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1971/05/24 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第7号
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1971/05/24 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第7号

#1
第068回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第7号
昭和四十七年五月二十四日(水曜日)
   午前十一時三十九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月二十三日
    辞任         補欠選任
     鶴園 哲夫君     松永 忠二君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         加藤シヅエ君
    理 事
                金井 元彦君
                矢野  登君
                伊部  真君
                内田 善利君
    委 員
                青木 一男君
                菅野 儀作君
                田口長治郎君
                高田 浩運君
                高橋雄之助君
                寺本 広作君
                原 文兵衛君
               茜ケ久保重光君
                占部 秀男君
                松永 忠二君
                小平 芳平君
                栗林 卓司君
                加藤  進君
   国務大臣
       国 務 大 臣  大石 武一君
   政府委員
       総理府総務副長
       官        栗山 廉平君
       環境政務次官   小澤 太郎君
       環境庁長官官房
       長        城戸 謙次君
       環境庁自然保護
       局長       首尾木 一君
       環境庁大気保全
       局長       山形 操六君
       環境庁水質保全
       局長       岡安  誠君
       文化庁次長    安達 健二君
       林野庁長官    福田 省一君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  北川 俊夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       防衛庁経理局施
       設課長      蔭山 昭二君
       防衛施設庁総務
       部施設調査官   楯石 一雄君
       文化庁文化財保
       護部長      高橋 恒三君
       通商産業省公害
       保安局参事官   森口 八郎君
       建設省都市局技
       術参事官     今野  博君
       日本国有鉄道副
       総裁       山田 明吉君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
○公害及び環境保全対策樹立に関する調査(公害
 及び環境保全対策樹立に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(加藤シヅエ君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨二十三日、鶴園哲夫君が委員を辞任され、松永忠二君がその補欠として選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(加藤シヅエ君) 特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います――。
 今日は、委員長から最初に質問をさしていただきます。
 この法律は、このたび参議院におきまして、ただいま外務委員会において審議中の、渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約の実施にあたって、国内法の整備の必要から立法されたものと理解いたします。近く六月に、スウェーデンのストックホルムにおきまして開催が予定されております人間環境会議に先立って、この条約が成立し国内法の整備もできるということは、たいへんに喜ばしいことだと思っております。
 ことに、今日ニュースを聞いておりますと、ニクソン・アメリカ大統領がソ連に行かれまして、ソ連で重要な会議に当たっていらっしゃいますが、最初に取り上げられました問題が環境の問題であるというニュースは、これは今日の世界の関心事のうちで、環境保全が最大関心事であるというような印象も受けますので、この法案の重要性というものをなお一そう認識しなければならないと思うわけでございます。
 ただ、一つ申さなくてはならないことは、鳥獣の保護がどんなふうになっているかということは、その国の文化の水準をあらわすようなものでございまして、その意味におきまして、日本は経済的に非常に発展をしたと世界から認められながら、片方においては、動物の保護についてはたいへんにおくれている。ひどくおくれている。これは決して日本国の名誉ではございませんので、たいへんにおそくなったとは思いますが、いまこういうような法律ができようとしているし、これは環境庁といたしましても、非常に御努力をなさって継続的にどんどんと保護を、もっと内容の充実したものに進めていただかなければならない、このように私どもは認識しているわけでございます。
 このような認識のもとにこの法案を審議するわけでございますが、いまこの法律に「絶滅のおそれのある鳥類」ということばが出てくるのでございますが、その名称に入れられます鳥類というのは、わが国の場合は、タンチョウ、アホウドリ、コウノトリ等二十一種ぐらいというふうに聞いているわけでございます。こういうような鳥類は、天然資源としてまた科学その他の分野において非常に大きな価値を有して、これはただ日本にそういう価値を有するというだけではなくて、世界共通の貴重な資源であるというような認識でこういう鳥獣の保護をいたさなければならない。そのためには、絶滅の防止というようなことに絶大な協力をいたしませんと、すでにこれはたいへんな危険な状態におちいっているように聞いておりますので、環境庁としては十二分の努力をしていただきたいのでございます。
 最初に伺いたいのは、そういうような非常な重要な任務が課せられておりますが、日本の環境庁という新しいお役所は、長官はじめ担当の皆さまのたいへんな御熱心な御努力にもかかわらず、過去がない、歴史がないために、今年度の予算は昨年度の七・一四倍取ったとたいへんにお喜びになっていても、金額にしてみれば一億二千万円、これでは全くお話にならないような少額ではないかと思うわけでございます。それで、日本だけでやっているのではなくて、この渡り鳥条約が締結されますと、これは日本とアメリカとのお互いの関係になってまいりまして、お互いに相手国がどういうように保護しているかということにも絶えず関心を持ち注目するわけでございますので、日本がどれだけのことをやっておるということ、これはたいへんに具体的にその成績があらわれてくることだと思うのでございます。
 ところが、いま申し上げたようなわずかな予算の中で、しかも環境庁の鳥獣保護課のお役人の数は、聞くところによりますと十一人というような話でございますね。それで予算が全部でたった一億二千万円。こういうような状態に対しまして、アメリカのほうはどうなっているかと申しますと、これはもう長い歴史を持ってやっているのだそうでございますが、内務省の中のフィッシュ・アンド・ワイルドライフ・サービスというお役所で役人の数が三千人、予算が四百億ドル。これではもう話にならないような差がある。
 こういうような状態の中で、環境庁長官はいろいろ歩かれて、たいへんに一生懸命にやっていらっしゃいますが、現在はこういう実情で、これはたいへんきびしいことでございます。これに対して、将来どういうようなことを、どのくらいの抱負をもってどのくらいの予算というようなこと、予算のことということで金額のことを伺うわけではありませんが、どういうような規模でどのような仕事にもっと力を入れようとか、いろいろな御抱負がおありになると思うのです。それをまず聞かしていただきたいと思います。
#4
○国務大臣(大石武一君) お話しのように、いまの日本の鳥類保護と申しますか、こういうものの行政は、過去の積み重ねがほとんどわずかしかございません。去年なんかは千七百万円ぐらいの予算でして、韓国のような日本の何分の一の予算の国でも、約五億円ぐらいの予算が、鳥類とかそういうものの生物に対する保護にさかれているわけでありまして、それに比べますと、経済大国とはいいながら、まことにお恥ずかしい話だと思います。ようやく七・二倍。これは過去が小さいですから何倍ということは意味がありませんけれども、ようやく一億円台に達しまして、どうやらこうやらアメリカと渡り鳥条約を結ぶための準備の仕事ができるようになっただけのことでございます。
 今後は、やはりおっしゃるとおり、鳥が住めるような、鳥類が豊かに住めるような環境でなければ、人間も豊かに住めるような健康な生活環境であり得ないと思います。そういう点でも、ぜひこの鳥類が豊かに住めるような環境をつくらなければならないと念願しております。ですから、どういうことをするかと言われても、一々具体的に申し上げるのもたいへんでございますけれども、とにかく、たとえば日本の鳥が一番住んでいる森林資源を乱伐させないように、できるだけ保護をいたしたいということに努力してまいります。
 それから渡り鳥について。渡り鳥の渡ってまいります干がた、あるいは沼なり湖水なり、そのような鳥の生息するための大事な基盤というものは、できるだけ確保しなければならないと思います。ただ残念ながら、いままでの経済開発によりまして、干がたというものはほとんど大部分がその姿を失いました。しかしそれを、何とかして残っているものをできるだけ保存いたしたいと思いますし、またその干がたも、新たに人工的につくれるならつくってまいりたいと思っております。
 東京都では幸い葛西沖に、あそこは大きいですね、大体三百町歩ほどですか、干がたの予定地がございます。これは、かつては干がたであったものが、全体の地盤沈下によりまして、いま干がたでなくなっております。これをまた元のような干がたに直してやろうということで、東京都と協力いたしまして、幸い東京都ではよく意見をいれてくれまして、あそこにりっぱな三百町歩ほどの干がたを、鳥の楽園をつくるということになっております。それから、その隣の新浜の、約一千町歩の埋め立て予定地がございます。これも埋め立てさせないようにということで、千葉県知事ともいろいろ相談をいたしまして、どのようにこれを利用したらいいか、どのような形で、それを使ったらいいか、どのような費用をどこから出したらいいかというようなことについて、われわれのほうはいま委託を受けまして、考え方をまとめておる最中でございます。このようにして、できるだけ鳥の住める基盤をつくってやらなければならないと思います。
 それから渡り鳥条約は、幸いにアメリカと結ぶことができました。これは、日本の国が島国だからですけれども、海を、大洋を隔てた国と国との間では世界初めての条約でございます。私はこの条約を今後、日本に渡り鳥が飛んでくる関係のある世界の国々ともできるだけこの条約を早く結んで、保護してまいりたいと考えております。
 手始めに、去年は民間団体の手を通じまして、中国にも一応その意向を伝えまして打診をいたしております。ソ連にも、この前、グロムイコ外務大臣が見えられましたときにその交渉をいたしまして、その際、話し合いの呼びかけをしたのでありますが、今度のストックホルムに参ります前に、一日か二日の日にモスコーに参りまして、ソ連と来年あたり結びたいというふうに申し入れをしてまいろうと思っております。そのほかにも、アメリカとは結びましたが、その間にあるカナダが抜けておるのです。カナダとも交渉しなければならないし、東南アジア、オーストラリアのほうとも交渉しなければならぬということを考えておるわけでございます。
 こういうことで、いろんな前向きの姿勢で取り組んでまいりますが、さらに大事なことは、日本の、鳥類だけではありません、全体の生物、これをできるだけむだなハンティングをやらせないように、ハンティングはいけないと申しませんが、ほんとうにむだな意味のないハンティングをやめてもらおうと思いまして、いわゆる猟区狩猟制度と申しますか、全国を禁猟区にするということ、これは少しいろんな批判もございますので禁猟区ということばをやめまして、猟区狩猟制度ということにいたしたいと思いますが、そういう猟区を設定いたしまして、そういうところで十分ハンティングというスポーツを楽しんでもらおう、それ以外の地域では一切鉄砲を撃たないようなことにいたしたい。これを何とか今年は法律にいたしたかったのでありますが、とうてい準備が間に合いませんで少しおくれるのでございますが、そのようなことで、そのようないろんなことを総合的に組み合わせまして、できるだけ鳥類が豊かに住めるような環境をつくってまいりたいと考えておる次第でございます。
#5
○委員長(加藤シヅエ君) ソ連、カナダ、その他の国とも、どんどん協定を結ぶ準備をなさるということ、たいへんけっこうでございますから、ぜひ進めていただきたいと思います。また、干がたなんかを買収するとか、あるいは自治体と協力をする形で保存する努力、これはぜひどんどん進めていただきたいと思います。
 こういうような鳥類の保護、保存につきましては、いままで役所というものがほとんど何もすることができないような状態であったときに、民間の団体、たとえば鳥類保護連盟とか、野鳥の会とか、こういうようなものが早くから存在しておりまして、こういうような会の会員の方が全国的にいろいろの手を貸してくださるので、今後お役所としてもいろいろ仕事をお進めになる上で、こういう民間団体の協力というものを高く評価して、さらに手を結んで仕事をお進めになるということを私は希望したいと思います。
 さらに、いまお話にございました保護のために干がたを保存するとかいうことでございますが、もう一つ、特に絶滅に瀕している鳥の場合には、太平洋諸島の小さい島にいる鳥の中に、絶滅に瀕するものがあるように聞いております。そういうようなところが今後どういうことになりますか、もしこれを放置しておきますならば、昨今の観光ブームによりまして、島を買い取ってしまって、そこにいわゆる観光センターのようなものをつくるというようなことをやられますと、たちまち開発をして、その中にある樹木そのほかの植物を伐採する、伐採をするそのことが、すなわち鳥が住めなくなるというようなことで、環境の変化によって鳥は死滅するのでございます。そういうようなものに対しましてはどうやって保護なさいますか、伺いたいと思います。
#6
○国務大臣(大石武一君) それが一番むずかしい問題でございます。いまわれわれとして、日本の国土の全体の、そのような自然を守りたいという熱望を持っておりますが、いまの段階では、自然公園法できめられたわずかの地域しか、直接環境庁で保護できないような状況でございます。あとは自由かってに開発なり何なりされても、そう十分な規制ができないような現状でございます。
 そこで、何とかしてこの日本の自然を、できるだけ秩序ある保護と開発の中に置きたいと考えまして、その前提として自然環境保全法という法律をつくりまして、それによって、もう少し範囲を広げた、もう少し秩序のある、たとえば人為を加えないで大事に守っておくようなほんとうの原生地域から、ある程度の人為を加えて、人間が自然の中にとけ込んでいける自然地域とか、あるいはもっと、自然を守りながら多くの勤労者や家族が週二日くらいのレクリエーションに十分これを利用し得るような、そういう自然地域とか、いろいろなことを考えまして、自然の正しい保護並びに利用の方法を考えておるわけでございます。その自然環境保全法も、いろいろなむずかしい壁にぶつかりまして、まだ提案いたしかねておりますが、近くどうやら提案できそうな見通しでございますので、会期延長ということがあれば御審議賜わると思います。それに望みを託して努力いたしておりますが、そういうことで、できるだけ日本の自然を守っていきたいということを、いま一生懸命に努力いたしておるわけでございます。
#7
○委員長(加藤シヅエ君) いろいろの法律等の関係で、もう少しやりたいこともなかなかできないようなことがおありになるということは、お察しができます。したがって環境保全のために、さらに環境庁がもう少し法律のもとに力を伸ばすことを私どもは希望するわけでございます。
 それからもう一つ、いまさっき申し上げました、太平洋における小さい島に特に絶滅に瀕する鳥がいる、たとえば尖閣列島、それから鳥島にアホウドリが十二羽くらい残っている。こんな少ししか残っていないというようなことでは、これをこのまま絶滅させないで、現状維持だけするのでもたいへんなことだと思うわけでございますが、これは、協定ができましたその時点において十二羽というようなことがちゃんと知られていて、それから毎年毎年だんだん死んでいって、とうとういなくなりましたというようなことでは、これは条約をほんとうに守っていることにはならないのでございますね。それで、これはやはりそういうような小さい島なんか、買い上げてしまったらどうなんでございましょうか。
#8
○国務大臣(大石武一君) それは、私も同じように考えておるわけなんです。
 先ほど少し言い残しましたけれども、たとえば、自然環境保全法の中にはいろんないま申しましたようなことを考えておりますが、さらに県の自然保護条例ですか、こういうものを、これは何の法的根拠もありませんので、それが必ずしもよく活用されておらない点がございますが、この自然環境保全法の中では、この県の自然保護条例をうしろからささえていくような法的な根拠を与えようと、いま考えておるわけでございます。こうなりますと、いわゆる国定公園とか国立公園にはならないけれども、県でぜひ保存しなければならない、たとえば小さなものでは鎮守の森であるとか、いろいろあると思うのです。そういうものを県のほうで、きめこまかくこれを保護していくことができるようなことになりますので、これを生かしまして、県の所属の小さな島とか無人島みたいなものは、当然、保護条例の中に入れてもらいまして、これでぜひ保護さしてもらいたいと考えております。
 そのほかに、買い上げの問題ですが、これは私は実は非常に希望しておるのです。
 いままでは買い上げの制度がございませんでしたので、国立公園の中の民有地を買い上げるために、五千万円という予算がこれまで毎年ありましたが、これではどうにもなりませんので、もっと広い大きな面積を買える予算がつかないかというので、四十七年度の予算には幸い六十億の交付公債を、交付公債の形ですが、これを獲得いたしまして、国立公園の中の民有地を買い上げることができることになったわけでございます。
 ただし、これは交付公債でありますので、県で買うことになります。その場合には、ある地域に対しては十分の十、補助金を国から出すことになります。そうなりますと、その十分の十の補助金を出した場合には、それが出し終わったとたんに、買い上げたとたんに国の所有になりますが、別の地域は五分の四の補助金を出します。そうすると、あと五分の一は県の持ち出しになりますけれども、それは十年間に出すことですから、大体二分の負担ですからそう大きな負担ではありませんので、そうなりますと、その買い上げた土地は県の所有になります。
 そういうことで、県のほうではそれは喜んでいるようでございますけれども、そのような形で土地を買い上げてまいりますが、ことしはどのような方針でやるか、こまかい根本的な議論が大蔵省と煮詰まりませんでしたので、とりあえず今年は、国立公園の中の民有地ということに限りまして買い上げをしましたが、来年度四十七年度から、もう少しいろんなあり方、根本的なあり方をことしじゅうにきめていくことになっておりますので、私は、できることなら交付公債の範囲を広げまして、国定公園はもちろん、県立公園でもその金が使い得るような、県のあれになりましょうけれども、起債のような形になるかどうか知りませんが、県中心の公債になりましょうが、そのような、県立公園でもその金が、交付公債が使えるような形にまで持っていったならば、いま委員長がおっしゃるような買い上げの問題も、ある程度めどがついていくのではなかろうかと考えて、いま、そういう努力をいたしている最中でございます。
#9
○委員長(加藤シヅエ君) これからの鳥獣保護のお仕事といたしましては、保護区の設定、それから野鳥の森の整備、それから干がた対策、それから特定の鳥類の保護対策、そしてさらに鳥類の試験、研究、研修費、こういうようなものには来年度はそれぞれ十分な予算をひとつお取りになって、これはみんな、仕事をもっと拡大強化していただかなければならない性質のことだと思うのでございますが、その中で、特に絶滅に瀕している鳥のことを、私はたいへん心配しているのでございます。
 その中の、タンチョウのツルの問題を一つとらえてお伺いをしたいのでございますが、タンチョウのツルが、北海道の釧路に昔からたくさんいたのだそうでございますね。それで、一昨々日、日曜日でございましたか、ニュースで聞いていたのでございますが、アメリカのコーネル大学の出身の鳥の専門の博士が、ここに数カ月滞在して、そしてもう克明な調査をなさったらしい。その方は特にツルの専門家だそうでございますが、たいへんな研究をなさって、自分の費用でヘリコプターを借り上げて、上から、どういうふうに巣があるかというふうなことの、数まですっかりお調べになって――日本の国では何にもそんなことは調べてなかったわけですね、いままで。お金もないから、また、だれもそんな仕事をしなければならないということじゃなかったから、しなかったわけでございますが、この協定ができますと、もうアメリカのほろからどんどん来て、私費でもってそういう調査をなさって、非常な関心を持ってタンチョウのツルの生息状態を研究していらっしゃるわけでございますが、そのときに、その方の意見が短かいニュースの中で言われたのには、ここに高圧線が通っているので、タンチョウヅルがこの高圧線に触れて死ぬ、これはたいへん残念なことだから、こういうようなものはこれは地下埋設をするべきものではないかと思う、こういう意見がニュースで報道されたわけでございます。
 それで、私は、さっそくこの問題につきまして通産省の公益事業局施設課長に、その実情につきまして報告を求めたわけでございます。そういたしましたら、なかなかよく調査をしていらっしゃいまして、この高圧線は北海道電力のものだそうで、もともと農協の電力でつくったものを引き継いだものだそうでございますが、何ぶんにも距離が二百キロからあるのだそうでございますから、埋設するためには一キロメートル一千万円以上かかる、二百キロもあるのにその金はとても出しようがないから、やむを得ずトラテープとかなんとかいうような交通標識みたいな、黄色と黒のものとか、白と赤のものとか、ああいうものを下げて、ツルのほうにも交通標識みたいなものを出して、ここはあぶないですぞというわけで、そこに触れないような方策をとってただいまやっておりますというような報告を受けました。それは、十分誠意のあることをやっていらっしゃると思います。しかし、これで十分なのかどうか、これは私どもしろうとにはわかりませんです。
 それで、アメリカから専門家が来て、いろいろと研究していらっしゃるというようなことになりますと、やはりこういう法律の手前、また条約の手前、こちらの専門家が、こういうふうなものにもつともっと研究をして、この保護のための対策というようなものを、いま地方自治体のほうに、教育委員会のほうにも頼んでいらっしゃるそうですから、そういうところと協力してやっていただかなければならないのでございます。
 これにつきまして、タンチョウのツルとかトキとか、こういう珍しい美しい鳥でございますね、これがだんだん絶滅に瀕している。そうすると、これが天然記念物に指定されたということを聞くわけでございます。私どもはしろうとですから、天然記念物に指定してもらったらたいそう大事にしてもらうのだろう、これはたいへんけっこうなことだというふうに考えるわけでございますが、現実はそうじゃなくて、天然記念物に指定してもらっても、名誉かもしれませんけれども、それだけ特別の保護を受けられるものでも何でもないので、指定されていながらだんだん減っていくかもしれないし、高圧線に触れていく現状かもしれないし、ほんとうにだれがどれだけ責任を持ってこういうものの絶滅を阻止するために努力しておるのか、これはたいへんなややこしい問題だと思うのでございます。
 いま、これは天然記念物の指定ということになれば、文化庁の取り扱いになっているので、文化庁でも一生懸命におやりになっていらっしゃることはよくわかるのでございますが、そこで文化庁のほうへ伺うのでございますが、文化庁のほうも、この節、いろいろ古墳が発掘されたりなんかして、ずいぶんお仕事が忙しくなっていらっしゃると思うのです。またこの天然記念物も、いろいろほかの生きものもたくさんあるそうでございますが、私はここでは鳥だけを問題にするのですが、ちょうどたとえばタンチョウのツルとかトキとか、そういうようなものが文化庁の記念物課ですか、そういう役所のほうへ移されますね。そうしますと、そのお役所は仏さまのこともやり生きた鳥のこともやるなんというそういうことは、なかなかできることじゃないと思うのでございます。それでいろいろ御苦心があるだろうと思うのでございますが、どんな御苦心があるか、それを聞かしていただきたいと思います。
#10
○説明員(高橋恒三君) ただいま先生からタンチョウヅルについてお話がございましたので、一応タンチョウにしぼって具体的にお話し申し上げますと、タンチョウは、昭和の初めに二十数羽の生息数をみたのでございますが、昭和二十七年に、えづけと申しますか、給餌に成功いたしまして、年々増加をいたしまして四十四年には二百十二羽、その後は残念ながら減少してきたわけでございますが、……。
#11
○委員長(加藤シヅエ君) あまり詳しいことは、時間がございませんので。
#12
○説明員(高橋恒三君) 先ほど先生からお話ございましたより以上に、私聞いておりますところでは、何羽いるということを数えることは非常によくやっておるようでございまして、ほかの国でも非常に目をみはっているというようなことも聞いております。
 そこで、五千ヘクタールの釧路の湿原地が保護されているほかに、それぞれの管理団体、北海道の教育委員会等でも、えづけをやっておるわけでございますが、四十六年から監視員十名を置きまして保護をいたしております。なお釧路市が事業主体になりまして、人工増殖事業もやっておりまして、これに要する経費が千四百五十万円、これは半分国庫補助しております。
 なお四十六年、四十七年度と二百万円の、補助事業についてやはり二分の一補助をいたしておりますが、なお、非常に死亡数が、最近先生御指摘のように多くなってきておりますので、減少原因調査ということで、本年度、緊急に百五十万円の経費で二分の一国庫補助で調査をしてまいりたい、こんなふうに考えております。
#13
○委員長(加藤シヅエ君) いろいろ御苦労さまでございます。一生懸命におやりになっていらっしゃることをよく理解いたしますけれども、私の考えでは、鳥類に関してはあちらのお役所こちらのお役所ということではなくて、こういうことは非常に専門的に研究した知識というものを必要といたしておりますので、これはやはり一つのところに集めてやっていただくほうが、ほんとうに成績が上がるのじゃないかと、これはまあ公害委の委員長としての私見でございまして、これについては長官の御意見を伺うわけではございません。ただ、そういう考えを持っているということを、所見を披瀝するわけでございます。
 それからその次に伺いたいのは、こういうような、問題になる特殊鳥類の輸出入を規制するということでございますが、これは一体どうやって輸出入の規制ができるのでございますか。たとえば、いま植物なんかは検疫というのですか、税関に農林省のほうからの役人が出て、そこで検疫をするというふうに聞いておりますけれども、この加工物とか、あるいは生きた鳥なんかが問題になるかどうかということは、どうやって規制をするのでございますか。それを聞かしてくださいませ。
#14
○政府委員(首尾木一君) この法律によりまして、輸出入につきましては、すべて輸出につきましては許可制ということになっておりますし、輸入につきましても、これも相手方の適法な証明書の発行ということを条件にいたしておるわけでございます。ただいま先生の仰せになりました点は、実際のチェックの問題といたしまして、税関、税務職員等においてやはり鳥類についての知識を必要とするものでございますから、そういうことにつきましては、図鑑の配布等を考えましたり、そういうことによりまして、このチェックを実際問題としてはやっていくことが必要だと考えております。
 なお、そういったようなまぎらわしい問題につきましては、それぞれ税関関係と都道府県というものの連絡をとるようにいたしておりまして、都道府県のほうでそういったような技術的な面からの指導といいますか、そういうようなものをやれるような体制をつくっていきたい。なにさま、鳥の専門家というものが非常に少ないものでございますから、実際問題として、非常にそういう問題についてはむずかしい問題があるわけでございますが、実例としましては、あまり多くの件数が輸出入の件数になるというようなことはありませんので、したがいまして、そういう点では、さしあたって、ただいま申し上げたようなやり方によってこれをチェックしていこうというふうに考えておるわけでございます。
#15
○委員長(加藤シヅエ君) もう一つ伺いますが、加工品にはどんなものがございますか。たとえばダチョウの皮のハンドバッグというようなものも、規制される対象になるのでございますか。それで、そのような加工品になった場合に、たくさんのものと一緒にどんどん入ってきたり出たりするのを、一々許可を得ているわけじゃなくて、あるいは知らないで、あるいは故意にというようなわけで、これをチェックするというようなことが、そういうことができますですか。
#16
○政府委員(首尾木一君) 規制の対象には、これは人っておるわけでございまして、実際、いままでの事例から申しますと、特殊鳥類のそういった加工品というのは、あまり輸出入の事例がないそうでございますけれども、今後、それにつきましてもやはり十分に取り締まっていきたいというふうに考えております。
#17
○伊部真君 時間の関係もありますから、二点ほどにしぼって質問をしたいと思います。
 一つは、環境が汚染されると、鳥であろうと人間であろうと、安全地帯がなくなってしまう。そういう意味では、いままで鳥は、一面では人間の生命の一つの防波堤のような感じになっておる。聞くところによりますと、DDTの場合でも、スウェーデンで最初にこれが議論されたときには、スウェーデンの愛鳥家が、なぜたくさんの鳥が死んでしまうんだろうというようなことから、これが始まったと言われておるわけです。かつまた、志布志湾のあの環境保全についても、一番中心的な力になっておられるのも、やはり野鳥を守る会の人だと聞いているわけですね。そういう意味では、たいへん鳥というものについては、常に何といいますか、関心を払っておくことが、環境保全について非常な関係を持つものだと思うわけです。
 そこで、この十年間の野鳥の増減というのはたいへん私気になりますので、最近の鳥類の場合は、種類が四百数十種類と聞いておりますが、十年前と比較してどうなっているのか、その状況についてひとつお聞かせ願いたい。
  〔委員長退席、理事矢野登君着席〕
#18
○政府委員(首尾木一君) 野鳥全部につきまして、十年間に生息状況がどうなったかということでございますが、この点につきましては、全体の全種類にわたって把握するということはなかなか困難でございまして、いろいろ資料の数の変化とか、そういったようなことによって把握しておる現状でございますが、一例といたしまして、ガンについて調査をした結果によりますと、それを申し上げてみますと、昭和三十八年には、これはガンは渡り鳥でございますが、全国五十七カ所の渡来地に、約九千三百羽くらいのものが渡来をして来ておった。これに対しまして、その八年後の四十六年には、渡来地も半減をいたしまして二十七カ所になり、そして渡来数も半減をいたしまして、五千百六十羽というような半減の状態になっております。
 そのほかの渡り鳥等におきまして、シギ・チドリ類あるいはツバメに減少傾向が見られるということ、また一部ではナベヅル等につきましては増加するといったような例も見られますが、十年間におきまして、大勢としましてやはり鳥類全体としまして減少をしていったということは、いなめない事実であろうというふうに考えておるわけでございます。
#19
○伊部真君 これからもぜひひとつ、そういう意味では野鳥の増減あるいは状況の変化というものに、私は関心を持ってもらいたいと思うわけです。
 そこで今度、この野鳥の観測のためにセンターをつくるというふうに聞いておりますが、現在計画されておるセンターというのはどのような状況になっていますか、お聞きします。
#20
○政府委員(首尾木一君) わが国の主要な渡り鳥の渡来地あるいは繁殖地等につきまして、今後、観測ステーションを設置をいたしまして、その渡り鳥の観測をやろうというのが、ことしの予算において初めて計上されたものでございます。この観測ステーション、これは北海道の浜頓別クッチャロ湖、それから千葉県の新浜、それから新潟県の福島潟というところに、さしあたって一級の観測ステーションを四十七年度につくりたいという、一応の予定になっております。それからさらに二級のステーション、これは一級のステーションが主として先ほど言いましたような渡来地でありますとか繁殖地のような重要なところでありますが、二級のステーションというのは、鳥の飛んでいく経路にあたっているようなところでありますが、そういうところにつきましても、さらに今年度十五カ所につきまして、これを設定をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
 さらにこれは、本年度はいま申し上げました数字でございますが、最終的には、おおむね一級ステーションを九カ所程度、それから二級ステーションにつきましては二十一カ所程度というものを一応の予定といたしておりますが、そういう観測ステーションを設けまして、特に渡り鳥の状況について観測を進めていきたい、かように考えておるわけでございます。
#21
○伊部真君 これは私先ほど申し上げたように、渡り鳥の観測という意味だけではなしに、環境汚染という意味でもたいへんに大きな意味を持っております。先ほど委員長からの質問にもありましたが、やはりそういう意味では予算上も、私から見てもこれは形を整えているだけだというふうな感じがしてなりませんので、この点はぜひひとつ予算面でも配慮されるように、そしてこの観測センターその他の鳥類の全般的な監視、状況を常に掌握できるような体制を、ひとつぜひとっていただきたいということをお願いをしておきます。
 それからもう一点は、この間新聞にも出ておりましたが、PCBを少量に鳥が摂取をしても、その次の代の鳥は卵を産まなくなるというふうなことが出ておったわけですが、そうなりますと、私はいまのPCBの対策いかんによっては、鳥がもう日本には来れなくなる。もしも来ても、それは死を意味するようなことになってしまう。これはPCB汚染が全国にわたるとは思いませんけれども、そういうふうなことで、非常にこの意味では汚染問題というのが鳥類にとってたいへんに問題だと思うわけです。そこで、いろいろ学者のほうでも卵を産まなくなるという意見があるようでありますけれども、これは調べられたことがありますか。また、その結果についておわかりでしたらお知らせをいただきたい。
#22
○政府委員(首尾木一君) PCBが卵に影響をするという事例につきましては、これは実はスウェーデンにおけるオジロワシのPCBによる汚染調査の結果、判明したものでございますが、わが国におきましても最近の事例、本年の四月でありますが、埼玉県の野田のサギ山のコサギの胸筋の脂肪から高濃度のPCBが検出されたという事例がございます。残念ながら、鳥類とそれから公害物質との関係といったようなものにつきましては、そういったような事例が発見をされておりますけれども、十分な研究がなされておりません。
 しかしながら、これは食物連鎖の関係から、特に魚類を主たるえさとしますサギ類に、最もPCBに汚染されやすい状態があるというふうに考えられるところでありまして、したがいまして、実は今年の予算において私ども、鳥類における公害物質の残留毒性の問題についての調査予算を取っておりますので、その予算を活用いたしまして、こういったような面の検討をさらに深め、必要な対策といったようなこともその面から考えていきたいとそういうふうに思っております。
#23
○伊部真君 時間がございませんから一つだけ。有害鳥獣というものは、定義といいますか、どういうものがこれに適用されるのですか、その点お聞きをしたいと思います。
  〔理事矢野登君退席、委員長着席〕
#24
○政府委員(首尾木一君) 有害鳥獣と申しましても、これは有害な面もあり、また有益な面もあるといったようなことで、必ずしも鳥によってこれが有害鳥である、これが有益鳥であるというふうに、その種ごとにこれをきめてしまう、定義づけてしまうということは、これはできないものが多いわけでございます。たとえば年間を通じまして、やはり農作物等に対するいろいろなそういう影響が多い鳥でありますとか、あるいはそういう鳥であっても、それは一方において昆虫をえさとすることによって、農作物の面においてあるいは林産物の上において有益であるというような場合もあるわけでございまして、したがいまして、今日の鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律におきましても、有害鳥獣の駆除につきましては、これは申請によりまして許可をしてこの有害鳥獣の駆除を行なうというふうにいたしておるわけでありまして、一がいにこれが有害鳥獣だというふうな指定をやっておるということではございません。
#25
○小平芳平君 先ほど、加藤委員長の御質問に対して大石長官から御答弁が一部ありましたのですが、日米渡り鳥条約調印のときの長官の談話の中に、ソ連とも中国ともアジア諸国とも、こうした条約締結を進めていきたいというふうな談話を拝見しておりました。また予算委員会等で長官から、そのつどの御答弁は私断片的ながら伺ってきたわけですが、今日、日ソ、日中、あるいは長官のあげられたアジア諸国とは、どのようなお話し合いが行なわれようとしているか、あるいは現に話し合いがなされているかどうか、このような点について初めにお伺いしたい。
#26
○国務大臣(大石武一君) いま、一番渡り鳥で数が多くて種類の多いのは、ソ連でございます。その次には中国、それから東南アジア、こういうことになっておるわけでありますので、どの国でもけっこうでありますが、できるだけ効果のあがる国からと思いまして、実は、中国に対しましてはまだ国交がありませんので、去年民間の訪中団がまいりましたおりに、その一行にお願いをいたしまして、中国にそのような民間としての申し入れをしてもらいました。その結果は、非常にけっこうなことである、いずれこちらでも十分に連絡をしてそういう方向に進みたいという返事があったということで、民間のこれからの、しばらくの間の連絡というものを期待しておるわけでございますが、いずれ、そういうことが積み重なりまして、幸いに近い将来に国交回復しましたならば、そのときには政府間折衝化してまいりたいと、いま考えておる次第でございます。
 それからソ連につきましては、やはりぜひ来年度あたりは私は条約を結びたいと願いまして、たまたまグロムイコ外務大臣が見えられましたので、そのとおりにお目にかかりまして、その申し入れをいたしました。ところがグロムイコ外務大臣は、非常にけっこうな話である、これはお互いに両方の国にとっても重要なことであると思うから喜んで協力する、ただし、自分は鳥のことはわからない、そして、その申し入れが前もってなかったので、本国と打ち合わせてこなかったのでいますぐ返事はできないけれども、国に帰ってできるだけ前向きにするように努力しましょうという返事がございました。そこで私は、ちょうどストックホルムの人間環境会議に今度出席するから、その帰り道でもモスコーに寄っていろいろ御連絡しますよと言ったら、それはけっこうなことです、あなたがモスコーに来れば、すぐきめてあげますよという話になりました。そこで私は、今度は先に参ることにしまして、来月の一日か二日にモスコーに参りまして、来年あたり結ぶよう努力しませんかという申し入れをいたしたいというふうに考えております。
 それから、その他の国にはまだ手を伸ばしておりませんが、たまたま、私が人間環境会議におきまして演説をする場合に、渡り鳥のことも入れることにいたしております。その原稿の内容の一端が、たまたまちょっと新聞に出ましたところが、その中にはオーストラリアという名前があったものですから、さっそくオーストラリアの政府から、大使館だと思いますが、環境庁に連絡がまいりまして、連絡をいただくというお話ですが、いつでしょうか、われわれとしては喜んで協力いたしたいと考えておりますので、御連絡いただけますればけっこうでございますという御挨拶があったそうでございまして、それで一つの手がかりに近いものを得たような感じがしておるわけでございます。
 それからもう一つはカナダでございますが、カナダは、ちょうどアメリカとアラスカにはさまって、そして北アメリカ大陸におきましては、カナダ、アメリカ合衆国並びにメキシコの間におきましては、それぞれお互いの鳥を保護する条約のようなものがあるそうでございますが、日本では、アメリカと結びましても、カナダとはやらないわけですね。ですから、カナダともやらなければならないということで、いずれそういうところもだんだん連絡してまいりたい、こう考えている次第でございます。
#27
○小平芳平君 長官のそうした積極的な姿勢が、公害列島日本の汚名を幾分なりとも挽回していく一つの力になっていただきたいと、私たちも心から念願している一人でございます。
 次に、この点についても先ほど長官からお話が出ましたのですが、一全国を禁猟区にする、そして特別な地域だけを指定するという積極的な長官の発言がありまして、そして、ある新聞の世論調査でも、七一%の人が賛成だ。あるいは、現実に田畑に働いていても、弾が飛んできてけがをするという、とんでもないことが起きているという事実。従来の日本の政治のやり方は、そうした狩猟を規制する、禁止するというようなことに対する反発というか、圧力というか、ということで、なかなか言い出そうという人もなかった。しかし、大石長官がきわめて積極的な発言をなさって、多くの国民が期待を持ったわけでありますが、その後はどのようになっているでしょうか。
#28
○国務大臣(大石武一君) それは、いまお話しのように、全国禁猟区ということばがけしからぬ。それはぜひやめてもらいたいという、猟友会その他の申し入れがありますので、できるだけ使わぬようにして、適当なことばがありませんので、とりあえず猟区狩猟制ということを私は一応言っておりますが、そのような制度にいたしたいということで、そのような趣旨としてぜひやってほしいという、いろいろな国民の間の要望もございまして、それをまあ望んでまいりました。その準備をするように、法律の大綱を考えるようにということで、自然保護局、特に仁賀鳥獣保護課長にもそのことを命じまして、準備はいたしてまいったのでございます。
 ただ御承知のように、これについては一部にいろんな抵抗がございます。申し上げませんけれども、そういうものの抵抗がありますが、これはいろいろと努力をして、実態を理解していただけば、ある程度の話はつくのじゃないかと思っているわけでございますけれども、抵抗があるわけであります。
 ところが、その前にまずとりあえず出さなければならないのは、自然環境保全法でございます。この法案に一生懸命に自然保護局が取り組んでまいりました。ようやく一応新しい考えの、相当いいものが実はできたわけでございますが、それが各省庁との間に調整に時間をとりまして、二月から二、三、四、五と、約四カ月以上たって、ようやく法案が出せるという見通しがついたわけでございます。それも、まだ法制局が通っておりません。何とかしてこの二十六日と思いますが、間に合わないかもしれません。とにかく今月中には国会提案という、情ない状態になったのでございます。
 そのようなわけで、この自然環境保全法が先に提出されませんと、どうしても猟区狩猟制は手がつけられません。また二兎を追いますと、全部を逃がすおそれがございます。そういうことで自然環境保全法に努力いたしました結果、いま目鼻はつきましたが、もう国会も末期でございます。あと会期延長があればと望んでおりますが、それもそう長いことはあるはずがございませんので、それで、もし幸いにある程度の期間延長があれば、自然環境保全法がこれは御審議願えるかと思いますが、それ以上はとても多くを望むことができません。残念でございますが、この鳥獣に関する法案の問題は次の国会まで延ばしまして、その間に十分な根回しなり努力なりをいたしまして、次の国会にはりっぱに提案できるようにいたしたいというのが、いまの私の心境でございます。
#29
○小平芳平君 そういたしますと、自然環境保全法案は、だいぶ後退した形で提出されるというふうに報道されておりますが、かりに禁猟区ということばがけしからぬというなら、禁猟区ということばは使わないにしましても、猟区制とかそういう表現を使うにいたしましても、環境庁の取り組む姿勢としては変わってないというふうに理解してよろしゅうございますか。
#30
○国務大臣(大石武一君) おっしゃるとおりでございます。この自然環境保全法にしましても、確かにある権限とか形の上では、われわれが考えましたよりも多少後退いたしております。現実にはこれはやむを得ないことでございますが、しかしその基本的な、自然を守るという新しいものの考え方は、これは変えておりませんので、ぜひこれは制度化いたしたいものだと考えております。
#31
○小平芳平君 それから次に環境庁にお尋ねしますが、「絶滅のおそれのある鳥類」ということは、これをどういろふうに判断をなさるか、もういまのままだと、すべての鳥類が絶滅のおそれがあるじゃないかというふうにすら指摘されているわけですが、その辺の見解はいかがですか。
  〔委員長退席、理事矢野登君着席〕
#32
○政府委員(首尾木一君) このアメリカとの条約を検討するにあたりまして、指定すべき絶滅の危険のある鳥類の基準といたしましては、もともと個体数の非常に少ない鳥、それから生息環境におきまして、非常に絶滅のおそれのあるような生息環境にある鳥、それから他の禽獣との間においての競合関係において、やはり絶滅のおそれのある鳥ということで、これらについては、人間の援助がなければその種の保存というものがはかりがたいというような鳥を、これを絶滅のおそれのある鳥ということにいたすということで、具体的にはそれに基づきまして指定をやっていくということで、とりあえずアメリカとの間においては、内地で二十一種類、沖繩で七種類、日本で二十八種類でございます。それからアメリカで四十六種類というものを指定をするというような予定になっているわけでございます。
#33
○小平芳平君 今回の法律では、譲渡の規制、輸出輸入の規制、そういうものが出まして、いま御答弁の、人間の援助を必要とするという、この人間の援助についての予算なり対策はいかがですか。
#34
○政府委員(首尾木一君) 今回の法律そのものは、現在の鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律のいわば特別法的なものといたしまして、特に仰せられました譲渡の禁止、輸出入の禁止だけに限っておるわけでございます。その他のものは、現在の現行法の中でこれをやっていくということになっておるわけでございます。
 したがいまして、現行法の中でこれを実施するわけでありますが、先ほどもお話が出ておりましたように、現在の予算の状況というのは非常に貧弱な予算でございます。現在の鳥類保護といたしましては、これは実態は、各都道府県におきまして、入猟税等を財源といたしますそういう鳥獣保護の事業が行なわれているわけでございますが、鳥獣の環境の保護につきましては、たとえば鳥獣保護区の設定によりまして、そこで巣箱でありますとかあるいは給餌施設をつくるというようなこと、あるいは特に鳥獣特別保護地区というものの設定ができるようになっておりまして、それにつきましては、環境保護のために各種の工作物でありますとかあるいは木の伐採でありますとか、そういったようなことにつきまして、鳥獣保護法のほうで規制ができるというような形になっております。
 予算といたしましては、そういうようなことで実際に十分でございませんが、今後予算を拡充をいたしまして、ただいま申しましたような給餌の施設でありますとか巣箱でありますとか、そういったようなものをやりますし、さらに環境の保護につきましては、先ほどお話が出ておりましたように、今後必要とあれば土地の買い取り等も検討するというようなことを考えてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
#35
○小平芳平君 環境庁のほうでは特殊鳥類としての指定をされる。で、文化財保護法の天然記念物の指定がまた別に行なわれるということになりますと、環境庁の特殊鳥類としての指定の目的、あるいは文化財としての指定の目的、それぞれあるとは思いますが、要するに、この両方で指定しまして、その辺の連絡なり、あるいはその監視体制なり、それはどのようにお考えですか。
  〔理事矢野登君退席、委員長着席〕
#36
○政府委員(首尾木一君) この今度の法律で考えております特殊鳥類は、これは現在の鳥獣保護法とあわせまして、種の保存というような観点からこれを指定をいたします。天然記念物のほうの指定といたしましては、これは学術研究上重要なものとして指定をするということでございまして、したがいまして、これは実際問題としてダブる場合がかなりあるわけでございます。現在の、先ほど申し上げました二十八種類のうちの約十六種類というものが、特別天然記念物あるいは天然記念物として指定をされておるというような実情にあるわけでございますので、これは十分文化庁とも連絡をとりまして、各種の届け出等につきましても十分連絡をとりまして、遺憾なきを期してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
#37
○説明員(高橋恒三君) 文化財保護の観点から、天然記念物としては、鳥類が七十一件天然記念物に指定してあるわけでございまして、そのほか、御承知のように動物、それから植物、それから鉱石類、いわゆる地質的なものまで含めまして、八百八十七件指定をいたしております。そのうち鳥類は先ほど申し上げたように七十一件でございます。
 もとよりこれらの指定は、ただいま環境庁からお話ございましたように、わが国にとって、あるいは世界的なものも含めて、学術上価値の高いものという観点から指定をいたしておりまして、学術資料として保護していこうということが目的でございます。したがいまして、今回環境庁のほうから御提案になっております法案によるところに見ましても、私どものほうで指定をいたしますと現状変更ということが非常に規制されておりますが、そういう意味で、現状変更ということについてオーバーラップする面もございますけれども、両者相待って、なお保護が高められるということになるかと思います。
#38
○小平芳平君 ダブって指定を受け、両者相待って保護が充実されればそれでけっこうですが、実際問題として、現在の鳥獣保護区にしましても、どの程度の管理体制になっておりますか。
#39
○政府委員(首尾木一君) 現在、鳥獣保護区には国設の鳥獣保護区と、それから県で設定をしております鳥獣保護区というものがあります。これらにつきましてはそれぞれ、前段の国設の鳥獣保護区につきましては管理員を委託をいたしております。それから県で設定をいたしております鳥獣保護区につきましては、鳥獣保護員を委嘱をいたしております。この鳥獣保護員は現在約二千三百名でございます。その他、鳥獣の保護につきましては、これは一般に司法警察職員として、特別司法警察職員となっておりますものが千百八十名おるわけでございまして、それらによりまして、現在の鳥獣保護あるいは狩猟の規制といったようなものを行なっておるわけであります。しかしながら、これらにつきましては、現状から申しまして十分ではございません。たとえば先ほども申し上げましたような巣箱の設置、あるいは給餌施設のような積極面における整備といったような面について、まだまだこれから十分にやっていかなければならない面があると考えておるわけでございます。
#40
○小平芳平君 先ほど御指摘のあった予算の点についても、これから充実されなければならないという点を私も、ダブりますので申し上げませんが、希望として要請しておきたいと思います。
 次に、この点も先ほど伊部委員から指摘がありましたが、鳥類が大量に死ぬという。それで、野鳥が大量に死んだその原因は、農薬なのか、あるいは大気汚染というようなことになるのか、あるいはPCB等の蓄積か、その辺の実態をすみやかに明らかにしていかなければならないと思うのです。
 それは一般的にいえば、公害をなくしていく、きれいな空気、きれいな水を取り戻す、このことによってそういう大量死を防ぐのはもとより、鳥も人間も健康に、しあわせに生活できる環境を取り戻すということになるわけですが、しかし公害の場合は、このくらいならと思って出していると思うのですね。まさか千人のぜんそく患者、公害病患者が発生するということを予定して出しているわけじゃないのですが、現実、結果としてはそういう公害が発生し、公害病患者が続出し、また、なくなっていくということになってしまったわけであります。したがって環境庁としましては、特にこうした野鳥が大量に死んだ、そうすると、ある研究機関ではPCBの蓄積がこれだけある、これが原因ではないかというふうにも指摘されます。あるいは農薬、そういう汚染物質とそれから大気汚染と複合して死んだのかもしれませんし、この辺の究明についてはどのように取り組まれますか。
#41
○政府委員(首尾木一君) 野鳥の、そういう農薬その他の公害物質等による残留毒性に関する研究を、本年度の予算において予定をいたしておりまして、二百万円でございますが、これによりまして、その辺のことを今後研究をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
#42
○小平芳平君 ですから、二百万円で研究しましても、どういう研究ができるかですね。さしあたって、具体的にどういうことから手をつけますか。
#43
○政府委員(首尾木一君) この点につきましては、私どもはただいまのところ直接の研究機関というものを持っておりませんので、これにつきましては山階研究所に委託をいたしまして、従来の研究ともあわせまして、こういったようなことについての研究を進めてまいりたい、かように考えているわけでございます。
#44
○小平芳平君 それから、先ほど鳥類観測ステーションについての御説明がありましたが、そのほか鳥獣保護区、あるいは野鳥の森、こういうような構想についてはいかがですか。
#45
○政府委員(首尾木一君) 鳥獣保護区につきましては、これは現段階においてさらにこれを拡充をしていこうというふうに考えておるわけでございまして、本年度の予算におきましても国設鳥獣保護区を拡充をいたしております。さらに最近、各都道府県におきましても鳥獣保護区の拡充ということが、そういう積極的な動きが見られますので、大いにそれを促進をしてまいりたいと、かように考えております。
 また、野鳥の森につきましては、これは鳥と人間が親しむような、そういうことをねらいといたしまして、また鳥についての知識を深めるということができるような施設といたしまして、本年度四カ所を予定をいたしておりますが、さらに今後、それの増設を次年度以降においても考えてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
#46
○小平芳平君 もう少し、何カ所、どういうような範囲で設けようというような、具体的な案はまだできておりませんか。
#47
○政府委員(首尾木一君) 国設鳥獣保護区につきましては、本年度予算において二十九カ所の増ということを考えておりまして、野鳥の森につきましてはこれは四カ所でございますが、予算要求といたしましては、将来これをさらに二十カ所程度くらいはつくりたいというような、計画的にそういうことで予算要求をいたしましたが、まだこういったものは、計画につきましては財政当局との間にセットはできておりません。しかし、今年とりあえず四カ所につきまして設置をするということでございまして、今後もそういう野鳥の森というものを、各所に必要に応じてつくってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
#48
○小平芳平君 環境庁長官が、四十七年度予算が閣議決定された段階で、この鳥獣保護行政関係が一億二千万円、それは前年度に比べたら、伸び率は相当の伸び率ではありますが、このジェット機の飛行機、何十億もする飛行機が予定されている段階において、わずか鳥獣保護行政に一億二千万円、あれだけ大騒ぎしてこういう現状だ、というふうな談話を新聞で拝見したわけですが、で、最後に環境庁長官から、そうした今後の取り組みの基本的な姿勢について伺いたいと思います。それが第一点。
 それから、時間の関係で全部申し上げますが、第二点としましては、この教育につきまして、学校教育あるいは一般の社会人に対する愛鳥に対する教育といいますか、そういう面についてのお考えを承りたいと思います。
 それから林野庁。林野庁としましては、環境庁とどうも歩調がそろわないようなことがよく出てきますが、この鳥類保護についてはどのように考えられるか、伺いたいと思います。
#49
○国務大臣(大石武一君) 鳥類保護についての基本的な取り組みはという御質問でございますが、できるだけりっぱに鳥の生存する環境が保全されまして、人類とともにお互いに共存をして楽しく繁栄できるような、そのような環境をつくりたいということを願って今後も努力してまいりたいと思います。
 予算につきましても、ことしは一億二千万円で、ほんとうにこれは七倍半としてもわずかで、話にならないわけでございますが、それでもあのような大騒ぎをして取ったわけであります。しかし、このような新しいものの考え方、つまり鳥類を愛情をもって保護しようという新しい行政のものの考え方が、ようやく政府部内でも、あるいは一般の行政の中でも認められたように思います。そういうことで、これを基本として今後は大きく発展できると思うのでございます。ですから、七・何倍でわずかに一億二千万円ですが、かりに三倍になっても、半分で今度は三億六千万円になる。そういうことで、こういうことを基準にして近い将来には何倍にもふやしてまいりたい、こういうような予算を取っていかなければならないというように考えておるわけであります。
 それから、鳥類保護の教育につきましては、大事なことだと思います。けさの新聞を見ますと、警官がトビを警棒で打ち殺したということが出ております。それは確かに警官が必ずしも悪いとは言えないので、十歳の少女の頭をトビが突っついてけがをさせた、至急何とかしてくれという電話が一一〇番に来たので、警官が二人でトビをおびき寄せて警棒で殺したということでございますが、これは大したことではないんで、少女の頭のリボンをからかってつついた程度でございまして、殺さないでも済んだはずでございます。それは、殺したことが悪いというのじゃありませんが、そのような鳥に対する認識なり愛情の持ち方というものが、今日の鳥に対する教育の程度ではないかと思います。あれがもう少し、学校教育とかそういうことによって鳥類に対する愛情がわかっておれば、もう少しトビについても知識があるでしょうし、トビがどれほど害をするかということがわかってくる。あるいは殺さないでも、つかまえられたかもしれません。
