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1972/04/03 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 法務委員会 第14号
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1972/04/03 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 法務委員会 第14号

#1
第071回国会 法務委員会 第14号
昭和四十八年四月三日(火曜日)
    午前十時三十三分開議
 出席委員
   委員長 中垣 國男君
   理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君
   理事 谷川 和穗君 理事 福永 健司君
   理事 古屋  亨君 理事 稲葉 誠一君
   理事 青柳 盛雄君
      井出一太郎君    植木庚子郎君
      住  栄作君    松本 十郎君
      保岡 興治君    正森 成二君
      沖本 泰幸君    山田 太郎君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 田中伊三次君
 出席政府委員
        法務政務次官  野呂 恭一君
        法務大臣官房長 香川 保一君
        法務省刑事局長 安原 美穂君
        法務省矯正局長 長島  敦君
 委員外の出席者
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  牧  圭次君
        法務委員会調査
        室長      松本 卓矣君
    ―――――――――――――
三月三十日
 裁判所職員の増員に関する請願(青柳盛雄君紹
 介)(第一九八三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
三月三十日
 地方法務局出張所の整理統合中止に関する陳情
 書(松山市一番町愛媛県町村会長日野泰)(第
 一八七号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 刑事補償法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第八二号)
 刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法
 律案(横山利秋君外六名提出、衆法第二号)
     ――――◇―――――
#2
○中垣委員長 これより会議を開きます。
 おはかりいたします。
 本日、最高裁判所牧刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○中垣委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○中垣委員長 内閣提出、刑事補償法の一部を改正する法律案及び横山利秋君外六名提出、刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。稲葉誠一君。
#5
○稲葉(誠)委員 刑事補償法の改正案について質問するわけですが、まず、刑事補償ということで、刑事賠償法案という形をとらないで補償ということばをずっと使っているわけですね。これは昭和六年に出て、七年からですか、旧法の場合も。それはどういう意味なのかということをお聞かせ願いたい、こう思うわけです。
#6
○安原政府委員 御指摘のとおり、刑事補償といいまして、賠償と申しておりません。理由として私ども考えておりますことは、要するに賠償という場合におきましては、やはり公権力の行使が公務員の不法行為による場合には賠償ということばが適切であるのでありまするが、刑事補償におきましてはそういう不法行為を要件としない、つまり公権力の行使のとき、公務員の故意過失を要件としない、いわゆる無過失の場合におきましても現行の制度におきます勾留とか抑留、拘禁というような刑事手続に特有の一つの制度が与える国民に対する相当特別の損害ということにかんがみまして、故意過失がなくとも公平の原理からそういう損失を補償しようというととろにこの制度の特色があるわけでありまして、そういう意味におきまして、公平の原理からくる一つの損害のてん補という意味において補償ということばが用いられているものと理解いたします。
#7
○稲葉(誠)委員 その公平の原理というのは、それは確かにそのとおりかもわかりませんけれども、旧刑事補償法が廃止されて、新しい刑事補償法ができたわけですけれども、旧刑事補償法のころに、だいぶ前の話で、時代が変わっているからそれをそのまま援用するというわけにはいかないとは思うのですけれども、提案の説明の中では、なるほど不法行為ではない場合も補償するのだと、そういうことからこれは一つの一国家の仁政、恩恵だ、こういうようなことが提案の理由の中に出ていますね。これは渡邊千冬さんから、――昔の話で、あの人が司法大臣だったころですか、装いを新たにして、公平の原理というようなことばを使うけれども、結局はどうなのですか、まあ恩恵だという考え方がその底にあるわけですか。そこのところはどうなんでしょうか。
#8
○安原政府委員 稲葉先生御指摘のとおり、旧刑事補償法におきましては、提案理由でも、国家の仁政である、あるいは恩恵であるということで、国民の権利ではないということであったようにわれわれ伝承しておるのでございますけれども、新刑事補償法の基本の観念は、憲法四十条に明記されておりますように、基本的には公平の原則から出るものではございませんけれども、それは国家の恩恵ではなくて国民の権利であるというふうに、請求権という権利であるというふうに理解いたしております。
#9
○稲葉(誠)委員 そうすると旧刑事補償法と新しい刑事補償法とで一番大きな違いというのがどこにあるかということですね。それはいわゆる例外規定の範囲を狭めたということにある、こう思うのですが、その違いがどこにあるかということと、その違いが出てきた理由、そこら辺のところを説明を願いたいわけです。
#10
○安原政府委員 いまも申し上げましたように、旧法と違いましてこれは憲法四十条からくる請求権という形をとっておるということから、刑事補償法の性格が旧法とは大いに違っておるという点が基本的に違うのだろうと思いますし、それから、いま稲葉先生御指摘のように、補償しない場合といたしましては、旧法ではたしか、たとえ無罪であっても、この行なった行為が公序良俗に反するときにはやらないということで、大きく除外規定に一つの拒否条項のようなものがございまして、その結果が補償する件数を減少させる大きな原因であったというように聞いておりますが、そういう除外事由の点においても現行法は非常に狭くなっておるという点、この二点がやはり大きな違いであろうというふうに理解しております。
#11
○稲葉(誠)委員 そこのところをもう少し、きちんとと言うと語弊があるのだけれども、きょうでなくてもいいのですが、これは書物を見ればわかることですけれども、整理してもらいたいことと、それから現行法で刑事補償をしなくてもいい場合というもののおもな場合ですね。そうしてそれが適用をされた例というか、そういうふうなものはどんなのがあるわけですか。何か誤ってではなくて、自分の責任で自白をしたというふうな場合ですね。その結果裁判が誤って、それが原因で終局的に刑事補償の問題が起きてきたとか、いろいろな問題があると思うのです。
#12
○安原政府委員 実際の運用の実情の問題でございますので、裁判所当局からお答えいただきたいと思います。
#13
○牧最高裁判所長官代理者 刑事補償の請求に対しまして補償決定をしない場合としては、いわゆる請求却下の場合あるいは請求棄却の場合あるいは請求の取り消しというような三つの場合が考えられますが、請求却下というのは請求の手続が法令上の方式に違反したような場合、あるいはたとえば補償請求が法律に定められている三年以内という期間を経過した後になされたような場合、そういうようなときに請求却下ということがなされますし、また請求棄却の場合は、いま御指摘のように、本人が捜査または審判を誤らせる目的で虚偽の自白をしたなど、いわゆる刑事補償法三条第一号に掲げられているような場合とか、第二号に定められておる、一個の裁判によって併合罪の一部について無罪の裁判を受けたけれども、他の部分については有罪の裁判を受けたというような場合が、請求棄却となる場合があるわけでございます。
 本制度が施行されましてから昭和四十七年までの補償決定をしなかった人員は全部で二百九十一名ございますが、その内訳は、いま申し上げました請求却下となったものが四十四名、それから棄却になったものが百七十一名、それから請求を取り下げたというか、請求を取り消しました者が七十六名というような内訳になっております。
#14
○稲葉(誠)委員 刑事補償がいわゆる権利として認められたのだというわりには請求却下、却下の場合には手続上の問題が主たるものかもしれませんからちょっと別かもしれませんけれども、内容的に棄却が多いというのはちょっとうなずけないような気がするのです。一たん自白をすると、自白をしたときの目的にもよるかもわかりませんけれども、そこら辺のところは例外ですから、できるだけ厳格に解釈して、できるだけ刑事補償の規定を適用しようというような形に実際は運用をされておるのですか。あるいはまた逆に、できるだけこれは補償の適用を狭くしていこう、こういう形に運用されているわけですか。ちょっと棄却が多過ぎるような感じがするのですが。
#15
○牧最高裁判所長官代理者 新法が施行されまして以来の請求の認容率を見てまいりますと、全部で九三・七%が認められておるわけでございます。先ほど人員数ではあるけれども棄却があるように申し上げましたけれども、率としては非常に高い率がございます。
 これは、いわゆる請求棄却をすべき事由として掲げられているところがきわめて狭いことと、それからその第一号のいわゆる虚偽の自白をしたという場合でも、裁判を誤らせる目的でということではっきりした目的を必要としておりますので、そういうことで棄却になる事例というのは、いわゆる身がわり犯人というような場合で、きわめてまれな例であろうと存じます。
#16
○稲葉(誠)委員 それから、昭和七年の一月一日から施行ですか、この旧法の場合はたしか五円以下でしょう。下限がなくて五円以下だと思いましたが、それから何回か変わっていますね。変わってきた経過で、その補償の額が出ているわけでしょう。それは何との関連においてその補償の額がきまってきたわけですか。何回ぐらい変わっていますか。
#17
○安原政府委員 旧法当時は旧法当時で一度も基準の日額は変わっていなかったと承知しておりまするが、現行刑事補償法になりましてからは、昭和二十四年十二月に成立いたしました現行刑事補償法は、その後昭和三十九年に一度、それから昭和四十三年に一度でございますから、二回日額が変わっております。
#18
○稲葉(誠)委員 旧法のときの五円以下というのは、五円以下といったって五円までいったかどうかよくわかりませんけれども、その当時の五円というのはずいぶんな金額なわけでしょう。だからそれとの対比からいうと、現行法のいま言った二回の改正なり新法ができたときの金額というものが少な過ぎるのじゃないかという印象を与えるわけですよ。さらに厳格に言えば、では昭和七年当時の五円というのは、いまの二十四年それから三十九年、四十三年、そういうようなときの、そのきまった金額との対比で、貨幣価値がどうなっているかということは、それはこまかい計算でなかなかわかりにくいからそれは別としても、どうも旧法のときの金額が相当大きな金額だったように考えられるわけですが、新法になってからの金額の上限が少な過ぎるのではないか、そういうことがちょっと考えられるものですから聞いているわけなんですけれども、何を基準として旧法のときは出てきたのですか。新法のときは何を基準として出てきたのですか。
#19
○安原政府委員 稲葉先生御案内のとおり、この補償しようとする金額のめどといたしましては、何を補てんしようかということに相なりますると、それはこういう未決の勾留または刑の執行を受けた者が後に無罪になったという場合の、その当該人間の抑留、拘禁によりますところの財産上の損失とか精神的な損害という両面につきましての損害を補てんしようというのが基本的なあり方ではございまするけれども、一応いわゆる国家賠償による、不法行為による場合とは違って、故意、過失を問わない無過失補償であるという点におきまして、金額を定型化しておるということでございますが、一応その補てんしようとするものは何であるかといえば、そういう抑留、拘禁による精神的物質的損害ということをめどにして補てんしようとしたものでございます。ただ、そういう意味におきまして、当時における賃金とかそういうものをある程度にらみながらこの程度で一応の無過失の場合の補てんはできるのじゃないかということで考えられた金額であろうというふうに思います。
#20
○稲葉(誠)委員 それはわかるんですが、確かにそのとおりなんだけれども、具体的に新法になってからでも改正が、最初のときは別として、その後、今度入れると三回でしょう。その基準が、どういうふうな計算、根拠でその当時の数字が出てきているのかという数字のとり方の問題です。よそれが今回の改正の金額と、数字のとり方が一体違うのか違わないのかということですわね。かりに違わないとすればするで、それで数字が出てこなければならないし、違ったとすれば違ったという理由、統計のとり方の理由というか、そういうようなものが出てこなくちゃいけないと、こう思うのですが、今度の法案は、金額の改正がおもというか、それが法案ですから、その点を聞くわけです。
#21
○安原政府委員 同じような答えになって恐縮でございますが、どうも何が基準といえば、めどは先ほど申し上げたようなことでございますが、具体的なきめ方としては、やはり旧法におきましても新法におきましても、その当時におきますところの賃金とか物価とか、あるいは刑事補償におきましては、さしあたり必ずしも本質的には同じではございませんけれども、証人の日当の額等をにらみながら、それとのバランスをとってきたというのが具体的なきめ方であり、その後のきめ方は、経済事情の変動、賃金、物価指数の変動をにらんで逐次改正を加えてまいったということになろうかと思います。
#22
○稲葉(誠)委員 そこのところはいまここでというわけにはいかないと思います、非常に数字的なことになってきて。何もその数字によって厳格に今度の法案の上限、下限が出てきたんじゃないというか、それとはある程度かけ離れているかと思いますが、大体の説明ができるんじゃないかと思うので、これはいまでなくてもいいんですけれども出していただきたいと思うのです。
 それから、今度の場合などは、概算要求のときにというか、大蔵省に要求したときの金額と、この法案になって出てきた金額とはどういうふうになっているんですか。
#23
○安原政府委員 予算要求は裁判所当局がなされておりますので、裁判所からお答えいただきます。
#24
○牧最高裁判所長官代理者 予算要求の上で認められましたのは、この法案に掲げられているのと同額ということになっております。
#25
○稲葉(誠)委員 そうすると、四十八年度では大体どの程度の刑事補償の決定なり、あるいはそれに伴う額があるというふうに、大体前の年の、何というか、推計から見てどの程度のことが、無罪判決が出て刑事補償しなければならないかというふうに一応見ているわけですか。ちょっとこれもなかなかはっきりしないかもわからぬけれども。
#26
○牧最高裁判所長官代理者 無罪判決の率は非常に数が少ないものですから、そのときの出方、たとえばメーデー事件とかそういう判決がありますと急にふくれるということになりますので、とうてい正確な積算はできにくいわけでございます。したがいまして、全体としてのいわゆる事件数の予想ということだけで、過去の予算の支出実績に事件数の変動を見込んで積算しているだけでございまして、正確な無罪事件が何件あるだろうということの予想はちょっとつきかねるかと思っております。
#27
○稲葉(誠)委員 無罪の場合に、大体従来は基礎件数のどの程度の割合が無罪というのが出ているわけですか。
#28
○牧最高裁判所長官代理者 大体〇・八から〇・九%くらいが最近の数字ではなかろうかと思います。
#29
○稲葉(誠)委員 その無罪の判決が出るということの、それが刑事補償の問題が起きてくるわけですが、一番最初の段階は逮捕ですね。逮捕、勾留、起訴、それから公判、そういうような順序を追っていくわけですが、いま逮捕状の請求は、これは旧刑訴のときと違ってきたのだと思いますが、どういう形で逮捕状の請求が行なわれているわけですか。これは、いまは検事は通さないのですか。通す場合もあるわけですか。
#30
○安原政府委員 稲葉先生御案内のとおり、捜査の第一責任を持つものは警察でございまして、司法警察員によるところの逮捕状の請求、それによる逮捕ということが大半であると思いますが、現在は、原則として警察の逮捕状請求にあたりまして、検察官を経由いたしておりません。
#31
○稲葉(誠)委員 それは捜査の指揮権というものが、検事の警察官に対する指揮権、これがいまの刑訴でなくなった――なくなったと言っていいのかな、ある場合にはあるのだと思いますが、そのことに関連してくるわけですか。
#32
○安原政府委員 旧法に比べまして、検察官に司法警察官に対する指揮権がなくなったから、逮捕状が検察官を経由しないということと必ずしも直接に因果関係はないと思います。要するに、新法施行当時においては、私ども知っておりまするが、新刑訴施行直後におきましてはできるだけ、なれないものでございまするから、検察官を経由する場合が多かったと思いますが、施行後、相当日もたっておりますので、大体において検察官によらなくても誤りなき場合が多くなりましたので、そういう必要もないということで、徐々に、原則として検察官を経由しないという運用が行なわれているということでございます。
#33
○稲葉(誠)委員 逮捕状の請求のときは、簡易裁判所の判事と、それから地裁の判事補あるいは判事の場合、たとえば簡裁の判事でも、殺人だとか放火とか、こういうようなことの逮補状も出せるわけですか。それで、勾留の場合は変わってくるわけですか。
#34
○安原政府委員 御指摘のような重大事件につきましても、簡易裁判所判事でも逮捕状も出せ、勾留状も出せるわけでございます。
#35
○稲葉(誠)委員 そうすると、警察のほうでは、逮捕状を請求するのに簡裁の裁判官の逮捕状のほうが、これはことばは悪いけれども、もらいいいというか何というか、わりあいに出してくれいいわけなんですね。そういうことで、簡裁に逮捕状を請求するか、地裁へ請求するかというのは、警察官のほうの選択にまかされておるわけですか。あるいは裁判所に請求して、裁判所の中で当番か何かで分けるのですか。どういうふうになっているのですか。
#36
○牧最高裁判所長官代理者 大多数は警察のほうの、請求者側のほうの請求する相手がどちらになるかということによってきめるということでございます。したがいまして、いわゆる事件としては地裁に起訴されるべきような事件でも警察が簡裁に逮捕状を請求をすれば簡裁でそれを審査しておるという状況でございます。
#37
○稲葉(誠)委員 逮捕状の請求があっても却下するという場合がなきにしもあらずでしょうね。あると思うのですが、それはどの程度全体としてあるのかということと、それからもう一つ、簡裁の判事の逮捕状却下率と地裁の判事補の却下率というか却下の件数というか、わかればと思うのですが。なぜそういうことを聞くかといいますと、率直に言うと、これは簡裁の判事のほうがことばはどうも悪くて誤解を招くといけませんけれども、何というか、出してくれやすいというか、わりあいに簡裁の判事のほうの人は出してくれる。地裁の判事の人は若い人でなかなか厳格なことを言って逮捕状を請求しても出さない。ただ、出さない場合が却下という形で正式に来る場合と、そうじゃなくて事実上とにかくもっと補正しろとか、その処理は足りないとかということで出さない場合がありますから、出すのを延期するという場合がありますから、なかなか統計の上ではこれはわかりにくいかと思うのですが、私らが考える一般的な感じとしては簡裁の裁判官のほうがわりあいに出してくれる。地裁の判事補のほうはなかなか逮捕状を出すのにやかましいということで、警察のほうでは逮捕状の請求でも簡裁のほうに出すということ、これは検事もそうなんですけれども、あとで話しますけれども、そういうのがあるんじゃないですか。具体的にどの程度却下することがありますか。
#38
○牧最高裁判所長官代理者 一番新しい数字で見てまいりますと、昭和四十七年でございますが、逮捕状の請求が地裁に対してなされましたのが五万三千六十一件、それから簡裁に対して請求されました数が十二万三千百五十四件でございます。そしてそれぞれについて却下されましたのが地裁におきましては百七十五件、簡裁におきまして百四十五件ということでございまして、若干却下の率といたしましては地裁のほうが多いようには数字の上では出ております。しかしこれは先ほど稲葉委員も御指摘のとおり、すべてについて却下という形としてあらわれてまいりませんで、疎明資料が足らないということであれば、持ち帰ってもう一度再度出し直すというようなことになりますので、統計が必ずしも全部をあらわしているとは申せないかと存じます。ただ、統計の上での数字だけで申し上げますれば、地裁のほうが若干却下の率は高いように思います。
 ただ、これは事件の内容にもよるのではなかろうかというふうに思います。簡裁のほうにはわりあいに簡易な事件が、実際上は地裁と簡裁との差別はないにいたしましても、わりあいに簡易な事件について請求されることが多い。地裁のほうに対してはわりあいに複雑なものが請求される。つまり、逮捕すべきかどうかについて非常に微妙な事件もわりあいに地裁のほうには多く来るというようなところからも差が出てきているのではないかと思います。したがいまして、いま稲葉委員の御指摘のように、簡裁のほうならばとりやすいとか、そういうことはないのではないかと思います。
 もう一つは、警察のほうがもよりの裁判所ということになりますと、簡裁のほうが一番もよりになる場合が多いわけでございまして、そこで簡裁に請求するということも数の上としては多くなってくるということではないかというふうに考えております。
#39
○稲葉(誠)委員 勾留請求するときに、これは警察の捜査の便宜だと思うのですが、いわゆる代用監獄に勾留してほしいという要求は、非常に多いと言うと語弊があるかもしれませんけれども、たとえば余罪があると見られるときとか、いろいろな点があると思いますけれども、代用監獄に勾留してほしいというのが相当ありますね。裁判官がこれはだめだというので、拘置所に勾留する場合もありますけれども。そこで大臣おいでになったので、お聞きするわけですが、代用監獄、これは局長でけっこうですが、代用監獄というのは一体何なのかということですよ。それから監獄というのは一体何なのかということからまずお聞きして、それから大臣にはそのあとで監獄法の改正がいまどう行なわれているかということをお聞きするつもりですけれども、まず最初に矯正局長から代用監獄とは一体何なのか、どういう制度なのかということですね。
#40
○長島政府委員 最初に監獄でございますけれども、監獄の中には懲役を入れます懲役監、それから禁錮を入れます禁錮監、拘留の受刑者を入れます拘留場、それから拘置監というのがございまして、ここには勾留されました刑事被告人その他引致状によって留置された者とか、そういった者が入るわけでございます。こういった四種類が監獄といわれているものでございます。この代用監獄と申しますのは、「警察官署ニ附属スル留置場ハ之ヲ監獄ニ代用スルコトヲ得」という規定がございます。したがいまして、いま申し上げました四種類の場所について警察の留置場をこれに代用することができるということでございます。ただし、監獄法には、受刑者につきましては、懲役または禁錮に処せられた者については一カ月以上継続して代用監獄に「拘禁スルコトヲ得ス」という規定が置かれておりまして、そういう意味で既決の受刑者につきましては代用監獄に留置する期間の制限がございます。
 以上が大体の基本的な構造でございますが、代用監獄というものを法律的に申しますと、これは昔の旧監獄則というのがございましたけれども、そのときは代用監獄というのでなくて、警察の留置場そのものが監獄の一種とされておったのでございますけれども、現在の監獄法で代用監獄というふうにいたしたわけでございます。
 代用監獄と申しますのは、警察の留置場におります人的な警察官の戒護組織でございますが、それから留置のための物的施設、そういった全体をひっくるめまして、監獄に代用するということでございます。したがいまして、組織的に見ますと、これは警察の一部の組織でございまして、それを監獄に代用するということになるわけでございます。この留置場は監獄に代用するということでございますので、その範囲におきましては、監獄法及びこれを受けて出ております委任命令と申しますか、そういう性質を持っております監獄法の施行規則がそこに適用になるというふうに解されておるわけでございます。その限度では監獄法及び施行規則による規制が代用監獄に及んでおるわけでございます。
#41
○稲葉(誠)委員 大臣にお聞きしたいのですが、監獄法の改正がこれはもうずいぶん前から言われて実際の作業に着手しておるのだと思うのですが、当初は御案内のようにいわゆる刑法の改正の中で刑の一本化、懲役刑と禁錮刑の一本化が行なわれるか行なわれないか、そのことに関連してそれがぴしっときまらないと監獄法の改正が進まないようなことが盛んに言われておったわけですが、現在の監獄法の改正ということがどうしておくれているのか、どの程度進捗しているのか、どういう点に問題があるのか。特に憲法との関連で、非常に古い法律なのでいろいろな問題があるということもいわれておるわけですが、これは具体的なことは別の機会にして、たとえば検閲の問題だとかいろいろな問題が出てくるわけですね。そういうような点を含めて監獄法の改正に関連して大臣から説明願いたい、こう思うわけです。
#42
○田中(伊)国務大臣 大体六年前と思いますが、私がこの前に法務省のごやっかいになっておりましたときに、たしかこの部屋であると記憶をいたしますが、社会党さんから質問が出まして、いま時分に監獄とは何ごとだ、この名称自体けしからぬ、いいかげんにしたらどうだという、たいへん御熱意のこもったお話がございました。私は非常に感激をいたしまして、その日即日、その日の日付をもって矯正局に命じまして、いわゆる監獄法の改正作業に着手をせよということを、その日の日付から起こしまして監獄法の改正に着手をいたしました。自来私は間もなくいなくなったのでありますが、今日まで一次、二次、三次と矯正局案ができ上がっております。お目にかける段階には来ておらないのは申しわけないのでありますけれども、実はできておりまして、それでもまだ十分でないというのでただいま第四次草案という意味でございますが、これに手をつけておりまして、この草案が大体ことし末には自信のあるものができ上がる見込みでございます。これができ上がりますと省内手続をいたしまして――これは局案でございますので、矯正局の案からこれを法務省全体の省議にかけた省議の案にきめまして、これはそんなに時間はかからぬものと思いますが、その上で法制審議会にかけて、法制審議会の議を経て国会提出の準備をするという段階になるのでございます。
 そこで、いまの段階においてどうして時間がかかっておるのかと申しますと、一口にずばり申しますと、刑法の全面改正が進んでおります。委員長の中垣法務大臣時代に、いまから十年も前に御諮問がございまして、それが今日までずっと続いておるわけでございます。これが自由刑に関しましてどういう判断をお下しになるのかということが問題で、それいかんによりまして、受けて刑を執行する監獄法の立場の立案は違うわけであります。それで、逃げ口上を言うのではありませんが、刑法改正の大方針をおきめをいただきませんと監獄法の改正は、準備はできるのでありますけれども、これが最後のものだという完成はできない。こういう事情で刑法改正草案がきまるのを待っておる、それをたいへん期待をいたしまして待っておるという事情になっております。
 しかし、刑法改正のほうは一体どれくらいの時間がかかるのかということで、最終的にこちらがどれくらい時間がかかるのかということの見通しがつくわけでございます。これも、ことし一ぱい現在審議しております草案がかかるのではなかろうか、こう考えるのであります。したがって本年じゅうにこれができ上がりますと、こちらのほうはそれを受けて、大体の見当はついておるのでございますから、準備ができておりますので、それに順応する監獄法の改正を立案をいたしまして国会にお願いをするということになろうかと存じます。来年一年でこれをやり上げるといたしまして、刑法の改正案提案と前後することになると思います。四十九年初頭の国会に提出するととは時間的にも技術的にも物理的に無理であろう、やはり五十年初頭の開会国会に提出することができれば重畳、そこに一つ目安を置いてしっかりやれということを私がただいま言うておるのでございます。大体の見当を申し上げますと、五十年初めの休会明け国会に早い時期にこれを提案することにはしたいものだ。それ以上延びては困るというふうに実はただいまは考えておるわけでございます。
#43
○稲葉(誠)委員 そうすると監獄法の改正は、田中さんがいま言われたように質問を受けてから改正に着手したというのではなくて、もっと前から着手しておったように私は考えておったのですが、ちょっとその点はあとで確かめますけれども。それから内容が非常に古い法律でしょう。実際に行なわれておることが現在の憲法との関連で問題になる点が相当ある。これは私は前に矯正局の朝倉参事官の論文を読んでそういう気がしたのですが、ちょっと私の勘違いかもしれぬ、あるいは正木先生の論文かもしれないのですが、いずれにしても憲法との関係でいろいろ問題になるところがある。そういう点については監獄法の改正はあと回しにして実際の運用として手を打つというか、そういうようなことをやっておるというふうにぼくは聞いておったのですけれども、その点はどうなんでしょうか。これは大臣でなくとも局長でもけっこうです。
#44
○長島政府委員 監獄法の改正につきましては現在鋭意やっておりまして、憲法上の問題等も監獄法自体にある程度はっきり書いたほうがはっきりするということでございます。当面、改正が実現いたしますまでの間は運用上の通達あるいは質疑、それからいろいろな一審の裁判等が出ておりますが、そういう動向を見まして遺憾のないように指導してまいります。
#45
○稲葉(誠)委員 きょうはその質問じゃありませんから別の機会にしますけれども、裁判で現在の監獄法及びそれに基づく運用、それが下級審かもしれませんけれども、明確に憲法違反だという形で出たのはあるわけですか。あるとすればどんなのがあるか。
#46
○長島政府委員 たとえばかつて死刑囚の孫斗八という者がおりましたが、これが起こしました訴訟をめぐりまして、たとえば新聞とか何かの閲覧を許さなかったとかいろ点が問題になったわけでございまして、そういう裁判に応じまして、いままで監獄法の施行規則をその点は直しましたりあるいは通達を直したりいたしまして、一審裁判であっても理由のあるものは尊重していままで順次改正してまいってきておるわけでございます。
#47
○稲葉(誠)委員 それは別の機会にあれしたいと思います。
 そうすると、いま刑法の改正が問題になってきておるわけですね。これは非常に大きな仕事ですし、小野先生を中心にやられておるようですが、その中で、尊族殺が合憲か違憲かの判決があした最高裁で出るわけでしょう。この前に大臣にその点聞いたら、純風美俗で、尊族殺というものを刑法の規定として残しておくのがいかにも妥当であるかのような大臣のこの前の話であったというふうに私は聞いたのです。だけれども、刑法の改正の中では今度はその点は削ってあるじゃないですか。そうすると刑法の改正案を出すといっても、これは大臣の個人的な考えかもわからないけれども、あなたの考えとは、刑法改正は少なくとも尊族殺に対する考え方は違っておるのじゃないですか。そこはどうなんでしょうか。
#48
○田中(伊)国務大臣 私の考えは、親子の関係というものはこれを維持することが純風美俗の上から差しつかえがない、平等の原則には抵触せぬ、こういうはっきりした考え方を私は持っておりますので、その答弁をしたのでございます。改正草案の中には削られておるようですが、私はそれが削られておる、おらぬにかかわらず考えは変わりません。純風美俗上当然である、日本社会においてはこの関係というものは認めてかかってよろしいのだ、尊属殺というものは認めてよい、こういう考え方でございます。
#49
○稲葉(誠)委員 あなたが大臣していると、刑法の改正案というのは二百条を残した形で出てくるんですか。そうするとどうなんだろう。もっとも、あした憲法違反だという判決が出るかもわかりませんけれども、判決のことを予測するわけにはいきませんが、大臣としてそこまではっきり言い切っちゃうというのはちょっとまずいんではないかとぼくは思うのです。それは言論の自由だからかまいませんけれども、刑法の改正案としては二百条を削っているんでしょう。それをあなたとしては残していかなければいけないと言うんだと、あなたがそこでその分についての改正案出してくるというのはどうもちょっとおかしくなってくる。公のあれと個人の意見とは別だと言われればあれかもしれませんけれども、もう少し柔軟性をもって、ぼかしておいたほうがいいんじゃないかと思いますがね。
#50
○田中(伊)国務大臣 私はぼかせない男、私はそういうふうに考えておりますが、法制審議会がどういうことを持ってまいりますか、結果を拝見した上で柔軟に取り扱うかどうかということをその時点で考えていけばよろしかろう、私の考えとしてはそう思っておる、こういうことでございます。
#51
○稲葉(誠)委員 そこで法制審議会ですが、監獄法の場合でも、法務省の案がきまってから法制審議会にかけるんですか。いまのお話だとどうも逆のように感じるのですが、刑法の場合だとずっと先に法制審議会にかけるわけでしょう。それで、それに基づいてやるんでしょう。ただ法制審議会の場合は――私の言う法制審議会とあなたの言う法制審議会と意味が違うのかもわかりませんが、逆じゃないですか。いま監獄法の場合、法制審議会にはかかってないんですか、どうなっているんでしょうね。
#52
○田中(伊)国務大臣 中垣法務大臣当時、諮問をせられた場合には、草案要綱を示さないで、刑法は改正する必要があるかどうか、必要ありとするならばどのような改正が必要かというような形で御諮問があったわけで、少年法などの場合はこちらで案をつくりまして、この案はどうか、この要綱でいいか悪いかということの諮問をいたしました。刑法の場合にはそうでないのでありまして、監獄法の場合はまだ方針はきめておりませんが、大体案をつくりまして、長くかかっておるものでございますから、審議も早くないといけませんので、大体の腹を申し上げますと、先ほど申し上げたように、刑法の改正案が出てまいりました。それに順応して、これに応じて立案をいたしまして、これでどうであろうか、要綱または草案をつくりまして、これをかけて、できるだけ早急に答を出していただきたい、こういう方向になると思います。
#53
○稲葉(誠)委員 そうすると、監獄法の場合、法制審議会で二年や、三年かかっちゃうんじゃないですか、学者の集まりだから。実務家の方も監獄法の場合は多いのかと思いますけれども、長くかかるんじゃないですか。そこはどういうふうなあれなんでしょうか。
#54
○田中(伊)国務大臣 先ほど申し上げましたように、刑法改正と、それを受けて立つ監獄法とは裏表、前後のものでございますので、したがっていま申し上げますような草案準備をいたしまして、審議会が促進できるような態勢でこれを審議会にかけまして、できれば刑法と監獄法とは同時に御審議をいただけるよう、前後してほとんど同時に御審議ができるように進めたい。まだこれは省内の意見をまとめておるわけではございませんが、私はそういうふうにただいま思っております。
#55
○稲葉(誠)委員 刑事補償の問題が起きる前の一番大きな問題は、勾留がきわめて安易というとことばが悪いのですけれども、厳格に行なわれないというところにあるんじゃないかというふうに考えるのです。それで勾留を請求して、私は勘違いしておったのですが、簡裁の判事の場合はいわゆる地方事件、合意事件というか、そういうふうなものの勾留はできないように考えておったのです。これは私の勘違いかとも思いますが、その勾留について却下することはどの程度あるわけですか。簡裁の判事と地裁の判事補との場合に、これは相当開きがあるというふうに思うわけです。というのは、よく実務で検事が勾留請求するわけでしょう。そのときに、きょうの勾留当番はだれだろうかということをいつもよく言うのです。そしてAならAというと、あれはやかましい。あれじゃ通りそうもないからというので、一日延ばせるわけですね。だから延ばしておったりあるいはなんとかかんとかを、雑談かもわかりませんけれどもよくやっているわけです。現実にはやはり若い人権感覚の非常に豊かな判事補が勾留なりあるいは逮捕状ですか、その場合、ことに勾留の場合は判事補はやらないのですか、どういうふうになっているのですか。若い判事補の場合は却下するのが相当ありますね。そこら辺のところが具体的にどういうふうになっているかということです。却下の理由あるいは却下の率といいますか、それは簡裁の場合と地裁の判事補がやる場合あるいはその他の裁判官がやる場合、いろいろあると思いますが、わかっている範囲でどういうふうになっていますか。
#56
○牧最高裁判所長官代理者 四十七年度の数字で申し上げますと、地裁のほうに対して勾留の請求がございましたのが五万二百七十二件、それから簡裁のほうに対して請求がございましたのが四万六千百九十二件でございます。それに対しまして却下の数は地裁のほうが二千四百三十六件、簡裁のほうが四百八十三件でございますので、却下の率といたしましては、地裁のほうがやや高目になっておるということが言えようかと存じます。
 それからいま稲葉委員がおっしゃられました裁判官を選ぶようなお話は私どもも承知しておりませんが、勾留というものが時間で限られている、ある程度の時間内に勾留請求をしなければならぬということになっていますと、そのために一日延ばすということは規定上できなくなるということもありましょうし、それから東京とか大きな裁判所では勾留担当の裁判部が別につくられておるわけでございまして、その中の事務分配はもっぱら順番でいくわけでございます。そして勾留部の担当の裁判官というのはある一定の期間はかわらないわけでございます。翌日に回してもらって人がかわるというような状況ではございませんので、そういうことが出てこようとは私どもは考えておらないわけでございます。
#57
○稲葉(誠)委員 東京の場合は十四部なら十四部がこれは専属にやっておるからちょっと違うと思うのですけれども、地方へ行くとどういうふうな当番制になっているのですか。現実的に、若い判事補が勾留当番になると、どうもあれはやかましくていかぬというので、だいぶ検事のほうでは話をしているんじゃないですか。きょうの勾留当番はだれだなんて盛んに言っていますよ。これ以上言いませんけれども、現実にやはり若い判事補だと非常にやかましい。疎明資料が足りないとかということで却下するのが相当あるわけです。それは内部のことかもわかりませんから、これ以上あれしませんけれども、地裁の場合にはどういうふうにきめるわけですか。それから簡裁の裁判官でも合議事件、法廷合議でも何でも勾留ができるわけですが、どういうようになっていましたかね。
#58
○牧最高裁判所長官代理者 簡裁でもその点は地裁の裁判官と同一の権限でございまして、殺人事件というようなことについての勾留の裁判もできるわけでございます。ところで分配の方法でございますけれども、これはそれぞれの裁判所の裁判官会議で年度当初に事務分配として定めるのが普通でございます。特定の部をつくります場合には特定の部にだれを配属するかということが裁判官会議できめられるわけでございますし、特定の部をつくらない場合にはどのようにして裁判官が勾留事件を担当するかを、たとえば人を指定して、あるいは順番に数人の方であれば曜日を指定するとか、そういう指定のしかたで事務分配として定めていくことになろうかと存じます。地裁でございますと、裁判官の数が少ないこともありまして、大体全体の裁判官が順次日にちをきめて交代で勾留事務を担当するということが多かろうかと存じますが、ある程度の数がございますと、そのうち何人かを選定して、その方が順番に勾留事務を担当するということになっているのが多いように存じます。その場合には大体若い裁判官が当たられるということの例のほうが多いように承知いたしております。
#59
○稲葉(誠)委員 いまの勾留が、若い判事補、新しい感覚を持った判事補の人は厳格ですね、簡単に勾留を認めない方が非常に強いわけですね。
 そこで、いま刑事局長言われたのですけれども、あなたもちょっと勾留尋問と言われたのですけれども、あれは勾留質問というのがほんとうですね。どっちがほんとうなんですか。あなたも無意識に勾留尋問と言われるのだけれども、あそこを見ると勾留質問と書いてあるんだけれども、実際やっていることは尋問ですね。糾問捜査的な、それに近いようなことで、勾留の場合は本人がどういうふうに弁解しようと、いや、ということで勾留してしまうようなことがいままで多かった。これはどうなんですか、勾留尋問ということと質問ということ。
#60
○牧最高裁判所長官代理者 質問ということでございまして、尋問ということばを無意識に使っておったといたしましたら、これは訂正させていただきたいと思います。
#61
○稲葉(誠)委員 ぼくの聞き違いかもわからぬのですが、尋問というふうに聞こえたのですけれども、どういうわけですか。尋問と質問とはどう違いますか。
#62
○牧最高裁判所長官代理者 質問でございますから、本人の弁解を聞くということでございまして、こういう被疑事実について検察官のほうから勾留の請求が出ているが、それに対して弁解する点はないかということで弁解を聞いてやるのが実務の勾留質問の中身でございます。いまおっしゃられるような、いわゆる糾問的なことは実際上はあり得ないことだと思います。
#63
○稲葉(誠)委員 糾問的なことはあり得ないはずなんで、それは弁解を聞くという形でやっているわけなんですけれども、ただその場合に、勾留請求が却下されますね、そうすると準抗告する、それはいい、悪いは別として。その場合に、勾留却下になって準抗告して準抗告が通るというのはどの程度あるんですか。
#64
○牧最高裁判所長官代理者 ちょっと手元に準抗告がどの程度認容されたかの統計資料を持ち合わておりませんが、そう多くはないかもしれませんけれども、少ないという数字でもないと思います。
#65
○稲葉(誠)委員 そこで、勾留された場合に、代用監獄へ入れてくれという要求が相当出てくるわけですね、検事のほうからは。これはおそらく、検事のほうからというよりむしろ警察官の要請ですよね。警察官なんか、普通付せんをつけてくるでしょう。代用監獄でやってくれという付せんをつけてくるわけだ、記録でね。代用監獄へ勾留することが、一体どうなんですかね、いいのか悪いのかということ。拘置所というものがありながら、何のために代用監獄へ勾留するんですかね。そのねらいはどこにあるわけですか。また、それに対して法務省はどういう指導をしているわけですか。原則として、やはり代用監獄ではなくて拘置所なら拘置所へちゃんと勾留するように請求すべきだとか、そういう点はどういうふうにやっているわけですか。
#66
○安原政府委員 捜査の過程のことでございますので私から一応お答えいたしますが、特にいまの最後の結論でございますが、特に代用監獄を使わないようにしろ、拘置所に勾留してもらうようにしろという指導はいたしておりません。勾留は御案内のとおり起訴前に身柄を確保して、と同時に、被疑者は一つの取り調べの客体でございますので、捜査の便宜ということからいたしますと、できるだけ警察ないしは検察庁に近いところに被疑者がおってくれるほうが捜査の便宜でもございますので、実際問題としては代用監獄を使うという場合が非常に多くなっているのは事実でございます。ただ、先ほど矯正局長申しましたように、入れておく期間は制限がありますので、起訴前におきましてはできるだけもよりの監獄という意味において代用監獄を使う場合が多いということは事実でございます。
#67
○稲葉(誠)委員 代用監獄を使うのが非常に多いですよ。ふえていますね。それに対して裁判所が、勾留場所に代用監獄を指定してあるのに対して当事者から不服の申し立てあるいは取り消しの申請というのが、準抗告ですか、あって、取り消しして、そして拘置所へ入れなくちゃいかぬということでやる場合が近来相当ふえてきているんではないですか。それはよく見ますね。判例時報なんか、よく出ていますけれども、それはどういう理由からなんですか。だから、結局こういうことでしょう。被疑者を、いま言われた取り調べの客体として捜査の便宜のために考えて、ことに警察の場合は代用監獄で自分のところに置いといたほうが便宜ですからそこへ置きたがるわけですよね。拘置所だと一々行って、拘置所の許可を得て調べなければならぬ。しかも時間的にも場所的にも制限されるということでやっておるわけですから、それは捜査の便宜が先行してしまって、代用監獄に勾留することがふえているきらいが非常にいまあるんじゃないですか。それに対して裁判所のほうでそれを申し立てによって取り消して、それで拘置所に入れなければいけないというので拘置所へ入れ直すというのがこのごろあると思うのですが、どういう理由からでしょうか、それは。
#68
○牧最高裁判所長官代理者 被疑者の勾留場所として考えますときには、原則として捜査機関の影響から切り離された場所であるということで、拘置所のほうが適当であるということは申すまでもないこととは思います。しかし、実際問題としましては、個々の事件のケースによりまして、拘置所の収容人員であるとか拘置所の所在地、拘置所までの交通事情あるいはその事件についての捜査の必要、たとえば証人との対質との関係あるいは引き当たり捜査等の関係、そういうようなことを個々の事件ごとに判断しなければならない必要が出てこようかと思います。したがいまして勾留裁判官として、拘置所じゃなくて代用監獄にした場合に、その事件としては代用監獄でなくて拘置所のほうが適当であろうということで、準抗告で取り消したような事例あるいはそれが逆になったような事例も、ここしばらくいろいろの裁判例が出ておるわけでございます。それは個々の事件ごとに判断していかなければならない事情が非常に多いことで、そういうような判断の差異が若干出ているのではなかろうかというふうに考えます。
#69
○稲葉(誠)委員 通俗的な議論になるわけですけれども、代用監獄だと自白をさせやすいわけですよ。代用監獄と拘置所と待遇でどこが一番違うか、御存じですか。法務省でも最高裁でもわかりますか。どこが一番大きな点で違うか、ちょっと難問ですけれども、どういうふうに思いますか。答えは簡単ですよ。代用監獄の場合には被疑者にたばこをのませるのですよ。拘置所はたばこをのませないのですよ。これが一番大きな違いですよ。あとはおふろへ入らせるとかいろいろあるかもしれないが、一番の違いはたばこですよ。そうするとたばこをのみたい人は、取り調べ官がたばこなんか吸っていて、ぼくはたばこなんか全然吸わないから気持ちわかりませんけれども、たばこの煙なんか吹っかけられて、調べているほうでたばこ吸っているのを見ていると、調べられているほうはたばこをのみたくてしようがないのですよ。そこで自白に使われる。自白をしやすいのですね、代用監獄のほうが。しやすいというかさせやすいということで、代用監獄が現実問題としては非常に使われる。取り調べの便宜もちろんありますけれども、たばこだけじゃありませんが非常にこのごろ乱用されている、実際に余罪がある場合もあるから一がいに言えないとしても、十日間の勾留期間として八日ぐらいは警察で持っているわけでしょう。検事のところに来るのは最後の一日ぐらいだろうから、結局当然勾留延長だ。勾留延長の請求は、これがあたりまえのようになって勾留延長を請求するということで行なわれているわけですね。
 そこで、これは裁判所にもお聞きするのですが、勾留延長を請求すると、ほとんどといっていいくらい、もちろん条件を調べるのでしょうけれども、認めるんですね。はなはだしいのになると、勾留延長で――これはぼくの勘違いかとも思うので、そうなればおわびしますけれども、間違いであることを祈るのですが、勾留延長の請求書を裁判官が裁判をやっている法廷へ持ってくるのですね、書記官が。そこで裁判官がちょこちょこと見て判こを押しているのをたまに見るんですね。もちろんそういうのがきわめて例外であって、そんなことがないのを祈るのですけれども、どうも簡単に勾留延長を認める。捜査官のほうでは十日なら十日あるいは七日なら七日勾留延長になるのがあたりまえだという前提で捜査をしている、こういうのが非常にあるように思われるのですけれども、間違いかもわかりませんけれども。勾留延長の請求で、それを却下をするという、こういうふうな例なんかはどうなっておりますか。相当ありますか。
#70
○牧最高裁判所長官代理者 これも四十七年度の数字で見てまいりますと、勾留延長の請求がございましたのが、地方裁判所に対しましては一万一千二百五十四件、簡易裁判所に対して請求のございましたのが七千二百八十三件、それに対しまして却下されましたのが、地裁で百四十八件、簡裁のほうで十九件という数字になっております。却下の数が非常に少ないように見えるわけでございますので、いま稲葉委員御指摘のような御疑問も出ようかと存じますが、勾留延長の請求の数自体が全勾留事件のうちの約一割程度でございます。相当しぼられていると見てよろしいかと存じます。それから十日間の延長請求に対しまして五日とか七日とか、あるいはもっと短くするというような例もあるわけでございますが、それもすべてこの認容の中に入れてございますので、実質的に短縮している分、それがあるいは勾留延長を実質的に否定したものに近いような短縮された分も含めますと、却下の数というのはわりあいにふえてくるのではなかろうかというふうに考えております。
#71
○稲葉(誠)委員 何か勾留延長が当然のこととして安易に認められているような印象を受けるのです。疎明なんかは十分でなくても簡単に認められているような印象を受けるのですけれども、これは間違いであればいいのですが。それからやはり勾留延長なら勾留延長を慎重に記録を見て、いままでの捜査の進捗状況を見てちゃんとやるように、ちゃんとやっているのでしょうけれども、十分注意をしてやるような、外部に対してそうじゃないような印象を与えてはいけないと思うのです、これはあたりまえのことですけれども。
 そこで、刑事補償ということはやはり無罪の裁判ということになってくるわけなのですけれども、検事の起訴というか、無罪に対する考え方がいろいろ違うわけですね。きょうも大臣は参議院へ行かれたので、ここではあまり質問しないのですけれども、たとえば東京と大阪という対立した考え方が相当あるわけです。東京のほうは、これは検察庁にしても従来よくいわれていることは、事件について自分のところだけで処理をしたのではかえって公正さを疑われるというか、妥当性を欠く、そのことのために裁判に全部ゆだねる、そこで無罪になったとしても、それは検察としては一つの目的を達したのだというふうな考え方、大ざっぱに言ってですよ、そういう考え方もあるし、それから関西を中心としては、よくいわれるのは、捜査というのは非常に厳密にやらなければいけない、そのことのために無罪が起きたときには――ここが問題なんですね。無罪が起きたところで、そこで人権が侵害されたと考えるのではなくて、その捜査がやり方が間違っていたとか、不足だったとか、そういう方面での反省になるわけですね。だからそこら辺のところで無罪に対する考え方が、東京のほうは無罪が出てもそう強く考えない、けれども、大阪、関西を中心にしては無罪が出ると非常に強くその検察官の捜査のやり方に対する批判が出てきて、そうしていろいろの材料になる。こういうことで古くからこの二つの流れが検察庁内部にあるということが巷間言われているようなのですが、そこで起訴についての考え方、それから無罪が出たときの考え方、これは非常に大きなポイントになるというふうに私は思うわけです。きょうは大臣がいませんから、大臣がいるときにその点に関連して、基本的な考え方ですからこれを申し上げたいと思うのですが、それで無罪が出たときにいま検察庁では、内部のことですけれども、なぜ無罪が出たかということについての何か反省というか、あるいは本人から何というのですか、上申書というかそういうものを書かせるとか、そういうような一つのやり方をしているわけですか。
#72
○安原政府委員 いま御指摘の無罪が出た場合に、当該主任検察官から上申書をとるというようなことはいたしておりません。あくまでも無罪が出たことについては検察全体の責任でございますので、そういう意味において深刻に反省をいたすことはいたしておりまするけれども、当該検察官から上申書をとるというようなことはいたしておりません。
#73
○稲葉(誠)委員 別な機会にその点譲りますが、そうすると無罪が出て検事控訴にするということですね、検事控訴を日本の刑事訴訟法では認めているわけですが、検事控訴という制度を認めない外国の法制もたしかありますね。検事控訴を認めない考え方は、これはどこから出ているのですか。それが一つと、もう一つは検事控訴というのはどの程度の割合で行なわれているわけですか。
#74
○安原政府委員 検事控訴を認めない制度をとっているのは、どういう理屈に基づくものかということでございますが、やはり裁判所の判断というもの、特に第一審の判断が出たときは、その判断を尊重するという根本的な思想があって、その判断が出た以上、被告はともかく検察官としてはそれに従えという思想が強く出ているところに、上訴を認めないという制度をとっている国の考え方があるのだと思います。わが国におきましては検事上訴は認められておりまするけれども、私どもあくまでもみだりに上訴をするべきでないということで、上訴の要否につきましては常に慎重な判断をいたしまして行なっておるというのが実情でございます。なおどの程度上訴をしておるかということにつきましてのちょっと統計が、突然のお尋ねでございますので、後日またお答えをいたしたいと思います。
#75
○稲葉(誠)委員 検事控訴によって――事件によりますからね。検事控訴というのは例外的なものというか、検事控訴をして十分通る見込があるものでないと現実に許さないし、それは地検なら地検の段階ではできない、おそらく高検の決裁を得てやるようですから例外かもしれませんし、内容によるから一がいに言えませんけれども、それによって裁判が長引くとか、いろいろな問題が起こってくると思うのです。そこでこの次のときにお聞きしたいのは、こういうことを疑問に思っているので、きょうは時間がありませんから、この次お聞きしますけれども、それは刑事補償の場合に過失がなくても国が補償する、こういうわけでしょう。過失がある場合ももちろん含まれるわけですが、そうすると国家賠償の関係もあるのですけれども、国家賠償なり刑事補償全体を通じて検察官あるいは裁判官――たとえば検事が起訴した、その起訴によって無罪の発生の基本的な原因が出てくるわけですね。それと裁判官が一審でたとえば有罪の判決をした。それが二審で無罪になった、あるいはいろいろな、最高裁で差し戻しになる場合もありますけれども、そうすると有罪の判決をした裁判官あるいは有罪になると信じて起訴した検察官、一体これらの過失というふうなものはどういうふうになるのかということが一つ。これはいまでなくてもいいですけれども、なかなかむずかしい問題が確かにあると思うし、同時にそういう場合に、これらは国が刑事補償で国民の税金で被告人らに払うということになれば、その補償金額について過失があるとされるとすれば、検事の場合はどういったことになるのかわかりませんけれども、検察官なりあるいは裁判官なりに対しての求償権の問題はどういうことになるのか。いままでそんなことはないと思いますけれども、理論的にどうなるのかということですね。そういうふうなことが刑事補償とからんで当然問題になってきていいのじゃないか。これは現実の問題もあるし、理論的にも当然その問題が起きてこなければならぬ。それは控訴権の内容の問題にも関連してくるし、いろいろな問題が出てくると思うのですが、こうしたことについてはこの次に聞くということで、きょうは時間もお昼になりましたから、これで終わりにいたします。
#76
○中垣委員長 次回は、明四日水曜日午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午前十一時五十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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