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1972/07/20 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 法務委員会刑法改正に関する小委員会 第4号
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1972/07/20 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 法務委員会刑法改正に関する小委員会 第4号

#1
第071回国会 法務委員会刑法改正に関する小委員会 第4号
昭和四十八年七月二十日(金曜日)
   午前十時三十分開議
 出席小委員
   小委員長 中垣 國男君
      大竹 太郎君    小島 徹三君
      福永 健司君    古屋  亨君
      稲葉 誠一君    青柳 盛雄君
      沖本 泰幸君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 田中伊三次君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 香川 保一君
        法務省刑事局長 安原 美穂君
 小委員外の出席者
        法務委員会調査
        室長      松本 卓矣君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 刑法改正に関する件
     ――――◇―――――
#2
○中垣小委員長 これより刑法改正に関する小委員会を開会いたします。
 刑法改正に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。稲葉誠一君。
#3
○稲葉(誠)小委員 大臣にお伺いしたいのですが、刑法の一部改正の問題ですね、百九十九条以下の問題。これはまあ率直に言いまして、いまの状態で聞くのはちょっと本意でないところがあるのです。ですけれども、立場上聞かざるを得なくなっちゃったので聞くわけですけれども、法務省なり政府の原案というもの、それと伝えられる自民党の中の案というものは違うというふうに言われていますね。どういうわけで違うところが出てくるのでしょうか。その辺のところをちょっとお聞かせ願えないでしょうか。どういうことから違う点が生まれてくるのでしょうか。
#4
○田中(伊)国務大臣 政府の案に反対という態度がきまっておるわけじゃないのです。政府の態度に反対だということも賛成だということもいまだきまっていない。ペンディング。そういうことでございますので、まあ政府案に賛成というほうは、政府の提案理由というものがちゃんと容認できておるものですから、それはそれで賛成ということになるものと想定されます。政府の案に反対だというほうは何で反対をなさるのかということの反対の理由、これは私つまびらかに大体のことはわかっておりますけれども、どうもそれに言及することは遠慮をしなければならぬ。まだきまっていないことで論議の最中、論議が進んでおる、花の咲くような論議が展開されている。私の意見は、しっかり論議はしてもらったほうがいい、論議はあるほうがいい、こう大まかに思っているのであります。結論を得たい。結論を得ましたら御報告はできますけれども、この段階では、いいかげんに隠しておくというのでなしに、申し上げる段階にきてないということでございます。
#5
○稲葉(誠)小委員 そうすると、大臣の意見というのはここで何回も表明されましたね。私も何回もお聞きしたわけですね。それは法務大臣としての御意見なわけでしょう。そう承ってもよろしいわけですか。
#6
○田中(伊)国務大臣 法務大臣としての意見でございますから、法務省の意見がそのとおりであることはもちろんでございます。政府の意見でございます。閣議決定もいたしておる政府の意見でございます。
#7
○稲葉(誠)小委員 そうすると、法務大臣としての意見、閣議決定をしている政府の意見、それと相反する意見が正式に討議、決定されたという形になってきたときには、これは大臣としてはどういう立場をとられるわけですか。あなたの責任という意味を強く言うわけではございませんけれども、これはどういうふうなことになっちゃうのですか。
#8
○田中(伊)国務大臣 それは責任問題だという行き過ぎたことは起こらぬのじゃないでしょうか。政府の出した案を、与党のOKを得た上で国会に提出するという国会運営上の制度になっております。国会の運営は、理屈を申し上げるまでもなく、政党がやっておる。政党が、各党が国会の運営をしておるわけであります。