 ああいうことを考えますと、まだまだ学校の教育は足りないと思います。当然、私は基本的な学校教育の中において、自然保護、鳥類の愛護ということを十分に加えなければならないと思います。われわれ環境庁としましても、当然いわゆる社会教育の一端としてこの任務を負わなければなりません。いままでも例の野鳥の森をつくるとか、そういうこともやはり自然保護、鳥類愛護の教育の一端でございます。
 このようにして、できるだけわれわれの、ことに若い世代に、やはり少年のうちに子供のうちに鳥類なり生物なり自然に対する愛情の種をつくりませんと、その愛情というものは、将来これは大きな人類愛にまで成長しないと思います。愛情というものは人間が訓練し、努力して大きくしていくものだと思います。そういう意味で、将来その一番の核となりますか、そういうものを、やっぱりほんとうの小さい幼ないもののうちに、子供の心に愛情を植えつけることが、それがだんだん異性愛にまで広まり、あるいは人類愛にまで広まると思いますので、できるだけ幼ない子供にでもそういう自然を愛する、鳥を愛するというものの考え方、愛情というものを植えつけるような努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
#50
○政府委員(福田省一君) 森林の全面積は二千五百万ヘクタール、その中で、国設、県設合わせまして鳥獣保護区が約百八十万町歩ですから、一割までいっておりませんけれども、それぐらいが全森林の鳥獣保護区として指定されておるわけでございます。
 実は一例をあげて申し上げますというと、佐渡のトキが絶滅に瀕しまして、この間、植樹祭で新潟へ行ってきましたら、九羽になっているそうでございます。私、一昨年佐渡へ行きましたとき、ちょうど十一羽。この佐渡のトキを何とかして保存しようということで、国有林としてこれを買い上げまして、これを保護区に指定したいきさつもございます。なお、積極的な面では、聖蹟桜ケ丘に林野庁の鳥の実験場がございまして、ここで日本キジの種キジを増殖しております。これを各県に配付しまして、各県がそれぞれの保護区に放鳥しているわけでございます。
 要するに、森林というものは先生御承知のように、木材だけじゃなくて、水資源を確保するとか、あるいはきれいな空気をつくるということを含めまして、森林の中にある樹木と、それから鳥なりあるいは渓流の魚なり、あるいはカモシカ、リスその他の小動物を含めて、全体として有機的なものが森林であると、かように私は考えております。そういう意味で、鳥というものと森林というものは密接不可分の関係にある。これが一つのレクリエーションの場として国民全般の保養の揚にもなっておる、かように考えております。そこで今後は特に、国設、県設にしましても、そういう鳥獣保護区を積極的にふやしまして、最近減少しつつあります鳥の増殖をはかってまいりたい。その点については環境庁ともよく御連絡しまして、今後は前向きで進めてまいりたいと、かように考えております。
#51
○内田善利君 関連。終わります前に一言お聞きしておきたいと思いますが、長官、先ほどの答弁の中で、渡り鳥条約についてモスクワで何とか早く処置をきめてきたい、またカナダともそうしたいという御意向でしたが、これは地球全体の問題として、せっかく開かれる人間環境会議に、こういった鳥類の保護について提案される気持ちがないかどうか。
 それともう一つは、鯨が問題になっているわけですが、十年禁止協定についてどのように考えておられるのか。修正案を出されるということも聞いておりますけれども、お差しつかえない範囲でお願いしたいと思います。
 それから森林伐採の問題、東南アジア地域ですね。
 それと、海洋汚染防止法が六月二十五日から施行になりますが、それよりももっときびしい廃油投棄禁止勧告がなされるとも聞いておりますが、こういったことに対してどういう腹づもりでいかれるのか、この点お聞きしておきたいと思います。
#52
○国務大臣(大石武一君) この人間環境会議に出てまいりまして、私は代表演説をするわけでございますが、その演説の草稿の中に、いろいろと直接私が取り上げまして訴えるところが五点ほどございます。その中の一つに、渡り鳥の条約の締結のことをつけ加えております。
 先ほど申し上げましたように、アメリカとは国を隔てて初めて条約が結ばれましたが、それをその後いろいろな国ともやるということで努力を進めてまいりますが、この条約が、できるだけほかの国でも、大陸間でも、お互いにこの条約が結ばれまして、地球がその渡り鳥条約でおおわれるような、渡り鳥がどこでも自由に楽しく飛んでいけるように、そのような楽しい世の中をつくりたいということを、私は提案と申しますか、演説の草稿の中に加えてまいりたいと思いますが、それを強調してまいりたいと考えております。
 それから鯨の問題でございますが、これは、鯨を現在いわゆる商業、企業としてとっておりますのは、ソ連と日本だけでございます。その他は、あとわずかに局部的に、エスキモーであるとかアメリカの小さな島の住民であるとか、そういうようなのがとっておりますし、また別にペルーとチリとエクアドルでしたか、三つの国が集まりまして、これが、あまり大規模ではありませんが、そこで原始的な捕鯨をやっておるというのが大体世界の現状でございます。
 それで、御承知のように鯨はいま非常に減りまして、絶滅に瀕しているものもあるのでございますので、世界各国で鯨をとる場合に、いろいろ制限をいたしまして、捕獲禁止なり頭数の制限ということをいたしておるわけでございます。それをするのにいろいろな段階を経ておりまして、現在では国際捕鯨委員会という、大体十四カ国くらいでございますが、世界の、アメリカも入っております、イギリスも入っております、日本とかノルウェーとかソ連とか、そういうのも入っておりまして、そういうところでいろいろな規制を申し合わせましてそれを守っているわけでございますが、その国際捕鯨委員会の内定に反対して脱退をしたのが、先ほど申しました南米三国でございます。これは、捕鯨委員会の規制は自分らに不当であるということで脱退しまして、独自で別に三国で共同して捕鯨しておりますが、これはあまり大きな企業ではありませんので、それほど鯨の保存には大きな影響はございません。ただ問題は、ソ連と日本のとり方でございます。
 御承知のように鯨というものは、日本やソ連なんというのは、あとからとり始めたのです。以前は、ノルウェーとかあるいはドイツとか、イギリスとかアメリカとか、そういう国がさんざんとりまくりまして、めちゃくちゃにとりまして、大部分のものが非常に危殆に瀕した。その後ソ連と日本とが加わりましてやっておりまして、残ったのが二国でございまして、まるで鯨を絶滅させているのが日本とソ連のような印象を与えておるのであります。これは非常に残念でございます。
 それで、いろいろ種類がございますが、鯨のうちでも五種類、五つの大きな鯨が捕獲禁止になっております。グリーンランドクジラ、これは数百頭しかおりません。セミクジラ、これもわずかしかおりません。それからコククジラというのは、これはアメリカの沿岸にいるのですが、その後保護しまして、非常にふえて大体一万頭ぐらいいるそうでございます。それからシロナガスクジラ、これも数千頭しか世界にはおりません。一番大きな鯨です。それからもう一つザトウクジラ、これも数千頭か、二、三千頭しかいないと言われております。これらは非常に少なくなりましたので捕獲禁止ということになっておる。各国が大体守っているわけでございます。
 残る鯨の資源としては、いまとっておりますのはナガスクジラ、さらには、イワシクジラとかニタリクジラとかいろいろなものがありますが、その種類のイワシクジラ、歯のあるマッコウクジラ、これが大体いわゆる商業捕鯨の対象になっております。もっと小さなツチクジラとかミンク、そういうものはとられておりますが、これはあまり資源もありませんが、捕獲頭数も非常に少ないので、あまり問題になっておりません。その三つのクジラがいま一番問題になっております。このうちでも、ナガスクジラが一番その中で大きい。一番利用価値がございます。そういうことでナガスクジラが一番ねらわれますが、それがだんだん、いま非常にあぶない方向に進んでおるわけでございます。
 そこで、アメリカは、全部これをやめちまえ、十年間捕鯨を禁止したらよかろうということを主張しまして、国連の会議の一つの部会の中に、それを決議として提案しているわけでございます。これに対して世界の国々はみな集まって決議しますが、そこに参りますのが、大体あまり鯨に専門的でない国が多いのです。ほとんどとっていない国が多いのですから。そこでもしぼやぼやしておりますと、アメリカの提案が直ちに決議されることになる可能性が強いわけであります。これは決議されても、必ずしも直接強い強制力がありませんけれども、しかし、そのような世界の国が決議した決議案に反しまして日本だけが、しかも国連環境会議にはソ連が出ない公算が多いのでございますから、日本だけが常にその決議を破って捕鯨をしたということになりますと、世界的に非常に孤立をするおそれがございます。そういう意味で、この決議を何とかして別な形に変えなければならぬと、みんなで考えておるわけでございます。
 日本の現状から申しますと、いまのところ、直ちに捕鯨を十年間禁止するということは、とうてい私は行政上できないと思います。私個人としてはしたい。私個人としてはしたいのですけれども、行政の面から考えてこれは不可能でございます。いろいろな経済の実態、それによって何万という家族が生活をされている。いろんなことを考えますと、いまここで直ちには禁止できません。しかし、その趣旨には沿わなければなりませんから、いま申しましたように、この三つの鯨、特にナガスクジラはなを用心をしなければなりませんが、十分に資源の保護、繁殖をはかりながら、考えながら、その可能な範囲内において商業的捕鯨を続けていく、当分の間。これは五年か八年かわかりませんが、そういうことで、ある機会にそれは全面的な禁止に入ってもけっこうでございますが、ある期間はそのような捕鯨を続けていかなければならないと考えまして、日本の水産庁並びに捕鯨会社の中心の方々、それから学者の方々にお集まりを願いまして、いろいろ対策を立てましたが、そのような、やはり当分は資源を守りながらとっていかなければならないという結論に達しました。
 その旨を、やはりそのような考え方に修正するように努力しようということで、アメリカのトイレン委員長ですか、公害関係の、この人にもぜひ協力してほしいので、手紙が参りましたが、返事として、このような日本の実態であるからこのような修正に協力してほしいという返事を出しておりますが、そういうことでいまいるわけでございます。これからもいろいろ努力いたしますが、そのような、ただその年限を付しながらということに問題があります。これには厳重なやっぱり条件が要りますが、それは御承知のように、三つの条件がいま一番大事になっております。
 一つは、シロナガスクジラ換算ということをやめなければなりません。つまり、もとはシロナガスクジラが一番大きな鯨でありまして、それをとっておりました。それを禁止したのでありますから、ほかの鯨をとる場合には、シロナガス何頭分の許可をする、何頭とってよろしいということで、シロナガスクジラに換算してとっているわけです。たとえば、ナガスクジラは三頭でシロナガスクジラ一頭に換算いたします。それからイワシクジラは六頭でシロナガスクジラ一頭に換算している。ところが、実際は油とか肉とか、そういうものを考えると、大体ナガスクジラ一・六頭でシロナガスクジラ一頭に当たる。それからイワシクジラが三・五頭くらいで実際はシロナガス二頭に相当するのです。それを大きくしてあるんですね。ところが換算していきますから、どの種類をとってもかまわないのです、シロナガスクジラ一千頭なら一千頭という範囲内では。そうすると、一番大型のとりやすいものがねらわれます。そういうことでナガスクジラが一番ねらわれて、絶滅するおそれがある。
 こういうようなシロナガスクジラ換算をやめまして、そうして鯨の種類、たとえばナガスクジラは何百頭、イワシクジラは何百頭ということで、鯨の種類をはっきりして捕獲の制限、規制をするということが一番大事であるということと、それから、とる場合には勘違いをしでかさないように、故意といえどもあるいは過失といえども、間違いをしでかさないように国際監視員を乗せるということ、それから三番目には厳重に資源の再検討をするという、こういうことが一番大事でございます。そういうことを条件として修正案を出してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
 それから海洋汚染でございますが、――話が長くなってもよろしゅうございましょうか。
#53
○委員長(加藤シヅエ君) はい。
#54
○国務大臣(大石武一君) 長くなりますが、海洋汚染は世界的な問題でございます。これは今度の環境会議でも重大な議論の中心になると思います。ことに、けさの新聞を見ますと、特別に海洋汚染だけの問題で特別部会をつくるようなことが出ておりますので、やはりこれは相当議論になりますと、一番の海洋汚染の元凶の代表は日本である、つまりはタンカーが一番多いのですから、だろうということになりまして、だいぶん苦しい立場に立たなければならないだろうと思うのでございます。
 これにつきましても、私は海洋汚染を何とかして防止しなければならないということで、そのように演説の原稿に入れてあるわけでございますが、その中で一番考えておりますのは、やはり海洋汚染の一番大きな問題は油であります。油の海洋汚染であります。廃油を捨てるということ、これは一番問題でございます。
 私はその前に、日本海洋学会の会長である宇田道隆先生にもお目にかかりまして、いろいろと御意見を承りました。その結果得ました結論は、これは宇田先生も同じ主張でございますが、一番問題になりますのは、船から出る廃油、ビルジといいますか、それからタンクの中の、行くときはから船で参りますから、それを安定させるためのいわゆるバラスト水を入れますが、油で汚れておりますバラスト水を海に捨てますと、何百トンという油が一そうの船から出るわけでございます。そういうバラスト水とビルジ、この二つが海を汚す原因でありますので、この油を捨てさせないためには厳重な規制をしなければならぬ。
 そこで、いまでも日本の港に入ったタンカーその他の船は、やはりそのような油の処理を港の中ですることを義務づけております。しかし、これはまだ、ほとんど無視されております。処理を義務づけられておりますが、全然無視されております。ですから、これは厳重に守らせるようにしなければならぬと思います。つまり、日本の船であろうとアメリカの船であろうとイタリアの船であろうと、日本の港に入った以上は、全部港でビルジなりバラスト水を完全に処理する、きれいに洗う。そういう処理施設を港につくらなければなりませんし、処理しない限りは出港を認めない、これくらいの厳重な規制をしなければ、とうてい日本近海の油の汚染を防ぐことはできません。そういうことで、このような考え方をひとつその中で主張しようと、こう考えておるわけでございます。
 ずいぶん長くなりましたが、このようなことで行ってまいりたいと考えております。
#55
○委員長(加藤シヅエ君) ちょっと委員長から関連で、いまの御答弁に対して伺うのでございますが、捕鯨の件で、ソ連はこの会議に出席しないわけでございますね。
#56
○国務大臣(大石武一君) しない公算が多い。おそらくしないかもしれません。
#57
○委員長(加藤シヅエ君) もし日本だけが捕鯨の問題で矢面に立たされて、そして監視員を乗せるというようなことをきめた場合は、ソ連が出席していなかったら、監視員の問題はどういうことになりますか。
#58
○国務大臣(大石武一君) それは、私はアメリカのトレインに返事をしたのは、監視員を乗せることは日本一国だけでも実行するということを申しております。そのことは業界にも約束してございます。
 これはこの前、御承知のようにきまりまして、ソ連の船には日本の監視員を、日本の船にはソ連ういう形でいま進んでおるようでございます。これは監視員でございますが、考えてみれば、悪いたとえでありますけれども、どろぼう同士がお互いに監視するようなもので(笑声)そういう形に見られがちなものですから、もう少し正確な国際監視員を乗せることが大事だろう、そう考えております。
#59
○田口長治郎君 関連。いまの油の問題でございますが、御承知のようにアラビアその他は、油槽がきれいでなければ入港させないということにきまっておるのです。したがって日本から行った船は、アラビア付近に着くまでにきれいに油槽を掃除をしてしまって入港しなければならない、こういうたてまえになっておる。それから日本のほうは、いま長官が言われたように、油槽をきれいにしなければ出港できないという、それが実行できればいいのですけれども、全然実行できないのです。それでもう、原油を揚げてしまったらすぐに出港してしまう。したがって太平洋、インド洋を航海中に油をそっくり捨てていって、アラビアに着くまでにはきれいにしてしまわなければならぬ、こういうような実態になっております。
 日本でどうして実行できないか、これを調べてみますと、船舶公団その他で油処理の施設を陸上につくっておる。したがって五万トン、十万トンの船を、そうかってにそこここに着けるわけにもいかないので、この点やむを得ない実情にありまして、また法律も、きれいにしたものでなければ出港できないという、そういう法律になっていないわけなんですよね。
 そこで、法律も制定しなければなりませんが、現実にそう手間なしに油槽をきれいにする廃油設備をする、こういうことを考えた場合におきましては、やっぱり船舶に廃油設備をつくりまして、そうして原油を積みおろした船の横にこっちの船を着けて、ビルジその他をこっちのほうに移す。こういう、船に廃油設備をするということが絶対に必要のものでございますから、これは二千トンかあるいは千五百トンくらいの船でもいいと思うんですがね、この船を建造する奨励を、ぜひひとつやってもらいたいと思います。
 それから国際的には、一つ困りますのは、海洋の汚染防止法という国際的な法律がありますが、この法律は実はざる法になっておりまして、この法律を見てみますと、一〇〇PPM以下のものであれば一海里走る間に六十リッターの水を捨てていいと、こういうことになっておるわけなんです。したがって、監視をする者も何もいないところで、そういうような法律ですから、その途中でどんどん捨ててもだれも見ていないし、これを厳格に、一〇〇PPMのもので一海里走るのに六十リッターと、これだけを厳格にやってくれるといいんですけれども、そこに抜け道があるためにそれがどうも実行できない。
 こういうようなことになっておりますから、この国際法にも今度の会議で何とかそのうち触れていただいて、世界中でそういう抜け道を国際的にとめてしまうというような、そういう方法をひとつお考え願わなければ、なかなかこの油の問題はむずかしいと思いますから、国内的にはタンカーに廃油設備をつくる、国際的には、この法律のざるのところを何とかとめる方法を研究していただきたいと思います。
 以上でございます。
#60
○国務大臣(大石武一君) ありがとうございました。
#61
○加藤進君 この前の法案の趣旨説明では、長官は「絶滅のおそれのある特殊鳥類について、その保護繁殖をはかることは重要かつ緊急を要する」、こういうふうにおっしゃいました。それから日米渡り鳥条約の第六条によりましても、絶滅のおそれのある、保護しなくてはならない鳥類の「環境を保全しかつ改善するため、適当な措置をとるように努める」、こういう義務づけがなされておると思います。
 そこで私は最初にお尋ねをしたいのは、この法案でいう「絶滅のおそれのある鳥類」として二十八種類ですね、沖繩を含めますから二十八種類を指定されたわけでありますけれども、この二十八種類の特殊な、絶滅のおそれのある鳥類について、その生息地の環境保全のために、環境庁はどのような対策と手だてを講じられようとしておられるのか、その点を簡潔にまずお尋ねしたいと思います。
#62
○政府委員(首尾木一君) 環境保護につきましては、現在の鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づきます鳥獣保護区の設定、さらに鳥獣保護区の中における鳥獣特別保護地区の設定ということを通じまして、その環境の保護というものを基本的にはかってまいりたい、かように考えております。
#63
○加藤進君 概略の話だけお聞きしておきまして質問に移りますが、そこで、今度復帰いたしました沖繩県では、二十八種類の特殊鳥類の中で、その四分の一にあたる七種類の貴重な鳥類が生息をしておりますね。特にその中でもノグチゲラという鳥類は、これはもう世界でただ一つしかない貴重な珍鳥だということも、もう世間でもよく知っておるところだと思います。
 そういう七種類の鳥類の中で、沖繩の最南端の島、西表島には、私の拾ってみましたところ、四種類の特殊の鳥類が生息しております。カンムリワシ、ヤエヤマシロガシラ、ウスアカヒゲ、ヨナクニカラスバトですね、こういう四種類の鳥類が生息している。いわば、その生活環境をできるだけ手厚く保全してやらなくてはならぬ地域だと思います。そこで、この貴重な鳥類の生息しておる環境がどうなっているのか、この地域の鳥類の環境保全のために、今日どのような具体的な措置がとられておるのか、その点をお尋ねしたいと思います。
#64
○政府委員(首尾木一君) 西表につきましては、これは非常に貴重な原生林が全島に残っております。現在、その全島の約三分の一の面積にあたります約一万ヘクタールでございますが、これが国立公園地域に設定を、ごく最近されました。政府立公園ということに指定をされまして、復帰と同時に国立公園になったところでございます。したがいまして、国立公園でございますから、そういったようなところの自然の保護というものは、今後私ども十分に考えてまいりたいと思っておるわけでございまして、現在は、幸いにしてかなり広い面積でのそういったような原生林が、ほとんど手のつかない状態になっておるところが非常にたくさんございますので、そういうところについて環境の保全は十分できると思っております。
 さらに鳥類の保護につきましては、今後、先ほど申しましたような鳥獣特別保護地区といったようなものを設けまして、この鳥類の保護について万全を期してまいりたいと、かように考えておるわけであります。
#65
○加藤進君 そこで、きょうは林野庁おいでになっていますね。お聞きしたいと思うのですが、この、いわば太古から受け継がれた秘境ともいわれるような西表島です。ここで、八重山開発との契約によって、この原生林がパルプ原木としてどんどん伐採されてますね。私の調べた限りでは、この西表島の森林面積は二万五千ヘクタール、そのうちすでに二千二百ヘクタールは、ほとんど皆伐にひとしいような状態で切り倒されている。串間の伐採規模は二百ヘクタールにあたる。
 こういう事態が今日進行しておると思いますけれども、こうした伐採が進められた場合に、西表島の原生林はおそらく十年くらいあとには姿を変えるであろう、こうして、ここの自然の生態系はめちゃめちゃに破壊されるであろうということを専門の学者諸君が警告しておるわけでございますけれども、林野庁は、先ほど申し上げましたような鳥類の自然環境の保全という立場に立って、こういう計画を今後とも従来どおり進めていかれる気なのかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
#66
○政府委員(福田省一君) 現在、西表島の面積は先生御指摘のように二万七千八十七ヘクタールございまして、このうち国有林が二万四千七百二十七ヘクタールございます。九二%が国有林になっておりまして、あとは民地でございます。この二万四千七百二十七ヘクタールの国有林のうち、国立公園としまして自然保護を重点に除外した面積は九千二百九十二ヘクタール、約四割でございます。これは主として山岳地帯を中心に、四割の、自然を主とした国立公園として保存されるわけでございます。それから、ただいま御指摘のございました八重山との部分林の契約をいたしておりますところ、これは九千八百四十七ヘクタールでございますので、やはり約四割でございます。大体、国立公園を取り巻いた里山に近い地帯が主になっておるものでございます。その他五千五百八十八ヘクタールというものは保安林であるとか、あるいは保護林であるとか、あるいは地元の人たちが利用します農用林、あるいは開拓地とか、こういうものになっておるものでございます。
 実は、御指摘の八重山開発株式会社との間に部分林の契約ができましたのは、当初が、先生十分御承知かと思いますが、一万八千ヘクタールであったのでございます。この一万八千ヘクタールの部分林の契約は、もとの琉球政府との契約でございますが、昭和二十八年にできたものでございます。これは、この中から水源涵養保安林であるとか、あるいは禁猟区であるとか、風致林その他の保安林、こういったものを約五千ヘクタール除外しまして、昭和四十五年には一万三千ヘクタールに部分林が減ってきております。で、今度は九千八百ヘクタールに変更されましたのでございますけれども、一万三千ヘクタールから、やはりいま申し上げました国立公園を指定されますために、それを重点的に取り上げたためでございます。だいぶ会社の面積が、当初の一万八千から九千八百ですから、約半分に実は減らしたわけでございます。
 この地域には、ただいま自然保護を重点に国立公園を設定したのでございますけれども、地元に昔から住んでおりまして、ここで伐採をし、あと地を造林するということによって生計を立てておったような人たちがだいぶおるわけでございます。こういう人たちのことも考えていかなければならぬと思うわけでございまして、最小限度にしぼったのではございますけれども、部分林契約でございまして、琉球政府から引き継ぎまして、こちらと八重山開発との間に――これは伐採しますところは里山ですから、質の悪い木でございます。これを切ったあとは、松その他のいい木を植えていくという計画のものでございます。一応ただいまのところでは、きめました計画に従って続行してまいりたい、かように考えておるところでございます。
#67
○加藤進君 これからのことを私も聞いたわけですが、これからも、いままでどおりの契約に基づいて、年間二百ヘクタールにも及ぶような山を全部切るわけでございますから、これはもう、一部を残すというようなことではなしに全部、皆伐というふうな方式をとっていくのであって、これは林野庁の方も、こういう方式は本土ではほとんどないような状態で進められている、こう言っておられるような事態を、今後とも林野庁としては認めて推し進められる気かどうか、これをお聞きしたい。
#68
○政府委員(福田省一君) 今度は沖繩が日本に復帰したわけでございます。日本全国につきましては、この二月に、森林の伐採方法につきましては、従来のような木材の増産を重視した能率主義の大面積皆伐ということはやめるという方針にしたのでございます。伐採するに際しましても、一カ所の伐採面積は最高限度二十ヘクタール、しかもその周囲にはできるだけ天然林を残す、そういうことによりまして、日本国土の全伐採面積は約百万ヘクタール減少することにいたしたのでございます。そういう大きな方針を定めたのでございますが、沖繩が返ってまいりますれば、やはりこういう原則の中で沖繩の森林計画も考えていかなければならない、かように思うわけでございます。
 ただ、ただいま申し上げましたのは国有林を中心とする経営方針ではございますけれども、民有林につきましても同じような考え方でいきたいと思っております。この場合は部分林でございます。お互いに契約のいきさつもございます。しかし、ただいま申し上げましたような方針に従って、国土の保全を考えながら、そういう方針に従って慎重に対処してまいりたいというように考えております。
#69
○加藤進君 私も現地に行きたいとは思っておりますけれども、まだその機会を得ません。しかし、実際の地図を見て私も驚いているわけでございますけれども、ここに朱線を引いてあるところが国立公園ですね。なぜ一体国立公園が、この島の中で、こんなに入り組んだところを残してわざわざ指定されたのかということに対して、非常な疑問を感じざるを得ないわけであります。
 これというのも、沖繩における新聞、あるいは沖繩の政府関係のこれまでの言明によりますと、それはもう八重山開発との間の皆伐という方式を認めて、そうしてそれをどんどん進めていく、進めていって、余ったところをまあ何とかということで、これが国立公園の指定区域に入れられた、こういうふうに期せずしていわれているわけでございまして、これでは、皆伐は遠慮なくやらせる、やらせたあとをとにかく保存していく、これは私は真の自然保護でもなく、また真にこれを国立公園としてりっぱに守りながら、そこに生息する鳥類その他の貴重なものを守っていく方法ではない、私はそう感じざるを得ないわけでございます。
 そこで私は、ただ私だけの言い分ではなしに、現に昭和四十五年三月に、政府、厚生省の沖繩自然公園調査団、これができておりますね。これに加わられた自然保護審議会の委員である横浜国立大学の宮脇助教授は、こう言っております。これは現地を十分に視察されたあとの声明でございますけれども、「日本民族の最後の〃郷土の森〃が破壊されている。西表島の原生林は、現在、森林皆伐と自然の聖域の中を縦断しようとしている林道建設によって大規模な破壊がすすんでいる」。これは、七〇年十月五日の朝日新聞にもこのことか出てまります。こういう訴えが出ておるわけであります。また、琉球大学の学長である高良鉄夫さんは、林相は破壊され、有益鳥獣は減少しつつあると警告しております。
 こういう現象に対して今日、最も私たちが守らなくてはならない重要な特殊鳥類、その四種類が少なくとも生息しておる地域なんでありますから、私たちが法案審議するにあたって、このような鳥類を真に保護していくためにどのような手だてをしっかり持っていかなければならぬのか、こういうことを私ははっきりしなければならない。私はこの際、環境庁長官に、従来どおりのやり方ではなく、もっとゆっくり十分に御調査をいただいて、この環境の保全のために万全の措置を講じていただかなければ、渡り鳥条約の趣旨も、また今度の法律の趣旨も死んでしまうといっても言い過ぎではないような感じがするわけでございます。その点、環境庁長官の御所見を伺いたいと思います。
#70
○国務大臣(大石武一君) 私は、この国有林、国立公園に編入するに際しまして、実は西表を一ぺん見たいと思っておりました。そこで、なかなか国会の都合があるので参れませんので、五月初めの連休を利用して参る予定を立てまして、その旨を一応屋良主席に申し入れたのでありますが、まことに申しわけないけれども、いまはどうにもこうにも復帰の事務に忙殺されまして手が出ません、まことに恐縮ですが復帰が終わったあとにゆっくりお迎えいたしますから、そのときに来ていただきたいという返事がありまして、沖繩をまだ見かねております。見ておりませんから、あまりえらそうなことを申せませんけれども、できるだけ広い範囲を保護する、国立公園に入れるということで、十分に自然保護局を督励いたしまして努力してまいりまして、ようやく一万ヘクタールに近いものが確保されたようなわけでございます。
 質問をお聞きしますと、大体問題は、川沿いや海岸にはえておりますマングローブの自然林とか、あと、その中にある原生材もごさいますが、そういうものを中心にしておりますので、非常に入り組んだ形になっているのは、一つはそのようなマングローブ林、こういうものをよく保存するという意味で入り組んだ形になっているわけでございます。大体は、おっしゃるとおり原生林としてまだ残っている部分を入れているようであります。それ以外の地域は、いろいろと畑ができたり、あるいは八重山開発によって取られたりあるいは権利があるわけです。あれは一応権利がありますから、できるだけ、先ほどの林野庁長官のお話のように面積を減らしてまいりましたが、ある程度権利を持っておりますから、いま直ちに取り上げるわけにはまいりませんでしょうが、そういうことで、とりあえず一万町歩のものを確保したわけでございます。
 その中に林道ができましたのは、これは残念であります。ですけれども、これは山中総務長官が向こうへ行って、彼も初めこういう道路に反対しておったそうです。ところが、現地に行ってみまして、現地の住民のいろいろな要望、そういうものについに彼も負けまして、非常に経済的にもいろんな不便であるということに負けまして林道をつくることにきめたということでございまして、大体が大部分でき上がっておるところであります。ただ、あのまん中を通るわけですから、私も残念に思います。
 ですけれども、あの林道を考えてみますと、それからまた自然保護局にもいろいろ話を聞いたのですが、あの道路が一本できましても、あそこのところを毎日何千人という観客が、車で何百台、何千台も通って往復するはずはなかろうと思います。まあ何十台かの車が向こうの部落とこっちの部落をつなぐだけで、その程度ならばそれほどの、排気ガスによる破壊も防げるだろうということで、ある幅だけは大事にしまして、そこのところをこれは一応認めざるを得ない現実であると、こう思いました。
 そのほかにもいろいろ地域を聞いておりますが、まだまだ多少拾いあげられそうな感じがいたします。そういうことで、できるだけ面積を広げますが、面積を広げるよりも、内容をひとつ充実いたしたいということで、ほんとうの厳密な保護ができるような方法でやっていきたいと考えておるわけでございます。
#71
○加藤進君 この問題につきましては最後に申し上げますが、宮脇助教授がさらに次のようなことを警告しております。
 それは、木材伐採は、各種の有機物が豊富に含まれている土壌を直射日光にさらし、有機物を消滅させ、PHを変化させ、さらに、雨による表土の流出を促進している。そして、ついには母岩まで露出する状態になったと、こう言っておるわけでございまして、今日までの状況、昭和四十五年の現状に一おいてもこのような事態が警告されておるわけでございます。
 今度、本土復帰を実現した今日でございますので、ひとつ環境庁長官といたしましても、この現地の実情をあらためて十分に調査検討されまして、あるいは国立公園の指定区域につきましても、ひとつ従来の考え方にとらわれないで、新しい観点から再検討していただく御用意があるかどうかということをまずお伺いします。
 さらに林野庁長官には、いままで続けてきたような伐採、皆伐にひとしいような伐採のやり方によってこの状態が現出したのだから、この状態はもはや放置できないという立場に立つなら、この伐採計画について、十分の自然保護の配慮を加えて再検討をさせる、再検討する、こういう御用意があるかどうか、その点、両長官からお伺いします。
#72
○国務大臣(大石武一君) この貴重な資源を守るためには、あらゆる努力をいたしたいと思います。必要な、強い規制が要るならば、いろいろな抵抗もありますけれども、そういうものを適宜排除して、そして厳重な保護ができるような行政を強力に進めてまいる決意でございます。
#73
○政府委員(福田省一君) 先ほど申し上げましたように、森林に対する経営の方針としましては、自然保護を重点として考えてまいるということを申し上げたわけでございます。沖繩が幸い本土復帰しまして、十分現地を調査する等の努力をいたしました結果、十分、ただいま申し上げました趣旨に沿うていきますように検討してまいりたいと、かように考えております。
#74
○加藤進君 環境庁と林野庁との関係を、この問題の改善を通じて、ひとつお互いに協力し合える状態に促進してもらいたいということを、まず言っておきたい。
 次に、特に沖繩本島の北部地帯に生息しておるノグチゲラについてでございますが、このノグチゲラは、すでに五月十五日の復帰とともに、文化庁が特別天然記念物に指定されましたし、また、沖繩県では、これを県の鳥だと定めて、非常に愛好し、また尊重しているということは御存じのとおりであります。
 ところが、この鳥がいまや絶滅に瀕しつつあると、こういう事態になっておることがまさに重要だと思いますが、このノグチゲラが危険な事態に立ち至っているということについての御認識をひとつ承りたいと思いますけれども、どのような状態がこのノグチゲラの生息する地域一帯にいま起こりつつあるか、この点の御所見を承りたいと思います。
#75
○政府委員(首尾木一君) 沖繩本島の北部にノグチゲラの生息地があるわけでございますが、これにつきましては、正確な実態調査の資料というものを、私どもただいま手元に持っておりません。今後、その問題につきましては十分調査を、復帰いたしましたものでございますから、これは早急にやりたいというふうに考えております。
 しかし、北部のおもな生息地につきましては、これは沖繩政府下においてすでに鳥獣保護区の設定がされておりまして、復帰と同時に、経過措置法によりまして、わが国の鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の鳥獣保護区に読みかえられるという形になっておりますので、その鳥獣保護区の管理、さらに先ほども申し上げましたような特別保護地区の設定といったようなことに今後努力をしてまいりたいと、かように考えております。
#76
○加藤進君 まだ実態を十分に掌握しておられないように思います。
 沖繩県の調査によりますと、このノグチゲラの生息地である北部山岳地帯一帯には、森林面積として一万三千六百六十六ヘクタールがあって、そのうち、アメリカの海兵隊演習地は八千六百九十八ヘクタール、陸軍演習地は千九百五十三ヘクタールになっておりまして、全森林面積のうち、アメリカ軍の演習地の占める割合は七七・九%なんです。これが私は実態でありますし、せっかく特別保護地区までつくられたところが、いわばアメリカ軍の演習の空砲がどんどん目標として撃ち込まれている、そういう地域になっておるということ、この点までは私はよもや御存じないはずはないと思いましたけれども、御存じないでしょうか。
#77
○国務大臣(大石武一君) これは存じております。
#78
○加藤進君 ここには、ベトナム侵略の悪名高い第三海兵師団のゲリラ訓練が公然と行なわれていますし、また、この地区周辺にはヘリポートが十八カ所にもつくられており、ヘリコプターによる訓練や白兵戦訓練が毎日のように実施されている。そして小火器の実弾演習が行なわれている。その上に、一〇五ミリりゅう弾砲の空砲発射演習がなされているということであります。しかも、これがだんだんと縮小されるならともかく、この演習地は、縮小されるどころか、さらにりゅう弾砲の砲座が新たに設けられるなどの強化拡大が行なわれている。これがノグチゲラの生息する現地の実情なんです。
 そこで私は、きょう防衛庁をお呼びいたしましたのは、こういうことは事実として確認していいのかどうか、この点を防衛庁にお尋ねしたいと思います。
#79
○説明員(楯石一雄君) いま御質問のありましたことにつきましては、事情をまだ十分に承知しておりませんが、幸い復帰後に、沖繩のほうに那覇防衛施設事務所ができまして相当人数が参りますので、今後十分な調査を行なおうと思いますが、現在わかっております段階におきましては、いま先生おっしゃいますようなことのうち、若干のものが行なわれていると聞いておりますが、りゅう弾砲の空砲射撃につきましては、これは承知しておりません。それから小火器の、小銃弾の射撃につきましては、北部訓練場の南部のほうで若干やっているということは聞いております。
#80
○加藤進君 それでは、一昨年のことでございますけれども、アメリカ軍のこのような演習に対して、有名な国際鳥類保護連合という団体がこれに抗議をした、そしてついに米軍さえ実弾射撃を中止している、こういう事態については防衛庁も御存じでしょうか。
#81
○説明員(楯石一雄君) そのような状態については承知しておりまして、中止になったはずでございます。
#82
○加藤進君 きょうの新聞でございますけれども、日本野鳥の会も近く、実弾射撃演習が行なわれるということを心配して、防衛庁に実弾演習をしないような要望書を出すということが出ています。
 私がここでお聞きしたいのは、防衛庁としては、この米軍の演習地をいわば共同使用して、ここで射撃演習を自衛隊として行なうという計画がおありかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
#83
○説明員(蔭山昭二君) 自衛隊としては、いま御指摘の個所において共同使用して、射撃演習をするという計画はございません。
#84
○加藤進君 ないですか。そうしますと、ここで今後、実弾演習等を行なうということは防衛庁としては考えていない、こう理解していいですか。
#85
○説明員(蔭山昭二君) 自衛隊に関します限りは、そういう計画を持っておりません。
#86
○加藤進君 そこで長官にお尋ねしたいと思うのですけれども、このノグチゲラについては、ユネスコでさえ、貴重な鳥であるから十分に保護すべきだという勧告が出されていますね。それから、沖繩県では県の鳥として愛護しようとしている。その生息の現地が、まさに米軍の演習地として日夜大砲の音をとどろかしている、ゲリラ演習が行なわれている。しかもここは国有林、特別保護地区さえ設定されている。こういう状態でいえば、日米渡り鳥条約の趣旨からいっても、あるいは今回成立させようとしておられるこの本法案の趣旨からいっても、このような事態を環境庁としては黙って見過ごされるのか、それとも、何らかの規制措置をこれに対して行なおうとしておられるのか、その点を私はお聞きしたいと思います。
 特に日米渡り鳥条約は、日本とアメリカとの間の義務を要求する条約だと思います。したがってアメリカの、あるいは国際的な保護団体さえ、米軍に抗議するほどの問題でございますから、環境庁といたしましてもこのような事態に対して、アメリカの政府にも堂々と、ノグチゲラを守るのは共同の責任だ、こういう立場に立つ、はっきりした意思表示をなさるべきだと思いますけれども、その点いかがですか。
#87
○国務大臣(大石武一君) いまの御意見には、大体私も賛成でございます。われわれとしましても、そのような大事な自然環境を保全するためには、あらゆる努力をいたします。できることとできないことがあるでございましょうけれども、いずれにしてもやるべきことは、一番適当な手段を用いまして、そのように努力してまいる考えでございます。
#88
○加藤進君 私は、その長官の所信に非常に信頼をしたいと思います。ぜひとも、米軍といえども、世界の人類あるいは自然の中でどうしても守り抜かなければならない貴重な鳥が、このような軍事的な行動によってさらに危険な状態にある、このことをひとつ強く訴えられて、日米渡り鳥条約に基づく適切な、米軍に対する演習もあるいは射撃等々の中止処置をとられるように、ひとつ重ねて長官にお願いしたいと思います。重ねて御所信をお願いします。
#89
○国務大臣(大石武一君) まだわれわれは実態がわかっておりませんから、至急その実態を調査いたします。その結果、そのような要求が必要ならば、そのような要求をいたします。
#90
○委員長(加藤シヅエ君) 時間でございますから……。
#91
○加藤進君 最後にもう一つ、重ねて防衛庁にお尋ねしますけれども、去る五月二日の琉球新報によりますと、防衛庁は、沖繩の復帰後、ノグチゲラの生息地である米軍演習地内の森林で、一〇五ミリりゅう弾砲などの実弾射撃を行なう計画を立てている、こういう記事が出ております。こういうことに対して、防衛庁ははたしてこの記事どおりのことを考えておられるのか、いや、そういうことは事実間違いであって、決してそのようなことは、いまもないし、今後もやる用意はない、やる計画はない、こういうことでしたら、その点をひとつ明確にこの機会に述べていただきたいと思います。
#92
○説明員(蔭山昭二君) その北部演習場地域の自衛隊の使用の問題につきましては、防衛庁としては当初から、こういう地域に演習を考え、復帰後においてもこれを検討の対象とするということは、作業としてもやっておりません。ただ、幾つかの出版物に、そうした計画があるのではないかという推測がなされたことは、承知はいたしております。さらに四月二十八日の沖繩タイムス、五月二日の琉球新報に、先生御指摘のような記事が載っておりますけれども、防衛庁は、農林省に対してそのような実弾射撃演習地にしたいという申し入れをしたこともございませんし、また、この地域について防衛庁が共同使用の計画といいますか、そういうものは一切、東村高江地区でございますか、そういう計画は全く持っておりません。この際はっきり申し上げます。
#93
○加藤進君 これで質問を終わります。
#94
○委員長(加藤シヅエ君) ほかに御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#95
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより討論に入ります――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#96
○委員長(加藤シヅエ君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
#97
○伊部真君 私は、ただいま可決されました特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党、五党共同提案の附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読をしたいと思います。
    特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律案に対する附帯決議案
  政府は、本法施行にあたり特に次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。
 一 渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約の実施にあたつては、渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類の共同研究計画および保存対策に万全の措置を行なうとともに、関係各国との間において同種条約の締結を促進するよう努めること。
 二 特殊鳥類の生息環境保全のため、生息地の買上げ等必要な措置を検討するとともに、各種公害対策の徹底及び原生林の大面積皆伐、鳥類の生息に悪影響のある除草剤の空中散布の規制の検討その他自然環境保全対策の推進等により、鳥類の生息環境の十分な保全を期すること。
 三 渡り鳥の生息に必要な干潟の保存確保について特段の努力を払うこと。
 四 鳥類保護に関する行政を強化するための組織のあり方並びに鳥類保護の積極的な推進をはかるため環境庁の附属機関として特殊鳥類の人工飼育施設を含めた研究所の設置を検討すること。
 五 鳥獣保護に関し、青少年を対象とする学校教育に正規のカリキユラムを織り込むことを検討すること。
  右決議する。
 以上でございます。
 各位の御賛同をお願い申し上げたいと思います。
#98
○委員長(加藤シヅエ君) ただいま伊部君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#99
○委員長(加藤シヅエ君) 全会一致と認めます。よって、伊部君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対して、大石環境庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。大石環境庁長官。
#100
○国務大臣(大石武一君) ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重いたしまして、善処いたします。
#101
○委員長(加藤シヅエ君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#102
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 午後三時から再開いたします。暫時休憩いたします。
   午後二時四分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時十七分開会
#103
○委員長(加藤シヅエ君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。
 公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
#104
○伊部真君 広島の大久野島に灘ガスが、ボンベあるいはドラムかんで見つかりました。戦争中のイぺリットあるいはそのほかの薬品が出たということが、新聞に出ておりました。私は前に、この状況について環境庁が調査に行かれたことですから、その結果について報告を願うようにお願いをしておったのでありますが、状況を、判明した範囲内でひとつ報告を願いたいと思います。
#105
○政府委員(首尾木一君) 昨日、調査に参りました担当官が帰りましての報告でございますが、大久野島におきまして、旧軍の残存物、毒ガスの疑いを持たれた残存物がありましたことについての調査でございます。
 位置は、広島県大久野島の護岸及び階段工事のうち、起点から七十メートルの地点に問題のものが、床掘りをやっておりました際に発見をされたということでございます。
 その経緯を申し上げますと、護岸・床掘りの作業中、四月の十八日に、直径四十五センチメーター、高さ八十センチメーターのドラムかん状のものが、地盤下六十センチに発見されましたが、その工事に当たっておりました現場では、一応支障がないと見まして作業を続行するうちに、そのうちの一本が転落をいたしまして、これをブルドーザーのバックホーですくい上げたのでございますが、そのおり、約四センチの穴があきまして、黒褐色の液体が出たのでございます。しかし、その液体からは特ににおいはなかったというような報告になっております。
 その、問題のドラムかんでございますが、これは四月二十四日にその土地を埋め戻しました際に、基礎の裏側に埋め込まれたということでございました。
 さらに、このドラムかんの出ましたところの近くに、幅二メートル、長さ四メートル、高さ一・二メートル、壁の厚さ〇・二メートルのコンクリート製の水槽が発見されました。これが四月二十三日、二十四日に発見されまして、その一部を取りこわしております。その際に、水槽の中の土砂は暗褐色で悪臭があったということの報告になっております。そこで、この水槽につきましては機械で破壊を行なったのでありますが、実施できません部分を手作業で、ハンマーで取りこわしまして、その作業に当たった方が、その後かぶれたといって、四月二十五日から二十七日の三日間、作業を休まれたということであります。しかし、特に医者には行っておられない。二十七日から作業に出たいといっておりましたが、ほかの従業員が旅行に出たため、五月二日から作業に従事して今日に至っておりますが、特にその後、かぶれ、発しん、そういったようなことはありましたが、現在においては異常がないというようなことでございます。
 なお、念のためにその作業に従事しております者につきまして、五月二十三日に、広島県の竹原市忠海町の国家公務員共済組合忠海病院で検診をしてみました。それには十三名の土木工事作業員の検診を行なっておりますが、その受診者のうち、七名につきましては特別に異状の所見がない。で、その他の六名の方でありますが、これは先ほども申し上げました水槽の取りこわし作業の際に、くしゃみ、目の痛み、それから涙、それからいま言いましたかぶれたというような症状があったと訴えがありましたけれども、その原因が、はたして毒ガスによるものか、その他の刺激物によるものかは、断定できないという状況になっております。なお、症状があったと訴えた六名の方でありますが、現在は特別の所見がないので、特に継続観察の必要はないというのが、診断の結果ということになっております。
 大体以上が、大久野島におきますあらましの調査の結果でございます。
#106
○伊部真君 この工事のときに、いま説明されましたドラムかんその他ですね、これは毒ガスが入っているということを承知の上で取り扱いをされておったのか、この点はどうですか。
#107
○政府委員(首尾木一君) これは、作業を請け負っているところにおいて、そのかんが毒ガスであったか、毒ガスの疑いがあるものであるかどうかということについての認識は、なかったのではないかというふうに考えております。
#108
○伊部真君 新聞に報道されているところによりますると、いま説明がありました忠海町の行武院長の話によると、認定患者百人が、いわゆる毒ガスが原因で十年間の間に死亡されて、現在でも十人が入院中だというふうに言われておりますが、そうしますと、この事実は環境庁のほうでもお聞きになっていますか。
#109
○政府委員(首尾木一君) 聞いております。
#110
○伊部真君 そうすると、これは因果関係からみると、その周囲に毒ガスがあって、あるいはその薬品がそういう疑いがあるということは、私は工事をする監督者としては当然に知る、もしくはその疑いをかけて作業をしていかなければならぬと思うんです。そういう準備がなかったということなんでしょうか。その点はどうですか。
#111
○政府委員(首尾木一君) ただいまお話のありました入院中の方の事故でございますが、これは、現に毒ガス工場として行なわれていた際の従業者の傷害でございまして、大久野島につきましては、その後、毒ガス工場のあと処理の問題をやっております。その後さらに二、三回にわたりまして、毒ガスの残存の状況について調査をいたしております。
 私どもとしましては、これは十分ここの毒ガスという問題については処理をされたというふうに考えておったわけでございますが、まあそういう点がございますが、一般的に申し上げまして、これは、もとそういったような毒ガスをやったところでもあり、その後においても二、三回にわたりまして、催涙性のガスでありますとかそういったような、毒性は弱いものでありますけれども、そういうものが発見されたというような事実もありますので、やはり工事をする際には、そういったようなことについては十分配慮をすべきものであったというふうに考えておるわけでございまして、実は、この工事は国の工事でございますが、県に委託をして行なっておるわけでございまして、県においても、大久野島の工事につきましては、そういったような過去の事情もわかっておることでもございますし、そういったような点についての十分な、事前のそういう注意というものがなかったということにつきましては、これは遺憾なことであったというふうに考えておるわけでございます。
 なお、申し上げますが、この出ましたかん自体が、これがはたして毒ガスであったかどうかということは、事実としてまだ確認をされておりませんので、しかしこういった問題でたいへんに心配をおかけをいたしておりますので、すでに埋め戻しましたかんについては、さらに発掘をいたしましてその内容物を点検し、さらに今後、その結果によりまして、必要であれば、必要な措置を考えてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
#112
○伊部真君 これはその近くに、戦争中、第二陸軍造兵廠があって毒ガス製造をやっておった、しかもそれの処理は、片方では焼却をする、あるいは海に投てきをするというふうな状態は、すでにそういうことが起きておったという事実認識があったはずなんですよね。そういう状態で、住民のほうでもかなりこれを心配をしておったということも、地元の自治体は承知をしているはずなんです。したがって竹原市では、県を通じて国に掃海を再々依頼しておった、こう言っているわけです。
 しかも、そういう非常に心配な憂うべき状態であって、その近辺は、京阪神を中心とした海水浴のお客さんがたいへんたくさん来るという状態で、これが少しの間違いでもあれば、身体の傷害はもちろんでありますが、命まで影響するような状態であるのに、これが毒ガスであるのかどうかわからぬ、あるいはそういう危険な状態であるかどうかということについては十分承知をしていないというのは、どうもおかしな話なんですね。これは当然、市のほうからの要請もあったし、状況としては、戦争中にそういう工場があって危険な状態であるということがわかっておれば、当然に国としては処置をすべきだと思うのです。
 私はこの問題について、まずそういう場合の責任について明らかにしてもらいたいと思います。これはどこの省の所管ですか。
#113
○政府委員(小澤太郎君) その責任と申しますと、どういうことか、ちょっと……。現在の国民休暇村になっておりますそこの管理の責任なのか、毒物を処理したその責任なのか、責任にもいろいろありますから、どちらをお尋ねのことか、お聞きをしたいと思います。
#114
○伊部真君 この問題は、単に大久野島だけではなしに、大分その他にも出ているわけですよね。この毒ガスの処理、あるいは毒ガスがこういう状態になっているということ、それから起きる問題についての処理、それからそういう調査、事前にその毒ガスの災害が起きないような処置をしなければいかぬと思いますね。私は、いずれの所管がやられることか、よくわかりませんが、当然その所管は、調査なり、そういう被害が起きる前に管理をしていかなければならぬことだと思うのです。その責任はどこが持つのですか。
#115
○政府委員(小澤太郎君) いろいろ場合があると思いますが、戦時中のそういう毒物、毒ガス等の製造をやっておったもの、それは戦後アメリカ軍によって接収されまして、アメリカ軍の手によって処理されたものもございます。あるいはまた日本の、旧日本軍の手によって処理されたものも、いろいろあると思います。
 いまおっしゃるのは、その処理をしたことの責任なのか、処理したものの処理後の危険防止のための責任はだれが持つのか、こういう、このどちらかと思いますが、おそらく後者の意味だと思うのですが、そうでございますか。
#116
○伊部真君 私は、処理をするとか管理するとかいうことが主体ではなしに、これで被害が出たら、当然これは国の責任だと思いますね。被害が出れば、そうでしょう。これは、普通の工場から排出をされているような毒物劇物なら、それは排出者の責任ということになりましょうが、しかし、少なくとも戦争中の毒ガスの処理というものをしたのは、国がやったのでしょうね。国がやったわけでしょう。国の責任でやったわけでしょう、それは米軍がやろうが、どこがやろうが。したがって、その処理をした政府としては、どこが所管をしてそういう問題について責任を持つのかということですね、それを私は聞いているわけです。
#117
○政府委員(小澤太郎君) だんだんよくわかりましたが、たとえばこの大久野島のごとく、国民休暇村として現在環境庁が所管いたしております。そこで毒物が出て人体に被害を起こす、こういうことになりますと、これはやはり管理している者の責任である、こういうことは明確に言えるわけであります。しかし、いろいろ多様性がありますから、たとえば海の底に沈んでいるもの、これをだれが責任を持つか。これは遺憾ながら私どもの所管ではございません。結局、政府の責任には違いないのでありまして、政府部内でどこが責任を持つかというと、これは内閣が責任を持つべきところだ。ただし、それが海上保安庁の業務の範囲内に属するならば、海上保安庁が責任を持つ。こういうふうに、それぞれの態様によって、管理しておる者、管理の責任がある者が責任を持つ、こういうふうに考えていいのじゃないかと、このように思います。
 これは私から答弁する範囲を越えた問題でございますが、少なくとも大久野島のごとき、国民休暇村として環境庁が現在管理しておりますものにつきましては、環境庁が責任を持ってこれに当たるということだけは明確でございます。
#118
○伊部真君 どうもそれでは、国民の側にとっては、これはどこへ文句を言っていいのか、わからなくなってしまうんですがね。たとえば、きょうの新聞でしたか、別府湾にも毒ガスが投棄されていて、それは、海上保安庁がそれを知って、そして防衛庁と相談をして両方が処理をするということになったようですが、私は別の委員会で海上保安庁を呼んでこれを聞こうと思っているんです、事情については。大分のほうは海上保安庁ですね。それで、こっちの大久野島は環境庁ですね。どうもその辺がよくわからぬわけですが、いずれにしても、被害が起きたら国民はどこへ責任を持っていったらいいのか。これは当然、補償問題その他が起きてくると思います。したがって、処理をする責任というのは、国民自身がその被害を受けたときにはどこへ持っていくのか。だれが責任を持ってくれるのか。そういう補償問題だとか、あるいは診療その他がありますね、そういうのはどこがまずやるのか。
 それからもう一つは、こういう危険な状態というものが方々で出てきますと、これは私は、二十数年前にそういう毒薬、毒ガスの処理をしたときに、たとえばドラムかんに入れたとしましたら、二十数年たつと、かなり腐食をして流れてくるという時期ではないかと思うんですよね。その薬が水の中に出てきて、毒素が消えてしまうのなら心配ないのですけれども、そうでなくて、これが海水浴のところへ流れてくるということになると、たいへんなことになりますね。しかも新聞で報じているのでは、たいへんな劇薬で、そのときには気がつかなくとも、後にびらんをする、筋肉までびらんをするというような、命までなくするというようなことでしょう。
 そうすると、一つには、被害が起きたときの責任はどうするのか。それからもう一つは、こういう状態が出ておるが、これに対する掌握、調査をし、そして事前にこれを防止するという対策をとらなければいけませんね、この二つは、どこが所管をして、どういうふうにやられるというのか。私ども、その所管がどうもよくわからぬわけです。ですから環境庁に聞くわけですが、政府としてこの点はどうお考えになっていますか。
#119
○政府委員(小澤太郎君) 政府、まあ内閣総理大臣が全責任を負うわけでありますから、それぞれ、つかさつかさに従って、所管に従って、その事態に応じて責任を負うたてまえになっておるわけでございまして、環境庁の所管しておるところでその問題が起こればもちろん環境庁、海上保安庁の所管しておるところで問題があれば海上保安庁、こういうことにそれぞれ責任は分担をいたすわけでございますが、これは政府の責任であることは間違いないのです。こういうふうに考えていいのじゃないかと思います。これを一貫してどこかで全部責任を負うということが、できるのかどうか。もちろん、内閣総理大臣が責任を負うことは当然でございまして、それぞれの所管に分けて、責任を持っておるところでこの責任を分担する、こういうことになる。当然そうなると思うのですがね。
#120
○伊部真君 それでは聞きますけれども、その所管の区分というものは、どういうふうに分けておやりになるのですか。たまたまそこで見つかったところ、それが海だったら海上保安庁で、陸だったら環境庁なのか。その所管区分というのはどういうことなのか。
#121
○政府委員(小澤太郎君) それは、御承知のように各省設置法によってそれぞれの所管がきめてあります。たとえば自然公園の中とか、あるいはこのような国民休暇村のところとか、こういうものは環境庁の所管でございますから、一切責任を負う。で、海上の交通の問題とか、そういうものにつきましては、海上保安庁が、それぞれの設置法に従って所管する。こういうことは明確になっております。そして、いずれの省にも所属せざるものについては、これは内閣の総理府が所管するという形になっておりますから、先生のお話のように、総括的にどこの所管に配分するかということになりますれば、内閣においてこれをきめるべき問題だと思います。明らかなものは、きめていただくまでもなく、それぞれの所管に従ってこれの責任を負うということは当然でございます。
#122
○伊部真君 私に与えられた時間がなくなったのですが、これは見つかったところが所管だというのがどうも私わからぬのですが、そうじゃなくて、それは当然本来からいえば、たとえば劇物なり毒物なら厚生省とかというふうに、その内容によってあれするのじゃないですか、出どころによってじゃなくて。ただ私が非常に不明確なのは、この場合は陸軍第二造兵廠がつくったもの、しかも国が終戦のときに処理したことですから、だから、これはもとがそういう状態だから、非常に所管があやふやだ。いまもある所管省がやっているなら、文句なしにそこへ持っていかなければならぬわけですが、その点がちょっと理解ができないので、もう一ぺんはっきりしてもらいたい。
#123
○政府委員(小澤太郎君) 私は、見つかったところが所管するとは初めから申しておりません。そうお聞きになったとすれば、それはお聞き違いでありまして、見つかったところが所管するというのじゃございません。先生のお話のとおり、内容によって所管がきまる、こういうことでございます。で、先ほどお話のありました旧陸軍の毒ガス製造廠と申しますか、ここで働いておった者が病気になっておる。認定を受けておる。こういう者は旧令認定患者として、いま所管は、たしか大蔵省が所管しておるのですか、そういうふうにはっきり所管をきめております。ですから、見つかったところが所管するという意味ではございません。
#124
○伊部真君 そうすると、結局、さっき言われたのは、所管というよりも窓口として、たとえば大久野島の場合は環境庁が取り扱うということなんでしょうか。
#125
○政府委員(小澤太郎君) もちろん所管でありますから、窓口がそこにあるのは当然でございます。この大久野島は環境庁が所管している島でございますから、これは環境庁が責任を負う、こういうことでございます。たまたまそこでこのような事件が起きたのでありますから、その調査、今後の処置などは環境庁が責任を持って行なう、こういうことになるわけでございます。
#126
○伊部真君 どうも私の言っているのと食い違いがあるわけですが、私はその意味で言っているのじゃないんですよ。その島で起きた事件だからそこでやるというのは、これは取り扱いとしてはわかるのですよ。しかし、毒ガスの被害が起きて、あるいは被害を事前になくするというための処置なんかは、これは一貫してやらなきゃいかぬのじゃないですか。そういうことや、それから被害者が出たときの世話は、これは当然一カ所で、厚生省なら厚生省、環境庁なら環境庁が取り扱って、そうしてその処置は、法律的にはいろいろあるでしょうけれども、そういう意味で環境庁がこのことについて責任を持って行なわれるのか、あるいは厚生省が行なわれるのか。そういう点を申し上げているわけです。
#127
○政府委員(首尾木一君) 今回の事件につきましては、これは先ほどから政務次官が申し上げておるように、休暇村内において生じた問題でございますので、休暇村という一つの営造物でございます、国有地でもございますので、ここを管理する私どものほうで、この問題について最終的に責任を持って処理をしたい、こういうことでございまして、技術的な方法といたしましては、当然防衛庁にも協力を依頼し、また厚生省関係では、毒劇物についての専門でありますところの衛生試験所の援助も受けて、これを実際問題としてはそういう形で処理いたしたい、かような考え方でございます。
 一般的な所管という問題につきましては、実はたとえば不発弾の処理等につきましては、自衛隊法によって明確にこの処理についての所管がきめられておりますが、この毒ガス問題につきましては、そういったような根拠規定は現在ございませんので、そういう意味において、先ほど政務次官が申されましたように、内閣において、その問題についての、こういったような一般的な問題についてどうするかということは、検討さるべき問題であるというふうに考えておるわけでございます。
#128
○伊部真君 もう時間がありませんから、私、次官にお願いしておきますが、結局、大久野島だけではなしに、別府やそういういわゆる終戦のときに毒ガスを処理したところというのは、やはりそういう危険あるいは心配が出てきていると思うのですよね。しかも過去において、いかなる機会でそうなったか知りませんが被害者が出ているという状況になりますと、これは当然そのような危険な、あるいは疑いのある地域の調査をし、そしてそれに対する対策もしなければならないし、あるいは処理をしなければならぬでしょう。こういう点は、やはりこういうふうに具体的に、大分で、あるいは広島でというふうに出た以上は、政府として調査をしその処理をしていく、どこかで一貫してやられるということが至当ではなかろうかと思います。したがってその点は、内容的には、もう時間がありませんから私申し上げませんが、少なくとも内閣のほうで、これに対する対策を早急に出していかなければいけないというふうに要望しておきますが、一応見解をいただいて質問を終わります。
#129
○政府委員(小澤太郎君) もとより、先生の御意見のとおりでありまして、それぞれの責任を持った役所がございます。これを統括する内閣において、この予防なり、あるいはそういうものの排除なり、あるいは事後の処理なり、こういうものはそれぞれ責任ある場所において行なうというたてまえは、これは積極的に進めなければなりませんし、また、そうなければならないことなんでありまして、はたしてだれが手を下してやるかという責任の問題は、内閣において適当にこれは配分しなければなりません。所管がそれぞれはっきりしているものはその所管で大いにやりますし、はっきりしないものは、これはやはり設置法によって、総理府においてその所管をきめる、こういう処置をしなければなりませんが、海上保安庁においてやっておる場合、あるいは水産庁において、漁民が非常に困っておるような状態でやっておる場合、こういうものもございます。ですから、とにかく政府が何らかの形で、だれかの手において必ずこれをやるという体制を進めていくということは、もとより必要でございますし、そういうふうにしなければならぬと、こう思っております。その所管がわからぬからどうにもならぬということでは絶対にあり得ない、そうしてはならない、こう思っております。
#130
○伊部真君 私、打ち切るつもりだったのですけれども重ねて。
 私が言っているのは、やはりこういう状態が発生したら、それに対する調査だとか対策だとかというものは、どこかではっきり国民の前でとらなければいかぬと思いますね。そういう意味で、私早急に、こういう状態が起きたのですから、所管がそれぞれやるだろうということでなしに、これは環境庁なら環境庁のほうで調査して、そしてこれはこういうふうにしたということを国民の前に明らかにするような、何か機会を持ってもらうようにひとつお願いをします。
#131
○政府委員(小澤太郎君) この大久野島につきましては、たびたび申し上げましたように、環境庁が全責任をもってこれに当たっておる、また、当たるつもりでございます。そういうような意味で申し上げておるわけであります。
#132
○松永忠二君 お尋ねいたします。
 中央公害対策審議会は、悪臭物質の規制の基準を答申をして、五月三十一日から悪臭防止法の施行令の基準として適用していくというようなことになったようでありますが、これについて、実効がすぐ期待できないのではないかと、こういう心配が出ていることは事実であります。
 具体的に言えば、八条二項の改善勧告というのは、規制の基準が設けられてから一年後でなければだめだ。また、規制の地域については都道府県知事が定めて、その一年後でなければ、たとえば改善の命令は出していかれないというような問題がある。あるいは排出の水については、不明の点が多いから残されている、これらの問題は、究明を待って行なうんだというようなことが言われているのですね。あるいはまた、特に養豚とか養鶏場の施設全体から悪臭を発生するものは、きめ手となる臭気の計算方法がないから、適用をしばらく延ばそうというようなことであるとか。
 悪臭の苦情というのは、騒音に次いで苦情全体の四分の一を占めている。自治体に対しても、昭和四十五年には苦情が約一万五千件出ているという、この実態からかんがみて、この答申を実施しても実効が期待されないのではないかという国民の非常な心配について、環境庁はその点についてどういうふうな考え方を持っておられるのか、次官からひとつ聞かしてください。
#133
○政府委員(小澤太郎君) この悪臭の防止、これの規制をする方法、手段、これは御案内のとおり世界でも初めてやることでございまして、したがって、遺憾ながら現在の測定技術等の科学的な試験が十分でないというものがたくさんございます。そこで中公審にはかりまして、当面アンモニアとかメチルメルカプタンなど、五つの物質を政令でとりあえず規定したわけでございます。これは五つの物質でごさいますけれども、悪臭として訴えられるものの非常に大きな部分を占めておるそうであります。
 なお、これでもちろん十分ではございませんから、さらに被害の実態の究明とか、測定の方法の開発等をいたしまして、逐次加えていきたいと、こういう方法をとっておるわけでございまして、これが最善であり、かつ最終の方法では毛頭ございません。
 それと、またもう一つは、先ほど御指摘のように、直ちに実施するということが望ましいことでございますが、こういう、においを消す、あるいは出さないという施設等につきましては、これを指定して直ちにそれが実行できるという、そういう段階では、現在の技術なりいろいろな面から、そういうことが十分でございませんので、やむを得ず若干の時間的猶予を与えまして、そうしてこの規制に対応するだけの施設をやらせる、こういうような考えに立っておるわけでございますから、先生御指摘のとおり、いかにも何かこう、なまぬるいような感じがいたすわけでございます。もとより、そのことは私どもも痛感いたしておりまして、今後こういう問題につきましては、さらに技術開発、解明と、それからこれに対する防止の施設の整備等につきましても、くふうを加えましてやっていきたい、こういう態度でおる次第でございます。
#134
○松永忠二君 いまお話のあったように、まあ、直ちにということでなしに非常に手ぬるいという感じを受けるという点については、同感されている。そこで、その不安にこたえるためには、法律がこうなっているからこうだというのではなくて、一体どういうことをやっていけばこの実効を期待ができると考えておられるのか、それの不安にこたえる道として一体どういう方法があるのかという、この点についてはどういうお考えでしょう。
#135
○政府委員(山形操六君) お答えいたします。
 今回の政令できめました物質をきめます段階におきまして、やはりこれを規制手段として用いる場合には、各都道府県においてあるいは政令市において、そのチェックがきちんとできるかどうかという点が、一番大きなもとになりましたのでございます。したがって、主要な悪臭物質、十三物質ぐらいを押えたいと実は思ったのでございますが、それの機械測定に基づく方法が、どうしても今回、とりあえず五つの物質にしか限らざるを得なかったという点が一番大きな理由でございます。
 で、調香師といっておりますが、香水等の専門家でございますが、その方たちによって臭気の強度を六段階に分け、それと、ガスクロマトグラフという機械を使って、その臭気強度とそれから悪臭物質のいわゆる何PPMというのがきちんとそろえられるという、そのところに焦点を合わせましたので、これならば今後都道府県においてこれを十分チェックできる、規制措置の励行ができるというところに焦点を合わせた結果でございます。これが今後の調査研究で、次々にほかの物質にもこの様態を整えることができるようになりましたならば、その辺の規制措置が十分整っていく、こういう考え方から今回定めたものでございます。
#136
○松永忠二君 それはお話のとおりでして、十三の中でいま五つということで、十三ができなかったのは、言うとおり研究調査技術において開発ができなかった、やむを得ずそういう措置になったということですから、この残されたものについても早くひとつ測定のでき得るように、開発の努力をすることがまず第一点だと思うのですね。
 しかし、それだけでは私は足らぬと思うのですが、いま話に法律が出てきているように、規制地域というものを早くきめなければだめだ。この規制地域がきまってから、なおかつ一年たたなければ、現実にどうもぐあいが悪いものを改善命令が出せないわけですから、まず規制地域というものを早くきめるという措置をやっていくことが大事でしょう。そう考えてみると、仕事があるじゃないですか。
 そうしてまた、いま各都道府県が公害防止条例をつくっているけれども、まだつくっていない県があるでしょう、防止条例を。その防止条例の中に悪臭というものを規定をしている県は、全部ではない。これもやらなければならないことだと思うのですね。その点では、すでに審議されている前段階で、宮城県あたりでその規制についての明確な措置が条例の中に出ている。そういうことをまず取り急いでやっていくということが必要じゃないですか。
 それからまた私は、できるだけこの段階で行政指導をすることが大事だと思うのですね。法律が、いわゆる法規制の実施というのはある一定の年限おくれたとしても、行政の指導をすること自体については、すでにこの悪臭防止法が制定されている以上、その指導がなされ、しかも改善命令は一年だけれども、いわゆる勧告についてはすぐできるということになるわけであります。
 だから、単に十三物質について、残された物質について研究調査を進めるだけではなくて、それらの措置を明確にどんどんやっていかないと、さっきのお話のとおり騒音に次いで苦情の多いこの悪臭、せっかく期待をしてこういう法律ができ、基準ができることを待ちかねている国民の期待に沿うという意味においては、少しその迫力が足らぬというような感じが私たちはするわけです。だからこういう点について、やはり不満にこたえる道があると私は思うので、これらの点について明確に、努力をするかどうか、そういう点についての考え方を、政務次官、ひとつ決意のほどを聞かしてください。どういう一体措置を考えているのか。
#137
○政府委員(小澤太郎君) この指定の政令を、五月三十一日に施行することにいまきめております。したがいまして、はっきりいたしますので、行政指導をそれに従って十分にやっていく。いままでも行政指導はもちろんやっておりますけれども、はっきりした基準を求めておったわけでございまして、今月の末日にこれが基準ができます。これに従った行政指導をもとよりやるつもりでございます。さらに、いまお話のとおり、地方でいろいろやっております条例等につきましても、この政令に従った条例、これをつくってもらう、あるいは不十分なものはこれに合わせてもらう、こういうものがこれからできるということになるわけでございます。
#138
○松永忠二君 ひとつ、ぜひそれをお願いいたします。
 そこで、次に静岡県の富士宮市の富士フイルムのフェノール公害というものが住民から訴えられて、すでに環境庁に対しても数回にわたって書面が届けられている。これに対して迅速な回答がなされていないという点もありますけれども、この問題はまずおいて、一体、富士宮の富士フイルム、これは日本の国のレントゲンフィルムの六割以上をつくっている工場である。このレントゲンフィルムを製造する過程の中で、つまりフェノールのごとき公害が出てくるわけでありますが、一体このフェノール公害という実情をどういうふうに把握されているのか、それをちょっとお話しください。
#139
○政府委員(山形操六君) 御指摘の、富士フイルムのレントゲンフィルム製造工場からのフェノール類の排出という問題でございますが、私どもこれは県のほうから事情を聞いて承知しておりますが、その内容は、天候、風向によって住民が非常に臭気を感じておるという点でございます。
 ただ、従来ここには悪臭防止に関する措置が十分に施されていなかったのでございます。ちょうど昭和四十六年、昨年の八月にレントゲンフィルム製造工程の試運転を開始したのですが、この際、工場から一・五キロの範囲にわたってフェノール類の悪臭の問題が出まして、非常に住民から苦情が出まして、さっそく工場でフェノールの回収装置を設置したのが、ことしの一月からでございます。この設置で、約九五%のフェノールの回収には成功いたしました。臭気も非常に薄くなり、影響も狭くなったのでございますが、現在でもなお工場周辺では、風向きによって継続的な臭気を感ずる、こういうふうな状況だということを承知しておるわけでございます。
#140
○松永忠二君 その、いま問題が残っているという点について、把握が不十分だと私は思うのですけれども、これは富士宮市の公害対策課の出しているものでありますけれども、私も現地を、事実を見たわけでありますが、これには、苦情を受ける範囲が狭まった感じだと。で、悪臭問題は依然として残っているという、回収の能力というものが不足ではないか、こういうこと。それからまた、いまフィルムをつくる際の感光紙を原紙に密着させるために使っているのは、フェノールだけではなくて、アセトン、メタノールも使っているけれども、アセトン、メタノールの回収はやっていない。このにおいというものは一体どうなっているのか。それからまた、その次の問題としては、微量でもこれを長期に人体に、住民が吸収した場合には、住民の健康にどういう一体現実に被害が起こるのかという、こういう問題が残っているという事実があるわけです。
 お話のような、何かそれは向こうの言うことでありますよ、九五%回収したというのは。そして回収をした後の、そのうちから煙突で放出をしておることは事実なんでありますから、この問題が残っておる。こういう把握については明確にしているのでしょうか。
#141
○政府委員(山形操六君) 残っているという事実は、私ども承知しております。
 ただこのフェノール類に関しまして、今回悪臭防止法の政令の対象物質にどうしてもできなかった理由につきまして申しますと、フェノール類は、わずか一PPM以下の濃度で臭気を感ずるのであります。一PPMという低濃度における測定方法がいま全く開発されていないというのが、どうしても今回の対象物質にすることができなかった理由であります。普通、測定上の最新式な機械を使って測定する場合でも、少なくとも五PPM以上なければこれはちょっと無理だということと、それから普通の検知管法でやる場合には、一〇PPMという量でないとできないという技術的な問題がございました。したがって、この濃度の問題でいきますと、一PPM以下の濃度ですでに悪臭のにおいを感知できるという状態でございますので、それの脱臭技術という点になりますと、なかなかこれは技術的にやはりむずかしい問題があるのではないかと私ども想像しております。
 それから健康上の問題に関しましては、これは労働衛生法のほうで五PPMと私は承知しておりますけれども、やはりこれが濃度が強くなれば皮膚炎あるいは呼吸器系の障害を起こすのは当然でございますが、私どもの悪臭防止法に対する態度としては、ごく微量のところで押えたい、悪臭という形で押えたいということを目途といたしておりますので、なかなか現段階で、低濃度のキャッチという点でなおもう少し調査研究をさせていただきたい、こういう段階でございます。
#142
○松永忠二君 フェノールについては、大気汚染防止法の第十七条に「(特定物質に関する事故時の措置)」ということで、特定有害物質として指定をされているわけですね。第十七条には、人の健康がそこなわれ、またはそこなわれるおそれがあると認めるとき、事故拡大、再発防止のため必要な措置を命ずることができるというように規定をされているわけです。これは一体、いまのお話で五PPMというようなことを、一体何の、どこの根拠をもってそれをきめたのですか。それからまた、このフェノールだけではなしに、たくさんの物質が規定されているのだから、これはどれくらいの濃度をもってやるという、科学的な根拠をもってこれを規定しているのですか。まず一体フェノールの、特定物質に関する事故の際に、人の健康がそこなわれる、またそこなわれるおそれがあると認めるときを、五PPMときめた理論的根拠はどこにあるのですか。
#143
○政府委員(山形操六君) お答えいたします。
 大気汚染防止法の特定物質に掲げておる物質は、先生御指摘のとおり、これはあくまで事故時の問題として、環境にこれが問題のあったときとしてここに並べているわけでございます。これは一つ一つ、たとえばいま申し上げましたフェノールにつきましては、アメリカのほうの労働基準に基づきます数値、また日本における労働省関係の従来のデータ等から、全部これは科学的根拠をもってここにあげたものでございます。それは、フェノールについて私の承知しておりますのでは、アメリカのほうも日本のほうも、すべてこれは五PPMというふうにきまっておるということを承知しております。
#144
○松永忠二君 アメリカのその五PPMというのは、労働衛生の、環境衛生として五PPMをきめている。ソビエトは一PPMをきめているわけなんです。だから、そういうアメリカもきめていますからというお話ですけれども、日本で、自分で実験なり、科学的根拠をもって一体きめたのかどうなのか。そういうようなことは一体議論をして、またこの大気汚染防止法成立の際に述べられている十七条の関連の、いわゆる特定有害物質についての基準、人の健康をそこない、またはそこなうおそれがあるというときは、何をもって基準とするかということについて、科学的なデータをもってそういうことをきめたのですか。それとも、よその国がきめているから、大体そんなところにきめたらよかろうというふうに考えたのですか。正直な話をひとつしてみてください。
 何もそんな、何もかも準備ができてやったわけじゃないんだから、だから、率直に言ってそうなのか。その辺、私がちょっと調べたところでは、国会でもこの議論が行なわれていないというお話のようであります。それからまた、積極的なこの基準についての説明は政府からもなされていないように、私は一通りいろんな人に依頼して調査してもらいましたけれども、そういう状況のようですので、これはどこをとらまえてそういうことにしたのか、こういう点を率直に話してみてください。
#145
○政府委員(山形操六君) 大気汚染防止法に物質をいろいろ設定いたします際は、先生御承知のとおり、当時厚生省のほうの関係だと思いますが、生活環境審議会において、一つ一つの物質について国内のデータと諸外国のデータとの比較等を十分やって、検討を進めていったと私は承知しております。したがって特定物質の中で、日本の国内のデータがもし手薄なものがあったとしても、これは諸外国のデータと照らし合わせて、根拠をもったものとしてここにあげたと私は承知しております。
 そしてその特定物質は、あくまでその事故において大量発生したときの問題でございますから、それが人体に影響があるということを従来のデータできちんと、動植物の影響まできちんとわかっているものと、ないものとありますが、少なくとも人体的なフェノールの問題について、私このきめました経過というものをいまこまかくここで承知しておりませんが、ほかのいろいろなものも、みなそういう態度できめてきたと私は聞いておりますので、五PPMという問題につきましては、当然日本の労働衛生の問題と、アメリカのも五PPMになっておりますので、国内のデータがもし少ないとしたならば、諸外国のデータを照らし合わせてその数字をきめた、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
 なおこの点の、前の経過につきましてはいま私データを持っておりませんが、十分調べて次の機会にお答えいたします。
#146
○松永忠二君 そうなると、大量事故のときに出た場合が五PPMだとすれば、いまお話しのとおり、一PPMではちょっと測定をすることが、大気中にあってもできない。においでは、そのところから非常に悪臭が出るということになると、この間の、急性毒性、急性中毒というべき、肺とか心臓とかじん臓とかにいろいろな障害を起こすとか、いろいろなことが出てくるわけですね。だからそういう点について明確な、これはソビエトでは一PPMにきめているわけなんですね、だから結局、こういう研究がなされていないということだと思うんですね。
 それで、特にその点から要望して、答弁していただきたいことは、やはりこのフェノールについては、十三物質の中に入っていないけれども、できるだけ早く、いわゆる大気中に一PPMがあっても悪臭としてにおってくるのに、その一PPMが技術的に測定できない、そういうことでは、対策なんというのは実際に実行できないわけでしょう。だから、こういう点についての研究と技術の開発をできるだけ早くやって、そうしてフェノール自身の毒性というものについてはもうすでに明確になっているわけなんだから、こういう点からいわゆる一歩前進したそういう研究調査をして、早急にやる。そのための費用が一体あるのかないのか。この点を、一体やる用意があるのかないのか、これひとつ聞かしてください。
#147
○政府委員(山形操六君) 御指摘のフェノール類、こういうものに関しての基礎的な毒性問題、急性毒性、慢性毒性等は、十分に現在の医学で証明されていると私は確信しております。
 ただ悪臭とのつながりになりますと、先ほど申しましたように悪臭防止法の対象は、なるべく健康の被害というようなところでなしに、悪臭というずっと低いところで押えたいというのがねらいでございますので、そうしてずっと低いところで測定方法を確立しようというので、いま一生懸命調査しておるところでございますが、このフェノールのように、ごく微量で悪臭を感じてしまうようなものは、やはりどうしても低濃度の測定方法が確立いたしませんと悪臭の対象物質にあげることができませんので、そちらのほうの検討につきましては、本年度十分調査研究をやる予定になっております。
#148
○松永忠二君 そうすると、今後の問題として何が残るかということを、ひとつお聞かせください。
 そうして、現に地元住民なり市は何を一体要望しているのか、これにどうこたえることができるのかという点で、今後のいわゆる富士フイルムのフェノール問題を中心に、フェノール公害というのはあまり各地でひんぱんにあるようではないのでありますし、しかもフィルムという関係になれば、富士フイルムというのは七割のいわゆるシェアを占めている会社であります。あるいはレントゲンフィルムについては六割以上を占めている会社ですから、ここでフェノール公害というものが防止できるということになれば、大体他の地域でもそれは防止できるというふうになるわけであります。その意味からいって、私は日本におけるフェノール公害の問題を解決する一つの支点としてこの問題を取り上げて、そうしてこの要望にこたえていくということが大事だ。
 そのために、いまお話のあった一つの点としては、いわゆる毒性というよりはむしろ悪臭という意味の、低い段階でとらえることについての技術、調査研究が進んでいないから、これをできるだけ早い機会にことし手をつけてやっていきたい、こういうことが一つの問題の解決になると思うのですが、その他の問題について何があるでしょうか、ひとつお考えを聞かしていただきたい。
#149
○政府委員(山形操六君) その他の問題の一番大きな点は、やはり悪臭防止のための施設の改造だと私は思います。ただし、悪臭の防止に関しましては、いろいろな悪臭物質がまざっているものが非常にむずかしいのだそうでございまして、時間の経過とともにそれがまた新しいものをつくっていくという、アミノ酸関係の腐敗に属するものはなかなかやっかいだと聞いておりますが、このフェノールのことに関しましては、私も技術的にまだ十分知っておりませんが、装置をやって約九五%の回収ができるということに成功いたしたのでございますから、あともう一息、もう少し防止技術の点において知恵を出せば、これはもう少し何とかなるのじゃなかろうかというふうに考えております。その点に関しましては、いろいろの融資の方法もございますし、目下、悪臭防止対策に対する技術の面も着々と進行しておりますので、それらの点に関しましては、県ともよく相談して、適切に防止技術の点で満足がいくような処置をとらしていきたいというふうに目下考えております。
#150
○松永忠二君 それを私のほうが具体的に申し上げますと、市が言っていることは、市もいろいろな指導したけれども、法律上の基準、規制がないために、行き詰まりの状態だ。したがって悪臭防止法の悪臭物質として指定をしてくれと。それは指定をしたいけれども、結果的には、いま言ったような測定の研究が進まないので、指定ができないから進まないという状態なんだから、その研究をして、その上に立ってやはり悪臭物質として指定をするということが一つ。そのための研究を進めるということが一つでしょう。
 それから第二の点は、フェノールの回収装置を完全にするということだと思うんです。ところがよく調べると、あなたは御存じかもしれませんが、フェノールというものは非常に高価なものであって、回収することによって非常に利益があるんですよ、会社側が。だから極端なことをいえば、さっきも言ったようにアセトンやメタノールの回収はやらないのにフェノールを回収するということは、ある意味で申しますと、例の製紙工場の汚水の処理の、いままで有利なほうだけやってきたのと似ているわけなんです。だから、回収したフェノールが高価であるから非常に熱心になるという面も、ないとは言えない面があるわけです。回収すれば非常に高価なものが回収できるわけですから、相当進んできているのだから、この能力に不足はないのかどうか。六基つけてやっているけれども、煙突から出てくる放出前のものをもう一回やるということはできないのかどうなのか、いわゆる吸収液の効率が低下をしてきているのじゃないか、能力不足ではないか、そういう点が一つあるわけです。これをやっぱり明確にして、なお出さないということを、いま現に出しているわけですから、九五%というなら、残ったのはある意味では出しているわけですから、そういう面で、そのフェノールの回収装置の完全化をはかっていくということが、その次に考えられることである。
 それから、アセトンとメタノールの回収の研究を進めるべきであるということを、やはり指導をすべきではないのかというのが第三点です。
 第四点としては、実はフェノールの回収装置から、残ったものを大気に放出をして、それを現に会社が一日に二回測定をしておるわけです。この放出の記録を県に提供し、地元に提出すべきだ。
 ところで一体、県は測定をしたのですか。これだけ悪臭があるといって、何とか測定してくれと言われているにもかかわらず、大気中にあるいわゆる濃度が測定できるかできないか、そういうことの測定を県自身がやったことがあるんですか。あるいはまた、そのフェノールを放出しておる煙突から出てくるものを、工場が一日に二回検査しているのに、一体県は、これをやったことがあるんですかね。まずその点をひとつ聞かしてください。一体、県自身がこういうことについて本気に取り組んでいるのか、あるいはまた環境庁は、県にそういう測定を命じたのか。これをひとつ、まずちょっと聞かしてください。
#151
○政府委員(山形操六君) 県のほうから再三、環境濃度を測定したいので指導してくれという申し出がございました。私ども、フェノールにつきましては、先ほど申しましたように非常に微量でむずかしいものですから、諸先生ともいろいろ知恵を出していただきまして、ともかく準備が整い次第ちょうど明日になりますが、五月二十五日から測定するということで方法を示して、県のほうの公害センターにおいてこれを実施するということを指導中でございます。ただテクニックが非常にむずかしいので、もちろん会社でどういう方法をとっているかわかりませんが、そういうふうなことも十分県のほうを指導いたして、記録を残しておき、県の検知方法と対比しながら検討して、研究して進めていきたいと考えております。
#152
○松永忠二君 そういう点については、やろうということを、現に工場は一日に二度測定しているというのだから、だからそれを指導してできないはずのことはないと私は思うんですね。しかも、私はいま言いましたけれども、何回か環境庁に書面がきておるんでしょう。そうしたら、環境庁のほうでも、測定してみなければそれが一体どうだかわからないと思うんですよ。測定を命じたのにかかわらず、県が迅速にやらなかったという面も残っているように私も聞いているのだけれども、測定についてむずかしい面もあるけれども、これだけ周囲の者がいわゆる悪感を感じ、食欲がなくなり、非常に困るということを言っておる段階の中で、そのくらいのことをやるのはあたりまえのことだと思うんですが、今度始めるというなら、さっき言うとおり、フェノールの回収装置から出てくる大気中の放出の記録を、やっぱり明確にしておくということが大事ではないかということが第四の問題であります。
 それからその次の問題として、一体ここに働いている労働者の身体検査はどうやっているのだろうか。これいま私も聞いてみたところが、春秋に二回やっている。そういう、一年に二回しかやらないんだそうです。このフェノール問題については、なかなかいま言うとおり測定も困難であるし、害についても、極端なものについてはわかっているけれども、常時それを吸収したらどういうことになるんだろうかというような、そういうデータも少ないようであります。だから、特定の人を限ってやはり常時定期的に、身体検査をやっていくというくらいな配意はあるべきだと私は思う。こういう点をひとつ指導をすべきではないか。やってもらわなければいかぬのじゃないか。
 最後にもう一つは、工場の周辺の環境測定というものをやってもらわなければいけない。煙突から出るところばかりやっておりますけれども、フェノールというのは空気より三倍の重さを持っておるわけであります。しかも、ここは富士フイルムのすぐ横に相当高い丘陵があるので、おおむね風が朝晩ないでくるわけですが、そのときにずっと下へおりてきて、それが残っているから、現在でも朝晩の食事などのときに非常に気持ちが悪い、食事が進まぬというようなことを、現に私たちの調査したときにも訴えていたわけです。だから、いわゆる工場周辺の環境測定を、関係機関に依頼して行なうということをやっていかなければいけないのじゃないか。
 こういういま私が羅列をした問題についてお考え方を聞くと一緒に、このことについて、次官としては今後どうして指導し明確にしていくのか、その決意のほどをひとつ聞かしてもらいたい。
#153
○政府委員(小澤太郎君) ただいま先生が幾つかおあげになりました事柄、一々ごもっともでございまして、そのような措置を私どももやるべきだと、かように考えております。
 それから特に私感じましたのは、九五%の回収ができるなら、それも最初試運転をしてから一年足らずの間に、施設をつくったら九五%の回収ができるようになった。いまの日本の技術なり、もっと一生懸命やれば、九五%が九八%にならぬことはないのじゃないか。ですから、おっしゃった事柄のうちで一番大事なことは、出ないようにするという施設の改善、これは行政指導でもって強く会社に臨む、こういうことにいたしたいと思います。
 それから測定の問題は、先ほど申し上げましたように、きょう先生から言われたからあしたさっそく始めるというかっこうになって、二十五日からというのはかっこう悪いですけれども、そうじゃなくて、初めからそういうような気持ちで県のほうは指導しておりまして、明日から測定をやることにいたしております。
 それから将来どうするかということでございますが、フェノールが一PPMで非常ににおいを発する、この測定方法が非常にむずかしいということでございます。もちろん行政的には、あるいは法律的には、何PPM以下はいけないというような基準を明確にすることによって、行政指導もできますし、あるいは勧告もし、あるいはこれに従わない場合にはこれに対する行政の処分もできる。こういうことになりますけれども、それを待つまでもなく、人間の嗅覚でもって先生のおっしゃるような非常に不快で食事も進まないということになるならば、そのPPMがきまるまでにも、やはり県と国と市が一体となって行政指導を強くやっていく、こういうことがやはり必要だ、こう思います。したがって、そのような方向で、この分析方法ができるまで待てという気持ちではなしに、しかもおっしゃるとおり、日本の六〇何%というシェアを持っておる工場だそうでございますから、これを一つのモデルとしまして強力な行政指導をやっていきたい、こう思うわけでございます。
#154
○政府委員(山形操六君) 政務次官のおっしらなかった点の一、二を補足いたしますと、職員の身体検査の問題に関しましては、これは労働衛生の問題と思いますが、労働省とよく相談いたしまして県を指導して、職員の呼吸器その他の慢性的な影響等についても十分処置ができるような対策が講ぜられるよう、よく指導していきたいと考えております。
 それから工場の中でなしに、あるいは煙突の出口でなしに、環境の測定をやってみろとおっしゃることは、そのとおりでございます。確かにこれは、いささかやったのですが振れなかったという事実がございますけれども、しかし、それとこれと別に微量でも、いまはかり方をいろいろ専門の先生に御指導いただきながら検討しておる最中でございますから、工場の環境問題に関する測定は、さっそく県を指導してやらしていく覚悟でございます。
 そのほか、会社自身がやっております記録等の提出等についても、十分県を指導して、私どもも一緒になって調査研究に励みたいと、努力いたす所存でございます。
  〔委員長退席、理事金井元彦君着席〕
#155
○松永忠二君 次官その他、局長のいろいろな個個の問題についての御決意を伺ったのですが、ぜひひとつそれが実行できるようにお願いいたします。
 それじゃ次へ移りますが、次は伊場遺跡の問題であります。
 これは広い意味でいえば、歴史的環境保全という問題であります。そしてそれが実は鉄道高架に伴って、伊場の遺跡に機関区、電車区を設置するということによって埋蔵文化財が破壊をされようとしているという、こういう問題であります。この伊場遺跡そのものについての問題については、もう考古学の面では、一つの重要な課題としていま学者の間で周知されている事実であります。また、すでに新聞などでも二、三回取り上げられて、積極的ないわゆる歴史的環境保存という意味から、危機に瀕している埋蔵文化財を保存したいということの考え方が出ているのであります。
 伊場遺跡そのものの、埋蔵文化財としての価値という問題については御承知でありますので、後にちょっと触れることとして、この鉄道高架について、四十七年の二月七日に、建設大臣が鉄道高架事業の都市計画を認可をした。しかし、この認可の中には、電車区を伊場につくるという事業は含んでいなかった。これはわれわれにも十分連絡があって、これは都市計画事業の中に入っていないという、再三にわたる説明と確認の上に立って、高架事業そのものは重要でありますので、それを推進するということになったのですが、こういう点については、建設省として明確にそういう把握をしているのかどうか。
 それからまた国鉄については、機関区と電車区の付帯事業を将来行なわなければできないけれども、これについて伊場遺跡の場所に設置を予定をしているという、かつて予定をしておったわけですけれども、現段階において、この問題についてはどういう一体考え方を持っているのか。
 文化庁としては、この伊場遺跡についてはどういうふうな措置を今後やっていくというふうに考えているのか。
 関係の各省庁から明確にひとつ、現段階における考え方を明らかにしていただきたいと思います。
#156
○説明員(今野博君) お答えいたします。
 ただいまお話がございましたように、浜松駅周辺の東海道線の鉄道高架事業に伴いまして、あそこにございます貨物ヤード、電留線、そういったものを西のほうに移設をするという、その移設先に伊場遺跡がありまして、現在いろいろ関係者の間において調査中でございます。
 御質問の点は、四十七年の二月に都市計画決定した際、あるいは三月三十一日に都市計画事業の認可をした際に、そういうことを把握して認可をしたのかという御質問だというふうに……。
#157
○松永忠二君 把握してじゃない。その事業を除外されたものとして認可をされているのか。
#158
○説明員(今野博君) 私どもが都市計画決定なり都市計画事業の認可をいたします場合に、先ほど先生からお話がございましたように、電留線の持っていく場所でございますが、場所につきまして、その都市計画の決定なり事業の内容に入ってございません。これは都市計画決定なり都市計画事業の認可の線は、本線高架する部分でございます。それだけが都市計画決定の内容になってございまして、いまお話がございました点は、関連事業としてそういうことがあるということでございます。そういう点もいろいろ現地からは十分に拝聴した上で、都市計画事業の認可をしたものでございます。
#159
○松永忠二君 国鉄と文化庁。
#160
○説明員(山田明吉君) いま建設省のほうからお話がございましたとおりでございまして、都市計画決定をしていただきましたのは、浜松駅を中心として五キロを高架にする、その結果、大体踏み切りが十五カ所除却できるわけでございまして、その五キロの部分、高架部分について都市計画を決定していただきまして、したがって、高架にするために、現在の浜松駅の構内にあります電留線を移設しなければなりません。その工事は当然必要でございますけれども、それは都市計画の中には入っておりません。
#161
○政府委員(安達健二君) 文化庁といたしましては、伊場遺跡の考古学的な意義というものを十分確かめた上で、その考古学的な評価に立ってその保存についての最終的な判断を下したい、こういうふうに基本的に考えておるわけでございまして、御案内のとおり、浜松市におかれまして、昭和四十三年から本年の二月に至る間、三回学術的な調査が行なわれたわけでございまして、同時に、その発掘調査団に顧問会、懇談会がつくられておりまして、その発掘調査の結果をまた顧問会に報告して、この問題についての評価を慎重にする、こういうことで進んでおるわけでございます。
 ところで、これまでの数次の調査結果によりますると、東のほうは弥生時代の集落あとであるということで、その範囲はほぼ明らかになってまいったわけでございます。ただ、現在残っておる遺構の保存状況があまり良好ではない、こういうのが東側のほうの状況でございます。同時に、西側のほうへまいりますと、これは奈良時代を中心とするところの建物の遺構やみぞが出てまいったわけでございますが、同時に出てまいりました木簡、木の札と申しますか、木簡等に書かれておる記載内容からいたしますと、これが奈良時代の郡衙のあとではないかというような推定もされているのでございますが、まだ正確な、あるいはその遺跡がどこにあるのかという中心がまだわからないというようなことでございます。
 そこでさらに、この西側のほうの郡衙あとかと思われるところのものについて、第五次の調査を市におかれまして五月から八月にかけて行なうということでございますので、私どもといたしましては、その第五次調査の結果と、そしてまたそれに対する懇談会と申しますか、顧問団の意見を十分お聞きした上で、この保存の問題についての最終的な判断をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
#162
○松永忠二君 そうすると、いま決定した都市計画並びに都市計画事業は、この伊場の遺跡そのものの地域は入っておらないものだということが明らかになった。国鉄もそうである。建設省もそうである。しかし電車区なり機関区というものは、いずれはどこかにつくらなきゃいけないし、またそういうところとしてかつて予定をしていたことは事実であるので、この点については文化庁は、近く行なわれる相当大規模な調査になるその調査の結果を見て、ひとつ慎重にいろいろ相談をしていくということだというふうに、大体把握をされると思う。
 そこで一体調査にあたって、この前私この点を文部大臣に聞きましたが、文部大臣は、明年の調査については国も協力をしたいということを言っておられた。一体この今回の調査の費用はどのくらいかかり、また国の協力とは一体具体的に何をさしているのかという点について、文化庁のほうから明らかにしてください。
#163
○政府委員(安達健二君) 調査の協力ということになりますると二つございます。
 一つは、技術的で専門的な指導という問題でございまして、いろんな問題等につきまして、要請があった場合に、現地に行きましていろんな助言をする、あるいはその判断等についての相談にあずかるというようなことが、一つの協力のあり方になるわけでございます。
 第二の点は、発掘調査費用について補助をするかどうかという問題でございます。これについては、実は私のほうでこれを補助をしないということを申しておりませんけれども、市のほうからは補助をしてもらいたいという要請が出ておりません。したがいまして、財政的な援助を、要請がないのにするというわけにもまいりませんものですから、現在のところは補助をする意向は持っておりません。
#164
○松永忠二君 それは、持っていないとあなた言っているけれども、協力するといって、はっきり文部大臣が言っているんです。違ったようなことを回答しちゃ、しようがないじゃないですか。大臣がやると言っているのに、次長が出てきて、やる気がないなんて、そんなことは要求に基づいてやっていくのが当然であって、補助が、大体われわれの聞いている範囲では四千万程度の費用だと、こう言っているけれども、現実には、おそらく倍くらいかかるのじゃないか。実は市がこの調査になかなか踏み切らなかったのは、いろんな事情があるけれども、数回やり、金をかけているという面なんです。だから、今度のこの伊場の調査をするにあたっては、やはりもちろん市や県からも連絡をし協力を求めて、国もまたそれとの間に協議をして協力をしてもらいたい。またそうしなきゃいけないし、そういうことを約束しているのに、やる気がありませんなんて、そんなだめなこと言われたんじゃしようがない。
#165
○政府委員(安達健二君) これは補助金の性格によるわけでございまして、私のほうは、これを拒否する意向はないわけでございます。ただ、要請がまいっておりませんのに、どうか受け取ってくださいというのは、補助金の性格からおかしいのではないかというようなことの意味で申し上げたわけでございます。
#166
○松永忠二君 わかりました。
 そこで、この「文化財保護の現状と問題」という本を出しているのですが、この文書はまことにけしからぬと私は思うんですよ。
 実は、これはさっき話にも出た調査団、斎藤忠氏の調査への提言の中にこういうことが出ている。「もはや浜松に於ける遺跡であることにとどまらず、日本屈指の遺跡となり」「今後「伊場遺跡を除いて日本古代史を論ずることはできない」と言われる程になった」、郡衙址であると同時に、駅家がそこに併設をされているのではなかろうかというような考え方が出ておるわけであります。
 まだこれは明確にはなっていないけれども、しかし文化財審議会の専門委員であり、団長である斎藤氏がこういうことを明確に言っているのに、これにはこういうことが書いてあるんですよ。「昭和四十三年二月電車区、機関区の移の移転先用地として伊場遺跡を含む一帯の市有地を予定した。」「本遺跡は県の指定物件であるが、本事業は静岡県の発展にかかる大事業であり、そのためには伊場遺跡の破壊もやむを得ないが、その代り、調査には万全を期す、指定地の現状変更を行なうという措置をとった。」と書いてある。
 いつ一体「現状変更を行なうという措置」を県がとったのか、県の遺跡の指定地であるのに、とったのですか。また、破壊するということはやむを得ないなんて、そんなことを一体、こういういままでの伊場のいろんな学術調査からいって、こんなばかなことを言えたはずがない。これはこういうことをやらない前に言ったのか何かわかりませんが、率直にこれはもう改むべきだということを私は考えているのだが、これについてはどうなんですか。
#167
○政府委員(安達健二君) この資料は、問題になっている物件につきまして「問題点」と「処理」というように分けて示しているわけでございます。それで、いまお読みになりましたのは「問題点」のほうでございまして、市の教育委員会がそういうような方向をとってやろうとした、というところでとめてあるわけです。それに対して「処理」といたしまして、市教委は「四十四年六月から事前調査を開始した」ということで、むしろ「遺跡の学問的不明確な点を解明する」ということで、その調査の結果に基づいて保存を考慮するという声明を出したわけでございます。
 ですから経過的に見れば、一たんはそういうように市は思ったけれども、やはりいろんな意見もあり、また運動等もあって、もう少し検討し調査をする必要があるということで、保存を考慮するという声明を出しまして、文化庁の指導によりまして学術調査を継続中であると、こういうことでございますので、「問題点」と「処理」というのを両方あわせて読んでいただければ御了承いただけるかと思います。
#168
○松永忠二君 それではあなたに聞くが、一体「指定地の現状変更を行なうという措置をとった。」と書いてあるのは、いつとったのか。
#169
○政府委員(安達健二君) これは、ここにも書いてございますように、現在東側のほうの一部が県指定の遺跡になっているわけです。国ではなくて、県指定の遺跡になっているというのは御承知のとおりでございます。そこで市のほうの教育委員会では……。
#170
○松永忠二君 市のことを言っているんじゃない。
#171
○政府委員(安達健二君) 市の教育委員会が現状変更の調査をするという申請を県のほうに出したということまでが、この「問題点」に書いてあるわけでございます。それでその「処理」としては、さらに調査をしていくということで、学術調査を文化庁の指導のもとに行なっておるという経過だけを示してございますので、そういう意味でございます。
#172
○松永忠二君 経過としても妥当じゃないでしょう。そんなことにいま固執する必要はないじゃないですか。当時としてはそういうことを、問題点として指摘をされたかもしれぬけれども、いまの段階で、「伊場遺跡の破壊もやむを得ないが」というようなことばを使えるですか。そんなたわいないことを言って、そんなことは、もう率直に、こういうような時期もあったけれども現段階ではこういう時期でないということを言えばいいじゃないですか。そんなたわいなことを言わないで、問題点としても妥当じゃないでしょう、このことばは。妥当ではないでしょう。
 片方には、もはや浜松の伊場遺跡は日本屈指の遺跡といわれる、しかも「伊場遺跡を除いて日本古代史を論ずることはできない」といっているのに、片方は「破壊もやむを得ないが」という、「その代り」とかいうことを書いて、「指定地の現状変更を行なうという措置をとった」というのは、県の指定なら県がやらなければ、「行なうという措置をとった」にならぬ。行なうようにしてほしいということを市が要請したというなら、文章が違うんじゃないですか。そんなくだらぬことに固執することはないんですよ。これが書かれた当時は、あるいはこういうふうな状況判断をした場合もあったかもしれぬけれども、現状では、これはもうそういう状態ではないということを私は言っているのであって、そんなことぐらいに文化庁が簡単に合意ができないということなら、あとのことを言ってみたってしようがない。
#173
○政府委員(安達健二君) ちょっと誤解があるかと存じますが、これは昭和四十五年十一月に「文化財保護の現状と問題」として出した資料でございまして、その当時におけるそれまでの経過と、その当時における問題点、処理を示したものでございます。したがいまして、現在はこういう状態にはなっていないわけでございます。それはもう御指摘のとおりでございます。ただ、経過はどうだとおっしゃいますから、そのことを御説明申し上げただけで、現在はまだこの考え方をとっているというわけでは毛頭ございません。これはあくまで、先ほど申し上げましたように学術調査の結果に基づいて慎重なる最終的判断を下したい、こういうのがわれわれの考えであります。
#174
○松永忠二君 経過としても間違いだということを言っているんですよ。いわゆる指定地の現状変更を行なう措置をとったと。措置をとったというのは、県の指定なんだから、県が措置をとった――。県は、いまだかつてそんな措置をとったことはない。あなたの前の説明では、市がそういう措置をとるように言っていたというなら、それじゃ表現が違っているじゃないですか。
#175
○政府委員(安達健二君) 経過の点でございます。文章の全体でごらんいただきますと、県の指定物件でございますから、現状変更の認可をするのは、県の教育委員会になるわけでございます。申請するのは市の教育委員会でございますから、「現状変更を行なうという措置」を願い出たというのが実際の実情になるわけでございます。つまり、県の史跡地の現状変更をして学術調査を行ないたいということを、県の教育委員会に申し出をしたということが書いてあるわけでございます。
#176
○松永忠二君 その表現も妥当ではない。これは現状に合ったものではないというんだから。これはそれでいいにいたしましょう。その点については、伊場の問題については積極的に市や県なども協力を求めてまいりますから、ひとつぜひ善処してもらいたいと思います。
 そこでもう少し話を進めます。飛鳥の問題について、総理府のほうから少しお話を伺いたいと思います。
 私たちはいま、環境の保全とかそういうふうな問題について、環境を破壊する公害、それから自然を守る、自然の環境の保全、それと文化的な遺産を持っている歴史的環境保全、この三つが同時に並行的に行なわれるということは、非常に重要なことだと私たちは考えているわけです。
 その中で、特にいま公害の問題とか自然環境保全という問題が非常に強く強調されているけれども、しかし私は、個人としては、文化的な遺産を含んでいる歴史的環境保全こそ重要に考えていかなければならぬし、また、これに力を入れていかなければならぬと思うので、そういう面について、飛鳥の歴史的環境保全の問題について、「飛鳥地方における歴史的風土及び文化財の保存等に関する方策」というものをいわゆる閣議決定をした、あるいはまた文化財審議会とか歴史的風土審議会もそれぞれ答申をして、国が努力しているわけです。しかし、この飛鳥の歴史的環境保全については、実は一つの大きな問題の点があるというふうにわれわれは考えているわけなんです。十分でない点が一つあるのではないか。
 それは特にこの問題でありますが、地域住民の生活の環境の改善と住民生活の安定向上に資するための必要な措置、こういうことが文化財の審議会の中でも強調されております。それから閣議決定をしたものの中には「飛鳥地方における歴史的風土及び文化財を保存し、住民生活の向上を図るためには、国、地方公共団体および民間の一体的協力が必要である」というようなことを言っているわけです。この点について、一体、かつてこの地域にどういうことをやってきたのか。いわゆる民生という意味でどういうことをやってきたのか、今後それをどうやっていこうとしているのか。まず、その点について総理府のほうからお聞かせ願いたいと思います。
#177
○政府委員(栗山廉平君) お答え申し上げます。
 先生いま御指摘のごとく、閣議決定が昭和四十五年の十二月十八日にあったわけでございます。内容は、いま先生のおっしゃられたとおりでございます。文化財の保存あるいは歴史的風土の保存、そういう保存等の措置、それから環境の整備、これは住民生活の安定向上をはかるという意味を含めております。それでそういう二大目的の措置を行なうためには、国、地方団体及び民間の一体的協力が必要である、こういうことをはっきり申しておりまして、この民間の一体的協力を促進するために、財団法人の設立を要請する、こういう文言があるわけでございます。
 そこで、これは昨年の四十六年度から始まったわけでございまして、保存の点はこれは別といたしまして、国で行なっております予算上の点としましては、河川、道路といったような点、あるいは駐車場、それから国営公園、これは建設省の所管でありますが、こういったようなことをいたしております。それからごみ処理、清掃関係でありますが、これは厚生省の所管といたしております。
 これらは国あるいは公共団体等の関係でございますが、民間の、いわゆるただいま申し上げました財団法人の問題について簡単に申し上げますと、これも先生すでにもうよく御承知かと存じますが、昨年四十六年の四月一日に飛鳥保存財団というものが設立いたされまして、法的にも確立したわけでございます。で、いたします仕事は、宿泊研修施設とか総合案内所、そういったのは国の予算でできておりますが、独自の仕事といたしまして、おっしゃいましたような地域住民の生活の向上に資する事業をきめこまかにやっていきたいということで、実は着手したわけでございます。
 先ほどの閣議決定にもございますように、とにかく一体となって地元とやらなければならないということで、地元にまずいろいろ御要望を聞かしてもらう。もちろん明日香村、それからそのすぐ周辺の町村もございます。それから奈良県にも入っていただきまして、いろいろ協議を重ね、またいろいろの案も出しまして、究極的には、村、県の案が大体秋ごろまとまりまして、それでいま、昨年度として大体着手しましたものを簡単に申し上げますと、村で単独事業で、国、県が行ないます以外に、村の中の道路の舗装事業をやることにいたしたわけでございますが、これにつきましては、村民負担分が相当かかるわけでありますので、その村民の負担は全額を財団でまず持つということが一つ。
 それから香久山という地区の、たいへん過疎の地区になっているところがございますが、そこの学童、つまり小学校に行く者、幼稚園に行く者、これは、ここは特別地区なものでございますから、非常に細い道を、さびしい道を相当長距離歩くということで、そこの地方団体で通学のための車を雇いまして、それに乗せてやっているということで相当負担がかかっているわけでございますが、この香久山地区の学童、幼稚園児、それに対する通学の車の手当てに対する補助金を出す。これも地元の切なる要望があったわけでございます。
 それからさらに、飛鳥の保存地区内に、昔ながらの大和風のわら屋根がまだ残っているわけでございますが、そういうところが、いろいろ古くなってまいりまして補修するにもなかなか、御承知のようにいまわら屋根のふきかえというのはたいへんな金がかかるわけであります。そういう補修の費用、あるいはわら屋根を、もうとてもこれは持てないということで、かわらか何か、あるいはトタンにでもかえたいということの希望がある。それに対しまして、やはりわら屋根を復元してもらいたいということで、そういう費用、これも村から出た御希望でございますが、そういうようなこと。
 あるいは飛鳥川、御承知のように改修等いたしておりますが、近ごろたくさんの観光客がおいでになるものでございますから、いろいろ川がよごされるという問題がございまして、そこの村で人を雇いまして、そういう川のよごれる、いろいろ投げられるものその他をちゃんと清掃しているわけでございますが、そういう清掃費の補助金を出すといったような問題。
 それから御承知のように、にわかにたくさん人がまいったので、いま飛鳥ブームと言いますか、やってくるものでございますから、案内等のしるしその他もあるわけでございますけれども、いろいろまちまちで、そのときそのときにつくったようなもので不備になっているというようなことで、わからない場合にはもうみな村の家に入って、あそこへ行くにはどう行ったらいいかというふうなことで、たいへんわずらわされることが多いわけでございまして、そういう施設の案内板といったようなもの、あるいは指道標、それからさらに解説板といったようなものも、必要なところに設ける必要があるということで、これも地元の御希望でそういう補助金を出すことにいたしたわけでございます。
 さらに、いろいろ基本的な調査をいたしまして、それに基づいてさらに村の、村民の方々の要望を知り、そしてそれを基礎にまたいろいろ将来の援助も考えていきたいということで、見学に来る方々が、御承知のようにたいへんふえたものでございますから、それの実態の調査を三カ年計画でひとついたしたい。見学の流れ、どういう見学をするか、詳細に調べまして、それに基づいてこれに対する対策、それの援助といったようなものを考えていきたいという、そのために、その見学者の実態調査を一つ。さらに二番目には、こういう保存の規制を村が受けまするために、村民がどういう影響を生活に及ぼされているかといったような実態調査、これも明日香村の規制区域の全域にわたりまして、やはり三カ年計画で実施しようというようなことで、規制も、先生御承知のようにいろいろの法律に基づく規制があるわけでございますが、そういう回数あるいは事例、それに対する村民の協力の態度、考え方、それから希望といったようなものを具体的に村民にあたって調査をしていきたい。これも三カ年計画でございます。
 それからさらに最後に、非常に飛鳥の、たとえば文化財を保存していこうというような、あるいはまた飛鳥の中をきれいにしていこうというような、自発的な善意なボランティアの団体があるわけでございます。こういう団体を、励ますというと何でございますが、もっとさらに盛んにやっていただくというような意味を込めまして、この団体の事業に対するあるいは励ましの意味の助成金を出す。これは現在七団体に出されているわけでございます。
 それによって飛鳥地区の皆さんの気持も、さらに文化保存に熱意をわき立たせていただきたいというような意味も込めまして補助金を出すというようなことで、飛鳥保存財団におきましては、昭和四十六年度では六百二十三万九千円という額を補助をいたしているような次第でございます。
#178
○松永忠二君 そういうことで明日香のほうではたいへん感謝し、満足しているのですか。
#179
○政府委員(栗山廉平君) 先ほど申し上げましたように、大体これはまだできて早々のことでございまして、四十六年度の事業としてとにかく年度内にいたしたいということで着手しましたと言いますか、そういうような仕事でございまするから、今後さらにこれは継続し、あるいはまたもっと拡大していくべき性質のものでございまして、これをもって決して村民の方々が一年度で御満足というわけにはまいらぬというふうに、私は考えている次第でございます。
#180
○松永忠二君 この点については、むしろ明日香では、飛鳥の保存のやり方について非常な異議が出ているというか、不満の声が起こって、特別なそういう団体なども出てきていることは承知をされていると思うのです。
 いまお話を聞いても、それは一つは公共事業に対する負担の幾分かを軽くするということはあるけれども、住民自身の民生的な向上というものは、生活の向上に直接その金を使っているわけじゃないわけですね。しかも非常な規制がかかるし、周囲の町はどんどん地価は上がっていくし、そういう中で処置はできないし、また飛鳥をたずねる人からいっても、かつて明日香の人たちは誇りを持ってみずから条例をこしらえてやってきた。明日香村民の、文化財の保存にさまざまな形で努力してきて、現在の生活と過去の遺跡とがこれまでうまく調和したということが、この土地の最も魅力であった。しかし、いま行ってみると、これはそうではないというようなことを、相当ないろんな人が言っているわけですけれども、だから、住民の生活といわゆる遺跡の保存というものが全く合致をした形の中でこの飛鳥の保存が行なわれたという状況ではない。極端なことを申せば、飛鳥保存のいろんな施策というものは、むしろ観光を中心としたものではないかというような批判なども出ているわけです。
 これは時間もありませんからあれですが、諸外国なんかでは、こういうやり方とはまた違ったやり方をしているわけです。たとえばここにちょっとありますが、パリのヴォージュという広場では、保存するにあたって、この広場には祖国の栄光が満ちている、わしらはここで生まれ、育ち、そして年をとったと言っているわけです。あるいはイタリーのベニスあたりでは、博物館のベニスではなくて、幸福な生活のできるベニスをつくるのだと、こう言っているわけです。だから、生活といわゆる遺跡の保存とが密着して、そうしてその中で歴史的環境が保全されているということになるわけです。
 私がいま言っているように、ここをたずねる人がバスでどのくらい、ハイヤーでどのくらい、徒歩でどのくらいたずねていくかということをいうと、道をつくったこと自体が、飛鳥のほんとうの意味の歴史的環境保全になるだろうか。あなたがいまお話になった小さな子供たちの登校の道路であるとか、小さな道路の舗装をするというようなことについて、これは積極的になることは私は否定はいたしませんけれども、バイパスなどをつくることが、飛鳥の財団が計画をしているものなんかが、即直ちに住民生活に直結するということにはいかない。だから、もっとこういう点について、生活と結びついた歴史的環境保全という面について考えていかなければならないのではないか。
 そうかといって、それじゃ文化庁にそれができるのか、建設省にそれができるのかということになると、それじゃ、たとえば奈良の県にできるのか、明日香の村民にそれができるのかとなると、やはりそういうものを総合した、いわゆる総理府自身がこれを推進をしていくという熱意がなければ、実はこの飛鳥のいわゆる歴史的環境保全というのはできないわけなんです。そういう面について総理府のいわゆる推進の体制というものが少し弱いのではないかという感じを、特に今度の古墳の発掘なんかもあったりして、一そう、飛鳥文明の中で、逆に明日香の住民がそういうふうな希望を強く持ってくるという状況だと思うのですが、こういう点について総理府の積極的な努力を期待をしたいと思うのですけれども、いまいろいろあなたが申し述べられたけれども、まだそこに幾多の問題点のあるという把握をされているのか、それについてなお一そう努力をしていこうというような考え方を持っておられるのか、この点をちょっとひとつお聞かせをしてください。
#181
○政府委員(栗山廉平君) ただいま先生おっしゃいましたように、保存という問題と村民の生活安定あるいはむしろ向上という点と、並行して完全に一致した状態でということはなかなかむずかしい状態かと存じますけれども、われわれとしましては、なるべくこれが一致するようにいたしていきたいという熱意は持っておる次第でございます。
 それで生活問題になりますと、御承知のように農業あるいはその他の産業の問題もございましょうし、いろいろな問題があるわけでございます。財団のほうは、先ほどから申し上げましたように、そういう国なり地方公共団体でやることにいろいろ法外のお手伝いを申し上げるという点でございますから、それをもって安定あるいは向上に直ちに資するというわけではございませんで、それのお助けを申し上げるというようなことでございます。
 そこで、この明日香並びにその周辺の地区の、いまおっしゃいましたような御趣旨に沿うべく、われわれは十分地元とも連絡し、また事あるごとに各省とも連絡しているわけでございますけれども、決してこれをもって満足しているわけではございません。まだ着手したばかりでございまして、四十六年度から始まったばかりでございますから、まだまだこれから大きな問題がたくさん出てくるし、また、まだ残っているということを痛切に感じておるわけでございまして、なおこの上とも御趣旨を体しまして、各省とも十分にわれわれ積極的に連絡をとりまして、先ほどからおっしゃいましたような線に沿いまして、努力をいたしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
#182
○松永忠二君 そこでもう少し話を進めて、埋蔵文化財の保存ということについて、特に土地の開発とか公共事業のために、埋蔵文化財というのは非常に深刻な影響を受けておる。私、ちょっとここに出ておるのですが、このごろ新聞に出たものでもたくさんあるわけですね。山口市の古代鋳銭所あとの遺跡、浜松の伊場、武蔵国分寺の史跡、風土記の丘、山陽新幹線福山市の福山城、三原城の保存の問題、難波宮、歴史的飛鳥保存、死にかけている装飾古墳の問題、また近ごろの高松塚古墳の問題など、いろいろな問題が出ている。
 これらの問題になっているところは、大体バイパスであるとか、あるいは住宅のいわゆる団地を建設するとか、あるいは道路、鉄道運輸の関係で、むしろそういうところ自身がそういうところを破壊をしているという面もあるわけなんです。しかし現実には、各省庁の間に覚え書、協定というのが非常にたくさんあるわけです。日本鉄道建設公団とも、住宅公団とも、日本道路公団とも、国有鉄道ともやっておる。農地法との関係とか、あるいは天然記念物との問題だとか、通産省との覚え書、土地調整委員会との関係だとか、自然公園だとか、宅地造成だとか、新住宅市街地開発法の運用についてだとか、電気事業、いろいろな事柄について非常にたくさんの覚え書とか協定を結んでいるにかかわらず、気がついたときには、もうすでにそこを掘り起こしたり変えているということになっているわけですね、現実は。こういう点で、たとえば山陽新幹線のときに、国の指定地にまで、何も言わんで福山市の福山城や三原市の三原城に手をつけた。あとから文化庁から言われてびっくりした。よく調べて見ると、いわゆる新幹線なんという路線をあまり早く発表すると、次から次へ抗議を持ち込まれるので、発表したとたんにその路線を推進をしている。それじゃ何のために協定を結んであるのかという気持ちさえ起こるわけです。これはどうしても、やはり文化財保護法というものは抜本的に改めなければだめじゃないか。そういう意味から、抜本改正の要綱というのはぜひやらなければいかぬと私たちは思っておる。
 私は時間もありませんので、ひとつ具体的に言ってみます。文化財保護法五十七条の二の、土木工事の届け出制であるのを、これを許可制にしなければだめだろう。これはもう相当大ぜいの人から言われておる。
 あるいは文化財保護法の八十四条の「遺跡発見の届出」、遺跡が発見されたときに、この禁止、中止の命令が出せない。禁止、中止の命令が出せないだけでなしに、急速にそれを調査する機構もなければ、それで不利益をこうむったときに補償する措置というものがない。だから遺跡発見の届け出の際における、いわゆる禁止、中止命令を含むようなものをつくらなければだめだろう。
 第九十一条において、重要文化財、史跡名勝天然記念物の現状変更、保存に影響を及ぼす行為については、あらかじめ関係各省庁の同意が必要だと書いてあるけれども、文化財を包蔵する土地について、開発行為と遺跡発見の際に協議をするということは書いてない。つまり、重要文化財とか史跡名勝天然記念物については、この現状を変更したりするときには同意が必要だと書いてあるけれども、文化財を包蔵する土地について、開発行為を行なったり遺跡発見の際に、いわゆる関係省庁との間の協議が法律的に規定されてない。だから、たくさんの省庁の間に覚え書をつくっておかなければならないが、その覚え書は、覚え書であって法律的根拠がないから無視をされてしまうということになってくるのではないか。
 第四点として、第八十一条に「環境保全」ということが出ておるが、この歴史的環境保全については、いわゆる環境庁がいま考えている自然環境保全法にきめられているようなものがない。これによれば、国、地方公共団体が責任を持って必要な基礎調査はやる、保全の計画を立てる、買い上げの指定をして、補助とか地方債について適切な配慮をするというような、自然環境保全法の案の中にはそういう積極的なものがあるけれども、文化財保存法の八十一条の環境保全には、そんなことは全然ない。こういう点について環境庁のほうからもちょっと聞きたい。こういうものをぜひひとつ明確につくっていかなければだめだということを強く感ずるわけです。
 そういうことで、問題点はたくさん出てきているので、これはどうしても改正をしなければならぬが、一体改正はいつやるのか。そういう用意をもって進めているのかどうなのかという点をお聞かせいただくということが一つ。
 時間もありませんから、もう一つは、私はこの前、何か予算委員会で話を聞いてみると、大蔵大臣は、文化財の保存の予算については私は自信を持っていると言っていたけれども、実際から言うと、いま文化財は、埋蔵文化財というと十四万カ所あったわけですが、あなた自身も座談会で言っているとおり、これはすでに三十万カ所ぐらいになっている。この十四万カ所のうち、六千カ所を特に緊急必要だと考えて調査をすることにして、四千カ所はすでにやってきたけれども、まだそれができない。したがって、緊急事態が起こってきたときにようやく調査するにも、もうフルであって一ぱいだという状態だ。しかも史跡の買い上げの問題についても、ずいぶん文化庁としてはこじんまりした形で、八百四十三ヘクタール、いわゆる三千九百四十九ヘクタールの史跡の中で、民有地がある中で、八百四十三ヘクタールを買っていこう、四十五年から十年間に約六百億の金を使って、国庫補助三百億をもってやりたいというつつましい計画を立てている。これもなかなか実行できてない。だから、したがって私たちからいうと、追加の調査をしなければならないし、またそういうものについて、つまり調査の図をつくって各地へ分けているわけだけれども、それも部数が非常に少ないし、もっと分けなければならぬし、調査の図自身もまことに明確を欠くような点もあって、もっと完備しなければならない。
  〔理事金井元彦君退席、理事矢野登君着席〕
 こういう点で私は、最初申し上げましたように、公害予防も大切だ、自然環境保全も大事だけれども、それに、文化的遺産を持った歴史的環境保全さえできないようなことでは、とてもじゃないがほんとうの意味の環境保全にはならない。この三つの環境保全が進んで初めて日本の国の正しい意味の環境保全ができるのであって、こういうふうな面で、この点についてひとつ積極的な努力を文化庁に要望して、こういうことについては文化庁だけの力じゃなしに、国会のほうもひとつこぞってそういう問題について力を入れていきたいと私たちは考えているわけです。
 したがって主旨としては、一体これらの文化財保護法の、幾多の欠陥があるとわれわれは考えているが、この改正をどういうふうにしていこうという、いつの時期に考えておられるのか。それからまた環境庁のほうでは、いわゆるいまの自然環境保全法の、いま言ったような積極的な面が確実に法律として提案をされていくことを要望しているけれども、この点はどうなっているだろうか。つまり、文化財保護法に足らざるものをもって、自然環境保全法の中に明確に出ているこの点をしっかり守って、これを必ず法律化していってほしいという強い要望のある点について、どういうふうな状況であろうか。またさらに最後の点として、予算の問題について、特に埋蔵文化財の十四万カ所を、もっと調査を広げていくというような点について、緊急性があるとわれわれは考えるが、これについて文化庁はどうか。この点をお答えを聞いて、私質問を終わります。
#183
○政府委員(安達健二君) たいへん適切なお話を承りまして、非常に文化財保護、特に埋蔵文化財保護の緊急性と必要性を痛感をいたした次第でございます。
 文化財保護法は、御案内のとおり昭和二十五年に制定されまして、その後二十九年に改正が行なわれておりますが、その後非常な社会全般が変化をしておりますので、現在の文化財保護法が現実の情勢に適応していないということは、御指摘のとおりでございます。御指摘になりました問題につきましても、いろいろ問題点もありますけれども、とにかく早急に検討すべき問題ばかりだと思うわけでございます。そういう観点から、文化財保護法の改正の問題でございますが、これにつきましては、現在都道府県の教育長協議会あるいは知事会等からもそういう面での御要望、御要請もございます。したがいまして、私どもとしてはそれを早急にやらなければならないということで、現在は部内で研究を進めておるというのが状況でありまして、できるだけ早い機会に成案を得て御審議をいただきたい、かように考えておるわけでございます。
 それから予算の問題といたしまして、特に土地の買い上げとか緊急調査とかという面につきますると、本年度は二十億の国庫補助で四十億の買い上げをするということになっておりますが、御指摘のとおりこれはなお非常に足らないわけでございますので、諸先生方の御指導、御協力も得まして、これを飛躍的に増額してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
 それからもう一つ、そういう法律的な問題あるいは予算的な問題と、もう一つは埋蔵文化財の調査発掘体制と申しますか発掘の人員、組織、そういうものにつきまして、抜本的な対策を講ずる時期にきているのではないかということも痛感しておりますので、そういう面も現在検討を重ねておるということを申し上げたいと思います。
#184
○政府委員(小澤太郎君) 自然環境保全法について触れられましたので、一言お答えいたします。
 これは御案内のとおり、目下政府内部で成案を急いでおります。しかしこれは、御案内のとおりあくまで自然環境の保全ということを目的といたしております。したがって、文化財が自然環境保全というものと重なるところがあると思います。そういうところにはこの法律の適用をいたしまして、目的に従った管理、処理をいたしたい、こう考えておるわけでございますが、文化財そのものについては、私どもの法律のらち外でございます。ただし文化財の問題につきましても、文化庁あるいは文部省、いわゆる関係の各省でそれぞれの何らかの措置をされる場合に、自然環境の保全と関係がある問題につきましては環境庁長官の協議を求めるということが、それぞれの法律にできておりますので、そういう意味からも私どもこれに関与してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
#185
○政府委員(首尾木一君) 先生の仰せられました個々の具体的な問題点でございますが、お話にございました中で、土地の買い上げ問題というものにつきましては、これは今年度の予算におきまして、地方の交付公債を発行することにより約六十億円の事業費を見込んで、国立公園の地域内の土地を買うというものがさしあたって計上されておるわけでございます。そういうふうな意味におきまして、本格的な制度として自然環境保全地域等についての買い上げ制度、この問題につきましては、一年間さらに検討をするということで予算がついておる経緯がございまして、そのような関係から、今回の自然環境保全法の中には、条文としては、そのものはうたわれないということになろうかと思います。
 その他の点につきましては、たとえば保全計画でありますとか、あるいは保全事業でありますとか、こういったようなものにつきまして、国、都道府県が責任をもってそういう自然保護をはかっていくというようなことにつきましては、これはできるだけそういう十分な形でもって法律を成立させたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
#186
○内田善利君 私は、職業性のガン種の中で最も多いのがタールガンであるということは、古くから知られておるわけですが、こういったことに対しては公害対策あるいは労働省のほうで対策がとられておるものと信じますが、きのうの新聞で、新日鉄の八幡製鉄所から職業性のガンが多発した、昭和八年から三十三人もタールによる肺ガン患者が出て死亡しておる、このような報道がなされておりますが、この点について労働省はどのように把握されておるか、まずお聞きしたいと思います。
#187
○政府委員(北川俊夫君) 八幡製鉄所におきます職業性肺ガンの発生につきましては、いま先生御指摘のように、製鋼工程で燃料を得るために、八幡製鉄所でガス発生の作業を行なう。これは経緯的に見ますと、明治三十四年から使っておるわけでございますけれども、その作業の中から職業性肺臓ガンが出るということが、初めて指摘されましたのが昭和十二年でございまして、昭和八年から十二年までの観察をしまして、二十一例という指摘がございます。十二年以降、戦争中につきましては全然その資料がございませんで、戦後になりまして、二十一年から四十年の間に十二例の発例を見ております。
 以上、先生御指摘のように三十三例の肺ガンの発例も見ておるわけでございますけれども、私たちは戦後、終戦直後基準法が適用になりまして、基準法に基づきます安全衛生関係の監督指導をやります中で、この問題をたいへん重視をしまして、ガス発生の作業の改善というものをそのつど指示をいたしております。たとえば、まず第一段階では攪拌作業、いわゆる石炭をよく燃えるように鉄棒でかき回しておったのでございますけれども、その際に水蒸気を吹き込んでタール蒸気が漏れないようにするというようなことを終戦直後に指導いたしまして、その後二十五、六年ごろには、ガス発生装置そのものを閉鎖的にして、タールフュームが出ないようにというような指導をいたしました。最終的には、昭和二十八年に発生炉を廃止をいたしまして、重油による燃料の供給というものに切りかえたわけであります。したがいまして、われわれの把握しておる限りでは、昭和三十八年以降この関係のガンの発生というものはないというふうに理解をいたしております。
#188
○内田善利君 これによりますると、コークス工場で二人発生している。これは最近の調査によるガンでありますが、コークス工場で燃料の粉末を炉に入れたあと、工場内にタールのフュームが充満することがあるということで、二人ほど死亡者が出ておりますが、これはどうですか。
#189
○政府委員(北川俊夫君) 昨日私もその新聞を拝見しまして、非常に驚きまして、現地の労働基準局に調査を命じておるところでございますが、先ほど申し上げましたガス発生炉と違いまして、コークス炉につきましては機械化されておりまして、防じん、いわゆる粉じんが立たないような装置が大体なされております。ただその場合に、コークスをかき出す場合、そういうような場合に、粉じんとしてそれを労働者が吸い込むことはあるいはあり得るかと思いますので、その点につきましては現在調査中でございまして、まだ、新聞で報道されました事項につきまして、労働災害ないしは職業病であるという断定的な資料は持ち合わせておりません。
#190
○内田善利君 通産省に聞きますが、このコークス炉で粉炭を取り扱ってる場合にタールが発生する、あるいはタールのフュームが発生する可能性があるかどうか、その点はいかがですか。
#191
○説明員(森口八郎君) 直接の技術屋ではございませんので明確な答えはいたしかねますけれども、新聞に書いてございますように、燃料の粉炭を炉に入れたあとの数分間は、工場内にタール蒸気が漏れる云々というような記事が新聞にございますが、私のほうの、コークス炉の操業の実態を知っておる者の話によりますと、そういうことはあり得るかもしれないというように言っておりますが、なお実情については、工場側その他についてよく調べてみたいというように思っております。
#192
○内田善利君 私は、コークスを取り扱って高温に熱する以上は、やはりタール分は出てくると、このように思うわけですね。ただ、これが漏れたかどうか、その辺は疑問がありますけれども、必ずタールは発生する、そのように思います。そうしますと、昔からタールによるガン発生ということは、医学的にももう私たちは古くから知らされておるところでありますし、非常にこの点については注意しなければならないというように思うわけですが、労働省にお聞きしますけれども、ガス発生炉にしてもあるいはコークス炉工場にしても、日本にはたくさんあるわけです。ただひとり八幡製鉄だけがこういったガンを発生するとは思われないんですね。そうしますと、ほかの工場ではどのような状態になっているのか。肺ガンの、特にガス発生炉工場、コークス工場等におけるタールガンの患者の発生状況、あるいは死亡状況を掌握しておられたらお教え願いたい。
#193
○政府委員(北川俊夫君) コークス炉につきましては、実は不勉強でございまして、昨日の新聞で初めてそういう危険性もあり得るということに認識をいたしておるわけでございまして、したがいまして、コークス炉につきましての職業病の発生状況を、まださだかにつかんでおりません。いま申しましたように、八幡のコークス炉の作業環境というものを調査をいたしますと同時に、これらの関係事業所の調査を並行的に行ないたいと考えています。
 なお、ガス発生炉の関係は、たとえば都市ガスの供給をしておりますガス会社等で行なっておるわけでございますけれども、八幡の製鋼の過程の燃料獲得のための発生炉、当時の発生炉と、いまのガス会社で使っております発生炉では非常に装置が違いまして、大体私たちが把握しておる限りでは、ガス会社等で使っておりますガス発生炉は密閉式になっておりまして、それに従事する労働者の中にタールのフュームを吸うというのは、非常に例としても少ないのではないか。そういう意味でガス会社の従業員の健康調査を見ましても、いまのところわれわれが報告を受けておりますのでは、肺ガンの発生というものはまだ見当たりません。
#194
○内田善利君 コークス工場については、私はさっそく総点検をしていただきたいと、このように思いますが、いかがですか。
#195
○政府委員(北川俊夫君) 御指摘のように、さっそく調査に取りかかりたいと思います。
#196
○内田善利君 それから、この三十三人の方は労災法は当然適用されたと思いますが、この点はいかがですか。
#197
○政府委員(北川俊夫君) 三十三人のうち戦争前の者がございます。それで、その内訳を申し上げますと、労働基準法の適用前の方が二十一名でございまして、これにつきましては戦争中の、労災保険法にかわるもの、すなわち健康保険法の適用によって補償がなされているようでございます。戦後は、したがいまして労災保険法によりまして補償をいたしました者は九名になっております。
#198
○内田善利君 このコークス工場のほうの、二名の死亡者についてはいかがですか。
#199
○政府委員(北川俊夫君) これにつきましては、先ほども申し上げておりますように作業環境の調査及び当該労働者の実態等をよくつかみまして、その死亡が業務上のものであるということがはっきりしましたならば、早急に労災保険法上の補償をいたしたいと考えております。
#200
○内田善利君 まあ私はやはりいつも打つ手がおそいと思うのですけれども、八幡製鉄では昭和十一年にもうすでにタールガン、肺ガンが発生していますね。私たちも古くからタールガンということについてはよく聞いておるわけですが、もう少しこのタールが発生する、特にタールのフュームが発生するというところは十分留意をして、こういう被害者が出ないようにしていただきたいと、このように思うわけです。したがいまして、まだほかにタールを使う工場として、活性炭を製造する工場の中でタールを使用している工場、こういう工場がありますが、その工場は大体全国でどれくらいあるか、通産省。
#201
○説明員(森口八郎君) 活性炭には、粒状と粉状の二種類がございます。生産工程上タールを使いますものは粒状を生産しておる工場でございまして、わが国には大体六工場、粒状の活性炭を製造しておる工場がございます。
#202
○内田善利君 こういう工場もタールを使っておりますから、当然、先ほども申したように注意しなければならないと思いますが、こういった工場における職業病の発生はないかどうか。その状況を把握しておられればお聞かせ願いたいと思います。
#203
○政府委員(北川俊夫君) いま通産からお話がございましたように、粒状活性炭製造の段階でコールタールが使用されておりますので、コールタールの中の3・4ベンツピレンによる発ガンの可能性はあり得ると考えております。ただ現在まで、活性炭製造工場において具体的にそういう例があったかということにつきましては、先般も社会労働委員会で御指摘がございまして、現在調査中でございますけれども、いままでのところ、そろいう事例の報告を受けておりません。
#204
○内田善利君 私の調査では、ある工場ですけれども、工場長が二人も肺ガンでなくなっておる。元工場長、その工場のですね。そのほかたくさんの肺ガン患者が出ておるわけですが、私は一番最初から申しましたように、そういったタールを使用している工場は、タールガンの発生、あぶないわけです。染料工場におけるピリジンとか、あるいはアミリンガンとか、そういったものよりもタールを取り扱っておる工場のタールガン発生というのは考えられることなんですね。私も公害問題こうして取り扱ってきて、出ないことを願っておったわけですけれども、こういった新聞記事等を見ますと、やっぱりタールを使っておる工場は注意しなければいけないなということで調査した結果、活性炭をつくっている工場でそういう被害者が出ている。それを労働省が全然聞いてないということは、ちょっとおかしいと思うのですね。私が短時日に調査しただけでも、一つの工場からたくさん出ているわけですから。まあ名前を言え、また工場名を言えとおっしゃれば言いますけれども、こういったタールによるガンということは、昔から、明治時代から医学的には問題になっていること、また職業病としても問題になっていることなんです。そういったことを掌握していないというのはどうもおかしいと思うのですが、どうですか。
#205
○政府委員(北川俊夫君) タールの発ガン性につきましては、先生おっしゃるとおり、非常に職業病予防上重要な問題でございまして、八幡のこのガス発生炉事案以降、労働省としましてはタールを使いますこういう発生炉についての密閉化の促進とか、あるいは作業方法の改善というような指導もいたしておりますし、単に製鉄会社のガス発生炉のみならず、タール作業の作業手順といいますか、いわゆるガンに罹患しないようにというような作業の、作業労働者の参考書となるような指針も出しておりまして、それは広く現在まで使われておって、私たちはタールにつきまして相当指導はいたしたつもりでございますけれども、御指摘のような活性炭の製造工場につきましては、いままでのところ、それについて労災申請で職業ガンが発生したから補償をしてほしいというような請求例もございませんし、また私たちがとっております職業病の統計にも載ってきておりませんので、まだ把握をしていないと、こう申し上げたのでございますけれども、おっしゃるようにタールの発ガン性、その危険性というものは十分われわれも留意しなければなりませんので、これらの工場につきましての実態調査を早急にいたしたいと思います。
#206
○内田善利君 通産省は、こういったタールを使って粒状の活性炭をつくっている工場について、どのように把握しておられますか。
#207
○説明員(森口八郎君) 先生の御質問の趣旨は、発ガンのことでございましょうか。
#208
○内田善利君 こういった危険なタールを使って粒状の活性炭をつくっている、そういった工場の管理ですね、そういった面についての注意、指導、そういった点です。
#209
○説明員(森口八郎君) 活性炭につきましては、最近いろいろ公害の防止にも使われておりますので、その生産が非常に著増をいたしております。活性炭の作業環境と申しますか、そういうものは、いろいろな公害上問題点があるわけでございまして、製造の過程でいろいろ酸、アルカリ等を使いますので、汚水には当然いろいろの問題点がございます。また炭化物を粉砕いたしますので、当然その粉じん等が発生をするというような点がございます。沈澱装置をつけるとか、あるいは集じん装置をつけるとか、そういうことで業界を指導いたしておるわけでございます。
 いま先生おっしゃいましたタールの発ガン性の問題でございますが、基本的には労働省のほうでいろいろ取り締まりをなされるわけでございますが、お話を伺いまして、タールが発ガン性物質であるということを頭に置いて、業界のほうでも、労働者がタールを吸い込まないようにいろいろな作業状況の改善その他について、私のほうでも指導をいたしてまいりたいというように考えております。
#210
○内田善利君 私は、タールを使って粒状の活性炭をつくっている工場は、さっそく総点検をしていただきたい、このように思います。と同時に、周辺の住民の環境調査もしていただきたい。というのは、こういった工場の周辺は、大体障子紙は五、六回、年にかえている。もう内側がまっ黒になるわけです。それからテレビの画面も、毎日チリ紙でふかないと、もう見えない。そのふいたチリ紙もまっ黒です。そういった微粉を吸っているのですから、私は非常にあぶないと、このように思うわけですね。周辺の家庭がそうですから、中で働いている労働者に異常がないというのが、私はふしぎなくらいに思うわけです。実際当たってみますと、非常にたくさんの患者が、被害者がおられる。そういう実情ですので、ひとつ労働省のほうでもぜひ総点検をやっていただきたい、六工場ですから。そしてその周辺の環境調査もやっていただきたい。そのように思いますが、いかがですか。
#211
○政府委員(北川俊夫君) 粒状活性炭を製造しております六工場につきましては、その職場環境についてさっそく調査をいたします。
#212
○政府委員(山形操六君) 私のほうで、この活性炭のほうの生産にあたっての対策は、従来、塩化水素及びばいじんの大気中に排出する問題をやっておりました。そこで、焼成炉から発生する塩化水素及び乾燥炉から発生するばいじんについての規制措置を講じていたところでございますけれども、お話しのように、製品の粉砕とかふるい分け、あるいは粒状の製造過程において、粉じんの発生することが十分に考えられますので、今後それに対するコークス炉に準じた施設の構造、使用管理の基準を設定するかどうか、これにも対処したいと思いますので、十分調査していきたいと考えております。
#213
○内田善利君 労働者にもう一つお伺いしたいと思うんですけれども、先ほどから申しましたように、染料工場のピリジンとかそれからアミリンガン、あるいはいま出てきておりますタールによる肺ガン等々、こういったものも職業病として的確に調査すべく、先取りの研究機関を設けていただいて、こういう労働災害者が出ないようにしていただきたい。労働省の中にこういったいわゆるガンについての、医学的なガンについてはガン研究センターとかできておりますけれども、こういった職業的な専門的なガンについての発生原因の研究、こういったことをする調査委員会等を労働省でつくって、先取りの施策をやっていただきたいと、このように思いますが、この点いかがでしょうか。佐賀関にしても、砒素による肺ガンあるいは肝臓ガンは、あの周辺の住民の中に、他地域に比べて二倍も三倍も多い患者が出ているわけです。そういったこと等を研究する機関を工場内あるいは鉱山等でつくって、そういうものに対する研究センターというようなものをつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#214
○政府委員(北川俊夫君) 最近、新しい化学物質等が続々と出てまいりまして、それに伴う健康障害というものが労働者の生活にとっては非常に大きな脅威となっております。現在参議院で御審議をいただいておりますけれども、労働省としましては安全衛生法案というものを今国会に提案をいたしまして、この中でも、発ガン性物質の製造禁止、それからガン原性物質の製造にあたっての許可制度というようなものを制度として導入をいたしたい。ただ、先生いま御指摘のように、どういう物質について毒性をすみやかにつかみ、あるいは事前にチェックしてそういう職業病を予防するかにつきましては、調査研究機関の充実というものが非常に大事なので、いま労働省の労働衛生研究所がもっぱらそういうことをやっておりますけれども、本年度から三カ年計画で、これを産業医学総合研究所というふうに改組をいたしまして、そういう要請にこたえるべく努力はいたしておりますけれども、労働省の機関内でそのことを全部消化できるものでもございませんので、従来から学界の先生方に専門委員をお願いをいたしまして、有害物質、特に作業を行ないます労働者に対する影響というものについて検討を続けておりますけれども、なお御指摘もございますので、さらにこういう制度の活用あるいは拡充という点に努力をいたします。
#215
○内田善利君 この職業病については、私も四十年前、五十年前に聞いたことなんですね。そういったものが、いまだに解決されていない。そういう実情をこうして見ますと、非常に残念に思うわけですね。学生時代に、職業病としていろいろなことを聞いた、そういったものが、いまだに解決していない。非常に残念に思うわけですが、ひとつそういった研究機関等を設けて、先取りの行政指導をしていただきたい。このように要望して、私の質問を終わります。
#216
○加藤進君 時間が十分ございませんから、荒筋の質問に終わると思いますけれども、この点よろしくお願いいたします。
 きのうの夕刻、東京都の公害局は、きょう午後あるいは光化学スモッグが発生するであろう、こういう警報を発令いたしました。これはことしになって二度目だそうでございますが、こういうふうにして、もうすでに光化学スモッグが公に発生して以来、三年を経過するわけであります。また、その一年一年いよいよ深刻化するという事態は、われわれすべてが否定できないことだと思います。その点で、東京都はそれなりに非常な努力を払い、やっきになってその対策に終始しておられるようでございますけれども、これに対して政府は、一体どのように現状を認識しておられるのか、また、そのために実効あるどのような具体策を持っておられるのか、その点をまずお聞きしたいと思います。
#217
○政府委員(山形操六君) 光化学スモッグ対策の問題につきましては、国におきまして、四十五年度から一応試験研究機関で測定機器の開発をやりましたのが、スタートでございます。
 四十六年度、昨年度は引き続きその研究のほかに、先生御指摘のように、緊急性にかんがみまして、環境庁が発足以来直ちに予備費一億二千万円をいただきまして、実態調査をしようということから、東京湾地域について航空機による広域的な汚染物の調査を実施いたしました。冬にやりまして、さらにこれを夏にやって、比較検討しながらデータを整えていこう、少しでもその本質を見きわめようという努力をしておる最中でございます。それ以外に、現在進めておりますのは、どうしても光化学スモッグという、光化学反応を起こした空気をつくらなければ実験になりませんので、それを移動性にしようということから、移動性のスモッグチャンバーと言っておりますが、自動車に各種の測定機器を入れ、さらに紫外線発生機を整えた実験装置を積載した移動用スモッグチャンバーを製作して、目下、でき上がったばかりでございまして、これの操作研修をいま行なっておる最中でございますので、近く現場に行きまして、現地の調査をやることができる段階に近くなるわけでございます。
 で、今年度引き続きさらに一億二百万円の予算で、光化学スモッグの発生機序、またさらに人の健康に及ぼす影響等について、総合調査をこれからしていく方針で対処していこうと思っております。
#218
○加藤進君 お聞きして、私も非常に驚きました。というのは、三年前にもうすでに発生して、具体策が今日東京都その他によってとられておる段階において、環境庁、政府は、まだその原因の探求調査の段階である、こういうふうに言っておられるわけでございますけれども、私のしろうとの知識から言っても、この光化学スモッグを発生させる一番の犯人は何かということは、ほぼ確定されておるように考えておるわけでございますけれども、その点の見解はいかがでしょうか。
#219
○政府委員(山形操六君) 根本原因につきましては、私も、まだ十分わからないと申し上げるよりしかたがございませんが、従来の、米国でスタートいたしましたロサンゼルス型の光化学反応は、これは自動車の排気ガスを中心にしたものが大気の紫外線の作用を受けて、主成分のオゾンの発生を見て、それにプラスアルファの因子が加わって、ことに炭化水素系のものが入りますと作用が強くなるといわれております、という解明が、推定ではございますが、なされておるわけでございます。
 しかし、それの人体の影響は、ほとんどすべてが、従来のロサンゼルス型のタイプでは目のチカチカ反応ということだけに終わっております。あるいは自動車のタイヤがゴムの亀裂を生ずるというふうな別な反応もありますが、人体の健康被害という問題になりますと、症状的にはあまり強くない反応を示しておるのでございますが、日本の、ことに東京型といま言われております光化学反応におきます人体の影響は、非常に強烈な反応が認められておりまして、中学校、高校生等が体育中に倒れて、非常に窒息的な状況になるという呼吸器系の症状を示しますものですから、これは従来ロサンゼルス型でいわれているオゾンを中心にした発生機序だけでなしに、いろいろな複雑な大気汚染物がそこにまたまじって、別な反応、プラスアルファを起こしておるのではなかろうかというのが、私どもの解明をしたい一番大きなねらいでございます。したがって、自動車の排気ガスが相当な役割りをしておることは十分承知しておりますけれども、それ以外のプラスアルファの因子を早くつかみたいというのが、私どもの目下機序の解明に一番力を入れておる点でございます。
#220
○加藤進君 もちろん、政府、環境庁が光化学スモッグの原因について科学的な解明をされるということについては、われわれ決してこれを否定するものではございません。しかし、五月の十三日に、東京都の佐藤公害局長が次のようなことを言っています。
 自動車の排気ガスを減らさないことにはもはや光化学スモッグに打つ手はない。光化学スモッグの原因物質について、都では主要百九十一工場から排煙を押えるための協力を今日得ている。しかし、自動車の排気ガスは野放しの状態である。都はCOの排出基準を国の五・五%よりきびしい四・五%に押えているけれども、法的根拠がないために強制できないのが現状である。特に排気ガス中の炭化水素や窒素酸化物は国の基準すらないので、規制のしようがない。都は四月末に、国に環境基準をつくるように申し入れたが、さらに再度申し入れるつもりである。こういうふうに言っておりますけれども、このような東京都公害局の見解に対しては、環境庁はどのように認識しておられるのでしょうか。
#221
○政府委員(山形操六君) ただいまの東京都のお話でございますが、私ども理解しておりますのは、現在自動車の排気ガスとしてあげられております一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、この主たる三つの排気ガスに関する規制の問題に関しましては、環境庁ができます前に、これが運輸技術審議会で昭和四十八年度あるいは五十年度の規制が、目標値が掲げられておりまして、環境庁ができましてから、中央公害対策審議会で引き続き目下昭和五十年度以降の規制値を諮問しておる最中でございます。そして四十八年の目標値は、もうことし三月にすでに告示をいたしましたし、その点に関しましては着々とやっておる最中でございます。
 ただ、何ら基準がないという窒素酸化物でございますが、この問題につきましては、先生御承知のとおり、一酸化炭素と炭化水素を減らそうという措置をいたしますと、完全燃焼をさせねばならなくなります。そして、それが逆に窒素酸化物が非常にふえる。逆に、不完全燃焼で窒素酸化物を押えようとすると一酸化炭素等がふえるという逆現象がございまして、現在の対策に関しましては、非常に有毒な一酸化炭素の施策が先に進み、それから炭化水素の規制が着々と行なわれておるのでありまして、決して東京都の言われるように、何ら国がしていないとおっしゃっておられますが、その点は、窒素酸化物の規制というのは、脱硫装置のSOXと違いまして、脱硝装置というもののむずかしさがいま問題になっておる最中でございます。
 ところが、たまたまマスキー法というアメリカの規制法案が出まして、それに準拠して、いま目下私ども自動車対策の専門委員会において、少なくともマスキー法に劣らない規制の方法をどうするかというのを先生方にお願いしておる最中でございますので、近くそれらの規制ができ、対策の目標値が整うということからスタートしようと思っております。
#222
○加藤進君 東京都は、もうすでに具体的に踏み切っている。しかし政府、環境庁のほうでは、まだいろいろ原因についての探究をやられ、またこれについての、対策について十分な見解の表明ができておらない段階だということになれば、一体どういうことになるでしょうか。私はそういう点で、政府がもっともっと積極的にこういう事態についての究明に当たる。そのためには、東京都であろうと大阪、名古屋であろうと、光化学スモッグの発生した地域における自治体に積極的に協力援助して、そうしてこの状態の究明は一日も早くやらなくてはならぬ。この対策を一日も早く立てるのが政府の責任であると思いますけれども、その点は次官、いかがでしょうか。
#223
○政府委員(小澤太郎君) ただいま局長から答弁いたしましたように、一面、環境庁におきましては、この光化学スモッグの問題、この問題の根本的なものの究明に努力をいたしておる。これは環境庁が責任をもってやらなければならぬ仕事でございます。一面、各自治体におきましても、同様な調査もしながら、なおかつ多数の住民の健康を直接責任を持っておるところでございますから、あれこれといろいろと具体的な問題をあみ出しては実行しておる。このことにつきましては私ども深く敬意を表しておりまして、その一つ一つが実効があがるようにということで、私ども、自治体に対しましては、せっかく考案された事柄についてはこれを積極的に使っていただくとか、あるいはその扱いの指導等についてはやっておるつもりでございます。
 ただ御承知のとおり、すべてが完全無欠ではございませんので、ですから、その各地方自治体が積極的にやっておられますことを積極的にわれわれも支持すると同時に、なお欠陥があるところについては、ともどもに研究をしていきたい。そして具体策も求めていきたい。一つには、根本的な問題の解明と取り組む。同時に、一つには、試行錯誤的なものになるかもしれませんけれども、具体的に取り組んでいきたい、地方自治体のそのような努力に対しましては敬意を表するとともに、これをバックアップしたいと、こう思って思っております。
 たとえば、先生お話しにならないのでありますが、この触媒式の、自動車の排気ガスを減少するという装置を東京都が考えまして、それを取りつけることについて奨励をいたしておりますが、私どももこの点については賛成でございます。現に私の自動車もつけております。そして、この実際の実情がどうであるか。いろいろ欠陥もまだあるようであります。ことに耐久力の問題など、これから解決すべき問題がたくさんございます。そういう意味で、積極的に私の役所ではこれを取りつけまして、と同時に、このことをやるように、関係方面にも奨励をいたしておるような次第でございまして、決して、東京都と環境庁とが足並みがそろわないわけではございません。しかし、おのずから中央の役所としてやるべきことと、自治体でやるべきことと、自然にそのようなニュアンスの違いがあるということは、これは事実でございますが、自治体をさらに私たちはバックアップしていこう、こういう気持ちでありますことはひとつ御理解いただきたいと思います。
#224
○加藤進君 それでは具体的にお尋ねしますけれども、先ごろ、四月二十七日付で東京都から大石環境庁長官に対して「自動車排気ガス減少装置の取付け要請について」という要請文書が出ているはずでございます。これに対して環境庁はどのようにお答えになっておるのでしょうか。
 その内容の全般を申し上げますことはできませんけれども、とりわけ、光化学スモッグの有力な原因である自動車排気ガスを減少させるための装置、いま次官の言われましたアフターバーナーでございますけれども、この取りつけについて、政府の指導強化とその法制化を要求しているというのが、主たる内容になっておると思います。いま東京都がアフターバーナーを一生懸命取りつけようとして、そのためのいわば条例の改正までやって実施に乗り出しておるわけでございますけれども、残念ながらそのアフターバーナーの取りつけの義務制がない、法的裏づけがないために、この効果が十分に発揮できないというのが、東京都の苦しみのもとになっていると思います。この点について環境庁は、それならそれで、それの援助について十分国として配慮しようというような立場でこれに対するお答えをされたかどうか。お聞きしたいと思います。
#225
○政府委員(山形操六君) その書類を持ちまして東京都の公害局長が私のところへ参りましたので、十分懇談をいたし、趣旨を了承いたしました。ただ、まだ書類で正式に回答をしておりませんが、御指摘の点に関しましては、十分話し合いはついておるものと私は承知しております。
 その一、二を申しますと、先ほど政務次官からお話がございましたとおり、私どもはこのアフターバーナーの取りつけを否定しておるのでは決してございません。東京都の成績の出るのを見ておるわけでございます。と同時に、私どもの環境庁自身もテストをやっております。ただ御承知のとおり、これらの触媒には寿命がございますので、その寿命をこえてそのままつけておったのでは、もっとひどいガスを出してしまうのであります。したがって、この装置に関しましてはまた、そう言うとあれですが、メーカーが、大きいメーカーより中小企業が多いものですから、各社の製品の耐久性というものについての比較検討を、東京都自身としてやっておる最中でございます。一応のテストが来月中に出るものですから、この六月の東京都の最終の、たとえば一万キロという目標値に達した場合の各種のデータを見ながら、私どもさらに判断をしようということで話し合っておる最中でございます。
 ことに、法制化ということになりますと、これはやはり取りかえの問題等がございますし、ユーザーの判断でなかなか交換しにくい問題もございますし、タクシーの使用距離数の場合においては非常に寿命が縮まってしまう問題もございますので、本来の自動車排出ガスの規制の問題は、先ほど言いましたマスキー法案をもとにして私どもいま規制を考えておりますので、このアフターバーナーだけの問題だけでなしに、根本的な規制はどうしても加えていかなければなりません。アフターバーナーをつけることが少しでもよくなるという先生の御趣旨は、私は了承をするのでございますが、これを東京都全部、全国的にということになりますと、一、二の検討問題がまだ解決しておりませんので、それらを十分観察しました結果、全国的に指導する考えでございます。
#226
○加藤進君 アフターバーナーの技術的な開発とか改善とかいうことについては、おっしゃるようないろいろな問題があるかとも私思います。性能とか耐久力についてもいろいろ問題もあるでしょう。しかし、そういう問題はあるとしても、その問題についてさえ都が努力していることに対して、環境庁やあるいは政府関係機関が積極的に技術上の援助、行政上の援助を与える、指導を与えるというのが国の責任である、こういうふうに私は考えておりますが、その点はいかがでしょうか。
#227
○政府委員(小澤太郎君) まことにそのとおりであります。ただし、環境庁といたしまして全国的に法制化をしてこれを強制するという段階まで、残念ながら現在のアフターバーナーの機能が十分でないということは事実でございます。
 現に私の車もつけておりまして、ずっと観察いたしております。私自身が、そのつけたときと現在との能率の問題なども聞いております。ですから、このアフターバーナーのやり方については、その方法については私はこの問題を解明する一つの有力な手段だと思います。思いますが、その構造なりあるいは材質なりその他のものについては、なお検討を要するものがたくさんある。ことに、いま申しましたように耐久力の問題は、これはぜひとも解決しなければ、強制しましても実際使えないということでは困る、こういう点もございますから、法制化するというところまではいっておりませんが、しかし一つのアイデアであり、そしてまた有力な方式であるということについては、私どもも十分な認識を持っております。
 この意味で、この方式がさらに改善され、そして、やがてはマスキー法と大体同じような規制を、私どもも昭和五十年、五十一年にはやりたいと思っておりますから、これに呼応してこういうような設備が進むことは最も望ましいことでございますので、奨励することについてはやぶさかでございません。これをじゃまするようなことはもちろん考えておりません。そういう意味でひとつ御理解をいただきたいと思います。
#228
○加藤進君 最後に一問だけ。
 いま東京都二十三区に動いている自動車が、二百三十万台あるそうですね。このうち、千八百CCのガソリン自動車と千五百CCのLPG自動車を合わせて、二十五万台になるそうでございます。ですから大体一割。この二十五万台にとりあえず減少装置をつけたい、相当の効果をあげることができるというのが東京都の見解だと思います。そしてまた、その見解を裏づけるためのさまざまな実験や研究は、それなりにやられておることも私は存じております。これは環境庁もよくお読みいただいておると思いますけれども、私は、もしここでいろいろな問題点がある、あるいは科学上、技術上欠陥があるというなら、遠慮なく問題を提起して、この点は一緒に直そうじゃないかというような態度で当然のことながら行政指導を行なうべきだと私はまず考えます。そして、そのために、すでに先ほども次官がおっしゃいましたけれども、政府の各省庁の車にはこれを取りつけましょうということは、予算委員会におけるわが党の春日委員の質問にはっきりお答えになっておるわけでございますから、これは当然実施する、しかも効果があるからこそ実施されるというふうに私は理解して当然だと思っている。
 そこで、対象になる二十五万台の自動車に対して当然これにつけさせたいけれども、条例を改正しても、勧告以上のことはできない。こういうことで、ぜひつけてほしいがといって文書の依頼を出して、これに回答のあったのは一万五千九百台ということでございました。しかもそのうちで、ことし七月までに取りつけますとはっきりと答えられたのが九千五百台、すなわち回答のうちの六〇%、こういうところまでは回答を得ている。したがって、取りつけるという機運が大きく前進しつつある。しかし、残念ながら二十五万台のうちの九千五百台でございますから、いわば二十五、六分の一にしか当たらない。これを、何とか大気汚染を激化させないために、光化学スモッグの発生源を阻止するために、何とか有効なものにしていきたいというのが東京都の私は悲願だと思います。
 この点について、いま私が申し上げましたのは、東京都の言われるように、できればこれを法的に規制をして、取りつけを義務づけするということが、一番手近な有効な方法ではあろうということを私は申し上げたわけでございますけれども、もし法制化ではなしに、それにかわるような適切な、少なくとも二百三十万台に及ぶような自動車の中で、その一割に当たるものにこのような装置のつけ得るような措置が、行政的にもさまざまな方法において政府にできるというなら、そのできる一つ一つを、ひとつぜひとも実施に踏み切っていただきたい。このことを、私は特に次官に要望したいと思いますけれども、そのような点で御努力をいただけるということがお約束いただけるでしょうか。
#229
○政府委員(小澤太郎君) 先ほど私が申し上げましたように、私自身の車につけておりまして、私も絶えずチェックをいたしております。ところが、ここで数字を申し上げるのは遠慮いたしますが、義務づける、法制化するというような数字は、遺憾ながら出ておりません。いわゆる耐久力、最初はいいのですけれども、ぐっと落ちるわけですね。こういう状態のものを法制的に義務づけるということについては、政府といたしましてはやはり慎重にならざるを得ない現状です。ただ、これをつけたいという人が、いまお話のように相当出てきている。その人たちに、やってごらんなさいというような勧奨をされる、都がされる、私どももみずからやっておりますが、これを奨励するということについては、私はいささかも反対ではございません。そういうような意味で、いかにも環境庁が慎重に過ぎ、ティミッドだというような感じを受けられるかもしれませんけれども、私どもやはり行政の責任を持つ者といたしましては、より完ぺきなものをつくるという努力と並行してこれの採用をお願いする、こういうことでいいのじゃないかと。
 ただ私ども、ほんとうに行政をやっておりますと、いわゆる試行錯誤的なことを一般の市民に押しつけるということは、これまた私ども行政の責任にある者の立場としていかがかというような、一種の何と申しますか、慎重といいますか反省といいますか、そういう気分もあることは事実でございます。ですから勇敢に、二十何万台やるようにしろというようなところまでは、いましばらく、少し時間がほしい、こういうような状態にあることを申し添えておきたいと思います。
#230
○加藤進君 最後に一言。
 お聞きするところによりますと、光化学スモッグはいよいよシーズンに入ったと。今後どのような状態になってくるかもはかりがたいような事態だけれども、しかし東京都は、それなりにアフターバーナーの備えつけ等々の努力を重ねておる。ところが政府のほうでは、ではこれにかわるべき、さらによりよき方法がこういうふうにあるではないか、これを一緒にやろうではないかというような案をさえ持たずに、いまや光化学スモッグの一番大きな発生源である自動車の排気ガスの規制について、まだまだ十分な成案を得ておらないから積極的な対策や積極的施策がとれない、これが現状になっておるのではないかと私は判断いたします。こういう点につきましては、今後も論議を重ねていかなければならぬ問題でございますけれども、事柄は猶予しがたいような重大な問題にいよいよなってきているという認識を、さらに強く持っていただきまして、この問題についての積極的な政府の解決策と、また、そのための行政指導を強化されるように心から期待いたしまして、私の質問を終わります。
#231
○政府委員(小澤太郎君) 私ども、いま先生のおっしゃるとおり、この問題は一日もゆるがせにすべからざる問題であり、至急に速急に、しかも徹底的な措置をしなければならぬ、こういうことで進んでおるということだけはひとつ御理解をいただきたいと思います。そのつもりでおります。
#232
○理事(矢野登君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会をいたします。
   午後六時二十六分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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