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1972/11/01 第70回国会 参議院 参議院会議録情報 第070回国会 本会議 第4号
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1972/11/01 第70回国会 参議院

参議院会議録情報 第070回国会 本会議 第4号

#1
第070回国会 本会議 第4号
昭和四十七年十一月一日(水曜日)
   午前十時四分開議
    ―――――――――――――
#2
○議事日程 第四号
  昭和四十七年十一月一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
    ―――――――――――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します、黒柳明君。
   〔黒柳明君登壇、拍手〕
#4
○黒柳明君 公明党を代表しまして、田中総理大臣に質問をいたします。
 総理、一昨日来、私、総理の答弁をお伺いしておりますが、内容としては残念ながら抽象的であります。また、独断的、一方的の感を深くするものであります。あるときは田中元帥となり、威圧的に国民の平和を愛する心を踏みにじり、あるときには日本列島改造株式会社代表取締役となり、甘言を弄し、感情的であり、しかも非常に内容が乏しい、私はこう感ぜざるを得ないと思うのであります。ある意味においては、選挙目当ての発言に終始しているのではないか。非常に熱があり、積極的なことはけっこうであると思います。しかしながら、一国の総理であります。少なくとも、その発言は、より論理的で、より科学的で、そして説得力がなければならないと思います。声を大にすることのみが能ではありません。声が大きいことは、私は総理に負けません。ひとつ、こういう観点を十分に反省していただきまして、今日は国民の皆さまに納得いただける答弁を、まず冒頭に心からお願いする次第であります。よろしくお願いします。(拍手)
 さて、日中国交正常化によって、田中内閣は、明治以来百年、いまだ歴代内閣が経験したことのない新しい政局を迎えたのであります。しかし、この新しい局面に臨む田中内閣の姿勢は、その売りものとする「勇気と実行」というスローガンをみずから踏みにじって、外交においても、内政においても、佐藤内閣以来の悪政から抜け出ることができず、国民の立場に立って新たな歴史を切り開いていこうという気概に乏しいのではないかという疑惑を国民の中に起こさせております。
 国際情勢の緊張緩和により、世界は平和に向かって急速に進展しているにもかかわらず、田中内閣は、緊張緩和を逆行させるように、安保条約を堅持し、ひいては、四次防までも独善的に決定してしまったということは、総理が所信表明で言われた「外においてはあらゆる国との平和維持に努力し、内にあっては国民福祉の向上に最善を尽くす」ということばを全く虚妄に付するものでありますが、総理は、この点、どう反省するのか、明確に答弁をお願いいたします。
 さらに、米軍戦車輸送に関しては、車両制限令を改悪し、B52の沖繩基地大量飛来を認めるなど、相変わらず対米追随外交を行なっているが、これがはたして総理の言われる新しい時代の新しい政治であると言えるでしょうか。今後も、国民の声には耳をふさぎ、対米優先外交を続けるのかどうか、総理の所信をお伺いしたいと思います。
 次に、安保、四次防、アジア政策等、順次お伺いいたします。
 田中総理は、中国から帰国した直後の記者会見で、「中国側も日米安保条約に理解を示した」と述べておりますが、これはどういう意味なのか、お尋ねします。中国側は、日米安保があっても日中国交正常化はできるという意味で、次善の策としてそれを言ったにすぎないのであって、国交正常化以前のような侵略的な安保を中国が認めたわけでは決してないと思いますが、いかがでしょうか。
 佐藤前総理は、かつて、「沖繩が返らなければ戦後は終わらない」と言い、これに「日中国交が回復しなければ戦後は終わらない」ということばが対置されてきたのであります。しかし、中ソの脅威を前提として米国の極東政策に日本が追随せざるを得ないような仕組みを基本とする日米安保条約、この実態が改まらなければほんとうの戦後は終わらないと言えると思うが、総理の所信をお伺いいたします。
 また、田中総理は、過日の自民党の議員総会の席上、日中国交正常化による安保の改定問題に対して、「現実は公式論で割り切れるものではない、実態に沿って条約や法律を変えていくのが当然だ」との実態優先論を述べましたが、それなら、日中国交正常化に伴う実態に合うように安保を手直しすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。もし安保条約が手直しされないというのであれば、形式的には、依然として台湾は米軍が出動できる極東の範囲に含まれることになります。しかも、アメリカが「古い友人台湾との軍事的約束は守る」と言明している以上、条約の持つ論理的矛盾は一向に解消されないことになりますが、明確な御答弁をお願いいたします。
 また、在日米軍の台湾発進に対して安保の事前協議を運用する場合には、当然ノーしかあり得ないと思うが、どうでしょうか。さらに、もはや米台相互防衛条約は、沖繩米軍には当然適用されないはずだと思います。総理の見解はどうか、お伺いいたします。
 次に、四次防の問題についてお尋ねいたします。
 四次防の主要項目と一緒に発表された情勢判断は、日中国交正常化、米中、米ソ接近を緊張緩和に役立つといいながら、局地紛争の可能性を否定できないといっております。日中の国交は正常化し、南北朝鮮は統一へ進み、ベトナム戦争の和平交渉は刻々煮詰まっている今日、一体どこに日本の自衛権が侵されるような局地的紛争があるというのでしょうか。朝鮮か、台湾か、ベトナムか、具体的にそれを示していただきたいと思います。田中総理は、どのように情勢を判断しているのか、所信をお伺いいたします。
 去る十月二十二日、ソ連国防省機関紙「赤い星」は、「日本の四次防は日ソ関係をそこなうおそがある。」と指摘しております。また、先ごろ来日しましたエマーソン元駐日米公使も記者会見の席上、「日米安保は、今後対ソ連向けに必要になる」という意味の見解を述べておりますが、これらの見解に対し、田中総理はどう釈明するのか、お伺いいたします。
 次に、なぜ、平和憲法を掲げるわが国が、三次防のほぼ二倍に達する巨大な防衛力増強計画を推進しなければならないかということであります。総理は、一昨日来声を大にして、「四次防が最低必要限だ」と言い、「東南アジアには脅威は与えない」と申しておりますが、愛知特使の報告では、東南アジア諸国は、わが国の四次防に対して確かに脅威を感じているということですが、これは総理の単なる感情的な発言ですか、それともあやまった発言ですか、所信をお伺いいたします。
 また、国民一人当たり一万円の負担という膨大な税金でつくられる自衛隊の実態はどうか。総理、よく聞いていただきたい。自衛官総計の充足率は、毎年低下しております。四十六年は九〇・四%、中でも陸上自衛隊の充足率は、四十六年で八七・三%という現状であります。特に、陸上自衛隊の医官に至っては、本年は何と一三・六%という驚くべき低い充足率であります。また、国から手当を支給されながら、年に五日間の訓練招集にも応じない予備自衛官が二割以上もある。さらに、隊員の中には、いわゆる脱走兵があとを断たず、これまた、この数年間に約二千名という数字になっております。これらの数字は、明らかに自衛隊の、申しわけないが、質の低下を示すものであります。政府は、こうした国民に支持されない自衛隊の現状に対し、率直に、どう認識され、どう対策を講ずるのか、考えをお聞かせいただきたいと思います。
 また、兵器の質的向上とは逆に、隊員の一と言っても、決してすべてではないと思います、中にはと、こう言いたいと思います――隊員の質の低下によって、そのギャップは、ますます広がるばかり、そして国民の血税による高性能な兵器がスクラップ化してしまうのではないかとも考えられますが、いかがでしょうか。
 次に、アジア政策についてお尋ねいたします。
 日中共同声明は、平和五原則による日中友好をうたい、アジア・太平洋地域において覇権を求めぬことを誓っております。しかも、さきに東南アジア各国を歴訪した愛知特使によれば、田中内閣の外交姿勢は、依然としてアジア各国に対しては侵略的であり、軍国主義的であると見られてもしかたのない点が少なくありません。総理は、それを根本的に改める意思があるのかどうか、お伺いいたします。
 たとえば、日中共同声明で田中内閣は、「台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部」であることを十分に理解し、尊重することを明らかにして、日台平和条約は消滅しました。また、すでに国連でも昨年来、あらゆる委員会は台湾をボイコットせざるを得なくなったのであります。しかるに、日本政府の加盟しているASPACについてはどうでしょうか。台湾が自発的に脱退するのか、それとも日本が脱退するのか、ASPACは事実上機能を停止するのか、それともASPACを解体するのでしょうか。田中内閣の明快な方針を明らかにしていただきたいと思います。もはや、日中国交正常化以前のような反共侵略的な方針は通用しないことを銘記すべきであると思います。
 田中総理は、日本国の首相として戦後初めて中国大陸の土を踏み、日本の中国侵略を遺憾とし、道義上の責任を明らかにし、中国の国民にわびたのであります。ことばの意味というものは、その文面ばかりではなく、また発言者の行動によってきまるものであります。かつてわが国の軍隊が中国の人々に多くの迷惑をかけたことが遺憾である、とするならば、米国のベトナム侵略もまた遺憾なはずです。一方を遺憾とし、一方を遺憾としないことは道義上できない一わけであります。日本政府の中国侵略の責任の真の表明は、今日、道義上の理由から、ベトナム戦争への一切の協力を拒否することによってのみはっきり明確になるのであります。それが日米安保条約の拡大解釈により、今日、日本の米軍基地がベトナム戦争に直結する結果を生じていることは、それこそまことに遺憾であると思うが、総理、この点をどう考えているか、所見をお伺いいたします。
 次に、アジアに人間連帯構築の運動を起こせ、ということを提案いたしたいと思います。
 第二次大戦後二十七年を経た今日、いまだアジアの各地には元軍人数千名、そして数百万の遺骨もそのままになっております。第二次大戦の悲劇が現在も生き続けているのであります。その陰には幾多の災いを各地に投げかけてきたという歴史もあります。災いを転じて福となすということばのごとく、アジアのかつての大戦被害地域に、わが国のエコノミックアニマルの姿勢を改め、人間生命の尊厳を主軸にし、人間連帯の構築の運動を起こすべきであると思います。全国民の人間的視野に立って、アジアの新たな人間的連帯構築の運動の推進本部をつくり、外貨の活用をはかり、各界各層の人材を集めて、この運動を発議され、推進されんことを提案するものでありますが、いかがでありましょうか。この人間連帯の構築の中でこそ、生存者の徹底的救出も、膨大な遺骨の収集も初めて円滑に進められるし、その意義も深くなると考えますが、総理の前向きなお考えをお伺いしたいと思います。次に、在日米軍基地について種々の問題を指摘し、政府の誠意ある答弁をお伺いしたいと思います。
 まず第一に、基地公害についてであります。在日米軍基地より発生する公害は、騒音、電波障害等、すでに社会問題になっておりますが、今回のわが党の総点検により、新しい公害問題が発生しているという事実が明らかとなったのであります。
 その一つは、廃油のたれ流し及び廃油の中に含まれている四エチル鉛による鉛公害の発生についてであります。沖繩における陸軍貯油施設所、嘉手納飛行場、山口県の岩国飛行場等からは最高三一五OPPMという驚異的な汚染度の鉛が土壌中より検出されたのであります。普通、汚染されていない土壌中からは〇・七PPM程度でありますから、実に四千倍にも及ぶ汚染度という驚くべき数値が記録され、この鉛を含む廃油が基地外にたれ流しのまま放置されており、現在でも周辺の田畑に多くの被害を与えております。イタイイタイ病のカドミウム、水俣病の水銀に見られるごとく、重金属公害がいかにおそろしいかは明白であり、すでに人体に影響を及ぼしていることも間違いのない事実であります。
 また、沖繩の嘉手納飛行場、キャンプ・ハンセン等の排水を調査した結果、一一〇〇PPMという、いずれも高い汚染度を示し、関係河川の汚濁の原因になっていることも判明しました。
 政府は、この新しい基地公害に目を開き、積極的な姿勢で基地の鉛公害、廃油公害、そして汚水公害等の総点検を実施し、国民の前にその結果を明らかにすべきことを強く要望いたしますが、総理の見解を明らかにしていただきます。
 さきに、立川基地では、地位協定三条により、立ち入り調査を拒否されたといわれますが・地位協定三条の三項には、米軍の作業は、公共の安全に妥当な考慮を払うべきであるという項目があります。この点に違反しているいま述べました諸公害については、当然立ち入り調査がなさるべきであると思うが、どうでしょうか。この点につきまして、早急に日米合同委員会で協議すべきことを、これまた重ねて要望する次第であります。
 次に、核兵器についてであります。
 沖繩返還以前、国会において沖繩に核兵器が存在するかどうかについて再三論議され、そのつど政府は、米側がないと言うのだから存在しない、と答え続けてきたのであります。しかるに、米側の一方的な見解発表で、核の撤去を信ぜよということ、これはなかなか、幾ら私が人がよくとも信じられない面がありました。その結果、どうでしょう。このたびのわが党の調査により、沖繩の知花弾薬庫に核兵器が存在するという新しい事実が明らかとなりました。政府はこれに対して、米大使館の情報をたよりに反論しているようでありますが、常に米側の発表のみをうのみにし、核撤去の日時、方法さえも明らかにせず、国民をだまし続けてきた佐藤内閣当時の悪い外交姿勢を脱してこそ、国民から期待される新しい田中内閣の外交姿勢のあり方だと思います。昨日の衆議院の答弁では、総理はまたまた佐藤内閣と同じ答弁の繰り返しでありました。アメリカはないと言ったからないのだよと、きょうの答弁はそんな答弁でありますと、私は、決して許されないと、こう思う次第であります。政府がこの際立ち入り調査を行なうことによってのみ、国民の不安と疑惑を一掃し得るのではないかと思いますが、総理の明快な御答弁をお願いします。
 また、復帰後に、沖繩の米陸軍から出された「核兵器消火方法」というパンフレットには、総理、こう書いてあります。「航空機や船舶が沖繩の空や沿岸を激しく航行しており、その中には、核物質を輸送しているものもあり、沖繩に立ち寄る可能性もある」と、こう明記されているのは、まことに穏やかならざるものがありますが、総理はこの文章をどう認識するか、御答弁をお願いいたします。
 さらに、米側の回答によりますと、核兵器はRADIO・ACTIVEと表示されているといっております。しかし、横須賀基地には、ELECTRONICS ENGINEER ACTIVITY すなわち、電子技術部門の中に、RADIAC DIVISIONという場所があります。すなわち、さきに米側が、放射能、核兵器はラジオ・アクティブであると言った、そのとおりの部門、場所が横須賀の基地内にあるということは、これまた横須賀に核兵器があるのではないかという新しい疑惑がここに出てきたのであります。その場所について、私いま電話番号を言います。総理控えてください。電話番号は三二四−五六六七であります。すぐ政府委員にこのところに電話をかけさせて真偽を確かめていただきたい。
