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1971/05/18 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 社会労働委員会 第15号
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1971/05/18 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 社会労働委員会 第15号

#1
第068回国会 社会労働委員会 第15号
昭和四十七年五月十八日(木曜日)
   午前十時十六分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十六日
    辞任         補欠選任
     高山 恒雄君     中沢伊登子君
 五月十七日
    辞任       補欠選任
     今  春聴君     橋本 繁蔵君
     中沢伊登子君     高山 恒雄君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         中村 英男君
    理 事
                鹿島 俊雄君
                高田 浩運君
                大橋 和孝君
                小平 芳平君
    委 員
                石本  茂君
                上田  稔君
                川野辺 静君
                高橋文五郎君
                橋本 繁蔵君
                山下 春江君
                佐野 芳雄君
                須原 昭二君
                田中寿美子君
                藤原 道子君
                高山 恒雄君
                小笠原貞子君
   国務大臣
       労 働 大 臣  塚原 俊郎君
   政府委員
       人事院事務総局
       職員局長     島 四男雄君
       労働大臣官房長  藤繩 正勝君
       労働省労働基準
       局長       渡邊 健二君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  北川 俊夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       警察庁刑事局捜
       査第一課長    宮地 亨吉君
       通商産業省繊維
       雑貨局繊維検査
       管理官      半田 幸三君
       建設省住宅局建
       築指導課長    救仁郷 斉君
       消防庁消防課長  青山 満夫君
       消防庁予防課長  永瀬  章君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働安全衛生法案(内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(中村英男君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 労働安全衛生法案を議題といたします。
 質疑に先立ち、前回の小平君の発言に対する答弁を求めます。渡邊労働基準局長。
#3
○政府委員(渡邊健二君) 前回、小平先生から調べるようにお話しのございました三点の問題についてお答えを申し上げます。
 まず第一点は、笹ケ谷鉱山の元労働者であった方々のように、老齢等によって労災補償請求を行なう場合の業務上の挙証がなかなか困難な方々に対する挙証をどうするかという点でございますが、労災補償請求を行なう場合の業務上外の挙証につきましては、給付請求書を提出する際に、労働者が業務上であることを立証することになっておりますが、たとえその疎明が不十分でございましても、行政庁が調査いたしまして、必要な資料を整え、業務上外の判断をすることといたしております。
 笹ケ谷鉱山の元従業員であった方々のうち、藤村さん、弘中さんにつきましては、労災補償給付の申し出がございましたので、補償給付請求書を交付いたしまして、請求手続を御指導申し上げておるところでございますが、請求書が提出されました場合には、労働基準監督署において、証明に必要な所要の調査を実施いたしまして、早急に業務上外の判断をいたしたい、かように考えております。
 なお、他の二名の方は、労働基準法、労災保険法適用後まで在職されたかいなかにつきまして現在調査中でございます。
 それから、第二番目の静岡県の松庫海事株式会社の大久保山採石場におきまして、採石に伴う土砂崩壊等をめぐって地元民との間に紛争が生じているが、この事業場内での採石方法に問題はないかどうかという点でございます。
 この松庫海事の大久保山採石場につきましては、五月十三日本省の安全課長をして安全関係の状況等について現地を視察させたところでございますが、その報告によりますと、本採石場につきましては所轄労働基準監督署の監督指導も行なわれておりまして、昭和四十四年にそれまでの採石方法を改めまして、階段式の採掘方法を採用いたしております。現在は四段の作業段を有する採掘面で採石を行なっておりまして、段の広さも十分でございまして、掘さく面の勾配も六十度内外となっており、災害防止上特段の問題はないものと考えられます。
 なお、隣接の二葉建設株式会社獅子浜採石場につきましても視察させたのでございますが、これも三段の階段式採掘方法を採用しておりまして、問題はないとの報告を受けております。
 それから、三番目の問題でございましたPCBにつきまして大阪府衛生研究所から昭和四十四年に労働省に報告書の提出があったのではないかという点でございますが、この点につきましては、労働省に対する公式文書で報告を受けたという事実はございませんが、労働省は従来も種々の研究機関や関係学会などから定期的に研究報告を取りまとめた冊子や年報をそのつど送付いただいておりまして、PCBについての研究成果が収録されております大阪府立公衆衛生研究所発行の四十四年九月号の研究報告も送付をいただいてはおります。労働省といたしましては、いわゆるカネミ問題が起きました昭和四十三年末からPCB関係事業場の実地調査等を実施してまいりましたが、これらの調査及びそれに基づく指導や、PCBについて規制を設けました四十六年四月制定の特定化学物質等障害予防規則の制定段階等におきまして、これらを参考にさせていただいたわけでございます。
 以上、前回小平先生より御指摘のございました三問について、その後調べましたところを御報告申し上げます。
#4
○委員長(中村英男君) それでは質疑に入ります。
#5
○小平芳平君 いまの三点につきましては、労働安全衛生法案の審議の過程でなお詳しくお尋ねしたいと思いますが、一点だけあらかじめお尋ねしておきたいと思いますのは、そうしますと、PCBの健康被害の報告、大阪府衛生研究所の報告は、労働省に実はあったと、したがって、大臣が予算委員会で、一切そうしたものはなかったと言ったことは間違いだったと、むしろ事務当局が大臣に対してうその報告をしてしまったということになりますか。
#6
○国務大臣(塚原俊郎君) ただいまの小平委員のお話は、予算委員会で関連質問に立たれたときのことだと思いますが、たしか労働衛生研究所についての私は御答弁をいたしたつもりでありまするが、私が承知いたしている範囲では労働衛生研究所ではそういうものがなかったと私は承知いたしておりますので、ああいう答弁をいたしたわけであります。いまお話しの、報告と申しますか資料の提出というものについては、私は承知いたしておりません。
#7
○小平芳平君 それでは、いまの答弁は、大臣が答弁するよりも事務当局が大臣に報告を間違えていたということなんですから……。
 それでは次に労働安全衛生法案についてお尋ねをいたしますが、まず大臣にお尋ねしたいと思います。
 第一点は、須原委員から前回労働災害の状況についてこまかいお尋ねがあり御答弁がありましたから繰り返しませんが、こうした労働災害がなぜ減らないか、依然として労働災害が次々と発生するかということについての御答弁の中に、それは技術革新が一つの原因だというふうなお話がありました。ところが、まあ、私たちが常識的に考える場合には、技術革新によって災害が減り、そして国民が幸福になるための技術革新でなくてはならないはずなのに、反対に、技術革新がもとで労働災害がふえたりあるいは減らなかったり、あるいは今回の大阪千日前ビルに見られるようなビルの大火災、こういうような点は、技術革新によって災害がふえたということは、いかにも世の中が逆のように受け取れますが、何かが基本的に欠けているんじゃないかというふうに常識的に受け取れますが、その点、いかがでしょう。
#8
○国務大臣(塚原俊郎君) 世の中が日進月歩で進み、また機械その他もそういった非常な早いテンポで進んでいるというふうに私は確かにお答えをいたしました。今日までの現実を見まするというと、そういう技術革新がすなわち小平委員御指摘のように労働災害を減少させるための手段でなければならないということは私は同感であります。しかし、今日までの現実の問題として見ますると、技術革新でどんどんたとえば新しい機械ができてくる。ところが、これに対するなれと申しますか、訓練と申しまするか、それがおくれておったと、後手後手に回ったという事実を私は指摘せざるを得ないと思います。そういう意味でああいう御答弁を申し上げたつもりでありまするが、今後は、そういうたとえば技術革新という面で新しい一つの機械、新しい一つのそういったものができた場合には、労働安全衛生というものを十分に前提としたものでなければならないと、私はこのように考えております。一見矛盾があるような答弁にとられるかもわかりませんが、今日までの現実は確かに後手後手に回ったことを私は認めざるを得ないのであります。したがって、今後労働災害の防止につきましては、たとえば機械につきましてもその他につきましても、十分なるそれへの対応性と、そう一言っては失礼ではありますが、未熟な、なれない働く方々に対して十分な知識と十分な認識を与えるということが絶対条件となってくるものと考えております。
#9
○小平芳平君 この労働安全衛生については、きわめていま必要なとき、重要な時期と、このように受けとめているのは、これは大多数の者がそういうように受けとめていると私は考えます。ところが、労働省今回提案の労働安全衛生法案によって、いま大臣が述べられたような、技術革新に対応し、あるいは技術革新によってこそ労働災害が減少する方向へいけるものかどうか。はたしてどの程度効果があるものかどうか。そういう点についてはいかがですか。
#10
○国務大臣(塚原俊郎君) 今日までの現実を私は申し上げたのでありまするが、そういうことをなくするためにも今度の労働安全衛生法案を御提案申し上げたわけでありまして、たとえば条文でいいますると九十八条でございましたか、もし間違いがありますればあれでありまするから、詳細は政府委員をして答弁させますが、そういうものを防ぐ意味においても、先ほど、後手に回ったという御答弁も申し上げましたが、それを防ぐために今度の法案を提出した次第でありまするから、私は十分対応策も講ぜられるし、また防ぐことも可能であり、また労働災害の発生を防がなければならない、またそれがなし得ると考えております。
#11
○政府委員(渡邊健二君) 先ほど大臣が答弁されました安全衛生教育、特に技術革新等によって作業内容が変更しましたときにも、雇い時と同様に安全衛生教育をしなければならないという規定は、この法案の五十九条二項にその旨の規定が設けられておるわけでございます。なお、その他新しい機械、新しい作業方法等が起きた場合につきましては、この法案の八十八条で、そういう場合には届け出制を設けており、さらに八十九条におきまして、それら届け出があったもののうち高度の技術的検討を要するものについては労働大臣が学識経験者の意見を聞いて審査をし、必要な場合には災害の防止に関する事項について勧告、要請ができる規定を設けておるところでございます。
#12
○小平芳平君 ところが、今回のこの労働安全衛生法案によりますと、労働者に対して労働安全を守らなければならないという規定がきわめて多いわけですね。第四条、労働者は、次々のことに協力するようにしなければならない。第二十六条「労働者は、……必要な事項を守らなければならない」。第二十九条第三項、「請負人又はその労働者は、……指示に従わなければならない」。こういうように、労働者はまず従えということが当面でありまして、その事業者がどれだけの責任を持ってやるかということに対しては国が事業者に経済的な財政援助を与える、そして安全計画はむしろ事業者が一方的にきめ、労働者は、いま指摘するような「従わなければならない」「守らなければならない」、こういうような全体的な構成になっておりませんか。
#13
○政府委員(渡邊健二君) 今回の法案におきましても、やはりこれは安全衛生の最低基準を設けるということが一番の中心でございますから、この法案で義務を課しておりますのは、第一には使用者でございまして、具体的に申しますと、各条項ほとんど使用者に義務を課しておるわけでございますが、特に「労働者の危険又は健康障害を防止するための措置」、二十条から二十五条まで、これにつきましては、事業主に詳細な義務を課しておりまして、さらにこれらの規定に基づきます具体的な使用者が守らなければならない事項につきましては、省令でこれが細部規定されることに相なっております。それらに対する違反につきましては、罰則をもって事業主に義務が強制されておるところでございまして、決して労働者にだけ義務を課して使用者には任意的にしておるということではないのでございます。ただ安全衛生という事柄の性質上、労働者御自身もいろいろな規定について安全に必要な事項をお守りいただくことが災害防止の効果をあげるために必要でございますので、いま小平委員が御指摘になりました何カ条かにおきまして、その旨を規定しておるところでございまして、何といいましても、義務を課しております基本は、この法案では使用者になっておるわけでございます。
#14
○小平芳平君 したがって、安全衛生に対しては労働者の意見を聞くだけで使用者の責任でやれ、こういうことですか。
#15
○政府委員(渡邊健二君) 第一義的に、いま申しましたように、安全衛生を確保する義務を持っておる者は使用者であり、そのために必要な義務を課しておるわけでございますが、安全衛生という事柄の性質上、その実効をあげるためには労働者も災害防止について協力していただくことが必要でございますので、それにつきましては、先ほど先生が御指摘になりましたような条項につきまして、労働者にもそれを守っていただくような規定が設けられているわけでございます。
#16
○小平芳平君 労働者が安全衛生を守るべきであるということは、私はそれがいけないと言っておるのではないのです。要するに、安全衛生委員会も労働者の意見は聞きおくだけで、事業者が一方的に労働安全をきめて労働者にはただ守れと、こういう結果になりませんかということをお尋ねしているのです。ということは、労使対等であると、労働協約事項であるということと、いま私が申し上げることと矛盾しませんかということです。
#17
○政府委員(渡邊健二君) 先ほど申しましたように、安全衛生を実効あらしめるためには、やはり労使が協力してやることが実効があがると思うわけでございます。そこで安全委員会、衛生委員会等につきましては、半数は労働者側の推薦を受けた者を委員にいたしまして、十分それと協議をいたしまして、企業に安全衛生対策を進めてもらうことにいたしております。しかしながら、やはり危害防止をすべき責任は使用者に第一義的にあるのであるということを申し上げたわけでございます。
 なお、安全衛生も労働条件でございますから、その意味におきまして、それについて労働者の方が労働三権を活用されまして交渉され、あるいは交渉された結果について労働協約を締結される。その権利は何らそれによって制限されるものではないわけでございます。
#18
○小平芳平君 あまりすっきりいたしませんけれども、要するに、安全委員会も衛生委員会も、それではこの議長はだれがつとめ、可否同数という場合にはだれがきめるというふうになっておるでしょう。
#19
○政府委員(渡邊健二君) 安全委員会、衛生委員会につきましては、たとえば安全委員会について申し上げますと、十七条の三項によりまして、議長は使用者側の委員がなることになっており、衛生委員会においてもそれが準用されておるわけであります。それから、これは先ほど申しましたように、第一義的にその義務を負うものは使用者側だということからさようにいたしております。
 それから、決定をどういう形でやるかというような問題につきましては法律では特に規定をいたしておらないわけでございまして、それは、そういう運営の問題については、労使の自主的なお話し合いによってお取りきめいただきたいということであります。
 なお、議長に使用者側がなることにつきましても、この法律では別に規定を設けまして、過半数で組織する労働組合との間における労働協約に別段の定めがあるときには、その限度においてはその規定を適用しないということで、協約によれば別段の規定もできることになっておりまして、その点、労使の自主性というものを尊重いたしておるわけでございます。
#20
○小平芳平君 安全衛生の義務は第一義的に使用者にあると、これも私はそのとおりだと考えます。ただ、この安全委員会、衛生委員会では、むしろ具体的な安全対策、衛生対策というものは、そうした使用者よりも働いている労働者のほうが身近な問題として意見が出るわけです。したがって、それが絶えず法律でもって「安全委員会の議長は、第一号の委員がなるものとする」ということになっておれば、これは使用者側の考えが安全衛生対策として打ち出される。ですから、安全衛生の義務は第一義的に使用者にある。その計画を検討し、立案しようという段階では、むしろ職場の代表こそ一番中心になって進められるべきものではありませんか。
#21
○政府委員(渡邊健二君) 安全衛生の実効をあげますためには、どちらかが一方的に自分の主張を押しつけるというようなことではなくて、ほんとうに労使が真剣にその問題について虚心たんかいに話し合って意見が一致したところで実行するということが効果があると思いますので、そういう意味におきまして、安全衛生委員会の運営等につきまして、そういう一方的な押しつけでなく、ほんとうに労使が対等に話し合って処置していくと、こういう運営がされることが望ましいという点については、先生の御意見のとおりであると考えます。
#22
○小平芳平君 いや、私の意見のとおりならば、この「議長は、第一号の委員がなるものとする」という規定がおかしいということを私は申し上げているんです。こういうことをきめておく必要がない。あるいは、きめるならば、交互にやるとか、そのほうが妥当じゃないですか。
#23
○政府委員(渡邊健二君) この趣旨は、先ほど申し上げましたように、運営は労使が、押しつけという形でなくて、十分に話し合ってやるということが望ましいわけでございますが、やはり法律的に申しますと、義務としては第一義的に使用者にあるということで、法律上は使用者側の委員が議長になる旨を規定しているわけでございますが、ただ、先ほど申し上げましたように、そこは労使の自主的な話し合いの結果を排除するものではございませんので、労働協約によって別段の定めがあるときにはその規定によらなくてもいいということで、労使の自主性の余地を残しておるわけでございます。
#24
○小平芳平君 そのほか問題点はいろいろありますが、時間もかかりますので、労働大臣に、要するに、今回のこの労働安全衛生法案は労働基準法を骨抜きにするものではないかという強い疑問があるわけですね。で、基準法自体を全体として問題にされているということもありますし、そしてこの労働安全の条項だけをさしあたって別の法案として提出したんだという説明も前回ありましたけれども、やはりこの労働基準法で労働安全衛生は労使対等できめるというようなそういう点、あるいは基準法の根本的な精神がこの法案によって骨抜きにされないかという疑問、こういう点についてひとつ大臣にお伺いしたい。
#25
○国務大臣(塚原俊郎君) 決して基準法を骨抜きにするというような考えは毛頭ございません。第一条にも、「労働基準法と相まって」――言うなれば、一つの姉妹関係にあると申しまするか、そういうものでございまするので、決して労働基準法の基本的な性格がこれによってそこなわれるようなことは絶対にございません。労働基準法は一つの憲法として、基本法としてわれわれはあくまでもその考え方を貫き、それを守っていく考えであります。この法律と――繰り返すようでありますが――姉妹関係というふうに御理解を願えればよいのではないかと、私はこのように考えます。
#26
○小平芳平君 まあ、姉妹関係にあるならば、もう少し条文の書きようがあるんじゃないかということを先ほどから言っているわけですが。
 で、次に職場の快適基準というものを定めるようになりますか。その点についてお伺いいたします。
#27
○政府委員(渡邊健二君) 労働災害を防止いたしますためには、最低基準を強制的に罰則で担保をして守らせるという従来の最低基準確保の行政が根幹といいますか、中心になることはいままでと同じでございます。ただ最低基準の確保だけで災害全体をこれからの技術革新の世の中でなくすことができるかどうかというような点も検討をいたしましたところ、やはりこれからの職場の中では、最低条件を満たしておるだけでなくて、働きやすい、そういう快適な条件というものをあわせて確保することが労働災害を減少さす、あるいはなくすための絶対的条件ではないか、こういうふうに考えたわけでございます。そういう意味から、今回は、労働大臣が必要と認めます場合に、それぞれの作業の実態、あるいは職場の実態に応じまして望ましい作業の環境、そういうものを示す、それによってそれを指針として事業主が職場環境の改善につとめる、こういう趣旨でこの規定を設けたわけでございます。
#28
○小平芳平君 そこで労働省としては具体的な快適基準を定めるのですかということをお尋ねをしているんです。
#29
○政府委員(北川俊夫君) 作業環境の標準としましていま検討をいたしておりますものは、たとえば室内、一般事業場におきます室温の問題、あるいは気流の問題、照明の問題、あるいはもっと進みますとバックグラウンド・ミュージックの問題、そういうような問題についてぜひこの際作業環境の標準というものをつくりたいということで検討に着手をいたしております。
 なお、こういうものにつきましては、先生御承知のように、たとえば粉じんとかガスとか、そういうものと違いまして、そういう有害物はむしろゼロである、ないに越したことはないわけでございますが、照明につきましては、明るければ明るいほどいい。あるいは気温につきましても、高低いずれかに偏すれば非常に労働環境としては望ましくないわけでございまして、その中間の望ましい標準、そういうものがあり得る。こういう考え方で検討をいたしてまいりたいと思います。
#30
○小平芳平君 したがいまして、労働省としては、この労働安全衛生法案が成立した場合においては、そういう快適基準を定めて行政指導するということでしょうか。
#31
○政府委員(北川俊夫君) 先生御指摘のとおりでございます。
#32
○小平芳平君 特に、私は、屋内の労働者の快適基準も一つの問題でありますが、屋外ですね、屋外の作業に対する作業環境の規定が今度の法案では少ないじゃないか。大体屋内についてのいろいろなこと、工場でも屋内工場についての適用される条項が多くて、屋外については、この前採石場のことでちょっと指摘いたしましたが、安全に、転落しないようにしなければならないというふうなあたりまえのことしか書いてないように思いますが、この点はいかがですか。
#33
○政府委員(北川俊夫君) 従来の基準法及びそれに基づきます安全衛生規則その他の規制によりますれば、ややもすれば、先生御指摘のように、工場労働といいますか、そういうところの安全が比較的重視をされておって、屋外労働につきましてはまだ十分でないという点は認めざるを得ないと考えております。ただ、従来の労働災害の発生の状況を見てみますと、たとえば港湾荷役作業であるとか、あるいはいま御指摘の採石作業であるとか、あるいは鉄道の保線作業と、そういうような屋外作業におきまして災害の発生率というものが非常に高うございます。これからわれわれは、新しい法律が制定されましたならば、これを契機といたしまして、そういう面につきましての規制あるいは最低基準の確保とともに、先ほど申し上げました望ましい環境基準につきましてもその点は検討をいたしたいと思います。
#34
○小平芳平君 じゃ具体的に、この屋外の労働者については「危険を防止するため必要な措置」とか、まあ、そういうことですね、「危険を防止するため必要な措置を講じなければならない」ということになっておりますが、危険はもとより、健康障害あるいは健康管理、衛生の水準向上、安全衛生教育、こういうような点についても、それぞれ屋内だけじゃなくて、屋外、特に出かせぎ労働者あるいは道路建設工事、こうした危険なところでなれない仕事をしている方々のためには、こういう具体的な問題について定める必要があるのでありませんか。
#35
○政府委員(渡邊健二君) 屋外におきます危険防止につきましては、本法案におきましても、二十一条、二十二条等々は屋外が主でございますし、二十三条等におきましても、一部は屋外に関係あるものもあるわけでございまして、それらにつきましては、詳細は、二十七条によりまして、これは省令で定められることになっておるわけでございまして、現在ございます安全衛生に関係いたしますいろいろな諸規則、こういうものによって今後詳細に規定をいたしてまいるわけでございます。
 なお、そのほかの先生御指摘の安全管理体制だとか安全衛生教育だとか、そういう問題につきましては、他の条項で規定されておりますものは、これは屋外、屋内を問わず規定は適用されるわけでございます。
#36
○小平芳平君 したがいまして、職場の快適基準を検討するにあたっても、そうしたもの、屋内の照明、温度、そういう作業環境が検討されるときには、同じように、室外の場合はいろいろな条件があってきめにくいこともたくさんありますけれども、私が先ほど指摘したような危険、二十一条と二十二条は、危険を防止するため必要な措置でしょう、両方ともですね。これはもう当然のことで、先ほど指摘したような安全教育あるいは健康管理、そういうものをあわせ検討し、検討を進めていくと。屋内に偏するのではなくて、屋外もともに進めていくと、そういうことでよろしいですか。
#37
○政府委員(北川俊夫君) 危険のみならず、健康の保持につきまして、屋外労働者につきましては最低基準のみならず、先生御指摘のように、快適基準につきましても検討をいたしたいと思います。
#38
○小平芳平君 それから、特にこの労働災害の多いのは下請ですね、下請。で、その比率はどのくらいに発生しておりますか。
#39
○政府委員(北川俊夫君) 親会社と比べまして下請関係で特に災害が多いというのは一般的傾向でございますけれども、なかんずく建設業あるいは鉄鋼業あるいは化学工業、そういうところでは大体親会社の三倍程度の災害の発生が下請に見られるというのが現状でございます。
#40
○小平芳平君 どうして下請の労働者がその親企業の労働者に比べて三倍もの労働災害が発生するのか、その原因はどのように把握されますか。
#41
○政府委員(北川俊夫君) 下請企業につきましては、やはり管理者といいますか事業主が安全衛生管理につきまして大企業に比べればやや熱の入れ方が足りないというようなことも一つございます。
 あるいは、それに伴いまして下請の労働者の方の年齢構成、そういうものから本工に比べましていろいろ問題がある。
 さらには、下請される事業内容そのものがやはり災害の起きやすい、あるいは職業病の発生しやすいというような危険、有害業務がたまたま下請に出される傾向があるというようなことも、親会社と下請企業の災害の発生の相異を形成しておる要因ではないかと思います。
#42
○小平芳平君 したがって、今回の法案ではどのようにそれを規制することになりますか。
