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1971/06/09 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第9号
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1971/06/09 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第9号

#1
第068回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第9号
昭和四十七年六月九日(金曜日)
   午後三時二分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         加藤シヅエ君
    理 事
                金井 元彦君
                矢野  登君
                内田 善利君
    委 員
                菅野 儀作君
                田口長治郎君
                寺本 広作君
                渡辺一太郎君
               茜ケ久保重光君
                占部 秀男君
   衆議院議員
       公害対策並びに
       環境保全特別委
       員長       田中 武夫君
       公害対策並びに
       環境保全特別委
       員長代理     林  義郎君
       公害対策並びに
       環境保全特別委
       員長代理     島本 虎三君
   国務大臣
       国 務 大 臣  大石 武一君
   政府委員
       環境庁企画調整
       局長       船後 正道君
   説明員
       法務省民事局参
       事官       古館 清吾君
       農林省農政局参
       事官       川田 則雄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○公害及び環境保全対策樹立に関する調査
 (公害及び環境保全対策樹立に関する件)
○大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改
 正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(加藤シヅエ君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。
 大石長官にはストックホルムから昨日お帰りだったそうでございまして、いろいろ御苦労さまでございました。
 公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。
 質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
#3
○茜ケ久保重光君 大石環境庁長官は、いま委員長がおっしゃったように、ただいまスウェーデンの首都ストックホルムで開催中の国連人間環境会議に出席されまして、たいへん日本のために気を吐いてみえたようで、まことに御苦労さまでした。長官の所信の表明が、参加した世界の各代表はもちろん、参加しない多くの国の人たちも非常に高く評価をされているようでありまして、御同慶に存じます。
 この際、国連人間環境会議に出席された長官の率直な御感想を最初にひとつお伺いをして、また、それに対して若干のお尋ねや御希望を申し上げたいと、こう思うのであります。この際いろいろと御抱負もあろうかと思うけれども、端的な御所感をひとつ承りたい、こう思うのであります。
#4
○国務大臣(大石武一君) ゆうべ、会議半ばにして帰ってまいりました。いま茜ヶ久保委員の御質問でございますので、報告をかねまして、少しその内容のことをお話し申し上げたいと思います。
 御承知のように、この会議は今月の五日から十六日まであるわけでございます。私は、もちろん初めは最後までおる予定でおったわけでございますが、残念ながら、私どもの用意しております二つの法案が審議中でございましたのと、また、もう一つはまだ審議の段階に至らない、未提出の段階でございましたので、何とかしてこの法律を片づけることも、非常に日本の政治上の問題として大切だと考えまして、その審議のため、実は会議半ばにしてゆうべ帰ってまいったわけでございます。
 この国連の人間環境会議は、すでに二年半以上前からいろいろと準備が進められておりました。その間に四回の準備委員会が開かれまして、さらにその間に数回の、いわゆる政府間作業部会というものにさらにその下の部会がございまして、具体的ないろいろなこの会議で提案すべき議題について、意見を重ねてまいったわけでございます。その結果、約二百四十の項目が六つの部会に分かれまして、そしていろんな環境保全のための新しい会議をすることになったわけでございます。わが国は全部の委員会、全部の作業部会に欠かさず出席をいたしました。これはアメリカと日本と、ほかにもう二、三カ国しかございません。その中心となって努力してまいりました。その結果もございましょうし、もう一つは、やはり日本国民のいろいろな長い間の努力というものが実ったものと思いますが、この会議に参りまして一番先の感じは、やはり日本が国連人間環境会議の一つの中心であるということをはっきりと自覚いたしました。もちろんアメリカも一つの大きなこれは力でありますけれども、アメリカとともに日本がやはり大きな中心勢力と申しますか、中心的な推進力を持った国であるということを認識したわけでございます。
 ただ残念ながら、御承知のように第三回の準備委員会まで熱心に出席をして討議を進めてきたソ連が、東独のこの会議に出席できないということに関連いたしまして、その義理だてをしたのだと思います、欠席をすることになりました。その結果いわゆるソ連圏の、共産圏の諸国がだいぶ脱落いたしまして、それで今度の会議には百十二カ国が集まったことになったわけであります。私はその前にソ連に参りまして、ソ連の科学・技術国家委員会並びに農業省の幹部にお目にかかりまして、渡り鳥の相談を申し上げたのでありますが、その節、環境会議の話になりますと、自分らとしても出席したかった、いまでも出席したいと思っておる、そのために自分らとしては準備委員会にずっと出席、努力した、しかし御承知のような政治情勢でわれわれは出席しないことになったのだということを言っておりました。ですから、これを出席させるまでに導き得なかったことに非常に、手落ちとは言いませんけれども、むずかしい政治問題があったわけでございます。
 私は三十一日に立ちまして、一日にソ連の農業省並びに科学・技術国家委員会に出てまいりまして、渡り鳥の協定を結びたいという申し入れをすることで出かけてまいりました。幸いに一日の午前には、農業省の農業次官のペトロフ氏、ちょうど農業大臣が出張中でおらないということで、私から一方的に一日に会いたいと申し入れたものですから、ペトロフ氏並びに自然保護局長その他の方が会ってくれました。ことしはアメリカと日本との間に、初めて海を隔てた国としての渡り鳥保護条約が結べた、今度はぜひソ連ともそのような条約を結びたい、ことにソ連からは一番多くの、代表的な白鳥とかガンとかカモ類がたくさん飛んでくる、ぜひお互いの国でお互いに生息の問題を調査したり、研究したり、情報交換したり、いろんなことをして、これらの鳥類を保護いたしたいということを申し述べましたところが、非常に向こうでも乗り気になりまして、いろんな話の結果、喜んでその条約は結ぼう、しかし条約を結ぶには時間がかかるが、どのような形にしたらいいか、おまえのほうで案をつくって持ってきたらどうか、同時に、その前に情報交換や専門家の交換をやったらどうかという、まことに積極的な話がございました。
 ことに自然保護局長というのが、大きな男ですけれども、大きな地図を広げて見せまして、たとえばいろんな渡り鳥が夏にはどこへ飛んでいくか、みな描いてありまして、日本に来るのは、東のほうの五つの州がありますが、カムチャッカとか、ここの州からこう飛んでくるというようなことをいろいろ説明をしてくれまして、非常に話が進みました。ぜひそうしよう、どこに連絡をしたらいいかと言うと、もちろん農業省だということをはっきり言ってくれまして、非常に話はうまく進みました。
 午後一時からは、今度は科学・技術国家委員会のほうに出てまいりました。この科学・技術国家委員会の議長がキリリンという人でありまして、この人は副首相の一人であります。この日はちょうど最高閣僚会議と申しますか、クレムリンの中であるので出席できないので、副議長のグビシアニという人、これはなかなかスマートな人で、コスイギン首相のお婿さんでございますが、この人が中心になりましていろいろ交渉いたしましたが、これまた話が進みまして、同じように情報の交換をしようと。そればかりじゃなく、おまえのほうで専門家と事務屋をもっとよこしたらどうか、そうしたらさっそく仕事が進むのではないかという話になりまして、非常に好都合でございました。
 それで、おまえのことをゆっくり待遇したいけれども、おまえは今晩モスコーを離れてレニングラードに行くそうだからしようがないけれども、一ぺんソ連を全部、シベリアでも何でも全部おまえに見てもらう、いろんなこの国の自然環境、そういうことについておまえに見てもらいたいと思うから、招待するからぜひ来てくれというけっこうな招待をいただきまして、そして話が進んでまいったのでございます。その節に、いま申しましたように、国連人間環境会議に出席できないで残念であるという話と、それから渡り鳥の保護条約については日ソ間にこのような基本的な合意ができたのだから、ぜひおまえは環境会議でそのことを伝達をしてくれという頼みを受けまして、そこで私は演説の内容にそれを加えたわけでございます。
 そういうことで参りましたが、鯨の問題につきましては、私はあえて話をしようと思いませんでした。というのは、あまりたくさんの議題を持ってまいりますと焦点がぼけますので、私は渡り鳥だけしたいと思って、持ってまいりませんでしたが、たまたま一言だけ鯨の問題が出ましたが、向こうでは、われわれは行かないから、日本はしっかりがんばってくれと激励をされたわけでございます。鯨をとることにがんばろうという、これはソ連の意見でございます。
 それから向こうの招待で一日半、二晩ほどレニングラードで休養いたしまして、休養といいましても、あっちこっち引っぱり回されまして、ほんとうにくたくたに疲れましたけれども、休養でございます。そういうことで、三日のお昼過ぎにストックホルムに到着いたしましたが、ちょうどソビエトもそれからスウェーデンも初夏でございまして、一番いい気候でありました。それで、ことにモスコー、レニングラードにはリラの花ですね、ライラックが一ぱい咲いておって、大きい木で、白とか赤とか紫とか黄とか一ぱい咲いていました。非常によかったです。それから非常に気がつきましたのは、菩提樹がずっと大きな並木をなしておりまして、非常にすばらしい様子でございました。
 三日の日にスウェーデンに参りまして、それから日本記者団並びに外国記者団との会見がございまして、そのあと、夕刻、集まった者が全体で結団式を行ないまして、その会議の態勢を整えたわけでございます。
 それで外国人記者団から、かなり手きびしい質問がございました。特に日本の実態は、これは日本は公害で悩んでいる国だ、公害病を出した国だという宣伝が多く届いておりますから、実態がわかっておりませんから、かなり手きびしい質問が一時間ほどございました。私はできるだけ懇切丁寧に、日本の実態並びにこれに対する対策なり将来のあり方というものにつきましてお話をいたしまして、相当理解をいただいたことと思います。ただ、一人だけ、グンナーソンというスウェーデンの記者がおりました。この人にはしつっこくいろいろなことで食い下がられまして、しまいには議論みたいな形になりまして、おまえのところで国立公害研究所をつくって水俣病を研究するなんて、そんなことを言ったって、国立研究所を建てる予算は五百ドルしかないじゃないか、五百ドルで何ができるのだという議論がございました。私は、五百ドルなんて、そんなお金では日本でも少ない、そんな金では建つはずがないじゃないか、もっと調べてこいということで、まあ、そんなことがありましたが、概して、日本の公害に対するある程度の、ごくわずかでしょうけれども、理解をいただいたと思います。
 四日は、日曜日でありましたけれども、ストロング事務局長にぜひ会って、環境基金の拠出問題について相談しなければなりません。日本政府から、あまり出すなという訓令をいただいておりますので、努力してまいりました。アメリカは四〇%出すのだから、日本は二〇%ぜひ出してほしいという要求がありましたが、一〇%は責任を持って約束するが、どうだろうかと言ったら、それでもけっこうだということになりました。事実は、アメリカは四〇%出しますが、ほかに一〇%出すのは日本だけです。それをはっきり約束したのは日本だけであります。したがいまして、このことによりまして、会議における大きな主導権が日本に移ったような気がいたします。われわれははっきり言いました。その次の日の私の演説にも明確に言いましたので、議長も皆も大喜びで、非常に感謝してくれましたし、そのことによって、西ドイツは八%しか出さないと言っておったのが変わる方向になったらしいとか、イギリスのウォーカー代表は、自分は国から五%と言われてきたが、とてもこれでは恥ずかしくて金額は言えないということで言わなかったとか、いろいろの話がございます。
 そういうことで、いよいよ五日の開会式がオペラ劇場でございました。各国の代表が一人ずつ出てまいりまして開会式がございました。これは別にとりたてて言うことはありません。ただ、ここに国王が見えられました。私はあとで聞きましたら九十四歳の国王です。いかにもお元気そうで、正直なところ私は驚きました。もう一つ、ビルギット・ニルソンという有名なソプラノ歌手がおります。ことにワグナーの一番得意な歌手でございます。これがスウェーデン出身ということで、非常にたくさん四つほど歌を歌ってくれました。北欧の歌とか、ヴェルティの「運命の力」という歌劇の中の「平和よ平和よ」というアリアを歌ってくれましたが、これは非常にすばらしくて、私はこのほうが楽しかったわけでございます。
 それで五日は、午後から形式どおりの議長選挙その他がございました。そして五時過ぎからイギリスのウォーカー環境大臣にお目にかかりまして、実は鯨の問題がむずかしいので、この人間環境会議ではこの話をあまりやらないで、そして今月の下旬にロンドンで開かれるIWC、インターナショナル・ホエーリング・コンベンションというのがございます。これが一番鯨の問題についての拘束力を持つ、一つの権威ある委員会でございますが、そこできめたらよかろう、それにはイギリスが仲に立って世話をしてもらいたいということで、ウォーカー氏にお目にかかりましていろいろ懇談をいたしました。
 その節いろいろお互いの国の政府の公害対策についての話を聞いたわけでございますが、この人の話は、ちょっとわれわれと違いまして、農林省だか何だか三つくらい兼ねております。ですから予算を聞きますと、大体日本でいえば三兆円くらいの話をする。とにかく途方もない大きな予算です。環境庁の八十億とか九十億とは雲泥の差の予算であります。これは聞いてみますと、農林省とかその他いろいろな役所の全部の予算を入れての話でありますが、これはお聞きしただけでございます。それで、他に自動車の公害の問題が出まして、わが国でいまガソリンの中の鉛をやめさせるようにしているわけだが日本ではどうかということなので、日本は一応四十八年度中までには全部鉛はなくすということで進めておると言いましたら、それはほんとうにきめたのかと言うので、ちゃんときめて、その方針で進めていると言ったら、どうして企業を納得させられたのかと、ふしぎな顔をしておりました。ですから、外国でも企業を納得させるのは非常にむずかしいのだという感じを受けたわけでございます。
 いよいよ六日の日から代表演説が始まりました。日本は、環境庁が三番目に申し込んでくれましたが、これは一番いいあれだったのです。一回目はイランが話しましたが、十時から始まりましたので、まだ人が集まらず、ぼつらぼつら入ってくる状態で、話しづらかったと思います。その次にはカナダが話しました。カナダの話の中ごろには、大体各国代表の大部分が集まって一ぱいになったということで、非常によかった。カナダの代表が先に、五年後の一九七七年にはカナダで第二回目の環境会議をやることを要望するということを、はっきり打ち出したわけでございます。
 そこで三番目に私が立ってあいさつをしまして、御承知かと思いますが、いろいろと日本の長い間の自然を愛する国民性、明治維新から今日までの日本の、国の経済発展の方向を話しました。そして、どういうことでまず公害が発生したかというようなこと、そしてどのようないま公害の実態であるかということを率直に話しました。これを話しませんと、いろいろ疑惑の目で見られますので、率直に話しました。そして政府も責任を感じておる、一生懸命いま努力しておる、この努力は、これこれこういうことを言っているのだという、いまのいろいろな公害に対する対策なり自然保護の話をいたしました。時間が二十分しかありませんから詳しい話はできませんが、将来はこうやるんだという、いろいろな見通しを話しました。
 それからさらに、今後国連を中心としてこういうことをやってもらいたいという、三つ四つの提案をいたしました。
 その提案は、人間環境宣言、これを高く評価するからぜひ採択したいということと、環境基金には一〇%出すという話をしました。
 それから、海洋汚染についてはすでにいろいろな具体的なことをやって、少なくともわれわれは、日本の近海に油の出ないようなものにしたい。それにはバラスト水とか廃油、ああいうものを処理する義務とか、あるいは積み出し港における廃油処理施設とか、いろんなことをやらなければならぬということを提案いたしましたし、その他、渡り鳥条約についても今後いろいろな国と結んでいきたいということも話しました。それから、六月五日から一週間を環境週間ときめまして、毎年世界でこの環境週間を中心として、環境保全のためのいろいろな宣伝なり施策をするということで、これを提唱いたしました。
 それから南北問題についても、われわれはぜひとも後進国をできるだけ早く開発、繁栄に導いて、お互いに民族が、いろんな生活のしかたがありますから特色は生かさなければなりませんが、文化的にも経済的にもあまり差のないような、同じような生活を持たなければ世界の平和はない。そのように、できるだけ開発途上国の手を引っ張って、そして開発、繁栄に協力しなければならぬ。ただし、その場合に一番注意しなければならないことは、日本の歩んだ道を歩んではいけない、これを参考にして、ぜひとも公害のない繁栄をしてもらいたいし、繁栄に手をかす先進国は、そのような道を歩ませないように配慮をしなければならぬということを主張いたしました。
 そういう話をして、最後に実は日本で第二回の会議を開きたいと言いたかったのでありますが、これはいろいろな政府からの注文もありましたので、二回目もやる必要がある、ぜひ二回目は、そのような必要があるときには、日本でいつでもあらゆる協力をする準備があるというような話をして演説を終わりまして、その日はうまく済みました。
 お昼からは、アメリカのトレイン代表と一緒に食事をしながら、約三回にわたって鯨の問題についていろいろと懇談いたしました。御承知のようにトレイン氏は、アメリカが中心となって、十年間いわゆる商業的捕鯨をやってはいけないという禁止の決議案を出しております。これについては、そのような禁止案が通過いたしますと、これは必ずしも強制力はありませんけれども、やはり一つのこれは国際的なモラルになりますから、それに違反して日本が鯨をとりにいくことは、世界的に非常に非難されることになります。そういうことで、私ども将来はそれに賛成するが、いまの日本の現状からいえばそれはどうしてもできないので、もう少し理解を持って、自然の保護をしながら商業捕鯨を続けるように、しかしそれがむずかしい場合にはどうするか、具体的ないろいろな話をいたしました。ところがトレイン氏は、よく日本の事情もわかるし同意をしたい面もある、しかし自分としても、アメリカの国会の上下両院で十年禁止、モラトリアムの決議をされている、そういうものを背にしていては、自分の意思どおりにかってに動くわけにいかぬということで、お互いの立場を理解し合うということで話し合ってきたわけです。それを終わりまして、七日の朝立ちまして、きのう東京へ帰ったということでございます。
 非常に中途半ぱで、ろくな仕事もできなかったわけでありますけれども、今後むずかしい問題は大体鯨の問題だけで、海洋投棄につきましても、大体わが国の方針は、世界の中において協調国になっておりますので、いろいろ問題があります場合には、向こうからすぐ連絡があることになっておりますけれども、そのようなことでしばらく様子を見てまいりたいと思います。
#5
○茜ケ久保重光君 御苦労さまでございました。だいぶいろいろお聞きしたいことはありますけれども、次の法案の審議の時間がなくなりますから、一、二点お聞きしたいと思うのです。
 その一つは、あなたは御出発前には、第二回の会議をぜひ日本でやりたいと、それも新聞等に発表になったようでございましたが、向こうでの演説では、いまおっしゃったように、何か二回目をカナダが先に言ったからですか、そういう点についてはできるだけの協力をするという形で発言されたようであります。きのう空港での記者会見では、外務省のサゼッションによって、訓令でやめられたというようなことをおっしゃっておりますが、こういうことははっきりしてもらわないと困るので、あなたの出発当時の意思が変わったいきさつ、そこをはっきりしてもらいたいと思います。
#6
○国務大臣(大石武一君) 実は、第二回目の国連環境会議を開くということは、まだきまっておりません。しかしおそらく、この一回きりでやめるというのは惜しいと思います。ですから、必ず二回目を開こうという気運になりまして、そのようなことになると思うのであります。そのような場合には、ぜひ二回目は日本でやりたいという希望で、私もそういうことを願っておったわけであります。
 そのことについて、私は前から原稿をつくっておりましたので、そういう意向でおりましたが、いろいろと各方面で、ことに閣内でも話してみますと、必ずしも日本が積極的に開こうと主張することに賛成でない方もあります。そこでいろいろ相談しました結果、立つ直前になりまして、大蔵大臣、外務大臣と相談いたしましたところが、日本でまだ二回目を開くときまっていないのだから、何でもかんでも日本に、無理無理持ってくるような、引っぱり込むような話はよしなさいということでございます。私はそのとおりだと。ですから、必要かどうかわからないけれども、二回目をやろうという話になった場合に、ではこういう話をしたらどうですかというので、二回目の会議を開く必要性が高まってそのような方向にきまった場合には、日本としてはホスト国となる準備は十分ございますと、それならどうですか、それなら外務大臣も大蔵大臣もよろしいということになったのです。そういうことで行ったわけです。
 その方針がきまりましたから、閣内で別にきめないで、へたにきめて、中で反対だと言う者が出ますと閣内不統一だといわれますので、それでいいということにして出かけて行ったわけでございますけれども、ところが、ごちゃごちゃ訓令がときどきくるのです。ここだけの話ですけれども、それはおそらくは大臣なんてあまり通さないで、下のほうの課長とか課長補佐とかが適当なことを、ぱっぱっと思いつきを言ってよこすことがあるんだろうと思う、そういうことがあるんだろうと思うのです。調べて、悪かったらしかってやろうと思いますけれども、そういうようなことで、一応は訓令で来ますから、どうしたらいいか――。ところが、それが土曜の夜中から日曜にかかりまして、こちらとうまく連絡がつきにくかった。それでいろいろ相談しまして、まあせっかくそう言ってくるなら、少し表現を変えればいいからという大使の連中の知恵によりまして、ホスト国の用意があるというのを、さらに会議を開く必要性が高まったならば、次の会議の開催にあたってはわれわれは全面的に協力を惜しむものではないと、英語の表現ではサポート・アンド・コオペレイションということを入れましたが、惜しむものではないという表現に変えたのであります。
 そういうことで、それほど大きな変化はありませんが、たまたまカナダが私の前に、次はおれの国で開くと言ったものですから、日本が、それならけっこう、それに協力しようというような形にも見えますけれども、現実には、おそらくこの会議中にはどこで開こうということはきまらないと思います。このスウェーデンにきまりましたのも、この人間環境会議を開くということがきまった一年ぐらいあとで、スウェーデンということにきまったわけでございますので、おそらくどこで開くかということも来年あたりだろうと思います。ところが、どこが立候補せられましても、日本という国は大きな中心勢力であって、日本を無視して、なかなかよそで開き得ないと思います。ですから、そういうことで来年あたりはもう少し、新しい内閣にもなりましょうし、どなたが環境庁長官になるかわかりませんけれども、いろんなみなさんの新しい理解をもって、そうして来年あたりは日本で開くような方向にいくように日本は努力したほうが、私は、日本の実態を世界に見せることもできますし、日本の政治ということもわかりますし、また日本のような国が中心になれば、非常に地球の環境保全に役立つと思います。そういうことで、私は当然そうきまるのじゃないかと思います。
 いま日本の財界とか、そういう一部で、へたに日本でやったら日本の恥さらしになるのだ、醜態を世界に示すことになるという意見がありますけれども、そういうことはないと思うのです。なるほど日本という国は、確かにひどい公害がたくさん起こっておりますけれども、しかし、このような立地条件の中で、これほど経済を拡大をして、これほど人が密集しておる中で、このような公害を押えていく努力というものはたいしたものだと思うのです。おそらく総合的な、きめのこまかさとか熱心さにおいては、私は世界のどこにも負けないのが日本のいまの公害対策だと思います。ただ残念ながら、あんまり長い間の積もり積もった公害が多過ぎるのと、このような非常に立地条件がひどいために、急に効果がまだあらわれ得ないだけでございまして、おそらくいまから三、四年たてば、相当に効果があらわれてくるだろうと思います。そういうことで、この努力、この内容というものを見せたならば、私は決して軽べつされるどころか、尊敬されるのじゃないかと思いますので、私は、自信を持って二回目の会議は日本で招集したほうがよかろうと、こう考えるわけでございます。
#7
○内田善利君 それでは、私も関連して一言聞きたいと思いますが、非常に御苦労さまでございました。あの中で、戦争こそ最大の環境破壊であるということが新聞に出ておりましたが、このような問題はどのように扱われたのか、お聞きしたいと思います。
 それと、環境基金一〇%というのは、金額にしますと日本円で幾らになりますか。
#8
○国務大臣(大石武一君) いろいろな会議の一番中心の問題は、人間環境の宣言ですね、それが問題になります。これは人間の環境権を確立しようということで、非常にりっぱなものでありますけれども、まだこれは固まっておらない。たとえばわれわれは、核実験その他を全部廃止する、そのようなことを提唱しておりますけれども、これも、核実験をやっている国からは猛烈な反対意見が出てまとまりませんで、一応、大量殺戮兵器ですか、の禁止というようなことで表現されておりますが、しかしいろいろな意見があって必ずしもまとまっておりませんが、人間環境宣言というのは一番問題になっているわけです。それを最後の六月十六日に議題として、本会議で採択するようになるわけですが、いまのところ、やはり各国から問題が出そうです。核実験をやらなければならないという国も、おそらく中国はそう言うのではなかろうかと心配しております。その他いろいろなことがあるわけです。ですからまだきまっておりませんが、人間環境宣言は、大体いままで政府間作業部会できめて、そういうことをそっとしておいて、議論しないで通そうという空気が強いわけでありますから、そういう方向に進んでいくのじゃないかと思います。
 それから一〇%と申しますと、五年間で一億ドルでありますから、日本としては一千万ドル、五年間に平均すれば、一年に二百万ドルずつ出すわけでございます。日本の国家財政にはそうたいして影響はありませんので、これがわずか八%――二%というのは二十万ドルですから、たった二十万ドル多いか少ないかによって、国家財政にあまり影響がないのに、それで主導権が取れるか取れないかということになると、大きな問題だと思いますので、思い切ってやってまいりました。幸い大蔵大臣も納得してくれましたので、よかった、こう思う次第でございます。
#9
○委員長(加藤シヅエ君) 他に御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#10
○委員長(加藤シヅエ君) 大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。大石環境庁長官。
#11
○国務大臣(大石武一君) ただいま議題となりました大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 わが国の環境問題は、経済の急速な拡大と都市化の進行の過程で、深刻な社会問題となっているところであります。
 このため、政府におきましては、先般来の国会で体系的整備が行なわれた公害関係諸法に従い、公害規制の強化を初めとして、各般の施策を強力に進めてきたところであります。
 しかしながら、公害により被害を受けた人々に対しては、すでに行なわれている行政上の救済措置に加えて、事業者の民事上の責任を強化して、私法的な面においても、一そう円滑な救済ができるような措置を講ずることが強く要請されているところであります。
 今回の改正法案は、このような要請に対処して、人の健康に有害な一定の物質が大気中、または水域等に排出されたことによって、人の健康にかかわる被害が生じた場合における事業者の無過失損害賠償責任について定めることにより、公害によって被害を受けた人々の保護の徹底をはかろうとするものであります。
 以下、改正法案のおもな内容について御説明申し上げます。
 第一に、工場または事業場における事業活動に伴って一定の有害な物質が大気中に排出されたこと、または一定の有害な物質を含む汚水等が排出されたことにより人の生命または身体を害したときは、当該排出にかかる事業者は、故意または過失がない場合であっても、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずることといたしております。
 この場合、有害な物質として無過失責任の対象となる物質は、大気汚染防止法及び水質汚濁防止法において人の健康に被害が生ずるおそれがある物質として規制の対象とされているもので、硫黄酸化物等複合汚染を常態とする物質をも含めることといたしております。
 第二に、損害が二以上の事業者の共同不法行為によって生じた場合において、その損害の原因となった程度が著しく小さい事業者については、裁判所が、その損害賠償の額を定めるについて、その事情をしんしゃくすることができる道を開くことといたしております。
 第三に、本法律は、その施行の日以後における有害な物質の排出による損害について適用することといたしております。
 以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
 なお、被害者の責めに帰すべき事由があったときの賠償のしんしゃく規定、経過措置及び損害賠償を補償する制度に関しましては、衆議院で諸修正が行なわれておりますので、あわせて御説明申し上げます。
#12
○委員長(加藤シヅエ君) この際、本案の衆議院における修正部分について、衆議院公害対策並びに環境保全特別委員長田中武夫代議士から説明を聴取いたします。
#13
○衆議院議員(田中武夫君) 内閣提出の大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案に対する衆議院修正の趣旨について御説明申し上げます。
 まず、修正の第一点は、損害賠償の責任及び額を定めるについての裁判所のしんしゃく規定中、被害者の責めに帰すべき事由があったときに関する部分を削り、天災その他不可抗力が競合した場合だけの規定とすることであります。
 被害者の責めに帰すべき事由の部分を削りましたのは、との種の問題は、民法の一般原則によって処理すれば足りるという意味であります。
 修正の第二点は、附則二項の経過措置に関するものであります。
 すなわち、原案が、新法施行前の排出による損害については、あげて従前の例によることとしているのを改め、新法は新法施行後に生ずる損害について適用する旨を明記するとともに、新たにただし書きを設け、新法施行後に生ずる損害であっても、事業者側においてそれが新法施行前の排出によるものであることを証明したときは、なお従前の例によることといたしました。
 この際、経過措置についてのこの修正点の意味を明確にしておくことが適当であると思います。
 まず、新法は新法施行後に生ずる損害について適用するという本文の意味は、公害の結果である損害についてはあくまで法律不遡及の原則を尊重するとともに、その原因である排出については、新法施行前の排出たると新法施行後の排出たるとを問わず、新法の適用を受けるという意味であります。
 この新法施行前の排出である場合にも新法の適用を受けるということは、わざわざ条文に書くまでもなく、条文全体の仕組みからして、解釈上当然の帰結であります。
 次に、ただし書きの規定は、たとえば新法施行前に有害物質の排出をとめたような場合を想定したのでありまして、このような場合は、原因行為が新法施行前のものであることは立証可能でありますので、事業者側においてそのことを立証すれば、従前の例、すなわち民法の一般原則に返るということを定めたものであります。
 修正の第三点は、政府は、公害にかかる健康被害者の救済に関し、その損害賠償を保障する制度について検討を加え、その結果に基づき、すみやかに必要な措置を講ずるものとする旨の規定を附則に追加したことであります。
 以上であります。
 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
#14
○委員長(加藤シヅエ君) これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
#15
○茜ケ久保重光君 どうも特別委員長さんに質問をしようと思ったのですが、所般の事情でやむを得ません。どうぞ、けっこうです。
 幾つかの質問をしたいと思うのでありますが、まず最初に長官に対しまして、長官としては、修正はされましたが、いわゆる無過失損害賠償責任体制の確立のため、この法案で長官としては御満足か、あるいは何か御不満がありますかどうか。この点について冒頭に、長官のひとつこの法案に対する御所信のほどを承りたいと思います。
#16
○国務大臣(大石武一君) これは政府が、私と同じ趣旨で出した法案でございますので、不満であるとは申しません。りっぱな案であると、自分では申し上げたいと思います。ただし、この法案の内容だけですべてが満足されるものではないと考えております。
 これは、この種の被害者を守るための法律としては、必要な最小限度のものにすぎないと考えております。たとえば損害の補償につきましても、この法律は人間の健康被害だけに限っております。しかし、これでは不十分であります。もっともっと広い、いろいろなほかの財産、生業、そういうものについても、当然これらの法律は将来及んでいかなければならないと思いますけれども、いまのところはこの程度でとどめたわけでございまして、近い将来にそう広げてまいることが絶対に必要だと存じます。ただ、新しい考え方を早く行政に打ち立てたい、もう一つは時間的な余裕、そのようないろいろなものを包含した法律になりますと、とても一年や二年ではなかなか出せません。そこで早くこれを出したいという気持ちから、取り急ぎ必要な最小限度のものに限ったわけでございます。したがいまして、これは完全なものではありませんけれども、必要な最小限度のものではあると考えておる次第でございます。
 なお、衆議院で修正をいただきましたが、修正は、けっこうな修正と喜んでおる次第でございます。
#17
○茜ケ久保重光君 まあ、長官としてはそれ以上のことは言えないと思うのであります。それは私もわかりますが、しかし、やはり完全無欠であるとはもちろんこれは言えない問題でありますし、長官自身もそれをお認めになっている問題であります。当然これは、今後時間をかけて完全なものに、修正なりというものは考えなくちゃならぬと思います。
 この努力は、私どもとすれば、長官が次の内閣の、さらに環境庁長官として御再任されんことを期待するものでありますけれども、私どもが期待してもなかなかのところいきませんが、そういった意味でも長官のひとつ次の内閣への再任を期待するわけでありますが、そうとは言いながら、この法案が、今度の法案としては大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案という形で出てまいりました。当初大石長官が取り組まれたときには、単独法としてお出しになりたい意向ではなかったかと思います。いわゆる無過失損害賠償法といったような単独法として、かなり強力にして内容の整ったものをお出しになる御意向であったと思うのでありますが、これがいつの間にかこういう形になってきたことは、いろいろな事情があったと思うんですが、差しつかえのない限りにおいて、単独法で出したいという御意向がこういう形になったことについて、ひとつ御説明を願えましたらばお聞きしたいと思います。
#18
○国務大臣(大石武一君) これは、私どもは初めから無過失賠償責任法という、いかにも単独法的な名前で呼んでおりますけれども、いまの、先ほど申しましたように必要最小限度のものでとどめた場合には、この二つの法律の改正で間に合うことになったわけでございます。
 単独法に将来はしたいと思います、いま申しましたいろいろなものを包含いたしまして総合的なものにいたしたいと思いますが、ただ、単独の法律をつくりますと、非常に時間がかかります。たとえば、この次にお願いいたします自然環境保全法案にいたしましても、とにかく一つの役所と折衝を重ね、四カ月かかってようやく不十分なままにいま調整ができたということでございまして、それが各役所にわたる大きな法案になりますと、これはとても半年や一年ではつくれません。これはほんとうにいまの制度では、法律案をつくるということはたいへんな時間と努力がかかります、そういう意味で、私は、将来はやはりお話のような単独法にいたしたいと思います。中身もそれにふさわしい、いろいろつけ加えた総合的なものにいたしたいと思いますが、いま申しましたように必要最小限度の、人間の健康被害を中心として、このような新しいものの考え方を行政の中心にするということでございますので、とりあえずこの二つの法律案の改正ということにしたわけでございまして、これは他意はありません。ただ事務的な時間的な余裕、そういうことを中心として考えたからでございます。
#19
○茜ケ久保重光君 まあこういう形にはなりましたけれども、政府というか、政府というよりも、むしろ大石環境庁長官の努力に対しては、一応多とするものであります。と同時に、いわゆる最小限ということばで表現をされますように、われわれからすれば非常に不満足なものであるけれども、少なくとも一歩前進だというぐあいには、これは受けとめ得るものであります。
 そこで、先ほど長官自身もお触れになりましたが、これは被害者救済といった意味が非常に強いと思うんですね。いわゆる水質汚濁や大気汚染による被害者に対する救済措置が非常に前進したと思うのでありますが、いま長官もちょっと触れられましたが、大気汚染や水質汚濁だけではなくて、たとえば土壌の汚染、さらには農業、漁業に対する汚染被害、これも結局は人体に及ぼす被害だと思うんですね。御承知のように、大気、水質だけでいきますけれども、農業や漁業の、たとえば土壌の汚染ということも、これは間接的な人間に対する被害だ。こうなりますと、やはりここで農業や漁業の被害が抜けた、土壌の汚染その他のものが抜けたことは、やはり片手落ちだという気持ちがしてなりません。
 長官は、こういうことも追って含めていきたいという御意思がいま表明されましたから、これはあえてくどくは申しませんけれども、こういったものも私はやはり当然入れるべきだったと思うんです。残念ながら入らずに、衆議院でもだいぶ修正される際には考慮されたと思うのでありますけれども、これは除外されて、結局附帯決議という形で出てきたようでありますが、これはやはり長官としては、早急にこういうものは当然この中に含めていくべきであるというお考えのように先ほど承ったのですが、この際、確認する意味においてもう一回ひとつお尋ねしたいと思います。
#20
○国務大臣(大石武一君) 土壌汚染、あるいは漁業というより漁場だと思いますけれども、漁業関係の漁場の汚染によって、人体にいろんな影響を与えたという場合には、当然これはこの対象に入ります。それは、結局は大気汚染か水質汚染によって土壌が汚染される、漁場が汚染される場合があるわけでございます。そういうことから、全部入るわけでございます。健康被害につきましては、人間の健康被害に対してまずいまのところ考え得るものは全部ほとんど、大部分入れたと考えております。そういうことで、いまの土壌汚染とか、かりに漁場汚染と申しますか、そういうものにつきましても、この法律の中でこれは十分解決できるものと考えております。ただ、その土壌汚染による、あるいは漁場汚染による農産物あるいは海産物、こういうもののいわゆる物質被害につきましてはいまのところ入りませんけれども、これは近い将来に包含いたしたいと考えておるわけでございます。
#21
○茜ケ久保重光君 時間がないようでありまして、あまり突っ込んだ御質問ができませんが、ぜひそういった点を早く修正なり是正をしていくために、われわれも努力するし、ひとつ政府のほうも虚心たんかいにぜひ対処してもらいたい、こう思うわけでございます。
 これは、無過失損害賠償責任法案が公害問題にとって最も重要なものだと思います。したがって関係者は、非常にこの立法を期待しておったわけであります。また反面、これは政府部内にもいろいろな意見がありましょうが、一方、産業側にとってはかなりきついものがあろうかと思うんです。したがって、一時はかなり反対ののろしも上がっておりましたが、この法案については最近あまりそういった動きは表面には見えないようであります、内面的にはどういう動きがあるかは存じませんが。産業界の反対が大きいということは、逆に言えば、それだけ被害者側にとっては有利な面があろうと思うわけです。もし産業界の反対がなかったとしますと、これはあってもなくてもいい法案だという面も出てくるのでありまして、私はそうは思いませんが、これはそういう二面を持った法案であります。実はその結果、私ども最初期待したよりもかなり後退した法案になり、それが衆議院の修正によって、先ほど言ったようにある程度前進をしたと、こう思うわけであります。
 この点は衆議院の諸君の御努力を多としてよろしいし、また、これを一応支持された長官の熱意も買うわけでありますが、しかし、この附帯決議からでもわかりますように、まだまだたくさんの問題を残しているわけであります。これは先ほどの具体的な問題とともに、あらゆる機会に述べられた問題の適正な解決のために、ひとつぜひ御努力願いたいし、当委員会においても、これは機会あるごとに討議をし、論議をしながらやはり改善していって、長官がおっしゃったように、これが単独法として、あらゆる日本における公害の問題点を包括した中で、解決する一つのりっぱな法律になってもらいたい、こう思うわけであります。
 いろいろな具体的な問題もたくさんありますけれども、いま申しますように時間もありませんので、私は以上ほんの概括的な質問だけで終わりますが、ひとつそういったことを含めて、最後に長官の御所信を承って私の質問を終わります。
#22
○国務大臣(大石武一君) ただいまの茜ヶ久保委員の御意見に私は全面的に賛成でございますし、また、そのようにあたたかい思いやりのある考え方でこの法案の促進を希望されますことに対して、心から感謝いたします。
 おっしゃるとおり、この法案ができ上がれば、これが一つの足がかりになります。何でも一番基礎が大事でございまして、基礎さえでき上がれば、どのような上の建築も早い機会にでき上がるわけでありますから、これを私は一つの強固な土台にいたしたいという心がまえでおりますので、これができれば、もう来年からでも再来年からでも、いろいろな新しい必要なものが幾らでもつくり上げられ得ると、そう信じて努力いたしてまいりたいと考えておる次第でございます。おっしゃるとおり一生懸命に努力いたしまして、できるだけ早い機会にりっぱなものにする決意であります。
#23
○内田善利君 無過失賠償責任制度と光化学スモッグの関係がどうなるか、まずお聞きしたいのですが、光化学スモッグは、昨年でしたか、環境庁長官にお聞きしたときには、公害であると思うということだったのですが、いまだに公害としては認められていない。原因が何であるかはっきりしない、分析方法もいまだにはっきりしない、そういうようなことで原因がはっきりしていないわけですが、この光化学スモッグについて、この無過失賠償責任制度が発足したらどのような取り扱いを受けるのか、まずこの点をお聞きしたい。
#24
○国務大臣(大石武一君) この光化学スモッグは、おっしゃるとおりいろいろな問題を引き起こしているのでありますけれども、まだその実態がなかなかつかまらないのでございます。おそらくは自動車その他の排気ガスが一番中心であろうとはいわれておりますけれども、いままでのよく起こった例を見ますと、必ずしも直接自動車の排気ガスが影響しているというような結論も出し得ないような状態でございます。そういうことで、これにつきましてやはりもう少し検討を加えまして、できるだけ早い機会に、もう少しある程度の実態をつかみ得ませんと、なかなか裁判の対象になりにくいと思うんです。そういうことで、いま申しましたように原因の究明に努力してまいりたいと思います。
 ただ、この無過失の場合には、不特定多数の自動車の排気というものは、必ずしもこの法律でとらえられないようなことになっておりますので、その点の関係につきましてもどのように考えたらいいのか、そのことにつきましては政府委員から具体的にお答えさせたいと思いますが、いま申しましたようなことで、いますぐここに光化学スモッグを取り入れるということは、なかなかできにくいのではないかと考える次第でございます。
#25
○政府委員(船後正道君) 光化学スモッグの原因につきましては、ただいま長官が申し上げましたように、自動車排気ガスが主たる原因ではないか、このようにいわれておりますけれども、なおかつ不明の点が多いのが現状でございます。今回のこの無過失責任を規定いたしました法律では、無過失責任を問うておりますのは、工場または事業場における事業活動に伴う有害物質の排出、これによりまして起こった健康被害でございます。さようでございますので、もしそれが不特定多数の、自家用車を含めました自動車の排気ガスというものが主たる原因であると、このようにいたしますれば、光化学スモッグによりまして健康被害という損害が生じましても、この法案の対象とはなりがたいのでございます。
 この点につきましては、私どもも立案過程におきまして種々議論をいたしたわけでございますが、現在のやはり民事上の救済の限界がそのあたりにあるのではないか。非常に移動する発生源であって不特定多数から出てくる、そういったものが原因となって一つの被害を引き起こしたというような場合には、どういたしましても、個々の裁判手続でもって原因者を究明し、損害の賠償を求めるという制度にはなりにくいのではないか、このような結論に達したわけでございます。
