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1971/03/10 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 科学技術振興対策特別委員会 第3号
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1971/03/10 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 科学技術振興対策特別委員会 第3号

#1
第068回国会 科学技術振興対策特別委員会 第3号
昭和四十七年三月十日(金曜日)
   午前十時十二分開会
    ―――――――――――――
  委員の異動
三月十日
   辞任          補欠選任
    中村 利次君      向井 長年君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         渋谷 邦彦君
    理 事
                津島 文治君
                平島 敏夫君
                辻  一彦君
                矢追 秀彦君
    委 員
                江藤  智君
                長田 裕二君
                剱木 亨弘君
                源田  実君
                小林  武君
                沢田 政治君
                森 元治郎君
                向井 長年君
                星野  力君
   国務大臣
       国 務 大 臣  木内 四郎君
   政府委員
       科学技術庁長官
       官房長      井上  保君
       科学技術庁計画
       局長       楢林 愛朗君
       科学技術庁研究
       調整局長     千葉  博君
       科学技術庁原子
       力局長      成田 壽治君
       環境庁自然保護
       局長       首尾木 一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        渡辺  猛君
       常任委員会専門
       員        菊地  拓君
   説明員
       原子力委員会委
       員長代理     有澤 廣巳君
       原子力委員会委
       員        山田太三郎君
   参考人
       原子炉安全専門
       審査会会長    内田 秀雄君
       原子炉安全専門
       審査会委員    渡辺 博信君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事の辞任及び補欠選任の件
○参考人の出席要求に関する件
○科学技術振興対策樹立に関する調査
 (昭和四十七年度科学技術庁関係の施策及び予
 算に関する件)
 (原子力発電の安全性に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(渋谷邦彦君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。
 理事の辞任につきましておはかりいたします。
 大矢正君から、都合により理事を辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(渋谷邦彦君) 御異議ないものと認め、さよう決定さしていただきます。
 この際、理事の補欠選任を行ないたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(渋谷邦彦君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、理事に辻一彦君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(渋谷邦彦君) 参考人の出席要求に関する件についておはかり申し上げたいと思います。
 本日、科学技術振興対策樹立に関する調査のため、原子炉安全専門審査会会長内田秀雄君及び同審査会委員渡辺博信君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(渋谷邦彦君) 御異議ないものと認めます。
 なお、手続等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(渋谷邦彦君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(渋谷邦彦君) 科学技術振興対策樹立に関する調査を議題といたします。
 まず、木内科学技術庁長官から、科学技術振興のための基本施策について、その所信を聴取することといたします。木内科学技術庁長官。
#9
○国務大臣(木内四郎君) 第六十八回国会にあたり、科学技術庁長官としての所信を述べさせていただきます。
 戦後の四半世紀を通じて、わが国は目ざましい経済成長と、これによる豊かな国民生活の実現につとめてまいりましたが、その原動力として科学技術が大きな役割りを果たしてきたことは申すまでもないところであります。
 科学技術の発展は、経済社会構造の高度化の基本的条件であるとともに、環境を保全しつつ未知の領域を開拓し、人類の夢を実現するためにも不可欠の要因であります。
 今日、私どもは、対外的には激動する国際社会への適応、対内的には環境問題、都市問題の深刻化等の諸問題の早急な解決に迫られておりますが、このような情勢に対処いたしまして、わが国の繁栄と、より豊かな国民生活の確保をはかっていくためには、人間尊重の基本的理念にのっとり、科学技術振興を強力に推進していくことが、まさに現下の緊要な課題であると言っても過言ではないと思うのであります。このような観点に立ちまして、私は、昭和四十七年度において、次のような諸施策を推進してまいる所存であります。
 第一は、科学技術振興基盤の強化であります。
 わが国の科学技術を総合的、計画的に推進するため、科学技術に関する基本的な計画の策定の一環として、研究開発目標の体系化をはかることにつとめるとともに、研究公務員の処遇改善等、研究環境整備のための施策を引き続き推進してまいる所存であります。特に、現在、研究環境の画期的な向上をはかることを目的といたしまして、筑波研究学園都市の施設が進められておりますが、科学技術庁といたしましては、無機材質研究所等関係研究機関の移転等をはかるほか、科学技術に関する総合調整官庁としての立場から理想的な研究環境が整備されるよう、その建設に力を尽くしてまいる所存であります。さらに、広く国民の科学技術に対する正しい理解を得るため、科学技術の普及啓発活動の強化につとめてまいる考えであります。
 第二は、原子力の開発利用の推進であります。
 近年におけるわが国の原子力開発利用の急速な進展、濃縮ウランをめぐる国際情勢の展開等にかんがみ、次の施策を重点的に推進してまいりたいと考えております。
 まず、新型動力炉の開発につきましては、高速増殖炉の実験炉の建設を昭和四十九年臨界を目標に推進し、同原型炉の建設の諸準備を進め、また、新型転換炉の原型炉の建設を昭和五十年臨界を目標に推進いたしてまいる考えであります。
 次に、ウラン濃縮技術の研究開発の推進、国際濃縮工場計画への参加についての検討、海外ウラン資源の調査の促進、使用済み燃料の再処理施設の建設等、適切な核燃料サイクルの確立を目途とする核燃料政策を総合的に推進する所存であります。
 また、原子力開発利用に欠くことができない原子力施設の安全対策及び環境汚染防止対策に万全を期する所存であります。すなわち、反応度事故実験研究を新たに開始し、冷却材喪失事故実験研究を推進するとともに、放射性廃棄物の海洋投棄の安全性を確認するため海洋調査を実施するほか、原子力施設の多数所在する地域における連絡体制の強化をはかる等、万全の措置を講じてまいりたいと考えております。
 これらのほか、原子力船「むつ」の海上運転を開始し、食品照射、核融合等に関する研究を一そう推進するとともに、沖繩の本土復帰に伴い、沖繩における放射能調査体制の整備につとめてまいる所存であります。
 第三は、宇宙開発の推進であります。
 宇宙開発につきましては、宇宙開発計画に基づき、昭和五十年度打ち上げを目標に技術試験衛星I型の開発を、昭和五十一年度打ち上げを目標に技術試験衛星U型の調査検討を進めることとしております。また、これら人工衛星打ち上げのためのNロケットにつきましては、第一段の製作に着手するとともに、第二段等上段ロケットの開発を引き続き進めることといたしております。このほか、打ち上げ施設、試験管制施設等の整備をはかるとともに、宇宙開発長期ビジョン、気象衛星等、実用衛星開発計画の策定に必要な調査の充実並びに国際協力の強化をはかる所存であります。
 第四に、海洋開発につきましては、海洋開発の総合的推進の要請にこたえ、海洋開発審議会において海洋開発推進の基本的方策について審議を進めるとともに、科学技術庁内の開発業務体制の強化及び昨年十月発足いたしました海洋科学技術センターの拡充強化をはかる考えであります。また、海中作業システムの確立を目的としたシートピア計画について水深六十メートルにおける海中居住実験を行なうほか、潜水シミュレーターの建造、潜水調査船「しんかい」の運用をはかる等の施策を推進いたします。
 第五は、国民生活に密接に関連する科学技術等の推進であります。
 わが国は、世界でもまれに見る高密度社会であるだけに、環境問題、都市問題等を解決するための科学技術を欧米諸国に先がけて、より強力に推進する等、真に豊かな国民生活の実現をはかるため、国民生活に密接に関連する科学技術の振興につとめていくことが重要であります。このため、環境、都市、防災等、社会開発関連科学技術の研究開発を推進するとともに、ライフサイエンス及びソフトサイエンスの振興に力を注いでまいりたいと考えております。ライフサイエンスは、生体機能の解明を通じて環境問題の解決、医療の充実等に資するとともに、今後の技術革新の芽となることが期待される分野であります。また、ソフトサイエンスは、公害防止、都市開発等、現代社会における複雑な政策課題の解明等に資するものであります。
 第六は、研究開発一般の推進であります。
 これまで述べてまいりました措置と並んで、基礎的共通的な研究を進めるとともに、独創的な新技術の開発を促進するため、新技術開発事業を一そう強力に推進し、情報化の進展に対処して科学技術情報の全国的流通システム構想の整備をはかるほか、最近の資源をめぐるきびしい情勢に対処し、資源の総合的利用方策の確立を目ざして調査研究を進めてまいります。
 また、科学技術に関する国際交流の重要性が一そう増大していることにかんがみまして、先進国との協力の拡充をはかるほか、アジア諸国をはじめ、発展途上国との科学技術協力を進める等、国際交流の強化につとめてまいる所存であります。
 以上、昭和四十七年度における科学技術振興施策の概要について述べてまいりましたが、これら諸施策を実施するため、昭和四十七年度政府予算案におきましては、科学技術庁分として、原子力開発のため約五百五十九億円、宇宙開発のため約百九十八億円、海洋開発のため約九億円等、総額八百八十九億円を計上いたしました。
 私は、科学技術振興の衝に当たる者として、その使命の重大性を十分認識し、いま申し述べました諸施策の実現を期して全力を尽くす決意でございます。
 ここに、委員各位の一そうの御支援と御協力を賜わりますよう、お願い申し上げる次第であります。
#10
○委員長(渋谷邦彦君) 次に、昭和四十七年度科学技術庁関係予算案について説明を聴取いたします。井上官房長。
#11
○政府委員(井上保君) 昭和四十七年度科学技術庁予算案について御説明申し上げます。
 昭和四十七年度政府予算案におきまして科学技術庁の予算案は、歳出予算額八百八十九億四千九百万円、国庫債務負担行為額二百七十六億九千百万円を計上いたしております。これを前年度当初予算額に比較いたしますと、歳出予算額百八十一億五千九百万円の増額となっており、その比率において約二六%の増となっております。
 次に、予算要求額のうちおもな事項につきまして、その大略を御説明いたします。
 第一に、科学技術振興基盤の強化といたしまして、歳出予算額九億一千百万円を計上いたしました。
 これには、まず、わが国における科学技術を長期的な観点に立って、計画的、かつ、総合的に推進するため基本的な計画策定の一環として行なう各種の調査検討に必要な経費並びに科学技術会議の運営をはかる経費など、四千六百万円を計上いたしました。
 また、研究・学園都市の建設の促進につきましては、無機材質研究所の高温合成実験棟の建設及び国立防災科学技術センターの大型降雨実験装置の整備などに必要な経費といたしまして、四億九千二百万円を計上いたしました。
 次に、科学技術の普及啓発活動の推進につきましては、科学技術映画の製作、科学技術功労者の表彰、原子力の平和利用及び宇宙開発その他一般の科学技術に関する国民の理解を深めるための広報活動を行なうほか、新たにテレビによる科学技術の普及啓発を行なうに必要な経費四千四百万円を含め、一億七百万円を計上いたしました。
 さらに、優秀な人材の養成確保をはかるため、国内及び海外への留学、研修及び国際研究集会へめ派遣などに必要な経費といたしまして、二億六千六百万円を計上いたしました。
 第二に、原子力開発利用の推進といたしまして、五百五十七億五千百万円と国庫債務負担行為額百三十四億八千万円を計上いたしております。
 まず、動力炉の開発につきましては、高速増殖炉実験炉及び新型転換炉原型炉の建設を進めるともに、高速増殖炉原型炉に必要な研究開発及びその建設のための諸準備を進めるため、動力炉・核燃料開発事業団の動力炉開発分といたしまして、三百十八億八千七百万円と、国庫債務負担行為額百十億六千万円を計上いたしました。また、同事業団の核燃料開発関係の業務といたしましては、ウラン濃縮の研究開発、海外ウラン資源の調査等を拡充強化するとともに、使用済み核燃料再処理施設の建設の促進をはかってまいります。
 以上のため、動力炉・核燃料開発事業団に対し、政府出資金及び補助金を合わせ総額三百八十億五千万円と、国庫債務負担行為額百十億六千万円を計上いたしました。
 次に、原子力第一船「むつ」につきましては、原子炉艤装を完了し、出力上昇試験及び海上公試運転を行なうとともに、定係港施設の整備、乗員の養成訓練等のため、日本原子力船開発事業団に対し、政府出資金及び補助金を合わせ十七億二千四百万円を計上いたしました。
 また、日本原子力研究所におきましては、新たに反応度安全研究装置等を設置して原子炉施設の安全性研究を強化するとともに、前年度に引き続き、ウラン濃縮、核融合、食品照射の研究開発及び各種原子炉の運転整備等に必要な経費として、政府出資金及び補助金を合わせ百二十四億四千九百万円と、国庫債務負担行為額二十三億六千五百万円を計上いたしました。
 さらに、放射線医学総合研究所におきまして医療用サイクロトロンの建設を進めるほか、国立試験研究機関等における原子力試験研究及び民間に対する原子力平和利用研究の委託など、合わせて二十八億四千万円を計上いたしました。
 このほか、安全対策の一環として、放射能測定調査研究及び新たに実施する放射性固体廃棄物の処分に関する海洋調査等に必要な経費として四億五千百万円を、また、核燃料物質の借り入れ、保障措置関連施策の強化等の行政費及び国際共同ウラン濃縮事業調査などに二億三千七百万円と、国庫債務負担行為額五千五百万円を計上いたしました。
 第三に、宇宙開発の推進につきましては、宇宙開発計画に基づき、ロケット及び人工衛星の開発を中心とし、これに必要な経費として百九十七億八千百万円と、国庫債務負担行為額百四十二億一千百万円を計上いたしました。
 まず、宇宙開発事業団につきましては、宇宙開発計画に基づくNロケット及び技術試験衛星I型の開発等を進めるとともに、種子島宇宙センターのNロケット打ち上げ関連施設の整備を行ないますほか、研究・学園都市に建設を行ないますロケット及び人工衛星の開発試験施設の整備などを行なうため必要な経費として、政府出資金、補助金を合わせ百八十二億六千八百万円と、国庫債務負担行為額百四十二億一千百万円を計上いたしました。
 次に、航空宇宙技術研究所における宇宙開発関連研究といたしまして、ロケットエンジン高空性能試験施設の整備など、基礎的、先行的研究に必要な経費として十二億一千三百万円を計上いたしております。
 第四に、海洋開発の推進につきましては、まず、海洋科学技術に関する試験研究、大型共用施設の設置及び運用、人材の養成等を行なう機関として昨年発足いたしました海洋科学技術センターに対し、高圧実験水槽の建造などに必要な経費として、政府出資金、補助金を合わせ三億一千九百万円を計上いたしました。