 そこで与党の立場から申しますと、与党が政府を持っております場合に、与党の了承を得たる上で国会に提出するということが取り扱いとなっておるわけであります。そういう規定があるわけではございませんが、そういう、規定以上のルールとなっておる。それに、そういう制度となっておる以上は、政府の出したものは与党が必ずのまねばならぬ筋はない。反対をして、全く対立をする反対の意見が与党から出てくることはあり得る。あり得ることが予想されておる。政府の出したとおり与党が全部これをのまなければならぬのだということならば、これは与党の了承ということは意味がない。与党の了承を得てということは、与党の了承を求めた際に与党の了承が得られないこともある、こういうことですね。ですから責任問題とかなんとか行き過ぎたことは起こる余地はない。制度として相反する意見ということが起こり得る。この刑法改正で起こっておってよろしいのだということを言っておるのではないのです。制度として、政府の意見と与党の意見と法案提出をめぐって相違することは起こり得る。それは何もおかしいことはない。しっかり論議を重ねて、気に入らぬところは気に入らぬところとして政府の出した法案に対して所見を述べてもらうことはたいへんにいいことだ、こういうふうに私はあっさりと考えておるわけであります。
#9
○稲葉(誠)小委員 法制審議会が答申をして、すでに準備草案というのですか、改正案というのですか、出ておるわけですね。そうすると、それはまあ審議機関だからそれに拘束されるものではない、こういうふうにお考えなんでしょうか。
 いま小野清一郎氏が中心となって全面的な刑法の改正が最後の詰めに入って、十月ですか十一月ごろですか、最終の案が決定されるわけですね。その中でも明らかに二百条関係全体が削除という形になって出てきているわけですね。これはもうはっきりしておるわけです。すでに市販なんかもされておるくらいですが、そうすると法務省としては法制審議会の結論というものに拘束されるわけですか。ただ拘束という意味が、法律的に拘束されるという意味もあるし、そうでないという、いろいろあるかと思いますが、これはどういうふうに考えたらよろしいのでしょうか。
#10
○田中(伊)国務大臣 法制審議会は法務省の内部関係の仕事をしてもらっておるのでありまして、法制審議会でおきめになった事柄は一字も違わずそのままに尊重するということのできない場合も間々ございますけれども、原則は法制審議会でおきめになった事柄は極力これを尊重していくということが方針で、長い間のしきたりでございます。何ぶんまあ日本的全国的視野から見て日本一といわれる権威者がお集まりいただいて審議会をつくっておっていただくものでございます。また私が諮問をしておることでもございます。諮問の結果に対しては極力これを尊重する。時に尊重の線をはずれることもなくはないのでございますが、極力、原則としては尊重するという方針をとってきておるわけでございます。
#11
○稲葉(誠)小委員 技術的なことになるので大臣にここまでお尋ねするのはどうかと思うのですが、法制審議会で出したものが、従来法務省で、字句の訂正は別ですよ、内容的に変更になったというふうなことがあるのでしょうか。ということは、法制審議会の重要メンバーは、法務省の刑事局なりあるいは何なりの人たちが相当入っているわけですね。入ってやっているわけですからね。
 刑事局長まだですか。――刑事局長なりが来るのをちょっと待っていてもいいですよ。それは答えはあとでもいいです。私の聞きたいのは、そこですでに全面的なこの関係条文の削除が決定されているということでしょう。政府としてもその考え方できているというふうに大臣は再三言明されている。言明はされているけれども自分の内部でそれが反対になっちゃって、そしてあなたの再三の言明にもかかわらずそれが実現できないということになればこれは法務大臣としての、法律的な責任は別として当然政治的な意味の責任というものはこれはもうとらざるを得なくなってくるんじゃないでしょうか。これが常識じゃないでしょうかね。ぼくはそういうふうに思います。ただ形式論からいえば、自分はこう考えたのだけれどもそれはあくまでも与党の賛成ということを条件としているんだ、それがやられなかっただけの話だといえば、それは形式論としてはそうかもわかりませんけれども、政治家としてはちょっと筋が違ってくるんじゃないでしょうか。ということは、私が最高裁の判決があったその直後に法務大臣に質問したときに、あなたがああいうふうに明確に二百条以下その他の条文の削除を答弁するとは思わなかったわけです、率直に言いますと。これはその点については各方面とも慎重に協議をしてそれから結論を出したいというふうにお答えがあるだろうとばかり思っておったのですが、やはりそれは田中さんのいいところで非常に勇敢に答えられたわけですね。ぼくはそれに敬意を表するのですけれども。結局引っ込みがつかなくなっちゃったというふうになっちゃったんじゃないでしょうかね。引っ込みがつかなくなっちゃったということばは悪いのですが、あなたがそういうふうに答えているから自民党の内部でもそれに相反することは決定できないわけですね。これは法務大臣の責任問題が出てくるからというようなことが一つの問題になってきちゃっている。非常にあなたのいいところでぼくは敬意を表するのですが、やはり変だなと思って聞いておったわけです。それは非常にいいところだと思うのですけれどもね。それはそれとして結局目安としてはどうなんですか、ただ慎重にやれ慎重にやれと言ったって、あなたが国会でおっしゃったようなことが必ず実現をできるというふうに私どもは承ってよろしいんでしょうか。まずそれが第一点ですね。