 したがいまして、この問題は今後、光化学スモッグの発生機序の解明あるいはこれによって生じますところの健康被害といったようなものにつきましての科学的な検討と並行いたしまして、よって生ずる損害をどのような仕組みで救済するか、私ども現在確たる内容の案は持ち合わせてはおりませんけれども、おそらく損害賠償制度と申しますか、多数の原因者に何らかの形で拠出を求めて、その拠出をプールいたしまして被害者に損害を支払うといったような仕組み、こういった仕組みでなければこの救済は乗らないのではないか、このような問題意識を持っておりまして、本件の検討を進めておるところでございます。
#26
○内田善利君 光化学スモッグは、いわゆる公害ですか。何ですか、これは。
#27
○国務大臣(大石武一君) やはり、私これは公害だと考えております。
#28
○内田善利君 そうすると、公害であるけれども無過失賠償責任制度は適用できない、原因者が複雑であるから。そういうことであれば、一体どこで救済する方法があるか。いま局長お話しになりましたけれども、いままでは学校でしたから、学校安全会とかああいうので校長先生は、それは一部分ですけれども払っておられる。入院費とかその他、いまのところはそういったことで、東京都当局とかあるいは県当局で救済しているわけですけれども、これについてどのように救済措置をしていくか。あるいは治療費とかそういった面は、公害であるけれども公害病と認定するわけにいかないわけでしょう。そうしたら、どういうふうにして救済をしていくかということなんですが。
#29
○国務大臣(大石武一君) これは公害であります。そうして、ある程度人間の健康に影響を与えますけれども、幸いにしていままでは生活の補償を要するような大きい損害まで起こっておりません。今後も起こらないでほしいと願っております。そういうことで、いますぐ水俣病であるとかあるいはイタイイタイ病というように、生活の補償を支給するようなほどにまだなっておりませんけれども、これに何とかして対処しなければならないと思っておるわけでございます。
 とにかく、どの自動車が、どこで、どのような公害発生に寄与しておるかどうかということは、非常に測定しにくい、まず現実には不可能に近いと思います。ですから、たとえばそこに住んでいる人がどの自動車の排気ガスでやられた、その通った自動車にどれだけ寄与度があったか、とうていこれは公平な判断のはかり方ができないと思うんです。ですから、このような場合には、やはり無過失であってもその責めに任ずる企業といいますか、それをつかまえることはまず不可能であろう、こういうわけでございますので、別にこれに対して、何かの大きな被害が出てまいれますれば別に考えなければなりませんし、またそのような生活の補償を要する問題が将来出てまいりますれば、それは別の形で補償しなければならぬ。
 これは修正案にもありましたように、この法律案が成立すれば、それと相呼応して、これに要するいろいろな費用は、企業だけでは負担し切れないであろう費用をやはりわれわれは考えなければなりませんので、いわゆる基金の制度をつくらなければなりませんが、その基金の制度をいろいろ拡大いたしまして、そうして、そのような公害産業と申しますか加害者は、やはりこれに対してある程度の基金に対する責任を持つようなことにいたしまして、その基金を中心としていろいろな被害者への補償、生活の補償にも充てなければならないのではないかと私は考えておるわけでございますが、そういう方面でだんだんとこういう考え方を広めていきたいと考えております。
 いまのところ、直接自動車の排気ガスであろうと思われる光化学スモッグにつきましては、治療費なんかは、そういうものはどこからでもこれは出せます。治療費なんというものは、そう長いものではありませんからこれは出せますけれども、いわゆる生活補償となりますと、いまのところ、そういう方面で考える以外に、直接ほかの公害病のように加害者をつかまえるということが不可能でありますので、そのようなために当分それ以外ちょっと考えがつかないのではないか、こう思っておるわけでございます。ただ幸いに、あとで生活補償のめんどうをみなければならないような、そういう被害はそう簡単に起こり得ないと思います、起こってはなりませんけれども、そういうことで時間的な余裕を持って、もう少し検討してまいりたいと思う次第でございます。
#30
○内田善利君 この間、本委員会で自動車の規制について、警察庁の交通規制課長だったと思いますが、いまは自動車はふえるにまかせて、歩道をきちっとして、あとは幾ら自動車がふえてもしようがないというようなことを答弁されておったんですけれども、いまの状態ではいまの長官の答弁で納得できますけれども、アクロレインがもう少し濃密になってきたり濃厚になってきたりすると、ほんとうにばたばたと倒れるようなことが起こらないとは言えない、このように思うわけです。ロサンゼルス型がどのように解明され、原因がわかっておるか、私も知りませんけれども、この光化学スモッグは、昨年一昨年以来問題になっておるわけで、一体これにどれだけの予算をかけて究明、検討、研究をなさってきたのか。いまだに原因がわからない、自動車だろうということでは、これはもう、だんだん行政公害に移行しつつあるのではないかというふうに私は感ずるのですけれども、やはりこういう問題に対しては早急に原因を究明して、納得させていくべきじゃないか、また対策を講じていくべきじゃないかと、このように思うわけです。
 いまの状態でも、学校内で勉強している最中にあのようにばたばた倒れるということは当然いけないことであって、いまの状態ならばということばがいまかわされたわけですけれども、やはりいつまでもいまのような状態ではないのじゃないか。このように自動車がふえ、また煙もふえてきますと、どのような事態が起こるかわからないということで、原因究明を急いでいただきたいと同時に、救済対策、また治療費の問題等も対策を講じなければいけないのじゃないか。土呂久の場合にしましても、これは通院費とか入院費とか、全部県当局がたてかえておるというような状態ですね。これではやっぱり安心して患者の方々も治療できないのじゃないか、一体この後はどうなるのかというようなことで。だから、公害病であるならば公害病であるらしく、治療対策を講じていただきたい、このように思うんですけれども、いかがでしょう。
#31
○国務大臣(大石武一君) いまのいろいろお話にありますように、われわれも考えなければならない点がたくさんございます。たとえば自動車の量、交通量の問題、これもやはりもう限度がきている。ある限度以上は、これは走らせることはできなくなります。そこで、私たちは、去年から申しておりますように、環境容量というものをいま全国的に、地域的に区切って調査いたしまして、どの程度までの必要な環境を守らなきゃならぬかという、一つの科学的な基礎をつくっているわけでございます。当然、東京とか大阪とか、こういった大都市はきびしい環境容量というものが要求されると思うんです。われわれは前から申し上げておりますように、東京や大阪に一生住んでおっても、そこで健康をそこねないで活動し得るだけの環境は何としても確保しなきゃならない、これが大事な点であると考えまして、そういう努力をいたしておるわけでございます。
 そういう、何といいますか限界があるわけでございますね。その限界以上のものにわれわれ環境を守っておかなきゃならないわけですから、いろんな調査結果、車はこれ以上走らしてはいけない、ガスはこれ以上出してはいけないということになれば、当然これは、それ以前に車の規制というものは十分しなきゃならないと思います。そういうことで車の規制のしかた、私専門家でありませんからわかりませんが、前から言っておりますように、とりあえずたとえば大型トラックとかそういうものは全部東京の郊外で押えて、そこから公害の少ない小型のトラックに荷を積みかえて都内を走らせるとか、あるいはノーカーデーをつくるとか、そういう地域をつくるとか、いろんなことがあると思いますが、ある程度の規制は、当然これから考えなきゃならないと思います。そうして、その環境容量を中心として、はるかにそれよりももっともっと高いところで環境の保全をしなければならない、こう考えておるわけでございます。そういうことで、車については今後十分に私は考える必要があると思います。
 ただその実態がわからない限り、いわゆる対症的な療法、たとえば応急の対策だけはできますけれども、それではとうてい解決になりません。したがって実態を早く認識して、将来に対する恒久的な対策を立てることが絶対必要だと思います。そういう意味でいま実態の究明を急いでいるわけでございます。
 幸いに今度環境庁では、光化学スモッグを調査するためのチャンバー車と申しますか、新しい移動研究室ができまして、そろそろ今月の半ばからそれが活動開始ができますので、いままでよりももっと科学的な光化学スモッグに対するいろいろな調査究明ができやすくなってまいります。今年は飛行機も使っておりますが、さらに飛行船も使って、いろいろな光化学スモッグに対する基本的な調査もすることにいたしております。そういうことで、必ずしも予算は十分でありませんけれども、環境庁か、どこが中心になってもけっこうですが、環境庁が仲に入りまして、東京都が中心でも、環境庁が中心でも、名目はどちらでも私よろしいのですが、近県のものが集まりまして共同で研究もいたしておりますので、このような研究を、できるだけ原因を究明し、また一体どのような臨床的な症状が起こるのか、何によってそのような、けいれんを起こしたり意識をなくしたりなど、おそろしい症状を一体どんなような物質が起こすのか、そういうものをもう少し究明しませんと対策ができませんので、その究明も急いでまいりたい、こう考えて努力をいたしておる次第であります。
#32
○内田善利君 もう一言聞いておきますが、現在治療費はどこが出しておりますか。
#33
○国務大臣(大石武一君) おそらく東京都で患者はやっていると思います。あるいは区でやっておりますか、東京都でやっておりますか、これは私はやはりどこでやってもいいと思うのです。これが何万、何十万人ということになれば考えなければなりませんが、いまのところは都でやっても区でやっても、その治療はできる程度の費用でございますから、別にそれはいま急にすぐ全部やらなければならぬとか、都でやっていけないとか、区でやっていけないとかということではなくして、やはりこれは行政というものは国だけでやるものでもありませんし、各自治体もみんなで協力してやるのが行政でございますから、どこで負担してもいいと考えておりますが、それが将来まただんだんいろいろな問題をはらんでいくとなれば、これはやはり一つの組織を考えなければなりませんから、国でやるか、地方自治体とどんな割合で負担するか、あるいは別な基金から出すか、いろいろありましょうが、そういうことを考えたいと思います。いまのうちは東京都か区で出していると思いますが、それでもあまりそう地方自治体の財政を困らせるようなことでもないと思いますので、もう少し様子を見てまいりたいと考えております。
#34
○内田善利君 出していると思うでは困るのであって、前回は、先ほども申しましたように、学校安全会の費用だけですね。一番最初に光化学スモッグが起こったときには、学校安全会からやむを得ず金が出ているというような状態ですから、どこから出していただいてもけっこうです、どこからでもいいですが、そういう健康被害に対しては十分なひとつ対策を講じていただきたい、このように思うわけです。
 次にもう一つお聞きしたいのは、具体的な例をあげて聞きますが、特定物質に限ってこの賠償法が適用されるわけですが、一つ私が疑問に思いますのは、予算委員会のときに、公表ということで足尾銅山のことで質問をしたわけです。そのときに長官は、公表すべきだ、知りたい人には教えてあげるのが順当だ、そういう答弁をいただいたわけですが、農林省あるいは通産省等で調査をして、そうして、それをもちろん公表もしてないわけですが、また、それによって被害を生じた、健康被害を生じたと見られる方がおるわけですけれども、もちろんこの法案では財産被害はありませんので関係ないのですが、健康被害までいったと見られるという場合に、本人に知らせてない、こういう場合には、これを調査した行政当局がその責任を問われるべきじゃないかと、このように思うのですが、この点はいかがでしょう。
#35
○国務大臣(大石武一君) 御質問の御趣旨は、いろいろな調査した結果、公害病患者の発生であるとか、あるいはいろいろな問題を起こしているということを、そういう実際をいろいろな人々に知らせて認識させて、それに対して、その人が妥当な行動がとれるような措置をとるようにしたらよかろうという御趣旨だと思いますが……。
#36
○内田善利君 それをしなかった。
#37
○国務大臣(大石武一君) それをしなかった場合にはどうかということ。――わかりました。
#38
○政府委員(船後正道君) 現在も、環境が汚染されまして、それによって人の健康に影響があると思われる地域につきましては、たとえばカドミウムあるいは有機水銀等に関連いたしまして、環境調査と同時に健康調査をやっておるわけでございます。この健康調査の結果につきましては、それぞれその疑わしい方々というものには御指導も申し上げ、通知もするということにいたしております。ただこの間、検診を受けられました方々といたしましては何らかの症状がある、しかし、検診したほうの目的は、もっぱらたとえばカドミあるいは砒素との関連において調査いたしておりますので、御本人が御病気であってもそういった通知が漏れておる、まあ通知しないほうは、その有害物質と関連しないから通知しないまでだといったような点がございまして、かなり不親切ではないかというような御批判があったのでございますが、その点は各県にもよく連絡いたしまして、やはり保健所活動を通じまして、そういった個別的健康診断もこれまた地方のつとめでございますから、できるだけ地域住民の方々に御納得のいくような説明をするように、指導いたしておるところでございます。
#39
○内田善利君 実はこういう例があるんですが、農林省と厚生省と通産省、三省連合で日本列島のカドミウム分布調査をしたことがありますね、農林省。
#40
○説明員(川田則雄君) 農林省の農地局がそれに従事したというように、私理解いたしております。
#41
○内田善利君 四十五年の十月ごろ、日本列島全部のカドミウム分布調査をやったわけです。そのときに農林省が、米の中のカドミウムを調査したわけですね。県が委託を受けて、県の農事試験場がこれを実施したわけですが、このときに、一・〇PPM以上の玄米が出たわけです。
 これは長崎県の対馬の話ですが、厳原町の前原、この水口で一つは〇・九七、それから中央で一・七〇、水しりで一・五八、それから裏河内というところで、水口で一・二八、それから中央が出ていませんで、水しりが〇・七〇、それから下田というところでは、水口で一・七二、中央で一・〇八、水しりで一・〇一と、このように、いずれも平均が一・三三、一・〇二、一・二二というふうに結果が出たわけですが、この結果を熊本の農政局が農林省に報告したわけです。
 農林省は、これについて分布調査ということで何にも対策を講じていない。また、県のほうも知っておったけれども、全然知らせてない。この農家の方々も全然知らない。ところが、いよいよことし四十七年五月、苗しろで田をつくることになりましたが、そのときに、原因も何も言わないで、本年度から米をつくらないでもらいたいと言ってきているわけですね。農家の人たちはびっくりしたわけです。どういうわけでこれはお米をつくらないことになったんだろう――。
 そこで公明党で調査したわけですが、以上のような結果が判明したわけですが、これは四軒ですけれども、たんぼはいま三つ申し上げましたが、この方々のうち一軒はまだ十俵、四十五年の秋にできた米が、まだずっと食べ続けて残っている。一軒はあと一俵残っておる。そのように、ずっと一・〇PPM以上の米を、何も知らされないままに食べ続けてきた。そしてこの家の、結婚してきて二十年ここにおる方が、四十一歳になる奥さんが、最近関節が痛み骨が痛いと言って訴えておる。近所の方々は、それはイタイイタイ病じゃなかろうかと言っておる。ところが健康診断は一ぺんも受けたことはない。そういう状況にあるわけですが、私はこれは事実とすればけしからぬ話だと、このように思うわけですね。たとえ分布調査ということをやったにしても、こういう状態であるということを、あるいはまた県当局にしても、米をつくらないようにと言う場合も、理由を言ってつくらないように指導すべきじゃないかと、このように思うのですが、全く先ほど申しましたようにこれは行政公害だ、そのように感じたわけですが、この点、法務当局の見解をお聞きしたいのです。
#42
○説明員(古館清吾君) ただいま突然の御質問で、十分研究しておりませんけれども、おっしゃるとおり行政指導の妥当性に問題があろうかというふうに感じます。
#43
○内田善利君 農林省のほう、いかがです。
#44
○説明員(川田則雄君) 私が理解いたしておりますのは、農地局が、通産省と厚生省と一緒になって調査をいたしまして、それは公表したと理解いたしております。分布調査を農地局がやりましたのは、非常に点数が少ないので、今後の対策その他を考慮するためには、地域指定のための対策調査というのがございます。これが四十六年から環境庁で行なわれることになっておりまして、環境庁は長崎県に補助をいたしまして、そして対馬の調査をやりましたところ、すでに公表になっております、四十六年十二月一日に発表になっておりますが、対馬につきましては、それによりますと、土壌中のカドミウム濃度については分析中でございますが、玄米中のカドミウム濃度につきましては、一PPM以上の点数が三十一点あったというように、環境庁は四十六年十二月一日に公表いたしております。
#45
○内田善利君 そんなことを聞いているわけじゃないですよね。いま行政責任を法務当局にただしたわけです。農林省は公表したと言っているけれども、四十六年の十月ごろの新聞には確かに発表になっております。それは三カ所、一・〇PPM以上の米があったというだけで、その内容は全然発表になってないわけです。そして、農林省からは、どこにもそういう対策は講じてないでしょう。そういう点はどうですか。
#46
○説明員(川田則雄君) それにつきましては、土壌汚染防止法に基づいた措置を順次とろうというようなことから、環境庁と連絡をとりまして、土壌汚染防止法に基づく措置をとるためには、御承知のように二・五ヘクタールに一点の対策調査をやりまして、それでその地域についてのカドミウム濃度の分布から地域指定というようなことになるわけでございますが、地域指定につきましては、その調査に基づいて、御承知のように一PPM以上の米が生産されたところ、あるいはそれのおそれのあるところを区画を区切りまして、それで地域指定をして、その地域指定は、県の場合は県の審議会にかけて地域指定をして、それに基づいて県知事が対策計画を立てて、それで農林省と環境庁長官の承認を得て、そして自後の対策に移るというような手続を順次とっていこうということから、農林省のほうは環境庁と相談いたしまして、環境庁の地域指定の調査をすぐ開始して、その結果を発表いたしまして、長崎県としましては、その結果に基づいてさっきのような措置を講ずるように検討されていると聞いております。
#47
○国務大臣(大石武一君) 地域指定のことよりも、もちろんそれは将来しなければならないと思いますけれども、内田委員のおっしゃることは、そのような米が、一・何PPMの米が出ているにかかわらず、それをほうったらかしていままで食わした責任をどうするかというお話だと思います。
 私もそう思います。それはどうなっているか、私はわかりませんが、当然、そのような一・何PPMのカドミウムを含んだ米が出たというならば、それは当然農林省は、食事にとらないように、農林省では買いませんから、そういうものは農民が食べないように、おまえのところはこういう米出たぞ、注意せいということを食糧事務所に連絡して、事前に知らすべき責任があると思います。ですから私は、どうなっておるか実態はわかりませんから、注意しているのかもしれません、それをしていると思いますけれども、もし、していなければそれはやるべき責任があります。地域指定して、そこをどうするかということはあとの問題でして、当然それはやる。それだけの親切がなければ行政はだめだと思います。さっそくこちらで調べてみまして、実態がどうなっているか、もしそのようなことがあったらわれわれとしても責任を感じますから、できるだけの善処をいたすつもりでおりますけれども、そのような親切が行政に絶対必要だ、こう考えまして、さっそく調査いたしたいと思います。
#48
○内田善利君 いま環境庁長官の言われたとおりなんですけれども、農林省は地域指定のことばかり言われておりますけれども、そのとき発表したと言われますが、本人たちに向かって、こうなんですよと、いま環境庁長官の言われたように、食糧事務所を通して、一・〇以上の米だから当然凍結すべき筋合いのものなんですね。それをほうっていた責任ということを私は聞いているわけです。当然、農林省がやるべきじゃないんですか。
#49
○説明員(川田則雄君) いま環境庁長官からお話がありましたように、すぐ食糧庁と連絡をとって、どういう措置をしたかということを調べて、先生のほうに御報告いたしたいと思います。
#50
○内田善利君 この対馬は、御承知のとおり土壌が非常に汚染されているわけです。県のやった、あるいは農林省のやった四十六年度、四十五年度の調査によりますと、カドミウムのみならず、鉛も亜鉛も、データを見ますと、よその地域に比べて非常に多いのですね。御存じですか。米にしても土壌にしても、土壌汚染はまだやっているわけではないとおっしゃっておりますが、私のところには入っているわけですけれども、米も土壌も、カドミウムだけじゃなくて鉛、亜鉛、非常に多いわけですね。こういう土壌に対する対策は、農林省に対して私は四十三年からこれは改良すべきだということをお願いし続けてきたわけですが、最近は対馬の問題もあまり取り上げておりませんけれども、常に念頭から離れないわけです。同時に、これは厚生省の問題ですけれども、あるいは環境庁の問題ですけれども、要観察の病人なんかもまだおられるわけですね。いまOECDに行っておられる橋本公害課長が、一番心配なのは対馬だと言ってスイスに行かれたんです。そういう対馬の問題が、このようになおざりにされているということはほんとうに遺憾だと、このように思うのですね。
 したがいまして、千三百年前からあの鉱山がありまして、当時は、すずをとったり銀をとったりしていたわけですが、その当時亜鉛とか鉛はスラッジとして、鉱滓として放置されたわけですね。それがいま土壌になったり道路に敷かれたりして、畑を歩いていても亜鉛の鉱石が見つかるほどに土壌は汚染されている。したがって東邦亜鉛としても、自分の責任じゃないというようなことを言っておるわけですが、こういったところの救済、いまのところ健康被害は、まだまだいまからの問題としても、土壌がそのように汚染されておる。したがって生活が非常に困っているわけです。凍結された米も非常に多いし、田畑を手離すかどうかというような問題も現地には起こっているわけですが、そういったものに対する補償ということが一体どうなるのか。無過失賠償責任法は通過しても、この対馬のようなところの人たちは救われるのかどうか。私はこの法案を見る限り全然救われない、このように思うのですけれども、一体こういった財産被害に対しては、どのようにして救済していかれるおつもりなのか、この点をお聞きしたいと思います。
#51
○国務大臣(大石武一君) 財産被害に対しましては、われわれは当然この法律を適用しなければならないと考えております。それは、今度の場合にはそれを盛り込んでございませんが、先ほどの答弁にもありますように、ごく近い将来、これの基礎ができれば、この法に、これを土台としていろいろな財産に対する補償の問題も考えなければならない、そう考えておりますので、具体的なものをどのようにするか申し上げられませんけれども、そのような方針で進めることにわれわれ考えておりますので、その点御認識を願いたいと思います。
#52
○内田善利君 この法律は、一番最初に茜ヶ久保委員からも質問があったわけですが、一昨年の九月一日、宇都宮一日内閣で佐藤総理も、無過失賠償法をつくる、このように言明されて今日に至っているわけですが、この無過失賠償責任制度が、水質汚濁防止法また大気汚染防止法の一部を改正する法律として出てきたことは、いままでの経過からなかなか国会に提出されなかった、そういう経過からいろいろなことを考えるわけですが、私どもは、当然佐藤総理の意をくむような単独立法として提出すべきじゃなかったか、それこそほんとうの無過失賠償責任制度であり、こういった法案では無過失賠償責任法とは言えないのじゃないかと思うわけですが、もう一度この点についてお聞きしたい。
#53
○国務大臣(大石武一君) 手きびしい御意見でございますが、実際はそのとおりでございます。当然、これはもっと完全なもので出れば非常にけっこうなんでございますけれども、やはり三年かかってようやくこの程度でき上がったということは、いわば日本の行政なり政治のあり方が、その程度のものじゃなかろうかと考えます。実は、やっと環境庁ができ上がりましてから、環境庁という一つの大きな組織のもとで初めて提案が可能になったわけでございまして、それまでは、やはりあれほど強力である山中総務長官にしても、これをなし得なかったというところに一つの、日本の政治のあり方がそういうふうなものでなかったかと私は思う次第でございます。
 これは言いわけになりますからしようがありませんけれども、そういうことで、やっと私の代になりまして、環境庁という大きな組織のもとにこの法案が提案できましたわけでございますが、いま申しましたように、これを出すにも手一ぱいでございまして、言うに言えない社会情勢もありましたし、いろいろな世間の人々の判断もございましたのでくどいことは申し上げませんけれども、ようやくこれをつくり上げたと思っておるわけでございます。しかし必要な最小限のものではあると思います。したがいまして、これが通れば、土台さえできれば、あとは幾らでもその上に積み重ねは可能でございますので、土台をつくるという意味で、このように不十分ではございますけれども、これをあえて提案したのでございますので、そのような御認識のもとにひとつこれをよく理解していただいて、さらにこれに上積みをできるような励ましをしていただきたい、こう思う次第でございます。
#54
○内田善利君 この無過失責任の対象となるものを、大気汚染防止法の規制物質、それから水質汚濁防止法の規制物質に限った理由ですね、これはどうなんですか。
#55
○国務大臣(大石武一君) これははっきり申し上げたら、大気汚染防止法でも水質汚濁防止法でも、そのような健康被害を及ぼす物質としてそういうものを全部あげているわけでございます。したがいまして私どもは、人間の健康被害に大きな影響を与える物質として、大体ここにあげております特定物質、これが網羅していると考えましてそうしたわけでございます。
 しかし、おっしゃるとおり将来いろいろな問題も出てまいります。たとえば、われわれがいままだ必ずしも実態を知り得ない光化学スモッグの問題とか、あるいはPCBの問題がございます。PCBも、これは有害物質であることはわかっておりますから、これを何とかごく近いうちにこの法律に入れたいと思っておりますが、もう少し分析のしかたとか、実態のつかみ方を明確にいたしましてからでないと、あとでいろいろ問題を複雑にしていけませんので、そういうものを早くきめてからということで急いでおりますが、それも至急取り入れる方針でございます。そういうことで、まだわかっていないものは入りませんけれども、大体わかっております有害な物質は、法案の中にみな取り入れたと考えておるわけでございます。
#56
○内田善利君 有害物質、特定物質であれば、確かに被害を生ずる可能性はあると思います。工場等が、もしこのような大気汚染防止法あるいは水質汚濁防止法でいう有害物質を出して、それで健康被害が生ずるということは、それはもう当然無過失じゃなくて、私は過失責任だと、このように思うわけですね。水質汚濁防止法で言い、大気汚染防止法で言う有毒物質を流したということは、これは基準以上でもあるいは基準以下でも、もう当然過失だ。そういう有毒物質、特定物質にあげられておる物質を流すということは、これは過失だ、はっきり過失責任法で問うべきだと思いますね。それでなくて、それ以外の、いまおっしゃったようにPCBとか、あるいはいろいろな有害物質がまだ私はあると思うんです。工場があって、そして下流で病気が出た、そこで異常な事態が生じたという場合に、有害物質であれば、特定物質いわゆる規制された物質であれば当然だと思うのですが、規制されない物質が出た場合に私は無過失法を適用すべきじゃないか、このように思うのですけれども、この点はどうでしょうか。
#57
○国務大臣(大石武一君) いまの特定物質も、これは全然出してはいけないものもありますけれども、ある程度の排出を認めております。そこで、ある程度のものまで認めるというのは、つまり環境基準と排出基準というものによって認めまして、排出基準で、いまのところこれまでは出してもよろしいということで許可してあるわけでございますから、その範囲内で流しておれば、いわゆる過失もなければ責任もないわけでございます、ほんとういえば。しかし、それでもこれが集合され複合されますと、やはり公害病患者を発生し得るかもしれない。そのような場合には、これは無過失であっても責任をとらせるというのがこの趣旨でございますから、やはり排出基準、環境基準を守っていてもだめだよということでございますから、相当意味があると思うんです。
 ただ今後、ほかにいろいろな影響を及ぼす物質があるかもしれません。しかし、それは実際、はなはだ残念な言い方ですけれども、結果があらわれてみなければわからないのです。わからないものはつかみようがございませんので、いま申しましたように、やはりわからないものはやれない。できるだけ、それはいろいろ行政面でそのような有害な物質が使用されないように、製造されないように、あらゆる努力をすることが一番大事だと思いますけれども、不幸にしてそれが防ぎ切れないであらわれた場合には、やはりこれをこの制度の中に十分組み入れるようなことをしなければなりませんが、そういうことで今度の衆議院の修正は、私はかえってよかったのじゃないかと考えておる次第でございます。
#58
○内田善利君 私は、カドミウムが土壌汚染防止法ではたった一つ規制されている、あるいは水質汚濁防止法でも特定物質が何種類かありますが、そういったものはある程度予見できるわけですね。排出基準以上あるいは排出基準以下で流出している場合に、ある程度予見できる。そういうものは過失責任法で規制できる。ところが、それよりも、わからない物質が流れてきて健康被害を生じた場合には、これはどうにもできないのですから、こういう法律こそ、私はそういうものに限らないで全部包含した法律にすべきじゃないか、このように思うのですがね。私はあまり法律に詳しくないから、よくわかりませんけれども、そのようにいま感情的に思うのですけれども、いかがでしょう。
#59
○国務大臣(大石武一君) ただいまの場合、私はあまり法律に詳しくありませんのでわかりませんが、おそらくこうだと思うのです、今度わからないものを使用した場合、それが何か大気汚染か水質汚濁でいろんな公害病患者を発生したとしますと、それは当然過失責任か無過失責任、どちらかに入ります。ですからいままでは、この法律がないと、過失責任に入らないものはそれっきりで見のがされましたけれども、今度は過失責任でなくても、無過失でも入るのですから、当然これは過失であると認められた場合には、過失責任でもちろんこれは補償の道が講ぜられますが、無過失であっても、流した場合にこの法律に引っかかるわけでありますから、これから新しく予想される、あるいは出るであろうと思われるいわゆる有害物質は、みんなこちらの法律に引っかかると思うのです。そういう意味で、この無過失は意味があるのじゃないかと考える次第でございます。
#60
○内田善利君 これは例が、妥当な例であるかどうかわかりませんが、たとえば自動車がスピード違反をしていたら、当然、事故を起こしたら引っかかるのが過失責任じゃないかと思うのですが、この排出基準以下である、すなわちスピード以内で、スピード違反をしていないということで車が走ってきて、たまたま事故を起こした、こういう場合に無過失責任法が当たるのじゃないか。基準以下である場合でも、そういう被害が起こったら罰せられる。そのスピード以外の、ほかの原因で事故を起こした場合にも、私はその自動車に責任があると思う。こういう考え方から、特定物質を基準以下で排出していても起こる、それ以外の原因で健康被害、身体に被害が起こった場合には、やはり責任を持つべきだ、こういう考え方なんですけれども、間違いでしょうか。
#61
○国務大臣(大石武一君) それは、御意見伺えば私はそのとおりだと思うのです。この法律は今後、いわゆるここに載っております特定物質以外のものですね、それはいま考えられない、わからないものですが、そういうものは全部この法律の中に入っていると思うのです。つまり、そういうもので健康被害を起こせば、何か新しい物質が大気汚染か水質汚濁かで健康被害を起こせば、必ずその物質を排出した者は無過失でつかまるか、過失でつかまるか、どっちかでつかまります。これは全部この法律に入っていると思うのです。ですから、わからないものは名前で規制をすることはできませんし、また、そういう新しい公害病が発生した場合には、当然それは今度引っかかることになりますから、無過失責任か過失か、どちらかで引っかかるのですから、どちらかにしても責めを負わなければならぬのじゃないか、こう思いますが、なおひとつ法律的に説明していただきたいと思います。
#62
○政府委員(船後正道君) まず不法行為で責任を負う場合の、その行政上の何らかの基準との関係でございますが、これは一般論といたしまして、行政上の基準を守っているということと故意過失とは、原則といたしまして関係はございません。ただ、どこまでが故意であり、どこまでが過失であるかというような、社会通念に照らしての判断になってまいりますと、もちろん基準を守っていたか、いなかったかということは、心証といたしまして問題になろうと思いますが、理論的にはまず問題ない。
 そこで、無過失責任というのは、こういう加害者側の注意義務というものを極限の状態においてとらえたわけでありまして、いかなる注意をいたしましても、なおかつ結果として損害が出たという場合でも責任を問うというところに、無過失責任の意味があるわけでございます。ところが現在の民法は、やはり個人の自由なる活動というものを保障いたしておるわけでございますから、民法の原則は、何といたしましても、損害賠償につきましては、やはり故意過失があった行為、これによって損害が生じた場合に責任があるということになっておるわけであります。
 そこでただいま、有害物質を、規制の対象として取り締まっております物質に限定しておることについての御議論でございますが、私どもといたしましては、この規制されていない物質というものは、現在の科学的知見をもっていたしますればこれは有害性の立証がないということから、規制対象になっていないのでありますが、しかし、この問題はやはり常に検討が必要でございまして、現在無害と考えられておる物質でございましても、有害になる、有害のおそれがあるということになりますれば、当然行政面といたしましては、機を失することなく早期にこれを取り締まりの対象にしていく。さらに進んで申し上げますれば、PCBのように、そういうおそれがある物質というものが製品となり使用されて、環境に放出されるということ自体を、事前にチェックするというところまで進んでいかねばならぬと思うのでありますが、いずれにいたしましても、現在規制の対象となっていない、したがいまして、何人もこれは害を起こさないというように信じまして一つの排出が行なわれておる、それが後日になって損害を生じた、だからさかのぼって無過失責任だということになりますと、先ほど申しましたような、民法が考えております過失責任の大原則という点からみまして、これはいかがなものであろうかというような点から、今回やはり無過失損害賠償を規定するにつきましては、その物質の範囲というものを限定するという方向にいったわけでございます。
#63
○内田善利君 それでは具体的に、この法律ができることによって、SO2の複合汚染、そういったものに対してはどのように前進があるのか、お聞きしたいと思います。
#64
○政府委員(船後正道君) SO2につきましては、現在これは大気汚染防止法の規制の対象となっておるわけでございまして、立案過程におきまして、SO2のような複合汚染を常態をする物質は、非常に因果関係の究明等にむずかしい問題がございますので、これを除外するというような意見も一部にあったのでございますが、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたような考え方から、少なくとも大気汚染防止法で規制の対象となっておるという物質は、それが複合汚染を常態とするものであっても、今回の無過失責任の対象とするということに踏み切ったわけでございます。
 したがいまして、SO2による損害も当然無過失責任の対象となるわけでございますが、実際問題といたしまして、数多くある煙突から出てくる煙によりまして一つの被害が生ずるという場合に、これをいかに実際上取り扱うかという点で一番問題でございましたのは、現在の共同不法行為の考え方に従いますれば、複数の事業者が共同して排出行為をなして、それによって損害を生じたという場合には、全員が連帯して責任を負うわけでございます。この部分につきまして、やはり非常に寄与度が小さい、たとえば中小企業等が大企業の隣にあるという場合でございますが、こういった場合に、その寄与度の非常に少ない中小企業にまで全額の連帯責任を負わせるのは、やはり加害者相互間の公平の見地から酷ではないかというような見地から、微量寄与者につきましてはしんしゃく規定を設け、これによりまして、複合汚染問題の場合における負担関係の調整をはかろうとしたものでございます。
#65
○内田善利君 最初あった推定規定がなくなったわけですけれども、どういう関係でなくなったものか、その実態はわかりませんが、推定規定がなくなったことで、被害者がそういう二つ以上の企業の実態を調査してというようなことになると、たいへんな問題じゃないかというふうに思うわけですが、この点について、いまおっしゃったように企業が責任を負うわけですけれども、一体どうなるんだろう、被害者の救済がどれだけ前進したのか、このように思うのですが、この点はいかがですか。
#66
○政府委員(船後正道君) 当初、環境庁の発表いたしました原案段階では、いわゆる因果関係の推定規定があったのでございますが、この因果関係の推定規定は、新聞紙上等では非常に広く推定規定が働くといったような報道もあったのではございますが、しかしそうではなくて、因果関係のいろいろなワクの中で、いわゆる到達経路、この部分につきましての推定規定を設けたものでございます。もう少し詳しく申し上げますと、公害事案で不法行為が成立いたしますためには、当該事業者の排出行為によりまして当該損害が生じたということを立証することが必要でございますが、私どもの当初考えました推定規定では、このような直接事実を証明することにかえまして、当該事業者の有害物質の排出により被害が生じ得る地域内に、同種の物質により被害が生じていることを証明すればと、このようにいたしたのでございます。
 ところが、この推定規定におきましても、事業者から当該有害物質の排出があったという事実、あるいは当該物質によりまして当該病気が生ずるといういわゆる病因度、これにつきましては、やはり被害者において立証することを要するわけであります。で、推定いたしておりますのは、その事業者の排出したその物質が、被害者のからだの中に入って被害を巻き起こしているんだという、その汚染の経路につきまして、有害物質により被害が生じ得る地域内に同種の物質により被害が生じているときはと、このような推定方法を用いたわけでございます。
 そうでございますので、結局この推定では、汚染経路の部分ということになるわけでございますが、このような推定方法は、実は最近の公害事案に関する判例ではおおむね採用しているところでございまして、いわゆる蓋然性の理論と申しますか、被害者側に必ずしも非常に厳格な科学的立証を要しないで、たとえば阿賀野川の裁判でございますが、状況証拠の積み重ねにより、関連諸科学との関連において、すべて矛盾なく説明できればよいというような趣旨から、裁判所といたしましては、かなりの事実上の推定をいたしておるのでございます。
 このように、因果関係の推定が、実際の裁判におきましては、事実上かなりゆるやかな方向にあるのでございますが、いまここで推定規定を設けるといたしました場合に、方法といたしましては、一般的に、たとえば蓋然性をもって足りるというような一般規定を設けるか、もしくは一つの代表的なケースを用いるか、いずれかの方法によるのでございますが、私どもは後者の方法によって、一つの代表的なケースでもって推定規定を設けたわけでございます。
 ところが、これにつきましては、このように、被害が生じ得る地域と地域内において同種の物質により被害が発生しておるというように、新しく間接事実につきましての構成要件を定めたのでございますが、これについては、たとえば、被害が生ずるならばどのような微量であってもいいのかというような拡張解釈が生じてまいりますし、また他方、また現在の現実の裁判におきまして、因果関係の証明が困難な部分は、必ずしも汚染経路の部分には限らないのでございます。現に、富山の裁判におきましては、いわゆる病因度、カドミウムとイタイイタイ病との関係ということが主たる争点でございましたし、また阿賀野川の裁判におきましては、昭和電工の工場から有機水銀が排出されたという、その排出の事実そのものが主たる問題であったというふうに、個々の裁判ごとにその証明の困難な点は違うわけでございます。
 そこで、このような現状におきまして、汚染経路の部分にせよ法律上の推定規定を定めてしまう、ここで明文化してしまうということにつきましては、動きつつある判例動向というものを決定づけてしまうというおそれも考えられたのでございます。そのようなことから、因果関係の推定につきましては、必ずしもこのような明文の規定を設けなくとも、現実の判例動向が、そのようにゆるやかな証明をもって足りるということになっておる事実、さらに、因果関係の推定規定を明文で置くとすれば、やはり、もう少し判例の集積を待って、その方向がほぼ定着されると思われる時期に、あらためてこの明文化を検討するというのが妥当ではないか、という判断から削除いたしたのでございます。
 したがいまして、この規定がなくても、私たちといたしましては、現実の裁判において何らの支障なきものと考えております。
#67
○内田善利君 ちょっと最後のほう、矛盾するように感じられたのですが、判例でもうやっているから入れなくてもいいんだと。ところが、入れるとすれば判例の積み重ねを見て入れたいと思うというように受け取ったのですが、そうなると、ちょっと矛盾しているのじゃないかと思いますが。
#68
○政府委員(船後正道君) 裁判所で事実認定をいたします場合には、やはり事実上の推定ということで、裁判官の心証によって種々の推定をいたしておるわけでございます。これに対しまして、法律上の推定ということになりますと、やはり直接事実を証明するために間接事実を証明するということに相なるわけでございまして、したがいまして、その間接事実としてどのような構成要件を備えたものを規定するかということは、かなり問題がございます。現にいま判例が、非常にゆるやかな立証という方向に向いつつある時期に、ある一段階における判断でもって、たとえば汚染経路の証明には、被害が生じ得る地域内に同種の物質により被害が生じておるというような間接事実の証明を私どもは考えたわけでございますが、そういうことではたしていいかどうかという点につきましては、なお今後の判例の動き方によりましては、もう少しゆるやかに間接事実をもって直接事実の証明に足りるということが考えられるわけでございますので、そのような判例動向を待ちたいという意味でございます。
#69
○内田善利君 四日市はいま裁判中ですが、たとえば北九州のような場合ですね、この法案が成立した場合に、どのような差異が出てくるか。一方は裁判中ですが、一方は北九州のようなところでSO2による複合汚染ができた場合の、被害者の救済について差異はありませんか。
#70
○政府委員(船後正道君) 少なくとも現在係争中の事案につきましては、この法律の適用はできません。ただし、今後提起されます裁判で、その災害の発生が法律施行後であり、それから、その排出につきましては、今回衆議院の修正によりまして、法施行前に明らかにとまっていたという証明がなき限りは、それは新法の、この新しい法律の適用があるわけでございますから、したがいまして、そのような場合には、当然裁判上、故意過失の立証を要することなく、責任を問われることになるわけでございます。
#71
○内田善利君 これは四日市とか川崎とか、こういったところの人たちに、この法律ができても何の役にも立たないということでは申しわけないと思うのですね。やはり、こういったところの人たちも救済するような法律でなければいけない、このように思うわけですが、ちょっと別になりますが、鉱業法にしても原子力損害賠償法にしても、これはもう全被害に対して救済できるようになっているわけですね。だがこの法律は、先ほどから言っているように、大気汚染防止法、水質汚濁防止法の一部改正にとどまって、しかも対象物質は大気汚染と水質汚濁防止法にとどまって、典型公害、健康被害にとどまって、ほかの財産被害等も入っていないということになると、片手落ちのような感じがするわけですが、ほんとうに公害によって健康被害を受けた、あるいは財産被害を受けた、そういう方々に対する私法救済という意味では、非常にアンバランスな法律ではないかと、このように思いますが、この点はどうでしょうか。
#72
○政府委員(船後正道君) 御指摘のように、鉱業法におきましては、鉱業法に無過失賠償責任に関する規定が設けられましたその時点、その時点以前の作業によりまして法施行後に生じだ損害についても、これを適用するということになっておりますが、損害は、あくまでも鉱業法におきましても、その改正法施行日以後でございます。またこの点は、別途三党から提出されております法案におきましても、損害は、法施行後に生ずる損害でございます。これは、やはり現在の法的秩序ということから考えまして、法施行前に生じた損害までは、何としても新しい法律で律するわけにはいかないというような考え方から、損害につきましては、鉱業法もまた私どもの今回の法律も、また野党三党案も、いずれも法施行後の損害を問題としておるわけでございます。
#73
○内田善利君 大石長官は、衆議院の公害特別委員会で、この制度は民法の過失責任原則の例外規定なので、明確な範囲をきめる必要があるので人間の健康被害に限った、近い将来には財産被害も考慮に入れると、このように言っておられるが、これは事実ですね。ということは、その必要性を認めておられるということだと思いますが、いかがでしょう。
#74
○国務大臣(大石武一君) おっしゃるとおりでございます。そのとおりいまでも考えております。
#75
○委員長(加藤シヅエ君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後五時十分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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