 米軍基地内の立ち入り調査については、現在の地位協定では、第三条により拒否され、日米合同委員会の協議にかかるわけでありますが、この特権的条項が、現在の在日米軍に対する国民の反感を一そう強いものにしているのであります。西独においては、米軍基地内において西独の官憲は立ち入り自由及び指図さえもできることになっているのに比較すれば、わが国における地位協定は、全く日本政府のアメリカに従属する姿勢をはっきりと示しているのであります。田中内閣のもとで、早急に地位協定の不都合な点を検討し、抜本的な改定をすべきであると思うが、どうでありましょうか。
 また、沖繩の米軍基地にある標識についてでありますが、今回の調査によりますと、アメリカの基地内――すでに返還されましたから日本の領土であります。そこに、「米国政府所有地」となっていて、米国の施政権下にあるがごとき支配意識そのままの標識が、撤去されることもなく、無数に掲示されております。中には「近寄ると発砲される」などという驚くべき標識までも、まだ沖繩の米軍基地には立っておる。そうして、沖繩住民に対して威圧的な標識となっているのであります。このような標識という形式的なものでさえも、返還後まだ整理されることもなく放置されているということは、真の沖繩の返還はなく、さきの日本人従業員が射殺されるというような不祥事を起こす原因をつくっているのであります。政府は、早急に、これら不適当な標識の撤去を米側に申し入れるべき・だと思いますが、お答えください。
 返還された那覇空港についてであります。問題のP3の移転がまだ実現していないため、空港の整備ができない状態が続いております。那覇空港当局者の話によりますと、交通量の飛躍的増大から、整備がおくれればおくれるほど、将来重大な事故につながるおそれがあると心配しておりますが、いつ移転完了するのか。事故が起こりてからではおそうございます。お聞かせいただきたいと思います。
 さらに、横須賀海軍基地では、タクシーの基地乗り入れ許可料として、毎月、LPG車二千円、ガソリン車五百円を、昭和四十一年から取っております。
 現在、入場料を払っているタクシーは、個人、法人合わせて約四百台ありますが、すでに五千万円をこえる額を米海軍がタクシー業者からピンはねしているのであります。もともと米軍基地というのは、安保条約のもとで安全保障という理由で、日本がアメリカに提供したものであることは言うまでもありません。しかるに、このような行為は、基地を使ってピンはねという商売をしていることにほかならないのでありまして、断じて許すわけにはいかないと思います。さらに、この不当な入門料システムは、白タクの横行までも公然化しているのであります。政府は、早急に改善方を申し入れるべきであると思いますが、その処置をどうするか、お尋ねいたします。
 また、同じように安保条約及び地位協定により提供された米軍基地の、本来の目的から逸脱したものを次に指摘いたします。
 私は、すでに国会の場において指摘しましたが、防衛庁と民間業者との間で、米軍ゴルフ場をめぐる訴訟があり、昭和三十九年六月、東京地裁において、米軍基地内にあるゴルフ場は、その規模からいって娯楽施設としては、過剰である、日米地位協定でいう娯楽施設提供の範囲については違法なものであるという判決が下っております。
 この例と同じように、米軍基地の三沢飛行場、千歳基地では、合計約六十万平方メートルという広大な基地を使用し、オートレースを開催しているのであります。米軍の基地内でギャンブルにひとしい行為が行なわれている。これが、過剰娯楽施設と言わず、何を過剰と言うのでしょうか。しかも、サーキット族の温床となり、市民に多大な迷惑をかけ、また、この地域は地元開発計画のために再三にわたり返還の要求が行なわれているのを、政府は現在まで無視しているという現状でありますが、一体どういうわけでしょうか。早急に返還を実現させるべきだと思うが、総理の所信をお聞かせいただきたいと思います。あるいは総理大臣にすれば、これらの問題はささいなことであるという考えがもしかするとあるかと思いますが、これは今後の安保の問題、それに伴う米軍基地の利用方法について大きな問題を投げかけるわけでありますが、ひとつ明快な総理からの答弁を要求するのであります。
 次に、内政問題に移ります。
 田中総理は、事内政に関しては、語ることのみ多く、やることは五里霧中の感を深くするのであります。たとえば、目玉商品といわれる列島改造論については、内容はともかくとしても、その実行体制には十分な対応策がとられていないのが実情です。改造論を実行するにあたっては、総合的な行政が必要であるが、列島改造懇だけを見ても、二回の会合で終わっております。このことは、まさに行政能力の欠除を物語るものであり、この状況の中で、現実どのように行政改革を進めるのか、明らかにしていただきたいと思います。
 列島改造論の内容については、その発表以来、各方面から批判が寄せられ、わが党におきましても、すでにその見解を日本福祉列島への改造論で示しておりますが、総理は、これらの世論を聞かれ、みずからのプランについて、何か基本的に反省され、修正したほうがいいと思われる点があると考えるかどうか、お伺いしたいのであります。
 公害のない臨海工業地帯として、農工両全をうたい文句にして出発した鹿島の問題は、いまでは四日市や水島と何ら変わらない状態になっております。すなわち、本年二月四日、県の公安部に勤務していた四十八歳の職員の方が亜硫酸ガスによる公害病の疑いで、白十字病院のベッドの上で悲しくも苦しい最後を遂げたのであります。しかも、鹿島はいまだ四割しか企業が操業していないのに、早くも、四日市や川崎と同じような悲惨な犠牲者を出しているのであります。
 その上、まだ重要な事実があります。それは住友金属に隣接する三浜地区でありますが、本年六月、大気汚染防止法による緊急措置基準の〇・二PPMを上回る〇・二二PPMが二時間以上も続くという、鹿島始まって以来の危険をまのあたりにしまして、周辺の百戸をこえる住民は、集団移転を県に要望しております。そして県当局も、人命の危険を認め、現在、移転先を検討しているのが現状であります。このような現状を見たとき、申しわけございませんが、木村建設大臣の公害感度については、私は全く疑わざるを得ないのですが、公害ゼロヘの総理の真剣な決意をお聞かせいただきたいと思います。
 次に、土地利用政策の一環として、この際、国有地の利用について指摘しておきたいと思います。
 最近、行政管理庁は、利用可能な未利用地等が普通財産で三万平方メートル、行政財産で十六万平方メートルあることを指摘しておりますが、私が調べたところ、さらに四十六年度で、一般会計の行政財産の土地だけでも、未利用の分が一千百万平方メートルもあるのが実情であります。このような行政内部の土地利用政策の渋滞と怠慢に対して、どう有効的な利用法を考えるのか、あわせて御答弁をお願いします。
 また、日本列島改造論が具体化されていく上で関連して派生する若干の問題事項について、総理の答弁をお願いいたします。
 第一に、公共の事業費増大に伴う地方財政の負担増に対して、いかなる財政措置をとられるのか。
 第二に、国、地方公共団体の支出予算の飛躍的増大化に見合う税源の確保は、少なくとも所得税の軽減、中小零細企業の減税という制約の中で達成されなければならないが、そのために、いかなる税制の改革を行なうのか。
 第三に、国債の発行については、歴史的制約があるが、従来の考え方に対して何らかの変更を行なうのか。規模、用途についてはどうか。また、地方債についてはどう考えているのか。
 第四に、公共事業の増大は、土建業界の受注件数、金額の増大をもたらすことは明らかでありますが、従来の入札制度を含めて、入札契約の適正を確保するための再検討を行なう考えがあるか。
 以上、四点についてお答えいただきたいと思います。
 最後に、青少年教育に国有林野を活用せよ、こういうことを提案いたしたいと思います。
 公害だ、自然破壊だと幾ら騒いでも、せんじ詰めれば、自然を破壊しているのは人間であり、その人間の変革なくしては、究極のところ、自然の破壊もとどめることはできません。人間の変革は何によるかと言えば、人間教育にまつ以外にはありません。文部大臣、自然を破壊することは人類の滅亡につながるとの根本的認識に立って、日本列島を人間のものとして防衛する国家百年の大計として、自然愛護の人間教育を徹底して、開始すべきであると考えます。このことは、日本列島改造論と同じ重さで受け取らるべき問題と思うのですが、いかがでしょうか。
 そこで、提案でありますが、国が所有している貴重な国有林野に、その教育のための思い切った国家投資をし、必要な施設を整え、また、学童や先生には国鉄輸送賃を国が肩がわりするなどして父兄の負担をなくし、国有林野内の教育適地に喜々として学童が集合し、自然愛護の徹底した実地教育を行ない、それを一定の教科課程に組み入れるようにしたらどうかというものであります。
 田中総理は、将来百年ぐらいもつような小学校の思い切った改築を提唱されたことがありますが、そのことと相あわせて、国家百年の大計に立って新しい、しかも、人間性豊かな人材育成の基を開くべきだと思いますが、総理の所信をお伺いして、私の代表質問を終える次第であります。
 答弁のいかんによっては、再質問を留保いたしたいと思います。以上であります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
 安保、四次防、防衛の問題に対して、まず基本的な考え方を申し上げたいと存じます。
 平和を希求することは人類の悲願であり、理想でございます。日本人は、四半世紀前に敗戦という困難な状態に遭遇をしたのでございますし、世界にある唯一の被爆国でございます。その意味で、新しい憲法の平和憲法を守っておるわけでございますし、なお、この憲法の中に、国際紛争が起こっても武力で解決をしてはならないという、大きな平和達成に対する基本的な考え方を規定いたしておるのでございます。でありますから、日本が再び銃をとって侵略を行なう国家であり、国民であるなどと考える人は、これは全くないと思うのでございます。また、日本人の中でこのような考え方を持つ人が一人もおらないであろうことは、私が申すまでもないのでございます。しかし、高い理想は掲げなければなりませんが、政治はあくまでも現実に立つ七、現実に対応していかなければならないのであります。そういう意味で、平和の希求をしながら、しかも、世界的に平和を愛好するように、また、再び戦争が起こらないような状態をつくるために、精力的に活動をすることは当然でございます。日本も、その意味で平和的な外交を進めておるわけでございます。
 でありますから、私が先回も申し述べましたように、国際的な安全保障の体制ができる、そしてその中でお互いが平和を維持できるということは望ましい理想の姿であります。そういう理想の実現に全力を傾ける、これが戦後四半世紀の日本の実態だと思います。でありますから、日本も必要な防衛力を持つと、ただ言っておるのじゃありません。世界的に日本が防衛力を持たないで済むような理想的な姿ができることが望ましいことである。また、そのために全力を傾けておるのでございますが、現実がそのような理想にいまだしという状態であれば、現実に即した体制をとらなければならないことは言うをまたないわけであります。そういう立場で、理想と現実というものの間にある現状というものを、十分御理解の上お考えいただきたいと、こう思うのでございます。
 まず、そういう前提に立って申し上げておるわけでございますが、国が独立を保持し、国民の生命財産を守るために最小限度の自衛力を保持することは当然でございます。しかも、自分だけで、単独で防衛をするというのはなかなか困難な問題でございますので、集団安全保障体制で補うというのは、洋の東西を問わずそうなっておるのでございます。ですから、日本もその例外ではないわけでございまして、日米安全保障条約と、しかも甘木の持つ防衛力というもので日本の安全を守っておるのでございます。
 問題として残るのは、その量が問題になるわけでございますが、これはあくまでも憲法の許容する範囲内の、専守防衛を目的としたものでございます。四次防そのものが専守防衛のワクをはみ出すかどうかということでございますが、これは前にも述べておりますとおり、三次防の延長である、こういうことで内容をごらんいただければ、御理解がいただけると思うのでございます。
 なお、去る日中首脳会談におきまして、安全保障条約を持っておること、また自衛力を持っておることという実態に対しては十分説明をいたしました。安保条約に対する非難は全く行なわれなかったのでございます。
 それから戦後四半世紀に及ぶ平和愛好国としての日本の歩みを見ていただくならば、四次防や日米安全保障体制が、いかなる国に対しても脅威を与えるものではないということは明らかでございます。先ほど、四次防がアジア諸国に対して侵略の脅威を与えておるのではないかということでございましたが、いろいろの国々が、みずから持っておる軍備、みずから持っておる防衛力というものと、日本の持つ四次防の実態を比較すれば、それが侵略的なものでないということは、おのずからおわかりになると思うのでございます。(拍手)
 それで、日本には、大前提として憲法の大きな制約がある、国際的な紛争解決には武力は使ってはならない、こういう憲法の強い制約の中にある純防衛力であるということを評価いただきたい、こう思うのでございます。(拍手)
 それから日中正常化に伴い、安保堅持は、米台条約との間では矛盾があるというような御発言、在日米軍の台湾向け発進というような問題に対しての御発言がございましたが、日中国交正常化は、米国の台湾に対する施策を否認するものではないので、米国と台湾との防衛条約関係が日米安保条約と矛盾するということはないのでございます。日中正常化というものは、安保条約とは関係なく正常化が行なわれたということで御理解をいただきたい、こう思うのでございます。
 それから四次防説明の、局地紛争はあるのかということでございますが、これは具体的に申し上げるということよりも、米ソ中という三つの大きな国の利害が、アジアにおいて必ずしも一致をしておらぬ。中国とソ連との間には、相当長い国境線の紛争がいまだ片づいておらないということを見てもおわかりになるとおりでございます。なお、宗教問題もございますし、分裂国家の問題等もございます。そういう意味で、四次防策定の際の「情勢判断」で、「地域的ないし期間的に限定された武力紛争の生起する可能性を否定することはできない。」、こう述べておるわけでございまして、これらの問題がアジアのどこで起こっても日本とは関係ないという御発言には、くみすることができません。(拍手)
 四次防が東南アジアに脅威を与えないと私は言っておりますが、愛知特使の報告と食い違うという御指摘でございますが、愛知特使から受けておる報告によれば、東南アジア諸国首脳は、日本が自衛力を持つことは当然のことであり、四次防もその観点から当然のことであって、きわめて好意ある意見に接したという報告をいただいておるのでございます、私の発言との食い違いはございません。
 四次防の兵器の質的高度化に比して兵員の質の低下が見られる、兵器の質的向上と隊員の質的低下によって兵器のスクラップ化が行なわれるのではないかという趣旨の御発言がございますが、常々、良質隊員の確保につとめております。隊員全般の質が低下しておるとは認められないのでございます。また、四次防におきましても、隊員の処遇の改善等も計画をいたしておりますので、所要の隊員は確保できるように努力をしてまいりたいと考えております。
 ASPACはどうするのかということでございますが、ASPACは、御承知のとおり、経済的な問題を主題として協議を行なうようにだんだんと変わっております。わが国は、進んでASPACから脱退をする考えは、いま持っておりません。
 ベトナム戦争への協力をやめなければならない、ベトナムに対しましては、経済援助は人道ないし民生の安定のための援助でございまして、戦争協力というものではないわけでございます。
 また、わが国は、在日米軍が極東の平和と安全のための活動との関連において修理・補給などのため、わが国の施設・区域を使用することを認めておりますが、これは安全保障条約上の義務に基づくものでございます。とにかく、ベトナム戦争は平和裏に一日も早く終息することを心から期待をいたしております。
 エコノミックアニマルというような感じを持たれておるので、アジア人間連帯推進本部というようなものを設置するような考えでやってはどうか、アジア諸国とは相互理解の一そうの増進を今後とも努力していかなければならぬことは、御指摘のとおりでございます。御提案に対しては、御意見として十分承っておきたいと存じます。
 基地に対する問題でございますが、黒柳さん、基地に対して非常に御勉強いただいておるわけでございまして、感謝をいたしております。基地の公害をなくさなければならぬことは、これはもうほんとうに御指摘のとおりでございます。基地公害というものに対して問題が存在する限り、日米の間もうまくいかないわけでございますから、そういう意味で、基地公害というものをなくするためには精力的な努力を続けてまいります。
 しかし、この基地の中に入って立ち入り検査をしろというお話は、毎々御発言でございますが、外国軍隊の駐留を認めておる場合、その同意なくして受け入れ国が立ち入り調査をすることができないのは、一般国際法上の原則でございます。しかしながら、地位協定上、米軍も施設・区域内の作業について、公共の安全に妥当な考慮を払うことになっております。問題が生じた場合には、日米双方が協議の上、必要な調査及び改善措置を講じております。政府は、御指摘の事例も含めまして、今後とも施設・区域が周辺の住民生活に及ぼす諸問題について、積極的に解決のため努力を続けてまいりたいと存ずるわけでございます。
 沖繩に核兵器があるという疑惑、核運搬の航空機、船舶の立ち寄りとか、横須賀に核兵器があるのではないかという御指摘でございますが、原則として沖繩が核抜きで返還をされたことは、返還協定、米上院における証言、国務長官の外務大臣あての書簡等の経緯にかんがみ、これは疑いをいれる余地はないのでございます。その意味で、沖繩を含め、わが国には核兵器は存在いたしません、こうお答えをいたします。(「原則とはどういうことだ」「現実はどうだ」と呼ぶ者あり)原則ではなく現実に訂正をいたします。
 まだ、沖繩及び横須賀にあるとのことでございますが、これは核兵器とはかかわりのないものであるということで御理解をいただきたいと、こう思います。
 那覇空港のP3については、いつ移転するのか、目下鋭意検討中でございます。
 それから、横須賀基地内でのタクシーの営業、千歳、三沢基地内のオートレースはけしからぬ、返還を求めなさいということでございますが、この問題につきましては、小さな問題だとは考えておりませんで、調査をいたしました。
 横須賀基地に乗り入れるタクシーは、諸設備利用の点から手数料を払っておるようでございますが、地位協定に違反をしないということでございます。
 また千歳一及び三沢のオートバイのサーキットは、基地本来の機能を果たしている場所にたまたま設けられたものであって差しつかえない、こういうことでございます。これはこまかく調査をいたしてみましたら、倉庫とかいろんなところの間を使ってやっておるのでございまして、これは基地本来の機能を果たしておる場所というものにあるようでございまして、私が調査報告を求めた限りにおいては、以上申し上げるとおりでございます。
 日本列島改造を実行するための行政体制、列島懇の運用状況についての御指摘がございましたが、列島改造政策の具体化に応じて、行政機構ないしその運営について配慮してまいりたいと存じます。
 なお、列島懇談会は二回開催したのでございますが、委員各位から書面により詳細な意見をいただいております。十月に予定しておりました会合は、臨時国会が開かれるということになりましたので、会合にかえ、緊急に取り上ぐべき施策について、アンケートによって委員の意見を求めておるのが現状でございます。次回の懇談会は、国会終了後、適当な時期に会合を行ないたい、こう考えております。
 日本列島改造に対する批判に対してどのように反省をしておるかということでございますが、これは、私が申し上げておりますとおり、まず、戦後の四半世紀余にわたって、荒廃の中から、とにかくわれわれは現在の繁栄を築いたのでございます。
 第一の段階におきましては、日本の総生産をあげ、国民所得を確保するというのが一つの目的でございました。その第一の目的は、八千円最低賃金を確保せよという決議案を審議をした当時から考えれば、今昔の感にたえないと言われるほど、われわれは豊かになったことは事実でございまして、第一の目標は達成ができたのでございます。しかし、第一の目標は達成はできましたが、それは都市への過度集中という形によってできたのでございます。その限りにおいては、社会資本の不足という問題が第二の問題として起こってまいりました。でございますので、われわれは、いま社会資本の不足を補い、生活環境の向上をはかるべく努力を傾けておるのでございます。
 第三の問題は、人間が働いて生きるのでございますが、働けないような状態になった場合や、すなわち老人とか、社会福祉の向上が大きな問題として取り上げられてきておるのでございます。その意味において、このような過密のままで、一体、事が解決できるであろうか。物価の問題も、土地の問題も、あらゆる問題が、過密の中を、そのまま是認をし、そのままの方向を進めていくことによって確保できるであろうかという問題にぶつかるわけでございます。これは、政府・自民党、野党であるとを問わず、この問題にぶつかります。地価を下げなさいということで、この地価というものを下げるということで、東京や大阪や名古屋だけに三千二百万人も四千万人も人が集まっておる現状を、これを六千万も七千万も集めて、地価が下がると考えることはナンセンスであります。その意味では、やはり供給をふやさなければならない。供給地はないのかというと、あります。日本列島にはまだ九〇%も利用できるところがあるわけでありますから、これらを高速鉄道や高速道路で結んだり、そして内国海運を振興することによって、時間的にはほぼ一つの地域となり得る。そういうことによって、水や、公害調整や、一次産業との労働調整を求めて、よりよき国民総生産の拡大をはかる上にこそ、われわれの理想的な社会環境は確立できるのだと。それ以外に、方法があれば、私はそれをとることにやぶさかではないのであります。
 そういう意味で、列島改造というものをテーマとして国民皆さまの前に出しております。ですから、列島はこのような状態でありますので必要だと思いますが、国民皆さま、どうです、こう提案をいたしておるのでございます。だから、皆さんも国民の一人として、この列島改造論の中で落ちておると、精神が落ちておるというなら精神の部分を入れていただきたい。社会保障が落ちておるというなら社会保障の部分を入れてもらわなきゃいかぬのです。そうして後代の日本人のために、より理想的な日本を築くということでなければならない。こういうのでございまして、私がいま提案をいたしておりますものは、これは理想を達成するための一つの手段、方法として提案を申し上げておるのでございまして、深い御理解をお願いをいたします。
 鹿島工業地帯での公害問題について御指摘がございましたが、鹿島地域における汚染状況は、硫黄酸化物について見ると、現行環境基準を下回る状態が維持されておるが、最近、一時的に比較的高濃度の汚染の発生が見られるようになってきておるようでございます。この地域は今後さらに生産規模の拡大が予想せられますので、公害対策の一そうの強化が必要でございます。昨年九月、公害防止計画の策定を指示いたしておるのでございます。なお、鹿島地域には、現在、公害病患者は発生していないと理解しておりますが、先ほどの御指摘もございますので、調査はいたします。
 行政財産の未利用土地の利用等の問題もございますが、行政財産、特に国有林の利用問題等合わせての御発言に対しては、効率利用をはかることはもちろん、特に都市及び都市周辺に存在する国有地等につきましては、一そう有効な利用につとめてまいらなければならない、こう考えております。
 公共事業費の増大に伴う地方財政の負担対策、今回の補正予算の追加に伴う地方負担の増加につきましては、これを全額一般財源でまかなうことは困難であります。したがって、地方税の自然増収分のほか、地方債によってまかなうことといたしておるのでございます。
 今後の国債や地方債についてのその規模等についてでございますが、これは建設公債の市中消化の原則というものを堅持してまいります。地方債につきましては、生活環境施設の整備等を中心とする地方公共団体の財政需要が増大しておりますので、地方債によらなければならないものが多いわけでございますが、金融緩和基調にありますので、これが消化は十分できると考えております。
 公共事業の契約の適正化についての御指摘がございましたが、公共事業の施行にあたっては、さらに合理的施行をはかってまいりたい、こう考えます。
 最後に、青少年教育のための緑化運動の推進等を含めて、国有林の活用問題がございましたが、わが国の将来をになう青少年が、緑に親しみ、これを大切にする心を養うことはきわめて大切なことであります。そのため、豊かな緑を有する国有林野についても、学校部分林の設定、各種の自然教育施設及び森林レクリエーション施設の設置等を推進しておるわけでございますが、いま御指摘にございましたように、大自然、緑と離れてほんとうに心の安息所を求めることはできないのであります。そういう意味で、いかに列島改造が必要であるかを、この際、御認識を賜わりたい。(拍手)
#6
○議長(河野謙三君) 内閣総理大臣から答弁の補足があります。田中内閣総理大臣。
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(田中角榮君) 戦後が終わるのは、中ソの脅威を前提として、米国に従属する仕組みの安保が改められて初めて実現すると思うがどうか、という御質問に対するお答えは、戦後は終わっておる、こういう考えでございます。
 それから沖繩の標識に対する御質問があったようでございますが、沖繩の標識については、確かに返還後まだ日が浅いので、こちらからの標識等の取り除き等を申し込んでおるわけでございますが、まだ御指摘のような状態があるということは事実のようでございます。これは、引き続いて、過去の、どうも見てもあまり気持ちのよくないような標識があることは両国のためにも望ましくないのでありますから、これを早急に取り払うように努力をいたします。
 それからもう一つ、日中共同声明でアジア・太平洋地域に覇権を求めずと誓っているが、現在の外交姿勢にはまだ侵略的な姿勢がある、これを根本的に改める意思があるか。もうアジア・太平洋地域において覇権を求めぬ、これはもう日本の全く基本的姿勢でございます。覇権などを求めるということよりも、日本にいろんな問題が、損害が起こり、国際紛争によって日本の利益が侵されるような状態が起こっても、武力をもって解決手段−とはしないと憲法は明定しておるのでございまして、覇権を求めるなどという気はごうまつもないことをここで明確にしておきます。これはもう与野党だけではなく、日本が覇権を求める国でないということは日本人全体が考えなければならない問題だと、こう思うのでございます。(拍手)
 それから最後に、車両制限令の問題でございますが、車両制限令の改正は、道路管理者が道路の管理上の理由以外の理由によって通行の許可をしないというようなことで、法律の適正な運用が阻害されるような状態がございましたので、真にやむを得ず行なったものだということで御理解を賜わりたいと思います。(拍手、「もう一つ抜けたんじゃないか」と呼ぶ者あり)
#8
○議長(河野謙三君) 田中内閣総理大臣。
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(田中角榮君) 日中正常化に伴い、安保堅持は米台条約との間で矛盾がある、在日米軍の台湾向け発進は事前協議でノーと言うかという御指摘のようでございますが、前段に対してはお答えをいたしました。
 後段に対しては、御質問が落ちたような気がいたしましたので申し上げなかったわけでございますが、御質問が通告どおりあったとすれば、私の誤りでございますので、御了恕賜わりたいと思います。
 前段に対してはこう申し上げております。日中国交正常化は米国の台湾に対する施策を否認するものではないので、米国と台湾との防衛条約関係が日米安保条約と矛盾するということはありません。ここまではお答えしてございます。
 また、事前協議に対する日本政府の基本的態度は、これまで明らかにしておるとおり、わが国益確保の見地から、具体的事案に即して自主的に判断して諾否を決定するということであります。米中間の対話が始まり、台湾をめぐる情勢が質的な変化を遂げでいる現在、台湾との関係における問題は考えられない事態となっておるのでございます。
 以上でございます。(拍手)
#10
○議長(河野謙三君) 中村正雄君。
   〔中村正雄君登壇、拍手〕
#11
○中村正雄君 私は、民社党を代表して、田中総理の所信表明演説に関連して、質疑を行ないたいと存じます。
 田中総理は、演説の締めくくりとして、最後に、政治責任を明らかにして決断と実行の政治を遂行する決意だと述べておられます。けだし政治家として、総理として、当然のことだと思います。歴代の総理大臣たれ一人として、政治責任を明らかにしないと言った人はおりませんし、また公約を実行しないと言った人もおりません。しかし、責任を明らかにするためには、その裏に反省が必要であります。自己の行為、行動に対し、過去に行なった政策に対し、反省の上に立ってのみ責任が明らかにされると思います。
 田中総理が、最近各地、各所で展開されておられます政治的言動を耳にするにつけ、私は一つの疑問を感じます。田中総理は、都市の過密がいかに非人道的な環境をつくり出しつつあるか、まことに詳しく指摘され、過密過疎を同時に解決すると自称される日本列島改造論を公にされました。わが国の福祉政策が他の先進国に比べていかにおくれておるかも指摘され、今後の重点政策として、国民福祉の向上に最善を尽くすと言われております。
 現在の矛盾の多い非人間的な社会をつくり出したのは、言うまでもなく戦後二十数年にわたる自民党内閣の政策の結果であり、特に、高度経済成長政策を強力に打ち出してきた池田内閣以来の政治の失敗にあると思います。田中総理の政治家としての経歴を言いますと、池田内閣では、最も枢要な地位を占める大蔵大臣を長くつとめられ、引き続き佐藤内閣では、政府をささえる与党の幹事長として、また大蔵大臣、通産大臣として、特に、このたびあなたが指摘する工業と人口の都市集中、過密過疎の矛盾を深刻化する政策そのものを強く推進してこられたのは、ほかならぬ田中総理自身ではありませんか。そのあなたが、みずから負うべき責任には全く触れず、あたかも自分のなした過去の政治とは無関係な新しい政治家田中角榮があるがごときふるまいを国民に演じて見せるのは、一体いかなることでありましょうか。所信表明における、政治責任を明らかにすると述べられたことと全く相反する姿勢と言わざるを得ません。
 言うまでもなく、議会制民主政治とは、主権者たる国民の負託にこたえる責任をことのほか重要視する政治形態であります。したがって、今日の政治家は、お互いに議会制民主政治をいよいよ確固たらしめるため、その政治道義を不断に高揚する責務を負うておると思います。いやしくも私が指摘しましたような政治的な誤りをおかしてきた田中総理は、その政治的責任を痛感され、深い反省をなされてしかるべきだと思うのでありますが、いまだ一言もこのことには触れておられません。私は、この際、あえて田中総理のこれに関する釈明と御見解を求めておかなければならないと思うのであります。
 私は、わが党の春日委員長をはじめ同僚議員より、外交問題に関しましてはそれぞれ質問されておりますので、時間の関係上これを割愛し、内政問題に限定し、主として土地問題、公害、環境問題、円対策の問題の三点にしぼって、田中総理及び関係大臣に質問いたします。
 最初に、土地問題についてお伺いいたします。田中総理が自民党の総裁を争う手段として日本列島改造論を公にされ、総裁、総理になられてからはこれが政府の政策の中心となり、各省の役人が争ってこれに便乗し、それぞれの計画を発表し、各省間の相克が起きておるのが現状であります。二百億ドルに迫る手持ち外貨を背景にした金融緩和の現象は、法人の土地の買いあさりを助長し、昨日まで過疎的な現象を嘆いていた農村地帯にまで新しいブームが起きております。地価は騰貴に次ぐ騰貴で、どんな土地でも買っておけば必ずもうかるという状態であります。巷間、この法人の土地買いブームによって日本列島の可能面積のほぼ三分の一が買い占められたといわれております。この状態は日増しに激しくなり、庶民が勤勉にその生涯働き続け、生活の最終的ないこいの場所であるわが家を持とうというマイホームの夢はむざんにも打ち砕かれました。この傾向は日本列島改造計画が実施の段階ともなればますます激しくなり、田中総理が当初考えていた財源の数倍を要すると私は思うわけでございます。
 田中総理の日本列島改造論は、一部の法人と土地ブローカーのふところを肥やし、土地の急激な騰貴に拍車をかけ、庶民の夢を打ち砕いただけでなく、これからの国や地方自治体の国土政策に大きな障害を与える結果となりました。一個人の著書がこのような害悪を流した例は、いまだかつて見たことがありません。一国の総理たる者、心すべきことだと私は考えます。
 その原因は、この改造論の土地問題に関する方針に大きな抜け穴があるからであると私は考えます。私は、土地問題とは、一口に言って、経済効率の問題ではなく、所得再分配の問題であると考えます。したがって、土地問題の基本的課題は、土地を投機の対象にしてはならないということであります。さらに進んで、法人にしろ個人にしろ、自己の事業に、個人の生活に必要な以外の土地を持っていてももうけにならないという政策が必要であると思います。この基本的な考え方に対する総理の見解をお伺いいたしたいと思います。
 現段階における土地対策として、三つのことを考えなければなりません。
 その第一は、すでに行なわれたとみなされる法人の投機的買い占めによる利潤の実現をいかにして排除するかという問題であります。
 第二は、田中内閣の基本的な政策である列島改造の実行の過程において生ずる土地需要の中から、いかにして投機的な需要を排除するかという問題でございます。
 第三は、騰貴し続ける地価に対して、いかにして安定した価格での国民の住宅用土地を確保するかという問題でございます。
 第一の解決は税制の問題であります。第二、第三の解決は土地所有権の制限の問題にまで発展しなければなりません。第一の問題については分離課税、土地保有税等いろいろと政府部内でも議論されておりましたが、いまだその結論を聞いておりません。第二、第三の問題については、民社党の主張するように、土地利用基本法を制定して、土地の譲渡は、新しく公の機関を設置して、その機関を通じなければならないようにする以外に方法はないと思います。具体的な対策について総理及び大蔵大臣の答弁を求めます。
 次に、私は公害、環境問題に関し若干の意見を申し上げながら、同時に、政府の方針を伺いたいと思います。
 公害が大きな社会問題となって以来相当の年月がたち、その間、法制度の改善、体系化も進められてまいりましたが、依然として解決されるきざしさえも見えない状態であります。このことは本格的な公害対策の未確立を意味すると思うのであります。
 そこで、提案いたしたい第一点は、公害を発生させるおそれがある製品に対しまする化学的な分析、実際使用面を考慮した検査を行ない、不合格品はその製造、販売及び輸入販売等を一切禁止するという製品審査制度を大々的に設ける必要があると思うわけであります。もちろん製造法の改善、品質の変更等が可能なものについてはその改善を命じ、再審査で合格すれば製造、販売を認めることとしても、今後の新製品のみならず、現在、製造、販売されておりまする全製品を含めての再検討をすべきだと考えるわけであります。
 第二は、工場など生産過程から排出される公害原因物質を根絶するためには操業の停止をする措置を講ずることが最も確実な方法ではありますが、少なくとも、新設される生産施設と改築する施設には、まず一切の汚染物質が排出されないと確認されるまでは操業を認めない厳重な検査制度を設けるべきだと思います。現行の水質汚濁防止法や大気汚染防止法等では、知事の立ち入り検査権が認められておりません。したがって、義務づけられておりまする常時監視も効を奏さない実態でありますから、知事が市町村の協力を得ながら技術者、専門家等で検査委員会をつくり、そのメンバーによる立ち入り検査ができるように改正しなければならないと考えるわけであります。
 第三に、現行の公害犯罪処罰法あるいは無過失損害賠償責任制度には不備、欠陥のはなはだしいものがありますので、常に被害者の立場に立たされまする国民がほんとうに法益を得られるよう、この際、抜本的に改正すべきだと思います。これまで政府・与党は、肝心な点については産業界の要求に屈し、せっかくの法案も骨抜きにしてきたのでありますが、もはや事態はそれを許すような状態ではありません。いまこそ抜本改正の決断を迫られていると思うのであります。
 以上私は、公害対策について当面とるべききびしい提案を申し上げましたが、一方においては、公害を完全に防止する技術開発が大きな問題として横たわっております。大量生産、大量消費の悪弊を大いに改めなければなりませんが、今日のように、公害防止技術の不十分な状況下に、根本的な手段を尽くさずして成長政策を推進すれば、ついには人類の滅亡を招くことになると言っても過言ではないと思います。したがって、公害を完全に防止する技術が一貫して確立されるまでは、自然の破壊をこれ以上行なわず、謙虚に自然との調和を求めて、経済成長がたとえゼロになっても、人類の生存が保障され、自然界を支配する法則に従って豊かな生活を確保する政治的努力が今日の重要な課題ではないかと思うのであります。
 人類は、一方において、限りなき科学技術を創造することもできますが、同時に、自然の秩序からのがれて生活することはできないのであります。均衡の回復をはかるためには、成長を犠牲にしても繁栄を求める政治哲学の創造こそ、今日の日本が取り組むべき問題だと私は考えます。政府はこの際、英知を傾けてこの道を探求すべきではないでしょうか。田中総理及び環境庁長官は、私の以上の提案について、誠実かつ慎重な検討を加えられ、御見解を伺いたいと存じます。
 第三にお伺いしたいのは円対策についてであります。
 総理大臣並びに大蔵大臣は、機会あるごとに、円の再切り上げは避けなければならない、このことを強調され、外貨減らしの方策にやっきとなっておられます。対外経済緊急対策を第一次、第二次と実行され、今回またそれを拡充するために第三次の対策を策定されておられます。しかし、その内容を経過的に見ましても、産業界の利害の対立、大蔵省と通産、農林両者の対立等のため、その効果は期待どおりあがらず、貿易収支は依然として黒字を続け、思惑的なドル売りと相まって、手持ち外貨は日々増加の一途をたどっております。政府は手続的な操作によって、公表する手持ち外貨の数量を控え目にいたしておりますが、その数字さえ、今月末におきましては、百人十億ドルに達するのではないかと思います。昨年末の通貨調整以後に開かれておりまするあらゆる通貨及び貿易問題の国際会議において、直接あるいは間接に日本は再切り上げを要求されてきております。米国だけでなく、欧州諸国からも火の手が上がり、少なくともこの問題に関しては、日本は国際的に孤立いたしておる状態であります。しかるに田中総理は、緊急対策が浸透すれば必ず回避することができる、再切り上げはしないと言明され続けております。しかし、外国の新聞、雑誌によれば、一月か二月には円は再切り上げされる、その幅は一〇%かあるいは一五%かということが常識となっておるように見受けられるわけであります。また、国内の輸出関連企業及び貿易商社では、すでにレートを二百八十円ないし二百六十円と見込んで来年の取引を計画しているのは、公然の秘密となっておるわけであります。貿易管理令の発動によって輸出を押える、緊急輸入によって外貨を一時的に減らす、このような小手先の政策によって通貨の力という経済の根本問題が解決されるとは思わないのであります。今日でもなお、田中総理は、円の再切り上げは近い将来には絶対にやらないと言明できるかどうかお伺いいたしたいと思います。
 また、大蔵大臣は、手持ち外貨を「適正な水準に戻すために格段の努力をする」と財政演説で言われておりますが、本年末における手持ち外貨の数量の見通し及び一月以降の増減の推移についての見通しをお尋ねいたします。
 私は、通貨及び貿易の問題について心配いたしている点が二つございます。
 その一つは、当面のことであって、米国との関係であります。対米貿易の黒字がこのまま続いていき、円の再切り上げもせず、米国の要求する輸入の自由化も拒否し続けた場合、大統領選挙の終わった年末から来年二月ごろまでの間に再び輸入課徴金の問題が起きはしないかという点であります。田中総理は、ニクソン大統領とのハワイ会談において、相互に理解を深めてまいったと報告されましたが、事貿易に関しては、今日ほど米国との間に利害の対立いたしている時期はないと思います。私の心配が杞憂に過ぎるものであれば幸いでありますが、総理の見解をお伺いいたしたいと思います。
 心配の第二点は、将来のことであって、国際社会における日本の経済的地位の問題でございます。経済成長中心、輸出優先の長い間の政策の結果、日本の商品は世界のいずれの国の店頭にも見ることができるようになりました。その結果、自国の産業を圧迫するという声が米国だけでなく欧州諸国にも起きてまいっていることは総理も御承知のとおりであります。国際会議において、円の問題、輸入自由化の問題となって、わが国が窮地に追い込まれておるわけであります。
 私は、政府が従来とってきた円対策及びこれからとろうといたしておる円対策のように、生産第一主義、海外競争力強化第一主義の基本をそのままにしておいて、外部的な保護政策の廃止や手続的な障害の除去で円の力を弱めようとしても、国際収支の黒字は減少しないと私は思います。スミソニアン体制以後の貿易収支の黒字が明らかにこのことを物語っておるわけであります。このような状態で推移するならば、田中総理の述べられた「国際社会との協調融和の中で発展の道を求める」ということばとは正反対に、国際社会において日本が孤児になることを私は心配するわけでございます。
 私は、この際、なぜ日本の商品が安いのかという根本の問題にメスを入れた対策を実施しない限り、国際収支の黒字を解消することはできないと考えておるわけであります。日本商品のコストの安い原因の第一は、低賃金にあるわけであります。第二は、外国の新聞が報道するように、企業の公害防止の負担が軽いという点であります。公害のたれ流しだという点であります。第三は、日本の企業は税制面で優遇され過ぎておるという点であります。これらの根本問題を解決することが国際収支改善策の中心だと私は考えますが、総理の御見解を伺いたいと思います。
 私は、質問を終わるにあたり、最後に田中総理に要望しておきたい点が一つあります。
 国民は田中総理に期待いたしております。それはあなたの持っておられる庶民性にあると私は思います。自分たちの仲間が総理大臣になったんだという親近感であります。それは、歴代の官僚政治に対する反発からかもわかりません。この国民の期待にこたえるためにも、あなたの育ちや環境の庶民性を「決断と実行」の政策の中に実現していただきたいと思うわけでございます。
 以上をもって質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(田中角榮君) 民主政治は政治責任を明確にしなければならない、御指摘のとおりでございまして、私も心しておるわけでございます。
 なお、その意味で、いろいろな障害が出てきた経済成長は、自民党の政策をやったからではないか、しかも、その中で重要な地位を占めて推進力となってきたその責任をまず果たせと、言外にそう御指摘になっておるようでございます。この問題につきましては、明治から百年間、都市に集中をして、という現象が続いて、その中で経済成長が行なわれてまいるというのは、これは日本だけではないのであります。これは全世界各国の流れでございます。一次産業比率がだんだんと減少をし、二次、三次へ人口が移動する過程において都市化現象が起こってきておるのであります。これは、あに日本だけのものではないわけでございます。また、そうすることによって生産と消費を直結せしむるという経済的な理由もあります。そういう意味で、効率的な経済運営といいますと、どうしても都市集中を是認するということになるわけでございます。そういうことで、明治から戦争が終わるまでに、日本も都市化が行なわれながらも、国民総生産も国民所得も増大してまいりました。また、戦後四半世紀という短い間にこのような経済繁栄を行なった直接の原因も、都市化のメリットであったことは事実でございます。そういう意味で、まず国民所得を上げようという大きな政策的な命題は解決ができたわけでございます。でありますから、それはそれなりに評価をしなければならぬのでございます。しかし、その時点において起こってきたのが過密の弊害、いわゆるデメリットでございます。家族はたくさんであることが望ましい。たくさんであれば仕事も非常によくできる。しかし、あまりにも家族がたくさんになると、人の和を欠くとか、いろいろな弊害、マイナス面が出てくるのでございます。それが、物価問題であり、土地問題であり、心の問題であり、公害の問題であり、交通の渋滞の問題であり、幾ら財政的な投資をしても住宅は需要に追いつかないということになったわけでございますので、そういう意味で、新しい立場、新しい視野と角度から、第二の飛躍はどうすればできるのかということを考えるのが政治の責任だと思うのでございます。その意味で、当面する問題の解決はもとよりでございますが、それ以上に高い理想を掲げて、その理想実現のために努力をしてまいらなければならない。だから、第一の段階は、とにかく何とかかんとか言っても、いまの日本の経済を確保した。第二は、そこで露呈しておる現象に対して的確な処方せんを書いて、われわれの子供や孫の時代にはもっといい日本をつくらなければならぬというのが政治の責任であると、こう理解をしておるのでございます。
 それから土地問題に対しての御提言でございますが、土地問題は、お互いが議論をするだけではなく、ほんとうに国民的な角度からいろいろ検討していただかなければならぬ問題でございます。憲法にある私有権という問題がございますが、この範囲内で十分解決できる問題がございます。それは、土地は商品であるというような考え方から土地は公共のために使用さるべきものだと、こういう考え方にまず立脚しなければならないと思います。まず土地問題を解決するには、一つには需要に対して供給をふやすということが一つでございます。第二は、土地の利用計画を定めることによって、投機を抑制をしなければならないということでございます。もう一つは、税制によって調整を行なうということでなければならない、こう考えるわけでございますが、いずれにしても、小さなところに集中をしておるから、需要と供給のアンバランスで地価問題が起こるのでございまして、日本列島すべてを考えれば、土地問題が解決できないことはないということで御支援を賜わりたい、こう思うのでございます。
 製品に対する化学的な分析、審査制度という問題に対して御指摘がございましたが、最近PCB等の化学物質による環境汚染、危険な製品による事故の発生等が社会問題化しておることは事実でございまして、政府も安全性の点検、用途の制限、販売禁止、回収処理の義務づけ、被害者に対する補償制度の創設等に対して具体的に検討を進めておるわけでございます。
 大気汚染防止法等の問題について申し上げますと、これらの法律では、排出されるばい煙や汚水等が基準に違反する場合には、都道府県知事は、施設の改善や一時使用停止の命令を出すことができるようになっております。また、立ち入り検査もできることとなっておるのでございます。これらの措置を厳正に行なうことにより、大気汚染及び水質の汚濁の防止をはかることができるものと考えています。国としては、規制基準の一そうの強化、監視測定体制の整備等をはかることにより、大気や水質の改善に万全を期してまいりたいと存じます。
 公害犯罪の処罰法の欠陥を是正せよ、無過失賠償責任制度は、すべての公害を対象とせよというような御所論でございましたが、いわゆる公害犯罪処罰法は、昨年七月一日に施行されて以来、いまだ同法に該当するものとして起訴された事例はございません。これは、同法が施行日以後の行為についてのみ適用されるものであること、各種の行政措置によって、適正な公害規制が行なわれていることなどによるものと考えられるので、同法に現に欠陥があるとは考えておらないわけでございます。現行法では、無過失損害賠償責任は、民法の過失責任の原則の例外をなすものとして、その範囲を緊急性、重大性の判断から、大気汚染及び水質汚濁にかかる健康被害に限定をしておるのでございます。無過失責任を大気汚染及び水質汚濁以外の公害のすべてに適用するか、また、財産被害をも対象とするかについては、今後とも引き続き検討してまいりたいと存じます。
 公害防止技術の開発の促進についての御発言に対して申し上げます。公害防止技術の研究開発のため、政府と民間の総力を結集しておるのでございます。特に最近では、そもそも公害が初めから生じない技術、すなわちクローズド・システム化された技術、無公害の電気自動車等の開発を強力に推進をいたしておるのでございます。
 成長と自然の調和についての御指摘がございましたが、国民の福祉増大をはかるため、経済成長が、逆に環境破壊につながり、ひいては人類の生存をおびやかすようなことがあってはならないことは申すまでもないのでございます。したがって、政府としては、環境保全を重要な政策目標として、公害規制の強化、産業構造の転換、公害防止技術の開発、自然の保護等の努力を払うことによりまして、環境破壊を伴わない経済成長を続け、国民福祉の増大をはかってまいりたいと考えます。
 国際収支対策に対しての御意見がございました。国際収支対策は、いまの日本の一番重大な問題ではないかとさえ考えておるのでございます。昨年末、多国間通貨調整、史上初めてのことが行なわれたわけでございます。この中で、円平価の切り上げも行なわれましたし、また、その後政府は七項目にわたる円対策を実施してまいったのでございます。このような全力を傾けてまいったにもかかわらず、わが国の貿易収支は、なお大幅な黒字を続けておるのでございます。去る十月の二十日に第三次円対策を決定をいたしたわけでございます。貿易・資本の自由化、関税の引き下げ、開発途上国への経済の協力の拡充など、幅広い政策を積極的に推進することにいたしたわけでございます。それだけではなく、公共投資の追加を含む補正予算について御審議をいただいておるのも、申すまでもなく国際収支対策でございます。ところが、十月末の外貨準備高は百七十七億九千六百万ドルということでございますので、非常に積み増しが行なわれておるわけでございます。このような外貨の累増を続けておる限り、御指摘のように、国際的な理解を得られないことは申すまでもないのでございます。こんなことをやっておると、アメリカから輸入課徴金を再びかけられるのじゃないかというような御指摘もございましたが、アメリカだけではなく、ヨーロッパとの間にも不均衡がございます。いま、国際収支に対しましては、両三年以内に経常収支の黒字幅をGNPの一%以内に押えたい、しかも、七〇年代の末には、GNPに対して一%の低開発国援助、後進国援助を行なうとともに、そのうちに占める七〇%、すなわちGNPに対しては〇・七%まで政府援助を上げたいということを世界に明らかにいたしておるわけでございますが、しかし、この理想を達成するためには、絶えざる努力を続けていかなければならないと思います。また、この解決をするためには日本の経済構造、産業構造そのものも変えていかなければならないと思います。しかも、膨大な原材料を海外から輸入して、すべてを日本で製品化するということ自体を続けておることもできないと思います。その意味で、重化学工業から知識集約的産業に移らなければならないということを申し上げたのもそのとおりでございます。また、公共投資等、日本は高い生産を続けておるとはいいながら、社会資本は非常に不足をいたしております。社会資本の蓄積率は、アメリカに比べては四分の一なのでございます。そういう意味で、いま御審議をいただいておるような、公共投資を中心とした生活環境整備、また、量から質へ転換できるような基盤をつくるための施策を遂行しなければならないと思うのでございます。
 また、賃金の問題、生活環境の問題、社会保障の問題等、御指摘のような問題に対しても、合理的な、日本の理想的な姿をつくるべく最善の努力をしていかなければ、国際収支そのものは解決できないと思うのでございます。
 もう日本の国際収支問題は、外から要求されるというのではなく、日本が国際社会の一員としてこれから末長くつき合っていき、理解を得ながら生活を向上さしていくためには、どうしても国際収支問題は解決をしなければならない問題でございまして、国民的な英知を結集してこれが問題に対処してまいりたいと、こう存じます。(拍手)
   〔国務大臣植木庚子郎君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(植木庚子郎君) 私への御質問の点に対しましてお答え申し上げます。
 円問題につきましては、ただいま総理から、いろいろと基本的な問題について構想をお話がございました。そのうちの具体的な問題として、私への中村議員からの御質問は、円の再切り上げを回避することができると考えているのかどうかという問題、これは抽象的に言えばそのとおりでございますが、具体的には、一体年内に云々ということをお尋ねになりましたが、これは私の立場といたしましては、いま年内に外貨が、日本の準備がどれくらいになるかというような問題についてのお答えは、まことに申しわけありませんが、数字的には私は申し上げることを差し控えさしていただきたいのでございます。
 それからその対策として、一体再切り上げの回避ができるかどうかという問題については、しなければならない、あらゆる方法をもってやるのですということを申し上げざるを得ないのであります。それは、今回のこの臨時国会におきまして補正予算をいろいろ御審議をお願いしております分も、あるいはこれに関連する法律案を審議をお願いしております分も、すべてこれは、ある意味から言いますと、この外貨問題、この通貨問題に一番基礎があるので、その解決のためには、この臨時国会を開いて、そうしてそれに対する備えをいまからいたそうというのが、われわれ政府の態度でございます。もちろんその中には、この際でございますから、いわゆる義務的経費の増額でありますとか、給与の改善に伴う所要の増加でありますとかいうような、必要な義務費の増加に伴いまして、この機会に審議をお願いしておく分もあることは申すまでもございません。しかし、基本的には、一番この臨時国会を急いでお願いを申し上げておるのはこの問題である。だから、あらゆる方法を政府といたしましては努力をして、そうしてこの再切り上げが起こらないようにという努力を、衆知を集め、閣内一致して努力をいたしておるのがただいまの姿でございます。
 土地の問題について、なお私への具体的な御質問だと私は解したのでございますが、投機利益に対する課税の問題、これをお答え申し上げますが、なるほど今日の状態におきましてそういう傾向が見えます。見えますが、これが容易に、投機のために売買をやったかどうかというような問題についての議論になってまいりますと、なかなかこれは仮定の論が入って議論になりません。そこで、われわれ税制の面からそれを見ます場合には、一体、個人が土地を買う、そうしてそれをまた売る、その間にいわゆる不当な利益を得ているような傾向があるかどうかという問題が一つ。もう一つは、法人につきまして、法人がこういうことをやるのに対していろいろな批評が行なわれ、われわれもそれに対して、何となくこれはどうもおかしいのじゃないかという場面もなしとしない。そうすると、これをどうするかという問題に相なるのであります。われわれは、この問題に対しましては、各般の土地対策をまず政府はきめなければいかぬ。それをきめて、そうしてその目的のもとに法人の場合にはどうする、個人の場合にはどうするということにならなければならぬと思いますが、法人の土地についての税制上の措置を講ずべきかどうかについては、いろいろといまわれわれ事務当局も研究をいたしておりますが、なおまだここに残念ながら成案を得るに至っておらない。また、第二次、三次といろいろその案を考えなければならぬのであります。ただ、方式としていろいろ考えてみますというと、その法人の得た譲渡所得に対して、分離して、それに対して重課をする、その譲渡所得に対しての、分離重課方式とわれわれは言っておりますが、そういう方式が一つ考えられるのと、もう一つには、保有課税方式を考えておるのであります。そのいずれがはたして適切であるかという問題についての利害、長短というものをいまいろいろ考えておるのが、われわれのただいまにおける姿でございます。これは、いずれは来たるべき通常国会において十分考えていかなければならない問題として、われわれは研究をいたしておるのであります。
 なお、もう一つ、土地売買のための公的な機関をこしらえていくべきではないかという御質問があったように思いますが、この点につきましては、われわれも一つのりっぱな御意見としてそれを活用して、その方式をこしらえることができるかどうか、それがいいかどうかということについてただいま検討の段階におります。
 これで、私への御質問に対してはお答えができておると思います。(拍手)
   〔国務大臣小山長規君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(小山長規君) 公害に関する御提言に対しましては、総理からお答えがございましたけれども、私からさらに補足して申し上げたいと存じます。
 大気汚染防止法及び水質汚濁防止法を改正したらどうかという御意見でございますが、現行法によって立ち入り検査ができ、また、操業停止までできますことは、先ほど総理大臣からお答えがあったとおりであります。ただ、中村議員の御提言は、新しく新設する場合、あるいは開設する場合に、事前に検査をして、そうして操業をさせない方法を考えたらどうかという御意見でございますが、これに対しましては、私どもは今後、公害を排出するおそれのある企業の進出の場合には、総量規制あるいは水質、大気が許容し得る限度内における工場の操業ということを考えますと同時に、現行法によっても、先ほど総理大臣からお答えのありましたような方法、手段を用い、また、環境基準の強化、そして、それに伴うところの排出規制の強化によって御提言は可能になると考えております。
 次に、無過失損害賠償制度の欠陥是正についてでございますが、現在の水質並びに大気の中で健康被害だけをいま取り上げております。土壌汚染が一部入っておりますが、そこで、それ以外に騒音、振動、地盤沈下、悪臭などについての損害賠償を考えたらどうかという御意見でございます。また、財産被害だけでなしに、精神上の苦痛も無過失損害賠償の対象にしたらどうかという御提言でございますが、これは公害防止法の成立の過程においていろいろ論議があったところでありまして、私どももこれらの論議をもとにして、今後とも引き続き慎重に検討してまいる所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(河野謙三君) 春日正一君。
   〔春日正一君登壇、拍手〕
#16
○春日正一君 私は、日本共産党を代表して、国政の基本にかかわる幾つかの問題について、田中総理に質問いたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 七年数カ月にわたって政権を担当してきた佐藤内閣は、国民のきびしい批判の前に、まるで追われるように退陣をしました。これは佐藤政治の破産、言いかえれば、アメリカ従属と大資本本位の政治の行き詰まりの結果であります。このことは、田中総理自身が、いろいろの面で行き詰まった日本列島の現状を並べ立てていることによっても明らかであります。
 ところで、田中総理は前内閣の有力な閣僚として、また、与党の最高幹部として、佐藤政治を積極的に推進してきた人であります。
 そこでお聞きしますが、日本列島を総理も認めているような矛盾に満ちた状態にしたことについて、田中総理は、どのような政治責任を感じ、どのような反省をしておいでになるか、これからの総理の政治を判断するためにお聞きいたします。
 第二に、日中国交回復以後のわが国の外交と安全保障の問題であります。
 総理は、さきの日中共同声明で、「日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」と述べていますが、これは、中国との戦争を日本の侵略戦争と認めてのことであるかどうか、はっきりお答えを願います。
 いま世界で最大の問題は、ベトナム、インドシナ問題であり、ベトナム情勢は、和平交渉をめぐってきわめて重大な段階に差しかかっています。第二次世界大戦後の最大の戦争であり、アメリカの軍事介入で数百万人が殺されるという残虐な侵略戦争を真に終結させ得るかどうかは、アメリカ側の態度にかかっており、との結果は、わが国とアジアの平和と安全にとっても密接な関係を持っております。しかるに田中内閣は、さきのハワイ会談で、安保条約の円滑かつ効果的な実施をアメリカ側に誓い、アメリカのベトナム侵略戦争に安保条約を全面的に発動し、積極的に侵略に協力、加担しているではありませんか。
 総理は、一昨日、衆院で、「ベトナム和平を期待する」と答弁しておりますが、真にベトナム戦争の終結を望むなら、和平への動きに逆行する相模原からのベトナム向け戦車の輸送を直ちに拒否すべきであります。さらにB52の沖繩基地利用、日本からの米軍のベトナム出撃や補給を一切やめさせるべきであると思いますが、総理はどう考えますか。
 また、総理は、わが国の平和は、極東の平和と安全の確保なくしてあり得ない、との理由をあげて、安保条約堅持を強調していますが、アメリカのベトナム侵略と、そのためのわが国の基地使用が安保条約第六条にいう、「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」ものと、総理はまじめに考えておられるのかどうか、答弁を願います。
 最近の新聞の世論調査によっても、安保の継続を望む国民はわずか一五%の少数であって、大多数の国民は安保をなくすことを切実に望んでおります。総理は、国民の声を聞くと言っていますが、それなら、この国民世論を尊重して日米安保条約を廃棄し、日本の進路を平和・中立の方向に転換すべきであります。そのためにも、まず政府は、国民の利益や安全を無視した安保最優先の政治を改めるべきであります。総理の答弁を求めます。
 また、政府は、第四次防衛力整備計画を、世論のきびしい批判を無視して決定しました。総理は、三次防の二倍、年間一兆円の軍事費をつぎ込み、攻撃的能力の飛躍的強化を目ざすこの計画は、諸外国の防衛費と比較して自衛上最小限度の防衛力と強弁していますが、軍備を否認した日本国憲法を尊重するならば、このような議論はできない道理であります。いかなる根拠に基づいて四次防を最小限度の防衛力というのか、また、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と定めた憲法と四次防の関係について、総理の明快な答弁を求めます。
 レアード米国防長官の国防報告は、「われわれは、日本自衛隊の装備の近代化をはかるよう奨励している」と述べております。国民のためじゃない、ニクソン・ドクトリンによる責任分担のための軍備増強であることは明白であります。四次防を撤回し、年間一兆円という膨大な予算を、公害の防止、物価の安定、社会福祉の向上など、国民生活にとって緊急な問題に回すべきであると考えますが、総理の考えをお聞きします。
 第三に、財政、経済問題について質問します。
 今日、多くの国民が、自民党政府の大企業本位の高度経済成長政策がもたらした公害、物価高、社会保障の極端な立ちおくれなどに苦しみ、その早急な解決を求めています。
 総理は、日本列島改造論によって、国民のこの要望にこたえるかのように言っていますが、全国に高速自動車道と新幹線鉄道網を張りめぐらし、昭和六十年までに工業生産を四倍にするという改造論の目標は、佐藤内閣当時を大幅に上回る独占資本の超高度成長政策であって、これでは物価高、公害その他の害悪を一そう激しくすることは避けられません。総理は、列島改造は国民福祉充実の基礎条件を整備するものと主張していますが、これは、「成長なくして福祉なし」と言った佐藤前総理のすでに破綻した論理と本質的には同じものであって、批判に耐えないものであります。総理が、真に国民福祉を考えるなら、このような政策をやめて、公害、物価高、交通戦争、住宅難、老齢年金その他の社会保障の立ちおくれなど、いま、国民が切実に解決を求めているさまざまな問題を優先的に解決する政治に転換すべきであります。総理の見解を求めます。
 特に、物価問題の解決を望む国民世論は切実であります。総理は、物価値上がりの原因は過密にあるとして、列島改造で物価問題は解決すると答弁をしていますが、列島改造の終わるまで物価安定を待てというのですか。これは物価政策の放棄ではありませんか。物価値上がりの原因は、インフレ政策や、公共料金、独占価格のつり上げにあることは明白であります。現に、総理が首相就任以来、決断と実行をされてきたのは、消費者米価、ガス、地下鉄など、公共料金の引き上げであります。その結果、すでに消費者物価は総理府統計によっても、八月の前年度対比五・七%、九月の三・三%と急上昇を示しています。さらに、列島改造と称して、赤字公債の増発を予定し、補正予算においても三千六百億円を計上し、四十七年度の公債総額は二兆三千百億円と、一般会計予算の一九%にも達して、戦前の軍事国債の水準をすでに上回っています。こうした赤字公債の発行がますますインフレを促進し、物価上昇に拍車をかけることは明白であります。これでは物価安定どころか、物価値上げの促進ではありませんか。真の物価安定のためには、このような赤字公債の発行は一切やめて、必要な財源は、年間三兆円にも及ぶ租税特別措置、その他大企業への減免税をやめることなどに求め、国鉄運賃、消費者米価などの公共料金値上げはやめて、必要な資金は国の一般会計から支出すべきであると思いますが、総理の考えを伺います。
 地価問題も緊急の課題であります。近年、大企業による土地買い占めは一そう激化し、その所有地は、わが国の純可住面積の十数%にも達しています。この結果、地価はますます高騰し、勤労者のマイホームは高ねの花となり、公共用地の取得も一そう困難になっています。しかも、田中総理の日本列島改造論以来、秋田県横手市、京都府福知山市、岡山県津山市など、総理が名をあげた新二十五万都市候補地や、国鉄新幹線、高速自動車道、大規模工業基地、観光地など、開発予定地を中心に、日本列島の全域ですさまじい買い占め競争が展開されていることは、日々の報道によっても明らかであります。これは、具体的な土地政策も示さずに、個別の地名をあげて開発を示唆した総理の責任であります。総理は、この始末をどうおつけになるか、はっきりお答え願いたいと思います。
 総理は、土地政策として、全国的な土地利用計画の策定、税制の活用をうたっています。しかし、地価問題解決のきめ手は、大企業の買い占めた土地に高率の固定資産税と譲渡所得税をかけ、さらに、必要な土地は適正な価格で収用し、土地買い占めはもうからないということを明確にすることであります。その決断ありやいなや、総理の答弁を求めます。
 次に、政府・自民党の総合農政のもとで、危機的状態にある日本農業について伺います。
 政府は、一体、日本農業を、今後どのようにしようとしているのですか。総理の列島改造論によれば、昭和六十年までに、現在の農業人口の実に六割から七割を追い出し、農地法を撤廃し、農業生産の基盤である農地を、工業開発、観光開発のために農民から奪い取り、その残りの農地で農業を営ませようとする残地農業の政策であります。これは、まさしく日本農業破壊政策以外の何ものでもありません。少なくとも、主要食糧は自給することが独立国としての望ましい姿であります。その立場から、農産物の無制限、無秩序な輸入をやめ、米以外のおもな農産物に対しても、価格補償制度を確立すべきであります。また、農業の総合的多面的発展のために、大企業の土地買い占めをきびしく規制し、国の思い切った投資によって農用地を積極的に造成する必要があると思いますが、総理の考えをお聞きいたします。
 次は、円問題についてであります。
 政府の円対策なるものは、アメリカの責任には一言半句も触れないばかりか、農民や中小企業に大打撃を与える関税大幅引き下げや農産物輸入などを中心とし、大企業に対しては為替差損を国が負担する低金利の外貨貸し制度など、依然として優遇措置を中心としております。これでは、今日の円問題を解決できるはずはありません。
 円問題の国際的根源であるアメリカのベトナム侵略の停止と、喪失しているドルと金との交換性の回復をアメリカに要求すべきであります。同時に、賃金の大幅引き上げ、独占価格の引き下げ、大企業への特権的減免税の廃止、公害費用の企業負担、社会保険費の企業負担の引き上げなどによって大企業の国際競争力を適正なものにすることこそ、円問題の最も根本的な解決策であります。経済政策を国民福祉優先に切りかえることこそが、最も根本的な円対策であります。総理はこれを実行されるかどうか、答弁を求めます。
 第四に、政治資金と選挙制度についてお聞きします。
 さきの自民党総裁選挙で、田中総理の対立候補であった政治家が雑誌や新聞に発表した文章の中で、「大事な党首決定が金や権力で左右される」様相を見て、「総裁選挙の途中でやめてしまおうかと思った」と述懐しております。これは、あの総裁選挙でばく大な金が乱れ飛んだという世評を裏づけるものであります。政治が、世論や国会の討論によってではなく、財界からの金で動くところに、国民不在、大資本奉仕の政治が生まれる土台があります。政治の腐敗を根絶し、国民の政治への信頼を高めるためにも、すべての会社、団体からの政治献金を禁止し、政治献金は、年間四十万円を限度とする個人の野付に限るなどを内容とする政治資金規正法を早急に制定すべきであると思いますが、総理の考えをお聞きします。
 総理は、政治資金の規制をことさらに選挙制度と結びつけて、その実施をサボる口実にしております。しかし、選挙制度と政治資金の規制とは、次元の異なる別々な問題であります。総理は、第七次選挙制度審議会委員との懇談会で、答申が出れば適正な措置を講じたいと、小選挙区制の導入を示唆しております。しかし、議会制民主主義のもとにおける選挙制度は、主権者である国民の意思が正確に国会の議席数に反映されることを基準として定めらるべきものであります。小選挙区制は、この基準に反して、国民の意思と国会の議席数をますますかけ離れたものにするだけであります。
 総理は、所信表明の中で、「政治は、国民すべてのもの」と言い、「民主政治は、国民の理解と支持がなければ、効果があげられない」とも言っていますが、総理がほんとうにそのように考えておいでならば、小選挙区制ではなく、せめて都道府県単位の比例代表制など、国民の意思がより正確に反映される方向で選挙制度を改正すべきであります。
 また、当面の問題として、大阪三区と兵庫五区のように、議員一人当たり有権者数の格差が五倍にも広がっている現状を改め、現在の選挙区のままで、有権者に比例するよう議員定数の是正を早急に行なうべきであると考えますが、総理の考えをお聞きしたいのであります。
 最後に、昨日、衆議院本会議でわが党の不破議員が、中国との復交交渉の過程で、中国側に、日本共産党と手を握らないでほしいと申し入れた問題を質問したところ、総理は、話題にならなかったと、これを全面的に否定しました。これは、総理が、自民党両院議員総会で報告し、広く報道され、録音までされている発言をくつがえしたものであります。また、十月五日、わが党が政府に抗議した際、二階常官房長官が、交渉の中でいろいろ話があったと事実を認めたことをも否定したものであります。このようなその場のがれのごまかしは許されません。総理は、周恩来首相と、わが党の問題について話し合った事実を率直に認めて、その責任を明らかにすべきであります。
 総理の明快な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(田中角榮君) 戦後、自由民主党の内閣がずうっと続いてまいっておるわけでございますから、私も自由民主党の政策、綱領を中心として政治を、施策を進めていくわけでございます。その意味で、都市に集中したことも、また現在、いろいろな現象があらわれてきたことも自由民主党政府の責任であり、しかも、重要な地位を占めておった私の責任をどうするのかということでございますが、先ほど申し上げましたとおり、戦後は、荒廃した中からまず経済を立て直すということが政治の最大の目標でございました。それから、混乱の中から立ち上がった日本の産業の成果を輸出に振り向けるということによって、国力やわれわれ国民の生活を向上しなければならないということが政治の目標でもございました。また、できるだけ国際水準に国民所得をさや寄せするように所得政策を進めなければならないということも、政治の目標でございました。また、働くに職のなかった次三男対策等が政策の焦点でもございましたように、まず、完全雇用を行なうということも政治の目的でございました、そのような目的はおおむね達成をし、所得水準におきましてもヨーロッパ各国に比肩をするようになったことでもございますので、一応の目的は達し得たわけでございます。しかも、これは日本だけの特別の政策によった現象ではなく、世界は、一次産業から二次、二次から三次へと人口が移動する過程において、都市化現象は避けがたい現象でございました。日本もその例外ではなかったわけでございます。こういうのでございますから、いままでの問題はそれなりに成果があったわけでございますから、これから取り組まなければならない問題については、真摯な立場で取り組まなければならないと、こう考えておるわけでございます。
 戦車の輸送についてお話がございましたが、戦車輸送は、間々申しておりますとおり、道路管理者が、道路管理以外の理由で許可をいただけないというような事態が起こりましたので、やむを得ず、真にやむを得ず政令の改正を行なったものであるということで、御理解を賜わりたいと存じます。
 ベトナム戦争と極東の平和と安全、安保破棄が世論であるという御指摘でございますが、ベトナム和平につきましては、目下、当事者間の話し合いが真剣に続けられており、近くこれが実現するものと期待をいたしておるのでございます。ベトナム紛争は極東の平和と安全に無関係のものではありません。その意味で、米国が安全条約上認められている行動は、これを許容しなければならない、こういう考えでございます。
 また、安保条約に対しては、世論が非常に悪いということでございますが、二十年余の実績がございまして、広範な国民の支持を受けておる、こういう考え方でございます。
 憲法と四次防の問題についてでございますが、平和憲法を尊重することは当然のことでございます。四次防計画は、いまも申し上げておりますように、必要最小限のものでございますので、その意味で御理解をいただきたいと思います。
 国民福祉のための政治に転換せよということでございまして、それはそのとおりでございます。生産第一主義から成長活用型へ、また、重化学工業から知識集約型の産業へ、特に生活第一主義にだんだんと移っていかなければならないということは、もう御指摘のとおりでございまして、そのためには福祉政策を強力に進める必要がございます。ただ、福祉政策は、ただで福祉ができるものでないことは私が申すまでもないことでございまして、成長を前提として福祉が完成をするのでございます。それは、制度はようやく西欧並みになってまいりましたが、内容において西欧諸国と比肩するようにしなければならないわけでございます。そのためには、やはり適切なる成長を前提にしなければならない。そういう意味で、福祉が成長を呼び、成長が福祉を招くというような日本列島改造論を前面に押し出しておるわけでございます。
 それから物価問題及び公共料金の引き上げ抑制についての御発言がございましたが、物価の安定のため、政府は、低生産性部門の構造改善、生鮮食料品を中心とした流通機構の近代化、輸入政策の積極的活用、競争条件の整備等、各般の対策を講じてまいっておるのでございます。公共料金は、特定のサービスに対する対価としての性格を持っており、負担の公平等の見地からも、その料金の決定にあたりましては、受益者負担を原則とすべきものと考えます。同時に、公共料金につきましては、物価対策の見地から、その引き上げの国民生活に与える影響にかんがみ、慎重に取り扱ってまいることは言うまでもないことでございます。
 土地対策について申し上げますが、土地問題の解決は現下の急務でございます。政府としましては、土地供給量の大幅増加、全国的な土地利用計画の策定等を進めますとともに、投機抑制のための取り引き規制、税制措置等を引き続いて検討してまいりたいと存じます。特に、将来の値上がりを予想して土地に投機的な投資を行なっておる者に対しては、土地の利用計画をかぶせていくというようなことによりまして、投機利益は十分押えるような措置もとらなければならないと思いますし、税制上の問題に対しても勉強しておるところでございます。
 農業については、残地農業という考え方ではないかという御指摘でございますが、そのようなことではございません。農業に対しては、まず生産性を上げるために、生産基盤の整備と農村の生活環境の整備を計画的に推進して、高福祉農村を建設するということが大前提でございます。これによりまして、国内農業の根幹をなす主要農産物については、完全自給ないし八〇%以上の自給率を確保するということでございます。また、価格政策につきましても、農産物ごとの特性に応じて、需給状況、生産条件等を勘案するとともに、農業所得の確保、物価の安定にも十分配慮した適正な価格形成を行ないたいと思います。
 ただ、きのうも申し上げましたように、農業だけで理想的な農村環境ができるかというと、必ずしもそうではないわけでございます。いま、現に減反政策等を行なわなければならないような状態でありますので、それらの地域を、いま土地が不足で困っておるような状態を考えながら、国土の総合開発、また列島改造というような施策の中に消化をしてまいらなければならないと思います。その意味で、農村工業導入促進化法もできたわけでございますし、工業再配置も行なわれたわけでございます。また、地域開発も行なわれておるわけでございます。農村人口がまだ二次、三次産業に移動しなければならないという事実、その移動する人口がすべて都会に出かせぎに出、都会に生活の拠点を求めなければならないとしたならば、過密は一そう拍車をかけることになるわけでございます。そういう意味で、工業化を行なう等により、農工商三位一体の理想的な環境をつくることによって、新しい農村環境が確保されると考えておるわけでございます。
 円対策について申し上げます。円対策は、先ほどからも申し上げましたとおり、非常に大きな問題でございます。その意味で、昨年から三回にわたって国際収支対策を決定いたしておるのでございますが、いまだ、輸出はだんだんと抑制をせられてはおりますし、輸入も拡大の傾向にはございますが、しかし、大きな貿易収支の黒字はまだ解決をせられておりません。このような状態を続けておったならば、国際社会における日本の地位も確保してはまいれないわけでございますので、いま、国会に対して、内需を振興するような補正予算等の御審議をお願いしておるわけでございます。先ほども中村さんにお答えを申し上げましたように、いままでは輸出の振興、国際収支をよくするために政策が必要であったわけでございますが、今度は経常収支の黒字を単年内にGNPの一%以内に押えるというような、逆な政策を必要といたすわけでございます。全く新しい事態にぶつかったわけでございますので、国民的英知の結集によって、これが対策に万全を期してまいりたい、こう考えます。
 政治資金規正法の問題等について御質問がございましたが、両院において間々申し上げておりますとおり、幾たびか改正法案が国会に提出をされ、廃案になった経緯がありますことは御承知のとおりでございます。これを今日の時点に立って見ますと、金のかかる選挙制度あるいは政党のあり方をそのままにして、これを具体化することにはいろいろな無理があるようでございます。しかし、くふうによりましてはその方法も見出し得るものとも考えますので、政党本位の金のかからない選挙制度について、選挙制度審議会で御審議をいただいておるところでございますので、徹底した検討と議論を積み重ねてまいりたい、こう考えます。
 当面、都道府県単位の比例代表制の導入と、議員定数の是正についての御発言に対してお答えをいたします。政府は、国会議員の選挙制度をどのように改めるべきかについて、目下、選挙制度審議会に審議を願っておるところでございます。都道府県単位の比例代表制にせよという御意見は、御意見として承っておくことにいたします。
 次に、選挙区の区別の定数の合理化は、総定数、選挙区制、選挙制度のあり方と切り離すことのできないものでございますので、政府は選挙制度審議会に、これらの問題をあわせて審議するようにお願いをいたしておるわけでございます。
 最後に、日中戦争を侵略戦争と認めるかどうかという問題について申し上げます。日中首脳会談において、わが方は、戦争を通じて中国国民に大きな損害を与えたことについて、深い反省の念を表明をいたしましたが、これは道義上、わが国として当然なすべきことであります。過去を不問に付するつもりはありませんが、より重要なことは、今後の日中友好関係をより確固たる基礎の上に置くことであると考えます。今後の善隣友好の関係をいかにして実現していくかが、より重要な課題であると考えておるのでございます。
 また、日中首脳会談の中で、貴党に関する話は出なかったということを、きのう衆議院で申し上げましたが、再び私から正確にここで申し上げておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○副議長(森八三一君) 杉原一雄君。
   〔杉原一雄君登壇、拍手〕
#19
○杉原一雄君 田中総理はたいへんお疲れでしょう。どうも御苦労さまでございます。代表質問はちょうど私で終わります。日本社会党を代表して質問いたします。
 実は私、今日まで約六年間、百三十戸の団地の町内会長をつとめております。幸いにしてかきね越しに市民と語る喜びを持っておるわけです。総理もまた、所信表明の中で国民との対話を力説しています。しかし、歴史は、太閤秀吉の政治を誤らせたのは淀君だと規定しています。田中内閣の命運を左右するのは、実は国民でなくて、外、ワシントン政府、内、日本の財閥だと危惧するものは非常に多いのであります。とりわけ三十日以来の答弁の姿勢の中にそれを痛感するのは非常に悲しいことであります。だから総理に対し、一日一日、喜びと悲しみと怒りと不安の生活を続けている市民大衆に対して、希望と勇気を与える決断と実行の政治をまずもって要望いたします。
 総理、あなたは二十八日、本議場において「インドシナ半島においては平和が到来しようとしており、朝鮮半島においても南北の話し合いが進められております。」との見解を表明されました。まさにそのとおりであります。
 去る十七日夜、韓国において非常戒厳令の宣布、憲法停止、国会解散という一連の強硬措置がとられたとき、私、一瞬、不安と驚きに包まれました。しかし、去る二十四日、平壌において第三回南北赤十字会談が平静に開かれ、なおまた、明二日、平壌において南北共同委員会が開かれようとしております。実は七月十八日から二十七日まで十日間、日本社会党朝鮮問題特別委員会を代表し、足鹿団長外八名が朝鮮民主主義人民共和国を訪問し、二日間の政治会談と、四時間にわたる金日成首相との会談を行ない、その後、朝鮮対外文化連絡協会との間で厳粛に共同声明に調印をして帰国したのでございますが、まず要求したいのは、空間的距離が沖繩よりも、上海よりも近いのに、三泊四日のシベリア回りでは困るのであります。ジャンボをもってして二時間余りで行ける状態をつくってもらいたいのであります。南北会談と統一への道、朝鮮半島四千万人民の願望が成就するよう積極的に乗り出してほしい。七月四日の南北朝鮮の共同声明に対する熱烈なる支持の表明を重ねて希望するわけであります。
 韓国の一詩人が、「祖国とは何か、必ずしも山紫水明である必要はない、そこに同じ一つのことば、同じ一つの乳ぶさで育ったはらからがいるだけで、それは祖国なのだ」と言っているのであります。そこには、長い間南北両断の悲しみが横たわっております。南北統一の夢、その第一歩が踏み出されたのであります。
 その統一の三原則、一つは、外部勢力の干渉を排し、自主的に解決をする。
 二つ、制度、思想を越えて民族の大同団結をはかる。
 三つ、武力的手段を排し、平和的解決をはかる。
 この三原則こそ、四千万民族の知恵であり悲願であります。重ねて総理の七・四の南北朝鮮の共同声明に対する見解表明を要求するわけであります。
 金首相も、われわれとの会談において、田中内閣にかなりの期待を寄せております。南北両朝鮮に対する均衡政策を希望しております。そして、統一を助け、妨害をしてはならない、そのことを伝えられたいと私たちに伝言したのであります。そして、佐藤前総理のように、南一辺倒政策をとり、統一を妨害するならば、それは朝鮮人民にまた一つの大きな罪を重ねることになるだろうと警告しておりました。すでに国会内外での大平発言で明らかなように、文化、経済等の交流を深めていくが、政治、外交的には手も足も出さぬと言っておられるのであります。前福田外務大臣が日中問題でアヒルの水かきという発言をしたことがございますが、この水かきさえも大平外相には認められないのであります。それは一体どのような分析と判断によるものか、総理も外相もはっきりその事情をわれわれに申し述べていただきたい。われわれは要求いたします。
 一つは、共同声明により日韓条約は空洞化し、従来、朴政権に対する一方的な加担、共和国に対する敵視政策をやめ、すみやかに国交を樹立すること。
 二つ目、在日朝鮮公民に対する一切の差別政策をやめ、祖国往来の自由、国籍選択の自由、民族教育の自由を保障すること。
 三つは、国連に対し、共和国の無条件加盟に協力し、南からの国連軍の撤退、国連における朝鮮統一復興委員会の解体、不当な諸決議の撤回を要求し、その実現に努力すること。
 以上三点について、総理の所信を求めるとともに、当面何をなすべきか、なさんとしているかを具体的に明らかにされることを要求いたします。
 次は教育の問題。総理は、所信表明において、「明治百年という時代の転換期にあたって、教育の占める役割りは重要となってきております。私は……さきの中央教育審議会の答申を踏まえ」と述べています。列島改造論の中では、文化、芸術、教育についての構想はゼロであり、それがまた最大の盲点でもあります。でありますから、総理のライバルであります福田氏も、あらゆる機会に、国づくりについての日本列島改造も重要な一つだが、しかし、より大事なことは、今日の段階では人心改造論だ、と力説しております。私もまた、激動する歴史的社会を正しく生き抜くために、七〇年代のパイオニアとして欠くことのできない世界観、社会観、人生観、労働観などの自己形成に正しく寄与するような基礎的知識を選びに選んで学ばせることが大切であると思います。そのためにも、教育権は国民のもの、教育行政に対する住民の自治、たとえば最近まで沖繩百万県民がしっかりとその手に握っておりました教育委員の公選制の復活など、きわめて重要な課題ではないかと思います。政府が進めようとしている、大資本に奉仕し軍国主義復活強化の中教審路線には、私たちは遺憾ながら反対の意思を表明いたします。
 その上、教育改革の重大な時期の文部大臣が稻葉文相であることに、非常に大きな不安を感じます。文相は和服でゆうゆうとしておりますが、実は六月の十六日発表された自民党憲法調査会の憲法改正大綱草案、その最高責任者であります。民主、平和、人権尊重の日本国憲法に大胆に挑戦する改正草案、文相は政治家として、その当時の信念はいまもなお変わらないものだと信ずるのでありますが、もし私の推定に間違いないならば、憲法の根本に触れる第一条、天皇の地位の明確化、第九条、戦争の放棄の改正、自衛権の確立、いま問題になっている車両制限令改正と重大なかかわり合いを持つ、内閣に緊急状態における特別立法及び財政措置の権限を付与する規定を設けるなどときめていることは重大な問題であります。いま文教行政の責任者として、教育基本法を検討しておられると思います。教育基本法は、「憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、」と前文でうたい、昭和二十二年三月三十一日公布されたのであります。教育基本法を抜本的に改定をする準備を、稻葉文相の思想体系から考えると、おのずから進められていると思いますが、憲法改正の先頭に立つ文部大臣、いまそのことの、教基法改正についての作業の現段階――先般は学習指導要領を非常にすみやかに改定されたのであります。総理も、そうした関係、憲法と教育基本法、稻葉文相と文教行政、この点について明確な責任ある態度を実は表明していただきたいと思います。その上、総理としては、直ちに憲法改正の作業をここの段階でストップをかけると同時に、中教審の今後の運営をどうしますか、具体的目標、作業日程などを実は明らかにしてほしいのであります。
 きのう、わが党の加瀬議員が指摘されたとおり、総理は、北京会談あるいは共同声明を通じて、太平洋戦争の責任、周首相の提起した一八九四年すなわち日清戦争以来の日本の歩いてきた道、軍国主義、帝国主義、この歴史にきびしい自己批判を行ない、国際社会にその態度を明らかにしてきたのであります。だから、少なくとも明治、大正、昭和の歴史を再検討し、教育の場における教科書の総点検を行なうことが緊急かつ重大だと思うが、総理の最高の決断を伺いたい。
 私は、いま、ここに一冊の教科書を持参しておりますけれども、具体的な指摘を行ないません。ただし、一昨年、公害国会において、わが党の衆参両院の議員から公害に関する記述の指摘がありましたところ、当時の坂田文部大臣は直ちにその教科書の訂正を命じたのであります。それぐらいの決断を総理が下してもいいのではないだろうか。その点、教科書まであなたに読めとは申しません。検討していただきたいと思います。
 農業問題です。国会閉会中、すばらしい秋晴れの午後、隣部落の農業倉庫に立ち寄りました。倉庫の前庭に検査米が山に積まれております。ある農民がつぶやくように語りました、「心配しないで働ける農業にしてください」と。私も六年前まで八十アールの農業経営をしてまいりました。だから農民の訴えがビーンと胸につかえました。もし、その農民が三十日以来のテレビ放送を見ていて、衆参両院の総理の発言を聞いていたらおそらくがっかりしたことでありましょう。いわんや、来年の稲作計画へと勇気をもって立ち上がることができるでありましょうか。残念ながらノーと言わざるを得ません。
 「農業については、総合農政の推進のもとに農村の環境整備を強力に実施して高生産農業の実現と高福祉農村の建設をはかり、農工一体の実を挙げてまいります。」、これが総理の所信表明の構想であり、きのう、きょうの答弁の中身でもあります。しかし、もっと具体的構想と、それを年次的にどう実施するか、その計画をポイントだけでも明らかにしてもらわないと、われわれはさっぱりわかりません。
 自民党の先月の二十七日発表された新政策大綱を読みました。「高能率農業の展開と林業、漁業の振興」ということでありますけれども、農民は一体どうすればよいのでしょう。日本の農民はどこを向いて歩いたらよいのでしょう。たとえば減反休耕で祖先伝来の美田に雑草がはえ茂っています。これをして高能率農業とどうして言えるのでしょう。もし、かりに自民党の政策、主張どおり高能率農業を主張するならば、政府は、まず、ばく大な国費を投入して干拓し、干拓しつつある八郎潟、石川の河北潟を農林省本来の目的、計画に返って大胆に方向転換をすることができるかどうか、これを簡単に言明してほしいと思います。
 改造論九ページに、「日本農業の将来あるべき姿を考えると、農家一単位が自家保有地一ヘクタール、他人の所有地十〜二十ヘクタールをこなすようでなければならない。」、なおまた、「農業発展の主流はこんご協業、請負、賃耕などになるだろう。」と、これはことばどおり読んだわけでありますが、述べているのであります。この分析と展望で進めると、必然的に生産組織の一大改造が必要だと思うのであります。私の判断では、発想の起点は同一ではないでしょう。だが、中国の農業が今日偉大な前進を遂げ、朝鮮民主主義人民共和国の農民が工業労働者の生活水準に追いつき、希望に満ち満ちた生活をしている基盤に、合作社から発展した人民公社組織があります。だから、私は、日本的人民公社組織を従来の部落生産組合と農協の機能を強める中で新しく構築したらどうかと思うのであります。唐突でありましょうけれども、いかがでございましょう。
 最近農林省が改造論に刺激されたのか、農業が農産物以外に洪水調節、土壌浸食の防止、酸素供給など、一年間の緑の値段が五兆八千億なりという機能試算をしたそうだが、その意図は一体どこにあるのか。一体、日本農業を産業として正当な評価をしているのかどうか、ほんとうに疑問に思います。
 そこで、ただしたい。政府は、米の生産制限、減反休耕政策をとり続けるつもりなのかどうか。食管制度がそろそろじゃまになりましたからこれをどうしようとしているのか。改正作業をしているならばその事実を明らかにしてほしい。もちろん、われわれは食管制度の改廃には反対であります。改造論の、食糧の国内自給度八〇%の根拠を示してほしい。だが、先ほど春日議員の質問に対して、一〇〇%もあり得ると言ったので、ちょっと私、てこをはずされたような感じがしますが、改造論では、工藤議員がやじったように、八〇%と、れっきとして書いてあります。だから、根拠があると思います。それを明確にしてほしい。
 十月十七日から十月二十七日までニューデリーで開かれたFAOの第十一回アジア極東地域総会でも、米の需給は問題ないとする将来の需給予測は考え直すべきでないかとの意見が出たということであります。それは米の主産国が軒並みに不作が伝えられ、世界の米需給が逼迫している局面に直面しているからであります。わが農林省の内部からも、生産調整が行き過ぎたから米の需給が窮屈になったという、きわめて無責任な声が上がっているということであります。事実、九月二十日の作況指数では、水・陸稲合計一千百四十六万トン、四十八年米穀年度における需給計画は一千百七十万トンであります。ほぼとんとんであります。きわめて不安な状況であります。いわゆる米減らしが基幹である稲作の抑制を通じて日本農業の分解を促進し、土地、水、労働力を農業外に転用させようとした政策に対する農家の生活自衛の知恵の結果ともとれます。改造論はそうした農民の心をじゅうりんして突き進もうとしているのであります。とりわけ農産物の自由化、米国からの自由化はどうしても避けられないものかどうか、あらためて総理の決意を伺いたい。
 積極的な土地対策をサボリ、農業の第三次産業化の方向が何か新しい政策であるかのように改造論はうたっている。私は、次の三点にしぼって問題を提起し、総理の見解を求めます。
 一つは、農業を産業として正当に位置づけることであります。米、畜産、果樹の三本柱の確立。二つは、生産の地域特化をもりと徹底する適地適作の農業の確立であります。第三は、さきに提起したように、生産組織を大きく前進して、大胆に改造することを提起したいのであります。総理の考えを求めます。
 次は、道州制の問題であります。
 改造論の八ページに、府県制度を改廃し、道州制実現の必要を示唆しています。総理、どうしても府県制度が狭過ぎて経済の発展と行政の広域化に対応できませんか。そして改造論の機能的主張の中の「一日交通圏」、「一日経済圏」の機能と内容はとても理解できません。どこにそのメリットがあるのか。とにかく私は道州制実現には反対いたします。そうして、そうです、日本商工会議所や関西経営者協会などから私たちにも道州制の実現に対する強い要望が参っております。総理の構想と一致いたしております。これは偶然でしょうか。戦後、日本国憲法第八章で、地方自治の権利が保障されました。市民はその経験不足からくる未熟さを草の根民主主義運動を通じて克服し、中央集権強化のきびしい攻撃と戦い戦い、みずからの領域を確立してまいりました。たとえば、自民党と官僚とが一体になって攻撃をかけてきた市町村連合法案は六十八国会でついにつぶれ去ったのであります。また、四日市市民が複合公害から命を守る戦いに勝利し、木村建設大臣を感心させたのであります。また反対に、木村建設大臣からあなどり軽視されてはいるけれども、鹿島工業地帯の農漁民の命と暮らしを守る戦いなど、そうして私の県の富山では、神通川流域の住民は敢然として天下の三井を相手に戦い、三年半にわたる裁判闘争において完全勝利をかちとったのであります。一体、これらの戦いには、中央政府の指導あるいは都道府県の行政努力があったでありましょうか。断じてそうではありません。雑草のごとく踏まれ、けられても立ち上がった住民自治の知恵と底力ではありませんか。確かに、旧全総、新全総を計画し推進する側に立つ者は、こうした地域住民の抵抗はじゃまでしょう、はがゆいでありましょう。しかし、議会で多数をとれば何でもできるという民主独裁政治の危険を身近に痛感します。われわれは、太平洋戦争の愚かさを再び繰り返したくありません。大資本の行くところ敵なし、国民の命も権利もブルドーザーの勢いで踏みにじるような行政機構づくりは、断固として反対せねばなりません。ものそれぞれには理由があります。総理、どうしても府県の統廃合もしくは道州制の実現をしないと列島改造はできませんか。そのどうしてもというところをはっきりと説明してくださいませんか。それとも、東京、埼玉、京都、大阪、岡山、そして沖繩と、続々と革新知事が誕生しつつある韓新自治のこの怒濤のごとき大きな流れを遮断しようというのでありましょうか。もしそうだとするならば、それは大きな誤謬です。それこそ改造論は中央集権からの改造であります。そうでなくて、シビルミニマムをもととして、そして地方自治体に自主性を持たせ、自主財源を確保することによって、下からの改造を行なうことこそ、まさしく市民の福祉を増進し、確保する道であると確信します。総理、いかがでしょうか。
 最後に、車両制限令の問題。
 私は、相模補給廠の米軍車両の道路使用について、六月一日、六月六日、地方行政委員会において、相模原市の日本社会党総支部からの連絡により、政府の責任追及と緊急措置を要求してきました。だから、総理はきのうも答えていたように、八月上旬に問題が起こったのではありません。六月以前から正義の同志が血みどろの戦いの結果、ついに局地闘争に耐えかねて国会に持ち込んでまいったのであります。ただ、六月一日、六日の地方行政委員会の審議の中で、建設、外務両省と警察庁の責任ある答弁と行政措置により、M48戦車並びに米軍車両は完全に補給廠の中に封鎖されたことになっていたのであります。ところが、八月五日、米軍車両がのこのこと出てきたので、飛鳥田横浜市長や市民と労働者が怒ってその前に立ちはだかり、ついに立ち往生をさせたのであります。そこで八月十日、三たび地方行政委員会においてその責任を追及いたしました。橘アメリカ局長代理がこう言いました。「六月六日の当委員会における松田説明員の説明後に、間もなく、六月の八日に日米合同委員会が行なわれましたが、その席上におきまして、日本側より文書をもちまして、道路交通法、なお、そのもとにおける車両制限令というものがありますよと、それについても尊重するようにしてください、」「ということを米側に申し入れております。なお、七月の三日に、これは安保条約の実施に関するいろいろこまかいことの協議をやる、まあ随時協議を米側とやっておるわけでございますが、七月の三日にやはり事務レベルでのそういう協議がございました。その際には、口頭をもちまして、さらに道路関係の法規をよく守ってくださいということを米側に重ねて注意を喚起してございます。」
 八月五日の紛争について、国道の管理者である建設省、その省の小渕政務次官に、どういう連絡があったかと尋ねたところが、道路管理者でございます建設省でありますが、「その後におきましては連絡を受けておりません。」と、きっぱり答弁をされました。
 そして、十月の十七日、政府は、車両制限令を改正し、米軍車両並びに自衛隊車両について適用除外することを決定したのであります。
 総理に伺います。六月八日、日米合同委員会で外務当局が文書できっぱりと断わっておきながら、なぜ十月になってから車両制限令を改悪して、フリーパスを認めざるを得なかったか、その理由を明らかにしてほしい。繰り返し外務省に合同委員会に出した文書を要求いたしましたが、これは外に出すわけにはいかないと断わられました。私には、蓮見事務官のような方はおりませんので困っております。国際情勢、とりわけベトナム戦線に緊急事態、すなわち北ベトナム人を大量に殺さねばならない、そうしなければ東洋の平和を保持できぬことでも起こったのでしょうか。それは総理の所信表明の中の緊張緩和を強調した国際分析とは違うのではありませんか。
 もっとわれわれが危機感を持つのは、六月十六日の発表の憲法改正大綱草案、すなわち稻葉試案の「第五章、内閣、内閣に緊急状態における特別の立法及び財源措置の権限を付与する規定を設ける」とあるのと結びつけて考えると、かつての勅令、緊急勅令時代を思い起こします。戦慄を感じます。だから、一つには安保優先であり、政治的には不当であります。いま一つには、法理的には政令改正は憲法違反であると思います。一人のルバングの生き残りの旧兵士を救うのに厚生省が全力投球していることには、私、心から敬意を表し、命の尊重を痛感いたします。しかし、一台の戦車が何千、何万のベトナム人を殺しているが、どうして国内法まで改悪して戦車を通さなければなりませんか。とのことにつきまして首相の明確なる答弁を要求いたしまして私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(田中角榮君) 杉原さんにお答えをいたします。
 朝鮮南北の共同声明に対してどう思うか、また、統一三原則についての見解をただされたのにお答えをいたします。
 南北共同声明を歓迎し、支持をしております。統二二原則も適切なものだと考えております。
 南北両朝鮮に等距離政策をとれ、北鮮と正常化せよ、北鮮の国連加盟を認めよ、国連軍を撤退させよというような趣旨の御発言がございましたが、まず前提になっておる北朝鮮に対する態度を申し上げますと、北鮮に対しては、敵視政策はとっておりません。それから現在の状況下では、南北両鮮に等距離政策をとる考えはありません。現在のところ、北朝鮮との国交正常化は困難と考えております。北鮮から国連加盟の申請はありません。国連軍の撤退は、南北会議の進展ぶりを見きわめた上でなければ何とも言えない状態だと思います。
 在日朝鮮人の差別政策をとるなということでございますが、わが国はお尋ねのものに対して差別をしていることもございませんし、今後もそのような政策をとることは考えておりません。
 国民の自己形成のための教育、教育委員公選制の復活とか、中教審路線の問題とかに対して御言及がございましたが、列島改造は、すべての国民が豊かな文化的生活を営むことができる新たな国づくりであります。御指摘のとおり、この新たな国づくりのにない手となる国民を育成するための教育を充実することは、今日きわめて重要なことであり、意義あるものだと考えております。私は学校教育の刷新振興と、生涯教育の環境づくりを積極的に推進をいたしてまいりたいと存じます。
 現在の教育委員会制度は、法律に基づくものでございまして、教育委員の選任については、住民によって選挙された地方公共団体の長が、住民の意思を反映した議会の同意を得て、任命することとなっておりまして、これを改める考えはございません。
 なお、昨年六月の中教審の答申についてのお考えが述べられましたが、今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について貴重な示唆を与えており、今後国民各層の意見を聞きつつ、その趣旨の実現をはかっていきたい、こう考えておるのでございます。
 改憲論者の稻葉文相は、文相として不適格ではないかというようなお話でございましたが、稻葉文部大臣は民主政治家でございます。内閣の閣僚として国務大臣の職務を遂行しており、不適当な点は見当たらないのでございます。(拍手)
 列島改造と農業に対する基本的な考えをまず申し上げますと、わが国は御承知のとおり、農をもって立国の大本といたしております。明治から百年の歴史の上でもおわかりになるとおり、二次産業の発達によって国民所得も国民総生産も拡大をいたしましたが、これらはすべて農山漁村がもとなのであります。農村は、言うなれば民族の心のふるさとであり、魂の安息所であります。こういう考え方を前提として、新しい農村づくりに取り組んでおるのでございます。この基本的な考えに立って、高能率、高生産の農業を確立するため、政府は農業生産基盤の計画的な整備、農業団地の育成、農村地域への工業の導入等、各般の施策を進めまして、総合的かつ計画的に農業政策を進めてまいるわけでございます。
 政府は、米の減反政策を続けるのかどうかということでございますが、長期的な食糧需給に十分気を配りながら、農業政策を進めることは当然でございます。しかし、米の生産調整につきましては、米が過剰であるという基調に変わりはございませんので、生産調整の必要は、今後ともしばらくは続けていかなければならないのではないかと、こう考えられるのでございます。
 それから米、果樹、畜産の位置づけ、生産地域の問題等に対しての御発言に対して申し上げますと、農業生産の地域指標をガイドポストとしつつ、米の生産調整、農業団地の形成等、各般にわたる施策を進めなければなりません。今後は、御指摘のように、米、畜産、園芸などを中心とした適地適作を推進してまいりたいと考えます。
 改造論と道州制に対しての御発言でございました。特に道州制は反対であると。これは一つの考え方として、テーマとして提供したものでございまして、府県を、これを廃止するときめてかかっておるわけではないのであります。大体、日本列島改造論そのものが、一〇%ずつの成長を続ければ、国民総生産は十五年後には四倍となり、三百四兆円になります。しかし、八・五%の成長を続ければ二百四十八兆円になります。七%にすればどうか、五%にすればどうか、そういう問題を、一つの試算数字として国民に提供した数字でございます。同じように、府県に対しましても、情報化が進んでまいった現在、ほんとうに機構は国民のためにあるであろうか、これに対してメスを入れる必要はないのか。現実的に、小さな問題でも上京して政府に陳情しなければならないというような状態にありながら、各地方には政府の出先機関があります。同時に府県があります。その下に自治体たる市町村があるわけでございますが、すでに明治初年に郡制が廃止をされた、こういう歴史的な事実に徴しても、いまのような都道府県制度が、そのまま地方自治体として、自治法で求めるものとして適当なのであるかどうかを、ほんとうにメスを入れて勉強する必要がなくはないかということで提案をしておるだけでございます。また、その意味で道州制をいま研究しておられる方もございますが、道州制に対しても重要な問題として研究をいたしておりますが、しかし、これは自治体というものは、一体、市町村が自治体なのか、府県が自治体なのか、道州制をとっても自治体になるのかという、自治論の根本にも触れる問題でございますので、地方制度の根本的な問題として慎重に検討すべき問題だと存じます。
 米軍に対する六月八日の申し入れはどうなったか、車両制限令の改正を撤回せよということでございますが、米軍の車両通行については、六月八日の日米合同委員会において、国内法に従うよう米側に注意を喚起しましたが、米軍内部の趣旨の不徹底により、八月上旬の問題発生となったものでございます。しかし、その後、円満解決のための政府の努力にもかかわらず、関係道路管理者の適正ならざる法令の執行が続いたので、やむなく車両制限令を改正した次第でございます。この改正は、真にやむを得ない処置であったことを御理解承りたいと思います。
 以上。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(大平正芳君) 朝鮮半島に対する対処方針につきましては、総理大臣からいま御答弁がございまして、私から蛇足を加える必要はないと思います。ただ、外交をあずかっておる者といたしまして、御指摘の、七月四日の共同声明を軸といたしまして、南北の間には平和的な、かつ自主的な統一を目ざしての努力が始まっておるわけでございます。で、この対話は、現在の朝鮮半島の置かれました内外の状況を基礎に行なわれているわけでございまして、私どもといたしましては、これに軽率な影響力を及ぼすようなことは慎まなければならないと思います。したがいまして、今後の南北の対話の進展ぶりを慎重に見ながら、慎重に対処していく所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣稻葉修君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(稻葉修君) 教科書の御質問についてお答えいたします。
 教科書の内容が、歴史の変遷、社会的事情に即応する新法律の制定などによって改定さるべきは当然であります。
 公害防止立法の制定によって、公害に関する記述を教科書の内容として取り入れることは、公害をなくするための教育効果を期する上で歓迎すべきことであることは御指摘のとおりであります。
 同様に、日中共同声明による国交正常化の線に沿って教科書を点検し、改定すべきではないかとの御質問に対してお答え申し上げます。
 中国に関しましては、主として歴史及び地理の教科書において取り扱っておりますが、いずれの教科書も歴史的事実及び地理的事象に基づき、適切に記述されているところでありますが、今回の日中国交正常化に伴い、従来、たとえば中華人民共和国とは国交が開かれていないなどと記述されている部分については、修正を要することは当然でありますが、これについては、著者、発行者の申請に基づき、今後順次修正が進められるよう措置いたします。
 教育基本法に改める考えはないかとの御質問に対してお答え申し上げます。
 教育基本法は、人格の完成を目ざし、平和的な国家及び社会の形成者として、心身ともに健康な国民の育成を教育の基本的な目標としておりますが、私としては、鋭意教育の充実刷新のための施策を推進し、この教育目標を十分達成していくことが肝要であると考えており、教育基本法を改正する考えは持っておりません。(拍手)
#23
○副議長(森八三一君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時十六分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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