くにさくロゴ
1971/06/01 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 商工委員会 第16号
姉妹サイト
 
1971/06/01 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 商工委員会 第16号

#1
第068回国会 商工委員会 第16号
昭和四十七年六月一日(木曜日)
   午前十時十七分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月三十一日
    辞任         補欠選任
     中尾 辰義君     浅井  亨君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         大森 久司君
    理 事
                川上 為治君
                剱木 亨弘君
                竹田 現照君
                藤井 恒男君
    委 員
                赤間 文三君
                植木 光教君
                小笠 公韶君
                大谷藤之助君
                中山 太郎君
                矢野  登君
                山本敬三郎君
                渡辺一太郎君
                阿具根 登君
                小野  明君
                大矢  正君
                林  虎雄君
                原田  立君
               柴田利右エ門君
                須藤 五郎君
   衆議院議員
       修正案提出者   武藤 嘉文君
   国務大臣
       通商産業大臣   田中 角榮君
   政府委員
       通商産業政務次
       官        林田悠紀夫君
       通商産業大臣官
       房参事官     増田  実君
       通商産業省企業
       局長       本田 早苗君
       通商産業省企業
       局参事官     田中 芳秋君
       通商産業省繊維
       雑貨局長     佐々木 敏君
       通商産業省鉱山
       石炭局石炭部長  青木 慎三君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        菊地  拓君
   説明員
       運輸省鉄道監督
       局国有鉄道部業
       務課長      服部 経治君
       労働省職業安定
       局失業対策部企
       画課長      望月 三郎君
       労働省職業訓練
       局訓練政策課長  山口 政治君
       自治省財政局財
       政課長      近藤 隆之君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正
 する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○工業再配置促進法案(内閣提出、衆議院送付)
○産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
     ―――――・―――――
#2
○委員長(大森久司君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 委員の異動について報告いたします。
 昨年五月三十一日、中尾辰義君が委員を辞任され、その補欠として浅井享君が選任されました。
 ちょっと速記とめてください。
  〔速記中止〕
#3
○委員長(大森久司君) 速記を起こしてください。
    ―――――――――――――
#4
○委員長(大森久司君) 特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#5
○大矢正君 私はまず第一に、去る三十日、大手合成繊維会社に対する公正取引委員会の立ち入り検査についてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、新聞等で報じられておりまするとおり、これは今日までの間に国際カルテルが結ばれたのではないかという前提に基づく独禁法違反ということのようでありますが、これは現在どういうような状態になっているか。もちろん公正取引委員会がその権限に基づいて、また判断に基づいて行なうことでありますから、通産省がそのことについて言及するということはいろいろ差しさわりのあることではあろうかとは存じますが、これからの貿易面における大きな問題点にもなる可能性がありますので、認識のほども含めてお答えをいただきたいと思います。
#6
○政府委員(佐々木敏君) 先生御指摘のように、五月三十日に公正取引委員会が化合繊メーカー等十四カ所に立ち入り検査をしたのであります。その立ち入り検査の被疑事実といいますものは、一つには合繊メーカーが本年一月ごろからナイロン、アクリル、ポリエステル等の繊維につきまして、生産数量の協定をして操短をしたという疑いでございます。
 それともう一つは、わが国の合繊メーカー等がナイロンその他につきまして、西欧の合繊メーカーと協定をいたしまして市場分割をしたというような事実、これに基づきまして立ち入り検査をしたのでございます。
 実は、通産省といたしましては、四月の初めに西独のカルテル庁が西独の合繊メーカー九社に対しまして、同じような国際カルテル、国内カルテルの疑い等から審決を出しまして、合計四千八百万マルクの罰金を科したというような事実の報道がございました。通産省といたしまして、さっそく国内の合繊メーカーを呼びまして、実態を究明した次第であります。わが国の合繊メーカーは、外国との国際協調の精神でナイロン等の合繊の国内生産状況、輸出状況等の情報交換はいたしておりますというような説明がございました。通産省といたしましては、輸出秩序の維持ということは今後の健全な合繊の貿易につきまして、方向としてはけっこうであるけれども、いやしくも、法律にもとるような独禁法違反の疑いがあるような行為は絶対にすべきでないということを強く指導した次第であります。もちろん今後の公正取引委員会の審査、審決にまたざるを得ないのでございますけれども、そのような事実があれば、通産省といたしましても非常に遺憾である、かような立場に現在ございます。
 なお、国内の生産調整につきましては、昨年秋ごろから合繊各社が最近の合繊の生産過剰、市況低落等に基づきまして、各社が個別に、時期あるいは操短率について、自主的に操短を行なっているということは、つとに私ども承知しているのでございますけれども、これがカルテル行為であるかどうか、その点につきましては、私どもまずそのようなことはなかろうと考えておるのでございますけれども、これまた公取の正確な調査に待たざるを得ないというような立場でございます。
#7
○大矢正君 問題なのは、結局それが海外に対する輸出の問題それから国内におけるカルテルの問題等、両面にわたっての問題点があろうかと思いまするし、公取が問題点として指摘してきておるのも、またそういう両面にわたっていると思うわけですね。
 そこで、国内的な生産制限というか、公取側に言わせればカルテル行為というものは、これは明らかにあるということが言われてはおるが、問題はやはり対米交渉の推移であるとか、それから国内の全般的な不況現象であるとか、そういう非常に外的、内的要因のために、ある面においてはさまざまの措置を講じなければならなかったというような事情もあるいはあるかもしれない。となると、たぶんにこれは、政府みずからもこれは責任を感じなくちゃならぬ部面もありますし、それから同時に、私も専門家じゃありませんからよくわかりませんが、政府が行政指導すればカルテル行為にならないし、政府の行政指導という形がとられなければこれは独禁法違反だという、その間における非常にさまざまな問題を一体どのように考えたらよろしいものなのか。これは私は、何も大手の化合繊メーカーが公取によって立ち入り検査され、将来審判、審決、その他いろいろな法的措置が講ぜられると思うのでありますが、そのことを否定するという立場ではなくて、問題はやっぱり、そういう独禁法というものと実際の政府の行政指導というものとの関係なり、関連なり、それからその線の引き場所なり、そういうものについての通産省の配慮というものが過去になかったであろうかという点で疑問を感ぜざるを得ませんので、もう少し詳細に、政府はどういう判断を持ち、どういう態度でやってきたかということを私はお尋ねをしたいと思うし、そういうことがある意味では、この独禁法違反であるといわれていることに対するある意味での行政官庁としての行為も成り立ち得るわけですからね。経過はこうでございますということももちろん必要でございますが、その間に政府としてどういう判断を持ってきたか。対米繊維交渉が強引に行なわれることによってかなり打撃を受けたということや、経済的な一般の不況の進化に伴う繊維当局としての、他にもいろいろ業種的にありますけれども、とりあえず、ここで問題になっている件に限定していえば、繊維行政を担当するあなたのほうでどういう判断のもとに行政指導なり、それから業界の混乱を防ぐために手を打たれたのか、その辺のことをひとつお答え願いたいと思います。
#8
○政府委員(佐々木敏君) まず、最近のこのような国際カルテルのような疑いのある行為が業界に起こっておるということにつきまして、そのことの全部がこれまでの政府の繊維産業に対する行政の責任である、そのような御指摘の問題につきましては、もちろん繊維産業の、特に日米政府間協定の締結によりまして、合成繊維の糸が非常に影響をこうむったということは事実でございます。今年に入りまして合成繊維糸の対米輸出は急激に減っております。しかしそのほかに、やはり一般的な景気不況の問題もございますし、アメリカにおける一連の保護主義の台頭、ドル・ショックの問題、あるいは円切りというような一般的な経済現象の大きな変化ということも、繊維産業にこのようなことをせざるを得ない一つの原因であったかと思うのであります。私どもこういったことにつきましては、かねがねわが国の繊維製品の輸出が長期的に発展するためには健全な輸出、すなわち輸出秩序の維持――オーダリーマーケティングということをかねがね指導をしておったわけであります。そのためにはやはり国際協調的な動きも一面においてば必要であるというような指導を業界に対しましてしておったのでございます。しかしながら、やはり厳として独禁法はございますし、また、その独禁法を適用除外する法律としては輸取法その他ございますから、やはり業界に対しましてはそういった合法的な立場で輸出秩序を極力維持するというような方向を示しておったのであります。いやしくも法律違反にならないような、その疑いが生じるようなことは絶対すべきでないという指導ももちろんしておったのでございます。それと同時に、これからの国際繊維貿易の動きも、ガットその他の場におきまして国際協調的な動きが、ガットの繊維のWPとかあるいはLTAの問題とか等々ございます。もちろん原則は自由貿易の立場でありますけれども、やはり国際協調的な精神でいろんな勉強会をしていく、実態把握をしていくということにつきましては、業界としても前向きに取り組んでいくべきである、かような指導もしておったのであります。
 繰り返し申し上げますように、輸出秩序は必要であるけれども、いやしくも、法律違反的なやみの行為は絶対に慎むべきである、かような指導をいままで続けておった次第であります。
#9
○大矢正君 世界的な傾向が、従来唱えられてきたような自由な貿易を許容するような情勢にないことは、日米繊維協定を結ばなきゃならぬような事実によって明らかでしょう。しかも、わが国がアメリカに対してだけでもおそらく二百近い、あるいは二百前後のいろんな意味における輸出制限をしているわけですね。そのようにして今日もう自由な貿易などというものは、それはことばとしてはあり得ても、現実には世界じゅうに通用しない現象となってあらわれておりますね。といたしますと、秩序ある輸出とかオーダリーマーケティングとか、そういうような判断というもの、それからそういう考え方というものはもう当然のこととして、これはまあ業界といわず、行政官庁といわず、受けとめた形における輸出政策なり貿易を考えていかなきゃならぬことは事実ですね。その際に問題になるのは、私はこの公取が行き過ぎだとか、業界のほうが正しいとか、そういう意味で申し上げているのではなくして、それでは、明らかにすれば、たとえば、わが国とドイツとの間において繊維メーカーが話し合いをして、こういう話し合いをいたしましたということを明らかにすれば、それじゃ独禁法違反にならないのか、どんなことをやってもならないのかという理屈だって出てくるのじゃないでしょうかね。ですから、きれいなことばであなた盛んに秩序ある輸出とか、やみの協定とか、話し合いとか、こうおっしゃられるけれども、じゃ明らかにして、こういうやつを、こういう協定を結びましたと言ったら、それ自身が業界同士であれば問題になるわけでしょう。だとすれば、どうすれば一体いいということになるのですか。私はそれを聞いている。
#10
○政府委員(佐々木敏君) もちろん先生おっしゃいますように、国際協定で不公正な取引方法あるいは不当な取引制限をやった場合には、いかに独禁法六条二項によりまして届け出をいたしましても、もちろん違法であります。したがいまして、そうではなくて、私ども、やはり合法的な方法で輸出秩序の維持をしていただく。たとえば、輸出入取引法に基づく輸出カルテルもございましょう、あるいは個々の業者がそれぞれの自主的判断に基づいて生産制限、あるいは輸出制限を自主的に行なうという方法も一つございましょう。そういった具体的なケースに即しまして、あるいはまた業界のそれぞれの特殊な事情に即して実りある輸出秩序というものを確立する、そのような方向で指導をしておるのでございますけれども、ただ、残念ながら先生御指摘のように、なかなか業界の複雑な関係によりましてむずかしい問題ではございます。しかし通産省といたしましては、新しい国際情勢に対処するためには、今後十分業界とも相談いたしまして、実際に即した輸出秩序体制というものを確立してまいりたいと、かように考えております。
#11
○大矢正君 けさの朝日新聞で谷村公取委員長はこう言っておりますね。「「秩序ある輸出」の体制づくりには、政府がなんらかの形で介入すれば」いい、と考えているのか。」という質問に対して、「そのへんは微妙だが、要するに、法律に違反しない形で政府が認めたものはいい、ということだ。業者同士が「秩序ある輸出」と称して、ヤミのカルルを結ぶのは、断じて認められない。」問題はそれから以降です。「政府が一枚かめばいいというのは、政府はその業界の利益ばかりでなく、広く一般国民、他の関連業界などの利害も考え、全体の調和をとることができるからだ。貿易は自由を原則とすべきだが、どうしてもその自由を規制する必要があるなら、政府が責任を持つべきだ。だから本来、秩序ある輸出は政府ベースの話だと思う。」と、こう答弁されているわけです。これをあなた読んで、どういう感じを受けられますか。
#12
○政府委員(佐々木敏君) 公正取引委員会委員長のその御判断、お考えというものは、私どもも全くそのとおりである、かように考えます。
#13
○大矢正君 そのとおりなら、なぜこういうことにならないようにあなた方は処置できなかったのかということも含めて私は聞いているわけです。田中通産大臣が、それこそ無理やり首根っこを押えて、アメリカにとにかく物を売っちゃいかぬという協定を結んだわけでしょう。それはそれだけ業界に響いてくるんだから、業界は別なことを考えなければならぬとすれば、やはりそこに一方ではそういうことをするかわりに、今度は他国に売る場合において、他国との間のトラブルを起こさない。すなわち、秩序ある輸出をするためには、政府が乗り出していけばそれは独禁法の違反にならないんだと、政府が介入をすれば、ということなんだから、今日の繊維業界の不況その他を考えてみて、なぜこれが政府の手によって行なわれなかったのかということを私は聞いておる。
#14
○政府委員(佐々木敏君) 先生から御指摘を受けるまでもなく、繊維貿易の秩序ある方向につきまして、政府として責任のある方向づけをすべきであったかと思うのであります。その点はまことに私ども反省をしておるわけでありますが、ただ繊維業界、申し上げるまでもなくメーカーと輸出商社との関係、あるいはメーカー間における、今回は大企業の化繊メーカー、紡績メーカーでありますけれども、大企業と中小の加工段階のメーカー、いろんな複雑な体制でございます。輸出業者のカルテルあるいは国内取引のカルテル、いずれもなかなか現実問題として、政府が勧告をしまして、その業界に対してカルテルを結ばせるということはなかなかむずかしい問題であったのであります。今回、対外経済調整法にも一応その勧告規定を盛られておるようでありますけれども、現実問題、従来におきましては繊維業界は、ただいま申し上げましたような複雑な業界の実態でありまして、十分指導が困難であった次第でございます。
#15
○大矢正君 これは最後になりますから大臣にお伺いしますが、いま私と繊維局長との議論のやりとりの中で、問題は、繊維としてはいま公取委員会における立ち入り検査という問題取り上げられておりますが、先ほど来申しておりますとおり、これはもう数え上げれば切りのないほど、とにかく自主規制その他の名のもとにいろんな形で、一見自主規制という聞こえのいいことばではあるけれども、秩序ある輸出ということばが適切であるかどうかはわからぬが、相手国の業界の反発にあわないような形においてどう調整をするかという意味において、いまの独禁法にいう国際的な、国際カルテルのもうほんとうに紙一重の状態であることもやられておる。単に繊維だけに限らず、全体として通産大臣は秩序ある輸出という問題と、いまの独禁法のカルテル条項と、国際カルテルの条項と合わして考えてみて、何らか考えることがありませんか。感ずることありませんか。あるいはこうすればいいんではないかなと思うような何らかの構想はありませんか。
#16
○国務大臣(田中角榮君) 独禁法という法律や組織があるわけでございますが、反面、国際的な問題として、輸出秩序の確立ということは世界的に望まれることであり、要請されることであります。ですからまあ独禁法違反か、もしくは許されるカルテル行為かということは、これは政府が介入しているかどうか、行政指導によるものかどうかと言っておる谷村公取委員長の考え方、また大体筋はそうだなあという感じであります。しかし、今度の立ち入り検査によってどういう状態が明らかにされるか、これは通産省そのものは検査の結果を待つ以外にないわけでございますが、今度の立ち入り検査を契機にして、やはり公取としての、公取の持つ法律上の問題と、それから輸出秩序の確立という問題でどこまで調整しなければならぬのか、そこまでは当然やっていいのだ、やらなきゃならないのだと、やっていいのだというよりもやらなきゃならないのだということが、多国間交渉だとか二国間交渉やっていると起こってくるわけです。自主規制などどんどんやっておるわけです。相手の国から要請されて自主規制をやらなければいかぬということもあるわけですから、ここでやっぱり独禁法の問題自体に対しても整備をしなければならないと思います。今度の立ち入り検査を契機にして、通産省も公取との間に意見の調整ひとつ勉強したいと思います。これは実際こまかいところまでいってくると紛淆してまいりまして、法律の適用そのものもできないという状態がたくさん現に存在いたします。私たちもそう思います。だからそういう意味で、今度の問題を契機にして法制上いまの対外経済調整に関する臨時措置法出しておりますから、ですからそういうものの中で大臣が勧告権を持つとか、調査権、調査を行なうとか、それから報告義務、情報提供を求めるとか、いろいろな問題がありますけれども、それよりも一歩進めると、やはりいまの法体系にある公取そのものの法律の限界と、それから行政指導によるもの、自主規制等によって許されるものというものを、やっぱり明確にこの際しなきゃならないのだというふうに考えます。
#17
○大矢正君 大臣、これ関連のあることなんでお尋ねをしておきますが、まあ対外貿易を進める上においての法律的なよりどころというようなものももちろんいまありますが、しかし、どうもいまの独禁法との関連を考えてみましても、現行の輸出入取引における現存する法律では、今日のように非常に自由貿易が後退をしている中で適合させようとすれば、無理な点が随所にあらわれてくるのではないかと、したがって私は、独禁法との関連もさることながら、先般のような、たとえば日米繊維協定が政府間において結ばれるような結果が、言うならば、係争事件を引き起こすというようなことにならないような意味においても、輸出入の取引その他全般にわたってまた対外経済関係の調整法とでも申しましょうか、そういう全体にわたっての何らかの法律を、この際、日にちがかかってもできるだけ早くまとめて、やっぱり国会に提出して、混乱を将来に及ぼさないように考えるべきじゃないか。そうでないと、これは自主規制だ、これはカルテルだ、これは政府の権限外だ、行政権限外だから法律的にやらさなきゃならぬと、非常に輸出取引上において混乱が生ずるので、私はそういう方向も今後考えるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
#18
○国務大臣(田中角榮君) そういう必要性を今度の立ち入り検査で十分感ずるわけであります。独禁法によるもの、輸出入取引法によるもの、行政指導によるもの、自主規制によるもの、これはいろいろ必要な調整というものがあるわけでありますが、そういう問題があるにもかかわらず、やろうと思えば独禁法ではやれるのだというようなことになると、非常に混乱するわけでありますから、やっぱり経済調整という面から、おのずから限界を明確にするということの必要性というのは当然起こってまいると思います。
#19
○大矢正君 次は、繊維局長にお尋ねしますが、三十日に藤井委員からも質問があったように聞いておりますが、来年の九月に一応の期限が到来をする例のLTAに関する問題、これは近く交渉が行なわれるはずでありますが、どういう態度をもって臨もうとされておるのか、お答えをいただきたいと思います。
#20
○政府委員(佐々木敏君) LTAの機関といたしまして、綿製品委員会が六月五日から三日間ジュネーブで開催されることになっております。これは、実はLTAの取りきめでは、失効に先立つ一年以上前に関係国がその延長、修正、その他について会合することになっておるのであります。その規定に基づいて今回第一回目の会合が行なわれる次第であります。
 その第一回目の会合は、いままでの慣行によりますと、まず議題といたしましては、これまでのLTAの実績レビュー、それが中心になっております。しかしながら、先生御指摘のように、当然のことながら来年九月三十日に失効いたしますあとの問題につきましても、各国からいろんな意見が出ようかと思うのであります。わが国といたしましては、昨年十月にLTAの再延長の議定書にサインいたします場合に、ガット事務当局を通じまして、わが国としては再々延長には反対であるということを、ガット事務当局から書面で関係各国に日本の意向を伝えてもらっておるのでありますが、元来LTAは暫定的なものでありまして、わがほうとしては、自由貿易を原則とする日本の立場からは、これについては反対であるという筋論の立場は現在も変わっておりません。したがいまして、今回のCTCの会議におきましても、その原則的なわがほうの立場は継続して強く表明するつもりでございます。
#21
○大矢正君 ここ数年来の日米間の化合繊、毛に関する規制の交渉の過程の中で、将来は、現存するというか、既存のLTAをさらに拡大をして、そうして糸を含む全繊維の包括的な多国間協定というものを目がけてアメリカはおそらく進んでくるであろうということが当時からいわれておるわけで、これからLTAの交渉に入りますと、勢い、その中で包括的な繊維全般にわたっての多国間協定で強引に主張してくることが懸念されるわけでありますが、その面については、明確にそれはもうはねのけるという強い態度で事務当局は当たられる決意がおありかどうか、お尋ねをしておきたい。
#22
○政府委員(佐々木敏君) 今回開催されますCTCは、綿製品協定の場でございますから、これは、綿製品に関する議論以外につきましてはCTCの分野ではないという立場で、ただいま先生おっしゃいましたような綿製品以外の毛、化合繊、糸に関する問題につきましては、CTCにおいては当方は避ける。議論が出ましても避けるという方向で進みたいと考えておる次第であります。ただ、この全繊維につきましての先生御指摘のような問題につきましては、実は、かねがねガットの場におきまして、国際的ないろんな勉強会を――繊維の世界貿易、あるいは各国の繊維産業政策等についての勉強会をしていこうというような動きがございまして、最近もガットで非公式な会合が数次行なわれたのであります。わが国といたしましては、繊維産業の今後を考えまして、国際貿易、あるいは繊維産業自体の勉強会であるならばこれはむげに断わるべきではないというふうな態度でございます。しかし、この勉強会が将来逐次発展して、多国間取りきめ、貿易制限的な動きに発展するのを絶対に避ける必要があるわけでありまして、私どもその点につきましては十分な配慮と、また、その条件を明確にするように、ただいま鋭意努力中である次第であります。
#23
○大矢正君 最後に、無登録織機の問題についてお尋ねをしますが、綿スフ関係の織機は産地、業界の、また組合の非常な努力によって効果的というか効率的にその解消が推移しているわけでありますが、絹・人絹関係も、まあまあ綿スフよりも悪いが比較的どちらかといえば進行している。どういうわけで毛の関係の織機だけがおくれておるのか、あるいはやる気がないのか、この点についてお尋ねしておきたいと思います。
#24
○政府委員(佐々木敏君) 御指摘のように、無登録織機、いわゆるやみ織機が、綿スフ、絹・人絹はほぼ登録織機の一割程度でありますけれども、毛の織機は登録織機の四割程度、三、四割程度という非常に大きなやみ織機があるのであります。その原因につきましては、私ども、いろんな複雑な事情がございましてむずかしいのでありますけれども、一つは新幹線ができまして、農民の方が土地を売却して、それでもって一台、二台というように織機を入れたということも、ここ近い時代におきましては大きな原因であったかと思うのであります。そのほかにもちろん一般的な毛製品の季節による大幅な需給の動き等もございますし、流行の変遷ということによりまして、業界の体質というものが非常に時期によって動くということもございます。あるいはまた組合の監視体制についての組合自体としての困難性といいますか、そういったこともあるかと存ずるのであります。いろんな複雑な事情がその他にもあるようでありますけれども、そういった関係から、綿スフ、絹・人絹とは相当違ったやみ織機の実情でございます。
