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1972/04/06 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 本会議 第23号
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1972/04/06 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 本会議 第23号

#1
第071回国会 本会議 第23号
昭和四十八年四月六日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十九号
  昭和四十八年四月六日
   午後二時開議
 一 厚生年金保険法等の一部を改正する法律案
   (内閣提出)並びに国民年金法、厚生年金
   保険法等の一部を改正する法律案(八木一
   男君外十六名提出)及び国民年金等の積立
   金の運用に関する法律案(八木一男君外十
   六名提出)の趣旨説明
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
  閣提出、参議院回付)
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
  参議院回付)
 厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内
  閣提出)並びに国民年金法、厚生年金保険法
  等の一部を改正する法律案(八木一男君外十
  六名提出)及び国民年金等の積立金の運用に
  関する法律案(八木一男君外十六名提出)の
  趣旨説明及び質疑
   午後二時四分開議
#2
○議長(中村梅吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(中村梅吉君) 議員請暇の件につきおはかりいたします。
 田澤吉郎君から、海外旅行のため、四月十二日から二十七日まで十六日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
#5
○議長(中村梅吉君) おはかりいたします。
 参議院から、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、及び所得税法の一部を改正する法律案が回付されました。この際、議事日程に追加して、右両回付案を順次議題とするに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 まず、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。
#7
○議長(中村梅吉君) 採決いたします。
 本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
    ―――――――――――――
#9
○議長(中村梅吉君) 次に、所得税法の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。
#10
○議長(中村梅吉君) 採決いたします。
 本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#11
○議長(中村梅吉君) 起立多数。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
     ――――◇―――――
 厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに国民年金法、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(八木一男君外十六名提出)及び国民年金等の積立金の運用に関する法律案(八木一男君外十六名提出)の趣旨説明
#12
○議長(中村梅吉君) 内閣提出、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、並びに、八木一男君外十六名提出、国民年金法、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、及び国民年金等の積立金の運用に関する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。厚生大臣齋藤邦吉君。
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
#13
○国務大臣(齋藤邦吉君) 厚生年金保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 わが国は、急速なテンポで高齢化社会を迎えようとしておるのでありますが、他面、核家族化の進行や扶養意識の変化などにより、わが国の老人を取り巻く環境は著しく変貌しつつあります。このため、老人問題をめぐる国民の関心はかつてない高まりを見せており、中でも、老後保障の柱となる年金制度に寄せる国民各層の期待は、きわめて大きいものがあります。
 さらに、経済社会の発展の成果を各世代を通じて均てんさせる上からも、老人が安心して老後を送ることができる年金制度の確立をはかることは、いまや内政上最優先の課題の一つと申すべきであります。
 今回の改正法案は、このような趣旨にかんがみ、わが国年金制度の大宗をなす厚生年金及び国民年金を中心に、老後生活のささえとなる年金の実現を目ざして、年金給付の水準を大幅に引き上げるとともに、年金額のスライド制を導入する等各年金制度の改善充実をはかろうとするものであります。
 まず、年金額の水準につきましては、厚生年金について、最近の被保険者の平均標準報酬の六〇%程度を確保することを目途に、改正後、新たに老齢年金を受ける場合の標準的な年金額をおおむね月額五万円に引き上げるものであります。
 国民年金につきましても、二十五年加入の場合の年金額を附加年金を含めて夫婦月額五万円の水準に引き上げることといたしております。
 また、多年の懸案であったスライド制につきましては、年金額の価値維持のため、新たに物価変動に応ずる自動的なスライド制を導入することとし、あわせて、財政再計算期に、従来どおり国民の生活水準その他の諸事情を勘案して、年金額の改定の措置を講ずることにより、将来にわたり適正な年金額の水準の確保をはかることといたしております。
 以下、改正案のおもな内容につきまして御説明申し上げます。
 まず、厚生年金保険法の一部改正について申し上げます。
 第一に、年金額の水準につきましては、定額部分を大幅に引き上げるとともに、報酬比例部分について、過去の期間の標準報酬を最近の標準報酬の水準をもとにして再評価することとし、その飛躍的な改善をはかることといたしております。
 その他、妻の加給年金の額並びに障害年金及び遺族年金の最低保障額の引き上げ、在職者に対する老齢年金の支給範囲の拡大等の改善を行なうこととしております。
 第二に、年金額の自動的改定措置、いわゆるスライド制の導入についてでありますが、年度平均の消費者物価指数が五%をこえて変動した場合には、その変動した比率を基準として、政令で定めるところにより、年金額を改定することとしております。
 第三に、標準報酬の改定についてでありますが、最近における賃金の実態に即して二万円から二十万円までの三十五等級に改めることとしております。
 第四に、保険料率の改定についてであります。給付水準の引き上げに伴ってその改定を行なうこととし、今後受給者が急激に増加することが見込まれているため、将来にわたる保険料負担のなだらかな増加を期するとともに、長期的な財政の健全性を確保するという見地に立って、保険料率を千分の十五引き上げることとし、以後段階的に引き上げをはかっていくこととしております。
 なお、以上の改正は昭和四十八年十一月から施行することとし、現に支給されておる年金につきましても、同様に年金額の引き上げをはかることとしております。
 次に、船員保険法の一部改正についてでありますが、厚生年金の改正に準じて、年金額の大幅な引き上げ、スライド制の導入その他所要の改正を行なうこととしております。
 次に、国民年金法の一部改正について申し上げます。
 第一に、拠出年金の額についてでありますが、その水準の大幅な引き上げをはかることとし、現実に支給されております十年年金については、現行の月額五千円を月額一万二千五百円に引き上げ、また、五年年金については、現行の月額二千五百円を月額八千円に引き上げることとしております。
 その他、附加年金の額を引き上げ、障害年金の最低保障額及び母子年金等の額の改善を行なうこととしております。
 第二に、年金額の自動的改定措置についてでありますが、拠出年金について、厚生年金と同様のスライド制を導入することといたしております。
 第三に、保険料及び国庫負担についてであります。今回の給付水準の引き上げに伴う保険料の急激な増加を避け、さらに将来にわたる財政の健全性を確保する見地から、保険料は月額九百円とし、昭和五十年一月以後段階的に引き上げをはかっていくこととしております。同時に、十年年金、五年年金等の経過的な老齢年金について、国庫負担割合の引き上げをはかることとしております。
 第四に、高齢者の任意加入の再開についてでありますが、任意加入の対象とされた年齢層で加入しなかった人を対象に、申し出により、再び五年年金に加入できる道を開くこととしております。
 なお、以上の改正による年金額の引き上げは、昭和四十九年一月から実施することとしております。
 次に、福祉年金の改善について申し上げます。
 各福祉年金の額につきまして、昭和四十八年十月から、老齢福祉年金を月額五千円に、障害福祉年金を月額七千五百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金を月額六千五百円にそれぞれ引き上げることとしておるものであります。
 最後に、年金福祉事業団法の一部改正について申し上げます。
 年金福祉事業団が設置運営する施設として、保養のための総合施設を明示いたしますとともに、新たに、被保険者のための住宅資金の貸し付けを行なわせることといたしております。
 以上をもって改正法律案の趣旨の説明を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(中村梅吉君) 提出者八木一男君。
  〔八木一男君登壇〕
#15
○八木一男君 私は、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表して、ただいま議題に相なりました国民年金法、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案並びに国民年金等の積立金の運用に関する法律案について、提案の趣旨並びに内容の大綱について御説明申し上げます。(拍手)
 社会保障制度の確立は、声ある者、声なき者を問わず、全国民の切実な願いであります。そしてまた、このことは、憲法がその第二十五条第二項において、国に対して明確に責務を課しているところであります。にもかかわらず、政府がGNP世界第三位、成長率世界第一位と呼号するわが日本において、その社会保障制度が西欧諸国よりはるかに低位にあることは、低賃金、高物価、公害と並んで、憲法を軽視をし、大資本に奉仕する自民党政権の冷酷きわまりない政治の代表的なものというべきであります。(拍手)
 ことに、医療保障とともに社会保障制度の重要な柱である年金制度の劣悪な現状は、全く国民を無視したものといわなくてはなりません。
 ウナギ登りの物価上昇で、大部分の国民の生活が異常に圧迫されておりますが、その中でも障害者や母子家庭等は、全く苦しい生活にあえぎ、多くの老人はきわめて暗い生活を送っております。戦前からの老後のための貯蓄は、戦後のインフレで完全に消え去り、さらに家族制度が音をたてて崩壊をしております。
 そうした現状の中で、明治、大正、昭和と続いた、圧制と苦難の中を生き抜いてきたわれわれの先輩に対するいまの政治は、きわめて冷酷であり、怠慢であります。
 住宅、医療等々、老人等のために対処すべきことは多々ありますが、年金制度の確立こそがその中心であることは、何人も否定できないところであります。しかし、その現状は全くお話になりません。
 ちなみに、昭和四十七年度の六十歳以上の人口、約一千二百万人でありますが、そのうち老齢年金の受給者は、すべての制度を合わせて約六百五十三万、そのほぼ半数にしかすぎません。しかもその六割が、年金という名に値しないあめ玉年金、すなわち、月三千三百円の老齢福祉年金の受給者であります。厚生年金の受給者ですら、平均月一万六千五百円、老人の暗い生活の嘆きがこの数字で裏書きされているということができましょう。
 われわれは昭和三十三年、政府が全く放置していた国民皆年金を実現するため、抜本的国民年金法案を国会に提出したことをはじめとして、年金制度確立のための先駆的役割りを果たすために、努力を続けてまいったわけでございますが、老人等の生活の現状と人口老齢化の進行を重視をし、昨年総選挙での公約を果たすべく、四党一致して、ここに本二法案を提出した次第でございます。(拍手)
 まず、国民年金法、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法案は、国民年金法、厚生年金保険法、船員保険法並びに年金福祉事業団法の一部を改正するものであります。先ほど提案説明のありました、政府提案の厚生年金保険法等の一部を改正する法律案と、主要点において対比をしながら御説明を申し上げたいと存じます。
 本法案の目的とするものは、
 まず第一に、老人、障害者、遺族の生活を保障するに足る年金制度を、いわゆる月六万円年金として確立しようとするものであります。これは厚生年金では被保険者期間二十年、国民年金では二十五年の人を計算の中心点として六万円年金と称するものであります。
 これに対し、政府案は、厚生年金では被保険者期間を二十七年に引き延ばし、上げ底として五万円年金と称し、国民年金では付加部分を加えて夫婦五万円年金と称するものであります。
 これを本案と正確に比較すれば、厚年において約三万七千円、国年において夫婦四万円としか称し得ない内容でございます。野党四党案が、誇大宣伝の政府案とは違い、真に充実をした内容であることを明確にいたしておきたいと存じます。(拍手)
 第二に、年金の最低保障額の確立と、それに見合った福祉年金等の改善であります。
 厚生年金、船員保険中、老齢年金の最低保障額が、妻の加給を入れて現行法で月額一万二千二百円、政府案で二万四千四百円であるのに対し、月四万三千円とし、それに見合い、老齢福祉年金について現行法月額三千三百円、政府案五千円を、一躍月二万円、すなわち夫婦四万円とし、さらにこれを上回り、二十五年年金額に近い、五年年金夫婦四万六千円、十年年金夫婦五万一千円を実現しようとするものであります。
 さらに、現行法では月八千八百円、政府案では一万八千四百円であるのに対し、月額三万三千円を最低保障額とする障害及び遺族関係の年金並びにこれに準じた各種福祉年金額の飛躍的な引き上げをはかろうとするものであります。(拍手)これこそ、「いますぐ生活できる年金を」と叫ぶ国民の要望にこたえる道であると確信をいたす次第であります。(拍手)
 第三に、年金の支給対象を大幅に拡大をし、年金を必要とする全国民に制度を及ぼし、かつまた全労働者に被用者年金を適用しようとすることであります。
 すなわち、国民年金においては、六十五歳からの老齢福祉年金の適用、二級障害福祉年金制度の創設、福祉年金の扶養義務者並びに配偶者の所得制限の撤廃であり、国民年金保険料免除者に対する年金の大幅増額なども同じ趣旨の改正であります。
 厚生年金においては、五人未満雇用事業所の労働者への強制適用、日雇い労働者に対する厚生年金適用促進、在職老齢年金制度の拡大及び改善、五十五歳以上退職者の繰り上げ減額年金制度の創設、船員保険も含めて掛け捨て及び脱退一時金受給者の年金受給権の確立の推進であり、各制度を通ずるものとしては、遺族年金、障害年金の通算措置の促進であります。
 これに対し、政府案では、福祉年金の所得制限、在職老齢年金についてごくわずかの改善を行なおうとするのみであり、その他の多くの事項については、一切取り上げられていない点を明らかにいたしておきたいと存じます。(拍手)
 以上の第二、第三が、いわゆる谷間問題の解決等、社会保障の理念に従い、賦課方式の考え方に基づき、多くの国民のため、年金制度を質的に改革しようとする本法案の特徴であり、社会保険主義の弊を改めようとせず、日陰にいる人々にきわめて冷たい政府改正案とは全く考え方を変えた抜本的な改正案であることを明確にいたしておきたいと存じます。(拍手)
 第四に、賃金自動スライド制を実施することであります。
 本案は、厚生年金、船員保険はもとより、国民年金にも、ことに各福祉年金を含め、賃金自動スライド制をとることにいたしております。
 自動スライド制が年金制度に欠くことのできないことは、もはや申すまでもありません。しかし、政府案のように物価スライドでは、現在の苦しい国民大衆の生活水準、その中でも、つつましい年金生活者の生活水準を維持するだけにとどまるものでありまして、私たちは、活躍中の青年、壮年と同様に、先輩の生活が豊かになるよう、賃金スライド制が絶対に必要であると確信して、このことに踏み切ったのでございます。(拍手)
 ちなみに、昭和四十七年度に、政府の推計では、消費者物価上昇率は五・七%、賃金上昇率は一五%と推定され、賃金自動スライドのほうが年金受給者の生活保障にきわめて有効であることをつけ加えておきたいと存じます。
 第五に、保険料の据え置きと国庫負担の増率であります。
 年金制度の充実を推進するのに際し、国民生活の現状から見て、保険料の値上げは断じて避けなければなりません。
 わずかな年金の充実を計画する際にこれを国民の負担増でまかなおうとする政府案とは違い、本案は、保険料値上げなしに、年金の飛躍的充実改善を実現しようとするものでありまして、国庫負担は、厚生年金の基本部分の二割を三割に、船員保険及び厚生年金第三種の二割五分を三割五分に、国民年金の保険料の五割、すなわち、給付に対する三分の一の国庫負担を保険料と同額、すなわち、給付に対して五割に増率することとし、厚生年金、船員保険の保険料の労使負担区分を、使用主七、労働者三に改めることにしたのであります。
 各年金の保険料を引き上げ、しかも、引き続き一そうの引き上げを計画し、国庫負担増率をしない低福祉高負担の政府案に比し、四党案は、高福祉低負担、「社会保障充実は、国と資本家の負担で」の国民に対する公約を果たすものでございます。(拍手)
 第六に、年金財政を現行の積み立て方式より賦課方式に転換することでございます。
 政府は、これに対して、後代の負担との均衡をはかるべきであるとの理由のもとに積み立て方式を主張しております。しかし、われわれは、高物価、低収入で保険料負担が苦しい現状と、物価が安定し、十分な収入が保障され、年金のための負担に痛痒を感じない将来あるべき状態とを考慮したときに、政府のように形式的な均衡論はとるべきではなく、実質的な均衡論こそ重視さるべきであると確信をいたします。(拍手)
 ことに、政府の積み立て方式論の真の意味は、高い保険料を吸い上げ、ばく大な積み立て金を大資本の設備投資や産業基盤をつくるために利用しようとするものであり、目的と手段を混同、いな逆転をさせ、インフレによって国民の収奪をしようとするものであり、その意図は断じて紛砕されなければならないと信じます。(拍手)
 積み立て金制度を継続しようとすれば、たとえ政府が言うごとく、その修正度を増大し、さらにわれわれが主張するように、国庫負担の増率及び労使負担区分の変更を行なっても、国民年金の被保険者及び厚生年金、船員保険の労働者の近い将来の負担は、耐えがたいものになることは必至であります。したがって、われわれはこの際、賦課方式に向かって踏み切り、現在並びに近い将来の国民の負担の増大を避け、年金制度の飛躍的充実をはかることにいたしたのでございます。大資本の立場に立った俗論を排し、深い国民的視野に立って、断固として賦課方式に踏み切ったことを明確にいたしておきたいと存じます。(拍手)
 第七に、本案は、国民年金と厚生年金、船員保険の各制度間の均衡をはかる考え方のもとに構成されたものであり、さらに、すべての年金制度充実の過程において、他の被用者年金制度と早急に肩を並べるようにする考え方のもとにつくられたものであることを明らかにいたしておきたいと存じます。
 次に、本案の具体的内容を要約して御説明を申し上げます。
 まず、国民年金法の改正についてであります。
 その第一は、年金額の引き上げ及び支給範囲の拡大であります。
 第一点は、老齢年金の引き上げでありまして、夫婦で月額六万円の年金を実現しようとするものであります。このために、老齢年金の額は、現在、保険料納入済み期間一月につき三百二十円で計算しておりますものを、千二百円に改め、加入期間が二十五年の場合、現行法では月額八千円、政府案では二万円であるのに対し、これを月三万円、すなわち、夫婦月六万円に引き上げることにいたしました。
 また、ただいま支給が行なわれております経過的年金の額につきましては、格段の配慮を払うこととし、十年年金については、現行法の月額五千円、政府案では一万二千五百円を、月二万五千五百円、すなわち、夫婦月五万一千円に引き上げ、近く支給が開始される五年年金につきましても、現行法の月額一人二千五百円、政府案では八千円を、月二万三千円、すなわち、夫婦月四万六千円に引き上げることにいたしだのでございます。(拍手)
 この際、保険料免除期間の取り扱いを改めることに踏み切りました。
 心身障害者、生活保護世帯など、保険料納付を免除された人たちこそ、特に年金を必要とするものでありまして、これらの人たちの年金額が他の人に比較してはるかに少ないことは、現行制度の大きな欠陥であります。したがって、現行の保険料免除期間は、年金額の計算上、保険料納付期間の三分の一と評価されておりますが、これを四分の三と評価し、日陰の人たちの年金を大幅に引き上げることにいたしたのでございます。(拍手)
 第二点として、老齢福祉年金につきましても飛躍的な改善を行なうこととし、いわゆる谷間問題を解決するために、その支給開始時期を現在の七十歳から六十五歳に引き下げるとともに、その額を、あめ玉年金、お小づかい年金としかいえない現行の月額三千三百円、政府案五千円に対し、生活保障年金を実現するために飛躍的に引き上げ、月二万円、夫婦月四万円にすることにいたしました。(拍手)ただ、七十歳未満の人につきましては、施行日から一年間は月一万円、その後一年間は月一万五千円にとどめ、三年目から月二万円とすることにいたしております。
 第三点は、質的に見て最も所得保障の必要の度の多い障害者のための障害年金の改善でありまして、その額を、老齢年金の改善に準じて引き上げるとともに、その最低保障額を、障害の程度が二級の者で、現行法の月額八千八百円、政府案一万八千四百円に対し、大幅に引き上げ、月額三万三千円にすることにいたしました。(拍手)
 第四点は、障害福祉年金の支給範囲の拡大と年金額の増額でありまして、この点は、現在拠出制障害年金制度から除外されている障害者のために、特に欠くことのできない改正点であります。すなわち、新たに、障害の程度が二級の者にも支給することとし、その額は、一級にあっては、現行法の月額五千円、政府案七千五百円に対し、飛躍的に引き上げ、月三万三千円とすることにし、二級にあっては、月二万四千七百五十円とすることにいたしたのであります。(拍手)
 第五点は、母子年金、準母子年金について、現行法の月額八千四百円、政府案一万八千四百円に対し、月三万三千円に引き上げることといたし、また、母子福祉年金、準母子福祉年金の額を、現行の月額四千三百円、政府案六千五百円に対し、月二万四千七百五十円に引き上げるとともに、子や孫が二人以上ある場合に支給される加給金の額を、一人につき月額千円に引き上げることといたしました。
 第六点は、扶養義務者並びに配偶者の所得による福祉年金の支給制限は、一切これを撤廃することにいたしたのでございます。(拍手)
 その第二は、年金額の賃金自動スライドであります。
 第三は、年金の財政方式でありまして、現行の財政方式はいわゆる積み立て方式によることとされておりますが、今後は、賦課方式を原則として年金財政の運営に当たっていくべきことといたしております。
 第四は、国庫負担の増額であります。現行の保険料に対して二分の一の国庫負担を、保険料と同額とするものであり、これは、給付に対して三分の一の国庫負担が二分の一になることは、各位の御理解のとおりであります。
 その他、今回の給付改善に伴う支給増の過半を国庫負担とすることといたし、また、インフレ等に伴う整理資源について、別途国庫負担をできることといたしたものであります。
 第五は、既裁定年金の扱いでありますが、改正後の規定に準じて大幅な年金額の引き上げが行なわれることになっております。
 次に、厚生年金保険法の改正について申し上げます。
 その第一は、年金額の引き上げ及び支給要件の緩和であります。
 第一点は、老齢年金の引き上げでありまして、これは本年十一月新たに老齢年金を受けることとなる者に、加入期間二十年で、妻の加給を加え、月額平均六万一千円の年金を支給しようとするものであります。
 そのために、まず基本年金額の定額部分の算定基礎額四百六十円を千六百五十円に引き上げ、報酬比例部分につきまして、その乗率を、現在の千分の十を千分の十五に引き上げるとともに、平均標準報酬月額を計算する場合において、過去の低い標準報酬月額を現在の水準に合うよう再評価することにいたしました。
 また、加給年金につきましても、妻については月額四千円に、子については千五百円に引き上げることにいたしたのであります。
 第二点は、老齢年金及び通算老齢年金の在職支給の要件の緩和であります。
 現在六十五歳までの在職支給は、標準報酬月額が一万八千円以下の者になっておりますが、これを六万円の者まで認めることとし、その支給額は、標準報酬等に応じて基本金額の四割ないし八割といたしました。また、六十五歳に達した者にかかわる在職支給は、標準報酬月額が六万円以下の者には全額を支給し、六万四千円以上の者には現行どおり、その八割を支給することといたしました。
 すべての場合加給年金額を加えることはもちろんであります。
 また、在職支給者の年金額については、在職中でも六十五歳に達したときは、その請求により改定することといたしたのであります。
 第三点は、老齢年金を五十五歳から本人の請求により繰り上げ減額支給する制度を新設することにいたしたものであります。
 第四点は、障害者の所得保障を重視し、障害年金の最低保障額を老齢年金の改善に準じて引き上げるとともに、二級の場合で、現行の月額八千八百円、政府案一万八千四百円に対し、大幅に引き上げて月三万三千円とし、障害年金は、受給権者が別表に定める程度の廃疾の状態に該当しなくなった場合でも、三年間は失権させることなく支給を停止することとし、その間に再び廃疾の状態になったとき年金を支給することにいたしました。
 遺族年金の最低保障額も、現行法の月額八千八百円、政府案二万八千四百円に対し、月三万三千円に引き上げることといたしました。
 その二は、年金額の賃金自動スライドであります。
 その三は、標準報酬の下限を二万円、上限を二十万円に改定することであります。
 第四は、財政方式であります。
 国民年金と同様、現行の積み立て方式から賦課方式に移行すべきことといたしております。右の原則にのっとり、保険料率は、現行の率を維持することといたしました。
 また、現在折半負担となっております保険料の負担割合を、労働者三、使用者七の割合に改めることにいたしましたが、当分の間は、従来どおり折半負担を続けることといたしております。
 国庫負担につきましても、現在、一般的に、給付時における二〇%、第三種は二五%の国庫負担がなされておりまするのを、それぞれ三〇%、三五%に増率することとし、さらに、インフレ等に伴う給付改善の結果必要となる整理資源については、別途国庫負担をする道を開くことにいたしました。
 第五は、既裁定年金の扱いでありますが、改正後の規定に準じ大幅な年金額の引き上げが行なわれることといたしております。
 その他、五人未満の事業所の労働者について強制適用に踏み切ることといたしたわけであります。
 次に、船員保険法の改正等について申し上げます。
 船員保険の年金部分につきましては、厚生年金保険法の一部改正に準じて所要の改正を行なうことといたしました。
 さらに、年金福祉事業団法の一部改正について申し上げます。
 その内容は、年金福祉事業団に被保険者に対する住宅資金の貸し付け等の事業を行なわせることとするものであります。
 なお、年金制度につきましては、今回取り上げた事項のほかに困難かつ深刻な問題が山積をしていることは、同僚議員各位のすでに御承知のとおりであります。たとえば、各種公的年金の統合の問題、妻の地位の問題など、非常に大きな問題がありますが、この法律案は、緊急に措置されなければならない重要事項として三つの事項を提示し、政府にすみやかに実現する責務を課するものであります。
 その一つは、日雇い労働者のための厚生年金加入の実現であります。
 第二は、かつて厚生年金等の被保険者であった者をできる限り年金給付に結びつけるための、いわゆる掛け捨て並びに脱退一時金受給者の救済措置であります。
 その第三は、各種公的年金における遺族年金及び障害年金の通算措置を講ずることであります。
 終わりに、この法律の施行は、国民年金については昭和四十八年十月一日、厚生年金及び船員保険については同年十一月からであります。
 次いで、国民年金等の積立金の運用に関する法律案について申し上げます。
 現在、国民年金、厚生年金保険、船員保険の特別会計の積立金にあっては、その大部分が資金運用部に預託され、直接間接に大資本の利益のために用いられ、被保険者のために用いられる資金は、増加資金の四分の一程度に限られているわけでありまして、全く不当な運用であります。(拍手)これは、この運用に関し被保険者代表の意思を表示する制度がなく、また運用の主体が大蔵省に握られていることに基因をいたしております。
 元来、積立金というものは、老齢または障害の場合被保険者にいくものであり、死亡の場合遺族に支給されるものであります。当然、その全部が被保険者のものと考えることが至当であり、たとえ国または資本家がその中の一部の金額を負担していたとしても、積立金となったときに被保険者のものとなり、彼らには絶対に戻らないものでありまして、これに対して介入する権利は断じて認めるべきではございません。(拍手)
 こうした明確な立場に立ち、四党は、積立金の運用は被保険者の意思によって決定され、被保険者のためになされるべきものであるという見地から、本法案を提出いたしたわけであります。(拍手)
 本案の主要な内容は、国民年金等積立金審議会を設置し、その構成は被保険者代表が十名、学識経験者が五名、政府側三名とし、被保険者の意思が完全に反映できるようにいたしたことであります。
 この審議会の決定に基づき、厚生大臣が積立金を福祉資金と一般資金に分かち、福祉資金は審議会の議にはかりつつ運用することにいたしております。一般資金については急速に減少し、福祉資金が真に被保険者のために役立つ運用がなされることを確信いたしまして、本法案を提出した次第でございます。(拍手)
 以上で、四党提出両案の提案の理由の説明を終わるわけでございますが、いずれも年金制度充実及び整備が内政上の急務であることにかんがみ、国民のためにこれだけは即時、絶対に必要であるとの確信のもとに、四党が一致して提案したものでありまして、さらに四党とも一そうに年金制度向上、確立のために邁進する決意を持つものであることを明らかにいたしておく次第でございます。(拍手)
 衆議院の全同僚議員各位、われわれ四党は、即時生活できる年金をと叫ばれる国民の声、将来を安心できる年金制度を求められる国民の意思を体して、強い決意を込めてこの両案を提出いたしました。
 何とぞ熱心に御審議を賜わり、党派を越えて満場一致可決されることを強く要望いたしまして、提案の趣旨説明を終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに国民年金法、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(八木一男君外十六名提出)及び国民年金等の積立金の運用に関する法律案(八木一男君外十六名提出)の趣旨説明に対する質疑
#16
○議長(中村梅吉君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。川俣健二郎君。
  〔川俣健二郎君登壇〕
#17
○川俣健二郎君 私は、日本社会党を代表し、政府提案の厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、すなわち、政府・自民党の言う五万円年金なるものについて、いかにまがいものであるかを明らかにしながら、内閣総理大臣並びに関係閣僚に対し、所信をただしたいと思います。(拍手)
 まず、この案によれば、厚生年金の受給者は約八十万人で、そのうち五万円に達するのはわずかに八万五千人、一割五分、一体これでどうして五万円年金と言えるのだろうか。世にこれを羊頭狗肉と言う。やはり大道ヤシのしわざかとまず断ぜざるを得ません。
 ここで、もらえる厚生年金が低い人の場合を政府案に従って試算してみると、二十年かけてきた人でも、わずか二万二千円にしかなりません。まだまだ不満足なわが国の生活保護基準ですら、四十八年度で六十歳の一人身の場合、低いほうで二万三千円、高いほうになると、三万二千円となり、政府案による二十年の年金に比べて千円から一万円生活保護のほうが高いレベルにあるという計算になります。つまり政府案によれば、生活保護を受けなければならない年金受給者が一部に発生するという結果になります。年金と生活保護費は併給されないことから、この二万二千円の年金生活者は何と生活保護費からの差額で救済されなければならないという、まことに奇妙な現象が起こるのであります。(拍手)
 年金は人生の有給休暇とさえいわれ、所得保障がその目的であります。ところが、このように生活保護費から保障の一部を借りなければならないような年金制度を所得保障の制度とは、私は断じて容認できないのでございます。(拍手)
 さらに、国民年金に至っては、昭和六十六年度、つまりいまから十八年先でなければ夫婦で五万円にならないという。年金を楽しみにしているお年寄りは、月五千円の老齢福祉年金か、あるいは月一万二千五百円の十年年金しかありません。その対象者実に四百八十万人、平均して月六千二百円程度の給付ということになるわけでございます。
 総理、あやまちを改むるにはばかることなかれ。五万円年金とはまっかなうそ、実は六千円年金だったと頭を下げてもらえませんか。いかがでございましょう。私たちは、昨年の総選挙で一同ともに戦った者として、ここであえて田中総理並びに齋藤厚生大臣にお尋ねしたい。あなた方のつくられたあの五本指のポスターの五万円、これは五千円ということだったのか、それとも十八年先が五万円になるということだったのか。私は怒りを込めて、選挙民にかわって内閣総理大臣並びに齋藤厚生大臣を告発したいと思うのであります。(拍手)田中総理、あなたの御母堂はたいへん偉いお方と聞いております。越後の自然をたよりに、土地を相手に老後農耕にいそしむその御母堂の前で、きっぱり答えられるように、ここで釈明されたいと思うのでございます。
 このように、故意か過失か、うそ偽りの結果になったのはなぜだろうか。それは、第一の理由として、いわゆる最低保障制度を導入しなかったからであります。
 そもそも年金とは、国民年金法第一条に見るとおり「憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、廃疾又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを防止する」とあります。言いかえるならば、国民のだれもが老後、年金で一応の暮らしができるようにするということでありましょう。だとすれば、われわれが長年主張してきました最低保障、すなわち拠出期間にこだわらず、また過去の賃金高を問わず、すべて老後は少なくとも最低生活だけは保障するという、いわゆる最低保障年金制度を打ち立てることが必要不可欠であり、ここで初めて福祉国家と言えるものと私は思います。
 問題の第二は、厚生年金において五万円年金になる人は二十七年間かけてきた人である、ここを基準にしてきたことであります。
 なるほど、二十年以上かけた人の平均期間は二十七年でありましょうが、受給者のすべてが二十年以上ではありません。四十八年度の受給者約八十万人のうち、二十年以上になる人は約四十八万人、残りの三十二万人、すなわち、全体の四割は二十年以下であります。厚生大臣、この三十二万人の人たちを除いて平均期間を出したのは、いかなる理由によるものでありますか。全体の平均期間は、政府当局によれば、おおむね二十年になるのではありませんか。したがって、モデルというならば、二十年の人が五万円になるようにするのが、ものの道理というものではありませんでしょうか。(拍手)どうです、大臣。それとも、五万円を公約した手前上、さがし求めて二十七年を基準にとったのとは違うでございましょうか。
 さらに第三には、過去の報酬の扱い方であります。
 すなわち、年金額の中で報酬比例部分でありますが、過去十五年間に、平均幾らの報酬があったかで積算の基礎となるわけであります。そこで、各種の公務員共済年金の場合は退職前の三年間、公共企業体は退職前一年の平均報酬を基礎としているのに比べて、その五倍に当たる十五年間の平均とはどういうわけか。
 なお、十五年たてば、平均賃金が五倍半になるのではありませんか。これに対して答えるでありましょう。「それは読みかえました」と。しかし、ここですなおに五倍半に読みかえているならば、私は何も問いません。これをかってに修正して三・八倍に押えられているから、その根拠をしつこく質問いたしたいのでございます。
 また、今後、この過去の報酬の読みかえは、年々の賃金上昇にならって、逐年修正すべきと考えますが、政府の方針を承りたいと思います。
 第四に、厚生大臣にお尋ねしたいのは、この高度成長のもとでは、年金額にスライド制の導入は申すまでもありません。だが、しかし、政府案は、賃金スライドを採用せず、物価スライドを採用しようとしているが、その論拠を示してもらいたいと思います。
 御承知のとおり、共済年金の改定の場合は、公務員給与のベースアップ率そのものによるのでありますが、しかるに、厚生大臣、なぜ厚生年金だけを物価スライドでよしとするのか、お尋ねしたいと思います。
 ちなみに、わが国の昭和四十七年度の例をとれば、物価上昇率五・七%に対し、賃金上昇率は一五%であります。先ほど野党四党の共同提案が教えておるように、国民の生活水準を示す端的な指標は賃金であり、政府案の物価スライドでは、せっかくの年金生活者の水準が一般よりも年々低く、次第に離されていくことは自明の理であり、それを政府が容認することになりますが、そのように理解してよいかどうか、お尋ねしたいと思います。(拍手)
 第五の問題は、わが国年金制度は、現在掛け金を出している人口に対する受給者の割合がきわめて低いということであります。国民年金では、受給者は保険料を納めている人のわずか一%、厚生年金でも二・七%、いわゆる未成熟といわれるわけであります。
 ところが、皆さん、厚生年金制度発足以来三十年になります。それで未成熟とは一体なぜだろうか。だれがこんなに未熟児にしてしまったのだろうかと問いたいのであります。(拍手)おそらく次のように答えるでありましょう。「脱退一時金をもらって契約を解除する女子労働者が多過ぎて」などと。しかし、これは何もこの制度だけに見られることではなく、被用者年金一般に見られる実態でありますから、理由にはなりません。
 これについて、私は思います。すなわち、最大の理由は、わが国の年金には、掛け金を払い込まなかった過去の勤務期間を年金受給資格としての年数に通算する制度、すなわち、過去勤務年金制度がないため、法定期間に達しないうち、いわゆるかけ捨てになる人がきわめて多いということだと思います。これでILO条約批准ができると言われますか。はたしてGNP二番目と誇るわが国の年金制度が国際水準に達しておると思われるのか、お尋ねしたいと思います。諸外国でいわれる過去勤務年金制度、バースト・サービス・ペンション、この制度をわが国にも導入する意思がありやどうか、明瞭な答弁を求めたいと思います。
 さらに、政府案の最も許しがたいことは、いわゆる谷間の人たちに対し、何ら配慮のかけらもないということであります。
 たとえば、被用者年金の対象者でない農民、商店、家庭の主婦など、六十七歳から六十九歳の老人は、国民年金の十年年金からも、老齢福祉年金からもはずされており、いわゆる年金制度の谷間に落とされているのであります。一つ年下の六十六歳の人が十年年金を受け取っているのに、隣の年上の人に年金がないなんて、全く血も涙もない冷酷無比な仕打ちをするものだと慨嘆にたえないのであります。(拍手)
 最後に、大蔵大臣にお伺いいたします。すなわち、いま世間で疑りの目で見られている年金積み立て金の運用についてであります。
 政府の運用のしかたは、保険料を払っている国民の側から見ると、疑わないほうがよほどおかしいやり方になっております。そうでしょう。当該年度に積み立てられた分の貸し付け先はある程度明らかにされたとしても、貸した先から返済されたあと、その後どうなっているのか、皆目見当がつかない。また、返済状況さえ明らかにされていないこと。また、たとえば年金積み立て金は大蔵省の資金運用部資金として、郵便貯金などほかの資金と込みにして使われているために、国民は、自分が入っている保険の積み立て金がどうなっているのか、だれしも知ることができません。さらには、国民は、自分たちで積み立てている金の運用に直接タッチすることができない仕組みになっておるのではございませんか。これでは疑惑の目で見られるのも当然だと思います。
 そこで大蔵大臣、あなたは、さきの参議院予算委員会で、わが社会党議員の質問に対し、返済分の運用状況等を隠しているわけではないとか、ほかのものと一元的に集めてこれを運用するほうが国民的にベターであるとか、また年金積み立て金の自主運用の主張を否定して、もちはもち屋にと言われた。
 それならお伺いします。回収金の運用を秘密にしないと言うならば、ここで、過去三十年間の積み立て額と使途など、その全貌を明らかにしていただきましょうか。(拍手)
 二つには、一元的に集めて運用すると言われるが、国民がかけた金の行くえがわからないようにされておいて、国民的にベターとはどういう意味でありますか。
 三つには、野党の共同提案にあるごとく、被保険者を中心とする運用審議会をつくって、明朗で有効な運用をすべきであり、このように国民が自主管理、自主運用を希望しているのに、もちはもち屋にというのはどういう意味なのか。それとも大蔵大臣、八兆円という膨大な金をいますぐ返せと言われても困るということなのか。ここではっきり明言していただきたいと思うのでございます。(拍手)
 わが社会党の田中寿美子議員があなたに迫ったではないか、「シーザーのものはシーザーに返せ」と。これに何と答えられるか、この本会議場ではっきりしていただきたいと思うのでございます。
 皆さん、結局こういうことであります。現在までの積み立て総額は八兆円であります。政府案の保険料値上げが通れば、この一年間に新たに一兆二千億円たまります。そして、この一年間の給付額は、何とたった五千億であります。
 ところが、であります。この八兆円に対する利子が、毎年五千億円以上黙っていてもたまるわけであります。いわば、銀行利子分だけを給付額に回しましょうというわけでございましょう。それとも、この簡単な算術が違うというならば、厚生大臣、田中総理や大蔵大臣の前で、一度それは違うと否定してみてください。
  〔議長退席、副議長着席〕
もうがまんならんたい。哲学もなければ、何ら定見を持たない田中内閣に、社会保障制度の根幹を問いただすこと自体が無理だと思います。しかし、これだけは、以上の点だけは、国民の前に明らかにされたいと思うのでございます。
 最後の提案であります。この年金制度は、この時間に、この瞬間に、単にお年寄りばかりでなく、老人の扶養に当たる国民全体が注目と期待をしておる前向きの法案であるだけに、あらゆる法案に先がけて審議されんことを強く訴えまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#18
○内閣総理大臣(田中角榮君) 川俣健二郎君にお答えをいたします。
 まず第一番目は、五万円年金を受給できるのは受給者の一割五分で、これでどうして五万円年金と言えるかという御趣旨のようでございますが、今回の改正は、厚生年金の標準的な年金額を五万円にしようとするものであります。昭和四十八年度中に新たに老齢年金を受ける二十年以上加入の人について見れば、その三割以上が現実に五万円年金を受けることになるのであります。
 加入期間の長短、保険料拠出の程度のいかんにかかわらず、すべての年金受給者の年金額を五万円とするような年金制度の設計は、きわめて適切を欠くものだと考えるのであります。
 標準的な年金生活者の年金額として、現役の勤労者の収入の六割を確保しようとする今回の年金改善は、国際的に見ても遜色のない年金水準を実現する画期的な改正であると考えておるものであります。(拍手)
 第二は、政府案の国民年金は、夫婦五万円ではなく、六千二百円年金なのかというような御発言でございますが、今回の改正では、国民年金の給付水準についても、厚生年金の大幅な給付水準の引き上げに均衡する改正を行なうことに踏み切ったものであります。すなわち、国民年金の本来の資格期間である二十五年加入の場合の年金水準を、附加年金を含め、夫婦月額五万円に引き上げることといたしたわけでございます。
 御指摘のとおり、この年金の支給が実際に始まるのは、かなり先のことになるため、そのときの価格で五万円年金であるかのように言われておりますが、現在の五万円年金の実質的な価値を今後も維持していこうとするのが、今回改正の趣旨なのであります。このことから考えますれば、国民年金における五万円年金が画期的なものであることは、十分理解いただけると思うのであります。
 第三点は、ILO百二号条約の批准についての御言及でございますが、ILO百二号条約の批准につきましては、基準を満たしていない部門の今後の方向を含め、全体についても将来の見通しを立てた上で、態度をきめることが妥当であると考えます。各国の動向も注視しながら、前向きに検討してまいりたいと思います。
 以上。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#19
○国務大臣(愛知揆一君) 御指摘がございましたように、厚生年金と国民年金の積み立て金は資金運用部に預託されて、郵便貯金等と同じように、他の預託金と総合して運用いたしております。政府の考え方は、国の特別会計の余裕金や積み立て金等を資金運用部に統合いたしまして、財政、金融政策との斉合性を保ちながら、重複なく、効率的に活用して、公共の利益の増進に資するように運用することが最善の方策であると従来から考えておるからでございます。(拍手)
 したがいまして、別勘定とか独立運用とかいうことは、かえっていかがかと考えている次第でございます。
 同時に、年金資金の持つ特殊性は御指摘のとおりでございますから、従来から特段の配慮をしております。すなわち、特に三十六年度からは、政政投融資計画の使途別分類において、特に年金資金等の使途を明らかにしております。
 また、厚生年金、国民年金の預託増加額の三分の一は、いわゆる還元融資に充てることとしておりますことも御承知のとおりでございます。年金福祉事業団の機能を拡充して、新たに被保険者に対する住宅資金貸し付け制度を設けることにいたしておりますのも、その一つでございます。
 昭和四十七年三月末における各種年金積み立て金の残高は九兆五千七百三十五億円となっておりますが、そのうち、資金運用部に預託されております額は、昭和四十八年二月末で七兆九千七億円であります。厚生年金の関係で約六兆二千億円、国民年金関係で約一兆円であります。その他船員保険、国家公務員共済等を合わせてさような数字になるわけでございますが、これらの預託増加額につきましては、先ほど申しました三十六年度以降、各年度の財政投融資計画策定の際に、これを年金資金等といたしまして、特にその使途を明らかにしております。それ以前の分につきましては、特に区分した使途はきめておられなかったものでありますから、数字等については不明確でございます。
 これを四十八年度について見ますると、住宅、生活環境整備、厚生福祉施設、文教施設、中小企業、農林漁業の各分野に八五%を充てることにしておりますことも御承知のとおりでございますが、特に、年金被保険者等の福祉増進に密接に関係しております住宅、生活環境の整備、厚生福祉施設等につきましては、年々増加をいたしまして、四十八年度では六七%ということに相なっております。
 このように、年金積み立て金等の特殊性にかんがみまして、また、国民的な御要望にもこたえまして、御承知の財投関係については、今国会において、国会の御議決の対象とする法律もつくっていただきましたし、また、こうした内容等を明確にいたしまして、十分御趣旨に沿うようにいたしたい。同時に、資金の運用、活用にいたしましては、効率から考えましても、あるいは管理ということから考えましても、大切なお金でございますから、こういう一元的な運用をしたほうが、国家的に私はベターである、かように確信をいたしておる次第でございます。
 なお、大蔵省といたしましては、かくのごとき巨額の資金をお預かりをいたしておりますから、この管理運用をやりたいがために、大切なこの年金制度の運用等について、特に別の意図を持っているというようなことは全く考えておりませんことを明らかにいたしておきます。(拍手)
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
#20
○国務大臣(齋藤邦吉君) まず申し上げておきたいと思いますのは、年金については、御承知のように、わが国は社会保険方式を採用しておるということでございまして、厚生年金、国民年金たるとを問わず、国家公務員、地方公務員、三公社の職員の共済組合におきましても、御承知のように社会保険方式でありますために、一定の基準を設け、加入期間の長短、標準報酬の多寡によって年金額がきまっておるということをまず申し上げたいのであります。したがいまして、すべての年金は加入期間のいかんにかかわらず、標準報酬のいかんにかかわらず、定額で一定にするという制度は、わが国の年金制度においては全然とっていないことを明らかにいたしておきたいと思うのであります。
 そこで、まず厚生年金でございますが、先ほども総理からお話のありましたように、一定の水準、すなわち二十七年という標準的な加入期間を持つ人について、過去の標準報酬を再評価し、八万四千六百円に引き上げ、これによって、加入者の標準報酬の平均のおよそ六〇%、五万円を確保しようとするものであります。
 四十八年度における実際の推定を申し上げますと、四十八年度中に年金を受けまする方は、全国で全受給者八十万人でございます。その八十万人のうち、なるほど五万円以上の受給者はその一割、八万五千人程度でございますが、全受給者の六割、すなわち四十八万人という方は二十年以上の加入者であって、その受ける年金額は四万一千円ないし四万六千円ということでございまして、さらにこの数は、五万円を受ける数は年を追うて増加するのでございまして、全然見せかけなどではないと考えております。(拍手)
 生活保護との関連においてお尋ねがございましたが、生活保護は最低生活を保障する制度でありまして、厚生年金の改正は、加入者の標準報酬の平均の六割を確保しようということでありますので、直接比較することは必ずしも当を得たものではないと考えておりますが、なお、今回の改正によって、加入期間の短いものを含めても、平均年金額は三万六千円ということに引き上げられるのでございます。
 国民年金については、国民年金制度はもともと二十五年加入ということを前提とした制度でありまして、この制度は、創設以来十三年きり経過していないのでありますから、現実的に五万円を受ける者がないということは、制度上当然であるのであります。そこで、今日まですでに開始せられておる……(発言する者あり)開始せられておりまする十年年金の場合においては、十年年金は開始せられておるのでございますから、その分は現行の二・五倍に引き上げまして、夫婦二万五千円に大幅に改善しようとするものであることは御了承願っておきたいと思うのであります。
 それから、厚生年金の平均支給額の問題でございまして、二十七年という標準を二十年にしたらどうだろうかというお尋ね、経過年金受給者を除いたのは何か、こういうお尋ねでございますが、経過年金の受給者は本来の老齢年金ではないのでありまして、この制度は二十年以上を老齢年金加入の資格ときめておるから、これを除きまして計算をいたしたものでございます。
 そこで、かりに加入期間が二十年で六万円程度の年金額の水準を実現するといたしますれば、標準的な姿である加入期間二十七年のときにはどうなるか、そうなりますと年金額は八万三千円という金額になりまして、現在、現役で働き盛りで働いておられる全勤労者の平均賃金は七万円であり、男子勤労者は八万三千円ということになるわけで、働き盛りの、現実に働いておる勤労者の給与と均衡がとれない、かように考えておるわけでございまして、二十七年を採用いたしておる次第でございます。
 それから、さらに、厚生年金につきまして、過去の報酬の取り扱いに問題があるではないかというお尋ねでございました。過去のこの点につきましては、業種や職種によって給与体系がさまざまでございます。厚生年金の場合はそうでございます。特に、退職時の給与が最高であるとは限っておりません。加入期間を通じた標準報酬を用いるのでなければ、全加入者を通じての公平を保つことができないのでございます。この点から単一の給与表で律せられておる公務員などとは違っておるのでございまして、民間勤労者の場合、退職前数年間の報酬を基礎とすることはかえって不利になる場合もあるのでございまして、不適当と考えておる次第でございます。
 なお、こうしてきまりまする厚生年金の受給額は、物価スライドに伴いましてその年金が変わっていくことは当然でございます。再評価の表につきましては、五年ごとの財政再計算期において改定をいたす考えでございます。
 物価スライド制を採用した理由は何かというお尋ねでございまして、これは、御承知のように、年金額の実質価値を維持するために、物価上昇による減価を自動的に埋め合わせる仕組みとして、自動的物価スライド制をとることにいたしたのでございます。賃金スライドにつきましては、従来どおり、財政再計算期に、賃金や生活水準の向上を勘案して改善をはかることといたしておるのであります。
 こういうわけで、自動的に毎年賃金スライド制を実施するということになりますれば、厚生年金、国民年金、一緒に考えまして、被保険者の賃金体系など、所得のあり方がまちまちであり、景気変動の影響を受ける度合いが異なるなどの事情もあり、年齢により賃金上昇率に相当の差異があるなどのことから、賃金スライド制は適当でないと考えておる次第でございます。
 それから、厚生年金が制度発足以来三十年を経過しておるのに未成熟でないかというお尋ねでございました。厚生年金は、なるほど三十年の歴史を有するものの、発足当時の加入者はわずかに三百万人でございました。その後わが国経済の成長、発展に伴い一千万人に達しましたのは昭和三十二年、二千万人に達したのは昭和四十三年であります。したがって、今後においてこのように急増した加入者の老齢年金の支給が始まるのでございます。
 なお、加入期間が短い人については脱退手当金という制度があるのでございまして、かけ捨てという御指摘は当たらないと思います。過去の加入者が三百万人程度であったことからして、かりに御指摘のような過去勤務期間の算入のごとき措置を講じましても、厚生年金の成熟化の上でさほど意味はないものと考えるのでございます。
 なお、年金の谷間についてのお尋ねでございます。十三年前に国民年金制度ができましたときに、当時五十五歳以上の方は、保険料をかけていただくこともなかなか期間的に余裕がないといるので、この方は一応はずしたのでございます。
 その方々に対する問題でございますが、この問題につきましては、私ども何とか解決をしなければならないと考えておるのでございますが、拠出年金の体系で考えるか、無拠出年金その他の体系で考えるか、その方策について十分検討を要することがあるのでございますが、この問題につきましては、この法律案の御審議の段階において、十分結論を出して解決いたしたいと考えておる次第でございます。
 それから、年金積み立て金の問題につきましては、大蔵大臣お述べになりましたとおりでございます。
 なお、最後に、重要な法律案であるから、先に早く審議したらどうかという御意見がございました。このことは、社会労働委員会において決定すべきことではございますが、健康保険法はすでに本会議において趣旨説明も終了いたしておることでございますので、まず健康保険法から御審議を進めていただくようお願いをいたしておきたいと思う次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#21
○副議長(秋田大助君) 石母田達君。
  〔石母田達君登壇〕
#22
○石母田達君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、厚生年金、国民年金等の政府改正案に対し、総理大臣並びに関係閣僚に質問いたします。
 同時に、われわれは、日本社会党、公明党、民社党との四党共同による改正案を支持する立場から質問するものであります。(拍手)
 今日、老人問題はきわめて重大な社会問題、政治問題になっております。現在、六十歳以上の方々はすでに千二百万人をこえております。これは本来喜ぶべきことであります。
 ところが、いま多くの老人は、はたして長生きしてよかったと心から喜び合える状態にあるでしょうか。わが国は、世界で一、二を争うほど老人の自殺が多く、一日平均十八名にもなっているのであります。そのおもな原因が、病気や生活苦からであることは明らかであります。わが国の大多数の老人は、自民党政府の大企業優先の高度成長政策によって、人口の都市集中、高物価と住宅難、核家族化と高年者世帯を増大させ、老後の生活はますます不安定にされているのであります。
 このような状況のもとで、老人問題、とりわけ、そのかなめである年金問題に対してどのような態度をとるか、この問題こそ、生活優先の政治か、大資本優先の政治か、これを判断する分かれ道になっているのであります。(拍手)
 そこで、まず第一にただしたいことは、公的年金制度、ひいては社会保障に対する政府の基本的な考え方についてであります。
 憲法第二十五条は、「すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む權利を有する。」と明記してあります。さらに、国は社会福祉、社会保障の向上及び増進につとめなければならないとして、社会保障に対する国の義務をはっきりと規定しているのであります。老人福祉法第二条も、老人に対する敬愛と健全で安らかな生活の保障をうたっているのであります。
 このように、年金を含め社会保障は、国民の基本的な権利であり、国の責任で実行すべきことであります。ところが、田中総理、あなたは今度の国会で、月五千円の年金でどうして暮らしていけるか、こういう質問に対して、老人そのものの扶養義務者が存在するわけだから、こう言っております。これは、親子の情愛につけ込んで、社会保障の貧困と国の果たすべき責任をごまかそうとするものであり、国際的にも確立された社会保障の基本理念に全く反するものといわざるを得ません。(拍手)
 いま多くのむすこや娘たちが、年取った親を大切にし、一緒に暮らしたいと思っても、住まいは狭く、高物価、低賃金のために、それがますますむずかしくなっています。その結果、孤独な老人世帯がふえております。私は、明治、大正と生き抜き、今日の社会を築いた功労者の生活と健康を保障することは、国政をになう政治家として当然の責務であると考えますが、総理並びに厚生大臣は、この社会保障の基本問題についてどのように考えるか、具体的に明確にお答え願いたいと思うのであります。(拍手)
 第二にお聞きしたいことは、政府案の内容が、はたして老人の生活保障の要求にこたえたものであるかどうかという問題であります。
 年金問題で最も重要な原則の一つは、生活保障の原則であります。先ほどから総理や厚生大臣がいろいろのことを言っておりますけれども、選挙中から、今度の政府案を、お年寄りならだれでも、いますぐにでも五万円もらえるような宣伝をしたのは、まさに田中総理あなたであります。
