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1972/10/31 第70回国会 参議院 参議院会議録情報 第070回国会 本会議 第3号
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1972/10/31 第70回国会 参議院

参議院会議録情報 第070回国会 本会議 第3号

#1
第070回国会 本会議 第3号
昭和四十七年十月三十一日(火曜日)
   午前十時二分開議
    ―――――――――――――
#2
○議事日程 第三号
  昭和四十七年十月三十一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 内閣総理大臣から発言を求められております。発言を許します。田中内閣総理大臣。
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(田中角榮君) 去る二十八日の所信に関する演説につきまして、一部趣旨の徹底を欠きましたことはまことに遺憾に存じます。ここにその部分をあらためて申上しげます。
 最近世界的に緊張緩和の動きが見られるとはいえ、わが国が今後とも平和と安全を維持していくためには、米国との安全保障体制を堅持しつつ、自衛上最小限度の防衛力を整備していくことが必要であります。このたび、政府が第四次防衛力整備計画を決定しましたのもこのためであります。
 われわれは、戦後の荒廃の中からみずからの力によって今日の国力の発展と繁栄を築き上げました。しかし、こうした繁栄の陰には、公害、過密と過疎、物価高、住宅難など解決を要する数多くの問題が生じております。一方、所得水準の上昇により国民が求めるものも高度かつ多様化し、特に人間性充実の欲求が高まってきております。
 これらの要請にこたえて、経済成長の成果を国民の福祉に役立てていく成長活用の経済政策を確立していくことが肝要であります。(拍手)
#5
○議長(河野謙三君) 国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。加瀬完君。
   〔加瀬完君登壇、拍手〕
#6
○加瀬完君 私は、日本社会党を代表して、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
 総理は、就任以来、日本列島改造論を提唱し、また先般は、日中国交回復に奔走をされました。われわれもその努力と熱意に敬意を表するにやぶさかではありません。しかし、国民の中には、平和への決意がないのではないか、無防備中立の憲法には私たちはくみしないなどという発言をされては、平和憲法はやめるのか、こういう多くの疑問のあることもまた事実でありますので、以下お伺いをいたします。
 質問の第一点は、外交と防衛についてであります。
 お骨折りの日中共同声明によりますと、「日中会談は両国関係に新しい一ページを開くものとして、過去において戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについて、責任を痛感、深く反省する」と述べられております。また、すべて紛争を平和的手段によって解決し、武力または武力による威嚇に訴えないとも申されております。さらには、日中両国ともアジア・太平洋地域で覇権を求めず、第三国の利益を害さない、とも約束をされました。これらは平和五原則の確認でもあり、わが国平和憲法の具体化でもあると受け取るべきだと思いますが、よろしゅうございますか。
 御同感をいただけるものとすれば、中国封じ込めを目的とする安保条約の堅持、安保の有効な実施ということを内容としたハワイ会談の取りきめは、そのまま進行をさせましても、たとえば中国の政策とは全く正反対であります。相模補給廠でのベトナム戦の協力、さらには沖繩、北冨士の無制限使用、横須賀の原子力潜水艦基地の提供など、こういうものがどうして中国への責任を果たし、反省をすることになるのか、御説明をいただきます。
 特に政府は、相模原問題について、極東の平和にかかわりのあるものはすべて安保の範囲、ベトナム援助も安保の義務と、安保条約が極東の範囲にとどまらないことを説明をされました。このような安保の拡張解釈が日中共同声明とどう一致するかも、あわせて御説明をいただきます。
 一国の外交が、アメリカにはアメリカ向き、中国には中国向き、こういう態度で世界に信を得ることになりましょうか。そうでないとおっしゃるならば、次の点にお答えをいただきます。
 田中政権は、日中会談によって日中間の緊張はほぐれ、平和友好の機運は高まったと見ているのではないか。それならば、当然佐藤内閣の堅持をしておりました中国敵視政策、中国封じ込め政策は完全に廃棄さるべきものではないか。だとすると、今回の四次防は、これらの政治情勢に対しどう位置づけをするのか、特に中国敵視政策ないしは封じ込め政策は廃棄されないのか、今後の外交として、日中共同声明とハワイ会談とどちらに比重をかけるのか、全く国民は判断に迷っております。明確なお答えをいただきます。(拍手)
 国民は、なぜ緊張緩和の中で増強が行なわれなければならないのか、さらに今後、四次防はどう発展をするのか、防衛力の限界をどこに置くのか、全く四次防の決定には判断しかねておりすす。政府は、情勢判断として、紛争の可能性は否定できないとおっしゃっているようでありますが、それならば、どこの国と紛争が予想されるのか。また、総理は、台湾条項はともかくとして、朝鮮条項は必要だ、いまだ不安定要素がある、こう御答弁をなされておりますが、それでは、不安定要素とは何か。昨日の衆議院の御答弁ではわかりません。明確にお答えをいただきます。
 さらに、総理は、日中会談前と今日では、アジアの緊張が緩和されたことを認めておりながら、しかも防衛力は増強せねばならないと説くのであります。理由は何でありますか。
 また、総理は、最小限度の自衛力と説明をされますけれども、一歩譲って、最小限度の自衛力を認めるとしても、どうして日中会談以後に最小限度ふくらませなければならないのか、これもわかりかねておるところであります。お答えをいたかきます。
 特に、国民の側には、アジアの冷戦構造が解体されるのではないか、そういう期待感が大きいときに、地域的ないし期間的に限定された武力紛争の生起する可能性を否定することはできないと言われましても、納得はできません。くどいようでありますが、いつ、どこで、どの程度の、どこの国との紛争が予想をされますのか、明快な御説明がない限り、国民は、パンと大砲の取りかえっこには賛成できないのであります。
 ベトナム情勢を見ても、かくも判然と日本の周囲に緊張緩和が定着しようといたしておりますときに、依然として総理が安保体制の堅持を誇張することが、どうして国民世論に沿うことになるのでありましょうか。そして、それがどうしてアジアの緊張と世界の平和に貢献することになるのでありましょうか。あらためて伺います。
 頭隠してしり隠さずということばがありますが、政府の冷戦構造は四次防のみではありません。日中共同声明は少なくも中国に対する日本の侵略戦争の反省を明らかにいたしました。しかし、国民教育の中には、中国、日中戦争、太平洋戦争が次のように扱われております。満州事変の原因として「日本軍は張作霖の乗っていた汽車を爆破して、張を爆死させた」と、かつての教科書はこう書かれておりました。この記述は削除をされました。そして「奉天近くで中国軍と戦い満州事変が起こった」と修正をさせられました。太平洋戦争は、「中国との戦いが太平洋戦争の根本的原因である。満州事変以来中国への侵略がなかったら太平洋戦争は起こらなかったに違いない」、この記述は間違いとされまして、「東南アジア植民地の解放と大東亜共栄圏をつくるために太平洋戦争が起こった」と修正をさせられました。このように文部省の、満州事変を日本の侵略とは書くな、太平洋戦争の原因はABCDラインの包囲によるためである、こういった指導方針が今日の教科書を編集させております。総理が真に日中共同声明に忠実であるというならば、この教育の実態にどう対処をなさいますか。
 また、共同声明の趣旨からすれば、アメリカの基地、安保条約は当然解消の方向と方法をとるべきだとするのが多くの国民の世論であります。総理は、昨日の衆議院の御答弁では、声を荒らげて軍備強化を主張をばいたしましたが、何ら説得力のある御説明はありませんでした。国民の世論のどこが違っておるのか、本日はわかるように静かに御説明をいただきます。(拍手)
 質問の第二点は、日本列島改造論であります。
 日本列島改造論を必要とするものは、都市における環境破壊、地方における生活破壊が原因であります。そうであるならば、まず取り上げらるべきものは、その環境や生活を破壊した責任と原因ではありませんか。総理は組閣にあたって、生産より生活優先を提唱をされました。そのお考えならば、都市問題、過密過疎問題等の原因をつくった高度成長政策にまずメスが入れらるべきでありましょう。そういう政治を進めた内閣、そういう原因をつくった企業がまず追及さるべきではありませんか。しかし、その企業を増大させたものは自民党内閣であることを思うとき、その中心幹部であった田中総理は、みずからその環境と生活の破壊に責任をとることが先決であります。この反省のないところ、生産よりは生活優先という前提に立てるはずのものではありません。このように田中改造論は、政治の基本姿勢において反省を欠いているのであります。具体的に問題点を提起いたします。
 問題の一は、国民の命は守られるかの点であります。「花の命は短くて」という有名な詩がありますが、いま学者の間には、七十対四十ということばがささやかれております。花の命ならぬ人の命が、日本人の平均寿命がいままでは七十歳でありましたけれども、このままに環境汚染、生活破壊を許しておくならば、四十歳に低落をするということであります。すると、今日の政治課題の第一は、国民の命を守るために環境汚染や生活破壊をいかに解消するかということでありましょう。
 われわれは、ここで、過日の四日市判決を思い起こさざるを得ません。四日市判決は、企業の責任、行政の責任、生活優先の原則を明示をされました。とりわけ、命と暮らしを守るために、国、地方の人間優先の行政を要求されました。しかし、田中改造論は、この基本には何らかかわりなく計画をされ、遂行をされようとしております。すなわち、いかに抗弁をしようとも、公害分散計画はありましても、公害絶滅計画はありません。(拍手)
 そこで伺いますが、四日市判決の趣旨を、総理は、今後尊重をしていかれますか、尊重をしていただけますならば、列島改造の前に、人間優先の行政が今日どう行なわれているか、この実態調査をまずしていただきたいのであります。
 また、総理は、経済成長を進めつつ公害除去をはかる、こう先般御説明をなさいました。公害除去のためには経済成長にも歯どめをかける、このように御決断はいただけませんか。
 問題の二は、防災対策であります。田中内閣の成立を伝える同じ紙面で、死者、不明者百三十人と、四国、九州の大災害が当時報道をされました。ある社説は、「山津波、がけくずれ、河川はんらん、洪水は、共通して辺地と離島に集中している。そして、その原因は林野の過度伐採、産業計画の無計画性にある」と指摘をされました。さらに、「人命尊重、福祉優先の政治というならば、治山治水は、古来、政治の原点ではないか」とも論じられました。しかし、田中改造論は、治山治水の原点から出発をしておりません。
 また、総理は、東京震災の被害については改造論で述べられました。しかし、その対策は示しておりません。列島改造というならば、現在の国土の欠陥に対して対策がまず立てらるべきではありませんか。田中改造論が、国土を愛し、国民を憂うるというならば、なぜ防災対策を先に取り上げなかったのか、伺います。
