くにさくロゴ
1972/07/06 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 社会労働委員会 第39号
姉妹サイト
 
1972/07/06 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 社会労働委員会 第39号

#1
第071回国会 社会労働委員会 第39号
昭和四十八年七月六日(金曜日)
    午前十時三十七分開議
 出席委員
   委員長 田川 誠一君
   理事 伊東 正義君 理事 塩谷 一夫君
   理事 竹内 黎一君 理事 橋本龍太郎君
   理事 山下 徳夫君 理事 八木 一男君
      加藤 紘一君    瓦   力君
      斉藤滋与史君    志賀  節君
      住  栄作君    田中  覚君
      高橋 千寿君    戸井田三郎君
      羽生田 進君    増岡 博之君
      枝村 要作君    田邊  誠君
      多賀谷真稔君    村山 富市君
      石母田 達君    大橋 敏雄君
      坂口  力君    小宮 武喜君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君
        労 働 大 臣 加藤常太郎君
 出席政府委員
        厚生政務次官  山口 敏夫君
        厚生省公衆衛生
        局長      加倉井駿一君
        厚生省環境衛生
        局長      浦田 純一君
        厚生省保険局長 北川 力夫君
        社会保険庁医療
        保険部長    江間 時彦君
        労働省労働基準
        局長      渡邊 健二君
        労働省労働基準
        局安全衛生部長 北川 俊夫君
 委員外の出席者
        議     員 田邊  誠君
        人事院事務総局
        職員局参事官  後藤 敏夫君
        自治省行政局公
        務員部給与課長 小林 悦夫君
        社会労働委員会
        調査室長    濱中雄太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月四日
 辞任         補欠選任
  加藤 紘一君     稲葉  修君
  瓦   力君     上田 茂行君
  小林 正巳君     高見 三郎君
  志賀  節君     石原慎太郎君
  住  栄作君     中村 寅太君
  増岡 博之君     木村 俊夫君
同日
 辞任         補欠選任
  石原慎太郎君     志賀  節君
  稲葉  修君     加藤 紘一君
  上田 茂行君     瓦   力君
  木村 俊夫君     増岡 博之君
  高見 三郎君     小林 正巳君
  中村 寅太君     住  栄作君
    ―――――――――――――
七月五日
 国民健康保険法の一部を改正する法律案(田邊
 誠君外十一名提出、衆法第五〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法
 律案(内閣提出第一一〇号)
 優生保護法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第一二二号)
 国民健康保険法の一部を改正する法律案(田邊
 誠君外十一名提出、衆法第五〇号)
 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案
 (内閣提出第五五号)
 船員保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第四八号)
     ――――◇―――――
#2
○田川委員長 これより会議を開きます。
 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律案、優生保護法の一部を改正する法律案及び国民健康保険法の一部を改正する法律案を議題とし、順次提案理由の説明を聴取いたします。厚生大臣齋藤邦吉君。
    ―――――――――――――
#3
○齋藤国務大臣 ただいま議題となりました有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 近年における化学工業の発展並びに国民の消費動向の変化に伴い、各種の化学物質が繊維製品等の家庭用品に使用され、国民生活に多大な利便を与えておりますが、その反面、このような化学物質を使用した家庭用品による健康被害が発生し、このことが消費者の深い関心を集めているところであります。
 有害物質を含有する家庭用品については、従来から毒物及び劇物取締法等によりその一部について必要な規制を行なってまいりましたが、国民の健康を保護するためには、さらに、有害物質を含有する家庭用品全般について規制する必要があるので、新たにこの法律案を提出することとした次第であります。
 以下、この法律案のおもな内容について、御説明申し上げます。
 第一に、家庭用品について、有害物質の含有量等に関し、必要な規制を行なうことといたしております。すなわち、保健衛生上の見地から、家庭用品について有害物質の含有量等に関し必要な基準を定め、その基準に適合しない家庭用品の販売等を禁止するとともに、基準に適合しない家庭用品による人の健康被害の発生を防止するため必要がある場合その他緊急の場合には、すでに販売された家庭用品の回収その他の措置を講ずることといたしております。
 第二に、有害物質を含有する家庭用品の監視体制については、国及び地方公共団体に家庭用品衛生監視員を置き、立ち入り検査等の業務を行なわせることといたしております。
 その他、家庭用品の製造または輸入の事業を行なう者は、事業者の責務としてその家庭用品について含有される物質の人の健康に与える影響を把握し、その物質により人の健康被害が生ずることのないようにしなければならないことといたしております。
 以上がこの法律案を提出する理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
 次に、ただいま議題となりました優生保護法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 優生保護法は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護するという目的のもとに、優生手術、人工妊娠中絶、優生保護相談所等に関し、必要な事項を定めているものでありますが、最近の国民保健の実態の変化にかんがみ、今回、人工妊娠中絶の要件及び優生保護相談所の業務内容をこれに適合するように改める措置を講じ、もって、優生保護対策の適切な実施をはかろうとするものであります。
 改正の内容といたしましては、まず人工妊娠中絶の要件に関する改正でありますが、その第一点は、現行法では、妊娠の継続または分娩が身体的理由または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがある場合は母体の保護のため人工妊娠中絶を行なうことを認めているところでありますが、このうち、経済的理由という要件については国民の生活水準の向上を見た今日においては、このままにしておくことには問題があり、この際、これを取り除き、妊娠の継続または分娩が医学的に見て母体の精神または身体の健康を著しく害するおそれがあるものというように改めることとしております。
 人工妊娠中絶の要件に関する改正の第二点は、優生上の見地からの人工妊娠中絶に関するものであります。現行法では、不良な子孫の出生を防止するという見地から、妊婦またはその配偶者が精神病または遺伝性奇型を持つ場合等には人工妊娠中絶を認めているところでありますが、近年における、診断技術の向上等により、胎児が心身に重度の障害を持って出生してくることをあらかじめ出生前に診断することが可能となってまいりました。
 このため、胎児がこのような重度の精神または身体の障害となる疾病または欠陥を有しているおそれが著しいと認められる場合にも、人工妊娠中絶を認めることといたしましたのが改正の第二点であります。
 次に、優生保護相談所の業務に関する改正でありますが、現行法のもとでは、優生保護相談所は優生保護の見地から、結婚の相談、遺伝その他優生保護上必要な知識の普及向上、受胎調節の普及指導等を行なっておりますが、最近、高年齢初産が問題となってきておりますので、特に、初回分娩が適正な年齢において行なわれるように助言及び指導する等その業務の充実をはかるものであります。
 以上が、この法律案の提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#4
○田川委員長 田邊誠君。
#5
○田邊議員 ただいま議題となりました国民健康保険法一部改正案について提案理由の説明を申し上げます。
 国民健康保険組合は、周知のとおり、昭和十三年の国民健康保険法の制定とともに発足し、以来三十有余年、業種別組織たる特性を生かし、民主的かつ効率的運営によって、国民の医療確保とその健康の保持に貢献してまいりました。今日、国民健康保険組合は、店舗自営業者、自由業者、医療関係者などによるもの百五十五、あるいはまた、四十五年六月、日雇い健康保険の擬制適用の廃止によって新設された大工、左官、とび職などによるもの三十八、合計百九十三組合、被保険者総数二百七十万人にも達しております。
 さて、これらの最近における経営状況を見ますと、医学薬学の進歩、給付の改善、受診率の増大等により、医療費が年々二〇%前後の伸びを示すため、実に容易ならざる事態になっております。たとえば、四十六年度の保険料負担を見ますと、一世帯当たり、市町村国保の年平均五千五百二円に対し、国保組合平均は、何と一万五千九十六円、とりわけ旧擬適対象者によって新設された組合では、五万円にも及ぶという異常な事態さえ生じております。
 このような事態は、国民健康保険組合のうち約八割が、何らかの程度、法定給付率を上回る給付を行なっている事情をしんしゃくしてもなお異常と断ぜざるを得ません。この事態のよって来たるところは、市町村国保に対する国庫補助率が、医療給付費の四〇%であるに比べて、国保組合に対しては二五%にとどまっていることであります。すなわち、国保組合は、四〇%と二五%の差一五%分相当額たる約百六億円を、国にかわって背負っているということになるのであります。
 しかるに政府は、臨時調整補助金の名のもとに、わずか四十三億円(四十八年度)を計上しているにすぎません。一方、市町村国保に対しては、四〇%の補助に加えて、五%の財政調整交付金制度があることは、御案内のとおりでありましょう。どこから見ても、国保組合に対する国の対応は、著しく公平を欠くものといわざるを得ないのであります。
 本案は、右の観点から、政令の定めるところにより国民健康保険組合に対して補助できる率を四〇%に引き上げるとともに、政令の定めるところにより、五%の調整補助金を交付することができることとしたわけであります。
 なお、本案は、施行期日を四十八年十月一日といたしております。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに成立を期せられんことをお願いして、提案理由説明を終わります。
#6
○田川委員長 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、質疑を行ないます。
 申し出がありますので、順次これを許します。多賀谷真稔君。
#7
○多賀谷委員 長い間争点になっておりました通勤途上における災害について今度初めて法律化されようとするわけですが、そこでまず私は、今日の労働基準法と労働者災害補償保険法との関係についてお聞かせ願いたい。と申しますのは、労働基準法は昭和二十二年にできてから、いわばほとんどそのままの形である。そこで、たとえば年金給付についても基準法については何ら触れていない。そうして死亡の場合は千日分なんていう法律がいまだに残っておるということ自体も非常に問題があると思うのですね。しかし基準法は現存しておるわけです。労災保険法によってその後のいろいろな保険給付の改善はされておるが、労働基準法は何ら手をつけられていない。これは一体われわれとしてどういうように解釈をしていいのか。今後の方向はどういうようにお考えになっておるか。まずお聞かせ願いたい。
#8
○渡邊(健)政府委員 労災保険によります業務災害給付とそれから基準法によります災害補償との関係でございますが、これはいずれも事業主の業務災害に関する無過失責任に基づきます災害補償たる給付である、かように考えております。しかしながら基準法のほうは個別の使用者の責任を基礎といたしておるのに対しまして、労災保険のほうは保険制度という仕組みを通すことによりまして、災害補償の履行の確保をはかりますとともに、個別使用者ではできない年金制度等の導入をはかりまして、基準法の災害補償よりも上回った労働者の保護をしておる、こういう関係に相なっておると思うのでございます。具体的に申しますと、基準法、労災保険法発足当時の昭和二十二年におきましては、その給付内容は両方の、二つの法律の給付内容が全く同じであったわけでございますが、その後労災保険法の改正によりまして、先生ただいまお話しになりましたように、年金制その他の長期給付が設けられました結果、労災保険給付と基準法の災害補償との間に差が生じてまいったわけでございます。この関係につきましては、基準法の八十四条で、基準法の災害補償に相当する給付が労災保険より行なわれることとなった場合は使用者が基準法上の災害補償の責任を免れる、こういうことで両者の調整がはかられておるわけでございます。今回の通勤災害の保護制度は、労災保険として行なうことと相なっておりまして、基準法上個々の使用者には通勤災害に対します責任を課しておらないわけでございます。したがいまして、労災保険に加入していない事業場の労働者ということになりますと、これは通勤災害について保護を受ける法律上の保障はないわけでございまして、こういう両者のギャップを根本的になくするということになりますと、これは労災保険を全面適用するということにまたなければならないと思うわけでございますが、その間の、全面適用が行なわれるまでのギャップを埋めるものといたしまして、今回の改正におきましても保険給付の特例すなわち事後加入制度を設けまして、労災保険の適用がない、基準法だけの方という方につきましても、あとから労災保険の中に入っていただいて通勤災害についての保護を受けられる道を講じておるわけでございます。
#9
○多賀谷委員 企業家の個別責任である基準法で、たとえば年金というようなことはなかなかむずかしいということもよくわかっております。しかしたった二・八年分しかない、千日分の遺族補償なんというものは、今日の段階ではとうてい容認できないわけですよ。それをそのままにして今日まで放置しておるというのは、私は怠慢だと思うのです。ですからやはり年金制度に見合うなら年金制度に見合う一時補償金とか、あるいは何らかの形で、それを区別しないで、制度としてやはり一貫をした総合的なものに早くすべきではないか、こういうように考えるわけですね。現実に労災保険の補償金のほかにたとえば一千万円だとかというように、企業が出しているのが相当多いわけですから。私は、これはいまは触れませんけれども、早く総合的なものにしてもらいたい。これは法律を学ぶ者としては実におかしな感じがするわけですから、それは役人のように頭がよくてそれをするすると解釈するなら別として、理論的にも必ずしも一貫性がない、こういうふうに思います。と申しますのは、いまから質問をしていきます問題幾多について、そのギャップのために非常に困る問題が出てくるわけです。これは以後質問の過程で申し上げたいと思います。
 そこで、次に、なぜ通勤途上の災害を業務上としなかったのか、これをお聞かせ願いたい。
#10
○渡邊(健)政府委員 通勤途上災害を業務上の災害と見るかどうかという点は、通勤途上災害調査会でも非常に議論があったところでございまして、一方におきましては通勤なくして労務提供がないんだから業務上にすべきだという御意見もございました。他方においては、通勤が業務と密接な関係があるということは事実であるけれども、業務上というのは使用者の管理下において発生した負傷、疾病、死亡その他の事故をいうのであって、通勤というのはまだ使用者の管理下に入る前の段階において発生するものであって、業務上と同じではないのではないか、現に業務上であれば使用者が災害防止あるいは職業病の発生防止の努力ということが可能だけれども、管理下に入る前の通勤については使用者が通勤災害を減らすとか減らさないとかという余地もないので、これは業務上とするのは筋が通らないのではないか、等々の議論があったのでございます。結果といたしまして、通勤途上災害調査会におきましては、業務上であるか業務上としないかということについては明確な断定はしていないのでございますが、今度の通勤途上災害保護制度においては、従来業務上と通勤中の事故であって業務上とされたものを除いたものを今度の保護制度の対象にせよ、あるいは従来の業務上に対する補償と別個の給付を設けて行なえ、あるいは通勤途上災害の療養の給付についてはその初回において二百円以下の労働者の一部負担を設けろといったような内容も示されておるわけでございます。いま申しましたような諸点は、もし通勤途上災害を業務上というふうにしたといたしますと、考え方といたしまして、理論的に一貫しない内容になっておるわけでございまして、したがいまして、それから考えますと、この通勤途上災害の保護というものは、法理論的に詰めていきますと、これは業務上の災害という考え方の上に立っておるものではない、かように考えられるわけでございます。私どもといたしましては、この通勤途上災害の三者一致のこの答申を忠実に今回は立法化いたしましたわけでございますので、その考え方に基づきまして、通勤災害は業務上ということではなしに、業務上ではないけれども、その給付の事由、給付の内容等はそれに準じた新しい通勤災害、こういう概念を設けまして、これを労災保険の給付として実施することにいたしたわけでございます。
#11
○多賀谷委員 日本は今後社会福祉に重点を置く、あるいはまた高度の工業国であるという点から考えてみると、やはり発展途上国まで規制するILO条約よりも、やはりILOの勧告の線に従ってすみやかに法制化する必要があるのではないかと思うのです。なるほどこの条約においては、これは必ずしも業務上として扱えというようなことは書いてありません。実質的に、保険であろうと何であろうと、通勤時が保障されればいいんだというように書いてはあるけれども、しかし業務災害給付勧告、百二十一号勧告によればやはり労働災害として扱え、こういうようになっておるわけですね。それからよくあなた方は、英米は西ドイツやフランスやオーストリアと違って業務上として扱っていないということをあちらこちらで書いておられますけれども、私調べますと、全然スシテムが違うのですね。英国の場合は大体業務上とか業務外とかいうことを区別してないのです。医療給付は全部一本でいっておるわけですね。ですから、業務上災害としてそれを規定してもあまり実益がない。私は、今日の英国の政治のあり方、あるいは労働組合の力関係からいって、業務上なんというのはすぐとれると思うのですよ。とれるけれども、あまり実益がないというところに、やはりその運動がなかったんじゃないかと思います。アメリカは、一般の医療ですら社会保険が普及してない、むしろ民間保険のほうが力が強くて、御存じのように社会保険制度の問題について政治問題になっておる。損害保険団体から民主党に対して公開質問状が出ておるわけですね。あなたのほうの所属のケネディは社会保険を推進しておるけれども、もってのほかだ、政治資金も出しておるじゃないかというようなことをいわれておるわけです。ですからとても、普通の病気ですら制度がないわけですから、これもやはりむずかしい問題だと思う。そういう状態ですから、私は、英米の例というのはあまり今度は例にならない、むしろ大陸型といいますか、日本としてはやはり西ドイツやフランスやオーストリアやベルギー等の制度を見習うべきではなかったか、こういうように考えるのですが、それはどういうようにお考えですか。
#12
○渡邊(健)政府委員 まずILO百二十一号勧告について申し上げますと、百二十一号条約がILOで議論になりましたときに、通勤途上も業務上の中に全部含めるべきだという意見が労働者側から出まして、それをめぐって審議がかなり活発に行なわれたようでございますが、それぞれの国の事情によって、一がいにそう言えないということで、条約の中にはそういう規定ということではなしに、いま先生おっしゃいましたような、他の社会保障制度によってやってもいいんだという規定が入ったのでございまして、そしてそれがそういう意味で勧告のほうに、いまおっしゃったような規定としてあらわれたわけでございまして、そういうことから申しますと、やはり条約の中には入らずに勧告に入ったということは、それぞれの国の実情に応じて取り扱われるべきもので、一律に強制するのは適当でない、こういう考え方があったものと考えておるわけでございます。
 なお、諸外国の例の場合に、米、英の例ではなしに、独、仏等の考え方に立つべきではなかったかという御意見でございますが、独、仏の考え方にいたしましても、日本の場合と法体系が若干異なっておるわけでございます。すなわちドイツ、フランスの場合におきましては、業務上災害は労災保険で行なわれておりますが、根っこに個別使用者のいわゆる無過失責任といったような日本の基準法に当たる規定というものはないのでございます。これに対しまして日本の場合でございますと、業務上災害については根っこに基準法の個別使用者の責任というものがございまして、したがいまして、業務上災害については個別使用者に解雇制限を課している、こういうことに相なっておるわけでございます。
 しかし、通勤災害ということになりますと、これはやはり使用者の管理下において発生するものでなく、しかも使用者が通勤災害を防ぐとか少なくするとか努力し得る範囲外にありますので、個別使用者にそういう義務を課するということはやはり適当でない、そういう点で、現在の日本の基準法に基づく、そして同じ考え方の上に立った労災保険法でも、業務上と性格がやや違っておるのではないか、こういうふうに考えまして、そこで日本の場合には、全く基準法の個別使用者の責任の上に立ってできております業務上と、通勤途上と同じに取り扱うということは、理論的にも問題があるところでございます。そういう意味におきまして、個別使用者の無過失責任の基礎の上に立っておる日本の業務上災害についての取り扱いと、そういう個別使用者の責任というものを背後に持っていないドイツ、フランスの保険制度本来による業務災害の取り扱いとは、やはり法体系の仕組みが全く同じことは言えないのではないか、かように考えるのでございまして、ドイツ、フランスももちろん参考にはなりますけれども、やはり法体系全体の中で考えますと、違いを設けることが理論的に一応筋が通るのではないかと考えるわけでございます。
#13
○多賀谷委員 それはあとからつけた理屈ですか、初めから労働省はそう思っておったのですか。
#14
○渡邊(健)政府委員 通勤途上災害調査会におきましても、その業務上か業務外かという議論が非常に熱心にしかも掘り下げてされたのでございますが、私ども伺っておりましても、やはり通勤災害を個別使用者の責任ということはこれは無理であろう。そういたしますと、現在の日本の業務災害は根っこに個別使用者の責任というものがございまして、それと関連してその同じ基盤の上に立って労災の業務上災害もできておりますので、やはりその辺の判定というものは理論的にすっきりしたものにしなければならぬということは、審議会の議論等を承っておりまして、私ども考えておるところでございます。
#15
○多賀谷委員 それはあまり理屈にならないと思うのですよ。個別使用者の責任でいいわけですね。しかし個別使用者は多大な損害を免れるために保険をかければいいのです。何も理屈にならないのですよ。先ほどから聞いておると、個別使用者の責任であるから、上に基準法があるからなじまない。そんなことはない。個別使用者の責任であっても、それは個別使用者が責任を負担することができない通勤時のような場合は、それは労災保険という保険で担保する、こういうふうにすればいいわけです。そういうことを私は聞いておって、そういう日本の法体系がよその国のように依然として個別使用者の責任の基準法を基礎にしておるから、それは通勤時の場合は個別使用者の責任というわけにいかないという理論は、私は納得できない。それは、初めから前提として保険制度というものが密着しておれば、何も問題ないわけですよ。ですから、あなたのほうはあとから理屈をつけたのですかと聞いておるのです。私は、そうでなくて、要するに労使の力関係というか、話し合いができぬ、現実には災害が起こっておるからここで妥協したのではないか。ですから、妥協したものにあまり理屈をつけると、私は非常におかしなことになると思いますが、どうですか。
#16
○渡邊(健)政府委員 もちろん調査会の中では労使の意見がございまして、公益がその中を取り持って労使の意見の一致をはかられたわけでございます。ただ、それを一応現行法の法体系との理屈づけの調整をはかると、そういうことになるのではないか、かような意味で申し上げておるわけでございますが、先生おっしゃるように、労災保険に入ってしまえば、全部あれしてしまえば、それは保険の中で全体としてやれるじゃないかとおっしゃる点は、そのとおりだと思います。ただ、理論的に通勤災害なら使用者に個別的に課していいじゃないかということについては、これはそう一がいにいえるかどうかは議論があるところであると思います。
#17
○多賀谷委員 基準法が個別使用者に責任を課しておるから通勤途上の災害を労災に見られぬという理屈は立たない。そんなこまかいような法理論を展開すべきでないと思う。今度改正になったらあなた方どうしますか、非常に困るのですよ。理論が立たなくなる。そういうことではないのです。いま結局労使の話し合いがつかないから、ここにそういう制度にしようということになっておる。ですからものの本を書いても、あなたのような、英米、大陸法と違う理由が、日本の基準法の立て方が違うからなんという理屈は全然通らない。それは局長が涼しい顔で理論構成をしただけで、木を見て森を見ずの議論ですよ。私はそういうことでなくて、いまの労使の力関係で、とにかく緊急に急ぐという観点からそうなったんだ、こう理解をする以外にはないと思うのです。ですからあまり理屈の立たないところへ理屈をつけておくと、あとから困りますよ。
#18
○渡邊(健)政府委員 調査会でまとまりました経過は、先生おっしゃるとおり労使の意見がいろいろ対立いたしまして、調整をはかるために公益委員がこういう案を出されてきたことは事実でございまして、それを法体系の中に立法化していくときについては、一応現行の法体系と理論的な斉合性の上に立って立法化しなければいけませんので、その辺のことを申し上げたわけでございます。
#19
○多賀谷委員 次いで、これはひとつ大きな論争点になると思うのです。そこで今度の制度と、すなわち通勤途上と従来の業務上災害との差をひとつお知らせを願いたい。給付とか補償の差です。
#20
○渡邊(健)政府委員 通勤災害と業務災害との差につきましては、労災保険法上で申しますと、療養給付を受ける労働者に、通勤災害の場合には二百円以下の一部負担金の義務があると思います。
 それからもう一つは、労災保険法上特別加入者につきましては、業務災害の給付はあるけれども、通勤災害については今回は保険給付が行かわれないことになっておる。労災保険法上はそういうことでございます。
 それから、保険料の徴収法上の差につきましては、業務上災害につきましては業種別に料率に差があり、メリット制が一定の範囲のものに行なわれておりますが、通勤災害につきましては料率に業種別の差異がなく、メリット制も適用がない、かようなことに相なっております。それから、保険法上ではございませんが、基準法との関係で申しますと、労災保険法上休業給付につきまして、三日の待期があるわけでございまして、業務災害の場合につきましては、その三日分が基準法上の災害補償として行なわれることに相なっておるわけでございますが、通勤災害の場合には、その三日分の待期に対しまして基準法上の補償義務というものがございませんので、そういうものが使用者から行なわれない。これは結果論でございますけれども、そういうことがございます。また業務上災害につきましては、基準法は十九条で御承知のように解雇制限がございますけれども、通勤災害につきましては基準法上の使用者の義務がございませんので、その規定も適用がない。これらの点が通勤災害と業務災害との差の諸点でございます。
#21
○多賀谷委員 大体財源的にはどのくらいと考えているわけですか。
#22
○渡邊(健)政府委員 財源といたしましては、この労災法改正を施行いたしましたならば、通勤災害の費用といたしまして使用者全部に賃金総額の千分の一の料率のアップを行なうことにいたしております。
#23
○多賀谷委員 現在の平均は幾らですか。
#24
○渡邊(健)政府委員 業種によって差がありますが、平均いたしますと千分の八ぐらいです。
#25
○多賀谷委員 今度の場合は、第三者による場合は自賠法等の給付、賠償がなされますから、実際はみな業者がもつのではなくて、かなり第三者がもっというので千分の一ぐらいだといわれておるわけですが、そこで、従来の通勤時の場合、労災に適用された部分は基準法上はどの程度になっていますか。
#26
○渡邊(健)政府委員 通勤中の事故でありまして、従来から基準法上の業務上災害とされておりますのは、使用者が提供する通勤専用バス、これによって通勤中に生じました事故、あるいは使用者から緊急の出勤を命ぜられまして就業場所におもむく途中の事故の二つにつきましては、通勤中の事故でありましても、業務上の災害として取り扱っているところでございます。
#27
○多賀谷委員 人事院にお尋ねしますけれども、昭和四十三年に当分の間業務上扱いにしておられるもの、これはどの程度になっていますか。
#28
○後藤説明員 昭和四十三年に人事院におきまして「災害補償の取扱いについて」ということで事務総長通達が出ておりますが、その内容を簡単に申し上げますと、深夜、早朝に勤務に従事する場合、あるいは深夜に勤務を終了して退勤する場合、あるいは休日に緊急の要務により勤務を命ぜられた場合の通勤途上における災害は公務上の災害として取り扱うことができるという趣旨のことを通達をいたしておるわけでございます。
#29
○多賀谷委員 いま人事院の当分の間の業務上の取り扱い中、基準法で認めた分はどの範囲があるわけですか。それは全部基準法外ですか。
#30
○渡邊(健)政府委員 先ほど私がお答えいたしました基準法上の業務災害という点は人事院規則でも公務上となっておりまして、いま人事院の参事官が言われましたものはそれ以外でございますので、基準法上われわれが業務上としておるものよりも、その分だけは差異を生じておる点でございます。
#31
○多賀谷委員 そうすると、緊急に出勤を命ぜられたる場合の外の問題としていま人事院の取り扱いはなっておる、こう考えてよろしいですか。
#32
○渡邊(健)政府委員 国家公務員災害補償法上は緊急であろうと緊急でなかろうと、いま人事院の参事官のおっしゃいましたような午後十時から午前七時までの出勤及び午後十時から午前五時までの退勤は、公務災害となっておるわけでございます。
#33
○多賀谷委員 そうすると国家公務員その他この公務員等における災害補償は、いわば四十三年の通達は既得権としてこれは業務上の災害とみなすが、その他のものは今度できる制度に載っけて通勤途上の災害として別に扱う、こういうことですか。
#34
○後藤説明員 お説のとおりでございます。
#35
