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1972/02/14 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 本会議 第6号
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1972/02/14 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 本会議 第6号

#1
第071回国会 本会議 第6号
昭和四十八年二月十四日(水曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第六号
  昭和四十八年二月十四日
   午後一時開議
 第一 昭和四十七年度の米生産調整奨励補助金
  等についての所得税及び法人税の臨時特例に
  関する法律案(大蔵委員長提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 愛知大蔵大臣の国際通貨情勢に関しての発言及
  び質疑
 日程第一 昭和四十七年度の米生産調整奨励補
  助金等についての所得税及び法人税の臨時特
  例に関する法律案(大蔵委員長提出)
   午後一時四分開議
#2
○議長(中村梅吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(中村梅吉君) 議員請暇の件につきおはかりいたします。
 石田博英君から、海外旅行のため、二月二十日から三月十二日まで二十一日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 愛知大蔵大臣の国際通貨情勢に関しての発言
#5
○議長(中村梅吉君) 大蔵大臣から、国際通貨情勢に関して発言を求められております。これを許します。大蔵大臣愛知揆一君。
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#6
○国務大臣(愛知揆一君) 去る一月二十二日のイタリアにおける二重市場制の導入及び同二十三日のスイスの変動相場制移行に端を発した今回の国際通貨危機は、その後、二月に入りましてから西ドイツへの大量のドル流入となり、重大な局面に発展いたしました。
 このような状況から、米国はみずから国際通貨危機の収拾をはかるため、わが国をはじめ欧州関係諸国等と協議を行なう一方、欧州諸国間においても、事態打開のため、蔵相間の協議等が精力的に行なわれました。その結果、米国が国際収支を改善してドルの信認を回復することが、米国自身のみならず、国際通貨情勢全体の安定のための基本的要件であるとの認識のもとに、まず米国自身がドルの一〇%切り下げを決定し、これに対応して、各国はそれぞれ自国の置かれている国際環境のもとで適切と考える措置をとることとなりました。
 わが国といたしましては、欧州主要諸国とともに今回のドルの切り下げを歓迎するとともに、円の為替相場を当分の間フロートさせることとしたのであります。わが国が切り下げられたドルに対する為替相場を直ちに決定しなかったのは、ここしばらくの間は、今回のドル切り下げの効果と国際通貨情勢の推移を慎重に見守った上で、適切な水準を見出すことが適当であると判断したからであります。今後適当な機会に固定相場に復帰いたしたいと考えております。
 なお、政府といたしましては、今後とも国内経済の安定的成長を確保するとともに、特に中小企業に対しましては、必要に応じ、十分な配慮を行なう所存であります。
 また、わが国の対外均衡を達成するための努力も引き続き怠らない所存であり、さらに、国際通貨体制の長期的安定をはかるため、新しい国際通貨制度の確立に積極的に貢献してまいりたいと考えております。(拍手)
     ――――◇―――――
 国際通貨情勢に関しての発言に対する質疑
#7
○議長(中村梅吉君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。前尾繁三郎君。
  〔前尾繁三郎君登壇〕
#8
○前尾繁三郎君 私は、自由民主党を代表して、最近の国際通貨危機と円の再切り上げの問題に関して、若干の質問を試みたいと存じます。(拍手)
 一昨年末の円切り上げにつきましては、その切り上げ幅が予想以上に大幅であることによって、貿易上相当な打撃を受くるものとの不安があったにもかかわりませず、経済界に著しく大きな影響がなかったことは、一面成功であったかのようでありますが、われわれからいえば、国際収支は依然黒字であり、このままの状態が続くならば、当然再切り上げは免れないものと不安に考えてきたのであります。しかし、総理は、昨年九月、ハワイのニクソン大統領との会談において、相当の期間をかせば国際収支の著しい改善が行なわれることを約束され、その期間は一般には両三年と了解されてきたのであります。また、その後しばしば円の再切り上げを行なわないとの言明をされたのであります。しかし、民間では依然三月切り上げ説、五月切り上げ説も行なわれ、私なども六、七月には切り上げを行なわなければならないのではないかと考えてきたものではありますが、それが最近突如として変動相場制に移行し、円再切り上げ必至と伝えられるに至ったことは、はなはだ遺憾に存じます。
 このことは、国民にとっては全くその理解に苦しむところと思われますので、まずもってかかる事態のよって起こってきた理由なり経緯を、すでに大蔵大臣の説明もありましたが、繰り返し明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 今回の通貨危機の原因が、伝えられるように、イタリアの二重相場制の採用やスイスフランの介入停止及びこれに続く西独市場での大規模なドル売りの局地的現象に端を発したものとしても、基本的には米国の国際収支の継続的赤字が大きな原因になっているものと考えられますが、かかる事態が起こることは全く予想できなかったかどうかについて承りたいと思うのであります。
 ということは、国際収支の根本的原因と為替投機による原因とに分けて、まず為替投機による誘因は、現在の貿易構造の慣習からいってやむを得ないものといえばそれまででありますが、できることならば、国際通貨基金の動員などによって、かかることを防止する手段がないかどうか。あれば当然これを除去すべきものと考えるからであります。そうして、十分国際的な問題として今後討議さるべき課題であると思います。
 次に、近因はどうあろうとも、根本の原因は国際収支の不均衡にあることは言うまでもありません。国際収支の継続的な過度の黒字は、国際収支の継続的な赤字と同様、国際貿易を破壊すること、これまた論をまたないのであります。しかし、その黒字解消の手段方法の第一は、貿易と資本の自由化を促進し、海外投資なり海外協力を勇敢に行なわなければなりません。ことに、従来の民間の信用供与重点の援助政策を改め、アジアの平和に寄与する政府開発の援助を重点に思い切って増加することが肝要であります。しかし、現段階においては、これらの方法のほか、国内の金融を緩和し、公共投資を盛んにし、輸出ドライブを減退せしめる方法が最も有効であることは、私も年来主張してまいったところであります。
 昭和三十年代の国際収支の赤字時代は、金融引き締めと予算の緊縮によって消費を押え、これをしのいできたのであります。したがって、国際収支の黒字の時代に入った昭和四十年代には、全くその逆を行って、消費を盛んにしなければならないのであります。現内閣は、昨年そのことに気づき、金融を緩和し、大型予算を編成されたことはわが意を得たものと賛意を表しているものであります。(拍手)
 ただ、惜しむらくは、全くきめこまかい配慮が足りなかったのであります。金融を引き締める場合は、業者の困ることが明らかでありますから、勢い日本銀行の窓口指導などによって種々の配慮がなされたのでありますが、金融緩和に際しては、安易に考え、ただ漫然と不用意に行なったために、その緩和された資金は株式投資や土地に対する投資に回され、ついに株価や地価の高騰を招いたにすぎず、せっかくの消費に使われなかったために、肝心の国際収支の改善にはあまり寄与しない結果となったのではないかと思うのであります。このことは、将来のこともありますから、これに対する総理と大蔵大臣の見解をお聞きしたいのであります。
 私は、現在の国際収支の過度の黒字の根本原因は、何としても現在の産業構造そのものにあると考えているものであります。われわれは、昭和二十年代と昭和三十年代を通じ、長きにわたって輸出する産業の育成をはかるとともに、輸入するものは極力国内で自給することを考え、いかなる場合にも国際収支の赤字が出ない産業構造をつくってしまったのであります。しかし、それが行き過ぎると国際貿易は成り立たないのであります。したがって、いまやわが国は、国際分業において何を分担するかということについての大方針を固め、それに従って産業構造を再編成することに着手すべき段階に来ているのであります。(拍手)私は、不幸にしてかかる大転換の具体案を聞いたことがありません。これに対する総理の見解と、何かお考えがあれば承りたいと存じます。
 しかし、このことは相当の年月を要するのであります。したがって、ある期間は、応急措置としては、私は円の切り上げによるのほか道ないものと考えております。
 御承知のように、昭和二十年代は、アメリカ以外は、欧州の諸国もわが国も、いずれもドル不足に悩んでおりました。その当時は、欧州のマーシャルプラン、わが国のガリオア、エロアなど、アメリカの財政措置による海外援助の方式によって世界の国際収支を調整してまいりました。しかし、昭和三十年代になると、世界の諸国も戦後の復興を終わり、金融措置によって世界の国際収支を調整することができたのであります。しかし、昭和四十年代になると、かかる金融的措置では調整は不可能となり、勢い為替的な措置によらざるを得なくなったのであります。
 為替措置については、それによって受ける影響が業種によって一様でないこと、また、取引の安全を害し、投機を誘発するなど、多くの欠点を持っていることは言うをまちません。したがって、為替措置にかわる国際通貨の調整制度の確立を急がなければならないと思います。
 しかし、なかなかこれにかわる名案がない現状においては、以前のように為替の切りかえは絶対に回避すべきものと考えるわけにはまいりません。私は、いままでのように、外圧によってやむを得ず上げるというのではなく、もう少し柔軟性をもって対処すべきであり、従来あまりにもこれにとらわれ過ぎてきたのを改めるべきではないかと思うのであります。(拍手)これに対する総理の見解、また、国際通貨制度に対する方策について、大蔵大臣から御教示を得れば幸いと思います。
 ところで、今回の通貨危機に際し、切り上げ幅がどうなるかについて、アメリカのドルの一〇%切り下げが予想以上に大きかった上、マスコミはいろいろの憶測を書いておりますので、それによって国民は戸惑っていると思います。また、切り上げだけで済まされずに、さらに輸入規制も行なわれるのではないかと不安がっている向きもありましょう。また、円の切り上げは、輸出価格が上昇する反面、輸入品は値下がりするのでありますが、これが前回の切り上げの場合には中間マージンに吸収されて、あまり国民の目には立たなかったうらみがありますが、輸入品の対策についても十分お考え願いたいのであります。(拍手)
 また、円の切り上げによる影響は、ドルの切り下げと相まって、一般的不況も甚大であり、輸出関連産業、特に中小企業に対しては深刻なものがあると考えなければなりません。これらのことは、前回の切り上げの際の体験を生かし、常に早い目、早い目に手を打っていかなければならないのであります。(拍手)また十分配慮も願わなければなりません。これらについて国民の不安をできるだけ解消する意味で、総理なり大蔵大臣から、この際御発表のできるものはここでお答えを願いたいと思います。
 なお今回は、アメリカもみずからドルの弱さを自覚して、一〇%の切り下げを行なったことは当然のこととはいえ、一つの進歩であると思います。従来、黒字国の責任だけが追及されたことはあまりにも一方的で残念でありました。われわれは、昭和三十年代までは、赤字国なるがゆえにその改善に責任を感じ、あらゆる努力をしてまいったのであります。しかし、確かにわれわれの行き過ぎたことについては反省をし、現在の産業構造に転換を考えなければなりませんが、働く人間がばかを見るのでは経済の理法にかなわないのであります。交渉にあたっては、単なる黒字国の責任だけではなく、主張すべきは堂々と主張することを忘れてはならないと思います。(拍手)そうして、今回の為替調整後、これを契機に、今後の国際通貨の調整をいかにして安定せしめるか、新しい方策を生み出していかなければならないのであります。そうしなければ、今回のような措置を何回も繰り返さなければならないこととなると思うのであります。
 最後に、今回の一連の通貨関係の措置によって、国際収支のほか、輸出関連産業を中心に国内経済面に影響することは必至であります。しかし、まだ現在のような流動的な段階で、政府の経済見通しや税収等の歳入見積もりの改定を行なうことは、いたずらに無用の混乱を来たすおそれがあり、(拍手)この点から言っても、むしろ現在審議中の四十八年度予算の年度内の成立に全力をあげて、予算の空白期間を生ぜしめないことのほうが重要であると考えますが、(拍手)これに対する総理の見解を伺って、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(田中角榮君) 第一は、今回の通貨不安が発生した経緯と理由に対して述べよということでございます。
 本年に入ってから、イタリアの二重市場制導入、スイスの変動相場制移行に端を発した欧州の通貨不安は、二月一日以降、西ドイツへの大量のドル流入となり、重大な局面に発展をしたのでございます。このことにつきましては、一部の欧州通貨の強い、弱いの問題があっただけではなく、一昨年十二月のスミソニアン協定以降も、米国の国際収支が改善しなかったことが密接に関係しておることは否定できないのでございます。
 この間にありまして、米国は、その国際収支改善として、ドルの信認を回復することが国際通貨情勢の安定のための基本的要件であるという認識に立ちまして、まず米国自身が一〇%のドル切り下げを決定し、これに対応して、各国がそれぞれ自国の置かれておる国際環境のもとで適切と考える措置をとることになったのでございます。わが国としましては、欧州主要諸国とともに、今回のドルの切り下げを歓迎するとともに、円の為替相場は当分の間フロートさせることにしたのでございます。
 第二は、IMF等、国際的な話し合いによって解決できなかったのかということでございますが、今回の措置も、関係国間の協議によって事態の収拾がはかられたものでございます。また、今回の通貨危機を通じまして、各国とも、長期的な国際通貨制度改革の緊要性をあらためて認識し、今後、IMF二十カ国委員会による通貨改革問題の討議の進展をむしろ早めることになるのではないかと考えておるのでございます。
 次は、国際収支の不均衡是正の問題でございますが、政府は一貫して国際収支の均衡を目ざして努力をしてまいりました。昨年十月には第三次円対策を決定し、関税の一律二〇%の引き下げ、輸入ワクの拡大、貿管令による輸出の適正化、大型補正予算による内需の拡大などを行なってまいったことは、御承知のとおりでございます。また、現在審議をお願いしております四十八年度予算及び財政投融資も、国民福祉の向上に重点を置きますとともに、国際収支の均衡回復を重要な柱として編成をしたものでございます。
 次は、産業構造を転換せよという問題でございますが、戦後のわが国経済政策の基本が輸出及び設備投資主導型であったことは、御指摘のとおりだと思います。これからは、経済社会基本計画で明らかにせられておりますように、生活優先、福祉優先の経済政策へ転換をはかるとともに、産業構造の高度化、知識集約化を推進して、国際分業を進めてまいりたいと考えております。(拍手)
 なお、為替レートの調整をもっと柔軟に考えよという趣旨の御発言に対して申し上げます。
 為替レートの安定が望ましいことは、申すまでもないことでございます。国際経済社会の中にあって、為替レートの変更は必ず他国に影響を及ぼすことになり、特に先進国間にあっては、国際協調の観点からも為替調整は慎重に取り扱わるべきものだと考えます。今回の措置は、米ドルの切り下げに対応し、関係国間の話し合いによって事態の収拾をはかろうとするものであり、わが国といたしましても適切にこれに対応してまいりたいと考えておるのでございます。
 フロート後の通貨情勢の見通し等に対して申し上げます。
 わが国が、切り下げられたドルに対する為替相場を直ちに決定しなかったのは、ここしばらくの間、今回のドル切り下げの効果と国際通貨情勢の推移を慎重に見守った上で、適正な水準を見出すことが適当であると判断をしたからであります。今後、為替市場の動向を見きわめた上で、適当な時期に固定相場制に復帰したいと考えております。
 輸入価格の引き下げ効果等に対してでございますが、政府としましては、今回の措置による輸入品価格の低下が消費者物価によりよく反映いたしますよう、輸入代理店対策、輸入の自由化、関税の引き下げ、輸入品にかかる流通機構の改善などの各種施策を、強力に展開をいたしてまいりたいと考えます。
 輸出関連産業、特に中小企業等に対する問題について申し上げます。
 政府といたしましては、今回の措置に伴い、輸出関連中小企業が受ける影響の実態を十分把握をいたします。その上、金融、税制、信用補完、為替取引の安定などの面で、適時適切なる対策を講じてまいります。
 赤字国の責任はどうだという問題でございますが、赤字国である米国が、国際収支改善のため、ドルの切り下げを行なったことは評価すべきであります。わが国が、今後の交渉において、主張すべき点は主張することは当然でございます。
 最後に、政府の経済見通しなどの改定は適当でないような御発言をもとにして、四十八年度予算に対してお触れになりましたが、御指摘のとおり、変動相場制下でのレートの水準、変動相場制の期間等、流動的な要因が多いので、現段階で、年度を通じた、経済全体に及ぼす影響や、税収を中心とした歳入の見積もり等に及ぼす影響を把握することは困難であります。したがいまして、このような段階で歳入見積もり等を改定するのは適当でないと考えております。
 また、変動相場制移行に伴う国内経済面への影響等を回避するためにも、現在御審議を願っております四十八年度予算は早期成立をはかり、予算の空白を生ずるような事態はぜひとも避けなければならないと考えております。
 以上であります。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#10
○国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。
 まず、今後の国際通貨体制についてのお尋ねでございますが、従来の国際通貨体制のもとでは、一国の通貨であります米ドルの役割りが過大であったということは指摘しなければならないことでございます。これが通貨情勢の不安定を生む一因となったといえると思います。このような体制に対する反省からいたしまして、きわめて重要な米ドルの交換性回復の問題も含めまして、現在二十カ国委員会を中心として、通貨制度改革の議論が進められておるところでございます。
 わが国としても、従来から、準備資産としてSDRを育成強化して、米ドルの役割りを減少させていくべきことなどを主張してきておりますが、今後はさらに積極的に、新しい国際通貨制度を確立するための討議に参加してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
 第二に、昭和四十八年度予算との関係でございますが、ただいま総理からも御答弁がございましたように、変動相場制下の問題でございますから、レートの水準とか変動相場制の実行の期間等、流動的な要因がございますので、現段階で、年度を通じた、経済全体に及ぼす影響や、税収を中心とした歳入の見積もり等に及ぼす影響を現時点で的確に把握することは、性質上困難でございます。したがって、このような段階で歳入見積もりを改定するというようなことは、適当でないと考えておる次第でございます。
 そうして、これも総理が言われましたとおりに、こうした国内経済への影響や動揺を防ぐためにも、四十八年度予算は早期成立をはかって、国民経済の安定をはかっていただくということを、ぜひともお願いをいたしたいと考える次第でございます。
 さらに、今回の変動相場制移行につきまして、輸出関連の中小企業等の問題は重要な課題でございます。
 まず、国内の金融面では、今回の措置によって影響を受けます、特に輸出関連の中小企業につきまして、その実態を十分に把握することにつとめております。そして、まず、金融面におきましては、必要な手段の疎通を欠くことのないよう、適切な配慮を十分いたします。為替相場の変動等に伴いまして、輸出関連の中小企業の業務運営に著しい支障を来たすようなことがあってはなりませんから、為替面からも適切な措置について検討いたしております。
 なお、財政上の措置につきましても、中小企業に対する助成措置などにつきまして、年度中にも必要な手段を講ずることといたしまして、予備費の支出、財政投融資の弾力的な運用等で事態に対処できると思います。しかしながら、必要があれば、適当な時期に適宜予算補正等万全の措置をも考えたいと思っております。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(中村梅吉君) 広瀬秀吉君。
  〔広瀬秀吉君登壇〕
#12
○広瀬秀吉君 私は、日本社会党を代表し、ただいま政府から御報告のありました今回の国際通貨問題の緊急事態、ドルの切り下げ、円の変動相場制移行の問題について、総理並びに関係各大臣に、国民の立場に立って質問をいたしたいと存じます。(拍手)
 今回、円の問題をめぐって、二月九日に東京外国為替市場の閉鎖、十三日米国のドル切り下げ、そして本日、東京為替市場再開とともに二百七十二円をもって変動相場制に移行するという緊急事態に立ち至ったのであります。
 思えば一月二十七日、田中総理は、円切り上げを回避するためにあらゆる努力を傾注する旨、再開冒頭における所信表明演説で述べられたのでありますが、それからわずか半月後に、かかる最悪の事態を迎えざるを得なくなったことに対し、国民は、あげて田中内閣への不信をつのらせ、田中総理の決断と実行、たよりがいのある総理として大きな期待が裏切られた今日、期待と待望は不信と絶望に変わり、不信と怒りの声は全国にほうはいとしてわき上がるに至っております。(拍手)
 その原因の一つは、今日の事態を招いたものがドルの決定的弱さに基因するにもかかわらず、アメリカは、ベトナム戦争を長期にわたり継続して、今日停戦を迎えてはいるものの、かかる戦争政策によるドルという名の不換紙幣を乱発しての戦費調達、不当な海外軍事援助、多国籍米系企業の無秩序な海外投資、進出などで、世界に過剰ドルをたれ流しております。さらに、国際基軸通貨としての責任を放棄して、金との交換停止を続けております。
 内政面では、インフレ、物価値上げ政策、八百二十億ドルにのぼる総予算の三〇%以上を占める大型軍事予算を組むなど、あまりにも節度なき内外政策を行なってきていることは、全世界の非難の的となっているのであります。
 国民大衆が田中内閣に不信を抱くもう一つは、かかるアメリカの態度に対して、当然要求すべきことを要求することなく、日米パートナーシップの美名のもとにうつつを抜かして、対米依存、そして追随を続けている点にあるのであります。それのみか、今日の緊急事態についても、ことごとくアメリカのイニシアのもとに行なわれたことが日を追うにつれて明確になっていることは、自民党政府の体質とはいえ、まことにお粗末きわまると言うほかないのであります。(拍手)
 愛知大蔵大臣は、変動相場制移行であるから、これは円切り上げでないと強弁しているのでありますが、本日から二百七十二円を基礎にフロートするという、アメリカの決定は実質的には一〇%の円の切り上げと同じ意義を持つことは自明であります。
 二百七十二円で再開されたフロートが、今日すでに二百七十一円二十銭という相場が立っておるということを考えましても、国民経済に大きく影響することは、すでに万全の対応策をとり得た大資本、大企業はいざ知らず、産地産業、中小零細企業、労働者などにとって、いかなる犠牲と被害をもたらすか、はかり知れないものがあることを、総理は一体どのように考えておられるか、お尋ねをいたしたいのであります。
 第二に、アメリカ側の要因とともに、われわれが許し得ないことは、田中総理が就任と同時に、日本列島改造論に集約されるように、今日までの生産・輸出第一主義、産業優先、大企業の利潤追求型の経済政策、財政金融政策こそ、日本経済の構造となっている点に対し、国民は、その裏返しの、公害の激発、交通災害、住宅難、大衆に対する重い税金、物価値上げなどに、もはや忍耐の限度を越えた怒りを、総選挙における社会党、共産党の躍進ということで表明したのであります。
 田中総理は、今国会再開冒頭の所信表明演説の中で、「私は、総選挙を通じて国民の期待や不満を痛いほどに感じました」と表明し、「内に福祉の新時代のとびらを開くことは、必ずできると確信をする」、このようなことばで所信を結んでおられるにもかかわらず、国際収支不均衡の是正を声を大にして言明しながら、貿易収支黒字幅の縮小、同対策に効果的な何らの手を打てず、大企業中心の財界の圧力に屈服し、生活向上、福祉優先の経済財政政策の転換を実行しなかったことが、スミソニアン体制下の一年で、すなわち四十七年度で七十一億ドルの貿易収支黒字が八十九億三千五百万ドルと、二十億に近い実績見通しとなりました。外貨準備も、十二月末で百八十億をこえ、粉飾分を加えれば二百七十億にのぼる外貨を保有するに至っておるのであります。今日の事態に追い込まれることとなったのは、このようなことが原因になっております。
 田中内閣が経済財政政策の転換を怠り、安易な、選挙スポンサーである財界従属型の姿勢は、全国民の名によって糾弾されなければなりません。総理は、この点について、国民に向かっていかに弁解されるのか、総理の責任はまことに重大であります。総理の御見解をただしたいと思います。
 第二に、政府は、四十八年度予算においても十四兆二千八百億の予算、公債発行二兆三千億、財政投融資計画額六兆九千億という、歴史始まって以来の大型予算を編成し、財界の要請にこたえて、調整インフレ的役割りを期待し、一部、場当たり的な福祉向上の面は見受けられますが、先ほど述べた財政経済運営の基本姿勢の転換とはほど遠い物価値上げ、インフレによりまして、減税効果も福祉効果も全く相殺されてしまう予算を提出したことは、まことに遺憾千万であります。
 しかも、この予算は、その編成の基礎である経済見通しに全く今日の事態を織り込んでいないのであります。今日の事態は、まさに予算審議のまっただ中で発生した緊急事態であり、経済見通しは当然修正されなければなりません。
 経済見通しを基礎にして、歳入における税収入が算定されている以上、税収見込みの、景気動向、経済成長率の変動に伴う見込み違いは相当の巨額にのぼるでありましょう。
 さらに、歳出の面についても、当然とるべき優先順位、さらに支出額も大きく変動することが明白であります。
 政府は、すみやかに予算編成の基礎をなした経済見通し、予算案、財政投融資計画、地方財政計画などを抜本的に洗い直し、これを撤回して、再検討の上あらためて提出すべきであると思いますが、総理、いかがでございますか。(拍手)
 さらに、今日の事態によって受ける中小零細企業、産地産業等に対する緊急対策は、予算案に何一つ計上されておりません。単に融資をもって手当てをするというようななまやさしい対策で、この事態は乗り切れるものではありません。
 総理は、昨年、通産大臣当時、大蔵委員会に出席して、円切り上げはどうしても避けたい、避けなければならない、なぜなら、そのような事態に再度なったならば、その被害の深刻さは前回の比ではない、金を借りようにも、小零細企業、産地産業は、担保に提供する資産が、前回の円切りの際出し尽くして、それすらないことを強調されたのでありますが、まさにそのとおりであろうと思うのでありまして、今日の緊急事態の中で、それらの被害を最小限度にとどめるためには、融資だけではなく、直接的な政府援助、補助金の交付などを当然に考えてしかるべきと思うのでありますが、いかがでありますか。
 四十八年度中小企業予算は八百三億円で、対前年伸び率も一七・八%増額をしただけであります。この点についても政府はいかに措置されようとしておるのか、見解を明らかにしていただきたいのであります。
 いずれにしても、政府は、新事態に対応する予算の編成がえをみずから行なうことが絶対に必要であり、それなくして予算の責任ある審議はあり得ないと考えますが、総理の所見をお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 次に伺いたい点は、このような事態を迎えております今日こそ、日本経済の質的転換を断行する絶好の機会であると考えますが、政府は直ちにこれを実行する決意があるかどうか。
 政府の進めてきた、そしていまや構造化している生産・輸出第一主義の高度成長政策、大企業の利潤追求型の日本の経済構造を続ける限り、円の再切り上げは、必ず再々切り上げに両三年を出ずして至るでありましょう。そのたびに関連中小企業、産地産業、労働者たちが犠牲にされたのでは、いつの日かこれらの勤労大衆に、豊かな安定した生活と不安のない福祉の時代が訪れるのでありましょうか。いまこそ政府は、勇断をふるって財界癒着、対米依存の経済構造の質的転換を実現しなければなりません。
 その第一は、国内価格と輸出価格の二重価格の解消を行なって、外に貿易収支バランスに役立たせ、さらに国内消費者物価引き下げの両面に大きく貢献することを断行すべきであります。
 その二は、公害防止を徹底化し、公害発生者負担の原則を厳格に実行して、公正な対外競争力の実現とともに、国民の生命と健康を守ることが必要であります。
 その三は、社会保障を画期的に充実をし、福祉政策を体系的に推し進め、この面からの企業の適正な負担を求むべきことは、対外バランスの面でも重要であり、これこそ生活向上、福祉優先型の政策と申すべきでありましょう。
 第四に、生活関連・環境整備を思い切って断行することであります。
 第五に、労働者の低賃金の状態を解消しなければなりません。ちなみに、日銀発行の国際経済比較の資料によりますと、一九七〇年における諸外国との賃金格差は次のようであります。日本の労働者は一時間当たり三百八十円、これに対して米国は千二百十円、西独が六百円であります。米国の三分の一、西独の二分の一。悪名高き日本の労働者の低賃金を、いまこそ改善をしなければならないと思うのであります。(拍手)
 目下、春闘の最中であります。労働者は、かつてない確信と体制をもって大幅賃上げに立ち上がっているのであります。すでに日本の低賃金が対外競争力を強め、円切り上げの最大の原因とすらいわれているのであります。総理大臣、労働大臣は、今回の事態をむしろ利用して円切り不況のキャンペーンを張るであろう財界筋に向かって、賃金抑制などを行なわないように、適正な賃金要求を受け入れるべきことを積極的に指導すべきであると思いますが、いかがでありますか。(拍手)
 以上申し述べた五つの政策を根幹とした福祉経済構造に転換することなくしては、円の再切り上げ、再々切り上げ、そして再々々切り上げというようなスパイラル現象が起きてくることを、私は心から警告をいたしたいと思います。
 総理、いま私が申し上げたような経済構造、産業構造の転換を実行する決意があるかどうか、お伺いしたいのであります。
 最後に、田中総理は、円切り上げを避けるためのあらゆる努力をし、そのような事態に追い込まれた際は重大な責任をとると発言をされました。今日、その事態に直面をしたのであります。冒頭に述べたごとく、田中総理に対する国民の評価は全く変動し、フロートしておるのであります。あなたが責任をもって提案された予算案もまた、目下変動の段階にあるのであります。
 わが党は、今回の事態に追い込まれた真の原因が、総理の財政経済運営の誤り、そして対米追随の姿勢にありと断じて、この責任はまさに田中内閣の総辞職に値すると思うが、(拍手)総理の明快な答弁をその点について求めて、私の代表質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#13
○内閣総理大臣(田中角榮君) 第一は、数次の円対策は失敗であるということでございますが、政府は一貫して、国際収支の均衡を目ざして努力をしてまいったわけでございます。
 昨年十月には第三次円対策を決定し、関税の一律二〇%の引き下げ、輸入ワクの拡大、貿管令による輸出の適正化、大型補正予算による内需の拡大などを行なってまいったことは御承知のとおりでございます。
 また、現在審議をお願いしております四十八年度予算案及び財政投融資も、国民福祉の向上に重点を置きますとともに、国際収支の均衡を重要な柱として編成したものでございます。この予算案が出ましたときに、代表質問の中で、これは社会福祉を中心としたというけれども、国際収支対策予算ではないかという御質問をいただいたことによっても明らかなとおりでございます。(拍手)
 それから、今回の問題は、日本の経済力が低下をして円の切り下げが行なわれたのではなく、各種の処置をいたしてまいりましたが、しかし、日本の国際収支面はだんだんとよくなりつつございますけれども、輸出は依然として伸びております。輸入は増大し、均衡の方向に向かっておることは御承知いただけると思うのでございます。今回は日本が切り出した話ではなく、アメリカ自身が一〇%のドル切り下げを決定し、これに対応して、各国がそれぞれ自国の置かれておる国際環境のもとで適切と考える措置をとることになったのでございます。
 わが国といたしましては、本日から当分の間、円をフロートさせることにいたしたのでございます。
  〔発言する者多し〕
#14
○議長(中村梅吉君) 静粛に願います。
#15
○内閣総理大臣(田中角榮君)(続) 今後とも国際収支を妥当な規模におさめる努力を続けてまいりたいと考えておるのでございます。
 第二は、いまこそ福祉優先の経済構造に転換すべきであるという御所論でございますが、政府は、経済社会基本計画におきましても明らかにいたしておりますように、輸出優先の経済構造から国民福祉指向型の経済構造へ転換をはかることが基本的に必要であると考えておるのでございます。このため、経済成長の成果がより一そう社会のすべての階層に行き渡り、国民がひとしくゆとりと潤いのある生活ができますように、社会保障の充実、生活関連社会資本の整備、豊かな自然環境の確保などにつとめてまいります。
 予算の再編成、経済見通しの修正などについて御発言がございましたが、円の変動相場制に移行後、流動的な要因が多く、現段階で、年度を通じた経済全体に及ぼす影響、したがって税収を中心とした歳入の見積もりなどに及ぼす影響を把握することは困難でございます。
 また、変動相場制への移行によりまして影響をこうむる輸出関連中小企業等に対しましては、緊急対策を必要とする場合には、予備費の使用等によって対処することが可能であると考えておりますが、なお、先ほど大蔵大臣が述べましたように、諸般の措置を講じてまいりたいと考えるのでございます。今回の措置が国内経済面に及ぼす影響を回避するためにも、現在御審議をいただいております四十八年度予算につきましてはその早期成立をはかり、予算の空白が生じるような事態はぜひとも避けなければならないと考えておるのでございます。(拍手)せっかくの御協力を切にお願いをいたします。
 なお、賃上げ抑制の問題等について御発言がございましたが、賃金問題につきましては、労使それぞれの立場から主張がなされております。基本的には労使の自主的な話し合いによってきめらるべきものでございます。政府としましては、労使が国民経済的な視野に立って合理的な解決をはかることを強く期待をいたしておるのでございます、
 なお、変動相場制等に対して相当の責任ということでございましたが、これらの問題については、予算委員会でも申し述べておりますように、日本は諸般の努力を続けてきたことは御承知いただけると思うのでございます。今度は、アメリカが依然としてドル不安から抜け出すことができないので、そして日本を含めた各国に対して一〇%の切り下げを提案をし、マルクはこれを受けたわけでございますし、そのほかのフランやポンドや円は変動相場制に移行したわけでございます。これは切り下げが行なわれる場合と、先般のオーストラリアのように切り上げが行なわれる場合もございます、こういう問題でございまして、日本が国際通貨の問題に取り組むとともに国際収支改善対策に努力を続けなければならぬことは、これは当然のことでございます、これからもなお懸命な努力を続けてまいりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#16
○国務大臣(愛知揆一君) 御質問の第一の点でございますが、固定相場制にはいつごろ復帰するのか、その際円の切り上げ率はどの程度になるのかと、こういう私に対する御質問の第一点であったと思いますが、政府といたしましては、変動為替相場というものをしばらくの間続けてまいりますことが、これが国益に合するゆえんであり、また日本としての自主的な当面とるべき措置である、かように考えておる次第でございまして、このフロートの期間内におきましてどういうふうな円の実勢があるであろうかということを冷静に見詰めてまいりますこと、これが当面一番必要なことではないかと思います。したがって、何どき固定相場に戻るか、またどういう比率が適当であろうかということは、いまさような意見を申し上げる段階ではございません。
 そして第二の御質問の点でございますが、こういうふうな政府の見解でございますから、こうした変動相場制下でのいわゆるレートの水準、あるいはこの相場制というものをどの期間実施するかというようなことについて、考え方が流動的でございますだけに、この段階で年度を通じて長い期間における経済全体がどういうふうに見通されるかというようなことを、早計にここで見通しを変えるというような段階ではないと私は思います。いわんや、具体的に四十八年度の税収見込みをここであわてて変えるというようなことはかえって不適当であると、かように考えるわけでございますから、税収の見込みを変えるというような考え方は持っておりません。
 それから予算の面におきまして、歳出の中にはたとえば外貨建ての支払いもございます。しかし、基準の外国為替相場それ自体には変更がないわけでございますから、こうした外貨建て支払いにかかる歳出予算につきましても、その執行には何らの支障はございません。(拍手)
 かようなわけでございますから、この四十八年度予算の性格、またその使命にかける政府の考え方というものは、ただいまも総理大臣から御説明がございましたように、国民生活の安定のために、一日もすみやかにこれが施行されることが、政府として心から望んでおるところでございます。(拍手)
 特に、御心配、御懸念、御指摘のございまする中小企業等につきましては、できるだけのことを緊急的に用意いたしますということは、先ほど前尾議員の御質問に対しまして、政府といたしまして十分なお答えを申し上げたつもりでございまして、万全の措置を講ずるつもりでございますから、何とぞ御了解を願いたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
#17
○国務大臣(小坂善太郎君) 政府の経済見通しを改定する必要があるのではないかということでございますので、お答えをいたします。
 政府の経済見通しは単なる経済の予測ではありませんで、経済の実勢を考慮に入れながら政府がとる政策の効果を織り込んだ経済の見通しであり、政策的な目標ともいうべきものでございます。四十八年度の経済見通しも、四十七年度後半からの経済の強い上昇基調のもとに財政、金融政策等の適切な運用により総需要を適正に保ち、経済の行き過ぎを押えながら安定した成長を確保することを経済運営の基本といたしまして、この前提のもとに見通しが立てられております。また、国際収支についての輸出の調整、輸入の促進等の政策努力により、極力対外均衡の促進をはかるということを目的といたしておるわけでございます。最近の経済の実勢は設備投資にかなりの動意が見られ、卸売り物価が上昇を続けるなど、経済の上昇基調がかなり明確になってきておりまして、また、輸出の増勢にもなお根強いものがあるなど、変動相場制に移行することによる影響は、かなり吸収されるものと考えております。(拍手)
 以上のような、最近における経済の実勢、さらには政府経済見通しの性格から見まして、変動相場制に移行した現段階において、この見通しを改定する必要はないものと考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#18
○国務大臣(中曽根康弘君) 今回の通貨調整は、わが国の中小企業に対して相当な影響があるものと懸念し、その対策に万全を期しております。
 すなわち、金融関係につきましては、政府関係金融機関並びに民間銀行に対しまして、臨時、緊急の金融措置を講ずるように指示または要請をいたしました。
 それから、下請業に対してしわ寄せが来ないように、この点も公取委員長と連名で、約百三十二の親企業の団体に対して、書面で通達したところでございます。今後も、下請にしわ寄せが来ないように厳重に監視をいたします。
 さらに、近代化資金あるいは合理化資金、高度化資金の返済猶予制度についても、これを実施したいと思っております。
 なお、為替取引を円滑化するために、予約制度、買り取り制度は、前回と同様に実行いたしますし、信用保険の点につきましても措置を強化したいと思っております。
 なお、予算についてお尋ねがございましたが、昨年に比べまして、総額において若干減っておりますのは、繊維関係の費用が減ってきたことと、それから中小企業信用保険公庫の出資金が昨年と横ばいであったために、多少減ったのでございまして、中小企業直接に対する指導助成費は六百三十八億円、二六・三%にふえております。
 なお、この現在の情勢にかんがみまして、各地域並びに業種別に実情を把握することが非常に重要であると思います。この通貨調整の影響は、一週間、二週間、三週間、一カ月と、時間を追って非常に変化が出てくるものでございます。来週さっそく通産局長を招集いたしまして、よく指導いたしますとともに、刻々情勢変化を本省に通知してもらいまして、適切な措置を打つように努力してまいるつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣加藤常太郎君登壇〕
#19
○国務大臣(加藤常太郎君) 総理より答弁がありましたが、私より補足の答弁をいたしたいと思います。
 賃金の引き上げについては、労使が自主的に国民経済的見地から、良識をもって取り組むことを期待いたすものであります。
 最低賃金制については、これまでどおりすべての労働者に実効性のある最低賃金制を適用すべくその推進につとめてまいる所存であります。
 また週休二日制等の福祉の問題については、今後とも普及、促進に積極的に進んでいく所存であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(中村梅吉君) 紺野与次郎君。
  〔紺野与次郎君登壇〕
#21
○紺野与次郎君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、今回の変動相場制への移行をめぐる問題について、政府に率直に聞きただしたいと思います。
 政府は、変動相場制への移行について、これが円の切り上げではないとか、予算の再検討は行なわないという態度をとり続けております。しかし、アメリカのドルの一〇%切り下げによって、円は自動的にドルに対して約一一%の切り上げとなり、さらに、フロートによってその上に円の切り上げが上積みされて、対ドルレートが十数%から二〇%近くにも引き上げられる危険が出ているのであります。
 今回の事態が、十三カ月前の円の切り上げに引き続いて、より一そう重大な、かつ深刻な影響を日本経済と国民生活に与えることは明らかです。とのような重大な事態の決定に対して、きわめて不可解なことが行なわれました。われわれが大きな疑惑を持つのは、日本政府が変動相場制移行に関する発表をするよりも一時間前に、シュルツ米財務長官が日本の円の変動相場制への移行を発表しております。これは政府が国民に秘密に、アメリカとの間に事前に打ち合わせを行なったことを示すものであります。
 また、シュルツ長官は、ボルカー財務次官が日本及びヨーロッパ諸国と交渉して合意を得たとも言っておる。この点で、二月八日のボルカー次官と田中総理、愛知蔵相の会談で円の切り上げについての合意を与えた疑いが濃厚であります。一体政府は、ボルカー次官にどのような合意を与えたのか、総理及び大蔵大臣に対して、国民に公表することを要求いたします。(拍手)
 また、政府は、できるだけ早い機会に固定相場制に復帰したいと述べておりますけれども、一体どういう条件のもとで復帰しようとするのか、政府の見通しを明らかにされるように大蔵大臣に要求します。
 しかもまた、その間で輸入課徴金や緊急輸入制限の立法化などの手段を使って、新ドルレートを二〇%も引き上げようというふうに不当な圧力をかけているニクソン政権に対して、政府はどのような態度をとるのか、総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
 次にお聞きしたいのは、今回の事態を招いた政府の責任についてであります。
 第一に、日本の国際収支に大幅な黒字が出るようになったのは、歴代の自民党政府が大企業本位の高度成長政策をとって、国際競争力の強化を至上命令としてきたからであります。すなわち、働く国民に対しては、欧米諸国と比べて低い賃金水準、長い労働時間、劣悪な社会保障、生活環境、大衆課税を押しつけた。しかし、大企業に対しては、大幅な企業減税や産業基盤造成など、手厚い助成を行なってきたことであります。その結果、日本の大企業は、欧米諸国の企業と比べても、賃金コストは低い、租税負担率も低い、公害防止の責任も負わない、それゆえに国際競争力が急速に強まって、大幅黒字を出すようになったことは周知の事実であります。
 ところが、一昨年の円切り上げ後も、田中内閣は、依然としてこのような大企業本位の高度成長政策の大筋は改めない。それだけでない、日本列島改造の名のもとに、あえて超高度成長政策さえ持ち出してきているのであります。
 このような働く国民と中小企業の犠牲を土台にして、大企業奉仕の経済政策を続けてきたからこそ、今回の切り上げが、前回の切り上げ後十三カ月にして、このように早くやってきたのでございます。
 第二に、田中内閣が円問題に一貫してニクソン政府に追従してきた、その責任についてであります。
 今回の国際通貨危機も、ドル不安がその根底となって起きていることはだれも知っております。今日のドル不安が続く原因は、ニクソン政府がベトナム侵略戦争に引き続いて軍事費の増大をはかる、これを力の政策としてあくまで続けているということ、またアメリカの大企業の海外投資の増大を野放しにしているということ、このようにして、アメリカの国際収支赤字を大きくする政策を続けているのであります。そして、もはや金とは交換し得ないドルをたれ流しして、それから起きる通貨危機のあと始末は、為替レートの変更を敏感に行なう制度となるものを他国に押しつけまして、そうして黒字国に、特に日本に対してこれを強要するという態度をとっている、このようなニクソン政府のあつかましい態度はきわめて明白です。
 田中内閣は、その不当な対日経済要求を受け入れて、貿易・資本の自由化、関税の引き下げ、緊急輸入など、際限なく譲歩に譲歩を続けて、それでついに今回の大幅の円の切り上げへと追い込まれたのであります。国民に対する重大な打撃を与えた、以上のような事態に対する政府の責任はきわめて重大であります。政府は、このような責任をどう考えているか、また、どのように責任をとろうとしているのか、総理の明確な答弁を要求するものであります。(拍手)
 さらに、政府が、今回の事態に対して責任を深刻に考えないで、従来と同じ対米追随、大資本本位の経済政策をとる限り、今後もドル危機、通貨危機のたびに、アメリカの政策に振り回されて円切り上げを繰り返すことが当然予想されるのであります。それとも、政府は、円切り上げを今後繰り返すことはないだろうという保証があるのかどうか。あると確信できるなら、その根拠を国民の前に明らかにされたい。総理及び大蔵大臣の答弁を要求します。
 次に、国民生活に対する影響の問題であります。
 政府が、国民生活に重大な打撃を与える今回の事態に対して、これを軽視する態度をとっている。きわめて無責任であり、遺憾であります。
 円の大幅切り上げの影響はきわめて重大でありまして、景気は回復したといわれているけれども、現在、完全失業者の数はふえております。四十六年十月の五十九万人に対して、四十七年の十月には六十三万人と増大しております。また、地価をはじめとし、木材、大豆、とうふ、みそ、しょうゆに至るまで、異常な物価上昇が国民を苦しめております。
 その上に、前回に引き続く大幅な円切り上げが行なわれるとしたならば、日本経済と国民生活にどんな大打撃を与えるか、はかり知れないものがあるのであります。前回の円切り上げで持ちこたえたところの中小企業も、今回はとどめを刺され、持ちこたえることができないといわれております。
 大企業は、労働者の春闘に対して、不況宣伝をもってきびしい態度で臨み、低賃金、労働強化、一そうの合理化を押しつけてくることは明らかであります。失業と中小企業の倒産の増大も必至であります。日本農業の競争力も一そう弱まって、アメリカの農産物輸入の促進によって農民の困難を激増することは間違いありません。政府は、これらの国民生活への深刻な影響についてどう考え、どのような対策をとろうとしているのか、通産、労働、農林各大臣の明確な答弁を求めます。(拍手)
 さらに、今回の事態と予算案との関係についてお聞きしたい。
 以上に明らかなように、四十八年度予算作成の基盤である税収及び一切の経済的な見通しがすでにくずれております。その上、重大な影響を受ける国民生活に対する手当てがばく大な予算を必要としております。愛知蔵相は、予算案は円の価値が変わったわけではないから修正することは考えないと言っているけれども、対ドルレートで見る限り、すでに事実上の円の切り上げが行なわれております。しかも、固定相場制への復帰に際しての円切り上げもまた不可避であります。それでも政府は予算案を再検討する必要はないと主張するつもりであるのか。また、予算案を変えないとすれば一体どうなる。緊急対策をわずか二千三百億円の予備費のワクにとどめるつもりなのかどうか。もしそうだとすれば、これは、国民に対して無責任きわまる態度であります。わが党は、政府が四十八年度予算案を根本的に再検討するよう要求するものであります。この点について、総理、大蔵大臣、経済企画庁長官の答弁を求めます。(拍手)
 最後に、今回の事態に対する対策の問題であります。
 第一は、今後、輸出関連中小企業、農民が、どんな損失も受けることのないよう、大幅の緊急融資及び利子補給、為替差損の優先補償、倒産防止救済対策など緊急対策をとるとともに、労働者や下請企業に対して、大企業がしわ寄せをすることは許さない措置をとるべきであります。政府は、このような対策をとる意思があるのかどうか、大蔵、通産、労働各大臣の答弁を要求いたします。
 第二に、賃下げなしの四十時間労働制、本格的な最低賃金制の確立、大幅な賃上げなど、働く国民の所得の大幅引き上げ、労働条件の大幅改善、社会保障制度の根本的改善、国民への大幅な減税、公共住宅の大量建設など、生活基盤の優先的整備など、経済政策を国民生活優先に転換することであります。この点から見ても、大資本のための列島改造を中心とする四十八年度予算案は、全く情勢に合わないものであり、再検討を必要とするものであります。
 第三に、ニクソン政府に対して、力の政策をやめ、自国の責任で国際収支の不均衡を是正するように強く要求することであります。
 ニクソン政府の円の大幅切り上げの圧力や輸入課徴金に反対すること、これが大切であります。政府はニクソン政府に対し、きっぱりした態度をとる意思があるのかどうか、総理の答弁を求めます。
 第四に、繰り返し行なわれる円切り上げと国民生活の打撃という悪循環を断ち切ること、そのために、自主的な立場、国民の利益を守る立場から抜本的な対策を打ち出すことであります。
 特に、この点で重要なことは、安保条約の第二条の日米経済協力をやめることであります。(拍手)この日米経済協力とは何だ。アメリカの強引で不当な要求を日本が受け入れるということであり、円切り上げ、自由化を進め、アメリカのアジア侵略を補強するための侵略的な経済協力を進めることです。日本を軍事的に縛りつけることだけではない、経済的にも縛りつけているこの安保条約をなくして、輸出の三〇%もアメリカに依存するような片寄った状態を改め、すべての国々との平等互恵、相互不干渉の原則に立つ経済貿易関係を発展させて、国民生活を根本的に改善することによって、国内市場を拡大し、日本の国際収支の長期的な均衡を打ち立てることであります。
 わが党は、このような政策こそが、真の日本経済を絶えざる混乱と撹乱から安定と繁栄に向かわせるところのただ一つの国民的な道であると確信しております。(拍手)政府は、この国民的な道を受け入れる用意があるかどうか、総理の明確な答弁を求めるものであります。
 以上をもって、質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#22
○内閣総理大臣(田中角榮君) 第一は、アメリカのボルカー次官と会って何を相談したかということでございますが、アメリカのボルカー次官とは愛知大蔵大臣が会ったわけでございまして、私は会っておりません。これは、国際通貨全体の問題について話し合いをしたということで、具体的な問題については私は聞いておりませんので、愛知大蔵大臣からお答えをいたします。
 それから、固定相場制にはいつ戻るかというようなお話がございましたが、今後、為替市場の動向も見きわめた上で、適当な時期に固定相場制に復帰したいという考えでございまして、これも具体的な問題は大蔵大臣から答弁をいたします。
 それから、政府の円対策と責任問題についてお話がございましたが、政府は一貫して国際収支の均衡を目ざして努力をしてまいりました。昨年十月には御承知の第三次円対策、関税の一律二〇%引き下げ、輸入ワクの拡大、貿管令による輸出の適正化、大型補正予算と、御承知のとおりの措置をしてまいったわけでございます。また、現在審議をお願いいたしております四十八年度予算及び財政投融資も、国民福祉の向上に重点を置くとともに、国際収支の均衡回復を重要な柱として編成をしたものでございまして、これも国際収支対策の重要な施策の一つでございます。
 それから、今回の措置は、国際通貨制度の危機を打開するため、関係国間の協議を通じてドルの切り下げを中心に対応策が講ぜられたものでございます。わが国といたしましても、今後とも国際収支を妥当な規模におさめる努力を続けてまいりたい、こう考えるわけでございます。
 それから、アメリカに対して、ドル価値の維持に対して言うことを言っておるかということでございますが、これは一昨年の日米経済閣僚会議の場も、またサンクレメンテの場においても、強く要請をしておるわけでございます。それはアメリカのドルが基軸通貨としての責任を果たせないというようなことだけではなく、ドルが弱くなることは日本自体も影響を受けるのでございます。御承知のとおり、年間百四、五十億ドルも輸出入が日米間にあるわけでございます。今年度は日本からアメリカへの輸出が、アメリカからの輸入に対して四十億ドル以上も出超であるということを考えると、少なくともドルが安定をしてもらわなければならないということは、私が申し上げるまでもないのでございます。その意味でドル価値の維持のためには、アメリカも商売をうまくやってもらうこととか、売り込みに熱心になってもらうとか、それから海外に対する投資を抑制するとか、いろいろなドル価値の維持のために具体的政策をとられたいということを、私からも強く要請をいたしておるのでございます。金とドルとの交換が一日も早くできるように、基軸通貨としてのドルの価値維持ができるようにということを間々要請をしておるのでございまして、今回、しかるにもかかわらず、一〇%のドルの切り下げをしなければならないというような状態であったことは、はなはだ遺憾でございますが、これは事実問題として受けとめ、対処してまいりたい、こう考えるわけでございます。
 なお、いろいろな問題ございましたが、その他の問題については、関係大臣からお答えをいたします。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#23
○国務大臣(愛知揆一君) まずお尋ねの第一点は、アメリカの財務省の次官のボルカー氏の件でございますが、去る八日夜、ボルカー次官がヨーロッパ旅行の途次わが国に数時間立ち寄りまして、その機会に面会を求められましたから、私がボルカー氏と若干の時間会談をいたしました。
 何ぶんにも、これはきわめて短時間のノーティスでありましたし、あらかじめ議題を用意しての公式の会談でもございませんから、正式の会談ではございません。公式に御報告すべき内容のものではございませんでした。主としてアメリカの経済事情、政治情勢あるいはヨーロッパの通貨問題等についての所見等についての説明を聞いたり、意見を交換をいたしたわけでございまして、何らここで日米間が合意に達したというようなことはございません。
 為替変動相場制の問題については、先ほど来すでにいろいろの質疑応答がございましたが、変動相場制というのは、御案内のように、市場における需要と供給とによって相場形成が行なわれる仕組みでございますから、そこでどういうふうな実勢が出てくるかということについては、これはにわかに予断ができません。したがって、こうした中からドルに対して何%を改定レートにするかというようなことについて、いま政府として意見を持っておるわけではないということは、こうしたものの性質上御理解いただけることと思います。
 それから、当面の予算との問題については、先ほど来しばしば申し上げておりますように、こうした変動相場制下における円の状況から申しまして、これが現在組まれておる予算、その中で歳入の見積もり等にどう影響するかということについては、これもまた事柄の性格上、予算の上の歳入というものは見積もりでございますことは、これまた御承知のとおりでございまして、これは相当長期にわたりましての見積もりでございますから、現在の段階におきまして急激に現在の見積もりを修正するということは、かえって不適当である、こういうような立場に立っておりますし、また、歳出につきましても、外貨建ての支払いになっておるものは、全予算のうちからいえばごくわずかなものでございますし、しかも、これは基準為替相場が変更されたわけではございませんから、歳出の執行には何ら支障がないということは、先ほど来申し上げておるとおりでございます。(拍手)
 しかも、その上に立ちまして、先ほども通産大臣からも詳しく御説明がありましたように、中小企業対策等につきましては、単にいま予備費だけの御指摘がございましたが、その他金融政策の面におきましても、財政投融資の機動的な活用の面におきましても、十分な措置を講じようとしておるわけでございますから、これらの点を十分ひとつ御理解をいただいて、四十八年度予算の議決並びに執行について特段の御協力を賜わりたいことをあらためてお願い申し上げる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
#24
○国務大臣(小坂善太郎君) 政府の経済見通しについては、先ほども申したように、その性格並びに最近の上昇を続けつつありまする経済の実勢から見て、円為替が変動相場制に移行したからといって改定の必要はないと考えておるわけでございます。
 現在、わが国の経済の状況は、本格的な上昇過程にあると見られますし、変動相場制移行に伴うデフレ効果は、かなりこれによって吸収されます。また、雇用面や所得面での影響は少ないものと考えておるわけでございます。
 一方、変動相場制下で円の実勢が高まることになりますれば、それは従来までの輸出超過を減少させ、より多くの資源を国民生活の充実に向けるような基盤をつくれるものでありまして、また、物価の観点から見ましても、輸入品の直接的な価格の低下をはじめとして、その安定に寄与し得るものであり、その効果が消費者に徹底するようにできるだけ努力したいと考えておるわけでございます。
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#25
○国務大臣(中曽根康弘君) 景気の運営に急激な変化を与えないということが、目下非常に重要であると思います。特にデフレを起こさないということが、われわれ当面の大きな目標でございます。
 今回の通貨調整によって、繊維、雑貨、機械等の中小企業がかなりの打撃を受けるのではないかとおそれております。政府といたしましては、今回、無担保、無保証の小企業経営改善特別融資制度を実行いたしております。なお、中小小売商業振興法という特別立法も用意してあります。そのほか、中小企業振興事業団の指導あるいは情報伝達等を思い切って強化いたしまして、遺漏のない対策を講ずるつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣核内義雄君登壇〕
#26
○国務大臣(櫻内義雄君) 紺野議員にお答え申し上げます。
 今般の措置により、農林漁業への影響のありますことは当然考えられますが、この時点で申し上げられますことは、これからの円相場の推移、農林水産物の国際的な需給事情を見きわめて、しっかりした判断をすべきものと考えます。
 農林水産物の輸入については、一般的には輸入価格の低下が見込まれまするが、わが国の主要な農産物については、価格支持が行なわれ、国境保護措置がとられておりますから、国内農林漁業に悪影響を及ぼすことはないと存じます。
 輸出につきましては、その渋滞等の影響が生ずることが予想されますし、また、関連企業の多くが中小企業に属していることにかんがみ、早急に実態の把握につとめ、大蔵大臣から対策についてお話がございましたが、それに伴なって適切な配慮を払ってまいりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣加藤常太郎君登壇〕
#27
○国務大臣(加藤常太郎君) 今後、中小企業保護政策が最重点施策であることは御指摘のとおりであります。
 各大臣が申したとおり、政府としては、各般にわたる中小企業対策を強力に講じ、離職者が発生しないようにつとめる考えであります。しかしながら、なお離職者が出た場合には、きめこまかく失業保険並びに職業転換給付金などの各種制度を活用して、その早期再就職に万全の努力をいたす考えであります。
 福祉の問題については、政府としては、今後とも、労働者の福祉の向上のため、週休二日制の普及促進、時間短縮と、実効性のある最低賃金制の適用を推進いたす所存であります。
 賃金の引き上げ問題については、先ほど広瀬議員に申し上げたとおり、労使が自主的に、国民的、経済的見地から良識をもって取り組むことを期待いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○議長(中村梅吉君) 広沢直樹君。
  〔広沢直樹君登壇〕
#29
○広沢直樹君 私は、公明党を代表して、当面しております通貨不安、なかんずく円の変動相場制移行に関する政府の重大な政治責任及び今後のわが国の対応策について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 今回、わが国が外為市場の閉鎖に続きまして、変動相場制へ移行を余儀なくされましたことは、一昨年のスミソニアンにおける通貨調整以後最大の課題でありました日本と米国の貿易の不均衡が是正されず、輸出が依然として高水準にあり、外貨準備高が百八十億ドルをこえるなど、国際収支の黒字幅が拡大したことによることは、疑いのない事実であります。
 もちろん、国際通貨不安の根源は、米国がドルの信認低下を放任して、国際収支均衡回復のために、みずからの努力を傾け尽くさなかったことによるものであることは、言うまでもありません。ベトナム戦争によるドルたれ流しなど、米国の行動に私どもは強く警告を発してきたにもかかわらず、政府は、米国追随の外交、防衛、経済政策に終始して、一度も米国に節度と責任ある努力を要求していないのは怠慢といわなければなりません。
 このように、通貨不安の最大の責任者は米国自身であり、しかも、二月初めに始まった欧州での通貨不安は、米国政府が仕組んだ気配が濃厚と海外特派員が伝えておりますことは、周知のとおりであります。
 さらに、今回のドル売りまたマルク買いの投機は、米国系企業がその口火を切ったとも伝えられているのであります。みずから通貨不安の火種を消す努力を十分にせず、黒字国の責任のみを追及し、円に重い負担をさせようとする米国の態度に対し、きびしい姿勢で対処すべきであると思いますが、所見を承りたい。
 四十六年末の通貨調整におきまして、わが国が一六・八八%と、各国に見られない大幅な切り上げに追い込まれ、わずか一年で円再切り上げの事態におちいらざるを得なかったことは、田中内閣の経済運営が破綻したことを証明して余りあるものであると思います。
 すなわち、佐藤内閣からバトンタッチを受け、産業優先の経済政策を福祉優先へ転換することを公約した田中内閣が、依然として産業優先、輸出第一の高度経済成長政策を変えず、従来の経済体質、産業構造を温存して、国民生活関連の社会資本、あるいは社会保障、公害防止等、これまでのひずみ是正に対する努力を怠ってきたところに原因があるといわざるを得ないのであります。もしも政府が、経済政策の軌道修正を本気に取り組んでいたならば、当然こうした事態は回避できたのではないでしょうか。
 総理が、再三、円再切り上げはしない、もし円の再切り上げに踏み切らざるを得ない場合、相当の政治責任をとると豪語されたことが、いま現実には事実上の円再切り上げに踏み切らざるを得なかったことは、田中内閣が、口先ばかりで実のある有効な対策は何一つとってこなかったことを物語っているのであります。(拍手)その政治責任はきわめて重大であるといわなければなりません。(拍手)総理にまず所信をただすとともに、いかなる責任をとるのか明らかにしていただきたいのであります。
 次に、変動相場制移行に伴い、今後の焦点は円の切り上げ幅がどうなるかということであります。
 米国は昨日、一〇%のドルの切り下げを財務長官が発表いたしましたが、その中で、今後わが国に大幅な円再切り上げを要求してくる意向を示しているのであります。米国はかねてから、貿易収支赤字の三分の二は日米貿易の不均衡にあるとして、円再切り上げを望み、それが果たされない場合は輸入課徴金の復活を、先日来日したエバリー氏は要求しております。政府は、変動相場制に移行しながら、現在でもなおかつ円再切り上げは行なわないと言明しているのでありますが、これは、不可能なことをしいて可能にするという論法で、全くのごまかしか、国会の予算審議の乗り切り策としか考えられないのであります。
 総理は、円切り上げを絶対しないと、この議場でお約束できますか、重ねてお伺いいたします。
 今日の事態から、円が一五%から二〇%の切り上げを迫られることは不可避と報ぜられているわけであります。米国のドルの一〇%切り下げから判断しまして、大幅な切り上げが行なわれるであろうということはもはや常識であります。
 こうした情勢下で、政府が最も早急に取り組まなければならないことは、重ねて申しますが、すみやかに四十八年度経済見通しを改定する、それに基づいて予算案の大幅修正を行なわなければならないということであります。過日の予算委員会の席上、小坂経済企画庁長官は、経済見通しには円再切り上げを予想していないと答弁いたしております。今日の情勢は、政府が円再切り上げは行なわないと強弁したところで通るものではありません。来年度経済見通しは大幅に改定されなければならないはずであります。
 さらに、政府の予算編成方針の中に、来年度経済見通しにのっとって予算編成を行なったと明記されておることから考えましても、実質円再切り上げになっている以上、歳入面では、特に法人税は減収が予想されます。歳入に欠陥が生ずることは必至だと思います。また、歳出面からも、予測しなかった事態に対処するため、中小企業対策などが必要になっております。これに予算措置を講じ、万全の対策をとるという必要性があることはもちろんであります。このように、歳入、歳出の両面から予算修正の必要なことは明白でありましよう。
 政府は、これまで予算修正は必要ない、いまも繰り返しております。この態度は全く理解できないのであります。この重大な事態に当面して、予算も経済見通しも修正の要なしと強弁せられるならば、それこそ政府の経済見通しや予算編成がいかにずさんなものであるかということを天下に告白しているようなものでありませんか。(拍手)
 総理、メンツにこだわるときではありません。率直に、予想される経済情勢に対応する姿勢こそ国民に対する義務であり、田中内閣の重大な政治責任を明らかにすることになるのであります。
 わが党は、政府に予算修正を強く要求するものであります。(拍手)
 次に、経済政策を福祉重点に軌道修正することについて、総理も再三再四にわたって表明されておりますが、今日まで全くかけ声だけに終始してきましたことは、さきに指摘申し上げたとおりであります。円再切り上げに追い込まれた以上、かけ声だけの無責任な姿勢に終止符を打ち、実効ある具体策を打ち出すことが緊要であります。
 そこで、お伺いしたいのは、社会保障、社会福祉、所得水準が西欧よりも著しく低位にあることは、いわゆる不均衡競争として諸外国からの批判を受け、この条件改定を早急に実行しないと、第三、第四の円切り上げが起きてくることは想像にかたくありません。そのたびに国民に不当な被害を押しつけることになるのであります。総理に、均衡競争の条件をつくり上げるための具体案をお示しいただきたいと思います。
 次に、円切り上げになればもちろん、変動相場制が長期にわたる場合、中小企業が受ける被害は甚大であります。このことは、田中総理みずから、円再切り上げ回避の大きな理由の一つとしてしばしば発言されてきたところであります。
 政府は、昨日、中小企業対策を発表しております。この重大な局面にあたりまして、従来からとってきた場当たり的な措置に対し、中小企業者は、やはり深刻な不安を抱いているのであります。しかも、前回の円切り上げ時に、予算措置が補正予算でとられておりますが、現在、予算案修正の要なし、こういう政府の態度というものは、まことに遺憾であります。この際、中小企業対策予算の増額は不可欠であり、また、抜本的な対策を講ずることを強く要求するものであります。総理の具体的な答弁をお願いいたします。
 次に、物価対策についてお伺いいたします。
 国民にとって、円切り上げのメリットは、輸入品価格の低下が消費者価格に反映することであります。前回、一六・八八%円切り上げのとき、当時の推計によりますと、為替差益が直接還元されたとするならば、輸入品は少なくとも一〇%程度は下がり、全体の物価も一・七%は下がるという見通しが立っておったのでありますが、ほとんど末端の消費者価格には反映されておりません。もっとも、特殊な、たとえば洋酒やゴルフ用品、高級時計など値下がりはいたしておりましたが、これは強い世論に押されて、総代理店の独占していたブランド商品を、並行輸入制に改めた結果によるものであって、ほとんどの輸入品は流通段階で為替差益分は消えてしまい、反対に、海外市場の値上がりを口実に、消費者には値上げを押しつけるなど、ほとんど消費者の手に還元されなかったのであります。政府は、円切り上げを行なう以上、少なくとも輸入品価格の値下げが消費者価格にまで及ぶよう、具体的な対策を講ずるべきでありますが、総理のお考えを、さらには経済企画庁長官のお考えをお伺いしたいと思います。
 さらに重要な一つの観点は、企業の公害防除の投資が、今回の円再切り上げを理由として行なわれなくなるのではないかということであります。政府は、公害防止に対する企業責任を強く要求する措置を講ずるべきであると思いますが、総理の所信を求めるものであります。
 最後に、政府は、これまで日米貿易不均衡の是正として、第一次から第三次までの円対策を実施いたしてまいりましたが、しかしその効果をあげることができず、通貨調整を迫られるに至ったのであります。
 日米貿易不均衡の是正をはじめ、世界各国との間で調整と節度のある貿易を行なうべきことは、当然でありましょう。しかしわが国が、米国はもちろん、ヨーロッパ諸国からも問題にされている円対策や、輸入、資本の自由化、関税の引き下げに今後どう対処するかということは、円再切り上げの問題と並んで注目を浴びております。もしこれらの問題にうしろ向きの姿勢をとるとするならば、再び国際世論の反発を買うことも必至であります。その意味で、政府は、第三次円対策はもちろん、今後どのような施策を実施しようと考えているのか、見解を示していただきたいと思います。
 以上、御質問申し上げまして、終わりにいたします。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#30
○内閣総理大臣(田中角榮君) 政府の円対策は失敗であるということでございますが、先ほどから申し上げておりますとおり、国際収支の均衡を目ざして努力を続けてまいったわけでございます。
 昨年の十月には第三次円対策をやったり、またずっと引き続いての対策を行ないながらまいったわけでございますし、現在御審議をお願いしております四十八年度予算案及び財政投融資も、国民福祉の向上に重点を置くとともに、国際収支の均衡回復を重要な柱として編成をしたものであることは御承知のとおりでございます。
 それから、今回の措置は、国際通貨制度の危機を打開するため、関係国間の協議を通じてドルの切り下げを中心に対策が講じられたものでございます。わが国といたしましても、今後とも国際収支を妥当な規模におさめる努力を続けてまいりたい、こう考えるわけでございます。
 赤字国の責任という問題、円に責任を転嫁しようとするアメリカに対する態度等についての御発言にお答えをいたします。
 赤字国でありますアメリカが、国際収支改善のためドルの切り下げを行なったことは評価すべきでございます。わが国が、今後の交渉において、アメリカに対して主張すべき点は主張することは当然でございます。
 それから、経済見通しと予算案等については、先ほども申し上げたとおりでございますが、いずれにしましても、予算案は一日も早く執行できるような体制にしてもらうこと自体が一つの対策でもございますので、格段の御配慮をお願いしたいと思うわけでございます。
 福祉路線の問題については、政府は、経済社会基本計画におきましても明らかにいたしておりますとおり、輸出優先の経済構造から国民福祉指向型の経済構造へ転換をはかります、こう申し上げておるのでございまして、このとおりだと思うわけでございます。
 なお、経済成長の成果が一そう社会のすべての階層に行き渡り、国民がひとしくゆとりと潤いのある生活ができるよう、社会保障の充実、生活関連社会資本の整備等を行ない、豊かな自然環境の確保などにつとめてまいりたい、こう考えるわけでございます。
 中小企業対策については、先ほど通産大臣から申し述べましたが、今回の処置に伴い、輸出関連中小企業が受ける影響の実態を十分把握した上、金融、為替取引安定などの面で、適時適切なる対策を講じてまいりたいと考えるのでございます。
 それから、輸入価格の引き下げを消費者価格へ反映させよという御説でございますが、政府としては、今回の措置による輸入品価格の低下が消費者価格によりよく反映するよう、輸入代理店対策、輸入の自由化、関税の引き下げ、輸入品にかかる流通機構の改善などの各種施策を強力に展開をしてまいりたいと考えております。
 最後に一言申し上げたいのは、国際収支対策をかかる強力にやってきたにもかかわらず、その効力を発せず、ドルの切り下げが行なわれたではないかということでございますが、これは、輸出振興ということは、比較的いろいろな施策があるにしても、経済力が強くなって、国際競争力が強くなって、輸出がなかなか減らないということに対しては、これは輸出を振興するよりもむずかしい面がございます。
 もう一つは、どうしても輸出を内需に振り向けなければならないわけでございまして、そのためには財政主導型の大きな投資が必要でございます。そのために四十七年度の予算の補正として六千五百億の審議をお願いしたときも、国際収支の面ではわかるけれども、こんな大きな予算はインフレ予算じゃないか、今度の予算も、提出をしたときにはそういうふうに見られるわけでございます。
 ですから、そういう意味で、輸出力が強くなっておる現段階において、日本だけの力でもってすべての国際均衡を保つということは、たいへん無理な面があるわけであります。ですから、そういう意味で、アメリカ自体としても、赤字国の責任を痛感して、ドル価値が維持するように諸般の政策の実施を求めたわけでございますが、どうしても――アメリカとしてはいろんなことをやったのです。第一回のドルの切り下げを行なったわけです。円平価の切り上げも行なってわずか一年半しかたたないときに、ドルみずからが一〇%の切り下げをしなければならないような状態になったということでありまして、その面からいうと、たいへんに遺憾なことだといわざるを得ません。しかし、国際均衡を保つ国際通貨制度の中で、協調して、アメリカがみずからの責任を痛感し、みずからの責任によってドルを切り下げたということは、評価をしなければならぬわけでございます。
 こういうめんどうな問題ではございますが、しかしまあ、円価値が切り下げられるような状態よりも、切り上げられる措置のほうが望ましいことは言うまでもありません。(拍手、発言する者多し)
 しかしそれは、切り上げられた場合において中小企業等に大きな影響がありますので、その影響がないように努力をしなければならぬことは言うをまちません。これはひとつ十分考えて配慮してまいります。
 昭和初年に一ドル対二円であったものが、二円五十銭対一ドルになり、三円対一ドルになり、最後には三百六十円対一ドルになったわけでございますが、ここで何十年ぶりかで円価値が上がっておるというのでございまして、そういうところはやはり評価をせざるを得ないのであります。(拍手)
 しかも、その円の切り上げによって影響を受ける面に対して万全な配慮をしなければならぬのが、政策遂行の責任だと考えておるわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#31
○国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。
 私への特に御質問は、変動相場制と予算、財政との関係であると思います。これを私は三つに分けてお答えをいたしたいと思います。
 まず、予算の歳入につきましては、先ほど来申しておりますように、経済全体が動いてまいります。そして変動制に移行いたしましたわけでございますから、長い目で見て、そしてこれがどういうふうに動いていくかということを、にわかにただいまの段階において、その特に税収等の見積もりについて、これを変更をするということは不適当であるし、また、これは非常にできにくいことであるということを申し上げておるわけでございます。
 それから、歳出につきましては、まず外貨建ての支払いのものがございますが、これにつきましては、基準外国為替相場が変わっておりませんから、予算の執行の上においては支障がございません、こういうことを申し上げておるわけでございます。
 そして第三に、一番実質的な問題は中小企業の対策であると、私はかように理解をいたしておりますし、これが一番大事なことであると思いますが、この問題については、冒頭に前尾議員に対するお答えで申し上げましたように、金融措置につきましても、あるいは為替政策の上におきましても、あるいは財政上の措置につきましても、直ちに実行するものについてはすでに実行の用意をいたしております。また、適当な時期に適宜適切な措置をやるべきものにつきましても、政府としては十分考える余地を持っておるという趣旨を先ほどお答えいたしましたとおりでございまして、こういうところ等お考え合わせいただきまして、一日もすみやかに四十八年度予算が執行できるように、ひとつまげて御協力いただきたいというのが私の心境でございます。どうかよろしくお願いいたしたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#32
○国務大臣(中曽根康弘君) 中小企業対策につきましては、先ほどいろいろ御答弁申し上げましたが、一番大事なことは、中小企業が出血輸出を強行せざるを得ぬということを回避することであるだろうと思います。そのためには、資金的にもある程度持たしてあげなければならぬということ、内需を振興して、輸出に回さぬでも国内で消化できるようにその市場をつくってあげるということ、こういうことが中小企業の、特に繊維や機械や雑貨等について大事であると心得ております。
 それと同時に、先ほど申し上げました下請支払いに対する圧力がかからないように配慮するということであると思います。通産省といたしましては、本年度予算で小規模経営改善資金として事業規模で三百億円の資金を用意しております。なお、経営改善普及事業として昨年に比べて十八億円、それから中小小売り業振興対策として、中小公庫の融資、昨年に比べて九十億円増、国民公庫の融資、昨年に比べて五十億円の増、それから生鮮食料品貸し付けとして六十億円の増、それから中小企業振興事業団の融資事業ワクとして、昨年に比べて三百八十二億円の増を手当てしておりますけれども、この影響の状況を見まして、さらに適切な手を打つ必要があれば打っていくつもりでおります。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
#33
○国務大臣(小坂善太郎君) 政府の経済見通しをつくりました一月の時点において、為替の変動の要素が入っていないじゃないか、したがって、この際組みかえるべきであるという御所論でございますが、先ほど申しましたように、私どもの政府の経済見通しというものは、単なる経済の予測ではない。ことばをかえていいますと、ほうっておけばこうなるという見通しではないのでございまして、やはり望ましい姿を描きながら、実効ある政策を前提として、そういうものを内包した経済のいわば努力目標とでもいうべきものでございます。
 したがいまして、先ほども申したように、昨年の年末以来、非常に経済の実勢が強くなっておる、機械受注が多くなっておる、民間の在庫投資もふえておる、あるいは輸出も増勢を続けておる、卸売り物価もまた上がっておる、こういうような情勢のもとにおきまして、やはり財政金融政策あるいは貿易政策というものが非常に多く要請せられておる際でございますが、その中においてのこの平価の調整というものも、その結果は吸収されていくものであろう。したがって、この見通しは変える必要はない、こう申し上げておるわけでございます。
 それから、一昨年の一六・八八の円価の切り上げ以来、輸入物資の対策といたしまして、関連物資の売り渡し価格の引き下げ、あるいは第三者による真正輸入製品を総代理店と競合させることによって物価の引き下げをやっておるわけでございますが、その他いろいろ輸入物資を、流通過程の中においてその値下げ分が吸収されないように、極力これが消費者の手元に利益として還元されるように、極力今回の際においても努力したいと思っている次第でございます。(拍手)
#34
○議長(中村梅吉君) 大蔵大臣から再答弁があります。大蔵大臣愛知揆一君。
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#35
○国務大臣(愛知揆一君) 政府といたしましては、現在、円はフロートいたしておるのでありますから、円の実勢を十分見届けましてから、適当な時期にきめることにいたしたいと存じます。
    ―――――――――――――
#36
○議長(中村梅吉君) 小沢貞孝君。
  〔小沢貞孝君登壇〕
#37
○小沢貞孝君 私は、民社党を代表して、円の実質的再切り上げにつながる国際通貨危機に関して、政府に対し若干の質問を行ないたいと存じます。(拍手)
 この二月二日ドイツマルクに端を発した国際通貨危機は、ついに昨日のドルの一〇%切り下げ、円の変動相場制への移行、ドイツマルクの固定相場制による市場再開などの決定に至ったことは御承知のとおりであります。
 これは言うまでもなく、わが国の円が最低一〇%以上切り上げを行なったことにほかなりません。そしてなおかつ、西ドイツマルクが固定相場制を維持し、わが国だけが変動相場制に移行することは、間違いなく円の切り上げ幅が二〇%前後にも達することを意味しておるのであります。まさに日本をねらい打ちした集中砲火だといわざるを得ません。
 このような円の実質的大幅再切り上げを招いた原因は、ひとえに政府の円再切り上げ回避策の怠慢、見通しのなさ、主体性の欠如にあると断言せざるを得ません。(拍手)
 わが党は、この憂うべき事態を予想し、すでに一昨年十二月の円切り上げに伴う本会議質問において、竹本議員が、「あるいは五十年を待たずして再び円の切り上げが強要される結果になりはしないか」と、強く政府に警告を発してきたのであります。また、昨年十一月二日の予算委員会においても、佐々木議員は、田中総理に、「いま本気で円の再切り上げを回避する方針でおられますか。」と質問したのに対し、田中総理は「いま、円の再切り上げは回避できると思います。」こう答弁してまいりました。さらに、本年一月十三百の党首会談においても、春日委員長もこの点を指摘してまいったわけであります。そうして、本年の国会冒頭における施政方針演説でも、総理は、あらゆる努力を払い円再切り上げを回避すると国民に公約して、いまだ一カ月にもなっていないのであります。にもかかわらず、いま円は再び大幅切り上げを余儀なくされようとしております。
 これは言うまでもなく、政府は、口で国民をごまかし、実際は何の有効な切り上げ回避策をも講じてこなかったということではありませんか。
 まさに、政府の政治責任はまことに重大であります。きびしくその責任が追及されなければなりません。真に政治責任を痛感する内閣であるならば、まさに総辞職に値するものでありますが、(拍手)総理のこれに対する見解を、率直にお尋ねしたいのであります。
 次に、私は、当面の諸問題についてお伺いいたしたいと思います。
 わが国は、一昨年の国際通貨危機に際し、四カ月にわたる変動相場制をとった経験を持っておりますが、長期にわたる変動相場制が、第一に、国内経済の不安と対外取引の混乱をもたらし、第二に、この間に、諸外国の圧力により円の切り上げ率を大幅にさせられた苦い教訓を持っております。この貴重な教訓を生かす道はただ一つしかありません。それは、この際、政府が勇断をもって、ドルの一〇%切り下げのほか、自主的に五%前後の円の切り上げを決定し、直ちに固定相場制に復帰することであると思います。
 しかるに、今回もまた変動相場制をとった理由は、一体どこにあるでありましょうか。変動相場制によって円の対ドル交換比率を見定めると、こう言っておりますが、一方において、日銀は積極的な市場介入を行なうがごとき報道がなされております。これでは矛盾撞着もはなはだしいといわなければなりません。(拍手)
 また、このような日本政府の態度こそ、諸外国の不信感を一そうつのらせ、ひいては円の大幅再切り上げを余儀なくされる原因であると思いますが、政府の明快な御答弁をお伺いしたいわけであります。
 第二に、今回の円切り上げによってこうむる中小企業者の深刻な打撃に対する救済策についてであります。
 いまでもわが国の中小企業は、インフレ倒産ともいわれるように、原材料の高騰、人件費の上昇など、その経営基盤はまことに脆弱であります。この上さらに二〇%前後の円再切り上げが行なわれたならば、ますます中小企業者は苦しくなり、輸出中心の地場産業は壊滅的打撃を受けると言っても過言ではございません。いつも、弱い立場の中小企業者が、政府の施策の貧困によって被害をこうむるという理不尽な状態は、断じて解消しなければなりません。(拍手)
 政府は、この際、中小企業者の不安を一刻も早く解消するために、業者別にきめこまかい対策を講ずべきであります。
 具体的には、四十八年度中小企業予算の大幅増額修正をはじめ、政府系中小金融機関の緊急融資、輸出手形買い取り保証、先物予約保証など総合的な円再切り上げに伴う中小企業緊急対策を発表し、実行すべきであると思うのでありますが、関係大臣の御所見をお伺いしたいわけであります。
 第三は、昭和四十八年度予算についてであります。この問題についてはすでに質問、答弁が行なわれましたが、重ねてお尋ねいたしたいわけであります。
 言うまでもなく、現在審議しております政府予算と、そのもとになっている政府経済見通しは、今回の円再切り上げを前提にして作成されたものではありません。したがって、政府の経済見通しとそれをもとにした政府予算は、新たな情勢に対処して根本的に再検討すべきであります。政府は、必要な措置は補正予算によって処理しようというようでありますが、すでに今日予見できる対策を本予算に盛り込まずして補正予算に回すがごとき態度は、明らかに不法であり、行政の怠慢であります。国民の納得を得るわけには断じてまいらないと思うわけであります。(拍手)
 そこで、具体的にお尋ねしたいわけでありますが、経済成長率は、当初見通しの一〇・七%を下回ることは必至であり、したがって、予算の基盤になっておる歳入も根本的に狂ってくると思うわけであります。政府は、経済成長率は低下しないと考えておられるでありましょうか、御所見をお尋ねいたします。
 また、さきの答弁にもありましたように、早急に中小企業に対する救済措置を講じるというようにいわれておりますが、四十八年度中小企業対策費も増額しなければなりません。さらに、防衛予算においても、アメリカからの武器購入費等は割り安となり、防衛予算は減額するのが当然であります。また、内需を拡大し輸出を押える目的で、この際、サラリーマンその他の大幅減税をやるべきだと思います。
 これらの諸点について、関係大臣の明確な御答弁をお願いをいたします。(拍手)
 第四は、円の再切り上げによるインフレ抑制効果についてであります。
 円の切り上げは、確かに理論的にはインフレ抑制効果を持っているわけであります。国民もまた、この点について一るの望みを託しております。だが、一昨年の切り上げ後も、その効果はほとんどあらわれず、輸入業者の利益増大だけになっていることは、政府の物価政策の貧困を端的にあらわしたものということができましょう。今回の切り上げについても、その危険性がはなはだ大きいのであります。
 この際、具体的に、輸入価格の大幅引き下げをはかるために、政府は、輸入総代理店制の廃止、輸入原価、卸売り価格などの公正取引委員会に対する報告義務並びに公取委の価格是正勧告の行使、商社の膨大なる在庫の臨時立ち入り調査とその放出など、抜本的な物価政策を講ずべきだと思いますが、総理並びに経済企画庁長官の決意をお伺いしたいわけであります。(拍手)
 さて、最後に、私は、国際通貨制度の今後の方向について質問を行ないたいと思います。
 現下の国際通貨危機も、この二カ月程度のうちには一応の安定を見ることは事実でありましょう。だが、これは決して長期的な通貨制度の安定にはならず、あくまで暫定的解決にしかすぎないのであります。
 その理由は、第一に、アメリカのインフレが終えんする保証がありません。むしろ軍事費の増大、多国籍企業等による資本の流出など、依然としてドルをたれ流しする危険性が強いからであります。
 第二に、金とドルとの交換性が回復しない現状において、現在でも八百億ドルをこえるといわれるユーロダラーなど、過剰流動性が今後もそのまま放置されておるという事実であります。
 第三は、ドルにかわり得るSDR制度等がいまだ非常に弱体であるということであります。したがって、いつまた通貨投機が発生するか、予断を許さない状態が続くものと見なければなりません。
 しかし、このような不安定な状態を一刻も早く解消し、真に恒久的な国際通貨制度を確立することが、いま先進国に与えられた緊急の課題であります。日本の責任もまた、まことに大きいといわなければなりません。
 そこで、政府にお伺いしたいわけであります。
 第一に、アメリカに対し、金・ドル交換性の回復を要求するつもりはないか。
 第二に、SDRの比重増大をはかるべきではないかと思うがどうか。
 第三に、現在のIMFを世界銀行的なものに改革し、各国間の経済調整の強化をはかるべきであると思うが、いかが。
 第四に、これら諸対策を協議する新しい国際会議を早急に開催するように世界に呼びかけるつもりはないか。
 以上の四点について、政府の具体的な御答弁をお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#38
○内閣総理大臣(田中角榮君) 円平価の再調整を迫られるような事態が起こるまでに対しての実効があがらなかったではないかということでございますが、先ほどから間々御答弁を申し上げておりますとおり、政府は、一貫して国際収支の均衡を目ざして努力をしてまいったわけでございます。
 第一回目の通貨調整というのが多国間で行なわれたわけでございまして、異例な措置として行なわれたわけでございます。また、その後、御承知のとおりの国際収支対策をたくさんやってきたわけであります。臨時国会を開いてさえ、法案や予算の御審議を願ったこともございます。そういうようなことをしながら、日本がなさなければならない国際収支均衡対策に対しては全力を傾けたわけでございますが、いつも御指摘を受けるとおり、黒字国の責任だけでもってこのようなものは解消できないのだ、だから、ドルの価値維持ということに対して赤字国であるアメリカも努力をしなければならないということでございまして、私が先ほど御答弁申し上げたように、アメリカに対しても、ドルの交換性を回復するようにしてもらいたい。それは日本だけでもってできるものではないので、アメリカみずからがドルの価値維持のための諸施策を進められることと相まって日米間の不均衡は解消したい。そのためには、ハワイ会談におきましては、日本の基礎収支の均衡、少なくともGNPの一%以内に経常収支の黒字幅を押えるには三年間ぐらいかかりますよ、こう言っておったわけでございます。
 ところが、その後のいろいろな施策において、輸入は拡大をいたしました。一−三月は輸入期であるとはいいながら、史上最高の輸入というふうにもなっております。しかし、国内の景気が非常に上向きになってきて、いま御審議いただいております経済見通しでは、一〇・七%ということで出しておりますが、しかし、御審議の過程において、どうもいまの状態からいうともっと景気は上向くのじゃないか、そうすると五・五%と政府が考えておる物価も、もっと上がるのじゃないかという御質問を受けておるわけであります。ですから、一〇・七%に成長率を押え、五・五%に押えるためには、四十八年度、御審議をいただいておる予算の中で思い切った政策的な措置が必要でございます、そして、五・五%にし、一〇・七%に押えたいと思っております、こう述べておるわけでございます。
 そういう状態において、輸出が急激に内需へ転換もなかなかできないということでございます。しかも、現在のような高い成長率であっても輸出はふえるのでございますから、そうすれば、貿管令の適用とか、輸出税とか、いろいろなことを考えざるを得ないのであります。そういう意味で、前の前の国会には、国際経済調整に関する法律の御審議をお願いしたわけでありますが、しかし、国内の情勢を見れば、簡単にあの法律が成立ができなかった事情もございます。ですから、先ほども申し上げたように、輸出を伸ばすことは、税制上とかいろいろな問題でもって的確な効果をあげることはできますが、しかし、日米間の三十億ドル、四十億ドルという日本の出超を一ぺんに直すということはなかなかできないのであります。そういう事情は、日本の産業の力が大きくなり過ぎた、国際競争力がつき過ぎたという見方もありますし、同時に、アメリカや外国の状態が悪くなり過ぎておるということもあるわけであります。そういう両面からの問題がありましてついに今日のような状態に至ったわけでございまして、政府は、私は、これからも長期的に国際収支均衡に対して努力を続けてまいらなければならぬと思います。また、政府はやってまいります。やってまいりますが、今度の問題は日本の問題だけではなく、ドル対マルク、ドル対フラン、ドル対リラ、ドル対英国のポンド、そしてその影響を日本も避けることはできない、ドル対円と、こういう問題になり、主要国間の話し合いでアメリカが自発的に一〇%切り下げる、一〇%切り下げることは、現行レートを維持しておっても、こちらは自動的に一〇%価値が上がったということになるわけでございますが、やはりこれからの平価調整というものは、多国間でやるか二国間でやるかという問題はございますが、これからも日本だけではなく、相手の立場によって変動が起こるということは、これは理解をしていただきたい。
 羊毛を輸入しなければならないオーストラリアは、日本に黙って、ぽんと平価を上げておるのであります。そういう問題もございますし、今度は日米だけではきめられません。日本とドルだけではなく、日本とポンドの問題、日本とリラの問題、日本とマルクの問題が出てくるわけでございますから、変動相場制に移行をしながら事態の推移を見なければならない。国益を守るためにはそういう方法しかないのでございますから、そういう意味ではひとつ御理解をいただきたい。その意味では四十八年度の予算案も、国際収支対策ではないかとこの席上から御指摘を受けたぐらいに、三つの目標を持っておりまして、その一つには国際収支対策でございますとお答えをしておるわけでございますから、その意味ではぜひ御審議を賜わりたい、こう思います。(拍手)
 それから、中小企業対策につきましては関係大臣からお答えをしますが、私からも基本的な問題はお答えをしなければならないので答えます。
 今回の処置に伴い、輸出関連中小企業が受ける影響の実態を十分把握をいたしまして、適用する諸施策に万全を期します。これはいまある法律を延長していただかなければならないような、もう、前の国会でもってつくってもらっておる中小企業対策の法律もございます。こういうものを延長していただくとか、それから財政金融の状態で予備費を使用するとか、財投を弾力的に運用をするとか、いろいろな問題があります。こういう問題に対しては完ぺきな、万全の体制をとってまいりたい。これは一ぺんもうやっておりますから、手のうちは大体承知しておるわけでございますから、そういう意味では万全の対策をとってまいりたい、こう思います。
 それから輸入物価の引き下げ対策、これは、私が先ほどから申し上げておりますように、円平価が切り下げられるのではないんです。昭和の初年は切り下げられてきたわけです。一ドル対二円、一ドル対二円五十銭、一ドル対三円のときには戦争を始めなければならぬというくらい下がってきたわけでございますが、今度は三百六十円をピークにして、いよいよ何十年ぶりかでもって日本の円とドルとの価格は、円が強くなる。強くなるわけでありますから、輸入品は安く入るわけであります。そういう意味で、輸入品の価格の低下が消費者物価によりよく還元しますように、輸入代理店対策、輸入の自由化、関税の引き下げ、輸入品にかかる流通機構の改善などの各種施策を強力に転換をし、少なくとも物価対策に寄与できるようにしなければいいところはない、こういうふうになるわけでございますから、その意味では十分な配慮をしてまいりたいと思います。(拍手)
 それから最後の、国際通貨制度の安定化についてどうするかという問題でありますが、具体的な問題は大蔵大臣からお答えをいたします。しかし、やがて今後の国際通貨問題について、当面の混乱が収拾されたことにより、長期的な通貨改革への努力が推進されなければならないということは当然でございます。いまIMFの二十カ国委員会等がありますから、これを中心として行なわなければならないということでございます。しかし、これは三十九年の東京総会を中心にして国際流動性の問題が起こり、SDRが解決をし、そして今日の段階まで十余年の歳月を経てきておるわけであります。それで、基軸通貨であるドルが金との交換性を失ったというところにまず大きな問題があります。ですから、先ほども御指摘ありましたように、金・ドルの交換性の回復ということは、アメリカのためだけではなく、日本のためでもあり、拡大均衡を保っていく新ラウンドを推進するためにはどうしても必要であります。それができなければ新通貨を考えなければならないという議論が出ておるわけでございまして、私たちは、対米貿易がこれほど大きくなっておるということを考えますと、ドル価値が維持されて、かつての基軸通貨としてのドルの面目を維持してもらうようになってもらいたい、そして金との交換性を回復してもらいたい、そのためには日本も努力をし協力をすると同時に、アメリカ自身の強力な施策も求めていく考えでございます。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#39
○国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。
 第一は、変動相場制によって円の対ドル実勢価格を見るというが、それでは何ゆえに日銀が介入をしているのか、要するにこういうお尋ねであると思います。
 先ほど申しましたように、変動相場というのは市場の需給に相場形成をゆだねるのが本質でございますから、介入ということは原則的におかしいことは御説のとおりでございます。ただ、しかし、一時的な要因によりまして相場が乱高下するということは防止しなければなりません。為替取引の安定性を確保して市場の機能が秩序正しく動くようにするということは、また同様に必要なことでございますから、適当な介入というものは各国がよく相互に理解しておるところでございます。
 たとえば本日のごときは――開場した初日でございますと、閉鎖期間中に実需に伴う輸出手形がたまっております。そういう関係から、ある程度の市場の変調が開場第一日には残ることは、これはまあやむを得ないことでございます。そういう意味から申しまして、この変動相場制というものは、相当の期間やってみませんと円の実勢というものがつかめないというところに、一面におきましては特質があると、かように理解すべきものではないかと考えるわけでございます。
 それから第二の点は、先ほど来しばしば御質疑のある点でございますが、中小企業の問題、これは先ほど申しましたが、財政上の問題としても相当にこれを重視していかなければならない問題でございますが、さしあたり為替面の対策としては、輸出成約の円滑化をはかるための外貨預託の問題がございます。それから財政措置としては、予備費をはじめといたしまして財政投融資の機動的な活用という問題もございます。あわせて市中金融の問題もございますし、その他、先ほども通産大臣からも申しましたように、こまかいいろいろの用意がすでにできつつありますので、それらを財政当局といたしましてもあとう限り協力をしてまいりたいと思っております。
 第三は、今後の通貨制度でございます。ただいま総理からも御答弁がございましたから、きわめて簡単に申し上げたいと思いますが、今回の調整措置というのは、私は、アメリカ自身の経済の不均衡の是正に役立って、そして国際通貨情勢の安定をはかる上には相当の貢献があると思いますけれども、長期的に見ますると、真の安定的な国際通貨制度の確立にはまだまだである、一そうの努力が、関係各国といいますか、世界的な協力をし合わねばならないと思います。
 そこで、わが国の態度でございますが、従来からしかるがごとく、長期的な通貨制度改革の討議等におきましては、まずわが国の一番願っておりますことは、一つの世界を指向して、ブロック化を排除すべきこと。それから第二には、国際収支不均衡の是正については、まずいずれの国もインフレ抑制を中心にした国内政策に重点を置くべきことである。この点は、アメリカを含め関係各国がそれぞれの努力を徹底してしてもらわなければならないということを強調しているわけであります。第三は、SDRを国際通貨制度の中心的存在としていくために、SDRというものを魅力あるものに育成していくことがきわめて必要なことである。このために、今後各国の積極的な関心と協力を求めるために、一そうの努力をしたいと思います。
 そして、ドルの交換性の回復については、これはもう御指摘のとおり、また、ただいま総理からも率直に御意見の表明がございましたとおりでありまして、交換性の回復ができて、これが中心で動くようになれば、現在のような不正常状態というものは相当基本的に解決するのではなかろうか、かように見ておるわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#40
○国務大臣(中曽根康弘君) 小沢議員御指摘の中小企業対策は一々ごもっともであると思いまして、御指摘のとおり実施いたしたいと思います。ただ、予算の修正については、その必要ないと思います。
 輸入総代理店廃止の問題につきましては、輸入総代理店の存在はある意味においては輸入促進に非常に便利な点がございます。しかし、一面において競争制限やあるいは価格の硬直性を呼んでいる面もございます。政府は、昨年十月、真正商品に対する並行輸入を認めまして、ウイスキーや時計の値下がりを見ましたが、こういう並行輸入制度を認めるというやり方によりまして、この問題を解決していきたいと思っております。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
#41
○国務大臣(小坂善太郎君) 小沢議員にお答えを申し上げます。
 最初に、見通しの問題でございますが、繰り返して申し上げましたように、われわれの経済見通しというものは、いわゆる社会主義国あるいは全体主義国におけるような計画経済下における見通しではございませんで、やはり市場メカニズムというものが前提になっておる経済の見通しでございます。したがいまして実行可能なる諸政策を勘案した好ましい姿、政策努力の目標ともいえる性格があるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、今日までの経済実勢というのは非常に上昇カーブに立っておりますわけで、これを目標に持っていくためには、財政金融政策あるいはまた貿易政策、これは非常に強力なものをやらなければならぬということを、この一月の月例報告でも私は特に申し上げておるわけでございますが、そこにこの為替の変動というものが入ってきたわけでございまして、これのデフレ要因としての効果は吸収せられるであろうというふうに考えておるわけでございます。
 ただ、目下為替がフロートしておりまするので、これについての先の見通しをこの場から申し上げることは、さらにフロート以後の日本の為替政策に対するある種の先見といったようなものを生むおそれがありまするので、これは差し控えたいと思いまするが、要しまするに、この目標の改定は必要ない、現行どおりでいける、こう思っておるわけでございます。
 次に、輸入総代理店の問題でございますが、これはおっしゃるとおりでございまして、何といいましても、独占的な販売店を持つ総代理店というものは、価格操作の上で相当な影響力があるものでございますので、通産大臣も言われましたように、第三者よる真正品の輸入というようなことで競争条件をつくるようにいたしておることは御承知のとおりでございます。
 さらに、独禁法の関係によりましても、認定基準というものを作成いたしまして、総代理店契約をいたします場合も、届け出を促進しているということを実施しているわけでございます。
 さらに、今回のこの事態に関連いたしまして、輸入品価格の追跡調査を行ないたい。そして流通段階における価格形成の問題点を明らかにいたしまして、消費者保護の徹底を期したい、消費者保護に対するいろいろな情報を提供して競争の促進をはかりたい、こう思っておる次第でございます。(拍手)
#42
○議長(中村梅吉君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第一 昭和四十七年度の米生産調整奨励
  補助金等についての所得税及び法人税の臨
  時特例に関する法律案(大蔵委員長提出)
#43
○議長(中村梅吉君) 日程第一は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。
 日程第一、昭和四十七年度の米生産調整奨励補助金等についての所得税及び法人税の臨時特例に関する法律案を議題といたします。
#45
○議長(中村梅吉君) 委員長の趣旨弁明を許します。大蔵委員会理事大村襄治君。
  〔大村襄治君登壇〕
#46
○大村襄治君 ただいま議題となりました昭和四十七年度の米生産調整奨励補助金等についての所得税及び法人税の臨時特例に関する法律案につきまして、提案の趣旨及びその概要を御説明申し上げます。
 この法律案は、去る二月十三日大蔵委員会において全会一致をもって起草、提出いたしたものであります。
 御承知のとおり、政府は、昭和四十七年度におきまして米の生産調整奨励のために、稲作の転換または休耕を行なう者に対して、補助金または特別交付金を交付することといたしておりますが、本案は、これらの補助金等に係る所得税及び法人税について、その負担の軽減をはかるため、おおむね次のような特例措置を講じようとするものであります。
 すなわち、同補助金等のうち、個人が交付を受けるものについては、これを一時所得とみなすとともに、農業生産法人が交付を受けるものについては、交付を受けた後二年以内に固定資産の取得または改良に充てた場合には、圧縮記帳の特例を認めることといたしております。
 したがいまして、個人の場合は、その所得の計算にあたり、四十万円までの特別控除が認められ、これをこえる部分の金額につきましても、その半額が課税対象から除かれることになります。また、法人の場合には、取得した固定資産の帳簿価額から、その取得に充てた補助金等の額を減額することにより、その減額分が損金と認められ、補助金等を受けたことに伴い、直ちに課税関係が発生しないことになるのであります。
 なお、本案による国税の減収額は、昭和四十七年度において約五億円と見積もられるのでありまして、大蔵委員会におきましては、本案の提案を決定するに際しまして、政府の意見を求めましたところ、山本大蔵政務次官より、米の生産調整対策の必要性に顧み、あえて反対しない旨の意見が開陳されました。
 以上がこの法律案の提案の趣旨とその概要であります。何とぞすみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#47
○議長(中村梅吉君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#48
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
     ――――◇―――――
#49
○議長(中村梅吉君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時四十九分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  田中 角榮君
        大 蔵 大 臣 愛知 揆一君
        農 林 大 臣 櫻内 義雄君
        通商産業大臣  中曽根康弘君
        労 働 大 臣 加藤常太郎君
        国 務 大 臣 小坂善太郎君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 吉國 一郎君
        大蔵省主計局長 相澤 英之君
        大蔵省国際金融
        局長      林  大造君
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ソース: 国立国会図書館
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