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1972/06/26 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 法務委員会大蔵委員会商工委員会連合審査会 第1号
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1972/06/26 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 法務委員会大蔵委員会商工委員会連合審査会 第1号

#1
第071回国会 法務委員会大蔵委員会商工委員会連合審査会 第1号
昭和四十八年六月二十六日(火曜日)
    午前十時四分開議
 出席委員
  法務委員会
   委員長 中垣 國男君
   理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君
   理事 谷川 和穗君 理事 福永 健司君
   理事 古屋  亨君 理事 稲葉 誠一君
   理事 横山 利秋君 理事 青柳 盛雄君
      井出一太郎君    植木庚子郎君
      羽田野忠文君    早川  崇君
      松澤 雄藏君    水田三喜男君
      八百板 正君    正森 成二君
      沖本 泰幸君
  大蔵委員会
   委員長 鴨田 宗一君
   理事 木村武千代君 理事 森  美秀君
   理事 阿部 助哉君 理事 荒木  宏君
      宇野 宗佑君    大西 正男君
      木野 晴夫君    三枝 三郎君
      萩原 幸雄君    毛利 松平君
      広瀬 秀吉君    村山 喜一君
      山田 耻目君    増本 一彦君
      竹本 孫一君
  商工委員会
   理事 羽田野忠文君 理事 中村 重光君
   理事 神崎 敏雄君
      小川 平二君    加藤 清二君
      野間 友一君    松尾 信人君
      玉置 一徳君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 田中伊三次君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 香川 保一君
        法務省民事局長 川島 一郎君
        大蔵大臣官房審
        議官      大倉 眞隆君
        通商産業省企業
        局次長     橋本 利一君
 委員外の出席者
        法務省民事局参
        事官      田邊  明君
        大蔵省証券局資
        本市場課長   米里  恕君
        大蔵省証券局企
        業財務課長   白鳥 正人君
        法務委員会専門
        員       松本 卓矣君
        大蔵委員会専門
        員       末松 経正君
        商工委員会専門
        員       藤沼 六郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 商法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇
 二号)
 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する
 法律案(内閣提出第一〇三号)
 商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係
 法律の整理等に関する法律案(内閣提出第一〇
 四号)
     ――――◇―――――
  〔中垣法務委員長、委員長席に着く〕
#2
○中垣委員長 これより法務委員会、大蔵委員会、商工委員会連合審査会を開会いたします。
 先例により、私が委員長の職務を行ないます。
 商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案、以上三法律案を一括議題といたします。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
#3
○中垣委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
#4
○横山委員 本日の連合審査をするに先立ちまして、緊急に理事の一人である私から、簡潔に法務大臣の報告を求めたいと思います。
 先般来殖産住宅の株価操作の不正の問題が社会の問題になっておりましたが、本朝の新聞によりますと、驚くべきことに、これが大蔵省並びに東証にまで波及をいたしまして、五人の者が家宅捜索並びに勾留を受けた模様であります。
 商法の審議をいたしております私どもについては、この問題は看過することのできない重大な問題を法案審議に投げかけました。したがいまして、この際法務大臣から、この殖産にからまる事案の概要につきまして、本朝の報道を含めまして、報告を求めたい、こうお願いします。
#5
○田中(伊)国務大臣 本件につきましては、御承知のとおり、捜査を継続しております最中でございます。昨日も若干の逮捕者を出しておりますが、この経過の詳細をまだ申し上げる段階に至っておりませんが、先生おことばのように、商法改正をめぐりまして深い関連のある事項でもございますので、早急に捜査の見通しをとりまとめまして御報告を申し上げたいと考えておりますが、本日この段階ではまだ御報告を申し上げる材料がとりまとまっておりません。本日午後この委員会が終わりました時点において中間的な報告を求めてみたい、こう考えておるところであります。まことに申しわけございませんが、できるだけ早急に御報告申し上げることにいたしますが、本日この段階はお許しをいただきたいと思います。
#6
○横山委員 報告すべき材料がまだ整っておらぬとおっしゃるならば、それはいたし方がありません。しかしながら事はきわめて重大でございますから、おくれればおくれるほど詳細を要求いたしたいと思います。
 特に私どもが、法案審査の中心になっておりますのは、証券取引法の監査に加えて商法の監査を行なう、その行なう基礎となりますものが、役所の公認会計士に対する監督権、それから役所自身が行ないます監査等を信頼をして、それが間違いないものとして、そして審議をしておるわけであります。しかし、そのやるべき役所のこの監査官が、あるいはまた東証の証券市場の幹部が信用できないとするならば、監査官を監査する監査官を設けなければならぬ、こういう論理に発展をいたしますならば、何をもってわれわれは審査の対象にするか、きわめて重大であります。この点を踏まえまして、すみやかに、場合によれば明日の法務委員会にでも御報告を待って質問をいたしたいと思うのでありますけれども、この問題については厳重に精密に調査をいたし、一刻も早く報告されんことを要望して、さしあたりの本日の質問を終わることにいたします。
#7
○田中(伊)国務大臣 明日の法務委員会の段階で報告のできます限りとりまとめまして、御報告申し上げることにいたします。
#8
○中垣委員長 村山喜一君。
#9
○村山(喜)委員 私は、この連合審査にあたりまして、今回提案をされております商法の改正並びにこれに関連をする法案について、まず第一に法務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
 それは、いま国民は、インフレと物価高、そして公害、商品投機の買い占めによるたいへんな被害を受けながら、片一方、新聞紙上をにぎわしておりますように、いま報告がありましたように、脱税やあるいは株価の操作による不当な利得を得ている姿が出ている状態を見せつけられているわけであります。そして、株主総会を開けばまさに総会屋のばっこする姿に成り下がってしまって、まさに株主不在、消費者無視、住民不在のそういう姿を見せつけられております。片一方、大企業の法人決算の結果を見てまいりますと、たいへんなインフレ利益をおさめている、そういう状態を見せつけられているわけでございまして、そういうような状態の中から、六月の二十二日に稲葉誠一委員が大臣に対しまして質問をいたしましたときに、大臣は、その社会的な存在としての義務を果たす意味において、株主総会なりあるいは取締役会の今後の健全な措置といいますか、それをはからなければならないという意味の答弁を大臣なすっていらっしゃるわけでございますが、まあ法人というものがその目的を中心にして存在をいたしておるわけでありまして、会社は、営利法人という形でございますが、その営利法人であると同時に、社会的な存在として、社会的な義務を果たす必要というものは否定をされないものだと思うのです。
 そこで私はまず大臣にお尋ねをいたしたいのは、抜本改正の方向というものはどういうような内容のものをお考えになり、そうして商法の全面的な改定への方向に向けてどのようなスケジュールをお考えになっているのか、その点をお尋ねをしてみたいと思うのであります。
 大臣も御承知のように、いま株式というのは社債と同じような形で、一つの利益対象の債券化と変わってまいりまして、一般の株主は投資利益を求めるためにやっているという姿に変わり果てておりまして、そうして株主総会というのは一種のお祭りのような形になっておるわけであります。今度の法改正の中でも、累積投票制度を弱めるようなやり方をとっておいでになるわけですが、少数株主を締め出しているような姿の中からは、内部においてその株主が経営の実態を立て直していく、そういうような状態は期待ができないのではないかと私たちは現状では思うのです。それは新日鉄の首脳の入れかわりをめぐります茶番劇を見ましても、あるいはチッソの総会等を見ましても、あるいは丸紅等を中心にいたします商社が総会をやっている姿を見ましても、まさにそういうようなことしか言えないような気がしてなりません。
 そこで、あるべき総会の姿というようなものについても、これはやらなければならないと思うのですが、大臣の御所見をお伺いいたしますと同時に、通産省の企業局にお尋ねいたしますが、これはりっぱな総会だと思われるような総会がどの程度あるものなのか、私たちは不敏にしてそれを知らないわけでありまして、もしそういうようなりっぱな総会があるような状態があるならば、ひとつ教えていただきたいと思うのです。
#10
○田中(伊)国務大臣 商法の抜本的改正の方向でございますが、まず第一は、何といってもただいまお手数をわずらわしております監査制度の改正、監査役の権限の強化、この監査制度というものの改革が第一に必要であると存じます。それから第二には取締役会の構成並びに取締役会の運営に関する事項、これも抜本的改正の中に入れねばなるまい。さらに第三には、株主総会、いまおことばのありましたような事態もございますことでありまして、株主総会の組織運営に関する抜本的改正もやらなくてはならぬであろう、そのうち一番大事と考えておりまする監査制度の改革についてこのたびお願いをしておるわけでございます。これをまず改革のお願いをいたしまして、実施ができましたならば、その実施の状況も時間をかけてこれをよく勘案をいたしまして、残余の二つの改正に手をつけたい、こういう考えでございます。
 それから先生仰せをいただきました社会性の問題でございますが、自由主義経済のもとにおいて営利会社、株式会社のやることでございます。利益を目的にして会社の活動を行ないますことはやむを得ぬといたしましても、おのずから企業には社会性がなければならぬということ、先生お説のとおりでございます。その社会性を持たすためにはどうすればよいかといえば、先ほど御質問のありました抜本改正の方向を全うするということに要はあると存じます。
 第一、今回の第一次の改正で、社会性を持たすことに役立つのかといえば、監査役に人を得て、強化された権限に基づいて監査役が遺憾なく活動をしてくれる、こうなりますと、執行部に対する押しもきいて、そうして企業の社会性を否定するような会社の行動というものはチェックできる、こういうふうに考えるのでありまして、このたびお願いをしております監査制度の大改正によりまして、相当程度の企業の社会性というものを確立することができる、こういうふうに考えておるのでございます。
 それから監査制度に関する抜本改正の内容につきましては、また質疑に応じまして私がお答えを申し上げるのでございますが、あとの二つの抜本改正の方向、取締役会と株主総会というものにつきましては、民事局長からお答えを申し上げます。
#11
○川島政府委員 仰せのとおり現在の株式会社法はいろいろな問題をかかえております。御承知のように株式会社は全国に百一万という多数の会社でございまして、年間約五万ずつふえているという実情でございます。このような多数の株式会社を同一の規制のもとにやっていくということは非常にむずかしい問題があるわけでございまして、そういった問題を含めながら、ただいま大臣がお話しになりました株主総会、取締役、こういった問題についても今後検討を重ねる必要がある、このように考えております。
 株主総会につきましては、現在の大会社におきましては株主が数万、数十万というような多数に及んでおりまして、その運営につきましては、現在の制度にかなり思い切った改善を加えていく必要があるんではないか、このように考えますし、また取締役会につきましては、会の構成の問題、現在の社内重役といったようなものによって運営されているその姿勢を正すためにはどういう方法が用いられなければならないかといった点を中心に考えることになろうかと思います。いずれにいたしましても法制審議会の商法部会で十分御検討を願いましてなるべく早く改正を行なっていきたい、このように考えております。
#12
○橋本政府委員 せっかくの先生の御質問でございますが、この場で御報告申し上げるような、十分に時間をかけて慎重審議いたした株主総会の例を聞いておりません。
#13
○村山(喜)委員 大臣もお聞きのとおり、法律制定は法務省でおやりになる、その企業の実態等に対する指導面は通産省でおやりになる。ところがりっぱな株主総会が開かれたという例は残念ながら聞いていない、そういう状態でございます。これはやはり法律自体にも問題があるし、運営そのものに対する指導面においても欠けている点があるということを残念ながら指摘をしなければなるまいと思います。
 今度は監査制度の強化が行なわれることになりました。この面については私は前進したものだと思います。しかし幾らそれをやってみましても、あの協同飼料の株価操作やあるいは殖産住宅の今度の時価発行をめぐるところの汚職問題にまで発展をした状態の中からは、やはり取締役会の権限、責任というものをもっと明確にしていかないと粉飾決算等をつくりあげていく、そういうような取締役会というものにもつとメスを入れて、執行機関ですからこれをきちっとさせなければ、大臣もお考えになっていらっしゃるように抜本的な改正は生まれてこないと思います。そういうような意味において私は今後さらに法制審議会等に十分な論議をいただいてもっと社会の実態に合うような形の中から問題の処理を願いませんと、いまの大企業法人の場合等につきましては、もう社会的な存在すらも認められないような状態に立たされるようになってくるおそれがあると思うのです。
 そこで次に質問をいたしますが、商法の適用を受けるものの中で小商人の取り扱いの問題でございます。これはいま株式会社については百一万というお話がございました。年に五万ぐらいずつふえていくという川島民事局長の説明でございました。一体商法の適用を受けているものの総数というのはどのようになっているのか、これは大臣からお答えいただかなくてもけっこうでございますが、ぜひその数を知らせていただきたい。
 それからこの小商人の取り扱いでございますが、私これの淵源を調べてみました。明治三十二年勅令の二百七十一号によりまして、資本金五百円以下の場合には商業登記とかあるいは商号、商業簿記等の規定を適用しないということで免除規定というものがあった。片一方商法による保護規定というものはないわけでございます。ところが昭和十三年、たしかいまの二千円というのは昭和十三年にきめられた金額だと思うのです。それがずっと今日まで生きておりまして、そして三十二条、三十三条の商業帳簿を作成する義務、それから三十六条の帳簿及び重要書類の保存義務、三十五条の訴訟上の帳簿を提出する義務が免除されている。ところが今度この資本金二千円というものは動かしてないわけです。とするならば事実上のすべての商人が今度新たに貸借対照表あるいは損益計算書、そういう商業帳簿を作成をしなければならないという義務づけが与えられる、私はそういうふうに考えるわけです。
 その内容はどういうふうになってくるのだろうというのでいろいろ調べてみますと、個人商店の場合とそれから合名会社、合資会社は当然株式会社に追記されまして今度追加される形の中でその帳簿記載の義務を負わなければならないということになるわけでございます。そうなってきて、一ぱい飲み屋のおやじのところまで、あるいは小さな小商売をやっているようなそういうようなところまで商業帳簿というものを備えるような形をとらしていった場合に一体それは実効性を期待できるのかという問題になってくると思うのであります。この過去の淵源から考えてまいりますと、二千円というその資本金を動かさないでやるというのは、事実上実態は、二千円に満たない商人であって会社でない者というのは一体何人存在しますか。この点は川島民事局長にお尋ねをいたしますが、法令に定めてある、資本金二千円に満たない商人であって会社でない者というのが小商人です。その小商人の存在がありますか。私は一件もないと聞いている。そういうような状態の中で二千円という金額を動かさないということになれば、これはすべてにかかる。こういうことを考えますと、なぜこの点についてもっと零細な業者の実態に即応するように法律改正なさろうとされなかったのか、この点がお伺いしたいわけです。
#14
○川島政府委員 会社以外で商法の適用を受けるものが何人あるかということは、実は正確にその数字を把握しておりませんのでお答えできないわけでございます。
 今回の改正におきまして小商人に対する規定を、金額を引き上げるなどの考慮をしなかったかという点でございますが、この点につきましては仰せのような問題があるわけでございますが、法制審議会として会社の監査制度の問題を中心とした改正を審議しておりましたために、この点についての検討がまだ行なわれていない、したがって今回の改正に組み入れなかったという実情でございます。
 小商人というものは仰せのような状況にある、つまり商法におきまして商業帳簿の作成義務を免除されるとかいろいろな特例がございます。こういった点から考えますと、現行法が定めております資本金二千円という額が低きに失するということは私も仰せのとおりであろうと思います。したがってこれを改正するように今後検討する必要は十分あろうと思いますが、昭和十三年以前の小商人の定義といたしましては、資本金五百円以下ということのほかに、「戸々ニ就キ又ハ道路ニ於テ物ヲ売買スル者」というものがございまして、これは行商人あるいは露店商人というようなものをさしておったということでございます。こういうものにつきまして、商法の商業帳簿その他の規定の適用を免除するということが必要でありますことは、その営んでおります営業の実態から見て当然であろうと思うわけでありますが、その範囲の定め方につきまして、現在の学者の間にもいろいろ意見がございまして、資本金で区別するのがいいのかあるいは営業の形態によって区別するのがいいのか、こういう点がひとつ問題になっておるようでございます。資本金というのは常に変動いたしますので、かりに二百万円というふうに定めたといたしましても、常時店の改造を行なうこと等によって変動してまいります。そのために適用の基準がはずれたりあるいはまた反対に入ってきたりするということであっては、かえって商法の適用が不安定になる、こういうことからもう少し確定した基準を求めるべきである、こういう考え方がざごいますので、そういった点も含めまして今後商法部会において検討していただきたい、このように考えておる次第でございます。
#15
○村山(喜)委員 大臣いまお話のように、商法の適用を受けるものの総数は会社以外は不明なんです。その二千円以下の会社にあらざる、いわゆる商人であって会社でない者というものは、これは今日存在をしていないわけです。二千円というのをきめた当時を考えてまいりますと、今日の物価指数に直したら大体二百万円ですよ。資本金だけで営業形態をくくることは非常に無理な点もあることはよくわかります。経営の実態に即して法律というものを定める必要性のあることも認めます。しかしながら、今度商法の規定の改正を見てみますと、これはやはりすべての商人が作成義務を持つということになれば、非常に過酷な条件を私は零細な業者に押しつけるものだということを指摘をせざるを得ないわけですよ。ですから、そういうようなことを考えますと、二千円に満たない商人であって会社でない者が存在をしないにもかかわらず、法律は厳然として残っておる。そして会社組織をとっていない白色の申告事業者等につきましても、あるいはもっとそれ以下の小商売をほそぼそとやっておる零細企業者、こういうようなものは、やはり商法の規定が適用されるということになるわけですが、そうなってくると、商法の規定に違反をした状態であるということで、税務署のほうが、おまえのところは商法の規定に違反をしているじゃないかという形の中で、おまえの事業所得については認定をする、一定の規格にあわせて認定をするぞというおどしをかけてくる、そういうようなことから、これは小商人をいじめるために今度の法律改正をなされたんじゃなかろうかという、そういうような気がしないでもないわけです。というのは、その商業帳簿に基づいて損益計算書や貸借対照表をつくる能力がない人たちが大部分ですから、私はそういうような点において、二千円に満たない商人であって会社でない者というものが今日依然として残されておるという状態では、これは非常に実態に即応しない。だから、なぜこの点を改正をされなかったのかということを、私はいま監査の強化というようなものに重点を置いて論議をしたので、これについては論議をしなかったという話でありますが、法律というのは実態に即して法律を制定されなければ、法が定めるところのものが逸脱をされていったら法律そのものをつくる意味がない、私はそう思うのですが、大臣の御所見を重ねてお尋ねいたします。
#16
○田中(伊)国務大臣 まことにお説ごもっともに存じますが、このたびは二千円の金額はなぶっていないのでございますが、いまお話しのようなことを金額で規定することが、従来の態度というものがはたしていかなるものであろうか、もう少し企業の実態に即したはかり方をすることが適当ではなかろうかというような問題が残されておりますので、これの抜本的改正をめぐりまして次の改正の際にまで十分検討いたしまして、お説を念頭に置きまして検討を加えていきたいと考える次第でございます。
#17
○村山(喜)委員 もう一つ法律の実体に合わないものがあります。それは株式会社です。この株式会社は大臣も御承知のように一無額面の株券発行をやるということになるならば、株式会社をつくるのに、きのう私も習ったわけですが、資本金は七円でよろしい。普通今日資本金三千五百円ということで会社をつくることだって可能であります。そういうような状態の中で、最低の資本額というものが設定をされておりません。そこでいろいろな問題がこれに関連をして出てくるわけでございますが、東京地裁の所長をしていらっしゃった長谷部さんの中小企業株式会社論というのを拝見いたしました。これによりまして私も大体わかったわけでございますが、今日株式会社というのは大きな資本金、多数の株主、そして大企業に適する企業形態だ。そういうような意味においては、少ない資本で小人数の株主、中小企業というものには実態に即しない姿のものなんだけれども、しかしながら名前だけは外に対して外見がいいわけです。いわゆる信用を得るには非常に便利なんです。それから株式の譲渡が自由にできるというようなことで、有限会社と比較いたしますと株式会社のほうがメリットがある。だから百一万というようなたいへんな株式会社が日本には存在をする。今度は休眠会社ですか、それは整理するということでございまして、その点は私も賛成でございますが、しかしながらどう考えてみましても、この形の上では法律は順守しているけれども、実質が伴わない。ですから総会も開いたような形はとるけれども、事実上は開いていないというような実態がありますし、見せ金の株金払い込みで会社を設立する、そして名儀上の株主が存在をする一人会社が今日の普通の状態になってきた。株券の発行はしない。ない株式を譲渡や転売をすることもできる。そしてその法律の定める、法律が期待をしたものとはそぐわないような実態にいまなっているという状態は、これはあきらかに株式会社制度というものが乱用をされている。法の創造する共通の現象が生まれているといってもこれは過言でない、こういうようなことを考えてまいりますと、明らかに何らかの措置をとらなければいかぬ。しかし法を守らせるということを考えますと、それをめちゃくちゃに、おまえのところは何々株式会社という名前を使っちゃいかぬというふうに禁止するわけにもいかぬ。ですから、その実態に合わせて中小企業株式会社という立法を特別に起こす必要があるのじゃないかという立論でございます。私はごもっともな意見だということで考えておりましたが、法務省からいただきました資料を拝見いたしてまいりますと、外国の場合には、株式会社というものが日本に比べてきわめて少ないわけであります。ドイツが日本とよく対比されますが、ここでは株式会社の数は二千五百程度であるようでございまして、フランスの場合でも会社の数等については資本金の最低限度額をきめてあるわけでございますし、イギリスの場合やその他の場合を調べてみましても、交通整理がされておるようでございます。日本の場合だけは百一万という膨大な株式会社が存在をする。このことを考えますと、なぜ今度そういうようなものについて検討をなさって法令を現実に合わせていこうという考え方をおとりにならなかったのか。そして法律の定める商法の五十八条、五十九条の、大臣が解散請求をして裁判所が解散をさせるというようなことをおやりになったことを聞いたことはない。そういうようなことを考えてまいりますと、これはどうも自然ではないという感じがしてなりません。したがいまして、私はこの際、この問題については見直しをしていかなければならないのではないかと思いますが、大臣の御所見をお伺いしておきたいと思うのです。
#18
○田中(伊)国務大臣 お説のように、商法の規定があれども活用されざるもの、規定があって適用がないもの、こういうものが相当量にわたって長年の間に出てきておるわけであります。
 そこで、先ほどお話しになりました大企業と中小企業との区別でございます。商法適用上この区別を明らかにすべきものではなかろうかという御見解に対しましては、私もさように存じます。ただ公称資本だけで区別をしてよろしいかどうか、資本以外にも区別をする要素、基準があってよいのではなかろうかという問題に関しましては、慎重に検討をしてみる必要があろうと存じますので、今後の抜本的改正に臨みましては、いまのお説を十分に念頭に置きまして、大企業と中小企業との区別をして、適用上の区別ができますような方向に向かって検討を加えてみたいと存じます。
#19
○村山(喜)委員 そういうような立場から、ぜひ検討を願いまして、法律を現実に合わせながら処理を願いたいと思います。
 そこで、いま二点について質問をいたしたわけでございますが、大臣、この商業帳簿のつけ方につきましては、いわゆる会社はいいですよ。会社以外の商人、これについては、どう解釈をいたしてみましても、貸借対照表のほかに損益計算書を作成する義務が課せられておるわけです、法文をそのとおり解釈をいたしますと。われわれが説明をいただいているのでは、単式でもいいですよ、いままでの会計日記帳的なものでもいいですよ、こうおっしゃるけれども、それは解釈にすぎないのであって、この法律の条文を見てまいりますと、やはり貸借対照表のほかに損益計算書も作成しなければならないようになっているようでございますが、これでは実情に合わない点があると思います。私は、そういうような点については、不当なしわ寄せをやるべきでないという考え方で指導を願いたいと思いますが、大臣、御所見をいただきます。
#20
