くにさくロゴ
1972/06/22 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第24号
姉妹サイト
 
1972/06/22 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 外務委員会 第24号

#1
第071回国会 外務委員会 第24号
昭和四十八年六月二十二日(金曜日)委員会にお
いて、次の通り小委員及び小委員長を選任した。
 海外子女教育等に関する小委員
      石井  一君    稻葉  修君
      加藤 紘一君    小林 正巳君
      西銘 順治君    深谷 隆司君
      福永 一臣君    岡田 春夫君
      河上 民雄君    堂森 芳夫君
      柴田 睦夫君    渡部 一郎君
      永末 英一君
 海外子女教育等に関する小委員長
      西銘 順治君
―――――――――――――――――――――
昭和四十八年六月二十二日(金曜日)
    午前十時三十五分開議
 出席委員
   委員長 藤井 勝志君
   理事 石井  一君 理事 岡田 春夫君
   理事 堂森 芳夫君
      石原慎太郎君    稻葉  修君
      加藤 紘一君    深谷 隆司君
      福田 篤泰君    石野 久男君
      川崎 寛治君    河上 民雄君
      三宅 正一君    柴田 睦夫君
      渡部 一郎君    永末 英一君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       伊藤宗一郎君
        科学技術庁原子
        力局長     成田 壽治君
        外務政務次官  水野  清君
        外務省条約局外
        務参事官    松永 信雄君
        外務省国際連合
        局長      影井 梅夫君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (東京電力株式
        会社副社長)  田中直治郎君
        参  考  人
        (日本原子力研
        究所労働組合中
        央執行委員長) 大杉 茂治君
        参  考  人
        (財団法人電力
        中央研究所ウラ
        ン濃縮事業調査
        会副会長)   藤波 恒雄君
        参  考  人
        (東京大学教
        授)      大島 恵一君
        参  考  人
        (明治大学教
        授)      宮崎 繁樹君
        外務委員会調査
        室長      亀倉 四郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月二十一日
 辞任         補欠選任
  加藤 紘一君     木村 武雄君
  小林 正巳君     園田  直君
  柴田 睦夫君     三谷 秀治君
同日
 辞任         補欠選任
  木村 武雄君     加藤 紘一君
  園田  直君     小林 正巳君
  三谷 秀治君     柴田 睦夫君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 小委員会設置並びに小委員及び小委員長選任の
 件
 小委員会における参考人出頭要求に関する件
 原子力の非軍事的利用に関する協力のための日
 本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を
 改正する議定書の締結について承認を求めるの
 件(条約第一二号)
     ――――◇―――――
#2
○藤井委員長 これより会議を開きます。
 この際、小委員会設置の件についておはかりいたします。
 海外子女教育等に関する調査を行なうため、小委員十字名よりなる海外子女教育等に関する小委員会を設置することといたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、各小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長において指名いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 それでは小委員に
      石井  一君    稻葉  修君
      加藤 紘一君    小林 正巳君
      西銘 順治君    深谷 隆司君
      福永 一臣君    岡田 春夫君
      河上 民雄君    堂森 芳夫君
      柴田 睦夫君    渡部 一郎君
      永末 英一君
を、
 小委員長に西銘順治君を指名いたします。
 次に、小委員会において参考人より意見を聴取する必要が生じました場合、その人選及び日時、手続等、並びに小委員及び小委員長の辞任、補欠選任に関しましては、あらかじめ委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#6
○藤井委員長 原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 本日は、本件審査のため、参考人として東京電力株式会社副社長田中直治郎君、日本原子力研究所労働組合中央執行委員長大杉茂治君、財団法人電力中央研究所ウラン濃縮事業調査会副会長藤波恒雄君、東京大学教授大島恵一君、明治大学教授宮崎繁樹君に御出席を願っております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 さきに御連絡申し上げましたとおり、各件につきまして、参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 なお、議事の進め方につきましては、参考人各位には、最初にお一人十五分程度御意見の御開陳を願い、そのあと各委員から質疑が行なわれることになっておりますので、よろしくお願いいたしたいと存じます。
 それでは、田中参考人からお願いをいたします。
#7
○田中参考人 私は、東京電力副社長の田中でございます。私は、現在、電気事業連合会の原子力開発対策会議の委員長もつとめておりますので、本日は、電気事業者としての立場から発言させていただきたいと存じます。
 まず、今般、国会で御審議されておりまする日米原子力協定改定議定書につきましては、私どもは全面的に御賛成申し上げます。これを御承認していただくことは、わが国にとって必要不可欠のものと考えておりまして、その早期の御承認をよろしくお願い申し上げる次第でございます。
 さて、日米原子力協定の問題を申し上げるに先立ちまして、原子力開発の現状について簡単に触れてみたいと存じます。
 現在、わが国で電力会社が運転中の原子力発電所は五基でございまして、合計出力百六十六万キロワットとなっております。また建設中の発電所は十六基、千二百八十一万キロワットであり、これらは、いずれも軽水型でございます。
 一方、世界で運転中、建設中、計画中の原子力発電所につきましては、日本原子力産業会議の昨年十二月三十一日現在の調べによりますと、運転中が百二十四基、三千五百三十八万キロワット、建設、計画中は二百五十二基、二億八百三十四万キロワットでございまして、合計で三百七十六基、二億四千三百七十二万キロワットとなっております。
 わが国における原子力開発のうちで、新型の原子炉の開発はナショナル・プロジェクトとして動力炉・核燃料開発事業団が当っており、新型転換炉の原型炉及び高速増殖炉の実験炉、原型炉の建設計画が進められております。
 高速増殖炉の開発は原子力の最終目標として世界先進国において精力的に進めようとしており、米国、ソ連、英国、西独、フランス等がこれにあたっております。
 また、ウラン濃縮について見ますと、米国が現在年産一万七千トンSWCの設備を保有し、委託濃縮サービスを提供しております。
 さらに需要の増大にあわせ一九八〇年ごろまでに年産二万八千トンSWCに設備規模を改善、拡充する計画を進めております。このほか英国、フランスなどもガス拡散工場を保有して運転している実情でございます。
 これらはいずれもガス拡散方式でございますが、この方式は運転にあたって大きな電力を必要とするものでございまして、電力消費量の少ない遠心分離法の研究開発が世界的に進められています。
 すなわちわが国においては動力炉・核燃料開発事業団が中心となってこの研究開発を進めております。また英国西独、オランダの三国は、共同で開発機関を設け、協力して実用研究を進めているほか、米国においても鋭意研究開発が進められております。このように原子力開発は世界的に進展を見せている現況にございます。
 次に、今回のこの協定改定が必要欠くべからざるものと考えております理由を申し述べさせていただきます。
 今回の改定内容は、濃縮ウラン並びにプルトニウムの供給、移転に関する部分、保障措置に関する部分及び協定有効期間に関する部分よりなっておりますが、特に、濃縮ウランの供給、移転に関する改定内容に関して、私ども電気事業者としての考え方を申し述べさせていただきます。
 原子力平和利用の中核をなします原子力発電の開発は、わが国のエネルギー政策上絶対的に必要なものでありますことは、御高承のとおりでございます。
 私ども電気事業者といたしましても、電力を長期に安定して、かつ低廉に供給する責任上、従来開発してまいりました水力、火力に加えまして、原子力発電を強力に推進する計画を立てているのでございます。
 本年度の電力需給は、一部の発電所予定地点の建設遅延が累積いたしましたため、一部地域ではきわめて逼迫した状態にございます。年間最大需要の発生が予想されます本年八月の供給予備力は、全国総合でかろうじて六%台に維持されるという見通しでございます。
 私どもは九電力会社、電源開発会社で中央電力協議会を組織して十五年以上広域運営を実施しておりますが、今回もその活動によりまして中地域の需給逼迫に対処することとしております。現状のままで推移すれば、昭和五十一ないし五十二年ころに至りますと電力危機のおそれがありますので、私どもは全力を傾注して電源開発につとめ、供給力確保に努力したいと考えております。
 このような現状にもかかわらず、中央電力協議会作成の昭和四十七年度電力長期計画によりますと、電力需要の増勢は著しいものがございまして、昭和四十七年度から昭和五十六年度までの十年間の需要増加率は年平均約一〇%と予想されており、昭和五十六年八月の最大電力は約一億四千万キロワットに達する見込みでございます。
 この需要に対して適正予備率を持つためには、供給設備は昭和五十六年度末で約一億七千万キロワットが必要でございまして、このうち水力は約三千三百万キロワット、約二〇%、火力は約一億百万キロワット、約六〇%、原子力は約三千六百万キロワット、約二〇%という電源構成が予定されております。
 このように原子力の構成比率は、昭和四十八年度四%に比し、昭和五十六年度で二〇%に増大いたします。その後さらに原子力の比率は増大すると予想されますが、しかしここ当分の間は火力と原子力の共存時代が続くものと考えられます。
 御高承のとおり、化石燃料につきましては、最近の情勢はきわめてきびしいものがございます。すなわちOPEC諸国は最近二年ぐらいの間に非常に強い姿勢を示してまいりまして、原油の値上げ、産油会社への経営参加等次々とメジャーへの要求を実現いたし、その影響はわが国にも直接間接に波及しております。
 さらに、最近イラン等では、従来メジャーが経営していた国内の石油会社を取り上げて国有化するとか、またアラブ、イスラエル紛争の有利解決をはかるために、アラブ産油国の中には石油の生産制限をする気配も見られます。
 また、先般発表されましたニクソン大統領のエネルギー教書にあらわれておりますとおり、アメリカは、いままで自給自足してきた状態から資源の大幅輸入に移行しなければならない状況下にあります。もちろん、国内には石炭においては約一兆六千億トンというばく大な埋蔵量を持っているといわれ、石油においても約六十億キロリットルの埋蔵量を有するといわれておりますが、きびしい環境条件等のため、これらを直ちに開発利用することは困難であり、極力国内のエネルギー消費を節減するよう呼びかける一方、不足する分につきましては中近東から大量の石油を相当長期にわたって輸入する必要があり、そのための関税体系の見直し等諸措置をとることとしております。これは、世界輸出量の三分の二を輸出しております中近東が対象となるために、わが国と競合することになり、私どもの火力発電の燃料源の確保にも一つの脅威となっておるのでございます。
 また一方、環境改善のための公害問題解決に私ども電気事業としては率先して当たる姿勢をとっており、低硫黄燃料の使用に極力つとめております。また、最近では、単にSO2だけでなくNOx問題の解決にも最善の努力をいたしております。したがって環境、資源の両問題を解決しながら電力の安定供給を確保していくためには、ナフサ、LNG等の超良質の燃料の確保が絶対に必要であり、その努力を払っておりますので、御理解を賜わりたいと存じます。
 私どもはまた、燃料からの脱硫にも力を注いでおり、排煙脱硫については、地域の実情に応じて昭和五十二年度約八百万キロワット相当を目標に装置を取りつける見通しを持っております。またガス化脱硫の研究開発にも取り組んでおります。それにもかかわらず、大局的には、今後石油については供給不安も考えられ、一方、今後の値上げもさらに予想がつかない状態でございます。
 このような諸般の情勢から、私どもの電源開発にあたりましては、将来にわたって原子力発電にますます依存せざるを得ないのが実情でございます。もちろん原子力発電の開発にあたりましては、後に述べますように安全性について慎重の上にも慎重に対処することを第一義的に考えております。このような原子力発電の開発には、安全性の確保と並んで核燃料の安定的確保が必要不可欠でございます。
 私どもが当面建設を予定しております原子力発電設備に使用いたします核燃料は、ウラン精鉱を濃縮してつくられるのでございますが、原料のウラン精鉱につきましては、電気事業者は、主として海外諸国の鉱山会社との長期購入契約によりまして今後ほぼ十年間の必要量をすべてまかなえる程度の数量を確保しております。
 一方濃縮役務につきましては、わが国は従来より日米原子力協定に基づき確保してまいりまして、昭和四十一年から昭和四十八年まで着工の発電用原子炉、電気出力約二千万キロワットの所要濃縮役務につきましては現行協定によりまして供給保証を得ております。
 今回の日米協定改定は、前述の既協定の原子炉に、さらに昭和四十九年以降着工される予定の発電用原子炉等約四千万キロワットを追加し、既協定と合わせ総計六千万キロワットに必要な濃縮役務を確保するために欠かすことのできないものでございますので、核燃料の供給が絶えることのないよう、本国会で御承認いただくようお願い申し上げる次第でございます。
