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1971/04/22 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 予算委員会第四分科会 第1号
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1971/04/22 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 予算委員会第四分科会 第1号

#1
第068回国会 予算委員会第四分科会 第1号
昭和四十七年四月二十二日(土曜日)
   午前十時四分開会
    ―――――――――――――
昭和四十七年四月二十一日予算委員長において、
左のとおり本分科担当委員を指名した。
                楠  正俊君
                玉置 和郎君
                徳永 正利君
                中村 禎二君
                西田 信一君
                初村滝一郎君
                須原 昭二君
                辻  一彦君
                松井  誠君
                塩出 啓典君
                中村 利次君
                河田 賢治君
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十一日
    辞任         補欠選任
     中村 利次君     萩原幽香子君
     河田 賢治君     加藤  進君
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     松井  誠君     上田  哲君
     須原 昭二君     安永 英雄君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    主 査         塩出 啓典君
    副主査         楠  正俊君
    委 員
                徳永 正利君
                中村 禎二君
                西田 信一君
                初村滝一郎君
                上田  哲君
                須原 昭二君
                辻  一彦君
                安永 英雄君
                萩原幽香子君
                加藤  進君
   国務大臣
       文 部 大 臣  高見 三郎君
       厚 生 大 臣  斎藤  昇君
   政府委員
       文部大臣官房長  井内慶次郎君
       文部大臣官房審
       議官       奥田 真丈君
       文部大臣官房会
       計課長      須田 八郎君
       文部省初等中等
       教育局長     岩間英太郎君
       文部省大学学術
       局長       木田  宏君
       文部省社会教育
       局長       今村 武俊君
       文部省体育局長  澁谷 敬三君
       文部省管理局長  安嶋  彌君
       厚生大臣官房長  高木  玄君
       厚生大臣官房審
       議官       曾根田郁夫君
       厚生大臣官房審
       議官       信澤  清君
       厚生大臣官房審
       議官       江間 時彦君
       厚生大臣官房会
       計課長      福田  勉君
       厚生省公衆衛生
       局長       滝沢  正君
       厚生省環境衛生
       局長       浦田 純一君
       厚生省医務局長  松尾 正雄君
       厚生省医務局次
       長        横田 陽吉君
       厚生省薬務局長  武藤g一郎君
       厚生省社会局長  加藤 威二君
       厚生省児童家庭
       局長       松下 廉蔵君
       厚生省保険局長  戸澤 政方君
       厚生省年金局長  北川 力夫君
       厚生省援護局長  中村 一成君
   説明員
       警察庁保安部保
       安課長      関沢 正夫君
       外務省アメリカ
       局外務参事官   橘  正忠君
       大蔵省主計局主
       計官       青木 英世君
       大蔵省主計局主
       計官       渡部 周治君
       文部省社会教育
       局青少年教育課
       長        川崎  繁君
       日本ユネスコ国
       内委員会事務総
       長        西田亀久夫君
       厚生省環境衛生
       局水道課長    国川 建二君
       水産庁調査研究
       部長       松下 友成君
       自治省財政局財
       政課長      近藤 隆之君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○主査及び副主査互選
○昭和四十七年度一般会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和四十七年度特別会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和四十七年度政府関係機関予算(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
  〔年長者西田信一君主査席に着く〕
#2
○西田信一君 ただいまから予算委員会第四分科会を開会いたします。
 本院規則第七十五条により、年長のゆえをもちまして私が主査及び副主査の選任につきその議事を主宰いたします。
 これより主査及び副主査の選任を行ないますが、選任は、投票によらず、主宰者の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○西田信一君 御異議ないと認めます。
 それでは、主査に塩出啓典君、副主査に楠正俊君を指名いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
  〔塩出啓典君主査席に着く〕
#4
○主査(塩出啓典君) 一言ごあいさつを申し上げます。
 ただいま皆さま方の御推挙によりまして主査をつとめることになりました。ふなれではございますが、どうか御協力のほどよろしくお願いいたします。
 審査に入ります前に、議事の進め方についておはかりいたします。
 本分科会は、昭和四十七年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係予算中、科学技術庁、文部省、厚生省、労働省及び自治省所管を審査することになっております。
 二十六日の委員会において主査の報告を行なうことになっておりますので、議事を進める都合上、主査といたしましては、本日厚生省及び文部省、二十四日自治省及び厚生省、二十五日科学技術庁及び自治省、二十六日労働省という順序で進めていきたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○主査(塩出啓典君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#6
○主査(塩出啓典君) 分科担当委員の異動について御報告いたします。
 本日松井誠君が委員を辞任され、その補欠として上田哲君が選任されました。
    ―――――――――――――
#7
○主査(塩出啓典君) 昭和四十七年度総予算中、厚生省所管を議題といたします。
 慣例では、政府側から説明を求める順序でありますが、説明はこれを省略し、お手元に配付してある資料をごらん願うこととし、その説明資料は本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○主査(塩出啓典君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は、順次御発言を願います。
#9
○辻一彦君 私、きょうは時間が限られておりますので、主として社会福祉の中で保育所の問題を中心に、あと若干福祉問題について質問をいたしたいと思います。
 で、この保育所の問題は、言うまでもなく、わが国で非常に共かせぎの家庭がふえているということ、その中で幼児教育の重要さ、こういう点を考えましても、保育所の問題がたいへん大事な問題であるということは論をまたないと思います。そこで、保育所には、子供を預かる保母さんの立場、それからこれをまあ経営といいますか、運営をする立場の人、また子供を預ける保護者の立場の三つがあるわけでありますが、若干それらの点について二、三の質問を行ないたいと思います。
 第一に私、大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、それは幼児教育というものが非常に保育所におる子供の年齢にとって大事なときでありますが、この保育所というものに対して、まだ厚生省の中に保育所を託児所あるいは子守所と、こういうような考えがまだ残っておるのじゃないか、こういう感じが若干するんでありますが、そこらの問題が全然ないかどうか、その点をまずお伺いをいたしたいと思います。
#10
○国務大臣(斎藤昇君) 辻委員のおっしゃいますように、保育所はまあ保育に欠ける児童を預かるわけでありますが、何といってもただ預かっておればいいというんではなくて、やはり幼児の教育、学校教育のような意味の教育でなくても、やはりこれから育っていこうという子供の人格形成には大事な時期でありますから、そういう意味におきまして、ただ子守をするというだけでなしに、そういった見地で保母等に対しましても講習あるいは指導をいたしておるわけであります。私は必ずしも徹底しているとは思いませんが、しかし、そういう方向で常に指導をいたしておりますので、その点はひとつ御了承いただきたいと思います。
#11
○辻一彦君 重ねてお伺いしますが、この厚生省の内部に、保育所は必要悪だと、こういう発言をされた方があるということをちょっと聞いたのでありますが、まあ、そういうことがなければ私は幸いでありますが、そういうことはないかどうか、その点、ちょっと確かめておきたいと思います。
#12
○政府委員(松下廉蔵君) もしそういうことがお耳に入っておるとすれば、これはたいへん私ども担当者といたしまして申しわけのないことだと思います。いま大臣からも申し上げましたように、現在の社会の婦人労働の増加等の実情から申しますと、保育所というのは不可欠の施設でございまして、私どもとしても、その整備、内容の充実につとめておるところでございまして、もしそういうことばがあったといたしますと、現在の社会の実態といたしまして、子供がおかあさんに育てられるという実情がだんだん少なくなってくる実情がございます。そういうことを議論いたしております際に、やはり子供がおかあさんに育てられるということが子供にとっては一番望ましいことであるという原則的な話をいたしまして、そういうことが、保育所との関連におきまして、さらに望ましい姿として、おかあさんに育てられるような社会になってほしいというような議論が出ました際に、保育所との対比において、あるいは比較いたしましての議論が出ておるかもしれませんけれども、そういうことと行政としての保育所を充実するということは別の問題でございまして、社会の実情に照らして保育所が重要であり、その内容を充実するということにつきましては厚生省あげまして力を入れておるところでございます。
#13
○辻一彦君 いま局長の御答弁のように、そういうことがないとすれば私はけっこうであると思いますが、私が耳にしたのは、そういうことを聞いたわけであります。で、これは重ねては申し上げませんが、保育所というものが、幼稚園と比べて何か幼児教育の大事な場所だという認識がややもすると欠けがちになる中でそういう発言があるとしますと、表現はいろいろあると思いますが、非常な誤解を与えるので、この点はひとつ十分気をつけていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
 そこで、具体的にお伺いしたいのですが、その保育所がそういう託児所や子守所でないと、こういうことを確認されるならば、たとえば保育所に働く保母さんにしても非常なオーバーワークがあります。朝、早番、おそ番ありますが、八時前後に出まして、そして四時まで――子供が帰るまでずっと子供のめんどうを見ている。そういう中で、食事を十分とる時間もないし、昼休みの十分な時間もなかなか取れないというような状況が非常に多いわけであります。ところが、同じ幼児教育に携わる幼稚園の場合を考えますと、四時間授業をする。そのためにかなりあとの四時間は学習の準備ができる、こういう点、教師といいますか、あるいは子供の世話をするために、かなりなゆとりがあるわけでありますが、そういう点が保育所の保母には非常に少ないわけであります。また、おもちゃがありますが、遊具にしても、厚生省の通達では五千円以上の遊具は買っちゃいけない、こういう連絡がされておると思うんですが、私は公・私立の保育所の保護者会の会長、二つをやっておりましたので、子供が十分元気にあばれておる、こうなりますと、ジャンピングの台だとか、あるいは平均台、あるいはいろんな道具というものがそう長くはもたない、一つの消耗材みたいなものであると思うわけなんです。そういう中で非常に十分な手当てがされてないということは、表現は、保育所は託児所ではないと言われますけれども、その中身を見ますと、どうも託児所、子守所のような実態がかなりあるのではないか。これらの点について担当局長からお考えをお伺いしたいと思います。
#14
○政府委員(松下廉蔵君) 第一の保母さんの勤務体制の問題でございますが、御指摘のように、幼稚園と同じ年齢の子供が通います施設としての幼稚園と保育所を比較いたしますと、幼稚園のほうが短時間の勤務で十分な教育の準備をする余裕がある。それから保育所は大体八時間ないし九時間子供を預っております。そういう実情から申しまして、先生御指摘のような点があることは事実でございます。私どもといたしましては、こういった点を解消いたしますためには、一つは保母さんの定数を改訂する、それからもう一つは、そういった非常に責任の重い重要な勤務にふさわしいだけの処遇の改善をしていくという両面から考えなければならないと思っておるところでございまして、四十七年度御審議いただいております予算におきましても、そういう意味で、若干ではございますが、保母さんが交代で――常勤の保母さんが休憩時間を取るための非常勤の保母さんの定数の増というようなこと、あるいは処遇の改善といたしましては、主任保母さんつきにましては四十六年の当初が四万六千円程度でございましたものを五万四千四百円程度にまで引き上げる、あるいは一般の保母さんが三万六千円程度のものを四万三千円程度まで引き上げるというような給与の改善をいたしまして、できるだけ処遇を改善し、それと並行して保母さんの資質を向上いたしまして、養護と教育の内容が充実できるように努力いたしておるところでございます。
 それから設備の面につきましては、いま御指摘の点は、措置費の経理の方針に関しての指導を御指摘になったんだろうと思いますけれども、措置費の積算はいまいろいろな分野に分かれておりまして、子供の施設でございますので、監査等におきまして、その措置費の運用のやり方につきまして、かなりこまかい指導をいたしております。その段階で、あるいはほかの経費が遊具等に流用されて、それがあまり高額にわたりますと、御指摘のような問題も生じておるかと思いますが、反面、この児童福祉施設全般の運営の方向といたしましては、やはりこれはそれぞれ熱意、善意をもって行なっておられることでもございますし、措置費全体の中でそれぞれのくふうによりまして、遊具が必要な場合にはできるだけ遊具を整備する、あるいは児童の食品を改善するためにもっと安いものを買って努力をするというような点がさらに弾力的にできますように、これは保育所のみならず児童福祉施設全般につきましても今後検討いたし、改善してまいりたい、そのように考えておる次第でございます。
#15
○辻一彦君 ことしの予算案の中にそういう面の若干の前進があったということは私は言える点があろうと思います。そこで、そういう考えからして、いま雇用促進事業団の中に、予算として企業内託児所・保育所、こういう構想があって、五億の予算がついているというように聞いておるんですが、そういう方向は、先ほど言われた保育所を幼児教育の大事な場として公立の拡充を中心に拡大していくという方向と、企業内の中にそういうものを設けるという方向はかなり矛盾をすると思うんですが、そこらの見解をお伺いしたいと思います。
#16
○政府委員(松下廉蔵君) 基本的な保育を充実するというたてまえから申しますと、先生おっしゃいますとおり、やはり公立あるいは公立にかわるべき児童福祉法に基づきます認可保育所を充実いたしまして、地域の児童が、市町村長の措置によりまして、自分のうちの近くの保育所に入ることができるようにするということが原則であることは私どもも全く同感でございまして、そのように努力いたしておるところでございます。ただ、事業所の態容によりましては、たとえば非常にたくさんの子供を持っておられる婦人が就業しておる繊維工業等につきましては、そういう実態が見られるわけでございます。そういうような事業所におきましては、やはりおかあさんの便宜、あるいは場合によりましては交代制勤務等をとる場合がございまして、時間が通常の保育所の育児の時間とはズレてくるというような実態もございます。こういう点は特に看護婦さんの勤務につきまして見られるところでございまして、そういうような意味におきましては、やはり企業内、事業所内の保育施設というものは、そういう地域の保育施設の足らざる点を補完しながら、補完的な意味をもちまして児童福祉に貢献できるという性格を持っておりますので、私どもといたしましても、労働省と緊密な連絡をとりながら、その地域の保育施設を補完するものとしての事業所内の保育施設、こういったものにつきまして考えておるところでございます。ただ、事業所内の保育施設は、先生先ほど御指摘になりましたように、お母さんが仕事をするために子供を預かるというような意味だけでは児童の福祉に結びつきませんので、やはりその内容が、児童福祉法に基づきます保育施設と同様な内容を持って、子供の養護教育が十分に行なわれなければならない。そういう前提がございますので、労働省にもお願いいたしまして、私ども児童福祉の専門の立場といたしまして、事業所内の保育施設につきましてもその内容の充実について十分な指導ができるような体制をとってまいりたい、そういう態度で臨んでおる次第でございます。
#17
○辻一彦君 時間の点がありますから、あまり深くは触れられないと思いますが、いまお話しのように、児童福祉法に基づいて、たとえ企業内に設けられる保育所でありましても、十分大事な幼児教育、その点に力を入れてやってもらうようにお願いしたいと思うんです。
 それから第二に、先ほどから私は保母の問題に触れましたが、それに関連して若干お伺いいたしたいと思います。
 実は、私は三人の子供を、生まれてから七十日目ぐらいから全部乳児保育所に預けて、共かせぎでずっとやってきた。そういう点から、かなり子供を保育所に運搬した経験もありますし、また、公立、私立の保育所の経営をされる、運営をされる皆さんがいろいろな苦労されていること、そういうことを体験いたしましたが、特にその中で保母の苦労というものがなかなか私はたいへんだというように実感をいたしたわけなんです。そこで、朝から夕方まで八時間ないし九時間、ああいうように働いておられるわけですが、たとえば労働基準法に保障された昼食時における昼間の休み、あるいは女性の場合の生理休暇、こういうものが労働基準法に保障されているような状態にあるとお考えになるか、その点、どうでしょうか。
#18
○政府委員(松下廉蔵君) 御指摘の点は、率直にお答えいたしまして、私どもといたしましても非常に苦慮いたしておる点でございます。昨年労働省の労働基準局それから婦人少年局、両局長からの内簡もいただいておりまして、児童福祉施設全般の労働者の状況につきまして、御指摘のような、一般の企業に比べまして若干労働の条件がきついという点があることは私ども認めざるを得ないと考えております。ただ、労働基準法自体の規定につきましては、現在の措置費の積算といたしまして、おおむねこれが最低限度の法律の要件は守れるというだけの手当てはしておるつもりでございます。また、特にいま御指摘の休憩時間等につきましては、先ほども申し上げましたように、そのための非常勤の保母の賃金を増額いたしまして、大体四十七年度からは休憩時間等は正規に取れるたてまえにいたしておるところでございます。ただ、確かに保母の勤務は一般の企業の状況に比べまして、特に週休二日というようなことまでいわれておりますような時代におきましては、なおかなりきつい勤務であることは否定できませんので、今後ともその点につきましてはできるだけ努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
#19
○辻一彦君 労働基準法でいう勤務計画が立てられるような保育所がどのくらいあるか見当はついておられるでしょうか、どうでしょう。
#20
○政府委員(松下廉蔵君) 申しわけございませんが、数といたしまして、個々に分類いたしましてどうという資料ははっきり把握してないわけでございますけれども、ただ、いま申し上げましたように、労働基準法に基づきます法律の規定による正規の勤務を行なうということは、いまの措置費の体系からいたしますと、一応全体について可能であるというふうに私ども考えております。
#21
○辻一彦君 まあ、労働基準法が十分なかなか守り切れないというむずかしさがあるということ、その状態は私もわかりますが、非常にそういう意味のオーバーワークといいますか過重労働があるということを指摘をして、これはぜひひとつ改善をしてもらいたいと思うんです。
 そこで、具体的にいいますと、こういう問題があります。これは私のよく知っている保育園でありますが、たとえば一、二歳児が十五人。こうなりますと、厚生省の基準では二・五人になります。しかし、実際では、三人いなくちゃならない。保母さんの二・五人というのはないわけですから、三人になります。三歳児は三十三人。これは基準でいくと一・七人。これも一・七じゃ、人間をまあ〇・七に分けるわけにはいきませんので、二人になります。それから四歳児が三十八人で一・三人。これは一人見るか、二人見るかという問題があると思いますが、一人見れば非常に過重になるし、二人見ればちょっとゆとりが出るということになります。五歳児が二十二人おるんですが、これは〇・七人。これはやっぱり一人いなくてはいけない。そうなりますと、厚生省の基準では六・二人というのが、トータルで出てきますが、ところが、実際は七人ないし八人を置かなければ――人間端数は切れないわけですから――八人が必要になる。そうしますと、計算では六人の計算で措置がとられる。しかし、実際は八人の保母を置かなくてはいけない。こうなりますと、その負担というものが、たとえば私立の保育所の場合には、保育所の経営のほうの形でしわ寄せになってくる。あるいはどうにもならぬ場合は保護者が何らかの形で少しは分担する。こういう形になるわけですが、こういう矛盾がことしの予算の中で解決をされておるのかどうか。その点はどうでしょうか。
#22
○政府委員(松下廉蔵君) ただいま御指摘の保母の定数の基準、年齢別で計算いたしておりますことはこれは従来のとおりで、その点については四十七年度で特に改訂はいたしておりません。ただ御指摘のような点、保育の実態といたしまして、クラス別をどうするかというような問題にも関連してくるであろうと思いますが、まあ年齢別にそれぞれ厳格にクラスを設けて保育をするということになりますと、いま御指摘のような端数の問題が起こっておるわけでございます。で、私ども、いまの定数のきめ方が、ああいう端数を含めまして、どういうふうにするかというのは、現状のままでいいと必ずしも思っておるわけではございませんので、いろいろとこれは専門家の御意見も伺いまして、今後の検討課題であろうとは思いますが、同時に、いまの保育の動向といたしましては、ある程度年齢の違う子供たちを一緒に場合によっては保育いたしまして、これはむしろ人手の節約をはかるという意味よりも、子供の育成のためには、同年齢の子供だけよりも、大きい子供、小さい子供につきましても一緒に保育をするということが保育技術としても適当であるというようなことも専門家の御意見を伺っておりまして、そういう意味で、三歳未満児、それから三歳児、四歳児以上というような区分を一応定数についてしておるわけでございまして、そういうような点も含めて現場にもごくふうをいただきながら、定数つきにましても今後さらに検討してまいりたいというふうに考えております。
#23
○辻一彦君 そこで、私、それに関連して、零歳児の保育の問題を二、三お尋ねしたいのです、乳児保育になりますがね。
 で、働く母親が非常にふえてきますと、乳児の時代から、生後三カ月とかそういうときから保育所に預けたいという家庭が今日かなりふえておるわけなんです。そこで、乳児――いわゆる零歳児から三歳未満の年齢の小さい子供――を預けたいという希望がふえるのですが、一般の保育所に零歳児を預けることができるようになっておるのかどうかですね、そこらの点はどうなっておりますか、簡単でけっこうですから。
#24
○政府委員(松下廉蔵君) 現在零歳児だけのいわゆる乳児保育につきましては、特別な予算のワクを設けまして、特にどうしてもお母さんが働かなければならない低所得の方のための零歳児の予算を特別に計上しておりますが、それ以外の保育所につきましては、御指摘のように、三歳未満児につきましては一括の計算をするという形をとっておりまして、その意味におきましては、一般の保育所でも、その中の受け入れ体制ができておりますれば、乳児を収容することは可能でございます。
#25
○辻一彦君 これはなかなかむずかしいのですが、きのう私ちょっと厚生省の説明を聞きますと、二割はそういう零歳児も収容するようにという一般的な指導はしていると、こういうことを伺ったわけなんですね。ところが、御存じのように、零歳から三歳未満の場合は六人に一人の定数になっておるわけなんです。小さい子供を預けると、預かったほうは、保育所のほうは非常に手数がかかる。だから、零歳児から三歳児までを一括して六人に一人という今日の定数では、実質的に、その乳幼児という小さい子供を実際的には保育所は預かれないという実態に私はなっておると思うのですが、一般的に指導されても、事実としては預かることができない、そういう実態にあると思います。その点、どうでしょうか。
#26
○政府委員(松下廉蔵君) 乳児保育の問題につきましては、これは専門家の御意見を伺いましても非常にむずかしい問題でございまして、初めに申し上げましたように、基本的には、おかあさんが育ててほしいという考え方があると申し上げましたが、これは特に乳児につきましてそういう専門的な要請が強いわけでございます。そういう意味で、ちょっとほかの話になって恐縮でございますが、労働省から提案されております勤労婦人福祉法でも、育児休業というような制度を考えておられる。やはりできるだけ家庭でおかあさんに育てていただくということが子供のその後の人格の形成上非常に望ましいという要素は、乳児について特に多いわけでございまして、ただ反面、社会の実態といたしまして、そういうことはわかっておっても、どうしても預けなければならぬおかあさんもおられることも、私ども承知をいたしております。ただ、そういう一方、受け入れ体制といたしましては、非常に技術的に困難性がございます。特に、三カ月未満の乳児につきましては、首もまだぐらぐらしているというようなことで、非常にむずかしい点がございまして、そういう受け入れ体制を進めながら、やはり必要最小限度の需要は満たしていかなければならないというのが私どもの考え方でございます。現在の乳児保育の特別ワクというのは、まだ数は少のうございますが、今年度におきましては前年度の倍にいたしまして、こういった考え方は、御指摘のように、需要に応じましてはある程度進めていかなければならないということは、十分考えております次第でございます。
#27
○辻一彦君 乳児保育のむずかしさということは、これは十分あるわけです。そうしますと、どうしても乳児専門のやはり保育所をつくっていくということが、いろいろの設備の点からしても必要になってくる。
 そこで、私は福井県のほうですが、具体的に乳児保育所が設置されている内容を見てみると、鉄筋で六十人定員の場合に、建物で二千万円、それから備品で三百万円。二千三百万円ぐらい大体かかると、こういうのですが、ところが、国の補助の対象になるのは六十人の場合は五百万ですね。したがいまして、国が半分、さらに、県がその半分を負担しますと、三百七十五万の補助になる。そうしますと、二千三百万から三百七十五万引きますと千九百万。大ざっぱな数字ですが、千九百万円というものを自治体、もしくは私立である場合には、そういう特別な負担をしないとなかなか乳児保育所が実際としてできないわけですが、予算的にこの程度では乳児保育所を充実するといっても事実できないのですが、厚生省のほうでは今後、こういう基準といいますか、こういうものを変えていくようなお考えがあるのですか、どうですか。
#28
○政府委員(松下廉蔵君) いまの保育所の整備費の基準単価の問題につきましては、何回か、非常に御指摘をいただいておるところでございまして、私どもといたしましても、従来、もうこれはできるだけ引き上げたいというふうに努力をしてきたところでございます。非常に従来御要望が多かったために、ある程度の型を設定いたしまして、それに対する、まあ低額とは申しませんけれども、そういう型別の単価をきめるというような形で従来施行してきておりましたなごりが現在でも残っておりまして、ただいま御指摘のように、実額に比べましてかなり低い額になっておることは私どももよく承知をしております。申しわけないと思っておるところでございまして、今後、できるだけ予算の操作の段階で改善してまいりたい、そういうふうに考えております。
#29
○辻一彦君 これは乳児保育でなしに、木造平屋の場合、これも私の関連のある保育所ですが、福井で、六十名で大体千三百万かかる。で、千三百万から同様三百七十五万引きますと、やっぱり九百二十五万。こういう、乳児保育にしましても、一般の保育所にしましても、いま御答弁のとおり、実際の基準というものがかなり低いという点から、自治体や、あるいは私立の場合にはその設置者に非常に負担がかかっているという実態であると思います。実は、公立がだんだん少なくなる――減るわけじゃないですが、公立の建設率が落ちて、私立がふえていく反面には、補助金だけ自治体は出して、経費のかかることはひとつもうほかにまかしていこうというような方向が非常に強くなっておるのですが、この傾向は、私はこういう状況がこのまま放任されれば、ますます強くなっていくのじゃないか。早急にひとつこの点を改善をしてもらって、やはり保育所の基本は、公立が充実をする、そういう方向ができるようにしてもらいたいと思うのです。足りないところを、私立を充実して拡充していく。こういうことで、何といっても、私は先ほどの数字のとおり、非常にこの数字、いわゆる低額ではないんだけどとおっしゃいますけれども、まあどうも実態は低額みたいなものであって、実情には非常に数字が離れておると。この点は、重ねてひとつ指摘をして、この点の改善をこれからひとつ早急に求めたいと思います。
 それから、非常に限られた時間になりますので、これに十分な論議ができないのでありますが、基準単価の問題が出ておりますので、私は関連して運営費におけるこの基準単価の問題で若干質問したいと思うのです。
 実は福井県に武生という市がありますが、五カ所の公立と七カ所の私立で十二カ所の保育所があって、その運営に要する経費は大体九千四百五十四万一千円と、こういうように大体いわれておるのですが、法律上はこのうち国が十分の八、県が十分の一、市が十分の一負担するということになっておりますね。ところが、実際の基準単価が非常に低いので、計算をしてみますと、国の負担は十分の八といいながら十分の四・二、それから県はずっと下がって十分の〇・六、市の負担は十分の五・二というように、基準上は十分の一の市の負担が実際は十分の五・二負担をしなくちゃいかない。そのうちの十分の三は保育料として保護者の負担にかかっている。この点は、法的にいうと、この基準からいいましても、十分の八と十分の四・二というのは、たいへんな数字のかけ離れが、へだたりがあると思うんですね。こういう点に、どうもこの基準単価の算定に、実情にあまりにも合わなくなっている点が出てきているのじゃないかと思うんですが、この数字をお聞きになって、どういうふうにお考えになるか、それをお伺いしたいのであります。
#30
○政府委員(松下廉蔵君) ただいまの保育の措置費のほうの問題だと思います。
#31
○辻一彦君 措置費、運営費。
#32
○政府委員(松下廉蔵君) 措置費につきましては、先生御案内のように、実際に措置に要しました所要額、公費で負担いたしました額、これを国の基準によって計算いたしまして、そのうちで、保護者が全部または一部を負担し得るものは保護者が負担するということは児童福祉法に規定されておるところでございます。それを保護者からいわゆる徴収という形で負担していただきまして、その残った額につきまして国が十分の八、県が十分の一を負担するという形で操作をいたしておるところでございます。御指摘の点は、したがって、いまの十分の三の保護者負担というのは、これは市町村の負担の中から除きまして、その残りについて補助率を計算するわけでございますが、ただ、地方公務員とそれから措置費の基準は国家公務員のベースによりまして、先ほど申し上げましたような一例でございますが、保母の給与等計算してございますので、地方公務員のほうがあるいは施設の職員のほうが給与が高い場合には多少の超過負担という問題が生じておるわけでございますけれども、基本的には給与が児童福祉の関係者一般に低額であるという初めの御指摘の点もございますので、そういった点も含めまして基準単価につきましては今後とも実情に合った改善をしてまいりたいと考えております。
#33
○辻一彦君 次に、私さっきの問題では、計算では武生市に三千九百万円の不足で、これが市民の税外負担あるいは市の財政からいえば超過負担になると、こういう計算が数字でされておりますが、こういうものを私は一日も早くひとつ解消されるように、これは単にこの市だけじゃなしに共通する問題であると思いますから御努力をお願いしたいと思うのです。
 それから次に私は私立保育園の問題について触れたいと思うのです。先ほど申し上げたような状況から、自治体はなるべく公立で建てるのを敬遠をして、一定の補助金だけを出してあとはひとつ全部私立保育園にまかしてしまうと、これはいわば安上がりな方法でありますから、そういう傾向がたいへん強くなっている。そんな中で、この公立の足りない面を何とか補いたいと、こういうことで私立保育園を経営する人も非常に御苦労を私はされておると思うのです。そこで、その中で、この私立のほうの認可申請等の書類を見ますと、これはまあ私は実態を聞いたんですが、実際は非常に苦しいんだが、しかし認可をもらうためには大体つじつまを、収支を合わせなければいかぬので、無理な計算をして合わして認可をもらって保育所をつくっているんだということで、厚生省の皆さんがごらんになる書類は収支が合っておりますけれども、実際はかなり苦しい状況にあるということが私言えるんでないかと思うんです。そこで、たとえば私立の保育所ですが、自治体のほうで補助をもらうということで六十人の保育所をかかえた場合に、先ほどのように基準が五百万になりますから、千三百万円かかるとしますと、五百万を引いて――五百万というのは国が四分の二、県が四分の一、市が四分の一負担したとして五百万の補助があると、八百万融資を受けてそれで私立の保育所を建てているという状態になります。そこで八百万の融資といいましても、結局は返さなければならないお金ですから、借金になるわけなんです。そこで八百万の借金を返していくということになりますと、一体こういう経費をどこから捻出することができるのか、あるいはそういう新しく建て直す場合を考えていまの建物の減価償却費、こういうものが全然見られないわけですが、そういうものをどういうところから捻出をするのか、あるいはまあ社会福祉事業振興会の資金で五・一%の金利がありますね。これはほかに比べればかなり低いわけですが、こういう金利をもっと下げるとか何かの方法を講じないと、私立の経営をやっている方は五万九千円の給与を自分で一応もらっているけれども、その中身は寄付という形でいろんな経費に充てているという実態が非常に多いのですが、私は、私立保育園は、こういう非常な犠牲といいますか負担の上に今日公立の足りないところをカバーしている状態である、こう思うのですが、そこらをひとつどういうふうに見ておられるか、時間の点もあまりありませんから簡単でけっこうですが、答えてください。
#34
○政府委員(松下廉蔵君) これは保育所に非常に御指摘のような例が多いわけでございますけれども、私立の社会福祉施設全般の建設費につきましてだれがどういうふうに負担するかという問題になろうかと存じます。で、現在の政府のたてまえといたしましては、あくまで措置費はそのときどきにそこへ収容されます子供なら子供、保育所の場合ですと子供さんの処遇のための経費という考え方でございまして、その設置費につきましての減価償却あるいは借金の返済というようなことは計算されていないわけでございまして、これはやはり私立の社会福祉事業の特殊性といたしまして、民間の人たちが善意を持ってある程度の個人負担をもって建てていただくということが前提になっておる。これが一応の現在のシステムでございます。ただ、一つは先ほど申し上げましたように、現在の単価が非常に低いために補助率というものが実質上かなり低くなっておるという点から、当初考えられておりました以上に自己負担が多くなるという点。それから、いまの社会福祉事業振興会の融資の条件というような問題があるわけでございまして、こういった点、私どももいま直ちに措置費をもってこういった条件を満たすということは、措置費の性格上困難であろうと存じますので、やはり今後の補助単価の問題、それから民間社会福祉施設全体の運営をどういうふうにするかという問題を含めまして、できるだけ改善する方向で検討さしていただきたいと考えております。
  〔主査退席、副主査着席〕
#35
○辻一彦君 地代だとか火災保険とかいろいろな経費が要るわけですが、それを民間の善意だけになかなか期待し得ない状況なんで、いま御発言のように、それをひとつ改善する方向で努力を願いたいと思うのです。
 それから、当面償却費等が見られぬとすれば、せめて金利を一つの用地に八百万とか一千万借りておるのですから、そういう金利をもう少し安くなるように国のほうで金利補給をする、こういうような考えは持たれないか、その点、簡単にひとつ。
#36
○政府委員(松下廉蔵君) 社会福祉事業振興会の財源は、御承知のように、これは年金の積み立て金が主体でございまして、これはやはり将来の年金の給付の財源といたしましてある程度の財源計算をいたしまして運用いたしておるところでございますので、この金利を社会福祉施設のために現在より安くするということはなかなか計算上困難であろうかと思います。ただ、いろいろな融資の条件等につきましても御要望もございますので、私どもも今後振興会を所管しております社会局等とも相談いたしまして、改善する余地があれば検討いたしたいと考えております。
#37
○辻一彦君 そこらをもう少しくわしく聞きたいんですけれども、時間がたいへん迫っておりますので、あと二、三残っている問題に移りたいと思います。
 一つは小規模保育の問題なんです。これは過疎地指定地域には三十人の保育所を認める。それから、過密の都市にも、場所の関係から三十人を認めるときもありますが、問題は、私らの北陸のように過疎指定にはならぬけれども、準過疎に近い地域が農村、山村にかなり多いわけなんです。こういうところは保育所をつくりたいのだが六十人はちょっと満たないのでなかなか認可が得られない。そこで季節保育所をかなり長期にわたってやるというような変則をやっている場合が多いのですが、こういう準過疎地帯に対して保育所が設立設置できるように対策というか考え方がないのかどうか、その点、ひとつ伺いたい。
#38
○政府委員(松下廉蔵君) 過疎地におきます小規模保育所、六十人未満三十人までの特別な単価を認めましたのは、本来、先生御指摘のように、保育所の運営規模から申しますと六十人が最低限度の効率的な基準でございますけれども、そういうところは定員割れをいたしまして運営が困難になってくるというような実態に着目して行なったわけでございます。で、現在自治省のほうとも緊密に連絡をとりまして、過疎地帯の指定もだんだん広がってきておりまして、四十七年度におきましても、この過疎地帯のための小規模保育所の数はかなり増加をいたしております。で、こういった点は過疎というものをどの程度にまでそれぞれの対策においてとらえるかという問題とも関連すると存じますので、自治省のほうとも緊密に連絡をいたしまして考えてまいりたいと考えております。
#39
○辻一彦君 まあ、そんな過疎指定地域がどんどんうちらの県でふえたんではほんとうは困るんで、準過疎くらいにとめておかなければいかぬわけですが、そういう準過疎地帯というのは案外いま多くて、そこは、過疎地帯に指定にはならないけれども、実際は保育所が発足して、しかし園児が六十人には満たぬと、こういうことでいろいろ苦労しておるのが多いわけですね。そこで、たとえばこういうことを努力しておるところがありますが、スクール・バスじゃないんですが、保育所を回るバスですね、こういうものをやってかなりな範囲から子供さんを乗せてそして定員をある程度確保するというような努力をしておるところもあります。これは特定の町村でそういう努力をすれば可能な場合もありますが、こういう保育所のスクール・バスというものに対して、国が準過疎地帯に対する対策として何らかの手だてが考えられないか、その点、どうですか。
#40
○政府委員(松下廉蔵君) 保育所の分布状況、普及状況が、これは地域によりましてかなり差がございまして、そういった点で、いろいろな意味で先生いま御提案のような御要望は承っておるところでございます。ただ、保育対策費全般の中で、初めに先生御指摘になりましたような設置費の基本的な問題がございまして、どこを優先して考えていくのが最も効率的でありまた子供のためになるかというようなことも含めまして今後検討さしていただきたいと考えております。
#41
○辻一彦君 それは十分ひとつ努力を願いたいと思います。
 もう一つは、私、学童保育の問題を――文部省の方見えておりますね――ちょっとお尋ねしたいんですが、まあ先ほどから申し上げたように非常に共かせぎの家庭が多くなっている。そこで、就学までは保育所に預かってもらえば大体四時まで、それから場合によっては長時間保育と、こういうことによって五時半ごろまで預かってもらえる。――長時間保育の問題、あとでちょっと時間があれば質問いたしたいと思うんです。
 そこで、この保育所自体は、何とか保育所もしくは長時間保育で子供をつとめから帰るまでは預かってもらえる。ところが、学校へ入りますと、お昼で、午前中に一年生は授業が終わっちゃう。うちに帰ってくる。そうすると、私は、まあ県営団地といいますか、団地に住んでおりますが、そういうところへ帰ってくると、子供は部屋の中に入っちゃってテレビを見て、いわゆるかぎっ子という状況になる。これは非常に児童教育からいって問題があるところであると思うんです。そこで、せっかく保育所でずっとめんどう見てもらってきた子供が、学校へあがってあと半日はテレビを見て終わっているというんでは問題があります。そういう点についての幼児教育、児童教育という点からの対策ですね、そういうものをどうされておったか、お伺いしたい。
#42
○説明員(川崎繁君) ただいま先生御指摘のとおり、特にいまの子供たちの遊び場でございますとか、特に御指摘のかぎっ子の増加等に伴います対策、たいへん重要な問題だと思っております。私のほうといたしましては、現在、これらの児童を含めまして広く地域の子供たちの、学校が終わりましてからあとの遊び場の不足の解消の問題やら、あるいはまた、地域の子供たちが、そこで集団的な活動を通して児童の育成に資するというふうな観点から、校庭開放事業の推進をはかっております。本年度の予算にいま計上せられております――御審議をいただいておるわけでごさいますが――額は二億三千九百七十五万円でございまして、市街地の学校約三千五百校を開放する予算としてこの事業を推進すべく現在進めておるわけでございます。
#43
○辻一彦君 前に文部省は、学童保育、留守家庭児童会育成制度という名前で助成をして、学校の子供を集めてそこでめんどう見ておったそういう助成があったんですね。ところが、昨年からか、あれは打ち切りになりまして、福井県のほうで七カ所ほど、主婦が一生懸命になって、学童保育の場所を教会等を使ってやった。それが国の助成が打ち切られると同時にまた消えてしまった。残念ながら定着していないんですが、こういう問題をさらに復活させるというか、何かの対策によって、教会やその他の施設にもう少し子供を集めてやれるような、そういう条件を何か考えられる対策がありますか。時間が終わりですから、ごく簡単でけっこうです。
#44
○説明員(川崎繁君) 実は、これは私どもの指導の不徹底もございまして、十分反省をしておりますが、実は四十六年度から、従来ございました留守家庭児童会の育成事業の補助でございますが、これはいま申し上げました校庭開放事業の中に統合いたしまして、これはまあひとりかぎっ子だけを対象にした児童会組織でやるよりは、非常に交通事故も最近多発しておりますし、あるいは遊び場も非常に少なくなってきておる。こういう観点から、これらの児童を一般の児童と一緒に含めましてやっていく、こういうことで統合しておりまして、廃止をしておらないんでございます。そういう趣旨のことを十分われわれもいま徹底さしておるわけでございますが、この点は誤解のないように御了解いただきたいと思います。
#45
○辻一彦君 最後ですが、これは要望しておきますが、廃止というか助成がなくなったという受けとめで、それでは市町村もやめたという形でとまってしまったところが非常に多いんです。実態を調べて対策を立てていただきたいと思うわけです。
 最後に私、大臣にお伺いして終わりたいと思います。それは福井県で就学前の児童が約七万人、私の県一も幼稚園が一万二千人、保育所が一万八千人、措置を要する児童二万三千七百人といわれております。私のところのような小さな県でも二万三千七百人の就学前の子供が、まだこういう幼稚園にも保育所にも行けない、措置を要すると、こういう対象になっております。全国で見れば私はこれは相当な数に上がると思う。それはどのくらいの数であるかということをひとつ大臣に御確認をいただいて、そうしてこれらの就学前の児童に対して、保育所あるいはその他の施設によって拡充をはかるということが私は幼児教育の非常に大事な点じゃないかと思いますので、その点でひとつ大臣のこれからの考え方、そういうことをお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
 なお、長時間保育あるいはいろんな施設等の問題について社会福祉で聞きたいことがあったんでありますが、時間が来ましたので、これをもって終わりたいと思います。
#46
○国務大臣(斎藤昇君) 私のほうでも今日いわゆる保育に欠ける児童を保育所で保育しなければならないと推定している人数が相当多いわけでありまして、そういう意味で、昨年から五カ年計画をもって、五カ年目にはどうやらそれが収容できるというようにいたしたいと思います。その数字は昭和五十年までにこれからまだ三十四万人も措置をする必要がある、かような推定をいたしておるわけでございます。よろしく。
#47
○上田哲君 冒頭にお伺いしますけれども、昨年の十二月二十日の委員会で、総理から厚生大臣ともどもにお約束をいただいた広島原爆の資料ですね、アメリカにあるもの、サンクレメソテの会談で十分話し合うということを総理が議事録にとどめておられるわけですが、その辺はどうなったか、まとめてひとつ御報告いただきたいと思います。
#48
○説明員(橘正忠君) お答えいたします。
 昨年、先生御指摘のとおり、この問題が提起されましてさっそくにワシントンにありますわがほうの大使館を通じまして米側に照会をいたしました。その際、この問題に対する日本側の強い関心も十分指摘いたしまして米側に照会したわけでございます。
 まずその事実関係を確かめてみようということから話が始まりまして、それで、先生御指摘の資料は、米側でいろいろ取り調べました結果、一九四五年の九月から同年の十二月までの間に、つまり原爆が投下された直後からその年の暮れまでの間に、米国の陸海軍の医療団が、日本側の学者にも協力してもらって、関係の資料を集めて持ち帰ったものであるという事実がまず判明いたしました。それはいろいろの資料があるようでございまして、とりあえず連絡が来たのは、いろいろ顕微鏡用の標本であるとか、スライドであるとか、あるいは衣料であるとか、あるいは一部の写真とか、そういったようなものが入っておるということがわかりました。あるいは統計の資料というようなものもあるようだということでございました。で、直接その関係の米軍の病理学研究所、そこでは、こういう資料について、当然日本側のものであると考えられるものであればこれはお返しいたすのに何らやぶさかではございませんということを申しておりましたが、現物が全部病理学研究所にあるというわけでもない。一応目録はあるけれども、実際の保管はいろんな関係の機関にその後渡って保管されておるものもあるということで、これをまずとりあえず取りそろえることをやろう。それから、ものによっては、いろいろ今後の研究の継続のためにも、日本側にお返しする場合にも、コピーというようなものをとっておかねばならぬものもあるかもしれない。それで、まず第一段階は、そういうものを取りそろえます。それから、そういう点も、いろいろ米側としてのもし必要があればそういうコピーをとるというようなこともやらなければならない。若干それに時間がかかるかもしれないので、その点はひとつ御了承を得たいというようなことをただいま申しておる。したがいまして、基本的な考え方については、米側内部も日本側の強い関心を承知しておりまして、ずっと上のほうにも話は行っておるからその点は心配なく、ひとつそういう事務的な手続的な面の時間のかかることだけをとりあえずこの段階では御了承していただきたいということで、いまそっちのほうの作業を進めておるというのが現状でございます。
#49
○上田哲君 そうしますと、昨年暮れに私が二回にわたって質問をいたしましたとおりの内容があったということが言えるわけですね。
#50
○政府委員(滝沢正君) 当初、先生の御質問に「病理学」というようなことで、また突然のことであり、私もこの内容を承知しませんでしたので、少し先生の御質問の趣旨に沿わない御答弁を申し上げて失礼いたしましたが、結論から申しますと、先生のおっしゃるとおり、病理学的なもの以外の、たとえば建築物に対する影響の研究等、それからいろいろの衣服の当時の標本等を含めまして、先生のおっしゃるとおりのかなり広範の資料があるということがわかったわけでございます。
#51
○上田哲君 これはやはり非常に重大でありまして、ぜひひとつ話を詰めて、これは日本のものですから、広島の原爆記念館にある資料は非常に少ないわけですから、そういう意味では、ぜひ日本に持って帰ってくるという交渉を鋭意進めていただきたい、こう思います。
 これはサンクレメンテでは話し合われたわけですか。
#52
○説明員(橘正忠君) 先ほど申し上げましたとおり、さっそくに米側に注意を喚起して調べてもらいまして、米側も、誠意をもってこの調査に当たります、それから、日本側の関心のほどは米政府の内部の上層部にもよく話しておきますということでございましたので、まあ、先生の御指摘の件が契機になりまして米側内部が十分上のほうにも話を通じておるということでございまして、したがいまして、それから先は実はやや事務的な関係に入ります関係上もありまして、時間の関係でサンクレメンテの段階で具体的に話を出したということは私ども事務方は伺ってはおりませんが、事務的に向こう内部も話を進め、わがほうの日本側の関心を上層部にも全部通じてあるということを聞いております。
#53
○上田哲君 まあ、総理はサンクレメンテの会談でぜひ話し合うということを答弁されているわけなんで、そのこと自体を問題にはしませんけれども、
  〔副主査退席、主査着席〕
いまのお話を総合すると、私の指摘したとおりの非常に膨大な貴重な資料がアメリカ側にあった。それは日本側としては最大の誠意をもって返してもらうように交渉をしていると、そしてアメリカ側としてはそれにこたえて、第一段階は資料の整理をする、またコピーなどもとる、そしてなるべく早い機会に日本に返したいと思っていると、こういうふうに考えていいわけですね。そうだとしますと厚生大臣、政府として、これは前に原爆フィルムが返って大きな反響を呼びましたけれども、学問的な意味でもそれ以上の意味もあるとすら言える。非常にまた量の多い資料でありますから、これはひとつ一刻も早く返してもらうように、そしてまた、それの日本の受け入れ態勢を十分に考えるように御処置をいただきたいと思うのでありまして、この点についてひとつ総合的な御決意を賜わりたい。
#54
○国務大臣(斎藤昇君) ただいま政府委員から答弁いたしましたように、この原爆資料は、アメリカも非常に誠意をもって対処しよう、日本側の要望にこたえようということで、交渉、作業ともに順調に進んでいるようでありますから、いまおっしゃいますように、日本にこれを返還をしてもらい、そしていかに保存するかということを、その資料の内容がだんだんわかってくるにしたがって、ぜひおっしゃるように実現をいたしたいと、かように思っております。
#55
○上田哲君 その際日本側の受け入れ機関はどこになるのか、また、研究目的等はどういうふうなことを考えているなら考えているか。それから、返ってくるのはいつごろになるか。
#56
○政府委員(滝沢正君) 先ほどお答えいたしましたように、また、先生のおっしゃるとおりの広範な資料でございまして、われわれこの問題を取り扱うのに、資料館の立場からいきますと、広島市の原爆資料館の関係者がやはりこれに参画していただいて、場合によっては現地に派遣することを考えたらどうか。これは私の一つの判断でございまして、まだ上司との御相談はしてない問題でございます。
 それから病理学の問題は、ABCCの解剖資料もいま全部広島大学の原医研の医学資料館に集めておりますので、やはりその関係者の御意見等、また現地の把握が必要ではなかろうか。したがって、一般資料の関係と医学の病理学の関係者の現地派遣ということを検討いたして、それに基づいてその受け入れと保存の問題等も現地で見た上で検討したらどうかというふうに私は考えております。
#57
○上田哲君 わかりました。大体その方向で私もいいと思います。現地派遣というのは当然だと思いますよ。まあ、やる気がこれだけ出てきたんだから、大臣の御答弁もあったんだから、これは一つ私は了承しておきます。しかし、まあ一言いえば、戦後二十数年間これだけ膨大な資料が――原爆資料としてはこれは最高のものでしょう、おそらく。これを全然わが国がほっておいたというのは、これはたいへんなことですね。指摘したとおりのことが出てきて私もほっとしましたけれども、どうかこれは貴重なものとして精一ぱい、細大漏らさず、返ってきたらこれを大切にして十分に役立てるということを、これまで二十数年の怠慢も含めて、しっかりやってもらわなきゃならぬ。重大なことですから、大臣、ひとつ、その御決意をもう一ぺん承りたいと思います。
#58
○国務大臣(斎藤昇君) 確かに、おそらくこれは世界にない資料であると思います。ことに、これは日本がそれだけの大きな犠牲を出したわけでありますから、当然のことだと思います。いまおっしゃいますように、これはぜひ実現をいたしてまいりたいと思います。
#59
○上田哲君 了承しました。ひとつ、ぜひこれはがんばってください。
 さて、問題を変えまして、きょう私は子供の精神病についてお伺いをいたします。厚生省はすでに四十五年の五月に心身障害者対策基本法というものを打ち出しているわけでありまして、重点施策としてこれを考えておられると思うんです。だから、重点施策となっているということについては認めるんだけれども、そしてまた、努力がないなんという追及を私はしようと思っているんではないが、結果的には、今日、子供の精神病という問題はおそらくは最大の対策上のポケットになっているんじゃないか。しかも、その問題の重さというものは、おそらくはまあ厚生省当局も一番頭を痛めてなければおかしいということだろうと思うのです。
 そこで、まあ、少し問題をしっかり掘って、方向を明らかにしていただきたいと思うのですが、まず第一に、一体――まあ学術的にいえばことばは精神障害児とかいろいろ言うんでしょうが、精薄と精神障害児の区別がどうだなんということばはもういいですから、てんかんが入るかどうかなんという区分もいいですから、わかりやすいことばでいって、子供の精神病、これについて、大体いまどれぐらいの数があるのかということからひとつ説明してください。
#60
○政府委員(松下廉蔵君) 精神衛生実態調査の際の資料によりますと、これは年齢区分が十九歳までとっておりますので、正確に申しますと、いまの児童福祉法の十八歳よりちょっと多くなっておると思いますが、約三十五万、有病率約二%というふうに承知いたしております。
#61
○政府委員(滝沢正君) 先生のお尋ねの小児の精神病院へ入所している実態を、まあ実態の一部として申し上げたいと思いますが、十八歳未満の在院児童精神障害者の数は、われわれの実態調査によりますと五千五百六十九名でございまして、全入院患者の二・二%、この中で、児童の専門病室あるいは病棟を持っておる施設が、千三百四十八調査施設のうち四十八施設ということでございます。それから、児童の特定な外来、児童精神障害者の外来をやっている施設が千三百四十八のうち二百二ということでございます。そのほかに、遊技室を備えているのが百十というようなことで、機能としては御指摘のとおり非常に今後のきわめて重要な問題でございます。で、この五千五百の数の診断別区分を大ざっぱに申しますと、約三分の一が精神分裂病でございまして、約二千、それからてんかんが二〇%で千二百、それから精神薄弱が千、神経症が三百五十、自閉症が二百五十、こういうような数字でございます。
#62
○上田哲君 それはわかっているから、時間がないからいいです。大体わかっていることはわかっていますから。
 時間を節約してひとついきます。問題点を私は洗っていきたいので、数字上の実態は、また私のほうの資料で申し上げよう。たとえば、いまの数字はざっと三十五万と言われるけれども、三十五万五千が三十八年、十年前は三十九万とか、こまかい数字があるでしょう。三十五万でいい。これは推定ですからね。ほとんど推定以上わからぬのですが、しかし、三十五万という子供の精神病がいる。これはたいへんなことですね。三十五万の子供の精神病がこの日本じゅうにいるんだ。もっと大事なことは、いま、するすると言われたけれども、二・二%だ。つまり五十分の一しか収容されておらぬということですよ。子供の精神病が三十五万人いて五十分の一しか収容されておらぬとなると、五十分の四十九はどういうことになるのか。これは、私は、問題の第一だと思うのですね。ここんところをひとつ問題にしていきたいのですが、これは総論をやってもしようがないから、ひとつ問題点を洗いながら御意見を承っていきますが、問題は、まず入っている子供たち――五十分の一のほうをとらえても、大体入っているところは子供の専門病棟ということはないでしょう。おとなの精神科というものに入っていることになっているのではないか。あるいは子供の場合は精薄施設に入っていることにならぬか。つまり、プロパーなところには入っていないのじゃないか――それは入っているのもありますよ――ここに入っていることになっている全部の五千五百人――七千五百人くらいの数ですね。入っているのは五千五百人くらいで、外来入れてそういうことになる。七千人ちょっとでしょう、微々たるものですけれども。それがそういう形になっているのじゃないかという点はどうですか。
#63
○政府委員(滝沢正君) 専門病棟の問題は、先ほどちょっと申し上げましたが、結論を申しますと、きわめて数の上で貧弱な数字でございまして、病室程度持っているものを加えて、先ほど申し上げましたような数字でございまして、四十八施設程度でございますが、病棟を持っているのは千病床で、国立の国府台病院を入れまして約十施設ぐらいしか公的病院でございません。しかも、選別ということでございます。ですから、精神病院の中の病室で、あるものは五十ぐらいある。それから病棟として独立している、子供のものを持っているものが十施設ぐらい。こういうのが実態でございます。
#64
○上田哲君 いや、だから問題は、入っているところが子供プロパーじゃなくて、おとなの精神科へ入っているのじゃないか。小児精神科というのはないでしょう。小児精神科というような、いま区分がないでしょう、内科、小児科というような意味での。そういう意味でおとなの精神科のところへ入ってやられているのじゃないか。あるいは精薄の施設に入っている。精薄と精神障害、違うのだから、これは。違いますね。それが一緒になっているんじゃ適切な治療ができないことは明らかでしょう。つまり、たいへんことばは悪いけれども、子供の精神病――精神病といえばまだことばはいいのですよ、もっと俗なことばがあるのだけれども。子供の精神病というのは適切な治療を受ける環境、条件になっていないわけですね。実態はどうかということじゃなくて、これは困ったことですね。どのくらい困っているかということを聞いてみたいんですよ。
#65
○政府委員(滝沢正君) その問題は、専門病院がないことはもう御指摘のとおりでございまして、子供プロパーで、子供だけの病院というものはわが国にはございません。その基本の問題として、子供の精神障害を取り扱う専門医が非常に少ないという問題が基本にございますので、そういうことを踏まえて……
#66
○上田哲君 困っていますね。
#67
○政府委員(滝沢正君) たいへん困っておるわけでございます。
#68
○上田哲君 それじゃそれでいいです。いじめているんじゃないんだ、私は。問題点をしっかり出して――大蔵省も来ていますね。よく大蔵省に聞かそうと思っておるのです。だから、しっかりポイントで答弁をしてください。
 そこで精薄施設と精神病棟の場合を考えてみると、一方には医療がない。一方には福祉がない。まあ生活指導というか教育指導というか、そういうものを含めてですね。そういうちぐはぐな形というのがありますね。つまり、子供はこの谷間に入っちゃって、まるっきり救いようのない形の中にあるということだと思うんですよ。
 もう一つの問題はね、これはいま国庫補助で整備された施設が八カ所ですか――八カ所ですね。これはたとえば去年、おととしなんというのはつくってないですね。
#69
○政府委員(滝沢正君) おっしゃるとおり、去年、おととし、この問題、病棟の整側の関係はやっておりません。
#70
○上田哲君 これだけ困っていて、そして実際にはもうプロパーな対策にならない状況でありながら、八施設というのは少ないわけですけれども、その八施設も、去年もおととしもつくれてないと。これはどういうわけですか。大蔵省に聞いたほうがいいんですか。
#71
○政府委員(滝沢正君) この点につきましては、先ほどちょっと触れて、まあ先生の御意見もございましたが、小児の専門家の医者がいないということがたいへん問題になっています。私のほうの順序としては、小児の専門家の養成ということでことし予算ができまして、したがって、県から、あるいは公的の国の補助対象になる地方自治体等からの小児病棟の建設等の御要望がない。それは私のほうでは優先的に精神病棟のほうに補助金から回すということを、部長会議その他でも通知でも出しているんですけれども、御要望がない。したがって、そういう専門にやる医者がないために、まだ地方にそういうその機運が盛り上がってこない。率直に申しますと、そういうことで、国の施策の出し方も十分でないかもしれませんけれども、そういうような関係から実行上できない、こういうことでございます。
#72
○上田哲君 そんなことを言ってりゃあなた、援護射撃しようと思っているんだが、これは話は変わってくるよ。金は要らんのかね。金のことは心配ないけれども、医者がないからできないという話かね。地方に熱意がないからできないんだという話かね。それでいいですか、よきゃ知らぬぞ、こっちは。
#73
○政府委員(滝沢正君) 正直に申し上げますと、そういうことでございますので、われわれとしては老人病棟とそれから小児の精神病棟の整備ということはきわめて重要な課題で、それを優先するということで、あとはもう公的病院の精神病床の増床については、増床するということは、よほどその事情が必要が認められなければ見ない。むしろ、新しい子供の病棟や老人の病棟というものの整備に重点を指向しておる。こういうことでございます。
#74
○上田哲君 応援したい熱意がなくなってくる気持ちがしますがね。大臣、いいですかね、こういう答弁で。私はまあよくわからぬな、こういう反応が返ってくるというのは。一生懸命データを調べたあれからすると不満がありますがね。まあいいでしょう。
 それでは伺うけれどもね、その八カ所でベッドがありますね。そのベッドが全部合わせると七百ベッドだ。半分しか入ってないじゃないですか。七百ベッドのうち入っているのは半分ですよ。何で要らないんですか。五十分の一、二・二%しか入ってない。しかしベッドは七百しかない。それの半分しか入れてない。医者がないなんという説明ならあとでぼくはぎゃふんといきますよ。
#75
○政府委員(滝沢正君) 先ほど千ベッドと申しましたので、八にいたしますと七百床でございますが、現在の問題としては、やはり医療従事者の不足等の理由が主でございまして、子供の患者がいないというんじゃなくて、そういう理由から、必ずしも十分な利用がされておらないというふうに、たいへん残念でございますが、実態としてはそういうことでございます。
#76
○上田哲君 全部医者のところへ話を持っていくわけですな。それじゃ話がおかしいと言うんだ、私は。あなたは、じゃ念のために伺うけれども、いま患者何人に医者何人、医師が何人で、看護婦が何人で、それから保母が何人で、心理検査員は何人だというのを物を見ないで言ってごらんなさい、医療法でどうなっているかというのを。うしろから聞かないで答えなさいよ。
#77
○政府委員(滝沢正君) 医師が、精神障害の場合は、三十人に一人というようなこと。それから看護婦が、一般的な精神障害の場合は六人に一人でございますが、児童の精神障害者の場合には、少なくとも四人に一人ということが必要だというふうに私は理解しております。
#78
○上田哲君 それはやっぱり医療法をよく読む必要がありますね。重症心身障害児はいろんなケースがあるけれども、おしなべていえば一・五人に一人。これは、しかし、医師じゃありませんよ。医師、看護婦、保母、心理検査員、全部合わせたトータルの数字ですよ。そのトータルでいえば、この場合は五人に一人ですよ。まあ数字的にはちょっと問題がいろいろ出てくるんだけれども。そういう状況からいって、これは根本的に問題が幾つか出てくる。医師が足りない。なるほどそう言っていれば、ことばは薄っぺらですけれども説明にはなりますよ。しかし、あなたのほうは医師をふやそうということを、たとえば医師の養成、たとえば医療法上の基準の改訂、こういういう努力をやっていますか。具体的にやっているのなら言ってごらんなさい。
#79
○政府委員(滝沢正君) 四十七年度の予算で、小児専門の医師の養成と申しますか、医師になっている方の研修でございますが、これを、初めて予算化いたしまして、小児精神医療の充実の第一歩を踏み出したという程度でございます。
 それから医療法の改正の問題につきましては、医務局所管でございますけれども、この問題は将来の病院の専門分科に伴いまして、いまの医療法の職員の定員の考え方というものは、やはり基本的に検討しなければならぬと、私自身は思っております。
#80
○上田哲君 そういうことを言ってたんじゃ話にならぬですよ。私はあなたのほうをきょういじめるつもりはなかったのだけれども、何でも医者が足りないのだという理由に持って行ったから申し上げるんだが、何が第一歩を踏み出しただ。四十七年度にあなたのほうが小児精神科医の養成というものを研修費に組んであるのは十名分じゃないですか。単位が幾つか違っているんじゃありませんか。たった十人の研修費を組んだだけで、医者が足りないのだからしかたがないんだなんということを、三十五万人の子供を放置しておいて何を言っているんですか。数字は明白じゃありませんか。金額でいえばもっとみじめな数字だ。たった十人の研修費を組むだけで、それで医者が足りません、私どもは全力に努力しておりますなんということをよく言えますね。それでいいですか。どうですか厚生大臣。厚生大臣に聞くんだ。あなたに聞くんじゃない。
#81
○国務大臣(斎藤昇君) 小児精神病の重要性につきましては、実は率直にいって私も十分認識がありませんでした。大蔵省に対する要求であるとか、こういう施策をしなければならぬとか、それについて、大臣こうしなければならぬという認識をいままであまり持っておりませんでしたので、いまお開きのような答弁になっておったと、かように思います。
#82
○上田哲君 まあ、これね、ぼくはあなたをいじめてもしょうがないんだ、これは。大臣からたいへん率直な意見があったから、ぼくは時間を大事にする意味でここでやめますよ、これは。しかし、考えてもらいたいな、これは。そんなぐるぐる回った役人答弁をしていてもらっちゃ困るのだ。これはたいへんなんですよ、あなた。ぼくは実例をいっぱい持っているけれども、きょうは五十分だからやらないのだけれどもね。いいですか。ことばは悪いけれども、認識がないから私は言うんだから、ひとつかんべんしてもらいたいが、ばかなんだ、これは。いいですか。ばかと気違いなんだ、これは。わかりますか、あなた、これが。心臓が悪い、じん臓が悪い、肝臓が悪いという子供を持っている親はね、じん臓の悪い子供を救けようというので日本じゅうの母親の手をつなぐ会というのをつくれるんですよ。うちの子供はばかだから、ばかの子供を持っている親が集まろうという話はできないんだよ、これは。わかるかね、あなた、それが。だから厚生省の持っている数字だって、ろくな推定数字じゃないよ。私のほうがやっている推定数字のほうが、あなた方よりも単位が一つよけい出ておりますよ。たいへん大ざっぱな推定数字しかない。それは無理がない。名のり出てこいと言ったって、心臓が悪いんだという親は出てきますよ。ばかと気違いの親は、一番最後にそっと来るんだ、これは。わかりますか、これが。こんな話までする気はないし、データをあげろと言うんなら、ぼくは具体例をいっぱい持っているんだ。そういう問題をどうしようかというときに、私は率直にいって、これは厚生省にがんばってもらいたいと思ってきようは質問しているんだ。いいですか。それを、医者が足りないからどうしようもないんだ、地方に盛り上がるものがないからなんと言うのは不見識きわまる。不見識きわまる上に、これは私もしろうとかもしれないけれども、そんな答弁じゃごまかしようがないですよ。もっと出してもいいけれども、何が一歩を踏み出しただ。でき上がった医者を十人研修に呼ぶだけの費用を組んでおいて、これで医者の拡充のために努力していますなんということを言えますか。大臣がああいう答弁があったから私はそれで納得するし、私は面責をしたいと思っているのは、大臣自身が高茶屋小児精神病棟というのをつくっているんですよ、三重県で。実績があるから、私は大臣にひとつがんばってもらおうと思ってきょうは最後に花を持たせる気持ちでそういうことを調べておいたんです。いいですか。その下僚がそんなことを言っておったんじゃだめですよこれは。ほんとうに私の子供はばかと気違いなんだ、ばかと気違いの子供をどこかに収容してくれということは言えないですよ。これはそういう言えないでいるのを三十五万人もほっぽらかして、五十分の一しか救い上げられないで、ベッドは半分あいていて、医者が足りませんだ、地方自治体はその気がありませんなんというようなことをあなたが言ってたら親が泣くよ、三十五万人は。いいですか。どうしても私は納得できない。一言あなたから聞いておこう、心境だけ、時間もったいないから。
#83
○政府委員(滝沢正君) 先生のこの小児精神病の問題をお取り上げいただいたこと自体、私は、ポリオの問題で先生が非常にキャンペーンをされてポリオの問題が現在わずか八名程度の発生に減っておる、こういう実態と実はけさ率直に言って、思い合わせておったわけでございます。したがって、われわれとしては小児精神病の問題は、わが国精神衛生対策の中のきわめて未熟であっただけに今後やらなければならぬ問題だという認識は持っております。たとえば十名という御指摘は、この十名の医師を研修させる場所が十名しかできないという実態がある。非常にわれわれとしては苦しい状況でございます。まことにきょうは率直に申し上げ過ぎた点はございますけれども、私自身としてはそこに非常にやはり実態に大きな悩みを感じ、またそれに焦点を合わせて相当大幅な一つの運動を展開しませんとこの問題の進展はできない。そういう意味で、きょうお取り上げいただいたことを、私は行政の立場からも、また、われわれ内部の、この問題はちょうど二年ぐらい前から問題意識を十分持って取り組んでまいりましたけれども、まあ不十分でございます点を反省いたしまして、今後この問題を精神衛生対策の大きな柱にして取り組みたい、こういう気持ちでございます。
#84
○上田哲君 不満が一ぱいありますけれども、とにかく時間のほうが大事ですから先へ行きましょう。
 それじゃ具体的に伺いますが、それじゃ、看護婦や検査員の養成費は計上してない、これはどういうことですか。場所がないというのはどうもしろうとにはわからない。研修なんかやろうと思ったら、医者は卵からつくろうというわけじゃないんです、いる人を研修しようというんですからね。看護婦や心理検査員の養成費が出ていないというのはどういうわけですか。
#85
○政府委員(滝沢正君) 心理並びに看護婦も、小児の取り扱いとなりますと、確かに専門的な、少なくとも看護婦のグループの中の指導的役割りをする人ぐらいは、小児の取り扱い、特に小児の精神障害の取り扱いに習熟する必要がございます。この点は、われわれが今後に充実していかなければならぬ問題点でございますが、まだそこまで手が及ばないという実態でございます。
#86
○上田哲君 答弁、なってないですよ。よけいなことは要らないですよ。なぜやらなかったのか、なぜ。一生懸命やってんだと言うけれども、実態はやったことになってないんですよ。養成してないじゃないですか。これはなぜやられないのか、簡単に言ってくださいよ。
#87
○政府委員(滝沢正君) 中心になる医師の確保、養成、研修ということにまず第一歩をやりだしたということで、その周辺の技術者の専門養成という問題は今後の宿題に残したわけでございます。
#88
○上田哲君 そんなことを言っていないで……。では、ほかに移りましょう。
 それでは、やる気があるならば、五人に一人ではこれは無理なんですよ、こういう人は。どこへ走り出していってしまうかわからないんだ。気がついてみたらカキの木を登っているというようなことがあるんですよ。だから、五人に一人ではこれは無理なんだ。では重症心身障害児はどうかというと、大体一・五人に一人だ。これは医療法にあるんだから、そんなら子供の精神病はせめてその線まではこの基準を変えたらどうか。これは当然なことだと思うんですよ。どうでしょうか、大臣。
#89
○国務大臣(斎藤昇君) 先ほども申しましたように、どうも私十分この子供の精神病にあまり取り組んでおりませなんだので、いまおっしゃるのもごもっともに思います。何といっても、ものを言わぬ声を聞くというのがこれは政治の要諦でなければならぬわけでありますが、自然にやはりやかましい者の声が耳に入ってきてそれの対処に追われるということになりがちで、これは反省しなければならぬと思っております。私も高茶屋病院は視察したこともあります。いろいろ感じも持っておりますが、全国的にいまおっしゃったような重要な問題であるという認識を十分持っていなかったと、かように申し上げますが、おっしゃいますように、声なき声を聞いてやるということでなければなりませんから、おっしゃいますようなことを十分体しましてひとつ事務当局も鞭撻をしてまいりたいと思います。
#90
○上田哲君 局長ね、重症心身障害児のレベルまで何とか比率を持ってったらどうかということについて検討しませんか、いまの大臣の前向きの気持ちを聞いて。
#91
○政府委員(滝沢正君) 重症心身障害児と精神障害児の関係の問題は、ベッドに寝たきりということと、いまのように行動が激しいというような問題を含めまして、どうするのがいいのか、あるいは職種的な内容も検討いたしましてそれに近づける方向が当然ではなかろうかという認識は持っております。検討いたします。
#92
○上田哲君 来年度あたりやれませんか、すぐ取りかかれませんか。
#93
○政府委員(滝沢正君) この問題は看護婦養成その他の技術者の養成の計画全体ともからみますけれども、できるだけ早い機会に実現するように検討いたしたいと思います。
#94
○上田哲君 どうもあまり具体的になりませんね。これはほんとにやらないとかわいそうですよ。たいしたことじゃないんだから、どうせ病棟は幾らもないんですからね、まだ。だからぜひやるべきだと思うんだ。そこはもうそんな話に文句言う人はいませんよ。これはぜひひとつやってやらなければいかぬというふうに思いますよ。なるべく早い機会なんて言わないでひとつ努力してもらいたい。
 時間がありませんから先へ行きますけれども、そこで、こういう問題を未然に防いでいくという体制がやはり並行して行なわれなければならぬ。そうすると、早期発見というようなことになってくる、まず第一段階は。そうすると三歳児検診ということの問題が出てくるわけですね。ところが、これもゆっくり聞いていると時間がないから結論的に詰めてしまいますけれども、その三歳児検診というものが非常に手薄なわけですね。これもまたおそらく答えはわかっているんだ、もう。病院が足りないなんて言うだろう。病院が足りない、じゃ済まない三歳児検診というものの重要さがありますね、私が繰り返すまでもない。いまやれるのは東京だけですよ。地方はまるっきりお手上げだという実態になっていますね。これはどうしますか。
#95
○政府委員(松下廉蔵君) 三歳児検診は母子保健法に基づきまして現在やっておりますけれども、御指摘のように、この内容につきましては現在やはり身体検診、一般的な内科的な検診等がおもでございまして、精神面の検診につきましては十分な体制が整っておりません。申しわけないと思っております。ただ、繰り返しになるようでございますが、検診体制につきましていろいろ困難な問題もございまして、四十七年度からはとにかく児童相談所あるいは精神衛生センターとも連携いたしまして、少なくとも一般検診で疑いのある者につきましては精神衛生面の精密検診も行ない得るような準備はいたしております。これをできるだけ充実いたしまして早期発見につとめるように努力いたしたいと考えております。
#96
○上田哲君 これは飛ばして結論だけ聞きますけれども、実態は東京だけでしょう。もう地方は完全にお手上げですね。そうなると、具体的にどういうふうに展開していくのですか。できるだけやりますということの具体的なことを、一挙に、来年どうなっちゃうということは言いませんから、どれくらいのことはやってみせましょうというようなことは言えますか。
#97
○政府委員(松下廉蔵君) これは検診一般にも関連することでございますが、現在の集団検診方式をとりますと、やはり一つの会場にたくさんの子供を集めて行なうというような形をとりますために、非常にこまかい観察がむずかしくなる。子供が興奮しておりまして、平常の状態が見られないというような点がございます。で、これは一部の地区でも行なわれておりますが、今後事情が許しますならば、一つの方法といたしまして、民間の医療機関にも委託いたしまして、一般検診もそういった面でも行なう方法がないかどうかという点を検討いたしたいと思います。
 それからもう一つは、精神衛生面につきましては、やはり児童相談所にも専門の嘱託医もおりますが、やはり手薄の面もあろうかと思いますが、だんだん充実されております。精神衛生センターとも十分な連携をとりまして、できるだけ専門医の応援を求める体制をとりたい、そういったことに今後努力いたしたいと考えております。
#98
○上田哲君 これはもうちょっと詰めたいけれども、あと八分ですから最後のテーマに移りますが、早期三歳児検診というのは、つまりさがしっぱなしということですよね。これがポイントだと思うのです、さがしっぱなし。いま、さがすのもとにかく、さがし得ない状況になっているけれども、さがしっぱなしじゃ何にもならないので、おまえは悪いぞと言われたまま、それじゃどうしてくれるんだということがいまのところ最大の行政問題になってくると思うのです。ここのところぜひ裏打ちをして考えてもらいたい。
 そこで最後の問題は、その者をさがすということでしかないが、もっと根本的には予防対策です。この予防対策に、日本の、何といいましょうか、予防医学体系、特に小児病問題へ本腰が向けられていいと思いますよ。先ほどのお話にも出てきましたけれども、それからもう十年たち、少なくも世界一なんですからね。GNPはそこへ向けられなければいけないということは当然議論されてしかるべきだ。そういうことになると、研究体制がどうなっているかということが問題になります。これはその話をしてもらうと時間が全部たっちゃうからいいです。いいですが、きわめて簡単にいえば――現在たくさんの例がありますけれども、これも省きましょう。省きますが――そういう子供の精神病というものも、生まれつきだからだめなんだ、家系が、血統がどうなんだというような切り捨てじゃなくて、現在の小児予防医学システムの中では半数は救えるだろう。たとえば妊娠の段階から、あるいはいまや「ゆりかごから墓場まで」じゃなくて、「指輪から出産まで」とでもいいますかな、そんなことばをつくりましょうかな、「指輪からゆりかごまで」、の間を完全にコントロールすることによってそういうような者が少なくとも半分にはなるだろう、こういうことだと思うのですよ。研究体制はそこまで来ているということをよく御存じになって、そこへ向かって対策を考えておられますか。
#99
○政府委員(松下廉蔵君) 御指摘のように、障害児はすべてできるだけ発生させないということが対策の基本であるということは私ども障害児対策として前提として考えております。で、具体的な方法といたしましては、一つは原因となることがわかっております疾病の防止、昨年も御指摘がございましたが、たとえば風疹等妊娠時に罹患しないようなワクチンの開発等を進める、あるいはフェニルケトン尿症のような疾病に対して、できるだけ早期に発見して治療を行ないますように乳児の健康診断を進めるというような点が一つ。それからさらに、いまのお話しの胎内におきます遺伝性あるいは先天性の疾病の診断、これが羊水によりましての疾病診断が相当開発されてきつつあります。こういったことを含めまして、四十七年度におきましては、前年度の心身障害児の研究費一億を三倍に増額をお願いいたしておりまして、この中でできるだけそういった早期の発見及びそれに伴います早期の治療、そういうことによりまして発生防止をはかりたい、そういうことを主眼に進める覚悟でございます。
#100
○上田哲君 これは啓蒙ということも非常に大事だと思うのですね。学問的なことは御存じに違いないから、私はこんなところで質問の対象にはしませんけれども、しかし、たとえば東大に母子保健学科なんていう学科が生まれたのはつい最近のことですね。ほかの大学にはそういうものはないわけですから。何か、生まれるまでは産科である、生まれてしまったら、とたんに小児科であるということでなくして、そこのところをもう少し広げて押えていく母子保健学科というものが出てきたということ自体が、まだこれだけの歴史でしかないということがこの問題の浅さを物語っているけれども、しかし私は、そういう学究とかあるいは厚生省の中の母子保健スタッフもよくやっていると思いますよ。よくやっていると思う。そういう連中の努力で、少なくも学問的には半分は解決できてますね。そうですね。いまもう生まれつきなんだと思われている。救いがたいんだ、家系なんだ、血筋なんだというような形で押し込められていたものが、まさにそうしたケアによって少なくとも半減はするというところまでは来ている。そういうことをいかに強く行政に反映させるかということ、もう一つはいかに啓蒙するかということですね。そこをどうするかということに本腰を入れないと、実際に網を張ってもかかってこないということになるでしょう。そういうものをひとつどれくらい力を入れていかれるか。子供の城運動御存じですか、私は子供の城運動というのをやってますよ。そういう運動がありますですよ。小児予防医学システムというのがそこから出ているわけですよ。シンポジウムをやってますよ。御存じですか。そういうような運動に政府としては、これは行政レベルだけではだめだから、世論レベルといいますか、民間レベルのそういう運動に力を入れていくというか、手をかしていくというか、そういう努力をここでひとつ考えておかなければならないんだ。つまり、行政と研究と世論の一体化、こういう問題にしていかない限りこの突破口はない。これはどうでしょうか。
#101
○政府委員(松下廉蔵君) 御指摘のとおり、初めに先生からもお話がございましたが、こういった精神障害の子供さんを持っておる――これは精神薄弱も精神病もそうでございますが――親御さんができるだけ隠したがる、こういう気風が少しずつ薄れてはきておると思いますが、なお子供の福祉を増進するために積極的に社会に訴えるところまでは行っていないという事実がございます。そういった点も考えあわせますと、あるいはおかあさんが子供を産む段階、あるいはその前の妊娠する段階におきましてこういった障害の防止をはかるという知識がぜひ必要である。いろいろな意味で、国民に対します周知徹底と申しますか、PRは、これは必須の要件であろうと思います。で、私どもといたしましても婚前学級、あるいは新婚学級、母親学級というような機会をとらえまして、これは文部省の社会教育局のほうとも連携をいたしまして、できるだけこういう知識の普及をはかる、あるいは民間のそういった心身障害児の親の団体に対しまして国からも援助をいたし、また民間からも寄付を求めまして、親の方々自体が社会に訴えていただく、そういうようないろいろな方法によりまして、じみちな宣伝活動をいたしまして、実際にこの周知徹底をはかってまいりたい、そういうふうに考えておる次第でございます。民間団体の育成につきましては、いまの子供の城運動等も含めまして、今後ともひとつ先生方の御指導をいただきましてさらに徹底させてまいりたいと考えております。
#102
○上田哲君 大蔵省、確かに研究費が一億から三億になったことは認めます。しかし、これはこの問題の大きさからするとたいへん私はまだ足りないと思うんですよ。これについてどうですか。
#103
○説明員(渡部周治君) 小児の精神病問題というのは非常に深刻な問題であるということは、私、厚生省からもいろいろお話を承っておりましたし、また、そういう家庭の親の方からも直接いろいろお話を承りました。それで、その場合、予防研究の必要性というものが非常に大事である。しかも、その面における日本の研究はかなり進んでおって、もう一歩金を出せば、もう成果は得られるんだというような強いお話も承りました。それで、今年度の予算の査定にあたりましては、たしかこの点につきましては御要求どおりの私は金額をつけたつもりでございますが、しかし、なお本日の問題で、残された問題、いろいろあろうと思います。なお、この点につきましては厚生省ともよく連絡をとり協議を重ねまして、この問題の重要性に顧み、予算上の配慮をしてまいりたいと、かように考えております。
#104
○上田哲君 最後に、じゃ大臣、いまのお話を三つにしぼりますから、どうか前向きに御答弁をいただきたいと思います。
 やっぱりこれはまず専門の小児病院ですね、これはやっぱり精神病だけとは言いませんけれども、きょうはしぼったこの問題ですが、専門の小児病院をたくさんつくるということ。これはやっぱり繁栄などといわれるわが国の最大のシンボルでなければなりませんよ、これから。これはこれからの未来を目ざす政治のポイントになるはずです。だから、小児病院をぜひひとつつくってもらいたい。これはもう説明無用で、私はどうしてもこれはひとつ前向きにお答えをいただきたい。
 それから二番目は、いまも大蔵省の理解があって、私はたいへんうれしいと思ったんですが、母子保健医学といいましょうか、小児予防医学システムの研究は世界に冠たるものですね、わが国は。非常に進んでいて、ちゃんとその辺のことが徹底されていくようなとこまでいけば、三十五万を数える子供の精神病というのは日本にはいなくなるのですよ、将来は。そういう体制というものがつくられてこそ日本はいい国ということになるんでしょうから、この研究は自信を持って、大蔵省もああいうふうに言っているわけですから、大いにこれは推進をしてもらいたい。
 それから三つ目は、世論運動だと思うんですよ。まあ、行政主導型の世論運動というのはいいか悪いか問題はありましょうけれども、どうでしょう、ひとつ「揺籃から墓場まで」ということばの前に「指輪からゆりかごまで」というスローガンはどうですか。そういう立場でぜひひとつその部分にこれから重点を当てて世論との大きな連携プレーを重ねていこうじゃないか、こういう三点にしぼりますから、高茶屋の小児病院をおつくりになった実績を踏まえられる大臣は、ぜひひとつ積極的な御見解を聞かせていただきたい。
 私はそれで終わります。
#105
○国務大臣(斎藤昇君) ただいまの三点、まことにごもっともでございます。私もそのつもりで努力いたしているわけでございます。小児病院、少なくとも各府県に一つの小児病院センターといいますか、中心になる病院をつくってまいりたい。これは計画的にやってまいりたい。すでに出発をいたしておりますが、さらに充実していきたいと考えております。
 それから、母子保健医学をもっと現実に適応できるように、私はこの前に厚生大臣を拝命しまして、ずっと見まして、何が一番大事かと考えましたときに、やはりいまおっしゃいました――そのときは私は「指輪から」とは申しませんでしたけれども、妊娠前から、それから出産して三歳児まで、この間の母子保健、これに重点を注げと、これが前向きのあれである。そのときに私は、いまおっしゃいました小児精神病という点は少し抜かっておったといま思います。もっぱら心身障害児、これをなくすように、まずそれの予防、それにはいまおっしゃいました結婚から出産、三歳児まで、これに重点を注げと言うて、これを重点施策の一つにいたしまして、三歳児の無料検診の拡充も相当力を入れて、そのときは私が折衝するぐらいにまでいって、そしてまあこれからこの姿勢でいこうということでやっておるわけでございます。その際にも、一般の人たちに認識してもらうということ、世論運動、この点もあげておるわけでありますが、いまおっしゃいますように、そういう点を十分認識をいたしまして、われわれの気のつかないところもあろうと思いますから、しかし基本的にはさような考えでいたしておりますので、指輪からといいますか、結婚から三歳児までということを重点にしてまいりたい。
#106
○上田哲君 「指輪からゆりかごまで」はどうですか。
#107
○国務大臣(斎藤昇君) けっこうです。
#108
○上田哲君 大いに、じゃ使ってください。
 じゃ、終わります。
#109
○須原昭二君 私はまずもってお願いしておきますが、質問、答弁を含めて五十分というきわめて短い時間でありますから、ひとつ簡明に、あまり蛇足のないようにお願いしておきたいと思います。
 特に私は国民のための正しいよい医療、そういう点と、もう一つは、多くの良識あるお医者さんの権威と名誉を守るためにも、やはり無資格のいわゆるにせ医者事件というものを皆無にしなければならない。そういう視点からひとつお尋ねをいたしたいと思います。
 まず、警察、お見えになっておりますか。――ちょっとお尋ねいたしますが、最近のいわゆるにせ医者事件の立件数、これはどれだけあるか、現在調査中のものはどれだけか、この点をひとつお尋ねをしたい。さらに、近年のこの二、三年の医師法違反あるいは医療法違反のこれの立件数、これをひとつお示しをいただきたいと思います。
#110
○説明員(関沢正夫君) 最近ここ数年のいわゆるにせ医者事件の取り締まり状況でございますが、これはまず本年一月から三月までの間が医師関係が四十二件の七十名、それから歯科医師関係が九十三件、百四十一名、合計百三十五件の二百十一人でございます。わずか三カ月でございます。四十六年度中の検挙につきましては、医師法関係が五十一件の四十九名、それから歯科医師法関係が三十六件の四十人、合計で八十七件の八十九名、わずか三カ月で前年度を上回っておる、こういう状況でございます。
#111
○須原昭二君 三年間の医療法、医師法違反、調べておいてください。
 それからもう一つ、厚生省のほうへお尋ねをいたしますが、医療監視員による無資格診療事件を告発したことがありますか。
 それからもう一つは、最近の三年間における医療監視員における医療法あるいは医師法の告発は何件あったか、この点をお聞かせ願いたい。
#112
○政府委員(松尾正雄君) 医療法、医療監視員による摘発件数は、ほんとうに告発したというのはきわめてわずかだと思います。ちょっと手元に正確な資料は持っていませんので、後ほどお答えいたしますが、医療監視員自体によりますものは実際にはそういう告発まで至っているものは非常に少ないというような実態でございます。
#113
○須原昭二君 あとから報告してください。医療監視員のは私も調べたんですが、大体去年が一件、おととしが一件だと記憶をいたします。間違っておったらひとつ御訂正を願います。
 そこで、このにせ医師の問題について、実は私は昨年の十一月の三十日に社労で御質問を申し上げたことがございます。そこで、その当時指摘をいたしましたのは、私の地元でありますが、佐藤神経科病院、この問題について県あるいは現地の病院について厚生省は直ちに現地調査をしなさい、あるいはまた何らかの行政的な指導をしなさいと申し上げたわけです。しかしながら、その後の経過については聞いておりませんが、事件に対する対応の姿勢が厚生省はきわめて鈍いような感じがいたしております。実はそのほかにどのような措置をされたのか、御報告を願いたい。
#114
○政府委員(松尾正雄君) 昨年たしか十一月の三十日に参議院の社労で御指摘をいただいたと思います。それで直ちに十二月三日――三日後に愛知県の衛生部長を直接厚生省に呼んでおります。そういたしまして、この病院につきましての改善措置ということをはかるべしということを指示いたしております。特に愛知県におきましては直ちにまた立ち入り調査も行ないました。そこで、指導いたしました点は、第一には医師等が足らない、これを充足せよということ。それから第二には、あのときも御指摘があったかと思いますが、超過収容をしておるという実態の解消。それから第三は、それに関連いたしますが、病室外に収容しておるような事態をなくする。それからなお医師の当直室等が不備であるという問題がございまして、その点の改善を直接命じておるわけでございます。それからなお、あのときに御指摘がございましたケースワーカーが無資格のままで診療しておるという重要な事件の御指摘がございました。これにつきましては、その間に衛生部で調査を進めまして一月二十六日に衛生部長名でもって医師法違反の告発をいたしました。それから、警察におきましては、三月四日に本人を医師法違反でもって送検をいたしております。同時に、当時の院長についてもそういう医師法違反の教唆という件でもってやはり送検をいたしておる、こういう処置をとっております。
#115
○須原昭二君 そこで、実は十二月の末だったと私思いますが、わが党の現地の県会議員に聞きましたら、衛生部長は、厚生省から何ら指示が来ておらぬというようなことを言っているわけです。この信憑性についてはいま厚生省の医務局長がおっしゃいましたから間違いではないと思うんですが、この点をせんさくしようとは私は実は思いませんが、いま報告がありましたように、一月十二日衛生部が医師法の違反で告発をいたしまして、さらに引き続いて愛知県の県警保安課ですか、一宮警察が去る三月の二日に書類送検をいたしております。その内容については、この際、どういう容疑事実で送検をされたのか、警察のほうにひとつお尋ねいたしたいと思います。
#116
○説明員(関沢正夫君) 先ほどお答え申し上げてなかったここ三年間についての数字を先に申し上げます。
 医師法関係が、四十三年が六十二件の五十一人、四十四年は九十四件の百四人、それから四十五年が百十件の九十六人。それから歯科医師法関係が、四十三年が三十二件の四十四名、四十四年が三十三件の三十七名、それから四十五年は三十二件の三十六名。こういうことでございます。
 それからただいまの御質問でございますが、簡単に犯罪事実を申し上げますと、被疑者の久野信行、これは医師の資格がないのにかかわらず、佐藤神経科病院におきまして昭和四十六年の一月から同年四月二十三日の間に入院患者百名、外来患者四十八名につきまして無資格の診療行為を行なった。そのほか若干の往診の事実もこれに含めております。それから次は病院長でございますが、これは久野信行の犯行を教唆して当該行為を行なわせた、こういう医師法十七条の教唆として本年の三月四日に送致した。簡単でございますが……。
#117
○須原昭二君 大体新聞で報道されている事実と相違いたしておりませんから、これでやられたと思いますけれども、そこでお尋ねをいたしておきたいと思います。時間の関係がございますからまず医務局長にお尋ねしたいのですが、いま、適切ないろいろ行政措置を講ずるように現地の衛生部に伝達をした、指示をした、こうおっしゃられますけれども、たとえば医療法でいう管理者の不適当命令が出されたのかどうか。この点は医務局長は私に、十一月三十日の答弁の中でも、そういうことをやろう、こういうようなことを言われておりますが、出されたかどうか、その実態はどうなんですか。
#118
○政府委員(松尾正雄君) 県が管理者の変更命令を出したかどうか、まだ報告は受けておりません。
#119
○須原昭二君 管理者がかわったということについて知っておられますか。
#120
○政府委員(滝沢正君) 精神病院の関係でございますので、私からお答えいたしますが、四十七年の二月二日をもって管理者の交代を行なったという報告を受けております。
#121
○須原昭二君 それは、県から管理者の不適当命令が出てかえられたのか、それとも自主的にかえたのか、どちらですか。
#122
○政府委員(滝沢正君) その詳細につきましては承知いたしておりません。結果だけを承知いたしております。
#123
○須原昭二君 そういう点が、われわれが議会で質問いたしてこれだけ問題になっている問題について承知をしておらないというところにやはり問題があると思うんですよ。しかとひとつ御記憶にとどめておいていただきたいと思うんですが、特に私はその問題について若干触れたいと思うんですが、仲田杉太さんという人が出てきておる。これはもうすでに御存じだと思うんですけれども、この方が県の命令によってあとがまとして入ったのか、それとも院長の指図に従って新たに加わったのか、ここが問題でありますが、特にこの仲田さんという人は、いま町では、にせ医師のほうがまだよかった、仲田のほうがもっと悪いじゃないかという意見があるわけです。特に仲田さんの風評を聞きますと、悪徳医で、問題になった病院をずっと回って歩いて助けっとに行くような人だと、しかも、そこの病院には労働組合がある。その労働組合をつぶすためにおれはやってきたのだと、こう言っておる。あるいはまた、精神病の専門医ではないので、こういう人がまたあとがまにすわるということは、私はほんとうにもう一ぺん不適当命令を出さなければならぬのではないかと、かように思うのですが、その事実をつかんでおられるかどうか。
#124
○政府委員(滝沢正君) 特に精神病院でございますので、最後に御指摘の、専門医でないというようなことでございますれば、先生いま御指摘の問題全体を確認しておりませんのであらためて確認の上、不適切な人事であるならば、県を通じまして指導いたしたい、こういうふうに考えております。
#125
○須原昭二君 後ほど御報告があるということですから、いまここで糾明してもいたしかたがないと思いますので、先へ進みましょう。
 先ほど医務局長がおっしゃいました医療法二十一条によって病院の法定定員、あるいはまた施設の改善について改善命令が出されたようなことをいま御発言になりました。県は改善命令を出したんですか。
#126
○政府委員(松尾正雄君) 先ほど申し上げ達した項目について病院当局に県が具体的に指示をした、そういう報告をいただいております。
#127
○須原昭二君 現実には改善命令は出されたようでありますけれども、実はその改善の趣が全くない。御案内だと思いますが、病床が二首五ある。入院患者が二百名、外来が百名あるといわれておりますが、管理医師は先ほどの仲田さん一名、パート七名、定員は十六名でなくてはならないのに半分以下である、こういう点ですね。看護婦さんは定員が三十六名であるのにかかわらず十九名。それから薬剤師は一名、もう一名最近ふやしたようでありますが、勤務時間がわずか二時間、ケースワーカーはゼロ、心理検査士はパートが二名、衛生検査の部屋はない、給食施設すらないのです。こういうでたらめな内容がそのまままだ継続をされている。こういう点だと、問題が解決してしまったらあとはしりくらえ観音、まあいいじゃないかということで放置をしていくのかどうか、その点についてお考えを聞きたいと思います。
#128
○政府委員(松尾正雄君) 私どもは決してそういうものを放置するつもりはございません。やはり改善命令等もどんどん出すべきでございます。かりにその改善命令を出しましても、すでにパートの医療管理医師等の際にも通知を出してございますが、そういう悪質なものについて、改善命令を出しても聞かないということであれば、これはまたさらに強い、先ほど申し上げましたような管理者の変更命令なり、あるいは場合によったら施設の使用停止をかけられるわけでございます。お指摘のような非常に重要な患者の人権にもかかわるような問題があれば、もっとやはり強い姿勢で発動すべきだと私は考えております。
#129
○須原昭二君 医務局長からきわめて適切な答弁をなされましたからそれを信頼をしておきたいと思います。
 ただ問題は、この三年間にわたる検挙率が非常に高いわけです。最も直接に、身近に、しかも日常監視をしておるところの医療監視員の告発件数というのがまさに一年に一回あるなしと、こういう状態は、私は、何か医療監視員というものが現地におけるところのお医者さんとの、また診療所あるいは病院との間におけるなれ合いがあるのじゃないか。見ても見ぬふりをしているのじゃないかというような疑いすら持たざるを得ないのですが、その点はどうお考えですか。
#130
○政府委員(松尾正雄君) 決して見て見ぬふりをしているという事態はないと存じます。もちろん医療法等の中では、人員等について一つの標準という形でいろいろ定めてございますが、かりにそれがたまたま監視をやりましたときに一名不足でございましても、やはり不適格な条件だとしてあげていることでございますので、決してそういうように見過ごしていくという態度はとっていないと私どもは信じております。
#131
○須原昭二君 実績が実はものを言っているわけですからね。この医療監視員の行政指導を適切にひとつお願いをいたしたいと思います。
 そこで、この事件を私は大阪の斎藤病院、そして愛知の佐藤神経科病院、現地調査をしました。わが党もやりました。それで、私は、現地へ行ってつくづく思った疑念からひとつお尋ねをいたしたいのですが、カルテというものは、すなわち診療録ですか、このカルテについては医師みずからが記入する必要があるのではないかと思うんですが、その点は法的にどうお考えになっておりますか。
#132
○政府委員(松尾正雄君) まさに医師みずからが書かなければならない問題でございます。それで、医師法の二十四条に、「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」と明記してございまして、これはあくまで医師みずからが書かなければならない、こういうことでございます。
#133
○須原昭二君 わかりました。そこで、やはりカルテというものは患者の個人のプライバシーを守る立場から、カルテ、レセプト等については非公開の原則がある。この点は私たちもよく知ってます。たとえば刑事訴訟法百五条でしたか、それから民事訴訟法によると二百八十一条だったと思いますが、二百八十一条、患者及び保護者の承認がなければ医師は調査を拒否することができると、こういうことになっておりますが、実際、立件に当たられた、捜査をされました警察のほうの御意見をひとつ承りたい。
#134
○説明員(関沢正夫君) 県からは、いわゆる押収拒絶権を行使たという事例をにせ医者事件については聞いておりません。
#135
○須原昭二君 聞いておられないですね。自由にやっておられますね。確かめますが、どうですか。
#136
○説明員(関沢正夫君) 報告は受けておりません。
#137
○須原昭二君 そこで、私は実は大阪の斎藤病院のにせ医者事件で現地調査したときに、大阪府警の保安課長は、やはり無資格者が診断をし、診療事項を記載して、後に本もののお医者さんが記名、そして捺印をしている場合、これは非常に立証しにくいと、こう言っているわけです。たとえば、あとで本もののお医者さんに聞くと、おれは診療に当たったんだと、こういう証言があると、これは立証はほんとうにむずかしい問題で、われわれはそこで非常に困っているんだと、こういうことを告白をいたしました。ですから、医師みずから記載する必要は法に敢然と確立をしなければいけないと私は思うのですが、その点は医務局長さん、どうお考えになりますか。
#138
○政府委員(松尾正雄君) 先ほども申し上げましたように、この診療録というものは医者の仕事の中できわめて大事な問題でございますから、したがいまして、医師みずからがやはり責任を持ってきちんと書く。これにもう徹する以外に方法がないと思います。
#139
○須原昭二君 やはりこの点は、生殺与奪の権と言うと言い過ぎかもわかりませんけれども、そういう大きな権限が与えられているお医者さんです。医師です。ですから、大きなやはり義務も当然私は負荷されなければならないと思うわけです。忙しいからといって人の人権に、生命に関係をするカルテ等については――レセプトは別といたしましても――カルテというものについては、厳にひとつ行政指導を強めていただきたいと特に要望しておきます。
 これに関連をいたしまして死亡診断書です、今度は。この死亡診断書はお医者さんみずから書かなくてはならないと私は思うんですけれども、その点はどうですか。
#140
○政府委員(松尾正雄君) 私もそのとおりだと存じます。特にこれは医師が死亡診断書を書けとは書いてないと思いますが、しかし、逆の形と申しますか、医者は、みずから診療しない、そういったときには書いてはいけないということが規定されておるほどでございますから、当然だと思います。
#141
○須原昭二君 そこで無資格のにせ医者に診断させて、死亡診断書に記名捺印しただけのものは、これは何法違反になりますか。
#142
○政府委員(松尾正雄君) この死亡診断書は、当然現在の制度の中では戸籍の届け出等に使われるものでございますから、私は専門ではございませんが、刑法の百六十条で、虚偽の私文書作成ということに当たるんではないかと存じます。
#143
○須原昭二君 医師法には関係はございませんか、医師法、医療法。
#144
○政府委員(松尾正雄君) 医師法では二十条にみずからが診断してそれについて書かなければならない。それの違反については罰則がございます。五千円の罰金ということになっております。
#145
○須原昭二君 これは違反ですね、間違いなしに。
#146
○政府委員(松尾正雄君) 違反です。やはり医者が人に書かして、人の死亡診断書だとすれば、これはやはり違反になります。
#147
○須原昭二君 それで明らかになりました。みずから診断もせず、そして捺印しただけでは医療法違反であるということですね。そこで、私はさらに質問を続けて先へ進んでまいりたいと思うんですが、実はこの病院で、私はずっと調べたんですが、おそるべき事実があるわけです。先ほど警察当局はにせ医者だけは医師法違反、医療法違反で立件をした、お医者さんだけは教唆である、こういう容疑事実だと、こうおっしゃいました。しかし、私が調べまいりますと、実は四十四年十月十日水野喜代美ちゃんという十歳ぐらいの女の子でありますが、実は、五、六人の子供が、そのベッドに寝ておったらその上へ乗ってきて、そしてその患者は、水野喜代美ちゃんは圧死しておるんです。窒息死、そして、その死亡診断書を見ますると、直接原因はけいれん発作、そしてその死因はてんかん症となっている。これはにせ医師の久野氏が診断をして、そして佐藤医師が死亡診断書に捺印記名をしておるだけです。まさにうその診断書、うその死亡診断書です。さらに四十五年九月二十四日堀健二君という十九歳の男の子でありますが、これは実は精神病患者でありますが、排便をしちゃって服がよごれておる。管理体制が全く遅々として行なわれてないもんですから、ですから、隣の患者が普通常に看護婦さんがやっておることをまねして、裸にしてふろ場へ連れていって、熱湯が出てくるホースをかけたのですね。初めは冷たかったけれども、だんだん熱くなって、百度になって、下半身全部やけどですよ。そうしたら診断書は、これはふろへ飛び込んでそして下半身やけどになっちゃったと、こういう死亡診断書に実はなっておるわけです。これは証人もおります。こういううその診断書。さらに私はここに持ってきておりますけれども、これを一ぺん見てください。カルテ、レセプト、そして投薬の内容、投薬、注射の処置の内容、そして死亡診断書、検視の、死体の検案書といいますか、全部ここにそろっております。荒川広治君、四十四年三月三十日死亡です。二十八歳の男。これは当直員もいない。看護婦も足らない。だから、管理上この監視ができないわけです。ですから、屋上から自殺をという説もありますけれども、私はミスではないかと思いますが、屋上から墜落死している。しかし、死亡診断書にはどう書いてありますか。蜘蛛膜下出血。しかも、中を見ますると、廊下で転倒してそして失神、意識消失をしたと、こう実は書いてある。こういううその診断書が堂々と通っておるというところに医療の私は荒廃があると言わざるを得ない。死亡診断書というものは、きわめて私は重大な問題だと実は思います。こういう問題をどう考えられるのか、一度御見解をお尋ねしておきたいと思います。
#148
○政府委員(松尾正雄君) 全くでたらめだと申さざるを得ないと思います。御指摘のように、死亡診断書というのはきわめて慎重に大事に取り扱うべきでございまして、過去の例に、たとえば死亡時間を少し変えて書いたというだけでもって現職の教授が問題になって大学を去ったという事件がございます。その程度にやはり死亡診断書というのは大事に、重く見るべきだと存じております。
#149
○須原昭二君 そこで私はこの点、さらにお尋ねをしたいんですが、たとえば私の近くでこの一カ月ぐらい前だったと思います、お医者さんが看護婦さんに、ある患者に三つの注射を打ちなさい、こう言ったわけです。そうしたら看護婦さんは、その三つの注射液を一本の注射の筒に入れて投入してしまった。そして数分後にその患者はなくなってしまった。たまたま近くの同室の患者がおったからこれは摘発をされた。もしそれが医師一人だったら、あるいは看護婦だけだというようなところでそういうことがなされた場合には、事故死がやみからやみへ葬られる可能性というのは、こういう実例から、私はあり得るんじゃないか。きわめて私は重大な問題であると言わなければならないんですが、そういう点からお尋ねをいたしますと、そういうことをやっておる。この三つの死亡診断書もみんな児童閉鎖病棟ですか、その患者ばかりです。その児童閉鎖病棟というのはみんな久野というにせ医師が診断をやっていた。ですから、診断して、全部死亡診断書は本もののお医者さんが記名捺印をしている。こういう場合に、たとえば佐藤さんという院長さんは管理上の責任はどうなるのか、この点をお尋ねしたいと思う。
#150
○政府委員(松尾正雄君) これは当然管理責任を怠っているというふうに御指摘できると思います。
#151
○須原昭二君 何法違反ですか。
#152
○政府委員(松尾正雄君) 医療法の中に、管理者はその職員をして正当な業務をやらさなきゃならぬということが明記してございます。それに違反すると思います。
#153
○須原昭二君 医療法違反。
#154
○政府委員(松尾正雄君) はい。
#155
○須原昭二君 医師法違反。
#156
○政府委員(松尾正雄君) ただいま申し上げたのは医療法でございます。
#157
○須原昭二君 いま一つ警察のほうへお尋ねしますが、そうした、要するに、自然死、病死ではなくして事故死ですね、やけどをしたとか、同じ患者でありますが、患者が熱湯を浴びせかけた。これも事故死です。あるいはまた屋上から飛び降りた、あるいはまた墜落死したというのも事故死ではないでしょうか。それからほかの子供がその患者の上へ乗って窒息、圧死したというのも自然死、病死ではないんです。こうした事故死の場合は警察に通告する義務があると私は思うんですが、その点はどうですか。
#158
○説明員(関沢正夫君) 医師法関係だったと思いますが、医師が医師の義務として異常事態を検分したときには届け出義務があると、こういうふうに記憶しております。それからいま御指摘の点でございますが、ちょっと先走るかもしれませんが、大阪からの報告によりますと、いま御指摘の荒川広治、これは飛び降りた事故で……。
#159
○須原昭二君 大阪ではない。名古屋です、一宮。
#160
○説明員(関沢正夫君) これにつきましては、実は病院から届け出がございません。届け出がございませんで、これは医師法二十一条の異状事態の届け出義務違反として立件送致しております。御指摘のやはり事故死であれば、やはり警察はその死因の究明をいたします。
#161
○須原昭二君 立件送致しておりますか。
#162
○説明員(関沢正夫君) いままでにせ医師関係につきまして、いわゆるその扱った事案について死亡者が出たという例は幾つかございます。したがいまして、医師法違反と同時に、あわせて業務上過失致死傷、こういった犯罪の成否を検討したようでございますが、この確証を得るには至らなかった、こういう報告を受けております。
#163
○須原昭二君 そこで、その問題なんですよ。久野信行というにせ医者については医師法違反で送致した、そして院長の佐藤医師はただ医師法違反教唆、教唆なんです。そそのかしただけなんです。ですから、こういう具体的な事例が、当然警察がいまお話にあったように全部死亡診断書からカルテからレセプトから全部検査ができるというなら、できているはずだと思う。そういう点の調査はどうなっているんですか。
#164
○説明員(関沢正夫君) 御指摘の点でございますが、何といいますか、全体として社会的事実としてとらえた場合には、まさにこの病院長が本犯である、こういうあるいは御指摘かと存じますが、やはり先生も御承知のとおり、それを法律的に評価する場合には、やはりあくまで医師法違反をやったのは久野でありまして、これに対して病院長がどういう形で参画したか。つまり、具体的に申しますと、共同正犯になるのか教唆になるのか幇助になるのか、こういう加功の形で法律的には評価せざるを得ませんで、この場合に共同正犯であったか教唆であったか幇助であったか、これが問題になると思います。そういう問題だと存じます。
#165
○須原昭二君 そこで、警察のほうの調査も私はなってないと思う。たとえば一宮市内で名鉄電車の踏切事故で飛び込み自殺があった。これは調べてもらうとわかると思う。そうしたら警察から、おまえのところの入院患者だ、佐藤病院の入院患者だと思うがということですね。にせ医者の久野が現場へ行って検視に当たっている。そしてあくる日、今度は警察から死亡診断書がほしいと言ったら、今度は佐藤院長が出てきて、おれが書いておくわと言って書いて出した。警察も警察ですよ。みずから診断しないものについて、それで死亡診断書をもらってくるというようなことは、私は、そういうところに警察としても調査が全くでたらめだと言わざるを得ない。もしそういうところで、これは四十何年の話ですから、もしそういう時点でこれはおかしいと思ったら、これは事前にできておったはずなんです。こういう点は現地の事情をお聞きになっておらないと思いますからひとつ調査をしておいていただきたいと思います。いいですね。
 そこでさらに、時間の関係、あと十五分くらいしかありませんからお尋ねをいたしておきたいんですが、死亡診断書というのはやはりチェックすることができるのかどうか。事件が起きた場合に初めて警察権あるいは医療監視員の形で調査ができるけれども、普通はほとんど見ておられないんじゃないか。だから悪徳医師が事故死をやり医療過誤をやって死亡に至らした場合でもほかの別名で自然死になる、病死になってしまう。そういう私は可能性は多分にあるのではないか。これはうがった見方ではございますが、そういう疑念をやはり国民が持たざるを得ない状態ではないか。ですから、こうした問題について死亡診断書の書き方、対応のしかた、そういう問題について厚生省はどう処置をされていくのかを一ぺん御見解だけ承りたい。
#166
○政府委員(松尾正雄君) 死亡診断書はいま申し上げましたような非常に大事な性格を持ちますとともに、わが国の人口動態のまた貴重な資料になるわけでございます。したがいまして、この死亡診断書の書き方というものにつきましては統計調査という面からも正確を期してもらわなきゃならない、こういうことで、御承知のように国際疾病分類、死因分類と、こういったようなものと合わせまして、直接死因あるいは間接死因等々のいろいろな問題がございますので、そういったことを広く医者に徹底すると、そういうふうにやっているはずでございます。
#167
○須原昭二君 先ほどの三件の死亡診断書の問題についても、これは警察のほうも調査をされたという報告ですけれども、私は報告を理解するわけにはまいりません。したがいまして、追起訴もできるんですから、この点は厳密に調べて適切な処置をしていただきたい。この点は特にお願いしておきたいと思います。
 さらに私は精神病院のあり方について、残す時間、ちょっとお話を伺っておきたいと思うんですが、たとえばこの佐藤病院あるいは大阪の病院を見ましてもそういうことを聞いたんですけれども、ES療法というのがある。百ボルトの電流でショックを与える療法でありますが、これまた医師みずから直接手を下してやるべきものか、だれがやってもいいのか、この点はどうですか。
#168
○政府委員(滝沢正君) 精神病の治療に薬物療法が現在のように有効なものが出てくる前、電撃療法はきわめて有効な治療法でございましたが、これを医師がやらなければならないということは医療のたてまえからいけばそうでございます。しかしながら、実際の問題としては電撃療法そのものが盛んに行なわれた当時、私の承知しておる実態では、医師以外の看護婦等これを熟知しておる者がやったという事例は、個人的には承知いたしておりますが、当然のこと、医師がやるべき医療の内容、中身でございます。
#169
○須原昭二君 先ほども上田さんからの御質問の中に、子供の精神病のことが言われておりました。収容所が少ない、したがって、小さなところにたくさんの子供を閉鎖病棟の中へ入れている。やっぱり子供ですから騒ぎます。騒ぎますと、これを全部連れてきて、ずっと並べておいておしりに全部電撃衝撃を加える。仕置きに使っているんですよ。まさに子供といえども、いたいけな子供にそういうものを看護婦にやらしているのです。まさに私たちは冷や汗といいますかね、まさにほんとうのことなのかどうかということを疑いたいくらいですが、現実には電気ショックを与えてふらふらになって寝ちゃう。また、そうして間もなく起きたら夢遊病者のように頭をぼんぼんぶつけて倒れる。そういうまさに地獄というような状態。まさに私は収容所そのもの、かつての戦前の軍部はなやかなりしころの収容所の実態そのものじゃないか、こう思います。
 さらにもう一つ、措置入院制度についてお尋ねしておきたいのですが、この措置入院制度は精神衛生法によって規定されて、しかも経費、費用が公費になっているんですね。そこで今日医療費が高いものですから、患者に、よしおまえは措置入院制度にしてやる、医療費をただにしてやる、入れ、こう言って入れられる子供さんが多いわけです。もちろん保護者としては経費がただならこれにこしたことはないと入れるのです。しかし、それは閉鎖病棟の中へ入れられるわけです。そういう状態で、自分の子供が、先ほどの話ではないが、ばかや気違いだからこういうことは秘密にしたがるわけです。しかし、現実にはその中では非常に人権無視がされている現実がある。たとえば京都の十全病院の双ケ岡病院の時田美代子さんという人のここに手記があります。厚生大臣も非常に医療にお詳しい方ですから、一ぺんあとで読んでおいていただきたいと思うんですが、もうただにしてやるからと言ったもので、そんないいことはないということで入った。そうしたら、まさに人権じゅうりんですね。そうして一年間、出してくれ出してくれと言ってもなかなか出してくれない。まさに人の人権だとか、民主主義とか、精神病患者に対しては人間扱いされてない事例があるわけです。ただ精神病患者を――いけにえと言うと語弊がごさいますが――いいこと幸いにして、金もうけの手段に転嫁している傾向が非常に強いと思う。特にこのまた佐藤病院なんか見られますと、昨年十一月、私もこの奥さんにお会いしました。現実に名前はこの際避けておきたいと思うのですが、ある夫婦が佐藤病院にやってきた。そうしたら御主人が、待合室に置いといて、主人が入って行ってお医者さんに、うちの女房、精神病患者だからひとつ強制入院さしてくれ、それでがちゃんと入れちゃった。奥さんは精神病患者じゃない。だんなさんのほうが精神病患者なんです。逆に入っているんですよ。そんなばかげた話は笑いごとだと思われるかもわかりませんが、現実にあるのです。そこで実は奥さんが、看護婦が巡回に来るもんですから訴え続けた。しかし、なかなか出してくれない。そうしたら看護婦もたまりかねて院長に言ったら、イソミタールでも打っておけ、わあわあ騒ぐな、こう言っておけ、こういうことですね。それで奥さんに聞いてみたら、おやじさんが――御主人が精神病患者だ、けさもあばれて、おまえは浮気をしておるとあばれて一緒にこの精神病院に来たら、私が入れられて一だんなさんが帰っていってしまった。ようやくこれは二、三日のあとだったと聞いたのですが、看護婦さんがみんな集団になって院長に説得をして、院長から退院さしたそうです。いま奥さんは同じ一宮の病院で働いておりますけれども、こういう姿があるわけです。現行の精神衛生法の治安的側面を医師がかってに拡大解釈して適用している傾向が私はあると思う。その点についてどうお考えになっておるか。
#170
○政府委員(滝沢正君) 先ほど来のお話の全体は医療法なりあるいは病院という一般論でもございますが、内容そのもののこまかい点は、やはり精神病院であることにかなり本質的な問題があるというふうに私は承っておったわけでございます。いま御指摘の患者の取り扱いあるいは公的な措置入院等は、手続上は自傷他書のおそれある患者について二名の鑑定医の鑑定の結果においてやるべしということになっておりますが、緊急措置入院制度というような法的な根拠もございまして、ややもするとそのような取り扱いがみだれている面は否定はできません。一般的にわが国の精神衛生法はかなりの権限を病院の院長に与えられている面がございますけれども、特にこの鑑定後措置入院した患者のその後の措置解除の取り扱い等についての手続が私は現行は非常に不十分である、こういうふうに思っております。で、そういう点を踏まえまして、わが国の病院というものの問題点のさらに集約されたような一つの形が精神病院にございます点は十分認識いたしておりますので、今後措置入院の、たとえばこの佐藤病院については、その後措置入院の患者は措置いたしておりません。この点につきましては、医療法その他の実態とあわせまして、われわれが指定病院として県知事が指定することになっておりますけれども、そういう取り扱いの問題については、国の行政指導として今後の措置入院の取り扱いについても十分考慮を加えなければならぬ、こういうふうに考えております。
#171
○須原昭二君 時間がありませんからね、ひとつ答弁も簡単にお願いしたいと思うのですが、簡明に。
 この精神病院というのは、やはり国立だとか都道府県立のように、そういう公的な機関でやらなければならぬのではないか。指定の私立病院の比率を考えますと、何か聞くところによると、九〇%が私立の指定病院であって、公立が一〇%以下だというような話も聞いたのですが、こういう問題についてどうお考えになっておるか。やはりこれは国立、公立の精神病院で私は措置入院をさすべきだ、こういう考え方を持っております。特に刑法改正でいま論議を呼んでおるように、保安処分なんかが非常に叫ばれておりますね。議論になっております。保安処分を私立の指定病院にまかせる方法を私は検討すべきだ、その点に、時間の関係がございますから、もう一つ関連をしてお尋ねをしておきたいと思うのですが、そこで先ほど申し上げましたように、医療の荒廃の氷山の一角に集約されている、こうみずからもお認めになっておりますが、先ほどの県の医療監視員の監視の状態というのはまさに私は名ばかりだ。たとえば熱湯でやけどをした堀君なんか特別監査やっているんですよ、その時期に。医療監視員は事務所へ行って書面だけ見て帰ってきているんです。何も証言も聞いてないんです。ですから、もぬけのからですよ。名ばかりで実際には何も監視をしておらないという状態です。この間、十一月の三十日の社労委員会で私は、この際全国の精神病院を総点検しなさい、こういう要求をしました。その点についてはできるだけ早い機会にすべての精神病院について点検できるように措置を考えたい、具体的に内容はまだ示されなかったのですが――そういう御答弁を実はいただいております。そういう点についてひとつお尋ねをしたい。
 さらに、にせ医者の問題について、当該者だけはよく縛られるけれども、それを管理しておるところのお医者さんというのは何か軽視をされているようなきらいがあると私は思います。そういうにせ医者を使ったお医者さんこそ私たちは糾弾をしなければならないと私は思います。その点について、総合的にひとつ三点について御答弁を願い、かつまた、大臣からもこの点について御所見を承っておきたいと思います。
#172
○政府委員(滝沢正君) 最初の公私の病院の数字は、先生のおっしゃるとおり、八五%が私立でございます。で、指定病院につきまして、私は、やはり公的病院ももちろん運営がいままで十分であるとは思いませんけれども、私的病院の、特に公的措置を指定されておる病院の取り扱いをもっと公的に義務づける、その運営を公的にすべきである、この点について検討いたしたい、こういうふうに考えております。
 それから、精神病院の総点検の問題につきましては、部長会議並びに精神衛生主管課長会議を三月引き続き実施しまして、その際、書面をもちまして、精神病院の管理運営の総点検と、それから医療監視の面において特に重点を定めた実施について指示いたしております。
#173
○政府委員(松尾正雄君) 最後の第三点でございますが、私どもは、無資格者が医療を行なった場合、当然、これは医師法違反でございます。しかしながら、四十三年並びにことし出しました通牒におきましても、それを承知の上で使っている医師、それはやはり共同正犯ということを明白に出しております。そういう態度で今後も進めていきたいと思います。
#174
○国務大臣(斎藤昇君) 先ほどから、須原委員の精神病院のあり方についての御発言、私もいろいろと聞いております。いまお見せいただきました精神病院を総点検――これもときどき記事を見ております。私の感じといたしましても、やはりこれからは精神病院は国公立でないと十分なことができないという感じをいたしております。――もちろん、私立病院でも例外があります。――一般的にいいますとですね。
#175
○須原昭二君 いいところもあるんです。
#176
○国務大臣(斎藤昇君) ほんとうにいいのは例外と言うていいんじゃないか、極端に言いますと。それくらいでありますから、したがって、総点検なり、いまの私立を全部公立に変えるというわけにもなかなかまいりませんから、現在のものをさらによくしていき、さらにこれからは国公立に重点を置いていくというような考え方で医療行政をやっていく必要があるんじゃないだろうかと、かように考えております。
 まあ、にせ医者を使っていた医者、これはにせ医者と同様に正犯ということで処断をすると言っておりまするし、また、病院、診療所の管理責任者としても不適任であると、かように考えます。
 医療監視員の監視のしかたについても、いまおっしゃいますと同じような私は感じを持ちまして、最近、特に医療監視員の監視のあり方について指示をいたしまして、関係当局から、その意のあるところを通達さしておるわけでございます。
#177
○須原昭二君 時間があと一分ですから、簡単に要点だけ申し上げておきますが、いま御答弁いただいて、ひとつ、前向きで、強硬でしかも厳正な、きびしいやはり体制をしいてもらいたい、こういうことを特に要望しておきたいと思います。
 行政処分のあり方について、特に私はつけ加えておきたいと思うんですが、医務局長は、大阪の斎藤医師の問題については、取り消しもやぶさかでない、こういう御答弁をいただきました。それを聞きましたんですが、やはり、こういう問題については、厳正で、きびしい態度で臨んでもらわなければ、あとを断たないと私は思います。その点を特に要望しておきます。
 最後に、実は、けさ新聞を見まして援護局の調査課長さんに来てもらったわけですが、時間が来てしまったんですが、せっかくお見えになりましたから一言だけ御質問をしておきたいと思います。
 ミンダナオ島におけるところの元日本兵数十名が山中におるという現地調査の報告に基づいて、これは新聞記事の問題でありますから一けさの毎日新聞です――現地のフィリピンの大使は、確認をしていない。――まあ、それは確認をしておらないかもわかりません。ただし、この中の発言で、「そういううわさは聞いているが、事実かどうかはまだ確認されていない」――これはよくわかると思う。あとのほうに――「また本当だとしても横井さんのケースとは違って本人たちに、いまさら帰国の意思があるとは思われず」そっとしておいたほうがいいと、こう善いてあるわけなんですね。これは私はどういう意味なのかわかりませんが、本土では、もう死んでしまったものか、あるいはまた、こういうミンダナオ島で云々と言われますと、また、わが子が、わが夫がまだ生きておるのではないかというような疑念を持つのが多いんじゃないか。だから、早くやってもらいたいという私は意向が国民の中から出てくるのは当然だと思う。そういう点について、この問題については、現地の報告を待つんじゃなくて、事、人権の問題でありますし、長年間苦労した人たちでありますから、これは早急に手を打つようにひとつお願いをしたい。その点について、御意向だけ承っておきたいと思います。
#178
○国務大臣(斎藤昇君) ミンダナオに行かれた人たちが帰ってこられるということで、その実情を聞くということに事務当局でなっておりますが、私といたしましては、やはり事実を明確にいたす必要がある。ただそっとしておくんでなしに、そっとしておいたほうがいいか悪いかという、その事実をもっと明確にすべきである。その方向で今後十分調査をいたします。
#179
○須原昭二君 現地調査をやってください。
#180
○国務大臣(斎藤昇君) まあ、帰ってこられた方のお話を伺い、要すれば、現地調査もやることもあるべしということで御了解を願いたいと思います。
#181
○主査(塩出啓典君) 別に御発言もなければ、厚生省所管に関する本日の質疑はこの程度といたします。
 午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時四十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十五分開会
#182
○主査(塩出啓典君) ただいまから第四分科会を再開します。
 分科担当委員の異動について御報告いたします。
 本日、須原昭二君が委員を辞任され、その補欠として安永英雄君が選任されました。
    ―――――――――――――
#183
○主査(塩出啓典君) 昭和四十七年度総予算中、文部省所管を議題といたします。
 慣例では、政府側から説明を求める順序でありますが、説明はこれを省略し、お手元に配付してある資料をごらん願うこととし、その説明資料は本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#184
○主査(塩出啓典君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 これより質疑に移ります。質疑のある方は、順次御発言願います。
#185
○安永英雄君 まず、文部大臣にお尋ねをいたしますけれども、福岡の大牟田市で、昭和十二年九月二十五日の名刻から、突如として――人口が十三万程度の当時の町でありますが――熱発をし、けいれんを起こし、それからのどの痛み、せき、下痢、こういう奇病があらわれてきたわけであります。結果としましては、死者七百十二名、患者が一万二千三百三十人、こういう膨大な赤痢患者を出した、こういう事件があったわけです。
 その後、この真相についてどうなんだということで追及が始まっておりまして、地元の市会あるいは福岡県議会あるいは熊本の県議会、こういったところでも現在この真相を追及している。何の真相を追及するかと申しますと、結局、九月の二十五日に三井鉱業所の大爆発があったわけです。これと非常に関係があるということが次々に明るみに出てきつつあるわけですが、したがって、ごく最近では、新聞あるいは週刊誌あるいはテレビ、ラジオ等でこの問題が非常に報道をされて、日本じゅうの人が耳目をそばだてておるという状態でありますが、こういった事件についての認識が大臣としてはございますか、お知りでございますか。
#186
○国務大臣(高見三郎君) 私も、詳しいことは存じませんが、昭和十二年の赤痢事件につきましては、厚生省の調査の結果では、赤痢菌による水系感染を否定することができないということをいっておるのであります。最近、この問題について三井鉱業所の爆発事件と関係があるのじゃないかという議論が出ておることもほのかには承っておりますが、それ以上のことは存じません。
#187
○安永英雄君 そこで、私は、あとで申しますこの事件と教育との関係ということで質問をしておるわけなんですけれども、大臣のほうで認識がないとまたこの判断についても出てこないと思いますので、多少私から説明をしてみたいと思うのですけれども、当時、赤痢ということで判断をし、しかも、その伝染経路というのが水道から伝染をしているというふうなことになっておるわけであります。しかし、その判定を現在の時点で調べてみますというと、非常に不可解な点ばかりが出てくるわけで、たとえば水道説というものをとった場合には、水道のほうで管理をしておるそこの子供、満二歳だったと思いますが、この子供が赤痢にかかって、そして、その赤痢の菌を持っておる子供の衣類、これを洗たくをして、その洗たくの結果、これが水道に入っていって、そしてこれが全市にばらまかれたと、そして先ほど申したような多量の死者、罹病者を出したと、こういうふうになっておりますけれども、私どもが調べますというと、その子供、現在ぴんぴん生きておる人なんですけれども、当時二歳の人が九月の十九日に診断を受けておりますが、病名は消化不良ということで診断をされておりますし、二十四日にはこれは全快をしておる、こういった診断書、病状書が現在あります。これも確認をいたしております。さらに、九月の三十日には、久留米十二師団の軍医部が、この田中さんという一家、それから貯水池、水源地の従業員家族百三十五名、この関係者の検便を綿密にやっておりますが、その結果としましては、全員が陰性という結果も出ておる。だから、私どもとしては、この水道説というのは、いまから考えましても、現在残っておる記録から見ましても、まずそこのところも非常におかしいのではないかというふうに考えて調査を進めておる段階です。それから当時そういった事件がありましたから、市長あるいは水道局の課長、こういった責任者は引責辞任をやっておる、こういう実態でありますが、そのときの助役あたりがおられますが、この方あたりも、完全にこれは水道の汚染ということから起こった事件ではないということもたびたび言われておりますし、最近のテレビ等にも本人が直接出てそういう証言も広く行なわれておるというところあたりから、四十年も前の話でありますけれども、調べれば調べるほど、現在の水道説というものは、これはそうではないという結論が私どもとしてはほとんどそろったと思っておるわけであります。
 そこで、その当時の状態からいきますというと、ちょうど日中戦争が始まって三カ月後でありますから、大体大臣もその当時の日本の国情というものについては想像がつくと思うのでありますけれども、結局、私どもとしては、三井の爆発というものからこの大量の死者あるいは罹病者が出たというふうに考えざるを得ないような結論ばかりなんです。そこで、三井の爆発というものがやはりこの原因になっているのだというデータを私どもとしては集めたわけでありますけれども、その当時の罹災者の居住地等を調べましても、三井染料工場の周辺、これがもうほとんど病気にかかったり死んだりしているという、そういう集中した状態になっていることも明らかになっております。この点、私はここでたくさんの資料を持っておりますけれども、大体そういった状態になっておるということは間違いないわけでありまして、これについて現在厚生省ももちろん調査をされておる。この真偽の問題については、これはまあ政府機関では文部省の立場ではないと思います。
 そこで、まず厚生省のほうにお聞きをいたしますが、これは衆議院でも質問があって、そうして、その際、調査もしその真偽も明らかにしていくという答弁もあっておったわけでありますが、その後、今日まで、この事件についての真相をどのような形で調査をされ、その結論といったものをどういうふうに厚生省でつかまれておるのか、これをまずお聞きしたいと思います。
#188
○説明員(国川建二君) お答えいたします。
 昭和十三年の九月の大牟田のいわゆる爆発的に発生しました赤痢の集団発生の原因についてでございますが、当時におきましても、医学界、あるいは当時はもちろん内務省の時代でございますが、当時から、この異常な赤痢の発生が急激であり、しかも市内全域にわたって一時に発生している、そういうようなことから、その共通の原因と考えられるものは水道水ではないかと、そういうことで、これは一応水道汚染によるものと判断されておったわけでございます。で、その原因といたしましては、ただいまもお話がございましたけれども、水道の水源が汚染されたのではないかというような疫学的な推定に基づいた判断が下されておりました。
 一方、ただいまのお話にもございましたように、市内のN工場という工場におきます爆発事故がございまして、これとこの集団発生の間に何らかの因果関係があるのではないかという問題が最近提起されておるわけでございますが、昨年来、厚生省といたしましたも、この集団発生の原因をできるだけ解明いたしたいということから調べてまいりました。ただ、何ぶん昔のことでございまして非常に困難でございましたけれども、かなりの資料を収集できまして、およそ現存すると思われる資料はほとんど集め得たと思います。それからなお、関係者の当時の話等も聞きまして、慎重に検討を加えてまいりましたけれども、現在のところは、従来からの水道が原因しているというような定説に対しまして、これをくつがえすような新しい事実と申しますか、そういう疫学的な必然性は得られていないというのが現状でございます。
#189
○安永英雄君 そうしますと、厚生省としては、現在、水道汚染による伝染病集団発生の実例集というのがあるわけですが、この中でこの水道汚染というものがはっきり入っているわけなんですけれども、これは、現在、いまおっしゃったように、これの真偽のほどをかなり調査をしたと。しかし、水道説をくつがえすというだけの理由はないというふうにおっしゃいますけれども、それでは、厚生省の態度としては、今後さらに続けていく、この真相については、さらに資料も集め、調査もし、そうして明確にしていくという意思、これはおありでしょうか。あるとすれば、先ほど申しましたこの事例集というものはどういう性格のものになるのか、この点もあわせて御説明願いたいと思います。
#190
○説明員(国川建二君) いま御指摘の事例集と申しますのは、厚生省の私どものほうの水道課におきまして編集いたしまして日本水道協会で発行された書類でございますが、これは水道が原因になりまして広く赤痢とかチフスとかそういう集団発生が過去においてあったわけでございます。そういうことから、水道施設の衛生的な管理を十分にやっていきたい、そういう意味の教育資料と申しますか、そういう意味で過去の水系感染の発生事例集をまとめたものでございまして、これは昭和三十七年に出したものでございます。その後はこれに類したものはまとめていないわけでございますが、この原因等につきましては、患者の発生状況その他いわゆる疫学的な考察から考えれば、先ほど私がお話し申し上げたような事情にあるわけでございますが、なお、その具体的な汚染の機序と申しますか、どこでどういうように病原菌といいますか赤痢菌が侵入したかというふうなことにつきましては、必ずしも完全な資料がととのっておるわけではございません。そういう意味から申し上げますと、一〇〇%明確になっているというわけでもございませんので、今後なお新しい資料その他が出るということがありますれば、もちろんその時点におきまして検討を加えるという必要がありましょうし、私どもとしては引き続き関心を持って見守ってまいりたい、そういうふうに考えております。
#191
○安永英雄君 そうすると、結局、厚生省としては、この水道汚染説という点についてまたさらに今後検討をされていくわけですか、いわゆる調査はできるだけ今後も続けていかれるのですか。それとも、いまの段階では、この水道汚染説というものを否定する材料はないけれども、といってこれを断定するという立場でも裏を返せばないわけでありますが、この態度は一応打ち切られるというわけですか。
#192
○説明員(国川建二君) 過去の事件でございまして、当時のたとえば水源施設の構造図等、すでに消滅しているというような点もございますので、一〇〇%事実を解明することは非常にむずかしい、不可能に近い事件だと思います。そういう意味で、今後もなお新しい事実というものが出てきましたならば、当然そういうことも十分関心を持って見守っていきたいということでございますけれども、昨年来の私どもの作業におきまして現存すると思われる資料はほとんど集め尽くした感じがございます。そういうようなことから、断定というわけではございませんけれども、まあ現在持っております所見といいますか原因等についての判断が先ほど申し上げたような事情だというように御理解いただきたいと思います。
#193
○安永英雄君 これは私も調査したんですけれども、当時の三井染料の工場では明らかに毒ガスをつくっておったことは間違いない事実であります。これはその当時働いておった人等も調査をし尽くしましたけれども、この点については毒ガスをつくっておったことは間違いない。いわゆる病原菌になる細菌の爆弾というものもつくっておったことは間違いないし、私どもはいま調査をしておりますが、ごく最近でもそういった製造をやっておるのではないかという疑いが非常に濃い、こういうところでございます。そこで、その当時の情勢から見れば、はっきりと時期を同じくしておるこの三井染料の爆発、これが当然この当時の大量の死者を出し多数の罹病者を出した原因だというふうに私どもは断定しておるわけです。しかし、これについては、本委員会でやるのでは時間もありませんし、こういう御認識を持っていただきたいと思うのです。ここに写真もありますけれども、毒ガス入りの容器等も私どもはっきりつかんでおりますが、毒ガス入りの容器は耐火煉瓦で特殊なものであります。戦時中広島のあの大久野島でほとんど日本陸軍の毒ガスを製造しておって、そして戦後になってここで働いた人が後遺症その他で非常に苦しんでおるという問題も起こったわけでありますが、そこで使っておる毒ガス入れの容器と全く同じものが現在でも三井染料の工場の中にあるわけです。これは参考に渡しておきます。
 時間もありませんから、続けて申し上げますが、厚生省のほうで、水道汚染による大量の罹病者が出たというこの論についても、断定的な最終的な結論は出ていないということもいまはっきりなったわけでありますし、また、これも四十年前の問題でありますから、私どもも資料も集めてはっきりさしていきたいと思いますが、資料はできるだけ集めておるし、これ以上という厚生省の話もありましたけれども、まだまだ資料はたくさんあるということで、この点について水道汚染かどうかという問題はいまからの問題だと私は思うし、いま現在でも水道汚染ということでないという断定ができないのだというそういったこともおっしゃっておりますので、私はこの問題について文部大臣のお考えをお聞きしたいと思うのですけれども、いろんな教育の上で使っておる教科書とかあるいは指導書とかこういったものの中には、はっきりと水道でこれが流行したのだというふうな断定のしかたでそのデータが教材として提示をされておるという状態に対して、私は、この問題は当然教育の全般についての責任を持っておられる文部大臣としてはお考えがあるのではないかというふうに考えるわけです。もちろん文部省のこの問題についての限界はあると思うし、現在高等裁判所のほうで家永裁判もまた行なわれておるようでありますが、いわゆる文部省の教育に対する権限と、こういったものを中心に行なわれておりますが、いまここで私が申し上げておる問題はそれ以前の問題だと私は思うのです。いわゆる真実をきちんとつかんだ上で教育上の素材に使っていくべきである。現在まだはっきりしないといったものを教育の資料として使った場合には、教育上非常に大きな誤りをおかしてくるということで、教育権がどうのこうのという以前の問題として私は文部大臣としていまの情勢を見て判断をしていくべきだと思うのです。そういった点で、どういうお考えをお持ちか、お聞かせ願いたいと思います。
#194
○国務大臣(高見三郎君) 文部省といたしましては、看護婦学校等で使用いたします図書の内容について一々点検をする権限を持ってはおりません。しかし、もしこれが水系感染でないという否定的な確実な資料が得られまするならば、著者に対しまして再検討を依頼するというような措置はとりたいものだと考えております。
#195
○安永英雄君 そういったものが出ない限り、いまこういったことで教材に使っておるとすれば、これに対してはどうですか。
#196
○政府委員(木田宏君) 教育の場で使われますいろいろな素材につきまして、後の時点に至りまして記述されたことがおのずから違っておったというようなこともいろいろと起こり得ることだと思います。しかし、それはその時点になりましてからの措置として考えるほかはないのではなかろうか。また、いろいろと論争中の案件につきましての記述のこともあろうかと思います。これはそのようなものとしてどちらかの意見で書かれておりましても、指導する関係者がそのことを十分わきまえて指導さるべきものではなかろうかというふうに考えております。
 いまお尋ねの事態につきましては、厚生省のほうでも御調査のようでございますけれども、現在の段階におきまして従来からの水源汚染説ということを水系の感染を否定するだけの素材がないということでございまするから、この時点におきまして文部省から意見という形でものを言うべき段階ではないと考えております。
#197
○安永英雄君 いま出ておりますのは、「系統看護学講座」――これは微生物学の教科書でありますが、この中に、「昭和十二年の福岡県大牟田市の水道による赤痢の水系感染では一万三千二百六十六名の患者を出したが、この場合は水源の汚染であった。」と、そういう記述があるわけです。あるいは、「最新看護学全書」――これは細菌学の教科書でありますが、第八章に、「水による伝染病流行例」という中で、水道流行という感染経路をはっきり示して、そして大牟田市で起こったと書いてあります。あるいは、ごく最近、中日本のスポーツ研究会、ここで出しております保健体育の教師の指導書というものがあって、これは参考に使っておると思いますけれども、この中でもはっきりと書いております。明治大学の政経学部あたりの使っております教科書の中にもこれが出ております。こういう出し方は、いまも局長がおっしゃったように、あるいは大臣がおっしゃったように、はっきり水道汚染ではないという時点で考えると、こうおっしゃいますけれども、この問題はいま厚生省の水道汚染と断定することはこれはまた反面できないという状態なんで、そしていまや全国的にこれはやはり明らかにしなきゃならぬということでデータもいろいろ集めて、そして、私どもに言わせれば、はっきりこれはそうではない、爆発から起こった問題だというふうに私どもはデータを持っておるわけです。そういう中で、水道汚染説をとってこれを神聖な教育の中で使っておるということは、私は少なくとも水道汚染説ではないという言い方をしながら文部省が指導せいというふうにいま申し上げておるわけではない。そういう不明な中であれば、私は、不明として、その問題は、そういう調査段階なんだとか、あるいはこれについてはこういう説もあるんだというふうなことをつけてこそ正しい教材になるのではないかというふうに考えておりますので、大臣のほうではそういった結論が出たときに初めて文部省としては考えるというふうにおっしゃるが、いまの時点において文部大臣としてお答えになるところはないかということをお聞きしているわけです。
#198
○政府委員(木田宏君) 大学あるいはいろいろな教育の場で使われています教材につきましては、義務教育等、小中高等学校の教科書以外のものにつきましては、直接文部省としてその内容を検索するという立場には一応ございません。いろいろな素材につきまして、それぞれ指導する人が適切な教材というものを考えて使っておると思っております。御指摘の事例は、いままでの多くの関係者が水源による感染というふうに考えて取り扱ってきたものということから、そのような記述があることだと思うわけでございます。そのことにつきまして、文部省は、直接、間違っておるとか、間違っていない、確定していないからどうだこうだということを指導者に対して言うべき立場でも実はなかろうと考えておるのでございます。しかし、こうして御指摘になりますような案件につきまして、それぞれ看護学校等で担当の指導者が教授を行ないます場合に、従来の定説に対して異説があるというようなことなどは、その教授する立場にある者がそれぞれわきまえて取り扱うべき課題ではなかろうか。行政的な立場から、教えられるべき素材につきまして、特に明確に事実と違うものであることがはっきりした場合の訂正を申し入れること等は、事と場合によればあり得ると思いますけれども、こうした素材につきましては、関係者のそれぞれの立場のお取り扱いにゆだねるべき性質のものではないかというふうに考えております。
#199
○安永英雄君 時間もありませんから、いま大学局長なり文部大臣がおっしゃったような立場でこれは貫いてもらいたいと思うのです。あるときはぐっと入ってきて、およそ権限外のところまで入ってきてやってみたり、こういう問題になったら逃げちゃってそれは私の権限じゃございませんという言い方は、私はこれは今後見守っていきたいと思います。ただ、先ほど大臣のおっしゃったように、漠とした気持ちからいえば、そういったものについては気をつけなきゃならぬというふうな意味の発言もありましたから、私はそういった意味で権限で入るとか入らないとかそう開き直りの問題ではないと思うからここであえて言ったので、あなたがそういう開き直りをされるとするなら、これは文部省の権限問題いかんという問題になってくるので、私はそういう次元でものを言っておらない。やはりそういった言い切り方をされたけれども、これは文部省としても厚生省あたりとも連絡をとりながら――それはいろんな形で、指導といっても、通達を出してこうとか、あるいは決定的にこうだとかそういうことじゃなくて、文部大臣が漠と言われたような気持ちでこの問題に対処していただかぬと、これが誤ったらたいへんなことになるんで、いまこの問題についての過渡期で白黒をはっきりしろという段階でもあるわけですから、そういった次元における文部省のこれに対するタッチのしかたというのはおのずからあると思うのです。そういった意味で最後にこの問題についての大臣のお気持ちを聞かしていただいて、次に移りたいと思います。
#200
○国務大臣(高見三郎君) 確かに、安永先生のおっしゃるような時代の背景から見ますというと、日本の最高の毒ガスはイペリットであった。そのイペリットの毒ガスをどこかでつくっていたことは間違いない。それがどこだったかということは私は存じませんけれども、実は私は兵隊時分にガス兵をやりましたのでガスのことはわりあい詳しいのでありますが、イペリットは最高のびらん性ガスであった。しかも、それが日本のどこかでつくられておったということは事実であります。ただ、問題は、厚生省が――何も私は責任のなすり合いをするわけじゃありませんけれども、はっきりした断定を下してくれなければ、教科書についていい悪いというようなことを発行者に対し文部省が発言をする権限は持っておらないと、これは大学局長が申し上げたとおりであります。しかし、おそらく安永先生が研究されておるような事態があるいはあったかもしれない。これは厚生省の手によって解明をしていただきたい。解明ができましたならば、私どもは、ちゅうちょなくいつでも正しい方向へ持っていくということについては、これは教育をあずかる文部省として当然の仕事だと、かように考えております。
#201
○安永英雄君 これはまた別の機会に文教委員会等でさらに続けて質問をしていきたいと思います。
 次に、国連大学の問題について簡単に質問をいたします。
 わが党も、国連大学の設置には、われわれとしても主張をしたことがあります。さらに、世界で最初の原爆の被爆国としてそして世界の平和というものをこいねがっておる日本として、国連の大学、この大学を誘致してくるということについても、当初に私どもとしても申し上げたわけでありますが、ここでちょっとお聞きしたいのは、私どもが考えておった国連大学の構想というものと現在国連の中で検討されておる国連大学の構想というものが違ったらたいへんなことになると思うわけです。これはもう相当期間かけて検討されて、ことしの秋にはこれが国連総会ではほとんど決定するのではないかというふうにいわれておるのでありますが、そこで、いままで検討された国連大学がどういった目的でどういう構想で固まりつつあるのか、これあたりが現在わかっておればはっきりしていただきたい。いままでは、文部省も、前の文部大臣も、とにかく国連をこっちに持ってくるんだと言うし、また、国内でも、これが来るというと、長崎県がここに置きたいとか、広島が置きたいとか、あるいは万博のあとを使いたいとか、先走った話がどんどん行なわれておるわけで、誘致のところだけは非常に出てくるけれども、どういった性格のものかというのを詰めてはおらない点が多いので、その点についての大体のいままで研究された国連での経過というものをお聞かせ願いたい。
#202
○国務大臣(高見三郎君) ごく概略的なことを私から申し上げまして、詳細は関係局課長のほうから申し上げますが、現在国連とユネスコが協力をいたしまして研究した報告書によりまするというと、一つには、人類の将来にかかわる世界的問題、たとえば、国際平和、開発、環境問題について各学問分野の総合的な研究を行なうとともに、二つ目には、発展途上国の科学技術研究と人材育成を促進し、三つ目には、国連の根本課題解決に新しい手がかりを与える学術的機関として設置すると、これが国連大学の三つの目的なのであります。国連の目的でありますところの世界平和と人類の進歩に資することをねらいといたしておりまするが、設置形態といたしましては、世界の各地に研究教育センターをつくりまして、既存の大学研究所であってこの目的にふさわしいものと連携組織をつくって研究教育を促進し、これらの全体の組織の総合調整と企画管理を行なうため企画管理本部を置くことになっております。よく国連大学の日本誘致と申しまするものは、この管理運営の本部を日本へ誘致したいということが国連大学という単独の大学ができ上がるかのごとき誤解があるようでありまするけれども、これは世界の各地に研究組織を置こうということでありまして、それを総合した管理機構というものを国連大学本部としてどこかの国へ設置しようということなんであります。国連大学という一つのキャンパスが日本の国内にできるものを誘致したいというような話がどうも巷間非常に強く打ち出されておるようでありまするけれども、国連大学というものの組織自体はそういうものじゃないということを御理解いただきたいと存じます。
#203
○安永英雄君 わかりましたが、そうすると、日本のほうで誘致を考えておりますのは、いわゆる大学本部といいますか、国連のここにある調整計画センターという中心になるセンター、これを日本に誘致しているという形じゃなくて、研究修練センターといって各地にできるそちらを日本に誘致するというふうにお考えになっておるのか、この点はどうですか。
#204
○国務大臣(高見三郎君) これは国際的に非常にむずかしい問題であります。と申しまするのは、国連大学の本部を日本へ持ってまいりますると、本部総長は日本人がなることはできないことになっております。第三国の方が事務総長になるわけであります。そこで、研究センターを何かの部門を日本が受け持つということであるならば、これも何としても東南アジアでは一番よけい金を出さなきゃならぬのは当然のことでありますけれども日本がしょわなきゃならぬことは言うまでもないことであります。しかし、そのセンターは日本人が総長じゃないということを考えてみますというと、国連大学というものができることはまことに望ましいことでありまするけれども、何も日本にぜひこれを誘致しなければならないという性格のものではないと思っておりまするし、ところが、アジア諸国の後進諸国においては、日本が早く名のりをあげてくれということをしきりに言っておるようであります。しかし、アメリカやソ連は、必ずしも日本にこの本部ができることを歓迎はしていないというような、非常に微妙な段階にあるのでありまして、日本は金は出します、応分の負担をするということははっきりいたしておりまするけれども、日本へ是が非でも本部を持ってこなきゃならぬということを日本側が主張することは、必ずしもいまの国際情勢上適当でないのじゃないか。自然に来るものなら喜んでお引き受けをするし、それから反対論があるものなら、どこかよその国に持っていかれて、日本は金を出せばいいと、それでどこかの研究分野を日本で真剣に取り組んでやっていけばいいという考え方でおりまして、いまのところ日本が積極的に国連大学の本部を日本へ誘致するという名のりをあげておるわけではございません。この秋までにはおそらく自然的な姿において日本に本部をつくろうという動きが出てくるものだと私どもは期待をいたしておるわけであります。
#205
○安永英雄君 これは私どもが提唱をし、坂田文部大臣も非常に力を入れて、あの当時、いわゆる国連大学本部というものを日本に持ってきてそうして世界の平和に寄与する中心になるんだという、こういうような意気込みだったわけですが、いま聞きますというと、総長になる者が外国人になっちゃうから、ぐあいが悪いとか、あるいは国際情勢の云々ということですけれども、どうも私はそこのところがわからないんですが、自然に来ればいいけれども、積極的に本部を誘致しようとは考えていないというのは、もう少し説明していただきたいと思うのです、よくわかりませんから。
#206
○説明員(西田亀久夫君) ただいま大臣がお答え申し上げたとおりでございますが、当初国連大学の問題が議論になりましたときに、この大学がどういう姿で設けられるかということは、必ずしも共通理解がございませんでした。昨年以来、ただいま大臣が申し上げましたように、国連大学というのは単独の機関が独立にどこかにできるというのではなくて、いわばネットワークの形で組織されるということが共通理解としてだんだん出てまいりました。その場合に、本部として議論されておりますのは、御承知のとおりに、計画調整ということを中心に行なうセンターでございまして、これは現在まだ内容は固まっておりませんが、いわば一つの大学の本部があって世界じゅうのそういう組織に中央から指示方針を出して強くコントロールをしていくというような、そういう本部ではなさそうでございます。むしろ、それぞれの地域に置かれたセンターが独自の活動をする、それを全体的にうまく足並みをそろえるような一つの連絡調整を行なうというようなことを中心に考えておりますので、その本部が来なければ国連大学が日本に来なかったことになるのだというほど、それがすべてのものについて全権を持っておるようなものとは考えられていないようであります。したがって、大臣がお答えのように、私どもは、そういうものが各国の賛同を得てそれは日本に置くのが適当だということで来ることを強く期待をいたしておりますけれども、しかし、それが来なければ国連大学が日本に置かれることの意味がなくなるのだというようなものではない。そういう点が、昨年以来、次第に内容が固まってまいりましてはっきりしてまいりましたので、ただいま大臣のお答えのような結論になっておるわけでございます。
#207
○安永英雄君 わかりました。この点は、わが党としてもこの問題についての見解を持っておりますから、多少食い違っておるところがあります。世界の情勢の問題もさることながら、あなたがおっしゃるように本部が来なければ全然意味ないんだというふうなそういう思い詰めた考え方は持っていませんけれども、少なくも国連大学の中枢を占める本部というものはやっぱりなるべくここにあったほうが――私も概略のあの報告書等も読ましていただいたけれども、やはり有用な任務を果たすことは間違いない事実でありますし、この点は多少違いますけれども、これはまあうちのほうから前の天城さんも出ておられることだし、私も他のほうからちょっと聞いたわけでありますけれども、この誘致にはごく最近非常に消極的になってしまったというふうな話を聞くこともありますが、本部を誘致するということは、いまの答弁からいけば、もう少し熱意を入れたほうがいいんじゃないか。そして、いままでのこの種の問題について発言をしてきた天城さんあたりの立場というものは非常に変わってくると思いますけれども、この点は、もう少し進みましたら、文教委員会なりそれぞれのところに文部省の構想をこれは聞かれて発表するんじゃなくて積極的に出していただいて、そしてお互いの意見を戦わせるという機会をぜひつくってもらいたいというふうに考えます。
 時間もありませんから、あと二件。その一つは、四月の六日に、時間外勤務の手当請求訴訟の判決が最高裁で出ました。この点について、先日大臣がおられませんでしたので、あらためて大臣にお聞きをするわけでありますけれども、文部省のほうで各都道府県等に指導をして、そしてあの判決が出たので早く和解をしろというふうな指導をしていないかということを申し上げたけれども、局長のほうは、そういう指導をした覚えはございませんと、こういう話でした。しかし、その後、やはり報告が私どものほうにも来るわけです。あるいはまた、正式の新聞じゃないけれども、教育関係方面の新聞等の中にも、そういった指導をしたというふうに書いてあるのを見ますので、もう一回お尋ねをいたしたいと思うのです。この前は、局長は、結局、こういった判決が出ておるし、そしてこれは職員会議の時間外になった分について支払えというふうに出ておるけれども、他のほうは、あるいはそれがクラブ活動であったり、あるいは修学旅行であったり、いろいろ同じような種類の訴訟が二十二件行なわれておる。これについては、やはり最高裁の判決が出ておるので、いままでの問題だからこれは早く片づけるというふうな方針はお示しになったわけです。この点、大臣のほうは、この判決が出て、そしていま二十二件残っておる、この問題についての解決を文部省としてはどういう指導をなされるか、どういうお考えを持っておられるか、お聞きしたいと思うのです。
#208
○政府委員(岩間英太郎君) 先般も申し上げたところでございますが、私どものほうでただいま和解とかそういうことについての指導はいたしておりません。ただ、これは各県相当多くの県の関係の問題でございますので、教育長同士のお話しがあるんじゃないかというふうな気がいたしますけれども、この問題は、問題の性質上、教育長さん方のいろいろな御相談もあってしかるべきだというふうに考えておるわけでございます。私どもの基本的な方針としましては、この前の判決から照らしまして問題のないものは、これはすみやかに解決をしたらよろしいんじゃないか。しかし、事実関係だとかあるいは金額の関係でまだ決着のつかない、意見の分かれておるところもあるようでございまして、そういうものもできれば解決すればよろしいのでございますけれども、そういうもので最終的にあるいは裁判の決着を待つというようなものもあるかもしれませんけれども、基本的な考え方としましては、なるべく問題のないものは早急に片づけていくという方針でまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#209
○安永英雄君 大臣からお聞きしたかったわけですけれども、これは……
#210
○国務大臣(高見三郎君) 私から答えましょうか。
#211
○安永英雄君 ええ、どうぞ。
#212
○国務大臣(高見三郎君) いま初中局長がお答えしたとおりであります。私もできるだけ和解の方向で話し合いをつけていってもらいたいと思っております。ただ、文部省が指図するわけにはまいりませんから、各県の教育委員会がそれぞれの立場に立って、事実関係について非常な食い違いがあるものについては係争を続けなきゃならぬところも出てくるかもしれませんけれども、すでに最高裁の判決が出ている現段階においては、すみやかに和解の方向に向かって進むことが一番望ましい姿だという考え方であるわけであります。
#213
○安永英雄君 私の言っているのは、大臣、多少違うわけでしてね。私は、和解がけしからぬと言っておる。いまになって、とにかく、意見が対立しているというものを、和解を文部省のほうが指導しているのじゃないか。それよりも、私の言っているのは、もう同種類のものが最高裁で判決が出て、どこも文部省が指導しながら同じ法理論でもって追及しながら一つの判例が出たので、すみやかに他のほうも、主張というのがもう間違っておったというのが最高裁で出たので、その主張をいままでの従前の主張というのを変えて、早く裁判の結審を右へならえをして出すべきだというふうに指導をせいと私は言っておる。
#214
○国務大臣(高見三郎君) この問題は、私は、民法上の争いでありますから、和解ということばを使ったのであります。話し合いがつくものなら話し合いをつけるのが一番いいことであるし、それから上訴中のものであるならば、これはまあ教育委員会の見識の問題でありますけれども、取り下げるということもありましょう。けれども、事実関係において非常な食い違いがあるものについては、やっぱり係争をしなければならない問題もあり得ると私は思います。そこで、できることならば話し合いによって解決する道を考えることが一番賢明な方法だと。これが刑事事件でありまするというと、何も和解とかなんとかいう問題じゃございませんけれども、民事事件でありまするので、話し合いによって解決するという道を考えるのが適当じゃないかと、私はかように考えております。
#215
○安永英雄君 私はだいぶん大臣と食い違いがあるんです。と申しますのは、大臣は小さいことをお聞きになっていないと思いますけれども、長い間、この問題については、和解と言えば和解をするなと、こう指導をし、わが主張は通っておると。その主張がくずれたとなれば、今度は、急に、和解をしてそして金のほうも取られるなと、こういうふうな指導が行なわれていやせぬかというわけで、これは刑事だろうと民事だろうと和解という問題については同じあれで、むしろ私は民事ということをやりながら和解を持っていくというのはおかしいじゃないかと、こう言っておるわけですから、この点は誤解のないようにしていただきたいと思う。大臣、和解をすすめられたらたいへんなことになってくるわけですから、これは経過をもう少し御研究願って、次の委員会等でもはっきりしたものをお聞かせ願いたいと思う。まあ局長のほうの話は、いまの態度としてはそうだろうというふうに考えますが、これはこういう席上ですから、そうでけっこうでございますと私は絶対に言えないわけですから、問題をあとに残したというふうに思います。
 終わります。
  〔主査退席、副主査着席〕
#216
○塩出啓典君 それでは、私、きょうは、水産高校の実習船の問題についていろいろそのあり方について文部大臣にお聞きしたいと思うのでございますが、まず、最初に、全国の水産高校及び実習船、これは大体どの程度ございますか、これは局長さんに伺うんですが。
#217
○政府委員(岩間英太郎君) 全国の水産高等学校は現在五十六ございまして、そのうちで、全日制が四十九、全日制定時制併設が三、定時制が四ございます。学科の数は百六十八でございます。生徒数が一万八千七百八十七人。これが四十六年の五月一日現在の数字でございます。なお、生徒数は、これはたいへん遺憾なことでございますけれども、この五年間ぐらい少しずつ減っておりまして、前には二万人をこえておったというふうな状態でございますが、現在は一万九千人弱というふうな数字が出ておるわけでございます。
 それから実習船の数は、現在五十二隻でございます。
#218
○塩出啓典君 それでこの実習船によりましていろいろそういう漁業の実習をするわけですが、その実習のあり方については文部省としてはどういう方針でいくように指導しているのか。おそらく、私は、ここに高等学校学習指導領要というのがありますから、あくまでもこの方針でやっておるんじゃないかと思うわけですけれども、その点を確認しておきたいと思いますが。
#219
○政府委員(岩間英太郎君) ただいま先生の御指摘のとおりでございます。ただ、まあこれは私も県の指導課長をやっておりまして現実に実習船を持っておる水産高校を所管したことがございますけれども、非常に大きな労働、それから危険性を伴うものでございまして、そういう意味から申しまして、規律を必要とするとかいう関係で、私は在任中一番気をつかいましたのは水産高等学校でございます。学生の中でも上下の関係等につきましてかなり問題があったことは事実でございまして、指導の上でもなかなかむずかしいところであるということは申し上げられると思います。
#220
○塩出啓典君 そこで、きょうは、実は鳥取県の境水産高校について伺いたいのですが、ここは実習船が二隻あるわけでございますが、一隻はイカの実習、それからもう一隻はマグロの遠洋漁業ですね。ところが、このマグロの遠洋漁業の実習船が、県の特別会計の中で、一億二千万ですね、年々少しは違ってきているわけですが、それだけの水揚げをあげなければならない。そういうような点から、奴隷船だと、そのように言われて、わが党もいろいろ現地のほうに参りまして生徒に調査をしてきたわけですが、そういう点について文部省としてはどのように掌握しているのか、また、それに対して今日までどういう指導をしてきたのか、その点をお聞かせいただきたい。
#221
○政府委員(岩間英太郎君) ただいま先生の御指摘のようなことが新聞あるいは県の議会あたりで取り上げられたということは私ども承知をいたしておりますが、これは、私、一口に申しますと、たいへん遺憾なことであったというふうに考えるわけでございます。いろいろ県の教育委員会からの話を聞いてみますと、新聞で報道されております、あるいは生徒が申しておりますことと、県の教育委員会が申しておりますこととは、若干のズレがございまして、その点では少し誇大なことが報告されているというふうなことがあるかもしれませんけれども、ともかく、実習教育ということが学校におきましては主体でございまして、漁獲とかあるいは収入とかいうことはその次に考えてもらわなければならないことは言うまでもないことであります。したがいまして、教育という面、それから生徒の身心の発達を阻害しないかどうかという点、それから安全が守られているかどうかという点、そういう点にまず第一に目を向けて、ほかのことは多少おろそかになりましてもやむを得ないのではないかというふうな感じがするわけでございます。
#222
○塩出啓典君 あなたは、いま、非常に事実と違うと、そういうことを言われますけれども、文部省は調査をしたんですか。
#223
○政府委員(岩間英太郎君) 私どもは、県の教育委員会の報告というものをまず信用すると申しますか、そういう立場にあるものでございますから、実際に実地に参りましていろいろ調査をしたというわけではございませんが、県の教育委員会の報告と新聞等で報告されておりますこととの間に食い違いがあるということを申し上げたわけでございます。
#224
○塩出啓典君 じゃ、その現状に対して文部省としてはどういう指導をして、そしてよくなったんですか。現状はどうなんですか。そういういいかげんなことじゃ困りますよ。
#225
○政府委員(岩間英太郎君) その後、県の教育委員会でいろいろ改善した事項はございますが、まず事実関係について申し上げますと、非常に勤務の長い労働が続いたということでございますが、教育委員会の報告によりますと、四日間の平均が八・五時間ぐらいで、まあ一時的には二時間ぐらいはオーバーしたことはあるけれども、そういうふうな長期の労働時間がそう続いたということはないというふうなことを申しております。しかし、改善の方法としましては、八時間をこえるということは、これは法規上は規制はないようでございますが、また、年齢から申しましても、十八歳以上の者ばかりのようでございますけれども、しかし、これは八時間以下に押えるというようなふうに今後はやっていきたいというふうに聞いております。
 それから実習中の指導員の問題でございますけれども、指導教官が一人しかいないという点がございますが、この点は事実のようでございます。これに対しましては、機関科関係の先生も一人乗せてこれからはやっていきたいというふうな改善の方針が出されております。
 それから衣服代などの小づかいが二、三万円かかるというふうな報告もあるようでございますが、嗜好品だとかあるいはみやげ物の購入というふうなことで一万五千円程度は使ったかもしれないけれども、二、三万円というのはちょっと多いのじゃないかというふうなことでございます。
 それから暴力船員がいて生徒に暴力をふるったというふうなことも言われておりますが、暴力団に関係した者が一人おったというふうな事実はございますが、これは退職をさせたというふうなことを言っております。
 それから食事、飲料水、その他食糧の問題等につきましては、これは現状としまして不備な点があったということで、そういうものを改善したというふうなことが言われております。なお、食卓料それから甘味料、こういうものにつきましても、今後検討していきたいというふうなことが言われております。
#226
○塩出啓典君 まあいろいろ説明がありましたけれども、これは実は昭和四十四年度にすでに県の監査委員会が――魚の漁獲量をことしは二隻で大体一億二千万あげなきゃいけないと。これは数年前からあがってきているわけですけれども、四十四年に、漁獲量を義務づけるということはその結果やはり労働を過重にするわけですから、そういう点は非常によろしくないと。当然のことなんですね。四十四年の会計監査のときに言われておりながら、ことしの予算はどうなっていますか。
#227
○政府委員(岩間英太郎君) 私どもが報告を受けております四十六年度の収支予算額は一億五千六百九十三万円、そのうち、収入が一億一千七百五十万円、これは先生から約一億二千万円というお話がございましたものに対応するものでございますが、それから一般会計からの繰り入れ額が三千九百四十三万円、そういうふうになっております。
#228
○塩出啓典君 大体、去年は一億五千万、本年は一億二千万。けれども、一億二千万という水揚げを学生の乗る二隻の船であげなければならないようになっているわけですが、そういう点はどうなんですか。全国に水産高校もたくさんある、実習船もたくさんあるわけですが、そういう点から見てそれでよろしいんですか。
#229
○政府委員(岩間英太郎君) ちょっと水揚げの全国的な数字を持っておりませんが、全国的に申しましてそう無理でもないというふうな判断をいたしております。
#230
○塩出啓典君 無理でもないというのは、それはどういう根拠で言うんですか。全国の水産高校の水揚げは、全部その程度で、それでよろしいと言うんですか。全国の資料もわからないでそういういいかげんなことを言うというのはよくないですよ。
#231
○政府委員(岩間英太郎君) まあ私どもばかりではなくて、関係者に意見を聞いてみましたが、そこでは一応そう無理ではないのじゃないかという意見で申し上げたわけでございます。全国統計その他資料がございませんでたいへん恐縮でございますが、その点は資料を整えましてまたあらためてお答え申し上げます。
#232
○塩出啓典君 それで、あなたは県の教育委員会の言うことを聞いて、生徒の声、生徒の言っていることは信用できないと。大体文部省がそういう考えじゃよくないですよ。やっぱり、文部省というのは、生徒の意見をよく聞いて、それを尊重していくのが文部省じゃないですか。教育委員会はそんなことを言えるわけはないですよ。文部省にもそういう水産高校の船をちゃんと調べる担当教科調査官というのがいるわけでしょう。しかも、船の上なんですから、遠洋航海に行けば、船の上でどういうことがあろうとも、そういうことはわからないと思うんですね。そういう点で私は文部大臣にもまず要望したいのですけれども、もう少し県の教育委員会から報告だけでなしに――これは大事な問題だと思うんですよ。水産国日本として次代をになうそういう水産業の人たちを養成していく教育なんですから、それがやはり適正に行なわれていなきゃならない。そういう点で、不審な点があれば、そのために私は教科調査官というのもあるのじゃないかと思うんですがね。そういう点で、まず早急に教育委員会からのそういう報告だけじゃなしにもう少し実態を調査してもらいたいと思うんですよね。文部大臣、どうですか。
#233
○国務大臣(高見三郎君) 私の県にも実は水産高校があるわけであります。大体一億三千万ぐらい水揚げをいたしております。いま初中局長が申しましたところが大体無理ではないだろうというのは、そういうところから出ているのではないかと思うのでありますが、問題は、教育が本体でありまして、教育実習のためにやるのでありますから、収入というものをそう過酷に要求するということ自体が私は無理だろうと思う。文部省が新聞記事の出るたびに一々調査官を派遣するというわけにもまいりません。鳥取県は、あの報道が出ましてから、たしか一年四回の航海実習を三回に減らすとかいうようなことにしたようであります。教育委員会が十分措置いたしておると私は承知をいたしております。しかし、塩出先生がおっしゃるとおり、教育委員会の報告をなんでもかんでもうのみにしてこれは正しいんだというような判断に立つわけにもまいりません。ただ、問題は、私どもが教育委員会を信頼いたしたいと考えておる気持ちだけは御了承をいただきたいと思います。
#234
○塩出啓典君 そこで、深夜労働の問題ですけれども、生徒にいろいろ当たって話を聞きますと、午前三時ごろから投げなわ作業に入って、五時間ぐらいそれが続いて、そうしてあと片づけをして、そしてまた十二時ごろから夜中の十二時ごろまで今度は網を揚げる作業を続けると、そういうわけで、深夜労働で、睡眠時間も一日のうちの三時間か五時間ぐらいだと、まさに奴隷船だという、そういう生徒の声でございます。私はこの船に乗ったことはありませんからわかりませんけれどもね。そこで、こういう点はどうなんですか、深夜労働というのは、これは労働基準法あるいは船員法にもちゃんとよくないと禁じられているわけなんですよね。これは文部省でどう考えていますか。
#235
○政府委員(岩間英太郎君) 船員法では、「十八歳未満の船員又は女子の船員を午後八時から翌日の午前五時までの間において作業に従事させてはならない。」というふうな規定があるようでございますけれども、この規定は漁船については漁業の特殊性からその適用が排除されているわけでございます。御指摘のように、マグロのはえなわというのは、こうずっとなわを投げてまいりまして、それをまた端から上げていくというふうなことでございますから、どうしても八時から五時までは休むというふうなことができにくい漁業の方法でございます。そういう点から考えまして、できるだけ八時間の睡眠というふうなものは確保しなければならないと思いますが、例外的にそういうことがあり得るというのもこれはある程度はやむを得ないのじゃないかという気がするわけでございます。しかし、四日間が一つの周期でございますので、四日間を通じまして、労働時間が八時間をこえないようにというふうな指導はこれは徹底してまいる必要があるのじゃないかというふうに考えております。
#236
○塩出啓典君 それで、実習船というのは、魚をとるのじゃなしに、教育を行なうわけですからね。そういう点で、収入によって生活をしている漁船にとっては、これはやはり夜もやらなければならない場合もあるかもしれない。しかし、教育という立場から考えて、そういう深夜作業というのは、これは船員法の中でもちゃんと規定しているし、どうしても深夜作業をしなきゃならない場合にはそれなりのちゃんと届け出をしてと、そういう規定があるわけですね。もちろん、この場合、乗り組み員は船員ではない学生ですから、あるいは厳密に言えばそういう適用は受けないかもしれないですけれども、その精神においてはそういう点はもっと厳格にしなきゃいけないと思うのですね。ただ、漁船の場合はそういう適用除外があるのだからといって、そうして高校生の実習生がどんどん深夜作業にかり立てられている。その結果、学生時代の実習の――われわれも学生時代にいろいろ実習に行きましたけれども、そういうのは非常に楽しい思い出になっているわけですけれどもねやはり奴隷船のようなそういう印象の残らないように、そこは文部省がもう少し基準をちゃんと定めて、歯どめというのですかね。いま、言うなれば野放しみたいなものでしょう。やはり歯どめをちゃんとして、そして行き過ぎのないように、どうしても教育上夜そういう作業もしなきゃいけないそういうことであるならば、それは限られた中でそういうことも認めると、そういうようにもっと厳格にやっていかないと生徒がかわいそうじゃないかと思うのですけれどもね。そういう点、文部大臣、どうですか。
#237
○国務大臣(高見三郎君) 御意見、ごもっともでございます。ただ、御承知のように、実習船で実習をするということは、たとえば遠洋漁業の場合は私は承知いたしておりますが、投げ網などの場合は、網を投げておきまして、それからまた夜中にその網をたぐっていく。やり方によりますと、二班に分ければ、別に深夜作業をやる子供を昼間寝せておいて、次の回は今度は深夜作業をやっていない学生にやらせるというような運営の方法はあると思うのですね。また、それだけの教育的な配慮はしなきゃならない。けれども、学生だからといって実習船で実習にならない実習をやってみても、これは意味のないことだと思うのであります。だから、教育的配慮と申しますのは、その実習をやることによって将来子供がほんとうに漁業者としてひとり立ちのできる漁業者に仕立て上げてやることでなければならぬと思います。問題は、どういう教育的な配慮をするかという問題に私はかかってくるのじゃないか、かように考えております。
#238
○塩出啓典君 文部大臣の言われる趣旨はわかるわけですけれどもね。ただ、いま言ったように、一たび船が外へ出ちゃえば、結局、指導教官も一人しか乗っていない。それで、船員とともにあるわけですから、やっぱりどうしても水揚げというものに力を入れざるを得ないのです。そういうわけでやっぱりそこに行き過ぎがあるわけですから、そういう点、もっと行き過ぎのないようにやってもらいたいと思うのですよ。どうも、文部大臣や局長の話を聞いていると、やむを得ないんだと、船乗りになる者がそれぐらいの重労働にへこたれるようじゃ話にならぬと、そういうような認識に見えるのですけれどもね。やはり、教育なんでしょう。魚をとるのが目的じゃなしに、技術を実習するのが目的なんですからね。そういう点で、ひとつ行き過ぎのないように、この高校の指導要領なんかでも全くこまかい点が書いてないのですね。ただ、実習船は一カ月ないし三カ月、そういうことで、そういう深夜労働の問題についてもう少しこまかい配慮をするなり、通達を出すなり、私はそのようにすべきじゃないかと思うのですけれどもね。大臣、どうですか、その点。
#239
○国務大臣(高見三郎君) 私が申し上げましたのは、実習の教育的意味というものを申し上げたのであります。これが教育の目的を逸脱して、ただ水揚げさえふやせばいいというような趣旨の教育をやられては困るということを申したつもりでおります。その点においては、塩出先生と何ら異なったところはございません。したがって、指導の面につきましては、御指摘のように十分配慮いたす覚悟であります。
#240
○塩出啓典君 この水産高校は、そういう漁業科、それから機関科もあるわけですけれども、機関科の生徒に会いましていろいろ聞いてみると、ともかく、一つは、指導教官が乗っていないわけですね。それから船に乗っても、魚とりばかりやって、機関の実習をしたのは最後の一日の一時間だけやったというんですよ。こういうのは、どうなんですか、文部省の学習指導要領に照らして、機関科の人が魚ばかりとっているというのは、どうなんですか、その点は。
#241
○政府委員(岩間英太郎君) ただいま御指摘になりましたように、指導教官が乗っておらないという点は、これは県の教育委員会のほうでも改めるようでございます。確かに、いままでは、機関長あるいは機関士まかせという点がございました。これは、私どもの方針から申しますと、やや欠けておった点があるということでございます。
 それから実際の実習が最後の一日の一時間しかできなかったというのは、私どもまだそういうところまでは伺っておりませんけれども、これは当然機関科でございますから、機関科の者に――まあ手伝いをさせるようなことがあるかもしれませんが、魚とりばかりやらせるということは、これは改めなければならないことだというふうに考えております。
#242
○塩出啓典君 これは生徒に会っていろいろ聞いた話ですから、そういいかげんなうそを言うわけはないと思うんですよ。ちゃんと文部省の指導要領には、「職業に関する各教科・科目のうち、実習に関する科目の指導に当たっては、関係する各教科・科目と密接な関連を図るとともに、」と。だから、やっぱり自分が実習をするのと目的に合ったそういう仕事をしなきゃならない、そうなっているわけですよね。それが、もう、機関の実習でありながら、大半は毎日魚とりを手伝わされる。結局、忙しいと、機関の実習生までかり出されるわけですからね。だから、交代で休む時間であっても、忙しくなるとかり出される。そういうような状態になっているわけですよね。そういう点は、いまおっしゃったように、厳重にやってもらいたいと思うんですよ。
 それから船の食事についても、非常にまずい、野菜が少ない。あるいは、歯をみがくのも全部海水を使わなければならない、飲み水だけしか真水を使えない。こういうような点は、どうなんですか、文部省としてはそういうことではまずいと思うのですけれども、どうですか、この点。
#243
○政府委員(岩間英太郎君) 仰せのとおりでございまして、これは県のほうでも造水装置とかウオータークーラー等を改善するということを申しております。
 なお、食費等につきましては、これは全国的に私ども調べてみたわけでございますけれども、大体全国平均ぐらいのところまでまいっておりますが、ほかのものと比べてみますと大体自衛艦程度ということで、まあ労働も非常に激しいわけでございますから、これもできましたなら改善の方向で進んでもらいたいというふうに考えております。
#244
○塩出啓典君 実験実習にあたっては特に安全と保健に留意することということでちゃんと文部省の指導要領にもあるわけですからね。やはり一番成長盛りの生徒がそういう不健康な状態であれば、なんにもならないと思うんですよ。そういう点もひとつ厳重に指導してやってもらいたいと思います。
 それから船員がなかなか集まらない。これはどこの高校でもそういう状態になっているわけですけれども、その点は全国的にはどうなんですか。この船には何名の船員が乗らなきゃならないという、定員どおりちゃんと集まっているのかどうか、その点はどうですか。
#245
○政府委員(岩間英太郎君) 全国的な状況は正確にはいま資料がございませんが、先生がおっしゃるとおりだと思います。これは鳥取の例を見ましても非常に船員の確保という点がむずかしいようでございまして、また、航海が終わりますと抜けていく船員もあるというふうなことを聞いておるわけでございます。現在ここで歩合制などをとられておりますのも、やはり船員を確保するためにいまとられていると思いますが、いろいろ各県でも苦労をしているということであろうと思います。また、給与の面を見ましても、歩合を入れまして十万から十一万ということでございまして、そういう面の問題もあろうかというふうな気もするわけでございます。
#246
○塩出啓典君 やはり、ここも、定員が二十名と十六名ですけれども、定員がなかなか集まらない。いつも何名か不足しているわけですね。そうすると、やっぱりそういうのが全部生徒のほうに重労働がかかってくると思うんですよ。そういう点で、これはやはり待遇の問題等にもあると思うのですけれどもね。しかし、日本は、これからも水産ということが非常に大事になってくるわけですから、もう少しそういう船員の確保という問題についても私は国としての財源的な配慮――しかも、いろいろ聞いてみますと、船員がやめるでしょう。そうすると、よその県からほとんど来ているらしいんですよ。教育という面からいえば、人間的なつながりというものが非常に大事なわけですからね。暴力団も結局入ってくるわけです、その結果では。そういう点で、やはり教育という点から考えれば、一緒に仕事をする人の人柄というものもこれは非常に大事になってくると思うのですね。そういう点で、このあたり、もう少し待遇を改善するなり、そういうようなもっと根本的な処置をとらなきゃならないのではないかと、私はそのように考えるのですけれども、その点はどうですか。
#247
○政府委員(岩間英太郎君) 基本的には、先生のおっしゃるとおりだと思います。これは具体的にどうするかということになりますとなかなかむずかしい問題もあろうかと思いますが、その点につきましては今後私どもも十分注意を払いましてその確保につきましては格別の注意を払いたいというふうに考えております。
#248
○塩出啓典君 それで、問題は、先ほど申しましたように、各地方自治体も非常に財源的に苦しいわけですね。実習船をすれば金もかかる。船員を雇えばお金もかかる。そういうことで、各県は財政的に苦しいために、実習船でのそういう漁獲による収入というのは義務づけられているわけですよね、鳥取県の場合には。県によってはそういう義務づけられていないところもあるわけですけれどもね。だから、それを義務づけるということは、やはりそこでこれだけとらなきゃならない。あるいはまた、漁獲高に応じて船員の給料が歩合制ですから、そういうようなことでできるだけたくさんとらなきゃならない。その上、定員が不足している。そこに学生に大きな負担がかかってくるのじゃないかと思うのですね。そういう点で、そういう実習船とかそういう運航に対する費用、そういうものはやはり国からもう少し財源的な処置をして、そういうことのないように私はやるべきじゃないかなと思うのですけれどもね。自治省から来ていらっしゃいますか。その点はどうなっておりますか、そういう点は。
#249
○説明員(近藤隆之君) 御承知のように、高等学校に要する経費は、地方交付税の基準財政需要額として積算して交付することになっております。課程によりまして、たとえば普通課程、工業課程、農業課程、それから水産課程と、そういうふうに分けまして、毎年どの程度標準的に要るかというモデル予算みたいなものをつくりまして、それから入ってきます収入を差し引いた差額を一般財源として交付税の基準財政需要額にするというやり方をとっております。水産課程は、普通課程などに比べますと、相当需要がかさみます。交付税ベースで申しますと、約六・六倍の補整を行なっております。したがって、その意味では、われわれのほうといたしまして必要経費はここに計上されておるものと見ております。ただ、全国的なモデルということになりますと、特定の県というわけにはまいりませんけれども、毎年毎年実情に合わして補整しておりますので、おおむね実態に合っているのじゃないかと思っております。
#250
○塩出啓典君 結局、特別交付税あるいは交付税の中でそういう水産高校のあるところの分はちゃんと見ているというわけですね。見ているけれども、結局、こういうような状態になっているというのは、それはどういうわけなんですか。
#251
○説明員(近藤隆之君) 水産課程でございますれば、当然実習船というものがありまして、一応モデル的な収入というものは交付税の基準財政需要額外になるわけでございます。具体的な高校につきましてどこが水揚げがどうこうということを、交付税の性格から言いましても、それを反映するということは不可能でございます。やはりそういう全国一律のモデル的なもので配分せざるを得ないのじゃないかと思います。
#252
○塩出啓典君 私はこれは文部大臣にお聞きしたいのですが、そういう実習船が一年間の水揚げ高というものはこれだけあげなきゃならないと、そういうような義務づけをするということは非常によくないと思うのですよ。そういう点で、これはもちろん実習すれば魚もとれるわけですから、それは一般会計に雑収入としてあげるとか、そういう制度そのものが問題になって、そうして高校ではそういう重労働にならざるを得ない、そういう結果になっていると思うのです。だから、これはそういう財政的な面でちゃんとした体制にしていかないと、どうしても遠洋航海先では目が届かないわけですから、そこに行き過ぎもあるのじゃないかと思うのですね。そういう点で、文部省としては、これは特別会計でそういう収入をこれだけあげなきゃならないという義務づけをしていないところもあるわけですから、そういう方向に私は持っていったほうがいいのじゃないかとそのように思うわけですよね。その点、どうですか。
#253
○政府委員(岩間英太郎君) 一般会計で予算を組むかあるいは特別会計にするかというのは、これは一つは財政上のテクニックの問題もあろうかと思います。先生も御案内のとおり、国立学校につきましては、現在、国立学校特別会計を設けておりますけれども、これは主として財政上の技術的な理由でございます。特別会計にいたしましても、収入が過大でなければ、それから必要な経費がその中に盛られておれば、これはいいわけでございまして、そういう意味から申しまして、会計いかんにかかわりませず、収入の見積もりというものを正確にする、それから必要な経費はこれはなるべく盛るようにする、それに伴う国の財政的な裏づけというものは、私ども自治省のほうにお願いいたしまして、なるべく実態に合うように改善していく、そういうような方向でやってまいりたいと考えております。
#254
○塩出啓典君 それで、農林省にお伺いしますが、これから水産業というのは、日本の将来にとっても、後継者対策として水産高校における教育というのは非常に大事だと思うのですね。そういう点で、この就職状況を見てみましても、かなり陸上の会社とかあるいは商船会社とかあるいは大企業とかそういうところへ就職をして、鳥取県の地元にあるそういう漁船に乗る人は年々非常に少なくなってきているわけですね。やはり、実習船における重労働、そういうものが一つの悪い印象となって船に乗る人も少なくなっているんじゃないかと、われわれはそういう感じがするわけですけれどもね。漁業の将来を考えると、こういうことでは非常によろしくないと私は心配しているわけですけれども、農林省としては、その点をどう考えているか。
#255
○説明員(松下友成君) 水産高校の卒業生の中で漁業へ向かう者の割合が低い、また、その多くの者が大手の企業に向かうという点は、先生の御指摘のとおりでございます。これはいろいろ原因があろうかと思うわけでございますけれども、何と申しましても、先ほど先生の御指摘のように、労働条件なり、労働環境なり、あるいは漁業所得の面、そういった面におきまして、漁業の場合に他産業と比べて低いという点があろうかと思うわけでございます。水産庁といたしましても、漁業者の所得の増大、それから船内の環境の改善、それから船内作業の省力化、そういったものをはかるために、中小漁業、沿岸漁業の振興対策を現在強力に進めておるところでございます。水産高校の卒業生が漁業へ進出できるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
#256
○塩出啓典君 最後に、私は文部大臣に要望したいわけでございますが、高校におけるそういう教育というものは非常に大事だと思うのですね。確かに、漁業そのものが、現在の特に零細漁業においては労働条件が非常に過酷である。それはやはり徐々に直していかなきゃいけないと思うのですね。そのために、学校における教育というものが行き過ぎがあっては、そこで、正しい漁業のあり方というものを教える意味からも、その高校における実習船において労働基準法違反のようなことがかりそめにもあってはならないし、そういうことがあれば、そういういいかげんな印象になって、ますます将来のことが心配になってくると思うのですね。そういう点で、大臣は、こういうことを一々問題があって調査に行ったらきりがないと。しかし、私はそういう考えは間違いだと思うのですよ。そういう一つの問題が起きたときに、そこにやっぱり行って、そして実際にそのためにちゃんと文部省にもそういう担当官もくっついているわけなんですから、それはやはり遠洋航海というのはどうしても目の届かないところですからね。そのために担当官もいるんですから、私はこの問題についても真剣に取り組んでもらいたいと思うのですよ。何か文部省の話を聞いておりますと、そういうのは一部の生徒が言っているんだとかね。それは教育委員会を信じたいということはわかりますよ。やはり、ものごとというのは、両方の意見を聞いて、また現場を調べて、そうしてやっていく必要があるんじゃないかと思うのですね。そういう点で、文部省におきましてもよく実情を調べて、そうして水産高校――これは境水産高校だけではない、全国にある水産高校全部についてもそういう危険性はある問題でございますので、水産高校の学生の人たちが、ほんとうに楽しい思い出と、そしてまた将来の大きな希望を持ってほんとうに水産を中心になってやっていくんだと、そういう気持ちになるような教育をしてもらわないと、生徒が奴隷船だとかタコ部屋みたいなところでほんとうに恥ずかしい、そういうような声が一人でもあるようであっては相ならないと思うのですね。だから、もっとこの問題を真剣に考えてもらいたいと思うんですよ。文部大臣の話を聞いておっても、なんだ、それくらいはあたりまえだと、そういう感じがぼくはしてならないんですけれどもね。そういう点、もう少し現地、実情を調査して、四十四年から言われてまだよくなってないんですから、ほんとうによくなるまでやはり責任を持ってやってもらいたいと思うのです。そのことを要望したいと思うんですけれども、どうでしょうか。
#257
○国務大臣(高見三郎君) それは、もうお話のとおり、全然異議はございません。ただ、日本の水産業が非常ないま苦境に立っておることは、御承知のとおりであります。それだけに、水産教育というものは日本の将来にとって非常に大事な役割りをになっておる。残念ながら、農業高校や、こうした職業高校の卒業生がその職場に居つかないというのは、水産高校だけの例じゃございません。農学校にも同じような例があるわけであります。ありますが、ことに私は自分の体験から申しまして、外洋に出ての話でありまするので、これはよほど注意の上にも注意をしなきゃならないということは申すまでもないことだと思うのでありますが、御指摘の点につきましては、私のほうも十分調査をいたしますし、また、県のほうもすでに改善すべきものについての改善方法についての報告が参っております。けれども、これがまだ十分であるとは存じませんので、御指摘の点は心に置きまして十分注意をいたしたいと考えております。
#258
○塩出啓典君 根本はやはり財源措置の問題になると思いますので、文部省としても、そういう実習船に対する費用の点も、十分な費用がとれるように、そういう点も、文部大臣としても、国としての財源措置、これは水産というものは国全体の大きな問題ですから、そういう財源措置も十分措置をしてもらいたい、そのことを要望いたします。
#259
○国務大臣(高見三郎君) 関係各省とも相談いたしまして、できるだけ先生の御意見を実現するように努力をいたします。
#260
○塩出啓典君 それで、この問題は終わりまして、一つだけ最後にお聞きしておきたいと思うんですが、昨年の予算委員会の分科会で夜間中学の問題について私はこの委員会で質問をいたしまして、それについて、文部当局は、その当時はまだ坂田文部大臣でございましたけれども、検討すると、そういうことでございますが、この問題について、どなたか、どういう現状になっているのか、そのことを御報告願いたいと思います。
#261
○政府委員(岩間英太郎君) 現在、夜間中学で夜間学級を設けておりますのは、七都府県の二十一の中学校でございますが、前年度に引き続きまして中学校の夜間学級の経営や指導のあり方につきまして調査研究を委嘱するということで調査費を計上いたしております。前年度の予算が二百三十九万四千円でございますが、ただいま御審議願っております四十七年度予算におきましては四百二十一万というふうに増額しているわけでございます。
 なお、生徒の数はだんだん減ってまいりまして、それからまた、生徒の質も、義務教育修了者が九〇%以上だったと思いますが占めるというふうになっておりまして、いままでとはちょっと性格が変わりまして、生涯教育の一環とでも申しましょうか、そういうふうな観点からこの問題をとらえるということも一つの方向ではないかというふうな感じもいたしております。
 いずれにしましても、現在こういうものが現存いたしておりますし、それからまた、その役割りを十分果たしているわけでございますから、これにつきましては、先生御指摘のございましたように、あたたかい目でもって見守ってまいりたいというふうに考える次第でございます。
#262
○塩出啓典君 この問題はまた次の機会にいたしますが、結局、夜間中学というものはどうしても必要だと。実際は義務教育の年代に昼間の中学へ行くことが一番望ましいわけですけれども、それがどうしてもできない人というのはあるわけです。そういう点で、どうしても夜間中学というものの必要性は文部省は認めているわけです。ところが、夜間中学というものは、学校教育法においてはそういうものは認められていないわけですね。だから、できれば夜間中学でなくて昼間の中学へ全部行って、それで完全に卒業するのが一番望ましいわけですけれども、現実には就学しない、除籍になる生徒もおるわけです。そういう点で、どうしても夜間中学は必要なんです。いろいろ話を聞いてみると、非常に大事な役割りを果たしていると思うのですね。そういう点で、これはちゃんと昼間の中学の先生と同じように、先生に対する国の援助という点についても差があるわけですから、法律的にそれをちゃんと認めてそういう処置をしてもらいたい。そういうことを昨年の委員会において要望いたしまして、国務大臣は、その点を含めて検討いたしますと、そういう答弁をいただいたわけですけれども、その当時はいまの文部大臣は文部大臣じゃなかったかもしれませんけれども、前文部大臣がそういうふうに言っているわけなんですから、そのあたりもう少し前進をしてもらいたいと思うんですね。昨年のこの分科会でやったことが全く何ら前進をしていない。それでは、ここで幾らやっても意味ないと思うんですよ。その点を文部大臣に要望して、質問を終わります。
#263
○国務大臣(高見三郎君) 私は、一人でも夜間の学校で学びたいという子供がおる限りは、夜間中学をやめるわけにはまいらないと、こう考えております。できるだけ教育の機会均等という観点から、夜間中学というものを、生徒の数はだんだん減ってまいりますけれども、これは一人といえども要望者がある限りは続けていきたい。その意味において調査費をことしは前年度のほとんど倍額つけたわけでありまして、前進しておらないことはありません。坂田文部大臣が非常に熱心にこの問題に取り組んでおられたことは、私もよく承知をいたしております。私も、文教委員の一人として、一人でも学びたいというものがある限りは、やめるべきじゃないという考え方を持っておりますし、現に私もそのつもりでやっておるわけであります。世の中が変わってまいります関係上、生徒数は減っていきます。学校数もあるいは減るかもしれません。減るかもしれませんけれども、教育内容だけは充実したものにしてあげたいというのが私の念願であります。
  〔副主査退席、主査着席〕
#264
○萩原幽香子君 きのうの「朝日新聞」に報道された韓国人少女の高校入学問題について、文部大臣はどのようにお考えでございましょうか。
#265
○国務大臣(高見三郎君) 私も、この新聞を読みまして、これがもし人種的差別であるならば、これはゆゆしい問題だと思うのでありますが、どうも人種的差別から出発したものではないらしい。ただうそをついたことがけしからぬと。これはやや教育的配慮が欠けておるのではないかという感じはいたします。ただ、東京都が所管いたしておる私立高校の問題でございますので、文部省がいま直接くちばしをいれる筋合いのものではございませんけれども、まことに遺憾なことだと思っておるわけであります。
#266
○萩原幽香子君 在日韓国人の子弟の教育に対しては、日韓地位協定第四条及び合意議事録に定めがございますけれども、政府としては、その具体的な実施に関していかなる配慮をお持ちでございましょうか、承りたいと思います。これは私立のことでございますし、直接の問題ではございませんと、そういうことをおっしゃっておりますけれども、やはり私はその問題についてはそれで片づけられない問題があるのではないかというふうに考えますので、もう一度大臣のお考えを承りたいと存じます。
#267
○政府委員(岩間英太郎君) 私ども、日本の国内に外国の方がお住まいになっておられる場合、やはり日本に長くお住まいになる場合には、現在の社会の進展等から申しまして、少なくとも高等学校程度の教育は受けていただくほうが望ましいのじゃないかということで、ただいま御指摘になりましたような日韓の問題につきましても同じような方針で臨んでおるわけでございます。つまり、義務教育を修了した者が高等学校に行きたいという希望があれば、できるだけそれをかなえてやるようにというのが基本的方針でございます。
#268
○国務大臣(高見三郎君) 私からも申し上げますが、これは日韓条約の関係もございまして、ことさらにこの問題は深刻に受けとめなきゃならぬ問題だというように理解をいたしております。
#269
○萩原幽香子君 この事件は、一見ささいな事柄のようなんですけれども、地位協定の前文はお読みいただいておりますでございましょうね。地位協定の前文、これはこういうことが書いてございます。「多年の間日本国に居住している大韓民国国民が日本国の社会と特別な関係を有するに至っていることを考慮し、これらの大韓民国国民が日本国の社会秩序の下で安定した生活を営むことができるようにすることが、両国間及び両国民間の友好関係の増進に寄与する」と、こういうことが書いてございますね。そういう精神から考えますというと、これは私はやはり重大な問題ではないかというふうに考えるわけなんでございますね。そこで、この地位協定第四条には、永住権のある韓国民に対するわが国における教育について、政府は「妥当な考慮を払うものとする。」と、こういうふうにございますが、その妥当な考慮を払うものとするというのは、一体どういうような意味に受けとめておられますのか、承りたいと存じます。
#270
○国務大臣(高見三郎君) これはもう文字どおり、妥当という意味は、日本人と差別をしないということを内に含んでおることばの表現でありまして、韓国人なるがゆえに差別の待遇を受けることはないということを明らかにしたものだと、私はこのように理解をいたしております。
#271
○萩原幽香子君 この問題は、韓国人なるがためにではないというふうにお受けとめになっていらっしゃるわけでございますね。
#272
○国務大臣(高見三郎君) この記事に関する限りは、うそをついておったということを事由にしておるようであります。しかし、うそをつくといっても、うそのつき方もあるだろうと思うのでありまして、一たん入学を許可したものを入学式が終わって取り消すなどということは、これはちょっと学校の権威にかけてもいかがかと思っておるわけであります。少なくとも公立の学校に関する限りは、さような事態はないつもりでおります。
#273
○萩原幽香子君 それでは、これはうその問題ということになっておりますようでございますから、私はいまから大臣とうそ論議を少ししてみたいと思います。
 国籍についてうそを書いたということに端を発する、人種の差別ではないと、こういうふうに大臣は受けとめておいでのようでございますね。そこで、わが国は、昔から、うそというものは道徳的に許せないような感じが非常に強うございます。かつて私も学校の教員でございましたが、うそはいけないというふうに子供に指導をしてきたところでございますが、いまこの問題を見て、私はあらためてうそというものについて考え直さなきゃならないのじゃないかという感じがいたします。昔でございますと、うそは泥棒の始まりとか、うそを言えば死んでから舌を抜かれるとかいったようなことで、ほんとうにうそというものは悪いものだと、こういうことでございました。ところで、いま私たちの生活の中で、うそのない社会というものがございますでしょうか。たとえば、沖繩返還協定をめぐる政府の答弁のうそから始まって機密漏洩事件が起こった。そのうその答弁をした人よりも、うそを漏らした人のほうがきびしい立場に追いやられた。これは文部大臣も御承知のとおりだと考えるところでございます。
 そこで、教育の立場で、大臣は一体うそというものについてどういう定義をなさいますか、承りたいと存じます。
#274
○国務大臣(高見三郎君) たいへんむずかしい御質問でありまするが、うそはうそでありまして、真実でないことをうそと申しておるわけでございます。
#275
○萩原幽香子君 真実でないことはうそであるということでございますか。大臣はそういう定義をなさったと私は受けとめて、それでは、うそというものはなぜ言うんでしょうか、この問題はいかがでございましょう。
#276
○国務大臣(高見三郎君) いろんな事情はあるでありましょう。いろんな事情はあるでありましょうが、この場合には、第三国人であるということを知られたくなかったというところに出発点があったんじゃないか。私はそれはそれなりに評価してよろしいと思うんですよ。それが悪いけしからぬという意味じゃございません。が、第三国人としてでなしに、まあ三世も続いた――これは三世の子なんですね。だから、日本人としての立場に立って願書を出したと。それがたまたま戸籍謄本をとってみたら国籍は大韓民国人であったと。それだけのことで入学の許可を取り消すということ自体がうそなるがゆえにということでは、ちょっと教育的にいかがかという感じはいたしておるのであります。
#277
○萩原幽香子君 そうしますと、この子供の言ったうそというもの、これを教育的に考えれば、それにもかかわらず、こういうことをもとにして入学を取り消したということは、学校の配慮が足りないと、そういうふうに大臣はお考えなんでございましょうか。
#278
○国務大臣(高見三郎君) 率直に申し上げまして、私がもし校長であったら、まず親を呼んで、戸籍がこうなっているがどうだということを聞くつもりであります。おそらく子供は知らなかったに違いない、うそをつくということをですよ。知らなかったに違いない。親のほうが承知しておったかと思います。現に、私も、この春大学を受験いたします子供の保証人に私になってくれという韓国人がいまして、喜んでなりました。これは非常によくできる子供でありまして、それでもやっぱり一つの感情を持っておるわけなんですね。それだけに、私どもは、この扱いというものはやっぱりもっとあたたかい気持ちで扱ってやるべきであったという感じがするのであります。
#279
○萩原幽香子君 そうしますと、このうそは、ほんとうはうそとは言えないうそだというようにお考えなんでございましょうか。これは子供にとってはほんとうはうそを言ったということではないんだというふうに大臣はお受けとめでございましょうか。
#280
○国務大臣(高見三郎君) 私は、どうも、新聞で見る限りにおいてはそういう感じがするのであります。実は、私が今度保証人になりました子供の兄は自殺をいたしております。静岡の商業高校の二年生のときに投身自殺をいたしております。朝鮮人だと言われたために自殺をいたしております。その次の娘を今度大学へやるというときに、どうも現職の文部大臣が保証人になるというのもいかがかと思いましたけれども、私は進んで保証人の判をということで保証人になってやったいきさつがございます。したがって、私は、おそらくこの場合も、親の立場から申しますると、子供には知らしてなかったのじゃないかという感じがするのであります。
#281
○萩原幽香子君 そうしますと、知らなかったのにいきなりこういったような状態を受けたというその子供の心境というものはどうでございましょう。
#282
○国務大臣(高見三郎君) おそらく非常に大きなショックを受けたことだと思いまするし、これが将来にわたって両国間の信頼感を非常にそこなってくる要因をなしておる、こういうことは二度とあってはならないことだという感じがいたしておるのであります。
#283
○萩原幽香子君 こういうことになりますのは、そもそも従来の在日韓国人に対する日本社会の対応のしかたに問題があるんじゃないかと思うのです。そういうことにつきまして、これまで大臣はどういうお考えをお持ちでございましたでしょうか。また、たとえば具体的にこういったことはやっぱり残念なことだったというようにお考えになったことがあれば、承りたいと存じます。
#284
○国務大臣(高見三郎君) 私は、在日韓国人で非常に懇意にしている人があります。が、どうもやっぱり一種のコンプレックスを持っておることは事実であります。残念なことでありまするが、これは事実であります。そこで、今度の場合などは最も端的にあらわれた一例であり、この子供にとっては生涯消すことのできない心の傷になるであろうと思いますし、できることならば入学許可取消をもう一ぺん取り消してもらいたいものだと。しかし、取り消してもらっても、この子がもう一ぺん入ろうという気持ちになるかならぬか、そこらにも問題があると思いますけれども、学校側が謙虚な態度で、一たん入学を許可したのでありますから、取消を再取消をやるだけの雅量があってほしいものだと、実は文部大臣としてではありません、私は日本人の一人として念願をいたしております。
#285
○萩原幽香子君 そこで、またうその問題に返るわけでございますけれども、やむを得ずつくうそというのは、いまのような例もございましょうが、ほかにまだやむを得ずつかなければならないうそというのはございませんでしょうか。
#286
○国務大臣(高見三郎君) どうも、うその談義では私も困るわけなんですが、それはあるでしょう、ほかにも。あるいは私ども日常の生活においてすらあることでありますから、ほかにもあることだと思います。けれども、うそがいいという倫理観というものは私は成り立たないと思うのですね。うそがいいという倫理観は成り立たない。うそはいけないことだと。しかし、この子供を例にとる場合には、まことに気の毒であったと申さざるを得ないということであります。
#287
○萩原幽香子君 私は、うそをついたほうがいいという例もあるのではないかという感じがいたします。たとえば、いま死ぬかもしれない病気になっている人に、おまえはいついつ死ぬぞと言ってやることがよろしいか、そういうことをはっきり言わないほうがよろしいのか。大臣は、さっき、真実でないことを言うことがうそだと、こうおっしゃいましたですね。そうすると、真実でないとしても、やっぱり言ってはならないこともあるのではございませんでしょうか。そういう点では大臣はどのようにお考えでございましょう。
#288
○国務大臣(高見三郎君) これはその人の人生観の問題でございましょう。たとえば、ガンの患者に対して、あなたガンだと、これはもう手おくれで助かりませんと言うことが医者として真実な態度であるか。あるいは、医者としてこの人を一刻でも長く生かすために、あなたのガンは大したことじゃありません、気をしっかり持っていなさい、もう手術などする必要はありませんと言う。実は、手術ができない状態であって、もう手術なんかしなくっても、あなたのガンは薬でなおりますよと言う場合のうそも私はあり得ると思うのですね。だけれども、それはその人の人生観の問題だと思うのであります。だから、倫理観の上においてうそというものがよくないことだということは、これは萩原先生も御承知のとおりで、おそらく先生だってうそをついていいという教育は一ぺんだってされたことはないだろうと思います。けれども、必要やむを得ざるうそというものはあり得るということだけは私も認めております。
#289
○萩原幽香子君 それでは、絶対許されないうそというのは、一体どういう種類のものでございましょうか。
#290
○国務大臣(高見三郎君) 絶対許されないうそというものはどういう種類のものかと言われましても、一体、うそと真実というものの価値判断をどこに置くかということによってきまることじゃないでしょうか。たとえばカントの言っております純粋理性から申しますと、うそというものは絶対に許されないことなんですけれども、しかし、必要やむを得ざるうそというものはあり得るということになりますと、それはそのときそのときの判断の問題、その人の人生観の問題であると、私はこう思っております。
#291
○萩原幽香子君 たいへんうそ論議をやりましたわけでございますけれども、それでは、この学校とそれからこの少女との間には、そのうそというものをめぐっての見解の相違と、こういうことだとお考えでございましょうか。
#292
○国務大臣(高見三郎君) 私は、少なくともこの問題に関する限りは、どうも、学校側が言っているうそをついたというだけの問題であったのか、あるいは試験の成績が悪かったのか、どっちかということになると、試験の成績が悪かったわけじゃないんですね、現に合格しているんですから。それを取り消した理由がうそだと、うそが原因だということであるならば、教育的配慮が足りなかったと申し上げざるを得ないと。ことに相手が第三国人である場合には、なおさら人種問題というものをからめて考えざるを得ない問題でありまするから、少なくとも教育者である限りは、その辺の問題は、ただうそをついたからけしからぬというだけで入学を一たん許可したものを取り消すということが適当であるかなかったかということは、これは教育観の問題でもありますけれども、私にとってはまことに残念なことであったと、かように考えております。
#293
○萩原幽香子君 東京都の総務局学事二課の課長さんは、この問題について、これはあっさり入学取消処分を撤回するのかと思ったら、そうじゃなかったということで、たいへん残念だから校長を呼んで事情を聞くと、こういうようにおっしゃっているわけでございますね。それじゃ、その後どういうふうな進展を見せておりますのか、大臣、このことについて何か――それほどいままで大臣がお答えになりましたようなあたたかい配慮がこの少女にございますとしますならば、この新聞をごらんになって、一体その後どういうふうな経過になっているかということについて十分御調査がいただけたのじゃなかろうかと思いますが、その後いかがでございましょうか。
#294
○政府委員(岩間英太郎君) その後、学校のほうでは、もう一度試験をやりましてそうして入学を許可するかどうかをきめるということで一回試験をやったようでございますが、その成績があまりよくなかったというようなことがあったようでございます。再度また試験をすると、これはまあほかの生徒との関連もあると思いますけれども、そういうことで親のほうといろいろ話をしているようでございますが、まだその試験をやるまでには至っておらないようでございます。ただいま、学校のほうとそれから親あるいは本人のほうと話をしている段階でございます。これは最後には本人の気持ちということになるかもしれませんが、問題がここまで発展をして、もういまさらその学校に入れないというふうな気持ちになれば、これはその学校に入ることがないというふうなこともあり得るわけでございます。まだ最終的なところまではいっていないようでございます。
#295
○萩原幽香子君 これは四月十五日ぐらいの問題でございますから、いまでしたら、もう一週間以上たっていると、こういうわけでございますね。そういう中でまだこの問題のはっきり解決しないということは、この少女にとってはもうなかなかに大問題ではないだろうかと思うのです。ほかの自分のお友だちなんかが勉強に行ったりいろいろしている状態をながめながら、一体どういう気持ちで日々を送っているかということを考えますときに私はやり切れない感じがするわけなんですね。そこで、この問題について、文部省としてはどういうふうにこれから先お考えになって、どういう形でこの問題に取り組んでいこうとなさっておりますのか、文部大臣のお考えを承りたいと存じます。
#296
○政府委員(岩間英太郎君) 私のいまの感じでは、これは学校とそれから御本人あるいは御家庭との間の話し合いにまかせていい段階じゃないか。どういうふうな結末になるか、それはわかりませんけれども、それ以外に方法もございませんし、また、ほかから手をかしましてもやはり同じような結果じゃないかという点で、いまのところは両方の話にまかしておいたほうがいいのじゃないか。聞くところによりますと、二十四日に学校のほうは来てほしいという話がございまして、家庭のほうでは二十四日に行くかどうかわからないというふうなことを言っているようでございます。それ以上に私どもが手をかすような段階ではないというふうな気がするのでございます。
#297
○萩原幽香子君 私が承りましたところでは、なかなか学校側の態度は強硬なようでございますね。自分たちのとった処置は決して間違ってはいない、こういうことで非常に強硬な態度のようでございますけれども、そういうことになりますと、学校の監督庁はもちろん東京都知事だと思いますけれども、学校教育法の第四十九条及び第百六条並びに同法施行規則の第五十九条、こうしたものの規定を持つ学校教育に関する法体系から見ましても、また、日韓関係という外交問題がからんでくる、そういう性質から考えてみましても、やっぱりここで文部大臣が直接仲介の労をとって円満に解決されることが望ましいと私は考えるわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
#298
○政府委員(岩間英太郎君) 先生のほうのお考えでは、学校のほうに原因があって解決がおくれておるようなお感じのようでございますけれども、私どもがいままで聞いておりますところでは、むしろ本人側がそういう気になるかならないかというところが非常に大きなポイントのような気がするわけでございます。本人のほうでもう行きたくないというふうな気持ちでございましたら、これは私どもが行けというふうに言うわけにもいきませんですが、もし学校のほうに原因がございますのでしたら、私ども何か意見を申すとかあるいは校長に指示をするとかということもあると思いますが、どうもそういうことではないようでございますから、二十四日と申しますと月曜日でございます、もう少し学校とあるいは家庭の関係というものにまかしておいたら、いかがかと、かように考えております。
#299
○萩原幽香子君 それでは、この少女の気持ちにまず一番の問題があると、こういうことなんでございますね。ところが、この少女は、行くところもないし、いまさら学校さがしもできないしというところに悩みがあるようでございますが、もしこの学校に行けないということになりますならば、この少女に対してどういうようにあたたかい配慮をしていただけますのか、その点も承りたいと思います。
 また、この新聞を読んだ限りでは、中学校の先生の話がどこにも出ておりません。私は、おそらく、これを読まれたときには、その受け持たれた中学校の先生にもいろいろ考えがおありだろうかと思うのでございますけれども、文部省としましては、その受け持たれた中学校の先生に対して、一体この問題の一番大事なところはどこなのかというようなことについてお聞きになりましたでございましょうか、いかがでしょう。
#300
○政府委員(岩間英太郎君) 私も新聞を読みましてやっと気がついたということでございまして、そこまでの連絡はいたしておりません。ただ、この問題が、御本人の気持ちあるいは家庭のほうのお気持ちでどういうふうになるかわかりませんけれども、私どもとしましては、いずれにしても、高等学校に進学するつもりで受験したといういきさつもございますので、どこの高等学校ということは申せませんけれども、高等学校の教育を受けられるようにできることがございましたら、そういうことを私どももくふうしたいというふうに考えております。
#301
○萩原幽香子君 これと同じような問題が一昨年大阪の私立高校でもあったというふうに承っておりますが、文部省は御存じでございますか。
#302
○政府委員(岩間英太郎君) ちょっと存じません。
#303
○萩原幽香子君 私の聞いたところでは、やっぱりそういった問題がございまして、韓国の子供さんなんかについては、普通の日本の子供よりも三十点よくないと入れないとか、あるいは有力者の紹介とか保証がないと入れないとか、人数制限をするとかといったようなことが大阪でもあったと聞いているわけでございますね。ところが、それは文部省としては御存じないわけでございますか、そういったことについて。
#304
○政府委員(岩間英太郎君) そういう事実は私は存じませんけれども、ただいまのお話でございますと、これはあるいは日本の小中学校を卒業された方ではなくて、あるいは各種学校を御卒業になった方が高等学校に入られる場合に、学校のほうで中学校卒業と同等程度の学力があるかどうかということを審査する際にそういうふうな基準が設けられたのじゃないかというふうな気がするのでございます。御案内のとおり、現在、各種学校から高等学校には直接進学するというふうな道が開けておりません。そういう点からそういう問題が起こったのではないかという気がするのでございますが、間違っておりましたらお許しを願います。
#305
○萩原幽香子君 こうしたことに対しまして、大阪では、昨年の一月に、教育の機会均等に格段の注意をするようにといったような助言をしてこの種の問題の解決ができたやに承っております。そこで、私は、今後こうした問題――韓国だけの問題ではございませんで、ユネスコの精神から考えましても、今後こうした問題が教育の場で起きないように、どのような文部省としては対策をお考えになっておりますか、承りたいと存じます。
#306
○政府委員(岩間英太郎君) この問題は前からの懸案でございますが、現在、中学校を卒業しまして高等学校に入る際には日本人と差別をしないという方針でまいっておりますことは、これは御案内のとおりでございます。ただ、問題は、各種学校の場合には、各種学校と正規の学校とどう考えるかという問題につきまして私ども以前から検討はいたしておりますけれども、なかなかむずかしい問題でございましてまだその結論が出ておりません。この点につきましては、さらに検討を進めたいというふうに考えております。
#307
○萩原幽香子君 そうしましたら、普通の小中学校に学んだ子供の場合でございますと、これはそういうことは全然やらないのだと、こういう差別は認めないのだと、そういうことなんでございますね。だけれども、それがわからない場合というものもございましょうから、そういうときには文部省としてそういう私立の学校、高等学校なんかに対して何らかのそういう助言というものをしていただくおつもりがおありかどうかと、こういうことを承っているわけでございます。
#308
○政府委員(岩間英太郎君) それはもちろん私どもそういうつもりで指導してまいっておりますつもりでございますが、まだ不徹底な点がもしあるといたしますならば、これはもう十分その点は徹底しなければいけない。今度のような事件もございますので、そういう点につきましては今後とも十分配慮してまいりたいというふうに考えております。
#309
○萩原幽香子君 再びこういうような子供さんが出ないようにぜひお願いをしたいと思います。
 次いで問題を変えます。私は、先日の予算委員会で国民の税外負担について質問いたしました。そのときに、大臣のほうからあまり時間もございませんで具体的なお答えがいただけませんでしたので、きょうは私のほうから少し具体的にお尋ねをしてまいりたいと存じます。大臣は、いま日本の国でも教育貧乏ということばが使われていることを御存じでございましょうか。
#310
○国務大臣(高見三郎君) 承知いたしております。
#311
○萩原幽香子君 そういうことばは、一体、どこからどういうことでそういう教育貧乏ということばが出ましたのか、大臣、いかがでございましょうか。
#312
○国務大臣(高見三郎君) 日本では、明治以来、明治の学制発布の当時は義務教育小学校でも授業料を取っておりました。子供の多い家庭では、所得が低くても教育をするために教育貧乏になるということから、教育貧乏ということばは明治の初めからあったのでありますが、いまもなお低所得の時代に実は子供が多いというのが現況でありますから、義務教育無償の原則から申しますと、一番困った問題はこの問題です。老後になりまして相当の収入があるころになりましたら、教育費などの問題もそう大きな問題ではございません。ただ、問題は、一番大きな問題は、教育費の税外負担の問題、これが教育貧乏の一番の根源だと、私はかように考えております。
#313
○萩原幽香子君 そこで、それでは少し具体的に伺いますけれども、公立の小中学校で父兄から徴収されるもの、この状況について承りたいわけでございますが、四十三年から現在までどういう形に変わってまいりましたか、承りたいと存じます。
#314
○政府委員(岩間英太郎君) 現在、PTA会費等の寄付によって学校の経費がまかなわれておりますのが、四十五年度で百五十六億でございます。これは、四十三年あたりから比べますと、四十三年度あたりは百八十九億くらいではなかったかと思いますけれども、毎年金額としても減少いたしております。それから全体の教育費に占める割合も、四十一年度の二%から、四十五年度は〇・九%というふうに減少をしているような状況でございます。ただ、これは、公費をもって負担することをたてまえとする学校経費の一部を父兄に負担さしておる、そういう限定しました調査でございます。たとえば、学校の給食費でございますとか、その他子供に直接還元されるような経費、そういうものはこの中から除外されておるわけでございます。
#315
○萩原幽香子君 先ほど四十三年のほうは幾らと局長さんはおっしゃいましたですか。
#316
○政府委員(岩間英太郎君) たいへん失礼しました。私が申しましたのは四十一年でございまして、百八十五億七千万、四十三年で申し上げますと百六十七億でございます。それが四十五年には百五十六億になっておるというふうに申し上げたわけでございます。
#317
○萩原幽香子君 ちょっと私はけたが違うのじゃないかしらと思うのでございますね。たとえば四十三年では千二百五十億、そして、そのうち、PTA会費が一千億、寄付金と思われるものが二百五十億、こういうふうになっているわけなんでございますがね。局長さんのと私はだいぶ違うようなんですが、いかがでございますか。
#318
○政府委員(岩間英太郎君) 私が申し上げましたのは、これは地方教育費の調査というのを文部省でやっておりまして、その中で公費をもって負担することをたてまえとする学校の経費につきまして、その一部をPTA会費等で徴収しているものということでございます。これが私どもが父兄負担の軽減というものの対象にしているわけでございますけれども、これは小中学校の公費、私費及び学校徴収金というふうな別の調査がございますが、これによりますと、小中学校で学校徴収金として徴収しておりますのが、昭和四十四年度で千三百六十五億という数字がございますが、この中には、先ほど申し上げましたように、学校給食費とか本来児童生徒に負担をしていただくたてまえのものも中に含まれているわけでございます。
#319
○萩原幽香子君 いまおっしゃいました徴収金でございますけれども、それはどういうように使われておりますか、その実態調査をなさったことがございますでしょうか。
#320
○政府委員(岩間英太郎君) これは官房審議官のほうで答えていただきたいと思いますが、この中で最も大きな割合を占めておりますのは学校給食費それから修学旅行費でございまして、両方で、小学校の場合は八五%、金額にいたしまして七百八十五億、中学校の場合は七八%、三百四十三億、合計いたしまして千百二十八億であります。
#321
○萩原幽香子君 教員の給与に見合うようなものに充てるとか、あるいは電気ガスとか水道費とか、建築、備品の修繕費とか、そういうものに使われている分もあるわけでございますね。そういうものについての調査はどうでございますか。
#322
○政府委員(岩間英太郎君) 先ほどの百五十六億の中には、たいへん残念でございますが、そういうものが入っております。教職員の給与費といたしまして四十五年度には六億六千六百万、それからただいま御指摘になりました維持管理費といたしまして十三億二千六百万、合わせまして二十億、これが地方財政法で禁止をされておるような対象経費になります。
#323
○萩原幽香子君 そういうふうにおっしゃいますけれども、私は、地方の学校なんかへ行きまして、あるいは育友会なんかの人にお話を聞いてみますと、必ずしもそういう数字がぴったり当てはまらないような感じがするわけでございますね。だから、これは教育委員会に対して調査をなさったものでございましょうか、それとも、育友会に対して調査をなさったものでございましょうか、その点を承りたいと存じます。
#324
○政府委員(奥田真丈君) ただいまの調査のデータは、教育委員会を通じ、また学校に調査表を配りまして、学校で記入したものでございます。育友会といいますか、PTA等団体自体にはやっておりません。
#325
○萩原幽香子君 やっぱり地財法の二十七条の四の違反のようなものは、教育委員会としてはおよそ書きづらいものでございますから、そういうものはおそらく書かないと思うんです。ですから、これはもうきりきりの線しか書いていないと思います。学校に対しても同じことが言える。たとえば、先生の給与に見合うようなものをもらっておりますというようなことは、なかなか書けないものでございましょう。だから、私は、これは、育友会費といったようなものに対して調査をなさらないと、ほんとうのものが出てこない、いわゆる税外負担というものは出てこないと私は考えるんですが、その点、大臣、いかがでございますか。
#326
○国務大臣(高見三郎君) これはおそらく萩原先生のおっしゃるほうが正しいと私は思います。私の娘もPTAの役員をやっておりますが、よく話を聞いてみますと、どうもいま先生のおっしゃるほうが正しいのであって、教育委員会のほうでは公式な返事しかしていないという考え方をとらざるを得ないのじゃないかという感じがいたすのであります。
#327
○萩原幽香子君 文部大臣、非常に正直にお答えいただいて私は満足したわけでございますけれども、やはり調査をしていただきますときには、できるだけ実態に近い調査をしていただきませんことには、その調査は意味をなさない、こういうことをお考えいただきたいと思うのです。この間、私、ふと何げなくテレビを見ておりましたら、先生の修学旅行費を子供の積み立て金の中から出して問題になったということを言っておったわけでございますね。そういうようなものは、おそらくどこからも出てこない。何かぶすぶすくすぶったようなかっこうでどこかにふっとふき出すというようなかっこうで出でくるのではなかろうかと思います。そのときのお話でも、八百八十人の子供に対して毎月四百四十円ずつ積み立てていた。その中から先生の修学旅行費を出していた。先生の修学旅行費などというようなものは、これは当然出張旅費でまかなうものではなかろうかと考えるわけでございますね。
 そこで、先生の出張旅費というようなものは、一体、年額どれぐらいになっておりますのか、承りたいと存じます。
#328
○政府委員(岩間英太郎君) ことし、小中学校で一万八千三百円でございます。これは義務教育の国庫負担金の中に組むわけでございますけれども、過去の実績をもとにいたしまして毎年増額改定をいたしております。
#329
○萩原幽香子君 年々どれぐらい増額されておりますのでございましょうか。
#330
○政府委員(岩間英太郎君) 金額にいたしまして約二千三百円でございまして、増額の率は一四・四%でございます。
#331
○萩原幽香子君 ほんとうに先生たちがちゃんとした出張旅費をとるといたしますならば、大体年額どれぐらいが妥当だとお考えでございましょう。
#332
○政府委員(岩間英太郎君) これは、先ほど申し上げましたように、各府県によりましていろいろ僻地が多いとかなんとかでずいぶん事情が違うと思います。したがいまして、私どものほうは、頭から幾らというふうにきめつけておるわけではございませんで、各県の実績をもとにして負担金の予算を組んでいるわけでございます。実際にどれぐらいかかるかと申しますと、これは旅費の問題は国家公務員の私どもの場合も同じでございますけれども、これは多々ますます弁ずというようなことがございまして、これが幾らであるかというのはなかなか計算上はむずかしいのじゃないかというふうに考えます。
#333
○萩原幽香子君 それでは、局長さん、大体、平均ですね、ことしあたりまた交通費も全部上がるわけでございましょうが、そういたしますと、そういう上がりに対してことしは一体どれぐらいを見積もってくださったんでございましょうか。
#334
○政府委員(岩間英太郎君) これは、負担金は、御案内のとおり、精算負担でございます。実際に都道府県がそういうふうな料金の改定その他に伴いまして改定をいたしました分の半分を私どものほうで負担をするというたてまえになっておりまして、その点では若干計算のやり方が甘いかもしれませんが、しかし、結果的には、精算をいたしまして助成をするという道が講ぜられておるわけでございますから、いまのところそういう制度にいたしておるわけでございます。
#335
○萩原幽香子君 それじゃ、ことしの平均は大体どれぐらいでございますか。いま、局長さんは、僻地あり、いろいろあるから、そのあれによって違うということでございましたね。じゃ、平均はどれぐらいになっておりますか、ことしの平均は。
#336
○政府委員(岩間英太郎君) 先ほど申し上げました一万八千三百円というのがいままでの実績の平均でございます。
#337
○萩原幽香子君 いや、ことしでございますか。
#338
○政府委員(岩間英太郎君) ことしの平均と言ってもよろしいかと思います。
#339
○萩原幽香子君 これでは研究会に出かけるにいたしましても、さっき申しましたような旅行についていくような費用にいたしましても、なかなか弁じ切れないと。そこで、やはり父兄から出したものの中から支出をしなければならないような状態が出てくるのではなかろうかというふうに私は考えるわけでございます。そこで、今後、この問題についてはどのように配慮をしていただけますのか、大臣、いかがでございますか、この点につきまして。
#340
○国務大臣(高見三郎君) 私のほうは多々ますます弁ずるのほうで、この問題は、大蔵省の主計官も来ておりますから、主計官のほうにもお尋ねをいただきたいと思いまするが、本来、私も教員をやっておりましたけれども、学校の先生の旅費というものは、先生同士の間で奪い合いをしておった時代のことを考えてみますというと、ほんとうに教員旅費というものは足りないということを私自身が実感として持っているわけであります。
#341
○萩原幽香子君 大臣も実感としてお持ちでございますし、私も全く実感として持っております。それで、教育は大事だと、先生は優遇しなきゃならないとよくおっしゃりながら、なかなかそうなっていないのが現状でございます。
 そこで、それじゃ、大蔵省のほうがおいででございましたら、そういう点で大蔵省はどのようにお考えなのか、承りたいと存じます。
#342
○説明員(青木英世君) ただいまお尋ねのございました義務教育職員の旅費の点でございますが、先ほど岩間初中局長から説明がありましたように、四十七年度の予算におきましては、四十五年度の各県におきます実績の平均、実際に使いました実績平均を予算として計上しております。したがいまして、四十七年度で各県におきまして旅費が予算で組みました平均の一万八千三百円以上になるということになりますと、予算に対して不足が出てきます。これは、予備費とか、あるいは来年度の補正予算とか、そういうかっこうで精算の段階で精算するということでございますので、必要な旅費は国としてもその二分の一はみていくという原則をとっておる次第でございます。
#343
○萩原幽香子君 それでは、旅費は要りましただけ大蔵省はみてくださると、こういうことでございますか。
#344
○説明員(青木英世君) 原則的には、各県でかかりました実績の二分の一を持つと、こういうことでございます。
#345
○萩原幽香子君 私は、教育は大事だとおっしゃらない大臣はございませんし、あるいは、総理大臣にいたしましても、教育は大事だと非常におっしゃるわけでございますね。そこで、大事だということをおっしゃるのだったら、やっぱりそれに見合うような予算を組んでくださることが大事だと思うのです。ことし、文部大臣、どれほど当初に予算要求をなさったのでございましょうか。
#346
○政府委員(岩間英太郎君) これは、先ほど申し上げました一万八千三百円を要求したわけでございます。そのとおりに認められたわけでございます。それで、これはちょっと御理解いただきたいわけでございますが、仕組みとしては私はこれは予算としましては最高の財源措置ができるような仕組みになっているというふうに考えているわけでございます。もし現場におきまして旅費が足りないということでございましたら、これは府県のほうでの予算の組み方が少なかった、あるいは予算の配分が実態に即しなかったという点はあるかもしれませんが、これはまあ府県ないしは学校のほうで必要な手当てをしていただく、それに対して手当てをしていただいたものにつきましてはそっくりそのまま私どものほうで受け取りましてその半分を負担金で支給するということでございますから、国の財源措置としましては私は最高の制度じゃないかというふうに考えておるわけでございます。
#347
○萩原幽香子君 私がいまお尋ねいたしましたのは、旅費の問題から少しはずれまして、教育費全体として文部大臣は今度は教育の面でよほど力を入れて、予算要求もずいぶんなさったようでございますね。ところが、それが私は大幅に削られたような感じがするわけなんでございますよ。ですから、それを大蔵省はなぜそんなに文部省の予算というものをお切りになりますのか、私は承りたいと存じます。
#348
○説明員(青木英世君) 文部省の御要求の四十七年度の要求額そのものはここに持ってきておりませんが、要求でございますので、折衝の間においてお互いに譲歩するというところがあるのはこれはまあ通例のことでございますので、要求そのものが予算額として成立するということは、これは各省いろいろ財政需要がございますので、なかなかそういうぐあいにはまいらないわけでございます。そこで、文部省の所管の予算の伸びを申し上げますと、四十七年度はたしか一九・九%ぐらいでございまして、一般会計の予算の伸びが二一・八%ということを考えますと、一般会計の平均的な伸びより若干低くなっております。ただ、これは、文部省の所管の予算の中には、先ほどからお話がございます義務教育の教職員の給与とかあるいは国立大学の学校の先生方の給与とかいうのが非常に大きな割合を占めておりまして、これらは、給与の性格上、ベースアップの率ぐらいしか伸びないということでございますので、そういう要素を除きますと、おそらく二六、七%という伸びになっておるのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
#349
○萩原幽香子君 私は、文部省の予算がそんなにたくさんあるとは考えておりません。そこで、三十年ぐらいまでは、国家予算の伸び率と文教予算の伸び率は大体平行しておったと思うのです。ところが、三十年ごろからだんだんと下降の一途をたどってきているのじゃございませんか。そういったようなことで、教育は大事だとおっしゃっていただいても、私はどうもいただけないような感じがいたします。そのことにつきましては、うちの受田さんが文部大臣にお尋ねをしましたら、そういうことにはなっていないという御答弁だったそうでございます。しかし、文部省の予算というものは、だんだん外国のように教育が大事だから文教予算を伸ばすというようなところにはなっていない、これを確かでございます。そういうことについて、私は、文教委員の一人といたしましても、あるいは国民の側に立つ者といたしましても、教育予算を大幅に削るようなことでほんとうにりっぱな国民が養成できるのか。何か事件がございますというと、それは教育のせいなんだと、こういうふうにきめつけられるにしましては、あまりにも教育予算は多くとれていないというふうに考えます。大蔵省、いかがでございますか。
#350
○説明員(青木英世君) ただいまお答え申し上げましたように、公共事業の問題、あるいは社会福祉の問題、いろいろ国の事業といたしましてはたくさんございますので、まあ私が教育関係の主計官を担当いたしておりますので、私自身といたしますればできるだけ文教の予算を伸ばしたいという気持ちは持っておりますが、国の全体的な財政需要の中で一挙に教育予算だけを伸ばすということはなかなかむずかしいので、できるだけ過去の均衡もとりながら教育費に力を注いで伸ばしていきたいと、このように考えておる次第でございます。
#351
○萩原幽香子君 福祉予算もございますというお話でございましたので、ちょっとこれは引っかかってみたいと思います。私は、予算委員会のときに、福祉予算についてずいぶんといろいろ申し上げてまいりました。ところが、その福祉予算にいたしましても、なかなか伸びているとは言えない状態でございますね。一体、国民を大事にするというのは、どういう施策をおとりになるのが国民を大事にするということなんでございますか。私は、福祉予算、教育予算、こういったようなものにはずいぶん大幅に予算をおとりいただかなければほんとうは国民のしあわせは来ないのではないかというふうに考えるわけなんです。これは話が横道に回りますけれども、あの予算委員会のときに、大蔵大臣は、イギリスのおばあさんはたくさん税金をかけているけれども、私は満足でございますと言いましたと、こうおっしゃいました。そこで、私は、大蔵大臣はなかなかいいことをおっしゃってくださいます。私だって、ほんとうにもう生きることが喜んで生きられるような福祉計画をお立ていただけるのなら、税金は喜んでかけますと、こういうことを申し上げたわけでございます。ところが、税金が喜んでかけられないような実情にありながら高負担とおっしゃることはいただけないと、こういうことも申し上げたわけでございます。
 そこで、教育の問題とか福祉の問題とかいうのが一番大事な予算なんじゃございませんか。大蔵省、いかがでございますか。
#352
○説明員(青木英世君) 萩原先生のおっしゃるとおりでございまして、社会福祉あるいは教育というような国民の生活に密接した予算は最優先で取り上げていくべきものであると思います。また、現に、いろいろな御批判、見方があろうかと思いますが、今年度の予算におきましても、こういう社会福祉を最重点の一つ、あるいは教育費につきましても大きな柱として編成しておるというわけでございます。私、財政全般の姿をやっているものではございませんので、一般の方面のことは詳細は存じませんが、政府としてはそういう考え方のもとに四十七年度予算を編成しておるという次第でございます。
#353
○萩原幽香子君 全体の予算で二五%ぐらいずつを上積みしながら予算をおきめてなったのではございませんか。だから、予算を組まれるのは非常にむずかしいとおっしゃるけれども、割合早くさっさとお組みになりますのは、去年のものを基礎にして大体二〇%とか二五%とかを上積みなさるという組み方なら、福祉予算といっても、一方のところをふやしたら一方のところを削ると、こういうことになっているのじゃございませんか。そうだとすれば、私はまことに不満なんでございますが、いかがでございますか。
#354
○説明員(青木英世君) 予算の具体的な編成につきましては、各省からこまかい積み上げの要望がありまして、それらの要求を個々に説明を聞きながら積み上げていくというような作業をしておりますので、あらかじめこの経費を何%ふやそうとかいうようなことで編成をしているのではございません。したがいまして、結果として何割伸びたというのは、あくまでも個々の積算の積み上げとしての結果でございます。
#355
○萩原幽香子君 時間がございませんから、もう多く申し上げられませんけれども、教育貧乏といわれるゆえんは、税外負担の重さを考えるということを皆さんに御理解をいただきたいと思ったわけでございます。ですから、先ほど文部省がおとりになったようなああいう調査では、実は国民はまことに不満なわけでございますね。だから、子供の教育のためならという親心に対しての甘えの上に立って、当然国や市町村がやるべきものまで国民にあるいは父兄に負担させているという現状について、大臣、どのようにお考えでございましょうか。
#356
○国務大臣(高見三郎君) 確かに、御指摘のとおりだと思いますけれども、私はPTA自体にもひとつ見識を持ってもらいたいものだと思うのですよ。学校のガラスの割れているのをPTAが負担しなきゃならぬ筋合いのものじゃないと思うのですね。それは当然市町村がやるべきである。それを子供かわいさでPTAのほうで出す。PTAにはPTA本来の仕事があるわけなんです。本来の仕事のほうに力を入れてそのために金がかかるのなら、これまた意味があると思うのですね。
 先生、先ほどからいろいろ文部省の予算についてお話しになりましたけれども、文部省の予算の大体六割というものは人件費なんです。これは、人件費の上昇率に見合っての上げ幅しか見ません。したがって、人事院勧告がありますというと、その上げ幅をこえる分は物件費の面で増額されるということになるわけであります。文部省本来の仕事である社会教育だとか体育だとか、こういう方面の予算は、私は今年は大蔵省はよく見てくれたと実は感謝をしておるところであります。これはてまえみそのようなことを申し上げますけれども、文部省予算の構成というものがそういう構成になっておるということをいま青木主計官は説明をされたわけでありまして、たとえば、御承知のように、社会教育の予算は大体どのくらいになっていますか、四十何%。体育のほうは二〇%ぐらい伸びておる。ただ、伸びておるといって、パーセンテージだけを申しますと、非常に伸びているようでありますけれども、もともと根っこが少ないのでありますから、倍になりましても、たかが知れておるということになるわけであります。けれども、私はそういう形において文部省の予算というものも伸ばしていかなきゃならぬ。六割も既定の予算がある上に上積みをする予算というものは限られておるとするならば、それを大幅に見てもらうことが実は教育全体をよくすることであろう、こう考えるのであります。私はよく娘に言うのでありますが、PTA自身に見識がなさ過ぎるということをよく言うのでありますが、そうは言っても、子供がかわいそうだといって、もうすぐ子供に持ってまいりますけれども、私はPTAにはPTA自身が持つべき誇りがあり、持つべき見識がなければならぬ、こう考えておるわけであります。あるいはお気にさわるかもしれませんが、私はそういう考え方でおります。
#357
○萩原幽香子君 決して気にさわってはおりません。まことにそのとおりでございます。しかし、大臣、過疎地域なんかで非常に予算の少ない町なんかでは、なかなかやりづらい点があるわけなんでございますね。そういうところも考えていただかなければいけませんし、大臣がおっしゃるように、もうこれはよくめんどうを見てくれたんだなんておっしゃっていただいては私は困ると思うのです。大臣、ひとつ、文部行政、いろいろ全体の問題につきましても、この際発想の転換をしていただいて、私たちうしろから大いに大臣についていって、大蔵省にもついていって激励したいと思いますから、そんなように見てくれてありがとうなんておっしゃらないで、これでは困る、これでは不満と、どんどんやっていただかなければいけないのではないかと思います。今日義務教育の全額無償についてもなかなかやれていない現状であるということを、大臣、もう少し認識をしていただきたいものだと思います。その点についての御決意を承って、質問を終わります。
#358
○国務大臣(高見三郎君) お話のとおり、私はこれで満足しておるわけじゃございません。満足しておるわけじゃありませんけれども、大蔵省が見てくれた見方については、私はことしは感謝しておる。来年はこれでは承知せぬというだけのことでありまして、御一緒になってひとつ教育予算の獲得のために努力をいたしたいと思います。御協力をお願い申し上げます。
#359
○萩原幽香子君 がんばってください。ありがとうございました。
#360
○加藤進君 私は、教科書の検定問題について質問したいと思います。
 言うまでもなく、教科書は、いまの法律のもとでも、各教科のおもな教材、こういうふうにも規定しておりますように、国民の子弟を教育するための非常な大きな地位を占めておると言うていい。いわば、教科書がどのようにきめられるか、どのような内容になるのか、どう使われるのかということが、子供たちの将来を左右すると言ってもいい、学校教育の内容を決定すると言ってもいい、こう私は考えています。同時に、これは教育だけの問題ではなく、この教科書の使われ方によって、その国の文化、社会、そして思想が非常に大きな影響を受ける。このことは、戦前、わが国におきまして、国定教科書によるあのような軍国主義教育が行なわれた結果が私たちにどういう悲惨な状態をつくり出してきたか、こういう歴史の教訓から見ても明らかであると思う。したがって、そういう立場から見まして、文部省が行なっておられます教科書の検定の問題につきまして、この検定がどのように行なわれておるか、えこひいきなしに公正に行なわせておるかどうか、こういうことが国民の非常な大きな関心事になっていることは、文部当局も十分に御承知だろうと思います。
 私は、教科書の検定の実体がはたしてどのようなものであるかということについて、長年にわたっていろいろ文部省にそれなりの資料を提供すべきであり、資料を公表すべきであるということを訴えてきました。幸いにして高見文部大臣の勇断によって、あの一部の検定文書が公表になりました。私はここに持参しておりますけれども、この公表文書を拝見いたしまして、実は非常に驚いたわけであります。というのは、なぜこのような文書を長年にわたってマル秘などといって隠しておられたかということであります。私はふしぎでならなかったのであります。先ほども、うそはよくないというお話がございました。教育を担当すべき教育行政の責任者である文部省あるいは文部大臣、うそはもちろんいけませんけれども、真実を隠すということもまた同様にこれはよくない。こういうことは私は文部大臣自身としても当然肝に銘じておられると思いますけれども、その点の全般的な所信を一言お聞きしたい。
#361
○国務大臣(高見三郎君) お話のとおりであります。私も、別に文部省が秘匿すべき筋合いのものでないと考えましたから、提出をいたしました。あなたにお約束したことをお約束を果たしただけのことであります。
#362
○加藤進君 そこで、私は、文部省からいただきましたこの公表文書、原稿審査についての答申の内容についてお尋ねをしたいと思います。
 昭和三十八年二月二十日に行なわれました教科用図書検定調査審議会、この審議会の議事録がございます。この議事録によりますと、その日、第二部会すなわちその中の日本史小委員会が開かれています。その日の午後一時三十分から開催になりまして、同じ日の六時十五分にこの審議は終わっております。この間に何がやられたかを見ますと、原稿審査として、ここにナンバーが出ておりますけれども、日本史に関する七冊の原稿が審査をされておるわけであります。きわめて常識的なそろばん勘定で見ましても、一時三十分から六時十五分までの間は四時間四十五分、この四時間四十五分の間に何冊の原稿の審査が行なわれてその審査の判定の合格・不合格が決定したか、どんな大きさの書物が審査されたかといえば、ここに持っていますけれども、おそらく日本史の教科書は三〇〇ページあるいはそれ以上のものだと思います。この三〇〇ページの書物を七冊でたった四時間四十五分、おそらくその間には休憩もあったでしょう。こういう時間に審査を完了して、合格だ、不合格だと、こういうふうに判定をされるというのは、慎重に審議されていた、その結果がこうだったとはっきりと国民に納得させ得るようなものではないと私は感ずるわけでございますけれども、この点、高見文部大臣は直接関与されたとは思いませんけれども、現在の文部行政の担当者として、一言御所見を賜わりたいと思います。
#363
○政府委員(岩間英太郎君) 私から事務的なお答えをまずいたしたいと思いますが、これは先生御指摘になりましたように小委員会でございます。小委員会と申しますものは、調査員それから調査官、こういうものですでに審査をいたしたものを小委員会にかけまして、それからまた別にこれが終わりましてから部会にかける、そういうことでございます。すでに教科書調査官それから調査員で十分審査をいたしましたそういうものを持ち寄りまして、もうすでにある程度わかっいる者が審査をするわけでございますから、もちろん長時間をかけてやればよろしいわけでございますけれども、それにもやはり事務上の限界がございます。この場合には七冊の本がかかりましたが、まあそれぞれ問題点の少ないものは少ないなりに時間も少ないということで、おそらく、その当時、私はおりませんものでよくわかりませんが、関係者の意見を聞きますと、この問題の「新日本史」に一番重点的な時間がかけられたのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。短時間のようでございますが、すでにあらかじめ十分調査をいたしました上の小委員会でございます。まあそういう意味で御了承をいただきたいと思います。
#364
○加藤進君 念のためにお尋ねしますけれども、この七冊の原稿の審査にそれぞれ何分ぐらいずつかかったのか、これは記録にあるでしょうか。
#365
○政府委員(岩間英太郎君) たいへん遺憾でございますが、そういう記録はございません。
#366
○加藤進君 少なくともこれは審議会の小委員会でございますね。したがって、これには原稿その他について事前の調査もしておられない審議会委員も参加しておられることは当然ですね。
#367
○政府委員(岩間英太郎君) みな、参加されます方は、十分に事前に教科書の原稿を見ておられる方々ばかりでございます。
#368
○加藤進君 そうしますと、この審議会では、調査官からも説明は受ける、それから調査官の意見書もここに提出される、そうして審議が進められると、こういうわけですね。
 そこで、お聞きしたいのですけれども、昭和三十七年度のいわゆる家永本の原稿審査におきましては、担当の四名の調査員、調査官のうちで、三名は合格、他の一名も不合格ではなく判定保留であります。ところが、どうしたことか、審議会では、この調査官、調査員の判定をくつがえして不合格にされております。調査員、調査官の意見を基礎に置いてここで討議をするとならば、私は常識的に見てこれは合格にするのがあたりまえのことであって、不合格というのはこれはまさに意外、まあこういうふうに見ても差しつかえないと思いますけれども、不合格になったその理由、その根拠を御説明願いたいと思います。
#369
○政府委員(岩間英太郎君) 御案内のとおり、調査官及び調査員の調査の結果というのは、まあ俗なことばで申しますと下請と申しますか、審議会のあくまでも参考資料でございまして、合否の判定は最終的には審議会が決定するわけでございます。調査員とそれから調査官の評定が合格でございましても、審議会で新しく意見が追加されて、その結果、合格点に満たなければ、不合格と判定することがあるわけでございます。御案内のとおり、調査員の甲の方は八百四点・合格、調査員の乙の方は七百八十九点・合否保留、調査員の丙の方は九百八点・合格、教科書調査官のお一人の方は八百十六点・合格というふうなことでございまして、これは合格点の八百点にもうすれすれのような点が多いわけでございまして、審議会のほうでは、審議会の委員の方、これは十五名の方でございますが、そういう多数の方が、すでにあらかじめ教科書を十分お読みになりまして、それぞれの御判断をお持ちの上、部会にお出になるわけでございまして、その部会の際にこういう参考資料に基づきまして審査をいたしますけれども、やはり審議会独自の判断というのが加わるわけでございます。この不合格になりましたのは、検定基準の「正確性」とそれから「内容の選択」という項目がそれぞれ一段階下がりましたために合格点の八百点に達しなくなったということでございます。
#370
○加藤進君 そうしますと、審議会には文部省の調査官も出席し、調査員も出席して、詳細に事前審査の結果を報告して、これが基礎になって審議はするけれども、審議会は審議会としてのとにかく主体性もあり、独自の見解も持ってこの審議に臨むものだと、したがって、その合否のくつがえることもあり得るんだと、こういう説明でございますね。
 そこで、お聞きしますが、教科書検定審議会の「総計」というところをごらんになれば明らかでございますけれども、修正意見書で示された三十三カ所の欠陥のほかに、調査官と調査員の調査意見書で採択した欠陥が認められたと。すなわち、審議会で新たに三十三カ所の欠陥を認めたそのほかに、調査員、調査官の前もっての意見のもとでの欠陥もこれを認めたと、まあこういうふうになると思いますね。それで、評定の結果は、調査官の評定結果よりも、先ほど言われましたような正確性及び内容の選択の項目においてそれぞれ一段階下のものに評定されたと、まあこうして七百七十四点・不合格、こういう判定が出た、これが事実の問題でございますね。そこで、このように正確性と内容の選択の項目について審議会は独自に新たに欠陥をいわば指摘したと思います。
 そこで、私はここでお聞きしたいのは、一体どんな正確性の欠陥というものがこの審議会において問題になったのか、こういう点でございます。私、この修正意見書の数をいろいろ調べてみますと、特に審議会で新たにつけ加えたものが二十五項目あります。その二十五項目のうちの十五項目は、正確性の欠陥としてあげられております。そうですね、正確性の欠陥です。そして、あとの十項目は、内容の選択についての欠陥である、まあこういうふうに示されております。
 そこで、特に指摘申し上げたいのは、正確性の欠陥があるといわれる具体的な事実は何かと、こういう問題であります。これは全部の事例をここで申し上げる必要はないと思います。実例の第一は、「今まで中国文化と、中国を経てきたインド文化だけを受け入れてきた日本は、新しく南蛮人のもたらす西洋文化を取り入れることになった」と、これは近代の始まりの時期だと思います。こういう記述に対して、審議会建正確性の欠陥をどういうふうにして指摘しているのかと申しますと、ここにちゃんと記述があります。「日本は外国から、中国、印度の外に、ギリシア、ペルシアの文化も入れている。」と。ギリシア、ペルシアの文化も入れていることが抜けているから、これは欠陥だというわけです。ギリシア、ペルシアの文化だって大陸から来ていることは明らかです。これを欠陥だと指摘して点を落としたのです。こういうことによって正確性の欠陥を一つ一ついわば点数を落として、最後のところ不合格にしたわけです。
 もう一つ言います。この家永本の原稿によると、日米安全保障条約の問題ですが、「日米安全保障条約によって、アメリカ軍は日本に駐留を続け、全国各地に多くの基地を保有した。」とあるが、それは、基地というのは正確さを欠くのであって、「施設及び区域」とするのが正確だと、基地はいかぬというのであります。高見文部大臣、アメリカの基地などということばは使っちゃいけませんか。必ず施設及び区域ということばを使わなくちゃならぬとなれば、国会の論議はもう一度やり直さなくちゃならぬと思いますが、その点はいかがでしょう。こういうことまでがいわば欠陥として指摘されている。そのための減点ですよ、これは。私は、常識的な教育者の立場から言うなら、こういうこともをって正確性の欠陥などという指摘をする審議会の頭を私たちは疑わざるを得ない。こういう問題が正確性の欠陥の中からは続々出てくるわけであります。その点文部大臣はほんとうにどう思われますか。こういうことを欠陥だと、こうして減点するわけでございますから、しかも文部省が任命した調査官やあるいは調査員の諸君の決定した判定をくつがえすわけでございますから、事柄は重大であって、しかも最後には教科書の検定は文部大臣がするというわけでございますから、文部大臣みずからがこれをやられたと言っても差しつかえないわけでございます。この点についての高見さんの責任ある所信をお聞きしたいと思います。
#371
○国務大臣(高見三郎君) これはまあむずかしいことばの使い方の問題でありますけれども、この記述は、「サンフランシスコ条約の成立」の項に述べられておるものであります。日米安全保障条約第六条によると、「施設及び区域」という用語は用いられておりまするが、「基地」という用語は用いられておりません。「基地」という用語を用いると、その地域内において治外法権的な地位を認める一九四一年の米英間の基地協定、一九四七年の米比――米国とフィリピンですね、米比基地協定等にいう基地を意味するものと認識されるおそれがあるのであります。しかるに、日米安全保障条約の「施設及び区域」にはこのような治外法権的な地位は認めていないから、この記述のように「基地」の語を用いることは、同条約によって使用することをわが国が許している「施設及び区域」について生徒に誤解を起こさせるおそれがある。したがって、これは不正確であり、適切でないという判断を下しておるようであります。
#372
○加藤進君 私たちは、これから成長していく子供たちの教育のために最も役立つような教科書をつくる、このために検定もあると思います。そういう検定の中の重要な審議会で、基地ということばは不適切である、日米安保条約の条文にはこう書いてある、こういうふうに指摘をされて減点されておることについては、私は納得いきませんし、同時に、この教科書の中にはどういうふうに文部省の審議会の意見を入れて書き直されたかというと、「区域(一般には基地といいます)」と書いてあります。基地といいますと説明しなければわからないような区域なんです。こういうものを生徒に教えるということで教育がはたしてほんとうにできるかどうか。これにはできますというお答えもあるかもしれません。しかし、こういう教育的な効果を実際にはかるべき問題は、決して役所できめられるべき問題ではないと思います。現場の教師がきめるべき問題であります。こういう問題が審議会において遠慮会釈なく指摘されている。そして、これが減点されて、合格であったものが不合格に転落する。こういう点では、私は、審議会の中にきわめて大きな意図的なものがありはしないかと国民が疑うのもこれはあたりまえではないかと思います。
 次に、「内容の選択」についての欠陥として指摘されている問題を私はただ一つ二つの例だけで申し上げますと、坂上田村麻呂のエゾ征伐であります。このエゾ征伐について、前の原稿では「蝦夷を征服させた。」と書いてあるが、そうではいけないのであって、「反乱をしずめたのだ。」というのが正しいと。これで減点なんです。こんなことまで議論をして、これに点をどれだけやるかなどということになりますと、これはもう教育以外の考え方が作用するといっても私は言い過ぎではないと思います。
 もう一つありますが、これは徳川時代の女性の服装の問題です。女性の服装を見ると女子の社会的地位が低かったことを示しておるような文章があります。ところが、この審査会の審議の中では、「女性の服装が女性の社会的地位の低かったことから生まれたとするのは一面的である。」と。だからこれも減点するというのであります。著者の意見も何も聞かないで、いわば裁判所以上の権限をもってこれを判定して採点をする、これが審議会であるなら、一体この審議会を通じてどんな教科書ができるかと疑わざるを得ないような問題であるし、これはもう著者の学問あるいは思想への介入であって、こういうことが審議会を通じて教科書の検定という一つの仕事の中で実行されていく、こういうふうに私は見ざるを得ないわけであります。
 こういうふうにして個々の具体的な例から見てもおわかりいただけると思いますけれども、にもかかわらず、日本史小委員会の議事録によると、「慎重に審議した結果、満場一致をもって不合格判定」と、こういうふうに書いてあります。私は特にこの際文部大臣にお願いしたいわけでございますけれども、一体どのような審議が具体的に行なわれて、どのような委員からどのような意見が出て、そして最後には合格ときめられたものが不合格になったのか、その間のいきさつと論拠を私たち国会を通じて明確にしてもらいたい。それでなければ、私は納得できません。
#373
○政府委員(岩間英太郎君) ただいまいろいろ御指摘を受けましたけれども、先生のお考えと私どもの考えと違っている点がございますのはたいへん遺憾でございますが、この審議会の指摘しました事項につきましては、まあ裁判所みたいに反論が許されないというお話でございましたが、これは異議の申し立てを認めておりますから、そういうことはございません。是正する機会はあるわけでございます。
 それからまた、ここで減点されたために不合格になったというお話でございますけれども、そもそも初めから二百点のアローアンスがあるわけでございます。それにすれすれのところまでいっておったから、あとから欠点を指摘されてそれが合格点を割ったということでございまして、家永さんがお認めになっているその欠点だけでも九十九カ所あるということでございます。まあもともとそこの初めに調査員あるいは教科書調査官が指摘しました欠点が多過ぎたために、最終的に審議会のほうでは減点されて不合格になったということでございますから、その点は先生とやや意見が異なるわけでございます。
 それから審議会のやりとりにつきましての御意見がございましたけれども、まあこれも先生と意見が違うかもしれませんが、行政と申しますのは、審議の経過よりも、むしろその結果及びその理由というのが重要視されるわけでございまして、行政というのは組織でもって動いておりますために、その間にいろいろな下からの積み上げが行なわれまして最終的な結果とその理由というものが出てくるわけでございます。その審議の経過というものをこういう組織の中で動いております過程におきましてこれを外に公表するというのは、私ども内部書類を表に出さないというのはそういう理由でございまして、これは行政という組織で動いておりますたてまえからそうなるわけでございます。国会等におきましては結論よりもむしろその経過、御審議が非常に重要なところと行政とはいささか違うわけでございます。どういう方がどういう御意見を申されましたかということを外に公表することによりましてかえって公正を阻害するというふうな欠陥も出てくるわけでございまして、その点は、行政とそれから立法、あるいは政治にお携わりになります先生方のお考えと私どもとの間に食い違いがあるということは、これが一つとしてあるのではないかと思うわけでございます。
#374
○加藤進君 御説明を聞いておりますけれども、これはもうすでに相当前のことですね。そのために、証拠資料としてこれを出された。その証拠資料についての疑惑があるし、疑問が起こる。これについて国会で答えてほしい。答えるための材料があるだろう。もうすでに過去のことだから、これをいま出してもらったって、これがすぐにほかのところに作用するなどということはあり得ないはずだ。そういう過去の資料についてまでマル秘で出せませんと、こうして長年の間これはマル秘文書としてうずもれておったわけでございます。これが高見文部大臣の御決意によって公表された。けっこうなんです。したがって、これに基づいて私たちは国会で審議しております。審議する段階で、聞きたいこと、知りたいことが、やまやま出てくる。その一番大きな問題は、審議会におけるなぜ合格が不合格に逆転したのか、減点減点と言われるけれども、その理由、根拠は何か、こういう点をぜひとも私は国会に文書として提出してもらいたい。文部大臣、いかがでしょうか。
#375
○政府委員(岩間英太郎君) 今度提出命令を受けまして私どもがお出ししました書類が、これが全部でございます。これ以外に私どもが内部にとどめております資料というのはございません。
#376
○加藤進君 私は、その点、今後とも、文部省がマル秘といわれるような多数の文書を擁しておられるわけですし、そういう中から国会で事態を明らかにする、これは教育行政を担当する立場からいったら当然のことだと思うんです。うそ隠れはしない、このように私たちの立場は正しいんだということをむしろ遠慮なく国会の場において国民に訴えられる、これが私は正しい態度ではないかと思います。
 なお、いまのことにつけ加えまして、同じ議事録では、不合格の理由の中にこういう文言があります。「近代史についての記述に上記の欠陥があるばかりでなく――その次でありますが――特に一方的な叙述が多く、絶対条件にてらしても欠陥があるとの意見も出され」と、こういういわばだれかれの意見までがこの判定書の中には出ておるわけでございます。しかも、重大なことには、「絶対条件にてらしても欠陥がある」という意見が特別に述べられています。この絶対条件について欠陥があるというような判定は、一体、この答申の中に出てくるでしょうか。
#377
○政府委員(岩間英太郎君) これは、御案内のとおり、議事録でございまして、これがその判定の理由ということではございません。不合格の理由は審議会の答申書に明示してございますように、必要条件、特に正確性及び内容の選択において著しい欠陥があったということでございます。
#378
○加藤進君 そうすると、この絶対条件ということは、この場合に不合格の理由にはならなかったと、そういうふうに確認していいですね。
#379
○政府委員(岩間英太郎君) そのとおりでございます。
#380
○加藤進君 いずれにしましても、せっかく出していただきましたこの文書の検討を進めている段階で、いろいろな重大な問題が出てきています。私もこれでわかりましたと引き下がるわけにはいきません。その点では、ぜひとも重ねて申し上げますけれども、文部省のほうで、私たちの見解が間違っておるのか、そういう評価がきわめて一方的なあるいは先入観を持った考え方なのか、それとも、文部省のほうがしかじかかくかくで正しい見解を持っておるのか、この点のけじめをぜひとも私は国会でつけさしていただくように文部大臣にもせっかくの御努力をわずらわしたいと思いますが、いかがでしょうか。
#381
○国務大臣(高見三郎君) 私は裁判所の命令に従って証拠書類は提出いたしますということを申し上げました。
 ここで一つ誤解のないようにお願いをいたしたいと思いますのは、この書類は出さなければ出さなくてもいい書類であります。裁判所が命じましたのは、民事訴訟に対する決定であります。憲法上の問題を云々の問題はございませんでした。ただ、問題は、民事訴訟を進めていきます場合に一番大事な問題は、相手方が要求する証拠を提出しない場合には、要求しているほうの意見を正当と認められてもしかたがないようになっておるのであります、訴訟法上。そこで、私は、裁判所が命ずるものなら出していいと。それから一つ誤解のないように申し上げておきたいと思いますことは、どうも教科書の検定というものが戦前の検閲制度とやや似たような性格のものだというような誤解があってはならぬと、教科書の検定というものがきわめて公正に行なわれているものであるということを世間に知ってもらう必要があるという意味からこの書類を出したのであります。
 それは、いまあなたがおっしゃるようないろいろの問題があります。ありますけれども、結論としては、これはもう行政府は結論の問題でありますから、結論としては不合格だと。御承知のように、家永さん御自身がお認めになっている不備の個所すら九十九カ所もあるという原稿であります。そこで、家永さんがこの不備の個所を全部修正するとおっしゃるならば、それはそれでよかったのでございます。それはおっしゃらない状態であるならば、審議会としては不合格にせざるを得ないという結果が出るのもこれまたやむを得ないことであると思うのであります。それで、私どもは、少なくとも教科書の検定に関する限り、検閲の思想でもって検定をやっているものじゃないということを今度の証拠書類によって御認識いただけたものだと実は思っておるわけであります。どうか、その辺のところは、誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。
#382
○加藤進君 私は、もちろん、この問題が裁判で争われている重要問題だということを知っています。しかし、国会における審議でございますから、私は決して裁判、公判の問題に関連さしてこの問題を取り上げているつもりはありません。問題は、ここに少なくとも、わずかではあるけれども、文部省が責任を持ってこの証拠書類を出してこられた。これはもう裁判所だけの文書じゃないと思います。私もいただいておりますから、国民のいわば批判にさらされる文書であることは明らかです。したがって、私は、この内容に即して見ても、以上のような疑惑が数々あるということを指摘したわけでございますから、そういう指摘に対して、その疑惑は誤りであるというような点でもっと明確なお答えをいただかなくてはならぬ、これが私は文部省のなすべき仕事だと思います。その立場から言うなら、きわめて簡単な議事録やあるいは記述その他についてなお不明な点があるから、これはひとつ文部省においてさらに積極的な御努力を払って、国会の審議を通じて国民に事態の真相をもっともっと明らかにして、国民の文部省に対する信頼をもっともっと高めてほしい、これが私の真意であることをまず申し上げておきます。
 同時に、文部大臣は、これは出せと言われたから、裁判所からそういう要望があったから、その分として出したんだと、こういうことでございますけれども、私はそういう措置は文部省としては本末転倒だと思います。先ほどもある新聞に出ておりましたけれども、秘密文書の問題が外務省や防衛庁から出た。高見文部大臣は、文部省にはそういう秘密なるものはない、こう言われたと聞いています。私は、本来、文部省の文書に国家の機密に関するマル秘があるなどというような事態は正しくないと思う。事教育については、ほんとうに国民の前に公明正大に明らかにしなくちゃならぬ。そういう立場から言うなら、裁判所に出せと言われていやいや出したというのではなしに、この問題は裁制所に出しました、同時に国会においても十分御審議を賜わりたい、疑問があるならお答えしましょう、こういう態度こそ私は教育行政を担当する文部省の本来のあり方ではないかと、こういうふうに考えるわけでございます。
#383
○国務大臣(高見三郎君) 加藤先生がおっしゃるとおりであります。ただ、私は、行政府は行政府としての秘密というものはあると思うのであります。ただ、文部省には、たとえば防衛庁の問題だとか外務省の問題だとかいうようないわゆる国家の機密に関する重要な秘密というものはございませんという答弁を先ごろの予算委員会でいたしました。それはないのであります。したがって、行政府の持っておる秘密というものをすべて公開しなければならないものであるとは考えておりません。これは立法府が独立の権限を持っておると同時に、行政府もまた独自の権限を持っておるのであります。したがって、その判定は、国権の最高機関である国会がおきめになることであります。したがって、私は、行政府が行政の執行上機密としなければならないものについては、無理に出せと、私が文部大臣であるから無理に出せということは申さないつもりであります。ただ、沖繩国会の際にあなたからこの御質問がありましたときに、私は出すべきものと判断をいたしましたから、出しますというお約束を申し上げた。お約束を申し上げたとおりに実行しただけのことであります。
#384
○加藤進君 私もあえて文部大臣に重ねて申し上げますけれども、蔵のたなおろしをやって全部出せというようなことを申し上げているわけではございません。問題が明らかになってきた、疑問が出た、これに率直に答えていただくためにこそそのような文書をぜひ国会の舞台では提出してほしい、こういうことでございますから、その点は御了解いただきたいと思います。
 そこで、角度を変えましてさらに進みますけれども、教科書の検定をほんとうに公正に行なうということのためには前提条件があると思う。それは、検定に当たられる調査官や調査員あるいは審議会委員の方たちが偏見あるいは先入観を持って審査に当たられるということを防がなくちゃならぬ、私はそう思います。その場合、特に、審査する原稿の著者はだれであるか、事前にそれがもうわかってしまっているとか、あるいは出版社の一体どこにいったかということもわかってしまっている、こういうようなことのないような措置が、教科書検定においては文部省としてとられていると。その一つのあらわれは、白表紙版として出されてきておるということ、また、著者名はわからないように隠してナンバーでその著書を表示すると、こういうような措置を講じられておると思いますけれども、その点はそのとおり理解していいでしょうか。
#385
○政府委員(岩間英太郎君) そのとおりでございます。
#386
○加藤進君 そうしますと、審議会の審査の段階までに原稿の著者名が担当関係官の方たちにわかっているとか、あるいはその本が特別な扱いを受けるというようなことが絶対にないというのか、その点の保証はどうなんでしょうか。
#387
○政府委員(岩間英太郎君) 私どもは、先生の御趣旨の線に沿いまして最大限の努力をしてまいりましたし、今後も最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、再本あたりになりますと、お書きになった方の特徴だとかということがもうすでに前の本で非常によくわかっているというふうなこともございます。あるいは、今度のように新聞で家永先生がまた検定の申請をお出しになるというようなことがわかれば、家永先生の本が少なくとも出るということはこれは事前にわかっておるわけでございます。まあそういうことでございますけれども、もちろんそういうふうな個人の恣意が働かないように最大限のことはいたしたい。また、調査官あるいは調査員の選考につきましても、これはできるだけの公正をはかりたいというふうに考えておるわけでございます。
#388
○加藤進君 それでは聞きますけれども、三十八年の二月二十日の先ほどの日本史小委員会、この議事録によりますと、一ページの議事の項では、家永本の原稿ナンバー7−205はトップに出されています。そうですね。七つの本の中の一番前に出ています。ところが、記録の中ではこれが一番最後に回されていますけれども、これは一体どういう取り扱いなんでしょうか。
#389
○政府委員(岩間英太郎君) これは書き方の順序というのは別に意味があるわけでございませんので、やはり家永先生の本が先ほど申し上げましたように合格、不合格のすれすれの線で、しかも不合格というふうにお考えになった調査員の方もおられるわけでございまして、いわば非常に慎重を要する審査の対象でございますので、簡単なものは先に済ませまして、あとから一番問題のものをやるというのがこれはごく普通のことであろうというふうに考えるわけでございます。
#390
○加藤進君 ごく普通だと申しますけれども、これはおかしいじゃないですか。審査の公正を期するためにわざわざ著書の原稿に白表紙をつける、そうして著者名その他がわからないようにナンバーで審査する、これは何のためにやるのです。こういう著書について事前に先入観を持たなくて、この著書そのものの原稿の内容を吟味する、これが私は審査であり検定の仕事だと思うのですが、そういうためにナンバーその他がつけられ、白表紙がつけられておるのじゃないでしょうか。
#391
○政府委員(岩間英太郎君) これは審議の順序でございますが、一般的に問題が五つあったとしますと、やさしいほうからやるか、あるいは一番問題があるものからやるか、どちらかだろうと思います。この場合には、一番問題があるものを一番最後に回したということで、家永先生の御著書を一番最後に回したということではございません。
#392
○加藤進君 それじゃ、こういうふうな記録がありますね。「渡辺調査官より、この原稿を特に合格した理由として四訂版との比較において認定したことの説明あり。」と記されていますよ。四訂版というのは、これは何ですか、いま言われたように家永本ではございません。それは順序として問題のあるのをあとに回したと言われますけれども、四訂版というのは家永本の四訂版でしょう、これは。こういうことがちゃんと審議会の中で論議されてそうして説明されているじゃないですか。
#393
○政府委員(岩間英太郎君) これはまあたまたまそういうふうに前にすでに著書が出ておりますから、そういうことでそういうことになっただけでございまして、別に家永先生の本を意図してこれを特にきびしく見ろとかそういうことでやっているわけではございません。
#394
○加藤進君 いや、きびしくとかというようなことは、これはもう文部省の方がそうお考えになるかもしれませんけれども、ここで指摘しておるのは、そういう先入観を持たないで原稿そのものの審査をやるのが審議会の仕事であるし、調査官の仕事である。ところが、もう審議会の席上でちゃんと家永本であるということが明確にみんなにわかるような議事の内容がちゃんと記録に残っている。四訂版との比較、三訂版・四訂版との比較をいたしました、こういうことが書かれている以上は、これはもうナンバーで知らしておろうが、白表紙にしておろうが、これは家永本であることは明確になって、その上での論議が続けられておる、審議が続けられておる、こう言わざるを得ないじゃないですか。
#395
○政府委員(岩間英太郎君) これは、最初にも申し上げましたように、前に一ぺん審査をいたしたものは、これはどうしてもわかるわけでございます。私どもはできるだけわからないようにするということは基本でございますけれども、やはりわかってしまうのは、これはいたしかたないわけでございます。したがいまして、検定の公正を期するためには、わかるわからないだけではこれは防げないわけでございます。したがいまして、私どものほうは、審議会の委員とかあるいは調査員それから調査官に公正な方をお選びするということを心がけておるわけでございまして、幾ら秘密にすると申しましても、これは人間のやることでございますからやはり限界があるということはやむを得ないことであろう、そういうふうに考えるわけでございます。
#396
○加藤進君 もちろん、それぞれの担当官が、あるいは委員が、この原稿を読んでみると、大体これは家永さんの本だなあと察知できるのは、これはあり得ることだと思う。しかし、この審議会の小委員会では、四訂版との比較においてこうこうした、三訂版、四訂版を比較してみるとなどというようなことが公に記録として残されています。これはすでに家永本について、他の本とは違う特別な扱いがなされた。まず第一には、一番前に若い番号からやるべき審議が、家永本だけが最後に回された。そして、その最後に回された家永本に対しては、相当長時間の審議をかけて、そしてこれに三訂版、四訂版の比較までやっている。これでは、一体、審議会というのが、そういう事前の先入観を持たずに原稿そのものの審査をやるという趣旨とは相反すると思いますけれども、その点の説明はどうでしょうか。
#397
○政府委員(岩間英太郎君) これは、いまも御説明申し上げましたように、別に意図があってやっておるわけではございません。これは先生のまあ思い過ごしというのはたいへん失礼でございますけれども、私どもは公正に検定が進められているというふうに考えるわけでございます。たまたまこの前に、すでに審査をしたという実績がございますから、これは皆さん方がおわかりになっておられれば、幾ら私どもが隠そうというような手だてを講じましても、これはやはり皆さん御存じの上での審査ということになるのは、これはやむを得ないのじゃないかというふうな気がするわけでございます。
#398
○加藤進君 二つのことを申し上げます。その一つは、いまの説明でも、調査員、調査官、あるいは審議会が、その審議内容をほんとうに明確にして、はたしてこれが公正であるかどうかということをやっぱり明らかにする責任がある。これは文部省に責任があると思います。この点をぜひとも私はやってもらいたいと思います。すなわち、審議会の審議議事録をやはり国会に出してもらいたい、これが第一点。
 それからもう一つ、家永本と一緒にほかの六冊がやられているわけです。もし家永本の審査が公平で他と全く相違ない形でやられたかどうか、何らの先入観もなしに特別扱いせずにやられたかどうかということを比較するためには、私は同時に行なわれた同じ日の六冊の審査の資料もぜひここに公表していただきたいと思います。これは家永本についてこれだけの資料があるわけでございますから、他の六つの教科書原稿についてもそれなりの審査資料があると思います。この文書だけは少なくとも私は国会に出していただきたいと思います。
#399
○政府委員(岩間英太郎君) 先ほど申し上げましたように、私どもが裁判所に提出いたしました書類が、いままで私どもが持っております書類の全部でございます。これ以外に議事録というようなものはございません。御案内のとおり、裁判所で提出命令がございましたのは、私どもが提出いたしました書類の半分でございます。残りの半分も私どもが任意に提出をしたものでございまして、これが全部でございます。
 それからほかのものにつきましては、これは私どものほうとしましていまのところ御提出するというふうな意思はございません。
#400
○加藤進君 意思はございませんということで、われわれ国会でさようでございますかと引き下がるわけにはいきません。私は、この検定問題は、一番初めに申し上げましたように、教科書の内容を左右する。したがって、これを通じて国民の教育を左右するほど重要な仕事だ。したがって、われわれは、重大な関心を払わなくちゃならない。こういう点で私は国会で論議をしておると思います。そういう意味から見て、家永本がはたして公正に、他の教科書原稿と何ら違わない取り扱いを受けてきたかどうか、差別がなかったかどうか、特別の取り扱いが行なわれなかったかどうか、この点を明確にするためには、私はぜひ他の六点の審査がどのように行なわれたかという文書をぜひとも資料として国会に出してほしい。これが公表できないという理由がもしありとするなら、ここで述べていただきたいと思います。
#401
○政府委員(岩間英太郎君) これは先ほども申し上げましたように、内部書類でございますし、それからただいまこの問題は係争中の問題でございます。裁判所の決定がございまして、私どもその関係のものは、今度裁判所に提出をいたしますと同時に、公表したわけでございますけれども、その他のものにつきましては、これは内部の書類でございますので、御容赦をいただきたいということを申し上げているわけでございます。
#402
○加藤進君 そうしますと、理由は、部内の資料であるからこれを国会にも公表するわけにはいかぬ、こういうことですね。それが理由ですね。もう一度確かめておきます。
#403
○政府委員(岩間英太郎君) それと、ただいま本件につきましては、裁判所で係争中でございます。その二つを含めましてお許しをいただきたいということを申し上げているわけでございます。
#404
○加藤進君 係争中なのは、これは家永本についてのいわば資料でしょう。家永本についての資料です、係争中なのは。裁判に必要なのはこれですから出されたんだと思います。その限りにおいてけっこうだと思います。しかし、私たち国会では、これを文部省の正式の資料文書として拝見すると、この中に数々の疑惑が起こってくるから、その疑惑を解いていただくために、他の六つの原稿の審査資料も同時に国会には出してほしい、こういうことを要求しているわけでございまして、裁判との関係は私はその六冊についてはないと思うのですけれども、これはどうでしょうか。
#405
○政府委員(岩間英太郎君) 係争中の問題につきましては、これは国会でお取り上げいただくということは、私のほうもなるべく裁判につきましては意見を言わないというふうなことがたてまえでございます。国会でお取り上げをいただきましても、国が裁判の片方の当事者としてやっております問題につきましては、これはなるべく係争中の事件については国会でもそれに関係のある部分は意見を差し控えるということが、これがいままでの私どもの慣例でございます。そういう点から申しまして、まあ関係はないと申しますが、先生がこれに関係をつけてお話しになっているものにつきまして、私どもも、内部の書類であるということと、それから係争中の事件に関係があるということ、その二点によりましてお許しをいただきたいということを申したわけでございます。
#406
○加藤進君 もうこれで終わりますけれども、文部大臣にお尋ねしたいと思います。とにかく、裁判で係争中だと、こういうことで国会にも資料は出せない、また、部内の機密文書だから、これも国会に出せない、こういうことでは、一体、教科書の検定、教科書を左右すべき文部省の大事な仕事である検定の作業、この作業については国会ではもはや論議ができないと、こういうことと同じじゃないですか。その点、教育ということに直接責任を負う文部省といたしまして、これは全国民の前で教育者はうそも隠しもしてはならぬ、正しいことを正しいと主張して、その真偽を国民に理解させるべきだ、こういう態度を私はとるべきだと思いますけれども、この点、文部大臣、いかがでしょうか。
#407
○国務大臣(高見三郎君) これは初中局長がたびたびお答えしておるように、ただいま係争中の案件と関連してこれを国会に提出するということは、行政部内の問題でございますので、この問題は御容赦をいただきたいと思います。私はあなたとのお約束を確実に果たしたのでありまするから、これ以上要求せられましても、これをすぐ承知いたしましたと申し上げるわけにはいかない立場にあることをこれだけは御了承をいただきたいと思います。
#408
○加藤進君 文部大臣の見解は明らかになりました。ただし、私は納得しません。ぜひともこの事態は国民の前に明らかにしてもらう必要があるし、そのためにはどうしてもなお残された六冊の資料についても出してもらわなくちゃならぬ。今後私は文教委員会その他の機会を通じて遠慮なくまたその点を追及いたしますが、その覚悟でひとつ皆さんも答えていただきたい。
 この程度で私の質疑を終わります。
#409
○主査(塩出啓典君) 他に御発言もなければ、以上をもちまして文部省所管に関する質疑は終了したものと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十一分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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