○川島政府委員 今回の改正によりまして、すべての商人に対して損益計算書の作成義務を課するということになっておりますことは、仰せのとおりでございます。その損益計算書の作成につきまして、複式帳簿が必要であるとか、あるいは単式帳簿で足りるかといったような点が議論されておりますが、私どもはその点は、法律としてはいずれともいっておりませんので、単式帳簿でも差しつかえない。損益計算書というのは、要するに一定の会計期間に生じた収益とこれに対応する費用というものを記載して、その期における純損益というものをまとめたものである。簡単に申しますと、一年間の収益が幾らで費用が幾らである、したがって利益がどれだけ生じたということを記載すれば足りるものでございますので、それほどむずかしいものではない。ただ、株式会社につきましては、もっと厳密な要件を課する必要がありますので、これにつきましては、別途商法の施行法に基づくところの省令において、その作成の様式等について規定することにいたしておりますけれども、一般の商人につきましては、そのような規制をいたしませんので、先ほど申し上げましたように、きわめて簡単なものでも差しつかえないというふうに考えておるわけでございます。
#21
○村山(喜)委員 しかしながら、税法の定めるところでは、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従ってやらなければならぬというような法律の制定あるいは指導原理があります。そうなってくると、その出し入れが明確になればよろしいのだというようなことでは、まあ指導はされるでありましょうが、しかしどうも現実の結果といたしましては、複式簿記を導入して、そして税の取りやすいような形を商法の改正によってやろうとしているのではなかろうかと思われるような行政姿勢もあるわけです。この点については、きわめて重要な問題でございますので、そういうような小さな、零細な個人業者にしわ寄せがこないように、ぜひ徹底して御指導をお願いをしておきたいと思います。
 そこで、次の問題でございます。これは商法と税法、それに企業会計原則の接点に関する問題でございますが、今度の改正を見てみますと、どうも私たちが考えておるものとは相反するような方向のものが出されてきているのではなかろうかという気がしてなりません。それは商法の二百八十七条ノ二によりまして特定引当金の措置がとられているわけでございますが、今度調整をしたのだということで、この特定引当金の措置等につきましては未処分損益計算として取り出すようになっているわけでございますが、その中身について見ますと、これは幾多の変遷がいままであるようでございまして、私の手元にあります資料によりますと、「税法と企業会計との調整に関する意見書」というのが、昭和四十一年の十月十七日に企業会計審議会の特別部会で出されておるものがございます。これは税法との関係でありますが、「企業会計原則上利益剰余金に属するとみられている価格変動準備金等について、税法がその繰入額の損金経理を要求することは、企業会計上妥当でないと考えられる。」「企業会計原則によれば、価格変動準備金、海外市場開拓準備金、海外投資損失準備金、証券取引責任準備金、株式売買損失準備金、特別償却引当金等は利益剰余金に属すると考えられている、」こういうような解釈が出まして、そして大蔵省の証券局長から国税庁長官にあてた指導文書によりましても、これは四十三年の二月二日の通達でございますが、これによりましても、「今後企業会計の基準に照らして費用又は損失と認められないような租税特別措置法上の諸準備金については、企業ができるだけ利益処分方式を採用するよう指導したい、」ところが、この商法の二百八十三条によりまして計算規則がありまして、決算の公告がそれぞれ新聞等に出ているわけでございますが、これを見てまいりますと、いわゆるそれは資本の勘定に入るべきものが損失のほうに計上されるような形をとって会計処理がされているわけですね。
 それで、今度この法律が改正をされましたときの内容を、企業会計原則修正案によりまして損益計算書と貸借対照表を比較検討をしてまいりますと、損益計算書の中で未処分損益の部として特に振り出してまいりますが、それは、資本の部に本来は入るべきものでさえも今度資本の部にはそれを入れちゃいかぬ。そしてそれは特定引当金の部として負債の部に入れなさいということで処理をされようとしているわけですね。そうなってきますと、貸借対照表が今日決算公告として新聞には出る、そういう形をとってまいりますと、これは利益留保性のものが負債の部に計上されているじゃないか。これは本来ならば資本の部に計上されなければならないのに、これが負債の部に計上された形の中で、いわゆる投資家に提供をされるということになってまいりますと、どう見ましてもB/Sの当期純利益とP/Lの当期純利益が一致をしない、こういうようなものも出てくる。私はこれらの企業会計原則修正案によるところの損益計算書や貸借対照表の今後の、まあ新聞公告に出される内容を見まして、どうもおかしなことを考えているなという気がしてなりません。だからこれについては大臣に答弁を求めるわけにもいきませんが、実務者のほうで説明を願いたいと思うのです。
#22
○白鳥説明員 企業会計原則の修正案における特定引当金の取り扱いについての御質問でございます。従来企業会計上、特定引当金は、いわゆる企業会計上認められております引当金には二つの種類がございまして、評価性の引当金、これは減価償却引当金であるとか貸し倒れ準備金のようなもので、評価の性質を有するものでございます。これと負債性引当金、典型的なものとしては退職給与引当金のようなものがございますが、等々、負債に該当する性質を持っているもの、これ以外のものは利益留保性のものである、こういうたてまえをとってきたわけでございます。ところが商法におきましては二百八十七条ノ二項に「引当金」という項目がございまして、将来の特定の支出または損失に備えるために引き当て金を負債の部に計上したときには、その目的を明らかにしなさい、こういう規定があるわけでございます。
 ところで商法の改正案によりまして、企業会計原則との接点が生じてきたわけでございます。御承知のように商法の三十二条ノ二項におきまして「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」という規定が入りましたので、その間の接点において商法上の扱いと企業会計原則上との扱いの混乱が生じないようにということで、企業会計原則の修正案におきましてはこの混乱が生じないように所要の措置を講じたわけでございます。で、その場合、特定引当金はこれを貸借対照表におきましては商法の規定に従いまして負債の部に計上いたしますが、これは本来の意味の負債とは別個に取り出しまして、特定引当金という一つの科目をあげまして、ここに全部集中して掲げていただく。こういうことによりまして従来、まあ流動負債の中に入っていたり固定負債の中に入っていたり非常にわかりにくいという弊害を除去いたしまして、特定引当金の残高は特定引当金という一つの項目の中にはっきりと区別して計上することができる、これによりましてこの貸借対照表を見る人は、そういう特殊な形の引き当て金がどれだけあるかということを一目りょう然わかるようにしたわけでございます。
 さらに損益計算書におきましては、特定引当金の取りくずしやあるいは繰り入れ額は未処分損益計算の項で計上する、したがいまして、純損益計算までの段階で当期純利益というこの特定引当金は影響させない。当期純利益を見ますと、これは特定引当金の出し入れが入っていない形で一目りょう然この数字がわかる、こういうことによりまして、逆粉飾を防止することができるように取り扱いをしたわけでございます。
#23
○村山(喜)委員 私は調整という名に隠れて、どうも今度の処理のしかたを見てまいりますと、従来不適正意見をつけられてきた特定引当金が、今度企業会計原則修正案の注の14によりまして、法令で証券取り引き上も適正となりまして、今後は限定意見ないし不適正意見というものは付せられないような形をとろうという、そういう考え方に基づいて表示をされるように受け取るのが正しい、こういうように思うのです。だから、その引き当て金の住所がはっきりしない。私は、これは見せかけの、株主やあるいは従業員に対して、その利益性のあるものを不当に圧縮をした形の中で表示をするような、そういうやり方になる、このことを指摘をして、まことにこの点については納得できません。
 そこで私、税法との関係においてこれはただしておきたいと思うのですが、もう時間があまりありませんので、指摘だけになるかもしれませんが、「企業会計原則の設定について」という、古いものですが、こういうようなことが書いてあります。「企業会計原則は、将来において、商法、税法、物価統制令等の企業会計に関係ある諸法令が制定、改廃される場合において尊重されなければならない。」
 そこで、この企業会計原則というものと税法との関係ですが、課税所得の計算の中心をなす部分は、大臣御承知のように、国会の税法審議とは無関係に行なわれて、その中身は、資本蓄積を最高の目的として定められている企業会計原則を、法人税法の二十二条の四項で公正妥当な会計処理基準として認知をして、大企業の利潤隠蔽を許していることにあるわけですが、私は、本商法の改正案の三十二条の二項で、公正な会計基準のしんしゃくという規定を定め、そして商法、証券取引法や法人税法のすべてで、企業会計原則を公正妥当な会計処理原則として認めて、一方、会計原則に、経団連の代表であるとかあるいは御用学者、官僚、そういうようなもので構成する企業会計審議会で、大体九〇%は経団連寄りの要求に従った、こういうような状態で、粉飾決算を認めるための修正を行なったのではないかとさえ思われるわけです。税法についていえば、継続性の原則の形骸化、それを企業の要求によりまして会計処理の方法の変更によって課税所得の圧縮に使うという結果を見ることになるのは明らかではないか。だから、そういう特定引当金の計上というものは、これは利潤の隠蔽を今日以上に進めようというふうに受け取って正当ではないだろうかという気がしてなりません。ですから、来年政府は法人税を四〇%に引き上げるような話をいたしておりますが、課税所得の圧縮等を別個に考えて、そして、国民には受けのいい、大企業には税金をヨーロッパ並みに引き上げるんだという宣伝に使おうとしているのではないかという気がしてなりませんが、一体、この企業会計原則と税法との接点において、見せかけのそういうような特定引当金の部に未処分損益の部というものを設けて処理をされるという考え方をこの課税原則の中にも持ち込むというお考え方を持っていらっしゃるのではないだろうか。そういう企業会計原則に従って商法や税法の制定がなされなければならないという考え方があるわけですから、私は、そういう点からいえば、今度の改正案は、調整の措置をとったということをいいながら、そうではない要素が入っているのではないかということを指摘をしたいおけですが、その点いかがでございますか。
#24
○大倉政府委員 税法との関連につきまして、ただいまの仕組み、今後の考え方を簡単にお答え申し上げますが、ただいま御指摘ございました各種引き当て金及び準備金につきましては、準備金は利益留保性のものを主として名前をつけておりますし、引き当て金のほうは、御指摘のように評価性のものと負債性のものとあるわけでございますが、いずれにいたしましても、税法上損金に算入いたします前提といたしましては税の法令におきましてその算入の範囲額を規定いたしております。税法上の規定がなしに、引き当て金をとりあるいは準備金をとったものが損金になるという仕組みは採用いたしておりません。
 今後の方針といたしましても、やはり引き当て金、準備金につきましては、税法において、法令上の規定を設けてその算入限度を規定するという方向で参りたい、さように考えております。
#25
○村山(喜)委員 やはり「企業会計原則の設定について」というのを見てみますと、いまおっしゃるようなことはいわれていないわけです。逆に、商法なり税法をつくる場合にはこの企業会計原則の線に従ってやりなさいということが書いてある。私は、そういうような意味から、これは今後きわめて注目しておかなければならない点だと思いますので、大臣に警告だけ発しておきたいと思います。
 そこで、時間が参りましたのでこれでやめますが、いわゆる監査人の独立性と、税理士業務、税理士の職域が不当に侵害をされることになるのではないだろうかということで、いろいろと問題が関係の団体から提起されている。これについては、私は時間が足りませんので追及をしていく時間がございませんが、どういうふうに職域の問題等についてはお考えになっているのか、私は数字でこれを示してもらわなければいかぬと思います。その点だけ説明を願いまして終わりたいと思いますが、いかがでございますか。
#26
○田中(伊)国務大臣 最後のお尋ねの点は、公認会計士法による公認会計士と、税理士法による税理士の仕事の区分に関する問題、そういう表現でわかると思います。この問題を、先生のお説は数字によって示してもらうべきものだというおことばでございますが、これは私もそう思う。
 そこで、会計監査人はそれぞれ数が違っております。そこで、そのうちの二分の一未満の利害関係人がある場合、利害関係人が頭数にして二分の一以下である場合においては、監査差しつかえないとなっておること、御承知のとおりでございます。これを税理士の諸君の団体と公認会計士の諸君の団体と、双方間に入りまして、所管が大蔵省でございますので、大蔵省を中心として目下調整をしていただいております。私のほうから出しております商法改正をめぐりましてこの重要問題が発生してきておりますから、私のほうからも大蔵大臣にお願いをいたしまして、数字による調整、これをぜひやってもらいたいということを懇請して、目下検討しておる最中でございます。いずれ御報告を申し上げる機会が来るものと存じます。
#27
○中垣委員長 次に、加藤清二君
#28
○加藤(清二)委員 お許しを得まして、私はただいま審議されております商法関係について二、三御質問を申し上げたいと存じます。田中さんとは久しぶりでございます。よろしく御指導のほどをお願いいたします。
 まず大臣にお尋ねいたしますが、会社が株を増資します場合に、その割り当てをする順序は、何が一番で何が二番でございましょうか。順序をお尋ねいたします。
#29
○田中(伊)国務大臣 民事局長からお答えを申し上げます。
#30
○川島政府委員 新株を割り当てる順序でございますが、これは、新株引き受け権が特に定められております場合のほかは、特にきまっておりません。
#31
○加藤(清二)委員 商習慣はいかがでございますか。きまっていないとおっしゃるから、商習慣はいかがかとお尋ねする。
#32
○川島政府委員 取締役会できめておるようでございます。
#33
○加藤(清二)委員 商習慣はいかがかと聞いておる。取締役会できめることはあたりまえの話である。
#34
○田邊説明員 私どものほうで新株の割り当てについての商習慣というのは存じませんが、従前からの商法の経緯から見ますと、出資者である株主にまず割り当てることを考え、さらに資金の調達の規模等から考えて、その一部を公募すべきかどうかというふうなことが考えられておる、あるいは一律に公募するということも最近は非常に多くなっているように思います。
#35
○加藤(清二)委員 当然のことです。だから、銀行金利よりは配当金のほうが少ない、利回りのほうが少なくても、なお一般市民が証券に投資する気になる、それは親株に対する額面配当があるからなのだ。当然のことなのです。その商習慣を、本省のお役人や、それを扱う場所のお役人が破ったらどういうことになります。大臣に承りたい。
#36
○田邊説明員 お答えいたします。
 商習慣を破った場合というお尋ねなのでございますが、商法の規制といたしましては、いま申し上げましたような一般的な慣習から見て、株主に割り当てずに他に割り当てるという場合の規制を厳格に定めておるわけでございます。そこで、その種の要件を満たせば、一般的な公募ということもなし得る、こういうふうに考えております。
#37
○加藤(清二)委員 商人、商社、会社、商業関係は非常に複雑多岐なのです。したがって、商法だけでこれを管理、取り締まることができない。したがって、商法の定めなき場合は商習慣による、商習慣によってもなお取り締まれぬ場合は民法によると商法第一条に書かれている。そうですね。ではあなたにお尋ねしましょう。功労株というのはどういう人に配当すべきですか。
#38
○田邊説明員 お尋ねはたいへん実務的な点なので、私の知識でお答えできるか疑問でございますが、功労株と一般にいわれているものは、その会社の役員あるいは従業員、つまり会社に密接な関係のある方々に、その功労を賞するという意味で新株の引き受け権を与える場合を一般に功労株といっているようでございます。
#39
○加藤(清二)委員 これを公務員が要求したり、あるいはその証券取引所に携わる連中が要求したらどういうことになります。
#40
○田中(伊)国務大臣 公務員が職務に関してかかる要求をする場合は、収賄が成立する場合が多いと存じます。
#41
○加藤(清二)委員 そのとおりでございます。だから前提にいろいろ聞いたわけなんです。本日の新聞にこんなに大きく出ておる。もっていかんとなすということなんです。証券を監督しなければならないところの大蔵省の公務員が功労株を要求するとは一体何ごとですか。監督の任にある者が汚職をやって、それで事が足りますか、こういうばかげたことをやられるものですから、次々と会社、企業の汚職やあるいは法律違反が続出している。これについて私は多くを語ろうとしませんが、法務大臣としてこの問題についてどう対処なさろうとしていらっしゃいますか。
#42
○田中(伊)国務大臣 お説のとおり重大な事件であると存じます。厳正公平に捜査をやっておる最中でございます。ちょうど先ほど先生おいでになる前に、横山先生から御質問がございました。現段階ではまだ御報告を申し上げるに少し時間がかかるということでございますので、明日の法務委員会で、捜査の差しつかえがない限度で、できるだけ詳しく本件概要の御報告を申し上げたい。特にそれをお約束いたしましたのは、この商法の改正にもひいては重要な関連が出てくる、御参考の資料にこれをしたいということで、明日の委員会である程度御報告ができるものと存じますが、いずれにしてもこの種の事案をこのままに放任しておくことはできませんので、厳正公平な立場でありますが、断固処置をしたい、この決意でございます。
#43
○加藤(清二)委員 断固処置をするということばを信じますが、断固処置をすべき当局の方々が、新株の配当の基準がわからなかったり、商習慣がわからぬようで、はたして純正なさばきができますか。それだから前提に聞いたのです。さばくほうがわからなくて、どうして正しいさばきができます。新株の配当の基準、功労株は一体いずれの人に与えるべきや、これが即座に即答できぬようでは心細いといわざるを得ないのです。厳正にやられるとおっしゃいますが、捜査中の案件は立法府においては遠慮するというのが、これがまたここの慣習のようでございますけれども、しかし緊急を要する場合はさにあらず、大臣も長いのですからおわかりでしょう。並行して審議したこともたくさんあります。したがってタブーではないはずなんです。立法府と司法府は並行に捜査をし、並行に審議をするということはタブーではないはずなんです。
 それで、お尋ねしますが、厳正な態度をとる、それを信じますけれども、国会として、国務大臣として、法務大臣にお伺いしたい。いつの時期にはっきりした態度を公表なさいますか。
#44
○田中(伊)国務大臣 捜査を終了いたしますと、起訴の手続をとらなければなりません。起訴の段階で、こういう事情でこういう内容のものであったので断じて起訴をしたということを公表することが、この捜査段階と国会の御審議とをできるだけ並行せしめていくという考え方から申しますと、この時期が一番適当であろう、ところが、まだ明日はその時期ではございませんが、しかしたいへん急いで商法改正を御審議をいただいておるときでもございますので、捜査に特別の差しさわりがない限度において、明日法務委員会において御報告を申し上げたい、こういうことを申し上げたのでございます。
#45
○加藤(清二)委員 内地の問題としてもこういうことがありますが、やはり海外においても、商法違反が次々と行なわれております。そのことは、日本の商社に対して諸外国から、エコノミックアニマルというありがたくない評価をいただいておる。これは日本にとっては決して喜ばしいことではない。むしろ私は恥だと思います。
 きょうの新聞にまた出ている。ジェトロの発表、「無作法すぎる商法をやり玉」悪役商社、海外各紙が袋だたき、ジェトロ調査、こう出ている。見てください。
 このごろ日本の物価が上がったのも商社のオファーが一つの原因であるということは、すでにもう国会の中で論議済みでございます。ところが、最も将来にも影響があり、日本の海外に対して正さなければならぬ姿勢の一点は、商社がルート違反、ルール違反をやっていることなんです。商社がルート違反、ルール違反をやっております。そのおかげで、アメリカは日本の商品をどしどし規制してまいります。カナダはこれをまねました。EC諸国もまたこれをまねて、ガット三十五条第二項の援用で、日本を平等扱いにいたしておりません。差別扱いでございます。いなか流に言えば、村八分扱いでございます。
 そういうやさきに、またぞろ悪名を累加するような行為が行なわれております。すなわち、日本の原毛、コットン等々の買い付けば、メーカーが商社に依頼をし、依頼を受けた商社が産地へ行って買い付ける、こういうやり方です。いわゆるインデント。ところが、それを破って、商社がかってに行って買い付けて、それをメーカーに無理やりにのませる、食わせる。この結果どうなるか。商社の買ってきたものがメーカーの製造しようと思っているものに合わない。メーカーが製造しているものは三品市場に売りつながなければならない。三品市場にはきちっと格づけがある、格差がある。つまり言うと、相撲の番付みたいにきまっておる。だから、横綱格のものは横綱格の材料を使わなければならない。ところが、別な材料でもってすれば、横綱格あるいは大関格のものができなくなってくる。
 さて、輸出の場合はどうなっているか。
 アメリカから注文を受けた、このような品物をつくってくれ、仕様書があるわけなんです。たとえばA社の一五〇〇番であるとかB社のAGであるとか材料に指定してくる。その一五〇〇番なりAGなりが中身が狂ったらどういうことになるか。製品の輸出市場でまたクレームやらペナルティーを受けなければなりません。すなわち、やっちゃいけないオッパ取引がいま行なわれようとしておる、いや行なわれつつある。これは商法に照らし合わすと、どういう違法になりますか。
#46
○田邊説明員 御指摘のケースは、一般的に考えますと、先方の注文と異なるようなものを送るという場合には、ことさらにこれを行なえば、商法上よりもむしろ刑事犯罪に該当する詐欺であると思います。
 その他のオッパ取引についてお尋ねでございますが、これは私どもよく存じません。その内容は、あるいは刑事犯罪に該当する場合もあるかと思いますが、所管いたしませんので、正確にはお答えいたしかねる問題でございます。
#47
○加藤(清二)委員 商法の立場から見ると、これは何条違反ですか。
#48
○田邊説明員 商法自体には詐欺、オッパ取引というものを直接に規制するというような条文を持っておりませんけれども、一般的には商取引の正常な取引でないという意味で、民事的な責任を生ずる場合があると思います。
#49
○加藤(清二)委員 大臣にお尋ねいたします。
 インデント取引はいままでずっと長きにわたって行なわれたよい習慣です。良俗でございます。ところが、いわゆるオファー取引、大阪流にいえばオッパ、オッパといいます。オッパ取引は、商社の独占をほしいままにすると同時に、やがて先ほど申し上げましたようなあまたあまたの悪影響を及ぼし、これが外国にまで影響を及ぼす。それは天然資源を売り出すほうの国に対しても迷惑をかけますし、今度はそれを加工して売り出す商品を買ってくれる国に対してもまた迷惑を及ぼすわけです。これは美風良俗に反する行為なんです。商法でいうと何違反になりますか。
#50
○田邊説明員 おっしゃるような事例について、商法は直接の規定を持っておりません。
#51
○加藤(清二)委員 商法第一条を読んでみてください。
#52
○田邊説明員 商法第一条は、商法の適用に関する原則を書いておるわけでございまして、先ほどの先生御指摘のとおり、商法、慣習法、民法という適用の順序を定めておるものでございます。
#53
○加藤(清二)委員 大臣、明らかに公序良俗に違反する、しかも、かつて長きにわたって伝えてきたところの習慣に違背する行為である。そうですね。これは放置しておいてよろしゅうございますか。この商法の改正も、商社をよりよき姿勢にする、株主を守る、当該企業に働く労働者を守る、そういう立場から行なわれようとしておりますね。しかし、いまのこの案件は世界的に影響を及ぼしているのですよ。ただそれを知っている人と知らぬ人があるだけの話で、むしろ関係の外国人のほうがそれをよくわきまえ、それを糾弾し、だから日本の商社は何とかしなければならぬ、こう言われておる。で、いわゆる公序良俗、すなわちよき商習慣、これを次から次へと破るようなことがあっては相ならぬと思います。
 実例を申し上げます。これはもう時効になりましたからここで言うてもいい。かつてアメリカから日本の商社に対して二百六十億円のペナルティが参りました。ここで論議になりました。私はやりました。覚えております。で、国会代表がアメリカへ行って、これのぺナルティを解消するためにアメリカへ代表が選ばれて行きました。なぜそんなことが起きたのか。やはりルート違反、ルール違反をやったからなんです。アメリカのルート違反、ルール違反をやったからだ。日本にもそういうルールはなかった。かってに商社がつくってしまう。なぜそれをつくらなければならないか。人よりも一歩早くかけつけて、二歩前進して、人よりも三倍よけいもうけたいと思うから、そういうことになる。つまり、エゴとエゴの衝突なんだ。もうけるためには手段を選ばぬ。つまり、手段を踏みにじってでも、人のしかばねを越えてでも行くというこの姿勢は決して日本にとってもよくない。諸外国のように、特に英国のように慣習を守るところから見れば、これはやくざと見られてもやむを得ぬと思います。こういうことが現に行なわれている。そのやさきに立って法務大臣はどうなさいますか。この法の改正も大事かもしれないけれども……。
#54
○田中(伊)国務大臣 お説のような事柄、すべて商取引上のよい慣習、これを破るものであるというおことば、私はそのとおりであると存じます。
 で問題は、法務大臣がお答えをいたします場合の問題はでございますが、そういうよき商取引上の慣習を踏みにじって利益に傾く行動をとりました場合の罰則でございます。商法の規定による罰則がどの程度立法技術の上から、現にこれがございませんが、将来りっぱな商取引を行なわすという意味から、いま先生お説のような事態が起こったときに、これに対する罰則をつくる場合にどういう形の罰則が立法技術的につくり得るかということ、非常に深刻な問題として検討をする必要があろうと存じます。しかし、大体の問題はそういう場合におきましては商法に規定はないが、一般の刑法並びに刑事法規によって処断をするような技術的な道があれば、これを考えることも一つの方法でございます。非常に重要なよい慣習を守るために刑法がタッチする。商法以外の刑罰法規がタッチする。商法の罰則をもってできない場合においては、これも一つの方法でございます。そのいずれの道を考えるべきものであるかということが重要課題でございますが、しかし、まあありていに申し上げますと、いまお話をいただきましたような、この種のものの取り締まりは当該商事会社が内部関係においてそれぞれの商社が反省をいたしまして、内部が自主的、自治的に反省をして取り締まりをしていくという改善を行なっていこうということが善の善なる道であろうかと存じます。
 そういうことをいたしますためには、この法案の改正をめぐって関連をして一口申し上げたいことは、やはり監査制度に人を得て監査機関が今度の改正によってその権限を強化せられて、そうして商社の執行部、社長以下の執行部の会議に監査役が出席をいたしまして、意見を述べて、当を得ざるもの、企業の反社会性に関するごとき行動に対しては、これをチェックする機能が与えてありますから、思い切ってこれをチェックするという態度に出てまいりまして、この法律制度の改正のお許しをいただきました上で、監査制度に人を得て、監査制度の改正というものを活用して、行き過ぎたよい習慣を踏みにじるような行動はとらさないということを、商社みずからが自制と反省の結果、これをやっていくということが実現をしていきますと、これは日本の産業界のためにも善の善なる方法であるように思うのでございます。
 それではなかなかやれないではないかということになると、他の立法の道を考えねばならぬが、これは立法技術の上からなかなか容易なものでない、非常に困難なものであろう。しかし検討をしなければなるまいというふうに考えるのでございます。いま先生のお話を承って、なるほどそういうものにも罰則が必要だということをいま承って感ずるのでございます。そういうふうに当面いたしまして、思うのでございます。
#55
○加藤(清二)委員 私は監査役の権限を拡大して監視を厳重にする。株主総会の以前に監査役の意見がより正しく反映させることができる、こういう点について反対しているのではありません。反対ではありません。しかし、ほんとうに今日の時点において悪名高き商社の悪業をいまにして是正しなければ、諸外国から名誉の孤立をしなければならぬ。それを心配する。現に円の問題だけではありません。商品の貿易においても次から次へと自主的な制限、ペナルティをおっかぶせてきている今日なんです。はたして大臣、監査役の権限をふやしただけで、これが直るでしょうか。監査役というのは取締役よりも下部に属する、位が下に属すると、こう一般常識ではいわれている。しかも監査役はついでにやっている。名前だけだ、肩書きだけだ、あそこの重役もここの重役もやっている人が、某会社の監査役なんだ。しかもこれは関連なんだ。資本は、表は違っているけれども、下は連通管の原理と一緒で、みんな一緒に通じている。そういう一部の人がはたして権限を与えられたからといって、その権限の行使が十分にできるでございましょうか。少なくとも、これは給与を別な面、国家からでも与えられておれば、権限が発揮できるでしょう。しかし国家から給与をいただき、会社には影響のないところの権限を持っておる者が会社と妥協して功労株をよこせなんと言った、こういうことでは、これは幾ら監査役の権限をふやしたってどうにもならぬ。しかしこのインデント取引がオッパ取引になっているのは事実なんだから、この事実を見てどうします、通産省。
#56
○橋本政府委員 ただいま御指摘の原毛につきまして現実にオファー取引が行なわれているということはまことに遺憾なことだと思います。本来原毛というものは非常に多種多様で、したがいまして品質にかなりの差がある。そういったものにつきましてオファー取引をやるということは経済の実態にも沿わない問題でありますので、私どもといたしましては貿易商社並びに羊毛紡績業界に対しまして強くもとのインデント方式に戻るよう要請いたしておりますが、今後ともその方向で強く指導してまいりたいと考えております。
#57
○加藤(清二)委員 効果がなかったらどうする。
#58
○橋本政府委員 効果が出るまで行政指導を強化してまいりたいと考えております。
#59
○加藤(清二)委員 なぜ私がそんなに念を押さなければならないのか。すでにアメリカ輸出のスチールで商社は大やけどをしたはずなんです。だれのおかげであの難儀を救われたか、それをすっかり忘れてしまっている。のど元過ぎれば熱さ忘るるで何回でも何回でも同じことを繰り返す。監査役の一人二人かわったり、権限が少々ふえたくらいじゃこの体質は直りません。このままでいったら一体日本の貿易はどういうことになるのか。それを念頭に置いて、この際時間を区切ってはっきりえりを正させるようにすべきであると思う。それができますか。
#60
○橋本政府委員 御指摘のような点はまことに遺憾なことでございますので、われわれといたしましても商社の首脳部を招致いたしまして強くその自粛、自覚を要請するとともに、商社の首脳部を集めまして商社懇談会なるものを定期的に開いております。この場を通じまして商社の本来の機能に立ち戻って、反社会的行動のないようにあるいは対外的に信用を失墜することのないように強く指導してまいりたいと考えております。
#61
○加藤(清二)委員 これは中曽根通産大臣もすでに承知のことでございます。商法の番人である法務大臣としてはどうお考えでございますか。
#62
○田中(伊)国務大臣 先ほど申し上げましたように、一番大事なことは商社自身が内部関係を統一いたしまして自主的に反省をしてよい習慣を守る、よい習慣を踏みにじらないということに努力をしてくれることが一番でございます。同時に、政府には業者を所管いたします通産省がありますので、私の所管ではございませんが、通産省が知恵のありったけをしぼって、いま申し上げますように商社との間に公の懇談を通じましてしっかり行政指導をやっていただく。現に努力をいたしましてある種の成績をあげつつある、こういうふうにも見られますので、この努力を継続していただいて、しっかり業者に対する行政指導をやっていただく、こういうふうにしたいものである。それがどうしてもできぬという場合においては罰則を考えなければならぬといういやな事態が起こってくるのでございます。そういう事態が起こらないようにやってもらいたいものだ、こう考える次第でございます。
#63
○加藤(清二)委員 田中内閣は国内でもずいぶん人気を落としました。物価が上がれば総理の人気が落ちるのはあたりまえなんだ。しかし海外においても田中内閣の人気が落ちておるということがきょうの新聞に出ておる、ジェトロ調べでも。なぜそうなのか。当然のことなんです。商社がこれほどあばれる。なぜそうなったかという原因は、田中内閣のつくった予算の関係である、投資の関係でこれが発生してきているということを諸外国は先刻見通しだからなんだ。私は田中内閣が人気を失墜しても別に影響はございません。しかし問題は、田中内閣イコール日本の国民である。日本国家が海外において信用を失墜することは黙視できないことなんだ。したがって、本件を是正するにあたっては野党としても協力にやぶさかでございません。それは日本の名誉を守るため、日本の信用をますます増加させるためなんだ。その意味において、要すればここへ証人を喚問する。そして一そうえりを正させることに拍車をかけるということを催すとしたら、大臣は賛成ですか反対ですか。
#64
○田中(伊)国務大臣 せっかくのおことばで、私のことばが出にくいのでありますが、国会でおやりをいただく事柄に属しますので、私の賛否の見解は差し控えます。
#65
○加藤(清二)委員 国会できまれば法務大臣もその席へ出席することにやぶさかでない、こう受け取ってよろしゅうございますか。――はい御苦労さんです。それでけっこうです。
 それでは次、本法の改正の要点、一口に言うとどういうことなんです。
#66
○田中(伊)国務大臣 なかなか先生一口で言えぬのですが、ほんとうに一口に近いところで申し上げますと五つの要領がございます。
 第一は、先ほどからくどく私がへたな説明をいたしました監査制度の強化でございます。同時にそれは会計の帳じりだけを監査する会計監査だけでなしに業務監査も行なわしめる、これが第一点でございます。
 それから第二点は、取締役に欠員が生じますと選挙をいたしますね。その場合一人の欠員ですと問題は起こりませんが、二人以上の取締役の選挙をいたします場合の累積投票というものを定款の規定によって完全排除ができるようにしていこう、いろいろむずかしい問題がございますが、これが第二点でございます。
 それからもう一つは、時価による株式の発行をいたします場合、額面以上の額は申すまでもなく法定準備金に繰り入れられることになっております。その場合に株主に対して配分いたしました新株のうち代金の一部を免除する。現在は全部免除の規定はございますが、一部免除の規定はございませんので一部を免除することができるようにしていこう、こういうことが重要な第三点でございます。
 それからもう一つは、一年を限っての決算、年二回の決算をしないで一回決算をしております会社が相当ございます。大体大ざっぱに申しまして上場会社の四分の一くらいが一年決算をやっております。それは株主のほうからいうと不便でございますので、中間配当ができるように処置をしていこう。むろんこの中間配当には制約がございますけれども、とにかく中間配当制度を認めていこうということ
 それからもう一つ大事な点は、現在先生仰せのように百一万の株式会社がございます。大体この中の二割の二十万程度の会社は、会社という登記はあるけれども実際は休眠をしておる。こんなものは思い切って整理をしてしまおう、いろいろ取引上迷惑がかかることがございますから休眠会社の整理を思い切ってやろう、こういうことを第五に考えておるわけでございます。
 それからさらに一口申し上げますと、監査制度をめぐりまして、あまり小さい会社に業務監査までやらすことは無理でございますので、資本金一億以下の会社については業務監査はやらぬでいい、会計監査だけでいい、こういうことにいたしまして、一億以上の会社について業務監査を行なわしめることにいたしました。そのうち特に五億以上の会社につきましては、株主総会に送付をいたします計算書類というものにつきまして、これは会計監査人の監査を経てこれを提出するようにしていこう、監査の強化でございます。こういうことを考えておりますばかりでなく、もう一口で終わりますが、今度の商法改正をいたしますにつきまして、非訟事件手続法その他三十二の法律を改正いたしませんと理屈が合いませんので、商法改正に伴う関係法令の改正三十二を改正したい、これが全部でございます。長くなりましたが……。
#67
○加藤(清二)委員 一口でけっこうでしたが、御丁寧に解説をいただきまして、一そういい勉強になりました。が、考えてみますと、こういうことじゃございませんか。監査役の権限を拡大する。一つには公認会計士の導入、まあ簡単に言うとそういうことじゃございませんか。それから、いろいろあまたあまたの問題が発生してきておるようでございますが、問題はそこなんですね。
 そこで法制審議会の答申と今度の法の改正とを比較してみますると、だいぶスタイルが変わってきているようですね。変わった原因を承りたい。
#68
○田中(伊)国務大臣 これは参事官が詳しいので、参事官から……。
#69
○田邊説明員 答申原案と法律案要綱は異なる点がございますので、大きい点は監査役の権限の一部が原案に対して修正削除をされております。この点は今度の監査制度の目ざすところの最小限の権限を盛り込むことによって法律案を作成した、そういう事情にございます。
#70
○加藤(清二)委員 だいぶ削られたので、これは財界の圧力に法務省が屈したのではないかといううわさが立っておる。法制審議会の答申からだいぶ後退をしている。ゆえになぜ後退したか。それは反対があったであろう。だれが反対したであろうか。おそらくこれは企業である、といううわさが立っている。
 そこで承りたい。法務大臣、私はそう信じたくはありません。私の信頼する田中法務大臣でございまするから、そのようなことはないと思います。しかし、どう考えても不可思議なのは、先ほど村山委員からお尋ねのありました社内保留の分、蓄積の分、これはどう考えてもわからないのですね。当然これは資本と考えてしかるべきだ。それを負債の部に記録するというばかげたことは、会社側からいえば社内隠蔽だ。もっと突っ込んでいえば、粉飾決算ということをあえて法務省が認めるという結果にもなりかねない。なぜそういうことをしなければならないのか。その結果、資産があるにもかかわらず、資本があるにもかかわらず、公表するときにはありませんということになる。商法によって粉飾決算はいけませんと厳禁されている。それをあえて基本の場において許すというようなことは、これは二律背反もはなはだしいと思いますが、なぜそうしなければならないのか理由を承りたい。さっき村山君が聞いたけれども確たる答弁がなかった。これはもう私だけではない、一般国民がみんなそう思っているから、さっきこちらにいらした委員の方々からわあわあやじが出たでしょう。こういう空気の中でこれを押し通していったら最初から疑われます。もとより企業の会計は疑われておる。三分や五分で何百億という会計を一ぺんに通す。しかも株主でない連中やらちょうちんつけたり太鼓をたたく連中の雑音によってさあっと持っていっちゃう。それがいままでのやりようだ。基本の問題で、資本であるべきものが負債になりかわる。どう考えたって、そんなことはあり得ぬことなんです。これもやはり、うわさによれば財界の圧力に屈したのではないかと、こうなんです。これはどうなんです。
#71
○田中(伊)国務大臣 法制審議会で示されたもののうち、相当部分がこのたびの改正に載せていないということは事実でございます。お察しのとおりです。それが財界の圧力ではないかと仰せになることがたいへん片腹痛い感じがいたします。(加藤(清二)委員「両腹かもしれない」と呼ぶ)いや両腹かもしれませんが、そういうことばがあることがほうとうに片腹……。それでない腹を探られておる感じでございます。それで、法務省はこの法案の改正をいたしますにつきまして、法制審議会の意見はあったけれども、その意見に基づいて立案をせねばならぬでしょう。その立案の過程において、どうしても関係方面の意見の聴取ということは入念にせねばいかぬ。いま反対をしております税理士の意見も聞かなければならぬ。公認会計士の意見も聞かなければならぬ。弁護士方面の意見も聞かなければならぬ。また通産省から、最高裁の方面から意見もみんな承らなければならぬ。財界の意見も、この商法の改正につきましてはウエートを置いて聞かなければならぬ。意見を聞いたことは事実でございます。意見を聞いたことは事実であるが、その圧力に屈して法務省が改正をやりたいが遠慮をしたということ、先生、そんなことないですよ。あなたそのようにいまおっしゃるから、そんなあなたひどいことをおっしゃる、そういうことはありません。
#72
○加藤(清二)委員 私は田中法務大臣とのおつき合いも二十何年で、あなたの人格もよく存じ上げておるし、尊敬もいたしておりますから、田中法務大臣が財界に骨抜きにされたとは言いませんよ。そんなことは思いたくないし、そんなことは言いません。しかしそれじゃ資本の部に記載すべきものを、当然そうあってしかるべきものを、貸借対照表の負債の部にする。損益計算書の場合にはこれはどうなるのです。損益計算書と矛盾が発生するのじゃございませんか。なぜそういうことをしなければならないか。大義名分が出ていないじゃないですか。納得できないですよ。このおかげでどういうことが発生するか。わが会社にはそんな社内保留はありません。そんな資産はありません。だからもうかっておりません。こういうかっこうになるでしょう。そこから先は言いません。それがどう影響していくか言いませんが、これが物価の値上がりや労働者の賃下げに悪用されなければいいと思うのです。このごろの物価の値上げ、大阪の電気、四国の電気、去年の東京のガス、みんな理由が負債、負債で来ているのですよ。だから上げてくれなければかなわぬといっておる。これはこのままでいくと、物価の値上げに通ずる道を開いたと同じことになる。それを私は心配するのです。なぜこうしなければならないのか。大臣、大義名分、にしきの御旗を承りたい。
#73
○田中(伊)国務大臣 いまのもろもろの引き当て金の問題ですけれども、不当な引き当て金があり得るのだということを考えてみますと、たとえば貸倒引当金。貸し倒れがそんなにない会社じゃないか、(「銀行がそうだ」と呼ぶ者あり)しかるに、そのような膨大な貸倒引当金を考えておくとはいかがなものか。また最近の変動の激しい価格変動準備金にしても、そんな変動準備金は要らないではないかとだれが見ても思うような変動準備金が用意されておる。これは確かに負債の部に入るべきものでない。どう見ても資本の部に入るべきですね、社内保留ですから、社内保留の形式が変わっておるだけですから。そこで、そういう場合には、大蔵省がしっかりしておりまして、その部分については、課税をいたします場合には、負債として課税はしないのだ、ここは計算に入れてぴしゃり課税をしておりますから、先生仰せのような、そんなに不当なことが起こらぬのではないかという感じでございます。私専門家ではありませんから何とも言えませんが、それは課税のやり方さえ手落ちがなければ、私はこれを負債の部に記載をしてもそう大きな問題ではないのではなかろうかという感じを持っておるわけでございます。
#74
○加藤(清二)委員 大臣も経験が深ういらっしゃいますから、ようくすべてを知っていて、いまの答弁ももたもたしていらっしゃると思いますが、すでにおわかりのはずなんです。なぜ私どもがこんなに熱心にここをつかなければならないのかというと、悪用こそされ善用はされない。善用されないようなものをなぜ変えなければならないのか。新しくつくったというなら、それは入れ歯を間違えたということでも通るでしょう。しかし、いままでこっちにあったものを、資産であるものを、資本であるものを、どうして負債のほうに入れなければならないのか、納得ができないのです。
 具体的に申し上げましょう。いまあちらからも声がありましたが、銀行に貸倒引当金というのがありますね。ほんとうに銀行が貸し倒れにあって損したことがありますか。銀行は倒れる前に引き揚げますよ。そうして、かりに倒産というのであるならば、必ずその前にわかりますから、何せ自分のところで不渡りを出すのだから。わかるからどうするか。そこの会社の資産を全部凍結しますよ。そうして、これを二束三文で売りたたきますよ。その利潤のほうがはるかに大きいですよ。いわんや歩積み両建てをやらしておるでしょう。貸倒引当金なんというものは必要ないのです。電気会社に渇水準備金というのがある。石炭や石油に渇水準備金というものは要らないのですよ。あれは水力電気のはなやかなりしころは必要であったかもしれません。どうして石油に渇水準備金が必要でしょうか。これはみんな会社の資産になっていくのですよ。どうして負債になりますか。他人に浮き貸しすれば、それは負債になるかもしれませんよ。自分の会社の中へたくわえておくでしょう。銀行へ預金しておくでしょう。どうしてこれが負債です。そういうことをそれじゃ個人の経理でも許しますか。代議士もみんな調査をされますね。そのときに、資本であったものを負債だといって記載して、それでよろしゅうございますか。こういう例が許されるとするならば、みんなこれをまねしますよ。それでいいですか、大臣。大義名分を聞きたい。
#75
○田邊説明員 たいへん専門的にお尋ねでございますが、大臣が答えました引き当て金の問題は、現行の商法は二百八十七条の二というところで、いわゆる特定引当金の計上を認めております。これは義務的なものではございませんので、計上することを認め、計上する場合には負債の部に計上しろ、こういう規定を持っておるわけでございます。この規定の趣旨は、会社が将来特定の支出あるいは損失に備えて、ある蓋然性のある金額を見積もれば、それを貸借対照表の負債の部に計上いたしまして計算をしてもよろしいという趣旨でございます。
 ただ、お尋ねのように、資本にあるべきものを負債と考えているかという点でございますけれども、記載部分は負債の部に書いておりますけれども、これは左側の資産の部に対応して右側に書いたという趣旨にしかすぎない。ただ問題は、その引き当て金めぐって、先ほど来出ておりますような利益性の引き当て金を含んでいるところの問題点だと思います。これは商法の本来の考え方が、そういう利益性のものを引き当て金として認めた場合に、まず会社をめぐる利害の関係者、これは二派に分かれるわけでございます。会計原則が従前から扱ってまいりました投資家という人たちの利益と、そして従業員その他を含む会社の債権者という人たちの利益と、この二つを商法は調整しておるわけでございます。現行商法の考え方は、そういう利益性の引き当て金というものを負債の部に入れて計算をいたしました結果は、利益配当の可能額というものの計算に影響してまいります。つまり、その種の引き当て金を計上しなければ、投資家のほうから見れば、株主から見れば、配当が十分とれる計算になるはずであります。ところが、債権者の側から見ますと、そのような勘定で社内に残されるというものは、債権者の取引の目当てとしては、会社内に資産が残っているという勘定になろうかと思います。そこで、商法の考えは、その種の利益性の引き当て金の計上は認めると同時に、株主にその計上を認めるかどうかという権限を実は与えておるわけです。もし株主が了承し、すなわち、自分たちの利益配当の面でそれが控除的に計算されても差しつかえないということを承認すれば、それは会社の処理として認めよう、こういう立場でございます。ということは、株主がこれを認めません場合には、引き当て金としては計上を認めずに、配当の財源として使う、こういう考え方でございます。
#76
○加藤(清二)委員 ちょっともわからぬ。あなたは頭のいいエリートなんです。その頭をもってしても解説ができない。苦しい答弁。大体スコラ哲学というものは昔からそういうものです。苦しい、苦しまぎれのため息をしなければならぬ。
 最後に一つだけ救われる点がありましたね。株主の賛成を要する。しかし大臣、ほんとうに株主総会で株主が自分の意思を総会に反映することが、今日の状態で、できると思っていらっしゃるのですか。法律上は、小株主でも、累積すれば重役の取りかえっこまでできることになっている。なっているけれども、そんな例がありますか。発言したい、発言したいというて、なけなしのさいふをはたいて一株買った人たちが累積して会場に臨んだら、おっぽり出されるでしょう。寄せつけぬでしょう。五分たたないうちに終わりでしょう。そういう現実をながめながら、小株主の意見が反映するなんて、そういうむちゃなことをいうものじゃありませんよ。それこそ現実無視。社会党のいうことがいつでも空理空論、こういう評価があったが、いまや与党のいうことが空理空論、現実遊離じゃないですか。そんなむちゃな話ありませんよ。理解できない。どうしてこれで株主擁護ができますか。商法に定められたところの株主擁護、労働法に定められにところの当該企業に働く労働者の擁護がどうしてこれでできますか。資産ですよ、どう考えたって。もっともそれは利潤から生まれたものかもしれません。しかし、あくまで資産である。それがあなたは右と左とかわるだけだからだいじょうぶだとおっしゃる。右と左とかわったらたいへんですよ、思想だって。そうでしょう。右と左がごっちゃになりますか。冗談じゃない。取りかえっこができますか。そういうあほなことをやっておるものだから、東京都がいまに右と左がかわりますよ。冗談じゃないですよ。右と左とかわる、白と黒とかわるということはたいへんなかわり方なんです。天地がひっくり返るということなんです。夜と昼とがかわるということなんです。たいへんな変わり方です。あなたはいなかの山奥のじいちゃん、ばあちゃんに演説やるときにはそれでいいでしょう。右と左とちょこっとかわっただけですからこんなことはだいじょうぶですよ、変わりはありませんよ、こう言ったかもしれません。おっとどっこい、こっちはそうはいかぬ。たいへんな変わりよう。理解できない。理解できないものは賛成することはできない。この点は賛成することはできません。どうしても修正なり賛成なりということを野党に対してさせたかったら、もっとわかりやすく、もっと親切に、かくかくの理由でこうしましたというものを出していただかなきゃ納得できません。
 同時に、もう一つ答えが落ちてましたね。それでは、これと同じことを、企業、会社に許されるこの記帳のしかたを国民全部がまねたらどういうことになりますか。それでいいですか。大臣、これはまだ答えが出てない。いや、最後だから大臣に聞いておる。
#77
○田中(伊)国務大臣 むずかしい御質問でございます。たいへんむずかしい御質問でございます。
#78
○加藤(清二)委員 では大蔵省、スコラ哲学の続きをやりなさい。
#79
○田邊説明員 先生御指摘の一番大きい問題は、株主総会の形骸化の問題でございます。これは累次大臣が答弁しておるとおりでございますけれども、全面改正の検討の事項に取り上げられますその前の改正として、実はおっしゃるような経理に関する先生の御議論と違うかもしれませんが、その適正を期するための監査役の権限改正あるいは大きい企業について、つまり利害関係人の多いものについての会計士監査というものを今度の改正で入れたわけでございます。
 それから最後のお尋ねの、すべての国民がとおっしゃるわけですが、はたして一般の個人商人その他が引き当て金を計上しているのかどうか存じませんけれども、先ほど御指摘にございました総則の改正で商業帳簿の作成については公正な会計慣行をしんしゃくして解釈しなければならないという規定を置きました結果、個人商人もそういう引き当て金会計というものを公正慣行と考えて使う場合には、これを排斥する理由はないと商法は考えます。
#80
○加藤(清二)委員 これでおしまい。わかりません。理解できません。何とおっしゃっても。説得力がない。私が頑迷固陋のゆえかもしれませんけれども、納得できない。
#81
○中垣委員長 加藤委員、あなたの御質問に対しまして――大蔵省の大倉審議官、おられますか。――大蔵省の企業財務課長から一ぺん答弁させますから。私が聞いておっても、十分行なわれていません。もう一ぺん、答弁させます。
#82
○加藤(清二)委員 そうでしょう。委員長が聞いてみえてもわからない。では、皆さん、わかりますか、ここのところ。(「わからない」と呼ぶ者あり)わからぬまま通していくというのは――こういうことをやるから、株主総会でも株主がわからぬままがあっと通すようになりますよ。これはいけない。
 最後に、大臣。むずかしい、むずかしいとおっしゃった。これは、私はますます大臣に敬意を表します。正直ですからね。これを、国民が資産であり資本であるものを、負債だといって記載するようになったら、これ、どういうことになりますか。私はそれが心配なんです。日本の商社の横暴がやがて海外において日本の権威を失墜したと同じように、資産であり資本であるものを負債であるということを書くことをここで許したならば、それは株主総会の歯どめがあるとおっしゃるけれども、そんなものは歯どめにならない。したがって、それでは国民も、おれもそういうふうにまねよう、こういうことになったら、これはどういうことになりますか。これこそ日本の経済、徴税、税収入の基本がくずれることになるじゃございませんか。及ぼす影響の甚大さにかんがみて、私は納得できるような御説明がいただきたい、こういうことを申し上げておるわけです。
#83
○白鳥説明員 御指名がありましたのでお答え申し上げます。
 企業会計原則は一般の投資家の保護ということを目的としておりますので、私どもの所管では、広く一般大衆に株式を募集するような会社に対する経理を規制しておりますので、小規模な一般の人々、小さな商人、こういうものについては直接関係はございませんけれども、一般的にこの引き当て金を計上することにつきましては企業会計ではこれを利益留保性のものとして考えているわけでございます。したがいまして、これは負債とは考えられないわけでございますけれども、負債とは区別して特定引当金というものをはっきり掲げることによって一般の大衆に誤解を与えないようにする、こういうたてまえをとっているわけでございます。
#84
○加藤(清二)委員 最後に。ますますおかしくなってきた。企業会計原則の適用は、ほとんどが大きな企業なんです。大きな企業の場合は資産を負債と記載してもよろしい。しかし小さな企業は、国民は、資本、資産は負債と記載することはできない。そんなばかな、不平等なやり方がどこにありますか。税でも、法でもこれは国民平等でなければならぬはずです。なぜそんな特例を設けなければならないのか、ますますわからぬ。さなきだに日本の経済は上に厚く下に薄いといわれておる。徴税は下に厚く上に薄いといわれておる。そういうやさきにそれを一そう助長するようなことばがはしなくも出ました。企業会計原則に適用する。これは資産の部はいみじくもおっしゃった。そうでないけれども、こっちに書くことにした。なぜ大きい企業だけそれを許さなければならぬ。だから私は聞くのです。では、一般の零細やわれわれ個人が資産を負債に書いたら、どういうことになりますか。それでよろしいかと聞いておる。及ぼす影響は大きいですよと言っておる。答えがない。それに対する答えかと思ったら、違っておる。上がけはよろしい、こういう話だ。上だけはよろしかったら下もまねますよ。法はすべての国民に対して平等なんです。なぜ特例を設けるのだ。理由があかぬ。もういいわ。時間ですわ。だめです。
 では、大臣、かくのごとし。結論に到達しておりませんね。委員長の制限がありますから……。
#85
○中垣委員長 加藤委員の御質問に対しまして委員長から特に白鳥企業財務課長にもう一ぺん答弁願います。
#86
○加藤(清二)委員 私は委員長の仰せに従います。それで時間を延ばそうといたしませんから。しかし、結論に達していない、理解できないということはおわかりいただいたと思います。したがって、願わくば、委員長、理事の皆さんの相談によっていずれかの機会にもう一度質問をする時間をお与えいただきまするよう、私の質問は留保してこれで終わります。
#87
○白鳥説明員 私のことばが足りませんで誤解を生じましたことを申しわけなく思いますが、証取法のたてまえは一般の大衆を保護するためでございます。したがいまして、一般の大衆が投資をするにあたって判断を誤らないようにする、こういうことが原則でございまして、そのために特定引当金をはっきりと計上させる、こういうことがあるわけでございます。小さな企業は大ぜいの大衆から株式を募集するということはございませんから大衆の保護ということは問題がございませんので、お答えにはならなかったかと存じますが、証券取引法の目的という観点からお答え申し上げましたので、多少食い違いがございましたことをおわび申し上げます。
#88
○中垣委員長 次に荒木宏君。
#89
○荒木(宏)委員 お尋ねを申し上げる前に一言前置きを申し上げますが、今度の改正の趣旨は、企業の経理を適正にする、企業監査を充実させる、こうおっしゃっておるわけであります。私は、この点についての国民の皆さんの要望は、企業が、ことに大企業が自分かってな経理操作をする、その一部に粉飾といわれる事例がありますけれども、そういうかって気ままなことを許さない、つまり真の粉飾を防上する道を求めておる、こう指摘しなければならぬと思うのであります。そのためにはそういった趣旨に沿う原則ですね、企業会計上の原則は守らなければならぬ。守らなければならぬ原則はしっかりと守っていかなければならぬということに相なると思うのであります。
 そこで、そういった企業の経理処理にあたって恣意を許さない、そのために守らなくてはならない原則、それがどのようになっておるかということについてまずお尋ねをいたしたいのでありますが、第一に継続性の原則ですね。すでに委員会でも論議になりましたのですが、この継続性の原則について、いまの証券取引法では財務諸表の作成並びに表示についてどのように規定されているか。これはまず大蔵省のほうからお尋ねをしたいと思います。
#90
○白鳥説明員 財務諸表の作成の方法につきましては、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則というのがございまして、これは企業会計原則を受けまして、企業会計原則に従った企業会計の処理を行なった結果を財務諸表にあらわす場合のあらわし方を規定しているわけでございます。この財務諸表の規則の第一条に、財務諸表の「用語、様式及び作成方法は、この規則の定めるところによるものとし、この規則において定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。」こういう規定のしかたをしてございます。
 さらにただいま御指摘のございました継続性の原則につきましては、財務諸表の作成基準を定めております第五条に、「当該会社が採用する会計処理の原則及び手続については、正当な理由により変更を行なう場合を除き、財務諸表を作成する各時期を通じて継続して適用されていること。」という条件が書かれております。
 さらに「当該会社が採用する会計処理の原則及び手続について、変更が行なわれた場合には、その旨、変更の理由及び当該変更が財務諸表に与えている影響の内容を当該財務諸表に注記しなければならない。」こういうふうに規定されています。
#91
○荒木(宏)委員 関連してお尋ねをいたしますが、変更の理由というのが表示にありましたね。この変更の理由の正当性についてはどのような規定になっておりますか。
#92
○白鳥説明員 どういう場合が正当でありどういう場合が正当でないかということにつきましては、財務諸表の規則に特別の規定はございません。これにつきましては公認会計士が判断をいたしまして、正当な理由によるものであるかどうかということを監査報告書に記載するようになっております。
#93
○荒木(宏)委員 そういたしますと、いまの御説明ではこういうことになるわけですね。変更の理由は書かなきゃいかぬ、その理由について正当であるかどうかは監査人が判断をする。つまり変更が正当であることを要するのだ、こういったことがいまのたてまえだ、こう伺ってよろしいわけですね。
 そこで、その継続性についての一応の規定はある、あるけれども、現実がそのとおりになされておるかどうか。この点について例をあげてお尋ねをしたいんでありますが、普通償却の償却方法の変更、これは定率法と定額法とありますけれども、これについて例を新日本製鉄にとりますと、御承知のように四十七年の三月期決算で、不況になったというので従来の定率法から定額法に変更になりました。これは有価証券報告書で御存じのとおりだと思いますが、この変更になった理由がはたして正当であるかどうか、こういったことについてはいまの規則がどのように働いているかですね。監督官庁である大蔵省のその点についての御意見を伺いたい。
#94
○白鳥説明員 新日本製鉄の四十七年三月期の報告書に付されております財務諸表の監査報告書によりますと、変更の事実だけが記載されております。で、変更の事実だけが記載されているということは、会計士がこれを正当な理由に基づく変更と認めたというふうに考えられるわけでございます。
 なお、ただいま御質問の中に、不況になったので定率法から定額法に改めたというような御指摘がございましたが、この時期の実態をよく調べてみましたところ、四十七年三月期には君津製鉄所の償却法を定率法から定額法に変更した、こういうことのようでございます。
#95
○荒木(宏)委員 そこで、いまおっしゃった君津製鉄所の償却方法の変更ですが、これはしかし、四十五年の九月に定額法から定率法に変えたばかりでしょう。これは報告書に出ておるとおりであります。一年有余にして今度は定率法から再び定額法に返る。公認会計士の方の監査を経ているという話でありますけれども、その報告書を見て、守らなきゃならぬ原則である継続性、その継続性の変更についての理由の正当性の存否、それは大蔵省としてはどうお考えになったわけですか。君津製鉄所の償却方法を変えた理由が正当であるかどうか。その点についてはいかがですか。
#96
○白鳥説明員 君津製鉄所の償却方法を、前に一度定額法から定率法に改めていて、また定額法に変更した、こういう事情があるのではないかというお話でございますが、そういう事実はございます。これは四十五年三月に新日本製鉄として、八幡製鉄、富士製鉄が合併いたしましたが、それまで君津製鉄所については、八幡製鉄では定額法を採用しておりました。ところが合併いたしましたので経理方式を統一するためにここで定率法に変更したわけでございます。これは正当な理由による変更だと存じます。ところが四十七年三月期に君津の第三号高炉が完成いたしましたので、この完成に伴って君津製鉄所の高炉が非常に金がかかっているということで、企業の負担が非常に大きくなるということで定額法に変更したということでございますが、これにつきましては監査報告上限定されております。
#97
○荒木(宏)委員 つまり、おっしゃるように定額から定率に変わったときには経理の処理を統一するためだ、こういうお話でありますけれども、経理の処理を統一する必要が生じてから一年有余にして、今度は償却費の負担配分を適正にするためというふうな理由でもって再びもとの定額に戻る。そういうことでありますと、あるときは定率をとりあるときは定額をとりと言い、処理を統一するといってもこれは二つあるわけですから、どっちかに統一すればいいわけですね。その費用負担を平分化するということになりますと、これは実際に財務諸表を作成する人が平分化したいということで考えれば幾らでも変更ができるわけであります。ですから、そういうことでもって四十七年三月期には利益がうんと減っておるにかかわらず、六分配当を維持しておる。そういった業界の景気と、それからいま大蔵省から説明があった普通償却額の償却方法の変更理由について考えてみますと、それでは企業の側では、あるいは配当維持のため、あるいは利益計上額の操作のために償却方法の変更が幾らでもできるじゃないか。経理処理を統一する、あるいは費用負担を平分化する、こんなのはゴム印でつくって押したって通るような抽象的な理由です。ですから、そういう点から見ますと、現在の経理処理においてすら継続性の原則を貫徹する保証が十分ではない。いまの財務諸表規則あるいは企業会計原則の定めるところが十分には実行されていないではないか。
 そこで今度の改正商法の監査で、これは大臣に伺いたいのですが、この点については方向としてはどうお考えですか。いま大臣の提案されておる改正商法の監査で、継続性の原則を私が指摘した点についてどのような配慮をされておるか、その基本的な政策の方向についてまず伺っておきたい。技術的なことはあとで伺いますから、先に大臣からおっしゃってください。
#98
○田中(伊)国務大臣 この問題につきましては、みだりに変更を許さないということなのでありますが、公正な慣行をどこまでも守る、一口に申しますとそういう態度でございます。
#99
○荒木(宏)委員 では、法務省の政府委員の方に伺いますが、いま大臣がおっしゃった、みだりにということは、これは企業会計原則で現行でも規定があります。第一原則の五の前段に規定がある。しかし、現行ではそれ以外に財務諸表規則、それからいま申しましたことに関する監査の省令、ここで正当な理由が要るということをはっきり言っています。変更する理由を脚注に書き、かつそれは正当な理由が要るんだということをはっきり言っている。言っているにかかわらず、なかなかそれがやられない。きわめて抽象的な理由で便宜にくるくる変えられている。四十七年の三月期には、これは新日本製鉄だけではありません、住友金属だって、従来の定率から定額に変えて、それでうんと償却を減らして利益を粉飾するような操作をやっている。いまそういう正当な理由が要るという規定があってすらやっておられていないのに、今度は一体どういう手当てをしようとするのか、これを伺っているのです。政府委員はいかがですか。
#100
○田邊説明員 現在の商法の側では、株式会社の貸借対照表及び損益計算書に関する規則の第三条で、御指摘の会計の処理の方法を変更いたしましたときは、その旨を貸借対照表または損益計算書に注記しなければならない、こういう規定を置いております。先ほど来御指摘の企業会計原則が修正されますと、その方法と同じように、変更した場合にその影響額というものを新たに記載させる方向で、規則改正を検討いたしております。
#101
○荒木(宏)委員 もう少しよく質問を聞いていただきたいのですが、理由の記載は要求されておりますか。
#102
○田邊説明員 現行のもとでは要求しておりませんし、今後もその理由の記載を要求する考えはございません。
#103
○荒木(宏)委員 現行は、先ほど大蔵省から説明があったとおり、財務諸表規則で理由を脚注に記載する、こうなっているではありませんか。また、監査省令でその理由の当否についても判断をする正当性が要るのだということをはっきり指摘をしておりますね。今度商法でなさろうという監査では、その理由の記載は証取法と違って明文の規定があるのですか。いままであったのになくなっている。それから正当性についてもいままで明文の規定があるのになくなっている。いまでさえやられていないのに、これは一体どういうことですか。これを聞いているのです。
#104
○田邊説明員 現行の商法では継続性の原則というものを掲げておりません。したがって、お答えしております商法の計算書規則でも、いわゆる計算上会計処理の変更をした場合の理由というものの記載を求めておりません。御指摘の問題は証取の監査に基づく財務諸表規則、監査証明に関する省令等の現行の内容を御指摘になっていると思います。
#105
○荒木(宏)委員 大臣にお尋ねいたしますが、いまの参事官の御説明で問題の所在はよく御理解いただいたと思いますが、恣意的な処理を許さない、真の意味の粉飾を防止するために継続性の原則ということが論議をされてまいりました。この委員会でも御議論のあったことはよく御承知のとおりでございます。従来の証取監査では、あるいは証取法による財務諸表の作成では、一応曲がりなりにも理由の記載、しかも理由について正当な理由が要るということが規定をされておる。もっとこれを強化しなければならない。行政上の指導としてもそのことが強化をされるべしという時代の要請もあるわけですけれども、しかし実際はなかなかそうはいかない。ところが今度の商法の監査によりますと、いま参事官からお話があったように、本来継続性なんというものは考えていないのだ、しかも今度の修正会計原則の案によりましても、脚注の三にありますように、理由の記載は要求されていない。いわんや正当性の判断についても明文の規定、根拠すらない。それでは、いま要求されておる大企業の恣意的な操作ということについてはまことに心もとない。心もとないどころか逆行するものではないか。その点についての大臣の政策的なお考えですね。先ほどみだりにとおっしゃったけれども、それじゃ問題にならぬということがいまはっきりしたわけでありますから、その点についての処理、政令の作成なりあるいはこの規定の整備なり、あるいは基本的な商法改正案についての再検討なり、そういったことを含めてひとつお考えを伺いたい。
#106
○田中(伊)国務大臣 たいへんむずかしい技術的な面の答えでございますので、民事局長からちょっとお答え申し上げます。
#107
○川島政府委員 実は私もあまり会計に詳しくございませんので、十分にお答えできるかどうかわかりませんが、商法上は継続性の原則というのを規定しておりませんことは先ほどお答え申したとおりであります。ただ商法は、今回の改正にも「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」というような規定を設けておりますし、もともと商業帳簿というものがでたらめにつくられていいというものではございませんので、したがってみだりに会計の基準、書類作成の方法等を変更してはならないという商業帳簿作成の精神といいますか、趣旨といいますか、そういうものは当然底にあるわけでございまして、その根底にあるものを踏まえた上で商業帳簿が適正に作成されるということを期待しておるということでございます。具体的なこまかい点につきましての計算規則あるいは監査規則などにおきましてはこまかい配慮がなされるわけでございますが、商法といたしましては、これは会社のみならず一般商人にも適用されるものでございますので、きわめて大まかな規定をいたしまして、営業の規模あるいは種類に応じてそれぞれ適当な会計処理がなされるということを期待しておるわけでございます。
#108
○荒木(宏)委員 ですからこれは大臣にお尋ねしたわけでありますが、何かどこかでそういうのをつくってくれるようなことをいまちょっとおっしゃったわけでありますけれども、一般規定だけでいいのなら、ほかの規則なんか要りはしません。宣言規定、抽象規定だけでいいのならあとの規則だとか原則だとか修正だとか、そんなものは何にも要らぬことになるじゃないですか。問題は現行ですらやられておる。現行ですらかってにくるくる変えられる、そういった余地が非常に多いから、それを今度商法改正をして会計監査人監査をするんだ、しかもそれは粉飾防止のためなんだ、こうおっしゃるとしたら、粉飾の手段になっておる、あるいはそれに使われる、この点についての手だては一体どうですか。大臣は技術的なことをおっしゃるけれども、これは技術的なことじゃないのです。一番提案理由でおっしゃっておる粉飾防止、恣意的な処理を許さないための手だてを一体どうするか、こういうことでしょう。その点についての検討が全くないまま提案をなさったのか。あるいは大蔵省とすでにその点はお話が進んでおって、この商法改正案がもし通過をすればあとの規則あるいは省令、政令はこういった手だてであります、そういうことになっておるのか、この点は大臣はいかがですか。これは技術的なことじゃありません。あなたの基本的なお考えのほう、一体どうして取り締まるかという。
#109
○田中(伊)国務大臣 お話の場合の基本的な考え方というものは、先ほど申し上げましたように公正な慣行を守るということを基本に置こう、それは言うまでもなくみだりには変更させぬ。今期の上半期で変えてまた下半期で変わっている。ことしは定額でやっておいて来年は定率に変わっておるなどということは、みだりに変更を許さぬ。少なくとも数年間は続いておらなかったら「みだりに」ということにひっかっかってくる。これは現行法でもそうなっておるわけでありますけれども、公正な慣行を守らなければならぬのだということを基本的態度にしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
#110
○荒木(宏)委員 それならどうしてこの理由の記載を今度はやめちゃったわけですか。それならどうして今度は変更に正当な理由が要るということをはずしちゃったのですか。いままで証取の部分では理由を書け、それから正当性が要る、こうなっている。これは大臣、どうですか、今度あなたのほうで御提案になっている分について、変更には正当な理由が要るのだという従来の歯どめをもっと強化するというための手だて、それがなされずに、逆に今度の部分については、それが企業会計原則の修正案によれば、ゆるめられている。だって、「正当な理由」というものは抜かれておるわけですからね。その点についてお考えは逆の方向に行っておるじゃないか、このことを申し上げておるわけです。
#111
○川島政府委員 先ほどから理由の問題がございますが、これは企業会計原則の問題でございます。一般に企業の会計が適正でない、粉飾が行なわれるあるいは逆粉飾が行なわれるということはどういう点に弊害をもたらすかというと、それぞれの領域において違ったものがあるわけでありまして、先ほどから問題になりました税の問題あるいは従業員に対する関係では賃金のベースアップの問題、債権者に対する関係では会社の財産を虚偽に誇大に表示するといった問題、いろいろな角度からあるわけでございまして、商法の立場で申しますと、これは株主とか債権者とか従業員とかそういった者が主たる保護の対象として考えられるわけでございますので、そこでの規制とそれから投資家を主たる対象とした証券行政上の立場からの問題、あるいは税金を取るほうの立場といった立場からそれぞれ見方が異なるわけでございまして、商法の問題としては先ほど申し上げたような基本的な線をとっておるわけでございまして、いまの理由云々の問題は、企業会計原則及びその修正案にからまる問題でございますので、法務省の立場としてはちょっとお答えをいたしかねる次第でございます。
#112
○荒木(宏)委員 これは償却方法の変更だけに限りませんで、また継続性の原則というものも単に一原則だけに限りませんで、全体としてどう押えるかということでありますから、ほかの例をあげてさらに質問を続けたいと思いますけれども、しかしいま局長が御説明になったいろいろな関係者の利害を調節するといっても、かってにくるくる変えられるのじゃ、これはどの利害の調整も何もあったものじゃないでしょう。ですから、それは商法サイドでは考慮の外なんだ。そんなものは大蔵省まかせなんだというわけにはいかぬと思うのですよ。ですから、その点についての御理解を重ねていただくために、今度は特別償却をひとつ例にあげてみたいと思うのです。
 これは少し大蔵省のほうにお尋ねをいたしますが、いまの企業会計原則あるいは会計処理の上では特別償却というものは入ってくる余地はないと思うのです、費用対応、収益対応の原則からいいましても、特別に償却を上増しするというのですから。しかしこれが御承知の租税特別措置の準備金に関する省令の取り扱い、監査省令の取り扱いによってこの特別償却を費用として認めている。大蔵省の通達ではそうなっているわけですけれども、あの通達の根拠ですな、一体どういうところから特別償却が認められるのか。特別償却がどうして費用だというふうに認められるのか。合理的な理由、根拠をひとつ伺いたいのです。
#113
○白鳥説明員 特別償却が認められておりますのは、これは税法上の特別な措置でございまして、証券局の立場からは私責任ある御答弁はできないのでございますけれども、この趣旨は企業が巨額な投資をした場合に、それを通常の償却方法を行なったのでは、非常に企業の負担が重くなる。特に合理化などを行なう場合にこれを促進するためにとられた政策的な措置であるというふうに解釈しております。ただ、私証券局のほうの担当でございますので、責任ある答弁はいたしかねますので、御了承いただきたいと思います。
#114
○荒木(宏)委員 しかしあれじゃないですか、通達で税法上特別償却を認めたものは、企業会計原則上公正妥当な処理をしたものとみなすと扱っていいんだ。これは証券局長の通達ですよ。証券局だから知らぬとおっしゃるけれども、証券局長がそうやっていいんだと言っているわけですよ。税法上これは政策目的のためにいろいろ認められることはあります。ありますけれども、それを企業会計の処理の上で損金としてよろしいんだ。税法限度内なら一ぱい積もうが、そのうちの目分量で積もうが、どんなに積もうが、要するにこれは損金処理していいんだ、こう言っておるのは、さっきの定率と定額とかってにぐるぐるとかえるのと一緒で、本来費用にならないものを税法で認めて、それへ持ってきて、しかも限度額の中から幾ら積もうがいいんだ。企業のかってな操作を許すというそしりを免れぬじゃないですか。一体どういう根拠でそうなっておるのか。通達を出された証券局に伺っているわけです。
#115
○白鳥説明員 証券局の立場から申しますと、企業の処理が適正に企業会計原則にのっとって行なわれていることが必要なわけでございます。
 ところで、特定引当金の中で利益剰余性のあるもの、いま申し上げましたような特別償却もこれに入るわけでございますが、こういうものにつきましては、本来会計の立場からいいますと、監査証明省令の第四条の第三項の第一号で、これは限定の意見を付される、こういうたてまえになっております。ただし税法の規定によりまして、課税所得の計算上損金算入の認められるものにつきまして税法の規定の範囲内で損金経理を行なっている場合には、これは税法の趣旨にかんがみまして、一般に公正妥当な企業会計の基準に従って処理されているものとして取り扱う、こういうことにしているわけでございます。
#116
○荒木(宏)委員 もう一問だけ伺って休憩にしたいと思いますが、だからどうしてそういう取り扱いにしているのかということを聞いているのです。取り扱いをしているのはもう知っていますよ、通達が出ているのだから。たとえば新日鉄でいいますと、四十五年九月期には特別償却で百五十三億も償却していますね。ところが四十七年三月、あの例の定率から定額にかえたときには、今度は三十億特別償却から取りくずしている。それだけ利益計上をふやしているわけですね。だから定額、定率、普通償却でやったと同じような、ぐるぐる変更しているやつを特別償却で自分の都合のいいときにはうんと積むし、自分の別な都合のときにはうんと引っ込めちゃう。そんなかってなことは本来企業会計上はできないはずじゃないですか、これはおっしゃるとおりですわね。ところが、一片の証券局長通達で税法限度ならよろしいと言っているのは、一体どういうわけだ。何べん聞いてもその理由の御説明がない。あるときは管轄外とおっしゃる、あるときは通達をお読みになるだけ。そこで法務大臣、こういったことについて今度商法で監査を充実するといって御提案になっているけれども、一体どういう手当てを基本的な方針としておとりになるか、これは法務省の管轄の範囲内の方針として伺いたい。
#117
○田中(伊)国務大臣 この証取監査の基準となる企業会計原則、この原則が適用されていくということは、これは大蔵省所管の証取の関係になるわけですね。
 ところが、今度はこれの改正によりまして監査法人の監査を商法において五億以上のものについては行なっていかなければならぬということになるわけでございます。そういうことになりますが、その関係はどういう態度でこれに臨むかという問題はお説のとおり起こり得るわけでございます。これは大蔵省の関係じゃない。私のほうのたいへん深い関係を持つわけでございます。これは大蔵省にこのことはお願いするわけでございますけれども、やはり態度といたしましては証取監査のやり方、企業会計原則に基づく監査のやり方、そういうやり方に右へならえをする、特別にこれだけこう扱っていこうという考え方はございません。右へならえをしてやらしていく考え方である、こういうふうにお願いしているわけでございます。
#118
○荒木(宏)委員 それでは、大臣、ひとつ確認をしておきますがね、それでは法務大臣、よろしゅうございますか、従来証取監査で変更については継続性で正当な理由が要るのだ。そうすると、これは今度法務省の所管でも正当な理由を要するということを明確にさして、継続性の原則は堅持していく。それから特別償却は企業会計上は認められない。ただ一片の証券局長通達で本来道理に合わぬものを便宜やっておるのだから、そういう道理に合わぬものははずしちゃって、特別償却をかってに積み増し、積み下げすることは許さない。これは法務省としてはやっていくということですか。
#119
○田中(伊)国務大臣 いま後段のお話がちょっと大事なことがありますので、間違ってはたいへんと思います。
#120
○川島政府委員 この商法の改正が行なわれました場合には、これに基づくところの、つまり株式会社の計算書類についての規則、これを法務省令で定めておるわけでございますが、これを検討いたしまして、さらに改正を行なう必要があります。大蔵省で証券監査の関係で定めておられます財務諸表規則とその内容的に調整をはかる必要がございますので、その点につきましては今後この商法が成立いたしました場合に、大蔵省と十分御相談をしてきめていくということになるのでございまして、その際にいろいろお尋ねのような問題についても検討がなされることというふうに考えております。企業会計原則修正案というものが出ておりますが、これも重要な参考になるというふうに考えております。
#121
○荒木(宏)委員 いろいろお聞きしたかったのでありますが、本会議が始まりますので、あとの質問は本会議後に続行させていただきたいと思います。
#122
○中垣委員長 この際、暫時休憩いたします。
 本会議散会後、直ちに再開いたします。
   午後零時五十八分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時四十九分開議
#123
○中垣委員長 休憩前に引き続き連合審査会を再開いたします。
 質疑を続行いたします。荒木宏君。
#124
○荒木(宏)委員 休憩前に続いて大臣にお尋ねいたしますが、ひとつ、お尋ねを申し上げておる趣旨は休憩前に申し上げましたので端的にお答えをいただきたいのでありますが、この企業の経理操作が恣意的にならぬようにということで継続性の原則ということが定められておる。これをしかく実のあるものに今度の御提案の監査でもされるべしである。そういった処置が具体的になされる保障があるかどうか、こういうことでお尋ねをしておるわけでございまして、そこで継続性の変更ということについては正当な理由が要るんだ、このことを法令の手当てなり処置をもってはっきりさせるというふうに明言をなさるかどうか、この点はひとつはっきりと伺っておきたいのであります。
#125
○田邊説明員 お尋ねの継続性の問題については、商法と企業会計原則の修正作業という形で、昭和四十四年の暮れまで調整が進められまして、その結果、御指摘のような継続性については、企業会計原則の側では、正当の理由ということにいままで定義的な問題もあり、これを削るという結論を出されて修正案を示されたわけでございます。これを受けて商法改正が実現いたしますと、商法側の規則と財務諸表の規則との調整を行なう、こういう前提になっておりますので、企業会計原則の現在の修正案を踏まえて、商法側も対処するということになりますので、先生の御指摘のように商法側で、特に法令で新たに正当の理由というものの義務づけを行なうということは現在考えておりません。
#126
○荒木(宏)委員 それでは法務省のほうでは、いま何よりも求められておる企業会計処理のかってなやり方、これを縛るために処置が必要だ、こう言っているのに考えておらぬ、その点について国民の皆さんが強く要望しておることについては考えておらぬ、こういうふうな御答弁のように伺いました。大蔵省のほうに私はお尋ねいたしますが、大蔵省のほうでは、継続性を変更するにあたって正当な理由が必要である、企業会計原則上必要だけれども、はっきりさせる。現状が、たとえば新日本製鉄のごとく、あるいは住友金属のごとく、問題がある事態を改善するためにむしろ強化するんだ、私は国民の皆さんの要望はそういうところにあると信じておりますけれども、その方向をとるとはっきりおっしゃれるかどうか。この点をひとつ大蔵省のほうから伺っておきたいと思います。
#127
○白鳥説明員 企業会計原則と財務諸表規則との関係につきましては、先生の御質問の一番最初のときに御説明申し上げたとおりでございまして、企業会計原則による企業会計処理の基準に従って、その結果を財務諸表にあらわすための、その場合の表示の方法をどういうふうにするかということを財務諸表規則で定めているわけでございます。
 現在の財務諸表規則と企業会計原則との関係、継続性の注記についての関係はどうなっているかと申しますと、正当な理由によって、会計処理の原則または手続に重要な変更を加えたときには、財務諸表に注記しなければならない、これだけが書いてあるわけでございます。それをさらに財務諸表規則で補いまして、詳しい表示の方法は、注記の方法はどうするかということを財務諸表規則第五条第二項におきまして書きまして、その場合にその理由と影響額を書きなさい、こういうふうに書いてあるわけでございます。したがいまして、財務諸表規則の表現のしかたがどういうふうになるかということは、企業会計原則がどう変わるかということと直接には関係ございませんで、私どもは継続性の原則についてはみだりに変更してはならないということは依然として生きておりまして、決してゆるめたいというふうには考えておりません。その意味で、財務諸表規則に従来と同じような表現方法を定めることもできる、こういうふうに考えております。
#128
○荒木(宏)委員 せっかくの御説明でありますが、いまの御説明では、むしろ、大蔵省のほうとして継続性の変更について正当理由でもって規制をしていくんだというつもりがないということを自白なさったようなものじゃないかと思いますが、まず第一は、私は表現方法、記載方法について伺ったのではなくて、企業会計処理の原則についてどうなっているか、これを伺ったわけですね、現状と将来。御案内のように、現行の企業会計原則の第一の五、後段では、正当な理由が要るということが明記されている。また監査の基準につきましても監査省令でそういうことがはっきりしておるわけです。ところが今度の修正案では、そのことについて「みだりに」ということだけを残しておるから、だからそれでいけるのだということで、中身の「正当な理由」という点はのけてしまっておりますね。言うならば、家の側だけ残しておいて中身は全部とってしまって、まだ家は残っておるというのと、たとえて言えば似たようなそういう形ですから、先ほど来の御説明で、法務省のほうもその点については全く考えておらぬ、大蔵省のほうも、お聞きをすれば継続性の原則の維持、変更についての正当理由の必要性、そのことについてはむしろ弱める形で改正を考えておるということが私ははっきりしたと思うのですよ。これはもう幾らも、何度も繰り返してお聞きしましたから、それでお尋ねするごとにそのことが浮き彫りにされていきますから、これは大企業がかってな経理処理をしないように、つまり真の意味の粉飾を防止するという点からいいますと、今度の改正案なるものはその点を全くネグレクトしておる。むしろ当局の方の口から考えていないということがはっきりした。大臣の御答弁ではそのことを技術的な問題ととらえられて、御念頭にないということもはっきりしたと思います。これは非常に大きな問題だと思うのです。そこで、そのことを指摘しておいて、さらに、ほんとうに言われるような企業の会計処理の適正化がはかられるかどうか、粉飾防止に役立つかどうかということで、会計基準の単一化、単一の原則といいますか、かってな処理を許さないというその縛りですね、そこのところを次の問題で伺いたいと思います。
 これは大蔵省にお聞きをいたしますが、化学合成繊維のいわゆる糸売り、製品買いの問題ですね。これの処理について、御案内のように日本公認会計士協会で本年の一月一応の処理基準を出されたようでありますが、大蔵省としてはこの当該業界の糸売り、製品買いに伴う会計処理の基準、これはいままでの建て値による売買基準というものがありますね、建て値による売買処理、それから今回新たに出しました、利益は全部排除するというやり方、あるいは実勢をこえる部分だけ排除するというふうなやり方、いろいろありますけれども、一体大蔵省としてはどう考えておられるのですか。これの会計処理についてどういう方法が適正だと考えておられますか、それを伺いたい。
#129
○白鳥説明員 化合繊業界の取引の態様は非常に複雑でございまして、現在の慣行では、材料を一たん加工業者に売り渡しまして、その加工した製品を再び……。
#130
○荒木(宏)委員 現状の説明はけっこうです。
#131
○白鳥説明員 はい、わかりました。
 そのやり方につきましては、最近建て値と実勢価格との間の開きが非常に大きくなってきた、したがって材料を売った段階で利益を上げても、製品を売る段階で損失が出てくる、こういうような実態になってきておるわけでございます。
 そこで企業会計原則にも、第七の原則でございますが、保守主義の原則というものがございまして、安全性をたっとぶという趣旨から、将来損失になるようなものは安全な会計処理をしなさいという原則がございますが、これに従いまして、当期は売り上げで利益が出ていても、これは当然あとで損失になってくるのだというようなものにつきましては、売り上げの利益を排除する方式の処理を行なったほうがより健全な会計処理ではなかろうか。こういうことで、いま御指摘になりましたような、公認会計士協会において三つの処理方法を考えたわけでございます。全額売り上げを排除するという方式と利益になる部分を排除する方式、あるいは実勢と比べて実勢の部分を越えた部分については利益を排除する、こういう三つの方式を考えているようでございます。この三つの方式ともいま申し上げました保守主義の原則と申しますか、安全性の原則と申しますか、こういう考え方からいいまして、より健全な会計のやり方であるというようなことで、この三つの処理方法はいずれも健全な会計方法ではないか、こういうふうに考えるわけでございます。
#132
○荒木(宏)委員 もう一言確かめておきますが、前の建て値による売買方式ですな、それも不適正ではないわけですな。その処理をやられた当時は、あれは適正だということでまかり通っておったわけですな。そうですな。
 そうすると、これは法務省に伺いますが、この業界で糸を売る、製品を買う。このときに会計処理としては、建て値ですから、会社がかってな値をつけるわけでしょう。それで売買して利益が出たということもよろしい。それからそのうち相場を越える部分だけを利益計上しても、これもよろしい。あるいは利益の部分だけを排除して、建て値と原価の間ですな、この部分を利益にしてもよろしい。それから全部利益計上はやめてしまって、原価だけでよろしい。そういった幾つかの処理方法をここへ並べてどれでもよろしい。これは商法サイドとしてはこういった会計処理については全くノータッチですか。そのかってな処理をしていかぬというて規制をしようとしておるときに、今度の改正案を提示される上で、この点については監査の上でどういうふうなことをお考えになって提案をなさっておるのか。法務省のほうのお考えを伺いたい。
#133
○田邊説明員 お尋ねの糸の取引関係でございますが、商法で申し上げますと、商法の債権の計上と債権の評価基準の問題であろうかと思います。商法の二百八十五条ノ四の規定によりまして処理される事柄でございます。糸を売った。そのことによって法律上の債権が成立いたしますれば、会計帳簿には金銭債権として計上なされることと思います。それが決算期においていまだ未回収、つまり債権のままで残っていれば、これを決算期でどう評価するかという問題でございます。商法は、原則は債権金額、つまり法律上の契約が成立いたしましたときの契約価額というものをまず基準に考えまして、ただ非常に値引きがあったというふうな場合、あるいは将来この債権が確実に回収できない、貸し倒れが生ずるというふうな場合には、その評価額についてこれを減ずるという方法が認められております。しかし、御指摘の事例では各種各様に利益の計上を異なるやり方がいいのかという問題でございますが、商法は評価規定に照らして適正な会計処理をしてもらわなければ困る、こういうことになろうかと思います。
#134
○荒木(宏)委員 大臣ももうよくおわかりと思いますが、先ほど来の普通償却の変更といい、あるいは特別償却といい、さらにはまたいまの債権評価の会計処理の方法といい、御提案の商法サイドでは全く恣意的な会計処理を規制する手だてが何にもなくて、それはすべからく大蔵省のほうにまかせておるとか、あるいはそれを言えば公正妥当なというふうな一般的な抽象的なことをおっしゃって、少しも真の意味の粉飾決算防止ということが今度の改正案に盛られていないんじゃありませんか。私はそういう意味合いでいま申し上げた問題自体、今度の改正案の不備をまさに示す一つの例ではないか、こういうふうに思っておるわけですね。これは大臣どうですか。法務省の側として、あるいは大蔵省と相談の上で実際にその規制をしていくというふうな手だては具体的な内容としては全くないんですか。
#135
○田邊説明員 いま問題は金銭債権の評価の問題だと申しましたが、商法の規定に従った評価がなされているかどうか、今回の改正案ではこの内容を従前どおり会計の監査に関する事柄でございますから、監査役が監査をいたしますし、資本金五億円以上の大規模会社については公認会計士が総会前に監査をいたします。もし、御指摘のようなその評価が違法であるということになれば、監査役及び公認会計士がその旨の意見を付することになります。この制度によって御指摘のような企業の不正経理というものが防止される、こういうたてまえになっております。
#136
○荒木(宏)委員 大臣、これはだめですわ。いま御説明ありましたけれども、今度の改正案というのは袋はとにかくばくとしたもので、入り口が非常に広くて何を入れたってみな適法だ。定率、定額あるいは特別償却の積み増し、取りくずし、あるいは今度の債権評価の方法もどれをやっても適法だという、袋の入り口をうんと広げておいて、それで監査をいたします、これにかなえば適法でありますと、それじゃいわゆる適正監査というものを全く捨ててしまって、そうしてもう袋の底のないような、こういった意味の適法監査というふうな概念を持ってきて企業会計の処理のまさに身がってなやり方を許す、一そうその方向を強化するものだというふうに、いまの御説明を伺って、その感じを強くする。
 私はいままで監査という方向で伺ってきましたけれども、今度は改正案に盛られておる資金調達ということでひとつ伺ってみたいと思います。
 いま国民の皆さんの要望は、大企業が調達した資金をてまえがってに、たとえば投機でありますとか、そういったことに乱用しないように、こういう希望が非常に強いのは御承知のとおりであります。今回は転換社債の発行条件あるいは抱き合わせ増資ということで資金調達の便宜をはかるということを指摘しておられますが、そこで私はお尋ねしたいのでありますけれども、この資金調達の一つの方法として時価発行ということが昨年来非常に論議になりました。たとえば三光汽船の例を申し上げますと、一昨年の十一月、昨年の四月、そしてまた昨年の暮れと三回にわたって合計七百億近い増資プレミアムが会社のほうに入った。全体としてみますと、昨年一年間で約八千億であります。時間がありませんから、私のほうで調べた数字を申し上げますが、設備投資の中で占める自己資金の比率ですね、これはすでに昨年の上期では八〇%を越えておりまして、昭和三十年からずっととってみますと、四十年の下期と四十一年の上期だけを除いたら、もう最高ですわ。そのくらいに自己資金がずっといまふえてきておるときに、この時価発行について今度の改正案を提案される御趣旨でこれはもうこのままでよろしいというふうに見ておられるのか、あるいはこれは制限する、押える必要がある、こういうふうにごらんになっておるのか、この点についてまず大臣の提案者としての御意見をひとつ伺っておきたい。これは大臣技術的な処置の問題じゃなくて、ひとつ基本的な方針として。
#137
○田邊説明員 技術的な問題だけを申し上げますと、時価発行は御存じのように一般公募の方法として現在非常に趨勢を見せております。これは、会社の資金調達の方法として、株主の利益を害しないという要件であれば一般に時価発行して資金調達できるという商法の仕組みからまいります。御指摘のプレミアムと申しますのは、商法上は額面価額を上回るものを法定準備金、資本準備金として会社に計上を義務づけられるわけでございます。今度そのプレミアムの中身のいわゆる現金というふうなものをどういう方向に使うかの問題が御指摘の問題点だと思います。これは、今度の改正案でもとられておりますような会社の業務運営全般の適正な運営、そのあり方に関する問題でございまして、改正法による監査役が業務監査権をもって取締役会で、そういう増資で獲得した資金をどう運用するか、その内容について、法令、定款違反がある場合にはこれをチェックし、与えられた権限によってこれを防止する、そういうたてまえになっておる事柄でございます。
#138
○荒木(宏)委員 大蔵省のほうに伺いましょう。時価発行の弊害というものについては、大蔵省のほうは感じておられませんか。
#139
○米里説明員 時価発行につきましては、昨年来非常に盛んになってまいったわけでございますけれども、ただ株価が高いというだけのことでプレミアムを多額にもうけようというような安易な態度の時価発行というものは、投資家サイドから見てもはなはだ望ましくないというように考えられます。
 したがいまして、私ども昨年来証券業界に安易な時価発行が行なわれることがないように指導してまいったところでございますが、これを受けまして証券業界は昨年来再三再四にわたりまして、時価発行の発行基準の強化をはかってまいっております。新年度からさらに一そう強化した基準を適用しておるわけでございますが、その中には、いま御指摘の、一つは資金使途、時価発行で入手した資金を企業がどのように使うかというようなことについて十分チェックしていくという点も入っております。
 さらにまた御指摘のプレミアム、企業のサイドから見ますと額面をこえるプレミアムが入るわけでございますが、これは本来企業自身のものではもちろんございませんで、株主のものとしてできるだけ有利に運用して、その結果を株主に収益還元していくということが非常に重要であるということで、証券会社の自主申し合わせの中の最も重要な要素になっております。
 具体的に申しますと、最近さらにそれを強化いたしまして、収益還元の状況が良好でない企業については、今後増資をやる場合には十分慎重にアンダーライターとして取り扱うというようなこともきめております。
 そこで、去年の時価発行で申しますと、十−十二月がピークであったわけでございますが、ことしに入りましてからそういう発行基準の強化ということもございまして、一−三、四−六、七−九と逐次時価発行は減ってまいっております。真に優良な、投資家観点から見ても問題のないような企業だけにしぼっていくというような形で、総額としてはかなり減ってまいっておる。優良なものだけが残っておるという現状になっております。
#140
○荒木(宏)委員 大臣、いま大蔵省のほうから説明のあったとおりでありますが、けさほど問題になったあの殖産住宅にからまる汚職ですね。あるいは先ごろ問題になりました協同飼料株価操作。時価発行を野方図に認めれば、株価が高ければ高いほどいいのですから。コストの安い金がどっと入ってくるわけですから。そこのところはよほどいろいろとそういうことが起こらないような規制のしかたを考えないと、まあ、あすあさって御報告になるそうですけれども、そういった好ましくない事柄が起こってくる。
 そこで法務省として、この問題について今度は抱き合わせ増資あるいは転換社債の発行条件の緩和、こういったことを出しておられますけれども、資金調達をやるというのはいいけれども、しかしそういうことで、それが過剰流動性に結びついて、物価をあおったりあるいは買い占めにならないような規制を、同時に資金調達の面ではやらなければならぬではないか。そのことを言っておるわけであります。その点についての大臣の基本的な政策、お考えをこの際出さないと、抱き合わせ増資であるとか転換社債であるとか、そういう個々の点だけを出して、肝心なことを何もおっしゃらないで、一体この資金調達問題について企業規制ということをどう考えておられるのか、姿勢の基本にかかわる問題でありますからお尋ねしたわけであります。時間の点もありますからこの点簡潔にひとつお答えいただきたい。
#141
○田中(伊)国務大臣 この株式の時価発行による増資のやり方でございますが、先生仰せのような特殊な場合を考えてみると、このまま捨て置けぬような感じがなくはないのでありますが、しかしながら、時価発行による増資をいたしました場合の金は、言うまでもなく資本準備金に編入されるわけでございます。そのうちの一部は株主に還元する方法、一部免除という方法も、今度の新法で、改正法で出しておりますので、その方法によって還元をしていく。それから一部は有効なりっぱな使い道に事業としてこれを使っていくという方向にこれがいきますならば、必ずしもこの問題はそんなに御心配をいただくような方向ではない。しかしながらここに一つの問題がありますのは、あるいはこの資金を買い占めに用いた、あるいは売り惜しみをして長期にわたって資金を寝かす方向にこういう金が活用されたというようなことになってまいりますと、この点は不都合千万ではないか。本来そのやり方というものは、一体時価発行の増資ということ自体が悪いのじゃないかということに、突き詰められるとならぬこともないので、しかし本来の会社の企業というものは、自由経済のもとにおいて利益を追求することを本来の性格に持っております営利会社のことでございます。企業の社会性というものを念頭に置いて、しっかりこれが逸脱をせぬように企業をやっていくようにしていきますためには、その営利事業をいたしております会社の企業が、自主的におのれを規制していくということ以外に適当な道はない。それをやりますための方法としては、やはり私の持論のようなことになりますが、監査役の強化でありまして、監査役に人を得て、その監査役が改正された、強化された権限を持って執行部に臨む、そして取締役会において反社会性をチェックする。そういう方面の金の使い方はよくないというチェックができることになるわけでありますから、その監査制度の拡大強化ということによって、その欠陥を補っていく。制度としては、やはり時価による株式の発行という考え方は悪くない、こういうふうに考えるのでございます。
#142
○荒木(宏)委員 時間が参りましたから、もう一問だけ申し上げておくことにいたしますが、いまの大臣の御答弁は、これはもう策がないということを自分でおっしゃったようなものだと思いますよ。現に、時価発行全部やめろ、こう言っているのではないですよ。問題のあるいろいろな事例がある。大蔵省もその規制を業界といろいろ話し合っている、こう言っているのですけれども、例の三菱地所のNHKあとを買ったあの金がどこから出ておるか、巷間いろいろ話があるところです。ことしの一月三十一日払い込みということで時価発行をいたしましたよ。ですからそういったことについて規制の方法が考えられてしかるべしというのに、大臣は、これはもう企業の自主性にまかせるのだ、法務省としてはいままでも何にも考えておりません、こういうことですから、これはよっぽどお考えいただかないと、そういうことじゃもうとても法の番人といいますか、法の執行というようなことは、これは裁判所じゃありませんからなんですけれども、期待はできないというふうに思いますね。いまおっしゃった監査役、これは一つですが、私は最後に監査をなさる公認会計士の方の独立性といいますか、これについて一問だけお聞きをしておきたいのです。
 公認会計士の方が仕事をなさるその職務の被監査会社に対する独立性の保障は一体どこにあると思っておられるか。契約をする、報酬をもらう、そういう立場ですね。しかもいま監査の契約は全部一期ごとでしょう。一期一期契約を更新しているわけですね。そこで限定意見をつけて、もう契約しませんよといっても、これは何にも違法なことはない、してもしなくても自由だ、こうなっていますね。そういう事態で監査役に比べれば外部監査ですからこれは自由職業人としてそれなりの立場があるわけですよ。それですら、契約関係であって、しかも一期ごとで限定意見をつけて、もう次からお断わりだ、こういわれてももうしりを持っていくところがない。こういうような状態で一体どういうふうに職務の独立が保障できると思っておられるのか。ことに公認会計士の方はいま税理士業務をあわせてなすっておられる方もおりますが、顧問税理士として報酬をもらっている。そうすると、そういう関係ができますね、顧問料をもらっている関係。そういう場合にいわゆる公正な会計監査が監査人としてできるか、そういったような公認会計士の監査をなさるについての職務の独立性の保障、これをひとつ、これは最後の一問ですから大臣からお答えをいただきたい。
#143
○田中(伊)国務大臣 午前中にも一言これに触れたのでございますが、公認会計士法による公認会計士と税理士法による税理士の職務の独立ないし職務の区分という問題につきましては、私のほう直接のものではございませんが、このたびの商法の改正をめぐりまして問題が表面に出てきております。そこで非常に重要な関心事でありますので、この問題の処理は大蔵省の所管でございますので大蔵省にお願いをいたしまして、目下せっかく検討をしていただいておる、こういう段階でございます。
#144
○荒木(宏)委員 先ほど来の御答弁で明らかになったと思いますが、大企業の経理操作の恣意を縛るための処置をこれは強化しなければならぬ、そして資金調達もこれはやはり目を光らさなければいかぬ、そのための制度、手当てですな。そして監査をされて監査人の保障、これもたとえば労働者の代表だとかあるいは消費者の代表とかそういう人も入れての監査の公開というふうなシステム、あるいは国会でその辺の独立性を保障するような機構をひとつ考えるといったような根本的な制度を抜本的に検討なさらなければ、もう何をいっても監査役、監査役というようなことでは、ほかの委員さんからも御指摘があったように、これではとても真の粉飾防止ということにはならないと私は思います。その意見を一言申し上げて私の質問を終わります。
#145
○中垣委員長 松尾信人君。
#146
○松尾委員 最初に、私がお尋ねいたしますのはこの商法の一部改正ということでございますけれども、まずその商法の一部改正に先立ちまして、いろいろ基本的な問題を解決しなくちゃいけぬのじゃないか。それはどういうことかと申しますると、企業経営者の倫理の欠如です。企業本来のあり方、こういうものをよくよく明確にするときがきたんじゃないか、こう思うのです。
 われわれ国民の生命または健康をむしばんでおる公害というものがついには環境破壊になりまして、先ほどの水銀またPCBに関する緊急質問も行なわれておるわけであります。水産王国の日本が魚が安心して食べられない、こういうような大きな社会的な問題、もうかれば何でもやる、中小零細業者の分野も現実に侵しております。また生活関連物資までも買いだめ、売り惜しみをする、いわば国民の犠牲の中にこの企業の利益というものが築かれておるといっても過言ではないのじゃないか。公害、物価、そういう面からながめただけでもありますが、また土地の買い占めが四十万ヘクタール、公団住宅が五千四百万戸も建つんじゃないか。こういう土地を買い占めておいて、そして買い占めた企業が営業上どういうふうにそれをきちっと使う計画があるのか、そういうものもわからない。また土地の大きな投機、土地の値上がり、そういうものをもたらしまして、ついには国民の大きな願いであるマイホームの建設もできないというような状態、あげれば切りがございませんけれども、このようなことからわが国の経済の健全な発展と国民の利益の確保というものが困難になっておるわけでありまして、銀行法、百貨店法等ではこの主要な産業につきましては法的規制のもとに置かれておるわけでありますけれども、このようなことでまあ通産省が当面の企業に対する責任官庁でありますが、通産省の考え方を、ここに影響力の強い商社というものを商法以外で何か適当な法律をもって取り締まるときがきたんじゃないか、これをまず通産省からお答え願って、そうして大臣のお答えを願いたい、このように思うわけであります。
#147
○橋本政府委員 先生の御指摘は企業行動の適正化をはかるために業種別に業法を制定したらどうか、こういう御意見かと思いますが、業法についてはそれなりの効用も多々あるかと思いますが、反面企業の自主努力と申しますか創意くふうの意欲を減退させる、ひいては経済発展の活力を阻害するというおそれもございますので、本件については慎重に検討する必要があるかと思います。
 ただ、むしろ企業といたしましてもこれは社会的存在でございますので、当然その社会的存在に即応した社会的責任を遂行すべきであると考えます。それは単に株主に対する責任のみならず従業員に対する責任、関連企業に対する責任、地域社会に対する責任、あるいは広く一般消費者と申しますか一般国民に対する責任を当然に遂行すべきである、かような責任の所在なるものについて企業各位が十分に認識し、この方向で企業行動を展開する、適正化していくということが必要かと思います。通産省といたしましてもそういった方向で指導してまいりたいと思います。
 なお、若干おくればせではございますが、企業のミニマムリクワイアメントにつきまして調査、検討の段階に入っておりますので、この成果が出ました暁には、それをベースにいたしまして、さらに強力に行政指導に乗り出していきたいと考えております。
#148
○田中(伊)国務大臣 先生仰せの、企業が公害を出す、買い占めを行なう、売り惜しみをやる、いろいろ社会に迷惑をかけるというような事柄を考えてみますときに、これらの違法をやります以上は、これをそれぞれの法規によって取り締まっていくことは当然のことでございますが、企業それ自体の活動というものを何らかの方法で規制するということはいかがなものであろうか。私の考え方でございますが、これはやはり企業の自主的な反省によってその企業に社会性を維持さすべきものであろう、こういうふうに考えるのであります。
 そう考えてみますると、企業に社会性を守らすための企業活動というものを制度としてどうするかということになりますと、企業の自主的活動の源泉をなすとでもいいますか、根源をなすとでもいいますか、力となるといいますか、そういう意味でここに監査制度を、新しい監査制度としては業務監査をも行なわしめる。そして有力なる監査人を取締役会にも出席をせしめる。こういう方法で企業の自主的な反省と規制をやっていくようにしてはどんなものであろうかという考えでございます。
 なお、今回は監査制度の改正だけをお願いしておるわけでございますが、やがては取締役会の制度、株主総会の制度というものについても抜本的改正を加えていく準備を進めておるわけでございますから、そういう改正にあたりましても、いかにすれば企業が自主的に社会性を守っていくことができるかという方向に向かって改正を考えてみたい、こう思う次第であります。
#149
○松尾委員 通産省のお答は、業種別にいろいろやっていくことはどうか、それから行政指導というものをやってもきたんだし、今後ともそれをりっぱに強化していきたいというお答えに尽きておったと思うのですけれども、私が申しておりまするのは、そのような行政指導でどうだとかなんとかいうのではなく、もうそういうことを飛び越えて、何か手を打たなくてはいけない。大臣は、また企業の自主規制と申しますか、自主的な判断、それを中心に答弁なされておるわけでありますけれども、はたしてそういうものにまかしていいかということであります。そのために監査制度の強化等が考えられておるというお答えでありますけれども、はたして総合商社等の現在のこの反社会的なあり方、これはそういうことで取り締まりができるのじゃなかろう。大臣、総理大臣がこんなことを言っておりますよ。これは日本貿易会の会合での話でありますけれども、総合商社は時代に応じ、ときには時代に先んじて新しい向上と社会的調和に貢献しなければならない。これがいま大臣のお答えまた通産省の答えでできるかというと、これはできっこないのであります。何かやはりそういう中小企業との分野とか、事総合商社に関する限りは、いろいろの考えを持ちまして公害をもう出さぬ。それから投機的なそういう行為は相ならぬ。いろいろこれはそういうもので網をかぶせておきませんと、いまおっしゃったような監査役とかまた会計監査人だとかまたは行政指導とか商社の自主規制だとか、いままでもこれはやられてきたことでありまするし、それが大臣の期待のとおり守られれば非常にいいことでありますけれども、守られない。そして彼らの営業は自由であるというところにすべての問題の根源があるわけでありますから、やはり商社法というような何か大きな網をかけて、そういう一つの行動というものを律していく方向に持っていくべきじゃなかろうか、このようなことを私は言っているわけです。これは大臣でけっこうですから、あらためてお答え願いたい。将来の大きな方向ですよ。
#150
○田中(伊)国務大臣 よくわかりました。お説を静かに承りまして、まことにそのとおりと存じます。もっと積極的に企業を指導し、企業が社会性を保つように、もっと積極的にこれを持ち込んでいく道はないか。おまえたちの考えておることは消極的ではないかというおことばに帰すると存じます。それと今後この問題を具体的にどうするかということになれば、いかなる立法をするかという問題に帰着することと存じますので、この問題は商法の第二回、追っかけての抜本的改正がございます。今回の抜本的改正に次いでの抜本的改正を計画いたしておりますので、これに際しまして、これは大企業と中小企業とのあり方はあるいは区分せねばならぬのではないかとも思います。一緒にというわけにいかぬかもわかりませんが、そういう段階は設ける必要があるかもわかりませんが、企業の社会性を持たすことを眼目に置きまして、積極的な施策をいかにするかについて、ひとつ検討をしてみたいと存じます。
#151
○松尾委員 いま大臣の非常に積極的な御発言がありまして納得いたします。ですから、これはあまりほってもおけませんですから、次の機会に、いまおっしゃったような基本的な姿勢できちっと実現できるようにしっかり御努力願いたい。これは私は重ねて強く要望しておくものであります。
 この商法の一部改正に関連いたすわけでありますけれども、監査制度の問題であります。これは今回の改正でまた昔に戻るわけですね。従来監査役というものは会計監査のみやってきた。今回これを業務監査もやらせよう。これは昭和二十五年の商法改正以前にまた戻るわけですけれども、その理由はどこにあるわけですか。
#152
○川島政府委員 仰せのように昭和二十五年以前におきましても、監査役は業務監査を行なっておりました。今回はその点におきましては、まさに昭和二十五年前の改正に戻るわけでございます。昭和二十五年の改正前におきましては、監査役が実はあまり大きな働きをしていなかった。実際は名ばかりというようなところも少なくなかったと聞いております。しかしながら今回の改正は、そのような状態に戻そうとするものではなくして、むしろ積極的に監査役に仕事をしてもらって、そして会社が正しい企業の姿勢を保っていくということを確保しようということでございます。その意味におきまして、昭和二十五年前の監査役に比べまして、地位の点におきましてもあるいはまた権限の点におきましても強化いたした面がございます。また現在の企業の社会における評価といいますか、いろいろ問題を起こしておるときでございます。こういう際に、企業といたしましても姿勢を正していこうという時期でございますので、今回の改正によって監査役が業務監査を行なうようになりますれば、それなりの効果というものは期待できるというふうに考えたわけでございます。
#153
○松尾委員 この前の改正のときの一つの理由といたしましては、取締役会の業務監査機能が十分でない、形式化しておる、こういうことがいわれておったと思うのですけれども、いかがですか。
#154
○川島政府委員 規定の上で十分でなかったかどうかという点につきましては、私実はそれを云々する知識がないわけでございますが、今回の改正におきましては、昭和二十五年に監査役と同時に取締役の関係の改正が行なわれまして、取締役が取締役会というものを構成して、そして会社の運営をみずから規律していこうという姿勢がとられたわけでございます。ところが、それが必ずしも期待どおりに行なわれなかったというような事情がございまして、やはりこの際はむしろ監査役を、株主の利益を守るという立場から、また企業の正しい姿勢を保つという立場から強化していかなければならないということで、今回の改正に至ったわけでございます。今回の改正におきましては、以前にございませんでした取締役の違法行為の差しとめ請求権でありますとか、あるいは子会社の調査権でありますとか、そういう権限を新たに付加いたしましたし、また昭和二十五年前には取締役会というものがございませんでしたために、監査役がこれに出席するということも法制上制度として認められていなかったわけでございますが、今回は取締役会に監査役が出席して意見を述べるというようなことも制度化いたしまして、常時会社の業務をコントロールできるという体制を持つことを考えておる次第でございます。
#155
○松尾委員 いまのお答えを簡単に言えば、取締役会の業務監査の機能が十分でなかった、それで今回また監査役の監査の力を強化してやっていくんだ、こういうお答えになると思うのですね。取締役、その取締役会というものがこの業務監査の機能を十分に発揮できない。今度はそのために取締役というものをいろいろチェックしていく権限を監査役に与えていこうということですね。会社の執行機関と申しますか会社の業務運営の中枢機関は何ですか。これはやはり取締役であり、取締役会だと思うのですがね。業務運営の中心は何か、こういうことを一言でいいですから、これは大臣でもどちらでもけっこうです。
#156
○川島政府委員 会社の業務執行は取締役会が決定いたしますので、取締役会であります。
#157
○松尾委員 そうしますと、会社の業務執行の全責任は取締役会にある。それがこの業務の監査面において不十分であるというのはおかしいのじゃないですか。これは確かにおかしいのじゃないですか。自分が執行機関でありながら、そして自分が不十分である。だから会社の業務監査については監査役は日常ほとんどタッチしていない。そういう業務のことにタッチしていない者にさせよう。これはぼくはどうも筋が違うのじゃないか。執行機関であるからよくわかる。わかるから取締役会で業務監査のこともやっていけるようにそれを盛り上げていくのがあたりまえじゃないかというのが私の考え方の一つ。並びに取締役と申しますけれども、これはだんだん社員から抜てきされて取締役になる。そういうことは、やはり社長に対して大きな権限がないと言っても過言でないと思うのです。ですから、どうしてもこの取締役会の業務監査が十分になされない面は取締役自体の力が弱い。それを今度は監査役と比べてみますと、取締役よりももう一つ格が低いと見ております。会社の中でも取締役に次ぐべき人々が監査役になる。これはやはり立場としては取締役よりも監査役のほうが弱いわけです。それにいかなる権限を持たせようとも自分のいわば先輩、力のある取締役、それにやんやん言うことができるかどうか。取締役さえできないほんとうの業務監査というものをそういうところにまかせておいてできるか。いわば取締役会の自主性、独立性、監査役自体の自主性、独立性、こういうものを比べてみてどちらが高いか。日常の会社の業務にだれが接してだれが知っておるのか。知っておるから悪いことをする。悪いことをするから何も業務に関係しない者にやらせるんだという考えも起こるかもしれませんけれども、力から言えばだんだん弱い者にやらしていくのでありますから、実際問題としてなかなかこれは会社の内部では取り上げられるものではなかろうというような感じを私は強く持つのです。大臣、いかがですか、あなたの感じ。取締役会また監査役の力の関係、そして取締役会で業務監査が不十分である、機能が十分発揮できない、だからこのようにするとおっしゃいますけれども、私はその点は非常に疑問がある、こう思うのですけれども、いかがでしょう。
#158
○田中(伊)国務大臣 これは先生むずかしいお話ですね。そこで私はこう思う。制度としては在来の考え方を離れてもらわなければ困るんだ、在来の考え方の監査役じゃないんだ。在来の監査役でなしに新しい制度の監査役、それが新しい権限を強化をされて、会社の定款違反、商法違反、その他の法規違反の行動というものに対してはチェックをする権限を持たされておる、こういうことでございますから、制度として弱くないと思うのです。ただ、先生御心配のようなことを私もそのとおりだと思うのは、監査役に人を得なかった場合は先生の仰せのとおりになる。形だけ監査役が権限を強化されておっても何もならぬ、とてもチェックはできぬではないかということが起こり得るのでありまして、今度の商法改正のねらいに呼応して、すでに財界方面においては、今度の改正によれば監査役は大物でなければならぬ、大物監査役起用の制度という動きがすでに一部に出ておりますような状態はごらんのとおりでございます。
  〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
したがって、監査役に人物を得るならば、人を得るならば、私はこの制度とこの権限を与えて会社を、執行部のやりますことをチェックできる。なかなかこれも二年や三年でいきますまいが、時間をかけてこれをやらしてみたら私は必ずりっぱな監査役になる。大体私たちの考え方というものは、監査役というと取締役以下の事務的な、ちょっとお義理で置いておるようなものが監査役になっておりますから、そういう在来の考え方から申しますとそういう心配もあるように存じます。それをひとつ考えを持ち直しまして、新しい制度の監査役、新しい強化された権限を持った監査役というふうに考えていきたい。これで訓練をしてやっていきたい。財界もこれに応じてくれる傾向が出ております。
#159
○松尾委員 では監査役の資格条件です。そういうことは何もきめずにおって、そしてそうであろうという、一部の会社がそのような動きがあるとか。また大臣は非常に大きな期待感ですね、それになればいいなというような。それだけで私は急に監査役が強くなるかということであります。そのような期待というものを監査役に寄せられる以上は、やはり監査役選任の場合の資格条件というものをきちっとしておいて、取締役と同等また同等以上の人物というのがいまから先には監査役になっていくのだというように、明確に資格条件というものをきちっとしませんと、これはなかなかきめがたい点があると思いますけれども、なかなか大臣の期待どおりの監査役がそろってくるということは、これはとうてい、いわば百年河清を待つような気がするわけですよ。その点はどうですか。資格条件の問題を明確にしていった上でおっしゃるなら、大臣の言うことを私は理解するわけです。了承いたしますよ。
#160
○田中(伊)国務大臣 この法律制度の改正をお許しを得て実現ができました場合は、漸次日を追って監査役は大物が起用されるという傾向に必ずいく、こういうふうに私は信ずるのでございます。したがって、経験のある会計監査だけでなしに事業もわかる人物、こういうものをさがし出してきてこれを監査役に仕立てていくという傾向に必ず入ってくるものと期待してよいというふうに考えております。
#161
○松尾委員 あくまでも大臣の期待ですよね。ですから期待どおりいけばいいのですよ。ところが、いかなくてもしようがないのでありまして、だからそこはやはり監査役の資格条件というものはきちっとしておいたほうが大臣の期待どおりになっていくだろう、確実になるだろう、こう私は言っているわけです。その点のお考えはありませんか。
#162
○田中(伊)国務大臣 私は資格条件をつけておく、当該会社の取締役を何年以上つとめたる者とか、あるいは常任取締役を何年以上つとめた者とかいうように資格条件をつけていくことは無理なのではなかろうか。もとより、その企業自体が自主的にやっておる企業でございますから、取締役になる者に資格条件があったり、監査役になる者に資格条件があったり――ただ、監査法人を構成いたします公認会計士というものに資格要件が国家試験によって備わっておるということ、これは先生、別な話でございますね。
 そこで私はそういう意味で、この資格条件を法律で規定してかかるというところまでこの人物の選定をやりますことは、監査役についても取締役についても専務、常務等につきましても、これは社長、会長はもちろんのこと、それらの資格条件をつけてかかるということは無理な注文ではなかろうかという感じを持ちます。
#163
○松尾委員 私がそう言っておりまするのは、何も会社の中で法律で明定する必要はない。それを大臣のおっしゃることがあたりまえなんだというような、やはり一つの内規と申しますか、監査役というものはこうこういうものなんだというものがはっきりなっていけば、大臣のお答えどおりに非常に近いものがだんだん固まっていくんだろうと思うのですが、それをいまのままにほったらかしておいて、そしてここで答弁で大臣が期待を述べられても、それがはたして企業の中に浸透して期待どおりの監査役ができるかどうかという点に私は疑念を持つわけです。法律で明定せよというのじゃありません。少なくとも会社の中でこういうものがなっていくんだぞというような一つの仕組み、そういうものはやはり固めていく、それを早く促進するような方向が好ましいのじゃないか、こう言っておるわけです。どうぞその点答えてください。
#164
○田中(伊)国務大臣 私に勘違いがございました。そういう御趣旨でありますれば、これはその法律ができました上で、所管としては通産省がおりますので、行政指導という点でもこのことはできぬこともございません。そういう御趣旨であればそういう方向に向かってぜひ努力をしてみたいと思います。
#165
○松尾委員 もう一つは、今回の改正で、監査役また会計監査人というものが子会社に対しまして営業の報告をとる、また必要があれば業務、財産の状況を直接調査することができるという一つの新しい調査権ですね。これが悪用されますと、子会社というのは何かといえばいじめられておるわけでございますが、親会社のほうがそのような監査役とか会計監査人に新しい権限を与えていくということになると、ますます子会社の親会社に対する従属性、親子の関係、それが少しきつく、従属性というものが強まってくるような感じもするわけです。どういう配慮があるかということ。なぜこういうことをやらせるのか、こういう必要があるから、こういうことをやらせるのである、そして従属性等の点においてはこのように配慮しておりますということがしっかりしていなければ、これは理解できません。お答え願いたい。
#166
○川島政府委員 仰せのように今回の改正案におきましては、監査役及び会計監査人に子会社調査権というものを認めております。この子会社調査権を認めた趣旨でございますが、これはあくまでも親会社自身の経理が適正かどうかを判断するために、その判断に必要な関係部分について事実であるかどうかという点を明らかにする手段として、子会社について調査を行なう、こういう趣旨でございまして、御承知のように大きな会社が粉飾決算をいたします場合に子会社を利用して行なうという例が非常に多いわけでございます。よくいわれる押し込み販売というような例もございますけれども、子会社に商品を買ったことにさせてそして親会社の成績をあげるといったようなことも行なわれております。そういったむしろ親会社の適切でない、適当でない行為を監査役が監査をする場合に、そういう事実があるかどうかということを調査するために認めたものでございまして、決して子会社に対して何らかの支配を及ぼす、そういう趣旨で設けたものではないわけでございます。子会社調査権の趣旨はそういう点でございます。
#167
○松尾委員 趣旨はそういう趣旨である。子会社を通じての、利用しての粉飾決算等があった、それをどうしても抑制しなければいけないから、こういう新しい権限というものを認めていくんだとおっしゃるのはわかります。わかりますけれども、この従属性等をどうするつもりなのか。法のとおりに運用されれば何も問題ないわけですよ。ところが、現実にそういうような調査権というものが発動されますと、それが思わない影響を及ぼしてくることが多いのです。ですから、その点の配慮というものがきちっとなければ、これはやはり私は心配ですね。
  〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
ですから、こういう面だけでとか、いたずらにやることはありませんでしょうけれども、そういうやり方とかなんとかを、これこそほんとうの自主規制といいますか、明確なる一つの事業運営のあり方というものをきちっときめていきませんと、これはいまおっしゃったように、そういう心配がないといわれないということです。弊害を正すことはわかります。わかるけれども、他方、今度はそういう新たに起こってくる弊害というものに対する歯どめというものがきちっとしていかないと、これもいけない、こう思うわけですから、その点はいかがですか。もう一回、念を押して聞いておきます。
#168
○川島政府委員 乱用を防ぐ必要があるとおっしゃいます点はそのとおりであろうと思います。一つの保障は手続の上で考えておるわけでございまして、第一には、親会社の監査役が子会社を調査しようとする場合には必要な部分についての報告を求め、その報告が得られなかった場合、あるいは報告の真否を確かめるために必要があるという場合に限って子会社にみずから調査ができるということにしておる点でございます。
 それから、これは規定にはございませんけれども、親会社の監査役がその権限を乱用いたしまして子会社の調査を行ない、そして子会社に不利益を与えたという場合には、これは一種の権限乱用と申しますか、子会社に対する不法行為が成立するという場合もあろうかと思います。その場合には損害があれば監査役が損害を賠償しなければならぬ、こういうことになろうと思います。
#169
○松尾委員 答弁としては非常に不十分でありまして、何かそういうことがあれば監査役が賠償の責めに任ずる、損害があればという、そういうところまで出ないうちの問題が具体的にはいろいろ多いのですよ。それが非常に圧力となる。現実に損害が発生する、せぬという問題の前にいろいろ問題がありまして、そしてもう損害が起こるというようなことになると、そこに従属性というものがはっきりしておりますから、それはこちらの子会社のほうも腹をきめましょうけれども、腹をきめる前の段階に多くの問題があるということは認識しておられなければいけないと思うのですね。なおなお、その点についてはひとつしっかり検討してもらいたい。これは要望しておきます。
 次に、中間配当の問題です。中間配当ということは、私よくわかりませんので、どういうことであるか、これをまずはっきりしてもらいたい。
#170
○川島政府委員 今回の改正案は商法二百九十三条ノ五の規定を改正いたしまして中間配当の制度を認めることにいたしております。
 この中間配当という制度を認める理由から申し上げますと、現在多くの会社は半年決算つまり年二回決算を行なうというのが普通の状態でございます。ところが、年二回の決算を行ないますと、季節によって売り上げが異なる。したがって、上期と下期とで利益が相当に違うという場合もございます。そのため、会社といたしましては利益の平準化をはかりたいということで多少粉飾めいた決算を行なうという例が少なくないわけでございます。その上年二回決算を行ないますと、決算株主総会を年二回開かなければならない。そのための費用、手続等がいろいろございまして、必ずしも経営上好ましくないといった面もございます。このような関係から年一回の決算に切りかえたいという希望を持っておるわけでございますが、現在年二回、株主に対して配当を行なうというのが普通になっておりますので、年一回決算に切りかえますと、配当も一回に減る。これは株主に対する関係でも、また株価の関係から申しましても好ましくないということで、何とか中間配当の制度を認めてもらいたい、そうすれば年二回の決算が年一回の決算に改められる、こういうことでございます。そこでこのような制度を認めたわけでございまして、今回の制度の骨子といたしましては、年一回に決算を行ないまして、そのあがりました利益の一部を留保しておきまして、そしてそれをその次の年度の中間において配当する、こういうことを考えておるわけでございます。
#171
○松尾委員 そうしますと、年二回の決算の会社が多い、上期、下期で利益率が違う、それで粉飾決算のおそれもある、だからこれを年に一回にする。もう一つは、株主総会の招集その他についていろいろ事務上の問題もある、経費も余分にかかるということですね。そういうことでありますけれども、中間配当をするとかしないとかいうことはだれがきめるのですか。まず一つ一つ聞いていきますから。
#172
○川島政府委員 これは定款に規定がある場合に限ってできるわけでございますが、中間配当を行なうかどうかは取締役会の決議によって行ないます。
#173
○松尾委員 まず取締役会の決定できまる。その承認というものは株主総会になるわけですか。
#174
○川島政府委員 これは年度の中間でございますから、事前の承認というものはございませんが、その年度が終わりましたときに最終の決算が出てくるわけでございます。
#175
○松尾委員 そうしますと、年二回の決算であれば、毎回毎回株主総会の承認が要るわけですね。これを年一回にする。しておいて、そして今度は利益の一部分をリザーブしておく。次の期の中間においてそのリザーブした利益金というものを配当していく、こういうことですね。そうしますと、株主等にとってみれば、もらえるべきものが先に延ばされたということですね。そうすると、その間いろいろの問題が起こってくるんじゃないか。決算のときに一割なら一割、一割二分なら一割二分という利益が出た、それを半分だけ配当しておこうというわけで、初めは五分なり六分なり配当しておく、中間配当で残りの五分か六分を配当していこうと思っていたけれどもいろいろなことでできなかった、こういうことが起こるわけですね。いかがですか。
#176
○川島政府委員 起こり得るわけでございます。ただ、さらに法律では要件がございまして、前期に利益を留保しておいたけれども、当期に入って営業の成績が非常に悪い、したがって当期の営業年度の終わりに赤字が出る心配もあるといったように経営状態が悪くなってまいりました場合には中間配当を行なってはならない、こういう規定がございます。そういった制約も受けるわけでございます。
#177
○松尾委員 景気が悪くなれば中間配当できない。株主としては最初もらうべき当然の権利があったわけでありますけれども、それが年二回配当ということになるわけですからね。そうしますと、半分だけもらっておいて、あとの半分ははたして決算のときのとおりにもらえるかどうかいつもわからないですね。会社は景気が悪くなればその中間配当というものをやめることもできるのであろうし、そういうことが会社のためになされていくであろうけれども、株主からいえば、これはやはり配当を受ける権利というものからいうと少しちぐはぐのような感じがしますがね。株主に対して、中間配当をやるんだ、それはあなたのためにこのような利益があるんだということを納得できるようにひとつ答えてごらんなさい。
#178
○川島政府委員 先生の御納得のいくようなお答えができるかどうかわかりませんが、株主といたしましては従来からの関係もございまして、むしろ株の値段が一年じゅう比較的安定した形で保たれるということも必要なわけでございますので、年二回の配当を望んでおるといたしますと、一年決算のある年度の終わりにこれだけの利益が出た、しかしこれを全部一回に配当してしまわないで二回に分けてもらったほうがいい、こういうことが考えられると思います。そういうことを予想してできた制度でございます。
#179
○松尾委員 会社の経営状態が悪くなれば株の配当ももう低くなるんだ、この会社の利益というものを分けてしまうと、この会社の景気が悪くなったときにいろいろ資金的に不足する、ですからいままで年に一回の決算であれば全部利益というものを一応株主配当として分けたけれども、会社のためにそれは一部分とっておくんだということですね。その間ほんとうに会社が、自由化その他ありますので、いろんな問題で経理上等の問題が起こってきましょうが、いままで受け取っておったものが半分しかもらえない。そうしてそれは会社のために使えるのだという大義名分は会社にありましょうけれども、そういうものを株主のためにチェックする何ものもないんじゃないかということですね。会社のためになるという判断、そしてそれが株主のためになるという判断、そういうものをどういう基準を置いて――株主が納得できるそのような基準のもとに決定していけるならこれはいいでしょう。いいでしょうけれども、粉飾決算等が指摘されておるように、いろいろ会社の決算等については問題が多い。そういう中から、やるべきものを先に延ばしておいて会社のいろいろなことをはかっていこうとする。そのときに、それはほんとうに株主のためになっているというその判断が、これは私はできにくい場合が多いんじゃないかと思うのですよ。ですから、こういうものもやはりいろいろときちっと何かきめておかなければならぬ。取締役会できめるということですね。そして今度は中間配当については株主総会の承認は要らないわけでしょう。年一回の決算で承認を受けておるわけですから、その次の中間配当のときにははたして決算のときの利益の半分をもらえるかどうかわからない。そうしてそれは取締役会だけできめていく、株主総会の承認は要らないということになると、どうも株主がこう、少し込み入っておりまして、そこをきちっとしていかないとこれは乱れていくのじゃないか、会社の恣意的な決算というものに利用されていくおそれがあるんじゃないか、これを心配するわけですよ。そこの配慮はどうです。
#180
○田邊説明員 先生の御指摘のとおりに、中間配当をするかしないかは取締役会の決定にゆだねられるわけでございます。ところで、例を現在半期決算をしている会社にとりまして、この新法で中間配当に移る場合のことを考えてみますと、従前でございますと、たとえば年一割の割合の配当をしておった。そういたしますと、額面五十円の場合には年間五円の配当金を二回に分けて二円五十銭ずつ払っておった。これを中間配当に入るために一年決算にいたしますと、もしこの制度がございませんと、普通の経営でいけば一年目に五円を支払う、こういう計算になるわけでございます。この制度は、それでは株主が会社の利便のために先ほどのような総会の開催あるいは経理の適正というふうな事務的な関係から、本来二円五十銭を途中でもらうべきものを一年先まで待っていなければならない、そういうところからこの制度が設けられたわけでございます。
 それと、先ほどの中間で景気が悪くなった場合に、中間配当をしてはならないということを法律はきめております。これは株主の利益にもなるという考えと同時に、商法が利益配当について規制しております債権者の利益をはかるための考え方でございます。もし期の初めに、中間で二円五十銭を支払える利益の留保があったといたしましても、中間の見通しから判断いたしますと、中間で二円五十銭払えはいたしますが、期末には二円五十銭はおろかゼロあるいは赤字になるというときに、途中の二円五十銭も支払ってはならないという規制をしている。これは債権者から見ますとそのように途中で食い逃げ的な利益配当をなされることによって会社資産が減少する、これを防止するための措置でございます。取締役会はこの法律で中間配当をするかしないかは、まず定款できめてあります特定の日から三カ月内に意思表示をしょう、こういう定めになっておるわけでございます。その判断時期が中間配当の基準日から三月内となっておりますので、株主といたしましてはそういう中間配当があり得る期待的な利益を持っておるわけでございますが、その時期に出資者としてはまた判断をせざるを得なくなるだろう。つまり、中間配当を当てにして投資をしたけれども、その地位をのくかどうかというふうな判断も可能であろうかと思います。要するに中間配当の規制は株主の利益と債権者の利益を調整した形ででき上がっているというのが改正法の考え方でございます。
#181
○松尾委員 考え方はそうでしょう。それがはたして現実にそうなるかということを私は論じておるわけであります。これは確かに経済界だとか大企業が喜ぶのです。なぜかといえば、年二回招集するのを一回でよろしい、招集するいろいろなばく大な費用が要らない、それから株主総会で決議が毎回毎回要らない、会社の安定のためには留保した利益というものをどんどん使っていける、こういうことでありますから、これは確かに会社にいいでしょう。であればあるほど、株主のためにとおっしゃるなら株主のためにもなるんだという点をうんとしっかり考えた上の歯どめというものがなくては、これはうかうかと利用しますともらうべきもの、期待権というのですか、そういうものが現実に守られなくてはこれはいけない、不合理ですよね。そこをじっくり見てきめてやるように考えておるかということです。歯どめの問題、これは一言でけっこうです。もう時間がなくなった。大臣一言、歯どめ、そこをしっかり考えると言えばわかるのです。
#182
○田中(伊)国務大臣 いまの最後のお話でございますが、監査役に発言権が与えてあることでございますから、監査役が発言をして取締役会で主張する、こういうことをさせる以外にはなかろうと存じます。
#183
○松尾委員 歯どめを考える、このように理解します。
 時間がなくなりますので次に急ぎますけれども、いまの証取法でございますが、これは、一年決算のものでも半期報告書の提出が昨年義務づけられたわけですね。それが会計士の監査が今度は要らないということになるわけでしょう。この点私は、監査の強化をはかる、会社の経理を適正にしていくのだといいながら、このようにされるということについて、これはむしろきちっとやっていかなくてはいかぬのじゃないか、こう思うのですけれどもいかがでしょう。
#184
○白鳥説明員 御指摘のとおり、一年決算の会社につきましては半期報告書の制度が昭和四十六年の証取法の改正で取り入れられております。これにつきましては四十六年十二月の証券取引審議会の報告で、この半期報告書におきましては決算が行なわれないわけでございますね。その点が一点と、第二点といたしまして半期の損益等に関する監査の基準が確立されていない、こういったような理由で半期報告書に対しましては公認会計士の監査証明を制度化することは適当ではない、こういう報告がなされておりまして、政府といたしましても、この審議会の報告の趣旨を尊重いたしまして、監査証明は不要ということにしたわけでございます。しかしながらこの監査証明を半期に行なわないということになりますと、一年に一回しか監査が行なわれない、これでは監査が弱められるのではないか、こういう御趣旨かと存じますが、監査の手続は、これは決算のときにその内容を見て、適当であるかどうかということを指摘するばかりではなくて、期中におきましても監査の決算の適正な処理、経理の適正な処理を指導いたしまして、その期中の手続の中でおかしい事項があるというようなことのありました場合には、公認会計士が会社の経理担当者に指導をしてこれを是正させるというこの監査の指導的機能というものが発揮されるわけでございまして、一年決算会社がふえてくるからといって、監査が弱められるということはないと存じます。また監査にあたりましては、年に二回監査するよりも、一年に一回監査するほうが、より、決算にあたりましての監査においては、また信度のある監査ができる、こういうこともございますので、必ずしも監査が弱められるということにはならないと存じます。
#185
○松尾委員 納得できませんね。できませんけれども、もう時間がないから。それで当面はそのようにやるだけですが、やはり将来の方向としては、これはがっちりやるという方向を固めなくちゃ逆であろう。これは私の主張を述べておくにとどめます。
 それからいろいろの引き当て金の問題でありますけれども、時間がありませんのでさっと言いますけれども、この利益の過小評価、これは株主に対しては利益配当請求権を不当に阻害するわけですよ、過小評価ですから。また従業員に対しても賃上げ交渉をするとき、いろいろそういう理由もまたつくってくる等々ありますけれども、このような過小評価に対するチェック、これは株主総会と公認会計士にまかせるというようなことでありますかどうか。一言でけっこうです、そうである、違う。
#186
○川島政府委員 そのとおりでございます。なお、監査役も監査いたします。
#187
○松尾委員 そうしますと、まず株主総会にいく前に公認会計士の監査はきちっとなっていかなければならぬわけでありますけれども、先ほどもこれはちょっと論じられたとおりに、公認会計士は会社から報酬をもらって雇われているわけですよ。ですからこれは幾らそこに権限を与えようとも、会社の意に反するいろいろのことが実際問題としましてやれるかどうか。大臣は、非常に人がいいといえば人がいい、期待ばかりしておいて、うまくいくだろう、自主規制とおっしゃいますけれども、これもものの程度によりけりでありまして、そういけばいいのですけれども、公認会計士の問題、これでも、何といっても会社から報酬をもらっている、また毎期毎期にかわっていくようなそういう不安定な地位であって、はたして大臣の期待どおりいけるかどうか、大いに疑問がある。ですからそういう報酬をもらって行く人、その地位の弱さですね、これは現在がそうでありますから。ですから報酬をもらわないで会社の経理をきちっとしていけるような何かを考えていきませんと、これは永久に、報酬をもらった人に権限を持たしても、はたして適正なる会計監査ができるか、経理の審査ができるか、これは疑問であります。そうしますと、それならばだれが公認会計士の報酬を負担するかという問題でありますけれども、会社から直接もらえばそういうことになりますが、何かそこに新機軸というものを考えていきませんと、従属関係というものは取れませんし、雇用関係は取れません。そういうものを幾ら声を大にして期待をしようとも、これは実現できないのではないか。これは、もう時間が超過したと言われておりますので、一言でいいですから、これで私は質問をきょう打ち切ってしまいますから、納得のいく答えを最後に聞きたいと思います。
#188
○田中(伊)国務大臣 公認会計士の人物、識見が――私はすぐ信ずるというのですが、その人物、識見を信じますならば、仕事に対する報酬は受けていても、その監査の仕事というものをしっかり公平無私にやるということは可能である、私はこう考えておるのでございます。
#189
○松尾委員 あなた、期待が多いのですよ。そして人がいいというかずるいというか、どっちかですよ。そういう期待だけじゃなくて、人物さえいればという人物がほんとうに人物どおりいけるかということは問題がありますから、これもしっかりお考えなさって歯どめというものをがっちりしませんと、幾ら法を改正し、力を与えていっても、実行できないものを幾らやってもいかぬ、こう言っているわけですからしっかりお考え願いたいと思います。
#190
○中垣委員長 玉置一徳君。
#191
○玉置委員 しんがりをつとめまして質問を申し上げたいと思うのですが、ただいまのお話を聞いておりますと、監査役の権限を非常に強化されました。株式会社がマンモス化してまいりますにつれて国民生活に非常に大きな影響を与えておることは事実でございますが、まず初めに私、法務大臣にお尋ねしたいのですが、そのくらい重大な影響を与えつつある株式会社の粉飾決算の場合におきましても、代表取締役が、後藤観光株式会社の商法違反、背任で懲役二年六カ月、四年間の執行猶予、富士車両株式会社が懲役一年で一年間の執行猶予、山陽特殊製鋼は目下神戸地裁で係属中でありますが、大阪土木が懲役一年で三年の執行猶予、罰金五万円、その次は北海興業が懲役二年で三年間の執行猶予、それから栗田工業で懲役八カ月、執行猶予二年、罰金五万円、こういうように粉飾決算のものが出ておるのですが、交通違反を見ましてもこのごろ一つの時代の要請に基づきまして罰金数万円あるいは体刑というようなのが非常に多くなっております。そういうようなものに比べましてこの社会的に非常に影響のある粉飾決算をいたしましても代表取締がわずかに懲役一年、執行猶予三年間、それから罰金五万円、まるきり交通違反と同じくらいの程度じゃないか、こう思うのです。これは今回の法改正を考えましても再検討する余地があるのじゃないだろうかというような感じがいたしますが、これは大臣でなくてもけっこうですから、ひとつ法務当局の御見解を承っておきたい、こう思います。私は粉飾決算事件一覧表というのをいただきまして質疑するのですが……。
#192
○田中(伊)国務大臣 従来の粉飾決算というものは、先生御承知のとおりに比較的に軽く見られておったという点に欠陥があろうと存じます。しかしこのたびのように監査役制度の大改正を行ないましてこれを活用してやっていきます場合に、万一不幸にして生じた粉飾決算あるいは逆粉飾決算というような場合においてはこのような判決にはなるまい。これは判決のことでありますから私のタッチすべきことではありませんけれども、いままでの粉飾決算は軽きに失しておる。しかしそれは制度自体が今日のように企業に社会性を持たすために、それを守らすための重要な制度の改正であるということになれば、今後の事案はそうはまいるまいという観測でございます。
#193
○玉置委員 そこで、先ほど来同僚議員の質問にお答えいただきましたが、監査役の非常に重要な責任を、したがって権限の強化をされましたことは、私は一つの非常な進歩だと思います。ところが監査役の不作為の責任は株主が追及し得る方法があるかいなや、ひとつ事務当局からお答えをいただきたいと思うのです。
#194
○川島政府委員 監査役が当然なすべき職務を怠って、そのために損害を与えたという場合には、当然その責任は生ずることになろうと思います。
#195
○玉置委員 株主がどういう方法でその責任を追及し得るのか、お答えいただきたいのです。
#196
○川島政府委員 監査役の責任といたしましては、商法の二百七十七条に会社に対する責任を規定しております。「監査役が其ノ任務ヲ怠りタルトキハ其ノ監査役ハ会社二対シ連帯シテ損害賠償ノ責二任ズ」、それから取締役の第三者に対する責任規定であります二百六十六条ノ三の規定が監査役に準用になっておりまして、第三者に対しても責任を負うということになっております。
#197
○玉置委員 先ほど法務大臣がお答えになっておりましたけれども、監査役が従来えてして取締役の一枚下のような感じと受け取るほうが社会通念だと思います。りっぱな方々を選任するといいましてもなかなか一挙にでき得ない問題で、むずかしい問題だと思いますが、これはみんなでそういう習慣をつけていくしかできないことだと思います。これを将来何らかの商法の改正に取り入れるようなことができる可能性があるかどうか、あるいはないとすればそういう慣習を一体どういうようにしてつけ得るか、大臣の私見でもけっこうですからお答えいただきたいのです。
#198
○田中(伊)国務大臣 一口に申しますと、監査役の地位を今度の改正で引き上げるわけでございます。地位が引き上がってくる内容は、権限が強化をされて、それから権限が拡張されておる。単なる会計監査から業務監査に広がっておる。改正法の運用をやっていけば、こういうところからだんだん、先生仰せのように認識が改まってきて監査役の地位が向上する、大もののよい者でなければ持ってこられぬような空気が出てくる、こういうふうに考えております。
#199
○玉置委員 願わくは、大臣等も経団連その他の会合に出られましたら、商法改正の趣旨をよく御説明いただきまして、そういうところの風潮をひとつ御指導いただくような方途も、私要るのじゃないか、こう思いますのでよろしくお願いを申し上げたいと思うのです。
 そこで、せっかくそこまでの、監査役を株式会社の社会的責任という観点からお強めになるのでございますのに、なぜ法制審議会のきめました監査役の株主総会の招集請求権とかあるいは取締役の招集権とか、あるいは報酬の別ワク、特にこの点は特別注意を喚起しなければいかぬと思うのですが、それは一挙にそこまでやったのでは、まだなじまないと思われておやりなすったのか、そうなれば、将来これを法改正の機会になるべく顔をのぞかすように御努力されるお気持ちがあるのかどうか、この点をお伺いしておきたいと思います。
#200
○田中(伊)国務大臣 どうも一挙にはなじみにくいであろう、無理であろうということを、先生お説のように考えております。
#201
○玉置委員 したがって、将来とも法制審議会の趣旨は、監査役制度、したがって株式会社の社会的責任という点から考えて望ましいことでありますので、でき得るだけ実現に努力する、こういうお気持ちだと判断をいたします。
 もう一つは、これも承りますと、皆さんから非常に声が大きくて質疑がたくさん出たらしいですが、一つは、取締役会の責任というものは、いまは株式会社は定款に基づいたものであって、そこに背任横領がなければ、ただに利益追求をしていけばいいというような形になっております。その取締役の責任というものを将来お考えになるように承っておりますけれども、大体どういうことをどのように考えておるのか、若干具体的な試案が法務省にあればこの際お聞かせをいただきたいと思います。
#202
○川島政府委員 取締役の問題につきましては、今回の改正では触れておりませんので、この次の機会に当然取り組まなければならないというふうに考えております。どういうふうに問題を扱うかということになりますと、これは法務省といたしましては、法制審議会の商法部会でいろいろ御審議いただくわけでございますので、私からその内容について申し上げることはできないわけでございますが、ただ現在の取締役会に関する問題といたしましては、いろいろあげられております。たとえば、現在の商法は取締役会というものを構成して、それが代表取締役を監督していくというたてまえをとっておりますけれども、実際は代表取締役社長とか専務とかいうものが非常に強くて、並び大名と申してはなんでございますが、普通の平取締役が取締役会で発言するということによってその監督を行なうということはなかなか困難な情勢にあろうと思います。こういった状態から、その取締役会の構成でありますとか、権限でありますとか、責任でありますとか、そういった問題をあわせて洗い直してみる、こういうことが今後の課題になろうというふうに思います。
#203
○玉置委員 法制審議会の議を経なければいけませんでしょうから、なかなかすぐにはできにくいでしょうけれども、ほんとうは大会社、ことに総合商社等の問題点がたくさんございまして、目下商法を改正されると一緒にこういうものがのぼることを国民の皆さんは期待をされておったと思いますので、二年も向こうなんという考え方ではなしに、なるべくすみやかに法制審議会の答申をもらいまして、適切な改正をすみやかにされることをひとつ希望いたします。
 ついでに、これも同僚議員からたくさん出たことだそうでございますが、この間あまりあれしておりますので見七みたのです。新日鉄の株主総会が、実に四十九万四千五百六十九名の株主総数のうち、出席者が四百四十六名、うち委任状が三十六名、これも会社の社員等々、このうち何割占めておると思いますか。そうすると、ほんとうの意思で出席した人というものは実に千分の一もしくはそれのまた五千分の一ぐらいの人数になってしまっておるわけです。その他十社ほど私も調べてみて、あの丸紅の大騒ぎの問題がわずかに九時三十分から九時四十五分、十五分間で済ましてしまっておるというようなこと、これではほとんどごあいさつをされる時間しかなかったとしか見られないわけです。十社ほど調べてみて、東レが十四分間、日立製作所が十二分間、トヨタが二十分間というような、これではもうほんとうに、いわば形骸化されておるというような以上の問題でして、むしろ社会的な罪悪でしかないのじゃないだろうか。いま商品投機の大騒ぎのときに、こういうことが行なわれていることをじっと見ていることのほうが、法務省として、ほんとうの不作為の罪というのか怠惰というのか怠慢というのですか、ことばは悪うございまして恐縮でございますが、これは一日もすみやかに何らかの手を打たなければ、国民の非常な政治に対する不信、法に対する不信ということまで起こりかねないのじゃないだろうかということを非常に心配いたします。そういう点、ぜひともすみやかな改正をお願いを申し上げたいし、大臣もその決意をお述べをいただいておったそうでございますので、この点ほんとうに――せっかく片一方で監査役の強化とか公認会計士の問題をやっておるときに、こういう大きな問題を、しかも非常に常識的な問題を捨てておいて、事務的に詰まったような問題だけをしておるような感じがしてなりません。一言大臣の決意だけ承っておきたいと思います。
#204
○田中(伊)国務大臣 この商法、企業の動向をめぐる法務省の立場でございますが、これはいかに法務省が力んでみましても、罰則の適用以外に打つ手はないので、法務省の立場としては――通産省は別でございます、そこで従来まではいろいろ、いわゆる総会屋と会社当局との関係に、恐喝的な金銭授受をいたしましたときにはこれを処分した例はあるのでありますけれども、商法による贈収賄罪を適用して処分するというやり方にはあまり力を用いなかった。今度はこれを断固たる立場でやろうとしていろいろな処置を講じておることは先生御承知のとおりでございます。こういう態度で、これも起訴の問題でございますから裁判法廷において公判を維持しなければならぬむずかしい問題がございますので、はたして起訴ができるかどうか、ここで言明の限りではございませんけれども、せめてこの方向に向かって、企業の社会性を保持さすことに力を入れてみたいという考えで、大いに腰を入れておるという事情でございます。今後ともこの種の犯罪に対しましては、強い態度で、厳正公平とは申しますが、きびしい態度で臨んでいきたいと思います。
#205
○玉置委員 そこでもう一つ、商法改正の場合に、その商法の社会的責任という点から考えまして、ほんとうに個人的な経営としかわれわれが事実上見えない、あまり社会に御迷惑をかけたり波及の少ない問題の同族会社的な、小さい魚屋さんでも、小さいお菓子屋さんでも酒屋さんでも、小売り店でも株式会社という名前、これは税法のどこかの不均衡から出ていっているんだろうと私は思うのですが、そういう点は税法の問題でありますが、これは社会的責任というところまではいろいろな問題でいかないわけでございます。そういうものの一つの分け方と申しますか、規制と申しますか、交通整理と申しますか、法の扱いの何らかの判断が要るような感じがいたしますが、どのようにかお考えなすって、将来それを検討される余地があるのかどうか、ひとつ御意見を承っておきたいと思います。
#206
○川島政府委員 現在の株式会社は、非常に大規模なものから、仰せのように個人企業にひとしいような小規模のものまでございます。これを一律に株式会社ということで一つのワクの中で同じ規制をはめていくということは、確かに実情に合わない点がたくさんございます。小さい株式会社にありましても、株券を発行しない、株主総会は開かない、貸借対照表の公告もしないといったような問題がざらでございます。こういった会社をそのままにしておくということは非常に好ましくないことでございますので、何とかしたいという意見は、実はもう十年、二十年前からあるわけでございます。
 そこで、その方向に向かっていろいろ考えておることは事実でございまして、今後法制審議会におきましてもその点が取り上げられるものと考えております。
 ただ、現実に百一万あります株式会社、これをどういうふうにして仕分けるかという問題になりますと、非常に大きな社会的な影響がございますので、そういった経過的な問題を含めながら同時に検討していくということになりますと、いろいろ課題が多くて若干時日を要すると思います。しかしこれはやらなければならないことであると考えております。
#207
○玉置委員 そこで監査役と並行いたしまして、公認会計士の経理監査というのが本来のまた一つの問題点でありますが、私は、まさか官庁から公認会計士を派遣するというわけにもいきませんので、役所が全部見るわけにもいきませんでしょうし、そういう点では何らかの、そういう民間人の非常に社会的責任を負うた人、そしてそれだけの資質を備えた人、そういうものが株式会社の、いまの総会といってもほとんど形式的で形骸にしかすぎないようなときにおきまして、株主はもちろんのこと、一般国民にかわりましてそのことを監査する人が非常に重要だ、こう思います。思いますにつきまして、証券取引の関係は前からおやりいただいておるわけですが、今回一般商法の中へ入れまして、全部に及ぼしていこう、この考え方は一つの方向として好ましいんじゃないか、私はこう思うのです。しかしながら、そこに前提となるのは、それだけの資質を備えた人がどのくらいの人数おいでになるのか、一挙にそれをやろうと思っても、それだけの自信がおありかどうか、ほんとうは心配なんです。しかも株式会社の取締役と思われる執行部が選んで委嘱した人に、いまのままだったら当然なりますから、役所がまさかあなたはどこどこへ行ってくれというわけにもいきません。そうなればよけいにそういう点を心配いたします。
 大臣がお話しになりましたように、これはもうほんとうに日本は日本のいままでの風土の中に育っておる社会の仕組みでありますので、これをこういう形にしていくのには、長年のお互いの努力によって社会的な一つのそういう思潮と申しますか、流れをつくっていかなければしようがないんじゃないだろうか。一挙にそれだけやり得るだけの質のある人を量的に確保できるのかどうか、その点ほんとうに杞憂いたします。大臣、どういうようにお思いになっておりますか。
#208
○白鳥説明員 現在、これは昭和四十八年四月末でございますが、公認会計士の数は四千五百六十名おります。このほかに公認会計士補の数が千百八十一名、こういう体制になっております。一方、証券取引法の監査の対象となります会社の数は、昨年末現在で二千四百五十三社でございます。今度新たに商法監査が始まりますと、昭和五十年から、証取法監査の対象となっていなかった資本金五億円以上の株式会社、金融機関を除きますが、これにつきまして新たに千百六十九社が監査の対象になるわけでございます。その後、五十一年からは金融機関が百五十一社監査の対象となってくるわけでございます。こういった対象に対しましてさらにその後の会社の数の伸び率と公認会計士あるいは公認会計士補の数の伸び率、こういうものを勘案いたしてみますと、将来公認会計士あるいは公認会計士補の従事可能日数に対する実際に監査に従事するのは、これは約七〇%程度になるのじゃないだろうか。ちなみに現在は五〇%ぐらいでございます。このように余地はまだまだ十分ございまして、さらにまた一年決算移行に伴いまして監査日数が減少するというようなこともございますので、公認会計士の数という面では御心配は要らないか、こういうように存じます。
#209
○玉置委員 いま私が申し上げておりますのは、数の問題でいえば、その方々は現に相当な仕事を持っておるはずでありますし、なおそれに加えて質の問題として、それだけの社会責任を付託するに足り得る人間が、それだけの余裕を持って遊んで待っておる人間があるかどうか、こういうことなんです。それだけの計算尺でそういう計算をすればそんな計算にはなるでしょうけれども、現に遊んでいる有能な人があるはずがない、それを私は聞いておるのです。
#210
○白鳥説明員 ただいま数の話だけを申し上げたわけでございますが、質の点につきましては、御承知のように公認会計士は非常に厳正な国家試験を受けて公認会計士の資格を得ているものでございますので、人物、能力、識見ともに非常にすぐれた人々でございます。また、公認会計士の質の向上につきましては、従来から当局としてもいろいろ指導しておりますし、質の面で御心配のようなことはない、こういうふうに存じます。
#211
○玉置委員 これは大臣でないと話にならぬからこのくらいにしておきますけれども、私は、いま遊んでいる人というのはそんなにないと思うのです。有能な人なら有能な人できりきり舞いしているのじゃないか、それが実情だろうと思います。そういう意味で、一挙にこういうことを広めてみたって、それからその選任がすべて取締役、執行部から選任を委嘱することはしばらくの間当然でありましょう。こういう意味では、われわれの考え方だけが先走りまして、あるべき姿ということは、これでは当然だと思うのです。これはあるべき姿であって、現在あるのは、そうはうまくいかないというのが現実じゃないだろうか。先ほど法務省からお答えになりましたように、法制審議会の監査役制度のあるべき姿というものはあの答申のとおりだと思います。しかしながら、あまり一挙に実情をひっくり返すのもどうかと思って、まずこういうところからお始めになったというのが私の考え方です。同じような意味で、いままでなじまない制度を一挙になじまそうと思うのは、なかなか言うべくしてでき得ないというのがあれなんで、そうでなかったら革命でも起こしたほうがよほど掃除が早いです。しかしながら現状というものはそうもいかぬ。なるべくそういう社会習慣をつけていこうというのが、今度盛り込まれた、いろいろな意味では若干なまぬるっこいのじゃないかと思うようなことでも徐々にいっている姿じゃないかと思うのです。そういう意味からいいまして、私の言うておるのは、たとえば選任だけのことを言えば、選任はなるべくやっておいでになる監査法人に委嘱して、監査法人の中で、監査法人のグループが全員で責任を持って、もしも不作為の責任等を追及されるようなときには、監査法人全部が汚名を受けるんだ、こういうようなつもりでそこに委嘱することが、個人個人を会社から委嘱するよりかはるかに望ましいのではないだろうか、そういう意味の習慣をつけていただくのが一番いい、私はこういう感じすら持っておるのですが、そういう意味ではどうお考えになりますか。
#212
○川島政府委員 今回の改正案によります会計監査、これは公認会計士の会計監査でございますが、それを受ける会社は五億以上の資本金の会社でございまして、二千七百余りでございます。そうして、それを実施してまいります場合に、経過措置といたしまして、三段階に分けまして実施することを考えておるわけであります。
 まず第一段階には、現在証取法の適用を受け、現実に証取法の監査を行なっている会社、これが第一段階といたしまして、千六百社ほどございますが、施行されることになるわけであります。それから一年おきまして、そのほかの会社で、銀行とか信託会社、保険会社などを除いたもの、これが大体千くらいになるかと思いますが、一年おくれてこれらのものに施行される。最後に銀行などにつきましては、さらに一年おくれて施行されるという段階的な適用を考えておるわけでございます。これによって比較的公認会計士側の態勢も整っていくんではないか、順調に実施に移せるものということを考えておるわけであります。
#213
○玉置委員 毎年どういうようにして公認会計士ができるのか。国家試験を毎年どのくらい受けて、どのくらいそれが資格をとり得るか。それから、インターンのような形のものを何年やるのか。そうして、ここ二、三年の間に、来年は何人ほど育ちますか、再来年は何人ほど育ちますか。そのことをお教えいただきたいのです。
#214
○白鳥説明員 公認会計士の試験は、第一次試験、第二次試験、第三次試験の三段階に分かれておりますが、第一次試験は一般的な学力をためすものでございまして、大学以上の学力を有する人はこの試験を受ける必要はございません。第二次試験が、これは専門的な知識をためすための試験でございまして、この試験に通りますと、先ほどちょっと申し上げました会計士補の資格を得られるわけでございます。この会計士補の資格を得ますと一年間実務補習という、補習機関におきまして実務補習をいたします。さらに二年間会計の実務に従事する。この従事期間、合わせて三年の期間を経過いたしまして、第三次試験の受験資格を得るわけでございます。第三次試験を通りますと公認会計士の資格を得ることができることになりまして、この資格を得た人は公認会計士協会に登録することによって公認会計士業務を営むことができるようになるわけでございます。
 それで公認公計士の試験を受けた合格者の実数でございますが、ちょっと資料を調べますので……。申しわけございません。
#215
○玉置委員 その間やっていけるのですが、たとえばいまのお話で三年間で会計士補を卒業できる。そうしますと大学を卒業するのは二十二歳ですか、二十二歳に足し算しまして二十五歳で一人前の仕事ができるわけですね。そういうことになります。私が心配するのは、このくらい大きな責任を負わして、会社の取締役あるいは経理部長等等を呼んでいろいろなことを調査するわけです。やはりここには世間の一人前のあれを備えたような形でないとなかなかむずかしいんじゃないだろうか。だから私は公認会計士のこういう地位を向上さし、そして社会的に国民にかわってこういうことをするということが非常に望ましいと思うのです。望ましいと思うからこそ、出発が肝心だから心配して言うておるわけでありますが、それだけにそういう年配、経歴、閲歴等々というものがものを言うことも事実上はあり得るんじゃないか。暗記力のいかんで試験に答案が書ければどうということとこれは違うんじゃないだろうかということを心配するがために、たとえば医者は医者でインターンを卒業しましても大学の教授のもとに、あるいはどこかの病院に配属されて先輩のもとに、院長や外科部長、何部長のもとにかなりの年数をやりましてから一人前の開業をするのが通常であります。弁護士もまた同じだと思います。こういう意味で社会的責任の非常に負わされた重い仕事でありますがゆえに、そういう点をある程度考えなければいかぬのじゃないかと思うのと、先ほど監査法人ということばを申し上げたのも、そういうグループの責任においてものをやっていくということが、職務上の非常な社会的訓練になるんじゃないか、こう思いますがために、そのことを申し上げたわけです。課長さん、別に数字がきっちりわからないでいいんでございます。私は一挙に千七百、千六百、いままでのやつもやりながら一挙に同数もしくは半数くらいをわんとふやしまして、そのことが事実上でき得ると思いません。田中総理がきょうも本会議で言っておりましたが、皆就職の世の中です、こうおっしゃっております。それはみな忙しくてしようがないほど仕事、しかも近代的な必要に基づく職種ほどほんとうにフルに御活動願っておると思うがゆえにそういうことを言うておるわけで、商法の改正の方向はまさによし、しかも順序を追ってやっていくというお考えも私は考えられぬことはありません。しかもそういう点から考え、いま申しましたような点を考えますと、一挙にものをやろうというところに若干この点は無理があるんじゃないだろうか、こういう感じがしますから、非上場の会社につきましては一応十億円くらいのところで出発さし、そのあり方につきまして、先ほど申しました、片一方では法人に入った者でないとだめだとも言い得ないんだし、だんだんそういう訓練を、そして一つの仕組みというものを二、三年かかって慣習づけていく、その結果を見てまた前進さすということのほうが将来とも誤りがないし、この機構、運営というものを社会になじまし、われわれが希求している方向、立法者が考えている方向にこの問題をやりやすいのじゃないだろうか、こういうことを思うがゆえにいま申し上げたわけでありますが、そういろ点につきまして法務省の見解をひとつお伺いしたいと思います。
#216
○白鳥説明員 先ほど数字の点を見落としまして失礼いたしました。合格者の数は、昭和四十八年五月三十一日現在で第一次試験合格者が二千二百六十四名おります。第二次試験に合格した者が四千四百八十五名でございますが、このうちすでに第三次試験を合格して公認会計士の資格を取っておる者がございますので、予備軍という形でございますが、そういう人が二千四名ございまして、そのうち会計士補の資格を登録している者が千百九十二名、こういう現況でございます。なお、第三次試験等に合格した人はこの五月三十一日現在で五千百十九名、そのうち四千五百六十四名が登録しております。
 なお、毎回の試験合格率は、第二次試験で平均して大体六%程度、非常に競争率の激しい試験でございます。第三次試験は平均で三〇%程度が合格する、こういうふうな実績になっております。
#217
○玉置委員 これも法務省と関係ないのかもわかりませんが、こうした社会的地位を広めるときの便法としまして、あるいは大会社だからいいとか小会社はいかぬということも言えませんけれども、長く経理の業務に従事した、人格、識見の優秀な、ある程度の御年配の方、あるいは役所でそういうことに長く従事した人等々の方々を算入できるような臨時の便法も、公認会計士全般の社会的地位を高め、そしてまた高められるように社会から思われることが、その方々にお勉強していただくような形に機能していくのじゃないかということを私は考えるのですが、あまりしろうとのような質問でいかがかとは思いますけれども、大臣、どんなふうに考えますか。
#218
○川島政府委員 まず、先ほどお尋ねのございました適用外者の数の関係の問題でございます。実は、この会計監査人の監査を受けるという制度は、法制審議会が法務大臣に答申いたしました要綱案では資本金一億円となっておりました。しかしながら、この点につきましては、ただいま御質問にありましたような数の問題、そのほかいろいろ問題がございまして、一時は中間三億ということも考えたこともございましたが、結局最も無難と思われる五億という線に落ちつけたわけでございまして、十億ということも全く考えられない線ではないと思いますけれども、法制審議会の答申と非常にかけ離れてまいりますことと、このような専門家の監査を行なわせる商法の改正の趣旨というものから考えますと、やはり五億程度が適当ではなかろうか、このように考えるわけでございます。
 それから公認会計士の練達した方を会計監査に当たらせるということは仰せのとおり重要なことであろうと思います。これは実施面においてできる限りそういったことが行なわれますように配慮をしておく必要があるというふうに考えております。
#219
○玉置委員 私が先ほど申し上げておりますのは、取締役というものの責任も、一番最高機関である株主総会のまるっきり形骸化されたやつも、これから検討してなるべくすみやかな機会をもってもっともなところに落ちつけます、こういうやつです。それで監査役だけの責任を強化しようと思っても、取締役会から候補者をきめられたような形で株主総会は一挙に通過してしまうような姿の中でそう満点なものはでき得ない。しかしながら一つでもいいことを方向づけをしていくことは好ましい。
 なお、審議会から答申のあったやつもかなり大事な点が、ことばは悪うございますが、骨抜きにされておる。それはなじまない制度を一挙にやることはいかがかと思われるから、順を追って一つの社会の潮流と申しますか風潮にしていくのだ、またそれをお互いに育てなければいかぬのだ、こういう点を考えますと、いま数字を聞きますと相当な数が一挙に出てこられるようになっておりますけれども、しかし企業の御年輩の、社会的にある程度の資質を備えた人というものは四千名しかおいでにならぬことも事実であります。そういう点から考えますと――それは筆記能力、暗記能力、一つの記簿計算、そういうことにはたんのうな今後の、まあ予備軍とおっしゃいましたけれども、士補としてのあれとしては非常に好ましいことだとは思います。しかも今後ともこの職業は社会的にも非常に一つの地位を得たりっぱな職業だと私は思うのです。好ましいことだと思いますけれども、それにはある程度の年輩もなにしなければ法的にも備わってない問題が非常にたくさんある。しかもその一人ずつが向こうから委嘱を受けて、向こうの報酬をもらってそれの監査をし、あれするのですから、言うべくしてなかなかむずかしい。私は数だけで勘定のできる問題だとは思いません。そういう点を考えますと、全般としてこれからすべてを秩序づけていこうと思う中に一つの問題点だけを、取締役会の責任とそれから一番大事なオールマイティの権限を持っておる総会というもののあり方すらまだきめてないところで、その中核のものだけを強化しようということを一挙にやるところに私は若干の危惧を感ずるわけです。こういう意味で、漸進的にお行きになるほうが望ましいのじゃないだろうか。だから非上場というものはまず十億ぐらいから始めていって、法律で規制できない問題がたくさんございますから、そういういろいろな立法慣習づけをした上で、それを見てまたそこの上によくないところがあって法定しなければいかぬことがあれば法定する。おそらく法定のでき得ない社会慣習のほうが多いのじゃないか、こう私は思うがゆえにこの点をくどく申し上げるわけであります。そういうような感触を持っておりますが、大臣から一言所見をお聞かせいただきたい、こう思います。
#220
○田中(伊)国務大臣 無理をせずに、漸進的に行けというおことば、たいへんよくわかります。
#221
○玉置委員 いずれにいたしましても、商法の改正は緊急焦眉の問題でありながら、しかもいま申しますように、現在の一つの制度と申しますか慣習と申しますか、そういうものを思い切って直していかなければいかぬところに、蛮勇も要るかわりに非常にむずかしい点があると思います。そういう点を考えまして、先ほど来申し上げましたようなことは、国民感情としてはこういうものは徐々にやっていかなければいかぬということにちょっと理解しにくい点もありましょうから、総会のやつが十五分でというようなことで新聞にわっと載りますと、あれくらい商社の問題がやかましいときに何をしておるんだ、それを二年もかかるんだということを理解していただくのに、われわれ若干でもこういうことを担当しておる者はわかりますけれども、非常にわかりにくい問題もたくさんあると思いますので、あるいは行政指導でしばらくの間やっていかなければならぬこともあるし、あるいは御理解をそのまま端的にお願いをしなければいかぬこともありましょう。そういうような点を考えまして御質問を申し上げ、意見を申し上げておったような次第であります。
 最後に監査法人をひとつお育ていただきたいという中へ一項目入りますのは、私はいま現行の二分の一というものを四分の一とするか、当該会社と関連のあるもの、あるいはそれだけはゼロにしたほうがいいんじゃないか、こう思いますのは、税理士と公認会計士と兼務できる。弁護士は税理士を当然やり得ることになっておるけれども、弁護士という職業のほうが収入もあれば、ある意味では社会的地位が高度なあれというふうに思われておるから、事実開いておいでになる方がほとんどない。こういう意味で私はいつかはきれいに分化されていくんじゃないだろうか、公認会計士と税理士というものの職務は分化されていく、そういうような感じがいたします。だから先ほどの数字も、事実上は税理士をおやりになる方も相当数あの中にはあるんじゃないだろうかと思うのです。専門的にやり得るのですからね。しかしながら、それが社会的な地位が、責任が重くてそして収入もそれに伴うというような形に社会が育成されてまいりますと、ひとりでにこのことは解決されていくんじゃないだろうかという感じがするのです。その意味においても私はあれはゼロのほうが、二分の一を四分の一にするよりはゼロにしておいたほうが早くそういうことが分化されるんじゃないだろうかという感じがいたしますけれども、当局はどのようにお考えになりますか。
#222
○白鳥説明員 監査法人を育てることが非常に必要だというお話、たいへん私どもも先生の御指摘のとおりだと感じております。特に企業の規模が複雑化し、拡大してまいりますと、どうしても監査する側においても組織的な監査というものが必要になってまいります。そういう意味で私ども監査法人の育成強化ということには非常に力を入れて指導してまいってきております。ところが、この監査法人の中に税務を行なう者が一人でもいたらこの監査法人は業務ができないようにする、こういう方向でいってはどうかという御指摘でございますが、このようにいたしますと、特に今後監査法人を育成強化していきまして、法人の規模が増大してまいりますと二百人、三百人というような大規模な監査法人ができてまいりました中で、一人でも税務を担当している人がいるとその法人全体ができない、こういうようなことになりますと、監査法人の育成強化の方向に逆行するのではないか、こういったような点もございまして、なかなかむずかしい問題ではなかろうか、こういうふうに考えているわけでございます。
#223
○玉置委員 私は逆に法定としてはゼロにしておいて、過渡的措置として、臨時のこれこそ過渡的措置でそのことを救済するほうが望ましいんじゃないだろうか。したがって、二分の一はなるべく下げておいて、四分の一まで下げておくけれども、あるいは原則はゼロにしておいて、経過措置として当分の間そういうことが何分の一まであってもやむを得ないというやり方も望ましいような感じがいたします。
 以上、まとまらない質問をいたしましてまことに恐縮だったのですが、質問を終わりたいと思います。
#224
○中垣委員長 先刻の保留分につき加藤清二君から発言を求められておりますので、これを許します。加藤清二君。
#225
○加藤(清二)委員 お許しを得まして、さきの継続をいたしたいと思いますが、もうすでに六時半でございます。法務大臣の大先輩を大ぜい足どめさせまして、まことに申しわけありません。したがって、私は簡潔に要点をしぼってお尋ねいたしますので、大臣もそのおつもりで簡潔にお答えいただきたい。しかも法務大臣の卒業生が大ぜい見えますから、法律違反とおぼしき、犯罪が構成されそうだとおぼしき点にしぼってお尋ねいたします。
 第一番、今度の法案の骨子が監査役の権限、業務の拡大、それに伴うところの経理、会計監査、これの権限の拡大、こういうことでございます。現在の状態からいうて――三つにしぼります。第一番、監査役というのは年限は何年でございましょうか、簡単に答えてください。
#226
○田中(伊)国務大臣 一年でありましたのを二年にいたしました。
#227
○加藤(清二)委員 現行法では一年でございますね。一年でやめる監査役が多いんですか、長年続いてやっていらっしゃる監査役のほうが多いんですか。
#228
○田邊説明員 六〇%ぐらいは三年以上在任しております。
#229
○加藤(清二)委員 でしょうね。としますと二百七十三条の違反の疑いがありますね。なぜ一年にしぼったかといえば、それはなれ合いが行なわれてはいけないということなんです。なれ過ぎて常務、取締役等々となれ合いが行なわれてはいけないから一年にしぼっておるにもかかわりませず、いまお答えのとおりです。ほとんどなれ合いが行なわれておるのです。さて、これについてどうお答えになるか。あとでけっこうです。
 第二点、目下の監査役よりももっと大ものの監査役を配置し、万全を期すというお答えでございました。それだけ聞いていると、ごもっともです。それはけっこうです。しかし現在の監査役は、一企業の監査役単独で終わっているという人が何人くらいあります。私の知る範囲、社会党の政調会で、いわゆる政策審議会で調べた範囲では、この監査役は当該企業に対しては監査役であるけれども、別の企業に対して取締役、重役、社長を兼任している、そういう人のほうが多い。しかもそれが継続されていっている。これについて具体的事実はどうなっているのです。時間がないから立ったままやります。
#230
○田邊説明員 御指摘のとおります監査役は前任経歴は取締役が非常に多い。同時に、兼任経歴も取締役を兼ねる人が多うございます。
#231
○加藤(清二)委員 そのとおりです。いいことをおっしゃいました。これは二百七十六条、兼任禁止の項に触れるか触れないか。
#232
○田邊説明員 その兼任禁止に触れないいわゆる兼任が多いと申し上げているわけで、同じ会社の兼任はございません。
#233
○加藤(清二)委員 わかった。あなたはそう言うだろうと思って予定しておった。ところが兼任禁止は、当該企業にあっては監査するほうと監査を受けるほうが一人であっては相ならぬ、つまり言えばのみ行為があってはいけない、これと同じような理由に基づくことなんです。しかしその結果はどうなっているか。常に経理帳簿に目を光らせておらなければならぬ監査役が、結果はどうなる。めくら判を押すだけの役になっている。しかも一年に一言だけ言えばいい、監査に間違いはありませなんだ。判こはどうか。自分が押すのじゃない。検印がちゃんと会社に置いてある。そして事務員がその会計帳簿に判こを押している。これが慣習化されておる。こういうやさきに権限を拡大してみたってどうして目を光らすことができます。めくら判の数を多くするだけだ。つまり二百七十六条違反の疑いがここに発生している。これについての答弁もまたあとでけっこうです、時間がありませんから。
 次、第三番。通産省、大蔵省それから法務省、これをよく聞いてくださいよ。先ほど来の御答弁を聞いておりますと、親会社の会計経理の責任者が子会社に立ち入り検査することが可能である、こういうことになりました。さすれば、そこからいかなることが発生するか。これはここで切って御答弁願いたいところだが、時間を節約するために先へ進めます。
 子会社の社長ないしは重役、会計担当者は、親会社の担当官、調査官に対して答弁をしなければならぬ、書類で答弁あるいは文言で答弁、立ち入り検査となれば、証憑書類、会計諸帳簿を提示をしなければならぬ、そうですね、そこまでやるという話でしたから。その場合に、私が今度子会社の担当官になります。あなたが親会社の調査官です。私はあなたに対して何を答えたらいいでしょう。もし一、洗いざらい答えたといたしましょう。企業機密の保持はどうなります。会社に不利益な証言をあえてしなければなりません。しかし、それじゃうそを言ったらどうなるか、偽証罪で問われなければなりません。どっちころんでも答える。子会社の社長ないしは専務取締役は王手、飛車なんです。
 通産省にお尋ねする。立ち入り検査がすでに許されているところの公害企業に対しても、なお通産省は企業機密のゆえをもって、それが大義名分となって立ち入り検査を遠慮しておるではないか。本省が企業指導育成強化をしなければならぬ企業に対しても立ち入り検査を遠慮しておるものがある。なぜ親だけが子企業に対して、系列会社に対して立ち入り検査を許すか、承りたい。この場合、私は子会社です。私の罪はどうなります。偽証罪かそれとも会社に不利な証言かあるいは企業機密の漏洩か、いずれかを選ばなければならぬ、どっちころんでも私は罪になる。さあ、通産省、どうしてくれます。
#234
○橋本政府委員 問題は二つあるかと思いますが、前段のほうの公害企業に対する立ち入り検査……(加藤(清二)委員「いや、それはいい、あとの問題だけでいい」と呼ぶ)あとの問題につきましては、先ほど来、法務省のほうからも御説明がございましたように、親企業の実質粉飾決算と不正行為を排除するための立ち入り検査、立ち入り検査と申しますか、調査というふうに承知いたしておりますので、本件、若干問題が異なる問題じゃなかろうかと思います。ただ、隷属関係という問題につきましては、中小企業対策といったような観点からいたしましても、さようなことのないよう重々われわれとしても配慮してまいりたいと考えております。
#235
○加藤(清二)委員 そんなことじゃ、解決にならぬですよ。この間うちの公害案件、引き続いて工場立地の案件についてどう答えているかといえば、通産省、一貫して答えるところは、中曽根通産大臣の一貫して答えるところは何かといったら、特許権の問題、ノーハウの問題、その他その他、企業機密がこれあり、洗いざらいはき出させるわけにはまいりません、とこうきておる。しかし、会計帳簿から拾っていけば、いかなる触媒を使っておるか、いかなる原料をどこから買っておるかということは、みんな明らかになってしまうんです。企業機密の漏洩ということになる。社長が行なう場合はいい、取締役の場合はどうなるのです。担当の従業員が答えなければならぬ場合はこれはどうなる。企業機密の漏洩だ、これは会社に不利な証言だ、これはどうします。私がその場合の従業員であったら、私の身分はどうなるんです。そこが問題なんです。そこをよく考えて答弁できますか。できなければけっこうです。
 次、大蔵省。
#236
○白鳥説明員 子会社の担当者が親会社の監査人あるいは親会社の会計監査人の調査に対して企業の機密を漏らすということはどうかという御質問でございますが、公認会計士……(加藤(清二)委員「漏らすかどうかじゃなくて、漏らした場合に私はどっちでやられるかということです」と呼ぶ)公認会計士におきましてもあるいは監査役におきましても同じと思いますが、公認会計士につきましては、公認会計士法の第二十七条に「公認会計士又は会計士補は、正当な理由がなく、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。」という秘密を守る義務がございます。したがいまして、担当者が公認会計士に対しまして、企業の内容について調査官に応じて答えましても、これは公認会計士を通じて他に漏れてしまうということはないわけでございます。もしそれを漏らしました場合には、公認会計士が守秘義務違反に問われるわけでございます。
#237
○加藤(清二)委員 そんなことを言うておるから問題なんだ。いま企業スパイというものがあることを御存じでしょう。アメリカじゃ政治スパイというやつがはやりなんです。選挙にまでスパイをつけて、大統領までが、指揮したかせぬかは知らぬが、行なわれておる。そんな認識でどうしてこの企業の競争がキャッチできますか。次から次へと企業スパイを送り込んでいる、それが現状なんです。だから、通産省の言い分としては、この公害に関する、犯罪に関することといえども、なおこれを公表することはできない、こう言っている。親から派遣された公認会計士、これは発表しなければならぬですよ、自分一人でたくわえておくことはできませんよ、発表する基礎として調査するんですから。特許権は親会社だけが持っているんじゃありませんよ。むしろ子会社のほうが多いんですよ。それを立ち入り検査させられてしゃべり上げなければならぬ。しゃべったら触媒一つであんたばれますよ、触媒も経理の中の一つに数えられるから。たとえば、聞いてみましょうか、重油から直脱をする、そのときの触媒は何だ。これはだれにも言えませんよ。しかし、それは何億円とするものである、年間消費量だけで何十億とかかる。こうなれば、それは親会社としては調べざるを得ぬでしょう。そんな認識でおるから事がだめなんです。次、法務省に聞く、大臣に。
#238
○田邊説明員 子会社調査に際しまして、御指摘の点は、これをさえぎったような場合、拒否したときの問題だと思います……。
#239
○加藤(清二)委員 拒否したんじゃない。私は正直に親会社の調査官にしゃべらざるを得ぬ。しゃべったとすると、私は当該会社の従業員である、だから企業機密の漏洩と会社に不利な証言ということで、私は会社からこれになる、子会社の重役会からこれになる。しかし、それならば今度は親会社の調査官に対してうその証言をしたとする。たとえばいまの脱硫装置のときの触媒は何であるかと尋ねられたときに、一回分だけで五億も六億もする、そんな高いものは一体何だといって尋ねられたときに、私はうそを言わなければならぬ。と、それが、公害の関係などは次から次へと仲裁裁定にかかって、裁判にかかって、そしてついにばれてくる、追及が激しいから。そうなった場合に、私は偽証罪で訴えられる。つまりいえば、どっちへころんでも、桂馬で飛車か王手だ。私はどっちかでやられる。そんなばかな不合理がありますか。だからそれはどこかに欠陥があるということなんです。そういうふうに、右すればこちらへたたかれ左すればこちらへたたかれるというようなことはどこかに欠陥があるからそういうことが発生するわけなんです。それを聞いておる。私はどうしたらいいか。
#240
○田邊説明員 お尋ねの場合は、先ほど局長答弁いたしました親会社の監査役なり会計監査人がはたして親会社の監査のために必要な事項としてその権限を行使するかどうかの問題であろうと思います。その場合に、御指摘のように子会社も独立した会社の人格を持っておりますが、事親会社の監査に関係なくしてその機密を探知しようとして調査をする場合は、これは違法な権限行使でございます。この場合には子会社としてもこれに応ずる必要はございません。そういうふうに考えるわけでございます。ただ先ほどお触れになりましたような事情のもとで、もし親会社の監査のために必要であるという範囲内のことでございますと、この調査に応ずるべき義務をこの法律で負わされることになります。そのためにもしその調査を妨げました場合には、監査役が相手でありましても、会計監査人が相手でありましても過料の罰則を科しておるというのが現状でございます。それから親会社の監査役なり会計監査人は、まず親子関係の規定上明確にされておりますように、その親会社が子会社の過半数の株式を所有しておる関係でございます。これを商法で考えますと、すでに十分の一以上の株式を持つ株主は会計の帳簿及び書類を閲覧する権限を持っております。過半数の所有になりますと、もちろん株主としても親会社の取締役というものは子会社に対して会計の帳簿や書類を見せろという権限を持っておるわけでございます。ただ今度の監査制度で考えておりますことは、親会社の不正を防ごうという趣旨から申しまして、その種の株主として当然行使できる権限でありましても、これは親会社の監査役が公正な立場で監査の手を伸ばして調べさせる、そういう趣旨の方向で立案されておるものでございます。
#241
○加藤(清二)委員 あなたは丁重にお答えをいただいているようですが、私の質問には答えていらっしゃらない。きわめていんぎん丁寧にお答えですが、遺憾ながら内容が私の質問に答えていない。調査を受けるほうの側の身になってみてくださいよ。調査するほうはかってですよ。子会社が特許を持っております。しかもその特許は外国から買ってきた特許である。アメリカから買ってきた特許である。人に漏らすわけにはいかない。しかしいまちょっと触れましたUOP方式にしたってガルフ方式にしたって、触媒が何であるかということを一つつけばあとは逆算でわかってしまうのです。硫酸は濃硫酸か希硫酸か、それを何ぼ使っておるか、これだけで工程はわかってしまうのです。そうでしょう。それは代数式の根をさがしていくと一緒ですから簡単ですよ。ところがそれが何で値段が幾らか、会計監査は値段を調べなければならない、幾らかかっておるか調べなければならない。それを調べたら白金は幾らで金は幾らでと、それから逆算していけばみんなわかってしまうのですよ。そうでしょう。それを親が握ってしまう。そうするとその親が機密を握ったのですから、あとますます系列化、自分の傘下に入れることはいと容易になってくる。おどしをかけられる。いままでだってずいぶんおどしをかけておりますよ、親が子に対して。いわんや親が特許を持っていってしまうのですよ。その例を幾つかあげたいのですけれども、時間がないから……。この発明発見したところの特許を親がみんな持っていってしまうのですよ、盗んでしまうのですよ。いままででさえもそうです。いわんや直接堂々と乗り込んで調査する権限を与えたらどういうことになりますか。そのときに問題は、取った、取られた、それはそっちの話、私はどうなる。答えなければならぬね。あとでおまえの答弁が悪いもので親が知っちゃったじゃないか、企業機密漏洩だ、そういうことになる。会社に不利の証言をしたじゃないか。私はどうなるのですか。大臣、私をどうしたら救えますか。
#242
○田中(伊)国務大臣 加藤先生、せっかくのお尋ねですが、親会社の監査の必要な限度に限られて子会社の調査をするという筋でございます。したがってそういう無理なことが事実上起こらぬのではないでしょうか。子会社はいやならば、これは機密であるというものであるならば、事前に重役会の了承を取るなり上司の了承を取らなければ機密の事柄を発言しないのが普通じゃないでしょうか。そうするとそういう結果は、おまえはかってに言って機密を漏洩したではないか、スパイじゃないかというおしかりは受け得ないのではないか。
#243
○加藤(清二)委員 わかりました。あなたのおっしゃったことばがわかっただけです。あなたのおっしゃったことを理解した、了承したというのではありません。
 そこで、もう時間が限られておりますから簡単に前例を申し上げます。すでに法務省ではこういう案件について統一見解を出しておるのです。植木前法務大臣やら、いま委員長の前法務大臣あたりの法務省の歴史を一ぺん調べてみて下さい。すなわちこういうことです。私がヒントを差し上げます。きょうどうせ答弁できないですから、ヒントを差し上げますから、あとで統一見解を出していただければけっこうです。百歩譲ります。これは予算委員会だったら承知しません。ここで寝ころんじゃうんです。−すなわち、公害裁判が行なわれました。公害の仲裁裁定、短期に被害者を救うという意味において仲裁裁定が行なわれます。その時点において、公害を出しっぱなしにしておる、たれっぱなしにしておる。いかなる濃度の硫酸か、いかなる濃度のSO2であるかはだれが一番よく知っておるかといえば、それは社長ではありません、取締役でもありません、そのことに従事しておる労働者が一番よく知っておる。そこで公害裁判になりますれば、仲裁裁定になりますれば、証人喚問はだれを喚問するかといえば、必ずその業務を担当しておった従業員なんです。従業員が法廷に出ます。うその証言をすれば追及が激しくて因果関係なくてもあとでやられることはわかっておる。そこで、ついにげろをはいたとする。すると、この男は会社に不利な証言をした、機密漏洩をしたということで、過去においてはこれになっておった。しかし、それならば、これを避けるために、それじゃうその証言をしたらどうか、公害には弁護士が大ぜいつくのです。多きに至っては一件について百六十四人もついておる。たいへんなことなんです。あの手、この手でつつかれたら、写真をあちらからこちらからとられたら、もう実態はわかっちゃうのです。そのときに法廷において、おまえはうその証言をしたではないかと言って、これがまた、桂馬で王手、飛車なんです。その場合に、それでは救われぬのは公害関係を担当しておる従業員ではないか。だから労資がアベックになる。だからホイッスルをしようがないからすることもしない。だから公害はますますということになる。そこで私は公害委員会で統一見解を聞いた。答えができなかった。第一番法務省、環境庁、労働省、通産省、ともに意見が違いました。私はきょういただこうとは思わない、じゃあとで統一見解を出してくださいと言いましたら、法務省から統一見解が出ました。この場合良心に従って正直に答えるべきである。それがかりに企業機密漏洩ということになった場合に、そのゆえをもってこの証人を首にすることはできない。これは労働法、その他雇用法等によって当然守られるべきである。そうしなければ良心に従っての証言ができなくなる。当然良心に従うべきである。ことにこの間私はここへ臨むにあたって通産大臣にちゃんとこれを聞いてきておる。そうでしょう。あなたはそのときにはいなかっただけだ。企業局長に聞いてごらん。法を実行するにはその法を実行するために被害を受ける者が出てくる。処女地であればそういうことはないでしょう。しかし、道路を敷くのでも、うちをとり除こうといったら、被害が出てくる。権利を失墜する者が出てくる。法律というルールを敷くにあたって権利を失墜したりあるいは自分の権利を奪われるというようなことは予見してしかるべきである。それを予見し、それを除去してかからなければ、仏つくって魂入れずです。仏つくって魂入れるために法務省、大蔵省、通産省の統一見解を出してもらいたい。きょうでなくていいです。それはできるでしょうね。すでに前例これあり……。
#244
○田中(伊)国務大臣 いまの御発言の御趣旨をよく検討いたしまして相談をいたします。
#245
○加藤(清二)委員 それはこの法案が衆議院を通過していく以前ですか、以後ですか。
#246
○田中(伊)国務大臣 先生の質疑がなかなか複雑でむずかしいので、えらいことですよ。ですから、期限を切っていつまでと言ってうそになる心配があります。そこでただいま仰せをいただきました速記録ももう一度拝見をいたしまして、それでとにかく検討させてください。
#247
○加藤(清二)委員 これでおしまいにしますが、食い逃げされては野党としてもたまったものではありません。検討する、統一見解を出す、出す、出すといいながら、先へ大事な法案が参議院へ行ってからでは、これは衆議院のメンツまるつぶれなんです。参議院に行ったころに実はこれはこうだったではメンツまるつぶれなんです。このいわゆる公害の仲裁裁定法の場合も、これが衆議院を通過する前に統一見解をいただきました、前の法務大臣から。その前例にかんがみて、すでに前例これあり、私は田中法務大臣を信頼し、その腕を信じている。だから願わくば食い逃げをしないように法案が参議院へ行く前に統一見解を出されますよう要望して、私の質問はあとは次に譲ります。
 委員長、どうもありがとうございました。
#248
○中垣委員長 以上で、本連合審査会は終了いたしました。
 これにて散会いたします。
   午後六時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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