 また、海中作業基地の海中実験、潜水シミュレーターの建造、潜水調査船による大陸だなの調査等に必要な経費として五億八千五百万円を計上いたしました。
 第五に、国民生活に密接に関連する科学技術等の推進といたしまして、まず、特別研究促進調整費の活用をはかることとし、ライフサイエンス、都市科学、国土保全・産業保安技術及び基礎電子技術等の総合研究を実施いたしますとともに、不測の事態に対処し緊急に行なうべき研究の円滑な実施をはかるため必要な経費として九億五千万円を計上いたしました。
 次に、ライフサイエンスの振興といたしまして、前述の特別研究促進調整費九億五千万円のうちより一億八千万円の配分を予定しておりますとともに、理化学研究所における生体高分子及び顆粒の理化学的研究に必要な経費として八千五百万円を計上いたしました。
 第六に、研究開発一般の推進といたしまして、新技術開発、科学技術情報流通、国際交流及び資源の総合的利用方策の推進並びに試験研究機関の整備強化をはかるため九十二億三千八百万円を計上いたしました。
 まず、新技術開発の推進につきましては、新技術開発事業団に対する政府出資金、補助金を合わせて八億三千万円を計上することにより、研究開発委託契約限度額を二十億円に引き上げるなど、その業務の拡充をはかるとともに、発明実施化試験費の補助金として三千四百万円を計上いたしております。
 次に、科学技術情報流通の促進につきましては、科学技術情報の全国的流通システム構想の整備などに必要な調査費として一千二百万円を計上いたしましたほか、日本科学技術情報センターにおける内外科学技術情報の収集、整理、提供業務の充実をはかるとともに、新たに九州支所を設けるなど、これら業務に必要な経費として、政府出資金、補助金を合わせて十一億三千三百万円を計上いたしております。
 次に、国際交流の促進につきましては、欧州原子力機関の共同研究等への参加、東京で開催を予定いたしておりますアジア科学協力連合会議の実施、二国間の科学技術交流の拡充等のため一億三千七百万円を計上いたしております。
 次に、資源の総合的利用方策の推進につきましては、海外資源の長期安定確保に関する調査等、資源調査会を中心とする調査等を実施するとともに、資源調査所における基礎的調査の充実をはかりますため、一億五千三百万円を計上いたしております。
 最後に、試験研究機関の整備強化につきましては、六十九億三千九百万円を計上いたしましたが、これは、当庁の付属試験研究機関のうち、金属材料技術研究所の金属材料疲れ試験設備の整備、無機材質研究所の研究グループの増設及び研究用機器の整備、航空宇宙技術研究所の汎用飛行シミュレーターの整備並びに国立防災科学技術センターの地震予知の研究の実施等に必要な経費のほか、理化学研究所の研究運営等に必要な政府出資金及び補助金であります。
 以上、簡単でございますが、昭和四十七年度科学技術庁予算案のうち重要項目について、その大略を御説明いたしましたが、このほか、一般会計予算総則において、原子力損害賠償補償契約に関する法律第八条の規定による国の契約の限度額を三百十七億円に、また、使用済み核燃料の再処理工場の建設資金のうち、動力炉・核燃料開発事業団が借り入れる資金の一部につきましては、同事業団法第三十四条の規定により、政府が保証する債務の限度額を「元本金額五十四億円及びその利息に相当する金額」と定めることといたしております。
 以上でございます。
    ―――――――――――――
#12
○委員長(渋谷邦彦君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、中村利次君が委員を辞任され、その補欠として向井長年君が選任されました。
    ―――――――――――――
#13
○委員長(渋谷邦彦君) この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、原子力開発の安全性に関しまして本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。
 なお、御意見の聴取は質疑応答の形式で行ないたいと思いますので、御了承願いたいと思います。
 本調査について御質疑のある方は順次御発言を願います。
#14
○辻一彦君 私は福井の若狭地区の出身の辻一彦です。きょうは、過日安全審査委員会におきまして結論が出ました大飯原電、美浜原電、また、きのう原子力委員会で美浜原電についての委員会を行なっているのでありますが、そういう問題につきまして、私、若狭地区に国会議員が私しかいないと、こういうことで、住民の皆さん方からいろいろな御要望や御意見がありますので、それを代表して、また、全国の幾つかの関連する問題と関連しまして御質問いたしたいと思います。
 まず第一に、きのう原子力委員会が開かれていますが、一昨日の衆議院におきましても、原子力委員会の内容につきまして早急にひとつ報告してほしい、こういう要望があったようでありますが、まず、九日の原子力委員会におきまして、どういうような論議がなされておったか、こういうことを初めにひとつお伺いいたしたいと思います。
#15
○説明員(有澤廣巳君) 昨日の原子力委員定例会議におきましては、ほかの案件もございましたが、原子炉の安全審査の問題につきましては、一つは、高浜二号の改訂と申しましょうか、申請の改訂意見についてでございます。それから第二は、美浜原子力発電所の第三号炉の安全審査会の報告についての議題でございました。で、この二つの原子炉の一つは、すでに許可されたものをもう一ペん、申請の改訂がございましたので、その改訂について、美浜につきましては、これは安全審査会の報告につきましていろいろ検討を加えたわけでございます。美浜につきましては、安全審査会の安全であるという報告書について検討した上で、なお地元の関係でその他の事情をいろいろ審議した上、美浜の発電所の第三号炉はこれを認可すると、こういう決定をいたしました。
 それで大体時間がもう六時近くなりましたので、一応、大飯の発電所につきましては、これはいままでの経過の報告があっただけで、審査の内容には入らないで終わったわけでございます。したがって、大飯の原子炉につきましては、なお次の定例会議以降にこれを審議することに相なっております。
#16
○辻一彦君 まあ、大体の経緯はいま伺いました。
 そこで、御存じのように、お手元に資料も差し上げてありますが、その上の表を見ていただいても、これはもう、若狭湾に、現在建設中が三百万キロワット、それから大飯一号、二号、美浜三号を入れれば六百二十万キロワットに及ぶ非常に集中かつ大型になる、こういうことはもう十分御承知のとおりであります。そこで、一つ一つの安全もさることながら、これだけ世界的にも有名なほど原子力発電所が集中をする、しかも、アメリカで大飯百十七・五万キロをこえるのは百十九万キロ一基が五、六年後に建設をされ――このように集中化、大型化が行なわれている、そこに私は、一個の建設の問題よりも、さらに安全審査並びに原子力委員会におきましては、さらに広い社会的な環境についての十分な考慮が必要でないかと思うわけであります。
 そこで、実は、安全専門審査会のほうは、伺えば、これは独立して学問的な立場からやるのであると、こういうことを伺っております。それはあとで論議いたしたいと思うのでありますが、それはそれとして、私は、いま有澤委員の御報告を伺いますと、すでに三月六日に、大飯一、二号、それから美浜三号の安全審査の結果が出た、わずかに三日後に美浜三号の認可をするということを原子力委員会がすでに決定をされた、ということについて、まず第一に非常に問題があるのではないかと思います。
 といいますのは、これは昨年の九月二十九、三十日でありますが、ここにいまお見えになっていませんが、理事の平島さんを団長として参議院の科学特別委員会が若狭湾原電の視察を正式にいたしました。その二十九日の晩に美浜町の議会が緊急会議を開き陳情決議をし、そして議会を休会いたしまして敦賀の宿舎に私たちを訪問されて、陳情をいただきました。その中身は、十一月十七日の科学特別委員会の報告書の中に明らかにされております。それは、漁民に温排水の問題が非常に影響を与えるので、この十分な調査を行ない、その調査の結論が出るまでは新たなる炉の新設、増設は、これは認めないでほしいという陳情でございました。これは、そこに五名のわれわれ委員が同席いたしまして、そしてそれをお伺いをし、以来、昨年の十一月十七日の科学特別委員会、また十二月十六日、私は内閣委員会におきましてもこの問題を取り上げたわけであります。
 ところが、その後美浜町の議会のほうから、まあああいう陳情したのだけれども、様子がたいへん変わったのでひとつあれは御破算にしてほしいと、こういうことが私にお話がありました。聞いてみますと、まああまり私はその内部にわたるのはいかないと思うのでありますが、あそこに丹生という六十五戸の部落があります。この部落は、昨年漁民の皆さんが非常に問題にし、反対しておりましたが、突如、当時の企業であります関電側から大体一戸平均で六百五十万、全部で四億五千幾らかのお金が特別補償という形で全部に平均して渡された、そういうことで、とたんに漁民のこのいろいろな運動というものが、その部落においてはとんざをしたということがあります。ところが、そのとき、さらに特別な補償を町当局とその部落が交渉して約束をされた、その補償をするために、企業のほうから、これはいろいろ言われておるのでありますが、五億程度の特別な町村振興費というものが出されるので、それを引き当てにして補償したい、こういうこと。この三号炉は、ああいう陳情をしたのだけれども、様子が変わったので認めてもらいたいのだと、私にはこういうお話がございました。これは美浜の町議会の原電特別委員長、副委員長から二回にわたって私にそういう話があったわけであります。私は、この問題は皆さんの御陳情によって国会に三回にわたって正式に取り上げ、委員会の報告にも盛られて、そしていま環境庁、水産庁、科学技術庁によって若狭湾の温排水の調査が春から行なわれようとしている、そういう段階にあるときにこういうことを申し出られるということは非常に私は理解しがたいと、こう言ってお別れをしました。
 しかし、その後いろいろな状況の中で美浜町の議会は多数でもって三号炉の誘致を御決定になったようでありますが、私は、少なくとも原子力委員会というものは、こういう問題に対して、十分住民の動きや、そういうことを考えて、単に安全の問題が数字の上で安全であるかいなか、そういう問題でなしに、もっと広範なる社会的環境や、あるいは住民の問題を十分に考慮されるということが原子力委員会のあり方ではないか、こういうように思いますが、これらの経緯について、ひとつ有澤先生のほうからお考えをお伺いいたしたいと思います。
#17
○説明員(有澤廣巳君) 美浜の第三号炉の審議にあたりましては、私ども常にそうでございますが、原子炉の安全性については、むろん安全審査会の報告を十分尊重いたします。私どものほうで疑義がない程度に十分明らかにした上で安全性を確認するわけでございます。が、それだけで原子力発電所の設置を認可するというふうなことはいたしません。やはり、何と申しましても、原子炉が設置される地元の方々の御理解と御協力がなければ、これは長い間発電所を運転していくということもできなくなるわけでございますので、地元の住民の方々の納得といいましょうか、御了承を得た上で認可をするというふうな慣例をいままでとってきておるわけでございます。
 それで、美浜の場合におきましても、やはりそういう問題がむろんあったわけでありますが、実は県庁のほうにも、どういうふうになっているだろうかというので事情を聞きました。その結果は、もうその問題はすっかり片づいているので……。いまは住民の納得ということも、なかなか大ぜいの住民の中にはいろいろの意見をお持ちになる方が当然出てくるわけでございますので、そういう点から考えますと、住民の納得というふうな問題は、一つは、町で申しますならば町長、それから町議会、その上に県知事、この三者が大体設置については異存がない、まあこういうふうな状況になったときには、地元の大方の納得を得られたものと私どもは推定することにいたしてまいっております。今回の美浜の場合も、まさにそういうふうな条件が整っているわけでございまして、したがって、私どもはこれを認可するという決定にいたしたわけでございます。
 温排水の問題につきましては、これは一つの問題点でございましたので、私どももいろいろその点を検討いたしました。今回の第三号炉の温排水の出口は、いままでの一号、二号炉の温排水の出口とは全く方向の違った形に排水をされることになっております。それの大体の影響範囲と申しましょうか、温度の上昇する影響範囲も、おおよそ私どものほうにも提示されております。したがって、その点はわりあいに局部的なことになるわけでございますけれども、その局部的ではありますけれども、そこでは温度が一度程度上がるということもあり得るわけでございますので、そういう問題につきましては関電のほうで漁業権に補償をするということで、その点も了承されている、こういう話でございましたので、以上まあいろいろ勘案の末、美浜三号炉の認可をいたすことにいたしたわけでございます。
#18
○辻一彦君 私は、原子力委員会の皆さんが、少なくも国会における科学特別委員会、あるいはそういう問題を扱ったほかの委員会の記録等には十分目を通しておられると思うわけであります。そうすれば、かなりそういう問題がまだ解明されていない、こういう状況の中で、たった三日間くらいの間を置いてすぐ結論を出されるということは、どうも納得ができないと思いますが、そういう問題について、これはあとで私はいろいろとこの問題をお伺いしたいと思いますが、もう少しいろいろな広範な意見を聞く、公聴会等を開くとか、こういうことによって、いま私が申し上げましたような、皆さんの耳にまだ達していない、あるいは入っていない幾つかの問題がある、そういうことを十分考慮していただくということができるのじゃないかと思います。そういう公聴会等は、第一回以来、このコールダーホールのあれ以来、東海のあれ以来行なわれていないのですが、そういう問題についての必要性、あり方、こういうことを原子力委員会としてどういうふうにお考えになっているか、これもひとつお伺いしたいと思います。
#19
○国務大臣(木内四郎君) いまの御意見は、かねがね、たびたび伺っておりますが、私は前から申し上げましたように、原子炉の安全性ということは何にも増して優先して、まず考えなければならぬ、かように考えております。しからばその方法はどうかといえば、まず科学的に安全性を研究する。その科学的の安全性を確保しただけでは、しかし、足りない。さらに、いま有澤先生からもお話がありましたように、地域住民の理解と協力を得るのでなければ原子炉の開発というようなものを長きにわたって有終の美をおさめることはできない、そういうふうに考えております。
 そこで、いまその点につきましては、美浜の場合においては、かねてから――まあ、いまの温排水の問題がありましたけれども、かねてから大体地元住民としては賛成の意を表しておられまして、そこで、私どもはそういうことで地元の方々の御意見を十分に聞くことができた、かように考えております。
 そこで、温排水の問題は、一時それについて異議があったというお話がありますが、温排水の問題につきましても、これを科学的に見ますというと、ほとんど放射能というものの害はない、自然放射能よりもはるかに低い程度で、害がないということになっています。この問題は、一にかかって地元の漁業関係者との交渉の問題に、いつもこれまでゆだねられておりまするし、それで解決できる、かように考えておりまして、この補償の問題も解決したというので、全体として異議がないものと、かように考えて、この問題を進めていただいたわけであります。
#20
○辻一彦君 まあ私は、温排水の問題は、公聴会等の問題は、あとのほうで、もう少し論議をいたしたいと思いますので、いまこれに深く入ることをひとつ避けたいと思います。ただ、長官の言われるように温排水の問題も補償で解決できるという考え方には、海を買い取って、あとはどうでもいいのだ、こういう考え方には私は賛成できないと思いますので、その問題はあとで論議をいたしたいと思います。
 そこで、これはかなり昔にさかのぼるのでありますが、その資料にも、あとのほうにありますが、原子力損害の賠償に関する法律のできたときの附帯決議、国会におきまして、昭和三十六年五月十八日、これは衆議院のほうの科学特別委員会、また、参議院では商工委員会でありますが、原子炉の発電所の集中化を避けるべきであるという附帯決議が行なわれております。これは専門の皆さんを前にして言う必要はありませんが、普通の事故に比べて、もしも万が一にも事故があったとすると、それは普通の産業事故とは比較にならない問題が起きる。その点から、すでに国会においては、かなり前でありますが、集中化をしないようにという附帯決議がなされております。
 そこで、先ほど私は申し上げましたが、美浜の原電は、大飯が日本にいままでない大型の原子炉の問題であるとするならば、美浜は、一基、二基、三基と、同一地点に三基集中をするという、そういう点において、大飯と内容は違いますが、大きな問題を持っていると思います。そういう国会の集中排除の決議に照らしても、私は、この美浜に三基もいまつくられるということについて検討する原子力委員会において、安全審査会の結論が出て、たった三日の間、そして九日だけで結論を出される、こういうことについては十分な慎重な配慮が払われていない、こういうように思いますが、この点、いかがでしょうか。