○多賀谷委員 労働大臣、この点はどういうように考えられるのですか。公務員の場合と一般の場合とは差がある、これは大臣としてはどういうふうにお考えですか。
#36
○加藤国務大臣 公務員はいろいろ業務の関係からいって、国民に奉仕する立場で、緊急の場合とか残業とかいろいろな特殊性がありますので、公務員の通勤の場合と一般の勤労者の場合と多少時間的な関係の相違があることは、これはいまの日本の現状からいくといたしかたないと考えております。
#37
○多賀谷委員 人事院の場合は、いわば政府といってもむしろ使用者ですから、使用者が優遇措置を講ずるというのはいいと思うのですよ。民間の一般の労働者の労働条件をよりよくするためには、公務員等が先行的に行なわれるということは私は何も否定しません。よろしいと思うのです。ですから、それはいわば法律といい、いろいろ取り扱いといっておるけれども、本来、国としての政府と事業主としての政府と両方あるわけですね。ですからそういう場合には、一般の基準法かそういうようになっていないけれども、しかし公務員についてはそういうようにしたいと、使用者としておやりになることは一向差しつかえないと思うのです。ですから、今後とも幾らもそういう事例もあるし、いままでもあるわけですから、これは私はよろしいと思うけれども、それなら基準法をその水準に合わせたらどうか、こう言うのです。
#38
○渡邊(健)政府委員 通勤の途中で起きた事故でいま業務上にしておりますのはさっき言った二つの場合でございますが、通勤バスのような場合でございますと、これは使用者の提供する施設によるわけでございますし、それから緊急に出勤を命ぜられたような場合には、やはり緊急ということで最短の距離、一番早い方法といったようなことで、通勤といいましても一応この経路が事実上制約されるというようなこともあって、業務との起因性を認めてやっておるわけでございますが、いままでの考えから申しますと、単に時間のおそい早いというだけで業務との起因性ということを一般の民間の労働者全部についていまそのようにするということについては、いろいろ問題があろうと思います。今後検討させていただきたいと存じます。
#39
○多賀谷委員 結局使用者である業界が賛成しなかったということで、一方のほうは業界の理解があったから政府がやったということ、単純に言えばそういうことですよ。あまり理屈をつけておると、これも理屈にならぬ。なぜ公務員だけにそういう優遇をするかといっても理屈にならぬわけですからね。私はむしろその水準に、せっかく四十三年度から通達があるんですから、少なくともその水準に合わすべきではなかったかと思いますが、これは意見ですが、そこまでおやりになるなら、この通勤時における災害を国家公務員災害補償の中においてどういう位置づけをするか。もう少し具体的に言いますと、あなたのほうではたとえば昇給等の復元問題でも、公務災害、それから結核による療養、それから私病の場合、三つに分けられておる。そして、公務災害の場合は復帰した場合には昇給が一〇〇%復元される、それから結核の場合は三分の二復元される、その他の私病の場合は三分の一、こういうことですね。この通勤時における災害の場合、少なくとも公務災害に準ずるくらいにすべきじゃないでしょうか、どうでしょうか。
#40
○後藤説明員 ただいま御指摘のとおり、私ども今回本国会に労災法の改正法と同様の趣旨の国家公務員災害補償法の改正を御提案申し上げておるわけでございますが、その中で先ほど申しました四十三年の通達までの分は公務災害として扱いますけれども、それ以外の分は、労災保険法と同じように、公務災害ではないけれども、公務災害に準じた補償、保護を与えるという形で進めておりますので、概念的にはやはりその分は公務上のものとは違うという概念になるわけでございます。したがいまして、給与上の取り扱いの問題になりますと、これは現在の制度の中では、先生御指摘のとおり私傷病扱いということになりますので、従来の公務災害上の扱いあるいは結核に対する特別の扱いよりは、いまのたとえば復職の調整等につきましては従来の私傷病と同等の扱いを受けることになると思います。しかしながら、今後民間の企業等におきましてこの制度の発足と同時に給与上の取り扱いをどのように扱われていくか、そういう民間の動向等を見きわめながら今後の問題としていきたいというふうに考えております。
#41
○多賀谷委員 それはやはり政府主導型で、公務災害に準じて扱われることを私は期待しますね。私病と同じということはどうもせっかく制度が一般の民間でも、保険ではありますけれども、しかし全体的には災害と同じように、実質はあまり差別がないように行なおうとしておるわけですから、政府のほうがやってあと民間が見習います。ですから、人事院のほうでぜひやってもらいたい、どうですか。
#42
○後藤説明員 今後の検討問題とさせていただきたいと思います。
#43
○多賀谷委員 これは強く要望しておきたいと思います。
 そこで私は少し具体的に問題に入ってみたいと思います。
 まず、今度の改正の中で第一条「災害補償を行い」というのを「保険給付を行ない」、こういうように改正されておりますが、ぼくはこれはやはり、災害給付を行ない、それから保険給付も行なう、こういうふうに書いたらどうかと思うのですね。それから同じような問題がずっとあるわけですよ。いままで災害補償ということを行なっておる、全部保険給付に直しておる、あちらこちらずっと。このことは逆にいいますと、ILOの勧告等の否定になるのではないか、否定的なことをはっきり明示したということ。ILOの勧告とは何かというと、業務上の災害とみなすということ。これを明らかに全条文について否定している。わざわざそんなに否定をしなくてもいいのではないか、こういうように思うのです。これはどういうようにお考えですか。
#44
○渡邊(健)政府委員 一条で「災害補償」を「保険給付」といたしましたのは、業務災害の災害補償、それから通勤途上災害についての給付、それらを総括したことばとして申しましたので、従来の災害補償も、保険の立場で申しますと保険給付であることは間違いないわけでございまして、別に、災害補償であるということを否定をいたした趣旨ではないわけでございます。
#45
○多賀谷委員 それは、災害補償は否定していないのですけれども、しかし法文の規定というのが漸次そういうように変わりつつある。たとえば今度現行二十条を変えていますね。現行二十条の「第三者の行為に因つて生じた」という、この「因つて」という因果関係の因を今度の改正で削っておるのです。そして全部かなにしておるわけです。
 もう少し聞きますと、現行の第一条の「業務上の事由による」という「よる」と、いまの二十条の「行為に因つて」の「因る」ですね。これは違うのですか。同じですか。字は違う。一方はかなですし、一方は漢字ですが、どうなんですか。
#46
○渡邊(健)政府委員 これは別に意味がございません、古い規定でございましたので、法制局で、最近の用例によって字を直した。別に私ども、直接特段の意味があるわけではないわけであります。
#47
○多賀谷委員 そうすると、現行法の二十条の「因つて」だけに「因」があるというのはどういうわけですか。
#48
○渡邊(健)政府委員 いじってないところは直さないわけでございまして、改正の際にそこを直していくわけでございます。
#49
○多賀谷委員 現行法上二十条の「因つて」だけに因果関係の因を入れて、ほかは全部かなであるというのはどういうわけか。現行法を聞いておる。
#50
○渡邊(健)政府委員 労災法は、いままで数次の改正をやってまいりまして、そのつど条文をいじりました際に、昔の表現を逐次最近の用例等によって直してまいったわけでございますが、二十条はこれまでいじっておりませんので、昔の字の使い方がそのまま残っておったわけでございます。
#51
○多賀谷委員 「第三者の行為に因つて」は、はっきり因果関係を示しておる。基準法及び労災法の第一条の目的というのは、必ずしもはっきり因果関係を法律で書いていない。立法者としては区別している。それを役所がかってにこのかなのやつまで因果関係を現実に適用しておるのです。
 あなたのほうは相当、因果関係によってしぼっておるでしょう。役所というのはそういうように巧妙に、知らぬうちにやってくるのです。われわれが気がつかないうちに、いつの間にか字が変えてある。これは意味がない、いままで因果関係の因を使っておったのを今度かなに直したのです、こう言っているけれども、実体は、第三者の場合ははっきり行為による因果関係がある、その他の場合はそれほど因果関係がなくても補償しておったのが、今度は因果関係一本にすることによって、要するに因果関係のほうをそのままかなのほうまで及ぼしてくる、こういうやり方をしておる。
 私は、今度のこのかなにするということはあまり改悪だという感じはないのですが、現行法の解釈が問題なんで、あなた方の現行法の取り扱いは、かなの「よる」も全部漢字の「因る」に考えて、ものを扱っておるでしょう。ですから、イギリスのように、その職場で起こったものはとにかく一応全部労働災害とみなすんだ、特別の反証がないものはそれでみなすんだ、こういう考え方でなくて、あなたのほうは、その事故と業務上の因果関係があるかないかをまず調べるでしょう。ですから、かなの「よる」とわざわざ漢字の「因る」を書いたのは、第三者の行為というのは初めから因果関係を前提にしておる。こちらのほうは必ずしもそれをぴしっと前提にしていないんだという規定のしかたですよ、法律の規定のしかたというのは。簡単に、これは一つだけ漢字があって、ほかはかなで書いてある、あれは間違っておるというような問題じゃないのです。少なくとも最初立法した人はそういう感じでやっておるのではないか。ぴしっとした因果関係が強くなくても、大体業務上と考える範囲のものであればという気持ちですね。ですから、そういう点をいままでどういうように扱ってきたのか漢字もかなも同じように考えておったのでしょうか。
#52
○渡邊(健)政府委員 業務上の災害についての支給の考え方は、これは基準法、労災法が昭和二十二年にできましたときから一貫いたしておるわけでございまして、業務起因性の有無ということで業務上かいなかという判断をいたしてまいったわけでございます。基準法の七十五条は「よる」というような表現ではなしに「業務上負傷し、又は疾病にかかった」という書き方をいたしておりまして、労災法上の業務上かいなかも基準法上の業務上かいなかと全く同じ考え方に立っておるわけでございますので、これは変わってきたということはございません。
    〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
昭和二十二年当時から一貫した考え方に相なっておるわけでございます。
#53
○多賀谷委員 立法者の気持ちとは違うのですね、行政のやり方は。立法者はかなと漢字を区別しておる。そこだけなぜ因果関係の因を使っておるか。区別しておるのです。それから七十五条は「業務上」というだけでしょう。「よる」とかなんとかいっていないのですから、私はそういう点もどうも役所が最初から締めてきたのではないかという感じを持つわけです。これは非常に遺憾だと思うのです。続いて、具体的に通勤途上に入りますが、これは報告書というのですか答申というのですか、これのまず「目的」の項ですが「全体としてみて、」というのは一体どういうように解釈するのですか。「その往復行為を全体としてみて、出勤又は退勤の目的をもったものと認められる場合に限る。」という「全体として」ということですね。
#54
○渡邊(健)政府委員 往復行為が通勤に入るかどうかという考え方は、経路それから手段等とともに、それがやはり就業との関連性を持ったものである、こういうことが通勤かどうかの判断の一つの基準に相なると思うのでございます。
 たとえて申しますと、同じ会社に来るのであっても、日曜日に会社のテニスコートでテニスをするために来ようというような場合でございますと、これは会社に来る途中であっても、通勤いわゆる就業との関連性を持ったものとはいえないわけでございます。したがいまして、その通勤について一応目的ということがその性格決定に問題になるわけでございますが、その目的というのは、途中の個々のささいな行為ではなしに、全体として見るべきである。たとえば会社に行く途中にたばこが切れたので、ちょっと横道にそれたほどではないがたばこ屋に寄るとか、あるいは生理現象の要求があって公衆便所に入るというような、部分的に申しますと多少そういう問題があるかもしれませんが、それは全体として見て会社に出勤するあるいは会社の就業が終わって退勤して家に帰ってくる、そういう目的下の行為であったかどうかということで判断すべきだという趣旨を述べられたものでございます。
#55
○多賀谷委員 そうすると、日曜日に組合の大会があるので出勤する、出勤というか事業所に行く途中で事故が起こった、これは入りますか。
#56
○渡邊(健)政府委員 会社の業務ということからいたしますと、組合の会議があって出られる、これは会社の業務ではございませんから、したがって通勤目的というわけにはいかない、したがって通勤途上にはならないわけでございます。もしその人が会社の従業員であると同時に半専従というような形で組合の業務もやっておられるということになりますと、そっちの面では組合の業務としての通勤ということになると思います。
#57
○多賀谷委員 そうすると執行部、専従、半専従というような場合にはこれは組合の通勤途上になる、一般の代議員や組合員はならぬわけですね。
#58
○渡邊(健)政府委員 一般の組合員の方で別に組合から、いわゆる組合業務をしたことに伴う賃金等をもらっておられない、そういう場合にはこれは組合のメンバーとしての行為でございまして、特にそれは組合業務に労働者として従事するという関係にございませんので通勤にはならないわけでございます。
#59
○多賀谷委員 それに手当を出しておった場合はどうですか、組合が手当を出した場合。
#60
○渡邊(健)政府委員 ですからそういう場合に、手当がいわゆる雇用関係に基づく賃金と見られるかどうかということになると思います。雇用関係があってそれに伴う賃金だと見られるような組合の方であれば、業務についての通勤ということになりますが、賃金と見られるものでない、雇用関係があって賃金が出されたと見られるものでない場合には、通勤とはいえないと思います。
#61
○多賀谷委員 そうすると会社が主催する運動会に出席した場合はどうですか、出場した場合はどうですか。
#62
○渡邊(健)政府委員 会社の運動会に出勤する場合にもいろいろございまして、単なるレクリエーションで出る出ないは全く本人の随意である、それに出るべき特に雇用関係上の義務というものがない場合にはこれは会社の業務といえない、全くのレクリエーションということになると思います。ただ全社の行事として行なわれ、それに出勤すべき義務がある、こういう場合にはそれに出る者は業務のために行く途中でございますから通勤になるわけでございます。
#63
○多賀谷委員 なかなかむずかしいのですね。世話をする福利関係の人は、事故があった場合、これは運動会の世話をしなければならぬからこれは通勤途上災害だ、しかし、一般に参加する人は通勤途上災害でない、こういうことですか。
#64
○渡邊(健)政府委員 たとえば会社の厚生課の職員等でございまして、会社主催の運動会には厚生課の業務として自分がいろいろな仕事をしなければならぬ、そういう意味で出勤すべき義務があるような場合には、おっしゃるとおりこれは通勤途上になります。それから一般の社員でございまして、これは全くのレクリエーションで、出る出ないは本人の自由、就業日でもないといった場合には通勤にはならないわけでございます。
#65
○多賀谷委員 そうすると、仕事が終わって、組合の執行委員会やその他の用事があって帰る場合ですね、これはどういうふうになるのですか。
#66
○渡邊(健)政府委員 これは実情によると思うのでございまして、会社の業務が終わりまして、会社が終わっても普通会社に残っておるような若干の時間であれば、その組合の会合等に出て帰っても特にそれが退勤でなくなるということはないと思いますが、非常にそれが長時間等でありまして、社会通念的に見て、これは会社の業務が終わっての帰りではない、組合の活動が終わっての帰りであって、会社の就業が終わっての帰りと見られないような場合になりますと、退勤とはいえないのではないかと考えます。
#67
○多賀谷委員 これは私も異論があるのですが、
 「時間」のところで聞きたいと思います。
 それから「始点、終点」ですね。「労働者の住居及び業務の場所とし、住居とは、居住して日常生活に用いる家屋等の場所をいい、業務の場所とは、業務の開始又は終了の場所をいう。」これは例のフランスあたりでは第二次的居所を含むということになっておる。ドイツでは恒常的住居ということになっておる。これはどういうように扱われるわけですか。最近は通勤が非常にふくそうするので小さなアパートを借りてそこから出勤しておる人もあるし、これはどういうように解釈しますか。
#68
○渡邊(健)政府委員 ここでいいます住居とは、労働者が居住いたしまして日常生活の用に供しております家屋等で、本人の就業のための拠点と見られるようなものをいっておるわけであります。具体的に申しますと、労働者本人が通常家族と生活しておる家屋はもちろんでございますが、そのほかにいま先生がおあげになりましたように、労働のために特にセカンドナウスを持っておる。本来の家族と住んでおる住居が非常に遠い、通勤に苦労であるために通勤の便のために就業場所の近くにセカンドハウスを持ったというような場合は、そのセカンドハウスもやはり労働者の就業のための拠点と見られますので住居に入ると考えております。
#69
○多賀谷委員 次に、食事をする場合ですね。家に帰える場合、これはどうなんですか。
#70
○渡邊(健)政府委員 一定の労働を終了いたしまして、相当の休憩の時間がある、その間に食事に帰るというような場合は、就業の場所と住居の間を就業の一定の区切りのときに往復する行為でございますから、これは通勤に入ると考えております。
#71
○多賀谷委員 そうすると、工場内に食堂がないから食事のために付近の食堂に行く場合は、どうでしょうか。
#72
○渡邊(健)政府委員 食事の場所、自分の住居以外の食事の場所との往復を通勤にするかどうかということは、調査会等でもいろいろ議論があったところでございます。フランス等におきましては、当初はそういうものは通勤の範囲に入っておらなかったのですけれども、それらの国におきましては昼食の時間が相当長く、社会の慣行として昼食のために自宅に帰るという例が非常に多いために、それとの関連で、うちに帰れない人の食事の場所等もあとから通勤に入ってきたというふうに私ども承知いたしておりますが、日本の場合には、食事のために住居に帰るということはまだ一般化した慣行とは必ずしも言えませんので、それとの均衡上、住居以外の就業の場所の近辺の食堂等との往復を通勤としなければならぬ理由も少ないんではないか。それから、そういう場合でございますと、むしろ昼の時間に就業の場所で食事をして、あと近所を散歩するとか、あるいはその際にお茶を飲みに入るとかということとの均衡上の問題等も生じますので、今回においては、そういう住居以外の食事の場所との往復は今回の通勤範囲には含めなかったわけでございます。
#73
○多賀谷委員 含めなかったといったって、どこにもないでしょう。どこにあるんですか。含めなかったというけれども、含めなかったとはどこきもも書いてない。
#74
○渡邊(健)政府委員 就業の場所と住居の場所の間を往復するように書いておりますので、食堂等は就業の場所と住居との往復にはならないわけでございます。
#75
○多賀谷委員 これはあとから議論があるだろうと思いますから、先にいきますけれども、問題提起だけ。これは非常に問題ですね。工場によりますと、工場内に食堂がない、ありましてもごく収容人員の少ない場合、これは必ず外へいくわけですから、これは一つ問題点としてあとから続いてしていただきたいと思いますが、これは問題点があることを提起しておきたい、こういうように思います。
 それから今度、帰る場合に、独身者等が食堂へ寄って帰るのがあるのですね。これはどうなんですか。
    〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕
#76
○渡邊(健)政府委員 食堂に寄ること自身は、これは同じようなことでございますので、食堂までの経路が通勤というふうには考えませんけれども、二条の三項で「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により行なうための最少限度のものである場合は、」往復の経路に復した以後は通勤とする、こういうふうにいたしておりますので、その日常生活上必要なやむを得ない行為に当たると思います。
#77
○多賀谷委員 そうすると、帰りがけに食堂に寄るのは、日用品等の購入その他云々という中に入っておる。そしてもとの道に帰ってから後に事故が起こった場合に救済する、こういうことになるわけですね。
#78
○渡邊(健)政府委員 そういう考え方でございます。
#79
○多賀谷委員 続いて業務時間の観念ですけれども、先ほどちょっと申しましたように、マージャンをするとか、社内のサークルをするとか、それから労働運動、大会とか執行委員会をして帰る、これは一体どの程度おそかったら通常であると考える時間内という範疇から出ていくんですかね。
#80
○渡邊(健)政府委員 それはやはり社会通念によって判断しなければならない問題でございまして就業の時間の終わったときにすべて帰宅の途に着かれるとは限らないわけでございまして、若干職場でやれやれということで雑談をして帰られたり、お茶を一ぱい飲んで帰られたり、あるいは将棋の一局もさして帰るということは、社会通念上あり得るわけでございます。したがいまして、そういう社会通念的に見て、就業の時間が終わったあとでその会社で若干ゆっくりして帰るという判断であれば、それから帰るときももちろん通勤に入るわけでございますが、非常に長時間にわたりまして、あるいは組合の会合に出るとか、あるいはそこで長くマージャンをして帰るというようなことになりますと、これは仕事が終わって帰るということよりは、社会通念的に見てマージャンの帰りだと見られるような場合になりますと、これは退勤とはいえないと考えるわけでございます。
#81
○多賀谷委員 しかし、主目的は会社に勤めに行ったのですからね。たまたまサークルだの会議があったということですから。それに行くときは当然就業のために行ったわけです。帰るときも終わって帰ったんだけれども、ただ時間がおそかったというんですね。マージャンをするために行ったわけじゃないんですからね。それで、これはどうなんです。時間内に限るというのは一つの大きなメルクマールといいますか、ファクターになるのですか。保護の対象にしないという要素になるのです。
#82
○渡邊(健)政府委員 通勤というのは就業との関連性があって通勤となるわけでございまして、先ほど先生の御質問にございました調査会の報告で目的を述べておりますのもそういう考えでございます。したがいまして、仕事が終わってある程度の時間がたって帰る場合に、それが社会通念的に見て、仕事が終わったことに基づく帰宅と考えられれば通勤、退勤になるわけでございますが、長時間にわたって全く業務と関係のない時間があって、そして社会通念的に見てそれが仕事が終わった帰りというよりは、別個のことをした時間からの帰路だと見られるように社会通念的になれば、これは就業との関連性というものが薄くなり、調査会報告でいうところの、そういう出勤、退勤目的といえないような状況になれば、これは通勤とはいえないのではないかと考えるわけでございます。
#83
○多賀谷委員 私は時間が入るということ、時間が一つのファクターになるというのが率直にいうとどうもわからないのです。要するに仕事に行ったわけですからね。帰りはその事業所で何かほかのことをしておったのでおそくなる。しかし仕事から帰るのですよ、何をしようと。あなたのほうで時間というものを入れた理由ですね。それはおそくなるから、交通事故になりやすいというならまた一つのなんですけれども、どうせ帰らなければならぬ。おそくなったらどうも保護の対象にならぬという理由がわからぬのです。
#84
○渡邊(健)政府委員 調査会報告で時間につきまして「始業又は終業の時刻、通勤所要時間その他の事情からみて、一般に通常と考えられる時間内のものに限る。」こういうふうに出ておりますのは、やはり通勤と就業との関連性、そういう出勤目的、退勤目的、それに当たるかどうかの一つのファクターとしてそういう時間を入れた考え方に立っておるのでございまして、たとえて申しますと、そこに非常に長時間マージャンをして帰ったということになると、就業が終わって帰ったというよりも、寄り道をして、マージャン屋に寄って帰るのを、たまたまマージャン屋に寄らないでそこの就業の場所でマージャンをしたというように見られる、したがってそれは仕事が終わったことに基づく帰宅ということよりは、マージャンをしてその帰りだというふうに見られる、こういう考え方によるわけでございます。
#85
○多賀谷委員 しかし、場所から場所へ移転するわけですからね。何のために行ったかといえば、就業するために行った。たまたまそこでほかのことをしておって帰りがおそくなったからといっても、それは保護の対象にならぬというのはぼくは非常におかしいと思うのです。おそくなったから、ことに危険なときに帰るからいかぬのだというなら、また全然別です。ただおそくなったということだけで仕事のための帰りではないというわけにいかないんじゃないかと思うのです。主目的がとにかく就業しておるのですからね。大部分就業しておるわけですから、ただ帰る時間がおそかったということはあまり理由にならないんじゃないですか。
#86
○渡邊(健)政府委員 たとえば会社の中ではなくて、会社のすぐ向かいのマージャン屋に寄って、三時間も四時間も、さらにそれ以後もマージャンをして帰ったというような場合でございますと――もちろん昼間は長時間働くわけでございますが、それはもうマージャンの帰りであって、就業の帰りとは社会通念上見られない。それと同じように、事業所の中でやりました場合でも、就業時間がすっかり終わってしまって、もう就業とは全く関係がなくなって、長時間そういうことをして帰ったということでございますと、向かいのマージャン屋でやっておったのと実質同じことではないか、もうそこで一応就業目的というものは断ち切れておる、こういうふうに考えられるという考え方でございます。
#87
○多賀谷委員 ですから私は、さっき、「よる」というのは漢字ですか、かなですかと聞いたのです。要するに、局長のものの考え方の態度なんですよ。たとえば一回事業所外に出て、近くのマージャン屋へ行って帰る場合は保護の対象にならないじゃないか、それと工場内でやった場合とは区別がつかないから保護の対象にしないというものの考え方は間違っておる。フランスの場合は逆ですよ。大部分が昼に昼めしを食べに家に帰る。だから入れた。家へ帰らないで食堂で食べる場合と区別することは困難だから、両方入れておるわけですよ。私は近所のマージャン屋に寄ったのを救えとは言っていないけれども、要するに工場から出る時間がおそかったのと、隣のマージャン屋に行って帰りがおそくなったのと区別がつかないから、工場の中で行なったいろいろな行為の場合も入れないというほうがおかしい。あなたのほうは、消極的に消極的に、否定的に否定的に解釈すれば、無限に否定的になりますよ。基本的なものの考え方、その態度が法の趣旨とは違うんじゃないですか。
#88
○渡邊(健)政府委員 今回の通勤災害保護制度は通勤が業務と密接な関連を有することに着目いたしまして、その途上で災害を受けた被災労働者あるいはその遺族を補償し保護しよう、こういう考え方に立っておるわけでございます。したがいまして、その往復行為が業務との密接な関連性が一応断ち切れた場合、たとえて申しますと、逸脱、中断などもそういう意味で、それ以後は通勤の範囲からはずしておるわけでございます。そういう意味で、時間の要素なども業務との関連性というものの中にまだ入っておるか、あるいはもう業務との関連性が断ち切れたと見られるかということは社会通念によってそこを判断するほかはないのではないかと考えるのでございます。
#89
○多賀谷委員 マージャンの例が悪いから一般に納得しにくいけれども、クラブ活動だって同じですよ。クラブ活動なんかをやって帰りがちょっとおそくなった、あるいは終業時間後に労働組合の執行委員会を開いたからおそくなった、こういう場合、適用がない、そこは中断されるという考え方がおかしいと思うのですよ。主目的はとにかく工場で働くことですから、結局それは付随したことですから、それによって保護が中断される、切られるというのがおかしいじゃないですかね、時間の観念は。
#90
○渡邊(健)政府委員 もちろん会社で就業が終わりまして直ちに帰路につくとは限らないわけでございまして、ある程度、先ほど申しましたようなことでしばらくの時間帰らないということは社会通念上あるわけでございます。したがいまして、クラブ活動あるいは組合の会合等も、終業直後に人が集まりやすいということでやられるかもしれませんが、社会通念から見て、終業後、普通若干の、ほかの用事をその場でするであろうというアローアンスの中であれば、これはもちろんそこまで排除して狭く縛ろうという考えはないわけでございまして、その辺はやはり社会通念によって、終業後会社の構内に残っておるということが一般に考えられる限度であれば、別に退勤からはずれるわけではないわけでございます。
#91
○多賀谷委員 この法律は新しい法律ですから、速記録というのは今後の解釈に非常に影響があるのですよ。ですから、私はかなりこまかく聞いておるわけです。あなたは社会通念、社会通念と言われるけれども、こんな便利なことばはない。局長としては大体どのくらいの時間を想定しておるのですか。
#92
○渡邊(健)政府委員 これは就業の場所と申しましてもいろいろございまして、業態その他によって必ずしも一律に申せませんので、単に時間的な長さだけで一律に何時間とか何分とかいうことはいえないのではないかと考えるのでございます。
#93
○加藤国務大臣 これはまだ最終的に法律できまったわけではありませんので、ことによったら局長の頭によって変わるというようなことも考えられます。会社によっては、工場内に福祉センターをつくるとか、いろいろなものをつくっておる。出勤したら必ず帰ってこなければいかぬのですからね。社会通念上といっても、これは人によっていろいろ見方が違いますが、この法案が通過いたしますと――いろいろなケースがあると思います。そういうようなケース、ケースによって、各末端のほうに通達を出さなければいかぬ。通達を出す以上は朝令暮改というわけにもいきません。いま、渡邊局長の頭と道楽者の私の頭とは少し違うかもわかりません。そういうような関係で、人々によって考え方も違いますが、いろいろな点を考慮いたしまして、省内でもいろいろ意見を戦わして最終的な基準というものをこしらえまして、そのときにはまた皆さんにもお示しして、そして通達を出すようにしたい。いまいろいろ御意見を聞いておりまして私も、どこまでかということになってくると、これはなかなかむずかしい点もありますので、御質問の御趣旨をよく体して、今後これに対する定義というか、こまかい点をきめていかなければいけない。あんまり社会通念といって広げると、これはもう全然程度がわからぬようになる、こういうような関係にもなりますので、いまの御意見などをよく参酌いたしまして、今後労働省におきまして、この問題について、社会通念の事例、事例によって、早くそれをきめて通達を出したい。通達を出しますと、これが大体基本的なものとして統一されますので、その間、いまの御意見などを十分参酌いたしましてきめていきたいと思います。
#94
○多賀谷委員 こういうものは十分予想されるわけですからね。法律を提案されるときには、ぴしっとした解釈をして出していただきたい。これがやはりわれわれとしては、法改正をするかどうか、あるいは修正をするかどうかの一つのポイントになるわけですからね。大体意見がきまって出しておるはずですから、私はもう少し明快に答えてもらいたいと思うのですよ。
