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1972/03/28 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 大蔵委員会 第18号
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1972/03/28 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 大蔵委員会 第18号

#1
第071回国会 大蔵委員会 第18号
昭和四十八年三月二十八日(水曜日)
    午前十時三十三分開議
 出席委員
   委員長 鴨田 宗一君
   理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君
   理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君
   理事 阿部 助哉君 理事 武藤 山治君
   理事 荒木  宏君
      愛野興一郎君    宇野 宗佑君
      越智 通雄君    大西 正男君
      金子 一平君    木野 晴夫君
      栗原 祐幸君    小泉純一郎君
      三枝 三郎君    竹中 修一君
      中川 一郎君    野田  毅君
      坊  秀男君    村岡 兼造君
      毛利 松平君    山中 貞則君
      佐藤 観樹君    高沢 寅男君
      塚田 庄平君    平林  剛君
      広瀬 秀吉君    堀  昌雄君
      村山 喜一君    山田 耻目君
      小林 政子君    増本 一彦君
      広沢 直樹君    内海  清君
      竹本 孫一君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  田中 角榮君
 出席政府委員
        内閣法制局第三
        部長      茂串  俊君
        大蔵政務次官  山本 幸雄君
        大蔵大臣官房審
        議官      大倉 眞隆君
        大蔵省主計局次
        長       長岡  實君
        大蔵省主税局長 高木 文雄君
        大蔵省銀行局長 吉田太郎一君
        大蔵省国際金融
        局長      林  大造君
        国税庁次長   江口 健司君
 委員外の出席者
        文部省大学学術
        局学生課長   遠藤  丞君
        大蔵委員会調査
        室長      末松 経正君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月二十八日
 辞任         補欠選任
  塩谷 一夫君     竹中 修一君
  萩原 幸雄君     愛野興一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  愛野興一郎君     萩原 幸雄君
  竹中 修一君     塩谷 一夫君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 四号)
 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 五号)
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第四二号)
     ――――◇―――――
#2
○木村(武千代)委員長代理 これより会議を開きます。
 委員長所用のため、その指名により、私が委員長の職務を行ないます。
 所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。小林政子君。
#3
○小林(政)委員 私は、所得税法の問題について、特にその中でも昨日来から問題になっております課税最低限の問題について、まずお伺いをいたしたいと思います。
 政府は、わが国の課税最低限はすでに先進諸国の水準に達しているから、したがって今後は大幅な手直しをする必要がないであろう、こういう立場に立っておりますけれども、円の事実上の切り上げが実施をされ、そして従来の産業優先、企業第一主義の税制というものを切りかえて、そしてほんとうに国民の生活を向上させていく、あるいはまた生活を優先するという立場に立って税制がこの問題を取り上げるということは、私は非常に重要な問題であろうというふうに考えます。
 このような視点に立って、具体的な納税者の生活実態がどうなっているのか、あるいはまた所得水準や蓄積水準というようなものが事実上一体どうなっているのか、具体的な事実に即してこれを正しく認識すると同時に、大幅な改善を行なうということが私はいまきわめて重要であろうというふうに考えます。特に私はこのような観点に立って、課税最低限、人的控除の引き上げ等を中心に据えて質問をいたしたいと思います。
 まず第一にお伺いをいたしたいのは、基礎控除とは一体何を基準にしてきめるのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
#4
○高木(文)政府委員 昨日も山田委員の御質問に対してお答えを申し上げましたが、所得税はどの程度のものかは別として、最小限の生活費についてこれは課税をするのはおかしいのではないか。いわゆる生活費についての非課税の原則というような考え方は私どもは必ずしも賛成をいたしませんけれども、しかしやはり何といいましても生活ができないところに税が食い込んでくるというのはおかしいわけでございますから、その意味で、まず本人の所得の中から生活と見合ってある程度の控除をする、生活費に見合ってある程度の控除をするという性格のものであろうと思います。その場合に、それでは基礎控除の額を具体的にどのような生活実態とにらみ合わせてきめていくかということになりますと、これは必ずしも基礎控除あるいは配偶者控除あるいは扶養控除のそれぞれの額についてそういう目安を立てているわけではございませんで、一人であれば、つまり税法上の独身者であれば幾ら、夫婦者であれば幾ら、子供があれば幾らというふうな組み合わせを考えまして、いわば世帯別にある程度のバランスがとれるように基礎控除と配偶者控除と扶養控除というもので組み合わせておるわけでございます。その組み合わせによっていわゆる課税最低限の計算が出てくるわけでございますが、その課税最低限というものは、何よりもやはり最小限といいますか最低限の生活費に食い込まないようにという趣旨のものであろうかと思います。
#5
○小林(政)委員 昨日来の説明を聞いておりますと、いわゆる納税者の税負担をどの程度の所得層から求めるかという一つの基準である、こういうことをいわれておるわけでございますけれども、いわゆる課税最低限、特にその中でも私はその基礎になるべき人的控除、これについてはいま世帯の構成等によっての組み合わせによっていわゆる最低生活の維持ということを保障していくものだ、このようにいわれたと思いますれけども、そのように受けとめてよろしゅうございますか。
#6
○高木(文)政府委員 基礎控除なり配偶者控除なり扶養控除なりの額あるいは制度を考えます場合に、直ちにそれが最低生活費の保障ということにつながるかどうか、そこはたとえば課税最低限をこえましても、御存じのようにまず課税が始まります段階は税率が一割でございますから、税というのは、それをこえました場合にすべてにかかるというわけではなくて、税率が一割の場合は一割がかかるわけでございますから、また基礎控除等を引きました額が四十万円をこえました額につきましては、今度は上積み一二%ということになっているわけでございまして、直ちにそれが全部がこの税になってくるわけではないのでございますので、生活保護の場合のように、何といいますか、生活の保障という概念と、いまの税の仕組みのような場合とはやや趣が異なっておるのではないかというように考えています。
#7
○小林(政)委員 非常に抽象的で、何を言っているのか国民はわからないだろうと思うのです。この程度の所得の水準のところから課税を行なっていきたい、逆の、裏のことばで言えば、ここまでは税金は徴収いたしません、こういうことがきめられるのが一つの意味の課税最低限、こういうふうに言われているだろうというふうに考えますけれども、この場合に、どこのところに一つの目安を国民は置くべきなのか。これは一方的に大蔵省が、この程度が適当であろうというようなことできめているのかどうなのか、はっきりしていただきたいと思います。
#8
○高木(文)政府委員 基礎控除、配偶者控除、扶養控除、そういうものを合計して、いわば課税最低限というふうな概念が説明として出てきておりますけれども、基礎控除、扶養控除、配偶者控除というような基礎的な人的控除は、それは必ずしも単にどこから課税が始まるかということだけを意味するものではございません。まさにそれは結果としてそこから課税が始まるということではございますけれども、現在の所得税の累進の形式は、所得から控除を引きまして、その控除を引きましたものに税率がかかるわけでございますので、控除の引き方、大きさ、そういうものは必ずしもそこの限界のところだけでなくて、その上のすべての所得層の税額計算に響いてくるという意味を持つものでございます。でありますから、その人的控除の額というものは、それだけを意味しているものではございません。しかし、ただいま小林委員がおっしゃいますように、それが同時にまた、ここからは税がかかりますよ、ここからはかかりませんよということの目安であることも、御指摘のとおりでございます。
 そこで、それはどうやってきめるかということでございますが、まさにこれは最終的にはこの御審議を通じてきめていただくわけでございまして、私どもは御提案を申し上げておるということでございます。その過程におきまして、もちろん政府といたしましては税制調査会等で御審議は願っておるわけでございますが、一つにはやはりいままでの原則といいますか、審議の過程におきましては、やはり何といいましても、各年の課税最低限はこのような状態である、それをどの程度改善していくかということを重点に議論されておるというのが実態でございます。
#9
○小林(政)委員 ここまでは税金をかけないという一つの目安、その目安は一体どこに置くべきなのか。この間来からいろいろと参考人、公述人の方からもお話がございましたけれども、憲法第二十五条に明記されております健康で文化的な生活あるいは貯蓄のゆとりがある保障である、こういうことがいろいろ言われておりますけれども、私はそこでまず伺いたいのですけれども、四十八年度に、いわゆる基礎控除、配偶者控除を一万円、扶養控除を二万円引き上げたわけでございますけれども、一体この一万円というのは何を根拠にしてこの一万円を引き上げたのか、まずお伺いをいたしたいと思います。
#10
○高木(文)政府委員 先ほどもお答えいたしましたとおり、それぞれの一万円という額にはあまり意味がないと思います。そうではなくて、その結果、昨年夫婦子供二人の場合でいえば、昨年までは百三万円というのが一つの目安であった。これは給与所得者についてでございます。そしてそれは収入金額についてでございます。しかしそれが目安であった。それが今回百十四万九千円になる。その引き上げ幅が適当かどうか、それが十分か不十分かというところが問題であり、同時にそれは子供さんをよけい持っておられる家計の場合と、夫婦の場合と独身の場合とどのようなバランスであるべきか、それから一方において、ただいまのは給与所得者についてでございますから、この給与所得者と事業所得者のバランスはどうあるべきかというようなことから議論が出てくるのではないか。私どもは、現行二十万円の基礎控除が二十一万円になるその一万円の意義というよりは、むしろ全体としての消費単位ということを考えた場合の夫婦子供二人というような状態、それにおける課税がどこから始まるかというあたりに一番のよしあしの判断の焦点を合わせて議論が進められるべきものというふうに考えております。
#11
○小林(政)委員 この一万円には別に何の根拠というものはないのだ、こういうことなんですね。むしろ全体的な立場で、従来の四人世帯百三万といわれていたものが百十四万になることがどうのこうのという御説明ですけれども、この一万円は意味のない、何の根拠もないのにこのところ十年にわたって毎年毎年一万円ずつ一万円ずつ積み上げてきている。むしろほんとうに基礎控除、いわゆる人的控除というものが課税最低限をなす、しかも生活と非常に大きなかかわりを持つ性質を持った控除であるならば、当然ここにこそはっきりさせたものを持たなければいけないと思いますけれども、何の根拠もなくて十年来毎年一万円を積み上げてきた。これでは私は説得力のある説明に何らならないと思うのです。一万円ずつ一万円ずつ積み上げてきた内容だって、実際の引き上げの割合というものは減ってきているじゃありませんか。具体的にはことしは二十万から二十一万、五%引き上げたにすぎない。毎年毎年減ってきているというのが現状じゃないですか。
 こういうあいまいなことで、課税最低限が上がります、基礎控除を一万円上げました、扶養控除を二万円上げましたというようなことで、わが国の課税最低限がはかりにかけられるということは許されていいのでしょうか。私はもっと具体的な生活実態を調査された上に立って、いま国民の生活水準というものがこういう状態になっているのでこう上げたんだという説得力を持った説明がなければならないというふうに考えますけれども、その点についてもう一度御答弁をいただきたいと思います。
#12
○高木(文)政府委員 率直に申しまして、私どももそういう悩みを持っております。何かもう少し他によるべき基準があって、その基準との関連において基礎控除なり配偶者控除なり扶養控除なりの額をきめる方法がないだろうかということは一つの課題でございます。それで、この点については、かねがねいろいろ検討をいたしておりますが、いままでのところ、いま小林委員のおっしゃったようなことはなかなか見つからないというのが実情でございます。同時にこれは、何かないかということから、たとえばよその国はどうだろうかというようなこともいろいろ調べてみましたけれども、いままでのところでは、いやそういうものはない。そういうことを比較する基準はないので、現行制度が幾らになっておるのをどう改善するかということが問題であって、何か絶対比較の関係においてかくあるべしというような議論をしたことはないというのが、いままで私どもが諸外国の行政官とか学者とかに聞いた結果でございます。しかしながら、昨日も山田委員の御質問にございましたように、生活費なり家計費なりとの関係というのはやはり一つの問題点でございますので、それは参考としては認めますけれども、それを直ちに引っぱってきて、それによって基礎控除なり配偶者控除なり扶養控除なりの額をきめるという形は適当でないということで採用してないわけでございます。
#13
○小林(政)委員 いわゆる給与所得の場合には、ここから課税をするのだということは、いわゆる所得というものを基準にしていうのか、それとも含まれている経費を含めて基準にしているのかどうなのか、こういう点についても明確にしていただきたいと思います。
#14
○高木(文)政府委員 給与所得控除の性格論はまたこれは非常にむずかしい議論があるわけでございますが、ただいまのところは、主として必要経費の概算控除という部面に多く着目して給与所得控除という制度が組み立てられておるというふうに私どもは理解をいたしております。そこで、給与所得控除については、ある程度定額控除制度をしき、その上に定率控除制度を乗せ、総所得が大きくなったからといって必要経費がふえるはずがないからという理由で、現行法では四百十三万円まで、今度お願いしております改正案では六百十六万円まで漸次給与所得控除の額がふえてまいりますが、それをこえた場合には、もう給与所得控除はふえないというかっこうをとっておりますのは、一種の必要経費の考え方から出てきているものでございます。
  〔木村(武千代)委員長代理退席、大村委員長代理着席〕
課税最低限を論じます場合には、本来必要経費的なものである給与所得控除と、それからもっと基礎的な控除であるところの人的控除と、それを一緒にして給与所得者についての課税最低限を議論することははなはだ混乱を招くのでございます。したがって、私どもも従来から課税最低限の議論をいたします場合に、給与所得者について収入表示で、たとえば百三万円であるとか百十四万円であるとか申し上げるのはかえって誤解を招くのではないかということで、非常に気になっているわけでございます。
 しかし、また一面におきまして、現実にはサラリーマンの場合には、収入が幾らであるということは認識がありましても、税法に定められました給与所得控除額を引いた後の額が幾らのところからかかるのかというようなことを説明しても、一向何のことかわからぬということになります関係で、課税最低限に関する資料等をお示しいたします場合には、給与については収入基準、事業所得その他については所得基準ということで説明をいたしておるという関係になっておりまして、そこに食い違いがあることは非常にものごとを複雑にしておるわけでございます。そこは何とかならぬかと思うのですけれども、しかしサラリーマンについて給与所得控除後の金額が幾らから課税になりませんよというようなことを言ってみてもあまり意味がない。そこで収入基準で、サラリーの額で表示をして御説明を申し上げている関係にございます。
#15
○小林(政)委員 この点については参考人の方々からいろいろお話の出たところであって、むしろサラリーマンの場合には、給与所得控除を含めて、そしていわゆる課税最低限が幾ら幾らだというようなことは、幻想を与えるだけであってごまかしじゃないか、このような御意見も出ておりましたけれども、本来課税最低限の表示というものはあくまで人的控除を中心にして明らかにしていくということが当然のことじゃないか。いたずらな問題を含めて、そしていかにも課税最低限が相当高まったような錯覚を与えるというようなことはちょっと問題だというふうに私は思いますけれども、いかがでしょうか。
#16
○高木(文)政府委員 私も全くそう思います。しかし、いままで、たいへん失礼でございますけれども、たとえば各政党で政綱をお掲げになるというときには、サラリーマンの収入で百万までとか百二十万までとか百五十万まで税金がかからないようにしようではないかということが、各政党とも綱領みたいなところには掲げられておるわけで、新聞等でも、サラリーマンは幾らから非課税にしたらどうだというようなことが議論される場合には、収入基準で議論されているわけでございまして、全く税だけの分野で考えますならば、おっしゃるように、収入基準で表示するよりは人的控除だけで表示したほうが、より正確でありますし、正しいと思うのでありますけれども、税の問題というのは、税専門家だけではいきませんので、社会一般の方に理解していただくという意味からいいますと、サラリーマンにとってはどうしても収入基準で表示してもらったほうがわかりいいというのは、これまた実際のところでございますから、そういう意味で言っているわけでございます。
 なお、課税最低限の問題は、もう先刻御承知のとおりでございますので、しいて申し上げる必要はありませんが、これはあくまで説明の問題でございまして、税の組み立ての問題としては、扶養控除が幾ら、基礎控除が幾ら、配偶者控除が幾らという人的控除であるとか、給与所得控除が幾らであるとかいうことがきまっているわけでございまして、いわゆる課税最低限幾らというふうなことは、税法の上では何らきまっていない。その計算上の結果であるにすぎないというものでございますことをつけ加えておきます。
#17
○小林(政)委員 最近の給与所得者の納税人口というものが、これも問題になっておりましたけれども、特に毎年毎年累増を続けているわけでございますし、今年度も約三千万人にも近づくというようなところに達しておりますけれども、年々ふえていく原因というものはどこにあるとごらんになっているのでしょうか。
#18
○高木(文)政府委員 一つの大きな原因は、やはり給与の伸びと減税のスピードとの関係であろうと思います。給与の伸びと同じだけの割合で減税あるいは課税最低限の引き上げが進んでいけば、それはふえない理屈でございます。しかし、全体として今後国の担当すべき仕事の量がふえていくということから、給与の伸びに対応するだけ課税最低限を引き上げていって、結果として所得税収を全くふえないようにするということは考えられない現状におきまして、よく御承知のとおり、最近十年近くの間は、いわゆる自然増収の大体二五%から三〇%ぐらいの間の減税が毎年行なわれているわけでございます。そういう前提に立つ限りにおきましては、どうしても若干納税人員に伸びを来たすということになる全体の趨勢であろうかと思います。
 しかし、それよりも最近の非常に顕著な原因となっておりますものは、初任給の上昇の関係でございます。給与水準全体の伸びがかりに一五なら一五といたしましても、御存じのように、ここ十年ほどは、初任給水準の上昇率が平均上昇率をはるかに上回って、それも年々きわめてステディーに上がっていっております。したがって、全体の所得税の減税の中で相当ウエートを課税最低限のところに置いてまいりましても、なおかつそれに追いついていかないというような現状にあるわけでありまして、それが一番大きな原因であると思います。
 そのほか、専従者給与等につきまして、御存じのように、青色申告の個人営業者の専従者給与につきましては、約五年ほど前から、法令上最高限を置かないで、企業のほうで常識的な水準で専従者給与の額をきめられることになりましたし、税務の執行におきましても、それを否認しているという実例はほとんどございませんので、最近に至りましては漸次専従者の給与水準が上がってきておる。したがって、個人、法人を問わず、税法上給与を受けて、そして税法上の独身者になる人が非常にふえてきておるわけでございます。そしてそれは、課税最低限を突き抜けて給与を受けても相対としては有利だということから、漸次そういう傾向が出てきておるわけでございます。まあ、ほかにもいろいろあろうかと思いますが、一つは全体の所得税のあり方と給与水準のあり方の問題、一つは初任給水準の問題、一つは個人、法人を通じて専従者的性格の方の納税者数がふえつつあるということ、こういったことが主要な原因でないかと思っておりますが、その点の分析は、申しわけございませんが十分できておりませんので、これは私の、まあ感じであるということでお受け取りを願いたいと思います。
#19
○小林(政)委員 私はやはり、いまいろいろ述べられましたけれども、この中で大きな問題は、何といっても人的控除が非常に低い、だから、初任給が上がれば当然未成年者までが全部納税者になっていく、こういう結果が出てくることは、これは当然だろうと思うのです。事実、独身者の場合には、給与所得者でいわゆる四十三万、平年度四十五万円、そうして白の事業者の場合には二十一万五千幾らです。これでは、具体的に納税者がどんどん累増していくということは、実際に初任給等が上がっている現在の社会情勢の中で、中学を卒業してすぐに課税されるというような、こういう結果が引き起こされてきているということは当然のことじゃないかと思うのです。私は、事実二十一万五千九百七十九円というような課税最低限で、貯蓄のゆとりのある生活というようなことがほんとうにいえるのかどうなのか、この点について、大蔵省一体どう考えているのか、私はこの点をまず明確にお答えを願いたいと思います。
#20
○高木(文)政府委員 ただいま御指摘の中の、非常に若い若年労働層についてまで学校卒業直後に課税になっていく状態はおかしいではないか、これはもとはといえば、いわゆる課税最低限の引き上げ幅が小さいからではないかという点は、私どももたいへん気にしておる点でございます。この点につきまして、これまた日本だけの現象かどうか、いろいろ調べておるのでございますが、この点につきましても、どうもあまり諸外国とも関心を持っておらないと申しますか、諸外国の学者等につきましていろいろ聞いておりますけれども、必ずしもそういう調査等も行なわれておらないようでございますし、そこで、的確な資料が得られないのでございますが、私どもが調べました感じでは、必ずしも若年労働者、しかも義務教育終了直後に就職した者が課税になるという状態があるということが、それがつまり課税最低限の制度の置き方がおかしいからだということになるのかどうか、これが、日本だけが常識的にかけはずれているかどうかということはチェックしてございます。その結果では、諸外国とも、ほとんど全部といっていいくらい、就職と同時に、年齢のいかんにかかわらず課税になっておるというのが現状でございます。
 それは国によって違いますけれども、日本よりもはるかに課税最低限と初任給水準との関係はもっと開きが大きいというか、日本の場合ですと、まあ初任給の平均水準よりは課税最低限のほうが下にあるということでございますが、諸外国の場合には、ほとんど問題にならないぐらいかけ離れて下のほうにある。これは、一つには、諸外国の給与体系は以前から比較的若年者に厚いという関係にあった。日本の場合には、そこがいわゆる終身雇用制によって、長く勤務すると給与が伸びていくという体系がいま切りかえられつつあるということから、いままではそういう方には税がかからなかったものが、最近になって税がかかり出したということから、非常に問題が大きくクローズアップされているわけでございますが、諸外国においては、ずっと以前からそういう人も当然に課税になっているという関係にあるようでございまして、その一事をとらえて、現在の課税最低限の水準が非常識なものであるという御批判は当たらないのではないか。私ども、非常に気にはしております。気にはしておりますが、いろいろ調べてみましたところでは、日本だけがおかしくなっているということではないということがいえるのではないかと思っております。
#21
○小林(政)委員 私が伺っているのは、現実に二十一万五千九百円というようなこういう課税最低限というものが、実際にそれ以上になっていけば課税される、そこまでは課税しない、こういう基準の置き方になっていることに問題があると言っているんです。実際、これでもって具体的に生活が保障できますか。
#22
○高木(文)政府委員 問題は、税法上の独身者と実際社会実態における独身者なり生活との関係でございまして、日本の課税制度は、まず第一に稼得者単位になっております。消費単位になってないわけでございまして、稼得者単位になっております。稼得者単位での課税最低限の問題でございます。したがって、独身者があって、その独身者の課税最低限は、いまおっしゃるように、かなり水準が低いというわけですが、その独身者が独身者として一戸をかまえて、そうして生活をしているという実態が一般的であれば、いまおっしゃるように、いまの水準ははなはだおかしいということになりましょうけれども、税法上の独身者が世の中における生活の生計単位であるという例はきわめて希有に属するわけでありまして、夫がどっかに勤務し、妻もどっかに勤務しても、それは二人で家計生活が営まれる。夫についても、妻についても、それぞれその水準から課税対象になりますよということでございますけれども、生活単位はそれぞれが独立ではないという実態から見ますと、いまのように、それだけで生活ができますかという議論には直接はなかなかつながらない。
 ただ、まれな場合には、それはそれ自体がそれで稼得の単位の方が同時に消費単位になっている場合がありますから、その場合にどういう問題があるかということは、例外的にはないとはいえないと思いますが、一般的にはあたかもその税法上の課税最低限で直ちに生活できるかどうかというふうにお考えになりますと、非常におかしなことになりますけれども、それは税法上の課税単位という問題と生活単位の関係をお考えいただく必要があろうかと思います。
#23
○小林(政)委員 私は、いまの論議こそ飛躍しているのではないかというふうに考えます。確かにわが国の税法は消費単位を家族の場合もとっておらないで、いわゆる所得を得る者、そこに重点を置いて課税をする、このような制度をとっているわけでございます。しかし、この問題は、私はむしろ課税最低限二十一万五千円でよいのだといういまの論理には何ら結びつかないと思うのです。事実また、税法上の独身者ということを言われましたけれども、実際にいま若い人たちは、家庭の中で他の家族と生活をしていても、事実自分が所得を得るというような状況の中で、自分の所得に対して課税されるというこの最低限があまりにもこれでは低い。こういう中で大きないろいろな問題が出てきているんです。私はやはり本来課税のあり方というものは、少なくとも課税最低限というものをきめるという考え方の中には、ある程度のゆとりのある生活というものはやはり保障していく、ここのところに基礎を置かなければ、これが二十一万であろうがあるいは二十万であろうが、問題にならない、こういう乱暴な立て方こそが私は問題だと思います。まして私は、基礎控除とか配偶者控除、扶養控除というような人的控除というものは、生計費問題とやはり直接かかわりを持つ性格の控除である、このように考えますけれども、この点もう一回はっきりさせていただきたいと思います。
#24
○高木(文)政府委員 ただいま御指摘の二十一万五千九百七十九円というのは、これは事業所得者で、青色でない白色の方で、かつ独身の方の課税最低限について、私どもが計算をいたしましたものをお示しした数字を御指摘のことと思います。私どもも確かに全体として二十一万五千円というのはいかにも低いではないかという点については、そのように思うのでございますが、事業所得者の場合は、これは事業収入から事業費経費を引いたものが事業所得になるわけでございますが、その事業所得者で、売り上げから経費を引いた残り、したがって所得、それが二十万、それが独身者という場合が、一体現実にどういうところにどういうふうになっているのかということ、そしてもしそういう方が現実の問題として納税ということになってきて、どういう事態になっているのかということが、申しわけありませんが非常に不勉強でございまして、そこがよくわかっておりません。一体独身者で白で事業をやっているという方で、現在納税者になっている方の実態がどういうふうになっているかということについては、今後十分研究してみなければならぬと思っております。と同時に、いま御指摘のように、現実の問題を私は申し上げておるわけですが、今度は理論的にはおっしゃるようにはたしてこれでうまくいくのかどうか、生活はできると思っているかという問題は十分あろうと思います。
 ですから、その点の問題としては、いまおしぼりになりました問題は人的控除全般の問題の中の、特に基礎控除の水準の問題を議論しておられるということになるわけでございます。先ほど来御指摘のように、何年も毎年一万円ずつ上げてきたということでは不十分ではないかという点も、私どもも一面においてはそういう感じを持っておるわけでございますが、最近におきましては、むしろ夫と妻の関係というふうなことがありまして、人的控除を議論いたします場合に、基礎控除と配偶者控除といずれに重点を置くべきやという問題がありまして、ここ約十年近くは配偶者控除の引き上げに非常に重点が置かれてまいりまして、数年前から現在では基礎控除と配偶者控除が同額になってきた、こういう経緯でございます。今後とも人的控除の問題を毎年毎年検討してよく勉強していく必要があるわけでございまして、そのあたりにつきましては、御指摘の点は理論的にまず問題があるということは私も承知をいたしておりますから、そのあたりよく考えてみたいと思っております。
#25
○小林(政)委員 基礎控除を中心にしてお伺いをしてきたわけですけれども、基礎控除を中心にしながらも、私はやはり課税の最低限のきめ方というものは、人的控除というところに大きくウエートを置くべきだということは、これはいままでいろいろな例もあげてお聞きをいたしましたけれども、当然のことではないか、このように考えるわけでございますし、また諸外国の例なども先ほど引き合いに出されまして、日本の独身者の場合の課税最低限、いわゆる基礎控除というようなものはむしろ外国よりもよいのだというような受けとめ方をされるような発言がございましたけれども、私はこれは逆だというふうに考えますけれどもいかがですか。
#26
○高木(文)政府委員 独身者の課税最低限は必ずしも各国に比べて日本の水準が非常にいいところにもうすでにいっておるということではございません。御指摘のように、そこにはかなり問題があるわけです。日本の課税最低限が非常にいい水準になっておるというのは、これは給与所得控除が諸外国に比べて非常に高いということがございますものですから、その関係でサラリーマンについての課税最低限は世界的水準に比べて相当日本がいいという状況にございます。そこでここ十年ほどの減税の重点は、非常にサラリーマンにウエートを置くべきだ、あるいはクロヨンとかトーゴーサンという問題があるではないかということから、どちらかというと基礎控除、配偶者控除、扶養控除というような点に重点が置かれるよりは、むしろ給与所得控除の制度のほうに重点が置かれて、率直に申しましてはたして必要経費の範囲内であるかどうか、それをかなり飛び越えるような水準で給与所得控除制度が拡充されてまいりました関係で、諸外国と比べましてもサラリーマンの課税最低限の水準は御承知のように世界的に高い水準にある、こういう関係になっておりますが、いわゆる人的控除、なかんずく基礎控除の水準は必ずしも日本の場合はそれほど世界に比べていい状態になっておるということではないわけでございます。
 先ほど申し上げましたのはそういうことではなくて、今度は諸外国での初任給水準と諸外国の独身者の課税最低限との関係でございまして、この関係から見ますと、日本と諸外国と比べて日本の若年労働者が非常に不利な状態にあるということにはなくて、むしろ学校卒業早々に課税になる状態は諸外国のほうがからいという状態にあるということを申し上げたわけでございます。説明が不十分であったかと思いますが、独身者の課税最低限、よってもってつまり基礎控除という点につきましては、これは日本は比較的低い水準にある。それは他の配偶者控除や扶養控除とどちらに重点が置かれていくべきか、つまり減税の重点がどのような世帯構成を中心に考えられるべきかということについて、ここ何年か歩んでまいりました道筋との関係で、比較的基礎控除の上げ幅が小さくなっておりますから、そういう意味でそこのあたりはまだおくれておるという実態でございます。
#27
○小林(政)委員 サラリーマンの給与所得控除の問題も問題でございますけれども、むしろこの際基礎控除あるいは人的控除というものを大きく引き上げていくということが非常に重要になってきているのではないか。そうでなければ、先ほど来から問題になっておりますサラリーマンの給与所得控除を含めた額が課税最低限というようなことこそがむしろごまかしであって、今日やれクロヨンだとかトーゴーサンとかいわれるようないろいろな問題が問題になっておりますけれども、むしろもっと基礎的なところで、課税最低限を人的控除できちっと引き上げていく、ここのところに今後大きな重点を置いて、やはり生活費にはかからないような課税最低限をそこにつくっていくということが非常に重要ではないだろうかというふうに私は考えます。
 外国などを比べても、やはりイギリスの場合の独身の人的控除が三十六万九千百七十八円、そしてまたカナダが四十七万九百十円、夫婦の場合でも、実際にイギリスの場合には四十八万一千円、そしてカナダの場合には八十九万四千七百二十九円、日本の場合にはごまかしの課税最低限でなければ具体的には独身者の場合二十一万、そして夫婦二人の場合には四十二万にしかならないわけじゃありませんか。こういう点から考えて、やはり人的控除、ここにこそやはり最重点を置いて、そして課税最低限をやはり引き上げを行なっていくということが非常に重要になってきているんではないかというふうに考えますけれども、この点について明確な御答弁をお伺いいたします。
#28
○高木(文)政府委員 それは、まさに国民の求めるところが国会の御意見に反映してきめていただく問題だと思います。問題は、各種の所得者、事業あるいは給与その他、事業の中でもその他事業というようなものがございますが、普通の営業でないものもございますが、そういう各種の事業の所得の形態によるバランス、資産所得と勤労所得との問題はまた別にいたしまして、勤労性所得といいますか、年々の勤労と関係のある所得の相互間のバランスの問題が一つと、もう一つは家族構成のいかんによるバランスの問題が一つ、その前提として現在日本がとっておりますような稼得者単位の課税制度のあり方、さらに言うならば源泉徴収制度のもとにあるものとしからざるものというようなものを総合的に御判断いただいて、そしてどの階層あるいはどの職業の方もどうしてもやはり自分だけが非常に税が重い、よそは税が軽いというような感情を持ちがちでございます。それを全部をひっくるんでどこにバランスを求めるべきかという問題でございまして、おっしゃるように人的控除、なかんずく基礎控除は所得税制度のまさに基本でございますから、そこに焦点を当てていろいろ研究しなければならぬのはおっしゃるとおりでございますが、単純になかなかそれだけでまいりませんのは、実はいま申しましたようないろいろな形態別、階層別、また現在の税制制度上の仕組みということとの関連でバランスがとれているかとれていないかということで御判断いただくべきものであろうと思います。私どもも、基礎控除のあり方そのものについての研究といいますか、そこに重点を置くべきであるという御意見については、われわれといたしましても基本的には何ら異論がないわけでございます。
#29
○小林(政)委員 現在のこの課税最低限の水準というものについて、一体この水準をどういうふうにお考えになっているのか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。
#30
○高木(文)政府委員 課税最低限の水準と申しましても、先ほど来お触れになっておりますように、給与の場合と事業所得の場合といろいろありますし、それから事業の場合とあります。ただいま小林委員御指摘のように、非常に人的控除に重点を置いてそれを引き上げていかなければおかしいではないかという御意見の方と、税制と税の執行全体を通じてやはり源泉徴収制度の関係もあり、また源泉徴収制度であろうとなかろうと給与所得というものはそもそもガラス張りである。実はこれは源泉徴収制度と関係なく給与所得というものが他から支払われるものであるということとの関係上非常に明確になっております。金額にごまかしがないといいますか、明確になっております。そういう関係上、他のものに比べて何といいますか金額そのものが明確にわかりやすいということとの関係上、どうも給与所得者に対する負担が重いのではないかということの主張を強くされる方があるわけでありまして、そちらの給与所得と事業所得とのバランスをどういうふうに考えるかということとあわせて見なければなりません。
 したがって、必ずしも課税最低限の問題にといいますか、人的控除の問題に今後は重点が移されていくべきか、なおやはり給与所得控除のような問題に減税の重点が置かれるべきかということは非常に大きな問題でございまして、にわかにここで従来のように給与所得控除よりはどちらかというと人的控除の手直しのほうに重点を移すべきであるということにもまいりませんし、その中でもまた三控除のバランスの問題がいろいろあるわけでございます。たとえば教育費控除ということの御主張も非常に強いわけでございまして、それとの関連で扶養控除をもっとふやしたらどうだ。現在基礎控除と扶養控除との間に六万の差がありましたのを、今度差を縮めたわけでございますが、そういう方向に行くべきだという御議論もあるわけでございまして、そこらはこの場でにわかにその中でどこに重点を指向していくということは申し上げにくい。ただし全体としては、課税最低限は物価その他の関係もございますし、今後も是正されていくべきものと思っております。
#31
○小林(政)委員 非常に何か、――端的に私の質問にむしろお答えいただいたほうがいいと思うのです。私は何も給与所得がどうのあるいは個人事業所得の場合の課税最低限がどうのということを伺っているのじゃなくて、むしろいろいろあるだろうけれども、課税最低限そのものの水準を一体どう考えているのかということをお伺いしたのであって、何か非常に回りくどい答弁でよけいわからなくなっていくみたいな、何を言おうとされているのかが明確にならないような感じがいたします。実際に働く国民の生活実態というものを私はあまりにも御存じないのじゃないだろうか、このように考えます。
 私ども自身いろいろ調査をいたしてまいりましたけれども、その一例をあげれば、現在全く勤労国民の生活の実態というものがどういうところに来ているか。所得水準が上がった上がったと大蔵省は言うけれども、実際に現在の生活実態というものがどうなっているのかということを私はいろいろな団体あるいはまた個人こういう方々からお話も承ったり、あるいはまた事業を家計簿等を見せていただく中で実態を把握してまいったわけでございますけれども、その一例によると、ある夫は三十八歳で、そして日給月給の旋盤工をして働いている。妻が二十六歳でもって、そしてこれがある程度アルバイトをしながら共かせぎをして、一歳二カ月の子供、いわゆる夫婦子一人の三人の世帯ですけれども、二月のその家計簿をいろいろ説明していただき、そして見せてもらいますと、どんなに切り詰めて計算しても十一万六百六円かかっているのです。その中身をいろいろと聞いてみると、決してこれはこの点を抜かしてもよいのではないかというようなそういうものは私は何一つ見当たらなかった。家賃は、六畳と四畳半の部屋でもって二万二千円、子供の保育料が、公立の保育所が少ないために未認可の保育所に子供を預けて一万八千七百円、そして外食を含めて夫婦二人の小づかいが一万七千円、電話代が二千五百九十三円、子供がたまたま病気をして六百八十六円、光熱費が三千七百十一円、食費については標準米しかとらない。しかもあとパンを主食にしているけれども、それで三千二百円、牛乳は一日三本でもって二千四百六十八円、副食費、調味料その他すべてのものを含めて一万九千三百三十二円、交通費はたまに乗る車代を含めて三千三百四十円、新聞代、雑貨が一万一千九十九円、そしてまたこの人の場合にはある程度親に仕送りをしている、こういう状態で約一万五千円の仕送りをこの月はいたしておりますけれども、総支出が十一万八千四百八十九円で、具体的には七千八百八十三円の赤字を出しているのです。この中で、この人の生活の状態で一体どこに余分があるのだろうかというと、どれ一つ切り離すことのできない、直接かかる家計の費用であります。こういう点から考えて、この方の課税最低限、いわゆる平年度分で九十三万七千円です。四十八年度分は九十一万六千円。こうなってまいりますと、実際に十一万八千四百八十九円の経費が、削るところのない経費がかかっているにもかかわらず、この場合には、課税最低限はきわめて低いということがいえるのではないでしょうか。
 私は、この方の一例を申し上げましたけれども、あと多くの人たちからのいろいろな資料ももらい、話を聞いてまいりましたけれども、四十七年の一月から十二月まで一年間を通して約二百世帯を対象に調査をされている、ある生活協同組合の家計簿調査グループというのがございます。この方々からもいろいろと資料をちょうだいして、そして分析をいたしてみますと、実際に平均家族三・八人でもって世帯主の年齢平均四十一・五歳、年収百七十二万三千八百二十一円で、ボーナスが四十二万二千四百九十八円、平均月収十四万三千六百五十二円になりますけれども、この場合でもいわゆる一年間の税金が十三万八千二十四円、社会保障関係費が十四万八千八百三十九円、税金と社会保障費でもって約二カ月分の働いた収入はそっくりそちらに回っていくというような結果が出ておりますし、また、昨年一年間調べた結果、ことしの一月との物価の比較などもされておりますけれども、特に生活に関係のありますいわゆる魚介類だとか肉類だとか野菜はものすごく上がっているのですね。教育費も年間十万をこしております。
 こういう生活実態というものが明らかになって、この中でいえることは、一つには共通している点は、夫の収入だけではもはや生活が維持できないということです。何らかの形で共かせぎをしなければ一カ月の家計を維持していくことができない、しかもいずれの世帯も全部赤字を出しているということです。しかも相当切り詰めているところは食費を詰めなければならない。こういうような生活実態を考えますときに、一体いまのこの課税最低限が机の上でもってひねり出されたような数字で、ほんとうにこれで生活というものが成り立っていくし、またいまの課税最低限というものは水準から見ても適当であるなどということがいえるのかどうなのか、ひとつ明確に、この点はむしろ私に答弁というよりも多くの国民に向かって答弁をしていただきたいと思います。
#32
○高木(文)政府委員 ただいまのような問題があることは承知をいたしておりますが、一つ問題のございますのは、課税最低限と申しますのは、さっきから申しておりますように、そこから課税になるかならないかという限界点であると同時に、そこをこえる額について、四十万円までは一〇%、それから八十万円まではさらに一二というふうにかかってくるわけでございまして、それをこえた額については全額課税ということではないわけでございますから、ですから、いかなる意味におきましても、課税最低限と家計の関係からいって、直ちにそれが生活不能ということになかなかつながるという話ではないということであるわけでございます。
 ただし、いま御指摘のように、非常に問題があることは事実でございます。いろいろな意味において日本の経済がかなり大きくなったとは申しましても、いろいろな面においてまだおくれがございます。ただいま御指摘のように、教育費に非常に金がかかるとか、いろいろな問題があるわけでございますので、ですから、そういう問題については何ぶん長い間にわたって何もないところから立ち上がってきた現状でございますから、漸次、時間をかけてではありますけれども、改善していかなければならぬ点は御指摘のとおりでございます。また、ただいま詳しくお示しいただきました点につきましても、私どもも一そう勉強して、そういう点をよく考えてみなければならぬということだと思います。
#33
○小林(政)委員 私は、生活実態というものをほんとうに踏まえて、そこに重点を置いて課税最低限というものを、十分ここでもって新たな角度で国民生活優先という立場から税制の上からも再検討すべきだというふうに思います。いま日本の生活水準がどのような状態にあるかということは、政府の統計資料によっても幾多いままでに明らかにされてきているではありませんか。政府が出している経済白書を見ても、住宅取得のために働かなければならない日数なども、日本の場合は労働者が土地を百五十平米買うのに六年と百四十九日分の賃金が必要だというのです。アメリカの労働者は四十日分でいいというのです。西ドイツの労働者は百七十四日分だ。これほど、いまいろいろと日本の生活というものが国際的に見ても賃金が低いとかあるいはまた生活実態が、蓄積がない、非常に高くなってきている、こういうことが言えるのではないかと思うのです。
 個人消費支出の数字を見ても、可処分所得の実態を見ても、可処分所得なんかでも、日本はアメリカの四割にも満たないじゃありませんか。こういうような実態をほんとうに踏まえた上でもって、そして国民生活最優先の立場で税制がいわゆる課税最低限、生活費非課税ということをはっきり打ち出すべきじゃないでしょうか。憲法が保障している文化的な生活というものを憲法に基づいてあらためてここでもってしっかりと踏まえた上でもって課税最低限というものを取り上げていくということが非常に重要ではないかというふうに考えます。この点について政務次官からひとつ御答弁をいただきたいと思います。
#34
○山本(幸)政府委員 先ほど来、いろいろ国民生活の実態ということから課税最低限の御質問がございました。課税最低限というのは、先ほど来局長が御説明申し上げますように、税制の上では具体的にはあらわれていない一つの控除をいろいろ勘定した結果として、これくらいのところから税金がかかります、いわばこういう説明用のものでありますけれども、しかしこれは国民にとっては非常に関心の的であるわけであります。いろいろ税制を立てます場合に、税制には一つの税の理論がある。ですから、一つの筋道を立てて税制を組み立てなければならないということが一方にございます。と同時に、私も税のしろうとでありますけれども、いろいろ見ておりますと、国民に、たいへん簡単明瞭といいますか、なかなかわかりにくい点がたくさんにございますから、何とかもう少し国民にわかりいいような税制にならないかという要求も非常に強いと思うし、政治の上ではぜひそれを考えていかなければならぬ。しかし、一方には税制というもののたいへんむずかしい理論があるわけでございます。その理論を立てながら、そしてまた、国民にわかりやすく御理解いただけるような税制にしていく。国民にわかりやすい税制にしていくという上におきましては、先ほど来お話がございますように、何といっても国民の生活の実態あるいは経済の進み方というものをとらえて、そこの上に組み立てられた税制でなければならぬと思います。
 もう一つ、私はきのうも申し上げたのですけれども、税金を取られる、取られるというけれども、やはりこれから国が目ざさなければならない福祉国家というものの財政をまかなう資金調達をどういうふうな角度からやったらいいかというそういう観点に立って税は考えなければならぬのであろうと思います。そういうことを踏まえまして、これから税制を大いに考え直していかなければならぬところに差しかかっておることは間違いないと私も思いますので、十分に先ほど来のお話を踏まえまして考えていきたい、こう思うわけでございます。
#35
○小林(政)委員 いま政務次官から御答弁があったわけですけれども、私は、やはりこの際ほんとうに勤労国民が納得のできるような税制、いわゆる課税最低限を引き上げていくという立場に立って、これを実施してもらいたいというふうに思います。したがって、主税局長からもいろいろ言われておりましたいわゆる一〇%から七〇何%にわたる刻み等についても、これを低い所得のところは改正をしていくというようなことをお考えになっておるのかどうか、この点を一つ伺うと同時に、少なくとも夫婦子供二人の標準家庭の場合には、課税最低限は年所得百五十万までは課税するな、ここに課税最低限を置くべきだ、私どもはこういう立場をとっておりますが、これは決して何かとてつもない数字であるというようなものではなくて、いまやだれしもが要求している状態のものでございます。この点について、直ちに年所得百五十万円までに引き上げるということについてどうお考えになっているか、答弁をもらいたいと思います。
#36
○山本(幸)政府委員 直に答えよというお話でございますけれども、なかなか御満足のいくようなお答えはこの場ですぐには出ないと思うのです。百五十万円説というのは野党の側からもよく承っておる点でございます。近代国家が運営されていく上においては、やはり財政の面からも考えていかなければならぬということもございます。これはすべて言うなれば国の財政経済全体から割り出して大いに考えていかなければならぬ、編み出していかなければならぬ政策であろうと思うのです。いまお話しのように、課税最低限についてはここのところ数年来毎年上げてまいりましたのも、局長は、課税最低限というものは生計費と直に結びついたものではない、こういうことでありますけれども、しかしやはりそういうことも十分頭に置きながらやってきたのであるという御説明をいたしておるわけでありまして、そういう課税最低限を毎年上げてきたという実績もひとつ御理解をいただきたい。今後の問題につきましては、先ほど来お答え申し上げまするように十分にそういう点を踏まえた税制のあり方というものを考えていきたいということで御理解をいただきたいと考えるのでございます。
#37
○小林(政)委員 勤労学生控除の対象になるいわゆる勤労学生の所得制限、これをもっと引き上げるべきではないか、私はこういう立場に立って大蔵省並びに文部省にお伺いをいたしたいと思います。
 今回働きながら学ぶ勤労学生の対象範囲を拡大して、その所得制限を三十二万円から三十四万円ということにしたわけですけれども、これは何も特別ということではなく、基礎控除が一万円上がって勤労学生控除が一万円上がったということによるわけでございますが、現実にいまの社会の現状から見てこれが妥当なものであるのかどうなのか、私は大きな疑問を感ずるものでございます。
 そういう立場に立って、まず最初に文部省に伺いますけれども、勤労学生といわれている学生は一体どのくらいいるのか、そしてその実態はどうなっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
#38
○遠藤説明員 大学生について申しますと、夜間部の学生が約十七万おりまして、そのうち定職を持っておる者が、推定ではございますけれども、約十二万ございます。
#39
○小林(政)委員 高校の場合はどうですか。
#40
○遠藤説明員 高等学校につきましては、定時制と通信制の高等学校に在学する者が五十万おります。そのうち定職を持っております者が約四十万と推定されております。
#41
○小林(政)委員 定職を持っている学生さんの中で、勤労学生控除の対象に具体的になっている人というのは、総数の中で何割ぐらいになるのでしょうか。
#42
○遠藤説明員 大学につきましては、今回の改正によりまして対象となる者が約四五%ぐらいになるであろう、高等学校につきましては約八〇%の者が対象になるであろうというふうに推定がされております。
#43
○小林(政)委員 そうすると、高校生の場合には比較的高い数字になっておりますけれども、大学のいわゆる夜間に通っている場合には半分以上が対象外ということになるわけです。先ほどこれも問題になりましたけれども、実際に最近初任給が上がっているというような実態の中で、定時制高校あるいはまた夜間の大学に通っている学生たちの中から、恩典を受けることができない者とそうでない者とが同じ条件の中で出てくるということについて、文部省は一体どうお考えになっているかということと、それからこの勤労学生控除の問題について、文部省としては具体的にどのような見解をお持ちになっているのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
#44
○遠藤説明員 文部省の立場から申しますと、勤労学生の所得の最高限が幾らであるかということに関係はございますけれども、現在の制度でございますと、合計所得金額が今度の改正によって三十四万円以下の者が対象になる、それをこえますと全然恩典がないという制度よりは、むしろ修学に要する費用というものが――文部省の立場からいたしますと、教育を奨励するという立場からも、所得が多くなりましても、十二万円あるいは今度の改正で十三万円になります控除がございます、これは大学生の場合ですと、大体平均の授業料あるいは修学等学生として勉強するために必要な金額に見合うような金額でございますので、所得が多少高くなりましてもこの程度の控除は恩典が受けられるようにしてもらいたいものだという意向は前から持っておりますが、制度の改正ということになりますために、今回もそこまでは今度の法案には盛り込まれておりませんけれども、従来から希望としてはそのようなものを考えております。
#45
○小林(政)委員 大蔵省にお伺いいたしますけれども、今回控除額を一万円引き上げた。これもまた一万円なんですね。何の根拠もないのかもわかりませんけれども、私このいま文部省からのお話を聞いても、勤労学生のために学資を見てあげるべきではないかということは、これは私は当然の意見だろうと思いますけれども、この一万円の根拠をもう一回聞かせてください。
#46
○高木(文)政府委員 勤労学生控除の額を一万円上げた根拠につきましては、これは他の寡婦控除等と同じ額だけ上げたということでございます。それ以外に格別根拠というものはないわけでございます。ただ、先ほど来まさに御指摘がございますように、独身者についても一万円しか上げないじゃないか、それから奥さん本人についても一万円しか上げないじゃないか、先ほど御指摘のように夫婦と子供一人の家計でも非常な負担になっているじゃないかという事態のときに、勤労学生についてさらにそれ以上の改善措置を加うべきかどうかということは問題でありまして、むしろ先ほど非常に綿密に御指摘になりました夫婦と子供があってなかなか生活がむずかしい、家賃も高い、保育費も高いというようなところあたりに非常に問題がございます。それで、減税額全体をどんどんふやしていけばいいじゃないかという御議論であれば別でございますが、同時にやはりいろいろな世帯の、あるいはいろいろな稼得者のバランスの問題がございますので、それを考えますならば、基礎控除なり配偶者控除なりが一万円引き上げられたということとの関連から申しますと、障害者控除なり寡婦控除なりという特別控除につきましても、まずそれをこえた引き上げというのは非常にむずかしいのじゃないかということで一万円とされたわけでございます。
#47
○小林(政)委員 全くいまの何というのですか、そういう理論というものは、私の控除額を、あるいは勤労学生の控除額をもっと引き上げて勉学を奨励したらどうかということに対して、先ほど国民もたいへんなんだからという指摘があったので、学生だけはそんなことをすることはできない、こういう形にすりかえているのですね。私はこういうことはもってのほかだと思うのです。むしろ私は、この控除額はもっと引き上げを行なうと同時に、実際にはこの所得制限というものは撤廃をしていくべきではないだろうか。そして働きながら学んでいる青少年を、やはり社会的にも激励をしていくというようなことがいま非常に重要なんじゃないかと思うのです。東京などでも、知事が、中学を卒業してそして夜間の高校などへ行く子供たちに対しては、何らかの社会的な奨励と激励ということで、補助金を出してまで助成をしていく、こういうような態度をとられておりますけれども、実際に私はそういう立場から考えるならば、この所得制限というものは確かに撤廃をして、そして多くの勤労学生に対する激励になるようなこういう制度というものをやはり税制の上でもとっていくことが必要ではないか、このように考えますけれども、これは最後に政務次官に答弁を求めて私の質問を終わります。
#48
○高木(文)政府委員 先ほどからすりかえという御議論がありますが、それはちょっと私どもとして御説明をしておく必要があると思います。
 所得税の問題というのは、先ほどから何度も繰り返して申し上げておりますように、いろいろな所得によるいろいろな方々、それからいろいろな家族構成の場合のバランスの問題が一つあるわけでございまして、絶対額の根拠が非常に説明がつかぬということで御指摘、御非難を受けておりますが、それもありますけれども、問題はそのバランスの問題があるわけでございまして、そこでどなたもやはり税は軽いほうがいいというお気持ちをお持ちなわけですから、そこのバランスの問題があるということだけは御理解いただきたい。また私の答弁のしかたがちょっとまずかったものですからすりかえのようになりましたが、すりかえて申し上げたわけではなくて、そこの基礎控除、配偶者控除の引き上げ幅とこの勤労者学生控除の引き上げ幅とはやはりそこはある程度のバランスがないと、他方からまた非難が集まる、こういうことになることを申し上げたわけでございます。
 もう一点の所得制限のほうにつきましては、これはかねてから文部省のほうから非常に強い御要求がございます。何とかこの所得制限をはずしたほうがいいのではないか、またはずしてもらわぬと非常に困るという御意見がございますし、私どもの手元にも全国の勤労学生の教育に当たっておられる先生方からも非常に熱心にそういう御要請がございます。今後とも私どもはその問題をよく検討いたしていきたいと思いますが、ただ問題は、学生さんで勤労しておられる方の実態が戦後のような状態、この制度ができました戦後のような状態とたいへん変わってまいりまして、非常に各種各様の勤労の形態、またその親御さんの家計状態もいろいろな状態になってきておりますので、この問題はひとつよくこの制度が発足しました当時と最近との関係も比べながらもう一ぺん検討してみたい。確かに所得制限には問題があることは御意見のとおりでございます。
#49
○山本(幸)政府委員 人的控除がいろいろあるわけですが、その中で先ほど来お話しの基礎控除、配偶者控除、扶養控除のほかのいろいろな控除があるわけですが、これに加えましてまたいろいろな控除をしたらどうかというそういう御要請も次から次へ出てまいるということでございまして、この控除については一体こういうものを社会経済の実態に即していろいろと取り上げて逐次考えていくべきものなのか、あるいは税制というものの役割りといいますかそういうものから考えて、税は税で筋を通していって、そして歳出のほうでそういうものを考えたほうがいいのか、私はもう一つそういう選択があるのではないだろうか、特に社会保障その他の制度を拡充していく上においてはそういう考え方も私は一つの考え方ではないだろうかと思っておるわけでございまして、この控除のあり方については今後の税制の一つの大きな課題としていただいておきたいと思っております。
#50
○小林(政)委員 次に私は、所得税減税の問題、課税最低限ということはさておいて、三千百五十億円という減税だということがいわれておりますけれども、自然増収一兆一千五百九十六億から比べるならば二七・二%、私は減税割合の点からいっても問題があると思いますし、自然増収と減税の割合からいってもほんとうに小さな減税ではないか。むしろ減税というよりもことしの税制は増税になっているんじゃないか、この感を非常に深くするものでございます。
  〔大村委員長代理退席、木村(武千代)委員長代理着席〕
事実、自然増収の増と減税割合、こういうものから考えてみても、過去四十一年のときには自然増収に対して六九・七%減税したことがありますし、四十二年のときには四八%、四十五年のときには三八%、四十六年のときには、これは年度内減税が行なわれた年ですけれども、二四%減税を実際には実施しておるわけでございますし、それから見ればことしはむしろ――昨年一銭も減税をやっていないのです。そして二年間の自然増収というものは、事実四十七年度五千九百三十二億円、四十八年度におきましては一兆一千五百九十六億円、両方合わせて一兆七千五百二十八億円。それから見てもほんとうに小さい減税にすぎないし、減税などといえるものではなくて、先ほど申し上げたとおり大増税になっているのではないか。もっとこの問題については大幅な減税を実施することこそが必要だと考えますけれども、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
#51
○高木(文)政府委員 減税のことにつきましては、私ども事務屋といたしましては、決して大きな減税だとは思っておりません。またそう小さい減税だとも思っていないわけでございます。自然増収等の関係からいえば、過去における各年度の減税の規模と大体同じ規模のものであろう。先ほど四十七年は減税なしと言われましたが、これは見方でございますが、四十七年も四十六年度分に引き上げて行なわれたわけでございまして、四十七年分としては、本年の自然増収に対する二七・二という割合に対応いたします数字といたしましては二九くらいの大きさでございます。その前の年は大体二四くらいの割合でございます。その前、四十一、四十二年は非常に大きい減税があったということでございますが、それはまさに御指摘のとおりでございます。
 だんだん現在積極的に福祉をふやしていこうという体制になってくるということになりますと、おっしゃるように、従来、過去において相当特殊の、特定の政策目的をもって減税をしてまいりました時期ほどには減税はなかなかできにくい。本年の財政全体を見ていただだきますと、いろいろ御批判はあろうかと思いますが、社会保障なり社会福祉なりを充実すると同時に、公債依存率を前年以下に少しでも落とす。その程度で減税をして、その減税はほとんど全部所得税にするということで今回の減税規模がきまってきたわけでございまして、これは私ども税の担当者から申しますと、各方面からいろいろ強い御要請もございますし、またそれは当然そうあるべきものと思われますので、率直に申しまして、私どもとしてはできたならばもっと減税をしたいという気持ちは一方においてあるわけでございますが、そうしてみると、やはり財源調達機関であるという性格上、財政全体の立場を離れて議論できないわけでございますので、今回の程度のものでも財政全体のあり方との関係においてはまずまず最低限のものは減税ができたのではないかということで考えておるわけでございます。
#52
○小林(政)委員 冒頭にも私申し上げましたとおり、税制の面で新たな、画期的な、従来のそれこそ企業優先のそういう税制から、国民生活を優先する、そういう立場に立って税制が機能していくというような、こういう制度がきわめていま緊急の問題として必要になってきているんじゃないか。そういう点から、法人税問題等についてもいろいろと言われておりますけれども、特にこの所得税について、やはりこの際大増税というようなこういう結果、これをほんとうに国民に還元していく、こういう立場に立つべきではないだろうか。ことしの所得税は四兆二千四百十九億円、そして実際には八千四百五億円の大増税になっているわけですね、法人税の七千四百十七億円の増収ということはありますけれども。しかし、実際には所得税よりもはるかに下回っている。所得税の増収額というものは八千四百五億円という非常に膨大な額になっております。私はこの立場から減税を年内に実施をすべきときではないだろうか、このように考えております。
 特に給与所得課税の税収の見積もりを見てみますと、ことしは、四十三兆五百六十八億円に給与の総額がなっておりますけれども、その中で人的控除の総額が占める割合は二六・五%、金額にして十一兆四千三百二十八億円。それからいわゆる諸控除全体の合計が十四兆一千三十五億円で給与総額に占める割合は三二、七%になっております。したがって、課税所得というものが十七兆八千五百七十三億円で、給与総額に占める割合は四一・四%、こういうことになっておるわけですけれども、何年か前の、具体的には四十三年のときの給与所得税の税収見積もりと比較してみますと、これはもう非常に大きな問題がこの中に含まれているというふうに言わざるを得ないと思います。
 たとえばいわゆる人的控除の控除額が給与総額に占める割合というのは、五年前の四十三年には三二・八%であったわけです。それが現在は二六・五%になっている。そしてまた控除総額は当時三九・五%であったものが三二・七%になっておりますし、課税所得の給与総額に占める割合は当時三五・一%、現在は四一・四%です。このことはいかに減税がやられていないかということを証明する一つの指標であるというふうに考えますし、私は、当然こういう立場から見ても、本年度大幅な減税を断行していくということが重要じゃないか、こう考えますけれども、この点について御答弁をいただきたいと思います。
#53
○高木(文)政府委員 経済が伸びてまいりますと、給与の総額もふえてまいるわけでございます。給与の総額がふえてくるのに応じて諸控除額を同じ割合でふやしていくというかっこうになりますと、ほとんど所得税の増収はゼロになっていくわけでございます。そういうかっこうにして、そして財政に占めるウエートを落としていくというのがいいのかどうか、そこらに問題があるわけでございまして、ノミナルにふえる分、物価も上がってまいりますから、ノミナルにふえる分、それに若干の改善も加える、ゆとりを加える分というのは控除を上げるあるいは税率を落とすということによって直していかなければならないと思いますが、おっしゃるように、基礎控除、配偶者控除、扶養控除の給与所得総額に占める割合が落ちていることをどう考えるかといいますと、ある程度財政の規模がふえていくのが当然であるという前提に立つか、財政の規模が全くふえないようにしようという前提に立つか、そこの問題と、あるいはさらに直接税にウエートを置くか、直接税の中で法人税にウエートを置くか所得税にウエートを置くか、そういった問題の総合できまってくる問題でございます。でございますから、程度の差はありましょう。どの程度基礎控除、配偶者控除、扶養控除を長期的に見て上げていくべきかどうかという問題はありましょうけれども、給与所得総額に占めるそういう人的控除総額をある時期のある率を保てといわれましても、そこはなかなか現在の財政をふやしていくべきだという考え方からいいますと、合わないわけでございまして、直接のお答えにはなりませんですけれども、しかし御指摘のような関係から、つまり給与所得総額と所得控除という関係からのみ御指摘になりましても、それは財政全体の問題を御理解願いませんといけないのではないかというふうに思います。
#54
○小林(政)委員 年内に私はやはり大幅減税を実施する必要があるというふうに考えておりますけれども、この点について明確な答弁をいただきたいと思います。
#55
○高木(文)政府委員 これはむしろ政治の問題でございますから、非常に高い観点からの御判断でなければいけないことだと思います。ただ、年内減税は昭和二十六年に行なわれました。それから昭和四十六年に二十年間の間を置いて行なわれたわけでございます。昭和二十六年には朝鮮動乱のあとで行なったわけでございます。昭和四十六年にはいわゆるニクソン・ショックのあとで行なわれたわけでございます。過去の例を申しますと、十何年かに一ぺん起こるような異常な事態のときに、特別に経済政策目的のために行なわれたものでございまして、現在の状態がそういう状態であるかどうか、そういうことの総合判断によって御決定願うことだと思いますが、事務屋といたしましては、現在の段階は昭和二十六年や四十六年のようなたいへん異常な経済状態であるとは思っておらないわけでございます。
#56