 しかし、まぼろしの五万円年金ということばが示すように、実際には厚生年金の場合、五万円もらえる人は、八十九万人のうちたった一割、国民年金に至っては、一番早くて二十年先の昭和六十八年であります。総理、これではいま六十歳をこえた人々のうち、何人がこの五万円を受け取ることができると思いますか。あすではおそい、いますぐ、これがお年寄りの切なる願いなのであります。(拍手)
 特に、老齢福祉年金に至っては、三百四十七万人にのぼる老人が、現在わずか月三千三百円を支給されているにすぎません。政府は、これをことしは五千円に、三年後には月一万円にすると言っております。しかし、月五千円や三年後の一万円でどうして暮らしていけるというのでありましょうか。
 さらに政府は、年金の谷間にある六十七歳から六十九歳までの老人百三十万人には一銭の年金をも出そうとしておりません。総理並びに関係大臣、これでもあなたたちは、病と生活の苦しみに耐え、年金の増額をひたすら願っている全国の老人の前で、この政府案が福祉優先であり、社会保障の名に恥じないものであるということを言い切れるかどうか、はっきりとお答え願いたいと思うのであります。(拍手)
 日本共産党・革新共同は、憲法第二十五条の精神に基づきまして、また、生活保障の原則に立って、六十歳以上のすべての老人に、夫婦で最低月六万円の年金を支給することを要求しております。すなわち、厚生年金も国民年金も、六十歳から直ちに夫婦で月最低六万円が保障されるべきであると考えております。老齢福祉年金は六十五歳から支給し、四十八年度は一万円、三年以内に三万円に引き上げなければなりません。百三十万人の年金の谷間にある人々に対しても、直ちに年金を支給すべきであります。
 政府が真に国民生活優先を実行する誠意があるならば、この共産党・革新共同の提案を受け入れるべきであると思いますが、総理並びに厚生大臣の明確な答弁を要求するものであります。(拍手)
 第三にお聞きしたい問題は、年金の財政方式、積み立て方式か賦課方式かについてであります。
 現在、政府が実施している積み立て方式は、保険料を二十年以上も積み立てて、その利子などで年金をまかなう方式であります。これはインフレで積み立て金の値打ちが下がる。それだけではなく、年金額を引き上げようとすれば、必ず被保険者の保険料を大幅に引き上げなければならない仕組みになっているのであります。特に、国際通貨危機が深まり、国内ではインフレと総合商社など大資本の商品投機が荒れ狂い、経済が激動している今日、積み立て方式の不合理はますます明白になっているのであります。
 さらに許しがたいことは、年金のための八兆円をこえる積み立て金が、現在財政投融資として、電力など基幹産業、産業道路、工業用港湾など、大資本のために使われているということであります。先日の参議院予算委員会で、わが党の渡辺議員が明らかにしましたように、年金の積み立て金は、商品投機の張本人である総合商社にさえ回されているのであります。
 財政投融資総額の中に占める年金積み立て金の比率は、昭和三十六年度が一八・四%、昭和四十七年度になりますと二六・四%と、年々増大しているのであります。これは、大資本のために国土を食いものにする日本列島改造計画に、この資金が不可欠の資金とされようとしていることをはっきり示しているのであります。(拍手)
 田中総理並びに大蔵大臣、これは、年金、社会保障の名をかりた大資本のための大衆収奪ではないでしょうか。老後のしあわせのための資金を、全く目的の異なる大資本のために使うことは、明らかに流用というべきではないでしょうか。総理並びに大蔵大臣の明確な答弁を求めるものであります。
 このような大衆収奪の積み立て方式は直ちに廃止し、賦課方式に切りかえるべきであります。四十八年度予算を見ても、厚生年金の歳入見込みは一兆八千五百億円をこえていますが、保険の給付に使われる費用は、三千二百億円にすぎません。それは、積み立て金の利子約四千六百億円より少ないのであります。
 現在、賦課方式に切りかえても、掛け金の値上げなしに年金を大幅に改善できることは、年金財政の収支を見れば一目瞭然であります。値上げなしで年金改善ができるにもかかわらず、なぜ政府は厚生年金の掛け金を千分の六十四から千分の七十九に、国民年金では五百五十円から九百円という大幅値上げを強行しようとするのか。日本共産党・革新共同は、このような不当な値上げには断固として反対するものであります。(拍手)
 政府は、賦課方式の切りかえに反対する口実として、いまはやっていけるかもしれないが、将来老人人口が大幅に増大するので、若い層は負担に耐え切れなくなるなどと宣伝しております。これは、若い人々の負担を口実に、老人と若い人々との世代間の分裂をはかろうとする、きわめて悪賢い宣伝であります。しかし、若い人々の負担増という問題は、政府が高福祉高負担の立場を改め、年金の負担を国と資本家が持つという真の社会保障の原則に従うならば、たちどころに解決する問題なんであります。盛んに政府が強調している国民生活優先を真に実行する勇気と決断力があるならば、せめて掛け金の労使折半の方式を改め、負担割合を労働者三、資本家七にすべきであります。もちろん、中小零細資本家の負担がこれ以上ふえないように配慮することは言うまでもありません。このような思い切った政策こそ、真に経済政策の転換の名に値するものであります。
 これはまた、大企業の社会保障負担や賃金コストが国際的にも特別に低く、ばく大な国際収支の黒字をかかえ、絶えざる円切り上げに悩まされているわが国経済の低福祉構造を改める道でもあります。国民の負担を軽くし、生活できる年金を保障するとともに、絶えざる円切り上げという日本経済の悪循環を断ち切るためにも、政府は、賦課方式への切りかえを断固として実行すべきであります。
 田中総理並びに関係大臣、あなたたちは、これでもなお大資本奉仕と低福祉の積み立て方式に固執し、また、賦課方式に切りかえることを拒否されるのですか。明確な答弁を求めたいと思うのであります。(拍手)
 第四に、今回、政府案に対する対案として先ほど発表になりました共、社、公、民四党共同提案について、政府にお聞きしたいと思います。
 この四党共同提案は、政府案に比べて、老齢福祉年金を大幅に引き上げ、国民年金を夫婦で月五万一千円、厚生年金を平均月六万円にするなど、給付内容を改善するとともに、国と資本家負担の比重をふやし、積み立て方式から賦課方式を目ざすなど、従来の制度を改善する内容を持つものであります。
 政府が多少なりとも国民生活優先を考えるならば、この四党共同提案を受け入れ、いさぎよく政府案を撤回すべきであります。(拍手)総理にその意思があるかどうか、お伺いしたいと思うのであります。
 最後に、私は、当面、今国会においてこの四党共同提案の成立のために奮闘するとともに、日本共産党がこれまで公表し公約してきた抜本的改革案を、広く国民に呼びかけ、その実現のために奮闘するという決意を表明して、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#23
○内閣総理大臣(田中角榮君) 石母田達君の御質問にお答えをいたします。
 まず第一は、政府の福祉政策についてでございますが、社会保障につきましては、昭和四十八年度予算において、年金、老人対策等その充実に特に意を用いたところでありますが、活力ある福祉社会の建設のため、年次計画を立てて、着実にその充実をはかってまいりたいと考えます。
 第二は、賦課方式を採用すべきであるという御主張でございますが、わが国におきましては、今後、人口の急速な老齢化と年金制度の成熟化に伴い、年金受給者が急増することが見込まれておることは、いま御発言にあるとおりでございます。このような状況のもとで、今後二十年、三十年と長期にわたり、急激な負担の増加を避けながら、充実した年金額の支給を確保していくためには、長期的視野に立った財政運営が肝要であり、現行の修正積み立て方式を実情に即した配慮を加えながら維持していくことが適当だと考えておるのであります。
 また、資金運用部に預託をされた年金積み立て金の運用につきましては、住宅、生活環境整備、厚生福祉施設、中小企業等各分野にその大部分、すなわち八五%程度が充てられておりまして、大企業本位に使われているとの批判は全く当たらないのであります。
 それから第三は、厚生年金、国民年金に関する四党提案に対する政府の見解を求められたわけでございますが、御提案のような年金水準の引き上げを、保険料負担の引き上げを行なわずに実現することは、今後の年金制度の健全な運営から見ても無理があり、現在提案しておる政府案が最善のものと考えるのであります。
 以上。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#24
○国務大臣(愛知揆一君) 田中総理からお答えがございましたが、そのとおりでございまして、私は、率直に申しますと、こういうふうに考えるわけでございます。
 年金の積み立て金は、財政投融資計画の使途別分類でも明らかでございますように、四十八年度計画でごらんになれば明らかなのでありますけれども、生活環境や厚生福祉、文教、中小企業等に向けられておるのでありまして、基幹産業とか貿易振興には、この関係からは全然出ておりません。
 ところで、この年金の積み立て金の使用ということと、それから年金制度を積み立て方式か賦課方式かということと結びつけて論議をされることは、いささか筋違いである、私はかように考えるわけでございます。積み立て方式がよろしいと申しますのは、ただいま田中総理からお話がございましたように、日本の現在の人口構成、これは欧米等から比べても、多くを申す必要がないと思いますが、これから老人層が多くなる、受給者層が非常に多くなる。そして、長期的に考えて、年金財政をよくするためにはどうしたらいいかということで、積み立て方式のほうがよろしいというのが政府の見解でございます。その結果、その積み立て金を大切にしながら、その間において運用をやっておるというのが現状でございますから、それとこれとをこんがらがって御議論なさるのは、私はいささか筋違いのところがあるのではなかろうか、かように考えるわけでございます。(拍手)
 私どもが、年金制度というものが末長く、現状に即し、かつ、現在だけを考えれば保険料が少なくて済むかもしれませんが、急激に将来これがふえるようなことがないようにということを考えまして、この制度をとり、かつ、その間に集まる積み立て金を大切に運用している、こういう順序になりますことを、どうか冷静に御理解をお願いいたしたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
#25
○国務大臣(齋藤邦吉君) お答えを申し上げます。
 田中総理からお答えになりました以外の事項についてまずお答えを申し上げますが、政府案の五万円年金はまぼろし年金ではないかというお尋ねでございますが、これはとんでもないことでございます。
 先ほども申し上げましたように、厚生年金五万円年金ということを提案をいたしておるわけでございまして、昭和四十八年度においてどの程度の年金額を現実受けられるかと申しますと、八十万人のうち、その六割を占める二十年以上加入の者が四万一千円ないし四万六千円程度の年金を受けられるのでございまして、その年金額は、五万円以上受けられる方々は、どんどん年を追ってふえてまいるということをはっきり申し上げておきます。
 それから国民年金については、先ほども申し上げましたように、二十五年加入ということが前提でできておる制度でございまして、まだ十三年きりたっておりませんから、五万円をいただく方がないことは明らかであります。しかしながら、制度創設以来すでに十三年を経過いたしておりますので、いわゆる十年年金につきましては、夫婦一万円を二・五倍引き上げて二万五千円にしようというのであります。
 保険料の引き上げの先取りのお話がございましたが、年金制度のような長期にわたる制度の場合には、将来急速に増大する受給者に対する給付費を確保しながら制度の健全なる維持発展をはかるためには、長期的視野に立った財政運営を行なうことが必要である、かように考えておる次第でございます。
 それから、年金の谷間の問題につきましては、先ほどもお答え申し上げましたが、拠出年金の体系で考えるか無拠出年金その他の体系で考えるかなど、その方策について十分な検討を要する事柄でございまして、まだ結論を得ておりませんが、法案審議の段階で何とか結論を出すようにいたしたいと思う次第でございます。
 なお、共産党が、厚生年金法、国民年金法の改正を提案しておるが、これに対してどう思うかというお尋ねがございました。
 御提案の内容は、各年金制度とも、三年以上加入で六十歳から年金を支給し、年金額も十年加入で夫婦月額六万円という水準を実現しようというような案でございますが、問題は、いかにしてこれを実現するかという財政対策には触れることなく、ただ金額を上げればいいということだけでは問題の解決にはならないと考えておるものでございます。
 次に、賦課方式の採用という御意見でございますが、当該年度に必要な給付費用をその年度の保険料でまかなうということになれば、すでに申し上げたとおり、被保険者数に対し年金受給者数の少ない現段階においては、きわめて軽い負担で給付改善を行ない得ることは当然でございましょう。しかしながら、わが国の人口の老齢化が急速に強まることに伴い、年金受給者が今後急激に増加する傾向を直視すれば、きわめて近い将来、何らかの給付改善を伴うことなしに、保険料負担のみが急激に増高せざるを得ない矛盾が必然的に到来することもまた当然であります。したがって、年金制度にとってはきわめて近い将来と考えなければならない二十年、三十年後の時点において、現在の五万円年金の実質価値を維持する、年金水準を確保するためには、現在提案いたしておる内容の制度改正並びに財政運営のあり方が絶対に必要なものであると確信をするものであります。(拍手)
 保険料の労使折半の原則をやめたらどうかというお尋ねでございますが、この問題は社会保険制度においてすでに定着しておるかと考えておりますので、いまにわかにこれを改めることは考えていないのであります。
 なお、積み立て金の問題について大蔵大臣からすでにお答えがございましたが、この積み立て金は、国民各層の貴重な拠出金の集積であるという特性にかんがみまして、直接間接、国民生活並びに国民福祉の安定向上に資するために運用をいたしておるものでありまして、誤解があるといけませんからはっきり申しますが、基幹産業、貿易などには、この金は一文も使っておりません。(拍手)
    ―――――――――――――
#26
○副議長(秋田大助君) 大橋敏雄君。
  〔大橋敏雄君登壇〕
#27
○大橋敏雄君 私は、公明党を代表いたしまして、先ほど趣旨説明のありました厚生年金保険法等の一部を改正する法律案につきまして、総理大臣並びに関係各大臣に質問をいたします。
 いま、わが国における老齢層の置かれております現状は、きわめてきびしいものであります。子供が親をみるといういわゆる家族制度は崩壊し、核家族化が急速に進行する一方、老齢人口の激増に対応し切れぬ社会福祉施設等の拙劣さに加え、インフレ経済、高度成長下のもとに、老後の生活はますます深刻かつ不安定な状況の中に突き落とされているのが実情でございます。ここに、老後の生活を保障するに足る安定した年金制度を充実、完備することが重大かつ緊急な政治課題であることは、もはや論をまたないところであります。
 老人問題に対する国民の関心がいかに大きいかは、昨年来「恍惚の人」という本が一躍ベストセラーとなり、世間の話題となったことは、その端的なあらわれでございます。
 また、あまりにも低過ぎる年金に、もうがまんならないと立ち上がった老人パワーは、三月十日に、「豊かな老後を求める三・一〇日比谷集会」を開き、生活できる年金、食える年金をと激しく要求して、国会に請願デモを行なったことは周知のとおりでございます。車いすを先頭に、腰の曲がった方々もプラカードを掲げ、医師の付き添いまでもつけて行なわれたあのデモ行進の現実こそ、わが国の老人福祉の貧困を如実に物語るものであります。
 ことしは福祉元年とか、年金の年とか叫ばれて、特に年金制度の抜本的な改革が期待され、国民世論の注目の的となってまいりました。
 しかるに、年金に対する政府の姿勢は、まことにおざなりといわねばなりません。すなわち、国民の要望とはうらはらに、一応形だけは整えましたものの、小手先の改正に終始し、実質的な内容はきわめて貧弱なものであります。
 たとえば、政府が題材的にPRした五万円年金は、しょせん、選挙目当てのPRに過ぎなかったようであります。おそらく国民のほとんどが、五万円年金を直ちにもらえるようになるのだと信じていたはずでございます。ところが、実際に五万円年金を受ける人は、加入期間が二十七年間で、平均標準報酬月額が八万四千六百円という高水準の、一部の限られた八万五千人の人たちだけであります。六十歳以上の人口のわずか〇・七%にすぎないという、実に欺瞞的な年金といわねばなりません。
 さらに、国民年金における夫婦五万円に至っては、まことに話にならないのであります。そのモデルは次のとおりでございます。すなわち、昭和三十六年、制度発足当時三十三歳で、しかも同年齢の夫婦で二人とも制度に入り、また、それぞれの所得比例年金にも加入して、昭和六十三年六月まで、すなわち二十七年と三カ月間も掛け金をかけ、さらに五年間の据え置き期間を経て、やっと支給されるのであります。要するに、最良の条件を備えている人の場合をとってみましても、いまから二十年先の昭和六十八年にならないと受給できないという、まさにまぼろしの五万円年金なのであります。しかも、保険料のほうは直ちに大幅に引き上げて先取りをするという、不公平きわまる内容になっているのでございます。
 そこで、総理並びに厚生大臣にお伺いいたしますが、先ほど指摘しましたように、政府の五万円年金案は、自民党の選挙スローガンにつじつまを合わせた誇大宣伝にすぎません。先ほど総理は、また厚生大臣は、しらじらと否定的な発言をなさっておりましたが、かつての二万円年金のときと同じように、再び国民の期待を大きく裏切った政府の政治責任はまことに重大であります。いかに反省し、責任を感じておられるのか、所信を承りたいのでございます。
 さらに、本日提出しました野党四党共同提案は、現財政方式のままでも改善し得る当面の改正案でございます。国民の切なる願いを込めて、緊急に措置すべき具体的かつ実現可能な年金改正案なのであります。
 総理は、この国民の声なき声を率直に受けとめ、すみやかに政府案を撤回し、四党共同提案を採用すべきであると考えるものでありますが、あわせて、総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)
 次に、年金制度の抜本的改革についてであります。
 わが国は、各種年金が乱立し、その制度間の給付、負担、受給要件、配偶者の地位等々、はなはだしく均衡を欠き、格差を生じていることは、総理も十分御承知のはずであります。当然改善されねばならぬ基本的課題であります。国民皆年金の現状と理想から見まして毛、国民年金の位置づけを再検討し、各種制度の基本的部分については、すみやかに統合し、老齢者の最低生活を保障すべきであると主張するものでありますが、総理並びに厚生大臣の御見解をお伺いしたいのであります。
 次に、経済企画庁長官にお尋ねいたします。
 わが国の社会保障給付費の国民所得に対する割合は、昭和四十六年度で六%でございます。西ドイツの二一・八%、フランスの一九・七%、イタリアの一八・六%等と比較いたしますと、三分の一以下というお粗末な社会保障の内容になっております。この低水準にあるおもな理由は、年金制度の立ちおくれがきわめて著しいことにあるわけですが、今後西欧諸国に追いつき、福祉国家を標榜するわが国にとりまして、どのような目標のもとに年金をはじめとする社会保障の充実をはかっていくべきなのか、長官の御見解をお伺いしたいと思うのであります。
 さらに、二月に発表されました経済社会基本計画の中に、五年後、すなわち、昭和五十二年までに振替所得を八・八%にまで引き上げると述べておりますが、これは年金受給者の自然増に合わせた指標であり、実効ある社会保障の目標ではないと思うのでありますが、御見解を承りたいと思います。
 次に、大蔵、厚生両大臣にお尋ねをいたします。
 まず、年金財政方式を賦課方式に転換せよということでございますが、わが国の年金制度の欠陥は、一つには、国民皆年金体制の発足がおくれたために、現在最も年金を必要とする老人の大半が本格的な年金をもらっていないということでございます。
 二つには、したがって、年金受給者と年金額が低く、老後の生活保障の名に値しないものであるということでございます。
 すなわち、わが国では、六十五歳以上の老齢人口に対する拠出制年金受給者の比率は一三%にしかすぎず、あめ玉年金といわれております老齢福祉年金を加えましても、五六%にしかすぎないのであります。
 ちなみに、昭和四十五年度における西欧各国の年金受給者の比率を見ますれば、スウェーデン一〇〇%、イギリス八四・二%、アメリカ八二・六%、これらと比較いたしますと、あまりにもわが国の年金制度が貧弱であり、未成熟であるかは、一目瞭然でございます。
 したがいまして、一定の被保険者期間を経ないと年金が支給されないという現行年金制度の積み立て方式に最大の欠陥があり、その積み立て方式の仕組みのままで年金制度の成熟化を待つことは、もはや断じて許されないのでございます。現在、生活に逼迫しているお年寄りに直ちに標準生活を維持し得る年金を支給するために、財政方式を、現在の積み立て方式から賦課方式に大転換することが国民の要望に最もこたえるものであると訴えるものでございます。この世代間相互扶助の精神に基づく賦課方式を採用すれば、四十八年度における全受給者に、直ちに六万円年金の実現は可能なのでございます。
 ところが、田中内閣は、賦課方式の採用は後代負担が高くなり、世代間の負担の不公平が生じると言って、積み立て方式に固執しているのでございます。
 私は、ここで、政府の誤った見方を指摘してみたいと思うのでございます。
 第一に、政府が世代間の負担の不公平を言うならば、現在のお年寄りと、いま働く世代との負担の不公平をどうするかが先決でございます。現在のお年寄りは、戦前、戦後の過酷な環境の中で、両親と子供を扶養し、インフレに耐え、しかも、数十年にわたって使用される公共施設を、公債によらないで、当時の税金で建設してきたのでございます。いまの世代は、これらの投資の成果を享受しているのであります。これほど大きな世代間の負担の不公平をまず是正するようなシステムこそが社会保障なのでございます。
 第二に、現在の働く世代と次の世代を比較するならば、いまの働く世代も、世界にもまれな高率の産業投資と教育投資を行ない、公債発行もできるだけ押えているではありませんか。次の世代は、この投資の成果を受け継いで、容易に高い所得水準を実現できるのでございます。
 第三に、働く世代の肩にかかる扶養負担を老人の側だけで見るのは片手落ちでございます。
 六十五歳以上の人口が全人口に占める割合は、確かに昭和四十五年の七・一%から、七十五年に一三・四%に上昇していきます。しかし、一方では、十四歳までの子供の人口の全人口に対する比率は、同じ期間に二三・九%から二〇・九%に低下するのでございます。そこで、十五歳から六十四歳までの稼働人口にかかる扶養負担は、三一%から三四・三%へ、わずか三・三%ふえるだけなのであります。また・この間の所得の上昇を考えるならば、さほど騒ぐほどのことではないと思うのでございます。
 そこで政府にお尋ねいたしますが、現在のお年寄りの悲惨な状態を見殺しにして、何ゆえに積み立て方式に固執をなされるのか、明確かつ具体的な御答弁をお願いするものでございます。
 次に、厚生大臣にお尋ねいたします。年金は保険主義か保障主義かということでございます。
 わが党は、結党以来、国民福祉の実現のため、社会保障主義を貫いた年金制度の大幅改善を訴えてまいりました。しかるに政府は、今回の改正案においても、一向に保険主義の域を出ようとせず、国民の求める真の年金改革にはほど遠いものといわねばなりません。
 すなわち、老齢福祉年金についても、ことしの十月から千七百円アップの五千円になるとはいいますけれども、いかに経過的、補完的措置の福祉年金といえども、一日にわずかに百六十七円という涙金でございます。この物価高の時代に、一体これで何が買えるというのでありましょうか。
 去る一月の十日、一人の老人が、五千円分の食糧を買い込んで、これで一カ月間暮らせるものかどうか、お役人の目の前で実験してみたいと言って、大蔵省の正門わきにすわり込んで年金抗議を行なっておりましたけれども、月額五千円ではたして老後の生活保障をはかられると大臣はお考えでございましょうか。
 われわれは、福祉年金の大幅改善を強く訴えるものでございます。と同時に、年金の谷間に埋没した六十七歳から七十歳未満の百二十九万人に対して、どのように救済なさるのか。先ほど厚生大臣は、拠出制か無拠出制か、法案審議の段階で結論を出しますと言っておりましたけれども、本日がその審議の段階ではございませんか。具体的かつ責任ある御答弁をこの場でしていただきたいものでございます。(拍手)
 ただいまは、ときあたかも、桜花らんまんの春四月でございます。現在のお年寄りにも、安定した老後のあたたかい希望の春を安心して迎えられるよう、誠意ある、血の通った御答弁を強く要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#28
○内閣総理大臣(田中角榮君) 大橋敏雄君にお答えをいたします。
 五万円年金で国民の期待を裏切った政治責任はどうかということでございますが、今回の改正は、先ほども申し上げましたとおり、厚生年金の標準的な年金額を五万円にしようとするものであります。昭和四十八年度中に新たに老齢年金を受ける二十年以上加入の人についてみれば、その三割以上が現実に五万円年金を受けることとなるわけであります。
 しかし、加入期間の長短、保険料拠出の程度のいかんにかかわらず、すべての年金受給者の年金額を五万円とするような年金制度の設計は、きわめて適切を欠くものと考えるのであります。
 標準的な年金生活者の年金額として、現役の勤労者の収入の六割を確保しようとする今回の年金改善は、国際的に見ましても遜色のない年金水準を実現する画期的なものであると、こう考えておることは、先ほども申し上げたとおりでございます。
 また、国民年金の給付水準についても、厚生年金の大幅な給付水準の引き上げに均衡する改正を行なうことに踏み切ったわけであります。
 御指摘のとおり、この年金の支給が実際に始まるのはかなり先のことであることも先ほど申し上げましたが、現在の五万円年金の実質的な価値を今後も維持していこうとするのが今回改正の趣旨であることを御理解賜わりたいと思います。このことから考えれば、国民年金における五万円年金が画期的なものであることは十分理解いただけると思うのでございます。
 また、現在の方式から賦課方式に転換せよということにつきましては、私からも、厚生大臣からも、間々御答弁を申し上げておりますとおりでございまして、現在の修正積み立て方式を実行することのほうが、よりよい長期的な制度の拡充をはかるゆえんであると、こういうことで御理解いただきたい。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#29
○国務大臣(愛知揆一君) 年金問題のわが国の特徴は、人口の老齢化と年金制度の成熟化とが相まって、今後年金の受給者が急増することであると考える次第でございます。
 具体的に見てみますると、四十八年度の厚生年金の老齢年金受給者数は七十六万二千人で、被保険者に対する割合は三・二%でございます。ところが昭和五十五年度には、受給者数は百六十六万三千人と二倍以上になります。そして、被保険者に対する比率が六・四%、さらに昭和八十年度には、受給者数は七百十八万人と九倍以上になるわけでございます。したがいまして、こうした被保険者に対する割合が四分の一に近いパーセンテージになるということが見込まれておるわけでございます。
 年金の財政方式を直ちに賦課方式に移行させますと、現在のように、被保険者に比べて受給者の少ない現段階では負担が軽くて済む反面におきまして、将来は受給者の激増に対応して保険料負担が急激に高額、過重なものとなるわけでございます。私どもといたしましては、二十年、三十年と長期にわたって急激な負担の増加を避けながら、充実した年金額の支給を確保していくというために、年金制度が成熟化して、安定した状態が見通せるまでは、できるだけなだらかな保険料負担の増加で推移しながら、年金財政の健全性が保たれるように配慮してまいるということが私どもの責任であると思います。したがいまして、こういう考え方で、財政当局といたしましても堅実な考え方で進みたいと考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
#30
○国務大臣(齋藤邦吉君) お答えを申し上げます。
 総理のお答えと多少重複しているところもあるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。先ほど来申し上げてありまするように、今回の厚生年金、国民年金の五万円年金は、一定の水準をもととして行なっておるものであるということを御理解いただきたいと思うのでございます。
 そこで、厚生年金につきましては、先ほど申し上げましたが、昭和四十八年度において、全受給者八十万人でございました。そのうちどの程度の金額を受けられるかと申しますと、先ほど来申し上げておりますように、五万円以上のものが一割でございますが、二十年以上の加入の人は、四十八万人の人が、現実四万一千円ないし四万六千円、こういうわけでございまして、五万円年金の受給者は年を追うてふえていくと考えております。
 国民年金につきましては、先ほど申し上げましたように、十三年前にできた制度でございまして、二十五年加入ということを前提としておりまするために、まだ五万円をいただく方はございませんが、御承知のように、すでに開始せられておりまする十年年金につきましては、夫婦一万円を二・五倍引き上げて、夫婦二万五千円という大幅な改善を加えておることを御理解いただきたいのであります。
 なお、社会党と皆さま方から出ておりまする法律案でございますが、それについてどう思うかというお尋ねでございましたが、加入期間が二十年で六万円程度の年金額ということになりますと、標準的な二十七年加入ということになりますと、年金額は八万三千円となりまして、現在働き盛りの人々が働いて得ておる賃金よりも多くなるということになりまして、均衡がとれないということでございます。
 それから年金制度の抜本改正についてでございます。
 わが国の年金制度は、御指摘のとおり、数多くの制度に分立しておることは事実でありますが、それぞれの被保険者の多様なニードに応じ、それぞれの沿革をもって発展してきたものでありますので、いまにわかにこれを統合することは困難ではありますが、国民全体に対する年金による基本的保障が確立されなければならないという御意見は、十分傾聴に値いたし、また将来の制度改正についての重要な検討事項であることもいなめない事実であります。したがって、さしあたりましては、各制度間における不合理な格差を解消し、あわせて各制度間を通じての斉合性を実現すべく、今後とも努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
 それから、賦課方式の問題についてのお尋ねでございますが、厚生年金、国民年金のように、二十年、三十年と長期にわたり、長期的視野に立った財政運営、これが絶対に必要でございます。どんな経済事情の変更がありましても、年金成熟期において二、三年間の給付を完全に担保するという準備金は絶対に必要でありますし、保険料負担を急激に上げるというやり方は避けなければならない、こういうやり方からいたしまして、現在の修正積み立て方式を改める考えはございません。
 なお、この賦課方式に関連いたしましてお話のありましたのは、十四歳以下の児童が将来減少し、扶養負担の増は三・三%であるからたいしたことではないではないかというお尋ねがございました。なるほど将来は児童の負担が減少するから、老人負担はさして過重とならない、こういう御意見でございます。
 かりに人口構成が御指摘のようになるといたしましても、児童に対する扶養義務者の負担と、老人に対する扶養のあり方を一律に論ずることはどうであろうかと思うのでございます。すなわち、児童に対する扶養というものは、両親をはじめとする扶養義務者の負担においてなされることが常道であります。これに対して、老人に対する扶養ということは、個々の老人が現役時代に可能なる限り老後に対する備えを、社会連帯の精神に立脚した方法によって、共同で準備するという社会問題としてとらえらるべきものでありまして、家族の個人的、経済的負担が軽くなるからといって、社会的負担を重くしてよいという結論にはならないと考えておるものでございます。
 老齢福祉年金を大幅に引き上げるべきであるという御意見でございますが、なるほど無拠出老齢福祉年金につきましては三千三百円でございましたが、昭和四十八年度五千円、来年度は七千五百円、昭和五十年度には月額一万円、夫婦一万円ということで改善につとめてまいっておる次第でございます。
 それから、年金の谷間の問題でございますが、これも先ほど来お答えいたしておりまするように、この年金法案の社会労働委員会における審議の段階において具体的な解決策を見出したい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
#31
○国務大臣(小坂善太郎君) 大橋議員にお答えを申し上げます。
 まず第一点は、四十六年度における振替所得の比率が六%で、これは欧州の諸国に対して少ないが、何ゆえであるかということでございました。
 これは、御承知のように、わが国は高度成長政策に成功いたしまして、世界じゅうに類を見ない一億国民の完全雇用というものをなしたのであります。これは他の国に見られない、一億の国民が完全雇用をなしておるという点が一つの問題でございまして、この若い人口構成が、その中における年金の普及率を低下させておるということであると思います。
 そこで、この年金をさらにもっと充実したものにしなければならないと考えまして、これは第二の質問に関連するのでございますが、昭和五十二年度における振替所得の比率を八・八%といたしておるわけでございます。
 御質問の第二点は、この八・八%が自然増の範囲内であるのではないか、もっと根本的に福祉改善策を進めるべきでないかという御指摘でございました。これは経済社会基本計画におきましても述べておりますが、社会保障への資源配分を年平均の伸び率二二%と大幅に拡大さしておる結果でございまして、この結果として、昭和五十二年度の振替所得は、国民所得に対して八・八%となるわけでございます。これを四十七年度の見込みの六・〇から二・八%上昇させることにしておるわけでございます。この伸び率は年平均二二%という数字になるのでございまして、これは近年の伸び率およそ一八%を大幅に上回っておるのでございます。近年の伸び率のままにいけば一八%であるべきものを、二二%と大幅にふやしておるのでございまして、そこに非常に積極的な政策意欲があらわれておるということであるわけでございます。(拍手)
 また、この二二%という伸び率は、この五年の期間内におきまする他の経済指標の平均伸び率、たとえば国民所得の一三%、あるいは名目国民総生産GNPの伸び率の一四・三%、あるいは政府固定資本形成の一七・九%、政府総支出の一七・三%などと比較いたしましても、きわめて大きいものでございます。
 政府は、この計画において示しました社会保障充実の基本計画に沿いまして、今後、社会保障の長期計画を策定するわけでございますが、その中で具体的な政策の展開をはかってまいるというふうに考えております。
 以上、お答えいたします。(拍手)
#32
○副議長(秋田大助君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#33
○副議長(秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時三十二分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  田中 角榮君
        法 務 大 臣 田中伊三次君
        大 蔵 大 臣 愛知 揆一君
        厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君
        国 務 大 臣 小坂善太郎君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 吉國 一郎君
ソース: 国立国会図書館
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