#12
○田中(伊)国務大臣 私がかってに主張して、かってに法案をつくって、かってに言明をして、かってに出しておるんじゃないのです。これはもう申すまでもないことですが、最高裁判所が憲法八十一条に基づく違憲審査権に基づいて御判決になった、その御判決の内容をつぶさに検討をしてみると、幾らか法律の知識を持っております私から言うと、削除以外に道はない、こういうんですね。そこで削除の方法を相談したところが法制審議会をはじめとし内閣に至りますまで、まあ内閣は条件がついておりますけれども、党が承認するならばという条件つきでこれが了承されておる。省内を取りまとめ、法制審議会の意見を聞き、閣議の決定を経ておるというように最善を尽くして裁判所のおやりになった判決に応ずる道を考えてきたということ、それは通るものと信じておる、通らぬものとはきまっておらぬ。それは責任の負いようがないではありませんか。責任を逃げるようなけちな男じゃありません。責任の負いようがない。どうして責任を負うのか。他人さまというとことばが悪いが、裁判所が憲法に基づいておやりになった判決だ、その判決に応ずる措置をすることは憲法上の義務である、義務に従って最善を尽くして、どの段階においても了承して今日の段階まできておる。それをどう責任を負うのか。オーケーするかしないか、党のお立場、花の咲くような議論をしていただいて、しっかり検討をしていただいてそしてきめていただく、それを私の言うとおりにしてくださいという期待をもって待っている、それでオールです。それ以上のことをどう私が責任をとらなければならぬのかということですね。この点はどこに行っても言うつもりでありますけれども、はっきりと申し上げる。最善を尽くしておれば私の任務は済んでおる。私が言い出して私がやっておるのじゃない、私の提案ではない、そうせざるを得ない御判決が下って憲法八十一条に基づく命令で私がこの処置をしておる、その最善と信ずる処置をしておればそれ以上責任のとりようはないじゃないか、また世の中はそれを責任を云々するような筋の通らぬことをいうものではない、こういうふうに思っておるのです。私はもう割り切っておるのです。
#13
○稲葉(誠)小委員 問題はその御判決ですわね。その内容の理解のしかたが違うわけでしょう。あなたの理解のしかたは私どもと一緒なんです。これはわかりますわね。それは多少プロセスの違いはあったとしても結論的には同じですわね。いま大臣が言われたのを聞くと、これはことばじりで非常に失礼なんですけれども、幾らか法律の知識のある者は結局あなたの言うところの結論になるのだ、こういうふうに聞こえるんですよ。だから幾らか法律の知識のない自民党の何とか部会の人たちがそういうふうにわあわあ騒いでおるのだというふうに聞こえるんですよね。ぼくはまた変なことを言うなと思って聞いていたのですけどね。いまそれはあったでしょう、幾らか法律の知識のある者なら自分と同じ結論になるのだという意味のことを言われた。ことばじりだからぼくはどうでもいいですけどね。責任の問題は別として、あなたにやめられちゃ困るんだ、ぼくらも。だからそれはいいですが、いつごろその結論は出る見込みなんですか。花の咲くころ出るのかな、それは。いつごろ出るのですか。
#14
○田中(伊)国務大臣 むずかしい御質問ですけれども、私がやっておるのではない、私はそれを期待してお待ちしておるという事情でありますので、私ではその見通しがつかないのです。つかないのですが、先ほどから申し上げますように政府案に反対だということときまっておるわけでない、賛成だということもきまっておるわけではない、目下検討しておる、こういうのですから、いつまでこれを検討するのだろうかということ、それから検討の結果どうなるのだということは、政府案に賛成をしてくださることを強く期待しておるということ以上に申し上げる材料がないのです。それは私が人のことを言う――同じ政党のことでも人のこと。
 それから先ほどおっしゃった、誤解があってはたいへんいけないと思いますが、八十一条に基づく裁判所の御判決があった、その判決に対して、大臣にもいろいろありますからね、法律のしろうとの大臣もあればくろうとの大臣もあるが、私はどちらかといったら法律を幾らか知っておるほうの大臣、その幾らか知っておるほうの男がこれを判断をいたしました結果、削除以外に道はない、こう判断をしたのである、こういうふうに一生懸命努力しておるということを言うておるわけです。人のことは言うておらぬのです。そういう意味でございます。
#15