 そこで、ずいぶんあるわけです。時間もあまりないでしょうから、問題点の提起をしておきたいと思うのですけれども、次に逸脱、中断の行為ですね。先ほど、たばこを買う、ちょっとトイレに行く、これは逸脱、中断ではないということでした。それから独身者の食事も、これは帰路にちょっと立ち寄って食事をして、そしてもとの道に返ってからは保護の対象になるということでした。そこで、共かせぎの場合の食料品の購入も同じだろうと思うのです。
 もう一つは、保育所ですね。あるいは託児所へ子供を預けておる場合ですね。つとめてから帰りに連れて帰る。この行為はどうなんですか。
#95
○渡邊(健)政府委員 たとえば母子家庭といったような場合で、出勤の途中に子供を託児所に預けなければ勤務につけないというような場合でございますと、託児をすること自体が就業と密接な関係にあるわけでございますから、託児所を回って勤務場所まで行く、あるいは勤務場所から託児所を回って帰るというのは、就業に関する合理的経路に当たると思います。したがいまして通勤に入るわけでございます。
#96
○多賀谷委員 わかりました。合理的経路でありますから入る。そうすると、おばあちゃんのところへ預けておったらどうなんだ。もう少し具体的に言いますと、夫婦で別居しておる。ですから就業するときにおばあちゃんのところへ預けていく。帰りにはおばあちゃんのところから連れて帰る。こういう場合はどうなんですか。
#97
○渡邊(健)政府委員 それが、祖母の方のところへ預けていかなければ就業できない、子供一人を置いていくことはできないから、そういうことで毎日おばあさんのところへ預けるような場合には、いま申しました託児所の場合と同じでございます。
#98
○多賀谷委員 選挙の投票はどうですか。総理大臣は、日曜日は投票日にしない、普通の日でないとみんな投票に行かないから、こう言っておるが、普通の日に選挙の投票へ行くのはどうですか。
#99
○渡邊(健)政府委員 やはり選挙といったようなことは、勤務者が投票に行くことは日常しばしばあることでございます。したがいまして、これは日常生活上必要な行為に該当すると考えますので、通勤経路に復したあとは通勤になるもの、かように考えます。
#100
○多賀谷委員 そうすると、デートはどうですか。
#101
○渡邊(健)政府委員 恋人とのデートのために経路からはずれる、あるいは途中で長時間ベンチ等であれする場合には、通勤目的がそこで中断されたと考えられる。そしてその点でデートの目的のための行動に移った、かように考えられます。これは逸脱、中断に当たると思います。
#102
○多賀谷委員 丸ビル等で、空気の悪いところにいて、公園に立ち寄って帰るという習慣のある人、こういうのはどうですか。
#103
○渡邊(健)政府委員 合理的な経路と申しましても、別に直線的な、幅のないものではございませんので、帰りの道近くに公園があれば若干そこでからだを休めて帰るといったことは、これは通勤の合理的な経路、手段を逸脱しないものと考えます。
#104
○多賀谷委員 外国では喫茶店に寄ってコーヒーを飲んで行く。それからドイツではビールを飲むのですね。帰りにビールを一ぱい飲んで帰る。これもやはり肯定的に考えておりますね、ドイツ、フランスでは。要するに保護の対象になる、こういうふうに考えておる。日本ではどうですか。
#105
○渡邊(健)政府委員 たとえば通勤の場合に、駅の売店でジュースを飲んだりすることはしばしばあるわけでございます。それと同じように、帰りに若干通常のお茶を飲むくらいの時間そういうところに寄りましてお茶を飲む、あるいはビール等で渇をいやす程度でございますれば、これは逸脱、中断には該当しないと思います。ただし、それが長時間にわたって飲酒をいたしまして、そこで腰を落ちつけたと社会通念上どうも見られるようになりますと、これは通勤の途上の合理的な、渇をいやす程度の範囲を越えることになりまして、それは飲酒のための逸脱、中断、こういうことになると考えます。
#106
○多賀谷委員 自動車をガレージに預けておるという場合、自動車をとりに行く場合は合理的経路になりますね。
#107
○渡邊(健)政府委員 それは当然でございます。
#108
○多賀谷委員 次に、いろいろあるわけですけれども、「重大な過失」についてお聞かせ願いたい。要するに、労働者の重大な過失の場合は給付の全部または一部を停止をすることができる。そこで今度は、いままでの労災法というのは基準法を受けておりますから、重大な過失の場合の制限としては、療養給付それから障害給付以外は制限ができない、こういうように考えておったわけですが、今度の場合は全面的に制限ができるのですか。
#109
○渡邊(健)政府委員 今度の通勤災害の保険給付の内容につきましては、業務上の災害と全く同じ考え方でございますので、給付制限の範囲も業務上で出す給付制限と同じようにする考えでございます。
#110
○多賀谷委員 ところが条文上でいきますと、通勤時は基準法を受けないわけでしょう。ですから、いままでの労災のほうは本来基準法を受けておりますから、療養とか障害の給付は一部制限ができるが、遺族補償であるとか埋葬料であるとか、そういうものは制限ができない、こういうことになるわけです。ところが、基準法を受けないわけでしょう。受けないのに通勤時は同じような条文を適用しておるのですね。ですから、私は制限があるのかないのか、それを聞いておるわけです。
#111
○渡邊(健)政府委員 確かに従来業務上につきましても労災保険法上は給付制限が一部または全部ということで、何でもできる形になっておりまして、基準法で先生おっしゃるような給付制限についての一定の制限があるわけでございます。今回は労災法でございまして、基準法のその規定はかぶりませんけれども、先ほど申しましたように今回の通勤災害保護制度の趣旨は、保険給付事由、保険給付の内容については業務上災害と同じにしよう、こういう考えでございますので、私ども給付制限につきましても業務上災害と同じにしようという考えでございます。したがって保険法上の規定はございませんが、通達によりまして業務上災害と全く同じ取り扱いをすることにしたいと考えております。
#112
○多賀谷委員 ちょっと私は間違えました。基準法上は休業補償と障害補償が制限を受けるのですね。ところが労災法のほうは全部または一部というので、保険給付全体に条文がかぶっているのですね。ところが今度の通勤時は基準法の適用を受けませんから疑問を持ったわけですが、こういうことだってやはり法律上はっきりしておったほうがいいのですよ。われわれは法律で勉強しておるわけでしょう。そうすると、あなたのほうはいままでも、たてまえは違うけれども取り扱いは同じようにする。局長から私が聞かなければわからぬわけでしょう。法律を見たってわからぬですよ、そういうことは。法律上は、今度は基準法と労災法との関係が従来とは違う、通勤時は基準法を受けないんだというならば、受けないように書くべきですよ。そこで私が最初に質問したのはそれなんですよ。いままでの労災法というのは基準法を受けてやっているわけです。今度は、通勤時は基準法を受けてやってないならば、やってないように当然書かなければいけないですよ、こう言っておる。ところが、基準法を受けておった当時と同じような条文の書きかたをしているのは、法の技術からいいますと、これはじょうずな技術ではない、こういうように言わざるを得ないわけです。しかし、扱い方については私は同意をするわけです。それは、同意をするわけですけれども、法律のたてまえからいいますと、必ずしも法技術からいうとあまり上等な扱い方ではない、こういうようにいわれるわけです。
 そこで、次に重大な過失とは一体何か。「社会通念上合理的と考えられる手段」、こういっておるのですね。これは、社会通念上合理的手段とは一体どういうことなのか。そこで具体的に無免許と酔っぱらい運転、これは一体どうなのか、これをお聞かせ願いたい。
#113
○渡邊(健)政府委員 無免許の人は、もともと自動車の運転等をしてはならない、自動車をみずから走行させて通勤するということは法律上許されないわけでございまして、そういうような手段は、社会通念的に見て合理的な通勤手段にはならないと思います。したがって、そういうものはむしろ合理的な手段のほうではずれる、かように考えるわけでございます。その他の交通違反になりますと、飲酒運転と申しましても、飲酒にもいろいろな深酒あるいはそこまでに至らない程度もございますし、その他の交通違反についても、いろいろ軽度の場合、重度の場合等があって、一律には言えないのでございますが、こういうものにつきましては、それがだれが見ても運転できないほどめいていしておって運転したような場合、そういった状態のもとにおいては合理的な手段ではなかったということが言えると思いますが、一般的には飲酒運転だからといってすべてこれは合理的な手段でないとまでは言えないと存じます。したがいまして、そういう場合にはあまり――ごく軽い飲酒運転程度でございますと、そこまで給付制限をいたしませんけれども、社会通念上見てある程度度を越えた飲酒運転のような場合には、これは、重大な過失、そっちのほうの給付制限になると思います。
#114
○多賀谷委員 では無免許でも、免許状を携帯しなかったとか、免許状の切りかえ時期を忘れておったというのはどうなんですか。
#115
○渡邊(健)政府委員 先ほど私が無免許と申しましたのは、もともとまだ免許をとってない、したがって十分な運転能力のないような人が運転をする場合でございまして、一度免許証をとって、運転の経験も能力も十分ある、その方がたまたま切りかえ時を忘れたために手続的にその日は無免許の状態になっておったといったような場合には、そこまでが社会通念的に見て合理的な手段でないとは言えないと存じますので、そういう場合まで合理的な手段からはずして考える考え方は持っておりません。
#116
○多賀谷委員 そうしますと、道交法違反をもって直ちに労働者の重大な過失とは考えない、こういうように考えてよろしいですか。
#117
○渡邊(健)政府委員 そのとおりでございまして、社会通念によって判断いたしたいと思います。
#118
○多賀谷委員 質問をするとずいぶんあるわけですけれども、例の特別加入である中小企業者とか一人親方をはずしたのはどういう理由に基づくのですか。
#119
○渡邊(健)政府委員 これも調査会で非常に議論がありまして、審議会でもいろいろ議論があったところでございます。ただ、議論の結果では、特別加入と申しますのは、大体大きくいいまして五種類ありまして、中小企業主・家族従業員、一人親方、それから家内労働者、農民、これらの五つのタイプがあるわけでございますが、中小企業主あるいは一人親方といったような場合になりますと、必ずしも労働者のように始業、終業の時間が明確でない。したがって、それが通勤であったのかあるいは退勤であったのか、あるいは退勤でなくて全く私用であったのか、そういうことが非常に労働者ほど明確でない。それからまた逸脱、中断にいたしましても、労働者の場合でございますと、たとえばお客を接待する場合には、業務命令があればそれが業務だということが明確になって、そういう接待の帰りは退勤になるわけでございますが、事業主の場合でございますと、業務命令というものがございませんから、そこらの判断も非常にむずかしいわけでございます。
 それから家内労働者等になりますと、これはうちで就業するのが通例でございまして、一体、仕事をもらいに行くあるいはできたものを届けに行く、これは通勤なのかあるいは業務そのものなのかといったような判断も非常にむずかしい等々、これらの特別加入者はその就業実態から見て、雇用労働者ほど通勤、退勤の概念を明確にすることが困難であるわけでございます。そこで、これらについては、いまにわかに細目にわたって検討するについては相当な時間を要するということで、雇用労働者についても労災保険未加入の労働者についてはまだ通勤途上の災害の保護の対象外にあるといったような均衡を考えまして、今回は特別加入者については通勤災害保護制度からはずすことにいたしたわけでございます。しかしながら、労災保険審議会におきましても、これらの問題はすみやかに検討するようという、審議会の答申の中にそういうことが述べられておりますので、私ども今後これらの問題を検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
#120
○多賀谷委員 せっかく大きな資料をもらって、一条、一条解釈が書いてある。ところが実に不親切な解釈なんですね。たとえばいまの条項のところですよ。特別加入の問題について、この資料の二〇ページですね、要するに第三章第三節というのをはずしておるわけですよね。すなわち二十八条、二十九条をはずしておる。そうしてはずしておるときに、「特別加入者に関する規定について所要の整理を行なうものである。」こういうことを言っておる。これではだれが読んでみてもわからない。「特別加入の者は適用を受けない」と、こういうように書いておけばいいわけですよね。そういう点は、実に、書いた官僚しかわからぬような書き方というのは非常に困る。よほど注意して見ないと、「特別加入者に関する規定について所要の整理を行なうものである。」何が抜けておるのだろうかと思って見たら初めてわかった。それもぎょうぎょうしく一条一条解釈をわれわれにくれておるわけですよ。こんな解釈を見ておったって何もならぬ。ですから、もう少し親切にわかるように書いてもらいたい。何にしても、この特別加入の問題は、私は、この特別加入があるから労災に入っておるのだという人が多いのですから、これは今後ぜひ実現をするようにしてもらいたいと思います。
 それから例の五人未満の商業、サービスの労働者、これについては整備法によって事後に、すなわち事故が起こった後に加入することができるようになっておりますけれども、これも私は事業主の請求だけでなくて、労働者の請求によって行なうようにすべきではないか、こういうように思うのです。
 もう少し聞きますと、整備法の十八条の三項です。すなわち事業主の申請によってあとからかけて保険がもらえるようになっているのですが、その場合には「事業主は、その使用する労働者の過半数が希望する場合」ということでなくて、事故の起こった労働者が希望した場合、そういうようにすべきじゃないですか。
#121
○渡邊(健)政府委員 労災保険は、これは事業所単位で適用されることに相なっております。個人単位で適用されるということでなしに、事業所単位で適用されるようになっておりますので、事業主の加入申請という方法をとっているわけでございますが、なおこれにつきましては、当該事業所の過半数の労働者が請求すれば事業主は加入申請をしなければならない、こういうことにいたして、労働者の意向が反映するようにいたしておるわけでございます。
#122
○多賀谷委員 ちょっとおかしいじゃないですか、これは。要するに基準法の適用のあるものは、これは労働者の意思表示と無関係に救済を受けるわけですね。基準法の適用でない通勤時の場合はやはり、当該被害者がその事業主に言えば事業主は申請しなければならぬというように書くべきじゃないですか。何でこんなところに「労働者の過半数」などということばを設けたのか。そうでなくて、これは全然給付をもらえるかもらえないかということでしょう。ですから当然当該労働者が事業主に申請すれば、事業主としては保険の申請をしなければならぬ、こういうように書くのが妥当じゃないですか。こんなところに大組合のような規定を設けるというのはおかしいですよ。五人未満ですよ。それを過半数とかなんとか――過半数といえば、三人おれば過半数じゃないか。あるいは五人未満ならば二名で過半数じゃないか。一人でいいのですよ。どうもものの考え方がおかしいんじゃないですか。
#123
○渡邊(健)政府委員 業務上の災害につきましても、未加入の労働者でございますといわゆる基準法だけでございまして、労災保険法に加入しているかしていないかということでギャップがあるわけでございます。たとえば三年たってもなおらないような場合には、基準法でございますと千二百日分の打ち切りで、あと一切補償は受けられない。それが労災でございますと、療養を要すれば長期傷病補償給付ということで、なおるまで、あるいはその後障害が残ればさらに年金がもらえ、なくなれば遺族年金ももらえる、非常に差があるわけでございます。
 そこで労災保険に加入しておられない、基準法だけの方との間のギャップを埋めるために、それら五人未満の商業、サービスについては事後加入の特別加入の制度があるわけでございますが、これにつきましても従来過半数の労働者の請求があった場合に事業主が申請する、こういう形をとっておりますので、通勤災害についても業務災害の場合と全く同じ方法によることにしたわけでございます。労災は先ほども申しましたように、労働者個々の単位の適用でなくて、事業所単位で適用する、もしその事業所が入るということになると、その通勤災害を受けた労働者一人だけでなしに全労働者を含めて、事業主としては適用に入らなければならないわけでございます。そこで、一般の任意加入の場合にもやはり過半数の原則によって労働者の意向を反映させつつ、事業主の加入申請で事業所単位で加入する方法をとっておりますので、それと平仄を合わせる意味におきまして、通勤災害についてもこういう方法をとったわけでございます。
#124
○多賀谷委員 ぼくは率直に言うと、どうも局長のものの考え方が間違っておると思うのです。現行法がむしろ悪いのですよ、私から言うならば。あなたは悪いほうに悪いほうに合わすような話をさっきからされておるのです。現行法もそうなっているからそれに合わすのです、なるほど現行法は基準法と労災法の差がありますよ。しかし今度は非常に差があるのです、今度の場合はもらえないのですから。もらえるかもらえないかでしょう、今度の場合は。今度は労働者としてももらえないのですから、また使用者としても保険をかけておかなければ払う必要はないのです。義務がないのでしょう。ですからそれは当然事業主としては、当該労働者の希望があれば申請する、こういうようにすべきではないですか、今度の場合は。それをいままでのような基準法がかぶる規定をそのまま、従来もあったからといって援用すべきではない、こういうように思うのですよ。従来は基準法というのがあって使用者の責任なんです。今度は基準法の適用を受けないのですから、使用者は何も義務がないのですよ、通勤時の労働者に対して。保険をかけた場合に初めて義務を生ずるわけです。そうすると、当該労働者については非常に差があるわけでしょう。ですから、当該労働者が希望した場合は事業主は申請しなければならぬ、こういうように書くべきではないか、こう言っているわけです。
#125
○渡邊(健)政府委員 御趣旨の意味はよくわかりますが、今回の通勤途上災害は、ともかく業務災害についての労災保険の仕組みを利用して通勤災害保護制度を設ける、こういうのが調査会の報告になっておりまして、それにのっとって改正を行なったわけでございます。
 そういたしますと、やはり従来からございます労災保険の仕組みとの均衡を考える必要があるわけでございまして、おっしゃるように確かに業務上災害が基準法の根っこがあるのと、ないのとの違いはございますけれども、通勤災害についてだけ個人加入というわけには、やはり労災全体の仕組みと非常にマッチいたしませんので、そういうわけにはいかない。やはり事業所単位ということになりますと、一人の労働者というよりも、労働の過半数の意向ということが、従来の労災の仕組みとのマッチも非常に合理的ではないかと考えるわけでございます。
 なお先生の、従来の労災保険の仕組みそのものが適当でないんだという御意見、これも一つの御意見であると思うのでございますが、労災保険全体の業務災害を含めた仕組みにつきましては、現在労災保険を全般的にこの際再検討したいということで、ことしの一月労災保険審議会にその全面的な検討をお願いいたしまして、現在同審議会で鋭意御検討をいただいておりますので、それらの問題についてはその全般の再検討の中で検討するようにいたしたいと考えておるわけでございます。
#126
○多賀谷委員 私は事業所単位に申請するということを否定しているのではないのです。個人単位ではないということは、私は十分承知しているのです。ただ当該労働者の希望によって当該事業所が、事故があった場合には全体として申請すべきだ、こう言っているのですよ。それをわざわざ、たった四名しかいないのに過半数とかというよいな形式論は通用しないじゃないか。あなた方の間違いというのは、基準法をかぶっておった労災と今度は基準法をかぶらない通勤時の災害との区別が法技術上はっきりしないのですよ。ですからこういう混乱が起こるわけです。ですから先ほど私が、基準法上は休業補償と障害補償しか差をつけられないけれども、今度のものは全面的に差をつけられるのですか、こう言ったら、いやそういうことにいたしませんというけれども、条文上はできることになっておるのですよ。ですから法技術として少しおかしいじゃないか、こう言っているのですよ。基準法をかぶるいままでの労災と今度の基準法をかぶらない通勤時とは、給付の面において要するにそういう義務がない場合には、さらにしり抜けのないようにしてやるのが、政府の改正をする場合の注意ではないか、こういうように思うのですよ。
#127
○渡邊(健)政府委員 確かに、業務上災害については基準法の背景があるわけでございます。したがいまして、それと基準法の背景のない通勤とは違った点があるわけでございまして、その点から申しますと、労災保険だけでやること自身に問題があるわけでございますが、当面緊急に通勤災害について保護を及ぼすというには、従来ございます労災保険の仕組みを利用することが最も迅速、合理的だということでこれにしたのでございます。したがって、基準法のバックのない通勤災害と基準法のバックのある業務災害との間にいろいろな差異が出てくることは事実でございますが、この点につきましては、私ども、やはり基本的には、早急に労災保険の全面適用というものを実現することによって、それらのギャップが初めて根本的に解決されることになるのではないか、かように考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、すみやかに労災保険の全面適用を実現したい、こういう考え方でおるわけでございます。
#128
○多賀谷委員 こんなところで時間をとってもなんですけれども、そういう全面適用をする前に、役所としてはそれをカバーするだけの注意力が必要ではないかと言っているのですよ。ですから、何もたった四名しかいないのに過半数なんという大げさなことばを使わないで――問題は当面当該労働者ですよ。ですから、当該労働者が希望した場合には、事業者としてはあとの四名分を保険に加入するようにする、こういうように改めたらどうですか、大臣。
#129
○加藤国務大臣 御趣旨の点、なかなか、ほんとうに、数人の場合の過半数という字句はどうかと思いますので、御趣旨を体して今後検討いたします。
#130
○多賀谷委員 一名、二名のことを私は言っているのじゃないのですが、大体基準法を適用する場合と基準法の適用のない通勤時の場合の差についての注意力が足りていないということをあえて指摘をしたわけです。
 そこで、先ほどから聞いておりますと、行政解釈というのは、通勤時の場合なかなかたいへんですね。そこで、監督官というのは大体どのくらいふやすんですか。
#131
○渡邊(健)政府委員 今回の労災保険法の改正は、基準法の背景が通勤途上についてはございませんので、監督官の業務というよりは、労災の事務としての業務量でございます。
 私ども、新しくできます通勤途上災害につきまして、やはりいままでやっていなかったこういう通勤災害保護制度が新しくできるわけでございますから、この実施の体制はなかなか容易でないと考えておりますが、四十八年度予算におきましては、常勤職員といたしまして百三十二名の増員をいたしております。
 なお通勤災害保護制度に関する業務の中には、主要な業務はもちろん正規の職員が行なうわけでございますが、通勤についての自賠との関係の問題の調査であるとか、そういったような調査事項については、必ずしも常勤の職員でなくても、非常勤の職員に委託をしてそれを行なわせ、行政的な判定には常勤職員が当たるというようなやり方も可能でございますので、常勤職員百三十二名の増員のほかに、通勤災害調査員といった非常勤の職員の予算といたしまして、五百一名分の予算を計上いたしておりまして、これらによって本年度におきます通勤災害保護制度の運用を何とかスムーズにやってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
#132
○多賀谷委員 その百三十二名、これは全国でしょう。そうすると、一基準局でどのくらいになるのですか。三名くらいですか。これで一体できるのですか。それは無理な話じゃないですか、大臣。そして定員の削減もあるわけでしょう。実際は十三名くらいしかふえないそうですね。ふやすというけれども、定員の削減もいわれているわけでしょう。ですから、全国で十三名くらいふやして、一体できるのですか。
#133
○渡邊(健)政府委員 定員の削減は、こういう新しい業務が生ずると生じないとにかかわらず別個に行なわれるわけでございまして、もしこの百三十二名の増員がなければ、それだけの、百何十名の減員になるわけでございますから、この百三十二名の増員はこの業務に伴うものとして、それぞれの局署に配置をされるわけでございます。これだけの新しい業務をやることについて、これで十分かどうかという御懸念がございますことは、確かにごもっともでございますけれども、先ほども申しましたように、事実上の、いろいろ自賠との関係の調査等につきましては非常勤の職員なども活用いたしますし、それから、これは自賠保険と競合する場合が非常に多いのでございます。どちらを先に請求するかは労働者の選択にまかせておるわけでございますが、従来のいわゆる業務上としての自動車災害、たとえば通勤じゃない、集金などに回っておる場合の業務上としての自動車災害等の場合などを見ますと、やはり自動車にはねられてかつぎ込まれた場合に、自賠で請求される例が非常に多い。自賠先行の場合が非常に多いわけでございまして、軽度のものであれば自賠だけで必要な補償は済みまして、それを上回る給付がない場合には労災から支給しない場合もかなりあるわけでございますので、これは実際にやってみませんと、通勤災害の場合に自賠と労災とどちらの先行が多いかということは的確に申せませんが、従来の業務上の災害と自動車災害との競合等の場合でございますと、自賠先行の例が多うございますので、それらから見て何とかこのような増員で今年度は処理できる、かように考えておるわけでございます。
#134
○多賀谷委員 大臣、やはりこれだけの大きな仕事を、しかもこれはみな個人に非常に影響のある問題ですね。一人としてもゆるがせにできない、いいかげんに扱えないものでしょう。ですから、やはり予算をとってやらなければ無理ですよ。しかも、さっきから話をしておるように、これはなかなかむずかしい。ですから一局に何名か置く、しかも現実に定員の削減があって十三名しかふえないという、それではとてもやっていける問題じゃないです。ですから、これはひとつ大臣に次の予算を早急に増額をしてもらうように御努力を願いたい、こういうように思います。
#135
○加藤国務大臣 定員削減とこの新しい仕事とは、新しく生まれたこの仕事に対しては、いまの局長の言った増員をそれに充てる。しかしなかなかこれは、事故が起きた場合の事務的な事情調査とかいろいろな問題もございますので、これから来年度の予算の計数をいろいろいま編成中でありますので、この点は十分政治的にも関係各省等といろいろ当たりまして――これでは私は足らないと思います。しかし法律が通りますと、当然これは現実の姿として大問題になりますので、御趣旨の線に沿って努力いたしますことをここでお誓いいたします。
#136
○多賀谷委員 次に、本件の通勤途上とは関係ないのですけれども、非常に従来問題になっておりました一、二点を御質問いたしたいと思います。
 一つは脊損患者で労災法の適用以前の患者、私どもは数字はわかりませんけれども、福岡県の筑豊地区でも身体障害協会友愛同背会という会をつくって、脊損の基準法以前の方々が日夜非常に悩んでおられる。そして毎日療養をされておるということです。この基準法以前の、いまで言いますと長期傷病療養患者に指定をされる方々、こういう方々に対して一体政府はどうしようとされておるのか。これはあとから質問があると思いますけれども、例の星野鉱山等についてもやはりけい肺で悩んでおられる方々がおる。そういうことで、現在は事業主はもう終閉山でいない。それから脊損についても、炭鉱ですから終閉山で事業主はいない。こういうことで忘れられておる災害者がいるわけです。これをどういうふうに考えられておるか、お聞かせ願いたい。
#137
○加藤国務大臣 この問題はほんとうにお気の毒な立場にある方で、労災保険施行前に業務によって実際にけい肺なり外傷性脊髄損傷、また中には砒素中毒、こういう患者に、現在療養を要する方に保険給付は行なえない、こういう困難な現在でございます。また当時の事業主も、現存する事業主に対してどうだこうだということの方法はない。こういう方々に対して国が何とか援護を行なう必要がある、こういうことをわれわれも感じております。このことについては各関係省とも再三再四折衝いたしまして、最近は何とかこれに近く結論が出るような段階に至って、この保護対策を何とかやりたい、こういうように具体化しておりますので、この点については渡邊局長が各省と当たっておりますので、局長のほうから具体的にいろいろな問題について補足の説明をさせます。
#138
○渡邊(健)政府委員 先生御指摘の休廃止鉱山の元従業員の方が脊損であるとかあるいはけい肺であるとか、そういった長期間の疾病にかかりました場合に、それが就業中の業務に起因したことが明らかであります場合に、その就業が労災法施行後のものであれば、これはもう退職されて長年たって発症したものであっても当然労災保険から補償が行なわれるわけでございます。ただ、労災法施行前の就業のものであり、これは同時に基準法の施行前にもなるわけでございますが、そういう場合には労災保険からも保険給付を行なうことは法律上できませんし、基準法上もその義務はないわけでございますが、当時の事業主が現存するような場合はその事業主、それから当時の事業主から鉱業権等を承継している事業者のある場合にはその事業者に、実効性のある救済を行なうようにこれまで行政指導を行なって、大体これまではそれでやってきたわけでございますが、しかしながら、先生もいま御指摘のように、当時の事業主もいない、鉱業権の承継をした者も現存しないというような場合につきましては、そういった保護の方法もございませんので、労災保険の保険給付としてそれらの方に何らかの給付を行なうことは法律上不可能でございますが、保険施設によりまして入院、通院を含めて療養の費用は全額見て差し上げたい。それから若干の手当を同時に差し上げたい。この額の程度は現在のところ、入院の場合には月一万円程度、それから通院の場合には三千ないし四千円程度を支給するようにいたしたいということで、現在関係省と検討を進めております。大体そういうことでまとまる見込みが立っておりますので、できる限りすみやかにそういう措置をとることによりまして、これら休廃止鉱山の元従業員の方のそういうけい肺、脊損などの災実疾病につきまして保護をはかってまいりたいと考えております。
#139
○多賀谷委員 そうしますと、何年度から、いつからできますか。
#140
○渡邊(健)政府委員 近く最終結論を見る予定でございまして、結論を見次第、本年度中にもそういう処置をとるようにいたしたいと思います。
#141
○多賀谷委員 本年度中にというとずいぶん時間があるわけですが、結論を見たならすぐやるわけですか。
#142
○渡邊(健)政府委員 そのつもりでございます。
#143
○多賀谷委員 給付は非常に不完全で、不満足ですけれども、長期傷病手当に切りかえた場合の人々の問題もあるし、いろいろありますので、これはひとつ今後の改善を待ちたい、こういうように思います。
 そこで、例のけい肺の方を長期療養に切りかえるときに、いま四十日分か引いているでしょう。現実にその四十日分は常に新しいスライドした額の四十日分を引いているものですから、もうほとんど十年近くになっているので、全額からいうと打ち切り補償をもらった金額をこえるような状態になっているわけですよ。これはひとつしゃくし定木にやらないで、この際もうこの程度で打ち切ったらどうかと思うのですが、どうですか、控除する分について。
#144
○渡邊(健)政府委員 労災保険法の三十五年の改正によりまして、長期傷病補償給付の適用を受けられる前の方は、千二百日分の打ち切り補償を当時の保険法によって受けておられるわけでございます。したがいまして、そういう方々で三十五年の切りかえに引き続き長期傷病者補償に移られた方は、それ以後に長期傷病者補償の決定をされました方と比べますと、前に千二百日分の打ち切り補償を受けておられるという点で、その後の方にない給付を受けておられますので、それの均衡をはかりますために、先生の御指摘のように、四十日分の金額が年金額から引かれておるわけでございます。確かにその後の賃金の上昇、それに基づくスライド等による年金額等から見ますと、当時は賃金が低うございましたので、千二百日分というものの差は埋まっているのではないかという御趣旨、ごもっともでございますが、当時としてはやはり千二百日分の賃金というものは、当時の価値においては相当なものを受けておられるわけでございまして、その均衡をどうするかという問題はやはりあるのでございます。したがいまして、これはいま直ちに四十日分の削減をやめるということを申し上げることはなお検討を要すると考えますけれども、ちょうど現在、労災保険の全面改正を労災保険審議会で御検討願っておりますので、将来の問題としてはそういう中でこれらの問題も検討していただくようにしたいと存じます。
#145
○多賀谷委員 でも、金額からいうと給付をもらった以上の金額はもう払っているわけでしょう。ですから、そのときの算定はどういうようにやるのですか。利子でやっておるのですか、やはり何十日分というそのときの給付の場合に控除しているのですか。
#146
○渡邊(健)政府委員 現在、給付の日数から単純に四十日分を引いておるわけでございます。
#147
○多賀谷委員 それはちょっと無理じゃないですかね、利子をつけるというのはやむを得ぬかもしらぬけれども、給付時から何日分を引くというのは。それは絶対額よりも多く納めるわけですから。そういう計算になるわけですよ。それはちょっと無理じゃないですか。やはり絶対額にある程度の法定の率をかけた分を控除するというのが至当じゃないですか。
#148
○渡邊(健)政府委員 三十五年の労災法の改正で長期傷病者補償給付制度ができまして打ち切り補償がなくなりましたときに、従来の方との均衡ということで、法律上それらの方の年金額をそういう形で調整するように法律できめられたのでございます。それで、確かに先生御指摘のように、名目の価額で申しますと控除した額がもう千二百日分の額を上回っておるのではないか、そういうことだと存ずるのでございますが、千二百日分は、名目額はいまから見ると少なくても、価値で申しますとやはり当時としては相当な額であったわけでございまして、そういう観点からそういう調整が行なわれたものと考えておるわけでございます。しかし、今後、将来の問題としてどうするかという問題につきましては、先ほども申しましたとおり、現在労災保険制度の全面検討を保険審議会にお願いしておりますので、その中でそれらの人の将来の取り扱いをどうするかも御検討を願いたいと考えます。
#149
○多賀谷委員 それが、賃金にスライドするほど打ち切り補償というものが有効に使われ、利潤を得ているなら確かにいまの制度でいいと思うのですが、そういうことはあり得ないわけでしょう。ですから、金額に法定の率をかけた分を返済をする、こういうことでいいんじゃないですかね。給与が上がった、無理に絶対額以上に納めろということは、やはり政治として酷ではないですかね。逆にいえば、その人たちから言うならば、本来法律を早く施行してくれておれはそういうこともなかったであろうということになるのですね。ですから、大臣はどういうようにお考えですか。
#150
○加藤国務大臣 基準法の問題と並行いたしまして労災保険全体について、いまこれの改善、改正を研究いたしておりますので、この法律とは関係ありませんけれども、日にちもたちまして相要矛盾の点もありますので、いま御指摘の問題も含めていろいろな問題を前向きに検討いたしたいと思います。
#151
○多賀谷委員 これは現在のいわば患者に対する問題とそれから制度としての問題とありますが、とりあえず現在の患者にそういう処置を講じてもらいたい、私はこういうふうに希望しておきます。
 次に具体例を二点ほど。一つは、コークス工場における肺ガンの問題です。コークス工場――これは八幡製鉄ですけれども、昭和二十二年四月から昭和四十七年三月までで定年退職者が三百九十九名、うち死亡者が七十四名、うち肺ガンによる者六名、死亡率が八・一%。それからコークス工場を除いた施設、業務部門の定年退職者は二千三百二名で、死亡者四百六十一名のうち肺ガンの者は十八、死亡率が三・九%。コークス工場の肺ガンによる死亡率が他の部門に比べて二倍以上になっておるというデータと、それから学者が調べた実験によると、一週間作業場において使用したタオルについておるベンツピレンを調べると二百五十五――これは何グラムというのですか、とにかくたばこ六千六百四十本分に当たるベンツピレンが付着しておった。そうすると、一日千本のたばこを吸うだけのものがタオルにくっついておった。
    〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕
目が荒いタオルですから、さらに逃げたかもしれません。そうすると、これはどうしても肺ガンがコークス工場に多いということです。ですから、これは職業病ではないかという点と、それから少なくとも健康管理手帳はもらいたいという希望が出、そして一方は基準局に提訴が行なわれておる、こういう問題ですけれども、これに対して労働省ではどういうように理解をされておるのか、お聞かせを願いたい。
#152
○北川(俊)政府委員 八幡製鉄はかつてガス発生炉で三十三例の職業ガンの発生を見ております。そのうち戦後の九件につきましては、すでに業務上災害という認定をいたしております。今回、先生御指摘のガス発生炉以外のコークス炉も同様に職業ガンが出るのではないか、こういうことが話題になっておりまして、その話を聞きまして直ちに、いま御指摘のように従業しておる人たちのみならず、過去に退職いたしました事務系職員を含めまして健康調査を指示いたしております。それから環境測定、それに基づきまして、やはり設備等について若干不備な点がございましたので、その改善を指示いたしました。
 なお、八幡だけではございませんで、御承知のようにコークス炉は、他の製鉄所あるいはガス工場、ガスをつくっておりますガス会社等で相当従業員がおりますので、全国で十六のコークス工場に従事しております労働者約五千名についても、ガンの発生の状況を調べたところでございます。いままでのところ、統計学的には一般の人との有意差はこの場合にはないというような結論でございますが、しかし外国の発表されておる文献を見てみますと、コークス工場でのガン発生というのがあり得るのではないかという事例等もございます。したがいまして、私たち行政ベースだけでなくて専門家の御意見をこの際まとめたいということで、先般から伺っております原因がいま先生御指摘の三・四ベンツピレン、そのもとはコールタールの扱いによるものと思われますので、コールタールに関する職業ガンの専門委員会というのを発足いたしまして、先ほど言いましたような外国の文献、あるいは国内のコークス工場の実態等に取り組んでいただいております。私たちは、こういう問題でございますのでなるべく早急にその結論を得まして、業務上因果関係が明確であれば当然職業病として認定いたしますし、また先ほど御提案の健康管理手帳につきましても、その結論に基づきまして前向きに検討いたしたいと思います。
#153
○多賀谷委員 これはかなり大きな問題ですけれども、大体作業はいつごろを目途にやっておるのですか。
#154
○北川(俊)政府委員 作業の内容はきわめて専門的でかつケーススタディーといいますか、実態調査をあわせてやらなければなりませんので、やはり今年度中はかかるのではなかろうか、こう考えております。
#155
○多賀谷委員 これはかなり深刻な問題ですから、ひとつ早急にしていただきたいと思うのです。
 次に、やはり職業病の問題ですけれども、弗素中毒の問題。これは小野田化学門司工場に起こった問題ですけれども、作業員が弗素の急性中毒という門司の労災病院のお医者さんの診断を受けだのですね。
    〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕
 そこで、これは当然職業病ではないかということで問題が提起をされておるわけですが、労働省はどういうようにお考えになっておるか、これをお聞かせ願いたい。
#156
○北川(俊)政府委員 小野田化学の門司工場につきましては、本年の三月ころに直用の労務者一名、それから下請労働者一名が異常を訴えまして、門司労災病院で診察を受けましたところ、四月二十八日に急性弗素中毒であるという診断を受けております。それに伴いまして、県評から基準局に申告がございました。四月二十一日に当該事業所の監督指導をいたしましたところ、氷晶石の袋詰め工場、そういうところで弗素をふくみます粉じんの発散、そういうところの排気処理が不十分である、あるいは排気ガス処理、こういうものの処理が十分でなかったということの十項目の改善を指示いたしますとともに、四月二十三日、二十四日、さらに基準局が専門家とともに立ち入り調査をいたしまして、その結果全員の健康診断の実施、それから作業環境の改善、これを指示いたしました。現在二名の方から労災の職業病認定の申請が出ておりますけれども、病院ではさらに精査をして、もう少し詳しく診断をしたい、といいますのは、どうも慢性的な症状が出ておって、急性だけでは認定しにくい、かつまた弗素以外の有害物の影響もあり得るんじゃないか、そういうことも病院側でも言っておりますので、先ほど言いました環境の調査あるいは全員の健康診断の結果と、この二名の方の病院の精査が終わりましたところで、これらの患者につきましての職業病の認定問題の決定をいたしたい、こう考えております。
#157
○多賀谷委員 そうすると弗素以外の有害物がある。この有害物というのは、おそらくやはり工場から発生したものでしょうね。
#158
○北川(俊)政府委員 おっしゃるとおりでございまして、これは焼成の燐肥工場と氷晶石工場、その二つの工程がまじっておりますので、いろいろの化学物質を使っております。したがいまして弗素だけでなくて、それ以外のそういう化学物質の影響というものもあわせて、今後の職場点検あるいは健康診断、そういうものに留意をしてやりたいと思っております。
#159
○多賀谷委員 そうすると、事実上は労災病院でかなりやっておるわけですか。
#160
○北川(俊)政府委員 健康診断につきましては、門司の労災病院で全面的にやっております。なお環境調査につきましては、これはその専門の機関が小倉にございますので、そこで協力をしてやっていただいております。
#161
○多賀谷委員 かなり長い間質問をしたわけですけれども、まだ疑問点もかなりありますし、また個別的な職業病問題については今後の労働省の検討をお願いをしたい、こういうように思いますので、一応本日のところは、これで質問を終わりたいと思います。
#162
○田川委員長 この際、午後一時四十五分まで休憩いたします。
    午後一時十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時五十六分開議
#163
○田川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 休憩前の質疑を続けます。村山富市君。
#164
○村山(富)委員 午前中相当具体的に詳しく突っ込んだ質疑がございましたので、この提出されておる改正案についてはそれほど問題はないと思うのですが、ただ、先ほど来お話がありましたように、この資料を見ても難解でなかなかわかりにくいのです。
 そこで私は端的にお尋ねしますが、今回の改正案は、要するに通勤災害の場合に、業務上災害とみなすのではなくて、準じて保険給付をする、そこが基本的に違うわけですね。その基本的な違いから出ておる今度の改正案は、具体的に業務上災害の場合と、準じて保険給付される場合と、どういう点が違うのか、違う点だけを明確に示してください。
#165
○渡邊(健)政府委員 業務上災害の場合と通勤災害の場合の違いは労災保険法上におきましては、通勤災害の場合には初回の療養の際に二百円以下の自己負担がございます。業務災害の場合にはございません。その点が一点。
 それからもう一つは、特別加入者、中小企業主とか一人親方、家内労働者等の特別加入者につきましては、業務災害の適用はございますが、通勤災害の適用がないという点が労災保険法上の違いでございます。
 それから保険料の徴収法上の取り扱いにつきましては、業務災害は料率が、業種別にそれぞれ災害の発生率も異なっておりますし、メリット制の適用があるわけでございます。通勤災害につきましては業種別の料率の差がございませんし、それからメリット制の適用がないという点に違いがございます。
 それから、これは保険法上ではない、基準法との関連で申しますと、労災保険では休業補償は三日間の待機期間がございます。それに対しまして、その三日間につきまして、業務災害につきましては基準法の災害補償の適用がございますので、三日分は基準法上災害補償として使用者が支払いをなすことになりますが、通勤災害は三日間の待期は業務災害と保険法上は同じでございますが、基準法上の通勤災害に対する使用者責任がございませんので、その分使用者から基準法に基づく補償の支払いがないという点。
 それから業務災害は、基準法上は例の解雇制限の規定の適用がございますが、通勤災害につきましては基準法のそういう規定の適用はございませんので、それがない。
 以上申しました諸点が業務災害と通勤災害の差異でございます。
#166
○村山(富)委員 初回の初診料を二百円の範囲内で自己負担する、この二百円を自己負担しなければならないことになったんですね。そういった原因は一体何なのかということがどうも私は理解できぬわけなんですけれども、この点はどうなんですか。
#167
○渡邊(健)政府委員 これは通勤災害調査会の三者一致の御答申がそうなっておりまして、それを忠実に法文化したことによるものでございますが、その考え方は、通勤災害というのは使用者の管理下において発生する事故ではございませんので、そういう意味において業務災害と全く同じ性格ということはできないわけでございます。ただ通勤災害は業務との関連性が密接であるということ、今日の状態においては通勤に伴う一種の社会的危険であるといったことから、労災保険においてこれを保護することになったわけでございまして、そういう観点から保険料としては一応使用者の保険料によって労災保険の通勤災害の原資がまかなわれるわけでございますが、ただ純粋の業務上とは先ほど申しましたような差異があるという意味において、労働者も受益者として何らかの負担をするということは一応の理屈があるのではないか。ただそれにつきまして、保険料として労働者が負担するということになりますと、労災には労働者保険料というのがございません。しかも今度できます通勤災害も業務災害も、労災保険の中では労働保険料の中の労災勘定ということで一括して取り扱われますので、労働者負担分がもしあるとすると、業務災害込みのものに労働者負担がなるということで、その点は性格上の問題を生ずるわけでございます。そこで保険料としてではなしに、別個の労働者負担という形が考えられたわけでございます。しかしそれにつきましても、もし労働者の負担が過大でありますれば、労働者がこの通勤災害の保護を受けることに対してそれが支障になるおそれがございます。そういうことであってはならないということで、そういう支障にならないということも考慮いたしまして、初回の診療受給の際の二百円以下程度の負担ということに相なったというのが、通勤途上災害調査会の御答申に出ました考え方であろうと思います。
#168
○村山(富)委員 先ほどから申しておりますように、改正案の前提が業務上災害とみなせば労災法が適用されるわけですから、問題ないわけですね。あえて業務上災害としなくて準ずる措置をとったということでいろいろな違いが出てきていると思うのですけれども、それにしてもその違いをあらわすために、ここが違うんだということを証明づけるために、初診料で二百円以下の自己負担をとってもよかろう。これは財政的には負担をするほうの側もあるいは受けるほうの側も、たいしたものにならぬと思うのですね。たいしたものにならぬようなものをあえてここでわざわざ設けたということは一体どういう理由なのかということがちょっといまの説明では納得できぬのですね。
#169
○渡邊(健)政府委員 先生御指摘のように、通勤災害を業務上の災害とするか業務上の災害と見ないかという点は、通勤途上災害調査会でも非常な議論があったところでございまして、労働者側の委員の方は、通勤がなければ労務の提供がないんだから業務上である、こういう御主張でございました。使用者のほうは、業務と関連があることは認めるけれども、業務上というのは使用者の管理下において発生した事故である。通勤というのはまだ管理下に入る前の段階のことではないか。したがって、これを業務上とすることは理論的におかしい。特に管理下にある業務上であれば、使用者の安全衛生対策、努力等によって業務上災害を減らすということも可能だけれども、通勤等はまだ使用者の管理下に入っていないのだから、使用者が通勤災害を減らそうとかいうことをする余地がない。したがって、それを使用者の業務上責任とすることは筋からいってもおかしいではないか、こういうような主張がございまして、なかなか意見が一致せず、調査会の報告ではその点について業務上であるか業務上でないかという断定はいたしておりませんが、この法案の内容に含まれましたような内容の保護制度を労災保険の仕組みを利用して設けることが適当である、こういうことで全会一致の答申があったわけでございます。その中に、先ほども申しましたように労働者の一部負担ということも入って、二百円以下の負担ということになっておるわけでございまして、それにつきましての考え方は先ほど申し上げたような考え方の上に立っておるわけでございます。
#170
○村山(富)委員 しいていえば、使用者の管理下にない。したがってこれは業務上災害ではない。準じた扱いをするのだ。だから保険給付の分は全部見るけれども、しかし保険給付以外の負担については自己負担をしてもらおう、こういう考え方で設けたわけですね。
#171
○渡邊(健)政府委員 もちろん、保険給付に要する費用の大宗をなすものは使用者の負担によって全部やるわけでございますが、先ほど申しましたような理由から、受益者としての労働者もそれが保護を受けるに障害とならない形、範囲で一部負担をするのは、その性格からいって理屈があることではないか、こういう考え方でございます。
#172
○村山(富)委員 私は同じ業務災害に準じて扱うのなら、ことさらこんなことをして、これはもういかにも違うのだということを証明づけるような措置をする必要はないのではないかと思うのですけれども、この点はひとつ意見として申し上げておきますから、今後の検討にしてもらいたいと思うのです。
 同時に待機期間の三日間は、これは基準法上からいえば使用者のほうが支給するわけですね。この場合には支給がないわけでしょう。したがって自己負担になるわけですけれども、これをあえて設けた理由は何ですか。
#173
○渡邊(健)政府委員 これは設けたというよりは結果としてそうなったということでございまして、労災保険法上三日間の待期がありますことは、これは業務災害も通勤災害も全く平等でございます。ただ業務災害につきましては、御承知のとおり基準法に使用者の業務災害に対する災害補償責任というものがございますから、その面から使用者は保険で給付されない分については出さなければならない。通勤災害については個々の使用者にそういう補償責任というものが基準法上ございません。そこで基準法に基づく使用者の支出という義務はない。そこで結果としてそういう違いが出てきたということでございます。
#174
○村山(富)委員 これもあえて理屈をつければそういうことになるかもしれませんけれども、しかし実体論として、おそらく労働組合の場合なんかには労使の協定によって使用者のほうに支給させるということはあり得ると思うのです。これからできると思うのですけれども、そういう実体論を踏まえた場合に、あえてここで法律的にこういうものをぴしゃっときめる必要はないのではないかと思うのです。その点はどうですか。
#175
○渡邊(健)政府委員 もちろん労使の協定等で、そういう場合に使用者が三日分を支給されることについては非常にけっこうなことであり、望ましいことであると思うわけでございますが、法律論で申しますれば、しからば基準法上に通勤途上災害についての補償責任を使用者に課し得るかということになりますと、これは先ほどから議論がございますように使用者の完全な支配下ではない、そういう問題がございますので、それについて個別の使用者に義務を課するということは、理論的にはなかなか問題があるところではないかと考えるわけでございます。
#176
○村山(富)委員 あとでまたいろいろな問題に触れたいと思うのですが、ここで少し観点を変えて、いまの労災で認定をする場合にいろいろ関連した問題がたくさんあると思うのです。そこで全般的な問題についてここで質問する時間もございませんので、特殊な例をあげて具体的にお尋ねしたいと思うのです。
 一つは、最近社会的にだいぶ問題になってまいりました社会福祉施設の事業場等においては、たいへん労働環境も悪いあるいは労働条件も悪いというようなことから、したがって人手が足りない、人手の確保ができない、こういったような問題が起こって、最近では島田療育園がストライキをやるといったような事態も起こっておりますけれども、こういう社会福祉施設の保育所等について労働省のほうで基準法上の調査がありますね。その結果はどうなっていますか。
#177
○渡邊(健)政府委員 私ども、社会福祉施設につきましては、いろいろ基準法履行につきまして問題がございますので、毎年重点的にその監督を実施しておるところでございますが、これは四十七年の監督結果によりますと、大体監督をいたしました事業場の七九・八%の施設に違反が認められておるところでございます。
#178
○村山(富)委員 その違反の内容は、どういう違反が一番多いわけですか。
#179
○渡邊(健)政府委員 違反が多い事項といたしましては、女子の労働時間に関する違反、それから休憩に関する違反、それから就業規則に関します違反、それらの事項が違反が多い事項に相なっております。
#180
○村山(富)委員 そこで、いま明らかになりましたように、こういう社会福祉施設については基準法違反がたいへん多いわけですね。労働時間も守られておらない、あるいは昼休みの休憩時間もとれない、こういったような業務の実態から、最近たとえば腰痛症とかあるいは頸肩腕症候群とか、そうした新しい病気がだんだん発生してきている。ところが、重度心身障害者なんかの施設の場合には、比較的特殊な事業場だから認定が受けやすいわけです。ところが、一般の保育所になりますと、まだ事例も少ないためになかなか認定が受けにくい、こういう事例があるのではないかと思うのですね。
 そこで、私は具体的な例を一つあげてお尋ねしたいと思うのですが、横浜市の光源寺保育所でもと保母をされておりました牛塚かよ子さんという人と、それから同じく久良岐保育所の金子康枝さんという人が労災病の認定を受けるために申請をしたわけですね。これは認定になったわけですけれども、認定になった原因は一体どういうところに一番大きなポイントがあって認定をされたのか。たとえば保育所における勤務の態様あるいは本人の素因あるいはまた受け持つ児童数とか、それから対象児の年齢とか、そうした問題も含めて、認定が受けられた最大の要因は何であったのかということがわかれば御説明願いたいと思うのです。
#181
○渡邊(健)政府委員 先生御承知のように、腰痛症はなかなか認定がむずかしい問題がございます。いろいろ業務以外の事由によりましても腰痛になる場合がございますので、したがいまして私ども専門家の意見を聞きまして、昭和四十三年には、従来からありました腰痛症についての認定基準をさらに改正した認定基準を設けて、それによって認定をいたしておるわけでございまして、この認定の基準に書いてありますところの中には、先生おっしゃったような業務によって、そういうような腰痛になりやすいように相当程度なっていたかどうかという問題あるいは腰痛症が発生するについて、業務外のいろいろな要因、場合がございますので、そういうような事例があるかないか、他の原因と認められるような症状があるかないか、それらのことを全部総合勘案いたしまして認定をすることになっておるわけでございまして、いまおあげになりました光源寺保育所の方につきましても、それらのことを十分調査をいたしまして、業務上と認定をいたしたわけでございます。
#182
○村山(富)委員 それは一般論として、たとえば認定をする場合の基準としては、そういうもろもろの条件を調査して、そして判定をすると思うのですね。ですけれども、私が聞いておるのは、具体的にこの二人が認定をされた一番大きな要因になっているのは何かということを聞いているわけです。
#183
○渡邊(健)政府委員 認定につきましていろいろな専門家の御意見も聞いたのでありますが、おむつの取りかえ、抱きかかえ、中腰の応対など園児の介助のために上肢に荷重のかかる可能性が業務の態様から見て否定しがたい、その他業務がかなり月間の残業量などから見ても過重であったということで、ほかに特別の腰痛が起きる原因が認められない限り、本疾病が業務によって起こったという考えは否定し得ないというようなことが専門家の御意見として出されております。
#184
○村山(富)委員 この横浜の事例の場合、四十五年の十月に認定の申請をしている。二人には若干のズレはありますけれども、四十五年の十月と四十五年の十二月に申請するわけですね。そして認定を受けたのが四十七年の五月ですね。約一年半もかかっているわけですよ。一年半もかかりますと、自分のからだもだんだん悪くなる、仕事もうまくいかない。このまま勤務したのではひどくなるのではないかというので、非常に困られる場合があるのですね。この二人の場合にはどういう理由かわかりませんけれども、退職しているわけですよ。退職しますと、せっかく労災法の認定を受けてそして救助されるという面が相当減殺されるわけですね。言うなれば、労働保険というものはそこでなくなってしまうわけですよ。私は、こういう問題はたいへんむずかしいと思うけれども、一年半もかかって認定がされるという理由は一体どこにあるのかといったような経緯について、若干お尋ねしたいと思うのです。
#185
○渡邊(健)政府委員 このお二人の方、それぞれ多少の事情、時間的な違い等はございますけれども、災害補償の請求が出ましたあと、監督署といたしましては、保育園の保母の労働の事情などをいろいろ調べました上、さらに、出されました診断書だけでは必ずしも十分な認定の材料にならないと考えまして、他の医師の受診を命じたのであります。しかし、初めのうちはお二人とも、その受診命令に応じられなかったのでございます。そこで、監督署といたしましては、調査資料によって、いろいろな病院、専門家に意見を求めたのでございますが、それらの書面審査だけではどうもはっきりしたものが出なかったのでございます。結局、お二人とも最後は受診命令に応じられまして、関東労災病院その他で受診をされたのでございます。初めの牛塚かよ子さんの場合で申しますと、最初に受診命令を署が出しましたのが四十六年八月でございますが、なかなかそれに応じられなくて、その間、もちろん署としてはいろいろな専門家に書面審査は求めておりましたけれども、それではっきりせず、御本人が受診命令に応じられて、関東労災病院で診断をお受けになりましたのが、四十七年三月ということで、約半年以上その間受診命令に従って受診をされなかった、そこでその間は非常に長引いた、そういう問題がございます。もう一人の金子康枝さんにいたしましても、四十六年八月に同じようなことで、関東労災病院でもう一度診断を受けられるように通知したのでございますが、初めは応じられませんで、四十七年二月になりまして、これも半年以上でございますが、やっと応じられた。そして、関東労災病院で診断をお受けになった。半年間くらいは、そういうことのために非常に長引いたので、一般の場合よりも長くなったという経過でございます。
#186
○村山(富)委員 そうすると、この場合には長引いた理由は、そういう本人が受診に応じられなかったというような経過があって、長引いたというわけですね。あとでまた総括的なお尋ねをしたいと思うのですけれども、次にもう一つ、具体的な事例でお尋ねしたいと思うのです。
 岩手県の盛岡市のキンダーホーム保育所、ここで川村さんと金野さんという二人の方が申請をされているわけですね。これは、相当期間がかかって、そして二人とも生活扶助を受けながら待機をされておった。ところが、金野さんの場合には、認定からはずれて、本人が自殺をされた。川村さんの場合には最後に認定をされた、こういう経緯になっておりますが、具体的に二人が、その一人は認定を受けなかったという理由はどこにあるのですか。
#187
○渡邊(健)政府委員 金野さんの場合には、業務の内容、業務量及び医証から、業務量が発症を誘引するほど過重であったとは認められないということで、業務起因性なしと判断したという経緯に相なっております。川村さんの場合には、これは腰痛について業務起因性を認めるということで業務上と決定されたというわけでございます。
#188
○村山(富)委員 業務起因性という問題に関連して、たとえば本人に素因がある、幾らか神経痛とか貧血という持病がある、その持病があって、しかも職場環境、労働条件等から考えてみて、その持病に過重な労務がプラスしていく、そうしてかりに腰痛症になる、あるいは頸肩腕症候群になる、こういうこともあり得るのですね。そうしますと、いま申し上げました横浜の場合と川村さんの場合との事例というものは、そういう意味の素因というのは全然ないわけですか。
#189
○渡邊(健)政府委員 金野さんの場合に業務上と認定されなかったことについて、そういう御本人の素因があったかどうかという点は、ちょっと手元にあります資料だけでは、その点が何も触れてございませんので、ただいまのところはわかりません。
#190
○村山(富)委員 その横浜の先ほどの例と川村さんの場合には、その点はどうですか。
#191
○渡邊(健)政府委員 先ほどの神奈川の場合、それから川村さんの場合には、これは業務上と認定されたわけでございますから、業務がそういう腰痛症を誘発さしたものという認定がされたものと存じます。
#192
○村山(富)委員 そうすると、素因のほうは別にないわけですね。たとえば本人に神経痛があるとか貧血があるとか。
#193
○渡邊(健)政府委員 素因の点は書いてございませんが、業務上と認定されたところを見ますと、業務起因性を帳消しにするようなほどの素因は御本人になかったものと考えます。
#194
○村山(富)委員 次に、ごく最近新しい事例として、東京都の杉並区にあります佼正保育園の保母さん、田中康子さんが、これは実は九カ月間ぐらいの期間で認定を受けているわけですね。これは私は非常にけっこうなことだと思うけれども、この人の場合にこういう指摘がされているわけです。私が仄聞するところによりますと、休憩時間が全く保障されていない、これはもう基準法違反ですね。しかもこの基準法違反というところに最も大きな重点が置かれておったのです。若干本人にはその素因があった。しかし、いまの職場実態等から考え、基準法の適用状況等から考えてみて認定が当然であるといったような意味でその認定をなされたというように聞いておるわけですけれども、この間の経緯はどうですか。
#195
○渡邊(健)政府委員 ここにございます資料でちょっと、本人の素因の点は触れてございませんので、その点は明確でございませんけれども、判断の理由といたしまして、本人の業務、労働条件、発症の時期及び発症部位などを総合判断して、本件の背腰痛症は業務に起因した疾病と認めざるを得ないということになっているわけでございまして、基準法違反の有無というだけではなしに、労働条件全般の問題もございましょうが、さらに本人の業務それから発症の時期、発症の部位などから、業務に起因するものと認められたというふうになっております。
#196
○村山(富)委員 これはまたあとで詳しくそういう点の資料もいただきたいと思うのですが、私はこの保育所というのは、冒頭に申し上げましたように、いままでそういう職業病が発生するという意味ではあまり関心もなかったし、注目もされてなかったと思うのですね。ごく最近やはりこういう問題があちらこちらに起こっておる。それはやはり冒頭にも申し上げましたように、職場環境なりあるいは労働条件なり基準法の適用状況なり、そうしたもろもろが重なってそういう新しい病気が起こってくる、こういうことが考えられると思うのです。
 そこで、いま最後に申し上げました東京都の例なんかを考えてみますと、やはりそういう点が一番ウエートを持たれて調査されておるという意味では、たいへん新しい傾向として歓迎していいのじゃないかと思うのです。
 ただ私がここでお尋ねをしたいと思うのは、きょう自治省お見えになっておりますか。――公立の保育所の場合も、やはり民間の保育所と同じような労働条件あるいは基準法の適用状況のところがたくさんあるわけです。ところがふしぎなことに、公立保育所の場合に、こういう職業病の認定、労災法の認定、公務災害ですかの申請が出されても、いままで認定を受けた例というのはないのですね東大阪の例が一つありますけれども、これも認定からはずされているわけですね。その東大阪の場合の例を見ますと、申請者が四人です。高砂さん、坂口さん、高田さん、井上さん、これは申請書を四十四年の八月に提出したのです。そうして実際に却下されたのが四十六年の七月、二年かかっているわけです。それからさらに不服申請をして、そうしてこれはまだ審査中ですけれども、四年かかって最終的にまだ結論が出ないわけです。こういうふうにおくれる理由は一体どこにあるのですか。
#197
○小林説明員 現在地方公務員の災害補償につきましては基金で認定を行ないまして、そこで行なっているわけでございまして、それに不服のあるものは基金に設置されております審査会に請求できるようになっておるわけでございます。ただいまお話にありました認定の状況でございますが、私その事例を詳しく聞いておらないわけでございますけれども、認定の段階におきましては、一応むずかしいケースになりますと、本部に協議しなければならない。こういうことで本部で慎重に取り扱う、こういうことで多少おくれた点があるのではなかろうかと思います。審査の段階でおくれた原因については、私ちょっと承知しておりません。
#198
○村山(富)委員 そうすると、これは自治省を呼んだ意味をなさぬことになるわけですけれども、地方公務員の場合は補償基金がつくられておるのですね。その補償基金が監督署のような役割りをするわけですか、どうですか。
#199
○小林説明員 結局監督署と同様の機能を果たすわけでございまして、認定を行なうわけでございます。
#200
○村山(富)委員 そうすると、その補償基金と自治体との関係というのはどうなりますか。
#201
○小林説明員 本来認定は自治体で行なうたてまえになっておったわけでございますけれども、基金を設置いたしました際に、それらの認定は基金で行なうということに改めたわけでございます。
#202
○村山(富)委員 そうしますと、たとえば補償基金に申請する、補償基金から却下される、そうすると、審査会というものがあるわけですね。その審査会というのは各地方にあるわけですね。
#203
○小林説明員 各県ごとに基金の支部が置かれておりまして、その支部で却下されたものにつきましては、その支部に設置されております支部審査会に審査を請求することになっております。
#204
○村山(富)委員 そうすると、その審査会で却下された場合に、もうそれから先は出すところはないわけですか。
#205
○小林説明員 裁判上の手続が認められております。
#206
○村山(富)委員 これは各県支部ですから、本部もあるわけでしょう。そうすると、本部と支部との関係というのはどういうことになりますか。
#207
○小林説明員 失礼いたしました。ちょっと説明が不十分でございましたが、支部の審査会で不服のある者はさらに本部の審査会に請求できる手続になっております。
#208
○村山(富)委員 そうすると、自治省とのかかわり合いというのはどういうことになりますか。
#209
○小林説明員 自治省は、基金業務の適正な運営をはかるように指導すべき立場にございます。一般的な認定基準等の作成につきまして協議を受けるべき立場にあると思います。
#210
○村山(富)委員 認定基準等についても相談を受ける立場にあるわけですか。
#211
○小林説明員 基金が認定基準等を作成する場合には、当然他の各省とか他の労災等との関係もございますし、そういう統一的な点をはかる意味もございますし、また自治省の、基金の業務の適正な運営をはかる、こういう見地から全般的な指導をすべき立場にあると考えます。
#212
○村山(富)委員 事例を申し上げても、具体的な内容については関知していないと言っているわけですね。そうすると、これは審査会に出席してもらえば一番はっきりするわけですけれども、私は詳しい資料をそう持っていませんからわかりませんけれども、概略を考えてみまして、労働省の監督署が扱う扱い方とそれから審査会が、補償基金が扱う審査のしかたとで若干違いがあるんじゃないかと思うのですね。たとえば東大阪の場合でもこういうことがいわれておるわけですよ。一番大きなウエートは、事例が非常に少ない、ですから、通常こういう職場からは頸肩腕症候群が生まれてくるだろう、あるいは腰痛症が出るだろうというふうな事例がたくさんあるところは比較的受けやすい。ところが、いまあまり事例がないから、そんな職場からそんな病気が起こるわけがないじゃないか、こういうふうな前提でもって問題を扱われますと、やはりだいぶ違ってくると思うのですね。そういう意味ではたいへん審査が、実態を見ないで机上だけでやられるような審査になっておるんじゃないかというふうに思うのですね。これは東京都の場合なんかは、私も聞きましたけれども、実際に監督官が現地に行って、そうして勤務の実態なりあるいは執務の状況なり、そういうものをつぶさに調査する。その上でいろいろ判断されておれわけです。ところがおたくの場合は、補償基金の場合にはそういう実態を見ないで、さっき申し上げましたように、ただ事例が少ない、ですから、そういう職場からそういう病気が生まれてくる可能性というものはないんじゃないか、こういう前提に立ってものを考えていきますと、なかなか金銭につながっていかないということがあり得ると思うのです。そこで自治省はそれを指導する立場にあるわけですから、今後そういう事例等も十分考えてみて、これからはもっと審査にあたっては実際に、現実の執務状況なり実態というものを十分把握して、そういう先入観にとらわれないで事実をやはり見詰める、こういう立場でやってもらいたいと思うんだけれども、そういう点はどうですか。
#213
○小林説明員 保育所等の保母の頸肩腕症候群につきましては、いろいろ認定のむずかしい点があるわけでございますが、基金といたしましては医学的な点を解明する意味で専門医を三人ないし四人、こういうものに専門的に調査を委託いたしまして認定等の基準にいたしておるわけでございますが、確かに先生おっしゃいますように、保母等につきましては確かに事例が少ない、またはっきりした医学的な原因もわかっておらない、こういうことから、本年度基金におきましても調査を委託する経費等を計上いたしまして、保母等のこういう症状と疾病との間の因果関係、こういうものについて十分調査研究していくことになっておるわけでございまして、こういう点自治省といたしましても前向きで指導させていただきたいと考えております。
#214
○村山(富)委員 これはちょっとあなたは、補償基金でないとわからないという点もあると思うので、突っ込んだ質問はできませんけれども、さっき申し上げましたように、最初補償基金が却下するまでに二年もかかる。これはたとえば非常に遠距離で大阪と東京の話というなら別だけれども、各県に支部がある。そうすると大阪で起こった事例については大阪の補償基金でもって審査ができるわけでしょう。それに二年もかかった。しかも審査会に不服申請をして四年もかかってまだ結論が出ない。これは一体どういうわけですか。それはわからないですか。
#215
○小林説明員 これらの具体的な面につきましては私ちょっと承知しておりませんけれども、自治省といたしましても、迅速かつ公正に審査を行なうということで基金を設置したことでございますので、この点今後さらに指導を進めてまいりたいと思います。
#216
○村山(富)委員 これはあなたに質問してもこれ以上のことは出ませんから、いろいろな事例を十分参考にして、もし自治省が、あなたの立場がそうした補償基金やらあるいは審査会を指導する権限があるならもっとやはり指導を徹底して、そして少しでも被害者が救済されるという部面に熱意を持って当たってもらう。しかも、さっきから何べんも言っておりますけれども、事例が少ないからというような立場で扱うのではなくて、やはり具体的な事実をしっかりつかんで結論を出していく、こういう態度をとってもらわないと、私はこれからこういう問題については件数が多くなってくるんじゃないかと思うのです。そういう場合にいま扱っておるような扱い方をされたんでは困るから、この点は強く要請しておきたいと思うのです。
 私はここにいろいろな資料があるわけですけれども、さっきから何回も言っておりますが、こういう保育所なんかの労働条件というものは、きわめて人が少ないわけです。たとえば厚生省が基準をつくっておりますね。園児何人に対して何人という基準をつくっておりますけれども、その基準でかりに定員一ぱいあるとするでしょう。そうしますと、腰痛症やあるいは頸肩腕症候群でも、あるいはのどを痛めるとかいろいろな障害が起こって休む人があるわけです。休む人があった場合には、ほとんど休養もなしに仕事をさせられるわけです。そういうことが無理から無理になって、起こる、こういう条件が相当たくさんあるのではないか。ここで、具体的に調べた調査なんか見ましても、ちょっと申し上げますと、たとえば川崎市の公立の場合、二百名中休養を要する者が十名、それから治療を要する者が四十四名、それから注意をしなければならない者が九十名、それから要観察が三十名、異常なしは二百名中わずかに四名です。さらにまた京都市立の保育園関係を見てまいりますと、頸肩腕症候群あるいは腰痛など、職業病と思われるものが十八名、それから、のどを痛めておる者が二名、自律神経失調症が一名、二十一名の者がもう入院しなければならないのです。こういったような実態にあるわけです。さらに、小平市の保育所を見ますと、回答者の九十九人中八十八人が何らかの自覚症状を訴えている。これはやはり頸肩腕症候群や腰痛が非常に多い。この率を見ますと、大体五十人以上がそういう病状を訴えておるわけです。
 これはほんの一例ですけれども、私はこういう事例というものは、これは公立ですから、民間の場合はもっと多いのではないかと思うわけです。こういう事例がこれからたくさん出てくると思うのですが、さっきから申し上げておりますように、申請をして認定を受けるまでに相当期間がかかるわけです。いまの災害補償のたてまえからいきますと、本人に立証責任があるわけでしょう。したがって、さっきちょっと申し上げましたが、かりに腰痛症にかかる。そして、職業病の認定を受ける、あるいは労災の認定を受けるために申請をする。その間、本人はもう労働にたえませんから、したがって休んだりやめたりする場合があるわけです。やめている間は生活保護を受けながらやる。そういう状態に置かれた労働者に立証責任を課することは、ちょっと過酷ではないかと思うのです。その点はどういうふうにお考えですか。
#217
○渡邊(健)政府委員 労災保険におきましては、業務上の災害として補償を求められる方については、本人が保険給付請求書を提出する際に立証されることにはなっておりますが、しかし、この立証は労働者の方の負担にならないように、労働者が災害をこうむられ、あるいは疾病にかかられた場合、その事情を疎明していただきますれば、監督署におきまして必要と認めた場合には、監督署のほうで所要の調査を行ないまして、その上で業務上外の判断を行なうことにしておるわけでございまして、全く御本人が立証できなければだめだというふうな取り扱いをいたしておりません。今後ともそういうことで、労働者の方の保護に欠けることがないように、必要な場合については、御本人で出されたものの不十分な点は監督署のほうで積極的に事情を調べて、そして認定をする、こういうやり方を今後とも一そう進めまして、労働者の保護に万全を期するようにしたいと思います。
#218
○村山(富)委員 その本人が監督署に申請をしますね。そうすると、監督官の人が調査に来ますね。さっきから言っているような事情調査をいろいろやって、そして認定をされるという場合には、それほど本人に負担がかからぬと思うのですよ。しかし、最初に却下をされて、不服審査を要求します。それから先はたいへん本人に過重になるわけですよ。これはやはり本人がいろいろ業務起因性の根拠を立証しないと、なかなか認定がされない。これはだれも手を貸してくれませんからね。むしろ、その事業所のほうは、使用者のほうは、たとえば保険料のメリットがある、あるいはまた、自分の職場から、自分の事業場から労災の患者が出たといったようなことは、社会的に若干不名誉になりますから、できるだけそうでないというほうがいいから、そういう立場をとる。そういう環境の中で本人は災害を受けながら一生懸命立証しなければならぬ、こういう立場に置かれるわけです。したがって、いまあなたが言われたように、初期の段階においては、あるいは監督署がいろいろやってくれるかもしれない。しかし、却下をされて、そして不服審査の申請をしてから後のその立証業務というのは、私は、本人にたいへん過重な荷物になるのじゃないかと思うのですよ。その点はどういうふうにお考えですか。
#219
○渡邊(健)政府委員 却下をされまして保険審査官等の不服審査の手続にかかりました場合でも、御本人が主張されまして、それについて御本人だけでは必ずしも十分立証がされてないような場合におきましては、保険審査官も職権で調査をすることに相なっております。実際も、保険審査官みずからいろいろ出歩きまして調査をし、あるいは職権で医者の医証を求めるというようなこともいたしまして、審査官も調査をいたしてやっておるわけでございます。今後とも審査官の段階におきましても、労働者の方だけの負担にならないように、そういうやり方を大いに活用していくようにいたしたいと思います。
#220
○村山(富)委員 審査官がいろいろやってくれることもいいですけれども、しかし現状をどういうふうに見ておりますか。なるほど被災者に立証責任を課して、そして、いろいろむずかしい問題もありますから、そのむずかしい問題に対応して本人に立証させることはあまりにも無理だというふうに判断をされますか。それとも、そうでなくて、これは監督官なり審査官がやるのだからそれほど本人の負担にならないというふうに判断しておりますか。
#221
○渡邊(健)政府委員 場合によりまして、先生確かに御懸念のように、労働者が非常に苦労される場合もあるかと存じますが、全体として見ますと、年間百四十万件ぐらい業務災害につきまして申請がございまして、もちろんそれについて何百件かの不服審査等もございますけれども、大部分はそれでスムーズに百四十万件の年間の新規の業務災害の認定がなされておるわけでございまして、これは実際にも監督署などがかなり職権でいろいろなそういう事情を調べて認定をしております。そのために監督署の職員等、相当忙しく出歩いたりしておるわけでございます。したがいまして、大部分の場合には一応スムーズにいっておるのではないかと考えるわけでございます。何件かは先生御懸念のような点があるかと思いますが、これにつきましては、今後労働者の方に過重な負担にならないように、監督署、審査官等の職権による調査等を十分に積極的にやりまして、労働者の保護に欠けることがないように一そう指導してまいりたいと思います。
#222
○加藤国務大臣 この問題は、きょう御質問があるからといって私と厚生大臣が話したのではありませんが、ほかのいろいろな関係で厚生大臣のほうとも話をしたのでありますが、どうも、現在の労働者の中で、保母さん並びに厚生省管轄のいろいろの福祉の仕事の関係の方が、やはり一般に奉仕するという信念で非常に御親切にやっていただいております。ところが労働条件その他においても、労働基準法施行規則第二十七条で、基準法第八条十三号の事業として九時間、そしてやはり保母さんの場合には、子供さんのことでありますから、知らず知らずのうちに時間も超過したり無理したり、労働条件が悪い。職業病、頸肩腕症候群、腰痛の問題もありますが、基準法の改正の場合にもこれはやったらどうだといって厚生大臣とも話したのでありますが、まあまあいま看護婦の場合にはちょっとむずかしいけれども、この問題はひとつそちらのほうで考えてくれ、そのときにたまたま労働条件その他、いまの給付の問題いろいろな話が出た中に、ひとつ労働省のほうもそれに対して手厚いいろいろな、ちょっと谷間のような関係があるから留意してくれ、こう言うので、私、帰りまして省内の渡邊君なりみな呼んで、一生懸命やっているんだろうけれども、なお一そうこの問題について熱意を持っていままでの態度を改めてひとつやってくれぬか、こう言ってよく懇談しておりますので、いろいろの不備な点がありますが、今後はこういうような方針の頭の切りかえもしておりますので、村山議員御質問の点もだいぶ改善されると思いますので、大臣としてこの問題に対する所見の一端を申し上げまして参考といたしたいと思います。
#223
○村山(富)委員 今後監督指導を十分やられて、少なくとも基本法は最低ですから、これを守るというふうにやってもらいたいと思います。
 いま私が質問しているのはその問題じゃなくて、労災の一般的な認定の扱いについて質問しているわけです。いま局長はスムーズにいっていると言われましたけれども、さっき私が事例を二、三申し上げましたが、自殺をされるというのは何年か非常に苦しみがあって、そして労災の認定を受けるというように希望をつないで生きておったのに、却下されたものだから、それで悲観をして自殺したのかもしれませんよ。そういう問題もある。同時に、一年半も二年もかかったのでは生活上ももたないと思うのです。そういう意味では決してスムーズにいっておらない。そういう実態に置かれておりながら、なおかつ本人が業務上の公傷ですといって立証をしていかなければならぬという被災者の立場に立って考えた場合に、私は決してスムーズにいっていない、もっと解明する問題があるのじゃないかと思うのです。そこでひとつ申し上げたいのは、できるだけ短時間にやってもらうことがもちろん必要ですけれども、立証責任というものは災害を受けた本人にあるのじゃなくて、使用者のほうで業務上でないということが立証されない限りは適用させるべきではないか、認定すべきではないかというように思うのですが、この点はどうですか。
#224
○渡邊(健)政府委員 業務上災害あるいは業務上め疾病と申しますのは、業務に起因して生じました災害なり疾病であるわけでございまして、業務中に起きたものがすべてそれは業務上ということになるわけではございませんので、したがって、業務中に起きたものは一応業務上だとして、業務上でないという反証をあげない限りということにすることは困難であろうと存じます。しかしながら、先ほども申し上げましたとおり、問題はその立証が労働者に非常に負担にならないようになれば、それで保護については欠けることがないわけでございます。現在も非常にむずかしい疾病等につきましては、専門医の診断を受ける等々のために時間を要することがございますけれども、全体として申しますと全部がそう長くかかっておるわけではありません。休業補償の場合等でございますと平均して二十日以内くらいに認定がされ、請求ができるようにされておるわけでございまして、全部が長くかかっておるわけではございません。やはり医学的に非常に判断がむずかしいものがそうなっておるわけでございます。そういう職業病のような場合でございますと、たとえば当該職務を離れてからいろいろ出る場合もございますし、では職務を離れた場合などは、その推定をどうするかといったような、使用者の反証云々と申しましても、どうするのかという問題もあるわけでございますので、反証をあげない限り業務中に起きたものはという考えですべてのものが解決するというのではなくて、むしろそういう場合でございますと、業務から離れてあとから出た場合にどうなるかという問題があるわけでございます。したがいまして、全体を通じてスムーズにやる道は、一応は業務との関連性は本人が一番御承知なわけでございますから、それについて労働者が主張されるような主張を疎明として出していただいて、そして労働者自身ではそれ以上の立証が困難な場合には監督署が専門的な立場から事情を十分積極的に調査する、あるいは審査官が職権に基づいて関連した、ここが問題だと思う点を積極的に調査する。そういうことによってその間の事情を解明し、すみやかに認定するというふうにいたしてまいりますならば、決して労働者の保護に欠けることはないのではないかと思います。
 なお、そういう点についてできるだけそういう判定がスムーズにいきますように、問題のある職業病その他につきましては、私ども逐次専門家の御意見を聞いて認定基準等をつくりまして、こういう点で認定されるのだということを明確にあらかじめしておきますれば、たとえば医者が診断書をお書きになる場合に、それらの認定基準上のそれぞれのポイントについてはどうであるというようなことを診断書に、お書きになるわけでございます。労災の指定医等はそれらの認定基準を十分承知してございますので、指定医が診断書を書かれた場合には、そういう認定基準上の問題点についての医証をお書きになるわけでございますので、そういうことによって認定を一そうスムーズにすることができると思っております。そういうことで逐次認定基準の整備をいろいろな疾病についてつくりますとともに、一たんつくりましたものにつきましても、その後の医学の進歩あるいは社会的な諸事情の変化によって逐次再検討して、常に合理的な認定基準をつくっていく、こういうようにつとめております。
#225
○村山(富)委員 外傷の場合には比較的判断がしやすいわけですね。ところが最近のように難病、奇病がどんどん出てくる、新しい病気が出てくるというふうな事例を考えてみますと、これから先を考えてみますと、非常に判断にむずかしい事例が多くなるのじゃないかと思うのです。ですからいままでは比較的スムーズにいった面があるかもしれませんが、これからむしろそういう新しい職業病というものがどんどん発生してくる可能性がある。そうしたものに対していまの監督行政の中で十分取り組めるような体制があるかといえば、私は完全にあるとは言えないと思うのです。したがって、相当長期化する可能性がある。そういうむずかしい問題を本人に立証責任を課するなんということは、やはり問題があるのではないか。これは監督署や係官とずっといくけれども、本人が疎明し申請をしない限りはやれませんから、したがって最終的には本人に立証責任があるわけです。そういうことを想定した場合に、二つの問題があると思うのです。一つは立証責任を、そういうむずかしい社会経済情勢の変化に対応して、以前のように本人に課することは非常にむずかしいのじゃないか、苛酷ではないか。むしろ立証責任は相手方のほうが、公傷でない、公務上の疾病でないということが証明できない限りにおいては認定すべきではないかということが一つと、もう一つは、さっきから何度も言っていますが、一年半も二年も三年もかかりますと、生活上問題があるわけですよ。生活扶助を受けながら労災認定の申請をして、一生懸命そのために没頭するというようなことを考えた場合に、できにくい要件というものがたくさんあるわけです。もちろん認定されれば遡及して給付を受けますから解決するわけです。しかし認定されるかされぬかわからぬといった場合に、本人にたいへん経済的に過重になると思うのです。そういう方面を何とか救済する措置を考える必要がある。その二つの面があると思うのですが、どうですか。
#226
○渡邊(健)政府委員 確かに今後職業病などで非常にむずかしい疾病がたくさん出てくるということは考えられるわけでございますが、たとえば午前中も議論になりました肺ガンといったような場合に、職務中になられる方もあり、おやめになってから肺ガンが出られた方もある。そういう場合にこれは職業病でないという疎明をしない限り、職業病といいましても非常にむずかしいのではないか。一体ガンになっているかどうかだれもわからないわけでございますから、それもまた非常にむずかしい。そういうむずかしい病気はどういう方法をとっても非常にむずかしいのでありまして、こういう問題につきましては、やはりすみやかに専門的な研究を進め、判断の一つの基準になるような認定基準というものを専門家の御意見について整備して、
    〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
それによって労災指定医の方が診断される場合も、それらのポイントについて医証を明確にされるといったようなやり方しかないのじゃないか、かように思うわけでございまして、そういう意味におきまして、私ども次々に起きます新しい職業病について、そのつどできるだけ努力いたしまして、すみやかに認定基準をつくって、それを一般の指定医にも周知をし、労使の方にも周知して、こういう症状でこういう場合には業務上であるというようなことを周知いたしまして、それによって御本人が出されたものが不十分である場合には、職権でいろいろな事情調査をする、あるいはさらに職権で専門家の鑑定を仰ぐといったようなことによって処置をいたしておるわけでございます。そういう整備された認定基準をすみやかに、そういう新しい職業病について整備していく、こういうことが新しい疾病に対しては最も有効である、かように考えるわけでございます。
 それから、確かにもし長年かかりますと、おっしゃるように、その間生活に非常に困難される場合があると思います。これにつきましては、私どもはできるだけ早く認定をするようにつとめておるところでございまして、これについてはともかく迅速に判断する、これが第一であろうと思います。私ども地方に対しましても、非常にむずかしい問題のときには、いつまでも出先であたためていないで、すぐに本省に禀伺しろ、そして本省におきましていろいろな専門家もおりますし、またいろいろな外部の専門家とも本省のほうは連絡のとりやすい場にございますので、そういうところによって早く認定をする、こういうようにいたしたいと考えて、地方において、ただいたずらに自分のところであたためておかないようにという指示もいたしております。
#227
○村山(富)委員 それはけっこうですけれども、しかしさっきから何回も言っていますように、現実にはそういう事例がたくさんあるのです、私が承知している範囲でも。これは被災された当人からしますと、経済的な圧迫もある、社会的な圧迫もある。しかも、からだは健康でないわけですから、その本人の立場を考えた場合に、たいへん大きな問題があるわけです。したがって、これは労働者の基本的な権利を守るという前提からするならば、本人かその間の権利なんというものは――さっきも言いましたけれども、やめなければならないようになってやめていく。やめたあとで認定を受けたって、そこで働く権利はなくなっているわけです。そういう事例もあるわけです。したがって、そういうものを考えた場合に、少なくとも二年も三年もかかるような事例については、やはり何らかの方法を考えるとかなんとかいう特殊な扱いを検討する必要があるのじゃないか。そうでないと、これは経済的にまいって、もうあきらめてしまいますよ、実際に。そうすると、せっかくある制度で救えないという場合もあり得るわけですよ。大臣、その点についてはどうですか。
#228
○加藤国務大臣 いまの応答を聞いておりまして、これはもう無理からぬところがありますので、数年もかかったらたいへんなことでございますから、御趣旨に沿うように、今後何とか迅速にやるように、前向きで対処いたしたいと思います。
#229
○村山(富)委員 ここで押し問答をしていてもなかなか結論が出ないと思いますから、これからのいろいろな問題を通して考えた場合に、一生懸命やってくれると思いますが、それにもかかわらず、長期間かかるような問題もたくさんあると思うのです。そういう場合には、やはり救済措置といいますか、何らかの方法を考える必要があるのじゃないかと思いますから、今後の課題として十分ひとつ検討してもらいたいと思います。
 それからもう一つ申し上げますが、これは大分県の日田市の石材業者の事業場で白ろう病が発生しているわけです。これは業者のほうが積極的に、久留米医大なんかの先生を呼んで集団検診をしたわけです。いま工員が三百名くらいおりますけれども、その三百名の中で、すでに入院を必要とする、早く入院しなさいと診断された患者が二十四名おるわけですよ。これはおそらく監督署も調査に行っていると思いますから、その調査の結果がどういうふうになっているか、もしわかれば知らせていただきたい。
#230
○渡邊(健)政府委員 本年二月に、先生御指摘の日田の石材業において白ろう病があるということで、久留米大学の環境衛生学教室による集団検診が行なわれまして、そのうちの五十八名については三月中に精密検診が実施されたわけでございます。もちろんこの費用は事業主の負担で行なっているわけでございます。基準局におきましても、さっそくそれについてはその業界に対しまして、いわゆるチェーンソーによる白ろう病の振動障害防止対策に準拠いたしまして、このチッピングハンマーによる振動障害の予防の対策要綱を定めまして、指導を進めておるところでございます。
 なお、本年六月末にそのうちの二十二名の方について職業病の認定の申請が出されておりますので、これについては、いま至急に検討をいたしておるところでございまして、すみやかに結論を出しまして万全の処置を講じたいと思っております。
#231
○村山(富)委員 私がいろいろ聞きますと、昭和三十六、七年ごろ、徳島の黒紙製材というところでやはり同じチッピングハンマーを使ってそういう病気か起こる可能性かある――当時、白ろう病ということはいわなかったかもしれませんけれども、いまからいいますと、そうですね。したがって、これは危険だというので、労働者のほうが就労を拒否したという事例があるわけです。それと同じようなチッピングハンマーをいま私たちは使っているわけです。そして新しい患者が出ているわけですね。こういう経緯を見ますと、もしそういう、たとえばチェーンソーとかチッピングハンマーなんかを使うことによって白ろう病が起こってくるということが考えられるならば、やはり規制をして、その使用時間を制限するとかいうようなことを直ちにやるべきではないか。もうすでに十年も前に起こっているのと同じような事例がまた起こってくるということについては、これはやはり監督行政上問題があるのではないかと思うのですが、その点はどうですか。
#232
○渡邊(健)政府委員 お尋ねの徳島県の事案につきましては、きのう先生からそういうお話がございまして至急調べさせたのでございますが、私どもの調べた限りでは、そういう事例があったということは全く記憶等もございませんので、そういうことがあったかどうか、ちょっとわからないわけでございますが、ただ白ろう病の場合等につきましては、先生御承知のとおり、チェーンソー等によります振動障害がかなり出ておることに応じまして、四十五年以来、予防対策の通達を出しまして、一日二時間以内、それも継続してチェーンソー作業をやらないように、あるいはチェーンソーについても防振装置をつける等、できるだけ振動の少ない機械を用いる、あるいはそれについては健康診断を六カ月に一回はやりなさいというような、いろいろな予防のための処置を通達いたしまして指導につとめておるところでございます。チッピングハンマーにつきましては、私どもこの日田の例を初めて聞いたわけでございますが、ここだけのことであるのか、もし他に同様な業務があり、同様な事例があるようならば、日田については大分の基準局が予防対策要綱をつくってチェーンソーに準じて指導いたしておりますけれども、他にも同様な事例がもしあるようでございましたならば、本省におきまして予防のための十分な指導を監督実施したい、かように考えております。
#233
○村山(富)委員 あなたのほうから徳島にこういう事例はないというふうに聞きましたので、私調べたのですよ。そうしたら、ないのではなくて、ちゃんと石材所もあるわけですね。電話をかけて聞いたのです。そうしたら、三十七年ごろそういう事例があって、そして機械を改善して、もうかえました。そして勤務時間なんかも規制して起こらないように注意しています。私も日田に参りました。そうしたら、やはり同じような機械が使われておりますと言っておるわけですよ。少なくとも十年近く前にあったような事例があるわけです。したがって、そういう事例があったら、同じような機械を使っている事業所を調査して、そういう病気が起こらないように規制するということが大事ではないかと思うのです。そうでないと、何か問題が起こったらそこへ行って規制する、あと何もない、また起こる、こういうことが繰り返されたのでは、ほんとうの意味で基準監督行政というものがうまくいっているとは思われないのです。
 ここでさっきも多賀谷さんが言われておりましたけれども、いまの基準監督署の人員ではどう考えたって無理ですよ。それは、局長は督励してスムーズにやらせますとか迅速にやらせますとか言いますけれども、この一つの事例を考えてみましてもなかなかそう簡単にはいかないのです。さっきから保育所の問題なんかも出ておりましたけれども、保育所の問題やらこういう石材所の問題やら何やら考えた場合に、しかも申請があった場合に、その申請の取り扱いをできるだけ本人にかわって監督署がちゃんと始末をしてやるというならば、ぴしっとやるならば、もう少し本格的にやるような体制をつくる必要がある。いまの人員ではどんなにうまいこと言ってみても無理ですよ。あれだけ事業所がふえて、しかも非常に複雑な事業所がたくさんできて、しかも依然として同じ程度の人員で扱われておるというところに無理な点があるわけです。そういう意味から考えますと、通勤途上災害の問題も事務量がふえるわけですから、そういうものも加味して監督行政をもっと整備していくという意味から、私は人員をもっとふやす必要があると思うのですが、その点はどうですか。
#234
○渡邊(健)政府委員 おっしゃるとおり、基準行政がしなければならない仕事は非常に多方面であるばかりか、ますますふえつつあるわけでございまして、私どもそういうことに対する体制といたしまして、現在の人員で決して十分であると考えておるものではございません。私どもといたしましては、監督官はもとより安全専門官、衛生専門官その他の職員、まだまだできるだけその整備をはからなければならないと考えておるのでございまして、毎年予算要求の際には相当人員増を要求いたしておるところでございますが、必ずしもそれに応じただけの増員等もございません。四十八年度につきましては監督官、安全、衛生専門官、合わせまして、先ほど多賀谷委員にお答えいたしました、労災の通勤途上以外の分につきまして八十五名程度でございまして、決して十分な増員であると考えておらないわけでございます。したがって、今後とも職員の増員につきましては、できるだけ私どもとして努力をいたすつもりでございます。
 それと同時に、職員の資質の向上についても努力し、あるいは自動車その他機動力の増強、装備品の整備等によりまして、行政の能力を向上いたしますとともに、監督等につきましても重点的にこれを行なうことによりまして、何とか必要な行政の推進に遺憾のないようにいたしてまいりたいと思いますが、それにいたしましても、監督官の増員をはじめ職員の増員、私どもぜひぜひ今後大幅の増員を獲得いたしたい、かように考えて、その努力をいたしていく所存でおるわけでございます。
#235
○村山(富)委員 もう時間もだいぶたちましたので、最後に総括的に申し上げたいと思うのですが、さっき申し上げました今度の通勤途上災害の一部自己負担の問題ですね。二百円の問題とか、あるいは待機期間中の三日間の問題とか、そういういまの失業保険、労災保険の給付が総体的に低いということは通説になっています。たとえば休業補償なんかも六〇%でしょう。これはもう諸外国の例を見ましても、はるかに六〇%をオーバーしていますよ。しかも実態から判断いたしますと、労働協約なんかで六〇%をこして一〇〇%の休業補償をしておるところがあるわけです。したがって、この労災補償法で位置づけられておる六〇%という額はきわめて実情にそぐわないものになっておるわけですね。こういう問題についてはどういうふうにお考えですか。
#236
○加藤国務大臣 休業補償給付の六〇%の問題でありますが、これは従来から労働基準法、健康保険法、失業保険法の関係諸制度を給付率の基礎として算定いたしたのであります。ILOの百二十一号条約でも、いまの役所の考えではそう水準に達しておらぬとは思っておらぬのでありますけれども、最近給付率全般の問題を改定せよというような議論も出ておりますし、この問題につきまして、全般の問題を――私は必ずしも懇談会や審議会を尊重するほうのあれではありませんが、労働省がやったらいいと思うのでありますけれども、いま労災保険基本問題懇談会というものをつくってここで検討させております。ただ検討するということでなくて、前向きでやってくれ、こういうふうに督励しておりますので、この六〇%の休業補償給付の問題についても、この一環として至急これが成案を得るように、そしてこれが改善をはかるように対処いたしたい、こういう所存であります。
#237
○村山(富)委員 ILO百二十一号条約、これは最低の基準ですから、やはりこれを乗り越えていく努力をしていく必要があると思うのです。
 そこで、これは時間もありませんから一緒に聞きますが、六〇%という率は低いというふうに判断をされるかどうかということが一点。もう一つは、給付基礎日額が千円です。かりに千円の日額でもって計算された場合に、六〇%で六百円でしょう。六百円で現状に合うかどうかということを判断した場合に、こういう給付基礎日額というようなものは毎年毎年変えていってもいいのじゃないか。これだけ物価変動が激しくて賃金の変動が激しいときに、そのままやっていくということは実情にそぐわないいろいろな問題があるのじゃないかと思いますから、その六〇%と給付基礎日額の千円の問題についてどういうふうに判断しておりますか。
#238
○渡邊(健)政府委員 現行の六〇%の問題は、ただいま大臣もお答え申し上げましたように、基準法の休業補償六〇%との関連もあるわけでございます。しかしながら、ILO条約等におきましてこれは最低の基準でございますから、これだけ経済力のつきました日本といたしまして、業務災害にかかられた方々の補償は少しでも手厚くしてあげるように努力すべきことはもう申すまでもないことでございまして、私どもそういう意味におきまして、給付改善という観点から、大臣も申し上げました労災保険審議会への全面検討の諮問をいたしておるわけでございますので、そういう改善の方向で今後検討いたしたい、かように考えております。
 それから最低給付基礎日額、これは四十七年度改定いたしまして千円にいたしたわけでございますが、これはその後の最低賃金の動向、あるいは賃金水準の一般の動向、あるいは失業保険その他のそういうようないろいろな関連、諸費用との関連で、これはもちろん逐次改定していくべきものと考えておりますので、現行の千円につきましても今後前向きにもう一回検討してみたい、かように考えております。
#239
○村山(富)委員 最後に大臣からその決意のほどを聞きたいと思います。
 さっきからるる申し上げておりますように、いまの監督署あるいは基準局の陣容から申し上げますと、どろぼうを見つけてからなわをなうようなもので、何か事件がない限りは手が届かないのですよ。これは職員が怠慢とかなんとかということでなくて、いまの陳容から考えて相当無理があるわけですよ。だからこれは大幅に人員をふやす必要がある。監督官の仕事というのは、第一に災害が起こらないように未然に防止するという予防対策を十分にしてもらう、それから新しい職業病が起こらないように職場環境の整備をさせる必要がある、同時に労働条件の改善もはかる必要がある、こういう仕事もやはり持っておるわけでしょう。それが行き届かないために起こるような原因というものもやはりあるわけですから、しかもどこかで一カ所起こった、これと同じような事業場が全国にたくさんあるのですから、起こるのではないかということを想定して、すみやかに規制をするなら規制をするで未然に防いでいく、こういう仕事もある。同時にまた災害が起こって申請があった場合に、さっきから何べんも言っておりますように、被災者にたいへんな荷重がかかっていく。これは監督官がもっと親切丁寧に便宜をはかってやる、あるいは手をかしてやるということも必要であるといったような業務をいろいろ考えた場合に、いまの陣容ではどだい無理な話だ。したがって、もっと大幅に人員をふやす必要がある。人員をふやすのは、人件費にかえられない大きな社会的プラス面があると思うのですよ。そういう意味で、いまの監督行政の充実について大臣はどう考えているかということが一つと、もう一つは、さっき申しましたように六〇%問題やら、あるいは給付日額の問題やら、あるいは今度改善されました通勤途上の問題やらなんかを兼ね合わせて考えた場合に、いまの基準法や労災法には時代にそぐわない低い部分がたくさんある。そういう部分に対して今後取り組む大臣の決意というものを最後に聞きたいと思います。
#240
○加藤国務大臣 もう御指摘のとおりで、私も同感です。役所が必ずしも怠慢であるというわけではありませんし、一生懸命やっておりますが、しかしなお一そう労働者の立場になって懇切丁寧にやれ――先般も県の責任者数十人を呼びまして、よく私から指示なり訓示をいたしました。
 日本の経済が成長して労使の関係が大いに変転しておるが、どうも法規その他のこれに伴わないという矛盾も、これは同感でありまして、基準法その他あらゆる法律は、改正すべきは前向きにする、ILOの批准の問題もどんどん前向きにしたい、こういうかたい決意でおります。
 最後に、これに対処するのには、やはり親切といっても人が足らなかったら困る。これはほんとうにありがたいおことばで、私も四十九年度の予算に対しましては重大な決意と重大な熱意をもってこれが改善を推進したいというかたい決意で、御趣旨のとおり進みたいと思います。どうもありがとうございました。
#241
○村山(富)委員 では終わります。
#242
○竹内(黎)委員長代理 坂口力君。
#243
○坂口委員 先ほどからもいろいろ御審議がありましたけれども、去る二月二十七日のこの委員会におきまして、保母さん、それから看護婦さん等の頸肩腕症候群あるいは腰痛症の問題を質問させていただきました。そのときに、腰痛症につきましてはすでに労災等の対象になっている、しかし頸肩腕症候群についてはまだそこまでいっていないというお話でございました。この保母さんあたりにそういうふうな疾病が多いのかどうかということを、早急に委員会等をつくって検討したいというお話をいただいておりますので、その後それがどういうふうになっているかということからまずお聞きをしたいと思います。
#244
○渡邊(健)政府委員 頸肩腕症候群につきましては、昭和四十四年に専門家の御意見をちょうだいいたしまして認定基準を作成いたしておりますが、その認定基準は、キーパンチャーやレジスターなど、いわゆる手指作業に従事している方についての認定基準でございまして、保母さんといったような手指作業以外の方についてまでカバーするという趣旨の認定基準ではないわけでございます。そこで先般の社労委員会におきましても、最近、手指作業以外の方にも頸肩腕症候群がかなり出ているのではないかという御指摘もございまして――事実そういう例も見られるわけでございます。そこでこれらの問題については早急に検討したいと申し上げたわけでございますが、その後頸肩腕症候群の業務上外の認定基準の検討についての専門家会議というのを三月の二十九日に設置をいたしまして、慶応大学の先生あるいは大阪市立大学の先生あるいは労働科学研究所の専門家の方あるいは労災病院の部長あるいは労働サービスセンター所長といったような専門家の方々に委員になっていただきまして、現在それら手指作業以外の方についての頸肩腕症候群の問題も含めて認定基準の再検討に着手していただいておるところでございます。
#245
○坂口委員 そういたしますと、スタートしていただいたわけでございますが、大体どのくらいのスケジュールで結論をお出しいただく予定でございますか。
#246
○渡邊(健)政府委員 おそくも年内と思っておりますが、できるだけ早く、できますればこの秋くらいにでも結論を出していただくように取り急いで検討を進めたいと存じております。
#247
○坂口委員 その点はひとつよろしくお願いをいたします。
 それから、きょう午前中にも多賀谷先生のほうから、いろいろこまかな問題につきまして御意見が出ておりました。私も一、二だけ聞かせていただきたいと思いますが、たとえば通勤途中で交通事故等でけがをいたします。そのときのけがはさほどでなかったが、半年なり一年あとになって、たとえば腰痛症だとかあるいはむち打ち症だとかいうような症状が出てきたような場合、これはやはり医学的な因果関係さえはっきりすれば取り上げられるということでございますか。
#248
○渡邊(健)政府委員 御説のとおりでございまして、そのとき直ちに発生しないものでありましても、遅発性のものであとになって発生したものでも、前の通勤途上の事故と医学的に因果関係があることが明らかになれば、労災の通勤途上災害の保護を受けられるわけでございます。
#249
○坂口委員 もう一点は出張の場合なんですが、たとえば非常に出張の多い職種の人がございます。出張の場合には、いつも通勤しておる、いわゆる会社と住まいとの間のいつも行き来をしておる場所ではないわけで、その日その日によって行き先の違う人がございます。その場合に、いわゆる任務は現地で終わりというような考え方のところがございます。たとえばどこかへ出張いたしまして、そこで話が済めば、あるいは仕事が済めば、その終わった時点で出張はもう終わり、そこからあとは出張の時間に入らないというような制度になっておるところがあるやに聞くのですけれども、これは出張から帰りのときでもこの法律の中に入りますか。
#250
○渡邊(健)政府委員 出張中は、これは会社の業務と全般的に見られておりますので、出張中は、これは通勤ということではなしに業務上ということになるわけでございます。どこまでが出張かということでございますが、これは、会社に戻られる場合には会社に戻られるまで、それから会社に寄らずにまっすぐ家へ帰っていい場合には自宅に戻られるまでが出張ということに相なるわけでございます。
#251
○坂口委員 現地で仕事を終わって、それからあとも出張の範囲に入るのであれば、これは問題ないわけですが、そうじゃなしに、現地で仕事が終わったその時点で出張という考え方は切るんだという考え方もあるわけでございます。現に私が日赤におりましたときに、日赤等ではそういう考え方をしていたように私は記憶いたしております。やはり出張してから帰るまでの間というのは、ちょうど通勤の帰りと同じようなことになるものですから、ちょっといま聞かせていただいたのですが、全部入るということになれば問題はないわけです。
#252
○渡邊(健)政府委員 出張の場合には、たとえば大阪の会議へ出かけまして会議が終わるまでということではなしに、大阪へ出かけるということ自身が業務命令に基づくものでございますから、会議が終わりまして、一たん会社に寄るべきものであれば会社に帰るまで、会社に寄らず出張先から自宅に帰っていい場合でございますと自宅に帰るまでが出張ということで、業務上になるわけでございます。
#253
○坂口委員 ありがとうございました。それはそれでけっこうでございます。
 その次は脊髄損傷の方ですね。最近労働災害がふえるに従いまして脊髄損傷の方が非常にふえてきたわけでございますが、脊髄損傷者というのは労働能力が一〇〇%喪失するわけでございますし、再び職場へ帰るということの困難な人も多いわけです。現在どのくらいの年齢の人が脊髄損傷者には多いのか、あるいはまた、こういう人たちが労災補償として月額どのくらいもらっているのか、そちらでわかりますか。
#254
○渡邊(健)政府委員 年齢のほうは、これはいろいろな年齢に分布しておると存じますのでちょっとわかりません。
 しかし脊損で年金を受けている人がどのくらい受けているかという数字につきましては、四十六年度の新規裁定の数字でございますので二年ほど前でちょっと古いのでございますが、脊損患者の年金額は、平均いたしまして一人四十五万八千六百八十一円、そうなっております。
#255
○坂口委員 年間ですか。
#256
○渡邊(健)政府委員 はい。
#257
○坂口委員 私のほうで調べたものを見ますと、平均年齢四十一・七歳ということになっておるわけです。一人の労災補償、月額でございますけれども、平均しまして三万一千円という数字が出ておりますので、これは私の場合は数字がちょっと違うようですが、いずれにいたしましても若い年齢層の人に比較的多い。それから月額三万円、これが一応四万円であったといたしましても生活のできる額ではないと思うわけです。
 これは労働省の婦人少年局で四十六年三月に脊髄損傷者に対する実態調査をおやりになっておるのであります。これを見せていただきますと、千四百十名についての調査をなすっておりますが、障害年金で生活をすることが不可能だというので、七割の方の奥さんがお仕事をなすっている。三割は御主人が寝たきりのために、働きにはいきたいんだけれども奥さんは仕事に出られない。で、泣く泣くわずかな月額三万一千円ぐらいで生活をしなければならない。四四・九%の家庭が子供の学業を断たねばならぬ。七五%の人がほんとうに生活困窮者になっている。こういう実態が報告をされております。
 こういうことを思いますと、現在の体制ではいかんともしがたい。特に最近のように物価高になってまいりましたらなおさらのこと。これはいかないのじゃないか。この点も今後改正の何かスケジュール等はございませんでしょうか、お伺いします。
#258
○渡邊(健)政府委員 婦人少年局が調査いたしました四十四年の調査は、私どもも十分承知をいたしております。なお、当時の額につきましては、その後賃金の上昇もございますし、年金等についてスライドもかかっておりますので向上はいたしておると思います。それから、年金額等につきましても、四十五年に給付改善をいたしておりますので、当時よりはよくなっておるとは存じますけれども、それにいたしましてもやはり相当数の方が、家族の方も働かなければ生活ができないという状況にあることは、今日においても同様であろうと推察をされるのでございます。
 なお、脊髄損傷といってもいろいろな程度がございまして、家で寝たきりというのは、おそらくもう症状が固定して病院から退院された方であろうと思います。そういう方で特に重い方は大体一級ないし三級ということになっておりますが、一級というような重い方、家族の介護を要するような方は、それらの点も含めて年金も高くなっておるわけでございまして、たとえて言いますと、昭和四十六年の裁定のことで申しますと、障害年金のほうで、一級の方の平均は年額五十六万円、三級の方ですと四十四万円ということで、やはり家族の介護を要するような方は年金額自身が多くはなっておるわけでございます。
 それにいたしましても、この程度ではとうてい生活上非常に苦しいことはわれわれも推察できるわけでございます。これらの給付の改善につきましては、先ほど労働大臣からも村山委員にお答えがございましたように、ことしの一月に労災保険全般の再検討をする必要があるというふうに考えまして、労災保険審議会にその御検討をお願いいたしたわけでございます。同審議会におきましては、労災基本問題懇談会というものを設けて目下鋭意検討を続けられておるわけでございます。私どもといたしましては、できるだけ早く同審議会から結論を出していただきまして、結論が出ましたならばそれを尊重して、給付の改善をはかってまいりたい。それの中にはこれらの脊損等の長期傷病者の方の補償の問題、あるいは症状が固定された方の障害年金の問題も含めて、給付の改善について、審議会の御結論を待って対処いたしたい、かように考えておるわけでございます。
#259
○加藤国務大臣 この問題は重要な問題があるようでございますから私からお答えいたしますが、いま政府委員から話があったように、各方面から全般について給付の問題を改善してくれ、こういう声がありますので、これはただ審議会にはかっただけでなく、労働省自体といたしましても前向きでこれが改善に進みたい、でき得べくんば今秋までに案を得ていろいろの決意をいたしたいという前向きの姿勢で、これは本腰でやっております。
#260
○坂口委員 ぜひ給付の改善に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、従来から労災保険法の適用労働者の業務災害につきましては、年金制度によりまして必要な期間必要な給付が行なわれているのに対しまして、労働基準法のみの適用労働者については一時金のみによる保護が行なわれているという不均衡があったわけでございます。今回労災保険で通勤災害に関する保護が行なわれることになるわけでありますが、この労災保険では、従来から原則としてすべての事業所の労働者に適用するたてまえになっておりますけれども、けさからもお話がございましたが、五人未満の零細企業なんかにつきましては任意加入ということになっているわけでございます。これは、先ほど申し上げましたような不均衡を除くために、任意適用の事業所について今後この適用範囲を拡大していかなければならないと思います。これにつきましてどういうようなお考えをお持ちになっているか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
#261
○渡邊(健)政府委員 先生御指摘のとおり、現在なお五人未満の商業、サービス業などが労災保険の強制適用外になっておるのであります。したがいまして、もちろん任意適用を受けておられる方も幾らかはございますけれども、それらの方大部分が労災保険の適用ではなしに基準法だけの適用になっておるわけでございまして、労災保険の適用を受けておられる方との間にかなりのギャップがあろうと思います。これにつきましては、そのギャップをなくするにはやはり本来的にはすみやかに労災保険の全面適用を実施することが必要だ、かように考えておるわけでございます。そういう意味で、暫定的な任意適用事業は逐次少なくしていくということで、四十七年度も製造業、運輸業法の一部につきましては従来暫定適用であったものを強制適用に入れるということで、強制適用の範囲を拡大いたしておるわけでございます。零細企業が企業としては非常に数が多うございますので、事務的な処理能力からもなかなか一挙にはまいりませんけれども、私どもすみやかに適用範囲の拡大をはかって、一日も早く全面適用を実現したい、かようなことで努力をいたしておるところでございます。
#262
○坂口委員 今後のスケジュールとしましては、大体何年間ぐらいで決着をおつけいただけるお考えでございますか。
#263
○渡邊(健)政府委員 私どもできるだけ早く、かように考えております。まあ二、三年――できればもっと早い機会にも全面適用に持っていきたい、かように考えております。
#264
○坂口委員 それでは、それはひとつよろしくお願いいたします。
 それから次に、自賠保険の給付との関係についてお伺いしたいわけでございますが、通勤災害のうちの多くのものは自動車事故だろうと思うわけでございます。このような場合に、自賠保険の給付と労災保険の給付とが競合する場合があると思うのです。両保険の給付の関係は今後どのようになるのか、これをひとつ御説明いただきたい。
#265
○渡邊(健)政府委員 通勤災害は自動車による事故が非常に多いと思われますので、先生御指摘のように、労災保険による通勤災害保護の制度と自賠保険とが競合する場合が非常に多かろう、かように考えております。
 これにつきましては、どちらの保険を先に受けるかということは、労働者の選択でどちらを先に受けてもいいことになっておりますが、その場合に法律では調整規定が設けられておりまして、労災保険が先に給付をいたしますと、自賠保険に対して自賠保険の限度内におきまして労災保険から求償をして、それで労災保険が自賠保険からその分だけをいただく、それから自賠保険に先に労働者が請求をされた場合につきましては、自賠保険から給付をなされた範囲で労災保険は給付しなくてもいい、こういうような調整規定を設けておるわけでございます。
    〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕
労働者の方としてはどちらでも選択によりまして給付を受けることができますし、結果としてはどちらを先に受けられましても受ける内容につきまして損得がないようになっておるわけでございます。
#266
○坂口委員 ちょっと労働省の範囲からはずれるかもしれませんが、医療費のことです。この自賠の場合には自由診療、それから健保等の場合には一点が十円、それから労災の場合には一点が十一円五十銭ですか十二円ですか、こういうふうに多少ばらばらになっておりますけれども、これは通勤途上災害の場合には労災と同じということだと思いますが、この点は今後の問題としてはいかがでございますか、何か一本化していかれるような用意がございますか。
#267
○渡邊(健)政府委員 先生も御承知のように、労災保険も昔は慣行料金ということであったわけでございますが、そうなりますとそれぞれの地域地域でばらばらでございまして、いろいろその辺のトラブルが起きましたので、漸次その辺の調整をはかってまいりまして、最近では点数は主として健保の点数に準ずる、ただし労災の特有な問題だとえばリハビリ等々につきましては別個の点数等を使っておりますが、そういうものを除きましては原則として健保の単価を使っているわけであります。点数にかけます単価につきましては、従来からのそういう慣行料金であった経緯等にもかんがみまして、それぞれの地域の医師会あるいは指定医師会等々と御相談をいたしまして、おおむね全国統一をとりまして、一般の民間医療機関については十二円、官公立の病院につきましては十一円五十銭ということで労災はやっております。なお、以前からの慣行料金が残っておるところも若干ございまして、いまの基準必ずしも斉一ではございません。若干はそれの例外的な取り扱いをしておるところもございますが、おおむねそういうことでございます。今回の通勤災害につきましての療養の給付あるいは療養補償費の支給につきましては、これは従来の労災保険における業務上についての医療と全く同じに取り扱うつもりでおります。
 なお、先生御指摘の健保、労災あるいは自賠がばらばらではないか、統一する考えはないかということでございますが、それぞれ長い歴史を経てきた関係もございまして、御指摘のような問題は確かにあるかと思いますが、いま直ちにそういう問題に手をつけることはなかなか困難であろうと思っております。いまのところ労災としましては、労災の中で昔からの慣行料金の残存がございまして斉一でなかった点、これをできるだけ労災としてすっきりしたものにしたいということで、そちらを中心にいま考えておるところでございます。
#268
○坂口委員 このほかの、健保とたとえば労災といま同じにする、そういうふうなことについてはそれぞれの歴史もあるでしょうから、一足飛びにはいきがたいと思いますが、たとえば労災の内部で私立の場合には十二円、官公立の場合には十一円五十銭という同じ中での差、これは一つにまとめることができるのではないでしょうか。
#269
○渡邊(健)政府委員 先生御承知のように、健保の場合には、それに基づく医療収入については非課税が相当大幅に認められておるわけでございますが、労災については健保並みの非課税がない、そういう問題がございまして、民間の医療機関でもいろいろ課税の問題があるわけでございます。そこで、課税がある民間の医療機関と課税がない官公立の医療機関といったような問題もあって、現在十一円五十銭と十二円というふうに官公立の医療機関と民間の医療機関と分けているわけでございますが、これらについては今後それぞれの医療機関でいろいろな御意見がございますので、十分それらとお話し合いを進めながら合理的な形に持っていきたいと思っております。
#270
○坂口委員 わかりました。先ほどもILOの問題が出ておりましたけれども、わが国のILO条約批准の現状から見まして、今後もこの批准をさらに促進していくべきだというふうに思いますが、特に百二十一号、業務災害の場合における給付に関する条約ですね。今回の通勤災害保護制度を内容とする法案が成立した暁には、これはすみやかに批准すべきものと考えますけれども、労働大臣、この点いかがでございますでしょうか。
#271
○加藤国務大臣 当然この問題も、改正案が通りましたら批准する方針でございます。
#272
○坂口委員 一応、批准をされるというふうに理解さしてもらってよろしゅうございますね。
#273
○加藤国務大臣 そうです。
#274
○坂口委員 それでは、いままでこれが、批准が非常におくれていたのは、やはり今回のこれができなかったからですか。
#275
○渡邊(健)政府委員 現在の労災の給付水準は一般的には百二十一号条約の水準を満たしておる、かように考えております。この百二十一号条約では業務上災害の定義の中に通勤途上災害を業務上とみなす条件を含むというような規定がございまして、従来、われわれといたしましては、会社の専用の通勤バスによる通勤中の事故、それから緊急呼び出しによって就業場所におもむく途中の事故だけを通勤の場合は業務上といたしておりまして、それは明確でございましたが、大部分のものが通勤につきましては業務上の扱いをいたしておりません。そこらで、はたしてこれでいいのかどうかという点も疑義があったわけでございますが、今回この通勤災害保護制度を設けることによりまして、ILO百二十一号条約の七条の二号のほうで、他の社会保障制度等によってこの条約に沿うような給付がされる場合には、通勤災害を必ずしも業務上にしなくてもいい、そちらのほうには少なくとも今回の場合当たるわけでございますので一そういうことによりまして今度は、この改正が成立いたしますならば、百二十一号条約に適合するものと私ども考えておりますので、その暁には批准ということで検討をするつもりでおります。
#276
○坂口委員 最後に、この労災保険の給付水準の問題でありますけれども、給付の基礎日額の問題がございます。けさもこれは議論されたと思いますが、現在、給付基礎日額といいますのは労働基準法の平均賃金に相当する額とされております。平均賃金はこの算定に際して発生した日以前三カ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額、それをその期間の総日数で割った値、こうされておりますね。通常、ボーナスというのは算定の基礎には含まれていないわけでございますが、給付総額の中に占めるボーナスのウエートというものはかなり多いわけでございます。今後の問題として、給付基礎の日額の算定の際にボーナスは含めていくべきではないか、こう考えますが、この点いかがでございますか。
#277
○渡邊(健)政府委員 御指摘のように、現在の労災の給付基礎日額は基準法の平均賃金に準拠いたしておるわけでございまして、基準法の平均賃金ということになりますと、ボーナスなどの三カ月の期間をもって支払われる賃金は算入されないことになっておりますために、給付基礎日額の算定の基礎になっていないわけでございます。
 それで、この給付基礎日額の額を平均賃金の額と同じにしておくことがいいかどうか、あるいはさらに平均賃金自身にいたしましても、三カ月ということでなしにもっと長い期間をとるべきかどうかという点、いろいろ問題があるところでございまして、ボーナスを含めるかいなかというような点についても非常に議論があるところでございます。大部分のいわゆる常用的な人にはボーナスというものはかなりございますが、たとえば日雇いであるとか、あるいは季節労務者であるとか、そういう方にはボーナスという制度は必ずしも適用されておりませんので、そういうことの関係もございまして、いろいろの議論があるわけでございまして、この点などは先ほどお答え申し上げました労災保険の全面検討の中で今後どういうふうに考えていったらいいかということの非常に大きな問題点の一つに相なっておるわけでございますので、それら審議会の御審議の結果等も承りながら、今後検討してまいりたい、検討の非常に大きな項目である、かように考えているわけでございます。
#278
○坂口委員 もう一つ、この給付水準の問題で、今回の通勤災害にかかわるこの給付というのは業務災害の給付水準に準ずることになっております。この準ずることになっている業務災害の給付そのものについてでありますけれども、諸外国の例と比較いたしましても、わが国がそう高いとはやはりこれ自身も思えないわけです。業務災害のほうの給付水準そのものについても、これはすみやかに検討をしていただく必要があるのではないかと思いますが、これも含めて今後検討になるのかどうか、ひとつお願いをしたいと思います。
#279
○渡邊(健)政府委員 いま労災保険審議会で全面的検討を願っておると申しますのは、これはまさに業務災害そのもののほうの検討を願っておるわけでございます。それが改善されますれば、通勤途上は業務災害と同じ給付ということになりますから、こちらの内容も同じく改善されるわけでございまして、現在はむしろ先生がいま御指摘になりました業務災害そのものの給付の内容のほうの検討を進めていただいておるわけでございます。
#280
○坂口委員 最後に一言要望しておきたいことがあるわけでございますが、これは別にお答えをいただかなくてもけっこうでございます。
 いろいろ災害が起っておりますが、ややもいたしますと、企業の中でできるだけ災害の件数を減らそうと申しますか、押えておこうという傾向がございます。減らすといいますと、件数を減らすように努力をする、これはいいことでございますが、そうでなしに、実際に起こりましたものを災害としてではなしに、ほかの一般疾病として取り扱うというようなケースがあることを私知っておりますし、そういった問題が私のほうにも持ち込まれております。これはやはり災害は災害としてはっきりと数字に出していただくということが、今後災害を減らすということで一番重要なことだと思うわけでございます。その点行政指導というような点で、特にそういったことがないように、これは今後お願いをしておきたいと思います。
 そういうことでございますので、最後に大臣の所信をお聞きいたしまして、先輩委員にかわりたいと思います。
#281
○加藤国務大臣 当然のことで、災害が統計上出なかったといっても実際はあったということがあったらたいへんなことでございますので、行政的にその点はよく御趣旨を体して、さように指導いたします。
#282
○田川委員長 大橋敏雄君。
#283
○大橋(敏)委員 私も関連をいたしまして若干質問をいたしたいと思っております。
 生命が大事なこと、貴重なものであることは申し上げるまでもないわけでございますが、これは古いことわざといいますか、標語といいますか、健全なるからだには健全なる精神が宿るとかいいますけれども、その生命をささえている健康というのは一切の根源であろうと私は思うのであります。ましてや労働者にとりまして、健康というものは言うならば資本である。したがいまして、からだ、その健康、それがいわば職業の内容によってこわされる、害されるというようなことがあるとすれば、これは直ちに排除せねばならない。また、直ちに予防措置を講じてその影響を防ぐことが肝心であろうと思うのであります。万一、職業によってかかった病気があるとするならば、これは国あるいは社会的な責任において、いち早く手当てをし治療をしてあげて健康を取り戻す、これは最も大事なことではないかと思うのでございます。
 実は、これから私がお尋ねすることは、事実の問題でありまして、むしろ事務的な問題ではなくて政治的な問題になろうかと思いますので、大臣とお話し合いをしていくのが一番いいのではないかと思うのですけれども、わが党がかねてから問題にしてきましたのは、鉱山従業員にけい肺病患者がかなり発生しているということでございました。これに非常に関心を払いまして、九州におきましても、かつて三井串木野鉱山あるいは大口の鉱業所等について調査を行ないまして、それなりにいろいろ成果をあげまして、微力ながらけい肺病患者の救済の一助になってきたつもりでございます。
 先般、と申しましても、ことしになりまして三月、四月、五月にわたりまして、鹿児島県の旧山ケ野鉱山の調査をしたわけでございますが、ここに働いていた人の調査でございますけれども、大体鹿児島県の薩摩町、栗野町、横川町にその実情調査を進めたわけでございます。ところが、元従業員中に数多くのけい肺病の疑いがあることを突きとめたわけでございまして、その調査の概要を申し上げますならば、元従業員のけい肺病の疑いのある者が二百十三名、そして元従業員のけい肺病で死亡した者が百三十人というような実態がわかったわけでございますけれども、これに対してほとんど救済の措置がとられていなかったというところに問題があるのでございます。というのは、同鉱山の関係で労災法の適用を受けた者はわずか十六名、その十六名中もう四名は死亡していらっしゃいましたけれども、そういうわずかなことになっております。その実情を申し上げるならば、その患者のうち八割以上は労災法が施行される昭和二十二年以前につとめをやめていたという従業員の方々がほとんどであった。したがいまして、法の救いの手はないということで、患者はもちろん家族の方々の悩みは非常に深刻なものでございました。私はここに問題の中心を運んできておるわけでございますが、五月の六日、七日、公明党の公害対策調査団が派遣されまして、その実態をつぶさに調査してまいりまして、事こまかに名簿を添えた資料を国及び鹿児島県に提出いたしまして、その救済対策の要請を行なってまいりました。
 労働大臣のところにも参ったはずでございますが、たしかあのときに、具体的に健康診断等行ないますということでありましたので、その後どのような対策をとられたか、具体的に御説明を願いたいと思います。
#284
○渡邊(健)政府委員 先生御指摘の山ケ野鉱山の元従業員にけい肺患者と思われる方がたくさん出ておられますことは、まことに残念なことと存じております。戦後も粉じん職場に就業された就業歴のある方につきましては、十六名でございますか、労災保険から補償をいたしておるわけでございますが、就業歴が労災保険法施行前のみの方につきましては何らの措置がされておらなかったわけでございます。大橋先生からの御指摘もございまして、さっそく鹿児島局に命じまして、それらの方々に対しまして六月の十九日、二十日及び六月の二十八日、二十九日の四日にわたりまして、じん肺健康診断の第一次検診を実施したところでございまして、現在その検診結果を整理中でございます。
#285
○大橋(敏)委員 先ほど申し上げましたように、公明党が調査しただけでも二百十三名の名簿ができていたわけでございますが、そういう方々はほとんど健康診断はなされたのかどうか。
#286
○渡邊(健)政府委員 御指摘の方々はほとんど健康診断をお受けになりまして、報告を受けておるところでは、二百二十四名の方が、その六月中に鹿児島局が実施しました検診をお受けになったという報告を受けております。
#287
○大橋(敏)委員 いま結果をまとめているということでございますが、おそらくその中で、はたしてけい肺病にかかっていたかどうかということと、その程度、あるいは労災保険に適用するかしないかという問題にさかのぼってくることであろうと思いますけれども、いずれにしましても再度精密検査が行なわれると私は予想しておるわけですが、大体いつごろその精密検査がもう一回行なわれることになるのかどうか、これをお伺いいたしたいと思います。
#288
○渡邊(健)政府委員 先ほど行なわれました第一次検診の結果の取りまとめを急がせておりますので、大体今月中ごろには第一次検診の結果がまとまると思います。それに基づきまして、その結果精密検診を必要とする方につきましては、医療機関とも打ち合わせの上、早急に第二次健康診断を実施いたしたいと考えております。
#289
○大橋(敏)委員 説明はよくわかりましたが、大臣、実はわが党がやったからというわけじゃございませんが、こうして申し入れをして初めて、労働省から非常に厳格な指示が流れまして、現地でこうした健康診断がなされた、それについては私たちも感謝いたします。そしてありがたくも思いますけれども、戦後今日まで、こういう方々が全く放置されたままきたということですね、これにはやはり大きな政治責任があるのではないか。まあ政府、なかんずく労働省の基準局ですね、この立場から見た場合、言われたから検診しました、いまやっておりますということでは、私はおさまりがつかぬと思うのですよ。大臣としてこの姿をどうとらえられるか、所信をお伺いしたいと思います。
#290
○加藤国務大臣 御指摘のとおりでありまして、もう少しこれらの問題に対しましても、大橋委員から先般も御指摘があってからこういうようなことをいたしますことに対しましては、よく出先機関も反省しなければならぬ、こういう意味で、この間県の責任者百人近くを呼んだときに、この問題にも私は触れまして、こういうことでは困る。指摘があってから手配するようでは同じことだから、今後、かような問題に対しましても、親切に、役所式でなくやってくれ、こういうことをよく話しておりますので、今後はかようなことはないと思いますけれども、今回のことにつきましては、役所自体も反省をいたしておりますが、私もこの点につきましては、まことに申しわけない、こういうことをおわびをする以外に道はないと思います。
#291
○大橋(敏)委員 政治のいわゆるあたたかい手が差し伸べられるか伸べられないかということによって、住民の幸、不幸が左右されているわけですね。私も現地に参りまして非常に胸を打たれたことは――胸を打たれたというよりも痛みを感じたことは、その山ケ野鉱山というのは、国の政策、いわゆる国策によって運営されていた、それによって休業もさせられたというような事業所であったわけですね。そして、その金を掘り出すためには、ハッパをかける。何発ハッパをかけたらハッパが終わりだから、すぐ中に入って掘り出しなさいというような強力な指示があって、ハッパの音が予定された数が鳴り終わるや終わらぬや同時に穴の中に、突撃隊みたいなかっこうで飛び込んでいって、もうもうたる中で作業をやったというのですね。これで病気にならないほうがふしぎだというわけですよ。そういうことで、非常にかわいそうな状態で今日まで放置されてきたわけでございます。幸いに、今度労働省の手厚い、きびしいといいますか、厳格な診断がなされましたので、相当数私は救済の線に浮かび上がってくるであろうとは思っておりますけれども、せっかく健康診断はしたものの、それを認定する基準がきびしければ、これはまた何をかいわんやで、救済の実はあがらぬわけですね。
 そこで、私は、ここで発表する前に、あるいは認定する前に、その認定基準をもう一回見直すべきではないだろうか、大きく緩和すべきではないか。大幅に緩和をして、そしてそういう方々を実質的に救済していくべきである、私はこのように思うのでございますが、従来の認定基準を見ますと、管理区分が一から四まであると思うのですけれども、その四の区分になって初めて労災の対象になるわけですね。もうこの管理区分四なんというのは、廃人同様だ、これはなくなっていく寸前だ、こういうことなんですね。地元の皆さんが泣くように言っておりましたけれども、倒れる前につえをくれ……。悲痛な叫びでございまして、管理区分四度になれば、もう助からぬのだ、そのときに認定されてみても何にもならない、ありがたいと思わない、こういうことでございます。そういうことで、私は、現在のいわゆる認定基準のあり方、これについて労働省の見解を承りたいと思います。
#292
○渡邊(健)政府委員 じん肺の診断の結果の管理区分につきましては、先生御承知のように、じん肺法という法律がございまして、そこで詳細に管理区分一、二、三、四という認定の基準が明確に規定されておるわけでございまして、法律上管理区分四のものが療養を要する段階である、こういうふうに相なっておるわけでございまして、これは三十五年、法施行以来、全部のじん肺職場で働いている人に対しまして毎年、これによって検診をし、診断をいたしておるところでございまして、昔は管理区分四になるとあぶないということが言われましたけれども、近ごろにおきましては、医学の進歩によりまして、管理区分四の方も治癒される方も多数出てまいっておるわけでございます。現在、そういうことで、じん肺法という法律に基づいてこういう管理区分が明確になっておりますので、私どもといたしましては、現在はじん肺についての診断結果の区分は、じん肺法の規定に基づいて、それでじん肺法の管理区分四ということで、じん肺法上療養を要するという人が、労災法上におきましても療養の対象者である、こういうことで取り扱っているわけでございます。
 なお、昭和三十五年にじん肺法ができましたときは、これは非常に先進的な立法だということで、専門家の間でも高く評価された法律でございますけれども、その後いろいろ医学面の進歩もございますので、特にこれについては、じん肺法そのものもさらに検討する必要があると考えておりまして、現在じん肺の診査医会あるいはじん肺審議会等で検討にとりかかるべく準備中でございます。
#293
○大橋(敏)委員 管理区分四度でも最近は助かる方がかなり出てきたというお話をされますけれども、これは患者の立場になるとたまったものじゃないと言うのですね。それはあなたのおっしゃるとおり、現在じん肺法そのものがそういうふうになっているからいたし方ないといえばそれまでですけれども、私はけい肺病患者をほんとうに救済していこうと思うならば、このじん肺法の本法から改正をしていくべきである、それが実は言いたいところなんです。それが一つ。
 それからもう一つは、この鹿児島の山ケ野鉱山関係者は、労災法の施行以前の方が多いわけですね。かりにその方がけい肺病にかかっていても、いわゆる労災法の適用にならない、こういうことなんですよ。先ほど二百十数名の関係者がいたと私は話しましたけれども、現在までいわゆる認定を受けているというのは、現在十四名ですね。というのは、施行以前にわずらった方がほとんどだからということです。ということは、もう救いようがないわけでしょう。ここに二つの問題があるわけですね。労災法が適用になる方については、じん肺法を適用されていくけれども、そのじん肺法そのものがきびしいという問題と、労災法適用以前の労働者、この人についてはどうするかという問題があるわけですね。これはどうお考えになりますか。
#294
○加藤国務大臣 この問題はほんとうにお気の毒な谷間というか、関係で、この問題は前回の委員会でもいろいろ御質問がありまして、私から命じまして関係省と折衡いたしました。法律上は保険給付は困難でありますが、また特にいまの鹿児島の問題は事業主は存在していないという関係で、事業主にもたよれぬ。しかし、法律上、保険の施行前でありますので給付は受けられない、こういう方に対しまして何とか救済の道、援助の道がないかというので各省と相談いたしまして、いまお答えいたしましたとおり何とかこれが救済の道を講じたい、こういうので、これが具体化しておりますので、最近はその数字などもまきりかかっておりますので、特に渡邊局長がその衝に当たっておって各方面にも走り回りましたので、渡邊より詳細説明させます。
#295
○渡邊(健)政府委員 労災法施行後に粉じん職場に就業歴がある方につきましては、現行のじん肺法の管理区分に従いまして療養を要するとされる方につきましては、これは労災法によって保険の療養の給付がなされることになるわけでございます。しかし、労災法施行前の就業歴しかない方につきましては、一般的には従来、労災保険より給付を行なうことができませんので、これまで、当時の事業主が現存する場合にはその事業主、あるいはその鉱業権等を承継した事業主がおられる場合にはその方に、所要の補償を行なうよう行政指導いたしましてそれでやってもらったわけでございますが、この山ケ野鉱山のようにすでにそういう山が休廃止になっておる、当時の事業主がいないという場合には、そういうもとの事業主によって保護をはかるということもできませんので、そこでそういう方が労災法の施行前の就業のためにじん肺にかかられて、現在療養を要するという診断がありました方につきましては、労災保険の保険給付は不可能でございますけれども、保険施設によりまして入院、通院を含めまして療養費の全額、それと若干の手当を支給するようにいたしたい。手当は入院の方につきましては月一万円、通院の方につきましては三千円ないし四千円、これは通院日数によりまして、月に七日未満の方は三千円、七日以上通院の方は、四千円ということで手当を支給するようにいたしたいということで、関係者とも検討を進めまして、大体そういうことで詰まってきておりますので、最終的な決定次第すみやかにそういう方々に対しましては、その処置によりまして所要の保護をはかってまいりたいと考えておる次第でございます。
#296
○大橋(敏)委員 労災保険施行以前の救済措置について具体的なお話を私はいま初めて聞きましたけれども、それはいつごろ大体実施の運びになるのでしょうか。
#297
○渡邊(健)政府委員 もうごく近々のうちに決定いたしましたからすみやかに、直ちに実施するようにいたします。
#298
○大橋(敏)委員 せっかくの善政でございますので、もう少し中身を濃くしていただけませんか。いまの入院は一万円だ、通院は三千円だということでございますけれども、現在の高物価、あるいは経済情勢からいきまして、もう少し支給すべきではないかという感じを持ちますので、もう一度検討を深められて、できることならばもう少し上乗せしていただきたいということを強く要望しておきます。
 それで実は私どもが調査してまいりました二百十三名の中身を見てまいりますと、入院なさっている方が三名、病臥中が四十四名でございました。静養していらっしゃるのが二十三名、軽労働が五十三名、稼働、いわゆる働いていらっしゃる方が九十名、その働いていらっしゃる九十名の方も実はある程度自覚症状があるのですけれども、働かざるを得ないという立場でやむを得ず働いているという人が多かったのです。ですから少なくとも入院中あるいは病臥中、静養、軽労働、合計しますと、百二十三名、少なくともこういう方々は何らかの姿で手当が受けられるような措置をとっていただきたいものだ、いまの措置の中に何とか含まれていくようにならないものだろうか、これも強く希望する次策でございます。
 それから、これはいま生きていらっしゃる方々の問題でございますが、実は戦中、労災保険法が施行される前にもうなくなった方がたくさんあるのです。実は現地にまいりましたところ「八百八後家」ということわざを聞いたのですよ。これはどういうことかと聞きますと、その鉱山で働いている千人中八百八名は若くして死んでいくわけです。つまり後家さんになるわけですね。子供さんをたくさん持ちながら、あの当時生めよふやせよだったですから、子供はできたわ、主人は早死にしていって、八百八後家といううわさがずいぶん立っておったそうですが、そういう方々がまだいまでも、相当の年になって苦しい生活を余儀なくされておるわけですね。こういう遺族の方々に対して何とか救済の手は伸べられないものだろうか、こう思うのですけれども、どうでしょうか。
#299
○渡邊(健)政府委員 それらなくなられました方々――その中にはけい肺によってなくなられた方もかなりおられるかと存じますけれども、なくなられて相当年数たたれた場合に、けい肺によってなくなられたかどうかということを明確にすることは、なかなか困難な場合が非常に多いわけでございます。しかし、できるだけ調査もいたしてみたい。現在御存命の方々の健康診断を終わり次第そういう方も調べてみたい、かように考えておりますけれども、いろいろ当時の診断書等がはっきりけい肺でなくなられたということが書いてあれば、生前の就業歴等々から判定もできますけれども、なかなかむずかしい問題もあるのではないかと思います。なお、もしそれがけい肺のためになくなられたということが明確になりました場合に、その方が戦後のじん肺職場における就業歴があったということになりますと、これは遺族の方からの請求によって労災から給付をすることが可能であるわけでございますが、戦前の方につきましては、戦前しか就業歴のない方につきましては保険給付というわけにはまいりません。先ほど申しました、いま御存命で療養を要する方につきましては、いま生きておる方で病気の療養を要するのだということで、特別に先ほど申し上げましたような措置を保険施設という方法によって考え出したわけでございますけれども、なくなられた方々についてまで何らかの措置が可能かどうか、これは非常にむずかしい問題があると思いますので、今後検討させていただきたいと思うわけでございます。
#300
○大橋(敏)委員 皆さんのほうから私の聞いていると、おんぶにだっこみたいな話に聞えると思いますけれども、実際にじん肺の病気で主人を若死にさせた、それでいまなお後家さんでずいぶん苦労してこられたという立場から見た場合は、そんな冷たいことを言わずに助けてくださいよ、これは当然の声だと思うのですね。
    〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕
労働省としては、精一ぱいのことをいまなさっていると思います。労災法の適用以前の従業員の皆さんを救済しようということをいま考えられたわけですから、非常に前進的な内容だと、私は高く評価いたしますが、同時に、その当時働いていたことがはっきりして、けい肺でなくなったということが明確になれば、遺家族にも何らかの姿でやはり救済措置を特例措置でつくってもらいたい、大臣、お願いしますよ。どうですか。
#301
○加藤国務大臣 これは山ケ野だけだったら何とかできますけれども、全国に波及すると、これは調査の対象がなかなかむずかしくなってきますので、気持ちはありますが、これはまあ一度現地でやはり――山ケ野のほうをやりますと、これはわーっと、こうなってきますので、なかなかこれはいま御質問のような、ぶつぶつ言っておるのが、ほかに波及したら困る、いろいろなことも考えたりしております。と言って、薄情な気持ちではありませんので、渡邊君も検討すると思いますが、何とかよく現地の実情で、いろいろ理論的なことを見出して、それによって対処するという以外にないと思いますので、なお一そう現地の調査をし、検討いたします。
#302
○大橋(敏)委員 いろいろ事情はありましょうけれども、いいことは全国的に波及したほうが、私はいいと思います。それで、今後の重要な課題として提起しておきます。
 もう一つお尋ねしますが、元従業員で、現在結核で、結核予防法の対象で治療を受けている人がおるのですね。しかも、その人は、けい肺病だともうはっきり見える方もいるらしいのですよ。ところが労災のほうでは適用にならないで、こうしていま結核予防法の立場で受けているのですけれども、これなどはもうはっきりしているならば、労災法の適用で救済していくべきではないかと思うのですけれども、どうでしょうか。
#303
○渡邊(健)政府委員 じん肺法におきましては、じん肺による活動性の結核のある者が管理区分四に相なることに規定されております。したがいまして、もしそれらの方が業務に基づくじん肺で、それに活動性の結核が合併しておる、こういうものであれば、健康診断の結果は管理区分四になるわけでございます。したがいまして、労災法施行後の就業歴があれば、労災保険によりましてもちろん所要の保険給付がなされますし、労災法以前の就業歴でございますれば、先ほど申し上げました処置によって保護をいたす考えでございます。
#304
○大橋(敏)委員 おっしゃることはよくわかるのですが、現実問題として、進行性だろうと思うのですが、現にいらっしゃるわけですよ。その人が労災の対象にならない。いわゆる戦中、施行以前の人ならばならないでしょうけれども、施行後の方にも、なっていないという方が何人かいらっしゃるような話も聞いておりますので、今度の調査のときに、それも念頭に置いて行なっていただきたいことを強くお願いいたしておきます。
 時間が参りましたので最後にいたしますが、金山というのは多いですね、鹿児島県をはじめ全国的に総点検をしていただきたいと思いますが、けい肺病で苦しんでいる人をとにかく救済してほしいということです。大分県の星野金山あるいは宮崎県の土呂久鉱山ですか、これなどは、労災適用前の患者に対しても、もうすでに県のほうでもいろいろ救済の手を差し伸べていたとも聞いておりましたけれども、先ほどの労働省の基本的な、施行前の救済の具体的な内容を聞きまして、非常に希望を抱いておりますけれども、一日も早くこれが実施されることを要望しておきます。
 それからまた、このけい肺関係ですね、これは鹿児島県のみならず、九州そのほかにもあろうかと思いますので、全国的に、労働省基準局として調査の手を打つかどうか。最後にこれを聞きまして、私の質問を終わりたいと思います。
#305
○渡邊(健)政府委員 古い方々はなかなか把握が困難な場合が多いわけでございますが、できる限り把握につとめまして、特に山ケ野などの例のごとく、集団的にそういうような方がおられる例につきましては、把握が容易であると思いますので、調査いたしまして、必要な保護をやりたいと考えております。
#306
○大橋(敏)委員 終わります。
#307
○塩谷委員長代理 小宮武喜君。
#308
○小宮委員 私は、この労災問題を考えますときに、労働者が不幸にして災害にあわれて、それを救済することはもちろん大事ではございますが、その前にやはりわれわれとしては、いかにしてこの労働災害をなくするかということが一番大事なことだと思うのです。その点、大臣どうですか。
#309
○加藤国務大臣 もうお説のとおりであります。
#310
○小宮委員 三、四日前に発表された四十七年度の労働白書によりますと、四十七年度の労働災害について、休業八日以上の死傷者は前年度を四%下回って、約三十二万五千人に減少しているけれども、一方この死亡者数は五千六百人とほぼ前年と同じ水準にとどまっておるということが白書で指摘されておりますが、死亡者が減少しないという原因は、大体どこにあるのでしょうか。
#311
○北川(俊)政府委員 先生御指摘のように、災害防止の最重点は、負傷者の中でも特に死亡者をなくすということがたいへん大事なことだと考えております。一昨年、昭和四十六年は、労働災害による死亡者が十年ぶりに六千人の大台を割りまして、五千六百人になりましたけれども、昨年は、御指摘のように五千六百人、横ばい状態にとどまっておる。その原因としましては、四十七年はかなり景気が上昇しまして、なかんずく災害の多い建設業における工事量、あるいは貨物運送業における輸送量、そういうものが増加をいたしております。そういう点から死亡者が多くなった。これが一つの原因かと思います。
 それから第二は、この白書の中でも指摘をいたしておりますけれども、近時、工事規模あるいは生産規模が大きくなっておる、あるいは機械が大型化いたしておる、非常に高速の運転をやっておる。そういうような機械の大型化、高速化に伴いまして重大な災害が――一度災害が起こりますと非常に多くの方が災害を受けられる、こういう重大災害がふえておる。この二つが、死亡者が一昨年と横ばいにとどまった背景じゃないかと思います。
#312
○小宮委員 休業八日以上の死傷者は三十二万五千人というのを、業種的に見ればどうなりますか。それから死亡者の五千六百人については、業種的に見ればどうなるのか、ひとつ教えていただきたい。
#313
○北川(俊)政府委員 昭和四十七年の休業八日以上の死傷者数を業種的に見ますと、製造業が十二万二千八百人でございます。建設業がそれに続きまして十万二千四百人、さらに道路貨物運送業が一万八千百人、これが目立っております。これらの業種の中で、前年に比べてふえましたものは、建設業ということになっております。
 それから一方、死亡数でございますが、建設業が二千四百人、これが最も多うございまして、製造業が千二百人、道路貨物運送が四百人、こういうふうになっております。死亡者につきましては、前年に比べまして増加しました業種は、建設、鉱業、それから道路貨物運送業でございます。いずれにしましても、建設業が一番重点でございまして、建設業は死亡の四割、それから休業八日以上の約三割を占めておる、こういう実態でございます。
#314
○小宮委員 いまの製造業の千二百人、建設業の二千四百人というのは、労働白書を見れば書いてあるわけです。
 問題は製造業の中で、業種的に見てどの業種が多いのかということを知りたいのです。そうしなければ、先ほど労働大臣も答弁されたように、どういうふうな対策を立てればこの死亡災害をなくしていけるのか。また労働災害全体をどのような対策を立てれば減らしていけるのかということを考える場合に、そういうような重点的に重大災害を撲滅するための対策をする場合に、業種的なものがわからなければ、ただ製造業一本でまとめて幾らだと言われても、なかなかその対策が立てにくいのではないか。
 この労働白書を見ますと、労働省は何人けがをしました、死亡者が何名出ました、理由はこういうことのようでございますと、何か評論家的な書き方をしておる。このようなことで、ほんとうに労働災害を撲滅するための対策をどうするかという、対策そのものは何らとられていない。しかも、先ほどから申し上げておるように、度数率において、強度率においては減少しながらも、災害件数自体は減少しておりますけれども、死亡災害は減っていない。むしろ強度率は高くなっておるというのは、重大災害が多く発生しておることを意味するわけです。そのためには、たとえば建設業に対してはどのような対策を立てるか。たとえば製造業の中でどの業種が災害が高いのかということを、その業種に対してどういうような対策を立てるのかという具体的な対策を立てるためにも知りたいと思って質問したわけですが、わかっておるなら答弁してください。わかっていないなら、やむを得ません。
#315
○北川(俊)政府委員 建設業ではやはり土木建築、建築よりもむしろ土木工業のほうが非常に災害が多くなっております。なかんずく隧道関係、トンネルを掘るとかそういう関係で死亡災害がたいへん多くなっております。それから製造業の中では、私たちがたいへん注目いたしておりますのは造船、それからその他重工業関係のものに非常に災害が多い、こういう結果が出ております。
 なお詳細な資料につきましては、いまちょうど持ち合わせておりませんので、また別途先生のほうに御報告いたします。
#316
○小宮委員 白書の中では所定外労働時間が減少したところでは災害が減っているというようなことをうたわれておるわけですが、所定外労働時間と災害との関係を、私自身が労働白書を見てみますと、必ずしも正比例はしていないわけです。だから、その意味において、所定外労働時間と労働災害との関係を労働省としてはどう見ておられるのか。その点いかがですか。
#317
○北川(俊)政府委員 労働時間、なかんずく所定外の労働時間が減りますと、肉体的疲労がやはりたいへん減少をいたします。そういう関係で安全に対する注意力あるいは安全の指示の徹底、そういうものに伴っておそらく災害が減少すると私たちは考えております。最近統計調査部で、たとえば月一時間の実働時間が減れば、強度率、度数率がそれに比例をして減少する、こういう結果を出しております。さらにまた、時間外労働ではございませんけれども、週休二日制に踏み切った場合に労働災害減少に役立ったという答えが、全体の一三%程度返ってきております。
 そういうことから考えまして、やはり労働時間の短縮が労働災害の防止あるいは減少にたいへん寄与するものであると考えております。
#318
○小宮委員 確かに労働時間が、所定外労働時間だけでなくて、総労働時間においても、労働時間そのものが減少すればそういう傾向があります。しかしながら、この資料を見ましても、これは四十二年の労働災害の動きですが、この場合は、所定外労働時間は二〇%も延びておるにもかかわらず、災害は逆に減っているわけです。それからまた、四十四年の後半期においてもそういうようなことが見られます。それはそれとしてかまいませんけれども、いずれにしましても、今度は週休二日制の問題について、いま答弁がありましたように、週休二日制を実施したことによって労働災害が減ったという企業が一三・六%ということをあげられておりますが、残りの八六・四%の企業はどのような実績が出ていますか。
#319
○北川(俊)政府委員 週休二日制の効果につきまして、たとえば生産性があがったとかあるいは欠勤者が減ったとか、そういうことでアンケート調査をしておりますが、そのアンケートの一つの項目としまして、労働災害減少につながったというものにマルをつけられたのが一三・何%、こういうことでございまして、それ以外は、週休二日制によって減少したということではないということはわかりますけれども、結果的にどういう影響を及ぼしたかというのは、この調査ではわかっておりません。
#320
○小宮委員 いまのように、結局減少したというのは一三・六%ですね。残りの八六・四%の企業は、週休二日制を実施したけれども、必ずしも労働災害が減ったということにはなっていないわけですね。したがいまして問題は、所定外労働時間と週休二日制の問題が必ずしも労働災害の減少に結びついていない。大体傾向としては結びついていても絶対的に労働災害を減少することにはならないことになるわけですね。そうしますと、そういった労働災害を減少させるために対策をどうするかという点はどうですか。
#321
○北川(俊)政府委員 労働災害の発生といいますのは、やはり施設、機械、そういうものが不備で、そのために災害が起きるというものが原因の一番大きなものであります。それともう一つは、働く人が不安全な行動をする、不注意な行動をする、そのための発生、いわゆる物の面と人の面との不安全状態ないしは不安全行動の結びつきが災害の一番多い原因でございます。
 私たちは、安全の一番大事なことは、本質安全ということをよくいわれておりますけれども、たとえ人が不注意であってもけがが出ない、そういう設備にする、あるいは安全な施設にする、こういうことを第一に考えております。あわせまして働く人の側から安全教育を徹底して、安全な行動、作業をしていただくということを第二の重点にしております。
 ただ、いかに安全な施設をし、あるいは安全な教育を徹底しておりましても、働く時間が非常に長時間である、そのために疲れる、そういうことでは災害が出ますので、あわせまして安全衛生法ではそういう災害防止のための施設改善、教育とともに、労働条件の改善をはかる、こういうことを考えております。
#322
○小宮委員 白書によりますと、規模別に見ればやはり中小企業のほうが災害が多いということを指摘しておりますけれども、中小企業の場合に、大体所定外労働時間の平均はどれだけになっておりますか。
#323
○渡邊(健)政府委員 所定外労働時間につきましては、毎月勤労統計の四十七年平均で申しますと、調査産業計では一カ月十五・四時間、かように相なっております。これを規模別に見ますると、三十人ないし九十九人では十四・五時間、百人から四百九十九人では十五時間となっており、それに対して五百人以上では十七・一時間ということで、特に中小企業のほうの所定外労働時間が長いとはいえない状況にあるわけでございます。しかし産業別にこれもいろいろ違いがございまして、所定外労働時間が多い産業といたしましては、製造業のうちでは機械、金属関連業種、それから製造業以外では建設業、運輸通信業などが所定外労働時間が長くなっておるわけでございます。
#324
○小宮委員 十四・五時間というのは一月ですか。
#325
○渡邊(健)政府委員 そうです。
#326
○小宮委員 それから中小企業の災害の大きな原因として指摘しておるのは、安全管理の問題や労働時間が比較的長いことというのが原因とされているわけですね。そうすると一月に十四・五時間の所定外労働時間になると、一日に〇・五時間くらいになる。大企業の場合は所定外労働時間の平均は幾らになっていますか。
#327
○渡邊(健)政府委員 ただいま申しましたように、五百人以上でございますと月に十七・一時間ということで長いわけでございます。ただこれは所定外労働時間でございまして、根っこの所定内労働時間は、大企業のほうが短くて中小企業のほうが長うございますので、所定内、所定外を含めました総実労働時間で見ますと、四十七年平均で三十人から九十九人規模では百八十九時間それに対しまして五百人以上の規模では月百八十・二時間ということで中小企業のほうが長くなっております。
#328
○小宮委員 中小企業の労働災害が多いという原因は、これは安全管理の問題もありましょうし、それから比較的労働時間が長いということがありましょうが、私はそれ以外に、やはり中小企業の場合は設備の近代化が非常におくれておるということが一番大きな問題ではなかろうかというふうに考えます。そのことについては白書では全然触れられていないわけですね。この点はどうですか。私の考え方は誤りですか。
#329
○渡邊(健)政府委員 中小企業の災害の大きな原因は、やはり先生御指摘のように設備が十分でない、あるいは近代化されていない、こういうことがたいへん大きな原因だろうと思います。その点は御指摘のとおりでございます。
#330
○小宮委員 時間がありませんのでかけ足でいきますが、今後労働省として重大災害を撲滅するためにどういうような対策を立てていくかということになりますと、先ほどからいろいろ言われておりますように、労働災害の件数そのものは減ってきたけれども、かたわら今度は重大災害が発生しておるという点をどうするかという問題それからもう一つは、いま言われておるように、特に災害件数の中で中小企業の災害が非常に多くなっておるという問題、それに建設業が非常に多いという問題こういった問題が三点ほど指摘できると私は思うのです。したがって、労働省として災害を未然に防止をして災害を減少するためには、こういうふうな三点に重点をしぼって対策を立てていかなければ、ただ漫然と行政指導をやっても、いつまでたっても労働災害が減少しないのではないかというように考えますが、労働省として今後の災害防止に対する重点施策目標はどのように考えてやられるのか、ひとつ答弁を願いたい。
#331
○北川(俊)政府委員 最近の災害発生につきましては、御指摘のように災害件数そのものは減っておりますけれども、災害の重大さ、あるいは中小企業における災害の多発の問題、あるいは特殊産業における災害の問題、こういう問題がたいへん問題でございます。われわれとしまして昨年の十月から安全衛生法を労働基準法から切り離しまして制定をいたしましたのも、そういう適確な対策を打てるようにという考えでございます。
 まず第一は、やはり新しい工法、新しい原材料というものが入ってきますと、ともすれば、先ほど言いましたように工事が大規模化してくる、あるいは機械が高速化してくる。そういうものを事前に安全性のチェックというものをやらないで機械を使う、原材料を使うがために災害が起きる、あるいは非常に多くの職業病が起きる、こういう問題がございますので、新しい工法、新しい原材料を採用する場合には事前にそれをチェックする。最近はやりのことばで言いますとテクノロジーアセスメント、そういうものを行政に導入することを行政の一つの大事なことにいたしております。
 それからもう一つは、従来は最低基準、どうしても守っていただく点だけを示しまして災害防止につとめてまいりましたけれども、最近のように生産が非常に進んでまいりますと、法律で最低基準をきめておるだけでは不十分でございますので、むしろ職場の環境を快適なものにする、働きやすいものにすることが災害防止の一つの大きな手段ではないかということで、従来の最低基準による災害防止に加えまして、快適な作業環境の基準というものを示しまして、働きやすい職場をつくるということも考えております。
 それから第三には、やはり中小企業の災害を減らすということがたいへん大事でございます。これには従来のように、法律でこうきまっておるからこうしなければならないというような監督一本やりの行政では不十分でございます。先生御指摘のように、設備が不十分ならばそれをどう直すか、あるいは直すための資金をどうするか、そういう指導、援助の面の対策。これは、今度の新しい法律で考えておりますのは、そのための融資制度あるいは中小企業の労働者が受ける健康診断の機関に対する補助金の問題、さらには監督官、専門官が手不足でございますので、中小企業のそういう人たちのための安全衛生コンサルタント制度、こういうもので補足をしていきたい、こう考えております。
 それから一番最後の御指摘の建設あるいは金属鉱山、石炭鉱山も含めてでございますが、港湾労働、陸上運送というような業種的にたいへん災害の多発する産業がございます。こういうものにつきましては業種が自主的にまず災害防止のためのいろいろな施策をやることを助成するのがたいへん大事でございますので、現在これらの業種につきましては災害防止協会というものをつくらせまして、国から若干の補助をいたしまして自主活動を促進しておるところでございます。
#332
○小宮委員 いまの答弁に対しても質問がありますけれども、一応先に進みます。
 次は労災補償の問題について質問します。これは大臣も局長あたりも、ほんとうに労災事故にあって悲嘆のどん底にくれておる家庭の方々を見られたことはないと思うのです。私はこれまで何回となくそういうふうな場面にあっております。特に重大災害の中でも死亡災害にあわれた家族の方々の悲惨な姿は、実際われわれも行ってみて、見るにたえないような状況なんです。もう奥さんは遺体に取りすがって、夫を返してくれと泣き叫んでおるし、そのかたわらにはまだ小さい子供が何事が起こったのかわけも知らないで無心に笑っておるのをわれわれは見るとき、やはりこの労働災害だけは何としてでも撲滅しなければならぬということをいつも考えるわけです。それと同時に考えますのは、労災補償が非常に少ないということなんです。このために、いまから質問しますけれども、皆さん方もそういった遺族の生活の実態なんかも一回くらい見られたらいいと思うのです。その意味で質問しますけれども、特に中小企業に働く労働者の補償給付の基礎になる平均賃金、つまり給付基礎日額は平均幾らになっていますか。
#333
○渡邊(健)政府委員 労災保険受給者の全産業の平均の給付基礎日額は四十八年の三月末現在で二千四百二十四円と相なっております。
 中小企業についてお尋ねでございますが、規模別の基礎日額についての資料はございませんが、毎月勤労統計の調査から推算をいたしてみますと、四十八年四月現在の事業所規模別の一日当たりきまって支給する給与を推算いたしますと、千人以上では三千百三十三円であるのに対しまして、五百人から百人までは二千七百四十九円、百人から三十人までは二千六百八十円、それから三十人以下五人までの零細規模になりますと二千三百二十一円、こういうふうに推算がされておるわけでございます。
#334
○小宮委員 先ほどから質問が出ておりましたけれども、この労働基準法の十一条ではボーナスは入っていない。もちろんこれは平均賃金を算定する期間の関係で入っていないと思うのですが、十一条には「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他の名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」ということで、十二条で「この法律で平均賃金とは、」云々と出ているわけです。いま平均賃金の三カ月の平均というのは、何月と何月と何月の平均をとっていますか。
#335
○渡邊(健)政府委員 基準法上の平均賃金は、算定すべき事由が生じたそのつどに、それ以前三カ月についてやるわけでございます。したがいまして、労災補償の場合などでございますと、事故が起きました日からさかのぼって三カ月をそれぞれの場合にとって平均賃金を算定するわけでございます。
#336
○小宮委員 それが、入る場合もあれば入らない場合もあるということですか。
#337
○渡邊(健)政府委員 そういう場合にボーナス――三カ月をこえる期間ごとに払われるものは算定から除かれることに相なっておりますので、ボーナスは全部入らないことになっております。
#338
○小宮委員 労災法の第十二条の二の二項の「給付基礎日額とすることが著しく不適当であるときは、前項の規定にかかわらず、労働省令で定めるところによって政府が算定する額を給付基礎日額とする。」こういうふうになっていますね。この労働省令で定める給付基礎日額の最低は千円ですか。
#339
○渡邊(健)政府委員 現在は四十七年度から千円となっております。
#340
○小宮委員 この千円も去年までは七百七十円だったわけですね。今度千円に上げたわけですけれども、具体的にこの労働省令を適用した例がありますかどうか。あるとすれば、何件ぐらいありますか。
#341
○渡邊(健)政府委員 適用した例の数はちょっとわかりませんけれども、給付基礎日額が千円未満のものは四十六年三月の平均賃金階級別の新規受給者調査に基づきまして、それを四十八年三月に延ばして推計してみますと、受給者の約八・九%ぐらいがそれに該当するのではないかという推計をいたしております。
#342
○小宮委員 たとえば、基礎日額がいまの説明では、三十人以下が二千三百二十一円、百人以下が二千六百八十円という平均賃金の説明があったわけです。かりに計算がしやすいように二千円とした場合、遺族四人の場合の遺族補償年金は、この法律に基づいて基礎日額に三百六十五を乗じて得た額に百分の五十に相当する額ということになっているわけです。そうしますと、二千円の場合、私の計算によりますと補償年金が三十六万円、月三万円にしかならないわけです。そうしますと、四人家族で一カ月三万円で生活できるかどうかということをひとつ労働大臣――もちろん賃金スライドの問題もありますけれども、問題は、給付基礎日額二千円の場合にはそういうような計算になるわけです。それで私が言わんとするところは、労災法のこれは非常に低いということを指摘したいのです。その意味では、賃金スライドをやっておるという話ですが、賃金スライドはどういうふうな方法でやっているのですか。
#343
○渡邊(健)政府委員 年金につきましては、毎月勤労統計によりまして二〇%刻みで、二〇%の上昇がありますとそれにスライドして二〇%年金を上げるということになっております。
#344
○小宮委員 それでは計算してみてください。たとえば三十人以下の二千三百二十一円ですから、二十一円は切り捨てて、二千三百円の人で、本人が死亡した場合に労災補償年金は幾らもらうのか、月幾らになるのか、計算してみてください。計算をやっておってください。
 それで、賃金スライドをやったとしても、結局もともと基礎になる年金そのものが低いわけです。その意味では、労災法の十六条の六の一号、これは労働者の死亡当時遺族補償年金を受ける人がいない場合の遺族補償一時金、これも給付基礎日額の千日分ということで、たとえば二千三百二十一円にしても結局二百三十二万にしかならないということになります。これは一時金ですから賃金スライドはあり得ないのでしょう。そうしますと、四人家族の人たちが二百三十二万ぐらいで生活できるかどうか。この点から見ても、この二百三十二万というのはあまりにも――たとえば三十五、六歳、四十歳という働き盛りの御主人がなくなった場合に、家族に対する遺族補償年金にしても一時金にしても少ない。いまごろの航空機事故にしても自動車事故にしても、こういうような額ではないはずです。そのことを考えた場合に、いまの労災法全体を私は見直しをすべきだと思う。障害補償年金にしてもそうだと思うのですよ。たとえば障害等級一級の場合、一級というのは最もひどいのですが、この場合でも給付基礎日額の二百八十日分、二千円とした場合、年金額は五十六万円、月額にして四万七千円ですね。こうなりますと、賃金スライドがあったとしても、いまの労災給付というものはあまりにも低いのじゃないかということをいつも感じているのです。話に聞けば、労災保険審議会で検討しておるというような話ですけれども、こういった給付全体の見直しを行なうためにやっているのか、そしてその答申というのはいつごろ出るのか、その点いかがですか。大臣にお伺いします。
#345
○加藤国務大臣 この問題は、労災の、特に夫がなくなった遺族の場合には、いままでの統計でも奥さんが七〇何%、子供が大きくなっておりませんから奥さんがあとの家庭を守っておる。こういう悲惨な状態でありますので、いままで、先ほどからの話のように千円だとか、毎年改善いたしております。役所の答弁でもよく言うのでありますが、ILOの水準にも達したといっておりますけれども、現在の経済成長のいろいろな関係、これから考えますと審議会で、中にまた懇談会を設けて審議いたしております。よく皆さんから話があるのは、それはかっこうだけやっておるんじゃないかということをいわれるのでありますが、この問題は私もこの間から、八月に新政策を掲げなければいかぬ、そして予算も請求せなければならぬ、この段階に来ているから、これだけは、労災保険の遺族、その他全般の給付の改善については、ただ審議会は結論を得よといってもそれはいかぬから、われわれのほうもやらぬか。それには審議会のほうも督励し、懇談会も事によったら私が呼んで、本年中に何とか成案を得るように前向きで、これは答弁でなく、前向きで検討さしております。そうしてやはり時代時代に合うように考えなくてはならぬということは当然でありまして、これは役所のほうは好かぬのでありますけれども、いろいろ労災の保険の内容を見ましても、インポシブルではありません。そういう意味で、今後前向きで対処いたします。
#346
○渡邊(健)政府委員 先ほどの数字、わかりましたのでお答えいたします。
 計算をいたしてみまして、給付基礎日額が二千三百円といたしまして、妻一人子供三人のお話の場合を計算してみますと、年金額は四十六万千七百二十五円、一月当たりにいたしますと三万八千四百円ということに相なるわけでございます。
#347
○小宮委員 いまの計算から見ても非常に安いということははっきりしているわけですから、いま大臣が答弁されたように、やはり現行の労災保険法全体を抜本的に見直しを早くやってもらいたいということを特に要望しておきます。
 それから、わが国で通勤途上災害を業務上災害と認めている企業が、労働白書の中にも大体二%ぐらいあるということが書かれておりますけれども、企業数から見れば大体どれくらいありますか。
#348
○渡邊(健)政府委員 昭和四十七年六月に労働省が、常時三十人以上を使用する製造業の事業所を対象に行なった調査によりますと、通勤災害につきまして何らかの保護制度を設けております事業所は、事業所全体の八%と相なっております。これにつきましては、企業規模別に見ますると大企業ほど実施率が高くなっておりまして、五千人以上の企業の場合は四一・九%でございますが、百人から四百九十九人ぐらいが八・四%、それから百人以下、三十人くらいまでになりますと四・一%といったようなことで、規模別によりましてそういう取り扱いをしておる事業所の率に違いがあるわけでございます。
#349
○小宮委員 保護制度ではなくて、私が言っておるのは業務上災害とみなしておる企業、労働協約なり就業規則で取りきめてある企業はどれくらいあるかということなんです。
#350
○渡邊(健)政府委員 業務上災害と全く同じにしている事業所の割合まではちょっとわかりません。要するに、いまの健康保険での現行の保護以上に、何らかの企業として有利な取り扱いをしているものの割合は、さっき申しました割合になるわけでございます。
#351
○小宮委員 わからなければやむを得ないとして、それでは通勤途上災害が年間何件ぐらい発生しているのか。その中で死亡者は何件ぐらいあるのか。
#352
○渡邊(健)政府委員 年間の発生につきましては、昨年の七月の調査をもとに推計をいたしますと、年率にいたしまして千人に対して約四人が一年間に通勤途上で休業一日以上の災害をこうむるというふうに予想されます。したがいまして、それに休業するに至らない程度の災害も含めますと、年間に約二十七万人の労働者が何らかの通勤災害をこうむっておるだろうと推定がなされるわけでございます。なお、それに伴う死亡は、これも推計でございますが、年間約二千二百人ぐらいと推定いたしております。
#353
○小宮委員 この改正案では、やはり労働基準法の適用はされないし、業務上の取り扱いもされぬということで、長期療養を要する場合問題になるのは、昇給とかいろんな問題についての不利益があったとしても、また三日間の休業補償の問題もあります。その小さい問題は抜きにしても、解雇という問題が出てくるわけです。したがって各企業で解雇制限という、たとえば長期療養を二年以上とか一年半以上とかした場合には解雇するというような協約なり就業規則なり取りきめがあるわけです。大体いま各事業所でそういうような解雇制限についての取りきめの実態はどうなっておりますか。
#354
○渡邊(健)政府委員 そういう解雇制限の取り扱いについては現在調査中でございまして、現在までのところはまだ状況がはっきりいたしておりません。
#355
○小宮委員 それは早急に調査してみてください。
 それからもう一つ大事なことは、たとえば今回の改正案にしても、業務上の災害としてみなすことができないという理由は、経営者のほうで支配下にないので管理、監督はできないから、自分たちのほうはその責任がないんだということをいっておるわけですよ。それでは現在、現実に職場の中に入って作業中に脳溢血、脳卒中、心臓麻痺でなくなる方がいるわけです。これも業務上とはみなされずに私病死扱いをしているわけです。こういうような現実に職場の中に入って作業中に心臓麻痺とか脳卒中とか、こういうようなことでなくなる方がどれぐらいいるか、調べたことがありますか。
#356
○渡邊(健)政府委員 ちょっとそういう調査はいままでございません。
#357
○小宮委員 この問題については、経営者側も、工場内にいるわけだし、管理、監督下にあるわけです、支配権が及んでいるわけです。それがどうして私病死扱いされているのか、理由はどこですか。
#358
○渡邊(健)政府委員 業務上災害と申しますのは、業務に起因性がある負傷、疾病、死亡等の事故であるわけでございまして、業務中になくなられました場合に、それが業務に起因性があれば業務上になりますけれども、たまたま業務中であるけれども、その原因は業務との因果関係がないという場合には、これは業務との関係がないことでございますので、業務上にはならないわけでございます。
#359
○小宮委員 その因果関係というのはなかなかはっきりしないのですよ。たとえばその人が持病であれば別です。しかしやはり工場で働いて、長時間労働で疲労度が濃かったとか、作業環境、労働環境によって発作的に出てくる場合も、これは医学的にはっきりしているわけですから、そういうような問題を、ただ因果関係がないんだ、たとえば直接品物が落ちたとか何かに巻き込まれたということだけを業務上災害として取り扱って、そのような心臓麻痺でなくなった、それは業務上の問題ではないんだというように見るところにまた問題があると思うのですよ。やはりよってきた原因というものは、ほんとうに因果関係があるのかないのか、医学上なかなかむずかしいいろいろな問題があるようです。しかしながら、少なくとも工場内において就業中にそういうような心臓麻痺とか脳溢血で倒れてなくなった方に対して、いまのように通勤途上災害においてすら将来業務上災害として考えなさいということが労災保険審議会の答申の中にも出ているくらいですから、少なくともこういった会社の中で突然なくなる方、なくなった方、これは全国的に見ればかなりの数にのぼっていますよ。こういうような人をやはり業務上死亡として認めるべきだと私は考えるのです。特に先ほどから審議会で労災法全般の見直しをやっておるというような問題もありますから、この問題はぜひひとつそういうことで努力をしてもらいたいと思いますが、まず大臣、この点についての所見はどうですか。
#360
○加藤国務大臣 これはいまうしろで聞いたのでありますが、ただころっと死んだからといって、全部それが業務災害でない、こうは現状でもしておらぬそうでございます。よく内容を調査して――本人の持病という場合にはいたしかたないけれども、よく調査いたしておりますが、なお一そうこれを広義に解釈して、実態を調査して、どちらになるかということを、これは専門的な医学的な問題もありますので、さっそくあした審議会にこちらから通達いたしまして、これも添えていい案を出せ――やはり世の中か変転しており、最近は人命尊重、人命尊重でありますから、当然さような方向に進ませたいと思います。
#361
○小宮委員 私が聞いておる範囲では、そういうような人はいないのです。経営者側に聞けばそういうようなことをやっておるというところがあるかもしれませんが、少なくとも私が耳にする範囲では、そういうようなことを聞いたことはございません。それはやはり判断の問題が非常にむずかしい。たとえば会社に入る場合健康診断をして入るわけです。それがつとめている間に、本人の不注意とか本人の持病だといってみても、長い間のそういった工場生活の中でそういう問題が起きてくる場合もあるわけです。だから少なくともそういった個々の因果関係を調査してどうだこうだということをいっておったのでは、適用されるということは非常にむずかしい。これは十中八、九どころじゃない、全部がおそらく除外されます。その意味で、この際、大臣も言われたようにこの問題については特にひとつ審議会等で問題提起をして、ぜひ業務上の扱いにするように私からも強く要望しておきます。
 それから今回の改正案について、これは午前中も質問が出ましたけれども、特別加入者の問題について、たとえば労働組合の委員長――特別加入者はいろいろありますから、私はそういうような人たちを全部とは申しません、なかなか実態がむずかしい問題がありますから。しかし少なくとも労働組合の委員長、それから一人親方の場合は、これはやはり考えなければならないのではないか。これは通勤の実態にしても、労働組合の委員長だって自分のうちから労働組合事務所まで行くわけだし、帰りはまたそのまま帰るわけだから、これほど通勤実態がはっきりしているものはないのです。一人親方の場合も、それは材料を買いに行くという場合はあっても、やはり自分のうちから作業場までまっすぐ行って、また帰る。それはいろいろなことがありましょう。先ほどからマージャンとかたばこ買いとかデートの問題も出たけれども、そういうような問題はあっても、一人親方の場合には通勤の実態というものははっきりしておる。したがって、こういうような人たちを除外したいということがよくわかりませんので、もう一度、どういうような審議がなされたのか、特別加入者ということで十ぱ一からげで論議されたのか、その特別加入者の中で個々の問題についてはどういうふうに検討されたのか、その点いかがですか。
#362
○渡邊(健)政府委員 いま先生御指摘の組合の委員長のような場合でございますと、労災保険の関係では、組合事務所につとめております書記などは、これは組合事務所の労働者、こういうことになるわけでございますが、委員長はそれらの労働者を使う、いわば中小企業の企業主、こういうことで労災保険の特別加入の対象者になっておるわけでございます。特別加入についても通勤途上災害を適用すべきかどうかという点は、いろいろな見地から議論をされたのでございますが、中小企業の企業主ということになりますと、一般的になかなか勤務時間が雇用労働者のように明確でございません。したがってどれが出勤でどれが退勤なのか、あるいは出先から帰るような場合に、出先でたとえばお客の接待なとをする――労働者でございますと業務命令というのがございますから、もし業務命令によってお客の接待をしたということになると、その出先から帰るのは退勤になるわけです。中小企業の企業主ということになると、それは業務命令ということが明確にございませんので、私的にやったものか業務としてやったものか非常に判定が困難であるといったような問題があるので、一律になかなか判定しがたいではないか。あるいは一人親方にいたしましても、毎日外へ行く親方もあるだろうし、あるいは石工のように、あるときは自分のところで朝から仕事をやる、あるときは外へ出かけて行く、あるいは注文を取りに行くこともあるし、材料を買いに行くこともあるし、その辺が、どれが通勤でありどれが通勤でない、業務そのものであるかといったような判断は非常に困難で、これは相当個々の場合ごとに考えなければいかぬだろう。したがって、そういう問題を特別加入について議論していると相当の時間を要して、すみやかに一般労働者の通勤災害について保護制度を設けるということがまたおくれるではないか。それは雇用労働者であっても、先ほども御審議がございましたように、未適の事業場などでございますと通勤災害の保護を受けられない、そういう問題もございますので、労災としては、まず労災に加入している雇用労働者にすみやかに通勤災害の項を起こす、あるいは労働者であって今回の保護の対象にならない人に早く及ぼしていく、そういう過程で今後特別加入者についてもこまかく個別に検討する必要があるではないか、そういうことで今回は通勤災害の保護の対象からはずすことに相なったわけでございますが、そういう審議の過程もございまして、労災保険審議会の答申では、この問題についてはすみやかに検討するようにということが答申の中に書かれた経緯があるわけでございます。
#363
○小宮委員 この通勤途上災害の取り扱いの問題は非常に長い間の懸案事項でございましただけに、われわれも、不十分とはいいながらここまで前進したということについては大いに賛意を表しておるものでありますが、いま言われたように、特別加入者の、特に労働組合委員長、一人親方の問題こういうような問題も前向きで取り組んでいただくと同時に、やはり問題は、今回の場合は業務上災害とはみなさずに、単に労働者保護という立場からとらえられておりますが、この審議会の答申にもありますように、この問題についても、今後とも前向きで積極的に取り組んでもらいたいということを要望します。
 最後に、これは船員保険法の一部改正の問題についてでありますが、現在船員保険に対する国庫補助は六億円の定額補助になっておりますけれども、これは現行のまま据え置くのかどうか、あるいは今度健保に対する国庫補助も一〇%に増額したわけでございますから、やはり私は船員保険に対しても国庫保助を増額すべきだというふうに考えますが、ひとつ所見をお聞きしまして、私の質問を終わりたいと思います。いかがですか。
#364
○北川(力)政府委員 ただいまのお尋ねは船員保険の疾病部門の問題でございまして、大体の財政状況は四十二年度以降おおむね健全な推移を見ております。そういう意味では、今回の健康保険法の改正案で御審議をわずらわしました、いわゆる一〇%の定率国庫負担を伴っております政管健保の財政基盤とは、かなり趣を異にいたしております。しかし御指摘の点もございましたので、明年度の予算編成にあたりましてはそういった点も十分検討していきたい、そういうふうに考えます。
#365
○小宮委員 時間が来ましたので、これで質問を終わります。
#366
○塩谷委員長代理 次回は、来たる十日火曜日、午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十二分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト