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1972/10/28 第70回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第070回国会 本会議 第2号
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1972/10/28 第70回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第070回国会 本会議 第2号

#1
第070回国会 本会議 第2号
昭和四十七年十月二十八日(土曜日)
    ―――――――――――――
    開 会 式
午前十時五十九分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長、議員、内閣総理大臣その他の国務大臣及び最高裁判所長官は、式場である参議院議場に入り、所定の位置に着いた。
午前十一時 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。
衆議院議長は、左の式辞を述べた。
    …………………………………
  天皇陛下の御臨席をいただき、第七十回国会の開会式をあげるにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。
  このたび、多年の懸案であったわが国と中国との友好関係が樹立の運びとなりましたことは、まことに喜びにたえません。
  われわれは、この際、さらに諸外国との親善を深め、世界平和に寄与するとともに、国民生活の安定、福祉の向上を目ざし、当面する諸問題の解決をはからなければなりません。
  ここに、開会式を行なうにあたり、われわれに負荷された使命達成のために最善をつくし、もって国民の委託にこたえようとするものであります。
    …………………………………
次いで、天皇陛下から左のおことばを賜わった。
    …………………………………
  本日、第七十回国会の開会式に臨み、全国民を代表する諸君と親しく一堂に会することは、わたくしの喜びとするところであります。
  現下の内外の情勢は、きわめて多端でありますが、この間に処して、わが国が、諸外国との友好親善と国民生活の安定向上のため、たゆみない努力を続け、その成果をあげつつあることは深く多とするところであります。
  しかしながら、変動する内外の情勢に対処し、今後さらに国運の進展を図り、国際社会の信頼を高めていくためには、なおいっそうの努力を要すると思います。
  ここに、国会が、当面の諸問題を審議するにあたり、国権の最高機関として、その使命を遺憾なく果たし、国民の信託にこたえることを切に望みます。
    …………………………………
衆議院議長は、おことば書をお受けした。
午前十一時六分 天皇陛下は、参議院議長の前行で式場を出られた。
次いで、一同は式場を出た。
   午前十一時七分式を終わる
     ――――◇―――――
昭和四十七年十月二十八日(土曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二号
  昭和四十七年十月二十八日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 田中内閣総理大臣の所信に関する演説
 大平外務大臣の外交に関する演説
 植木大蔵大臣の財政に関する演説
   午後一時三分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説
#3
○議長(船田中君) 内閣総理大臣から所信に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、大蔵大臣から財政に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣田中角榮君。
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#4
○内閣総理大臣(田中角榮君) 第七十回国会が開かれるにあたり、当面する内外の諸問題について、所信を述べます。
 本年七月国政を担当することになりましてから今日に至るまで、国民の皆さまから寄せられた激励に対し心からお礼を申し上げます。(拍手)特に、日中国交正常化のために中国を訪問した際に寄せられた各界各層をあげての御理解に対し、深く感謝申し上げます。(拍手)
 戦後四半世紀を過ぎた今日、わが国には内外ともに多くの困難な課題が山積しております。しかし、これらの課題は、これまで多くの苦難を乗り越えてきたわれわれ日本人に解決できないはずはありません。私は、国民各位とともに、国民のすべてがあしたに希望をつなぐことができる社会を築くため、熟慮し、断行してまいる覚悟であります。(拍手)
 七〇年代の政治には、強力なリーダーシップが求められております。新しい時代には新しい政治が必要であります。政治家は、国民にテーマを示して具体的な目標を明らかにし、期限を示して政策の実現に全力を傾けるべきであります。(拍手)
 私が日中国交正常化に取り組み、また、日本列島改造を提唱したのも、時の流れ、時代の要請を痛切に感じたからにほかなりません。(拍手)
 政治は、国民すべてのものであります。民主政治は、一つ一つの政策がどんなにすぐれていても、国民各位の理解と支持がなければ、その政策効果をあげることはできません。
 私は、私の提案を国民の皆さんに問いかけるとともに、広く皆さんの意見に耳を傾け、その中から政治の課題をくみ取り、内外の政策を果断に実行してまいります。(拍手)
 今日の国際社会には、随所に不安定な要因のあることは事実でありますが、世界には対決ではなく、話し合いによる緊張緩和を求める動きが始まっております。
 このような世界情勢の中で、わが国は、中華人民共和国との国交の正常化を実現いたしました。私は、去る九月、中華人民共和国を訪問し、毛澤東主席と会見するとともに、周恩来首相をはじめ中国政府首脳と会談し、国交正常化問題をはじめ日中両国が関心を持つ諸問題について、率直な意見の交換を行ない、九月二十九日共同声明に署名いたしました。これにより、長い間の両国間の不正常な状態に終止符が打たれ、両国間に外交関係が樹立されました。ここにあらためて国会に御報告いたします。(拍手)
 多年の懸案であった日中両国間の国交が正常化され、善隣友好関係の基礎ができたのでありますが、日中問題が解決できたのは、時代の流れの中にあって、国民世論の強力な支持があったからであります。私は、このような国際情勢の変化と過去半世紀に及んだ日中両国の不幸な関係を熟慮した上で、国交正常化を決断したのであります。この機会に、日中関係の改善と交流の拡大に尽力してこられた各方面の方々に衷心より敬意を表するものであります。(拍手)
 日中両国は、今回の共同声明において主権及び領土保全の相互尊重、内政に対する相互不干渉をはじめとする諸原則の基礎の上に、平和と友好の関係を確立することを内外に明らかにいたしました。日中国交の正常化によって、わが国の外交は世界的な広がりを持つに至ったのでありますが、このことは、同時にわが国の国際社会における責任が一段と加わり、人類の平和と繁栄にさらに貢献すべき義務を負うに至ったことを意味するものであります。
 インドシナ半島においては平和が到来しようとしており、朝鮮半島においても南北の話し合いが進められております。このような好ましい事態を一そう発展させるためには、これらの国を取り巻く環境がより安定し、恵まれたものにならなければなりません。今日の国際社会は、これまでの東西の対立を清算して南北の問題に取り組むべき時期に直面をいたしております。すなわち、南北問題の解決なくして、世界の調和ある発展と恒久の平和は約束されません。先進工業国としてゆるぎない地歩を固めたわが国は、開発途上国、とりわけアジア諸国の経済の発展と民生の安定のために一そう寄与しなければなりません。
 私は、さきにハワイにおいてニクソン米国大統領と会談し、日米両国の当面する諸問題について、率直に意見の交換を行ない、相互に理解を深めてまいりました。日本と米国は、政治、経済、社会、文化の各分野において深い関係を持ってきたのでありますが、新しい段階に入った日米両国の今後における友好協力関係の維持増進は、日米両国にとどまらずアジア太平洋全域の安全と繁栄に欠くことのできないものであります。
 わが国とソ連は、貿易、経済、文化の各分野で交流を深めておりますが、さらに平和条約を締結して日ソ両国間に安定した友好親善の関係を樹立する必要があります。(拍手)このため、私は、日ソ国交樹立以来の懸案である北方領土問題を国民の支持のもとに解決したいと考えております。(拍手)
 最近世界的に緊張緩和の動きが見られるとはいえ、わが国が今後とも平和と安全を維持していくためには、米国との安全保障体制を堅持しつつ、自衛上最小限度の防衛力を整備していくことが必要であります。(拍手)このたび、政府が第四次防衛力整備計画を決定しましたのもこのためであります。(拍手)
 われわれは、戦後の荒廃の中からみずからの力によって今日の国力の発展と繁栄を築き上げてまいりました。しかし、こうした繁栄の陰には、公害、過密と過疎、物価高、住宅難など解決を要する数多くの問題が生じております。一方、所得水準の上昇により国民が求めるものも高度かつ多様化し、特に人間性充実の欲求が高まってきております。
 これらの要請にこたえ、経済成長の成果を国民の福祉に役立てていく成長活用の経済政策を確立していくことが肝要であります。(拍手)
 この観点から見て、日本列島の改造は、内政の重要な課題であります。(拍手)明治以来百年間のわが国経済の発展をささえてきた都市集中の奔流を大胆に転換し、民族の活力と日本経済のたくましい力を日本列島の全域に展開して国土の均衡ある利用をはかっていかなければなりません。(拍手)
 政府は、工業の全国的再配置と高速交通・情報ネットワークの整備を意欲的に推進するとともに、既存都市の機能の充実と生活環境の整備を進め、あわせて魅力的な地方都市を育成してまいります。(拍手)経済と人の流れを変えることにより土地の供給量は大幅に増加されます。また、全国的な土地利用計画の策定、税制等の活用によって土地問題の解決は一そう促進されるのであります。(拍手)
 公害については、規制の強化、公害防止技術の開発、工業の適正配置、いわゆる工場法の制定など各般の施策を強力に実施することによって、経済成長を続けながら公害を除去していくことが可能であります。(拍手)また、公害被害者に対する救済の実効を期するため、損害賠償保障制度の創設を進めてまいります。
 物価、特に消費者物価の安定は、国民生活の向上にとって必要不可欠の条件であります。従来から中小企業、サービス業等の低生産性部門の構造改善、生鮮食料品を中心とした流通機構の近代化、輸入の促進、競争条件の整備などの施策が進められてきました。しかし、なお努力を要する点のあることも事実であります。今後とも、総合的な物価対策を推進するとともに、消費者の手にする商品の安全性の確保など消費生活上の質的問題についても万全を期してまいります。(拍手)
 豊かな国民生活を実現するために欠くことのできないものは、社会保障の充実であります。このため、今日までの経済成長の成果を思い切って国民福祉の面に振り向けなければなりません。(拍手)特に、わが国は急速に高齢化社会を迎えようとしており、総合的な老人対策が国民的課題となっております。(拍手)また、今日の繁栄のために苦難の汗を流してこられた方々に対する手厚い配慮が必要であります。中でも年金制度については、これを充実して老後生活のささえとなる年金を実現する決意であります。(拍手)さらに、寝たきり老人の援護、老人医療制度の充実などをはじめ、高齢者の雇用、定年の延長などを推進してまいります。
 以上のほか、心身障害者をはじめ社会的に困難な立場にある人々のため施設等の整備、充実をはかり、難病に悩む人々に対しては原因の究明、治療方法の研究、医療施設の整備など総合的な施策を推進いたします。(拍手)
 なお、国民が十分な余暇を利用することのできる社会を実現するため、週休二日制をはじめ余暇利用の条件の整備につとめてまいります。(拍手)
 農業については、総合農政の推進のもとに農村の環境整備を強力に実施して高生産農業の実現と高福祉農村の建設をはかり、農工一体の実をあげてまいります。(拍手)
 中小企業につきましては、国際化の進展等による環境の変化に適応し得るようにするため、構造改善の推進をはじめとする各般の施策を強化いたします。
 本年は、学制が発布されてから百年になります。先人のたゆみない努力によって世界に比類のない義務教育制度をはじめ、わが国の教育は目ざましい発展を遂げてまいりました。明治百年という時代の転換期にあたって、教育の占める役割は、重要となってきております。私は、学校施設の整備充実等をはかるとともに、さきの中央教育審議会の答申を踏まえ、科学技術の振興を含む教育の制度、内容の充実を積極的に推進し、あわせて次代をになう青少年の健全な育成につとめます。(拍手)
 当面する最も緊急な課題は、国際収支対策であります。昨年末、多国間通貨調整が実現し、さらに、去る五月以降対外経済緊急対策を実施してまいりました。しかし、わが国の貿易収支は引き続き大幅な黒字を続けております。国際的地位が急速に向上しつつあるわが国は、世界の経済交流の安定した拡大を維持していく上で大きな責任を持っております。経済の順調な発展をはかりつつ、両三年の間に経常収支の黒字額を国民総生産の一%以内にとどめるためには、有効な国際収支対策を実施しなければなりません。政府が去る十月二十日あらためて対外経済政策の推進について当面とるべき施策を決定したのはこのためであります。すなわち、貿易・資本の自由化をはじめ、関税率の引き下げによる輸入の拡大、開発途上国への経済協力の拡充等を促進していくことであります。
 いかなる国も他の国々との調和を欠いた経済政策を追求することは許されません。わが国のみが対外収支の黒字を累増させていくことは、国際的な理解を得られるものではありません。国際収支の均衡を回復し、世界各国と協調しながらわが国の繁栄を維持していくためには、日本経済の国際化を推進し、経済構造の改革をはかる必要があります。(拍手)また、充実した経済力を積極的に国民福祉の向上に活用していかなければなりません。
 当面している国際収支の問題は、わが国が経験したことのないきわめて困難な課題であります。私は、国民的英知を結集し、国民各位の理解と協力を得ながらこの問題に取り組んでまいります。(拍手)
 政府は、今国会に、公務員給与の改善、公共投資の追加などに必要な補正予算と、緊急に立法措置を要する諸法案を提出いたしました。公共投資については、道路、下水道、環境衛生施設の整備等のほか、災害復旧事業、社会福祉施設をはじめとする各種施設の整備をあわせ、事業費の規模は一兆円にのぼります。これらの公共投資は、相対的に立ちおくれている社会資本の整備を一そう促進するものであり、同時に、当面の緊急課題である国際収支の均衡回復に資するものでもあります。よろしく御審議をお願いいたします。(拍手)
 戦後四半世紀にわたりわが国は、平和憲法のもとに一貫して平和国家としてのあり方を堅持し、国際社会との協調融和の中で発展の道を求めてまいりました。私は、外においてはあらゆる国との平和維持に努力し、内にあっては国民福祉の向上に最善を尽くすことを政治の目標としてまいります。世界の国々からは一そう信頼され、国民の一人一人がこの国に生をうけたことを喜びとする国をつくり上げていくため、全力を傾けてまいります。(拍手)あくまでも現実に立脚し、勇気をもって事に当たれば、理想の実現は可能であります。(拍手)私は、政治責任を明らかにして決断と実行の政治を遂行する決意であります。(拍手)
 以上、所信の一端を申し述べましたが、一そうの御協力を切望してやみません。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(船田中君) 外務大臣大平正芳君。
  〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#6
○国務大臣(大平正芳君) 最初に、最近実現を見ましたわが国と中華人民共和国との間の国交正常化について御報告いたします。
 中国は、わが国にとりまして最も重要な隣国の一つであり、日中の間には二千年にわたる長い交流と伝統的友好の歴史がありました。しかし、遺憾ながら日中関係は過去数十年にわたり不幸な経過をたどってまいりました。戦後におきましても、わが国をめぐる内外の情勢を反映して長く不正常の状態を脱却するに至らなかったのであります。
 今日、世界はいわゆる多極化の時代に入り、国際情勢にはかつてない流動化の様相が見られます。そして、全体の趨勢としては対決の時代から対話によって平和を指向する時代へと移行しつつあるものの、なお随所に不安定要因が根深く存在することも否定できません。特にアジアにおいてしかりであります。わが国の外交はアジアの安定と繁栄に寄与することを基本の方針としております。日中両国の国交を正常化し、両国の間に善隣友好の関係を樹立することは、アジアの安定と繁栄の基礎を固めるために最も重要なことでございます。
 田中内閣は、その組閣以来、昨年の国連における中国代表権問題の審議の帰結、ニクソン米大統領の中国訪問などによって急速に高まってまいりました日中国交正常化への国民の願望にこたえなければならないと考えてまいりました。他方、この問題につき、中国側がとみに真剣かつ実際的な姿勢を示すようになったことに対し、いかに処するかについても思いをめぐらしてまいりました。また、日中国交正常化が、米国、ソ連をはじめアジア・太平洋地域の諸国とわが国との関係に対して、いかなる影響を及ぼすことになるかについても十分検討を加えてまいりました。その結果、政府はいまや日中国交正常化の実現をはかる機が熟したと判断し、この多年にわたる懸案の解決に取り組む決意を固め、中国側の招請にこたえ、田中総理大臣は、九月下旬北京を訪問し、同国首脳との会談を行なったのであります。
 日中両国の間には、申すまでもなく、政治信条や社会制度の相違がございます。また、戦後の世界政治におけるおのおのの立場や事情も違っております。しかしながら、今回の日中首脳会談におきましては、友好的な雰囲気の中で相互に率直な意見を交換いたしました結果、かかる相違は相違として残しつつも、国交正常化を通じてアジアの平和に貢献しようという道標を追求することにおいては一致したのであります。かような基本的な理解に立ちまして、相互の理解と互譲の精神により一鋭意交渉を重ねました結果、ついに国交正常化につき合意に達することができました。(拍手)かくて日中関係の歴史は新たな段階を迎えることになりました。
 日中国交正常化はもとより政府のみの力によって成就したものではありません。この際、私は、これまで長きにわたり日中の交流と国交の正常化に尽力を惜しまれなかった与党、野党の関係者をはじめ、各界の先達に対し、深い敬意と感謝を表明いたします。(拍手)また、今回の首脳会談にあたって国民各層から政府に寄せられました御理解と御支援に対し、厚く感謝するものであります。
 日中会談の成果は、九月二十九日に発表されました共同声明に示されており、また、それに尽きております。
 ここにその主要な点について御説明申し上げます。
 日中両国間の不正常な状態は、共同声明発出の日をもって終わりを告げ、この口から両国の間に国交、すなわち、正式の外交関係が樹立されました。この外交関係が十分機能するためには双方の大使館を設置し、大使を交換することが必要であることは申すまでもありません。政府といたしましては、そのための所要の準備をできるだけすみやかに整えたい所存でございます。
 次に、台湾の地位に関してでございますが、サンフランシスコ平和条約により台湾を放棄したわが国といたしましては、台湾の法的地位につきまして独自の認定を行なう立場にないことは、従来から政府が繰り返し明らかにしておるとおりでございます。しかしながら、他方、カイロ宣言、ポツダム宣言の経緯に照らせば、台湾は、これらの両宣言が意図したところに従い中国に返還されるべきものであるというのが、ポツダム宣言を受諾した政府の変わらない見解であります。共同声明に明らかにされておる「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」との政府の立場は、このような見解をあらわしたものであります。
 中華人民共和国政府は、この共同声明において、賠償放棄を宣言いたしました。過去における中国大陸での戦争がもたらした惨禍がいかに大きなものであったかを考えまするならば、わが国としては、ここに示された中国側の態度に深く感謝すべきであると考えます。(拍手)
 日中国交正常化が、第三国に向かってなされたものではないことは申すまでもありません。一衣帯水の間にあり、歴史的にも深い関係にある日中両国が、正常な国交を持つことはいわば当然のことであります。そしてこのことは、わが国が米国その他の諸国と緊密な友好関係を持つことと両立すべきであるし、また、両立させ得るものと信ずるものであります。
 また、共同声明は、今後の日中関係に適用さるべき諸原則を明示しております。すなわち、主権と領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政不干渉、平等互恵及び平和共存の五原則がそれであります。さらに、両国はこれらの原則及び国連憲章の諸原則に従い、紛争の平和的解決と武力の不行使を相互に確認いたしました。共同声明においてその締結交渉を約しておりまする平和友好条約は、このような指針を踏まえつつ、将来の日中間の善隣友好関係を確固たるものにしようとすることを目的とするものであります。
 なお、日華平和条約について申し上げます。共同声明発出の際に明らかにいたしましたとおり、日中国交正常化の結果として、日華平和条約は、その存続の意義を失い、終了したものと認められるというのが政府の見解でございます。
 日中国交正常化の結果、これまでわが国と密接な関係にあった台湾との外交関係は遺憾ながら維持できなくなったのであります。しかしながら、政府としては、台湾とわが国との間に人の往来や経済、文化をはじめ各種の民間レベルでの交流を、今後ともでき得る限り継続していくことを希望しており、そのために必要な措置を講ずる用意があります。台湾に在留する邦人の生命財産の保護は、台湾における官民の配慮により、今日まで幸いに事なきを得ておりますが、政府としても、これに対し、今後とも十分注意を払ってまいる所存であります。(拍手)
 日中国交正常化によりまして、米国、ソ連をはじめアジア・太平洋地域の諸国、特に東南アジア各国とわが国との関係は、いささかもそこなわれるものではなく、一そう拡充されるべきものであると考えます。しかし、政府としては、中国との新しい関係が、これら諸国に及ぼすことあるべき影響に十分留意し、今後これら諸国との関係を処理するにあたりましては、従来にも増してきめのこまかい配慮を払ってまいる所存であります。先般の日米首脳会談におきましても、かかる観点から米国政府首脳に対しまして、日中国交正常化についてのわが国の立場と考え方を率直に伝えた次第であります。また、わが国と緊密な関係を持つその他の各国に対しても、できるだけ広範に理解を求めてまいりました。さらに私は、最近、豪州、ニュージーランド、米国及びソ連を歴訪して、関係国首脳に対し、日中国交正常化交渉の趣旨を伝え、その理解を深めてまいりました。また、政府が韓国及び東南アジア諸国に対してそれぞれ特派大使を派遣いたしましたのも、同様な考慮に基づくものであります。
 日中国交の正常化は日中間の歴史に新しいページを開くものであります。しかし、これはいままでなかった道が開かれたというに過ぎないのであります。問題は、今後われわれがいかにしてこの道を拡大し、発展させるかにかかっております。両国関係の将来、ひいてはアジア・太平洋地域の平和と安定は、両国のこれからの努力に大きく依存しておると思います。
 私は、何をおきましても、日中相互の間に不動の信頼がつちかわれなければならないと考えます。われわれはお互いのことばに信をおき、かつ、お互いのことばを行為によって裏書きすることが必要であると思います。(拍手)さらに、両国が、アジア地域の平和と安定、秩序と繁栄に貢献することが肝要であると思います。そのためにわれわれは何を行なうべきか、何を行なってはならないかについて、正しい判断を持ち、慎重に行動すべきであると考えております。日中両国は、このような不動の信頼とけじめのある国交を通じてのみ、両国間に末長き友好関係を築き、発展させることができるものと考えます。政府としてはこのためにせっかく努力をいたす所存であります。(拍手)
 以上、私は、日中国交の正常化につきまして御報告をいたしましたが、この時点に立って、私は、あらためて、わが国が国際社会においていかなる立場をとり、いかなる道を歩むべきかという外交上の方針につき一言いたしたいと思います。
 わが国としては、わが国存立の主体的、客観的な諸条件を踏まえて、あくまでも平和に徹する国として、内においてはそれにふさわしいみずからの内政を整え、外に向かっては国際的な信用を高めつつ諸外国との交流を進め、世界の平和と繁栄に貢献すべきであると信じます。
 私は、わが国の国力の充実に伴い、今日世界におけるわが国の責任と役割りが年とともに増大しておることを痛感するものであります。内外にわたるかような責任を果たして、初めてわが国の安全が保たれ、その国益が維持されるものと信じます。(拍手)
 日米友好関係を堅持することはわが外交の基軸であり、寸時もゆるがせにしてはならないものであると信じます。(拍手)これとともに、わが国は中・ソをはじめアジアの近隣諸国との友好関係をますます緊密なものにしなければなりません。さらに、わが国は広く環太平洋諸国との関係を密接にし、新しい展開を示しつつありまする欧州諸国との関係を増進する必要があります。また、われわれは、国際連合を通じて国際協力を推進し、特に、軍備の規制及び経済社会面における国際協力の分野で応分の貢献をしなければなりません。
 われわれはまた、わが国の経済政策が世界経済にますます大きな影響を与えつつあること、とりわけわが国が世界の通貨貿易体制においてきわめて大きな比重を占めることを自覚しなければならないと信じます。その自覚に立ちましてわが国はみずからの経済の長期的利益と、世界経済の調和的な発展のために、果断な施策を進めなければなりません。さらに、わが国としては、アジア、中近東、アフリカ、中南米等の開発途上国の開発にできる限りの貢献をすることは当然の責務であります。われわれは、これら諸国の発展にとって真に利益となるような協力を行なうために一そうの努力をいたす必要があると思います。また、各国との相互理解を増進するため、文化交流も一段と推進したいと考えております。
 かくしてこそ、わが国は将来長きにわたり、わが国の安全と国民の繁栄、福祉等を確保しつつ、広くわが国の対外関係を安定した基礎の上に置き、進んで世界の平和と繁栄に貢献できるものと信じます。
 最近、ベトナム紛争の終息をめぐって活発な動きが見られます。わが国としては、当事者間の真剣な話し合いがすみやかに妥結し、インドシナ半島の平和が一日も早く到来し、かつ、これが永続することを心から希求いたしております。
 以上、私は、日中国交正常化について御報告申し上げますとともに、それに関連してわが国の外交方針につき、所信の一端を申し述べました。国民各位の御理解と御協力をお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(船田中君) 大蔵大臣植木庚子郎君。
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇〕
#8
○国務大臣(植木庚子郎君) ここに、昭和四十七年度補正予算の提出にあたり、その大綱を説明申し上げ、あわせて最近の内外経済情勢と今後の財政金融政策につき、所信の一端を申し述べたいと存じます。(拍手)
 まず、今回提出にかかる昭和四十七年度補正予算の大綱につき、説明申し上げます。
 最近の国内経済は、本年度における積極大型予算の執行、数次にわたる公定歩合の引き下げなど財政金融面からの諸施策が講じられたこともあり、おおむね順調な景気回復の過程をたどっております。しかし、社会資本の整備等に対する国民の要請はなおきわめて強いものがあり、他方、国際収支面では、昨年末の通貨調整後もかなり大幅な黒字が続いております。
 政府は、これら内外の諸情勢に顧み、昭和四十七年度補正予算の編成にあたりましては、人事院勧告の実施等に伴う公務員の給与改善費、法人税の増収に伴う地方交付税交付金の追加、米の生産調整に要する経費、義務教育費国庫負担金等の義務的経費の追加等につき、所要の補正措置を講ずるほか、社会資本の整備を一そう促進しますとともに、当面の緊急課題たる国際収支の均衡回復に資するため、公共投資の追加を行なうことといたしました。公共投資につきましては、一般公共事業及び災害復旧事業のほか、社会福祉、文教、医療関係その他の各種施設の整備等をあわせ、事業費の規模で約一兆円の追加を行なうこととし、これらに必要な歳出予算及び国庫債務負担行為の追加を行なうことといたしております。
 以上の歳出の追加に伴う財源といたしましては、既定経費の節減、予備費の減額を行なうほか、歳入予算において、租税及び印紙収入の増加二千八百二十億円を計上しますとともに、国債三千六百億円を増額するなど、所要の補正措置を講ずることといたしております。
 この結果、昭和四十七年度一般会計予算の総額は、歳入歳出とも六千五百十三億円を増加して十二兆千百八十九億円と相なるのであります。
 また、ただいま申し述べました一般会計予算補正等に関連して、道路整備特別会計等の特別会計及び日本国有鉄道等の政府関係機関につきましても、それぞれ所要の予算補正を行なうことといたしております。
 なお、財政投融資につきましては、すでに去る八月に二千六百六十八億円の追加を行なったのでありますが、さらに今回の予算補正等に関連しまして、総額五千三十億円の追加を行なうことといたしております。
 以上が昭和四十七年度補正予算の大綱であります。
 何とぞ、関係の諸法律案とともに、御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
 この機会に、最近の内外経済情勢と今後の財政金融政策について一言申し述べたいと存じます。
 昨年末に行なわれました多国間の通貨調整は、戦後四半世紀にわたる国際経済体制に一転機を画するものであり、いまや、国際通貨制度の改革は、国際経済面における最も重要な課題となっております。私は、去る九月末、国際通貨基金及び世界銀行の年次総会に出席し、あわせて各国の通貨当局の首脳と会談してまいりましたが、各国とも、国際通貨制度の改革に強い意欲を示しており、本課題解決の準備を担当する二十カ国委員会の正式発足とも相まちまして、その作業はいよいよ本格的着手の段階に入りました。
 他方、貿易面につきましては、世界貿易の拡大、自由化の促進を目的とする次期国際ラウンド交渉の明年からの開始を目ざして、鋭意準備作業が進められております。
 わが国といたしましては、国際的地位の向上とこれに伴う国際的責務の増大を認識し、新しい国際経済秩序確立のための国際会議におきましては、これを成功に導くよう積極的に寄与する心がまえが肝要と存じます。
 次に、わが国の最近の国際収支の動向について見ますと、昨年末に行なわれた通貨調整後も、なお相当の貿易収支の黒字が続いております。通貨調整の効果が国際収支面に浸透するまでにかなりの期間を要しますことは、国際的に共通した認識となっておりますが、国際収支の現況に徴しまするとき、これを適正な水準に戻すためには、引き続き格段の政策努力を払うべきものと考えます。
 政府は、本年五月、対外経済緊急対策を策定し、諸般の措置を講じてまいりましたが、この際さらにその内容を拡充することといたしまして、去る十月二十日、輸入の拡大、輸出の適正化、資本の自由化、経済協力の拡充、福祉対策の充実等、対外経済関係の調整を主眼とする総合的な諸施策の推進を決定し、そのすみやかな実施をはかりますため、所要の法律案をこの国会に提出することといたしました。
 また、目を国内の経済動向に転じますと、わが国経済は今後も引き続き着実な成長を続けるものと思われますが、これまでの高度の成長に伴い、公害問題をはじめとする各種のひずみが増大するにつれまして、国民は、いまや、成長と福祉との調和を求め、真に人間性豊かな福祉社会の建設を待ち望んでおります。
 この意味におきまして、今後の経済政策の基本的課題は、安定経済成長のもとで国民生活の質的充実をはかりますとともに、あわせて対外均衡の回復を達成することにあると存じます。
 よって、今後の財政金融政策の運営にあたりましては、充実した経済力と国際収支のゆとりを活用し、物価の安定に十分配意しつつ、相対的に立ちおくれている社会資本の整備と社会保障の充実のため、積極的に努力いたしてまいることが肝要であります。これと同時に、長期的な展望のもとに、国民の税負担等のあり方につき本格的な検討を加え、また、公債政策の健全な運営をはかることにより、民間部門と政府部門の間における資源配分の適正化を進める必要があると考えます。
 また、激動する内外の経済情勢に即応し、各般の施策を機動的に活用してまいりますため、金融環境の整備及び証券市場の育成指導につとめてまいる所存であります。
 以上申し上げましたように、わが国は、いまや内外にわたる新たな試練と転換のときを迎えており、その前途には早急に解決をはかるべきたくさんの問題をかかえております。
 私は、このときにあたり、内においては豊かな福祉社会を建設し、外に対しては国際協調の精神をもって世界経済の発展に寄与し得ますよう、財政金融政策の運営に全力を尽くしてまいる所存であります。
 国民各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
#9
○浜田幸一君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来たる三十日午後一時より本会議を開きこれを行なうこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#10
○議長(船田中君) 浜田幸一君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後一時五十二分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  田中 角榮君
        法 務 大 臣 郡  祐一君
        外 務 大 臣 大平 正芳君
        大 蔵 大 臣 植木庚子郎君
        文 部 大 臣 稻葉  修君
        厚 生 大 臣 塩見 俊二君
        農 林 大 臣 足立 篤郎君
        通商産業大臣  中曽根康弘君
        運 輸 大 臣 佐々木秀世君
        郵 政 大 臣 三池  信君
        労 働 大 臣 田村  元君
        建 設 大 臣 木村 武雄君
        自 治 大 臣 福田  一君
        国 務 大 臣 有田 喜一君
        国 務 大 臣 小山 長規君
        国 務 大 臣 二階堂 進君
        国 務 大 臣 濱野 清吾君
        国 務 大 臣 本名  武君
        国 務 大 臣 増原 恵吉君
        国 務 大 臣 三木 武夫君
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ソース: 国立国会図書館
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