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1972/07/19 第71回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第071回国会 本会議 第52号
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1972/07/19 第71回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第071回国会 本会議 第52号

#1
第071回国会 本会議 第52号
昭和四十八年七月十九日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四十七号
  昭和四十八年七月十九日
   午後二時開議
 第一 覚せい剤取締法の一部を改正する法律案
    (社会労働委員長提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 中曽根通商産業大臣の中小企業基本法に基づく
  昭和四十七年度年次報告及び昭和四十八年度
  中小企業施策についての発言及び質疑
   午後二時四分開議
#2
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 中曽根通商産業大臣の中小企業基本法に基づく昭和四十七年度年次報告及び昭和四十八年度中小企業施策についての発言
#3
○議長(前尾繁三郎君) 通商産業大臣から、中小企業基本法に基づく昭和四十七年度年次報告及び昭和四十八年度中小企業施策について、発言を求められております。これを許します。通商産業大臣中曽根康弘君。
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#4
○国務大臣(中曽根康弘君) 中小企業基本法第八条に基づきまして、先般、政府が国会に提出いたしました昭和四十七年度中小企業の動向に関する年次報告及び昭和四十八年度において講じようとする中小企業施策の概要を御説明申し上げます。
 初めに、中小企業の事業活動について申し上げます。
 昭和四十七年に入って中小企業の事業活動は、経済全体の景気回復の過程と軌を一にして、前年の停滞基調から徐々に立ち直りを見せ、年央以降着実な上昇過程をたどってまいっておりました。倒産につきましても四十一年以来の低水準に推移しておりました。
 しかし、本年に入って、円の変動相場制への移行、原材料の高騰、金融引き締めなどの問題が相次ぎ、中小企業の経済環境はとみにきびしさを加えており、その影響が懸念されるところであります。このような事情にかんがみ、政府といたしましては、中小企業に対して万全の配慮を加え、適時適切に十分なる施策を講じてまいる所存であります。
 続いて、この年次報告で取り上げております中小企業の基本的な諸問題について御説明申し上げます。
 中小企業基本法が制定されて以来本年で十年となりますが、総じていえば、この間、中小企業は、国民経済のきわめて重要なにない手としてその経済的社会的使命を変わることなく果たしてきたということができると存じます。すなわち、中小企業、とりわけ製造業分野の中小企業は、各般にわたる中小企業施策の積極的な活用と相まって、すぐれた適応能力を発揮し、わが国経済に占める地位を強含みに堅持し、大企業との格差をかなり改善させてきたことがうかがわれます。
 しかし、商業分野、特に小売商業分野においては、流通革新への適応が十分には果たし得ない面があることも率直に認めなければなりません。また、小規模企業においては、その体質強化は徐々に進んでおりますものの、依然大きな諸格差や種々の制約が残されております。さらに、下請企業を見ると、概してその地位の改善は認められますものの、零細、二次下請においてはその地位の向上がなおおくれております。
 このように中小企業の実態はきわめて多様なものとなってきておりますので、このような多様な企業の実態に即して適切に企業基盤の強化をはかっていくことが、今後最も肝要なことと考える次第であります。
 現在進展しつつある中小企業を取り巻く情勢の変化は、今までに例を見ない急激なものがあり、また、そのもろもろの変化が相互に深い関連を持ってあらわれておるところに大きな特色があります。
 おもな変化を中小企業に即してとらえますと、中小企業は、外に国際化の進展の波に洗われ、内に福祉充実の要請に迫られ、また大企業や関連産業分野における産業構造の知識集約化の動きに対応することを求められております。これらの課題にこたえるためには、中小企業みずからも知識集約化を実現していくことが要請されていると申せましょう。
 第一に、国際化の進展への適応について見ますと、輸出型産地をはじめとする中小企業は、国内の経済環境の好転に恵まれ、前回の通貨調整はこれをかろうじて乗り切ってまいりましたが、今回の通貨調整によって情勢は一そうきびしくなり、今後の発展を目ざすためには、製品の高級化等の知識集約化をはかり、あるいはより成長性の高い分野への転換や、海外投資によって新しい活動の場を創出していくことが重要であると考えられます。
 対内資本自由化に関しましては、わが国小売商が流通外資の進出の具体化に伴い、その体質の近代化を急がれておりますが、政府といたしましても、中小小売商に対する指導助成を格段に強化してまいることとしているところであります。
 また、中小企業の海外投資につきましては、近年著しい増加を見せておりますが、発展途上国の経済建設に寄与するような配慮とともに、人材、情報、資金面の障害除去につとめてまいる所存であります。
 第二に、福祉充実への中小企業の役割りと適応について見ますと、公害防止には、従来に増して一そう多面的な企業努力が必要とされているところでありますが、これとあわせて政府としても、技術開発、指導、資金等にきめこまかい基盤整備に努力を傾注してまいる所存であります。
 週休二日制につきましては、中小企業においても、導入の実績、意欲とも急速な高まりを見せておりますが、一方で中小企業特有の障害も大きく、導入の基本的条件として、同業あるいは同地域ぐるみの実施、親企業の協力等が必要であるとする声が多く、業種業態に応じた適切な環境整備が必要であると考えます。
 中小小売店の対応すべき方向としては、共同化によって構造改善をはかる一方、品ぞろえ、販売サービスの充実等による専門店化や効率化によって適応していくことが望まれており、このための総合的な援助を積極的にはかっていくこととしております。
 第三に、中小企業にとって、環境変化として考えられると同時に、その対応策でもある知識集約化について見ますと、知識集約化の重要な要素である知的活動、すなわち製品の高級化や新商品の開発などは、本来、中小企業の特質を活用しやすい分野であるゆえもあって、中小企業においても近年着実に進められる傾向がうかがわれ、その内容も漸次高度なものへと進みつつあります。
 人材、資金等経営資源の制約が大きい中小企業が、効率的に知的活動を遂行していくためには、企業自身の課題として、需要の動向の把握に特に配慮しつつ、社外の各種の機能や経営資源の多面的活用をはかっていくことが要諦でありますが、これに加えて政府としてもこれらの制約要因を軽減するようつとめてまいる所存であります。
 中小企業がこれらの課題を克服し、今後とも国民経済の要請にこたえた発展を遂げていくためには、その経営上の特質を生かし、一そうの効率化を基本として知的活動の充実をはかり、あるいは転換や海外投資にも積極的に取り組む姿勢が求められているといえましょう。
 中小企業には、一方で新しい発展の契機が芽ばえつつありますが、その現状は、発展を前にきびしい試練に直面しているわけであります。しかし、中小企業にはこれまでのすぐれた適応実績があることはもとより、今回の年次報告につとめて事例を収集紹介しておりますように、現に随所で最近の情勢変化に合わせた適応の動きが着実に進んでおります。
 本報告は、中小企業がその経営上の特質を生かして果敢に転換にいどみ、あるいは知的活動の充実をはかってきた現実の事例を分析して、具体的な適応の方策とその進め方を提示することにつとめた次第でありますが、中小企業がこれを生きた指針としてその創意くふうや果敢な行動力をもって新しい適応努力を進めることが望まれるところであります。政府は、このような中小企業の努力にこたえて、金融、税制、指導等の面であとう限りの援助につとめてまいる決意をここにあらためて明らかにしたいと存じます。
 次に、昭和四十七年度において講じた中小企業施策について御説明申し上げます。
 政府といたしましては、中小企業の総合的企業力の涵養と、わが国経済社会の均衡のとれた発展のため、昭和四十七年度において次のような施策を重点的に実施いたしました。
 まず第一に、昭和四十六年の円切り上げ等の一連の国際経済上の調整措置の実施が中小企業に与えた影響にかんがみ、同年臨時国会で成立した国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の積極的な運用によって、輸出関連の中小企業者に対し、金融、税制上の助成措置を講ずるとともに、事業転換をしようとする中小企業者についても、金融税制上の措置を講じております。
 また、本年二月の円の変動相場制への移行に伴い、大きな影響をこうむることとなる輸出関連の中小企業者に対しては、下請取引の適正化のための措置をとるとともに、為替予約、緊急融資、既往融資の返済猶予等を直ちに実施に移しているところであります。
 第二に、中小企業の公害の防除を進めるために、政府関係機関の公害防止のための融資制度を充実したほか、税制面、指導面、技術面等諸般の施策を拡充いたしました。
 第三に、小規模企業に対しては、従前に増して特段の配慮を行なっております。特に経営改善普及事業について、経営指導員の大幅増員等施策の充実をはかり、また、設備近代化資金、設備貸与制度を拡充するとともに、小規模企業共済制度についても、法改正により制度を拡充いたしました。
 第四に、中小企業の構造の高度化、構造改善につきましては、中小企業振興事業団の高度化資金を増大し、設備共同廃棄事業融資等を新設するとともに、中小企業近代化促進法に基づく構造改善の積極的な推進に努力いたしました。
 第五に、こうした諸施策の推進と同時に、増大する中小企業者の資金需要にこたえるため、政府関係中小企業金融機関の貸し出しを増加し、特別貸し付け制度の充実をはかったところであります。
 第六に、税制面におきましても、所得税における青色申告控除制度を創設したほか、公害防止税制、小規模企業のための税制を中心に制度の拡充を行なった次第であります。
 次に、昭和四十八年度において講じようとする中小企業施策について御説明申し上げます。
 昭和四十八年度におきましては、まず第一に、中小企業施策の対象となる中小企業者の範囲についてその改定を行なうこととしております。このため、中小企業基本法はじめ関係十八法律を改正することとし、中小企業者の範囲の改定等のための中小企業基本法等の一部を改正する法律案として本国会に提出しております。
 第二に、昭和四十八年二月に起こった国際通貨情勢の激動に対処するため、同年三月十四日の閣議決定に基づき、昨年度から引き続いて緊急融資の実施、事業転換の円滑化などを推進しつつありますが、これらのうち、法的措置を必要とするものにつきましては、国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案として本国会で御審議いただき、七月五日公布施行の運びとなりました。
 第三に、小規模企業に対し施策の抜本的拡充を行ないます。
 まず、商工会議所、商工会の経営指導員の指導を受け、経営改善をはかる小企業に対し、低利かつ無担保、無保証人で融資する小企業経営改善資金融資制度を創設いたします。
 また、商工会議所、商工会の行なう経営改善普及事業について、経営指導員の大幅増員をはじめ制度の抜本的な拡充をはかります。
 さらに、下請中小企業対策の強化、設備近代化資金、設備貸与制度の拡充を行なうとともに、税制面では、いわゆる個人事業主報酬制度を発足させたところであります。
 第四に、資本の自由化の本格化、大型店の進出、さらには消費者ニーズの多様化などに対処して、中小商業、特に中小小売商業の体質強化をはかり、その近代化を促進するため中小小売商業振興法を今国会に提出するとともに、商業近代化地域計画の策定等、商業対策を抜本的に拡充することとしております。
 第五に、中小企業近代化促進法に基づく構造改善を地域単位でも進め得るよう、また、デザインの開発や新製品の開発を主眼として構造改善を進め得るよう制度の改善をはかっております。このため、中小企業振興事業団の高度化資金の融資お件を改善するとともに、中小企業金融公庫、国民金融公庫の構造改善等貸し付け制度を充実いたします。
 また、最近の中小企業の団地用地の取得難を解消するため、高度化用地の先行取得のための融資制度を新設いたしました。
 第六に、中小企業金融対策として、政府関係中小企業金融機関の貸し出し規模を増大するとともに、特別貸し付け制度を充実いたします。
 また、信用補完制度につきましては、今国会で成立した中小企業信用保険法の改正により、普通保険及び特別小口保険の付保限度額を引き上げたほか、保険料率を引き下げ、中小企業に対する金融の円滑化をはかることとした次第であります。
 第七に、事業転換や情報化、公害防止、技術力の向上などの要請にこたえて都道府県の行なう指導事業を強化し、また、中小企業振興事業団の情報提供体制を整備するとともに、中小企業の組織化を進めるための施策を充実させることとしております。
 第八に、中小企業における労働力確保と資質の向上及びその福祉を高めるため、職業紹介、職業訓練等の施策の拡充、労働災害の防止、労働条件の改善等をはかり、労使関係の適正化のための施策を推進いたします。
 第九に、中小企業税制につきましては、個人事業所得者の事業経営の近代化、合理化を推進するため、事業主報酬制度を創設するほか、中小同族会社の留保所得課税について控除額を引き上げる等の制度の拡充を行ないます。
 これらのほか、沖繩中小企業対策、立地・公害対策、災害復旧対策、同和対策等について特別の対策を講ずることとしております。
 以上が昭和四十七年度中小企業の動向に関する年次報告及び昭和四十八年度において講じようとする中小企業施策の概要であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 中小企業基本法に基づく昭和四十七年度年次報告及び昭和四十八年度中小企業施策についての発言に対する質疑
#5
○議長(前尾繁三郎君) ただいまの発言に対し、質疑の通告があります。順次これを許します。近藤鉄雄君。
  〔近藤鉄雄君登壇〕
#6
○近藤鉄雄君 私は、自由民主党を代表して、ただいま通産大臣から御説明のあった昭和四十七年度中小企業白書に関し、政府の中小企業政策について、総理並びに関係大臣にその所信を伺いたいと思います。(拍手)
 中小企業基本法制定以来すでに十年、まさにこの十年こそは日本の中小企業にとって大きな躍進の時期であり、同時にまた、さまざまな苦難のときであったのであります。
 今回の白書は、この間の中小企業の発展のさまざまな態様を鋭く分析し、政府の中小企業政策を謙虚に反省、さらには、将来のわが国中小企業の新しい飛躍への期待を込めて書かれております。まさに戦後日本経済の大きな発展、いな、さかのぼって明治以来の経済成長の過程の中で、中小企業がはつらつとした、ときには忍耐強い原動力であったことを私たちはあらためて認識しなければならないのであります。勤勉で創造的な中小企業の経営者と、そこに働く大ぜいの人たちのまじめな努力がなかったならば、今日の偉大なわが国経済の構築はできなかったのであります。
 しかるに、一昨年の円の切り上げ、そしてことしに入って起こった大幅な通貨調整は、数多くの中小企業に、まさにその生死にかかわる深刻な衝撃を与えたのであります。原料高や物価高、労働力不足、過当競争や過密の問題環境対策や、最近の百貨店、大型スーパーの地方進出、さらには大手商社の中小企業の業務領域への侵犯など、そのいずれをとっても、中小企業に深刻な選択を迫る挑戦でありました。
 自由な市場メカニズムを基調とするわが国経済にとって、中小企業こそがその根源的な生命力でなければなりません。はつらつとした数多い中小企業の存在こそが、管理化され、硬直化した社会に新鮮な活力を注ぎ込んでまいりました。
 このような観点に立って、この最も大切な中小企業の発展のために、どのような基本政策を総理がお考えになっておられるか、私は、まず第一にこのことを承りたいと思うのであります。
 ここ三カ月の間に三度にわたる公定歩合の引き上げ、さらには預金準備率の引き上げが行なわれてまいりました。わが国経済は、目下物価安定のためのきびしい金融引き締めのさなかにあります。
 一方、経済の拡大に伴い、大幅な賃金の上昇が大企業に働く人たちを中心にして行なわれております。中小企業に働く人たちの賃金だけが過去の水準にとどまっていいはずはありません。このため、中小の工場や商店の販売価格の引き上げがすでに余儀なくされております。このような傾向を制御するためにも、中小零細工場や商店の近代化、合理化が絶対に必要であると思うのでありますが、政府は、これに対してどれだけ抜本的対策をとってこられたのか、承りたいのであります。
 大企業及び大商社は、有力な市中銀行と密接な関係を保ち、金融の一般的な引き締めに対しても巧みに対処することができます。しかし、資金力の脆弱な中小企業は、まさに金融引き締めの影響をもろにかぶるという現実に私たちは目を向けなければなりません。
 外貨保有の累増からきた過剰流動性が物価上昇の基本的原因であるといわれております。この物価上昇のまさに犠牲者である中小企業が、引き締めの直接の被害者になるという矛盾、この矛盾に対して、政府は一体どのように対処されようとしているのか。この際、政府関係の中小企業に対する金融機関の貸し出しを、これまでのような四半期別のワクにとらわれることなく、思い切って繰り上げて融資し、必要があれば、しかるべき時期に原資の拡充を考えるべきであると思うのでありますが、総理並びに大蔵大臣の率直な御意見を承りたいのであります。
 国際経済の激変に伴うショックから中小企業を守るために、国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律、いわゆるドル対策法が今国会において改正され、まず、中小企業信用保険の無担保保険の限度額を、これまでの三百万円の別ワクとして、五百五十万円と設定するなどの措置を講じられたことは喜ばしいことであります。しかしながら、とのドル対策法による措置は、当面、輸出減少からくる企業不振に対する救済措置にすぎないのであります。より長期的観点に立って、積極的な企業の体質改善のための施策が望まれるところであります。
 しかし、一方、円の切り上げに対処する方法として、中小企業を含むわが国経済が合理化し、近代化し、生産性を向上することによって、切り上げ前と同じ輸出量を確保しようとつとめることは、それだけ対外的な切り上げ効果を相殺して、皮肉なことながら、日本をやがて再び切り上げに追い込むことになるという矛盾があります。
 一体政府は、将来、輸出産業として、中小企業をどのように考えておられるのか。さらには、円の切り上げによって、当然、海外の商品が競争力を持ってわが国に押し寄せてくることが考えられます。これによって影響を受けるわが国中小企業の将来についてどのように考えておられるのか。
 このような事態に対処する措置として、今回の白書においても、中小企業の知識集約化、商品の高級化やファッション化等が随所でいわれております。日々のきびしい経営をやりくりしている中小企業の経営者が、高級化し、ファッション化し、知識集約化を具体的に実行していくためには、抜本的な政府による助成策がどうしても必要であると思うのでありますが、そのための十分な方策がとられてきたのか、また、ほんとうにとられるのか、お伺いしたいと思うのであります。
 白書においても、事業転換の必要性が再三にわたって強調されておりますのも、このような要請にこたえるためだと思います。従来のこの線に沿った施策が、ややもすれば手おくれであり、あと始末的であったことは反省を要するものであります。いまや、国際的視野に立つ、将来のわが国産業構造の見通しのもとに、積極的な事業転換をはからなければならない時期だと考えますが、これに対する政府の決意と具体的な措置について承りたいと思うのであります。
 田中総理、総理の提唱されておる日本列島改造の雄大な構想こそが、過疎と過密を同時にただし、日本列島の輝かしいあすを築く基本的な政策であることを私は確信するものであります。(拍手)
 この政策に対して誤解があり、曲解があって、いまだ国土総合開発法をはじめとする関係法案の十分な審議が行なわれていないことを私は心から残念に思うものであります。(拍手)誤解や曲解はたださなければなりません。過密大都市から地方への工場分散は強力に進めていかなければならないのであります。
 しかし、過密大都市の移転促進地域から地方の誘導地域に工場の移転を進めるに際して、税制並びに金融上の優遇措置が考えられていながら、かりに地方の企業が、地方都市の中央部から郊外に新しくできた工場団地や流通団地へ移転しようとしても、同じような優遇措置の恩恵に浴さないのであります。このような場合、せっかくりっぱにできた団地も、大都市からの移転企業にのみ利用されてしまい、これまでさんざん苦労してきた地元企業が、依然として日の当たらない場所に苦吟しなければならないということになります。
 日本列島改造の政策が、大都市から地方への工場分散を促進すると同時に、地方の中小工場や商店にとっても大きな福音であるように、地方の中小企業のために抜本的な措置を思い切ってとっていただくことを、私は総理に強くお願いしたいのであります。(拍手)
 今回の白書は、中小企業の新しいあり方、役割りについて、いろいろと示唆に富んでおります。ベンチャービジネスや知識集約化を聡明に進めている中小企業の成功の例示を関係者は感動をもって読むことでありましょう。みずからの技術や知識の特性を生かし、下請という立場にあっても、大企業とまさに堂々と五分の取引をしているすぐれた中小企業があります。
 しかし同時に、地方の小さな町や村で近所の人たちのためにまじめに一生懸命尽くしてきた小さな商店もあります。しかし、いまやとうとうたる流通革命の波に押し流されて、この人たちのあすの生存が脅かされています。この人たちにあたたかい手を差し伸べることも、私たちの政治の大切な仕事ではないでしょうか。
 田中総理、総理御自身がかつては中小企業の経営者でありました。中小企業の経営者としてさまざまな辛酸をなめられ、それにうちかってこられたあなたに、数多くの中小企業者が大きな期待を寄せているとしても、それはけだし当然のことであります。
 中小企業に働く人たちが、各自の能力を完全に発揮し、たくましく活動し、生活することができるように、この人たちを中核として、わが国の経済が自由な経済運営の旗手として世界の尊敬をかち得ながら、調和ある経済発展を堂々と続けることができるように、総理の熟慮と決断と実行を心から期待して、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(田中角榮君) 近藤鉄雄君にお答えいたします。
 まず第一は、中小企業のための基本政策についてでございますが、わが国経済は、内外の諸情勢の激変に対応いたしまして、中小企業のあり方や中小企業政策の進め方も、新しい観点に立っていくことが必要であると考えるのであります。
 このため、政府は、昨年八月、中小企業政策審議会から、七〇年代の中小企業のあり方と中小企業政策の方向について意見具申を得まして、今後そこに示された基本的な考え方に沿って施策を実施していく所存でございます。
 まず第一に、需要構造の変化への対応など、生産面での合理化だけでなく、いわばソフト面での対策に重点を置く必要があると考えるのであります。中小企業が、国際化の進展、福祉社会への指向、環境尊重などに対応していくには、これまで以上に市場動向に敏感で、また社会的要請に合致した企業経営をしていかなければならないと思うのであります。政府といたしましても、事業転換の円滑化や情報の提供などを通じまして、中小企業を知識集約化していくことが必要であると考えます。
 第二に、中小企業の存在が多様であることを十分に認識して、それぞれの業種、業態に対応して、きめこまかい政策配慮をしていくことが必要であります。
 次に、中小企業政策が、中小企業に対する指針を示し、中小企業を積極的に誘導していくという役割りを重視していく必要があると考えます。
 今後、こうした基本的な方向に沿いつつ、具体的な施策の展開を進めてまいる所存であります。
 第二は、平価調整及び国際収支の改善等が迫られておった中での中小企業の問題等に対しての言及がございましたから、お答えをいたします。
 中小企業、零細企業というものは、世界に例のないほど日本に特色を持つものでございます。また、日本の経済の中で大きなウエートを占めるものであることは申すまでもないのであります。しかも、わずか一年半の間にドルは三百六十円から二百六十五円台に、約三〇%の切り下げが行なわれておるのでございます。しかも、海外のインフレ要因等により、大きな原材料の値上がりに苦しめられておるのが実態でございます。
 このような中にありまして、国際収支の改善という大きな命題を達成する中における中小企業が困難な状態であり、この状態に対して政府が諸般の政策をとったことは御承知のとおりでございます。
 そのためには、まず輸出を内需に振り向けるために、景気浮揚政策がとられたこともまた事実でございますし、税制上、金融上、信用補完等に対して、各般の施策が万全に行なわれたわけでございます。その結果、所期の目的はおおむね達成できたと思うのでございます。みごとにというほど、中小企業は対ドル三〇%の切り上げに耐えて、前年度に比較して二〇%ないし三五%の輸出を維持できるようになったことは、慶賀にたえない次第でございます。
 しかし、そのような結果、国際収支も改善され、中小企業の体質改善も行なわれましたけれども、御指摘のとおり、物価の上昇という一面が起こってまいったことは見のがすことのできない事実でございます。
 その意味におきまして、物価の上昇というものが、せっかく一年半という短い間に困難な問題に対処し得た中小企業にしわ寄せが行なわれないように、万全な施策を講じなければならぬことは言うをまちません。このような観点に立って物価の抑制をはかるとともに、中小零細企業に対する万全の措置を講じてまいるつもりでございます。
 その一つとして、御指摘の金融引き締めが中小企業にしわ寄せされないように措置せよということでございますが、これまでも金融引き締めの強化にあたりましては、中小企業金融に対して格別の配慮がなされてきたところでございます。
 最近の動きを見ましても、中小企業向け貸し出しは順調に推移し、健全な中小企業が金融面で行き詰まるというような現象は生じておらないのであります。今後とも、従来と同様、中小企業金融の円滑をできるだけ確保する方針に基づきまして、実態に即してきめこまかい方策を講じていく所存でございます。
 さしあたりましては、中小企業向け貸し出し比率を少なくとも現在以上に維持いたしますとともに、中小企業に対し歩積み、両建てを要求するようなことのないよう、金融機関に対して強力な指導を行なっておるのであります。
 全体として金融の引き締まり感が強まっていく中にあって、中小企業の金融が疎通を欠くような事態は起こらないものと確信をいたしておるのであります。
 最後に、工業再配置と中小企業問題に対してお答えをいたします。
 工業再配置対策は、移転促進地域から誘導地域への工場移転を進めようとしておりますことは、御指摘のとおりでございます。このような工場移転の場合には、遠距離のため各種の大きな障害があることなどにかんがみまして、これを緩和、除去するために助成を行なうものであります。したがって、誘導地域内の地元企業や域内再配置の場合よりも、実体的に優遇しようとするものではないのであります。
 また、助成に際しましては、誘導地域の地方公共団体の意見を聞く等により、移転先で問題を起こさぬよう、十分配慮いたしておるつもりでございます。
 誘導地域の地元企業に対しましては、農村地域工業導入促進法等の地域振興法によりまして、金融、税制上の助成措置が講じられておることは御承知のとおりであります。
 特に、中小企業に対しましては、その存立条件等を考慮いたしまして、今年度から創設をいたしました中小企業過密公害防止移転貸し付け制度等によりまして、誘導地域内の移転についても、実情に応じ助成措置を講ずることにいたしておるわけでございます。
 以上申し述べましたように、列島改造すなわち工場の再配置等については、地元との不均衡を生じないよう万全の措置を講じておるつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#8
○国務大臣(中曽根康弘君) 中小企業は、最近の国際経済並びに国民経済の中におきまして非常に重要な役割りを果たしておるとともに、かなり苦難に見舞われておる現状であります。
 すなわち、国際的には自由化の要請、外国の小売商業等の日本に対する進出、それから国内的におきましては、百貨店やスーパーの最近の大きなシェアの増進、それに伴う中小小売商業等の苦難、さらに二次にわたる通貨変動による大きなショック、特にこれらは下請中小企業関係にも強く出てきているところであります。
 それと同時に、最近一部の物資の不足にからみまして、伸銅製品とかあるいはビニールパイプ等の資材が不足してきて、この面からも中小企業はかなりの困難を受けておると同時に、大企業と中小企業とにおける賃金の格差等から、人材の吸収難あるいは福祉政策の充実等につきまして、中小企業は非常な苦難を受けておるわけでございます。
 そういう事態をわれわれはよく認識いたしまして、この際周到な手厚い処置を中小企業にやらんとしておるのでございます。
 まず、国際化、自由化の問題につきましては、これを急激に行なわないように、中小企業における抵抗力を培養した上で、要撃能力をつけて徐々に段階的にこれを行なうようにいたしております。
 その抵抗力をつける政策といたしましては、今般百貨店法を改正いたしまして、百貨店、スーパー、小売商業等の営業の調整を行なうということにいたしまして、特に最近進出してきましたスーパーと小売商業との調整を心がげておるわけでありますし、また税制面におきましても、あるいは最近、経営改善の無担保、無保証人の特別融資制度を創設いたしましたり、長い間懸案でありました事業主報酬制度等も今回実行いたしまして、抵抗力をいま必死になって培養しておるところでございます。
 通貨変動に対しましては、いわゆるドル・ショック対策法を国会で通していただきまして、地域別、業種別にいろいろ現地の点検をやりまして、おのおのに応じたきめこまかい施策を県庁当局と協力して密接に進めておるところでございます。
 御質問の中で、知識集約化ということを言っているが具体的にいかなる政策があるかということがございました。
 知識集約化ということは、知的能力を最大限に発揮し得るような企業の運営を行なうということであります。すなわち、研究開発あるいはデザインあるいは経営力等におきまして、高度の知識あるいは経験能力というものを発揮した新しい分野に進んでいくということでありまして、これらの点につきましては、各関係方面と密接な連絡をとって積極的に指導しているところであります。
 たとえばマーケッティングの面におきまして、あるいは経営情報、技術情報を業界に対して供給するという点、あるいは研究技術開発体制の整備に対して直接援助をする点、それらの点につきまして金融面やあるいは指導施策面においても積極的に協力しておるところでございます。なお、中小企業振興事業団に、本年度から中小企業情報センターを設置することにいたしております。
 事業転換の問題につきましては、金融、税制、指導面におきまして、これも円変動相場制への移行に伴いまして積極的に指導しておりますが、先般通過させていただきましたいわゆるドル対法に基づきまして、これらの点につきましても、個別的にまた集団的に指導しておるところであります。個別的な転換については、政府関係金融機関の融資の金利の引き下げあるいは融資条件の緩和を思い切ってやっております。グループの転換に際しましては、同じく振興事業団の融資について、共同転換資金の融資比率の引き上げ、あるいは共同廃棄事業に対しては八割までは無利子で行なうというような思い切った措置を講じておりまして、転換に支障ないようにいたしております。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#9
○国務大臣(愛知揆一君) 金融引き締めと中小企業に対する関係のお尋ねでございますが、金融引き締め政策が強化されて中小企業にしわ寄せがあっては困るという点につきましては、全く御同感でございます。
 先ほど総理からお答えもありましたように、具体的に申しますと、全国銀行の状況を見てみましても、中小企業向けの比率は、現在大体三五%程度の比重になっておりますが、これは昨年の第二・四半期あるいは第三・四半期に比べますと、かなり比率は向上いたしております。少なくともこの比率を維持してまいりまして、健全な中小企業に影響が及ばないようにやりたい、これを基本にいたしまして、今後指導を強化してまいりたいと考えております。
 次に、政府関係金融機関の貸し出しでございますが、これはただいま通産大臣からもお答えがございましたけれども、四十八年度の貸し付け規模をごらんいただきますと、前年度の当初計画に比べますと二〇%増の、一兆六千七百十九億円と予定をいたしております。そして、これを四半期別に見ますと、本年度の第一・四半期におきましては、三機関合計で、前年同期に比べて五五%増を計上いたしたわけでございまして、これは特に変動相場制度の採用等によりまして中小企業に影響のないようにという配慮のもとに、五五%増というような非常に大額の割り当てをいたしておりますが、第二・四半期以降におきましても十分きめこまかく、弾力的に運用をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
 以上、簡単でございますが、お答えいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(前尾繁三郎君) 加藤清政君。
  〔加藤清政君登壇〕
#11
○加藤清政君 私は、ただいまから、日本社会党を代表して、昭和四十七年度中小企業白書について田中総理並びに各関係大臣に質問いたしたいと思います。(拍手)
 いまから十余年前、わが社会党は、中小企業に関する基本法の制定を本院におきまして提案し、それが発端になりまして、時の池田内閣による中小企業基本法が議決され、今日、白書も十冊を重ねるに至ったのであります。
 このような時代の流れを考えますとき、私は、わが党諸先輩の中小企業への熱意に対しましてあらためて敬意を表するとともに、反面、長年続いている自民党政府のもとでは、中小零細企業者のための政策が国の主要な柱として実施されますことが実に困難であるとの感を禁じ得ないのであります。(拍手)
 御承知のとおり、わが国の勤労者全体の七〇%以上が中小企業に職場を求めております。その職場が健康にして文化的な生活を確保できるに足る労働諸条件を保障できるものでなければなりませんし、これを実現させることは、政治の使命であると存じます。(拍手)しかるに、本年度の予算を見ますると、中小企業関係予算はわずかに八百二億円、一般会計に占める比率は〇・六%にすぎないという事実は、大企業に対するさまざまの優遇措置と比較するまでもなく、あまりにも貧困であると申さなければなりません。(拍手)
 まず、田中総理大臣にお伺いいたします。
 総理は、今後もなお中小企業施策を一%以下の比重にとどめておくおつもりか、あるいはこれまでの中小企業政策をもう一度抜本的に見直し、中小企業関係予算の大幅な拡大をはかるため、すみやかに必要な措置を講ずる用意がおありかどうか、総理の見解をお尋ねいたします。(拍手)
 今日の中小企業政策は、一部の業種に対して集中的にてこ入れを行なったり、特定の優良中小企業を中堅企業へ送り出すことに目的があるのではないことは明白であります。
 今日のように、あらゆる分野において大企業の力が強く、政策的ささえがなければ大企業が不当な利益を得、中小企業が犠牲をしいられる経済体制にあっては、中小企業それぞれの特殊な条件に合致させたきめのこまかい政策を不断に積み重ねることが大切であることは、いまさら申すまでもありません。かかる実態からいたしますと、もはや、大企業に主柱を置いている通産省から中小企業庁を切り離し、全事業所数の九九%、従業者数の七〇%以上を占める中小企業に一元的、有機的に対応し、強力な活を入れるためにも、中小企業庁を中小企業省に昇格させるべきであることを、わが党は従来から要求しておるのであります。
 過般、総理は、関係各大臣に対し、多年全国の中小企業者が要望していた中小企業省の設置を含んだ、中小企業対策の抜本的拡充について検討することを強く指示したということであります。
 中小企業者は、専任大臣がおれば、中小企業対策予算ももっと増大するであろうと、強い期待を持っておるのであります。
 また、中小企業行政を担当する中小企業庁は、現在、百六十七名の職員を有するにすぎず、出先機関を含めてもきわめて貧弱な実情にあります。このようなことでは、四百六十万の中小企業者と、二千七百万人の中小企業に働く従業者が期待し、要望する中小企業施策の充実は、とても達成することはできないと考えます。
 そこで、総理にお尋ねいたします。
 総理は、中小企業省設置についてどのような指示をされ、また、どのような構想を持っておられるのか、この際、明快なお答えをお願いいたします。(拍手)
 さらに、これからは、中小企業政策の予算並びに権限をできるだけ地方自治体に移譲し、自治体が中心となって、地域社会の実情に応じた中小企業政策を推進すべき方向へと転換すべきときであると思いますが、総理の見解をお伺いいたします。
 次に、緊急の問題として、最近の大企業、大商社を中心とした反国民的な投機に関連し、総理並びに通産大臣にお伺いいたします。
 すでにわが党があらゆる機会を通じて政府に具体的対策を迫っているように、大商社による買占め、売惜しみが横行し、ために、諸物価は急上昇し、このことが、国民生活はもとより、中小企業に対しましても、原材料の大幅な値上がりなどの深刻な影響を与え、その存続の基盤を危うくしておるのであります。
 特に、綿、絹、羊毛等の繊維原材料、木材などにおいては、中小企業はその経営を維持するために、やむを得ず高値の原材料を大商社などから買わざるを得なかったのであります。しかも、投機の当然の結果として、値段が暴落したときには、大商社はすでに膨大な利益をもって食い逃げし、取り残された中小企業はとるべき手段を持たないというのが実態であります。
 白書においても、「これらの事業分野は、中小企業の出荷比率が高く、中小企業製品の物価を押し上げている原因は、原材料の価格の上昇にある」と指摘し、中小企業への深刻な影響を裏書きしておるのであります。
 大商社は、依然として今日、このような投機行為を企業の当然の権利のようにふるまっておるのでありますが、当然、資本主義社会においても、利潤の追求の前提に、社会性及び商行為の倫理性がなくてはならないのであって、価格操作の役割りを演じて物価騰貴の元凶となっている商社の現状を正当な企業活動として認めるべきでないと考えますが、この際、総理の明快な見解をお伺いいたしたいと存じます。(拍手)
 次に、通産大臣にお伺いいたします。
 「ミサイルからラーメンまで」といわれるほどに広範な事業分野を持つに至った商社の巨大化、大商社の存在は、今回の例をまつまでもなく、決して流通の合理性をもたらさず、物価の安定にも貢献しないばかりでなく、逆に価格つり上げの原因になっていることは、もはや明らかであります。商社の現状は、このままではむしろ中小企業やさらには国民大衆にとって百害あって一利なしと断じても過言ではありません。(拍手)
 この際、少なくとも国内市場におきましては、いわゆる総合商社の活動をきびしく規制し、むしろ大幅な分割を行なうべきであると思います。
 私は、この際、かかる内容を目的とした商社法を制定して、商社モラルを樹立し、販売ルートを明らかにし、一定の企業活動のルールを設定し、その違反のなきよう措置すべきであると考えますが、この点に関して通産大臣の所信をお尋ねいたします。(拍手)
 さらに、これと並んで今日緊急な問題として、金融引き締めのもとの中小企業融資について、総理並びに大蔵大臣にお尋ねいたします。
 商品投機による影響とともに、中小企業にとっては、政府の金融引き締め政策がどういう形で行なわれるかということが、大きな関心事でございます。
 日銀は、七月二日に三度目の公定歩合の引き上げを行ない、預金準備率も三回にわたって引き上げ、都市銀行の窓口規制の強化などの一連の措置とあわせて過熱した景気を鎮静させ、総需要の抑制、過剰流動性の吸収をはかろうとしていますが、問題は、この措置が大企業も中小企業もひっくるめて行なわれた場合、特に中小企業の側に影響が強く出るということを懸念せざるを得ないのであります。商社や不動産会社の買いあさり、買い占めを抑制するための措置であるならば妥当でありますが、中小企業の場合、運転資金の借り入れまで抑制されますと、とたんに経営危機におちいることも考えられるわけでありまして、引き締め基調にあっても、中小企業の運転資金だけは別ワクにして貸し出しを確保するといった柔軟な配慮が必要と考えられるのであります。
 この点につきまして、運転資金貸し出しを別ワクにして、金融引き締めによる中小企業の深刻な影響を配慮して貸し出し確保をはかる必要があると考えますが、この際、御見解をお尋ねします。
 さらに、今日の商品市場のあり方を根本的に再検討し、投機を排除する具体的措置を講ずべきであります。化合繊及び絹などについては、今日の商品市場制度はもはや不必要といっても過言ではありません。通産大臣は、商品市場制度を根本的に再検討するとともに、対象商品の洗い直しを行なうべきと考えますが、これに対しての御見解をお尋ねいたしたいと思います。
 次に、白書に述べられております中小企業政策の基本について通産大臣にお伺いいたします。
 白書は「変化と多様性の時代の中で中小企業も資源集約型の産業構造を知識集約型へと転換していかなければならない」、そのためには「旺盛な意欲と冷徹な精神、創意工夫、行動力をもって試練を克服していかなければならない」と述べております。
 そうして、知識集約型産業に転換して成功した例というものを数多く取り上げているわけでありますが、私は、こういう論理の展開の結果がどういうことになるのかという点に幾多の疑問を持たざるを得ないのであります。
 そこで、通産大臣にお尋ねいたします。かかる時代認識は、それなりに評価していいとは考えますが、中小企業の実態を見たとき、資金も乏しく、人材面でも弱い中小企業に対して、業種転換や工場移転を迫ってみたところで、個別企業の意欲や行動力だけではどうにもならないのであります。しかも、中小企業の大部分が、そうしたジレンマをかかえながら模索を続けておるのであります。
 こういう中小企業の現実をベールに包み込んでおいて、知識集約型への脱皮ばかりを強調し、そこにスポットを当てていこうとするやり方は、別な言い方をすれば、現在の状況に対応できない企業はつぶれてもやむを得ない、政府の示す方向についてこれないものは切り捨てるんだということになりかねないのであります。(拍手)
 私は、この白書の中心ともいえる知識集約化が、実は、一部優良企業の選別的育成をはかり、新たな二重構造をつくり出すことにつながると考えるのでありますが、もし、それを否定されるのであれば、通産大臣はこの点についてどう考えておられるのか、また、転換が困難な企業に対してはいかなる施策を講じようとしているのか、具体的に御答弁を願いたいと存じます。(拍手)次に、知識集約型産業への転換の中身についてお尋ねいたします。
 このような方向性を打ち出す以上、当然それに沿った具体的な政策なり財政措置といったものが必要となるのでありますが、白書では、成功例、失敗例の具体的なケースが列挙されるにとどまり、対応する施策については、ほとんど見るべきものがありません。通産省として、いかなる政策によって対応されようとしておるのか、また、その方向への誘導、助成策を伴った長期計画を明らかにすべきであろうと考えますが、通産大臣の見解をお伺いいたします。
 最後に、中小企業の人材育成並びに、中小企業に働く人たちの諸問題についてお尋ねいたします。
 中小企業の勤労者の労働諸条件が大企業に比べて依然として劣っておることは、賃金水準一つをとってみても明らかであります。企業は人なりということばもありますように、労働者を抜きにした企業対策はあり得ないのであります。
 とりわけ、中小企業の場合、福利厚生の面や職場環境の面で大幅に立ちおくれており、これらの面での改善、政府のてこ入れといったものが必要であることは多言を要しません。わけても、中小企業に働く中高年齢者層の問題は避けて通ることができないのであります。技術習得のための職業訓練施設の拡充強化とそれに伴う訓練期間中の生活保障や中小企業退職金共済制度の拡充、年金の改善など、現在と将来の生活安定のために政府がいますぐに着手しなければならない課題は山積みしているのであります。企業経営の一方の面だけに分析調査が集中され過ぎているように思われます。白書では、勤労者に関する問題についても分析は行なわれているようですが、この際、労働省だ、通産省だというなわ張り意識などは捨てて、中小企業に働く人たちの条件、何を最も望んでいるのかといった点をきちんと把握し、対応策を講じるという姿勢を打ち出すべきであろうと考えるのであります。
 とりわけ、中高年齢者層に対する問題を中心とする諸問題こそ、中小企業施策の柱であり、これらの中高年齢労働者の生活安定のための諸施策の充実をはかっていくべきであると考えますが、総理並びに労働大臣の御見解をお伺いいたします。
 また、少なくとも当面、中小零細企業が集中している地域を選定して、中小企業の勤労者を対象にした診療所を開設し、夜、仕事が終わったあとでも受診ができるような医療体制をつくり、勤労者の健康維持をはかるべきであると考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
 さらに、労働者一万人程度を目途に、自治体と連携して労働者センターを建設し、娯楽や教養の場とし、中小企業の福利厚生施設の不足を補い、一そうの充実策をはかるような構想を打ち出すべきと考えます。この点について労働大臣の見解をお尋ねし、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(田中角榮君) 加藤清政君にお答えをいたします。
 第一は、中小企業関係予算が一般会計のわずか〇・六%にすぎないがという御発言に対してでございますが、本来、中小企業政策は、自由な企業活動の場において、中小企業の種々のハンディキャップの軽減等を通じ、中小企業がその本来の特性を十分に発揮して成長発展することを支援していくという役割りを果たすべきものと考えておるのであります。
 このような中小企業政策は、金融、税制、診断指導、情報提供など多彩な内容をもって進めなければならないものでございます。こうした各施策は必ずしも一般会計予算の面のみに反映するものではなく、財政投融資、税制拡充のほか経営指導、さらには中小企業相互、あるいは大企業と中小企業との調整などを通ずる環境整備のための施策といった、量的に評価しがたい分野の施策も多いことは御承知のとおりでございます。ただ、一般会計における中小企業対策費につきましても、今後ともその増大につとめてまいる所存でございます。
 通産省から中小企業庁を分離して中小企業省を設置すべしという御議論についてでございますが、中小企業行政につきましては、業種の実態に応じて展開される必要があり、そのため産業行政と一体的に運用されるよう、通産省の外局の中小企業庁を中心として施策の充実強化に全力を傾注してきたところでございます。ただ、中小企業を取り巻く情勢は、最近環境問題の深刻化、物価、流通問題等ますます複雑化し、多元化しておるのでございます。このような新たな情勢の展開を踏まえまして考えますと、中小企業省の設置は十分検討に値する問題であると考えておるのでございます。このような趣旨から関係当局に対して検討を命じたものでございます。
 第三は、予算や権限を地方自治体へ移して、地域社会の実情に応じた中小企業政策を推進せよという意味の御発言に対してでございますが、政府といたしましては、これまでも地域経済の振興を担当する地方公共団体と密接な連絡をとりつつ中小企業行政を進めてきておるのであります。たとえば、中小企業行政でも古い歴史を持つ経営や技術の指導、設備近代化資金融資、さらには中小企業の集団化等を推進する高度化資金融資等を行なうにあたりましては、地方公共団体の協力を得て、その行政機能を十分に生かして施策を実施しておるわけでございます。
 また、最近における国際通貨変動に伴う緊急中小企業対策を実施するにつきましても、産地、中小企業の実情に合った手が機敏に打たれるように、影響調査、緊急融資、あるいは緊急診断の実施には地方公共団体の全面的な協力を得ておるわけでございます。今後とも政府としては、中小企業行政推進の上で、国と地方公共団体との間の最も合理的な、また望ましい事務の分担という観点から的確に判断をしてまいりたいと考えます。
 次は、商社の活動についてでございますが、商社の活動は国内だけでなく、原料、製品等の輸出入から海外プロジェクトの推進まで幅広いものでありまして、その行き過ぎが国民生活等に悪影響を及ぼすようなことはぜひとも避けなければなりません。
 このような観点から生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律を制定したところでございまして、大手商社との懇談会も発足させております。今後は、これらの方策を通じまして、商社活動のあり方について調査、検討を進めてまいりたいと考えます。なお、商社も行動基準を自主的に作成をし、みずからの健全化につとめておりますことは好ましい状態と考えるのでございます。残余の問題につきましては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#13
○国務大臣(中曽根康弘君) 総理から大部分はお答えいただきましたので、私らに関係する要点を御答弁申し上げます。
 まず第一は、商社法を制定せよということでございましたが、われわれの考えは、あくまで自由経済による創意活動と効率的運営を尊重するものであります。しかし、自由を乱用して零細なものを圧迫するというようなことが極端に出た場合は、われわれは断固としてこれを取り締まらなければならぬと考えております。(拍手)公正取引を確保するということは、われわれが自由経済を維持していくための基本的条件でもあると思っております。
 こういう観点から商社の活動につきましてしさいに点検をしておるところでございますけれども、先般、生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置法を通過させていただきまして、まずこの法律を活用いたしまして、商社の活動につきましても厳格にこれを点検してまいりたいと思っております。
 なお、商社が行動基準を自主的にきめたことはきわめて歓迎すべきことでありますけれども、これらをはたして実践するかどうかということもわれわれは深甚の注意をもって見守るつもりであります。
 以上のような見地に立ってこれからの推移を見まして、もし商社の活動が逸脱するようなことがあるならば、立法を行なうということも含めて検討してまいりたいと思っております。
 第二に、商品市場制度の根本的改革のお話でございます。
 商品市場は、御存じのように、商品の価格のヘッジ及び価格の形成、それから取引の公正化をはかって欧米においては非常に大きく発展しているところであります。しかし、遺憾ながらわが国においては、この資本主義をささえている大きな機能を果たす場所が投機の場に一部化していたということはなはだ遺憾な事態であります。
 そこで、通産省としては、産業構造審議会におきましてこの点検と答申を要請しておりまして、これらの答申を得次第所要の改革を行なっていきたいと思っております。
 第三番目に、知識集約化という結果が二重構造をつくりはしないかという御質問でございます。
 われわれが言っておる知識集約化というものは、最大限に広範囲にわたって知識を活用するタイプの企業に転換させようということでありまして、これは研究開発、デザインあるいはマネージメント、情報の入手あるいは人材の研修、養成、そういうあらゆる面を包含するものであります。したがいまして、これが大企業との間に二重の底をつくるようなことは極力回避しなければならないと思っております。われわれといたしましては、情報面及び技術面の助成を特に強く指導いたしますとともに、都道府県の総合指導所、試験研究機関、それから組合の中央会、商工会、商工会議所等の指導機関を最大限に活用するとともに、事業転換の指導につきましても綿密に周到な指導をしてまいるつもりでございます。
 その次は、転換が困難な企業に対していかなる施策を行なうかということであります。通産省が指導しておりまする転換の方法と申しますのは、大体安定しているマーケッティングのできる方向に拡大していかなければならない。それから自分の技術能力を最大限に活用できる方向にいかなければならない。大企業その他が進出すると思われる分野は適当でない。自分の能力を最大限に発揮しつつ、新しい分野に伸び出していくという方向にいま指導しておるところでございます。
 この転換に際しましては、まず第一に、中小企業三政府金融機関を通じまして、事業転換貸し付け制度を実行しています。また、グループで転換する場合につきましては、先ほど申し上げましたように、長期、ごく低利の資金の貸し付けを実行いたしております。なお、先般国会を通過いたしましたドル対法等を活用いたしまして、さらに中小企業信用保険法の特別措置も実行しております。さらに、税制上の加速償却制度も実行いたしました。
 やむなく転廃業に至るという場合に、一部の仕事を廃棄するということが出てまいりますが、これら共同して廃棄する場合につきましては、長期、無利子の融資を行なうような設備共同廃棄事業も創設しております。
 以上のような諸施策を積極的に活用いたしまして、転廃業につきまして御心配のないようにはかっていきたいと思っております。
 最後に、知識集約型産業への転換を行なうことについて、いかなる施策によってそれを行なっていくか、また長期計画いかん、こういうことであります。
 われわれの方向は、日本の産業構造を国民福祉型と国際協調型、そして無公害社会の建設、そういう方向に進めていく考え方であります。したがって、長期的に見ましても、中小企業をその方向に誘導していくということがわれわれの目標であります。
 具体的施策につきましては、ただいま申し上げましたような指導、情報、金融、諸般の政策を毎年毎年強化いたしまして、関係業界に不安のないようにいたしていきたいと思っております。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#14
○国務大臣(愛知揆一君) 金融引き締め政策の問題でございますが、引き締めのねらいというのは、御案内のように、総需要を抑制をいたしたいということでございますから、全体としての資金の流れを適切にコントロールするところが眼目でございますし、したがって、どうしても金融取引全体に大きく網をかぶせることが必要でございます。この意味におきまして、公定歩合の累次の引き上げでありますとか、預金準備率の引き上げということが手法として効果のある手法であると存じます。
 同時に、具体的には対象別、目的別に金融政策を展開しつつあるわけでございまして、たとえば商社に対してきびしく、土地関連融資に対してきびしく、あるいは証券関係の金融にきびしくということをやります一方におきまして、健全な中小企業の金融にしわ寄せが及ぶようなことがあってはならない、これが基本の政府の考え方でございます。
 当面の方針といたしましては、金融機関の中小企業向けの貸し出しの比率を、先ほど近藤議員にお答えいたしましたように、現状以上に維持することにつとめておる次第でございます。その結果、最近の動きといたしましては、たとえば相互銀行、信用金庫等の中小金融機関の貸し出しの伸びはかなり顕著でございまして、引き締め開始後も高水準を維持して、それぞれ伸び率が二八%あるいは三二%というような状況を維持しております。そして全国銀行について見ましても、中小企業向けの貸し出しの比率、割合というものは、先ほど申しましたように、現在大体三五%程度であって、これは昨年の第二・四半期が三二%そこそこでありましたのに比べますとかなり上昇しておるわけでございます。
 今後におきましても、かような点につきましては、きめこまかく十分に配慮いたしまして、行政指導をいたしてまいりたいと思っておるわけでございまして、特にただいま御意見がございましたが、中小企業の運転資金というものだけを別ワクに制度的にするという考え方はございませんけれども、行政指導によりまして、十分御趣旨のような目的は達せられる、かように確信をいたしまして、今後とも十分の努力を続けてまいりたい、かように存じておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣加藤常太郎君登壇〕
#15
○国務大臣(加藤常太郎君) 中小企業の労働面について加藤議員にお答えいたします。御質問は、私と総理に対する御質問でありましたが、私から総理の分までも含めてお答えをいたしたいと思います。
 中小企業におきましては、一般的に労働能力の開発とか労働福祉の問題が大企業に比べて劣っておることは、これはいなめない事実であります。これを改善して働きがいのある職場にすることが重要でありまして、近代的企業に育成することも必要であります。それには労働者のいろいろな問題を解決をすることが当然でありまして、中小企業の労働者の労働条件の改善、福祉の向上、生活の安定をはかることが労働省の方針でありますので、これに十分対処いたします所存であります。
 次に、中小企業の就労の状態でありますが、若年者は求人難、中高年齢者は就職難、中小企業に就労する中高年齢者のウエートは高いのでありますから、当然労働省といたしましても、中小企業の事業主が行なう職業訓練、これに対しまして財政的、技術的援助、中小企業退職金共済制度の普及等をはかることとともに、中高年齢求職者に対する公共職業訓練の推進、訓練期間中の失業保険金の支給期間の延長、訓練手当の支給等の援助を行なっているところでありますが、今後ともこれらの諸施策の大幅な拡充、改善をやる所存であります。
 次に、中小企業の福祉増進の問題について、一万人を単位にしていろいろな施設をやれという問題でありますが、これは労働省も、御承知のようにこの対策をやっております。六億の予算で本年度から全国で六カ所、勤労総合福祉センター、また、予算はこれよりは少額でありますが、勤労青少年体育施設、勤労青少年ホーム、働く婦人の家等労働者福祉施設の設置につとめているところでありますので、本年度からは、さらに労働者の週休二日制の問題、余暇対策が必要だ、こういう関係から、都道府県と協力いたしまして、八億の予算をもって勤労者いこいの村を建設することとしております。今後とも、中小企業労働者の福祉施設の充実については、十分配慮いたします所存であります。
 次に、総理に対する御質問のうち、作業を終わってから、中小企業の地域においては、夜間に受診できるように医療体制をつくれ、こういうような御意見でありましたが、これは厚生大臣のほうの管轄でありますけれども、労働省も重大な関心を持っておりますので、これに対してお答えいたしますが、この問題は、いろいろな各省とも関係ありますので、夜間の医療体制の充実は、関係省などとも十分協議いたしまして、労働省は大賛成でありますから、この体制の充実を真に配慮いたしまして対処いたします所存でおります。(拍手)
    ―――――――――――――
#16
○議長(前尾繁三郎君) 神崎敏雄君。
  〔議長退席、副議長着席〕
  〔神崎敏雄君登壇〕
#17
○神崎敏雄君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、昭和四十七年度中小企業白書に関し、質問をいたします。(拍手)
 まず、第一の問題は、政府の中小企業に対する基本的な態度、立場に関する問題であります。
 今回の白書は、中小企業基本法制定以来十年の歩みを概観し、中小企業の過去と未来をバラ色に描き出しております。しかし、実際には、わが国の中小企業は、屈辱的な繊維の対米輸出規制、二度にわたる円切り上げ、金融引き締め、労働力不足、低い下請単価、大企業の投機による原料買い占め、また、自由化によるアメリカ企業の圧力など、数々の被害をこうむり、未来の展望も暗く、不安にさらされているのであります。
 白書も認めているように、歴代政府の中小企業政策は、製造業重視、商業軽視を特徴としておりますが、特に、製造業の中でも上層の優良部門のみを育成して、大企業のもとに系列化し、零細企業は切り捨てるという政策をとってきたのであります。
 政府が進めてきた中小企業の近代化こそは、大企業のために、中小企業労働者の低賃金や、低い下請単価を保障し、中小企業の犠牲のもとで、大企業の国際競争力の飛躍的な増大をもたらしたものであります。
 近代化促進法に基づく政府の上からの近代化や、構造改善事業の押しつけのもとで、中小企業は、いやおうなしに生産コストの低減を迫られ、それが不可能な企業は整理、倒産のうき目を見たのであります。近代化促進法の指定業種への特別融資も、中小企業上層に限られており、たとえばネジ業では、全企業数の三%の割合でしか融資を受けることができないという実績になっております。
 その上、近代化計画を実行してコストダウンになれば、それを口実に下請単価が一方的に切り下げられるのであります。協業組合についても、大企業のひもつきの優良中堅企業を中核とした組合をつくり、中小零細業者の自主性を奪い、従属的地位に置こうとするものであります。
 このように、政府の中小企業近代化政策は、真に中小零細企業の立場に立つものではなく、もっぱら大企業の経済的支配を強め、国際競争力強化を目的としたものにほかなりません。歴代政府の大企業奉仕、輸出第一主義の政策こそ、わが国中小企業の困難の根本的原因となっておるのであります。
 政府は、最近輸出第一主義の転換などと言い始めましたけれども、それならばなぜ、この白書の中で、従来の根本的に誤った政策を反省しようとしないのか。総理の明確な答弁を求めるものであります。
 中小企業の困難を生み出しているのは、大企業本位の輸出第一主義とともに、対米従属的な政府の経済外交であります。
 中小企業を二回にわたって塗炭の苦しみに追い込んだ円・ドル問題の根源が、輸出第一主義に基づく大幅な貿易収支の黒字とともに、アメリカのドルたれ流し政策にあることは周知の事実であります。しかるに政府は、アメリカ自身が責任をもってドル危機を解決するよう強く要求するという自主的な態度をとらないで、円切り上げや対米輸出の規制、自由化の促進など、アメリカの不当な要求を次々に受け入れ、中小企業に犠牲を転嫁してきたのであります。
 前回の円切り上げによって、休業、廃業に追い込まれた企業は九百六十一にのぼり、産地の輸出実績も、一五%減少した産地が三十三産地もあり、十八産地は二五%以上の大幅減少となっておるのであります。しかも、わずか一年有余にして、またまた事実上の円切り上げに追い込まれ、金融引き締めや大商社の原料買い占めも加わって、多くの中小零細企業の困難と不安を増大させているのであります。ところが、政府は、大企業に対しては為替差損金の救済など手厚い措置を講じてきたのであります。
 現在、国際通貨情勢は、金価格の暴騰、ドルの暴落とマルクの切り上げなど、いつ再び混乱と動揺が起こるか予断を許さないものがあります。しかも、ニクソン政府は、ドルたれ流し政策を改めず、その上、新通商改革法を議会に上程して、日本に国際通貨、貿易上の重大な譲歩を迫ろうとしているのであります。
 田中総理、あなたは、近く予定されている訪米において、円の絶えざる切り上げや、日本商品の対米輸出規制など、通貨、貿易上の対米譲歩は絶対に行なわないと、はっきりここで約束ができますか、明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 歴代政府の対米従属、大企業奉仕のために、中小企業の輸出シェアは、三十八年の五〇%から四十七年の三四・六%へと大幅に低下し、この十年間に七万六千件の倒産が引き起こされるなど、幾多の中小企業と、そこで働く労働者に大きな苦しみをもたらしたのであります。
 これらのことは、中小企業基本法にさえ述べられている、小規模企業従事者の生活水準の向上、中小企業の経済的、社会的制約による不利の是正などという基本理念に全く反したものといわなければなりません。総理の責任ある答弁を求めるものであります。
 次に、私は、今日緊急に解決が求められている中小企業問題の幾つかの点について質問をいたします。
 その第一は、金融問題であります。
 政府は、すでに革新自治体で早くから実施されている無担保、無保証人融資制度を、国民の声に押されて、ことしになってやっと小規模企業経営改善資金融資制度として実施しようとしております。しかし、その内容は、政府や財界の息のかかった経営指導員の指導と、商工会議所の推薦を条件としておりますが、この条件を廃止すべきであります。そうして政府の定めた納税、居住、営業の三つの要件を満たせば、だれでも無条件で借りられるようにしてこそ、真に業者の要求にこたえ得るものであります。
 また、買い占め、商品投機で暴利をむさぼる大商社へすら、政府系金融機関が融資をするような大企業奉仕の反国民的な財政金融政策を根本的に改め、中小、零細企業に対して融資ワクを大幅に拡大し、金利を引き下げ、貸し付け期間を長くし、簡単な手続で借りられるようにし、不当な歩積み両建てをやめさせるなど、中小企業と国民の利益中心の財政金融政策にはっきりと転換をすべきであります。(拍手)
 さらに、いま、利子の負担にたえられないという業者の声が高まっているのであります。そこで無担保、無保証人はもちろんのこと、無利子の特別融資制度を創設してこそ、心のこもった小零細企業対策と思いますが、以上の諸点について、総理並びに関係各大臣の見解を伺うものであります。
 第二は、税金の問題であります。
 政府が今次税制改正において鳴りもの入りで宣伝した事業主報酬制度の恩恵に浴するのは、年収五百万以上という申告所得者全体の一%にも満たない高額所得者だけであり、いまや、青色申告会内部でさえ、政府にごまかされたという非難が起こっておるのであります。その上に記帳を義務づけることになるために、これは付加価値税新設への布石ではないかという国民の疑いの声も高まるのは当然であります。
 そもそも付加価値税は、生産及び流通の各段階で付加された価値、つまり利潤や利子、地代、賃金などにかける税金のことであり、これが実行されたならば物価高に拍車がかかり、業種によっては業者が身銭を切らなければならないということになり、記帳義務や毎月の申告など、中小企業を幾重にも苦しめることになるのであります。
 総理に伺いますが、あなたはいまはやらないと言うかもしれない。しかし、税制調査会も付加価値税の導入を答申しており、総理自身も、間接税の比重を高めるという趣旨の言明をしばしば行なっておりますが、将来にわたっても付加価値税は絶対に実行しないと約束できるのかどうか、この点の明快な答弁を求めるものであります。(拍手)
 私は、業者が長年にわたって要求し続けてきた。自家労賃を青色、白色の区別なしに、すべての中小業者に認める制度をすみやかに実行し、所得税制では、年所得四人家族で百五十万円まで非課税にし、中小企業の法人税率も、現行より少なくとも五%引き下げるようにすべきであると考えますが、総理並びに大蔵大臣の見解を求めるものであります。(拍手)
 第三に、下請企業の問題であります。
 白書も認めているように、零細下請の四五%は、下請加工賃が親企業に一方的に決定されるという無権利状態に置かれております。また、下請代金の支払いについても、下請代金支払遅延等防止法はあってなきがごとしの状態であるといわれているのであります。さらに、工業再配置促進法のもとで、工場移転に伴うさまざまな弊害は、まっ先に、最も深刻に下請企業にのしかかってきております。
 わが党は、かねてから主張してきたように、下請加工賃を適正なものに引き上げること、下請企業の生業を守ることをあらためて強く要求するものであります。
 そのために、下請中小企業振興法及び下請代金支払遅延等防止法をきちんと守らせると同時に、下請中小企業振興法を改正し、団体交渉権を保障すること、さらに下請代金支払遅延等防止法を改正し、下請契約文書を下請企業振興協会に届け出るようにし、報告、調査の権限を都道府県へも拡大し、違反した場合は、損害補償の義務を課す等の強い措置を講ずべきであると思いますが、通産大臣の見解を伺うものであります。(拍手)
 第四は、労働者の問題であります。
 大企業の圧迫のもとにある中小企業では、そこで働く労働者もまた低賃金、長時間労働をしいられており、日給九百円未満の労働者が約百万人もいるのであります。このような低賃金を全然解決できないにせの最低賃金制を根本的に改め、いまこそ真の全国一律最低賃金制を実施すべきであります。そして、国と自治体が、もっと中小企業を援助し、福祉施設、作業環境の改善などを含む労働条件の向上ができるようにし、中小企業にも適正な求人ができるよう、可能な条件をつくる必要があると思うが、政府の的確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 最後に、政府は、今後の中小企業の進むべき方向として、知識集約型、いわゆる知識集約化を強調しておりますが、その内容は、市場調査、製品の高度化など、従来と全く変わりばえのしないものか、またはベンチャービジネスなど、少数の中小企業にしか実現不可能なものであります。しかも、そのねらいは、資本と貿易の一〇〇%自由化など、アメリカの不当な要求を受け入れながら、大企業の輸出増進と帝国主義的な海外進出を促進するための、いわゆる国際分業にあわせて、中小企業を整備、再編することにほかなりません。真に中小企業を保護、育成し、その繁栄をはかるためには、このような対米従属と大企業奉仕の道ではなく、何よりもまず中小零細企業の立場に立つことであります。金融、税金、下請単価、労働力対策、これらの中小企業の悩みを解決し、その自主的で民主的な協同化を助け、大企業の横暴を抑えて、日本経済の自主的でバランスのとれた発展をはかることであります。(拍手)
 対米従属と大企業奉仕の道か、それとも中小企業や国民の利益を優先させる道か、政府はどの道を選ぼうとしているのか、総理の明確な答弁を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#18
○内閣総理大臣(田中角榮君) 神崎敏雄君にお答えをいたします。
 第一は、中小企業の基本的な施策についての御発言でございます。
 中小企業がわが国経済の中で重要な役割りを果たしてきましたこと、及び今後ともその使命の重要性にはいささかも変化がないであろうことは、いまさら申し上げるまでもないことでございます。
 政府としましては、中小企業がより近代化し、より多様な形で国民経済の発展に寄与し得るよう、中小企業対策を国の最重点施策の一つとして進めておるのであります。
 次は、日米貿易関係についてでございますが、日米間の貿易通商上の最大懸案でございました日米貿易収支のアンバランスも、今年になってから急速かつ顕著に改善が行なわれており、また、資本、輸入の自由化措置等により、日米通商関係は大きく好転したと考えておるのであります。これだけ両国経済の規模が大きくなれば、ある種の調整を要する問題は今後とも起こると思いますが、両国政府は、両国間の貿易経済の拡大均衡を求めるとの基本的立場に立って、問題の円満な解決を双方が相協力して行なうことといたしておるのであります。
 私の来たる訪米に際しましては、このような見地に立ちまして、両国国民の真の利益になる日米関係のあり方につきまして、建設的な話し合いを行なうつもりであります。
 次は、中小企業の現状についてでございますが、御指摘のとおり、この十年の間に、中小企業の輸出シェアが低下し、また、毎年ある程度の倒産があることもまた事実でございます。しかし、その反面、中小企業が製造業の出荷額や商業の販売額の中に占めるシェアは、この間ほぼ一定水準に推移をいたしておることは御承知のとおりでございます。このことは、経済の急速な拡大の中で、中小企業が確固たる地歩を維持し続けてきたことを意味しておるわけであります。生産性や賃金水準における大企業、中小企業間の格差も、これまで総じて縮小の方向をたどっておるのでございます。
 しかしながら、最近の内外情勢の著しい変化は、中小企業に対してきびしい試練を迫るものでありますので、政府といたしましても、今後とも基本法の理念に沿った適切な中小企業施策の拡充をはかるべく、一そうの努力を傾注してまいります。
 付加価値税の問題でございますが、従来一般的な消費課税を行なっていないわが国におきまして、付加価値税等の一般消費税を導入するかどうかは、その物価に与える影響や、中小企業に与える影響等について慎重な研究をしてからにすべきであると考えておるのであります。
 ただし、今後における間接税のあり方としましては、所得税を補完しながら、全体としての税体系を適切に維持するという見地から、その地位の低下をできるだけ回避し、その充実につとめるべきであると考えておるのであります。今後における所得税の減税や社会保障の充実のあり方なども考え合わせながら、一般消費税のあり方あるいは付加価値税の導入の是非等については、引き続いて勉強してまいりたい、こう考えるのであります。
 残余の問題については関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#19
○国務大臣(愛知揆一君) 申すまでもないところでありますが、財政金融政策の運営にあたりましては、その成果が広く国民全般に及ぶようにしなければならないというふうに考えます。したがって、金融引き締め政策の実施にあたりましても、先ほど来しばしば申し上げておりますように、資金の調達力がすぐれておる、あるいは経済動向をリードするといったような力の大きい大企業に対して、強い効果、インパクトが及ぶようにするということが要諦であると思います。中小企業に不当なしわ寄せが及ぶことのないように、特段の配慮が必要であると考えておる次第でございます。
 今後とも、中小企業金融円滑化の見地から、中小企業に対してはできるだけ融資量を確保する、金利や貸し付け期間や手続等の面でも、極力中小企業の立場を考慮して取り扱ってまいりたいと考えます。
 ただ、御意見がございましたが、政府関係金融機関について申しますならば、これも独立の金融機関として融資業務を行なっておるわけでありますから、融資を無利子で行なうということは適当ではないと考えておるところでございます。
 次に、自家労賃をすべての中小企業者に認めよ、中小企業の法人税率を引き下げよ、こういう御意見を交えたお尋ねでございましたが、今回認めることにいたしました事業主報酬制度は、その実態が同族法人と類似している個人企業につきまして、みなし法人課税方式を選択する制度といたしたわけでございまして、事業主に報酬の支払いを認めるものであります。
 この制度を創設することといたしましたのは、前にも申し上げましたように、これによっていわゆる店と奥との経理区分を明確にする、企業経営の近代化、合理化の推進に資するようにしたいという政策目的から、特別の措置として創設したものでございますから、そういった意味から申しましても、青色申告において初めて認め得る制度である、これが政府の見解でございます。したがいまして、白色申告等においては考える余地はない、こう申し上げるべきであると思います。
 それから、法人税の税率の問題でございますが、現在御案内のように、資本金一億円以下の法人に対する法人の税率は年三百万円までの所得については二八%であって、一億円超の法人に対する税率三六・七五%に比べれば相当大幅に軽減されておるわけでございます。したがいまして、来年度は法人税率を相当引き上げたいと考えておりますけれども、その際におきまして、中小法人の軽減税率につきましてもあわせて検討しなければならない、かように考えますが、その際には、現状もかくのごとき状況でございますから、中小企業の立場を十分に考慮いたしまして税制改正の案をつくりたい、かように考えておる次第でございます。
 付加価値税の問題は、総理から御答弁がございましたから、省略いたします。(拍手)
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#20
○国務大臣(中曽根康弘君) 神崎議員の御質問をつつしんで拝聴いたしましたが、遺憾ながら賛成できません。
 中小企業経営改善資金の融資の問題でありますが、これはいままで商工会議所や商工会が経営改善普及事業を行なっておりまして、その一環として、この経営改善を指導している向きに対して、これを補うものとして金融上の措置もやって一体化をはかろうとしている制度であります。したがって、こういう経営改善指導というものは当然これは先行すべきものでありまして、単に納税や居住だけで融資するということはとりません。
 第二に、無利子の特別融資制度の問題につきましては、大蔵大臣がいま御答弁になりましたが、資本主義社会におきましては、やはり独立企業であるという場合には、特別の場合を除いては原則として金利は何がしかの額において徴収すべきものであります。そういう意味において、この無利子制度をこのように拡充することはいかがかと思われます。
 次に、下請企業関係の経営、下請と親会社との関係改善に関して幾つかの御提案がございました。
 これらの中で、下請中小企業振興法及び下請代金支払遅延防止法等について、いま随時実態調査を行なっております。したがいまして、この実態調査の実情に応じてこの間を調整していくということはいいと思うのであります。親請と下請との関係は、いわゆる共産党が主張されているような対立や闘争の関係ではないと思うのであります。やはり両方の協調関係によって相補完し合う関係にあると思うのでありまして、非常にきめのこまかい各業界、業態に応じた、態様の変化に応ずる協調関係が必要であると、そのように考えるものであります。
 なおまた、下請企業振興協会に届け出させるという御提案に関しましては、これは数量がかなり膨大になるということと、迅速性をかえって失うという危険性がございます。
 それから、府県に対して調査権を委譲する云々というお考えがございますが、これは企業は同一府県内にとどまるものでなくして、全国的規模に下請関係を持っているものもあり、かつまた、全国的均一性を確保する必要もあると思いますので、その措置は適切でないと思います。
 それから、損害賠償等の問題につきましては、やはりこれは民事手続によって当事者間において決定すべきものである、そのように考えております。(拍手)
  〔国務大臣加藤常太郎君登壇〕
#21
○国務大臣(加藤常太郎君) 中小企業の労働条件は、大企業の労働条件に比べまして、いま相当の差があることはお説のとおりであります。中小企業の労働条件の向上は、労働者の福祉の点からも、中小企業の人材確保の点からも、また中小企業の今後の近代化の点からも必要なことでありまして、労働省としては、従来から十分努力している考えであります。
 そのため、週休二日制の普及、労働安全衛生融資その他による安全衛生対策の推進等労働条件の向上、作業環境の改善をはかるとともに、雇用促進住宅、共同福祉施設、勤労青少年体育施設等福祉施設の拡充に努力いたします所存であります。
 お説の最低賃金制については、現在全労働者のおおむね八割に適用されており、今後も現行法に基づきまして、すべての労働者に産業別、地域別に実効性ある最低賃金制を適用する考えであります。
 また、求人の充足をはかるため、以上述べましたように、中小企業の労働条件の向上をはかるとともに、従業員の採用配置の合理化、労働能力の有効発揮など、雇用管理の改善についても指導を行ない、中小企業が労働者にとって魅力ある職場になるようつとめてまいる所存であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#22
○副議長(秋田大助君) 近江巳記夫君。
  〔近江巳記夫君登壇〕
#23
○近江巳記夫君 私は、公明党を代表して、ただいま説明のありました昭和四十七年度中小企業白書を通し、中小企業施策の全般について、総理並びに関係大臣に若干の質問を行なわんとするものであります。(拍手)
 今回の白書が、中小企業の憲法ともいうべき中小企業基本法が制定されてちょうど十年目に当たりますので、私は、中小企業施策の十年を振り返って、幾つかの問題点をただしていきたいと思います。
 まず最初にお尋ねしたいことは、いわゆる中小企業問題というものが、過去十年間の政府の施策によってどれだけ解消したのか、どれだけの効果を示したかという点であります。
 白書は、政府の施策によって中小企業が今日、日本経済の活力源として、基盤として、国民経済をささえるまでに大きく成長し、その地位はゆるぎないものとなったと自負しております。確かに、表面だけを見れば、わが国の中小企業施策は、各国に例を見ないほど幾多の施策があるといえましょう。しかしながら、私は、国民の目から見て、政府の中小企業政策が適切なものであって、その施策の効果がそれほどすばらしいものであったとはどうしても思えないのであります。
 今日、中小企業は、人手不足、人件費の高騰、原材料費の急騰、金融引き締めの強化、さらには再度の通貨調整の影響等により、おしなべてその存立基盤が大きくゆさぶられております。しかも、この十年間を顧みるとき、十年前に中小企業に存在した諸問題が依然として存在し、古くて新しい問題として、今日もなお解消のめどもないままにさらに複雑の度を加えておるのであります。
 これまで私どもは、常に、政府のとってきた大企業優先の高度経済成長政策、すなわち重化学工業への偏重、スケールメリットのみを追求する姿勢、さらには個々の施策の取り組み方の問題などについて指摘し、その改善をただしてきたはずであります。しかしながら、政府は、われわれの声に対しては全く耳をかさず、ただその場しのぎの対症療法的な施策に終始し、抜本的対策を講じようともしなかったと断ぜざるを得ないのであります。このため、中小企業は、基本法制定以来十年というのに、生産性の低さ、技術水準の低さ、さらには資金調達力の弱さなど、中小企業が持つ諸問題が旧態依然として解決されないという現実は、政府の重大な責任といわなければなりません。
 この際、政府は、これまでとってきた中小企業施策について深く反省するとともに、基本法制定十周年を契機として、原点に立ち返って施策を講ずることが必要と考えます。
 すなわち、このために、現在の中小企業庁を中小企業省に昇格させ、中小企業基本法を抜本的に再検討するなど、各種施策を洗い直し、現状にマッチした施策に改め、さらには、今後の中小企業のあり方について長期ビジョンを明示し、それへの誘導のための中小企業振興五カ年計画といった年次計画を策定することなどが真の中小企業施策であると思うが、政府の基本的態度を明確に総理に示していただきたいのであります。
 質問の第二は、政府が過去十年間行なってきた中小企業施策は製造業中心のものであり、そのもとに置き忘れられてきた問題について指摘しておきたいのであります。
 その代表的なものは、商業部門の小売商業についての対策であります。
 白書においても、小売商業の立ちおくれは指摘しているところでありますが、小売商業は国民生活と密接な関係を持っており、特に最近における物価の上昇を抑制する効果からもその近代化を急がねばならないにもかかわらず、政府の施策は生産第一主義、輸出第一主義に片寄り、商業部門に対する施策を怠ったことは、政府の怠慢といわなければなりません。米国から商業部門の資本自由化を迫られて、あわてて百貨店法の改正案中小小売商業振興法案を国会に提出したことを見れば、明らかなところであります。このような場当たり的なものが中小企業施策であるといわれてもしかたのないことであります。
 総理のこれに対する反省と、今後における商業部門の近代化の方向と、流通部門の資本自由化に対する所信を伺いたいのであります。
 また、政府は、知識集約型産業を指向されておられますが、過去において、石油ストーブ、魔法びん等に見られるごとく、中小企業が、せっかくくふうし、売れるものをつくっても、大企業の資本力にものをいわせた大量生産、大量販売により、その分野を荒らされた事例があります。今後、知識集約型産業を育成する中で、中小企業の事業分野を確保する施策を講ずることがぜひとも必要であると考えますが、通産大臣の御所見を承りたいのであります。
 質問の第三は、中小企業の輸出構造についてであります。
 わが国の中小企業の輸出企業は、概して産地を形成しており、その盛衰が地域経済に大きく影響を及ぼすこととなります。これまで、これら輸出型産地産業は、二度にわたるドル・ショック、先進諸国の輸入制限、特恵関税の供与、発展途上国の追い上げにより、いまや転換期に差しかかっていると思うのであります。
 しかしながら、白書においては、中小企業の輸出構造がどうあらねばならないかという点については明確にされておりません。わが国中小企業の輸出構造が今後どうあるべきかということについて、総理の姿勢を問うものであります。
 質問の第四は、産業構造の転換に伴う中小企業対策についてであります。
 その一は、白書で述べられておりますように、政府は、わが国産業構造の転換の必要を認識して、その方向として知識集約化を指向しております。中小企業についても同じでありまして、この波に乗せることによって新時代の中小企業へと脱皮をはかることを考えておられるようでありますが、実際問題として、中小企業の知識集約型産業への転換は、きわめて容易になし得ないことであろうかと思います。一口に知識集約度の高い企業に脱皮させるといっても、中小企業にとっては理解しにくく、そこには数多くの制約要因が山積しております。政府はいかなるプロセスをもって、また、指導助成措置についてはいかなる具体策によって構造転換を推進されようとしておられるのか、示していただきたいのであります。さらに、政府は、ベンチャービジネスの今後の発展に期待を寄せておるようでありますが、現在におけるベンチャービジネスに対する政府の助成束に、はたして何がありましょうか。今後、ベンチャービジネスを発展さすならば、わが国産業における位置づけと適切な施策がぜひとも必要であります。総理並びに通産大臣の所見を伺いたいのであります。
 その二は、事業転換の問題であります。
 白書でも指摘しているように、事業転換は今後きわめてその重要性を増していくものと思われます。しかしながら、企業者にとって、事業転換は生きていくためのやむを得ない手段であり、決してみずから求めたものではありません。
 白書においても、一方では事業転換を強調しながらも、他方ではその障害がきわめて多い点を指摘し、結果的には転換の困難さを認めざるを得ないとしておりますが、事実、中小企業振興事業団、中小公庫、国民公庫の転換貸し付けの利用実績が低いということがそれを物語っております。
 したがって、政府は、事業転換に追い詰められる中小企業の立場に立って、先行きの不安から転換に踏み切れずにいる中小企業者のために、責任をもって対策を講じていくべきであります。そして、具体的には、転換指導、長期低利の融資、旧設備の買い上げ、税制措置をはじめとして、従業員の職業訓練制度、情報提供等を含めた体系的な施策に改めるべきであり、これがひいては国民の利益に帰着するものと考えますが、通産大臣の決意と具体的な施策の内容とを明らかにされたいのであります。
 その三として、工業再配置についてお伺いいたします。
 政府が工業再配置を促進する過程においては、種々の問題が派生してくることは明らかであり、わが党はかねてから、公害を拡散することはもちろん、大企業中心の、しかも生産拡大を優先視した工業再配置に反対してまいりました。特に下請企業の場合、親企業の移転によって全面的に影響を受けるわけであります。
 私は、工業再配置というものが、中小企業、ことに零細下請企業の犠牲のもとに進められ、零細下請企業の切り捨てにつながることを指摘するものでありますが、総理並びに通産大臣はどのように見ておられるのか、御所見と、その具体的対策についてお尋ねしたいのであります。
 質問の第五は、中小企業の海外投資の問題についてであります。
 現在、中小企業の海外進出については、商工会議所に海外相談室を設け、本年七月からは財団法人海外貿易開発協会を発足させておりますが、何と申しましても、進出中小企業と相手国の国民との和を保ち、共存共栄をはかることが一番大切なことであります。しかしながら、海外におけるわが国の評価は、エコノミックアニマルに代表されるごとく、決してよいものではありません。したがって、私は、相手国との調整をはかりながら進出企業について適切な指導を行なう国の機関を設け、でき得れば進出企業の保証を行なうこと等により中小企業の海外投資の円滑化をはかることが必要であると思いますが、総理並びに関係大臣の見解を承りたいのであります。
 質問の第六は、中小企業の公害対策に関する問題についてであります。
 白書が述べているように、公害問題の深刻化は日ごとに拡大し、特に都市部に立地する公害型の中小企業にあっては、公害問題の解決なしにはもはや存在し得ないところまで追い込まれております。しかし、現実には、多くの中小企業は、その費用負担を生産性の向上によって吸収することが困難な状態であるといわねばなりません。
 中小企業金融公庫の公害防止貸し付けを受けても、結局は、減益あるいは赤字によってしかそれを吸収する方法がなく、そのことが中小企業の経営を大きく圧迫しているのであります。したがって、私は、中小企業の公害防止を強力に推進させるために、公害防止のための所要資金について、長期低利資金を確保し、相当期間を無利子とするなどの抜本的対策を講ずべきであると考えますが、総理並びに関係大臣の御所見を伺いたいのであります。
 最後に、中小企業金融について伺います。
 本年に入ってからの一連の金融引き締め基調の中で、今後の中小企業に波及する影響を考えたとき、きわめて憂慮せざるを得ないのであります。
 現在、中小企業は、過去二度にわたるドル・ショックにより、きわめて苦しい状態にまで追い詰められており、その影響は、これからもさらに一段ときびしくなることが予想されます。今後、金融が逼迫するならば、これら中小企業の倒産の増加といった事態が懸念されるのでありますが、これまでの公定歩合等の引き上げの中でどのような中小企業への配慮がなされたのか、また、政府はこれからの中小企業金融についていかなる対策を講じられるのか、年末金融を含めた対策について、総理並びに関係大臣にお尋ねいたします。
 以上、各項目についての懇切なる答弁を要求し、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#24
○内閣総理大臣(田中角榮君) 近江巳記夫君にお答えいたします。
 第一は、政府の中小企業対策についての基本的態度を示せということでございますが、わが国経済の基盤ともいうべき中小企業が、これまでの経済成長の過程を通じてすぐれた適応を示してきた反面、今日でも多岐にわたる困難な問題に直面しておりますことは、御指摘のとおりでございます。政府としても、基本法制定十周年にあたり、中小企業政策の一そうの充実につとめるべく、決意を新たにいたしておるわけでございます。
 中小企業の今後進むべき方向について長期的ビジョンを示すことは、あらゆる施策の前提として、きわめて重要であります。
 政府としても、変化と流動性の時代といわれる七〇年代において、中小企業のあるべきビジョンを得るため、さきに中小企業政策審議会に検討をお願いし、昨年八月、七〇年代の中小企業のあり方と中小企業政策の方向についてと題する意見具申をいただきましたことは、先ほども申し述べたとおりでございます。現在、この意見書に示された方向を政策に反映すべく努力をいたしておるところでございまして、今後とも、適切なビジョンの提示のもとに計画的に施策を進めるようつとめてまいりたいと考えます。
 中小企業省の設置につきましては、中小企業を取り巻く新たな情勢下にあって、十分検討に値する問題であると考えておるのでございます。このような趣旨から、関係当局に対して検討を命じましたことは、先ほども申し上げたとおりでございます。
 次は、今後の商業部門の近代化の方向と流通部門の資本自由化等についての御発言でございますが、消費者の日常生活に密着している中小小売商業の近代化をはかり、国民の豊かな消費生活を確保することは、きわめて重要な政策課題でございます。
 このため政府は、中小小売商業振興法案を今国会に提案をいたしておりますが、この法案では、中小小売商業者の組織化を促し、商店街の整備、店舗の共同化、ボランタリーチェーンなどの共同事業を推進するとともに、個々の中小小売商業者、特に零細な小売商業者につきまして、その近代化を助成し、経営体質の強化をはかることといたしておるのでございます。なお、小売業の資本自由化につきましては、本年五月の第五次資本自由化措置におきまして個別審査業種に残すことにいたしております。政府としては、経済的、社会的混乱を生ずることのないよう、小売業の近代化施策の伸展と歩調を合わせて、慎重に自由化を進めてまいりたいと考えます。
 次は、工業再配置は零細下請企業の切り捨てにつながりはせぬかということでございますが、工業再配置による工場移転は特に下請企業に大きな影響を与えますので、政府としては、下請企業の経営が困難にならないよう各般の対策を講じておるのでございます。第一に、移転する親企業に対して、下請企業に移転計画を十分説明し、また、用地、資金、取引先のあっせん等できるだけの処置を講ずるよう、指導してまいりたいと考えます。第二に、工場再配置対策に対し、助成に際しましても、下請企業の取引安定を配意しているかどうかを十分審査し、下請企業の基本的な納得を得ていない限り助成を与えることを認めていないわけであります。
 第三に、下請企業振興協会を活用いたしまして、親企業の移転により影響を受ける下請企業に対する取引のあっせんにつとめることとするほか、さらに親企業の移転に関連をして移転する下請企業に対しましては、工配公団、中小企業振興事業団、中小企業金融公庫、国民金融公庫などを活用して助成を行なってまいりたいと考えます。
 残余の質問に対しては関係閣僚からお答えをいたします。(拍手)
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#25
○国務大臣(中曽根康弘君) まず第一に、分野調整の問題でございます。
 魔法びん業界におきまして、過般大阪通産局で行政指導いたしまして、生産数量調整等を行ないまして、大企業と中小企業の調整をしたこともございますし、石油燃焼器具業界におきましても同様なこともございましたし、こんろ、ふろがま部門等におきましても起きました。いずれもこれらは中小企業団体の組織に関する法律に基づく、協調的な事業活動を行なうように指導したところでございます。
 先ほども申し上げましたように、力のあるものが中小企業のところへ乱入してきて、その不当な力を利用するというようなことは今後も厳に戒めていきたいと考えております。
 それから、中小企業と大企業との話し合いを積極的にやらせて解決を促進する、そういう意味において、分野調整をはかるための特殊契約の規定がございますが、これらもわれわれは大いに促進していきたいと思っておるところでございます。
 次に、政府はいかなるプロセスまたは助成方法によって構造転換をはかっていくかという点でございますが、これらにつきましては先ほどお答え申し上げましたように、個別中小企業、それからグループで転換をする場合、それらにつきましておのおの申し上げたとおりでございます。特に今回通していただきました、いわゆるドル対法によりまして、中小企業信用保険法の特例措置も講じた次第でありますし、また、加速償却制度も実行いたしております。なお、転換のための共同廃棄の場合には、長期無利子の融資を行なうということもやっております。
 次に、工業再配置は、中小企業、特に零細下請企業の犠牲のもとに行なわれるものではないかという御質問がございましたが、下請企業に対する影響をわれわれは非常に重要視いたしておりまして、下請企業の協同組合、協力会等に事前に移転計画を十分に説明して、納得を得ること。それから、下請企業も円滑に移転できるよう、移転先用地や移転資金のあっせん等に大企業もできるだけの措置を講ずること。それから、親企業とともに移転することができない下請企業に対しては、親企業が、ほかの工場や関連企業との取引のあっせんを行なうこと等について周到な手配をするように行政指導をいたしております。特に、下請企業等の中小企業の移転を円滑化するためには、工業再配置・産炭地振興公団のあと地買い上げ、移転促進運転資金融資制度等を積極的に活用いたしまして、中小企業振興事業団による土地先行取得融資、同じく中小企業金融公庫の過密公害防止移転貸し付け、国民金融公庫の過密公害防止移転貸し付け等を活用して、円満に行なうようにいたしております。
 次に、中小企業の公害防止を強力に推進させるための所要資金等につきましては、金融、税制、指導等各般にわたる施策を講じてきておるところでありますが、必要資金の確保につきましては特に配慮をしております。具体的には、中小企業設備近代化資金及び中小企業振興事業団融資において、長期無利子の資金融資を行なっておるほか、中小企業金融公庫、国民金融公庫及び公害防止事業団による長期低利の資金融資制度を行なうことによりまして、中小企業の公害防止の促進をいたしております。
 なお、昭和四十八年度におきましては、前述の融資制度につきまして、貸し付けワクの拡大、融資条件の緩和等を積極的に行なっております。
 次に、ベンチャービジネスの問題でございますが、このベンチャービジネスについては、いままで調査も行ない、その結果は白書に示されております。ベンチャービジネスは、中小企業がこなし得ること、需要の変化に機敏に対応できるものであることが要請され、知識集約型産業構造のもとでの中小企業のあり方を示唆する一つのものと考えております。その助成については今後検討してまいりたいと思います。
 次に、わが国中小企業の輸出構造について御質問がございました。
 わが国中小企業の輸出に関する環境は、きわめてきびしいものが出てまいりました。この中にありまして、輸出商品の高度化、多様化によって、国際分業に適応する生産構造へのシフトを基本として、あわせて秩序ある輸出、市場の多角化につとめておりますとともに、新商品の開発、デザイン開発、いわばソフトの面に中小企業振興事業団等を通じて積極的に助成いたしております。先般、貿易管理令の発動による輸出の規制につきましては、中小企業関係のワクは特に広げて設けてある次第でございます。
 中小企業の海外投資につきましては、日本商工会議所等による海外融資のあっせん、ジェトロによる情報の収集、提供、投資相談あるいは保険制度等の一そうの推進をはかることといたしております。発展途上国からの要請に基づくわが国中小企業の合弁事業の円滑な実施をはかるために、昭和四十八年度から中小企業海外投資協力事業制度を設けまして、財団法人海外貿易開発協会を事業主体として、必要な調査、指導及び資金の無利子融資を行なうこととしておりまして、こういう制度の活用によりまして、海外投資を積極的に指導してまいるつもりでおります。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#26
○国務大臣(愛知揆一君) 公害防止のための所要資金の問題は、ただいま通産大臣からお答えがございましたが、一、二の例を補足的に申し上げますと、国民金融公庫にたとえば産業公害防止のための特別貸し付け制度が設けられておりまして、大気汚染、汚水、騒音、産業廃棄物等をはじめとする各種の公害防止のための施設を設置する中小企業者に対して、たとえば十年という長期で六分二厘の低利で貸し付けを行なっております。また、四十八年度におきましては、こうした拡充を貸し付け限度の上においてあるいは貸し付けワクの上において、相当大幅に拡充いたしましたことは、ただいま御答弁があったとおりでございます。
 それから、公害防止事業団におきましても、特に中小企業が公害防止施設を設置するために必要な資金の貸し付けにつきましては、中小企業向けについて金利を五%というような低利で、貸し付けワクも四十八年度は五百五十億円にふやしていると、こういうような状況でございますが、今後とも十分に配慮してまいる所存でございます。
 第二の問題は、公定歩合等の引き上げに際して中小企業金融については特段の配慮を講ずべきである。この御趣旨についてはごもっともでございますので、たとえば預金準備率の引き上げを中小企業金融機関に行ないますためにも十分配慮いたしまして、相対的に引き上げ率を軽くするというような配慮をいたしておりますことは御承知のとおりと思います。
 それから、先ほど来しばしば申し上げておりますように、当面のところは、中小企業に対する貸し出しの配分比率を現状よりは絶対に落とさないようにするということを特に基本にして、きめのこまかい行政指導をいたしておるところでございます。
 最後の問題は、年末の金融、これはまだちょっと間がございますが、十分状況を注視してまいりながら、例年の措置とも比べ合わせ、今年特に配慮すべきところについては、いまから十分に考慮しながら準備をいたしてまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#27
○副議長(秋田大助君) 宮田早苗君。
  〔宮田早苗君登壇〕
#28
○宮田早苗君 私は、民社党を代表をいたしまして、昭和四十七年度中小企業白書について、総理並びに関係大臣に施策の方針、見解を伺いたいと思います。(拍手)
 今回提出されました白書によりますと、昨年の中小企業の経営は、四十六年末の通貨調整による手痛い打撃からようやく立ち直り始めたところでありますが、そのまま推移しまして、去る二月のドル一〇%切り下げ、円の変動相場制移行という新しい事態がなかったならば、この白書も、円の切り上げの試練を輸出型の産地がどう克服したかという分析結果から、その構造転換の必要性を経営者に力説するだけで済んだかもしれないのであります。持ち前のバイタリティーを発揮しさえすれば中小企業の前途には光がありますよという華麗な表現で事足りたと思うのであります。
 しかし、田中内閣は、国会冒頭の施政方針演説にもなかった選挙制度の改正を、党利党略から唐突に意図したのと同じように、円の切り上げを天下に向かって否定しながら、実質的な切り上げに踏み切ったのであります。その結果は、白書が指摘しておりますとおり、中小企業を取り巻く環境は険しいものがある、あるいは先行き楽観を許さないとまで言い切っているのであります。
 三十八年に中小企業基本法が制定されてちょうど十年であります。白書がその十年の歩みを振り返っているのを見てもわかりますように、中小企業は、いまや、国際化時代あるいは企業間格差の拡大にどう対応するかといった重大な転機に立っており、政府の中小企業施策も当然変化させなければならない時期にきておるのであります。今後の施策の方向を総理にお伺いしたいのが第一点であります。
 一昨年の円切り上げに起因いたしますところの昨年のドル・ショック倒産は、四十一年以来六年ぶりといわれるほどの低水準ではありましたが、これは過剰流動性が商社に土地や商品買い占めを促したように、中小企業にも潤沢に資金が回ってきた結果だといっても過言ではありますまい。現に、中小企業に対する融資実績を見ましても、肝心の政府系三公庫からの貸し出しは横ばいの実況であるのに対し、全国銀行の貸し出しが急速に上昇しておるのであります。また、全金融機関の貸し出し残高に占める中小企業のシェアは、四十六年の四一%から五七%にも拡大しておるのでございます。運転資金に恵まれている間は何とか切り抜けられるものというのが中小企業の体質であります。しかし、下げ続けていました金利は三月から上昇に転じ、その後の相次ぐ公定歩合の引き上げによりまして、いまや高金利時代に入っております。一連の金融引き締めが中小企業経営者へのしわ寄せとなることは、過去のパターンからいって歴然としております。私はここで、今後の中小企業金融の展望について大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。
 同時に、先週から欧州通貨とドルの再調整問題がクローズアップされていますことにかんがみ、中小の輸出型企業に最も関連の深い円の変動相場制をいつまで続けるのか、その方針をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、私は、いわゆる下請企業の対策について質問いたします。
 白書でも、この零細企業の直面している問題点が多く指摘されているわけでありますが、親企業からの工事代金の支払い条件は、手形から現金決済が多くなったくらいで、依然変わっていないのが現実であります。私は、ここで一つの実例を紹介して、政府の見解をお伺いしたいわけであります。
 ある地方自治体の公害防止プラント工事を、千四百万円で下請工事会社が元請から受注したのであります。正式の契約工事ですが、その後追加の付帯工事を頼まれ、三百三十万円かかって完工したところ、元請会社は、三百三十万円のうち人件費として百六十万円しか支払わず、残りは材料費として千四百万円の中に含まれておるというわけであります。この下請会社は、目下地元の通産局にあっせんを依頼しているようですが、この種のトラブルが依然あとを断たないのではないかと思うのであります。
 金融が引き締まってきますと、同じようなケースが多くなりますが、このような問題を通産省はどう指導しているのかをお尋ねする次第であります。
 私はここで一つの提案をしたい。
 それは、下請代金支払遅延等防止法を一部改正をして、小規模企業の経営安定をはかるために、当然支払われるべき下請代金については、たとえば工事発注時点または契約時に、その代金の三分の一程度を支払うべき義務を元請企業に負わしてみてはどうか、こう思うのでございますが、通産大臣の御意見をお聞かせ願いたいのであります。(拍手)
 白書第二部の構造編で工場移転の実態が取り上げられておりますが、私もこの問題について言及をいたします。
 大気汚染や騒音公害から、新しいところに移転したいという中小企業の意欲が高まる傾向にあるのは事実でありますが、そこには中小特有の障害も少なくないのであります。
 北九州市の戸畑というところに中小鉄工会社が百数十社まとまって立地しておりますが、工場建屋も老朽化したものが多く、騒音公害も解決をしなければならぬ。そこで、一昨年から移転計画が持ち上がり、昨年初めには新しい団地造成期成会が発足したのであります。近くに、国鉄が現在もその一部を使っておりますが、広大な用地があり、これを候補地として、市、国鉄当局と交渉していますが、国鉄の利用計画の関係から、移転計画は思うように進展していないのであります。
 かりに用地がありましても、問題は土地取得資金です。いま申し上げました北九州市の場合でも、市に先行取得してもらうことになるのであります。市の土地開発公社にしても、四十八年度の土地取得予算、住宅や公園用地などでありますが、これに関しましても約八十億円にすぎないのであります。移転はしたいが、土地や資金がない、このような悩みをかかえた中小企業が多いことにかんがみ、移転企業に対する資金、税制上の援助充実について通産大臣の見解をお伺いしたいのでございます。
 最後に、私は、中小企業に働く労働者の賃金と週休二日制などについて質問いたします。
 白書によりますと、従業員三十人から九十人の中小企業の現金給与上昇率は、大企業のそれを上回っております。しかし、これは賞与が寄与しているものであって、定期給与の水準あるいは大企業との格差は、依然縮まっていないのが現状であります。中小経営者といたしましては、賞与は、従業員を確保するためには、銀行から借りてでも奮発せざるを得ないのであります。この面から見ても、大企業と中小企業の二重構造解消は遅々として進んでいないのが現実の姿であります。
 週休二日制の導入は、いまや時代の要請であります。中小においても何らかの形で週休二日制と取り組む姿勢を示しているわけでありますが、中小企業庁の労働問題実態調査によると、四三%の企業が五年以内に実施と答えているものの、実に四〇%が予定なしとなっているのであります。休日増に伴う生産や売り上げの減少、他企業との競争上の不安といった、企業の存亡にかかわる障害があることを知らなければなりません。
 私は、多くの中小企業経営者の要望にもありますように、週休二日制導入には、何らかの国の誘導政策もしくは助成策を講じないことには、賃上げと週休二日制が中小企業経営者を破綻におとしいれるおそれが非常に大きいと憂慮せざるを得ないのであります。(拍手)
 賃金格差の是正や週休制のタイムスケジュールなど、労働者の福祉充実に対する施策について労働大臣の所見を承りまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#29
○内閣総理大臣(田中角榮君) 宮田早苗君にお答えいたします。第一は、今後の中小企業対策の方向についてでございますが、わが国経済は、内外の諸情勢の激変に対応いたしまして、質的にも充実していかなければなりません。その中で、中小企業のあり方や中小企業政策の進め方も、新しい観点に立っていくことが必要でございます。
 先ほども申し述べましたように、中小企業政策審議会からいただきました意見具申をもとといたしまして、この基本的な考え方に沿って施策を充実してまいりたいと考えております。
 まず第一に、需要構造の変化への対応など、生産面での合理化だけでなく、いわばソフト面での対策に重点を置く必要があると考えます。中小企業が国際化の進展、福祉社会の指向などに対応していくには、これまで以上に市場動向に敏感で、また社会的要請に合致した企業経営をしていかなければならず、政府としても、事業転換の円滑化や情報の提供などを通じまして、中小企業を知識集約化していくことが必要であると考えておるのであります。
 第二に、中小企業の存在が多様であることを十分に認識をいたしまして、それぞれの業種、業態に対応して、きめこまかい政策配慮をしていくことであると思うのでございます。特に中小企業の中でも企業体質の弱い小規模企業に対しましては、とりわけ気を配った施策を十分に講じていかなければならないと考えます。
 第三に、中小企業に対する指針を示し、中小企業を積極的に誘導していくという役割りを重視していくことだと考えます。これまでの施策の推進に加えまして、新しい中小企業のあり方についてのビジョンをできる限り提示し、それに沿って中小企業を積極的に誘導していく施策を組み合わせていくということが一そう重要になってきておると思うのでございます。
 こうした基本的な方向に沿いつつ、具体的な施策の展開を進めてまいりたいと考えます。(拍手)
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#30
○国務大臣(中曽根康弘君) 下請取引につきまして、代金支払いを拒否したり、遅延したりするトラブルについていかなる指導をするかということでございます。
 建設業法により、あるいは下請代金支払遅延等防止法によりまして、そういう不当な取引についてはこれを規制しているところであります。
 通産省におきましては、四十七年度に、親企業約一万、下請企業約四千について実地調査を行ないました。その結果、約七百の企業について立ち入り検査を実施してその非違を確かめたところであり、また注意を加えたところでございます。
 御指摘のような不当な事実があるとすれば、それらにつきましては、通産省はもちろん、公正取引委員会あるいは建設省と協力して、必要な立ち入り検査を行ない、改善措置を命じたいと思います。
 それから、これらの措置に基づく法律措置のほかに、当事者の申し出に応じて、全国各地の下請企業振興協会に設けられている苦情紛争処理委員会によるあっせん、調停の道も開かれておりますので、この面の指導もいたしたいと思います。
 次に、三分の一を手付金として払ったらどうかという御提案でございますが、製造業、建設業の一部についてはそういう事実も行なわれておるようでございます。しかし、一般の製造業については、親と下請との関係は反復継続して仕事が流動するという関係にもあるので、手付支払いということを一般的に認めることは必ずしも妥当ではないのではないか、少なくとも、法律をもって一律に義務的に強制することはいかがかと思われます。しかし、下請の地位があまりにも阻害されているというようなケースがもしあるとするならば、これらの問題も将来の問題として検討していきたいと思います。
 工場移転に関する先行取得の問題でございますが、これは先ほど御答弁申し上げましたように、中小企業団地取得のための先行取得に必要な資金及び過密、公害防止のための移転に必要な資金融資制度等につきましては、いろいろ先ほど申し上げましたような措置を講じておるところでございます。御指摘の問題等につきましては、具体的にいろいろ考慮してみたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#31
○国務大臣(愛知揆一君) 国際通貨の問題、円のこれからがどうなるかという趣旨の御質問でございました。
 この点につきましては、現在、わが国の円をはじめ、主要諸国の通貨がすべてフロートしておる状況でございます。その中で、安定的な通貨制度の確立のための努力が国際的な協力のもとに行なわれている、これが現状でございます。
 私といたしましては、この秋のIMF総会において何らかの合意が得られることを期待して、日本としても大いに努力を続けていくべきであると存じておりますが、現在の通貨情勢を見ますると、なお相当の期間はいわゆるフロートを続けざるを得ないのではないかとも考えられる次第でございます。同時に、わが国の市場は、ヨーロッパの通貨の動揺等によりまして影響を受けて、一時的に相場が動いた時期もありましたが、全体としてはきわめて平静に推移いたしております。
 次に、今後通貨の再調整はあり得るかという点についてでありますが、現在、主要国の通貨の為替相場は原則として市場の実勢にゆだねられることになっておるのが現状でございます。したがいまして、現状のもとでは、多角的に各国間の為替レート関係をあらためて調整するというような事態が生ずることは予想されない、私はかように考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣加藤常太郎君登壇〕
#32
○国務大臣(加藤常太郎君) 宮田君にお答えいたします。中小企業の週休二日制の問題について、実情に即したきめこまかい貴重な御意見、ほんとうに感謝いたします。週休二日制の普及、促進については、中小企業においても大企業においても、経済社会基本計画において、「計画期間中には大企業の大部分が完全週休二日制に到達し、中小零細企業においてもかなりの程度週休二日制が一般化することに努める。」、こう基本計画には載っておりますが、中小企業、零細企業、なかなか週休二日制の推進も、脆弱性、お説のようにあまりこれを無理すると、企業の存亡にも関係がある、障害がある、そのとおりでありますので、現在は月一回、月二回と段階的に、特殊性を考えて推進する所存でありますけれども、しかし労働省としては、できるだけ早くその目標を達成するよう、積極的に推進をはかっていきたいと考えます。特に中小企業に対しては、その実態にかんがみ、集団的な導入をはかる等、政府としては、その実情に即した、大企業よりは特にきめこまかい援助、指導を行なう所存であります。
 次に、中小企業の賃金の改善でございますが、中小企業の総合的振興対策を推進することが根本と考えられますが、労働面においても、労務管理の近代化を進めるとともに、実効ある最低賃金制の推進をはかってまいりたいと考えております。
 さらに、高福祉社会の建設を目ざす今日、中小企業労働者といえども、週休二日制のみならず、定年の延長、特に余暇環境施設の整備、この問題は大企業中心でなく中小企業中心に、労働省といたしましては、先ほどの総合センターとかいろいろな問題は、中小企業、零細企業が対象であります。今後とも、お説のとおり、これらの問題を全力をふるってつとめます所存であります。(拍手)
#33
○副議長(秋田大助君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#34
○中山正暉君 議事日程は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#35
○副議長(秋田大助君) 中山正暉君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○副議長(秋田大助君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時五十三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  田中 角榮君
        大 蔵 大 臣 愛知 揆一君
        通商産業大臣  中曽根康弘君
        労 働 大 臣 加藤常太郎君
 出席政府委員
        内閣法制局第四
        部長      別府 正夫君
        中小企業庁次長 森口 八郎君
ソース: 国立国会図書館
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