 問題の三は、農村または過疎対策であります。日本列島改造論は、相も変わらず工業優先方式、農業淘汰方式ではありませんか。過疎の解消にしても、地方に中心都市をつくるだけでは、一部の過疎は解消をされましても、さらに新しい過疎原因をつくる繰り返しにしかすぎません。千葉県では京葉工業地区が誕生をいたしました。しかし、利根川、九十九里の沿岸は一そうの人口減少、収入減少と過疎を早めております。ほんとうの意味での過疎解消は、農漁業問題を解決しない限りどうにもなりません。しかし、いままでの自民党政府には食糧対策すらありません。内閣統計局の平均農家収入は、農内収入三〇%、農外収入七〇%、百姓をしては、米をつくっては飯は食っていけないことをあらわしております。米価を幾らにするかの前に、農業で安心して生活できる、そういう政治を農民は望んでおります。しかし、改造論にはいまだ食糧対策は立っておりません。農村をどうしてくれるのか、農民をどうしてくれるかの具体策はありません。農民を食えなくしておいて、そこに住め、これが過疎対策と言えましょうか。最近の各種世論調査を見ても、列島改造論以上に、国民は、生活の解決を政府に迫っております。
 そこで、問題の四として国民生活を取り上げます。
 まず物価であります。改造論のいうように、人口分散をすれば物価は下がる、そう簡単にいくものでしょうか。前佐藤内閣の不人気の一つは物価対策の失敗でありました。したがって、新内閣はこの問題に強力な対策を立つべきでありまし、う。すでに物価問題懇談会、物価安定政策会議等からは多くの提言がなされております。しかし、新内閣も何ら具体的な実行計画は示しておりません。国民優先の政治といいながら、国民の要望を優先にはいたしておりません。たとえば、政府の方針ですぐにもできるはずの管理価格や独占価故の規制すら示されません。特に、生鮮食料品の価格安定対策にはどう取り組むつもりでありますか。具体例を示しましょう。大衆魚であるアジ、イカ各百グラムは、昭和四十一年一月には九円と十三円でありました。四十七年には三十円と三十八円、三倍に値上がりをしました。年率四〇%の値上がりであります。このような物価に、改造論はどう解決を与えておりますか。何にもありません。
 公共料金はどうでしょう。せめて公共料金だけでもと国民は願っておりますのに、国鉄、健保までも政府は国民の負担で解決しようといたしております。ここに国鉄について一言触れるならば、国鉄に対する政府の出資はあまりに少な過ぎはしませんか。国鉄の経常費は黒字であります。減価償却と利子が赤字の原因であります。ところが、政府機関でもありませんのに、海運には国鉄の七倍、航空機には五倍、自動車には三倍を政府は出費しております。ならば、なぜ国民の足であります国鉄に、政府は金を出せないのでありますか。政府出費を増額すれば、運賃は押えられるはずであります。国民のためには税金は使わない、こういうことがまかり通っていいものでありましょうか。
 いま各地で問題になっているガス、水道も同じ理屈であります。ある県の水道料金は、飲料水一トンが四十円、工業用水は五円五十銭。ところが、この工業用水の浄化費はトン当たり二十円であります。しかし、工業用水ならば浄化費が二十円かかりましても五円五十銭で売るのであります。二十円に対する不足分は国や県が負担をする、そういう仕組みであります。工業用水には税金は出しますが、飲料水には税金は使わない、こういうやり方であります。これでも国民優先の政治と言えますか。公共料金の仕組みを洗い直せば、料金値上げをしなくてもバランスのとれるという面が多いのに、田中内閣は、国民の暮らしに政治の焦点を当ててはおりません。しかし、いま国民の望んでおりますものは、直接的な、公害、物価、インフレ、老後生活の保障等の、列島改造論ではない生活改造であります。
 そこで、わが党は、「生命と健康のために」、「住まいと環境のために」、「生きがいのある生活のために」など、国民の生活要求を目標に、国民生活基準要項を提唱いたしております。
 まず、「生命と健康のために」は、それらに関係の深い公害、交通事故、医療や保健衛生、災害などを内容として取り上げ、たとえば公害についてはさらに内容を大気汚染、水質汚濁、騒音、地盤沈下、廃棄物等に区分けをし、各個別に環境基準を具体的に設定をいたします。
 一例を示せば、一般河川のBODは三PPM、大腸菌は一CC二五〇のように規定し、さらに、これが測定網と監視体制を法制化して目的達成をはかろうとするものであります。
 「住まいと環境のために」は、たとえばごみの処理については、収集は週三回、終末処理は全量焼却。風水害に対しては、河川の百年周期の最大降雨量に対処し得る整備、特に丘陵地は一時間九十ミリ、流出係数〇・九、このように詳しく取りきめます。
 「生きがいのある生活」については、教育環境、児童福祉、心身障害者福祉、老人福祉などを項目として明確にいたします。
 詳しくは成田委員長の昨日の説明もありましたので省きますが、要は、自民党は列島改造をして生活改善をはかるというのに対し、われわれは、いま生活上改めなければならないことは何か、この生活改善目標に焦点を当てて、生活要求を政治の第一目標に置こうとするものであります。
 問題の五は、土地問題であります。総理は、日本列島改造論で、「働き盛りは職住近接のアパートで、四十代は田園の家に年老いた親を引き取り、週末には家族連れでレジャーを」と説明されました。「ほんとにそうならうれしいね」という歌がありますが、全くほんとにそうならうれしいわけでございますが、庶民はせめてマイホームを、マイホームの建つささやかな土地をと望んでいるのが現状であります。しかし、現在の土地は、地価はどうですか。大手デベロッパー十社が首都圏で買い占めております土地は一万ヘクタール。そしてその土地は公団、公社などへ一括売りをされ、三分の一はゴルフ場、これでは庶民は手が届きません。デベロッパーのもうけの一例をあげますならば、M不動産は、昭和四十年九月の取得状況が二十三・三ヘクタール、四十七年は二百ヘクタール、四十年の営業成績は七十億、四十六年は二百八十三億であります。数年間で何倍もの利益を生ずる背景は企業優遇、個人冷遇の土地政策であります。個人の短期譲渡には五二%の税金がかかりますが、法人は適用外であります。これが、土地が投機や投資に利用される根本原因であります。なぜ、土地社会化の推進として土地利用計画の確立、開発許可制度の強化、土地の公的管理の促進、土地税制の改革などを実行しないのでありますか。改造論にはこの対策は全然ありません。あらためて政府の地価対策を伺います。
 問題の六は財政であります。田中改造論の最大欠陥は手順がないこと、すなわち財政措置の不明確なことでありましょう。それに、どういう方法で、だれが主体かも明瞭ではありません。特に、住民の要求で、自治体が行なうことにはなっておりません。ここが問題であります。われわれは、さきにあげた国民生活基準の達成のために、まず、国、府県、市町村の事務分担を明確にし、税配分を財政需要額の計算に見合って合理化します。特に、大企業過保護の税財政の改正、財政配分に優先順位を設け、国民生活分を優先、法人税の合理化、地方自主財源の強化のために国税の地方税への移譲、法人税制、法人事業税の特恵の廃止、土地税制の抜本的改革、これらを検討し、その実現をはかろうとするものであります。
 田中内閣のように、開発財源、開発主体をほうりっぱなしにしておいて、四次防も行ないます、列島改造も行ないます、福祉対策もいたしますと言うなら、では、その福祉対策の財源をどこに求めることになりますか。結局、住民負担とならざるを得ないでありましょう。田中内閣が、この成り行きを見越して高福祉高負担と言うならば、私どもは反対であります。福祉優先とは、いままでの産業専一に奉仕をしてきた財政を、産業から国民に切りかえることではありませんか。横浜大学の長洲教授は、福祉優先とは、成長を続ける一方で福祉に力を入れるということではない、財政の配分を変えることだと申されました。ところが、総理は列島改造論で福祉優先の発想を持ってはおりません。福祉発想を変えるお考えはありませんか、御所見を承ります。
 質問の第三点は、経済の動向と財政運営に関してであります。
 景気は政府見通しの七・二%を大きく上回り、一〇%をこえました。さらに最近の物価動向は、卸売り物価が七−九月で一・八%も上昇、消費者物価も各種公共料金や米代金を中心に政府主導型の値上がりを続けております。こうした時期に、公共追加、財投追加、各五千億を主たる内容として、しかも、公債を財源とする総事業費一兆数千億の超大型補正を組むことは、日銀総裁の警告を待つまでもなく、当然、財政インフレの危険を生じましょう。政府は大型補正の景気刺激効果をどのように判断をしておるのでありますか、まず承ります。
 総理は、最近、大型補正は円切り上げ防止のためだと放送をされております。そして、本補正は公共の事業拡大を中心としております。公共事業の直接的需要効果は鉄鋼であり、セメントであり、砂利でありましょう。鉄鋼は輸出自主規制中であります。セメントや砂利は輸出品ではありません。また、公共事業の場合は、土地代に食われる面も大きいのであります。そうすると、公共事業拡大は円対策としては最も不向きであります。年金や減税と比較をしまして、公共事業費が円対策としてまさるという根拠は何でありますか。また、この補正措置によってどれほどの対外不均衡回復の効果があがると計算をされたのでありますか。
 この補正が、世間で言うように、四十八年度予算の先取りであり、列島改造予算の先食いであり、まして総選挙目当てのものだとすれば、現行財政法の秩序を乱し、財政破綻、生活不安を生ずることにもなりかねません。こんなずさんな財政運営を大蔵省はどうして認めたのか、その理由を明らかにしていただきます。
 今日の経済動向のもとで最も必要な補正予算のあり方は、義務的経費の追加計上を別とすれば、まず減税でありましょう。政府の発表でも年度内自然増収が二千億、われわれの試算では四千億をこえます。したがって、この税の取り過ぎを国民に返すのは当然であります。その理由は、四十七年は不況による減収を理由に減税は見送られました。なお、現状では、減税によって個人消費の比率を引き上げることが急務ともなりました。これこそが福祉型経済への転換であり、円対策にもつながるからであります。さらに、政策的経費の追加補正の観点からすれば、公共事業費よりも社会保障、特に生活保護基準と年金引き上げ予算をどうして増額をしないのでありましょう。消費者物価は五・三%にとどまるわけにはまいりません。それならば、物価騰貴分だけ生活保護世帯や年金世帯は生活を切り下げられることになるのであります。したがって、当然、政府の責任で補正措置をとる義務があるはずであります。
 次に、円対策を伺います。
 ドルのたまり過ぎがIMFをはじめ国の内外で問題となり、切り上げ後一年を待たずに再び切り上げ必至の声が強まってまいりました。政府は、本年五月、円対策七項目をきめました。しかし、いずれも計画倒れに終わり、効果をあらわしませんまま今回の第三次対策となりました。しかし、切り上げ回避は不可能だと言われております。政府は、国内景気を振興すれば貿易黒字を減らすことができると、この一年間言い続けてまいりました。ところが、貿易収支は百億ドルの黒字とさえ言われるようになりました。大きな誤りを政府はおかしておったということにはなりませんか。もはや、わが国の国際収支は景気対策とのからみで考える時期ではなくなりました。外貨問題それ自体を中心に据えた政策をとらねばどうにもなりません。今日のドル過剰については、何よりも基軸通貨国米国の節度と交換性の回復を要求するのは当然でありますが、わが国としても、輸出振興税制、金融諸制度を即時完全撤廃をして、秩序ある輸出制度を確立すべきではありませんか。特に根本的には、賃金の引き上げ、労働時間の短縮、公害費用の完全企業負担、産業ないし企業のための社会資本投資の撤廃、これらを早急に実現をして、非難の的の日本製品の安売りを防止し、その原因を除去すべきだと思いますが、いかがでありましょう。
