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1972/02/22 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 本会議 第9号
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1972/02/22 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 本会議 第9号

#1
第071回国会 本会議 第9号
昭和四十八年二月二十二日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第七号
  昭和四十八年二月二十二日
   午後二時開議
  一 資金運用部資金並びに簡易生命保険及び
    郵便年金の積立金の長期運用に対する特
    別措置に関する法律案(内閣提出)、所
    得税法の一部を改正する法律案(内閣提
    出)、法人税法の一部を改正する法律案
    (内閣提出)及び租税特別措置法の一部
    を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説
    明
    …………………………………
 第一 昭和四十七年度衆議院予備金支出の件
    (承諾を求めるの件)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年
  金の積立金の長期運用に対する特別措置に関
  する法律案(内閣提出)、所得税法の一部を
  改正する法律案(内閣提出)、法人税法の一
  部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特
  別措置法の一部を改正する法律案(内閣提
  出)の趣旨説明及び質疑
 日程第一 昭和四十七年度衆議院予備金支出の
  件(承諾を求めるの件)
   午後二時四分開議
#2
○議長(中村梅吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金の積立金の長期運用に対する特別措置に関する法律案(内閣提出)、所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#3
○議長(中村梅吉君) 内閣提出、資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金の積立金の長期運用に対する特別措置に関する法律案、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣愛知揆一君。
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#4
○国務大臣(愛知揆一君) 資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金の積立金の長期運用に対する特別措置に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金の積立金の長期運用は、従来から財政投融資計画の中心をなすものとして、わが国の社会資本の整備、民間経済活動の誘導等に大きな役割りを果たしてまいりました。最近、財政投融資計画の規模が拡大し、また、その対象とする機関の数が増加してまいりましたのに伴い、これら資金及び積立金の長期の運用は、確実かつ有利な運用という性格に加えて、財政的資金の配分といった性格を兼ね備えるに至ってきております。
 このような現状にかんがみ、国会においてかねて行なわれてまいりました財政投融資計画と国会の審議のあり方についての論議の経過を踏まえ、資金及び積立金の長期の運用について、その適正かつ効果的な実施に資するため、その予定額につき、国会の議決を経るものとする等の措置を定めることといたしました。これが本法律案の趣旨であります。
 この法律案の内容といたしましては、
 第一に、毎会計年度新たに運用する資金及び積立金のらち、その運用の期間が五年以上にわたることを予定されているものにつき、予算をもって国会の議決を経なければならないことといたしております。また、その際、運用を予定する金額を、資金及び積立金の別に、かつ、運用対象区分ごとに区分することといたしております。
 この規定に基づき、昭和四十八年度における資金及び積立金の長期運用予定額を昭和四十八年度特別会計予算の予算総則第十四条に掲記し、別途御審議をお願いいたしているところであります。
 第二に、資金及び積立金の運用は、その相手先である公社公団等の事業の進捗の状況に応じて弾力的に対処する等の必要がありますので、国会の議決を経た長期運用予定額につきまして、議決を受けた年度内にその運用を行なわなかった場合には、翌年度に繰り越して運用できるものといたしております。
 なお、同様の見地から、予算総則に弾力条項を設け、予見しがたい経済事情の変動に対処するため、個々の機関につき、その運用予定額を五〇%まで増額し得るよう措置しております。
 第三に、毎会計年度の運用の実績を明らかにする必要がありますので、この点につきまして所要の措置を講ずることとしております。
 以上、資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金の積立金の長期運用に対する特別措置に関する法律案につきまして、御説明申し上げた次第であります。
 次に、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 初めに、所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 第一に、最近における所得・物価水準の推移を考慮して、中小所得者を中心とした所得税負担の軽減をはかるため、課税最低限の引き上げを行なうことといたしております。
 すなわち、基礎控除及び配偶者控除についてはそれぞれ一万円、扶養控除については二万円引き上げるとともに、給与所得者について、その負担を軽減するため、給与所得控除の定額控除を三万円引き上げるほか、定率控除部分についても適用金額の範囲を拡大することといたしております。この結果、給与所得者の課税最低限は、夫婦と子供二人の場合では、現行の約百三万円から約百十四万円に引き上げられることになります。
 また、老人扶養控除等については三万円、障害者控除等についてはそれぞれ一万円引き上げることといたしております。
 第二に、退職所得者の税負担の軽減をはかるため、退職所得の特別控除をおおむね五割程度引き上げることとしております。その結果、たとえば勤続年数三十五年の場合では、現行の五百万円から八百万円に引き上げられることになります。
 第三に、白色申告者の専従者控除を三万円引き上げることとし、また、寄付金控除の控除限度額の引き上げ、勤労学生控除の対象となる勤労学生の範囲の拡大をはかるとともに、予定納税を要しない予定納税基準額を現行の二万円から三万円に引き上げる等所要の改正を行なうことといたしております。
 これらにより、昭和四十八年度に一おきましては、三千億円をこえる所得税減税が行なわれることになります。
 次に、法人税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 法人税法におきましては、中小法人の税負担の軽減とその内部留保の充実に資するため、同族会社の留保所得課税についての控除額を引き上げるほか、役務の提供についても割賦基準による所得計算を認めることとしております。
 最後に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 まず第一に、土地に対する投機的取引を抑制するため、法人の譲渡益について重課することといたしました。この重課による税負担は、通常の法人税を含めた総合税負担がおおむね七〇%となることを目途とし、通常の法人税とは別に二〇%の税率で課税することといたしております。また、収用等の譲渡所得の特別控除の引き上げ及びその適用対象範囲の拡大を行なうことといたしております。
 第二に、重要産業用合理化機械等の特別償却の廃止、価格変動準備金の積み立て率の引き下げ等、産業関連の特別措置について整理合理化を行なうとともに、交際費課税の強化をはかるため、交際費の損金不算入割合を引き上げた上、適用期限を二年延長することといたしております。
 第三に、国民の福祉の向上をはかるため、老年者が受ける公的年金及び恩給については、六十万円の老年者年金特別控除制度を創設し、また、心身障害者を多数雇用する企業の機械等についての割り増し償却制度を創設することといたしております。
 第四に、公害防止に資するため、無公害化生産設備についての特別償却制度を創設し、さらに、低公害乗用車の開発普及を促進するため、物品税の暫定軽減措置を講ずることといたしております。
 第五に、勤労者財産形成・住宅対策の見地から、勤労者の持ち家取得を促進するため、勤労者財産形成貯蓄に係る住宅貯蓄控除制度の控除額を引き上げる等の措置を講ずることといたしております。
 第六に、中小企業経営の近代化合理化をはかるため、青色申告者について、みなし法人課税の選択による事業主報酬制度を創設することといたしております。
 第七に、農林漁業者の健全な経営の充実をはかるため、農業協同組合等の留保所得の特別控除制度の対象範囲を拡大して適用期限を延長するほか、農業信用基金協会等の債務保証に係る抵当権設定登記の登録免許税を軽減することといたしております。
 以上のほか、それぞれ実情に応じ、所要の措置を講ずることといたしております。