#25
○大矢正君 これは質問というよりも、私の意見としてお聞き取りを願いたいと思うのでありますが、一つには、たとえば綿スフ関係のように一つの方針に向かってやみ織機の解消のために非常に努力をされているところもあり、一向にそういうことに対して努力しようとしないところもあり、こういうことをそのまま見過ごしておいたのでは、結果としてはむだな金をつぎ込むようなことにもなりかねないし、政府は単にやはり無籍織機の解消だけの判断ではなしに、非常に効率的、効果的に構造改善その他に取り組んでいる組合なり産地に対して、何らかの助成措置を別途に講じてやって、その勢いをつけさせるような方向も私は考慮すべきではないかと思うのであります。
 それからもう一つは、この無登録織機の問題に関して言わせれば、なるほどあなたがおっしゃったように、ちょっと金が入ったから一台買ってきて、そんなもの法律なんてあるかないかわしにはわからぬよと、とにかく機械があるのだから、買ってきて自分が織るのに何が悪いんだという人もおるでしょうが、中には自分で機屋をやっておりながら、それを陰に回って、実際には自分でやっていながら表向きは他人にやらせるような、そういう、どちらかといえば悪質といえるような内容のものもなきにしもあらずで、そういう面について私は、一律にものごとを判断せよとはなかなか言い切れないものがあると思いますので、実情というものを十分把握して、構造改革の実があがるように最善の努力をひとつしていただきたいということを最後につけ加えてお願いして、私の質問を終わります。
#26
○藤井恒男君 ちょっと大矢先生の関係の質問に関連さしていただきまして、一言だけ大臣にお伺いをいたしますが、カルテルの問題について先ほど大矢先生からこまかい御質問があったのですが、私、一点関連して御質問申し上げますが、元来国際貿易というものが変化しておりますし、それに対応していわゆるカルテルというものがずいぶん様子を変えておると私ば思うんです。とりわけ、今回の公取が立ち入り調査した一つの問題であります生産者協定容疑ということについては、現に化合繊が大きな需給ギャップを来たしていることは、これは事実です。そういう中から自主操短を行なった、現に行なっておる、これは通産省も承知しておると思うんです。過日、私の質問でも、大体四分の一くらい平均して操短しているであろうという、そういうお話がありました。それから輸出市場の分割を内容とする国際協定容疑について、いわゆるオーダリーマーケティングですが、これも日米政府間協定が結ばれるおりに、田中通産大臣一昨日も私に御答弁なさったのですが、政府間協定よりも本来自主規制が望ましいと、したがって、業界がよく双方で話し合ってみずからの輸出体制をつくるということが望ましい、そうあるべきだということを明言しておられるわけです。今回、欧州でやはり輸入規制の動きが顕在化しておることも事実なんです。そういったときに、しかも、欧米では多国間協定を結びたいということもこれは事実なんだ。だからWPの問題も、きょうも大矢さんが言われるように非常に懸念しておる。だとすれば、それを回避して国益のために自主的に双方でオーダリーマーケティングの道をつけようとする行為、そのことはいままでの私は通産省の一つの行政指導だったと思う。それが業界において行なわれようとする、あるいはそういったことについて努力するその行為、それはかりに芽が出ていない段階で水をかけられるということになったら、これは座して政府間協定あるいは多国間協定を待てと、向こうの思うつぼになるじゃないか、こういうふうに受け取られてもやむを得ない。だから私は、いままでの通産省の業界に対する行政指導、それと公取が企画するもの、それは明らかに私はギャップがある。一体それじゃどうしたらいいんだと、オーダリーマーケティングを業界がみずから行なおうとする姿勢、それはどうしたらいいか、手だてはどうするんだ、こういうところまで発展していかなければならない。こういう点について、先ほどの御答弁ではちょっとまだもの足りぬのじゃないかという気がしますので、いま申し上げたような観点に立っての御答弁をいただきたいと思います。
#27
○国務大臣(田中角榮君) 独禁法に基づいて公取が立ち入り検査をした、これはいま法律行為をやっておるわけでありますから、通産省としては、これは推移を待たなければならないということでございます。しかし、これを契機にして、いま御指摘になったようないろいろな問題に対して検討を必要とする。検討だけではなく、ある意味においては整理を必要とするということでございまして、まあこの国会には、輸出市場の確立のために新しい大臣勧告や情報提供というような法律条文さえも用意しておるのでございますから、やはり今度の問題を契機にして、対外経済調整に関する何らかの法律的措置が必要かもしれませんというところまで申し上げておるわけです。これはまあいままでは安い品物、いい品物を安く入れるということが各国間でもって望まれておったのが、今度はいい品物でも安ければダンピング法によって取り締まるということになっておるわけです。適正価格に価格を上げなさいと、こういうこともあるわけです。また日本などにおいては、輸入価格を引き下げるために国会で議論しておる。総代理店制はいかぬのだ、何で中間搾取、中間マージンがこんなに高いのか、これは物価問題から見ればそういうことでございますが、アメリカなどにおいては、日本の品物が日本における国内価格よりも安く売られておるということでもって問題を起こしているわけです。ですから、当然業界別に業者同士でもって協定をして自主規制を行なう、これも国際的な慣行にもなっておるわけです。しかし、現に独禁法でもっていろいろな条文もございますから、いま立ち入り検査をやられておる。これは法律上の行為をやっているわけですから、これに対してどうこうというわけにまいりません。ただ、一番最終的な結論が出る前には、この種の問題に対して通産省の意見も述べるということがあって当然しかるべきだと思います。ですからこの問題を契機にして、独禁法によるカルテル、輸出入取引法によるもの、自主規制によるもの、特に通産省が行政指導でやるもの、いろいろあるわけでありますから、そういうものでこれは末端にいくと非常に紛淆する問題が多いと思うのです。ある時期においてはこれを政府は奨励する、ある時期においては同じ政府機関である公取は取り締まる、こういうことになるわけです。ですから、そういうことがやっぱりないように制度を整備しなければならないなら整備をする、で、また、けじめをつけるなら区画整理を行なうというような必要が十分存在いたします、こう述べておるわけであります。
#28
○委員長(大森久司君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#29
○委員長(大森久司君) 御異議ないと認め、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もなければ、討論はないものと認め、これより直ちに採決に入ります。
 特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#30
○委員長(大森久司君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 竹田現照君から発言を求められておりますので、これを許します。竹田君。
#31
○竹田現照君 ただいま可決されました特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党の四党共同提案による附帯決議案を提出いたしたいと思いますので、御賛同をお願いいたします。
 案文を朗読いたします。
  特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改
  正する法律案に対する附帯決議(案)
  わが国繊維産業が、最近における内外の厳し
 い経済環境に対処しつつ、安定した成長を遂げ
 て行くためには、今後二年間の構造改善事業に
 おいて、その体質を抜本的に改変する必要があ
 る。
  よって政府は、本法施行にあたり、今後ある
 べき繊維産業のビジョンを早急に確立し、従来
 より一層強力な諸施策を集中的に講ずるととも
 に、次の諸事項についても検討を加え、速やか
 に遺漏なき措置を講ずべきである。
 一、織布業の構造改善の実効を期すため、無籍
  織機の実態を明らかにするとともに、これが
  登録・廃棄・消滅等については適切な処理を
  行なうこと。
 一、やむなく転・廃業する中小業者に対しては、
  転換先産業の指導及び離職者対策について十
  分の措置を講ずること。
 一、振興基金は、繊維産業全体の寄与するよう
  効率的に運用すること。
 一、振興基金へ拠出する出えん金については、
  税法上これを必要経費、又は損金算入する措
  置を講ずること。
 一、一九七三年九月末の国際綿製品長期取極期
  限切れを機に、化合繊・毛を含む全繊維を対
  象とする多国間協定に切替えようとの動きが
  あるが、これを回避するよう努めること。
  右決議する。
#32
○委員長(大森久司君) ただいま竹田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。
 本附帯決議案に賛成の方は挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#33
○委員長(大森久司君) 多数と認めます。よって、竹田君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対して田中通商産業大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。田中通商産業大臣。
#34
○国務大臣(田中角榮君) ただいま御決議いただきました附帯決議に対しましては、政府といたしましてはその趣旨を尊重し、万遺憾なきを期する所存でございます。
#35
○委員長(大森久司君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○委員長(大森久司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#37
○委員長(大森久司君) 次に、工業再配置促進法案及び産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
 まず、工業再配置促進法案について、政府から趣旨説明を聴取いたします。田中通商産業大臣。
#38
○国務大臣(田中角榮君) 工業再配置促進法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。
 戦後のわが国の経済社会は、工業化と都市化を基調として成長、発展を続けてまいり、その結果国民の生活水準は著しく向上いたしました。しかしながら、成長、発展の過程において国土面積の二〇%にしかすぎないいわゆる太平洋ベルト地帯に工業生産の七〇%強、人口の五〇%が集中をし、一方では人口の著しい減少と財政窮迫に悩む市町村が全市町村の約三〇%にも及ぶに至り、これにより住宅難、交通渋滞、環境悪化等の過密問題と、過疎問題とが同時に発生しておるのが現状であります。
 こうしたいわば国土資源の片寄った利用による諸弊害を是正し、今後とも長期にわたってわが国経済社会の活力を持続し、国民生活の向上をはかっていくことが、われわれに課せられた重大な使命であると考えます。
 本法案は、かかる見地から工業生産の全国的な平準化の促進を柱として国土利用の再編成を進めるため、工業が過度に集積している地域から工業の集積の程度が低い地域への工場移転及びその地域における工場の新増設を環境の保全と雇用の安定に配意しつつ推進しようとするものであります。
 次に、本法案の概要について御説明いたします。
 第一は、工業再配置の基本となる移転促進地域と工場の誘導をはかるべき誘導地域を定めることとしていることであります。移転促進地域は、大都市とその周辺の地域のうち、工業の集積の程度が著しく高い地域について、また、誘導地域は、工業の集積の程度が低く、かつ、人口増加率の低い地域について、政令で定めることとしております。
 第二は、工業再配置計画を策定し、公表することとしていることであります。この計画は、目標年度における工業の業種別、地域別の配置目標、移転促進地域から誘導地域への工場の移転に関する事項、環境の保全に関する事項等について定めるもので、今後の工業再配置政策の基本となり、また民間企業の立地に関する指針としての役割りを果たすものであります。
 なお、計画の策定にあたっては、新全国総合開発計画その他各種の地域振興計画、農村地域工業導入基本方針等と調和のとれたものとなるよう十分調整をはかることとしております。
 第三は、移転促進地域から誘導地域への工場の移転及び誘導地域における工場の新増設を促進するための税制上、財政上、金融上の措置を講ずることとしていることであります。
 まず、移転促進地域から誘導地域へ移転する工場については、移転計画の認定制度を設け、この認定を受けた場合には、企業に対し償却の特例を認めるとともに、固定資産税の減免をした地方公共団体に対し減収分の補填措置を講ずることとしております。
 また、財政上の措置といたしましては、誘導地域において企業が立地した場合に、主として市町村に交付される工業再配置促進補助金、地方公共団体等の造成する工業団地に対する工業団地造成利子補給金を昭和四十七年度予算において計上しております。そのほか、誘導地域における産業関連施設及び生活環境施設の整備の促進等に関し所要の規定を設けております。
 なお、本法に関連いたしまして、工業再配置促進対策の重要な部分を実施させるため、現在の産炭地域振興事業団を改組拡充して工業再配置・産炭地域振興公団とすることとし、別途産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案を提案いたしておりますので、よろしく御審議賜わりたいと存じます。
 以上が本法案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同賜わりますようお願いをいたします。
#39
○委員長(大森久司君) 次に、本法案については衆議院において修正が加えられておりますので、この際、衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員武藤嘉文君から説明を聴取いたします。武藤衆議院議員。
#40
○衆議院議員(武藤嘉文君) 工業再配置促進法案の衆議院における修正点につきまして、御説明をさしていただきたいと思います。
 修正の第一点は、第一条の目的及び第三条工業再配置計画の規定の中で「環境の保全」というのを、「環境の整備その他環境の保全」に改めたことであります。これは、環境の保全の意味を政府原案よりもさらに明確にしたものであります。
 第二点は、第三条の工業再配置計画の規定につきまして、この計画が産炭地域振興基本計画との調和が保たれなければならないことを明文化いたしますともに、この計画の推進にあたって関係都道府県知事の意見が無視されることのないよう、その意見の申し出について新たな規定を設けたことであります。
 第三点は、第五条の認定の規定につきまして、認定要件として環境の整備その他環境の保全に配意されていることを明記いたしますとともに、認定に際してあらかじめ工場の移転先の地元地方公共団体の意向を確かめておくため、移転計画を提出する場合には、当該誘導地域の都道府県知事の意見書を添付しなければならないこととしたことであります。
 第四点は、誘導地域におきます工場用地の造成につきまして、環境の整備その他環境の保全に配慮して行なうようつとめなければならないこととする一方、移転促進地域における工場の移転あと地の利用につきましては、公共の用途その他住民の福祉の増進に資する用途に利用されるようつとめなければならないこととするため、第十一条及び第十二条の規定を新設したことであります。
 以上が衆議院における修正の趣旨であります。よろしく御審議をお願い申し上げます。
#41
○委員長(大森久司君) 次に、補足説明を聴取いたします。本田企業局長。
#42
○政府委員(本田早苗君) 工業再配置促進法案につきまして、その提案理由及び要旨を補足して御説明いたします。
 本法案は、特定の地域に工業が集中していることに伴う経済的社会的弊害を是正するとともに、国土の均衡ある発展をはかることがわが国経済社会にとって緊要であることにかんがみ、過度に工業が集中している地域から工業の集積の程度が低い地域への工場の移転及び工業の集積の程度が低い地域における工場の新増設を、環境の保全及び雇用の安定に配意しつつ推進し、全国的な工業の再配置をはかろうとするものであります。
 次に、本法案のおもな内容について御説明いたします。
 第一は、工業再配置の基本となり移転促進地域と誘導地域を定めることとしていることであります。移転推進地域は、大都市とその周辺の地域のうち、工業の集積の程度が著しく高く、当該地域内にある工場の移転をはかることが必要な地域として政令で定めるものでありますが、具体的には、当面首都圏の既成市街地及び近畿圏の既成都市区域をこの対象とすることが適当かと考えております。また、誘導地域は、工業の誘導をはかるべき地域として、工業の集積の程度及び人口の増加の割合を勘案して政令で定めることとされておりますが、北海道、東北、北陸、山陰、四国、九州、沖縄の地域の道県及び若干のその他の県、並びにこれらの県に連接する市町村で工業集積程度が類似のものを指定することを考えております。なお、誘導地域に指定された道県内にあっても、人口の規模が相当大きく、工業集積度が高い都市の区域は、誘導地域から除外することとしております。
 第二は、工業再配置計画を策定し、公表することとしていることであります。この計画は、新全国総合開発計画において示された方向に基づき、これを工業の面で推進するという観点に立つものであり、高速道路網、新幹線網等のネットワークの形成に呼応し、工場の分散及び遠隔地立地を推進することをそのねらいとして定めるものであります。工業再配置計画は、法律施行後、関係省庁等と協議の上定めることとなりますが、工業再配置計画におきましては、目標年度における工業の業種別及び地域別の配置の目標、移転促進地域から誘導地域への工場の移転に関する事項、誘導地域における工場の新増設に関する事項等を定めるほか、工業再配置を環境の保全と雇用の安定に配意しつつ推進するという観点から、計画の重要事項として環境の保全と労働力需給に関する事項を記載するとともに、計画の諸目標は、これらを前提としたものとして定めることとしております。
 第三は、移転促進地域から誘導地域への工場の移転及び誘導地域における工場の新増設を促進するための税制上、財政上、金融上の措置を講ずることとしていることであります。
 まず、移転促進地域から誘導地域へ移転する工場については、通商産業大臣及び事業所管大臣による移転計画の認定を受けることができることとし、この認定を受けた場合には、その移転前工場の事業用減価償却資産を認定計画において廃棄または譲渡するものとしている場合においては、その資産につき償却を加速して行なったときには、法人税または所得税の課税について特別の措置を講ずることができるよう租税特別措置法で措置されることとなっております。また、認定を受けた移転計画に従って工場を移転した事業者について、地方公共団体が固定資産税を減免した場合には、国はその減収額について三年間地方交付税によって補てんすることとしております。
 財政上の措置といたしましては、誘導地域における工場の立地を促進するための工業再配置促進補助金、地方公共団体等の造成する工業団地に対する工業団地造成利子補給金を昭和四十七年度予算に計上しております。工業再配置促進補助金は、移転促進地域から誘導地域に工場を移転した場合には当該企業及び移転先地元市町村に、誘導地域に工場を新増設した一定の場合には地元市町村に交付されるもので、いずれの場合にも使途は環境保全施設、福祉施設の建設費に限定することとしております。
 そのほか、本法案に関連して提案しております産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案により、産炭地域振興事業団を改組拡充して工業再配置・産炭地域振興公団とすることとしておりますが、同公団に、移転資金の融資及び工場あと地の買い上げ、中核となる工場用地の造成等の事業を行なわせることとしております。
 以上のような措置を実施するため、昭和四十七年度においては、年度下期から措置を実施するものとして、工業再配置促進補助金、工業用地造成利子補助金等として一般会計予算五億円を、また、工業再配置・産炭地域振興公団の業務のため産業投資特別会計からの出資金四十五億円、資金運用部資金からの借り入れ金五十億円及び政府保証による借り入れ金五十億円を計上しております。
 以上、簡単ではありますが、法案の提案理由及びその要旨につきまして、補足御説明申し上げました。よろしく御審議を賜わりたく、お願い申し上げます。
#43
○委員長(大森久司君) 次に、産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案について、政府から趣旨説明を聴取いたします。田中通商産業大臣。
#44
○国務大臣(田中角榮君) 産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。
 戦後のわが国の経済社会は、工業化と都市化を基調として成長、発展を続けてまいりましたが、近時、過密・過疎の弊害が顕著になってきており、今後とも長期にわたってわが国経済社会の活力を持続し、国民生活の向上をはかっていくためには、太平洋ベルト地帯、特にその大都市圏に工業と人口が過度に集中している現状を改め、各地域の開発可能性に対応した国土利用の再編成をはかることが急務となっております。
 かかる観点から、地域開発の主導力となる工業に着目し、昭和四十七年度から新たに各種の工業再配置対策を推進するため、別途本法案とともに工業再配置促進法案を提案している次第であります。
 工業再配置促進対策におきましては、工場の移転関連融資工場用地の造成等の諸施策が重要な役割りをになうこととなりますが、これを円滑かつ効率的に実施するため、現在内容的に類似した業務を行なっている産炭地域振興事業団を改組拡充して工業再配置・産炭地域振興公団にいたしたいと考えております。
 御高承のとおり、産炭地域振興事業団は、昭和三十七年に設立されて以来、石炭鉱業の不況により特に疲弊の著しい産炭地域における鉱工業等の計画的な振興をはかるために必要な業務を積極的に行ない、産炭地域の振興に多大の貢献をしてまいりました。今回の改組、拡充により公団は、従来からの産炭地域振興事業を積極的に推進するほか、新たに工業再配置事業を行なうこととしたいと考えている次第であります。
 次に、本法案の主要な内容について御説明いたします。
 第一は、産炭地域振興事業団を工業再配置・産炭地域振興公団に改組拡充するため、名称の変更、役員の増員等所要の改正を行なうこととしているところであります。
 第二は、この公団に、工業再配置業務を新たに行なわせることとしていることであります。工業再配置業務としましては、まず、過度に工業が集積している地域内にある工場を工業の集積の程度が低い地域に移転しようとする製造事業者に対し、移転資金融資を行なうとともに、その工場あと地を買い上げ得ることとしております。次に、工業の集積の程度が低い地域において、地方公共団体の要請に応じ、地域発展の中核となるような工業団地を造成することとしております。
 第三は、工業再配置業務と産炭地域振興業務をそれぞれ積極的に進めるため、両者を明確に区分経理させることとし、所要の規定を設けることとしております。
 以上が産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#45
○委員長(大森久司君) 次に、補足説明を聴取いたします。本田企業局長。
#46
○政府委員(本田早苗君) 産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を補足して御説明いたします。
 御高承のとおり、産炭地域振興事業団は、石炭鉱業の不況がひとり炭鉱の従業員及びその家族にとどまらず、炭鉱を中心として形成されてきた地域の経済、社会に深刻な影響を及ぼすことにかんがみ、石炭鉱業の不況により特に疲弊の著しい産炭地域において、石炭鉱業にかわる鉱工業等の急速かつ計画的な振興をはかるために必要な業務を行なうことを目的として昭和三十七年に設立され、自来、産炭地域の振興に多大の貢献をしてまいりました。
 このたびの工業再配置促進対策を推進するにあたって、その重要な施策である工場の移転関連融資、工場用地の造成等に関する業務を円滑かつ効率的に行なう必要がありますが、それには、従来類似の業務を行なってきた産炭地域振興事業団を改組拡充して工業再配置・産炭地域振興公団とし、同公団にこれらの業務を行なわしめることが適当であると考え、本法案を提案することとした次第であります。これにより、公団は新たに工業再配置促進事業を行なうこととなりますが、産炭地域振興事業については従来同様、積極的に推進することとしております。
 次に、本法案のおもな内容について御説明いたします。
 第一は、名称の変更であります。公団は、工業再配置業務と従来からの産炭地域振興業務をそれぞれ重要な業務として行なうものであることから名称も二つの業務を並列して、工業再配置・産炭地域振興とし、事業規模が飛躍的に拡大するため、これを公団とすることとしております。
 第二は、公団の業務として工業再配置業務を追加することであります。工業再配置業務のうち、移転資金融資は、過度に工業が集積している地域内にある工場を工業の集積の程度が低い地域に移転しようとする製造事業者に対し、当該移転にかかる工場のあと地の評価額の八〇%以内で移転資金を融資するものであり、金利は六・五%、貸し付け期間は原則として三年とすることとしております。また、当該工場あと地が売れない場合は、公団はこれを買い取ることができることとしております。さらに、移転に伴う運搬費、撤去費等の運転資金についても、金利七・〇%、貸し付け期間原則三年の条件で融資することとしております。
 工業再配置業務の第二は、工業の集積の程度が低い地域において、地方公共団体の要請に応じて、当該地域への工業導入による地域発展の中核となるような工業用地を造成し、これを管理及び譲渡することであります。ここで、工業用地の造成を地方公共団体の要請があった場合に限るのは、地域の振興を任務としている地方公共団体の計画的な地域振興策を尊重するとともにその積極的な協力によって効率的な造成を行なう必要があるからであります。また、公団が造成する工業用地は、単に工場の敷地として用いられるものにとどまらず、工業用地を職住近接の魅力ある地域社会として建設するとの観点から、工業用地とあわせて住宅、道路等の施設の敷地も造成できることとしております。
