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1972/10/30 第70回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第070回国会 本会議 第3号
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1972/10/30 第70回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第070回国会 本会議 第3号

#1
第070回国会 本会議 第3号
昭和四十七年十月三十日(月曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和四十七年十月三十日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時四分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#3
○議長(船田中君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。成田知巳君。
  〔成田知巳君登壇〕
#4
○成田知巳君 一昨日の総理の所信表明演説は、田中内閣の国民に対する、いわば最初の公式の訴えでありました。それだけに、国民の中には期待を寄せた方も多かったと思いますが、結果は、残念ながら平板なことばの羅列に終始したのであります。(拍手)
 国民が総理演説から感じ取ったものは、田中内閣の政治姿勢は佐藤政治の惰性の政治から一歩も出ていない、およそ自主独立の外交とか、庶民の政治とは無縁のものであったということだと思います。(拍手)
 以下、私は、日本社会党を代表して、総理に内外の重要問題につき質疑を行なうとともに、政治の流れを変えるための日本社会党の基本的態度を明らかにしていきたいと存じます。(拍手)
 先般の日中共同声明により、戦後二十七年続いた日中間の不幸な断絶状態に終止符を打つことができました。戦後一貫して、多くの非難、攻撃を浴びながらも、日中国交回復運動を続けてきたわれわれは、今回の国交回復を心から喜ぶとともに、国交回復の過程で淺沼稻次郎氏、松村謙三氏、高碕達之助氏をはじめ野党の各位、自民党の良識ある人々、名もない多くの民間先駆者の方々が払われたその犠牲と努力に対し、心から敬意を表するものであります。(拍手)
 今回、日中国交回復が実現したということは、日中両国民の真の恒久的な友好関係を打ち立てるという国民的課題から見れば、まさに終わりの始まりだということだと思います。この新しい秩序づくりにあたり、いずれの国とよりもまず最初になされなければならなかった中国との国交回復が、なぜ最後になったかということについて、政府・自民党は真摯な反省をなすべきだと思います。(拍手)
 言うまでもありませんが、正義と道理に反した日中間の不正常な状態が長く続いたのは、アメリカの圧力のもとに反共冷戦思想のとりことなって、中国を敵視し、蒋介石一派を中国の正統政府とみなすという、大きな虚構にしがみついてきた自民党政府の誤った外交路線の産物にほかならないのであります。(拍手)この歴史の現実を率直に認め、その反省の上に立ってこそ、初めて日中間に真の友好関係を打ち立てることができるものと考えるのでありますが、総理の日中問題に対する基本的な見解を明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 以下、私は、日中国交回復後の日本の外交、安全保障はどうあるべきかについて、総理の所信をただしたいと存じます。
 その第一は、日米安保体制の問題であります。
 安保条約は、歴史的に見て明らかなように、中国を仮想敵国として構築されたものでありますが、その中国との間に、今回国交回復が実現いたしたのであります。また、米中会談、南北朝鮮統一への話し合い、さらにベトナム和平への活発な動きに見られるように、アジアの冷戦構造は、いま大きな音を立ててくずれ落ちようとしております。この情勢の変化を正しくとらえ、歴史の流れを正しく洞察して、政府は、いまこそ冷戦の論理に基づく安保体制堅持のかたくなな姿勢を大きく転換すべきときだと思います。(拍手)
 そのためにも、まず第一に、佐藤・ニクソン共同声明における、台湾における平和と安全の維持は日本の安全にとってきわめて重要な要素であるという、いわゆる台湾条項を取り消すとともに、安保条約の極東条項を削除すべきだと思います。台湾を中国の不可分の領土の一部と認め、国交回復に踏み切った今回の共同声明からいって、このことは当然のことであります。従来政府がとってきた、台湾条項が発動されるような事態は起きないと思うとか、極東条項は解釈で処置できるというような、あいまいな態度は許されないと思うが、総理の見解を承りたいと存じます。(拍手)
 次に私は、政府に、ベトナム戦争への一切の協力を直ちに取りやめることを強く要求するものであります。(拍手)
 今回の国連総会で、議長は、どんな理屈をつけようとも、ベトナム戦争だけは正当化することはできない、それはあらゆる道義に反した戦争だと述べておりますが、この人道に反した、きたない戦争に多くの理屈をつけて手をかし、協力しているのが、自民党田中内閣であります。(拍手)
 現に政府は、米軍戦車をベトナムに送り届けるために、安保条約の極東の範囲を無限に拡大解釈したり、市民生活の安全を無視してまで車両制限令を改悪するなど、いままでの自民党内閣さえなし得なかったような暴挙をあえてして、なりふりかまわずアメリカのベトナム戦争に協力しておるではありませんか。(拍手)
 総理は、日中共同声明で、平和五原則を確認し、また、アジア・太平洋地域において覇権を確立しようとするいかなる国の試みにも反対することを厳粛に誓っておられます。アメリカのベトナム戦争は、平和五原則の主権の尊重、内政不干渉にまっこうから違反するものであります。(拍手)極東、アジアにおける覇権を求める強盗的行動であり、これに手をかすことこそは、共同声明の精神をじゅうりんするものだといわなければなりません。(拍手)
 特に、ベトナム和平の話し合いが急進展を見せておる今日、なぜベトナム向けの戦車輸送に積極的に協力し、沖繩へのB52の大量飛来を認め、ベトナム和平への動きに逆行する態度をとるのか、全くわれわれは理解に苦しむところであります。
 政府は、ベトナム和平の動きについて全くつんぼさじきに置かれ、アメリカの要求のままに日本の基地利用を許しているとしか受け取ることはできません。
 政府のベトナム戦争への協力の理由は一体どこにあるのか。米国とベトナム民主共和国との間の九項目合意事項につき、約束どおり十月三十一日に調印し、ベトナム和平を実現せよと主張するベトナム民主共和国の主張を一体支持されるのかどうか、総理の見解を承りたいと存じます。(拍手)
 総理は、中国から帰国されるや、共同声明の筆のあともまだかわかぬうちに、国民一人当たり年一万円の税負担となる五兆一千億という第四次防計画を決定されたのであります。
 総理も御承知のように、昭和四十五年度の防衛白書は、アジアを緊張の吹きだまりとしてとらえ、中国及び朝鮮民主主義人民共和国を「硬直した対外姿勢を堅持している」ときめつけ、この認識の上に立って、防衛力整備計画が推進されてきたのでありますが、今日のアジア情勢は当時と比べて大きな変化を見せております。特に中国との国交回復が実現した今日、なぜ冷戦構造を前提として打ち立てられた四次防計画を、あわて急いで決定しなければならない理由があるのでしょうか。相変わらず総理は、中国や朝鮮民主主義人民共和国を、硬直した対外姿勢をとっている国とでもお考えになっておられるのか、お伺いいたしたいと存じます。
 四次防決定に際して、総理は、平和時における防衛力の限界を明らかにするよう指示したといわれておりますが、まず防衛力の限界を明らかに確定し、しかる後に防衛計画を立てるべきであって、政府の今回のやり方はまさに本末転倒であり、総理の態度は耳をおおうて鈴を盗むのたぐいだといわなければなりません。(拍手)
 また、国力を示す長期経済計画は、御承知のようにいま策定中であります。この計画がまだでき上がっていないのに、なぜ防衛の長期計画のみを先行させたのか、これまた国民の理解に苦しむところであります。
 政府は、防衛費を国民総生産の一%以内にとどめると言ってきましたが、それは増強の理由にこそなれ、歯どめには絶対なり得ません。現に全世界の軍事費支出は、一九六九年を頂点として減少する傾向にある中で、ひとり先進国のうち日本だけが例外で、過去十年間に軍事費は三倍になっておるというこの統計数字を見れば明らかだと思います。
 政府はまた、中国の周恩来総理が防衛力増強に理解を示したと称して、四次防計画を合理化しようとしているようでありますが、周総理の発言がどのようなものであれ、日本の防衛のあり方は日本自身の自主的、主体的判断で決定すべきで彫ります。(拍手)周総理云々の田中総理の発言は、自主性を放棄したアメリカ一辺倒の自民党政治の裏返し以外の何ものでもないといわなければなりません。(拍手)
 総理は、所信表明演説で防衛問題に触れることわずかに一分間にすぎませんでした。しかも、参議院ではそれさえ読み落とすという失態を演じておられます。(拍手)総理は、四次防計画に対し国民の抱いている、以上私の指摘した不安と疑問に対し、本議場を通じて明快に国民に答える義務があると思います。もし十分に国民を納得させるような説明がないならば、今回の四次防決定は、兵器国産化を要求してきた死の商人の圧力に屈したものであり、大平外務大臣の訪米みやげであったとの国民の疑惑を、総理みずから裏づけることになると思います。総理の明快な答弁をお願いしたいと存じます。(拍手)
 第四次防は自衛隊を量的にふやすだけではなく、自衛の範囲を越え、攻撃的性格を自衛隊に与えようとするものであります。
 このように、周辺諸国へ脅威を与える四次防を決定しながら、政府は侵略の脅威に備えるためと称しておりますが、この政府のやり方を見るにつけ、私は、国を守ると称して、明治、大正、昭和にかけて強行されたあの富国強兵の政策を思い出さずにはおられないのであります。
 当時、国民は食うや食わずで政府の富国強兵の政策に協力し、世界でも有数な強い軍隊をつくりました。しかし、その軍隊は、国を守ったのではなく、中国その他アジア諸国に攻め入って、アジアの人々に言語に絶する損害を与えたのであります。いや、日本国民自身、そのために不幸のどん底におとしいれられたのであります。
 総理も御承知のように、いま沖繩県民は、自衛隊派兵に強く反対しています。なぜ沖繩を守ると称して派遣される自衛隊に、あのように沖繩の人々は強い拒否反応を示すのでしょうか。
 沖繩の人々は次のように言っています。「本土の政府は、明治以来、国を守ると称して富国強兵の政策を強行した。その結果、大きな強い軍隊はつくられたが、その軍隊もこの沖繩さえ守り切ることができなかったではないか。いや、それどころか、その日本の軍隊の手によって多くの沖繩県民が射殺され、自決を強要されたのである。この経験から、軍隊の本質が何であるかをわれわれはよく知っておる。だから、自衛隊派兵にあくまで反対するのだ」と言っております。
 いまこそ、われわれは歴史の教訓に正しく学び、真の安全保障の道は何であるかを、その原点に立ち戻ってみずから問い直してみるべきときだと考えるのであります。(拍手)
 言うまでもなく、核兵器の異常に発達した現代において、安全保障に一〇〇%確実な方法はありません。だとすれば、より危険度の少ない、より安全度の高い道を選ぶべきであって、他国に脅威を与え、他国から敵視されるような軍備は持たず、軍事同盟には参加せず、憲法の差し示す平和中立の外交を推し進めることこそ、われわれの選択すべき理性的かつ現実的な安全保障の道ではないでしょうか。(拍手)この立場から、私は、危険な軍事同盟である安保条約を一日も早く廃棄して、中立日本をつくることを要求いたします。
 日中共同声明に基づき、中国と平和友好条約を結ぶとともに、ソ連との間に、日本固有の領土である全千島列島は、安保条約の廃棄と見合って日本に返還されるべきことを確認した上、日ソ共同宣言に基づいて、まず歯舞、色丹の引き渡しでもって日ソ平和条約を締結することを主張するものであります。
 南北両朝鮮の平和統一の動きを妨げることなく、朝鮮民主主義人民共和国との友好関係を深め、一日も早く同国との国交樹立に踏み切るべきであります。
 これらの平和外交の進展に応じ、中国、ソ連、朝鮮との間に不可侵を内容とする相互友好条約を結び、進んでアジアの諸国による不戦宣言、アジア太平洋地域の非核武装地帯の設置など、アジアの恒久的平和保障体制を確立すべきであります。
 近隣諸国に脅威を与え、国際緊張を増幅し、軍国主義復活につながる第四次防計画は取りやめて、平和外交の推進と相まって、国民の理解と支持のもとに、漸次自衛隊を縮小して、国土建設隊にこれを切りかえ、防衛費は思い切って国民福祉に向けるべきであります。(拍手)
 御承知のように、われわれがいち早く提唱した日ソ、日中の国交回復が、当時は非現実的だと非難されましたが、ついに今日現実のものとなって日本とアジアの平和に大きく貢献しているように、以上のわれわれの主張もまた近い将来歴史の現実となることを確信するものであります。(拍手)
 総理の見解を明らかにしていただきたいと存じます。
 次に、内政問題につき総理の所信をただしたいと思います。
 いま国民の望んでいることは、最近政府の行ないました国政モニターによっても明らかなように、第一が公害、第二が物価、第三が社会保障の問題であります。なお総理の「日本列島改造論」は、ずっと下って第八位であることも注目すべきことだと思います。
 この世論調査に明らかなように、自民党政府が戦後一貫してとってきました大企業本位の高度経済成長政策は、とどまるところを知らぬ物価高、世界最大の公害の国、国民生活は二流、三流という日本をつくり出したのであります。現在秒読みの段階に入ったといわれておる円再切り上げ問題も、工業生産、輸出第一主義の自民党政策の矛盾の集中的なあらわれであります。(拍手)
 したがって、物価高から国民生活を、公害から国民の健康を守り、日本経済に大きな混乱をもたらす円問題を根本的に解決するためには、物中心の経済成長優先の自民党政策から、われわれの主張する人間中心の生活優先の政策に経済運営を百八十度転換させる以外に道は絶対ございません。(拍手)
 この基本的立場に立って、私は次のことを主張いたします。
 第一は、アメリカの三分の一、西欧諸国の二分の一といわれる低賃金構造と長時間労働制を改めて、思い切った賃上げと週休二日、四十時間労働制を直ちに採用することであります。所得税は五人家族百五十万円まで無税とし、個人事業税は大幅減税して、国内購買力の増大、国内市場の拡大をはかることであります。
 第二は、思い切った公害対策の断行であります。
 今日、生活環境の破壊は国民の生存自体を脅かしております。諸外国からは、公害ダンピングであるときびしい非難を受けております。
 しかるに、総理の公害に対する取り組み方は、「日本列島改造論」に見られるように、また、一昨日の所信表明でも明らかなように、きわめて安易であります。先日、総理は、四日市公害について、「今日の工業発展をもたらした日本人のエネルギーをもってすれば、公害をなくすことは可能だ」といわれたとも伝えられておりますが、総理は近代科学や技術を物神化し、それが無限に有効であるかのような錯覚におちいっておられるのではないかと心配せざるを得ないのであります。(拍手)
 工場から排出される汚染物質の量は測定できるでしょうが、自然の浄化能力を科学的に予測することは、近代科学をもってしても不可能だといわれております。それを可能だとする学者あるいは論文を、もし総理御承知ならば教えていただきたいと存じます。(拍手)
 一国の最高権力者である総理のこのような楽観主義、いや幻想は、公害対策にとって全く危険きわまるものといわなければなりません。(拍手)非科学的な楽観論を述べ立てる前に、四日市の空に青空を、瀬戸内海に澄んだ水を取り戻すための具体的方策をまず総理は明らかにすべきだと思います。(拍手)
 私は、かけがえのない日本の自然と国民の生活と健康を守るため、次のことを提案いたします。
 四日市、水島、千葉、川崎その他のコンビナート公害をそのままにして、瀬戸内海を死の海にしたままで、志布志湾やむつ小川原などの巨大なコンビナート開発を進めようとする「日本列島改造論」の大型工業基地開発構想は、直ちに中止すべきだということであります。(拍手)
 公害発生源に対する規制を徹底的に強化して、公害防止の責任は汚染者である企業に負担させる原則を打ち立てるとともに、無過失賠償責任法に因果関係の推定規定を設けることであります。さらに、公害防止の実効をあげるため、公害調査のための住民の立ち入り検査を認めるとともに、公害発生源の状況を一番よく知っている企業内技術者と労働者に、公害を告発する言論と行動の自由を権利として保障するということであります。
 総理は、また、「日本列島改造論」で、工業立地に必要な土地はすべてこれを先取りして残りをいわゆる永久農地にするという、徹底した農民切り捨ての政策を強行しようとしていますが、農業、漁業は大切な国民食糧の供給源であるだけでなく、国土と自然の保全という重大な役割りを演じておるのであります。
 いわゆる過密、過疎の同時解消などと称して、工場再配置を強行し、農地を無制限につぶしていくことは、日本農業の将来と国土保全のためにも許されるべきことではございません。むしろ、積極的に農業基盤の整備と農村の生活環境改善に思い切って資金を投入し、豊かな住みよい農村をつくることこそ真の過疎対策であると考えるのでありますが、総理の見解を承りたいと存じます。(拍手)
 次に、生産は一流、生活は三流といわれておるわが国の社会保障のあり方につき、党の主張を明らかにしたいと存じます。
 社会党は、いち早く六十五歳以上の老人医療無料化を提案いたしましたが、政府・自民党は財源難を理由に拒否し続けてまいりました。ところが、六年前、東京に革新都政が誕生するや、美濃部知事は直ちに老人医療無料化を断行し、全国の革新知事、市長がこれに続いたのであります。この大きな流れに押されて、政府も来年一月一日から、所得制限つきというカッコつきではありますが、ようやく七十歳以上の老人医療無料化に踏み切ったのであります。
 われわれは、六十五歳以上の老人医療の完全無料化をはかるとともに、三歳以下の乳幼児と重度心身障害者、難病に苦しむ人々の医療をただにすること、また、子供を産み育てる母親の健康を守るため、公費による主婦の無料健康診断制度を設けることを強く主張するものであります。(拍手)
 この医療保障制度の充実と相まって、老後の生活に不安を感ずる人のないように、六十五歳以上の老人に無拠出の福祉年金は少なくとも月一万円、拠出の国民年金は月二万円、御夫婦で四万円、厚生年金は最高時の給与の六〇%以上、月額平均六万円を支給することとし、賃上げに見合ってスライド制をとることをわれわれは公約いたしております。
 最近、自民党は、国民年金を夫婦で五万円にする政策を打ち出したと報ぜられておりますが、その実施時期は昭和六十一年からという、まことに気の遠くなるような話であります。(拍手)政府・自民党は、来年度より即時実施を要求するわが党の主張に対し、またまた財源を理由に反対すると思いますが、はたして財源はないのでし、占うか。
 御承知のように、フランスでは定年前の給与の七〇%が年金として支給されていますが、これだけの年金が支給される秘密は一体何であるか。それは制度の違いだということであります。すなわち、わが国では、働く人が収入の一部を積み立てて、年をとってからこの積み立て金のうちから年金の支給を受けるという、いわゆる積み立て方式をとっていますが、これに対しフランスでは、現在働いている人たちの掛け金のすべてで老人の生活を保障するという賦課方式をとっているからであります。なぜ政府がこの賦課方式を採用しようとしないのか、その理由は至って簡単であります。
 政府は、現在七兆円をこえている国民年金、厚生年金の拠出金のうち、相当部分を財政投融資の財源として、公社、公団、開発銀行等を通じて交通投資、地域開発などに投資して、今日までの大企業本位の経済成長をささえてきたからであります。(拍手)これこそ高度経済成長政策が国民生活を犠牲にして行なわれている典型的な事例だといわなければなりません。(拍手)老後を安心して暮らせるようにと、こう願って積み立てた国民の金を高度経済成長のために使ってよいとは、幾ら成長第一主義の総理といえどもお考えにはならないと思うのであります。
 問題は財源にあるのではございません。経済成長を至上命令と考えて、大企業のほうにばかり顔を向けるのか、それとも国民生活を第一義的に考え、国民のほうに顔を向けるのかという政治姿勢の問題だということであります。(拍手)世界の趨勢にかんがみ、国民の強い要望にこたえて、積み立て方式を取りやめ賦課方式を採用すべきだと考えますが、総理の見解を承りたいと存じます。
 戦時中の臨時軍事費よろしく、自衛隊増強のためには四次防計画を強行してはばからぬ政府・自民党は、国民の希望する国民福祉のための長期計画は、いまだかつて一度も立てようとしたことはございません。
 国民が総理に決断と実行を望んでいるのは、国民生活を犠牲にする四次防の決定ではなく、医療保障、生活保障についての長期的計画を一日も早く樹立することだと考えるものであります。(拍手)総理の社会保障に関する構想を、数字をあげて具体的に国民にお示し願いたいと存じます。
 次に、物価対策、特にそのきめ手といわれておる地価対策についてお尋ねしたいと存じます。
 田中総理は、組閣以来多くのことを国民に語っておられますが、ふしぎに物価対策については口を緘して多くを語ろうとはされないのであります。昨日の所信表明でも、物価問題に触れたのはわずか四行にしかすぎず、国民は全く期待はずれの感を深くいたしております。
 物価対策は、一言にして言えば、今日まで自民党政府のとってきた大企業の設備投資中心の高度経済成長というインフレの政策を転換して、国民福祉を中心にした安定成長の経済に大きく切りかえるということであります。
 しかるに、今度の大型補正予算案といい、その背景をなす「日本列島改造論」といい、相変わらずの高度経済成長路線を突き走ろうとするものであり、物価高に拍車をかけ、インフレをますます激化さすものであります。
 特に、一国の総理が地価対策に実効ある措置をとらずに、特定の開発予定地をあげた著作を公にして土地の買い占めを野放しにし、土地価格の暴騰をもたらしておるということは、政治家の姿勢として、政治道義の上からいっても絶対許されないことだと考えるのであります。(拍手)
 田中総理は、改造論によって土地価格をつり上げ、大手の不動産会社や大企業の土地買いあさりが終わったころを見計らって土地対策を出すのではないか、政治資金規制について態度があいまいなのも、その辺に理由があるのではないか、(拍手)国民が疑うのも無理からぬことだと思います。総理、もしそうでないと言われるならば、具体的施策によりそのあかしを立てるべきだと思います。(拍手)そのためにも、最小限度次の政策を実施すべきだと思います。
 二百坪以上の土地取得は市町村の許可制とすること。法人の所有する土地の再評価を行ない、土地増価税を課し、投機的な土地の売買、所有をきびしく規制すること。自治体の土地先買い権を強化するとともに、地代家賃統制令をすべての土地家屋に適用し、庶民の住宅費の高騰を押えることであります。
 総理も御承知のように、地価の値上がりは、この六年間に四十一兆円に上り、大土地所有者や大会社は、労せずしてばく大な利益を得、一方、三百六十万世帯の人々は住宅難で苦しみ、大多数の庶民は、一生営々と働いても、ささやかな一軒の家さえ持ち得ないという現状を考えるとき、以上の処置は当然過ぎるほど当然だといわなければなりません。(拍手)
 農工両全、公害のない鹿島開発のふれ込みで強行されました鹿島コンビナート地帯の農民が、次のように訴えております。「開発は農民から土地を奪い、自然を荒廃させ、そして何よりも人の心をずたずたに引き裂いてしまった。どんなに苦しくとも、銭のため、土地を、仲間を、人間の心を売り渡すようなまねを繰り返さないでほしい。」と、この農民の悲痛な叫びを総理は何とお聞きでしょうか。
 いま、日本の政治に求められているのは、これ以上がむしゃらに物質的成長を追求することではなく、心の安らぎと豊かさを持った、人間らしい生活を送ることのできる条件をつくり上げることだと思います。そのためにも、物価を高騰させ、公害を全国にまき散らすような日本列島の物理的改造を考える前に、国民が切実に要求している公害の絶滅、物価の抑制、社会保障の充実をまず推し進めるべきであります。大企業中心の政治から、漁業、農業、中小企業中心の政治に切りかえて、働く人間を尊重し、自然と環境を守る政治にその流れを変えていかなければなりません。(拍手)一言にしていえば、わが党の社会改造政策を断行するということであります。(拍手)
 最後に私は、政治姿勢のあり方について総理の見解を承りたいと存じます。
 政府は最近、国鉄労組、動力車労組に労働基本権を認めるための公労法の検討を約束されたかと思うと、数日を出ずしてこれをひるがえして、あえて恥じるところがございません。ベトナム行き戦車輸送を取りやめるとの閣議了解事項をわれわれに示された、その舌の根のかわかぬうちに、これまた前言を打ち消されるという食言を繰り返しておられるのであります。このような政府の態度こそ、国民の政治不信を増大させる根源であり、田中内閣は有言不実行の佐藤内閣の亜流にすぎないといわれてもいたしかたがないと思います。(拍手)
 三木副総理は、総裁選挙の際に、いみじくも次のごとく言っておられます。「自民党は、資金は財界に、政策は官僚に依存し、独自性と独創性を欠いている。何といっても、諸悪の根源は金にものをいわせ過ぎるところにある。」と言っておられるのであります。(拍手)田中総理もこの事実をまさか否定はできないと思います。
 総理がほんとうに日本の政治の流れを変える決意をお持ちならば、諸悪の根源であるこの金権政治をなくするため、少なくとも政治資金規正法を本国会で成立させて、国会を解散し、金によらないきれいな総選挙を行なうことだと思います。(拍手)
 もし総理にして政治資金規正法改正の意思なしといわれるならば、来たるべき総選挙において、われわれは、国民とともに金権政治を打倒し、政治を国民の手に取り戻し、真の民主主義政治確立のために全力をあげることを国民の皆さん方にお誓いし、訴えて、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(田中角榮君) 成田君の質問に対してお答えをいたします。
 まず第一は、日中国交正常化についてでございます。
 多年にわたり日中関係の改善、両国交流の促進に努力をしてこられた多くの方々に、衷心から敬意を表します。
 日中国交正常化の実現は、機が熟した結果、両国が合意に達し得たものと考えておるのでございます。
 第二は、これからの日本の外交はいかにあるべきか、日米安保条約の極東条項、日米共同声明の台湾条項は削除すべきではないかという趣旨の御発言でございますが、世界的に見ても緊張緩和の傾向が見られますが、アジア全域を見るとき、不安定な要素が残されていることも否定できません。わが国は、平和と独立を守るために必要な防衛力を整備しなければなりません。(拍手)米国との安全保障体制は堅持することによって、わが国の安全確保に万全を期す必要があります。(拍手)わが国の安全は、極東の平和と安全なくして維持し得ないものであって、政府としては、日米安全保障条約の極東条項は、わが国安全確保のために必要と考えており、これを削除するつもりはありません。(拍手)
 なお、一九六九年の日米共同声明のいわゆる台湾条項は、当時の日米両首脳の認識が述べられたものでありますが、台湾をめぐる情勢は、その後質的な変化を遂げており、これが現実に意味を持つような事態は起こらないと考えておるのであります。
 第三は、車両制限令等の改正とB52の沖繩大量飛来等、ベトナム戦争についてのことでございますが、政府はベトナム戦争の平和的解決ができますように希望しておるのでございます。近時南北問題が円満な解決の方向に向かっておるよう報道せられておることは喜ばしいことでございます。
 米軍車両の問題につきまして申し上げますが、八月上旬に米軍車両の通行問題が生じましてから、政府は法令の範囲内で円満に事態の解決がはかられるよう、あらゆる努力をしてまいったのでございます。しかしながら、通行許可の権限を持つ進路管理者が、道路の管理、保全とは関係のない理由をもって米軍関係の輸送許可を留保するなど、法令の適正な運用が阻害されるような状態が続いたのであります。わが国は、条約上米軍に対して国内における移動の権利を認めており、このような条約上の責任を果たすために、車両制限令を改正せざるを得なかったのであります。(拍手)
 また、B52の沖繩飛来につきましては、条約上わが国はこれを拒否できません。がしかし、国民感情にかんがみ、政府として台風避難など真にやむを得ない場合以外は飛来させないよう求めており、米側もこれに応じておるのであります。今回の飛来も、台風の接近によりやむを得ない措置であり、天候の回復によりその全部がグアム島に戻ったことは御承知のとおりであります。(拍手)
 第四問は、四次防は防衛白書に基づいてつくられたものである。政府は、いまなお中国、朝鮮などを強硬外交だと考えておるかどうか、こういうお話でございますが、四次防は、わが国の自衛のために必要最小限度の防衛力を整備することを目的として決定したものでございまして、去る四十五年の防衛白書発表当時の情勢に基づいて立案をしたものではございません。
 また、御指摘の中華人民共和国及び朝鮮民主主義人民共和国は、日中国交の正常化や米中の接近並びに朝鮮半島における南北間の対話の開始等に見られますように、事態を平和裏に解決しようとする努力を示しておるものと考えられるのでございます。
 政府は防衛力の限界をどこに置くのかという問題でございますが、四次防は、わが国が自衛のために必要とする最小限度の防衛力を漸進的に整備するため策定したものであり、防衛力の限界を定めなければ計画の立案ができない性質のものとは考えておりません。
 しかしながら、わが国の防衛力の規模が国際情勢、国力、国情に応じ、今後ともどの程度のものを適正とするかを見きわめる必要がありますので、おおよそその整備目標を検討するよう防衛庁に指示をしておるのでございます。
 他方、このたび決定された主要項目の整備において示される五カ年間の防衛費の総額は、一応四兆六千三百億円と見込まれておりますが、これがGNPに占める比率は、経済成長率との対比において、ほぼ現状横ばい程度に推移するものと見込まれ、長期的に見て、今後の経済運営の支障となることはないと考えておるのであります。
 四次防、日米安全保障条約の廃棄、日ソ平和条約の締結、日本と中ソ朝との友好不可侵条約の締結等々に対して言及がございました。わが国の防衛力は、自衛のため必要とする最小なものに限られており、かかる四次防において他国を攻撃するような防衛力が計画されていないことは、その内容をごらんいただければ明らかでございます。また、わが国が今後とも平和と安全を享受していくためには、日米安保体制を堅持することが不可欠であると考えておるのでございます。(拍手)
 日本の防衛費が大きいかどうかという問題を例をあげて申し上げます。
 防衛というものは、よその国の防衛なのではないのであります。自分を含めた国民全体の生命と財産をどう守るかというのであります。(拍手)まず、その防衛体制が妥当であるかどうかという問題を考えるには、世界の国と比較をすることも一つの案であります。
 諸外国との国防費について見ますと、米ソ等の超大国はさておき、西独、英国、フランスの国防費は、年間二兆円前後であります。四次防の規模五年間の合計は、西独の一九七二年の国防費二兆三千億円のちょうど二年分にすぎないのであります。GNPとの対比につきましても、これら諸国の国防費は、GNPの三ないし五%を占めております。中立国スウェーデンにおいても約四%なのであります。スイスは約二%でございます。これに対して、わが国の場合は、四次防期間においても〇・八%台にとどまっておるのであります。(拍手)国民一人当たりの国防費につきましても、西独、英、仏にありましては年間四万円に近く、わが国の一人当たり約八千円は、その五分の一でございます。(拍手)中立国スウェーデンは約五万七千円であって、わが国の七倍。スイスも約二万七千円で、わが国の三・五倍の防衛費を負担しておるのであります。(拍手)