 すでに御高承のことと存じますが、米国原子力委員会は、私ども需要者との間で新しい基準に基づく濃縮役務契約案の作成を完了しておりまして、来月半ばごろには確定する予定になっております。
 米国原子力委員会の発表によりますれば、原子炉購入契約済みのものは本年十二月末まで、未契約のもので八年以内に濃縮ウランを引き取るものについては、明年六月末までに濃縮役務契約を締結する必要がございます。しかも、同委員会は、その保有する濃縮設備能力の限度内においてのみ契約に応ずるという意思を表明しておりますため、世界各国からの契約申し込みが殺到することも考えられますので、わが国としても核燃料の確保におくれをとらぬよう措置することが必要でございます。
 私ども電気事業者は、本議定書の発効によって初めて濃縮役務の長期契約を締結することができる次第でございますので、ぜひ本会期中に協定改定を御承認くださいますよう重ねてお願い申し上げたいと存ずるものでございます。
 一方、私ども電気事業者といたしましては、原子力発電所の安全対策、環境対策については、地元の協力をいただきまして、万全の上にも万全を期する考えでございます。私どもは、今後開発を進める発電所ばかりでなく、すでに運転あるいは設置許可をいだだいているものについても常に安全技術の開発を進めておりますので、安全性については心配ないと確信しております。
 現に運転中の発電用原子炉として軽水炉四基がございますが、いずれも順調に運転しており、最初の軽水炉である敦賀発電所は三年余の安全運転を経験しております。また、東京電力福島一号機につきましても、昭和四十六年三月に営業運転を開始して以来、順調な運転を続けており、定期検査、燃料取りかえをそれぞれ三回実施し、検査の結果も良好でございます。いずれにいたしましても、私ども電気事業者は安全確保について万全の上にも万全を期するという方針を堅持しておりますことを重ねて申し上げます。
 なお、米国原子力委員会が最近発表した自由世界における濃縮需給見通しでは、一九八三年に供給力の不足を来たすと予想されております。
 今回の協定改定によって契約の対象となる原子炉は、ちょうどその時点まで逐次濃縮ウランを必要とするものでございます。
 さらに、その後の原子炉用の濃縮ウラン調達については、国際共同濃縮事業が考えられ、また、わが国においては自主技術開発研究がナショナルプロジェクトとして進められておりますので、将来はこれらによることが考えられます。
 以上、濃縮ウランの供給、移転に関する改定内容に全面的に賛成する理由を申し述べました。
 何とぞ原子力発電の開発推進に対する私どもの願いをおくみ取りいただきまして、今般の日米原子力協定改定議定書をすみやかに御承認くださいますよう再度にわたりお願い申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#8
○藤井委員長 どうもありがとうございました。
 次に、大杉参考人にお願いいたします。
#9
○大杉参考人 日本原子力研究所労働組合中央執行委員長の大杉でございます。私は原子力の仕事の現場で携わってまいりました者の一人といたしまして、原子力平和利用三原則を厳格に守るということがわが国の原子力研究、開発利用を発展させるほんとうの道だということをいやというほど痛感してまいりました。そういう立場から、本日率直に見解を述べさせていただこうと思います。
 この新協定は、要は、米国からの濃縮ウラン供給ワクを現行の二千万キロワット分から六千万キロワット分に拡大するというものであろうかと思います。しかしこのことは実はたいへんなことでありまして、わが国の原子力研究はもちろん、安全環境問題、産業の発展、国民生活、さらには外交関係にまで、三十数年の長期にわたってはかり知れぬ重大な影響を及ぼすものと考えられるのであります。そのことを、これまでの日米原子力協定の歴史を振り返りながら、また今日の新協定の背景にも触れながら申し上げたいと思います。
 日米原子力協定は、大きく見ますと、昭和二十九年、三十三年、四十三年、そして今回と、四段階に分けられると思います。
 まず、二十九年協定であります。昭和二十八年十二月、アイゼンハワー米大統領は原子力国際プール案を提唱、続いて翌年にはIAEAへの濃縮ウラン百キログラムの提供を声明いたしました。これが、アメリカが平和利用面で世界のイニシアチブをとろうといたしました最初の政策であります。それが当時のソ連の原子力利用の動きに対抗したものであったことは周知のとおりであります。わが国はあわただしくこのアメリカの働きかけに乗ります。二十九年六月、科学者の慎重論を顧みないで、アメリカとの間で六キログラムの二〇%濃縮ウラン受け入れ協定が結ばれました。次いで、この濃縮ウランの使途としてウォーターボイラー実験炉が輸入される、さらに、ウォーターボイラー炉の受け入れ機関として原子力研究所が設立されるという、まことに奇妙な順序で原子力開発のスタートを切ったわけであります。
 これに続いて、さらに混乱がつけ加わります。ウォーターボイラー炉のほか、国産の天然ウラン炉の計画が先立ってすでに開始されていたわけですけれども、さらにアメリカは三十五万ドルの援助つきで日本にCP5型研究炉を受け入れさせることとしたからであります。このため、三十二年には、二十九年協定の一環として、CP5型炉用に四キログラムの濃縮ウラン追加の取りきめが日米間で行なわれました。
 こうして、科学者や国民の声をよそに、アメリカの原子力政策とこれに基づく日米協定が軸となりまして始まったわが国原子力開発は、必然的な結果として、さまざまの技術上、体制上の予盾を生んだのであります。それらは原研に集中的にあらわれてまいりました。ウォーターボイラー火入れ式当時の人権ストといわれた争議、国産一号炉の燃料と重水の見積もり違い、CP5型炉の出力上昇の失敗と手直し、CP5型炉をめぐる安全紛争など、その例は枚挙にいとまがないわけであります。
 しかし、このような中で、わが国が世界に誇る原子力平和利用三原則を確立したということば、きわめて貴重なことであったと考えます。
 さて、二番目の日米協定です。このとき、イギリスはコールダーホール改良型原子力発電炉の売り込みを始めておりました。ソ連も世界最初の動力炉を完成させ、動力炉時代が始まりつつあったわけです。アメリカは急遽原子力潜水艦用に開発した軽水型原子炉を陸上動力用に転用し、世界の動力原子炉のイニシアチブをとろうという政策を打ち出しました。
 わが国では、イギリスの活発な売り込みでコールダー発電炉の導入がきまり、その受け入れ機関として、昭和三十二年、原子力発電会社が発足しております。これと並行して、原子力研究所には軽水型動力試験炉をアメリカから買い入れることとし、昭和三十三年に第二次の日米協定が結ばれたわけです。これまでの日米研究協定というのは日米動力協定と名称が変わりまして、濃縮ウランのワクも二・七トンと増加しました。
 この二番目の日米、日英協定も、大きな混乱をわが国原子力界にもたらしたのであります。当時、安易な動力炉受け入れ政策、コールダー炉の安全性などをめぐりまして、科学者から多くの意見が出されました。たとえば資料の公開、安全審査体制の問題、採算性など、鋭い先見の明ある指摘がなされておりまして、これらは今日もなお生き続けているものであります。しかし、ここでも外交と政治が優先した結果は、今日明瞭にあらわれております。コールダー型炉はこれ一台限りとなり、採算性は問題となっておりません。いずれ近いうちに閉鎖されるということも聞いております。また原研の動力試験炉は建設途上で米GE社とトラブルを起こし、さらに昭和四十三年には研究方針や安全問題をめぐりましてロックアウトが行なわれ、今日なお裁判で争われている状況でございます。しかも昨年夏以来配管のひび割れによって停止したままという現状であることは、きわめて残念というほかはないわけであります。
 三番目が昭和四十三年協定であります。ここで、二・七トンの濃縮ウランワクは百六十一トンに一挙に拡大されました。このときのアメリカの政策はどうであったか。すでに昭和三十六年ごろから、米国では特殊核物質を民有化し、商業用動力炉として軽水炉を全世界に広める、同時に、その燃料を賃濃縮の形で独占的に提供するという政策が準備され始めておったわけであります。昭和三十九年に、アメリカは特殊核物質の民有化法を成立させます。こういう中で、わが国では電力各社が続々と軽水炉導入の計画を発表します。政府は、日米協定の改定に取りかかりました。昭和四十二年にわが国原子力委員会は、昭和六十年に三ないし四千万キロワットという導入軽水炉による発電計画を決定いたします。こうして四十三年に結ばれたのが現在の協定でございます。同時に、わが国でも特殊核物質の、つまり軽水炉燃料の民有化が行なわれたわけであります。
 この四十三年協定は、何をわが国にもたらしたか。まず原子力研究所では、軽水炉は実証済みであるとして、その方面の研究は、安全研究も含めて制約されたわけであります。さらに原研で進めておりました高速増殖炉と新型転換炉の研究まで、このころ発足いたしました動力炉核燃料開発事業団に移されてしまいます。動燃団には産業界が参加いたしまして、軽水炉にかわる自主開発、ナショナルプロジェクトという名のもとにばく大な費用がつぎ込まれます。そして原研は、研究方針の展望を失うことになったのであります。
 しかし、三千万ないし四千万キロワット計画というのは、米国からの導入を急ぐあまり、安全問題、廃棄物問題、環境問題、再処理など、政策的にも技術的にも問題は山積したままでありました。おりから公害問題が全国的にもクローズアップしてまいります。電力会社の原発設置計画に不安を持った住民が各地で反対運動を開始しております。昭和四十六年になりますと、米国のECCS問題などが起きまして、安全問題は国際的規模の論争にまで広がってきているのであります。
 この間、原研では、研究方針の混迷に加えまして安全問題での発言がタブー視され、国産一号炉燃料破損事故を報じた技術者が処分されたり、原子力発電所地元住民からの講演要請に対してさまざまの介入が加えられたり、外部発表が制限されるなど、およそ研究所らしくない自由と進取の気風をそこなう非民主的措置が次々と重ねられてきました。ただいま現在もそういう状態であります。また原研の人員は、昭和四十三年協定以来今日に至るまでほとんど増員されておりません。国民的課題となっている安全研究や基礎研究に支障を来たしているだけでなく、研究者の後継者がいないという深刻な事態を迎えているのであります。
 ここで、これまでの経過を特徴づけてみようと思います。きわめて明確な特徴の第一は、まずアメリカの世界支配の原子力政策があり、これが次々にエスカレートしてきた。第二に、これに基づいてわが国の原子力研究開発路線が定まる。第三に、それを決定づけるものは、そのときどきの日米濃縮ウラン協定によってであったということであろうかと思います。第四に、その結果は、日本の原子力研究と開発に大きな混乱と矛盾をもたらし、自主性、民主性、公開の原則をそこなってきた。しかもこの困難は、原子力の規模が大きくなるにつれて一そう抜き差しならぬものとなり、研究の範囲にとどまらず、国民的な問題にまで拡大してきている、こういうふうに特徴づけることができると思います。
 そこで、今回の四十八年協定に入るわけであります。アメリカは引き続き世界の原子力支配を目ざす政策を軍事、非軍事の両面にわたって進めております。ますます多くの軽水炉を各国に配置し、ますます多くの濃縮ウランを独占的に供給し、エネルギー供給のかぎを握るという路線でございます。ソ連の濃縮ウラン提供やヨーロッパでのウラン濃縮事業計画の開始が一そうアメリカのこの政策を加速しているように見えます。米国がいま進めている民営によるウラン濃縮新工場の計画もその一環でありましょう。
 もう一つ、今日の新しい特徴は、米国のドル防衛策が原子力にも大きく入り込んできておるということであります。昨年七月の日米箱根会談で原発二号機以降も輸入によるということが要求され、また九月のハワイでの会談で、ドル防衛のため濃縮ウラン三・二億ドル、一千億円の繰り上げ発注が行なわれたことも記憶に新しいところであります。
 このような中で原子力委員会は、昨年六月、昭和六十年六千万キロワット計画というものを決定いたしました。なお中央電力協議会の本年三月の発表では、さらにこれが加速されているもようであります。このような路線を本新協定は濃縮ウラン供給という形の外交協定によって将来にわたって拘束する、こういう性格のものであろうと思います。
 以上、あえて申し上げましたこういう事情は、電力会社の方であろうと政府の方であろうと、およそ原子力に携わってきたならば、だれも御存じのことではなかろうかと思っております。
 最後に、私は、このような歴史的な体験に立ちまして、この協定をどう扱うかについての意見を簡単に述べさせていただきます。
 第一に指摘すべきことは、本新協定の大もとであります昭和六十年六千万キロワット計画そのものが、科学者と国民の合意を得ておらない、国会の審議も経ておらないという点であります。そういう状態のままで外交協定が先行して、事実上将来を長く拘束してしまうということは、民主主義の本旨からいってきわめて好ましくないことではないかと思うのであります。
 第二番目に、私たちは、新協定がわが国原子力研究にこれまで以上の困難をもたらすことになるのではないかと心配しております。私たちは、決して建設的苦労をいとうものではありません。逆にどんなに苦労をしてでも、世界に誇れる、国民に役立つ技術的、学問的貢献をしたいと考えているわけでありまして、それだからこそ、これまでの失敗を繰り返したくないのだということを御理解いただければ幸いと思います。
 そこで、私は第三に、次のことを提唱いたしたいと思います。
 まず、新協定の批准はもう一、二年見合わせていただく。その間、各界の衆知を集めて根本からわが国のエネルギー政策を検討し直す。それも、いままでのような政府ベースでなく国会ベースで行なっていただきたい。なぜなら、失礼ながら政府のたくさんの委員会、検討会、懇談会といったものは、どうしても構成が片寄りがちで、科学者と国民の意見と知恵を生かし切れないという問題があるからです。このグループでわが国の自主性を守る、産業を健全に発展させる、原子力を含む科学技術を真に振興する、環境と健康と生活を守る、そういう観点に立って国民的合意の得られる、科学者も納得できる総合エネルギー政策を練り上げる、こういうふうにしていただいてはどうであろうかと思うものであります。その間、新日米協定はしばらく待ってよろしいのではないか。いや、いま急ぐよりも、はるかにわが国にとって建設的結果を得られるのではないか、そう思うのであります。
 なお、この機会に、ぜひとももう二つ要望したいと思います。
 一つは、機密問題のからむウラン濃縮工場問題では、交渉経過なども含めて明らかにしていただく、平和利用三原則を堅持するという立場を厳格に貫いていただきたいということです。
 もう一つは、わが国が率先して核兵器禁止にまっ正面から取り組んでいただきたい、また原子力艦の寄港などもやめていただきたいということであります。
 以上をもちまして私の陳述を終わらせていただきます。(拍手)
#10
○藤井委員長 ありがとうございました。
 次に、藤波参考人にお願いいたします。
#11
○藤波参考人 私は、ウラン濃縮事業調査会副会長の藤波でございます。
 ただいま御審議の対象になっております日米原子力協定の改定議定書の締結は、わが国にとりましてたいへん重要な意味を持っており、かつ必要なものであると考えておりますが、この際、私は、主として濃縮ウランの安定確保という観点から若干申し述べまして、御参考に供したいと存じております。
 わが国の濃縮ウランの需要量は、原子力発電開発の規模と、それからそれに採用される原子炉型式の将来の動向というものによって当然左右されるわけでございますが、ただいままでの見通しでは、昭和五十五年、すなわち一九八〇年には大体四、五千トン、これは分離作業量、SWUという単位で申し上げておるわけでございますが、さらに一九八五年には九千トンないし一万トン程度、一九九〇年には一万五千トンないしはそれ以上になるものと想定されます。
 世界の全体の需要といたしましては日本の需要の数倍、すなわち一九八〇年では三万トン前後、八五年で六、七万トン、九〇年には十万トンをこすものと見られております。現在アメリカには御承知のようにウラン濃縮生産工場の大きなものが三つございまして、これによりまして世界需要の大部分を供給しておるわけでございまして、従来わが国も日米原子力協定のもとにおきましてこの三工場の供給力に依存しておるということは御承知のとおりでございます。この既存三工場の現有能力は、年産にいたしまして約一万七千トンSWUでございまして、現在はまだ稼働率が五、六〇%でありますから相当余分があるわけでございますが、先ほど申し上げました世界の濃縮ウランの需要の趨勢から見ますと、ここ数年を出でずして供給不足が予想されます。
 そこでアメリカのAECは今後約九億ドルの資金を投入をして、いわゆるCIP、CUPと称する設備改良計画、それから出力増強計画を行ないまして、その年産能力を約二万八千トンまで増加させることを進めておるわけでございますが、それでも一九八〇年以前に能力不足を来たす。それまでの間につくりだめしておきますところのいわゆるストックパイルの利用というものを計算に加味いたしましてもなおかつ一九八〇年代の初めには需給バランスがくずれるものと想定されております。
 それで、それから先の増加需要をまかなうためにはどうしても新しい濃縮工場をつくっていかなければならないわけでございますが、先ほど申し上げました世界全体の需要の見通しから申しますと、一九八〇年代の十年間には世界のいずれかの場所に相当大規模な工場を、たとえば年産能力にして九千トンぐらいの工場にしますと十工場あるいはそれ以上もの工場を次々と運転開始していかなければ間に合わないということに相なるわけでございます。これは何しろ特殊な技術を必要とするものでありますし、またばく大な資金と非常に長期にわたる準備期間、建設期間を要する事業でありますだけに種々困難な問題を含んでおるわけでございますが、各国とも将来のエネルギーの基本に関する問題としてその対処策に慎重かつ積極的な取り組み方をしておるのが現状かと存じます。
 アメリカにおきましては、政府はAECの既存三工場の改良拡充計画につきましては、先ほど申し上げましたように責任を持って遂行をして、その能力を二万八千トンぐらいにまで持っていくということを推進しておりますが、第四工場以降の新設につきましては原則として民間企業で行なわせる、こういう方針を打ち出しまして、目下その線に沿いまして種々の行政指導をしております。これを受けまして幾つかの企業があるいは企業グループが将来の民営濃縮事業に関する可能性につきまして調査検討を始めておるのでございます。
 なお、これに採用します技術方式につきましても、必ずしも実証された既存のガス拡散法技術のみでなく、将来を見越しましてガス遠心分離法の開発研究にも活発な動きを示し出してきております。
 しかしいずれもまだ流動的でございまして、ここ一両年の推移を見ないと的確な判断はむずかしい状況でございます。
 フランスは現在は小規模なガス拡散法工場、四百トン程度の工場しか持っておりませんけれども、ここでの技術経験をもとにいたしまして、大規模工場建設のための開発研究を進めてきておりまして、この技術を使いまして欧州の中に一九八〇年完成目標の濃縮工場を建設するということにつきまして、欧州各国と昨年来共同調査グループ、これをユーロディフと称しておりますが、こういう調査グループをつくりまして調査検討を進めております、御承知のとおりかと思いますが。しかし最近、このグループの中から英国とか西ドイツ、オランダの三国が脱退するというような動きもありまして、これまた流動的であると思われます。
 英国、西ドイツ、オランダの三国は一九七〇年三月に遠心分離法の開発並びに共同工場建設に関しまして三国協定を結びまして、現在小規模の、二十五トン程度でございますが、パイロットプラントの建設を進めております。引き続いて一九八〇年までには二千トン程度、一九八五年までには約一万トン程度の能力の共同工場を建設することを目標にして進んでおる現状でございます。
 わが国におきましても、御承知のように遠心分離法による国産濃縮工場の建設を目ざしまして、動燃事業団によりましてその研究開発がナショナルプロジェクトとして精力的に開始されましたことはたいへん心強いことと思いまして、できるだけ早期にその実用化がされるように望むものでございます。
 しかしながら、実用規模工場の稼働は今後の研究開発やパイロットプラントが計画どおり進んだとしても、おそらく一九八〇年代の半ばになるものと思われます。したがって、それまでの間の対策としてどうしても国際協力による供給源の確保を考える必要があるわけでありまして、原子力委員会におきましてもかねてからその方向を打ち出されておりますし、われわれ民間調査会でもその方針を受けて、国際濃縮工場の可能性について種々調査検討を進めておるわけでございます。
 ここで一つ留意しなければならないと思いますことは、これらの計画の実現には非常に長年月を要するということでございます。たとえばアメリカ国内に年産九千トンSWU程度のガス拡散法による濃縮工場を新設するというようなことを考えた場合、その建設には十数億ドルの資金を要するばかりでなく、建設期間も六年ないし八年という長期間を要します。その上に工場運転には約二百五十万キロワットの、しかも安定した電力供給を確保する必要がありますので、予備発電機をも含めると約三百万キロワットぐらいの発電所を別途新設しなければならないという必要があることを考え合わせますと、それらの立地選定をはじめとするいろいろな調査の期間を合わせまして、工場完成まではこれから八年ないし十年を見込んでおかなければならないのでございます。
 ではかりに遠心分離法による工場を考えた場合にはどうなるかということでございますが、確かに拡散法技術に比べますと、所要電力が十分の一程度でありまして、したがいまして、電源に対します配慮は格段に少なくて済むということもございますし、工場建設期間も多少短くて済むという可能性はございますが、一方、この方式は御承知のようにまだ世界的に見ましても研究開発の途上にありまして、具体的な工場設計を行なうに十分な実証的データはあと両三年を待たないと出てこない、こういうことでございます。
 したがいまして、いずれにしても国際工場計画が今後軌道に乗ったとしても、それが相当の供給力として期待できる時期は、早くて一九八〇年代の初期になると考えておかなければならないと思います。でありますから、それまでの間のわが国濃縮ウランの需要増加に対しては、やはり引き続きアメリカのAECの供給能力、すなわち先ほど申し述べましたCIP、CUP計画というものによりまして能力増加が予定されておりますこの既存三工場による賃濃縮に期待しなければならないと考えます。
 その意味におきましても、ただいま御審議中の日米原子力協定の改定議定書の締結は、わが国のエネルギー政策上きわめて重要な意味を持つものであります。したがいまして、その早急な御審議が望まれているところであると考えております。
 以上、簡単でございますが、私の陳述を終わります。ありがとうございました。
#12
○藤井委員長 ありがとうございました。
 次に、大島参考人にお願いいたします。
#13
○大島参考人 私は東京大学の原子力工学科の大島でございます。今回の日米協定の改定につきまして、私は大学での教育研究に携わっている者として、またエネルギー問題に関心のある者として、私の意見を申し述べたいと思います。
 今回の協定につきましては、私はこれはたいへんけっこうな改定であると思います。そしてこれがここで審議、承認されるということを望む次第であります。
 その理由を申し上げますと、本日米協定は幾つかの点がございますが、その一つの柱嘱研究開発における日米の協力でございます。それから第二の点は、ウラン濃縮に関する、すなわち濃縮ウランの供給に関する問題がございます。それから第三に、保障措置の問題がその中で触れられておると思います。
 それで、まずエネルギーの問題を考えますと、現在各方面で石油問題に関係しますエネルギー危機がいろいろいわれておりますが、石油供給に関する非常な不安定要素が拡大してまいりますとともに、原子力に対するエネルギー供給の依存度が高められなければならない。またそれによってエネルギー供給の安定というものが、原子力の技術開発及び主として発電が最初でございますけれども、さらに多目的利用その他を含めて、原子力エネルギーというものが将来のエネルギー解決の現在われわれが持っております非常に具体的な手段としてのかぎであるということが言えると思います。
 ひるがえってわが国の状況を考えますと、短期的に、わが国のエネルギー問題というものは石油に依存しているということは御承知のとおりでございますが、その間におきましても、原子力というものはわが国が持っております一つの安定供給の柱としてきわめて重要な役割りを果たしているわけであります。一九八〇年以降のエネルギー供給における原子力の重要性はすでに強調されておりますけれども、今回の協定の中の改定の数字にもございます約六千万キロワットという数字、すなわちほぼ一九八五年ごろのわが国の電力供給におけるこの割合は、約二五%を占めるという数字でございます。これは一九八〇年代のエネルギー供給に対する非常に重要な役割りを果たすとともに、現在われわれが石油問題あるいは石油の供給の問題におきましても、将来わが国が原子力という一つの手段を持っているか持っていないか、あるいはこの手段に依存できるかどうかということは、わが国が石油の供給を確保するためのいろいろな意味でのいわゆるバーゲニングパワーと申しますか、それに対する一つのわが国の立場を強める重要な要素であると私は考える次第でございます。
 その意味で私どもは、原子力の問題を単に原子力という立場ではなくて、石油問題その他の国際的なエネルギー供給の問題の全体のワク組みの中で総合的な観点からこれを判断しなければいけないと思いますが、その意味において、今回わが国における主として濃縮ウランの供給に対する一つのめどがついてきた。そのめどのつく意味でのこの協定が結ばれるということは、きわめて重要な意義を持つものであると考える次第であります。
 次に、さらに長期的問題を考えますと、これは一にかかって原子力における研究開発というものが重要な役割りを果たすと考えられます。わが国におきましても原子力の研究開発は、新型転換炉、高速増殖炉、あるいはウラン濃縮、また最近は高温ガス炉、核融合炉といったものについての研究開発が進められておりますが、その重要な役割りを持ちます高速増殖炉は、一九八〇年代の中ごろに実用化が期待されているわけでございます。わが国の研究開発計画もこの線に沿って進んでおるわけでありますが、もし高速増殖炉が技術的にあるいは経済的に実現いたしますと、よくいわれておりますように、ウラン資源の量は実際的にはほとんど無限であるというような状況が出てくるわけであります。
 幾分具体的に申しますと、現在の軽水炉において利用されておりますウランの利用率というのは一%以下でございますけれども、高速増殖炉になりますと、それは九〇%以上のエネルギー利用率になります。そのことは、ウランの現在の価格が一ポンド当たり六ドルとか八ドル程度の価格でございますが、その価格が十倍あるいは五十倍の価格をもってしても十分に経済的に成り立つという可能性が出てくるわけでありまして、そのことは世界のウランの実際に利用可能の資源量をほとんど百万倍以上にも増大するといわれている次第であります。でありますから、この高速増殖炉が解決いたしますれば、そのことは少なくとも物理的には、いろいろなほかの制限条件がございますけれども、エネルギー供給に対して非常に大きな道を開くわけであります。
 また核融合炉に関しましては、ほぼ現在の状況と申しますのは、最近きわめてこの実用性の見通しが明るくなってまいりまして、これはまだ核融合炉というものがエネルギーを実際に生産するということには成功はしておりませんけれども、非常に楽観的な見通しを持ちますと、一九九〇年、二〇〇〇年代に核融合の実用化も期待できるというような事態であります。
 で、このような将来のエネルギーというものは、われわれは技術的にこれを解決する可能性を非常に大きく持っておるわけでありますけれども、それまでの時期、すなわち一九八〇年代の初期までの時期は、現在の軽水炉による濃縮ウランを燃料とする原子炉がその重要な役割りをになっている次第であります。そのために、今回の協定におきますウラン濃縮あるいは濃縮ウランというものは、われわれが技術的に濃縮ウランに依存しないでほとんど無限にエネルギーが供給できるというような道を開くまでの間のきわめて重要な役割りを持っているわけであります。その意味で、わが国がエネルギー問題の基本としての原子力というものを考えますときに、濃縮ウランの供給が可能であるかどうかということがきわめて重要な意味を持つということが言えると思います。
 そのような観点で考えますと、わが国としては今後の原子力あるいは原子力における国際協力というものはいわゆる技術、あるいは単なる原子力という立場のみではなくて、非常に広い意味での国際的なわが国の今後の進め方という政策の基本として考えるべきものではないかと思います。
 ただ、私は今回の改定が非常に望ましいと申しましたけれども、それには一つ重要な条件がございます。
 今回の改定の内容をよく見ますと、一つは、いままでの協定と異なる点は、今回の改定においては濃縮ウランの供給はアメリカが保証していない。一つのワクは設けてございますけれども、その供給はすべて契約ベースで進めるという内容になっておるということでございます。
 それから第二の点は、これもいままでは第三国への供給に対する制限がございましたけれども、条件のもとにおいてきわめて自由になっているという点がございます。
 この二点は、実はわが国の側から見ますと、いままでの協定においてはアメリカからの供給に非常に制約されているものが、今回は契約ベースになりましたために、日本としてはきわめて大きな自由度を得たわけでございます。
 しかしながら、これを裏から考えますと、実はその契約ベースと申しますのは、今回のアメリカの原子力委員会の供給条件その他がたいへんきびしくなってまいりましたが、そのことはアメリカの供給がいわゆる商業ベースと申しますか、経済ベースでの供給ということに移ってきているという点であります。またそのことは、わが国のほうから見ますと、いままでアメリカだけに依存するという体制で進んできたわけでありますが、むしろ今回の協定の結果、われわれが日本としての自主的な判断に基づいて一つの行動をとらなくてはいけない。またそのことによって初めて今回の協定によってわれわれの今後のいろいろな、いわゆるオプションと申しますか、いろいろな選択を生かすことができるのではないかと思います。
 その意味で、私はこの協定が有効に生かされるためには、日本の原子力政策あるいは海外との国際協力というものが、いままでのいわば受け身の立場で進んできたものから、日本としての最も望ましい最適な方向を積極的に、また自主的に進めるという、いわゆるイニシアチブをとって進むという体制に行かなくてはならないし、そのことによって初めて今回の協定の意義が生かされるのであると考える次第でございます。
 それに関連いたしまして一言申し上げますと、現在の国際協力あるいは原子力の問題と申しますのは、たとえば濃縮ウランにおきます日米共同事業あるいはヨーロッパからの呼びかけその他におきましても、これは単なる商業的な問題ではなくて、国としての相当多額の海外協力投資というものが必要になってまいります。また後進国と申しますか、あるいは発展途上国との協力におきましても、発展途上国はわが国に対して非常に積極的な意味での研究開発及び資源開発に対する協力を求めております。その意味で、私は今後のこういった原子力の問題は、技術あるいは商業的な問題ということよりも、むしろわが国が今後のこういう問題に対する海外に対する積極的な協力の投資というものをも含めて考えるべき問題であると考える次第でございます。
 最後に保障措置の問題について一言だけ触れますけれども、今回の協定におきます保障措置問題は、これをIAEA、国際原子力機関の核拡散防止条約に伴う新しい協定に移管するという趣旨であると思います。この協定に関しましては、わが国は国際原子力機関と多年にわたりましていろいろ交渉しておりまして、現在の段階ではわが国の希望が相当満足すべき形で受け入れられており、その基本としては、ユーラトムその他の国々と同等の保障措置を受けるという形にほぼ固まりつつあると判断いたしますが、その場合に非常に重要なことは、その条件を実現しますためには、わが国としての国内的な保障措置体制の整備、そういった形で自主的な査察あるいは保障制度というものが十分に生かされる体制をつくるべきであるということが言えると思います。この協定に関連しましてその点も一言申し述べたいと思う次第でございます。
#14
○藤井委員長 ありがとうございました。
 次に宮崎参考人にお願いいたします。
#15
○宮崎参考人 明治大学法学部の宮崎でございます。
 外務省が派遣いたしました国際エネルギー問題調査団、か今月の十八日に発表した中間報告にもございますけれども、エネルギー資源の問題はいよいよ深刻でございまして、それも今後相当長期にわたるものだと考えられます。石油資源の枯渇と価格の暴騰に伴いまして、今後原子力エネルギーの利用が一そう盛んになるというふうに考えられるわけでございます。
 わが国をはじめアメリカ、イギリス、西ドイツなどにおきまして、近来新しい発電所の建設計画の大半は、原子力発電になっておりまして、二〇〇〇年代には発電の五〇%は原子力発電になるというふうに推定されております。しかも最近は原子力発電の動力炉の大容量化が進みまして、配付されております資料の日米原子力協定及び改正議定書に関する交換公文の附表を見てみますと、「日本国の濃縮ウラン動力用原子炉計画」というものの中に、建設中の福島六号ほか三基、それから計画中の福島第II一号ほか二基、いずれも一千メガワット、つまり百万キロワットをこえる大型のものになっております。
 各国の核燃料、濃縮ウランの需要増大に伴いまして、先ほど参考人からも御説明がございましたが、一九八〇年代の初頭には需要が供給を上回るであろうというふうにいわれております。
 わが国は、昭和四十三年の日米原子力協定によりまして、三十カ年にわたりアメリカから二万メガワット、つまり二千万キロワットの発電量に応ずる濃縮ウラン三百二十八トンの供給を受けることになっておりましたが、いま御審議の対象になっております改正議定書によりまして、五年延長され、また提案理由の説明によりますと、濃縮ウランの供給限度量を大幅に引き上げるということであります。これも御指摘になりましたが、第九条のAによりますと、六万メガワット、つまり六千万キロワットに相当する電気出力の原子炉の核燃料を維持するのに必要な量というふうになっております。ただ、これは御指摘になりましたように、第七条によりまして、従来ははっきりと約束されておりましたけれども、それが商業ベースといいますか、そういうことでそれ以内ということになっている点がございますが、いずれにいたしましても、供給限度量を引き上げるというのでありますから、一応発電用の原子炉に必要な濃縮ウランの供給安定確保の点から申しますと、田中、藤波両参考人が申されましたように、今回の議定書は歓迎すべきもののように思われます。しかし、日米原子力協定及び今回の改正議定書に関連をいたしまして、問題がないわけではないというふうに考えますので、以下若干意見を申し述べたいと思います。
 第一は、核燃料をアメリカにのみ完全に依存する体制からの脱却の点であります。わが国は、イギリス、カナダ、フランス、オーストラリアとの間にも原子力協定を結んで、原子力の技術、情報、専門家の交流などを約束しておりますけれども、当面の核燃料、つまり濃縮ウランは一〇〇%アメリカからの輸入入手によっているわけであります。アメリカの濃縮ウランの工場の能力は、八年ないし九年後には限界に達するといわれておりますし、ことしからの濃縮ウランの供給契約方法をアメリカがアメリカに有利に改定したというような様子を見ますと、この完全な依存体制というものにいつまでも日本がついておるということについては問題があると思います。
 伝えられるところによりますと、日本原子力産業会議が派遣しました訪ソ原子力視察団に対しまして、ソビエトが他国よりも有利な濃縮ウランの委託加工を引き受ける、また高速増殖炉の技術を開放する、核融合炉の研究開発の用意もあるという意向を示したと伝えられております。またフランスやアメリカとの間の濃縮ウランの共同工場の建設計画も検討中だというふうに承っておりますが、そのような点から申しまして、核燃料供給の多角化、自主化、それから高速増殖炉の開発、濃縮ウランの国産化の推進ということが一そう重要になってくるというふうに考えられるのであります。
 第二の点は、原子力公害の問題であります。環境保護とか公害追放の問題は、国内的にも国際的にも大きな問題になっております。原子力公害としては、一つは、排水、排気中に含まれて放出されるところの放射性物質、二番目は高熱の冷却水放出、三番目に放射性廃棄物の処理の問題があると思います。
 一九七〇年十月に国際原子力機関がニューヨークの国連本部で開催いたしました「原子力発電所が環境に与える影響」というシンポジウムによりますと、原子力発電に伴う公害というのは希薄であって、その点をむしろPRすべきであるという意見も有力だったように聞いております。そして、先ほどの参考人から述べられましたように、現在の施設においても原子力発電所からの排水、排気などによって付近の住民に急激な放射能障害を起こすようなことはないというふうに配慮されているようでありますけれども、原子力発電の原子炉からの排水中には、トリウム、放射性コバルト、鉄、マンガン、ヨード、ストロンチウム、排気中には放射性キセノン、クリプトンなどが含まれておりまして、微量の放出は不可避だというふうにされております。その放出基準をさらにきびしくすべきであるという要求は今後一そう高まってくるものと思われるのであります。
 この点で注目されるのは、一九七一年七月二十三日にアメリカのコロンビア地区特別裁判所が、住民及び自治体からアメリカ原子力委員会及びカルバート・クリフス原子力発電所を相手取って起こした訴訟におきまして、住民側の訴えを認容し、アメリカ原子力委員会が国家環境政策法の精神に従っていないというふうにいたしまして、原子力委員会に対し、原子力発電所の許可認可に際しては、放射能だけではなくて、熱を含む環境への影響要因の規制を厳重にするよう求めたのであります。その判決の結果、アメリカにおきましては、百三基の原子力発電炉の許認可に重大な影響を与えたのであります。
 わが国におきましても、先般、原子力船むつの原子炉の火入れにつきまして住民運動が起こりましたけれども、もしこの公害対策、PR問題をおろそかにいたしますと、今後原子力発電所の建設というものは重大な障害に突き当たるということが予測されるのであります。
 三番目は、放射性の廃棄物の処理の問題であります。廃棄の方法といたしましては、一つは海洋投棄、二番目は地下の岩塩層への埋没、三番目は地下への圧力廃棄が行なわれているのでありますけれども、海洋投棄につきましては、昨年ロンドンで作成されました海洋投棄規制条約四条、十二条と付属書の1、6によりまして、放射性廃棄物質の投棄は禁止されております。わが国の環境庁も、条約を高く評価し、汚染防止に万全を期し、条約の趣旨を全うするように努力するというふうに環境庁長官の談話を発表しております。
 地下への埋没や圧力をかけて廃棄をするという点につきましては、いずれ地上に汚染をもたらすというふうにいたしまして、各国からきびしく批判されているわけでございますが、わが国のように国土が狭く人口の多い、土地利用率が非常に高いというところにおきましては、原子力開発が進むに従いまして、また濃縮ウランの輸入がふえる、発電の実際の必要性が高まるということに応じまして、放射性廃棄物がたまり、早晩その処理が大きな問題になるであろうということが予測されるのであります。
 第三は、原子力損害の補償問題であります。原子炉の設置にあたりましては十分な安全対策がとらるべきことは当然でございますけれども、国際的にも、たとえば原子力船運搬者の責任に関するブラッセル条約、それから原子力事故の民事責任に関するウイーン条約、ヨーロッパ諸国におきましては原子力の分野における第三者損害賠償責任に関する条約がございます。それに応じまして、わが国でも昭和三十六年六月に原子力損害の賠償に関する法律、原子力損害賠償補償契約に関する法律が定められ、昭和四十六年にはそれが改正されまして、賠償措置額を五十億円から六十億円に引き上げ、原子力船については事業者の責任限度を三百六十億円を下らない額というふうにしておりますけれども、これは西欧諸国の、たとえばドイツなどにおきましてはもっと高い額がきめられておりますし、最近における経済情勢なども考え、また原子力発電所の規模の増大などを考えまして、それが適切であるかということをさらに検討される必要があるというふうに考えるのであります。
 最後に、核拡散防止条約との関係について申し述べたいと思います。
 わが国は、昭和四十五年の二月三日にこの核拡散防止条約に署名いたしましたけれども、批准はもちろん、国際原子力機関との間の保障措置協定も結んでいないのであります。わが国は、先ほどの核三原則もございますし、また人権の尊重ということにつき、また平和主義ということについて、憲法をはじめ国会においても、その意思を表明しておられるわけでございますけれども、わが国がいたずらにこの核拡散防止条約の批准をおくらせるということは、国際的にも疑惑を招くということになると思いますので、その批准問題についても国会においてよろしく御検討いただきたいと思うのであります。
 以上簡単でございますけれども、私の意見を述べさせていただきました。ありがとうございます。
#16
○藤井委員長 どうもありがとうございました。
 これにて参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
#17
○藤井委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石野久男君。
#18
○石野委員 参考人の皆さんにはたいへん貴重な御意見を承りましたが、最初に大杉参考人にお尋ねいたしますが、各参考人の方々、それぞれ御意見がありました。特に田中参考人とか藤波参考人等から、やはりこの協定が早急に結ばれるべきであるというような御意見もありましたが、大杉参考人は、なお一、二年延期して総合エネルギー政策の確立を国会ベースで検討した上でやってもいいじゃないかという御意見でございました。他の参考人の皆さんが、現在の原子炉の燃料政策の上からいきましても、世界の資源の上からいっても、早期にこれを確保するようにしなければいけないと言われているときに、大杉さんからそういうお話があったわけでございますが、日本の原子力発電、ないしはまた原子炉というものの開発という側面からして、もう一、二年あとでもいいという御所見をお立てになられた――大杉さんは具体的にはもうこれに専門にかかっている方でございますが、やはり他の参考人の方々の御意見等にらみ合わして、なおそれを主張なさる問題点はどういうところにあるのでしょうか、それが一つ。
 それからいま一つは、原子力問題についての後継者の育成というものは非常に不安定になっているという御意見でございましたが、そういう問題についてなおもう少し突っ込んだお話をちょっと聞かしていただきたいと思うのです。
#19
○大杉参考人 私はエネルギー問題の専門でも何でもありませんで、原子力研究所で働いているという立場で申し上げたわけでございますけれども、先ほど述べてきたことは、いままでの日米協定の結果、いろいろのひずみがこれまで現実に国内的に発生しておるということでございます。
 一つは、原子力研究の分野において、健全で自主的な研究開発というものがなかなかうまく進められない、研究者、技術者の民主的権利というものがさまざまの制約を受けるという実態が生じております。これは実際に原子力をこれから国民生活に利用するということを考えました場合に、技術面でも発展をゆがませることになりますし、また純学問的に見ましても、日本の学術の発展ということにマイナスの影響を与えてきたという実績が一つあるからであります。
 また安全問題につきましては、すでにいろいろなところでいわれておりますので申し述べませんけれども、これについてもいろいろな論争がある、それからエネルギー問題全般につきましても、国民の間でいまの日本列島改造に対していろいろな反対意見が出ておる、こういう状態、国民的な合意がない状態で、外交的な協定だけで事態が進んでいってしまう、しかもこれが将来のことまで決定してしまうということになりますと民主主義の観点からいっても非常にぐあいが悪いのではないか。ですから、まずその合意を、みんなが納得できるものをひとつつくっていただきたいということが先決ではなかろうかということでございます。
 それからもう一点の原研の定員の問題でございます。これは昭和四十三年以来ほとんど増員になっておりません。それでたとえば平均年齢がだんだん上がってまいりまして、普通の研究室では三十代の後半から四十をこえる人たちというものがたくさんおりますけれども、若手がさっぱりおりません。数年に一人くらいの補充が一研究室でできればいいほうではないかというふうに思われます。もちろん日の当たっている研究室では若い人たちがずっと来るわけでございますけれども、基礎的な部門というところでは、いわゆる高齢化というものが進んで非常に深刻な状態になっているということを申し上げたいと思います。
 なお、これはいわゆる公務員の一律定員削減というのが原子力研究所にも適用されまして、減員というのが行なわれるわけでございます。それに増員を足しますという形で、結局プラス、マイナス相殺をいたしましてゼロになる。たとえば今年度にしましても例のECCSあるいは冷却水の破断の実験というものが本格的に始まり、あるいはNSRRという研究も始まるわけですけれども、こういう大きな研究が始まりますのに、原研全体の増員はたった二名という状況でございます。
#20
○石野委員 田中参考人にちょっとお尋ねしますが、私ども率直に申しまして原子力問題について技術屋ではございませんから、あまり突っ込んだことはわかりませんけれども、炉の開発なり原子力発電というもので一番配慮しなくちゃいけないのは、安全性の問題だと考えておるのです。安全性の問題について、実は参考人は安全性については心配ないということをはっきりと申されたんです。きょうは東京電力の副社長というお立場ということよりも電力業界を代表されておるわけなんでございまして、実はこのことについて、参考人のおことばではあるけれども、どうもそのとおりに聞きおくというわけにはいかない。
 実は二、三日前に、私は敦賀へ参りまして、先ほど参考人もおっしゃられたように敦賀の発電所を見てまいりました。特に今度、三年余の経験を持っておる炉について、いわゆる蒸気発生器のところで細管の事故の問題を見てまいりました。この炉のごときは三年余たっておりますけれども、稼働時間はおそらく五〇%になるかならないかというような事情だと思うのです、ずっと引き延ばしの日数でいきますとですね。特に昨年の五月でしたか、細管の故障が出て、それの調査に六カ月かかり、百十本の細管の盲栓の工事をやって、それから昨年十二月の十二日でございましたか、その後の炉をまた稼働させまして、ことし三月十五日に定検に入った。この間まだほんとうに三カ月たっていませんが、その定検に入った今日まだ、三十七本の故障個所を見つけて、なおその後安全を期するために、八千八百本の細管のうちの千九百本に及ぶところのいわゆる盲栓工事をやっておるわけです。こういうような事情は安全性を期するためにやっておるのでございましょうから非常にいいことだと私は思っておりますが、それはまた同時に炉のいわゆる発電量の問題からいえば、約二割の蒸気発生器におけるところの必要な部分を閉じるのですから、これは能力は出てこないだろうということは、しろうとが見たってわかるのです。ところがいま田中参考人は、実際に安全性はだいじょうぶだ、こう言っておるし、それからまた関西電力の当事者は、これでもウエスチングハウスのほうでは一〇〇%稼働はできます、通産省でもそれは十分保証します、こう言うのですね。しかし二〇%の遊びを持っておったものを全部遊びをなくしてしまって、これがこれから後寿命としての三十年間を稼働できるかどうか。だれが考えたって安全とは考えられない。もしこれを安全運転しようとすれば、また二割か三割の遊びを残したものの発電しかできないだろう。三十四万キロワットの発電はおそらくもう二十万キロワットくらいしか出やしないのじゃないだろうか、われわれはそう思っておるのですよ。だけれども、それでもあえて参考人はこれらの問題について安全はだいじょうぶだ、こうおっしゃっているのですが、これはほんとうに安全性の問題について真剣にお考えになっての発言なのだろうか。それとも経営者として何とかして皆さんにそう愚思ってもらいたいからいっていることなのか。あるいはまた、何でもかんでもやはり炉の開発の問題に政府の協力を、あるいは国会の協力を求めようとするためのもの言いなのか、私はちょっとその点は疑義を持ちますし、また不安を感じるのですが、率直な参考人の御意見をひとつ聞かしていただきたい。
#21
○田中参考人 ただいま石野先生から敦賀の発電所につきまして、ごく最近の状況を御視察の上、御発言がございました。私どもももちろん敦賀の状況については一応電気事業連合会の中である程度の報告は存じておりますが、もちろんこれは――先ほど先生から、電気事業者としてきょうは出席であるから、これについてどう考えるかというお話でございますが、確かに稼働率につきましては、他の現在運転しておりまする発電所が六六、七%、さらには良好なものは七二ないし七三%という稼働率を持っております。これに対しまして、ただいま石野先生が御指摘になりました原子炉は五十数%ということでございまして、確かに稼働率が悪いのでございます。
 また、私、電気事業者でございますけれども、他の会社の発電所のことでございますので、きわめて詳細な点はよく存じませんが、いまのパイプを逐次つぶしていく、そして出力が下がるであろうというお話でございますが、私ども承っておりまするところは、ただいま先生がお話しいただきましたように、メーカーとしても会社としても、計画出力がいま直ちに下がるということはないというように聞いております。将来、敦賀の炉がどういうふうになっていくか、あるいは場合によったら相当の大修理を必要とするということもあるいはあるかもしれませんが、その辺のところにつきましては私十分に聞いておりません。しかし、この安全性の問題について直接どう結びつけたらいいかということでございますが、先ほど先生のお話がございましたように、電力会社としてはやはり最善の修理点検をいたしまして、そして安全確保をはかるという努力はしておるわけでございますので、一時的にあるいは出力が下がりましても、修理によってこれを改善し、また安全性の面で地域のお方に御心配をかけるということがないという状況のもとに運転することができると私は考えております。そのように存じますので、一応まず原子力発電所全体、すべての発電所に対して考えますと、安全であるということを私は確信していると先ほど申し上げた次第でございます。
 以上でございます。
#22
○石野委員 時間が二十分しかありませんから、ほとんどなくなりますが、今度の協定は、参考人の方々が言われているように、アメリカとの間に新しい協定を結ぶことによってある面では自由な線も出てくるかもしれませんが、しかし、他の面においては契約の側面に非常にアメリカの強引な、たとえば価格決定の問題にしましても、あるいは契約の側面においても非常に強引な線が出てくると思うのです。参考人の方もお話があったように、濃縮ウランについて日ソの間に協定が結ばれるかもしれない。あるいは外務大臣は近いうち日ソの原子力協定の問題を話し合いをする用意をしているのだということも聞いております。あとで外務省のほうからもそのことについてお聞きしたいのですが、参考人の皆さんにお聞きしたいことは、やはり日米の原子力協定が単にアメリカに一〇〇%依存するという形から脱却するという自主的な開発と自主的な濃縮ウランの燃料を確保するという意味で、この協定を続けることがいいとお思いになられるかどうかということを各参考人の方々からお聞かせ願いたい。
 それからいま一つは、特に大島参考人にお尋ねしたいのですが、一九八〇年代初期のころまではどうしても軽水炉に依存すべきだろうというお話でございました。九〇年代になればいわゆる高速増殖炉だとかあるいは核融合の問題も実用化の方向へ徐々に入ってくる体制だから、こういう所論でございましたが、そういうことを踏んまえていきまして、三十年間といいますと二〇〇〇年をこえる、そこまで一ぱいですから、そういう立場からしまして、この協定、日本とアメリカとの間の原子力協定の持つ規制といいますか、そういうものを考えてみました場合に、これは少しきつ過ぎはしないかというふうにはお考えにならないかどうか。そういう点を率直にお聞かせ願いたいと思います。時間があまりありませんので、ひとつ簡単にお願いします。
#23
○藤井委員長 参考人にお願いいたしておきますが、お答えをひとつ簡単明瞭に願います。
#24
○田中参考人 お答え申し上げます。
 先ほど石野先生からソ連のお話がございました。まだ原子力産業会議から正式に発表はございませんが、一応参加した者から、あの新聞に出ている濃縮ウランについてのソ連側との話し合いについて、私聞いておりますが、ただ将来にわたっては別といたしまして、当面ソ連の濃縮工場の設備、容量、供給力等については何ら情報もございませんし、その濃縮工場の場所すらもわからないというのが実態でございます。それで、先ほど他の参考人からもお話がございましたように、ヨーロッパ諸国においても濃縮技術の開発を相当進めており、また核保有国であるフランスあるいはイギリス等は濃縮工場を確かに持っておりまして、これは私も一昨年実際に工場を見学してまいりました。しかしながら、これらにおいては今後八年程度の時間をかけまして、あるいはさらにそれよりも長い時間をかけまして、真の商業用の濃縮工場をつくらない以上、日本がこれに依存するということはもちろんできないところでございます。
 今回のアメリカとの協定におきましては、アメリカはその供給力並びに世界における需要等を精密に調査をいたしまして、そしてわが国との協定を結んだわけでございます。日本としては、これをぜひ私として御承認いただきたいと申し上げたいことは、この協定によって初めて本年以降必要とするウランが確保できるということと、もう一つは先ほども陳述で申し上げましたように、他の国あるいはアメリカの国内も含めまして、世界各国の需要者から相当契約の申し込み塾が殺到するのではないかということでございますので、簡潔に申しますれば、ぜひ今回この協定を御承認いただきたいということをお願い申し上げる次第でございます。
 以上でございます。
#25
○藤井委員長 参考人に再度お願いいたします。質問の委員の方の手持ちの時間がきまっておりますので、できるだけ簡単にお願いいたします。
#26
○大杉参考人 先ほども申し上げましたとおり、いま急いでこの新協定を結ぶということば適当でないというふうに考えます。
#27
○藤波参考人 先ほど私将来のウラン濃縮事業について申し上げましたが、一九九〇年まで申し上げましたが、それ以降もまだまだふえるという見通しを立てております。かりに高速増殖炉が入ってまいりましても、それがきいてくるのは一九九〇年になってから徐々にきいてくるということでございますので、どんどんふえてくる。その場合に、一方国産工場というものが一九八五年くらいからでき始めましても、一度に多量はできませんで、逐次追加されていく、こういうことでございましょうから、その時点に、国産工場開始の時点に、いままでの賃濃縮契約等がとたんになくなってしまうということでは、そこにそごを来たすということでありまして、おそらく将来は、二〇〇〇年くらいまでの間は、そのアメリカとの協定に基づく取得とそれから国産工場あるいは国際工場というものの三つが並列して供給力として期待されるということではあるまいかと存じております。
#28
○大島参考人 簡単に申し上げますと、第一の点について、私は今後の原子力というのは、日本が自主的な一つのしっかりしたベースを持っていくべきだと思うわけですが、その意味において二つの点、すなわち国際的には協力という問題と競合という問題が二つあると思うのです。その点で私は濃縮ウランに対してもなるべく供給源を多様化するということはきわめて重要なことだと思いますが、本協定の場合に、その意味では私はこれが縛られない形であるという点は、日本にとってある意味で、アメリカの契約内容その他が経済的なベースに基づいて非常に最近きびしくなっているという点で、非常に困難な状況に直面する可能性があると同時に、また逆にいいますと、日本が自主的な一つの政策を打ち出せる一つの基盤になっているということで、これはたての裏表と申しますか、その意味で私は今回の協定は自主的な今後の政策にとっては望ましい方向だと思うわけであります。
 それからもう一つ期限の問題に対しては、私はやはり一九九〇年代というのは現在から見ますと非常にいろいろな可能性をはらんでいる時代であると思いますので、その点で私はこういう条約あるいは協定というものの技術的な内容は存じませんけれども、いわゆる研究者という立場から申しますと、現在八〇年代についてはほとんど見通しはついていると思いますが、九〇年代の原子力供給の体系というものについては、まだわれわれとしては予測はできないというふうに感じる次第でございます。
#29
○宮崎参考人 簡単に申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、私としてはアメリカに対する完全な一〇〇%依存ということには反対でございまして、それを早急に抜け出すために、供給源を多様化する、また高速増殖炉を開発をする、日本の工場を建設するという努力を早急に進めるべきだと思いますけれども、それには日にちを要すると思いますし、本議定書は必ずしもこれによって買うということを義務づけられているわけではないと思います。それに基づくところの商業的な供給契約につきましては、何か解約金を増額するとかいろいろな問題で困難な点があると思いますので、その運用については十分に考えていく必要があると思いますけれども、本協定は当面必要であるというふうに考える次第であります。
#30
○藤井委員長 柴田睦夫君。
#31
○柴田(睦)委員 参考人の皆さんには御苦労さまでございます。時間が非常に制限されておりますので、申しわけありませんが、簡単明瞭にお答え願いたいと思います。
 まず田中参考人にお伺いいたしますが、昭和六十年までに六千万キロワットの契約をするということになっておりまして、これは電力業界でこういう計画を立てられてそれがこの協定になってくるわけなんでありますけれども、これは昨年この計画が立てられた、ことしもまた将来の計画について検討されたと伺っておりますが、本年度の検討においては、六十年までの六千万キロワット、この計画から変更があるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
#32
○田中参考人 お答え申し上げます。
 電気事業連合会としては、毎年需要の成長の推移等を見まして計画をつくっておりますので、総ワクにおいては変更がございます。需要の増加並びにこれに対する供給力というものについての変更がございます。
 しかし、今回の協定におきまする六千万キロワットは一応総ワクでございます。したがいまして、そのワクの中でこれを逐次契約していくということでございますので、実際問題として今回の六千万キロワットのワクの中でわれわれは十分やれると考えておりますので、差しつかえないと存じます。
#33
○柴田(睦)委員 では昨年度と今年度の計画の差が生じた、その内容をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
#34
○田中参考人 連合会におきましては毎年十カ年計画をつくっております。四十七年度長期計画というのが私どもつくっている新しい計画でございますが、これは十カ年計画でございますから、四十七年度から五十六年度まででございます。したがいまして、この今回の協定とは必ずしも一致することはございませんが、今回の長期計画の中で着工分が今回の協定の中、つまり五十三年までですね、四十九年から五十三年までの着工分ということに相なっておりますので、必ずしも今回分とは一致――先ほど先生おっしゃった六十年の六千万キロと必ずしもきちんとそろっているわけではない。そこには若干のゆとりがございます。したがいまして、今回の協定においてはまず若干のゆとりがあると考えていいんじゃないか、私どもはそう思います。
#35
○柴田(睦)委員 今回の新基準によりますと、契約時期は、いままでは燃料引き取りの大体一、二年前に契約すればよかったわけでありますけれども、今度は八年前に契約をしなければならない。そして実際に引き取るということを考えてみた場合に、十年くらい前に契約をして、その三分の一の金を支払わなければならない、こういうことになるかと思うのです。そうしますと、もう五十年あるいは五十一年ごろまでにはすべての契約を終わらなければならないということになるかと思うわけです。そうして現実にはもう契約をする実行段階に入っているのか、あるいはもう計画が立てられているのか、この点をお伺いします。
#36
○田中参考人 お答えいたします。
 先ほどお話のございましたように、引き取りの八年前に契約をする必要がございます。したがいまして、相当部分が直ちに契約交渉に入る必要がございます。ただ目下のところAECとしては契約についての案を提示いたしまして、まだ最終的に決定いたしておりません。したがいまして、これが決定するのはおそらく来月の中旬以降になると存じます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、現在すでに機械を注文しているものは本年末、それから未発注のものについては、八年後までに必要とするものについては来年の六月までに契約することになっておりますので、その方向で進めたい、かように考えております。
#37
○柴田(睦)委員 十年近く先のことを契約することになるわけですけれども、日本の石油とのかね合いあるいは水力とのかね合い、それからこれからの国際的な動きとのかね合い、また立地条件や反対運動などのことを考えてみた場合に、十年先の予測は業界として正確に立てられるのかどうか、この点をお伺いします。
#38
○田中参考人 お答えいたします。
 従来私どもとしては五年計画を持っておったのでございますが、非常に開発規模が大きくなってまいりまして、五年だけでは発電計画を確定するのに不便であるということから、五カ年計画の後に、つまり前期五カ年計画、後期五カ年計画というものに分けまして、前期五カ年計画については、これは精密と申しますか、かなり確実な計画、それから後期五カ年計画につきましてはある程度、見通しという考え方で計画を策定している次第でございます。
#39
○柴田(睦)委員 次は宮崎参考人にお伺いしたいのですが、この日米原子力協定は、まあ条約ということでありますから、主権国家の対等平等ということが原則になると思うわけなんです。そういう観点から見て、また国際法上の条約の水準から見て、何かこの条約の中に日本が不平等のものを押しつけられているというようなそういう点について御意見がありましたらお伺いしたいと思います。
#40
○宮崎参考人 申し上げます。
 今度の議定書は、昭和四十三年の原子力の非軍事的利用に関する協力のための両国間の協定を改定するものでございますけれども、両方通覧いたしましたけれども、いま御指摘のような主権国間における主権制約とかそういうような種類のものは存在しないというふうに思います。
#41
○柴田(睦)委員 主権の制限ということまでには至らなくとも、条約の水準から見た場合に不平等だな、たとえば基準の関係からいうと、いまの八年前に契約金を払わなくちゃならぬというような点など、そういう点はいかがでしょうか。
#42
○宮崎参考人 おっしゃるような意味においては、もちろん対等ではございません。しかしこれは一方は濃縮ウランを売る立場にございますし、他方は買う立場にあるわけでございまして、さかのぼりますと、日本としてはそれが要らないという場合にはそれを解約をする、そういうことも不利益を忍ぶということでございまして、これは国内におきましても、契約上、そういうような場合に売り主と買い主、その必要度というものに応じておのずと立場の違いは生じてくるわけでございまして、この点は条約の法律論というよりは、その内容に関する需要者と供給者の立場というものからおのずと出てくる違いであろうというふうに了解いたしております。
#43
○柴田(睦)委員 では大杉参考人にお伺いしますが、原子力の問題に関して日本の独自の研究、自主的な研究というものが現実に進められなくて、参考人のことばによりますと、原研のほうは研究についての希望を失うような状態である、こういうことを言われておりましたが、もう少し突っ込んで――また一面参考人の中には、日本独自にも開発の研究がどんどん進められているというようなことも言われましたので、ひとつその自主的な日本の研究ということについての御意見をもう少しお伺いしたいと思います。
#44
○大杉参考人 やはり基礎から応用に至る幅広い研究というものがどうしても必要なんじゃないかというふうに思います。安全問題一つをとってみましてもそういう体制が必要でありまして、いわゆる事業的に一つのプロジェクトをやるということは非常に大事なことでございますけれども、そういう積み上げが非常に必要であろうということを申し上げておきたいと思います。
 それからそのためには科学者、技術者の意見を十分に聞いていただくということをぜひお願いしたいと思います。
#45
○柴田(睦)委員 それから大杉参考人は日本の原子力の利用の問題あるいは研究の問題が、歴史的にアメリカの政策、それに追随したといいますか、そういう趣旨の御発言だったと思うのですけれども、現段階におけるアメリカのこのウラン濃縮事業に関する政策、そういったものについて、おわかりでしたら、要点をお話し願いたいと思います。
#46
○大杉参考人 私もそういうことを専門にやっておるわけではなくて、むしろ産業界の方から教えていただいておるわけですけれども、一九八〇年代初めのいわゆる端境期という時期には、アメリカの現三工場の能力が一ぱいになる。これはどんどん軽水炉を売っていったその結果でもあろうかと思いますけれども、そういう中で、さらに軽水炉を広めていく、ウラン濃縮の提供をどんどん広めていくために、新工場の計画がなされておるわけです。この新工場の計画に関しては、米国原子力委員会としては民間にやらせるということでやっておりまして、先ほど来訪の出ておりますいわゆる新基準といった種類のものもそれの一環である、たとえば八年前契約、十年確定量契約というのは、民間工場が需要量を確定する、そして事業をやりやすくするというためのものであるというふうに聞いております。この新工場には、外国といいますか、まあ日本なども参加させるというような方向で現在話が進められておる。これは昔、中曽根長官とレアード国防長官の話のときに出ました、あの話の続きが現在も進んでいるようでありまして、この新協定によってウラン需要がアメリカとして確定いたしますと、次にやはりこの新工場のほうへの話へ日本としても入っていくのではないかというふうに私は思っております。この辺は政府の方のほうがよく御存じなんじゃないかと思います。
#47
○柴田(睦)委員 もう一つ、参考人の御意見の中には、アメリカに依存し過ぎる、そういう御意見があったと思うのですけれども、原子力研究所の中にいて、このアメリカへの依存、アメリカへのエネルギーの関係の従属、こういうものについての御意見を最後にお伺いしたいと思います。
#48
○大杉参考人 たとえばウラン濃縮研究につきましては、これは三年ほど前から原研でもガス拡散法ということで開始されたわけでありますけれども、たぶん、この協定が結ばれますと、この研究というのは事実上打ち切られることになるのではないかという形で、たとえば研究そのものが現実に影響を受けてくるというような事例がございます。安全研究につきましては、いろいろやはりアメリカなどでも騒がれておりますけれども、何しろ日本の科学技術者は、現実に、理論的にも、実験的にも、これを仕事として本格的にやっておりません。ですから、やはりこれで安全だと確信を持った発言ができないということが非常に残念なわけであります。
#49
○柴田(睦)委員 終わります。
#50
○藤井委員長 永末英一君。
#51
○永末委員 宮崎参考人に伺いたいのですが、先ほど核防条約の批准をおくらしていると、われわれの真意を疑われるという旨の御発言がございましたが、どういうぐあいに疑われるとお考えでしょうか。
#52
○宮崎参考人 核拡散防止条約というのは、原子力の平和的な利用ということを目的にいたしまして、平和的利用の場合にもおのずとそれに基づくところの核物質から兵器として使用し得るというような物質ができるわけでございますから、そういう点につきまして査察を受け入れるということが必要になるわけでございますけれども、日本がそういう、九十七カ国でございましたか、すでに批准をいたしておりますこの条約に加入をしないということになりますと、平和的利用ということを言いながら、何か核兵器というものについて研究をしているのではないかとか、あるいはそういうようなねらいがあるのではないかということを考える国がないわけではないと思います。わが国におきましては原子力三原則というものがございますので信用いたしますけれども、外国の目から見ればそれがなぜそういう平和的な査察を受け入れないのかという点で疑惑を持つ国があり得るというふうに申し上げたわけであります。
#53
○永末委員 いま議題になっておりますこの協定でも、国際原子力機関の査察があるわけでございまして、その査察の意味は、平和的利用の道にたがってはならぬ、こういう意味の査察がございます。したがって宮崎参考人は、現在行なわれている査察が平和的利用の道を国際的に確保するためのものだということになりますと、別段NPTの査察をいやがっているように思われるからということではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
#54
○宮崎参考人 わが国として国際原子力機関との間の保障協定に基づいて査察を受け入れるということならば、率直に核拡散防止条約を批准すればいいわけでございまして、それをしていないということは、国によってはそういう疑惑を持ちかねないというふうに思うわけであります。
#55
○永末委員 田中参考人に伺いたいのですが、いままで相当回数査察が行なわれましたが、その査察について、たとえばわがほうのやっていることに不必要に査察が行なわれるとか、行ないたいとか、そういうことはございませんか。
#56
○田中参考人 査察につきましては、私どもの福島発電所におきまして、すでに一昨年三月運転しております一号基並びに本年九月運転いたします二号基、すでに二号基が燃料が挿入されておりますので、三回程度査察を受けております。また一号基につきましてはちょっと回数をはっきり申し上げられませんが、受けておりまするが、一号基につきましては過去三回定期点検をやりまして、その間におきまして燃料とりかえをやったということでございます。それから運転についてはやはり運転の査察を受けております。
 ただ、過去において、敦賀におきまして少しくIAEAとの間に査察の現場における方法について、これは最初のことであっていろいろな行き違いがあったかと存じますが、若干の意思の疎通を欠いた点がございましたが、私どものほうの査察のあり方を見ますと、大体現在では二カ月に一回程度で済ましております。
 また燃料取りかえの場合には、出入り口にカメラを置きまして、カメラで撮影をしているわけです。これは自動カメラでございますが、これを現在では二カ月に一回フィルムを取りかえればいいというようなことになっております。それから現場の当社の社員と査察員――査察員は普通二名ずつ参っておりますが、何らトラブルを起こしておることはございません。ただ、私ども考えますのは、ヨーロッパにおいてはユーラトムがすでにある程度のところまでは自主査察をやれるということは、IAEAと協定を結ぶべく大体話し合いがついたということを聞いておりますので、でき得れば、私ども、日本としてもそういった方向に進めていただければ非常に幸いだ、このように考えております。
#57
○永末委員 重ねて田中参考人に伺いたいのですが、その平和的利用の道にたがっているかどうかという観点がその査察のときにうかがえますか。
#58
○田中参考人 これは私どもとしては電気事業者としてもちろん燃料の消費あるいは数量等、誤りにせよ故意にせよ、そういう間違いを起こす、燃料の数量などに間違いを起こすということはない、正確にやり得るという確信を持っておるのでございます。ただ、やはり国際問題としては当分行なわなければならぬだろう、私そう感じているわけなんでございます。特に今回の協定におきましても、IAEAの査察その他が協定の条件に入っておるようなわけでございますので、当分これは平和利用の面で必要だというふうに各国とも考えているのじゃないか、このように受け取っておる次第でございます。
#59
○永末委員 重ねてもう一つ田中参考人に伺いたいと思います。
 核防条約を批准いたしますと、査察なるものはその核防条約による査察に移行する、こういうぐあいにこの協定でなっているのでございます。したがって、いままでの査察と、それから核防条約を批准した暁の査察とは違うのか違わないのか。より合理的になるはずだという説明を受けたのですが、どの程度合理的なのかまだわからぬのでありますが、現場の田中さんとしてはどういう差別があるとお考えですか。
#60
○田中参考人 これは先ほどちょっと私触れましたが、電気事業者といたしましては、批准の問題について、特に批准に反対するという態度はございません。むしろ進めていただいたほうがいいのじゃないかという態度でございます。先ほど触れましたように、日本としてもユーラトム並みのある程度の自主査察というものができることが好ましいと思うのです。そういう面で、私も国際問題については実はよくわからないのでありますが、批准することによってそういう面で簡略化されるならば、私どもとしては非常にありがたいというふうに考えております。ただ、この問題については、単にそういう私どもの技術的な問題だけで判断すべきものでもないかもしれませんが、とにかく電力会社としてはそういう方向でやっていただくのがいいのじゃないかという考え方をしておる次第でございます。
#61
○永末委員 大杉参考人に伺います。
 原研にも査察が来たことがございますか。もしありとするならば、その査察についてどんな感じを持たれたか。
#62
○大杉参考人 私、査察の場に実際立ち会ったことがございませんので、残念ながらわからないのでございますが……。
#63
○永末委員 大杉参考人、先ほどこの協定は二年ぐらい見合わしたらどうだという旨の御発言がございましたが、その二年ぐらいの間に何をやらねばならぬとお考えですか。
#64
○大杉参考人 要するにエネルギー政策の根本について、各界の知恵を集めて練り直していただきたい、そしてほんとうに将来に向かって科学者も国民も納得できる、そういうものをつくり上げていただきたい、こういうことでございます。
#65
○永末委員 そうしますと、それが五年ぐらいかかったら、それができるまではこの協定はやめておいたほうがいい、こういう御意見ですか。
#66
○大杉参考人 先ほど来申し上げましたとおり、いままであわてた結果、現実に矛盾が生じ、それがだんだん規模が大きくなってきているということでございます。ですから、やはり急がば回れということが大事なんじゃなかろうかということでございます。
#67
○永末委員 わが国のそういう総合エネルギー対策並びに原子力に関する規制、取り扱い方というものと、この濃縮ウランを買おうという契約を内容とする協定とは、どういう因果関係にあるのでしょうね。つまり、濃縮ウランは入ってくるけれども、いまあなたのおっしゃったようなことは、これは別途やらねばならぬことでございますが、それがいま不十分である、だからそれが不十分な段階では濃縮ウランを買わぬでもよろしいということとは、論理的にあまり関係のないことではないかと思われる節がございますが、その点をちょっとお教えを願いたいと思います。
#68
○大杉参考人 先ほど田中参考人のほうからお話がございましたように、この協定が通りますと、すぐに濃縮ウラン役務の契約が始まるということで、ごく近い間に昭和六十年分までの契約が完了してしまうという状態になるわけであります。そういたしますと、これが先ほど来の、八年前契約、十年間確定量契約というやつでございますが、多額の前払い金を払う、またそれを解約するときには膨大な解約金が課せられるというような制約も課せられるというふうに聞いております。そういたしますと、結局将来にわたっていまの時点でこれを拘束してしまうことになる。日本のエネルギー政策の重要な部分を拘束してしまうことになる。こういう重要な決定にあたっては十分慎重に民主的な検討を経た上でやっていただきたい、こういうことでございます。
#69
○永末委員 ありがとうございました。
#70
○藤井委員長 石原慎太郎君。
#71
○石原委員 気がついた点について、順不同にお聞きしたいと思いますが、先ほど大杉さんがおっしゃっていましたけれども、原子力の平和利用に関する日本とアメリカ、あるいはアメリカと世界全体の関係を歴史的に振り返ってみますと、大杉さんがおっしゃったことが非常に妥当なような気がするのです。ただ、あなたがおっしゃった現協定に対する解釈はちょっと私異論がありますが、いずれにしても、一九五五年にアイゼンハワーの提唱で始まったジュネーブの会議は、実はいま論議されているNPTを実質的に第一期にやったような、いろいろな拘束力を持ち、アメリカのそういう世界政略のあらわれであったわけで、日本の原子力の平和利用計画というものは、アメリカのその政略に非常に振り回されてきた感じが強くいたします。今度のこの協定の具体的な運行のためのアメリカと日本の濃縮ウランに関する契約役務の協定に、実はアメリカのそうした平和利用に対する原子力の政略の性格が延長して続いていて、ある意味でそういう下心が非常に見えるような気がするのですが、田中さんにお伺いしたいのですけれども、つまり八年前に契約して十年間の使用量というものを契約時に契約せいということは、私たちからながめても非常に強い条件のような気がいたしますが、この契約役務協定によって、いままで必ずしも整然としたものとはいえなかった日本の平和利用の原子力に関するプロジェクトの立て方というものが管制される、つまりこの役務協定の規制によっていろいろな形で原子力の平和利用のプロジェクトの立て方が管制される、あるいは追い込まれるという点が出てくると思いますが、こういう契約役務協定をひとつきっかけにして、抜本的に日本の原子力の平和利用に関するプロジェクトの立て方に当事者としてどういう御注文がおありでしょうか、それをまずお聞きしたいと思います。
#72
○田中参考人 確かに、今回の協定に基づくアメリカのいま出しております濃縮ウランの役務購入契約の案では、御指摘のように引き取り前八年のところで契約をする、また、契約したものについては十年間固定するというようなことがございまして、従来、アメリカが日本に対して、あるいは世界各国あるいは国内に対して契約しておった条件からは格段にきびしくなっていることは確かでございます。それで、そういう面で、私どもとしては何かこれを緩和することを考えてほしいということで、本年度になりまして、アメリカの原子力に関する上院合同委員会委員長プライスさんが日本へ来られたときもよく実情を訴えまして、この緩和方を要請し、また、その後に原子力委員のダウ氏が日本に来られたときにもそのことを強く要請もし、その後アメリカの上院合同委員会は、議会において公聴会を開きまして、この契約書案についての取り扱いを公聴会の場でディスカッションをすることになりまして、日本から出席も認められましたので、電気事業者からも中部電力の渡部副社長が出席して、るるその緩和方を申し述べたわけでありますが、その結果もございまして、かなり弾力的になったところもございます。これは日本ばかりでなく、アメリカの電気事業者、またヨーロッパからも出席して、強く緩和方の要請をしたわけでございます。そのようないきさつがございましたが、大筋においてはやはり変わりないということになったわけでございます。
 そこで、いま御質問のございました点でございますが、従来とも、私どもは、発電所の開発をやる場合には、実施にあたっては綿密な計画をもってやってきておりますので、特にこの協定並びに購入契約の変更によって計画を変えるという必要はなかろうと存じております。一面において、私どもは、ことし一万トンの濃縮ウランをアメリカから購入することを決定したわけでございますが、やはりウラン精鉱と同じように濃縮ウランもある程度備蓄が必要だという意見もかなりございますし、若干、万一開発がおくれたような場合にはそういう面も出てきますし、また場合によっては、国内でどうしても計画とウランの濃縮役務の引き取りとが狂ったような場合には、相互に電力会社間でやりとりをするというようなことも可能かと存じます。したがいまして、特に計画に大きく響くというようなことはなかろうと存じます。
#73
○石原委員 実は前の委員会で政府委員に質問のときにも同じことをお聞きしたのですが、つまりこの契約役務の規制の裏に、アメリカが近い将来他国に対する濃縮ウランの供給能力が非常に不足してくるという予測があると思います。そういう現況を踏まえて、たとえば、私申しました、日本の今後の平和利用の原子力のプロジェクト計画の路線の変更云々ということは、具体的に言いますと、たとえば濃縮ウランの自家製造というものの開発をもっと徹底的に行なうとか、あるいはもう十年もすれば明らかに現在の買い手市場から売り手市場に移行する天然ウランに関して、日本が思い切った、買い占めというと語弊かありますが、買い付けをしておく、つまり十年後には日本がある場合にはウランの売り手にもなり得る準備をしておくというような手はずが整えられていいのではないかと思いますけれども、当事者としてそういう点についてどのようにお考えでしょうか、田中さんにお伺いしたいと思います。
#74
○田中参考人 ただいま石原先生から御指摘のとおり、日本としても、先ほど私、陳述のときに意見を申し上げましたように、濃縮技術というものを真剣にナショナルプロジェクトとしていま進めておられるわけでございまして、早晩これは自主独立の立場で技術開発をやり、またこれを実際に濃縮ができるような工業的な工場がつくれるということを、私、確信と申しますか、そのように思っておるわけでございます。したがいまして、いま先生が御指摘のように、将来は、日本が独自で濃縮をやっていくということはまず間違いなかろうかと思います。ただ、すでに欧米においては技術を持っておりますし、また、特に電力をそう必要としない遠心分離法については、ヨーロッパのように電力の窮屈なところでは真剣に研究をしておるというのが実情でございまして、日本もやはりエネルギー資源に乏しい国でございますので、早くこれを開発して自主的に濃縮をやれるようになることが最も必要じゃないかと考える次第でございます。
 以上でございます。
#75
○石原委員 そこで田中さんと、それから大島さんにお伺いしたいのですが、まず田中さんには、いまに関連しまして、ヨーロッパに、ある意味でアメリカの原子力平和利用政略に対して対抗してできたヨーロッパの濃縮ウラン事業団ですね。こういったものと日本との関連の余地、まあ日本は、アジアの中のヨーロッパ、西洋といわれておりますが、アジア大陸を地理的には越えて、ほかのいろいろなカテゴリーの業務の中では、日本だけが北大西洋のいろいろな機構の中に入るような会議も持たれつつありますので、こういった濃縮ウランの事業団と将来日本が何らかの形で関連性を持つ、あるいはこれに積極的に参加するといった可能性についてお考えかどうかお伺いしたいと思います。
 それから続いて大島さんには、いまも田中さんがおっしゃいましたが、濃縮ウランの自家製造に関する日本の技術的なポテンシャルあるいはファースト・オブ・リーダー等に関するポテンシャルと同時に、その技術的な潜在性というものの、つまり日本的な個性といいますか、個性度のようなものをNPTとのからみでお伺いしたいと思います。
#76
○田中参考人 お答えいたします。
 まあ、特に原子力開発に限らぬことかと存じますけれども、世界的に技術開発についての共同研究という考え方に対する各国、日本もそうですが、日本を含めて各国ともそういう傾向が非常に強くなってきているかと存じます。原子力開発研究におきましても、現在においては、日本の原子力委員会においては、かなり各国と技術開発の共同開発の協定を結んで実際に進めておられるわけでございます。ただ、まあ問題は、いまの日本においては、公開の原則がございますから、特に濃縮ウランというような濃縮技術というようなものについては、国によっては、やはり機密保持ということを要求することが考えられるわけでございまして、その点で、まあ機密保持が確実にでき得るならば、自由に各国と共同して研究ができるということが考えられるわけであります。しかしながら、実際には、濃縮技術についても差しつかえない範囲では、やはり相互に情報交換等のことが協定によって行なわれ得るし、また実際にもそのようになっているんじゃないかと存じます。
 いずれにいたしましても、従来のように日本の中だけでからをかぶって技術を開発するという方向でなしに、世界的に広い視野で開発を進めるということが非常に好ましい姿であろうかと私は思います。実際に、濃縮技術について、濃縮工場の調査について、実は、フランスとは、一年間調査を始めたのでありますが、ただフランスのやり方が、東亜圏、太平洋圏に一つ、それからヨーロッパ圏に一つという姿でやろうという考え方から始まったのですが、日本とフランスとバイラテラルで調査をする。それと同時に、フランスとオーストラリアとバイラテラルで調査をするという形で進んでまいったのが、オーストラリアの側がうまくいかなかった。途中から中断せざるを得なかったということで、あるいは途中までもいかなかったということで、日本も一応様子を見ようということで、一応中断している実態でございます。しかし、まあヨーロッパ諸国とももちろん提携をしていくということで、この遠心分離法については共同調査のグループに日本も入って、藤波さんの調査会がこれに参画するということをいまやっているのが実態でございまして、もちろん将来においてはアメリカ一辺倒でなしに、もっと広いフィールドでこれが進められることが好ましいかと私、存じます。
 以上でございます。
#77
○大島参考人 日本の技術的ポテンシャルという問題についてちょっと触れますと、基本的に私は、いまウラン濃縮あるいは高速増殖炉の開発というものは、単なる断片的な技術ではなくて、基本的にはその国の工業並びに技術水準の背景があって初めて実現する。その意味においては、日本はきわめて高いポテンシャルを持っておると思うわけです。
 しかし、もう一つ非常に重要な点は、いま石原さんからお話があった点ですけれども、過去における日本の技術開発というものは、どちらかというとたいへん受け身であって、よその国がやるのを一緒にやろうとか、あるいはそのパターンに非常に沿った行き方をしているために、私は、幾分いままでの進め方で懸念される点は、日本がほんとうに日本の将来の一つの、たとえばいまの場合ですと、エネルギー政策、エネルギーの中においてどの点でほんとうの力を入れるか、どこに相当な技術開発を進めるかということに対する検討が不十分であったのではないかという気がするわけです。その点は、将来の技術というのは、一国がただ自分だけで開発するというものでやるわけにはいかない。すなわち、国際的な技術協力という形が一つあります。それからもう一つは、技術を進めるにあたっては、各段階において日本で進める計画であれば、それの日本における特徴というものは、それは参加する人々あるいは日本の工業的な背景によって違うわけですから、その日本の特徴というものも出てくる。それを評価して、そうしてその中において外国技術との協力関係をつくっていくということがきわめて大事であると思うわけです。その点で、私は今後、この機会にやはり日本としては原子力開発計画というものを、単なる技術開発という視点ではなくて、総合的なエネルギー、すなわち石油とかあるいはその他のエネルギーを含めた形の中で評価すべきである。すなわち、一つの例を申しますと、石油開発につぎ込む金と研究開発につぎ込む金というものは、実は基本的には非常に関連のあるものでありまして、そういうような視点を含めて評価されるべきではないかと思います。
 それから、いまのNPTの問題に関連して申しますと、技術的にはいわゆる軍事技術と平和利用技術との差というのはきわめて少ないわけでありまして、今後日本が濃縮ウランあるいはプルトニウム燃料の製造という問題あるいはそれの産業が非常に進んでまいりますと、必然的にそれは軍事技術としての背景を持つわけであります。国際的にも日本のそういう意味での技術力というものはきわめて高く評価されていいと思います。その意味において、核防条約というものの中において日本がはっきり平和利用に徹するということをむしろ世界に明瞭に示すことが、今後の日本の技術開発において重要な点ではないかと思うわけであります。
#78
○石原委員 大島さんにもう一回お伺いしますが、確かにそうした技術の高度な開発は軍事利用につながるということはいえると思いますけれども、それ以前に、われわれの側としては心得てあくまでも平和利用に徹するということでも、なおその日本の開発途上の技術の持つ独自性というものが、日本と全然違う国情の第三国の政情のてこによって持ち上げられたときに、非常に軍事的な技術としての展開の可能性を持つ、価値を持つというような、日本に限っていえば平和利用だけのために開発されつつあるような種類の技術というものがあるかないかという言い方は、非常に乱暴な聞き方だと思いますけれども、そういったものの総合的なポテンシャルというものは現況においてどうなんでしょう。たとえば、これは私の知っているある学者ですけれども、ターボプロップのエンジンを使っての遠心分離を日本独特の形で着手しているような人がいますが、そういうものが、私詳しく知りませんけれども、濃縮ウランの自家製造ということでの技術性を高めてきて、それが査察の対象になって非常にイージーに外国に流れたときに、実はわれわれが平和利用に徹して開発したものが、そういうノーハウが容易に知れることで第三国の軍事的なその種の技術開発というものを非常に助長する、そういう可能性のあるような技術の研究がいま日本にあるのかないのかということをお伺いしたいと思います。
#79
○大島参考人 ちょっと御質問の意味が明確でない点があるので、私なりにお答えいたします。
 現在、具体的に申しますと、たとえば遠心分離の技術というのは実は非常に軍事技術と結びつきが、すなわち、わりあい小規模でできる、あるいは電力消費が少なくていいというような意味で、これは軍事技術と非常に近い。それほど大きな経済力を持たない国でもそれによって原爆がつくれるという意味で、特にアメリカはドイツ、オランダの遠心分離の開発をとめたという例があるくらい、これはその意味ではガス拡散技術上に軍事技術との結びつきが高いということがいえると思います。
 いまの御質問の点で、これは非常にむずかしい問題だと思うのですが、日本が平和利用のために技術開発をした場合に、それがほかの第三国によって軍事的に使われるという可能性は、私は相当あると思うわけです。これを防ぐ方法というのは、実は一つの方法は、基本的には、日本の遠心分離と申しますか、そういう軍事的技術の内容をある程度機密にしなければいけないという問題が含まれてくると思います。この点について私は十分に考えておりませんので、どういう形でそういうことが可能かということについては、ちょっといま申し上げられませんが、それが基本的に一つございます。
 第二の問題は、いまの査察という場合に、これを査察をする相手がどうであるかということになります。現在は、少なくとも核防条約に基づく査察ということで、国際原子力機関という形をとっておりますが、核防条約に基づく査察というもの、それを考えているわけでありますけれども、もしその場合には、少なくともその査察をするメンバーというものは、いわゆる核防条約という形で平和利用に徹するという形の組織をとっているというふうに考えるべきだ。ただ、いまの場合に、その国際機関の査察によって、核防条約に入っておるけれども、軍事的に将来使おうという国に、それが流れるかどうか。国には絶対に流れないことになっておりますし、国際公務員としてはその機密は一切外に漏らさないという原則にはなっておりますけれども、人間に伴ってそういうものが出てくる可能性がゼロであるかといえば、それは理論的にはあると思います。ただ、その場合に、では核防条約に入らない形であれば、そのことによって日本の技術が平和的に使われることが保証できるかということになれば、その点私はやはり同じ意味で問題があると思いますので、いまの御質問の点がちょっと明確でないのですけれども、私は、むしろ核防条約に日本が入ることによって、日本の技術が第三国に軍事的に使われるというよりは、使われないという方向でそれが規制されることになるのではないかと考える次第であります。
#80
○石原委員 いま大島さんのおっしゃったことは非常に大事なことなんですね。つまり、われわれはその次の世紀に備えてこの種の技術をどうしても開発しなければいかぬ。と同時に、公開の原則という機密にとって非常に障害になる規定があり、また公開の原則に踏み切れば、IAEAなんというものは、日本人はまともに信じていますけれども、外国人はだれも信じていない。ある意味で、人にいわせればスパイの巣くつだという人もいますし、そういうものを通じて、われわれが平和利用のために念願して開発した技術が、実はもっと強力な政治力によって軍事利用に転化されるという非常に二律背反した要素があるので、これはこれからすべての立場の人間が考えなければいけないと思うのです。
 最後に、ひとつ宮崎さんにお伺いしたいのですけれども、さっきの柴田さんの質問の中で、あなたは、この協定を純然たる需要と供給の、ある意味で単純で純粋な取引の行為と考えられるとおっしゃいましたが、実は私、ちょっとそれは異論があるのですけれども、われわれがこれから先ずべての事情からして濃縮ウランというものを必要とするということはアプリオリとしてあるわけです。アメリカもそれを知っておる。同時に、さっき申しましたように、アメリカの濃縮ウランの供給能力が不足していくということもはっきり見えている。そういう状況を踏まえて、あなたがおっしゃったみたいに、あくまでも対等で、買いたくなければ買うな、要するに違約金を払って破棄すればよろしいということは実はあり得ない一つの状況設定なんですね。こういう歴史的な状況を一方的に規制された協定というのは過去にあったかないか知りませんが、この場合には私は、アメリカと日本の場合が買い手と売り手とほんとうに対等な立場の協定としては考えられないのですが、国際法の専門家として、その点いかがお考えでしょう。
#81
○宮崎参考人 いまの御質問でございますけれども、私は法的な立場からお答えしたわけでございまして、条約については条約法に関するウイーン条約などがございまして、強迫による条約とかあるいは国際法の強行規範に反する条約というのは無効である、そういうことを念頭に置いて考えるわけでございますけれども、そういう法的な意味において申しますと、その条約が国際的な水準から考えてみて無効になるとか、あるいは著しく法的に見て不正であるあるいは不当であるというような意味の程度にまでそれが不平等でないということを申し上げているわけでございまして、そのような二つの違った立場、ものを持っているそれからものを持っていないという状況の場合に、その条約が全く対等であるということはどうであろうかというふうに考えてみますと、一般的にいってそれはやはり対等であり得ない。その対等であり得ないその程度をどのように考えていくかということであろうかと思うわけであります。
 確かにいろいろな情勢から見て、日本は原子力発電の必要性それからいろいろな石油資源の枯渇、そういうことから見て、この条約を結ぶという必要性が強い。その必要性のために、ある程度は不平等であるけれどもこの条約を結ぶ。そういうことであった場合に、その条約の不当性がどの程度考えられているか。極端に申しますと、この条約を結ばない、結ぶということの自由はやはり日本に残されているわけでございまして、いま石原さんがおっしゃったその必然的に結ばなければならないというようなその必然性というのをどういうふうに考えていくかという点にもかかってくると思うのであります。そういう点かあるからこそ先ほどもアメリカ一辺倒の核エネルギーの輸入ということは反省されなければならないというふうに申し上げたわけでございまして、現在の時点において考えてみる場合に、そういうような対応策を考えつつこの条約を結ぶということによって日本の主権が制約されるとかそういうことはあり得ないのではないか。また法的に考えまして、この程度の内容を持った条約というものは国際法的にいってその効力が左右されるほどの不平等あるいは圧迫といいますか、そういう条約ではあるまい、そういうような考え方から先ほど答弁した次第でございます。
#82
○石原委員 終わります。どうもありがとうございました。
#83
○藤井委員長 渡部一郎君。
#84
○渡部(一)委員 参考人の皆さんに、特にまず大杉さんにお伺いしたい。
 原子力協定が原子力研究に支障になるポイントについてお話しになりました。そのポイントについてもう少し詳しくお話しをいただきたい、こう思っているわけであります。つまり今回の日米原子力協定が国会に審議にかかっておりますけれども、従来からの経緯または今回新しく改定されるこの原子力協定両者を含んででけっこうでありますが、先生のおあげになったのはどのポイントか、お話を簡明にひとつお願いしたいと思います。
#85
○大杉参考人 まだこの協定が結ばれたわけではありませんので、今後のことを確定的に申し上げるわけにはいかないわけでありますけれども、一つは先ほど申し上げましたとおりに、過去の経緯からいきましてこういうふうに外交と政治あるいは財界の意向というところが主体になって進んでまいりますと、どうしても国民的立場あるいは科学的立場というものがあと回しにされてしまうという実績が積み重ねられて、それが現実にあらわれてきておったということが一つでございます。
 それから現在の状況で申し上げますと、やはり六十年、六千万キロワット計画というのが、先ほど来の話にありますように、この協定を結びましてからすぐあと事実上確定してしまいます。濃縮ウランの契約をすれば、原子炉は必ずつくらなければならぬという順序になるわけです。その原子炉はアメリカから買ってくるということになるわけであります。しかもそれの原子力開発を進めていくにあたってのその他のさまざまの問題、安全問題、廃棄物処理問題、燃料サイクルの確立の問題そういうさまざまの問題が技術面においても政策面においても未解決である。さらに基本的には、こういうエネルギー政策そのものが国民的な合意を得ておらないというようなところから私は先ほど来の主張をしておるわけでございます。
#86
○渡部(一)委員 藤波先生にお伺いするわけでありますが、私たちの長い間の願望といたしまして、核融合反応ができて、人類がエネルギーにそんなに意識を持たなくてもいい時代が早く来てほしいというようなしろうとの願望を持っておるわけでありますが、この現在先生がやっていらっしゃるウラン濃縮事業のほうからごらんになって、このウラン濃縮事業をどの程度継続して、どの程度の見通しをつけておけば可能なのであるか。要するに六千万キロワット計画というもの、そしてそれは三十五年間にわたる計画というもので核融合反応が現実に実用化されるその時期までカバーできるのかどうか。そしてまたそれに対して先生はどういうお考えを持たれるか、その辺を聞かせていただきたい。
#87
○藤波参考人 お答え申し上げます。
 核融合については私もしろうとでございますので、的確なお返事ができるかどうか疑わしいわけでございますが、先ほど私申し上げました将来の濃縮ウランの需給見通しという関連から御説明を申し上げますと、先ほど石野先生からの御質問にもございましたが、将来高速増殖炉が相当入ってきた場合に濃縮ウランの需要にどういう影響を与えるかという問題が一つあるわけでございます。
 これにつきましては私ども若干考察をいたしたことがあるわけでございますが、われわれの見方では、高速増殖炉がいまの見通しで一九八〇年代の後半から九〇年代の初めにかけて実用化に移ってまいりましても、そのテンポ、予想から申しますと、濃縮ウランが要らなくなるという効果が実際にあらわれてくるのは一九九〇年代のむしろ終わりのほうではなかろうか。言い方を変えますと、一九九〇年代の終わりごろまではまだ需要の増加傾向が続くであろう、こういうことでございます。それから先は高速増殖炉導入の効果がだんだんに大きくあらわれてまいりまして濃縮ウラン需要がなだらかに下がっていく、こういうことが予想されるわけでございます。したがいまして、その時期までに、いまおっしゃいました濃縮ウランの確保対策ができれば一つの山を越えるとわれわれは考えておるわけでございます。おそらく、いまおっしゃいました核融合反応炉が実用的に使える時代はそれ以前には期待できないではないかというぐあいにも考えますので、一九九〇年代前、さらにはそれ以降にまでわたって濃縮ウランの需要というものは相当考えておかなければならぬというぐあいに思います。
 お答えになったかどうかわかりませんけれども……。
#88
○渡部(一)委員 この協定との関係で核拡散防止条約に関する取り扱いについて先生方の御意見は、多少意見が分かれると思うのでありますが、大島先生と宮崎先生にこれに対する御見解を承りたい。簡明にひとつお願いいたします。
#89
○大島参考人 この協定を見ますと、核拡散防止条約による査察が発効になればそちらへ移すというようなことが書いてございますし、一応基本的にはそういうものを頭に入れてつくられているのではないかと私は判断しているわけであります。その点に関しましては、私は幾ぶんその査察に対する技術的問題に関係いたしまして、これは技術的観点からでありますけれども、核拡散防止条約に伴う国際機関の査察の問題についてはなるべく直接の立ち入りがなくて、しかもいわゆるシステムとしての取り扱いという形、いままでの、実際に立ち入ってながめるとか封印をするというような査察の形から、もっと全体の物質の流れを中心にして、それで押えていくという形にする、そういうふうな技術的な提案をしたわけでありまして、それは現在の少なくとも基本的な考え方の中には十分に取り入れられていると考えられるわけです。
 それから、もう一つの重要な点は、その途中の段階におきまして、ユーラトム、ヨーロッパの機構と、それからわが国におけるようなナショナル、いわゆる国内の査察制度との取り扱いを同等にいたしまして、国内における自主的な査察というものを、国際機関がベリファイ、検証するという体制をとる、そういうことを技術的な観点から主張いたしまして、現在の核防条約に基づく査察の基本的な考え方、あるいは基本協定の中にはそういう考え方が入っているわけであります。でありますから、技術的に申しますれば、いまの核防条約に基づく査察の体制のほうが、二国間のものを国際機関に移管した形での過去の査察体系よりははるかにわが国にとって有利であり、またこまかい立ち入りその他によるいわゆる機密の漏洩及び商業的な活動の支障というものは少なくできていると思う次第であります。
#90
○宮崎参考人 私の意見もいまの大島参考人の意見と同様でございまして、今回の議定書によって改定されることになります第十二条のB項によりまして、この核兵器の不拡散条約第三条によるところの査察というものに移行するということを予定しているわけでございます。また、この査察につきましても、従来はかなり問題がございましたが、一昨年にわが国をはじめ非核国の主張を入れまして、各国の核物質の計量管理制度を活用するなど、査察の簡易化を織り込んだモデル協定がつくられたそうでございまして、西ドイツなどもこれに加入するということを聞いております。わが国が核防条約に調印したときの政府の声明の中にも、わが国に実質的に不利益であってはいけないということをいっておりまして、査察によるところの原子力技術の商業機密の漏洩その他を考えられたようでございます。もちろんそういうことは考えなければならないと思いますが、大ワクとして巨視的に考えますと、この核防条約に入らないということのマイナスと入るということのプラスを考えてみた場合に、やはりわが国としては原子力三原則を掲げておりますし、平和憲法のたてまえからも、誤解を招くということによるところの不利益のほうが大きいのではないか。そういうことから核防条約の批准を急いだほうがいいというふうに考える次第であります。
#91
○藤井委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人各位には長時間にわたり貴重な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。
 委員会を代表し、委員長より厚くお礼を申し上げます。
 次回は、来たる二十七日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後一時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト