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1972/06/26 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 本会議 第46号
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1972/06/26 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 本会議 第46号

#1
第071回国会 本会議 第46号
昭和四十八年六月二十六日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四十二号
  昭和四十八年六月二十六日
    午後一時開議
 第一 議員小林政子君懲罰事犯の件
 第二 漁船損害補償法の一部を改正する法律案
    (内閣提出)
 第三 漁船積荷保険臨時措置法案(内閣提出)
 第四 水産業協同組合法の一部を改正する法律
    案(内閣提出)
 第五 地方公営交通事業の経営の健全化の促進
    に関する法律案(内閣提出)
 第六 国有財産法及び国有財産特別措置法の一
    部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 議員小林政子君懲罰事犯の件
 日程第二 漁船損害補償法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
 日程第三 漁船積荷保険臨時措置法案(内閣提
  出)
 日程第四 水産業協同組合法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 日程第五 地方公営交通事業の経営の健全化の
  促進に関する法律案(内閣提出)
 日程第六 国有財産法及び国有財産特別措置法
  の一部を改正する法律案(内閣提出)
 PCB、水銀汚染等に関する緊急質問(林義郎
  君提出)
 PCB、水銀汚染等に関する緊急質問(土井た
  か子君提出)
 PCB、水銀汚染等に関する緊急質問(中島武
  敏君提出)
 PCB・水銀汚染問題等に関する緊急質問(瀬
  野栄次郎君提出)
 水銀・PCB汚染問題に関する緊急質問(小宮
  武喜君提出)
    午後一時五分開議
     ――――◇―――――
#2
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 議員小林政子君懲罰事犯の件
#3
○議長(前尾繁三郎君) 日程第一、議員小林政子君懲罰事犯の件を議題といたします。
 小林政子君の退席を求めます。
  〔小林政子君退席、拍手〕
#4
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。懲罰委員長早稻田柳右エ門君。
  〔早稻田柳右エ門君登壇〕
#5
○早稻田柳右エ門君 ただいま議題となりました議員小林政子君懲罰事犯の件につきまして、懲罰委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本件は、去る四月二十六日の物価問題等に関する特別委員会において、小林政子君が田中内閣総理大臣に対して行なった質疑に関して、木部佳昭君外六名から懲罰動議が提出せられ、去る五月十日の本会議において本動議が可決され、懲罰委員会にその審査を付託されたものであります。
 委員会といたしましては、議員の一身上に関することであり、本件が特に委員会における議員の発言内容に関するものでありますので、議院における言論自由の原則と議院の秩序を乱した場合の懲罰権との関連性に重点を置き、十分時間をかけ、慎重に審査をいたしました。
 審査の経過といたしましては、五月三十日、動議提出者大村襄治君から懲罰動議の趣旨説明を聴取し、翌三十一日、本人小林政子君から身上弁明を聴取いたしました。引き続き、六月六日、十三日、二十日と動議提出者大村襄治君及び坂村吉正君に対し質疑を行ない、また、六月二十日には本人小林政子君の出席を求め、質疑を行ないました。
 一方、六月十一日には、問題となっております群馬県利根郡月夜野町の現地に委員を派遣し、その実情を見聞する等、きわめて熱心かつ真摯な態度で慎重審議を行ない、六月二十日質疑を終了いたしました。
 かくして、六月二十三日の委員会において、本件につき懲罰事犯として懲罰を科すべきかどうか、及び懲罰を科することとすれば、国会法第百二十二条に規定するいずれの懲罰を科すべきかについて意見を求めたところ、まず、自由民主党の稲村利幸君から、小林君の発言は、一国の総理大臣に対して礼を失した無礼の言であって、国会法第百十九条の規定に反するばかりでなく、議院の品位尊重に関する衆議院規則第二百十一条の規定に反して議院の尊厳を傷つけたものであって、議院の秩序を著しく乱したものと考えられるとの理由により、本件は、これを懲罰事犯として、国会法第百二十二条第三号により、二十日間の登院停止を命ずべしとの動議が提出せられました。
 また、日本社会党の田邊誠君から、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表して、小林君の発言は、物価政策に関する基本問題に関連する質問であって、日本列島改造論が提唱されて以来、土地の高騰は著しく、新幹線通過地域等においてこれにまつわるうわさが流布されていることなどから、政府の土地政策と田中内閣総理大臣の政治姿勢をただそうとしたのがその本旨であり、たまたま総理と親友の関係にある人が上越新幹線通過地点に土地を買っていることに関しての疑惑について問いただすことも必要であったと思うし、また、委員会での限られた質問時間の中における発言であるから、不十分な点や若干前後の事情が不明な点があったとしても、これは質問技術上の問題として許容されるべきものであり、このように議員の当然の権利として、国民を代熱する立場で行なわれた小林君の発言に対し懲罰を科するということは、今後の国会における発言権の重大な制約となるものであるという見地から、断じて懲罰事犯と認めるわけにはいかないとの理由によって、本件は懲罰事犯にあらずと決すべしとの動議が提出されたのであります。
 次いで、両動議を一括して討論に付しましたところ、まず、自由民主党の羽田野忠文君から、稲村君の動議に賛成し、田邊君の動議に反対する旨の意見が述べられ、また、日本社会党の中村茂君、日本共産党・革新共同の東中光雄君、公明党の坂井弘一君及び民社党の玉置一徳君から、それぞれ田邊君の動議に賛成し、稲村君の動議に反対する旨の意見が述べられました。
 討論の内容につきましては、いずれも国権の最高機関たる国会における議員の発言の保障と議院の品位尊重並びに秩序保持の観点から、傾聴すべき御意見が述べられましたが、時間の関係もありますので、その報告は割愛させていただき、会議録によって御承知を願いたいと存じます。
 かくて、討論を終局し、採決いたしました結果、多数をもって稲村利幸君提出の動議のごとく、本件はこれを懲罰事犯として、国会法第百二十二条第三号により、二十日間の登院停止を命ずべきものと決した次第であります。
 以上、御報告を申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(前尾繁三郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。東中光雄君。
  〔東中光雄君登壇〕
#7
○東中光雄君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となりました小林政子議員の懲罰に強く反対するものであります。(拍手)
 以下、その理由を述べたいと思います。
 御承知のように、小林議員の発言は、去る四月二十六日、本院物価問題特別委員会において、上越新幹線上毛高原駅の決定と、これにからむ土地買収をめぐる疑惑について、事実に基づき、田中総理に政治姿勢をただしたものであります。国会議員が、国民の要求や疑惑を取り上げ、これを国会で追及することは、議員として当然の権利であり、義務でさえあります。
 ところが、自民党の諸君は、この小林質問に対し、推測に基づき事実に反する発言であるとの言いがかりをつけ、懲罰委員会に付したのであります。
 だが、懲罰委員会での審議の結果、明確になり浮き彫りにされたことは、小林議員の発言が何ら懲罰に値するものではなく、逆に自民党諸君の言い分こそが全く理不尽であり、党利党略に基づくこじつけ以外の何ものでもないことが明白になったのであります。(拍手)もし自民党の諸君が事実と道理を重んじ、言論の自由と国会の権威を尊重することを真剣に考えるのであるならば、いまからでもおそくはありません、いさぎよくこの懲罰動議を撤回するよう勧告するものであります。(拍手)
 まず第一に、自民党の主張する懲罰理由は、懲罰委員会の審議を通じてことごとく崩壊しておるのであります。
 なぜなら、自民党のいう懲罰理由は、要約すれば、上牧荘買収土地の駅からの距離の指摘が誤っており、その面積が事実に反し、時期から見て、田中総理とこの土地買収は無関係であるという三つの点に尽きるのであります。
 ここで明白になっていることは、自民党の当初の主張に反して、まず何よりもこうした土地買収がなかったものではなくて、あったということであります。(拍手)
 ところで、小林議員が土地の所在地を、駅から一・五里を一・五キロとあやまって説明したとしても、そのことをもって自民党の主張するように、新幹線予定地周辺の土地買収の事実そのものを否定することはできないこと明白であります。(拍手)新幹線の停車駅決定とこれに関連した土地買収、これを無視、軽視することこそ、土地買占めを当然視する大資本本位の自民党の感覚をみずから暴露したものにほかならないのであります。(拍手)
 さらに、田中総理との関係についていえば、田中総理が中心になって進めた上越新幹線構想の進展と上牧荘の土地買収の時期は完全に符合していることであります。これは動議提出者も委員会でついに認めざるを得なかったのであり、田中総理がみずからも述べているとおり、新設駅の至近距離にある温泉郷上牧荘の経営者入内島氏と総理は深い仲にあることからいって、また、この上越新幹線計画と駅決定について、田中総理の当時の重要な地位との関係からいって、付近住民の中に疑惑が生まれてきたことも決してふしぎではないのであります。
 しかも、かつて荒舩清十郎氏が、上越新幹線駅の決定は、田中角榮氏と福田赳夫氏、それに荒舩氏の三人できめたという発言をしておるのであり、これで地元住民が疑惑を持たなければ、それこそふしぎというほかはないのであります。(拍手)
 小林議員は、まさにこのような住民の疑惑を取り上げ、これをただし、総理の政治姿勢を問うたものであります。
 国民の疑惑を取り上げ、これをただすことは、繰り返し強調いたしますが、これは国会議員の当然の権利であり、国民に対する義務であります。
 もし、田中総理にやましいところがないならば、その旨を冷静に答えればよいのであり、懲罰をもって議員の言論を抑圧する挙に出るがごときは断じて許されないところであります。(拍手)
 国会は、国権の最高機関であり、国政審議の場であります。為政者に不都合な、あるいは気に食わない発言だからといって、懲罰をもって議員の発言を規制するがごとき態度は、国会の自殺行為、民主主義の否定に通ずるものといわなければなりません。(拍手)
 いま、田中内閣の大資本中心の政治のもとで、国民の生活破壊はいよいよ深刻となっており、自民党政治に対する不満と不信、疑惑は日ごとに高まっております。とりわけ、大商社による商品の買占め、大資本の土地投機と地価の暴騰、公害の深刻化と、とめどもない物価高、その悪政に対する国民の怒りは、ますます広く深くなっておるのであります。
 小林質問は、こうした自民党政治のもとで日々苦しんでいる庶民の立場から、衆議院物価問題特別委員会委員として、国民の思っていること、問いただしたいと願っていることを、事実に基づき率直にただしたものであります。この質問は、院の品位を汚すどころか、逆に国会の威信を高めるものであり、そのような国民の立場に立った質疑が行なわれることこそ国民は期待しておるのであります。(拍手)
 自民党の諸君は、国会の中においては、あるいは小林議員を懲罰にすることができるかもしれません。しかし、どのような暴挙も、自民党と田中内閣の政治に対する国民多数の批判と疑惑、民主主義そのものを懲罰に付することは断じてできないのであります。(拍手)
 自民党田中内閣の立場と、小林政子議員の立場と、そのいずれが真に国民的正義の立場にあるかは、国民みずからがその自由な意思によって、遠からず明確な審判を下すでありましょう。国民の多くは、小林議員が、国民の生活を守るための先頭に立って戦ってきた国民の真の代弁者であることを必ず明らかにし、自民党と田中内閣の政治姿勢に一そうきびしい批判を集中することは、もはや明らかであります。
 わが党は、今後とも、いかなる圧迫や圧力にも屈せず 言論の自由、議会制民主主義を守り 自民党政治のもとで苦しんでいる国民の立場に立って、断固として戦うことをここにあらためて表明するものであります。(拍手)
 以上、私は、本懲罰に反対する理由を簡単に申し述べました。
 私は、全野党の諸君が、委員会において本件は懲罰にあらずとの見解を示されたことに心から敬意を表しつつ、同僚各位が民主主義の擁護と、院の権威を守るため、本懲罰案件を否決されんことを切に期待して、討論を終わります。(拍手)
#8
○議長(前尾繁三郎君) 粕谷茂君。
  〔粕谷茂君登壇〕
#9
○粕谷茂君 私は、自由民主党を代表いたしまして、委員長の報告に賛成をいたすものであります。(拍手)
 去る四月二十六日、議員小林政子君の物価問題等に関する特別委員会における田中総理に対する質問のうち、国会における発言としてはきわめて不穏当な発言があり、これは、国会法及び衆議院規則に抵触し、懲罰の対象となることは明らかであります。
 以下、その理由を申し上げます。
 その第一の理由として、事実関係についてであります。
 小林政子君の発言が事実と全く異なり、不正確きわまりないものであり、議員各位はもとより、マスコミを通じ、国民の大多数に大きな誤解を招いた点であります。
 すなわち、小林君の質疑に対して、総理が、事実に反していると再三にわたり否定していたにもかかわらず、自己の調査の結果を主張して譲らず、その上、総理大臣にあたかも疑惑があるがごとく歪曲し、発言したのであります。
 小林君は、物価問題等に関する特別委員会において、新幹線や高速道路または地域開発計画などが、周辺地域の地価急騰の起因であるとして、この問題を取り上げ、「計画が発表される以前に情報をいち早くキャッチして、その地域を資金を持っている者が買い占めていく」云々と発言しております。続けて、「上越新幹線の上毛高原駅が発表になった昭和四十六年の十月以前に土地が相当あの近辺で買われているという事実が、私の調査によっても明らかになっております。その土地は上毛高原駅からわずか一・五キロメートル以内の山林、原野、ここが具体的に昭和四十三年から四十四年にかけて、群馬県利根郡のいわゆる月夜野町の字石倉地区という地域が相当土地を買われているわけでございます。」云々と前置きをして、総理が当時の政治的地位を利用し、あたかも友人をして、上越新幹線計画の発表前に、上毛高原駅予定地の付近に土地を買収させているかのように発言し、さらに、そのようなことをやらせていてはと、小林君は断定したのであります。このことは、小林君が再三事実であると主張したにもかかわらず、懲罰委員会の実態調査の結果に見ても明らかなごとく、小林君の主張する一・五キロ以内に、土地の買い占めが行なわれた形跡は全く見当たらないのであります。
 また、石倉地区に相当土地を買ったとの発言も、約一千六百二十九平方メートル、坪数にして四百九十三坪の地続きのがけ地にすぎなかったのであります。
 かくのごとく、小林君の発言内容は事実と全く相反しているのであります。(拍手)この種の事実関係に基づく質疑にあたっては、事前に十分なる調査を行ない、実態を十二分に把握し、問題の理解を深めてから、ただすべきはただすということでなくてはなりません。このことは、議員の質疑にあたっての初歩的心得であるともいえるのであります。(拍手)今日に至るも小林君は依然として反省をすることなく、ただ、ためにせんがための意図的議論を繰り返し、自己の弁護に終始し続けているのであります。国会議員を侮辱し、国会の権威を傷つけ、品位を失墜させた責任はまことに重大であるといわなければなりません。(拍手)
 第二の理由には、小林君は、わが国を代表する内閣総理大臣に対する質問と称し、事実に基づかず、作為的な発言により、その名誉をはなはだしく傷つけ、その上、広く国民から政府及び政治に対する不信を招いた点であります。
 すなわち、小林君は国会の場を通じ、事実を十分確かめもせず、あたかも田中総理が、当時の地位を利用し、友人に土地の買い占めをさせ、それに加担しているがごとく事実を歪曲し、発言したことは重大なことであります。このことは決して見のがすことはできないのであります。
 そもそも、一国を代表する総理の政治姿勢を問うということであるならば、なおさらのこと事実関係を正確に把握し、論拠を明らかにしてただすべきであったと思います。
 小林君の記者会見の発言に基づき、新聞は次のように報道をいたしております。二万四千ヘクタールの土地が買い占められていると。二万四千ヘクタールの面積とは、どのくらいの広さであるかといえば、まさに東京都二十三区の面積の約二分の一に相当する膨大な広さであります。そんな土地を買い占めた事実は、現地の調査の結果どこにも見当たらないのであります。この一事をもってしても、田中総理を誹謗、中傷する意図的発言であったことがうかがい知ることができるのであります。総理が置かれている政治的立場から判断しても、国の内外に与える悪影響は甚大であり、国家、民族に及ぼす損失もまたはかり知れないものがあるといわなければなりません。
 第三の理由には、個人の私生活にわたる発言を行ない、その人の名誉を傷つけ、社会的信用をも失墜させた責任をわれわれは重視するものであります。
 すなわち、物価問題等に関する特別委員会において、小林君は、事実に反した質問によって、上牧荘の経営者入内島氏を名ざして、同氏が田中総理の友人であるがゆえに、その立場を利用し、あたかも土地の買い占めを行なっているがごとき発言をし、これがそのまま国民に広く知らしむるところとなったのであります。これに対し、入内島氏が、五月十日に東京地方検察庁に、小林君の発言した趣旨と同様な、あたかも土地買い占めの張本人であるがごとき記事を掲載した赤旗編集局長及び記者を、名誉棄損で告訴したことによっても、いかに大きな迷惑をこうむっておられるかは火を見るよりも明らかであります。
 国民は、議員の院内における発言に対して、反論の機会はほとんど閉ざされているにひとしいのであります。それゆえに、この種の発言をいたす場合には、慎重な上にも慎重なる配慮をいたさなければならないと思います。今回のごとき小林君の発言を黙視するならば、個人の名誉、人権を守るべき憲法の精神、国会の権威、議院の品位並びに政治に対する信頼を失わしめることは明らかであります。
 この際、国会の自律権に従って、小林君に責任をとらせることは、当然の理であります。われわれ国会議員の責務でもあると考えます。
 以上申し述べましたごとく、議院の品位を重んじ、人権を他のどの機関よりも重く見なければならない国会議員が、みずからの義務と責任を放棄した、このような行為を断じて容認することはできません。(拍手)これらのことは、法に照らして、懲罰の対象に該当することは当然過ぎるほど当然であります。
 さらに、私は、これまで小林君の言動をうかがってまいりましたが、みずからの非をいささかも認めず、言論の自由と免責特権の名をかりて、事実にもないことをあたかも事実であるがごとく断定し、一国の代表である総理大臣の名誉をはなはだしく傷つけ、個人の私生活にわたる言辞を弄し、国会の品位をはなはだしく失墜させたことは明白であります。同時に、その責任はきわめて大なるものがあります。
 もし、その責任を、われわれ国会議員が追及せずして、これを何ぴとが追及するといえるでありましょうか。いまこそ国会の自律権は、かくのごとく峻厳であることを認識しなければならないときであります。今日に至るもいささかの改俊の情を示さない小林君に対し、もしこのことを見のがすことがあるとするならば、国民の国会議員に対する信頼はもとより、国会の品位と権威を失い、ひいては政治全体に対する不信感をももたらし、やがて議会制民主主義の危機につながるものといわなければなりません。
 以上の理由をもちまして、委員長の報告に賛成する次第であります。
 議員各位の御賛同を願うものであります。(拍手)
#10
○議長(前尾繁三郎君) これにて討論は終局いたしました。
 本件につき採決いたします。
 議員小林政子君懲罰事犯の件委員長報告に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#11
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、議員小林政子君懲罰事犯の件は委員長報告のとおり議決いたしました。(拍手、「反対」と呼ぶ者あり)
    ―――――――――――――
#12
○議長(前尾繁三郎君) 小林政子君の入場を許します。
 ただいまの議決に基づき宣告いたします。
  昭和四十八年四月二十六日の物価問題等に関する特別委員会における議員小林政子君の発言は不穏当なものと認め、同君に対し、国会法第百二十二条第三号により二十日間の登院停止を命ずる。
     ――――◇―――――
 日程第二 漁船損害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 漁船積荷保険臨時措置法案(内閣提出)
 日程第四 水産業協同組合法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#13
○議長(前尾繁三郎君) 日程第二、漁船損害補償法の一部を改正する法律案、日程第三、漁船積荷保険臨時措置法案、日程第四、水産業協同組合法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。事業の試験的な実施について、必要な措置を定めたものであります。
 次に、内閣提出、水産業協同組合法の一部を改正する法律案は、最近における社会経済事情の変化に対応して、漁民、水産加工業者等の事業活動の円滑化をはかるため、漁業協同組合等が内国為替取引、手形割引等の業務を行なうことができる等の改正を行なおうとするものであります。
 委員会におきましては、三法案を一括議題とし、六月六日に政府からそれぞれ提案理由の説明を聴取した後、参考人から意見を聴取する等、慎重に審議を重ねてまいりました。
 かくて、六月十九日に三法案に対する質疑を終了し、まず、漁船損害補償法の一部を改正する法律案、及び漁船積荷保険臨時措置法案について、それぞれ採決いたしましたところ、両案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、水産業協同組合法の一部を改正する法律案について、日本共産党・革新共同から反対の討論が行なわれた後、採決いたしましたところ、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、各案に対し、附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#14
○議長(前尾繁三郎君) これより採決に入ります。
 まず、日程第二及び第三の両案を一括して採決いたします。
 両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、日程第四につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#16
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
#17
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長上村千一郎君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔上村千一郎君登壇〕
#18
○上村千一郎君 ただいま議題となりました地方公営交通事業の経営の健全化の促進に関する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、公営交通事業の深刻な経営危機をすみやかに打開し、その存立維持をはかり、もって地域における交通需要にこたえることができるよう緊急措置を講ずるため、路面交通事業に関する新たな経営の再建制度の発足その他公営交通事業の経営の健全化の促進をはかろうとするものであります。
 本案は、四月五日当委員会に付託され、六月一日江崎自治大臣から提案理由の説明を聴取した後、本案審査の参考に資するため、六月十一日には京都へ、同十三日には仙台へ委員の派遣を行ない、さらに、六月十四日には参考人から意見を聴取するなど、本案はもとより、地方公営企業制度の全般にわたって熱心に審査を行ないました。
 六月二十一日本案に対する質疑を終了しましたところ、日本共産党・革新共同から、国の責務の明確化、再建計画の承認制の廃止、再建期間の短縮、合理化規定の削除、再建債の元利償還金の全額国庫補給、料金の届け出制等を内容とする修正案が提出され、林委員からその趣旨説明を聴取いたしました。
 また、自由民主党から、交通事業再建債に対する国の利子補給の上限となる利率を、公営企業金融公庫の基準利率とすること等を内容とする修正案が提出され、中村委員からその趣旨説明を聴取いたしました。
 次いで、両修正案について内閣の意見を徴しましたところ、江崎国務大臣から、日本共産党・革新共同提出の修正案に対しては反対、自由民主党提出の修正案に対しては、やむを得ない旨の意見が表明されました。
 次いで、討論を行ないましたところ、自由民主党を代表して愛野委員は、自由民主党提出の修正案及び同修正部分を除く本案に賛成、日本共産党・革新共同提出の修正案に反対、日本社会党を代表して岩垂委員は、本案に反対、日本共産党・革新共同を代表して林委員は、日本共産党・革新共同提出の修正案に賛成、本案及び自由民主党提出の修正案に反対、公明党を代表して小川委員及び民社党を代表して折小野委員は、自由民主党提出の修正案に賛成、本案及び日本共産党・革新共同提出の修正案に反対の意見を述べられました。
 次いで、採決を行ないましたところ、日本共産党・革新共同提出の修正案は賛成少数をもって否決、自由民主党提出の修正案及び同修正部分を除く本案は賛成多数をもって可決、よって、本案は自由民主党提出の修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案により、都市交通環境の抜本的整備、料金決定方式の改善、労使間の信頼関係の維持、地方公共団体の自主性の尊重、交通事業再建債の元金償還に対する地方公共団体の一般会計の負担軽減措置、地下鉄建設費の国庫補助率の引き上げ等を内容とする附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#19
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#20
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 日程第六 国有財産法及び国有財産特別措置
  法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#21
○議長(前尾繁三郎君) 日程第六、国有財産法及び国有財産特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
#22
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長鴨田宗一君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔鴨田宗一君登壇〕
#23
○鴨田宗一君 ただいま議題となりました国有財産法及び国有財産特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、最近における社会的要請に即応して、国有財産の無償貸し付け制度及び減額譲渡または減額貸し付け制度の拡充を行なうため、その対象として、社会福祉事業施設、義務教育施設、公害防止事業施設等を加えるとともに、国有財産の有効利用並びに管理処分の適正化及び合理化をはかるため、行政財産の処分等の制限に対する特例を設けるほか、管理委託制度の拡大、普通財産の処理の特例について合理化及び改善を行なうため、所要の措置を講ずることとしたものであります。
 本案につきましては、審査の結果、去る二十二日質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対しては、全会一致をもって附帯決議が付されましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#24
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 PCB、水銀汚染等に関する緊急質問(林義
  郎君提出)
 PCB、水銀汚染等に関する緊急質問(土井たか子君提出)
 PCB、水銀汚染等に関する緊急質問(中島武敏君提出)
 PCB・水銀汚染問題等に関する緊急質問(瀬野栄次郎君提出)
 水銀・PCB汚染問題に関する緊急質問(小宮武喜君提出)
#26
○中山正暉君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、林義郎君提出、PCB、水銀汚染等に関する緊急質問、土井たか子君提出、PCB、水銀汚染等に関する緊急質問、中島武敏君提出、PCB、水銀汚染等に関する緊急質問、瀬野栄次郎君提出、PCB・水銀汚染問題等に関する緊急質問、及び小宮武喜君提出、水銀・PCB汚染問題に関する緊急質問を順次許可されんことを望みます。
#27
○議長(前尾繁三郎君) 中山正暉君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#28
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 まず、林義郎君提出、PCB、水銀汚染等に関する緊急質問を許可いたします。林義郎君。
  〔議長退席、副議長着席〕
  〔林義郎君登壇〕
#29
○林義郎君 私は、自由民主党を代表して、水銀、PCB汚染問題について、総理をはじめ各大臣に質問を行ないます。
 国民のたん白資源の五二%を魚類に依存しているわが国の状況、海外における日本漁業が諸外国から種々の制限を加えられつつある現在、沿海及び内海における水産業の役割りはきわめて重要であります。養殖や栽培漁業の振興をはかることもきわめて大切な施策として進められてきたところでありますが、西日本を中心として魚は食べられない、売れないという声が起こり、全国に広がろうとしております。
 去る五月二十二日、熊本大学武内教授らによる「十年後の水俣病に関する疫学的、臨床医学的ならびに病理学的研究」が発表され、この研究によれば、従来の水俣地区以外にも、有明町に十名の水俣病と区別し得ない症状を持った患者が発見されました。その後、徳山にも水俣病類似患者があると報道されて以来、単に八代海、有明海、徳山湾のみならず、全国的に魚は水銀に汚染されているのではないかとの疑惑が広がった。
 さらに、六月四日水産庁より、PCB汚染が全国で八水域に及ぶという発表があり、魚は水銀のみならずPCBにも汚染されているのかと、国民の不安が一そう高まったのであります。
 こうした疑惑を晴らし、不安を解消し、国民の健康を最重点に考えて公害対策は進められなければなりませんが、公害の問題は、あくまでも学問的、科学的論拠に立ってこれを進めるべきであり、飛躍した論理やいたずらなる宣伝的言辞によって解決さるべきものでないことは当然であります。問題は、冷静なる判断によって解決すべきものであります。
 私は、水俣病というのは、魚等の経口多量摂取により人体内にメチル水銀化合物が蓄積され、これが脳神経等に作用して、中毒性神経疾患を生ぜしめたものであると理解している。
 医学の分野においても、人体への蓄積の程度、微量の水銀の摂取による影響等について必ずしも定説がないようであり、医学自体においてまだまだ究明すべき問題点が多いのであります。医学研究者からは、研究費の足らざることを嘆く声がしばしば聞かれます。政府は、現在の研究で十分解明がされていると考えているのかどうか。また、研究費について特別の配慮をすべきものと考えるが、どうか。
 第二に、魚等を経口摂取するのであるから、魚にどの程度水銀があり、どの程度食べるかであります。
 人体への水銀摂取量が問題でありますから、食べる魚の量に魚の中にある水銀含有率をかけたもので判断すべきは当然でありまして、単に高い水銀含有率を持った魚が検出されたからといって、すぐに水俣病になるということに結びつけることはきわめて早計に過ぎるのであります。
 今回発表された魚介類の水銀の暫定基準は、そうした意味で一歩進んだものと私は高く評価いたします。しかし、マグロや河川魚が除外されており、これについて庶民はどう考えていいのか、食ってもよいのかどうか、迷っているというのが現状であります。
 一体、日本人は古くからマグロを食べており、しかし、その一般人から水銀中毒患者が続出したという話は聞いたことがありません。マグロの中には相当高濃度水銀があるとはつとに知られたところでありますが、それでも病気はなかったということは、水銀は同じものでありますから、特別の原因があってのことと思われるのであります。こうした点について学問的にも詰めてあるのかどうか。また、その上に立ってどのような判断を下したのか、政府にお聞きしたい。
 さらに、同時に発表された「水銀汚染から健康を守るために」という資料には、一週間に食べられる魚介類の量として、アジが十二尾、イカが二・三枚、サンマが五・八尾というような数字があげてあります。これだと、庶民には、イカとかサンマは汚染されている、あまり食べてはいけないのだというような印象を受けます。ところが、現在までに行なわれました魚介類の現地調査では、イカやアジやサンマはほとんど水銀を含有していないというふうに聞いております。
 厚生省の今回の資料では、「暫定的規制値〇・三PPMをもとに計算してみますと」となっておりますが、この〇・三PPMというのは第一に平均の数字であろうと思います。また、そのような魚が存在いたしますのは、水俣湾であるとか、あるいは徳山の沖合いであるとかという特別の地域でありまして、一般的に泳いでいるところの魚はこんな高濃度に汚染されたものではないと思いますが、どうであろうか。この発表で、実はイカ釣り業者は、漁価が四割も下がったということでありますが、もう少し親切に、また誤解のないように発表すべきではないか。
 第三は、魚の地域的汚染度の問題であります。
 たとえば水俣湾等には高度に水銀ヘドロがたまっているように推定されるが、外海の魚にそんなに水銀が含まれているとは考えられない。私は、暫定基準を拝見して、こうした汚染漁場については、漁獲禁止措置を早急にとることが、それにより逆に庶民の魚に対する不信感を取り除くことになると思う。
 ところで、現行の法制のもとでは、こうした異常な事態を想定した体系になっておりません。政府は、今国会にでも特別立法を提案するところの意図はないのか。
 第四は、一般的環境調査の問題であります。
 有明海は、今回の暫定基準をもとにして、県調査の数字を見れば白であります。しかし、さらに周到な調査をし、国民の疑惑をぬぐいさるべきであると思うが、どうでしょうか。
 第五、去る六月二十一日、水銀及びPCBに関し、漁業者に対するつなぎ融資を政府は発表されました。しかし、末端金利三分と聞いております。借りるほうの漁民は、全く自己の責任なしに生計の道を断たれ、とほうにくれておるのであります。しかも、その汚染源らしきものはすぐ隣に存在している。各地で漁民から工場への補償請求は相次いでおるのであります。こうした場合でありますから、このつなぎ融資は無利子であるべきであり、全く生活補償的な性格のものであるべきと考えます。事態は緊急を要するのでありますから、現行法のもとでそれが許されないのであるならば、汚染原因者と想定されるところの企業群に負担させるべきだ。さらにいうならば、汚染の原因、因果関係というものが、後日明白になった場合には、このつなぎ融資は、金利も含め、企業に、求償すべきものと考えるが、どうか。
 さらに、漁業者のみならず、鮮魚取り扱い業者、市場仲買い人はもとより、旅館等からも苦情が出ております。これらの関連事業に対してはどのような手を打つのか。
 第六に、汚染原因者の責任問題であります。
 現行法によれば、水質汚濁防止法においても、無過失賠償責任を追及し得るのは健康被害に限られておる。生業被害をはじめとし、財産権侵害については一般原則に戻ることになっておる。すなわち、今回のつなぎ融資の対象となるような被害につきましては、現在の法体系のもとでは、民法七百九条または七百十七条により論ずるというのが、法律解釈論としては私は正しいのだろうと思うのです。しかし、法律論だけであったならば、再びあのチッソの長年にわたる訴訟の二の舞いになりかねないと思うのであります。私は、政治責任として、この際いかなる形で、またいかなる方法で政府は企業の責任を追及されるのかお伺いし・たい。
 最後に、私は水俣や有明海、徳山湾等に現地を視察してまいりました。概していうならば、その汚染原因は、主として公害問題がやかましく論ぜられるようになったとき以前の排出であります。水銀の汚染は確かにおそるべき害毒であり、これから絶滅するように努力を傾けるべきであることは当然のことでありますが、科学的知見の得られる前のものまで企業に責任を押しつけるというところに問題がある。
 さらにいうならば、たとえばDDTであるとかBHCのような農薬は、かつては有益であるとされ、政府もその使用を推奨したが、自後になってその毒性が明らかになるにつれ禁止された。その場合、政府も、また学者も、当初はこれを認め、あとでこれを改めたというのが歴史であります。こういった種類の被害はチクロその他多くにあると私は思うのであります。こうしたものは、かりに無過失賠償責任だけで片づけるにしても、あまりにも大きな問題だと思います。
 換言すれば、科学は進歩します。その成果は人間として十分に享受すべきものであります。しかし、科学、科学者といったところで万能ではありません。そのあやまちを償うのは一体だれか、私はきわめてむずかしい問題であると思いますが、それをきめるのは、お互い国会であります。与党、野党の立場をこえて、現代科学、現代技術に対する反省というこの基本問題に取り組むべきであると考えます。議員各位の御検討を心からお願いするとともに、総理のこの点についての御見解をお尋ねして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#30
○内閣総理大臣(田中角榮君) 林義郎君にお答えいたします。
 第一は、公害被害の発生を未然に防止するためには、今後どのような措置を講じたらよいかという趣旨の御発言でございますが、水銀、PCB等の環境汚染に見られるように、科学技術は、プラスの効用と同時に、社会的に思いがけない悪影響を及ぼす場合があることを深く認識する必要があります。
 こうした認識に立って、科学技術のもたらす環境破壊等の悪影響を未然に防止するためには、新技術、新物質の開発にあたって、その技術、物質がもたらす効用と影響を事前に予測、評価するという、いわゆるテクノロジーアセスメントの考え方を、各方面に適用すべきであると考えておるのであります。私は、さきの施政方針演説でもこの点に触れ、先行的に施策を強化しておるところでございます。
 なお、公害研究所も今年には発足をいたしましたし、大学にも公害技術に関する学科の新設を考える必要があるとも考えておるのであります。なお、広範にわたる研究を進めるために、公害学会等の設置についても検討を進めてまいりたいと思うのでございます。
 なお、今国会には、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律案を提出、御審議を願っておるところでございまして、本法案の成立を待ちまして、化学物質の安全性確保のために遺憾なきを期してまいりたい、こう考えるわけであります。
 具体的な問題については、所管大臣から答弁をいたします。(拍手)
  〔国務大臣三木武夫君登壇〕
#31
○国務大臣(三木武夫君) 林議員の御質問にお答えをいたします。
 第一点は、有明海の環境調査についてでありますが、昨年の十一月に熊本県が、有明海の魚介類に対して調査を行なったわけであります。ところが、今回厚生省の発表した基準の以下であったわけであります。しかし、そういう調査がありましても、熊本大学の研究班の、有明町に水俣病に似た症状を呈する患者がおったという研究の結果の発表もありまして、地域住民は非常に不安に思っておるのに違いない。したがって、今回の全国にわたる環境調査の一環として、まずまっ先に有明とか八代海、こういうところの環境調査を取り上げて、魚介類、プランクトン、水質あるいは底質、こういう詳細な調査を行なって、地域住民の不安を解消したいと考えております。
 第二の、財産補償の問題でありますが、これは将来の大きな課題だと思います。健康の補償ばかりでなしに、生業とか財産に漁民、農民が被害を受けたときの補償制度というものは、取り組まなければならぬ問題だと思いますが、今回は健康の被害に関して補償の法案を御審議願うことになっておるわけであります。
 そこで、結局は、原因を与えたる者が、健康に対しても財産に対しても補償するというのが原則であります。政府は、この原因者が負担するという原則を曲げる考えはないのです。しかし、原因者が究明されるまでの間につなぎの資金を必要としますから、今回、非常災害並みの条件のもとにつなぎ資金を出すことにいたしたのであります。しかし、それには、たてまえ上三分の金利がついておりますけれども、これは、原因者がわかったならば、原因者が負担するものでありますがゆえに、たてまえ上三分の金利はついておっても、漁業者の負担にはならないという性格の資金であることを申し上げておきたいのであります。
 その他、研究体制の強化、お説のとおり、たとえばメチル水銀、こういうものを、微量であっても長期にわたって蓄積したならば人体にどういう影響があるかという問題であるとか、あるいはまた、その他水俣病というものの治療方法であるとか、公害に対する科学的な究明というものは、まだ未知なものが非常に多い。今後、研究体制の強化には一段と力を入れなければならぬと考えておる次第でございます。
 お答えをいたします。(拍手)
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
#32
○国務大臣(齋藤邦吉君) お答えを申し上げます。
 今回の規制のおもな目的は、流通上大部分を占めております国内産の魚介類のうち汚染されたものを市場から排除し、汚染地の浄化をはかる、こういう趣旨にできておるものでございます。
 ところで、マグロは、人工的汚染の魚ではございませんで、自然汚染でございます。したがいまして、こうした魚につきましては、総量規制のワクで健康を守ることは十分である、こういう考え方に基づきまして個別的な規制値の設定をいたさなかった次第でございます。
 なお、川魚の点についてでございますが、これは規制値の適用除外にいたしましたが、川魚は市場の流通性がございませんで、普遍的なものではございませんので、地方の段階で国の基準に準拠した措置をとれば十分である、こういう観点に立ったものでございます。
 なお、暫定基準発表の際に配布いたしました資料について、漁種別週間摂取量についてのお尋ねがございましたが、その際に、例示した魚がすべて暫定的規制値、すなわち〇・三PPM満度まで汚染されておるとしても、それだけ食べても心配はないという趣旨を、消費者にわかりやすく表現したものであります。しかしながら、魚がすべて〇・三PPMまで汚染されているということは考えておりませんし、市場においては汚染されてない魚や規制値以下の魚介類がほとんどを占めているものと思われる現状でございますので、そこに例示いたしました数字というものは摂取限度量を意味するものでないことは言うまでもございません。しかし、これらの点については説明がやや不十分のきらいがありますので、今後は御趣旨を十分体しまして、消費者に誤解を与えないように説明をいたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
#33
○国務大臣(櫻内義雄君) 二点についてお答え申し上げます。
 汚染された漁場の漁業の禁止につきましては、漁業法上はその規定がないため、漁獲の自主規制を行なうことにより、汚染された魚類が流通段階に乗らないよう当該県当局を指導しておるところでございます。
 また、それに伴う漁業補償については、原因者負担の原則により支払われるべきでありますが、原因者が明確でない間の措置として、つなぎ資金の融資を行なうこととしております。
 特別立法については、種々困難な問題があって、今後内部で検討を行ないたいと考えます。
 緊急つなぎ融資は可能な限り低利とすることにつとめ、天災融資法における激甚災の特別被害漁業者並みの三%とした次第でありますが、被害漁業者の元利についての求償については御意見のとおりと考えます。
 また、鮮魚商等については、漁業者に対する緊急措置との関連を配慮しつつ、目下関係省と緊急融資措置について検討を行なっておるところでございます。(拍手)
#34
○副議長(秋田大助君) 次に、土井たか子君提出、PCB、水銀汚染等に関する緊急質問を許可いたします。土井たか子君。
  〔土井たか子君登壇〕
#35
○土井たか子君 私たちは、いま、心ある全世界の人たちの高度成長日本に対する驚異の眼が一変して、世界の環境破壊と人命の危機をもたらす、地球侵略の先兵日本という非難に変わりつつある事実を直視しなければなりません。(拍手)私たち全国民がいま、有機水銀とPCBなどの汚染にすっかり包囲されている今日の事態は、そのきびしい非難を裏書きしているのであります。
 政府に対して、一刻も猶予を許さぬ、このわれわれの命運にかかわる当面の重大事について、私は、日本社会党を代表し、緊急質問をいたします。(拍手)
 最近、東京都内において、魚を食べ続けた三歳以上のネコに足がふらつく奇病がふえ始めているといわれます。ある江東区の獣医さんのところに、昭和四十五年には奇病ネコが三匹、四十六年に七匹、そして昨年は二十七匹も持ち込まれたのであります。いま直ちに水銀蓄積による水俣病とは断定できませんが、ネコの毛から異常に高い、七二PPMという水銀が検出されるなど、容疑は十分であります。ネコの大好物の魚が水銀やPCBで汚染されてしまったいま、ネコは最初の受難者であるかもしれません。
 このことは、かつて熊本県の水俣で、人間が発病する直前に、ネコやカラスや豚などに異常があらわれたことを思い起こさせるのであります。よろよろ歩いていたネコが、ある日、てんかんのような発作を起こし、よだれを流して踊り回り、狂い死ぬ。そして家々からネコの姿が消えていったとき、水俣病は、人間にはっきり姿をあらわしていたのであります。
 カネミ油症では、人間の発病が表面化する半年も前に、PCBが混入したダーク油配合のえさを食べた鶏が五十万羽も死亡しております。
 小動物の異常を軽視するとたいへんなことになりかねないと、識者は警告しているのであります。
 水銀による健康破壊は、熊本県の日本チッソによる水俣湾沿岸の第一水俣、新潟県の昭和電工による第二水俣、そしてこの五月二十二日、全国民にはかり知れない深刻な衝撃を与えた有明海の第三水俣病であります。
 第一水俣は、企業と政府が否定し続けたにもかかわらず、水俣病が表面化してから実に十七年、その水俣病を熊本大学がメチル水銀中毒と判定してからでも十四年、何ら根本対策らしい対策の講じられないまま、第二から第三、そうしておそらく第四、第五と、その被害は、政府の高度成長を通じて、重化学工業を中心とする臨海工業地帯を起点とし、日本列島全域を汚染したばかりでなく、北半球全域から地球全体を汚染し尽くしつつある惨状に目をおおうことはできないのであります。(拍手)
 すでに第一水俣病だけで死者は七十八人、そしていま認定されている患者五百五十八人、続々と認定のときを待つ申請者千人余り。だが、潜在患者の数は一万できかないとも、二万をこすともいわれております。いや、私たちすべて、一億総国民が潜在患者というべきでありましょう。(拍手)今後二十年、三十年を待たずして、私たちが顕在患者にならないという保証はどこにもないのであります。
 そこで、第一に私の問いただしたい点は、田中内閣の環境保全対策に対する基本的な姿勢であります。生産過程を通じて排出される無機水銀が川を流れ、海に流れて猛毒の有機水銀に変身転化するという学説は、もはや定説であり、一たび環境外部に出ても分解されないPCBは、生物の体内に濃縮、蓄積をされ、しかも、たちの悪いことには、孫子の代に至る慢性毒性を持つというのが常識であります。しかるに、一体、日本の政府は、この定説や常識をいまだに承認していないのではないかといわれております。環境破壊においては、疑わしき場合といえども、これに対処する対策を確立することが、健康破壊を未然に防止する最も重要な基本的姿勢であることを忘れてはなりません。昨年、国民のごうごうたる声に押されて、使用中のPCBすべてを外に流出させないクローズドシステムに踏み切ったといわれる政府が、満足に、全国の水銀、PCB使用工場の実態を掌握していなかったばかりか、常に事実を国民に公開することを拒み続けてきた態度は、公害企業と癒着した政府自身の行政が国民に背を向けた公害・汚染促進行政であったと言わなくて何でありましょう。(拍手)
 いま政府のなすべきことの第一は、すでに吐き出された水銀とPCBを完全に封じ込めること、生産過程で使用中の水銀、PCBの使用禁止措置を直ちに講ずることであります。総理、これができないと言われるのであれば、何らなすところのない田中内閣の無策と怠慢に対して、もはや被害者国民の不信と怒りは爆発寸前にあることを知らねばなりません。(拍手)
 さて、二番目の問題は、規制に対する政府の施策であります。
 一昨日二十四日、厚生省はやっとのことで、総水銀で〇・四PPM、メチル水銀で〇・三PPMという暫定基準をきめました。これも昭和四十三年八月に「水銀暫定対策要綱」が決定され、その中で水銀の許容限度を設定することにしながら五年もの間放置し、第三水俣病事件が起きてからやっと決定するという後手後手づくりであります。しかも、魚介類の基準については、最大の汚染が問題にされているマグロをはずし、摂取量については、感受性の高い妊婦や乳幼児に対する適用を心もとない行政指導にゆだねるという、平均値論の化けものであり、産業調和思想の妖怪であります。(拍手)
 それは第一に、乳幼児、妊婦、病弱者にとっては全く救いがありません。第二に、沿岸汚染地域の住民、ことに漁民に犠牲を押しつけるものであります。そして第三に、主なる食生活のたん白源を失い、物価高にあえぐ主婦たちの日常の買いものにはますます不安と疑惑が高まるものであります。
 規制ができると、それがどんなに欠点だらけで国民から批判されようとも、結局はまかり通らせているのが政府の常套手段であります。昨年八月に食品中の暫定安全基準が出されたPCBのときも、そうでありました。
 いま、私がただしたいことは、これら政府の規制基準とその施策についてであります。政府のきめた規制基準そのものは、官報の一ページで事足りるのであります。しかし、重要なことは、その規制を維持できる体制が政府にあるかどうかであります。現実に中央市場に入荷する魚をチェックアウトできる機能がなければ、それは単に絵にかいたもちにすぎないではありませんか。全国の府県、自治体レベルでそのための情報、組織、検査、研究、指導、監視の体制がどのようになっているかを、政府は御存じでありましょうか。PCBを測定するガスクロマトグラフィーの機材が、PCBのメッカ太平洋ベルト地帯や瀬戸内でお話にならないくらい少なく、それを扱う技師の人手不足に悲鳴をあげているという現状一つを見ても、この規制に対する無責任ぶりが知れるのであります。(拍手)
 PCBも含めて今回の水銀規制を実効あるものにするため、予算、人員、施設の拡充に政府はどのような用意があるのか、総理並びに厚生大臣、これをはっきりお示し願いたいのであります。これを明らかにせずして、一体何のための、だれのための安全基準でありましょうか。
 しかし、この際忘れられてならない、より基本的な問題は、そもそも規制の時が間違っているということであります。
 農薬にしても、工業原料にしても、簡単な急性毒性テストぐらいを経て、あとは企業の猛烈な生産競争にゆだねているのが、そもそも日本の政府、行政の間違いであります。(拍手)農民や消費者国民は、これらの物質を使うのではなくて、使わせられているのが現実であります。単位面積当たりアメリカの十倍近い農薬が狭い国土にまき散らされたわが国の、食糧も土壌も人体も、ひどく汚染されてしまうのは当然でありましょう。
 企業の活動は何にも増して優先され、犠牲者が出るまで十二分の利潤追求が許され、犠牲者を確認して初めて行政はその対策に取り組む。そしてまた結局、企業には実害のない、実態に見合った規制値がきめられ、企業は再び代替物質を生産することによって利潤を吸引していく。このメカニズムは、昭和四十五年の公害国会で追放したはずの、古い公害対策基本法一条二項にいう、産業との調和のもとに国民の健康を考えるという、もはや許されない根本思想が、いまだに政府の手によってまかり通っているということにほかなりません。(拍手)今回の規制はまさに、水産業をも含め、産業との調和に基づく政治的妥協の産物であるといわれて、何の反論がありましょう。
 水銀汚染の最も悲惨な犠牲者の一人、十七歳の胎児性水俣病患者上村とも子ちゃんの、生まれながらにして動かぬからだで何ごとかを訴えたげなまなざし。その取りかえしのつかない犠牲者が、そのしゃべれぬくちびるからおそらく訴えたいことはこうでありましょう。すべての化学物質が合成され実用化されるまでには、徹底的な毒性テストが国民に対する公開のもとに慎重に行なわれ、安全性の確認なくして絶対使用させてはならないと。環境庁長官並びに厚生大臣のこれに対する施策をお伺いしたいのであります。(拍手)
 公害による被害は、もはや取りかえしのつかないと言えるほど人間の健康と命、魚介類に及んでいることはすでに述べたとおりであります。
 人間の健康被害に関する救済措置については、今国会に公害による健康被害損害賠償制度が提案されるなど、幾つか前進した措置がはかられておりますが、財産や資源など物的被害についてはこうした制度が確立されておりません。
 水銀、PCB等の汚染による魚介類の被害に対し、すでに漁民は直接汚染源企業に損害補償を要求してはおりますが、魚介類の汚染による被害は漁業だけでなく、魚介類の流通を受け持つ仲買い人や小売り商に至るまでその損害は発生しております。
 第三点は、これらに対する損害賠償をどのように講ずるのか。また、直ちに漁業及び関連企業に対する損害賠償制度を確立すべきだと考えるのでありますが、明確な答弁を政府からいただきたいのであります。(拍手)
 次に、魚食民族である日本国民は、主たん白源をすっかり汚染されているのであります。今日、国民は食生活に不安を非常に感じておりますが、国民のたん白源の確保についてどのように考えられるのか。農林大臣、これを明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 最後に申し上げたいのは、忘れもしない一年前、この衆議院の本会議場で、七項目にわたるポリ塩化ビフェニール汚染対策が満場一致で決議されたのであります。あの後、総理に就任された田中首相に間髪を入れず私は質問主意書を提出し、最も汚染のはなはだしい瀬戸内海汚濁対策に対してただしたのであります。PCBや水銀など汚染物質対策も含め、この際早急に瀬戸内海対策特別法が必要ではないかとの問いに答えて、総理の答えは、このときに及んで沿岸地域の開発のあり方について環境保全面からどうすべきかを検討した、という消極的なものでありました。この際、本会議決議に従って何一つ実施されなかった政府の国会軽視と、末梢療法的な施策に終始している政府の態度は、強く糾弾さるべきでありましょう。(拍手)
 どんなに日本列島が改造されても、そこに生きて働く人間の食べものが汚染されて、奇形児や難病、奇病が常態化するような社会がつくられていくのでは、それはまさに日本列島破滅論以外の何ものでもありません。(拍手)佐藤前首相の新全国総合開発計画を大きく上回る、昭和六十年GNP三百兆円を目ざすウルトラ超高度成長政策列島改造論を撤回し、筑波大学法案や防衛二法案の強行採決に狂奔する態度をきっぱりとやめ、いま議員立法として今回成立を目ざしてわが党がすでに提案し努力している瀬戸内海環境保全特別措置法の実現に熱意を示されるべきであります。総理、その熱意のほどを、不安と絶望のふちに追い込まれた国民の前にただいま明らかにされることを求めて、私の緊急質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#36
○内閣総理大臣(田中角榮君) 土井たか子君にお答えをいたします。
 第一は、水銀、PCB等について使用しているものの禁止措置をとれとの趣旨でございますが、政府としましては、水銀等汚染対策推進会議を設置いたしまして、対策の総合的な推進につとめておるところであります。基本的には、環境に悪影響を及ぼすおそれのある有害物質は極力使用しないことが望ましいと考えており、PCBについては一部のものを除いて完全に使用を中止させ、安全な代替物質への転換を進めておるのであります。また水銀につきましても、クローズドシステム化の推進、電解ソーダ法の隔膜法への転換等について企業を強力に指導し、汚染が進まないよう万全の措置を講じてまいりたいと考えております。
 次は、水銀、PCBの規制値を保持するため、予算、人員、研究体制、施設を確保せよということでございますが、水銀、PCB等による水質汚濁の防止をはかることの重要性にかんがみ、政府としては、従来から測定機器の整備、公共用水域の水質調査の実施及び排水水質の監視測定について助成する等、監視測定体制の整備をはかってまいっておるのであります。今後においても水質測定の自動化を推進いたしますとともに、研修による技術者の養成等監視測定体制の整備拡充につとめてまいりたいと考えます。
 第三は、瀬戸内海の環境保全についてでございますが、現在排水基準の強化、下水道整備の促進、屎尿処理施設の整備促進等の対策を鋭意進めておるのであります。今後さらに汚染の実態、メカニズムの解明を急ぎ、これらの結果を踏まえて、沿岸地域の環境保全を具体的にどのように進めるべきかを明確にする環境保全マスタープランの策定及び各種対策の強化拡充をはかることにいたしておるのであります。
 なお、本問題につきましては、各党提案の議員立法もありますし、政府も前向きに検討いたしておるのであります。
 次に、列島改造の問題でございますが、日本列島改造すなわち国土総合開発は、片寄った国土利用を改め、国土全体の均衡のとれた発展をはかり、きれいな空気と水、緑に恵まれた、住みよく暮らしよい地域社会を計画的に建設しようとするものであります。(拍手)これは、今日まさに全国民の要望する政策課題であり、政府としては積極的にこれを推進してまいりたいと考えます。
 以上。(拍手)
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
#37
○国務大臣(櫻内義雄君) 公害等による被害については、原因者負担の原則により原因者によって補償がなされるべきであるという基本的態度は、先ほど環境庁長官から示されたところでございまして、私もそのとおりに心得ておるわけであります。
 生業被害等については、関係者間の話し合いで適切な補償がなされるよう指導してきたところでございまするが、このたびの被害の深刻さにかんがみ、緊急のつなぎ融資措置を講ずることとした次第であります。
 たん白源の確保につきましては、農林省は従来国民に食糧の安定供給を一大使命といたしておりまするが、私としては安定供給かつ安全供給をしなければならないと存じます。今回の安定基準が示されたのでありまするから、これによって確保につとめてまいりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#38
○国務大臣(中曽根康弘君) PCBや水銀の汚染に関しましては、心から遺憾の意を表する次第でございます。
 通産省といたしましては、有害物質は極力これを使用させないという方針のもとに、いま指導しております。
 PCBにつきましては、製造、使用を中止させまして、代替品によってこれを行なわしめておりますが、一部熱媒体につきましては、本年中にこれをかえるように、新幹線用のトランスにつきましては、本年度中にこれを代替するように、これですべてPCBの使用は中止されるということになります。
 第二に、水銀につきましては、全面禁止をいますぐやることは困難な事情にあります。基準を順守させまして、万全の措置を講じつつあるのが実情であります。
 水銀法ソーダ工業につきましては、特定水域について本年末まで、それからほかの水域等については四十九年九月までにこれをクローズドシステム化すべく指導しています。五十年九月を目途といたしまして、隔膜法に転換するように極力指導しておるところでございます。
 なお、水銀、PCBの企業につきましては、四半期ごとに使用の収支の報告をさせて、これを監視することといたしております。
 なお、今国会に化学物質の規制法を提案しておりまして、本法の通過により、さらに監督を厳重にしていくつもりであります。(拍手)
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
#39
○国務大臣(齋藤邦吉君) 食品衛生の監視体制の充実につきましては、従来から監視員の増員等、必要な経費を確保することにつとめており、今後とも一そう強化につとめてまいりたいと考えております。
 なお、当面の対策としては、汚染魚介類の排除を徹底させるため、特に汚染のはなはだしいと考えられる地域を重点的に検査する等、生産地対策を中心として万全の対策を講じてまいりたいと考えております。
 なお、食品公害による救済措置につきましては、今後法的措置を検討してまいる考えでございます。
 日本人のたん白質摂取源としての魚介類の比率は約二三%を占めておるのでございますが、今回示しました魚介類の週間許容摂取量による魚介の摂取のあり方では、たん白質の補給面で、国民の健康保持上特に支障はないものと考えておる次第でございます。
 なお、汚染地における乳幼児、妊婦、多食者に対しましては、今後とも特段の指導を加えてまいる考えでございます。(拍手)
  〔国務大臣三木武夫君登壇〕
#40
○国務大臣(三木武夫君) 土井議員にお答えをいたします。
 第一点は、新しい化学物質、これは分解しにくい場合が多くして、また有害な場合は、これは回収は至って困難でありますから、したがって、いかに生活に便利であっても、有害なものは製造をストップさすことが必要である。新しく政府が提案をいたしております化学物質に対する製造の規制も、安全性が確認されるまでは、疑わしい場合は製造を認めない、こういう規制を行なおうという立法の趣旨であります。
 第二点は、生業の被害に対しても補償の制度を設けよということでございます。今日、漁業とか農業に対する被害などを見ますと、こういう一つの制度の必要性は私も認めるわけであります。ただ、生業とか財産の補償問題は、いろいろとその態様がさまざまである。また、因果関係が必ずしも解明されない場合があるというので、この制度を定着さすのには、やはり相当の研究を必要といたしますから、いまこういう制度を実現さすことが必要である、こういう前提のもとに真剣に取り組んでおる次第であります。
 また、環境調査に対する政府の態度についてでありますが、これからはいろいろな環境調査を全国的に推進するわけでありますが、そういう場合に隠し立てをする考えは全然ありません。調査をした結果はこれを公表する。そしてやはり国民との間の信頼関係がなければ公害行政は推進できないという確信のもとに、できるだけ調査の結果は公表をいたす所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#41
○副議長(秋田大助君) 次に、中島武敏君提出、PCB、水銀汚染等に関する緊急質問を許可いたします。中島武敏君。
  〔中島武敏君登壇〕
#42
○中島武敏君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、現在重大な社会問題、政治問題となっている水銀、PCBなど有害物質による汚染問題について、田中総理並びに関係大臣に質問をいたします。熊本大学第二次水俣病研究班による第三水俣病の発見に引き続き、有明海沿岸各地、徳山湾などに水俣病の疑いのある患者が発見され、さらに全国各地でおそるべき水銀、PCBによる魚介類の汚染の実態が次々と明らかになり、国民の不安は日ごとに高まっています。多くの漁民もまた出漁停止のやむなきに追い込まれるという深刻な事態に直面しています。いまや国民の食生活と健康、漁民と関連業者の営業と生活は、きわめて大きな不安と危機にさらされているのであります。このことは、公害問題が一そう深刻な社会問題、政治問題として新しい段階に達していることを明白に示すものであります。(拍手)
 今日の事態を招いた根本原因は何か。それは、国民の命と暮らしを無視し、大企業の利潤を第一として、公害たれ流しを容認してきた歴代自民党政府の高度成長政策にあることは、だれの目にも明白であります。(拍手)大企業本位、公害の全国への拡散、国土と環境破壊の高度成長政策、そして日本列島改造計画が、公害規制とは全く両立しないものであることは明らかであります。
 総理、あなたは、今回の魚介類の汚染の原因がどこにあると考えているのか、どのようにして国民の不安を取り除こうと考えているのか、まず明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 言うまでもなく、公害を引き起こす原因は常に企業、特に大企業であり、公害の被害を受けるのは常に国民であります。国民が安心して生活を営むことができるようにすることは、政府が果たすべき緊急な責務であります。このような観点から、当面必要な緊急対策について質問し、総理並びに関係大臣の明確な具体的な答弁を求めるものであります。
 第一に、厚生省が一昨日発表した暫定基準は、数値そのものについてさえ科学者の間で異論があり、水銀の人体内滞留期間をどう見るかによっては、三倍以上もきびしくすべきだという見解があります。にもかわわらず、なぜゆるやかな基準を採用したのか。暫定基準だからというのは理由になりません。疑わしければきびしく定めるのが当然ではありませんか。厚生大臣の答弁を求めます。
 第二に、厚生省は指導指針として一週間に食べてもよい魚介類の量、たとえば小アジ十二匹などと発表していますが、国民にとって必要なことは、目の前の食卓の上にある小アジが安全かどうかということであります。(拍手)
 政府は、昨日の対策推進会議で、水揚げ地、集荷市場で検査を行なうことをきめたとのことですが、現在の地方自治体の人員、機材等の体制で十分やれると思っているのですか。不十分だというならば、どう強化しようとしているのでしょうか。環境庁長官の答弁を求めます。
 第三に、政府は、住民の健康調査は環境調査のあとで行なうなどとゆうちょうなことをいっていますが、沿岸住民の多くは、自分の健康についてもまた大きな不安を持っています。あらためて環境調査を行なうまでもなく、すでに魚介類の高濃度汚染が問題になっている水域沿岸については、少なくとも漁民、鮮魚商などに対する健康調査は直ちに行なうべきではありませんか。いつこれをやるのか。環境庁長官の考えはどうか。答弁を求めます。
 第四に、小さな魚屋が、売った魚で中毒患者が一人でも出たら、たちまち営業停止になるのに、たれ流しをしている大工場は、どうして操業停止にならないのか、これが町の魚屋さんの偽らざる声であります。(拍手)
 なぜ大企業の水銀、PCBの排出を、直ちに法的に禁止しないのですか。猶予期間が必要だということは理由になりません。熊本水俣病発生以来十七年間の猶予期間でもまだ不足なのですか。環境庁長官の明確な答弁を求めます。
 同時に、汚染水域の浄化、漁場の回復こそ国民の健康、漁民の生活の第一の条件です。これを住民本位に実施するには、どうしても専門家、漁民、地域住民の代表による民主的な浄化委員会の設置が必要であります。この点について環境庁長官の答弁を求めます。
 第五に、漁民、鮮魚商その他関連業者の営業と生活の問題であります。漁民は出漁できず、汚染水域の鮮魚商は、壊滅的打撃を受け、東京でも売り上げは半減という苦況をしいられています。
 総理に伺います。発生源企業が漁民、鮮魚商、その他関連業者に対して直ちに補償するよう、政府はきびしく企業に迫るべきであると思いますが、どうですか。
 また、発生源が特定しがたい場合、特定できるまで政府が立てかえ払いをする用意がありますか。つなぎ融資程度でお茶を濁せる問題とはわけが違います。これをやる気がありますか。さらに、打撃を受けている漁民及び関連業者に対する税の減免は当然のことと思いますが、これらの点について、総理の明確な答弁を求めます。
 最後に、公害法の抜本的な改正問題について伺います。
 今日の事態は、公害法の改正が緊急の課題であることをだれの目にも明らかにいたしております。しかるに田中総理は、日本共産党・革新共同の提起した公害法改正要求に対して真剣に取り上げようとはせず、必要はないと拒否し続けてきました。企業責任をあいまいにし、水銀やPCBの排出を認めるような現行公害法でどうして公害を防ぐことができるでしょうか。また、公選制の公害委員会の設置についても、総理は、企業の立ち入り調査は行政庁が行なうからその必要はない、と答えてきました。熊本水俣病発生以来十七年間、水銀の調査一つ行なわないような政府のもとにあっては、住民の監視なくして公害の防止はあり得ません。(拍手)この住民の権利を保障していない現行公害法でどうして公害が防げるでしょうか。今日、国民の生命と健康の危機を前にして、なおかつ、従来どおり、公害法改正の必要なしという立場を固執されるのか、それとも、従来の態度を改めて、日本共産党・革新共同の提起したように公害法を抜本的に改正されるのか、田中総理の明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#43
○内閣総理大臣(田中角榮君) 中島武敏君にお答えをいたします。
 水等が汚染されるのは一体どういうことかということでございますが、端的に申し上げると、化学工業の発達と新化学物質の発見と使用等によりまして、その効用の反面、公害のあることというものに対して、基準があいまいであったり、長い間の蓄積というものが複合公害として起こるということに対して、制度や基準ができておらなかったというような面がきびしい公害を引き起こしたものであるというふうに理解をいたしております。また、その意味でいろいろな法制を整備し、組織を拡充しておることは御承知のとおりでございます。
 第二は、水銀、PCBなど有害物質により、国民に不安を与えたことについてどのような責任を感じておるかの趣旨の御発言でございましたが、水銀、PCB等の有害物質による魚介類等の汚染問題が広範な海域で発生しましたことはまことに遺憾であります。政府としては、水銀等汚染問題の重要性と緊急性にかんがみ、先般水銀等汚染対策推進会議を設けて、総合的かつ効率的な対策を強力に推進をしておるところでございます。すなわち、国民の不安をすみやかに解消するため、魚介類の暫定的基準を設定し、また、被害漁業者に対し、つなぎ融資を行なうことといたしたのでございます。今後さらに、全国的規模の環境調査、関係工場の総点検、問題地域の住民健康調査、汚染ヘドロの除去事業等各種汚染対策を強力に実施をしてまいりたいと考えます。
 現在の公害関係法を抜本的に改正をしないか、同時に、共産党案を採用しないかということでございますが、政府は、四十五年のいわゆる公害国会におきまして、公害対策基本法外十四法案を改正をするなど公害関係法制の抜本的体系化を行ない、事業者責任の明確化や地方公共団体の権限の強化など、その充実をはかってまいったことは御承知のとおりであります。
 公害対策基本法につきましては、現行規定の運用により十分対処し得るものであり、現在のところ法改正は考えておりません。
 また、関連個別法及びこれに基づく規制基準等については、従来より必要に応じ改定強化をはかってまいりましたが、今後ともこの方針に沿って改定強化をはかってまいります。よって、共産党案を採用する意思はありません。
 それから、損失を受けた漁民等に対する補償や援助についてのお話がございましたが、先ほどからお答えを申し上げておりますとおり、生活資金及び経営資金につきましては、天災融資法に準じ緊急つなぎ融資を行なうことにいたしておるのであります。その際国は、利子補給につき高率の助成を行なって、漁業者等の救済措置を講じてまいりたいと考えております。
 なお、原因者が明確になったときは、原因者負担の原則によってその経費を支弁させることにいたしておるのであります。また、原因者負担については、被害漁業者と原因者との話し合いがすみやかに行なわれますよう、都道府県に対し適切な指導を行なってまいります。
 販売業者等については、漁業者に対する緊急措置と関連をし、目下関係省において緊急融資措置について検討させておりますので、早急に結論を得たいと思うのでございます。
 以上。(拍手)
  〔国務大臣三木武夫君登壇〕
#44
○国務大臣(三木武夫君) 中島議員にお答えをいたします。
 一つは、厚生省が暫定的な安全基準を発表いたしましたから、この新しい基準にのっとって、魚介類に対する監視体制を強化することは政府の当然の責任であります。ことに、問題のある水域に対しては、地方自治体と一体になって、常時監視員による監視を行なう、そして検査をいたしまして、検査のつどこれを公表して、一般の消費者に対する不安の解消に役立てたいと考えております。
 第二の、健康調査についてでありますが、有明海のような問題のある地域には、直ちに健康調査をいたしたいと思っております。しかしながら、全国的に環境調査をするわけでありますから、全国一斉の健康調査ということも、これは容易なことでございませんので、環境調査の結果を待って、必要な地域に対しては健康調査を行なって、健康に対する国民の不安の解消につとめたいと思っております。
 また、水銀の関連工場に対しては、これはもうクローズドシステムと申しますか、排水を外に出さないような方式に、問題の水域では今年中にみんな切りかえる、生産工程をみな切りかえて、水銀を外に出すようなことのないような方法を講じたい。さらに、通産省によって、隔膜法によって全然水銀を使わないような生産工程に切りかえる作業もいたしておるわけでございますから、こういう点は、根本的に水銀問題というものは、生産工程を通じて解決をしたい所存でございます。
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
#45
○国務大臣(齋藤邦吉君) 今回の水銀に関する魚介類の基準は、内外の最近の資料、知見に基づき科学的な根拠に基づいてきめたものでございまして、汚染物質の体内滞留期間なども十分考慮いたしまして、科学的な専門家によって策定されたものでございます。しかもその内容は、スウェーデン、アメリカ、カナダの基準よりきびしいものでありまして、この基準が守られる限り、国民の健康をそこなわないものと確信をいたしておる次第でございます。
 なお、今回の措置は緊急の暫定措置でございますので、なお将来検討の上、必要があれば法的効力を持たす、これも一つの方法であると考えておる次第でございます。
 なお、今回の措置は、汚染地において検査体制を強化し、汚染しておる魚はこれを排除し、食ぜんの安全をはかる、こういう趣旨に出ておるものでございますから、厚生省は全国の市場の監視を強化するほか、問題となっておる水域に、特に産地市場において集中的に監視する体制をすみやかに整え、その検査結果をすみやかに公表することといたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#46
○副議長(秋田大助君) 次に、瀬野栄次郎君提出、PCB・水銀汚染問題等に関する緊急質問を許可いたします。瀬野栄次郎君。
  〔瀬野栄次郎君登壇〕
#47
○瀬野栄次郎君 私は、水銀、PCB等による総汚染について、田中総理並びに関係大臣に対し、今後の対策について、公明党を代表し緊急質問をいたします。
 地球的規模で環境汚染が進む中で、人類が体験した最も悲惨な産業公害の犠牲者である水俣病が、水俣湾、阿賀野川にとどまらず、ついに熊本大学研究班によって、有明海沿岸における第三の水俣病の発見となり、さらに第四、第五の水俣病と目される患者が、大牟田、瀬戸内海の徳山、さらに熊本県不知火海沿岸地域からの県外移住者の中からも続々発見されるなど、全国的な広がりを見せておるのでございます。
 加えて、PCBによる海域、魚介類、土壌等の深刻な総汚染の実態があらためて浮き彫りにされ、まさにわが国の食品総汚染の深刻な不安が国民生活をおおい、社会不安が日増しに拡大しております。
 これは、自民党政府による高度経済成長政策が、人間生命を軽視してきた害毒をまざまざと証明する以外の何ものでもないのであります。(拍手)
 そこで私が、最初に伺いたいことは、このような、水銀にしろ、PCBにしろ、またカドミウム等の問題は、以前からその危険性が指摘され、安全対策が叫ばれていたにもかかわらず、このような事態を招いたことは、これまでの政府の公害行政が、いかに事態の認識を欠き、科学技術の発展による飽くなき経済成長の追求にのみ目を奪われ、その裏面にある生命の破壊作用を無視してきたかということを証明して余りあるのであります。
 このような事実を、田中総理並びに環境庁長官はどうとらえ、総理としてどのような反省と責任を感じておられるのか。また、今後の対策の根本に何を置き、対処されようとしておられるのか、公害、環境破壊に対する基本的な御見解を伺いたいのであります。
 また、日本列島改造計画を中止し、自然の生態系を守る方策について、田中総理の答弁を求めるものであります。(拍手)
 次に、総汚染による漁業の危機についてお伺いいたします。
 自民党の重化学工業中心産業政策は、国民の食糧の供給源である農業及び漁業を、有害物質の汚染によってその基盤を侵し、沿岸漁業の漁民を絶望のふちに追いやろうとしております。発生頻度を増しつつある赤潮と魚の大量死、奇形魚の全国的発生、それに今回の水銀、PCB総汚染は、漁業の暗い将来、あるいは壊滅さえも暗示させるものであります。
 水銀やPCB以外のカドミ、BHCその他の有害物質によっても魚介類は相当汚染されており、さらに、今後、企業によるたれ流しが続く限り、私は漁業の絶滅を予測せざるを得ないのであります。そのことは同時に、国民の食生活、すなわち生存を危うくすることになるのであります。
 総理並びに農林大臣は、世界で最大の漁業人口を持つ日本漁業の危機にあたり、漁業と漁民をどのように守っていくのか。不安のどん底にいる漁民のみならず、市場関係業者、小売り店、すし屋等の飲食店、食生活を脅かされている全国民に対して、十分納得のいく具体的対策をお答え願いたいのであります。
 第三に、公害源となる企業の社会的責任の欠如についてお伺いするものであります。
 汚染の実態が解明されるに及んで、企業の無責任かつずさんな有害物質管理及び処理が白日のもとにさらけ出されようとしております。山口県の徳山曹達等における五百トン以上の未回収水銀、また、全国のアセトアルデヒド工場及び塩化ビニール工場の持つ四百三十五トンに及ぶ未回収水銀は、工場の排水口及び周辺の魚介類の水銀汚染度から見て、不法にたれ流しされていることは明らかであります。調査、総点検によって、企業の不法行為が明らかになった場合は、公害罪を適用して厳重に処罰すべきであると同時に、水銀等の有害物質の全面的使用禁止をとるべきことを求めるものであります。
 さらにまた、政府は、このような公害のたれ流しをどのように絶滅していくのか、具体的対策をお伺いするとともに、これらの企業のたれ流しを放置してきた政府の責任について、総理並びに関係大臣の答弁を求めるものであります。
 第四点として、汚染源の究明等の総点検及び漁業補償についてお尋ねします。
 政府がとり行なおうとしている各種総点検、調査については、その結果のすみやかな公表はもちろんのこと、汚染源の究明、有害物質の処理状況等の重要な調査であることから考えて、従来の企業擁護的調査を排し、厳格、公平なる調査を期するために、被害者である漁民の代表も調査に加えるべきであると主張するものであります。
 また、調査によって判明した汚染源企業に対して、操業の停止を含む強い措置をとるべきことを求めるとともに、汚染源企業に対する措置の扱いについては、被害者である漁業関係者の意見を第一に聞くべきであると考えるのでありますが、総理及び関係大臣の見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 第五点に、漁業補償についてであります。
 漁業被害は、魚介類の売り上げが約半分に激減するなど、漁民から、小売り、流通業者、すし屋等の飲食店、さらに観光業者等の全国的規模に広がりつつあります。
 特に、熊本県等の汚染地域においては、漁獲禁止、汚染魚の廃棄や出荷停止、汚染企業との争いなどによって、パニック状態におちいっております。唯一の生活手段を奪われた漁民の心情は、まことに察するものがあるのであります。行商に行った人が魚を売りに行けば、毒を売りにきたのかといって皆さんから批判を受けて、悲しい姿で帰ってきたり、また、客に中毒患者が一人でも出れば、魚屋は当然営業停止になる。ところが、大企業はたれ流しをしてもほっておく。このようなことが行なわれてよいのでありましょうか。
 漁業補償については、自治体及び当事者同士の話し合いにゆだねており、政府は、いまだにはっきりした態度をとっていないばかりか、農林漁業金融公庫、天災融資法による融資でお茶を濁しておる実情であります。企業対漁民の力関係による不当な補償を避けるためにも、政府は、漁民の側に立って補償交渉のリーダーシップをとるべきだと考えるのであります。
 わが党は、健康被害のみならず、漁業被害等の財産被害、生業被害等の公害損害を救済するための公害損害賠償保障法案要綱をすでに発表しておりますが、その中では、原状回復を第一義として、被害者の請求と原状回復が困難である場合に限って、金銭による補償が許されることを明記しております。
 漁民が真に望むのは、きれいな海のもとで、PCB、水銀の含まれていないきれいな魚をとりたいということであります。政府は、公明党案に沿い、かつ、漁民の真の希望の上に立って、漁業補償を進めさせていくべきと考えるのでありますが、これらについての具体的対策及び法的措置について、どのように対処されるのか。また、汚染源が不明確な場合、無過失責任を適用し、関係企業全体に損害賠償を行なわせるべきだと思うのでありますが、この点について御答弁を求めます。(拍手)
 さらに、漁業補償のおくれる漁業被害者に対しては、政府が立てかえ払いを行ない、現実に困っている漁民に救済の手を差し伸べるべきであると考えますが、総理並びに関係大臣の所信を承りたいのであります。(拍手)
 第六に、水俣病患者の救済及び水俣湾の将来についてであります。
 熊本大学の調査をきっかけに、これまでかなり多数の水俣病患者及び死亡者が発見されております。この中には、不知火海沿岸出身の県外移住者も含まれており、不知火海沿岸出身者及び水銀温度計製造工場等の水銀使用工場の従業員についても、早急に健康診断を行なう必要があります。さらに、調査によって判明した水銀中毒患者については、熊本県内の非認定患者とともに早急に公害病に認定して、手厚い医療保障をするとともに、汚染源企業による被害者への補償がすみやかに行なわれるよう、政府は、最後まで責任を持つべきであると考えるのであります。また、治療法の早期究明を行なうとともに、さらに、水俣病総合センターの設置並びに水俣湾のヘドロ処理及び水俣湾の港湾計画について、どのように推進していかれるのか、総理及び関係大臣にお伺いするものであります。
 第七に、かけがえのない生命と日本列島を守る基本的な問題、並びに総理の決意についてお尋ねいたします。
 わが党は、国民の生存権を脅かす総汚染、環境破壊の現状に立って、国民の環境権を確立し、環境保全施策上の基本的要件等を明示した環境保全基本法案を、今国会に再び提出しておりますが、いまやその制定は急務であります。これについての総理並びに環境庁長官の御見解を求めるものであります。
 最後に、真の公害対策を推進するためには、為政者が公害の実態を自分の目で見、公害の悲惨な犠牲者の声をじかに聞くことが何よりも大事であります。その意味において、一国の最高責任者たる総理大臣が、公害の原点といわれ、しかも悲惨な犠牲者である水俣病患者及び漁業被害者に直接会われ、皆さんの悲痛な叫び、そしてまた、要求に耳を傾け、的確な対策を推進すべきことを強く総理に提言し、私の緊急質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#48
○内閣総理大臣(田中角榮君) 瀬野栄次郎君にお答えをいたします。
 まず第一は、公害汚染に対する責任と今後の対策についての御発言についてでございますが、わが国経済の発展過程において、環境破壊など各種のひずみが生じてきたことは否定できません。政府としても、この事実を率直に認識し、その解決に全力を尽くすとともに、長期的、広域的観点から、国民共通の資産である美しい国土、清浄な生活環境の実現に全精力を投入してまいりたいと考えます。
 このため、今後の環境保全施策の実施にあたっては、発生した環境破壊の事後処理という受動的政策にとどまるのではなく、環境破壊の未然防止を最重点として、各種施策を総合的に推進をしてまいりたいと考えます。
 列島改造の必要性につきましては、先ほど申し述べましたので、御了承賜わりたいと存じます。
 次は、汚染による漁業対策いかんということでございますが、沿岸漁業に対しましては、政府としては、公害関係諸法のより厳正な実施と監視体制の確立をはかりますとともに、漁場汚染を防止する等、公害対策を強力に進めてまいりたいと考えます。また、汚染漁場と汚染魚種を明確にして、これらの流通を防止する等、生産者及び消費者の不安の解消に最善の努力をいたしてまいりたいと存じます。他方、沿岸漁場の改良、造成と、栽培漁業の推進等の施策を積極的に講ずることによりまして、水産資源の維持増大をはかってまいりたいと考えます。
 県外移住者、水銀体温計をつくる工場の従業員、漁業関係者をも加えた検診調査を実施せよとの趣旨の御発言についてでございますが、水銀等汚染対策推進会議におきましては、全国的にPCB、水銀使用工場周辺の水質、魚介類につきましては、環境調査を実施をすることにいたしておるのであります。また、熊本大学研究班が指摘をしました有明海及び環境調査の結果、問題のある地域につきましては、疫学調査として、住民、とりわけ魚介類を多食する漁民の健康調査を実施をいたします。県外に居住した者の検診問題については、実施面で困難性が多いが、関係県とも協議し、検討してまいります。
 また、水銀体温計をつくる工場の従業員の検診につきましては、職業病検診の観点から、労働省とも協議して、必要の措置を講じてまいりたいと考えます。
 水俣病の治療方法の究明等についての御発言でございますが、現在、熊本大学その他関係機関において、水俣病の治療方法等の研究を進めますとともに、水俣市立病院等において、患者の治療を行なうかたわら、診断技術の確立等について研究を進めておるのであります。
 今後とも不知火海一帯の地域の住民の検診を一そう推進し、実態の究明につとめてまいります。
 さらに、現在未確立の治療方法等の医学的研究を強力に推進するため、学識経験者の意見を聞き、関係機関、県、市とも十分協議し、調査研究体制の充実につとめてまいります。
 それから、水俣湾の堆積汚泥の処理の問題、将来の港湾計画の問題についての御発言がございましたが、いま水俣港に堆積をしておる汚泥の処理を早急に行なう方針のもとに、運輸省、環境庁を中心にして、熊本県を指導いたしておるわけでございます。いずれにしましても、現在のところ、年度内に処理作業に着工できるものと考えておるのでございます。
 なお、水俣湾の将来計画につきましては、この公害防止のための実施計画の中に港湾の将来計画もあわせて検討しておるのでございます。全部を埋め立てるという案もございますし、一部を残せという案もございますので、慎重に計画を策定いたしたいと考えておるのであります。
 多々問題がございましたが、残余は関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
  〔国務大臣三木武夫君登壇〕
#49
○国務大臣(三木武夫君) 先ほど共産党の中島議員から、水揚げ地の検査、これは地方自治体の現状ではなかなかやれないではないかという御質問があって、抽象的にはお答えをしたようでございますが、さらにつけ加えておきます。
 現在の地方自治体の人員ではなかなか容易ではありませんが、厚生省あるいは水産庁一体になって、この非常な水銀に対する地方住民の不安もあるものですから、現在の人員をできるだけ動員をいたしまして、そして、いわゆる水揚げ地における検査というものを最善を尽くしたいと考えております。
 瀬野君に対してでございますが、これは、経済の量的な発展に伴って起こる環境の汚染という問題、質的な面に対して先見の明のある対策を欠いたという御指摘は、事実であります。こういう点については、やはり反省もいたさなければなりませんが、とにかくいまの現実の問題は、水銀汚染の問題が現実に起こっておる。これをどのように除去して、そうして、将来そういうことを再び汚染しないようにするかということが現実の問題でありますから、私どもは、全力をあげて水銀とかPCBによる汚染からくる国民の不安の解消のために努力をしたい。将来はいろいろ事前の審査というものを厳重にして、再びこういう事態を招かないようにいたしたいと考えておる次第でございます。
 地方自治体あるいはまた地域住民、あるいは科学者、産業界、これが一体になってこの問題と取り組むならば、私はある年限をかければ、再び美しい日本の国土は必ず返ってくる、こういう確信を持つものでございます。また、そのようにしなければならぬと考えておる次第でございます。
 漁業の補償の問題について、いろいろお話がございましたが、先ほどお答えしておるように、漁業補償あるいは農業補償という問題は、これは制度的につくり上げる必要があると思いますが、この問題は、被害の状態というものがさまざまと違っておる、あるいはまた、だれが原因でこういうことになったかということが必ずしも解明されないという、この制度を定着さすのにはいろいろ研究をしなければならぬものもありますので、これを実現さしたいという方向で、将来に向かって検討をいたしたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#50
○国務大臣(中曽根康弘君) 公害源を絶滅せよという御主張につきましては、全く同感でございます。通産省といたしましても、福祉優先の通産行政に切りかえまして、いま懸命に指導しているところでございます。
 第一に大事なことは、やはり、公害を起こすような物質を使用しない、その代替品をできるだけ早く開発して充てるということであります。そのためには、規制を強化していくということと同時に、監視をさらに徹底する必要がございます。それと同時に、公害防止のための科学技術の開発を促進するということが急務でございます。
 それと同時に、また通産省といたしましては、一九六〇年代の高度成長の結果こういうことが起きたということを反省いたしまして、産業構造の知識集約型への転換、重化学工業からの離脱ということをいま推進しておるところでございます。
 また、具体的には、企業に対して、工場立地に対するいろいろな規制等につきましても、今回法案を提出いたしまして御審議願っているところでございます。
 さらに、工場立地あるいは新しい物質を使うという場合の事前調査、いわゆるテクノロジーアセスメントということばが今回ぐらい痛感されたこ・とはございません。こういう点につきましても深く検討いたしまして、政策を進める考えであります。(拍手)
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
#51
○国務大臣(櫻内義雄君) 水銀、PCB等の汚染対策につきましては、先ほど総理から三点についてお答えを申し上げておるのでございまするが、それを農林省としては忠実に実行してまいりたいと思います。
 魚介類汚染は、魚介類の販売不振と消費の減退により、関係漁業者等の生活及び経営の不安定を来たしており、まことに遺憾にたえないところであります。補償については、原因者負担の原則に従い、漁業者と原因者の間で解決がはかられるようつとめてまいりたいと存じますが、緊急対策としては、先ほどから申し上げておるつなぎ融資等の措置を行なっていくことを申し上げたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#52
○副議長(秋田大助君) 次に、小宮武喜君提出、水銀・PCB汚染問題に関する緊急質問を許可いたします。小宮武喜君。
  〔小宮武喜君登壇〕
#53
○小宮武喜君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となりました水銀、PCB等による深刻な環境汚染問題に関して、緊急質問を行なわんとするものであります。(拍手)
 私は、本問題の根底は、何といっても過去二十数年間政権の座にあって、高度経済成長政策を絶対的なものと考え、世界的な資源輸出量の二〇%をこえるばく大な資源消費型の工業化を推進してきた自民党政府の重大な政治責任を取り上げなければならないと思うのであります。(拍手)
 水銀、PCBは言うに及ばず、カドミウム、硫黄酸化物、そして窒素酸化物など、わが国の水質、大気、土壌のいずれをとってみても、これほど環境が汚染され、人命を奪うような状況をつくり出した最大の原因は、いま申し上げました巨大な工業化でなくて何でありましょうか。しかも、その工業化は、そこから今日のような環境破壊に対する一片の配慮もなく、ただ、生産第一の利潤追求に狂奔する資本と企業にすべてをゆだね、それに奉仕する政策展開に終始してきたと言っても過言ではないと思うのであります。
 田中総理、あなたは、昨年七月以来自民党の超長期政権を引き継いで今日に至っているのでありますが、いま私が申し上げたような深刻な環境破壊の政治責任を一体どのように感じておられますか、率直にこの壇上から、国民に対し明らかにしていただきたいのであります。
 次に、私は、さきに水産庁が発表した魚介類のPCB汚染の調査結果を見ても、また、一昨日厚生省がきめたメチル水銀の暫定基準によっても明らかなように、全国六十二カ所にわたる汚染された河川、海域の上流及び周辺には、すべて汚染原因者たる企業が現存するか、さもなくばかつて存在していたことからしても、企業の直接責任は逃げられないと思うのであります。そして、その汚染原因者たる企業が、単独であれ、複数であるかのいかんを問わず、被害者が現に発生している場合はもちろん、今後発生した場合の企業責任についても、裁判の判決を待つまでもなく、政府が積極的に、しかも徹底した補償措置を講じさせるよう行政指導を行なうとともに、汚染された河川、海域の浄化対策についても、企業の全面的な責任において完全実施を行なうべきであります。
 御承知のように、昨年の四日市公害判決、最近の水俣病判決でも見られますように、司法の判断としても企業責任が明確にされているにもかかわらず、その後の政府の態度にきびしい姿勢が見受けられないのは、はなはだ残念であります。ただいま申し上げました企業責任に対する政府の明確な方針を、総理並びに通産大臣から伺いたいのであります。
 第三に伺いたいのは、現在、漁民、漁介類販売業者はもちろん、一般消費者の汚染に対する敏感な反応と混乱についてであります。
 過日の熊本大学の水俣病研究班の発表、水産庁のPCB汚染の発表、東京都衛生研究所の発表等々によって、魚介類の売れ行きが極度に減少したばかりか、現在では全然売れなくなり、漁民は出漁中止にまで追い込まれているのであります。また、漁民の出漁中止に伴って、魚介類販売業者を含む各関係業者の間でも営業停止を余儀なくされております。これらの人々は、異口同音に生活困窮を訴えるとともに、一日も早くこのような事態が解消されることを切望し、訴えておりますが、この漁民や関係業者に対する救済措置をどうするのか、また、このような事態を解消させるための対策はどうするのか、総理並びに農林大臣に伺いたいのであります。
 一方、消費者は、魚を食べたくても食べられず、何を食べたらよいのか、どこの魚を食べたら安全であるのか、大きな心配と不安を抱いております。政府は責任を持って、だいじょうぶだから安心して魚を食べてくださいと、いつになったら断言できるのか。
 一昨日、厚生省が発表した暫定基準によりますと、魚に関する一週間分の献立例を示しておるようでありますが、これとても、汚染された魚介類についてであり、それがどこでとれた魚介類であるかは、魚介類の産地証明がなければ消費者はわからないと思うのであります。
 したがって、消費者に安心を与えるための産地証明の方法、並びにこの暫定基準についてさえ疑問が投げかけられていること等に対し、厚生大臣より確信のある答弁を求めるものであります。
 第四には、わが国の環境汚染は、今日突如として起きたものではないということであります。
 すでに、昭和四十五年当時大問題となり、公害に関する臨時国会さえ開会されたことはすでに御承知のとおりであります。したがって、河川、海域の汚染度は相当に進んでいることは明らかであり、さらに、今日のこの深刻な状況等とも考えあわせ、この際、全国民の健康診断を国の責任において一斉に実施すべきであると思うのでありますが、総理の熱意ある前向きの御答弁を求めるものであります。
 最後に、私は、政府に二、三の提案をいたしまして、この緊急質問を終わりたいと思うのであります。
 その一つは、すべてのテレビ網を通じて、公害の時間を一斉に設け、権威ある学者、研究者等から国民に正しい情報の提供が行なわれるような措置を講ずること。
 二つ目は、環境庁の陣容を強化すると同時に、公害情報センターを新設し、国、地方公共団体及び各大学等の各種研究機関の調査、研究情報を広く交流させるとともに、国民に必要な情報を提供すること。
 三つ目は、公害病の認定機関を現在のように各都道府県に設置していたのでは、公害の広域化、多発化に対応できないと思われます。よって、これを国の機関として、迅速かつ適正に認定が行なわれるよう、国の責任を拡大すべきであると考えます。
 もし、政府に、国民の健康と生活を守る熱意と積極性があるならば、この提案は決して無理ではなく、直ちに実行可能なものと考えるのでありますが、総理並びに環境庁長官の所見を求めて、私の緊急質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#54
○内閣総理大臣(田中角榮君) 小宮議員にお答えをいたします。
 第一は、環境破壊の政治責任についての御発言でございますが、戦後四半世紀を経たわが国経済は、世界にもまれな完全雇用を達成し、国民総生産、国民所得も増大をいたしたことは御承知のとおりでございます。これは国民全体の力であり、世界に誇り得ることであります。
 しかしながら、その成長の過程において、環境破壊など各種のひずみが生じてきたこともまた事実であります。
 政府としましても、この事実を認識し、環境破壊の未然防止を最重点として、規制の強化、社会資本の整備等、各種環境保全施策を総合的に推進をしてまいりたいと考えます。
 第二は、汚染による被害者に対する損害賠償と企業責任についての御発言でございますが、政府としましては、関係各省庁との緊密な連絡のもとに、関係地方公共団体とも協議して、早急に環境調査等所要の調査を実施して、汚染源の追及を行ない、汚染者負担の原則に従い、損害賠償が円滑に行なわれるようつとめておるのであります。
 次は、被害を受けた漁家、販売業者等に対する補償措置の問題でございますが、先ほどから間々申し上げておりますとおり、被害漁業者及び水産業協同組合に対し、その生活資金及び経営資金につき、天災融資法に準じ、緊急つなぎ融資を行なうことといたしておるのであります。国は、利子補給につき、高率の助成を行なって、漁業者等の救済措置を講ずる所存であります。
 なお、原因者が明確になったときには、原因者負担の原則によって、その経費を支弁させることにいたしたいと考えております。
 販売業者等につきましては、漁業者に対する緊急措置との関連に配慮しつつ、目下関係省において、緊急融資措置について検討させておりますので、早急に結論を出してまいります。
 最後に、テレビ網等を通じて、権威ある研究者の見解等を紹介をして、公害の情報を国民の前に提供せよ。
 私もそう考えております。私も、国民に行政の実情を理解してもらうために、活動の強化、拡充につきまして、かねがねその必要性を痛感いたしておったところでございます。その一環といたしまして、ことしの五月一日から、内閣広報室を設置をいたしたわけでございます。
 御質問の公害に関する情報提供活動につきましては、定期的なラジオ番組として、「環境庁だより」を放送いたすことにいたしております。また、過般の環境週間におきましては、テレビ、ラジオ、新聞等を通じまして、積極的な広報活動を行ないましたが、今後ともその強化、拡充をはかり、公害に関し、公正な認識が得られるための努力を払ってまいりたいと考えます。
 以上。(拍手)
  〔国務大臣三木武夫君登壇〕
#55
○国務大臣(三木武夫君) 小宮君の御質問は、公害情報センターを設けたらどうか。
 これは、来年一月から開設を予定しております国立公害研究所の中に、こういう機能を持たせたいと思っております。また、各種の研究機関の交流なども、その国立公害研究所の機能として、こういうものもいたしたいと思っておりますので、御趣旨は私も賛成でございますが、いま申したような方法でこの機能を果たしたいと考えております。
 また、公害病患者の認定を、国で直轄してやれというお話ですが、いかにもそれも一つの方法のようにも考えられるのですが、公害病患者の認定には、生活歴も要る、職業歴も要る、あるいはまた食べものの嗜好もどういう嗜好であったか、あるいはまた日常生活はどういう状態であったかという、そういう総合的な判断というものも認定の場合には必要でありますから、国が直轄するということでは、現地の事情を把握しきれないものがありますので、やはり仕組みとしては県知事にその認定を委任して、国ができるだけこれに対して協力をするという仕組みが現実的だという考えでございますので、この仕組みを直接国の直轄にするという考え方は持っておりません。(拍手)
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
#56
○国務大臣(櫻内義雄君) 水銀またはPCB汚染等による被害漁業者の生活資金及び経営資金につきましては、ただいま総理から詳細お答えを申し上げたとおりであります。
 また、販売業者等につきましては、漁業者に対する緊急措置との関連に配慮しつつ、目下関係省とともに、緊急融資措置について、協議をしておるところでございます。(拍手)
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
#57
○国務大臣(齋藤邦吉君) 今回の規制基準の設定は、規制値以上の魚を市場から排除し、食ぜんの安全を守る、こういう趣旨に出たものでございまして、これがためには、特に問題地域の魚介類について、産地市場において集中的検査をすみやかに実施し、その結果を公表いたしたいと考えておるわけでございます。
 したがって、こうした集中的検査の実施に伴いまして、基準値以下の魚だけが市場に流通するということになれば、おのずから安全が確保されることになるのでございまして、先ほどお述べになりました産地証明の点につきましては、当面考えてはおりませんが、貴重な御意見として、今後十分検討してまいりたいと考えております。(拍手)
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#58
○副議長(秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時四十一分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  田中 角榮君
        大 蔵 大 臣 愛知 揆一君
        厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君
        農 林 大 臣 櫻内 義雄君
        通商産業大臣  中曽根康弘君
        自 治 大 臣 江崎 真澄君
        国 務 大 臣 三木 武夫君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 吉國 一郎君
        内閣法則局第四
        部長      別府 正夫君
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ソース: 国立国会図書館
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