#43
○政府委員(北川俊夫君) 今回の新しい法律の中では、そういう下請関係の労働者の保護、災害の防止ということにいろいろ規定を入れておりますけれども、まず第一は、この新しい法律の二十九条で一般の下請関係にあります労働者に対しては、元方事業者、いわゆるそういう事業を下請に出したところの事業者が、この法律の規定に違反しないように必要な指示をしなければならない。もし違反をしておるような場合には、それを是正するための指示、こういうふうに元方事業主に下請労働者あるいはその請負人に対しての指導、指示ということを義務づけておる。これが一つでございます。
 それから第二といたしましては、建設業とか造船業のように、下請関係の中で、特に親会社の労働者――本工と下請の労働者がこん然一体となって作業をしておるというようなところでは、その意思疎通あるいは連絡が不十分のために間々災害が起こるという事例が多うございます。そういうことに関連をいたしまして、そういう特定の元方事業者に対しましては、統括安全衛生責任者、そういう者を置くことを義務づけまして、そのもとに、この法律の三十条にございますように、たとえば親会社と下請のそういう企業との間の協議の組織、そういうものを置く。あるいは作業間の連絡調整を十分に行なう。あるいは作業場所を巡視する。下請の労働者の安全衛生の教育のための指導援助を行なう。そういうことにつきまして、元方の事業主が責任を持ってやるということをいたしております。
 それから第三点といたしましては、そういう特定の元方事業主が、自分のたとえば足場であるとかあるいは非常に危険な機械というようなものを下請の労働者に使わせるというような場合には、自分の直接使っておる労働者に貸すと同じ状態、すなわち、この法令で定めておりますところの安全衛生の基準に合わせるような状態でなければ貸してはならない。条項としましては三十一条でございますけれども、以上の三つの点につきまして、下請関係の労働者の安全衛生の確保を考えておるわけでございます。
#44
○小平芳平君 特に危険有害な作業、部長が先ほどあげられた三つの点のうち、第三の危険有害な作業を下請に請け負わせると、これはけしからぬじゃないですか。こういうことはもう、たとえばメッキ工場などでも問題のないメッキは親企業がやっているんです。それが、毒物が出て公害が摘発されるようなそういう公害の発生しそうなメッキは下請に出すわけです。ですから、そういうメッキの場合はちょっと当てはまりませんけれども、労働災害の場合は、そういう危険有害な作業を下請してはならない、禁止する、あるいは未熟練臨時工に危険有害な作業をさせてはならないというふうな、もっとはっきりした規定が必要じゃないですか、いまは。
#45
○政府委員(渡邊健二君) 危険有害な仕事だけを下請に出すといったようなことは好ましくないことでございますけれども、下請の問題は、これは単に安全衛生だけの問題ではございませんで、産業、社会全体の問題でもあるわけでございます。そういう意味におきまして、一律に下請に出すことを禁止することにつきましては、いろいろ問題があろうかと思うわけでございますが、そこで、先ほど安全衛生部長が申し上げましたように、この法律案におきましては三項目にわたりまして元請に一定の義務を、いままでよりも強い義務を課しまして、そういった規制によって下請関係における労働災害の防止をはかっていこうと、こういう規定をいたしておるところでございます。
#46
○小平芳平君 いろいろ問題があるでしょうけれども、下請労働者の健康管理、労災補償、こういうものは親企業が共同で責任をとるというようなことはいかがですか。
#47
○政府委員(北川俊夫君) いま局長が申し上げましたように、安全衛生の面からのみで下請関係を法的に規制をするということはなかなか困難でございますけれども、先生御指摘のように、危険有害な業務を下請に出してそのために本工と違って下請の労働者がそのしわ寄せを受けるというような事態は非常に望ましくない事態でございます。したがいまして、先ほども冒頭に申し上げましたけれども、この二十九条で、元方事業者が下請に出す場合に、この法令に反しないように、いわゆる災害が発生しないように適当な指示をしろと、こういう内容をきめておりますものは、その作業内容につきましてこれこれの防護措置を講ずべきである、あるいは先ほど局長が申し上げましたように、当該作業の下請に下請の労働者をつけます場合にはこういう教育をしてからつけさせるべきである、あるいはそのための援助をしてやる、こういう内容のことをこの法律では規制をいたしまして、それを行政的にも十分指導をいたしまして、下請の労働者なるがゆえにそういう危険有害業務による災害の発生のしわがそこに寄るということのないように、元方事業者に対して万全の指導をいたしたいと思っております。
#48
○小平芳平君 どうも、塚原大臣、法律で条文化すればこういうことになるかもしれないのですが、現状は、下請労働者が親企業の労働者に比べて三倍もの労災が発生している、現実に。また、しばしば新聞に報道される労働災害も、季節労働者が労働災害によってなくなられたという報道も再三われわれは聞いているわけですから、そういう点、私が先ほど指摘した二つの点――第一の点は、危険有害な作業を下請にやらせることは禁止するということ、そういう姿勢はとらせない、それから第二の点は、健康管理、労災補償、そういうような点については親企業が責任を持つ、こういうような何かきびしい規制がないことには下請の労災が減らないではないかということを私は痛感するわけですが、大臣、いかがですか。
#49
○国務大臣(塚原俊郎君) 下請企業の問題につきましては、単に労働災害のみならず、あらゆる面においてかなりのハンディキャップがあることは、これは言うまでもありません。前の通常国会でありまするか、政府提案――これは通産省所管だったと思いまするが――下請関係の法律案のいろいろ御審議を願った記憶も私あるのでございますが、私自身下請業者の実態というものをいろいろと今日までも見てまいりまして、確かにしわ寄せが来ているというか、ただいま政府委員が答弁いたしましたように、労働災害の発生率から見ましても、御指摘のような事情があるということは、これは大問題だと私は考えております。それで、今度の法案では、親会社といいますか、元請と申しまするか、親会社に対してかなりきつい義務を課しておりまするので、私はそれでカバーできると――小平先生はもっと法律的に強い措置をとれということでございまするが、私は今度の法案でそういった懸念をなくするための最大の努力が払われる、このように考えております。しかし、これが通過いたしまして施行後またどういうふうなことになりまするか、それも見なければなりませんが、十分この法案で下請に対する今日までのハンディキャップを、労働災害の面でカバーできるのではなかろうか、このように考えます。
#50
○小平芳平君 大臣はこの法律で十分きびしくしてあると言われますが、私はあまりそういうふうにも感じませんが、もう少し、これは結果がどう出るかが問題だと思います。
 次に、私が説明するまでもなく、この陳情は労働省でもお持ちと思いますが、列車の保線ですね、この保線の方々は列車の発散するふん尿をまともにかぶってしまうということに対する陳情、これは労働者の方々の職場がそうした列車のふん尿をまともにかぶるということがあるわけですが、周辺の住民もたいへんでして、周辺の、線路に近いところに車を置いておくとぶつぶつが一ぱい、朝とめて夕方帰ろうと思うと一ぱい落ちてきているとか、そういうことがあるのですが、そこまでは労働省としては無理だと思いますが、こうした条件の悪い労働に対する対策としてはどのように考えますか。
#51
○政府委員(北川俊夫君) 先日も実は私、施設関係いわゆる保線関係の労働者の方の組合――全施労と申しましたですか、その方の代表者約三十名の方から、今度の新法を契機としまして、保線関係労働者の安全衛生の確保というものにつきましての申し入れ及び陳情を受けました。その際に申し上げましたことは、先ほども先生が御指摘のように、屋外労働者につきまして従来もいろいろと施策は講じてきましたけれども、どうも屋外労働者は恵まれない立場にあって安全衛生法の日が当たっていないというのも事実であります。そういう点につきましては新法を契機にして十分の対策をやりたいということを約束をいたしまして、先週都道府県基準局長の一部に命じましてその実態の調査等をいたしておりますけれども、いま御指摘のふん尿の問題につきましては、数年前から問題でございまして、御承知のように国鉄当局と労働省といろいろ相談をいたしまして、いまの新幹線に見られるように、できれば全車両がタンク式のようなものに改造されればこの問題は全部片づくわけでございますが、御承知のような国鉄の財政状況でもございますので、計画的にその実行に移るということで話し合いをいたしておりまして、すでに国鉄当局では、そのテンポがおそいではないかというおしかりは受けるかもしれませんけれども、年々タンク車への切りかえ、そのためのいわゆる処理施設――いわゆる基地と申しますか、そういうものを全国の主要なところに確保するというような両方の施策を逐次行なっておられるというふうに私たち承知いたしております。
#52
○小平芳平君 その点は、屋外労働者の先ほどのこととあわせて推進していただきたいと思います。
 次に、有害物ですね、有害物で製造等の禁止と製造の許可とあります。この有害物の製造禁止あるいは製造許可、これの概略、労働者の意図するところを御説明いただきたい。
#53
○政府委員(渡邊健二君) 製造禁止につきましては、五十五条に規定、ございますように、黄燐マッチ、ベンジン、それから従来から禁止されておりますベンゼンゴムのり等のほかに、政令で定めるものといたしましては、ベータ‐ナフチルアミン、四‐アミノジフェニル、四‐ニトロジフェニルといったような発ガン性物質を定めることを予定をいたしております。製造の許可につきましては、五十六条に規定しておりますジクロルベンジンのほか、ジクロルベンジンを含有する製剤その他のものといたしまして政令で規定するものといたしましては、アルファ‐ナフチルアミン、ジアニシジン、オルソトリジン等発ガン原性物質を規定することを予定しておるわけでございます。
#54
○小平芳平君 そうするとこの五十六条、政令で定めるものを製造する場合は労働大臣の許可を受けるということですね。これは窓口は基準局になるわけですか、あるいは労働省の許可さえ受ければいいわけですか、その点ひとつ。
#55
○政府委員(北川俊夫君) 五十六条の製造許可は、先生御指摘のように、「労働大臣の許可」でございまして、ほかの関係官庁等の窓口の経由ということは必要といたしません。
#56
○小平芳平君 そこで、この政令を定める場合、いろいろ問題があると思いますが、発ガン物質としましてきのうの委員会で私が、活性炭の製造過程でタールを使う、その活性炭が公害防止でいま大活躍中の活性炭であるということ。その段階で使うタールによってガンが発生した――まあ皮膚ガンですけれども、皮膚ガンが発生したというような報告があるということで、連合審査のときに私が指摘したわけですが、これについて労働省から御答弁いただきたい。
#57
○政府委員(北川俊夫君) 昨日、内閣と公害防止の連合審査で先生から御質問受けました際に、私ちょっと先生の御趣旨を取り違えまして、いわゆる活性炭の製造工場においてタールによる発ガンの事例があるか、というふうに間違って受け取りましたもので、その際に、そういう事例はまだ報告を受けておりませんと、こうお答えを申し上げましたけれども、いま先生御指摘の点は、コールタールそのものによる発ガンという事例は、イギリスにも御指摘のようにたいへん問題がございますし、日本でも、イギリスほどの事例はございませんが、若干そういう事例は報告は受けております。
#58
○小平芳平君 まあ、イギリスでそういうガンが発生した、日本でも若干タールによるガンが発生したという報告があるということですね。ですから、それでどうしようというのですか。
#59
○政府委員(北川俊夫君) タールを使いましていろいろ行ないます事業所におきまして、タールによる汚染の防止あるいはそういうものを吸収することのないような措置、屋内で使います場合にそういう措置を講ずることによりまして、タールによる発ガンあるいはその他職業病の発生をぜひ防ぎたい。また、そういうことにつきまして、今回の法律、それに基づきますいろいろの規則で十分の規制をいたしたいと考えます。
#60
○小平芳平君 そう抽象的にいつも言われるのですけれども、タール――要するにタバコが悪いのもタールでしょう。だから、タールが低いということはタバコが少し安全になったと言えるのではないですか。ですから、そういうタールを実際上吸い込む――皮膚に当てればもう皮膚ガンになることはこれはわかったわけですけれども、実際またガンの研究所でも皮膚にタールを塗ってガンを発生さしているということですから、ですからタールを使用する工場で、タールそのものではないのですけれども、絶えず吸い込む、それが肺にたまるかあるいは胃腸のほうに行くか、そういうことによって肺ガンあるいは胃ガンということが発生する危険がないか、そういう点はどうとられるわけですか。
#61
○政府委員(北川俊夫君) タールにつきましては昨日も申し上げましたように、タールの中にベンツピレンという発ガン性物質を含んでおりまして、それを吸い込む、あるいはそれが皮膚につくことによってガンが発生するという事例はイギリスでもございますし、日本の場合でもタールを吸い込んでそのために肺ガンになったという事例が、わずかではございますが、報告例としてございます。ただタールを取り扱ってそれで胃ガンになったということはいまのところ聞いておりませんが、可能性その他につきましては、医学的に、私専門でございませんので、十分検討をいたしたいと思います。
#62
○小平芳平君 この点についてはきわめて重要な問題ですので大臣に御答弁いただきたいのですが、いま北川部長とやりとりしている中に、タールを使う作業がある、このタールを使う作業の過程で吸い込んで肺ガンになるか、あるいは飲み込んで胃ガンになるか、私たちが調査した範囲では、肺ガン、胃ガン、肝臓ガン、きわめてそうしたガンが多いということも、調査した結果明らかになっているわけです。それは医学上不明だということでいつまでもそのままにされていたのでは困るわけですが、いかがでしょう。
#63
○国務大臣(塚原俊郎君) 私もそのほうの知識は至って弱いのでわからないのですけれども、ただいま北川部長が答えましたように、医学界の権威の方にもいろいろ伺いまして、御指摘のようなことがあったら大問題でありまするし、ことに、いまガン対策というのは大きな社会問題でもあるし政治問題でもありまするから、万全の措置をとらなければならないと考えております。
#64
○小平芳平君 それでは次に、これは労働省に――労働省だけの問題じゃないのですけれども、たとえばバターを黄色くするための、そのバターイエローというものが発ガン物質だというのですね、タール系の。それで作業をする人に肝臓ガンが多いということはいかがですか。
#65
○政府委員(北川俊夫君) 着色剤の中で、たとえばオーラミンというような黄色い色素については、発ガンの可能性ありということで、いまの特定化学物質等障害予防規則の中で第一類物質として規制をしておりますが、先生いま御指摘の人造バターの中に入れる色素がはたしてそれであるかどうか、あるいはそれ以外のもので発ガン性のものであるかどうかという点につきましては、まだ調査が行き届いておりませんので、今後早急に調査をさせていただきたいと思います。
#66
○小平芳平君 やはり大臣、この点も労働大臣の一存でということではありませんけれども、どうもガンそのものが、大臣がお話しのように正体不明なんですけれども、しかし、発ガン性の物質だというものが明らかになれば、そうした作業環境、作業員の健康管理はもとより、政治そのものが、経済そのものが方向を少し直さなくちゃいけないと思うんですね。いま、従来の政治も経済もそういうような技術革新、産業発展でいきましても、肝心の人間が正体不明のガンや難病奇病で倒れるようなことでは何にもならないわけですから、したがって、部長からは調査いたしますというのですが、ひとつそうした単なる労働省の作業環境の調査――これも必要ですけれども、もう一つ高い視野に立って大臣の御答弁を承りたい。
#67
○国務大臣(塚原俊郎君) 先ほどからいろいろ発ガンのおそれのある物質についてのお話を聞いておりまして、私もちょっとこういやあな感じがいたしたのでありまするが、たとえばいまのバターを黄色くするというようなことになりますると、われわれも毎日食べておるのでありまするし、まあ、食べてどうこうというのでなくて、作業の過程においてというお話でもありましたけれども、ガンというものは、いま、私しろうとでわかりませんが、医学界では一時不治の病とされたのが、いやこれはなおるというような、世界的な権威がそれぞれ御研究なすってるということも聞いておりまするが、一方においてそういう努力が行なわれておるにかかわらず、いま御指摘のようなことで、逆に発ガンのおそれのあるものがどんどん横行しておるどいうようなことになりましたら、これはたいへんでございます。労働省所管としての仕事よりも、むしろこれは関係省といえば厚生省その他あると思いまするが、私もこれは重大関心を、またいい勉強をさしていただきましたので、さっそくそれこそ大きな視野に立ってこの問題に取り組んでいかなければならない、このように思っております。
#68
○小平芳平君 それでは次に健康管理についてですが、大体定期健康診断をやりましても異状なしとなるんですね。私たちが作業環境の調査や公害調査をやっても、もうほとんど企業の発表は異状なしなんです。けれども、あれこれ追及していってみると、異状なしなんてとんでもない、こういう実態もある、ああいう実態もあるという事例がきわめて多いところに問題があるわけです。ですから、この点についてはどう対処されますか。
#69
○政府委員(渡邊健二君) 健康診断につきましては、今回の法案におきましても六十六条等におきまして、従来行なっております健康診断よりも一そう綿密な健康診断を行なうことにいたしておるわけでございまして、特に有害な業務に従事する者と健康について特に問題があるような方々につきましては特殊健康診断を行なうことをこの法律でも規定いたしておりますが、そういう場合について、それが単にやるというだけでおざなりに行なわれませんよう、われわれといたしましては、特殊健康診断につきましてはどういう項目についてどういう健康診断をやるかといったようなことも定めまして、それが有名無実なものにならないように今後実効あるものにしていくようにしたいと、かように考えております。
#70
○小平芳平君 たとえば衆議院でPCBについての公聴会が行なわれましたが、たまたま私その会場に出ていたのですが、PCBによる職業病が発生しているかどうかという委員の質問に対して、企業側の代表で出て来られた方は、現在においても過去においてもPCBによる職業病はありませんと、こういうふうに当然のような答弁をされる。しかし、公害の学者の宇井純氏は、必ずあると、PCBによる健康被害は、職場における職業病は必ずある。ただ、いまのようなわけのわからない健康調査だけでは発見できないので、あるのだというふうに公聴会で答えておられましたが、こうなった場合、労働省はどちらをとりますか。
#71
○政府委員(渡邊健二君) PCBを取り扱う業務に従事するような方々につきましても、従前はその有害性等われわれも十分に承知いたしておりませんでしたために、健康診断義務等が必ずしも法令上明確に事業主に課せられておらなかったわけでございます。したがいまして、過去の点につきましては、そういう健康障害が生じているかどうか等について十分な健康診断がされなかった点はあったかと思うわけでございますが、昨年、特定化学物質等障害予防規則を制定いたしまして、その第二類物質といたしましてPCB等も指定いたしまして、それに基づきまして現在ではPCBを取り扱う事業者は特殊健康診断を行なうべき義務が課せられておりまして、現に昨年来その健康診断が行なわれておるわけでございます。
 なお、私どもといたしましては、現在やっているものはそういう規則によります健康診断義務がございますが、過去にPCB取り扱い業務に従事していた人たちについては健康診断が行なわれておりませんので、ことしの四月通牒を出しまして、現在PCBを取り扱う業務に従事していなくても過去にそういう取り扱い業務に従事した者につきましては、これは特定化学物質等障害予防規則による健康診断と同じ健康診断をそういう過去に取り扱った人についても実施するよう、通牒でその実施方を指導するよう全国に指示いたしましたところでございまして、そういうことで、過去に取り扱って現在取り扱ってない人についても、健康診断が、四月に通牒をいたしましたので、逐次行なわれておるわけでございます。
#72
○小平芳平君 それでは、この点についても最後に大臣にお尋ねして私の質問を終わりたいと思います。
 で、いまPCBの例を私申しましたが、要するに、企業で行なわれる健康診断、あるいはよくお役所で行なう健康診断はですね、健康調査はもう初めからないというような、疑わしい者は若干いるがたいしたことはない。まず公害被害地でも、職業による労働災害にしても、申し合わしたような報告ですよ、大臣。疑わしい者は若干いるが現在は問題ないとか、あるいは、過去においてこういう疑問が提起されたか、それは関係ないことかわかったというようなことでありますが、こうしたPCBによる健康被害の場合は、蓄積をするということ、あるいは再三大臣にお尋ねをした、またきょうの最初に局長から御報告のあった、砒素による健康被害にしましても、初めからこれは砒素じゃないんだと、まあ手足がふるえる、ああ、年とればふるえるのだ、腰が痛い、ああ年とれば腰が痛くなるのだ。そう言っていたのじゃ労災の防止にならないと思うのですね。ですから、頭からたいしたことはないというそういう観念にのらないで、むしろ労働省は労働者のサービス機関であると大臣も常に発言されておられますので、絶えずそうした問題が提起された場合は疑いを持ってかかる。疑いがはっきりすれば救済していく。救済のルートにのせようという努力をなさっていただきたい。とにかくもう企業内の健康診査だけで、これで労働災害防止は事足れりなんということはとても考えられないのが現実ではないか、このように考えますので、大臣の御意見を承りたい。
#73
○国務大臣(塚原俊郎君) 小平委員、非常に御熱心に今日まで、たとえば宮崎県の問題、島根県の問題、それから採石、それからさらには列車における先ほどの御質問のような問題等全般にわたって、特にPCBを中心としての御意見を交えての御質問、私はよく拝聴いたしましたし、今日までも実際各先生方の御質問を承っておりまして、労働省というものは従来の管轄からだいぶこれは前進してものを考えなければならない。というのは、環境庁の仕事もあり、厚生省の仕事もある。もちろん、政府としては一体に考えなければならないのですが、特に職業病というようなものを中心として考えますると、非常に分野が広くなって一また国民の健康というもの、労働災害、これから労働者を守るためによき環境をつくるための努力を払わなければならないということを痛感いたしておるわけでございます。ことにいまの医者の診断でありまするが、私はやはり医者は良心に従って、会社の御用的な診断をしているとは思いませんけれども、やはりPCB一つをとらえてみましても、非常に最近のものというふうに承っておりまするので、そういう面における配慮が足りなかったという点はあるのではなかろうか。しかし、ただ都合で、あるいは医者が良心に反してまで妙な報告をしたとは私は考えたくはございません。しかし、まあ私自身も非常に健康でございますので、ほとんど医者にかかったことがないからどうこう言うわけではございませんけれども、先ほど 申しましたように、労働対策というか労政というものは非常に広い分野に、しかも健康の基本になるような問題にまで伸ばしていかなければならない、それが今日の急務であるということを十分念頭に入れながら、もちろん、今度の御審議を願っておるこの法律案もそうでありまするが、今後の労政につきましてもそのことを念頭に置いて万全を期す決意であります。
#74
○大橋和孝君 それでは私は、先ごろ起きました千日のデパートの火事の問題について少しお尋ねをしたいと思うのであります。これはいろいろあちらこちらで委員会でも問題になっておると思いますが、私は、ちょうど火事の起こった翌日ぐらいにあの近くへ行った関係で、特にその実際の模様を見せてもらって、あまりにもびっくりをした状態でございます。もちろん、いろいろ調査の結果を聞きましても、あの建物についてもいろいろとあまり違法が少ないと、こういうふうに報告されているにかかわらず、あのような百十七名の死亡者を出したというような大きな事故が起きたわけでございまして、こういう問題について私はここに非常に大きな問題点が出ていると思うのですが、おも立った問題についてちょっとあとからお尋ねをしますが、これを調査を各省でされて、この問題について重要なポイントをどういうふうにお考えになっているか、それをまあ重複を避けて各省の考え方を少し伺いたい、それからお話をしてまいりたいと思います。
#75
○説明員(永瀬章君) 千日デパートの火災につきましては、特に七階のキャバレーにおられた方々か非常に多数おなくなりになりまして、まことに痛ましい、また申しわけない事故だと考えておりますが、この火災を調査いたしてみますると、特に出火したと思われます三階部分での火災の発見と、七階部分のキャバレーへの火災の連絡、これが十分に行なわれておらないんでございまして、この火災の通報の問題が一つの大きな問題点であろうかと思います。それに続きまして、次の問題といたしまして、火災を煙によって知りながら、約百七十名の方が七階におられたようでございますが、この方たちが大部分避難できないままにおなくなりになる結果になったという点につきましては、特に避難体制の欠除と申しますか、十分でなかった点が大きな問題でございまして、特にあの建物、御案内のごとく、キャバレーの部分に、近いところで直ちに使用できる階段が三つございますが、この階段が十分に使われておらない実態でございまして、なおこの階段のシャッターあるいはドアの開放状態は、現在も調査を続けておりますので、どのような状態にあったか、どの程度使える状態にあったか、これを調べてはおりますが、階段を使用しておりた方は、きのうまで調べた新しい状況では二名ばかりあるようでございまして、それ以外は全部はしご車あるいは救助袋が完全に使用状態にはなっておりませんが、これを伝って逃げられた方以外はあげてなくなられたということでございまして、この避難の不十分さ、これが非常に大きな問題と考えております。なお、それ以外設備関係の問題も多少ございますものの、大きな点は、いまの避難問題が一番大きいと私どもは考えております。
#76
○説明員(救仁郷斉君) ただいま消防庁のほうから御報告ございましたが、重複しない点につきまして御説明いたします。
 この建物は昭和七年に大阪歌舞伎座として竣工したものでございまして、その後昭和三十三年に大阪歌舞伎座が新しく別なところに竣工いたしました関係で、これを千日デパートに用途変更して使用していたものでございます。そして、これはデパートでございますので、しょっちゅういろんな改造工事等が行なわれておりましたが、問題のこの七階のキャバレーでございますが、「プレイタウン」は昭和四十二年に売り場からキャバレーに用途変更されたものでございます。まあ、この建物を、私も現地へ参りまして詳しくは調査いたしておりませんが、一応拝見いたしましたところ、一応消防庁のほうからも御報告ございましたように、現在の基準法に比べてみますと、こまかい点ではいろいろまだ完全とは言い切れませんが、少なくとも従前の建築基準法の規定よりも相当設備としてはいい階段等の設備があったんじゃないかというように考えております。しかしながら、やはりこういう問題が起こったということは、まことに残念しごくでございますが、これは原因としましては、いま消防庁から御報告申し上げましたような、いわゆる管理体制といったものが非常に不備であったということが言えるのではないかと思います。内装の問題等いろいろございましたが、階段が一つでも使える状態であれば、少なくともあんな大惨事にはならなかったんではないかというように考えております。
 以上でございます。
#77