 本法案の内容の第三は、組織の充実整備であります。産炭地域振興事業団を改組、拡充するに伴い、理事長を廃止し、総裁一人及び副総裁二人を新設するとともに、理事三人以内及び監事一人以内の増員を行なうこととしております。さらに、公団の経理について、工業再配置業務と産炭地域振興業務をそれぞれ積極的に行なうことができるよう、また、産炭地域振興業務は石炭及び石油対策特別会計からの出資によっており、他方工業再配置業務は産業投資特別会計からの出資によっていることからも、両者を明確に区分経理することとしております。
 以上、簡単ではありますが、法案の提案理由及びその要旨につきまして、補足御説明申し上げました。よろしく御審議を賜わりたく、お願い申し上げます。
#47
○委員長(大森久司君) 以上で両案の提案理由の説明の聴取は終わりました。
    ―――――――――――――
#48
○委員長(大森久司君) 参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
 工業再配置促進法案及び産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#49
○委員長(大森久司君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#50
○委員長(大森久司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時三十七分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時九分開会
#51
○委員長(大森久司君) ただいまから商工委員会を再開いたします。
 工業再配置促進法案及び産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、これより両案の質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#52
○阿具根登君 質問に入ります前に、せっかく衆議院から武藤さんがお見えになって修正の御説明をいただきました。お忙しいと思いますので、冒頭に質問申し上げたいと思います。
 いろいろ御審議の上に修正をされて、御説明いただいたのですが、第二点について、産炭地域振興の基本計画との調和ということで産炭地域を入れたのはまことにけっこうだと思うんです。しかしこの法律案見てみますと、近畿地区、関東地区、その他みんな入っておりますが、九州や四国というのは一言半句も入っておらないわけなんですね。おそらくこれは「その他法律の規定による地域の振興」云々と、これに入っているのだというお考えだと思うんです。しかし、せっかく産炭地域をここに挿入する修正をされるというんならば、どうして四国や九州というところがこれに入らなかったのか、そういう点お伺いしておきたいと思うんです。
#53
○衆議院議員(武藤嘉文君) お答えさしていただきます。
 まあこの工業再配置計画というものは、先ほどの大臣からの提案理由の説明にもございましたように、太平洋ベルト地帯に七三%も集中しておるものを分散をしなければどうにもならないと、こういう発想から出ておるわけでございまして、いま御指摘の問題につきましては、これは当然四国も九州も入るわけであるわけだと私どもは解釈をいたしております。ただ、この工業再配置計画の第三条の三項に産炭地域振興の計画だけを私どものを分散をしなければどうにもならないと、こういう発想から出ておるわけでございまして、いま御指摘の問題につきましては、これは当然四国も九州も入るわけであるわけだと私どもは解釈をいたしております。ただ、この工業再配置計画の第三条の三項に産炭地域振興の計画だけを私どもが入れて、そういうものをどうして明示してくれなかったかと、こういう御指摘でございますが、これは役所のほうへ承りますと、北海道総合開発計画というのが実は地域の開発計画としては一つれわれは承りましたものでございますから、四国なり九州なりを明文化しなかったということと、産炭地域振興基本計画につきましては御承知のような事情で、この工業再配置の公団というものが、工業再配置だけの公団ができなくて、もう一つの法律改正をお願いしております産炭地域振興事業団法を改正いたしまして、産炭地域振興事業団を改組して、工業再配置・産炭地域振興公団と、こういうことになったいきさつもありますものでございますから、特に産炭地域から、そういう事業団法の改正もあり、たいへん御要望が強いということをわれわれ承りましたものですから、この産炭地域振興基本計画だけを特に取り上げてここに追加をさしていただいたということでございまして、御趣旨はもう阿具根先生のおっしゃるとおり、われわれは四国、九州も当然入るものと、こう解釈し、そしてそれは代表的に北海道総合開発計画がそれを代表しておると、こういうふうに解釈をいたしておるわけでございます。
#54
○阿具根登君 この3を読んでみますと、確かに工業再配置計画は全国総合開発計画と首都圏、近畿、中部と、これが一番密集しておるところだと、だからこれを誘致地区に持っていくのだということになりますと、北海道と沖縄が一番適当なところだというようにとれるわけなんです。そうでなかったら、これは四国開発もある、九州開発もある。それがなぜ入らなかったのか。他の説明では大臣は、志布志湾なんかというのは昔は連合艦隊が入ったところなんだと、あんなところに工場入ってこないのはおかしいんだ、ああいうところにどんどん伸ばすんだと、こういうことを言っておられるんです。そうすると、この補足説明の中には四国も九州もちゃんと入っておるわけなんです。しかし、それは一つの精神であっても、法の表にはそれが出てきておらないわけなんです。これは説明を聞けば当然わかるんです。全部並べにゃいかぬかということもあるでしょうし、一応これを並べておいて、その他はこれに準ずるんだと、その他にもあるじゃないかということもあると思うんですけどね。やはり法律のたてまえからいくならば、沖縄と北海道とあるならば、四国や九州というのはなぜあって悪いのかということになる。あんまり字句が多過ぎるからだと、そういうものじゃなかろうと思うんです。しかし、これはこのあと政府に御質問していきますから、まあせっかくお見えになりましたから、御苦心のほどはわかりました。もう私の質問はこれで終わりますから、どうぞ御自由にお引き取りください。
 まず、産炭地域振興事業団が公団になったと、こういうことからひとつ質問していきたいと思うんですが、田中通産大臣になられてから、先般は石炭特別会計を石油石炭特別会計として、将来は、これは当然油に重点がかかっていくんだと、こういうような構想になってきて、期限も四十九年じゃなくてさらに延ばすということをお伺いしておりますから、その点は別といたしましても、先般は石炭特別会計を油と一緒にまぜてしまった。今度は産炭地の振興事業団を工業の再配置と一緒にされた。そうすると、これは長い将来ということよりも、重点がどっちにあるだろうか、こういうことを考えてまいりますと、産炭地というのは大体限られておる。いままでに、三十七年からですか、やってきて相当実績もあがっておることです。そうすると何かそれは、事情わからぬじゃないんです、わからぬじゃないけれども、それは行管の指示によって、もう外郭団体つくっちゃならぬということのために、ふやすんじゃないんだということでわざわざ事業団にくっつけられた。これをまた油と石炭じゃないけれども、非常に似ておるようだけれども、私は、この法の精神からいって少し違うんじゃないか。どうしてこの違うのを一緒にせにやならぬのだと、こういうような考えを持つわけなんですが、この点について、ひとつ大臣のお考えを承りたいと思います。
#55
○国務大臣(田中角榮君) 産炭地振興が必要であることは、もう申すまでもないことでございます。で、現に相当な実績をあげてまいっておるわけでございますが、いま工業の再配置の計画を新たに進めようという考え方に立って考えますときには、工業再配置というのは全国的なものでございまして、産炭地域という局限されたものではありません。しかし逆に言うと、産炭地は工業の再配置を引き受ける側の一つであることは間違いないわけであります。ですから産炭地域は、産炭地域振興法の上に、全国的に見た工場を引き受ける誘導地域としての二つかぶっておると、こう見れば間違いないわけでございます。まあ産炭地は確かにいろいろな計画を行ない、土地を造成し、成績をあげてまいりましたが、これに工業再配置法が二重になり、しかも、一つの公団として合理的な調整を行ないつつ政策が行なえるとしたならば、いままで単独に産炭地振興だけをやっておったときよりも一体メリットがあるのかないのかと、こういうことを考えると、二重にしたほうがメリットがあるということになったわけです。で、公団も一つにしたほうがいいと。それは産炭地の一つの例をとりますと、いままで造成はいたしました、それで、産炭地域振興事業団は工場の誘致ということに対していろいろ運動しましたが、なかなか産炭地というところは、これは石炭山があったということで発達をした地域でございますので、必ずしも産業立地としてすべてが優位であるというわけにはまいらない。水の問題とか、電力の問題とかいろいろの問題がございます。交通の問題もしかりであります。そういうことで産炭地振興だけでは、工場の用地もできたしいろいろなことができましたが、どうも来るものというと、縫製工場とか、いままでの下請の下請のような工場で、国際経済の波動には耐えがたいようなものが多かった。そこで、産炭地というものを考えるときに、全国的にその地方全部の中で、この産炭地というものとのつながりをどうするかということが考えられるならば、産炭地への事業誘致ももっと合理的に促進をされるだろう、こういう考え方が一つあります。
 もう一つは、今度産炭地域振興事業団が工業再配置・産炭地域振興公団というように一緒になって、ことしは十月一日から百五十億、これは平年度三百億というのがスタートでございます。しかし、実際はマルが一つ足りないと思っておるんです。私が要求したときには三千億でございましたから、そういう意味では一〇%でスタートする。この制度が私は進んでいけば、これはほんとうに三千億からマルが一つも二つもつくような時代がくると思うのであります。そしてきのうの朝刊に出ておりますが、東京の環七から中に車を入れないということで、入れることがいいのか、入れないことがいいのかという議論をしておりますが、そこに入れないということになれば、代替の地下鉄ができておらない限り入れざるを得ません。とめれば都市の機能は停止をしてしまうわけでありますから、これは生産コストなどという問題じゃないわけであります。だから、光化学スモッグの問題一つ取り上げてみても、これは分散せざるを得ない。分散せざるを得ないというよりも、工場も車も停止を要求しておるということが、もう現実の問題として起こっているんですから、私は、これはもうマルが二つも三つもつくと思います。そうなってくる方向にありながら、ことしの仕事とすれば、新しい工事の再配置がすぐ行なわれるわけではないので、やはりスタートは産炭地からスタートしていくということになるであろう、こういう考え方が第二に考えられます。
 第三はどうかというと、美唄のようなところ、いまの産炭地だけではなかなか工場がいかない。国家が非常により強い誘導政策をやってもらうならば、これは考えられます、こういう問題が重なっておるわけであります。そういう意味で、産炭地域振興事業団というものを工業再配置・産炭地域振興公団というものにしてやっていくほうが非常に合理的であり、この事業を推進するためにプラスになってもマイナスにはならない。そういうことで、これを一つにしよう、こういうことになったわけでございます。ですから、私は今度の工業再配置・産炭地域振興公団というもので行なわれることによって、産炭地域振興事業団で行なわれることよりも強力になっていく、合理的になる、こういう考え方を前提にいたしておるわけでございます。
#56
○阿具根登君 大臣の考えはよくわかりますし、産炭地のいままでの企業誘致が企業ということよりも、産炭地のまあ若い娘さんとか、あるいは女の方を対象にしたような縫製工場が大部分であった、全くそのとおりです。もともと炭鉱ができて町なり市なりが発展してきたところだから、確かに交通の便利もその他も悪いと思うんです。しかし、それでは産炭地とこの工場再配置とくるでしょう。おっしゃったような利益もあるかもしれないけれど、実際私は、この提案の理由を読んで見ましても、一方は産炭地の会計も何も別だ。一方はそういう石炭と別会計でまかなわれている。一方は全く別で、経理も二つに分けてしまっている。そうして今度は副総裁を頭に一つずつつける。その上に総裁が一つ頭にできてきた。そうなると、これは連合体ですな、一つのものじゃなくて。これは工場配置の法案、産炭地振興と二つのものを連合体にしてきたのですね。産炭地は産炭地の人がやはりなさいよ、副総裁どなたになるか知りませんけれども、副総裁が産炭地のほうに一名出てくる。そうして工業再配置のほうに一人できる。その上に今度どなたかが連合会長になる。何も産炭地域振興事業団の事業が変わったわけじゃないし、金がうんとふえたわけじゃないし、おそらくいまの理事さんたちはそのままやっていかれるだろうと思いますね。そうなってくると、無理にくっつけただけであって、性格は、二つは全然違いますよ。金の出どころも違いますよ。会計も違いますよ。長も違う。その上今度は副総裁というものも二人も置くのですから、一つの入れものじゃなくて、二つの入れものを並立さして並べたものだ。そうなってくると、大臣のおっしゃったようなこともありますけれども、しかし、やはり全般的に見てくる場合に、これは石炭のあともいいけれども、それよりも大工場はこちらに持ってこなければならぬ。そうして、これの大体の考え方がこれは全部民間ですな。これはようここまで政府が許可されたと思われるくらい許可している。二、三日前もテレビ見ておると、田子の浦のヘドロが十万トンしぼって、捨てどころがなくててんやわんやだ。あと始末は全部政府なり、あるいは自治体がふかなければいかぬが、それがぬぐえないから、一番犠牲をこうむっておるのは、これは住民である。そういうことも言われるから、まあ産炭地に事業を持ってくるようにするのだということはここじゃ言われるけれども、実際問題としてそれでは、産炭地を最優先に持ってくるのだ、こういうことがはっきり言えるか、これもなかなかむずかしいのじゃないかと思うのです。そうしますと、実際は産炭地に持ってきたいのだけれども、工場がなかなか来ないのだ。税制も優遇してやった、財政措置もしてやった、だけれども来ないのだ、こういうことで私は、自然逆にいってしまうのじゃないか。それで、この産炭地振興というのは、もう目的にはっきり書いてありますように、炭鉱が閉山になった場合の自治体の今日の困窮がある。今後何とか復活しなければならぬということにしてあるのと、工場再配置というのは矛盾してくるようなことになってしまいます。しかもいま言われるように、一つと一つの連合体になっておるのだから、そういう点はどういうふうにお考えになっておりますか。
#57
○国務大臣(田中角榮君) 産炭地というところは、ほんとうに先ほどから述べておりますように、必ずしも工業立地として最優秀の土地であるかないかということは、議論があります。議論がありますが、産炭地というものはそれなりの町を形成したり、村を形成しております。そうしてまた炭鉱があったのでありますから、終閉山をやったあとでも引き込み線が残っておるわけでありまして、用地があったり、電力の引き込み線があったり、また地形上の制約はあるにしても、それなりの労働者住宅があったり、労働力は他に転出をしなければならないほど質のいい労働力もあるはずでありますから、そういう意味で、政策よろしきを得れば産炭地に企業誘致ができる、またそうしなければならないという政策――そうしなければならないということは、政策を実行しておるのが産炭地域振興事業団でございます。だから、その産炭地域振興事業団とこの工業再配置促進法案というものが、再配置計画というものに相反するものであれば問題がありますが、これは全く同じ方向なものでございます。しかも、工業再配置ということを進めていく過程において、産炭地域振興事業団だけで仕事をしておるよりもメリットがあるはずであります。それは、工場を追い出そうとしております。産炭地振興では産炭地振興だけやっておりますが、このように工場を追い出すというほうの仕事はやっておらぬわけです。今度は過密地帯から工場を追い出しましょうと。そして、これから増強される、生産が拡大される部面の生産施設は、都市に過度に集中をしない。追い出すような地域には、いまですら困っておる地域に新しく工場を増設されないようにしたいということでありますから、誘導地域に過密地帯から工場が出ていくだけではなく、新しく、日本の経済は一〇%ずつ年率成長するとすればどうなるかというと、十五年後には四倍になるわけでありますから、少なくともいまから十五年間に三倍、いまある施設のふえる三倍分は過密地帯には持っていかないようにしようと、こういうことでありますから、そういう意味では、産炭地振興というだけではなく、この法律と一緒にして、一緒に計画をすることによっていままでの産炭地計画よりはよくなると、こういうことが言えるわけです。これは大阪も非常に過密でございますから、大阪から――初めは奈良県などはベッドタウンだったのです。ところが、これからは下請工場もみんな奈良県や和歌山県に出ていってしまって、しまいには大阪と同じになってしまうおそれがあるから、これはやっぱりちゃんと計画してやらなければならぬ、こういうことになっています。だから、追い出しと、それから新しく発生する工業施設というものを地方に定着をさせようという政策をあわせてやっておりますので、言うならば、産炭地域振興事業団の政策をあと押しをして、もっと助成をするような状態になるわけであります。そういうことでありますから、目的は同じだということでありますので、これを一つにすることが望ましいと、こういうことにいたしたわけであります。
 これは、衆議院でもそういう御質問がございましたが、副総裁を一人にでもすると、全国的視野にだけ立ってやっておったのじゃ困るが、まあこれは異例ともいうべき副総裁二人にした。そして産炭地域振興事業団と工業再配置のつながりを密にしながら総合調整をやるために副総裁を二人にしたということは、この種の法律ではたいへんよかったと、こういうことをほめられましたがね。私自身も、これは私が相当、行管では二人などといわず一人でどうですかと、同じ仕事なんだからと言いましたが、とにかく、産炭地というものをどうしても重点的にやらなければならないし、そういう意味で副総裁は二人にしたいと、こういうことで最終的には行管も財政当局もこれを承認したわけでございますが、これは私は、とにかくこの法律が成立をすれば、誘導地域として無条件に指定するところというのは何かといったら、産炭地はほとんど無条件に指定されるわけです。そういうことを考えてみても、これは非常にいい法律だし、私だけが自画自賛しておるのではなく、長いこと産炭地の振興問題で苦労された皆さんの立場から考えると、これはひとつ新しい道を開くものだと。これで少しは前進すると、こう私は評価いただけるものだと。私自身はそういう考え方で産炭地域振興事業団を改組拡大することが、一番産炭地のためにもこの法律のためにもいいことだと、こう考えたわけであります。
#58
○阿具根登君 まあ田中通産大臣だから、おそらく副総裁も二人とれたと思うのです。また、あなたのその考えだから、みんなそうだと思ってついてくると思うのです。ところがあなたが通産大臣やめたらどうなるかというのです。いままでこの種の法案が全部――これはあとで質問しますが、四つも五つも出ておって、目的は全部同じです。同じ目的を持って大臣がかわるたびに一つの法律案が出てきて、そして都市の均衡だと、やれ均衡が片寄らないように、あるいは公害がないように、同じことを言われて、法律案が一つずつできてくるわけですね。それで私が言っているのは、産炭地域振興事業団と一緒になるよりも、同じ目的で表現も同じようなものがあるならば、それのほうがよくなかったか、法律の問題としてですよ。しかも、大臣が言うのには、石炭が一人ぼっちで、それじゃ産炭地がうまくいかないからこのほうがいいんだと、こうおっしゃられれば、なるほどそれはけっこうだと、こういうふうに考えるわけです。それまで法律案の中にも、衆議院で先ほどの三条の問題修正にはなりましたが、産炭地というのは何にも入っておらないわけです。これは衆議院でも質問があったようですけれども、産炭地の審議会の意見を聞かなければならぬというのは何にもないわけです。だから言っておられる精神、あるいは補足説明の中に言っておられるのを聞くとよくわかるけれども、この法律案だけ見れば、あくまでもこれは一つ一つ別個のものであって、そして将来は、まあ将来といえばそれは長い将来まで産炭地が、こんな、いつまでも残っておったんじゃ困るのですが、そういう心配が多分にあるわけなんです。
 そこで、ひとつこれは石炭部長でもいいですが、お尋ねしたいですが、先ほどちょっと大臣からも言われましたが、美唄のあと地は一体どうなりましたか。さらにまた、ことしが二千七百五十万トン、五十年が二千万トンと、そうするとあと二年間のうちに七百五十万トンの山がつぶれる。それに対する対策はどういうふうに産炭地対策としては考えておられるか。いま閉山になったところの産炭地の造成なり、買い上げなり、その他がどのくらい完了しておるか。そして、企業が縫製工場といわれております、私も知っておりますが、そのほかにどういう企業が出てきたか。これは労働省に質問いたしますがね、この産炭地のあとの就職の状態は一体どうなのか。それから、生活保護に大部分が頼っておる地区があるが、一体、そういうところには企業が来るのか来ないのか。また、来た企業は一体どういう企業なのか、その点ひとつ石炭部長と労働者のほうから御説明願います。
#59
○政府委員(青木慎三君) まず一番先に、美唄のあと地のことについて申し上げますが、美唄の閉山がきまりまして、その後企業家の視察団を現地に派遣いたしまして、大体七社くらいの企業の進出希望がございまして、二十四万平米の団地に立地するという見通しになっております。今後も引き続きこの方向を続けてまいりますし、三菱グループにも進出の要請をしてまいりたいというふうに考えております。全体の数字で申しますと、産炭地への企業進出状況でございますが、三十七年から四十一年までに進出いたしました企業が三百三十一企業でございます。その後四十二年に百四企業、四十三年が八十三企業、四十四年が百四企業、四十五年が百十四企業、四十六年百六企業というふうな推移をいたしております。
 団地の造成のことについて申しますと、工業団地を産炭地域振興事業団が造成いたしました団地数は、計画といたしましては、昭和四十七年度末までに百五を完成する予定でございます。その総面積は二千九百三十九万四千平方メートル、四十六年十二月末の数字で申しますと、完成しておりますのが八十団地でございまして、面積が千二百八十五万平方メートルでございます。そのうち譲渡が終わっておりますのが八百七十七万平方メートルでございまして、譲渡率は六八・二%という数字になっております。
 団地造成並びに企業進出関係の数字は以上のとおりでございます。
#60
○説明員(望月三郎君) 昭和三十七年度以降四十六年度末までの実績を数字でお答えいたしますと、十九万三千六百人の求職者が産炭地で発生をしておりますが、その九七%に当たる約十八万八千人が再就職等の対策を受けて就業しております。これらの再就職者のうち、産炭地域振興事業団が行ないまする融資事業による誘致企業へは約八千人くらいが再就職をしてございます。なお、このうち資本金が五千万円以上の企業への就職者はおおよそ三千人くらいではなかろうかというように考えられます。
#61
○阿具根登君 労働省、ちょっと聞き漏らしましたが一十九万三千六百人の閉山による失業者のうちに、就職したのは十八万八千人、そうですな。
#62
○説明員(望月三郎君) はい。
#63
○阿具根登君 そうして、産炭地に持ってきた企業に就職したのは八千人ですか。
#64
○説明員(望月三郎君) そういうことでございます。
#65
○阿具根登君 そうでしょう。大臣、これでもわかるでしょう。いま石炭部長のほうからは千二百八十五万平方メートル造成したんだと、しかもそのうちの六八・二%はもう売れちゃったと。私はりっぱだと思うんです。よく売れたと思うんです。しかし、そこに来た企業は四十六年度で百六ですか、四十五年百十四、四十四年で百四、これだけの企業が来ておるのに、いままで三十六年から今日まで十一年間にたった八千人。いかに微々たる企業が来ているか。企業とも言えないようなものばかり来ておる。最近毎年毎年百何ぼ来ておる。そうすると十八万八千人労働省が就職を世話してくれた。しかし、そのうちの八千人だけだから、あとの十八万人というのはよそへ出ていくことになる。ここは過疎になるんですね。だから、いまでさえも、大臣のことばで言えば、いまそうだから今度はよくするんだと、こうおっしゃるけれども、企業そのものは大きな企業は来ないんです。これは相当なことをしてもらわねば来ないです。帳面づらでは毎年百幾つもの企業が来るから、一人も失業者は出ないはずです。ところが、それに雇われる人というのはまことに微々たるものです。だから、今度のやつも大体大臣の構想では、これは五千万以上くらいの大きな工場をあっちこっち持っていくんだと、そうすれば小さい下請はついてくるのだと、こういう考えだとぼくは思うのです。そうでなかったら焼き直しであって、産炭地は名前だけ、企業はまだ百も、二百も来るでしょう。しかし、来るやつは女の人二十人か三十人使うような、くつ下つくったり、メリヤスつくったりするような企業しか来ないのだ、そしてあまりにも賃金が安いから私は陳情を受けて、ある会社に交渉してみた。これじゃあまり安いじゃないですか、何とかならないでしょうかと言ったところが、大阪と名古屋と同じような賃金払うならこんなところに来ませんよと、こう言うのです。ここは労働力が余っているから、労働者の賃金が安いから来た、そうじやなかったら何のために、われわれは何も慈善事業やっているわけではないんですよ、われわれもこれで食っているんだから、賃金が安いからこっちへ来たんであって、同じ賃金なら何でこんないなかに来ますか、名古屋か大阪でやりますよ、こう開き直られた。こういう考えが企業の持っている考え方なんです。確かに企業に徹すれば慈善事業じゃないんだから、もうかるために企業をやるのだから、そうすると来るのはそういうような企業であって、そして一番低賃金で一部の人が、女の人だけが仕事をする、こういう哀れな姿になると思うのです。これは大臣も私が言うよりよく御存じですよ。で、少しでも前向きに行こうじゃないかと言われる熱意は非常にありがたいと思うのです。しかし、私はいままで見てきて、大臣の熱意だけじゃとてもこれは産炭地はまた置いてきぼりだ、こう思うのですが、どうでしょうか。
#66
○国務大臣(田中角榮君) いまの御発言、大体私も同じ考えを持っておりますから、こういう施策を考えたんです。これはしかも、私が考えたものはこんなものではないです。ないですが、まず三千億ということを考えた、特別会計をつくるということを考えた。それで十年たったら十倍になって三兆円になる、これは最低考えても、そういう思想を前提にしておって、これを立案しているわけですし、これはそうでないと、いまでさえももうこの非常に小さな地域――東京、大阪、名古屋で五十キロの円を書きますと、三つ合わせた地域は全国土の一%、全国土の一%に三千二百万人の人が住んでおるのです。太平洋ベルト地帯に七三%の工業生産をあげておるといっておりますけれども、これよりも六十年展望のあの新全総計画をやったときのコンピューターがはじいた数字を見ますと、六十年には全人口の八五%近くが都市に集まるでしょう。しかも東海道、山陽中心でございます。そうなっちゃ困るのです。それは集中排除法も必要である、言うなれば工業の集中排除法である、これはそんな状態に置いて水が足りるわけありません。それから地価が下がることはありません。それよりも一番困るのは、生産コストが非常に上がるというのは、交通が確保されない、労働者に住宅を提供できない、月給は相当上がっておるのです。月給は上がっておるのですが、都市の中では住宅が持てない、こういうことでございます。そうすると当然生産コストは上がってまいります。そこへ一番最後に王手飛車のような議論が出てまいりましたのが、車の乗り入れができない、同時に路上もできない、地下鉄である。地下鉄は建設費の二分の一を税金で補助しても赤字である。キロ当たり七十五億から百億かかります。街路を広げようとすれば九三%から九四%は用地買収費である。そこへ光化学スモッグと、こういうことになっておりますから、これではほっといても地方に分散しそうなものですが、誘導政策上禁止政策をあわせて行なわないと、どうしてもやっぱりだめなのです。なぜかというと、一つの工場を東京へ持ってくるために、その工場を経堂していくために、国民全体から見るとえらい公共負担をやるわけです。東京と大阪でいま車が一台増車をすると、道路の維持補修費は千五百万円かかるんですから、驚くべきことであります。全国平均が五十万円で済む車一台に対する道路の維持補修費千五百万円を国民が負担しておる。そういう状態であっても、短日月の会社のバランスから見ると、それでもまだわしの計算は北海道の果ての稚内の工場よりも、どうもまだ人も集まる、まだペイをする。しかし、国全体の計算をすると、高度成長を続けていっても、いつでも皆さんに御質問をいただいておりますように、全然実収は上がらないんじゃないかということになりまして、名目成長に堕するおそれがある。それですから、これは分散をしなければならないということにたるわけです。それでも分散をするためには、誘導地域に対しては助成を行なわないといけない。助成は税制と金融と財政でやればいいわけです。今度は東京や大阪に集まってはならないように、さなきだに混乱しているところに集まられちゃ困りますから、歯どめの政策、それは住民税を引き上げるとか、水道料金が上がるとか、道路は無料ではなく有料になりますよとか、それから公害施設は非常に厳重に公害設備の投資を要求する、あたりまえのことだと思うんです。それで、いまちょうど公害問題で新しい公害防除の施設の投資をしなければなりません。それで、ちょうど戦後四分の一世紀たっているんですから、生産施設もみんな更改の時期にきておる。いま迷っておるんです。いまのところに投資をするか、そうでなく、加速償却圧縮記張制度があり、政府も金を貸す、あと地も買ってくれるならば出ていこう。こういうことでございまして、この間政府が発表しました中小企業白書には、中小企業の二六%は直ちに移転をしたい、それで、なおその上に条件がそろえばというものまで入れると五〇%移転したいと、こういうことをいっているわけでありますから、もう現実的にも経済的な面から見ればペイしないという状態もございます。そういう意味で、ちょうど国民全体が選択に迷っておるときに政策の方向を明らかにするということは、当然これは責任でございます。そういう意味で新幹線、それから航空路、内国海運、それから高速自動車道路等の建設計画を明らかにして、地方との距離感をなくする。経済的にも計算ができるわけでございます。その上に、これ以上過密に拍車をかけるように都市に集中をしないように、しても損だというように、都市は今度税率を上げて高い税金ということにならなければなりません。そういう意味でこれはスタートしたんです。ところが、初めはまあ財源であるところの法人税の暫定税率一・七五、これはことし勘定しますと大体千五百億円です。ちょうど超党派でもって昭和二十九年にガソリン税を目的税にしたために道路がよくなったと、これと同じ思想で考えたわけです。第二には自動車トン税をやりまして、第三がこれだったんですから、それで一・七五という税率、千五百億円を原資にして特別会計をつくれば、同額は一般会計から入れなきゃいかぬ。それで三千億円になる。こういうことがスタートだったんです。そうすれば、これはもう私は、地方開発というような小さな視野に立った問題ではなく、全国的な政策として二次産業の平準化、工業の再配置ということが強く推進されれば、その過程において産炭地振興もいままでのスピードよりも非常によくなる。産炭地振興というのは、やはり産炭地へ行ったほうが利益になるという前提をつくらなければ行かないのです。これはそうです。だから、いままでの産炭地でもちゃんと政策はありますが、これは産炭地に誘導するときには、産炭地に争って行くようなところでなければならない。だからそうなれば、私がいま言ったように、利益を追求しておる会社でございますから、低賃金は、ちょうど沖縄でもって紡績工場が低賃金だからやっておるので、本土復帰して本土並み賃金の平準化が行なわれるならば、沖縄の工場はみなやめましょうというのと同じことであって、そんな考え方で、そういうことを言わせるような制度では、産炭地の振興も地方改善もできないと私は考える。そういう意味で、水もあるし、土地もあるし、炭鉱住宅もあるし、そこで生まれ育った人は、働くところがないから東京や大阪のきたないところに出てきているのである。生まれ育ったところはそれはわが郷土であって、職業があって、東京や大阪で働くと同じ賃金が得られるならば、何も過密の中に出てくることはないのです。だから、政治の上ではそういう現実に合うような政策をやはり先行せしめる、こういうことで私もこういうものと取り組んだわけであります。これは私たちが通産省として取り組むのはあたりまえなんです。通産省は公害の発生源であると、人殺しであると、いわれつつ、通産省はこの程度の政策を用意しないと、その責任を果たすゆえんではない、こういうことなんです。ですからそこをひとつ御理解いただきたい、こう思うのです。
#67
○阿具根登君 大臣、いま言われましたようにですね、通産省が昨年十一月に行なった資本金五千万円以上のいわゆる大企業を対象とした、過密公害地域からの工場移転の希望を持っている企業についてアンケート調査をしたわけですね。移転の希望ありと、計画ありといって答えた企業は一〇%しかなかったですね。しかも、この企業の状態はほとんど公害でたたかれておる、公害を発生しておる企業なんです。だから、これはとても大臣が言われるように、大臣の考え方は私は了解できるのですよ。非常に賛成なんですよ。しかし、当初言われましたような、まあ悪いことばで言えば、衆議院の中ではもう大臣もお聞きになっただろうけれども、田中さん一番実力大臣であって、大きなふろしきを広げてものを言うのに、この場合にはハンカチになってしまったじゃないか、なぜ大ぶろしきをそのまま広げなかったかということで、三千億円が三百億円になったということだと思うのですね。われわれだって、まあ田中通産大臣になって、いままでずっとやってきてできなかったやつを、抜本的にここで歯どめをやろうと。そしてわれわれは、今度の通産省の目玉商品だと、こう言われたから、少なくともおっしゃるようにマルがもう一ちょう多く出てくると思ったんです。そうしないと、確かに大臣が考えておられる気持ちはわかるけれども、結局それでは魅力がない、気持ちはわかるけれども。まあ産炭地に行くだけの勇気は持たない企業は、こうくると思うのですね。これは英国でもフランスでも見てみると、その企業に対しては、いま大臣が出しておる気持ちは同じだけれども、出しておられる予算と比べたら雲泥の差がある。そのままにはならないと思うけれども、非常にその大臣の考え方を進めなければ、これはどうにもならなくなると思うのです。しかし、これではどうしても私は、またもう一回今度は新々というんですかな、というものをつくらなければならないようになってくるんじゃなかろうか。たとえばどちらが先か、何かということになりますけれども、まあ過密地域になってくるから、道路もよくせい、広くせい。新幹線もつくれということで、私も鉄道審議会の委員ですが、大臣も長くやっておられたですが、今度北海道から九州までできるようにはなりましたけれども、ならば、山陰のほうはどうなのか。ここは工場も少ない、人も少ないから、まだまだ計画もない。そうすると、わざわざ過密都市をつくっていくような政策をまず考えたわけなんです。そうしてそこに人間が集まってくる。そうすると、これ以上集まってくると税金が高くなりますよ、生活費が高くなりますよといって、しわ寄せはその住民にくる。だからまず、そういう大きな青写真をかいたなら、やはりいま過疎のところにどう鉄道を持っていったならば、そうしたならばどういう企業が来るだろうかと、この問題を考えなくて、企業が来たから鉄道を引かなければならない、人が集まったから土地が高くなったというのは逆だと思うのですね。逆にしなかったら、あとあと追っかけていくから、結局は金はうんとかかるし、ずっとできたあとのあと整理を追っかけていくだけだ。だから物価も上がってくる。賃金が上がっても少しも生活がよくならない。せっかく実力ナンバーワンの田中大臣ですから、そういういままで踏んできたわだちではなくて、ほんとうに歯どめになる抜本的なそういうものを私は非常に期待したわけなんです。しかし、もうこの段階になって十倍にしろといっても、これはできっこないですよ。だから何か、大臣の考え方はわかるのです。考え方はわかるけれども――これに考え方の一部がにじんでいることも私はわかります。しかし、これでは結局、先ほども申し上げましたように、あと整理だけで、そうしてまた過密と過疎が出てくると、こういうふうに感じるのですが、それは何とかならないですかね、そこのところ。
#68
○国務大臣(田中角榮君) いままでというのはいま御指摘になったとおりです。これは国民の税金を使うのだから、投資効率の高い使い方をしなければならない。これはもう学問的にも現実的にもそうだったのです。私は大蔵省に三年おりまして、大蔵省のいろいろな書類をひっかき回してみたんです。明治から百年間で先行投資、道路をつくれば人は集まる、車は多くなる、それから工場敷地をつくればそこへ工場は来るのだ。鉄道の駅をつくればそこに町ができるのだ。これはたった一つしかありませんよ。これは何があったかというと、太政官布告というので、北海道開拓のために必要な公共投資は全額国が負担するという鮮烈な政策であります。これは法律も何もないのです。しかし、そのたった一条の条文によって、北海道は九十年間で三万九千人から五百二十万人になったのです。そのかわり北海道の鉄道も全部赤字です。当分まだ赤字なんです。しかし、鉄道の赤字の累計の何千倍、何万倍も北海道は発展をし、国民総生産に寄与している。これは言うまでもないことなんです。この政策にたった一つだったのです。あとは全部あなたの言うあと追い投資なんです。ただ法律が、国道は、一日車が三千台以上を国道という、こういうような基準がもうそうなんで、年間の荷揚げが何十万トンをこさなければ重要港湾には指定しない。ですから、町があると、一日の乗降客はふえるからホームを長くする、裏口をつくるということであって、それは過密の悪循環につながってきたことも事実なんです。そのとおりなんです。ですから、今度土地、公害、水、労働力、四十七年対比六十年で若年労働力は三〇%しかふえないのです。そういう状態にぶつかってきて初めて国民だれもが考えなければならないというので、政府が考えたのが新全総計画でございます。
 新全総計画も結局は一つの方向を、自然発生を認めておったわけです。それに少しの修正をしたのが苫小牧であり、いまの鹿島であり、それから四日市であり、水島であり、大分湾です。これは何か小型の東京と大阪をつくったようになってしまった、これはスピードが速いですから。そこで新々全総に直さなければならないということになってきて、ちょうどそのころ通産省も黙ってはおったけれども、これだけ公害発生源といわれる通産省でございますから、通産省は通産省なりにちゃんと考えたのです。昭和四十二年、工場立地適正化法というものを立案しようと思っていたら、各省が反対してできなかったのです。あのときに工場立地適正化法ができておれば、私は、公害行政というものはこんなにどん詰まりまで追い込まれないで、まだ合理的な政策が行なわれたと思いますし、産炭地も低開発地域工業開発促進法や、あるいは総合農政ということをやったら、余った農業人口は全部東京へ来るのか、そこへ定着をせしめるほうが得なのかということが当然考えられたはずです。それを全然考えないで、矢つぎばやに総合農政を行ない、どんどんやってきて、工場立地適正化法はできなかったのです。そのためにこうなったじゃありませんか。だから、ほんとうにそれは政府として、私も長いこと財政担当の大臣でもございましたし、その責任を追及されてしかるべきだと思うのです。だから、せめて通産大臣になったこのときには、おそまきながらこのくらいの法律を出さなければだめだ。しかもこれば、少なくとも十月一日までには青写真はできます、六十年展望の。これは合理的なものではありませんが、青写真はできます。ですから、これに合わせて新全総計画――きょうはまた私は、経済企画庁長官臨時代理でもありますから、そういう意味で新々全総計画というものも、いままでのものよりも合理的でなければならないと思うのです。だって、これはこのテーブルからちゃんと皆さんの質問に答えている、経済企画庁の答弁の中で。いま関東地方における二千八百万人の人は昭和六十年には四千万人をこします。こしては困るので、第一、車も何も身動きができなくなります。だから、その意味で何とかして関東に集まらないようにしなければならぬと思うのです。しかし、政策はいまぐらいの政策だとせいぜい三千八百万人にとどめる以外には手はありませんと、これは政府を代表して言っている。私がいま臨時代理をしている経済企画庁がそう答弁している。私が答弁してもいいのですが、そのとおりなんです。だから、そんなことでもって一体公害の除去や生命の安全、そういうものがほんとうにできるわけありません。日本の経済発展のメリットを国民が享受することはできない。一〇%成長を維持するために一五%――成長する分だけ公共投資をやらなければ都市機能が確保できないということでありますから、だから方向としてはもうこういう政策をとらざるを得ないのです。実際上とらざるを得ません。いま農業人口の農業以外の収入というものが六五%も伸びているわけですから、そういう意味からいってやはりそうせざるを得ないのです。これは全く純農業ということだけではなかなかバランスがとれないわけです。
 まあそういう意味でこの政策の御審議をいただいておるのですが、これが理想には遠い。そのとおりです。理想には遠いのですが、この入れものだけはこの国会でスタートさせておかないと一これはことしまた、この間もきめたように、四千五百億財投をやっていく、外貨を使おうといって。私もちゃんと担当大臣としておったのですが、いよいよ景気刺激が必要で公共投資をやるならば、この工業再配置の公団に出すならば、五千億でも一兆円でもやれますよ。これは府県に金を預託しておけばいいのですから、できるのです。その入れものをつくらなければならないということで、非常に強く主張をやったわけです。ですからこれは私は、この法律を出しまして、これが成立したら、将来こういうものは、閣法でやったから閣法で直さなければならぬということはありません。これこそ超党派で私は、この法律を土台にして直せば、今後どうすれば過度集中は排除できるか、どうすれば地方開発ができるか――これは地方開発というような狭い面ではないのです。実際においてどうしてもなさなければならないということでありますから、もう資源配分の面から考えてみても、どうしても必要である。そういうためにはこの国会で成立をさせていただいて、第二の段階においてはこれはもう皆さんからお力添えをいただいていくべきだと思います。
 私は、戦後、やっぱり事実上大きな議員立法というようなものは、これはガソリン税を目的税にしたときには全議員の立法で、やはりこれは当時政府は抵抗した。非常に抵抗がありました。ありましたけれども、全議員の立法として道路三法は通過をしておる。十七年間にその予算は百倍になった。当初二百億のものが十兆三千五百億、十カ年でなっておる。これはまあそう問題は国民的な問題だと思う。ほんとうに一内閣とか一政党とかいう問題ではないと思う、これはもう。だからそういう意味で、それについてはどうもスターとが小さ過ぎると、こういうことでございますが、これはちょうど去年一・七五という――私が四十年に不況のときに二%法人税率を引き下げ、地方交付税率を二%引き上げたわけであります。それが暫定税率になっておったわけです。ところが、その税率があるので、まあそれは非常にこういう制度をスタートさせるにはチャンスである。これも一・七五整理をしてしまってからではおそい、こういう考え方で立案をし、しかもそれが、四十二年に通産省が当然国会に出さなければならなかった工場立地適正化法の精神というものはこの中に貫かれております。だから、そういう意味で御審議をいただいておるのでありまして、私の力と通産省の力だけではなかなか合理的、理想的なものはできないと思いますが、これは、やっぱりどうしてもこの法律の持つ精神というものはぜひ実現をいたしたい。これはもういたさなければ、ほんとうに日本人が幾ら働いても、高い成長を続けながら理想的な日本をつくるわけにはいかないと、こういう考え方に立っておるわけでありますので、まあ御叱責を賜わるのはけっこうでありますが、ひとつこの法律をふ化していただいて何とかものにしていただくと、こういう方向でひとつお願いいたしたいと思います。
#69
○阿具根登君 そうすると、この工業再配置の問題は新々全総の考え方の一環だと、こうなるわけですか。まあ新全総がこれは行き詰まったから新々全総だという考え方と聞いたわけですが、その点ちょっと説明してください。
#70
○国務大臣(田中角榮君) 全国総合開発計画というのがございました。それから改定総合開発計画、今度それを改定しようというものでございますから三度目になる。だから新々全総ということでございます。まあ新々全総というのはやっぱり自然発生、さっき言たように、いままでの線を引き延ばしたらどうかということに幾ばくかの修正を加えたということだったのです。ところが今度は初めてこういう、言うなれば、二次産業の平準化政策というものが出ましたので六十年展望ができるわけです。そうすると、新々全総も六十年を展望しておりますから、だから、この法律が企図しているところと軌を一にしているわけでありますので、いままでのように大きく狂ったということがなくなるだろうと思います。これは、少なくとも六十年の工業生産という一番大事な指数をこれから各県別に計算をしようということでございますので、それがすなわち新々全総ではありません。全総の改定版ではないけれども、相当緊密な連絡のとれるものになるだろうと、こうは申し上げられるわけであります。
#71
○阿具根登君 まあこの問題につきまして、これは一昨日の新聞に出ておりますが、大石長官は、去る二十八日、奈良市で新全総計画について、国土をこま切れにして公害をばらまく計画にこれはほかならないと、こういうことを言われて、問題になって、これは閣議じゃつい口がすべりましたと言ったのですが、これは私は、まあ大石長官が何も故意にこういう政策を批判したというのじゃなくて、やっぱり一般の国民が受ける感じというのは、何か公害をばらまくんだと、一カ所に集めておいているから公害、公害でたたかれるからばらまくんだと、こういうようなやっぱり心配があると思うんです。で、閣僚の一人の方が、それは大臣がこれだけ一生懸命やって、そしてこれはどうしても行き詰まるはずだからやらざるを得ないと、こう言っておると、同じ閣僚の中では、これは今度国土をこま切れにして、そして公害をばらまくのだと、薄めるのだと、こういう考え方が同じ閣僚の中にもあるとするならは、これは一般の国民の方々が、これはせっかくこういう構想で、そしてさあ受け入れ態勢だ、さあそちらへ持っていこうということになると、今度そこの住民が、いやお断わりしますということで、なかなかうまくいかない。これは実際九州でも、大分でも福岡でも御承知のように、住民というのはこの公害に対して非常に神経をとがらせておるわけなんです。私らもそうなんです。しかも水俣なんというのは、まあ大臣も御承知だと思うのですけれども、いま水俣病、水俣病といっておりますけれども、十四、五年前、私が社会労働委員長をやっておりましたときに同じ論争をやっておったのです。そのときに、会社側についたのは通産省なんです。厚生省は熊本大学の意見を、確かにこれは公害ですよということを言ってくれたけれども、通産省は、会社側がまだ調査中だからそういう断定はできませんといって引っぱってきたのが今日です。だから、そういう状況をやっぱりみな知っておるから、またこれは工場を持ってこられたら水俣病のようになりはせぬか、ヘドロが出てきはせぬか、こういう心配が多分にあるわけなんですね。だから、そういう点についてあくまでも公害はこれを発生した人が責任をとらなければならぬということにしないと、これはもうヘドロでも何でも、これはいまからはそうなるかもしれぬけれども、いままでのやつは一体だれがするんだろうか。だから、そういうものを厳正にひとつやっぱりこういう際にはっきりして、そして業者はそれは全部責任を持たなければ、一切公害はまかりならぬということをやっておかねば、また今度は気がついたときにはどうにもならぬと、ヘドロの海になっておるわけです。いまやっておるところでは苦労しておるけれども、何にも知らぬ今度はいい土地に行ってよごされて、またやり直しと、そういうことがないように、大石長官でもこれだけ心配されているのですから、国民はこれはみんな心配しているに違いないと思うのです。そういう点をどうお考えですか。
#72
○国務大臣(田中角榮君) 大石発言は、これは閣議で訂正されて、きのうストックホルムに出発する前に公式の発言が発表されたので、それで御了承いただきたいと思います。まあしかし、環境庁長官はあのくらいのやっぱり気概を持っておることのほうがいいと、私は閣僚でもそう思っております。
 新全総計画でもって昭和六十年、百三十兆ないし百五十兆といっておりますのは、これは四十年価格でいっておるわけでございます。四十五年価格で申しますと、五%成長を続けていくと、いま大体五%だと思います、去年、年率四・七%というのですから。まあその程度不況感が非常にある。輸出は出て困る、輸入はさっぱりふえない、こういうぐあいで、大体五%経済だと思う。五%経済でずっとコンスタントにいっても百五十二兆円になります。七・五%ということしの経済見通しの成長率を延ばしていくと二百十六兆になる。経済企画庁長官が予算委員会で八・五%ないし九%となると思いますと、こう答えた八・五%でまいりますと、二百四十八兆円、二百五十兆になる。それが潜在成長率として、日本がほっておけば数字の上では一〇%の成長率というものは、潜在成長率はある、こう言っております。一〇%をとると三百四兆円であります。これはもう四十五年から。まあ三百四兆円になるならば、それはたいへんである。しかし、七・五%がいいのか、八・五%がいいのかということだと思う。五%では困る、こういうことでありまするから、いまは、ちょうど四十五年価格でもって四十五年の国民総生産七十三兆円でありますから、七十三兆円をそのまま先ほど申し上げたような数字を掛けていくと三百四兆円、六十年と、こういうことになるわけであります。だから三百四兆円にはならないとしても、二百五十兆円としても、いまのように工場の適正化というもののめどがなくて、自然発生でやらしたらたいへんなことになるんです。ですから、私は予算委員会でも述べましたように、新しい工場法というものの必要があると思います。これは通産省も、なかなかむずかしい問題ですから、なかなかすぐ立案には踏み切れませんが、私は、去年七月五日に通産大臣に就任すると同時に、新工場法の必要ありと、これはどこへも持っていけないんだ、これはやっぱり認可をする通産省の責任でなければいかぬ。そのかわり、認可をすればこれはもう公害の責任はまるかぶりになってくる。公害はもう環境庁でございますなどとは言っておられるものじゃございません。これはもうほんとうに全企業に対して工場法と同じ責任を通産省は負わなきゃいかぬようになってまいります。それはしかし、通産省としてはやむを得ないことじゃないか。私は、やっぱり必要である。同時に、通産省がまるかぶりにならなきゃならないほどの責任を持たせられるんですから、それは工場の適正化というものに対する権利も持たなきゃやれないじゃないですか。こういう考え方。で、いま勉強しているわけでございます。そこまで合理的なものができないにしても、公害問題ということを考えれば、当然工場の適正化ということを考えなきゃなりませぬ。これは、それで公害をばらまくというが、公害を絶対ばらまかない。公害というのはいま東京に集まっておるんです。大阪にもあるんですから。これは絶対公害をつくってはならないということでございますから、これは公害は絶対つくらない。
 で、もう一つ、きのう、おとといの新聞とテレビで私は非常に気をよくしたんですが、自然の浄化ということ、自然の浄化力ということを私も述べておるんです。これ、東京のように過密だから、複合公害が起こるわけです。ところが、北海道では石炭を日常火力にたいたって、これはある意味では適正規模以下であるならば、これは自然の浄化力があるわけです。私はそれを自分で原稿に書きながら、私は昔理化学研究所でもっていろいろな先生のいろんな講義を聞いておりましたから、そういうことに対しては比較的勉強しておるつもりなんです。だから都市政策の中にも公害に対する議論ちゃんと書いてあります。しかし、この間ちゃんとテレビでもい言っておりましたのは、土壌の一酸化炭素の浄化力ということが出ておりました。これは皆さんも注目されたと思います。土は、場所によって違うけれども、二十四時間置くと一酸化炭素をみな炭酸ガスに変える。これは一酸化炭素を食う生物が土中に存在することを立証したんだと、非常におもしろい科学的な問題が提起されましたが、やっぱり東京というような、全国土の二%でもって生産をしているものが二〇%生産をすれば異常な作用が働くことは、これは言うをまたないと思うんです。同時に、それだけではなく、公害防除の施設というものは、これはもう生産第一主義から生活第一主義にいかなきゃなりませぬ。命あってのもの種です。金を幾らもうけても、命がなくなるような生産第一主義から転換しますと、こう言っておるんですから、公害をばらまくんだということではないということだけは前提にして考えていただきたい。
 それでもう一つは、さっきあなたがいみじくも言われた、私、同じ気持ちは、新潟県へ行っても非常に公害問題ありますよ。公害なんぞ持ってきちゃいけません。特に阿賀野川の水銀中毒を起こしておる新潟県ですから非常に激しい。激しいが、どういうことかというと、六カ月間も出かせぎに出かけなけりゃいかぬ。夫婦生活もできない。親子も毎年六カ月間会えない。水もあり、土地もあり、労働力もあって、家もあって、何で一体働く場所を与えないのですか。これは私は、産炭地と同じ気持ちが、過疎地帯ではなく八〇%、九〇%の地域に住む人の考え方なんです。工場誘致をしようという考え方が大前提にあるのです。だけど、この人たちは公害がきていいんだなんというのじゃありません。公害は、日本のどこにあっても公害の除去はしなきゃいかぬという大前提に立って二次産業の平準化、工場の分散ということを考えておるのですから、やっぱり私は観念論ではなく、現実に徴した政策というものを進めなきゃならない。ですから、大石長官とは議論をいたしました、行く前に。環境庁長官は、大いに刺激的な発言をしてくれと、私はその発言にこたえるように、生産を拡大しながらも、公害の防除には責任の持てる態勢をとる、こう言っておりますから、公害論争とこれはまあやっぱり別問題として、経済政策と将来長期にわたる国民所得の増大、生活環境をやっぱり確保するという一つの手段、そういうことでこの法律の精神をひとつくんでいただきたいと思います。
#73
○阿具根登君 まあ大臣はいろいろ新聞の例をとって土壌の復元作用をおっしゃいましたが、これを取り上げるわけじゃないですけれども、自然を人間がこわしておいて、あとは今度は自然がまたそれを復元さしてくれるのだと、そういう消極的な考えじゃないと思いますから、それはもう言いません。
 もう時間もずいぶん過ぎましたが、まあ大臣の考え方はわかりますけれども、低開発地域工業開発促進法、この目的を見てみますと、「低開発地域における工業の開発を促進することにより、雇用の増大に寄与し、地域間に有る経済的格差の縮少を図り、もって国民経済の均衡ある発展に資することを目的とする。」こうなっておるわけです。そうすると、さらに新産都市もですね。うしろのほうを読んでみますと、「その地方の開発発展の中核となるべき新産業都市の建設を促進し、もって国土の均衡ある開発発展及び国民経済の発達に資することを目的とする。」同じことなんです。また、工業整備特別地域整備促進法の目的を見ますと、「その地域における工業の発展を促進し、もって国土の均衡ある開発発展及び国民経済の発達に資することを目的とする。」と、これはもうみな同じことをいうのです。全部同じ目的。今度のやつも同じ目的なんです。だから私がこう考えるのは、同じ目的であって、これがなし得なかったのをなそうとするならば、この同じ目的でつくられたどの法律かを、これを変えたらよかったんじゃなかろうか。同じ目的でまだこれ生きておるのですから。農工法で四つです。生きておる四つの目的がみな同じ目的。また今度の工業再配置また同じ目的なんです。だから、まあ冒頭申し上げましたように、非常に、考えられていることは私はいいことだと思うし、その当時これを審議する場合も私はやはりこういう発言しただろうと思うのです。確かにこの目的は、これは否定することはできない。いい目的です。それが大臣がかわられるたびに一つずつふえていくだけであって、そうして結果が同じだということではですね、まあ池田さんのときには――大臣が一番詳しいのですけれども――高度経済成長だとかいってのろしを上げられて、そうして農村切り捨てまでやられて、相当これは世間からたたかれましたけれども、現実は池田さんの言われたとおりになってきておると思うのです。今度佐藤さんはたしか安定経済を言われたのです。ところが、そうじゃなくてずっと高度成長が続いてきた。また、さっきから言われましたように、これが続いていくならばこれはどうしようもないようになってくる。しかし、これをとめるわけにはいかない。やっぱりその伸びを縮めていくということをしなければ、これだけのものを伸ばしっぱなしで伸ばしておるならば、私は、先ほど大臣が言われたようになってくると思うのです。だからあまりGNPが世界第二とかということでなくて、もっと国民本位にやっていただくようにお願いをするんです。
 それから、運輸省お見えになっておりますね。――運輸省にちょっと一問だけ質問してまいりますけれども、産炭地なんか閉山になりますと、これはもう鉄道が直ちにとまります。これは炭鉱そのものがやっている鉄道もありますけれども、今度はその周辺の鉄道も赤字ローカルでほとんどがつぶされていく。そうすると、せっかく大臣が、これは産炭地のために、産炭地に優先的に企業を持っていきますぞ、いままではあまり来なかったから、今度は縫製工場ではなくて、大きな工場を持ってくるためにこれは非常に有効だとおっしゃるけれども、肝心かなめの鉄道は、赤字でこれはだめだといって、鉄道をみんなつぶしてしまう。これでは運輸省がまたブレーキをかけているようなことになってくるんだが、一体これはどういう考えを持っておられるか、それをひとつ聞きたいと思うんです。
#74
○説明員(服部経治君) お答え申し上げます。国鉄のローカル線の廃止と申しますか、これを自動車輸送にだんだんと切りかえていこうという考え方でございますが、これはまず、鉄道というものが本来大量輸送機関であるという鉄道の特性を踏まえまして、一つには交通の効率化という、いわば国民経済的な観点からの道路輸送を中心としました地域交通手段の再編成という観点が一つ。それからいま一つは、国鉄の経営体質の改善という、そういった二つの観点からこの施策を考えているわけでございますが、一方、先ほど来先生御指摘のように、そういった状況の中ではございますけれども、今日なお国鉄のローカル線というものが地域開発に果たしております役割り、あるいは今後果たしていくであろう役割りは、なかなかまだ看過し得ないものがあるというふうに私ども考えておりますので、したがいまして、国鉄のローカル線の廃止を考えるにあたりましては、これはもう申し上げるまでもないことでございますけれども、単に現時点におきますその線区にかかっている輸送需要の量というものだけを考えるんではございませんで、たとえば、本日も御審議の対象になっております工業の再配置とか、あるいは産炭地の振興というような、国家の分散開発施策というものを背景にいたしますそれぞれの地域、地域の開発計画というものも、私ども十分これを勘案いたしまして、将来にわたりましてのその線区にかかるであろう輸送需要の量の動向というものを考えまして、私ども確信をもちまして、これを自動車輸送に転換しても差しつかえない、あるいは自動車輸送に転換すべきであるというふうに考えられますものにつきましてのみ、これを自動車輸送に切りかえていくというような考え方で対処してまいりたいというふうに思っております。
#75
○阿具根登君 労働省に最後に一つ質問をしておきますが、先ほども申し上げましたように、私らは今後二千万トンを了解しているわけではありません。少なくとも二千五百万トン近い石炭を使ってもらいたいということを大臣にも再三お願いしているんですが、四十八年、四十九年で七百万トンからの石炭がつぶれるということになってくると、離職者がこれは平均年齢が四十歳を越していると思うんです。そういう人たちの職業訓練をどう考えておるか。まあ最近の新聞で見てみますと労働省が非常に進歩的になったというか、何か秘書教育をするとかなんとか、一番魅力のある教育をするなんといっておられるけれども、そんなのは若い人ですよ。そういう人は心配ない。そういう人を心配するよりも、家族をかかえている、今日どう食うかという中高年齢者をどうするか。そういう人の職を考えるべきであって、若い人についてば考える必要はない。だから、中高年齢に対してどういうことをお考えになっておるか、それをひとつお聞きしたい。
#76
○説明員(山口政治君) ただいま先生の御指摘の問題でございますが、秘書、タイプ等、こういったような新しい労働市場のための訓練ということも一応今後考えなければならないということで考えておりますけれども、中高年齢に対します職業訓練をこれによりまして決してやらないという意味では毛頭ございません。なかんずく、炭鉱離職者の職業訓練による転換等につきましては、労働省の訓練行政としては特に重点を置いております中高年齢の訓練に対しまして、たとえば溶接、あるいは塗装、電気、ブロック、配管、板金、そういったような科目につきまして、あるいは九州、あるいは北海道の炭鉱離職者の多数出るようなところにおきましては、これらの訓練につきまして積極的に実施しております。そうしてこういったようなことを職業安定機関と密接な連携のもとに、求職者の動向に留意いたしまして、労働市場の状況を勘案しまして、職業訓練の受講希望者がございましたらば、積極的にこれを受け入れまして、適切な職業訓練を実施しておりますし、今後もそういった方向でぜひ充実させていきたいと思っております。
#77
○阿具根登君 これで質問は終わるわけじゃございませんけれども、私は時間を食い過ぎたようですから、大体きょうのところはこれで終わりたいと思うのですが、最後に、事業団が公団になるということになると、やはり勤務しておる人は一ランク上がったものだから、そうすると公団という魅力もまた持ってくるだろう。また、それに伴って給与の形態も変わってくると私ば思うのだが、やはりそういうものに対しては、公団になれば公団としての待遇その他考えてやらなければならないと私は思うのですが、これは一体どういうふうにお考えになっているか、最後に一つ御質問いたします。
#78
○国務大臣(田中角榮君) 新しい公団の発足を機会といたしまして、同種の公団が存在いたすわけでございますから、こういうものとの格差があるということも一面いわれておりますが、こういうものの是正に対しては当然考えてまいりたいと、こう思います。
#79
○阿具根登君 終わります。
#80
○竹田現照君 先ほどから大臣のお答えを聞いておりますと、この法律はたいへんよくて何も言うことがないようになっていますけれども、私がお聞きしたいことをだいぶ阿具根委員が聞いておりますが、先ほど話がありました新全総に対する大石長官の発言というのは、これは閣議で取り消しをしたとかしないとかとは別に――これはあまりそのまま閣議でも通れば、閣僚が内閣を不信任したようなものですから、ほんとは罷免ものなんでしょうが、しかし、大石さんのおっしゃったことはみんながそう思っているのですね。国民感情というものは私はぬぐえないと思うのです。それで全国各地で新全総に伴っていろいろな開発計画が出されて、それに対する公害問題というものがクローズアップされて、工業誘致に反対する住民運動というものが全国いろいろなところでありますね。それに、二十八日の大石長官の発言というものは、住民の反対運動に拍車をかけるような結果を私はもたらすのじゃないかと思うのです。これに対して、先ほどから通産大臣は、環境庁長官はいろいろあのくらいの決意で大いにやっているけれども、おれのほうは公害のないようにちゃんと施策をすると、こういうお答えがありました。まあそうは一朝一夕に公害はなぐならないと思うのですけれども、この工配法では先ほど大臣もちょっとお答えになりましたけれども、一体どのように対処されるのか、その問題を先にお尋ねしたい。
#81
○国務大臣(田中角榮君) 先ほども御質問ございましたが、各地域立法たくさんございます。ございますが、地域立法と違うところは、地域立法は一つの目的を持った地方開発というものを主体にした法律でございます。これは私も立法当時から関係をしてまいりましたが、新産業都市建設促進法、低開発地域工業開発促進法とか、工業地域整備促進法、離島振興法、山村振興法、北海道、東北開発法等の各地域立法、産炭地域振興法、首都圏、近畿圏整備法、これはみんなその地域の発展ということを目標にしておりますが、今後の法律の違うのは、全国的視野に立ちまして、国の政策として六十年を展望して二次産業の平準化政策を進めなければ、水も土地も労働力も理想的なものができないということであります。それで、あわせて過密地帯と過疎地帯両面の調整を行なう。そうすれば、一次産業と二次産業の調整もできる。だから農村地域工業導入促進法、あの考えておるものは、全国的にもっと規模を大きくして高い視野で考えよう、こういうことでありますから、これは各地域立法と完全に密着をしておるものであるということで、産炭地振興と一緒になるということでメリットが非常に大きくなるということ。各地域立法とこれが合わさることによって非常に合理的なメリットが追求できると、こう考えております。
 それで最後の、工業というものは、起これば必ず幾ばくかの公害が起こる要因はあります。いまの公害は多過ぎる、こう思うんです。多過ぎるというと、幾ばくかの公害の要因というのは、これは歩いておるときには交通事故は起こらないわけですが、オートバイや自動車なり、飛行機になれば、飛行機の交通事故はまあ一〇〇%助からないと、こういうことと同じことで、これは文明が進んでいく過程における避けがたい一つの現象だと思います。思いますが、これは科学の発達や技術開発によって最小限に食い止められる。どんな最小限であっても、命がなくなるものであるならば、それはやっぱり生産をとめるということになるので、その調整がお互いが考えなければならない問題だと思うんです。ですから、まあ北海道自体――私は北海道開発論者なものですから、いつでも引用するんですが、北海道というものを、やはり漁業だけではやれないと思うんです。そうするとやっぱり農業をやっていく。農業をやってきたけれども、これも南方作物の米を北海道でつくって反収八俵から十俵になったけれども、私は、それによって二次産業のような高い収益というものを平均して受けることはできないと思う。それで、北海道や東北を考えますと、やはり工業の平準化というものを行なわなければなりません。それは、いままでのように重化学工業中心のもの、これはヨーロッパで見るとイギリスはそうであります。しかし、付加価値の高いものをつくっておるスイスの空は依然としてきれいである、こういうことですから、イギリス的な工業主体、鉱工業からスイス式なものに移っていかなければならない、こういうことは確かにそうであります。一ぺんに移れるものじゃありませんが、地域的にもいろいろな特性もありますし、一ぺんに移れるものではありませんが、とにかく、その様態や内容を変えたがらも、国民生活がいまよりも高くなるような、収益が上がっていくようなことを考えざるを得たいのであります。ですから大石長官は、もう小さなものでも声を大にして、私は、公害というものの防除、駆除に専心すべきだと思います。そのために環境庁をつくったのでありますから、これは当然のことだと思います。しかしわれわれは、やはり生産を上げることによって国民総生産や国民所得を拡大しなければいけない、こういう立場にあるわけでございますから、環境庁と十分連絡もとりながら、政府全体で公害に対する責任を負える体制を前提にして、やはり国民所得を伸ばしていくというための生産を上げるということでなければならないんです。ですから量的拡大から質的にも通産省自体は転化しなければいけない。
 私は通産省に去年七月五日に行ったときに、第一回のときに、諸君は、何年後か、昭和六十年に諸君の局や課が存在するかどうかをまず考えてみてくれ、早く転換しなければならないなら、みずからの省で衣がえを考えてくれ、公害問題一つを指摘すればあとは言わずもがなである、こういうあいさつをしましたが、私は、ほんとうにいまの通産行政というものはそういうところにポイントがあると思っておるわけでございます。ですから工業再配置というのは、先ほど申し上げたように、四十二年に日の目をみなかった工場適正化法というものの精神を盛りながら、公害のない理想的な日本の六十年をつくっていこう、そういうことでありますから、その過程においてはやっぱり生産規模というものや、国民総生産の伸び率も調整が必要である、その面で全国総合開発計画の新しい版とは非常に密着したものになる、関連をつけてお互いに勉強する必要がある、全くばらばらでは困る、こういう考え方を持っておるわけであります。
#82
○竹田現照君 この法律案を提案する過程の中で、二月七日の日本経済ですけれども、通産省の原案に建設あるいは自治、経済企画、環境庁、農林省等が、まあたいへんな反発をして――環境保全の配慮が欠けているというので――それで、いろいろなことが書いてあります。たとえば、建設省ば「土地の利用区分を勝手に決めては困る」とか、自治省、経済企画庁は「調和のとれた総合的な地域開発が無視され、産業優先の地域開発が進むおそれがある」、あるいは農林省は、農村地域工業導入促進法との関連で「こんどの工業再配置促進法案は工業だけのことを考えており、”農工一体化”をねらいとした農村地域工業導入促進法と基本的に矛盾する」と、いろいろ書いてあります。こういう各省庁の通産原案に対する反発は、法案の提案の過程の中で完全に解消されておるんですか。
#83
○国務大臣(田中角榮君) これはまあ通産省が出すので、いろいろ通産省らしい法律案かと思ったら、よく見たらこれは政府全体として提案をすべき法律であるということであり、しかも、先ほど申し上げたような新産業都市建設法その他たくさんありますし、農村工業導入法等には、産炭地と同じように、この法律が付加されることによって全国的な青写真もできるし、地域の振興のためというようなものではなく、これは経済政策の根幹になる。これは、第二次産業、工業というものの配置や規模や計画がきまらないと何もきまらないんです、実際は。それは、国民総生産の大宗は工業であります。いい、悪いにしても、工業であります。だから、一次産業がいま一七・四%、アメリカは四・四%、拡大EC十カ国の平均が六%でありますから、総合農政を続けていけば、いやおうなしに一〇%の人が一次産業から離脱するわけであります。離脱をすれば、これは終閉山をした産炭地の職員と同じように東京や大阪に出るかどうかということでありますが、これは出てくれば、追跡調査をすると五分の四は社会保障対象人口になっておる。こういうことでございますから、そこに定着をさせることが望ましいことは言うまでもないんです。ですから、工業というものの生産計画をまずきめる、そうすれば国民総生産は自動的にはじき出される。そうすると、その中から何十%を社会保障に回すかという社会保障計画もできるわけであります。これは昭和二十年からの社会保障の拡大した歴史、制度の発足した歴史を見れば明らかであります。国民総生産の拡大、国民所得の拡大と平行して予算規模も拡大しているわけでありますから、やっぱり根幹は二次産業なんです。二次産業の計画をすれば自動的に三次産業の計算もできます。それと社会保障その他の計算もできるわけでございますから、この法律を提案する段階においては、もう政府としては皆賛成である。この国会ではどうしてもこれ成案を得て、そしてひとつお互いが協力して勉強しよう、こういうことでございますし、このごろもう地方からはすごく応援があるわけです。この国会でこの法律がもし通過せずんば、こういうことでございますので、ぜひ通過をするように御協力をお願いしたいと、こう思います。
#84
○竹田現照君 まあ地方に一生懸命ハッパをかけられるから、たくさんわれわれのほうにも、早く通せという陳情も来るのでしょうけれども、これは別として、開銀で工場移転計画調査というものをやったところが、工場が過密地域から移転する理由は、公害問題によるものが三九%で、最も多いのですね。ですから、過密地域から移転する工場の四〇%近い理由が公害問題になってるということは、これは早急に改まらないと思うのですけれども、それが今度の法律で、工場分散が過密地域からの公害の分散に通ずるのじゃないかという心配が一面出ているのですけれども、そういう心配はありませんか。
#85
○国務大臣(田中角榮君) すなおに答えると、過密都市の中においていままではたれ流しにしておったものを、たれ流しを禁ずる。しかも、無過失賠償責任制度が制度として発足をした。こういうことになりますと、いままでの利益追求、集中のメリットを追求して、都会や県庁の所在地というようなところ、これは生産と消費が直結しておりますから、経済ベースを考えればもういいにきまっておる。だからそういうことで都市集中しておったものが、これからの政策の中で考えると、これは移転しなければならない。もう移転をしたほうが得だという場合もありますし、移転をしなければ生存さえできないという面が確かにあることは事実であります。
 それともう一つは、公害投資をしようとしても土地がない。これは火力発電所は石炭をたくので、脱硫装置をつけなさいといっても、三分の一隣接地を拡大しなければ脱硫装置はできないのですから、これはできないのです。だから姫路の火力発電所、やめなければいけませんという、こういう要請があることも事実ですし、これはいろんな意味から公害に起因して、これはもう都市から離脱しようという考えがあります。ありますが、日本のどんな地域でもこれを許さないというものはこれはあります。これはいまのPCBなどはつくってはいかん、こういうのでありますからこれは別でありますが、そうでないならどこにおっても公害の基準にちゃんと当てはまる施設をしなければならない。これはどこにおってもそうなんです。そしてそれが日本の国内で必要な産業であるということになれば、これは制度の中で制限をするわけでございまして、鉱山と同じことなんです。公害に対しては確実に制度で制限をいたしますから、公害をばらまくというようなことにはもうならないということで、公害問題とこの再配置の問題というのは全く切り離す。これは確かにほうっておくよりも、公害も、騒音とか、原材料や製品を運び出すトラック公害とか輸送公害も全部入れますと、これはたいへんなことで、いままでのものに歯どめをして、新しい産業というものを新しい天地、立地に計画的に建設せしむる。そして誘導政策によって、ある場合にはこれは禁止政策を付加されます。ことしから自治省は、大都会の中の財源を確保するために事務所税を創設しようか、こういう問題がありましたが、ことしは時期も悪いというので中止になりましたけれども、そういうことでだんだんと都会で持っておってはならないものは禁止してまいりますから、だから、誘導政策や禁止政策が合わされてまいりますので、理想的な――まあ現状を改善しながら、いまよりもはるかにいい状態における工業立地ということを前提にしておるわけでございます。
#86
○竹田現照君 いま大臣、この法律と公害問題を切り離すということですけれども、この法律と公害問題とは全然別問題として考えるというのでありますか。
#87
○国務大臣(田中角榮君) これは別問題ではないのです。この法律を推進する過程において公害問題は前進をしても、後退などは絶対いたしません、こう理解をしていただきたい。先ほども御指摘がありまして申し上げたように、出たいという人は、いまの段階においては公害問題でもって一番出たいと言っているだろう、こういうことを言っておりますが、これからは経済的に考えてみてもこういうものもあるのです。新しい人たちに住宅を与えようとしてもなかなか住宅を与えられない、だから、地方へ出れば住宅を与えられるのじゃないか。だから、制度を完備して誘導政策ができたら出たいという人がたくさんあるわけです。いま三百坪持っておるものを売れば、東京の江東地区でも小さい工場を三百坪売っても一億にもなる。これで地方へ出られれば最新の設備を持ったものになって、これは税制度と金融制度を付加してくれれば直ちに出たいというような人たちが潜在的なものとしてあるのです。ですからいま調査をすると、公害企業だけが出たいといっておるのだということにはならない。通産省でもいろいろなものを計算をさせたら、公害問題もありますが、生産を拡張したい、新製品の製造をしたいが、隣接地や土地が見つからない、こういうのがあります。それから労働力確保ということがこれ以上困難である。それからもっと新しい施設を都会のまん中でやると、やはり賃金だけではなく社宅も提供しなければならないということでコストが非常に高くなる。できれば社員は家から通ってくれれば最も理想的である、こういうような考え方でもってずっと通産省でやったのを見ますと、必ずしも公害に対処できるためという数字は高い数字ではないのです。これは十八、十六、十六、九、六というような数字がずっと並んでおりますから、そういう意味では総体的に出たい。いまでも土曜日を待ちかねておって海に山に出ていくあの気持ち。私たちでもやっぱり土曜日やせめて日曜日には緑の効外、こういう気持ちが、都会の中におって、コンクリートとセメントと石の中におる人たちのこれは共通の願いである、こういう面からも数字は相当高い数字が出ております。
#88
○竹田現照君 農工法の計画策定がいまなされておるのは二十七件だと思います。ところが奈良あたりは、自然保護の観点から町村の反対で計画策定を返上しようというような動きもある、こういうことをいわれておりますが、これはいろいろと御説明はありますが、いままでの工業開発が、自然を破壊したり、生活環境を整備しないままに放置して、先ほど申しましたような地域社会の反発を受けている、そういうところに私は原因があると思うんですけれども、先ほど大臣、阿具根さんの質問にお答えがありましたように、十月の法律施行までに一つの青写真を、まあちゃんとしたものを出すと、そういうお答えがありましたけれども、これは言われているように、産業優先から国民生活優先の政策に転換する姿勢、これをはっきり青写真の中に打ち出すと、そういうものだというふうに理解していいですか。
#89
○国務大臣(田中角榮君) これが形の変わった新全総計画というものではないわけでありますから、形の変わった新全総計画のように一つの内閣から時を同じくして二つのものが出るというわけではありませんが、新全総という新しい全総計画をつくるのにこの計画は非常に役立つ。過去のようなものではない。しかも公共投資二十七兆五千億、五十五兆円に倍増しなければならない。倍増したけれども社会資本の比率はさっぱり上がらぬというようなことには絶対ならないというくらいに重要なものであるということだけは申し上げられると思います。
#90
○竹田現照君 公害関係に執着するようですけれども、総理の施政方針にもこのことははっきりいわれておるわけですね。人間と自然、人間と環境これを新しい感覚で発展をさせなきゃならぬ、そういうことをおっしゃっているわけですが、その点で先ほどから大臣もいろいろお話がありましたけれども、この法案によって過密地域からの工場分散に実効が事実上あがって、環境問題が解決をするという確信はおありなのかどうかです。その点……。
#91
○国務大臣(田中角榮君) この法律は、私が企図したような方向に必ずいくと思います。これはもう三千億――金額でもって言うわけじゃありません、これはもっと税制が主体に、もっと税制が働かなければならないと思います。税制、それから金融、それで残りは財政になるわけでありますが、そういうことになることを企図しておるわけでございますが、私は、そういうことによっていままでばらばらであった各地域の県との連絡もきちっととれますから、県の六十年における人口はどうなる、そのときの一次産業比率は一体幾らまで下がるか、二次は四五%の一次産業との比率が五五%に一〇%ふえるのか。ある県はいまば二次産業比率が高いけれども、六十年になると、二次産業比率はいまのままで三次産業比率がどこまでふえるかというような、そういう数字は相当正確なものが私はできると思うんです。第一に、この法律が通過すれば、次の国会にはこの法律に基づく六十年展望の計画ができたか、年次計画というものはどうなるか、これを提出せよと必ずなります。これはその意味では、県とも先ほど申し上げた各法律との調整も調和も行なわれて計算された数字が提示をされるわけであります。その数字が提示をされれば、その内訳は重化学工業か精密機械工業かということになります。そうすれば、重化学工業においては公害は一体どうなるんだと、こういう問題が出てまいりますので、まあこの法律によって、長期計画というものが非常にいままでばらばらであった、数字的にも地域的にも。いままでの長期計画には数字は大体できておるのです、想定数字で逆算してまいりますから。ところが、今度のこの計画を進める過程においては、やはり地域別、北海道の五百二十万人がだんだんだんだんいまになって減っているのです。かんぬきを入れて人口減少をどのようにして食いとめるか、六十年にはどうなるのか、そして拠点工業地帯はどことどこになってというようなものが出てまいります。いまの青森県とか、それから長崎県とか、鹿児島県とかいうものは、この計画でもって推定をすれば、相当正確な数字が出せると思います。このままなら青森県は人口は半分になってしまうかというようなことを言う人もございますが、青森県ほどの水もあり土地もあり、あんないいところはないはずであります。が、こういう制度がなかったために、どんどんと離村をしておる、こういうところもあるわけでございまして、離村の歯どめにもなりますし、相当正確な数字を提示できるような計画が進むと思います。
#92
○竹田現照君 この法律が、いわゆる田中構想といわれた土地対策の一環として工業分散構想というものを具体化したものだといわれておりましたけれども、先ほどもいろいろ答弁がありました。その中で、田中構想でいうところの今後六十年まで経済成長率年率一〇%というようなことが――それは先ほどの質問の中で訂正されたようにも私は聞き取れたのですけれども――年率一〇%の成長率が続くという前提で国民総生産は幾らになる、工業出荷額は幾らになる、そのためには工業用地はどれだけ必要だ、しかし、それを満たすには関東、近畿その他では用地というものは供給が不可能である。だから過密地域から工場を誘導して地域に移転させなければだめなんだと、そういうふうなことでいろいろ構想がありましたけれども、そこで経済成長率を今後十カ年一〇%、これはあれですか、先ほどの答弁は違うというふうに理解していいですか。
#93
○国務大臣(田中角榮君) 四十五年度を基準として一〇%で進むと三百四兆円になります。日本は潜在的な成長率は一〇%確保する力はあります。これは二十九年から三十九年の十カ年間の平均成長率は一〇・四%、三十五年から四十五年の十カ年は驚くべし一一・一%であります。ですから、そういう成長を続けていって、去年は四・七%までがたんと落ちたわけであります。十何年ぶりでがたんと落ちた。落ちたから不況だ。四年間に外貨は百億ドルたまったわけであります。四十二年から四年間で外国に対する債権債務の残額は百億ドルになったわけですから、ですからこれは、採算四年間では百億ドル外貨をかせいだわけであります。だから非常に外国から指摘をされている。その解決の道は景気を上げることでございます、こう全世界に向かって言っておるわけですから、そうすれば四・七%の去年の成長率ではだめだということだけはこれは言い得ると思います。きのうイギリスの通産大臣と会見をしたら、四・七%という数字だけでもうらやましいことでございますと、これはアメリカからも言われておるのです。五%近い成長をやって、完全雇用で、百何十億ドルも外貨を持って、何をとぼけたことを言っておるのだと頭からアメリカはそう言うわけですが、しかし、四%ぐらいの成長ではとても日本はやっていけないということだけは、これは事実でございます。ですからそれを先ほど申し上げたように五%は幾ら、七・五%は幾ら、八・五%は幾らということでございまして、それはこれから皆さんとの間に日本の成長率は幾らにすればいいかということは、これは目標数字としてはやはりきめなければならないことでございます。
 ただ私の言っているのは、いままで小さ目に小さ目にとやっておったから、社会環境は破壊されてしまったのです。こんなに都市集中はしないだろうということだった。年率、民間の設備投資は一五%ぐらいだと思って予算を組んで、この予算で絶対だいじょうぶでございます、こう言っておったら、二四%−二六%というような高い民間の設備投資が行なわれましたので、社会環境が破壊され、われわれの生活環境そのものが破壊されてきたことは事実なんですから、一〇%いくかもしらぬということでいろいろな政策をやっていって、七・五%になれば二・五%分は環境の整備が進むということになるわけであります。七・五%と見ておって五%で済めば、少なくとも環境整備は差額の二・五%進むということですから、だから、公害というものは出ないんだという感じではなく、公害要因は出るものだという前提でやったほうがいいということで、私のスタートは一〇%成長でいくと三百四兆円でございます。しかし、そんな高くなるとは思わぬし、また、してはいかぬということで、その数字はもっと押えられると、こういうことでございまして、これは六十年度に三百四兆円になったら、いまでさえ破裂しそうな日本は大破裂になってしまうから、破裂しないように、公害を除去できるような状態としてこの法律を考えましょう、こういうことでございます。これはころばぬ先のつえで、まあそんなことじゃだめで、すでにたいへんなことになっておりますが、三百四兆円というのは一〇%を実行しろということではなくて、潜在成長率は過去の実績に徴し一〇%ある、こういうことでありますので、そこを間違いないように、ひとつ明確にいたしておきます。
#94
○竹田現照君 あなたは、田中構想でそういうことを言われていたということなんですけれども、最近の国際環境の中でいろいろと変更しなければならぬ面もたくさんあるわけですけれども、そうなってくると、この産業構造の転換というやつがやっぱりどうしても明らかにしてもらわなくちゃならぬと思うのです。言われているように、重化学工業中心の産業発展ではだめだ、これを転換しなければならぬと、こう言っていますけれども、産業構造の転換ということについて、一体どのように考えておられるのか。転換をすれば、あるいは先ほどもお話がありましたけれども、農業あるいは中小企業の切り捨て政策に通ずるんじゃないかというようなこともまた一面には心配されているわけですけれども、その点、ひとつお伺いします。
#95
○国務大臣(田中角榮君) 公害の少ないものにと、一口で言えば、公害というものを伴わない産業ということが望ましいということで、目標はやっぱり公害を除去するということでなければならぬと、こう思います。そのためには、やっぱり重化学工業ということではなかなかむずかしいわけであります。それで、この間も、アメリカとの話し合いで、アメリカだけでも八五年になると、やっぱり石油の消費国――生産国であったアメリカが消費国になる。で、世界的には問題が、紛争が起こるだろう、こう言っていましたが、私もいつも申し上げておりますとおり、六十年には七億キロリットル――七億キロリットルというと幾らになるのかというと、全世界の海の上を運ばれる石油の三〇%以上、そんなに石油というのは使えるのだろうかということがまず一つあります。鉄鋼石もあります。それは、そういう制約もございますから、やっぱり入る原材料は小さくて、それで収入の多いもの、といえば付加価値の高いもの、これは、言うなれば知識集約型産業にということになります。全部が全部というわけにいかぬと思いますが、さっきもちょっと申し上げましたが、理想的に言うと、空がいつでも曇っておるイギリス型の状態からスイス型の状態になれればいいと、こういうわけですが、まあ必ずしもそういけるかどうかわかりません。しかし、電算機に非常に力を入れていて、電算機の自由化はできない、こう言っているのは、これは通産省の姿勢です。電算機工業に対する姿勢であります。
 それはほんとうに昭和三十二年でございますから、まる十五年くらい前でありますが、十四万円したテレビが、今日は十万円を切って四万円、こういうことでありますし、そのテレビがアメリカの市場を席巻してしまって、アメリカから何とかしてくれということを言われている。自動車は、安かろうということで一番だと思っていたアメリカに、日本の自動車がどんどん出ていく。そういう意味では、知識集約型産業に移行すること自体は、比較的に日本は順応性がありますので、技術水準も高いし、これはできるだろう、やらなければいかぬ、こういうことでありますが、地域的な制約とか、いろいろなものもございますし、そう簡単になかなかどういう工業が幾らということはとてもはじき出されません、いまでは。これこそ衆知を集めて、産業構造審議会を中心にして、もっと大きなもので研究しなければならぬと思います。特に国際分業が一体可能かどうか。国際分業するなら、それじゃ日本から出す品物は何か、こういう問題が出てまいります。そういうような問題を積み重ねながら、最後の計画というものを一応きめなければならぬと思います。しかし、これはもう必ず、いままでのように鉄鉱石を持ってきて板にしてそのまま出すのだ、こういうようなものからは相当精巧なものに、高度なものに転換する、これだけはしなければならないということは言えると思います。
#96
○竹田現照君 これは当初の構想がだいぶ変わったということは、先ほどのやりとりの中にありましたけれども、三千億の特別会計をつくって、工業再配置公団を発足させるというのは、公団をこれ以上ふやさないという行管の方針もあって、これは産炭地の事業団をくっつけてつくろうということになったのでしょうけれども、だから先ほどの発言のようなちょっと矛盾を感ずる面もあるのじゃないかと思います。これはいろいろとまたあとで質問することにしますが、そういう面の、工業再配置公団で構想の変更、移転工場に対する設備の加速度償却、あるいはまた二十五年間の固定資産税減免、こういう構想だったのが、今度の提案された法律ではだいぶ変わってしまったですね。だいぶというよりかなりダウンしているわけですね、当初の構想から見ると。このダウンしたいまの案の内容で、はたして関東、東海、近畿等のいわゆる太平洋ベルト地帯に集中している七〇数%の工業生産を六十年までに半分程度にしようと、そういう目標というのは達成される可能性はあるわけですか。
#97
○国務大臣(田中角榮君) たいへん痛い質問でございますが、それはこの原案だけでもってやったんじゃとても達成できません。これはできると思っておりませんが、これはことしスタートするものでございますから、スタートをすれば来年はひとつよけい金をつけようと、こういうことでございます。これは初年度三百億というと相当大型である。大蔵省も、まあ大蔵大臣をずっとやっておった通産大臣が初年度三百億ということは、いかに財政当局もこの事業の重要性を認識しておるかを理解されたい、こういうことで、私も、最終段階であったし、例の一・七五%の暫定税率がことし千五百億でありますから、この千五百億と、一般財源千五百億ということになれば、ちょうど三千億になる、こういうことでスタートしたのですが、どうもことしは財源の関係で一・七五に対しての整理はできないという見通しがつきましたので一年間おくらせようと、そのかわりに特別財源としてではなく、十月一日発足百五十億、平年度三百億の財源措置を行なうということでスタートしたわけですから、これはまあ妥協の産物でございまして、政府が国民の皆さんに対してこれでもってスタートはいたしますと、しかし、これでもって万全でありますなどということはとても言えるものじゃありません。固定資産税は二十五年でなければだめだということは、いまでも私は考えている。これは必ず実行するということなんです。ただ、先ほど申し上げたように、一・七五をどう使えるかということで、補てん財源をいつも使えるということでないと問題があるということで、地方財政との関係で現行法どおりの制度で発足せざるを得なかったということで、こういう三年にしたわけであります。これは私は初めから言っておりますように、固定資産を長期に投資をさせるときに、三年ぐらいの年数でもってうまくいくわけでありません。これは、このもとになっておりますものはイタリーの労働者住宅、これは国有地は無償で提供する。それから生保、損保の剰余金は労働者住宅以外に使ってはならないという制限があります。しかし、不動産取得税はもちろん免じておりますし、固定資産税を二十五年免じておるわけでありまして、そしてあれだけの労働者住宅を建てるんです。めんどうくさい法律は要らぬと思うんです。そういう鮮烈な政策というものが実行されればちゃんと労働者住宅できるんです。ですからこの法律を私は、率直に言いますと、ロンドンのあのニュータウンというものを考えたらいい。ニュータウン法、これは八百五十万都市を百五十万二ュータウンに移すという非常に大きなものであります。それに匹敵するような法制が前提でなければ、なかなか大事業だと思っておるんです。ですから、そういうものにだんだんとこの法律の制度というものを付加していって、そうしてやっぱり完ぺきなものにして、六十年展望の青写真を実行すると、これはもう実行しなかったら日本はえらいことになるという数字がたくさんあるんです。これは公害の問題と同じような問題がたくさんあります。それはもう実際乗用車の運行ができなくなってしまうということがあるんです。きのう、おとといから、もうとにかく東京では環七から中に自動車を入れないということで、東京都知事と警視総監が二者択一論をやっているわけです。全部こうなると、あに自動車のみならんや、こういう状態でございまして、もう議論の余地のない問題であると、このぐらいに考えておるわけでありまして、この制度そのものは全くスタートのものでございまして、意気盛んであった原案に比べて非常に退歩的になったことははなはだ遺憾でございますが、どうぞ皆さんのひとつ御理解とお力添えをお願いしたいと、こう思うわけでございます。
#98
○竹田現照君 結論的に、いわゆる田中構想の六十年代にかくかくしたいというのは、これはこの法律が発足することによってスタートをしたと、しかし、六十年までにはどうしても実現しなければならぬと、いま、大臣言い切っているわけだから、そうすると、それに関連するいろいろな立法措置もありましょうし、いろいろな行政施策もあるでしょうけれども、そういうことを今後とっていって、当初構想は必ず実現をするという前提の上に立ってこの法案でスタートする、そういうふうに理解していいですね。
#99
○国務大臣(田中角榮君) まさにそのとおりであります。
#100
○竹田現照君 そこで私は、この工場がやっぱりいま京阪神あるいは京浜、中京地区に集中するというにはそれだけの理屈が、やっぱり理由はあるわけですね。材料から製品、それの販路だとか、そういうことだとか、あるいは下請の中小企業の活用、まあそういうメリットがそういうところに集中しているから集まるのだと思うのですけれども、これを分散させるということになると、そういうメリットがメリットでなくなるような措置というものをとらないとなかなか出ていかないと思うのですね。まあしかし、そのメリットがメリットでなくなるような措置というものがこの法案の中ではたしてとられていると私は思わないのですね。これはどういうふうなんですか。
#101
○国務大臣(田中角榮君) 都市のほうにこう傾斜がついておったものを、逆な傾斜にしなければ工場は出ていきません。これはいま御指摘があったように、生産と消費が直結しておるということは、これはもう非常に有利でございます。そうして、まあそういう意味で京浜、阪神地区にはどんどんと工場が建てられておるわけです。これだけスモッグでどうにもならないといわれながら、京浜地区では海を埋めてやっておるわけです。これはもう企業自体のメリットが存在するからでございます。だから、この法律には、この集中のメリットを押えるということは法制的には書いていないのです。これはほんとうなら書くべきなんです。これは集中排除法でありますから、集中排除その都市から見れば集中排除であり、二次産業比率の低い、低開発一次産業地帯ということからいうとこれは開発促進法であります。両面持っていますから。開発促進というようなところからいけば、産炭地振興とか新産業都市と同じような税制上、財政上、金融上の優遇をする。同時に、こっちにおっては損だというためには税金をかけなきゃいかぬのです、実際税金をかけなきや。スタートのときからどうも禁止税というのはやれないのですが、これは、これからは禁止税を同時にやらなきゃいかぬと思っておるのです。これはドイツが一番税制はうまく使っております。ドイツは、日本のトラックの税金の約十倍であります。アウトバーンつくっておりながらトラックの税金は十倍近いものを取っておる。それはトラックは近距離配達用であって、トラックでもって重いもの、二十トン、三十トンのものなどはこれはアウトバーンを走ってもらっちゃ困るのです。それは維持補修費がうんとかかってしまってどうにもならないから、うんと高い税金を取るわけです。それでやむを得ないから中距離は貨車に載せるわけです。貨車もある一定距離になると、日本の遠距離逓減とは逆に遠距離逓増をやっておるわけですから、ある一定距離以上になるとうんと高い運賃になります。そうすると、やむを得ず何になるかというと、それは一定距離以上の遠いところは海で運んでいただきたい。これはこんなだから車をつくって売れるのです。道路交通も確保される。日本は自転車も人が歩くのも三十トンの車と一緒に歩いておるから非常に効率が悪いということでございます。そういう意味で税だとか、禁止税、誘導政策と禁止政策というものはこれは一緒にやるべきなんです。今度はまあスタートですから誘導政策だけで、これならまあだれでもひとつ賛成する。さて、この中に禁止税が一条入る、これはなかなかこの国会ではたいへんであろう。これはなかなかたいへんなんです。そういうことで、まあほんとうの目玉が入っていないと言われるかもしれませんが、まずやっぱり政策は誘導政策、補助政策というものを前面に出してながら、効率的にするには禁止政策をあわせる、こういうことになると思うのです。これは、来年には禁止政策がこの法の改正案として私は出てこなきゃならぬと思うのです。それは、さっき言ったような公害負担金の問題とか、公害税の問題とか、公害税の問題でも、こういうものの特別財源にするなら公害税が考えられるのですが、一般会計の財源としての公害税というものはなかなか実現しない。だからそういう意味で、禁止の方向は今日御審議いただいておる段階においては持てない。まあここらが退歩したなと言われれば、後退したなと言われればそういうことでありますが、これは世論形成を待ちながらやらなきゃならぬ仕事でありますから、国民に恩恵を与えるというような助成政策はいつでも国会できめりゃやれますが、やっぱり禁止政策を行なう、こういうことのときには、禁止税を行なったり禁止政策を付加していくときには、やっぱり世論形成を待たなきゃいかぬということで、通産省だけではこれを成案を待るというところまでは持っていかなかったというのが実態でございます。
#102
○竹田現照君 そこがやっぱりすっきりしないと、当初の構想というものはうまいぐあいに実現をしないと思うのですね。ですから、過密地帯でメリットを受けている企業に、メリット部分に対する税金をかけて、それを生活基盤の整備、あるいはいなかに行く企業には税制上の措置をとるという優遇措置をとると、そういうようなことをやっぱりやっていかなくちゃいかぬと思うのですが、いまのお答えのように来年あたりから出さざるを得ないと、こういうことなんですが、それとはまた別に、地方に行くというのは、これはなかなかたいへんだと思うわけですね、企業にとっては。立地条件のいいところに工場が集まるというのは経済原則です。この経済原則を無視してやるという、まあやらなければならないといういまのことは、これは明らかに政治的な課題として行なうわけですから、当然それには、これを大臣が言われるように六十年までにどうしてもやるのだと、こういうことになれば、財政的にもかなりの金を投下しなくちゃ私はならないと思うのですね、企業に税金をかけてそれをやるとかというばかりじゃなくて。そういう長期的な資金の投下の計画というものは、どういうふうになるのですか。
#103
○国務大臣(田中角榮君) まあ国で、国も地方公共団体も、ある時期において、ある時期、ある期間は助成をしなければならないということは、これは事実でございますが、六十年展望で計算をしてみるときには、投資――助成政策に使った金よりも、分散されることによって得る国の利益というものは非常に多くなる、こう思います。それは、いま都市政策の中で考えてみると、非常にそういうことなんですが、いまの東京都区内、一・七階平均でございます。一・七階平均を十七階平均にもししたとすれば、地価は十分の一になるわけであります。一・七階のものを十七階に押えられるとすれば、地価は事実十分の一になるわけであります。まあ十七階ではなく、いま三十一メートル制限というと九階ないし十階でありますが、十階というものでもって計算したり、いま住居地区の中における二十メートル、七階ということで計算をしてみると、全部がいま一・七階が七階くらいに整備をされるならば、これは三階以上の建設費の二分の一を補助してやっても、水道とかガスとか電力の引き込みとか電話線とかの引き込みとか、それから郵便の集配とか、公共的な面で負担しなければならない平面都市よりも立体都市のほうがはるかに安くなる。これは一定の時間がかかりますけれども、はるかに安くなる。こういうことであって、この全国的な二次産業平準化政策、工業の再配置計画を進めていくと、その過程の国や地方公共団体が負担する金額というものは、ある時期にはおつりがくる、こういう計算ができます。
 それからもう一つは、そこまでいくのに金を相当かけなければいかぬじゃないかと、こういうのですが、これも、金は金ですが、税制による誘導政策と禁止政策があわせて行なわれることが一番望ましい、こういうことでありまして、私は、財政上の大きな負担ということよりも、税制が働くということのほうが将来的にはメリットが多いというふうに考えております。
 それともう一つは、出て行くメリットというもの。これは、水、土地が安い、労働者の質がいいということになる。家を持っている労働者が多いんです。これは、地方に行きますと、自分の家から通えるということの労働力、労働者というものを考えると、いまの山梨県などは、甲府市に全部通っているが、家に帰れるという一つのモデルケースになっておりますが、そういう意味で労働力の質がよくなる。家族的に労働ができるので、生活は非常に安定するということも考えられる。ですから、そういう意味で工場が出ていくためには、必ずしも金でめんどうを見なくとも、出ていくメリットは十分ある。あとは、あと地を買ってくれる、あと地を担保にして金融措置がとれる。そして、新しく設備が更新をされ、いま三百坪のものが三千坪になり、三万坪になって合理的になったときには、なっても税をかけられないし、いわゆる圧縮記帳を認めるという制度でいくべきであって、一坪当たり金を幾らやるという補助金だけがこの政策の大宗にはならない、こういうふうに考えております。これは世界各国でやっておる政策、ブラジリアとか、それからいまのニューヨークのマンハッタン地区の街区改良とか、いろんなものを見ても、必ずしも財政というものが主体になってないこういう感じがいたします。ですから、これだけのことを十三、四年にわたってやるのには自衛隊をつくるどころの騒ぎではなく、いまの予算を倍加しなければならないのじゃないかという議論がありますが、そんなことではない。これは制度をうまく運用することによって必ず実効をあげ得る、こういう考え方でございます。
#104
○竹田現照君 いま税制上の問題をやることによって大きなメリットがある、こういっておりますが、やはり過密問題を解決するということになると、フランスのパリにパリ税というものがあるそうですが、そういうようなものを思い切ってやるとか、そういうことが必要だと思うのですが、首都圏整備委員会で首都圏工業立地制限法に基づいて、いろいろときびしい制限をする方針をきめた、四つ。しかし、それはだいぶ後退させられておるわけですね。この四つきめたことについてはそういう経緯から考えても、私は、いま大臣がおっしゃったような税制面からの規制といいますか、これは相当思い切ったことをやらなければ、工場の移転促進ということは実際問題としてできないような気がするのですが、パリ税等々との関係、ああいうような構想というものはお考えになっておりますか。
#105
○国務大臣(田中角榮君) これは考えているというよりも、当然それはそういう傾向をたどる。これはもうすでに、できれば四十七年度に事務所税というものをひとつ創設したいと自治省は要求したわけです。ただ、自治省の要求には私はにわかに賛成しなかったのは、これは地下鉄とか街路拡大とかいろんなことで金がかかるということで、地方自治の財源として新規財源を得るために事務所税を徴収したい。そうすると、便利がよくなればますます悪循環が行なわれるというような感じもしましたので、これはにわかに賛成しがたい。これはやはり事務所税というようなものは過密税です。こういうものを新設するならば、特定財源としてそういうものに歯どめが行なわれるような政策につながらないようでは、新税ば創設すべきではない。こういうことで、私たちもにわかに賛成しなかったわけでございますが、これはぜひそういう方向にいくというのは、もうすでに過密の地帯には入れなくなっているのです。これは住居専用地区、住居地区の中における町工場でも増力はいたさない、ガスは送らない、騒音禁止を行なう。何年以内には工場地帯に出ていけということをやってまいります。同時に都市内における地下水の汲み上げは禁止だと。禁止するなら、工業用水道でもって水は確保しなければいけませんが、水は確保しないうちに地下水だけは禁止しなければならない、くみ上げも禁止しなければならない。それはそうでしょう。地下水の禁止をしなければ、もう待っていられませんから、そういう禁止政策はどんどんどんどんと続いていくわけですから。それに王手飛車のきめ手になるものは税制である、こういうことでこれは避けがたいことであると思います。しかし、禁止をするなら、出ていくところをちゃんときめておいてからやるべきなんです。これは総合農政をやって転換、いわゆる休耕をさせる以上、他に収入を、就業の場所を与えなければならない。それでもって一年おくれましたが、農村地域工業導入促進法なるものが抱き合わせになって、おそまきながらていさいはできたわけですけれども、ほんとうなら総合農政をやるときには、工業再配置法がうらはらになって提案さるべきだったと思います。だからそういう意味で、この法律は過密地帯において新税を課したり、いろいろな禁止的な処置をするには、行くところはあるんですよと、工業再配置法というものがちゃんとあります。そしてそれは、金も貸せます、あと地も買ってあげます、あと地融資も認めます、そういうようなためにも、この法律はどうしても必要だったと、私はそう思っております。やっぱりこういう法律をつくって、初めて禁止的な税制等が起こせる、こう思っております。
#106
○竹田現照君 そこで、地方に移転する工場では、やっぱり電力だとか工業用水、あるいは道路、先ほど話がありましたが、交通機関も当然でしょうけれども、これは絶対必須の条件になるわけですけれども、この法律では、地方公共団体が要請した場合に限って新しくできる公団に工場用地の造成を認めると、そういうことしかないんですね。この必須条件を満たすための具体的な建設計画というものはどういうふうに進むんですか。
#107
○国務大臣(田中角榮君) まだ不十分だとは思いますが、これは制度として発足した上においては、やっぱり青写真ができてきて国会の皆さんの理解が得られるような段階になれば、これは要請というよりも、国はこの政策遂行に必要な措置をとらなければならない、工業用水は確保しなければならない、交通その他は整備しなければならない、こうなってきます。それでこれは、いままでの住居専用地区と同じように、一定規模の工業団地の中は四メートルあれば道路であるなんていうことは言えないわけです。少なくとも、十メートルの道路を入れなきゃならぬとか、車道の緑地帯をとらなきゃならぬとか、グリーンベルトはつくりなさい、そうして少なくとも建蔽率は、工場であっても三〇%をこえてはならない、もっと土地の少ないところは二〇%にもなるでしょう。そういうことをやらなければ、自然環境を守りながらの新しい工業地帯はできないわけです。そうしてやると、理想的なものができる。これは飛行機から見ると、たいへん大きな学校じゃないかと思うぐらいのところが工場でなけりゃならぬ。これはいまの、ナショナルの南九州に計画しておる工場などは全く研究所か工場かわからない。私は、そうでなければ環境を守りながら生産を上げていけないと思うのです。工場地帯は軒並みに建蔽率は七〇%まで建てられるんだ。そうしてその敷地の四倍も建てられる第四種地区であるとか、第三種地区も、千坪の敷地に三千坪建つんだというようなことでは、公害の除去は私は絶対にできない。そういうような考え方でございますので、この法律そのものは、あなたがどうも求められておるような状態になっておらない。しかし、さっき申し上げた税制とかいろいろなものが付加されますように、この法律がスタートすれば、必要な条件、必須な条件というものは自動的に具備されていくと、こういうふうに理解していただきたいと思います。
#108
○竹田現照君 これは自治省に聞くといいんでしょうけれども、これは、法案作成の過程でもう全部連携をとられているわけですから大臣にお尋ねしていいと思うんですがね。最初に私は、公害の問題に触れましたけれども、全然工場のないところに工場が行くわけですから、そこの環境が前より悪くなるということはもう必然だと思うんですね。何もないところに工場が行くわけですから、どれだけ公害除去のための施設をしたとしても、前より環境が悪くなるということは私は当然でないかという気がするんです。
 そこで、工場立地に伴ってそういう悪くなるであろう環境の保全、生活基盤の整備、こういうものを優先的にやらなければならぬけれども、それを工場立地誘導地域のそういう地方自治体の財政を圧迫するようなことがあっては私はならないと思うんですけれども、私は、黙っていれば地方財政の圧迫になることだけは必然であろうと思うんです。そこで、ここで国の措置として、移転促進地域、それから誘導地域へ移転した場合には、平方メートル当たり五千円ということですか、補助金は。この五千円じゃやっぱりたいした問題にはならないと思うんですけれども、もし、地方自治体が超過負担が大きな額になるという場合には、やはり補助率を引き上げて、そういう超過負担分の完全解消をはかる必要があると思うんですけれども、そういうこと、あるいは中核団地の造成の場合に、その地方の自治体の住宅、道路、下水、あるいは公園、こういう生活基盤の整備も当然必然的に行なわれなければならぬ。そういうような問題点、地方自治体に対するそういう措置というものは完全に行なわれないと住民が迷惑千万な話ですけれども、こういうことはどういうことになりましょうか。
#109
○国務大臣(田中角榮君) 平米当たり五千円というと、まあ坪で一万五千円ということですから、必ずしも低いものではないんです。ないんですが、これだけでもって全部環境整備されるとは思わない。結論的には特別会計ができなかったということとうらはらな問題ですが、財源補てんというものをどうしても考えなけりゃいけないんです。しかし、これは一つの例をとりますと、大阪に一キロの道路をつくるために二百三十億かけた有名な道路がございます。東京を例にとりますと、東京をまっすぐぶち割る道路を一本つくるというと、九州全島の現に保有する道路の全部が倍に拡幅されて補装が完備されるというふうなぐらいな計算もあるわけです。ですから、これだけの仕事を行なうのに地方財政の補てんをやってもメリットはあるんです。これは十分計算できるんです。だから、ことしのスタートにはできなかったけれども、この特別財源というものを考えるときには補てんを考えて、第二交付税制度をつくるとか、特借の中から地方自治体の財源補てんでどういう調整をするのかという問題の解決は一年延ばしたわけです。私ら四十年に三〇%の交付税率を三二%に引き上げた、これも交付税率を引き上げるときには暫定税率で一緒に引き上げたわけです。二%は三税が元に復したならば、当然に下げるということだったんですが、いまの状態から考えると、三二%の交付税率を引き下げるというような状態にはないと思います。あと一%引き上げるかどうかという問題が、まあお互いに議論しておるわけです。これはただ財源が不足だから引き上げるというなら、私はにわかに賛成しません。しかし、これを政策目的が明らかになっておって、国民負担がある時期になればちゃんと減るんだ、こういうことになるなら、私は、大蔵省などもこういう発言はタブーだとしておると思いますが、しかし、そういう問題こそ政治の上での問題としてまじめに検討すべき問題だと思う。ただ月給が払えないから交付税率を上げるんだというようなものではいかぬと思いますが、国民の負担を軽くするための合理的な投資がある期間必要であるとするなら考えねばならぬ問題である。私もまだこの問題は大蔵省とも話しておりませんし――まあ話してないわけじゃないんです。これはとにかく、いろいろかかることもあわせて来年度検討しようと、こういうことを発言して、向こうはそんなもの見向きもしないということでありましょうが、しかし、自治省などは非常に興味がある問題として検討している問題であります。ですから、これはやるということではありませんが、やっぱり補てん財源というものを何らかの方法でちゃんと結末をつけるということでもって、そうすれば地方財政の圧迫ということではなく、地方そのものがやらなければならない仕事を促進することでもありますので、この問題は具体的に解決ができると、こう思います。
#110
○竹田現照君 産炭地域の振興との関連についてもいろいろとお尋ねしたいのですけれども、私のきょうの持ち時間がもう間もなく来ますから次に譲ることにして、最後に一つお尋ねをしておきますが、工場が移っていくということは工場だけが行くわけではないので、必然的にそこに働いている労働者もみな移転していかなければいかんと思うのですが、そうかといって、千人いる工場が千人そっくりそっちに行くということのしかけには私はならぬと思うのです。新しく移るのには、これはかなり合理化をするし、高度な技術を入れる工場になるわけですから。そうすると、千人のうち何人かあぶれてしまって、失業というような事態が当然に私は考えられると思うのです。ですからそういうことについては、大臣でもいいし、労働省に残っていただいておりますから労働省でもいいですが、どういうふうに考えておられるかということ。それから移った先も、やっぱり住宅問題あるいは新しい工場の高度化された技術に対する教育問題もありましょうし、いろいろなそういうことについて、いわゆる雇用政策として考えなければならぬ問題がたくさん出てくると思うのです。ですからそういう点は、この法律にはそこまで書けないのかどうかわかりませんが、別の問題として考えなければならぬ問題、たくさんあると思いますが、そういういま私が移転に伴う二、三の問題を提起しましたけれども、これについてはどういうふうにお考えになっておるのか。
#111
○国務大臣(田中角榮君) これは、この問題を推進するときの一つのポイントでございます。これは集中のメリットを追求して集まったものがなかなか地方には分散しないよということは、これは表向きの反対論でありましたが、これはさて移ろうというときの困難な問題がこの労働問題なんです。これは少なくともその四〇%近い人は中高年齢層である。家族を持ってる、家も持ってる。長いこと都市に住みついた。ちょうど子供が学校にみんな行っておる。そういうことで非常にめんどうなんです。ですから昭和四十二年でございましたが、東京の過密の中でもって研究もできない。山紫水明の筑波山ろくに研究学園都市をつくろう、これはばかにいい話であります。それは自然環境はよくなるのですが、なかなか反対が多い。それは会議をするには東京に出てこなければいかん。それは物を買うにも困る、子供の学校はどうするのだ、こういうことでなかなかうまくいかない。だから結局、民間の問題の移転においてはなおその問題があります。だから私は、いまのところは、現にあるものを移転するものよりも、これから国民総生産が拡大する面は、どうしてももう過密なところは寄せてはならないということをまず第一にする。第二は理想的環境ということをいま考えております、この法律の実体を。これは必要があれば法律として付加してもいいと思うのです。それはいま言う学校の問題と、先ほど言った工業用水を確保しなければならないとか、それから都市における建築基準法と同じように工業団地の環境保持のために基準をつくるために場合によれば法律が必要になる、こういうことを考えなければいかん。学校もずっと併設しなければいかん。一番の問題はやっぱり住宅であります。住宅はやっぱり公営住宅法などは不特定多数の人に公営住宅を与えるということよりも、こういう政策目的に沿ったものに公営住宅法の適用を相当部分をさいていいものだと思うのです。ところが、これはなぜそういうことが言えるかというと、二十年前に皆さんの御協力を得て現行の公営住宅法は私が代表者となって議員立法を行なったわけでございます。政府は憲法上の問題があって政府提案を行なうことができなくて議員立法を行なった、こういうことでありますので、これは政策目的が明らかになっている公営住宅法の運用上の問題などは、やはりこういうものに合わせるべきだと思います。そうして、持ち家制度というものがここで発揮されなければならない。そうして、会社をやめたときには売り払うなら時価で会社の基金や何かで引き取る、共済で引き取ってもかまわないのです。そうでなければそこで定住をし、永住をして自分のものになる、そういう新しい政策をやはりこれに加味していくということによらないと、東京でも大阪でも、これからたとえ十年働いても百坪の土地を持てるかどうかというときに、これは非常に安い価格でもって新しい団地ということでつくるわけですから、それは初めから計画しておくわけですから、持ち家制度というものは実現は可能であります。現行制度でできます。そういうこともこまかく考えて、この法律がほんとうにできるまでの間に一つのモデル的な図面をつくってみよう、こう思っておったのですが、これは間に合わなかったわけでございます。やっぱりその問題は、――いま東京で私自身も知っているが、駅の前に二万坪の工場がある、従業員ば五千人ないし七千人もおる。この工場は古い歴史があるが、そこにおらなくてもよろしい、これがある地方に移るといま働いておる人の約四倍ないし五倍以上の人が、一つの市をつくれるくらいの人が移動する。それに対して今度いろいろな人たちが集まりますから相当なものができるのだけれども、理想的なものだと思っておるのですが、その中の三、四〇%の中高年齢層がなかなか態度を決定しないという問題を、私は興味深く見守っておるわけでございます。これはほんとうにこの状態を論文に書いたら、これはりっぱな博士論文になる、こういうことでございますので、この法律を御審議いただきながら、あなたがいま質問された、御発言になっているような問題も各省と連絡をとりながら検討したい、こういうことを申し上げたいと思います。
#112
○竹田現照君 それは筑波学園都市の問題のときもこの委員会でもいろいろやったけれども、通産省の諸機関が移るについてさえも通産省のいろいろな機関に聞くと、役所じゅうビラを張ってたいへんな反対運動があります。それから東京教育大学もそれで学内が二分しているという問題が、いまお話しの中高年齢層なんていうものとは全然別問題でもたいへんな問題になって、なかなか思うとおりになりません。鹿島臨海工業地帯に行って直接聞いてみましても、私はいま聞いたようなことがたいへんネックになるのじゃないかということを実感として現地に行って感じてきたわけです。ですからそういう点について最大の配慮と政策を遂行していただくことが一番大事なことじゃないか、そういうことを申し上げて、一応きょうの質問を終わりたいと思います。
#113
○原田立君 先ほどから阿具根委員、また竹田委員の質問をお聞きしておりまして、いろいろと大臣から示唆の多い発言、御答弁がございました。その点でまず初めにお伺いをしておきたいと思うのでありますが、先ほどの御答弁の中に、従来の産業政策を発展させるような方向というふうにお聞きしたわけです。ということは、今日の重化学工業の今後の思想の転換として、過日の審議会の答申にも知識集約化産業への転進ということを考えるべきだと、こういう答申があったのと、どうも大臣の御答弁になったその印象は、従来の産業政策を発展させるようなそういう方向で考えているというように聞こえるわけでありますけれども、その点はどうですか。
#114
○国務大臣(田中角榮君) 明治から百年間やってまいった――やってまいったというよりも進んできた傾向というもの、これは一次産業から二次へ、二次産業から三次へ、こう人口が移動してきたわけでございます。この歴史は、少し歯どめはかかっておりますけれども、これはやっぱりまだ進む――六十年ぐらいまでは進む、これはもう避けがたいことであると、こう思っております。そうする過程において国民所得が増大をし、理想的な環境整備ができるんだと、こういうことでございます。いままだそれは先進工業国の一次産業比率に比べて一〇%以上高い。この一〇%の人たちというのは、必ずこれは二次産業か三次産業へ移らなきゃならない。三次産業は大体世界的傾向の四七、八%――いま日本の三次産業は四七%であります、四六・八か七であります。四七%以上という三次産業というものをこれ以上一〇%ふやして、五三%まで三次産業にはならぬ、私はそう思うんです。そうすると、三〇数%の二次産業というものがもう一〇%ぐらいふえるということは、これはやっぱり、西ドイツ型経済ということになるともう少しふえるわけです。西ドイツ型経済になると三次産業がもう少し落ちて、二次産業比率が一〇何%ふえるということになるわけでありますが、そこまで一体いけるかということはいろいろ問題があるにしても、二次産業はふえる。それで、これから国際的分業が始まるとすると、一次産業というものはどうしても、とても二毛作、三毛作やるようなところのものと――雑穀などはこれは十億ドル以上も輸入してるわけですが、こういう飼料とか、雑穀などは日本はもう気候、地形、地勢上の制約があって、これは日本ではなかなかやれない、こういうものもありますので、どう考えてみてもやっぱり二次産業比率がもう一〇%ぐらいふえざるを得ない。そうすると、ふやすには理想的な姿でふやさなきゃいかぬ、それからよって起こる公害は絶対に排除しなきゃいかぬと、こういうことにどうもどっちから考えてみてもそうなる。これは、いま繊維交渉でもって繊維が少し操短をしなきゃいかぬ、これはいなかへ帰っても、家へ帰っても百姓するにも仕事がないんです。そうするとどうするかというと、つい都会に出てくる。都会に出てくると、結局生産に携わるということでないとどうも消化できない。こういうことがありますので、明治からずっと続いてきたものをそのまま踏襲して拡大政策を続けるというんじゃ絶対ございませんから、超高度成長ということじゃありませんで、理想的な産業形態にと、こういう考え方でございます。
#115
○原田立君 私が言いたいのは、この工業再配置というのは非常に国家的な大きい課題であろうと思うわけです。そういう重大な転換期にあるがゆえに、前回の答申にあったような重化学工業時代から知識集約型の産業へ転向すべきだというこの答申、これはまことに当を得ているんだろうと、こう思うんです。だから、それが基本になって工業再配置ということも考えに入れていかなきゃいけない。ところが、さっきの大臣のお考え、答弁を聞いてますと、やっぱり従来の重化学工業を進展させるんだというようなふうに聞こえたわけです。これは全然違いますね。
#116
○国務大臣(田中角榮君) それは先ほど申し上げたように、いままでの状態で行けば十二、三年しかたたない六十年に、すべてが、地球上を動く荷物の三〇%以上が日本に向けて入れなければならないようになりますから、なおまだ六十年で日本人の経済活動がとまるわけじゃないです、まだ続くのですから。だから、そういうことば原材料を持たない日本としては無制限に追求できないので、同じ原材料を輸入しても付加価値の高い、さっき申し上げたようなイギリス型から、むずかしいことではございますが、スイス型に近いようなものにだんだん転化してまいらなければなりません。こういうことが大前提になっておりますから、そこをひとつ誤解のないようにしていただきたい。
#117
○原田立君 通産省だけの提案になるものではなく、内閣で出すべきような法案であったと、先ほどそういうお考えがございました。それでどうなんですか。やはり運輸あるいは教育、いろいろ諸方面にわたって十分関連したもので社会づくり、町づくりをしていかなければならぬと、これは一通産省だけでできるものじゃなかろうと、こう思うわけでありますが、さて、そのときに私心配するのは、従来各省の権力争いといいますか、なわ張り争いといいますか、そういうようなものが対立して、いい考えだということはわかっていても前進しなかったという実例が幾らもある。この工業再配置という大きな課題をひっさげての、内閣で何らかの各省統合してしっかりやるような、そういう機関をつくる、つくりながら進めていくという考えはございますか。
#118
○国務大臣(田中角榮君) ある時期に、私は青写真もでき、いろいろなことになれば、協議会をつくるというようなことは必要かもわかりません。しかし、これはこの法律にも書いてございますが、各地域立法との関連は十分つくようになっておりますし、通産省と各都道府県、自治体というものが非常に密接な関係になってやります、実際的に。この法律では通産大臣がということになっておりますが、これは知事との間には地域立法とのあれもございますし、各大臣、各府県知事というものと密接不可分、一体になってこの計画が進められることですから、私は官庁間のセクショナリズムというものは、本件に関しては考えられないと思います。これは整備をするために環境基準を強める、道路の幅は広げなければならない、緑地帯の面積は総面積に対して幾らにしなければならない、水はある一定限度以上流さなければならない、空気の汚染の基準は守らなければならぬということですから、私はそういう意味ではもう方向はわかっているし、だれも反対はないのだ。まあ現状をいかんせんというものではないのですから、新しくこれから進められるだけに、白地にものを書くに近いものであるということで、各省との意思の疎通は十分はかれるし、政策的にそごをすることは万あるまい。これはもしありとせば内閣で十分調整できることであると、こう思います。
#119
○原田立君 内閣で調整できるから心配するなというお話でありますけれども、これは過去の経緯から見て、田中大臣もよく御承知のように、各省のなわ張り根性というものは相当強かった、それを心配をするわけです。心配ないという、ただ、それだけのお話では心配が解消しないわけです。沖縄をやるときには沖縄関係の閣僚会議というものをつくってやったとか、あるいは公害問題のときには各省庁が全部その次官級とか何か集まって対策を本部をつくってやったとか、こういうような姿勢が、この工業再配置をする場合においては当然あってしかるべきではないか、こう思うのですが、その点どうですか。
#120
○国務大臣(田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、これは全国的に青写真ができて、いろいろ具体的な問題が起こるようになれば、閣僚協議会をつくっても一向差しつかえございませんし、また、来年度予算、年々予算編成時においては、これに新しいものがつけ加えられてまいるはずでございます。そういう意味では、各省と十分意思の統一ができなければ新しい政策も付加されないわけでございますので、これはもうほんとうに工業再配置という面から見れば通産省でございますが、工場というものを移すことによって社会環境全体が変わってくるということになるわけでありますので、これは通産省だけでもって専管で何でもやれるなどとは考えておりません。これは、もうほんとうに内閣全体で各省庁とも十分連絡協議の上、強力にこの政策を進められるべきだと、こう考えております。
#121
○原田立君 工場が地方に進出する場合に、現在多くの地方では反対運動が非常に多い。その大きな理由は、もう先ほど来何度も話があるように、公害の発生、その点を非常におそれているわけです。で、先ほど来田中大臣の答弁を聞いておりますと、公害は出るものと思って計画を立てているとか、そういうお答えがあった。あるいはまた、多過ぎる公害と少し出る公害とあるとか、あるいはまた自然には浄化力があるのだというようなこと、こういうお話がありながら、一番最初には公害はつくらない、公害防除に責任を持つと、こうはっきりとしたお話があるわけです。そこら辺の話の脈絡がどうも一貫しないような気がしているわけなんです。その点はどうですか。
#122
○国務大臣(田中角榮君) 公害というものの原因を全くなくするということは申し上げられません、こう言ったわけです。それは言わずもがなのことかもしれません。それは工場があれば騒音もありますし、トラックも出入りしますからごみも立つ。これはもう公害は幾ばくか、ないものに比べればあります。ありますが、いま議論されているように、ほんとうに人命を損傷するような公害というもの、そういう住民が絶対反対をしなければならないような公害があるにもかかわらず計画は推進するんだというようなことは絶対しません。これはもうそういうことなら生活環境第一主義などということはもう全く申し上げられないわけでございますが、先ほども申し上げたように命あってのもの種なんです。うまいものも食べたいし、いいところにも住みたいし、いいものも着たいし、しかし、命を失うようなおそれのあるような危険はおかしません、そう言っているのですから、それはもう当然公害というものの防除、除去に対しては、これは工場がどこにあろうがなかろうが、これはもう新しい誘導地域に行こうが、現在のように東京に工場がつくられようが、それは絶対に除去されなければならない、こういうことであって、東京や大阪から、県庁所在地から地方に出ていっても、それは公害をばらまくようなものでは絶対にありませんし、そうはいたしません、こう申し上げておるわけですから、そこはもうひとつ、そのためには知識集約産業にも移さなければなりません、こう言っているのでありますので、そこはひとつ理解していただきたい。
 もう一つは、反対があったらどうか。絶対住民が反対であれば、これはやりません。工場など行きません。これは私は離れ小島がいいんだと、私はもう雪が降ろうが何をしようが、それは大自然の中にこの部落は守るんだ、こういうことであれば、これはもう絶対反対すれば、私、土地収用してまでほんとうにがたがたやるというようなことのようなものではないんです。だから、ただ反対反対といっておっても、政治的な反対であるということと真に反対というものを一緒にはしないというぐらいなことば、それは考えられなければいけませんが、ほんとうに住民が全部大多数が反対である、そういうようなものが強行されるということは絶対にない。私はもうそういうことはあるべきではないという感じを、考え方が基本になっておりますから、だから、ひとつどうぞ誤解のないようにしていただきたい。
#123
○原田立君 言われんとする意味はよくわかるのですけれども、やっぱり地方住民が極度におそれるのが公害の発生なんです。ですから公害を発生させないようなものをつくらなきゃいけない。私、公害ということをいま言ってますけれども、ほんとは私、公害なんていうことばはないと思うんですよ。企業災害だ。企業がそこにあるがゆえに、そこへきたならしい煙や水を出すからそういういろんな被害が生じるということであるから、そのもとのその企業に、そういうきたならしい水や煙を出さないように規制をすることが、十分そういう危険はないんだと、そして、またそこで働いて十分収入も得られると、こういうならどこだって反対はしないと思うんです。ところが現状ではそこら辺が非常に信用がないようですな、政府のやることに。結局工場が来る、来たらばきたならしい水を流され、あるいは煙を出され、環境が破壊されるであろうと、それでみんな非常に強く心配しているわけです。その心配を解消するには、ただ田中通産大臣がそんな公害は出さないと、こう言っただけではやっぱり説得力がない、そこには何らかの規制というものがなきゃいけないじゃないか。また大きい問題として、公害の無過失責任制度の確立と、こういうふうなことも考えなきゃならぬだろうと思う。そこら辺の御見解はどうです。
#124
○国務大臣(田中角榮君) それもそのとおりです。ですから、公害に対しては無過失賠償責任制度というものが確立をされておるわけでございますし、これはもう公害というものに対しては、責任の所在云々というよりも、公害は生命に危険をもたらすものであるということで、公害防除、公害除去に対しては、これはもうお互い精力的にやらなきゃならない仕事でございます。で、まあ明治から百年間たって、工業化、二次産業比率の向上によってメリットはあったんです。同時に、戦後四分の一世紀有余に及んで、やっぱり日本の産業復興ということを土台にして、今日の日本の経済復興はあった。しかし、そこに思わざる問題が起こってきた。それは、私が、昭和四十三年か二年だと思いますが、「都市政策」というものの中に、牛込の柳町と大原町の交差点の公害を書いてございます。そのときには講演もたくさんしたんですが、大学の助教授連中などが興味を持ったにすぎないのであって、公害問題というものが集中のメリットからデメリットに変えるんだということに対しては、どうも反応なかったんです。それから一年半たったら、もう急速に柳町が問題になり、大原町が問題になり、いまの高速一号線の外堀の中の車がとまっているときの、一体あの空気の中には何PPMあるのかという問題から、急速に出てきたわけでありまして、これは公式な記録の中では、私はほんとうにこの二、三年間の急速な問題だと思っている。国会でも公に公害論争というものが深刻に行なわれたというのは三年ぐらい前ではないかと思います。それだけに、やっぱり集中、過度集中という点と、もう一つは科学技術の発達、この物質の開発というものが進み過ぎて、PCBの問題とか、思わざる公害というものが急速に出てきた。ヘドロの問題しかりであります。だからまあそういう意味で、私は公害というものに対して、今度はもう法律上の体制も制度も、世界に冠たるものにしなきゃならない。山紫水明というくらい日本は、これは日本の実態はそれなんです。水が豊富であるこの日本の一番いいところを汚濁せしめてしまっては、われわれの生活そのものが危機に瀕していくことになりますので、公害問題に対してはやっぱり十分な配慮をいたす。だからその公害対策というのは、公害をばらまくということではなくて、公害を除去するために制度やいろんなものを完備しなければならない。完備しよう。しかし、公害論争に脅えて働き場所もなく毎年毎年、半年以上出かせぎに出るんだ。出かせぎに出たら公害にやられて帰ってこなくなったと、こういうことではだめなんだということで、やっぱりちゃんと割り切ってあれしなきゃいかぬ。それとやっぱり二%の地域よりも二〇%の地域、二〇%の地域よりも四〇%の地域がもし可能であるならば、そういうことの調整ができるならば、いまよりも環境はよくなるんだ、公害問題というやつは解決できるんだと、こういう絶対的自信を持って政策を進めなければならない。特に通産省は、景気をよくしなければ日本は困るんだといって毎日研究しているわけです。それでもうとにかく、各県知事が来れば、少なくとも五分の四の知事は何とかしてくださいよと、私の県はどんどんともうとにかく人がいなくなって、学校の先生の配置さえ困っているんですと。そういうところは水もあり、土地もあるわけなんです。
 それで私はここで、しかし一つだけ言わしていただきたいのは、どうも日本はなかなかうまくいってきたと思いますし、私は先輩も間違いなく政治をやってきたと思うのですが、たった一つ間違いがあると思う。それは、明治百年間の急速な工業化のときに方針を誤ったんじゃないかとちょっと感じておる。これはやっぱり歴史に対する批判です。なぜかといったら、一次産業地帯に適する東海道、山陽地域などになぜ一体工業地帯をつくったんだろう。これは東京、大阪という政治の中心地が文化の中心地になり、産業の中心地になったということに尽きるんでしょうけれども、あの地球儀を回してもすぐわかるでしょう。水が多くて、土地が肥沃で、平野であたたかいところは、全部一次産品地帯であります。だから主要工業国十カ国のうち九カ国は――ソ連を含めれば日本を除いて十カ国は全部日本の北であります。北海道よりも北であります。アメリカを見ても、ミズーリ川の両岸は一次産品地帯であり、民主党の地盤である。五大湖の周辺からあの大きな工業国は生まれている。イタリアにおいてもそうです。どこでもみなそうなんです。だからほんとうなら、北海道や東北は工業の基地であって、それで東京の周辺などは一次産品地帯が望ましかったんだと私は思う。そうでなければ、南の米を北海道まで持っていった日本人の英知は、北海道でもお米がとれるようになった。なったけれども、必ずしもこれは正しい私はいき方ではない。要するに、気がつけば、いまにしてやればいいじゃありませんか。だから私はそういう意味で、ほんとうにこれから――まあいまでは自然発生を是認してきている。政治や行政はそれを調整をしてきた。今度はやっぱり社会党さんがいっているような計画経済ではないんですが、やっぱり大目標を定めて調整権を事前に発動していかないと、公害問題とか、調和のとれた経済成長というものはなかなか期しがたいんじゃないか、こういうふうに思うのです。ですからそういう意味で、ひとつこの公害論争と国民生活の向上というものは、これはもう全く同一の問題であって、その調和の中に公害問題も片づけるのだ、こういうことでひとり私はそういう意味で、通産省も全部生産を上げなければいかぬ。しかし、公害は絶対に除去していく。こういう決意で、その処方せんとしてはまずこれだと、こう思っているんだということをひとつ理解してください。
#125
○原田立君 どうも田中大臣の熱弁を聞いていろと、ほかのほうに話がずっと移っていっちゃって、はてなと思って聞いているわけですけれども、まあ私は指摘しているように、公害が発生することについてのおそれが非常に強いがゆえに、工場の地方分散ということを地方住民は非常に反発を感じて拒否している。こういう空気があるんですよ。それでまたこういうことはどうですか、山紫水明のところに、そこに何千ヘクタールか工場ができたと、いままではそこの環境が非常によかったと、観光地にも匹敵するぐらいに非常によいところだった。ところが、もう煙はもうもう出て木は枯れ始めたとか、あるいは工場からきたならしい水がちゃっちゃか流れてきて、川が汚染されていったと、海が汚染されていったと、こうなっちゃったんだったら、それはもう公害どころか、企業災害ですよ。その出るところを、発生源をぴたっととめなければいけない。そのとめることは、もうそれこそ大勇断をふるってやってもらわなければいけない。だから、そこのところのしっかりしたお考えがあるかということ、それをはっきりしてもらわないといけないわけですよ。それともう一つの、こういう東京都なり、あるいは大阪とか、非常に大都市の中にあっては無過失賠償責任制度というものが当然必要だと、ところが今度国会に提出された法案は、当初、考えられていた因果関係の推定の規定が削除されているのですね。これは、私、非常に遺憾だと思うのですけれども、大臣はその点いかがですか、二つの点をお伺いしたい。
#126
○国務大臣(田中角榮君) 公害は削除しなければならない。これは生活向上のための手段として生産にいそしむわけでございますが、そうかといって、公害で元も子もなくしてはならないのであって、あくまでも生産によって状況をよくすることか主か、命を長らえて、生命を維持することが先かといえば、言うまでもなく生命が先だと、これは論のないところなんです。これは食えなくても、もうほんとうに生命が先です。そういう意味で、公害調整というものに対して公害を除去するためには全精力を傾ける、これはわれわれの英知を結集してやらなきゃならない民族のやっぱり責任ですよ。そう考えている。ですから、これはもう日本のこれだけの技術水準をもってして、科学的な水準からいっても、もう確実にできます。日本ができないものならよその国もできない。こういう自信を持とうじゃありませんか。そういう意味で、公害というものは絶対に除去するということでひとつ考えていただきたい。
#127
○原田立君 もう一つお聞きしたいんですけれども、非常にくどいんですけれども、福岡県の大牟田は、御承知のように、三井が非常に中心になった町であります。あすこはもう三井さんがいろいろ出すことについてはしょうがないと、三井さんがやるんだからしょうがないと、こういうことでずっと長い間の歴史があるわけでず。現実にどうかというと、川はきたないし、海はきたないし、ばい煙だらけであると、こうなっちゃったわけです。最近、それが何とか住民運動も起きて解消しようと、こういうふうにやっているんだけれども、すでに時おそし、手おくれと、こんな感じです。それからまた北九州ですね、あの洞海湾あたりの各企業、あすこなんかは行ってみればおわかりのように、空はもうまつ茶色ですよ。あれは八幡製鉄のばい煙ですよ。だけど、あれも多くの人たちは、八幡製鉄にいろいろやっかいになっているから、八幡さんのやることはしようがないという、そういう空気がずっとあった。そしてとうとうあのきたならしい空、それからあのもうどうしようもない洞海湾、こうなっちゃった。だからそういうようなことが今後あっちゃならないわけですね。工場再配置をするにあたって、ああいうようなことを全国の人たちもいやというほど見せつけられているから、だからなまはんかなことでは、公害が発生するんじゃないかという非常におそれを抱いている。だからそういうことがああいうふうに大牟田とか、洞海湾とか、八幡だとか、あんなことはないんだ、そんなものはつくらないんだ、こう断言できますか。
#128
○国務大臣(田中角榮君) それは、公害は絶対に発生をさせないためにも再配置を行なう、こういうことがこの法律の一つの目標でもあるんです。車一台でも野っ原走っておれば、排気ガスは出るんです。一台でも何でもなくはないんです。空気は幾ばくかは汚染している。しかし、全体から考えてみると、そんなに問題ではない。自然の浄化力がこれを吸収する、消化する。しかし、これが何千台もあるからどうにもならないようになるわけですから、やっぱり複合公害というのは、数が多くなるほど化学物質その他の複合公害というのがたいへんになるわけでございます。だから、無過失賠償責任制度もつくらなければならないということでございますから、これは公害をなくするためにも、新しい視野の立場と角度から、こういう新しい産業立地政策を進めることが、公害退治の有力な一つの手段だ、こう考えていただきたい。だからほんとうに空がまつ黒くなることは、私たちも東京におって東京もひどいけれども、大阪に行っても大阪も相当ひどいです。そういう意味で、これ以上大阪の空気を汚染してはならないとほんとうに考えます。だからいま御指摘のあったように、もう絶対に公害は起こしませんというふうにいって、それは私が絶対になどということは言えるわけじゃありませんが、少なくとも、この政策は公害を防止する、除却するための有力な手段であるということでございます。しかも、知識集約的な産業にだんだん移っていきますから、それは公害というものに対しては、いま考えておるような公害を絶対なくするなくなるような制度を完備してまいります、こういうことです。ひとつ御了解をいただきたいと思います。
#129
○原田立君 まだ、公害問題でやりたいんだけれども、そう大臣が強いことを言われると、もう公害は発生する心配はない、こういうようなことで、説得されたような形になってしまいます。それでも勇気をふるってやります。
 まず、青森のむつ小川原、あそこでは私が聞いている範囲では、二千万トンの鉄鋼生産、また八百万キロワットの発電、そのために年間二千万キロリットルの原油を処理する、そうすると亜硫酸ガスが、たとえばすぐれた脱硫装置をつけても年間十万トンを下らないほど出てくる。この量は二百五十万キロワットの火力発電所が、脱硫装置なしに一年間はき出した量、こういわれておる。そんなことで非常に地元は反対しているわけです。こういうことがあっちゃならないと思うんです。それからまた、現に二年前にあのように言われてつくられた鹿島臨海工業地帯、当時は公害は全然出ない無公害コンビナートである、国や県も盛んに言ったわけです。現実にいま二年たった今日においても、だんだんふえてきて、それで現地の人たちが非常におそれておるわけですね。こういうようなことがあるがゆえに、現行の方法での工業再配置ということは、どうしても公害の地方分散にならないかという強い不安があるわけなんです。大臣の御決意のほどはさっきから再三お聞きしているんですけれども、それを何らかの――もっと本来ならば環境庁がやるんだろうと思うんです。環境庁がきちっと煙や、あるいは水や何かの規制をするんだろうと思うんですけれども、こういう鹿島臨海工業地帯のような、こういうふうなことがもう絶対起きないんだ、そのための工業再配置なんだ、そのためにはこういうふうなきちっとしたきびしい規制を設けますよというふうにしないと、その心配は除去できないと思う。そこら辺のお考えどうですか。
#130
○国務大臣(田中角榮君) それは御指摘になりましたように、このままにしておけば、これはもうほんとうに東京都とか大阪とか名古屋とか、県庁所在地とか、太平洋沿岸ベルト地帯というもの、こういうところは呼吸できないようになると思います。だから、そういう意味で、全国的に産業構造そのものも変えなければいけませんし、公害除去の法制や制度の整備もいたさなければならない。そうして工場の分散ということをやらなければならない。これはやっぱり工場があまり集中し過ぎるので、利根川の自然流下の水、河川維持の水の流れよりも、汚濁した水の流れのほうが多いために、隅田川に魚住まずということです。だから自然流下の水や、河川維持の水の量を倍にすれば、一カ月たてばフナが寄ってくるんですから、そういうことで、やはり集中的に阪神とか京浜とかいうところを、これもいまは平面的な都市だから、これを立体的にしたらもっとよくなるだろう、能率は三倍になるんだ。これは実際都市の立体化と同じことであって、確かに道路もいまの三倍になりますし、一人当たりの土地面積も多くなります。緑地帯もできます。しかし、緑では吸収できないほどの一酸化炭素や炭酸ガスが滞留するという問題も起こります。だから、どう考えてみても、拠点中心というものは、経済的に見たら確かにメリットがあるわけです。しかし、それはもう過度集中になって、メリットがデメリットになっておるということでありますので、どうしても地域を拡大していく、だから産業の内容は変わってきて、知識集約型になることによって公害というものは非常に少なくなるんです。それがまた今度地域が拡大をされることによってもっと少なくなる。それよりも、もっと制度や排出基準やいろいろなものを整備さすから、ほとんど皆無にならなければいかぬ、こういうことが言えます。この法律をつくることが、公害をばらまくのではなくて、正常な成長を確保し、その恩恵に浴しながら、みずから額に汗した恩恵に浴しながら、そうして公害の危険からは身を守る、そのための一つの政策だ、こういうことですから、公害をばらまくとか、公害がいまよりも激しくなるということは全く考えておらないんです。
 しかも、いまあなたがちょっと御指摘になったところの苫小牧、いまの鹿島、それから四日市、水島、大分湾、これ確かに急速に工業化したんです。立地条件も非常によい。よいけれども、どうも少し東京や大阪が明治から九十年か百年かかってできてきたものを、非常に精巧なものが三年か五年程度でできた、こういう現実もなくはないんです。だからそれにはやっぱり環境基準とか、さっき私も時間がないからあれですけれども、商業地区は八割まで建つとか、工場地区は六割とか、それから住居地区は六〇%まで建蔽率を認める、しかし、美観地区や緑地帯は一〇%しか認めないというようなものが都市計画法においてあります。同じことを全国土につくらなければならないと思うんです。そうすれば工場地帯として、知事は条例をもって工場地帯を指定することができる、これは当然そういう法律を次の国会に出さなければならぬと思うのです。いまの国土開発法になるかもしれませんが、そうすれば、ちゃんと地価も押えられます。それで、工場地帯は建蔽率は非常に少ないので、もう初めから工場をつくっても七割以上緑地帯がなければいかぬとか、七割の中には公共的施設、道路とか遮断緑地とか、そういうものがちゃんと用意されるということになれば、これはもう環境基準というものは、いまよりははるかによくなる――よくなるよりも、理想的なものさえ確保できるはずであります。これは隅田川の河川維持のためには、水の流れを基準に合わせて東京都の両側や周辺における工場を制限すれば、隅田川は汚濁しなかったはずです。かまわず無制限に工場を許したから隅田川の水は汚濁したわけであります。そういう意味で、基準というものは非常に私は大切だと思います。ですから、国全体の国土の利用計画ということによって分散計画が進められれば、地価も押えられる。国土の高度利用を行なうことによって公害は防除し、除去できる。それが生産第一主義から生活第一主義への転換の実体である。ほんとにそう考えておるのです。ですから、そういうことをまず認めていただいて、まだ政策的に不足であるというなら、何かもっとこれに付加しようと、こういう立場で――そんなこと言ったって住民は反対するというけれども、あの知事や市町村長や市町村会議員の毎日のような陳情は、何とかしてこの法律を通してもらって、早く私のところへも工場が来るようにしてくださいよと、こういう陳情ばかりなんです。実際そうなんでしょう。それはあなたのところへも、そういう声は届いているはずなんです。ですから、そうだからといって、幾ばくかの公害はやむを得ぬと言っているわけじゃないんです。公害というものは、民族の将来を考えれば絶対になくさなければならぬけれども、生活レベルを上げるための手段は、やっぱり産業技術も幾ばくか上がらなければならぬ。自分たちは雪でもって非常に苦労していると、この雪は水である。この水が生産力に変わって自分たちの生活にはね返ってくるなら、よくしようという考えをみんな国民は持っているわけですから、だから、角をためて牛を殺すということばもございますが、これは釈迦に説法で恐縮でありますが、どうも公害におびえて生産をとめてしまって、原始生活――原始生活とは言わぬが、いまの生活に甘んじているのだというわけにはいかないんです。困難だが公害は排除し、除去して、生活はやっぱり世界で最高の生活をし得るようにやらなければいけない。そういうことでひとつ割り切ってくださいよ。公害論争はよく私も承知しておるのです。私自身も公害に対してはほんとうに深刻な考えを持っております。どうでしょう。
#131
○原田立君 じゃ、また公害は次にやりましょう。
 自治省から来てもらっておりますので……。固定資産税の減税をすると。で、最初の年度以降三カ年度にわたって固定資産税を減免する云々ということが、第七条にあるわけであります。この問題が衆議院の商工委員会で審議されたときに、当初この計画の考えられておったときには、二十五年間固定資産税を減免すると、こういうふうな考えがあったと。それがどうして三年になったのかと、こういう質問に対し、田中大臣は、非常にじくじたる気持ちである云々と、こう察うようなことが会議録に載っておりました。
 それで、私、問題としたいのは、その期間の問題じゃなくて、この法律から見ますと、地方交付税によって処置いたしますよと、こういうことになっているわけです。その基本方針が、そのとおりであるのかどうかがまず一つお聞きしたい点であります。
 それから、あえて批判的に言えば、同じ一つの器の中に入っているお金をその地域地域によって多少の特殊な問題があるからといって、こっちへふやしあっちへふやしと、こういうようなことであって、地方交付税であったら、それだけのワクというものは変わらないわけですね。だから、私、ここで言いたいのは、こうやって地方財源の確保という面からいえば、地方交付税で措置するというのではなしに、別に新たな減免したものについてはこういうふうに補助しますよと、きちっとした名目といいましょうか、法律というか、それをすべきではないか。地方交付税でまかなうというのは、ちょっとことばが悪いですけれども、一つのごまかしではないか、こんなふうな気がするわけです。
#132
○国務大臣(田中角榮君) それはある意味においては、この法律のポイントでもございます。これは二十五年間ということでなければならない。これは工場に投資しようというのです。膨大もない投資をやるのですから、場合によっては本籍さえ動かさなければならぬのですから、これは大問題なんです。それに対しては、少なくとも、相当長期な税制上の優遇といえば固定資産税の二十五年間というのと、それから不動産取得税の税の全廃というのがあるのですが、これは先ほどもちょっと述べましたが、各国でやっているのです。これだけの大事業というものはなかなか世界でみんな苦労しておりながら、どうにもならないような状態の中から一つ、二つ脱却している。その中で一番明確なのはロンドンのニュータウン法です。これは申すまでもない、たいへんなことであります。これはもう日本でもってあれだけの法律ができるかなと思うくらい鮮明な条文です。しかもそれは、この事業達成のために必要な事業費の要求があったら、政府はこれを計上しなければならない、予算編成権を拘束しておる。しかも、換地や土地収用に関しては裁判権を拘束しておる。公社の総裁に裁判の決定を待たずして換地及び土地収用の権限を与えておる。これでやってさえもなかなかあの仕事がたいへんであったということでありますから、なかなかむずかしい問題であることは事実であります。しかもその次に言うならば、御承知のイタリアで労働者住宅をつくる。それは国有地は無償で提供をしておる。これに近いものではないが、同じような方向をやっておるのがニューヨークのマンハッタン地区の不良街区の改良に対して、シティーと連邦政府と民間デベロッパーとの関係を調べれば、非常にうまく運用しております。
 イタリアは、ムッソリーニ政権時代からコミュニスト政権時代になってからもずっとその政策だけは続いておる。これは先ほども述べましたが、全く愉快な法律であります。用地は国が無償で提供する。生保及び損保の剰余金は労働者住宅以外に投資してはならない。使途を制限しているのですから、反対給付はちゃんと与えている。固定資産税は二十五年これを徴収しないという、こういうことでちゃんとやれているのです。そのために二十五年というものは、一つのめどだ。私はこれをやるためには、なぜ香港の都市改良ができないのか、ブラジリアはなぜこういう政策をとったのか、あらゆるものを全部調べたんです。ハワイの不良街区の改良から一切のものを調べてみて、やはり固定資産税の二十五年減免というのは、減免でなく免というのは、これはどうしても最小限のスタートに必要なものだとこういうふうに考えたわけです。ところが、それには財源補てんがあります。一番簡単なのは交付税率の三二%を一%引き下げて補てんをすれば、これは一番いいわけですが、そんなことなんかやれるわけがないのです。それはいま絶対に大蔵省はだめだし、なかなかそんなことはいまできないということでしょう。
 それなら第二の問題は、別に法律によって特定財源、それは政策的なものであって、政策メリットのある財源を考えなければならない。それは、三段階に地域を分けようとしたのです。誘導地域はいまの税よりも一段安い税、それから中間地帯は現行税率でやる、そして追い出し地帯は新しい税を賦課しよう、こういうことであります。そして賦課した税金を第三の地帯にやれば、これは政策的にも、理論的にも、学問的にもちゃんと通る、これはいいことであると。これはちょうど、さんざんたたかれながらやった自動車トン税と同じ思想なんです。やろうと思ってやってみたんですが、どうも、ことしの状態においては、先ほど申し上げたように、暫定税率の一・七五がどうも取れない。それから特別会計が、ちょっとことしは早い。それでいまの新税というのには、その一・七五との振りかえがありますから、どうしても新税は起こせない、こういうことで事務所税もみんなストップしたわけであります。それでいまあなたの御指摘を受けたように、どうも交付税ということでこれをやるならば、第二交付税をどうしてやるか、制度をどうするか、補てん財源は何をもって充てるかということをちゃんとしなければならない。これはいまの状態でできなかったというのが実態であります。これはもう来年度の予算編成には、当然この問題に対しては結末をつけなければ、三年ぐらいすぐたっちゃうんです。結末をつけなきゃならないというのがほんとうのところです。
#133
○原田立君 自治省に来てもらっているので、お聞きするんですけれども、どうですか、いまの田中大臣の言われているように、そんなふうな基礎で工場が移転する。その場合、固定資産税の減免をする。大体、推定はどのぐらいと見当されていますか。
#134
○説明員(近藤隆之君) 御承知のように、まだ、この工場再配置の青写真ができておりませんので、どの地域にどの程度の工場が行くのか。そうして、それに対して市町村が減免するのかどうか、そういうようなことが一切、いまの段階では未確定でございますので、われわれのほうで事務的に、この減収額がどの程度かということを積算することが非常に困難でございます。ただ、先生御承知のように、固定資産税は賦課期日が一月一日現在でございますので、四十七年度においては、この減収という問題は出てまいりません。したがいまして、四十七年度の地方財政計画には、この分は計上されておらないのでございます。今後、この法律施行過程におきまして、青写真がだんだんはっきりしてまいりますれば、次第に、工場がどういうふうに立地していくかわかると思いますので、その所要の年度におきましては、いまのところ、三年間はその他の地域立法と同じように、交付税でもってその減収額を補てんするという仕組みになっておりますので、減収額を積算いたしまして、その年度の地方財政計画を組むという形になろうかと思います。
#135
○原田立君 課長、この法律では、地方交付税でめんどう見よう、こういうことなんですけれども、これは私は地方交付税で見るよりは、特定財源をもって充てるべきだと、そういうふうに考えているし、主張もしているし、大臣にも聞いたところであります。あなたはそういう考え方についてはどうですか。
#136
○説明員(近藤隆之君) この法案の折衡の過程におきまして、いろいろあったわけでございますけれども、これも一つの地域立法という考え方をいたしますと、新産、工特、産炭地、過疎というような、それぞれの地域立法におきまして、固定資産税等減免いたしました場合には、交付税で三年間を限って補てんするという前例がずっとあるわけでございます。したがいまして、その範囲であるならば、国の一つの地域政策に対して交付税が協力するということで、この程度はやむを得ないのかということで、こういうふうにまとまったわけでございますけれども、工場再配置という、この政策を施行するためには、三年程度ではとても足りない。いま、通産大臣からお話ございましたけれども、そういう見地でございましたならば、これまた別途の財源措置をどういうふうにしてやるかということは、関係各省で相談すべき問題であろうと思います。
#137
○原田立君 要するに、財源を講じてやったほうがいいというような回答のように私は受け取るわけなんです。大臣、私もそのほうがいいと思うし、大臣のお考えもそのように聞こえるわけであります。それで、要するに、地方交付税で負担するというのは、一つのワクの中にあるやつをあっちへやったりこっちへやったり、それだけの話なんですから、そうじゃなくて、こういう大きな政策を実行しようとするならば、やっぱり他に特定財源を設けてやるというほうが、地方財政確立のためにも必要ではないか、こう思うわけです。そういう方向で来年度は進むというふうに解釈してよろしいですか。
#138
○国務大臣(田中角榮君) 私は、特定財源をつくるべきだという主張を続けております。来年も続けるつもりでございます。
#139
○委員長(大森久司君) 他に御発言がなければ、両案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。
 次回は、来たる六日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十六分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト