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1972/07/13 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 大蔵委員会 第47号
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1972/07/13 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 大蔵委員会 第47号

#1
第071回国会 大蔵委員会 第47号
昭和四十八年七月十三日(金曜日)
    午前十時四十一分開議
 出席委員
   委員長 鴨田 宗一君
   理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君
   理事 松本 十郎君 理事 森  美秀君
   理事 阿部 助哉君 理事 武藤 山治君
   理事 荒木  宏君
      宇野 宗佑君    越智 通雄君
      大西 正男君    金子 一平君
      木野 晴夫君    小泉純一郎君
      三枝 三郎君    塩谷 一夫君
      地崎宇三郎君    萩原 幸雄君
      坊  秀男君    村岡 兼造君
      毛利 松平君    塚田 庄平君
      広瀬 秀吉君    村山 喜一君
      広沢 直樹君    内海  清君
      竹本 孫一君
 出席国務大臣
        大 蔵 大 臣 愛知 揆一君
 出席政府委員
        経済企画庁物価
        局長      小島 英敏君
        大蔵政務次官  山本 幸雄君
        大蔵大臣官房審
        議官      大倉 眞隆君
        大蔵省主計局次
        長       長岡  實君
        大蔵省証券局長 高橋 英明君
        大蔵省銀行局長 吉田太郎一君
        大蔵省国際金融
        局長      松川 道哉君
        国税庁次長   吉田冨士雄君
 委員外の出席者
        議     員 広瀬 秀吉君
        大蔵大臣官房審
        議官      岩瀬 義郎君
        大蔵省主税局税
        制第一課長   伊豫田敏雄君
        大蔵省理財局国
        庫課長     水野  繁君
        大蔵省証券局企
        業財務課長   白鳥 正人君
        大蔵委員会調査
        室長      末松 経正君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 銀行法の一部を改正する法律案(広瀬秀吉君外
 九名提出、衆法第四一号)
 国の会計に関する件
 税制に関する件
 金融に関する件
 証券取引に関する件
     ――――◇―――――
#2
○鴨田委員長 これより会議を開きます。
 広瀬秀吉君外九名提出の銀行法の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
#3
○鴨田委員長 この際、提案者より趣旨の説明を求めます。広瀬秀吉君。
#4
○広瀬(秀)議員 私は、日本社会党を代表いたしまして、銀行法の一部を改正する法律案の提案の理由を説明いたします。
 本法律案は、労働時間の短縮と週休二日制の実施について、社会的な条件を整える目的をもって提案したものであることを、まず申し上げておかなければなりません。
 ドル・ショック、円切り上げの前後、わが国の労働実態、すなわち低賃金・長時間労働が国際的に見て公正競争にもとるという非難を欧米諸国から受けたことは御承知のとおりであります。その後もわが国の外貨蓄積は増加し、したがってこの非難もますます強められております。
 わが国の労働時間が欧米諸国に比べて著しく長いという実態については、改めて申すまでもありません。従来から、労働者は、時間短縮の実現を望んできたところであり、政府あるいは産業界においても、近年の国際的な非難を契機として、労働時間短縮、週休二日制の実施について、ようやく前進的な姿勢をとるに至っております。経済審議会人的開発研究委員会あるいは労働省の労働基準法研究会などでもその推進について研究がなされ、また労働省では、週休二日制の普及促進に関する通達を出されている段階にあります。
 しかしながら、政府の指導等があるとはいえ、現在行なわれつつある週休二日制については、多くの問題点があります。総括的にいうならば、その実施について、企業単位にまかせて行なわれているために、生産性向上に見合う限度でという労務管理機能を伴っていたり、あるいは企業、業種の技術的差異や収益動向によって不統一に行なわれているということであります。したがって、たとえば、週休二日制にはなったが一日の労働時間が長くなったとか、あるいは労働時間、休日の企業別・業種別格差が拡大するという現象が生まれてきているのであります。
 欧米諸国においては、すでにほとんどの国が週休二日、週四十時間労働でありますが、わが国の事情と異なるのは、一つの社会で労働時間について格差があってはならない、という理念が生かされているということであります。この、いわば社会的な公平の原則は、もとより諸法例による規制で担保されているのでありまして、西ドイツの例でいえば、労働時間法、商店閉店法があるのであります。
 わが国におきましても、これから労働時間の短縮、週休二日制の実施を推進していく場合には、この社会的な公平を忘れてはなりません。
 また同時に週休二日制についても、労働基準法による規制の改正が基本になることは申すまでもありませんが、それに至る社会条件をいかにして整えるかというのが現段階での重要な課題であります。政府の指導等と相まって、民間企業でこれを推進する場合、企業活動の実情から見て、銀行との関係は大きな比重を持っております。すなわち、銀行が週休二日制をとれば、民間企業もこれにならっていけるわけであり、その意味で銀行協会の週休二日制促進の提唱が注目されたのであります。
 以上のとおり、週休二日制実施の条件は熟している現段階で、これをさらに促進する必要があり、しかも制度として確立しなければならないのであります。
 本法案は、銀行法第十八条に規定されている銀行の休日の中に土曜日を新たに加えることにしております。
 御審議の上、御賛同いただきますよう御提案いたす次第でございます。
 以上です。
#5
○鴨田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ります。
     ――――◇―――――
#6
○鴨田委員長 次に、国の会計、税制、金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。
 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。広瀬秀吉君。
#7
○広瀬(秀)委員 昭和四十八年度の予算編成にあたって、大蔵大臣が有名なトリレンマという、日本経済、財政の三重苦というようなことで表現をいたしましたが、国際収支の問題は、大体今日いわゆる日本の外貨蓄積過剰というかそういう問題も、その後における国内の景気の問題などを背景にしながら、対米貿易の改善も進んで、しかも最近の外貨準備も百五十億あるいは百四十億台にもなろうかというようなところにまいっておりますから、その一つは、まあ小康を得たというか、そういう状況になっておるわけでありますが、一番問題としてむずかしく、しかも困難で、一体これはどうなるのだろうかという問題は、何と言ってもやはり物価の問題であろうと思うわけであります。
 もう数字をあげるまでもございません。ことしの三月、四月、五月、これはもう一〇%をこえる対前年同月比で、一一%、一一・四%、一二・三%、こういう状況で推移しております。おそらく六月はもう少しこれが、まだ資料は見ておりませんが、一三%台ぐらいになっているのじゃないかというように考えられるわけであります。
 このように物価が、これは列島改造による地価の上昇というような問題があったり、あるいは商社の買い占め、売り惜しみという問題があったり、あるいはその背景に過剰流動性というものがあったり、しかも輸入インフレというか国際的なインフレというものがバックにあるというような、いろいろな要因がからみ合って出ているだけに、対策としても非常にむずかしいものを持っている。しかし一方においては、政府の物価抑制の有効な対策というものも、一向に実効ある措置が強力に展開されないという状況にあると思うわけであります。
 そういうようなところで、今日この金融引き締め、これはもう公定歩合も年内になってから三回にわたって引き上げた、さらに預金準備率も引き上げた、窓口規制もかなり強化をしてきた、こういうことをやってきておるわけでありますが、こういう異常な、戦後のほんとうの一時期を除いては見られなかった消費者物価指数が対前年同月比二けたになる、一〇%をこえるというようなことはめったになかったわけであります。しかも、通年の統計、これはまだ先行きもあることでありますけれども、年度間を通じての上昇率もおそらく一〇%をこえるであろうということは、いまや常識になりつつある。
 これはまず経済企画庁にお伺いしますが、こういう異常な物価高というものを一体どのように分析しておられるのか。何がこのような異常な物価上昇を引き起こしたのか。この点についての経済企画庁としての分析というか、原因の究明というか、そういうものについてどのようにこの問題をとらえておられるのか。まず、この点を伺いたいと思うわけであります。
#8
○小島政府委員 現在の物価騰貴の原因につきましては、おっしゃるように幾つかの要因が重なっておりまして、複合的なものであると思いますけれども、まず第一にあげなければいけないのは、一昨年夏のニクソン・ショック以後非常に不況をおそれたということがございまして、不況になってはたいへんだということが一つと、それから昨年になりましてからは今度はレートの再切り上げは何としても防がなければいけない、そういう両方の目的を持って景気の振興がはかられまして、円対策の一環としても有用でございましたけれども、各種の施策がとられたのでございますが、その結果がどうも予想以上に景気の過熱のテンポを早めてしまったということがございます。その結果、総需要がやはりかなり過大になったということが実はあると思います。
 それから第二は、海外的な要因でございまして、ことしは非常に悪いことがいろいろ重なっておりますけれども、穀物の不作とかあるいは羊毛の生産がえらく減るとかいうような特殊の要因、それにさらに海外が一般的にインフレ傾向と申しますか、景気がよすぎるということもございまして、海外市況、日本の輸入価格というものが非常に暴騰したということが第二の要因かと思います。
 それから第三の要因といたしましては、これもニクソン・ショック後の過剰流動性というものが国内の背景にございまして、それと、先ほど申しました第二の要因、つまりこういうものは今後かなり輸入価格が暴騰しそうだという見込みとからみまして、かなりの投機需要が発生したことがございます。これは同時に、一つはやはり昨年の初めごろから土地に対する先高見越しというものとからんで、土地投機がかなり早くから発生しておりました。昨年の八、九月ごろ木材がきっかけでございましたが、本年に入りましてからは、繊維原料等に波及して、三月、四月ごろまで激しい仮需要が発生したということが起こってきたと思います。
 それから第四番目に、これは初めの段階ではあまり大きなウエートを持っておらなかったと思いますけれども、やはりその後だんだんに大きくなっている要因といたしまして、賃金等によるコストアップ要因というものがございまして、中小企業は早くからそういう影響を受け始めておりましたけれども、最近だんだんそれが大きなところに波及しているというふうに思います。
 それから第五番目に、これはかなり長期的な構造的な要因でございますけれども、やはり公害防止とかあるいは還境保全とかいう関係の対策が進められますと、どうしてもこれはコスト要因になるわけでございまして、その意味から一つのコスト上昇要因が生じ、これにさらに産業構造がいままでの設備投資、輸出型から、社会資本あるいは消費型、消費の中でも特にサービス関係の消費が強うございますが、そういう関係の産業にいま移りつつあるところでございまして、その過程においてはどうしても供給力が不足しがちだということもございまして、それからそういう新しいところはどうしても産業の効率性と申しますか、そういう点から申しますと、いままでの設備投資型の産業に比べますとどうもやはり能率がやや悪くなるという面もございまして、これらの要因が重なって現在のような異常な状態が生じているというふうに分析したわけでございます。
 それから特に消費者物価につきましては、いま申しました卸売り物価の上昇要因というものが現在波及しつつある段階であると思います。それに加わりまして、五月ごろでございますが、野菜の一時的な――キャベツ等が典型でございますけれども、一時的な上昇がございまして、さらにそれにオンされたというふうに考えておるわけでございます。
#9
○広瀬(秀)委員 まあ卸売り物価が上昇する要因について五つばかりあげられ、消費者物価にも若干触れられたわけでありますが、総体的にこのインフレ進展の要因ということを私なりに拾ってみますと、先ほども一部触れましたけれども、過剰流動性の問題、それからやはり政策のタイミングが合わなかったという面で、四十六年の七月二十八日公定歩合を引き下げをしました。さらに四十六年の十二月二十九日にこれをさらに引き下げておるわけでありまして、昨年の六月二十四日にもまたかなり大幅な〇・五%の引き下げをやっておるわけですが、この辺の最後のところあたりからはむしろ超低金利時代に終止符を打つというような政策配慮がほんとうは金利政策においても必要であったのではないか、こういうように思うわけでありますが、そういう点が欠けておった。これは政策のタイミングを間違えたものということが言えると思うのであります。
 もちろん第三番目に世界的なインフレ傾向、これはアメリカの過剰ドル、言うならば世界的に過剰流動性がドルのたれ流しによって膨大になっておったということ、それから一次産品の国際的な価格が上がっておる、急騰している、さらに国内的な要因では商社の買い占め、売り惜しみというような投機需要、仮需要というようなもの、それから大きい問題としては何といってもやはり財政の膨張。とにかくこれは、調整インフレはやらないやらないといいながら、円切り上げをやりたくないということで、この辺非常に問題があると思うのでありますが、これはあとで国金局長にも伺いたいと思いますが、財政の膨張というものが、切り上げをやらない、どうしても防ぐのだ、そういう硬直した態度でインフレ予算を組んだ、こういうことがあろうと思います。
 さらにこのいまの問題は、円切り上げのタイミングを失しているという――これは円切り上げが必ずしもいいのだということではないけれども、すでに経企庁から出しております経済白書等でも、大胆に政策として切り上げという問題をやはり考えてもいいのではないかということが、昨年の経済白書にももうすでに出ておったのですね。ところがそれをやる勇気もない。これはある程度のしっかりした体制というものを、しっかり条件を整えれば、そういう政策手段を選ぶというようなことだってあっていいというように、それはやはり物価を安定させるという大目的から見るならば、そういう点も考えていいのだけれども、その方向には全く踏み出せない。
 そういう面でのタイミングを失ったということもあるだろうし、先ほども申し上げたように、列島改造論による土地の買い占めあるいは地価の上昇、総体的に財政主導型の総需要の盛り上がり、しかも国民の消費需要もけっこう強いといわれておるけれども、やはり土地だとか鉄、セメント、こういうようなもののものすごい需要の急増というようなことを景背にして、そういうものの値上がりを伴いながら財政主導型の総需要がものすごく盛り上がってきた。こういう問題があろうと思いますし、さらに十番目には国際通貨が依然としてやはり不安定で、フロートに移行しているということは、インフレに非常に都合がいい。インフレとフロート制というものの結びつきというもの、こういうものが今日の経済学者などの中にも言われておる問題でありますが、そういうものもあるのではないか。
 いろいろな書かれたものや論説などから拾ってみると、このくらいのものがからみ合って今日の物価高というものを形成していると思うのですね。しかもことしの春闘では賃上げが二〇%ちょっとこえた二〇・一%だと労働省から発表されておりますが、こういう異常な物価上昇というものによって庶民大衆の生活に与える影響というものは非常に大きいものがあるし、まさにインフレマインドが定着したというような段階ではなくてインフレ期待である。これ以上もっとインフレでなくては困るのだ、インフレよもっと高進してもらいたいというような気持ちが換物思想あるいは土地を買っておくとか仮需要で買っておくとかそういう投機的な行為に走らせるということで、言うならばこれがわれわれギャンブル経済化しているというようなことも言っているわけでありますが、そういう状態まで追い込んでいる。
 その中で、常にインフレの中でひどい目にあう、犠牲を受ける者はやはり勤労国民大衆である。これは企業はどんどん技術開発をする、設備投資をやる、そして生産性を高めていく、そういうことによって、しかもそれが製品がどんどん上がるということになればもうかってしかたがないということになるわけでありますから、しかしそれはやがて悪性インフレ化した場合には、その人たちもひっくるめて破壊的な状況が出るわけだけれども、そういうインフレを喜んで迎えている大資本、大企業というところは、いまのところまだそういう点で潤っている、一方においては庶民大衆の暮らしが犠牲になっている、こういう状況になっておるわけですね。これをやはりここで何とかしなければならない、これが今日の一番大きい政治課題であろうと思うわけであります。
 そこでいろいろなことをやっておりますけれども、これも経済企画庁から伺いますが、いま五つほどあげられました。これに対して、それじゃその一つ一つの原因に対してどういうぐあいにその対策を対置しているか、こういう問題について企画庁の政策展開、そういう原因のとらえ方というものに立った上で、その一つ一つの要因に対してこの点についてはどういう対策をいま私どもはやっておりますというその対策をお示しをいただきたいと思います。
#10
○小島政府委員 先ほど申しました第一の要因が総需要の超過分を調整するということでございますので、やはり現在の物価対策の最大の重点は、総需要調整という点に置かれているわけでございます。これは先ほど先生もおっしゃいましたように、金融の面ではすでに三回にわたり公定歩合の引き上げが行なわれ、累計一・七五%という三カ月間の上昇率としては相当なものでございます。
 それから、三度にわたる預金準備率の引き上げが行なわれまして、過剰流動性の吸収がはかられたわけでございます。
 さらに窓口規制、これも日銀によってかなりシビアなものが行なわれつつあるということでございます。
 それから同時に、財政面では、年度内の調整ということで、上期から下期に契約の重点を移すということで、二度にわたって閣議決定をされて、現在実施されておるわけでございます。
 それからもう一つは、やはり需要超過ということは供給に対する超過でございますから、需要を押えるだけでなくて供給をふやすということが非常に重要な物価政策のオーソドックスな大道でございます。
 そういう意味で、国内生産のほうはかなりのテンポで上昇しておりますので、やはり当面輸入をふやすということに、非常に大きな重点を置いておりまして、四月の十三日に行なわれました閣僚協議会、ここで七本柱が決定されたわけでございますけれども、この七本柱の中でも第一が先ほど申し上げました総需要調整で、第二が輸入の拡大ということがうたわれているわけでございまして、これは残存輸入制限品目につきまして原則を立てて、前年度に対しては三割アップ率、それから国内消費の八%に満たないものについては八%までふやすという原則を立て、若干の例外はございますけれども、大体この原則に沿って四月以降農林、通産両省によってワクが設定されているわけでございます。特に牛肉などは前年同期の三倍という、かなり大幅なワクが設定されたわけでございます。
 それからもう一つ、輸入拡大策の第二の柱といたしまして、いわゆる特恵関税の関係でございまして、いわゆるシーリング枠と申しまして、あるところまでいくと、天井が来てしまうと特恵関税で優遇しなくなるという従来の制度を改めまして、百十品目、これは後進国からの問題でございますので、特に国内の繊維、雑貨関係が最近の消費者物価上昇の一つの要因でございますから、後進国からの輸入をこれによって大幅に拡大しようということで、六月一日から実施されたわけでございまして、それでなくても最近輸入の増大が相当顕著にあらわれておりますので、今後一そうこういう特恵関税の関係の政策が効果をあらわしますと、輸入面は一そう増大するというように期待しているわけでございます。
 それから第三番目が、先ほど申しました第二の原因である海外インフレに対する対策というもの、これは実は非常にむずかしい、国内だけではなかなか手の打ちようのない問題でございまして、一つは、レートがフロートいたしておりますから、比較的その意味では海外インフレの影響が従来の固定レートのときに比べますと緩和されているということがいえるかと思いますけれども、一つの問題は、やはり海外の相場が上がることについて、国内の商社が過大に買い付けをして、それによって上がっているという面もございますので、これは行政指導によってそういうマイナスが生じませんようにやっているということでございます。どうも第二の点については、事柄の性質上、国内対策としては十分に適応しにくい面があるということでございます。
 それから第三に申しました要因、これは過剰流動性と海外の物価高とからんだ投機の問題でございまして、これは先ほど過剰流動性対策、金融を締めるということが当然一つの柱でございます。それからことしの初めから幾つかの品目についてかなり強力な行政指導が行なわれたわけでございますけれども、不十分だということで、さらに実はいわゆる投機防止法という法案を提出いたしまして、ようやく最近成立いたしまして、本日の閣議で品目の指定のための政令が決定され、明日公布されることになっております。通産、農林及び厚生省物資を含めまして十四品目が指定されまして、さっそくこの厳重な調査をやるということでございます。
 それから先ほどの第四番目の原因に対する、いわゆる賃金その他のコストアップの問題でございますけれども、これは現在のところ、まだ私どもの認識といたしましては、いわゆる海外先進国におけるような狭義のコストインフレにはなっていないという認識でございまして、特に政策としての段階に入っていないということでございます。
 それから第五の還境コストあるいは公害コストの問題、それから産業構造のシフトに伴う問題、これらは非常に長期的な問題でございまして、特にこの環境コストの問題というものは、やはり日本の経済の体質を変えていく上に、むしろ社会的な生活環境をよくしていく上には、当然物価の面にある程度はね返ることは国民として甘受しなければならない問題である。もちろん企業の合理化で極力吸収してもらうということが前提でございますけれども、吸収し切れないものはどうしてもコストにはね返るということは、これはやむを得ないというふうに考えているわけでございます。
 そのほかに、七項目の中で特に大きく取り上げておりますのは、消費者に正しい情報を伝えるということでございまして、これはことし三月、四月ごろに国内の繊維類を中心に非常に値が上がりましたのは、足りなくなる、足りなくなるという情報が、正しい情報でない情報が過度に伝えられて、このために消費者自身が買い急ぎをしたということがやはり一つの原因でございますので、正しい情報を早く伝えるということが一つの柱になっております。最近各省共同してこの面にたいへん力を入れているわけでございます。
 大要以上のようなことでございます。
#11
○広瀬(秀)委員 いま物価局長からお話があったわけでありますが、いかにも金融は確かに総需要抑制ということを踏まえてかなり引き締めが強化されてきている。それと財政の二回にわたる繰り延べ措置も行なわれてきた。しかし、これがどれだけ物価抑制について実効をあげつつあるのか、またどの程度実効が抑制に結びついていくのか、こういう点では、もちろんタイムラグもありますから、いま直ちに何も効果がないというようなことは申しません。これは徐々にきいてくることでもあろう、そういうように思います。
 そこで、大蔵大臣もお見えになりましたから、この金融をどんどん引き締めてまいりますというようなことですが、金融引き締め、公定歩合を上げていくというようなことについては、比較的日本の場合には刻みが〇・五であったり、下げる段階でも〇・二五くらいずつ操作をするという、最近では〇・五とか〇・七五というようなことでやっております。そして三回で一・七五まできたというようなことでありますが、諸外国から比べてみまして必ずしもそういう点で、思い切っていよいよこれは引き締めて物価安定をしなければならぬのだという政策当局の決意が、そういう政策展開の一つ一つににじみ出るような、何といいますか、真剣味というか、これで物価を安定させるんだというようなものが、どうも遅疑逡巡をして、そういうものがにじみ出ないというようなうらみがあるんじゃないかと思うわけであります。
 たとえば西ドイツあたりでも、ことしの一月段階で四・五%、その前では三%ぐらいだったわけですから、それがいま七%ですか、ここまで上げてきているというようなことから見れば、これはやはり、そういう点でも少し、上げ幅が小刻みで何回もやるというようなことが、かえって効果を減殺をするというような面も、これは多分に心理的な面も含めての話ですけれども、あるのではないか。たとえば一%思い切って上げるというようなことが行なわれるべきであったと、そういうように思うわけでありますが、そういう点でやや小刻みに回数を多くやるということと、思い切って大幅にやって、しばらく様子を見ようというのならば、やはり思い切ってやるという、そういう政策展開が必要だと思うのでありますが、これまでの公定歩合の一月以来のあり方について、どのようにこの金融政策が効果をあげるだろうか、こういう点について、大蔵大臣の見通しをひとつ示していただきたいと思います。
#12
○愛知国務大臣 公定歩合の引き上げの幅が狭過ぎるとか時期がどうであるということは、よく聞く批評でございますけれども、それぞれの国にはそれぞれの国情もあるし、また経済状況の特有のいろいろのパターンもあるわけでありますから、日本の現状としては、相当思い切った措置を次々と追い打ちをかけてやっているわけであります。決して諸国に比べて思い切りが悪いというようなことは政府としては考えておりません。
 たとえばこれは私の持論でもあり、またそれが当然かと思いますけれども、インフレ対策というようなことは、これは財政、金融だけで処理のできるものではございませんで、総合的な対策が必要ではないか。たとえば土地に対する対策であるとかあるいは商社に対する対策であるとか、こういうものについては諸外国に比べて非常にドラスティックなやり方である面もあります。そういうところが総合的に成果をあげることであると思います。
 それから、公定歩合にいたしましても、三回にわたって次々とかなり短い期間の中で、日本の実情としてはかなり大幅な引き上げをやっているというようなことも、日本の現状としては相当思い切ったやり方でありますし、それから公共事業の繰り延べについても、これまた政府としては本腰を入れて、一般的な公共事業については従来全く例がないやり方でありますけれども、上半期に五〇%を切り込むというような思い切った繰り延べをやっている。こういうようなわけでありますから、その点については御理解をいただきたいと思います。
 それから今後におきましても、やはり総合的な対策の効果を見ながら、金融の動向などは十分情勢の推移を見ながら、機動的な運営というものについては今後とも常に十分の配慮をしていきたい、こう考えております。
 そこで、一体いつの時期にどれくらいの効果があがるかということは、これは国民的にも常識的にも非常に知りたいところであるし、そしてその点を明確にいたしたいということは人後に落ちるものではございませんけれども、やはり総合的な対策でございますから、ある程度の時間的な要素も必要であるし、それから何月にたとえば卸売り物価を何%というようなことを申し上げることは非常にむずかしい。これは忍耐強く現在最善と思う方策を次々に具体的に打っていく、そしてその成果がなるべく早い機会にあがるように期待する、こういう態度でことに今日のような状況下ではいくべきものではないだろうか、こういうふうに考えているわけであります。
#13
○広瀬(秀)委員 大蔵大臣、昨年の四十七年六月段階で公定歩合を四・二五%、四・七五%から〇・五%この段階で下げたのですね。当時もうすでに外貨準備が急増しつつある段階で、過剰流動性は相当大幅に、おそらく年度間四兆円ベースで過剰流動性があらわれた時期だと思うのでありますが、四兆円ないし五兆円ともいわれておりますが、この段階で公定歩合をさらに下げた。金はダブついている、金利はもう超低金利であるというようなことが政策によって行なわれた。そのことが、これはもういやおうなしに営利を主体とする企業でありますから、今日の商法体系からいってももうけるということ、利潤をより多く上げていく、そういうことで動いておる企業でありますから、そしてまたそういうことが保護され助長されてきておる、しかもそういう過剰流動性がものすごくある、手元流動性も豊富になってきている、しかもそこへ低金利のおまけまでつけてやるという政策展開が行なわれた。
 これはもう投機、仮需要、そういうものの発生に向かわざるを得ない。向くのが、商社の立場からいってもあるいは不動産屋の立場からいっても、これは当然のことになっておる。社会的責任ということはこれは当然のことなんですけれども、社会的責任を言う前に、政策展開がそういう方向にいやおうなしに向かうようなところに行ったというような、政策のタイミングがこの辺ではもう間違っておったのではないか。これは円の切り上げをおそれるという政策意図というものがあまりにも強くて、その政策意図というものはやはり大企業本位だと思うのですよ。物価がこれでどう上がるかというようなことについての配慮というものが足りなくて、そういうところで企業の利益を増進しようという政策意図というものが働いて、まさにその政策の順逆を間違えてしまった。
 こういうような点で、私は先ほど十ばかりインフレ要因を私なりにあげたわけでありますが、また企画庁からも同じような、今日の異常な物価高、インフレの原因について解明もあったわけでありますが、そういうもののうち仮需要がものすごくふえた、投機需要がふえた、商社の買い占め売り惜しみというようなことをあおった、地価の上昇が日本列島改造とともにあったというようなこと、こういうような問題、また昨年は田中総理がもう実現間近しという、そういう政策的意図というものが、本来の経済理論的な、あるいは財政の面から物価を安定させようというようなことがそろそろもう言われているにもかかわらず、そういうものがやっぱり先行した形で、このことが政策のタイミングを間違う一つの大きな火つけ役になったというようなことで、政策展開の誤りということについて大蔵大臣は、一年前を振り返ってみてどのようにお考えでしょうか。
#14
○愛知国務大臣 一年前は、いまも言及されましたけれども、いわゆるニクソン・ショック以来の円の価値の問題というようなこともあって、日本としては非常な不況ということが国民的な関心事であった。それに対して景気浮揚の政策を各般にわたってとらなければならなかった事態であって、それはそれなりに私はメリットを認めていただいてしかるべきではないかと思いますが、同時に、日本全体としては非常に長期にわたって高度の経済成長が続いてまいりましたから、何となしに経済の将来に対しての楽観的なムードというものもそれに関連してあったということも否定はできないのではなかろうかと思います。
 それはともかくとしまして、過剰流動性というのは昨年末からことしの初めにかけては、いわば具体的にいえば外為の散超ということになるわけでありますが、その基本はすでに今日全く切りかえられたわけで、これは政府と民間の収支から見ましても、実は外為が逆に揚げ超になっておる。そして円の実勢相場というものもけっこう安定している。国際収支の状況もいわゆる正常化といいますか、均衡回復ということができてきている。こういう点は、一年前を振り返ってみて現在のほうが正常化の基盤ができたというふうに私は認識しておるわけであって、この基盤の上に立って、先ほど来企画庁からもいろいろお話があったようでありますけれども、そういう方向の政策が具体的に展開されていくならば、私は日本の今後というものが必ず正常な状態に遠からずして基調回復するというふうに考えておるわけでございます。
#15
○広瀬(秀)委員 遠からずして回復、物価は安定するだろうという見通しのようでありますが、ある意味においては楽観的な立場だと思うのであります。
 私どもはやはりもう、商社の買い占め、売り惜しみ、地価の上昇、そういうようなことを通じて、そしてまた海外インフレというような要因まで加わり、どんどん異常な物価値上げが見られている段階において、たとえば年初準備率の引き上げはやりましたけれども、それでしばらく様子を見、そしてまたそれだけそういう物価上昇ということが問題化して、国会でもいわゆる商社の売り惜しみ、買い占め問題等がやかましくなった段階で、四月二日やっと、四・二五%を〇・七五%上げたんだからかなり大幅に上げたといわれておりますが、この段階あたりで少なくとも一%くらい上げてしばらく様子を見るというような、こういう点でもやはりまだ上げ幅が少なかったのではないか。いままでからいえば思い切って上げたというようなこともいえるかと思うのでありますが、やはりやるときには思い切ってやって様子を見るということでなければ、〇・七五やったけれどもこの異常な物価がどうも鎮静しそうもないというようなことで、次に五月三十日、約二カ月後でありますが、それでさらにまた〇・五%上げるということをやる。そしてまた一カ月くらいで、今度はもう一つ〇・五%上げて六%にしましょう。
 いかにも小刻みで様子を見るというような立場がそこにある。その効果というものは、やはり大幅に思い切って上げればそれだけ早く出るし、物価安定という方向にも結びつくというようなこと。結局、上げるんだったらもっと早い時期に思い切ってやって、しばらく様子を見るという態度でなければいかぬと思う。小刻みで、どうも効果がはっきりしない、それじゃもう一つやってみようかというようなことでやるのは、特に今度のような異常な物価上昇という段階を踏まえたときにおける政策態度としては、やや臆病に過ぎるのではないか。その臆病に過ぎるところは、何かやはり政策的な意図というか政治的な意図、政治的ないろいろなねらいというものを先行させる、それともう一つは、大企業中心にものごとを考えるという二つの誤りの中で、そういうことに遅疑逡巡されるのではないかということを強く感ずるわけなんです。
 そこで、いまさらに金融だけでなしに財政のほうも出動して、上半期五〇%を切り込む四九・何%というところまで公共事業支出を削減をしていくというようなこともやっておられるわけでありますけれども、去年のかなり大型の補正予算は、公共事業ベースで一兆四、五千億でしたか、そういうものが出ておるわけですね。そういうようなものがやはり上半期を潤しておるわけですよ。そういうものの中でそれをやったといってもそれほどきき目はないのではないかということがいわれるわけであります。
 したがって、ある程度、ドラスチックな言い方かもしれぬけれども、オーバーキルをおそれないで、もう一ぺんくらい公定歩合引き上げというようなことを欧米諸国並みにアメリカでももう七%になりましたし、フランスでも八・五%になっているし、西ドイツですら七%、イギリスが七・七五%、これは八%から少し下げておりますが、そういう状態。これはまた、日本が低落するドルの売り浴びせというようなことを警戒するというような配慮もやはりあるかもしれませんけれども、これをさらに七%あるいは六・五%というようなところまで上げていく、これはおそらくオーバーキルになるかもしれぬというようなことも言われるだろうと思いますが、やはりある程度そのくらいの決断がなければ、この物価上昇を冷やすことはできないのではないか、こういうように思うわけです。ある程度そのような気持ちで金融政策ももう一段階くらい、もちろん政策のきき目のあらわれの度合いというようなものを見ながらということでしょうけれども、そういうところまでお考えをされておるかどうか、この点を伺いたいと思います。
#16
○愛知国務大臣 御質問の焦点が私にはよくつかめないのでありますが、公定歩合をまた引き上げろという御説であるとすれば、ただいまは何とも申し上げられません。先ほど申し上げましたように、金融情勢あるいは金融政策というものは、十分情勢を見通して適宜適切な方策をとるというのが金融政策のかなめである、かように存ずるわけでございまして、前もって将来を予告しながらやるというようなものではございません。公定歩合の上げ下げというようなことは臨機の措置としてとるべきものである。
 それから外国の例をおあげになりましたけれども、たとえば一番話題になるアメリカの例をとってみましても、今度の企画庁の月例報告の中にも掲げられておりますが、六月のアメリカの経済の中で見ますと、卸売り物価は、前年同月に比べて一五・一%の増加でございます。それから西ドイツの例は特に申し上げることもないかと思いますが、ああいうふうにせっかく共同フロートで対応いたしましたけれども、共同フロートをやっているその中において、引き続いてマルクの切り上げをしなければならないというようなことは、やはり国内経済に対してもどういうふうな激動が起こっているかということが常識的にもよくわかるところでございまして、これらの諸国に比べまして、わが国がとっておる措置が決しておくれておるとも思いませんし、何らかの政治的意図でやるべきことをやらないでいるというようなことは、決して世界的状況の上で正当に批評をされるところではなかろう、かように私は考えております。
 なお同時に、こういうような世界的な状況でもありますし、また日本としては特に海外に対する依存度が経済構造の上からいって高いところでございますから、それらの状況をよく見守って対処するということが、もう一つ非常に重要な要素である。その辺については、私どもといたしましても、十分に目を注ぎながら、とるべき措置については間違いのないように今後も十分やっていきたい、こう考えておるわけでございます。
#17
○広瀬(秀)委員 第四次公定歩合引き上げをやるか、こう端的に質問すれば、いまのようなお答えになるだろうと思いますが、私が聞きたかったことは、ある程度オーバーキルになるかもしれぬ、しかしそれ以上に物価値上げを抑制する、物価を安定させるんだという、そのことを一番強い政策課題として認識している、こういう決意がおありかどうかということが聞きたかった点なんであります。その点では大臣の決意はいかがですか。
#18
○愛知国務大臣 オーバーキルということばは外国のことばでございますけれども、それは何を意味するか。私が政治的にも一番心配するのは、えてしていわゆるオーバーキルというようなものが日本の経済構造でまいりますと中小零細企業に非常な悪影響のあることを含んでおると思います。およそお互いに政治を担当しておる者といたしましては、オーバーキル、仕事ができなくなる、あるいは倒産ができる、あるいは失業が出るというようなことは、やはり最も留意すべき問題ではないでしょうか、私はそういうふうに考えるわけでございます。
 もちろん、金融政策においては相当厳粛な、きびしい態度でやっておりますことは、いままでのやり方の中で、これは公定歩合の問題だけではないので、たとえば窓口規制というものは、これはあるいは日本独特のやり方ではなかろうかとあえて申し上げてよろしいかと思いますが、これを準備率の引き上げ等を背景にして対象別、目的別等にきめこまかくやるところに日本独特のやり方があるわけでございます。
 こういう点が、いわばきき目のあるような、あるいはオーバーキルになってもいいような面にはきびしくいきますけれども、同時に、一般的にオーバーキルでもかまわないからやってしまえということは政府の立場としてはできないことであるし、またそれは避けるべきことである、こういうふうに考えますから、今後とも金融政策の展開においては、特に中小零細企業あるいは生活環境といったようなところには十分配慮して、オーバーキルどころではない、これらが不当な影響を受けないでやっていけるようにする、これが私は政策の要諦であろう、こういうふうに考えます。
#19
○広瀬(秀)委員 オーバーキルというのは、大体常識的には、中小企業に極度なしわが寄り、倒産が続発するということが一般的には考えられるけれども、何もわれわれもオーバーキルをやれということではない。中小企業等は、一番先にいつも引き締めの一番大きい犠牲を受ける。そういう点では、中小企業向けにはそれなりの配慮をしっかりやりながら、全体的には物価安定を期するためには、大企業、大資本、これが決定的に日本の経済における物価上昇の多くのウエートを持っておるわけでありますから、そういうものに対して意見だけ聞き、その立場だけ尊重するというような形で物価安定を考えていく場合には、大企業にもたまには痛い思いを見せてもいいというくらいの気持ち、そういうものが物価安定に結びつくものであろう、こういう立場であります。
 そこで、財政の問題ですが、日銀総裁等も、金融政策はこれ以上は無理だということもひそかににおわせながら、財政がもっと考えてもらわなければ困るという、そういう面では過剰流動性を吸収するというところで、西ドイツあたりでは思い切った政策展開をやっているわけであります。一定所得額以上の者に対しては付加税を徴収するようなこともやって、しかもそれを凍結をしておくようなことをやっておる。
 そういう点で、いずれ臨時国会、補正予算ということがことしは当然考えられるのですけれども、そういう段階で財政を繰り延べることはそれほどきき目はないだろうと経済学者等も常識的に言っておられますし、私どももそれほど効果はないのではないか。今は繰り延べられるということで資金だけ何とかやり繰りして回していければ、やがてはあれだということで事業はどんどん行なわれる、需要が一向衰えないということになるわけでありますから、そういう面ではむしろ大胆な――しばらく日本では減額補正はやっておりません。常に増額補正ばかりでありますが、ある意味においては、特に公共事業等について減額補正ということを考えてもいいのではないか。優先順位をシビアにきめて、そういうことすら考えてもいいのではないかと考えるわけですが、いかがですか。
#20
○愛知国務大臣 まず、公共事業の問題でございますが、これは物資その他資材等の需要の関係から見て、何といっても民需が圧倒的に多いのです。これは前回かの当委員会でも数字についても若干申し上げましたけれども、現状の見通しからすれば、民間の設備投資それからたとえば先行指標としての機械の受注その他から見て、これが全体の比重からいっても総量的にそもそもが多い上に、この伸び方がこのままにすればずっと伸びていくわけであります。したがって、もちろん公共事業費においても相当の思い切ったということを言われるわけですが、思い切った措置をしたわけでありますが、公共事業費ということに数量的にそう大きな減額ということを期待されることはそれほど大きな効果はない、こう思います。もちろん心理的あるいは政府の態度として、厳粛な金融の引き締めをやるようなこと、それと同じような考え方で、あるいはそれ以上にまず政府みずからの姿勢を厳粛にするという意味では非常な効果があります。
 それから具体的に申しますと、公共事業は御案内のとおり各種各様のものがございますが、たとえば地方的に申しますれば、一面においては非常な強い要望があるわけですね。そしてこれはすぐ大企業ということばが出てくるわけですけれども、実際上これを現場でやっておるのは下請の人たちである。これは中小零細企業の対策ということも頭に置いていかなければならないことは他の業種と同じような性格のものである、私はこのように考えております。
 そこで公共事業費の取り扱い方については、一種の窓口規制をやっているつもりであります。地方的に、たとえばセメント、木材あるいは鋼材といったようなもの、具体的な例をあげれば、これを国や地方公共団体の事業を予定どおりやっていくことにおいて、それらの物資が民需と競合することによって、それらの物資の価格がさらに急騰することを防ぐということが当面の一番の目的でございますから、そういう点をきめこまかく、従来はあまりそういうこともやっていなかったかもしれませんが、具体的にいえば、主計局がその姿勢でもって、地方的な物資の需給等も十分各省各庁の協力を得て資料的に検討して、民需との関係で競合して価格が上がるということを抑制しながら、実際の予算の張りつけをやっていくという仕事のやり方を現にやっておるわけであります。
 その目標といいますかワクとしては、一般公共事業費では年間で五兆一千億でありますが、上半期ではそれの五〇%切り込んで四九・三%になるわけでございますけれども、しかし、さらにきめこまかくいま言ったようなやり方をやっておりますから、実績ではどういうふうになりますか、さらにそれよりは切り込んだかっこうになるかと思いますが、そういう面においては今後とも十二分の配慮をして、国の経済政策全体にできるだけの努力をしていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
 同時に、これは御質問の範囲を逸脱するかもしれませんけれども、予算全体から見れば、物価の問題には迂遠なようでありますけれども、たとえば農業関係にいたしましてもあるいは流通の関係にいたしましても、その効率をよくする、あるいは生産性を上げる、あるいは安定供給、価格の安定ということが必要なんであって、その面には相当の予算が計上されておるわけであります。これが有効適切に効果を発揮することは非常に期待されるところなんであって、現在、さような面も含めまして、年度がまだ第一・四半期の間において減額補正などということを考えるべき時期ではない、この予算の持っている性格やその使命を一面において十分に発揮してもらわなければならない。これについては、たとえば生鮮食料品の関係などについては、ずいぶんいろいろの施設を期待してやっているわけでありますが、率直にいって東京都はじめ地方公共団体のほうの対応がまだまだ十分でなかった点がありますから、具体的にそういう面につきまして各省各庁協力いたしまして、そうした流通やあるいは生鮮食料品の供給の関係等においても現に総力をあげて具体策を展開しておるわけであります。
 どうかこうした予算というものが的確に早く実行に移って、そして地方公共団体その他関係の向きとの協力体制がもっとスピーディにでき上がって、その面からも物価対策というものに効果をあげるように、私はこれはほんとにもう真剣に各省にお願いしておるところであり、場合によりましては直接地方公共団体その他にも訴えたいと思っているわけですが、これはしかし所管の各省がその衝に当たっておられるわけでございますから、私の立場としては、ほんとに一生懸命になって、それらの具体的な効果があがるように、この上とも努力をいたしてまいりたい、かように存じております。
#21
○広瀬(秀)委員 減額補正はやる意思はないというお話でございますが、とにかくもこれほど異常な物価上昇を見た段階において、どうも私どもはまだまだ、物価を安定させる、しかもできるだけ早い時期に安定させるという政策に、何かやはり国民とともにいら立たしさとなまぬるさを感じざるを得ない。こういう点で、さらにこれは経済企画庁も大蔵省も、あるいは通産、農林、関係各省みんな一体になってこの問題の解決のために取り組んでもらいたいという要望を強く申し上げたいと思うわけであります。
 あと、国際通貨問題、税制問題をやりたかったのですが、時間がもう超過をしてしまっておりますので、一つ二つだけ聞いておきます。
 端的にお答えいただきたいのですが、今度の西ドイツのマルクの切り上げ、さらにスワップの拡大というようなことがアメリカのドル買いささえというようなことで、一応今次国際通貨危機というものが小康を得たという状況になっているわけでありますが、これは一体、今後ともECの共同フロートというようなものも内部に――内部は固定相場制だ、対外的にフロートだ、共同フロートだ、こういう状況になって、そういう中でもかなり矛盾が拡大する。さらに、そういう制度の中で、日本とEC諸国の間で、円が割り安になるというようなことで、そういう面からのEC方面からの反撃、特に輸出が急増いたしております。アメリカのほうは大体バランスがとれる、むしろ六月段階ではもう明らかに入超と、対米貿易関係はそういう状態になっているけれども、そういうECの共同フロートと日本のフロート下にある、大体二百六十五円ぐらいのところに回復したようでありますけれども、そういう点で円が割り安になるというようなことを通じて貿易が拡大をしている、こういうようなことで、このフロートの問題はどこまで続くのか、はたして九月段階でナイロビIMF総会で固定相場制復帰というようなことができるのかどうか、そういう点の見通しをひとつ伺いたい。これは局長と大蔵大臣双方からお願いしたいのです。
 それと時間がありませんからまとめて申し上げますと、来年度の税制改正で、田中総理大臣が、五月の三十一日に愛知大蔵大臣、吉國次官、高木主税局長をお呼びになって、一兆二千億減税をやろう、こういうことが新聞に大きく報道されて、百五十万円までの給与所得者の減税の実現、法人税の四〇%増税、ガソリン税、自動車重量税、印紙税などを増税する、こういうようなことになっておるようでありますが、この点東京都議選を控えての政治的発言なのか、田中総理のやはり去年のいまごろには一兆円減税というようなこともちらちら新聞等にも報道された。それが国税の面で三千三百五十億、地方税を加えて約四千六百億ないし四千七百億くらいですか、そういうところにしりつぼみになったわけであります。こういう問題について大蔵大臣として、この一兆二千億減税というものを本気にやる気があるのかどうか、この点を再確認したいこと、そうしてあなたのいま頭の中にある考えの中身を明らかにしていただきたいわけであります。そういう点、時間がありませんので、あと武藤代議士からいろいろ質問があろうかと思いますので、私はその二つ質問をして、お答えをいただいて終わりたいと思うわけであります。
#22
○愛知国務大臣 第一の問題は、国際通貨の問題ですが、これは二つに分けてお答えしたいと思いますが、全体の国際通貨の再建具体策がどういうふうになるだろうかということについて、これは世界全体の問題ですから、その見通しの確たることをまだ申し上げ得る段階ではございませんで、今月三十、三十一日と二十カ国蔵相会議が開かれることに確定いたしましたから、まずそこでさらに三月以降のいろいろの状況を踏まえて、何とか具体策が前進できるようにできるだけの努力を私もやりたいと思っております。そしてかねてから定まっております日程の九月のIMF総会のときには、さらにそれに上積みした何らかの具体的な合意ができるように最善の努力を払いたい。
 中身はどうかということですが、中身につきましては、固定相場制度というものが一番望ましい、その目的のために国際的に合意を得なければならぬ数点がまだ残っていると思いますが、それらの点を、現在蔵相代理会議が行なわれておりますから、それらの状況も見まして、まず今月末できるだけ前向きに対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
 二つに分けてと申しますのは、一つは、日本自体の立場でございますが、ヨーロッパには金相場の変動あるいはドイツのマルクの切り上げ等々、ヨーロッパにはいろいろの嵐がこの間も吹きましたけれども、幸いにほんの数時間といっていいくらい多少の何か動きが東京市場にもございましたけれども、やはり日本の現在の、特に一番大きな貿易の収支関係の見通しなどから申し上げましても、すぐ平静に戻りまして、現在お話しのような相場で安定をしておる。そして一方におきまして、アメリカの連銀がスワップの拡大に同意をしたということは一つの前進であろうと思います。国際通貨問題解決のある種のアメリカの前進ではないかと思いますけれども、日本としてもスワップ協定については、十億ドルを二十億ドルに増加することになりました。これも一つの安定要素であります。政府としては、今日以降におきましても、ドルの買いささえ、ドル買いの介入ということは考えておりません。その必要もないし、適当でないと思いますから、ドル買いをやるというようなことは考えておりません。
 しかし、ともかくも通貨の安定のためにスワップが拡大されたということは、これはプラスなのでありまして、まあ日本としては、一方において国際通貨のリフォームについて、何とかこれは世界全体のために調整可能ではあるが固定為替相場に復帰をするということを念願として、具体的な数件の問題を克服していくということの努力を大々的に展開しながら、幸いに現在においては日本としては安定している。したがって、一面大努力をすると同時に、それとの関連もございますけれども、現在の変動為替相場というものがある程度続きましてもだいじょうぶであるという認識を同時に持っておるわけでございます。
 それから、第二は税制の問題でございますが、これもこういう機会でございますから率直に申し上げるわけでございますが、一部には、こういう状況下であるから年度中にも税制の改正に取り組め、こういう御主張を承っておるわけでございますけれども、私といたしましては、現状のようなときには理論的にいえばむしろ増税をすべきときである。考え方としては、物価対策、インフレ対策に全力を注いで正常な状態をつくり出す。そして来年の四月以降においては、かねがねのわれわれの願望であります勤労大衆に対する所得税の減税をぜひ実行いたしたい。
 この考え方は、私はよくその御批評を受けるわけですけれども、真剣に考えて、その何兆円の減税というような看板で鬼面人を驚かすようなことよりは、内容的に現実に目標を置いて作業をすべきものであると思いますので、大蔵省として言明いたしておりますのは、所得税については、夫婦子供二人の標準家庭においての課税最低限は何としても百五十万円以上に引き上げる、給与所得控除等にもいろいろくふうをこらしてみたい、何としても百五十万円以上に最低限度を持っていきたい。これを一つの柱として、現にもう作業の方向に向いております。これは他の税源その他との関係で、総体がどういうふうな姿に税収入がなりますかはこれからの作業次第。いやそれよりももっと大事なことは、来年度の財政需要をどのくらいに見るか。
 先ほど来非常に御指摘がございますが、むしろ財政はしぼめろという御意見も一方においては非常に多いようでございますけれども、福祉国家に転回した今日においては、福祉関係予算だけでも当然増は相当ございます。これは長時間にわたって御論議をいただきましたけれども、たとえば年金のスライド制一つをとってみましても、あるいはその他の社会保障関係をとってみましてもまあ簡単に御想像もつくと思いますけれども、財政需要は非常に多いわけであります。
 四十九年度の予算の規模をどの程度にするかということについてもいろいろと現に勉強を始めているわけでございますけれども、そこで一面において社会的感覚や現在の経済状況から見ましても、法人税はどうしても税率は四〇%に上げる。それから特別措置はほんとうに徹底して洗い直しをするということと、それからただいまお話がございましたが、ガソリン税その他の問題では、一面においてやはり道路その他の長期計画がございますが、その特定財源として予定されている各税目の伸び等を勘考いたしまして、これをどういうふうにやってまいったらいいか、これはやはりまた物価問題等との関係もあるわけでありますから、それらをかみ合わせて来年度は相当な税制改正をやりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
 何兆円の規模でどうというところまでは、これはそういったいろいろの状況を組み合わせてまいりませんとわかりませんが、ただ所得税だけについていえば、最低百五十万円までに底上げができれば相当の数字になるということは容易に御想像願えるところである。これは都議選目当てとかなんとかではなくて真剣に、しかしその真剣さというものは、都議選を通じても多くの都民の方にも私は御理解をいただきつつあると思いますけれども、あくまで真剣にわれわれとしては四つに取り組んでおるところでございます。
#23
○広瀬(秀)委員 終わります。
#24
○鴨田委員長 武藤山治君。
#25
○武藤(山)委員 大蔵大臣、最近の物価動向はいかがに推移されているか、ちょっとお尋ねをいたしますが、卸売り物価の五月までの状況は、手元にございますが、昨年の十一月ごろから、前月対比ではたいへんな卸売り物価の上昇であります。時間がたいへん短うございますから、こちらの数字を全部申し上げることはできませんが、二月が前月比一・六、三月が一・九、四月が少々下がって〇・五、五月また反騰して〇・九。六月はどの状況になっておりますか。
#26
○小島政府委員 六月は、これは中旬の数字だと思いますが、一三・五%でございます。
#27
○武藤(山)委員 いまあなたがおっしゃったのは総平均の話で、私が先ほど申し上げたのは前月比の卸売りの状況をちょっと聞いてみたわけです。六月はどのようになっているか。四月は一たん落ち込んで〇・五になったわけですね。五月が〇・九、また上昇してきた。六月はこの趨勢がどう変わっているかを聞いているわけです。
#28
○小島政府委員 六月の上旬が、私の記憶では前旬比〇・五だったと思います。それから六月の中旬は〇・三でございます。
#29
○武藤(山)委員 消費者物価も相変わらず上昇の傾向にあるわけであります。このように物価がどんどん上昇していろんな問題を引き起こしているわけでありますが、いまも広瀬委員から話がありましたように、政府は対策が後手後手である。きのうの夕刊に、たぶん大蔵大臣もお読みいただいたと思いますが、前企画庁事務次官の矢野さんですか、経営者セミナーか何かで講演をしたのがばあっと出ておった。あれの物価に対する考え方は、政府のやっていることは全く後手後手で、へっぴり腰で、物価対策なってはおらぬという意味ですね。この人はついこの間まで企画庁の事務次官をやっておった人だ。
 また、大蔵大臣は経済団体連合会の幹部と朝食を食べながら二時間会談をやったという新聞報道が前にありましたが、そのときにも経営者団体でも、政府のやっていることはどうも先の見通しがなくて、長期的な展望もない、思いつきだ、行き当たりばったりだ、大蔵大臣の前でたいへんおきゅうをすえたようなことが、これは真偽はわかりませんけれども、新聞にそう出ておったのであります。そういうものをあわせ考えるときに、物価対策として現在やっておることは矢野前事務次官が言うようにへっぴり腰で後手後手で効果があがらぬ、こういう批判に対して、大蔵大臣は率直にどのような御感想を持ちますか。
#30
○愛知国務大臣 矢野前次官がきのうゼミナールで講演をした内容は私も承知しておりますが、これは私の理解しているところでは、その表現はともかくとして、企画庁の次官として、特に物価に対する責任者としての立場から、彼がいつも言い続けていたことであって、私も常にこれは傾聴していたことであります。へっぴり腰云々というような表現は、そのときの環境で使ったかどうかはわかりませんが、事務当局の責任者として物価問題についてはもどかしさを感じていた。それからこれは先ほども私は申し上げましたが、非常に広範な総合対策でいかなければならないので、なかなか足並みがそろわないところにもどかしさを感じていたということは、私は事実率直に認めます。私もさように考えております。
#31
○武藤(山)委員 物価の上がる原因は、企画庁もあるいは通産省、農林省も、消費者団体から責められるとみな述べているんですね。国民はなぜ物価が上がるのかということを聞きたいのじゃないんだ。国民が聞きたいのは、どうしたら物価が安定するのか、どうしたら庶民に犠牲を与えずに済むのかという回答である。その回答は、なかなか納得のいく回答を私もいまだ聞き及んだことがないのです。政府のこの七項目の緊急対策なるものの現状とその後の追跡調査の状況などを手に入れて読んでみたのでありますが、これを読んでもさっぱりどうも物価が鎮静するという感じにならない。国民が期待しているように、物価はこうして安定させます、自由民主党にまかしてください、そういう政策というのは実際問題としてお手上げなんですか。
 それとも当局者自身の気持ちの中に、現代資本主義というものを維持し完全雇用体制というものを持続していくためには通貨インフレというものはやむを得ないのだ、ケインズ経済理論を取り入れていく限り防ぎ得ない、これはアキレス腱なんだ、そういうあきらめの気持ちがあるのかもしれないという疑いを私は持つ。そこらの気持ち、大臣どうなんでしょうか。経済閣僚として物価に対して真剣に取り組む大臣の率直な真情を聞かしてください。
#32
○愛知国務大臣 物価に対しては政府全体をあげて全力を投入している、これが基本的な立場でございますし、それから理論的に申しましても、いかなる経済理論からいっても、政策論として物価が幾ら上がってもいいということを言っているわけではございません。したがって、われわれとしては、先ほど申しましたように、あくまで忍耐強くあらゆる措置を展開していきたい、こういうふうに考えております。
 それから、高度成長経済過程が始まりました比較的最近でありますが、ここ十数年、二十年の間を見ましても、引き締めをぎゅっとやってまいりますその期間というものは比較的短期で、かなりな効果をあげているわけです。ただ、現状におきましては、それがまた輸出に不当にといいますか、そちらのほうにシフトされていきますと、また基本がくずれますから、そこのところがなかなか今回のむずかしさでございますけれども、私は過去の例から申しましても、日本のいろいろの意味の風土からいって、がんばってここでやってまいりますれば、久しからずして成果をあげるものと、これは過去の経験から申しましても自信を持ってしかるべきではないかと思います。同時に今回のこのインフレは、世界的に足並みをそろえてのインフレ的様相なのでございますから、その点が従来からいえば今回の特色である。したがって、その辺のところも十分心に入れていかなければならない点であろう、こういうふうには考えております。
#33
○武藤(山)委員 大蔵大臣は久しからずして鎮静、安定をすると期待をしている。久しからずとはいつごろをさすのでございますか。
#34
○愛知国務大臣 クリアカットのお答えはまだ私も自信を持って申し上げられませんが、先ほど、広瀬委員にお答えしましたように、たとえば減税の問題について先ほど申しましたように、四月には絶対に大減税をやろうということは、裏返しから言えば、現在のような状況で言えばなかなか理論的には減税ということは踏み切れない、しかし来年の四月には十分踏み切るだけの基盤ができるということを前提にして、そして必ずこれはできるのだから、来年度は減税ということをいまからもう公約を申してはばからない、こういう心境でございます。
#35
○武藤(山)委員 小島物価局長いかがですか。物価の総元締めとして、大臣は久しからずと言うのですが、総理大臣はこの間選挙向けに十一月にはと言っているのですが、あなた担当して、全体の各省の動きを見ていて率直に、いつごろになれば消費者物価鎮静、安定という概念に当てはまるような状況になると思いますか。
#36
○小島政府委員 物価の安定ということばを非常にシビアに解しますと、上昇率ゼロというのがほんとうの物価安定だと思うわけですけれども、卸売り物価につきましては趨勢的にそういうことは十分あり得ると思います、これは景気の動きによって非常に弾力的に動きますから。ところが、消費者物価につきましては、どうもやはり過去の例から申しましても上昇率ゼロ――ある月そういうことがもちろんあるわけでございますけれども、年間ならしてみて上昇率ゼロということは遺憾ながら期待しがたい状況であると思います。
 どのくらいがノーマルかと申しますと、やはり過去十年間くらいの平均は、成績のいいときで四%台、悪いときは七%、八%ということでございまして、平均すると五、六%くらいというところがどうもいままでの消費者物価の上昇趨勢であると考えられますので、物価の厳密な意味の安定ではございませんけれども、少なくとも五%台くらいまで持ってまいりますことが当面の物価安定の目標であるというふうに考えております。
 では、いつごろそうなるかという御質問で、これはたいへんむずかしい問題でございますけれども、一つは私どもは現在の消費者物価上昇というものは、結局卸売り物価上昇の波及過程にあるということから申しまして、卸売り物価をまず安定させることが前提であると思います。そのために現在各種の総需要政策その他が行なわれているわけでありまして、これは遠からず卸売り物価につきましては横ばいに近づいていくだろうと思います。ところが消費者物価につきましては、どうしてもタイムラグがございますし、それから先ほど申しましたような上昇趨勢ということもございますから、上昇率が鈍っていきますのはやや時間がかかるということがございます。
 ただ、ここで申し上げたい点は、物価の上昇率には実は二つのはかり方がございます。一つは前月に対するいわゆる瞬間風速的な上昇率と、もう一つは前年同月に対する上昇率ということでありまして、前年同月で見ますと、先ほど先生がおっしゃいましたように一〇%、二〇%ということになっておるわけでございますけれども、前月に対する上昇率で特に私どもが重視しておりますのは、季節商品を除いた総合、これの前月に対する上昇率というものが実は消費者物価の実勢を最も的確にあらわすと一応考えられるわけでございます。
 それでまいりますと、実は一番上昇テンポが高かったのがことしの三月でございます。これは先ほど申しましたような一種の買い急ぎムードが一番高まった時期で、私の記憶ですと、前月に対して一・九%、ほとんど二%上がったわけでございます。その後、四月が一・六でございましたが、だんだん下がってまいりまして、六月の東京は一・一ぐらいまできております。六月の全体の数字は、東京の数字は五月における野菜の暴騰の反落がございましたので全体で〇・二しか上がっておりませんが、これは七月には当然その反落分がなくなりますから、もうちょっと全体としては上昇率は高まりますけれども、私どもが重視しております季節商品を除いた総合の前月比というものの上がり方がだんだん鈍っているということは、非常に注目すべき動きでございまして、前年同月比はしばらくやはり高まらざるを得ませんけれども、前月比で見ますと、だんだんにいま鎮静過程に入っているということでございます。それでもし消費者の皆さんが前年同月比が毎月高まるということは実態がますます悪くなっているというふうに考えますと、これはまた買い急ぎムードが出てまいって非常に実態が悪くなるわけでございます。私どもは実態をなるべく正しく消費者に理解してもらうということに現在つとめておるわけでございます。
 それで前年同月比でまいりますと、ことしの後半になりますと、実は前年の動き自身が非常な上昇をしておりますから、これは上昇率としては当然下がってくるということになるわけでございまして、大蔵大臣がおっしゃいますように、私も久しからずしてノーマルな状態に近づくというふうに考えております。(「名答弁」と呼ぶ者あり)
#37
○武藤(山)委員 メイはしんにゅうのついた迷だぞ、局長。
 時間が五十分くらいしかありませんからあなたと論争するわけにいきませんが、いまの六月のを見ても、目立つ前月比の上昇率の多かったのは野菜、被服、こういうものが非常に多いわけですね。また前年同期に比較しても、被服が二二・七、食料が一二・四というふうに被服、食料が多い。この中身を議論しないと、きめこまかい論争にならぬと思うのです。中身もやろうと思って、実はきょうは通産も農林もみんな呼んであるのでありますが、五十分間ではたしてできるかどうか疑問でありますが、さてそれはおいて……。
 これらの物価が上がっている原因には長期的なものと短期的なものと、大きく分けて二つの要因があると思うのですね。それをさらに詳しく内容を分析すれば、先ほど広瀬さんがおっしゃったような問題点があるので、それをちょっと申し上げますから、それ以外に物価局長としてまだこういうものとこういうものがあるということがあったら、ひとつ明らかにしてもらいたいと思う。