○説明員(半田幸三君) 今回の人身事故につきましては、たまたま、火元であろうと、火災場所であろうと思われる「ニチイ」の売り場そこの三階四階には、大体約三億円にのぼる衣料品が山積みとなっておりまして、そこがまあ発火の火元といわれておりまして、たまたまそこで起きましたガスとか煙がいろいろと人身事故の大きな原因になったといわれておるわけであります。しかしながら、繊維の場合は一般的に可燃性が強い性質を持っている関係がございまして、またいわれておりますような合成繊維関係が特に有害ガスを出してそれが大きな事故につながったということははなはだ少ないだろうということでございます。まあ、繊維関係につきましては、これからも人身事故の安全という面から考えまして、できる限り燃えにくい繊維を供給していくと、また煙やガスの少ない繊維品を技術開発していくということが大事かと思います。で、あわせまして合成繊維等につきましては、初めから燃えにくい繊維の開発をはかっていきたいというぐあいに考えておりますので、そういう面での強力な指導、そういうもので事故を防止してまいりたいというぐあいに考えております。
#78
○政府委員(渡邊健二君) 労働省関係について申し上げますと、この問題の調査は、現在現地の大阪の基準局がいたしておりますが、やはりこれだけの犠牲者が出ましたにつきまして、一番の問題は、特に従業員に多数の死傷者を出しました七階の「プレイタウン」について申しますと、やはり避難の問題が問題であったのではないかと思うわけでございまして、従業員が避難の場所等を必ずしも事前に十分知っていなかったというような問題もあるわけでございまして、そういう前々からの避難についての教育、訓練、まあ、そういう点が最大の問題ではないかと、かように考えるわけでございます。で、今回の法案におきましても、安全衛生教育の徹底ということを規定いたしておりますが、就業時、採用時の安全教育等につきましては、十分にそういう緊急時の避難といったようなことを今後重点に置きまして、まずそういう教育から入らせまして、そうして今後二度とこういうような事故がないようにつとめていかなければならない、かように痛感をいたしておるところであります。
#79
○大橋和孝君 まあ、いろいろ各省であれを聞かせていただきましたが、じゃ、ちょっとまず消防庁のほうからひとつお聞かせをいただきたいと思いますが、このようなところで、いまの消防の体制、こういうことから考えますと、大都市、中都市あるいは小都市、あるいはまあ農村部とか過疎地帯などいろいろなところにあるわけでありますが、こういうところでひとつモデル的に一、二の例をあげて、いまの体制でどうなのかということをひとつ聞かせていただきたいと思います。特にこの中で聞きたいのは、まあ四十何階というような高層のビルもできておりますし、この前はソウルでは大然閣というのですか何かのホテルの焼けたとき、あれも百六十何名の死者を出したわけでありますが、あの例がありまして、大都市にたくさん高層建築物ができます。特に住宅の団地なんかも相当高いものができております。あの中でどういうふうになっておるのか。まあ、非常に団地そのものの火災についても私ども非常に危険に思っておるわけです。また、このごろは四十何階のビルもできておるわけです。この消防体制の中からいったら、私は、いまそういう高層建築物に対してはほとんど不可能な状態になっているのじゃないかという心配を持っているわけです。この今度の火事を見ましても、四階か五階ぐらいまでしか、ほとんどはしご車というものはきかなかった、こういうようなことから考えますと、一体はしご車がどのくらい威力を持ってこういう高層建築物に対することができるかということが問題だと思うのです。これはひとつ大都市の問題に対していま消防体制がどうあるべきかということに対する一、二の例を聞かせてもらいたいと思うのです。これはいろいろ過疎地に対しても問題があると思うのですが、その模型的なものをひとつとっていただいて一、二聞かせていただけないでしょうか。
#80
○説明員(青山満夫君) 全国の市町村における消防体制でございますけれども、現在大ざっぱにいいまして、常備の地域と非常備の地域がございます。常備の地域におきましては、常備の職員がおりまして消防団が併存しております地域でございます。非常備の地域は、消防団だけで火災に対処しておる地域でございます。現在常備消防を持っている市町村数は、全国で千八百八十六市町村でございます。これは全国の市町村数に対しまして約五八%、人口にいたしまして総人口の八八%をカバーしているというかっこうになっておりますが、ただいま御指摘のように、常備消防を置いておりましても、市町村の規模によりましてその消防力につきましては格差がございます。この格差につきましては、私どものほうで「消防力の基準」というものを示しておりまして、人口規模に応じまして、さらにまた市街地密集地の数に応じまして、それぞれ都市の形態あるいは都市の構造が違ってまいりますので、それによってあるべき消防力の水準というものも変わってまいります。たとえばはしご車につきましては、まあ、現在の一応の基準といたしましては、半径一・五キロメートルの範囲内に高さ十五メートル以上の建築物の数がおおむね十棟以上ある場合に一つというふうな基準になっております。そういった基準によって各都市ごとに計算をいたしまして、あるべきはしご車の数が出てまいります。さらにまた化学車につきましても、やはり危険物の数に応じまして基準があるわけでございます。したがいまして、同じような人口規模を持った都市におきましても、そういった中高層建築物の数なりあるいはまた危険物の数によりましておのずから差が出てくるわけでございます。で、一例を申しますと、現在、大都市のうち、まあ東京について申しますと、たとえば消防吏員数が現在約一万三千人、消防ポンプ自動車は四百七十台、はしご車が四十五台、化学車が五十三台、消防艇が九艇というような数字になっておりますが、中小都市のまあ代表といたしましてたとえば小田原市を例にとりますと、小田原市は人口が約十六万三千人でございますけれども、小田原市におきましては消防吏員数が百四十一人、ポンプ自動車九台、はしご車一台、化学車がなし、それからまた消防艇もございません。まあ、消防艇につきましては、小田原市の場合は「消防力の基準」によりまして別に配置をしなくてもいいことになっておりますけれども、そういうぐあいに各都市間におきまして差はございます。
 それからまた、常備をしていない過疎地域あるいは離島地域につきましては、ただいま御指摘のように、現在は消防団員だけで火災あるいはその他の災害に対しまして対処しているわけでございます。で、これはやはり今後の問題点でございまして、私どもとしましては、現在全国の市町村におきましてなるべく常備化を進めるように、さらにまた、離島あるいは過疎地帯等におきましてとても常備消防を持つだけの財政上の力もないというところにつきましては、組合をつくるか、あるいはまた周辺の都市に委託をするかというふうな形で、できるだけ全国的に常備化を進めて、それによって各地域の消防力の差をなくしたいということで現在努力をしているような次第でございます。
#81
○大橋和孝君 こういう災害のときに私どもは特に思うわけでありますが、ほんとうに消防庁あたりではそうしたことを徹底的に考え直してもらわないと、これはこの事故と同じような、もうソウルでは前にあったわけですね。それからまた同じようなことが繰り返される。おそらく今後も繰り返されるというわけですが、そこで特に私は全国の過疎のあれについてお尋ねを申し上げたのは、過密のところに高層建築物ができて、過疎のところがほったらかしてあると、過疎のほうにもやはりそうした消防力の差といいますか、これが格差が出てまいりまして、非常にまたおそらく問題が出てくるんではないか、こういうようなことに思うわけでございまして、特にそういう点で初めにその考え方をお伺いしているわけでありますが、非常にこういう問題に対して、こういう時期に、かなり経済的にも余裕ができたときなんですから、こういうところで一ぺん抜本的な考え方をしないと、ただこそく的な考え方では、いまおっしゃっているように、今後そういう大きな災害が起こらぬようにいたしますという答弁がありましても、実際はそれが、そのことばと実際とが合わないということになるわけでありますので、いま申し上げた事柄は、報告を聞きますと、私はほんとうに不十分だと思うんですね。これだけ東京都でいま言われているような形でほんとにはしご車がそれだけで、たとえば霞が関ビルの大火災が起こったときの場合にこれができるのかどうか。また私は、火災ばかりじゃないと思うのですね。また地震だとか何か天災、いろんなものがあるわけでありますが、そういうような場合に、救助に対して万全な方法がいま考えられていると言えるのかどうなのか。私は、今度の災害を見て非常に不安と申しますか、私は、まだ七階で倒れて寝ている人を見てまいりました。あの姿を見たら、何らの故障がないわけですね。着たままで。きれいな顔をして、何やら普通に働いている、そこらで町で会う人よりはきれいなように見えます。そういうような形で、何ら打撲をされた形もなければ、あるいはまた焼けた形もなければ、何もなくてなくなっているわけですね。ああいう悲惨な状態を見たら、もう少し考えられないかというふうなことを考えたわけでありますが、私はあの災害を見まして、この欠陥というものがやっぱり救助体制にあるということが、先ほどの報告にもありましたように、私もそういうように感じたわけでありますが、この現場での救助体制は一体どういうシステムで行なわれておったのか。あるいは、消防職員の訓練はどういうふうにされておって、あれはその現場でどう利用されたのか。こういう点についても聞きたいし、あるいはまた医療機関なんかとの連携ですね、こういうようなものもああいう時期にはしなきゃならぬだろうと思うんですが、それはどうなっておったか。
 それから、消防団員は防毒マスクをつけて入っていますけれども、防毒マスク一つ、ほかの人に与えるようなシステムにはなっていない。もちろん消防団員が犠牲になったら困るわけでありますから、もちろんその防毒面も必要でありましょうし、酸素を吸入するような装置も必要でありましょうが、この体制の中には、消防団員がたとえ一個、二個でも持って入るということは一つもないわけでありますから、あるいはまた、何かの形でそういうものを投げ込んでおけばおりる場合もあろうと思うんですが、そういうシステムという面から考えて、もう何か全然考えられていないような感じがいたしますが、そういうふうなところで、どういうふうな消防職員の訓練が行なわれ、また、それがどういうふうにして発揮されるようなシステムになっているか。ここら辺をちょっと詳しくひとつ実情を説明してください。
#82
○説明員(青山満夫君) 大阪の千日デパートのケースについて申し上げますと、消防機関におきまして火災を覚知いたしましてから四分後にすでに出動しております。出動いたしました消防車両は全部で八十一台でございます。この八十一台の車両のうち、いわゆるはしご車が七台、それからいわゆるシュノーケル車が五台出動しておりまして、これが消火並びに人命救助に当たっております。消防職員が、出動数が三百五十名でございます。そのはしご車七台によりまして救助いたしました数が全部で五十名救助いたしております。その他、消防隊のシートによりまして三名を救助いたしておるというようなかっこうでございます。で、消防におきましてはそういうことで、現場においてまず救助すると同時に、それをすぐ医療機関のほうに搬送することになりますが、その搬送のほうは救急隊が受け持っております。救急隊は全部で出場隊数が十二隊でございます。その十二隊の救急隊によりまして五十三人を病院のほうに搬送いたしております。現在、火災出動と同時に人命救助並びに救助した者を直ちに病院に搬送するという形態で人命救助に当たっておるわけでございます。特に医療機関との関係につきましても、これは現在非常に救急の件数が全国的にも多いわけでございますけれども、常時医療機関との連絡をとっておりまして、たとえば大阪等におきましては、本部におきまして、どこの病院に医師がいるかいないか、またベッドがあいているかいないかということは、常時消防本部のほうにおいて把握しておりまして、医療機関と密接な連携をとりまして、事故にあった対象をすぐ運ぶというふうな体制になっておるわけでございます。なお、そういった消防の救助並びに救急活動の訓練につきましては、これは私どもも常に指導いたしておりますけれども、常時そのための訓練は行なっているわけでございます。
#83
○説明員(永瀬章君) 補足さしていただきます。
 ただいま御質問ございました中の消防隊以外の方に対します呼吸の保護具の関係を申し上げますと、これは消防隊が用います呼吸保護具は主として空気呼吸器を使っておりますが、非常に操作がややこしゅうございまして、かなりの訓練を要するわけでございます。したがいまして、従来のホテル火災その他の火災で多数の方が煙のためにおなくなりになっている事情がございますので、私どもの研究所のほうで、まあ、たとえば旅館の部屋にでも備えつけておいて、煙の中を逃げていただく間でも呼吸の保護ができるような簡易な保護具を開発すべくいろいろ研究してまいりましたが、問もなく完成するというようなめどだけは立っております。
 なお、それ以外、関連して補足さしていただきますと、建築物の階段というのが原則的に避難を考えた階段でございまして、建築基準法でも規定されておりますが、歩行距離、そこまで歩いて行く距離が一定――きまっておりまして、一応その階段を使って逃げるというのが原則になっております。で、それ以外に取り残された方がある場合がかなり考えられますので、まあ、これに対しまして避難器具の設置を消防法で規定いたしておりまして、この場合一つの避難器具はございましたけれども、十分な使い方がなされませんで、かえってそれから転落されるという方も出ておりまして、階段への避難口の開放、まあこれが一番残念に思われることでございます。
#84
○大橋和孝君 ちょうどいまその研究の話も出ましたけれども、結局、今度の場合やっぱり煙、あるいは有毒ガスというものが問題になったわけでありましょうと思いますが、この科学技術の非常に発達しているいまでございますから、この煙とか有毒ガス、油あるいは新建材、化学繊維あるいはまた薬物、劇物、または原子力の発電所なんかでやられるいわゆる放射性物質ですね、こういうようなものが考えられるわけでありまして、これは消防あるいはまた防災という面からどうしてもこの研究体制が早くできない限りはこういうような惨事を生むことは当然でありますが、こういうことのその研究体制はいまどの程度に進んでおるのか。また、防災のためのその体制の中にこういうふうなものがどの程度まで組み入れられているのか、こういう点を詳しくこの機会に聞いておきたいと思いますが。今後、一たん災害が発生した場合にどういうようにこれを組み入れていくかという形ですね。いまどの程度まで進んでいるか。そういうような、ことを少し聞かせてください。
#85
○説明員(救仁郷斉君) ただいまの、いろいろな最近の火災事故が炎でなくていわゆる煙――一酸化炭素あるいは酸素不足というようなことで起こっておりますのは、これは御承知のとおりでございまして、そのために一応現在の建築基準法でもちまして、大規模なビルあるいはこういった特殊建築につきましては内装の規制というものをやっております。普通部屋の中では燃えにくい材料、それから廊下とか階段とか、こういった避難上非常に重要な部分ではむしろ燃えない材料というような形で規制を行なっているわけでございます。ただ、現在のそういう燃えにくい材料というものが、試験方法はこれはJISできまっておりまして、これを建設省も使っているわけでございますが、この試験方法は、煙の試験は一応ございます。煙の量がどれだけ以上出る場合には不合格というような規定になっております。しかしながら、煙の量はございますが、はたしてそれが、一酸化炭素とか酸素不足とかあるいはその他の有毒ガスといったような点につきましては、これはまだどの程度の量があれば危険なのかというような定量的な研究がまだ進んでおりません。現在、これを建設省の建築研究所におきましてそういった定量的な基準をきめるべく研究中でございまして、現在のところでは、秋ごろまでには何らかの結論が出せるのではないかというように考えている次第でございます。
#86
○説明員(永瀬章君) 火災に際しましてやはり一番大事なことは、早く知るということでございます。早く知ってそれを皆さんに知らして、そして逃げていただく。また同音に、消火をするというのが原則的な考え方で、また必要なことになっております。この場合の火災を知る設備としまして、自動火災報知設備というものがございますが、これも従来の火災にかんがみまして、熱で感知します機器だけでは煙の関係がございまして非常におそくなるということで、煙によりまして火災を感知をします煙感知器の開発を急ぎまして完成いたしてまいりましたので、これを規制の中に取り入れて、特に煙の多いところ、また早く知らなければならない場所には煙感知器の設置を義務づけてまいっております。しかしながら、過去の古い建物に対しましての既存適用がない部分がございますので、これも今後問題といたしまして、どの程度まで既存建築物にそういうようなものをつけていくか、これを検討いたしたいと考えております。
 また、火が出ましたあとの消火の設備といたしましては、油の場合におきましては水では消し得ませんので、これに対しまして、いままで一般的に使われておりますのは、動物のたん白質を分解いたしました薬剤を使いました空気あわの装置がございます。そのほか粉末の消火剤とか、あるいは最近はフレオンのようなガスを使って、あるいは非常に蒸発しやすい液体を使って消火しようという開発が次第に進んでまいっておりますが、またこれらの設置のしかた、どの程度にすれば有効であるかというようなことにつきましては、新しいものにつきましてなお検討を続けてまいっておりまして、できるだけ早い時期にこれらの設置の基準をつくっていきたいと、かよう考えております。
#87
○大橋和孝君 いまのお話を聞いておりますと、新建材なんか、あるいはまた今度の場合は化学合成繊維の売り場で繊維が燃えたということで非常に化学的な有毒ガスがたくさん出ていただろうということなんでございますが、こういう問題に対して、いまの研究の結果を聞いてみますと、まだまだなかなかそういう問題に適用されるように思われないわけでありますが、こういうことの見通しはどういうふうになって、そしていつごろになればこれが完成するか。特に新建材から毒が出ることは、いまもうしろうとの者でもみんな知っているわけですね。ところが、その毒に対してどういうふうにするかということは、まだはっきりと十分な措置ができていない。たとえばいま予防課長がおっしゃったように、煙が出るところに煙感知器をつけると言いますが、それが十分できていないだろう。この場合、煙を早く感知するための感知器はどことどこにつけているのか。そういうふうなことをもう少し伺っておきたいと思います。
 そういうような観点から申しまして、私は、このガスが出る問題につきましては、相当な先手を打っていかなければならない。ガスが出たら一〇〇%死ぬんですから、助からないんです、ここにおれば。そういう状態があるにもかかわらず、それに対して完全な処置ができていないのに、新建材を使ったり、化学繊維がやられているままでじっと見ているということでは、そういう災害が起こったときにはこれ以上の被害者が出ることが予想されるわけだ。私は、そういうことから考えてみるならば、国の責任が今度は問題になってきて、いま現にそういうものを販売させたり、そういうもので新建材を使って建物を直させたり、そして建築業界に許可をおろしているということは、そういうことが起こった場合の責任は国で持つというぐらいのことまで踏み切っておかなかったら、この問題は解決できないんじゃないかというふうに感ずるのであります。そういう意味からいいまして、研究の過程、今後の見通し、あるいは現在どれだけこういう災害に対してそれが組み入れられているかということを、ひとつ消防のほうと、建築を指導する側から明確にしておいてもらわないと、この問題の議論は成り立たないと思うのです。
#88
○説明員(救仁郷斉君) ただいまのガスの問題でございますが、これは先ほども申し上げましたように、現在研究実験段階でございまして、その実験段階でのお話を申し上げますと、世上よく新建材の有毒ガスというような表現がされておりますが、実際にそういったガスを調べてみまして、それがどういう影響を与えるか。これはネズミの実験でございますが、これを調べてみますと、まあ有毒ガスの中で一番大きなのはやはり一酸化炭素でございます。一酸化炭素と、それから物が燃えますために酸素が不足いたしますが、この酸素が不足するという状態でございます。これは新建材のみならず、およそ物が燃えますと一酸化炭素を出しますし、酸素が不足するという状態になるわけでございまして、そういった問題でものごとを総合的にやはり見なければならないというような形で現在考えられております。したがいまして、新建材のみならず、部屋の中に置く燃える物の全体の量、このものがやはり一番大きな問題になってくるのではないか。ですから、新建材だけを規制しても、これは全体の煙の量というものを減らすわけにはまいりません。むしろ、新建材を燃えない材料にします目的は、最初の火災が発生する段階でその発生をできるだけおくらせようということが主目的でございまして、煙の量全体を押えるためには、そういった新建材のみならず、たとえば極端に申しますと、じゅうたん、あるいは衣料、あるいは机、家具類、そういったものまで総合的に判断しなければならないのではないかというような感じを持っております。
 それともう一つは、そのほかにも塩素ガスあるいはシアンガスといったようなものも、分析しますと、若干現実に出てまいりますが、いろいろな学者の意見を総合しますと、おそらくやはりそういったものよりも、むしろやはり一番の原因は、一酸化炭素、酸素不足ではなかろうかというようなことが現在の研究段階では言われているわけでございます。
#89
○説明員(永瀬章君) この煙の対策につきましては、主として建設省の規制のほうが大部分になるわけでありまして、建設省のほうと常に連絡をとって建材その他の規制をお願いいたしておりますが、なお今後の問題といたしますと、やはり物か燃えます場合に、結局燃える物の量、これが大きければよけい出ますので、今後これの量の関係をどのように規制していけばいいのか、また、実情としてあまり規制し過ぎますとお困りの点も多多出てまいります。そこら辺のかね合いをどのようにしていけばいいのか、十分検討していきたいと考えております。
 ただ、先ほど出ました火災の初期状態に対しまして、火災の拡大を押えるというためには、先般参議院のほうで御審議をいただきましていま衆議院に回っておりますが、防炎カーテン、あるいは劇場で使いますところの合板、天井の合板とそれから舞台で使います合板、これらができるだけ燃えにくいものにする、そうしてそれの表示を明確にしていくことの法案を御提出申し上げまして御審議いただいたわけであります。そういうような面から、一つは、できるだけ火災が大きくならない、進展をおそくすることによって煙の量をできるだけ少なくしていこうという措置を考えております。
 なお、煙感知器はあの建物に対してはつけておりませんでした。と申しますのも、非常に古い建物でございまして、消防法の消防用設備の規定がこまかくきちんとできましたのが三十六年でございます関係で、既存のものとしての適用がいまだ法的にはかぶっておりませんので、つけていなかったという状況でございます。
#90
○大橋和孝君 そういう点が、私は非常に責任上、もっと私はシビアに考えてもらわなければ困ると思う。いま建設省のほうのお話を聞けば、一酸化炭素が主である。その新建材にかかわらず、燃えるものがあればたくさん出てくるんだと、こういうふうな考え方ですね。しかし、新建材を使うためにほんとうにガスが燃えているのが証明されている。私は、これは問題だと思うのですね。そしたら、どれくらいの容量を使えばどれくらいのガスとどれくらいの煙が出るということは、ほぼ、いまの段階では計算ができると思うのです。こういうことでありながら、今度は消防の予防を考えたならば、その煙に対してどうするか、あるいはまたガスに対してどうするかということが考えられていないし、その発生をおくらすことによって、他に害を及ぼさない、こういうようなことを考える。もちろん、それは考えなければならないでしょうが、実際においてはどれほどできるかということを考えなければいけない。これはまた、先ほど過疎の問題を取り上げましたけれども、過疎地域であれば、一軒まる焼けば覚悟しているわけです。そして隣のほうにその火災が移らないようにして、燃えているその家には放水はしないわけですね。隣のほうだけ水をまいて類焼を防ぐというのがたてまえのようであります。私ども実際見せてもらったことがありますが、そういう形ですね。そしたら、こういうような大きな建築物になって、たくさんの人がおるような場合には、それは燃えちゃっていいというわけにはいかないわけですから、これを十分なはどめをしなかったら、いまのような大きな災害が出てくる。むしろ、私は、言うならば人災だと思う。やることをやらないために起こるのだと、私はこう解釈しなければならないと思うのです。そういう観点から、まして、私はいわゆる防災なり、防火なりの体制の中でこういうものをどう組み込んでいくか。現段階で最大のことがやられておると言っていいのか。たとえば、いまのいわゆる煙の探知器がついてない。それにこれだけ化学繊維、合成繊維も売り場でたくさん売られておる。周囲には、やはり新建材で燃えやすいものがたくさんある。こういう状態であるということがわかっておるならば、何とかして煙の探知器くらいしなければならない。こういうようなことも私は当然考えていいことじゃないかと思うのですね。しかし、やはり防災とか、防火ということに対する熱意と申しますか、そういう考え方というものが、もう少し、ほかの建築なり、あるいはまたそういういろんな、もろもろの技術開発とマッチしていっていない。そういうことに大きなこういう問題が出てくるんじゃないかというふうに考えられるわけでありますが、そういう点で、この体制なりあるいはこういう法律等に対して、いまでは非常に大きな欠陥があるんじゃないかと思いますが、こういうものに対して将来どういうふうにしようとお考えになるのか。もう一ぺん消防庁のほうにもお伺いしたいし、また、この建築を許可する上においても、もう少し考えなければならぬ問題じゃなかろうかと、こういうふうに私は思うのですが、その点はいかがでありましょうか。
 それからまた、今度の場合、高層ビルが林立をしているわけでありますから、こういう状態で、先ほど申しましたように、いま消防器具というものに対しても、よほど大きな改良をされなければいかぬわけでありましょうし、あるいはまた、その他機械類に対しても、思い切った改良が、あるいはまた研究がなされる必要があります。特にはしご車の問題ですけれども、はしご車で今度はだいぶたくさん救助もされたようでありますけれども、全体からいえば、非常にこれは不徹底ですね、こんなはしご車では。私は、もし言うならば、ほんとうに高層建築物に対して一体どういうふうに考えていらっしゃるのか。これらの点についてもひとつ説明していただきたい。
 この二点についてお伺いします。
#91
○説明員(永瀬章君) 火災を発生いたしました場合に、何といいましても一番重点に考えなきゃならないのは人の命でございまして、これの避難ということにまず第一の重点を置かなければならないと思います。したがいまして、現在の法令におきましては、五十人以上の人が勤務され、あるいは執務する場所に対しましては、防火管理者を定めまして、その火の使用の制限、あるいは消防用設備の維持点検、あるいは必要な設備の維持管理、あるいは避難の方法、いわば避難計画及び避難訓練の実施等についての義務を負わせておりまして、これをまずやらせるというのが第一でございますが、そのほか、先ほど申し上げました、火災を知り、知らせ、そうして消す、あるいは避難をさせるという、器具、設備にしましても、なお今後の検討を続けながら、火災を初期にとどめて、多くの人の命及び財産を守るという方向には、さらに検討を続けていきたいと思います。