 このように、各国はそれぞれ自国の防衛のために相当の努力を払っておることを知らなければなりません。(拍手)その意味から考えてみましても、わが国においても、この程度の負担をするのはやむを得ないことだと思うのでございます。(拍手)
 非武装中立論を前提にして国防論や防衛論をする方々との間には意見の相違があることはやむを得ませんが、しかし、国防や防衛という問題をそのような観念論によって律することはできないのであります。(拍手)
 なお、御発言がございました日中ソ朝友好不可侵条約の御構想については、その内容を十分承知する前に意見を申し述べることは差し控えますが、それが直ちに日米安全保障条約の廃棄、四次防の中止あるいは自衛隊の削減に結びつくものとの考えをとる必要はないと思います。
 なお、政府が日ソ平和条約の締結について各般の努力を重ねていることは、グロムイコ外相の来日、大平外務大臣の訪ソを見ても明らかなことでございますので、御了承賜わりたいと存じます。
 なお、ここで一言申し上げておきますが、周囲の情勢が変わってきたからといって、日米安全保障条約を廃棄しなければならないというような端的な議論にはくみしないのでございます。(拍手)それは、東西両独の間に雪解けの状態があり、独ソ条約が締結をせられる現状においても、NATO締約国の国々は、この条約を破棄しようとはしておらないではありませんか。(拍手)みずからの見識において、みずからの責任において、どうしてみずからを守るかということについては、数字に立って、現実を直視して、後代のためにも誤りのないように努力をすべきであると思います。(拍手)
 これからの経済運営について申し上げます。
 一人当たりの国民所得は、ほぼ西欧水準に達しました。しかし反面、公害、住宅、社会保障等の問題が生じてまいりました。政府は従来の生産、輸出の経済運営を改め、成長の成果を活用し、国民福祉の充実をはかるような方向に政策の方向を転換してまいります。私の提唱した日本列島改造論も、こうした国民福祉充実のための基礎条件を整備することを目的といたしておるのでございます。
 公害と生産の調整について申し上げます。
 住民の生活環境を破壊せず、自然を注意深く保全しながら、地域開発を進めなければなりません。志布志湾等の大規模工業基地の開発にあたっては、わが国の国土利用のあり方、その地域の生活水準の向上と並んで、環境の保全が最も大きな問題であります。したがって、その開発が環境に及ぼす影響を科学的なデータに基づいて十分チェックし、環境保全について十分な調整の上、しかも地元住民の理解と協力のもとにその方向を決定すべきものであります。発生源からの汚染物質の排出等の規制については、これを一そう強化してまいりますが、一歩進めて総量規制など、適切かつ合理的な規制方式を検討してまいりたいと存じます。
 汚染の原因者が公害防止費用を負担すべきであるという考え方につきましては、わが国の制度はすでにそのような考え方によっておるところでございます。企業が汚染者負担の原則を貫き、公害防止に万全を尽くさなければならないことは当然でございます。その上で、政府、地方公共団体も公害問題の早急な解決のために最善の施策を講じなければなりません。
 公害訴訟における因果関係の立証につきましても、実際上なかなか困難な問題がございます。最近の判例では、因果関係の認定についてゆるやかな方向が出ておりますが、因果関係の推定については、このような判例の動向を見守りつつ、その法制化について、引き続き検討してまいりたいと存じます。
 公害に対する立ち入り検査権の問題でございますが、現行の公害規制法において、工場等に対する立ち入り検査は都道府県知事が行なうことになっておるのでございます。政府としては、都道府県知事などが立ち入り検査を適切に行なうことにより、地域住民の期待にこたえるよう、十分指導してまいりたいと存じます。
 第九は、工業用地と農用地の問題でございますが、農業は国民の食糧を確保するとともに、国土を保全し、国民の生活環境を維持していくのに重要な役割りを果たしておることは御承知のとおりでございます。したがって、優良な農用地を十分確保すべきであり、また、工業用地の確保にあたっては、合理的な土地利用を計画的に行なうことにより、十分農用地との調整をはかってまいるつもりでございます。
 老人医療の無料化等についての御発言について申し上げます。
 老人医療無料化につきましては、七十歳以上の者を対象として四十八年一月から実施をするものでございますが、年齢を六十五歳まで引き下げることについては、今後の実施状況を見た上で考えたいと思っておるのでございます。
 乳幼児等の医療無料化につきましては、現在、未熟児など、保健上特に必要なものを対象として公費負担を行なっておりますが、これを乳幼児の疾病一般にまで拡大をすることにつきましては、今後慎重に検討してまいります。
 年金につきまして申し上げます。
 先般公にされた関係審議会の意見を考慮して、年金額について大幅な引き上げを行なうとともに、物価上昇等の経済変動に対応して年金額を調整し得る措置を講ずる等、年金制度の整備充実をはかってまいりたいと考えます。
 年金の財政方式を直ちに賦課方式に移行してはどうかという問題でございますが、当面は現行の修正積み立て方式を、実情に即した配慮を加えながら維持していくことが適当ではないかと考えられるのでございます。
 年金積み立て金の運用のうち、加入者の福祉増進に直接寄与する分野に充てられる還元融資につきましては、明年度からその融資ワクを、積み立て金の四分の一から三分の一に拡大する方針でございます。
 物価の問題について申し上げます。
 物価の安定は、国民生活の向上と安定のために基本的課題でございます。しかし、国土の一%の地域に三千二百万人の人口が集中しておるという事実を前提にする限り、物価問題の根本的な解決は困難なのであります。したがって、日本列島改造政策を根幹に据えつつ、低生産部門の構造改善、流通機構の近代化、輸入の促進、競争条件の整備などの施策を進めてまいることにより、物価安定に寄与してまいりたいと考えます。(拍手)
 地価安定対策に対して答弁申し上げます。
 一定規模以上の土地の取得について何らかの規制措置については、民間の取引件数、取引様態等を勘案して、最も適切かつ効率的に土地取引を規制する措置を検討してまいりたいと考えます。
 税制上の措置によってのみ土地需給の不均衡の是正をはかることは、おのずから限界がございますが、法人の所有する土地について何らかの税制上の措置を講ずべきかどうかについても検討を続けます。
 現行の地代家賃統制令をすべての土地について適用することは、必要な貸し地の供給を阻害し、住宅の供給を抑制するおそれがありますので、適切な手段とは考えられません。むしろ、公的住宅の大量建設とともに、低利融資、税制上の措置等により民間住宅の供給を促進することにより、需給関係の緩和を通じて地代、家賃の適正化をはかっていくべきものと考えられるのでございます。
 人間を尊重する政治に流れを変えること、この御説に対して申し上げます。
 私の日本列島改造のねらいとするところは、福祉が成長を生み、成長が福祉を約束するという、成長活用の経済運営のもとで過密と過疎の同時解消、公害の追放、物価の安定などをダイナミックに進めて、国民が安心して暮らせる、住みよい、豊かな日本をつくることにございます。
 具体的な処方せんにつきましては、国民各位の理解と支持を得ながら、決断し、実行してまいります。(拍手)
 公労法改正問題がございましたが、公労法問題に関しましては、公労法制定以来二十四年を経過をいたしております。内外情勢も法制定当時から大きく変化をいたしておりますので、公務員制度審議会において、諮問に対するすみやかな結論が出せることを期待しておるのが現状でございます。
 最後に、政治資金規正法の改正問題等につきまして申し上げます。
 政党政治の象徴、わが国の議会制民主主義の将来にかかわる重大問題でありますが、幾たびか改正法案が国会に提案をされ、廃案になった経緯があることは、周知のとおりでございます。これを今日の時点において見ると、金のかかる選挙制度あるいは政党のあり方をそのままにして具体化するということにいろいろと無理があることを示しているように思いますが、くふうによっては、その方法も見出し得るものと考えられるのでございます。
 特に、現在、政党本位の、金のかからない選挙制度について選挙制度審議会で鋭意審議しているときでもございますので、このような情勢を踏まえ、徹底した検討と論議を積み重ねてまいりたいと考えるのでございます。
 以上。(拍手)
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#6
○議長(船田中君) 櫻内義雄君。
  〔櫻内義雄君登壇〕
#7
○櫻内義雄君 私は、自由民主党を代表して、一昨日行なわれました田中首相の所信表明及び大平外務大臣による外交演説、植木大蔵大臣による財政演説について、質疑を行なうものであります。(拍手)
 田中内閣は、去る七月七日誕生以来、百十五日を経過しました。その間、各方面の世論調査によりますれば、圧倒的な国民の支持を得ているのであります。佐藤内閣時代にあって重要なる役割りを果たしてまいった田中総理ではありますが、政権の座に立ちますれば、前内閣末期の不評と沈滞した空気を一新して、国民より多大の期待を寄せられておることは、総理の責任を一そう大ならしめておるといわざるを得ません。総理みずからが言われたとおり、新しい時代に対処して、新しい政治を目ざし、政治責任の明らかな決断と実行の政治に全力をあげられるよう期待する次第であります。
 質問の第一は、外交問題であります。
 八月三十一日及び九月一日の両日のハワイにおける首相とニクソン大統領との会談は、日米関係に新しい一ページを加えたことは言うまでもありません。多年の懸案であった沖繩返還が終わり、ニクソン大統領の二月及び五月の訪中、訪ソ後の会談であって、それだけにきわめて意義深いものがあったと存ずるのであります。日米間がパートナー同士の対等の関係に立ったといわれますが、日米安保体制の現状は、相模補給廠の問題、沖繩へのB52大挙飛来に見られるように、一部の国民の批判行動があり、また、米側から見て、日米の経済関係が、政府の一連の円対策にもかかわらず、実効があがらず、本年末には三十数億ドルにのぼるアンバランスが考えられ、そこに米側の大きな不満が生じつつあります。さらに、一部の国民の中には、米国に対する一種のアレルギーがあり、各地基地における紛争や、沖繩県に見られる反米傾向を見るのであります。日米間の真の理解を深めるためには、国民に対し、日米間のあるべき姿、将来のあり方につき、総理をはじめ、関係者の一段の努力が必要であると思いますが、いかがでございましょうか。
 わが国と米国は、単に安保体制下にあるばかりでなく、米国を中心とする自由諸国間との間に深い関係があり、たとえば貿易を見ても九五%からのシェアを持ち、戦後の自由諸国間との関係は、日米の友好が、ひいてはヨーロッパ諸国との友好につながっておると思うのであります。特に、日米間の経済関係は、日本貿易の輸出入とも三〇%を上回り、米国の海外投資先との関係を加えますならば、その関係はまことに深いものがあります。すなわち、日米間のここまで参りましたつながりはないがしろにすることはできません。ましてや日本の防衛を考えるときに、専守防衛を任務とするわが国の国防の基本方針からして、安保体制によって足らざるところを補完していく現状は当然であります。現在、国内の一部で反安保のために積極的な批判行動がとられるのでありますが、安保条約が国民の合意さえ得られるならばいつでも変更のできるたてまえを理解し、各国から見て日本人が襟度ある行動をとる必要があるのではないかと思いますが、この点に対する総理の率直な見解をただしたいと存じます。
 日本が経済大国であり、政治大国であることは、各国の見ているところでありますが、この経済大国よりさらに軍事大国になるのではないかということがエコノミックアニマルの批判以上に世界の一部で潜在的におそれられておるところだと思います。四次防の総額四兆六千億円余の計画が発表せられるや、東南アジア諸国が不安の目で見ておるといわれます。また一方、このたびの中華人民共和国首脳との率直なる話し合いの結果が、日米安保条約に対する疑問がやわらぎ、従来のごとききびしい批判や日本の軍国主義復活論が後退したと見られるのでありますが、これら一連の日本の動向が、常に各国の反響を呼んでいる現状と、わが国のこれからの行動に誤りなきを期し、わが国の真意を各国の首脳に伝えるべく、総理みずからが東南アジア諸国あるいは拡大EC諸国をすみやかに訪問されるべきだと存じますが、いかがでございますか。
 日中共同声明を見て第一に感ぜられることは、戦後の特殊事情のもとに締結された日華条約を念頭に置きながら、非常な配慮をされたということであります。不正常な関係の終結で戦争の終末を意味し、中国は一方的に戦争賠償の放棄を行ない、台湾の領有はポツダム宣言八項の立場をとることにいたしておるのであります。これらの諸点は、相互理解なくしては合意のできるものではありません。特に、過去二十数年間の日本と台湾の関係、すなわち、相互に多数の国民が居住し、かつ往復しており、資産を有し、投資をいたし、現に日台貿易は巨額にのぼっておる実情について中華人民共和国は理解を示したといわれ、また、日本が戦後の蒋総統より得た恩義を忘れることのできぬことは、お互いに東洋人として十分了解され得るところと存じますが、日中の新局面を迎えたこの際、これからの台湾との関係について、総理の御所見を承りたいと存じます。(拍手)
 本年初頭、グロムイコ・ソ連外相の訪日を機会に、本年じゅうに平和条約締結の交渉を開始したいと提案され、先般は大平外務大臣の訪ソが行なわれ、ソ連首脳との会談が行なわれたのでありますが、これはすでに平和条約の交渉に入ったと見てよいのでありますか。また、その会談で、北方領土については、きわめて冷ややかな態度をソ連側がとったと伝えられますが、いかがでございますか。フルシチョフ時代には、沖繩の返還があれば、わが国の主張している固有の領土返還は考慮されるといわれておりましたが、どうなったのでありましょうか。国際情勢が急展開しておるこの際、国民世論を結集して対ソ交渉にもっと真剣な努力を払うべきであると存じます。また同時に、日ソの経済提携を促進し、特にシベリア開発に協力することは両国のために大いに寄与するものと存じます。この際、田中総理の訪ソにより、両国首脳の腹蔵のない話し合いを望むものでありますが、いかがでございますか。
 最近は国際政治が多極化したといわれるのでありますが、その根拠の一つは、核の恐怖の均衡が米ソ両大国が共存せざるを得なくなり、中国の核の開発が中国の封じ込めから国際社会への復帰、すなわち世界各国の多数の支持のもとに国連へ復帰しました。このような情勢の変化は、米国をして中国との対話の必要を感じ、米中会談となったと思うのであります。いまや米、ソ、中、それに拡大ECの四極時代となり、この四極はいずれも核を背景にしておることは言うまでもありません。わが国は、非核三原則のもとに、核を保有せざる多数の国との連帯感の上に立って五極の一つの立場をとっています。五極といっても、その一極は全くの異質のものであって、これからの国際政治の中できわめて重要な発言権を持つ一極といわねばなりません。
 田中内閣発足とともに、閉ざされておった中華人民共和国のとびらは開かれ、しかも、両国首脳の会談に見られるように、両国の意思疎通がはかられたばかりでなく、広くアジアの安定に、国際平和の確立に寄与すること多大であったと思うのであります。この際、日中国交回復後のわが国の国際的使命につき御意見をいただきたいと存じます。
 ベトナムの和平の実現を目前にしておることは、アジアの平和と安定にとり何よりのことと存じます。日中の国交回復、ベトナム和平、朝鮮半島での両国の話し合いは、戦後長い間のアジアの不安定状況に終止符を打つものであり、アジア外交も一大転機を迎えたといえるのであります。わが国は、国民の英知と勤勉のおかげで、何人も予想し得なかった繁栄の道を開いてまいりました。しかし、敗戦直後は、米国をはじめとする諸国の理解と援助がなくしては、日本の立ち上がりは不可能であったと思います。遠いかなたの思い出のごとくでありますが、敗戦後の米国による食糧援助、ガリオア、エロアの資金援助等は、いまだになまなましいものがあります。このような経験からして、ベトナムを戦雲がおさまらんとするとき、インドシナ諸国のため、その民生安定と復興のため、日本は可能な限りの援助をすべきだと存じます。政府のお考えはいかがでありましょう。
 先ほど触れましたが、四次防問題についてただしたいと存じます。
 五カ年計画四兆六千億円余の予算がいかにも多額であるとの素朴な意見が国民の中にあるのは事実であります。先ほど総理より詳しくお話がありましたが、本年度の予算では、防衛関係予算は国民総生産に対しては〇・八%であって、イギリスの四・七%、仏の三・一%、イタリアの二・六%に比較して大きなものではありません。
 もとより、国防費は、各国と比較して少ないからそれでよろしいというものでありません。あくまでも国民の血税であるということに徹底し、必要最小限のものを計上すべきだと存じます。しかし、われわれの考えねばならぬことは、国際的に国防の現実はどうなっているのか、日本の置かれている特殊事情、すなわち憲法九条の制約や狭い領土で労働力の不足しておるということに応じての防衛体制はどうかということであります。
 そのような見地からいたしますと、自衛隊をなるべく科学化する、機械化する、合理的なものにする必要があって、四次防の内容を検討すれば、装備費は年にして二千二百億円でありまして、その目ざしておるところは基本的に理解を持てると存じますが、この際、これからの国防のあり方について、国防費はGNPに対してどの程度を考えられるのか、自衛隊の好ましい姿はどうなのか、成田委員長へのお答えになかった点をお聞かせ願いたいと存じます。
 国防は、国民的課題であり、国民全体で行なうことであり、全国民の力を結集しなければできないことであります。そして、最も大切なことは、わが国の平和と独立を守り抜こうとする防衛意欲であって、そのような国民の精神的基盤なしには国の防衛は成り立たないと言って過言ではありません。(拍手)
 いままさに戦争を終わり、平和を迎えんとしておるベトナム戦争において、物量よりも民族の心がまえがまさっておったことを如実に示したと思います。
 日本の将来を考えるとき、青少年にこのことを訴え、青少年の真の理解を求めること本日より急なものはないと存じます。青少年のエネルギーは、ときに行き過ぎた姿で、おそろしい力で発揮されますが、この力は、もし軌道修正が行ない得られるならば、国家、国民のためにりっぱな力として発揮せられることを信じて疑いません。総理のこの面でのリーダーシップを期待したいのですが、お考えはどうでございましょうか。
 次に、内政諸問題についてお伺いいたします。
 田中内閣の発足により、総理がかねて用意された日本列島改造論が朝野をあげての関心事となり、従来、とかく政治は無縁のものと感じがちの国民多数にとって、政治がきわめて身近なものであり、政治が国民のものであることを痛感せしめたことは、いわゆる政治の流れを変えたものであり、これからの政治のあり方としてまことによい傾向であると思うのであります。(拍手)
 日本列島の現状は、このまま放置いたしまするならば、公害は深刻化し、容易ならざることは必至であります。人口の三二%が国土の一%に住み、一人一平方メートルの公園面積に甘んじ、東京では許容量を越える大気汚染の中に住み、停電のピンチや、せっかくの自動車時代も、朝夕のラッシュ時には時速九キロではどうにもならないのは当然であります。それだから日本列島の改造をするのであって、一部の批判者が日本列島改造に反対して、公害を拡散するものだと言われることは納得できません。(拍手)
 過密過疎を解消して、公害のない緑と太陽に包まれた日本列島をつくるために、国土開発幹線自動車道や新幹線などの交通網の拡充、近代的通信施設によるネットワークと、日本列島の四つの島をトンネルで結ぶことは、日本列島のどこであっても同一の立地条件にするものであると思います。そうであれば、工場の分散や新しい設置にあたって、現在の科学技術は気候や風土の相違を完全に克服しておりますので、裏日本沿岸であれ、山間地であれ、すべて同じに誘致できるのであります。
 列島改造の問題点の一つは、土地対策であります。道路や鉄道の建設にあたっても、工場や住宅の建築にあたっても、まずは土地が問題となります。土地対策について多くの構想が打ち出されておる中にも、土地投機の抑制に徹底するのは焦眉の問題でありますが、他面、社会資本の投下による土地の供給をできるだけすることであります。その場合、自然環境の保護を考えまするならば、できるだけ埋め立てによる土地造成が好ましいのではないか。また、公的機関、たとえば住宅公団や工業再配置・産炭地域振興公団等が田畑の信託を受け、これを必要な面に供給し、提供者は税法上等で優遇する構想はいかがでありましょうか。各個人が争って土地を求め、住宅を建設する結果は、虫食い的となり、あらゆる面でロスが多いのではないか。まず市街地が造成され、道路、上下水道、電気、ガスその他の整備されたコミュニティの形成が住宅の建設であると認識する必要があると思います。
 総理の構想の中で、全国土の均衡ある利用を実現するための前提として、全国的な土地利用計画の策定をいわれておりますが、具体的なお考えを承りたい。
 次に、列島改造に際しては、これからの物価がどうなるのかは国民の重大関心事であります。経済成長と完全雇用を維持しながら、従来の成長追求型の経済運営を成長活用型、福祉志向型へ転換しようというときに、最も大切なことは物価の安定であります。所得を上回る物価の上昇が望ましくないことは言うまでもありません。
 最近の物価動向を見まするに、消費者物価は一応騰勢も次第に落ちつきを示しておりますが、卸売り物価は、国内景気の回復に伴い、需要の強含みと海外原料高を反映して、八月には対前月比〇・七%、九月には〇・九%と上昇基調にあります。この趨勢は今後の消費者物価に影響を与えるおそれがあると存じますが、見通しを伺いたいと思います。
 消費者物価対策で最も肝要なのは、国民一人一人が物価を上げない、安定させるという環境づくりが必要であると思います。幸い世論調査では最高の関心事となっておりまするから、政府が本腰を入れるならば、必ず成果が上がるものと信ずるのであります。この際、企業の利益を消費者に還元するようつとめるとともに、物価と賃金の調和を確保し、健全な消費者運動を助長し、国民的基盤に立って物価対策を推進すべきであります。(拍手)
 複雑な流通機構をいかに合理化するか、円対策に伴う関税の引き下げ、輸入の拡大を通じ、物価の引き下げ、安定にいかに役立てるか、政府の特段の努力をお願いいたします。公共料金の抑制、強力な地価対策など、物価対策全般に対する総理の御決意のほどをお聞かせ願います。
 次に、社会保障政策についてお伺いいたしますが、成長活用型の経済運営は、福祉が成長を生み、成長が福祉を約束するというよき循環をつくることができるといわれておりますが、この際、福祉優先の考え方に立脚して、社会保障の充実のために、思い切って国費を投入すべきであると考えます。総理は、就任以来、明年は年金の年であると、まことにずばり適切なことを言われており、心強い次第であります。
 わが国の社会保障は、欧米の諸国に比べて相当な立ちおくれがあることは事実でありますが、その内容を調べてみまするに、医療の面では一応の水準にまいっております。所得保障の中心となる年金制度、心身障害者対策、難病対策などの分野は相対的に立ちおくれており、特に年金制度は、現在の老人ばかりでなく、老後の心配がないよう願う若い人たちにとっても制度の改善が必要であると存じます。
 社会保険審議会の答申を見まするに、年金制度の成熟化と人口の老齢化によって、将来の費用負担は相当なものとなると指摘しておりますが、先ほど賦課方式に移行すべきであるとの主張がありましたが、審議会の答申を尊重して、財政方式を検討すべきだと思いますが、どうお考えでありますか。
 社会保障は、本質的には国民連帯の思想に基づくものであって、ある程度負担が高まっても、できるだけ負担の公平をはかりつつ、社会保障の水準を引き上げ、早急に西欧水準まで社会保障の充実をはかるべきであると思います。
 次に、補正予算と円対策についてお尋ねいたします。
 今般の補正予算は、事業規模一兆五千億円余の大型のものであって、これにより国内需要が喚起され、輸出意欲が国内に向けられ、輸入の増大を期しており、したがって社会資本の整備促進と国際収支の均衡回復という一石二鳥の施策であると存じます。しかし、予算規模の大きいことによってインフレになるのではないかという日銀をはじめ一部の批判がありますが、この点に関し総理の御見解はいかがでございますか。
 次に、このたび関税の引き下げ、輸出入金融の改善、経済協力の拡充などの対策が講ぜられ、補正予算と相まっての円対策が行なわれたのでありますが、これで十分でありましょうか。事態に応じていつでも輸出税を課することのできるようにいたし、貿管令との併用をお考えにはなりませんか。
 また、以上の施策は黒字国の責任としての対策でありますが、この際、赤字国に対しての責任を問い、赤字国もまた、黒字国の納得のいく内外の施策を講ずるよう主張すべきであるが、お考えをお示し願います。
 所信表明には、現在国民が非常に関心を持っている円の再切り上げ問題について全く触れられておりませんが、どのような御所見でありますか。万一世上伝えられるように、早晩円の再切り上げが行なわれることになれば、昨年末に行なわれた円の大幅な切り上げの影響から完全に脱してない日本経済は、きわめて大きな打撃を受け、特に中小企業、零細企業が切り上げに耐え得られるかどうか疑問であります。この点、総理の明快な御判断をお聞きします。(拍手)
 次に、農政について御質問いたします。
 外には国際化、内には社会経済構造の激変に対応し、強力な総合農政の展開をはかるべきだと思います。国際競争力の強化や農産物輸出入調整措置の拡充、さらには発展途上国に対する積極的な経済、技術協力等、国際的観点に立った農政の確立が必要であり、主要農産物ごとの需給目標を明示し、流通、消費行政の強化や農業生産の地域分担の明確化等、国民的視野に立った農政の推進をはかり、高福祉農村の建設のため新たに農村環境基準を設定し、生産、生活を含めた都市計画に対応する農村計画を樹立する必要があると思いますが、田中農政の一端をお聞かせ願います。(拍手)
 中小企業対策については、列島改造による経済の構造変化に伴う中小企業の位置づけを明らかにするため、従来の経済政策の目安としてきた一次、二次、三次の産業分類、特に雑多な大企業から零細企業を包含する第三次産業を再検討し、今後の主軸となる知識集約型産業を加え、具体的な政策の指標として役立つよう再編成する必要があります。これに伴い、従来一括して金融、税制を中心に進められてきた中小企業対策の手法に加えて、知識集約化と高度化を進める過渡期の調整措置を十分に行なうなど、中小企業対策の刷新を試みる必要があると思いますが、総理の御所見を伺いたいと思います。(拍手)
 ベトナム和平に伴う米国を中心としての国際経済の変動は、ばく然としながらも予想のできるところであります。ベトナム戦争の一大消耗戦も終わり、帰還兵を迎える新しい情勢は、米国経済にとって明暗こもごも、種々困難が予想されます。日本に対するこの影響と、日中あるいはインドシナ半島の関係の新しい展開は、日本もまた新事態に対応し、独自の構想のもとに内外の諸施策を講ずる必要があります。
 たとえば、日本列島改造の眼目である工業再配置は、日本産業をさらに高度の技術により、最新の設備によって高能率の知識集約型産業に発展させ、三年、五年先の国際競争に備えるものであります。再配置や誘致による新しい工場を中心とする新都市は、環境の整備された、公害のない住みよい、働きがいのある総合的機能を持つ新都市の建設であって、この際、総理の勇往邁進を期待してやみません。公害あるいは環境保全に関する総理の確たる御見解を、この際、承っておきたいと思います。
 資源のない日本として、知識集約型の産業を中心に、頭脳の開発により無限の資源を見出していく必要があると思います。それには、言うまでもなく、教育が重視されねばなりません。列島改造による新学園都市や教員養成大学の建設を急ぎ――所信表明で言われたとおり、本年は学制施行百年に当たる意義ある年であります。新しい施設により、よい先生のもとに、将来期待される青少年の育成につとめ、国際的に恥ずかしからぬ、健康にして品性ある、りっぱな学識を身につけた人間形成につとめるべきだと存じます。(拍手)
 最後に、田中総理は、政治の最高責任者として、上意下達をたてまえとしてきたわが国の行政組織が横に弱く、内閣や各省庁間はもちろん、各省庁の内部においてさえ、とかくばらばらに仕事が進められてきておることを認識されませんか。従来の縦割りの行政機構とは全く別個の組織原理に立って、内閣ないし総理の国政の基本政策に関する総合調整機能を強化し、企画立案機能を備えた補佐機構を設けるべきだと思います。
 古くは明治、大正以来、多くは戦後につくられた各種の政治、経済、社会の法制、制度、慣例等が形骸化し、新時代に対する対応力と弾力性を失いつつある現状に目を開き、国政全般の基本構造を見直し、つくり変える決断を要請いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#8
○内閣総理大臣(田中角榮君) 櫻内君にお答えいたします。
 まず第一は、日米経済関係の真の姿を理解をするため、日米関係の改善に一そう努力をする必要があるという御指摘でございますが、まさにそのとおりでございます。
 戦後四半世紀の状態を見るまでもなく、日本の安全は、日米安全保障条約という重要な協定によって確保されておるのでございますし、日本の戦後の経済復興は、御指摘のとおりのような経緯を経て今日の繁栄を迎えておるのでございます。特に貿易は、輸出入とも三〇%のシェアを占めるという重要な状態でございますので、日米間については、常に十分なる理解と意思の疎通をはかっていかなければならないと思います。そういう意味で、前回のハワイ会談の際、私は、日米両国の間に間断なき対話の必要性を強調してまいったわけでございます。
 なお第二は、日米安保体制は日米だけの問題ではなく、自由諸国家にも深い関係があり、一部反安保の批判的行動があることは遺憾であるということでございますが、まことにそのとおりでございます。
 安全保障条約というものは、だれを守るのでもなく、お互いを含めた日本の安全保障のために存在をするのでございます。でございますので、これが必要性というものは、常に国民皆さんの中で理解を求められなければならないことは当然でございますが、しかし、日本の安全は、ただ日本だけの状態で確保できない。極東の、アジアの、世界の平和の中に大きな関連があることを十分理解をしなければならない、こう思うのでございます。でありますので、先ほど私は成田君に答弁を申し上げたように、質問があったからその部分に対してだけお答えをするというのではなく、そんなに異論があるにもかかわらず、自由民主党も内閣も現安保体制を守っていかなければならぬというには、それなりの理由があるからであります。そういう理由を十分国民各層に御理解を賜わるということでなければならない、こう思うのでございます。(拍手)
 それから第三は、経済大国日本が軍事大国にならないかという問題でございますが、経済大国になりますと政治大国になるということは、これはもう当然でございます。日本が経済大国である。すなわち、日本の輸出入の動向によって世界の情勢に影響を与えるということでありますから、好むと好まざるとにかかわらず政治的な影響を持つことは避けがたいのでございます。しかし、軍事大国にはならない。これは憲法が明定をしておるのでございます。国際紛争に対して日本は武力をもって解決できない、こういう大前提があるのでございまして、憲法を守ろうということを言う人は、特にこの事実を理解すべきでございます。(拍手)でありますから、日本の防衛力がどのような状態になろうとも、侵略的なものとか軍事的な大国というものには絶対に無縁のものである、日本を守るという全く防衛一筋のものであるということを理解すべきでございます。(拍手)
 日台関係が第四点でございますが、日中国交正常化の結果わが国は台湾との間の外交関係を維持できなくなりましたが、わが国と台湾との間に民間レベルで人の往来、貿易、経済等の実務関係が存続していくことは、いわば自然の流れでございます。政府としては、これら各種の民間交流が今後とも従来どおり継続されていくよう配慮してまいりたいと存じます。
 次は、日ソ平和条約交渉についてでございますが、日ソ平和条約交渉については、一月グロムイコ外務大臣が来日をしましたときに、ことしの秋口から交渉を進めたいということでございます。この申し出を踏まえて、過日大平外務大臣が訪ソいたしたわけでございます。そうして日ソの間には第一回の交渉が持たれたわけでございます。第二回以後の交渉は来年の春以降ということになっておるわけでございます。でございますので、大平訪ソはこの日ソ平和条約交渉の第一回交渉ということになっておるわけでございます。
 なお、その状態における北方領土問題に関するソ連の原則的立場というものでございますが、これは報道されるような少しかたい状態ではございますが、しかし、この問題が平和条約交渉において話し合われることまでを否定するという態度は示さない。新聞に報道されるとおり、次には領土問題は問題となり、話題となり、議題となるのだということを理解していただきたいと思います。しかし、ソ連側の態度は依然としてかたいものがあるということを前提にしてでございますが、政府は、国民的な願望を背景にして、これが返還実現のためにねばり強く、忍耐強く交渉を続けてまいるつもりでございます。
 日ソ経済提携、シベリア開発等に対する見解を述べよということでございますが、日ソの間には一年間に約十億ドルの交流がございます。これは年々大きくなりつつございます。なお、シベリア開発、チュメニの石油開発等を中心にして、六つ、七つの明確なプロジェクトをいま検討いたしております。これらの問題につきましても、現在は、検討しておるものもございますし、もうすでに三つばかり片づけたものもございます。内容が固まり次第、国益に沿うものであればその実施に協力してまいる、日ソの経済関係はだんだんと大きくなる、こういう状態でございます。
 それから、日中国交正常化後の国際的なわが国の使命、国際的な地位等でございますが、これは御指摘にあるとおり、日中の国交の正常化というものは、国際的にもわが国の外交を世界的な広がりというようなものに結びつけたものだと考えるわけでございます。また、先ほども申し上げましたように、経済的に大きな立場を持つ日本でありますので、政治的にも国際的な地位はだんだんと向上するとともに、国際的な日本の立場や義務も大きくなってまいるということでございます。われわれは、平和を主軸として経済的な面から国際協調、拡大均衡というものを推し進めていくために、新しくジャパンラウンド、ニューラウンドを提案しておるような状態でございます。
 それから、インドシナ復興に対してはどうするのかということでございますが、これはインドシナ問題が解決することが望ましいことは申し上げるまでもないことでございます。このインドシナ戦争が終われば、日本も民生の安定等に対して可能な限り十分な協力をしてまいりたい、こう考えるわけでございます。これは具体的方策としては、国際的な協力、国際機関を通じてというようないろいろな問題がございますが、関係各国との意見も十分調整をしながら、友好的な援助を実施したいと考えております。
 それから、国防についての問題は先ほど申し上げたとおりでございます。これは、世界の国々の国防費の状態等先ほども申し上げましたが、やはり、私もこの際申し上げたいのでございますが、ただ、四次防が三次防の数字において倍であるとか、そういうような意味でもって御質問また非難をされると、それはしかし、三次防の最終段階における四十六年度から四十七年度の予算を見ると、今度の四次防の第一年度の金額が八千億でございます。八千億の五年というと、ことしの予算をそのまま延ばしても、五、八の四兆円になるんだ、そういう答弁になるのであって、私は、そういう発言というものはあまり納得する問題ではないと思うのであります。百四十も国があるのです。その中で、緊張をしておるところの国は別でございますが、全く緊張をしておらないような平和な環境の中にある国でも、一体どのぐらいの国防費や防衛費を計上しているのか。だから、日本の現行憲法のように全く世界に類例のないものをつくろうという考えとか、しかも無防備中立がいいんだという前提に立っての考えとは、われわれの考えは合わないのです。どうしても合わないのです。(拍手、発言する者多し)ですから、ほんとうに考えるならば、平和な国であるというニュージーランドや、それがら大洋州のオーストラリアや、スウェーデンやノルウェーや、そういう国々は一体どの程度の国防費を持っているのかということと、まじめに比較をすべきなのであります。これは私が申し上げるのは、自民党と社会党の問題じゃないのです。日本人全体を守らなければならないのが国防であり、防衛であるということで、私は、感情とか、過去の行きがかりとかというものは全然別にして、新しい立場において日本の防衛は論じらるべきである、こう考えております。(拍手)
 それから、青少年の問題でございますが、日本の今日の青少年は、幸いにして戦禍を知らず、日本の目ざましい復興をまのあたりにしてこられた世代であります。私は、これら青少年諸君が、平和国家として発展を遂げているわが国の防衛に大いなる気概を持ち合わせておると確信をしておるのでございます。
 次に、全国的な土地利用計画の問題と日本列島改造について御発言がございました。日本列島改造というのは、私が常に申し上げておりますように、これはただ一つの政策として述べておるのではないのでございます。明治初年から百年間、九〇%あった一次産業人口は、ことし一五・九%になりました。なぜ九〇%もあった一次産業比率が一五%台になったかというと、一次産業から二次産業、三次産業へと人口が移動したのであります。その過程において、農村や漁村や山村の人口は減って、都市に人口が集中をしてまいったのであります。人口が二次産業、三次産業に移動する、すなわち、二次産業や三次産業比率が高くなるという過程において、国民総生産と国民所得は増大をしてまいりました。ところが、百年たった今日、都市集中のメリットとデメリットというものはほとんど同じくなった。これからはデメリットのほうが大きくなるんじゃないかというふうに考えられるようになりました。それは公害であります。それはうんと大きな投資をしても、なかなか交通問題は解決しないということであります。幾ら住宅をつくっても、都市に集まる人よりも、住宅をつくる数のバランスがとれないということでございます。北海道に対する鉄道は、キロ当たり三億五千万円で済むものを、東京や大阪の地下鉄は、キロ当たり七十五億円かかってもできない。やがてキロ当たり百億になる。しかもその北海道の鉄道は、赤字だというのではなく――初めから建設費の二分の一を補助してもなお大きな都市の地下鉄の運賃だけではペイしないという状態が起こっておるのであります。(発言する者あり)だから、まず静かに考えていただかなければならぬのは、だれがやったか、現状をどうしたか、じゃありません。現状をどうしなければならぬかというのが政治の責任であります。(拍手)皆さん、そういう意味で、都市集中の過程においては、月給が上がったり、国民所得や国民総生産が上がるというメリットはあるのです。同時に、今度は公害を除去しなければならないというようなデメリットがあるのであります。そういう意味で列島の改造が必要だと述べておるのでございます。
 皆さん、土地の価格を引き下げるとすれば、根本的な問題は供給をふやすよりないのであります。供給をふやすにはどうするか。列島改造以外に解決の道はない、こういうことでございます。
 (拍手)しかも、列島改造ということが行なわれる
 ことによって、既存の都市は理想的なものに改造
 せられるのであります。(拍手)その意味で、全国的土地利用計画が必要であるということは申すまでもないことでございます。これはいま列島懇談会でも検討いたしております。日本人のあらゆる英知を傾けて、六十年展望、六十五年展望、七十年展望という長期的な視野に立って、土地の全面的利用計画を定めてまいりたい、こう思います。(拍手)
 それから、土地利用の問題ばかりではなく、土地の利用規制の問題、また、現に行なわれておる投機的な問題に対する税制上の問題、抑制策等十分に配慮してまいります。
 次に、物価問題でございますが、御指摘のとおり、消費者物価は今年度は四%台に推移をする状態でございますが、卸売り物価が遺憾ながら上昇過程にあります。ただ、その内容を見ますと、鉄鋼、繊維、木材等が値上がりを示しておるのでございますが、鉄鋼に関しては不況カルテルの問題もございます。なお、繊維、木材については海外市況の問題がございます。これらの問題については十分な抑制が可能だと思いますけれども、この問題に対しては、一そう注意深く見守り、適切な処置をとってまいります。
 ただ、消費者物価の問題については、いろいろいわれますけれども、私は、ここで率直に申し上げると、消費者物価の異常の高騰の直接の一番大きな原因は何か。これは、一つは都市に過度に集中をしておるからであります。過度集中というものが解決しない限り物価の根本的対策にならないということが一つあります。
 第二の問題は労働賃金の問題であります。低生産性部門の産業も一律に、生産性の高い産業と同じように賃金が引き上げられるという問題が物価に大きな影響を持つことは、これは避けがたい事実でございます。(拍手)こういう問題も、流通機構の整備、自由化の促進、また構造改善等々十分な配慮によって対処してまいりたいと思います。
 年金の改善問題に対しては、先ほど申し上げましたとおりでございます。
 また、社会保障の問題についても先ほど申し上げましたので、こまかくは申し上げませんが、心身障害者の問題、また重度心身障害児や非常に重い病気を持っておる方々、難病、老人の病気等に対しては特に配慮をしてまいりたい、こう思います。
 年金の問題、一つだけ申し上げると、最も重要なものは、老人年金に対しては、少なくとも積極的な姿勢を示さなければならない、こう考えております。
 それから、大型補正予算につきましては、インフレ予算の批判もございますが、これは、今回の景気回復は財政支出と個人消費を中心にしたものでございますので、在来のような状態でインフレ予算と考える必要はないと思います。また、インフレを招くとは考えておりません。しかし、物価動向につきましては、今後とも十分に配意し、経済運営に全きを期してまいりたいと存じます。
 それから、円の再切り上げ問題でございますが、これは昨年の暮れに初めて多国間調整が行なわれ、円平価の調整が行なわれました。しかし、これだけの大きな問題でございましたが、必ずしも所期の目的を達成してはおらないということでございます。でございますので、今度のIMF総会に対してわが植木大蔵大臣も演説をしたわけでございますが、シュバイツァー専務理事が、日本に対してだけ円平価の再切り上げを求めない、こう言われたのは、求めるようなことによってすべてが解決できないということを端的に指摘をしておるわけでございます。
 しかし、円平価調整という大きな事態があったにもかかわらず、日本はその後依然として貿易収支は黒字を続けております。今度は、このような状態において、よそからの圧力、よそから求められるというだけではなく、日本だけが貿易収支、経常収支の大幅な黒字を続けておるという状態で各国の理解や協力が得られるはずはないのであります。新しい国際社会の中における日本として、日本自身の英知と努力によって、少なくとも三カ年以内には経常収支をGNPの一%以内に押えなければならない、こう申し上げておるのでございまして、円の再切り上げ問題という問題は、もっと新しい角度から見なければならない問題だと思います。いま円平価を切り上げられて、中小企業はこれにたえられるはずはありませんし、中小企業だけではなく、それは利益もなし、影響するところだけ非常に大きいということであって、平価の再調整を避けるためにも、あらゆる政策を進めなければなりません。その意味で、今度の補正予算もお願いをし、国際収支対策も議会でお願いをしておるわけでございます。(拍手)
 総合農政の問題につきましては、これは総合農政、新しい国際的に競争できるようにといいますが、それは理想であって、現実的には、一歩ずつ総合農政を進め、適地適作等をやってまいらなければなりませんが、ここで一言申し上げる問題は、日本の農村というものが純農政だけでやっていけるのかどうかという問題であります。これは、与野党を問わず考えていただきたいのは、結局先ほども申し上げたとおり、百年間に九〇%の一次産業人口が一五%台に減ったのです。しかし、いまなお減反政策を必要とするのでございます。その意味で必要なのは、申すまでもなく、これから一五・九%という一次産業比率は一〇%、なお減るでありましよう。
 この二次産業や三次産業に転出をしなければならない一次産業人口をそのまま都市に集めるとなると、これは物価問題とか土地問題というものが破局的になると考えなければなりません。そこで考えたのが、与野党一致で通した農村工業導入化法なんであります。それだけではありません。新産業都市建設法であり、地方開発を必要とするのはそういうことなんであります。ですから、一次産業人口からはじき出されるであろう、二次産業、三次産業へ移動しなければならないという人たちに、農村工業導入法や工業再配置法によって職場を与えよう、そして農工一体という新しい時代をつくらなければ一そこがほんとうに日本の農政のポイントであります。農業自体を専業農家と兼業農家というものに分けながら、どのような理想的な姿をかくかということでなければならない。それは、例を引いて申し上げると、返還された沖繩に、二次産業と三次産業の比率を上げなければ、沖繩の県民の所得は増大しないという事実を見れば、何人もが否定できない事実であります。(拍手)
 中小企業の問題は、いまも申し上げましたように、円平価の問題に徴しても重大な問題であり、国際競争力にたえ得るような中小企業の育成に努力をしてまいります。
 なお、新産業都市の建設、内閣機構の強化、行政機構の再編成、法制制度、慣例等の見直し、新しい政策を遂行し、責任政治をになうために果たさなければならない幾多の問題に対して御指摘がございましたが、この問題に対しては、また予算委員会で詳しく申し上げることにいたします。
 以上。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(船田中君) 竹入義勝君。
  〔竹入義勝君登壇〕
#10
○竹入義勝君 私は、公明党を代表して、田中総理に対し、内政、外交の重要点のみにしぼって質問をいたしたく思います。
 長年の全国民的念願でありました日中国交正常化が実現され、日中永遠の平和への道が開かれましたことは、わが国の歴史に大いなる一ページを画するものであり、アジアと世界の緊張緩和に大きな役割りを果たすものであります。私は、この交渉での田中総理はじめ政府関係各位の御労苦に対し、率直に敬意を表するものであります。(拍手)
 しかし、日中国交回復の実現は、総理の決断がその直接の要因ではありますが、これをなし遂げた真の原因は、国民世論がこれを早期に実現することに結集したことによる大きな成果であり、また、これまで日中国交回復の実現を妨げる歴代保守政権のもとで、この実現のためにじみちな努力を重ねてきた野党や保守党の一部先覚者並びに各民間団体の努力の積み重ねの結果であると思うのであります。(拍手)
 そこで伺いますが、まず、きわめて遺憾なことは、日中共同声明を国会の承認事項としなかったことであります。本来、日中共同声明は、単なる共同声明という扱いではなく、日華平和条約の否定、戦争状態の終結、賠償請求の放棄等を含めて、国交正常化を成立させる、事実上平和条約の効力を有するものであります。したがって、これは当然国会に承認を求めるべき性質のものであり、これは共同声明に対する賛否の問題とは別の次元に属する国会の審議権を守るか侵すかの問題であります。私は、今回の政府の態度は、行政権の乱用による悪例を残す結果となることをおそれるものであります。政府は、日中共同声明を国会承認案件としなかった理由を明確にすることを要求いたします。
 また、日中共同声明において、わが国は、中国を代表する唯一の合法政府は中華人民共和国政府であり、台湾は中国領土の一部であることを完全に認めたものと理解しておりますが、それを認めながら、日米安保でいう極東の範囲に台湾が含まれるとするならば、明らかに中国に対する内政干渉であります。政府は、この際、安保の極東の範囲から台湾地域を除き、さらに佐藤・ニクソン共同声明の台湾条項の取り消しを明示的に行なうべきであると思いますが、政府の明確なる見解を承りたいのであります。(拍手)
 また、先ほどの総理の答弁の中におきまして、確かに日中復交によって緊張は緩和の方向に向かっておるが、アジアの安全についてはなお不安定な要素ありとの先ほどの総理の答弁がありましたけれども、その不安定な情勢、不安定な要素はいかなるものかを、あわせて明確にお答えをいただきたいと思うのであります。(拍手)
 今後の台湾との関係については、かりにも二つの中国論に立脚すると解される態度は断じてとるべきではないと思います。したがって今後、経済、文化等の交流については、いかなる態度をもって臨もうとするのか。また、日華条約第三条の日本国及び国民の財産請求権の処理はどうなるのか、台湾に対する政府のこれまでの借款はどうなるのか、それぞれ明確な見解を承りたいのであります。
 さて、現在の国際情勢の大きな変動は、冷戦時代の終えんを示し、新しい平和共存の秩序を目ざしていると見るべきであります。いまこそわが国がサンフランシスコ体制による冷戦構造に基づく対外政策を改め、自主、平和外交を確立すべきであると思います。
 しかしながら、政治の流れを変えることを公約として生まれた田中内閣の対外政策は、冷戦外交を強力に推進し続けた佐藤前内閣と本質的に何ら変わるものではなく、日米安保の堅持、四次防など、軍備増強政策の強行決定、ベトナム戦争への積極的な協力など、相次ぐ反平和的姿勢をとり続けているのであります。決断と実行をスローガンとする田中内閣の本質は、まさに独断と暴走の危険きわまりないものといわざるを得ないのであります。(拍手)
 日中国交正常化は一体いかなる意味を持つものと政府は理解しているでありましょうか。また、アジアの緊張緩和とその展望、さらにわが国の果たすべき方向をどのように理解しておられるのか、疑わざるを得ないのであります。
 安保という軍事同盟体制の生まれた根拠は、言うまでもなくアメリカの共産圏諸国敵視政策にあったことは明らかであります。米中、米ソ首脳会談が行なわれ、平和共存体制への基盤が生まれ、さらに日中国交回復が実現をした現在、いままで自民党政権が主張してきた日米安保の存在意義は大幅に薄れたと見るべきであります。
 私は、日米関係の重要性を決して否定するものではありません。むしろ重要であるからこそ日米安保の早期解消をはかり、これにかわる相互不可侵などを内容とする非軍事的な友好条約の締結を目ざすべきであり、新しい日米関係の創造をするべきであると思うのであります。これに対する田中総理のお考えを明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 私は、今回東南アジア諸国を訪問し、各国の指導者と会談する機会を得ました。アジアはいま真剣に平和への道を求めております。これら諸国の間に東南アジア連合の中立宣言など、きわめて注目すべき動きも生まれてきております。同時に、わが国の動向に強い関心を持ち、また警戒の眼を向けていることも事実であります。特に第四次防など際限のない攻撃的な軍備拡大政策と圧倒的な経済進出は、これらアジア諸国に大きな脅威を与えておることも事実であります。政府は、アジア諸国に対する過酷、独善の経済協力の条件を改め、相手国の経済自立への協力原則を明確にするべきであると思うのでありますが、総理の所見を承りたいのであります。(拍手)
 わが党はこれまで、わが国が等距離完全中立政策をとるべきことを強く主張し、わが国が目ざすべき方向は平和中立の日本であると主張してきたのであります。こうした展望のもとに、アジア諸国との間に中立、平和のための連帯を促進する構想が生まれるべきであると思うのであります。この目標とするアジア・太平洋の平和と安全のためにアジア・太平洋平和会議を開催するなど、平和な国際環境づくりを積極的に行なうべきであると思うのでありますが、総理の所信を承りたいのであります。(拍手)
 さらに、日ソ平和条約には北方領土返還が前提とならなければなりませんが、これに対する政府の基本的な方針、特に北方領土返還問題については、少なくとも歯舞、色丹、国後、択捉の四島を要求するべきであると思うのでありますが、その要求する領土の範囲等をここに明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 また、朝鮮の統一への話し合いが現実に進行している現在、朝鮮民主主義人民共和国を無視した従来の政府の朝鮮政策は転換すべきであると思いますが、その見解を承りたいのであります。
 次に、わが国の安全保障問題について所信を承りたいのであります。
 ベトナムにおける戦争終結は既定の事実になろうとし、南北朝鮮双方の話し合いの進展など、世界の情勢、アジアの情勢は大きく緊張緩和に向かい、並行して軍縮の機運に向かいつつあります。
 田中内閣は、誕生以来、国会において明確なわが国の安全保障に対する構想を論議しないまま、膨大な第四次防衛力整備計画を閣議決定し、これを既定の方針として国民に押しつけようといたしております。また、先国会できびしい国民の指弾を受けて凍結されていた四次防予算の先取りを突如として独断的に解除し、さらに加えて、米軍のベトナム戦闘用車両の運行を可能ならしめるために、抜き打ち的に車両制限令を改悪し、国内法を日米安保条約に従属させるという暴挙を行なったのであります。(拍手)このように、アメリカの圧力に屈した田中内閣の姿勢が、B52の沖繩常駐を既定化しようとするたび重なる大量飛来という、日本国民の意思を無視したアメリカの暴挙を許す結果となったのは、きわめて遺憾であります。こうした一連の国家権力によって、国民の声を黙殺して軍事優先政策へ独走しようとする田中内閣に、日本軍国主義化への危険を抱くことは、むしろ当然のことではないでしょうか。田中内閣がこの国民的な批判にこたえようとするならば、これらの施策をすみやかに撤回すべきであります。
 田中内閣が行なおうとしている四次防総額は五兆円を上回るものであり、年間予算一兆円をこえ、世界有数の軍事予算を有することになるのであります。
 なぜ今日の情勢のもとで、わが国がこれほど膨大な軍備や軍事予算を持たなければならないのか、わが国を取り巻く国際情勢をどう認識しておられるのか、脅威の実態は何かなどの基本的な説明すら、何ら国民にいたしておらないのであります。国民の望む日本の平和と安全は、決してミサイルや戦闘機や戦車や護衛艦などによって築かれることではないと思うのであります。(拍手)また、このような発想こそが、今日まで人類に戦争をもたらしてきたことは、歴史の教訓ではありませんか。
 先ほどの田中総理の答弁をお聞きいたしておりますと、四次防の予算と他国との軍事費の比較を、田中総理は長々と述べられました。田中総理のこの他国との軍事費の比較を聞いておりますと、何か軍国主義下における答弁かと、私は耳を疑いたくなるのであります。(拍手)日本は、平和憲法のもと、戦争を放棄いたしております。すなわち、平和憲法の精神を全く忘れた議論ではなかろうかと、私は驚きを持っておるのであります。(拍手)
 総理は、四次防を必要とする根拠を明確にするとともに、自衛力の明確な限界をここに示すべきであります。(拍手)田中総理の明確なる所信を伺いたいのであります。
 さらに、兵器の国産化がもたらす危険は、軍需産業の本然的に持つ自己増殖作用によって、軍需産業の拡大強化を許し、最も危険な産軍複合体制への道を歩むことはきわめて明らかであります。総理は、産軍複合化への危険をどのように認識されておられるのか。また、わが党がかねてより提案してまいりました兵器の輸出禁止法案をこの際成立せしめるべきであると思うのでありますけれども、総理の所信を承りたいのであります。(拍手)
 私は、田中総理が決断をもって四次防を白紙に戻して、あらためてわが国の安全保障のあり方について国民的基盤で検討すべきであると思うのであります。総理にそのお考えがあるかどうか、所信を伺いたいのであります。
 また、文民統制の強化についてどのような施策をお考えになっておられるか、あわせてお伺いをいたしたいのであります。
 わが党は、今回、米軍基地の再総点検を実施いたしました。その詳細につきましては、予算委員会などの機会に譲ることといたしますけれども、明らかにされたことは、国民生活を脅威する米軍基地の実態であります。特に総理は、昨年の沖繩国会で成立した非核、基地縮小の決議をどう実行しようとされておられるのか、明確なる所信を承りたいのであります。
 次に、内政問題について総理の所信を伺います。
 私は、七〇年代におけるわれわれ政治家の責務は、公害を絶滅し、物価を安定し、老後の生活保障をはじめとする社会保障を充実して、安心して毎日を送ることができる、青空ときれいな水と緑に包まれた福祉日本を子孫に伝えることであると確信をいたしております。(拍手)
 しかるに、日本列島改造論及びそれを基調とした一昨日の所信表明では、現状の日本におとしいれた従来の政策については一片の反省もないばかりか、依然として生産第一主義の経済政策を踏襲し、福祉社会建設へのビジョンを示していないのは、はなはだ遺憾であるとしか言いようがありません。
 田中総理、私は、自民党政府がとり続けてきた高度経済成長政策には二つの特徴的な柱があると考えております。それは、生産第一主義と低福祉、低所得であります。昨年の円切り上げも、また現在迫られている円再切り上げも、生産第一主義、低福祉、低所得の経済成長政策の当然の帰結であります。
 さて、田中総理にお尋ねをしたい。田中総理は、改造論の中で、日本の現状を「許容量を越える東京の大気汚染」「生活を脅かす大都市の地価、物価」「一人当たり四畳半の住宅」等々、田中総理は正確にいまの現状を認識をしておられます。この認識はわれわれと全く同じ認識であります。この認識に立って御答弁をいただきたいと思うのであります。
 第一は、社会保障であります。わが国の社会保障の実態は、西欧諸国と比較すると、社会保障給付費の対GNP比率では、イギリス一一・八%、フランス一四。六%、西ドイツ一六・五%、スウェーデン一五・二%に対して、わが国はわずかに五・三%にすぎないのであります。田中総理が真剣に日本の将来を考えるならば、対GNP比率五・三%という実態を早急に改めるべきであります。私は、このために、田中総理に対し、社会保障給付費のGNPに占める割合を少なくとも今後五年間に西欧並みの一五%に引き上げるべきことを要求いたしますが、総理の御所見を伺いたいのであります。(拍手)
 さらにこれに関連して申し上げます。政府は、今回五兆一千億円の第四次防衛力整備五カ年計画を策定されました。しかしながら、反面、社会保障に関しては、かねてからわれわれが要求してきたにもかかわらず、社会保障充実のための五カ年計画ともいうべきものを策定してまいりませんでした。日本を福祉型に改造するということは、資源配分を変えるということであります。一方では社会保障費のGNP比率を少なくとも一五%に引き上げ、他方では社会保障充実のための中・長期の計画を策定することによって初めて可能になるのであります。田中総理は、社会保障を充実させるための計画を策定する御意思があるのかどうか。確たる御答弁をいただきたいのでございます。(拍手)
 私は、社会保障充実の中で最も大きい柱の一つは老人問題、なかんずく老人年金であると考えております。そして老人問題は、ただ現在の重要問題にとどまるのではなく、人間にとって永遠の課題であります。私は、老後は年金で十分な暮らしができるようにしなければならないと考えております。
 ちなみに、総理の例にならいましてまた他国との比較をいたします。アメリカは年金額月額五万六千五百円、イギリスは三万四百円、西ドイツは五万七千九百円、スウェーデン五万一千五百円であります。これに対してわが国は、厚生年金は新規裁定、既裁定を平均して月額一万六千円にすぎ一ません。国民年金は現在五千円であり、老齢福祉年金に至っては、今日現在わずかに三千三百円で一あります。これは大都市の六十歳から六十四歳の一男子の生活扶助基準一万九千円、同年齢の夫婦二万八千円を大幅に下回る低さであります。年金額の低さは、政府が年金制度の未成熟を理由にして積み立て方式に固執し、西欧諸国がすでに採用している賦課方式に切りかえようとしないからであります。
 総理、自民党は新政策大綱で国民年金夫婦五万円を提唱されました。しかし、積み立て方式では十四年後の昭和六十一年度から五万円年金が実現することになります。この物価上昇の中で、生活水準の向上を考えたならば、十四年後の五万円はおそらく現在の一万円程度にすぎなくなるのではないでしょうか。(拍手)
 私は、年金制度を賦課方式に切りかえ、来年度から国民年金夫婦四万円、厚生年金は賃金の六〇%、老齢福祉年金二万円を支給することを心から要求をいたします。(拍手)総理の確たる決意を伺いたいのであります。
 次に、公害対策について総理の所信をお尋ねいたします。
 田中総理は、改造論の中で、昭和六十年度の日本経済の規模を三百四兆円と想定し、その結果、粗鋼生産は現在の約二倍の二億トン、石油精製は約四倍の千五百万バーレル、石油化学も約四倍の千七百万トンに達すると思われます。そのために北東と西南地域に複合コンビナートをつくると述べておられます。これでは昭和六十年度には日本全土がいまよりもひどい公害に悩まされるだけではないでしょうか。日本が公害列島になった一因は、重化学工業最優先の経済成長政策であります。他の一因は、本来企業が負担すべき公害防除費用を企業が負担せず、公害をたれ流しにし、政府もそれを放任してきたことにあることを、私は認識をしていただきたいと思うのであります。
 総理、公害を撲滅するには、強い決意と勇気が必要です。まず私は、公害を多発させる基幹資源型産業の新しい立地を今後きびしく規制すべきであると考えますが、総理の所信を承りたいのであります。
 さらに私は、企業の社会的責任を強化するために、無過失損害賠償責任制度の確立を総理に要求をいたします。第六十八国会では、大気と水質に限って無過失損害賠償責任制度が導入されました。しかし、その中身は環境庁原案にあった因果関係の推定規定が、当時通産大臣であった田中総理の圧力によって削除をされたとうわさをされております。(拍手)私はこの一事をもってしてもい田中総理の公害に臨む態度は明らかだと思うのであります。
 確かに総理も改造論の中で「これからのコンビナートは公害調整、環境保全、災害防止など現場で働く人びとや地元で暮す人びとの安全と福祉を最優先に考える」と述べておられます。これを単なるリップサービスにせずに、田中総理が公害問題に真剣に取り組むのであれば、当然因果関係の推定規定を盛り込み、対象も典型公害にまで拡大した無過失損害賠償責任制度を確立すべきであると思いますが、総理の確たる御答弁を伺いたいのでございます。(拍手)
 公害対策について、将来の問題としてもう一点お伺いをいたしたいと思います。それは無公害自動車の開発であります。光化学スモッグの主因が自動車の排気ガスであることは、もはや明らかであります。田中総理は、アメリカのマスキー法に匹敵する法律を制定し、無公害自動車の開発をメーカーに義務づける意思があるかどうか、この際お聞かせをいただきたいと思うのでございます。
 次に、土地対策について、田中総理の御所見を承りたい。
 私は、地価対策のないままに行なわれてきました地域開発、企業の土地買い占めを野放しにしてきた土地対策の不在こそ、諸悪の根源であると考えております。(拍手)今後も地価高騰が続いたならば、住宅建設も、公園をはじめとする生活環境の整備も、不可能になっていくのではないでしょうか。
 建設省の最近の調査によると、東京証券取引所上場会社六百九十六社によって買い占められている土地は、日本列島の国土の一%弱にものぼっております。また、わが党の調査によっても、企業による土地買い占めの状況は、すさまじいの一言に尽きるほどであります。
 たとえば青森県のむつ小川原開発地域であります。当初の開発計画は一万七千五百ヘクタールという広大なものでありましたが、本年五月に発表された第一次基本計画によれば、六ケ所村七千四百ヘクタール、三沢市五百ヘクタール、計七千九百ヘクタールであります。
 青森県は、計画実施のため、四十六年に、むつ小川原開発公社、むつ小川原総合開発センター、むつ小川原開発KKを設立、この三者のいわゆるトロイカ方式によって用地取得から開発までを推進することとし、本年に入って、公社は土地買収に乗り出しました。公表された買収価格は、十アール当たり、田七十二万円、畑六十三万円、山林原野五十四万円であり、さらに補償額として、十アール当たり、水稲十万円、畑七万五千円、酪農標準一戸当たり四百万円を加算することとしております。計画前のこの地方は、十アール当たり、田二十万円、畑十万円、山林原野五万円が平均的売買価格であったことを考えると、全く異常な地価高騰であります。
 ここでわれわれが重視しているのは、公社が買収に乗り出す以前に、民間企業によって土地の買い占めが行なわれているということであります。われわれの調査によれば、六ケ所村は、四十四年一月から四十七年七月までの三カ年間に、約四千五百七十ヘクタールがすでに民間企業によって買い占められているのであります。さらに、その周辺の東北町、野辺地町、横浜町においても、約二千百ヘクタールが企業によって買い占められております。しかも、民間企業の中には、農地法に違反して買い占めたものもあるのであります。
 総理、六ケ所村では、公社等が買収する用地の大半は、企業によってすでに買い占められているのであります。したがって、公社は企業からまた、三倍ないし四倍の高い価格でその土地を買わなければならないのが現状であります。これによって公共事業の投資効率は大幅に悪化するのは当然であります。これはすなわち、税金のむだづかいであります。
 沖繩においても、しかりであります。沖繩では、昭和五十年に国際海洋博覧会が開催される予定になっております。この海洋博の会場、周辺地及び関連地域に対する本土企業による土地買い占めの攻勢は、ものすごいものがあります。すでに二百八十七ヘクタールが買い占められているのでありますが、沖繩企業による土地買い占め二百二十ヘクタールを加えると、企業によって買い占められた土地は、すでに五百ヘクタールをこえるのであります。さらに、宮古島では約八百八十ヘクタール、八重山群島では六百六十ヘクタール、沖繩全島では二千ヘクタール以上も、すでに買い占められているのであります。
 こうした例は枚挙にいとまがありません。土地は、開発計画確定以前に企業によって土地が買い占められ、それが地価をつり上げ、さらにその周辺地域に波及するのであります。この結果、利益を得るのは大手企業であり、被害を受けるのは土地を手放した農民と、用地買収に巨額の税金を使われる国民だけではありませんか。(拍手)これが日本列島改造論の欠陥の第一であります。
 私は総理に、企業の土地買い占めの規制と地価つり上げの排除を早急に行なうことを要求します。
 さらに、私は、田中総理に次のことを要求したい。
 その第一は、土地利用基本法を次期国会に提出することであります。第二は、法人企業の土地譲渡所得を分離して、高率の課税をすることであります。第三は、千平方メートル以上の土地、いわゆる三百坪以上の土地については、公共機関以外の、いわゆる民間による買収並びに売却する場合はすべて公的機関を通ずることにするとともに、地方公共団体の先買い権、買い取り請求権、収用権を認め、国・公有地の拡大をはかることであります。第四は、保有課税の適正化であります。私は、市街化区域内の土地については、現に耕作している農地、そして一定規模以下の住宅にかかわる土地を除いて、保有課税を適正にすべきであると考えております。
 田中総理は、これらの土地対策についてどうお考えになるのか。また、開発地域の土地収用価格について、すでに買い占めが開発計画に先行していることを考え合わせた場合、現行の事業認定時でよいと考えておられるのかどうか、御所見を承りたいのでございます。
 次に、物価対策について伺います。
 消費者物価指数は、六月には前年同月比四・四%、七月四・六%、八月五・六%と、依然として高水準が続いております。また、景気は順調な回復軌道を進んでおると見られます。経済成長は、当初見通し七%を大幅に上回る九・五%が見込まれております。このときに景気刺激の大型補正予算を編成したことは、消費者物価上昇に拍車をかけることは必至でありましょう。
 一方、卸売り物価にいたしましても、昨年十二月から九月までの上昇率を通算いたしますと、卸売り物価総計で二・六%であります。この卸売り物価の騰勢も消費者物価を押し上げる結果になることは当然であります。
 田中総理は、消費者物価安定のために今後どのような具体策を講ずるのか、卸売り物価対策及び不況カルテルはどうするのか、お示しをいただきたいと思うのであります。
 さて、私は、ここで物価対策について、基本的な点について総理の御所見を承りたいと思います。
 第一は、公共料金であります。私は、公共料金には、独立採算制や受益者負担の原則をいま適用すべきではなく、まして、物価上昇の激しいときには公共料金を引き上げるべきではないと思いますが、総理の御見解はいかがでありましょうか。
 第二は、管理価格の規制であります。私は、物価対策の一環として管理価格規制法を制定し、寡占企業の管理価格の排除や、公正取引委員会の調査権限を強化する必要があると思うのでありますが、総理にその御意見があるかどうか、お伺いをいたしたいと思うのであります。
 第三は、調整インフレであります。先般中曽根通産大臣は、円再切り上げを避けるため多少の物価高はやむを得ないとの発言をなさっておられます。私は、調整インフレ政策は絶対にとるべきではないと考えておりますけれども、田中総理の御見解を承りたいと思います。
 次に、円再切り上げ対策に関連してお伺いをいたしたいと思います。
 私は、現在ドルが蓄積されている原因として、円切り上げの効果が直ちにあらわれないという過渡的な要因及び不況から完全に立ち直っていなかったという一時的要因のあることを否定するものではありません。しかし、私は、より根本的には、昨年八月、ニクソン米大統領が新経済政策を発表した時点、あるいはおそくとも多国間調整が行なわれた時点で、経済政策を輸出第一主義から国民福祉優先主義に大胆に転換すべきであったものを怠ったところにあると思うのであります。すなわち、一方においては、社会保障制度を拡充し、所得減税を行ない、週休二日制を積極的に推進するとともに、勤労者の実質所得の向上をはかり、豊かな生活環境を築くべく資源配分を行なうべきであったのでありました。他方では、戦後二十数年をかけてつくり上げた輸出第一主義の産業構造の転換を円滑に進めるべきであったと思うのであります。
 私は、率直にいって、、今回発表された第三次円対策が円再切り上げに、はたしてどれほど有効であるか疑問であります。しかも、おそるべきことは、現在の経済体質を温存したならば、再々切り上げも迫られる可能性すらあるということであります。
 総理、円再切り上げ攻勢に対し、一時しのぎの対症療法に終始するのではなく、日本経済の体質、産業構造の根本にメスを入れた抜本的対策を早急に講ずるべきであると考えますけれども、総理の構想をお示しいただきたいと思うのであります。また、国際分業、産業調整についてもどのようにお考えになっておられるか、この際、明らかにしていただきたいと思うのであります。
 最後に、政治資金規正法についてお尋ねをいたします。
 われわれが今後日本を福祉型に転換するためには、国民の強い支持と協力が必要であります。そのためには、政治と財界の癒着を断ち切って、国民の信頼を取り戻さなければならないと思います。われわれは、そのためにも、いまこそ政治資金規正法を改正し、政治献金は個人に限るべきである、それが現在の自民党の実情として不可能であるならば、せめて第五次選挙制度審議会の答申に沿った改正をすべきであると思うのでありますけれども、総理の御所見を承りたいと思います。
 これをもって私の質問を終わりますが、最後に、田中総理に特に要望を申し上げたい。
 いま重要なことは、政治が国民のためにあるという原点に戻ることであると思います。現在、国民の求めている政治の選択は、われわれのこの日本を、人間が人間らしく、平和で豊かに生きることができる国としてこれを子孫に伝える道か、かりそめの繁栄はあっても人間が人間として生きていくことができない国として子孫に伝える道か、この二つの選択のうち、前者を求めているのはきわめて明瞭であります。それが現代のわれわれの、後代に対する責任であります。これを確認し、国民の信を問うために、田中総理は、今国会において十分審議を尽くした上で本院の解散を行なうことを要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(田中角榮君) 竹入君にお答えいたします。
 まず第一番目に、日中正常化と国民世論の成果について申し上げます。
 御指摘のとおり、日中国交正常化は、国民世論の強力な支持のもとで政府が努力をしたから実現したものでございまして、先ほども申し述べましたが、多年にわたって日中関係の改善と交流の促進のために努力をしてこられた方々に対して、重ねて敬意を表するものでございます。
 日中共同声明はなぜ国会の承認案件としないかということでございますが、先般の日中共同声明は、政治的にはきわめて重要な意味を持つものでございますが、法律的合意を構成する文書ではなく、憲法にいう条約ではございません。この共同声明につき国会の承認を求めないということでございます。しかし、この日中共同声明につきましては、事柄の性質上、非常に重要な内容も含んでございますので、国会において十分御審議を願いたいと考えております。
 アジアの平和構想を確立するため、日米安保を解消し、非軍事的な日米友好条約を結んではどうかという御発言でございますが、毎々申し上げておりますとおり、日米安全保障条約は、日本の安全と独立を確保するために必要なものとして、これを廃棄するとか変更するとかという考えは全く持っておりません。しかも、日中の国交回復につきましては、これは日米安全保障条約というものと関係なく日中の国交の正常化が行なわれたものでございまして、日中の国交正常化が行なわれたから、安全保障条約を別なものに変えなければ親善友好の関係が保てないというものでは全くないわけでございます。
 極東の範囲につきましても、台湾条項につきましても、先ほど申し上げたとおりでございまして、これを変更する必要はない、こういうことを基本的にいたしております。
 日中国交正常化の結果、台湾との問題についての御質問がございましたが、日中正常化の結果、わが国が台湾との外交関係を維持し得なくなったことは御承知のとおりでございますが、政府としましては、台湾とわが国との間の民間レベルでの交流を今後ともできる限り継続をしていくということを希望しておりまして、これがために必要な処置を講じつつございます。
 それから、日中国交正常化の結果として、日華平和条約は終了したものと認められるので、同条約第三条において予想されていた特別取りきめによる日台間の財産、請求権問題の処理は行なえなくなったのでございます。
 それから、アジアの不安定要因はどこにあるのかということでございますが、これは安定をしておって、すべてをなくするような状態にないということを申し上げておるのであって、これはよくおわかりになると思います。これはいま平和な方向に向かってはおりますが、ベトナムにも問題はございます。南北朝鮮も、話し合いの機運の中にはございますが、まとまったという状態でもございません。いろいろな問題があることは、いま日中の国交の正常化ということが行なわれただけでございまして、まだまだ東南アジア諸国だとか、また、中国とアメリカとソ連との利益も完全に一致はしておりません。このようなことは十分御理解がいただけることだと思うわけでございまして、アジアの不安定要因はこれとこれでございますというように言えるものでないことは、御理解いただけると思います。
 開発途上国に対する援助政策についてでございますが、これは御承知のとおり、GNPの一%を主要工業国は援助することになっております。日本の実績から申し上げますと、もうすでに〇・九六%ぐらいになっておりますので、申し合わせのGNPの一%にはなるわけでございます。しかし、問題は質の問題でございます。政府ベースの問題が問題になっておりますが、去る日のUNCTADの会議において、愛知わが国代表は、七〇年代末を目標にして、この現に〇・二三%である政府ベースの援助を〇・七%まで引き上げたいということを申し述べたわけでございます。これが実行されると南北問題に対しては非常に大きな貢献ができるわけでございます。実際、〇・七%まで拡大できるのかどうかという現実問題が議論せられておることは御承知のとおりでございまして、アメリカでもGNPの〇・七%政府援助を行なえるかどうかということでございますから、この問題がいかに大きいかということは御理解いただけると思います。この〇・七%ないし八%というのが、くしくも日本の防衛力に必要な金額と大体同じなのでございます。ですから、水田前大蔵大臣は、〇・七%とやすく言うけれども、日本の自衛隊と同じような金額を開発途上国に提供しなければならないというのであるから、これは相当腹をきめてかからなければならないことでありますと、こう述べておるのは、その間の事情を申しておるわけでございます。
 そういう意味から申しますと、人のためにもやらなければなりません。日本は国際的の中で当然信頼される日本にならなければなりませんし、貿易中心の日本でありますから、当然開発途上国に援助もしなければなりませんが、同じように、人にも援助をしなければならぬが、自分の生命、財産を守るためにもこの程度の金は使わなければならぬ、こういうことにもなるわけでございます。(拍手)そこらをひとつ、日本の防衛費とこれからの国際的援助という問題とのバランスを考えると――バランス問題じゃありませんが、やはり真剣に検討すべき民族的課題である、こう思います。(拍手)
 自主・等距離・中立外交のお話がございましたが、アジア諸国との中立、平和、連帯のための構想、アジア太平洋平和会議というようなものの提唱についての御発言がございました。わが国は、政治信条、社会体制のいかんにかかわらず、すべての国との友好的関係を維持してまいりますが、そのことが即等距離・中立の外交とはなり得ないのでございます。あくまでも自主外交でありますが、構造的に見ても、量的に見ても、わが国の平和外交は自由主義陣営の一員として、これと密接な関係の上に立って進めることが、より効率的であると考えておるのでございます。その意味で、アジア太平洋地域において平和な国際環境づくりのための提案がなされるならば、これを十分検討するにやぶさかでないということで御理解をいただきたい、こう思います。
 日ソ平和条約交渉につきましては、先ほどもお答えをいたしましたが、すでに開始をされており、去る日、大平外務大臣がモスクワを訪問したときに第一回の会談が行なわれ、第二回会談以後は来春を期して行なわれることになっておるのでございます。なお、御指摘がございました四つの島々、歯舞、色丹、国後、択捉、この四島につきましては、これは日本人の悲願であります。でございますので、御指摘のとおり、この四島の祖国復帰を前提としてねばり強い交渉を続けてまいりたいと存じます。御声援のほどを切にお願いをいたします。(拍手)
 朝鮮問題についての御発言がございましたが、これは、現在の時点としましては、南北朝鮮の対談ということを特に歓迎をいたしておりますということで御理解をいただきたい。
 それから、緊張緩和のもと、四次防というのは撤回しなければならないじゃないかということでございましたが、これは先ほど申し上げたとおり〇・七%。GNPに対する金額でございます。これと匹敵するものでございますし、この四次防というものは、三次防と比べてみると非常によくわかるのでございます。これは三次防の事実上の延長でございます。四次防の初年度であることしの防衛庁の費用が八千億でありますから、これを五カ年間そのまま延ばすと五、八の四兆円でございます。それに六千三百億円というものをまずおおよそのめどとして付加しておるということでございまして、内容をしさいに見ていただけると、これはもうこの程度のものは最小限必要であるということが御理解いただけると思いますし、この程度のものを持っていることで、アジアの国々が脅威を感ずる、そんなことはありません。そんなことは絶対ありません。
 なお、なぜこれほどの軍備増強をするか、日本に対する脅威の実体とは何かとか、自衛力の限界を示せ、兵器国産化は産軍複合体の危険がある、兵器輸出禁止法をつくったらどうか、こういういろいろな御指摘をいただきましたが、わが国国防の基本方針は専守防衛を旨とするものであり、四次防は、アジアの緊張を高めるような軍拡や軍備増強の計画では全くないということは先ほど申し上げたとおりでございます。現在、わが国に対する差し迫った侵略の脅威は存在せず、わが国をめぐる情勢は好ましい方向に進んでおります。しかし、限定的な武力紛争の生ずる可能性を否定することはできないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。四次防は、わが国が自衛のために必要とする最小限の防衛力を整備していく過程のものとして策定したものでございまして、防衛の限界を定めなければ計画の立案ができないという性質のものではないわけでございます。
 しかしながら、わが国の防衛力は、一次防以来の各防衛力整備計画によって逐次充実されており、今後どこまで伸びるかという問題に答える必要はあると思いますので、おおよそその整備目標を検討するよう防衛庁に指示をしてあるわけでございます。
 それから産軍複合の問題でございますが、わが国の工業生産に占める防衛生産の比率はわずかに〇・四%でございます。そういう意味から考えまして、まあ飛行機等の別な部分は別でございます。防衛庁生産以外にない飛行機のシェア等は別にしまして、防衛生産と純工業生産というものとの比率を考えると、〇・四%というものであって、世界各国等の例に徴してもこれが産軍癒着というようなものでないということはもう申すまでもないのでございます。(拍手)
 それから、兵器輸出禁止法案というものの提出ということは、間々問題になっておる問題でございますが、兵器は輸出しないという三原則を十分守っておりますので、その後、法律案として必要があるかないか、これはまた状態を見てまいらなければならない問題だとして御理解をいただきたいと思います。
 政府は、沖繩国会の決議に基づき、基地の整理縮小に取り組むべし、御指摘のとおりでございまして、過去長いことかかって、皆さんの御協力も得て、基地はだんだん整理縮小、合理化の段階になっておるわけでございます。この後も整理統合につとめてまいりたい、こう思います。真剣に整理縮小のために関係各省で検討し、また米軍とも相談をしてまいりたい、こう思います。
 それから経済政策の問題についてでございますが、まず、経済政策の根本的な問題を申し上げますと、いままでは確かに御指摘のとおり生産第一主義といわれてもやむを得なかったんです。それは、三十年代の国民所得の状態や国民総生産の状態を見れば数字的に明らかでございます。初任給八千円などという問題が国会で大きく問題になったのでございます。まず生産を上げ、給与を上げなければならない、こういう大きな大前提がありましたので、国民所得増大のためには、やはり生産を前面に押し出さざるを得なかったわけでございます。しかし、その結果、ようやく国民所得は西欧諸国と比肩するような状態になったことは御承知のとおりでございます。そういう意味で、生産については生産第一主義から生活第一主義に、重化学中心工業から知識集約的な工業に移らなければならない、こういうことを政府は大きく国民の皆さまの前に押し出しております。ただ、そういう過程における社会福祉の問題は西欧に比べて非常に少ないじゃないか、そのとおりであります。
 社会福祉というのはどういうことかというと、まず国民所得を上げることが第一であります。その次には、生きていかなければならない、生活していかなければならないという前提に立つ社会資本の不足を補い、われわれの生活環境を整備をするということが第二なのであります。そうして第三は、必然的に社会福祉の拡大へとつながっていくのであります。われわれは、しかし、いま第一の国民所得の平準化というものをなし遂げつつございますが、まだ自分の家の問題やいろいろの問題とあわせて社会保障を向上せしめておるのであります。その意味で、社会的蓄積の多い西欧諸国に比べて、いま社会保障費が低廉であるということは、いままで事実でございますが、今度は先ほどから御指摘にありますように、国際収支も黒字でございますし、ようやくわれわれもこれから本腰を入れて社会保障と取り組めるような前提ができたというのであります。成長を確保せずして、所得を確保せずして、その前提がなくて社会保障の拡大ができるはずがありません。(拍手)
 そういう意味で、これから社会保障の理想的な姿を描き、強力に進めなければなりません。(拍手)
 まず、御指摘がございました、西欧より低いが、西欧並みにするために全力を傾けるかということでございますが、当然のことでございまして、ある時期には西欧を上回るように、地球上の最大の目標に向かって努力を進めなければなりません。(拍手)しかし、ここで申し上げるのは、社会保障の拡大は必ず生産の向上、国民所得や国民総生産のコンスタントな向上というものを前提にしていくから、初めて大きな理想的な社会保障体制ができるのだということをひとつ十分御理解いただきたい。
 それから社会保障に対して年次計画をつくるか。これはつくらなければなりません。ただ、ここで、与野党を問わず申し上げておきたいのは、やはり西欧諸国の社会保障を見ましても、イギリスの社会保障でもフランスの社会保障でも、その国の状態を見まして、必ずしも日本がそのまままねができるものでないということは御理解いただけると思います。日本には日本に最も理想的な社会保障が確立されなければなりません。
 そういう意味で、私は昭和六十年展望に立った全国の列島改造論を前面に押し出し、理想的な青写真をかいて、それを前提にして社会保障の年次計画ができ上がるということを申し上げておるのでございますから、まじめに御検討賜わりたいと思います。(拍手)
 それから、老齢年金の拡充を来年重点的に行なうということは先ほど申し上げましたが、竹入さんは、年金の引き上げは明年から大幅に引き上げるのではなく、昭和六十年から実効をあげるのだというふうに御指摘ございましたが、これは明年からできるだけ年金は引き上げていくということでありますので、この点はひとつ誤解のないように御理解を賜わりたい。
 それから、公害問題につきまして申し上げますと、公害は、これはもう公害を除去するためにいろいろな政策を行なっておるわけでございます。私は、公害問題はこの二、三年間急に大きな問題になってきたわけでありますが、先進工業国と比べて日本は、制度、いろいろな問題に取り組むに対しては非常に積極的であるということだけはいい得ると思います。ただ、先ほども申し上げましたように、東京、大阪、名古屋というような拠点に過度に集中をいたしておりますのと、四日市やいろいろな過密な新しい拠点に複合公害というものが起こっておるのでございますので、このような轍を踏んではならない。いま過密のものは地方にだんだんと疎開をしなければならないし、新しいものは新しい立地によって建設をしなければならない。そして工場がふえることが公害の拡散だなどと考えておることは、もう問題にならない議論であります。(拍手)それは、工場をつくれば全部公害の拡散だという考えで、もうそれは論議以前の論議でございます。(拍手)それは公害基準、立ち入り検査というようなものを強くすることによって公害は防除できるのです。また、公害は防除しなければならないのであります。だから、排出基準をきびしくすることによって、そして工場法をつくる等によって、環境は整備され、公害のない生産は拡大をするのであります。(拍手)
 また、無過失賠償責任制度につきましては、民法の過失責任の例外をなすものでございまして、無過失責任を典型公害のすべてに適用するかどうかにつきましては、今後引き続き検討してまいりたいと存じます。
 それから、御指摘ございました自動車の排気ガス規制につきましては、規制の抜本的強化をはかる方針であり、昭和五十年度以降、世界で最もきびしいアメリカのマスキー法による規制と同程度の規制を行なうことといたしております。したがって、自動車メーカーに対しては、その方針に適合する自動車を早急に実現させるよう、今後さらに一そう指導、助成を強化してまいりたいと存じます。
 土地問題について申し上げますが、最近の金融緩和を背景として法人による投機的な土地買い占めが進行しております。このような投機的土地取引を抑制するため、税制上の処置については現に検討いたしております。
 それから、全国の土地利用に対する基本法をつくれということでございますが、これはもう一日も早くつくらなければならぬのでございます。これは都道府県知事及び市町村長を中心にして全国土地利用計画ができるとすれば、土地の供給量はぐんとふえるわけでありまして、そういう根本的、抜本的な制度が土地問題の最も基本にある政策でなければなりません。その意味で、全国的土地利用計画に対する基本法の制定に対しては、皆さんの御意見も十分しんしゃくをいたして早急に立案をはかってまいりたい、こう考えます。
 それから、土地投機を行なった法人の利得を制限するようにというような問題、これは税制上の問題について可能な限り措置をすべくいま検討をいたしておるのでございます。
 それから、千平方メートル、すなわち三百坪以上の土地の売買を禁止するという一つの提案、これは提案として理解できますが、ただ反面、土地の取引件数や面積から見て、これをやるとすると膨大な機構と予算、人員を伴うという問題もありますので、かかる問題は慎重に検討してまいらなければならない問題だと思います。
 それから、道路、公園、学校等の公共用地につきましては、本年の十二月一日から公有地の拡大の推進に関する法律が適用をされ、先買い制度が施行されるわけでございますので、効力を発すると思います。土地の保有税等に対しても、いま鋭意検討いたしております。
 それから、物価の問題に対して申し上げますと、卸売り物価は確かにこの二、三カ月、対前年比上昇しております。ただ、内容をしさいに検討しますと、先ほども申し述べましたように、鉄鋼、繊維、それから木材等でございます。鉄鋼は、カルテルの問題がございますので、このカルテルをどうするのか。これはもう、当然この問題は処置しなければならない問題である。また処置することによって、いまの消費者物価にはね返っておる面は十分是正できるという考えに立っております。それから繊維及び木材は海外市況の影響でございますが、これは処置できるという立場に立っております。しかし、卸売り物価がいままで世界に類例のない横ばいを続けておったにもかかわらず、一面ではございますが、このような状態になっておる現況に徴し、推移を十分注視をしながら適切なる処置をとってまいりたい、こう考えます。
 それから公共料金の抑制、これはもう厳に抑制をしてまいりたいというのが答弁でございますが、ただ問題は、公共料金というようなものは普通から言うと応益負担が原則でございます。応益負担が原則であるものを一般会計でまかなうために、市町村のバスや鉄道の赤字を全部一般会計でまかなうために、ほんとうに市町村や国がなさなければならない業病とか重病とか難病とかいうものの患者を全部引き取るようなところに金が回せないというようないろんなものがある。だから、限られた予算の中で効率的に行なうにはおのずから取捨選択をしなければならないことは言うまでもありません。そういう意味で、公共料金の全面的ストップというのは政治姿勢としては当然貫かなければならないことでございますが、しかし、政府や地方公共団体が当面して国民に果たさなければならない責任というものの中で取捨勘案せられるものであるということは、ひとつ十分御理解をいただきたい、こう思います。
 管理価格の規制に対して法制化を行なってはどうかという御指摘でございますが、本件に関しては、独禁法等の運用によって十分配慮してまいりたいと存じます。
 最後に、調整インフレの回避の問題でございますが、調整インフレとは学問的なものでございまして、いま調整インフレ政策をとるなどということは全くありませんので、御懸念のないようにいただきたいと思います。
 円対策は不十分ではないか。今度の国会のほとんどの使命は国際収支対策でございます。この法律も、この御審議をいただいております予算も、ほとんどが円対策、国際収支対策といっても過言ではありません。しかし、去年の七月の七項目、八項目、今度の対策等、相当努力をしてまいったわけでございますが、ほんとうにこれが万全であって、すべての国際収支対策になるのかということでございますが、全力をあげていまの時点において最善のものとして御審議をお願いしている、こう申し述べる以外にありません。しかし、われわれは、四十八年度予算編成に際しても、この国際収支対策というものが、お互いが望ましい日本、国際社会環境にあって最も信頼される日本とならなければならないと言っておりながら、この国際収支対策が万全でなければ、すべてが水泡に帰するという状態でございますので、困難な問題ではありますが、これは両三年の間にGNPの一%以内に経常収支の黒字幅を押えられるまでは精力的に政策を進めてまいらなければなりません。しかし、自由化や関税引き下げに対しても、たいへんめんどうな問題があります。その意味では、与野党を問わず事実の上に立って御理解を賜わりたいと思うのでございます。(拍手)
 それから、国際分業や産業調整という問題にお触れになりましたが、これはほんとうに重要な問題、日本の産業構造そのものをほんとうに根本的に考えないと、ほんとうの国際収支対策にはならないということは、もう御指摘のとおりでございまして、政府も在野の英知を結集して、この問題に対しては勉強してまいりたいと思います。
 最後に、政治資金規正法の問題でございますが、成田君にもお答えを申し上げました。政治資金規正法改正の問題については、政党政治の消長、わが国の議会制民主主義の将来にかかわる重大問題でありますが、幾たびか改正法案が国会に提案され、廃案になった経緯があることは周知のとおりでございます。先ほど申し上げましたが、重大な問題だからもう一ぺん同じことを申し上げておるのです。
 これを今日の時点に立ってみますと、金のかかる選挙制度、あるいは政党のあり方をそのままにして、これを具体化することにいろいろと無理があることを示しているように思われるのでございますが、お互いがくふうをすることによってはその方法も見出し得るものと考えられるのでございます。特に現在、政党本位の金のかからない選挙制度について、選挙制度審議会が鋭意審議いたしておるときでありますので、このような情勢を踏まえ、徹底した検討と論議を積み重ねてまいりたいと考えます。
 以上。(拍手)
     ――――◇―――――
#12
○浜田幸一君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明三十一旧午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#13
○議長(船田中君) 浜田幸一君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時三十二分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  田中 角榮君
        法 務 大 臣 郡  祐一君
        外 務 大 臣 大平 正芳君
        大 蔵 大 臣 植木庚子郎君
        文 部 大 臣 稻葉  修君
        厚 生 大 臣 塩見 俊二君
        農 林 大 臣 足立 篤郎君
        通商産業大臣  中曽根康弘君
        運 輸 大 臣 佐々木秀世君
        郵 政 大 臣 三池  信君
        労 働 大 臣 田村  元君
        建 設 大 臣 木村 武雄君
        自 治 大 臣 福田  一君
        国 務 大 臣 有田 喜一君
        国 務 大 臣 小山 長規君
        国 務 大 臣 二階堂 進君
        国 務 大 臣 濱野 清吾君
        国 務 大 臣 本名  武君
        国 務 大 臣 増原 恵吉君
        国 務 大 臣 三木 武夫君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 吉國 一郎君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト