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1972/06/27 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 商工委員会 第35号
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1972/06/27 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 商工委員会 第35号

#1
第071回国会 商工委員会 第35号
昭和四十八年六月二十七日(水曜日)
   午前十時四十九分開議
 出席委員
   委員長 浦野 幸男君
  理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君
   理事 田中 六助君 理事 羽田野忠文君
   理事 板川 正吾君 理事 中村 重光君
   理事 神崎 敏雄君
      天野 公義君    稲村 利幸君
      内田 常雄君    小川 平二君
      越智 伊平君    大久保武雄君
      大村 襄治君    木部 佳昭君
      近藤 鉄雄君    三枝 三郎君
      笹山茂太郎君    塩崎  潤君
      田中 榮一君    西村 直己君
      八田 貞義君    増岡 博之君
      松永  光君    森  美秀君
      岡田 哲児君    加藤 清二君
      上坂  昇君    佐野  進君
      竹村 幸雄君    藤田 高敏君
      渡辺 三郎君    野間 友一君
      松尾 信人君    玉置 一徳君
 出席国務大臣
        通商産業大臣  中曽根康弘君
 出席政府委員
        通商産業政務次
        官       塩川正十郎君
        通商産業省企業
        局長      山下 英明君
        通商産業省企業
        局参事官    三枝 英夫君
        通商産業省公害
        保安局長    青木 慎三君
        通商産業省化学
        工業局長    齋藤 太一君
 委員外の出席者
        農林省農蚕園芸
        局肥料機械課長 前田 耕一君
        通商産業省化学
        工業局化学肥料
        参事官     兵藤 節郎君
        商工委員会調査
        室長      藤沼 六郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月二十七日
 辞任         補欠選任
  天野 公義君     大村 襄治君
  小川 平二君     森  美秀君
  島村 一郎君     三枝 三郎君
同日
 辞任         補欠選任
  大村 襄治君     天野 公義君
  三枝 三郎君     島村 一郎君
  森  美秀君     小川 平二君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 輸出硫安売掛金経理臨時措置法を廃止する法律
 案(内閣提出第九八号)
 工場立地の調査等に関する法律の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第九一号)
     ――――◇―――――
#2
○浦野委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、輸出硫安売掛金経理臨時措置法を廃止する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。板川正吾君。
#3
○板川委員 輸出硫安売掛金経理臨時措置法を廃止する法律案について、若干の質疑をいたしたいと思います。
 輸出硫安売掛金臨時措置法が制定された当時の状況、その背景について質問いたしたいと思います。この法律は、所期の目的を達成して今日廃止することになりました。しかし、この法律の過去の背景をここで振り返って検討することは、今後の政策を立てる上に参考になると思いますので、振り返ってひとつ法律が制定された当時の状況について説明を願いたいと思います。
#4
○齋藤(太)政府委員 戦後わが国の肥料は、一番早くいわゆる傾斜生産方式によりまして生産が回復を見てまいりまして、昭和二十五年ごろからぼつぼつ輸出が出てまいったのでございますけれども、その後、輸出価格がだんだん低落を見てまいりまして、そのために、輸出におきます赤字を国内に転嫁することを避けるべきであるといった問題が出てまいりまして、昭和二十九年にいわゆる肥料二法がつくられました。
 それによりますと、輸出は日本硫安輸出株式会社を通じまして全部一手輸出をするということになりましたが、その際の硫安輸出会社に国内の製造業者が売り渡します価格につきましては、当時のマル公をもちまして販売をいたしまして、そして日本硫安輸出株式会社は、実際の国際価格によりまして輸出を行ないました。そのために、国内のマル公と実際の輸出価格の乖離につきましては、国際価格のほうが安かった場合には、国内の製造業者は硫安輸出会社に対します売り掛け金という形で、この国内価格と国際価格の差額が処理をされてまいったわけでございます。
 ところが、輸出競争がだんだん激化いたしまして、輸出価格は逐年低下を見ましたために、国内価格と輸出価格の差がだんだん開いてまいりまして、その結果、国内の製造業者の硫安輸出会社に対します売り掛け金はだんだんと累増を見まして、昭和三十七年十二月には二百十五億円に達したのでございます。しかも、その後の見通しとして、さらにこの額が増加をしていきそうな傾向にございましたので、これは非常に不自然な形でございますから、昭和三十七年の十二月に閣議決定をもちまして、昭和三十八年一月一日からは、国内メーカーの日本硫安輸出会社に対します売り渡し価格は実際のFOB輸出価格をもって硫安輸出会社には売り渡すこととする、そのかわりに、この三十八年以後は、硫安メーカーは、輸出によります差損につきましてはいろいろ経営の多角化をはかりまして、その中でそれは吸収をしていく、それから、それまでにたまりました二百十五億の売り掛け金につきましては、これは結局貸し倒れということでございますので、貸し倒れ償却をすることになるわけでございますけれども、当時の各社の経理状況からいたしますと、一挙に二百十五億を損金算入をいたしますと、各社の準備金等を取りくずしましてもなお巨額の会計上の赤字が出まして、金融等も受けられなくなる、こういう状況でございましたので、商法の特例を設けまして、この二百十五億の売り掛け金の損金算入を繰り延べ扱いにいたしまして、十年間に繰り延べ償却をする、こういうことによりまして、硫安メーカーの経理面での一挙に悪化することを防ぐことによりまして金融の道をつけ、一方開銀融資等をつけまして、肥料以外の分野への進出等経営の多角化をはかるということによりまして、硫安業界の合理化をはかろうということを考えたわけでございます。そのために商法の特例を設けまして、この輸出売り掛け金を十年間に繰り延べて償却する必要ができましたので、この輸出硫安売掛金経理臨時措置法を昭和三十八年の六月に制定を見たわけでございます。
#5
○板川委員 簡単にいうとこういうことですね。昭和三十七年の十二月までに、この硫安の輸出会社の赤字が二百十五億ほどある、その赤字をどうするかということでこの法律が考えられて、そこでその赤字は十年間のうちに繰り延べ償却を認めるというために、商法の特例を設けた、そして十年間に二百十五億ですか、この赤字を所期の目的のように解消してきた、したがって、この法律はこの目的を果たしたのであるから廃止をしたいということと思います。
 そこで、この十年間と今後の硫安工業対策というものについて若干議論したいのでありますが、その後この硫安工業界というのはいかなる体質改善あるいは近代化を行なってきたか、それについて経過を説明していただきたいと思います。
#6
○齋藤(太)政府委員 ただいま先生の御指摘のように、本法の制定以来、硫安生産業者十八社ございますけれども、この日本硫安輸出会社に対します輸出硫安売り掛け金二百十五億円は繰り延べ損失として償却が行なわれてまいりまして、ことしの三月末日をもちまして全額損金算入が完了を見たところでございます。この十年間の硫安各社のとってまいりました合理化対策でございますけれども、十年前の三十七年当時は、アンモニア肥料工業は、経営体質的に見ましても脆弱な体質でございましたが、この十年間に、繰り延べて損金算入ができるという措置、それから体質改善対策といたしまして、一つはアンモニアを極力肥料以外の工業用に活用をはかったのでございます。その結果、たとえば硫安について申しますと、現在ではいわゆるなまのアンモニアを使いまして合成する硫安は、硫安の生産のわずか二%でございまして、九八%は他の工業用に一度アンモニアが使われまして、それを回収するという形で硫安がつくられております。
 それからもう一つは、アンモニア設備の大型化計画を進めたのでございまして、昭和四十年に一日当たり五百トンのアンモニア能力の、当時世界で最新鋭といわれました工場をスクラップ・アンド・ビルド方式によりまして建設をし、四十三年にはさらに倍増して日産一千トンという、これも当時の世界の最も進んだ、大規模な形態のものをスクラップ・アンド・ビルド方式によりまして建設をいたしまして、コストの低下をはかったのでございます。その結果、現在のアンモニア能力は、たとえば十年前が約百六十二万トンでございましたが、現在四百六十万トンまで能力そのものが増大をしますと同時に、その約八割がいわゆる新鋭の大型設備で占められておる、こういった合理化が進んだのでございます。
 さらに、肥料以外の部門に極力経営を多角化いたしまして肥料の損失をそっちのほうで吸収していこう、こういう経営努力が進められまして、その結果、十年前には硫安をつくっておりました製造業者の売り上げ高に占めますアンモニア肥料の割合が大体二三%でございましたけれども、四十七年にはその売り上げの中での肥料の割合は八%まで低下を見せておりまして、こういうふうに経営の多角化、それから総合化、さらに設備の大型化、こういうことによりまして、いわば肥料会社におきます肥料生産はその一部門を占めるにすぎない、会社自体は総合化学会社という形に脱皮をしてまいったのでございます。
#7
○板川委員 この十年間、肥料関係業者が多角化をはかり、あるいは大型化をはかり、さらに硫安系肥料に対する依存度を低めて、そして合理化をはかってきた、こういうことが赤字を消し得る力になったということですね。
 そこで伺いたいのでありますが、最近世界的な食糧不足とともに、東南アジア諸国で食糧の増産というのが必要に迫られてきておる。そこで、わが国に対して、経済協力として化学肥料を供給してほしいということを要望する声が非常に強いと伺っておりますが、中国はまた別といたしまして、東南アジアの諸国がわが国にそうした肥料の輸出を求めるという状況はどの程度の規模になっておるか、その点を伺いたい。
#8
○齋藤(太)政府委員 発展途上国におきましては食糧の安定確保ということは非常に大きな問題でございまして、わが国の化学肥料の輸出に対する期待が非常に大きいわけでございます。政府としましては、一方で内需の確保をはかりながら、極力こういった輸出の要請に応ずるということの基本的な方針のもとに臨んでおるわけでございますけれども、時に東南アジア各国等は、外貨不足等の事情もございまして、円借款等の要請が強うございます。したがいまして、こういった国々には円借款等も通じまして極力そういった要請にこたえてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございますが、肥料の輸出の中に占めます円借款による輸出の割合は、トン数で見ますと昭和四十五肥料年度が全輸出の七%でございます。それが四十六年には一四%に上昇をいたしております。なお四十七肥料年度はこの六月末をもって終わりますので、まだ統計が出ておりませんけれども、絶対額で見ますと、昨年の二千八百万ドルに対しまして、ことしは見込みでございますが、三千五、六百万ドルになる見通しでございまして、相当増額される見込みでございます。
#9
○板川委員 そういう東南アジア諸国、発展途上国の要望にこたえるようないわゆる生産能力の点、輸出能力の点はいかがですか。十分こたえ得る力を持っている、こういうふうに現状を理解してよろしいのですか。
#10
○齋藤(太)政府委員 わが国の肥料の、特にアンモニア系肥料の能力は、国内の需要に比べまして非常な大きな能力を持っておりまして、大体輸出比率が七割に達しております。つまり内需三割、輸出七割という状況でございますので、こういった東南アジア各国の輸出の需要にいまの能力で十分こたえていけるというふうに考えております。
#11
○板川委員 現在輸出価格と国内価格との差はどういう状況でありますか。
#12
○齋藤(太)政府委員 国内価格も輸出価格もこの十年ばかりの間は一貫して低下を見せておりますが、特に輸出価格の低下が激しゅうございまして、一番開きました昭和四十六年度におきましては、硫安の値段で見ますと、国内価格が四十四ドル七十セントに対しまして、輸出価格は二十ドル五十三セントでございました。ただ、昨年の夏ごろから世界的に気候不順の関係ですとか、こういうふうに国際輸出の価格が非常に低落をしましたために、供給各国が増産をきらいまして、供給面でやや不足ぎみになってきた、こういった事情もございまして、国際市況がタイト化いたしまして、四十七肥料年度の価格は、推定でございますが、輸出価格では二十五ドル五十三セント、国内は四十三ドルでございまして、だいぶ近づいてまいりました。さらに、来月から始まります四十八肥料年度では、国内価格と輸出価格はほとんど差がないところまで輸出価格のほうが上昇を見せる見込みでございます。
#13
○板川委員 三十七年までの実績を見ますと、輸出価格と国内価格の比較を見ましたら、国内価格を一〇〇としまして三十七年が輸出価格が七一%、三十六年が七三・三%、三十五年が七七・四%、三十四年が七六・七%、三十三年が八一・五%、大体七七、八%ぐらいの平均になっておる。その後、この新しい処置をした三十八年以降は七三・八、九二・九、九四・六、七七・四、七〇・九、六七・七、六四・七、そして四十五年が五三・四で四十六年の肥料年度が四五・九、三十八年度以降各年度の比較をいたしますと、最近が一番安いのですね。国内価格の半分以下で外国に売っておる、こういうことになるわけです。見通しとしては、いま局長言ったように、あるいは将来需給のバランスが変わってそう違わなくなるのじゃないか、こういう説がありますが、未確定のことですからそれはそれといたしますが、最近における国内価格と輸出価格は、半値以下で国外に売っておる。国内の農民からいえば、外国へ売る値段の倍の値段で肥料を買っている、こういう理屈になるわけであります。
 三十八年以降は肥料に対する新しい法律ができたわけですが、その前は、いま言ったように輸出は安くして国内には高くしているじゃないかという農民の大いなる反発があって、そして新しい制度として一手買い取り機関を設けて、そして輸出と国内価格の差は赤字として積み立てておいたわけですね。いま、たとえば半値以下で外国へ輸出しておるという現状に対して、農業団体、そういった方面から三十七年までに起こったような批判というのはないのですか。
#14
○齋藤(太)政府委員 御指摘のように、昭和四十六年では、大体輸出価格は国内価格の半分まで下がっております。ただ、輸出の場合には、バラとして、小袋に詰めませんで船積みをいたしますので、いわゆる輸出メリットがございまして、手取りの比較で申しますと、実際にはこんなに開きがあるわけではございません。国内ものは小袋に詰めたり輸送がございましたり、手間がコスト面で非常にかかりますので、コストの比較からいたしますとそういった開きにならないわけでございますが、いずれにいたしましても、輸出価格のほうが安いのは御指摘のとおりでございます。
 この問題につきましては、輸出の赤字を国内価格に転嫁しておるのじゃないか、こういった批判が一部にあるわけでございますけれども、これは当たらない批判でございまして、国内の価格につきましては、新しい肥料価格安定等臨時措置法によりまして、昭和三十九年の法律でございますけれども、国内の価格については製造業者と需要者の団体とが直交渉をいたしまして値段をきめることにいたしておりますが、それは実際にはメーカーのコストをもとにして、原価に基づいてきめることになっております。
 その結果、国内価格はすでに低下を見せておりまして、昭和三十八年を一〇〇といたしました日銀の卸売り物価指数によります国内の肥料価格は、昭和四十七年には硫安で八八・五、尿素で八四・四、一般の食品が一二五でございますし、総合物価指数が一−二でございますけれども、肥料関係は八八とか八四とかいったような、十年前よりも一割ないし二割近い低下を見せておるわけでございます。輸出のほうは結局国際価格できまりますので、コストと離れまして、実際に輸出できる価格で出さざるを得ない。かりにそれによります損が出ているといたしますと、これは総合化学会社として、総体としてその分は埋め合わせをつけていく、こういうことをやっているわけでございまして、結局全体の生産の七割は輸出に出ておりますので、それだけ生産規模が拡大を見ておるわけでございまして、その大規模生産によるコストの低下分は、国内価格の引き下げにおいては常にそのメリットが反映されておる、こういうふうに考える次第であります。ですから、輸出の赤字分が国内価格に転嫁されておるという面は当たらない議論じゃなかろうか、かように私どもは考えておるところでございます。
#15
○板川委員 それはこういうことですか。いま肥料価格安定等臨時措置法がありますね。これは農業団体とメーカーとが話し合ってこの値段をきめるという制度が三十九年からですか、発足をしておりますね。従来は企業者が一方的にきめたからそういう誤解なり批判なりが生まれてきたけれども、いまは需要者である農業団体がメーカーと直談判をしてコスト計算をしてやっておるから、そういう非難は当たらない、こういうふうに理解してよろしいかどうか。
#16
○齋藤(太)政府委員 従来は企業者側が値段をきめたわけではございませんで、マル公で政府がきめておったのでございます。それを昭和三十九年に従来の肥料二法を改めまして、肥料新法として肥料価格安定等臨時措置法をつくりましたときにマル公制度をやめまして、そのかわりにユーザーの団体とメーカーのほうとで自主交渉をする、その場合に政府が資料を提供するということになっておりまして、政府がいろいろ調べました原価等等を提示いたしまして、それをもとに交渉が行なわれております。
#17
○板川委員 これは参考に伺いますが、前に政府が公定できめるときにはバルクライン方式なんかありましたね。いま、国内価格がきまる、そして輸出の場合にはバラで輸出をするし、手数がかからないということで、国内価格が四十四・七ドルであればそれよりも相当下でいい、こういうことなんですが、その国内価格を一〇〇とした場合に、輸出の価格のコスト、これは大体どの程度になるのですか。輸出価格は国際相場できまるから、それはこういうことに関係なく国際相場できまる、それはそれでいいのです。しかし、国内価格を一〇〇とした場合に、輸出の価格は大体、たとえば八〇%とか七五%とか、そういう程度がコスト計算上妥当であろうという線はわかりますか。
#18
○齋藤(太)政府委員 四十七年度の硫安の国内価格が四十ミドルでございますけれども、輸出メリットは、このうち約十ドルぐらいあろうかと存じます。
#19
○板川委員 そうすると、国内価格を一〇〇とした場合に大体八〇ぐらい、こういうふうに考えていいのですね。
 次に、将来国際価格が上がってくるという見通しに立てば、あるいは国際価格と国内価格が接近をして、輸出することによってマイナス面がないと考えられる場合は別でありますが、いま言った、輸出価格の八〇%以下で国際相場がきまって輸出するという場合に、いわば企業としてはコスト計算上ではマイナスになりますね。企業全体としては、他の部分でプラスがあればそれを補うことはできるでしょうが、硫安関係の原価を計算した場合にはマイナス面が出る場合がある。マイナス面が、さっき局長が言ったように心配ないというのなら、私の議論は実はないのですが、もし国際価格が下がって、輸出することによって赤字が累積をされる、そして東南アジア諸国では日本の肥料を要望する声は非常に強い、日本も輸出能力がある、こういう状態になった場合に、また、三十七年までの間のように、一手買い取りですか、輸出機関を設けて赤字をたな上げするようなことの事態は今後はない、そういう心配はない、こういうふうに考えてよろしいですか。
#20
○齋藤(太)政府委員 先ほど申し上げましたように、現在、肥料を扱っております化学会社の売り上げの中での肥料の割合は八%ぐらいでございまして、したがいまして、かりに輸出面で、国際価格が非常に低落を見ましてコスト的に赤字になるような事態がございましても、これはそういった総合化学会社の全体の経営の中で合理化によって吸収されるべきものと考えておりまして、国内価格で輸出会社が買い取りまして差額を会社に積み立てるといったようなことは考えておりません。
#21
○板川委員 次に、日中の肥料交渉について伺いますが、五月の初旬に、中国に日本の肥料代表団が行きまして、商談がまとまったわけです。九年ぶりで大幅な値上げが認められたということがこの五月十日の新聞に報道されておりますが、この中国に対する輸出の割合、それから数量、金額、価格あるいは将来の見通し、こういった点について、キャッチし得る一つの情勢といいますか、通産省はこういうことをどういう見解を持っておられるか、承りたいと思います。
#22
○齋藤(太)政府委員 来月から始まります昭和四十八肥料年度の日中間の肥料交渉は、去る五月に妥結を見たわけでございますが、三月二日に中国から代表団を東京に迎えまして、約七十日間の長期の交渉を行ないまして合意を見たのでございます。
 その量は、硫安換算で三百八十四万トンでございまして、大体わが国の輸出の約七割を占めます。金額にいたしますと三億一千万元、円貨にいたしまして四百十一億円でございます。
 今回は、肥料の国際需給がタイト化しております状況を中国側が理解をいたしまして、輸出価格は、御指摘のように、昨年に比べまして相当の上昇を見せておりまして、円貨で見ますと、硫安で約四割、尿素で約三割、塩安で約四割値上げになっております。
 それからもう一つの特徴点は、従来は日本からの輸出につきましては船積み後百八十日目に支払われる、こういう契約でございましたために、その間に為替の変動がございますと、その為替の差損は全部日本側がかぶったのでございますけれども、今回の四十八肥料年度の分からは、全部アットサイトのいわゆる即時払いというふうに変わりまして、この面は、日本側にとって非常に改善された形になったのでございます。
 それから数量につきましては、国内の需給等も考えまして、また、全般的に、世界的に肥料の需給がタイト化しておりますので、そういう関係もございまして、昨年よりも、硫安換算にいたしまして九%輸出量は減る契約になっております。
#23
○板川委員 われわれも、肥料関係者から、長い間、対中国輸出は赤字で、出血輸出で、まあやらないよりいいが、実はたいへんな赤字だということを訴えられておったのでありますが、ことしの協定で、硫安関係が四二%、尿素関係が三二%、かつてない大幅な値上げを認めてくれた、こういう状況のようですね。特に中国の市場は輸出の七割というのですから、また輸出は国内生産の七割というのですね。そうすると国内生産の半分は中国に輸出されている、こういう実態で、わが国のこの肥料行政上非常に大きな要素を持っておる、こう思います。
 そこで、この日中交渉の際に中国側は長期的な協定を希望しておった、しかしわがほうのいわば条件がととのわずに不成立に終わった、こう報道されておりますが、この長期協定が中国側の要望にかかわらず不成立に終わった背景といいますか、これはどういう点にあるのですか。
#24
○齋藤(太)政府委員 化学肥料の輸出におきましては、輸出のウェートが高い点もございまして、経営の安定という意味からも、長期契約を結ぶということは基本的には輸出、輸入、両方にとって好ましいことであろうというふうに私ども考えております。
 今回、日中間で四十八肥料年度の分だけがきまりまして、長期契約が妥結に至りませんでしたのは、全く時間的な制約によるものでございまして、近く長期契約の交渉が再開されるというふうに聞いております。私どもといたしましては、中国側は伝統的なわが国の肥料の市場でもございますし、先方も、今後も相当長期に大量輸入を考えておられるようでございますので、従来どおり中国の市場を重要視いたしまして、積極的にこの対中肥料輸出については取り組んでまいりたい、かように考えておるところでございます。
#25
○板川委員 これはちょっと質問の中で数字が合わなくなった感じがするんですが、齋藤局長は、十年前の百六十二万トンから現在の生産は四百六十万トン、こうおっしゃいましたね。それで、中国側に対しての輸出が三百八十四万トンで、これが輸出の七割を占めておる、日本の生産の五〇%ぐらいだろう、こう言っておるんですが、数字がちょっと合わぬけれども、これはどういうことですか。直してください。
#26
○齋藤(太)政府委員 たいへん失礼いたしました。
 先ほど私申し上げました四百六十万トンは、アンモニアの生産能力でございます。それから、ただいま申し上げました中国向け輸出は、硫安に換算いたしました肥料としての硫安と塩安と尿素の数量でございます。
#27
○板川委員 わかりました。
 最後に、これは農林省関係ですが、だれか来ておりますか。――この肥料価格安定等臨時措置法が現在運用されておりますが、この運用状況について、先ほど通産省も、ちょっとほかから触れておられますが、主務官庁として運用状況について説明を願いたい。
#28
○前田説明員 法律にございますように、趣旨としましては、内需の確保という事項、それから価格の安定化ということがございまして、法律に基づきまして、農林省におきましては、内需の調査、需要見通しの調査をいたしておりまして、通産省と連携をとりまして需給の見通しを立てまして、これを関係者に通知いたしております。これに基づきまして、輸出につきましては、法律に基づきまして、通産省が認可する場合に、農林省の協議を受けまして、農林省はそれに同意する場合には、需給の見通しを勘案して、内需に差しつかえない範囲において同意をいたしております。
 それから価格につきましては、先ほどお話がございましたように、現在全農と生産業者の団体との価格の交渉が行なわれておりまして、これに対しまして、農林、通産共同して生産費の調査をいたしまして、この資料を提供して低位、安定の価格の取りきめが行なわれるような措置を行なっております。
#29
○板川委員 この肥料価格安定等臨時措置法は、すでに一回期限の延長をしておりますね。来年の七月で本法の期限が切れるわけですが、来年七月以降どういうふうにおやりになるか、あるいはこれを廃止をして自由にするのか、あるいはこれにかわる法案を準備するのか、これは農林省、どういうふうにお考えでありますか。
#30
○前田説明員 先ほどからお話がございましたように、最近におきましては、肥料事情の需給状況が非常に世界的にタイトになってきまして、内需の確保という面についてかなり問題が将来生じるおそれもございまして、そういった四十六肥料年度の時点に加えまして、最近非常に需給をめぐる環境が変わってまいっております。こういう情勢でございますので、いま農林省におきましては、農林省の中の考え方としましては結論を持っておりませんけれども、そういった情勢を勘案いたしながら、肥料価格安定等臨時措置法の存廃をどうするかという問題を含めまして、今後の肥料対策を現在検討中でございまして、いずれにいたしましても、通産省とそのうち十分にお話し合いをいたしたい、かように考えております。
#31
○塩川政府委員 来年七月で切れますこの法律の扱いについてでございますが、制定されました当時から見ましたら相当情勢も変わってきております。しかしながら、一方においてやはり肥料の価格の安定等、供給の円滑ということは大きい使命でございますので、まだ状況も十分検討いたし、考えなければならぬと思うのでございますが、何といたしましても、制定した当時の使命は一応終わったという認識に立って考えてみたいと思っております。
#32
○板川委員 私はもうこれで終わりますが、先ほど齋藤局長のほうから、来年あたりは輸出価格が上がって国内価格と差がなくなるのじゃないかということでしたが、こういうことになりますと、これは輸出したほうがもうかるということになって、国内の肥料が供給できないということもあり得るわけでございます。いままでと情勢が今度は逆転する可能性がありますが、まあそういう将来の見通しも立てて、この肥料価格安定等臨時措置法の存廃について慎重な御検討を要望いたしたいと思います。
#33
○齋藤(太)政府委員 ただいま輸出価格が上昇いたしますと、輸出が有利になるために国内への供給を削ってでも輸出に回すようなことはないか、国内供給は不安はないかというお話でございましたけれども、この肥料価格安定等臨時措置法では、硫安輸出会社は、輸出数量につきましては全部政府の承認を受けることになっておりますので、政府としましては内需を最優先に考えておりまして、まず内需を確保いたしまして、余れば輸出に出す、こういうことで輸出の承認をいたしておりますので、内需のほうに回るべきものが輸出に回る、こういう懸念はないものと考えております。
#34
○板川委員 わかりました。この法案は、いわば廃止法案でありますから、所期の目的を果たしたということですから、以上で私の質問を終わります。
#35
○浦野委員長 松尾信人君。
#36
○松尾委員 ただいまの質疑で大かたの線ははっきりしたわけでありまして、私が質疑をしていこうと思ったことがだいぶ質疑され、答弁されたわけであります。まあこれは念のためということでありますけれども、四十七年度の硫安の需給並びに四十八年度の需給、今後の生産数量の見込みとしてはどのくらいふえていくのか。あるいは硫安の製造というものはいま限界にきておるから、もうこれ以上伸ばす必要はないのだというようなことかどうかということを最初に聞いておきたいと思うのです。これは需給の中には輸出も含めて、順々に御説明願いたいと思います。
#37
○兵藤説明員 数字にわたる問題でございますので、私のほうから御説明させていただきたいと思います。
 四十七肥料年度は、御承知のように七月から翌年の六月までの一カ年でございますが、この四十七肥料年度におけるところの硫安及び尿素の生産を申し上げたいと思います。
 まず硫安でございますが、生産が百九十二万トンでございます。そのうち内需が九十七万五千トン、この内需の中には肥料用がちょうど半分、それから工業用が半分、こうなります。それから輸出が百万トンと七万トン、こうなります。したがって、生産の中に占める輸出の割合は五五・七%、これが硫安でございます。
 それから同じく四十七肥料年度で尿素でございますが、生産が三百十八万トン、それから内需が七十三万二千トン、そのうち工業用が四十四万九千トンということで、尿素の肥料用としての内需は小さい。それから輸出が二百七十七万七千トンということで、輸出の生産に対する割合が八七・三%、こういうふうになっております。
 それからこの七月から始まる四十八肥料年度についてでございますが、硫安、尿素とも大体傾向としては四十七年の線を踏襲している、こうお考えいただいてけっこうと思います。数字を申しますと、硫安は生産が百九十六万三千トン、内需がそのうちちょうど半分で九十九万九千トン、それから輸出が百三万六千トン、輸出の生産に対する割合が五二・八%ということで、四十七肥年に比べればやや輸出比率が下がってくる、こういうことでございます。それから尿素でございますが、生産が四十七肥年よりやや多くなりまして三百二十一万四千トン、内需が工業用、肥料用合わせまして七十九万三千トン、輸出が二百四十四万四千トン、輸出の生産に対する割合が七六%ということで、四十七肥年よりはやや落ちてくる、こういう見通しになります。
 それから四十九年以降どうなるかといいますと、生産は硫安、尿素とも稼働率が九〇%をこえるというようないわばフル生産に近いような状況で対応していくわけでございますが、四十九肥年以降も世界の需給が今日のようなタイト化を続けていくということになりますれば、やはり今後もフル生産に近いような稼働率で推移するであろう。それから内需は、その場合、国内の肥料に対する需要は年々二%から四%ぐらい伸びていくだろう、こういうふうに考えられます。それから工業用は相当ふえていくであろう、こういうことで、二けたまではいきませんが、二けたに近いような数字のかなりの伸び率を示すであろう、こう見られます。そうしますと、輸出に振り向け得るところの余力というものがやや落ちてくるのではなかろうかというふうに考えられます。
 しかし、世界的に見まして今日、例の食糧の不足ということからしまして肥料に対する需要というものが非常に強まっておるわけでございますが、また肥料生産のほうも、特に東南アジア諸国あるいは中国あるいは原料の非常に安いクウェート、カタールを中心にした中東の諸国、それから東欧の諸国、ソ連、それから中南米ではメキシコとかあるいは産油国であるところのベネズエラ、こういうところがかなり大がかりな生産計画を持っているということからしまして、供給面も世界的にだんだんふえていく。こういうことからしまして、その中で占めるところの日本の化学肥料工業というものの位置は、ほぼ今日のような状況で推移するものと考えておるわけでございます。
#38
○松尾委員 いま四十七年度と八年度の需給の見通し、それから今後の生産のあらかたの見通しが説明されたわけでありますけれども、大体日本としては若干伸びていくというようなお答えであったと思うのです。
 そうしますと、構造改善等をいままで一生懸命やってきたわけでありますけれども、この構造改善によって生産数量の面がどのように変わってきたのか、それで今度は生産価格のほうが構造改善の結果どのくらい国際競争力がついてきたのか。これは大まかでいいですから、数量の面については、このようにふえてきた、またはあまりふえなかったということでけっこうです。ただし、価格の面については、国際競争力についてはこれだけついてきたのだというような成果というものはいかがでしょうか。
#39
○齋藤(太)政府委員 四十年――四十三年にアンモニアの大型設備をつくりまして、さらに尿素等も大型化をいたして、同時に能力も増加をいたしております。その結果、総生産量を窒素換算で申し上げますと、十年前の三十七年は百十万窒素トンでございましたが、四十六年は二百八万窒素トンでございまして、生産は約二倍に上昇を見ております。
 それから、その間の合理化の状況でございますが、国内価格は、先ほど申し上げましたように、三十八年を一〇〇といたしまして、硫安が四十七年で八八・五、尿素が八四・四というふうに、大体一五%から一二、三%の価格の低落を見ております。コストの低下も、いろいろな計算がございますが、大体国内価格の低下と似たように一二、三%のコストの低下を見ておるというふうに考えております。
#40
○松尾委員 大いに成果はあがったというお答えでありますが、現在なお国内価格と輸出価格の間に差がありますか、それはどうなっておりますか。
#41
○齋藤(太)政府委員 四十六年が一番開きが大きくございまして、ドルで計算いたしますと、硫安で国内価格が四十四ドル七十セントに対しまして輸出価格は平均で二十ドル五十三セントでございましたけれども、四十七肥料年度は、国内は四十ミドルに下がりまして、一方輸出価格は二十五ドル五十三セントに上がりまして、十八ドルくらいの差はございますけれども、格差はだいぶ縮まったわけでございます。さらに四十八肥料年度は、たとえば硫安では三十五ドルくらいになっております。それから尿素で八十ドルをこえておりまして、国内価格も大体八十ドル前後でございます。尿素について見れば、国内価格と輸出価格がほぼ同じくらいの価格になっていくというのが四十八年度の見通しでございます。
#42
○松尾委員 見通しとしては同じくらいになっていくだろう。硫安のほうはまだ少し安いですね。そういうことがありまして、いま四十六年度の価格の比較が言われましたけれども、そのように大きく内外の価格差がある。半分だ。そうすると、会社の採算はどうなっているのでしょうか。国内需要も半分、輸出も約半分以上だ、そして輸出価格というものは国内価格の半分くらいになっているという事態における会社の収支というものはどうなりますか。
#43
○齋藤(太)政府委員 ただいま四十七年度の上期、昨年の九月期の決算までしか統計が発表されておりませんけれども、それによって見ますとやはり硫安会社は非常に業績が悪うございまして、総資本収益率が一%でございます。それに対しまして化学工業全体の平均が二・七%の総資本利益率であります。それから全製造業は三・四%でございまして、全製造業の三分の一の利益率でございます。それから配当率も、硫安メーカー十八社の配当率は六・三%でございますが、製造業全般は九・九%でございます。配当率も非常に低いといったような状況でございまして、四十六年度の場合には十八社中大半が無配の会社でございました。
#44
○松尾委員 いまのお答えでありますけれども、このように内外の価格差がずっと続いてきたそのときに六・何%というような配当をやっているということは、無配もあるとおっしゃいますけれども赤字になっていない。赤字かどうか知りませんけれども、そのように平均してある程度の配当ができておるということは、国内価格よりもうんと輸出価格は安い、そして半分以上は輸出しておるということになりますと、これは先ほど局長は否定されましたけれども、やはり輸出価格というものが非常に安い、それをカバーするためには何としても国内価格というものを上げていかなくては会社の採算は立たぬわけであります。おまけに硫安だけの話でありますけれども、五〇%以上の輸出をやっている。価格は半分だ。国内、国外両方ひっくるめてみて会社の採算としてはある程度配当もできておるということになりますると、これはやはり国内価格というものが相当引き上げられておって国際価格の安いものをカバーしておる、こう見なければ会社としては大きな赤字が出るのがあたりまえだ、こう感ずるのですが、いかがでしょうか。
#45
○齋藤(太)政府委員 おっしゃるように、四十六年のころまではあのような輸出価格でございますと赤字であった。少なくとも輸出に関しましては採算を割っておったというふうに考えます。ただ、硫安メーカー十八社全体の売り上げの中での肥料の扱い高はわずか八%でございまして、九二%まで肥料以外の売り上げになっておりまして、結局輸出によります赤字はそういった他部門の収益によって埋め合わせをつけておる、こういうふうに考えるわけでございます。
 それならなぜ輸出を続けるかという点でございますけれども、やはり去年、ことしのように輸出価格が上昇するケースもございますし、それから逆に輸出を押えますと全体の生産規模が小さくなりまして、スケールメリットが発揮されませんで、コストが上がりましてそれがはね返って国内価格が上がる。むしろ輸出を落とすことによりまして全体の生産規模が小さくなってコストが上がる面の影響のほうが大きいと考えるわけでございます。
 国内価格と輸出価格は切り離されておりまして、国内価格につきましては、現在、肥料価格等臨時措置法によりまして、肥料の製造業者とそれから全農等が話し合いできめることになっておりますが、その場合に、農林省と通産省で原価の審査をいたしまして、政府の資料として両者に硫安業者の原価を提示いたしております。それに基づきまして国内価格の決定が行なわれておりますので、結局実際のコストによって国内価格がきまる、輸出は実際の国際市況によってきまる、こういった形になっておると思います。そういう意味で、輸出面の赤字は国内価格の計算上はそれにおっかぶせられていない、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。
#46
○松尾委員 そのように国内価格に転嫁しているのじゃない、会社の総体的なベースでやっているからそこにかぶせていない、こういう御返答ですね。そうすると、会社としては現実に利益のあがる分、今度そういう損失の起こる分、こういうことがはっきりしておりますから、輸出をやればほかの部門における利益をいままで食っているわけですからね。政府としては、総体的な硫安業界全体の立場から、スケールメリットの点からも輸出を維持していこう、こう思うわけでありますけれども、それは業界もそのように思っておるかどうか。業界がそこまで大いに意識高揚したならば、政府の思っておることと業界の意見と一致するわけですね。その点を聞きましょう。
#47
○齋藤(太)政府委員 わが国の肥料業界の弱点は、全生産の七割を輸出に依存しておる点にあると思います。御指摘のように、輸出は常に国際市況によりまして左右されますので、昭和四十二、三年から六年まで非常に大幅な低落を見せまして、そして肥料会社の経営を非常に圧迫したことも事実でございます。ですから、長期の今後の肥料政策としましては、私どもとしましては、輸出は需要があれば伸ばさなければなりませんけども、なるべく国内の工業用の用途を開拓する。アンモニアにつきましては、合成繊維のナイロンでございますとか、アクリロニトリルの繊維の原料にも使われます。あるいは酸化チタンにもアンモニアが使われます。こういう面に極力工業用の利用をはかりまして、そしてその回収という形で硫安ができてくる、あるいは回収する際にできればさらに硫安でない形で石こうで回収しますとか、アンモニアそのままの形で回収するとか、こういった工業面の利用に用途の開拓をはかりまして、そっちのほうのウエートを極力上げていくことが必要じゃないかと考えます。
 内需の肥料の伸びはほぼ横ばいと見込まれておりまして、一方輸出のほうは、先ほど参事官が申し上げましたように、ただいま国際的にタイトな状態になっておりますけれども、私どもは一時的な現象というふうに見ておりまして、長期的に見ますと、発展途上国が漸次自分で自給度を上げるために肥料プラントを建設する傾向がございますし、それから石油産出国がそこの安い油なり噴出しております石油ガスを使いましてアンモニア肥料をつくる傾向が活発でございます。また、東欧諸国も肥料の生産に非常に熱心でございまして、長期的に見ますとやはり輸出の伸びは期待できない、むしろ低開発国が漸次自給度を上げていくのではないか、こう考えられますので、それにかわるものとして工業用の用途を開拓いたしまして、全体としてのアンモニアなり尿素の生産規模をなるべく落とさないようにいたしたい、こういう方向に今後は持っていくべきであろうというふうに考えておるわけであります。
#48
○松尾委員 私がこのようなことを聞いておりますのは、日本で大いに生産をふやしていったらどうか、こういう前提で聞いているのではありません。石油の輸入等も非常にきびしくなってまいります。また、これ以上日本に公害がふえても困ります。ですから、幸い産油国なり発展途上国のほうでそのような計画があるとすれば、喜んで日本は向こうへ譲る、そしていま局長がおっしゃったとおり、日本の方向としましては、公害が起こらない工業製品のほうへ回していく、原材料の輸入というものは大体のところにしておいて、そしてそのものをより以上のものに転換する、こういう方向を前提にして聞いておるわけであります。
 そうしますと、輸出の国際価格が今後どのようになっていくか、上がるか下がるか、この見通しを一言聞いておきます。
#49
○齋藤(太)政府委員 輸出価格の見通しはきわめてむずかしい問題でございまして、昨年の世界的な天候異変、それから供給国側が、特にアメリカなりヨーロッパが、肥料の国際価格が非常に下がりましたために、生産を手控えておった、設備もほとんど増設をしていない、こういう供給需要の両面の事情から、昨年の夏ごろから国際的に肥料が非常に逼迫ぎみになりまして、そのために国際価格が強気に変わりまして、現在もなお上昇を見せております。おそらく今年あるいは明年一ぱいぐらいまではこういったタイトな状況が続くのではなかろうか、こう見ておりますけれども、それ以後についてもいまのようなタイトな状態が続くということはちょっといかがかというふうにむしろ思っておりまして、先行きは、やはりまた需給がゆるみまして国際市況は軟化に向かうのではないか、むしろそういった公算が大きいのではないかと考えております。
#50
○松尾委員 先ほども質疑の出ました日中肥料交渉の問題でありますけれども、これは数量面と価格面におきまして日中双方の提案に相違があった、このように聞いておるわけであります。この肥料交渉妥結に至るまでのお互いの数量、価格に関する相違点というものがあったならば、これを聞いておきたいと思うのです。
#51
○齋藤(太)政府委員 まず価格については、こういったふうに国際的に価格が上昇を見ておるときでもございますし、御承知のように、従来中国向けの輸出価格は、その他の東南アジア向けの日本の輸出価格に比べまして一番低位でございましたので、極力この際値上げをしてもらって採算を償いたいというのが日本側の希望でございました。その点、価格におきましては先方は低位を望みますし、こちらは値上げを極力していただきたいという点が交渉では第一の問題であったわけでございます。
 それから数量につきましては、非常に輸出の引き合いが活発でございますので、インドその他インドネシア等への輸出の関係もございまして、先方の要望どおりには沿いかねるというのが日本側の話で、先方は国際的に需給が逼迫しておりますので、なかなか日本以外の国からの輸入が思うにまかせなかったようでございまして、ぜひ数量を必要なだけ確保したい、こういう話でございまして、数量の面でも若干食い違いがございましたが、結局七十日の交渉の間に両方が歩み寄りまして、先ほど申し上げましたような線で妥結を見たわけでございます。
#52
○松尾委員 その一つの交渉の過程で、中国側としましてはできるだけ長期協定を結びたい、こういう意向の表明があったと聞いておりますけれども、いろいろのことでわがほうとしましてこの長期協定を結ぶことができるかどうか。ことしの秋にもう一回この長期協定につきましては日中双方が話し合うというようなことになっておるとも聞いておりますけれども、そのようなことの見通し、そしていよいよそのように長期協定というものの話が進められていくとすれば、日本側としてはどうなんだ、長期安定供給という中国側の希望と、日本のいまの生産、需給の見通しの点から、協定締結ということがはたしてどうなるか、こういうことでありますけれども、見通しはどうなんですか。
#53
○齋藤(太)政府委員 日中の肥料協定の長期契約の件でございますけれども、今回は、四十八肥料年度の輸出につきましての価格なり数量なりの交渉に時間をとられまして、長期契約の問題まで入る時間的な余裕がなかったためにそこまで至らなかったわけでございますけれども、日中双方ともに長期契約はメリットが多いと私どもも考えます。
    〔委員長退席、稻村(左)委員長代理着席〕
そういう意味で、近くまた長期契約につきましての交渉が再開されるというふうに聞いております。その場合には三年になりますか五年になりますか、その期間等も問題でございますし、その場合も、数量だけにとどめるか、価格までその長期の中にきめてしまうか、特に価格につきましてはなかなかむずかしい面がございまして、いろいろ問題点を含んでおりますけれども、いずれにしましても、わが国のほうとしましても現在はちょっと需給がタイト化しておりますが、将来ともども現在のような逼迫した状態が続くとも考えられません。そういう意味で、やはり肥料についての長期の輸出契約ができておるということは、将来の見通しを立てます上で肥料業界にとりましてはいろいろプラスの面もあろうと存じますので、積極的にこの長期契約締結につきましては私どもも指導してまいりたいと考えますし、業界もそういう姿勢で臨むものというふうに考えております。
#54
○松尾委員 これで質問を終わるわけでありますけれども、せっかく先方のそのような希望であり、また、それがわが硫安業界にとっても長期安定の一つの筋道にも乗るというようなことからいいましても、これはいまあなたのお答えのとおり、きちっとそういう方針を立てまして、そしてりっぱな日中両国の長期契約の締結ができますように、誠心誠意尽力をされるようにということを申し上げまして、私の質問を終わります。
#55
○稻村(左)委員長代理 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。
 午後二時から委員会を再開することにし、この際、暫時休憩いたします。
    午後零時九分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時十一分開議
#56
○浦野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出、工場立地の調査等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
#57
○中村(重)委員 本改正法案と日本列島改造論に伴う国土総合開発及び工業再配置法との関連はどういうことになっているわけですか。
#58
○中曽根国務大臣 本法案を提出した一つの動機は、四日市公害問題等が提起されまして、工場立地と自然環境並びに人命との関係を調整する、調整し直す、そういう反省から生まれたところが非常に多いわけでございます。ある意味におきましては公害立法の一種である、そういう意識に基づきまして所要の文章の訂正も加えて提出したわけでございます。しかし、まだ不十分なところがございまして、いろいろ御指摘を受けました点についてはわれわれも深く検討しなければならぬと思っております。
 それから、工業再配置促進法のほうは、日本列島の中における過疎地帯と過密地帯との再編成という意味で、ややもすればマクロ的処置として提出された法案でございまして、そういう非常な国土全体の有効利用、過疎、過密の解消というような面から工業再配置ということをねらって出てきたものでございますが、本法案は、むしろミクロ的に局所局所における環境保全との関係において工業立地を適正ならしめよう、そういう意味に主眼を置いて提案されたものでございまして、両々相まってと言い得るかもしれませんが、やはり環境という問題を非常に重視した意味の工場立地の規制法を提出したという意味において、環境保全、公害対策という面が強く出た法案であるというふうに御理解願いたいと思います。
#59
○中村(重)委員 田中総理が通産大臣であらわれたときに工業再配置促進法、この過密、過疎の状態、これは大臣も御承知のとおりで、田中さんが声を大にして言われることは、工場が過密地帯に集積をしているということ自体公害が起こるのは当然じゃないか、したがって、公害をなくするためにも工場の再配置をやらなければならないということであったわけです。私どもは、むしろそれであるならば工業再配置基本法をつくる必要があるのではないかということを主張してきたわけです。当時の田中通産大臣としましても、基本法をつくらなければならない、しかしこの工業再配置促進法自体が一つの基本法である、いろんな現行の法律というものはそれにぶら下がるものだ、なおそれをさらに充実をしていきたいというような、そういった意味の答弁がなされているわけですね。
 私の理解では、工場の立法措置といったようなものは、おそらく三年ないし五年前から通産省は提案をしたいということで、建設省であるとか自治省であるとか関係各省との折衝を続けてきておったわけですね。ところが、なわ張り争いのためになかなか話がまとまらないというようなことで、今回日の目を見るというか、提案の運びになったわけですが、当時考えていなかった、いま大臣もお答えになりましたような公害をいかに防止するかという、ここに重点が移ってきた、こう思うのです。ですけれども、やはりこの工場立地といったようなことは、やはり工業再配置促進法との関係というものが出てくるのだ。大臣のいまの答弁も、ミクロ的に見ればやはり局所的なものだ、ある意味においては工業再配置促進法にもぶら下がる立法措置であるというように受け取られたわけですが、そのように理解をしてよろしいのかどうか。
#60
○中曽根国務大臣 いままで国土計画的な立法といたしましては、再配置促進法のほかに、首都圏及び近畿圏における工場等制限法あるいは適正な土地利用をはかるための自然環境保全法、森林法あるいは農地法、都市計画法というようなものの法体系がいろいろございまして、今回はまた国土総合開発法案というものを提案しておるわけでございます。やはりいろいろそのときの必要に応じまして急所急所をねらってこういう法案が出されたり改正案が出されたりしてきたと思いますが、いろいろやってみた結果、国土総合開発法というような形で国全体の開発ということも知恵が回ってきたんだろうと思います。しかし、その開発の方法がいいか悪いかということは、各党により、また人によって意見が違うところでございますけれども、田中総理のアイデアは、そういうことでそこまで回り回ってきたんじゃないかと思います。
 われわれのほうといたしましては、何といっても昨年のコンビナート問題等から見まして、至急工場立地に関する規制法を強化して、そういう環境保全その他の面について脆弱点をこれで訂正する、そういう考えもございまして、今度提案ということになったわけであります。しかし、われわれの知恵もまだ浅いことがよくわかったと反省するわけですが、こういう量的規制という問題ではなくして、過密とか過疎という問題以上に、存在する工場から排出されるもの自体の水銀とかPCBとかという質的問題が、その前にここ半年ぐらいの間に非常にクローズアップしてきまして、われわれの知恵の浅かったことがいまさらながら反省されておるわけでございます。こういうような質的規制については公害諸立法があるわけですけれども、公害諸立法をつくってそれで安心しておったところが、それだけではいけない、過去の問題もございますし、あるいは現在さらにいろいろ注意しなければならぬ問題も出てきておるわけでございまして、そういう質的な問題について、私たちはさらにこれから注意して検討を加えていかなければならぬというふうに考えております。
#61
○中村(重)委員 この法律案の中身は別といたしまして、考え方としては理解できるわけですが、いまの制度の中からは工業再配置促進法によるところの過密、過疎を解消するということですね。これはどういう動きをやっているのか、休止状態ということになっているわけですか、いかがでござ、いますか。
#62
○中曽根国務大臣 公団はすでにできまして、公団の機能もいろいろ活動しているところでございます。それで、再配置促進法に基づく指定された工場に補助金を出したり移転を促進したりという事業も、いまやある程度前進を開始しておるところで、具体的には局長から御答弁申し上げます。
#63
○山下(英)政府委員 工業再配置法は去年の国会で制定されましてちょうど一年になりますが、十月一日工業再配置公団が産炭地域振興事業団と一緒になりまして新しく政府機関として仕事を開始いたしました。昭和四十八年度の財政投融資予算額を含めまして七百億をこえる予算で、まず過密地域からの移転希望会社を募ったわけでございますが、私どもが事前調査をしておりました予想とほぼ間違いなく相当数の希望が出てまいりまして、特に京浜地区におきましては大体五社、阪神地区におきましては四社、それぞれ審査の結果あと地融資の金融を実施いたしました。なお希望件数も相当にきておりまして、審査中でございます。
 実際問題としましては、そういう移転計画ができましてからあとも実際の移転までには相当にいろいろな問題があり、かつ過疎地域の受け入れ側では幾つかの問題が残っております。したがって、実際にここに移ってこういう仕事をしたというのはいまはまだございませんし、ちょっと先になると思います。
 それからもう一つの仕事の、公団みずから受け入れ団地を造成するという点につきましても、地点調査を終わりまして、今年じゅうに幾つかの個所で団地造成も行なえると思います。
#64
○中村(重)委員 工業再配置促進法の審議に際して、当時の田中通産大臣から、移転促進地域とそれから誘導地域、まあ調整地域というのもあるわけですが、移転促進地域から工場を出していくためにはたしか追い出し税といったことばが出たと思うのですけれども、私どもはその追い出し税というものに必ずしも賛成をしたわけではありませんでしたが、やはり何らかの負担をかけなければ財源的にもなかなか問題があるわけなんで、だからそういう方向へ進めていきたいというようなことであったわけです。また、田中さんの「日本列島改造論」の中にも、工場再配置促進というようなことで誘導地域へ出ていく工場に対しては相当な助成をしていかなければならない、地方自治体に対してもそうなんですが、そうなってまいりますと、当時工場再配置に際して、予算といたしましては実は百五十億程度であったわけですが、しかしただいま申し上げましたように、どうしても財源措置を別に講じていかなければならないというようなことが田中さんの構想の中にはやはり大きな柱になっておったという感じがするわけです。いま局長からお答えがございましたように、希望をとってみたところが京浜地区において五カ所、阪神地域において四カ所、どの程度の規模の工場が出ていくのかわかりませんけれども、田中構想といったようなことがそのままこれに助成措置として適用されるものであるとするならば、相当な財源を必要とするであろうというように私は思うわけです。それに対しては、どのようなお考え方をお持ちになっておられるか。工場再配置によって出ていく企業は別として、出ていかない企業に対しては何らかの財政負担というものをやらせようというお考え方を持っておられるのか、財源的な関係がありますから、ひとつその点を含めてお答えをいただきたいと思います。
#65
○山下(英)政府委員 御指摘のとおり、当初工業再配置法を提案申し上げましたとき、予算財政の措置案といたしましては、過密地帯から何らかの税金収入をあげまして、それを特別会計にして促進助成をするべきではないかという考え方がございましたことはそのとおりでございます。ただし、本年度予算の政府案を作成いたします去年の八月から十月の間、政府部内で関係者集まりて議論いたしました際に、自治省の見解あり、また大蔵省、通産省等、それぞれ見解があって議論いたしました結果、過密地帯に課税することはやめるという方針をきめまして、そして先ほど申し上げました、たとえば今年度のあと地見返り資金は六百八億円もかかりますし、移転運転資金は二十一億円もかかるわけでございますが、これらは一般予算及び財投から支出することにいたしたわけでございます。
 私どもとしては、過密地域の工場はこういった世相でもありますし、またそのほかに、工業用水の規制あるいはもちろん工場立地に関する過密地域の直接的な規制もありますし、ほかのほうからの規制もあって、できることならば過密地域から出ていったほうがいい、また過密住宅地域に公害を出さないようにするためにも出ていったらいいという空気は自然と増してくるものと考えております。したがいまして、私どもは追い出し税ということばは使ったことはございませんが、いま先生の御指摘がございましたように、当時、税をかければ出て行くことも促進されるのではないかという考えがあったことは事実ですけれども、現在はそういう考えを持っておりません。そして先ほども申し上げましたように、その後も希望件数が相当出ておりますので、まずこういうものをこなして、そして過疎地帯に移転を実施してみよう、そして過疎地帯でつくる工場は、いま御審議いただいております工場立地法を適用してできるだけ無公害の工場にしてもらおう、こういう方針でございます。
#66
○中村(重)委員 お答えのとおり、この委員会において追い出し税ということばが使われたかどうか、私も記憶がございません。しかし、何らかの経済負担をやらせなければならないという意味のお答えがあったことは事実ですね。ところが、だれが言ったかわかりませんが、追い出し税、追い出し税というのは、マスコミにも相当大きく取り上げられてきた、こういうことなんです。いま、そうした過密地帯に対して経済負担を課することはやめるんだ、だけれども、過密、過疎を解消するために、やはり過密地帯からの移転は促進をしていかなければならぬという考え方には変わりはない。ところが、いま私どもが審議いたしておりますこの工場立地の法案というようなものとは直接的には関係がない、大臣の先ほどのお答えの中には、むしろ知恵として、既存の工場というようなものから環境を保全するような何らかの方法を講じていかなければいけないというようなことがそこで考え方として浮かんできたということから、この法律案を提案をすることになったんだというように受け取れるお答えがあったわけです。
 それはそれといたしまして、いずれにいたしましても、既存の工場に対する環境整備、環境保全というようなものがねらいではなくて、新たに進出をする企業あるいは増設をする企業というようなものが対象になってきておるというようなことから考えてみますと、やはり工業再配置促進法との関連というようなものではないかというように私は考えていたわけであります。
 また、そのことは日本列島改造論に伴うところの国土総合開発というものとの関係はないとはいえないのではないかというようなことでございましたが、それは大臣の答弁がございましたから、その点に対しましては、私の考え方は考え方といたしまして、一応それ以上お尋ねをすることは本日はいたしませんが、この工業再配置・産炭地域振興公団の予算あるいは財投というものを計上するにあたりましては、四十八年度にこれだけ必要であるという具体的な目標と申しますか、そういうものがなければ、私は予算の編成というものはできないというように思うわけでございますが、工業再配置・産炭地域振興公団の財政投融資というものはどれだけなのか、それから、工場再配置に関連をいたします予算はどの程度計上しておられるのか、念のために伺っておきたいと思います。
#67
○山下(英)政府委員 公団の事業のために政府が四十八年度に出しました総金額は七百億円でございまして、産投出資百三十億円、財政投融資二百三十億円、政保債二百三十億円、自己財源、これは四十七年度分の引き継ぎ及び回収分でございますが、これが百十億円でございまして、これをもとに、公団は千億をこえる事業ができる予定でございます。
#68
○中村(重)委員 先ほど私がお尋ねをいたしまして、それに対するお答えというのは、規模を調べてみたところが、京浜地区は五カ所で、阪神地区は四カ所である、しかしながら、受け入れ側との問題といったようなこと等もあって、そう簡単にこれが具体化するというような見通しは立っていないというように伺ったわけでありますが、この工場再配置の財投計画は、四十七年度は三百三十九億、そのうちに再配置事業といたしましては百四十五億であったわけですね。ところが、四十八年度は七百十七億、その中で再配置事業には五百九十億が計上されておると思います。
 この予算を編成するにあたりましては、四十八年度にこれだけの工場再配置の事業ができるんだという見通しが立たなければ、予算の計上というものは私はやるべきではないし、またやれない、こう思うわけであります。実際これだけ四十七年度と比較をいたしまして大幅に増額を行ないながら、現実には具体的に四十八年度にこの予算あるいは財投計画というものが消化されるという見通しは立っていないのじゃないか。なぜにこれだけの予算を計上したかといいますと、うがった見方かもしれませんが、田中さんの日本列島改造論との関連というものがないとはいえない、日本列島改造論という田中さんの構想に対しまして、予算は要求さえするならばとれるんだ、財投計画にいたしましても要求さえすればその計画はできるんだというような、きわめて不見識な予算要求をやったのじゃないかというように私は考えられるわけであります。しかし現実には、この消化ができないという形になっているのではありませんか。
 それといま一つは、田中構想によりますと、先ほど私が触れましたように、過密地帯において何らかの形の財政負担を要求しようという考え方であった。ところが、これに対するごうごうたる非難があるということで、これはやめようということになった。しかし、四十八年度の予算編成当時におきましては、そうした方針は確定をしていなかったのではないか。これをやめるということになってまいりますと、じゃ将来どうするのかというようなことが当然重要な要素として考えられなければならないと私は思うわけであります。そういう構想だって立っていないのではありませんか。
 以上申し上げました数点に対して、お答えをいただきたいと思います。
#69
○三枝政府委員 四十八年度の事業内容といたしまして、先ほど局長からお答え申し上げましたような予算規模を想定したわけでございますが、その算出の根拠になりました想定でございますが、移転促進地域、誘導地域、白地地域、いわゆる移転でも誘導でもない地域で、合わせまして五千百三十ヘクタールの移転ないし新増設があるというように想定いたしまして、全体の工場の新増設のプラス・マイナス量といたしまして二百三十ヘクタールというものを想定いたしまして、それをベースに、先ほど申し上げましたあと地融資及び団地造成というような想定で、予算額を計上した次第でございます。
#70
○中村(重)委員 基本的な問題に対して参事官の答弁というのは適当ではありません。少なくとも大臣なり局長が当然お答えにならなければならない。ところが、実務的な関係についていまお答えがありましたが、私の質問に対する適当なお答えにはなっておりません。
 四十八年度において七百億という大幅な予算を計上しておる。これが、それでは四十八年度にどれだけ消化をするのかというはっきりした見通しは立っていないでしょう。金額について、これはどれだけ消化ができるのですか。基本的な関係といまの具体的なお尋ねに対してそれぞれお答えをいただきたいと思う。
#71
○山下(英)政府委員 先ほど申し上げました京浜地区、阪神地区の合計九社、これにはすでに融資をいたしておりまして、その合計が――失礼いたしました。その合計をただいますぐ集計して御報告いたします。
#72
○中村(重)委員 京浜地区と阪神地区に対してはすでに融資をしておる、合計して幾らということは集計をして答えるというお答えがあったわけです。その数字の問題は別といたしまして、それでは、京浜地区と阪神地区、五カ所と四カ所だ、受け入れ側との関係についていろいろ問題があってそう簡単にできないという意味のお答えが先ほどあったわけでしょう。いまのお答えは、阪神地区と京浜地区についてはそれぞれ融資をしている。融資をするということは、少なくともそうした立地する工場の造成等が行なわれていなければ私は融資はできないと思うのです。具体的にならない、受け入れ側との関係でまだ問題があるというような先ほどの答弁に対して、いまはそれぞれ融資をしているということはどういうことなんです。
#73
○山下(英)政府委員 受け入れ側に問題があると申し上げましたのは、多少誤解を招いた表現かと思いますが、ここに私が申し上げております五社、四社は、すでに公団のほうに移転計画を出し、その審査を終わっておりまして、その審査をいたしますときは、職員、労働組合との話し合いも進めてもらいますし、受け入れ側の自治体からの賛成もとっておりますが、実際それが移転するにあたってまだいろいろなこまかい点が残っておるということを申し上ましたので、さしあたりそれだけの条件がそろいますと、あと地融資に関する金融を公団がまずいたしまして、それから実際の移転が進む、こういう意味でございまして、受け入れ側では問題のない九社でございます。
#74
○中村(重)委員 私はあまりにも融資のやり急ぎをしているような感じがしてなりませんね。労働組合との間に、当該地点から誘導地域――おそらく誘導地域であることは間違いないと思うのですが、誘導地域に出ていくということについて、労使の関係については話ができた。それから受け入れ側というのは都道府県知事であるとかいろいろな関係であろう。反対であるのか、反対でないのかという見通しが立たなければ、何ぼ工場が行こうと思ったって行けるものではない。その段階であと地融資をやるということは少し早過ぎるんじゃありませんか。どういう事態が起こるかまだわからないのです。そんなに早々と企業に対して何のために融資をしなければなりませんか。宅地造成といったようなものがすでに始まって、融資をしなければならないといったような段階において融資をして――中小企業等の融資に対しましては、そんな早々とした融資はしておりませんよ。団地等に対しましても三分の二、少なくとも半分くらいの工事ができていなければ融資をしないじゃありませんか。金に困っている中小企業に対してはそういうきびしいやり方をやりながら、大企業に対しましては、ただ話ができたというような段階で現在おるところの工場のあと地に対して融資をしていくということは、私は問題があると思います。これは完全に大企業優先の典型的なやり方ではありませんか。そんなばかなことがあってはならないのです。
#75
○山下(英)政府委員 先ほど申し上げました会社の中には、もちろん資本金額からいいましても七十五億円というような大企業もございますれば、四千万円とか一億四千万円というような中小企業もございます。その点は大中小も一緒でございますが、工業再配置法はそもそもどういう手段を法律の中に入れたかといいますと、御承知のとおり、あと地融資と移転の際の補助金と、それから行った先における免税でございまして、移転の順序からいえばどうしてもあと地融資から始まってくるわけでございます。従来、過密地域でもって公害問題などを理由として早く過疎地域に行きたい、候補地もさがしておる、会社としてはいつでも行けるんだが、さて、自分がいまいる土地が売れないと移転費が出ないという場合が多々ございまして、その点で国の促進助成をしようということが一つの主眼であったわけでございます。もちろんこれは工場あと地の評価に関しても厳密な基準がありますし、評価額の八〇%以内という制限で融資金額をきめますし、かつ、一度融資しました場合にはその土地を今度どういう利用目的で売るか、それは制限がつくわけでございます。したがって、融資しました土地は、その地域の都市計画に合わせたものにあと地を使っていくというぐあいに誘導するわけでございます。
#76
○中村(重)委員 それでは京浜地区の五カ所、阪神地区の四カ所、合わせて九カ所になりますが、これに対してはどれだけの融資をしようとなさっておられますか。そしてその算定根拠というものがなければなりません。少なくともあなたのほうでは、一部といえどもすでに執行している。執行するからには、いまお答えになりましたように、八〇%の融資をするんだということでございましたから、それに対しては融資総額は幾らである、こういう条件ができたからこれだけ融資をするということがはっきりしなければ、融資ができるはずはありません。どうなっておりますか。
#77
○山下(英)政府委員 先ほど数字を申し上げられなくて失礼いたしましたが、いまお尋ねのとあわせて御報告いたします。
 九社分の貸し付け総額は百四十億七千万円でございまして、その貸し付けに相応する面積は四十四万五千九百二十六平米でございます。四十四万六千平米分のあと地が京浜、阪神にできまして、その融資分として百四十億七千万円を貸し付けることを承認いたしたわけでございます。実際の交付はそれの半分ぐらい交付しておる現状でございます。
#78
○中村(重)委員 数字はいま明らかにされましたが、融資をいたしましたその融資資金の回収はどういう方法でおやりになりますか。
#79
○山下(英)政府委員 移転会社が売り先を見つけまして、売れた場合に公団に回収されます。これは三年以内に回収することになっております。
#80
○中村(重)委員 移転企業のあと地が売れた場合、これは三年以内であると言われる。三年以内にそのあと地が売れなかった場合は、どうして回収なさいますか。
#81
○山下(英)政府委員 もちろん融資でございますから、売れる、売れないにかかわらず返してもらうわけでございますが、三年たって売れない場合に、その値段で公団に買ってくれという場合には、公団としては話に応ずるつもりでおります。
#82
○中村(重)委員 売れなかった場合は公団としては話に応ずるつもりというのは、具体的にはどういう意味ですか。
#83
○山下(英)政府委員 もちろん三年先のことでございますので、予算そのものはまだついておりませんが、政府部内では、そういうことで予算措置をする方針をきめております。
#84
○中村(重)委員 私はこれほど基本的な問題についてお尋ねをいたしておるわけですが、このような基本的な関係をあなたは課長に尋ねなければ答弁できないのですか。あなたの言われた数字だけでも百四十億七千万円というばく大な金額なんです。私は、売れなかったらどうするのだとか、いつ回収するのだとか、基本的に尋ねたのですよ。公団に話をする、公団は話に応ずる用意があるというようなお答えがありました。公団が話に応ずるということはどういうことなのかといったようなきわめて重要な問題点なんですね。基本的なことなんです。それを課長に言って、相談をして答弁をするというようなことは、私が何かの数字をお尋ねしたならいざ知らず、基本的な問題についてあなたは部下に尋ねなければ答弁もできないということはおかしいです。
 もう一つは、公団が相談に応ずるという法的根拠はどういうことなんですか。
#85
○山下(英)政府委員 前段の、おしかりを受けました点、ちょっと答えさせていただきますと、これは実は当初から非常に大事な点でございまして、あと地融資をし、工場が出ていくけれども、そのあと地というものがほんとうに過密解消の、都市再開発の計画に使えるかどうかというのは、実際には非常にむずかしく、かつ完全に解決していない問題でございます。たとえば、A社が東京の亀有から出ていく。その土地について、一体それを幾らで最終的に売れるのか、そしてまたそれを買おうという人は、そこに相当たくさんの住宅を建てたり、場合によってはもっと営業的に使おうとしたり、もしそれを公園緑地で残そうとすれば、その数百億円にのぼる負担をだれが持つのか、こういう問題が実は未解決でございまして、もちろんその場合には、都市計画に合わせて東京都なりあるいは国なり相談してきめなければならない問題でございます。そこで公団が発足しますときは、とにかく三年間は融資をしようということで発足いたしまして、そして原則的に、三年たったあと、その値段で公団が買い取りましょう、ところが、これは先生も御指摘のとおり、もしこれがそのまま広がれば五十億、八十億、百億という膨大な金でございまして、かりにそれを全部緑地にするとすれば、緑地の費用負担を公団が全部しょうことになります。
 そこで、私どもは、財政当局とこの点はさんざん議論いたしまして、そして将来についてそういう方針でいこうということで、まだほんとうのところ、議論が決着したとは申せないわけでございまして、その大蔵事務当局との話し合いのいきさつもございますものですから、課長に念を押した次第でございまして、御指摘の点の重要さというものは私も十分存じておる次第でございます。
 次の御質問の点、法的根拠、これは公団法の事業の規定の中にございます。
#86
○中村(重)委員 課長にお尋ねになった点はきわめて重要な問題なんです。そういった問題が非常に重要である。重要であればこそ、私は十分に部内において――部内においてじゃない、むしろこの問題は閣議で検討しなければならぬ筋合いのものであるとすら考えます。田中構想というものが、過密地帯に対しては、追い出し税というような表現は、先ほど申し上げましたように、この委員会において使われたことばではありません。しかし、一般に過密地帯に対して追い出し税、追い出し税というようなことが通常語のように言われた。少なくとも工業再配置の法律案を審議するときの田中さんの構想は、やはり過密地帯に対して大幅な経済負担をやらせなければならぬという考え方があったことは事実なんです。ところが、いまこれを取りやめた。それではどうするのだということは、これはきわめて重大な問題なんです。この方針というようなものは、やはり大きく田中さんの構想から言えば百八十度転回したわけなんです。ならば、このことは閣議において方針を確定しなければならない。経済負担をさせるのだということで、この工場再配置の問題は当委員会において審議をする際に、田中構想として出されている。それが百八十度の転回をするならば、当委員会におきましても、それらのことを報告をされるくらいの義務があると私は思う。それらの基本的な方針もまだ明らかにならないまま、誘導地域に対して工場が出ていく、それに対しましては三年間を限ってあと地に対するところの融資をするのだ、そしてその融資が三年たって償還できないといったような場合についてはどうするのだということに対しては、これは公団が相談に応ずるのだというようなことであった。きわめてこれは重大な問題だ。公団法の中にそう書いてあるからという形で問題を片づけるべき筋合いのものではない。田中構想の基本がくずれたわけなんだから、きわめて私は実は軽率なやり方であると思う。
 もう一点は、先ほど私がなぜにまだ話もはっきりつかない、宅地の造成にすら入っていないという段階において金を出したのだ、融資をしたのだということに対しましては、あなたは、出ていく企業の中には一億四千万程度の中小企業というお話がありました。また中小企業というものは資本金五千万円というのが中小企業の定義という形になってきている。苦しまぎれか知りませんけれども、あなたは一億円から一億四千万円程度の中小企業ということでございましたが、裏を返せば、そういう小さい企業であるから融資をいたしますよということになる。ならば、大企業に対しては融資をしないのだということになってまいります。それなら、大企業に対しましては融資をしておりませんか。いまあなたが融資をしておるというのは、実際はこういった一億かあるいは一億数千万円の小さい企業にのみ融資しているということになりますか。苦しまぎれに答弁をしたとするならば、これはきわめて重大な問題なんです。だから、そこらあたりはもっと明確にしてもらいたいと思う。
#87
○山下(英)政府委員 大企業にも融資をしております。先ほど申し上げましたのは四千万円というような中小企業、また一億四千万円、これは中小企業の定義に入らないのは御指摘のとおりでございますが、そういったものから資本金七十五億円というような大企業に至るまで九社の中ではございます。そして融資の方針として、企業の大小にかかわりなく移転希望があればその実現性を審査の上融資することにいたしております。
#88
○中村(重)委員 それから八〇%の融資をするのだというお答えがありました。その八〇%というのはあと地の時価相場ですか、簿価ですか。これは局長、売れなかった場合、公団が相談に応ずるということは、公団がこれを買うということですよ。これはたいへんな経済負担ですよ。簿価か時価相場かということも、これもまた重大な問題点なんです。どうなんですか。
#89
○山下(英)政府委員 あと地の評価額でございまして、簿価でもないし、普通の国有財産などを評価すると同じ手続によって評価した額の八〇%でございます。
#90
○中村(重)委員 大臣はいま局長がお答えになったことについて御承知になっていらっしゃいますか。
#91
○中曽根国務大臣 当時の事情はつまびらかにしておりませんが、いまお答え申し上げた程度のことは聞いております。
#92
○中村(重)委員 そうすると、評価額ということでございますが、その評価はどういう方法でなさいますか。
#93
○山下(英)政府委員 不動産鑑定士の評価を基準にいたしましてきめております。
#94
○中村(重)委員 公団が評価額によって買わなければならない事態というものは相当出てくるであろう。また、その評価にいたしましても、不動産鑑定人というのは御用鑑定人だってある。これはたいへん重大な問題であると思います。しかも、私が言いたいのは、田中さんの「日本列島改造論」の中に、出ていく企業に対しては、そのあと地に対して公団がこれを融資をするのだ、三年たってその融資が償還できなかった場合はそれを全部公団が買い取るのだということが書いてある。これは大きな問題点になったところなんです。これをもうすでにあなたのほうは実行しておられる。公団は、それでは財政的にパンクしてしまいます。ただ単に財政的にパンクをするということだけにとどまる問題ではありません。これほど日本列島改造論といったようなものが内外で世論の袋だたきにあってきている。にもかかわらず、あなたのほうではどんどんそういうことを推進をしておるということになる。しかも、融資の段階においては、もっと端的に言わしていただければ、まだ海とも山ともわからないものに融資をしているとさえ申し上げても差しつかえないと私は思う。そういうずさんな軽率な融資が行なわれてはならぬと私は考える。先ほど申し上げたように、当初の田中構想というものが大きく百八十度の転換をしたという段階においてはなおさらだということを申し上げたいわけなんです。大臣、いま進めている方向を私は再検討をやって、政府の方針というものが確立されなければならないというように思いますが、大臣のお考え方はいかがでしょう。
#95
○中曽根国務大臣 「日本列島改造論」という田中総理の本に書かれたことは田中総理のアイデアでありますが、正式に国会に法律として出てきたものは自民党の党議を経て出てきたもので、その間にはニュアンスの差は当然あるべきものであると思いますし、また一致した部面もあっていいと思います。
 私は、日本列島改造という大綱については歴史の方向であるだろうと思いますし、その着眼点については敬意を表しておりますけれども、その具体的な施策の個々の問題については、そのときの状況に照らしてしさいに検討を要するものがあるように思っております。たとえば、追い出し税というような思想もございましたけれども、追い出し税というものが簡単にいえるものかどうか。これは税理論の公平の原理とか、あるいは地元住民の反応とか、そういう点もやはり考えて、単に追い出す必要性があるという、そういう必要性の面からのみものを考えないで、税の公平理論やそのほかの面からも多角的に見た上で税理論、税の体系というものが出てこなければならぬ要素もあります。政策的租税という説もございますけれども、租税の面、また一面においては公平理論というものやそのほかの理論もあるわけでございます。中央地方の負担区分という問題もございましょう。そういう意味において、追い出し税というような問題についても慎重に検討する要素があると思っております。これは一つの例であります。いまのような、最後に公団が相談に応ずるという場合に一体どういう措置をするかというような問題点も、これは慎重に検討していくいろいろな複雑な要素があるように思います。そういう意味において、まだ御意見もあるところでございますから、文字どおり慎重に検討していくべきであると思います。
#96
○中村(重)委員 ことばじりを取り上げるわけではありませんけれども、私は日本列島改造論というものが世論の袋だたきにあっていると申し上げた。私も批判をしております。問題点も具体的にあげて、この点に対しては問題がある、これに対してはどうなんだということを大臣に私はお尋ねいたしました。
 あなたはいま、自民党の党議を経た、こうおっしゃった。それでは自民党の党議を経ておるならばどういうことをやってもよろしいということなんですか。何の必要があって、いまあなたは自民党の党議を経てということを言わなければならないのですか。自民党の党議さえ経るならば、経たんだから何をやってもよろしい、われわれの主張といったようなものも、あるいは世論の動向といったようなものも問題にするに足らぬという考えでしょうか。いかがですか。
#97
○中曽根国務大臣 私が申し上げたことをお取り違えになっておとりになっていると思われますが、私が申し上げたかったのは、「日本列島改造論」の中に書いてあるのは、田中構想、田中さんのアイデアである、それで、あれがそのまま国会に出てくるあとは限らない、これはやはり党の中で調整されて、いよいよ正式のものとして公的に出てくる場合にはその上で出てくるものだ、だからあの本がそのとおり出てくるとは思いません、そういう意味のことを申し上げたわけであります。
#98
○中村(重)委員 党議を経た、こうおっしゃったんだ。
#99
○中曽根国務大臣 つまり「日本列島改造論」の思想の中に出ている施策が出てくる場合には、自民党の党議を経なければ国会には出てこられないわけであります。あそこに関所があるわけであります。だから、「日本列島改造論」自体が自民党員全体の共鳴を得、また党のそういう機関の共鳴を得なければ出てこられない要素もあるわけであります。だから、その点が修正されることもあり得ますし、具体的な施行の場合においては局所局所において変革されることもあり得る、追い出し税というようなところもそういう点であると思いますし、いまのようなあと地をどう処理するかというような問題も、本に何と書いてあるのか、私その点記憶しておりませんけれども、これはやはりいまの税理論全般とか、あるいはそのときその時点における社会的公平とか、そういう観念も入れまして、みんなで討議してきめるべきものである、そういうふうに思っておるわけであります。
#100
○中村(重)委員 あなたが、私の指摘に対して、あなたは取り違えておるということばは承服いたしかねる。あなたは将来の問題として、与党の意見を聞いてということを言ったんではないんだ、自民党の党議を経ていると、議事録をあとで読めばおわかりになるが、自民党の党議を経たんだからというような意味の答弁をなさったんだ。将来いろいろな法律案を出すときには、それは政府与党が相談をして、与党のあらゆる機関を通して閣議決定がなされて一つの政策となり、法律案というものが提案されるという運びは私も知っているのです。しかしながら、田中さんの「日本列島改造論」といったようなこと、そういうものはまだ自民党の党議という形になっていない。しかし、具体的には現にその線に沿ってどんどんどんどん施策を進められている。いろいろと問題がある。田中構想を百八十度転換をしているんだとか、追い出し税の問題について、あなたは、あなたの構想はあったけれども、先ほど事務当局は追い出し税構想というものはやめましたということをあなたもお聞きのとおり明確にお答えになった。そうすると、構想は変わったわけですよ。そういったようないろいろな問題について私は指摘をした。それについてあなたは、自民党の党議を経たんだということをお答えになった。そのとおり言った。ところが、いまそうではなくて、将来の展望として、将来のやり方としては自民党の党議を経ていくことになるんだ、それは私も理解できる。しかし、あなたはそれはいいといたしましても、質疑をした、問題を指摘した私があなたのお答えを取り違えてそういうことを言ったということは、私は承服いたしかねるわけですね。それは質疑応答をやっているわけですから、聞き違えというようなこともありましょうけれども、少なくとも私はあなたのお答えに対して質問をしたつもりなんですね。取り違えて言ったと思いません。しかし、こういうことにこだわって、いつまでも時間を空費してもいたし方ありませんから先に進めてまいります。
 次にお尋ねいたしますが、工場立地に関する調査ですね。これは開発を前提としてやるわけですか。
#101
○青木政府委員 公害の事前調査は開発を前提としてやるということではございませんで、大規模な工場が集中して立地をされる見通しがある地域でございまして、その見通しと申しますのは、現に開発計画がありまして、住民とのコンセンサスもあって、集中して工場が建設される見込みがある地域、それまでに至らなくてもそういう動きがある場合に、むしろ住民のコンセンサスを得るためにも事前調査をする場合もございます。したがいまして、問題が起こりました場合に、事前調査をして公害がなかなか防げたいということになりますと、むしろ逆に開発が行なわれないという場合も想定されるわけでございます。したがいまして、事前調査をやる地域は必ず開発が前提となっているというわけにはまいらないというふうに考えております。
#102
○中村(重)委員 いまの答弁で大体わかったような気がいたしますけれども、事前調査の結果工場適地であるというように判断されますね。だがしかし、工場適地ではあるけれども、環境破壊のおそれがあるという事態が起こってこないとはいえない。そういったような場合は中止をなさいますか。
#103
○青木政府委員 この法案に基づきまして勧告あるいは命令をいたしまして、十分公害が防止できる場合にはそういう措置をとりますし、いかなる手段をとっても公害の防止が不可能であるという結論が出た場合には、その地域は開発することができないという立地の段階から開発ができないという場合もあり得るというふうに考えております。
#104
○中村(重)委員 事前調査というのは年間どの程度おやりになっておられますか。
#105
○青木政府委員 現在まで約五十カ所についてやっておりますが、これは大気と水と一緒に合わせた数字でございますが、大体五カ所から十カ所くらいの程度で従来は実施しております。
#106
○中村(重)委員 事前調査のための予算というのは二億円ですね。そして専門担当官というのはきわめて少ないわけですが、その程度の予算規模、それから数少ない専門担当官で十分な調査ができるというようにお考えになっておられますか。
#107
○青木政府委員 現在事前調査に携わっております通産省の本省と通産局の人員は、合わせて二十名でございます。予算も御指摘のとおり二億円くらいの予算がついておるわけでございます。が、今後この法律を施行してまいるためには、この人員、予算では不十分であるということは十分承知をいたしておりますので、この法案が通りました来年度の予算要求からは本格的に拡充をはかってまいりたいというふうに考えております。
#108
○中村(重)委員 先ほどあなたは、工場適地であるけれども環境破壊のおそれがあるといったような場合には、公害防止ができるという場合はやるけれども、どうしても不可能だといったときはこれを中止することもあり得るということですね。中止をするということは私は当然であると思う。そのことと関連して出てまいりますのは、この工場立地に関する法律案の準則というものが本法案のみそであるというように私は考えます。したがって、この準則をゆるやかにやるということになってまいりますと、住民の反対というのがありましてもばく進するおそれがありますよ。住民の意向というものは圧殺されるということになってまいりますが、住民の反対というものが起こってきた、だがしかし工場立地としては適地であるといったような場合等々、いろいろケースがありましょうが、その場合は、一体どのように対応なさいますか。
#109
○山下(英)政府委員 準則をきめますときは審議会にかけまして、技術的な問題も含め十分検討してきめる方針でございますが、それを公表していよいよその準則を基準として工場が立地するときに、御指摘のように、そこから住民のいろいろな意見が出てくると思います。この法律そのものが、個別的に工場が立地をする場合に、その周辺住民と融和をはかるということが法の目的でございますので、その線に沿って住民の意見というものは具体的によく聞いて審査をしていくべきだと考えております。
#110
○中村(重)委員 局長、法的な根拠があればいいわけなんだ。ところが、住民の意向を尊重するということについては法的根拠がないのですよ。ましてやこれは届け出制になっている。届け出制になっておるから、工場立地の場合は、これは準則に適合しているということで強引な態度をとるといったようなことに成り得る。だからして、これが届け出制ではなくて許可制というようなことになってまいりますと、政府は住民の意向といったようなものをやはりそんたくしてくる。今日、住民参加というものは重大な政治上の要素をなしてきていると私は考える。したがって、届け出制ではなくて、それはむしろ許可制にする必要があると私は考えますが、その点に対してはどのような見解でしょう。
#111
○山下(英)政府委員 間接的ではございますが、条文の文言をさがせば、たとえば第九条の二項に準則に適合しない場合のことが書いてございます。その二項の一のところで「第四条第一項の規定により公表された準則に適合せず、特定工場の周辺の地域における生活環境の保持に支障を及ぼすおそれがあると認められるとき。」ここを根拠にいたしまして、この法律の実際の運用をしていくべきものと考えます。あるいは先生御指摘の点が、もっと具体的に、住民の意見を聞く手続等が法律に盛らるべきだという御意見であれば、確かに実定条文に欠けておりまして、その点についてはあらためて私どもの意見を申し上げるつもりでございますが、実際には、審議会のメンバーに住民代表としての資格を十分兼ね備えておられる方々に入っていただいて、この法律の運用を補っていくべきだと考えております。
#112
○中村(重)委員 審議会の問題についてはあとでお尋ねすることにいたしますが、届け出制になっているということだけではなくて、この届け出をしましたところの工場の立地計画に対しては公表とか閲覧の規定すらないわけです。私はきわめてずさんであると思う。ことばとしては、住民の意向をそんたくするんだということを言っているけれども、法律のどこをさがしても、条文のどこをさがしても、住民そんたくなんというものは出てこない。ましてや当委員会において最も強く指摘をされた第一条の目的には環境保全なんということだってないわけでしょう。これは明らかに産業優先、生産第一主義の典型的なものだと私は指摘をしたいわけです。大臣が冒頭お答えになりましたように、公害防止というものがこの法律の重大な要素である、これが目的であると言われるならば、今日の住民参加の時代において立法されたこの法律案は、住民の意向をそんたくするといったような点についてなぜもう少し配慮をしなかったのかと私は言いたいわけです。ただいまの私の指摘に対してどのような意見をお持ちですか。
#113
○山下(英)政府委員 法律が許可制でありますれば非常にはっきりはいたしますけれども、そうなりますと、一般的に禁止しておるのをある適格なものを例外的に許可していくというたてまえにせざるを得ないと思います。ところが、これは準則のつくり方にもよりますが、私どもとしては、準則はできるだけレベルの高い、もちろん実現可能な範囲ではございますが、理想的なものにしていくべきだと考えておりますので、そうなりますと、企業経営をする人が土地を購入する場合にたいへんな使用制限になる面もございまして、土地私有に関する制限にもなりますので、一般的に禁止をし、許可するという立て方の法律には不向きではないか、こう判断したわけでございます。また、公害規制関係の法律にも届け出制を採用し、変更命令、罰則でやっておるものが多々ございますので、そういう全般の法律的な体系をにらみまして今回の立て方にしたわけでございます。
 届け出事項を公表すべきではないかという点も御意見だと存じますが、現在までの行政上のルールでは、住民の意思は市町村、県を通じ、自治体を通じて伺うこと及びもしそれが少数の特別のグループの意見であっても、それは直接どの官庁にも来ていただいてそれを聞くということをたてまえといたしておりまして、個別の工場から出た届け出を公表し、そこでその公表に基づいて住民の意見を聞く、あるいは公聴会を開く等々の手続は一般的に採用しておらない現状でございますので、今回の法律もそれにならった次第でございます。
#114
○中村(重)委員 コンビナートのような工場が集中するようなものでなければ届け出制にすることはない、勧告もないわけですよ。公害がそういうところに限って出るというものじゃないわけです。そこにも問題があるのです。だから、住民が知らない間に公害を出すような工場がどんどんつくられてくる。せっかく公害防止の法律案をつくっていこうとするならば、そこらあたりの配慮があってしかるべきなんだ。お題目といたしましては公害防止だ、これがみそなんだということを言うけれども、法律のどこにもその片りんすらあらわれてきておらぬというところにこの法律案の欠陥がある。また、特定工場の建築物の建築面積及び敷地面積というものは現行法では法律事項になってきているが、今度はこれを政令に改めようとしている。これも私は抵抗を感じているわけなんです。なぜこの法律事項を今度政令事項に改めるのですか。
#115
○山下(英)政府委員 準則のきめ方によってその基準数字が変わるものですから、政令以下に落としたわけであります。
#116
○中村(重)委員 そんな簡単なものではありますまい。それから小規模のものは届け出の必要すらないわけですね。規模の小さい工場であるからといって届け出もさせない。それも私は問題があると思う。
 もう一つは、届け出制をしく、実施するということに対しましては、あめとむちの政策で融資の道が考えられておりますけれども、届け出を必要としない小規模のものに対しての融資はどうなさいますか。
#117
○山下(英)政府委員 助成のための融資、特に緑地造成の融資につきましては、届け出の有無にかかわらず、また、場合によっては既存工場にも適用してまいりたい、こう考えております。
#118
○中村(重)委員 中小企業ということになりますね、小規模ということになってまいりますと。それでは、これに対しては融資もやるんだというように理解をいたします。
 もう一つ私は触れたいのは、コンビナートのような大工場が集積をする、その中に小さい企業というものがあるのですよ。大規模のものは一定基準、いまでは三千平米ですか、それから土地が九千平米になっていますね。その大規模工場の地域の中に下請であるとかあるいは関連の企業というものもあるのですよ。それは規模が小さいがために届け出制の必要もないのですよ。勧告もないのですよ。そこから水が漏れるのです。これは法律案の大きな欠陥なんです。届け出がないけれども融資をするんだということはいいといたしまして――中小企業ですから、当然私は融資はすべきであるとは思いますけれども、これに対して届け出をさせないということは、あなたのほうは関心を持たないということです。これに対しては、何か施策の上においてそういう欠陥を補っていくということがなければならないと考えますが、その点に対してはどういう措置を講じられますか。
#119
○山下(英)政府委員 俗にいいますこのすそ切りというのは、いろいろな法律でも、先生御存じのとおり相当広範に適用しておる制度でございますが、結局届け出をしてもらいまして、そしてその場合、届け出をしてもらえば政府が公表した準則に従ってもらわねばなりませんし、それに反したならば変更命令がかかるわけでございます。中小企業の場合には、もちろん実際上は準則に即してやってもらうわけでございますが、直接、法の対象にするよりも、実際上の行政指導でやっていったほうが実情に即すということで、いま先生は、それは水が漏れるのを放置しておくつもりかという御質問でございましたが、そういうつもりはございませんで、むしろ中小企業が立地する場合には、より多く、中小公庫からの金融もさることながら、自治体、政府側で誘導、指導すべきだと考えております。法の対象にはいたしませんが、同じように指導していくべきだと考えております。
#120
○中村(重)委員 私が言っているのは、工場の集積地域ですよ。その中にも関連産業というものがあるのですよ。下請企業も出てくるのです。同じように公害防止をしなければならないものがある。しかし、それは届け出制の必要がないのです。そこから水が漏れるんだというのですよ。
 公害防止というものが重要な要素であるとするならば、そういう小さい配慮というものもなければならない。小さいものは決して小さくない、あとから大きい問題点になるのです。これが欠陥の一つだと申し上げているわけなんです。
 そうした指摘をいたしますと、問題点というものは数多いわけです。その例としてあげてまいりますならば、この法案の対象となっておるのは新増設に限っております。既存の工場に対しても何らかの規制の措置を講じていく、本法案の対象とする必要があったのではないかと私は思う。これをはずされたのはどういう理由なのか。
#121
○山下(英)政府委員 もとより、先ほど大臣からもお話がありましたように、四日市周辺のぜんそくを主とした総合公害に関する裁判、判決が一つの動機でございましたので、私どもとしては、既存工場特に密集地帯の公害除去に役立てる方法を当然一緒に考えたわけでございますが、今回法の対象にしませんでした理由は、全国にあります既存工場の実態が、画一的な準則その他この法律の体系による規制をしようとすれば、あまりにも非現実的になってしまう、こういうことからはずしたわけでございます。
 しかし、もちろん、既存工場内に増設する場合、これは法の対象になりますし、また既存工場がスクラップ、ビルドする、建てかえたり施設を入れかえたりするような場合には、可能な範囲でこの法律、特に発表しました準則の線に近い方向へ指導していくべきだと考えております。
#122
○中村(重)委員 これは新増設ですから、増設の場合は対象になりますよ。私が言うのは、既存の工場増設計画というものがなかったにいたしましても、環境保全という立場から行政指導をやる、本法案の趣旨に沿った指導というものは当然する必要があるのではないか。しかし、毛頭そういうことは考えていないではないか。しかもあなたは、非現実的であるとおっしゃった。私はそうは思わない。準則というものを区別してきめる方法だってあるではありませんか。ほんとうに公害をなくしていこうとするならば、新増設の工場に対してのみ環境保全の方法を講ずるというのではなくて、既存の工場がむしろ問題があると考える。公害防止のためにあらゆる施策を講じていく必要があると考えている。申し上げたように、準則を区別してやる方法もあるんだから、非現実的であるということで片づけてしまうということは問題がある、私はそう考える。あなたはそう思いませんか。
#123
○山下(英)政府委員 実際には、この法律でいいますように、敷地面積の三割にする、二割にするという準則をかりにつくった場合に、その業種の工場で既存工場の場合には、六割一ぱいに建てている場合もありますし、さらに緑地を二割持つというような準則をつくりました場合に、とても緑地など現在の敷地内につくれないという場合もございますし、その場合に、その一つ一つの工場の実情に合わせて、いま御指摘のような準則を書き分けてやっていくということは、私は現状においてはまだ無理ではないかと思います。反面、私どもの行政上の手段としましては、事前調査もございますし、既存工場に対する誘導、融資等もございますし、また、自治体の緑地造成等に関する協約もございますし、いろいろな面から誘導、行政上の指導で、公表されました準則に近づけていくという努力を注いでいけると思います。
#124
○中村(重)委員 だから、せっかく新増設に対しましてそうした立法措置を講じられるならば、いまお答えになりましたようなことを法律案の中にやはり示していくということでなければならない。既存の工場に対してはこうする。しかし、その改正法案の中にはそういうものが全然触れられていない。そこに問題がある。私は一つの方法として準則を区別する方法もあると申しましたが、まだ別の方法だってある。いまあなたがこれから指導行政の中でできるだけそれに近ずくような方向で進めていきたいという考え方を持っておるならば、せっかく立法されるんだから、その中にそういう方針を明記していく必要があったということを指摘しておきたいと思うのです。
 それから、第十五条に「課税の特例」「国の援助」というのがあります。巨大企業に対しまして課税の特例とか低利融資、こうした国の助成を必要とするとお考えになっておられますか。公害防止の施設と申しますか、そういうものは国から低利の融資を受けなければやらないんだという考え方、そういう国に依存し過ぎる、甘えるという考え方が、公害防止施設というものは不生産設備であるという考え方が依然として払拭されない大きな要素であると私は考えているわけであります。それはほんとうに力のない中小企業にかけるべきである、かように考えます。その点に対しては大臣の御見解はいかがでしょう。
#125
○中曽根国務大臣 公害防止という点は、この法案のいままでの欠けているところを補うという意味で私たちは各条章について非常に注意してつけ加えたつもりでございますけれども、今後適用にあたりましては、大企業、中小企業ともども、行政指導によりまして万全を期していきたいと思っております。
#126
○中村(重)委員 大企業、中小企業ともどもこれを指導していくといういまの大臣のお答えは、私の質問に対してはどういうふうに理解したらよろしいわけですか。私は、巨大企業に対して甘えさせてはならないと言うのです。公害防止施設というようなものは不生産施設であるという考え方を持たせてはいけないのである。そういう考えを持たしているところに、依然として公害防止というものができないのだ。公害防止はみずからやらなければならない。そうした思想というものをここでぶち込んでいくということでなければいけないのだ、こう申し上げておるのです。
#127
○中曽根国務大臣 公害防止施設というものは、現在の社会においては、企業にとりましては社会的責任、義務を伴う当然の施設でありまして、それが余分な施設であるとか経費負担増になるやっかいな施設であるとか、こういう観念がありましたら大間違いでありまして、その点はわれわれは積極的に指導いたします。
#128
○中村(重)委員 だからその考え方からいいますならば、この立法の中で課税の特例とか国の助成というものが、大企業、中小企業を区別することなく一律になっているところに問題があるということです。               一
 それから最後にもう一つお尋ねをいたしますが、工業立地及び工業用水審議会委員の構成はどういうようになっておりますか。
#129
○山下(英)政府委員 正式の委員が三十六名、臨時委員九名を加えまして四十五名でございます。
 その内訳を大きく分けまして申し上げますと、学者を中心にしました学識経験者が九名、業界代表が七名、地方公共団体代表四名、これは知事会代表として知事が二名、さらに市長会代表として市長一名、町村会代表として村長一名でございます。そのほかに関係省庁の代表が十六名、次官クラスで入っております。
 臨時委員のほうは、学識経験者五名、業界代表三名、地方公共団体代表として知事が一名追加されております。なお、業界代表の中には、石炭代表で産炭地の村長をしておられる方も入っておられます。
#130
○中村(重)委員 いまお答えのとおり財界人が四十五名の中に十名、あとは各省の次官等が占めておりますが、今日、日本列島総汚染という状態の中で、追加された委員の中にすら公害によって生命を脅かされ、被害を受けるところの農民や漁民あるいは労働者、職を奪われる者の代表が一名も入っていないではありませんか。財界人は追加された委員の中にすら三名も入っておるけれども、いま申し上げたような被害者の立場に立つ者は一名も入っていない。先ほど来私が指摘をいたしますように企業優先、生産第一、この思想というものが全然改められていないということをこの考え方が立証しておると思う。
 大臣は冒頭、この立法は公害防止のための措置であるとお答えになりましたが、現実のこの中身の中には、大臣がお答えになりましたようなものは全然あらわれていない。きわめて問題であり不満であるということを指摘して、私はこの質問を終わります。
#131
○浦野委員長 玉置一徳君。
#132
○玉置委員 中村委員から詳細にわたりまして質問がございましたので、重複しますが、一点、二点御質問を申し上げまして終わりたいと思います。
 そこで、いま御質問のございました一定基準以上の届け出制の問題でありますが、おそきに失するとはいえせっかく公害に関して工場の規制をしよう、こういう法案でありますので、先ほどのお答えでは届け出制のないものはなるべくこの準則にのっとって行なわれることを期待するというような意味のようにもとれるわけでありますけれども、この準則にのっとって都道府県もしくは市町村において条例等で行なわれることを期待するというところまで持っていっていいかどうか、また、そういう場合だったらそのような行政指導をされるかどうか、ひとつそこまでお伺いしておきたい、こう思います。
#133
○山下(英)政府委員 自治体が条例をつくられるかどうかまでは私どもはまだ結論を出しておりませんけれども、実際上は、自治体の御指導も得てそういうぐあいに持っていきたいと思っております。
#134
○玉置委員 まあ土地の買収等、小さいところから全部一律にやるということは技術的にも不可能であり、あなたのほうも、とても検査規格等々もできないだろう、こういうような感じでおつくりなすったんじゃないかとも思いますし、零細な企業については無理であるというような考え方もあったのかと思いますけれども、零細企業といえども鉛工場、再生工場等、かなり問題になる点もあるわけでございますので、その点、しっかりした御返答をいただきたいのですが、そういう意味では、準則にのっとってあれしますのに、手続は一体どうされるのか。建築基準法によりまして、都道府県もしくは市町村の窓口で受け付けたものが建築基準そのものに該当するということで、その他周辺地域の文教との関係で教育委員会等に合い議するわけですが、これは一体、直接通産局に届け出さすのか、通産局が直接検査をするのか、あるいは先ほど申しましたような都道府県の建築基準の係のところへ届け出たものがそれから府県の商工部に合い議されるのか、通産局に合い議するのか、その窓口等々ひとつお伺いしたいのです。
#135
○山下(英)政府委員 届け出そのものは県知事を経由して出すようにきめたいと思っております。ただ、おっしゃっておられます中小企業の場合、すそ切り以下のもが立地される場合は建築基準法の適用を受けますので、そちらの手続はしてもらいますが、この法律に関する面は自由になります。しかし、先ほど申し上げましたように、準則には近いものにしてもらおう、そこで、助成措置もございますので、もしもその緑地をつくるために金融が要るということであれば、中小企業金融公庫のほうに申請してもらう、また通産局は相談に乗って、その準則にどうやって応じたらいいかということを指導してまいりたい、こう考えております。
#136
○玉置委員 そういう金融助成等の観点から見ましても、すそ切り、届け出制をしなくてもいい程度のものは、府県の商工部に建築基準の係が合い議をするというような形をおとりになるのも非常にいいのじゃないだろうか、こういうように考えますが、どうお思いになりますか。
#137
○山下(英)政府委員 私ども、それはたいへん実際的ないい御示唆だと思いますので、県内でよく相談をしてもらって、そういうぐあいに運びたいと思っております。
#138
○玉置委員 それからもう一つは、先ほど中村さんにお答えになりましたが、中小企業、零細企業に特に融資等の相談に応じる、こういうお話がございました。場合によっては既存のというお話がございましたが、場合によってではなしに、既存のものこそ、なお、そういう樹木等の配置等に特別配慮を願っていただかないとなかなか実施ができないんじゃないだろうか、こういう感じがいたします。これも同じような意味で、既存のものといえども、つとめてやれるだけこの法律の趣旨にのっとっておやりいただくように、おやりいただければ、それだけの融資等の措置が要る場合は、ひとつ御遠慮なくお申し出いただきたい、こういうような心がまえをいただくほうがいいのじゃないかと思うのですが、どうお思いになりますか。
#139
○山下(英)政府委員 既存につきましても、中小企業金融公庫のほうにワクをつくりまして融資していく方針でございます。
#140
○玉置委員 なお、先ほども、これも中村議員から御質問ございました科学的調査というものについては、二億数千万円の予算措置はございますけれども、これはいろいろ全国を全部手配しようと思うと、急激に環境汚染問題がやかましくなったおりからでありますので、それに対する技術屋の供給体制はなかなか一挙にはでき得ないと思います。ここだけじゃないわけであります。その点の御配慮を別に通産当局だけじゃなくて、国の政府機関をあげてうまく配分できるような措置を常に講じなければならぬじゃないだろうか。同時に、予算措置等も若干必要に応じてくめんをせにゃならないような感じがしますが、どうお思いになりますか。
#141
○青木政府委員 先ほど御答弁申し上げましたとおり、この法律が通りますと、この関係の定員予算は非常に窮屈になってまいると思いますので、極力この充実をはかってまいりますと同時に、こういうものの基礎になります研究等につきましては、通産省のみならず、環境庁でもいろいろやっておりますので、そういうところの応援を得まして、極力その成果を取り入れて、りっぱな調査にしてまいりたいというふうに考えております。
#142
○玉置委員 地域の社会との調和というものを非常にお考えなすっておいでになりますが、環境整備施設のうち、公園とかグラウンドとかあるいは木陰、体育館、さらには、そういうものが必要な場合には保育施設というようなものまででき得れば地域社会と共同に利用するような場合があり得ると思いますし、また、そのことが望ましい、こう思いますが、そういう場合に若干の融資等の助成をお考えなすったらどうだろうか。保育所の施設という点を考えましても、工場保育施設が非常に劣悪な場合が多うございますので、地域の住民と共同しておやりになる、一緒になっておやりになるときは非常に完備したものができるようなぐあいになっております。こういうこともひとつ特別考えまして、そういう場合には若干の融資等の施設もお考えいただくことが望ましいと思いますが、どうでございますか。
#143
○山下(英)政府委員 最近の工場立地の実例としましても、少しずつそういう敷地内の環境施設を近所の住民に開放している例が見えてきております。私どもは、この傾向はもちろん望ましいと思っておりますが、政府がこの原案を提案申し上げますときは、もちろんこれは政府が強制すべきものでもないのでと考えておりましたが、今回の法律が制定されまして、そうして法の趣旨が、先ほども申し上げたように、環境、住民と一体になってということでございますので、そういう傾向を促進してくれる、こう信じております。御提案の融資等もあらためて検討させていただきたいと思います。
#144
○玉置委員 最後に大臣にお伺いしたいのですが、場違いで恐縮でありますが、かなり中小企業金融公庫等の融資の要請が殺到すると思うのであります。そこで、昨今、金融の引き締めによりまして、公定歩合の引き上げ等々が再三にわたりまして行なわれましたが、これはやむを得ないことだと思います。それだけに、中小企業金融公庫等に非常に民間の需要が殺到いたしております。したがって、これを含めましてすみやかに三公庫に対する原資の補給をすることが必要だと思います。いつも年末になりましてからが多うございますが、時節柄なるべくすみやかに御検討いただくことが肝要だと思いますが、どのようにお考えになっておりますか。
#145
○中曽根国務大臣 玉置委員にお答えする前に、先ほど中村委員からの御質問の中で、審議会の委員のメンバーに関することがございましたが、この点は御意見を体して検討を加えてみたいと思います。
 それから、いまの御質問でございますが、確かに金融逼迫の情勢になりまして、中小企業にしわ寄せがいかないように深甚の注意を要する段階になりました。そこで、中小企業庁長官に指示いたしまして、よくその推移を見て、中小企業に圧力がいかないようによく当局と打ち合わせをして処置をするように言っておりまして、大体ワクがございますけれども、ワクがもし足りなくなるというような場合には、大体各月の一応の計画みたいな基準があるようでございますけれども、繰り上げてどんどん使ってしまえ、それで年末にはもちろんわれわれは補給いたしますが、その際に思い切って足りない分はわれわれのほうで考慮するから、いま不足している向きがあったらそちらのほうへ繰り上げるように、そういうことを指示してあります。
#146
○玉置委員 終わります。
#147
○浦野委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#148
○浦野委員長 本案に対し、田中六助君外一名より、自由民主党及び民社党両党共同提案にかかる修正案が提出されております。
    ―――――――――――――
#149
○浦野委員長 この際、修正案について、提出者より趣旨の説明を求めます。田中六助君。
#150
○田中(六)委員 ただいまの修正案につきまして、提案者を代表して趣旨を御説明申し上げます。
 修正案はお手元に配付いたしたとおりであります。
 修正の第一点は、第一条の目的におきまして、「工場立地の適正化に資するため、」とありますのを「工場立地が環境の保全を図りつつ適正に行なわれるようにするため、」に改めることであります。
 第二点は、第六条の届け出の規定中、第一項第六号におきまして、汚染物資の最大排出予定量及びその予定量をこえないこととするための措置を届け出ることになっておりますが、その「措置」を「当該汚染物質に係る燃料及び原材料の使用に関する計画、公害防止施設の設置その他の措置」に改めることであります。
 以上の修正は、本法が環境の保全を特に重視することを明らかにするとともに、その観点から、公害防止のための具体的措置の届け出を義務づけようとする趣旨でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#151
○浦野委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#152
○浦野委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。藤田高敏君。
#153
○藤田委員 私は、日本社会党を代表して、工場立地の調査等に関する法律の一部を改正する法律案に反対する討論を行ないます。
 本法案に対する私たち社会党の基本的な立場と見解は、すでに質疑の中で明らかにしてきたところでありますが、以下、その反対理由を簡単に説明いたします。
 その第一の理由は、工場を立地するにあたって最も重要なことは、憲法二十五条による国民の生活権と生存権を侵害するものであってはならないこと、また、国連人間環境会議における人間環境宣言によってもすでに確認されているごとく、公害の未然防止や環境保全、すなわち地域環境を絶対に破壊しないということが前提条件として保障される工場立地でなければなりません。この基本的な大原則と規制条件といささかたりともおろそかにした条件によってその立地を許すことは、公害日本列島とまで酷評せざるを得ないわが国の現状からも、絶対に認めることができないところであります。
 しかるに本法案は、これらの基本的諸条件のごく一部について最低限の義務づけをしているにとどまるものでありまして、真の工場立地法の名に値しないものであるという立場から反対するものであります。
 その第二の理由は、本来の工場立地は、工場立地を規制する基本法が先に制定され、それから工場の適正配置を進めるべきであるにもかかわらず、日本列島改造論によって工場再配置政策のほうが優先し、それを正当化する意図のもとに本法案が提出されてきているのでありまして、まさにこれは本末転倒の政策と言わざるを得ないのであります。このことは、田中内閣が依然として国民の福祉を犠牲にして、生産第一主義、大資本優位の政治を推進していることを裏書きするものでありまして、私たちの承服できないところであります。
 反対する第三の理由は、工場立地の規制は、公害防止、環境保全、土地利用計画その他のきびしい条件付の許可制によるべきであり、また、許可された後といえども既得権とみなさないような制度にすべきであるにもかかわらず、本法案はこの考え方からあまりにもかけ離れており、賛成することができないところであります。
 第四の反対理由は、工場立地の規制は、住民参加のもとになされるべきものでなければなりません。住民の理解と協力を得られない工場立地は、社会的にはそれ自体存立条件がないということにしなければなりません。この観点からするなれば、本法案は住民参加の規定を全く欠いているものであり、意図的に公聴会の規定さえ明文化しないのみか、届け出られた工場立地計画の公表、閲覧の規定さえもなく、住民をつんぼさじきに置こうとしているものでありまして、時代感覚のズレもはなはだしく、現代社会における住民自治の本旨にももとるものと言わざるを得ないのであります。
 反対する第五の理由は、いま前段でも指摘したところでありますが、住民無視の姿勢は、法第三条第二項の企業秘密の規定に余すところなくあらわれております。
 現在、日本列島が救いがたい公害列島になった最大の原因は、今日まで政府があらゆる産業政策上の立法措置を講ずるにあたって、公害にかかわる部分をはじめ公害発生のメカニズムの一切について企業秘密として聖域を設け、企業を過保護してきたところにあると申さなければなりません。ここに政治公害といわれるゆえんもあるのであります。にもかかわらず、これらに対するきびしい反省もなく、環境破壊の実態にさえあえて目をおおい、依然として企業秘密を擁護しようとするところに問題があります。なるほど大臣答弁では、企業の財産権を擁護するような答弁から、公害防止に関する調査の結果として企業秘密は含まないという一歩前進したところまで変わってきたのでありますが、しかし、公害発生のメカニズム一切について企業秘密はないという明快な統一見解をついに最後まで聞くことができませんでした。ここに本法案の最大のガンが残っていると言わざるを得ないのでありまして、かかる考え方が存続する限りへわが国の公害は絶対にあとを断たないであろうし、政治公害もあとを断たないであろうことを強く指摘して、反対の意を表するものであります。
 反対する第六の理由は、本法案の重要部分である準則についても、大体の考え方を示しただけで肝心なところが不明確なままになっているということであります。また、本法案は、既存の工場に対しては何ら手をつけていないのであります。政府が公害防止、環境保全に対してほんとうに本腰を入れてやる気があるのであれば、当然の措置として既存工場に対しても本法を適用し、積極的な規制を行なうべきであります。にもかかわらず、その対策がこの法案には見ることができないことをはなはだ遺憾とするものであります。
 最後に、この法案では、自己の責任で公害防止対策を講ずることができない企業には、今日の社会が要求している社会的責任を果たすことができない無資格者として工場立地を認めるべきでないと考えます。行政監督官庁はこの立場に立って指導を強化すべきであるにもかかわらず、この法案では、国の手厚い援助を講じてまず企業立地を促進することになっており、これは法案全体の性格論として一貫されているところではありますが、工場立地規制法の性格を一そうあいまいにして、この法律をして工場立地促進法にするものであり、私たちの絶対賛成できないところであります。
 以上、幾つかの反対条件を明確にいたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
#154
○浦野委員長 神崎敏雄君。
#155
○神崎委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、工場立地の調査等に関する法律の一部改正案に対する反対の討論をいたします。
 すでに審議の中で明らかにされてきたように、今回の改正案、工場立地法はさまざまな問題点を含んでおります。準則をきめ、工場緑化を推進するといっても現存の工場地帯に何ら手を触れず、敷地面積の一五%から二〇%の緑地が遮断緑地に必要な広さと密度を持つという保障は全くないのであります。この事実からも明らかなように、この改正案でいう工場緑化とは、結局住民の批判や反対運動から工場を緑でカムフラージュするという役割りしか果さないということになるのであります。
 さらに、公害防止の点からいっても、事業者の秘密に属する事項と称して住民の目から企業の秘密を守ってやるということになり、公害発生における企業責任の追及を困難にしています。
 また、重合汚染の規制についても、それにはどうしても必要な総排出量規制はなされていない。そして規制に必要な基準は法文上全く不明確であり、このようなもので新しい工業開発がもたらす公害などの環境破壊が防げるものとは思われないのであります。
 今日、大企業本位の工業開発が全国で環境破壊や農業、漁業、地場産業などの衰退を招き、住民の生活と利益に敵対する破壊的役割りを果しております。ところが、この工場立地法は、その最大のねらいを通産省の「工場立地法の必要性とその概要」などでも強調されているように、地域環境と産業活動の調和に置いているのであります。すなわち、本質的に相いれない大企業本位の工業開発、列島改造と地域環境、住民との調和とは、大企業本位の工業開発、列島改造をいかに地域住民に受け入れさせるか、新しい産業立地をいかに住民に抵抗なく受け入れさせるかということであり、工場立地法はそのために改正されるものと言えるのであります。
 さらに、工場緑化その他が、住民の反発また不満をやわらげる手段として登場していることは明らかであります。
 以上述べてきたように、今回の改正案、工場立地法は、国総法などとともに列島改造推進の一環であり、住民の生活、利益、健康を犠牲にして進む大企業本位の工業開発を促進させるものであり、わが党は本改正案に反対するものであります。(拍手)
#156
○浦野委員長 松尾信人君。
#157
○松尾委員 私は、公明党を代表いたしまして、工場立地の調査等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、反対の討論をいたします。
 まず第一に、公害はついに環境破壊をもたらしました。特に第三水俣病発生以来、環境破壊は地域住民の生命の安全を脅かし、その生業を奪い、農林水産業に与えている影響はきわめて重大な段階に達し、消費者たる国民に多大の被害を及ぼしているのであります。
 通商産業省は、公害発生源である企業の監督指導に責任を持つ立場にありながら、今日の深刻な環境問題を発生させたことはまことに怠慢であります。大企業優先の姿勢、経済成長を推進する方向を改め、国民の福祉優先、調和されたりっぱな環境を実現する政策を確立しなければ、公害の防除はとうてい実現できるものではありません。
 本法案は、今後の工場立地につき環境破壊の現状を反省し、良好なる環境を保持せんとする努力は認めるにやぶさかではありません。しかし、今後開発されるコンビナートなどについても、環境汚染につき多くの問題点を蔵していることは指摘しておかねばなりません。特に現在の公害発生源につき総点検を行ない、個別に監督指導をきびしくし、環境基準の強化をはかり、公害防除対策を一そう推進することは焦眉の急務であるということを強く要請するものであります。
以上申し述べまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
#158
○浦野委員長 以上で討論は終局いたしました。
 これより採決に入ります。
 まず、田中六助君外一名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#159
○浦野委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。
 次に、ただいま議決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。
 修正部分を除く原案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#160
○浦野委員長 起立多数。よって、本案は田中六助外一名提出の修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
#161
○浦野委員長 本法律案に対し、稻村左近四郎君外一名より、自由民主党及び民社党両党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 まず、提出者より趣旨の説明を求めます。玉置一徳君。
#162
○玉置委員 ただいまの附帯決議案につきまして、提案者を代表しまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
   工場立地の調査等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、公害防止、環境保全に関する諸般の施策を一層推進するとともに、本法施行にあたり、特に次の諸点につき、適切な措置を講ずべきである。
 一、工場適地の調査の実施にあたつては、特に公害防止、環境保全について配慮するとともに、工場立地に伴う公害の防止に関する調査については、その一層の充実を図ることとし、予算、人員等につき十分な措置を講ずるよう努めること。
 二、工場立地調査簿から、特に汚染物質の排出に関する事項の記載が除かれることのないよう第三条第二項の規定を運用すること。
 三、工場立地の届出について地元住民の意見が反映されるよう、届出内容を地方公共団体に周知させるとともに、勧告及び変更命令に関する規定の運用にあたつては、地元住民の意見を十分尊重すること。
 四、環境施設の整備を図るための助成措置は、中小企業向けに行なうよう努めること。
 五、工場が集中して設置されることによる生物の分布等その生態系への影響について調査研究を進めること。
 六、既存工場についても、本法の趣旨にのつとり公害防止、地域環境保全のため、緑地等の整備について強力に指導すること。
以上でございます。
 附帯決議の各事項につきましては、当委員会における質疑を通じまして十分御承知のことと存じますので、説明は省略さしていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#163
○浦野委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 直ちに採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#164
○浦野委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、附帯決議について政府から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根通商産業大臣。
#165
○中曽根国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨を尊重いたしまして、行政に万全を期する次第でございます。どうもありがとうございました。
    ―――――――――――――
#166
○浦野委員長 おはかりいたします。
 本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#167
○浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
#168
○浦野委員長 次回は、明後二十九日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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