○稲葉(誠)小委員 裏返せば、幾らか法律を知ってない人が何か自分の意見に反対しているのだというふうに聞こえるわけですよ。ぼくは先々考え過ぎちゃったのかな、どうもそういうふうにとれたのですけれどね。そんなら幾らか法律を知っているとか知ってないとかよけいなことを言わないほうがいい、ぼくはそう思うんだよ。法務省の役人は笑っているが笑っていちゃだめだ。(「逆は必ずしも真ならず」と呼ぶ者あり)逆は必ずしも真ならずというのはそのとおりだけど。それはそれとして、そうすると、政府案というものをあなたが大臣として考えられ省議で決定したのでしょう。省議で決定してないのかな。言ってからあとで決定したんじゃないですか、あまり内部のことは悪いけれども、そんならどうして政府の案として提出しないのですか。与党の了解を得られなくたって政府の案を――あなたの言うのは人のことだというのでしょう。ぼくは別に楽しんで質問しているわけじゃないのだからもうやめまして次に移りますけれども、そんなら政府案というのを提出をしたらいいんじゃないでしょうか。行政府としての責任じゃないでしょうかね。政党政治だからそれは与党の了解を得られなくちゃいけないかもわからぬけれども、それは正しいと信じているなら、出されて、そのうち自民党の案も出てくるし、みんなで突き詰めてやっていくというようなことでいいのじゃないかと思いますが、まあそれはいいですよ。答えはいいとして、いつごろだか見当つかないのですか。見当つかないことだけ答えをいただければ――あなたのお考えどおりの政府案というものが出てくるのはいつごろだか見当つかないというふうにお聞きしてよろしいですか。
#16
○田中(伊)国務大臣 私の出したものに賛成の結論が出るのは見当がつかぬと言うと、うまくいかぬというふうに聞こえるのです、それだけ言うと。両方言わんならぬ。私のした法案に賛成ということがいつごろになるかもわかりにくいし、反対だということがきまるのもいつごろかわからないのだ。これは両方聞いてもらわぬと、一方だけ言うと、一方に片寄ってしまうからね。いずれにしてもそういう事情にあって、私の出しましたことに御賛成をいただく結論の出ることを期待して待っておる、こういうことであります。
#17
○稲葉(誠)小委員 国会が参議院の中で急迫しているのに、こんなのんびりした問答をしているとおこられますから、少し急速な質問に返りますけれども、そうすると、刑法の全面改正は今後どういうプロセスをたどって、いつごろ目安として――目安ですよ。そんなのいまからはっきり言えるわけじゃありませんから、目安として、いつごろ、どこをどういうふうな経路をたどって国会に出てくるということになるわけでしょうか。これはおおよそのことしかいまわからないと思うのですけれども……。
#18
○田中(伊)国務大臣 これはまた見通しがつきにくい。大体の大まかなことは言えると思いますが、これは政治家の私が申しますよりは、大臣よりは事務局の、プロセスはみなわかっていますから、刑事局長から……。
#19
○安原政府委員 もう稲葉先生御案内のとおり、ただいま法制審議会の総会で、部会で決定いたしました刑法改正草案を審議中でございまして、いまの審議の状況では総則を終わりまして、各論に入っております。審議会のなさることですから、私からいつということははっきり申し上げられません。いまのペースで進むとすれば、おそくともことしじゅうには法制審議会の総会におきまして、部会決定しました草案についての御答申がいただけるという見込みでございます。あくまでも見込みでございます。そうであろうと思います。それを終わりましてから、なおこれまた御案内と思いますけれども、刑法の施行法とか、あるいは御賛成を得ております保安処分を法案化するにつきましては、実体規定はできましたが、保安処分の手続法とかいろいろ刑事訴訟法その他手続的関係の法規の整備をしなければなりませんので、そういうものを考えますと、それまた法制審にかけるということが必要であろうと思いますが、幾ら早く見込みましても、政府案の提出ということは次の次の国会で、早くてもそれくらいだろうというふうに思います。
#20
○稲葉(誠)小委員 そうすると、法制審議会で二百条以下の関連条文を削除するということについては決定している。その決定のときには、法務省の刑事局、参事官でしたか、だれでしたか知りませんけれども、それも全部出席した上で決定しているのですか。その決定の経過はどういうふうになっていますか。
#21
○安原政府委員 いまのお尋ねの点は、総会の件でございますか。
#22
○稲葉(誠)小委員 いま部会から総会にいくのでしょう。
#23
○安原政府委員 部会はもちろん、事務当局といたしまして法務省は参事官その他が出て部会の案が決定されております。それからこの間御案内の総会で、その一部分だけの削除についての総会でも御審議をいただいております。ただ刑法全面改正の中における殺人罪の扱いの各論の部分はまだ審議の段階に来ておりません。そういうことで終始部会におきましても、事務当局が出て考え方を説明したりあるいは質問に答えたり実情を御紹介したりしております。
#24
○稲葉(誠)小委員 そこで、法制審議会で今度の刑法の一部改正の問題については全然議論はないわけですよ。部会でも全然議論はないし、総会でも全く議論がなくてそのままでしょう。
 それはそれとして、法制審議会で刑法の全般の改正の中で一部の委員の人が辞任されましたよね。たとえば東大の平野龍一教授、それから法政の吉川さん、こういう人たちが辞任をしたというのは、まずその事実があるかないか確かめて、それからどういう理由で辞任をされたのか。これは法制審議会が学者の方の集まりで、学問的な主張というか信念に従ってやっておられる方ですから、その方に対する学問的なあれがない私がかれこれ申し上げるのは失礼ですから、これ以上のことは申し上げないのですけれども、なぜそういう方が辞任されたか、これをお聞きしたいわけです。
#25
○安原政府委員 平野教授が法制審議会の委員を辞任されたことは事実でございますが、その理由についてははっきりわかりません。
#26
○稲葉(誠)小委員 いや平野さんだけじゃないでしょう。やめたのは、あとだれです。
#27
○安原政府委員 先ほどちょっと御指摘の吉川法政大学教授が、法制審議会の部会の委員じゃなくて幹事をしていただいておりますが、この吉川さんがおやめになったことはございますが、そのほかの委員で、私いま随行の参事官にも聞きましたが、おやめになった方はないということでございます。
#28
○稲葉(誠)小委員 たとえば平野さんにしても吉川さんにしてもやめられた。なぜやめられたかということは、あなた、理由は法務省としては十分知っているはずですよ。ただそれは公開の席で言うのはちょっとぐあいが悪いということなら、それはまた別ですけれども、やめられた理由ははっきりしていますよ。これは学者の話になってあれですけれども、修正案を何回も出されたでしょう。全部否決されたことからでしょう。現在の法制審議会の主流をなしておる人と考え方が全く違うんじゃないですか。そのための学問的な一つの考え方の差異というものが中心でしょう。そこら辺のところはわかるでしょう。
#29
○安原政府委員 法制審議会の議事は非公開でございますので、だれがどうということは申し上げかねますけれども、現に法制審議会の議事の中で盛んにいわゆる部会案に対して修正の動議を出されている方が四、五人おられるわけです。したがいまして、それで否決されている場合が多うございます。しかし、そういうことはございますが、法制審議会としては別に同じ意見の人でなければならぬというようなあれは何もございませんので、平野教授がかりに、稲葉先生御指摘のように、自分の修正案を否決されたからやめたとおっしゃるのは、それは自由でございますが、いま否決されながらもあえて委員を続けておられる方もございますので、法制審議会の空気が悪いからみな委員を辞任に追いやる、そういうことはないと信じております。
#30
○稲葉(誠)小委員 私のことばもちょっと足らないので、それは否決されたからやめたというようなことではございません。そうじゃなくて、法制審議会のいわゆる刑法改正の考え方が応報刑主義の考え方を中心として運営されている。しかもそれが――あまり言うのは遠慮しましょう。いずれにしてもその色彩が強過ぎる。そのことのために新しい刑法理論というか、教育刑主義というか、その考え方に立っている人たちがとても、現在の法制審議会の刑法改正のものの考え方、たとえば国家に対する罪、それを極端に考える。それから騒擾罪なんかうんと重くするでしょう。公務執行妨害なんかも三年から五年、法定刑を五年にするとか、外国の元首に対する罪を、暴行をあれですか、侮辱まで入れているわけでしょう。そういうふうな考え方なり、それから保安処分の問題もありますけれども、全体としてはまだ出てきているわけじゃありませんから、ここでいま論議するのは時期としては当を得ていないと思うし、それから学者の個人の考え方に対する批判のようにとられてもちょっとまずいので、私もことばを折って聞いているわけですけれども、いずれにしてもあまりに刑法改正の行き方が、個人の考え方が、ある特定の個人の考え方が強く出過ぎている。このことが一つの基調になっているのじゃないですか。これはぼくは、りっぱな学者の方ですから、日本でも一流の学者の方のことについてこれ以上は言いませんけれども、どうもそういうようなことを聞いて、これは刑法の改正の問題が出てくれば非常に大きな問題になりますよ。応報刑主義的な考え方、それから国家に対する考え方を非常に強く持つというのが大きく流れているということが原因になっているというふうに私は聞いているわけですが、これはいまここで答弁願うということもいかがかと思うから、これだけにしておきますけれども、いずれにしても、そういうふうなことで、かりに法制審議会で結論が出たとしても刑法の改正ということについては、これは私はことしの秋ごろから非常に大きな関心が全国的に高まってくると思います。その関心は、誤解のものもあるかもわかりません。よくまだ十分に理解してないで反対するのもあるかもわかりませんけれども、いずれにいたしましても、その刑法全面改正に対する批判というか、反対というか、それは非常に強くなってきますよ。これはことしから来年、おそらく非常に強くなりますね。こういうようなことについても、そして刑法の改正は非常に重要な問題ですから、よく耳を傾けて当たってほしいと思うわけですが、それに対しての法務大臣の所見というか所感というかをお聞かせ願いたい、こう思います。
#31
○田中(伊)国務大臣 長年の時間をかけまして、中垣法務大臣の当時に諮問をいたしましたものが今日まで続いておるわけでございます。非常に慎重にはやってきておるのでありますけれども、いま先生仰せのように、あくまでも謙虚な態度で、これに対する世論というものの動向、ことに法律専門学者の御意向というものは、左右を問わず、この方面の御意見というものに慎重に耳を傾けまして、そして改めるべきは改めるという態度で、最後の立案をしてみたい、こういうふうに謙虚に考えておるわけでございます。法制審議会を通りましたものは一分一厘訂正はできぬのだ、それは押し切るのだというような態度でこれをやっていこうというふうに考えておりません。極力世論の動向というものを見る、世論は非常に参考になることがありますからね。法律の専門家はこう言っているのだ、しかし世論的立場からいうとこうではないかといわれることが非常に大事な事柄が出てくるものでございますから、これはひとつ耳を傾けたい。こだわらずにいきたい。尊重はせなければならぬけれども、それを尊重する態度を基本的態度として、十分意見をくんでやっていきたい。先生の仰せのとおりに考えております。
#32
○稲葉(誠)小委員 尊属殺の最高裁の判決が出た後に、判決訂正の申し立ての期間内に、確定してないというんですが、その期間内に最高検が通達を出したわけでしょう。それに対してここで質問がありましたね。あれは私は意見が違うんで、最高検は出すのがあたりまえなんで、ぼくは出したのはいいと思っているんです。だいぶいろいろな議論があったようですけれども、私は、出すのが当然なんで、いいと思っているんです。そして、話が戻ってしまって恐縮なんですが、この前ここで参考人を呼んだときに鍛冶千鶴子さんの話がありまして、その中で、旧刑法から明治四十年に新刑法に移るときに、前の旧刑法のときには直系血族だけだった、ところがそれが養子の場合だとか姻族の場合ですか、の関係にまで拡大されてきたというふうなことの話があったのですけれども、ここら辺のことについても、ぼくは非常に、その当時の、明治四十年の日本の状況から、なぜそういうふうな改正があったんだろうかといろいろ考えて、やはり家族制度の維持という以外にない、あるいはいわゆる忠君愛国というか、そういうようなものを中心とした考え方を徹底していくためにそういうふうな改正が行なわれたと、こういうふうに考えるのですが、それはきょうのあれでなくていいと思いますけれども、いずれにいたしましても、全体的に非常に大きな問題を含んでいるわけですね。そしてこの二百条関係全部についてみんな各党で話がまとまっている。そして政府も一応まとまっている。法務省もまとまっている。まとまらないのは自由民主党だけだというのは、これはもう世間ではちょっと理解しにくいところですね。ことにあなた、田中大臣としては、法律を知っている田中大臣としては、これはもう全く理解しにくい、こういうふうなことになるんだろうと、こう思うんですけれども、そうするとあなたとしてはあれですか、前戻りになってしまいますけれども、自由民主党の内部の人に、いずれにしても早くまとめるように、あなたの考え方にまとまるように努力は、もうそれもしないというわけですか。それも人のことだからしないという考え方なのかな、そこはどうなんですか。それを最後にお聞きしましょう。
#33
○田中(伊)国務大臣 政府の出しましたものを国会提出を正式にお許しを願うかどうかということをきめるのは、与党でございます。その与党の中にも専門家がいらっしゃらないのかというと、そうじゃない。りっぱな専門家がたくさんいらっしゃる。しろうとで意見をいう人もたくさんいらっしゃる。たいへんバラエティーに富んでおるんですね、妙なことばですけれども。そこで、そのバラエティーに富んだ党のほうがどうお考えになるかということを期待して待っておる、これがもう先生、最大、最善のもののいい方なんです。私が一戸一戸訪問して、あれはおれのいうことに賛成してくれ、そういう努力は間違いなんです、そういうことをやることは。それはそうでない。花の咲くようなりっぱな議論をしていただいて結論を得る、その結論を承る、こういう態度でなければ。いろいろやりようはありますけれども、工作的な努力、何とか自分の意見にまとめてもらいたいというような努力をして歩くことは邪道である、民主主義の立場からはそんなことをすべきものではないんだ、こういうふうに私は考えておりまして、強く期待をしておりますけれども、個々にいろいろな何といいますか、内面的なことをやらないで、公正な論議を尽くしていただきたいということで期待をして待っておる。そしてその論議もたいへん迷惑などには思っていないのです。しっかり論議をしていただきたい。さすがの大政党だ、こういうふうに見ておるのであります。
#34
○稲葉(誠)小委員 それじゃまあ別の質問に移りましょう、せっかく大臣おいでになっているので。だれに質問したらいいのかあれですけれども、検察庁へ行っていろいろ話をしてみると二つのことがいわれているのですよ。これはまあぼくが頼まれたというのじゃないのですけれども、雑談的な話の中に出てきたことですけれども、一つは副検事の人が何というのですか、特号というのですか、特一というのですか、一番上のところにいって、そしてあれは六十三ですかが定年で、五十くらいでそこへいってしまう人がいるわけです。そうすると、十何年間そのまま号が上がらないでいるというのですね。それで、それについて一体どうなっているだろうか。それじゃ非常に困るから何とか号俸の上がるような楽しみをというようなことを、頼まれたんじゃないのですけれども、そういう話が出たもんですから、ぼくも初めて知ったものですからどうなっているのだろうか。前に官房長に聞いてみたのですが、今後どういうふうにするつもりなんですか。ぼくも十何年間ちっとも昇給というものをしないというのは初めて聞いたんですけれどもね。そういうような事実関係をどういうふうにつかまえて、今後どうするのか。このことはどうなんでしょうか。
#35
○香川政府委員 御指摘のとおり副検事のつまり俸給の頭打ちの現象が出ておりまして、今度の予定されておる人事院勧告に伴う検察官の俸給等に関する法律の改正をして特号を上に設けるというふうなことを鋭意努力したい、かように考えております。
#36
○稲葉(誠)小委員 鋭意努力したいはあれなんですけれども、大臣どうなんですか。それはどこにどうやって努力して、その見込みはどうなのかということを、これは大臣いまわからないということなら、十分お知りになっていなければ十分検討してくださいよ。あなたの部下の話なんですから。官房長もう少し具体的に見通しというか、明るいような話はできないのかなあ。これはどうなんですか。
#37
○香川政府委員 非公式な折衝の過程におきましては、原則的には特号を設けることについて関係当局、大蔵省、総理府人事局の大かたの御了解はできておるのでありますけれども、裁判所関係、簡易裁判所判事の俸給の関係で若干まだ調整をしなければならぬ問題が残っておりますので、確定案は得られておりません。
#38
○稲葉(誠)小委員 じゃ大臣、いまのこととか、もう一つあるのですけれども、これは検察事務官、たくさんいるわけですけれども、これは勤務時間が各人によってばらばらなんですか。これはどうなってるの。その関係だれかわかる。これは通告してないので申しわけないけど。
#39
○香川政府委員 一般職の事務官の勤務時間は御承知のとおり週四十四時間であります。公安職の事務官は週四十八時間になっております。そこに差があるわけでございますが、鋭意公安職の四時間につきましても一般職に近づけるようにいろいろくふうはいたしております。
#40
○稲葉(誠)小委員 それは四十四時間と四十八時間だけでなくて、まだいろいろあるらしいですよ。人によって違うかもしれませんけれども、全部が公安職じゃないわけですよ。公安職は検察事務官の八割くらいですか、それはあとでいいですけれども、そうすると号俸調整の問題で裁判所の場合はあれでしょう、書記官は一六%の号俸調整がある。それから何というのですか、主任だとか主席だとかいろいろあるのですよね。それから法廷警備員まであれは八%の調整があるのですね。公安職になっているからその調整が必要ないというのかどうかわかりません。どうも実態がはっきりつかめないのですけれども、裁判所のそういうふうな調整と比べると検察事務官のほうが非常に待遇的に劣っているという話を聞くのです。あるいはこれは正確でないかもしれませんけれども。そこで検察事務官の場合の調整ですね、これについてはどういうふうに考えておるわけですか。何か四%くらい調整してほしいという要望が出ているのではありませんか、どうですか。
#41
○香川政府委員 検察事務官の俸給につきましては現在公安職俸給表(二)の適用を受けてやっておるわけであります。行政職俸給表(一)の適用を受けておる一般の事務官に比べますとおよそ一一%くらい優位になっておるわけであります。したがって号俸調整と申しますのは先生御承知のとおり一般職の行政職俸給表の適用を受けておる者についての措置でございますので、いわば実質的には号俸調整がされておる公安職俸給表(二)の適用を受ける検察事務官については、先ほど申しましたように一般職より有利になっておるわけでございますので、実質的には号俸調整されておるわけでございます。その一一%の優位をさらに優位にするというふうな努力はいろいろ続けなければならぬと思いますけれども、号俸調整の問題というのは理屈の上ではないというふうに考えます。
#42
○稲葉(誠)小委員 そうするとたとえば同じ学校を出て裁判所に入った者と検察庁に入った者の給与の比較ですね。ある年限たった場合にどういうふうな違いがあるかということは、私は通告してなかったのでなんですが、そういうような何か比較した資料というものは人事課でちゃんとできておるのですか。
#43
○香川政府委員 裁判所の職員は御承知のとおり一般職の俸給表の適用を受けながら、つまり号俸調整としまして、それぞれの官職に応じてプラスアルファの調整がされておるわけであります。したがって裁判所職員と検察事務官との優劣と申しますか、そういうものを簡単に比較するわけにはちょっとまいらないのでございますけれども、大体同じ在職年数の者と比較いたしました場合に、号俸調整されておる官職についておる裁判所職員は検察事務官よりは若干有利かと思います。その官職についてない者は検察事務官よりは下回っておるというようなケースがございまして、なかなか比較はむずかしゅうございます。
#44
○稲葉(誠)小委員 なかなかむずかしいというのは役人の発言の常套手段だと聞いておるのです。そうでもないかもしれませんけれどもね。むずかしいのはむずかしいのです、違うのですから。ところが片っ方のほうはいろいろな形でふえてきているわけですね。裁判所がいいという意味じゃないですよ。裁判所だってまだ低いんですけれどもね。ところが、検察庁のほうの事務官は、その点が不十分だというふうに考えるわけです。それは、確かに比較はむずかしいですよ。ただ、管理職というか、そういうふうなものは、裁判所の場合には非常に多いんですね。それから、片方は少ないということもありますから、一がいに比較できないのですが、大臣、そこら辺のところはよく資料なども見て研究していただいて、ちょうどもう概算要求が始まるのでしょう。いまやっている。そういうような時期ですから、これはひとつうんと努力してもらいたい、こういうふうに思うんですね。この点について、ちょっと大臣にお答えをお願いできればと思いますが……。
#45
○田中(伊)国務大臣 検察官並びに検察事務官の給与、処遇に関して御理解のあるおことばをいただいてありがとうございます。お説のとおりに、十分生きた資料を集めまして、その資料に基づいて善処をいたします。
#46
○稲葉(誠)小委員 大臣がおられるのでちょっとお聞きしたいのですが、来年度の予算はそれに関連してどういう点に、ことに人員増、人員の増加を中心にしてどの程度の要求をしようというふうにいまはお考えなのでしょうか。
#47
○田中(伊)国務大臣 まだこれから手をつけるところでございまして、私がまだここで御報告を申し上げる段階にきておりません。おりませんが、まず第一に検察官の問題でありますが、検察官の増員ということもたいへん大事な問題でございますが、これは増員が許されましても、なかなか現実の補充が容易でないという事情がございます。
 それから、それよりはむしろ実態的に非常に働いてくれております副検事……(稲葉(誠)小委員「ぼくの聞いているのは、刑事局関係という意味じゃないんですよ、法務省全体としての。」と呼ぶ)法務省全体としては、登記関係その他人員増にうんと力を入れなければならない、こう考えております。
#48
○稲葉(誠)小委員 そこで、刑事局関係という意味じゃなくて、大臣がおいでになっているので、大臣のいまの考え方で、詳しい数字なんかはいいんですけれども、たとえば、いま法務局の勤務の実態調査をやっているはずです。たとえば、きょう、二十日ですね、きょうは、私のところには、日光のそばに今市というところがあるのですが、そこの法務局の実態調査をやっておりますね。それは、毎日、夜八時過ぎまで仕事をやっていますね。それで超勤はほとんどないということですね。
 それからショックを与えたのは、例の登記官吏が、何か公簿にだれかが鉛筆か何かでしるしをつけて偽造しちゃった。それで国家賠償法の判決が出たでしょう。登記官吏としては、現在の数ではとてもそこまで注意力が及ばないということを、いろいろなことを言っておったようです。いずれにしても、法務局の職員を中心として、やはり大幅な人員増をかちとってもらわないと、とてもやっていけないわけですね。これは国民が困っちゃうわけでしょう。本来ならば、登記簿の場合だって、その日に出すのが筋でしょう。その日になんて出ませんよ。何か札を渡して、二、三日たって来てくれとか、そういうようないろいろな問題がありますので、そういう点についても、今後十分努力をして、人員増のためにやっていただきたい、こういうふうに思います。
 きょうは、そういうようなことで、実はちょっと臨時みたいなあれなものですから、要領を得なかった点があるかと思いますけれども、この程度で質問を終わらせていただきます。
#49
○中垣小委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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