 以上、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げた次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金の積立金の長期運用に対する特別措置に関する法律案(内閣提出)、所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#5
○議長(中村梅吉君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。高沢寅男君。
  〔高沢寅男君登壇〕
#6
○高沢寅男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金の積立金の長期運用に対する特別措置法案について、政府に質問をいたします。
 財政投融資を国会の議決事項にすることは、長い間私たちが要求してきた懸案であったのでありますが、このたび、わが党の成田委員長と田中総理との党首会談を契機として、この懸案が実現の運びとなったのであります。
 だが、現実に政府より提案され、ただいま趣旨説明のありました特別措置法案を見ると、政府には、財政投融資をほんとうに国会の議決事項にする意思があるのかどうか、その真意を疑わざるを得ないのであります。
 私は、まず第一に、この根本問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。
 財政投融資とは、たとえていえば、きわめて大きな貯水池であります。この貯水池には、大別すれば、第一に産業投資特別会計、第二には資金運用部、第三には簡易生命保険及び郵便年金、第四に政府保証債及び政府保証借り入れ金という四つの川から資金が流れ込んでおります。そして、今度は、この貯水池から八つの特別会計、十三の政府関係機関、三十四の公団、事業団、基金、会社などへ、細分された川の流れとなって資金が流れ出ているのであります。
 この財政投融資の貯水池へ流れ込む資金と、この貯水池から流れ出る資金の計画を全体として一括して、財政投融資計画に編成し、これを国会の議決事項にすることを多年にわたって要求してきたのであります。
 ところが、現在、政府より提出されている特別措置法案は、財政投融資の貯水池へ流れ込む四つの川の中の二つの川、すなわち、資金運用部と簡保及び郵便年金の資金の流れだけを国会の議決事項にしようとするものであり、これでは本来のわれわれの要求の趣旨に沿うものではありません。
 政府は、産投会計と政府保証債及び政府保証借り入れ金は、それぞれ別に国会議決の対象になっている、こう言われるでありましょうが、このような形でばらばらに分散させることは、財政投融資の一本性をゆがめ、財政投融資計画が全体として国会の統制を受けることを避けようとするものにほかなりません。(拍手)私は、このような政府の態度を認めることはできないのであります。
 さらにまた、私は、財政投融資の原資によって運営されている各種公団、事業団等の予算についても、国会の議決事項とすることを要求いたします。
 と申しますのは、最近、公団、事業団等が雨後のタケノコのように続々と新設されておりますが、これらの公団、事業団等の支出または貸し出しの事業については、もっぱら主務大臣の認可事項にまかされ、融資条件、償還計画など、その具体的な事業の中身が、国会の審議と点検を受ける仕組みにはなっていないのであります。これは、公団、事業団等へ天下る古手官僚あるいは大蔵官僚の聖域として、国会の統制を巧妙にのがれているものであります。これも、国民に対する知らしむべからず、よらしむべしの態度であり、財政民主義の原則に反するのみならず、こうした運営の中から、重大な不祥事さえ生ずることもあり得ないことではないのであります。
 以上の立場に立って、私は政府に対し、本日趣旨説明のあった特別措置法案を撤回し、財政投融資計画の歳入、歳出全体を一つのセットにして、国会議決の対象にする別個の法律案を今国会に提出されるように要求し、これに対する田中総理の所信をお尋ねするものであります。(拍手)
 私が第二にお尋ねすることは、いわゆる財政投融資の弾力条項についてであります。昭和四十八年度予算総則には、政府関係機関について、また資金運用部並びに簡保及び郵便年金の長期運用予定額について、また政府保証債及び政府保証借り入れ金についても、それぞれ予見しがたい経済事情の変動という名目によって、百分の五十までの範囲で予算の増額が認められております。財政投融資の性格上、一定の弾力性を持つことは私も認めるにやぶさかではありませんが、百分の五十という弾力性はあまりにも過大であり、これもまた弾力性の名のもとに、財政民主主義を掘りくずす突破口となりかねないのであります。
 私の調査によれば、過去において、財政投融資の当初計画の総額に対して、実際に追加された弾力性の。パーセントは、不況対策として追加額の特に多かった昭和四十六年度の場合でも一八%にすぎないのであります。この実績から見ても、百分の五十という弾力性がいかに過大であるかは明らかであります。私は、予算総則で認める弾力性は一〇%にとどめて、それを上回る追加額が必要となるときは、補正予算を組むべきであると考えるものであります。大蔵大臣の所信はいかがでございましょうか。
 また、同じく財政投融資の弾力条項として、当該年度において運用しなかった資金は、次年度に繰り越して自動的に運用できることになっておりますが、これもまた問題であります。
 日銀の国庫収支年報に掲載されている財政投融資の政府資金の実行状況によれば、たとえば昭和四十五年度では、財政投融資の政府資金の実行総額二兆八千億に対して、次年度への繰り越しは五千億という巨額にのぼっております。四十六年度では、政府資金の実行総額三兆四千四百億に対して、次年度への繰り越しは九千五百億の巨額にのぼっております。このような大きな繰り越しは、当然、これを繰り越し明許費として毎年度国会の議決を経て行なうのが財政民主主義の原理ではないでしょうか。
 しかるに、政府の提案された特別措置法案では、一括繰り越しというまことに非民主的な取り扱いをしようとしておりますが、これを取りやめて、財政法第十四条の三に基づく繰り越し明許費の取り扱いをされるよう、私は要求いたします。大蔵大臣の所信はいかがでございましょうか。(拍手)
 私が第三にお尋ねすることは、資金運用部の原資についてであります。
 昭和四十八年度の資金運用部資金の総額五兆六千二百三十九億円のうち、郵便貯金、厚生年金、国民年金の三資金の合計は四兆八十億円であり、その他の資金が一兆六千百五十九億円となっております。資金運用部の資金は税金によって構成されるものではありませんが、郵便貯金は文字どおり国民の貯蓄であり、また厚生年金と国民年金の資金は、法律に基づいて強制的に国民から徴収される保険料であります。それは税金ではないけれども、強制的に取られる国民にとっては税金にひとしい金であります。資金運用部資金はそうした金から成り立っているのであります。
 ところが、この資金運用部の資金の中に、性格の不明な、その他の資金と称するものが一兆六千百五十九億円もあるのであります。実に、資金運用部資金総額の二九%に当たるのであります。私は、大蔵大臣に対し、この「その他」と称する資金の性格、その内訳について、国民にわかる御説明を求めるものであります。
 なお、この際、資金運用部の原資に関連して、厚生年金、国民年金の改正についてお尋ねをいたします。
 昭和四十八年度において、政府は、厚生年金及び国民年金に改正を加えて、五万円年金を実現すると宣伝しております。だが、政府の言う五万円年金の実体はどうかといえば、国民年金で五万円の給付が実現するのは、いまから十三年後の昭和六十一年度の話であります。厚生年金では、現在老齢年金給付を受けている老人人口は約八十万、その中で五万円の年金給付を現実に受けられる人は、その一割の八万人から九万人にしかすぎないのであります。あたかも、わが国の老人たちがだれでもあしたから五万円をもらえるような宣伝をした自民党の政策は、まさに選挙目当ての羊頭狗肉の政策であったのであります。(拍手)
 それだけではありません。政府の五万円年金の裏側には、保険料の大幅引き上げというとんでもないおまけがついているのであります。
 このたびの政府の年金制度の改正を、金額のバランスシートで示せば次のごとくであります。
 厚生年金及び国民年金の現行に比しての給付の改善による給付費の増額は、合わせて約七百億であります。それに対して、厚生年金、国民年金の現行に比しての保険料の増額部分は、合わせて約千六百五十億であります。つまり、政府は、国民に七百億円を与えるかわりに、国民のふところから千六百五十億円を余分に奪い取ろうとしておるのであります。この千六百五十億が、財政投融資の原資として動員されていくのであります。
 つまり、政府の年金制度の改正は、その真のねらいは、財政投融資の原資をより多く握り、国家独占資本主義の政策をいよいよ露骨に推進しようとするところにあると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 もしそうでないと言うならば、政府は、年金保険料の引き上げを取りやめ、国民の貯蓄である従来の積み立て金の取りくずしによって年金の給付を引き上げ、この経過措置を経ながら積み立て方式を次第に賦課方式へ切りかえていく、この段階的な移行方式をとるべきであります。これを政府は断行するお考えがあるかどうか、大蔵大臣、厚生大臣の所信をお尋ねするものであります。
 私が第四にお尋ねすることは、開発銀行と輸出入銀行の運営についてであります。
 戦後の復興金融金庫の機能を受け継いで開発銀行が創設されたのは昭和二十六年であり、また、輸出入銀行が創設されたのは昭和二十五年であります。それ以来、国民の資金である財政投融資資金は、あるいは経済再建、産業開発という名目で、あるいは貿易振興という名目で、そのばく大な金額が基幹産業の大企業に長期資金として貸し付けられてきたのであります。その金利は四%から七%台であり、言うまでもなく市中金利よりもはるかに優遇された低い利子であったのであります。
 かくして、この政府のバックのもとに、これらの大企業を先頭に立て、あの悪名高き高度経済成長政策が急激に推進され、外貨準備が激増してまいりました。わが国は世界の国々からエコノミックアニマルの悪評を受け、それとともに、わが国に対する円切り上げの要求や、また貿易制限の風当たりが強まっています。このたびの円の変動相場制への移行は、こうした背景のもとにあらわれてきたものであり、政府の責任は重大であります。それにもかかわらず、なお依然として開発銀行と輸出入銀行のばく大な長期低利資金が大独占企業に対して貸し付けられているのであります。
 代表的な一例をあげれば、日本郵船は、その長期借り入れ金千七百億のうち開発銀行の融資が千二百億であり、実に約七割の高率に達しております。石川島播磨重工の場合は、長期借り入れ金三千九百億のうち輸出入銀行融資が二千億であり、約五割の高率に達しております。
 そこで、政府にお尋ねするのでありますが、開発銀行や輸出入銀行の目的にうたわれている経済再建、産業開発、貿易振興等々の目的は、政府の立場から見ても、すでにその段階は終わったのではないでしょうか。私はこの際、政府に要求いたします。いまや財政投融資の大原則を、成長優先、輸出第一主義から、福祉優先、生活第一主義へ転換すべきときであります。(拍手)
 具体的に申すならば、政府は、開発銀行及び輸出入銀行を解散し、それにかわって、中小企業の体質の改善強化、公害対策、また、生活環境の整備などを目的とする強力な政府銀行を新たにつくるべきであります。政府はこのことを決断と実行の態度で示す意思があるかどうか、これに対する大蔵大臣の所信をお尋ねして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(田中角榮君) 私から、二点にわたってお答えをいたします。
 第一点は、財政投融資計画には、御指摘のとおり、資金運用部資金及び簡保資金のほか、産業投資特別会計の支出及び政府保証による資金調達が掲げられておるわけでございます。産投会計の支出につきましては、同会計の歳出予算として、また政府保証による資金調達につきましては一般会計の予算総則において、それぞれ国会の議決を受けることになっておるわけでございます。これらをさらに議決対象といたしますことは、二重議決の問題も生ずることになります。その点を考慮いたしまして、今回、資金運用部資金及び簡保資金の運用を国会の議決対象としたものでございまして、これによって財投計画の内容はすべて国会の議決の対象となったわけでございます。
 第二点は、公団、事業団等の支出についても国会の議決事項としてはどうかというような趣旨の御発言があったと思いますが、公団、事業団等につきましては、その設立の根拠たる法律によりまして、事業の円滑な遂行のために、自主的、弾力的な運営をさせることが適当と判断をされておるのでございます。予算につきましては、国会の議決にかからしめず、主務大臣の認可となっているのもこのためでございますので、この取り扱いを変更することは、公団、事業団等の設立の趣旨に合致しないことになるわけでございまして、適当でないと考えておるのでございます。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#8
○国務大臣(愛知揆一君) 私に対する御質疑の第一点は、いわゆる弾力条項というものがおかしいではないかという御趣旨のもとに、具体的に数字をあげての御質疑でございました。そして、たとえば四十六年度の財投の追加は一八%であって、五〇%の弾力条項との開きが大き過ぎるではないか、その点はごもっともでございますけれども、一八%というのは財投計画全体についての割合でございまして、今回の政府案は、運用対象ごとの資金運用部資金あるいは簡保資金の追加割合というものは一様ではございませんので、そのそれぞれについて増額限度というものを五〇%にいたしまして、運営を円滑にいたしたい、かような配慮でございます。これは、従来から認められております公庫の借り入れの弾力、それから政府保証の弾力がいずれも五〇%でございまして、これと平仄を合わせたものでございますから、過大とは考えません。
 それから、弾力条項は一〇%として、それ以上は補正の手続をとるべきであると、こういう御意見がございましたけれども、こうした両資金の性格から申しまして、増額限度を一〇%というところに限定をして、それをこえる部分については補正措置ということになりますと、財投計画の機動性、弾力性というものがそこなわれる、かように考える次第でございます。
 それから、資金運用部資金、簡保資金の運用先のうちで公団、事業団等の事業は、年度を越えて行なわれる場合に繰り越し明許として議決を一々経べきであるという御意見を交えての御質問でございましたが、ただいま総理から御答弁もありましたように、公団、事業団等の事業というものは、その性質上、年度を越えて継続されるものが非常に多いわけでございます。また、融資期間につきましては、金融環境などによってその融資計画が相当の影響を受けることもございますので、一々繰り越し明許ということになりますと、やはり機動的な運営ということに支障が起こるわけでございます。
 それから次の御質問は、郵便貯金、厚生年金、国民年金だけが特掲されてあって、それ以外の資金を「その他」と計上してあるのは何であるかという御質疑でございましたが、昭和四十八年度の「その他」と計上されてございますのは総額一兆六千百五十九億でございますけれども、その内訳は大部分が回収金であって、一兆二千七百九十億円、それ以外は船員保険特別会計等の預託金が三千億円余りございますことは、御承知のとおりかと存じます。
 それからその次の御質疑は、開発銀行、輸出入銀行は、現在の状況下においてはその使命がおかしいではないかという御質疑でございましたが、これを具体的に申しますと、状況に応じてこの両機関の性格や運営は変わってきております。輸銀で申しますならば、従来は船舶等を中心にした輸出金融がおもでございましたが、最近におきましては、エネルギー、鉱物資源の確保などを目ざしました輸入投資金融が非常に多いのであります。また、経済協力のための直接借款に重点が移っております。それから開発銀行のほうは、いわゆる産業金融から公害予防、公害防止、流通近代化、大都市再開発、国民生活改善といったような、社会開発、国民福祉の向上に重点を置いて融資を行なっておりますので、両行の重要性というものは、設立された当初からは変わりまして、その現代的使命はますます重要になっておりますことを御理解いただきたいと存じます。
 以上、私に対する御質問にお答えいたしました。(拍手)
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
#9
○国務大臣(齋藤邦吉君) 現在採用いたしておりまする修正積み立て方式を賦課方式に改めたらどうかとのお尋ねにお答えを申し上げます。
 お説のように、当該年度に必要な給付費用をその年度の保険料でまかない、積み立て金を取りくずすということにいたしますれば、被保険者に比べ受給者数が少ない現段階においては、当面は比較的軽い負担で給付改善を行なうことも可能かと思います。しかし、老齢化傾向は西欧先進諸国並みに進み、今後受給者が急増するのでございまして、この方式をとれば、たとえ給付改善を行なわないといたしましても、保険料負担は今後急激に過重なものとなることが予想されるのであります。
 年金制度は、由来、二十年、三十年と長期にわたる制度でありますので、将来急速に増大する受給者に対し、物価スライド制を背景とした五万円年金給付の財源を確保しつつ、制度の健全なる維持、発展をはかるためには、長期的視野に立って財政運営を行なう必要があるのでございまして、短期的な収支のみによって給付と負担との関係を論ずることは適当ではないと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(中村梅吉君) 塚田庄平君。
  〔塚田庄平君登壇〕
#11
○塚田庄平君 私は、日本社会党を代表いたしまして、提案になっております所得税法、法人税法並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、総理大臣並びに関係大臣に対して質問をいたす次第でございます。
 一昨年の円切り上げでは、戦後わが国経済が一貫してとり続けてまいりました高度成長政策、輸出優先の生産第一主義が国際的にきびしい批判を受け、また国内的にも、生産拡大が即生活向上にはつながらず、かえって公害の拡散による生活環境の破壊と、生命の危険すらももたらすに至ったことは、周知の事実であります。アメリカの有名な経済学者は、日本は、このまま経済成長を続けるならば、おそらく今世紀のうちに個人所得もアメリカを追い越すことは明らかであろう、しかし、そのときまで日本人が生きておるかどうかは別問題だ、このように実は指摘しておるのであります。
 わが党は、従来にも増して、政府の糊塗的な対策では円再切り上げを避けることはできず、労働者をはじめ国民諸階層の利益を守るためには、早急に経済政策の転換をはかり、低賃金構造を打破して、国民福祉第一の政策に改める以外には道はないと強く主張してまいりましたが、政府は、一向に改めようとせず、ついに再び円切り上げの局面を迎えておるのであります。この事態に対して総理が責任をとらないならば、およそこの国には政治責任ということすら存在しないことになるのではないだろうか、(拍手)私はこのように言って過言ではないと思います。