#21
○説明員(有澤廣巳君) ただいまの原子炉の集中の問題でありますが、集中と申しますと、どの程度が集中で、どの程度が集中でないかということは、なかなか議論が分かれるところであろうと思いますが、私どもの審査といいますか、検討のときには、この三つなら三つの原子炉がそこにできる、それぞれ一基ずつは安全である、こういうことが審査会のほうで、すっかり調べられておりますが、なおその上に、この三つが運転をやるわけですから、その三つの炉の複合作用といいましょうか、複合影響といいましょうか、そういう観点も十分検討をいたします。これは安全審査会のほうでも十分検討いたしました。どれくらいの放射能がどの程度出るか、複合してどの程度になるか、そして最大の数字はどの程度になるか、こういうふうな審議も安全審査会のほうで十分してくださっておりまして、そのデータも出ております。でありますから、それらを十分勘案いたしまして、その集中の問題を考えていく。ですから、まあ放射線の点から申しますと、集中しますと、どうしても放射能が高まるおそれがありますから、そういう場合には、それぞれの発電原子炉に特別の、たとえばチャコールベッドとかいうふうなものをつけまして、一々から出る放射能を極力少なくするというふうな装置もつけております。そういうことがなくては、あるいは問題があるかもしれませんが、要するに、集中、あるいは三つが集まるときには、集まったときに、どういう複合的な影響が出るか、そのためには、どういうふうな放射能をなるべく少なく押えるような装置をしなければならぬか、また、最近は開発されてきておりまして、そういう装置をつけることによりましてその複合の影響を少なくする、そういう配慮が払われておるわけでございまして、そういう点を勘案いたしまして、三つ集まりましても、いまのところ、別に基準よりはるかに下回る放射能にとどまっている、こういうことになっております。
 それですから、集中化という点は、これが三つ集まっても――もっと容量の大きいやつの二つは、二つのほうが発電量としては大きくなるということもあり得るわけでございます。ですから、集中というのは、何といいましょうか、感じ的に言いますと何か影響がある、確かに影響はありますけれども、その影響がないようにした装置があるので、初めてそれが安全である、こういうふうに判断されてきておるわけでございます。しかし、どこまでも集中していいかということになりますと、これはまた別の問題でございますが、いまの美浜の場合につきましては、以上のようなことが言えると思います。
#22
○辻一彦君 開発された新しい技術に大きなクレジットを置いて信頼をされるということで、出てくる放射能がどんどん少なくなる、こういう論理でありますが、これは、あとで私はいろいろ論議をしてみたいと思うわけです。少なくとも、国会の附帯決議等の趣旨からかんがみれば、私は、かりに数字がそうであったといたしましても、もう少し時間をかけていろいろな問題を考えていただく、こういうことが原子力委員会のあり方でないか、その点を指摘して進みたいと思います。
 そこで、実は有澤委員は前に原子力賠償法等に非常に御熱意を持っておられたということを伺っておるのですが、たくさん原子炉ができますと、これはきょうの本旨ではないのでありますが、参考までにちょっと伺っておきたいのでありますが、やはりこれは一〇〇%の技術の信頼と絶対ということはあり得ないとすれば、万一のいろんな災害といいますか、問題を考えなきゃいけない。それに備えて私は保険があると思うのですが、原子力保険というもの、あるいは原子力損害賠償法というものは、どういう考えで今日あるのか。あまりこの問題には深く入りませんので、要点だけひとつお伺いしたい。
#23
○説明員(有澤廣巳君) 原子力損害賠償法におきましては、もう皆さん御承知のように、たてまえといたしましては、保険をかける、保険に入る。その保険が、現在、保険額六十億になっております。私どもはもっと保険額を大きくしてもらいたいという要望を十分持っておりますけれども、何ぶんにも、保険会社はこれを再保険に、ロンドンならロンドンの再保険市場に再保険しなければなりませんが、その再保険能力からいって、どうもいまのところ六十億以上はなかなかむずかしい。いずれ、アメリカにおきまして再保険市場がもっと拡大してまいりますと、その再保険能力がふえてまいりますから、もっとふやすことができるかと思います。それで、あとは国との補償契約があります。これは、地震その他の問題につきましては保険が見てくれませんので、政府、国のほうが補償する補償契約に入っております。ですから、六十億はまるまる保険で確保できますが、もし災害が起こりまして、さらにそれ以上の災害であるというふうな事態になりますと、今度は、これを原子力委員会におきましてその保険、損害額を査定しまして、それを政府に報告をいたします。政府はこれを国会に出しまして、国会の承認によってその災害に応じて政府のほうが賠償する、と言うと少しことばが簡単過ぎますけれども、政府のほうでそのめんどうをみる、まあこういうたてまえになっております。
 そこで、いまサイトに三つの原子炉があるといたします。そうしたときにも、三つになるからそれぞれ一つの炉について六十億というふうにはふえないで、サイトにおいていまの六十億、こういうことになっております。それだけに、まあ安全審査の場合におきましても、これはきょうは内田先生もお見えになっておりますから十分お話があるかと思いますけれども、一つ一つの炉につきましては十分でありますが、なおその上に最大事故――仮想事故と重大事故、この二つの場合を検討いたしまして、それで安全性を確かめておるわけであります。ですから、保険におきましては、以上申し上げましたように、サイトについて保険金額がきまっておる、こういうことでございます。
#24
○辻一彦君 そこで、六十億という額ですね、これを有澤委員は、もう少し大きくしたいと要望しておるが、再保険の関係でワクがあって大きくならない、こういうお話でありますね。そうなりますと、その六十億というのを大きくしたいというお考えでありますが、ということは、六十億をもっとこれは保険をかけたほうがいいということですね。そうなれば、その根拠に、六十億以下の場合どういった災害が起こると考えておるのか、あるいは六十億をもっとこえてたくさん災害が起こると考えているのか、この保険をふやしたいという中には、どういうことを想定されてお考えになっておるのか、そこらをひとつお伺いしたいと思います。
#25
○説明員(有澤廣巳君) 災害が起こるという場合ですが、いままで原子力発電所で、世界的に見てきまして、起こった災害は、イギリスのコールダーホールの場合ですと……、とにかく一億円以下程度の災害でございます。そのほかには、これといって大きな損害を発生するような事故はありません。ですから、われわれも原子力災害補償を議論をする場合には、もうほんとうにこれはあり得ないことだけれども、安心料といいましょうか、安心料のために災害補償の賠償の法律をつくっておこう。それで、大蔵省あたりは、そんなに安全なら、こんな法律をつくる必要はないじゃないかということを申しましたけれども、しかし、それでは万々が一起こった場合に、被害者について何の手当てもないというのは、これははなはだいけない。ですから、ほとんどない、全くないといってもいいような場合だけれども、その場合を予想して災害補償法、賠償法をつくるということで、これは賠償法の成立のときにそういうお話を申し上げたと思います。ですから、六十億をこえるような災害が起こるということは、ほとんどわれわれは予想していないところでございますが、しかし、いま申しました六十億よりももっと保険金額を大きくしたい、こういうことは、実は船との関係で、同じ船にも原子炉がありますし、陸上にも原子炉がある、その原子炉が船にある場合は、たとえば、これは国際条約でいきますと一億ドルということでございますから、三百六十億円になります。ところが、陸上にある原子炉は六十億というふうなアンバランスはおかしいじゃないかという議論があります。それもまた当然だと思います。ですから、賠償法として考えますときには、できれば船と陸上の炉について同じ程度のものにいたしたい、こういう発想でございまして、災害が起こる程度とか、そういうもので私どもはいまこの保険金額を多くしたいというふうに考えておるわけではありません。
 それで、外国のほうではいろいろの金額がありまして、イギリスはおそらく五十五億程度じゃなかったかと思います。また、アメリカのような国は、五億ドルというんですから千八百億円という金額にもなっておりますが、原子力船の条約につきましてはともかくも、陸上炉につきましては大体六十億円から百億円程度の間の賠償になっておる、こういう状態であります。
#26
○辻一彦君 ウインズケールの事故は一億円とかいま言われましたですね。まあ、幅十五キロ、長さ数十キロにわたって住民のいわゆる農業制限とか、いろんなことがあったわけですが、そういうものが、いま言われたように一億円であったかどうか、これは私ちょっとわかっていないので、もう一ぺんあとで確認をしていただきたいと思うのです。
 そこで、イギリスは、ああいう事故をいろいろ考えて、一九六五年に、四千三百万ポンド、これは、前の計算でレートを千円とすれば、四百三十億円になりますが、これだけの保険額を考えておりますし、あるいはアメリカは、いま言われましたように五億六千万ドルというように、まあ、あってはならない事故であるけれども、それは原子力船だけに限らず、このウインズケールの事故ですね、そういうものを体験として私は参考として出されておると思うんです。そういう考え方というか、やはり万一起こった場合、こういうことを私は考えておると思うんですよ。
 ところが、この敦賀原電から大飯原電に至るまで、いま安全審査会のいわゆる報告書を見れば、詳細はわかりませんが、ごく数字的に言えば、サイトといいますか、まあ半径六百から八百メートルの敷地の中にほとんど全部災害が入っちゃうと、だから、その外は何があったって心配はないんだという、大体大まかに言えばそういう見解なんでありますが、私は、いま言われたように、安心料ならどうでも五十億円、六十億円をもっと上げなきゃならぬという問題じゃなくて、やはり起こり得るいろんな場合に備えてそういう問題が必要じゃないかとすれば、片方で、サイトの中に、五、六百メートルから七百メートルの中に全部入って、外側には、若狭湾のように夏三百五十万人、まあ高浜の、あの大飯原電から五キロのところには、百四十九万人ですね、一夏に。それから土曜、日曜は二十数万の人がいるわけですが、そんなものは幾らおったって問題はないんだと、片方ではそういう考え方があり、片方では、まあ事故が起きた場合には、この保険はやはりかなりな額に上げていかなきゃならない、この中に非常に矛盾したものを考えるわけですが、その点はどうでしょうか。
#27
○説明員(有澤廣巳君) まあ、保険でございますから、保険事故というか、事故としての原子力事故、安全性の面から見ますと、これはもう内田先生からもお話が出ると思いますが、これはもう非常に安全であると、そして、重大事故と仮想事故の場合をちゃんと計算をしてみても、大体敷地の周辺のところで、敷地内のところで、放射能の許容量は、何といいましょうか、有意のある影響は終わる、なくなる、それ以上には及ばないと、これはそう出てくると思います。
 しかし、まあいまの重大事故と仮想事故という以外に、何か、もしあると、これはもう人知では考えられないんですけれども、何かあるということも、まああるということも考えて、その事故が想定されて、その事故に対して、いまのような保険を設定してあるわけです。ですから、まあ重大事故、そんな何十億円というふうな損害が起こるというようなことはほとんど考えられないと思います。ほとんどもう考えなくてもいいというと、大蔵省の言い分じゃないが、それなら賠償法を制定する必要はないじゃないかという議論になりますけれども、しかし、まあ何といっても人知をこえる何ものかがあったときにはまた事故が起こる、それによって起こるということになりますと、まあ敷地の外にも影響が及ぶこともないじゃない、そういう場合の補償というものはちゃんとしておかなきゃいけない、こういう考え方で、その事故というものは、いまの安全審査によって、重大事故と仮想事故を考えておりますが、何か人知以上、人知の及ばないような事故があったというときの用意だと私は考えております。ですから、その両者が、一方を大きくする、一方は安全にする、矛盾するということは、ある意味から言えば大蔵省の見解がその矛盾をついていると思います。それでは、なくていいかと、こういうことになりますと、やはり、なくちゃいけない。ですから、まあこの賠償法は、無過失責任で、事業者といいましょうか、むしろ設置者に全部の責任を負わせる、こういうことになっておると私は理解しております。
#28
○辻一彦君 まあ、その人知を越えるかどうか、その人知の、そこに問題がこれからあるわけですよ。だから、私は、まだまだ人知をしぼらなければならぬので、そう安心はできないと思うのです。ただ、アメリカの、いわゆるサイトの外に、なるべく人の住まない低人口地帯を排除区域の外に設けるというようなものは、そういう場合を、最悪の最悪の場合を考えた配慮であると私は思うのですね。そういうことが、いまいろいろ調べてみると、日本のほうではほとんど考えていない、こういう問題があります。
 この問題に私は入りたいんですが、ちょっと関連があるようですから、どうぞやっていただきたいと思います。
#29
○小林武君 関連。あとで質問の時間がありますけれども、別なことになりますので。
 これ、あれですか、有澤先生、この六十億円という金、災害を予想して多いとか少ないとかという根拠が、ぼくははっきりしないんですよ。たとえば、水俣病が出た場合に一千万円、とにかく、のたうち回る病人がもらった。そのことが、一千万円が高いとか安いとかという議論もあるし、また、それよりかもずっと低いものもある。そういう計算で、私は、あの六十億円あれば事足りるとか、いや、そんなに金は要らぬとかということであるならば、これは重大な問題だと思うのです。それはもう金でかえられるという、人の命、身体的異常を来たして苦しむ、そういうものが金で解決できるという考え方でいけば、それは幾らでもいいのです。六億円でも五千万円でもいいということになるかもしれぬ。私は、そういう考え方は根本的に間違いじゃないか。そういう計算は大蔵省的発想で、原子力委員会を代表する有澤先生からお聞きするということは、まことに私は心外な気持ちがする、こう思うのですがね。
 それと、もう一つ、私は非常に危険だと思うことは、私も労働組合に多少いろいろな人を知っているわけですが、原子力関係の労働者の中に、危険だと思う者が一人もいないという話を聞いたことがあるのです。労働者自体が危険性というものを一つも感じない。そのときに私は非常に危険性を感じた。労働者の皆さんが一つも危険性を感じないというような考え方に立っているときこそ非常に危険だ。国民という立場で考えた場合には、これはたいへんな問題だと考えたのですが、どうもその二点について、原子力委員会というものが、いままで聞いた限りにおいての御答弁だというと、非常に国民の気持ちに立った、あるいは民族全体に対する責任あるものの考え方というのがない、こういうように考えますが、どうですか。
#30
○説明員(有澤廣巳君) ただいまの御質問の第一の点でございますが、確かに、もし被害を受けた人々にとっては、なかなか金でかえられるというふうな問題ではありません。それだからこそ、原子炉の安全性、これは、事故時の場合も平常運転の場合も人体に対して影響がない、こういう目安をもって安全性の審査をいたしております。ですから、その点では、人知を尽くして、私の言い分で申しますと人知を尽くして安全性――安全性というのは、いまの事故の場合についての安全性のことですが、それから平常運転において生ずるいろいろの放射能障害というか、影響というものにつきましても、安全性を十分に確かめてやってきておるわけです。で、いまの災害賠償法というのは、いまも申しましたように、人知を越える、いまのとても全然わからないような何らかの理由によって災害が起こった場合には一体どうするのか。その場合にも、むろん災害は人身の災害もありましょうし、財産的な災害もありましょう。ですから、まあ人身的な災害につきましては、そういう場合には、たとえば早く退避をするとかということによって、ある程度避けることができると思います。が、財産はとても持って逃げていくというわけにはいかぬかもしれませんので、財産についても賠償をいたします。そしてまた、人身につきましても、何か放射能で障害を受けた、そうなったときには入院もしなければいけない。いろいろありましょうから、それに対する災害補償をする。その必要は私はやっぱりあると思います。その賠償法の精神が災害を起こしていいということを前提にしているわけじゃない。災害を起こしちゃいけない、こういうことを前提にしております。ただ、毎度を変えてみますと、もし何らかの予想できないというか、人知の外にある理由によって、もし災害が起こった場合に一体どうするかという、そういう措置でございます。ですから、そこをひとつ十分御理解を願いたいと思います。
 それから第二の問題点でございますが、いまのお話では、従業員、これは原子力施設に従事しておる従業員のことだと思いますが、その従業員には危険の意識が全くない、まあ麻痺してきている、最初あったかと思いますけれども、近ごろは麻痺してきているという御指摘でございます。これは、確かに御指摘のように、もしそういうことでありますれば、たいへん危険だと思います。ですから、実は原子力施設の中にもちょいちょい少さい事故があります。その小さい事故が起こるたびに、私どもは、小さいけれども、どうしてそういう事故が起こったか、あるときには、びんを取り落としたとか、あるいはふたをあけっぱなしにしてあったとか、そういうふうな、まあ小さい事故でございますけれども、そういう事故がどうして生じたかということは十分、何といいますか、追及いたしまして、そうして、今後そういうことが起こらないように配慮を加えております。それは、要するに、そろいう小さい事故が、まさに御指摘のように、事務といいましょうか、その仕事に慣れてきている、その慣れが引き起こしている事故が多いようでございます。ですから、その点は、御指摘のように、私どもも今後一そう、そういう慣れによる事故というものは非常におそろしいのでございますので、それは十分注意をして、厳重に、慣れにかかわらず、細心の注意をして、事務、仕事に当たっていくように、警告するといいましょうか、管理体制を厳重にしていきたいと、こういうふうに思っております。
#31
○小林武君 一言だけ。意見がまるきり違いますから。
 私は、人知を尽くして審査をやり、原子力委員会でそれを検討いたしましたから絶対間違いないという考え方には立っておらないのです。人知を越えたような問題は、原子力よりかも、もっと十分きわめ尽くされたような分野においていろいろな問題が起こっているわけですよ。これはそうでしょう。水俣の問題だって、絶対にそんなことはないというような主張がありましたにもかかわらず、起こっているでしょう。イタイイタイ病であろうが、そうでしょうし。だから、人知を尽くしてやったのだからいまはもう絶対安全だというたてまえに立つほど、原子力問題については、ないということです。それほど、日本だけはそういうたいへんけっこうなところまで到達したかもしらぬけれども、よその国ではそういうことまで考えておらないというふうに私は見ている。だから、たてまえが違います。有澤先生は、人知を尽くしたのだから絶対に起きないと、しかし、間違って起こったときというのは、まあ間違ったというか、きわめて何か希有のことで起こったというようなことをおっしゃると思いますけれども、これは立場が違いますから、私はその立場の違うところだけを申し上げて、質問を終わります。
#32
○辻一彦君 私も、いま小林委員の言われた人知を越える云々の問題に関連して質問していきたいと思います。
 私は、まだ、人知を尽くしてすべては絶対安全であると、まあ絶対という表現は使わないにしても、だいじょうぶだと、こういうようには言えないと思うのですね。しかし、有澤先生流の人知を尽くしたとしても、しかし、私は、たとえばアメリカは、計算ではかなり狭い範囲に排除区域を設けるにしても、その周辺に必ず余裕をやっぱりとっていると思うのですよ。そういうようなのは、まあ、先生の言われる人知を尽くしてもなお起こり得る非常の場合に備えるという態度だろうと私は思うのです。
 そこで、その論議に入る前に、十一月の十一日に関東ロームのがけくずれがありましたですね。あのときに、私はそのあくる日に質問して、資料を科学技術庁に要求して、ここに提出されたその控えがありますけれども、これをちょっとごらんいただきたいのですが、皆さんに差し上げた資料の中にあります。そこに図面と、それから科学技術庁のほうから私の質問に対して五点の答えが出ておりますが、それをちょっと見ていただきたいのですが、その図を見ると、この左のがけのほうに一定の水を計算をして流して、それによって土がくずれていくと、こういうことを実験されたわけです。実際に実験に際して計画された土砂の数量は幾らか、それに対して、当時の推定でありますが、約百立方メーターと推定したと。二は、実際に流出した土砂の量は幾らか、約二百三十立方メーターと推定される。しかし、泥水になって五百立方メーター前後と考えられる。第三に、安全線はがけ下何メーターに設定したか、安全線は集水柵のところであって、がけ下から二十八メーターに設定をしている。それから第四に、流出した土砂はがけ下何メーターまで流れたのか、がけ下から約五十五メーターまで流れて人間を埋め込んでしまった。そこで第五に、それでは科学技術庁の観測小屋、器材倉庫、そういうものがどこに置いてあったか、報道陣はがけ下何メーターに位置したか、器材倉庫はがけ下から三十三メーター、報道陣の大部分はがけ下から二十八メーターと三十三メーターの間に位置していたと。したがって、五十五メーターまで土砂が流れたのでありますから、人間がみんな埋まったというわけですね。この計算は、まあ長官は、私が質問したときに、それは予想外のことが起こりましたということでありますが、十分日本の土木学者、数学者、工学者等が、まさに先生の言われる人知をしぼって計算し計算し抜いて、これだけの水を流せばこれだけの土砂が出ると計算して、その結果、安全線といいますか、集水柵というのを置いて、ここならばもう泥水になって心配はないと設定したわけですね。だから、そのあとに観測小屋を置いて、カメラを置いたり、NHKあるいは報道陣の人が並んでおった。しかし、まさに先生の言われる人知を越えて、この事故といいますか、予測されざる流出が起きた、私はこう思うのですが、一体この計算は、これは人知を尽くしていたのか、いなかったのか、どうでしょう。これは、先生よりも、計画局長か、その担当者にひとつお伺いしたい。
#33
○国務大臣(木内四郎君) この問題は、科学技術庁として、まことに申しわけなかったのですが、この計算などについてはまあ精密にやったでしょう。しかし、私はこの前も申し上げたと思うのですが、そのとき最後の瞬間の注意力に足らなかった点があるんだと、私はこう認めてきた、現地を見てきまして。それはなぜかというと、私は現地を見たんですが、非常ながけになっている。そのそばまで行っていたんです。科学者というのは、まあなるべく近くその現象を見たいという気持ちになることはわかるんですけれども、ただ、一つだけ、すぐ前に非常に大きなやぶがあったんですね。そこで、まさか、そのやぶを根こそぎ持ってくるということは考えなかった。そこに注意力の足りない点がある。私は本会議でもお答えしたし、これはもちろんいま内閣のほうの調査委員会が調べておりますけれども、そこが私はちょっと足りなかったのだと。私は大体、主計局長もやったりしておりますし、それから議員をやっている間に災害視察をずいぶんやりました。大体がけ上、がけ下、川ぶちは住んじゃいかぬというのが私の持論なんですよ。それは自分の代にはなくても、子供の代、孫の代には、がけの下にいたら、くずれてくるかもしれない。こういうことは私はいつも考えておりまするので、がけの下でやることは危険だ。私なら、あの小さい家のほうの手前でとまったと思う。そのときに、私どものそれに従事しておった人は、おそらく災害の実情というものをほんとにまのあたりに見た経験のない者が見て、水とか土砂の流出などを計算した、それだけにとらわれておったところに間違いがあった。そこで、そのやぶは非常に間違いやすいですよ。相当大きな木がはえているやぶ、それを根こそぎ持ってくる、その最後の注意力に欠けているところがあったと私はこの前から申し上げている。そこが大事なところです。先生方の御研究には、そういう点はさらにないと、私はかように考えております。
#34
○辻一彦君 長官、まさにあなたの言われる、がけ下におらないほうがいいという常識論は大事なんですよ、科学の計算したことよりも。はっきりあなた言われておるでしょう。だけれども、これは思わぬところで竹やぶが根こそぎ持っていかれた、そんな話じゃないんですよ。少なくも、これをやるために室内実験を何回か繰り返し、これだけの大型実験をやるためには、原子炉で言えば安全専門審査会の委員に匹敵する数学者、工学音、土木学者が何回も計算をして、これだけ水をかけたらここまでしか土は流れないという線を引いているんですよ。集水柵というのは、このがけ下へ土が流れてくる、しかし、どろ水は土のとまるよりももう少しこっちへくる、手前に、そこに柵を設けて、したがって、これがいわゆる安全線である、ここならだいじょうぶだ、こういうことが、こちらの質問に対する答えにも出るんじゃないですか。そんな、竹やぶが持っていかれたから注意が足りなかったとか、そんなものじゃないですよ。有澤委員の言われるように、人知を尽くして日本の専門学者がこの点については計算をして、計算し抜いて、そうして実験をやってみて、思わない結果が出たということじゃないですか。それを、いまのように、そんな、すりかえの竹やぶ論なんかで言われたら、私は問題にならぬと思うんですよ。だから、あれでしょう、NHKやたくさんの報道関係の人が、科学技術庁がだいじょうぶだという線を引いているから、あれだけの人がずっと十何人かの、何十人という報道陣が並んでいたんでしょう。あぶないとなったら、まさにあなたの言われるように、がけ下におるべきじゃないという常識論が優先していたら、そんなところにおりるものじゃないんですよ。それは、計算された科学の結果ということをその人が信頼したからにほかならない。起こったあとはどうですか、土は五倍も流れて、倍以上の距離に流れて、池の中へ人間を持っていって、あれだけの犠牲者を出したじゃないですか。こうなったら、私はやはり、そういう人知を尽くしてもこういうことは起こり得るという、最も学ばなければならない大事な犠牲の上に立つ体験、経験であると思うんですが、その点をどう考えるんですか。これは計画局長ですか、もっと専門の人にちょっと見解をお伺いしたい。こういう大臣の答弁じゃ全然納得できません。――科学技術庁の局長は全部そろうべきじゃないですか。
#35
○国務大臣(木内四郎君) 私に御質問ですか。
#36
○辻一彦君 大臣のはわかりましたよ。あなたの常識論はとうといですよ。私は、そういう常識論を原子力の場合にも生かしてほしいと思いますよ。大臣の常識論には私は賛成。ですから、もっとこれについて、しっかりした科学的な意見をその専門の方にお伺いしたい。
#37
○委員長(渋谷邦彦君) 速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#38
○委員長(渋谷邦彦君) 速記を起こして。
#39
○辻一彦君 じゃ、担当局長が見えてないということでありますが、それでは私は内田先生にお尋ねしたいんだけれども、原子力では、内田先生はじめ、日本の最高権威がおられると思うんですが、関東ロームの計算では、数学や土木関係の方は皆さんに匹敵する学者の皆さんであったと思います。どうですか。
#40
○参考人(内田秀雄君) 私は、これにつきましては、新聞の報道以外、きょう初めて資料を拝見したわけですけれども、事前の計算はどういう人がタッチしてやられたかよく存じませんで、何とも申し上げられません。
#41
○辻一彦君 私は、おそらく――ではなしに、必ず原子炉安全専門審査会の皆さんと匹敵する数学や土木の皆さんがお集まりになって計算されておったと思うのですよ。しかし、それだけ計算して、明らかに土は何倍も流れておって、こういうことがあるということを考えると、集水柵の安全線よりももっと余裕をとった安全線を設定して、大きな余裕をとるということがどうしても大事だと思うのですよ。まして私は、こういう関東ロームの問題でなしに、原子力というように、それは、あってはいけない、万一ということでありますが、もしも起こった災害に対して、それに対するやはり考え方というものを考えなければならない。私は、こういう中からこそ、科学技術庁はいろいろな経験からくみ出して、単に数字で――単にと言うとたいへん語弊がありますが、皆さんが専門的に計算されたそれだけで全部解決する、こういう考え方に立っている点は、これは非常に問題があるところじゃないかと思います。その点はどうでしょうか。
#42
○参考人(内田秀雄君) いま辻先生のおっしゃいましたように、何か実験なり施設をつくるときに、いろいろな衆知を尽くした計算をしまして、それにさらにマージンを加えて安全対策を立てるという基本的な方針は非常に賛成でございます。原子炉につきましては十分な対策を立てていると思っております。
#43
○辻一彦君 私はいよいよ本論に入りたいのですが、日本の高浜の原子炉のサイト周辺、あるいは大飯の周辺、あるいは美浜の原子炉の周辺、こういうのや、先ほど言いましたように、若狭湾に三百五十二万、その資料にありますが、高浜で百四十九万、土曜、日曜には二十何万の人が海にいるか、テントを張っているか、こういうわけですね。そうしますと、皆さんの見解では、その事故は敷地の七百メートル、八百メートルの中におさまってしまうのだから、外にどれだけ人間がおっても、そんな心配はないんだという見解に立っているわけですね。しかし、私はこの問題を考えると、やはりその計算された関東ロームの例から推しても、その周辺のかなりの地域にたくさんの人が稠密している場合に、十分な配慮をするということが大事じゃないか。そういうことを国会は考えて、集中化排除とか、そういう問題を決議しているのですよ。それを、この安全専門審査会の皆さんが十分お考えになっておったかどうか、あるいは過去において原子力委員会がそういう点についてどう検討されておったか、こういうことを私はこれからお伺いしていきたいと思うのです。
 そこで、アメリカの場合は、これは山田原子力委員がおられますが、何回もこれは論議しておりますが、原子炉があって、人間が住んではいかぬという排除区域がありますね、日本で言えば非居住区域がありますが、その周辺に、アメリカは、初期においては、はっきりと低人口地帯、人間に、もしものことがあったときに、その被害が及ばないように、あるいは退避ができるような、その地帯を炉の出力に応じて設定して、さらにその周辺に二万五千人以上の人口を中心として一定の距離を置いている。低人口の周辺の一・三倍になっておりますね。ところが、最近は技術がいろいろ進歩している、これは当然ですね。そういう点で、いろいろな安全度を設定することによって、当初に設定したそういう距離というものがだんだんと短縮をされている。この事実を私はいまいろいろ具体的にあげますが、それはあると思うのですよ。しかし、それでもアメリカは、やはりサイトの周辺に、万が一ということを考慮して、かなりな、低人口地帯という表現をもって、私はまだこの考え方を生かしておると思う。
 しかし、日本の場合は、もう何回も出してもらった資料では、八百メートルの中に全部おさまって、どんな災害が――それはアメリカの想定事故が一番大きいのですが、それが起こっても、八百メートルの敷地の中で何の心配も要らない、こういう計算になっているのですね。だから、さっき私は、それなら保険を一体よけいにかけるようにというのは、その外に被害が及ぶから保険を拡大したいという考えがあるのであって、明らかに矛盾するのじゃないか、こういうことで申し上げたのですが、その保険の問題ではないのですが、日本の場合は、私は、そういうようにして計算されているから、もう心配ないという、こういう考えに立っておられるように思う。
 そこで、このTID一四八四四というものは、いろいろ変遷を経ておるのですが、これは一体いつごろまで使われて、それは生きておるのか死んでいるのか、そこらを、ここで一ぺんはっきり山田委員から答えていただきたい。
#44
○説明員(山田太三郎君) ただいまのTID一四八四四というむずかしい名前の報告が現在生きておるということは事実でございます。しかしながら、実際に審査をしておるアメリカの原子力委員会の担当者、これは内田先生からお聞きいただいたら、もっと詳しくわかると思いますが、実際には、そうでないものを使っている。それは、セーフティガイドと称するものを、去年あたりから実際に印刷されておりますが、内部的には前から使っておったと思いますが、そういう新しい方針で具体的にはやっておるということが事実でございます。したがいまして、TIDの一四八四四というものは、辻先生も十分に御承知のように、技術的な安全因子を考慮しない形のものでございましたが、それをどういう場合にどういうふうに考慮するか、あるいは技術的な安全因子でなくて、もっと端的に申し上げますと、前の計算は、原子炉の中に入っております、まあ事故の際出てまいりました核分裂生成物が時間とともに必然的に減衰するはずでありますけれども、そういう減衰も考えないという計算でございますし、さらに、原子炉の中に、核納容器の中に入りました核分裂生成物が外に出てまいりますが、そういたしますと、非常に物理的に明瞭なように、その中の圧力が減ってまいるわけでございまして、したがって、圧力が減れば、外へ出てくるフィッションガスと申しますか、はだんだん時間とともに減るわけでございますが、その圧力は一定であるというような計算をいたしております。しかし、これはもう物理原則に相反するわけでありまして、この新しいテクニカル・セーフティ・ガイドでは、そういう要素は当然取り入れますし、さらに技術的な因子につきましても取り入れるということが書かれてございます。
#45
○辻一彦君 いや、私先ほど言ったのですが、生きているということは確認されましたが、その使われていないといわれるのが、いつからなのか、それをひとつ具体的に……。
#46
○説明員(山田太三郎君) 詳しくは内田先生からお聞きいただきたいと思います。
#47
○参考人(内田秀雄君) TIDの一四八四四と申しますのは、原子炉の炉心が溶けたということを、かりに仮定した、放射性物質の放出をもとにした、かりの計算方法でありまして、これの計算結果から出ました、たとえば低人口地帯等の距離をそのままサイトに当てはめているものではないということは先ほど辻先生のお話のとおりでございますが、これは一つの評価の基準でありまして、実際には、それに安全施設の評価を加味したサイトの評価をアメリカでもしているわけであります。それで、ことしの二月十六日から私二週間ほどアメリカへ参りまして、この辺のいきさつを十分聞いてまいって、確認してきたわけでございますが、先ほど山田委員からもお話しのように、昨年発表されましたセーフティガイドの三と四というものがこのTID一四八四四に置きかわっているものである。その内容は、いまお話ししましたように、TIDといいますのは炉心が完全に溶けたということを前提にしたものでありますが、セーフティガイドの三と四は、燃料棒が全部ラプチャー、こわれたということを前提にした、かなり実際的な評価をしているわけでありまして、これにさらに工学的安全施設の評価をケース・バイ・ケースに加える、それから気象のデータ等をそこに入れるというようなことで計算することの指針でございます。
 内容が、TIDからセーフティガイドの三と四に、いつの時点ではっきり変化したかということは、これはアメリカ側の説明にもないわけでありますけれども、しかし、文献等を見ましても、TIDができた初期から、かなり初期のころに、TIDの計算の放出量の二十分の一ぐらいまでは、すでに当初から認めているわけでありまして、その後さらに工学的安全施設の評価を加えましたので、実際上はセーフティガイドの三、四の思想というものは、かなり前から生きていると私は思っております。TIDの一四八四四が法文としては現在生きているというのは先ほど山田先生のおっしゃったとおりでありますけれども、実際上は死文化されておりまして、これは、将来これをなくするということを最近の私の出張では確認してまいりました。
 以上でございます。
#48
○辻一彦君 ちょっと一番最後を聞き漏らしたのですが……。
#49
○参考人(内田秀雄君) TIDの一四八四四は、私、専門でありませんので、法文ということばがよいかどうかわかりませんが、文章としてはまだ生きております。生きておりますけれども、実際上にはそれは適用しておりませんし、ごく近い将来においては、このTID一四八四四は、なくすつもりであるということをアメリカの原子力局の専門家から聞いてまいりました。
#50
○辻一彦君 そのセーフティガイドというのは、私、国会図書館で調べてみると、あります。その中の三、四、五に、このいろいろの評価の過程が全部出ておりますね。しかし、この中に、読んでみると、これはいまも先生が言われましたが、安全設計手引きはこの規則にとってかわるものでないということははっきりしていますね。基準にかわるものでないということ、だから、具体的な技術の進歩に応じてそれをある程度どう縮小していくかという、そういう評価にこれを使うけれども、基準にかわるものでないということは、ここに明記してありますが、それは間違いないのですね。
#51
○参考人(内田秀雄君) 先生のおっしゃいました基準というのは、おそらく一〇FR一〇〇の本文のことだと思います。本文と申しますのは、排除区域と低人口地帯と人口集中地帯からの距離というものを考えるということでありまして、それのアペンディクスについて見ますと、TIDという計算は将来なくなるということを私申し上げたわけであります。
#52
○辻一彦君 まあ、生きているということは事実ですね。
#53
○参考人(内田秀雄君) 文章は生きていると思います。
#54
○辻一彦君 それでは、ひとつお伺いしたいのですが、この大飯原電の百十七万五千キロワットのモデルですが、こういうものは一体アメリカで、どの原電をモデルにされているか、ちょっとお聞きしたい。
#55
○参考人(内田秀雄君) 先生のおっしゃいましたモデルというのは、ちょっとわかりませんですが、どういう意味でございますか。
#56
○辻一彦君 まあ、あれですよ。向こうで、同じ型、同じ出力のものを持ってくれば一番簡単で、これは、そう言っては悪いですが、審査は書類的にやる過程だってずいぶんあるでしょうし、一番やりやすい。だから、同じ型、同じような出力のものを持ってくるのが、私は、同類の場合には一番やりやすいと思うのですよ。そういう意味で、何か大飯原電は、いわゆるウエスチングハウスの最新鋭の機械ですか、どこかと似たようなものがあると思うのですが、その点はどうですか。
#57
○参考人(内田秀雄君) 審査会の立場としますと、大飯の発電所は大飯の発電所について審査しているわけでありますが、ほとんど同型炉を参考にするという意味では、ドナルド・C・クックに現在建設中の炉が二基ございますが、これはほとんど大飯と同じでございます。
#58
○辻一彦君 それは、出力は何キロですか。
#59
○参考人(内田秀雄君) 百五万四千キロワットでございます。
#60
○辻一彦君 百五万ですか。
#61
○参考人(内田秀雄君) はい。
#62
○辻一彦君 まあ、原子力産業会議で出されている原電の一覧表に、これは私どう発音するか知らないが、セキュヤーといいますか、百十七・五万キロワット、まさに大飯原電とぴったり同じ原電が一九六八年十月十五日にアメリカの原子力委員会に申請書が出て、六九年から七〇年にわたって審査されて、七〇年に着工して七四年の五月に運転できるということに一応なっておりますね。で、私は、科学技術庁のほうではいろいろなことをみな調べておられるはずだけれども、一体そういうのが、調査室か、そういうものにちゃんと参考としてあるのかないのか、局長にひとつ伺います。
#63
○政府委員(成田壽治君) うちの調査室に大体参っております。
#64
○辻一彦君 それなら、そのアメリカの原子力委員会に申請された、表紙はこういう内容でありますね、ドケット五〇三二七−一、ドケット五〇三二八−一ですね。これは皆さんのところにある、あるんなら、大飯原電がこれだけ問題になっている以上は、この内容について詳細に――私は少かくも専門審査会の皆さんやあるいは科学技術庁のほうで御存じだろうと思いますが、それについて、ひとつお伺いしたいと思うのです。
 で、一九六九年に審査されておりますが、この中に、TIDという概念といいますか、考え方が、どういうように生かされておるというように見ておられるか、ひとつそれをお伺いします。
#65
○参考人(内田秀雄君) 先生のおっしゃいました趣旨に対して、私、十分答える準備を持っておりません。先ほど私がドナルド・C・クックを特に申し上げましたのは、いまのセコイヤーを参考にしてないということでございませんで、私、昨年ドナルド・C・クックの建設場を実際に見てまいりましたので、非常に印象に残っておりますので、申し上げたわけでございます。
#66
○辻一彦君 これだけ世間を騒がしているというか、論議になっている百十七・五万キロワットの大飯原電と全く同じ出力がアメリカにちゃんとあって、七〇年に着工しているというんでしょう。それを、内容を御存じなくして……。少なくも、これを御参考にされる必要が私はあると思う。
#67
○参考人(内田秀雄君) 先ほど申し上げましたように、大飯の発電所は大飯の発電所に対しての資料を求めるわけでございまして、その内容には、ドナルド・C・クックあるいはセコイヤーというものの資料を参考にしたデータも入っております。そういった意味では、もちろん参考にしておりますが、私、部会のこまかい審議を直接耳にしておりませんので、先生のおっしゃる具体的な問題がどこにあるのか、よく存じません。もし具体的な問題をお話しいただければ、お答えできるかと思います。
#68
○辻一彦君 だから、きょうの参考人にも、三島さんと高島さん、あの大飯の原電の部会長さんに直接来てもらって話を聞かにゃいかぬと言ったのですが、残念ながら、いろんな事情でおいでいただけなくて、内田先生が代表でありますということですから、代表に来ていただけば全部知っていただいておるということになると思うのですよ、ほんとうはね。
 で、私、山田委員にお伺いしますが、あなたはTIDというものが、もうずっと前から死文化しているというような、いつも表現でありますけれども、一体、大飯と同じ百十七・五万という、同型といいますか、同じ出力を持つこれが、少なくもTID等がどういう行き方をしているのか、どういう形で採用されているのか、こういうことぐらいは、専門のあなただったら御存じだろうと思うし、あるいは、私は、原子力局長あるいは調整局長も御存じだろうと思うのですが、それをひとつお伺いしたいと思います。
#69
○説明員(山田太三郎君) 御質問の趣旨がよくわかりませんので、お答えしかねるのでございますが、具体的にどういう点でございましょうか。
#70
○辻一彦君 じゃ、セコイヤーの、企業からの申請書の中に、TIDによるところの低人口地帯という概念が入っておるのか入っていないのか、どうですか。
#71
○説明員(山田太三郎君) 入っていると思います。
#72
○辻一彦君 具体的に、どのように入っていますか。
#73
○説明員(山田太三郎君) ただいまのセコイヤーにつきましては、原子炉の敷地と申しますか、非居住区域が六百メートルで、低人口地帯が四・八キロメートルというふうになっております。
#74
○辻一彦君 四・九キロメーターの、その出されている根拠を……。それは一体どこからの出典ですか。私は国会図書館において、五百ページにわたってフィルムがある、その中に、この具体的な事実を確認して申し上げるんだけれども、ひとつ出典を聞かしてください。
#75
○説明員(山田太三郎君) ただいまのは、申請者の提出書類ではなくて、AECのスタッフが評価したスタッフペーパーによっております。
#76
○辻一彦君 スタッフペーパーというのはどういうことか、ちょっと英語にわれわれ弱いので、具体的に聞かしてください。
#77
○説明員(山田太三郎君) アメリカの原子力委員会での安全審査のやり方は、民間の電力会社から申請が参りますと、それに対しまして、アメリカの原子力委員会の中の規制部の許認可課の人が、大体の――大体と申すと、まずいですが、申請書の要点を要約いたしまして、それをアメリカの原子力委員会にあります安全審査会、ACRSに提出する。ペーパーでございます。
#78
○辻一彦君 じゃ、ひとつ、その資料を委員会に出していただきたい。訳して出してください。わからぬから。
 次に、では、この中に確認されたことは、一九七〇年着工、六九年審査の、二、三年前のそういう審査段階において、アメリカにはTIDが生き、かつ具体的に低人口地帯というものが設けられているということですね。そういうことですね。
#79
○説明員(山田太三郎君) TIDが生きておるという表現でございますが、先ほどの内田審査会長が申し上げましたように、向こうの事故解析におきまして使いますものは、ちょっと英語で申し上げたいんですが、一〇CFR一〇〇というものでございまして、それが基本精神をきめたものである。それを出すときの参考としてTID一四八四四があると、こういうことでございます。
#80
○辻一彦君 まあ、その論議をあまりやる時間がないんですが、この資料には、その一OCFRですね、その一〇〇のTIDの手順というのが簡単に出ていますが、原文はここにあって、たしか、ここに訳したのがあります。その中に、実際はこの基準、このTIDによって距離を導き出すと言っていますね。その次のページに、その中身がありますが、具体的計算例が出ている。これは、こういう計算をする場合の因子の置き方というものが技術の進歩に従って変わってきたということは私は認めますよ。しかし、そもそもTIDは、安全には距離という概念を確立しておるんでしょう。この考え方というものは、やっぱり生きておるんですよ。だから、申請者は――まあ私の調べたのは、これは第一号の内容ですから、何号か変わっていったと思うんですよ。だから、その中では十キロ低人口になっていますよ。アメリカの原子力委員会かなにかが審査をして、技術が進歩したから四・九から五キロと、こうしたと仮定しますね。しかし、それにしても、ちゃんと低人口地域というものをやはり考えているということです。それは、先ほど私が申し上げた、あの関東ロームで線を引いて計算したけれども、しかしもう少し余裕を持たなくちゃ万が一の場合にあぶないと同じように、サイトの周辺にかなりな低人口地帯というものを設けなきゃならないというTIDの安全とか距離という概念が、考え方が、やはり生きておるんですよ。生かされておると私は思いますね。
 そこで、それと同じような時期に、高浜の原電が――高浜の原電の審査は昭和四十四年の十一月二十五日ですから、言うならば一九六九年、まさにこの論議がアメリカのAECにおいてなされておったときに、その委員会の結論が出ている。その中には、この高浜の周辺に、あのサイトの外に五、六キロ離れれば、さっき言ったように、何十万という海水浴のお客さんが季節的には来ている、そういうことが十分考慮されておったか。その点になると、この低人口というのは、高浜の例では八百メートルの敷地に入るんだから心配ないと言うんでしょう。そうすると、これはどうやってそのときに考えられたか、一ぺん内田さんからお伺いしたい。
#81
○参考人(内田秀雄君) 敷地の安全を評価する場合に距離の因子を考えるということは、日本でも、御存じのように、立地審査指針に書いてあるとおりでございます。立地審査指針に書いてございます低人口地帯あるいは非居住地帯という概念は、居住者に対しての評価が主でございまして、一時的な海水浴者に対しての評価は、また別の観点から見ていると思います。
#82
○辻一彦君 ちょっと、周辺の人口に対するのは別の観点から見ておるんですか。
#83
○参考人(内田秀雄君) はい。
#84
○辻一彦君 じゃ、別の観点というのは、アメリカでは同じ時期にサイトの周辺に一つの低人口地帯としてこれぐらいを設定しておるというそのときに、日本では同じ時期に――まあこれはワットは違いますよ、八十二万五千ですから。だけど、それを二つやっているんですね。そのときに、この考え方というものが全部敷地の中におさまっている、外は全然心配はないんだと、こういうお考えなんでしょう。
#85
○参考人(内田秀雄君) そういう意味ではございませんで、日本の低人口地帯が、いま先生がおっしゃいましたように、敷地の中に入ってくるというのは、計算から必要な低人口地帯は敷地の中に含められる範囲であるという、そういうことでありまして、敷地の外に低人口地帯、要するに人口密度が薄いところがなくてもよいという意味ではございません。ですから、そういったような環境については一般環境として十分評価しているわけでございます。
#86
○辻一彦君 いや、だから、私が言っているように、アメリカも、最近のこのとおりの計算でやれば、いわゆるかなりセーフティガイドに近いところにだんだん近づきつつあったと思いますよ。それでも、その計算をいろいろなものでやってみると、日本の八百メートルと違いますよ。しかし、そんな何十倍にもなるような距離じゃない。かなりそれは接近していますよ。それでも、アメリカはその周辺に、申請者は十キロの低人口地域を出しており、AECは許可の中で四・九キロという、五キロを一応そういう地域としてきめておるんでしょう、考えておるんでしょう。日本の安全審査だって、あれだけ高浜にたくさん人がおるとしたら、十分考えるべきことでないかと思うんですが、どうなんですか。――じゃ、ひとつ環境グループの主任さんにお願いしましょう。
#87
○参考人(渡辺博信君) きちんとしたお答えになるかどうかわかりませんが、環境における住民の被曝を考えます場合に、やはり、いま御指摘のありましたような炉からの距離というものが、申請書の段階では八百とか一キロにきまっております。その外につきましては、実際に、その申請者に対しまして、あるいは県に対しまして、今後五年とか十年におけるその地域の開発状況というものを伺っております。そして、はっきり申しますと、このサイト周辺が人口密度の高いような人口集中あるいは工場の誘致がないというようなお返事をいただいた上で線量の計算をチェックして、その環境に対する評価をいたしております。
#88
○辻一彦君 それじゃお伺いしますがね。あそこは、夏には、七月一日から八月二十五日、三百五十二万、高浜に百四十九万、土曜と日曜は二十数万、それで屎尿処理ができなくて、これは海へ流すというので、もうたいへんな問題になっておるところですよ。血で争うようなけんかをやってますよ。そういうところ、しかも、運輸省は、あの若狭湾を、裏日本ではもう唯一の場所、東の九十九里浜・西の若狭湾というようにして、大規模な、九十九里浜は東京、若狭湾は関西、名古屋のほうから、将来二千万とか、そういう観光客を誘致をして、あそこに国民的な保養基地をつくろうという、こういう構想で出発しておるのですよ。あの新全総の中にだって出ておるわけですよ。そういう将来の展望、現在たくさんの人がおるということ、そうして夏の人口、そんなことを一体あなたは環境の御専門の主査として、どういう討議をされたのですか。
#89
○参考人(渡辺博信君) 美浜の一号の申請が出た時点では、現在の、夏季あるいは年間を通じての観光客の数というものは、審査会といたしましても算定はいたしておりませんし、また、昨年度のようなふえ方というものはいたしておりません。昨年度いたしましたことは、夏季における、一番海水浴客等の集まります土曜、日曜、そういうときの海水浴客の被曝についても、一応、考慮といいますか、計算をいたしまして、それを評価しております。
#90
○辻一彦君 そういうことは、安全専門審査会の皆さんがやっておられるように、敷地八百メーターの中に全部おさまるから、ぐるりに何百万おったって心配ないということなんでしょう。違いますか。
#91
○参考人(渡辺博信君) いや、その被曝線量のその評価、個人個人について申し上げますと、その与えられます線量は、まあわれわれ国民の一人として、がまんできる線量だと私は言いたいのです。
#92
○辻一彦君 だからね、言っているでしょう。まあ私は、保険の話も、何も保険金を上げてくれということで言っておるのじゃないのですよ。保険の概念の中でも、サイトを越えて起こる災害ということをですね、表現はできないけれども、やっぱりあるということは事実ですよ。イギリスなんか見たってね。だから、そのほかにもし災害が及んだら、たくさんの費用が要るから、企業ではもうまかなえぬから、それ以上は国がまかなうということでしょう。そういう点を考えれば、やっぱりこのアメリカの場合は、サイトのほかに、かりに、かなりな、さっき言いましたけれども、セコイヤーでも、少なくとも四・九の低人口地帯を、万一の場合を考えて、ここやったらなるべく人は住まぬほうがいい、なるべく、おっても、いざいうときには退避ができるとか、そういう地帯にすべきだと、こう考えていたしておるわけでしょう。そういう一番大事なことは、あなたの御答弁を聞いておれば、どうも論議がされていない。そこで、議事録を出せと言えば――ここ三カ月、去年の十二月の十六日の内閣委員会以来三カ月にわたって要求しているけれども、何かメモの切れ端をくっつけてきたような、どういう論議をされたかといえば、いや、自由な発言ができぬから記録をとっていないとかね。記録をとっていなければ、御本人に出てもらう以外にない。御本人に出てもらえば、そういう論議の内容である。こんなことで、私はね、やっぱりその環境面の面だって、あの若狭の住民、それから夏に来る人たち、そういう人の安全や、いざということを考えたら、これは納得できませんよ。長官は、何か、きのう衆議院の予算委員会で、三百五十万もお客さんが来るということは、いかに原子力が安全かという実証だから、けっこうだということを御発言になったというのでしょう。そういう概念でこんな問題を考えたら、私はたいへんだと思うんですよ。そこら、どうなんですか。――あなたはこの報告によれば、原子炉安全専門審査会第七十五部会、大飯一号、二号炉の環境グループの主査なんでしょう。それから美浜は、一号から三号にわたってもやられておるんですよ。美浜一号の話ではないんですよ。美浜三号であり、そして大飯のいま話をしているんですね。急速に人間がどんどん来るようになったのは、この五、六年のたいへんな変化ですよ。そういうことを、現在並びに将来の展望等を十分考慮してと言われるけれども、抽象的に言われるけれども、具体的にどういう考慮をされたのか、論議をされたのか、そういう点を聞かしてください。
#93
○参考人(渡辺博信君) 審査会といたしまして審査いたしましたことは、個人の被曝線量を中心に、あるいはその集団の被曝線量を中心にして議論いたしただけで、将来の展望、人口の集中化ということについては、私どもではやっておりません。
#94
○辻一彦君 まあ、長官、いま私は、記録を出せ、委員会に出すとおっしゃって、出してもらったメモがここにあるんですが、まことに残念ながら、規制課長にたいへん御苦労いただいておるけれども、われわれから見ると、あまり十分な資料ではないですね。この記録のあれをくれましたですよ。内閣委員会の資料だったのですが、要求したら、なるほど議事録要旨というのが出ましたよ。これは、何をやったかという、風向きをやりました、人口の季節的集中度について検討しました、という項目が並べてある。だから私はマークをして、この中をはっきりさせなきゃだめだ、だからコピーを持ってきなさい、こう言ったんですよ。そうしたら、そういうものはないんだ、記録をとると自由に発言できぬから、環境部会とか、そういうところでは記録とってない、こう言うんですね。だから、何か担当者のメモの綴りを持ってきて、何か、ストーリーといいますか、物語を一ぺんつくってみましょうと言うのですね。それでも出していただきたいと言って、これをもらったのでは、私がいま申し上げましたようなことをうかがえるような内容じゃないんですね、残念ながら。御本人が、環境審査の主査がお見えになって、環境について論議されたことを聞いても、この程度でしょう。この程度なんですよ。
 そういうときに、私は考えますと、少なくも、まあ皆さん、アメリカの基準というのをいろいろ参考にされている。緊急冷却装置の事故が起これば、美浜や敦賀の市長、町長が科学技術庁にどうなのかと聞いても、アメリカに一ぺん聞いてこないとわからぬといって行かれて、帰ってお答えがあった。それほどアメリカのいろんなやり方というものを日本が参考にされておるならば、この安全といいますか、こういうことについて、サイトの周辺にやっぱり低人口地帯を設けて、万が一にも備えてやるべきだ、そういう私は基準が欠けておると思うんですよ、出発点から。日本の基準が出たのは昭和三十九年でしょう。アメリカのTIDの基準が出たのは三十七年ですよ。たった二年間の違いですよ。日本の審査の基準でいけば、極端に一言えば、若狭湾に何十でも、八百メートル以内なら全部問題ない、つくれるということになりますよ、計算でいけば。だから、どんどこどんどこ承認されておるわけでしょう。そのときに、どうですか、この原子炉敷地の基準といいますか、立地基準というものが、日本とアメリカとではやり方が違いますが、アメリカに比べて、私がいままでずっと指摘してきたような中で、きびしいと思われるか、あるいは甘いと思われるか、そこらをひとつ有澤先生にお伺いしたい。
#95
○説明員(有澤廣巳君) 私の理解しておるところによりますと、アメリカの基準は、何といいましても、アメリカに最初に原子力発電所ができた、その時分には、まだいろんな研究も十分でない点もあったかと思いますが、相当のアローアンスを加え、辻先生のお話の余裕を大きく持ったわけです。その敷地、立地指針であったと私は思っております。ところが、先ほども山田委員から説明がありましたように、だんだん技術の進歩もあります。また、前提条件にも、ちょっといまの物理現象なんかを無視したような仮定のもとに立った指針であったと思います。ですから、日本の安全審査の指針、それから立地指針、それにつきましては、それぞれ専門家の部会を設けまして、そこで十分検討していただいた上で、現在日本の置かれているような指針になっております。それですから、ものの考え方といいましょうか、歴史と、ものの考え方の上においての違いがそこに出てきている。で、それがきびしいとか安易であるというふうな批評は、ちょっとできにくいのじゃないかと私は思います。ですから、日本の指針は指針として、どこにどういう安全上の問題があるか、その問題に対してなら、おそらく審査会の先生方も十分お答えができると思います。私どもは審査会の報告を受けておりまして、そうしてその複合の影響はどうか、周囲の状況はどうか、こういうふうな判断をいたしておるわけでございます。ですから、アメリカの傾向も、いまのお話にも出ましたように、技術の進歩とか、ものの考え方の合理性に基づきまして、だんだんエクスクルージョン・エリアというものも狭まってきている、事実的には狭まってきている、こういうことになっておりますので、だから、きびしいとかきびしくない、弱いとか安易であるとかいうふうな判断はなかなかできない、それよりは、その違い、あるいは規制のしかた、安全性の考え方、それにおいてどういう問題が出てくるか、現実にどういう問題が出てくるか、そこを問題にしなければならぬじゃないかと私は考える次第です。
#96
○辻一彦君 私は、まあ原子力委員会の委員長は長官ですが、委員長はいろいろおかわりになる、そうすれば、やはりこの問題について原子力委員として広い視野で考えていただく有澤先生のお考え方を聞いておるわけです。その技術屋さんと言ってはおかしいけれども、専門家の計算をお伺いしているのではない、私はきびしいかいなかということは、これは平泉長官も木内長官も、以下全部の皆さんが、アメリカよりもイギリスよりも、いかなるところよりもきびしいということを何回も私の質問に対して御答弁されている。しかし、具体的にいま私は幾つかの問題をちょっとあげてみたけれども、どこがアメリカより一体きびしいだろうか。私の一番問題は、やはり安全とは、一つは、原子力の場合は哲学の問題にもかかわると思うのですよ。しかし、また、安全とは距離の問題ですよ。TIDは、その一番大事なところは、安全を距離に出したところに私は一つの重大な意義があったと思うし、その考え方は生きている。それが生かされて、そうしてこの周辺に数キロの、五キロ、六キロという低い人口地帯というものを設定している。そういうアメリカのやり方に比べて、日本は、もうそんなものは要らないのだ、全部サイトの中に入っちゃうのだから何も問題ない、これを具体的に比べたときに、きびしいかきびしくないかという判断は常識的に出ますよ。常識的に科学的な計算でいろいろ計算されて電算機に入れて、やるのじゃなしに、私は、原子力委員会としてこういうものの基準ということを考える場合に、やはりこういう問題は何も電算機に入るか入らないかの問題じゃない。やはり具体的な事実の中でお考えができると思いますが、どうなんですか。
#97
○説明員(有澤廣巳君) 基準ということになりますと、やはり、その基準を設ける、何といいますか、基準は一つの量だと思います。その量の決定についての十分な理由がなければ、なかなか基準を決定することはむずかしい。ですから、先ほど申しましたように、サイトの中におさまるようにしていく、日本の場合は。ですから、サイトが少し狭いという、いまの御指摘ですが、これには、むしろ地上権を設定して、そこにはもう今後は住宅ができないようにするというような配慮はしております。だから、周辺にも配慮はしております。ところが、日本の場合は、東海村の場合もそうでございますが、どうも原子力研究所ができる、あるいはその他東海発電所ができる、そういうことになってきますと、道路もよくなる関係もありましょうが、その地域がどうしても開発されてくる、あるいは大ぜいお客さんが来る。ですから、そういう、入っちゃいけない、こういう規制がなかなかしにくい。その規制をするのには、そこへ入るとあぶないぞと、危険があるぞと、こういうことがなくなっちゃなかなか言えない。その放射線の危険の計算は、これは科学的に計算してもらわなければ、常識的に危険であるとか危険でないとかいうことは言えない。それですから、その点から申しますと、一応立地指針をつくっていただいた立地指針の専門部会でそういう問題も考慮しておきめいただいたわけでございまして、この問題は相当前から、あれは、イギリスのファーマーさんの意見もございまして、当時、原子力発電所を中心にした周囲の距離の問題というのがたいへん議論をされたわけでございます。そのときにその立地指針というものもつくられたと私は記憶しております。
#98
○辻一彦君 いまの有澤委員の御答弁ですね、サイト内におさまるようにすると、こういうことですね。それから、内閣委員会において私が山田委員に質問したときに、私はサイト内におさまるようなことをやっているじゃないかと……。安全度合いを、いろいろのクレジットの置き方をとれば、これはあれですよ、一つの技術手段が開発される、それを、その壁を通るときに、これを何分の一に、放射能が外に出るか、その計算によって全然違ってくるわけでしょう。ですから、クレジットの置き方によっては、信頼度の置き方によっては、これはうんと様子は変わるわけですね。だから、私は、そういう問題を指摘して、アメリカに比べてかなりクレジットの置き方が大きいじゃないかと、だから全部日本はサイト内におさまるようになるじゃないかと、だからその周辺は問題ないと、こういう計算をやっぱりやられているのではないかと指摘したときに、山田委員は、いやそんなことはないと、これははっきり、ちゃんと計算してこうなるのであって、その中におさめるというような考えは全くないと、こういうことを言われているのだけれども、私は両原子力委員の答弁について非常に矛盾した点があると思うんで、そこらは一体どうなんですか。
#99
○説明員(有澤廣巳君) いや、私が申し上げましたのは、サイト、つまり原子炉サイトをもう少し広げなきゃいかぬという場合もありましょうし、サイトを広げることができない場合には、地上権を設定して、そこには住宅が建設されないように、原子力発電所、発電事業者の地上権ですか、それで住宅が建設されないような考え方、そういう考え方を現にとったこともあります。だから、そのことを私は申し上げているのであって、何が何でもこの計算のクレジットを変えて、そこへおさめる、そういう考え方ではないと、こういうことです。
#100
○辻一彦君 まあ私は、こういう問題を前回の内閣委員会において二時間論議をして、その結果、日米のこういう事故解析のどこが一体違うのか、そういうことをはっきり出すように何回も要求したけれども、科学技術庁は忙しいということで、質問前に私は入手することができなかったけれども、たとえばチャコールベッドだけれども、核の容器は進歩する、あるいはそのスプレー、そういうものも幾つか段階はあるでしょう、あれ以来開発された。それをどのくらいに安全度を見るかということによって、そんなものはもうサイトの値はたいへんに変わってくるんですよ。変わってくると思いますよ。だから、私は、サイト内におさめようとすれば、安全度を、アメリカがこの技術はこの程度だからまあ一〇に見ようというのを、これを二〇か三〇に見るとかすれば、それは、とたんにサイトの数字は変わってきますね。だから、私は少なくもそういう問題をはっきり解明されなければならぬと思うのですよ。それで、われわれのこういう質問に対してやっぱり答えていないですね。資料を言っても、そうですよ。
 だから、私は、時間がだんだん来ているし、小林先輩の時間を食い込んじゃって申しわけないんですが――いいですか、じゃ、やらしてもらいます。
 これは、環境問題にしても、安全審査にしても、当然、資料をいままで私たちも昨年の夏以来三回にわたって要求して、そうして公表されたのをわざわざガリに切って出されたけれども、公表された資料くらいは、印刷になっておるのをガリにする必要はないですよ。そんなことをやるよりも、全部やっぱりはっきり出されたらいいと思うんですよ。そういう点について、いままで私は、安全審査の申請の書類、それから安全審査専門委員会の議事録、こういうものを公開をして、この委員会への提出を、原子力基本法の公開の原則に基づいて、強く何回も要求しているけれども、依然として、出されているのはこの内容なんですが、速記録はないのかどうなのか、あれば出していただきたい。どうなんですか、それは一体。
#101
○政府委員(成田壽治君) 議事録のあるものにつきましては極力出しておるつもりでございますが、安全審査会の各部会等では、正確なこまかい議事録はつくってなくて、議事要旨程度にとどまっておりますので、御提出しましたのはそういう資料になっておると思います。
 それから申請書その他につきましては、これも公開の原則の趣旨に沿って極力出すべくつとめておりますが、ただ、企業機密に関する部分がありまして、この点の取り扱いは問題がありますので、その点はあるいは削って出したケースもあると思います。
#102
○辻一彦君 大事なところは全部削られていますよ、大体、見るとね。そこで、安全専門審査会の記録はあるのかないのか、どの程度あるのか、どうなんですか、局長。
#103
○政府委員(成田壽治君) 安全審査会の議事録はございます。
#104
○辻一彦君 環境部会における部会の議事録はどうですか、いわゆるグループごとに論議をしている内容は。
#105
○政府委員(成田壽治君) 各部会の議事録はありませんで、議事要旨の形になっております。
#106
○辻一彦君 その議事要旨たるや、さっき言いましたけれども、何をやりましたということで、さっぱりわからない。参考人に来ていただきたいと言うても、なかなかこれはむずかしい点がある。これは、これだけの国民の、また、私らから言えば、若狭湾のああいういろいろな人たちの疑問に答えるためには、こういうものは私はやはり明らかにされぬといかぬと思うのですよ。だから、まず第一に、私は、安全審査会の議事録を、正式にひとつ委員長からはかってもらって、当委員会の名前で要求してもらいたい。それから環境部会のグループについても、メモならメモをひとつ出してもらいたい、あるものを。そうでなければ、つぎ合わしたものを拝見しても、とてもこれで心配ないと私は言えないと思う。
 それからもう一つは、企業機密ということを言われたけれども、日本の大飯原電、百十七万五千キロワット――ここにはアメリカの原子力委員会に出された申請書があります。国会図書館にフィルムがあって、いろいろな方も使っておると思うのだけれども、いわば、これは公開されておる内容ですよ。そうしますと大飯原電の、全くウエスチングハウスの最新の設備、大飯もそうでしょうが、また同じ出力、この中身の一体どんなところが企業機密と考えておられるのか、それを一ぺん聞かせてください。私は、原子力基本法によって企業機密というものは許されないと、こう思っていますが、あなたが言われる企業機密というものはどういう範囲を言われるのか、それを一ぺん聞かしてください。
#107
○政府委員(成田壽治君) 大飯の場合の企業機密がどの個所であるか、具体的に個所を申し上げられませんが、外国との技術提携、ノーハウ契約とか、あるいは特許権関係とか、そういう点が企業機密に属する点でありまして、それは、企業がむしろ判断してきめる問題だと思います。
#108
○辻一彦君 アメリカのノーハウと言われるけれども、大飯原電と全く同じ原子炉の申請書が一九六八年十月十五日の日付でアメリカのAECに受領されておる。その申請書の中身が国会図書館に全部ある。そうすれば、もうこれは公開されているのですよ、言うならば。これは公開されていたいのですか、どうなんですか。国会図書館に行けば、だれでも一枚五十円でコピーしてくれる。ただで出してくれる。公開されているんじゃないですか。どうなんですか、一体。
#109
○政府委員(成田壽治君) 私、そのアメリカの申請書を具体的に見ておりませんので、はっきり申し上げられませんが、あるいは国会図書館に来ておる点では公開されておるのではないかと思いますが、ただ、アメリカの申請の様式と日本の規制法による申請様式、いろいろ制度が違いますので、どこまで内容になっているのか、よく比較しないと、向こうで公開だからこちらで企業機密を全部出してもいいじゃないかと一がいには言えないのじゃないかと思います。
#110
○辻一彦君 まあ、アメリカだって、あれでしょう、原子力委員会は日本よりももっと規制がきびしい。それを。ハスするためには、相当な資料を出して、しかも一回ではだめ、二回、三回、原子力委員会の規制をいれて、だんだん改訂しながら出しているんですよ。そんなものが全部公開されておるのに、企業機密の名前に隠れて、いままでその原子炉の申請書をこの委員会に提出をされないじゃないですか。どこが一体企業機密であるかわかりますか、あなた。調べておられますか。
#111
○政府委員(成田壽治君) ちょっと補足いたしますが、アメリカにおいても、申請の場合には企業機密については出してないというふうに聞いております。
 それから、具体的にどこが機密であるかどうかは、ノーハウとか特許がどこまで入っているか、もうちょっと具体的に調べた上でないと、申し上げられないと思います。
#112
○辻一彦君 アメリカは企業機密を出していないというのは、申請書に出していないんですか。そんな、企業機密を申請書に出さぬなんて、通りませんよ。
#113
○政府委員(成田壽治君) 申請書には企業機密も入っておりますが、それを公開してないというふうに聞いております。
#114
○辻一彦君 そうすると、いま国会図書館に置かれているこれは、企業機密に入ってないんですか。
#115
○政府委員(成田壽治君) 私、まだその内容を具体的に詰めておりませんので、企業機密の部分が入っているかどうか、いまの段階では申し上げられないのでございます。
#116
○辻一彦君 それでは、まさにこのセコイヤーの原電百十七万五千キロと大飯原電は同じ大きさですね。だから、この数十種に及ぶ項目がここにありますが、皆さんのほうは、おそらくこの資料があるはずですよ。こんなものは持っていらっしゃる。持っていなければ科学技術庁の存在はないはずなんで、あるの。なかなか出されないけれども、あるんですよ。あると思います。だから、一ぺんそれを拾い上げて、そしてこのセコイヤーの一覧表を、最新のを手に入れてつくって、そして両方対比して、どこが企業機密であるか、そういうことを、ひとつ、はっきりさせてください。そして、企業機密以外はこの委員会に全文、ひとつ、提出していただきたい。それから、それが企業機密であるかどうかということについては、これは資料の提出を待って論議をいたしたいと思います。
 そこで、まず、私は、議事録の全文、原文提出、並びに環境グループ等で行なわれたメモならばメモの原文の全文提出、そして、いま言いました、このセコイヤーと大飯原電の両方を比較して、その企業機密と否の一覧表を出し、それ以外の、機密と皆さんが言われる――私ども認めていないが、皆さんが言われる企業機密以外のものは、ひとつ、委員会に正式に全部提出をお願いしたい。同時に、アメリカのセコイヤーだってあるんですからね。それは訳すのがたいへんだったら、原文でけっこうですから、科学技術庁で手に入るはずですから、全文全部ひとつ出していただきたい。これは、しっかり、委員長から、具体的に、いつ出してもらえるか、はっきりしておいてもらいたいと思います。でないと、二、三カ月も待って審議の前にちょこちょこと来たようなメモでは、これはなかなか論議できない。はっきりひとつお願いしたい。
#117
○委員長(渋谷邦彦君) ただいま辻委員から要求されました議事録の全文並びに他の資料要求について、本委員会の名において御要求申し上げたいと思いますが、御提出できますか。また、提出に際しては、何月何日ごろまで出せるのか、責任を持って、ひとつ答弁をいただきたいと思います。いかがですか。
#118
○政府委員(成田壽治君) 御指摘の資料は提出いたしますが、ただ、非常に広範にわたりますので、時期については明確に申し上げられませんが、極力すみやかに、早く出したいと思っております。
#119
○委員長(渋谷邦彦君) ただいま、極力早くということをおっしゃいますが、たいへん抽象的な言い方でありますけれども、いま辻委員からも、たっての御要求がございましたように、ある程度の目安、そうした時期を、責任を持ってお答えいただけませんか。
#120
○政府委員(成田壽治君) はっきり申し上げられませんが、まあ一カ月ぐらいの期間をお借りできれば非常によろしいと思います。
#121
○委員長(渋谷邦彦君) じゃ、責任を持って、科学技術庁において本委員会へ御提出をいただきたいと思います。
#122
○辻一彦君 いままで、可及的すみやかにという御答弁で、安心しておったら、三月もかかりましたので、国会は四、五月と開かれておりますから、しかとひとつ、一カ月をめどで出していただきたいと思います。
 それから、同時に、私は、高浜の一号炉、美浜の三号炉について同様な疑義を持ちますので、これも、先ほどのように、企業機密、皆さんの言われるそれと区分けをして、秘密でないもの、それは全文、ひとつ、申請書を出していただきたい。それについても、機密であるかどうかという点については、次の委員会においてまた論議をいたしたいと思います。
#123
○委員長(渋谷邦彦君) ただいまの重ねての辻委員からの資料要求について、お答えいただきたいと思います。
#124
○政府委員(成田壽治君) ただいま御指摘の高浜と美浜につきましては、たしか内閣委員会で申請書については出したと記憶しておりますが、あれと大体同じようなものでよろしかったら、すみやかに出したいと思います。
#125
○辻一彦君 あれは、いろいろ見ると、活字になっているのを、わざわざガリ版に切っていただいて……。そんな苦労しなくたって、あんなものならば、印刷したのを出してもらえばいいの。私の言っているのはそうじゃないのだ。申請書というのはちゃんとあるんでしょう。そういう抜粋をしたり、そして公表されたところをすっと出す、そんなものでは、委員会の名において資料要求した意味がないですね。はっきり、原文かコピーを出してもらう、それしかないです。
#126
○委員長(渋谷邦彦君) ちょっと速記をとめて。
  〔午後零時三十八分速記中止〕
  〔午後零時五十二分速記開始〕
#127
○委員長(渋谷邦彦君) 速記を起こしてください。
 ただいま辻委員及び小林委員から重ねて福井方面の原子力発電についての資料要求がございました。それについて再びここで当局の御返事をいただくわけでありますが、まず、資料要求の問題が一つと、それから、専門審査会におけるそれぞれの分科会においての議事録――いままでは議事録がなかった。あっても、それは十分な資料として役に立たないということでございますので、今後の問題もあるかと思いますが、きちんと速記をとって、議事録にまとめて、当委員会に提出をしてもらいたい。
 さらに、現地においての公聴会についても、当然、現地の県民の意思というものを十分反映させる必要もあるのではないかという御要求でございます。それらの点について、それぞれ各分野から御回答をいただきたいと思います。
#128
○政府委員(成田壽治君) 資料につきましては、申請書そのものを出すようにとのお話がありましたが、資料そのもの、ただ、安全性に関して非常に企業機密的な個所がありますと、そこはあるいは、ごく限定した個所になると思いますが、伏せて、そして申請書そのものをなるたけ使って出すようにしたいと思います。
 審査会の各部会の速記録をとることにつきましては、これは審査会とも十分相談――といいますのは、非常にいろいろ意見が制約されるんじゃないかとか、いろんな問題もあると思いますので、従来どおりメモ要旨程度にとどめるべきか、要旨であっても、なるたけもっと内容のわかるようなメモの形にするか、あるいは一語一句の議事録にするか、もうちょっと審査会の先生方と十分相談してお答えしたいと思います。
#129
○小林武君 安全審査会の内田先生、それから渡辺先生にもちょっと御意見を伺いたいんですけれども、この種の問題であれば、どうなんでしょう、学者としての御発言をなさったことが、公開されてぐあいの悪いことはないように、われわれしろうとは考えるわけです。これが何か、文教関係だとかなんとか、いろんなところだというと、なかなか複雑でございまして、文部省あたりも、よくそういうことを言うのですけれども、学問上のことでありますれば、先ほど来の話の材料なんてことですと、これは堂々と出ても、別にかれこれ言われるべき性格のものでないし、また、学者としては当然それを堂々と発表されるべきだと思いますので、いろいろめんどうだとは思いますけれども、いま、なかなかよく、速記といいましても、うまくできますから、やっぱりやっていただくということが、国民のためには非常に安心をしていただけるのではないか。それは、ここで即答できませんでも、委員の皆さま方の間で、そういう話にまとめていただくように私は希望したいと思うのです。
#130
○参考人(内田秀雄君) ただいまの速記録あるいは議事の内容の公開の問題でありますけれども、私、もちろん帰りまして皆さんに御相談するなり、むしろ原子力委員会の指示を仰ぎたいと思いますが、原子炉安全専門審査会のやります役割りは、学識経験者の集まりの非常に狭い専門に対しての技術的な内容の検討がまず第一でありまして、その次、それを総合した評価が第二の問題であります。でありますので、技術的な内容のこまかい審査のとき、評価の場合、特に部会あるいはさらに小委員会等におきましては、商業上の秘密等にわたります非常にこまかい資料の提出を受けております。その資料の提出には、これは審査会の評価に限るということで受ける場合が大部分でありまして、また、それらの直接な発言がありません場合でも、その内容におきましては、将来それが商業上の秘密という判断は、原子力委員会あるいは申請者側から当然あるべきだと思います。したがいまして、私たちが審査をしております場合には、その内容がどの程度の商業上の秘密として守らるべきかということの判断は、私たちにはつかないわけであります。そういうものに対してのこまかい評価も審査をしておりますので、現在私たちがやっております審査会あるいは部会、さらに小委員会の内容が議事録として速記等の形で全部公開されるということになりますと、たぶん、私たちが帰りまして皆さんの御意見を伺いましても、全面的な賛成は得られないだろうと思います。しかし、いずれにしましても、きょうの先生方のお話も加えまして、原子力委員会からの指示も得ましたならば、それに沿った処置をしたいと思います。
#131
○小林武君 先ほど来から話が出ましたように、いわゆる商業上、企業の立場からの秘密といいますか、それが、明らかにそういうことだということになりますと、先ほども言っておるように考慮されていいだろう、ただし、これが全く国民の安全性の問題にからむ問題だということになると、また別ですけれども、そういう商業上と企業上のことということになりましたら、その判断は、ぼくは、原子力委員会でするなり、委員長がするなり、するだろうと思うんです。それで、とにかく、全面的な速記録というものは、やっぱりつくっておくということは、これは皆さんも反対なさる理由は、あまりないように思うんですが、そういうふうにお取り扱いをいただきたいと、そういうふうに、内田先生からも渡辺先生からも、ひとつお話をしていただきたい、こう思うわけです。
#132
○沢田政治君 先ほど公聴会の件について速記をとめて要求したわけですが、長官のほうは、何回聞かれてもこの前と同じような答弁しかできぬ、こういうようなことを言って、非常に見ようによってはしぶっておられるようですが、しぶっておるかどうかわかりませんが、特に長官が先ほど所信表明の中でも、人権尊重の基本的理念にのっとり科学発展云々と、こう言っておるわけですね。人権を決して阻害しておるとは思いません。しかし、多くの方々が、はたして安全かどうかという心配をしておるわけですね。これに対して、安全ならば安全だと、かくかくの経過のもとにこうやったんだ、こういうことをやっぱり所管の大臣として公聴会を開かして住民を説得する義務があると私は思うのですよ。それをしないとするならば、それを避けて通るとするならば、なぜ避けて通るのかという理由も、やはり国民の前に私は明らかにすべきだと思うのです。ここでこれは明らかにしていただきたいと思うのです。
 それから、議事録と資料の問題も、これは商業秘密とか、いろいろな問題もあるでしょう。しかし、確かに三菱金属鉱業の大宮原子力研究所ですか、ここに住民から問題を提起されて、裁判所が、住民の安全のためならば設計書も出せというような決定を下しているわけですね。目下控訴して争っているかどうかわかりませんが、事住民の安全と関係のない、そういう技術とか、そういうものまで要請しているわけじゃないのです。ともかく、安全に関係するものは設計書まで出せというほど、これはやっぱり一つの世論のあらわれだと思うのですね。まあ、その議事録とか資料のほうは、そういうことを十分踏まえていただきたいと思うのです。
 私、聞きたいのは、長官、なぜ公聴会を避けるのか。ますます私は疑惑を持ってくると思うのです。したがって、それを避けるとするならばその理由ですね、急いでおるからとか、そんなのわずらわしいとか、何かの理由があると思うのですね。そのよしあしは別として、ここで明らかにしてもらいたいと思う。
#133
○国務大臣(木内四郎君) 私は、皆さんのおっしゃることがわからないのじゃないですよ。そういうことを、たびたび過去においても――今度は二、三カ月ですけれども、この前やはり科学技術庁長官をしておった当時から、私の考え、主義としては、安全性という問題は非常に大事だと。ところで、まず第一に、これについては有能な科学者の方々、日本の最高レベルの方々に御研究を願って、そして安全性が確保されるという御意見を伺わなければならぬ。こういうことと同時に、それだけじゃやっぱりいかぬ。やはり、ことばは熟さないが、これは前から言っているのですが、まあいいことばが見つからないからそのまま使ってますが、社会的にやはり安全性というものが認められるようにならなければならない。そのためには、地域の住民、主として地域の住民の方々の理解と協力を得ていかなければならない。それにはいろいろな方法があるだろう。皆さんは公聴会だけのことをしきりに言っておられますけれども、私は、広い意味において地域の住民の理解と協力を得なくちゃならぬということを、ずっと唱えてきておるのですよ。その趣旨に従ってやっているのですが、私は、いま具体的な方法として公聴会を約束しろと、こう言われても、そう直ちにお約束はできぬ。しかし、その趣旨は、私がいま申し上げたことであるからということを申し上げて、この前の委員会など、まあそれで趣旨はわかったと、こういうことで御了承を得て今日に来ているのですが、私は、今後におきましても、地域の住民の理解と協力を得るためには、いろいろな方法はあるでしょう、最善の努力をいたしたいということだけは、この際にお誓い申し上げておきたいと思います。
#134
○沢田政治君 やはり、直接住民を納得させるためには、住民と対話したほうが一番いいわけですね。形がどれが望ましいかという議論は個々にあるとしても、たとえば電力料金をきめる場合でも、電力料金というのは命に関係しない問題ですよ。経済的に関係しますけれども。電力料金をきめる際でも公聴会を開くわけですよ。そして、聞いて電力料金を上げているわけです、まあ経済的な公共性ということで。ましてや、場合によっては命に関する問題を、直接住民を説得しない、方法を避けるということは、私はいけないと思うのですね。まあ、科学者を信頼してもいいというのですけれども、政府を信用せよというのですけれども、いままで、政府を信用したためにどれだけ国民は犠牲になったかということですね。たとえば鉱山公害でもしかり、スモン病にしてもしかり、サリドマイド児でもしかり。厚生省が科学の粋を集めて、これはだいじょうぶだと、有効かどうかわからぬけれども少なくとも害はないぞといって飲んだものが、害になっているでしょう。それと同じように、今日の科学にも絶対はないと思うんです。絶対があったら、科学はいかぬと思うんですね。そういうことだから、非常に住民が心配しているんだから、直接公聴会を開くべきだと思うんです。まあ形はいろいろあるというんですけれども、特に公聴会というものを避ける理由は何であるのか、この点はどうもいまの答弁では私は理解できません。
#135
○国務大臣(木内四郎君) いま、電力のことのお話がありましたが、電力料金についても、使用者の人々の理解を得る方法がいろいろあるけれども、それにつきまして、あの問題は法律において明らかに規定されているのですね。そういうことで公聴会を開くことになっておりますけれども、この問題は、地域住民の理解と協力を得るというような方法は、これは法律で規定されて公聴会とかということじゃないのでありまして、それはやはり行政庁の首長たる私にまかされておるというようなことに、極端に言えば、そういうようなことになりますので、私はさっき申し上げた趣旨によって最善の努力をしていく、こういうことを申し上げて、ひとつ御了解願っておきたいと思います。
#136
○小林武君 それは、結論的に言えば、公聴会をやらぬということですか。
#137
○国務大臣(木内四郎君) やらぬとは私は申しませんですよ。だから、私は、やるともやらぬとも申しませんが、私は、地域の方々の理解と協力を得るような方法でなければならぬから、その努力をするということを申し上げた。
#138
○小林武君 それじゃ議論してもしょうがない。採決でもしてもらおうかな。採決する前に、ぼくは一言、学界の方がいらっしゃるから……。別にこれは当てつけを言っているわけじゃないですから、ひとつ誤解しないでいただきたい。
 審議会というものは、どんなに有能な方が集まっても、審議会の結論が絶対誤りでないということは言えない。これは自然科学じゃないけれども、私の関係した委員会の中で、私が見てもこれは日本の一流の方が集まって、そして、このことはこれで正しい、その一番の最高の責任者は、私に対して、私の目を信じてください。こう言った。ところが、とにかく四年もかかってやってみたら、最後にそれは、にせものであった。目を信じたらたいへんなことになった。そのときに、私にあとでいろいろ内部の話を率直に言ってくださった非常に良心的な方がいらっしゃる。相当の責任のある立場の方が、実はあのときは若干どうもおかしいと思ったんだ――しかし、そういうことを発言するのは、どうもやっぱり審議会というのは一人じゃないですからね、何人かいらっしゃるので、いろいろなことをやっぱり考えたんでしょう。そういう話をされて、そして、そりゃ二千何百万円ぐらいの金だから私はどうでもいいというわけじゃないんですよ、国費ですから、どうでもいいとは言わないけれども、少なくとも謙虚さがなければならない。お前みたいなやつはしろうとだ、あるいは国民の不安感なんていうものは、これはしろうとが言っているので心配ない、われわれはあらゆる科学的な根拠に基づいてやっているんだと言っても、私はそういう一片のやり方ではだめだと思うのです。みずから出てやるべきだと思う。
 もう一つは、しかも原子力の問題については、必ずしも学者の間でも一致しておる意見だとも私は言えないと思うのです。そういう意味から言っても、これはやはり国民に、ほんとうに安心させるということのためには、公聴会を開いて、両者の意見を吐かせ合ってやるというような用意が、いまのあれにはある。これは公害問題に力こぶを入れている政府の閣僚としては、やるとも言わぬ、やらぬとも言わぬ、それはおれの胸一つだなんていうようなことを言われちゃ、委員会は一体どうしたらいいんですか。もしそれなら、採決をやりましょう。採決して、ひとつきめましょう。どうですか。
#139
○国務大臣(木内四郎君) いまの、委員会あるいは審査会の速記をとってやったらいいだろうという御意見、これも一つの御意見だと思う。しかし、私は、いやしくも原子力の委員の諸先生方におまかせしたのに、おまえたちは――おまえたちと言っちゃ悪いけれども、あなた方はこれを速記をとって、こうやらなければいかぬというようなことのお願いは私はできないのですよ。それから審査会に対しても。議事の運営とか、そういうことは、従来から、委員会とかあるいは審査会とかというものの方々が、みずからこれをどうすれば最上であるかということを決定されるので、それを私がお願いするときに、あなた方こういう形で、これでやってこいというようなことは、私は長官としてはお願いできませんよ。それは、委員会の方々、あるいは原子力の委員の方々、あるいは審査会の委員の方々が、議事はひとつこうやろうと、これはもう、委員会とか審査会の場合には、絶えずその議事とか運び方とかいうものは、その委員会自体において研究されて、あれするんでありまして、さっき、原子力委員会から御指示を得てというようなお話もありましたけれども、命令するわけにはいかない、そういうものだと私は思っているんです。そこで自由な意見の交換をされて、そうして結論を出していただくというのでなければ、こうやってやりなさいと言うわけには私はいかない。
#140
○小林武君 それはちょっと、大臣、何かお考え違いしているね。一つは公聴会、公聴会は、やるやらぬということについて原子力委員会から、ぼくは文句が出るはずはないと思うんです。公聴会をやるならば、われわれ侮辱されたからやめたなんということをおっしゃる、そういう、そんな非民主的なことはない。有澤先生はそういうお考えは持ってないと、絶対持ってないと思うんです。
 それからもう一つは、部会の運営についてですけれども、これだって、どこの審議会だって、これはあれでしょう、大臣の諮問機関でしょう、これは、一つの。委員長みずからやっていらっしゃる。そういう場合には、原案というのはどこから出るぐらいは、ぼくらだってわかっていますよ。原案が出て、どういう運営をやるかということ、それはもちろん、いろいろ先生方からも意見が出るでしょう。しかしながら、私はそれでも先生方にお願いしているんです。皆さんがお集まりいただいて、よくひとつおはかりいただけませんかということを言っているんですよ。だから、その中で、いや、ぐあいが悪いというので結論が出れば、われわれ、これ、やっぱりやむを得ないと、委員の先生方もみなだめだということになれば、だめだということになるわけです。だから、その点は筋をたがえないでいってくださいよ。公聴会まで原子力委員会が、とにかく、そんなことやるんならわれわれを侮辱したものだというふうにお考えになるかどうか、ひとつ有澤先生から御答弁をしてください。
#141
○説明員(有澤廣巳君) 公聴会は、前からいろいろほうぼうから要求されていることでございます。ただ、これは、私どもの委員会の理解におきましては、原則的にやると申しますか、ケース・バイ・ケースについてやる、こういうふうに、いままで慣例として、それで、このケースについて公聴会をやるとすべきものかどうか、それはそのときの状況によって判断をいたしております。ただ、まあ委員長は、公聴会等を開いてやって――「等」の中に、いろんなその他の方法があると思います。公聴会等によって住民の理解と協力を求めると、こういうようなお話だったと私は承っております。だから、委員長も、公聴会をやらないというふうには言っていない。協力と理解を得るために有効でありますならば公聴会をやる、こういうことだと思います。ただ、それはケース・バイ・ケースで、そのときの状況によって判断をすべきものだと、こういうふうに考えております。
#142
○小林武君 ケース・バイ・ケースのお話が出ましたが、私は先ほど来から辻委員の質疑をずっと聞いておりまして、今度の場合は非常に重要なあれじゃありませんか。大体、従来、あなた、いわゆる巨大化という問題が出てきていますからね、それで、アメリカにおいても、これ、なかなか慎重に取り扱ったという、それもあるでしょう。ソ連の何か最近の原子力発電所のあれ、一週間ほど前だか、二月中のあれに、ちょっと見ましたら、五十万キロワットですか、それが何か非常に大きな原子力発電のようなあれがありました。ぼくは持っていますから、あとで、うそを言わないことには、見せてもいいです。それほど、ソ連も相当その面では研究がよく積まれていると思っているんです。日本の場合、いまのことを考えますと、日本としては、かなりこれはやはり気ばった行き方だと思うんです。そうならば、私は、原子力委員会の先生方、あるいは科学技術庁として、公聴会を持つだけのケースに十分入る、こう考えています。それを何か非常に渋っていらっしゃるというか、渋れば渋るほど、何か腹に一物あるんじゃないかということを考えるようになったんだけれども、何でそんな簡単なことを――何かありますか、そのほかに何か、それやったらえらいことが始まるというようなことがありますかね。そんなこと、ないですよ。私は、そういうことよりかも、国民の信頼を得て、国民がほんとうにこれはもうこれからやっていかなきゃならぬという気持ちにならせればいいわけですから。先ほど来言っておるように、われわれだって原子力発電は絶対だめだと言っているわけじゃない、原爆をつくって、ひとつ戦争でもやろうかなんと言ったら反対しますけれども、平和利用については何も文句を言っているわけじゃないんです。念には念を入れよというのは、どこの国の原子力関係の人だって言っているわけですよ。これ、どうも大臣、少し何か勘違いしているんじゃないですか。
#143
○国務大臣(木内四郎君) 私は何も勘違いはしていない。ただ意見の相違であるということだけはっきりしています。私は、さっき申し上げたとおり、ここ数年来もうそういう主義で来ているんですから、それはいままでは御承認を得て、しておった。しかし、いま電力のような御議論があったから、法律でおきめになってくるなら、これは私はしかたがないけれども、しからざる限り、私はやはり私としての意見を持っていることの自由はあると考えます。これはお認め願わなければならないと思います。
#144
○辻一彦君 公聴会の件ですが、アメリカのAECは、規則の中に明確に公聴会をうたって、非常に公聴会というのを強くやっていますね。日本では法律にない。法律にないけれども、その必要はあるから、国会は、先ほど言いましたように、附帯決議をしている。大型原子炉については、資料の公開、公聴会を開けと、こう言っておるわけですよ。きめておるわけですよ。そうすれば、私は、いまなるほど原子力基本法、その中に、公聴会を開けという条項があるかないかということは、全部読んでないからわからないけれども、かりに、ないとしても、それを補うものとして国会の附帯決議がついているのですよ、こういうふうにちゃんと。ならば、公聴会を開かれるのは当然じゃないか。そういうのはケース・バイ・ケースならば、もうこれは、これだけの時間を、きょう一回でなしに、去年の夏以来何回かやっているんですから、まさにそのケース・バイ・ケースに、今日福井の若狭湾における集中地帯の大型原子炉は該当すると、そういう意味で、この際ひとつ、一歩……。そんな、十二月以来、いま何か聞きましたけれども、三カ月間、じゃ具体的に、それにかわるべき何があったかということになれば、私はもう、ある意味においては、逃げておられるのじゃないか、だから、ここでひとつ、はっきりさしてもらって、そんなあいまいなことじゃなしに、一歩前進して、公聴会はぜひ聞いていただくようにお願いしたいと思います。
#145
○小林武君 委員長にひとつあれしますがね。おれはおれのやり方でやるというお話なら、一体国会の決議というものを、おれのやり方でやる、これは認めないという話であるなら、それを確認してもらいましょう。それ以上けんかしてもしようがない。そのことの確認だけやりましょう。やってください。私はここでけんかする気にもならぬから。
#146
○委員長(渋谷邦彦君) いま、辻委員並びに小林委員から、それぞれ見解を通して述べられた公聴会の件について、木内長官のほうからは、地域住民の協力と理解に基づいて私は私なりの考え方でやるんだと、こういう御答弁のようでございました。しかし、すでに国会の決議において、公聴会を持つべきであるということが附帯事項として決定を見ております。ということになりますと、国会で決定された事項が長官の考え方一つで変、えられるということは非常に不穏当ではないか、このように思うわけでございますが、それに対する総括した一つの結論をここで御答弁いただきたいと思います。
#147
○国務大臣(木内四郎君) もちろん、私は、国会のこの附帯決議された御趣旨は尊重していきたいと思います。しかし、これは公聴会を必ず開けと書いてないんですよ、この附帯決議には。そういうことで、私に自由の裁量はまかされておると私は考えておるんですが、そういうことで、いまいろいろ御意見がありましたが、これは意見の相違で、いつまでたったって――これは法律で、はっきりおきめになってくれば私は従いますけれども、しからざる限り、私は自分の意見を述べて、それで実はいかぬと言われても、法律の規定だからつて、法律にはそうはないんですから、そこのところをはっきりしていただきたい。私は三年ごろ前からそれで通して、いまに始まったことじゃないんですよ。私は、地域住民の理解と協力を求めなきゃならぬという大方針――大方針と言っては、ちょっと大き過ぎるかもしれませんが、そういう方針で今日まで御了解を得てきておると私は思っておったのですが、また、いまも思っておるのですが……。
#148
○辻一彦君 法律にそれは書いてあるかどうか、私はまだ確認していませんが、ここに昭和三十四年三月十一日衆議院科学技術振興対策特別委員会の核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議に、こう書いてありますよ。二項に、国家補償に関連しての項目ですが、「大型実用原子炉の安全性に対しては、資料の公開、公聴会の開催等の手続きを経て決定すべきである。」とありますよ。これは国会決議ですよ。これは一体、長官、どう考えられるんですか。そんなあいまいなことでは納得できませんよ。
#149
○国務大臣(木内四郎君) それですから、私は、さっきから申し上げているように、この決議の趣旨は尊重します。尊重しますが、これには公聴会を開けとは書いてないじゃないですか。公聴会の開催等適当な方法によって地域住民の了解を得なくちゃならぬ。私はその趣旨に従っているんですよ。幾らここで議論されたって同じことですよ。法律でおきめになれば……。
#150
○委員長(渋谷邦彦君) ただいま木内長官の御答弁の結果は、これはあくまでも平行線のようでございますので、このまま議論を進めましても結論が出ないと思います。
 なお、この件については、さらに理事会にはかりまして、今後の取り扱いについてどうするか、それを決定さしていただきたい、このように思います。
 それでは、ただいまから暫時休憩いたします。
   午後一時二十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十二分開会
#151
○委員長(渋谷邦彦君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き質疑を行ないます。
 先ほど公聴会の設置につきまして各委員から強い要求がございました。それについて木内長官より発言を求められておりますので、これを許します。
#152
○国務大臣(木内四郎君) 原子炉の安全性の問題につきましてたいへん御心配を願っておって、まことに恐縮であり、また、感謝にたえない次第であります。この原子炉の安全性の問題につきましては、これは非常に大事な問題でありまするので、委員会の附帯決議の御趣旨に沿いまして、これは先ほども申し上げたのですが、これを十分に尊重いたしまして、できるだけ今後その実現に努力してまいりたいということをこの機会に申し上げておきたいと思います。
#153
○委員長(渋谷邦彦君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
 参考人の方々には、長時間にわたりまして御多忙のところ御出席をいただき、たいへんありがとうございました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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