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1972/06/20 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 法務委員会 第35号
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1972/06/20 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 法務委員会 第35号

#1
第071回国会 法務委員会 第35号
昭和四十八年六月二十日(水曜日)
    午前十時十五分開議
 出席委員
   委員長 中垣 國男君
   理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君
   理事 谷川 和穗君 理事 福永 健司君
   理事 古屋  亨君 理事 横山 利秋君
   理事 青柳 盛雄君
      井出一太郎君    住  栄作君
      戸井田三郎君    松澤 雄藏君
      三池  信君    保岡 興治君
      沖本 泰幸君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 田中伊三次君
 出席政府委員
        防衛施設庁長官 高松 敬治君
        防衛施設庁総務
        部長      河路  康君
        防衛施設庁施設
        部長      平井 啓一君
        法務大臣官房長 香川 保一君
        法務省刑事局長 安原 美穂君
 委員外の出席者
        外務省アメリカ
        局外務参事官 角谷  清君
        法務委員会調査
        室長      松本 卓矣君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月二十日
 辞任         補欠選任
  河本 敏夫君     戸井田三郎君
  山田 太郎君     竹入 義勝君
同日
 辞任         補欠選任
  戸井田三郎君     河本 敏夫君
  竹入 義勝君     山田 太郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 法務行政に関する件
 検察行政に関する件
     ――――◇―――――
#2
○中垣委員長 これより会議を開きます。
 法務行政に関する件及び検察行政に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。青柳盛雄君。
#3
○青柳委員 私はきょうは、ことしの四月十二日の午後、沖繩県の金武村にある米軍の基地、ブルービーチという演習場の地域で、同村の沖繩県人の安富祖ウシさんというお年寄りの婦人が死亡するという事件が起こりましたことに関連して、もっぱらこの事故の裁判権問題に関連してお尋ねをいたしたいと思います。
 この事故が何ら犯罪と関係のないものであるならば、当然裁判権問題などというものは起こってくる余地はないわけでありますが、この事件が起きたその瞬間からこれは犯罪の嫌疑が濃厚である、それは日本の刑罰法令に触れる、つまり故意があれば殺人罪、それから故意はない場合には業務上過失致死罪、しかもこれは数名関係しておりますから共犯関係、そういう嫌疑が濃厚なものであったと考えられたわけでございます。したがって、裁判権が日本にあるのではないかということが当時から論じられておりましたし、当時の外務委員会あるいは内閣委員会でもそれに触れる面もありました。おもに外務委員会で翌四月十三日質疑が行なわれまして、外務省のアメリカ局長の答弁では、公務中であったから裁判権は一次的にアメリカ当局にあると解されるような趣旨の答弁もあったようでございます。つまり、この事故については違法阻却の原因となるべきもの、つまり、正当業務であるとか正当防衛であるとか緊急非難、また判例、学説等でいう期待可能性がないとか不可抗力であるとかいうような犯罪の成立を阻害するようなものは何もない、したがって、あと問題になるのは、故意があったか、それとも業務上当然負わなければならない注意義務違反、つまり、過失があったかどうかということが問題になったわけでありますけれども、事故の起こった場所が見通しも良好なところであり、しかもまつ昼間のことである。それから、演習でございますから、仮想敵、つまり相手方が存在している。したがって、その相手方を攻撃するという任務を帯びてその演習が遂行されつつある。だから、相手方がどこにいるかをちゃんと見ながらやっていくわけでありますから、相手方もまた演習とはいいながら、実戦の訓練でございますから、ひき殺されないように、攻撃を受けないように、警戒はしているであろうということはわかります。したがって、そういうのを虚をつく形で戦車で攻撃をするという場合、当然散歩をするようなつもりで、あるいはドライブをするようなつもりで漫然と運転しているわけではない。指揮者も当然そうだと思います。したがって、前方に対しては厳重な警戒、注意というものが義務づけられていると思うんです。そういう状況のもとで起こった事故でございますので、犯罪の嫌疑はもう当初からきわめて濃厚なものであったと私どもは考えるわけでございます。
 それについて、きょうは警察庁当局がお見えになっておりませんが、その後検察庁のほうにその調査の結果は送られてきているものと信じますので、法務省当局に、この事故について当初から日本の捜査当局、検察当局はどのような措置をとったのかということをまずお尋ねいたしたいと思います。
#4
○安原政府委員 本件が発生いたしましたのは四月十二日でございますが、事件発生の翌日でございます四月十三日に、検察庁といたしましては――青柳先生御案内のとおり、捜査は原則として警察が主体としてやり、送致を受けて検察庁が捜査をするというのがごく普通の形態でございますが、このように人が死んだという事件でもございます。いわゆる社会の耳目を引いた事件でもございますので、検察当局といたしましてはそれを重視いたしまして、事件発生の翌日の四月十三日に、那覇地検の松田という検事が、警察の行ないました現場のいわゆる実況見分に立ち会いまして、それから米軍の関係者、本件の事故の発生いたしました戦車の搭乗員三人と、それからその事故を目撃しておりました一名の、合計四名から直接事情を聴取いたしましたほかに、十八日には再び警察と合同で実況見分を行なった際に、地検の松田検事と次席検事の両名におきまして、日本側の関係者、つまり当日演習場に立ち入っていた被害者でございます安富祖という老女と一緒に行動しておった森山カネほか五名につきまして事情聴取し、さらに米軍につきまして、演習場に立ち入りを許可しておった際に事故が起こったわけでございますので、米側の立ち入っている者に対する警告の状況はどうであったか、被害者がどういう行動をしたかというようなことにつきまして、日本側の関係者からも聞きました。そして実況見分にも立ち会わせて、種々の説明をさせるなどさせました。要するに、警察の捜査段階から、警察だけにまかせないで捜査に関与いたしまして、警察の捜査に対して適宜助言、指導をし、みずからも事情聴取をしていたというのが実態でございます。
#5
○青柳委員 いまの御説明によりますと、相当綿密な調査をされたようでございます。四月十三日の内閣委員会の会議録を読みますと、そこに出席をされました警察庁の方は質問に対して捜査ではなくて調査でございますというようなことをわざわざ言っておられるのですね。つまり小林という説明員は、「一応事情を聞いておるわけです。」そこで質疑をいたしましたわが党の東中委員は「捜査に入っていないわけですね。いわゆる調査をしている段階で捜査をしていない、こう聞いていいわけですか。」と言うと、「いまの捜査という意味でございますけれども、犯罪がありということを前提のもとに動いておるかと言われると、事情を聞いておるということでございます。」つまり「犯罪を前提とした活動という状況ではございません。」とこの小林説明員は言っておるのですが、その辺は、まだ犯罪とはわからないのだ、だから捜査なんというものではないと言うのですが、事実そうだったのでしょうか。
#6
○安原政府委員 警察の小林課長がどういうつもりで調査ということばを使われたか、私直接聞いておりませんのでわかりませんが、おそらくは捜査というものにつきまして、この事件につきましてはいわゆる公務中の犯罪であるのではないかという考え方が非常に強かったことから、わが国に第一次裁判権がない事件であるということが小林課長の頭にあって、第一次裁判権を行使できないような事件について事実を調べることであるから、捜査ということばを使わなかったのではないか。しかしながら、先ほど私ども説明いたしましたように、実態は捜査と同じことをやっておるということであろうと推察しております。
#7
○青柳委員 なるほど、小林課長はどういう気持ちかいま推察をされたわけでありますが、検察当局といたしますと、これは単に事実上の捜査であるというのか、やはり犯罪事犯ということで一応捜査をしたのであるということか。これは第三者の小林課長の言うこととは違って、自分のことですからお答えできると思うのですが、どちらでしょうか。
#8
○安原政府委員 青柳先生御案内のとおり、私どもは刑事特別法の十四条によりまして、わが国に一次裁判権があるものはもちろんのこと、二次裁判権のあるものにつきましても捜査することができるという規定がございます。したがいまして、検察庁といたしましては実況見分に立ち会い、関係者から事情を聴取しているわけでありますから、私どもとしては刑事訴訟法に基づくところの捜査をしておったものと理解しております。
#9
○青柳委員 そこで、刑特法の規定などもお出しになりましたが、きょう私が主としてお尋ねいたしたい裁判権の問題についてですけれども、まず当時の状況をお尋ねいたしますが、当時警察あるいは検察当局といたしまして、これが犯罪の容疑は一応あるということになれば、裁判権はいずれにあるかということが当然頭に浮かんでくるわけでありますが、いずれにあるという考えであったのか。つまりもっと詳しく言うならば、これは裁判権が競合している場合であるのかあるいはいずれかに専属するものであったと考えるのか、その辺のところはいかがでしょう。
#10
○安原政府委員 後段の、裁判権の競合する場合であるのではなかろうかと考えたのであります。
#11
○青柳委員 その法的根拠は、おそらく地位協定十七条三項(a)の(ii)、つまり「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」というものに該当するのではないかという考えであろうかと思いますが、そうでしょうか。
#12
○安原政府委員 まず、この地位協定の十七条によりますと、一項(a)で「合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服するすべての者に対し、合衆国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。」ということにも当たるであろう、同時にこの(b)で「日本国の当局は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に対し、日本国の領域内で犯す罪で日本国の法令によって罰することができるものについて、裁判権を有する。」という意味において、本件はわが国にも裁判権があるというふうに考えるべきであろうということで、競合すると申し上げたのでありまして、さらにその場合における、どちらが一次の裁判権を有するかどうかとい問題として、いま御指摘の十七条三項(a)の(ii)の「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」ではないかと一応考えたが、よく調べないとわからないという段階で捜査に着手した、こういうことになろかうかと思います。
#13
○青柳委員 確かにいまのようなお考えだと私も理解いたしますが、その前提になるのは十七条二項の(a)ですか、この内容を調査しておられますか。つまり「合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服する者に対し、合衆国の法令によって罰することができる罪で日本国の法令によっては罰することができないものについて、専属的裁判権を」有する、おそらくそういう専属的なものだとは考えない。そうだとすると、日本当局も合衆国当局もともに裁判権を持つ、いわゆる競合する場合ということでございますから、米軍当局が合衆国の法令に抵触する犯罪であり、しかも日本の法令に抵触する犯罪、つまり日本でいえば、先ほど私が申しましたように、殺人罪または業務上過失致死罪に当たる。合衆国のほうでは一体何に当たるというふうに考えられたのでしょうか。
#14
○安原政府委員 アメリカの軍法会議適用になる罪の中にこういう過失、故意によって人を死に至らしめるというようなことを罰する規定があると承知しておりますし、なおかりに当たらなくともアメリカ合衆国統一軍法百三十四条に、アメリカ合衆国軍隊における善良な秩序及び規律を害するあらゆる作意もしくは不作意による行為、または軍の信用を失墜せしめるあらゆる行為を罰するということで、一般的な処罰規定もございますので、合衆国にも裁判権がある、かように考えたわけであります。
#15
○青柳委員 あとのほうの一般的な規定があるからそれでおそらく罰する権限があるだろうというのは、罪刑法定主義のたてまえから考えるときわめてほど遠い考え方だろうと思うのです。そういうのは管轄をきめるというような一般論では通らないかもしれませんけれども、いざ具体的に、それでは一体何罪に当たるのだろうかというようなことになってまいりますと、ちょっとばく然としているわけです。前段でおっしゃったようにわが国の業務上過失致死罪のようなものがおそらく合衆国の法令の中にも、合衆国軍隊の行動に対してはあるので――これは私まだ調査しておりませんけれども、ちょっとそういうのは考えられないような感じがするのです。もしあるのならば私は知りたいのですけれども、たとえば合衆国軍隊が演習をやっておって、そして仮想敵国である相手方を殺傷したというような場合に、それは業務上過失致死傷になるのかならないのか。あるいは第三者がそこに存在して、仮想敵国同士の戦いではなくて一般市民がまぎれ込んでしまった、そして被害をこうむったというような場合には、それに対して合衆国軍隊の構成員は業務上過失致死罪などの刑事責任を問われるというようなそういう内容のものがあるのかないのか。これがはっきりいたしませんと、向こうにも裁判権がある、こっちにもある、だから一次はどっちだというようなところまではいかないわけですね。やはり双方にぴしっと罪刑法定主義のたてまえからいって明確な処罰法令が存在するということが前提で第一次裁判権、第二次裁判権という問題が起こってくるわけです。そのことは先ほどあなたもお読みになった十七条二項の(b)、向こうのほうには処罰法令はない、つまり米軍が演習しておって第三者に危害を加えたというようなことはアメリカの軍法には処罰規定がない。しかし日本の法では、それは米軍であろうがあるいは自衛隊であろうが、演習中であろうが、第三者に危害を加えた場合には当然業務上過失致死傷罪の成立する余地がある。だからむしろ十七条二項(b)に当たるという考え方も出てくるわけですね。だから何か両方とも罰則規定があるんだという先入主みたいなものが先にあって、公務か公務でないか、いや公務だ、非公務だ、こういった単純な俗っぽい、法律家らしくない議論がまかり通るような感じがするのです。この点ひとつ明確にお答え願いたい。
#16
○安原政府委員 まことにごもっともなお尋ねでございます。統一軍法典というのがございますが、その中の百十九条の(b)項に「本法に服するいかなる者も、人を殺害し若しくは人に身体的傷害を負わせようとする意図を持たず、重大な過失により、不法に人を殺害したときは、非任意的故殺の罪を犯した者として、軍事裁判所の命ずるところに従い処罰される。」という重大なる過失による傷害あるいは死というものについての罰則が百十九条としてあります。それは「重大な過失」ということでございまして、軽微な過失ではだめでありましょうが、百十九条にそういう規定があるということと、それから先ほど引用いたしました統一軍法の百三十四条、正確に申しますと、「本法に特段の規定がない場合においても、軍の良い秩序及び規律を侵害するあらゆる違反行為若しくは過失行為、又は軍の信用を失墜せしめるあらゆる行為、及び、本法に服する者がこれを犯せば有罪とせられるであろう死刑犯罪以外の犯罪に対しては、それらの罪の性質及び程度に応じ、一般、特別若しくは簡易裁判所のいずれかが管理権を有し、当該軍事裁判所の裁量するところに従い処罰される。」この過失行為の処罰規定が百三十四条の一般条項としてありまして、判例といたしまして自動車による過失致死というようなものは、百三十四条によって軍人軍属を処罰できるというアメリカの判例があると聞いております。
#17
○青柳委員 いまの御説明ですと軍事的な戦闘行為などが含まれているのかどうかですね。演習という形ではあってもそれも含まれているという解釈だとすれば、いわゆる公務執行中というような概念が入ってくる余地があるわけですが、それはいかがでしょうか。
#18
○安原政府委員 公務執行中であるといなとを問わず入るというふうに理解しております。
#19
○青柳委員 「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」という概念がその規定の中に含まれているということが前提にあって、そこで裁判権は競合するであろう。そして先ほど指摘された地位協定十七条三項(a)の(ii)によって一次的な裁判権が米軍当局にある、こう判断をしたわけでしょうか。
#20
○安原政府委員 「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」であるという判断を最終的にしたとはまだ申せない段階、つまり検察庁でまだ処分をしておりませんのでできませんが、この事故が起こりましたあとの四月十九日に米軍側から公務中の行為であるという公務証明書が届けられておりまして、現在までの捜査の段階におきまして、公務中であるという先方の証明をくつがえす反証が見当らないという段階でございます。
#21
○青柳委員 そこで、いわゆる証明書が先方から来たという、これは合意議事録というものが前提にあってそれからそういう証明書というものがつくられたりつくる権限があったり、またそれが一つの機能を果たすということだと思うのですけれども、この合意議事録というのは国会に提出することはできるのでしょうか。
#22
○安原政府委員 合意議事録はすでに国会に提出してございます。
#23
○青柳委員 それはこちらから求めて相手方が提供をしたものであるのか、こちらからは何らそういうことについて請求したわけではないけれども、米軍当局のほうから日本当局のほうに交付したという関係でしょうか。
#24
○安原政府委員 具体的な問題として四月十九日に先方から公務証明書と同時に、あわせて、第一次裁判権を持つものとして裁判権を行使するという通告が検察庁のほうにございました。
#25
○青柳委員 地位協定を読んでみますと、裁判権が競合している場合に、いずれかが自己の裁判権を行使する旨を相手方に通告する、そういう仕組みになっているのでしょうか。私は第十七条三項(c)を読みますと、「第一次の権利を有する国は、裁判権を行使しないことに決定したときは、できる限りすみやかに他方の国の当局にその旨を通告しなければならない。」これが本文になっております。したがって先走って、相手方が二次であるか一次であるかは別といたしまして、おれのほうでやるのだということを積極的に押えつけるみたいに通告するというような規定はどこにもない。自分のほうで調べてみたけれどもないというときには、すみやかに相手方に自分のほうにはないからという通告をする責任を負わされているように読めるのです。この点は慣習上米軍はいつでもおれのほうにあるのだということを高飛車に言ってくることになるのかあるいは法的根拠があるのか、この点いかがですか。
#26
○安原政府委員 いま御指摘の地位協定十七条の三項(c)に基づくものでございますが、(c)は「第一次の権利を有する国は、裁判権を行使しないことに決定したときは、できる限りすみやかに他方の国の当局にその旨を通告しなければならない。」ということで、要するに裁判権が競合している場合でございますから、いつまでもそれをほっておいてどちらが裁判権を行使するかがはっきりしないという状態が長く続いてはいけない。一刻も早くどちらが裁判権を行使するかを明確にするというのが(c)の精神でございます。この精神をとりましてこれまた国会に要旨を御報告申し上げております日米両国間の合同委員会におきます合意事項というのがありまして、それによりまして、その精神を受けまして一たん犯罪の通知を双方がいたしました場合、合衆国の場合は犯罪の通知が行なわれた後合衆国の当局から検事正に犯罪通知がありますと、あるいはまたわが国のほうから先方に犯罪通知をいたしました場合でもどちらでもいいのですが、犯罪通報をいたしました後十日以内に裁判権を行使をするかいなかの通知をして、そういう通知をしなかったならば第一次の裁判権を持つアメリカの裁判権がなくなって、日本のほうに第二次裁判権が浮き上がってくる。要するに日本側で裁判権を行使することができるというふうに合意事項で協定がございまして、それによってずっと従来やっておるわけであります。
#27
○青柳委員 そうすると、合意事項に基づいて先ほど読み上げた協定の条項、趣旨をもっと具体化したというふうなお話でございますから、それはそのとおりとして承っておきますが、この場合、一次の裁判権が、公務執行中の作為または不作為から生ずる罪であるから、アメリカ軍当局にある、その公務執行中の作為または不作為から生ずる罪であったかどうかということの判定はだれがするのか。つまり競合しておるわけですから、どちらもできる。そうであるとかないとかいう判定はできるんじゃないですか。その場合、各独自にできるのか、それとも協議の上で合意が必要なのか。もし各自が独自にできるということであって、しかもそれがお互いに矛盾をし合って対立しているようなときにはどう処理するのか。これはどうなっておりますか。
#28
○安原政府委員 まず結論から申し上げまして、双方ともにその判断ができるというのが理屈だろうと思います。つまり、わが国の当局が、この事件を処理するという意味において、裁判権がこちらにあるんだという判断で起訴をいたしました場合に、わが国に第一次の裁判権があるかどうか、つまり公務執行中であるかどうかということを判断するのは、最終的にはわが国の裁判所である。しかしアメリカ側の権限を奪うものでもないということで、場合によっては対立することもあり得るというのが理論的な結果であろうと思いますが、そういうことはまことに好ましくないわけでございますので、そういう場合には、つまり合同委員会におきまして問題を持ち出して、協議をして意見の一致をはかろうとするのが、具体的な手続として合意事項にきめられているところでございます。
 なお、実際問題といたしましては、すでに国会に提出しております合意議事録にも出ておりますように、合意議事録の十七条の「3(a)(ii)に関し、」というのがありますが、「合衆国軍隊の構成員又は軍属が起訴された場合において、その起訴された罪がもし被告人により犯されたとするならば、その罪が公務執行中の作為又は不作為から生じたものである旨を記載した証明書でその指揮官又は指揮官に代わるべき者が発行したものは、反証のない限り、刑事手続のいかなる段階においてもその事実の十分な証拠資料となる。
 前項の陳述は、いかなる意味においても、日本国の刑事訴訟法第三百十八条を」――裁判官自由心証でございますが、その規定を「害するものと解釈してはならない。」という規定がございまして、それは当然のことでございまして、軍人が公務中であったかどうかということを最もよく証明し得る立場にあるのは先方の指揮官または指揮官にかわるべき者でございますので、それが出してきた証明書というものは、一般に有力な資料にすることは当然のことでございまして、当然のことをここに書いてあるわけでございます。しかしこれは反証を否定するものではない。そこで、日本側で反証があるという場合には先方にそれを通知して、そして意見が合わないときは日米の合同委員会で協議をして、意見の一致をはかろうというたてまえになっておるわけであります。
#29
○青柳委員 本件の場合どういう経過をたどったか、あとでお尋ねいたしますけれども、今度の事件のようなのとよく似ているいわゆるジラード事件、これは昭和三十二年一月三十日群馬県の相馬ケ原演習場で起きた事件でありますけれでも、休憩を兼ねて見張りをしていたという、つまり公務中というような立場のジラードという米軍人――陸軍三等特技兵ウィリアム・S・ジラード、これが、たま拾いに来ていた近くの農婦の坂井なかさん(四十一歳)をからの薬きょうでおびき寄せて射殺したという事件があったわけですね。
 これはサンフランシスコ平和条約が成立した後の五年たったときであったけれども、占領時代の色彩がまだ相当濃厚に残っておって、事件は初め事故死として処理され、地元の代議士などが国会で取り上げて政治問題化したというのですが、この当時のことをちょっと思い起こす必要上お尋ねするのですけれども、裁判権がいずれにあるかということは紛糾したのでしょうか、どうでしょうか。
#30
○安原政府委員 紛糾ということに当たるかどうか知りませんが、結局意見の一致しなかったことは事実でございまして、当時米軍側は本件を公務中の犯罪であると主張し、日本側は公務外の犯罪であると主張して、合同委員会を開催しましたが見解の一致を見なかった。そこで具体的な解決といたしまして、当時米国側から、公務中の犯罪ではあるけれども、第一次の裁判権は自分のほうにあると確信するが、裁判権を放棄する、裁判権を行使しないということの通知がありましたので、協定ないしは合意事項に基づきましてわが国に裁判権が移ってまいりましたので、当時日本側は傷害致死罪で起訴いたしました。そして被告人は公務中であると主張したが、裁判所はこれを排除して、有罪の判決があったというふうに承知しております。
#31
○青柳委員 本件も、外観的に見るならばいわゆるジラード事件と同じような面がうかがえないわけでもない。ただ、ジラード事件のときには見張り番であって、怪しい人間に対して誰何したけれども答えないとか、あるいは逃走を企てたから射殺したというようなのではなくて、何か、ママさんいらっしゃいと言って呼んで近づけておいて、からの薬きょうをばらまいて射殺した、まことにふざけたことをやったから、これは公務とはいえないのじゃないかという、そういう事実関係の中でもなおかつ、いま御説明のように、米軍当局は第一次裁判権を強調して譲らなかった。その場合、おそらく先ほどお話しのような証明書みたいなものを出したのかどうか知りませんけれども、ちょっとお尋ねいたしますが、裁判所は、被告は公務中であると言って日本の裁判所で無罪を主張したか、裁判権がおまえのほうにないんだ、だから公訴棄却せよというような主張をしたという場合に、引用したのは、やはり先ほど出たその上官の証明書みたいなものであったのでしょうか。そしてそれは日本の裁判所の心証を拘束しないというような規定もあって、日本の裁判所はそれを、証明書を無視したというのであるのか、その辺のいきさつはいかがですか。
#32
○安原政府委員 おそらくそうであろうと思いますが、はっきりしたことは、申しわけございませんが、存じません。
#33
○青柳委員 そうしますと、どうも今度の場合もどうなっているかお尋ねしたいのですが、証明書も先方さんは早いところお出しになって、裁判権はおれのほうにあるんだと主張されていた。その場合わがほうとしては、先方さんの主張が大体正しい、ジラード事件の場合とはちょっと違うらしいから正しいという判断を持たれたのかどうか、まずそれをお尋ねしたい。
#34
○安原政府委員 公務執行中であるかどうかということも、捜査を完了いたしませんと、最終的なことは申し上げるわけにいかないはずでございますが、そういう意味で、最終的にはまだ判断に到達しておらないということに理屈はなるわけでございますが、先ほどもるる申し上げましたように、検察官としても、当時の関係者を取り調べまして、単に証明書をうのみにしておるわけではなくて、関係者からいろいろ事情を聴取しておるわけでありまして、現在のところ、米軍側の言うように、公務中に発生したとするその主張に対して、それをくつがえすに足る反証はないというように聞いております。そういう意味においては、いまのところは公務中であろうというような心証を持っておるということであります。
#35
○青柳委員 そういう考え方でいるところへ、今度、はしなくも刑事責任を問わないという決定が下されたという、通知ですか、そういう文書が渡されたということが報道されております。それは、五月二十五日に那覇地方検察庁と那覇防衛施設局に文書が来ているということでありますが、そのとおりでしょうか。そしてその内容はいかがなものでしょうか。
#36
○安原政府委員 五月二十五日付で米側から、私ども、インフォーメーションといっているのですが、情報の提供があって、これを検察庁が受理したことは事実でございます。
 そもそもこういう裁判権が競合する事件につきましては、協定にもございますように、日米両国は捜査についての協力をしなければならないというたてまえでございますので、かねてより所轄の石川警察から米軍側に対しまして資料の提供を求めておったわけであります。それに対する答えということではございませんけれども、米側から二十五日に中間の通報といたしまして、要するに、米側の調査したところでは、目下のところ関係者に犯罪を認めるということはできないという趣旨の通報があったのでございます。
#37
○青柳委員 琉球新報などの報道によりますと、相当文書の具体性が指摘されておりまして、たとえば「タイトルが「沖繩県金武村ブルー・ビーチ演習地域で一九七三年四月十二日十五時十分に起こった安富祖ウシさんの死に関する調査概略」となっていて、現場地形図、略図、現場写真が添付され、本文は事故の調査内容と調査所見、結論からなっている。所見の中で海兵隊当局は1安富祖ウシさんは現場地域から退去させられるのを避けるためカン木や草の茂みに身をひそめていた2彼女は彼女の背後から近づいてくる戦車の音を彼女の前を走っている五台の戦車と同じ音なので識別することができなかった一などの理由で、むしろ安富祖ウシさんの方に過失があったとして、結論の中で「調査結果から同事故に関係した海兵隊員の刑事責任は追及しない」と述べている。」こういう報道でございますが、これはおおむねそういう趣旨のものでしょうか。
#38
○安原政府委員 御指摘のとおりの趣旨のものでございます。
#39
○青柳委員 それは、日本当局の警察、検察が調べた結果の資料、事実の判断などと大差ないものでしょうか、それとも相当食い違っているものでしょうか。
#40
○安原政府委員 先ほどのインフォーメーションは、青柳先生御指摘のように、最終結果のような表現になっておりますけれども、現地検察庁検事正から米軍側に問い合わせましたところ、まだ最終決定をしたわけではないという返事があったものでございますから、まだ中間的な情報ということに私ども理解しておりまするが、そういうインフォーメーションのあった後の六月五日に石川警察から検察庁に事件が送致されてまいりまして、目下検察庁に事件が係属しているという状態でございます。まだ最終的な起訴、不起訴をきめたわけではございませんけれども、現在までの捜査の状況についての報告によりますと、「スケネロ少尉など米軍側は、演習場内に立ち入っていた安富祖ウシさんら六人に対して、演習場外に退避するよう再三にわたり警告を発して、その結果被害者らもそれぞれ一たん安全な地域に退避したにもかかわらず、被害者のみがひそかに現場に立ち戻った上、戦車のほうから見てきわめて発見困難な草むらの中にひそんでいたものである。」ということが、わがほうの捜査によりましても大体そういうことが認められるという状況でございますので、目下のところ被疑者らに対しまして過失の刑事責任を問うことは困難であるというように報告を受けております。
#41
○青柳委員 それに関連してお尋ねいたします。
 少しこまかいことになるかもしれませんが、この事故の起こった翌日の国会の委員会の調査などを見ましても、相手方のほうでは、安富祖さんのおられることが察知できたので、戦車部隊のほうに、あるいは安富祖さん自身もかもしれませんけれども、注意した。おそらく英語でやったのでしょうと思いますけれども、どういうふうにやったのか、私どもは正確にわかりませんが、いまのお話ですと、戦車隊のほうはわからなかったのだろう。しかし、相手のほう、つまり仮想敵のほうにはよくわかったというような事実があるようなんですが、この辺は考慮の中に入っておるのでしょうか、どうでしょうか。
#42
○安原政府委員 その点は警察でも十分に捜査を尽くしておると聞いておりまして、被害者に米軍側の警告を伝えた森山カネさんや最後に被害者と別れた当山イトさんから事情を聴取したりしておりまして、これらの関係者の証言によると、被害者である安富祖さんは一人で本件の現場に再び立ち戻ったということが認められるようであります。また、ベックといういま御指摘の仮想敵軍であった軍曹が、戦車が近づいてくるうしろを見て、安富祖さん、被害者が草むらにひそんでいるのを見て、戦車はもう一メートル六十センチくらいの至近距離に近づいておったので、戦車に対してあぶないということを叫んだということも関係者の捜査の段階で明らかになっております。
#43
○青柳委員 この委員会で一々捜査状況をお尋ねするわけにいきませんし、起訴するのが相当であるか、不相当であるかという議論を詰めることはちょっと困難だと思いますが、こういう中間報告があった段階で、わがほうの那覇地方検察庁が先ほどのような報告をされると同時に、新聞記者たちに対して、たとえば「同地検の川崎次席検事は、「調査報告を受けたあと米軍側からなんの連絡もない。米兵三人の処遇についての最終処分がどうなったのか聞いていない。おそらく米軍当局は刑事責任を追及しないつもりだろう。日本法からすると当然、過失致死事件として、追及されようが、米国の業務上過失のとらえ方が日本側のと違っている。それに地位協定の問題もあって、向こうが刑事責任を追及しないからといって、日本側が追及するわけにいかないと思う」、どうも意味がよくわからないのですけれども、どうも日本側で追及するわけにいかないというような意見を発表しているようです。これは先方が犯罪は成立しないというような結論を出す、あるいは犯罪は成立するけれども情状酌量して起訴はしないというような結論を出すというような場合に、第二次のほうの裁判権を有する側はこれに従わなければならぬものなのかどうか、一般論としてですね。その点はいかがでしょう。
#44
○安原政府委員 NATO協定も同じような規定がございますが、要するに第一次の裁判権を有する者が裁判権を行使しない、要するに裁判権を行使しないということは起訴しないこととは違う。起訴、不起訴を含めて、第一次の裁判権を有する国が最終的な処分をしたときは裁判権を行使をしたと考えるのだというのが、NATO協定を通じての通説的な理解でございますので、この場合におきましても、米側が起訴をしないという最終的な決定をいたしました段階で、本件についての第二次裁判権である日本の裁判権は消滅するというふうに理解いたしております。
#45
○青柳委員 そうしますと、まだ最終的な決定をしないという段階ですから、消滅はまだしていないと理解いたしますが、本件については沖繩県民はもちろん非常に事態を重視いたしておりまして、沖繩県議会与野党一致、また金武村の村議会も与野党一致で、それからその他の民主的な諸団体なども一致して、日本に裁判権を認めるべきである、つまり第一次が向こうにあるというのであれば、それを放棄してそして日本に裁判権を行使できるような状況にすべきであるという主張をしております。それは幾つもの報道記事によって明らかでありますので、時間の関係上一々述べませんけれども、ジラード事件のときのことも思い出すというと、かりに公務中であっても、日本の国民感情を尊重するならば、アメリカ軍は日本のほうに裁判権を行使させるための措置、つまり先ほど読みました十七条第三項(c)の後段ですね。「第一次の権利を有する国の当局は、他方の国がその権利の放棄を特に重要であると認めた場合において、その他方の国の当局から要請があったときは、その要請に好意的考慮を払わなければならない。」、こういうのがあります。そこで日本当局はそういう要請をすることをしたのかしないのか、する気があるのかないのか、この点はいかがです。
#46
○安原政府委員 放棄要請はいま御指摘の協定に規定があるわけでありますが、私どもは、このような第一次裁判権をアメリカ側が有しておるその原則を排除して、わが国が裁判権を行使すべきものとしてこの裁判権の放棄を要請するのは、わが国として、米側の裁判にゆだねがたいようなきわめて例外の場合でなければならないというふうに考えておるわけです。私どももとより現地の国民感情というものを無視するわけではございませんで、本件はいま申し上げましたような意味において、裁判権をアメリカにゆだねがたいというきわめて例外、重大な場合とは考えておらないのであります。また実際問題としまして、先ほどから御説明申し上げましたように、現地からの報告によりますと、現在まで得られた証拠ではこの被疑者に対し刑事責任を問うこともきわめて困難な状況であるということもあわせ考えますときに、放棄を要請する事態ではないというふうに考えております。
#47
○青柳委員 安原刑事局長は政府の意向を代表して答えておられると思うのですが、田中法務大臣にこの点についてお尋ねするのですが、いままでの質疑応答の中で事態がどういうふうに進んできておるかということは、大臣はもちろん前々から御存じのとおりだと思いますけれども、なお一そう明らかになったような気がいたします。そういう中で、相手方にいわば忌避すべき事由で公正な裁判を期待できないような、日本の訴訟法でいうならば忌避をしなければならないような事態がない以上は、どうも放棄してこちらに渡してくれと言えないというようなことだけで処理していいものかどうか。これはあとからもちょっとお尋ねいたしますけれども、民事的な損害賠償の問題ともからんでくるわけでございまして、先方さんが最終的に、裁判ではありませんから無罪とは言いませんが、不起訴ということになった場合に、一体過失を認めた上で情状酌量したのか、過失そのものはないということで不起訴にしたのか、そこは先方さんのやることですからわかりませんといえばわからない。そうなるとあとの処理にも非常に響いてくるわけでありますから、そしてまた、繰り返しませんが、日本側の県民感情、国民感情からいうならば、こういう事故がまたあとを絶たないというような恐怖感、どうもアメリカに対してはもう日本の当局は盲従的ではないかというような不安というものが残ると思うのですね。だからこの点は、新聞の論調などを見ましてもはっきりさせたほうがいいのではないか。それは本来、もっと前から検討されていたことかもしれませんが、すでに相手方から五月二十五日付の文書がきているという段階で、しかもそれが、新聞社が最近になって、三週間後になってひた隠しにしていたんじゃないかという推測も書いてありますけれども、とにかく知るところになり、六月十七日には日本人は全部、米軍のほうの中間的な措置とはいいながら、これは不問に付するというのが出てきて、一そう憤りを巻き起こした。たとえば沖繩県議会では、与党は裁判権移管を要求する、野党つまり自由民主党も一方的措置に憤りを感じているという報道があります。与野党とも一致してこの米軍の中間報告ですか、こういうものには納得しないという態度を表明している。こうなりますと、これから問題は、ただ賠償するからいいだろう、大体こっちも手落ちがあったのだからもうあまりむずかしいことは言わないほうがいいんだろうということでは済まないというふうに思いますが、大臣はどうお考えですか。
#48
○田中(伊)国務大臣 ただいまの質疑応答を承っておって考えることでありますが、安保条約六条に基づく地位協定、いま先生御指摘の地位協定の中の十七条の三項の(a)の(ii)というものに関してお手元に記録をお持ちのようでありますが、日米両国間の合意議事録ができておる。私はここに問題点があるのではないかと思う。その議事録によりますと、公務の証明書が出された場合には、その証明書に対して反証をあげ得ない限り裁判においてものを言う。これはあたりまえのことを言うておるのでしょうけれども、問題は、その証明書はだれが書くのか。米軍の司令官か司令官に準ずる者が書くのでしょう。向こうさんがお書きになったもので、こういう証明書だといって日本国を管轄する検事正に対して、今回も同様でありますが、公務証明書が送られる。こういうことで、公務証明書に公務中だと書いてあれば公務中と認める以外にない。このたてまえに検討すべきものがあるのではなかろうか。そうすると、もう日本側としてはただ一つ、反証をあげる、そうじゃない、公務じゃないんだということ以外には手がない。今回の場合でも、十二日に事件が起こりまして、四月十三日にはいろいろな関係者を調査をしておる。検事も出ておりますし、次席検事も出ておる。全力をあげてこの点については調査というか捜査というか、実質的内容の捜査をやっておる。やっておるけれども、ただいま刑事局長から御報告を申し上げましたように、客観的状態はどうも反証をあげることがたいへんむずかしい事情にあると、こういうことが見通されておるわけでございます。そういう場合に日本は日本の裁判権を主張し、アメリカは公務中であるからということでアメリカの裁判権を主張する。双方競合したような形になって、今日最終的結論は得られない。中間報告が来ておりますが、最終的結論の見通しのものではない。こういうことになってまいりますと、今後わが国の当局でとるべき態度といたしましては、反証をいかにしてあげるかということ以外に不可能を可能にする道はないということでございます。公務であるかないかの問題については、アメリカ当局が一方的に発行いたしました公務証明書というものをめぐって論議が行なわれることになるわけでありますが、反証以外に道がないのだ、こういうたてまえで事件が処理されていくという場合は、わが国の立場はいつでも不利な立場に立って事件の処理をしなければならぬことになる。これを何とか日米両国の間に検討をする方法はなかろうか。私の所管ではございませんから強いことを申し上げかねるのでありますけれども、この点は日本政府の立場としては、今後の事件もあることでございます。公務証明書が出さえすれば、そしてアメリカが譲らないという態度であるならば、アメリカに裁判権があるのだということにほとんど一方的にこれがきまっていくというこのたてまえに検討すべきものがあるのではなかろうか。これは一般論を私はしておるわけでございます。本件に関連をいたしまして一般論を言いますときに、一体このたてまえに検討すべきものがあるのではなかろうか、こういうふうに考えるのでございます。
 なお、大臣の答弁として申し上げたいと存じますことは、あきらめないで、さらに反証をあげることに一そう力を入れるべきものであります。あきらめるべきものではない、こういうふうに考えるのでございます。
#49
○青柳委員 裁判権が第一次的に米軍当局にあるという、そのもとになる公務執行中であるかいなかの証明が一方的であるという大臣の御見解、まことに私も同感でございまして、これはこれからもあることでございますから、抜本的に直す。反証をあげない限り先方のほうが優先するんだといった不公平な合意議事録は、とうてい私どもも承認できないわけでありますが、それはそれといたしまして、私が先ほど大臣にお尋ねいたしましたのは、そういう不合理な前提のもとであっても、それを是正するためには、第一次裁判権なるものを先方さんが主張する――放棄をして、そして他方の要請に応ずるというのが妥当な解決ではないか。つまり先方は、これは事実関係からいって業務上の過失を認めることは困難であるということであり、それがわがほうに裁判権が移った場合でも、わがほうも自主的に判断してやはり同じ結論になるかもしれない。だけれども、むしろそういう結論になったほうが、向こうが一方的にきめて、何かそれでわが国の裁判権が消滅してしまうということよりはより合理的であろうか。もちろん私は本件について一致することがいいので、先方も無罪だ、こちらも無罪だというのじゃ、おそらく県民感情からいうと、おさまらぬと思いますけれども、たとえ話でございます。要するに一方的に向こうはきめた、こちらもそれに何か盲従してしまわざるを得ないということではまずいのだ。だから先ほどの十七条三項(c)の「他方の国がその権利の放棄を特に重要であると認めた場合」というのに当たるのじゃないか。だから他方の国、つまりわが国のほうから要請をするのが政治的にも、また法律的にも正しいのじゃないか。この要請に対しては相手方は「好意的考慮を払わなければならない。」ということになっておりますから、これに応ずるということにもなろうかと思うのですが、先回りをして、先ほど安原刑事局長のように、これは相手方が不公正な処置をするという場合以外はできないのだ、それで、そういう請求をすることは相手方に不信頼を示すことになっておもしろくないというふうにも推察できるようなお話でございましたので、はたしてそうかという点について大臣はどうお考えですか。これは外交関係の問題になるのかもしれませんけれども、少なくとも、法律的な立場から言っても、こういう権利は活用したほうがいいのじゃないか。政治的にも法律的にもいいのじゃないかという考え方があるものですから、それでお尋ねするわけです。
#50
○田中(伊)国務大臣 大事なことですから、刑事局長から答弁させます。
#51
○安原政府委員 まず、放棄要請するのはアメリカの裁判が信頼がおけない場合であるというふうにおとりいただいたとすれば、それは失礼ですけれども誤解をいただいたわけでございまして、私どもはアメリカ側に裁判させることが適当ではないという場合といたしまして、たとえば公務中の事件ということになりますと、大体故意犯というのはあり得ないので、過失犯といたしますならば、重大な過失で、爆発物を配置させて多数の日本人が死傷したというような場合、犯行の態様なり及ぼした結果の重大性等から、わが国において司法権を行使するのが当然であると考えられ、それが国益に合致するような場合というふうに、放棄を特に重要と考えるというのはその程度にしぼりをかけた考え方だろうというふうに申し上げたわけでございます。
 本件につきましてどう解釈するか、まさに見解の問題でございますけれども、私どもとしてはそのように特に重大な事件とは考えられないし、また実際問題といたしましては、本件につきましては、現在までの捜査の状況によれば、公務中の犯罪であり、かつ過失自体が非常に認めにくい状況であるということでもございますので、放棄を要請する事態ではないというふうに考えておる次第でございます。そういうことでございまして、アメリカを不信でやるということではございません。
 なお、盲従するというお話がございましたが、かつて昭和三十二年ジラード事件にもあらわれておりますように、私どもはあくまでも主張すべきことは必ず主張しておるわけでございまして、決して盲従しておるわけではない。また、この事件が沖繩の県民に与えた感情的なものもよくわかっておりますので、盲従するどころか主張すべき点は大いに主張して、わが国の裁判権を行使する前向きの姿勢でありますが、この協定も協定でございますから、これに基づいてやるというわけにはいかない事態であるということを申し上げておるわけであります。
 なお、公務中のものについて第一次裁判権を認めるということは、これはもう国際法上外国軍隊の行動そのものでもあるわけでございまするから、こういうものについて一次裁判権を外国軍隊側に与えるということは国際法上の原則といってもいいと思うのであります。決しておかしいことではないと考えておりますし、大臣のおことばにさからうようでございますけれども、このような公務証明書の公務の認定のしかたのプロセスというものは、これはNATOでもそのとおりのやり方をやっておるわけであります。駐留軍がおります西独等も同じことでございまして、決して日本だけが盲従的にこのような規定をしておるわけでもないということも十分御理解いただきたい、かように考えます。なお、反証をあげることはできるわけでございます。
 最後に、先ほど申しましたようにわが国の裁判所の、刑訴三百十八条の裁判所の自由心証をこの協定が制限するものではないことも明らかになっておりますので、決して屈辱的な協定とは考えておりません。
#52
○青柳委員 先ほどお答えがあったのかもしれませんけれども、要請するかいなかということについて、一つの基準のようなものを述べられました。これはアメリカとの間で、どういう場合には要請するのだ、どういろ場合でないのには要請しないのだという基準のようなものを何か合意しているのかどうか。それともそういうものについての合意は何もないのだけれども、わが国のほうでまあ自主規制のようなことを考えて基準を設けているのかどうか。その点はいかがですか。
#53
○安原政府委員 御指摘のとおりです。アメリカ側とそういう基準の協定は何もございません。あくまでも自主的に判断をする問題でございまして、双方が自主的に判断をすることでございますし、なお御指摘のように、このような場合は放棄するということについての自主規制につきましても、特にこの当局としてはきめておりません。ケース・バイ・ケースで特に重大かどうかを考えるということだけでございます。
#54
○青柳委員 どうも私どもの感じから言うと、一応つじつまが合うようであるけれども、割り切れない。結局どこに帰着するかというと、外国軍隊の基地がわが国にあるということであって、もしこんなようなことが自衛隊と一般国民との間であったとするならば、これはとうていだれもつじつまの合うどころの騒ぎではないと思うのです。だから外国軍隊の基地が日本にあるということが根源であることが、だんだん明白になってきたと思います。だから法律的な論争を幾らやってみても、結局これよりほか手がないのだみたいな議論になってきたと思いますが、結論はあとで述べるといたしまして、何か中間報告のようなものによりますと、刑事責任はちょっと認めがたいけれども、被害者の安富祖ウシさんに対する賠償問題はまた別に考えられるというような説明がなされた。これは文章の中にあるのか、あるいは海兵隊の広報部が漏らしているのかどうか、そこはわかりませんが、いずれにしても、刑事責任はないけれども民事責任はあるかもしれないような含みがあるようです。わが国とすればこういうような事案の場合にどのように考えて処理をするのか。これは防衛施設庁のほうからも見えておられますので、お尋ねをいたしたいと思います。
#55
○高松政府委員 お尋ねの民事責任につきましては、刑事責任と一応別個のものだというように割り切っております。つまり民事責任につきましては、地位協定第十八条第五項の問題である。これに従って米側に民事責任があると認められる場合には、当然補償措置をとってもらえる、そういうふうに考えているわけであります。
 新聞にも米側の意向というのがちょっと出ておりましたが、私どもが承知しております範囲におきましては、米側も民事責任の問題は別個であり、これについて十分に検討していくというふうな態度を那覇の施設局に対して表明しているようでございます。
#56
○青柳委員 理論的に刑事責任と民事責任は矛盾しない、片方はなくても片方はあるのだというのも、ちょっと首尾一貫しない感じがするのです。日本の法律でも過失なんというのはそうざらにあるわけではない、罪刑法定主義のたてまえから言って。だから故意犯では無罪であっても、過失ということで、刑事責任は問えないが、しかし民事はまあ過失で責任がある、こういう場合ならば別々に考えてもおかしくないのですか。大体公務中の加害行為についてアメリカ軍のほうでは国家賠償責任のようなものともまた違った考えを持っているのかどうか。事がこういう国家賠償責任ということになりますと、不法行為がやはり前提でございまして、無過失責任、故意、過失が不必要だということにはなっていないわけです。刑事的な責任やそれから不法行為はないけれども、何か恩恵的に、たとえば慰謝料というようなことばが使われているのにも反映されているように思いますけれども、日本側では損害補償というふうにして計算して計算書を出しても先方さんは損害補償ではない。慰謝料だ、見舞い金だ、そういう考え方のようで、結局民事責任といいますけれども、これは恩恵的なもののような感じが先ほどの十八条の規定の中身から考えられるのですが、この点で日本側はどういう計算をするならわしになっているのでしょうか。
#57
○高松政府委員 おっしゃるように確かにむずかしい点もあろうかと思います。それで十八条の五項の(a)では、「日本国の自衛隊の行動から生ずる請求権に関する日本国の法令に従って、」ということになっておりまして、したがいまして国家賠償あるいは民法というものが問題になってくるわけでございます。両方とも故意、過失を前提にしていることは御承知のとおりでございます。
 ただ、私どもといたしましてはやはり刑事責任という問題も、先ほどおっしゃったように確かに過失はあるんだけれども酌量して起訴しないということなのか、そもそも過失がないということなのか、いまのところ最終的な結論というものは得ていない。それからまたそういう刑事責任の問題と離れましても、たとえば本件の一番特徴は私は立ち入り許可日に演習をしたということであると思います。立ち入り許可日というのは通常どこでもその日は演習しないというのがたてまえですけれども、沖繩ではそういう立ち入り許可日にも演習するという一つの慣習的なものがあったようでございます。それが一つの恩恵的な形であったかもしれませんが、しかし、いやしく立ち入りを認めている日に演習する以上は、米側に演習場の安全管理上手落ちがあるのではないかというふうな点も、民事上の責任の問題としては考慮されてしかるべきものであると思いますし、これらの点につきまして今後遺族のほうの請求書の提出があり次第私どもとしても米側と十分に折衝を重ねてまいりたい。その結果がいま御指摘のようなたとえば慰謝料、見舞い金というような形になるかあるいは損害補償という本来の形になるか、これは事案について警察、検察あるいは米側とも十分に意見をただしていかなければ、最終的な決定的なことは申し上げられないと思いますけれども、一応私どもとしてはそのように考えまして今後これの民事損害補償というふうなことを明確にしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
#58
○青柳委員 この問題についてはすでに参議院の外務委員会などでも質疑が行なわれております。それに対する政府委員の河路さんからお答えも出ているようでありますが、これはどういう基準があってやられているのか。その説明によれば一九六四年の六月二十三日の閣議決定が基準のようでありますけれども、これはずいぶん前の、約十年くらい前の閣議決定なんですけれども、現在でもこれが有効だという。実情に合っているものかどうか、この点もお尋ねしたいと思うのです。
#59
○高松政府委員 昭和三十九年の六月二十三日の閣議決定によりまして、従来は人身被害の場合にはいわゆる労災保険方式ということでたとえば千日分というようなことで補償をやっておったわけでございますけれども、それをいわゆるホフマン式計算方式を採用する、従来の労災保険方式にはよらない、こういうことで大体やり方がきまりましてそれによってその後は実施しているわけでございます。
#60
○青柳委員 ホフマン式ということばがしょっちゅう使われるのですけれども、要するにこれは逸失利益の計算の一つの方法にしかすぎない。だから逸失利益ということになりますと、働き盛りの方がなくなったというときには平均寿命がまだ相当長い。だからその間に得べかりし利益というものは非常に多いということになりますけれども、七十歳を越えたような方について逸失利益をホフマン式で計算するなどというようなことが、はたして補償方法として妥当なものであるかどうかという疑問が最近の公害訴訟などでも出てきているわけですね。だから従来の見舞い金が幾らときまっておった、その定額であったのが今度は定額にしないで定率にするといいますか、ホフマン式でやるのだというようなことで、慰謝料についての考え方というものは、実は逸失利益をカバーするような意味で考えられるべきだと私は思うのですが、それはまだ全然きまっておりませんでしょうか。
#61
○高松政府委員 御指摘のように老人には非常に不利な方式である、これは私どももそう思います。今度の事件につきまして私どもは一番困っておりますのは、被害者の所得が幾らであるかということが基礎になるもんですからその点が非常にむずかしい。被害者になるべく有利なように計算しようと思っていろいろ考えてみましたが、そういう点が非常にむずかしいのがありますのと、七十歳の御老人だというところに問題があると思います。それを実務的に処理いたしますのには、それに対して慰謝料というふうなものについてある程度の幅を持たせてやるということも一つの方法であろうかと思います。私どもといたしましてはいまいろいろな点を考えまして、被害者の遺族のほうからいろいろ事情を伺ったり何かしているわけですけれども、なるべく有利なように措置ができますようにいまいろいろ那覇局に命じて仕事をさせているところであります。
#62
○青柳委員 何か従来のような計算でいくと河路さんの参議院でのお答えは、一般論だけれども一応百十万から二百十万くらいの範囲だというようなお話で、それに葬祭料などが入って二、三百万円という大まかな一般論を述べられているのですけれども、かりにこれが一般論であっても本件の具体的な決定が何もあるわけではないという、それはそのとおりだと私は思いますけれども、一般論でもどういう措置をとるか。ホフマン式ということだけに固執するのではなくて、慰謝料ということであれ何であれ、やるならば、たとえば自賠法などでも黙って五百万円ぐらい、被害者の方が自殺するにひとしいような場合であっても、なくなってしまっているんだから気の毒だ、あえて――これが自殺なら、遺書でも持っておって死ぬ一つの方便として汽車に飛び込む、自動車に飛び込むというのじゃ、これはちょっと問題でしょうけれども、そうでない限りは五百万円は最低限度差し上げるというような現状でございます。しかも最近の状況から見て、これはもっと上げなければいけないのじゃないか、一千万円ぐらいまで上げるべきであるというような議論だってあるわけですから、この辺はよほど政府としても考えて、もう十年前の方針、閣議決定などは直すべきではないかと思いますが、どういうお考えを持っていらっしゃるか、これはひとつ大臣にお尋ねしたいと思います。
#63
○田中(伊)国務大臣 私の所管事項でありませんので、意見を申し上げることを遠慮したいのでありますが、いま先生仰せのようなお説、ごもっともな点もありますので、将来の検討としてこれを承っておきたいと思います。
#64
○青柳委員 お尋ねしたい点はまだ不十分ではございますけれども、時間も相当たちましたのでおしまいにいたしますが、先ほどもちょっと触れましたけれども、どうもこういう問題はこれからもあとを引くであろう。しかも沖繩は本土とまた違った特殊性がある。たとえば黙認耕作地などという本土にはないような状況、これはそういうものができ得べくしてできた。つまり農民の土地をほとんど収奪するような形で軍事基地にしてしまった妥協的な産物として黙認耕作、立ち入り黙認といったようなことがあるものですから、そこでこういう事故は起こるべくして起こるということになる。ベトナム戦争はちょっとおさまった形になっておりますけれども、まだ完全にラオスやカンボジアまで停戦ができているわけでもありませんし、沖繩基地がそういうことに使われているというような現状からいいますと、結局は安保条約があるというところにこういう問題の根源が横たわっている。これはほとんど普通の新聞の論調も結局はそこにいかざるを得ぬということのようなでございます。まさに安保条約はまだ廃止するということで日本の国民的合意は成立しておりませんけれども、政府としてもこの問題は深刻に考えるべきではないか。そうしなければ、政府が望んでおられるアメリカとの親善、友好関係、協力関係などというものも発展することは不可能ではないか。世界の各国との間の友好、親善、協力関係も期待しにくいというふうに私は考えます。結局田中内閣としてはこの問題を簡単に見過ごすのではなくて、ただ一老婦人がなくなられた、しかも状況から見れば被害者の側にも多少注意が欠くるところがあったからやむを得ないのじゃないかというようなことで終わりにすべきではないというふうに考えます。
 これは私の意見になってしまいましたので、それだけ申し上げまして終わりにいたします。
#65
○中垣委員長 次回は、来たる二十二日金曜日午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午前十一時五十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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