○小林(政)委員 私は、あと租税特別措置並びに法人税の問題等を質問いたしたいと思いますけれども、その点については、きょうではなくて後日行ないたいと思いますので、所得税だけに限って、いま大幅減税をぜひとも実施すべきである、そして課税最低限を人的控除を中心にして引き上げるべきである、この二点を中心にして質問をいたしたわけでございますけれども、ぜひともこれを実施するように強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
#57
○木村(武千代)委員長代理 午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
   午後零時十五分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時十三分開議
#58
○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。広沢直樹君。
#59
○広沢委員 私は、まず基本的なことを政務次官に最初にお伺いしておきたいと思うのです。
 いわゆる福祉へということで、福祉財政への税制の問題として考えられる面が二通りあると思います。いわゆる福祉財政の財源というものをどうするのかということと、さらに、税制の公正による税負担面のいわゆる福祉の問題はどう考えるか、この基本問題をはっきりしませんと、減税へということを盛んに言いましても、やはり基本的にこういう問題点がどう考えられているかということを明らかにしていただかない限りにおいては、平行線になってしまうのじゃないか、こう思いますので、まず最初にその基本問題からお伺いしておきたいと思います。
#60
○山本(幸)政府委員 税制の基本に触れる大きな問題でありまして、私の立場で御満足のいくような結論はむずかしいかと思いますけれども、仰せのように、福祉国家をつくっていくという場面での財源をどう調達するかということは、まあこれからの財政に課せられた最大の問題だと思います。これから日本の経済が一体どういうふうになっていくのかということも十分に考えながら、その所要の財源調達を税制の理論を貫きながらやっていくということであろうと思います。
 いまそういう事態になったときに、基本的に一体何を考えていくのかということを――まあいろいろあると思いますけれども、いまお尋ねの一と二をミックスしたような形で、一つは、直接税と間接税との関係というものを一体どういうふうに考えていくのか。御承知のように、日本の税収の実態は、だんだんと直接税にウエートがふえていくということであります。その辺のところを、必ずしも直間比率にこだわることはもちろんございませんが、そういうことも考えながら、一体どういう考え方でいくのか。それからさらには、いまお尋ねになったのは、おそらく法人税なりあるいは租税特別措置法のことを頭に置いてのおことばであろうと思うのですけれども、これらの問題も所得税との関係において一体どういうふうに考えていくのか。一つの方向を、これから日本の財政経済のあり方といいますか、あるいはそういうふうにあらねばならないというそういう姿を描きながら、税制の間の問題をひとつ考えていきたい、こういうのが、やや私の私見のようなものをまじえて申し上げたわけでありますけれども、考えられるところではないだろうか、こう思います。
#61
○広沢委員 後に総理も見えるそうでありますから、基本的な問題をまた伺いたいと思うのですが、経済白書が毎年出されておりますけれども、その経済白書によりましても、いわゆる高福祉高負担への通念の転換が必要であるというようなこと、さらには、租税や応益負担などの形で国民全体の負担がふえていく、高まってくるであろうということを結論づけているわけです。そうなりますと、いま盛んに論議されました所得税の減税の問題にしましても、基本的にこういう経済運営の基本に立って考えるとするならば、なかなか国民の実感に即した減税というものが行なわれないのではないか、こういうことを私は懸念するものでありますから、その基本的ないわゆる福祉財政へ転換しなければならない、その財源の柱になっていくであろう税制の改正というものに対しては、基本的にはどういうふうに考えているのか、この点をお尋ねしたわけですが、いまのところ、ちょっといまのお答えではあいまいでよくわからないのですがね、もう一度お答えいただきたいと思うのです。
#62
○高木(文)政府委員 四十六年の八月に、政府の税制調査会で、やや長期にわたる税制の見通しというものについての御答申をいただいております。ただそのときには、すでにちょうどこの二月に決定になりました経済社会基本計画、これがいずれきまるであろうから、それを見ながらまたよく考えなければならない、こういう前提になっておりますので、四十六年の八月の、長期にわたる税制改正の答申においては必ずしも明確にはなっておりませんし、また、この基本計画ができましたならば、それをよく見直さなければいかぬという前提にはなっておりますが、基本的には、やはり福祉の充実に伴いましていろいろと財源が要るであろうから、よってもって、全体としての国民所得に対する税負担は、なだらかながら上がっていかざるを得ないであろう、こういう考え方になっておるわけでございます。
 その場合に、一体いかなる税がどのような位置づけに置かるべきかということにつきましては、ごく大ざっぱといいますか、大筋でございますが、所得税はやはり毎年減税を繰り返していく必要がある、法人税はなお若干の負担を求めてもよろしいであろう、それから間接税については、御存じのように最近十年間にわたってステディにウエートが下がってきているけれども、これはこの趨勢のままほっておいてはいかぬのではないか、こういう感じの答申になっておるわけでございます。
 私どもといたしましては、本年の二月に基本計画がきまりましたので、この基本計画によって、わが国経済が五十二年度までにどういうふうに伸びるか、その中でまた政府の仕事なりあるいは民間の仕事なり、それから資本的な支出なり消費的なものなりの位置づけというものが示されましたので、それに基づきまして、いずれこの夏以降、やや長期にわたる税制のあり方というものを御議論願うということになろうかと思います。その御議論を待たなければ、ただいま御指摘のこの基本計画に基づいて日本の税制はどういう方向にいくべきかという点は、各界の方の御意見を承りませんと、にわかにわれわれ事務当局から申し上げるわけにいかないわけでございますけれども、しかし、総じてやはり四十六年の八月の答申にありますような方向、つまり、所得税は全体としては減税、どの程度ということはいっておりませんが、毎年減税が繰り返さるべきであろうし、それから法人税のほうはなだらかながら負担が上がっていくことが必要だという方向は、やはり基本的には変わっていかないのではなかろうかというふうにわれわれは推定をしておるわけでございます。
 福祉時代と税制との関係は、そういう全体の税負担の問題と、それから別途いろいろ福祉対策を具体的に税でやるべきかどうかという問題があるわけでございますが、あとのほうの問題については、特に社会保険その他につきまして、保険料負担で処理をすべきものと、それから税を通じて負担すべきものとのあり方の問題等がいろいろあるわけでございますが、その問題につきましては、まだ今後の社会保障制度のあり方についてのもろもろの長期計画的なものがもう一つ固まってきておりませんので、それらの進行を見ながら考えられるべきではなかろうか。つまり、同じ負担を求めるにしても、保険でもって求めるということになれば、社会保険負担の増というかっこうになってまいりますし、それから税でもって見るということになれば、税のほうで負担をふやしていかなければならぬということになりますが、そこは税プロパーできめられない問題でございまして、むしろ社会保険、社会保障の全体の基準でなしに、個々の年金なりあるいはもろもろの制度なりについての財源調達の仕組みというものをどっちにウエートを今後置いていくべきかという問題がきまってまいりませんと、税の果たすべき役割りというものもきまってこないということではないかというふうに考えております。
#63
○広沢委員 まず、いまの基本問題の前提になることは、やはり税負担のあり方がどうあるべきかという、そして現実にいろいろ不公平な問題が起こっております。企業と個人、また個人の中でも、株式などのいわゆる資産所得と事業所得、また給与所得者、サラリーマン、こういう不公平をまず是正しないことには、やはり基本的な転換をどうしていくかということも論じられないのではないか。そこで、数年来また数々の議論の中でこの問題は毎年繰り返されてきているわけであって、いかにして負担の公平化をはかるかということなんですが、今回の税制改正を見ましても、私はそういう面から考えていきますと、非常にまだ不合理である、こういう認識に立っているのですが、やはりこの税制改正の基本的な認識、まだまだ不公平があるんだということで税制改正というものをやっていかなければならないわけですが、どういう認識に立っておられるのか。今回の税制改正で、あるいは毎年毎年行なわれている改正でそれが一応は是正されてきているというふうに認識を持っておられるのか。私は、今回の改正では逆にまた不公平の問題を拡大したという面も見られるんじゃないか、こういうふうにも考えておりますので、その辺の認識はどうなっておるのか、伺っておきたい。
#64
○高木(文)政府委員 数年来、主として租税特別措置、特に産業奨励的租税特別措置、その中でも輸出に関係のありますところのもろもろの措置というものを整理すべきだということでございまして、私どもも一日も早くそれを進めたいと思っておったわけでございますが、やはりいろいろな考え方があって、思うようには進んでいなかったわけでございますけれども、昨年の秋の臨時国会の際に海外市場開拓準備金についての整理をする法律をお通し願ったというところで、大体輸出関係のもろもろの制度の整理はほぼ完了したということが言えるだろうと思います。
 それから、重要産業用合理化機械等の特別償却ということを通じて、いわば基幹産業についての一種の産業奨励措置があったわけでございますが、今回御審議を願っております租税特別措置法の改正で、これを三年間でやめるということにする案を御提案申し上げておりますが、これによりましてさらにまたそういう種類の産業奨励措置のうちの一番の中心をなす、柱をなすものが整理されることになったということでございまして、租税特別措置につきましては、かなり、テンポがおそいということでおしかりを受けるかもしれませんが、進んできたということが言えるのではないかという認識を持っております。
 その反面におきまして、新しい要請といいますか、海外投資であるとか、あるいは資源開発であるとか、あるいはまた石油の備蓄であるとか、それから公害対策であるとかいう新しい措置がまた設けられたり拡大されたりしてはおりますけれども、これらのものは、いままでありましたような輸出全般とかあるいは重要産業全般とかいうものとはかなり性格が違いまして、臨時的な、またかなり限定された趣旨のものでございますので、これがその使命を果たしますならば、何年か後にはまた整理されていき得べきものであろうというふうに思っておるわけでございます。
 そういう意味におきまして、法人税に関連いたしますところの、特に産業関係の特別措置については、これはその進め方の速さという点についてはいろいろ御意見はあろうかと思いますが、私どもは、あるテンポではとにかく一つの方向をもって整理の方向で進んでいるものという認識を持っておるわけでございます。
 そのほか、別途、むしろ所得税を中心にいたしまして、預金も分離課税になっておる、あるいは源泉選択になっておる、それから配当についても配当控除の問題がある、それからさらに土地について分離課税の制度があるということから、資産性所得と勤労性所得とのアンバランスの問題があるではないかというような問題が起こってきておりますが、しかし、これは特別な政策目的を持って分離課税にするというものも、土地のようにあるものもありますけれども、株式の問題であるとか預金の問題とかにつきましては、これは非常に長い歴史もありますし、そうなりましたについては、それぞれいわゆる税の執行との関連の問題が非常に複雑にからみついている問題でございます。理論的には、所得税の総合累進の姿から言うならば、これらの分離課税のような制度はやはり問題があるのでございまして、私どもといたしましても、何か整理の方向に進んでいくべきだという気持ちは常に持ってはおりますけれども、いわゆる預金なり株なり土地なりの実態、特に取引の実態というものとの関連上、そう簡単には総合のほうに持っていけない事情があるわけでございまして、その事情との関連上どうしたらいいか。現状のままではちょっといけませんし、そうかといって、そう簡単には総合のほうに技術的にも持っていき得ない。政策的意図で分けているというよりは、むしろ技術的に持っていき得ない性格を持っておりますので、これをどうするかというのが、特別措置の形式をとっておろうと、本法の形式をとっておろうと、いずれにいたしましても、そういうものについて所得税の本来のあり方へ戻る道筋をどう見つけていったらいいかということが非常に大きな問題であるという認識を持っております。
#65
○広沢委員 したがって、税制改正の方向としては、いまいろいろお話がありましたように、大別して四つに分かれる。所得減税の問題と法人税制の改正の問題、さらには租税特別措置の改廃、それと地方税制の改正。きょうは時間がありませんので、法人税やあるいは租税特別措置法に関してはまた別の機会に質問するといたしまして、きょうは所得税の減税の問題について私も触れておきたいと思うのです。
 そこで、四十八年の税制改正では、所得税の減税は、初年度で三千百五十億、平年度で三千七百一億、こうなっております。先ほどの質問に対するお答えの中で、大きくもないし小さくもないというような、中間なのか、ちょうどいいと思っておられるのかわからないようなお答えがありましたけれども、私は、実際にこの内容をあとから具体的にいろいろお伺いするとしても、総額的に考えても非常に少ない、これで十分ではない、こういうふうに考えておるわけですが、当局としては、四十八年度の税制改正ではこの程度ではまだ十分でないという認識に立つならば、今後とも課税最低限を十分上げていかなければならぬところであろうし、まあこの程度であるということであれば、その後においては物価の調整減税だとかいう手直し程度のことにしかならぬのではないかと思うわけで、基本的にこれをどういうようにお考えになっていらっしゃるか、まず伺っておきたい。
#66
○高木(文)政府委員 所得税の減税のあり方を研究いたします場合に、やはりその前提としての財政のあり方ということが非常に問題でございます。最近の認識では、やはり社会福祉あるいは社会資本を充実さしていかなければならない。充実していく場合に、従来は、どっちかと申しますと、好況のときには民間の活発なる設備投資等によって経済が円滑に運営されていくであろうから、そういう時期には、政府のほうが、財政のほうが若干引っ込んでもよろしい。それから不況のときには、公債等の額をふやすことによってやや景気刺激型財政をつくって、そしてそれによって景気、不景気の調節をするというような思想があったわけでございますが、最近の流れといたしましては、むしろ民間の設備投資拡大は押えて、そして政府の仕事をふやしていく、いわゆる公的資源と私的資源の配分のあり方について、ここ十年来あるいは十五年来とり来たりましたような考え方を少し変えていくべきじゃないかというような感じになっております。
 それを前提にいたしまして税のあり方ということを考えます場合には、これまた従来とは若干異なりまして政府の役割りがふえていくべきだということになりますならば、従来よりははたして減税にそれほど重点を置くべきかということについて疑問が出てくるわけでございまして、
  〔委員長退席、木村(武千代)委員長代理着席〕
その辺のものの考え方がどのように今後、この数年間、財政のあり方、それに関連する税のあり方について定着をしてくるかということがまず第一に問題でございます。で、その税のあり方、したがって減税テンポというようなものがある程度わかってまいりませんと、所得税減税の姿というようなものもなかなかわからないわけでございます。
 そういう財政との関連を離れまして、所得税プロパーの問題として考えますならば、おっしゃるとおり、まだ非常に重い重いといわれているわけでございますし、それからそのことが納税思想に非常に悪い影響があるわけでございますから、税プロパーの問題といたしまするならば、なお今後相当の減税を続けさしていただかないとぐあいが悪いというのが、われわれ税のほうを担当している者のものの考え方でございますけれども、そこのところは、ただいま申しました意味での財政のあり方の切りかえ、それから社会福祉事業をどんどんふやしていこうという考え方との関連で、必ずしも税が税独自の立場だけで都合のいいような減税を大幅に繰り返していくわけにはなかなかいかないというような見通しではあるまいか。その意味で、やや転換期に来ておるという時期でございますので、今後どういうふうにいくべきか、私どももただ従来の姿を踏襲していけばいいということではございませんので、いろいろと思いめぐらしているということでございます。
#67
○広沢委員 いまのお話を聞いておりますと、福祉に対しては非常に財源が必要である。税当局から考えるといわゆる減税はしなければならぬということで、まさしく方向がはっきりしていないようですね。これはあとから、いろいろ国民の生活の上に立って税制というものは考えていかなければならぬという面を指摘したいと思います。
 そこで、今度の自然増収は、四十七年当初予算に比べて総体的に二兆五千六百五十六億ですか、いままでにない非常に大きな自然増収というものが見込まれておるわけでありますけれども、それに対して今度の減税の規模というものは、先ほども指摘がありましたように、非常に小さいのではないか。率的にいいますと二七%になるといわれております。しかしながら、歴年をこう見てみますと、いままでの調整的な減税をやってきたいわゆる状況じゃないかとしか考えられないわけですね。調整的な減税といろよりも、いま国民、特に給与所得者が望んでおることは、もう少し生活を圧迫しないように、生活に負担にならないような税制に変えてもらいたいというのが今日の要望である。それができないところに、いわゆる重税感というものが取り除かれないでそのままいつまでたっても繰り返されていると思うわけです。
 そうしますと、この自然増収というのは、財政当局ですから当然大幅に見るというわけにはいかないので、一定の基準の方法から大体この程度であろうという見込みを立てた、それがいわゆる自然増収ということになってくるわけですが、この自然増収は、増収分については、毎年の補正予算で、年内減税をやるとか、国債を減額するとか、または福祉予算のほうへ回すとか、それぞれのやり方があると思うのですけれども、先ほどのお話から考えてみまして、自然増収が当初見込みよりももしも多くなった場合においては、どういうふうにおやりになろうと考えていらっしゃるのか、その方向を聞いておきたいと思います。
  〔木村(武千代)委員長代理退席、委員長着席〕
#68
○高木(文)政府委員 まだ御審議願っている最中でございますし、予算案のほうも参議院で御審議を願っておるところでございます。その上、現在経済状態が非常に変動いたしております。通貨がああいう状態でございますし、物価もちょっと異常なカーブになっております。しかし、それらはもろもろの弾力的な財政金融の運用によってやがては鎮静するものというふうに考えておるわけでございますが、今日の経済状態というものはいろいろむずかしいファクターがあちこちに重なっておるという状況でございます。そういう状態で、この秋なり来年の春なりにどういう税の状態になるかということは、まことに予測がむずかしいわけでございまして、今日の段階で、どうなったらどうするかということについては、ちょっとまだ実は考えてもおりませんものでございますから、お答えを差し控えさしていただきたいと思います。
#69
○広沢委員 それでは、まず減税という正確な意味合いなんですけれども、これもさきにいろいろお話がありましたが、やはり税の負担が実質的に減るということ、率直に受け取れば、減税というのはそうなるわけですね。したがって、数字の上でふえていく分をある程度減らすということを減税と考えるのか、われわれは、これは調整をしているにすぎない、生活の実感の上から考えていく場合は、いわゆる減税になっていない、こういうふうに考えるわけですけれども、いままでの減税の方向というのは、いわゆる調整的な減税ではなかったのか。いま求められているのは、実質的に前年度に比べてこれだけ税が減ってきたということが実感として感じられるような減税をやらなければならないということだと思うのでありますけれども、それについてはいかがでしょうか。
#70
○高木(文)政府委員 減税ということばは、前年あるいは現行制度に比べて、もし現行制度をそのまま続行したならば幾らになるであろうという税負担が制度を改めることによってこのくらい減りますというものをすべてひっくるんで減税と呼んでおるわけでございます。その減税が、戦後ずっとノミナルに貨幣価値が下がっておりますこととの関係で、減税をしても、それが実質的な意味をなす部分となさない部分とあるではないかという御議論がいろいろあるわけでございますが、ことばの使い方といたしましては、制度上改めるものはすべて減税と呼んでおるわけでございます。
 しからば、一種の物価調整減税と申しますか、ノミナルには、上がったものをもとに引き戻しているだけではないか、実質的な減税は全く行なわれていないではないかという御批判がありますけれども、その点は、私どもから見ますと異論があるわけでございまして、過去におきます、たとえば課税最低限だけとらえてみましても、課税最低限の年々の改善率と物価の上昇率とを比べますならば、それはやはり物価の上昇率よりは確実に上回った課税最低限の改善が行なわれておるわけでございますし、それから国民所得の伸び率と税の関係を見ましても、単に物価の上昇率だけ減税が行なわれたという結果にはなっていないわけでございまして、この点は数字的に証明できると思います。
 国民所得がふえ、国民生活に若干余裕が出てくるのにつれて、若干の負担はやはり求めなければならないわけでありまして、給与が、たとえば年々一五%伸びても、伸びた結果、減税をしても去年よりもよけい税を負担しなければならないではないかという非難がありますけれども、それはやはり給与の伸び率が物価の上昇率より高ければ、それだけ実質的に収入がふえておるわけでございますから、それに応じて応分の負担がふえていくのはある程度がまんをしていただかないと、財政もだんだんふくらんでいくということに対応していけないわけでございます。
 ただ問題は、そのテンポが早いかおそいかということであろうかと思います。その点につきましては、本来の税のあり方の前に、財政のあり方についていろいろ御議論があるはずでございまして、どの程度の財政規模であるべきか、そしてその財政がどの程度税に依存すべきかという問題と関連してくるわけでございまして、それを切り離して税だけのフィールドの問題として、いまのテンポではおそ過ぎるという御議論がありましても、それは税そのものが財源調達を目的としている以上、なかなか困難なことであろうかと思います。
#71
○広沢委員 そこが基本的に国民が重税感というものを常に感じている問題だと思うのですね。いま一五%とおっしゃいましたが、かりにそれだけ給与がふえていったとした場合に、やはり税の負担というものは大きくなってきている。給与がふえたわけでありますから、物価上昇分とかそういうものを引いた分で多少ふえているものについては、何ぶんの負担があるのは当然であるというふうに考えるかもわかりませんが、それじゃ生活の実態というものを見た場合に、いまのお考えがそのまま通用するかという問題が出てくるわけです。
 そこで、いまおっしゃったように、自然増収に対して減税の割合が非常に少ない、そういう一つの問題がある中で、給与が一五%上がった場合に、名目所得というものは上がらざるを得ないわけでありますから、その点から考えていきますと、いまお話がありましたように、確かに納税者にとっては増税と同じ結果が出てくる。たとえば収入金額五十万円の層でいわゆる所得弾性値というものが二・八一、百万円で二・一九、二百万円で二・〇七、五百万円で一・五九。所得のふえ方よりも税負担のふえ方が増大しているという問題があるわけですね。したがって、これ自体もやはり高額のものと低所得のものとの間に不公平が生じてきているわけです。いま言うように、たとえば五十万円の人あるいは二百万円の人、そういった方々が、名目的な所得が増大したということで税負担がふえるということ自体に対しては、いわゆる増税という感じをぬぐえない。ですから、重税じゃないかということになってくるわけだろうと思うのですがね。その点はどうですか。
#72
○高木(文)政府委員 一般的には累進構造をとっておりますから、かりに一割なら一割収入がふえました場合にふえる税負担、それは所得が大きいほど大きいというのは当然のことでございます。ただ問題は、課税最低限に非常に近い、たとえば今回の場合ですと百十万なら百十万前後のところの階層につきましては、たとえば全く非課税であったのが、ちょっとふえただけで幾らか納めるということになれば、納める額は一〇〇%になるじゃないかということになりますので、課税最低限に近いところにつきましては、その限界点のところをちょっとこえますとゼロから何ぼかになるということで、非常に高い率で、あたかも弾性値が大きいような数字になってまいるわけでございます。それはどうも課税最低限あるいは非課税制度があるということと関連して起こる問題でございまして、一般的にはいま御指摘のようなことはないはずでありまして、所得の大きいほうほど累進構造の関係で弾性値が大きくなっているという仕組みになっておるわけでございます。お尋ねの点にうまくお答えしたことになるかどうかわかりませんが、構造的にはそういうふうになっております。
#73
○広沢委員 それは試算してみると、いろいろな試算のしかたがあるのですけれども、いまの弾性値の問題、これはいま局長がお答えになったとおりじゃないのですよ。
 ここで具体的な例をひとつこの資料に基づいて申し上げますと、まずいわゆる四十三年を一〇〇とした場合、独身者の場合五十万円になっている。それが四十七年、約四、五年の間に七五%ふえたとして、それで試算してみますと、やはりその弾性値というものはいわゆる高額の者よりも高くなってきているわけです。これはあらゆる面で試算してみると、いまおっしゃったように弾性値は所得の高い者ほど低いというような結果になっているのですがね。――じゃ、もう少し具体的に言いますと、いま言った例で言いますと、いわゆる四十三年の収入が独身者で五十万円であった。それに対して四十七年度の税収を計算すると、収入が七五%ふえたとして八十七万五千円になり、その差額は三十七万五千円ですね。税収は四十三年度で一万三千三百九十五円、四十七年度の税額は三万五千六百九十七円と、こうなります。その差額が二万二千三百二円、その割合は一六六・四九、したがって、この給与の伸びと税収の伸びと、これで割ってみますと二・二一、こういう結果が出てまいります。また夫婦二人ですね、その夫婦がいわゆる四十三年度に七十万円であった、四十七年度に同じような率で計算されたとしてこれが三・二七になります。それから夫婦子二人の場合においては一・六一。それからずっと金額が上がってまいりますが、一千万円を例にとらえてみましても、この弾性値は一・〇八というふうになっておりますね。同じような計算方法で税額からずっと割り出して考えますと、そういうふうになっておるわけです。
 そういう面から考えてみますと、低所得の者に対して減税はしたというものの、やはりその弾性値というものは、所得が一ふえた場合の税の伸びというものは大きくのしかかってきているという不公平がやはりあるわけです。ですから、それを是正しないことにはやはり問題が出てくるのではないか。したがって、いわゆる低所得に対しては、その面まで加味したいわゆる減税の方向を考えていかなければいけないんじゃないかということなんです。いかがでしょうか。
#74
○高木(文)政府委員 この税の仕組み、控除と税率を――税率と申しましても、幾らから幾らまでのところには何ぼの税率がかけられるかという、ブラッケットと呼んでおりますが、税率適用の幅、それを直して四十三年から四十七年まで経過をいたしております。その関係ではいろいろなケースが出てくることがあり得ると思います。ただ、いまおっしゃいました一千万円のところで非常に小さくてというのは、ちょっと私どもも計算をしてみないとよくわかりません。ただ、百五十万から以下ぐらいのところでございますと、確かにおっしゃるように、課税最低限の引き上げの関係とブラッケットの幅の動かし方の関係でいろいろ問題が出てきておることは事実でございます。その点については、少しく計算例をつくりまして、場合によりましたら詳しく資料等をもってお答えをいたしたいと思いますが、それが一般的であるということは言えないのではないか。課税最低限に近い部分、そこの部分の問題についてさような問題が一部、部分的に摩擦現象として起こってきているということではないかと思っておりますが、ちょっと、ぴしっと正確に計算をしてみないと責任あるお答えになりませんので、計算をいたしまして、場合によりましたならば数字的に御説明できるようにいたしたいと思います。
#75
○広沢委員 その点は、やはり先ほどから申し上げておりますように、減税というものについては、実質的な、実の上から考えても減税になるという方向でなければ、いま言うような問題があると思いますので、ひとついろいろなケースを試算したものを資料として出していただきたいと、こうお願いしておきます。
 それから次に、やはり免税点の引き上げの問題を私もやはり触れておかなきゃならないと思うのですが、これは税調の答申にありますように、所得、物価水準の動向あるいは所得税の納税者のふえていく分、あるいは蓄積の水準、こういうことを考えれば、今後も中小所得者の減税を行なうという意向を明らかにしているわけです。こうしたことを減税の基本方針に考えておくならば、先ほど局長は、意向として、減税は今後もやらなければならないだろうとおっしゃったんですが、今後も毎年持続的に減税をやっていくべきである、こういう問題を基本的な背景にした場合にはですね。そう思うわけですけれども、そこで考えなければならないことは、いま申し上げた免税点の引き上げの問題です。生計費には課税しないという原則があるのないのという議論が先ほどありました。しかし、私はずっと大蔵委員会あるいは予算委員会に出ておりまして、やはり課税最低限の基準になるものは何だ、これがはっきりしないから、やはりそこのところに大きな当局との食い違いが出てくるんじゃないかと思うのです。
 主税局長は、先日の答弁の中で、政府自身は生計費には課税しないということはきめていないんだというお話でありましたけれども、かつてこの当大蔵委員会においても、課税最低限の基準は何によるべきかという問題に対して、三つある、その一つが財政上の事情である、それからもう一つは、所得の再配分を所得税に期待していることをどの程度の層から始めればいいかという基準の問題があります、第三番目に、所得のうちどうしても支出せざるを得ない生計費的なものがあるとするならば、それに対して課税しないほうがいい、いわゆる生計費との関係がある、この三つが課税最低限の基準である、こういうお答えをなさっていらっしゃるわけですよ。この点をはっきりしておきませんと、生計費に幾らかかっておった、だからこれだけ減税しろ、こういう議論を展開してみましても、これはやはり基準というものがはっきりしないと減税の方向も明確にならないと思うのです。したがって、いまこういうふうに、あなたは、ないとおっしゃったけれども、一応当局としてはこれまでこの三つを基準にして減税の方向、課税最低減の基準というものを考えてきたという答弁があるわけですが、その点いかがですか。
#76
○高木(文)政府委員 まさにおっしゃるとおりでございまして、ただいま御指摘の三つの理由というのが、課税最低限をきめますときの非常に重要な大きな目安であるということは間違いないと思います。その場合に、第三番目の基準である、所得のうちどうしても生活に必要な部分というものが課税最低限の決定の要素として非常に重要な要素を占めることも、これも一つの基準であるという点においては、私ども異論がないわけでございます。ただ、現行の課税最低限、あるいは昨年の課税最低限、それから来年度の課税最低限というようなものを考えました場合に、この三つの要素のうち、第三の要素からいって、絶対に課税最低限が幾らにならなければならないというほどに、現行の課税最低限の水準が生計費との関係で低いところにあるということではないのではないかというような意味のことを申し上げる趣旨で、昨日その点を若干強調し過ぎたということでございまして、ただいま先生あげられました三点が、課税最低限の問題の関連において重要な要素であるという御見解に対しては、異論を差しはさむものではありません。
#77
○広沢委員 いま総理が見えられましたので、総理の質問のあとに、保留分をやらしていただきたいと思います。
#78
○鴨田委員長 三枝三郎君。
#79
○三枝委員 初めに、本委員会に総理が御出席をされまして、私、質問をする機会を与えられましたことを心から感謝しておるものでございます。
 現在、当委員会におきましては、所得、法人、租税特別措置の税三法につきまして、真剣に本格的な審議に入っているのでございます。税制の基幹をなすこれらの審議につきましては、過去の経過を見ましても、御承知のとおり、国会の議決によるもの、国民の意思を直接反映させるものとして、議会制民主主義の中心的な課題を形成している重要な問題でございます。
 税制は、御承知のように非常に専門的で技術的な性格を持つものでありますけれども、反面、国民生活に直結する問題でもありまして、国民の税制に対する関心は非常に大きいものがございます。このことにつきましては、昨年経済企画庁が経済社会基本計画を策定する作業の一環として実施いたしました国民選好度調査、この調査の結果にも明らかにされておりまして、その負担の公平につきましてはきわめて国民は敏感でございます。この経済社会基本計画を見てみますと、昨年の五月から六月にかけまして、全国の満十五歳以上の国民を対象にいたしましてこの調査はなされたのでございます。そしてこの調査の中身を見ますと、これまでの高度経済成長によりまして所得もふえ生活水準も向上したことを反映しまして、生活全般について国民は満足するものという数は五五%、過半数を占めております。しかし、その反面、税負担は公平かいなか、そういった問いに対しまして、この調査では、「不公平」または「どちらかといえば不公平」と答えたものが五五%と、やはり過半数をこえております。そして「他の納税者にくらべて負担が重いのではないかという意識が不公平感につながっているのではないかと思われる。また、これとあわせて「税金が高い割に福祉・社会保障などの見返りが少ない」という意識も満足・不満足の度合いにかなり影響を及ぼしている。」と、この調査はいっているのでございます。
 総理におかれましては、このようなことはもう先般十分に御承知の上に、経済社会の進展に即応した公平な税制の確立に積極的に対処しておられます。特に私は、総理が、土地税制の改善措置につきましては、国土総合開発の基盤をなすものといたしまして、自由主義経済のもとに可能な限り積極的に取り組んでおられる一方、たとえば事業主報酬制度の創設というぐあいに、零細な中小企業の経営者に対してあたたかい援助の手を差し伸べられたということを見まして、この問題はいずれも理論的には問題が多うございますが、私は、総理のこれらの措置に対するなみなみならぬ情熱と実行と決断に対して、深く敬意を表するものでございます。
 私は、この機会にあらためて、租税政策のあり方につきまして、総理の御所見と御決意のほどを承りたいと思うのでございます。
#80
○田中内閣総理大臣 税は、かつて国民の三大義務の一つであったわけでございますが、戦後はそのような国民的義務というような観念では扱われておりません。それは、戦後とられた新しい税制が申告納税を大前提としておるというところにも、過去の略奪徴税といわれた時代よりも、税に対する基本的な観念が変わっておることは事実でございます。これは新しい憲法の精神そのものでございますから、当然の帰結だとも思うわけでございます。
 税というものは、これはまあ国民の当然納めるものでございますが、納税というよりも、税は取られるということがよく納税者側から言われておりますし、大蔵大臣でさえも、税は取りますというようなことを言うのでありますから、どうもこの思想そのもの、考え方自体、まだ改めるべきところがあるのだと思うわけでございます。
 税は公平の原則が貫かれなければならないということもまた言うまでもないことでございますが、しかし、税を納付することによって国家や社会が維持されておるのでございまして、応分の負担のできる人の負担によって社会公共の福祉が増進をせられるということでありますので、これもまた国を形成していくためには不可欠なものであります。不可欠なものである限りにおいて、絶えず最も合理的な税制の確立に取り組まなければならないということであります。そういう意味で、改善に対しては、諸外国の例に徴したり、わが国に適合する税制というものの確立にえらい努力をしてまいったわけでございます。
 一つ申し上げますと、やはりこの税が重いというのは、率直に言って、国民所得そのものがまだ理想的な状態にないということの比較から、税に対する負担が重いということが一つあります。
 もう一つは、直接税中心であるということは、これはもう長いこと争われながら今日に至っておりますし、源泉徴収の問題、税は天引きされて、手元に来るときにはもう税控除の後である。だから、税を理解しでおる人は別でございますが、うちを守っておる奥さんなどは、手に入る金だけが主人の働きでということになりまして、そういう意味では、税の源泉徴収というものに対してもいろいろな議論が存在するわけであります。率直に申し上げて、やはり直接税中心主義だと、ある意味では、財源確保のためにはいい制度だと思いますけれども、納税者側から見ますと、絶えずふところに手を入れられるというような感じが抜け切れないわけでございます。そういう意味で、直接税にウエートが置かれると、税に対しては絶えず不満感があるというようなものもございます。
 また引き続いて御質問にお答えをしますが、そういう意味で、税というものは、だれが考えても、納めるのだ、納めることが至当なんだ、しかもあまり抵抗を感じないで納められるような、直接税制度を維持する限りにおいても、やはり当然良識的に理解できるという税制の確立ということが望ましいということは、申すまでもないことだと思います。
 私が最後に一言付言しておきたいことは、いままでは税の公平論という立場で論じられてまいりましたが、これからは、税は、税制上の優遇その他は財政の補完的な一つの使命と目的を持って実行されてきたときから、やはり税を政策として使わなければならないという時代が私は来ておると思います。ですから、そのときに、税の公平論という観点に立つ国民的な税に対する感情、理解というものをどうして深めるかということが、非常に配意しなければならぬ問題だと思うのです。当然、ある意味においては、税制、金融、それから財政というものが三者鼎立というようなときもあると思うのです。だから、中小企業等の対策を見れば、財政だけではなく、金融が主体をなしておる、税制が主体をなしておる、こういう面もあるわけでありまして、そういう状態がこれから来る、不可避の状態になると思うのです。やはりそういうときに、税の不公平論を助成するような状態では、なかなか実効をあげることはできないわけでございまして、税制というものに対しては、絶えず新しい視野の立場、角度から取り組んでいくべき問題だろう、このように考えております。
#81
○三枝委員 ところで、わが国が新しい時代にふさわしい、活力のある福祉社会を実現するために、ただいまも総理が触れられましたが、税制に期待されるところは非常に大きいと思いますが、この今後のあり方については、いろいろいまも問題が提起されましたが、いろいろ議論が行なわれるところだと思います。また一方、健康で文化的な生活環境の確保、国土の均衡ある発展をはかるということを基本理念としております総理の提唱されておられる国土総合開発、ただいまの一番大きな問題でございますが、この開発を推進するために、今日の過密過疎の問題の解消というのはまさに焦眉の問題であろうと思いますが、この過密過疎の問題解消にあたりまして税制をいかに活用するかということも、これまた大きな意味を持った課題であろうと思うのでございます。そこで、このような点に関連しまして、以下、総理の御所見を承りたいと考えるのでございます。
 先ほども触れましたが、経済社会基本計画、これはことしの二月に閣議決定になったのでございますが、これを見ますと、今後のわが国の経済社会の望ましい発展方向としまして、わが国の経済社会につちかわれている潜在的な成長力と活力を生かしながら、既存の経済社会に内在している制度をあらためて見直して、新しい時代にふさわしいものにつくりかえることが必要であるといっております。そのためには四つの原則を打ち出しております。御承知のとおり、経済活動と自然環境との調和、それから社会的な公正の尊重、地域住民の意思を反映させること、さらには国際協調、この四つのものを原則としまして、いま申し上げました活力のある福祉社会をつくるべく、そのためには、財政については各種の社会資本の整備と社会保障の充実をはかるなど、国民経済における役割りをより積極的に果たすことが期待されております。
 こうした財政需要が非常に増大してきておりますが、これを反映しまして、その財源の一環として、税制につきまして、経済社会基本計画、との計画は、その期間中――これは五カ年でございますが、この期間中に国民の租税負担は、所得水準が上昇しますので、それに応じて上昇する、そして国民所得に対する税の比率がおおむね…%程度の上昇が見込まれております。
 そこで、このような負担の上昇をはかっていく場合におきましても、物価の上昇があることを一方考えなければならないのでありまして、やはりある程度の減税は今後とも必要であります。またそれと同時に、先ほど総理も触れられました課税の公平化を一そう進めなくては、国民がなかなか納得しないのではないかと思います。
 そこで、所得税についてお伺いいたすのでございますが、本委員会でもしばしば論じられておりますが、この課税最低限につきましては、今日まで毎年減税をしております結果、相当程度高い水準に達していると思います。諸外国の水準に比べましても遜色のない水準になっていると思いますけれども、今後の所得水準、生活水準あるいは物価水準との関連におきまして、引き続いてその引き上げを行なうべきものであると考えますけれども、これに対します総理のお考えを伺いたいと思います。
 それからもう一つ、産業の国際競争力を強化するために設けられました租税特別措置は漸次整理する一方、公害防止等のために所要の措置をする方向に向かうべきではないかと思いますが、この二点について総理の御所見を伺いたいと思います。
#82
○田中内閣総理大臣 課税最低限は逐年引き上げてまいったわけでございまして、かつては標準世帯は夫婦子三人といっておったわけでありますが、四十六年から夫婦子二人ということに統一をしたわけでございます。それで約百十五万という平年度の金額をきめたわけでございまして、数字からいえば、これはアメリカを除いては西ドイツ、イギリス、フランスをオーバーしておるということで、一応は目標のところまでは達成をしたということでございます。西欧先進国並みにいつなるのかと、絶えず議論をしてきたわけでございますから、数字は現実でございまして、これはもうまごうことなく、アメリカを除いては課税最低限の数字は越したということは事実でございます。
 しかし、物価の問題もいま御指摘がごさいましたし、よりよい生活環境というものをこれから提供しなければならないということで、課税最低限というものはこれからも引き上げてまいりたいという意思は明らかにいたしておきます。これは百五十万円にすぐしたらどうかというお話がございますが、しかし課税最低限、これは十万円上げますと、約二千三百億ばかりの財源を必要とするわけでございます。ですから、すぐ百十五万からというと、それだけでも一兆円減税近くなるわけでございますから、それは段階を踏みながら理想に近づけてまいりたいという意思をひとつ御理解を賜わりたい。特に、課税最低限が上がると、独身者とかいろいろなものの非課税限度額が上がりますから、そういう意味でも、やはり引き続いて課税最低限の引き上げということを、減税をする場合にはもうこの問題を除いてはなかなか総体的な減税にはならないという考えでありますから、もうフランス、西ドイツを越したからこれでいいのだという気持ちではありません。
 それから、法人に対する特別措置等の問題でございますが、これは平年度四百億の増税措置を行なったわけでございますが、これはやはり漸次目的を達したものに対しては整理をしていくという方針でなければなりません。そして必要な公害防除とか、これから公害負担に対して積立金を行なうとか、当然企業の原因者負担でやらなければならないということになれば、そういうものに対しては税制上の優遇も考えなければならぬわけでありますから、時代の進展に伴うような、社会的要請にこたえられるような面のものは、これは新増設もまたやむを得ない。これは都会における電力料金を上げないためにどうするかといえば、液化ガスを導入して、これに対して特別な税を認めていたわけでございますから、時代の必要性、社会的な必要性に応じて整理されるべきものであるということは、これはもう当然のことでございます。そういう姿勢は今後も貫いてまいりたい、こう考えております。
#83
○三枝委員 次に、先ほど触れました国土総合開発あるいは過密過疎の対策を進める場合における問題でございます。この点につきましては、生活と生産というものを調和させなければならない。経済活動は、自然、生活環境との調和においてなされるということが大前提であることは申し上げるまでもないと思います。そしてこの大前提のもとに、過疎地域におきます開発のためには、相当思い切った財政上、税制上の特別の措置が必要でないかと思います。
 そこで、私は北海道の出身でございますが、総理十分に御承知のとおり、北海道は、いま日本の全面積の二〇%を占める広大な土地を持っております。しかし、人口は五%にすぎない。まあ典型的な過疎地帯でございまして、総理の大きな期待と熱意をもってお進めになっております国土総合開発計画の先駆者としての役割りは、北海道において私はなされるのではないかと思います。ところが、北海道におきましては、積雪寒冷ということで多くのハンディキャップを持っておりますが、私は決して地域的なエゴイズムのもとに申し上げているのではなく、わが国の大きな発展のための国土総合開発、その一環として北海道をあらためて見直して、これに政府の力強いあたたかい手を差し伸べていただくということが必要ではないかと思います。総理がかつて大蔵大臣のときに北海道においでになりまして、たぶん御記憶かと思いますが、道民の前に演説をされました。そのときに、予算の配分において、これは道路があるから人が集まる、いままでの発想は、人がいるから道をつける、それではいけないのだ、道をつけて、そこに人が集まり、生産が興り、また自然環境も整備される、そういう発言をされまして、多大な感銘を道民に与えたのでございます。
 私は、いま総理におかれましては、北海道の地元の者が、全国的な立場において、あるいは北方圏における北海道という立場において、政府の税制上、財政上のいろいろな特別の措置、しかもそれは傾斜措置を強く望んでいるのでございまして、このことについて前向きに御検討していただけるかどうか、それをお聞きいたしたいのでございます。
#84
○田中内閣総理大臣 北海道は一番いい例でございますが、明治四年約四万人ぐらいの北海道が、約九十年間で五百二十万人に膨張したわけでございます。これは一次産業比率の高い地域としては全国に希有な実例でございます。これには御承知の北海道開発のための政策が実行された。これは非常に簡単な政策であります。御承知のことでございますが、太政官布告に一条を加えた。北海道開拓に必要な公共投資は全額国が負担する、こういう政策が約八十年余にわたって行なわれたわけでございます。昭和三十九年か四十年から、北海道も担税力が出たのでということで北海道にも応分の負担を求めるように法改正が行なわれたわけでございますが、皮肉にもそのときを境にして北海道の人口の増はとまった、こういうことでございますから、これはもう北海道をひもとく者はだれでもこの問題を指摘するわけでございます。水が豊富であり、電力が余っており、石炭をたけるというのは、いまにしては北海道だけでございます。公害問題もございません。そういう意味で、中小企業対策にはいつでも財政、金融、税制の面において万々の対策を行ないますと、こう言っておるのですが、財政という問題よりも、やはり税制と金融が誘導政策になり、促進政策になるものだと考えております。
 国土総合開発法の中でも、平米当たり幾らずつ補助金を出すというような、直接補助金を出すというのは低開発国方式でございますから、やはり税制と財政を柱にした開発計画というものが進めらるべきだ、そういう意味で、無料公開の原則に立つ道路でも有料制度が導入されてすでに二十年、こういうことでありますし、港湾に対しても有料制度が採用されておるわけでありますから、これがやはり国土の総合開発計画、なかんずく北海道開発等に対しては、税制また金融上の措置はこれはもう当然とらるべきものだというふうに考えておりますし、政府としても積極的な姿勢で、国会の御理解が得られるような状態で検討を進めてまいりたい、こう考えるわけであります。
#85
○三枝委員 次に、実は先般、大蔵委員が四谷の税務署の視察に参ったのでございます。そのときに私は痛感いたしたことでございますが、税務行政につきまして、それを執行する税務職員が非常に少ないということでございます。これは先般同僚野田議員が指摘されたのでございますが、私は本日総理にぜひともお願いいたしたいことは、この数々の税制の執行面を担当しています税務職員が、その執行に際しまして非常に苦労をしております。量的にも質的にもだんだん少なくなっておる現状におきまして、たいへん苦労しております。そこで、どうか総理におかれましては、これらの税務職員が、世間文書においてたたかれ、あるいは交渉において圧力を受け、一生懸命やっておりますこの姿を見ますときに、どうしても定員を増加させなければならない、これが一番基本であるということを痛感して視察を終わったのでございますが、これにつきまして総理の御所見を承りたいと思います。
#86
○田中内閣総理大臣 四十八年度の納税人口三千二百九十七万人、こういう膨大もないものになっておるわけでありますが、税務署の職員の総数は五万二千二十七人でございます。これは沖繩を含めてでございますが、昭和三十六年、五万七百三十四人に比べてみますと、わずかばかりしかふえておらぬわけでございます。昭和三十六年ごろは全国にちらばっておった税務職員が、東京、大阪、名古屋というような拠点にみな集められて、ようやく精一ぱいの徴税業務をやっておる、こういうことでございまして、税務署の職員が恵まれておらないということは、これは御指摘のとおりであります。私も大蔵大臣在職中、第一番目に考えなければならぬのは税務職員の待遇改善である、省においては、旧陸軍が使った馬小屋を改造してそのまま住居にしておる、このような状態で国税の徴収が合理的に適正に行なわれるはずはない、こういうことで、まず国設宿舎の建設から手始めにやったわけでございます。そういう意味で、非常に重要な職責でありながら、税が取られるものだという感じのところへ取りに行くわけですから、あまり望ましいお客さまとしては待遇しないわけでございますから、そういう人たちに対して国がやはり応分の待遇をすることは当然のことだと思います。いまの税務職員に対する待遇が最上なものだと考えておりません。待遇も考えなければいけませんし、数はどうするかというと、はっきり言って、税務職員をこれ以上ふやすことは非常にむずかしい。徴税機構がもう追いつかない。追いつかないために、それならもっと減税しなさい、こういうことになるのです。ですから、徴税人口をふやさないように調整減税も必要であるということを、私はここでまじめに認めます。国民所得が急激に上がってきたために、毎年毎年減税をしながらも納税人口がふえる、それによって徴税する人間の負荷される任務が多過ぎるという問題があるのです。これはふやすといっても、なかなかふやせないのです。だれでもいいという職務じゃありません。そういう意味で非常にむずかしいものであります。
 ですから、そういう意味からいっても、直接税中心主義というものにもおのずから限界があるということと、やはり課税最低限を引き上げるようなことによって、納税人口そのものに対しても幾ばくかの歯どめをつけなければいかぬし、それから、やはり徴税機構の簡素化によって財源が確保されるような道も考えなければならない。それがガソリン税であり、トン税であり、いろいろなものをやってきたわけです。やはり、ただ単に仕事量がふえたから人間をといっても、できない人間は集められません。質の問題がありますので、これはへたをするとたいへんな問題になります。やはり税制そのもの、機構そのものも十分考えなければならない。
 これはひとつ、いやな話でございますが、地方税を付加税にすれば、三万人から七万人人間はすぐ浮くのです。そういうところに全然メスを入れないで、ただ徴税の人員だけをふやせといっても、専門家は一日にはできないということがあります。そういう意味で、付加税をすぐ実行するというのじゃありませんが、やはり機構の合理化や税制上の合理化や、国税と地方税との徴税の合理化とか、いろいろなことをはかりながら、税務職員が負っている重き荷をもっと合理的なものにし、待遇も改善しなければならぬ、こう考えております。
#87
○三枝委員 最後に、希望だけ申し上げまして、私の質問を終わります。
 私は昨晩NHKの「大都市改造をどうする」という総理の座談の番組を拝見しました。これからは総理は、こういう国会の場を通じてももちろんでございますが、積極的にああいう座談その他の場に出まして、そして茶の間に、一国の政府の、日本の最高責任者としての総理が何を考え、何をしようとしているかということをどしどしPRすべきであるということを、あの番組を拝見して強く感じたのでございます。今後そのことを希望いたしまして、私の質問を終わります。
#88
○鴨田委員長 山田耻目君。
#89
○山田(耻)委員 お話を聞いていますと、たいへん理解のある態度をお示しになっておりますし、私にもそういう態度でひとつよろしくお願いいたします。
 いまの質問の中で、最近税の不公平の問題、あるいはそれを基礎にした税に対する国民の不満が非常に高まってきておりまして、私たち国会に出ております者としては、こうした国民の不平不満というものを一日も早く解消してあげたい、こういう立場に立つことは当然でございます。総理の御所見につきましても、そういうところに深く御配慮なさっている気持ちをよく承知しておりますだけに、これから私が、ほんとうに限られた時間でありますけれども、お伺することに、ひとつ決断をもってお答えをいただきたいと思います。
 いまの国民の税に対する認識は、申し上げましたように、非常に不公平であるということ、高いということ、そうしたことが不満の中心になっておりますが、特に総理が一月二十二日の記者会見で、財政需要の立場等あるいは高福祉等の立場から新しい税金を考えたい、その税金は付加価値税である、こういうことを述べられまして、国民はこれ以上まだ取るのかという衝撃を受けました。大蔵省に対して検討を命じておるという最後の詰めのようでございましたが、端的に言って、この付加価値税というものを一体おやりになるのかどうか、やるとすれば、いつごろの時期を目安に置くのか、こういうことについて総理大臣の決断のあるところでひとつ御回答をいただきたいと思います。
#90
○田中内閣総理大臣 付加価値税というのは、西ドイツなどで採用されておるわけでございます。間接税の中の一つの大宗をなすような税であることは事実でございまして、大蔵省も勉強はしております。検討ではなく、勉強の過程でございますが、これはなかなか慎重を要する。というのは、前に自由党政府時代であったと思いますが、取引高税というのを出したのです。そして、これは国民の理解が得られなくて廃案になったわけでございます。付加価値税というような何か日本人になじまない名前を出すと、取引高税であるということで、まだ勉強しておる時代に、もうすでに反対論が町に横行して、立て看板に付加価値税絶対反対ということでございますから、これは国民に理解の得られるような税じゃないと、新税というのはなかなかむずかしい。新税というものはやはり相当な抵抗があります。抵抗があっても新税を行なって、一手、二手たったら、やはりやむを得ない税だったなということにならなければならないのです。
 そういう意味で、ガソリン税を目的税にしたときもたいへんだったのです。たいへんでしたが、与野党全員一致で議員立法でやったわけでございます。相当な反対がございましたが、今日の段階において、ガソリン税の増徴ということになると問題があっても、ガソリン税に対して必ずしも理解が得られない状態にはない、こう思います。自動車トン税においてもそうだと思うのです。
 そういう意味で、付加価値税というものを勉強しなければならない。これは間接税のウエートを上げるということになれば一つの問題であるという状態で勉強だけしておるのであって、これをいま採用するという段階には入っておりませんが、ただ、これに似た税というのはあるわけです。登録税とか収入印紙税とか、それから切手もそうでありますし、商品券に対する課税もそうでありますし、まあ変わったものでありますが、分離課税を今度土地に対してやりました。どんなところに一体やれるのか。ただ、付加価値税をやるときには、大衆課税になってはいけないということが原則でございます。間接税と同じ理論でございます。ですから、国民の日常品に対しては絶対かけないというものでなければならない。ただ、ダイヤモンドにはかけてもいいだろう、こういう気持ちはするのです、ダイヤモンドや何かの取引に対しては。そうすると……(「物品税で間に合う」と呼ぶ者あり)だから、物品税と言うけれども、絶えず動くから、ダイヤモンドなどというものは動くたびに幾らかずついただくということも、これはあまり不公平感を呼ばない税なんです。
 ですから、そういう意味で、勉強の過程でいろいろなことが出てくるのであって、いやしくも国民に理解を得られないような付加価値税、私は、付加価値税という名前のために国民に理解が得られないので、何とかいい名前が勉強の過程で出てこないかという程度でございまして、これはまだ率直にいつから行なうということにはなりません。少なくともいまの大幅な所得減税を行なう。しかし、他に財源を求める場合に大衆に迷惑をかけない財源を求めるべきである。しかし、国民の大方の理解を得られるという場合に、間接税に相当のウエートを移すというときになれば、一つの課題であろうというぐらいの考えでございます。
#91
○山田(耻)委員 私が勉強不足でたぶらかされておるんじゃないかというような気がいたしますが、いまあなたのおっしゃっておるようなことならば、付加価値税という冠をかけなくてもいいと思うのです。これは現在の個別消費税で十分間に合うわけです。だから、付加価値税というのは、私たちがいろいろ勉強しました範囲の中では、欧州その他でやられておるように、ある意味では売り上げ税。あなたは大衆課税はしないようにするとおっしゃるが、完全に大衆課税になる。だから、大衆課税もしない、生活必需品とかいうものについても課税をしない、そういうことになりますと、私は付加価値税という冠をはずしていただいたほうが、国民は誤解をしないでいい。
 だから、財政需要がふえてくる、高福祉をするために必要だ、そういう立場から一つの財源の捻出をお考えになるんだったら、これもいまあなたのお話にございましたように、所得税は大幅に減税する、財源をどこに見つけるか。今日の法人税なり、それから租税特別措置の中にもずいぶん税調でも取り上げられている問題があるわけですよ。こういうものについては全然手を触れようとせずに付加価値税の問題を出されるから、国民は、またか、こんちくしょう、こういう気持ちになるのです。それが私は今日世上に起こっておる税の制度なり、税の不公平に対する不満の元凶だと思うわけです。ですから、いまの点について、今日現存しておる税制に対してそこに大幅な改革を加えて、付加価値税という冠をかぶされたいまの問題はやめる、こういう立場を総合的な検討の中でなさるというのならば、国民はあなたの決断と実行に拍手を送るかもしれませんよ。そこをひとつはっきりしていただきたいのです。
#92
○田中内閣総理大臣 減税は必要である、逐年減税を行なってまいりたいという基本の上に立って申し上げますが、その場合、財源捻出のために法人税や特別措置等に対して手をつけないと言うんじゃありません。法人税に対しても当然対象にしなければならないと思っておりますし、先ほどから述べましたとおり、特別措置というものに対してもメスを入れなければならないということを考えております。
 ただ、そういう問題とあわせて相当大幅な減税を行なおうというときに、他に何か財源を求めなければならないというときには、やはり新税というものも不可避の問題として考えなきゃならない。ただそのときでも、どうも日本人に理解しにくい付加価値税という、体系的な整った付加価値税、いわゆる取引高税というようなものを採用するには慎重でなければならない。ですから、単年度に幾ら減税をするから付加価値税を採用しようというような考えはいま持っておりません。明確にいたしておきます。これはもう国民の理解があって、そうして現在の直接税と間接税のウエートを変えなければいかぬ、しかもそのときであっても、日用品等、いわゆる課税最低限ですな、千円以下のものにはかけないとか、二千円以下のものにはかけないとかいう、そういういろいろな問題が出てくると思うのですね。そういう問題を勉強しているにすぎないのであって、これは当面する問題を解決するための手段として付加価値税が採用されるということは、ただいま考えないでけっこうだ。慎重に勉強しているというだけであって、これはそういう心配はありませんから、いまから付加価値税反対などということをひとつお取り上げにならないようにぜひお願いいたします。
#93
○山田(耻)委員 わかりました。
 それでは、現在あります税制については、法人税なり、特別措置なり、あるいは税調でもしばしば指摘を受けております医師の必要経費七二%、行き過ぎだとも言っている問題ですが、こうした一つの問題についても検討を加えて適正な公平措置をとっていきたいという立場と、それから付加価値税として国民が誤解をしたこの問題ですけれども、大衆課税になるような新税は絶対やらない、こういういまのお話でございましたが、この二点を一応私もいただきましてこの問題について終わりたいと思いますが、よろしゅうございますか。
#94
○田中内閣総理大臣 大衆課税というのは、日用品とか生活用品とかということでございまして、これは大衆から納めてもらうことであることは間違いないのです。他の間接税でも、消費税とか、そういう範疇を越えてほんとうに生活必需品までかかるような税は、これは理解が得られないし、そういうことは絶対考えておりませんということでありますから、これはその意味ではガソリン税もトン税もみんな大衆課税であるという考え方で、それもやめろ、こういう御議論ではないと私も理解いたしておりますが、それは理解を得られるようなものでなければ、特に新税には慎重であるということだけは御理解をいただきたいと思います。特に物価が上がるようなときに流通税というのはむずかしいのです。いやしくも流通税とかそういうものは、物価が安定もしくは下降傾向な状態の場合には新税が容認されても、こういうような状態においては、とても勉強しております、検討しておりますとさえも言うことに慎重さをもってお答えしておるわけでございますから、政府の考えは御理解いただけると思います。
#95
○山田(耻)委員 総理がおっしゃっておられますように、いわゆる国民が誤解を受けたといわれるような付加価値税を行なわれますといたしますならば、物価の上昇というものは火に油を注ぐような結果になることは間違いありませんし、それから一番私たちが心配をいたします担税能力のない者、こういうものにまでおしなべてかけられるわけでございますから、こういうたいへんな悪い税制、そういう非常に大きな収奪の税制というのはおやりにならないということなので、私は安心をいたしておりますけれども、どうかそういう国民が誤解を受けるような言動だけは総理も主管大臣も慎んでいただいて、ああいう新聞記事が載らないように私は配慮いただきたいと思います。
 それから、時間がありませんのでこれで終わりますが、いまもさきの委員の方にお答えになっておりましたが、最近納税者が非常にふえてまいりました。いまの総理の御発言の中にも、全納税者は三千二百九十七万人である、これは既存の税務職員ではたいへんだというお話がございましたが、これは三千二百九十七万人の全納税者のうち、給与所得税を納める給与所得者というのはどれくらいあるかといえば、昭和四十七年で二千九百二十一万人、全納税者の八八%。あなたは、税というのは申告が大原則である、申告制が大原則であるという。ところが、申告制で税を納めておる者はわずかに一二%、あとの八八%は源泉徴収によって徴税をされておる。私は、税の基本の観念がたいへんゆがめられてきた世代である、こういう感じがいたしてなりません。時間がありませんから、多くこの問題に触れられませんけれども、このようにして源泉徴収というものが、いまの税法の中では、このことを納税者に義務づけた強制力のある法律はどこをさがしても見当たりません。事業を行なう責任者に徴収義務を負わしておりますけれども、それだけでございます。この問題については、いまの勤労者の不満の中には、だからおれたちは必要経費が認められないのだ、みずからが必要な経費を申告ができないのだ、こういう不満が多く出てきております。こういうものに対して総理はどのようにお考えになっておるのか。
 それからもう一点、二千九百二十一万人もこの給与所得者の納税者がいる。これは最近の物価上昇に照らして名目所得が年々上がってまいります。この名目所得が上がりますと、学校を卒業した者の初任給も上がってまいります。だから、昨今の状況では、高等学校に行きたくても貧しくて行けない、そうして中学校を出たまま町の工場に働きに出ていく、この中学卒の十四歳の子供の初任給から税金がかかっていますよ。それが異常に納税人口をふやしてきているわけです。私は、ここらあたりに政治の配慮、政治のうまみ、こういうものを感じ取ることはできないわけです。しかも、この小ちゃな子供たちは、それによって与えられる賃金によって十分の生活をしておるかといえば、そうじゃない。たいへん苦しいわけです。ところが、高校に行っておる者、働きながら高等学校に夜学に行ける者、これは勤労学生控除を受けます。しかし、小ちゃな中小企業に働いている中学校を卒業した子供たちは、夜学に行く時間も許されない。こういう人たちは何の控除も持たない。こういうことでは、税制のあるべき正しい姿とは言えないのじゃないか。
 きのうもここでお話をしたのでありますが、この際、総理、ひとつ思い切ってこうした未成年者には未成年者控除というものを一項起こして人的控除の中に加えていただいて――いま人的控除の中にございますのは、基礎控除、配偶者控除、扶養控除でございますが、これに一項未成年者控除というものを生かして措置をしていただくことにならないだろうか。しかも、これにはある意味では科学的な根拠がございます。今度通っていきました相続税法の問題、これは未成年者は二万円の税額控除がございます。この二万円の税額控除を所得に引き直しますと、二十万四千円でございます。二十万四千円を限度に未成年者控除をしてあげるということは、私は科学的にも正しい姿だと思う。人的控除の中にこういう未成年者控除を加えてやって、若い子供たちが未来に希望を持って働き続けていける、そういう条件を税制の中にも与えてあげる、こういう配慮というものをひとつ総理いかがでございましょう。
#96
○田中内閣総理大臣 未成年者の中で、特に給与所得者についての御発言でございますが、資産所得に対してこれはもう課税の対象になることは、未成年者であろうと成人であろうと区別はないわけでございますが、給与所得、勤労所得というものに対して課税対象になるということに対して、何らかの特例措置を設けられないかという御発言でございますが、これはそういう考え方も一つあると思います。
 それからもう一つは、課税最低限が引き上がっていけば、当然未成年者というものも、このごろ初任給も非常に高くなっておりますが、しかし自動的にはずれていくということになるわけでございます。
 ですから、やはり未成年者なるがゆえにということは、政策の上では理解が得られると思うのです。まあ修学しておる者に対する控除とか、いろいろなめんどうな税をやるよりも、なるべく基礎控除というような――いま議論がありますが、基礎控除も、自分がどのくらい基礎控除を受けておるのかわからないのです。いまの税法を、これは私は十年前に、税法は納税者にわかるようにひとつ書き改めてくれということで、その後税法は相当わかりやすくなったわけでございますが、それでもいろいろな控除やいろいろな制度がありますので、大蔵省の出身者で、今度三月十五日に納めたときに、自分で書いたのかといえば、大体そうじゃない、だれかに書いてもらっておるようでございます。わからないのですな。そういう意味で、わかりやすい――わからないから非常に不満があるのです。そういう意味で、基礎控除というものを一定限度設けるということも一つの考えではないか。それで自分が納税者である場合には、こういうことでもって自分で計算できるのだというようなものが一番望ましい。そうすれば税に対する不満というものは少なくなると思うのです。
 いまの未成年者に対してはやはり課税最低限を上げていく。私はいま研究をしてもらっておるのですが、課税最低限がどれまで上がったら――十万円上がれば二千三百億の財源を必要とするというのですが、ただいつまでもいまの未成年者の問題が――いま独身者で税を納めておる人が約四十四万人おります。この中で未成年者が一体幾ら納めているのか。どの程度のものが――きっと徴税費に合わないようなものまでだろう、これは源泉徴収をやっているので徴税が確実に行なわれるということで、申告納税をやったら全然把握できない、徴税できないという種のものもあると思うのです。そういうものに対する課税最低限がどれまで上がって、給与が一五%、一〇%と相当上がっていった場合でも、未成年者が課税最低限以内におさまるためにはどれだけ減税すればいいのかというようなものを――これはいまの問題じゃありません。これは四十九年度以降の問題としていろいろな角度から専門家に検討してもらっておる、試算してもらっておるという状態でございまして、どういう制度を採用することがいいのか。きのう新聞を見ましたら、税調会長は、未成年者には課税しないことが望ましいということを述べられたように書いてありますが、私もあした同じところへ出るのだから、後退したようなことを述べてはいかぬなと思いながら参ったわけでございまして、これはひとつ研究課題として勉強させていただきたい、こう思います。
#97
○山田(耻)委員 まあ何となく逃げられたような気もしますが、それは私が申し上げました事柄というのは、税調会長もそこで答えておりましたけれども、私は、やはり国民のいわゆる弱者をしっかりいたわっていく、そうして日本の未来を建設をしていく中で、一本筋の通った、ヒューマニズムだと思うわけですよ。ただそれがあなたのおっしゃる政治的な問題であって、税制の上ではいずれかということで、課税最低限の引き上げから検討していくとおっしゃっていますけれども、いずれにしても、やるという立場に立って、基礎控除を新設をするのか、それとも課税最低限を引き上げるのか。やるという立場に立ってその方法を技術的に研究しておるのだ、こういうふうにひとつお答えいただけると、あなたの決断と実行が生きてくるわけですが、いかがです。
#98
○田中内閣総理大臣 大蔵大臣や主税局長だけでなく、税調会長というのも減税にはかむわけでございまして、ですから、税調会長がきのう言われたことは私まだよく内容を承知しておりませんが、きょうの発言でもございますし、税調の御意見も十分しんしゃくいたしまして、勉強を続けさせていただきたい、こうひとつ御理解を願いたい。
#99
○山田(耻)委員 時間がありませんから、最後にもう一つだけお伺いしておきますが、実は年少者に類した問題、似ておりますけれどもちょっとタイプが違いますが、身体障害者。いまは名目所得がふえてまいりましたから、身体障害者が、いわゆる社会復帰をしたい、やはり人並みの生き方をしたいということで、コロニーとか方々の施設で一生懸命にがんばっておるわけです。そこで事業も行なっています。ところが、最近の傾向では、名目所得がふえてきておりまして、いわゆるこの身体障害者にも税金がかけられるわけです。しかもその身体障害者は、税金がかかるほどの所得がございますと、たとえば五十万の年収をこえていきますと、特別障害者手当の年金の十六万ですか、これも没になっていく。そうして厚生省のほうで支給しております身体障害者手当の五千円なり七千五百円も没になる。身体障害者として何らの恩典も受けないわけです。全く普通人と同じです。そういう状態が最近起こってまいっておりまして、私たちは、税金を納めると同時に、納めた税金がどう使われていくか、いわゆる再配分の形の中で適確に行なわれているか、そういうこともやはり納税者としては意を用いなくてはならぬ事柄なんです。
 ところが、身体障害者の皆さんは、車いすに乗ってみたって、通る道路もない。いまの歩道から車道におりるためには三十センチぐらいの段差がついております。それは車いすは転落いたします。県庁にいろいろお願いに行こうとしても、県庁に行けば、段階があり、車いすののぼれるようなところは少しもございません。たとえば、若干でも社会的に旅行をしたいと思ってみても、旅行しようとすれば、駅の改札口を通る広さがすでに車いすの幅であけてございません。跨線橋を渡ろうとすれば、みんな段階です。この人たちは、完全に人並みの税金を納めながら、社会生活からは隔絶をされていっておるわけです。これに税金をかけておるというのは、私は、税制だから、所得があればかけるぞということだけでは、非情だと思うわけです。
 だから、いまの未成年者の所得控除と同じように、こういう身障者に対しては、やはり特別控除を措置してあげることが一つと、しかし将来的には、その人たちの社会人並みに生き続けていこうとする気魄を高く評価をしてあげて、その人たちが旅行をするいろいろな便宜、あるいは地方自治体、県庁に行く場合の措置、あるいは駅から汽車に乗る場合の諸設備の配置、こういうものをしてあげてこそ、私は、その人たちが社会人として納めた税金に対する還付だと思うわけです。いまの世相の中では、こうした年少者とか身障者とか、ごくわずかの人に対して思いやりのある税制なり政治をすることが、いまの世の中にどれだけ活力を与えるかわからないわけです。そういう意味からも、この身障者の課税についてはひとつ格段の配慮を願いたいし、また、この人々の社会復帰への諸設備についても十分な御配慮をいただきたい。このことは、総理、決して私は無理を言っているわけではないので、いかがでございましょう。
#100
○田中内閣総理大臣 身体障害者に対する勤労控除は、障害者や寡婦、老齢者、勤労学生等に対して、十二万円から一万円上げて十三万円に上げるということでいまお願いしてあるのでございますが、しかし、いま御指摘になられましたように、身体障害者が働かないということであれば、これは社会保障の対象として支出をしなければならぬわけでありますから、これは働いてもらえるということであれば、自分の勤労によってみずからの生計を立てようというような人たちに対して手厚い処置をするということは、これは望ましいことであると思います。そういう意味で、ことしは十二万円から十三万円ということでございましたが、このような制度をこれからの税制の中へ組み込んでやっていくという方向が維持される限りにおいては、やはりそのような事情を特別しんしゃくしながら身体障害者の勤労に報いる、これは当然考えていくべき問題だと思っております。
#101
○山田(耻)委員 終わります。
#102
○鴨田委員長 武藤山治君。
#103
○武藤(山)委員 田中総理はいま日本一の権力者でございます。世界の全体の中では四番目ぐらいの権力を握った座についている総理大臣であります。したがって、あなたがこれをやろうと決断をすればたいていのことはできる地位と力を持つ、日本における最高の人であります。そういう角度から私はあなたの決断をお尋ねし、いかに実行するかということを、これから大きな問題点だけ――時間が限られておりますから、あまり詳細を質問する時間がございません。
 去年、田中さんが総理になるころ、一兆円の減税をするぞ、一兆円減税ということがかなりにぎやかに報道されたわけであります。そのときに、なぜそういうことを言っているのかなと私なりに推測をしました。その結果、昭和三十二年度の一千億円の減税の際に、国の一般会計予算は一兆円であります。一兆円の予算で一千億円の減税ということは、本年の同じベースで考えると、十四兆の予算のうち一兆四千億円の減税に匹敵をする減税が三十二年度に行なわれたわけです。でありますから、一兆円の減税は夢ではない。なるほど、庶民宰相、大衆の味方田中角榮ならあるいはやるかもしらぬ、こう実は期待をいたしたのであります。なぜ一兆円減税ができなかったのか、その根拠、理由は一体、あなたがやろうと思えばできると私は推測をしていたのでありますが、どういう阻害要因があるのですか。
#104
○田中内閣総理大臣 一兆円というのは、どこかで一兆円になっちまったのです。これは質問の過程において倍になったのです。私が総裁選に立候補するときから、五千億減税というのがちゃんと出ております。ですから、私たちが五千億と言うときっと倍くらいに評価されるのかもしれませんが、いずれにしても、それは一兆円、一兆円とよく出ておりまして、どこかの記事にも、一兆円減税はいずこか、こういうことでございますが、これは書いた人の希望的観測がいれられなかったのでそういうことになったのだろうと思いますが、私は、一兆円減税ではなく、五千億減税ということを明確に述べております。これは文書になって活字になっておりますから、間違いはありません。しかも、どこかの演説の何かで一兆円減税をやりたいということも述べてはおりませんで、五千億減税と言ったら、これは平年度五千億とか、中央、地方を通じて五千億とか、いろいろな議論がございますが、五千億と言ったのだから、できれば国税だけで初年度五千億にならなかったかなというような気持ちは、いまにして思えばそういう気持ちはしますが、いままで私は、大蔵大臣のとき述べましても、みんな平年度五千億、国、地方を入れて五千億、こういう観念でございまして、途中で変節をしたわけではございませんので、どうぞひとつその間の事情は御理解のほどをお願いいたします。
#105
○武藤(山)委員 それは過大広告ではなかったということの弁解は一応了解いたしますが、時間がないので、とにかく次から次に進みますが、大臣も御存じのように、納税人口が急激に増大をして、四十六年と四十七年の増加の人数は、源泉所得税関係で二百五十七万人、四十六年の増加納税人口は百八十三万人、四十五年度が二百八十六万人、四十四年が三百四万八千人の納税人口、これは給与所得だけです。事業所得のほうは、四十七年は前年と同じ二万人、四十六年二万人、事業所得のほうはそう伸びておらない。すなわち、給与所得者だけが二百五十七万人、百八十三万人、二百万人以上ずつ年々納税人口がふえている。これはすなわちいまのインフレートされる諸物価や賃金の上昇、名目所得の上昇、もちろんそういう原因があるけれども、そういう社会環境情勢に対応して政策を立てなければいかぬと思うのであります。でありますから、このように急激に納税人口がふえるような仕組みというのは、どこかやはり手直ししなければならぬ。先ほど総理は、ときどき時期を見て手直しをする、逐年改善をしていく、そういう考え方を披瀝されましたので、ぜひこういう納税人口の急上昇というものをこの際どこかでチェックする、そういうことを思い切ってやるべきではないか。特に、日本の課税最低限は世界と比較して遜色ないぞ、アメリカ以外の先進国に追いついたぞ、こう総理はおっしゃって、たいへん抽象的な、これからの減税姿勢については消極的な態度のように受け取りましたが、諸外国の初任給と日本の初任給をちょっと比較してみますと、高校男子卒業生で、日本は一九七〇年が三万四千九百円のときに、アメリカは二十六万四千九百九十円、七倍以上であります。イギリスが十万八千円の初任給、三倍以上であります。西ドイツが十万三千五百七十円で、これまた三倍プランスが二・五倍の初任給であります。そういう手取り自体が、日本の労働者は先進諸国と比較して低いのであります。そういう点から見ると、可処分所得というものが日本の労働者は少ないのでありますから、まだまだ減税をしなければ、先進国のこれらの人たちに生活水準が追いつくということには相ならぬ。
 そこで、いま山田議員が何とか総理にいい答弁をと要求をいたしたのでありますが、未成年者の減税について何か特別な配慮をしなければならぬ、こういう事実から見て。特にあなたのほうの幹事長である橋本さんは、この間、文書によって大蔵大臣に要望したということが新聞に出ております。勤労者に対して三〇%の必要経費を認めよと、こういう提言を大蔵大臣に文書をもって与党の幹事長が提起をしたということが新聞に報道されております。おそらく、これらは、今日膨大に給与所得者の納税人口がふえている、あるいは初任給が諸外国と比較してまだ日本は低い、そういうような理由から橋本提言になったのだろうと思うのであります。
 私も同じでありますが、田中さんは、かつてたいへん苦労なすった方であります。十四、五歳のときに土木事務所の給仕をやったと、あなたの履歴書に書いてある。私も十四歳のときに税務署の給仕になりました。下積みの生活の中から、世の中の差別と不公平というものを憎む立場から、私はこういう不公平と差別というものがなくなる世の中をつくりたい。特にそのためには、いまの税法というものの中にそろいう不公平と格差が一ぱいある。それを直せる総理大臣、これは私は田中さんしかないと思うのです。官僚出身の、役所の机上でつくるような頭では、これらの未成年者や若年労働者に対する思い切った、ヒューマニズムのにじみ出る政策は生まれてこないように私は思うのであります。いまはそのチャンスだ。全国の若い労働者は田中さんに大きな期待をかけていると思うのです。この際、思い切って、若年労働者の税金は国税としては取らない、そのくらいの思い切った施策を来年度は実現してみよう、私はぜひふん切ってもらいたい。税調の会長東畑さんは、ぜひ未成年者に税金をかけないようにしたいと言っているのです。しかしながら、それは私ども税調ではどうにもならない、政治の権力を握る国会の皆さんがきめてくれなければしようがないと言っているのです。
 したがって、田中さん、明年度税調に対する諮問案の中に、未成年者に対する課税を軽減をするための検討を命じますか。税調に対して、諮問案の中にその項目を入れるかどうか、ひとつ総理の決断をぜひ聞かしてください。
#106
○田中内閣総理大臣 あなたの熱意のこもった御発言の趣旨、十分に理解をいたします。
 確かに、四十六年二千八百七十五万人、四十七年三千百十六万人、四十八年三千二百九十七万人、こういうふうにふえておりまして、先ほども述べましたように、徴税職員は五万二千人でやっておるわけでございますから、徴税事務の上からいっても、これがあまりふえてはもう徴税が困難になるということでございます。また徴税の非効率の面もございます。そういう意味で逐年減税をて受けているのだというくらいなものを一体どうすればいいのかということで、いま勉強を続けてやっておるということは、先ほども述べたとおりでございます。
 ただ、いろいろな項目別でその減税を行なうということになって、さなきだにむずかしい税制がもっとむずかしくなって、自分がどういう減税を受けておるのかもわからないようなことでは困るので、だから先ほども、わかりやすい税制、自分が国家の恩典を受けている場合にはこのようにしもらっております 十二月になってから税制改正をきめるのではなく、絶えず、四十八年度税制の御審議を願っておる間からでも、皆さんの御発言を参考にしながら、十分しんしゃくしながら、ひとつ来年度は、時間がなかったというようなことのないように勉強しようということで、主税局等でも勉強をまとめておるわけでございます。
 それで、とにかく橋本案というのは、私が橋本幹事長などとめしを食べながら話をした中で、いろいろなことを党側も検討しなさいということで述べたことが新聞に漏れたわけでございます。これは、いまの税率を二分の一にすればどうかというような見方もあるわけです。そうすると、財源としては一兆九千億必要である。三〇%一律控除ということを全部認める、自分は少なくとも三〇%の控除があるということになれば、四千三百億の財源があれば一応数字的には可能であるということになりますが、これは現在、零細所得者で、各種の控除を合計すると三五%ぐらいの者もあるわけです。それが一律三〇%になれば五%損をするということになりますから、そうすれば、ある程度いままでより以上にそういうところも見なければいけないということでもって、現在三五%以上の控除を受けておる低所得者もありますので、そういうものを合理的に調整してまいると、この四千三百億円が五千億ないし六千億の財源を必要とするということになるわけです。それから課税最低限を引き上げるには、先ほど申し上げたとおり、十万円を上げると二千三百億かかる。こういういろいろな角度から勉強をしまして、最も合理的な税制改正というものはどうあるべきかということをいまから勉強しているわけです。
 ですから、いままでいろいろ御提言がございましたが、いま決断と実行をもって直ちにここで述べるということは、これは税調とも御相談をしなければならぬわけでございますから、だから、そういう意味でこれから、どちらがいいのかというような問題比較をしまして、御納得のいくような税制をつくるために十分の勉強をしてまいりたい、こう思います。
#107
○武藤(山)委員 いま総理、参考のためにちょっと数字を申し上げますと、中学卒の現在の未成年者、しかも就職をしている人ですね、十四歳から大体二十歳まで、百十万人。それから高校卒が約百四十万人、十八歳から二十歳まで。したがって、二百五十万人の未成年労働者がいるわけです。片方は親から金をもらってぬくぬくと大学へ行っているわけですね。その大学へぬくぬくと行ける階層は国家の補助金をもらって――私立学校にも国家資金は補助金でいく、官立の大学にも補助金はいく。同じ人間でありながら、大学へやらしてもらえる青年は国家の恩恵の補助金をもらい、片方はわずかな収入に税金をかける。これは田中内閣のときにこれを直さずんば、当分の間この問題については手をかけられる総理は出ないと思うのであります。いま、田中さん、中学を卒業して初任給がすでに課税される。平年度で四十五万一千円から税金がかかるのですね。独身者で四十五万一千円、平年度ベースで。そうしますと、これを十二カ月の月給、三カ月の賞与に計算すると、一カ月わずか三万円ですよ。一カ月三万円しかとらない中学卒の十五や十六の少年に国税がかかる。むごいじゃないですか。収奪ということばに当たるのじゃないですか。この辺を総理は、定額控除でもって引くようにするか、定率控除でいじるか、それとも若年労働者の基礎控除という方法を考えるか、あなたのすぐれた勘と能力によるなら、私はこんな方法は必ず簡単に編み出せると思うのであります。税調に向かってこの三つの案のうち、諸君一番いいと思うものはどれだ――あなたは最高の権力を持った総理として、本気でこれらの若年労働者のことを思うなら、明年度税調に諮問を出してみよう、はっきりそのくらいの答弁はいただけると思うのでありますが、再考願えないでしょうか。
#108
○田中内閣総理大臣 いま四十八年度の税制改正をお願いしておるわけでございますから、四十九年度の問題までひとついますぐ答弁をしろといってもなかなか無理でございますが、あなたの御発言の趣旨は十分理解いたしました。そういう問題に対しては真剣な検討と配慮を続けたい、こう思います。
#109
○武藤(山)委員 うそを言わない総理大臣でありますから、誠意をもって検討し、実行に移すことだろうと期待をして、この問題は一応終わります。
 次に、現在卸売り物価がたいへんな高騰を続けておりまして、昨年一カ年間で八・五%の卸売り物価の上昇だ。経済学の原則からいうならば、卸売り物価が上がった率の約三倍は消費者物価が上がるだろうというのが従来の経済学の常識であります。まあ三倍は多いにしても、全体の数字に出てくるのは、多くの品目の全体の中からの平均でありますから、そうは上がらないにしても、五・五%でおさまらないことだけは間違いないと思うのであります。しかも五・五というのは、いまの定期預金の金利よりも高いので、定期預金の金利は一年間五・二五でありますから、本来ならば五%をこえたら直ちに可処分所得をふやしてやるという意味においても減税すべきだ。かつてあなたの先輩の佐藤総理は年度内減税をやりました。本年このような卸売り物価の情勢や消費者物価の上昇の状況のときでありますから、年の途中であっても、経済見通しを上回る消費者物価の上昇の際には、思い切って所得税減税を断行する、こういう御意思は持てませんか。
#110
○田中内閣総理大臣 理論的な問題もございますから申し上げますが、物価が上昇したから減税すべきであるということ、これは減税だけでもってまかなうものでもなく、物価が上がるということになれば、その次の年の賃金協定においては当然賃金の上昇率というものは高くなるわけでございます。ですから、同じような問題として、定期預金の金利、特に郵便貯金の金利などというものも、物価が上がったらスライドすべきではないか。これは今度物価スライドというものに対して考えたのは、年金に対して物価スライド制を採用したわけであって、これは画期的であるというのはそこにあるわけです。他のものはすべて単年度において処理できるものではないわけであります。
 だから、そういう意味で、前年度に物価が上がった場合、減税をどうしなければならぬかという問題は、これは調整減税といわれるように、減税を考えるときにはいつでもしんしゃくするわけでございますが、年度内に減税をしなければならない、これは年度を通じてみないとなかなか年度間の物価の上昇率というものもわかりませんし、そういう意味で、年度内減税で対処すべきだというふうに断ずることはできないと思うのです。だから、ことしはいまの減税案を御審議いただいておるわけでありますから、四十九年度の減税や何かを考えるときには、やはり物価の上昇その他に対しては当然しんしゃくすべき問題ではあろうということを申し上げるわけであります。
#111
○武藤(山)委員 大蔵大臣は予算委員会で、年度内におけるそういう状況の場合には年度内減税をやりますと、はっきり答えているのですよ。議事録にもありますよ。新聞にも出ておりますよ。それは総理大臣、やはり大蔵大臣の考え方は追認してやる、それは追認せぬ、どういうふうに理解したらいいでしょうか。
#112
○田中内閣総理大臣 大蔵大臣がどのような、御審議の過程においてどのような発言をしたか、よく私も承知いたしておりません。おりませんが、減税とか、その他の問題、予算の編成等においては、これは法律上も大蔵大臣が非常に大きな力を持っておりますから、大蔵大臣いま出張中でございますが、ひとつ帰りましたらよくその真偽をただしてみたいと、こう思います。それは大蔵大臣が技術的にもでき、なす意思があるときに、私がそれをとめるというような立場にないということは、これはもう長いことこの委員会の委員であります武藤さんもよく御承知のことだと思います。いずれにしても、いまこの席にすわって、一々その内容をつまびらかにしない段階において、追認をするとか何かではなく、もう少し御猶予のほどをお願いいたします。
#113
○武藤(山)委員 限られた時間でありますから次に進みますが、総理も御承知のように、西ドイツはいま経済がたいへん過熱をしそうだ、景気が急テンポの上昇をしつつある、さらに、外貨準備が日本と同様にたいへんウナギ登りにふえちゃった。そこでドイツの社会民主党政権は、ブラント政権は、この際、企業と高額所得者、こういうところからひとつ特別に税金を取ろう、そして物価の安定をはかる、そういう適宜適切に景気の動向に対応する財政措置というものを考える。私はなかなかすばらしいと思うのであります。政治力があるなと思うのであります。
 日本の財政金融政策というのは、ほとんど後手後手に回っておって、経済が常に先行してしまってからどろなわ式に場当たりの政策を充てる。こういう点と比較すると、ドイツのいまやらんとしているこの付加税方式というものは、私は、なかなか時宜に即したりっぱな政策手段だなと思って感心をいたしておるのであります。特に西ドイツは、高額所得者は、独身者の場合は年所得一千万以上、既婚者の場合は二千万以上の所得ある者から、その所得税の一〇%を付加税として取り立てる、大法人の法人税に対しても同様一〇%の付加税を取ろう、これらの金は景気の動向や物価の情勢をにらみ合わせて凍結をする、総花式にこれは支出に使わない、そういう財政の景気調整的機能を果たそうとしている。
 日本もいまや大企業が国民の非難の的になっていますね。商社は、買い占めをやる、売り惜しみをやる、値段はどんどんつり上げてしまう、株への投資をやって株を過熱する、土地はどんどん買いあさって地価は上げる。まさに日本の今日のこれらの現象の犯人は大企業、大資本だという国民の怨嗟の非難を受けているわけであります。田中総理もそれを何とかチェックしようということで、土地政策や商品投機問題の規制法や、いろいろお考えになってはおりますが、やはり税制面からこういう問題についてチェックをするような、ドイツの財政当局のような思い切った政策手段というものを行使すべきではないだろうか、こう思うのでありますが、これらの、いまドイツがとろうとしているような、高額所得者や大資本から一〇%の付加税を取る、そういうような手段というものをとるほうがいいのではなかろうかという考え方は持ちませんか、どうでしょう。
#114
○田中内閣総理大臣 ドイツが共同変動相場制に移行せざるを得ないという前段の段階においていろいろな手段を講じたことは、私も承知をしておりますが、これは西ドイツと日本とはまだ状態が違うということをひとつお考えいただきたいと思います。いままでは確かに日本も消費者物価は逐年上がってはまいりましたが、十カ年の平均を見ても、西ドイツとは比べものにならないほど安定をしておったわけであります。しかも同時に、卸売り物価は横ばいを続けてまいったわけでございます。去年の暮れから、下期から卸売り物価が非常に高騰してきて、先ほど御指摘がございましたように消費者物価にいずれの日にか還元をするときは避けがたい、こういう御指摘でございますが、そういうことのないように各般の施策をいまとっておるわけでございます。
 そういう意味で、西ドイツがいま考えているようなドラスティックな手を日本が打たなくとも、私は、日本がまだやらなければならない手段、やってしかるべき政策は残っておる、十分あるというふうにいま考えております。西ドイツはもうすでにこの十年来マルクの四回の切り上げをやっておるわけでありますし、あれだけの大きなドルを抱きながらも共同フロートに踏み切らざるを得ないというような特殊な要因がございます。日本のように為替管理が完ぺきでもありません。それはヨーロッパの持つ一つの特性であります。特にユーロダラー等いろいろな問題があって、日本がドイツと直ちに同じレベルで比較をされなければならぬということはないのです。まあ日本はドイツのようなドラスティックな手段に訴える前に、端的に述べれば、金融の引き締めを行なう。あなたも長いこと大蔵委員会にずっと籍を置かれておりますが、雑金融機関といわれるような金融機関、それから系統資金といわれるような分野が非常に大きくなっております。農協資金も十兆円になんなんとしております。こういうものに対して、いままでは金融政策のらち外にあったといわれるような状態でございました。私は大蔵大臣在職中に初めて雑金融機関に対して、国債――あの当時は国債がありませんでしたから、政保債の一〇%の引き受けということを求めたわけでございますが、その後顕著な引き締めの対象になっておらなかったわけです。きょう初めて、雑金融機関に対しても、日銀の範疇にないような金融政策に協力をせしめよう、これはまあ中小企業や零細企業というものを対象にしてその例が及ばないようにという配慮のもとになされてきた処置でありますが、やはり物価が上がるというようなことであれば、これは総需要の抑制をはかって、それで必要なところにその金を流す以外にないということできょうの記事になったのだと思います。私はまだ大蔵省から説明を受けておりませんが、そういう手段が残されておるわけであります。日銀のシェアが三〇%を割っておるという現状において、そういう日銀からはみ出しておるような金融機関に対する調整権もまだ残っておりますから、まだまだ西ドイツがやるよりももっとやる手はある、こういうことでありまして、どうも一千万以上の所得者から全部一〇%の税を取る、そうしなければ物価問題に対処できないというような状態ではないし、もっとやるなら諸般の手続は十分存在する、こういうことでひとつ御理解いただきたいと思います。
#115
○武藤(山)委員 日本の当局者は、いつも、まだその段階でないとか、まだほかにあるとか言っている間に経済がどんどん先行しちゃって、どうにもならぬ病気になってから、さあどうしようかというのが、いまの商品投機の問題であり、土地投機の問題であり、株の証券界の状況であったわけであります。だから、そこまで行かぬうちに、やはり財政主導型の経済といわれるこれからの時代だと、このあなたのつくった経済社会基本計画の中でも、この計画の中に財政の占める役割りというものはきちっと書いてありますが、これからの新しい時代は財政はそういう点を常に適切に先取り先取りをしていかなければいけないのだという意味が書いてある。そこで、国民の目から見ると、金融引き締めをやり、窓口規制をやり、公定歩合を引き上げる、そうなると住宅ローンを借りる金が狭まる、われわれ庶民の住宅を建てる金を銀行が貸さなくなるのじゃないか、中小全業はどうなるのだろうという不安がかなり出てくる。もちろんそれは、最もオーソドックスな方法は、金融手段によって景気の動向を常に勘案して政策を立てることが最もオーソドックスな方式であります。しかし、現在はそれだけでは解決できない過剰流動性の問題が企業内にはある。過剰流動性は、総理大臣、銀行の資金量だけではないと思うのであります。いまの大法人の余裕資金というものをどうチェックするか、吸い上げるか、それも両々相まって考えてもらわないと、いまのような大企業に対する国民からの批判、特に自由民主党が大企業本位の政策をとり、大資本をかばっているのだという印象はぬぐい去らないのであります。したがって、われわれはここで、そういう一定規模以上の大企業から、こういうときにこそ付加税を取るべきではないか、これが当然財政当局として打つべき一つの政策手段ではないか、こういう提言をいたしておるわけであります。
 しかし総理は、その時期ではない、まだまだ日本の経済はドイツほど過熱しておらぬ、物価問題もそれほど心配はないという楽観論でありますから、それはさておいて、おそらく田中総理のお母さんは、新潟で週刊誌や新聞を読みながら、もうちょっと慎重にやらぬと困るぞと、小僧とは言わぬでしょうが、週刊誌によると、だいぶ総理を心配して日夜お母さんが電話で注意をしているような話でございますが、あまり楽観論でいくとお母さんが心配をするのじゃないかと私は思うのであります。ぜひひとつその辺は経済のかじとりを誤らないように、早いうちに手を打つようにすべきではないかと思うのであります。
 そこで、大資本の今日の状況の中で、私は、大資本がこの数年の間にため込んだ土地資産、これはたいへんなものであると思う。また、地価がどんどん暴騰したために、土地資産の倍率というものは、昭和三十年と今日の四十七年の間の、簿価と現実の価格との開きは八〇・四倍だというのであります。したがって、この辺で、幾ら資本主義は自由競争であり、強い者勝ちであり、競争原理により、勝つ者が大きくなり、負ける者はくたばるという資本主義の原則であるとしても、やはり一定の資本以上、そういうものに対しては、この際、これらの土地を再評価して、再評価税をかけて税金で取り上げるべきである、これが過剰流動性を吸い上げる一つの手段にもなる。ぜひ私は、国民が期待をする、こういう大資本のため込んだ資産というものについてこの辺で一回洗い直す、富裕税に似たようなものになるかもしれませんが、再評価税をかける、こういうお考え方はいかがでしょうか。
#116
○田中内閣総理大臣 再評価税とか富裕税とか、それから財産税というものは、これは一ぺんきりのものでございまして、国家の非常のときになすべきことであって、これは前にも、戦後、財産税が徴収されたわけであります。そういう意味で、いまの段階において、私は富裕税とか再評価税というものは直ちに実行すべきものでないという考え方に立っておるのです。大資本とか商社とか、いろんな御指摘がございましたが、その過剰流動性の問題に対しては必ずしも完ぺきなものではなかったと思います。それはやはり初めて受ける平価調整というものの影響をさだかにつかむことができなかったというのが第一の前提でございましたし、中小零細企業にしわが寄ってはならないということで、まず中小企業や零細企業の状態を見なければならないということが前提になっておりましたから、公定歩合を引き下げる、それから政府は補正予算を組む、財投の追加を行なう等、諸般の対策を行なったわけであって、その結果、一六%以上という、史上初めてだと思うような平価調整が行なわれた結果は、比較的スムーズな経済情勢を維持することができたわけでございます。だから今度はそういう面による一つのマイナス面、それは企業の手元資金が潤沢だったために買い占めが行なわれるというような問題が起こってきたということで、商社別、企業別に日銀の手形の買い取りを制限をしたり、銀行に対しての融資の抑制をやったり、それから市場における時価発行の許可をしなかったり、これは急激に引き締めの状態に入っておるわけでございます。けさの新聞によれば、また公定歩合も引き上げられる、また第三番目の準備率の引き上げも用意しておる、こういうふうに金融当局の考え方が報じられております。
 そういうことから考えると、いまもうすでに個人的土地業者は非常に困っておる。金融が逼迫して、いまとにかく買い付けたものまで払えないというような状態にあります。企業がもう新しい土地の買いだめをするような状態にないことは事実でございます。それで、ちょうどいま決算期でありますから、各企業別に銀行と金融機関と企業から、資金の状態、それから四十六年、四十七年両年度にわたって買ったものに対して報告を求めるというような、相当こまかいことをやっておるわけです。そういうことで企業の手元資金も相当詰まっておるということは言えるのです。ただ、いま詰まっておらぬものがまだ一つあるのです。それは大口に土地を売ったりしたような人たちが、いわゆる一〇%の分離課税でもって土地を売ったりしたというような人たちの金がまだどのくらいあるのかというような、そこまでものを考えながら、いま政府は可能な限り企業の手元資金というものを調査をしておるわけですから、今度五月決算で報告されるわけです。納税期でもあります。
 そういう意味で、非常に急速に締まっておるという考え方でございまして、大企業が買ったものを吐き出さすというところまでまだいってないかもわかりませんが、これを吐き出させるような手段をいま講じておるわけでございますが、吐き出させるということになると、これはものが下がるわけであります。そういうものもいまあわせて行なっておるわけでございますので、その意味では政府もこれは人ごとには考えておらぬのです。これで物価が上がったりまだ買い占めが行なわれたりしたら、その責任は何といっても政府が追及されることでございますので、ということで、しさいな観察を行ない、調査を行ない、施策の万全を期しておるということをひとつ理解していただきたい。
#117
○武藤(山)委員 ただ、総理大臣、素朴な庶民大衆の感覚でいくと、個人の場合には、親が少々財産をためると相続税でごっそりやられてしまう。法人の場合には、何ぼ財産を持っていても、残しても相続税はないのだ。したがって、やはり法人も実在説的、法人も一つの人格として認められているのだから、せめて十年に一回くらいはそういう資産というものを洗い直して、再評価して税金を取るべきじゃないか。そういう素朴な庶民大衆の公平論というのはやはりあるのですよ。そういうものをやらずに弱肉強食をどんどん突っ張ると、自由民主党そのものの土台がこれによってだんだんくずれていくのです、国民の怨嗟の批判で。したがって、やはり総理大臣はもうちょっとそこらを考えていかぬと、あなたは選挙に強いけれども、弱い人がいるから、そういう人はなかなかたいへんなことになるのであります。
 時間がありませんからあれですが、総理、きのうも佐藤観樹君の質問で、たいへん私たちはこれは改善しなければいかぬなと思いましたのは、せっかく田中さんが新しい福祉社会、まあ福祉元年、しかも基本計画のタイトルには「活力ある福祉社会のために」、いよいよ福祉社会到来だという、もうまことに大きいキャッチフレーズを全国にばらまいたわけであります、これは野党も全部そうでありますが。ところが、恩給や年金をもらう年寄りですね、普通五十五歳でもらう人、六十歳でもらう人、六十五歳でもらう人がありますが、そういうような年金や恩給が、いまの所得税法二十九条で、普通の所得として合算所得で申告しなければならぬのですね。今度の改正の中には、農業年金、あれも新たに加える、こういうわけですが、どうですか、年金や恩給を普通の所得と同じに合算して申告をするというようなけちなことはやめさせて、やはり若いときから働いて、一定の年数になって年金、恩給をもらえるのでありますから、せめて、その人が六十五歳になったら年間六十万円の基礎控除を認めましょうなんというけちなことでなくて、恩給や年金には一切所得税はかけない、ひとつそのくらいの決断と実行、どうですか。
#118
○田中内閣総理大臣 先ほどから、人情の機微をついて非常に説得力のある御発言、傾聴いたしておりますが、年金等に対して五万円の十二カ月、六十万円までは無税、それに六十五歳以上の年齢は八十七万円が非課税でございますから、計百四十七万円までの非課税、こういうことになっておるわけです。しかし、年金とか、それから、これはずっとやってまいりますと退職金という問題にもなるのです。こういうものは何とかして非課税としたらいいじゃないかという考え方は、一つの考え方として私もあなたと同じようなことを主税局に言ってはみるのです。ただ、そういうことは、ある時期に、減税も行なわれ、国民所得も増大し、国民総生産も増大したある時期においては、やはりそういう制度というものが世人に了解をせられるというときが私はくると思います。ただ、いまの状況におきますと、どうしても税の不公平感とか、いろいろな問題が起こっております。これは資産所得に対しても、いまあなたは、不動産の再評価を行なってもというような、そういう一面があるわけです。そういう面から考えますと、全部非課税にするというには時がやはり必要である。私は、やはり営々として働いた人がその恩恵をみずから受けるということは、これは当然なことだと思うのですよ。そうでなければ惰民政策につながりますから。
 私も、そういう意味で、ものの考え方、よく理解できるのです。理解できますが、いまの状態においてはということで、今度老人を持つ家庭の課税の最低限を六百万円まで上げよう。六百万まで上げたら全部やったらいいじゃないかという議論がありましたが、そのときに、土地を売ったりした高額所得者までみんな非課税になるのだということはやはりよろしくない、どこかで限度を設けておくべきである、制度上も限度が必要である、こういうことで、大幅に最低限を引き上げましたが、すべてのものを除外するというわけにならなかったわけです。
 ですから、いまの御発言の趣旨、よくわかります。私自身が個人的なものの考え方としては、ほんとうに働いてきた人が、また当然社会連帯的な制度のもとで社会的恩恵を与えなければならない人に対して、特に失業保険とか老齢年金をもらっている人が、ちょっと働くとその分だけ控除される、こういうことは、もうやはり限度を越しているのじゃないか、そういう意味で、やはりもっとそういうものの限度を大幅に上げるというようなことで救済すべきであると思うのです。ただ、制度上全部非課税にするということは時期的にまだ多少早い、これは私はそういう考え方で、私もあなたと同じような考え方で議論をしておるのです。しておるのですが、ただ、いまの制度の中で、それで年金をもらっている人は全部はずしてしまうというわけにはいかないと思うのです。これは恩給でも、やはり議員の恩給でも何でも、若年停止があったり、それから所得制限がある。これはいまの制度の中で年金者だけを全部はずしてしまう……
#119
○武藤(山)委員 そうじゃないんだ。総理、私が言っているのは、いまの、六十五歳で六十万というようにきめてあるわけですね。ところが、実際には六十歳でもらう人もいるわけですね。再就職できないからだの弱い人もいるわけです。そういう人には基礎控除がないのですよ。六十五歳から六十万引けるのです。だから、それをもっと下げる、これも一つの案なんですよ。六十五歳にするか、六十歳にするか。これからは、六十五歳になればいま月五万円までの年金にはかからないわけですから、大部分の人は救済できるわけです、それをもっと下げなければいかぬ。そうでなければ、福祉国家だの――年金でも、農民年金をもらえる人が、六十五歳以下の人だと総合合算で取られるのですから、直さなければいかぬと思うのです。
 時期を見てというのは、田中さんが総理をやめたあとのことですか、三年間総理をやっている間にということですか。それはいつごろを頭に描いているのですか。
#120
○田中内閣総理大臣 そんなにいつまでもいつまでもなどということで政治の責任にたえられるものではありません。そういう意味で、いいことはいっときも早くやろうというように考えております。
#121
○武藤(山)委員 たいへん前向きの、いいことは即刻やるというのでありますから、来年度は実現するだろうと期待をしていきたいと思いますが、最後に、時間でありますから、総理の、今回国会に提案をされている退職手当法というのが内閣委員会にいまかかっております。これは内閣提出であります。この退職手当法によりますと、今度は退職金が大幅に引き上げられます。かりに三十年の場合に、七百十四万五千八百二十円になる。三十五年勤務は九百五十四万九千円になります。ところが、大蔵委員会にいま付託をされておる減税案では、三十年で六百万、三十五年で八百万でありますから、非課税措置よりも退職金額のほうが今度は多くなるという、逆にまたもう一回手直しをしなければならぬ事態が生まれてまいります。これについても、総理、早急にひとつ御検討をいただいて、退職金には課税しない、こういう従来の原則を、今度の引き上げになっても考えよう、こういう考え方をとっていただきたい。
 もう一つは、もう最後で、これは質問しっぱなしになりますが、入場税の問題であります。特に演劇、音楽、スポーツ、こういうものに対しての課税はもうやめてしまう。映画、演劇、音楽、スポーツ、体育、特に文化関係で、田中内閣は文化関係に特に思いやりがあった、理解があったわけですが、税額はわずか八十六億円、十四兆の国家予算の中から見るならば、まさにスズメの涙でありますが、この際、こういう文化、芸術、芸能関係に対する入場税を廃止するぐらいの思い切った措置を総理に決断をしていただきたいことを強く要望して、私の質問を終わります。
#122
○田中内閣総理大臣 退職所得につきましては、一千万円までやりたいという考え方も、過程において検討したのです。いろいろと年金の問題その他との問題がありまして今年度は八百万円ということになったわけでございまして、先ほども述べたように、退職金そのものは非課税ということができないのかということさえも検討しておるのでありますから、その間の事情は以上で御了解いただきたいと思います。
 入場税はわずか八十六億円である。これはそうですが、これは他のものとの均衡の問題があるわけです。飲食税とかゴルフ入場税を上げよう、こういうことでございまして、健康保持のためのゴルフというものもあるし、いろいろな問題もあって、これは筋を通すということでございます。しかし、相当大幅な減税をして、文化人は、たいへん善政である、決断と実行の結果である、こういうことですから、どうぞ御理解のほどを願います。
#123
○鴨田委員長 荒木君。
#124
○荒木(宏)委員 私は、再開国会の冒頭に総理の施政方針演説を伺いました。総理は、外に平和、内に福祉の新時代のとびらを開こう、こういうことばで施政方針演説を結ばれました。その後新しい経済計画を発表されまして、そこには、活力ある福祉社会への転換、こういったことを提唱されております。新しい時代のとびらを開く、また、新しい社会への転換、こういった政治理念が、財政政策の中ではどのように生かされるか、そのことを、この租税三法の審議の場に総理がお見えになった機会に伺いたい、こういうふうに思います。
 新しい長期計画の中に若干その手がかりがあるように思えますが、その中では、法人税につきましては、これは高いとはいえない、相応の負担が必要である、こういうことをいわれております。そして、昭和三十年に法人税率が四〇%から四十年には三七%、そして四十一年に三五%になりまして、その後四十五年に若干、三六・七五%に戻りましたけれども、いまいわれた新しい時代の動きが、今度の法人税法の改正案の中で一体どのようにあらわれてくるかと見ておりましたところが、この点については全く触れられておりません。
 そこで、いまの企業の実態について若干事実を申し述べてお伺いしたいと思いますが、ちょうど落ち込みのもう一つ前であります昭和四十年、これは法人税率が三七%でありますが、それと、一番新しい統計で把握できます昭和四十六年、これを比較してみますと、GNPが約二・四倍ですね。全産業平均の売り上げがやはり二・四倍と、ずっとふえております。そしてこの売り上げに対比する利潤率が、昭和四十年の二・三%から四十六年の二・四%へ、つまり、GNPがふえる、全産業の売り上げ高がふえてくる、それに応じて利潤率が増加している。これは売り上げ高対比だけではなくて、総資本の対比でも自己資本の対比でも同じであります。総資本では三・四%から三・六%へ、また自己資本の利益率では一七・四%から実に二二・五%へ、こういったいわゆる全産業を平均してみても企業はもうけがふえているということから、法人税率の相応の負担ということではなくて、法人税率、基本税率の引き上げ、こういうことを新しい時代としては言うべきではないのか、こういうふうに考えますので、まずその点についてお尋ねしたいと思います。
#125
○田中内閣総理大臣 四十八年度には、特別措置の改廃等によって、平年度四百億円程度の増徴が行なわれるというような措置をしたわけでございます。それは、先ほどから述べておりますとおり、第一回の平価調整が行なわれて、そのほんとうの結果があらわれるのは一年ないし二年先である、場合によっては三年先であるというような状態でありまして、平価調整の結果は、中小企業や零細企業はもちろんのことでございますが、やはり何らかの措置を講じなければならないのではないかというような立場にございましたので、その意味で、法人税率というものに手をつけないで、課税所得の面で調整を行なうということにしたわけでございます。
 もう一つは、法人税率というものが確かに低い。暫定税率を含んでも三六・七五でございますから、低いということはよくわかっております。わかっておりますが、ただこれを画一、一律的な議論でもって引き上げということを行なう前に、なさなければならぬことがあるわけです。それは公害問題が一つあります。それからもう一つは、社内における企業の社会施設や福祉施設というものが非常に貧弱であるという問題も一つあります。もう一つは、中小企業との関係が、法人を締めると、すぐ中小零細企業のサイトが延びたり、貸し付け金の回収になったり、だから支払遅延防止法というようなもの自体で一体いいのかというような問題、そういうようなものも広範に考えながら法人税率というものを考えなければいけない。
 こういうような問題でことしは手をつけがたかったわけでありますが、これは四十九年度予算編成の過程にやはり税制改正が当然行なわれると思いますが、これはやはり増徴の方向にあるということで御理解をいただいてけっこうだと思います。これは四十九年四月三十日に暫定税率一・七五の期限が来るわけでありますから、どうしても、四十九年度にはこれを本税に繰り入れるのか、そのほかに一体プラス何%増徴することがいいのかという問題が出てくるわけでありまして、四十九年度税制改正の過程において解決をしなければならない問題だ、こう考えております。
 ただ端的に法人税を引き上げるというだけではなくて、いまいろいろな解決をしなければならぬ問題があります。自己資本比率が非常に低いとか、それからいまの会社の安定ということと、資本の自由化等が進められるという場合に、いわゆる従業員がみずから株を取得するにはどうするのかというような面もあります。そういうような諸般の政策とあわせて法人税率の問題を検討してまいろうということであります。
#126
○荒木(宏)委員 来年はひとつその方向でやろう、このお話は、それはそれでわかります。ただ、私が申し上げておりますのは、いますぐやるべきことじゃないのでしょうか、こういうことなのです。といいますのは、なるほど、公害その他いろいろやらなければならぬことはこれはありますよ。しかし、企業は、全産業平均して見まして、社内の留保率がうんとふえているのですよ。昭和四十年に比べますと、三六・一%から四十六年には五一%に留保率がふえている。だから、ほかのこともいろいろやる力があるわけですね。だって、太っているのですから。しかも、国民所得の中で占める法人留保率、これがまた三・七%から七・二%にふえている。だから、企業の中で見たって率はふえているし、国民所得全体で見たってその率はちゃんとふえている。中でやっているだけじゃないですよ。配当もふえているのです。配当率も、御存じだと思いますが、九・四%から一〇・九%にふえている。中でもいい。全体として見てもいい。おまけに外にもいっている。それなら制度を変えてうんと引き上げてみたらどうですか、私はこう言っているのじゃないです。昭和三十年からずっと下がりっぱなしで、これをこういう時代だからもとへ戻したらどうですか。来年というお話、これはけっこうでしょう。しかし、いまのこの事実から、これはやはり戻すべきではないか、こういうことを申し上げているわけです。いかがでしょう。
#127
○田中内閣総理大臣 ですから、いまも申し上げましたように、まだ平価調整が行なわれて一年二カ月というのに、また変動相場制に移っておるという問題が一つあります。それから、中小企業に影響が絶対いかないような状態でなければならない。もう一つ、やはり企業企業といいますけれども、この企業で生命をつないでおる人たち、給与所得者というのは非常に多いのです。だからそういう意味で、いまそういうことをちょっと手をつけることによって春闘にも影響するというような、なかなか微細な配慮をしているのです。
 ですから、そういう意味では、何も自民党は企業というものを擁護するというだけを考えておるのではありません。そういう意味で、今度の状態においては、四百億円の増徴ということで、一%引き上げたと同じような効果を持っておるわけであります。ですから、三六・七五に、四百億といえば、三七・七五ということもいえるわけでございます。少なくとも三七・五にはなっているわけです。そういうような状態が実質的に行なわれておる。三七・七五というと、三十三年の三八%、四十年の三七%のちょうど中間ということになるわけであります。ですから、そういうような事情で、ことしはいま御審議いただいておるものでございますが、四十九年にはどうしても、やはり経済基本計画を推進していくためにも、財源確保のためにも、考えなければならないと思います、こう述べておるのは、これはすなおな述べ方なんです。
 それからもう一つ、今度交際費課税も非常にきびしくやりましたし、これは税率を変えればいつでも財源になり得るものでございます。そういう意味で、来年の税率が上がったらこれは困るから、早く飲んでしまおうというようなものではないのです。ですから、いつでも財源になり得るものであるということで、四十八年度にやらなくても、四十九年度に十分措置できるものだという事実もひとつ御理解を賜わりたい。
#128
○荒木(宏)委員 四百億という話がよく出るのですけれども、総理御承知のように、取ったかわりに今度別の項目でまけておるのがありますから、計算上差し引き十億でしょう。これは御存じのとおりですよ。おまけに、中小企業への配慮というお話よく出るのですけれども、それはもう来年になったって同じことでしょう。やはり大企業にはやれないということでしょう。ことに商品投機でそこにひとつぎゅっとおきゅうを据えようか、こういうふうにおっしゃっておるときに、大企業に手をつければこれはもう中小企業にいくのだから、それはという話が出ますと、これはどうもほかのことについてもほんとに大企業に取り締まりのメスが入れられるのかというふうな懸念が非常に強くなってくるわけです。
 ことに私が申しておりますのは、法人所得に対する法人税の負担率、これが四十年に比べて逆に減ってきている。三四・五%から二八・一%にまで、税率は同じですけれども、実質的な負担率は減ってきておる。しかも、御案内のように、国際比較から見ましても、西ドイツでは四九%、フランスでは五〇%、アメリカでは五一%をこえている。にもかかわらず、日本は御案内のように四五%余りです。
 ですから、全世界を見渡しましてもそうなりますし、実質的にもこう減ってきているし、そして中ではふくらんでいる。国民所得の対比から見たってそうだし、おまけに配当率がふえておるのだ、こういうことですから、その点は、四百億ということをおっしゃらずに、いま申し上げたような趣旨で、法人税率を戻すのだという方向でひとつ御検討いただきたい、こういうふうに思います。
 そこで、検討していただく方法に関連して申し上げておきたいのですが、企業の資本階級別の利益率ですね、資本金一億円以下、一億から十億円、十億円超、いろいろな資本金階級別がありますけれども、いま大企業と中小企業というお話が出たのですが、この売り上げ高利益率は、大蔵省の関係資料から計算をいたしますと、五千万円から一億円までの資本金が一・八%、一億円から十億円までが二・一%、ところが、十億円をこえますと、もう一ぺんに三%にはね上がる。ですから、いまの比例税制ということで実質的に利益を得ているのは、資本金十億円以上のところがそのことによってうんと利益を得ておる。ですから、法人税切り上げの、あれを戻す方向は、むしろ大企業のほうにこそ目を向けるべきである。先ほど、大企業をやるとすぐ中小企業に移るとおっしゃったのですが、大企業のほうにこそいくべきではないかというふうに、この数字からは明らかに読み取れるのですが、この点はいかがでしょう。
#129
○田中内閣総理大臣 それは税率の是正を行なう場合でも、中小企業や零細企業の税率アップということではなくて、これは税率アップにも耐えられるという企業を対象にして考えなければならないということは当然でございます。中小企業への影響というものは、これはなぜ私が言うかというと、中小企業、下請企業と明確にしてもいいのですが、何らかの形でもって大企業と結んでおります。それで、下請企業に対する支払遅延防止法のごときものがあるのですが、何かするとやはり中小企業や零細企業、下請企業にすぐ影響を求めるということに問題があります。ですから、円平価の調整が行なわれても、元請業者の利益は減らないで、その分は相手側のマージンの切り下げと下請企業の支払い代金の遅延や納入代金の切り下げによってまかなわれておるというようなことが――こういうことをちゃんとやれないような状態では、やはりやるべきじゃないのです。そういう意味で、四十九年度というのは、――平価調整というのをいまにして思えば、何も先見の明があったわけじゃありませんが、少なくともフロートしなければならないような状態になったわけですから、そういう意味では、やはりいま中小企業や零細企業に及ぼす影響というものに対して目張りを十分やってから四十九年度で行なうことが、結果的にも私はよかったと思っておるのです。これは私はすなおに考えてそういう感じでございます。ですから、法人税というものに対して全然手をつけないのだというのではなく、増徴の方向でもって検討せざるを得ないということで政府も腹をきめているんだということに御理解をいただきたいと思います。
 さっき、フランスが五〇%、アメリカが五一%、西ドイツが四九%だというのですが、これについてはそれなりの影響が出ておる。こういうことだから国際競争力に耐えないでもってドルの切り下げをやらなければいかぬというような面もあるのであって、これは実際においてそう単純なことでは言えないわけでございますから……(発言する者あり)いや、そういう面もあるのです。そういう面もありますし、それから、いまの日本の勤労者の所得水準そのものが最高じゃないのですから、そういうものの給与の是正ということなどもみんな考えながら、四十八年度というのはいま御審議をいただいておる税法でお願いをしたい。四十九年度には相当前向きで考えております、こういうのでございますから、いますぐ増徴しなさいということではなく、また次の段階までは今日から検討を進めておりますということでひとつ御理解を賜わりたい。
#130
○荒木(宏)委員 この長期計画で相応の負担が必要であるというふうにいわれておるのが、増徴の方向だというようにはっきりおっしゃったわけですから、その意味では、けさほども主税局長が若干の負担というふうな言い方で、はっきり増徴ということをおっしゃらなかった点を明確にされたことは、それはそれで方向として私ははっきりしたと思うのですが、しかし、おっしゃっておる看板が「転換」なんですから、新しい時代とおっしゃっておるのですから、だから中小企業が被害を受けるのなら、それこそ大企業にやれるような手だて、中小企業が被害を受けないで大企業に規制ができるような手だてをやってそれを国民に示されるのが、新しい時代というものではないかと思います。にもかかわらず、先ほどのようなお話でフロートのことを例に出される。いま私が読み上げました数字は、これは全部四十六年です。例のニクソンショックでたいへんにがたがたした年ですよ。そういうときですら、こう言っているのですから、そういうことを理由に来年来年とおっしゃるところを見ると、これはやはりもっとしっかり見つめていかないと、来年のこともほんとうになりはしないんじゃないかというふうなことも思われます。だから、いま内に商品投機のあらし、そして外には国際的な過剰流動性の、実質的な円の再切り上げ、こういうようなことになっているのです。
 大企業のことに関連してもう一言お伺いしたいと思いますが、今月の十九日に参議院の予算委員会でわが党の渡辺議員が大蔵省のほうに資料要求をいたしまして、そして伊藤忠、丸紅、その他十大商社が、価格変動準備金あるいは貸倒引当金、そういった八項目の準備金、引当金で一体この一年半の間にどのくらいの免税を得たであろうかということを資料要求いたしました。そうすると、大蔵省のほうから出された数字によりますと、十大商社で三兆一千八十一億円、これだけが引当金、準備金のために免税になっている。大企業の手元流動性の問題については、これはもう衆議院の予算委員会でも資料が出まして、昭和四十五年には〇・九三、それが四十七年の中ごろになりますと、一・二七になっている。ですから、先ほども話がありましたように、そういった企業内の流動性手元資金があるにかかわらず、大蔵省の試算によっても、一年半で、三期で三兆をこえる免税をしている。しかも資本階級別の実効税率を見ますと、資本金が百億円をこえる場合は二一・四%、これは大蔵省の関係資料からとったのですが、資本金一億円未満の場合には二九・四%、これは傾向的に資本金が上がるにつれて税率はずっと下がってきているのです。そこへこういう減免税をやり、しかも手元には金がだぶついておる。この特別措置、これは、産業保護政策は逐次見直されつつある、こういうふうに長期計画でおっしゃっていますけれども、逐次見直しではなく、もうこうなってくると廃止の方向へはっきり政策として出されるべきじゃないか。しかも大企業に向けてのそういった特別措置を廃止の方向に持っていく、こういうことをはっきりおっしゃるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
#131
○田中内閣総理大臣 特別の制度というものが既得権化すことは、これはもう考えておりませんし、当然のことだというふうには考えておりません。これは逐次合理化を行なっておるということは、まま申し上げておるとおりでございます。あなたがいま御指摘になった三兆あまりというのは、これは一年度、単年度の問題ではなく、累計数字のようでございます。これは退職給与引当金、貸倒準備金、価格変動準備金、海外市場開拓準備金というようなものをずっと合わせて三兆あまりということのようでございます。そういうことでございまして、これを一ぺんに全部やめてしまう、これだけ機構の大きいところが、倒産したら退職金も払えないということになると、これはえらいことでございますし、そういう意味で、やはり緊急の度合い、必要性というものを十分考えながらやっていくわけでございますし、これが過剰に積み立てられるということになれば、それはある時期には法律の御審議をいただけば、それはまた財源にいつでも振りかわるものでありますから、これはそういう意味で、これを直ちに全部この制度をやめてしまうというわけにはまいらない種のものである、こう御理解いただきたいと思います。
#132
○荒木(宏)委員 これをやめたからといって退職金が払えないということはないでしょう。これは総理御存じのとおりですよ。それだけ社内留保をして、そして税制上有利になっている、企業会計上利益計上しますからね。そういうことであって、それをやめたから退職金が払えないというのは、論理が飛躍しているのじゃないですか。ですから、こういうふうなことについては、いま整理の方向ということをおっしゃったのですが、はっきり廃止の方向、むしろ廃止、整理をすみやかにやるということを強く求めておきたいと思いますが、それとうらはらに、個人の所得の場合を見ますと、個人所得の中の所得税、住民税、この占める比率はむしろ逆に上がってきていますね。御存じのとおりですが、四十年一八・五%から四十六年一九・三%に、個人の場合にはむしろ負担率がふえてきている。しかも自然増収の中での減税の率は逆に減ってきているわけです。たくさんどんどん払う方向が出てきていながら、減税の率は減ってきている。四十年二九・三%から四十六年二七・二%に減ってきている。しかも物価調整ということで、これはほかでも話が出ましたから、私は税外負担の場合を一言申し上げたいと思うのです。
 今度厚生年金、それから健康保険は、若干の部分的改善と引きかえに保険料が増額になる。そのことによって、たとえば月収九万円の労働者、夫婦子二人、これを見ますと、減税額は一万二千三百三十円になります。しかし、税外負担がこの二つだけによって一万三千三百二円ふえる。つまり、減らしてもらったよりもふえるほうが多いわけですよ。御存じのように、減税といいましても、これは絶対額が減るんじゃなくて、ふえ方が少し減るというだけですから、この場合を計算しますと、絶対額は税額で八千五百三十八円ふえていますから、合計で四十七年に比べて二万二千九百五十円ふえる。だとすれば、物価調整減税ということをおっしゃるのですから、税外負担の点も、もちろん改良できる部分、給付の部分がありますから、これは一本調子でいかぬと思いますけれども、これも調整の中に含めて考えるべきではないか。これも減税をさらに即時すみやかに進める一つの理由ということになるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#133
○田中内閣総理大臣 確かに税負担だけではなくて、税外負担もあわせながら個人の国民の負担の軽減ということをはかっていかなきゃいかぬし、軽減をしながら給付内容をよくしなければいかぬというのが理想であります。しかし、ローマは一日してならずというように、なかなか――いまのように、あなたがしさいに検討されるとそういうことになるわけでございますから、ですから、今度の経済社会基本計画の中で端的にそれを述べているわけでございます。給付率をこのように上げます、社会保障制度の内容充実は行ないます、しかし、高福祉高負担ということで、その間において約三%の負担増になります、こう正直に述べているわけであります。これは、三%の増にならないで、それで給付や社会保障の内容をここまで上げますということが望ましいことであり、理想の姿であることは言うまでもありませんが、しかし、計算をしてみますと、急激に他の財源だけをもってやれないということで、このように述べておるわけでございまして、いろいろ議論の存するところでございますが、しかし、たえがたい限度を越しての負担にまで上げてそして給付内容や社会保障の内容をふやすというのなら、これは言うまでもなく間違いでありますが、そうではなくて、これは戦争中なんかもそうなんです。戦争に勝つためには、飯は食わないでもいいから税金を出せ、こういうことでございましたから、これは全然いいことではないことはわかっております、しかし、三%税外負担を含めて負担はふえますが、少なくとも三〇%給付はふえるんです。こういうことになると比較論になるわけでございます。
 ですが、あなたの言うことはわからぬわけじゃありませんよ。わからぬわけじゃありませんですから、減税その他を行なう場合には、少なくとも零細な人たちや、先ほど御指摘がございました未成年者や身体障害者や、他の政策をあわせ行なわなければならない人たちに対しては、やっぱりわかりやすく、こっちでもらったけれども、こっちで取っているじゃないかということは、これは政策的にはあまり効果のないやり方なんですから、そういう意味で、そういうものの現状も十分把握しながら、実際に国民が心身ともに、心の中でも、精神的にも、それから実際の面においても恩恵を受けたのだ、こういうように政策効果があがることが望ましい、私はそう思っております。だから来年度、これからいろいろな勉強を続けていくわけでございますから、そういう御指摘の面なども十分検討いたしますが、しかし、あなたがいま御指摘になったように、税外負担もすべてを考えて減税をしなさいということに対しては、いまにわかに、そういたしますとは申し上げられません。
#134
○荒木(宏)委員 時間が来ましたから、最後に一言申し上げて終わりたいと思いますが、このいろいろな中に、どうしても消すことのできない矛盾というのがはっきり出てくるわけですね。基礎にいまおっしゃる転換ということを掲げながら、その実は、一日にならないという、従来の継続した路線というものがあるために。だから、たとえば勤労学生控除というのがありますが、所得制限が三十四万円、これが年に、給与所得控除を上積みいたしますから、五十八万六千円ということになっておりますけれども、しかし、昨年の人事院勧告によりますと、高等学校を卒業した者が初任給で五十八万五千円、正確に言いますと五十八万五千八百八十八円ということになっている。これは去年のですから、ことしはもっとふえているわけですね。だから、高校を出て、勤労学生控除がありますよと言うけれども、実は人事院勧告の初任給によると、もうオーバーしてしまう。ですから、こういうふうな点は、いまいろいろおっしゃったけれども、これはやはり即時解決、改善なさる、生活に必要な経費には課税をしない、こういう原則でいまの点も解決をなさるべきではないか、それこそが、新時代のとびらをあける、新しい社会への転換、そういうことになるのじゃないかと思います。
 私どもは、大企業、お金持ちから税金を取って、そして働く勤労者、国民には税金を安くする、特権的な特別措置はやめる、こういうことを主張しているわけでありますが、その一環としても、生活に必要な経費には税金をかけない、こういうことは方向としても確認されてしかるべきではないか、こういうように思いますので、、一言伺って、質問を終わりたいと思います。
#135
○田中内閣総理大臣 その最後の御発言、必要な生活費には課税しないという考え方は、もう当然貫いていきたい、こう思います。また、貫くべきだと思います。そういう意味で、いままでは、総理府統計の数字からいっても、その献立は生きるに足ることであって、楽しみを覚えないような食事は、生計費として計算をして何の足しにもなりません。だから、やはり国民全体のレベルが上がっていかなければならぬわけでございますから、やはり必要な生活費というものも当然上げていく、理想に近づけていくということでなければならないということは、私もそう理解しております。
 勤労学生に対して、学生そのものに対してどうこうということになりますと、これは学校に行かない人もあるし、いろいろなものもございますから、これはやはり総体的な問題として課税最低限を引き上げていく。それから未成年者には、できれば給与所得面においては課税限度以内にするようにつとめるとか、いろいろな問題をやはり考えていかなければならない問題だと思います。
#136
○鴨田委員長 広沢直樹君。
#137
○広沢委員 時間の制約がありますので、私は質問を数点一ぺんにお伺いしておきたいと思います。
 まず、総理は、予算編成にあたっても、一応福祉へということを国民に公約なさいました。したがって、いわゆる福祉国家を実現していくためには適正な負担ということが問題になってこようかと思うのです。そうなりますと、その大前提に立つのは、いまの国民の税に対する不公平の問題、それから重税感の問題、こういったものを片づけていかなければ――それが大前提に立っていると思うのです。単なる福祉ということであれば、それに対しては当然財源というものが必要になってくるし、そうなれば高負担になるのではないかという懸念を持ってくるようになるわけですね。
 そういう意味から、いわゆる重税感の問題と不公平の問題、これを最初にお伺いしておきたいのですが、それは先ほどもお話がありましたけれども、まず免税点を引き上げるという問題があると思います。この問題についてはいまもお話がありましたけれども、何を基準にして免税点を引き上げていくかということです。これはいままで大蔵省は大蔵メニューというようなものを一つの参考に出して、そういったことが課税最低限の論議の中では問題になったわけですけれども、しかし最近ではそれもだんだん情勢が変わってきた、大蔵メニューも引っ込めてしまったわけでありますが、当然いまの文化的な憲法で保障された最低の生活水準、それには課税すべきではないという、そういう観点に立って免税点の引き上げというものを考えていかなければならない、こういうふうに考えているわけですが、その点についてどのようにお考えになっていらっしゃるか。
 それから、いま言う不公平の問題で出てくる問題は、このたび事業主報酬制度、これを特別措置の中で考えられておりますけれども、私は一つの制度として当然であろうと思うのですが、それによって生じる、いわゆるサラリーマンの不公平の拡大ということが問題になります。したがって、税調の答申の中にも、基本税率の中にこれを取り入れて考えることは認めがたいという答申が出ています。しかしながら、法人事業主と個人事業主との関係においては不公平を是正していくということは長年の問題であったので、一応この制度というものを取り入れた、これはけっこうだと思います。したがって、それによって生じるサラリーマンの不公平の拡大がいま問題になっているのですが、その点に対してどういうふうにお考えになっているか。
 それから、いま数々論議がありました中でも、税調会長が先日参考人としておいでになったときに、いわゆる選挙権のない未成年者に対しては所得税は非課税にしたい、これは先ほど税調とよく検討してというお話でありましたけれども、すでに税調の会長としてはその意向を示されているわけです。したがって、この点についてはいろいろな問題があろうと思いますが、まず課税最低限を上げるという問題あるいは未成年者控除を特に設けるという問題があろうと思います。したがって、課税最低限の問題は独身者の関係といろいろな関係が出てまいるかと思いますが、基本的にはそれが一番ベターであろうと思いますけれども、もしもそうでないならば、未成年者控除というものを設けて、現在の矛盾に対する適正な税制上の処置を講ずるべきである、こう主張するものでありますけれども、その点についてどうお考えになっていらっしゃるか。
 次に、法人税のことです。これはいままで、一口に言いましていわゆる高成長低負担という形で、産業優先の税制といいますか、そういう傾向にあったわけであります。ところで、先ほどもお話がありましたとおり、二十七年に法人税が引き上げられて以来ずっと税率が下がってきているわけです。しかし、今回福祉へ転換するということになれば、その基本税率というものをここで考えてみなければいけないだろう。ただし、四十一年のときには基本税率を上げるという問題は税調でも問題になった、結論的には付加税方式といいますか、いわゆる臨時措置として一・七五というのを上げているわけです。こういうやり方でやるべきではないと思うのですね。したがって、この段階においては法人税の法人税率を上げるといいますか、もとへ戻すといいますか、どちらにしても同じでありますけれども、この際においては法人税率を引き上げるべきであるとわれわれは主張するわけです。
 そこで、確かに中小企業と大法人との関係あるいは零細企業との関係というものが出てまいりますので、いまの法人税率は、いわゆる所得の面とそれから資本金の面で二つに分かれておるわけですね、二段階になっておりますが、これをもう少しきめこまかく、基本的には法人税も累進的な税率の方向をとったらどうか、四段階にするか、六段階にするか、八段階にするかは今後また法人税の問題を論議するときに論議したいと思いますが、基本的な方向だけはどういうように考えていくべきかということをお伺いいたしておきたいと思います。
 それから次に、総理は日本列島改造論の中に、いわゆる財政資金を先行的、効率的に運用すること、これがいま非常に大事である、こういうことをいっておられます。そこで、いままで補完的役割りであった税に対して、税制の機能を活用して、いわゆる財政の二本柱として国土の改造を推進する、こうおっしゃっておられるわけです。特にいまの国土のひずみから考えてみまして、不均衡から考えてみまして、国土改造は必要であろうと思います。したがって、大都市集中の機能を鈍化させて、地方開発を進めるには、税制の政策的な機能、すなわち禁止税あるいは誘導税を活用する、こういうふうにおっしゃっておられますけれども、具体的に申しますならば、総理も言っておられましたいわゆる工場の追い出し税、こういった構想も総理は述べられておったのですが、それが具体的には四十八年度の税制の中には一つもあらわれていない。一体こういう基本的な問題といま具体的にあげた問題はどういうふうに今後お考えになっておるのか。
 それから最後に、いわゆる租税特別措置法でありますけれども、今日の税制改正は、法人税をある程度重課すべきであるという議論が多いわけであります。四十八年度の税制改正におきましては、まず租税特別措置、いわゆる産業優先になっている減免措置を是正することに重点が置かれたといわれております。しかし、その場合に租税特別措置法の内容を見てみますと、まだまだ産業優先の優遇措置がそのまま残されているわけです。この際一ぺん洗い直して、ここで抜本的といいますか、画期的にやっていかなければならない、こう考えるわけです。租税特別措置そのものの基本は、これは税制の不公平というものをあらわしておるものでありますから、できるだけそういった面が租税特別措置で措置されない、こういう方向で検討されなければならない。しかし、やむを得ないものについてはいたし方ないものとして認められておるわけでありますが、こういう時期が来れば、たとえばいま、いわゆる海外市場開拓準備金などというものは、これも減らしてはきておりますけれども、残っているわけです。こういう面は今日の段階においてはもう廃止をして、そのために生じてくる中小企業やいろいろの問題については別の補助金的な、あるいは政策の面で考えられるべきではないか、こういうように考えるわけであります。
 数点にわたってお伺いしましたが、まずお答えいただきたいと思います。
#138
○田中内閣総理大臣 順次お答えいたします。
 税に対して不公平感、重税感というものを持っているということは、もうよろしくないことでございまして、不公平感と重税感というものをなくするということが税制改正の主眼でなければならない、こういうことで、私も同感でございます。
 それから、課税最低限というものはどういうことできめるのかということは、一つには国際比較がございます。それからもう一つは生計費からはじき出して課税最低限をきめるということであります。三点目にいえば、これはよその国の比較だけではなく、日本の理想的、あるべき姿に、年次的にどのようにして近づけていくかという三点から課税最低限というものはきめられていくわけでございます。そういう意味で、課税最低限の引き上げというものに対しては、十万円上げれば二千三百億円という財源を必要としますから、御指摘になっておるように、直ちに百五十万円まで上げるということは、なかなかむずかしいことであっても、十分これからの税制改正においても考えてまいりたいということで御理解をいただきたいと思います。
 それから第二は、事業主報酬制度等を認めたということは理解するが、サラリーマンの問題に対してどう考えるかという問題に対しては、これは先ほどもちょっと議論が出ましたが、この事業主報酬制度だけではなく、医師に対して特別控除が認められておるとか、それから必要経費が認められておるのにかかわらず、サラリーマンに対しては、低所得者は別でありますが、サラリーマンといっても、サラリーマンイコール給与所得者と考えれば、低所得者だけではなくて、中堅所得者もみんなサラリーマンに入るわけであります。われわれもその意味では入るかもしれません。
 そういう意味で、いわゆるサラリーマンというよりも、もっと詰めて勤労者の納得を得られるようなものというのは、相手が恩典を受けるからけしからぬというのではなく、相手が恩典を受けるならば、みずからも恩典を受けるように、いいほうに持っていくことが望ましいわけでありまして、そういう意味で橋本幹事長が述べたように、やはりそれなりの必要経費はあるのだし、世の中に生きていくために、純風美俗をつちかっていくためにも、計上できないような支出も事実あるのだ。そういう意味で、サラリーマンも課長になれば係長よりも、それから部長になれば課長よりも出費は必ずかかるわけであります。ところが、現在においてはどうかというと、課長と銀座へ飲みに行っても、課長は一万円しか持っていない。新しい入社の独身者は十万円――十万円は大きいかもしれませんが、五万円は持っている。実際問題としてもそれじゃだめなんです。
 そういう意味で、一律控除というようなものを考えられないかということでまじめに検討しているのです。事実、まじめに検討いたしております。これは必要経費という面からでもいいと思いますし、それは当然、社会的な生活を維持していくための必要経費であるということで一律のものが考えられないのか、低所得者に高くてもかまいません、そういうものが考えられないかということを考えております。
 それから、未成年者の給与所得というものに対しては、これはひとつ非課税にしてはどうかということを先ほどからも言われておりますが、未成年者というだけで控除をするということになるのか、控除をするとするならば、未成年者は人生における修養期であります、勉学期であります。ですから、学生に対して控除をしなさいというと、これは学校に行けない人もあるのだからということで、なかなか反対はあります。ただ、人生何びとも通る過程において修養しなければならない。それは独学でも学校で勉強するのでも同じであります。そういう意味で、いわゆる修養費、勉学費というようなことで学生とか区別しないで一定の控除ができないかということは、私も大蔵大臣時代からずっと考え続けてきておる問題でございます。十年の余たっても結論が出ないというのは、はなはだ遺憾なことでございますが、抜本的な改正という場合には、そういう面から取り上げるべき問題だと思います。そうでないと、未成年なるがゆえにといっても、憲法上とかいろいろな問題が未成年といえども違っておりますから、そういう区別を税法上一体どうできるのかという問題もありますので、未成年者、成年に達せざる人といえば、修学している人も修学していない人も、一様にどのような控除の制度があるかということが勉強課題であろうと思います。
 法人税率が低い、これは先ほどから申し上げておるとおり、現在の暫定税率一・七五を加えて三六・七五になっているわけでありまして、来年の四月三十日にはこれは切れるわけであります。そういうことでございますので、来年度この問題は当然検討さるべき問題である、こう考えております。暫定税率を基本税率に繰り入れるという問題も一つございますが、それだけで済むのか済まぬのかという問題も当然あります。暫定税率がある現状に対しても、御不満があるわけでございますし、また歳出の必要性も増大するわけでありますので、そういう面では考えていかなければならない問題だと理解しております。
 法人税に対して累進税率を採用せよという議論がたくさんございますが、これはなかなかむずかしいのです。大体法人税にはなじまないのです。相続税とか個人の所得税とかいうものに対しては、これは所得の再配分ということで考えられる問題でございますが、法人は株主も非常に多様でありますし、法人自体に累進税率をかけることは、制度上なかなかなじまないということがあることをひとつ御理解いただきたい。
 それから、財政と税制というものに対する政策上の問題に対しての御質問が第五点でございましたが、これは私は常に言っておるわけでございますが、財政という現ナマ中心主義というものは、はっきりいうと撤回する方式でございます。だから、財政でやらなければならないものは、社会保障とか、直接お互いの税金によってまかなわなければならない重度心身障害児とか寝たきり老人とか、社会連帯の公の責任で必ず責任を果たさなければならないというものは、これは財政でやる以外にはないのですが、その他のものはだんだん補完的な任務を持つということで、金融を合わせてまいっておるわけであります。そこで財投制度ができたわけであります。そういう意味で、財投も大きくなったので、今度は国会の議決事項にしようというふうに転換してきておることは御承知のとおりでございます。
 ですから、国が全部土地を買って宅地を提供する、うちをつくってやるよりも、土地を持っている人やその上に借地権を持っている人が、みずからの力でもって貸し家や分譲住宅を提供できるとすれば、同じ金で倍の戸数が提供できるわけでございますから、先進工業国においてなすことは、財政中心主義よりも他の方法も加味していくべきであるということは、これはもう避けがたい事実であるし、当然の方向だと思うのです。
 そういう意味で、税は財政の補完的任務だということが長らくいわれてきましたが、今度の国土改造政策を行なうような場合には、やはり税を財政というものは二本の柱になり、金融を入れれば三本の柱になって、その優劣はつけがたいような状態である。場合によっては、税が先行しなければならないということもあり得る。これは過去において、輸出力増強などについては、財政ではなくて税制が主体になってきて、今日の国際競争力ができたわけでありますから、そういう意味から考えてみても、税というものはいままでの財政の補完的な任務ではなくて、税が先行する場合毛ある。
 そうであったならば、なぜ追い出し税をやらなかったかということでありますが、追い出し税は受けざらがなかったので、受けざらがなくて取るとすれば苛斂誅求になるわけであります。これは全くそういうことになるわけです。ですから、国土開発庁や国土総合開発法やいろいろなもので受けざらをつくっておいて、それでもなおおいでにならないならば、こちらのほうで追い出し税というものでいきます。これは追い出し税が先行すべきではないという問題があったわけであります。もう一つは、自治省は事務所税をかけたいとか、いろいろな大都市における財源確保の問題がありましたので、そういうものと紛淆しては困るということで、これを見送ったわけでございますが、こういう問題は、効果が出ない場合には罰を加えるような税制よりもやはり補助するような税制が先行するほうがいいということでございまして、実効があがらなければ当然公害税という問題も出てまいりますし、同じ思想でありますから、そういうことになっていくと思います。
 誘導税や禁止税というものは各国で使われております。これは自動車の税金についても日本よりも十倍もよけい取っておって、中距離の貨物は鉄道に移すように西ドイツはやっております。遠距離は船に移すように、日本の遠距離逓減ということと逆の遠距離逓増制度をとっているわけでございます。それから税制が誘導、禁止税に入っていく、こういうことでありまして、日本もそういう方向をとらざるを得ないということは言うまでもないことだと思うわけでございます。ですから、今度工場の追い出し税をやらなかったからということですべてを律しないで、これからひとつ御理解を賜わりたい、こう思うわけでございます。
 最後は、特別措置の問題でございますが、特別措置は、四十八年度において千六百七十二億円でございます。これは企業分でございますが、そのうちに大企業は三百十六億、一八・九%、個人及び中小企業は千三百五十六億、八一・一%でございます。中小企業や個人に対して代がえをするわけにはまいりませんから、もう少し事態を見ていかなければならないし、場合によっては付加しなければならぬものもあります。しかし大企業に対する特別措置は漸次改廃の方向にあるということは御理解いただけると思います。特別御指摘のございました海外市場準備金というものは、中小企業だけを残して、あとは経過措置を講じておるというのが現状でございます。
#139
○広沢委員 時間ですから終わります。
#140
○鴨田委員長 竹本孫一君。
#141
○竹本委員 最初に私は、要望を一つ申し上げておきたいのでありますが、先ほど来、未成年者に対する控除なり税負担の免除といったことについて、同僚議員からいろいろと意見が出ておりますから、私は結論だけでございますが、民社党は、四十三年以来このことを主張してまいりまして、四十四年の党大会においては、党の政策としてこれを決定いたしております。と申しますのは、われわれの関係の全繊同盟あたりは、多くはみな中学校を出てそのまま工場に入ってきた人が多いわけですし、こういう人はまことにお気の毒だということもありまして、未成年者控除の制度を設けるようにということを主張をしてまいったわけでございます。もちろん、これに対しましては最低の課税標準を上げるとか、いろいろなほかの方法も考えられますけれども、いずれにしても、中学校を出て働いておる未成年の人たちに初めから税負担をぶっかけるということについては、そういうことのないように、ぜひひとつこれは前向きに取り組んでいただきたいと要望を申し上げておきたいと思います。
 それから第二はといいますか、これは本論のほうに入りますが、法人税の問題につきましても、すでに同僚議員からたいへん議論が出ておりますので、結論だけでけっこうなんですけれども、一つは、三六・七五%の問題。期限が参りますと、これはもう一ぺんそのまま三六・七五%の措置を引き延ばすということはない、またそれを軽減するということもない、いずれにしても、方向としては法人税に対しては引き上げの方向である、引き上げの方法は別といたしまして、それをそのまま継続したり、軽くしてもとの三五%に返すということだけは少なくともないんだ、こう理解してよろしゅうございますか。
#142
○田中内閣総理大臣 いま、三五%プラス一・七五の暫定税率を含めて三六・七五%でございますから、四十九年の四月三十日でこの暫定税率は切れるわけでございますが、これを本税率に繰り入れるということは最低のことだと理解していただいてけっこうです。ですから、その上に幾ばくかの付加が行なえるかというような方向で検討を進めるということで御理解いただいてもけっこうでございます。
#143
○竹本委員 そこで一つ提案があるのですけれども、先ほど総理大臣は、法人税の累進という考え方はなかなかなじまない面が多いとお話がありましたけれども、私も若干同感できる点があるのですけれども、実は、御承知のように、今度の事業主報酬の制度というものも、いろいろ御努力をいただいて新しく実現することになりました。みなし法人というようなこともありますと、法人というのは、それらも含めてまことにピンからキリまであるわけです。これを三百万円から上と下とか、一億円から上と下といったように、二つに区切って、それで法人税をかけるということ自体にぼくは無理があると思うのですね。だから引き上げるとか引き上げないとかいうことでもいろいろ議論が複雑になりますが、私は、これを法人の資本の規模に従って、三段階に分けるか五段階に分けるか別といたしまして、多段階に、少なくとも三つないし五つの段階くらいのグループに分けまして、その段階、段階に応じた税率をきめる、これなら一億円以上の会社にこういう税はどうも少な過ぎるとか、あるいはこういう小さな法人にこれだけの税は重過ぎるとかということが、より具体的に論議ができると思うのです。そういう意味で、今度法人税を再検討される場合にはぜひ多段階の方式を取り入れるという方向で検討してもらったらどうかと思いますが、御意見いかがでございますか。
#144
○田中内閣総理大臣 まあ、これは御専門のあなたは十分承知しての一つの知恵でございますが、第一、そういう段階をつけるということ自体がなかなかなじまないということが原則になっておるわけでございます。法律をつくるとやっぱり法律を逆用しまして、いままで十億円であった会社が、二億円までは低税率であるといえば、商法上の規制がないわけでございますから、これは各部がみんな会社に分裂していけばいいわけです。それでみんな一億九千九百万円という会社が五つできて低率の税を適用を受ける、その程度の知恵はみんな持っているわけです。
 そういうわけで、段階的に、大きな会社、企業の形態が大きいから、資本金が大きいから高率なというふうに税で段階区分はなかなかむずかしい。これは過去にも、昭和十九年でございましたか、二十万円以下という、十九万五千円という会社が軒並みにできたわけでございます。そういうようなこともありますから、いずれにしても、段階を設けるというよりも、やはり法人税率というものは大きく二つくらいに分けられる。この二つの分け方というものも時代によって相当変わってまいりますが、中小と普通の企業というふうに分けて、何か大きな会社というものはみんな悪人であるというような意味の懲罰的な税制を適用するというようなことというのは望ましい姿ではないし、実効をあげ得ない、こういう考えでございます。
 それで、これは言わずもがなでございますが、自己資本比率から見ますと、企業が大きいというのは、みんな株主がほとんど全国的に網羅されているということであって、これは六〇%の支配力を持っておるとか三分の二を持っておるとか、外国の企業の例とは違うわけであります。ですから、そういう意味で、へたをすると大衆課税になるという面もございますので、にわかに賛成できないということは遺憾でございます。
#145
○竹本委員 いま総理が言われた点は、二つに分けるか三つに分けるか、あるいは私は五つに分けるかということを言っているわけですが、現に一億円なら一億円で線を引いているわけでしょう。その場合に、いまおっしゃった矛盾はそのままあるわけですね。だから極限の場合を言えば切りがないのですよ。だから極限の場合をとって針小棒大に言って、そして、そういう多段階制を全面的に否定するということはどうもおかしい。これはもう少し具体的にあと別の機会に論議しなければならぬと思いますが、どうしても私は、段階を分けて、それはみなし法人で、個人がやっているものをみなし法人としたそういう法人と、それから二千億円の資本金のものと、一緒じゃありません、線が引いてありますけれども、それを二つに分けるということはあまりにも荒っぽ過ぎて、これは頭が粗雑ですよ、そういう考え方は。もう少しきめこまかく考え得るのだから、それは考えてもらいたい。時間がありませんから、要望だけいたしておきます。
 次に、教育費控除の問題でございますが、これもすでに野党からたびたび議論になっておりますし、私ども特に強調いたしたいのは、教育費控除につきましても、個人的事情、個別的事情を税でそこまでしんしゃくできないとか、あるいは公の学校をたくさんつくることのほうが先だとか、これは確かにいろいろ議論があります。それぞれまた理由もありますが、私が特に指摘したいことは、やはりこれからはいわゆる物の時代、GNP中心の時代を通り越して、われわれはこれから福祉国家というか、その福祉国家も、ただえさだけたくさん与えればいいというものじゃないと思うのです。もっと人間的な教養とか心の豊かな精神的な充足感のある人をつくっていくということ、これが政治の根本問題です。そうしますと、その教育のためには特別な傾斜した配慮をするということも、教育国家への一つの意思表示だと思うのです。
 私は、いまいわれている今日の世相の大部分の問題は、精神の問題だと思うのです。この精神の問題を解決することなくしては次の政治の展開はできないのだということに立てば、教育国家の建設ということは、私の党でも党是としてきめておりますが、しかし、きめる、きめないにかかわらず、これからは、そういう精神的な充足、精神的な内面性ということが大事なんだから、一人でも多く、頼んででも学校へ行ってもらわなければならぬ。もちろんいまの学校の教育方針については非常に異論がありまして、意見がありますけれども、それは別の問題としまして、とにかく学校には頼んででも行ってもらうということが必要だ。そういうことで、また実際問題からいっても、社会的な必要からいっても、教育には力を入れていかなければいかぬ。
 私は、一昨年ですか、アフリカのタンザニアに参りまして、ちょっと感心しましたのが、下のほうは、小学校から始まって、希望者だけが入る。上のほうは、大学、高等学校は、全部国営で国がまかなっていくのです。理由を聞いてみたら、下のほうまで全部国有国営にしてやったら財政が破綻する、しかし上のほうはいわゆる国家の人材をつくるのだ、だから国が全部めんどうを見るのはあたりまえだ、そのかわり出た人にはナショナルサービスを二年なら二年義務づける、こういうことをやっておった。これも一つの行き方だと思うのです。
 いずれにしましても、個人の社会的な必要からいっても、いまは半ば強制的にでも学校は行かなければならぬ。国の必要からいっても、行ってもらわなければならぬ。こういう日本の立場から、ある意味において成功し、ある意味において失敗した今日の段階では、教育を奨励するということには若干傾斜して、むしろ無理のあるところを飛び越していくというところに大きな政治の判断がある。そういう意味から、教育費控除の問題は、ぜひ早い機会に積極的に取り上げていただきたい。総理の御見解を承りたい。
#146
○田中内閣総理大臣 これは毎々申し上げておるのですが、これを税制の中でやろうとすると、先ほど申し上げたように、教育と勤労者というものを分けないで、未成年者をどうするかというような措置をする以外に、これは私は修学をしている学生だけに、その家庭に対して控除制度を設けるということには、どうしても賛成できません。それは行きたくても行けない家庭の子弟があるのです。そういうものと対立感情を起こします。これは理想とは遠い姿になるということで、これはやはりやるとすれば画一、一律的に、修養費であるとか勉強費であるとかいうような、青少年に与えるようなものでなければならないのであって、個別的な特例を設けるということは害があっても益がないという感じを私は長く持っているのです。
 ただ、教育の必要性はわかります。これはあなたがいま指摘したと同じように、明治初年から今日までの官立、公立の教育はみな人材養成でありました。これは国の指導者を求めるということであったわけでございますが、その後やはり私学が必要であるということで変わってきておりますし、戦後は教育の機会均等ということに教育方針は変わっておるわけでありますし、生涯教育ということに変わっておりますから、私は明治初年に考えられたような指導者を育成するために国民の税金を使うということが万能であってはならないのであって、それとやはり情勢が違うということであります。
 ですからやはり学生に対しては、いまでも修学をす慫慂るようにいろいろな制度が行なわれております。今度は私学に対する経常費の補助まで行なわれておりますが、私は、ほんとうから考えますと、もっと広範な意味での育英資金を活用すべきだと思っております。とにかく四年間だけ、働くまで待ってください、そのかわりにきょうだいの中から一人四年間だけは全部まかなえるような勉学の資金を国家が与える、そうして貸与されたものは学校を出てから必ず返済する。いま貸与された育英資金の返済率が非常に悪い。こういうことはけしからぬじゃないかと私は思っているのです。実際そういうことはよくないと思うのです。ですからやはり実情というものを把握して、ただ修学というものが是なりということだけではだめなんで、内容に適合するような制度の拡充ということが必要である。だからほんとうに能力のある人が――能力のない人が何千万円も金を積んで医学部に入る、これは実際そういう人にみてもらう、そういうことを考えたらたいへんなことであります。そういうことを是正しながら、真に国家有為の人材になられるというような素質を持った人は制度上救済してやるというのが正しいのであって、画一、一律的な修学者に対する控除というものはやはり十分慎重に考えなければならないケースの問題だ、こう理解しております。
#147
○竹本委員 行きたいのに行けない人がある、いま総理のおっしゃったように、これは育英施設が十分でないという問題なんですね。私が言っているのは、とにかく自分で親ががんばって行かせるという場合、それを国家の意思表示の一つとしてやはり奨励をしておるのだという意味の最低限度の教育費控除、額は幾らでもないのです。ただ問題は、老人扶養控除の制度をわれわれも主張いたしまして実現していただいた。これも私は、その金額なんかほとんど問題にならないと思うのです。十六万が十九万円です。しかしそれでもやはり老人を大切にするといった一つの意思表示が法律を通じて行なわれるのです。教育についてもそういう意思表示、われわれは教育をいかに尊重するかあるいは精神面をいかに尊重するかということの具体的な意思表示としてひとつ検討してもらいたいと思うのです。いろいろ議論のあることは私も承知しておりますが、きょうは要望だけにとどめておきます。
 それから、総理はかつて、私の記憶に間違いがあるかもしれませんが、予算その他について暦年制を言われたと思うのだけれども、それはその後どうなっておるかということが一つ、それからあわせて国の予算、あるいは税制もそうですけれども、予算ですね、これもみな四月一日から出発するわけですね。ところが国のあり方を受けて地方は出発するわけですね。それが同時に四月一日というところに非常に無理があると思うのです、中央と地方のスタートにおいて。この点についてどういうお考えであるかということをお聞きしたいと思います。
#148
○田中内閣総理大臣 四月――三月年度というのは、明治からの長い歴史の上に立っておりますから、いろいろな面から暦年制に変更することは相当影響がありますので、こういうことがお断わりのことばになっております。しかし私は暦年制論者であります。論者であって、ただ無制限に暦年制を言っておるのじゃありません。これは北半球にありまして、日本の四九・五%は降雪地帯であるということを考えますと、これは四月−三月年度というのが最良の年度ではないということは、もう学問的にも指摘をされておるところでございます。これは歴史上やむを得ず――四月−三月年度を採用している国はごく少数であります。みんな別なものをやっている。別なものの中で何がいいかというと暦年制が一番いいのです。これは国際統計が暦年制である。四月−三月年度を全部暦年制に変えて国際統計をやっているわけですから、その間に議論が起こるわけであります。いままで暦年制に反対があったのは、学校の就学児童が四月一日、春ともなれば学校に通うというのに、ふぶきの中を通うというのはよくないということがおもな反対の理由であります。それだと六歳入学とか五歳入学ということは吹っ飛んでしまうわけであります。そんなことは問題になりません。
 そういう意味で暦年制というものを採用しなくても、継続費制度の問題とか、繰り越し明許制度とかいろいろなものがあって、実際に支障は来たしておりませんというけれども、この間参議院で御指摘がございましたように、財投の内訳を出しなさい、こう言ったときに、一年おくれで実態は仕事が進んでおるわけであります。去年の予算の三分の二は繰り越されてことし行なわれている。そうすればことしも財投の三分の二が繰り越されるというのでございますから、だからこんなに国際的な変動が起こった場合、締めようとしても去年の予算が執行されておるのですから。それは何かというと、あなたがいま御指摘になったように、これは四月予算が三月の末に終わるわけであります。いろいろな内示をしたりやっておるでしょうけれども、府県は継続事業に対しては六月県会でやっておるわけです。で、新規事業は九月県会でやっているわけです。しかも自治省の起債などは地方銀行等の借りかえを行なっておりまして、実際資金運用部からの資金を求めるという段階で全国的な計画を内示するわけです。これも一月、二月になるわけです。ほんとうの新規の事業は二月県会できまるわけでございます。それで全部年度を繰り越すのは当然のことなんです。そういう意味で半分もあるところの日本の降雪地帯というものはちょうど公共事業の執行が雨季に入る、九月、十月ごろから行なわれる。これは労働賃金の高騰をもたらすものであるし非常に非効率である。これは論をまたないところでありまして、これは自由民主党でも暦年制採用は党議としてきまっておるわけであります。一応椎名調査会長が外国を見てまいりまして、――党議として正式にきまっておるかどうか、これはまた訂正を必要とするとまずいのでそこは少し御猶予をいただきたいのですが、いずれにしても政調の機関としては結論が出ておるわけでございます。しかし、まあ長い歴史の重さとでも申しましょうか、実害はないんです。中には予算編成を八月の真夏にやらなければいかぬとか、いろんな議論が存在いたしますが、国益を優先して考えると、これはやっぱり真剣に考えなければならない問題だと、私は真にそう考えております。
#149
○竹本委員 最後のほうは歴史の重さという文学的表現で終わったのですけれども、これはやはり決断と実行で考えるべきものはもう少し検討していただいたらどうかと思うのです。
 時間がなくなりましたから、最後に一口だけですが、例のワシントンにおける通貨制度改革にまつわる蔵相会議の問題ですけれども、これはみな基調発言に終始しまして、改革論議はほとんど次にまかせる、蔵相代理会議にまかせるということになったと新聞で拝見しておるわけですが、私は非常にこれは遺憾である。一口だけ申し上げるわけですが、日本はフロートにいま移っているのですけれども、フロートあるいは半永久的フロート、永久的フロート、いろいろ考え方はあるが、いずれにしてもフロート体制にあるということは日本の国益から考えてあまり利益でない。その理由は、日本はいまの情勢からいって全くすべてが大体受け身に立っておる。それからいざということになってみれば、最後に日本だけがみんなから、ことばは悪いですけれども袋だたきになるか孤立化するか、そこまで心配しなくてもいいとおっしゃるかもしらぬが、いずれにしても日本にほんとうの意味で味方をしていく考えを持っておる国というのはあまりないと思うのですね。だから長引いてくればいろいろあげ足をとられて、いいことは一つもない。
 しかもフロートしておれば、日本のあれは幸いにして――実は私は二月十八日だったと思うのですが、国会討論のときに、二百六十円から二百六十五円、その辺で日本が早く固定に移ったほうがいいということを私は主張いたしました。その後の動きを見ても大体その見当で動いている。ところがこれはフロートさして、アメリカのほうは今度あまり積極的な態度を示さなかったようなことが新聞に書いてあった。これはアメリカからいえば当然なんだ。日本はフロートさせておけば輸出が超過しているのだからだんだん円が強くなるのはさまっていますよ。よその国とは事情が違う。そういう意味で日本はドル建てがほとんど大部分であるということ、しかも輸出が超過しておるということ、これらを考えれば、フロートさしておけばアメリカは別に困らぬが日本はだんだん不利になる、こういう大きな読みがあるかもしれない。あれこれ考えてみますと、フロート制に立って日本が特に得になるということは何もない、むしろ逆に損になるほうが多い。
 しかも今度は外国のほうの立場を考えてみますと、今度改革論議が具体的日程にのぼらなかったということは、日本の責任とは私申しませんが、日本にももう少し打つ手があったんじゃないかということを言うわけです。というのは、アメリカは一〇%切り下げた。アメリカ人に言わせるとおれのやることはもう大体済んだのだ、こう思っている。ヨーロッパは共同フロートをやりドイツは三%切り上げた。ドイツからいってもわしの任務は大体これで終わった、こう思っているでしょう。
 だから、だれが考えても、次に具体的な結論を出すのは日本の番ですよ。日本が、ドイツが三%切り上げたのだからその上のせが五%というかあるいは三%と考えるか、それは別としまして、アメリカが一〇%下げた、ドイツは三%上げた、世界の常識は、それに日本がプラスアルファを上げて、そこで一つのとりあえずの第一ラウンドの終わりとしてのレート調整ができる、そのレート調整ができた上に立って今度は過剰ドルをどうするかが交換性をどうするかとか、為替相場の動きをもっと弾力的に動かすようにするとか、こういう問題が出てくるわけですね。ところが日本が結論を出さずにおるとだれも出せぬのじゃないですか。だれが出しますか。日本が出さなかったらアメリカがもう三%切り下げるというわけにもいかぬ、ドイツがもう三%上げるわけにもいかぬ、イギリスとイタリアは固定相場制にも組みはずれにならざるを得ないような弱い事情に立っておる。こうなると新しい通貨のレートをまずきめてそれから次の段階へ入っていくのに、それが第二ラウンドになると思うのですが、第一ラウンドの終わりには日本が切り札を切らなかったらだれが切るかということですね。
 私はその点、国際関係だからいろいろデリケートな問題があることもわかりますけれども、この辺で日本が一つの腹をきめて、御承知のように、アメリカはパッケージ政策で通貨の問題と通商の問題と軍事負担の問題と三つからましてこよう、こういうのだから、そのうちどれにも手を打たなかったらだんだん追い込まれてしまう。だから通貨はこの辺で、あとは次で通商の問題でも考えましょうとかなんとかいう形で、私はパッケージ政策についてはまず通貨問題を片づけるべきである。通商あるいは軍事、それはもちろん相関関係がありますよ、これだけ切り抜いて孤立させるという意味じゃありませんが、相関関係を考えながら、全体を考えながら、とりあえず具体的な処置としては通貨からいかざる得ない。
 しかも通貨は、アメリカが手を打ちドイツが手を打ちヨーロッパがこういう動きをした、日本はフロートしただけじゃないか、あとは何がありますか。結局どうしても日本はこれでいきたいのだ。愛知さんの演説にあったと思いますが、国際協調のワクの中で自主的にきめる、こういうことばを言っておる。これはことばとしては非常によくわかるけっこうなことばだと思うのでございますが、しかし政治的に判断すると、私は順序が逆だと思うのですよ。日本が切り札を切らなければ国際協調のワク組みができませんよ。そのワク組みができた中で今後の問題はいろいろ考えなければならぬ、これはそのとおりです。しかし問題は、いま日本が何も言わぬでおれはフロートしているだけだ、こういう形ではだれが考えても具体的に第一ラウンドは終わったという幕の引きようがないんですね。だから、私はこの点について、日本がフロートで得をすることはまずあまりない、したがって、日本はやはり言っておられるように弾力性のある、幅のある固定相場制を指向するということが当然でありましょうし、しかもそれは早いほどいいのだ、おそくなるほど損になる、そういうことを考えれば、この辺でもう一歩進んだ手を打つべきではなかったか。私は全部が日本の責任と申しておるわけではありませんが、もっと手を打つことが考えられてしかるべきではなかったかと思うが、この点についての総理のお考え、これからの通貨問題は、日本としてはやはり人が出てくるのを待っておってみるだけ、フロートでいく以外にない、こういうお考えかどうか、その点だけ政治的に決意を聞きたい。
#150
○田中内閣総理大臣 この問題に対してあなたのような見方もございますが、逆の見方もあると思います。日本は、私は結果的に見まして、ヨーロッパに起こった事態に対してフロートしてきたということは結果的には数字の上から見ても非常に成功だったと思います。一時は、報道されたものは二百五十円になるかもしれないというような不安材料がございましたが、しかしその後西ドイツが三%の切り上げを行ない、ヨーロッパが共同フロートに入っても日本はクリーンフロートをやっておって日銀が一億ドル余も売らなければならない、それでも二百六十五円を維持しておるというのは、これは実勢相場というものが出てきたわけでありまして、これはその意味では私は一応の成功であったといえると思います。
 ただ第一の段階において、今度愛知大蔵大臣が二十カ国蔵相会議に出席をしながらも何らかの結論を得ることができなかった。これは第一回の西ドイツが切り上げなかった当時の状態であれば、これは二十カ国蔵相会議のウエートというものは強かったと思いますよ。ところがその後は切り上げないといった西ドイツが三%の切り上げを行ない、欧州全体が共同フロートに踏み切ったということ。これは一月一日に拡大ECに入ってその去就を注目されておったイギリスもついに参加せざるを得なかった、こういう事態から考えますと、私は今度はやはり第二ラウンドというものがあってしかるべきであって、これはやはりアメリカや各国が通貨基金体制をどうするとか、それから固定相場制に移る場合には一体どうするとかということをお互いに、第二のスミソニアン体制と同じ状態で結論を出すということでないと、日本だけでできる問題ではないと思うのです。
 もう一つは、アメリカはパッケージ政策をとっておるといいますけれども、私はパッケージ政策の中でもって通貨問題の切り札を出したのではなくて、通貨は通貨でやりながら、通商問題は別な国際収支対策として出てくるんではないかと思っておるのです。だからそういう見方は、これは向こうから聞いたわけじゃありませんし、それは協調しながらも国益を守らなければならぬという立場から言いますと、これは私は、簡単に、固定相場制に日本の主導で、日本だけでも固定相場制に復帰するということは国益を守るゆえんではないと思うのです。これは結局固定相場制を一番求めておるのはアメリカだと思います、一〇%切り下げたのですから。ヨーロッパも共同フロートに入ったのですから、そういう意味でここらでもってと思うと思いますよ。思いますが、他にいろいろな問題もありますし、国際通貨の問題が収拾できるような見通しのないときに、日本がフロートから固定相場制に移るということはまだ時期が早いと思います。私はそういう意味で、やはりヨーロッパともアメリカともいろいろな問題に関して協議ができて、相当な見通しができたときに固定相場制に移るべきである。変動相場制が不安定であるということは、それはもう御指摘を待つまでもなくそう思っておりますが、私は、そういう意味で日本が主導的な立場で固定相場制を主張する立場にはいまない、こういう、ちょっと食い違いがありますが、これは見方の相違でございますので、これはひとつわれわれも国益を守りながら国際協調の実をあげていこう、こういう考えに立っておるのでありますから、時に触れ専門家の御意見はぜひひとつお寄せくださることを、そして政府も間違わない施策を進めなければならぬのでございますから、各党の御意見を十分承りたい、こう考えております。
#151
○竹本委員 終わります。
#152
○鴨田委員長 広沢直樹君。
#153
○広沢委員 課税最低限の問題で中途になりましたので、そこからまず入りたいと思います。
 そこで、いま総理からもお答えがありまして、課税最低限をきめる基準というものは、一応やはり最低生計費には課税しない、こうはっきりおっしゃっておられるわけですね。その点いままでずっと局長を中心に論議を重ねてまいった中で、諸外国の例、いろいろなことを出されてその点の食い違いがあったように思うわけですが、その点いかがですか。
#154
○高木(文)政府委員 ちょっとお答えのしかたがやや不正確でございまして、いろいろ問題を起こしましたが、先ほど広沢委員がおっしゃいましたように、かつて政府側から御説明しましたような三つの基準というものが、課税最低限を考える場合の基準として考えられてきたということはおっしゃるとおりでございます。
 そこで問題は、それじゃ生計費というものをどのようにして考えるかという問題があるわけでございますが、過去におきましては、いわば標準的最低生計費というようなものをいろいろ計算をしたことがございます。それを一つの基準にして課税最低限の目安にしたことがございます。今日ではそのような作業をしていないわけでございます。なぜそのような作業をしていないかという点は、課税最低限をきめます場合に、きのうもお話がございましたように、まず家計費、生活費非課税の原則というものを考えてスタートするということでございますと、そこでいかなるものが生計費かという議論をする必要があるわけでございますが、いまは課税最低限が五年前、十年前と比べますとかなり改善されてまいりましたので、現在はそういう作業はしないで、もちろん総理府の家計調査等は横に見ておりますけれども、それを直接基準としておるということはないわけでございます。その意味で先ほどもちょっとお答え申し上げましたが、家計費、最低家計費と申しますか、その辺の概念は非常にむずかしいわけでございますが、それが課税最低限の一つの目安であることはおっしゃるとおりであるというふうに、不明確な答弁をしました点を訂正をしてお答え申し上げます。
#155
○広沢委員 そこで、基準がある程度明確になりましたので、
  〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕
まずその最低生活費というのは、いわゆる憲法でいう文化的な最低生活を保障しているわけですから、それでなければならないと思うわけです。そこで来年度の改正では、初年度で約百十二万円までは標準世帯について非課税、こういうことになるわけでありますけれども、しかしながらいまの総理府の統計によりましても、さらに民間のそれぞれの立場において計算したところによりましても、やはりこれをはるかに上回っているわけです。これが標準なのか最低なのかということは問題になりますけれども、一つの例をあげると、電機労連の標準生計費調査でも四人世帯で消費支出は年間に百九十九万四千七百円、ざっと二百万円。少なくともこの程度まで免税点を上げろという議論もあります。しかしわが党は、御存じのように、まず百五十万までは課税最低限を引き上げるべきである、こう主張しておるわけです。確かにいろいろな面から考えてみましても、今日毎年十万円程度課税最低限を引き上げてきただけでは現実に追いつかない問題があるのじゃないかと思います。
 そこで、この最低生活費の基準になりますと、いまもお話がありましたように、かつては大蔵メニューなんというものもありましたけれども、この点ではやはり大蔵省としては、ただ各民間とかあるいは各省のそういう部門で調べたものを横目ににらんでいるだけではなくて、そういうものを具体的に検討してみる必要があるのではないか。したがって、絶えず税制改正で問題になります課税最低限の引き上げの基準としての最低生計費というものはこういうものであるということをお出しになる考え方はないかと思うわけですが、いかがでしょうか。
#156
○高木(文)政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、過去におきましては、いわば最低生活費と申しますか、衣食住のぎりぎりのところはどのくらいのところであろうかというようなものをつくっておった時代があるわけでございます。それはその当時課税最低限がまだ非常に低い水準にございまして、かなりぎりぎりの生活というものと課税最低限とがいわばすれすれのところにありましたので、毎年の改正の際にそれを一つの目安にしておったわけでございます。現在の段階では、家計費調査の結果を見てもおわかりいただけますように――と申しますのは、
  〔森(美)委員長代理退席、委員長着席〕
生計費調査というのは実際の家計の支出の実績でございますから、その実績の数字は必ずしも最低生計費というものの概念とはぶち当たらないものでございます。そうでなく、実際の実績があらわれてくるわけでございますが、その実績があらわれてまいりますところの総理府家計調査による消費支出の水準で見ましても、現在課税最低限はまあまあの水準にあるということは言えるわけでございますので、私どもとしては、現在の段階では必ずしも、これとまた別に何か私どものほうだけで特別な調査をするなり作成をするなりということを通じてその調査をする必要の緊要性というものを、五年前、十年前ほどには感じていないわけでございます。しかし、先ほど来のお話もございますから、何らかの意味において、私どものほうで調査をいたしませんでも、いろいろありますところの調査等を参考にして処理をしていくということでよろしいのではないかというふうに考えております。
#157
○広沢委員 政務次官、いま局長から答弁がありましたけれども、今回、課税最低限を標準家庭で初年度百十二万円まで引き上げたということで、まあまあの線だ――とにかく基準がはっきりしないでこういう論議をしておっても始まらないわけです。大蔵省自身にそういうことを調べてこいと言っても、それはいろいろ問題がありましょうから、総理府の統計だとか、同じ政府部内で出されている家計調査というものを基準にして、先ほど言った最低生活費の基準というものは大体こういうところをめどにしてやっているのであるということを示さなければ、課税最低限の引き上げの基準は大体どの辺であるかということはわからないわけですね。したがって、課税最低限を引き上げるめどとして、最低生活費はここがめどであるというものをやはり大蔵省当局としても示されるべきであると思うのですが、いかがですか。
#158
○山本(幸)政府委員 生計費をどういう調査方法でやるか、それではたして的確なものが得られるかどうかというように、いろいろ問題があると私は思うのです。いま総理府でやっておりまする生計費にいたしましても、あるべき姿というよりは、現在ある姿をやっておる。したがって、たとえば耐久消費財のようなものも入っておる、あるいは若干のレジャー費みたいなものも入っておる、こういうことであります。いまのお話で、これが日本における標準家庭のぎりぎりの生計費だというものを技術的にうまく出すことができるものかどうかという点を非常に心配をするわけであります。しかし、いまやっておりまするものも、生計費を無視しておるわけではない。生計費というものを頭に置きながらやっておるわけです。なるほど、前に大蔵メニューというものがあったこともありますが、これもあまり――成功したかどうか、私も寡聞にしてその辺知らないわけでありますけれども、苦心をしてもなかなかうまくできなかったのではなかろうか、こう思うのであります。これは、各方面からいろいろなデータをちょうだいしながら、おおよその基準というものをねらいながら、いろいろな控除を考えながらやるわけですから、その控除に振り分けながら結論としての課税最低限を出すことが、いま大蔵省としてやり得る道ではないだろうか、こう理解するわけです。
#159
○広沢委員 そういうことで、この免税点の問題を論じてみても、やはり平行線なんですよね。そこにまず基本になるもの、論じ合えるようなものを出してこなければいけない。その上に立って、今回の免税点はこの程度までだ、最低生活費には課税しないというのはこの限度までだというめどをはっきりつける必要があるんじゃないか、その点が今日まであいまいになってきておるんじゃないかと思うわけです。したがって、先ほども私、論議の中で申し上げたとおり、減税になったとはいいながら、実際は名目所得がふえた、物価上昇だとかそういう関係でふえたということだけで、税負担はふえている、こういう結果が出てきているわけですから、いつまでたっても国民は重税感から抜け出せないことになるんじゃないかと思うわけです。もちろん、何でも減税すればいいというのではない。適正な負担というものは必要なんです。
 そこで、ほかの政府部内のいろいろな統計を基準にして標準生計費が出ておりますので、その中からレジャーの問題とかいろいろな問題を省いても、どうしても最低これだけは必要だ、たとえば生活保護の関係をとらえていっても、これだけでは十分ではないわけですね。毎年毎年一四%ないし一五%の引き上げを行なっているわけです。しかし、それも食べるだけでは、やはり憲法で保障されたいわゆる文化的な最低生活というものは保障されないわけでありますから、ある程度その中にどうあるべきかというめどをはっきりさせるべきではないかと思います。またそれに対して努力してみよう――一ぺん大蔵メニューを出されて、そんな考え方はどうだということで論議が集中して問題になったら、それを引っ込めちゃった。それで、毎年毎年、歴年的に十万円程度課税最低限を引き上げていく、物価調整減税であるとかなんとか調整的な意味合いをもってやっていくということでは、税制改正の上においてもはっきりとしためどというものは出てこないと思います。そういう面でもう一ぺんそれをお考え願いたいと思うのですが、いかがですか。
#160
○高木(文)政府委員 現在、実はある種のことはやっております。そのやり方は、家計費調査をもとにいたしまして、人事院がいつも人事院勧告を出しますときに算定をいたします標準生計費という方式がございます。これは、人事院が毎年の公務員給与の勧告をいたします際に、生計費との関係を考慮しなければいけないということで、家計費調査のまあいわば個票のようなものを当たりまして、それをベースにして標準生計費を算定しているわけでございまして、それは一般に人事院勧告のベースとして使われているものでございます。それで、その数字がだんだん毎年毎年歴年的に固まってきておりますので、たまたま過去におきまして私どものほうでやっておりました方式をやめましたこととも関連いたしまして、実は主としてこの人事院勧告のベースになりました標準生計費というものを一つの参考にいたしておるわけでございますが、それによりますと、四十七年は標準生計費に対して一五%課税最低限が上回っております。四十六年は年内減税前で一六%上回っております。四十五年は二〇%上回っております。こういうような数字になっております。しかし、標準生計費のほうは税制改正よりもあとから出てくるわけでございまして、結果としてチェックができるという意味の数字になるわけでございます。そこで、前年をベースにして、前年に標準生計費と課税最低限との間にいわば余裕がありますれば、そして物価その他を考慮した課税最低限の上昇をとりますれば、大体ある程度の目安がつくではないかということでやっておるわけでございます。
 ただ、この人事院の標準生計費というものは、一方において民間におきます給与を一つの基準とし、同時に、一方において参考資料として人事院がとっておられるものでありますので、課税最低限の場合の一つの目安として直ちにこれでよろしいかどうかという点は、ただいま御指摘のような点からいいましてもなお問題が残ろうかと思いますが、現在においてはそれが一つの目安となっております。ということは、家計調査が実際の支出額の調査であるのに対して、これは家計調査をベースにしてあるべき標準生計費というものを一応推定をして出しているという意味のものであり、かつ給与の算定の際の参考になっておることでございますから、ある意味で権威のあるものとして使わしていただいているわけでございます。
#161
○広沢委員 時間もあまりありませんから、この問題だけにこだわっているわけにいきませんけれども、一応いまも局長おっしゃったように、これはベターなものではない、一応の基準であるとこうおっしゃいましたが、私、先ほど一つの例を出したように、総理府の統計あるいはまた民間のそういうようないろいろな計算方法によっても違ってきているわけです。課税の考え方に立つならば、一つだけの基準じゃなくて総体的によく検討した標準的なものをまとめ上げた上で検討すべきじゃないかと思うのですが、これはまたの機会にまたいろいろ問題としてお伺いしてみたいと思います。
 次に、税率の変更の問題ですけれども、いま現行税率では、まず課税の所得金額が四十万円以下一〇%から始まって一応七五%まで十九段階になっておりますね。この刻みを見ますと、四十万円以下から二百万円までは、所得が四十万円の開きで税率が二%の区切りになっています。それから二百六十万円から五百万円まではそれぞれ六十万円区切りで三%の区切り、二千万円以上になると五%の区切り、こういうふうになっていますね。先ほど私は弾性値について指摘申し上げたのですけれども、負担が急上昇する傾向になっているわけです。やはり所得の増加に伴って税率を変更する必要がある。税率の区分を高位の所得部分で急上昇する方向に改めていかなければ、先ほど総理がお見えになる前に指摘した、弾性値の面としてはやはり低所得者に税負担の増加というものが大きくあらわれてくるという結果になっておるわけです。今回の税制改正では税率の改正というものは見送られた。したがって、それは給与所得控除というものを大幅にしたために、それで見送ったということでありますが、いま言った矛盾が出てくるわけでありますが、税率改正の方向としてどういうふうに考えておられるのか伺っておきたいのです。
#162
○高木(文)政府委員 先ほども申し上げましたように、ちょっと私もいま、計算をやってみませんと、混乱しておりますので、弾性値といまのブラッケットの幅の関係が私自身よくつかめておりませんから、その点は一ぺん、直ちに計算をやってみてお答えをいたします。ただ、税率の幅の問題、ブラッケットの幅の問題につきましては、しばしば申し上げておりますように、所得税は控除と税率との組み合わせでできておりますから、本来ならば、所得税を直しますときには、控除を直します際には税率もある程度手直しをするのが本来のやり方であると思っております。ただ本年は給与所得控除の幅を、いままで四百十三万円まで効果が及ぶことになっておりましたのを六百十六万円のところまで広げましたものですから、もしそれと税率の手直しを一緒にやりますと四百万円から六百万円のところまでが非常に有利に働くということになりますので、そういうこともあって給与所得控除を約五割、ブラッケットをこっちに持ってきました関係もありまして、税率の手直しを見送ったという事情でございます。
 それからもう一つには、事業主報酬の問題があるわけでございまして、事業主報酬制度との関連でサラリーマンと事業主とのバランスがどうなるかということがあるわけでありまして、これは選択でございますけれども、もし青色申告者の中で事業主報酬制度を選択する方は、選択のほうが有利だからということで選択が行なわれるわけでございます。そういうことを考えてみますと、今年の場合には税率を直すのはいかがかという感じがあったという事情があるわけでございます。
 なお、冒頭に申し上げましたように、そのブラッケットの幅の問題と弾性値との関係の問題については、よく計算をして、後日お答えを申し上げます。
#163
○広沢委員 それは、いまおっしゃっていることはわからぬでもないですけれども、いま申し上げたようにその低位の所得層の刻みですね、こういう関係がありますので、刻みが非常に、二%とか三%、大きくなるに従ってこの額も、あるいは区切りのパーセントも大きく開いてきているわけですから、少し改正しても、やはり低位所得層には、税率の改正がない限りはやはり弾性値は上がっていくんじゃないか、こういうふうに考えられるわけで、当然そういう意味からするならば、いまお話があったように、課税最低限を引き上げると同時に税率を変更すべきじゃないかと、こういうふうに思うわけです。
 たとえば年収二百五十万円の、ここにいろいろな例が出ておりますけれども、これも新聞によく出ておりますが、二百五十万円の年収の人が一五%四十八年度において給与がふえた、その場合は、四十七年度の税負担率というのは九・三六%、四十八年度一五%ふえて二百八十七万円になったときには九・八九%、その差というのは〇・五三%負担率がふえるわけですね。したがって、先ほども申し上げたように、所得弾性値の面で見ますと、五十万円で二・八一、百万円で二・一九、二百万円で二・〇七、五百万円で一・五九というふうに、所得の低い層のほうほど高いんじゃないかと、こういうふうな関係が出てきておりますので、やはり税率の改正というものはともにあわせてやるべきじゃないかと私は思うのです、減税という立場に立って考えていくならば。でないと、低所得の層ほどそういうような、少し名目所得がふえただけで、減税はしたというけれども、減税しなかったらこうだというのはありますけれども、減税してもやっぱり少し増税になってくるという感じがぬぐえないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
#164
○高木(文)政府委員 ただいまの階層別の弾性値の議論は私よくのみ込めませんので、計算をしてお答えをいたします。ただ、いまのお話の中で、給与が一五%上がったという前提の場合に、かなりの減税をいたしましても納めていただく税額が前年よりふえることがあるということは、簡単に申しますと、給与が一五%ふえる場合に控除も税率も一五%ずらすということにすれば、それは前年と同額で済むわけでございますが、それを今回のように、課税最低限は大体八%強の引き上げでございますから、それとベースアップ率が一五%とした場合とでは、やはりどうしても納めていただく税金が前年度よりはふえる。税率が上がった、改正しなかった場合に比べればもちろん減りますけれども、ベースが上がったのに応じてふえるという関係にはなっているわけでありまして、それが全くふえないようにするためには、簡単に申しますと、ベースの上昇率だけ減税を行なえばよろしい。そうしますと、国民所得の伸びがありましても所得税収は前年と同じになってしまうということで、とうていふえてまいります財政需要に対応するだけの財源を調達してまいれないということになるわけでございます。
 ですから、先般も御議論がありましたが、減税とは何ぞやということで御議論ございましたが、私どもは、やはりある程度給与水準が上がっていけばそれだけ負担能力がふえるのでございますから、若干の負担増があることはこれはがまんをしていただかなければならぬというふうに考えているわけでございます。ちょっと御質問と答えが食い違っているかもしれませんが、その点はもう一ぺん階層別によく詰めた上でお答えをいたします。
#165
○広沢委員 それではもう時間がありませんので、最後にお伺いしておきたいのは、所得控除の内容については、基礎控除とか扶養控除とかあるいは配偶者控除、いろいろな議論があります。私も、毎年一万円ずつ上げる基礎控除、こういうのも一つ大きな問題だろうと思いますが、きょうは給与所得控除についてお伺いしておきたいのです。
 給与所得控除については、その中身というのは一体何なのか。先日、北野参考人からは、一応四項目に分けてこの内容を申しておりましたけれども、所得者の概算経費控除、いわゆる必要経費的なもの、それからいわゆる給料から毎月天引きされる関係で利子控除分も含まれているんだろう、さらには担税力の低さを考慮された分も含まれているんではないか、あるいは把握控除分である、こういうふうに内容的にはなっているということであります。したがって、先ほどもこの点に関しては、事業主報酬制度の件で総理にお伺いしたときに、やはりその不公平を是正する意味においては、総理はある程度別個に必要経費的なものを考えなければならないということで検討されているそうなんですけれども、一応この給与所得の、内容的にいろいろ含まれておりますが、これを分類別に控除を分けてはっきりしないと、全部この中へほうり込んでしまって、そうして毎年毎年これを少しずつ上げていくことによってほかとの均衡が保たれるというように解釈すると、これまた問題が出てくるわけですね。その点はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
#166
○高木(文)政府委員 従来政府が説明してまいりました給与所得控除の性格は、ただいま御指摘の四点のうち第四点を抜いたものでございます。給与所得控除について、要するにその把握の程度ということが給与所得控除の中に概念として入っているんだということになりますと、今度は他の所得者においてはいろいろ問題が出てまいります。そこで、私どものいまの理解いたしておりますところでは、ただいま御指摘がありました必要経費の概算控除ということと、それから所得の不安定性あるいは担税力の弱さという面と、それから三番目には源泉徴収にからむ前払い利子相当額というようなものが、こん然一体となったものではないかというふうに理解をいたしておるところでございます。
 そこで、それを分けてはどうかという御議論でございますが、これはよくある議論でございます。またこの中には、給与所得についての資産所得と区分しての勤労性を考慮した部分があるではないかという御議論もよくある議論でございます。しかしながら、現在のところ、この給与所得控除を分けることはほとんど不可能でございます。もしたとえば、必要経費部分がどのくらいあるだろうかということになりますと、現在の定額控除の十六万円なり、二割なり一割なりという定率部分の額は少し大き過ぎる、平均的給与所得者の必要経費としては、十六万円なりあるいは所得の二割なりという額が必要であるという説明はなかなかできないのではないかというふうに思っております。もしこの必要経費部分が、どのくらいの額であるということが十分行き届いた説明ができるようでありますならば、分解して、それを除く部分が第二、第三の部分だということがいえるのかもしれませんが、私どものいま持っております感触では、サラリーマン特有の必要経費というものがそんなに大きな額になるものとは考えていないわけでございまして、そういう意味で、これを分解してしまうということは制度的に非常にむずかしいことになるのではないかというふうに思っております。
 勤労性の問題につきましても、これも他の事業所得につきましても十分勤労性の部分があるわけでございまして、勤労性所得の特殊性ということを、所得の十分類の中の給与所得だけに特有なものと考えることはできないわけでございます。
 そこで、まことに恐縮でございますが、現状におきましては給与所得控除の性格というものは非常にばく然としたものになり、先ほど来御指摘を受けております基礎控除、配偶者控除、扶養控除等、人的控除の水準のあり方の問題以上に、給与所得控除のよるべきものというものはなかなか見出すことがむずかしいという現状でございまして、これこそ過去の積み上げと申しますか、毎年毎年におきまして、現行制度に比べてどの程度給与所得者の負担を軽減すべきかというほうの結論的なものから、漸次給与所得控除制度を直してきたという長い、いわば十年以上にわたる積み上げの結果であるということになっておるわけでございます。
#167
○広沢委員 事業所得は一応実額控除制度になっておる。給与所得の場合は一応いわゆる概算なんですね。所得控除そのものがもう概算である。また給与所得控除についても、いまあなたがお話しになったように、すべて概算なんですね。そこはやはりこのたびの事業主報酬制度というものが設けられた段階においては、必要経費というものが、いままでも論議が続いてきたのですが、よりはっきりされてきたわけでして、何らかサラリーマンに対してもそういうものをもう煮詰めて考えなければならない段階に来ている、こういうことになってきているわけでしょう。先ほども総理から、そういう面からある程度考慮しているというお話があったわけですね。したがってやはり私は、これは一挙にその実額控除制度にしてみても、これは繁雑やらいろいろな問題があって、これはきめがたい。概算経費控除とそれから実額控除制度というものを選択的におやりになるようなことはできないものか、こう考えるわけです。いかがですか。
#168
○高木(文)政府委員 諸外国の立法例でも選択制度がある場合もございます。過去においても、わが国におきましても選択制度はしばしば主張をされております。私どもの中でも選択制度を採用してはどうかということはこの検討の過程に入っておりますし、さればこそ税制調査会にも一応御相談はしております。しかしどうも、確かに概算控除と実額控除制度の選択制を採用いたしますことは相当メリットがある場合もあろうと思います、メリットがある場合もあろうと思いますが、反面において相当デメリットが出てくるのではないか。
 と申しますのは、いかなる基準によってその給与所得者の実額控除のベースとなるべき必要経費を認めるか。つまり、サラリーマンにはいろいろ必要経費がかかりましょうが、それは何と何、どういうものを認めるか。たとえば衣服代等につきましても、一体どこまで認めるか。サラリーマンでなくても衣服は必要でございますので、サラリーマン特有の衣服代というものがうまく計算できるかどうか。それが一人一人の方が主張された場合に、税務署がそれをいわば、ことばは悪いですが査定をするというような現象が起こらざるを得なくなる。また、その査定をするのについて基準となるべきものがなければならなくなるというようなことになってまいります。またその給与所得者といいましても、実にいろいろとございまして、同じ衣服代でも、当然よけいかかってしかるべき方、そしてそれが所得の稼得につながる場合とそうでない場合と、いろいろあります。どこまでが所得を得るための衣服代であるか、どこまでがいわば趣味なりたしなみ、身だしなみの問題であるかというようなことが出てまいります、ということで、なかなかこの基準がつくられないのではないかという点が一点でございます。
 第二点は、全般的でなくてもとおっしゃいましたけれども、そういう制度を設けまして、その選択があった場合に、その選択に対して税務署との間でやはりどうしても一種の折衝が行なわれることになります。その折衝ということになりますというと、昨日来いろいろお話がございますように、何ぶん現在の給与所得者の数は三千万に近い数でございますので、そのうちのどの程度の方が実額控除を主張されるかわかりませんけれども、かりに五%にしてもたいへんな数になりますから、その事務量というものはたいへんになりますし、納税者のほうの負担も相当のものになってこようかと思います。しかもその実額を主張される場合には、やはりいろいろと、一種の証拠書類というようなものを御提示願って、そしてやらなければならぬ。いわばその主張の技術というようなもののじょうずへたというようなことによって、税務署が認めたとか認めないとかいうことが起こってくるのではないかというようなことが考えられるわけでございます。先例としては、アメリカにあるわけでございますけれども、アメリカの先例にしても、必ずしもうまくいったというふうには聞いていないわけでございまして、いまのところ両論ございます。この選択制度を認めたほうがいいのではないかというのは、どうも少なくともサラリーマンが非常に申告の機会がないということになっておるのは、源泉徴収制度というよりはむしろ給与所得控除の概算控除制度にあるということから、事業所得者との間に差があるということの主張がされますので、そういう意味での御主張を受け入れるという意味からいえば、一種のサラリーマンの負担感を緩和できるのじゃないかという考え方もあります。
 いろいろ申しましたが、そういうことでいまのところはどうもまだデメリットのほうが大きいのではないか。なかんずく納税者と税務署サイドと双方の負担が非常にふえるというところはどうやって解決するかということについて、ちょっとすぐには解決のめどがつかぬということがございまして、いろいろ思案はしておりますが、いまのところはまだそこまで踏み切れないということで今日に至っておるという事情でございます。
#169
○広沢委員 最後に、一応勤労者の生計費は、所得を得るために必要な費用ですね。その性格の経費としてこれを扱っていくべきじゃないかと、これは私も思いますし、負担公平の原則または法のもとに平等という関係からも、こういう問題が改められない限りはやはり税負担の公平というものははかられないわけです。ですから当然、そのはかられないままにいま徴税当局がやっているということ自体に大きな矛盾がある。いわゆる先ほどもお話があったとおり、納税者は給与所得者のほうが八五%も納税人口の中で占めているというのですから、そこにいま大きな矛盾として起こってきているのは、この給与所得者に対する、いわば必要経費の問題だとか、税率の問題だとか、課税最低限の問題だとかいうようなことで、再三指摘されたとおり、これは大きな問題だと思うのですね。それに対して私も先ほど来いろいろお伺いしたけれども、課税最低限の基準にしましても、あるいは税率の問題にしても、あるいは必要経費にしても、どれ一つをとっても、給与所得者に対するものについては確固とした基準というものが示されていなくていままでやってきたというところは、これは大いに反省してもらわなければいかぬと思うのです。それに対して今後この問題が解決しない限りはやはり基本的な税負担の公平というものははかられないという考えを持っておりますので、いま前向きに努力するとおっしゃっておられますけれども、いま申し上げた点については、当局の姿勢というものはかくあるべきだというものをはっきりと示されるべきことを強く要望して、質問を終わりにいたします。
#170
○鴨田委員長 次回は、明二十九日木曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することにし、本日は、これにて散会いたします。
   午後六時五分散会
ソース: 国立国会図書館
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