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1972/05/08 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 本会議 第31号
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1972/05/08 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 本会議 第31号

#1
第071回国会 本会議 第31号
昭和四十八年五月八日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十七号
  昭和四十八年五月八日
   午後二時開議
 一 発電用施設周辺地域整備法案(内閣提出)
   の趣旨説明
 二 国務大臣の演説(沿岸漁業等振興法に基づ
   く昭和四十七年度年次報告及び昭和四十八
   年度沿岸漁業等の施策について)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 元自由民主党総裁前議員石橋湛山君逝去につき
  弔詞を贈呈することとし、弔詞は議長に一任
  するの件(議長発議)
 発電用施設周辺地域整備法案(内閣提出)の趣
  旨説明及び質疑
 櫻内農林大臣の沿岸漁業等振興法に基づく昭和
  四十七年度年次報告及び昭和四十八年度沿岸
  漁業等の施策についての演説及び質疑
   午後二時五分開議
#2
○議長(中村梅吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 弔詞贈呈の件
#3
○議長(中村梅吉君) おはかりいたします。
 元自由民主党総裁、前議員石橋湛山君は、去る四月二十五日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 つきましては、同君に対し、弔詞を贈呈いたしたいと存じます。弔詞は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 弔詞を朗読いたします。
  〔総員起立〕
 元自由民主党総裁前衆議院議員従二位勲一等石橋湛山君は多年憲政のために尽力しさきに内閣総理大臣の重責につきまたしばしば国務大臣の重任にあたり戦後の多難な国民生活の安定に力をいたされさらに近隣諸国との友好につとめられましたその功績はまことに偉大であります衆議院は君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
 この弔詞の贈呈方は議長において取り計らいます。
     ――――◇―――――
 発電用施設周辺地域整備法案(内閣提出)の趣旨説明
#5
○議長(中村梅吉君) 内閣提出、発電用施設周辺地域整備法案について、趣旨の説明を求めます。通商産業大臣中曽根康弘君。
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#6
○国務大臣(中曽根康弘君) 発電用施設周辺地域整備法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 わが国の電力需要は、国民生活の向上と国民経済の発展に伴い、今後とも毎年一〇%程度の伸びが予想されています。
 他方、ここ数年、電力会社が発電所の立地を計画しても、地元の同意が得られないため、国の電源開発計画に組み入れることのできないものが増加しており、また、これに組み入れた後においても、地元住民の反対にあって建設に着工できない例も多々生ずるに至っております。このままの状態が続けば、数年後には電力不足がきわめて深刻な問題となることが懸念されるところであります。
 このような住民の反対の根底には、一つには環境保全の問題があることは御承知のとおりであり、発電所設置による公害を防止し、環境を保全するため、今後とも最大限の努力を払うことは言うまでもないところでありますが、立地難のもう一つの理由として、発電所等の立地による雇用機会の増加等による地元の振興に対する寄与が他産業に比べて少ないということが大きな問題としてあげられると存じます。事実、発電所等の立地が予定されている地点の地方公共団体は、住民福祉の向上に資する各種の公共用施設の設備事業の推進を強く要望しております。
 本法案は、このような状況を踏まえて、発電所等の立地を円滑化し、電気の安定供給の確保に資するため、発電所等の周辺地域において住民福祉の向上に必要な公共用施設の整備事業を推進するための措置を講じようとするものであります。
 次に、本法案の概要について御説明いたします。
 第一は、国は、火力発電施設、原子力発電施設等の発電用施設の設置が確実である地点のうち、その設置の円滑化をはかる上で、公共用施設を整備することが必要であると認められる地点を指定し、公示することとしていることであります。
 これについては、当該地点が工業再配置促進法の移転促進地域をはじめ一定要件に該当する地域に属するときは指定しないこととしております。
 第二は、この指定された地点の属する都道府県の知事は、当該地点が属する市町村の区域とこれに隣接する市町村の区域において行なおうとする道路、港湾、漁港、水道、都市公園等の公共用施設の整備計画を作成し、国の承認を求めることにしております。
 この計画には、公共用施設の整備に関する事業の概要と経費の概算について定めるもので、他の法律の規定による地域の整備等に関する計画との調和及び地域の環境の保全について適切な配慮が払われるようにしております。
 第三は、整備計画に基づく事業の実施に要する経費の一部を発電用施設を設置する者に負担させることができることとしております。これは、発電用施設を設置する者が地域社会に対する協力という観点から行なうもので、整備計画に基づく事業の経費を負担する地方公共団体が発電用施設を設置する者と協議して、地方公共団体の負担する金額の一部を負担させることができることとしております。
 なお、国は、この経費の負担について関係者の申し出があればあっせんに当たることとしています。
 第四は、国が承認した整備計画に基づいて地方公共団体が実施する事業のうち、特定の施設の整備事業については、通常の補助率を特別に引き上げて適用することとする等事業の円滑な実施をはかることとしています。この特定の施設は、道路、港湾、漁港、水道及び都市公園のうちから政令で定めることとなっておりますが、たとえば市町村道路は、通常三分の二とされているのを四分の三に、漁港は十分の五を十分の六に、引き上げることができることとしております。
 このほか、国は地方債の起債について配慮する等財政上、金融上の援助措置を講ずることといたしております。
 以上が発電用施設周辺地域整備法案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 発電用施設周辺地域整備法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#7
○議長(中村梅吉君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。渡辺三郎君。
  〔渡辺三郎君登壇〕
#8
○渡辺三郎君 私は、日本社会党を代表し、ただいま趣旨説明のありました発電用施設周辺地域整備法案に対し、国のエネルギー政策や公害対策などと関連をさせながら、内閣総理大臣及び関係各大臣にその所信をただすものであります。(拍手)
 まず取り上げなければならない点は、わが国のエネルギー消費の今後の見通し並びに国のエネルギー政策の基本に関する問題であります。
 歴代自民党政府は、高度経済成長政策を柱としながら、これまで重化学工業を中心とした大規模コンビナートの建設に最大の力を注いでまいりましたが、その結果としてわが国は、世界まれに見るエネルギー消費経済国となり、全国至るところに公害をまき散らしている状態となったことは、何人も否定することのできない事実であります。(拍手)
 田中内閣のバックボーンとなっている日本列島改造計画におきましても、一部においては産業構造の転換をうたい、知識集約型産業の育成を唱えながら、その具体的内容についてほとんど明らかにされないまま、昭和六十年に二百八十兆から三百兆円経済の実現が言われておるのでありますが、これはとりもなおさず膨大なエネルギー消費の伸びを前提とするものであること、きわめて明白であります。
 言うまでもなく、最近は世界的な問題として、石油を中心とするエネルギー資源埋蔵量の限界が深刻な課題となり、有限な化石燃料をわれわれの子孫に伝え、長い世代にわたって有効に使われなければならないことが強く求められておるのであります。
 このような事態を迎えている今日、もはやこれまでのように、年率二〇%以上の石油輸入増大を前提としたり、一九八〇年代には世界の資源輸入三〇%以上の独占を考えたりするような経済政策は、決してとり得ないでありましょう。電力においても大胆な節約政策がとられなければなりません。
 しかるに、さきに政府が発表した経済社会基本計画においては、昭和五十二年の電力総需要量を六千億キロワットアワー以上とし、昭和四十六年度の一・八倍増を見込んでおるのであります。
 この数字は、昭和四十年から四十六年までの同じ六年間にほぼ倍増した実績を、そのまま今後も引き続いて行なおうとすることを意味するものであって、何ら政策的な転換がなされていないと断ぜざるを得ません。(拍手)
 しかも、電力需要の伸び量で見た場合、産業用の大口電力が相変わらず高い比重を占めており、工業開発の先兵としての火力発電所のあり方はほとんど変わっておらないのであります。
 そこで、総理大臣にお伺いをしたいのでありますが、総理は、具体的なエネルギー節約政策を国の経済政策の根幹の一つとして打ち出し、電力需要の伸びを規制する政策を実行する用意があるかどうか。また、こうした実情に立って、基本計画それ自体を変える必要があろうと思われるのでありますが、その用意があるかどうか。ひとつ慎重な配慮の上に立った答弁を求めるものであります。
 さらに、今日の電力使用の実態から見た場合、電力規制にあたっては、総需要の八〇%前後を占めておりますいわゆる産業用のものを、まず規制の第一対象にすべきことが当然だと考えられますが、この点についても明確な見解を出していただきたいのであります。
 次に、需要と密接にかかわる電力料金のあり方について、通産大臣に伺いたいと思います。
 御承知のとおり、わが国の電力料金体系は、産業用にきわめて安く、一般家庭用が極端に高くなっているのが実情であります。総括原価を需要の種別に配賦する手続を何段階にも分けて行なうやり方を用い、こうして、産業用と家庭用ではその原価が違うのだという説明になっておるのでありますが、しかし、それにいたしましても、昭和四十五年の比較で、家庭用料金が一キロワット時当たり平均十一円八十五銭、産業用が四円九十八銭、まさに二・四倍になっているのであります。こうしたことは、フランスを別とすれば、先進諸国ではほとんど例を見ない大企業優遇、産業優先措置といわざるを得ません。(拍手)
 このような料金制度を根本から改め、一般家庭の負担を軽くして、全体のバランスをとるべきだと考えますが、この問題について、通産大臣の基本方針をお聞きしたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、この料金問題について、もう一点、これは田中総理にお尋ねをいたします。
 新規電源の開発、公害防止設備の設置による費用の増大、燃料の高騰、発送変配電工事費のアップ、諸材料の上昇などをおもな理由として、最近、二、三の電力会社で料金値上げ申請のための検討が始められたと聞いております。昭和三十七年から四十六年まで十年間に行なった九つの電力会社の定額償却超過分は、五千八百億円を上回っておるのであります。
 この膨大な超過利潤ともいうべきものが、一切、損金経理の上、内部留保されてきたわけであります。この分こそ、本来は電力供給責任完遂のための各種の先行的な投資、完全な公害対策に向けられるべきものでなければなりません。現在、異常なまでの諸物価の値上がりの中で悩んでいる国民大衆の生活に、さらに大きく追い打ちをかけるような家庭用電気料金の値上げなどは、断じて阻止しなければならないと考えますが、総理の明快な決意ある答弁を求めるものであります。(拍手)
 次に、本法案の目的及び内容についてただしてまいりたいと思います。
 今日、電源開発計画はその前途が全く暗く、今後においてもそれはさらに一そう深刻化する傾向にあるといわなければなりません。
 かりに、政府の現在見通しによる需要の伸びがそのまま放置されるとするならば、去る四月二十三日通産省が発表したとおり、昭和五十二年には、全体として需要が供給を上回る時間帯が生ずることになるわけであります。
 本法案は、こうした引くに引けない深刻な現実を背景として提案されたものと考えるのでありますが、一体、発電所建設に地元の協力を得ることが今日まことに困難をきわめ、電源立地難がますます深刻になり、ひいては、電力の供給不足を招来する追い詰められた状態にまで立ち至ろうとしているほんとうの原因を、政府はどのように認識をしているのか、政府を代表して田中総理から、このことを明らかにしてもらわなければならないと思います。(拍手)
 発電所建設が進まない主たる原因は、明らかに公害問題であり、安全性の問題であります。火力発電所から放出される亜硫酸ガスあるいは窒素酸化物、さらには温排水による公害が地域住民の健康を脅かし、漁業などの生活基盤を破壊する危険性のあることに対して、地域住民がその命と暮らしを守るため、反対運動に立ち上がるのは当然のことであります。(拍手)
 不断に放出される放射能が、どのような影響を地域住民及びその子孫に与えることになるのか、原子炉の運転に伴って膨大に蓄積される死の灰による潜在的な危険性、原子炉の安全装置にかかわる重大な疑問、そしてまた、原子炉安全審査会そのものの機能に対する不安などについての解明がまだ十分になされないまま、住民の声を甘く見て、ただ一方的に発電所の拡大をはかろうとしても、しょせん、それは問題の解決となり得るはずがないのであります。
 こうした絶対的条件の整備を怠り、住民の立場に対する正しい認識を欠いてきた政府、電力業界の姿勢こそ、電源立地難を招くに至ったほんとうの原因ではありませんか。(拍手)
 電源開発調整審議会のあり方にも私は重大な問題があると思います。
 総理がその会長になっている電調審では、昭和四十五年十月の第五十三回審議会において、「火力・原子力発電所の立地の円滑化について」という報告をまとめておりますが、その中で、当該年度の開発地点の決定については、地元との調整ができていることを条件としております。また、通産省においても、施設計画が電力会社より提示されたときは、当然地元との調整の見通しについてチェックしているはずであります。しかるに、電調審の決定を見た開発地点が着工されないでたなざらしになっているのが、四十七年十月現在で三百五十万キロワットに及んでおり、そのほとんど全部が、公害または安全性の点で地元の納得が得られないでおるのであります。いかにこのあり方が、全体の立地条件をも含めて、ずさんなものであるかを示しているではありませんか。
 一体、電調審は、地元との調整に関していかなる姿勢で対処をしているのか、重大な反省を求めると同時に、総理の見解もあわせてお聞きしたいのであります。(拍手)
 公害防止のための万全な施策の確立と、地域住民の意思を十分にくみ上げ、その完全な了解を得ずして、発電所の建設促進は決してあり得ないことを政府は銘記すべきであります。
 私は、ここで三木環境庁長官にお尋ねをいたします。
 本法案においては、公共用施設の整備を促進することによって、地域住民の福祉向上をはかり、発電所施設の設置の円滑化に資するとありますが、道路や港湾、漁港、公園、水道などの建設が、発電所の公害防止に有効なものと認めておられるのかどうか、また、公害防止の問題を触れずに素通りして、はたして発電所周辺地域住民の福祉の向上が一体保障されると考えておられるのかどうか、明確な答弁を求めたいのであります。(拍手)
 次に、本法案が火力発電所、原子力発電所などを、発電用施設として同一に扱っていることに関し、政府の見解を伺いたいのであります。
  わが国の原子力政策の基本は、原子力基本法に基づき、独自の法体系と制度でもって扱うというのがこれまでの一貫した基本方針でありました。
 その理由は、自主、民主、公開の原則のもとに、原子力の平和利用の限定を厳格に行なうことと同時に、放射能公害や危険性に対しては、その特殊な性質から、他の公害と区別をして、より一そう慎重に取り扱わなければならないことなどにあることは、広く認められるところであります。
 しかるに、本法案のように、原子力利用を他の発電所と同じく取り扱うということは、この法案の趣旨が直接放射能や平和利用に関するものではないにいたしましても、これまでの基本原則をくずすものであることは明らかであります。
 われわれは、いまここで、原子力を独自の体系で扱うこれまでの基本をくずすような先例はつくるべきでなく、したがって、火力、原子力を別個に取り扱うべきであると考えるのでありますが、この点について、科学技術庁長官のしっかりした見解を伺っておきたいと思うのであります。
 最後に、公共用施設の整備を実施する場合の基本について質問をいたします。
 公共用施設は、本来、自治体または政府の計画に基づき、また、その財源でもって建設すべきことが原則でなければなりません。
 特に、本案のような地域住民の福祉にかかわる公共施設と企業の負担という関係においては、企業からの取るべきものははっきりと税金として徴収をし、必要ならば、その財源を建設資金に充てるなどの措置が正常な形であります。
 しかるに、本法案では、企業に直接負担をさせ、さらに、自治体がつくる整備計画に対しての企業の発言権を、条文の中で公式に認めるという方式をとっており、このような制度は、これまでの地域計画を実施する場合の企業との癒着、企業依存という傾向を一そう強化するものといわなければなりません。
 自治大臣は、かかる制度を本来のあるべき地方自治制度あるいは地域開発整備計画のあり方として、どのような評価をしているのか、一般論としてではなく、具体的なこの法案に即しての見解を求めるものであります。
 以上、幾つかの点について政府の見解を求めてまいりましたが、終わりに重ねて申し上げなければならないことは、今日、この法案を提出する前に政府が実施すべきことは、まず、発電所設置に伴う公害の完全な徹底した防止であり、住民の選択権、同意権の完全な保障であります。そして、企業に公共施設費用負担を行なう意思ありとするならば、まずその前に行なうべきことは、汚染物質を絶対にまき散らさない設備を確立することにみずからその資金を投入すべきであります。それなくして、本末転倒したまま、との法案をあえて強行しようとするのであれば、本法案は、まさに住民の真意を無視し、当然の、しかも重大な権利である公害反対を、公共施設の整備という当面糊塗的なあめの政策で本質をすりかえ、ごまかそうとする悪法に転化してしまい、公害反対運動に巧妙に挑戦するための法案という結果にならざるを得ないであろうということを強く指摘をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(田中角榮君) 渡辺三郎君にお答えをいたします。
 まず第一に、エネルギー節約政策を打ち出し、電力需要の伸びを規制したらどうかということでございますが、エネルギー需要の増大を緩和し、また、環境を保全する観点からも、エネルギーの効率的利用、エネルギー原単位の改善、産業構造の転換は、わが国にとって重要な課題であります。
 このため、現在、産業構造の知識集約化を基調とする省資源、省エネルギー政策について検討を進めておるのであります。具体的には、将来の望ましい産業構造についてのビジョンの確立につとめますとともに、その中核となるべき電子計算機産業をはじめとする知識集約的産業の育成、在来型の産業の資源、エネルギー依存度を低める一方、資源の有効利用をはかるための資源再生利用技術のシステムや、廃プラスチック有効利用等が考えられるわけでございます。
 しかし、御指摘のように、電力は産業用にだけ使われておるのではないのであります。国民生活が向上し、国民所得が向上してまいりますと、水や電力の使用量は飛躍的に増大をしてまいるのでございます。
 一九七〇年の例をとって申し上げますと、アメリカでは、国民一人当たり年間七千四十五キロワットアワーを使用しております。スウェーデンでは六千九百八十四キロワットアワーでございます。現在、日本は、相当程度個人的に消費電力量が増大したとはいいながら、いまだ三千八十八キロワットアワーでございます。ですから、昭和六十年を待たずして、国民一人当たりの電力消費量は、いまの倍をはるかにこすであろうことは申すまでもないのであります。ですから、電力が産業用だけという観点から考えられると間違いが起こるのでございます。国民生活が向上し、所得が向上してまいると、自動的に消費電力や水の量が多くなるということは、いま数字で明らかにしたとおりであります。
 昭和四十六年度の水力、火力、原子力の合計は五千八百二十二万キロワットでございますが、昭和五十二年を展望しますと、その倍以上になるわけであります。五年間で一億二千百五万キロワットということになるわけでございまして、これは低く押えておる数字でございます。先ほど申し上げましたように、従来のような重化学中心の工業から知識集約的産業に移さなければならない、しかもそれだけではなく、アルミ工場や電力を多量に使うものは、海外の現地製錬を行なうというようなことを前提にして計算をしても、五年間で電力消費量は二倍以上にふえるわけでございます。
 そのような状態で現在の電力の状態を直視いたしますと、予備電力は一〇%から一五%あることが望ましいことは、私が申し上げるまでもないのでございます。ところが、現時点において九電力のうち一五%をこしておるものは、北海道電力が一四・八ないし一五・三というところでございます。九州電力が八・一ないし一六・六というのは、四十八年度の計画が終わった場合の状態でございます。ところが、関西電力においてはわずかに一.七でございます。今年八月のピーク時を想定して一.七でございまして、いまのような経済の状態で進めば、もうピンチにおちいる状態にあるということでございまして、電力消費を規制するように努力をしなければならないと同時に、人間が米を最低限量必要であると同じように、電力は確保しなければならないというのが現状でございます。
 第二は、経済社会基本計画を変える必要がないかということでございますが、いま申し上げましたように、電力の基本計画というものは、いま申し上げたような事情で、変える必要はないし、しかも、経済社会基本計画の中で述べております電力量というものは、非常に押えて計算をしたものであるということを御理解賜わりたい、こう思います。
 第三点は、電力料金の値上げ問題についてでございますが、電力料金は低廉、良質であることが望ましいことは申すまでもありません。従来から、政府は極力値上がりを抑制してまいったわけでございます。大規模な電源開発の推進に伴う資本費の増大や、公害対策費の増大とか、燃料価格の高騰とか、原子力発電を推進するために必要な問題とか、また、年々相当大幅の賃金のアップがあるわけでございます。にもかかわらず、昭和二十九年、昭和三十五年からというように、長い間電力料金が押えられてきたという事実は、合理化に全力を傾けておるという結果であることを御理解を賜わりたい、こう思うのでございます。政府としましては、今後とも経営の近代化、合理化等により、料金原価上昇要因の吸収をはかり、料金安定の確保に努力するよう、一そう強力に指導してまいるつもりでございます。
 なお、料金の見直しがやむを得ない場合におきましても、極力値上げ幅の抑制等に努力をしてまいりたい、こう考えるのであります。
 第四点は、電源立地難の原因等についてでございますが、これは御指摘ございましたように、大気汚染問題、温排水問題、また、原子力発電所につきましては安全性の問題等がありますことは、御指摘のとおりでございます。
 もう一つ、御指摘はございませんでしたが、ここで申し上げておきたいことは、大電力の消費地は大都会でございます。産業や人口が集中をしておるところはすなわち、即電力の大消費地でございます。大消費地の地域内においては、電源立地を求めることは困難でございます。それは、大阪において電力がピンチになっておるにもかかわらず、姫路の火力発電所を停止しなければならないというような事情や、大阪や京都のために長いこと懸案である新舞鶴の発電所が着工できないというような事情を考えてみれば、私が言うまでもないのであります。(拍手)東京都や大阪や名古屋というような大電力消費地に送る電力が、地域内において立地が見出しがたいので、東北や北陸やその他の地域に求めるわけでございます。自分が使う電力でないものを、大都会に送る電力のために、なぜ公害やその他のものに泣かなければならないかというところに、現地が承諾をしない大きな原因があるのでございます。
 ですから、地元に恩恵が及ぶような施策を付加しなければならないことは言うをまたないのであります。電力の不足は、水の不足や米の不足と同じように、電力がとまった場合には生命に直ちに影響するのであります。どうしても、電源立地地帯の了解を得られるような施策を付加することによって発電を確保しなければならぬことは、申すまでもない重要なことでございますので、野党の皆さまも、どうすれば発電がうまくできて、電力を良質、低廉に安定供給できるかということを御考究いただきたい。(拍手)
 最後には、電源開発基本計画についての御指摘がございましたが、電源開発調整審議会の議を経て慎重にきめておるわけでございまして、新規に着手する発電所を審議会に付議するにあたりましては、公害の防除、環境の保全、安定の確保等について十分に慎重に検討し、万遺憾なきを期しておるわけでございますが、これからも、政府も技術的、科学的に国民各位の理解が得られるように一そうの努力を傾けてまいりたい、こう考えます。(拍手)
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#10
○国務大臣(中曽根康弘君) 御指摘のように電力不足は顕著でございまして、四十七年度における電源開発調整審議会の計画決定が千二百万キロワットでございましたが、着工はわずかに、御指摘のように三百五十万キロワットにすぎません。昨年は関西電力で事故が起きまして、非常な真夏の八月でございましたが、いつもならば電力が要らぬときであります。しかし、最近はルームクーラーとかテレビの需要が非常にふえてまいりまして、夏になっても減らないという現象ができまして、昨年は、電気事業法に基づいて、関西電力の区域においては五百キロワット以上については使用制限をしなければならぬというところまできましたけれども、幸いにそれを発動することを免れたのが実情でございます。
 したがいまして、電力建設は非常に焦眉の問題になっておりまして、この問題については、まず第一に公害対策、安全対策、環境整備等が非常に重要であると考えております。政府といたしましても、これらの点については鋭意努力しておるところでございます。
 しかし、料金問題につきましては、負担の公平とそれから公正報酬という原則から原価主義をとってまいっております。昨年、この原価主義の問題につきましていろいろ御議論もありましたので、通産省におきましては、電気事業審議会におきましてその原価主義の問題についていろいろ検討してもらいましたけれども、当面、目下のところその方針を変える必要はない、そういう考え方に基づきまして、現在、供給原価を上回る割り高な料金を産業用に賦課する、そういう考えはございません。
 しかし、いずれにせよ電気の供給をふやすことと、電気料金をできるだけ抑制するということは非常に重要なことであると思いますので、鋭意努力するつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣三木武夫君登壇〕
#11
○国務大臣(三木武夫君) 渡辺議員にお答えをいたします。
 この整備法は、いま提案理由の説明にもありましたように、発電所をつくっても地元にメリットがないということに対してこたえることを目的としたものであって、それによって地域住民の福祉の向上、生活の環境を整備していこうというわけでありますが、もう一つの不安は、やはり公害に対しての不安であります。地域住民の不安、これに対しては、やはり第一義的には発電所の立地計画を立てる事前において、十分に公害防止、環境保全の立場から、事前の調査というものを厳重にしていく必要がある。
 もう一つは、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、この法律にのっとって排出の基準を強化していく。一方においては、地域住民の福祉の向上、この立法の精神はそういうことでありますから、これを向上するとともに、もう一つの不安である公害問題に対しては、いま言った立地と排出規制の強化で、これで地元の不安をできるだけなくすることに努力をしていきたい、これが環境庁として考えておる点でございます。(拍手)
  〔国務大臣前田佳都男君登壇〕
#12
○国務大臣(前田佳都男君) 電力の安定供給に原子力発電は今後ますます重要な役割りを果たすことが見込まれるわけでございます。発電立地反対の理由の一つに、地元の振興に対するメリットが少ないということは、火力、原子力共通の問題でございます。また、原子力発電立地予定の地方公共団体から、各種の公共用施設の整備事業の推進をしてほしいという要望がされております。この点から、原子力発電などの施設もこの法律の対象にしたわけでございます。
 なお、原子力施設の設置、運転につきましては、安全性の確保、平和利用の担保につきまして、原子力基本法並びに関係法令によりましてきびしく規制をいたしております。が、この法案に基づく措置と相まちまして、原子力施設の設置の円滑化をはかっていきたいと考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣江崎真澄君登壇〕
#13
○国務大臣(江崎真澄君) お答え申し上げます。
 地域の整備計画に対して企業の発言権を認めるというのは、企業と地域とが癒着をする原因になりはしないか、こういうお尋ねでありまするが、この場合の発言権を認めるあり方というのは、発電所をつくろうということで、その工事用の道路を敷設します、また、発電所の関連の付属設備、こういったものと地域のいわゆる整備計画の関連性をどうつけていくか、その面において意見を聞こう、会社側の意見を取り入れよう、こういうわけでありまするから、これも当然なことであって、地方自治を乱るものでもありませんし、また、そういうことによって、計画自体や地域の整備計画そのものに何ら支障を来たすものではないということを、はっきり申し上げておきたいと思います。(拍手)
#14
○議長(中村梅吉君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説(沿岸漁業等振興法に基づく
  昭和四十七年度年次報告及び昭和四十八年
  度沿岸漁業等の施策について)
#15
○議長(中村梅吉君) 農林大臣から、沿岸漁業等振興法に基づく昭和四十七年度年次報告及び昭和四十八年度沿岸漁業等の施策について発言を求められております。これを許します。農林大臣核内義雄君。
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
#16
○国務大臣(櫻内義雄君) 昭和四十七年度漁業の動向に関する年次報告及び昭和四十八年度において沿岸漁業等について講じようとする施策につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 わが国漁業の生産量は年々増加し、昭和四十六年には九百九十一万トンを記録し、一千万トン台に近づいておりますが、国民経済の発展に伴う食生活の向上により、高度化、多様化しつつ増大している水産物の需要に十分対応するまでに至っておりません。このため、四十六年の水産物価格は、上昇率がやや鈍化したものの、中高級魚介類を中心に引き続き上昇しております。また、海洋の水産資源の一般的な状況は、必ずしも楽観を許さないものがあります。
 漁業経営体数は、四十五年以後やや減少しており、四十六年には二十二万五千となりましたが、その大部分を占める沿岸漁業経営体におきましては、中核的漁家層の経営が増加しており、かつ、専業化も進んでおります。
 また、就業者数は、近年減少傾向を示し、引き続き高齢化及び女子化の傾向が見られます。沿岸漁業の平均漁家所得は、農家及び都市勤労者世帯の平均を上回っておりますが、世帯員一人当たりでは、都市勤労者世帯に比べ、格差は縮小しているものの、なお低い水準にあります。
 中小漁業経営におきましては、収益性は概して平年並みの水準を維持しておりますが、業種、規模による格差が大きく、また、経営基盤にも不安定なものがあります。
 最近におけるわが国の漁業をめぐる内外の諸情勢は、公害による漁場環境の悪化、漁業労働力の不足、国際規制の強化、発展途上国を中心とする排他的水域の一方的拡大等一段ときびしさを加えております。このような諸情勢に対処し、わが国漁業の健全な発展を期するため、海洋水産資源の開発等により生産の増大につとめ、水産物の安定的供給を確保するとともに、漁業従事者の所得の増大により生活水準の向上等をはからねばならないと考えております。
 次に、沿岸漁業等について講じた施策は、政府が四十六年度及び四十七年度において漁業について講じた施策を明らかにしたものであります。
 最後に、昭和四十八年度において沿岸漁業等について講じようとする施策について申し上げます。
 ただいま御説明いたしました漁業の動向に対処するために、政府といたしましては、栽培漁業の積極的な展開と新漁場の開発等海洋水産資源の開発の促進、漁業公害対策の強化による漁場環境の保全、第五次漁港整備計画の策定とこれに基づく漁港の計画的な整備、海外漁業協力による海外漁場の確保、沿岸漁業及び中小漁業の近代化、水産物流通加工の合理化、漁業従事者の福祉の向上等に重点を置いて諸施策の推進をはかることといたしております。
 以上、その概要について御説明いたした次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説(沿岸漁業等振興法に基づく昭和四十七年度年次報告及び昭和四十八年度沿岸漁業等の施策について)に対する質疑
#17
○議長(中村梅吉君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。島田琢郎君。
  〔島田琢郎君登壇〕
#18
○島田琢郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま政府より説明のありました昭和四十七年度の漁業白書について、田中総理並びに関係大臣に対し質問をいたします。
 白書は、ことしもまた漁業をめぐる現状のきびしさを訴え、その中で幾つかの課題を示していますが、漁業発展を阻害するこうした条件を排除する具体的な姿勢に欠け、国民の期待する良質な動物たん白資源の安定的供給という面に依然多くの問題を残していることを、私は、まず強く指摘をしたいと思います。(拍手)
 すなわち、白書では、九百九十万九千トンと昨年に続きその生産量がふえ、世界第二位の漁業国としての面目を維持しているとしていますが、漁業を取り巻くその環境の悪化は、ますます深刻さを増しています。特に、沿岸における漁業は、油かすなどによる海面汚染、たれ流しのヘドロによる海底堆積によってその漁場が失われつつあり、加えて、水産資源に対する沿岸国の管轄権が拡大強化されるなど、わが国の漁業をめぐるこうした状況は、ますます不利になっているといわなければなりません。破壊されつつある沿岸漁場の生産力を回復するとともに、遠洋漁場におけるわが国の伝統的利益を守ることは焦眉の急を要すると考えられますが、予算面においても、また具体的な政策展開においても、積極的な姿勢が見られないのは、まさに政策怠慢といわなければなりません。(拍手)昨年の漁業予算は、農林予算の中のわずか五・九%、六百五十億円にすぎず、これではわが国漁業が当面するきびしい課題に対処することはできないと、われわれは強く指摘をしてきましたが、ことしもまた五・六%、八百五十億円にとどまっており、海の資源を育て、環境を守るなどという政府の言い分は、またもやお題目にすぎないことを露呈しているといわなければなりません。(拍手)
 総理は、日本の漁業のあり方について、この際いかなる考えを持っておられるのか伺いたい。
 生産第一主義、大企業中心の経済成長政策は、重要な沿岸漁場を奪い、公害のたれ流しによって魚の生息を許さず、漁業労働力の異常な流出を引き起こし、日本漁業の発展を阻害していますが、これに対処される総理の所信のほどをまず承りたいと思います。
 近年、国民の食生活の高度化と多様化は、生活水準の上昇に伴い激変しつつあります。とりわけ、生鮮魚介類に対する需要の増大は食料支出の伸びを上回っているといわれますが、その資源においては、イワシ、サンマの一部を除き、全般的には楽観を許さないばかりか、むしろ悲観的でさえあります。すなわち、海面生産量の四〇%以上を占めるといわれるアジ、サバ、スケソウダラは、その資源において低下の傾向にあるといわれていますが、こうしたものが資源において行き詰まりになることを、一応想定しておかなければなりません。
 政府の長期展望でも示すごとく、昭和五十二年に二千百四十万トンの需要量に対し、供給量を九百五十万トンとしており、残り一千二百万トンの不足が見込まれる中で、資源の確保と生産の拡大は密接不可分の関係の中にあるだけに、この対策の具体性を期待するのは国民の世論といえます。
 さらに白書では、とる漁業から育てる漁業への転換を強調していますが、これは長いこといわれてきたことでありますのに、依然定着していないというのが一般的な見方であります。
 この際、この養殖漁業の展望と深海漁業の開発を含めて、農林大臣の所信をお尋ねしておきたいと思います。
 次に、海洋の環境をめぐる問題についてお尋ねをいたします。
 沿海と内水面漁場は、排水と都市下水、ふん尿や廃棄物などの流出や堆積によってその汚染の度を強め、その被害はますます増大しつつあります。海洋汚染防止法、水質汚濁防止法などの公害立法がありながら、その運用の的確さを欠き、一向に解決されず、さらに環境破壊は進むばかりであります。したがって、関係地域における漁民や住民の不安は、解消されないばかりか、増大しつつあります。
 特に、瀬戸内海の環境保全の問題は、国民的関心事でもあります。日本を代表する景観地として、また高級魚の沿岸漁場としての瀬戸内海の汚染、汚濁は、いまや日本の公害の縮図ともいわれ、海外の旅行者からまで指摘されているありさまであります。ハマチの赤潮による死滅事故など、瀬戸内海における公害問題はあとを断たない状況であり、こうしたことから、昨年以来、この瀬戸内海の環境保全のための特別立法の動きともなっているのであります。わが党としても、これらの要請にこたえて、今次国会に、瀬戸内海環境保全対策特別措置法を提案しております。
 政府は、瀬戸内海の水質一斉点検の結果をこの際明らかにし、早急に解決すべき問題点を洗い出し、公害諸立法の機能化をはかるべきと考えるが、環境庁長官よりお答えをいただきます。(拍手)
 さらに、いま、愛媛県の伊予三島市において近く着工する運びになっている臨海埋め立てによる土地造成事業は、第二次公害が必至であるとして、燧灘一帯を漁場とする香川県三豊漁連や地元住民から反対運動が起こっておりますが、この計画の中止と、ヘドロ拡散による第二次公害の防止の保障については、政府としてどのような考えと態度を示そうとしているのか、あわせてお答えをいただきます。(拍手)
 また、大型タンカーの航行についての規制が必要であるとの観点から、昨年、海上交通安全法の成立を見たところでありますが、これらによる事故の重大性にかんがみ、さらに一そうの規制措置が必要と考えます。この際、思い切った航行制限を行ない、この種の事故を未然に防ぐお考えはありませんか、政府の所信を承っておきます。(拍手)
 漁業をめぐる自然環境破壊は、申すまでもなく、政府の無計画な地域開発政策にあることを重ねて強く指摘するところでありますが、各種の計画や立法がしり抜けにならないためにも、現存の公害諸立法の補強が必要であり、特に、沿岸における重要な漁場に一日も早く青い海が取り戻されていくための措置を望むものでありますが、総理の決意のほどを伺っておきます。(拍手)
 また、青森県むつ小川原における原子力船の問題は、現地漁民が生活権にかかわる重大事として強い反対があるのでありますが、これにどう対応するお考えなのか、あわせてお答えをいただきます。
 次に、水産物の価格と流通についてお尋ねをいたします。
 国民の動物性たん白質摂取量は、欧米諸国に比べてまだかなり低い水準にございますが、動物性たん白質は、わが国においては、畜肉の需給逼迫などの背景から、水産物に五〇%以上依存する傾向はさらに一そう強まると考えられますが、その価格において、まことに矛盾だらけといわなければなりません。すなわち、昭和四十六年の水産物の生産地価格総合指数は一七八・九%で、前年を八・二%上回ったが、消費者価格の総合指数は一七八・八%で、対前年比では一三・六%と、依然上昇を続けております。生鮮食料品の重要な地位を占める魚介類が、産地の豊凶と無関係にある状態は、消費者の何としても納得のできないところであります。
 物価対策にきめ手を持たない田中内閣でありますが、この際、複雑な流通機構を根本的に改革し、生産漁民も消費者も一様に求めている、この魚価安定を含め、生産対策一本やりの漁業政策を改め、流通、消費にわたる総合施策の確立を、それこそ総理の決断と実行を強く望むものであります。(拍手)
 さて、船底一枚下は地獄といわれるきびしい職業に従事する海の男たちは、きょうも南の黒潮と戦い、流氷の海にいどみ、家族と別れて北洋の荒海にその身をゆだねながらがんばっているのであります。
 漁業は、自然の水域で採捕し、養殖をする産業であり、自然のきびしい影響を受けることが少なくありません。しかも、その大部分は零細な基盤の上に立つ沿岸漁業者であり、中小漁業者であります。危険を承知でも出漁しなければならない状態さえあるのであります。気象や海流の変化、漁業資源の変動などによって、絶えず不安定な状況にあるとさえいえます。このようなきびしい条件と特殊な環境の中で食料生産の重要な一翼をになっている漁民の身分保障とその漁村環境の保全は、漁業振興の上できわめて重要なものであり、この世界で生きる人々の社会保障制度の充実の必要性は、いまさら言うまでもありません。家族を置いて遠く航海し続ける漁民の人たちの保障は、他のどれよりも重厚でなければなりません。
 しかるに、漁業全体から見て、共済制度一つをとってみても、その普及状況さえ十分とはいえません。また、加入率も非常に低率であります。この際、これら漁業災害補償制度、漁獲共済、養殖共済制度の抜本的な改正をやるべきであります。
 さらに、白書は、漁業経営の動向に触れ、漁民が前年比で四・四%、この十年間で二五%も減ったと報告しています。特に、重要な日本漁業のにない手たる若年層の流出により、漁村もまた農村と同じように老齢化、女子化が進んでいるのであります。最近の朝日新聞の夕刊紙上のグラビアで、千葉県館山市相浜の老人船団が報じられていますが、何と悲壮ではありませんか。
 このような状態は、いかに漁村における福祉対策がおくれているのかを意味するのであります。漁民年金を一日も早く実現させ、安心して経営ができるような十全の措置によって後継者対策に本腰を入れ、こうした漁業を取り巻く条件の整備をはかるべきと考えますが、これに対しどのように取り組もうとされるのか、総理大臣と農林大臣の御所見をお伺いいたします。(拍手)
 最後に、国際漁業問題に対し、政府にお尋ねをいたします。
 北洋漁業は逐年きびしさを加え、ことしは豊漁年であるにもかかわらず、日ソ間における交渉は難航を重ね、三月一日から始まった漁業交渉が最近ようやく妥結を見、出漁するに至りましたが、ことしは、特にカニの全面規制をはじめ、サケ・マスの禁漁区の拡大など、きびしい情勢の中で、長期にわたって交渉が行なわれてきました。妥結の状況から見て、来年以降はさらにきびしくなると予想されており、その母船団数の現状維持も危ぶむ声さえあります。なぜこのように、交渉を重ねるたびに縮小を余儀なくされるのでありましょうか。
 政府は、日ソ漁業交渉に臨むにあたって、資源問題について、ソ連に十分対抗できるだけの科学的根拠を持っているのかどうか。また、北洋の漁業資源問題については、日ソの共同調査が必要であると考えます炉、御見解を聞かせていただきたいと思います。
 これら一連の問題を含め、わが党は、日ソの漁業関係を根本的に立て直す必要があるとの考えの中から、両国間の平和条約締結がその基本であるとの主張を持っております。それがまた、国民の悲願といわれる北方領土問題をはじめ、安全操業への新しい道あけとなると考えるとき、最も緊急にして重大な問題であると信じます。外務大臣のこれらに対する方針をお示しいただきたいと思います。(拍手)
 また、日中国交回復にみずから中国へ飛び立った田中総理、あなたは近くソビエトへ出かける予定であると聞いておりますが、その際、平和条約締結の方針に基づく具体的な話をされるお考えがありますか、この際、総理の御見解を承っておきます。(拍手)
 次に、日中民間漁業協定についてお尋ねをいたします。
 東シナ海や黄海の漁業資源の捕獲や安全操業などをきめているこの日中民間漁業協定は、六月下旬で期限切れになりますが、これに対し、先ごろ政府は暫定延長の方針をきめたと伝えられていますが、暫定延長とはいつごろまでをさすのか、また、この間全く民間にまかすとの方針であるのか、今後政府間協定への切りかえ問題を含め、農林大臣のお考えをお尋ねいたします。
 さらに、国連の拡大海底平和利用委員会における国際海洋法の制定にあたり、専管水域、領海二百海里を主張する中南米諸国の動きが活発化する中でわが国の態度が注目をされていますが、政府はこれに臨む態度をどのように持とうとされておるのか、担当大臣の見解と所信をお聞きいたします。(拍手)
 以上、私は、ピンチに立ったわが国の漁業をめぐる若干の問題について、政府の見解を求めたのでありますが、国際的な食料問題が再検討を迫られている重大な時期でもあり、国家百年の大計の上に立って、これらの懸案の諸問題に積極的に取り組まれることを強く要求して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#19
○内閣総理大臣(田中角榮君) 島田琢郎君の御質問にお答えをいたします。
 まず第一は、今後の日本漁業のあり方についての御質問でございますが、わが国漁業を取り巻く内外の環境がきびしいものであることは御指摘のとおりでございます。これらの諸情勢に対処するために、沿岸海域においては、公害対策の強化による漁場環境の保全、栽培漁業の積極的な展開等による水産資源の維持増大をはかり、沖合い、遠洋海域にありましては、国際協調をはかりつつ、わが国漁業の実績の確保と新漁場の開発につとめてまいらなければならないと考えております。
 さらに、沿岸漁業構造改善対策の推進や、漁港等漁業生産基盤の整備により、漁業経営の近代化と漁業従事者の福祉の向上をはかってまいらねばならぬと考えます。
 第二は、近海の汚染防止についてでございますが、近海が汚濁せられつつあるということは事実でございまして、政府は、公害対策基本法に基づく環境基準の設定の促進、水質汚濁防止法による排水の規制等公害諸法の効果的な運用をはかることによりまして、浄化、環境の保全をはかってまいらなければならないと考えます。また、必要があれば立法措置も進めてまいりたいと考えます。
 瀬戸内海の問題につきましては、環境庁長官からお答えをいたします。
 それから、水産物の消費者価格の安定についての御質問が第三点でございましたが、生鮮水産物の価格は、近年上昇の傾向が見られるわけでございますが、これは基本的には中高級魚を中心とした旺盛な需要に対し、これに即応した供給が行なわれていないこと、人件費をはじめとする諸経費の増高、流通コストの増大等に原因があるのでございます。政府としましては、栽培漁業の振興や新漁場の開発等生産対策の拡充につとめますとともに、産地市場、消費地市場等の整備や、総合食料品小売センターの設置等小売り段階の改善を総合的に実施してまいりたいと考えるのでございます。
 陸奥湾でのお話がございましたが、原子力船「むつ」に関してでございます。臨界試験、出力上昇試験の実施につきましては、その試験の性質上、静穏な海上で行なうことが必要であるとの観点から、原子力船事業団は、陸奥湾において行なうべく、関係漁民との間に昨年九月来折衝を重ねてまいっておりますが、今日までのところ、漁民の完全了解を得るに至っておらないわけでございます。関係漁民の問題としている原子力船の安全性につきましては、厳重な安全審査を行なっており、また、関係行政機関の監督のもとに行なわれるものでありまして、全く問題はないと考えております。しかし、陸奥湾内にはホタテガイの養殖がかなり広範囲に行なわれておりますので、漁民の了解を得るべく、さらに努力を続けてまいりたいと考えるわけでございます。
 最後に、ソ連との漁業問題、平和条約の問題に対して言及がありましたのでお答えを申し上げますが、わが国漁船のソ連官憲による拿捕等、北方水域における不幸な事件をなくすためにも、北方領土問題を解決して平和条約を締結することが必要であることは申すまでもないのであります。私は、この問題についてソ連首脳と話し合うため、訪問の日程を検討中であります。
 以上。(拍手)
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
#20
○国務大臣(櫻内義雄君) 漁業の生産拡大についてまずお答えをいたします。
 栽培漁業の研究につきましては、三十七年より瀬戸内海で実施してまいりましたが、四十八年よりは、その結果に基づき、さらに日本海側に五カ所の県営栽培漁業センターの設置を助成いたしまして、このような種苗の生産、放流対策を行ないますとともに、あわせて魚礁の設置、その他漁場の開発整備及び増養殖等の施策の推進により、沿岸における水産資源の積極的開発をはかりたいと思います。
 漁業者に対する災害補償その他についてのお尋ねでございますが、船員法の適用されている漁船の乗り組み員に対しましては、船員保険制度により、小規模の漁船乗り組み員、また家族従事者については、労働災害補償制度により対処しておりますが、今後とも漁業従事者の労働災害の補償については、関係省庁との緊密な連携のもとに、充実をはかり、その福祉の向上につとめてまいりたいと思います。
 漁業共済制度についてのお尋ねでございますが、三十九年発足以来、数次の制度改善により事業規模を拡大いたしましたが、漁業の実態の変動もあり、現行の仕組みに種々問題が生じておりますので、目下学識経験者による漁業共済制度検討協議会で検討しており、漁獲共済については、近くその結論が出される予定でございますので、早急に法律改正を含む所要の措置をとることにしております。
 養殖共済についても、検討の上、必要に応じ改善措置を講じたいと存じます。
 漁業者を対象とする特別の年金制度の新設でございますが、農業者年金は、農業の実態から農業構造の改善に役立てるための施策の一環として行なわれてまいりましたが、漁業は農業と事情を異にしておりますので、漁業者にも同様の制度を設けることは、なお慎重に検討いたしたいと思います。
 漁船乗り組み員の年金をできるだけ充実をはかることに、関係省庁との密接な連携をとって、つとめてまいりたいと思います。
 サケ・マス、ニシン、タラ、カニ等の北洋漁業についてでございますが、お話しのように、資源保存のための国際条約による規制措置が講ぜられておりますが、わが国としては、条約締結、改定にあたっては、科学的な資源評価に基づく合理的な規制のもとに操業が確保されるよう努力しておる次第でございます。また、今後さらに、サケ・マスの日ソ共同の人工増殖の実現をはかる等、関係各国との協調をとりながら、資源の拡大についても一そうの力を入れてまいりたいと思います。
 日中間における漁業についての実務協定につきましては、現行民間協定の期限が六月に切れますので、中国側の意向等を十分考慮の上交渉を行ない、わが国の漁業の安定した操業を確保する考えでございます。(拍手)
  〔国務大臣三木武夫君登壇〕
#21
○国務大臣(三木武夫君) 島田君にお答えをいたします。
 第一点は、瀬戸内海の汚染についてであります。環境庁においても、昨年度四回にわたって、瀬戸内海の水質調査あるいは汚染物質、プランクトンの総合調査を行なったわけです。やはり瀬戸内海はだんだんと汚染されていっておる。これは、調査の結果をいま取りまとめ中でありますが、この結果に基づいて、瀬戸内海の環境保全のためのマスタープランをつくりたいと思っておるわけでありますが、とにかく、いまにしてこれはもう非常に強力な施策を推進しなければ、美しい瀬戸内海は返ってこない。したがって、われわれとしても、この機会に、瀬戸内海浄化のための強力な施策を推進していきたいということであります。
 そのために、必要ならば特別立法も考慮するという考え方でございます。それには、やはり一つには、工場の排水などに対する規制を強化しなければいけない、あるいはまた、総量規制などを含めて規制を強化していく、あるいは船舶の油に対して、いろいろな問題を起こしておりますから、油に対する規制、廃棄物に対しての規制、こういうことばかりでなしに、一方においては埋め立てとか、産業立地に対しての再検討もやはり必要であります。また、下水の整備等も必要である。とにかく、瀬戸内海をきれいにするためには総合的な施策を行なわなければ、ただ一つだけできれいになるというわけでありませんので、これは、全国民的な願望でもありますので、この問題は各位の協力のもとに、瀬戸内海をもう一ぺんきれいにしようということを推進をしていきたい考えでございます。
 第二点は、三島港の埋め立てについての御質問でありましたが、これは、知事が埋め立ての免許をするときに、周辺の水質に対して悪い影響を与えないという条件を付して免許を与えておるわけですから、やはりその条件は守らなければいかぬ。条件だけはただ黙って聞いておって、それを実行しないということでは、これは汚染は防止できないわけでありますから、われわれとしても、その条件の履行をこれから監視したい。また、いろいろな埋め立て地の利用についても、瀬戸内海全体の環境保全の見地から、さらに検討を加えたいと思っておる次第でございます。この問題にも、われわれも重大な関心を持っておるということでございます。
 お答えといたします。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#22
○国務大臣(大平正芳君) わが国は、漁業ばかりでなく、海運、海底資源の開発等あらゆる面で大きく海洋に依存しております。かかる見地から、国連拡大海底平和利用委員会と、これに続く第三次海洋法会議は、わが国にとりましてきわめて重要な国際会議であると承知いたしております。
 近時、海洋に関する沿岸諸国の権利主張が強まっております。とりわけ、御指摘のように、漁業にとりましては、二百海里に及ぶ広範な、排他的な水域を求めつつある主張があらわれてきております。そういう国際情勢でございますので、わが国がみずからの権利を守ってまいりますためには、たいへん困難な問題に対処をしいられることになるだろうと覚悟をいたしております。
 政府としては、来年春、チリで開催される予定の第三次海洋法会議に周到な準備をいたしまして国際協調のもと、海洋法会議が建設的な成果をもたらすことになるよう、積極的に対処してまいりたいと考えております。
 なお、日ソ平和条約につきましては、総理大臣から御答弁がありましたとおりでございます。(拍手)
#23
○議長(中村梅吉君) 中川利三郎君。
  〔中川利三郎君登壇〕
#24
○中川利三郎君 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、四十七年度漁業の動向に関する年次報告、いわゆる漁業白書について、総理並びに関係大臣にお聞きするものであります。
 御承知のとおり、国民は、動物性たん白の五二・四%を水産物に依存しており、わが国漁業の動向は、全国民の暮らしと健康にとって切実な影響を持つものであります。
 したがいまして、私は、わが国漁業、とりわけ沿岸漁業の民主的、総合的発展をはかる立場から、まず第一にお聞きしたい問題は、大企業の工業開発によって深刻化する一方の沿岸海域の汚染、漁場環境の破壊についてであります。
 昨年の夏、瀬戸内海において、わずかの間に千四百万尾のハマチが赤潮のために死滅するという事件が起こりましたが、いまや、わが国の沿岸海域は、臨海工業の汚水、船舶の廃油あるいは埋め立てなどでよごれによごされ、それによって生じた漁業被害は、白書の控え目な数字によってさえ、昭和四十四年には百八十三億円以上と推定され、さらに汚染の進んだ昨年は、その数倍に達するといわれているのであります。
 これらの深刻な事態は、田中総理、あなたを含めた歴代自民党内閣の大資本優先政治の結果ではありませんか。(拍手)あなたは、それにどのような責任を感じていますか。
 わが党は、沿岸漁民の経営と暮らしを守るため、これまでも沿岸漁業政策、日本海政策、瀬戸内海政策など、次々と発表してまいったのでありますが、わが党は、まず、沿岸漁場をよごす大企業に対し、その一つに、PCB、水銀、ヘドロなど有害物質を排出させない。その二つに、排水を濃度と総排出量で規制し、公害を発生源で押える。三つに、被害補償と原状回復を義務づける。これらの対策が必要だと考えるのであります。また、沿岸漁場の埋め立てなどはどうしても押えなければなりません。
 田中総理、あなたがもしもほんとうに沿岸漁民の経営や国土の保全をまじめに考えるならば、直ちにこのような対策を実施するべきだと思いますが、どうか。
 また、政府は、独占資本の利益のため、沿岸海域のよごれを進める一方、第二次漁業構造改善事業を推進しておるのでありますが、これは、大企業がすでによごした海域や、企業が新たに立地しようと目をつけている地域は、おしなべて漁業不適地のらく印を押しまして、国と自治体の漁業への一切の助成を打ち切るというものであります。
 総理、あなたは日本列島改造論の中で、まず、工業用地その他大資本のための土地を確保し、その残りの土地で農業を行なうという、あの悪名高い残地農業論を主張していますが、この第二次漁業構造改善こそは、まさに残地農業論の漁民版ではありませんか。あなたが改造論の中で漁民については一言も述べていないのは、漁民の苦しみに対して何も感じていないことを証明したものであると思うのであります。
 質問の第二は、米軍と自衛隊による漁場の使用と漁民の被害の問題であります。
 リマ海域や沖繩、そして秋田湾沖を含む日本海などをあげるまでもなく、米軍、自衛隊による海上合同演習の強行によりまして、わが国の漁業が絶えず危険にさらされ、多くの被害を受けているのであります。昨年、瀬戸内海におきましても、広島県呉市の沿岸漁民が、このため、二百四十日以上にわたって海面使用制限を受け、四月には、米軍がベトナムから持ち帰りましたコバルト六〇で漁場がよごされ、六月には、サワラ流し網が米軍弾薬輸送船によって切断されているのであります。国民にとって、このように重大な米軍と自衛隊による漁業権の制限や被害について、漁業白書がそれに一言も触れていないのは、まさに言語道断であります。(拍手)
 公害によって沿岸漁業が危機におちいっているのに、それに拍車をかけるような米軍、自衛隊による漁場荒らし、漁民いじめは断じて許すことができません。(拍手)米軍、自衛隊の海上演習は直ちに中止すべきであります。
 また、この機会に政府は、公海を含めまして、米軍や自衛隊の演習等に使用させている海域はどことどこで、その面積はどれくらいあるのか。さらに、基地、演習場ごとに、漁民の補償要求の総額と、実際に支払われた金額について明らかにすべきであります。
 これまで、この問題について、日本共産党・革新共同は、再三にわたって資料要求したにもかかわらず、その全貌を明らかにしていないことはきわめて不当であり、強く抗議すると同時に、今後の白書には、このような実態を記載すべきことを強く要求するものであります。(拍手)
 また、このような漁場制限や漁業被害をもたらしているその根っこには、日米安保条約があります。そればかりか、政府はリマ海域など、安保条約によっても提供義務のない公海区域を、米軍、自衛隊に提供するという屈辱的な態度をとっています。リマ海域など公海上の演習場は直ちに撤去すべきであります。そして、日本の海を平和の海にするため、安保条約は破棄すべきであると思いますが、総理並びに各大臣の答弁を求めるものであります。(拍手)
 質問の第三は、沿岸漁業の正しい発展についてであります。
 政府は、とる漁業から育てる漁業を宣伝して、漁業政策の目玉として、栽培漁業を積極的に展開するといっております。しかし、政府のいう栽培漁業は、沿岸漁業全体をそれぞれの海域の特性に合わせ、総合的に発展させようとするものではなくて、きわめて部分的限定的なものであります。しかし、それさえも、瀬戸内海栽培漁業センターの実績が示すとおり、これまで十年間も種苗の生産、放流に取り組みながら、たとえば、クルマエビの漁獲量は年々減っているなど、白書も、その成果については触れることができないほどみじめな状態になっています。
 わが党は、このようなこそくなやり方ではなく、まず第一に、沿岸に広範な漁業の保護水域を設定し、よごれた漁場を浄化して、自然の生産力を最大限に利用できるようにすることを主張しているのであります。そうして、政府のやっているよりははるかに大規模な魚礁帯を設置し、根づき魚、回遊魚の寄りつく環境をつくること、さらに、海域と水族の生態系に応じ、真に地域の沿岸漁業を総合的に発展させるための試験研究体制の整備と、自主的、民主的研究の推進が必要であると考えるがどうか、答弁を求めるものであります。
 質問の第四は、わが国漁業全体のつり合いのとれた発展をかちとるために、どうするかという問題であります。
 白書によっても、わが国漁業に占める遠洋漁業の比重は年々大きくなり、それに反して、沿岸漁業はますます小さくなっています。戦前において全漁獲量の七五%を生産した沿岸漁業も、四十六年には二五%に落ち込み、逆に、戦前わずかな比重しか占めなかった遠洋漁業が、四十六年には三一%を占めるに至っています。これは、日本漁業が、歴代自民党政治の手厚い援助のもとで大漁業資本中心に発展してきたことを示すものであります。しかもその遠洋漁業は、鯨やマグロに見られるように、資源乱獲によって国際的な非難を受けているのであります。これではどう見ましても、日本漁業の正しい、つり合いのとれた発展の姿とはいえません。
 わが党は、沿岸漁業の総合的な発展をはかると同時に、国際環境がきびしさを加えつつある遠洋漁業については、大漁業資本による資源の乱獲をきびしく規制するとともに、アジア、アフリカ、中南米諸国など、沿岸諸国との間に、平等互恵の立場で漁業協定を結ぶなど、これまでの反省の上に立った政策をとるべきであると考えるが、どうか。
 また、日、米、カナダ、三国漁業条約に見られるように、アメリカなどに対しては、わが国だけが自発的に漁獲を押えるなどという屈辱的な漁業外交を直ちに再検討し、対等、平等互恵の立場から漁業条約を締結し直すべきであると思うが、どうか。
 さらに、北方水域の安全操業の問題については、漁民が安心して操業できるよう、日ソ平和条約の締結促進はもちろん、その前にも、一日も早く漁業協定を結ぶ必要があると考えるものでありますが、総理並びに関係大臣の答弁を求めます。
 質問の最後は、国民の台所に水産物を安く豊かに供給し、生産者である漁民はもとより、流通関係で働く人々の利益をはかる民主的な流通改善の問題についてであります。
 政府は、価格対策として、流通の合理化を万年
 一日のように繰り返しているのでありますが、水産物価格は年々上がる一方であります。この十年間の推移によりましても、マグロで三倍以上、大衆魚であるところのイカやアジで五倍以上となっているではありませんか。一体なぜこのように魚が高くなったのか。
 それは、生産コストの上昇もありますが、とりわけ、流通を支配している漁業独占資本の利潤追求が野放しにされてきたためではありませんか。(拍手)全国流通の六〇%以上を占める六大都市の中央卸売市場を牛耳っているのは、言うまでもなく大洋、日水、日魯など漁業独占資本の系列下にある卸売り会社であります。いま必要なことは、政府のいうカッコづきの合理化ではなくて、流通の民主化、すなわち、流通を支配する大資本の規制そのものではありませんか。
 わが党は、中央卸売市場の開設と運営管理の権限を地方自治体に大幅に移し、市場運営協議会を、消費者、生産者、加工業者、市場関係者などによって民主的に構成し、卸売り業者による投機的価格操作をきびしく規制するなどによりまして、真に市場取引の民主化を実現しなければならないと考えるものであります。
 政府は、このような流通民主化政策を実行する意思があるかどうか、はっきり答えてください。(拍手)
 また、価格決定に一段と重要な役割りを果たすようになっている生産地市場でのマグロの一船買い、タラコ隠しあるいはエビ隠しなどに見られる大企業の投機行為が行なわれていますが、これを規制するとともに、政府が産地仲買い人の共同化を援助し、また、漁業協同組合に対しても、冷蔵、冷凍、加工などの事業への援助を強めるべきであります。これこそ、国民に新鮮な水産物を安く供給し、あわせて流通関係に働く人々の利益を守る抜本的な政策であります。
 以上、わが党は、わが国の漁業を、働く漁民と消費者の立場に立って、総合的に発展させるためには、大資本奉仕と対米従属の水産政策、漁業政策を根本的に転換させる以外に道はないと確信するものであります。(拍手)この立場から、国民に納得のいく答弁を要求して、私の質問を終わるのであります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#25
○内閣総理大臣(田中角榮君) 中川利三郎君にお答えをいたします。
 まず第一問は、海洋汚染の防止及び沿岸漁業の振興についてでございますが、政府は、沿岸海域の水質汚濁防止について、海域にかかる環境基準の当てはめを促進いたしますとともに、その維持達成のために、地域の実情に応じた上のせ排水基準を設定し、きびしい排水規制を行なうよう指導しておるのであります。
 また、沿岸漁業の振興のため、漁場環境の保全につとめるとともに、漁業生産の増大と生産性の向上をはかっておるのであります。
 具体的には、一つには漁港等漁業生産基盤の整備、二つには栽培漁業の積極的な展開、三つには漁業公害対策の強化、四つには沿岸漁業構造改善事業の推進、五つには漁業金融の拡充等を推進をしておるわけでございまして、以上申し上げたようにやっておるわけでございます。
 第二は、演習による漁場の制限により、漁民が多大の被害を受けておるという御指摘でございますが、わが国は、安保条約の精神に基づき、日本の近傍において米軍の演習を認め、関係漁業者に漁業補償等、所要の救済措置を行なっておることは御承知のとおりでございます。
 第三点は、海外漁業の安定的発展策についてでございますが、わが国は、年間漁獲量一千万トン余、世界における最大の漁業国であることは御承知のとおりでございます。しかし、わが国海外漁業の安定的発展をはかるためには、従来からの公海自由の原則のみでは対応できず、関係国との漁業協力を推進し、相互に漁業の発展をはかるという基本的立場で対処することが必要となってまいりました。
 このため、各国に対するわが国の立場についての理解を深め、国際漁業交渉の場におけるわが国の対処に十全を期してまいりたいと考えておるのであります。特に、発展途上国に対する海外漁業協力を、円滑に実施する体制を整備することも必要でございます。このように、関係国との相互理解及び共存共栄の立場のもとで、わが国漁場の確保をはかってまいりたいと考えております。
 残余の問題に対しては、農林大臣から答弁をいたします。(拍手)
  〔国務大臣増原恵吉君登壇〕
#26
○国務大臣(増原恵吉君) お答えをいたします。
 わが国周辺の水域、これは領海及び領海外の周辺を含むわけでございますが、この地域の在日米軍の訓練のために使用をする区域は、全周辺において二十三カ所、本土が十三カ所で、沖繩が十カ所ございます。こういう水域において訓練をいたすわけでございますが、これが領海のみならず、公海においても設定をされておるのはどういうことかという御質問でございましたが、公海におきましても、こういういわゆる提供水域、そこでいろいろな演習を行ないまするためには、危害防止の必要上、区域をあらかじめ設定をし、演習のありまするたびに公示をいたしまして、災害の防止の万全を期するという必要があるためでございまして、公海における水域の提供についても、その必要を認めておるわけでございます。
 こういう水域の使用は、ただいま総理大臣からも申されましたように、わが国の防衛及び安保条約の目的遂行のために必要なものでございまして、こういう水域を撤廃をすることは適当と考えておりません。しかし、その水域は必要最小限度に限ることといたしておりまして、船舶の航行の安全なり、漁業の保護につとめることを方針としておりまして、絶えずその縮小をはかってきておるところでございます。
 演習水域の使用に伴いまして、漁業関係者がその経営上こうむる損失につきましては、自衛隊法または漁船の操業制限法等により、適正に補償を行なっておりまして、また、防衛施設周辺整備法によりまして、漁業施設の整備に対する補助を行なって、漁業関係者の事業経営の安定に資しておるところでございます。(拍手)
  〔国務大臣三木武夫君登壇〕
#27
○国務大臣(三木武夫君) 中川君にお答えをいたします。
 漁業を守るために、漁業海域汚染を食いとめなければならぬということは、これは言うまでもないわけであります。そのためには、先ほども申し上げましたように、たとえば、工場の立地とかあるいは埋め立てとか、こういうものに対して十分に事前のチェックが必要である。また、既設の工場に対しては、工場の廃棄物に対して、あるいはまた排出物に対して、規制を強化していくよりほかにない。実情に即して、そして規制を強化していく。あるいはまた、下水道を整備することによって、家庭から出る排水を浄化するということも必要でありましょうが、要は、結局は、環境容量の中でなければ開発は認めない、こういう方針のもとに、環境の保全をはかっていきたいと考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
#28
○国務大臣(櫻内義雄君) 公害との関連で、構造改善事業についてのお尋ねでございました。
 最近における公害等による漁場環境の悪化の現状にかんがみまして、公害関係諸法令の厳正な運用により、水質規制等を強力に推進し、また、公害等で生産力の低下した漁場におけるしゅんせつ、耕うん等の事業による漁場機能の回復をはかり、さらに漁業公害に関する調査研究の強化等を進め、沿岸漁業構造改善事業の効果的実施をはかっているところでございます。
 栽培漁業について、いろいろ御所見を加えてのお尋ねでございますが、私どもは、瀬戸内海の成功にかんがみまして、四十八年には日本海海域に五カ所の県営栽培センターを設置いたしますが、その他の海域についても、逐次施設の設置をはかり、実情に即した栽培漁業の積極的な推進をはかってまいりたいと思います。
 遠洋漁業についていろいろ御批判でございますが、約一千万トンに及ぶ多種多様の水産物需要に応じて供給を確保する見地からは、沿岸漁場の資源的制約もあって、沿岸漁業の生産のほか、沖合い、遠洋漁業の生産に依存せざるを得ないのはもとよりだと思います。
 また、沿岸海域におきましては、漁場環境の保全につとめつつ、栽培漁業の積極的な展開をはかってまいり、漁港等の生産基盤の整備、漁業経営の近代化等の施策を強力に進めて、沿岸漁業の振興につとめたいと思います。
 水産物価格の安定について申し上げたいと思います。
 消費地市場の計画的整備や総合食料品小売センターの設置等、小売り段階の近代化はもとよりでございますが、拠点的産地における流通加工施設の総合的整備を計画的に促進し、産地と消費地間の入出荷の計画化、合理化、情報機能の強化等により流通コストの低減をはかってまいり、水産物の価格の安定に寄与いたしたいと思います。(拍手)
#29
○議長(中村梅吉君) これにて質疑は終了いたしました。
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#30
○議長(中村梅吉君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時五十一分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  田中 角榮君
        外 務 大 臣 大平 正芳君
        農 林 大 臣 櫻内 義雄君
        通商産業大臣  中曽根康弘君
        自 治 大 臣 江崎 真澄君
        国 務 大 臣 前田佳都男君
        国 務 大 臣 増原 恵吉君
        国 務 大 臣 三木 武夫君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 吉國 一郎君
        通商産業省公益
        事業局長    井上  保君
ソース: 国立国会図書館
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