 私は、一つは超過需要があると思う。これは予算規模が非常に大きかったことや住宅建設が予想以上に非常に拡大基調にあった、こういう超過需要の問題点が一つ。それから供給不足、これの手だてがなかなかむずかしいのだと思います。
 第二に、その供給不足が需給関係をアンバランスにしたという商品がある。こういうものをどうやるか。特にこれは政府が不況カルテルを認めて、解除する時期がおそかったという後手の問題が供給不足にかかわり合いがあると思うのですが、第二にはこの問題がある。
 第三には、地価や株価やゴルフ場の買い占めにあらわれたような過剰流動性問題がある。これは貿易収支が非常に好調であったという、外為会計を通じての散超がそういう問題を引き起こしている。
 第四には、その過剰流動性から起こってくるモラルの問題、投機と思惑の問題、これがやはり物価をかなり押し上げているような気がいたすわけであります。
 その次が、国際インフレの輸入ですね。ドルのたれ流し八百億ドルあるいは、一千億ドルといわれるユーロダラーの存在が世界じゅうの国に迷惑を及ぼしているという問題、これをどう防ぐかというのも大蔵大臣にあとで聞きたいのでありますが、その次にもう一つは、寡占、価格協定、独占価格といわれるような寡占状態にある独占資本主義の弊害ですね。こういうようなものが価格を硬直化して、大量生産になれば薄利多売になるのが資本主義の原則なわけですが、大量生産になっても薄利多売にならないというところに問題がある。これは公取委員長に聞きたいと思っておったのでありますが、それら以外に、物価局長としてこういうものとこういうものがありますよということをひとつお教え願いたい。
#38
○小島政府委員 先生のおっしゃった国際インフレの中にあるいは入っているのかもしれませんけれども、一般のインフレ問題以外に、やはりことしは穀物その他の不作の問題というのが重なっていると思います。これは幸いにして、ことしのできぐあいというのはアメリカその他、かなり良好でございまして、したがって、私、先ほど広瀬先生の質問に対して答えました国際的な輸入価格暴騰という第二要因というのは来年度、ことしの暮れから来年にかけましてはかなり好転するということが、先ほど、久しからずしてかなりよくなるという結論の一つの要因でございます。
 それからもう一つ、それに関連して、やはり資源の問題。石油等の国際的な値上がりというもの、これはインフレ、国際的な流動性の過剰ということに関連はございますけれども、やはり本来的に資源不足がいろいろな面で輸入価格を上げているということがあろうかと思います。
 それから先生のおっしゃいました六つの中で、やはり六番目の問題というのがそれまでの五番目の問題に比べて非常に長期的な問題、構造的な問題であると思います。今後やはりこういう問題が――私は先ほどの不況カルテルの処理の不手際という問題は確かに短期の原因でございますけれども、長期的な問題としてはそれほど大きなウエートを持っていなくて、むしろ今後だんだんこういう問題がウエートを増してくる危険性があるということは同感でございます。もしこういう問題を含めるとしますと、やはり長期的に低生産性部門の問題というものが当然、流通部門を含めて、根っこに横たわっているというふうに思います。
#39
○武藤(山)委員 そこで大臣、ただいまの原因は局長が二つつけ加えて、大体この程度だろう。そこで大蔵大臣として短期的に当面いまの項目の中のこれとこれは大蔵大臣の任務として万全を期するという、その項目はいまの中のどれとどれですか。
#40
○愛知国務大臣 一つは、国際的な問題については、やはり通貨の問題と切り離すことはできませんので、その点から見ても先ほども申しましたように今月末の会議あるいは九月に予定されている会議等におきましては、その角度からもひとつ主要国同士のお互いのインフレ克服のための努力ということが具体的に展開されるように日本としても大いに主張し、成果を上げたいと考えております。
 それから管理価格あるいは公取の関係等は直接は私のほうは関係はございませんけれども、やはり間接でありましてもできるだけの協力は惜しむべきではないと考えます。
 それから財政金融問題については、大体先ほど広瀬議員にお答えをしたようなことで、これは全体に関連する問題でございますから、さらに一そう、私としては厳粛にやってまいるべきものである。適時適切に財政金融政策の展開は十二分に配慮してまいりたい。
 それから同時に、これは問題が広範ですからほかのことを申し上げるようでありますけれども、やはり将来をも考え合わせ、また現実問題でもございますが、やはり低生産性部門の生産性向上、それから流通機構の大改善、これについては先ほど申し上げましたが、もう少し関係の向きの、これは政府部内だけではなくて、地方公共団体その他の関係の向きにもできるだけの協力を呼びかけて軌道に乗るようにいたしたいと考えております。これはともすると当面すぐに効果があらわれないかのように受け取られがちでございますけれども、これが実は日本の経済社会における大きな私は構造的な問題でもあると思いますし、同時にまた当面でもやりようによっては相当効果があがり得るし、将来を考えればますます必要なことである、かように考えておるわけであります。
 それからもう一つは、いまの問答には出ておりませんが、一方において所得政策というふうなこともぼつぼつまたあらためて論議に出てきておりますけれども、この点については、先ほど物価局長からも話がありましたが、私も同様な認識であって、コスト・プッシュ・インフレということがまだ日本で端的にあらわれているわけではないし、それから所得政策というような非常に大きな問題については、国民的なコンセンサスというものがこれに関心を深くするときでなければ取り上げるべきではない、その段階に今日至っているとは思わない、こういう態度でございます。
#41
○武藤(山)委員 実は話がよそのほうにちょっといっちゃったので、しかし話のついでで、いま流通改善について他の諸官庁と大蔵省も積極的にひとつ相談をしてやりたいというのですが、私もこれは一家言を持っているのですよ。流通問題、特に食料農産物、生鮮食料品については、過去十年来毎年予算分科会で農林大臣に私質問をずっと続けてきたのは、この安定供給ができる体制というものを長期的にやらなければだめなんですよ。だからもちろん野菜の作付計画をきちっと立て、農協が一切それの出荷体制をつくる、そこまではいいが、政府の施策はその後ができてない。だから低温冷蔵庫を、いまの価格の水準で考えるなら、もう低温冷蔵庫なんというものはどんどんつくれるわけですね。
 東ヨーロッパの国々を旅行して感心したのは、国民のそういう食料を低温冷蔵庫の、日本のそれこそ中学校を十くらい合わせたぐらいな大きな施設がだあっとあるわけですね。日本にはそういうものがないのですね。だから東京周辺なり大阪周辺なり、中都市の周辺に国費でもって低温冷蔵庫をだあっとつくったらいいじゃないですか。一機二十四億円もする戦闘機をつくる、人を殺す兵器をつくるよりも、国民が毎日物価戦争でおののいているときなんですから、そういう発想の転換が物価問題には必要だと思うのですね。
 それから市場にしても、低温冷蔵庫をつくって、そこから安定供給をずっとする。作付計画がきちっとできているということになれば、一カ月や二カ月の操作というものは絶対にできるのですね。いまの低温冷蔵庫でいけば、卵なんか液卵にして一年保存できるのですし、野菜だって大半のものは二十日や一カ月間鮮度を落とさずに保存できるのですね。日本はそういう設備がないのですよ。ようやくやあやあ野党につっつかれて、ことし二カ所東京周辺に六億か七億かけてつくり始めた。これも農林省に聞いたらお金を取るというのだ。お金を取るのではだめなんだ。これまたやはり物価にはね返ってくるのですよ。無料の国の施設でやらなければいかぬですね。そのくらいの金を惜しんでいるところに、私は今日の食料農産物の供給安定ができない一つのポイントがあると思うのです。
 たとえば市場にしたって、いまどき手をあげて、これが需要供給による公正な適正な価格なんですというような感覚はもう私は古いと思うのですね。一体あそこで売った買ったの手をあげてせりをしているけれども、それが公正な消費大衆との需要供給による値段であるかどうかということは疑問がありますよ。あのせりのしかたも、コンピューターの時代なんですから、あんなのは全部コンピューターに切りかえて、カラーテレビにして、出荷する場所がテレビで映り、船でもって魚が届いたところをテレビで映して、市場で全部現地の状況がわかる。きょうの港に着くアジは幾ら側は幾らという卸価格を発表する。そういう形で適性な価格が市場に反映されていくというようなシステムに切りかえることは、十四兆の国の予算なら、やろうという決断があれば簡単に私はできることだと思うのです。
 いま大蔵大臣は、流通改善についてもひとつこれから取り組みたいというお話をちょっと申されたものですから、私の一つのビジョンを申し上げたのでありますが、大臣どうですか、ひとつ来年度予算で低温冷蔵庫を従来にないようなものを飛躍的にやってみよう、さらに市場の改善もコンピューターやカラーテレビというものの導入を少し検討してみよう、そういう前向きの、流通問題について取り組む姿勢を示すことができますか。ひとつ見解を聞かせてください。
#42
○愛知国務大臣 これは私としては非常に関心を持っている問題でございまして、今年度予算で農林省所管の生鮮食料品流通対策費だけでも、御案内のように四十八年度では相当の予算を計上しております。
 そして具体的に申しますと、たとえばその市場の問題などはまさにそのとおりでありますが、たとえばちょっと雑談みたいになって恐縮なんですが、国内の各中大都市の状況を見てみましても、たとえば神戸市はたしか七万人に一カ所のわりで相当現在ではりっぱな中央市場があるわけですね。ところが東京都では七十五万人に一つのわりあいになっている。そこで予算のほうでも、少なくとも当年度では四カ所を東京都では開設をしたいということで、それは制度の問題としていろいろ御批判があるでしょうが、現制度のもとにおいて政府が負担すべき額は四十八年度の予算の上に計上してございます。ですから、先ほどもちょっとぐちみたいなことを申しましたが、関係の向きが対応してくだされば、これは予算的にはもう手当てができている。それではしかし不十分であるというおしかりは受けるかもしれません。テレビまでは本年度の予算では見てなかったかと思いますけれども、これはしかしとにかくつくることが先決問題だ。
  〔委員長退席、木村(武千代)委員長代理着席〕
 それから、たとえば冷凍庫の問題にしましても、いま食肉はずいぶん輸入しておるけれども、冷凍庫の設備が足りないというのでいま大騒ぎをいたしておりますが、これもたとえば食肉安定基金というような名前でございましたか、これは国、地方公共団体、それから消費者、それから卸商も小売り業者も全部で法人をつくってやることになっております。これも今年度予算のときに、これは国と地方公共団体の折半というようなことじゃなくて、たしか農林省のお考えであったと思いますが、関係の業界もそれから生協のようなところの代表者も全部入れて、民主的な基金をつくって、そこの事業として大々的な冷凍庫というものをつくるということで、私も賛成を大いにしたわけでございますが、これもまだ年度が始まって間もない関係もございましょうが、現実にまだこういう基金制度というものも十分に発足しておりませんから、これは来年度はもちろんでございますが、今年度の予算の執行において、先ほど申しましたように、私もみずからひとつ、自分のところの所管ではないのですけれども、大いに関心を深くし、あるいは具体的に動いて、具体的な成果をあげることにしたい、かように考えております。
#43
○武藤(山)委員 前向きでこれからひとつさいふのひもを少しそういう方面にゆるめるように、いま答弁中物価局長もにこやかにうれしそうな顔をして聞いていたのですから、実行するようにひとつ期待をいたしておきます。
 そこで、それこそいよいよ大蔵大臣の専門の過剰流動性吸収策でありますが、過剰流動性を吸収したり超過需要を押えたりするという立場から、政府は預金準備率の引き上げ、窓口規制の強化、公定歩合の引き上げ、短期証券の公募拡大、二年もの定期の創設等々、たいへん愛知大蔵大臣としては従来よりも思い切ったことをやっていると自負をされているに違いないと思うのでありますが、ひとつ具体的にこのことがどの程度物価上昇に効果をもたらしているか、その中身を少しお尋ねをしてみたいと思うのであります。
 一つは預金準備率の引き上げによって、銀行の手持ち資金をどのくらい今日日銀に吸い上げたか、その額はどのくらいになりますか。
 その次、短期証券の公募状況はどんな状況になりましたか。六月十八日から、大蔵省の従来の短いものを、今度は三カ月もの、六カ月ものを設けて、しかもこれを証券界を通じて公募する、こういうことをきめてやっているようでありますが、その実績状況はいかがでございますか。
#44
○水野説明員 お答え申し上げます。
 六月十八日に短期証券の公募の拡大措置をとらせていただきまして、一昨日、七月十一日の公募状況は千二百二十五億円でございます。
#45
○武藤(山)委員 銀行局長がお見えになりましたから、預金準備率の引き上げがこの一月に始まって以来今日までどの程度吸収をしたか、資金の吸収額をちょっと明らかにしていただきたい。
#46
○吉田(太)政府委員 その措置の結果、国民経済全体において何兆であるかということにつきましては、これは非常にむずかしく、実は率直に申し上げまして、正確な数字ということをお答えできないかと思います。
  〔木村(武千代)委員長代理退席、委員長着席〕
 ただ、あの準備率の引き上げによりまして日本銀行に凍結いたしました資金量は、三回合計で八千五百億ということになっております。
 それを、銀行の資金が凍結された結果、凍結しない場合にはどの程度の貸し出しとなって出ていったかということについては、これは幾つかの説がございますが、きわめてかたく考えます場合には二倍ないし三倍、大きく見る場合には七倍ないし八倍の金額が市中に出ていったであろうというのが、現在の考え方でございます。
#47
○武藤(山)委員 銀行局長、もう一つ。窓口規制と公定歩合の引き上げによって金利が上がったことによって、かなり需要が鎮静をする、あるいは貸し出しが窮屈になる。それによる各金融機関の預貸率の変化の趨勢というものは、この金融引き締めを始めて以後どう変わってきておりますか。あわせて、それを額で見積もりができれば、額も明らかにしていただきたい。
#48
○吉田(太)政府委員 まず、預貸率ということでございますが、その前に、貸し出しの増加率ということで、公定歩合及び準備率の引き上げに伴いまして、日本銀行で、銀行が貸し出す場合の、三カ月間に貸し出すワクを規制いたしておりますので、むしろこの数字を申し上げるほうが的確かと存じます。
 そこで、ことしに入りまして一月から三月までの実績といたしましては、都市銀行は一兆三千億というワクでやっておりましたのが、四十八年四月から六月には一兆ということでやっております。それから、四十八年七月から九月、現在の時点におきましては、約一兆四千三百億というワクを示しておりまして、このワクの中で貸し出しを行なうようにという指導をいたしております。これは前年の実績に比較いたしますと、約二四%減少したという数字でございます。
 そのほか長期信用銀行、信託銀行及び地方銀行、相互銀行それぞれ指導をいたしておりますが、多少その指導のしぶりは緩急はございます。たとえば、長期信用銀行は約六%から七%前年実績に比較して減少するワクでございます。信託銀行は約一三%の減少という形でやっております。それから地方銀行につきましては少々減少する程度、相互銀行もほぼ前年実績並みというところで、それ以上の貸し出しが起こらないという程度の指導をいたしております。
#49
○武藤(山)委員 それから二年もの定期の新設ですね、これをいよいよ七月十六日から設けることによって、これが過剰流動性吸収にどう作用するのか。新聞などを見ると、やはり過剰流動性がいま流行しておるのに便乗して、金利体系を乱し、長短金融分離という従来の銀行局の指導方針をひん曲げて、何か金利体系そのものがこれによってまたかき乱されるというような、これはどうも過剰流動性吸収に役立つのかどうか、この点は疑問なんですが、当局者としてどう踏んでいるのですか。
#50
○吉田(太)政府委員 確かに定期預金の期間を長くすること自身がどれだけ新たな貯蓄をここに吸収し得るかどうかということは、実証的な数字は私ども持ち合わせておりません。むしろ、この長期預金の問題の一番大きな本質と申しますかねらいは、預金者に金利の形で還元していく場合に、長期の預金をしておられる方にそれを優遇していくという考え方が一番本質的なねらいであろうかと存じます。
 ただ、新たな二年ものができて、新規に全然吸収できないかとなりますと、これは必ずしもそうではない。と申しますのは、一年から一年半に変わりました場合に、その比率がいわゆるどれだけシフトして、どれだけ新規に吸収したかということを調べてみたわけでございますが、必ずしも的確な数字は実はつかみ得なかったわけでございます。今回も、二年ものに一年半から六カ月期間を延ばす場合に、新たにふえていく分と一年半のものが二年になっていくという効果がどのくらいのものであるかということを、これからできればひとつ調べてみたい、かように思っております。先ほど申し上げましたように、むしろ金利を優遇していくことによって、比較的長く貯金をされる方を優遇していきたい、かような考え方でございます。
 ただ、いま武藤先生御指摘のように、この問題は長くから言われております金融機関の業務分野の問題に関係があることは事実だろうと思います。しかし、世上に言われておりますような中期預金、たとえば三年というようなことになりますと、これは金融債でございますとか、その他のいわゆる社債市場にまで影響を及ぼすものでございますが、現在一年半のものを六カ月延ばすという程度のことではそれほど影響はない、むしろ、しいて申しますならば、二年ものでございます金銭信託程度の問題、これとてもウエートがきわめて小さいものでございますから、大きな影響は与えない、かように考えております。
#51
○武藤(山)委員 大蔵省は、従来の長短金融分離の指導方針というものはこのことによってごうも変更したという考え方ではない、こう理解してよろしいのか、それともこれからは長短金融のあり方というものは変わっていくんだ、金利体系も変わるんだ、こう理解していいのか。
 それから第二は、過剰流動性を吸収するために二年ものをつくったというなら、国民の側からいえば一年ものの定期の金利をもっと上げてやったらいいじゃないですか。いまの情勢の中で個人消費というものをもっと抑圧していくという考え方を実現しようとするのであれば、いまの一年ものをばんと上げて公定歩合が六分になったのなら、それに匹敵するくらいにしてやろう。一時企業者側の融資の金利が上がるかもしれぬが、今日の過剰流動性吸収策としてはそのほうがいい効果があり、国民も納得いくのではないですか。しかもインフレで預金が減価していくという時勢であれば、国民が期待しているのは二年ものよりもそっちじゃないですか。なぜ銀行局はそういう選択ができないのですか。
#52
○吉田(太)政府委員 まず、長短金融と申しますか、業務分野の問題について私どもの考え方を申し上げさせていただきます。
 御承知のように、長短金融分離の問題については、これはきわめて古くからあるわけでございます。ただ、そういう金融分野の中でどのような関係が適当であるか、長期金融と短期金融との間がどの程度が望ましいかは、申し上げるまでもなく、そのときどきの経済環境なり社会の環境に応じて変わっていくべきものであろうと存じます。昭和三十年の初めごろ以来とられてまいりました長短金融の分離という考え方も、今日までの間に、環境の変化とともにこまかいところでは徐々に変わっておる点もあろうかと存じます。今後これがどういうふうになっていくかについては、基本的には国民の選択と申しますか、国民のニーズに合う金融制度をつくっていくという考え方に応ぜざるを得ないもの、かように考えております。そういう意味では、一つには国際化といった考え方もございます。
 それから、今後は企業金融に非常に偏重した形の金融の姿がどういうふうに変わっていくか。生活福祉を重視した金融の姿に変わっていく過程において、わが国の金融制度をどう考えていくかという中で、もちろん金融でございますから、急激な改革はできないかと存じますが、それに適応させていくという意味では、従来の考え方も徐々には変化していくもの、かように考えております。
 それから第二の、中期預金をつくっても過剰流動性対策にはならないのではないかという御説については、私もこの中期預金が過剰流動性対策のきめ手であるというようには考えておりません。多少なりとも貯蓄の吸収に資することになることが中期預金の一つの意味である、かように考えておるわけでございます。お説のように、やはり金利の問題として解決していくべきことであろうか、かように考えております。
 そういう意味におきまして、今度二年に定期預金の期間を延ばしました際に、あわせまして一年以上の貯蓄性の預金について金利を引き上げたことは、全く御指摘の考え方と同じでございます。
#53
○武藤(山)委員 七月九日の日本経済に、大衆預金優遇制を拡充するように金融制度調査会に諮問をする。諮問するということは大蔵大臣の名前でやるのでありましょうが、この新聞を見ると、われわれが年来、この間大蔵大臣にも言った、企業の預金と個人の預金の金利とに差をつける、個人のほうを優遇して、公定歩合が下がったからといって個人の定期預金の金利は下げないような配慮をしようということを大臣お考えになっての新聞記事だと思うのですが、いつごろをめどに、ぼくは早ければ早いほどいい、いま過剰流動性吸収の面からも物価対策の面からも早ければ早いほどいいと思うのですが、これはいつごろをめどに諮問して、実行に移るのはいつごろを考えられますか。
#54
○愛知国務大臣 実は金融制度調査会で、いま御指摘のありました中期預金問題その他が最終的に議せられましたときに、私は、その議題とは別に、たいへん異例なことだけれども個人的な意見を申し上げたいということで、どうでありましょうか、個人対象と法人対象の預金の取り扱いを変えるということがちょっと頭にあるのですが、そういうことについてもひとつ皆さまの御意見を伺いたい、こういうふうな話をいたしました。それだけのことでございまして、まだ正式の諮問を申し上げているわけではございません。その後金融制度調査会は開かれておりません。最近の金融制度調査会で私はそういう発言をいたしました。これが記事等に取り上げられたと思いますが、私は実はそういう方向がいいんじゃないかと思っておるのです。したがって、なるべく早く正規に諮問をいたしまして、なるべく早く実行に移りたい、こう考えております。
 それからなお、先ほどの御質問にちょっと関連いたしますが、銀行局長のお答えしたとおりでございますが、同時に、短期国債をもう少し個人消化をしてもらいたいと思いまして、ひとつそのほうももう少し積極的な方策を講じたいと思っております。
#55
○武藤(山)委員 銀行局長、それはなるべく早い機会に調査会にはかると言っておりますが、今度いつごろを予定しておるのですか。
#56
○吉田(太)政府委員 一つは現在金融制度調査会で住宅金融、住宅ローンの問題を御審議いただいております。これが秋ぐらいに結論を得ていただくように、実は隔週一回という形で開いております。これは御承知のように、金融制度調査会の総会という形でなくて、むしろ利害関係者を除いた特別委員会という形で現在審議を隔週でやっておるわけでございます。そういう特別委員会という段階に、この問題も住宅部会とは別の形でいずれおかけしたい、かように考えております。
 その前提といたしまして、いろいろ調べていかないといけない問題がございます。特に預金金利を相手によって変えるということについては非常にむずかしい問題がございます。それを個人、法人で分けていくということで私どもは踏み切ろうとしておるわけでございますので、特に中小企業の場合にいかなる問題が起こっていくか、預金者にとって不当に不利になってもいけない。かような関係で、たとえば税務の執行の問題とのかね合いとか、いろいろ調査していかないといけない問題がございます。いましばらく日本銀行などと連絡をとりながら実態を調査し、その上で調査会におかけしたい、かように考えておりますので、できますれば私どもは秋早々からでも御審議をお願いしたいと思っておりまして、現在のところは確定した日付は持っておりません。
#57
○武藤(山)委員 一連の過剰流動性吸収対策について、大蔵大臣あるいは大蔵省に数字を出してもらって、いまやっていることはこういうことだ、これで大蔵大臣が企図している目標、過剰流動性吸収の金融面からの総需要抑制策は大体出尽くした、これで大体目標にいけるだろう、五・五%の消費者物価水準に落ちつけるための抑制策はこれでよかろう、こういうお感じですか。それとも、まだこれからこういうことをやらなければならぬということですか。この点の大臣のいまのお考えはいかがでございますか。
#58
○愛知国務大臣 直接の問題としては財政と金融とがあると思いますけれども、財政については先ほど申し上げましたとおり。
 それから、金融政策の問題については、特に貸し出しの規制という点については、これからは常に的確に情勢の推移を見ながら臨機の措置をとるということが基本的な態度でございますが、先ほど広瀬さんに申し上げましたように、それならいつ何をどうするかということをいままだ申し上げる段階ではございません。
#59
○武藤(山)委員 財政の繰り延べで約一兆一千億円上期に圧縮をしておく、しかしこれは下期にだあっとまた上乗せになるのでありましょうが、いずれにしても財政で一兆一千億円、それから金融面で、預金準備率引き上げで八千五百億、短期証券公募拡大で一千二百二十五億円、これは月ですね、大体来月もそういうぐあいになるんだろうと思います。それから銀行の貸し出し増加の抑制で何兆円、その合計をして、当初企画庁長官や大蔵大臣が、目安として過剰流動性が何兆円あった、四兆円あったという声もあるし、私がここで大蔵大臣とやったときに、大蔵大臣は四兆円くらいだろう、企画庁長官と私がやったときは六兆円くらいあるかもしらぬ、こう答弁している。二兆円の開きがあるのでありますが、いずれにしても、その過剰流動性を一体どこまでこれで圧縮できたのか、銀行局長、当局者としてあなたの目安、この手だてで大体現時点でこのくらいあった過剰流動性がこのくらい一応押えたような気がする、そこのひとつ目安を明らかにしていただきたい。
#60
○吉田(太)政府委員 非常に大胆に申し上げさしていただきますならば、今日の問題が、いわゆる過剰流動性という表現で出てきたときの問題意識の過剰流動性とは、いま御指摘の過剰流動性の問題は必ずしも同じではない、むしろ問題が移りつつある、かような感じでおります。
 と申しますのは、一体過剰流動性というものはどういうものかというものの考え方でございますが、私どもは適正な通貨の量というものをまずどういうものとして考えていくかというところで、その過剰流動性の金額が分かれてこようかと思います。たとえば日本銀行券といわゆる通貨性預金を合わせたものの比率、いわゆるM1と称します通貨量、これの伸び率が従来の五年間に比べて非常に大きくなっておる、その大きくなっておる分を過剰と考えるかどうかという問題が一つございますが、そういうような計算をいたしますと、これは試算として四兆とかあるいは六兆という数字も出てこようかと思います。
 それは適正な通貨量というものはそもそもなぜ起こってくるかというもとの問題に立ち返ってまいりますと、ことしの春過剰流動性といわれておりましたのは、そもそも実体経済の活動が、いわゆる望ましい活動の水準以上に貨幣面でいろいろな動きがあった。たとえば投機というのがその端的な例でございます。そういうものを吸収しないと過剰流動性のいわゆる弊害というものはなくならないのだという考え方で、いわゆる過剰流動性対策と称しまして、現在まで御指摘のようなことをやったわけでございます。そういう意味からいたしますと、いわゆる貨幣面における過剰性と申しますか、投機問題というものは一応峠を越しつつあるのではないか。問題は、実体経済の活動のテンポが大き過ぎるか大き過ぎないかというところが現在の経済問題の一番基本ではなかろうか、かように考えております。
 そういうことからいたしますと、私どもは、いわゆる貨幣的に金融を凍結するという趣旨からいたしますと、まずまずその効果は出ておるのではないか、かように考えております。問題は、実体経済の活動を抑制するためにいわゆる総需要抑制策というものをとっておるのが現状である、かように考えておるのが今日の認識でございます。
#61
○武藤(山)委員 過剰流動性対策は、金融面からいくならこれで大体出尽くして効果は出ている、こういう銀行局長の認識のようでありますが、効果が出ているならやはり物価が鎮静しなければならぬという問題が一つありますね。それがどうも冒頭の議論の中で、やはり鎮静してないのですね。だから過剰流動性対策が金融に片寄っていて、金融は大体限度だとしても何かどこか欠けているものがある、こういうことになりますね。そうなると、これは企画庁の先ほどの寡占価格の問題とか供給不足の問題とか流通過程の問題とか、いろいろそれはあると思いますよ。あると思いますが、金融的なそういう措置というものが効果をあげているという判定はまだ下せないような気がする。大蔵大臣はどうお考えになりますか。
#62
○愛知国務大臣 これはなかなか微妙な問題であって、金融政策もあるいは情勢によってはまだまだやる手は残っているのじゃないか、私はこういうふうに思います。それから企業の手元資金というようなものはまだ相当に残っている、そういう点をやはり注目していかなければならないと思います。
#63
○武藤(山)委員 もうこれで割り当て時間がなくなるのでやめますが、財形貯蓄ですね、いま証券会社がテレビで毎晩サラリーマンの金を吸収する宣伝をやっているわけでありますが、これをどうして労働金庫に認めないのですか。
#64
○吉田(太)政府委員 お答えいたします。
 ちょっと私正確に記憶いたしておりませんが、財形貯蓄は全部の金融機関に適用されておるのではないかと考えておりますが、調べましてお答えいたします。
#65
○武藤(山)委員 時間がありませんから少し詰めた質問ができませんが、またまた思いつきかどうか知りませんが、総理は、財形貯蓄について来年はまた抜本的な案を出そうと言う。これによると、宅地債券それから持ち株を大いに推進をして税金の面から優遇する、あるいは財形貯蓄をしたものは必ず国か住宅公団で土地が取得できるように保証するというのですね。さらにその債券を買った以後、地価が上がってインフレでもって減価した場合には、国がその減価分を補償する。まことにそれは、これを読んだだけではたいへんりっぱなことを言い出したのですね。しかしこの思いつき、大蔵省はこの新聞記事を読んで、このことがほんとうにやれるというお感じですか。
#66
○愛知国務大臣 財産形成の促進については、四十六年でございますか法律ができて、それから現在も勤労者、事業者の間の協定によって、勤労者住宅の建設等についてはある程度の仕事ができているわけですが、こういう点をもう少し拡充することはできまいかということで、実はこれは大蔵省だけの問題ではございません、税の問題その他いろいろございますので、現在内閣で座元になりまして、さらにこうした考え方を拡充することができるかどうか、あるいはまた、これだけにとどまらないで、勤労者に対する持ち株をふやすにはどういう方法が講ぜられるであろうかということで研究会を始めた段階でございます。したがって、いまお話しになりましたようなことが、総理が思いつきとして提案されているわけではございませんで、もう少し徹底的にそういう目的に沿うような名案がないであろうかどうかということを、実は官房副長官を中心にしまして建設省、労働省、大蔵省というようなところで研究会をいま始めたばかりのところでございますから、結論が出るのにはまだ若干の時間がかかると思います。
#67
○武藤(山)委員 大蔵大臣は、これを推進しようという御意思だということはわかりました。ただ私が危倶するのは、この前の財形貯蓄制度ができるときに、やはり当初の新聞では、掛け金は全部非課税にしてやる、その利子も大幅にひとつ免税をしてやろう、こういう鳴りもの入りの宣伝があって、どうもふたをあけてみたらさっぱりこの二つの項目とも全く取り上げてなかったのですね。だからこれは広告に偽りがある。誇大広告だったわけですよ。今度もまた参議院選挙前でこういうことをばんばんぶち上げて、その場になって中身は全く違っていた、こういう過大広告をやってはいけない。やはりもっと誠実に、国民は信頼をして新聞を読むのでありますから、やはり私はそういう点を幻惑させないようなまじめな政策発表をしなければいかぬという立場から、いまの問題は大蔵大臣に慎重にひとつ対処してほしい、こう期待をして、持ち時間が来ましたので私の質問を終わります。
#68
○鴨田委員長 荒木宏君。
#69
○荒木(宏)委員 物価を安定させ福祉を進めるということで金融財政措置がとられている、といっている、こういう御説明があったのでありますが、先ほどの大臣の御答弁の中でも、企業の手元にまだ資金が残っておる、こういうふうにごらんになっておるということを伺ったわけであります。それで、まあ物価全体についての私どもの主張をこの機会に明らかにする時間もございませんし、また所管の関係からいいましても必ずしも適当ではないと思いますので、先ほどの御答弁に限ってお尋ねを進めていきたいのでありますが、まず実態ですね、これをひとつお伺いをしたい。
 企業の手元資金、手元流動性につきましては、日銀の統計その他がありますが、四十五年の上が一・一一、下が一・一七、四十六年になりましてこれが一・四一、一・五九、四十七年の上が一・六〇、こういうことになっておりますが、これは四十年前後の一番ピークといわれたあの四十年下期の一・三四に比べて非常に高くなってきている。最近、四十七年下期の決算が発表されましたけれども、これで手元流動性がどういう指数を示しておるか、これを政府委員のほうからお尋ねをしたいと思います。
#70
○岩瀬説明員 ただいまのお尋ねでございますが、若干先生のおっしゃる数字と私のと違いますので申し上げますと、四十六年の上期は一・一九、下期が一・三一、それから四十七年の上期が一・三〇、下期が一・二五、四十八年の上期が一・一七となっております。
#71
○荒木(宏)委員 手元の短期の有価証券を含めてそのほうの指標を申し上げましたので、それに見合った数字をお示しいただきたい。
#72
○岩瀬説明員 私のいま申し上げましたのは、月平均の売り上げ高に対する定期性預金の比率、これを手元流動性ということで申し上げたわけでございます。
#73
○荒木(宏)委員 これは有価証券はすぐ金にかわるものでありますから、指数のとり方はいろいろありますけれども、短期の有価証券を含めて四十七年下期は幾らになりますか。
#74
○岩瀬説明員 下期の数字はまだ出ておりません。
#75
○荒木(宏)委員 最近発表になりましたこの下期決算を新聞で三百二十社の平均をとっておるのを見ますと一・六三。これは短期有価証券も含めてでありまして、これを除いた場合の先ほどの数字も、決して流動性が低くなっている、ずいぶん締まっているということはいえない数字の経過であります。そこで先ほど来の議論の中でもタイムラグの問題もあり、それから波及効果についてはいろんな考え方がありますから幅があるわけですけれども、しかしこれで十分だということはいえないということは、もう御答弁があったとおりであります。
 そこで、私はこういった流動性の問題を解決するという上からも、ひとつ租税特別措置の問題をぜひ検討されるべきではないか。これはもう従来からいろいろ税制の公平という点からも問題を指摘してきたところでありますけれども、この時点で、こういった大企業が主として利益を受け、それによって内部留保を重ねているこの問題に徹底的にメスを入れるべきときではないか、こう思うのであります。大臣も先ほど御答弁の中で、これは徹底して洗い直す、こういうふうにおっしゃったわけでありますが、この物価対策、手元流動性の解決という点からも、この洗い直すべき方向、洗い直すべき内容、これについて大臣のお考えを伺いたいのであります。
 まず第一に、今日いわゆる大企業の活動については、その社会性といいますか公共性といいますか、そういったことがいろいろな点から指摘をされております。あるいは投機でありますとか買い占めでありますとか、こういったことが指摘をされて論議が進められておるのでありますが、例を証券界にとってみますと、先ほどこの委員会でも論議になってまいりました協同飼料の株価操作の問題あるいはまた殖産住宅相互の親引け株の問題、こういったことにからんで株式投機ということがずいぶんと論議になりました。
 こういうふうないわば反社会的な行為を積み重ねてきている、あるいはそういったことが行なわれる土壌がある業界といいましょうか、そこに株式売買損失準備金でありますとかあるいは証券取引の責任準備金でありますとか、こういったような特別措置がなお維持されて、そしてそのことによる内部留保が重ねられておるということは非常に好ましくない。もちろん制定の当初には政策目的がありますけれども、しかし考えてみますと、一般投資家の保護というふうないわばきれいごとの題目の中で、実際のその業界の実態といったものは、一般投資家の保護どころか、あるいは株価操作に責任者が関係をし、しかもそれが一業者にとどまらず、半ば業界の常識にもなってきておる親引け株あるいはあいさつ株の問題をめぐっては、ついには大蔵省当局にも関係をなさる方が出てくる。これをめぐっていろんな投機の話が絶えず、しかもその額はきわめて巨額であるといったようなことになってまいりますと、国民の常識からしますと、これは一般投資家の保護ではなくて、そういった準備金の名前のもとにたとえば証券、大企業を保護し、そして内部留保を重ね、そういったふるまいを助長していく、こういうふうに見ざるを得ないわけであります。
 したがって、単に税制の公平という問題だけではなくて、いまの物価高を解決するために流動性を吸い上げる、しかもそれにからんで、そこへつけ込んで反社会的な行為を重ねているそういった業界、大企業に対する措置としても租税特別措置の問題は考え直されるべきだ、私はこう思うのでありますが、先ほど大臣が御答弁になりました徹底して洗い直すというその方向ですね、それから内容、ことにいま申し上げた国民に背を向けておる、かって気ままなふるまいをしておる大企業、業界に対して、なお租税特別措置を維持されるのか。損失準備金制度はことしは若干の手直しがございましたけれども、あんなような程度では国民の皆さんはとても納得しないと思うのです。だからこの点についてひとつ御意見を伺いたいと思います。
#76
○愛知国務大臣 非常に広範な問題にお触れになっておりますので、お答え漏れがあるかもしれませんが、第一に、大企業に手元資金がまだ相当に残っているのではないかという点については、今後金融政策においてもまだ効果のあがる余地が相当ある。まだ足りないとすれば金融政策においてもさらに一段と踏み込んでやる必要があろう、こう思っております。
 そこで次の問題ですが、内部留保が多過ぎる、手元資金を詰めるために税金のほうで特別措置法を徹底的に洗い直すことはどうかという御指摘がありますが、特別措置を徹底的に洗い直すことと、現にあると思われる手元資金というものの吸い上げということは必ずしも関連しないで、また別個の立場が必要ではないかと思います。別個の立場というのは、社会的な不公平感を払拭したいということがむしろ大きな眼目になるのではないだろうか。それらの両方の考え方からいたしまして、特別措置はできるだけ洗い直していきたいと思います。したがって、損失準備金等につきましても十分に検討を始めつつあるところでございます。
 それからもう一つは、証券政策の問題だと思うのです。たとえば親引けというようなことはもうやめるようにするとか等々、いろいろの証券政策の問題があるので、これはまた税金政策とは別個の立場があろうと思います。その面につきましても、私どもとしてもまことに遺憾に思っております。不祥事件が起こったようなことになりまして申しわけなく思っておりますけれども、こういったような機会に、その制度そのものを徹底的に改善して、一般の投資家に対する保護と申しますか、御理解をいただけるようにするためには、証券政策自身も転換をしなければならない、こういうふうに思っておりますので、金融政策、税金対策、そして証券対策、そのいずれにわたりましてもできるだけ前向きに取り上げてまいりたいと考えております。
#77
○荒木(宏)委員 一番最後におっしゃった前向きというのは、ぜひそういうことを思い切って進めていただきたいと思いますが、ただ金融政策でこれからまだまだやるべき余地があるのではないか、こういうおことばがありました。見方によっては確かにそういった一面もあろうかと思いますが、しかし、先ほど来のほかの議員さんの御質疑の中でもありましたように、金融政策と申しましても出方を抑制するといいますか、水道のせんを少し締めて出方の流れを細くするといいますか、こういう点でありますが、バケツの底にたまった水をごっそり思い切って吸い上げるというわけにはなかなかまいらない。ことにそれが総需要の抑制という形でやられておりますから、いま問題になっておる大企業の手元にある流動性対策ということになりますと、これはどうしても限度がありますし、それからまた金融政策だけではもちろん十分効果が上がるものじゃないということは、もうたびたび指摘されておるとおりであります。
 そこで私が申し上げたのは、そういうこともあって特に租税特別措置を見直すべきだということを申し上げたのですが、いまおっしゃった公平感ということだけでよろしいでしょうか、これを申し上げておるわけであります。なるほど証券政策あるいはそれぞれの業界や、問題領域ごとの政策は必要でありましょう。しかし今日、税制度を考える上で、特に租税特別措置を考える上で、単に公平、不公平というようなことだけを国民の皆さんは問題にしておるか、このことを申し上げているわけであります。
 いま証券界のことを申し上げましたけれども、たとえば先ほども別の御答弁の中で出ておりましたセメント業界の問題、これは災害でありますとかあるいは地域的な特殊な事情でありますとか、そういった事情はありますけれども、本年に入りましてからもうセメント価格がうんと値上がりをしている。公取のほうではこれについてやみカルテルがあるということで指摘をして、行政措置を進めつつあることはもう御存じのとおりであります。あるいはまた鉄鋼の資材にしましても、これが本来価格が上向いてカルテルを打ち切るべきであるにかかわらず延長されて、ステンレスなどは本年に入ってもまだ続いておる。
 ですから、国民の目から見ますと、単に公平、不公平というのじゃなくて、そこに背を向けて、てまえがってなことをしている、やみで談合してみたりあるいは存続すべきでないカルテルを続けてみたり。そしてそのことが問題になると、ある鉄鋼会社の社長などは、それじゃ価格を上げますよ、五千円上げますがどうですかと、国民のほうから見ますとまるでどうかつされているのではないかというふうに思われるような態度が示され、しかも証券界は先ほど指摘したとおりでありますが、こういうふうなことをしておるところを税制上優遇するということは、公平、不公平の問題だけではなくて、本来、租税特別措置として、そういうふうなことは税制の基本方針からもするべきじゃない、こういう方向をぜひ打ち出されるべきではないでしょうか、こう申し上げたわけであります。重ねて大臣にこの点についての御意向を承りたいと思います。
#78
○愛知国務大臣 特別措置法についてはもう前々から申し上げておりますから、先ほどの御質疑が私は取り違えていたかもしれませんが、過剰流動性というものの対策として租税特別措置法の洗い直しが必要ではないかという御趣旨もありましたから、それだけで過剰流動性の吸収にはどれだけの効果があるかわからない、社会的な公平感ということも大きな目的であるということを申し上げたのでありますが、先ほどの話にもあったように、租税特別措置法というのはそのときの政策目的によってつくったりやめたりするのが本来のもので、既得権ではございませんし、今日の社会、経済情勢下において徹底的に洗い直しますということを申し上げているのは、従来からのさらに一番基本的な考え方でございます。前向きにやりますということは、これは税制上の問題としてやるということをはっきり申し上げたつもりであります。
#79
○荒木(宏)委員 たいへんくどいようでありますが、そこで一言念を押しておきたいのでありますけれども、そのときそのときの政策目標から検討される、既得権ではない、これは当然そうだと思うのです。いまの政策は買い占め売り惜しみ規制ということが非常に大きな政策課題になっております。ですから、そういう点からも単に証券市場をどうするかというような証券政策の点だけではなくて、あるいは公平感だけではなくて、買い占め売り惜しみをはじめとする反社会的行為を規制する、この政策のもとに特別措置を洗い直されるお考えがあるかどうか、これを伺っておるわけであります。
#80
○愛知国務大臣 冒頭に申しましたように、非常に広範な問題にお触れになっているわけですから、証券会社に対してはどうするのか、これは一つ分けて申し上げたわけでございます。それから今度は企業一般に対して特別措置はどうするのか、これも考え方を申し上げたわけでございますし、金融政策は一般的にどういうふうに考えるか、これも申し上げたとおりでございます。今度は証券会社の税制に対してどうするかという問題を焦点としておあげになりましたから、これは証券対策においても考えなければならないことであるし、税制の問題におきましても損失準備金その他の点について税制の問題としても洗い直しをいたします、こう申し上げておる次第であります。
#81
○荒木(宏)委員 私の質問の進め方が、あるいは前後が必ずしも意のあるところがつながらなかったのかもしれませんけれども、まず申し上げたのは、租税特別措置を見るときに、反社会的な企業活動の抑制ということも、改廃、存続の重要な柱になってくるのではないか。たとえばその例は証券界に見られるがごとく、あるいはたとえばその例は鉄鋼、セメントに見られるがごとくということで、一例として申し上げたわけであります。そしてまた、そのことが金融政策上、過剰流動性対策にもつながるところがあるという観念で申し上げました。
 お尋ねせんとする中心は、租税特別措置を洗い直すとおっしゃっておるその中身であります。どういう点に重点を置いて洗い直されるか、関係がありますので、一言触れておきたいと思いますが、本年も租税特別措置についての改廃がございました。しかし、結果から見ますと、公害防止の関係の特別措置がありまして、試算額が合計で十億円の差が出ただけであります。これはまた、公害防止の点から別個の政策目的ではありましょう。しかし、内容をみますと、公害のみを目的とした装置ということではなくて、公害を含めた機械装置、そういったひとについて適用になりますから、金額は非常に大きくなって、差し引き結果としてはもう十億円にしかならない。今日企業活動を進める上で、公害を全く抜きにするというようなことでは、日本ではもうとても存続の余地がないというくらいに国民の世論が高まっております。
 ですから、そういう点からいいますと、それこそ公害防止については、公害をなくす政策として、これは企業の負担において強力に進められなければならぬと思いますが、結局、租税特別措置の問題を論ずるにあたって、反社会的な企業活動は抑圧する、そこのところをずっと通しませんと、目的別にやれ公害だというようなことで、本来反社会的な活動がいろいろ論議されておる業界が、今度はそこへ便乗して、それを使って特別措置の恩典を受ける。これでは国民の目から見ても納得のできる行政とは言いかねるわけでありまして、またこの公害という点を入れましたから、あるいは論旨が必ずしも十分にはお聞き取りいただけないかもしれませんが、これはまあ例として申し上げたわけです。
 私が申し上げておるのは、反社会的活動を押えるのだ、今度の租税特別措置の洗い直しの場合も、この点は十分に考慮して前向きに進めるのだ、こういうふうにお伺いできるかどうかを伺っておるわけなんです。
#82
○愛知国務大臣 おっしゃることはよくわかりました。
 そこで、私もざっくばらんに申し上げるのですけれども、特別措置がそれならばみんな反社会的なものであったかどうかということになるので、特別措置というものの適用を受けているものは、これはずいぶん多くの企業があるわけでございますが、これは特別措置の適用を受けていたものが、全部聞きようによっては反社会的なものであると、こうきめつけられるような感じがいたしますから、ですから、そことの関連は、もちろん反社会的というようなことは、あらゆる政策においてこれは十分考慮に入れるべきものでございますけれども、したがって、税制の面においてもそうでございますけれども、かりに特別措置というものを、ある種のものについてやるといった場合に、これは、反社会性を助長するものだということでおとりにならないようにしていただきたい、こう思いましたので、私の申し上げることがあまりに明快でなかったかもしれません。しかし、お気持ちはよく理解いたしております。
#83
○荒木(宏)委員 理解をしていただいたところで、一言念を押して申し上げておきたいのでありますが、私どもは、主張としては、そういった特別措置は廃止すべきである、こういう主張を持っております。現にその主張は、いろんな機会に申し上げておるのであります。しかし、きょう御質問申し上げているのは、そういうことはそれとして、洗い直す、こういうことばがございましたので、これは洗い直しをやめて、即時廃止せいということでお尋ねしておるのではなくて、洗い直されるなら、それはそれでその中に反社会的な活動を抑圧するということで、そこにつながっておる、あるいはそこに関連をしておる特別措置はこの際やはりやめていく、それが当然論理の筋として出てくるのではないでしょうか、これを申し上げておるわけであります。
 ですから、たとえていいますと、なるほど証券政策は別にありましょう。ありますけれども、これだけ次々と問題が起こっておるといたしますと、株式売買の損失準備金あるいは証券取引の責任準備金、これは単に幾らかことしの春のように下げるとかいうようなことで済む問題ではなくて、こんなのはそれこそやめちゃっていいじゃないですか。一般投資家の保護にはちっともつながってないし、証券政策はそれとして、もし一般投資家、中小零細証券の保護ということがあるならば、それは別途の方法で考えられるべきだ、これは一つの例として申し上げておるわけであります。
 ですから、よく理解をしていただいたということだけでは、私が申し上げておることが、それはそれとしてわかったというふうにおっしゃっていただけたにすぎませんので、これは政策上の責任のあるお立場として洗い直しされる方向について、反社会的な活動を抑圧するということを一つの方針、一つの基準、それとしてとるか、とらないか、このことを伺いたいのであります。
#84
○愛知国務大臣 どうもことばの上のやりとりになるようになっては申しわけありませんけれども、こう言ったらよろしいでしょうか。特別措置というものを考える場合に、反社会的であると思われるような分子のあるような特別措置はやらない、こういうふうに私は考えてしかるべきではないかと思います。特別措置法というものも、これは御承知のように、いろいろ従来あったわけでございますから、それぞれの項目について十分検討をしましょう。廃止するものは廃止するなりの理由、あるいはかりに新設するなら新設の理由は的確に国民的な理解を得られるものでなければならない、あるいは存続するものは存続するだけの理由がなければならないわけでございますが、そういう場合において、反社会的な活動につながるような恩典を与えるようなことは絶対すべきでないというのが私の考え方でございます。
#85
○荒木(宏)委員 私はこの点については、いま大臣が設けられた制度そのものについて反社会性の有無を論じられたのでありますけれども、しかしこれは看板の問題ではなくて中身の問題だと思うのです。だれがどういう制度をどのように使っておるか、これはもう全体として一つに評価をいたしませんと、とても行政の効果を論ずることはできぬわけであります。ですから、お述べになりました内容は、私がお尋ねしておることではなくて、私が申し上げたのは、単に、先ほど例に引きました損失準備金の制度目的がいかぬといっておるわけではないわけであります。それを使っておる業界が、それを使っていま保護を受けておる。そこがたいへん国民から指弾されることをやっておる。
 ですから、そこのところを今度の洗い直しのときにはぜひ検討されるべきではないかということを申し上げたわけでありまして、それを御理解いただけましたら、先ほどの制度の設置目的だけではなくて、制度の運用が反社会的なことにつながってないかどうか、全体として国民の目から見た場合に反社会的な活動をしておる業界なりそういった業者を保護する結果になってないかどうか、この点をきっちり筋を立てていただきたい、こう申し上げておるわけであります。
#86
○愛知国務大臣 十分検討いたします。
#87
○荒木(宏)委員 そこで、関連してお尋ねしたいのでありますが、そのことを私どもがこの国会の場で論ずる場合に、国民の代表としてお尋ねをしておるわけでありますが、ところが、たとえば特別措置の内容について当局にお尋ねをしても、なかなか明確なお示しがない。たとえばこの委員会で私は昭和四十六年の価格変動準備金の試算額が二十億円になっておりましたので、それが実績どのくらいになったかということを計算をいたしました。その計算の方法についても申し上げて、これで二十億円というのは一体どういう計算で出てきたのか、こうお尋ねしたわけであります。私どものやった計算方法についてはある程度御理解をいただいたように記憶しておりますが、それにもかかわらず、試算の内容、試算方法すらお示しにならない。これでは特別措置の存続が問題になっており、しかも徹底して洗い直すといわれております時期に、国民の皆さんに洗い直す方向、内容について発言をする機会がない。政府のほうでどういう計算をされて、一体どういうふうにいくのか、はっきりしない。これでは財政民主主義という点からも望ましくありませんし、反社会的活動をみんなで相談をしてずっと規制をしていこうという政策目的にも沿わないわけでありますから、租税特別措置の計算の内容、その内訳その他もやはり御報告をいただきたいと思うのでありますが、それについての大臣のお考えを伺いたいと思います。
#88
○伊豫田説明員 お答えいたします。
 価格変動準備金の二十億という件は、私、ちょっとどの数字をおっしゃっているのかわかりませんのですが、私のほうといたしましては個別の企業の問題は事の内容上いろいろ問題がございますけれども、業界あるいは全体としての計算の方式等については十分御説明申し上げていると考えております。
#89
○荒木(宏)委員 ではちょっと時日の経過がありますから一言申し上げますが、四十六年度の減免額試算として大蔵省のほうから出されたのは価格変動準備金二十億円という記載がありました。これについて私は、この委員会で主税局長にお尋ねしたわけであります。私どもの計算によれば、実績は六十九億になる。そのとき政府委員も実績は大体そのくらいになりましょうと、開きが三倍半から四倍近くなったのでありますけれども、それはお認めになったのです。それじゃこんな開きがあるのはおかしいじゃないか、二十億というのはどういう計算で出てきたのですか。どの企業が幾らなんというのは聞いてないのですね。二十億というのが出されてきたその計算の過程、数式を御説明いただきたい、こう言うと、それはだめなんです。それでは特別措置を、反社会的な行為を抑圧していくという方向も含めて検討されるときに、私どもとしては意見を申し上げることも十分できないし、国民の皆さんはこれでは納得しないと思うのです。そのことを申し上げたわけであります。
 その数字とかそういうことは別として、大臣の基本的なお考え方を聞きたいと思います。
#90
○愛知国務大臣 先ほども申し上げましたように、今後の問題としては、かりに、仮定でございますけれども、特別措置、こういうものを存続するとか新しくつくるとかいうようなことがありました場合には、それぞれ十分国民的に御納得をいただくような十分の説明ができるものでなければならないというのが基本であると思います。
 それから従来の資料の御説明等については、足らざるところがございましたら、十分ひとつ、おそくなりましたけれども、さっそく用意をするようにいたします。
#91
○荒木(宏)委員 関連してもう一言伺いたいのでありますが、この特別措置で認められておりますのが、今度は企業会計のほうに参りますと、それがたとえば証券取引法による監査の対象になった場合に、内部留保として適正意見がつけられる。これは、特別措置は税制上の問題でありまして、それを廃止すべきであるという意見は別に持っておりますけれども、しかしそのことは一応おいて、企業会計上の扱いを見た場合に、それが税法とは別の証券取引法による監査であるにかかわらず、適正意見がつけられる、このことの法律上の根拠をひとつ伺いたいと思うのであります。
 これは別の委員会でありますけれども、証券局の担当の方にそのことをお聞きしましたところが、お答えは社会通念である、こういう御返事がありました。私は、今日労使の間でいろいろと賃金の問題が論議をされる、そういったときに企業側から資料として出されてくる財務諸表が、公認会計士の適正意見がつけられておる、そういった根拠が社会通念だというふうなことになりますと、この財務諸表をめぐる社会通念は企業側と労働者でうんと違うわけです。
 そういったことがなされておるもとは、昭和三十二年の証券局長通達にあるというふうに聞いておりますけれども、その法律上の根拠ですな、これをひとつはっきりしていただきたいと思う。
#92
○愛知国務大臣 この問題は、今国会の予算委員会でも大蔵委員の阿部委員からも御指摘、御注意があり、当時あらためて大蔵省内でも十分協議をいたしました経緯は御承知のとおりと思いますが、法律的根拠といたしましては、企業会計審議会の議を経て、こういう企業会計のやり方をするということについて、国税庁長官がこれを是なりと認めて、法律に授権されたところによってこれを通牒の形にして徴税の基準にいたしたわけでございます。法律の根拠は二十二条の第四項、そういうことに相なっておるわけでございますけれども、今後におきましても、その関係は今国会でも御指摘をいただいた問題でございますから、さらに慎重に大蔵省としても検討を続けてまいりたい、かように存じております。
#93
○荒木(宏)委員 従来の、いま御指摘の他の委員会での経過はいま伺ったとおりでございますが、私が申し上げておりますのは、法人税法の二十二条の四項でありますとか、あるいは今度の税法の改正の問題でありますとか、ありますけれども、しかしそれは税法サイドの問題でありまして、そのこと自体にも意見はあります。ありますけれども、しかしそれはおいたとしても、企業会計の処理の上で税法の二十二条の何とかというのが根拠になるのか。いま申し上げておるのは証券取引法によって、そして証券取引法を受けた財務諸表の規則がございます。その規則によって処理をされる。そうなりますと、そこに特別償却とか圧縮記帳というのが入ってくる余地がないわけであります。それはそれぞれのところについてみな意見がありますけれども、それはさておくといたしましても、証取法を受けました財務諸表の規則では、商法の二百七十四条の二しか受けてないわけでありますから、とうてい圧縮記帳などが入ってくる余地がない。
 ですから、そこのところは合法性の根拠を欠いているのではないかというのが私の指摘でありますので、これは検討するということをおっしゃっておりますし、また形式論議だけを申し上げるのが本旨ではありませんので、この点について問題点を指摘させていただいて、なおこれは引き続きすみやかにその点の処置を検討されて、ひとつ納得のいく御報告をいただきたい、かように思いますので、これはひとつ御要望させていただきたいと思います。
 それから時間のほうでございますけれども、連絡がありましたが、もう一間だけ聞かしていただいて、あと本会議後に少しお時間をいただきたいと思います。
 もう一問関連して申し上げますが、昨日の新聞でございましたか、拝見をいたしますと、一部にキャピタルゲインの問題について、大蔵省のほうでは百万円以上の分については、従来の所得税法の施行令の二十六条にかかわらずひとつ課税をしていこうという方向をきめたということが報道されておったのでございますが、このことの真否と、このキャピタルゲインの方向について、ひとつ内容が具体化しておれば明らかにしていただきたいと思います。
#94
○愛知国務大臣 実は、前々から申し上げておりますように、今国会では税制の問題について、非常にいろいろの角度から御意見をいただきましたので、われわれといたしましても、そこで取り上げられた問題を詳細に検討、勉強をいたしております。いま御指摘の問題についても勉強しておることは事実なのでございますけれども、われわれのことばでいえば、まだ省議の段階にまであげてきておる状況ではございませんで、担当者の間でどうやったらいいかということを検討している過程でございますので、何とも申し上げかねますが、キャピタルゲインの問題も検討の対象にしているということは事実でございます。
#95
○荒木(宏)委員 それでは質問を一応ここで……。
#96
○鴨田委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
   午後一時五十一分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時三十八分開議
#97
○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。荒木宏君。
#98
○荒木(宏)委員 引き続いて大臣にお尋ねをいたします。
 減税につきまして、課税最低限百五十万円という御答弁が本日もあったわけでありますけれども、課税最低限ということにつきまして、これはもとより法律上の用語でもありませんし、また考え方の内容としては、すでに昭和三十二年の税制調査会の答申以来、あるいは貯蓄の始まる階層であるとか、またマーケットバスケット方式でありますとか、いろいろな考え方が示されておるのでありますが、少なくとも、その額はそのときそのときの財政需要その他いろいろな要素を勘案してきめられるといたしましても、考え方の理念といいますか、その本質について、この際ひとつ明確に伺っておきたいと思うのであります。
 時間がありませんので、私のほうの考えを申し上げたいのでありますが、勤労者の所得税負担を軽減するということで、勤労所得控除なども含めて考えが出されておるようでございます。勤労者の課税限度を軽くするという方向で施策が進められるのはもとよりでありますし、そのことはたいへんけっこうなのでありますが、しかし小規模零細事業者あるいは規模の小さい農業事業者、これも本来は勤労者というふうにいうべきだと思うのでありますが、広くおしなべて、単にいわゆる給与所得者に限らず、大体勤労を主として生活をしている人たちには、すべてやはりこの百五十万円というのを均てんすべきである。すでに私どもは党として、本年に人的控除を主として大幅な課税最低限の引き上げということを主張しておったのでありますが、それはそれとしまして、先ほどの百五十万円課税最低限というところへ、単に給与所得控除というふうなことではなくて、それを別にして、基礎控除あるいは配偶者控除、扶養控除、この人的控除で額を引き上げるべきである、そういうことを申し上げて、基本的な考え方をお伺いをし、あわせて、総理府の出しております標準生計費あるいは生活保護基準、こういったところから見ましても、小規模業者を含めた意味での課税最低限の引き上げというのは、そういう点から見ますと、まだまだ少ないというふうに思いますので、そのこともあわせ申し上げて、ひとついまの点についての大臣のお考えを伺いたいと思います。
#99
○愛知国務大臣 これは細部にわたってバランスをとって、体系の中でどういうふうにしたらいいかということについては、まだ検討は進んでおりませんけれども、基準として標準家庭四人のところで最低限度百五十万、少なくともその程度まで最低限を引き上げたいということを基準として考えてまいりたいということを公にこうして申し上げておるわけでございまして、それがまず標準家庭の勤労者についてできますならば、各種の控除、たとえば教育費控除であるとか、あるいはある意味からいえば、未成年者に対しては課税をしない、いろいろの点からいろいろの御意見が出ておりますが、それを一つの基準にいたしますと、ほとんどすべてのいままで出ている問題が吸収されて解決できるのじゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
 同時に、小規模の事業者等につきましても、できるだけ権衡のとれるような考え方にしたい。それからなお地方税との関係なども十分に考えてまいらなければなりませんけれども、こういったような点についてはどのくらいの程度に考えるか。これはまあ政府の部内としては、自治省とも十分相談しなければならない問題でもありますし、また、いろいろと財政需要の点も考え合わせていかなければならない。
 ただ同時に、もう一つの考え方は、できるだけ税制は簡明なものにしたい、簡素なものにしたい、こういう考え方でございますので、だれにもわかりやすく、しかも所得課税というものがこれだけ軽減されたということがだれにも直接にぴんと理解ができるように、そういう方法を講じたい、こういう考え方でございます。
#100
○荒木(宏)委員 総理府の四十七年の消費支出によりますと、食料費、住居費、被服費、この衣食住という金額だけですでに人的控除が一ぱい一ぱいになってしまって、あとは、医療費でありますとかまた教養費、教育費、衛生費、そういったものがとうていまかない切れない。いま大臣のおっしゃったように、いろいろなものを寄せ集めて、そして階層間のバランスもありますが、全部何もかも積み重ねて、一番高いところがようやくおっしゃった金額では、これは十分実のあるものとは必ずしも言いがたい。
 ですから、いまおっしゃった簡明という点からいいましても、基礎控除、扶養控除、配偶者控除、こういったものを大幅に引き上げるという方向でひとつ前向きにぜひ御検討いただきたい。百五十万円最低限の引き上げ、こういうことをおっしゃっているのでありますが、そういった人的控除を実態に合わせてうんと引き上げるという方向をひとつ前向きに検討される御意向がおありかどうか、これを伺っておきたい。
#101
○愛知国務大臣 いろいろ検討いたしておりますけれども、先ほど申しましたように、内容的にまだいろいろな、いわばおもちゃ箱をひっくり返したような各種のデータやらやり方、それから勤労所得控除をどういうふうにしてやったらいいかというようなことをいろいろいま検討しておるわけでございまして、まあ事実は、いまの段階で百五十万円ということをもう思い切って公に申し上げているのでありますが、これがいまの段階ではぎりぎりのところでございます。もうしばらく時間をおかしいただいて、その間にだんだんと中身について、あるいはバランスについて検討は進めてまいりたいと思っております。
#102
○荒木(宏)委員 時間の点がありますので、もう一言だけ御質問をして終わりたいと思うのでありますが、日米経済委員会が開かれますし、蔵相会議、国際ラウンドというものが続くわけでありますけれども、この点については、けさほど来、他の委員さんのほうのお尋ねにも御答弁は出ておったのでありますが、私は一口で申しまして、ここ数年来の経過ですね、これはぜひこの際十分に考えてみなければならぬ、こう思うのであります。
 四十三年に金の二重価格ということになりまして、あのときは七カ国の中央銀行の総裁が寄られて会議があって、共同声明が発表される。そのあとで、四十三年の二月でありましたか、この大蔵委員会で当時の国際金融局長が報告をされ、アメリカはこのドル価値を維持するということに非常な熱意を持っておる、一オンス三十五ドルということでこれがやられるということで、日本政府としても評価をしておるのだ、こういった御報告がきわめて明瞭になされておるわけであります。
 確かに、一九六九年、つまりその翌年のアメリカの予算の収支は若干改善された点がありますけれども、もう七〇年以降は、数字を申し上げるまでもなく、ずっと大幅な赤字続きであります。その間に、国際収支の問題とかあるいはベトナム戦争の問題とかいろいろありましたけれども、要するに国内では赤字続き、国際的な流動性ペースでいいましても、これはドルのたれ流しが続いておるわけでありまして、一九七三年の一月から三月期の速報を見ましても、六十八億ドル何がしということで非常に大幅になってきておる。ですから、確かにSDRの問題、フロートの問題、またこのたびのスワップの問題、そのつどそのつどを見ますと、若干の小康を保ったとか、一時的には手当てをしたとか、いろいろ国際協調を保ちながらやっておりますが、こういう御説明でありますが、五年このかた見てみますと、あのときに言ったアメリカの決意表明、それを受けて、もうこれはたいへんけっこうなことでありますという御報告、これはさっぱりよろしくない方向に向かっている。
 そこで、やはりそのもとは、いわれております交換性の回復の問題、これはスワップで拡大した分を金で返せとかあるいはほかの外貨で返せとかいろいろありましょうけれども、やはりドルの価値を安定させるために交換性の回復をし、インフレをおさめて、しかも通商面も含めて、アメリカが主たる通商の相手になるというようなことでは、一国の過剰依存になってくる。大豆の問題、資源の問題、まことに好ましくない事態である。つり合いのとれた民主的な通商発展、そういったことが基本的な方向として望ましいということはたびたび指摘されているとおりだと思うのであります。
 そこで、この五年間を振り返って、あのときのアメリカ政府の言ったこと、あのときの日本政府の代表が報告されたこと、それをいまの時点でどうお考えになっているか、国際会議を踏まえてひとつ大臣のその点についての御意見を伺いたいと思います。
#103
○愛知国務大臣 最近の過去の状態は、いわゆるニクソン・ショックといいますか、スミソニアン体制といいますか、そういうことを考えてみましても、情勢はすっかり変わってきている。その現実の上に立って考えていかなければならない事態であると思います。日本はアメリカとの間が一番貿易上も資本上も密接な関係で、かつ巨額な関係でありますから、一番苦労もしたと思いますけれども、ヨーロッパにしてもその他の各国にしても、同じようにドルを唯一の基準通貨にし、かつドルが金とリンクをしていたということをたよりにして国際経済が運営されてきたが、これは情勢がすっかり変わってきたということについて共通の悩みをアメリカも含めて持っているわけでございまして、非常に率直に申し上げれば、過去がどうであったかということをいうよりは、こうした事態のもとにおいて日本としては国益をいかに守っていくか、同時に国際協調を新しい角度でどういうふうに展開していくかということに過去の経験を生かしながら対処するということが最大の課題である、かように認識をしておる次第であります。
#104
○荒木(宏)委員 情勢が変わった、過去は問わない、こういうお話でありますけれども、しかしものごとにはもとがあるわけでございますから、その点からいいますと、情勢が変わったというのは実はフロートというようなことで、アメリカの一番もとにある病巣をなおすという方向でなくて、むしろそれを助長するといいますか、結局歯どめをなくしていってから回りをする方向で情勢が変わってきておる。ですから、小康だの一喜一憂だの言われますけれども、根源の状態は少しも解決されておらない。たびたび申し上げておるところでありますが、そういった基本的な通貨政策の転換がなされるべきだということを申し上げて、時間が参りましたので私の質問を終わりたいと思います。
#105
○鴨田委員長 竹本孫一君。
#106
○竹本委員 三つほどお伺いをいたしたいと思いますが、第一は、いまの荒木さんの御質問にも関連をいたしますが、アメリカの金の放出の問題についてであります。
 それに入る前にまずお伺いをいたしたいのですけれども、対米スワップの拡大によりまして、一応ドルを安定させようという御努力をいただいたのでありますけれども、これを与える前提は何であったか、それから返済条件はどんなものであるかということについてお伺いをいたします。
#107
○松川政府委員 ただいま国際通貨情勢が不安定でございまして、これに対応するとりあえずの施策としてスワップ協定が結ばれた次第でございますが、この国際金融問題全体をささえます考え方、そして将来安定した国際通貨制度をどのようにしていくかという面につきましては、御案内のとおり、そしてまた先般来この委員会でも御説明がございましたとおり、拡大十カ国蔵相会議で種々検討がなされておるのでございます。しかしながら、現実のその討議の進展の成果を待つことなく、実際問題としてヨーロッパの通貨情勢は必ずしも安定いたしておりません。そしてその原因はいろいろあるとは思われます。たとえばジョイントフロートをしております各国の間の経済関係が適切にレートに反映されておるかどうかとか、そういった問題もございますが、さらにその根底にはドル自体に対する信頼が必ずしも十分でないという事情がございます。
 そこで、そのドルの信頼をいかにして回復し、また維持するかということが当然問題となってまいるわけでございます。この点につきましては、一方では米国自体の国内、そして国際政策、そういったものが全般的に見直されることも必要でございますが、また他方、いわゆるドルの相当量が外国に流れ出ておりますものにつきまして、その価値をどうやって保証するかという問題もございます。そして、これらの点は二十カ国蔵相会議の議題としてあわせて議論をされておるのでございます。しかしながら、さしあたりの情勢に対処いたしますには、ドルの価値を保証するための一つの方法としてスワップという形での形式をとりまして、米国とそれから関係しております諸国の中央銀行相互間におきましてスワップ協定をし、これによってドルの価値を維持しよう、こういう発意から出たものでございます。
 なお、そのスワップ協定の条件がどのようになっておるかということでございますが、これは公表されておらないものでございますから、御説明を遠慮させていただきたいと思います。
#108
○竹本委員 返済の条件については公表しないという国際的な約束になっておる、こういうことですか。
#109
○松川政府委員 必ず公表されないということではございません。先般までございましたスワップ協定につきましては、たとえばその返済期間が三カ月である、ただしこれは繰り返してころがっていくこともあるわけでして、その限りで、その範囲内での条件は明らかにされております。それ以外のこまかい技術的な条件は必ずしも明らかにされておらない、こういう趣旨でございます。
#110
○竹本委員 もう一回お伺いしますけれども、三カ月でやるか繰り延べるか、その他条件はいろいろあるのですけれども、発表ができないということなのか、あるいは常識的にスワップをとにかくやってドルの信用をとりあえず回復しようという応急措置を講じたので、特にまとまった条件というものがないから発表ができないのか、どちらですか。
#111
○松川政府委員 ただいま御質問のように、とりあえず急いでやったからその条件がきめられなかったということではございません。前々からございます米連銀とほかの国々との間のスワップ協定にいたしましても、条件はきまっております。そしてまた、一言ふえんさせていただきますならば、ある意味でその通貨を利用する可能性が非常に少ないものにつきましては、その可能性が大きくなった段階で非常にこまかい取りきめをする、その前は大まかな取りきめだけであるという場合もございます。
#112
○竹本委員 あまりはっきりしないようですけれども、次へいきましょう。
 現在、日本の金は幾らあるのか、それから最近幾ら流れ込んできたかということを一つ。それからあわせて、アメリカの金がいま幾らあるか、それから同時にアメリカの過剰流動性、いろいろ問題がありますが、大体どのくらいと見ておられるかということを一つ。
#113
○松川政府委員 わが国の外貨準備の中で金が占めております金額は、四十六年末で六億七千九百万ドル、四十七年末で八億百万ドル、本年五月末で八億九千百万ドルという金額になっております。したがいまして、大体この一年半の間に二億ドル余り増加したという形になっております。
 なお、米国の外貨準備の中に占めております金の量は、同様の時点をとって御説明いたしますと、四十六年末で百十億八千百万ドル、四十七年末で百四億八千七百万ドル、そして本年の五月末では百十六億五千百万ドルでございます。
 もう一つのお尋ねの過剰流動性がどの程度あるのかという御質問でございますが、これは便宜上現在発表されておりますいわゆるユーロダラーの量でもって御説明させていただくのが一つのめどかと存じますが、ユーロダラーは一九七〇年末で四百六十億ドル、一九七一年末で五百四十億ドル、一九七二年末で七百億ドルという数字がBISの推計によって発表されております。
 なお、このほかに、ドルではございません他国の通貨の形をとっておりますいわゆるユーロカレンシーというものが若干ございます。
#114
○竹本委員 日本が最近二億ドルふえたというのはわかるのですけれども、三月末も八億九千万ドルだったと思うのです。五月末が八億九千百万ドル。そうすると三、四、五はあまりふえてないということになるのだが、その辺はどうですか。特に自由化をしたあと日本にどんどん入ったというふうに新聞は伝えたのもありますが、その関係はどうなっておるのか。
#115
○松川政府委員 ただいま御説明申し上げました二億一千万ドルの日本の保有金の増加でございますが、これは金額の上の増加でございまして、御案内のとおり一トロイオンスが三十五ドルから三十八ドルになり四十二ドル二十二セントになってきた、この反映が主たる部分でございます。なお、そのほかにIMFとの取引におきまして、金額はわずかでございますが、金で支払いを受けるもの等が若干ございます。
 しかしながら原則的には、先ほど荒木先生の御質問の中にもございました例のワシントン協定でございますが、これによりまして通貨当局、すなわち大蔵省ないし日本銀行は市中から金を買わないという原則になっておりまして、各国の通貨当局間で売買が行なわれますれば、それが日本の公的な保有金の金額に反映してまいるわけでございますが、それは先刻御説明いたしました国際機関との取引、こういったものに限られておりまして、これがない場合にはほぼコンスタントの状態で動いておる次第でございます。
 なお、御質問の中に、金の取引の自由化のことがございましたが、これは本年の三月末までは民間が直接金の地金を輸入することを認めておりませんので、これは貴金属特別会計の上で、国の手を通じて売買いたしておりまして、これを直接民間が輸入できることを認めたわけでございます。したがいまして、その措置の結果、日本にはある程度の量の金塊その他が入ってきております。
 しかしながら、これは私的な保有の金でございまして、先刻私が御説明申し上げましたのは、わが国の外貨準備の中に占めておる公的な金の保有量でございますので、三月の措置の前後でも計数に違いがなかったということでございます。
#116
○竹本委員 ついでにあわせて伺っておきたいのですが、アメリカの百六十億ドルですね、それもソ連に小麦を売ったその決済等はどうなったか、それからアメリカももう少しふえているのじゃないかと思いますが、やはり公的な関係というようなことですかあるいはどういうわけか伺いたい。
#117
○松川政府委員 御質問の点につきましては、正式な発表はなされておりませんので、あくまでも私どもの推定の範囲を出ておりませんが、私どもが得ております情報では、ソ連は若干の金をあるいはチューリッヒであるとか、そういったところへ売っておるように聞いております。と申しますのは、ソ連が支払いをなします場合に、これはドルの形でしたほうが有利でございます。かりに金ということになりますと、アメリカも公的な取引は一オンス四十二ドル二十二という数字でございますから、それ以上の評価をもって金を受け取ることは不可能であろうと思います。そういたしますれば、支払いをいたしますソ連の側に立ちますと、これを自由市場で売却いたしますと、現在百十九億ドルとか百二十億ドルとかいわれておりますが、これで外貨を獲得することができるわけでございますから、おそらくはそのような形で支払いをするのではないか、このように推察いたしております。
#118
○竹本委員 先に参りますが、本論ですけれども、アメリカの金の放出に関する考え方について、これは前回にも大蔵大臣に私簡単に質問をして、大臣から、金の問題についてはきわめて慎重に取り組まなければならぬという御答弁をいただいたわけでありますが、少し掘り下げてきょうはお伺いをしますが、ある新聞では、金問題について米国はさきにボルカー財務次官が金廃貨について各国の幅広い合意ができていると述べるとともに、自由市場への金の放出の考えを明らかにした、こういうことが書いてある。それからまた聞くところによりますと、六月に行なわれた国際決済銀行の総会におきましても、オランダ国立銀行の総裁あるいは西ドイツの連銀の副総裁エミンガーさん等が、金の二重価格制度の早期解体とかいうようなことを言って、金の公定価格を廃止または無視すべきだとの最近の見解に留意したい、二番目は、金問題を政治的に解決しない限り、金の公定価格と自由相場の格差が国際通貨の摩擦と不安定の原因になるという二つの点をきめたというふうに聞いておるのですけれども、それらともあわせて、要するに二重価格制は解体をするのだという方向へ動いておるようにも見受けられる。特にボルカー財務次官が言うには、金廃貨について各国の幅広い合意ができておると述べたというのですけれども、その各国の中には日本も入っておるのだろうと思うのですけれども、日本はこの問題についてどういう連絡を受け、どういう返事をしておられるのか、この点についてひとつ明確な御答弁をいただきたい。
#119
○愛知国務大臣 いまあげられたような人々がそれぞれ発言していることは事実でありますが、C20大臣会議あるいは代理会議などで、金の問題をこれからどうするかということについて合意ができておることはございません。特にC20大臣会議で金について合意ができているということは事実でございませんで、C20会議のコンセンサスというものは、発表されている共同コミュニケ等に記載されている以外についてはございません。
#120
○松川政府委員 ただいま御指摘のございましたボルカー米財務次官の発言というのは、六月二十六日、米国の議会においてなされたものであろうと存じます。そこで金の廃貨について合意があったという報道ないし記述があったようにただいま承りましたが、私どもがそのときの表現を聞いております限りでは、準備資産としての金の役割りを後退させるべきであるという点についてのコンセンサスができている、そういう表現になっております。これはただいまC20の、国際通貨の将来の問題において検討いたしております項目の一つに、将来の準備資産が何であるべきかということがもちろん重要な項目の一つとして入っております。そしてこの点につきましていろいろな意見が出されて討議されておるのは事実でございます。しかしながら、その討議の過程で、将来とも従来のように金に準備資産の役割りを全部持たせておいていいんだということを言っておる国はほとんどございません。そしてだんだんやはり金だけにたよっておったのでは従来の国際通貨ないし国際的な貿易問題、こういうものは片づかないのではないか。金の役割りを後退させるということについて、徐々にそういう一般的な思想の統一といいますか思想が同じ方向へ向いてきておる、そういう趣旨でございまして、格別の書きものにした合意とかまたは口頭での合意とか、そういった意味の合意ではないものであろうと存じます。
#121
○竹本委員 確認しておきますけれども、そうすると、金の役割りは準備資産として漸次後退すべきであるとか後退するであろうということについてのコンセンサスはあるけれども、これを一体どうするかということについて積極的な取りきめは現在ないというふうに理解していいわけですね。
#122
○松川政府委員 そのとおりでございます。そしてそのようなことをこれからの二十カ国蔵相会議で検討が続けられるわけでございます。
#123
○竹本委員 そこでもう一つ、アメリカがたとえば一オンス幾らというようなことで、しょっちゅう上のほうへ、百二十ドルだとか百三十ドルだとかということになりますし、公定価格との格差が開き過ぎるので困っておるということもわかりますし、それから若干市場へ放出するということによってそれをひとつ調整していこうという気持ちもわかるのですけれども、その他いまの金の役割りを後退させるという一般論もよくわかるのだけれども、そのほかにアメリカがいまこういう問題を非常に熱心に取り上げておるのはどういうねらいがあるのか、あるいはどういうそこの考え方があるのか、その辺を政府はどういうふうに見ておられるか。
 すなわち将来はほんとうに金廃貨に持っていくという傾向にあるのか、思惑を少し鎮静させようという当面の対策なのか、あるいは将来ドル本位に何とかごまかして持っていこうという考えなのか、アメリカの真意をどういうふうに受けとめておられるのか、御答弁いただければありがたいと思います。
#124
○松川政府委員 私ども現在までの段階で、アメリカがどのような意図をもってそういうことを、たとえば財務次官が国会で言うというような経緯に立ち至ったのか正確には存じておりません。来週の月曜、火曜日にアメリカの財務長官の代理としてこのボルカー財務次官本人が東京に参りますことでもございますので、それらの機会を通じまして米側の真意というものを打診してまいりたいと存じます。
#125
○竹本委員 これは要望ですけれども、確かにいまの段階でアメリカの真意がどの辺にあるかということをつかむということはむずかしいということもよくわかります。しかし、同時に日本はいつもアメリカの真意を的確に前もってつかんでいないので国際会議であまり得をしないということも事実だから、これは大臣は外務大臣の経験も持たれておるのだから、ひとつ大いに目をみはって、アメリカの真意がどこにあるかをこれからなるべく早く的確につかんでいただきたい、これは要望にとどめておきます。
 さらにこれに関連して、一九六八年のワシントン協定の修正という問題について日本政府はどういうお考えであるかということについて、もう一度これを伺いたい。
#126
○松川政府委員 一九六八年のワシントン協定は二つのポイントを含んでおります。
 一つは、各国の通貨当局は市中の金を売買しないということでございます。これは通貨用の金と、それからいわゆる工業用と申しますか産業用の金、このマーケットを二つに分けるということでございます。
 それからもう一つは、米国はほかの国の通貨当局に要望があれば、米国の通貨当局はこれと金を売買する用意があるというこの二点でございます。しかしながら、その第二の点は御案内のとおりその後のいわゆるニクソン・ショックによりまして、アメリカの金の交換停止という事態がございましたので、その限りではワシントン協定は改められております。残っておりますのは第一点だけでございます。
 そこで、各国の通貨当局は市中の金を売買しない、そしてその裏には、通貨当局間で売買する場合にはこれはきめられた価格、現在で申しますれば一トロイオンス当たり四十二・二十二ドルで売買するということになっております。そこで現実に問題が起こってまいりましたのが、たとえばある国で外貨準備がだんだん減ってくる、外に対して支払いをしなければいけない、しかしながら持っておるのは金だけだというような事態がかりに起こってまいりますと、その国は金をもって相手方に払おうとすれば四十二ドル何がしでしか受け取ってくれない。しかしワシントン協定で、金を市中に売りましてその対価として百何ドルかの金を受け取って、これをもって支払いに充てるということは考えられてもいいはずなのでございますが、これに対して産業用の金と通貨用の金は別だ、こういうことになっておりますために、そのような売却ができないで困っておる事例がございます。それこれを考えあわせまして、そのような不便を排除するようにワシントン協定と申しますか金に関する協定を修正してもいいではないか、こういう意見が出てきておる次第でございます。
#127
○竹本委員 背景はよくわかった、御説明のとおりだと思いますが、日本の政府としては、したがってこの改定というか修正の問題については賛成だというように理解していいのですか。
#128
○松川政府委員 ただいま申し上げましたように、そういう意見が出てきておるという段階でございまして、これは別途二十カ国蔵相会議の討議ともあわせていろいろ検討されておりますために、私どもも慎重に対処してまいりたいと考えております。
#129
○竹本委員 いまの段階ではその辺だろうと思うのですけれども、これは私たびたびここでも申し上げるし、それからまた大臣のお考えもたびたび承っておるつもりでございますが、私は結論からいって、先ほども御議論が出ましたように、金の廃貨とか交換性回復は絶対やらぬというような形では国際通貨危機を解決することはできないと思うのです。そういう意味で、遠い将来ということになれば――遠いということの内容がはっきりしませんからよくわかりませんが、当面の段階で議論をすると、やはりドルは一ぺん交換性を回復しなければ国際通貨問題は解決しない。
 それからそういう意味でアメリカの過剰ドルの問題も片づけるとかあるいは評価をもう一ぺん考え直すとか、いろいろくふうがあると思うのですけれども、これは大臣が言われる固定相場制であり、かつ弾力性をもって適当にアダプテーションは考えるということになるのだろうと思いますが、やはりそういう基本的姿勢というものを堅持する。堅持するのもとりあえず堅持するが、フランス的な考え方に立ってそういう方向に強く押し出していくのか、これはだいぶニュアンスが違うと思いますし、私はどちらかといえば、個人としてはこの問題についてはむしろフランスの意見に近い意見を持っておりますが、いずれにしましても、この問題は大臣の言われる固定相場制に帰り、それを弾力的に運用する。そしてあわせてドルの金の交換性の問題についてもやはり一度は真剣に取り組む。そのためには、結局これはアメリカの財政経済運営の基本姿勢を変えさせなければいかぬと思うのですね。そうした形でやはり本格的に問題を解決する軌道に乗せておかなければ、ドルが一進一退だけならいいけれども、何度もひっくり返ってくる、問題を起こすということは避けられないと思いますので、この点についてもう一度大臣のお考えも承り、その善処を要望したいと思います。
#130
○愛知国務大臣 一口に言えば仰せのとおりだと思うのです。ですから、前回申し上げましたように、金の問題についての日本政府としての態度は真剣で慎重でなければならない。これは相互に相関連する国際通貨再建の問題でもあり、それからドルがどういうふうにこれからの姿勢をとるか、あるいはとらせるかということに関連しまして、これは非常に大切な問題である、そういう認識を持っておりますので、各国の考え方などは十分聞きながら、またこちらの主張すべきところも十分主張していきたい、こういうふうに考えておるわけです。
 二十カ国の蔵相会議レベルで、先ほど申しましたように、金の問題が非常に大きな討議の対象になっておる事実は現在まではございません。代理会議等におきまして、各国がいろいろの意見を出したり、あるいはサウンドした状況ではこういう意見を持っているらしいといろいろな情報は的確に掌握しつつあるわけでありますけれども、大きく分けると、金の公定価格というものは変更しないけれども、公的の機関から市中への売却というものはお互いに認めようというのが一つの考え方である。それから金の公定価格自身を妥当な水準に改めよう、これが一つの考え方です。それからもう一つの考え方は、金の公定価格というものは廃止して、しっぱなしにしておくという考え方もあるようであります。これはどこの国がどういうなんというのではなくて、いろいろな情報等から総合していろいろの国々の意見を分類してみると、大体その三つになろうかと思います。この間に処してワシントン協定というものも半分残っているのが現状で、それがよかったか悪かったかということについてはまたいろいろの批判もあり得ると思います。
 それから一方において、準備資産のあり方として、アメリカを一つだけ基準通貨にするというのは、もうそういう時期ではないと思います。反面において、SDRというものをできるだけりっぱなものにしたいというのが日本をも含めて各国のコンセンサスである、これが現状でございます。その現状を踏まえ、そして日本としてはどういう意見を貫いていくかということがこれからのやりどころである、かような状況でございます。
#131
○竹本委員 この問題はこの程度で終わりますが、要するに一つは、いまどういう姿勢をとるか、あるいはとらせるかという大臣の御答弁がありましたけれども、アメリカに少し姿勢を変えさせるという要素がなければ、過剰流動性の問題にしても交換性の問題にしてもあるいはアメリカのインフレの問題にしても根本的に解決はしないので、この点は大臣にこれからの会議においても若干強い姿勢で臨まれるように要望を申し上げて次へまいります。
 次は、中期財政計画の問題であります。これは福祉社会の建設ということになれば、長期的ビジョンに裏づけられなければ福祉というものがどうにも徹底しないという問題もありますし、新幹線や高速道路の問題も単年度ではなかなかうまくこなせないというような問題がありますので、これからの財政は長期的ビジョンを持たなければならぬということは、実は本委員会において私も数年前から、財政五カ年計画なり十カ年計画なりというものは昔の馬場蔵相の時代から言われている問題なんだから考えたらどうですかということを言ったのだけれども、そのとき大臣はだれだったか忘れましたが、大蔵当局はあまり積極的でなかった。最近において新聞等でそういう問題が言われるようになった。事実ECの中でもイギリスその他ドイツもそういう長期ビジョンを持っておるということでございますから、そういう考え方、方向というものには私は全く賛成であります。今度財政制度審議会でその問題を取り上げるような記事が新聞にありましたけれども、はたしてそうか、それからまた大蔵省として中期財政計画というものを策定するということについて、どの程度の熱意を持っておられるか、この二つの点をお伺いいたしたい。
#132
○愛知国務大臣 私はかねがね竹本さんの御意見に非常に共鳴するところが多いのです。特にたとえば社会福祉政策の展開というようなこと、これは現に政府といたしましても相当長期な一応のビジョンをつくっているわけでございます。それからたとえば公共事業等の関係におきましても相当の長期計画を立てておるわけでございますから、中期の財政計画というものに取り組んでいくべき素地は相当出てきているし、また望ましいことである、ひとつこれは財政制度審議会あたりでも一つのテーマとして御検討いただきたい問題だな、こういうふうに考えております。
 それから、欧米等の状況もあらためて検討いたしてみましたが、私の受ける印象は、欧米等で長期財政計画をつくりました環境とか条件というものは、非常に財政が膨張する、これを何とか緊縮財政をしなければいけない、発想の環境がそういうところから出ているように私には理解できるののです。竹本委員の御発想、御提案というものはそういった欧米のなにとはいささか異なるわけで、むしろ竹本さんのお考え方はもっと積極的なお考えをもとにしておられるのではないかとこの前もその御意見を伺いましたが、外国の長期あるいは中期の財政計画をつくろうということと、今日のわれわれの置かれている立場とはかなり違っていると思うのですけれども、その違っている意味合いにおきましても相当これは取り組んでいい問題ではなかろうかと思います。
 ただ、財政とか経済とかいう問題は、これは生きものでなかなか計画どおりにいくものでもないし、そのときどきの情勢によって政策の選択がかなり転換を要請される問題でもございますから、いわゆる何々五カ年計画というふうなあんばいには、かりにつくるといたしましてもそういうふうな受け取られ方をしてこれに執着し、あるいはこれを一ぺんつくればそのとおりにいかないというような場合に政治責任だというふうにすぐそういった意味の批判の対象になるようなものだけは私もいささか逡巡せざるを得ない。これは非常にざっくばらんなお話でございますが、とにかくひとつ前向きに取り組んでみるべき問題であると私は考えておる次第でございます。
#133
○竹本委員 時間がありませんので、ひとつまとめて申し上げますが、そうした財政長期計画に熱意をもって取り組んでいただくと非常にありがたい、大賛成でありますが、私、考えますのに、これがうまくいくためには三つの条件があると思うのです。一つは高度の政治性というか政治指導力ということでございますが、私はそういう意味で内閣の補佐官制度とかいう問題も議論をしたこともありますし、あるいは経済企画庁をもう少し権限を強化すべきではないかという問題を取り上げたこともあります。今度の国会ではシンクタンクの問題も出てまいりました。そういう意味で、内閣の政治指導力の強化ということを必要とするのではないか。その中でシンクタンクは一体どの程度に活用されるお考えであるかということが一つ。
 それから第二は、それと関連しますけれども、やはり経済政策全体の総合的計画性というものが要ると思うのですね。この点について、私はことばはあまり好かないのですけれども、この前大蔵省で考えられてこの国会に出すことをお取りやめになった例の経済安定法案といいますか、何といいますか、案がございました。この問題はある程度財政権限の一種の授権法みたいなところがあるし、いろいろ問題があったと思うのですが、また国会の法案審議の過程のいろいろの問題もありまして政治的にお取りやめになったのだろうと思うのだが、これは次の国会にはもう一度出してこられるのか。
 すなわち、あの法案がいいとか悪いとかは別として、経済政策全体に総合性と機動性を持たせることなくしてほんとうの意味でいまの日本のインフレ的な動きを押えることはできない。それが解決できなければ長期財政計画というようなものは宙に浮いてしまうという意味で、地ならしとしてのそういう基礎的な工作はどういうふうに考えておられるか。
 第三点は、これはいまのヨーロッパとの問題にも関連すると思うのですけれども、私はこの点はイデオロギー的な立場の相違という問題も出てくるかと思いますけれども、いままで日本の財政なり経済なりあるいはGNPの成長というものは、だれかが言ったように民間設備投資主導型の高度成長であった。財政はそれを補完する意味で、景気がいいときには財政は小さく遠慮しましょう、不景気になったら財政は大いに積極的に機能を拡大して景気が沈滞しないように公共事業その他ふやしましょう、こういうようなことになって、あくまで、資本主義経済の必然性かもしれませんけれども、財界あるいは設備投資主導型であった。
 しかし私は、福祉国家の建設とかあるいは公共事業等あるいは社会資本の問題等についても、先ほど大臣もお話しのように、これからは政府がある程度積極的、意欲的なものを持っていくということになれば、やはり今後は策定されるであろう中期財政計画がもとになって、それにあわせて設備投資その他を主導していくということでなければ、設備投資が先にどんどん走っちゃって、その穴埋めや補正の努力を、あるいは補完的な努力を財政がやるというようなことではいけないので、これからは中期財政計画ができれば、主と従との関係から言うならば、それが日本の経済財政運営の主軸になるべきである、設備投資のほうが主軸になっていくのじゃなくて、財政長期計画、中期計画のほうが主軸になるべきである、こう思いますが、その民間設備投資の位置づけの問題。
 この三つについて、私はよほど総合的な判断がないとうまくいかないのではないかと思いますので、この三点についてお伺いしておきたい。
#134
○愛知国務大臣 シンクタンクは、あの法律で御案内のとおり、政府がみずから一から百までを考えるようなシンクタンクでは効率も成果もあがらないというのが考え方のみそでございまして、これはやはり衆知を集めて、ほんとうの国民的なシンクタンクでなければならないという発想があの中の一つの考え方の中心になっておる、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。要するに、役人仕事ではいけないというような意味も入っております。
 それから第二の、経済安定法は私としては非常な意欲を持っているわけでございまして、政治情勢等に率直にいえば御遠慮をいたしまして、七月二十四日までとなりましたこの国会には提案をあきらめましたけれども、政治情勢の推移に応じてできるだけすみやかな機会にぜひ提案をすべく用意を続けておるわけでございます。ただ、いわゆる経済安定法案として若干世に問うたわけでございますけれども、あの中身につきましてはいろいろな意味で御批判がすでにありましたので、そういう点はとるべきはとり、捨てるべきは捨てまして、姿をよくして御審議をいただくように、引き続き準備を進めておるわけでございます。
 それから、民間投資主導型ということは、私もそのように考えております。従来のパターンは民間投資主導型、まさにいいことばをお使いになったと私は思うのでありますが、そのイメージといいますか、それが何となしに今日にもつながっておるのです。ですから、これも率直に申しますと、現在の情勢下においても予算を切れ切れ、公共事業は切れ切れというお声が非常に高いけれども、そういう中から出てくる御意見ではないかと思います。少なくとも一部はそういったようなイメージがまだ残っているのではないかと思います。
 これは計量的に申しましても、午前中にも申しましたように、今日でもなおかつそれは民間のほうのバイタリティー、エネルギーというものが非常に大きいのです。財政のほうは、これはもうきちっとして予算で組まれておりますから、見通しどおりに動きますから、そして現在でも福祉国家型に編成がえをしておるわけでありますけれども、おりますだけに、またこれをそのように執行していきたいとわれわれは思っておるわけです。
 しかし、物価問題というものが今日のような国民的な大関心事でございますから、財政のほうでもできるだけ繰り延べはやっておりますけれども、ことに大切であると思います環境関係あるいは福祉関係というようなものについては繰り延べもできるだけやらないで、一般の公共事業のほうに重点をかけているわけでございますが、わき道に入りましたけれども、それはともかくといたしまして、今後はやはり財政主導型でなければ福祉国家建設は望み得ないと思います。したがって、これはあえて財政計画だけに限らず、もっと広い社会経済発展計画というようなものでとらえたほうがむしろいいかと思いますけれども、そういった総合計画の中でも財政主導型にもっとずっと傾斜するようにこれからの国政の発展の姿は持っていくべきであろう。そしてそういう意味からいっても、やはり中期財政計画というようなものもそういった意味でとらえていったらどうだという御意見については、私も同感でございます。
#135
○竹本委員 財政主導型あるいは政治主導型になるわけですから、どうしてもそうなければ計画性とか社会性というものは出てこない。私も役人の仕事の能率の悪いこと、それから民間のほうがバイタリティーのあることもよくわかっておりますが、しかしバイタリティーがあり過ぎて暴走するところもありますので、やはりそれに社会的な立場から、あるいは長期的な立場から一つの計画性を持たせるということがいま必要な段階でございますので、あまり遠慮なくこれは財政主導型を発揮してもらいたい。中身についてはまたいろいろ議論がありますけれども、パターンとしてはそういう方向に転換をしなければならぬということだけ申し上げておきます。
 最後に、三番目の問題でありますが、これは税務職俸給表の水準差、これをどうするかという問題に関連して一言申し上げておきますが、私は、最近の、いまも申しましたが、役人の仕事は能率が悪いという問題とも関連をしてくるわけですけれども、こんなに国家公務員がふえて、その能率がいいか悪いか、またそれぞれの人がどれだけの使命感を持っておるかということは、ことはたいへん重大な問題だと思うのですね。
 例をあげて言っていいかどうかわかりませんが、国鉄の場合に、私どもは、国鉄の問題については、いまの当局の経営姿勢で幾ら値を上げてみても、運賃が上がるだけで赤字の克服はできないというような観点からこれに反対をいたしました。その一つの理由は、これは大臣、一つ大事な点なんですが、国鉄が生産性向上の問題とマル生運動と関連をして、一体生産性をあげるということがいいのか悪いのか、当局側は一体どう考えているのかということについて、あるときは非常にけっこうだ、やってもらいたいと言う、あるときは行き過ぎでした、あやまちでした、あんなことはもうやりませんと言う、次には、あれは間違いました、やはりやってもらわなければ困りますと言う。
 一体政府はどういうことを考えておるのかということがはっきりしない。それがために、まじめに働こうという人は頭が混乱しているでしょう。経営の理念というのは何だ、また、われわれはどれだけの使命感を持ってやればいいかということについて混乱が起こっておる。
 また、赤字線の問題についても確かに政治的観点からいえば、赤字であっても、地域社会のために線を敷いて動かさなければならぬ汽車もあるでしょう。しかしながら、赤字は出さぬのだということが最後の一瞬になって初めて経営に熱が出る、一人一人も使命感が出てくるというのに、赤字線をむしろいいことだと歓迎するということ、赤字線は何本あってもいいのだということをいえば、これは現に私に、まじめな国鉄の従業員が、われわれは経営の理念というようなそんなものは見失ってしまった、これから先は何をやったってどうでもいいじゃないかといわざるを得なくなったということで、非常にさびしく感じておる話を直接訴えられたこともあります。
 いずれにいたしましても、私は、国鉄の従業員にしても、それからまたもう一つは警察官だ。これもまあ国がすぐ直接という問題じゃない場合もありますが、いずれにしても、そういう国であろうと地方であろうと、公務員の給与というものはあまりいいものではない。昔からそうで、一つの誇りと使命感があるからやれるし、またそれがなければどうにもならぬものです。
 そういう点について、これはひとつここの問題ではないのですが、大蔵大臣にもお聞きしたいのですが、いまは政治がないということばもありますけれども、そういう意味で、国全体にも一つの方向づけ、使命感というものを持たせていく。特に国家公務員については一つの誇りと使命感を持たせて奮起させなければ、能率は悪くなるばかりだと思うのですけれども、その面についての努力が足りないような感じを私は受ける。ベースアップをやる人事院の勧告を大いにやってもらうこともけっこうですけれども、それとともに、あるいはそれの前提として一つの誇り、使命感というものを公務員等に持たせる、できれば日本国民に持たせるということでなければ、単なる行政事務ではほんとうの経済改革はできないと思いますが、その点についても一言大臣のお考えを承りたい。
#136
○愛知国務大臣 特に税務官吏の待遇の問題について、前回も御激励をいただいて、たいへん私も感謝いたしておるわけであります。私といたしましても、大蔵省全体とすれば、各業種の多くの公務員をお預かりしているわけですけれども、全体が誇りを持って濶達に働けるようにいたしたいことはやまやまでございます。特に税務職員につきましては、御案内のように長い間定員をふやしているわけでもない。そうして税の仕事はますます複雑多岐にわたっている。これは税制の上でもなるべく簡素にし、それから徴税対象も減税等によってできるだけ範囲を少なくするというようなことを税制上でも考えてまいらなければならないわけで、これがやはり多少でも負担が軽減されるということになろうと思いますけれども、税務官吏については待遇の問題、給与の問題も、御案内のように相当の幅があったわけでございます。だんだん狭まってきている、こういう点はひとつこの際ぜひ改善してもらいたい。
 これは現在の制度からいえば、人事院の勧告によって政府が執行する義務を負うわけでありますから、私としては近々出るであろうところの人事院勧告の中で、給与の体系として税務官吏に対する特殊の立場を具体的に評価していただけるような勧告が出ることを衷心から期待しているわけであります。ぜひそういう方向で人事院も考えていただけるであろうと私は期待をいたしておるようなわけですが、出ますれば、さっそくこれを実行いたしますし、それから同時に、給与だけの問題ではないと思います。だんだんと私も実情を見まして、かつての状況よりは相当改善されつつあるように思われます。思われますが、決してこれに満足しているわけではございませんで、給与以外の処遇や福利の面におきましてもできるだけの改善を心がけていきたい、こう考えております。
#137
○竹本委員 税務職員の問題は、私これから申し上げるつもりでしたけれども、繰り返しますが、私が最初に申し上げたいことは、いまの国家公務員あるいは地方公務員を含めて、とにかくもう少し誇りと使命感を持たせるという大きな政治がなければどうにもならぬのではないかということでございますから、これは善処を要望しておきます。
 それから税務職員の問題については、いま大臣からいろいろ御理解のある御答弁があったのでけっこうでございますが、私はひとつ警察官やいまの国鉄ともまた違った意味の特殊な、いま大臣も特殊な立場というお話がありましたけれども、これはほんとうに特殊な立場だと思うのです。
 これもプライベートに聞いた話ですが、シャウプさんが日本に来たときに、当時たしか平田君が主税局長だったかと思うのですけれども、そのときに彼が冗談半分に主税局長に、パブリック・エネミー・ナンバー・ワンだと言って握手したというんですね。要するに、税務署の官吏というものは、パブリックエネミーとしか少なくとも国民は受け取っていない。いま警察官も非常に親切になり、民主的になってソフトムードになったので非常に親しまれておるけれども、世間で一番憎まれ役は、ぼくは税務署の職員だと思うのです。これはなまけておって税をかけなければ向こうから歓迎される、まじめに働けば、そうして税をうんとかければ、むちゃくちゃかけるわけではもちろんないでしょうけれども、非常に憎まれる、こういうような非常にむずかしい立場に立っておる。
 税法を覚えるとか、うまく公平に適用するということもたいへん複雑でもあり、困難でもある、むずかしい仕事だと思いますが、それよりも、気持ちの上において、特にぼくはある意味からいえば非常に気の毒な立場にある。まじめにやれば反感を買う、なまけておればむしろ歓迎される、それがこういうほんとうに特殊の立場で、この点は理解してやらなければ気の毒ではないか。国税庁からもお見えになっているが、どうですか、税務職員というのは、ぼくは普通の人以上に誇りも持たせ、使命感も持たせなければならぬという大前提が一つありますが、そのほかに、税法はややこしいのだという困難性もありますが、何よりもまじめにぴしぴしとやれということになれば、片っ端から敵意と反感を持って迎えられる。ことにいまのように納税道義がほとんどすたれてしまっておるというようなことになりますと、税務署のやつ何しに来た、それこそパブリックエネミーというような受けとめ方をされるのではないか。
 だから、これは一方において税務職員を激励してやるとともに、一方においては正しい納税道義の高揚というものにもう少し努力をしなければ、大蔵省はたばこの宣伝ばかりよくやっておるが、それ以外に、正しい納税道義の高揚のために一体どれだけの努力をしておるか、ひとつ伺いたい。
#138
○吉田(冨)政府委員 おっしゃいますように、税務官吏につきましては、いろいろ苦しい面が多いわけでございまして、納税道義の高揚につきましても、私どもとしては、第一にやはりまず青少年層から十分にその点をPRしようということで租税教室等には特に力を入れまして、PRいたしております。それから一般の納税者に対しましても、できるだけ税法の周知徹底と同時に、正しい申告をしていただくということでPRあるいはパンフレットをつくりましたり、あるいは民間団体等を通じまして、納税道義の高揚と納税知識の普及に努力しております。
#139
○竹本委員 時間がありませんので、これで終わりにしますが、そこで大臣、いろいろな事情も勘案されて、従来は税務特別手当というようなものがありまして、一般公務員に比べて二五%くらいの水準の差をつけておった。それがだんだん少なくなりまして、先ほど大臣もお話がありましたが、三十二年の公務員の俸給表の改正のときには一七%になった。それが最近ではまた一〇%を割ったくらいに落ちている。特に悪いのは、年々下がっている、差が縮まっていくということになっているようだから、これは重大な問題だ。そこで、一般公務員のベースアップの問題もありますが、少なくとも年々下がるという傾向はおかしいということで、そういう傾向はとめなければならぬ。積極的に言えば、三十二年の水準の一七%のところぐらいまでは格差を持っていかなければいかぬだろう。
 そういうことは最終的には人事院がやることでございますが、しかし、大事なことは、大蔵当局あるいは大蔵大臣が、まず自分の足元の税務職員の困難な立場、苦しい立場あるいは不快感といいますか、あまり芳しくない職掌柄の事情について、あたたかい理解を示されることが必要だろうと思いますが、その点についての大臣のお考えを承って終わりにいたします。
#140
○愛知国務大臣 全くごもっともでありまして、今後とも十分注意していきたいと思いますし、私は、やはりできるなら三十二年のときの状況に戻すべく、いろいろ努力もいたしておる次第でございます。
#141
○竹本委員 終わります。
#142
○鴨田委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後三時五十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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