるわけでございます。そういった意味から、最終的な解決を四十九年度予算編成時に譲りまして、本法案におきまして別法で定めるということにいたしたのでございますが、本法の公布後施行に至るまでにはいろいろな準備がございまして、一年の期間をお願いしておるわけでございますが、その間に必ずこの「別に法律で定める」部分を明定いたしまして、本制度の財政に遺憾のないようにいたしたいと考えております。
#98
○岡本委員 ほんとうはこの法案をつくるにあたっては、この移動発生源の問題もやはりきちっとこの法律の中に入ってくるのが私はほんとうであろうと思うのですね。まあそう言ってもしかたがありませんが……。
 そこでひとつ考え方を聞いておきたいのですが、特定賦課金の納付義務者、当該汚染の原因者、したがって当該被害を発生せしめた加害者になるわけですね。こういうように解釈をするのか、この点がちょっと大事ですから聞いておきたいのです。これは六十二条です。
#99
○船後政府委員 第二種地域にかかわる指定疾病はいわゆる特異的疾患でございまして、原因物質と疾病との関係が通常明らかでございます。したがいまして、その原因物質を排出したものというものも比較的把握しやすいわけでございます。でございますので、このような疾病を第一種地域にかかわる非特異的疾患と同じような仕組みで費用の負担を求めることは困難でございますから、第二種地域にかかわるこういう特異的疾患につきましては、そういった問題が起こりましたケースごとに、それぞれの原因物質の排出者と目されるものから特定賦課金を取って、そして給付の財源に充てるという構成をとったわけであります。
#100
○岡本委員 原因と目されるというところが、そうするといまの考え方としては、そういった特定賦課金の納付義務者、これはそこから取るといういうことですが、その納付義務者は、当該のそういう病気の原因者だ、したがって原因者であるから加害者だ、こう断定をしてよいのかどうかということを聞いているのです。
#101
○船後政府委員 この制度はあくまでもこの制度といたしまして、その疾病の原因である物質を排出したものというものをともかく特定いたしまして、それは複数の場合もあれば単数の場合もあると思いますが、賦課金を徴収するわけでございますが、それが民事上不法行為の責任者であるかという問題は、やはり法律といたしましては、民事は民事、行政法は行政法ということにならざるを得ないのは御了承願いたいと思います。
#102
○岡本委員 どうもこれはややこしいですね。
 そこで次にもう一つお聞きしておきたいのは、協会が賦課金を徴収するにあたって、立ち入り調査権があるというような規定がないように思うのですが、これはどこにありますか。私はそれが一番心配なのは、長官、この協会が環境庁長官と通産大臣との共管になっておるのですね。そうするとどうしても環境庁長官の権限というものが、通産大臣と共管しますと押されてしまうのですね。いままで公害が非常に早く除去できなかったというのは、通産大臣の権限というのが非常にそこに入りまして、いま電気事業がそうでしょう。ですから私は、被害者救済の一番国民が期待しているのは環境庁ですね。環境庁長官のその権限が弱められるということになると、非常に心配である。この点については、長官から絶対そういうことがないんだ――これはまあこの間の答弁では、電気事業法に基づくところの火力発電所とかそういったもの、あるいはまた鉱山、そういうのがありますけれども、しかしそれは通産省の権限になっておりますけれども、しかし、そういうような設置とか、あるいはいろいろな許可の権限でありまして、中の、今度はまた公害問題になりますと、これはもう環境庁の権限でなければ私は処理できないと思うのですね。ですから、一歩進んで、この協会がやっぱり今後運営されていくについては、もう途中でつぶれてしまうようなことでは話にならないわけですから、借入金をどんどんやる。健康保険の赤字みたいになってしまってにっちもさっちもいかなくなる。こんなことでは、私は話にならない。そうならぬようにするためにも、今度は被害者の救済を少し少しに押えていくというようなんじゃ、これはもう名前はあるけれども実はないということになると思うのです。そういう点を私は非常に心配いたしますので、長官から確たるところの御答弁をいただきたい。
#103
○船後政府委員 長官がお答えいたします前に、私から法律上の仕組みにつきまして、御説明申し上げます。
 まず、協会の仕事はあくまでも賦課金の徴収とそれから、集めました金を都道府県に配るというだけの仕事でございまして、集めるべき賦課金の総額というのは、これは協会がきめるわけではなくて政府においてきめるわけでございます。その総額の範囲内で個々の事業者に、これもまた法律政令で定めるところの一つの算定方法に従って割り振っていくというような仕事を協会が行なうわけでございます。でございますから、協会は、この法律、政令で定めるところにより事務を執行いたしますれば、理論的には金の取りはぐれと申しますか、そういうことは起こらないわけではございますが、しかし、まあこれは税金におきましても滞納処分が起こりますように、事実問題といたしましてはあり得るということは、予想いたしておるところであります。
 なお、協会が環境庁長官及び通産大臣の共管といたしておりますのは、これは電気、ガス、鉱山等につきましては、通産大臣が主務官庁であるということに基づいておるわけであります。なおまた、協会には立ち入り検査権は与えておりませんけれども、第百四十一条の規定で環境庁長官または通産大臣に立ち入り検査権あるいは報告聴取ということを与えております。
#104
○三木国務大臣 本法を制定しようという目的が、公害病患者の人たちを救済しようという目的ですから、これが産業の側に立ってこの法は運営をしようというものではないわけですから、御心配のないように、環境庁長官がこの法律の精神に即して運用のよろしきを期していきたいと思っております。
#105
○岡本委員 長官、あなたは五分ほど一時までの間、何か用事があるそうですから、では、すぐ行ってください。
 あと、まだ各項目のものがだいぶあるんですが、時間があれですからこの次に譲りまして、ぜひひとつ――お隣から、自民党の議員総会に敬意を表してということですから、まあこれで終わりますが、ぜひひとつ徴収それから補償、これをしっかりやっていけるような政令事項も立ててもらわなければならない。悪ければまたどんどん変えていくということにしなければならないと思います。
 これできょうは終わります。
#106
○登坂委員長代理 次回は、明二十一日土曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後零時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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