 さらに輸入自由化は必要な政策ではありますが、食糧輸入による外貨減らしには賛成できません。農産物の自由化は日本の農業破壊となるばかりでなく、日本産業の構造を一そう高度化し、工業製品の輸出競争をますます強め、輸出依存国になり過ぎます。このことは貿易不均衡を一そう拡大するばかりではなく、農業放棄は国土の荒廃ともつながります。むしろ日本産業においては、工業化の速度をどうしておくらせるかを考うべきではありませんか。この点、農業には保護対策が必要だと思いますが、御見解を承ります。
 終わりに、田中内閣の政治姿勢について伺います。
 田中総理は警察本部長会議に出席をされました。警察活動は、不偏不党、公平中立を旨とし、とある警察法の精神をじゅうりんするものではないかという批判も少なくはありません。出席の理由をお述べいただきます。
 さらにこの際、内閣と警察との関係について、明確な御答弁をいただきます。
 次は、内閣の政治責任の問題であります。
 内閣は、米軍輸送問題に関し、建設大臣は、地元との話し合い解決を説明、官房長官も、東京都知事等に、自治体の要望を尊重する旨を確約しておきながら、抜き打ち的に強硬手段をとられました。しかも、条約論ということで、米軍車両の修理は許容されるし、ベトナム輸送も安全条約上排除されないと説明をされております。しかも、いままでの約束は、政策論として今後日米合同委員会にはかり、努力していくとも述べられました。国民に約束したあとで条約が生まれたわけではありません。条約を承知の上で国民に約束したはずであります。しかもアメリカは、そんな話は受け取っていないと言うのであります。だとすると、政府は、初めから国民をだまそうとしていた、そうしか解釈ができないではありませんか。条約のためには国民利益は無視してもいい、そういう論理がまかり通っていいものでありましょうか。美濃部都知事は、政府にペテンにかけられたと申しました。全くこれがペテンでなくて何でありましょう。解決方法は一つしかありません。相も変わらずアメリカに従属して安保効果をあげていくのか、新しい外交姿勢に立って、日中友好を軸に、真実第三国の利益を害さない立場、それは今日の国民の世論でもある、その国民世論に立つか、いずれをとるかであります。
 以上にも増して政府の責任は、外交における国際情勢の見通しの暗さであります。今回のベトナム情勢を見ても、政府の外交音痴は明白であります。ハワイ会談、大平訪米、何の情報を取ってきたのでありますか。どういう対策を立てたのでありますか。何にもアメリカから情報が与えられなかったとすれば、それは司政官以下の待遇にしかすぎません。それでも国益を守ったと言い切れますか。かつて、国際見通しの不明を恥じて、複雑怪奇の名せりふを残して辞任した総理がありました。
 世界各国が戦争をやめようとするときに、その見通しもつかず軍備強化を進めていく、こんな国際感覚が許されていいでありましょうか。この政府の不見識は国民に謝罪をして済むものではありません。政府の反省を求めます。
 内政問題でも重ねて念を押しますが、政府は物価対策、インフレ対策に本気で取り組むつもりですか。前内閣との物価対策の違いを明確に打ち出せますか。
 以上を伺って私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(田中角榮君) 加瀬さんにお答えをいたします。
 まず第一番目に、防衛力と日米安全保障条約の必要性という問題に対して申し上げたいと存じます。
 独立を保持し、国民の生命と財産を守らなければならないというためには、防衛力の保持、自衛力の保持は必要でございます。しかし、究極的な理想的な姿を考えれば、国連を中心にする集団安保機構が完備せられることが望ましいことは言うまでもございません。しかし、いまのアラブ、イスラエルの問題でさえも解決を見れないというような状態であり、スエズの閉鎖を解くこともできないような現状に徴すれば、最小限の自衛力を保持しなければならぬことはこれはもう言うまでもないのでございます。(拍手)
 それから防衛の具体的方法でございますが、単独でやるか、集団安全保障でやるか、二国以上でやるかということでございますが、これは洋の東西を問わず、一よりも複数以上の、言うなれば最終的には国連を中心とする集団安全保障機構が望ましい。それに至らない過程においては、西も東も集団安全体制にあることもまた事実でございます。そういう事実の上に立って日米安全保障条約が存在することをまず御理解を賜わりたい、こう思うのでございます。(拍手)世界的な趨勢でございまして、日本だけが日米安全保障条約を廃棄して自分だけで守るということになれば、どうしても国防、防衛と費用の負担も非常に大きくなるわけでございますし、ただそのような事実だけで完全な自衛が果たせるかどうかということを考えると、日米安全保障条約のもとで日本の防衛をはかっておるということは、これは避けがたい事実でございます。
 次に、日中共同声明、ハワイ会談と日中声明、中国の敵視政策をやめる、ハワイ会談、日中いずれにウエートを置くか、台湾条項、朝鮮条項等に対しての御質問がございましたが、日中共同声明は、日中間に長らく存在いたしておりました不正常な関係に終止符を打った歴史的なものでございます。日中間に横たわっておりました壁とは逆に、平和諸原則を基礎にした対話の道が開かれたものでございます。私はこれが契機となって、アジア・太平洋地域においても、ヨーロッパにおけるような安定した状態が一歩一歩実現されることを期待するのでございます。したがって、わが国は中国敵視の政策をとるつもりなどは全くない。全くないから日中の国交正常化も行なわれたわけでございます。また、他方、ハワイ会談を重視するか、日中にウエートを置くかというようなお尋ねもございましたが、これはわが国といたしましては、米中のみならずソ連、拡大EC、また開発途上諸国、いずれにも重大な関心を持っておるのでございます。わが国の外交は、世界的広がりを持つに至ったことはまさにこのことを意味しておるわけでございます。また、朝鮮条項や台湾条項に関しましては、衆議院の御質問でもございましたが、これは、朝鮮半島におきましては南北の話し合い機運が醸成されつつございます。また、台湾海峡におきましても米中の武力紛争はもはや考え得ない情勢になっておるのでございます。日中正常化も日米安全保障条約に触れることなく達成をされたのでございまして、両条項をこの段階で特に問題にされることはないように思います。
 四次防と日中共同声明、どの国との紛争を予想するか、最小限度の防衛力の基準は何か、安保は緊張緩和と矛盾しないかというような御発言がございましたが、四次防は、国の独立と平和を守るため、最小限度の防衛力を整備するため作成されたものでございます。これは事実を見ていただくとおわかりになるのでございますが、四次防の初めての年次でございます四十七年度の防衛庁予算は八千億でございます。この予算をそのまま五ヵ年間引き延ばすと五、八の四兆円になるわけでございます。しかし、国民総生産の拡大を七%ないし九%と想定をしましても、国民総生産に対する比率は〇・八%、いまの横ばいでございます。しかも、まあこまかい問題は予算委員会で十分数字をもって申し述べますが、大ざっぱに申し上げても、四次防が終わったときに飛行機の数はどうなるかというと、千機台が九百機台になり、それが八百機台になるというぐらいに、実際にいままでの防衛力の実態をよく見ていただくと、四次防が御指摘になるような強大なものではない、自衛のため必要な最小限のものであるということがよく理解できると思うのであります。(拍手)
 また、日米安保体制というものは自衛の一翼でございまして、わが国の独立保全のために必要なものでございまして、緊張緩和と逆行するものではないということでございます。
 アジアの不安定要因はどこにあるのかという御質問でございますが、これは不安定であると断定をするわけではございませんが、緊張緩和の方向にございますけれども、全く平和であるという状態を確認するような状態にないということは御理解いただけると思います。この間、バングラデシュの問題があったじゃありませんか。いま、ベトナム問題は平和の方向に進みつつはございますが、まだ南北は真に平和の状態を確保するまでには、相当な時日を要することも御承知だと思います。しかも、アジアにおいては、大国であるところの中ソ両国の間に、あのような国境紛争が存在をしておるじゃありませんか。しかも、国境を中心にして百数十万という軍隊が対峙をしておるという事実を否定することはできないのでございます。また、大国であるアメリカ、中国、ソ連の利害も一致はいたしておりません。また、朝鮮半島においても、話し合いの機運は出ておりますが、これがほんとうに地球上の平和の姿だということにはまだ遠いのでございます。そういう意味で、アジアの情勢をすなおに見詰めていただきたい、こう思うのであります。(拍手)
 日本列島改造の必要性と、公害その他、日本列島問題を前提にしていろいろ御発言がございましたが、この際、私は申し上げておきたいのは、日本列島の改造論は、これは方向として必要であるじゃないかということをまず議論をしていただきたいのであります。そしてあの一冊の本が、すべての政策を網羅しておるものでないことは、これはもう申し上げるまでもないのであります。私にはそれほどの力はございません。方向として、流れを変えなければならないということを訴えておるものでございます。流れを変えることが必要であるとしたならば、その理想的な政策は、国民の英知の結集をもってつくらなければならないのでございます。そして政府は、それを忠実に実行してまいらなければならないわけでございます。私がここで申し上げるのは、物価の問題も地価の問題も社会保障の問題も、すべての問題が列島改造という新しいテーマと真剣に取り組まない限り、私は、根本的には解決ができないとこう考えておるのでございます。(拍手)
 まず、一番大きな問題として、地価問題がございますが、例を申し上げますと、東京、大阪、名古屋に半径五十キロの円をかいて、この三つの円の合計の面積は全国土面積の一%でございます。この一%の中に、驚くなかれ三千二百万人の人が住んでおるのでございます。しかも、東京を中心にした半径百キロの首都圏には三千百万人の人が住んでおるのであります。(「だれがそうしたか」と呼ぶ者あり)そのような問題を、だれがそのようにしたかということと、現実に踏まえて新しい政策を立てなければならないということは別なのであります。でありますから、まず限られた過度集中の実態から、国土の総合的な、理想的な開発をきめて、推し進めていくことによって土地の供給をふやす。供給をふやさないで地価問題が解決するわけはありません。そういう意味で、まず列島改造の必要性を是認をしていただきたいのでございます。列島改造の必要性を是認した後に、公害対策、防災対策は具体的な政策として確立をするのでございます。
 まず、四日市判決についてでございますが、四日市判決は貴重な教訓としまして、公害のない、人間と太陽と緑が主人公となる人間優先の社会を築くのが列島改造の目標でもございますし、この判決を尊重することでもございます。公害防止のためには、規制の強化、防止技術の開発、産業構造の知識集約化、工業の適正配置、いわゆる工場法の制定等をいたしまして、公害に対しては根本的な解決を行なってまいりたい、こう思うのでございます。このような考え方を前提にしてまいりますと、適度な成長を続けながら公害の防除をはかっていくことは十分可能でございます。
 それから災害の防止と国土の保全については、お説のとおり、治山治水を原点として推進をしてまいりたい、こう考えます。
 それから列島改造というものは農業を淘汰するということにならないかということでございますが、農業の問題は、農業部門の問題だけでは解決できません。それは、やはり列島改造というテーマを前提にして、農工商三位一体の理想的な姿をどうして推し進めるかということでなければ、農業だけではどうしても収入を上げていくわけにはまいらないわけであります。百年前には九〇%でございました一次産業比率は、ことし一五・九%になったのであります。その過程において日本の国民総生産と国民所得が増大してきたことは、私が申し上げるまでもないのであります。しかし、アメリカの一次産業比率は四%であります。拡大EC十ヵ国の平均一次産業比率は六%であります。好むと好まざるとにかかわらず、現に総合農政を推進しなければならない実態にあることに目をおおうてはならないのであります。でありますから、農業生産をあげるために構造改善を進めたり、諸般の施策を進めるとともに、農業プラスアルファ、すなわち農村工業導入法や工業再配置、地域開発法などを総合的に活用することによって豊かな農村地帯が築き上げられるのであります。でありますので、列島改造は農業を淘汰するというものではなく、理想的農村を建設するための不可欠の要素である、こういうふうに御理解を賜わりたい、こう思います。
 物価問題について申し上げますと、物価対策は国民生活を安定させる上で重要なことは申すまでもございません。しかし、この物価問題は、率直に考えますと、消費者物価というものをまず考えるときに、消費者物価はどこに一体原因するのかというと、一つには都市に過度に人口が集中する一つの弊害であります。もう一つはどういうことかというと、低生産性部門が、生産性の非常に高い部門と同率で給与が上がっていくというところに大きな問題があります。第三点は、流通機構の整備であります。第四点は自由化であります。そういう問題を解決しないで、一つずつのものだけを取り上げて、それで物価が解決できるような考えを持つことは錯覚であります。ですから、物価を根本的に解決をするためには、どうしても国土の総合的開発、すなわち列島改造を踏まえた政策を実行する以外にないことは、私が申し上げるまでもないのであります。(拍手)
 皆さん、ここで私は一言申し上げておきたいと思いますのは、物価論争というのは戦後二十五年間ずっとやっております。しかも、野党の皆さんからこれだけいろいろなことを御注意を受けておるにもかかわらず、物価問題にきめ手のないのは、根本的な物価政策が行なわれなかったというところに起因しているのであります。その基本的な姿勢は列島改造である、こう申し上げたいのでございます。(拍手)
 公共料金についての御指摘がございましたが、公共料金につきましては、物価対策上の見地から、極力慎重に取り扱ってまいります。ただ、公共料金は単にこれを抑制すれば足りるというものではございません。企業の経営努力、賃金の上昇等もしんしゃくをして、どうしても必要なものに対しては改定を加えることもやむを得ません。ただ、国鉄につきましては、国有鉄道というものが明治初年から百年の間、日本経済の向上、国民所得の向上の大動脈としての使命を果たしてきたことは御指摘のとおりでございます。でございますので、国有鉄道というものを、ただ一つの企業として、独立採算制だけを要求できるものかどうかということについては、新しい立場から検討を必要とすると思います。それは、鉄道と道路と、そうして海運と、どのように調和をせしむるかという重要な問題がございます。そういう意味で、新しい視野で、また新しい立場で、国有鉄道の再建問題と取り組まなければならないということでございます。
 社会党の国民生活基準要項についてのお話がございましたが、これはいま勉強中でございます。
 それから土地問題につきましては、先ほど申し上げましたとおり、供給をふやさなければなりません。しかも、そのためには、将来の値上がりを予測をして、民間で買いあさるような状態に対処するために、全国的土地利用計画を定めなければなりません。土地利用計画に対して必要な立法は、次の通常国会において御審議をいただきたい、こう考えておるのでございます。
 それから高福祉高負担を前提とした基本的な考えについてただされましたが、いままでは確かに、まず国民所得を上げなければならないということで、生産第一主義であったことは事実でございます。それは昭和三十年代に、この議場で、最低賃金八千円を確保すべしということを野党の皆さんから強く述べられたことを考えれば、ただ、今昔の感にたえないということで片づけられる問題じゃありません。これはまず生産を上げ、輸出力を涵養することに全精力を傾けてきたことは事実でございます。しかし、その結果、公害問題、物価問題、地価の問題、公共投資の高率投資の問題等が起こってまいったわけでありまして、そういう意味で、生産第一主義から成長活用型生活環境整備に移らなければならない。その過程において社会福祉を拡大しなければならないという事態を迎えておることは事実でございます。でございますので、これからは基本的には生産第一主義から生活優先へ転換をはかってまいるつもりでございます。
 それから高福祉高負担というのは、ただこのことばにあらわれるものではなく、世界的な趨勢として、高い福祉のためにはある程度の負担は前提とせざるを得ないということを申し述べておるのでございます。
 また、大型補正予算についてのお話がございましたが、この補正予算がインフレを招くことはないかという問題でございます。今回の景気回復は財政支出と個人消費を中心としたもので、過去の景気回復パターンに比べると、そのテンポはゆるやかでございます。まだ生産余力も十分ございますので、インフレを招来するというおそれは全く考えておりません。公共投資の追加によりまして、社会資本の整備を促進いたしますとともに、輸入の増加、輸出圧力の内需転換を進めるという効果を考えておるわけでございます。また、社会保障費は、制度のあり方についても十分検討を加える必要がございますので、来年度予算においては十分措置してまいります。ただ、今回の補正予算の中で、社会福祉施設、国立病院等の整備については、十分配慮をいたしたつもりでございます。
 また、円対策についてでございますが、円対策、すなわち国際収支対策は非常に重要な問題でございます。いままでは輸出入銀行という機関一つを見てもわかるとおり、それは名前は輸出入銀行でございますが、実体は輸出の奨励、輸出の振興のためにつくられたものでございます。今度それが国会で法律を御審議をお願いしますのは輸入を拡大し、輸出を調整しなければならないというように、全く事は逆になっておるのでございます。そういう意味で、日本民族が初めてぶつかった問題でございますが、しかし、国民的英知を結集して、万全の措置を講じなければ、国際社会の中に新しい日本として長く経済活動を続けていくことはできないのでございます。そういう意味で、円対策につきましてはこの後も慎重かつ勇気を持って取り組んでまいるつもりでございます。今次補正予算も円対策の重要な一つであることを御理解いただきたいと思います。
 最後に、警察本部長会議になぜ出席をしたかということでございますが、現行の警察法は、警察の政治的中立性を確保し、民主的かつ能率的な警察運営をはかることを理念として制定されましたが、この理念は二十年近い運用の成果としてわが国に定着をしておると思うのでございます.先般、全国警察本部長会議及び全国公安委員連絡協議会に出席をし、昨年末の殉職事案の発生など、困難な情勢下における警察官の労苦に対して激励の気持ちを伝えましたが、これは行政の最高責任者として当然のことであり、警察の政治的中立性の問題とは関係のないことだと考えておるのでございます。(拍手)
 最後に、米軍の車両の抜き打ち輸送は国民感情の無視であるということでございますが、これはひとつ率直にお考えいただきたいのでございますが、理由は、八月の上旬、米軍車両の通行問題が生じましたので、各方面とも多岐にわたる話し合いを行ない、何とか円満に事態の解決がはかられるよう努力してまいったわけでございます。まあ、普通なら、これでいくのであります。なぜかというと、過去は法律的な制約はなかったわけでございます。それは、長い材木などや鉄の橋梁材を運搬する場合に、警察に届け出れば、そのまま運行注意を行なって赤い布などをつけて静かに通りなさいよということで自動的に許可になるのです。ところが、今度は、道路管理者が道路の管理保全とは関係のない理由で許可をしないのであります。そういうところに問題がございまして、これを改正せざるを得なかったということでございますので、これは自由民主党内閣でなくとも当然なさなければならないことに対して、このような事由に基づく真にやむを得ないことであったということで御理解を賜わりたい、こう思うのでございます。
 以上。(「答弁漏れ」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣植木庚子郎君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(植木庚子郎君) お答えを申し上げます。
 私への御質問は、経済動向と財政の運営につきまして、今回の補正予算、その補正予算の編成のしかたに問題がありはしないか、重点の置き方が間違っていはしないかという御意見の御質問でございます。
 今回、私、所管大臣として非常に心配をいたしておりますのは、いわゆる円対策の問題でございます。この問題につきましては、昨年の暮れ以来、政府当局としましてもいろいろなくふうをいたしまして、そうしてこれに善処してまいっておるのでありますが、いろいろな事情から、なかなかに、いわゆる貿易上の黒字、言いかえれば国際収支の上に起こる黒字の問題がだんだんとむしろふえる傾向さえある、ここにいろいろわれわれも考えなければならないというのが、現地に臨んで会議に参加しての感想でもございました。
 帰ってまいりまして、いろいろとこのくふうを関係省との間でも相談をいたしまして、そうして今回の十月二十日の日にできました円対策のあの緊急の政策をきめられたわけであります。その場合におきまして、現在の状況におきましてはやはり非常に大事な問題はこの問題であるが、この問題についていかにこの際に補正の予算を組んで、そうしてその目的を達成するかということの問題にぶつからざるを得ないのであります。そこで考えました結果が、いろいろ御相談をして、そうして、われわれは、この際公共事業費の追加の問題も取り上げたほうがよろしいと、一つの結論に達しました。もちろん、これにつきましては、輸入の増大につとめる問題、輸出の適正化につとめる問題等々、たくさんございますが、また資本の自由化の問題、これらも、いずれも政府としましては苦心の上政策を定めましたが、すなわち、公共事業の部門を追加いたしました意味は、やはりこの公共事業は、日本の国の現在の状態といたしまして考えますときに、社会資本の充実という問題について、この点になお足りない部分がある。この部分を考えると同時に、一方におきましては、国民の福祉増強のために必要な経費も出す、その施策をいろいろに講ずる必要があるという、両立した当面の国民多数の要望があるわけであります。そこで考えましたのは、この公共事業の追加ということをいたしますのも、これは間接にやはり国民の生活環境の改善にもなり、また、これによっておのずから輸出の品物を内需に向けるという効果も出ます。すなわち輸入の増加、この増加と輸出圧力を内需のほうに転換をするという効果がある、こういう問題を考えまして、われわれとしては、長期的にはやらなければならない問題であるところの、いわゆる産業あるいは工業の方向転換の問題、すなわち構造改善の問題、その一部にも役立つ、この考え方がこの際、取り上げるべき問題であるというので、今回公共事業の追加をいたしたわけであります。で、公共投資の追加は、緊急性を要するわが国社会資本の整備という、それを一段と促進しますとともに、国民福祉の向上に資するばかりでなく、それが国際収支の改善にも、間接ではありますが、効果を発揮することができるという見通しを立てまして、この問題をも補正予算でもって扱った次第でございます。その点、御了承をお願いしたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣有田喜一君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(有田喜一君) 私に対する御質問で物価問題がありましたが、これは先ほど田中総理から詳細に御答弁いたしましたので、重複を避けたいと思いますが、ともかく物価の安定は国民生活の向上に非常に大事な問題でありますから、私も全力をあげてこれに取り組む決意であります。
 次に、補正予算がインフレにならぬかという御質問でありましたが、これも総理からお答えがありましたので重複を避けたいと思いますが、御承知のとおり、現在、日本の景気は回復基調を強めております。しかし、今回の景気の停滞は、ずいぶん長い間でありました。したがいまして、いまだ経済の供給力にはかなりの余裕があるものと見られます。したがいまして、今回の補正予算が景気を刺激して直ちにインフレを招くものとは考えられません。しかし、物価の動向については十分注意をしていきたい、かように思っております。
 なお、労働賃金及び労働条件の改善の御質問でございますが、御承知のとおり、雇用労働者の賃金水準は最近着実に上昇しつつあり、また労働時間も次第に短縮されつつある傾向にございます。で、政府は内外均衡達成のために、輸出指向型の経済から国民福祉指向型経済へ早く転換することが必要であると考えております。このため、さらに社会保障の充実、環境保全対策の強化、物価の安定、週休二日制の推進など、国民生活の質的充実、労働環境の改善のための諸施策の強化、拡充につとめてまいりたい、かような所存でございます。(拍手)
#10
○議長(河野謙三君) 内閣総理大臣から答弁の補足があります。田中内閣総理大臣。
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(田中角榮君) 現行憲法を守るかどうかということについて申し上げます。現行憲法の平和主義は堅持してまいりますことは申すまでもないことでございます。
 それから第二は教科書の問題に対し答弁漏れがございまして、恐縮でございました。小・中・高等学校において憲法に定める平和主義に基づき、平和の努力の大切なことや戦争を防止することの必要を教えております。教科書の満州事変や太平洋戦争に関連する記述におきましても同様でございます。
 なお、日中間の国交正常化に伴い、修辞上の修正を要する部分については、著者、発行者の申請に基づき適切な措置がとられると承知をいたしております。
 なお、第三点は列島改造の手順をどうするかということでございますが、これは先ほども申し上げたとおり、いろいろな問題を解決するのには、列島改造ということを十分必要なものとして検討をし、しかも国民的な理解を求めなければならない。私は、この列島改造というものをまじめに出しておるつもりでございますが、どうも野党の一部の皆さんに御理解がいただけないということははなはだ残念でございます。これは、これを除外して、これからの政策はあり得ないのであります。どう考えてみても、この問題はもう不可避の、避けて通ることのできない問題でございますので、これはほんとうにもつと考え直していただきたい。同時に、この改造の手順というのは、御承知のとおり、次の国会には国土の総合利用、利用計画に対する基本法のごときものをまずやらなければなりません。そういう意味で、六十年展望に日本の経済状態がどうなるのか、日本人の国民所得と国民総生産は一体どういうふうに推定をするのか、その中に社会保障や生活環境というものはどうあるのかという青写真が書かれて、そして、その実行策が年度予算に盛られていくわけでございますし、まず次の国会からは、私は法律をつくっていただかなきゃなりません。そして、いまいろいろなところを買いあさっておるような人には、知事や市町村長が利用計画を上からかぶせることによって、先買いをした利益などは確保されないような法制を整備しなければならぬわけであります。そういう意味で、手順は次の国会までに国民的英知を結集して立法手段に訴え、また財政措置をしていただく、こういうことでございます。
 それから、最後に減税の問題でございますが、減税は政府・与党また税制調査会等で検討いただいておるわけでございまして、来年度は相当な減税を行なおうという姿勢で検討を続けておる段階でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(河野謙三君) 白井勇君。
   〔白井勇君登壇、拍手〕
#13
○白井勇君 私は自由民主党を代表いたしまして、主としまして内政問題を中心に、総理はじめ関係大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、その前に、一言申し上げておきたいと思います。
 多年懸案でありました日中両国間の国交が正常化されましたことは、党派を越えて各党の御協力のもとに、また、国民世論の強力な御支援によることは申すまでもありませんが、新内閣成立後わずか八十余日で、わが外交史上画期的な偉業を果たされました田中総理はじめ大平外務大臣に対しまして、国民とともに心から敬意を表し、そのなみなみならぬ御労苦を多とするものであります。(拍手)
 日中両首相が、晴れの調印のあとかわされましたかたい握手、あの感激の場面こそ、両国民は永久に忘れ得ないものと信じます。あのかたい握手は、日中関係だけではなく、アジア各国間の善隣友好の光明となりますよう念願をするものであります。
 これからの政治は、国民の自発的参加に待たなければなりません。したがって、国政を担当する者は、国民の自発性に強く訴えなければならないと思うのであります。
 さきに総理が、国民への提言といたしまして、十大基本政策を明らかにし、さらに日本列島改造論の提案をされまして、広く国民へ訴えられましたことは、政治のあり方の転換であり、まことに適切な措置だと思うのであります。総理は、国民の中にとけ込んで、国民と語り合う姿勢で、国民の参加と協力を求め、国民のための政治が実ってまいりますよう、一そうの御努力を期待するものであります。
 私は、最初に日本列島改造論について伺います。
 その第一は、日本列島改造を可能にする大前提というものは何であろうかということであります。改造論によりますと、「過密も過疎も同時に解消され、産業と文化と自然とが融和した地域社会」とあるのでありまするが、これはどういう理念によってささえられている社会であろうかということであります。
 私は、それは頭の切りかえであり、意識の転換であり、発想の転換によりまする新しい自由であると、これは私なりに推定をいたしておるのであります。新しい自由とは、人のことも考える自由、すなわち、自分が生きることで他人も生きることができることであり、他人が生きることで自分も生きることができる自由、つまり、共同で生きるための自由であると考えるのであります。いままでのように、自分のことだけを考える自由であってはならない。人さまのことも考える自由でなければならないと思うのであります。企業で申しまするならば、これまでのような地域住民のことを考えない、公害のたれ流しは許されないということであります。この新しい共同で生きるための自由こそ、日本列島改造を可能にする理念であり、福祉社会対策、公害防止、その他あらゆる国内政治、また国際政策を推進し得る根本理念でなければならないと思うのでありまするが、総理の御所見を承りたいと思うのであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 次に、日本列島改造論は公害を全国にまき散らすものかということであります。世間の一部には、日本列島改造論というものは、公害の全国的ばらまき論であるとして反対する批評家もあるのでありまするが、私は、「日本列島改造論」を読んでみますと、「これまでの生産第一主義、輸出一本ヤリの政策を改め、国民のための福祉を中心にすえて、社会資本ストックの建設、先進国なみの社会保障水準の向上など、バランスのとれた国民経済の成長をはかる。」、また、「これからの事業は、公害調整、環境保全、災害防止など、現場で働く人々や、地元で暮らす人々の安全と福祉を最優先にする。」、さらにまた、「工業基地の建設に際しては、規制を守ると約束した企業にだけ立地を認め、地方自治体との間に厳格な公害防止協定を締結させる。」と言明をしてあるのであります。それなのに、公害ばらまき論の出ますことは、従来の公害防止の施策が不十分であった経過からの懸念に基づくものかと思われるのであります。国民の中には「日本列島改造論」を読まれる時間のない方もありましょうから、この際、国民が誤解もしないし、納得のいくよう、総理からじきじき明確な御説明を願いたいと思うのであります。
 次に、この日本列島改造のにない手の育成対策というものをどうされるかということであります。日本列島改造をやります者はわれわれであり、特に、次の時代をになう青少年であります。私はいつも思うのでありまするが、明治維新のああした時代に、明治の先人というものはすばらしい教育制度を確立いたしました。日本の今日の繁栄は全くそのおかげであります。総理は、中央教育審議会の答申を踏まえ、積極的に教育制度の充実につとめるとおっしゃっておりますが、日本列島改造という新しい国づくりの時代を迎えまして、そのにない手となる若者をいかなる教育理念によって教育される御方針か。それは前にあげました根本理念と同じかと思いまするが、念のため総理大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
 次に、政府は、土地対策、地価対策にどんな手を打たれようとしておるかということであります。住宅対策も問題となります点は土地対策でありまするし、道路、新幹線等の公共事業の施行も土地対策に困り切っておりますることは御承知のとおりであります。今後、日本列島改造の諸施策が成功するかどうかというものは一に土地対策をどうするかにあると私は思うのであります。国土の一%余りが、東京証券取引所上場会社六百九十六社によって占有をされているとか、日本列島改造を見越しまして地価は至るところで値上がりの傾向にありますとか、全国的に数々の問題が起きておるのであります。このように土地が投機取引の材料にされ、国民の手の届かないものになっておる。この現状というものは、憲法第二十九条に「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」とある条文から見ましても、このままに放置することは許されないものではないかと思うのであります。
 私は、戦時中、戦後のあの食糧難の時代のことを思い起こすのであります。米が足りないので、順次その管理体制というものは強化されました。まず、米を投機取引の対象にすることが禁ぜられ、取り扱い業者も制限をされ、また、組織化もされましたし、小売り価格がこの春まで物統令で押えられてきましたことも御承知のとおりであります。土地は米のように増産はできないものであり、米のように過剰になる心配はございません。この際、政府が第一にやるべきことは、私は、まず地価を凍結をする措置を講ずべきだと思うのでありまするが、どうでありましょうか。たとえてみますれば、土地の取得価格に造成費、管理費、利子、ほかの物価の上昇率を加えました額を最高価格とするというような案であります。その上で、全国七万余人の土地取り扱い業者の整理、合理化や、国土全体の利用計画の樹立や、土地利用の規制や、土地所有目的に応じましたきめのこまかい保有課税制度などを講じ得るような、法体制というものを確立すべきだと思うのでありまするが、総理大臣の御方針を承りたいと思うのであります。
 次に、社会保障対策について伺いたいと思います。
 立ちおくれておりまする社会保障の対策中、現在最も緊急を要するものは年金対策であります。総理も御就任早々、昭和四十八年は年金の年として、老後を託するに足りる年金を目ざして、画期的な改善をするとおっしゃっておられます。
 厚生年金、国民年金につきましては、過日、社会保障審議会、国民年金審議会から、それぞれ年金時代の幕あきにふさわしい改善意見書が提出をされました。どうか政府は、あくまでも国民の立場に立って年金の年らしい制度を確立されますよう、まずお願いをいたします。
 問題は、老齢福祉年金であります。年金制度のしかれました当時、この厚生、国民年金のいずれにも加入し得なかった老齢者は、この十月から月三千三百円の給付となり、来年十月から五千円に引き上げられることに内定をいたしておりますが、この程度の額で老後の生活は保障されるものでありましょうか。この該当者の方々は、戦時中、戦後のあの、辛酸をなめ尽くし、日本の今日の繁栄を築き上げた方々であります。老齢福祉年金一万円はぜひ実現をすべきときだと思いまするが、いかがでございましょうか。所要額は月額五千円で、平年度総額約二千九百億円、一万円にしまするというと、一挙に約五千七百億円の巨額になります。万が一、予算上いろいろ困難な事情がありといたしまするならば、せめて、一人暮らし老人四十七万人、または寝た切り老人三十四万人だけにでも、月額一万円というあたたかい手を差し伸べるくふうをすべきであろうかと思うのであります。予算額は平年度でせいぜい二、三百億円の増加にすぎないものと思います。昨年から内定しておりまする月額五千円給付を、単に、来年から実行するのだというだけでは、田中総理のおっしゃいまする年金の年にはそぐわないものであろうと思うのであります。大蔵、厚生両大臣の御所見を伺いたいと思います。
 次に、社会福祉施設の整備対策について伺います。
 社会福祉関係施設で最も不足しておりまするものは、老人、重度身障者、重度心身障害児の収容施設や保育所であります。政府は、昭和四十六年から五十年まで、五ヵ年計画の緊急整備計画で進めておりまするが、この計画はまことにつつましいものでありまして、たとえてみますと現在、寝たきり老人が先ほど申しましたように、三十四万人でありまするが、その約半分の十八万人だけしか収容できない計画であります。その進捗状況を見ましても、三年目の来年の昭和四十八年度の整備を終わりましても、計画の四割程度しか達成できない現状であります。本計画立案当時とは社会情勢は急変をいたしております。文部省は、来年度幼稚園を一挙に五倍にする計画のようでありまするが、そのぐらいの意欲をもって計画を全面的に見直し、地方負担の軽減を含め、拡充すべきものと思いまするが、厚生大臣の御方針を伺いたいと思います。
 なお、これに関連をいたしまして、社会福祉施設に対する国有地の無償貸付について伺います。
 現在、地方公共団体または社会福祉法人が国有地を無償で借り得るのは、生活保護法、児童福祉法に基づく施設に限られております。老人福祉法、身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法に基づく施設には、その恩典が認められていないのはどういうことでありましょうか。まことにこれは小さいことではあるようでありまするが、行政の一貫性を欠くと思うのであります。社会福祉事業等の施設に関する措置法というものがありまするから、すみやかにこれを改正いたしまして、こうした恵まれない施設にも国有地の無償貸与をやるべきと、こう考えますが、大蔵、厚生両大臣の御意見を伺いたいと思います。
 次に、私は通信情報網の整備方針について伺いたいと思うのであります。
 日本列島改造の推進にあたりまして、通信情報網の整備というものは今日の事業投資のテンポで足りるのかということであります。日本列島改造にあたり、先行的に整備をしなければならないものは、交通網と通信情報網であることは、総理もたびたびおっしゃっておられます。現在、わが国の通信情報網というものは、道路網やら鉄道、新幹線網に比較をいたしまするならば一番進んでおります。しかし、その進んでおりまする通信情報網でありましても、電話は、御承知のとおりに、申し込んでもつけてもらえないものが二百二十万個に達し、そのほかに、申し込みを待っているものも数多くあると言われているのであります。それなのに、電話の年々の建設投資規模の伸び率というものは、せいぜい一一、二%程度のものでありまして、鉄道建設の三〇%から五〇%、道路の建設の三〇%から三〇%の伸び率よりはるかに低いものでありまして、総理の改造論にありまする「日本全国を一つの情報列島に再編成をするのだ」、こういう大方針に即しておるものとは思われないのであります。さらにラジオ、テレビにおきましても、NHKのラジオニュースすらも聴取困難な山陰地方、瀬戸内、九州西方地区や離島の数々が残されているのであります。こうした通信情報ネットワークの欠陥に対しまして、郵政大臣はどう対処される御方針でありまするか。
 また近年、宇宙衛星によりまする通信情報が急速に展開をされつつあります。現在、わが国のテレビの聴取できる世帯というものは、全世帯の九七%とその普及度は高いのでありまするが、残りのわずか三%のテレビの見えない世帯を見えるようにしまするには、約一千億円の新しい投資を必要とするのであります。しかも、現在の放送網というものは、今後六、七年先には更新をせねばなりません。更新をするのには 一つの放送網で約六百億円の投資が必要であると言われておるのであります。ところが、宇宙衛星の中継によりますと、わずか三百億円の投資で、全国の全世帯が、完全にテレビが見られるようになるのであります。さらに宇宙衛星によりまする放送、通信の実用化というものにつきましては、宇宙開発上、将来の国益を確保するためにも、緊急を要する情勢にありまするので、わが国の国産技術によります宇宙開発計画の基本というものは、それは守りながら、さしあたり必要でありまする技術というものは、米国の協力によるなり、すみやかに衛星を打ち上げまして、放送、通信の実験を急ぐべきときと思うのでありまするが、あわせて郵政大臣の御方針を承りたいと思うのであります。
 次に、東南アジアに対しまする協力事業として、東南アジア海底ケーブルの布設を積極的に進めるべきではないかということであります。
 東南アジア等、新興国に対しまする日本の技術援助というものは強く要請をされておりまするが、日本は電気通信の技術におきましては世界一流であります。情報網の整備を急がなけりゃなりませんことは、日本国内だけではありません。わが国と密接な関係にありまする東南アジア間の情報網の整備も緊急を要するものであります。幸い、国際電気通信連合が昭和三十四年に東南アジア海底ケーブルプランというものを採択いたしましたのをはじめ、昭和四十一年九月には、アジア国会議員連合でもこの問題を採択いたしました。その後、日本が中心となって、その実現を期してきたのではありまするが、東南アジア諸国の経費負担の問題などから、今日まで実現せずにいるものであります。
 この際、海外協力事業としまして、所要経費約三百億円といわれまするが、日本、香港、マニラ、バンコクと海底ケーブルを敷設してやるべきだと思うのであります。今日、政府はわずか四百万円の予算をもちまして、単に係官を関係諸国に派遣しようとするような計画を持っておるようでありまするが、それよりも、堂々と外交ルートにより、あるいはまたアジア国会議員連合というものがあるのでありまするから、その協力を借りるなどしまして、関係国首脳部の理解と賛同を求めることのほうが、むしろ先であろうと考えるのでありまするが、郵政大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
 次に、農政につきましてお伺いをいたしたいと思います。
 まず最初に、一つは、新内閣の新しい農業ビジョンというものは何であるかということであります。先年、米をつくれつくれの農政から、米を減らせ減らせの農政に急変をしました。コシヒカリというおいしい米のとれる新潟県のような米どころも、米づくりは無理なところも、全国一律の生産調整というものをしいられましてから、農家は、政府の農政に信頼感を失い続けております。今日、なお多くは、農業の将来に戸惑っておるのであります。幸い、新内閣を迎えまして、農家は長期見通しに立った新しい日本の農業ビジョンを期待をいたしておるのであります。総理は、地方長官会議におきまして、「日本列島の変化に富んだ自然条件を十分生かして、適地適作を進めることが農政の基本である」と申しておられるのであります。私も、それはそのとおりだと思うのであります。この適地適産の方針に従い、どんな作物をつくり、どういう農業経営をするかということをきめまする最後の者は、これは申し上げるまでもなく耕作者自身であります。ただ、わが国の農業も、国際化の波にさらされ、この激動する世相の中にあって、日々耕作に追われておりまする農家が、信頼できる指針もなく、たよりになる助言もなくして、どうして、どんな作物をつくり、どんな農業をやるべきかということを的確に把握し得るでありましょうか。
 そこで、私は、農林大臣にお尋ねするのでありまするが、日本農業のビジョンの提示というものは、時間を要するにいたしましても、せめて、次の二つはすみやかに提示をいたしまして、農業経営のガイドポストとすべきものと思うのでありますが、いかがでございますか。
 その一つは、主要農産物の長期の需給見通しと生産目標、二つには、農業生産の都道府県別の地域指標であります。前者につきましては、去る十一日に試案としまして発表されましたが、農業生産の地域指標につきましては、昭和四十四年の十一月に全国十四ブロック別のものが公表されまして、都道府県別につきましては、それから三年をたった今日、いまだに公表されておりません。いつごろこれは御提示になるものでありましょうか。また、政府のこれからの農政の施策というものは、この二つのガイドポストに基づいて進められるものと思うのでありまするが、お伺いをいたしたいと思うのであります。
 次に、土地基盤整備について伺いたいと思います。
 政府は、新たに新土地改良十ヵ年計画というものを計画しておられるようでありまするが、この計画というものは、農家の負担の上におきましてどう軽減される見通しかということであります。農林大臣は、今後の農政全般を左右する大問題は、食管制度の改革、農地制度、農業の国際化の三つであると語っておられます。食管制度、農地制度、農業の国際化がどう移り変わりましても、農業経営の根幹をなすものは、私は生産基盤のいかんにあると思うのであります。耕地さえ、機械化、近代化されました耕作ができるように整備されておりますれば、農業経営はまず磐石に近いものと思うのであります。新土地改良計画は、来年から十ヵ年間に約十四兆を投じまして、所要耕地五百二十万ヘクタール中、三百八十万ヘクタールを近代的耕地に改良する計画のようでありまするが、特に問題でありますることは、国庫補助率の大幅引き上げ、金利の引き下げ、償還期間の延長、工事期間の短縮、通年施行ができるかできないかなどの諸条件が、どういうふうに改善される見通しであるかということであろうと思うのであります。これらの条件が大幅に改善をされませんと、兼業農家の多くなりました今日の農村におきましては、申し上げるまでもなく、土地改良事業に対しまする部落民の一致した合意を得がたい実情にあります。したがいまして、事業の実施はたいへん困難になりつつあります。農林大臣の御方針を伺いたいと思うのであります。
 次に、私は、農業税対策につきまして伺いたいと思います。
 農業の税対策といたしまして、現実に耕作をしておりまする田畑や牧草地、あるいは造林されておりまする山林につきましては固定資産税というものを免税する、こういうことはできないであろうかということであります。農林業は、いまもって天候に大きく支配をされ、人間の努力ではどうにもならない面が多いものであります。そこで、農林業の唯一の生産要素でありまする土地には課税をしないことにしてはどうかと、こう思うのであります.平たく申しますれば、農業をやっておる限り、その土地には税金はかからぬのだと、こういうことはできないものであろうかということであります。今年度、これらの固定資産税収入見込み額というものは約二百七十六億円予定をされておるようでありまするが、この補てんにつきましては、できますれば、大企業の法人税率の、現在三六・七五%を多少引き上げるようなことにして埋め合わせをするわけにはいかないかと思うのであります。と申しますること、は今日の産業がここまで発展をいたしてきておりますることは、戦後長期間にわたりまする農家の食糧の供給と、農村労働力の提供によるところがまことに大きいからであります。これにつきまして、特に総理の御所見を伺いたいと思うのであります。
 次に、漁業対策について伺いたいと思います。
 私は、漁業というものは、これからは栽培漁業に転向する方針のもとに、国が年次計画をもって大規模に行なうべきでないかということであります。今後の日本漁業は、国際協力によりまする漁場の確保をはかることも必要であります。しかし、近年、領海二百海里の主張でありまするとか、漁業専管水域拡大の動き、こういうものが世界的の風潮でありまするし、さらに発展途上国の地元での魚に対しまする需要が増大をすることでもありまして、長期的には、他国依存にも限度があると思うのであります。現在、農林省がやっておりまする栽培漁業のやり方のように、関係の県や漁連に金を出させまして、栽培センターという一協会をして、こんな重要な事業をやらせておるようなやり方の時代では私はないと思うのであります。日本は、国は小さいのでありまするが、海岸線に恵まれております島国であります。海浜の公害防止に万全を期することはもちろんでありまするが、国の経費で大規模に海洋種苗というものを生産いたしまして、漁業組合などに無償配付し、栽培育成をさせるような栽培漁業の方向に大きく転向するときだと思うのであります。農林大臣の御所見を伺いたいと思います。
 最後に、総理は、日本列島改造論を次のように結んでおられます。「敗戦の焼け跡から今日の日本を建設してきたお互いの汗と力、知恵と技術を結集すれば、大都市や産業が主人公の社会ではなく、人間と太陽と緑が主人公となる”人間復権”の新しい時代を迎えることは決して不可能ではない。」「残る自分の人生を、この仕事の総仕あげに捧げたい。そして、日本じゅうの家庭に団らんの笑い声があふれ、年寄りがやすらぎの余生を送り、青年の目に希望の光りが輝やく社会をつくりあげたい。」
 この総理の結論と御決意は、国民大衆に向うべき方向を示されたものだと思うのであります。これに対しまする国民の正しい理解と今後の諸施策の具体化につきましては、何よりも第一に国民の納得と協力にまたなければなりません。
 今日、国民はだれしもが、そのふるさとの、日々に住みよくなりますること、祖国の年ごとの繁栄をこいねがわない者はいないはずであります。全国民があげまして、その活力と情熱とを傾けまして、新しい国づくりに邁進し得るよう、総理が陣頭に立たれまして、一大国民運動を展開すべきときと思うのでありますが、総理の御所見を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(田中角榮君) 日本列島改造について可能にするまず理念は、ということであります。
 日本列島改造の理念は、福祉が成長を生み、成長が福祉を約束するという成長活用の経済運営のもとで、都市集中の流れを大胆に転換して、日本民族の活力と日本経済のたくましい力を日本列島の全域に展開して、失われ、衰退しつつある日本人の故郷を全国的に再建することにあります。こうして、地方においても、都市においても、ともに人間らしい生活が送れるようになり、連帯と協調の地域社会を形成することができるというのが理念でございます。
 第二には、公害の問題でございますが、公害の追放は緊急の課題であります。これは列島の改造をする、しないにかかわらず、公害の追放は緊急な問題でございます。日本列島の改造のねらいは、公害と過密を解消し、国民が安心して暮らせる住みよい国土をつくろうというのでございます。
 また公害というのは、工場を、生産をとめなければ公害が排除できないというものではございません。これは重化学工業中心であった過去の日本の工業形態から、知識集約的な産業に移るということになれば、公害はおのずから防除できるわけでございます。石油を使うというようなものから、電気を使う自動車になれば、転化すれば、公害はとまるのであります。しかも、東京や大阪のように、狭いところにたくさんの煙突が存在するから、複合公害というものが起きているのでございますが、この工業立地というものをきびしく制限をすれば公害は排除できるのでございます。ですから、大気汚染防止法、水質汚濁防止法のような法律が必要であることは御承知のとおりでございます。そういう意味で、世界じゅうでも、いまどんな国でも、少しずつでも工業化が進んでおるのであります。これはもう歴史でございます。どんな先進工業国でも何%か、それは年率一〇%にならなくても、年率三%とか、五%とか、工業化はどんどん進んでいるんです。進んではおりますし、また進めなければ、所得を上げたり、社会保障を拡大したりはできないということで、成長は進めるんです。しかし、公害は防除しなければならぬ。それは英知によって、学問によって防除できるのでございます。(「そうさせぬじゃないか」と呼ぶ者あり)それは先ほど申し上げたように、石油の自動車から電気の自動車に転換できるとすれば公害は防除できるわけでございますが、経済的な問題もありますので、高い理想を掲げながら現実的に一つずつ解決をしていくのが公害の防除でなければなりません。そういう意味で、公害防除のためには、排出基準をきびしくすること、総排出量の規制を行なうこと、工場法によって立地制限等を行なう。特に立地制限等は好むと好まざるとにかかわらず、これから地方の工場等の立地の状況を見ますと、大体、工場地帯の四〇%以上は道路に確保しなければならぬと思います。これは工場のないワシントン市街の道路面積は、都市面積に対して四〇%が道路であるということを考えると、生産であり公害を発出するような工場立地がよりきびしく制限をされなければならぬことは言うをまちません。ところが、面積の四〇%を道路にし、残りの四〇%を空地もしくは緑地に指定をし、最後に残る一〇%ないし二〇%が工場を建てられる可能建築面積と規定をしなければならないと思いますが、そのようになれば、いま既存都市の中における工場は、ほとんど移転をしなければならないような状態であることはもう指摘するまでもないのでございます。そういう意味で、公害の防除というものについては、工場立地の制限を考える限りにおいては、日本列島改造以外にどんな角度から考えても手はない、こういうことになるわけでございます。その上、公害防除技術の開発、工業の適正配置等を円滑に進めてまいるつもりでございます。
 第三は、改造のにない手についてでございますが、日本列島改造の仕事は険しく困難ではございます。しかし、敗戦の焼けあとから今日の日本の繁栄を築いてきたわれわれ、特に若者の汗と力、知恵と技術を結集していけば、必ず理想は達成できるものと確信をいたしておるのでございます。この意味で、次代をになう青年諸君に大きな期待を寄せておるわけであります。
 第四は、地価対策でございますが、地価に対しては、先ほど申し上げましたとおり、これはやはり需要と供給の面から地価はきまるわけでございますので、どうしても供給をふやすということでなければなりません。日本列島というものは小さいと言われております。確かにカリフォルニア州一州にも満たないようなものではございますが、しかし、未利用な地域がどのくらいあるかということは、もう皆さん御承知のとおりでございますし、現に農地で転作を求められておる地域の一〇%ないし二〇%が都市や住宅地域や工業地域に転化できるとしたならば、それだけでも現に利用しておる土地の倍も供給できるわけでございますから、やはり供給という原則問題にメスを入れざるを得ないのでございます。
 もう一つは、全国的な視野に立った土地の利用計画を定める。まあ、東京や大阪などでよくおわかりになると思いますが、かつて多摩川の周辺あたりは一〇%以上建てることはできない。中には、緑地帯であり、制限地域においては延べ一〇%しか建てられないという建蔽率の非常にきびしい制度もあったわけでございます。今度幾ばくかでも公害を出すおそれのある工場地域等を考える場合には、こういう意味で土地の利用計画というものはどうしても全国的につくらざるを得ません。これは次の国会には御審議がいただけると思います。同時に、都会においては、制限というよりも、高度利用という立場において立体化をはかるなどしてまいらなければならないわけでございます。
 なお、税制の活用等につきましても検討いたしておりますが、地価のストップ措置、御提案になりましたけれども、これはなかなかむずかしい問題なんです。いまの地価でもってストップしろ、これは簡単に考えると一つの提案のようでございますが、ストップをかけると、現在の体系における不公平がそのまま温存されるんです。ですから、物価問題のときに、賃金と物価との悪循環で、一年か二年賃金をストップせよと、こう言うんですが、それは平準化が行なわれない過程において賃金ストップはなかなかむずかしいというのと同じことでございます。また、一定規模以上の土地の取引についての規制措置等については検討いたしております。
 それから農政の問題の中で、特に私に答弁を求められた農地の課税の問題について申し上げますが、一般の農地につきましては、その評価額は宅地等に比して低くなっております。税額についても、農業政策等の関連も考慮して、昭和三十八年度の税負担を据え置いておるところでございます。これがいまの政府の公式見解ではございますが、将来の問題、特に新農政を展開していくときに、国有地の活用などをはかって、特に北海道などで国有地を開放して大規模な畜産、酪農等を行なう場合、農地の課税を一体どうすべきか、新しい農地というものに対しては、ある意味で無税化を考えなければならないかというのは、学問的な問題として大きな問題であります。私もこれらの問題とは取り組んでもおりますし、検討いたしております。それはただ、いまの農地法というような問題から、新しい農地の姿ができて、そして先ほど言ったように、相当部分が他の市街地やいろいろなものに転化をして、新しい長期的な観点に立った農地というものが、あるところで拡大し、あるところでは制限をされるというようなことになる場合には、農地の無税化というものは有力な手段として考えなきゃならぬ問題だと思います。この問題は、私だけではなく皆さんもお考えいただきたい、こう思います。
 農政の具体的な問題は農林大臣からお答えがございますが、ただここで基本的なことを申し述べておきたいのは、国民所得の上を見ましても、都道府県の県民所得の状態を見ましても、一次産業、特に農業所得のウエートはだんだん低くなってまいっております。こういうものに目をおおうては真の農政はできないと私は思うのです。そういう意味で、農政というものは適地適作、これは米とか、果樹とか、畜産とか、いろいろ自給度をきめて、これに合うようにしなければなりませんし、合うだけではなく、これから一〇%ずつも拡大するであろう二次産業や三次産業と、一次産業に残る人の所得がやはり平準化、均衡するような政策を考えてやらないでほんとうの農政とは言えないのであります。
 そういう意味では、やはり経営基盤の強化拡大、構造改善の推進等々ございますが、これはやはり新しい視野に立って農政というものの経営規模を拡大するということでなければなりません。しかも、専業農家と兼業農家をみんな一緒にしておっちゃだめなんです。兼業農家というものは、いま年間農作をやっておっても二ヵ月しか耕作する時間は必要でないのであります。あとの十ヵ月をどうするか。これがほんとうに深刻な問題なんです。この場合、いま解決されておるのは、みな出かせぎに出ておるのであります。この出かせぎを何とかしてなくしなければならないというので考えられたのが農村工業導入化法であります。そうして、工場を導入することによって、余暇をというのではなく、年間の十ヵ月、家族が就業のところを得るように農村工業導入化法が制定をせられたわけであり、前の国会では工業再配置法が成立をいたしたわけでございます。そういう意味で、平たいことばで申し上げますと、お互いの府県で、長男は工場に出ておるか、役場に出ておるか、農協に出ておって月給を取ってくる。あとは七、八反以上のたんぼを持ち、自分で必要なところの野菜はまかなっておるというような家庭は、豊かではなくとも、少なくとも安定した家庭であることは申すまでもありません。そういう意味で、全部の日本の農民を五町歩、十町歩、ヘリコプターで種をまくような農民に転化できるかできないかということは、私が申し上げなくともおわかりのことなんです。そういう問題にはメスを入れるべきであります。そして、入れて、農工一体というもので、出かせぎに出ないで、水と土地と住宅などを十分利用できるような新しい体制、それが新しい農業政策の根幹でなければならない。基本的な姿勢を申し上げておきます。(拍手)
   〔国務大臣塩見俊二君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(塩見俊二君) まず、厚生年金、国民年金の問題につきましては、御指摘のとおり、先般社会保険審議会並びに国民年金審議会から御意見をいただいたのでございまするが、その御意見によりますると、年金額は標準報酬の六割、また物価変動等の状況に対応するような措置を講ずべきであるというような点がおもな内容であったのでございます。政府といたしましては、これらの意見を尊重いたしまして、明年度におきましては、欧米諸国に遜色のない、老後をささえるに足る年金を実現すべく、ただいま準備を行なっておるところでございます。
 次に、老齢福祉年金につきましては、今月、十月より三千三百円に引き上げたのでございまするが、前の国会におきまして衆参両院の議決をいただいた線に従いまして、とりあえず明年は五千円にこれを引き上げたいと存じておるのでございまするが、なお御意見のような、これを一万円に引き上げてはどうかということにつきましては、社会保障審議会に今後の方針について意見を求めておりますので、これらの意見もくみまして、できるだけ早い機会に、引き続いて一万円年金の実現に努力をいたしたいと考えております。
 一人暮らしの老人、また寝たきり老人につきましては、特別養護老人ホームの緊急整備、あるいは介護人、家庭奉仕員の強化、日常生活用品の給付、給食サービス等の対策を充実することといたしておるのでございまするが、御提案の福祉年金を一万円程度に引き上げてはどうかということにつきましては、今後検討してまいりたいと思うのであります。
 老人、重度心身障害者、保育所につきましては、御指摘のとおり昭和四十六年から、施設に収容する必要があると認めるものにつきましては、これを全員収容するということで、三千五百億円の予算をもって、五ヵ年計画で緊急整備を実施中であるのでございます。御意見のとおり、この問題は非常な緊急性を持っておりますので、さらに計画を繰り上げ、あるいは拡大を進めてまいる方針でございまして、今回の補正予算におきましても、二十四億円の予算で、特に本年度のワク外として緊急整備をすることといたしておるのであります。
 次に、老人福祉法、身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法に基づく施設に対しまして、地方公共団体や社会福祉施設法人と同様に、国有地の貸し下げを無償にしてはどうかという御質問でございましたが、私は、これはきわめてごもっともな御意見であると存じますので、大蔵大臣と協議をしてまいりたいと存じております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣植木庚子郎君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(植木庚子郎君) お答え申し上げます。
 ただいま厚生大臣が御答弁になりました趣旨につきましては、私自身も、もうすでに一部分御説明を受けておる部分もありますし、おそらく来年度の予算で両省間でいろいろと折衝を進めなきゃならぬと思います。と申しますのは、言うまでもなく、老人対策の問題につきまして、非常に力を尽くそうと、あるいは身体障害者等々につきましても同様な考えでおりますが、しかし、何ぶんにも財源を要することでございますから、十分研究をいたしまして、でき得る限りの措置を講じたいと、かように思っておる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣三池信君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(三池信君) お答えいたします。
 私への御質問は、最初は、日本列島改造のために情報網の整備が必要である、それについて、電話がなかなか申し込んでもすぐは取りつかないという現状は改めるべきだという御説でありますが、まことにごもっともだと思うのであります。
 経済の発展、国民生活の向上で、電話の需要はたいへんに旺盛なものがありまして、現在でも、申し込んでもなかなかつかないという電話が、お説のとおり二百二十万個もあるのであります。これに対しまして、昭和四十七年度までにこれを全部解消をいたして、そうして、申し込んだらすぐ取りつく電話を実現する計画で着々といま進めておるところであります。
 日本列島改造についての電気通信が、距離、時間の短縮の面から、その先導的役割りを果たし、かつまた一つの支柱であることを踏まえまして、電話の大幅な増設、さらに自動化の促進を進めていきたいと考えておる次第でありますが、しかし、これには非常にばく大な資金が必要でありますので、どうぞひとつ御協力をお願いいたす次第でございます。
 それから、中波ラジオの難聴の問題でありますけれども、御承知のとおり、外国放送の混信等によりまして、日本海沿岸その他でラジオがなかなか聞き取りにくいというところが多いのであります。これに対しましては、放送電力の増大あるいは中継局の新設というようなことで対策を講じておりますけれども、なかなか期待薄であります。最終的にはどうしてもFM放送によらなきゃならない。しかしながら、このFM放送によりますというと、中波、超短波という、いわゆる音声放送全部にかかわる問題で、大きな放送事業の再編成というような問題を含んでおりますので、目下慎重に検討中であります。
 テレビの難視聴も重大な問題でありますが、目下NHKでは、二百億を投じて五十一年度までに四十五万戸解消する予定でおるのであります。あとは十六万戸の地域になるのであります。民放に対しましても協力方を要請しておりますので、その努力を期待しておる次第でありますが、しかし、これはなかなか困難な地域もありますので、お説のとおり、放送衛星によるところの難視聴の解消ということが最も理想的なものであることは申し上げるまでもないのでありまして、これには、しかし諸般の準備体制が整わなきゃならないのでありまして、放送衛星については現在世界各国とも非常に急激な進展を見せておりますので、わが国といたしましても、その需要に応ずべく技術の確立をやらなきゃならない。また国際会議などでの発言力の強化もはからなきゃならない。さらにまた、静止軌道におけるところの周波数その他の権益も確保しなければならない。こういう立場から政府といたしましては、従来の計画をさらに進展させて、五十一年度を目途として中容量の衛星を打ち上げて、そうして必要な研究を進めていくようにいま検討中であります。
 さらに、東南アジア海底ケーブルの件でありますが、これはお説のように、国際機関でも推奨いたしておりますし、わが国としても、多年の懸案として関係各国と折衝しておるところであります。しかし、近年東南アジア諸国においてはインテルサットを使っての通信が非常に発展してまいりました。また、日中国交の正常化という新事態も発生してまいりましたので、この新事態を踏まえて、新しい構想のもとに関係各国と折衝を進めていくというような計画を持っておるのであります。さっきお話しの四十八年度に要求いたしました四百万というあの金額は、折衝費、交渉費でありますので、御承知をお願いしたいと思います。
 関係各国の中には日本あるいはアメリカ、英国のように、資金負担にたえる国もありますけれども、東南アジア発展途上国のように負担がなかなか困難な国もありますので、日本は東南アジア海底ケーブルの推進国として、そういう困難な発展途上国には資金の協力を前向きで進めていきたいというので、国内関係方面とも折衝中であります、ということを御了承いただきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣足立篤郎君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(足立篤郎君) 農政の基本的構想につきましては、先ほど総理からるるお話がございました。私からも若干補足をさせていただきたいと思います。
 日本列島は、御承知のとおり長々と南北に横たわっておりまして、それぞれの地域におきましては恵まれた自然条件を持っておりますので、その特性を十二分に生かすように、いわゆる適地適作を進めてまいりたいと思いますし、同時にまた、機械の導入等によりまして、高能率、高生産の農業を展開していきたいと思います。同時に、農村の環境整備を計画的に推進いたしまして、高福祉農村の実現をはかりたいと考えております。
 このため、白井議員御指摘のとおり、今後の農政の推進の指針といたしまして、今般、農林省におきましては、農産物の需給展望と生産目標の試案を作成いたしました。今後十年間における主要農産物についての、自給率と生産性向上の指標を明らかにいたした次第でございます。また、地域の特性に即した農業生産を誘導する、いわゆるガイドポストといたしまして、一昨年、地域指標の試案を公表いたしましたが、目下、県別の指標作成について検討が進められておる次第でございます。今後の生産振興あるいは農業団地の育成等の政策を進めるにあたりましては、できる限り、地域の特性に応じた振興策をはかっていく所存でございます。ちなみに申し上げますと、先ほど申し上げました生産目標は、米は将来とも完全自給、野菜、果実及び牛乳、乳製品等は、八〇%以上の自給率を確保することといたしております。また、農業就業人口一人当たりの生産性は、十年間に二・五倍に向上することを目標といたしておる次第でございます。
 次に、御指摘のありました土地改良十ヵ年計画に関してお答えをいたします。
 私は、ただいま申し上げましたとおり、高能率農業の実現をはかるため、十年後において、全農地の八〇%の機械化ができる基盤整備を行なうことを目標として計画を立案中でございますが、土地改良事業の計画的かつ効率的な推進をはかるため、実施上の諸条件の改善につきまして、白井議員から具体的な御指摘がございましたが、その線に沿って、できる限りの措置を目下検討中でございますが、来年度の予算編成におきまして、その内容を具体的に明確にいたしたいと存じております。
 最後に、漁業問題につきましては、御指摘のとおり、わが国の漁業は、とる漁業からふやす漁業に転換すべきことは仰せのとおりであります。すでにサケ、マスのふ化放流をはじめ、瀬戸内海におきましても、主として高級なエビ等の栽培漁業センターを設置して、稚魚のふ化放流を実施し、漸次その成果をあげておりますが、去年からことしにかけまして、全国的資源生態調査をいたしておりますが、その調査の上に立ちまして、来年度からは全国的な規模において栽培漁業の振興を積極的にはかってまいりたいと考えております。白井議員御指摘のとおり、本格的な栽培センターの推進をはかりたいと存じておりますが、今後とも御支援のほどをお願い申し上げます。(拍手)
#19
○副議長(森八三一君) 郵政大臣から答弁の補足があります。三池郵政大臣。
   〔国務大臣三池信君登壇〕
#20
○国務大臣(三池信君) 私のただいまの答弁中、積滞電話の解消を四十七年度と申し上げたそうでありますが、五十二年の間違いでありますから、訂正いたします。(拍手)
#21
○副議長(森八三一君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○副議長(森八三一君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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