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1972/06/05 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 法務委員会 第29号
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1972/06/05 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 法務委員会 第29号

#1
第071回国会 法務委員会 第29号
昭和四十八年六月五日(火曜日)
    午前十時二十八分開議
 出席委員
   委員長 中垣 國男君
   理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君
   理事 谷川 和穗君 理事 福永 健司君
   理事 古屋  亨君 理事 稲葉 誠一君
   理事 横山 利秋君 理事 青柳 盛雄君
      井出一太郎君    植木庚子郎君
      住  栄作君    早川  崇君
      松澤 雄藏君    三池  信君
      水田三喜男君    保岡 興治君
      八百板 正君    正森 成二君
      沖本 泰幸君    山田 太郎君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 田中伊三次君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 香川 保一君
        法務省民事局長 川島 一郎君
 委員外の出席者
        法務省民事局参
        事官      田邊  明君
        大蔵省証券局企
        業財務課長   白鳥 正人君
        法務委員会調査
        室長      松本 卓矣君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十九日
 辞任
  前尾繁三郎君
    ―――――――――――――
六月四日
 司法書士法改正に関する請願(河本敏夫君紹
 介)
 (第五八三九号)
 同(佐々木良作君紹介)(第五九四八号)
 同(保岡興治君紹介)(第五九四九号)
 出入国法案反対に関する請願(石橋政嗣君紹
 介)
 (第五八四〇号)
 同外五件(岡田春夫君紹介)(第五八四一号)
 同(川崎寛治君紹介)(第五八四二号)
 同外一件(北山愛郎君紹介)(第五八四三号)
 同(嶋崎譲君紹介)(第五八四四号)
 同(成田知巳君紹介)(第五八四五号)
 同(藤田高敏君紹介)(第五八四六号)
 同(松浦利尚君紹介)(第五八四七号)
 同(吉田法晴君紹介)(第五八四八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 商法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇
 二号)
 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する
 法律案(内閣提出第一〇三号)
 商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係
 法律の整理等に関する法律案(内閣提出第一〇
 四号)
     ――――◇―――――
#2
○中垣委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案、以上三法律案を一括議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。正森成二君。
#3
○正森委員 それでは、私から商法改正に伴って企業のあり方、その社会責任について、あるいは企業会計原則の修正と商法との関係について、あるいは監査役や会計監査人の業務監査等について、これから質問いたしたいというように思います。
 これだけではお答えになりにくいですか。
#4
○田中(伊)国務大臣 一つ一つお願いします。
#5
○正森委員 実は私考えておったのですけれども、国会が審議ができなかった一つの大きな原因は、小選挙区制について政府・与党が分離提案をなさったということからでございます。分離提案する以上は、それで審議ができると思っておられたに違いない。そこで私も、商法の改正についてまず本体、総論についてお聞きして、各論は別表で質問するということができるはずじゃないですか。ですから、まずいまの私の質問についておよそお答えするということができないか、御意見だけ伺って……。
#6
○田中(伊)国務大臣 広範囲な御質疑を一挙に仰せになりましたので、まごつくわけでございます。そこでまず企業の社会性――私は社会性と申し上げておくのでありますが、この問題につきましては、いわゆる自由経済時代、経済統制のない自由経済時代において、ことに営利を目的とする営利会社、私企業が業務をやっていく、こういう場合に企業が利潤を得るための企業としての取引は自由である、何をやったってかってだという考え方に立って仕事をされたのでは国家、社会に及ぼす影響というものがまことに憂うべきものが出てくるおそれがある、こういうふうに考えますので、営利を目的とする私企業といえどもその規模の大小にかかわらず――大きなものはもっと影響が大きいわけでございますが、規模の大小にかかわらず社会性を尊重して、その限度を越えた悪影響を社会に及ぼすことがないように、ことに重要なのは国民生活に悪い影響を及ぼすことのないように、もっと具体的に申しますと、これによって極端な物価騰貴等が行なわれる心配のないように心して企業の経営を行なう必要がある。これは法律問題と申しますよりは企業道徳の問題でございますが、しかし企業家のモラルがこの方向に向かってこの社会性の大原則を順守しないで行き過ぎた商取引を行ないます場合においては、これに関連する罰則によって断固取り締まるべきものである。法規がなければ法規はつくらねばならぬ。現行の法規あればその現行法規に基づいて断固たる態度で、きびしい態度でこれに臨まなければならない。もし法規がなくんば法規をつくるべきものであるというふうに考えておるのでございます。
 それから、第二段に先生仰せになりました監査制度だけでは商法改正は十全のものではないのではないかということでございます。(正森委員「いやそういうことはまだ聞いてません。」と呼ぶ)そうですが、ちょっと最後におっしゃったのでは……。ではいまの企業責任の問題の限度で答弁不足がございましたら続いてお答えを申し上げます。
#7
○正森委員 いま大臣から非常に御苦心をされながらお答えいただいたんですけれども、やはり総論だけでお伺いするということは大臣にとっても非常にお答えにくいだろうし、まして局長、参事官はお答えにくいだろうというように思いますので、私は以下に詳しく、お答えしやすいように伺ってまいりたいと思います。しかしここで申し上げておきたいのは、そういう大まかなことだけをぽんと聞けばお答えするほうも答えにくいし、聞いているほうも自分がほんとうに聞きたいということを聞けない。やはり質問というのは具体的に懇切丁寧でなければならぬ。これは法案の審議でも同じで、選挙法を選挙区割りなしに出すというようなことではこれはぐあいが悪い。もしそんなことができるなら質問だって大まかなことをぽこんと聞いて、一月か一月半先に別表で質問やるということだってできるはずだということを比喩的に申し上げたかったから、大臣には失礼ですけれどもそういう質問をしたわけです。ですから、これからも私どもも審議を尽くしたいと思いますけれども、政府・与党も一般に認められたルールはお守りになるということを――この例の問題は今国会では過ぎたというようにいわれておりますけれども、念のために申し上げておきたいというように考えております。
 それではこまかい点について質問さしていただきたいと思いますが、今度の商法の改正では御承知のように商法三十二条に「商業帳簿ノ作成に関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」という文言が新たに入れられたことは御承知のとおりでございます。また大蔵省とも関係ありますけれども、企業会計原則というものがございましたが、その企業会計原則について御承知のように企業会計原則修正案というものが、大蔵省の企業会計審議会報告として昭和四十四年十二月十六日にできております。そこで、伺いたいのですが、これは現在企業会計原則修正案、こうなっておるように承知しておりますが、もし商法改正が通ればこの案というしっぽはちぎれて、修正企業会計原則ということになると承ってよろしいか。
#8
○白鳥説明員 お説のとおり企業会計原則修正案というものが昭和四十四年十二月十六日にできております。これは商法改正が実現した場合に企業会計審議会において所要の手続を経て企業会計原則として確定する、こういう予定になっております。
#9
○正森委員 そこで伺いますが、私がいま読み上げました商法三十二条の「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」というのはその企業会計原則の修正案とどういう関係にあるのか、あるいはそれとイコールであるのか、違うのか。違うとすればどこが違うのかという点について御説明を承りたいと思います。
#10
○川島政府委員 仰せのように商法改正案では、第三十二条の規定を改正いたしまして、その二項に「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」こういう規定が設けられることになっております。この規定は、要するに商業帳簿の作成につきましては、一応商法に原則的な規定が幾つかあるわけでございます。しかしながら、それだけでは必ずしも商業帳簿作成の場合にあたりまして十分ではないと申しますか、いろいろこまかい問題が出てまいりますので、そういった場合に公正なる会計慣行をしんしゃくして商業帳簿を作成せよ、こういう趣旨でございます。
 企業会計原則との関係でございますが、企業会計原則は御承知のように、もともとは昭和二十四年に現在の企業会計審議会の前身であります経済安定本部の企業会計制度対策調査会がつくったものでございまして、その当時の企業会計原則の前文によりますと、企業会計の実務の中に慣習として発達したものの中から一般に公正妥当と認められるところを要約したものであるというふうにいわれております。そうであるといたしますと、企業会計原則というのは、公正な会計慣行というものを具体的にまとめたものであるということが言えようかと思います。したがって、商法の三十二条の二項、これができました場合、企業会計原則は、その規定によるところの「公正ナル会計慣行」と内容的には一致することになろうと思います。
#11
○正森委員 内容的には基本的に一致するというようなお考えでございますが、そうすると、現在は企業会計原則修正案ということになっておって、修正企業会計原則にはなっておらない、企業会計原則というものが別にあるということになれば、「公正ナル会計慣行」というものにも変動があって、企業会計原則では商法にうまくマッチしないから、それで企業会計原則の修正案ということになってきたんじゃなかろうか。なぜそうする必要があったんだろうかという点が、やはり新聞、雑誌等でいわれているように問題になるわけでございます。したがって、なぜ変えなければならなかったのかという疑問は依然として残る。それはなぜ変えたのか、どこを中心に変えたのかという点について、これは私も少しは知っておりますけれども、まず政府側からお答え願いたい。
#12
○白鳥説明員 商法と企業会計原則の関係につきましては、ただいま法務省の川島民事局長からお答えしたとおりでございますが、現在、企業会計原則と商法との間には、必ずしも完全に一致しているところがないということもございますし、そもそも企業会計原則と申しますのは、ただいま川島民事局長からの御答弁の中にございましたように、企業会計の実務の中に慣習として発達したものの中から一般に公正妥当と思われるものを要約したものでございまして、この一般の会計の実務の慣習というものは日々生々発展するものでございまして、そのときどきによって動いているものでございます。そこで、これは一つの法律とか規則とかいうもので画一的に縛りつけるというような性格のものではございません。非常に流動的な性格のものでございます。そこで、商法がこの一般に公正妥当な会計慣行をしんしゃくするということになりますと、商法との間に企業会計原則の解釈をめぐって紛糾が起こってはならない、こういうことでございますので、この点の調整と申しますか、誤解をなくする、混乱を避ける、こういう意味で企業会計原則に所要の修正を施したわけでございます。
 おもな修正点と申しますと、いろいろこまかい点にわたりますけれどもおもな点を四点だけ申し上げますと、第一点は、継続性の原則でございます。企業会計原則の一般原則の中に七つの原則がございますが、その第五原則で、継続性の原則という規定がございます。これは会計処理の手続を毎期継続して適用しなければいけない、みだりに変更してはならないという規定でございます。この規定につきまして、現在の企業会計原則におきましては、こういうふうに書いてございます。「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。」そのあとに、後段としまして、「正当な理由によって、会計処理の原則又は手続に重要な変更を加えたときは、これを財務諸表に注記しなければならない。」こういうふうな書き方になっております。修正案におきましては、この後段を削除いたしまして、これを注解のほうに移しております。これは、本来、原則というものは、注記の問題のような技術的といいますか、手続的な問題を原則の中に入れるのは不適当ではないかということで、中身を注解のほうに移して、さらにその理由とか注記のしかたとか、そういうものを詳しく書きまして、これを注解のほうに移した、こういうことでございます。実質的には変更はございません。
 次に、第二の修正点は、貸借対照表の資本の部の表示でございます。ここに従来は、資本剰余金と利益剰余金とを区分表示しておりました。修正案におきましては、これを資本準備金、利益準備金、それからその他の剰余金、こういう区分表示にしたわけであります。これが第二点の修正点でございます。
 第三点は、損益計算書の形式でございます。現在の企業会計原則におきましては、損益計算書のほかに利益剰余金計算書がございます。損益計算書そのものはいわゆる当期業績主義によって通常の営業活動から生ずる利益金を計算する処理になっておる、こういう形になっております。ところが、現在でも、この損益計算書に続けまして、利益剰余金計算書をつけ加えまして、いわゆる通常損益並びに利益剰余金結合計算書と申しておりますが、そういう形で発表する形式、慣行ができ上がってきております。そういった点も考慮いたしまして、また、商法上の考え方である包括主義を取り入れまして、包括主義による損益計算書に改めております。ただ、その場合に、当期業績主義による計算も明らかにすることが望ましいのではないか、こういう考え方から、損益計算書を四つの区分に分けてございます。第一が営業損益計算書、第二が経常損益計算書、第三が純損益計算書、第四が未処分損益計算書、こういう四つの区分に分けまして、営業損益計算は、通常の販売活動から生じたいわゆる営業利益を出すための部分でございます。経常損益計算は、そのほかのいわゆる営業外収益、営業外費用、こういうものを計算を加えまして、いわゆる通常の経常利益を出すわけでございます。そうしてここまでの区分が従来のといいますか、現行の企業会計原則による当期業績主義による当期純利益であります。
 その次に、第三の段階として、純損益計算を乗せまして、ここには特別利益、特別損失、つまり前年の損益計算の修正を行なう、あるいは災害損失とかそういった臨時の損失あるいは利益が出てきた場合にこれを処理する、こういう形で当期純利益を出す、これが包括主義による当期純利益が出てくるわけであります。そのあと最後の未処分損益計算で、未処分の特定引当金、これは後ほどまたお話を申し上げますが、こういったものの増減を行ないまして、当期未処分利益を出す、こういうような手続になっているわけでございます。現行の損益計算書の形式で申しますと、あとの純損益計算と未処分損益計算は、現在の利益剰余金計算書に相当するわけでございます。
 最後に第四点のおもな修正点であります。特定引当金の記載方法があります。これは、修正案の本文ではございません、註解の中に書いてございますが、商法二百八十七条の二に定めております特定引当金、こういったものは従来の会計原則からいって評価性引当金とか負債性引当金といったものとは別の形の引当金になりますので、そういったもので特に法令で計上を認められているものにつきましては、特別な記載方法をはっきりと明示しております。つまり特定引当金への繰り入れ額あるいはそれからの取りくずし額、こういったものは損益計算書では、先ほど申し上げましたように、その四区分のうちの一番最後の未処分損益計算の区分に記載される、つまり当期の純損益計算からははっきりと区分する、こういうことを明示しているわけであります。
 それから、その特定引当金の残高は貸借対照表の中で負債の部に、流動負債でもなく固定負債でもない、特定引当金という新たな部を設けまして、そこに本来の負債とは区別して記載する、こういうふうにいたしたわけであります。
 以上の四点が企業会計原則の修正案のおもな修正点ということでございます。
#13
○正森委員 いま大蔵省から、いろいろ御説明を承りましたが、そのうちの幾つかの点について、なお質問させていただきたいと思います。
 企業会計原則の修正案で四つほど変わったうちの第一に、継続性の原則というのがございます。その点は、御承知のように企業会計原則の修正案を見ますと、一般原則の五のところは、非常に簡単にして注3というところに出ておりますね。いま時間の関係もあってお読みになるのを省略されましたが、重要ですので読ましていただくと、こうなっておりますね。「企業会計上継続性が問題とされるのは、一つの会計事実について正当と認められる二つ以上の会計処理の原則又は手続が存する場合である。このような場合に、企業が選択した会計処理の原則及び手続を毎期継続して適用しないときは、同一の会計事実について異なる利益額が算出されることになり、財務諸表の期間比較を困難ならしめ、この結果、企業の財務内容に関する利害関係者の判断を誤らしめることになる。したがって、いったん採用した会計処理の原則又は手続について重要な変更が行なわれた場合には、変更が行なわれた旨及びその変更が財務諸表に与えている影響額を当該財務諸表に注記しなければならない。」こうですね。
 そこで伺いたいのですが、これを比べてみますと、私は弁護士ですから法律家の端くれですけれども、会計学を専門に勉強したわけではないから、これから伺うことについて専門家の大蔵省から見れば多少おかしなことを言うかもしれませんが、その点は遠慮なく教えてください。
 私がこれを見たのでは、もとの企業会計原則の一般原則の五と比較して一番大きな違いはどこだろうかと思うと、前のところには「正当な理由によって、会計処理の原則又は手続に重要な変更を加えたときは、これを財務諸表に注記しなければならない。」こうなっておりましたね。「正当な理由によって、」という文言が入っております。今回は「正当な理由によって、」というのが削られております。したがって、正当な理由がなくてもこれは企業の必要によって変更することができる。もちろんみだりにしてはならないという限界はありますが、こういうことになると思うのです。少なくとも文言上はそういうことになる。いままでは正当な理由がなければ変えられなかった会計処理の方法が、今回は企業の必要によって正当な理由がなくても変えられることになるということは解釈上当然だと思いますが、なぜそういうようにお変えになったのか、その点について伺いたい。
#14
○白鳥説明員 おっしゃるように、注解のほうの文言の頭には正当な理由によってということばが入っておりません。現行の企業会計原則において、この「正当な理由によって、」ということばが入っておりますのは本文の中に続けて書いてございます。前段のほうに、会計の処理手続は毎期継続して適用して、これをみだりに変更してはならない。このみだりに変更してはならないということばを受けまして、これに対応することばとして正当な理由によってこれを変更したときには注記しなさい、こういう形になっております。
 このみだりに変更してはならないという「みだりに」ということばは、修正後の企業会計原則にも残っているわけでございます。ただ、これを注解に落としました関係上、注解の中で詳しく説明している文言は、いま正森先生たいへんお手数をかけて恐縮だったのですが、お読みいただいたとおり、この変更がどういう場合に問題が生ずるかというような、あるいはその変更についての注記をする場合には影響額も書きなさいというふうに詳しく書く、こういう目的で細目的な規定ということで注3に書いてあるわけでございます。この場合におきましてもみだりにということばが生きておって、決して正当な理由がなくても変更していいという趣旨ではございません。この辺はいろいろな書物で確かに、正当な理由というのを削ったことによって、どんな変更をしてもいいんだというような議論がなされておりますが、私どもはそういうふうには考えておりません。みだりに変更するということは、つまりゆえなくして変更する、正当な理由なくして変更するということでございます。そういう変更があった場合には、もちろんこの会計原則のみだりに変更してはならないということに抵触するというふうに考えております。
#15
○正森委員 いま大蔵省がなかなか御苦心の答弁をなされたのですけれども、それほどおっしゃるなら、なぜ、前のところには「みだりに」のほかに正当な理由なくしてが入っており、今度は正当な理由なくしてが注記の中にすら入っていないのか。注は細目的な部分だからというのであれば、なぜ本文の中に残しておかないのか。これは明らかに、正当な理由がなくても企業の必要によっては継続性の原則を変更してもいいんだという含みがあるからにほかならない。これはだれが考えてもそうでしょう。だから、少なくともみだりにはしてはいけないが、正当な理由がなくても企業の必要があればいいんだ、こう解釈するのが日本語の解釈としてはあたりまえのことだ。ですから、もし大蔵省がおっしゃるようなのであれば、企業会計原則の修正案をさらに修正されれば、人から痛くもない腹を探られずに済む。それをそうやっていないから、いよいよ改正した根本のねらいというのは継続性の原則を大幅に緩和するんだ、それは正当な理由がなくてもやっていいんだということに一般では受け取られておるし、企業はもちろんそう受け取るでしょう。いかがですか。
#16
○白鳥説明員 おことばを返すようでございますが、もし、正当な理由ということを削って、どんな変更があってもいいんだということになり……。(正森委員「私はどんな変更があってもいいとは言っておりません」と呼ぶ)「みだりに」ということばまで削るのであれば、これはそういうことになるかと思いますが、むしろこの変更の重要な点は、先ほどの注解の最後にございます注記の方法でございまして、変更が行なわれた場合に、その旨及びその影響額をはっきり注記しなさい、こういうことによりまして、影響額を見れば、どういう変更が行なわれて、そのためにどういうふうに前期と本期との間で金額の影響があったのか、利益がどれだけ変わってきたのかということがはっきりわかるように、これを注記させる。この点にポイントがある。むしろそういう意味で修正案は改善されているんだというふうにお考えいただきたいと思います。
#17
○正森委員 それでは伺いますが、この注3に書いてある「影響額を当該財務諸表に注記しなければならない。」というのは変更したその年だけに限られるのか、それとも五年、十年と相当長期にわたって書くことまで義務づけられているのか。私どもの法律家的な解釈では、変更をした当該年度に前年の会計のやり方、原則から考えれば、こういう影響額が出ておる、プラスになっておる、マイナスになっておるということを注記すれば必要にして十分であって、二年目、三年目、四年目、五年目、まして十年目には書く必要はないというように解釈するのが当然だと思いますが、それはいかかですか。
#18
○白鳥説明員 ある事業年度から次の事業年度に会計処理の方法を変更したといたしますと、その前年度との比較の間に利益の調整が、まあ故意に行なわれるかどうかわかりませんけれども、利益について誤解を生じやすい点が出てきます。したがいまして、その変更が行なわれた年においてははっきりとその影響額を注記してもらう、こういうことになります。で、次の年度においてもしその変更を行なったままの形で、今度はそこからまた継続性が出てくるわけでございますが、同じ処理をやっていたとすれば、これはその年度と前の年度との比較は容易にできるわけでございますから特に注記は必要でない。もちろんその年度にまた違う処理をしたというときには当然注記が要るわけでございますが、その変更が行なわれた年度だけに注記を行なえばよろしい、こういうことでございます。
#19
○正森委員 そうですね。
 そこで伺いたいのですが、これは運輸委員会における昭和四十八年五月十一日の速記録です。国鉄がいま運賃値上げの問題について旅客を二三%余り値上げするということで非常な問題になっております。それが審議された運輸委員会で紺野委員がこういう質問をしておる。三十六年から減価償却の方法を定額から定率法に改めた。三十九年には取りかえ資産に半額法、四十年と四十六年には耐用年数についての大幅な変更をしたというふうに、償却制度を三十六年から大きく変えてきておる。定額から定率に変え、たとえば新幹線の車両について大体いままで十三年だったのを十年ぐらいに耐用年数を少なくしておる。そしてその結果どうなったかというと、三十六年と三十七年の比較だけでは非常に不十分なんで、質問の過程で、もし三十六年の償却方法で続いたとすれば、どれくらい新しい償却制度と、つまり継続性の原則が破られたわけですが、違ってくるかというと、実に五千六百三十六億円、これは概算ですが、それだけ償却が多くなり、したがって赤字がふえておる。これは国鉄の累積赤字七千九百九十六億円の約七割に当たるということになっておりますね。これは一年ぐらい注記したというだけではわからなかったことである。長年こういうことをやってきたために、赤字だ赤字だといわれておるけれども、それはたまたま企業会計原則の継続性の原則を変えてやったためにこういうぐあいに内部留保が多くなってきたんだということになります。そうだとすれば、あなたがおっしゃるようにこれは改善でございますと言って胸を張られるほどのことはないんで、一年ぐらい書いてもらったってこれはよくわからない。国鉄はいま赤字だから値上げをするということで、できるだけ運賃の値上げをしたいということからそういうことになる。あるいはこれは赤字を隠したいのであれば定額法に戻る、償却年数を長くするということになるでしょう。したがって、この継続性の原則の変更ということは企業の恣意的な営業政策に左右されるおそれが非常にあって、企業だけを考えれば、これは企業にとってはいいことかもしれないけれども、社会的責任、大臣に伺いたいと思いますが、企業というものは損をしないように、株主に配当がちゃんとできるようにということだけではだめなんで、企業が大きくなればなるほどその生産した財貨を国民に対してあるいは社会に対してどういうように配分するかというような問題、商社の場合ならばどういうような商社活動をするかということを考えなければならないと思うのです。
 そこで、大蔵省にもあとでお答えいただいてもけっこうですけれども、大臣に大所高所から伺いたいと思いますが、こういう「正当な理由によって」というような文言を削ったまま、あるいはむしろ削ることによって商法三十二条の中に包括規定としてもぐり込ませようとするという考え方は、著しく企業の慾意的な会計操作を許すものではないかというように思います。事実国鉄ではすでにそうなっておるのですね。それについて法務大臣の御答弁、運輸大臣ではありませんからあまり言えない限度もあると思いますけれども、御見解を承りたい。
#20
○田中(伊)国務大臣 大蔵省から答弁をいたしましたようにみだりに変更を許さずというこの趣旨の条文が生きておるものだといたしますと、これで一応の目的を達するのではなかろうか、こう考えるのでございます。ただ、しかし、先生仰せのことを参考に考えてみるというと、この規定の技術的な面においては幾らか問題なしとしない状況も考えられますが、私も専門家でございませんが、このみだりに変更を許さずとの原則は生きておるのだという見解に立ちますとあるいはこれでよいのではなかろうかというふうに考えるのでございます。
#21
○白鳥説明員 注記を、毎年継続して注記すべきではないかという御趣旨の御意見でございますが、長年の間に何回か変更が行なわれますと、それを全部一つの事業年度の財務諸表にこまかく注記を書くということではかえって読みづらくなるのではなかろうかと思います。長期的な財務の流れを見るときにはむしろ毎年度の財務諸表を並べて比較するわけでございます。そこでその継ぎ目のところ、つまり変更の行なわれたところに注記がございますれば、それでその点からこういうふうに変わったということがはっきりわかるわけでございます。注記が全然ございませんと内容を全部分析をしなければならないということで非常にわずらわしいということになるわけでございます。また証取法におきましては有価証券報告書につきましては五年間の財務諸表をまとめて出す、こういうことになっておりますので、その辺は御心配のようなことはないのではないかと思います。
#22
○正森委員 白鳥さんのように頭がよくて専門家なら、それは十年もざっと並べておおここに注記があったということで計算をされるでしょうし、役人だから、この変えなかった前ので調べたらどうなるのだと聞けるでしょうが、一般の者はわからないのだから、だからそんなことよりも「正当な理由」ということを削らないほうが監督もしやすいし、いいだろうというのは、これは会計にはしろうとの法律家的発想からすれば非常に明らかだというように私は思いますね。
 そこに同じく運輸委員会での五月十一日の質問を見ますと、こういう会計原則が変えられたについては必ずその会社の大きな営業方針が変わっておる年なんです。たとえば昭和三十六年というのはどういう年であったかというと国鉄の第二次五カ年計画が発足した年なんですね。そこで新しい設備投資が必要だというので旅客と貨物の一二%の運賃値上げが行なわれた年なんです。そこで運賃は値上げするわ償却制度は変えてうんとこさ内部留保を多くするわということになる。昭和四十一年の大幅な値上げ、旅客三一・二%、貨物一二・三%という値上げをやった。償却制度も多少変わった。これはどういう年かといえば、第三次長期計画が始まった年なんです。こういうのとからんで変える、こういうことになっておるのですね。だから、正当な理由といえるのかどうか知れないけれども、企業の目的のために変えていっておる。こうなれば、この商法の改正というのは決して手放しで改正といえるものではなしに、企業の目的に沿うような、そのためにわざわざ企業会計原則を修正した上で、それを商法の三十二条ですべり込ませるという手の込んだことをやったという巷間の非難というのは、まんざら火のないところに煙はたたないとは言えないと思うのですね。しかし、幾ら聞いても、あなたは課長さんで、もし大蔵大臣のように、はいはい、企業会計審議会なんかに申しましてというようなことを言えるはずもないからこのくらいで置いておきますけれども、しかしそういう点は、町の声はあるのだということをやはり記憶にとどめておくということは大事なことだと思いますね。
 そこで、いろいろありますが、あなたは、三番目の原則のところで四つあげて、未処分損益計算のところに特定引当金というのがある。四番目の大きな項目で、特定引当金の記載方法というのを注解のところで記載しておりますと、こういうように言うておられます。これはおそらく、私はよく存じませんが、注解の14ないし18のことをさしておられるだろうというように思いますが、そう伺ってよろしいか。
#23
○白鳥説明員 おっしゃるとおりでございます。
#24
○正森委員 そうしますと、この14ないし18というところを見ますと、「負債性引当金以外の引当金について」ということになっておって、「負債性引当金以外の引当金を計上することが法令によって認められているときは、当該引当金の繰入額又は取崩額は未処分損益計算の区分に記載する。なお、これらの引当金の残高については、貸借対照表の負債の部に特定引当金の部を設けて記載する。」こうなっておりますね。注の18のところを見ますと、「負債性引当金について」と書いてあって、一ぱいいろいろなものが新しく入っておりますね。「その年度の収益の負担に属する金額を負債性引当金として計上し、特定の引当金と区別しなければならない。」と、こうなっておって、それで「製品保証引当金、売上割戻引当金、景品費引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金等がこれに該当する。」と、こうなっておる。しかもそのあとで、「負債性引当金は、金額は未確定であるが、その支出は確実に起ると予想されるものであるから、偶発損失についてこれを計上することはできない。」こういうことにはなっておりますけれども、一ぱいあげてある。そうすると、読んで明らかなように、これは負債性引当金だけをいっておるのじゃないのでしょうね。そうでしょう、特定引当金というのは。
#25
○白鳥説明員 ちょっと御説明申し上げますと、この企業会計原則の修正案で特定引当金と申しておりますのは、負債性引当金、つまりいま最後にお読みになりました注18であげております引当金、これは企業会計原則上も認められております。
 それから評価性引当金というのがございます。減価償却引当金であるとか貸倒引当金、そういったものがございますが、そういうものも会計理論上古くから認められている引当金でございます。そういう引当金以外のもので、法令で認められているものを特定引当金という名称で呼んでいるわけでございます。
#26
○正森委員 いまの答えはお答えになっておるかのごとく見えて一向お答えになっておらない。つまり負債性引当金、その繰り入れ額というのは費用になるのでしょう。
#27
○白鳥説明員 負債性引当金はおっしゃるとおり費用に入ります。
#28
○正森委員 特定引当金というのは未処分損益計算の区分に記載される。形式上は違いますが、未処分の利益ということでは一致して、商法の決算書と証取法の決算書が統一されて特定引当金という名前で、商取引上も貸借対照表の負債の中に隠されるわけでしょう。貸借対照表の負債の中に入るのでしょう。
#29
○白鳥説明員 おっしゃるとおり貸借対照表では負債の部に計上いたします。ただしこれは便宜的に負債の部に計上しているということでございまして、本来の負債とは明確に区別して、特定引当金という特別な部を設けて計上するということでございます。
 なお損益計算書におきましては、包括主義によるものあるいは当期業績主義によるもの、いずれにいたしましても当期の利益にはかかわってきておりません。当期純利益を出しましたあとで、その未処分損益のところでこれを明確に区別して計上する、こういうことになっております。
#30
○正森委員 いろいろ伺いますが、しかし特定引当金が貸借対照表の負債の中に計上されることは間違いない。そうすると未処分利益で本来利益であるものが、隠せば隠すほど外見上は負債が増大するということに貸借対照表上はなる。これは明らかなことではありませんか。そうすれば、業務監査なんかやって粉飾決算、逆粉飾決算をなくするというのが商法改正の大きな目的であるにもかかわらず、こういうように特定引当金という名前で、実際は未処分利益であるものが貸借対照表上の負債の中に入る。私よく知りませんけれども、しかしそういうようなことはしろうとの考え方からすれば、はなはだ奇異な感を抱く。そういうものをなぜ企業会計原則の修正案の中でわざわざ入れるようになるのかと考えてみれば、これは大企業がいろいろもうけておる、この利益をどこへ隠そうかというのに明白に使われる材料であるというようにいっても差しつかえないではありませんか。そう解釈せざるを得ない。大蔵省はその点についてどう考えておるのですか。
#31
○白鳥説明員 ただいま逆粉飾というようなことについての御質問でございますが、企業が自分の利益をできるだけ少なく見せて将来に備えようということで、いわゆる逆粉飾というものが最近非常に問題になってきております。しかしこの逆粉飾と申しますのは、本来の意味のといいますか、厳密な意味での逆粉飾と申しますのは、財務諸表に全然あらわれてこない利益を隠匿してしまうわけです。秘密積み立て金のような形で。表に出てこないようなもので利益を隠しておる。それによってたとえば株主の増配を押えるとかそういったようなことにも使いますし、あるいは利益の平準化の目的に使う。こういうことは非常に弊害のあることで、当然排除しなければならないことは言うまでもございません。
 ところが、この特定引当金の場合には、はっきりと貸借対照表の部には特定引当金という新しい部が、明確に区分された部が設けられまして、それを見れば一目りょう然、どれだけの特定引当金を従来からあげているかということもわかりますし、一方、損益計算書のほうを見ますと、当期の純利益というものは、はっきりとこの特定引当金を控除する前の純利益が出ているわけでございます。しかも当期において特定引当金をどれだけ取りくずし、あるいはどれだけ取り入れたかということも、はっきりと未処分損益計算の部のところに計上されるわけでございます。そういう点を明白に示しているという点で粉飾ということばには当たらないのではないか、こういうふうに思います。
#32
○正森委員 非常に形式的に粉飾ということばに当たらないと言われましたが、人三化け七みたいな女性がお化粧を一生懸命して天下の美人になるというような意味から言えばそうじゃないので、やはりあばたはあばたであるということを隠したままだ、こうおっしゃるのでしょうけれども、そうすると租税特別措置法との関係で特定引当金がどういう扱いを受けるのか。それは明白に法人の税率、それがきちんと課せられるのか、それはどうですか。
#33
○白鳥説明員 この注解14にございますように、「負債性引当金以外の引当金を計上することが法令によって認められているとき」というふうに書いてございます。租税特別措置法によって認められております引当金は、この法令によって認められている引当金に該当いたしますので、その繰り入れ額は、やはりただいま申し上げたと同じように貸借対照表の部では特定引当金のほうに計上され、損益計算書では未処分損益計算のほうに入るわけでございます。
#34
○正森委員 だからどうなるのですか。ずばりと答えてください。われわれは大蔵省みたいに頭がよくないから……。
#35
○白鳥説明員 これは租税特別措置法によって損金に計上することを認めるということになっております。これはあくまで税法上の問題でございまして、企業会計上の話でございます。
#36
○正森委員 だから損金に計上されるから税金はかからないのでしょう。田中総理大臣が、来年度は人気が悪いから法人税を四〇%に上げようなんて言っているけれども、これは四〇%税金かからないのでしょう。
#37
○白鳥説明員 おっしゃるとおり税法におきまして、税法上のといいますか税務行政上では、(佐藤(観)委員「特別措置だな」と呼ぶ)おっしゃるとおりでございます。そういう特別措置によりまして損金処分を認める。ただしこれは利益金処分によって認めるということであります。これを利益金処分によって行なった場合も税法上の損金として認める、こういうことでございます。
#38
○正森委員 何かいろいろアクセントをつけてピアノをひくみたいにおっしゃったけれども、結局のところ税金がかからないということは事実でしょうが。そうすると、これは一体だれのための企業会計原則の修正であるかということは非常にはっきりしておると思うのです。これはあなたをわずらわすまでもなく、私は名前の読み方は知りませんが、番場嘉一郎と読むのですか。そう読むのですか――この人が経団連のパンフレットのナンバー一〇五、「企業会計原則修正案の解説」、七〇年の三月にお書きになっておる。その中ではっきりと得々と言っておられるのです。こう言っておる。「経団連意見はほとんど九〇パーセントまで通っていると思います。その結果、こういう修正案ができたのだということを申し上げます」、堂々と九十点満点だとこう言って、喜び勇んで報告しているのです。そして「この点だけは何とか渋谷さん、居林さん」、居林次雄さんですね、あっちこっちに書いている。「居林さんにお願いし、がましてくださいといった結果がこんなふうになってきたわけです。そのかわり、まともな引当金というその引当金の解釈を少し拡大解釈しましょうという、そういう話をとりつけました。」どこで取りつけたのか知らぬが、「負債性引当金というものを厳密に解釈すると、これもだめ、あれもだめだということになるが、修正案では、これもいい、あれもいいというふうに、」いいですか、「これもいい、あれもいいというふうに、まともな引当金の概念というものを拡大することによって、そこのところを吸収しましょうということで目をつぶっていただいたのです。」だれに目をつぶってもろうたんや。「そこで、まともな費用というよりも、損失的なものの引当金計上ということもなるべく認めるようにしようという了解があったわけです。」こう言っておる。私どもは一体そういうように話を取りつけたとか、目をつぶっていただいたとか、了解があったとか、一体経団連はどこに対して目をつぶっていただき、了解してもらい、話を取りつけたのか。そういうことを堂々と「企業会計原則修正案について」経団連のパンフレットで言っている以上、大蔵省に問いたださないわけにはいかない。しかもそれを受けて経団連の居林次雄氏、この人は有名な人で、傘下の企業を以下のように指導している。これはやはり「企業会計原則修正案の補足説明」ということで経団連のパンフレットの中に明瞭に書いておる。「この際、有税で以ってでも会計原則が例示した負債性引当金を広く計上して、税法としてもこれを認めざるを得ないようにすることが必要であると思われる。したがって、この三月期決算以降において、各社が有税ででも引当てるという決心をしていただきたい。この場合、負債性引当金の計上額は、各社、各業界における過去の実績値(アフターサービス費を出した実績とか、売上割戻、売上値引をした実績値等)を参考として、今後の見通しを加えた額にすることになる。とくに長期延払いのものとか、長期の保障契約をしているようなものについては、手厚く引当金を計上することが必要であると思われる。」「手厚く」と、こう言っておるのです。いいですか。だから経団連の番頭である居林氏は、手厚く引当金を計上してくれ、この際広く計上して税法としてもこれを認めざるを得ないようにすることが必要であると思われる、実力行使をするということだ、それで税務署に、国税庁に認めさせるのだということを堂々と書いておる。これを見ればあなたがいまきれいごとで言ったような、そんなものではなしに、企業会計原則の修正というものが、そしてまたそれを商法三十二条の中に引き入れてくるということが一体だれの利益のためのものであるかということは明らかではありませんか。どう思いますか。
#39
○白鳥説明員 負債性引当金の拡大の問題でございます。拡大とおっしゃるわけでございますが、これは拡大ではございませんで、限度をはっきりさせたということでございます。先ほど先生お読みになりました注18におきまして、負債性引当金に該当するようなものはどういうものがあるかということが書いてあるわけでございまして、「将来において特定の費用(又は収益の控除)たる支出が確実に起ると予想され、当該支出の原因となる事実が当期においてすでに存在しており、当該支出の金額を合理的に見積もることができる場合には、」そういう場合に負債性引当金として見積もることができる、そしてその例示として先ほどお読みになりましたように、「製品保証引当金、売上割戻引当金、景品費引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、」こういうものを例示しております。そしてそういうように確実に見積もられる、そしてその原因となる事実が当期においてすでに存在しておる、こういう条件をはっきりと規定しておるわけでございます。これはむしろ特定引当金を先ほど申し上げましたように貸借対照表においても損益計算書においてもはっきりと明確に計上するように規定しましたことによりまして、負債性引当金のほうに逃げてくるものがないかどうか、そういうものがないように、これをその限界をはっきりと示して、これ以上のものは負債性引当金とは言えませんよ、こういうような条件に当てはまらないものは負債性引当金といってごまかすわけにはいきませんよということを明示しているわけでございます。居林さんのおっしゃるようにたっぷりとというようなことはとんでもないことでございます。
#40
○正森委員 それでは法務大臣、あまり技術的なことになって御退屈でしょうから伺いますが、いまの大蔵省の説明にもかかわらず、私が番場嘉一郎氏の経団連のパンフレットの中での意見あるいは居林次雄氏の意見というものを読みましたように、少なくとも経団連関係ではそういうように理解しておるということは、これは否定できないと思うんですね。そこでそういうものをすべり込ませるようなことを商法の改正で、いまこの企業の社会的責任が問われているときになぜなさる必要があるのか、また私どもがそういう問題提起をしても自由民主党は多数だからこれはやはり成立させるんだというようにお考えなのか、あるいはそれについても何らかの手当て、法律上の手当てあるいは行政指導上の手当てというものをなさらなければならないと思っておられるかどうか、こういう大きな問題について大臣の御見解を承りたいと思います。
#41
○川島政府委員 その前に私から商法の改正案の考え方について一言申し上げておきたいと思います。
 御承知のように、今回の商法の改正におきましては、会計処理の原則、評価規定といったようなものにつきましては特段の改正を行なっていないわけでございます。ただ先ほど御指摘がありましたように、「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ、」こういう規定を置くことにしております。そこで、なぜこういう規定を置いたかということでございますが、これは一つには商法の規定だけではすべてを尽くしておらない。したがって、規定のない点についても、商業帳簿作成の目的から見て正しい処理を行なう必要があるというために、公正な慣行をしんしゃくせよということを規定したわけでございますが、それともう一つ技術的な問題といたしまして関係のございますのは特例法との関係でございます。これは特例法におきましては、資本金五億円以上の株式会社に対しましては決算期における計算書類につきまして株主総会前に公認会計士あるいは監査法人を実体とする会計監査人の監査を受けさせることにいたしております。そしてこの五億以上の会社の中には、現在証取法の監査の必要のある会社がかなり含まれておるわけでございます。ところで証取法の監査におきましては現在おおむね企業会計原則によって処理しております。それに対しまして、商法のほうでは商法自体の原則によって処理しなければならないということになっておりまして、同じ会社に対して商法上の監査と証取法上の監査と監査の基準が食い違ったのではぐあいが悪い、二重手間になるであろうというような点も考慮いたしまして、なるべく両者の会計処理の基準というものを同一にしようということで、先ほど申し上げましたような公正なる会計慣行、これにつきましては現在の考えております企業会計原則におおむね一致するものであろうというところからこういう規定を設けますと同時に、今後商法の規定に抵触することがないようにさらに企業会計原則を再検討して、さらに修正すべきものは修正していこう、こういう話になってきたわけでございまして、商法の立場から申しますと、商法の規定しております会計の処理の方法、それを適正に行なうためにさらに企業会計原則につきましても十分な御考慮をお願いしておる、こういうことになるわけでございます。
#42
○田中(伊)国務大臣 いま局長から説明をいたしました公正な慣行というものが、企業会計原則の改正されましたものとそりを合わして矛盾をしないというふうに運用をしていくことがたいへん大事なことである、こう考えます。いろいろ御意見を伺いました点を念頭に置きまして、この方針でひとつやっていきたい、そういう意味で商法改正のねらいとしております公正なる慣行という点に御理解をいただきたいと思います。
#43
○正森委員 いや、御理解できないからいまいろいろ伺っている。それで、企業会計原則の修正案というものは非常な問題点を含んでおる、また現実にも問題を起こすということを申し上げたわけで、川島局長の御答弁も御苦心のほどはわかりますけれども、しかし私の疑問を解消させるには至っておらない。逆に最初の御答弁でも、また横におられる田邊参事官、非常に御勉強なさっておりまして、論文を拝見しましたが、その論文を見てもおおむねこの商法三十二条の公正なる会計慣行のしんしゃくというのは企業会計原則と一致しておりますと、そうでしょう川島さん、私あなたの本ちゃんと読んだから、そういうのを言うておられるわけですから。そうするとこれがパラレルほぼイコールなものであるということになれば、その商法独自という意味のことをちらっと言われても、われわれとしてはなかなか、これはやはり大企業の利益のために活用されるのではないかという疑問を消し去ることができないのですね。
 そこでもう少しこまかく聞いていきますと、「公正ナル会計慣行」、こうなっていますが、慣行というのは慣習とは違いますね。民法九十二条では「慣習」ということばを使っておりますが、それをわざわざ「慣行」というようにしておられる。これはいかなる理由によるものであるか。これについては先ほど少しお答えになりましたけれども、これは商法側の――大臣はこういうこまかい問題はけっこうですから、それ以外の方から承りたい。
#44
○田邊説明員 先生のお尋ねになっておりますのは、三十二条二項の慣行としんしゃくの関係だろうと思います。
 おっしゃる慣行と申しますのは、民法で申します慣習、これとほぼ似た概念と考えておりますけれども、会計の世界で行なわれているならわし、そういうものを表現したつもりであります。ただ単純に行なわれている慣習、ならわしではございませんので、それが商法から見て公正なものであると考える場合のならわしを組み入れて判断しろ、こういう表現でございます。先ほど来の御質問で、私どもも全く会計的にしろうとでございますので、御指摘の点が非常にむずかしい問題を含んでおりますけれども、商法側から申しますと、この「会計慣行ヲ斟酌スベシ」という表現をいたしましたところに、先ほど来先生の御追及になる問題点を解決したつもりでおるわけでございます。
 少しく付言いたしますと、問題は継続性の原則に始まり、引き当て金の問題というように発展してまいっております。商法の考えから申しますと、継続性の原則というものは商法上は明確にそれをうたっていない、ただ計算書類の表示の面で、私どもの概念の省令の中でこの修正案に出ておると同様にいままで使っておりました会計処理の方法を変えたときにはそれを明らかに注記しろ、こういう規定を持っております。その考え方は実は継続性の原則で先生が例にあげられました固定資産の償却の方法について、たとえば定率法と定額法という二つの方法が行なわれておる、商法の側は条文上は相当の償却をしなければならないという条文になっております。そこで商法は実際上の会計の慣行をながめて、その慣行で使われている二つの方法を、いずれも適法なものとして扱っている、こういうたてまえでございます。したがって、適法な方法のいずれをとるかということは、それぞれの企業の実情に応じて行なわれることであり、かりにその方法を変更いたしましても、それは法律が、たとえば二つの尺度を認めておるというところに問題があるわけでございます。したがって、ある一つの尺度からもう一つの尺度に移るということは、最終的にはその会社の計算結果を判断する株主の判断にゆだねよう、しかし、それは株主にとっては明らかにわかりませんから、これを変更いたしましたということだけは明確にしておく、そういう趣旨で商法は成り立っておるわけでございます。会計原則の修正の問題でもその立場は貫かれておりまして、現行の省令よりも詳しく、つまり、現行の省令ではものさしを変えたということだけを示せばいいとなっておりますものを、今後の改正ではおそらく、ものさしを変えた結果、前のものさしで計算した額と、新しいものさしで計算した額の差額をも書かせようという方向に改正が行なわれると考えております。
 それから、第二点の引き当て金の問題でございますが、御存じのように、商法は二百八十七条ノ二という条文で引き当て金を規定しております。この商法の規定する引き当て金は、非常に範囲の広いものでございます。と申しますのは、任意の規定で、企業は必ず商法二百八十七条ノ二の引き当て金を計上しなければならないというたてまえになっていない、と申しますことは、会計で先ほど来御議論になる負債性引き当て金というものも含めて、利益性引き当て金というものも入り得るような余地のある法文になっているわけでございます。商法から見ますと、たとえば退職給与引き当て金というようなものは、いわゆる負債であると考えております。巷間退職金を引き当て金という名目であげておりますものは、商法からいえば、これは必ず計上しなければならないもの、こう考えるわけでございます。そういう意味合いで、商法の考えているものは非常に広いものだ、広いものでありますけれども、御指摘のように、これを計上することによって利益に影響いたします。株主から見ますと、そのようなものを計上しなくていいという結論を下してちっとも差しつかえない、それを計上しないで、むしろ配当に回すべきだという修正の権限を持っているものである、こう考えるわけであります。したがって、今回の会計原則の修正でも、商法から見ますとどうしても計上しなければならないものは、当然計上させるけれども、企業に任意とされており、しかもその性格が利益を留保するような性格のものについては、株主に十分な情報を与えるように、そういう配慮がなされていると思います。そうして、会計慣行というものが、御指摘のようにそういう利益性のものをより多くとるという方向に向かうという場合に、それが公正なものかどうかということの判断は、やはり商法独自でやらざるを得ない、かりに会計原則をもう一度修正いたしまして、御指摘のような広いものに広がっていく、そういうまた広がっていった場合に、株主に対する公示の方法も不十分であるというふうなことになれば、商法から考えれば、かりにそういう修正が行なわれても、それは公正な慣行とは認め得ないという結論が出る場合がございます。そういう配慮がございまして、会計学者は非常に不満であったわけですが、つまりしんしゃく規定ではなくして、公正な会計慣行によれという、準拠すべしあるいは依拠すべしという表現を主張したわけでございますが、法律の上からは、それはしんしゃくということばで、大いに判断の材料とするけれども、そのものによれという表現は避けたわけでございます。そういたしませんと、会計原則の修正、つまり政府の行政審議会の結論によって法律改正が行なわれるようなことになってはならない、そういう配慮があったわけでございます。この条項の考え方というのは、以上のような考え方をいたしております。
#45
○正森委員 そこで伺いますが、あなたはいま非常に懇切丁寧に説明していただいて、あなたが座談会でおっしゃっているのがさらに真意がよくわかった。あれは短いものですから、真意がよくわからなかったというように思いますが、しかし、私どもが同じく学者の言っているのを聞きますと、慣習と慣行とは違う、また、慣行というのは現にあるものだけを扱うというのではないのだ、慣行というのは時間的にも慣習のように長く継続しておる必要はないし、場所的にも広い地域で行なわれている必要はない。あるいはまた、いまたとえば定額法、定率法というように、二つの方法がありますけれども、その会計原則として新しい、より公正なものがあらわれてくる、あるいは償却制度にかかわらずいろいろなものが出てくるというような場合には、それを先取りと言ったら語弊がありますが、取り得る余地を残して会計慣行をしんしゃくすべし、こういうようになっておるのだという学者もございますね。そうだとすると、これは、あなたは、一行政庁の企業会計原則の修正によって商法の立場が公正でなくなるというようなことはないのだと言われましたが、それはそうかもしれませんが、今度は逆に、一部の企業でこれは慣行だというようなことが出てくる、あるいは慣行にする、それもまた慣行たり得る余地があるというように学者は言っておりますから、そうだとすると、よほどこの点はよく考えないと、非常に有力な企業が、これはもう慣行としてしんしゃくされてしかるべきなんだというようなことでやってくるという場合もあり得るのです。それに対する歯どめというのは、結局ははたしてそれが公正なる会計慣行をしんしゃくしたものであるかどうかということで、裁判所が判断するというように学者は言っておりますね。ですからそういうことになるのかもしれませんが、慣行を、もし慣習と違ってそういうように解釈するとすれば、私がいま言ったような心配も起こってくるというように思いますが、それについて田邊参事官の見解を承れればけっこうです。
#46
○田邊説明員 先生のお考えのとおり、学者の議論といたしましては、このしんしゃく規定を設けた経緯からいって、慣行というものに縛っておくと、新しい方法が出現したときにそれによれなくなっては困る、こういう主張なんですが、実はそれは私の主張でございまして、この背景は御指摘のとおりなんでございます。慣行といいますと、やはりある程度の時間的なつながりが必要ではなかろうか、ならわしというものは繰り返される、特にある一企業のみである事柄を案出いたしましても、それは一般にならわしとはいわないであろう、こういう考えから慣行ということばを使いました。しかし、先生の御指摘のように、それを慣習と表現いたしましても、私は同じことになろうかと思います。このポイントは慣行にこだわることはないんだ、それべったりで考えなくてもよろしい、それが実は会計の新法につながるだろう、ある新しい学説が突然出てまいりましても、それが商法からながめて公正なものなら堂々とそれによってよろしいという考え方を示しておるものでございます。したがって、ある企業が突然新しい方法を案出したといたしましても、これはおそらく慣行とはいえないと思います。そこで、その企業がその方法を採用したことについては、最終的には裁判所の判断によりますけれども、当面の決算の上ではそれが商法でいっているような公正な会計慣行に準ずるようなものである、あるいは公正なものであるということをみずから立証しなければならないと思います。その立証によって監査役なり公認会計士を納得できなければ、それはやはり会計士なり監査役の意見としては不適法だという判断を受ける余地は十分あるのだ、つまり、新しいものを使うときにはそれだけの覚悟をしろということをこの条文はいっている、そういうふうに考えております。
#47
○正森委員 それでは次の問題に移りますが、ついでに比較的技術的な問題を伺おうと思ったのですけれども、時間がたってきましたので、大臣が御用があるといけませんので、大臣にお聞きすることをいまから一、二伺って、御用がございましたら十二時になりますので御退席いただいてもけっこうでございます。
 商法で、これから監査役の監査の問題を伺うわけですけれども、しかし、いま企業の社会的責任というのを論じている場合に、普通いままでは株式会社で、私ども大学で習いました場合には、株主の保護、債権者の保護、取引先の保護というようなことが中心でございました。しかしながら、現在の資本金数千億円というような企業が出てまいるというような場合には、やはりそれだけでは足りないので、その企業と一般庶民とのかかわり合いというようなものが、どうしても考えの中にのぼってこなければならないのじゃないかというように思うのです。そこで、その場合に、監査役の権限強化だけで済むか、あるいは取締役会をどうしなければいけないとか、あるいは総会をもう少し実のあるものにしなければいけないとか、いろいろな点がございますが、たとえば総会の点については、田中委員もいろいろお聞きになったようでございますけれども、これは総会屋の横行というようなものは目に余るものがあるというように大新聞の社説も指摘しておるわけですね。これは少し古いですが、昭和四十五年の三月に朝日新聞がずっと特集したものでございますけれども、総会屋というのがいろいろなところへ出ている。「「これほど簡単にもうかる商売は、なかなかやめられないよ」。」と、こういうておる。これが昭和四十五年三月十一日の「総会屋と会社」という朝日新聞に載っておるところでございます。大体総会屋にも与党と野党というのがあるらしくて、それで名の売れた総会屋は与党になってしこたまもらう。かけ出しは、まあ私のような者かもしれませんけれども、野党になっていちゃもんをつける。しかし、それでも何がしかありつけるというようなことで大いにやっておる。総会の進行係、これは与党の国対委員長みたいなものですが、そういうものになればもらいはうんと大きいということがちゃんと書いてあるんですね。そして、進行の筋書きどおりに動いておる。会社というのはもうそれに対して非常に弱くてお金を包む。これは昭和四十五年三月十日の朝日の記事によると、活動している会社ゴロは千五百人ほどと警視庁は見ている。――これは私のことばではないのです。朝日新聞に「会社ゴロ」とはっきり書いてあるわけですから。そこで、ついこの間も「批判の中、四大商社も株主総会」ということで、これは朝日新聞だけでなしに各新聞、讀賣新聞その他にも出ましたね。これは大臣も御承知のとおりだと思うのですね。これを見ると、たとえば三井物産の例をあげると、五月三十一日に大手町の三井生命ホールで開かれたけれども、与党の総会屋が二十ページにわたる議事進行の筋書きを持っておる。国会の本会議だってそんな筋書きはない。ときどき舌が長かったり短かったりする。そういうことになっておるのに、議事をすべき総会において総会屋が筋書きを持っておって、そして大体そのとおり動いたということがはっきり出ておるわけですね。これは大新聞が実際上その場にいて報告をしたことであるわけです。それから、たとえば丸紅、この間木材だとか米だとか買い占めてえらい問題になったこの丸紅でも同じことでありまして、檜山社長、国会へも呼び出された。この人が「営業概況報告に入る前にヤミモチ米の取扱いで逮捕者まで出した事件にふれ「いやしくも法令に違反することがないよう注意していたのですが…。商社の社会的使命と責任が重大な時だけに、まことに申訳なく反省しています」と深々と頭を下げた。」そうしたらその総会屋から「「了解」「了解」の声が飛んだ。」ということで「拍手の連続。途中、株主の一人が営業報告書を片手に立上がり質問しようとしたが、まわりの株主になだめられて着席する一コマがあったぐらいで、それも総会屋同士の茶審劇。」あまり何もなかったら困るから、総会屋の野党が立って、それを与党がなだめるということをちゃんと組んでやっておる。一般の人は質問できない。こういうことが公然と――いいですか、これは「赤旗」じゃないですよ。讀賣新聞、朝日新聞――それは共産党に好意のあることをこのごろ書いてくださることもありますけれども、書かない場合もある。そういう新聞が、目に余るものとして書いているというふうな点を考えますと、やはり一株運動なんかでいろいろ問題もありましょうけれども、総会の権限規定というようなもの、少なくとも総会のあり方ですね。それをやはり考慮するとか、あるいは行政指導で総会というもので暴力なんかが伴うようなことがあってはなりませんが、論議を尽くし、社会的に企業のあり方について経営責任者は考え、世間には訴えるということがあって当然だと思うのですが、それについて大臣のお考えを聞かしてください。
#48
○田中(伊)国務大臣 お説のように、総会屋がいろいろ策動する余地があった。そういうことは一体どういうことかといいますと、まあ大企業に多いわけでございますが、大企業の行なう株主総会の運営というものが形式的なものになっている。そこに出席しております株主の諸君も、会社の企業の内容、計算書類の内容というものがつぶさにわからない。出席するまでわからない。出席の席においても、説明をしたりしなかったり、その株主総会が形式に流れておるので、総会屋が活動する余地がある。活動する余地があるぐらいでは、総会屋の思いどおりになってしまう。総会屋さえ操縦しておれば、会社の立場は立つようになるというところに欠陥があろうと思います。
 そこで、このたびの商法改正に、その点だけに関連をしたところで申し上げますと、計算書類は、いやしくも内容を尽くしたりっぱなものにしなければいけない。そうしてそれを株主総会の招集令状、招集通知状、何月何日株主総会を開きますからおいでをいただきたいという招集の通知状に、内容のよく整うた計算書類を事前に添付して、これが今度の改正のところでは非常に重要な意味を、先生御質問の御趣旨に合わせた点を取り上げて申しますと、非常に大事な点でございます。そうしてその計算書類も形式的な、取締役がかってにつくったものでなしに、もとより通知状に添付していく計算書類というものはだれがつくるのかというと、これは取締役会の責任で取締役がつくるのでございますが、つくりましたものを、会計監査法人なり会計監査人としての公認会計士にこれをかける。そうして今度の新制度による公認会計士の厳正な監査を受けましたものを、今度は会社内部の監査役の監査にまたかける。監査役が五人おります場合は五人、三人おります場合には三人、それぞれ独立して責任をもって監査を行なう。そういう二重の監査をいたしまして、よろしいということになりましたものを、ことばをかえますと、内容をよく尽くしたものを事前に招集通知状に添付して、これを回していく。株主はそれを手にとりまして自分で読めるものは自分で読めばよろしいし、専門家に読ませなければ説明のわからないものは専門家にこれを読まして説明を受ける。そうして株主総会当日議題の中心となる計算書類の中身について十分これを承知、理解をいたしました上で株主総会の席に出席をする、こういうたてまえをぜひ実現させたいというのが今回の改正でございます。
 そういう手順を運びました上で行なわれる株主総会におきましては、必ずしもそうとも言えないかもわかりませんが、従来のようなずさんな形式的な株主総会と比較をいたしますと、よほど総会屋が暗躍をする余地が少ないのではなかろうか、こういうふうに考えまして、これをやっていくのであります。
 ただ先生仰せのとおりに、それじゃ計算書類をそういう慎重なものにして、事前報告をするだけで、それでよいのか、株主総会それ自体の運用は現状のままでよいのか、こういうふうにおことばをいただきますと、それでは十分でない。のみならずこの計算書類をつくってまいります取締役会の運営、取締役会の構成、これも十分のものではない。現在では十分でございません。その十分でないものをそのままにしておきまして、とりあえず今回の改正は監査制度の改正を行ないますと同時に、計算書類につきましては厳重な手順を踏みまして権威のある、中身の充実したものを、内容のわかりますものを、これを事前に提出していただきたいということを努力をいたしまして、一応これでやってみる。これを改正のお許しをいただきましたら、実現してみた上で、第二段は取締役会の根本改正、同時に、続いていたしますが、大事な、先生おことばの株主総会の構成並びに運営に関する根本問題というものを第二次に大改正をしていきたい。一挙にやってどうかという意見も出ておるのでございますけれども、一応これでやってみて、相当大きな影響を受けるものと思いますので、これをやらしていただきました上で、実情に沿うように次の根本改正をやっていきたい。前後の根本改正によりまして商法の基本的改正を完了するように持っていきたい、こういう気がまえでございます。
#49
○正森委員 いま大臣からそういう御答弁があったわけでございますけれども、しかし、一つ、二つの例をあげますと、ここに私は四月三日の讀賣の夕刊あるいは私どもの機関紙の赤旗というものを持っておりますが、讀賣の見出しによると「投機アニマル六大商社」「土地保有額二倍、木材売買益三倍」「四十七年度下期から急増」こういう大きな見出しですね。そしてそれを実際上裏づけるように大商社の利益は非常に急増しておる。たとえば買い占めで激しい糾弾を浴びた木材の関係について言いますと、四十六年十月から四十七年三月の四十四億三千万円に比べて四十七年度下期の四十七年十月から四十八年一月の四カ月だけで、二月からわざわざこうやったのですけれども、四カ月だけで何と百四十九億一千五百万円と、実に三倍の売却利益をあげておる。土地について見ると、四十七年度下期の四カ月間だけでも、御存じと思いますが、六社合計で三百四十五億円を動かして千百十二万平方メートルも買い占め、四十七年度下期の期末残高では三千七十万平方メートルを保有、四十六年度下期の期末残高千五百九十六万平方メートルの実に二倍になっており、猛烈な土地投機の状況を示しておるというように書かれておるわけですね。そういうことのために利益が異常にふえてきたというのは当然でございまして、たとえば三井物産などは、これは前年のほぼ二倍、二百十四億三千七百万円の所得をあげた、あるいは所得の伸び率が最も大きかったのは丸紅で、二・六八倍伸びておる、こういう状況なんです。そうしますと、株主の立場から言えば、企業がよくもうけてくれた、おれたちの配当は多くなる、あるいは社内留保は多くなる、それこそ特定引き当て金が多くなる、大蔵省のおかげだ、こう言って喜ぶかもしれませんけれども、それによってたとえば全建労の労働者などは木材が来ないから仕事ができないといって、丸紅に波状的に陳情、抗議したことは周知の事実。そうなれば、一体企業は何のためにあるのか。もちろん企業は存立に必要な限度内においてこれは利益をあげなければならないかもしれませんけれども、企業といえども、結局は社会のためにあるのだということを考えますと、現在の状況というのは、商法を改正しただけでは事が足りるわけではなしに、たとえば買い占め、売り惜しみについて自由民主党は案をお出しになりましたが、あれは買い占め、売り惜しみそのものに対して罰則はない。そういうものをもっときびしくする必要があるのではないか。あるいは国会の中に委員会を設けて十分な監督権を持つようにしなければいけないのではないかというようなことを思わざるを得ない。商法の一部をいじくって、あとで聞きますけれども、監査を少しくらいきびしくしたように見せかけても、それでこのような事態を防ぐことはできない、私どもはそう思いますけれども、大臣は将来の展望としてあるいは現在の展望としてでもよろしいが、御見解を承りたい。
#50
○田中(伊)国務大臣 わが国経済界で問題になっておりますような事柄、これは商法の改正で防止をする役目をつとめ得ないのではないかという御心配、同様の心配が私にもあるわけです。しかしこの商法の改正をお許しいただきます場合には、企業がいやしくも売り惜しみ、買い占め、反社会性のある行動をとろうといたします場合においては、ある程度は押え得る、これはもう間違いなく押え得る、こう考えてこういう改正のお願いをしておるわけでございますが、具体的にどんな点でそれができるのかと申しますと、いままでのような収支の帳じりと金銭の額だけを銀行の預金高と合わしていくという、そういういわゆる会計監査にとどまらないで、今度の監査役には業務監査を行なわしめる。その業務監査を徹底して行なわしむるために監査役に権限の強化をはかっておることは御承知のとおりでございます。取締役会に出席して所見を述べる、言うことを聞かない場合においては差しとめ請求権を持たしてやる、それを聞かない場合においては裁判所に申し立てをいたしまして、仮処分の申請もできるようになることもちろんでございます。そういう取締役会に出て強力な発言をする、処置をするようなことができるようになっておりますという結果、私の申しますように企業が反社会性の行動をとることがむずかしくなってくるのではなかろうか。どのような大きな会社でも取締役会を経ないでやみで買い占めを行なうということはございますまい。必ず取締役会で問題となる。その取締役会には監査役が出て意見を述べる、反社会性のものはチェックする、こういう行動がとれることになるわけでございますので、この商法改正のみでは万全ではないではないかという先生のおことばは、私もそのとおりだと存じますが、商法のこの改正は相当程度お役に立つのではなかろうか、またお役に立つようにこの運営を行なわしめなければならない。問題は、監査役にそういう重要な仕事のできる人を得ることが困難ではなかろうかということは、私も案じておるところでございますが、これは時間をかけて努力をいたしますれば人を得ることもできるのではないか。監査役に人を得れば、いま提案をしております商法の改正のお許しをいただきました上は、相当程度企業の社会性を確立する上にお役に立つということを実は私はたいへん信じておるのでございます。ぜひどうかひとつ御審議をお願い申し上げたいと思います。
#51
○正森委員 大臣がいろいろ後半にお答えいただいたのですが、私は質問の順序を少し変えて、監査でいわゆる業務監査もできるようになっておるのだ、これで安全とはいえないけれども、少しはよくなるだろう、審議を十分に行なってほしい、つまり可決してほしいということですな、という御意見をおっしゃいましたけれども、しかし大臣にははなはだ申しわけないのですけれども、そう楽観していいものであろうかという危惧を禁じ得ない。
 そこで、それについて若干伺いますが、大蔵省が来ておられますけれども、公認会計士の方々――私は弁護士でございまして、弁護士もいろいろ自戒せなければならない問題がある。決して弁護士がりっぱであって公認会計士はどうとか、そういうことを申すわけではございませんけれども、公認会計士の方々が証取法上の監査等をなさって、その上で一定のあやまちがあったということで処分ないし注意をお受けになった件数、それはきのう申しておきましたが、おわかりになりましたら内容をお話しください。
#52
○白鳥説明員 公認会計士の制度ができましてから現在まで、証取法上の監査に関連して公認会計士が公認会計士法違反によって行政処分を受けた実績でございますが、これは公認会計士個人としての公認会計士五十四名と監査法人二法人、合わせて五十六件でございます。その内容を申し上げますと、最も重い処分であるところの登録抹消の処分を受けた会計士が三名ございます。それから業務の停止、これは一定の期間業務停止になるわけでございますが、この処分を受けた公認会計士が四十六名おります。それから戒告の処分を受けた会計士が五名、こういうふうになっております。
#53
○正森委員 いま白鳥課長から御説明がありましたが、私が手元に持っております資料、昭和四十五年十月二十一日の朝日新聞の「公認会計士」という連載記事があります。それを見ますと、「粉飾決算を発見できなかったため登録を取消されたものが二人いるほか業務停止処分などの処罰を受けたのは四十四人、誓約書をとられたのは五十一人、処分検討中が二十二人もいる。」こういうぐあいに書いてあるんですね。そうすると、昭和四十五年十月二十一日でさえ、計算してみるとすでに百数十名おる。いま五十数名とおっしゃいましたが、その中には誓約書をとるとか、そういうものは入っていないと思うのですね。登録取り消しと業務停止処分ということだけだと思いますが、誓約書をとられる――弁護士で誓約書をとられるということはめったにないんです。だから誓約書をとられるというものまで入れればどのくらいありますか。昭和四十五年でさえこれだけあったんだから、現在までにはもっと多いはずなんです。
#54
○白鳥説明員 誓約書をとられました者が、現在まで八十九名でございます。
#55
○正森委員 公認会計士は、現在何人おりますか。
#56
○白鳥説明員 現在四千五百六十名おります。
#57
○正森委員 四千人おられて、暗算しますと、大体、ざっと百五十人くらいですか。というのは約四%ですから、それほど大きな数字ではないといえるかもしれませんけれども、しかし弁護士もいろいろ問題を起こしますが、いま一万人をこえておると思いますけれども、それの四%、約四百ないし五百人が数年の間に処分を受けるというようなことはないと思うのですね。それがこういう処分を受けておる。しかも四十五年三月十一日ですかを見ますと、監査法人が初めて処分を受けたということで、名前は名誉のためにあげませんけれども、芝電気の監査証明にあたり虚偽の証明をしたという、非常に古い監査法人ですね、十八も監査会社を持っておった。法務省からいただいた資料によると、おそらく最もたくさん持っておるところだと思いますが、それが法人自体が戒告を受けて、そこの筆頭と見られる公認会計士は三カ月の業務停止を受けておる。こうなると、個人としてでも非常に問題がある。しかも、監査法人ということで共同でやるということになれば、これは防げるかと思えば必ずしもそうではないというようなことを考えますと、これは専門の公認会計士だから、あるいはその公認会計士が何人か集まっている監査法人だからということだけでは、問題が解決しない社会的原因があるのではないかというように私どもは思わざるを得ない。これは公認会計士さんが悪いんではない。そうさせるような社会的原因があるんではないかというように考えますが、その点についてどうお考えになっておりますか。法務省でも大蔵省でもよろしい。
#58
○白鳥説明員 確かに、従来、企業の中で粉飾決算に対する罪悪感が薄かったというような事実がございます。特に昭和四十一、二年ごろまでは、そういった傾向が非常に強うございました。公認会計士もそういった一般的な社会の考え方と申しますか、そういうものについ引きずられまして監査をおろそかにしたといいますか、甘くしたというような事実があったかと存じます。したがいまして、私ども監督官庁といたしましては、そういうようなことのないようにたびたび注意を発しているわけでございまして、特に山陽特殊鋼の事件が起こりました昭和四十年の事態を非常に重視いたしまして、四十一年に厳正なる監査の実施についてという通達を行なっております。またその後、四十三年にも、重ねて公認会計士協会に対して監査の徹底を通達しております。さらに昭和四十六年に行なわれました証取法の改正によりまして、会社の責任者のみならず、公認会計士あるいは引き受け証券会社等についても民事責任を課すといったようなことで罰則を強化いたしております。この公認会計士法の改正が行なわれましてからは、会社の事業経理に対する姿勢も非常に改善されましたし、公認会計士の監査に対する責任観念というものも徹底してまいりまして、最近においてはこういった処分を受けるという事例は著しく減少しております。
#59
○正森委員 最近においては著しく減少しているということでございますが、少なくとも誓約書の点については昭和四十五年十月二十一日には五十一人と報告されたものがいまあなたの御報告では八十九。だから二年半ほどの間に約三十名ふえているということは決して減少しておらない。非常に重い処分を受けたものは減少しておるけれども、しかし誓約書をとられる程度のものは減少せずにむしろ多くなっておる。それはむしろ処分に手心を加えたのではないか、そういうことは言えないというようにおっしゃるかもしれませんから御答弁は要りませんが、そういうように勘ぐらざるを得ないというようなことかあるわけですね。そこで私は、田中法務大臣も同業で、私の何年先輩ですか二十年は先輩ですね。弁護士として二十年は先輩で大臣の苦心話も伺いましたが、非常にすぐれた弁護士であります。だからお世辞を言うわけではありませんけれども、弁護士も決して公認会計士と比べて人間として飛び抜けてりっぱであるとは言えないですね。弁護士にも誘惑はある。しかし弁護士がなぜ処分をされることが少ないのであろうかといいますと、弁護士というのは一方の代理人となる。しかし裁判ですから刑事事件の場合はそこら辺に検察官も優秀な秘書官もおられるけれども、こわい検事さんが弁護士は証拠隠滅をしないか、いろいろなことをちゃんと監視してそして法廷でやり合うわけですね。民事の場合でも原告があれば被告もある。それには双方弁護士がついておる。だからおかしな訴訟指揮をすれば弁護士なら大体わかるわけですね。しかもその上に裁判官がおられて、この弁護士の出してきた証拠はどうもおかしいというのは見る人が見ればわかりますね。ですからわれわれは幾ら何でも恥はかきたくないということで、ここをちょっとごまかせば裁判に勝てるなと思うことが間々あっても、弁護士として数十年間やっていくためにはそういうことはしてはいけないということで逆に依頼者をしかりつける場合もありますね。それは決してわれわれが非常に高潔な人格者ということじゃない。田中大臣は別です。高潔な人格者でしょう。われわれごときものも相手にも弁護士がついておる、検察官がおる、しかもそれを裁判官が一審、二審、三審と判断される。おかしなことをやったんではとんでもないことになると思うから弁護士としてあまりなことはできない。これがほんとうなんですね。ですから弁護士会の意見書に弁護士を監査役にしろというのがございますが、私は同じ弁護士として、たとえ弁護士として優秀な人であっても監査役ということに取り込まれるならばはたして厳正な立場をとり得るかどうかということには問題がある。公認会計士を悪く言うわけではございませんが、りっぱな方もおられるでしょうに、こういうように処分が出てくるというのは、やはり企業に対して依頼を受けてそこから報酬をもらってそして報告をする。大蔵省は目を光らしておられるでしょうが、私ほどは目が大きくないというように思いますし、まして対抗してここをやっつけて裁判に勝とうとかそういう人はいないし、大蔵省は忙しいから全部調べられるわけではない。裁判官は判決を書かなければいけないのだから、証拠の評価あるいは訴訟指揮について厳重に見なければならない。そういうことがないからこういうことが起こってくる。これは弁護士の立場から見てそうだと思うのです。そうだとすれば、そういう制度のもとで公認会計士あるいは監査法人は専門家なんだから、それの集まりなんだから、これにまかせておけばそれはけっこういいだろうというようなわけにはなかなかまいらないのではなかろうか、そう私は思うのですね。論より証処、ここに新聞記事がありますけれども、こういうように書いているのですね。四十五年十月二十一日の朝日新聞、これはS公認会計士が書いておりますが、「公認会計士なんていうものは、風にそよぐアシのようなもの。会社が気に入らなければ、自由にクビにできるんだから…」こう書いてある。「一社持てばそれだけで年間三百万円近くの収入があり花やかな職業にみられている。」だからその会社のお得意を失いたくない。しかも公認会計士の数に比べて証取法上の監査法人というのは少ないですね。大蔵省の統計では大体〇・六ということになるとどうしても買い手市場になるということで、「会社がおかしなことをやっているとは感じていたが、会社側が大丈夫というと、それ以上なにか調べにくいふん囲気だった」これは四十三年十一月の決算で粉飾決算を見のがして業務停止九カ月という処罰を受けたHさんという人の発言だということになっているのですね。これは公認会計士自身がこういうことを言っておられる。
 それだけではない。これは昭和四十四年十月三十日の産経新聞に投書が載っておる。東京都世田谷区の住人です。少しあれですけれども、短いですから読ませていただきますが、こう書いてある。「会社の粉飾決算が、あとを断たない。そしてそれが発覚するたびに、その会社に委嘱されていた公認会計士が、大蔵省からおしかりをうけたり、資格を取り消されたりする。公認会計士が、委嘱されている会社の監査報告で、不適正との判定をくだすことは、きわめてまれであり、むしろ例外に属する。そのはずである。その会社から報酬をもらっている以上、おかかえ会社の致命傷になるような経理上の欠陥や、やりくりを、公に報告するはずはあるまい。それが人間というものである。むしろ、委嘱会社の営業上の弱点や、やりくり決算をうまく隠す手だてを、頼まれることがあるだろうし、そうした場合、専門的知識を役立てて協力する場合だってあるだろう。たまたま発覚するのは、会計士が未熟だとか、バカ正直だとかいう場合なのかも知れない。そういう会計士は、商売も繁盛しないということになろう。会計士制度が、会社側のお雇い方式になっている現制度の下では、この制度によって会社経理が一般にガラス張りになるということは、たいして期待できないのではなかろうか。むしろ、隠し方が巧妙になるともいえないだろうか。」こう言うておる。これは非常に失礼ですが、私の意見ではない。これは新聞にもあるとおり、名前は申しませんが、ある投書家がこう言っておられる。これは少しきついことばかもわかりませんけれども、弁護士の方向像と比べてそれはそうなるある程度の社会的原因があるということを私は指摘したかったわけです。
 そこで、そういうような点をそのままにした商法の改正を考えてみますと、せめて公認会計士が会社側との契約というだけでなしに、戦判所が関与してそして費用も裁判所が取り立てて払うとか、あるいは公認会計士さんの中で問題はあるかもしれませんが、弁護士会のような相当の自律権威を持って、あれを監査してくれといえばある地域では一カ所で受けて順番を指名する、こうして恣意的に了承したというように言えないようにする。もちろん税務代理をする場合は別でございますが、少なくとも監査についてはそういう方法を考えるとかいうようにしなければ、公認会計士だって人間でいろいろつらいことはあると思うのですね。したがってそれについて法務省あるいは大蔵省は何らかお考えを持っておられるかどうか。それともこういうように処分が出てきた実績があり投書があるにもかかわらず、公認会計士は神のごとき人であって、いかなる誘惑にも屈せずいまの日本を救うために乃公出でずんばということで安心しておられるかどうか。その点を伺いたい。
#60
○白鳥説明員 おっしゃるとおり、公認会計士は神さまではございません。しかしながら、会社が確かに公認会計士に対して監査報酬を払っているから公認会計士が会社の言いなりになるのではないか、こういうようなお考えは必ずしも当を得たものではないと思います。むしろこれは会社側の姿勢といいますか、基本的な考え方にもつながることでございますが、本来公認会計士監査というものは、会社の経理がこれだけ正しいものなんだ、りっぱなものなんだということを明らかにして会社の社会的な評価を高めるためのもの、それに対する報酬だ、こういうことが、これは理想論とおっしゃるかと思いますけれども、こういう方向に持っていく目的のものであると存じます。
 なお、公認会計士が会社の言いなりになって十分な監査意見を表明しなかったというような例は、これはごくわずかのものがそういうふうに表面に立って議論される、批判の矢面に立たされて、大多数の公認会計士は非常にしっかりとした監査をやっているのではないかと思います。特に重要なことは、この公認会計士が会社の行なった経理の結果を見て、それがけしからぬといって不適正の意見をつけるということだけが公認会計士の仕事ではございませんで、監査の過程において、会社の相談をいろいろ受けて、こういう点については、これは自分の専門的な知識からこういうふうに経理するのが正しいのだというような指導をいたします。こういう公認会計士の指導によって会社の経理が、内容が向上してくる、こういう面があることをひとつお見忘れないようにしていただきたいと存じます。
 なお、諸外国におきましても、公認会計士の監査報酬は、これは自由契約のもとに会社が公認会計士に対して監査報酬を払うという、いかなる国、どの国によりましてもそういう制度になっておりまして、そこから弊害が出た――もちろん一部の不心得者はあると存じますが、一般的にそういう制度が弊害があるといったような声は聞いておりません。
#61
○正森委員 いま大蔵省が非常に理想論をお述べになった。お金を握っておるところにしてはどうも理想論過ぎるのじゃないかというように思いますが、実際にそれはいまの投書をした人の意見は少し極端な意見かもしれませんが、私も弁護士をやっておりまして、やっぱり依頼者というのはかわいいですよね。刑事の場合なら、悪いことをした。しかし、法のもとに許される限りは、これは正当防衛で無罪にしてやりたい、あるいは刑の免除にしてやりたい、せめて執行猶予をつけてやりたい、こう思うのはあたりまえの話であって、これは田中大臣もよく御経験のあるところ。民事でも、これは明らかなうそをついて勝つというようなことはできませんけれども、法律技術的に微妙な事件の場合は、弁護士の活動によって勝訴、敗訴分かれる場合があるというようなことで、かわいいものですね。その場合でも弁護士は、相手方があるから、それが裁判所の前で検証されるからうかつなことができないけれども、公認会計士の場合は、大蔵省は監査されるでしょうけれども、それはきわめて弱いものだ。だからやっぱり問題があるんじゃないかということを言うておるので、それについて会社側が、その監査を受けて専門的な技術でやってもらって、非常に教示を受けてけっこうなことだと思っているかといったら、思っておらないのですね。現に、昭和四十五年十月二十三日、その朝日新聞にはこう書いてある。「監査を受ける会社側の考え方も変えなければならないようだ。公認会計士の報酬は経団連との間で協定されている。基本報酬は半期で一部上場が五十万円(二部三十五万円)執務報酬は一日あたり責任者二万円、会計士一万二千円、会計士補七千円となっており、一社監査を持つと年間平均三百万円の報酬がはいる。物価高のため協会で」――というのは公認会計士協会ですね、「値上げを交渉しても経団連側は「企業経営者は、監査を受けても、利益にもならず逆に値下げをすべきだとの考え方が多い」と拒否する。」こう書いてあります。「監査を受けても、利益にもならず逆に値下げをすべきだ」、これがいまの会社の考え方です。もうかるなら木材でも何でも買い占める。しかしりっぱな公認会計士の監査を受けても、利益にもならず、監査についての費用を出すだけだ、そんなもの上げられるかという不届きな考え方です。そんな会社を相手にして公認会計士、よほどスーパーマンでなければなかなかできないですよ。その実情を考えずに、いやいや、りっぱな御制度でございますとかいうて大蔵省の役所の中でちんとおさまっておったんでは、これはなかなか世の中はよくなりませんよ。だからあなたは課長さんだから、愛知蔵相じゃないから責任のある答弁ができないだろうと思って、きょうは初めからそういう気持ちであなたに聞いておるけれども、しかし上司に対してそういうことを言うておきなさい。そうでなければ、なかなかこんな程度の商法改正では世の中はよくならない、こう思います。法務大臣にもそのことはぜひとも御記憶にとどめておいていただきたいということを、私として申し上げておきたいのであります。
 そこで委員長、お疲れのようですけれども、まだもうしばらくありますけれども、続けてよろしいか。
#62
○中垣委員長 どうぞ。
#63
○正森委員 そこで、それならば公認会計士さんの監査が一定の限度内で十分に行なわれるだろうかというように考えますと、大臣は、今度の監査役あるいは公認会計士あるいは監査法人による監査、五億円以上は義務づけられていますね。それは業務監査までできるんだというようなことをいろいろおっしゃいましたが、その業務監査の権限は違法性の監査のみであるのかあるいは妥当性の監査にも及ぶのかというのは、学説上争いのあるところでございます。そこで、いま大臣がこう胸を張ってお答えになった見地から見て、期待される法務省のホープ、会計監査制度の改正というのは、取締役の業務について違法性の監査だけに限定されるのか、それとも妥当性の監査にも及ぶのかという点について御見解を承りたい。
#64
○川島政府委員 改正法によりまして監査役の監査権限が会計監査から業務監査に拡大されました場合に、その拡大された業務監査の権限は妥当性の監査にまで及ぶのかあるいは違法性の範囲にとどまるものかという御質問でございます。
 この点につきましては、先般大竹委員からの御質問もあったわけでございますが、商法の規定の上では必ずしもその点を直接にはっきりとはいたしておりません。しかしながら各個の規定を検討いたしてみますと、それはおおむね違法性の範囲にとどまるということになろうと思うわけでございます。この点につきましてはいろいろな考え方があることは御指摘のとおりでございますが、たとえば差しとめ請求でありますとか、あるいは株主総会に対する監査役の報告義務、二百七十五条とか二百七十五条ノ二といったような規定でございますが、法令に反しあるいは定款に反するというようなことが要件になっております。それから「著シク不当ナル事項」ありたるときというような表現のあるところもございますけれども、これは取締役が著しく不当な行為を行ないました場合には、会社に対する忠実義務の違反というような問題を生じますので、そういう意味におきまして理解できるわけでございまして、広く申し上げますと、やはりこれも法令違反の範囲に入るだろう、そういうふうに考えます。したがいまして、たとえば二百七十四条には「監査役ハ取締役ノ職務ノ執行ヲ監査ス」と単純に書いてございますけれども、個々のいろいろな権限、規定と照らし合わせて考えますと、監査役の監査の限度は違法性の監査の範囲にとどまるであろう、こういうことがいえると思います。
#65
○正森委員 そこで私から伺いたいと思いますが、学説を見ますと、大体大きく分けて三説、あるいはこまかく分けると四説くらいになるというふうに思われます。第一説は、これはいま川島民事局長のおっしゃったように違法性の監査に限られるのだというような考え方、これはむしろあなた方が要綱の第一、五ないし八というところでおっしゃっておられます。この説については学者の中でも、私勉強しておりませんが、味村さんなどはほぼ同じ見解ではないかというふうに思います。第二説としては、違法性の監査を法律上の職務ないし権限としているのが原則であるが、妥当性の監査は、法律上の職務ではないけれども、妥当性について意見を述べることは法律は禁止していないから、事実上やることは差しつかえないというのが二番目の説でございます。東大の矢沢さんなどはこれに近い意見だそうであります。あるいはさらに広く解釈される方もありまして、これは肯定説で、監査役は取締役会に出席して意見を述べることができる。これは改正案にございますね。これは限定を付せられていないから取締役の職務遂行の妥当性についてはもちろん、会社の経営方針その他あらゆる面について意見を述べることができる。したがってそれに必要な限度で業務監査ができるのだというような見解であります。これが一番広い。第四説としては、田中誠二一橋大学名誉教授。これは妥当性の点についても監査はできるけれども、妥当性の点を二つに分けて、第一は経営政策的または能率を目標とするもので、積極的に一定の営業活動または生産活動をすべしという前向きのものだ、これについては消極だ。しかし第二種類の、一定事項の当、不当を調査して不当な点がないかを明らかにする防止的なもの、これは違法性の範囲にとどまらなくても妥当性の範囲についてもできるのだということをいっておられるのですね。だからこまかく分ければ四説ある。三説だと見てもいいと思いますが、そういう説がある場合に、私はあまり勉強はしておりませんが、「法律のひろば」第二十三巻第八号、一九七〇年の八月号、これに田邊明法務省参事官が出席して御高説を述べておられる。これはたまたま私どもが学習をいたしますと、一生学習しなければならぬですから学習をいたしますと、これはほぼ第一説に近い適法性の監査というふうな立場で権限を行使することになるだろう、こういうような結論ですね。結論部分だけを読んだのですが、これは御記憶にあると思いますが、となっておるわけであります。そこで初めに戻るわけですが、大臣が非常に意気込んでこういう期待をするのだと言われる趣旨から見れば、私はこれは何も今度の業務監査についてすべて賛成しているわけじゃありませんが、かりにそういうものが設けられるとすれば、違法性についての監査だけではなしにある程度妥当性についての監査というものもできるのでなければ、これは商法が期待しているような、あるいは少なくとも大臣が期待しておられるようなそういう効果はあげられないのではなかろうか。その場合に、学説の中に四説あり、むしろ法務省の意見は少数説であるというように拝見できるにもかかわらず――これは何も共産党の学者がいっているのじゃない。ほんとうに保守的な学者でさえそういうふうに言うている場合に、なぜ違法性の監査だけだという見解を立法者の意思としてお答え願わなければいかぬのか、その点を伺いたい。
#66
○田邊説明員 お名ざしでございますから私からお答えいたします。
 先生御指摘のとおり、私が答えましたこの法案の考えは、違法性の監査、私どもは適法性の監査とこう申しております。その適法性の監査と申しますのは、取締役会がきめることあるいは取締役の執行する内容について、それが法令、定款に違反するかどうかを監査する、こういう趣旨でございます。ただ、法令違反の中身に、先ほどおあげになりました、第四説でございましょうか、田中博士がおっしゃっておられる当、不当の問題を実は含んでいる。と申しますのは、先ほど局長が読み上げました条文の中にも、たとえば総会報告事項の中で、「著シク不当ナル事項」あるいは監査報告書の中で、「著シク不当ナルトキ」というような表現がございます。これは実はいわゆる妥当性の監査の対象となる意味での当、不当ということを基礎にいたしておるわけですが、その当、不当が著しく不当だという場合には、商法上の考え方といたしましては取締役が忠実義務を負担している、民法的には善管義務を負担している、その忠実義務に違反する場合である。もう一度申しますと、著しく不当なる業務執行をやった場合には、それは忠実義務規定に反するという意味での違法性を帯びるのである、こういう意味合いを持たしております。したがって一般的に当、不当の問題を取り上げた場合に、これは調べてみない限り、それが商法のいうような著しく不当かいなかということはわからない。そういう意味では、ちょうどこの当、不当の接点が妥当性と適法性の監査の交わり合う場面だと私どもは考える。そういう意味で監査役は、原則は適法性の監査を担当いたしますが、妥当性に関しても、それが法令違反になるような著しき不当性を帯びるかいなかについて監査すべきであり、また権限を持っている、このように考えておるわけでございます。
#67
○正森委員 さすが田邊さんだけあって非常に詳しくお述べになりましたが、しかしそういう御説明を伺っても、なおかつ、その接点になるというような御説明でなしに、田中誠二博士の説をとるということの実益はあるというように思うのですね。田中氏自身がいうておられるのですね。その部分を少し御参考までに申し上げますと、なるほど不当と認められるものは二百五十四条の二の取締役の忠実義務違反といえる場合が多い、したがってそれは法令違反でもあると、こういうことですけれども、「著しく不当と認められるというのは、多くの場合には、取締役の忠実義務違反に該当するとしても、この場合には、監査役は第二百五十四条の二違反であることを根拠づける必要はない」、つまり法令違反だけでなしに、当、不当も妥当性について判断できるというのであれば、これは二百五十四条の二違反だから、だから私は調べさしてもらうんだ、意見を述べるんだということをいわなくても、その見解上著しく不当だということをいえばそれで足りるということになるんで、監査役が何も公認会計士または弁護士、法律専門家だけでなしに――何しろ百万もあるのですからね、そして商法は一般法なんですから、そういうふうな点も考えますと、適法性の監査だけだというように立法者の意思としておっしゃらずに、そこを余裕を持たして、せめて田中誠二博士の積極的な、経営政策的あるいは生産活動的なものではないにしても、一定事項の当、不当という妥当性は監査できるし、業務監査をやっていいんだというようにこの国会の審議の場でお述べになっておくということが非常に、公認会計士さんにしろ、あるいはしろうとの監査役にしろ、やりやすくなるのではないかというように思うので、あえて尋ねるわけです。それは「赤旗」に書いておるんじゃないんで、りっぱな学者がいっておられる。しかも中正妥当ですかな、田中さんのお好きな、右に片寄らず左に偏せずという人が言っておられるのですから、それで私はあえて聞くわけです。なおかつ、いやいや、適法性のあれだけだ、おれは「法律のひろば」にいうたんだというように固執されるのか、あるいは、改むるにはばかることなかれということなのか、その辺を伺いたい。
#68
○田邊説明員 おっしゃるとおりの考えを私も持っております。
 ことばにこだわっているわけではございませんので、先ほど違法性ということについて適法性ということばを使いましたその趣旨が、実は先生のおっしゃっていることと合うわけでございまして、原則は、適法性の監査というものは、当、不当の問題に関しては、その当、不当がいわゆる著しき不当に当たる場合に初めて適法性の範疇に入っている、こういう趣旨で申し上げた。しかもそれを結論づけるためには当、不当の内容を見ざるを得ない、そういう意味での妥当性の監査というものは当然含まれていると考えるわけでございます。
 それから取締役会の意見陳述に関しては、学説も述べるとおり、積極的に適法性の意見に限定する趣旨の条文は置かれていない。その意見は自由に述べる内容のもので差しつかえない、こう考えております。
#69
○正森委員 非常に含みのある答弁で、田中誠二説に同意するかのごとく、若干足踏みするかのごとくでございましたが、同姓ですが、田中法務大臣はいかがお考えになりますか。
#70
○田中(伊)国務大臣 私はこういうふうにこれを解釈をしておる。
 監査役の大事な仕事は、業務監査をやるという権限を持たすと同時に、取締役会にあらわれて所見を述べる、この所見を述べるということに非常に重要な意味がある。企業に社会性を持たすというような点から申しましても、意見を述べること自体に非常に重要な意味がある。何しろ、言うことを聞かざれば差しとめ請求をするんだ、それでもいやというならば裁判所に申請をして仮処分をさえするんだ、こういう権限が持たせてあるわけでありますから、そういう権限を背景に持っておる、権限を自分がみずから掌握しております人の所見というものは聞かねばならぬ、聞かすべくいろいろ所見を述べることができるように制度がしてあるということに重要な意味があるので、あらゆる意見を述べていい。違法性であろうが適、不適であろうが、意見はしっかり述べて――ただその意見を強制するという場合、たとえば聞かざれば差しとめ請求をするんだ、聞かざれば裁判所に申請をして仮処分の処置をするんだという強制力のある処置をいたします場合には、これは違法性、法令または定款違反というものがなければ成り立たないのではなかろうか。成り立つのか成り立たぬのか、わかったようなわからぬような、まん中のできごとというものも、実際の問題にはずいぶんあろうと思います。あろうと思いますから、大いに意見を述べていいが、さていよいよという伝家の宝刀を抜くときには、いま私が申しますように法令または定款の内容に限られる、限られざるを得ない、こういうふうに判断をして、いま事務の申しておりますことと私の言っておることとあまり違わぬですね。違わぬことなのでございますが、そういうふうに解釈をしてそして運営をしていきたい、こういうふうに考えております。
#71
○正森委員 いま田中法務大臣から御答弁があったのですが、それはそれでけっこうで、私はよろしいと思いますが――よろしいというのは田邊参事官との関係でです。しかし若干、私の質問の趣旨が、私の質問のしかたが悪かったのかもしれませんが正確に御理解願えていない点がある。
 それは、大臣がおっしゃった、たとえば差しとめ請求ですね。聞かなければ仮処分までするという強大な権限は、改正商法の二百七十五条ノ二に「取締役ガ会社ノ目的ノ範囲内ニ在ラザル行為其ノ他法令又ハ定款ニ違反スル行為ヲ為シ之ニ因リ会社ニ著シキ損害ヲ生ズル虞アル場合ニ於テハ監査役ハ取締役ニ対シ其ノ行為ヲ止ムベキコトヲ請求スルコトヲ得」とこうなっておるのですね。これは明文の規定があり、当然のことです。
 私が申しておりますのは、それは条文上こうかもしれないけれども、差しとめまでいかない。差しとめるためには、悪いのをそのものずばり調べておるというだけではだめなんで、これはきょうは公安調査庁に質問しているわけじゃありませんけれども、破防法関係では、イモ掘りと称して、イモを掘り出すためにはまわりの土をごそっと掘らなければイモは出てこない。共産党を調べるためにはまわりのやつも調べなければだめだ、こうおっしゃっているのですね。またこれはゆっくり聞きますけれども、そういった問題について、差しとめをするようなそういう違法なものであるかどうかを見るためには、やはりまわりのイモを掘らなければならない。それが業務監査であって、その業務監査については、適法性だけでなしに、一定の妥当性というものについても監査でき、報告を求める、あるいは帳簿を調べるという権限がなければ、二百七十五条ノ二の伝家の宝刀を抜くことすらできないのではないか、こう聞いておるのです。したがって、それについて大臣はどうお考えになるか、四説のうちのせめて田中誠二説ぐらいまではお行きになるのか、いやいや、川島、田邊という有能な事務官僚がものを書いたりしたんだから、適法性ということにとどまるんだ、こうお思いになるのか、そこの点を大臣として、政治家として、お聞きしたい。
#72
○田中(伊)国務大臣 私は、先ほど御説明になった田中博士のお説に近い考えを持っております。
#73
○正森委員 大臣としてはそこらまでお答えになるのが限度だと思いますけれども、これは実際上もし法案が通過した場合に、監査をなさる方の指針にやはりなりますからね、立法者の意思として。ですから、適法性ということだけにきちっと限定しないほうがいい場合も起こり得ると思ったから伺ったわけです。
 それで、こまかい問題なのですけれども、今度の改正商法によりますと、監査役がそういう権限を持ってきたことにかんがみて、二百五十九条ノ二で、取締役会を招集するためには、一週間前に監査役に対しても通知を発しなければならないことになっておりますね。そこで、もしその取締役がサボりまして、監査役うるさいというようなことで通知をしなかったというような場合に、その取締役会の決議の効力はどういうぐあいになりますか。
#74
○川島政府委員 監査役に通知をしないで取締役会を開いたという場合には、改正商法の規定によりますと、当然通知をしなければならない義務を怠ったことになりますので、その取締役会は違法な手続によって開催された。問題は、その違法な手続が取締役会の決議の効力に影響を持つかどうかということでございますので、これは解釈問題になってまいります。一応の考え方といたしましては、原則として無効であろうというふうに思われるわけでございます。ただ、通知をしなかったにかかわらず監査役がその取締役会に出てきたとか、そういう例外的にその瑕疵が治癒されたと見られるような場合もないとはいえないと思いますので、事情によって若干留保はつけなければならないと思いますが、原則といたしましては先ほど申し上げましたように、その決議は無効であろう、こういうふうに思います。
#75
○正森委員 そうしますと、学説を若干調べてみますと、この規定を効力的規定と解するかあるいはそう解しないかということで結論が違ってまいりまして、有効説、無効説あるいは制限無効説というようなのに、大体三つぐらいに分かれる。中には知恵のある学者がおりまして、おれは厳格制限無効説だというようなことを言うておられる学、者もいる。しかし、原則としては無効である。しかし、行為と第三者との関係というものは当然起こってまいりますから、それはそれで権利乱用または信義誠実の原則の法理によって、そういう不都合は裁判所で救い得る場合があるけれども、たてまえとしては無効である、これが立法者の意思だ、こう伺ってよろしいか。
#76
○川島政府委員 大体いまお話しになったとおりであろうと思いますが、ただ、第三者との関係ということになりますと、これは代表取締役がその代表権に基づいて第三者との間に行為をするということになりますので、その行為の効力と、執行機関の内部的な意思決定である取締役会の決議とがどういう関係を持つかということになりますと、別の問題が一つ入ってまいりますので、簡単にはお説のようになるかどうか疑問であろうと思います。
#77
○正森委員 そうすると、無効説だ、こうすなおに聞いておいていいわけですね。
#78
○川島政府委員 取締役会の決議としては無効だ、こういうように申し上げられると思います。
#79
○正森委員 そうすると、対外的にいろいろ起こってまいりますね。いまちょっとこっちを見ていたので、聞かなかったのですが……。
#80
○田邊説明員 局長が答えましたのは、代表取締役が取締役会の決議に基づいて行為を執行する場面の問題は別であろう。具体的に申しますと、おっしゃるように、監査役に通知なくして当該取締役会で新株の発行を決議したような場合、これが無効になるという原則をとりますと、新株発行は、実は取締役会の決議なくして行なったということになるわけであります。これは最高裁の判例も申しますように、第三者の保護、特に株式の流通安全を保護する趣旨から、当該発行そのものには効力の影響はない、こういう趣旨のお答えをしたわけでございます。
#81
○正森委員 わかりました。
 時間の関係で若干はしょりますけれども、いま、いろいろ業務監査が適法性の範囲内かどうかというような点でお聞きしたのですけれども、結局大臣が最初におっしゃいましたように、今度の監査制度の強化といいますか、それはやはり取締役がいろいろ社会的に見て不都合な点がある、あるいは粉飾決算といいますか、逆粉飾決算といいますか、そういうようなのについても防止する目的を持っている、こういう御趣旨だと思うのですが、他方、累積役票制度、これは御存じだと思いますけれども、それは今度全部排除できることになっておる。いままでも実際上経団連関係の大きな会社では、法務省当局からの説明によりますと、一社ぐらいですかを除いては、実際上累積投票制度は発動されたことがないというように伺っておりますから、いわゆる企業ベースで実効性はいままでなかったというようにいえるかもしれませんが、しかし、ものごとは、監査役がいろいろ横から監査する、それが実効性を持つ場合は、取締役会の方針それから実践、考え方と全く同じの場合には、これは監査役は一生懸命御苦労なさっておるけれども、目に見えた効果としてあらわれてこないわけですね、その場合に無意味だというのじゃありませんよ。実際に、社会的にああおったな監査役が、よくやったというのは、やはり見解が違う場合にほかならない。そうだとすれば、外側から監査役がいろいろ異なった意見を言う、あるいは差しとめをするという前に、取締役の中に、社長の言うままでなく、少数の株主あるいは多数派と異なった意見を有する者が進出し得るような――いままでだったら、二五%以上の株式を持っておる者は、これは累積役票制度をやめてしまうことを阻止できるわけですね。だから、そういうものはやはり残しておくということのほうが、これは取締役会の論議の中で少数意見が出てくる、そしてそれを説得してこれは多数意見でやる。そうなれば、少数取締役は、いやでもおうでも自分が経営責任者ですから、どういうぐあいに行なわれるか監査しておるわけですから、なかなか悪いことはできない、あるいは逆の立場からいえばいいこともできないかもしれませんが、そういうことになりはしないか。そうすると、監査制度を強化しながら累積役票制度はやめてしまう。しかもそれは居林さんがお書きになったものを見ると、資本自由化というものとの関連で、これをなくさないと、二五%以上外資が来るとえらいことになるということを、私が読みました中では書いておられる。それならば外資関係の特別法としてお手当てなさってもいいことで、百一万くらいある株式会社の制度として累積投票制度をなくしてしまうということは、監査制度を強化するという御趣旨から見てつろくしないのではないかという気がしろうと目にはするわけです。私いまから二十年余り前に商法を習いましたときに、そういうぐあいに教えてもらいました。だから、その点聞くのです。
#82
○川島政府委員 今回の累積投票制度の改正は、これを全然なくしてしまうということではございません。定款で排除した場合にはそれが行なえない、こういうことにするわけでございます。もともとこの制度ができましたのが、昭和二十五年当時の、アメリカナイズという傾向があったわけでございますが、立法関係におきましてもアメリカ法を範にとったという一つの例でございまして、アメリカの州の中にこういう制度があったというところから、わが国にもこれを入れようということでできたわけでございますが、その当時から、こういう制度がはたしてわが国になじむものかどうかという声はかなりあったわけでございます。
 その後今日までの経過を見ますと、先ほど御質問にありましたように、ほとんど行なわれた例がないというのが実情でございますし、これを法律をもって常に強制すると申しますか、完全排除ができないというたてまえを続けておくということはいかがなものであろうか。現在外国の法律を見ましても、このような制度を置いておるのはアメリカだけでございまして、しかもアメリカの全部の州がそうであるというわけではございません、そうでない、こういう累積投票制度をとっていない州も相当あるわけでございます。
 今回の改正は、そういう点でありますとか実情などにかんがみまして、この点は会社の定款によって累積投票を排除したいという場合には排除するというだけのことでございますので、特に実際にはあまり影響のない問題であろうかというように思うわけであります。ただ、実際この累積投票の制度を排除できるようにしてほしいという要望があったのは事実でございます。
#83
○正森委員 いま川島民事局長から、何か実際上はさっぱり変わらないのだというようにとれかねない答弁がございましたけれども、そうじゃないでしょう。やはり今度のあれも、定款で排除できるだけだということになっておるけれども、いままでだったら、二五%以上持っておればそれは阻止できたのですから、それを今度全部ささえをはずしてしまうということになれば、定款さえ変えれば、累積投票は完全になくしてしまえるわけでしょう。違いますか。そうだとすれば、やはり累積投票制度というのは、今度の商法改正によってなくしてしまいやすくなるということは事実であって、そうだとすれば、取締役の中に、少数意見あるいは異なった人脈といってもよろしいが、そういう人を入れることによって業務を監視し合うという体制はとれなくなって、多数派が全部握ってしまうということを、より助長する、したがって、そうなれば、その同じ多数派によって選任された監査役というものが、いかにこの法令によっていろいろ業務監査の権限を与えられても、十分な監査をするというのは迂遠な方法ではないか、だから、活用するしないは株主にまかせればいいわけですけれども、累積投票制度をいまより以上に実効性のない、名目だけのものにしてしまう必要はないので、それは残すなら残して、外資の点が心配なら、それは特別法で設ける、一定の範囲を限ってというようなことだっていいのではないか、こう聞いているのです。それについてはやはり胸に落ちるような御答弁はないですね。どう思います。やはりそういうものは残しておいたほうが、少なくともいろいろな角度から監査するあるいは牽制するという意味ではいいのではないですか。
#84
○川島政府委員 制度的におっしゃるような変化が起きることは事実でございます。ただ、私があまり大きな変化はないと申しましたのは、現在累積投票が行なわれた例がほとんどないわけでございます。したがって、こういう改正をいたしましても、今後においても実行されることはほとんどないであろう、わが国の実情から出発いたしまして、そういう観測を申し上げたということでございます。
#85
○正森委員 その観測は当たっているかもしれないし、アメリカ的な商法改正のときに時の立法者が抵抗したというのは、累積投票制度を置きながら、解任については何ら手当てを講じていない、だから、多数派はいつでも解任できるというような点についてしり抜けになっておるという点はありますけれども、しかし、解任されたって、今度は株主総会でまた累積投票が出てくるということはできるのでうるさい、こういう歯どめがあったわけですね。それがなくなってしまっておるというようなことは、これはやはり、いままでの実情から出発しましてといいますが、実情から出発すれば、昭和二十五年以前には業務監査制度というのはあったのですから、それがだめだということで変わったのでしょう。そのだめだというほうへ戻そうとしておるのかという議論だって、税理士さんなんかの中にはあるわけですからね。いままで実効がなかったということと、だからそれは全部やめてしまっても――全部というのは言い過ぎですね、定款で排除できるということにしてしまうのは、やはり論理の飛躍があるので、それはたてまえ上いろいろ監査するのだ、粉飾決算なんかなくすのだ、企業の社会的責任というものを考えるようにしてもらうのだ、こういうことになれば、これはやはり残しておいたほうがいいのじゃないかというのは、もっともな意見なのです。どうもたてまえと実際にやることが違うじゃないか、いろいろ言うけれども、実際は企業の経営陣をやりやすくするということにだけなってしまうのではないか、公認会計士さんについてもその費用はどこから払われるか、いままで私が読み上げたいろいろ新聞の実績というような点から考えますと、ずいぶん問題があるのじゃなかろうかということを指摘しておきたいというように思うのです。この点については御答弁は要りません、いままでの答弁を維持されると思いますからね。
 そこで、私、別の問題について伺いたいのですが、今度の改正を見ますと、非常に企業が資金を得やすくなっておりますね。それがどの項目かというのは川島さん、田中さんよく御存じで、三点ぐらいありますか、そういうようなことをしておられるわけですが、企業はたださえ、特に商社などが非常に資金を集めて、そして買い占め売り惜しみをやっておるというような点から考えますと、非常に簡易に企業が資金を獲得することができるような今度の商法改正の諸点というのは、これははたして妥当であろうか、従来どおりで不都合があるのだろうかという気がするわけです。それについて、なぜこの機会に改正をなさるのか、その点について伺いたい。
#86
○川島政府委員 今回の改正の項目の中で資金の融通に関係のありますのは、たとえば転換社債の発行の問題、それから抱き合わせ増資の問題、大体その辺がおもなところだと思います。
 まず転換社債の問題でございますが、これは御承知のように現行法上新株を発行する場合、あるいは普通の社債を発行する場合、こういう場合には取締役会の決議だけでできるということになっております。ところが、転換社債の場合につきましては、転換の条件などを定めるために、株主総会の招集が必要になってくるというたてまえでございますが、転換社債というのは社債であり、かつ転換いたしました場合には株式になるという性質のものでございまして、すでに株式や普通の社債が取締役会の決議で発行できるという以上は、転換社債のみを特にこれと異なる扱いをさせておく必要というものはないわけでございます。ただ、問題となりますのは、転換社債特有の問題として、転換の条件等を定めるこの定め方、あるいはその転換社債の引き受け権、これを第三者に与えるとか、株主にどういうふうに割り当てるかといったような点で、いろいろ複雑な問題が出てまいりますし、それに伴って株主の利害に影響を及ぼすことがございます。したがいまして、そういう点の規定を整備いたしまして、取締役会に発行の権限を与えるということにすれば、ほかの場合とのつり合いもとれますし、実際も便利になるということでございますので、そういう改正をいたした次第でございます。
 それから抱き合わせ増資の関係でございますが、これは一部の場合に限られておるわけでございますが、株式会社の再評価積立金の資本組入に関する法律というものがございまして、これによってすでに抱き合わせ増資という制度が認められておったわけでございます。ところが、この法律が今年の三月に失効した。これにかわるべき制度を設けておいてもらいたいという要請がございましたし、これは同じような制度がすでに経験済みでございますので、それを範にいたしまして商法の中に取り入れたというだけのことでございます。
#87
○正森委員 いまどういうわけでそういうことをやったかという技術的な説明がございました。それは私も皆さんがお書きになったものを読ませてもらってそのとおりだと思いますが、現在の社会情勢の中で、むしろ資金がだぶついておるということか見られるときに、やはり御説明を伺いましても、それは企業が資金を得やすいということを助長するということになるので、それをわざわざこの機会に出すということについて、もっとほかにすべきことがあるんではないかという気がするということを申し上げたわけです。
 次に、中間配当といいますかあるいは金銭の配分ですかということが出ておりますが、わが国では先例として南満州鉄道株式会社に関する勅令というのがあったようでございますが、これは出所を申し上げておきますと、商事法務の六百二十七に、田邊参事官がお書きになっておるということですが、今度の中間配当あるいは金銭の配分とどういう点が違うのか。それから、私よく知りませんがディスクロージャーといいますか、企業の内容をなるべく公開する機会を多くするという観点からすれば、これはある意味では逆行するという意見も一部にはある。そういう点との関連でどういうぐあいにお考えになっているのか伺いたい。
#88
○田邊説明員 御指摘のように先例といたしまして南満洲鉄道が行なっておりましたが、これは御存じのように特殊会社でございますので、その中間配当率も勅令で定めるというような制度、純粋の中間配当として行なわれておったようでございます。純粋のと申しますのは、一年決算のまん中でそれまでにかせいだ利益を目当てにして配当を出そう、こういう考えでございます。ところが改正案の場合は、御意見にございましたように、この監査制度のねらった方向と逆行してはならない、つまり企業の経理の健全性を害してはならないというところから、まず俗にこれを中間配当と申しましたが、商法上は株主総会の承認を得ないものは配当でないという考えで、特に法文上は中間における金銭の配分という表現にいたしました。しかもその条件は、条文にございますように、先ほどの例に引いたようなつまり中間配当をするまでにかせいだ利益を目当てにはできないということを原則にいたしました。原則上は、その前の定時総会でもし配当しようとすればできた範囲内に限る、こういう制限を課しております。法律上は前期の定時総会で配当もし、必要な準備金を積んでなお社内に残った利益、それを限度として配ってもよろしい。さらには中間配当をいたしますときに、中間で金を出せるその余裕はかりにあったとしても、その年度末の決算では配当が出せなくなるというふうな見通しのときには、一切中間における金銭配分ができない、こういう制限を課しております。さらに、先ほどの見通しを誤って金銭配当をしてしまって年度末においては配当不能ということになれば、その差額について取締役の弁償責任というものを課すようにいたしました。このような配慮によってこの中間配分というものは主として株主の利便というものを考えていく、同時に中間配当のねらいは、企業が一年決算の体制をとりやすいようにという配慮、それはまたさらに今度の改正が意図いたします経理の適正を考える、つまり半期の決算におきましては季節的な変動による前期、後期の売り上げの変化、そういうものをならすために利益の平準化というふうなことが行なわれる。それがいわゆる粉飾決算の萌芽を温存するようなやり方になりかねません。そういうところから一年決算に持ち込み、かつ経理の適正を期しつつ株主の期待にこたえようというのが改正の趣旨でございます。
#89
○正森委員 私、子会社の監査の点についても、あるいは改正の中に自己株式の取得の問題、あるいは企業、会社の分割の問題、それからのコンピューターを導入した場合の会計監査のあり方、これは商業帳簿のインビジブルという問題とも関連してくるわけですがそういう数点の問題を伺いたいと思いましたが、約束した時間が参りましたので、それは残すとして、最後に大臣に伺いたい。
 それは昭和四十六年六月二十四日の大法廷の判決ですが、有名な八幡製鉄の事件というのがあります。これには、会社の目的との関連で、政治献金をこれは適法なんだとした判決でございます。ここでは、「会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するわけであるが、目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに包含されるものと解するのを相当とする。そして必要なりや否やは、当該行為が目的遂行上現実に必要であったかどうかをもってこれを決すべきではなく、行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断されなければならないのである。」こういうふうに判示をし、そして政治的行為の自由の一環として政党に対する政治資金の寄付の自由を有するというようにいうておるのです。これは定款に掲げられた目的とかそういうようなものを離れてきわめて広範なことが企業はできるのだという解釈をとっておるものにほかなりません。しかし今度の商法の改正でも、企業監査をなす場合に、会社の行為が定款の目的とかそういうのを逸脱しておるかどうかというようなことを考える上では重要な影響を持っていると思うのです。私はたてまえとしては政治献金などというものは、重役さんはたくさん給料をもらっているのだから自分がお出しなさい、企業がそういうものを損金として落とすとかというようなことで出すべきものではないというふうに思っておるわけですけれども、それが今度の会計監査でどの程度まで監査人は発言権があるのかというような点も心配になってくるわけです。
 そこで伺いたいのですが、これは非常に失礼なことでございますが、私どもの調べた調査によりますと、これはわが党の渡辺武参議院議員が大蔵省から提出された資料をもとに試算しました結果、大手十商社、三井だとか三菱だとかトーメンから安宅産業、江商まで入っていますが、そういう商社に対する租税特別措置による特権で減免税額は一九七一年四月から七二年三月までの一年間で総額百八十億円に達していることが明らかになったということがいわれております。そういうふうに特権で減免税がふえておるのと逆に、今度は非常に申しわけないことですけれども、八幡製鉄の判例、これは三百五十万円について起こされた事件ですね。大手商社から最近の自由民主党に対する政治献金額を見ますと、四十五年上期から四十七年上期までの二年半の間に、三井物産は二千三百三十四万円あるいは丸紅は千六百六十万円等々で、十大商社で全部で一億三千三十一万円献金されておる。これは全部八幡製鉄の判例によれば企業がやってもいいことだ、こうなっておるのです。そうなりますと、やはり大商社との癒着というようなことを巷間いわれるのもあながち根拠のないところではないという議論をする人が出てきても、これはいやいやと言い切れない面があるのじゃないか、こう思うわけです。
 そこで政治資金規制法の改正というような問題も起こっておりますけれども、商法をせっかく改正なさって、企業の姿勢を正さなければならない、われわれ国会は当然姿勢を正さなければならない、わが党は、国会に調査権を設けて、それで企業の横暴を防がなければならない、公害の問題なんかについては、公害委員会を設けて企業を監督しなければならないというように思っておりますが、そういう社会情勢との関連において、これらの問題について法務大臣はいかが政治的にお考えになっていられるか、その点を伺って、ちょうど時間が来ましたので質問をやめさせていただきたいと思います。
#90
○田中(伊)国務大臣 政治資金の制度の問題につきましては、私の所管ではございません。ございませんが、本件商法改正をめぐりまして新たに権限を拡張された、権限を付与された監査役は、一体ただいまお話しのような巨額の政治献金をどう判断すべきかということに局限をしまして、商法的にひとつ一口申し上げたいと思います。
 それは、企業そのものが自分の信ずる政党に献金を行なうこと自体、限度は別にいたしまして、そのことは最高裁も否定をしてはいないのです。問題は、どの程度の献金を行なうことが当を得ておるのかという問題に限られるものと思いますが、これは、その企業の公称資本金の大きさ、それから企業のいたしております生産額、販売によるところの利益、そういう企業全般にわたりまする会計の現状というものから見て、政治献金と称する社交を達成するにはどの程度の金額に限られるべきか、どの程度を越えるものは多過ぎる、どの程度のものならばまあまあという判断を監査役がすべきものではなかろうか。したがって、具体的にこの会社がこの政党にこの場合献金をするのは、これは許されるべきものかどうかという判断は別でございまして、抽象的に申しますと、そういう諸般の状況を判断をいたしました上で、こういう程度の社交、交際はやむを得ないのではなかろうか、これは行き過ぎておる、こういうふうに判断をしていくべきものでありますが、これも新改正商法が施行されました上に立っては、ぜひこの監査役においては厳格な態度で判断をしてもらいたい、ルーズな判断は今度の改正の趣旨に沿わない、こういうふうに考えております。
#91
○正森委員 それでは、時間が参りましたので、必ずしも私どもの党のたてまえは、大臣の御答弁ではそれでいいというわけにはまいりませんけれども、御答弁がございましたので、委員長に最後に申しましたように、私あと数点こまかい問題ですが伺いたかったのですけれども、時間がございませんでしたので、他の党が質問されたあとでもし時間がございましたら、質問させていただきたいということを保留しまして、本日の私の質問を終わらせていただきます。
     ――――◇―――――
#92
○中垣委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。
 ただいま本委員会において審査中の商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案につき、来たる十五日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#93
○中垣委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次回は、明六日水曜日午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後一時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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