 政府の国民不在の経済成長政策を、その根底においてがっちりとささえておるのは、実は税制であります。いま政府が口で言うように、国民福祉重点の経済政策に転換するというならば、まず大企業、高額所得者優遇の租税政策のあり方を再検討し、是正しなければならないものでありますが、このたび提案された改正案は、この点きわめて不徹底であり、あるいはむしろ逆行するものさえ見受けられる点が数多くあるのであります。まさに税制の混迷ここに至れりという感が私はするのであります。
 以下、具体的に若干の点に触れて政府の見解を求める次第でございます。
 まず、所得税についてでありますが、四十八年度は大幅減税といううたい文句のもとに、初年度三千百五十億円減税することになっております。四十七年度の自然増収は実に二兆五千億をこえることが予想されておるのに、わずかに三千億程度の減税では、物価との関係からいえばむしろ実質的に増税結果を招くものである、こう断定せざるを得ないのであります。(拍手)国民の暮らし向きをよくするための減税であるならば、物価を考慮に入れない減税などは実はナンセンスであります。
 消費者物価は四十八年度は予算の上で五・五%の上昇を見込んでおります。大体政府みずから預金の利子五・二五%以上の物価の値上がりをのっけから予算に見込むというこの不見識を、私は国民とともに糾弾したいのであります。(拍手)しかし、物価の実勢は政府の見通しをはるかに上回ることは明らかであり、かりに政府見通しどおりとしても、二千八百億円の物価調整減税を必要とし、差し引き純減税額は五百五十億円程度になってしまうのであります。
 先ほど大蔵大臣の提案理由の説明の中で、所得、物価水準を加味して今度の措置をしたと言っておりますが、現実には何ら加味しておらないということが、この数字によって明らかであります。(拍手)
 所得税の本来の負担は、実質所得に対する負担を中心に考えるべきであります。しかし、実際には、名目所得に対し直ちに累進課税が適用され、消費者物価の上昇に相当する部分についても一律に課税されるので、実質所得に見合う税額より当然多くなるのであります。
 総理は、この際、物価調整減税を税制の中に織り込む用意があるかどうか。そして生活福祉優先と言うならば、自然増収の額から見て、本年度内に思い切って一兆円程度の所得減税を行なうべきだと思いますが、決意を込めた総理の所信を承る次第でございます。(拍手)
 また、所得階層別に減税割合を見ますと、低所得層ほど低く、高所得層ほど高く有利になっておりますが、このことが国民に対して重税感を与えておる大きな原因であります。おそらく政府は、私がこのように主張しますと、累進課税だから、減税の場合はその逆で高額所得者が有利になることは、これはもう数字的にあたりまえだ、こういう答弁をなさるだろうと思います。しかし、福祉の向上という政策目的から、下に厚く上に薄い思い切った減税措置が必要であると思うが、大蔵大臣は一体どう考えるか、御質問をいたす次第でございます。
 次に、法人税の改正について御質問いたします。
 税制調査会の答申では、福祉充実のためには、法人に応分の負担を求めるべきである、このように指摘しております。これはまさに、従来の産業優先の税制を大きく転換すべきことを示唆しておるものと私は考えております。後に質問をいたします租税特別措置の整理と相まって、まさに緊急の課題であります。
 法人税の基本税率は、昭和四十五年度以来三六・七五%に据え置かれており、その実効税率は国税あるいは地方税を合計いたしましても四五・〇四%であり、まさにこれは国際的な水準からいって大きく優位性を表明しておるものであります。国際競争力が強過ぎて、円の再切り上げが具体的日程にのぼっておる現在、何ゆえ思い切って増税に踏み切ることができないのか。この点を私は特に総理大臣に対してお伺いする次第でございます。法人税率をわずか一%上げただけで、実に一千億円の増税になります。まさに決断と実行を総理に望みますが、ずばり所信を承りたいものであります。
 私は、日本が今日のように国際収支の大幅黒字に悩み、国際的非難を受けなければならない大きな原因の一つは、政府が昭和二十五年以来大企業の資本蓄積を助長するために、今日なおとり続けている租税特別措置にあると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)いまや、この企業優遇措置は、主要なものだけでも百三十項目に及んでおり、四十八年度の減収額は実に四千六百四十五億円の巨額に達しておるのであります。私は、今回新しく措置されたものを中心として、これがいかに不合理きわまる国民無視の税制であるかを指摘し、総理大臣、大蔵大臣の確たる見解を求めるものであります。
 まず、公害対策関係の特別措置であります。私は、これこそまさに公害防止に名をかりた大企業優遇税制そのものであると断ぜざるを得ないのであります。もとより公害対策は重点的にいま実施されるべき今日的な課題ではありますけれども、OECDなどは公害防止に対する政府の助成は非関税障壁とみなし、かかる一種の輸出補助金的なものは廃止し、公害費用の発生者負担の原則確立を主張しており、これがいまでは国際的な通念になっておるのであります。
 しかるに、わが国は、依然として資本蓄積の脆弱さを強調して、大企業中心の恩典を与え続けておるのであります。四十七年度に公害防止準備金制度を設け、加えて、無公害生産設備の特別償却制度を創設、さらに今回低公害車の開発普及のための物品税の軽減措置を講ずる等は、いまやごうごうたる国際的な非難の的になっておるのであります。このような措置をとるから、国内価格百万円の無公害車が、実は一千五百ドル前後で輸出される、つまり二重価格の横行する根本的な原因であり、外貨をためる真犯人なのです。
 私は、かかる特別措置を廃止して、経済行動の大転換をはかるべきだと考えますが、この点について大蔵大臣の明快なる答弁を求めるものであります。(拍手)
 次に、青色事業主報酬制度の創設が、中小企業対策の中で五年間の特別措置として出されておりますが、五年間の時限においてこの制度の基本的方向をどのように据える考えなのか、まずこの点について大蔵大臣の考えを聞きたいのであります。
 この制度に踏み切った以上、同時に、一般給与所得者及び白色申告者との均衡を絶対にはからなければなりません。そうでなければ、せっかくの措置も悪法のそしりを免れないのであります。税の不公平感を助長しておるトーゴーサンとかあるいはクロヨンとかの所得捕捉率の格差がある現況のもとでは、給与所得者の重税感は深まる一方であります。私は、ここにもまた所得税一兆円減税の重大な根拠が存する、このように主張するものであります。大蔵大臣の確信のある御答弁を求めます。
 次に、新たに創設されました土地税制についてお尋ねをいたします。
 経済の成長と歩調を一にしておるのは物価の上昇であり、その中でも、地価の値上がりは、田中総理の列島改造論と相まって、決定的なドライブをかけられたと言って過言ではないのであります。列島改造計画が実施に移されればたちどころにすべてが解決されるとうそぶいていた田中総理、この事態に対しては、まさに政治的責任を問われるものと思うが、総理大臣はどのように考えておられるか、率直な御答弁をいただきたいと思います。
 国民は、無策無責任きわまる政治のもとで、いま深刻な住宅難あるいは土地入手難にあえいでおるのであります。豪華な邸宅に住み、高価な別荘をぽいと買い上げる総理には、わずかな公営住宅あるいは土地分譲に殺到する庶民の切ない気持ちはおわかりにならぬだろうと思います。(拍手)いまや、住宅の抽せんに当たるのは宝くじに当たるよりもむずかしい、というのが庶民の率直なささやきであります。しかし、提案されております税制では、地価引き下げに役立ち、また未利用地の放出を促進するどころか、かえって逆の結果を招来するものと考えざるを得ないのであります。
 その理由といたしまして、まず保有税については、その強化によって持ち越し費用を高め、手放さざるを得なくするのが目的であろうが、固定資産税に比べ、課税標準を土地取得価格としたところに違いこそあれ、全く同率であって一・四%、適用除外規定と相まって、おそらくその効果はほとんどあらわれないのではないか、このように私どもは考えております。
 一方、国税である譲渡税では、課税率は二〇%とまことに低く、宅地造成は適用除外になっておりまして、宅地を造成して販売する業者には何らの影響もなく、適用されるのは、値上がり待ちで短期間土地を保有するものに限っておるのであります。特に私ども、がまんのできないのは、民間デベロッパーが適用除外になっておるということであります。
 わが党が、過去十カ月にわたりまして、多くの困難を克服しながら調査を進めた最近の結果によりますと、首都圏においては、大手二十社の買い占めている土地は実に九千六百五ヘクタール、近畿圏において大手二十九社の買い占めておるのは八千四百九十一ヘクタールという驚くべき数字が判明しておるのであります。このように、土地があって住宅難に泣くのは、大手デベロッパーが土地を買い占め、地価高騰をあふっておるからということがきわめて明瞭になってきておるのであります。(拍手)このようなデベロッパーが適用除外され、あまつさえ新規参入を抑制して、むしろ独占効果をねらった面さえあるのであります。適正利潤の保証と相まって、まさにざる法たる性格を如実に露呈したものといわざるを得ないのであります。この点について、特に土地の問題ですから、総理大臣は一体どう考えておるかも御所見を承りたいと思います。
 次に、実施の時期でございますが、政府案では、保有税は四十九年度から、譲渡税は新法施行後一年たってからとなっていますが、一体、この期間中に何が行なわれるでしょうか。私は、土地投機で取得した土地を、なるべく税負担の安い部分に移すということが公々然と行なわれる、こう判断せざるを得ない現況であります。私どもはこのような可能性を封ずるために、猶予期間を設けるべきではないと思います。
 以上、数点にわたりまして質問を申し上げましたが、土地問題は、「花見酒の経済」を待つまでもなく、物価上昇の元凶であり、また信用インフレを高めるものでありますから、列島改造論の著者といわれる総理大臣の率直な御所見を承りたいのであります。
 これをもって私の質問を終わりますが、誠意のある御答弁を強く要求するものであります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(田中角榮君) まず第一に、一兆円程度の減税をすべきではないかという問題に対してお答えをします。
 四十八年度におきましては、国税、地方税を通じまして、初年度四千六百億円、平年度五千二百億円の大幅減税を行なっておるわけでございます。特に中小所得者の負担軽減をはかるために、課税最低限の引き上げと、給与所得者に重点を置いて給与所得控除の拡充を行なうなど、初年度三千百五十億円、平年度三千七百億円に及ぶ所得税減税を行なっておるわけでございます。このような減税の結果、夫婦子二人の給与所得者の場合、課税最低限は、現行百三万七千八百六十円から百十四万九千六十円となりまして、アメリカを除く、英国、西ドイツ、フランスの例を上回っておるのでございます。
 第二は、法人税の実効税率を引き上げるべしという御発言でございますが、法人税の負担を高める道は、税率の引き上げだけではなく、課税所得の拡大もその一つの方法でございます。四十八年度の改正におきましては、産業関連の租税特別措置の改廃等によりまして平年度四百億円の増税措置を講じたわけでございます。また、固定資産税につきましても、その負担を高める措置が講じられておりまして、この面からも法人の税負担は加重されることになるわけでございます。なお、法人税につきましては、十分勉強してまいりたいと存じます。
 第三点は、土地税制についてでございます。保有税を課する場合、土地供給を促進するため、一定地域を限って未利用地に対して高率の課税を行なう方法が考えられます。しかし、このような地域の限定や未利用地の判定が困難な事情もあり、今回実施しようとしております特別土地保有税は、課税地域を限定せず、利用度のいかんにかかわらず、一律的に課税する方法をとることといたしたわけでございます。このように広く一般的に課税するものである以上、税率をあまり高くすることは適当でない、こう考えております。
 なお、譲渡税につきまして、適用除外が多過ぎる、特に民間デベロッパーを除外しているのは不当であるということでございますが、今回の土地税制の主たるねらいは、土地投機の抑制に置かれており、同時に、土地供給が阻害されるという副作用をできるだけ緩和することに配慮をいたしておるわけでございます。投機の抑制ということと、同時に、供給が阻害されないようにという二つの目的を達成しようといたしておるわけでございます。一定の要件に該当する優良宅地の供給について適用除外としておりますのは、これにまで重課措置をやりますと、サラリーマン住宅の価格に転嫁されるおそれがございますので、これを防ぐためのものでございます。
 それから、適正利潤率はという問題に御発言がございましたが、これは、取得原価、造成費等をもとにいたしまして、一般の企業活動から通常得られる程度の利潤ということを考えておるわけでございます。
 それから、実施までの間、経過期間を設けたのはどういうことかということでございますが、課税開始までに一年の猶予期間を設けることにいたしております。それは、今回の譲渡税が、今後取得する土地の譲渡だけではなく、昭和四十四年一月一日にさかのぼっておるわけでございます。その意味で、一年間猶予期間を置きましたのは、これを直ちに徴収をするということによって供給がとまるということであってはなりませんので、猶予期間中に土地を放出する、供給促進の効果を期待をいたしたわけでございます。
 以上。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#13
○国務大臣(愛知揆一君) まず、所得税の減税の問題でございますが、これは、課税最低限度が百三万円から初年度百十二万円以上に上がるということだけをとらえてみましても、その幅は一〇・七%でございまして、消費者物価の値上がりというようなものよりははるかに幅が広いわけでございます。なおまた、これを具体的に年収であげてみますと、たとえば百五十万円クラスで二三・七%、二百万円クラスでいいますと一四%、三百万円で一〇・四%、五百万円で七・一%と、こういうような軽減割合となっておりまして、ただいま御意見のございましたようなところは、政府案において十分考えてまいっておるところでございます。
 それから、法人税の問題につきましては、ただいま総理から詳しい御答弁がございましたが、なお政府案といたしましては、課税所得の範囲をできるだけ拡大したい、そして特例措置をできるだけなくしたいということで立案しておるわけでございますが、御指摘のございました公害対策のための特別措置でございますけれども、これは無公害化生産設備の特別償却制度の創設ということを本案の中で考えておることは、御指摘のとおりでございます。公害防止が緊急な社会的な要請となっておる現状におきまして、過渡的な措置として、税制上の誘導的な効果を利用いたしまして公害発生源を解消するということは、刻下の重大な政策であると思いますし、また、こうした過渡的な措置につきましては、OECD等におきましても認められておるところと承知いたしておる次第でございます。
 それから次は、事業主報酬制度の問題でございますが、事業主報酬制度は、その実態が同族法人と類似しておる個人企業につきまして、御案内のようにみなし法人課税方式を選択する制度を試みに採用をいたしておるわけでございます。この制度によりまして、平たく言えば、店と奥との経理区分を明確にして企業経営を近代化する、合理化を推進したいという政策目的もあわせまして、特別の措置として創設をするものでございますから、その意味合いから申しましても、これを白色にまで及ぼすということはいささか無理であろうと考えるわけでございます。
 土地の税制につきましては、総理から詳しく御答弁がございましたから、私から特に申し上げることはございません。
 なお、申し落としましたが、事業主報酬制度と勤労所得との均衡を考えろ、これは十分考えまして、勤労所得控除等につきましても配慮いたしましたが、なお、この事業主報酬制度というものをこれから運営してまいりまして、他の均衡等については、十分将来の問題として考えてまいらなければならない、かように考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(中村梅吉君) 増本一彦君。
  〔増本一彦君登壇〕
#15
○増本一彦君 私は、日本共産党・革新共同を代表しまして、ただいま議題となりました租税関係三法の各改正案に関し、総理並びに関係各大臣に質問をいたします。
 いま、政府による円の変動相場制移行の結果、国民の生活と経営は重大な打撃を受けようとしております。このような国民生活の悪化は、当然、政府の経済見通しと税収見積もりにも重大な影響を与えるものといわなくてはなりません。
 政府は、昭和四十八年度経済見通しにおいて名目一六・四光、実質一〇・七%と見込み、これを基礎として、税収を十一兆七百八十六億円と見積もっております。特に、このうちの三八・三%を占める所得税については、労働者の賃金などに対する源泉所得税では、前年に比べて雇用が二%ふえ、賃金も一五%上昇するとか、申告所得税でも、中小商工業者などの営業所得は一二%、農民の所得も五%伸びるなどという見通しのもとに計算されております。さらに、税収見込みの三一%を占める法人税に至っては、申告所得が二四%もふえるというのであります。
 しかし、今日の深刻な生活と経営の困難を体験している国民のだれが、このような政府の言い分を信用するでありましょうか。今日の事態は、政府の経済見通しが全く破綻し、それに基づく税収見込みも全く客観的な裏づけのないものになったことを明白に示しております。
 総理、見通しが困難だと言って、自分でも確信のない税収見込みを国会に提出しておいて、その承認を求めようとするのは、無責任であり、国会軽視もはなはだしいといわなくてはなりません。
 政府は、来年度の経済見通しとそれに基づく税収見積もりがどのようになるとお考えになっておられるか。総理並びに大蔵大臣の明確な責任ある答弁を求めるものであります。(拍手)
 いまや国民は、円の事実上の再切り上げに伴う打撃とひどい物価高に加えて、生活費に食い込む重い税金を押しつけられて、がまんのならない状態にあります。
 ところが、総理は、変動相場制移行は遺憾であった、国民生活を守るためには万全の措置をとるなどと言いながら、変動相場制移行後の国民生活の困難を全くしんしゃくすることなく、所得税、地方税を含めても、たかだか四千六百億円にすぎないものを減税だと言っているのであります。しかし、国民の立場から見るならば、これはとうてい減税という名に値しないものであります。
 国民の税負担率は、部分的な減税措置すらとらなかった昭和四十七年度よりもさらに引き上げられて一九・五%に達し、自然増収二兆六千億円と合わせて、国民には実質的にも大幅な増税となるものであります。
 いま、働く国民は、生活費に食い込む課税をするなと要求しているのであります。
 政府の資料によっても、昭和四十六年のわが国の一世帯当たりの生活費の中に占める食費の割合、つまり、エンゲル係数は約三六%であり、夫婦子二人の場合の一カ月の食糧費を、政府の生活白書に基づき四万五千円と見ると、一カ年の必要生活費は百五十万円になります。憲法二十五条は「すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む権利を有する。」と、はっきりと生存権を保障しているではありませんか。この生存権の租税制度における具体的な保障こそ、生活費には絶対に課税しない立場を貫くことであります。
 ところが、今回の政府案では、免税点は夫婦子二人の場合、給与所得が平年度で百十四万九千六十円、事業所得の白色が七十五万六千二百八十八円、青色で百六万七千六百二十八円にすぎず、独身の労働者の場合だと年収入五十万円でも税金を取られるなど、勤労者の生活費に大幅に食い込む課税となっていることは、全く明白であります。
 政府は、今回の改正案によって、免税点も欧米諸国並みになったといっていますが、これは、政府が国民に強要している低賃金と、物価上昇による激しい収奪を無視した暴論であるといわなくてはなりません。(拍手)
 この十年間を見ても、消費者物価の上昇率は、アメリカや西ドイツの三一%に比べて、日本は実に七七%をはるかにこえるという異常な激しさであります。労働者の賃金水準に至っては、同一業種をとっても、アメリカの三分の一から二分の一、西ドイツ、フランスなどの二分の一という状態であり、社会保障の貧しい実態とあわせ考えるならば、日本国民こそ主要国最大の高負担を押しつけられていることは全く明白であります。(拍手)
 わが党は、国民生活を守るため、生活費非課税の原則に立って、免税点を大幅に引き上げるべきであり、当面、所得税、住民税、個人事業税の免税点を、夫婦子二人の四人家族で年収入百五十万円まで引き上げ、住民税の均等割りを廃止して、わが党の主張する二兆円の大衆減税を断行すべきであると考えますが、(拍手)総理並びに大蔵、自治両大臣の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 また、政府の事業主報酬制度についても、白色申告者を差別しているばかりか、自家労賃を経費として完全に認めていないものであります。わが党は、事業主報酬制度を、大多数が中小零細業者である白色申告者にも適用して、自家労賃を経費として完全に認めることが、大幅な大衆減税と相まって、今日の円問題における緊急対策ともなると考えますが、総理並びに大蔵大臣の答弁を求める次第であります。(拍手)
 次に、土地税制について質問いたします。
 今日の地価値上がりの最大の原因が、歴代自民党政府の高度成長政策による大企業、大不動産会社の土地買い占めにあることは、いまや全く明白であります。(拍手)ところが、政府は、農民や都市の小土地所有者が土地を手放さないことが地価値上がりの原因であると、責任を国民になすりつけ、大企業の土地買い占めと土地投機を野放しにしています。
 今回の土地税制は、このような事態に正しくメスを入れるものではなくて、税率も低く、除外事由も多く、全く何の解決にもなりません。
 わが党は、法人の不動産の譲渡所得に対しては、大企業の土地投機が採算の合わないものとするためにも、地方税を含めて七〇%から九〇%の高率の分離課税を採用すべきであり、大企業の固定資産税についても適正な評価のもとに、その所有面積に応じて高度累進税率によって重課すべきであると考えますが、総理並びに大蔵、自治両大臣の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 さて、政府は、これまでの大企業本位の生産、輸出第一主義と、高度成長政策に対する内外のきびしい批判をかわそうとして、福祉社会への転換などと宣伝をしてきましたが、それが全くの偽りであることは、昭和四十八年度予算案が、大企業の超高度成長政策を目ざす総理の日本列島改造計画の実行を根幹としていることでも全く明らかであります。そして、その税制面での端的なあらわれが、租税特別措置をはじめとする大企業に対する特権的な税の減免措置であります。
 政府は、海外市場開拓準備金や、海外投資損失準備金などの輸出優遇税制を依然として残していますし、銀行の貸し倒れ引き当て金制度や、四十七年度八千億円以上にものぼる大企業の広告費に対する非課税措置にも全く手をつけていません。
 その上、公害をまき散らしてきた鉄鋼、電力、石油精製などの公害大企業に対しても、その公害責任を追及するのではなくて、その利益を優先して、無公害化生産設備特別償却制度を創設するなど、依然として大企業奉仕の政治姿勢であります。
 法人税についても、大企業の税負担を少なくして利益を大きくするために、大企業の法人税率を引き上げよという世論を無視して、比例税率をそのまま維持して、これを全く変えようとしていません。
 このような大企業に対する租税の特権的な減免措置によって、昭和四十六年だけで、東京電力で百三十六億円、日立製作所百億円、松下電器七十三億円、三井物産三十四億円などの税の減免が行なわれているのであって、全体では三兆円にものぼる特別の減税がなされていると推計できるのであります。
 日本の大企業は、欧米諸国と比べても比較にならぬくらい賃金コストが低い上、租税負担率や社会保険料の負担も低く、働く国民を犠牲にして輸出競争力を強め、貿易収支の黒字を生み出してきたのであります。その結果が今日の変動相場制への移行と、実質的な円の再切り上げを招いたものであり、総理の責任はきわめて重大であるといわなくてはなりません。(拍手)
 わが党は、大企業と国民との間のあまりにもひどい税負担の不公平を是正するためにも、また、円問題の根本的な解決を進めるためにも、大企業に対する租税特別措置をはじめとする一切の租税の特権的減免措置を廃止するとともに、中小企業に対しては、現行の法人税率を少なくとも五%引き下げ、大企業に対しては、法人税の比例税率をやめて高度累進税率を採用して、その引き上げをはかるべきだと考えます。
 また、円再切り上げによる大企業の為替差益に対しても、他の所得と分離して高率の課税をすべきであります。
 このような政策こそ、今日の通貨危機を国民の立場に立って解決する道であります。
 総理並びに大蔵大臣の明確な責任ある答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#16
○内閣総理大臣(田中角榮君) 予算案における税収の見積もり等について、申し上げます。
 変動相場制下のレートの水準、変動相場制の期間等、流動的な要因が多いので、現段階で年度を通じた経済全体に及ぼす影響や、税収を中心とした歳入の見積もり等に及ぼす影響を把握することは困難であり、したがって、このような段階で経済見通しや歳入見積もりを改定するのは適当でないと考えておるのでございます。
 また、変動相場制移行に伴う国内経済面への影響を回避するためにも、四十八年度予算の早期成立をはかり、予算の空白を生じることのないよう、ぜひとも避けなければならないと考えておるのでございます。
 大衆減税、事業主報酬制度等の問題について御発言がございましたが、四十八年度におきましては、特に中小所得者の負担軽減をはかるため、課税最低限の引き上げと、特に給与所得者に重点を置いた給与所得控除の拡充をはかったことは、先ほども申し上げたとおりでございます。初年度三千百五十億円、平年度三千七百億円に及ぶ所得税減税を行なうことにいたしたわけでございます。このような結果、先ほども申し上げましたように、アメリカを除き、英国、西ドイツ、フランスよりも、夫婦子二人標準世帯の課税最低限は上がったわけでございます。
 なお、事業主報酬制度につきましては、その実態が同族法人に類似をしている個人企業につきまして、法人と類似をした課税方式による道を開き、事業主に報酬の支払いを認めるものでございます。この制度により店と奥との経理区分を明確にし、企業経営の近代化、合理化を推進するという政策目的から、特別措置として創設したものでございまして、その意味からも青色申告に限ることとしたことは、先ほど大蔵大臣から述べたとおりでございます。
 それから、不動産譲渡所得等に対する問題についてお答えをいたします。
 土地譲渡税の税率は、通常の法人税や地方税の上に、さらに二〇%賦課するものでありますので、これは相当な重課であると考えておるのでございます。
 固定資産税について累進税率を導入することについては、個々の財産に対し課税する固定資産税の性格から見て、適当でないと考えられるわけでございます。しかし、法人の投機的な土地取得に対しましては、その抑制をはかる必要があると考えられますので、今回、一定面積以上の土地の取得及び保有に対して、新たに特別土地保有税を課税することといたしておるわけでございます。
 それから、中小企業に対する法人税率を五%くらい引き下げ、大企業に対しては高度累進課税率を適用せよというようなことでございます。
 現在、資本金一億円以下の法人に対する税率は、年三百万円までの所得については二八%となっております。資本金一億円超の法人に対する税率は三六・七五%でございますから、これを比較してみますと、相当大幅に中小企業は軽減をされておることでございます。また、累進課税は、所得や財産が最終的に帰属する自然人に課税を行なう所得税や相続税などにおいて端的に適用できる性格のものでございまして、法人税には本質的になじまないものと考えておるのでございます。
 租税特別措置につきましては、先ほどから申し上げておりますように、合理化をはかっておるわけでございまして、四十八年度にも改正をいたしておりまして、平年度四百億円近い増税をはかっておるわけでございます。
 最後に、大企業の為替差益に対して分離課税等が考えられないかという御説でございますが、為替相場の変動によって生ずる利益としては、外貨建て債務の換算差益、輸入価格の低下による利益など、種々の形態があるわけでございます。これらの利益は、経済的には最終消費者まで還元をはかっていくことが適当であると考えます。為替差益について高率の分離課税を行なうことは適当でないと考えております。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#17
○国務大臣(愛知揆一君) 税収入の見積もり、大衆減税、法人課税、事業主報酬制、土地譲渡税、中小法人特例措置、為替差益、これらの御質問の点につきましては、総理からきわめて詳細にお答え申し上げましたので、私からはつけ加えてお答えすることはございません。(拍手)
  〔国務大臣江崎真澄君登壇〕
#18
○国務大臣(江崎真澄君) 個人の住民税について申し上げます。
 個人の住民税も、所得の軽減をはかる意味から毎年免税点の引き上げを行ないまして、来年度も八十万円から八十六万円、まあ、これを百五十万円ではどうかというお話でありまするが、住民税の性格から申しまして、これは、地方公共団体の一翼を自分もになっておるという責任と自覚を持っていただく意味から課しておる税金の性格上、現在の税率が適当であるというふうに考えております。それだけに、御承知のように、課税率というものが非常に低くなっておるわけでありまするから、御了承を願いたいと思います。
 個人の事業主報酬の問題、事業税の問題、それから土地税制につきましては、総理から詳しく御答弁があったとおりでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(中村梅吉君) 高橋繁君。
  〔高橋繁君登壇〕
#20
○高橋繁君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに大蔵大臣に若干の質問をいたすものであります。
 昭和四十八年度税制改正につきまして、生産第一主義から生活第一主義への転換、税負担の不公平の是正、所得再配分の推進など多くの要請があったにもかかわらず、政府の税制改正案にその実現に対する積極的な姿勢が見られなかったのは、きわめて残念であります。
 まず、口には生活優先を唱えながら、生産優先の税制のパターンを改めようとしない政府の姿勢は、自然増収が二兆五千億円から三兆円も見込まれるにもかかわらず、わずか三千百億円余りの所得税減税をもって大幅減税であると強調していることからも明らかであります。この程度の減税では、健保、国鉄などをはじめとする公共料金の引き上げによる諸物価の高騰で、全くの焼け石に水であり、国民生活はますます苦しくなるのであります。
 「発想の転換」「政治の流れを変える」をキャッチフレーズにいたしまして登場した田中内閣に対して、国民は今度こそはという期待をわずかながら抱いたことは事実であります。しかしながら、当初の気負いとは打って変わって、その決定をした税制改正案は、大幅減税という公約にもかかわらず五千億円、そして三千億円へと縮小され、国民の夢はむざんにも打ち砕かれてしまったのであります。これでは、結局、歴代自民党政権のとってきた路線を踏襲する以外の何ものでもなく、全くの見かけ倒しであります。
 そこで申し上げたいことは、所得税減税についてであります。
 最近の著しい物価高騰の中にあって、国民の重税感はきわめて高く、大幅減税を求める声が非常に強くなっておるのであります。それは、所得税の納税者が、毎年の減税にもかかわらず、昭和四十六年度で三千万人をこえ、過去十年で二倍以上に増加していることからも明らかであります。これは、減税が、実質的に税負担が減るような税制改正を意味するものではなく、一種の取り過ぎの調整でしかないからであります。つまり累進課税によって、所得がふえる以上に税負担がふえるからであって、このような減税という名の増税によって、納税人員が増加を続けてきたのであります。
 しかるに、政府は、今回の税制改正案によって大幅減税したと主張いたしておりますが、自然増収に対する減税割合をとっても、四十一年七〇%、四十二年四八%であったのに対して、今回はわずか一二%と、全くの小規模減税であります。
 さらに、標準四人世帯の課税最低限を昨年より十万円引き上げて百十二万円としたのでありますが、これでは憲法で保障された健康で文化的な最低生活を営むために、あまりにも低過ぎる額であります。それは総理府統計局の調査による四人世帯の標準生計費が約百二十四万円であることからも明らかであります。
 また、標準四人世帯で年間二百万円の収入のある家庭を例にとると、今回の税制改正では一万三千円の減税がされることになります。この場合、収入の七割の百四十万を生活費に使ったとすると、物価上昇による負担増は、物価上昇率を政府見通しの五・五%と低く押えても七万七千円となって、この程度の減税では不十分であることが明らかであります。
 さらに、わが国の法人税負担が欧米諸国に比較して極端に低く、企業の国際競争力を異常に強くし、外貨の累積を招いていることは、衆目の認めるところであります。それは法人税率が低い上に、租税特別措置による種々の恩典が与えられているからであって、来年度こそ法人税率の引き上げが必要であったのであります。
 したがって、税制改正の最大の課題の一つは、給与所得者の大幅減税と法人税負担の強化をはかることなのであります。
 わが党は、所得税の課税最低限について標準四人世帯で百五十万円まで引き上げること、中低所得者中心の累進税率の緩和をはかること、さらに法人税率は、現行の三六・七五%を四〇%まで引き上げることを目途に、当面三八%まで引き上げることを主張しておりますが、政府はその実現に努力されるつもりがあるかどうか、お伺いしたいのであります。
 ここで、住民税は納めているが所得税は納めていない、いわゆる所得税の失格者が昭和四十六年度実績で五百万人いるわけでありますが、この人たちについてもお伺いいたしたいのであります。
 言うまでもなく、この層は年々の課税最低限の引き上げの恩恵に浴さず、かといって生活保護など社会保障を受けられないのであります。しかも、毎年の諸物価の高騰は、上昇分だけ確実に家計を圧迫することになり、容赦なくこの人たちに強力かつ深刻なる影響を与えるのであります。毎年の減税の恩典に浴さず、しかも、物価上昇の影響を最も強く受けるこの層について、少なくとも課税最低限の引き上げに見合う何らかの措置を講ずべきであると思うのでありますが、総理は何らかの具体策を考えておられるでありましょうか。
 さらに一歩進みまして、政府は、社会保障的ないしは所得平準化的な意味を持つ負の所得税、すなわちマイナスの所得税制度について検討するつもりはないかどうか、お伺いしたいのであります。
 たとえば年収百万円の標準家庭を例にとると、四十八年度における課税最低限との差額は十二万円であるから、この五〇%に当たる六万円を逆所得税として支給するとすれば、年収は百六万円となるはずであります。そのような負の所得税、マイナスの所得税制度は、すでに先進諸国でも検討されているが、政府は、その創設によって低所得者を救済するとともに、所得の平準化をはかるつもりはないか、お伺いいたしたいのであります。
 さらに、税負担の不公平の典型であります租税特別措置については、特に大企業優先、資産所得者優遇の措置について、これを直ちに撤廃すべきであります。
 たとえば輸出振興税制の全廃、合理化機械の特別償却など各種償却、準備金制度の改廃、利子・配当所得に対する課税優遇の撤廃などを強力に実施すべきであります。そして、その財源を給与所得者の減税に振り向けるべきであります。
 ここで、事業主報酬制度の問題についてでありますが、これは当然本法の改正とすべきであったにもかかわらず、何ゆえに租税特別措置に含め、また、五年間という時限立法にしたのか、お伺いいたしたいのであります。
 また、この制度の創設によって、法人、事業所得者と給与所得者との税負担の不均衡がますます拡大することになるのであります。この是正のためにも給与所得者の大幅減税が必要であると思うのでありますが、総理の見解をお伺いいたします。
 さらに、地価抑制のために期待された土地税制が、世論に対する糊塗対策に終わってしまったことはきわめて残念であります。その内容は、国民の期待していたものから大幅に後退をしており、また抜け道だらけで、全く実体的効果のないものとなるおそれもあるのであります。
 そこでお伺いしたいことは、まず、土地の譲渡益に対し法人税等が加算されているとはいえ、わずか二〇%の譲渡税では何ら課税効果はなく、むしろ、その課税分が地価に上乗せされるのではないか。また、譲渡税の適用除外の基準があいまいであり、その運用いかんによっては不動産業者の過保護になるおそれがあるのではないか。さらに、適用時期が新法施行後一年後となっているが、それではおそ過ぎるのではないかというととでありますが、以上の点をどう考えるか、お伺いいたしたいのであります。
 特に、わが党は、譲渡益を完全に分離して、八〇%以上の課税をすることを主張しておるのでありますが、総理の御見解をお伺いいたします。
 次に、過日、経済審議会が策定をいたしました経済社会基本計画に関してお伺いしたいのでありますが、福祉の充実強化のための内容が貧弱であるばかりが、その計画が不鮮明であるのに比べて、財源確保のための負担計画だけがきわめて明確にされておるのであります。つまり、社会保障の充実整備が進めば国民の負担は当然増大するとして、税負担は今後五年間で三%程度高まることになっておるのであります。
 言うまでもなく、高福祉高負担の前提には、財政支出の体質改善、国民負担の合理化、公平化が必要であります。しかるに、昭和四十八年度予算を見れば明らかなように、メスを入れるべき当然増経費の膨張を必然化している制度的要因には手を触れようとせず、また、税負担の不公平の典型である租税特別措置の大企業優先の税制構造改革にはほおかぶりをするというように、政府にはその意欲が全く見られないのであります。
 このようにゆがんだ財政支出、矛盾をはらんだ税体系を改めずして、いたずらに高負担の道を指向することは、現状無視もはなはだしく、これはとりもなおさず、大衆課税の強化をはかる以外の何ものでもないのであります。これでは高福祉よりも高負担が先行するものであるといわざるを得ないのであります。四十六年の長期税制答申で、負担率増大を求め、その後に使途を考えるのではなく、まず具体的な政府支出計画を示すべきであると、安易な高福祉高負担論を戒めておりますが、何よりも優先しなければならないことは税負担の公平化であると思うのであります。
 そこで、総理にお伺いしたいことは、この三%税負担増をどこに求めようとするのか。法人税負担の増徴か、それともきわめて強い反対意見のある付加価値税の創設にいよいよ着手されるつもりなのか、あるいは国債発行にたよるのか、今後の税制改正の方向とあわせてお伺いしたいのであります。
 特に、先月末の再開国会を前にしての記者会見で、田中総理は、所得税中心となっている現行税制を改めて、間接税に対する考え方を見直していかねばならないとの発言をしておりますが、これは具体的に何を言っているのか、その内容について述べていただきたいと思うのであります。
 以上、質問を終わりますが、明快な答弁を要求いたします。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#21
○内閣総理大臣(田中角榮君) 課税最低限を百五十万円にできないか、累進税率の緩和をはかるべきだと思うがというような御発言に対しては、先ほどからもお答えをいたしておりますように、政府は引き続いて中小所得者の負担軽減をはかってまいったわけでございます。四十八年度におきましても、間々申し上げておりますとおり、初年度三千百五十億円、平年度三千七百億円に及ぶ所得税の減税を行なっておるわけでございます。しかも、この結果、標準世帯、夫婦子二人の給与所得者の場合の課税最低限は、アメリカを除く、英国とか西ドイツとかフランスの例を上回るところまで上がっておることも事実でございます。
 法人税につきましては、法人の税負担を高める道は税率の引き上げだけではなく、先ほども申し上げましたように、課税所得の拡大もその一つの方法であると考えておるのでございます。四十八年度の改正におきましては、産業関連の租税特別措置の改廃によりまして、平年度四百億円に及ぶ増税措置を講じておるわけでございます。また、固定資産税につきましても、その負担を高める措置が講じられておりまして、この面からも法人の税負担は加重されることになっておるわけでございます。
 土地税制について申し上げますが、今回の土地税制は、法人の土地譲渡益重課措置と特別土地保有税の組み合わせによって、法人による投機的土地取得を相当程度抑制することを期待しておるものでございます。ただ、地価対策は、もとより税制のみで解決し得るものではないのでございまして、土地の利用規制その他各般の土地対策を総合的に実施をすることによりまして、地価対策の実効を期してまいらなければならないわけでございます。
 また、経済社会基本計画による三%の税負担の増というものについての御発言でございますが、国民福祉の充実をはかるためには、その裏づけとなる財源を確保する必要があることは申すまでもないのでございます。このため、経済社会基本計画には、国民所得に対する税及び税外負担の比率が計画期間中おおむね三%程度高まらざるを得ないと指摘をしておるのは御承知のとおりでございます。具体的な負担のあり方につきましては、今後税制調査会にはかり、勉強してまいりますが、どちらかといえば間接税にウエートを置いて考えるべきではないかと考えるのでございますが、それは現時点における考えでございまして、慎重に対処してまいりたいと考えます。
 また、一月下旬の記者会見で、間接税の見直しということは何を具体的にさしておるのかということでございますが、それは福祉社会を建設するため必要な財源の調達ということで、間接税が税体系において適切な地位を維持するように検討を重ねていってはどうかということと、もう一つは、御承知のシャウプ税制以来、日本の税体系は直接税中心主義でございます。財源を確保するには都合のいい税制ではございますが、しかし、間接税とのバランスに対しては、各国の例にも見るとおり、まだ十分検討を必要とする状態にあることは事実だと思います。記者会見での発言は、付加価値税のような一般消費税の問題をさして述べたのではなく、間接税のあり方、直接税と間接税とのバランスをどうしなければならない、より合理的な税制のあり方を申したものでございます。
 なお、残余の問題に対しては、関係閣僚からお答えをいたします。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#22
○国務大臣(愛知揆一君) 御質問の一つに、負の所得税、マイナスの所得税ということについてどう考えるかというお尋ねがございました。これは課税最低限以下の階層の方々で、しかし生活保護世帯でもない、そういう方々に対して、国が何らかの給付を与えることが適当ではないか、こういう御意見ではなかろうかと思いますが、政府としては、ただいまさようなことは考えておりません。
 なお、負の所得税というのは、英米などで行なわれておりますネガティブ・インカム・タックスの議論のことにお触れになったのかと思いますけれども、これは、アメリカにおきましては、現在の社会保障制度の改革案にからんでおる議論でございますし、イギリスにおきましては、きわめて源泉徴収制度が複雑になっておりますので、それを簡素化するという特殊な要因から、こういう議論が出てきているのではないかと想像されるわけでございます。
 それから、事業主報酬制度を恒久的制度にすべきではないかという御意見でございますが、政府の御提案申し上げておりますのは、恒久的なものではございません。先ほども御議論がございましたように、いろいろの観点から、なおかなりな時間をかけて将来検討する要素があるのではなかろうか、こう考えておりますので、とりあえず時限立法として考えた次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
#23
○国務大臣(小坂善太郎君) 経済社会基本計画の中で税の負担率を三%上げるという問題につきましては、総理からすでに十分御答弁があったところでありまするが、一言だけ申し上げますると、租税負担率の引き上げというものは、それ自身が目的ではありませんで、国民の納得の得られた財政支出とうらはらの問題として考えるべきであると思います。今後国民福祉の充実のために財政支出の一そうの充実が必要でありまして、それに裏づけとして、計画期間中に租税負担率が三%程度漸増するということは、これはやむを得ないことだと考えますし、また、国民の負担能力や諸外国との負担の比較から見ましても、それは十分可能であると思います。
 なお、具体的には税制調査会にはかりまして、毎年慎重にその計画を実行していくわけでございます。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
#24
○議長(中村梅吉君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第一 昭和四十七年度衆議院予備金支出の件(承諾を求めるの件)
#25
○議長(中村梅吉君) 日程第一、昭和四十七年度衆議院予備金支出の件を議題といたします。
    ―――――――――――――
#26
○議長(中村梅吉君) 議院運営委員長の報告を求めます。議院運営委員会理事中川一郎君。
  〔中川一郎君登壇〕
#27
○中川一郎君 ただいま議題となりました昭和四十七年度衆議院予備金支出の件について御報告申し上げます。
 今回承諾をお願いいたしますのは、昭和四十六年十二月二十九日から昭和四十七年十二月二十一日までの間に、本院で支出した予備金五百六十五万二千円であります。その所属年度は全額昭和四十七年度分でありまして、使途は、すべて応召帰郷旅費の既定予算の不足を補うための議員旅費であります。
 これの支出につきましては、議院運営委員会の承認を経たものでありますから、御承諾をお願いいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○議長(中村梅吉君) 採決いたします。
 本件は承諾を与えるに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#29
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、本件は承諾を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#30
○議長(中村梅吉君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時五十五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  田中 角榮君
        大 蔵 大 臣 愛知 揆一君
        厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君
        自 治 大 臣 江崎 真澄君
        国 務 大 臣 小坂善太郎君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 吉國 一郎君
        大蔵省主税局長 高木 文雄君
        大蔵省理財局長 橋口  收君
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ソース: 国立国会図書館
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