 なお、高層建築物に対しましては、実のところ、はしご車の能力といたしまして、高さにある程度の限界が、ございます。従来は三十三メーターのはしごが最大でございました。それが最近三十八メーターないし四十一メーターのはしごが開発されてまいりまして、これが大阪にも一台入っていたわけでございますが、このはしご車も、無限に高くすることは、車両の関係もございまして、不可能でございます。したがいまして、十一階及び三十一メーターをこえます建築物に対しましては、主として建築基準法のほうで、内部で避難をし、また消火の活動ができる、いわば、はしご車を使わないで消火をし、救助をする構造に建築構造そのものを持っていくように御努力願っておりまして、この点は、私どものほうからも建設のほうにいろいろお願いいたしているわけでございます。一例をあげますと、霞が関ビルのような建物でございますと、途中に安全区画というものを設けまして、そこに飛び込んでいただきますと、煙も何も来ない。そうしてそこの階段は十分に下まで使える。しかも、その安全区画に多少煙が入ってまいりましても、その煙を吸い出すところの装置までつけておりまして、そのほか、三十一メーター以上の建物では、火災の感知器にいたしましても、また、皆さんに知らせる警報の設備にいたしましても、強化いたしておりまして、さらに、これらを集中的に管理いたします管理の部屋を設けまして、そこからいろいろな情報なり避難の指令の出せる統一的な管理室を設けなきゃならない。また、消防隊用といたしましても、消防隊専用の上へ上がりますエレベーター、これの設置義務等をつけまして、はしご車の届かないところにおきますところの消火、避難体制の強化をはかってきている次第でございます。
#92
○大橋和孝君 たいへん苦労をしておられることはよくわかるわけでありますけれども、しかし、私がいま申し上げたいのは、現在、そういう状況になっているのに対して、やはり消防庁側から考えますと、これに対応して何とかできるという、その見通しがなかったならば、これはあまり消防庁としてもじっとしておられない現状だろうと思うのですね。これは先ほどもちょっと申し上げましたが、韓国のソウルでのあの大事故がございました。あのときには、今後こういうことがないようにと、各新聞も、いい教訓になった、この教訓を生かさなければいけないということが盛んに言われておりましたですね。ところが、これがまた同じようなことが繰り返されて、同じに近いような、なくなった人も出てくる。こういうような状態を考えますと、私はいまの消防庁のほうで予防を管理しておられる方が、そういうふうなことだけ配慮をしておるというだけではどうもいけないと。私はいま、また、こうした質問に立たしてもらいながら、受ける国民の側からいえば私は非常に不十分だろうと思うけれども、それならこれをどういうふうにしていくかということをもっと考えなければいけないし、少なくとも、こういう建材なりあるいはまた商品なりがたくさんあるところに対しては、もうすぐそういうことを指導されて、少なくとも、もうそこらにその管理体制の部屋でもつくり、専任が長となれば、これは私は防げると思うわけですね。そういうことも、これは少々過重であるかもしれないけれども、何かする方法を考えなければいけない。これがまた、中小企業なんかであるとするならば、ここへはまた百五十何軒もの企業が入っているわけですから、その人たちが、じゃあ、そういうことにするための費用を出したら1実際はそこで物を売っただけでそれが可能であるかどうかということも私は問題であると思いますので、そうであればそうであるような形で、ビルの責任者がそれを持つなり、あるいはまた、自治省なりあるいはまた国なりで、ある程度のそういうことに対する援助方法をとって、低利の貸し出しをするとかなんとか方法をとって、そういうものをして何とか具備できるような方向を進めていくとか、もっと積極的なことがあって私はしかるべきじゃないか。今後そういうことで研究いたします、こうしますと言ったって、もう韓国ではそういう事例があったわけでしょう。だから、またこの次にはそういうことが起こり得るであろうということがいわれるわけでありますから、しなければならぬ。特に私は、こういう大きな問題が起きたんですから、各都市にはそういう高層の建築物がたくさんある。また、そこで使っているものもいまと同じようなもの、置いてあるものもそういうものを置いてある。とすれば、それ以上のことが必ず起こることはもう明らかなわけなんですがね。きのうの新聞なんかを見てみると、自治大臣も都内を見られて、これも危険だ、あれも危険だと言っておられるわけですが、そんなことが一ぱいあるんですね。それが、企業のサイドで、小さい零細企業がそれができるかどうかということが考えられるわけでありますけれども、そういうことに対してもやっぱり適切な処置をしない限りこういう事故が起こるわけですから、起こることが明らかになっているのにそれをしないでおっては、私は意味をなさぬと思うんですよ。こういうようなことを考えてみると、いまさら私は、局長さんあたりがこういう答弁をしておられる間にどういう処置をされているかということをむしろ聞きたいと、こういうことに非常に焦慮を感じているんです。
#93
○説明員(永瀬章君) お尋ねの点、ごもっともだと存じますが、先ほどもちょっと触れましたように、消防法令の現在の関係では、既存の建築物に対しまして法令の適用が免除されているのがございます。これはほかの法令におきましても既存不遡及の原則がかなりございますので、その原則的なものに従っての法の仕組みではございますが、先ほど申し上げましたように、この事故にかんがみまして、そういう一般的な不遡及ではい甘ないと思っておりまして、いま御指摘のような、非常に煙を多く出す、あるいは火災が発生したならば非常に大きくなりやすいというようなところに対しまして、現在の新しい法令の規定、これを適用していかなければ災害が防げないと考えております。この法令の適用をどこまで適用させていくか検討に入っておりまして、これをやらせない限りは、御指摘のとおり次々と災害が起こることが予想されます。
 なお、先般続きましたホテル火災に対しましては、火災感知器の設置の義務を遡及いたしまして適用させたわけでございますけれども、この場合も、やはり資金的な援助を何らかの形で行ないませんと実行していただけませんので、そのときには、環衛公庫のほかに、県で単独に融資ワクをつくりまして、その融資によって実施していただくという形をとったわけでございまして、今度の事故に対しましても、そのような考え方で、不十分なところに対して設置をさせて、事故を早く知り、早く知らせ、早く消す、この措置は十分とっていく考えでございます。
#94
○大橋和孝君 今度の事故を見てみますと、私はそういうふうな指導が徹底してないと思うんです。何とならば、三つの階段で屋上へ上がる口がありますけれども、みな施錠されているんですね。向こう側にいろいろな物を置いてあけられぬようになっている。こういうようなことは、私はやはり建築課のほうでも指導をされて、あるいはまた消防庁のほうでも、それを、実地を見て指導されていくなり、こういうことはもう注意されているべきじゃないんですか。この七階でなくなった人が全部屋上へ上がっていたらみんな助かりますね。空気の流通もいいわけでしょうし、火災のところからかなり離れています。ただガスと煙でやられたというわけなんですから、あれは屋上へ行けばきっとみんな助かったんじゃないか。ところが、みんな施錠されているわけです。また、いろいろなものが張ってありまして、そこに働いているホステスさん自身がそこに入り口があるのかないのかも知らなかったということ、入り口があるなら、知っているなら、それを破ってでも出るかあるいはまた何かする方法ができたんですが、これをされていないことは、平素からの指導がされてないということであろうと思います。これは、ぼくは消防庁のほうにも責任があるんじゃないだろうか。あるいはまた建築課のほうからいっても、いままでの何回かにわたる内部改装なりあるいは使用目的の変更のときには、おそらく指導しておられるわけですから、その意味でもわかると思うんですが、こういうものがやられてない。近所では、もうそういうことが――施錠されておったとか、こういうことがいろいろいまうわさになっておるわけですね。これはもう私は、地域ぐるみの防災なりあるいはまた防火なんということは、いまやかましく言われておることですから、もちろん必要だと思いますけれども、こういう観点から申しましても、やっぱりおざなりな状態が続いておるというふうに私は思います。ですから、そういう観点から申しますと、ここらなんかでもうほんとうにもう少し徹底しているなら、この百何十人ほとんど助けられたわけですね。また、建築のほうからいいましても、私はあそこを見まして、外側に少しバルコニーがあったならば、外側の戸を締めてバルコニーに出ていれば、私は、助けてもらえるまでの問、いわゆる危険な状態は防げる。私は、高い建物に対するバルコニーのあり方というものが一つあるんじゃないか。部屋ごとにあれば、ちょっとバルコニーに出て窓だけ締めておけば多少助かる。下のほうから煙が出てきたりする場合があるでしょう。けれども、あのような場合を考えてみると、この建物のバルコニーというものは、私ども考えたことはなかったけれども、ああいうのが意味があるんじゃないか。特にあそこは屋上があるわけですから、屋上に出る通路もあるわけですね。これに出ておったならば、あそこにおる人はみんな助かったんじゃないか。それからまた、避難のための階段のところには必ず防火戸ができているわけですね。その防火戸さえきちんとしていてくれたなら、避難路をずっと行けるわけですね。そんなことは考えられているけれども、それが実際において用をなしていないというところに問題がある。こういうことを考えてみますと、私は、この問題を掘り下げて考えていきますと、そういうところに非常に大きな問題点があって、そしてむしろ国なり建築課なりあるいは消防庁のほうでやってもらう事柄の、ほんとうに私はずさんさがこういうようなものを出かしてきたんじゃないか、こういうようなことまで考えられるわけです。ですから、今度のような場合に、ひとつ今後そういうことが起こらないためには、そういういろいろなことに対してもっと掘り下げて、実際これだけのことをやればもう起こらないんだというものを、この際各関係省庁の方々が熟議をしていただきたいし、あるいはまた、ある程度の研究機関なら研究機関をつくっていただいて、今後こういう事柄が続いて起こらないようにするためにはどうなんであって、どれだけのことをしなければならぬということをひとつ徹底してもらわぬ限り、ソウルの問題があって今度また起こったようなこういう問題が、まだまだこれからまた繰り返されていくんではないか。こういうことを考えてみますと、私は、こういう意味での徹底をした考え方、こういうものに対してひとつ各省で相当な力を入れてもらわなければいかぬ時期になってきているんじゃないかと思いますが、そういう点、どうでございましょう。
#95
○説明員(永瀬章君) 今度の火災の場合の、特に七階におきますところの避難体制の関係でございますが、これは昨年の六月に、あのビルに入っております「プレイタウン」とそれから「ニチイ」ともう一つの千日デパート、これは千土地株式会社でございますが、これは三つの権原に分かれております関係で、これらの責任者を集めましてそれぞれの防火管理について一もちろん避難も含みますが、防火管理についての体制の強化を指示いたしておりまして、特に上の「プレイタウン」については、十月に避難の関係の指導をしております。それの報告によりますと、階段は平素はいろいろな関係で締めておりますが、火災の際にはそれをあけるべく処置をしてあった、そして階段のマスターキーを支配人に渡してあったようでございます。しかしながら、結果的にああいう形になっておりまして、私どもの見ますところ、非常に残念な事故でございまして、いろいろ設備はございましても、それが宝の持ちぐされになって使われていなかったという点が非常に悔やまれてならないわけでございます。なお、今後ともこの設備の面と人の管理の面、ことにとっさの場合にそれが有効に使えるような体制を十分整えていただくための指導の強化、これに十分につとめていきたいと考えております。この火災の場合、各階段が全部下から上へほとんど全部が閉鎖されておりまして、普通の大きな火災でございますと、階段室の防火戸がどこかあいていたために広がったというのが通例でございますが、今度の場合は、全部階段が防火戸で締められていたわけです。あまり締め切り過ぎまして、屋上へ達するところの防火戸のかぎを持ちながらあけられなかったのが非常に残念なことでございます。これらの設備とそれから管理という両方の面で今後ともさらに指導を強化いたしまして、再度こういうことが起こらないようにいたしたいと考えております。
 なお、これにつきましては建設省からもお話があるかと思いますが、建設省とまず一緒になりましてこの事故に対しまして原因その他を徹底的に究明いたしまして、最も必要なこと、また最も効果のある方法は何であるのか、これを究明した上で、それらについての対策を樹立していきたいと考えております。私どもも今後ともこういう事故が再び起こることはまことに残念なことでもあり、怠慢のそしりは免れませんので、この点、十分な努力を払っていきたいと考えております。
#96
○大橋和孝君 もうそのことばだけでなしに、各大臣にこのことを十分に通じてもらって、各省で今後これだけのことを今度はやらなきやならない、そして、もうこういう期間内には完全な防御ができる、あるいはまた、これがありましてもこれが起こらないというそういうはっきりしたものを出して、できるだけ早くそうしたものを国民に知らしてほしい。国民はこれに対して非常に不安を持っておると思います。ことに、このごろたくさん住宅ができて、高層住宅におる人なんか、すぐ見て自分で身近に感じておる。これだけの狭さの中ではしご車が来て問に合うのかとか、いろいろなことがあると思います。今度の場合も、救助袋もほとんど使われてないわけですね。これがうまく使われておったら、これで助かる分もずいぶんあったろうと思います。こういうことを考えてみますと、おっしゃるとおり宝の持ちぐされだけれども、もっともっと言うならば、不徹底さがあって、この責任はだれがとるべきか、私が考えたら、やはり国及び地方自治体がとるべきじゃないか、私はそういうふうにまで思うのです、ここでは、御存じのように百五十八か何ぼかのたくさんの業者が入ってやっておるようですね。ですから、一人一人の業者に対しても相当な痛手ができて、中小企業の業者がその賠償もおそらくなかなか出せないでありましょうし、あるいはまた、そういうことなんかでいろいろなことが問題になってきて、おそらくいまおっしゃいましたような観光会社とかあるいはスーパーの会社とか、そういうような形で三者が会って、三者でいろいろ協議もされるかもしれませんと思いますが、いずれにしましても、私は国の責任というものも少しはここで考えてもらわないと、それぐらいの責任を持った観点でこういうものを防止するための一つのスタートにしてもらわないと、なかなかこれはできないと思うのです。
 また最後にちょっと警察庁にも聞こうと思うのですが、こういうものを調べていただいて、私はほんとうにこういう事件の責任はどこにあるのか、こういう問題は警察の捜査の側から調べてもらったときに、もちろん失火をしたところの者が一番責任はあろうと思いますけれども、いま言ったような段階で考えていくならば、単におまえらが悪いということだけではこういう大きな災害に対しての取り組みにならぬと思うのです。そういう点をひとつ警察庁のほうからの御意見もちょっと伺っておきたいと思います。
#97
○説明員(宮地亨吉君) お答え申し上げます。
 御案内のように、本件火災の直接原因につきましては、三階の呉服コーナー付近におきまして当時電気工事をやっておりました作業員のたばこの火の不始末によるということが認められましたので、十四日の午後十一時五十分にその作業員を逮捕いたしました。現在取り調べ中でございます。また、いま御指摘の、多数の死傷者を出した「プレイタウン」の責任者につきましても、防火管理上の問題、あるいはまた火災当時の従業員の誘導その他いろいろな問題につきまして、業務上過失責任の有無について鋭意捜査を進めている状況でございます。
#98
○大橋和孝君 建設省にちょっとまとめて一、二伺いますけれども、こういうような火災を見まして、定時の点検ということが私は十分にできなかったんじゃないか。ことに、いろいろな使用目的を変えられて改装しておられる、こういう段階。いままでのような事柄は煙が出たりいろいろ問題があった。それが使用目的が変えられた。それは相当前からの建物である。こういう点から考えますと、定時の点検でこれを指導するときには、私はもっと指導のしかたがあったのじゃないかと思いますが、こういう点を振り返って考えられまして、この程度しかいまの法律ではできないのかどうか、このことについてちょっと聞かしていただきたい。
#99
○説明員(救仁郷斉君) この点につきまして、私現地で大阪市の建築行政の当局と資料等によって調べましたところ、たび重なる改装、用途変更をやっております。そのたびに手続が要る場合もございますし、手続の要らない小規模の場合もございまして、手続の要る場合にはちゃんと手続をとらせていたようでございます。それから手続が要らない場合でも一応相談という形で適切な指導はしていたようでございます。そういった意味で、この建物につきましては、建築基準法上は少なくとも設備的にはできていたのじゃないかというように判断しております。ただ、御指摘のように、非常に残念でございますのは、そういった設備がありながら、適切にかぎが非常時にあけられなかったというような点、この点につきましては私どももたび重なる経験によりまして、たとえば防火戸がありながら火災のときに締められていない。そういった苦い経験を私どもずっと経験してきたわけでございまして、そのために、私どもといたしましては、できるだけ人のそういった管理、人の責任でなくて、できるだけ自動化するような方法で設備をやっていきたいというような形で指導をしてまいってきております。そういった意味で、私ども建築行政のほう、あるいは消防のほうと御協力して、これが点検がもし十分に行なわれていたとすれば、ある程度こういった事故が未然に防げたのではないかというような感じがいたしますし、そういう点に関しましては御指摘のとおりでございまして、深くおわびしなければならない点があるのではないかというように考えている次第でございます。
#100
○大橋和孝君 現在のような、先ほどから申しましたようなこういう用材がいろいろ新しくなっていますね、中を美しくするためのじゅうたんとかなんかいろいろなものがあるわけですが、そういうような状態になってきて、いまの建築基準でそれに十分対応できる水準にあるのかどうか。私は、いまになってきたらもう少し水準を変えて、いわゆる建築基準のあり方をもう少し検討し直す必要がある。もっと補強するといいますか、それを何かしなければそういうことが徹底的に取り締まれないのじゃないかと、こういうことをまた起こさせないようにできないのではないか。取り締まりの問題じゃなくて、こういうことが起こらないようにするための措置ができるかできないかということがもう少し問題になるのではないかと思いますが、あなたのほうでは、いまの基準法でいいと思っておられるのですか。
#101
○説明員(救仁郷斉君) 現在の基準法は、昨年の一月から大改正によりまして施行しているわけでございますが、この昭和四十五年に国会を通していただきました大改正によりまして、との改正では主として防火避難、人命の安全確保という問題を中心に抜本的な大改正をいたしたわけでございます。そういった意味で、三階以上の建物の中の内装材につきましては、先ほど申しましたような難燃材料あるいは不燃材料を使うようにというような規制をいたしております。そういった意味では私どもとしては、現在の規定は現在の段階ではこれで十分であるというように考えている次第でございます。ただ、先ほども申し上げましたような、有毒ガス等、そういった点につきましてまだJIS等につきまして不十分な点があろうかと思いますが、そういう点につきましては、もちろん研究の成果が出次第、必要な限度において改正をするということは考えております。
#102
○高山恒雄君 ちょっと関連。いまおっしゃったように、四十五年に新しく建築法に基づいて燃焼建材は使用してはならない、公共施設あるいは旅館その他。ところが既存のそういうものに対しては改善を要求する命令を出すことができるというようになっておるでしょう。なっておるんでしょう。――それをどうしてやらなかったかということですよ。
#103
○説明員(救仁郷斉君) 先ほどもちょっと御説明いたしましたが、現在の建築基準法上は一般的には新しい改正規定は、古い既存の建物に対しては遡及適用できないということになっております。しかしながら、非常に危険だと思われ、判断される場合には、基準法十条によりまして、既存の建物といえども是正命令を出すことができるというような規定になっております。御指摘のとおり、こういった規定がありながら、この建物に対して検査の上、そして是正命令が出されなかったということはまことに怠慢のそしりを免れないんじゃないか、私ども非常に反省しております。そういった意味で、従来ホテル等の火災が頻発しまして人身事故が非常に起こった関係で、ホテル等につきまして、むしろ従来、消防庁のほうと御一緒に地方公共団体を督励いたしまして、そういった既存の建物について一斉点検を行なって十条の命令等を出しておりますが、残念ながら、こういつた複合ビルまで現在のところ手が回っていなかったということは非常におわびしなければならない点じゃないかというように考えている次第でございます。
#104
○大橋和孝君 いま触れられました改善命令といいますか、ちょっと調べてみますと、これは四千五百件ぐらいのところで改善命令を実際行なったのは三百七十九件というような報告も聞いているわけですね。そうすると、こういう改善命令が出されておりましても実際はなかなか実行されてない。あなたのいま言っておられるように、いまの建築基準法でよろしいのだと言うておられても、その建築基準法で改善命令を出しておられても、実際にはそれが不徹底な結果になっているという例もあるわけですね。今度のような場合でも、もし監視体制、そういうものを徹底し、悪いところに対してびしびしと改善命令を出しておられるならば、こういうこともだいぶ防げたであろう。たとえて申せば。あの建物でいろんなところを考えればあるわけですね。それから、ことにこれは古い建物であるからということで非常に改善されてない面がたくさんあるわけです。こういうところをずっと考えてみますと、もう少しそういう点をやらない限り、いまの基準法でけっこうでございますといって、こういう事故が防止できないことは裏を返せば確実になってくるわけですね。そういうことから考えると、私はいまのような答弁ではどうも納得できないし、国民も安心しないと思うのですよ。ですから、改善しなきゃならぬということを建築上から指導しておきながら、四千何百件という中でわずか三百、一割にも満たないわけですね。そういうふうなことで、その実態で済ましているのにはおそらく何かの隘路があるからだと思うのです。それができない問題点があるからだと思う。そういうことまで掘り下げて指導しない限り、これは改善されていかない。といって、命令を出してあります、しないほうが悪いのですということだけでは、実際行政の面からいったら、私は片手落ちになると思うのですね。もう一つ、そこに何か欠陥がある、改善命令出してもできない理由はどこにあるのだということを見きわめながら、やはりそれを指導していくのが私はほんとうの行き届いた行政じゃなかろうか、こういうふうに思うわけです。そういう意味で、私ずっと見てみますと、ほんとうに消防のほうにも先ほど申したぐあいに不徹底さがあるけれども、私は、建築の場合にも非常に大きな不徹底さがあるのじゃないかと思います。今度の場合、ここではことに雑居ビルなんですね。ですから、いろいろな意味で入っている人たちに、建築そのものに対する利用のしかた、そういうことに対する管理のしかたということに対しては非常に手落ちができやすいわけです。百五十八も入っているとすれば、それはなかなかうまく徹底しないわけですね。私は建物の管理というものは、やはり絶えずやっていかなければならぬわけですから、その監視体制をやはり建築課では指導する必要があると思う。今度のような、こういう特殊の場合、これはほかにもたくさんあるわけです。同居してたくさんの人が入っているビルというのは、大きければ大きいほど、あると思うのですが、そういうものに対してどういうふうに指導されるのか、私は建築課の立場でももう少しやらなければならぬと思いますが、建築課としてはどう考えておりますか。
#105
○説明員(救仁郷斉君) ただいまの改善命令でございますが、御指摘のとおり、命令を出すのは簡単でございますが、これを実行させる担保をどうするかというような問題につきまして、実際上、これが一番むずかしいところでございます。先ほども消防庁のほうから御答弁いたしましたが、一応たび重なるホテル火災等におきまして事故が発生いたしましたので、環境衛生金融公庫の該当業種につきましては、厚生省と相談いたしまして、昨年度からこういった安全措置をやります場合には優先的にそういった融資が受けられるように措置が講じられておりまして、現在の集計では昨年度約三億円くらいの融資が予定されている模様でございます。しかしながら環衛業種以外の業種につきましては、まだそういった融資の制度がございませんので、来年の予算におきまして、私どもといたしましては政府系金融機関、いろいろな金融機関ございますが、そういったところにお願いいたしまして、いろいろな業種にそういった融資の道が開かれるように努力してまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
#106
○大橋和孝君 徹底したひとつ指導をしてくださいね。そんなことじゃとてもだめだと思います。もう言われることは、やはり筋道はついておりまするけれども、実際に行なわれてないわけですね。
  〔委員長退席、理事高田浩運君着席〕
金を融資してもらっている、それじゃ何件できているか、いろいろなことを詰めて話を聞きたいと思いますけれども、時間の都合もありますから、それはいたしませんが、特に、そういう点はひとつ考えてもらいたいと思います。
 特に、私はここで最後に建設省に考えてもらいたいことは、最近の建て売り住宅あるいはまた、今度非常に四階、五階という高い団地ができております。こういうものに対して、いまおる人たちが非常に心配をいたしておるわけですね、袋小路もあります。もっとひどいものになれば、ほんとうに消防車が入れるかと思われるところもできているわけです。こういうようなものをいまの段階で再検討しないと、ここらにも同じような災害が起こるのですよ。あなた、いまの段階でそういうことは起こりませんということを言えますか。そうなってみれば、私は責任上、そんなことをしておってはいかぬのじゃないか。ちょうど私は京都から出ておりますが、京都でこの問うち、見てまいりました。天上川が旧年はんらんしたことがありましたが、いまはなくなっている。いま、ないからいいと言いましても、何かの集中豪雨がありましたら、また起こるでしょう。私は火事ばかりではない。天災――地震とか、いろいろな災害があると思う。そういうすべてのものの災害に対して、やはり公団をつくったりあるいは住宅なんかつくる場合、私は相当十分な手を尽くさないと、同じようなことが起こるのじゃないかと思います。こういうようなところを、一般過密の地帯に対しては一応、これで災害上だいじょうぶか、あるいはまた、火災上だいじょうぶか、こういうようなことなんかも一ぺん点検し直さないと、これはもういま声を大にしてそれをお願いしたいと思いますけれども、それをしない限り、また同じことが繰り返される、こういうことを警告いたします。ですから、今後ぜひともそういうことがないような一ぺん再点検、こういうものを各省でやってもらいたいと思います。自治省でもやってもらいたいし、建設省でもやっていただきたい、労働省も労働安全の面からそういうようなところに対しては、あるかないかということを点検していただきたい。おそらくいろいろなことで点検してもらわない限り、このいまのしわ寄せがこういうところにきてしまって、そういうことが繰り返され繰り返されして困るのは国民であるし、ほんとうにかわいそうな人が次々と出てくる。こういうことになるわけですから、そういうことに対して、ひとつ十分な建設省の考え方、――おそらく私は建設省が第一になって、そうして、自治省あるいは消防庁あたり、あるいはまた労働省あたり、あらゆるすべての方向に対して連携のとれるところは連携をとって、私はまだ十分じゃありませんけれども、そういう点を考えてもらって、この災害が再度繰り返されないような方法を、きちっと一ぺんここで立ててもらういい時期じゃないか。今度のこの災害を転じて、今後災害が起こらないというものにできたと、こういうようなことを誓えるようにひとつやっていただきたい。これはまた、各大臣にもひとつ十分……きょうは労働大臣は出ていただいて、労働大臣にはよく聞いていただいているわけですから、労働大臣のほうからもひとつイニシアをとっていただいて、そうして各大臣にこういうことを徹底していただいて、少なくとも二度とこういう災害を起こさないような徹底した再点検なり、あるいはまた法律を変えなきゃならぬものは変えて、そうして一ぺんやる。それから、それもいまおっしゃったような指導だけじゃなしに、裏づけのある方向にして、そうしてできやすいようにしてもらわないと、いまの中小企業だってできませんから、そういう点は、ひとつ確実にやってもらいたいと、こういうふうに思います。
#107
○説明員(救仁郷斉君) 御趣旨の点、非常にごもっともでございまして、私ども、例を公団、公社住宅等にしぼってみますと、これはたび重なる火災事故をやりまして、その結果いまの設計基準をもちましていたしておるわけであります。しかしながら、今度の事故の非常に大きな教訓は、いかにそういった設備を設けましても、それを管理する体制と相呼応しなければ事故が防げない。それから私どもが想像も及ばないような形で災害がやってくるということでございます。そういった教訓を私ども十分認識いたしまして、御趣旨の線に沿って努力してまいりたいというふうに考えております。
#108
○須原昭二君 まあ、実はいま大橋委員から御質問が続けられておりますが、その観点に立って若干関連でお尋ねをいたしたいと思います。というのはこのプレイタウンの事故というものは、七階が閉鎖をされてしまった。施錠されてしまった。その中で、人体に外部的な外傷はなくて、ガスで中毒を起こして皆さんがなくなった。
  〔理事高田浩運君退席、委員長着席〕
こういう事例なんでありますが、どうも上のほうへ目がいっておるようで、実は下のほうへ目を移しますと、この地下街の今日の利用状況、われわれ非常に心配をするわけです。特に私ちょっと調べますと、全国の地下街が百五十カ所ぐらいあるそうで、しかもまた延べ面積は百二十万平方メートル、そして私たち名古屋の中に住んでおりますが、たとえば名古屋駅の前あるいは東京駅の前でも、道路の下をどんどん掘っていって、そしてビルとつないでいく。それが延々とこの延長されていくという現況です。しかもその地下施設に就労しておる労働者が実に五万人、そして一日に日本の国民がそういう地下街を利用して、いわゆるショッピングあるいは通行によって使用しているのが、実に驚くなかれ一日に一千二百万人といわれておりますが、そういう状態を考えますと、たとえばその中で火災が起きた。いまのお話のように新建材あるいは合成繊維、そういう商品、そうしたものが燃焼いたしますと、当然有毒ガスが発生をするわけです。そういたしますと、あの地下街の通路というものはまさに一瞬にして私は煙突の役目を果たして、しかもそのビルとビルをつないだり、あるいは古い商店街から新しい地下街をつくっていく。その間隙には必ず閉鎖されるとびらがあるわけです。したがって、総合的な関係がない以上、もし火災が発生をしますと、その当該の商店街だけ締めてしまう。中に人がおるかおらないか、そういうものを検索するまでもなく、とめてしまうようなおそれなしとし得ないわけでありまして、幸いにしてまだ日本には地下街の火災事件がありません。しかしながら、いつ何どきそういう災害が起きるかわからないわけでありまして、そういう点を考えますと、労働安全衛生法案の中に、事業者は危険が予想される場合労働者を退避させなければならないと、こう明確にうたってありますけれども、労働者だけではなくして、それを労働者が中心になって、通行者なり一千二百万人になんなんとするこの通行者をいかに誘導するか、こういう問題がやはり問題点になってくると思うわけで、そのうち、そのほか避難対策のほかに、日常におけるところの換気、もし火災が起きた場合には、その有毒ガスをどう地上に排出させるのか、あるいはまた日常におけるところの、これは快適な労働条件ということにも関係がありますが、環境汚染の問題、そうした意味を考えますと、いずれにいたしましても労働はもちろんのこと、建設はもちろんのこと、厚生とか自治省とか警察とか消防とか、そういう各方面にわたる政策の一本化、これが必要だと実は思うわけです。そういう点について各省の施策を見ますと、まさに私はばらばらである、こう指摘をせざるを得ないわけです。
 特に、いま高層ビルの災害の問題が課題になっておりますが、この地下利用施設に対する対策というのは、まさに私はおくれておると言って過言でないと思います。したがって、この問題についてどう対処されておるのか。そうして、その横の各省の連携を今後どのように取り扱っていかれるのか、この点はせっかくきょう労働大臣がお見えになりますから、近く閣議の中においてもひとつ、この徹底をしていただいて、早急に抜本的な対策を立てられるよう、いつ災害が来るかわからない、災害というのは忘れたころにやってくるということですから、どうぞひとつその点を留意されまして対策を講じていただきたい。これを関連の問題としてひとつ御質問申し上げたいと思います。
#109
○国務大臣(塚原俊郎君) 今回の大阪千日前の事件につきましては、なくなられた方々、心から御冥福を祈りますると同時に、けがをされた方々の一日も早い回復を祈っているわけであります。あの事件の起きました直後、自治大臣とそれから建設大臣、私のほうも労働基準法に基づく安全衛生規則第九十八条によって、避難階段あるいは避難用器具、これの有効保持についての問題もありまするので、いろいろと協議をいたし、また私から文句をつけた点も多分にあったわけであります。ただいま地下街の問題も出ましたけれども、これも私は非常に重大関心を持っておりまして、すでに労働省におきましては政務次官を中心といたしまして、地下街対策の研究、検討というものを真剣にやっており、また取り組んでおるわけであります。また、各省においても、おそらくそういった機会があると私は存じておりまするが、先生御指摘のようにですね、高層ビルのみならず、いまの地下街、ことに、いまあげられた人数というものを考えますると、これはたいへんな問題だと私は考えております。いま御審議を願っておりまする労働安全衛生法案につきましても、これが通過いたしましたならば、たとえば新規採用者に対して教育の徹底、先ほど率先して労働者が誘導しなければならないというお話もございましたが、これは不特定多数の方々にも非常な影響を与える問題でございますので、今後とも御趣旨のように、私自身かなり建設大臣と自治大臣に文句をつけておる立場にありまするので、今後とも、閣議その他の場所においてこれを反映し、ただいままで質疑応答のありました点を踏まえまして、あまり好きなことばではございませんが、禍を転じて福となすという処置をとらなければならないと強く考えております。
#110
○大橋和孝君 じゃ、今度はひとつ労働大臣お急ぎのようですから、労働省のほうの側に質問をしぼってちょっと伺いたいと思います。
 特に今度の事件を見まして、やはりこのたくさんなくなっている人たち、あそこで働いている労働者になるわけですが、こういう人たちは非常に雇用関係が不明瞭である。こういうような形で、非常に現場に行って聞きましても、また労働省のサイドからこれを見られましても、非常にこれは問題点があるわけですね。こういうことを、労働省のほうではどういうような点から、こういうようなものを今後どうしていこうかというような形をもう少しはっきりしていただかないと、またこういうような形が多く出てくる。むしろ、ここではお客さんが案外助かっているんですが、ここに働いている人たちが非常になくなった人が多い、パーセンテージからいくと多いわけですね。そういう点を考えてみまして、それはいろいろな条件があるでありましょう、キャバレーのことでございますのでお酒も入っておったかもしれないし、いろいろな条件はあろうと思いますけれども、しかし、やはり働く者の立場からこういう人たちを見ると、もう少しやはり、雇用関係の不明瞭さ、あるいはまた、いろんな意味で、たとえば賃金の問題からいいましても、制度上から非常に固定的な給料が少なくて、いろんな形に転化をされながら支給されておると、いろんな問題が山積しているわけです。ここらのあり方、――それだけにこういう人たちの被害が多かったじゃないか。また同時に、なくなった人がたくさんおったわけですが、そういった方の補償関係を見ましても、関係しておる四社でこれは一億五千万ですか、見舞い金として出すのは。まあ、新聞で報道されているのを私は読んだんですけれども、いろいろ考えてみますと、もう少しいわゆるこういう不安定労働者、――まあ、日雇い労働者に似たような形で不安定である労働者、こういう者に対して労働省としては、こういう時期に、こういう大きな被害が起こったときに、もう一ぺん考え直してもらって、そうして、こういうものをもう少し安定した職業としてこれを位置づけていかなければ、やはり働く者の補償にはならない。あるいはまた、いろんな意味で人権も守られないというふうな形も考えられるわけでありますから、いろいろ困難な条件は十分私も理解できるわけですけれども、それを困難としておかないで、やはりいまの賃金のあり方から見て、もっと安定をした労働条件のもとに働けるようにしないと、こういう災害のときには一番大きなあおりを受けるのじゃないかと思う。こういうことにつきましての、ひとつ労働省としての見解をお聞しておきたい。
#111
○国務大臣(塚原俊郎君) この事件が起きまして、直ちに係官二名を派遣し、さらに政務次官を団長といたしまして、関係官を現地に派遣したのであります。北川部長も現地に直ちに、はせ参じた一人でありますが、まあ、われわれのほうの所管といたしましては、まず、当面労災の補償の問題というものが非常に大きな問題となっており、その対策に万全を期しておるわけであります。で、何名ぐらいの者があったかということがもし必要でありますならば、政府委員をしてその数等については答弁させまするが、また、一般客の問題につきましても、業務上の災害と見なされる者もありますし、それよりも大橋先生御指摘のような、こういう環境に働く方々の時間の問題、賃金の問題、やはりいま、このような中で、ああいった形のものがあることは、これは実際でございます。しかも、なくなられた方を新聞等で拝見いたしますと、またいろいろ報告を受けますると、非常に生活を助けるためにお子さんのある方々が、非常な無理をされておるというようなことは、非常に胸を打たれるわけであります。ですから、そういった方がもっと健全な職場で働けるというような措置、それから賃金の問題、労働条件の問題もあるでしょう。これは労働省といたしましては、この問題を特に契機といたしまして真剣に取り組まなければならない、このように考えております。
#112
○大橋和孝君 ここの中を見ましても百五十八とか、いろいろあるわけですが、相当零細な企業が入っているわけですね。零細と言っては失礼かもしれませんけれども、たくさんの方が入っておられるわけです。これをずっと聞いてみると、なかなか、ここに働いている人たちの労災保険の加入率、――もちろん先ほど申しましたようなこういうホステスさんのような方たちは特にそうだろうと思うんですが、そういう形で、やはりこうしたせっかくいい制度がありますのにかかわらず、案外そういう適用が十分でない、こういうような形があるわけでして、おそらく今度のなくなった人の中にも労災の適用を受けられない人たちがたくさんあるんじゃないかと思います。いろいろ話を聞いてみますと、そういり気の毒な人たちには、まあ、いろいろ便法も考えられるかもしれませんけれども、やはりこういうふうな雇用関係をもう少しここで明確にするような方法をひとつ考えていただかなければならぬ時期ではないか、こういうふうに思うわけですが、その点いかがですか。
#113
○政府委員(渡邊健二君) 今回なくなられました方々のうち一番多いのはプレイタウンの従業員の方々でございますが、この方々がなくなられた方だけで七十九名おられます。プレイタウンは労災保険に加入しておられますわけでございまして、労災保険は、そういう場合には、日雇いとか臨時とかそういう雇用形態にかかわりなく、適用事業所であれば、そこで業務上災害にあわれた方に対しては全部保険の給付がされるわけでございます。したがいまして、そういう場合には、今回も労災保険から給付されるわけでございます。なお、お客の方々の中にも、取り引き先の接待等々業務上で来ておられたと思われる方がおられまして、そういう方を含めますと、なくなられた方だけで八十四名、負傷者が十四名、こういうふうになっておりますが、この方々につきましても、現在までの調査の状況では、いずれも労災加入事業場であるというふうに見られますので、業務上災害にあわれた労働者については、今回は労災保険から支給がし得る、かように考えております。
#114
○大橋和孝君 その百五十幾つかあるところの人たちもみな加入しておりますか。
#115
○政府委員(北川俊夫君) 現在までに調査いたしました段階では、プレイタウンの従業員が主体でございまして、下のニチイあるいはそれ以外の繊維関係のスーパー等で働いておられる方、労働者が死亡ないしは負傷を受けたというのはまだ把握しておりません。
#116
○大橋和孝君 私は、それに関連してちょっと質問しているわけですけれども、こういうふうな中小企業関係の人では、そういうふうなところに入っていない人がわりあいある。それが今度の業者の中にあるなしは別だと思いますけれども、いろいろそういうことがあることを考えますと、やはり労働省のほうとしても、やはりホステスさんにそういうことがあったと同時に、一ぺんこの時期に振り返ってもらって、そうして事業場でいまの法規に触れるような範囲はできるだけひとつそういうふうなことに適用さしていただいていく必要がこの中にあるのじゃないかという感じがいたします。
 それから、労働省にちょっと関連をしまして、私はこういうような繰り返しの中で、やはり労働省側でこういう災害を防止するためのいろいろな施策、これは、やはり先ほど大臣からもお話のありましたように、避難の器具だとかいろいろそういうことに対しても、労働上の問題から、労働省の側から、そういうことに対するいろいろな規定によって指導されているわけでありますけれども、今度の問題なんかでも、そういうサイドから見ていろいろな考えられる点がどういうところにあったか、ひとつ労働省サイドから今度の事件を見て様子を聞かしていただきたい。それが今後のそういう災害防止のための一つの大きな方向づけになろうと思いますから、ちょっと聞かしてください。
#117
○政府委員(渡邊健二君) 現在までのところは労働基準法に基づきます諸規則によりまして、こういう場合も含めまして安全衛生をはかっておるわけでございまして、今回の場合の関連で申し上げますと、たとえば避難口等については、これは有効に保持しなければならない義務が使用主に課せられておるわけでございます。今回の場合、特に従業員が多数なくなりましたプレイタウン等につきまして、避難口の有効保持等にプレイタウンの使用主側として違反があったかどうか、その点につきましては、ただいま現地の極力関係者等々と取り調べておるわけでございまして、現在までのところ、まだ明確な段階には至っておらないわけでございますが、今後ともそれら諸規則につきましては、常時厳格な適用をはかりましてこういうことがないようにいたしたいと思いますし、今回の法律では、新しい二十五条で緊急の場合の使用者に待避させる義務等も課しておるわけでございまして、それら一そう厳格な適用によりまして、今後二度とこういうことがあってはならないと思いますので、そういうことで監督指導をしてまいりたい、かように存ずるわけでございます。
#118
○大橋和孝君 これは労働安全にもそういうふうなことがあるということをもちろん私も了解しておるのですが、私はこの事件を見まして、やはりこれは避難を指導するというのは、むしろ現場で働いている人たちにやはり非常に大きな役割りがあるんじゃないか。これは経営者にその責任を持たせることももちろん当然必要だろうと思いますが、まず一番初めに労働災害を安全に導くための指導ということは、やはりその働いておる場所の人が最も身近に自分の危険を感ずるわけですから、そういうときに指導するということはこれはたいへん必要なことではないか。そういうことから考えますと、やはり災害防止指導員という形の問題ももう少し位置づけをして、そしてこの働いている現場の人たちがそういうことをもうやらなければいかぬということに私はなったほうがよりいいんじゃないかという感じを持ちますので、ひとつつけ加えておきたいと思います。
 それからちょっと大臣もおいででございますから、これとは関係がございませんが、この問題も今後の災害を防止する上において少し関連すると思いますので、大阪のあの尻無川の問題を私はここでひとつ大臣に考えてもらいたいと思います。
 その問題点は何かと申しますと、あそこでは御存じのようにもう御調査もなっておりますから、工法の中でいろいろ問題があって、そして、あの工事は中止命令が出されておる。ところが、あれの経過について詳しくは時間がありませんからごく簡単に問題点だけを申すわけですが、そういうふうなことで行なわれておりましたけれども、その災害の防止の実施計画によってその現地のいろんな工事を見ても何といいますか、空気ケーソン工法とかなんとかいっておりますが、そういうような形で行なわれているのに災害が起きたわけだから停止になった。それが停止になったのが、ほんとうに災害が防止できるという的確なあれがないのにかかわらずその事業が再開された。私は、今度の会議を通じましても、十分なことがされないうちに重なってくるようなことを考えますので、やはり、ここの問題なんかもいろいろ問題点があるのではないかと思いますが、こういうことについてどういうふうな把握をしていらっしゃるか。
#119
○政府委員(北川俊夫君) ただいま御指摘の尻無川のケーソン工事の再開でございますが、これは昭和四十四年の十一月の二十五日に災害が発生をいたしまして、直ちに作業停止命令を労働基準法に基づいて基準局長が発令をいたしております。ただ、その後事故発生の原因等につきましていろいろ検討いたして、その安全確保につきまして一応のめどが方策として立ちましたので、その点につきましてそれぞれ業者に対しまして十分な指示をいたしております。しかも、その施策が行なわれたかどうかの確認措置をいたしました後に、一月の十七日に右岸及び左岸の潜函工事につきまして作業停止命令の解除をいたしております。その際に行なわせました措置といたしましては、たとえばシャフトの継ぎ手ボルトのすべてをJIS規格に適合するように変えるということ、あるいはシャフトの動揺を防止するためにすべてのシャフトに控えを設けていること、あるいはシャフトの継ぎ手部分のパッキングを取りかえる等々でございます。
 なお、災害の現実に起こりましたのは中央の潜函・ケーソンでございますけれども、これにつきましてもいろいろ実態を調査をいたしまして、いま申しました措置のほかにロックが五つございますが、そのロックのうちの一本をマンロック――人専用のロック――に専用するということを加えまして、そのほかにかなり指導的事項をも加えまして、これも災害が再び起こる心配はないという確認のもとで二月五日に中央ケーソンの作業停止命令の解除をいたしました。安全性につきましては、われわれ十分確認した上で作業停止命令の解除をした、こういうふうに考えております。
#120
○大橋和孝君 ことにその問題はもう少し堀り下げていきたいと思いますが、時間がないからあれしますが、ひとつ十分にこれを配慮して災害が起こらないようにしていただきたい。こうお願いしておきます。
 もう一つ、大臣のほうにおかれましても、そういうような形でございますから、今度の問題でひとつ十分に各大臣と連絡をとっていただいて、これをやっていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 それから通産省から来てもらっておりますので、ちょっと一言お願いしておきます。これもちょっと話をしたいと思いましたが、お願いしておきます。
 化学繊維あたりで非常に毒ガス性のものが出たり、あるいは燃えやすかったりいろいろなものがあるのでありますが、こういうものの保管場所を規制するとか、あるいは責任を明らかにするような方法を考えてもらうとか、あるいはまたいろいろな繊維に対する規制をしてもらうとか、何か一つ基準をつくってもらって、こういうようなことを考えてもらわなければならない時期でありますから、特にその点をひとつ大臣のほうでもお取りあわせいただいて考えていただきたいということを要望しておきます。
#121
○高山恒雄君 労働省にまず聞きたいのですが、先ほど大橋さんからも御質問が出ておりましたが、こういった移動の激しい従業員ですね、雇用対策上から、基準法に基づいて結局雇用関係の手続その他は全部やっているのかやっていないのか。実際問題として、十三日でしたか火災が起こって、実際に死体の整理ができたのは十六日でしょう。先ほどおっしゃったように、八十四名の死亡者に対して現在十四人だと言われましたけれども、私は、入院中の人が十二名だと思うのですが、これは人数はどうともいたしましても、実際の雇用の手続その他が完備されているのかどうか、その点をちょっとお聞きしたい。
#122
○政府委員(北川俊夫君) 基準法に基づきます諸手続といたしましては、現在まで確認しておりますのでは、プレイタウンにつきましては基準法適用事業場としての届けには出ております。それ以外の労災保険の適用につきましても、これは届けが出ておりまして、適用事業場として成立をいたしております。
 なお、それ以外に、いまおっしゃったように個々の労働者につきましてはたいへん職種柄移動の激しい職種でございますが、これは基準法上の特設の届け出その他の義務はございませんので、当該事業場がその労働者名簿を具備するということが要件とされております。賃金につきましても賃金台帳に記載を明記するということでございますが、その点につきましても私は今週の月曜に現地におもむきましたときに書類等を若干見ましたけれども、私たちがああいう職種の事業所で考えますよりも書類については整備しておるようでございます。ただ、いま御指摘のように、なくなられた八十四名あるいはそれ以外の負傷者五十数名の方につきまして、そういう雇用関係の確認あるいは賃金台帳の整備というものが完全であるかどうかは今後十分調査をして、早急に補償あるいはその他療養費の支給等につきましては支障のないようにいたしたいと思います。
#123
○高山恒雄君 そのことを完備しなければ、基準法には、御存じのように、安全管理者を専任して手続をしなければならないという規定があるんですよ。そうでしょう。そうすると、これは指導の立場に立つ人です、安全に対して。三カ月か二カ月でかわる人に対して、就業規則がかりにあるとしますならば、就業規則に基づいて安全衛生に対して管理者としては指導しなければならない。そうすると、だれが入ってきたかわからぬような状態の中でそれがまた労働省として掌握ができないのでは、実際これは空文にすぎないんじゃないかという感じがしておるものですから、当然これで二カ月でも三カ月でも多少おくれても手続をとる方法をこの際必要とするのではないか、この点を私は強く感ずるわけですよ。その点、どうですか。
#124
○政府委員(渡邊健二君) 基準法に基づく労務管理上のいろいろな適用を厳格にすること、これは先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、災害の予防、防止という点につきましては、その手続の完備云々がおくれたといたしましても、これはもう厳格にどうしてもやらなければならないものだと、かように考えておりまして、今回の法案におきましても、いわゆる採用時の安全衛生教育ということが規定されております。したがいまして、こういうような業種につきましても、今後採用しましたときに、それが短期間の労働者の方でありましても、特に一番重要な緊急時の避難といったような点については十分教育をいたしまして、入って間もない方に災害が起きた場合でも、そういうことの処置が不十分だったために犠牲者が多く出るというようなことは今後ないようにしてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
#125
○高山恒雄君 まあ、むろん、支配人が自分が一人だけ逃げてしまってかぎも持って行ったということが出ているのですが、警察の調べでもそれが事実らしいですね。そうなってくると、先ほど建設省なり消防庁からお話がありましたように、実際問題というのは現地教育ですよ。現地教育は消防管理的なものは消防署がやるとしましても、その内部におけるところの施設というものがどうなっているかというのは、これはやっぱり労働省関係の管理者が指導しなくちゃいかぬと、こう思うのです。こういう点が非常に抜けている。したがって、たとえ一カ月でも二カ月でも雇用した限りにおいては、人命を尊重するという意味からも、われわれは営利のためにやるのじゃないのだから、君たちの危険をどう防止するか、どう衛生的に君たちが健康であるかという点を指導するんだということを三人でも四人でも採用した者については完全に指導しておけば、ああいうことはなかったと私は思うんですよ。非常口は三つあるんですよ、新聞で見ましても。その三つの中で一つは完全に戸もあいておるわけです。ただカーテンが下がっておるだけで、そこにさえ行けば退避できたわけです。それができていないというのは、指導がしてないということが私は問題のやはり大きなポイントだと、こういうふうに考えておりますが、どうか、その点は、今後の問題として、特にああいう六階、七階という階上にあるキャバレー等については特段の考え方を変えていかなくちゃいかぬのじゃないかという感じがいたしております。これは私の希望として申し上げておきます。
 時間がありませんから簡単に申し上げますが、これは建設省ですが、今度の問題で一番問題になりますのは、いろいろいままでの質問に対して、規制のあるものについては措置されて、ある程度できておったということも私は言えると思うのですよ。けれども、たとえばこれはまあ全般的なビルを見てもいいんですが、排気設備ですね、これがないんですね。そうすると、先ほどえらい金が要るように言われますけれども、私は、いまの日本のビルは相当の窓がついているし、旧来のビルでも、窓としてはかなりありますから、それに適当な排気設備というのはそう金は要らぬと思うのですよ。そういうものこそいわゆる改善命令でやっておく必要がビルに対してはあるのではないか。そう大きな構造じゃないですよ。これは根本的に考えなくちゃいかぬ。なぜかならば、スプリンクラーはあるんです。スプリンクラーはあっても、ある程度の火熱が出なければスプリンクラーは働かない。今度の場合は煙に対する設備としてそれを防止するものは何かというと、やはりいわゆる排気循環装置があればあそこまでいかぬで済んだのではないかという気がするんですよ。この点、どうお考えですか。
#126
○説明君(救仁郷斉君) 御承知のように、昭和四十五年の法律改正によりまして、排煙設備というものを設けさせるようにいたしております。これは窓でもよろしいわけでございますが、窓も天井の近くの窓でなければ有効でございませんので、天井から八十センチ以内の窓がない場合には、機械で、ファンで抜くように、抜く設備を設けるというような規定になっております。おっしゃるとおり、排煙という問題が非常に重要でございますが、ただ、排煙設備の使い方、これは非常に問題がございます。たとえば、今回の場合、かりに七階に排煙の設備がございまして、それでファンをもちまして強制的にあそこで抜きますと、逆に下のほうから煙を呼び寄せるというような逆な効果も起こる場合がございます。ですから、そういった意味で排煙設備の管理というものの指導、これが非常に必要ではないかというように考えておる次第でございます。
#127
○高山恒雄君 私が言うのは、六階から七階に通じた排煙設備、排気設備をしようというのではないのですよ。各階ごとにやったらいいんですよ。各階ごとに、それは大した金じゃないですよ。いま宿舎も全部ありますわね。ビルはそれがなければまたたいへんでしょう。だから、一本のものにしようとするから大げさになってしまうのであって、少なくとも各階ごとにそういうものの設備があれば、私はあそこまでいかぬで済んだのじゃないかという気がするんですよ。それを検討してもらうことを希望意見として申し上げておきます。
 消防庁にお聞きしたいのですが、つまり避難設備ですね。非常口は三つあった。そのうちの一つはかぎがかかっておった。一つは非常口があってもカーテンで全部締まっておった。これは、労働省の先ほどの問題ではございませんけれども、ホステスにはそういう訓練が全然してなかった、非常口がどこにあるかわからなかった、こういうことですね。そうして、肝心の一つの非常口は、下からどんどん排煙が上がってくる。三つのものが一つしか使えないのに、その一つを知らなかったところに問題があるわけですよ。こういう場合の避難場所に、一カ所の――あれは何といいますか、袋に入って避難するやつですね、あれはどういう名前がついておりましたかね、救助袋ですか、これも一カ所しかなかったと書いてありますね。ところが、あそこは何平米とかいっておりましたね、二万九千平米ぐらいあるのでしょう。それだけの大きなところに一つでいいかということの問題があるわけですね。これも、いま、旅館等においては、救助袋だけではなしに、なわばしごも設備してありますよ。最近できるのはそういう設備がしてある。だから、これもそう大して金の要る仕事ではないと私は思うんですよ。どうしてそういうものを命令で設備させなかったかという点が、私は、ちょっと取り締まり上甘いんではないか、それで消防法の規制どおりにできておったとは言えないのじゃないかという気がするのですが、この点、どうですか。
#128
○説明員(永瀬章君) 避難経路につきましては、先生御指摘のように、あそこの階段が三つありながら、しかも、場所的に、ほかの場所と比べますと、わりにいい配置にあるように私も現場で見まして思いました。この場合、かぎがかかっていなかったクロークの前、これは避難非常出口の表示がすでにつけてございまして、従業員の方にあるいはお客にも目に触れるようになっておりました。これは徹底されていたのではないかという感じはいたします。また、カーテンが下がっておりましたバンドの横のらせん階段のほう、これには十二月の査察におきまして非常出口の表示がございませんから、これを早くつけろということを指示しておりましたのですが、ただ、場所的に、カーテンを取り去りますとシャッターがまる見えになる関係もあってか、ここのところはよくわかりませんが、まだ表示がされてなく、カーテンもどうもまだ取り去ってなかったようでございます。この点は非常に残念に思っております。
 なお、この避難口の階段に通じますシャッターあるいは防火ドアー、これの開閉関係につきまして現在なお調査を続けておりまして、昨日のところあたりになりますと、どうも開いたのではないかというような関係もうっすら出てきております。なおこれは今後とも十分調査いたしまして明確にいたしたいと思いますし、また、クロークのほうも、二人の方があそこから逃げられたような話もございまして、これもなお確実にいたしたいと思っておりますが、これらの階段が十分に使えますとあれだけの方がなくならないで済んだはずであります。
 先ほどもお答え申し上げましたように、避難となりますと、やはり階段を主としてお使い願う。そして、その階段が煙によって避難の障害にならないような措置をお願いいたさない限りは、避難が十分にまいりません。ただ、消防法令におきましては、階段を主体にいたしてはおりますものの、しばしば逃げおくれるケースがございますので、これに対しての救助袋の規定がございます。低いところでございますれば、ロープとかあるいは縄ばしごの使用も可能でございますけれども、高いところになりますと、避難の際の恐怖あるいは途中での脱落等がございまして、現在のところ、救助袋で袋でおりる形のもの、それから緩降機と申しましてロープにからだをゆわえまして自動的におりていく設備、これらがある程度の高所に対しまして適当だという判断をいたしております。これの数につきましては、収容人員との比較におきまして、一定収容人員の場合にその一部の避難という考え方で設けさせております。この数字につきまして、一個で適当であったかどうかという点については、なお現在調査を進めさせておりますので、もし不足といたしましても、二個までの数字になります。ただ、残念なのは、あの避難器具、救助袋は、行ってみますと、起こさなければ袋の口があかないのでございます。とっさの場合でございますので、袋をたたんであるのを投げおろして、そうしてそのあとワクを立ててございません。これが非常に残念なところでございますが、どういう形でこれが立ち得なかったかよくわかりませんが、これさえ立っていたら、もう少し人が救えたのじゃないだろうか。この点、非常に残念に申しわけなく思っております。
#129
○高山恒雄君 皆さんが想像される恐怖感というのは、もう恐怖感なんということは考えないと思うんですよ。だから、五名ほど屋根の上に飛びおりたんですよ。それが恐怖感が出てこないぐらいですから、いざというときには生命が惜しいんですよ、みんなね。ですから、恐怖感ということじゃなくて、私は、綱でも、ある一定の間隔をもってとまりをつくってやれば、女性であろうが男性であろうが、命にはかえられないから、完全におりると思うんですね。そういうのはたいした金じゃないですよ。いま、ビニールの綱で十分できるのですから。
 それと、もう一つ新たに考えなければいけないのは何があるかといいますと、電気がとまっちゃったんでしょう。エレベーターばかりでなくて、電灯も消えちゃった。そうしているうちに周囲が何もわからなくなった。非常用のランプがあったかといえば、その電池もなかったというんでしょう。少なくともあれだけ二百数十人が入れるだけのキャバレーにおいては、万一の場合は――普通の停電の場合でも問題ですよ、やっぱりね。ある程度の個数の電池を置くべきですね、相当大きい。家庭でも予備品として置いていますからね。置かなくちゃいかぬという指導しているじゃありませんか。そういう指導、あるいはまた防火設備も置けと家庭にも奨励しているくらいでしょう。あれだけの人のところに一つもそういうものがなかったという点は、これはやっぱりミスですよね。そういうものはどうお考えになっておるんですかね。これはもうわれわれが考えても想像のつかないような、簡単にできることがやられていないということ、そうしてとうとい人命を失ってしまうという点ですね。
#130
○説明員(永瀬章君) 特に問題になりますのは、非常出口の表示が火災の際に消えますと、逃げる方向がわからなくなりまして非常に混乱を来たすということがございますので、非常出口の表示灯につきましては、非常電源をつけまして、そして電気が消えましてもそのあかりだけはつくという形を規制いたしております。この形式は二つございまして、一つは、中に電池を持ちまして、特にまあ乾電池でございますと電池があがってしまうことがございますので、現在カドミウムを主体としました電池によりまして平生充電できる形式であってそして一般の電気が消えますと直ちにその電池で照明がついて一定時間は継続できるという形式のもの、これを内蔵式と呼んでおりますが、もう一つは、一般の電灯配線と違う別の配線を持ってまいりまして、これで照明ができる。それからさらに、その主電源が消えましたときに、予備電源を置きまして、その予備電源であかりがつくという形式を強制いたしております。なお、非常出口以外の、そこに行きますところの通路の誘導灯についても、同様の規制を行なっております。まだこまかい調査が進んでおりませんで、一部分ずつだんだん明らかになってきておりますが、私どもへの報告によりますと、非常電源はあったように聞いております。ただ、それがどのような保安灯の配置であり、照明の明るさがどの程度であったかということは、まだはっきりいたしておりませんが、きのうあたりになりますと、どうもそれがついたかつかないかの詳細がまだ調査中でございますが、あるいは途中で電線がやられましてつかなかったのじゃないかという状況も一つにはちらっと報告になっておりますが、これはまだ真偽のほどはさだかではございません。
 以上のようなことでございまして、できるだけ災害時におきまして照明が消えましても避難に支障のないようにいまの避難口への誘導と、それから非常口の照明、所在を明らかにします照明、これは規制どおりにつけさせるように今後とも落ちのないように徹底をさしたいと考えております。
#131
○高山恒雄君 先ほど申しましたように、家庭でも、消火器を購入せよ、あるいは非常用の電池はちゃんと整備しておけと、こういう指導をさしてもらっていますから、やっていますよ。消火器の使い道も知らぬでも買っていますよ、高い金を出してね。家庭でそれだけのことをやれたのに、どうして集団的なところにそういうものが徹底しないかという点を私は疑うのですよ。これは何といってもやっぱり指導の不徹底だろうと私は思うんですよ。
 そこで、もう一つ、ビルとして、大橋さんも非常に心配された御質問をされましたが、全くこれから不安が起こりますね。それは何かと申しますとね、やっぱり排煙の問題が中心になろうと思いますね。しからば、この排煙と非常口という問題ですがね。非常口は、階段が三つあるんですね。それで、かぎがかかっておったかないか、いま警察で調べ中とおっしゃるから、その点は私は確認するわけでもございませんが、一体、非常口というものは、かぎをかけて非常口ということになるのか、ある一定の力によって押せば、一人ではなかなか破れないけれども、三人とか四人でだっと押せば非常口は簡単に非常の役をつとめるという研究はなされていないのかどうか。これはもう当然のことじゃないかと思うんですが、これは建設省の関係ですか、ひとつ考え方をお聞かせ願いたい。
#132
○説明員(救仁郷斉君) 御指摘のとおり、非常口はかぎをかけないほうがいいわけでございますが、実は、これは、また防犯対策上、かぎをかけなければならないといったような逆な使命も持っておるわけでございます。そういった意味で、御指摘のとおり、現在、建築基準法の規定で、非常口のドアは外からはあけられないけれども、中からはかぎを用いないであけられるようなかぎにしろというような規定になっております。したがいまして、もしこの建物が査察によってそういう管理状況が発見されていたとすれば、当然それをかえさすべきであったのじゃないかというように判断いたしております。
#133
○高山恒雄君 時間がありませんから簡単に申し上げますが、今度の大阪の問題は、ガス爆発の問題に関連して第二回目の重大な大きな災害だと思うんですよ。こういう問題に対して、警察力の整備ですね、いわゆる地域の警備、さらにまた消防署、ありとあらゆる消防を集中してやられたと思うんですよ。ところが、火災が発見されて一一九番に電話がかかって、一一九番で連絡をさらに確認したときは、四分の時間しかないんですね。行ったらもう死んでおったということですがね。したがって、高層ビルにおける火を消すほうの研究はかなりやかましくなって、ある程度できたのではないか。しかし、高層ビルの消火設備では人命を救うことはできなかった。しからば、何を考えるべきかということになると、完全にそこに働いておる労務者も含めて、お客さんも含めて、今度の場合は、いかにして避難をするかというその訓練と避難研究ですね。避難研究ということがビルにとってはいかに大事か。高層ビルは、次の高層ビルに類火する危険はまあまあ少ないでしょう。だから、そのビルだけを守ればいいということになると思うんですね。したがって、その場合のビル内における救命措置をいかにしてとるかということ、私は、これの近代化をはかる時代だと、こう考えているんですよ。こういう点はすでに研究なされているのかどうかですね。研究なされておればひとつお聞かせ願って、もしなされていなければ、今後お互いのビルにつとめる者の不安を解消するために速急にこれをやるべきだ、それが第一だと。あとの資産は、そうそう焼けてもたいした問題じゃないですよ。外装は何ともないんですからね。内装だけですから、その内装を今度やるときには不燃焼建材を使えばいいんですよ。実際、ほんとうをいえば、もう法律もできているんですから。既存のものにはなかなかそれを適用しないから問題があるんで、そういう点をひとつ研究されて、いかにして人命の救済をやるかという科学的な研究ですね。どういう設備にはどのくらいのものが必要だと、こういうものをひとつ研究されておるなら御発表願いたい。もししていなければ、ぜひやってもらいたい。そして、それはもうい先ほど申しますように、特別の処置としてできるんですから、改善命令を出してやらすべきだと私は思う。
#134
○説明員(永瀬章君) 今度の火災が三階で起きたと考えられておりますが、二階、三階、四階を焼いただけで、火災は幸いにして上へ出ておりません。にもかかわらず煙が上階に充満いたしましてとうとい犠牲を出したわけでございますが、今時の場合に階段がどの程度煙で充満されて使用できない状態になったであろうかという点についてはまだはっきりした点わかっておりませんので、非常に残念ではございますが、なおこれは明らかにしていきたいと思っております。
 なお、避難につきましては、私ども、今度の炎害について非常に残念でならないのが、一階上が屋上でございまして、三つの階段がいずれもが煙で充満されていて使えなかったという状態ではなかったような感じがいたしますし、現地消防隊に聞きましても、通れなかった階段はあるけれども、通れる階段はあったようでございます。消防隊が上がったというのもございますですから、どうしてそれが早くあすこから救助穴をあけてでも屋上に通ずる避難路をつくり得なかったか、これもなお究明いたしたいと思うのですが、普通であれば、かぎさえあけば一階上は屋上でございます、屋上に逃げていてくれる。実のところ、消防隊も、屋上へすぐ上がっていったところが、どなたもおられないのでふしぎに思ったという間の事情もあったようでございます。
 なお、煙の挙動につきましては、建築関係の研究所あるいは私どもの研究所であわせまして多くの火災実験をやってまいっております。煙の伸び等については一応の挙動は明らかになっておりますが、ただ、火災の発生の状況が燃えしろあるいは空気の供給等によってえらく違ってまいりますし、さらに、防火戸を通しましてどの程度煙が出てきて、時間的な問題としてもどのくらいの時間までは階段が通れるかという点については、まだ十分でない点がございます。これは、今後、建設当局とも研究所その他協力いたしまして解明した上で、これだという避難上のきめ手となる方法、これを見つけ出していきたいと考えております。
#135
○高山恒雄君 一つだけこれは大臣に私は言おうと思ったけれども、大臣がおりませんから、昼からも確認していきたいと思いますけれども、これは建設省でやってもらう法律かと思いますけれども、私が考えますのに、休日ですね、あるいはまた、休業以外の空閑ですね、これを利用して電気事業とかガス事業者が工事をやるんですよ。そうすると、大阪の場合は、管理者が四人おったといいますね、新聞で見てみると。上はホステスの管理者が一人おった。五人おるというんですね。そして、管理者四人が、そうした工事をやる場合には、普通の営利会社であれば、少なくとも中でそういう事業をやった場合には、いわゆる警備人は、一時間に一回回ればいいものを二十分に一回回りますよ。これは危険だからですよ。溶接にしても火を使うし、あるいは電気にしてもある程度あぶないですから。だから、そういうつまり休日その他における作業の場合は、警備の体制を法律で規制する必要がある。それは絶対やらなくちゃいかぬ。船の中でも往々にしてあることです、これは。ガスの爆発、点火して爆発をするというような場合がございます。今度の場合は、監督者が外で酒を飲んでというように新聞に書いてありますから、これはもうほんとうの彼の責任でしょうけれども、しかし、警備人が四人もおるんですから、やっぱり巡回をして発見と同時にぱっとやれば、もっと早く消しとめることができたんじゃないか。たとえば、繊維は、羊毛にしましても、絹にしましても、綿にしても合繊にしても、たばこの火を一つぱっと落としますと、十二、三分は煙だけです。こげついて燃えるまで十二、三分かかりますよ。それだけの時間があるわけですから、大体合繊にしても――合繊は、しかし、ついてしまったら、炎が出かけたら早いです、これは溶けちゃうのですから。さっき繊維の方も見えておりましたけれども、私は繊維出ですから、そんなことを聞く必要はないと思っていましたから聞かなかったのですが、したがって、休日その他における工事については、少なくとも警備員の巡回を強化すべきだという一つの法律的規制措置をする必要がある。これは建設省でやるか消防庁でやるか、どちらでもいいですが、これは建設省でしょうね、私はそういう考え方を持っています。特に最近の状態からいえば、それをやらなければ火災を防腐することはできない、こういう不安を感ずるわけです。これをひとつ研究してください。お願いします。
 これで終わります。
#136
○説明員(永瀬章君) 先生の御趣旨、ごもっともでございまして、特に消防側といたしましては防火管理の規定がございますので、これを法改正を必要とするかどうかについてもさらに検討いたしてまいりたいと思いますが、そういう火を使いますところの作業管理について十分検討いたしたいと思います。石油工場等におきましては、火を使用しますときに、許可をとりまして、一定の条件がついております。それを遵守するというのが大きな条件になっております。もちろん、消火器も置きますし、巡回も普通以上にひんぱんに行なわれております。この方法を他のほうにも及ぼしていく指導なり規制なりをよく考えていきたいと思います。
#137
○委員長(中村英男君) 本案に対する午前の審査はこの程度といたします。
 午後三時まで休憩いたします。
   午後一時五十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時二十三分開会
#138
○委員長(中村英男君) ただいまから社会労働委員会を再会いたします。
 午前に引き続き、労働安全衛生法案を議題とし、質疑を行ないます。
#139
○高山恒雄君 労働安全衛生法の問題について御質問申し上げたいと思います。
 わが国では、毎年、労働災害で死亡する労働者は、労働基準法関係だけでも約六千人、これに公務員や海員を加えると、六千七百人、こういう数字の方が不幸な状態にさらされているわけです。なお、休業にあらざるものを含んだ負傷者については、労災保険法の関係だけで百七十万人をこえると、こういわれております。申告しない者や労災保険法の適用のない労働者の分をかりに加えるといたしますならば、おそらく四百万人をこえるのではないかといわれておりますが、このように多くの労災による犠牲者を出す原因はどこにあるのか、政府としてはこれに対する調査――実態の欠陥というものはどういうところにあるのか、世界でも類例のない傷害ではないかと、こういうふうに考えますが、その点ひとつお答え願いたい。
#140
○政府委員(渡邊健二君) 最近におきますわが国の労働災害の発生状況につきましては、ただいま高山先生がおっしゃいましたように、労災保険の受給関係で申しましても、年間に死者約六千人、それからそのほかの負傷、疾病で受けられる方々が約百六十万ないし七十万前後にのぼっておるわけでございまして、そのほかに、労災の適用ではございませんが、国家公務員、地方公務員等で業務災害を受けられる方が、年間、死者を含め死傷者全部で約四万七千、それから船員につきましても約二万三千程度の被害者が出ておるわけでございます。
 このような労働災害の発生の背景といたしましては、最近におきます新技術の開発、技術革新によりまして機械設備の大型化、高速化、さらには新しい建設工法の採用、それから新材料の採用等等があげられるわけでございますが、それに加えまして、最近では、労働力不足あるいは人口の労齢化等によりまして、中高年齢者あるいは出かせぎその他の未熟練労働者、こういう方々が就労者の中に増加しておる、こういうことも災害多発の原因の一端をなしておると考えております。
#141
○高山恒雄君 私は、そういう問題の対策として今日までやってみえる基本的なものですね、それがお聞きしたいんですよ。ふえておる事実は私も申したとおりでありまして、急激に増加しておる、たとえば、日雇い労務者、出かせぎ労働者、建設業、下請業こういうものがいろいろありますね。そういうものの対策というものは、やっぱり大きく分ければ三つくらいあると思うんですよ。それにはどういう対策を講じておられるのか、その点をお聞きしたいんです。
#142
○政府委員(渡邊健二君) ただいまあげました諸原因に対しましてそれぞれ対策を講じておるわけでございまして、たとえば、新材料その他新物質の採用等につきましては、最近の状況に応じまして特定化学物質等障害予防規則その他逐次新しい物質につきまして職業病発生の予防一健康管理等等について逐次規制を整備いたしておるわけでございますし、それから新しい工法、新しい機械設備等々につきましても、それぞれ研究をいたしまして指導をいたしますとともに、今回の法案等におきましては、そういう場合には届け出制をとることにいたしまして、そして届け出られたもののうち非常に問題があると思われるものにつきましては、労働大臣が専門家に審査をさせる、そして必要な場合には勧告助言をするというような制度を設ける等々によって、そういう原因に対する対処をいたそうとしておるところでございます。
 また、老齢者あるいは出かせぎ者等不熟練の方方が就労されるというような問題につきましては、今回の法案でも、労働安全衛生教育、こういうものを非常に徹底しようということで、採用時のみならず、新しい業務にかわるようなときにもさらに安全衛生教育をする。それから指導に当たる職長、監督、こういうような人たちが非常に重要でございますので、こういう人たちに対する安全衛生教育を徹底しよう、こういうようなこともいたしておりますし、あるいはそういう新しく入られる老齢者等々に対しますために、健康診断、こういうようなものも、今回の法案では従来よりももっと綿密にやるような体制をとっていこうと、こういうことを考えておるわけでございまして、これらの諸施策を総合いたしますとともに、特に中小企業につきましては、単に規制を強めただけでも必ずしもそれが実行できませんので、行政指導、こういうものを強めることにいたしますとともに、財政的な融資その他の援助等々によって実際にそういうことが守られるようにしていこう、こういうような総合的な対策によって災害全体の減少をはかっていこうと考えております。
#143
○高山恒雄君 したがって、いまの御答弁で推察できますことは、例を申し上げますならば、たとえば建設業は、年に何回か指導をやっておるんだ、こういうことですね。あるいは建設業以外の下請け事業者に対する指導、これもやはり年に何回かやっておると、こういうことですね。私は、労働災害は、言うまでもなく、結論的には、事業者や政府がほんとうにやる気になれば、完全とはいかないまでも――人間には間違いがありますから、完全とはいかないまでも、ある程度の防止策はできるんじゃないか。これは私だけが思うんじゃなくて、たとえばイギリスの有名な災害研究者であるヴァーノン氏によれば、多方面にわたって災害の犠牲を五〇%以上減少することが可能であるというようなことを言い切っておりますね。私らも、これを見て、そうだと思うんです。なお、アメリカの経営者側の安全研究者であるハインリッヒ氏は、七万五千の事例についていろいろ分析した結果、労働災害の五〇%は事実防止することができたと、これもそう言い切っておりますね。九八%は防止できるもので、あとの二%だけが問題になるんだ、こういうことを言っていますが、それが、結論的には、私が申しましたように、人間には間違いもありましょうから、それがほんとうの災害と言ってもいいんじゃないか。あとは、すべて、行政上あるいは経営者の管理上、こういうことから防止ができるだろう、こういうふうに考えるわけです。
 そこで、わが国では、御答弁なさったように、労働災害の原因が徹底的に究明されていない。これを政府としては分析もして、詳細にその対策を立てるべきではないか、私はこういうふうに考えるわけです。
 問題は、純技術的にいえば、労働災害を防止できるのに、それをさせない条件が存在しているところにあると思うんです。たとえば、労働時間の短縮もその一つでしょう。日本に基準法が制定されてそして八時間労働ということで労働をやっておった時代から、非常に高度な機械になっておる。いわゆる機械に人間が拘束されるという形になっている。これで八時間労働が適切かどうかという問題も起こってくると思うんです。場合によっては、午前中の二十分の休憩を与えるとか、あるいは午後の二十分の休憩を与える。いま大体四十分の休憩を与えていますが、それをせめて一時間二十分にするとか一時間にするとか、こういうふうに近代化に即応した安全対策を立てなければいかぬのじゃないか。ところが、今度の改正ではそういうことがちっとも出ていないのじゃないかと私は思うのですがね。したがって、その問題は、機械が事業者に使用されるというんじゃなくて、逆に労働時間の延長をできるだけ避けてやるとかいうような手段を講ずれば、ある程度これは防止することができる、こう思うんですよ。そういう点をどうお考えになっておるか、お聞きしたいと思うのであります。
#144
○政府委員(渡邊健二君) 先生御指摘のように、労働災害はいろいろな努力によって私どももまだまだ引き下げることが可能であると考えておるわけでございまして、日本におきましても、これまで災害防止に熱心な方が経営責任に当たられて、その事業所の災害が非常に減少したといったような例もあるわけでございます。私どもも、そういう意味において、今後一段とそういう努力を続けなければならないと考えておるわけでございまして、労働災害の原因の分析把握というような点につきましてももちろん非常に努力をいたしております。特に、最近は、コンピューター等を活用いたしまして労働災害原因の詳細な統計的分析等もいたしまして、それに基づきまして法令を整備したり、あるいは労働災害防止計画の策定の場合にはそれによって計画をつくったり、あるいは監督指導における重点事項の決定等もそういう分析によっていたしておるというようなこともいたしておるわけでございまして、それらの対策の中で、先生おっしゃいますように、災害が起きやすいような事業につきまして適当な期間休憩を与えるとか、その他過重な労働になったためにそれが災害多発の原因になることがないように、たとえば、ハイヤー・タクシー等につきましては、時間について通達等によって指導する等々のことにも努力をいたしているところでございます。
#145
○高山恒雄君 一つだけ聞きますが、週休二日制は日本では大体三%ないし四%だと思うのです。これの災害実態を研究されたことがありますか。週休二日制の企業があり、労働組合がそれを獲得しているところがありますが、それの災害実態はどうなっておるのかという研究をされたことがありますか、どうですか。
#146
○政府委員(渡邊健二君) 週休二日制はここ二、三年非常に進んでまいりまして、四十五年度で四・四%でありましたものが、昨年九月の一年後の調査では六・四%というふうに全企業の中で実施事業所がふえてまいっておるわけでございます。しかし、まだここ一、二年のことでございますために、週休二日制と災害との関係を詳細に調査いたしたことがございませんが、週休二日制を実施いたしました事業所につきまして、その効果等を調査いたしました中には、週休二日制の採用が災害の減少をもたらしておるというような報告は受けておるわけでございます。
#147
○高山恒雄君 大臣、週休二日制の問題ですね、特に労働省はこ三二、四年の間にある程度八〇%まで何とか指導したいというようなお考えもあるようですが、まず、私は、その指導をする意味の一つとしても、長いのは三年ぐらいたっておると思いますが、現実に三%ないし四%近いものが週休二日制をとっておると思いますが、これらの災害状況あるいは健康状態というようなものの詳細な調査をさっそくやって、労働時間の短縮あるいは週休二日制等によっていかに労働者の健康保持というものの効果があがっておるかということがわかれば、これは一つの基本にもなるべきものではないかと私は思うのです。これはさっそくやる必要があると思いますが、大臣としてどうお考えになりますか。
#148
○国務大臣(塚原俊郎君) 週休二日制につきましては、われわれの考え方をいままでも申し上げたところでありまするが、いま災害との関連において局長が答えましたように、十分休息がとれる、それによって災害が減少していく、これはまことにけっこうなことだと考えておりますし、また、今日までわれわれが調査いたしましたところ、完全な週休二日制、あるいは月に二回、月に一回というようなものを見ましても、土・日と休んで月曜に出た場合に非常に快適な気持ちで職場で働ける、出勤状況もよろしいというような報告もいただいておるわけでございまして、特に労働災害というような面から考えまして、すみやかなる調査をやりまして、われわれが労使間の話し合いでこの問題を進めることが望ましいという行政指導をいたしておりまする資料にもこういう問題は非常に役立つのではなかろうか。今日まで正しい完全なものはできておりませんが、御指摘の点もありましたので、単なる報告を受けるだけではなくて、積極的に、週休二日制といいますか、労働時間の問題と労働災害の関係というものの調査をやりたいと考えております。
#149
○高山恒雄君 そこで、基準法との関連における今度の改正案ですが、この関連性から見た法案の問題点についてお尋ねしたいんですが、基準法とのドッキング条項という形で、これを切り離すことは離すけれども、結局はやっぱり基準法とドッキングしておるんだと、まあこういうことだろうと私は思うんですよ。したがって、四十二条から五十五条までが当然適用されるにいたしましても、結局、独立法案として基準法からは離れることになるわけです。したがって、総則にうたわれている人たるに値する生活の保障とか、こういう基本的なものはなくなっちゃうんですね。労使対等の原則――先ほど公明党のほうからも御質問もございましたが、真に、安全、災害等においては、労使対等の立場において防止をする義務をお互いに持たなくちゃいかぬと。特に、その中の経営者は、主たる安全の原則を守らなくちゃいかぬということになろうと思うんですよ。それが切り離されるということになると、その点の基本的な人たるに値する生活の保障というような点が全然なくなっちゃうということになるのじゃないかという心配をするわけです。その点はどうお考えになっておるのか。これは、全労働者が、基準法を知っている限りにおいては、みんな心配するところだと思うんですよ。この点、もう少し解明していただきたいと思います。
#150
○国務大臣(塚原俊郎君) 先ほど、小平委員の御質問に対して、私は姉妹関係にあるということばをつかったのでありまするが、よくこれによって労働基準法が空洞化されるというような御批判もいただくのでありますが、私はそうは考えておりません。労働基準法は、あくまでも基本法として、その法のあり方は厳然として残っておるわけでありまして、これから抜き出したからといってこれが空洞化するというふうには私は考えておりません。第一条にも「労働基準法と相まって、」とございますように、決して労働基準法をないがしろにすると申しまするか、空洞化するというふうなことは毛頭考えておりません。繰り返して申し上げまするが、あくまでも労働基準法は一つの基本法としてわれわれはこれを厳然として考えておる次第であります。
#151
○高山恒雄君 基準法の関係をそういうふうに御理解していただくのでございますなら、この安全衛生が一つの労働条件であるという問題については、基準法上明らかになっておりますし、また、衆議院の本委員会でもそうだという御答弁をされております。先ほど小平委員のなににもやっぱりそういう基本理念を述べられておるし、いまの答弁もそうおっしゃっておるわけです。それなら、基準法からどうしても分離しなくちゃいかぬというならば、法案の第一条等のドッキングの条項をさらに一歩進めて、基準法の精神である労使対等の原則をあくまでも入れるべきじゃないか。それと切り離すことはないんだと、ドッキングはしておるんだと、こうおっしゃるけれども、しかし、独立法案には変わりないわけです。したがって、そういうお考えで大臣もそうおっしゃっておるんだから、誤解を招かないように法案に成文化する必要があるんじゃないか。この点はあまり無理ではないと、私はこう思うわけです。さらに、労働者の申告権については、労基法の第百四条にありますようにこれは法案に入れてありますから、当然そうすべきではないかと、私はこう思うのですが、いまの御答弁も差しつかえないんだということにも聞こえますから、これを入れてもいいのか。入れなかった理由は、入れなきゃ入れないでどういう理由があるのかということですね。ただドッキングしておるというだけでは、法案上、やはり独立法案である限りにおいてはちょっと心配があるわけです。
#152
○政府委員(渡邊健二君) この法案の附則の四条で労働基準法の一部改正をいたしまして、基準法の四十二条といたしまして、「労働者の安全及び衛生に関しては、労働安全衛生法の定めるところによる。」と、こういう規定がございまして、基準法の四十二条は、この法案が成立すればそういうふうに変わるわけでございます。したがいまして、改正後、そういう規定が基準法にできるということになりますと、安全衛生法上の労働条件の最低基準は、即基準法上の労働条件の最低基準である、こういうことになるわけでございます。そうしますと、基準法上の最低基準でございますから、当然先生おっしゃいました基準法の一条、二条等の基本原則はかぶるわけでございます。したがいまして、先生おっしゃいますようにこの労働安全衛生法に重ねて同様の条文を入れませんでも、法律としてそういうものをかぶってくる、こういう解釈でございます。
#153
○高山恒雄君 そうなると、基準法も改正するの、一部そこを。今度出ていないじゃない。出ていないから不安に思うんですよ。
#154
○政府委員(渡邊健二君) この法案の附則の四条にいま読みました条文が入っております。附則によりまして基準法の一部改正が行なわれておるわけでございます。
#155
○高山恒雄君 ああ、そう、附則で。じゃ、それはそれでいいでしょう。
 それじゃ、次に移りますが、たとえば基準法とのドッキング条項が、第一条と基準法の四十二条から五十五条までが関連法として当然あるんだと、こういうことをいま言われますが、それはそれとして私も了承したいと思うんです。ただし、内容を見ると、先ほど来おっしゃった労使対等の原則というものはやはり薄らいでいるんじゃないか。基準法の四十二条ですかの関連から見ても、労使対等の原則に関して、ことばの表現が、いままではそうしなければならぬというのを、今度は、努力しなければならないとか、協力をしなければならないとか、表現がみな変わっていますね。だから、むしろ、労働者に管理者が逆におまえたちは協力しなけりゃいかぬぞと、こういうふうに変わっているんですよ。詳細に話をすればなんですけれども、皆さんがつくられたんだからそういうふうなことを言わぬでもわかっていると思いますが、いままでの表現と全然変わった、労働者に対する義務づけが大きくなってきている。拡大解釈が何ぼでもできる。たとえて言えば、ある管理者がこれは安全委員長になると思うんです。そうすると、安全委員長が、あいつはちょっとこ理屈ばっかし言ってちょっとも言うようにしないじゃないか、おまえたちも労働者として協力せにゃいかぬのじゃないか、何を言ってるんだと、こう言われてもしかたがないですね。そういう点、やっぱり対等の原則というものがもっと明らかに出てこないと、これはいかようにも解釈ができるし、また、利用ができる。ここに、先ほど私が申しました労働条件という原則が変わってきておる。あくまでも答弁ではそうして言われるんだが、私は、この点だけは、いかに基準法とのドッキング条項の一環としてそれを変えるということで関連性はできたにしても、やはり表現のしかたを従来のままにするか、もっとこの点を明らかにしていくか、私は表現を変えるべきだと、こう思うんですが、この点についてどうお考えになっているか。
#156
○政府委員(渡邊健二君) この法案で、確かに、先生御指摘のように、四条とか二十六条とかで、労働者にこれこれしなければならないというような規定を設けておりますけれども、それら二、三の条項を除きますと、本法案の大部分は、これは使用者に義務を課しておる、各条項の規定がそうなっておるわけでございまして、特に使用者が守るべき労働者の危険または健康障害を防止するための危害防止措置、二十条から二十五条まで等々におきましては、事業主にそれぞれ、これこれのしなければならないということで義務を課しまして、これにつきましては罰則をもってそういう使用者の義務履行を強制いたしておるわけでございまして、この法案の全体を流れる大きな筋は、やはり使用者に労働者の安全衛生を守るべき義務を強行法規的に課しておるという点が一番の基本になっておると、われわれはこの法案の一番の中心はそこにあると、かように考えておるわけでございます。
 ただ、先ほども申し上げましたように、安全衛生というものは、事柄の性質上からいたしまして、やはり一定の事項については労働者も一定の事柄を守っていただきませんと、安全衛生の効果、危害防止の効果というのは十分でございませんので、そういう必要な点につきましては労働者にも順守を要請いたしておりますけれども、法案の基本は、労働者に対する危害防止、安全衛生の確保というものを使用者に義務として課しておる、これが本法案の基本をなします骨幹でございまして、そういう点については、基準法から安全衛生法に独立法としたといって、決してそういう姿勢が変わっておるわけではないわけでございます。
#157
○高山恒雄君 安全衛生行政の徹底ということになるのでありますが、基準法は昭和二十二年に制定されたもので、部分的には現在の社会経済の急激な変革、これにマッチしてない面もあることは、もう先ほども御答弁のとおりです。しかし、根本的には、労働災害防止をするのには、一にして政府及び事業者の姿勢にかかってくるわけですよ。大きな問題はもうそこに私はあると思うんですね。それができなければ、何ぼ法案を変えてみたって、どうにもならぬ問題じゃないかと、こう思うんです。ところが、今回法案が提出されても、実際の安全衛生対策が従来と同様であって、不十分だとはいままで言っておられぬですから、しからば、監視もやっぱり同様だと思うんですよ。そういう意味から、一体、監視体制というものはどうなるのか。これは、日本はまだILOの批准もしていませんわね、監視体制は。これらでももうほんとうはやらにゃいかぬですね。第六条には、「監督職員は、分限及び勤務条件について、身分の安定を保障され、且つ、政府の更迭及び不当な外部からの影響と無関係である公務員でなければならない。」と、こういうことをうたっておるわけですね、ILOでも。ところが、日本の場合は、皆さんも体験があってわかっておって御答弁されると私は思いますけれども、地方の監督者は、一つ中傷が入ると、すぐ転勤ですよ、これは実際問題として。なかなか監督にその権限が与えてないんですね、日本の場合は。しからば、その権限も与えないで、実際問題としてこれを分離してそうして近代化に即応した改正をするんだと、こうおっしゃっても、実際問題としてこの安全衛生対策が従来と同様にそれ以上のものが改善されるのかというと、できないと、それは不十分だと、監視体制もいまのままではできないと、こう言わざるを得ないと私は思うんですよ。そういう点についてはどうお考えになっておるのか、お伺いしたいんですよ。
 私たちはたくさんな例を知っていますよ。私はこういう例を知っておるんですがね。私が大阪におるころに、私もそのときは大体二十万ぐらいの代表者になっていましたから、ある局長が、どうしても基準法に違反するからあそこを摘発をしたいと。ところが、ここは労使一本になっておってどうにもならないと。したがって、これは監督やあるいは罰則でこれを整備することはできないんだと。したがって、側面から組合も大きくこれに違反行為に対する努力をしてくれぬかという相談を受けたことがありますよ。われわれもやったですよ。やって成功した例を私は知っていますよ、大阪ですがね、これは。そうしなければならないほど頑迷なんです、経営者は。そういう経営者がおるんですよ。そこで、逆に今度は地方行政とつながり中央行政とつながって監督者に対する反発が出てきた場合には、必ず転勤なんですよ。実は監視人の身分保障というものをもっと確立してやるべきじゃないかと思うんだが、そういうものを変えないで近代化だ近代化だと言っておられても、私は何らこれは意味をなさぬじゃないかという気がするんですが、これはひとつ大臣のほうもお考えを願いたいと思うんですよ。一体、監視制度というものを日本はどうするのか、独自の人格を与えて監視するのか、これをやる必要がある。どう、お考えになっているのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
#158
○国務大臣(塚原俊郎君) 御指摘の点、全くそのとおりだと思います。今度の労働安全衛生法案、いま御審議を願っておりますのも、従来のように一方的になってしまうというお話も、ございまするけれども、私は、この法案が成立いたしましたならば、各条項に見られるように、経営者、使用者に対してそれだけの義務づけをかなりきつく命じておると思いまするし、この法案の成立の過程においても裏を返せばいろいろなお話も私のところにも来ておるということもございまして、私は、かなりの成果はあげられる、御批判のような点があればどんどん行政指導できつく臨んでこの法案の基本原理である労働者を災害から守る人間尊重ということをあくまでも貫かなければならないと、このように考えております。
#159
○高山恒雄君 この法案が成立すればということでありますが、この規制が十分に行なわれなければ、また、それを行なおうとするならば、結局は監督官の不足ですよ。この点は痛感しておられると私は思うんです。現実に私らが見ても不足しているんですからね。それで、年間の監督される率にしても、全く問題になりませんわね、率は申しませんけれども、そういう問題で、しかも、先ほど言ったように、ILOでは身分保障もしてあるのに、日本ではしてない。増員もしない現在のままで、罰則も今度はきつく出ていますよ。その点は私はわかりますけれども、現在のままでは、何といってもこれは指示命令の権限というものが十分に発揮できない。これをもっと考える必要があるんじゃないか。たとえて申しますならば、一体、しからばこの監視問題について、予算等ではどういうふうにお考えになっておるのか、増員の計画もあるのか。たとえば、旅費が足らぬで行けないというような点も聞かぬではありませんよ。私はよく聞いていますよ。そう言われますけれども、あなた方どうしてあれを基準法であげないのだと、こう言うと、いやこれは旅費が足りませんというようなことも聞きますよ。そういう状態で、一体ことしの予算はどのくらい組んでおられるのか。増員をしよう、監督権というものをもっと強化しようという考え方があるのか、これをお聞かせ願いたいんですよ。
#160
○国務大臣(塚原俊郎君) この前にも須原委員から独得な呼び名で呼ばれた労働基準監督官のお話がございましたけれども、確かに私も少ないと思います。いま、全事業所を、二千九百何十人ですか、それで見ますると、何年に一ぺんということをよく私も言われます。今度の場合、二百人要求いたしまして、労働基準監督官とそれから安全衛生専門官を含めまして百二十名が認められた、私はこのときは在任中でございませんでしたけれども、そういうことになっております。しかし、これで決して満足だとは思いません。定員増ということについては非常にうるさいので、おそらくこの辺にとどまった。しかし、これで、はたして監督体制が完全にできるかどうか。ことに、機械も大型化し、日進月歩で進んでいくとなれば、今度は監督する側に立ったものの知識の向上というか豊かな経験というものも必要になってくると思いまするから、そこがイタチごっこになったらこれはたいへんですから、まあいまは与えられた数でできるだけ最大限のフルに能力を発揮して、やはり機動力を発揮することも必要であるし、私は抜き打ちでやるというようなことも指示しておるわけでありまして、まずこれで万全を尽くす努力をしていく。明年度予算で、足らざる面は大いに努力して、皆さん方の御協力もいただいて増員をはかって監督体制の整備をはかってまいりたい、このように考えております。
#161
○高山恒雄君 大臣、いまの答弁は私は納得しますが、しかし、この法案に基づいてやろうとするその姿勢というものが、先ほど言ったように、予算であり、監督官をふやすということ、身分の保障をするということにならなければ、ワクを広げて罰則をきめるだけで何ぼでも法の裏をくぐりますよ。十年に一回しか回れないというのでは、あなた、何したってだめでしょう、結果的には。労使関係の対等の立場における――これも労働組合がしっかりしておってですよ。労働組合がしっかりしておって対等の立場における安全衛生委員会というものを構成して、そして工場長がかりに委員長になるならば、組合長が支部長になると。したがって、あくまでも合議の上で安全衛生というものを互いに対等の立場でやるんだと、この原則が労働者は労働者の意識というようなものを持ち、経営者は経営管理というものを意識的なものを身につけて、はじめて安全と衛生が守れるわけですよ。これはもう理屈じゃないんですよ。それは幾ら経営者が問題にしても、働く組合員がいいかげんなことをやっておって、たとえば、週休でもよろしいですが、週休二日制にでもなって二日ともレジャーばかり楽しんで、月曜日は災害が多かったなんていうことは例がないわけじゃありませんからね。そういうものの自粛についても、やっぱり対等の立場の原則の中から安全と衛生が守られる姿勢が出てこなければ、こんなものは防止できませんよ。そこの上に立って監視人の監視というものが徹底してこそ、罰則にはしないけれども指導ができるということ、私はこれが抜けておると思うのですね、そういうことで分離されるということになると。
 もう一つお聞きしますが、しからば、中央労働基準審議会がありますが、いまの日本の基準法は最低ですよ。これ以上なんぼやってもいいわけでしょう。この最低ですら今日まで依然として固執してやっておるのは何かというと、先ほども意見が出ましたように、下請企業ですよ。ものすごい問題ですわね。これは労働省から出しておられるじゃないか、労働省はちゃんと調べておられる。「労働災害の現状と対策」というのを基準局から出しておられる。これで見ますと、造船業の下請の度数がどのくらいあるかという率が一四・三七です。親企業は五・八〇ですよ。化学工業も同じです。下請は八・六三、親企業は三・七二。あるいは鉄鋼業にしても同様のことが言えます、親企業は半分しか出ていません。こういう事実をつかんでおられる。そうすると、下請というものをどうしてやるかということになると、労働条件の改善といういわゆる企業の近代化もございましょう。しかし、企業の近代化は、労働者の職業に対する練摩が重ならないとけが人が多いわけです。技術の練摩というものが重なって、はじめて新しい機械を使いこなすことができる、安全を守ることができるわけです。それもできないような状態の人不足だというところに問題があるわけですから、私は、少なくともこの点に対する監督の完備をぜひやってもらわなきゃいかぬ、それでなければこの法案をなんぼやってもだめだと、こういう見解に立つわけです。特に労働条件の最低基準が国民生活から見ても国際的に見ても非常におくれておる。したがって、それを改善しなくちゃいかぬということは政府もわかっておりましょうけれども、私はせめて最低基準を改善する機構をつくるべきだ。いまの基準法そのものを最低としておるのですから、この最低の現在の日本の基準法というものを近代化された産業として一方これを悪いところは改善していくんだ、もっと上げてやる、こういう中央基準審議会の結論、これまた大臣の諮問機関でもいいですがやってもらうべきだと思うのです。いつまでも最低に依存しておるから、日本は、こういうものが守れないわけです。これだから安全衛生法だけは独立法案として、しかし、先ほどおっしゃるように、基準法に十分なる関連性を持ちドッキングしておる、こう申しておるから、その点は私も信頼しましょう。そうしても、監督も不十分だという現状から考えますと、いかにもこの独立法案となった法案があやふやになって、結果的には、罰則がきまったけれども罰則の適用もできないような摘発になってしまう。これは大事なところですよ。私はここらをほんとうに政府は考えてもらう。それがためには、根本的な原因は、何が何と言ったって劣悪な労働条件を改善するということです。しかし、これは政府がやるわけにはいきません。労働組合もやらなくちゃいけませんけれども、今日非常に立ちおくれておる中小企業に対する施策として政府がどういう指導をするか。先ほど私が読み上げました労働基準局から出ておりますこの数字を、せめて、大企業まではいかぬとしても、下請の災害というものを減少させる方向にいかなければいかぬ。それでなければ、何の法改正をしてもだめだと、私はこう思うのです。この点、どうお考えになるか、大臣でなくてもいいですが、他の方からでもひとつ。
#162
○政府委員(渡邊健二君) 先生おっしゃいますように、下請等含めまして中小企業におきましては大企業に比べますと災害率が非常に高いということは、われわれも災害減少のために非常に大きな問題だと、かように考えております。そこで、現在四十三年から五カ年計画でやっております災害防止計画におきましても、三つの重点の一つとして、中小企業の災害減少ということをその重点にいたして進めておるわけでございます。具体的には、監督等につきましても、これは先ほど大臣も申し上げましたように、確かに監督官の人数の制約等はございますけれども、たとえば建設業であるとか、あるいは造船業であるとか等々、特に災害が高い業種等につきましては、これを優先的に監督を実施いたしまして、一般の監督率よりもはるかに高い監督率で監督を実施いたしておるわけでございます。
 それからさらに今後の進め方といたしましては、中小企業、特に下請の災害を減少するためには、やはり元請にある程度責任を負わせまして、元請と一括して安全衛生対策を進めるということがきわめて重要であろう、かように考えまして、今度の法案の二十九条におきましても、元方事業主は、下請及びその労働者に対しまして、この法律またはこれに基づく政令の規定に違反しないように指導を行なわなければいけない。もし違反があれば、是正のために必要な指示を行なうように、元方にそういう責任を課しておりますし、それから三十条等におきましては、特定業種、建設や造船等の特定業種につきましては、その元方の事業主と下請の事業主が同一の場所において作業をしているような場合には、元方の事業主が下請も含めた協議組織を設ける、あるいは作業間の連絡調整を行なうとか、あるいは作業場所を巡視するとかといったようなことで元方事業主が災害防止に必要なかなめの役をすべき義務を課してございますし、また、三十一条におきましては、そういう場合に元方事業主が下請の者に自分のところの機械や設備を使わせるような場合には、これは一定の基準に合いました危険のない機械や建物を使わせるようにするといったような義務も課しまして、元方に下請に対する災害防止、これについて従来よりもはるかにきつい義務を課し、災害防止に当たらせる、こういうような制度も設けておるわけでございます。
 さらにまた、下請を含めまして中小企業全般につきましていろいろ規制をいたしましても、実質経営力がないためになかなか守れないという点がございますので、そういう点につきましては、たとえば今度は安全衛生融資制度を設けまして、そういう中小企業で安全の総合改善をするような場合にはそこから融資をしてやる、あるいは健康診断の義務を課しましてもなかなか自分のところにはできないというようなものについては、巡回健康診断、そういうものについての一定の補助を国がして中小企業に対する健康診断がしやすいようにする等々、そういう実際の指導面あるいは財政的な援助面、そういう面から中小企業につきまして安全対策を推進し得るような仕組みも今度の法案では規定をいたしておるところでございまして、それらの施策を総合的に推進することによりまして、御指摘のような下請を含めた中小企業の災害の減少に今後つとめてまいりたい、かように考えております。
#163
○高山恒雄君 時間がありませんから、まあいまの御答弁は私も読ましていただいて、ある程度理解はできるのですが、それであってもむずかしいということを言わざるを得ないのです。
 そこで、大臣にお聞きしたいのですが、わが国の劣悪な労働条件は国際的にも最近は有名になろうとしておるんです。私は経験の立場から最近のすべてがそうだとは思いませんよ。もうイタリーよりも賃金の高いのもありますし、あるいはドイツと大体似たところも出ておりますし、決してそうは考えませんけれども、国際的に見るとそう言われるのですね。つまり、国内の、これも下請の問題なんですが、低賃金ですよ。最低賃金法にしてもいまだに日本はようつくらないわけです。いわゆる協議制度にして、そして地域ごとにきめるというようなことになっておるわけですからね。これも行く行くは一本化しなくちゃならぬということも出てきましょう。最賃の問題も。こういう問題から考えますと、結局、日本は低賃金、長時間労働によって国際競争力を伸ばすことだけに終始しておるという欧米各国からの指摘をされるという条件もなきにしもあらず、あると思うのです。これは基準法等においても、この最低を向上させるという考え方、安全衛生等についても健康保持のためにどうするかというような問題は、総合的なものをやはり条件として整えていくという考え方がなければ、私はあらゆる問題にこういう影響が出てくると思うのです。最近は、よく言われますように、経済学者が言うように、生産秩序と貿易秩序の確立ができぬような日本では国際競争には耐えられぬのじゃないか、結局この規制を受ける段階になるのじゃないかと、これはもうその世論のとおりだと思う。その根源になるものは何かというと、やはり労働条件なんです。労働者のやはり条件が一番問題になるわけです。けれども、私は、先ほど申しますように、決してソシアルダンピングを日本がやっているとは思いませんよ。一つの例を申し上げますならば、アメリカが六万の失業者が出たなんというのは、これはうそです。実際はアメリカが合理化をやったんです、半分はそれから出ているのです。この七年の間にものすごい合理化をやっておるんです。それも、日本の製品が輸出して市場撹乱をしておるというようなことはないんです。アメリカ自体が企業合理化をしている。そういう点は決して信頼は私はしておりませんけれども、しかし、最も労働条件として大事なことは、やはり労働者の安全と衛生を十分に守ってやる、健康を保持してやるということが基本になろうかと思う。こういう面に対して大臣はどうお考えになりますか、御答弁を願いたいと思います。
#164
○国務大臣(塚原俊郎君) 諸外国からいろいろな非難を受けており、ときには、これは一つの通称になっておりますが、エコノミック・アニマルといういやなことばもわれわれはずいぶん耳にいたすのであります。しかし、いま賃金の話が出ましたけれども、逐次改善されまして、フランス、イタリーと比較するわけではございませんが、それなりに近づいてきた、あるいはそれを抜いたということはまあよいことではなかろうかと考えておりまするが、アメリカ、イギリスそれからスウェーデンなどと比べますると、まだだいぶん差があるわけであります。一方において、労働時間の問題についても、先ほども週休二日制のお話も出ましたけれども、やはり、働き過ぎるとか、少し過酷な労働時間があるのではないかという批判があることもわれわれはよく承知いたしておるのであります。ですから、週休二日制につきましても、一九七〇年代の半ばごろまでには日本もおくればせながら他の先進国並みの労働時間になるよう、われわれも行政指導をいたしておるのでありまするが、いずれにいたしましても、今日までの日本の経済というものが、高度経済成長政策のもとに設備投資というようなことから今日のアンバランスというかひずみというものが出たことは、私はこれは率直に認めます。ですから、今後は、私の所管ではございませんが、やはり今後の財政のあり方は財政消費というものを主導型としたような形で、そしてわれわれの労政の中心である人間の尊重と福祉の優先というものが批判されながらもどんどん満たされていくという形に持っていかなければならない、そういう労政が、日本では内政の年といわれた一九七〇年から二年たったのでありますから、今後は労政の面においてそういう方法がとられなければならないし、また、労働省としてもそのかまえで今後とも臨んでいく考えであります。
#165
○高山恒雄君 これを最後にしますが、この間「日本経済新聞」にもこの四月二十日に「条約批准強く促す」ということで出ておりましたが、日本の場合は批准率が非常に低いのですね。したがって、少なくとも国際的な労働条件というものを維持するためにも、日本はもっとILOの批准というものを基本的に検討して、政府みずからがやれるものはやっていくと、こういう方法をとることのほうがむしろ国際的な日本の産業育成のためにもなるのではないか。一挙にやるということはできませんから、これは何としてもやっぱり一歩一歩前進させるという考え方からILOの批准をやっていく。労働者が希望するからそれをやるというのではなくて、経営者が反対するからやれぬというのではなくて、政府自体がこの問題については検討していただいて、ILOの批准が非常に立ちおくれておる、日本の批准は何とかしてやっていってもらうべきだと、この点をお聞きしたいと思います。どうお考えになりますか。
#166
○政府委員(藤繩正勝君) ただいま御指摘のILO条約の批准でございますが、わが国では現在ILO条約を二十九件批准をいたしておりまして、各国の平均は三十一でございます。まあ平均よりもちょっと下というところでございます。お説のように、できる限り条件の許す限りこの条約を批准することは、わが国としては当然の義務ではなかろうかというふうに思うわけでございますが、そういう角度で、最近におきましても昭和四十二年に百号条約を批准を行ないました。また、昨年は最低賃金関係の三条約を批准したわけでございます。
 そこで、ただいま御審議をいただいておりますこの労働安全衛生法が成立をいたしますれば、機械の防護に関する条約、百十九号というのがあります、こういった条約も批准が可能になるということで、条件を整備して逐次批准を進めてまいりたいというふうに思うわけであります。
#167
○高山恒雄君 おっしゃるような状態ですが、しかし、国際的に見ると、日本は非常におくれておるんですね、実際問題として。加盟国の六十カ国ぐらいがある程度の批准をしておるのじゃないかと、こう思うんですよ。その中で日本は六十何位だと思うんですが、その点はどうですか、順位からいきますと。
#168
○政府委員(藤繩正勝君) 順位としては、五十七番目になっております。なお、おもな国につきまして批准状況を御説明いたしますと、カナダが二十四、西ドイツが四十二、イギリスが六十五、フランスが八十二、ソ連は四十、アメリカが七、こんな状態になっております。
#169
○高山恒雄君 大臣ね、もういまわかって私も聞いておるわけなんですが、平均じゃないですよ、実際問題として。ほんとうに日本が国際的にこれだけ高度成長をしたという事実の上からも、五十七番目じゃいかぬですよ。私は六十一だと思ったんですが、ちょっと進んだんですかね、実際問題として。これは何としても考え直していただかぬと。だから、私は、先ほど申しましたように、労働者が要求するからやるというんじゃなくして、日本の現状から見て労働省がむしろ促進してILOの批准をやれるものはやっていくという基本原則がなければいかぬと思うのですね、姿勢が。これは一にして姿勢ですよ。もし日本があれもこれもということでどんどん一ぺんにやらなければいかぬ――先ほど言ったように、日本は、いま、貿易においては孤立化するような状態にきているでしょう。また、円の切り上げもやらなきゃいかぬような状態がくるでしょう。あるいは、そういう問題と関連して、日本の劣悪な労働条件ということが大きくウェートがかかって、あれもこれもと言われた場合、一体どうなる。そんなことはできやしませんでしょう。しかし、国際的に責められると、やらざるを得ないことになる。だから、私は、進むべきところは進んでもらう。高度に進んだ日本の経済情勢の中から、やれるものはどんどんやっていく、この姿勢が労働省になければ私はいかぬのじゃないかと思います。先ほどもおっしゃったように、週休二日制の問題も積極的にやるとおっしゃる。その意気込みで、批准もできるだけそれをやっていく。一挙にやるというような姿勢はとらないというふうな考え方をわれわれはするわけですが、大臣はどうお考えになりますか。
#170
○国務大臣(塚原俊郎君) 加盟国が百二十一カ国で五十七番目だからどうこうというようなことは、私は毛頭たいしてウエートを置いておりません。日本がおっしゃるように今日国際的に非常に評価をされているときでありまするから、やはりILOの面でももっと前進しなければならないということは、私もこれは基本的な考え方でございます。実は、労働大臣に就任いたしまして――私も、パレ・デ・ナシオンでありますか、ときどき参りましていろいろとそのほうをよそからながめておったのでありますが、自分が実際これを所管する立場に立ちまして、皆さま方に御質問をして報告も受けて、そのときに、なかなか問題があるのだな、もっとやらなければならぬなという話もしたのでありますが、だんだん調べてみますると、国内法との関係、あるいはほかの各省特に厚生省との関係において、まだ煮詰まらない点がある。これは事実でしよう。しかし、いまおっしゃったように、国際的な水準以上にまで上げようという日本でありまするから、労働省が主導権をとりながらそういったものを引っぱっていくという形は、これはどうしてもとっていかなければならない、このように考えております。
#171
○高山恒雄君 終わります。
#172
○小笠原貞子君 まず初めに具体的な問題をお聞きする上においても、いまも問題になっておりました労働災害に対して、責任ある労働大臣としてどういうふうに考え、どういうふうな姿勢を持っていらっしゃるかということを、テストするわけじゃありませんけれどもお伺いしてから、具体的に入りたいと思うわけなんです。
 高度経済成長を批判した佐藤さんが、高度経済成長をどんどんやって、そうしてその結果起きたのは非常な労働災害の数になってきた。だから国民一般も、初めは自分の生活が高度成長するかと思ったのが、あにはからんや、それは資本の高度成長であって、働く者にとっては労働災害や物価高になってくるというような自覚が高まってまいりました。ですから、この高まりに対して、佐藤内閣も、もう最近では高度成長政策ではなくて、福祉優先をするというふうに言われるようになった。当然、労働行政もその立場から考えていただけると思うわけなんで、まず大臣、そうして事務当局から、この労働災害がいまだに非常に大きく出てきて、働く者を苦しめておるという問題について、たくさんいままで言われましたので、簡潔に姿勢を表明していただきたいと思います。
#173
○国務大臣(塚原俊郎君) この法案を提案いたしましたときの提案理由の説明の中にも、私が冒頭この委員会に参りましてごあいさつ申し上げましたときにも、あくまでも人間尊重と福祉の優先ということを、私は労政の基本政策だということを申し上げました。今日までこまかい数字は要らぬと申されましたけれども、百六十五万人も出て、そのうち六千人でありますか、なくなっているということは、まことに残念であります。
 ことに、なくなられた方は一家の支柱をなす方で、これほど悲惨なことはありません。ですから、いかに機械が大型化し高度化し、それに対する対応性が少ないとはいえ、こういうものをほんとうに絶滅しなければならぬという気持ちが、この法案を提案いたしましたのも、そういう気持ちが十分にあるからであります。不十分であるという御批判はずいぶんいただいておりますが、私は、やはりこれによって、重大な労災というものを少なくしていくということにつとめなければならないと思っております。で、昨年度は発生率で一〇%減った。いろいろ運動も展開いたしておりまするし、訓練等も強化いたしておりまするが、また、死亡者の数でも五百人ほど減ったという数字も私は聞きまして、いいことだなとは思いましたが、そういう面、やはり考えてみれば不況のときでありますから、受注関係で、あるいはそういったことが少なくなったのではないかという反省は人一倍強く持っております。しかしこういう少ない数字がより少なくなる、そういうことが継続していくということが望ましいと。あくまでも私の基本姿勢は災害の撲滅であります。こういう悲惨な状況をなくすることであります。
#174
○政府委員(渡邊健二君) ただいま大臣からお答え申しましたような基本姿勢に立ちまして、人間尊重の立場から労働者の健康と生命の安全を守るという立場に立って各般の施策を進めているわけでございますが、当面は、昭和四十三年度から五カ年計画の労働災害防止基本計画というものを立てまして、それにおきましては、死亡・重大災害の減少、それから有害物等による職業病防止対策の徹底、それから中小企業における労働災害防止対策の充実と、この三点を柱といたしまして、行政における監督指導の強化、あるいは職業病等に対する必要な規制措置の整備、あるいは労使の自主的な防止活動の推進等々の施策を推進いたしまして災害の減少につとめておるところでございます。さらに、抜本的にはやはり法制の整備が必要だということで今回の法案も提案してるところでございます。
#175
○小笠原貞子君 たいへんいい姿勢で、声も大きくて元気で、やる気十分だというふうに判断をさせていただきましたが、これから私の質問が終わりますまで、いまの姿勢で御答弁をいただきたいと、そう思うわけでございます。
 で、まず具体的にお伺いしますけれども、いままで問題になっておりました、最近の事故の中で元方事業者の責任が明らかになっていないというような点で、非常に下請で犠牲が出ているということが大きな一つの問題だろうと思います。それで、元方事業者の責任について二十九条でなぜ罰則をつけてきびしくするということができなかったのか、その点をお伺いいたします。
#176
○政府委員(渡邊健二君) 元方事業主に対しまして二十九条で下請に対する必要な指導あるいは指示を行なう責任を課しておるわけでございます。ただ、この元請−下請の関係というのは非常に広範な産業にそういう関係がございまして、したがいまして元方が下請になすべき指示あるいは指導等々も非常に多岐にわたるわけでございます。したがいまして、そういう場合にこれは罰則を科するということになりますと、罪刑法定主義の立場から相当その個々の場合に使用者がどこまでやれば義務を果たしたか、どこまでやれば罰則がかかるかということが明確でないとなかなか罰則の適用ということは困難でございます。いま申しましたようなことで、非常に広範な業種にわたり、多岐な部門についてそういう問題がありますためになかなかそれが特定しがたい、そういう点もありまして、一応、この法案では罰則を付さない形にしておるわけでございますが、実際の運用につきましては十分に下請の災害をなくするという立場に立ちまして、効果が出るような運用がされるよう指導してまいりたいと考えております。
#177
○小笠原貞子君 ことばではそのとおりというふうに言えるかもしれませんので、具体的な例で御質問したいと思います。
 これは三菱モンサント化成四日市工場で水銀中毒、下請の労働者が被害を受けたわけなんです。四十五年の九月十四日ごろでございます。で、水銀中毒の七名、そして使用者がほかに一名被災しております。で、発生の状況――これはおたくのほうでお調べいただいたのでおわかりだと思いますけれども、大臣にも聞いていただきたいので、一応簡単に申しますが、三菱モンサントの会社、それから下請、下請と、こう二段になっているわけなんですね。で、下請の下請である日美組では、三菱モンサントから下請を受けた日本化工機株式会社を経由して、三菱モンサント化成四日市工場の塩水精製装置の沈でん分離槽の補修工事を請け負い、使用者を含め八名の作業者が四十五年九月七日から作業を開始いたしました。そして九月十三日までで所定の工事を終了しております。ところが十五日に作業者一名、十六日に三名、十七日に四冬の休業者が生じました。発熱、倦怠感を訴えるため当該工場の診療所において作業者全員の診療を実施した結果、水銀中毒と診断をされたわけなんです。で、こういう事故が起きまして、そして、労働基準局が講じた措置はどうなのかと言いますと、日美組及び日本化工機に対しては厳重な勧告でございます。そして、大もとの三菱モンサント化成四日市工場に対しては、同種災害の再発防止に関して次のことを指示したということで、指示が出ていると、こういうことなんですね。この点もちょっと考えておいていただきたいわけなんです。一番大もとのところには指示であって、そして下請、下請のところは厳重にやられているわけなんです。こういう点から見ますと、この工場は去年も水銀中毒を出しているわけなんですね。で、問題は下請の日本化工機というのが、その請け負った仕事、その場所、その装置について水銀がついていたということを全然三菱モンサントから知らされていないということが一つの問題でございます。そして、それからまた下請けされた日美組は、だから全然もちろん知らされないで作業をして、その作業した労働者が中毒したということになるわけです。常識的に考えてわからないのは、この監督署の処置なんですね。だから最も元請である三菱モンサント、ここに水銀があるというのはわかっている。ところが知らせないで下請に出した。だから、下請は当然その下請に知らせなかったというのだから、知っているところが知らせないのが一番悪いのに、そっちに対しては、こういうふうにしなさいという改善の指示命令だけで、そして知らないで犠牲になっちゃったところには、厳重にというような措置が講じられているわけなんですね。で、そうしますと、先ほどの御答弁によりますと、元請と下請との関係の仕事の関係が非常に多岐にわたると、そうして明確でないと可だから、そういう罰則というものをつけにくいと、一般的に言われたらそうだと思うのですけれども、具体的に言いますと、水銀の残っている危険があるのだよと言えば、それで防止できるのに、そのことを言わないでおいた元請に対しては全然手がゆるやかで、そして、知らないで請けたところが被害を受けているということになれば、別に多岐でもないし、複雑でもないし、まことに簡単だと思うのです。この元請の三菱モンサントに非常に責任があると思うのに、結局こういうことができてしまっているとすれば、先ほどの御答弁では、ちょっと納得がいかないと思うのですが、いかがでございますか。
#178
○政府委員(北川俊夫君) 先生御指摘のように、この事案につきましては、沈でん分離槽のスケールの中に水銀が入っておるということを下請に十分周知せしめれば完全に災害が防ぎ得たのではないか、こう考えます。そういう意味では三菱モンサントの犯しました過失というものはたいへん大きいと。ただ、いま御指摘の新法二十九条との関係でございますけれども、先生が御指摘になりました当該監督署が講じました措置は、御承知のように現行基準法に基づいてやったものでございまして、したがいまして、あくまでも現行基準法は直接雇用関係があるということを前提として指導しておりますので、三菱モンサントについては非常に軽やかな警告というようなことになっておるわけでございます。今回、もし新法が成立しましたならば、二十九条に基づいて三菱モンサントが十分な措置を行なわなかったという、二十九条に反しておるという点では、非常に厳重な注意、あるいはそれなりの行政処分というものができ得ると思います。ただ、二十九条そのものにつきまして、先ほど局長が申し上げましたけれども、刑事政策上、罰則がつけられるかどうかという問題につきましては、罪刑法定主義、いわゆる構成要件としまして罰則をつけるほど具体的でない――まあ、この事例につきましては、たまたま非常に具体的でございましたけれども、事例全体につきまして、元請、下請の関係を二十九条によって罰則をつけるほど、法律的にはシビアにすることはちょっと困難ではないか、こういうような感じでございます。
#179
○小笠原貞子君 それではもう一つ具体的な例でお伺いしたいと思います。
 これは鐘淵化学工業高砂工場で同じく水銀中毒事件が起きております。これは四十六年十月三日でございます。被災状態は、水銀中毒者七名が出ております。で発生状況で言いますと、鐘淵化学工業高砂工場で、旧式化した塩化ビニールモノマー製造設備を廃品として樋口商店というところに売却をいたしました。工場の中で廃品として売却してそのまま置いてあるわけですね。その樋口商店は今度はこれを設備解体業者である杉山商店へその解体工事を発注いたしました。鐘淵化学工業高砂工場側は杉山商店が解体作業を開始する前に七日間、水洗しているわけですね。つまり、水銀というものがあるということがわかっていたからだと思います。杉山商店の所属労働者十四名は四十六年八月二十五日からその解体作業を開始し、小型反応装置二基を解体終了し、同四基の解体中、大型反応装置一基の下半分解体を終了した四十六年十月三日ごろに、ガス溶断作業を行なっていた作業者のうち、悪寒咽頭が赤くなり、疼頭を訴える者が発生した。このために診療所等で治療を受け、大阪府立衛生研究所及び神戸大学医学部において検査を受けたところ、水銀中毒と診断されたと、こういうことになっております。そして、先ほども言ったように、役所側が行なった措置としては、鐘淵化学工業高砂工場に対して、当該装置内の有害物を除去すること、売却先及び解体業者に対して、当該装置内で取り扱った有害物の名称、有害性等を連絡し、解体作業が安全に行なえるよう必要な措置をとることというふうに、知らせてなかったということを指摘して、指示を出しているわけなんですね。こういうふうに、この鐘淵化学工業でも犠性がやはり同じようなケースで起きているわけです。そして、この中でまた一つの問題だというのは、五人が一人親方なわけなんですね。そうすると結局、補償というものが全然ないということになってくるわけなんです。で、監督署としても、鐘淵化学に補償しろということまでは法的根拠がないから言えないということになるだろうと思うのですね。そうすると、全くこんなばかなことがあるだろうか。下請で一生懸命働いたのが何にも知らないで犠性を受けた、しかも補償が得られないというような、こういうおかしなことが現実に起きております。これは時間もありません。二つだけの例にとどめましたけれども、化学工場にはこういう問題がずいぶん方々でございます。で有害作業は下請労働者にやらせる。ひどいときには有害物の加工を外注したり、社外下請に出すというケースもたくさん聞くわけなんです。だから、私は行政当局の姿勢というものを一番先に聞いたわけなんです。こういうような仕組みも十分御存じだと思うわけなんです。そうすると、いままではこの新法がなかったからできなかったと、こういうふうにおっしゃるけれども、少なくとも新法がなくても、労働省の基準局の立場としてはもう少し労働者の立場に立った措置というものが行なわれなければならなかったのじゃないだろうか。それがされてないとすれば、この新法ができて、いろいろと指導いたしますということを言われても、またやはり同じような程度じゃないだろうか、泣くのはいつも下請だという結果にならないだろうか、そういうことを心配するわけなんです。こういう例に照らして、今度の立場ではどういうふうに具体化して安心できるものか、お伺いしたいと思います。
#180
○政府委員(北川俊夫君) 先ほどの答弁のやや繰り返しになるかもしれませんが、基準法は御承知のように直接の雇用関係にある者の間に立って、使用者に対して労働者が災害あるいは職業病にかからないようにという規制を直接の使用者にしておるわけであります。最近、先生が御指摘のように、重層下請関係、あるいはジョイントベンチャー、リースというように、単純な雇用関係でない、いわゆる働く関係というものが出てまいりました。そういう関係から、基準法から離して、新法では、元方事業者あるいはリース業者、ジョイントベンチャー業者、そういうやはり働かせるものの実質的な指揮権あるいは指示権、そういうところの力を持っているところを押えようというのが新法のそれぞれの規定、たとえば二十九条、三十条あるいは三十三条のリースの規定というようなものがそれでございますけれども、今回いま御指摘になりました鐘淵化学の問題あるいは先ほどの三菱モンサントの問題につきましても、二十九条の運営につきまして、御指摘のように、化学工場につきましては、その部分的作業を下請におろす際に、十分その工場で扱っておりますところの化学製品、特に有害物についての知識を与えるのでなければ職業病にかかる、あるいは災害が発生することは必然でございますので、その指示内容につきまして、化学産業について、こういう場合に、こういうぐあいにというような内容の指示をいたします。従来の単に法律に基づきません行政指導とは違いまして、徹底したものになると、そういうふうに確信をいたしておりますし、そういう方向で努力をいたします。
#181
○小笠原貞子君 もちろん努力を期待するわけですけれども、先ほどから言いましたように、非常に多岐だとか複雑だとか広範囲だ、だからやりにくいというような問題はあるとしましても、もう明確にその元請の怠慢のために犠性を出したというような場合には、当然ここに罰則というものがつけられてしかるべきだと思うのですよ。だから、その責任というのを先ほど一番先に私は伺ったわけなんですよね。ほんとうに人間尊重ということを、福祉優先、労働者の立場、命と安全を守るという立場に立てば、やはり大きな会社の元請で当然のしなければならないことがされていなくてこういう事故を起こしたというような場合には、遠慮することないと思うのですよ、きちっと罰則というものを、こういう場合には罰則をつけるというような、いろいろと御苦労して法の中に組み入れるということはできないはずはないと思うのですがね。その辺大臣、私の言うのは無理でしょうか、どうでしょう。ちょっと、大臣考えてみてください。
#182
○国務大臣(塚原俊郎君) いろいろな実例をあげましての御質問でありまするが、先ほどから親企業と下請との関係についていろいろ議論されておりまするが、確かに下請に事故の多いことは事実であります。だから、それをなくするために、われわれはこの御審議を願っておる法律でこれをカバーしたいと、しかし、いま小笠原委員は、これはやってもだめじゃないかという、その辺は……
#183
○小笠原貞子君 全くだめとは言いません。はっきりしたところをしっかり押えるようにしてください。
#184
○国務大臣(塚原俊郎君) ですから、われわれはこの条文に従いましてしっかりひとつやりますよ。ただ、いま小笠原委員御指摘のように、もっと罰則を強化するということはいまのところは考えておりません。これで十分なし得る、またなさねばならない、このように思っております。
#185
○小笠原貞子君 大みえを切られましたが、大臣、もし出たらどうしますか。大臣、そのとき大臣でないから知らぬと言われたら困るのですがね。まあ、これ以上時間がないから続けませんけれども、やはり、そういう立場で、ほんとうにたいへんなことだと思いますけれども、事務当局としても具体的に労働者の安全を守るという立場で何とか努力して、こういう下請が泣かされるというようなことがないようにくれぐれも期待したいと思いますし、労働大臣もこの次また大臣としておいでになりました節は引き続いてがんばってやっていただきたいと思います。
 それではその次に移りますけれども、昨年十一月の二十六日、新日鉄戸畑工場で爆発事故があって、死者四人、重軽傷十七名の災害がありました。この新日鉄八幡製鉄所では、非常に災害が多うございます。時間がないから数字はあまり申しません。その災害でもやはり下請とか社外工とかというところに非常に災害が多くなってきているというのが数字で出ております。こういう製鉄関係ですね、これはやはり今度の法の中にも建設、造船というのが入っているのですけれども、やはりこういう製鉄関係で事故が多いというような場合は、当然三十条の政令で指定していただきたかったと思うのですけれども、その辺はどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
#186
○政府委員(渡邊健二君) 八幡製鉄におきましてお話しのような事故が起きたことは事実でございます。最近鉄鋼業におきまして下請に仕事を出すという事例がふえておりますことも事実でございます。ただ、鉄鋼業は、建設や造船などに比べますと二次下請、三次下請といったような重層下請の関係は少のうございますし、また、災害率も建設や造船に比べますと少ないわけでございます。それから、特に建設や造船と違いますことは、下請に出すものは下請にまかせてやりますので同一の仕事を元請と下請が混在してやるという事例は鉄鋼業の場合は比較的少ないわけでございます。特定事業にしたらどうかというお話しでございますが、十五条の「特定元方事業者」と申しますのは、そういう元方と下請とが同一の作業を行なっておる。こういう場合に、元方に「統括安全衛生責任者」を選任させて、そして三十条のいろいろな元方事業所の仕事を統括管理させるという規定でございますので、鉄鋼は造船、建設などからいたしますと、そういう元方、下請が混在してという例が少ないというようなこともあって、十五条のこの「特定元方事業者」の業種にはしないつもりでおるわけでございまして、しかしながら、この場合は、その場合でありましても、鉄鋼業におきましてもやはり元方である以上、二十九条の、先ほどから申し上げております下請に対する必要な指導を行なう、あるいは違反している場合の適当な、必要な指示を行なう。こういう責任は当然元方事業者として、その義務を負うわけでございますので、第二十九条の適正な運用によりまして、下請にだけ災害のしわ寄せがされることのないように十分指導運営してまいりたいと、かように考えております。
#187
○小笠原貞子君 それじゃ、今後の製鉄関係では、そういうふうに指定とするということは全然考えていないとおっしゃるのですか。
#188
○政府委員(渡邊健二君) 現在までの状況は先ほど申しましたように、建設、造船とは全く同じとは言えないのでございますが、今後、もし鉄鋼におきましても、そういう下請に出す仕事がさらにふえていく。そして造船や何かのように混在した形での作業が行なわれるといったような実態が、造船や建設に近い状態になってまいりますれば、そのときは検討しなければならない、かように考えております。
#189
○小笠原貞子君 建設や造船に近いようになったら考えるというのじゃなくて、やっぱり事故というものはそういう下請なんかにも非常に大きく出てくるというようなそういう点で比較しながら御検討いただきたいと思うのです。ひどいところに近づかなかったらそこに入れないよなんというんじゃ、死ななきゃだめだということにつながりますので、やっぱり労働者の安全を守るという立場から指定して、きちっと監督して守るというふうな姿勢で今後も御検討いただきたい、そう思うわけです。
 それじゃ、次の問題に移りまして、職業病の予防と認定の問題に関して少しお伺いしたいと思います。
 もう、大臣はじめみなさん御承知のとおり、職業病というのが非常にふえてきておりますし、非常に新しい職種にふえてきております。まあ、産業の近代化とか生産工程が非常に変化した。また合理化がきびしくなってきたというような直接的な原因が相当あろうと思いますけれども、はたして、それだけで職業病というのがこんなにいろんな形で、それの数も相当ふえてきているのかどうでしょうか、まず、大臣からこういった、いま問題になっております職業病というものが出てきている、増加してきているということに対して、どう考えていらっしゃるか。これに対してどういうふうにしなければならないとお考えになっていらっしゃるか、まず、そこからお伺いしたいと思います。
#190
○国務大臣(塚原俊郎君) 四十四年、四十五年、それからそれ以後の統計、まだはっきりいたしておりませんけれども、大体年三万件ぐらいのものが数えられるのではなかろうか。これはまことに重大な問題であると思います。じゃ、こういうものがどうしてできるかというとやっぱりけがからくる、負傷による疾病、それから重激業務と申しまして、重い激しい業務ですね、重激業務。運動機能障害、あるいはやけどや化学物質による中毒など、こういうものがあげられると思います。その原因としては新建材料あるいは新作業方法等が考えられますが、その他、職場内の危険防止施設の不十分、――これは決して十分でないと思います。それから衛生教育などの衛生管理状態の低調さ、こういうものが原因で職業病というものがふえてきている。そのほかにもたくさんございまするが、基本的にはこういうものじゃなかろうかと思っております。ですから、今後は衛生管理体制を整備する。それから有害物管理を適切に行なう労働安全衛生教育の徹底、健康管理の徹底、こういうものに最重点を置いていかなければならないと思います。今度の法案においても職業病というものも重点を置きまして、それをなくするための努力をすべき状況がたくさんあると私は考えております。
  〔委員長退席、理事高田浩運君着席〕
#191
○小笠原貞子君 いろいろお述べになりまして、それなりの原因になっていると思いますけれども、最近の特徴としては、精神的に過労で、精神病と言えば大げさになるかもしれませんけれども、事実精神病がふえてきております。しかも中間管理職の中にノイローゼがいまふえてきているというのが私は非常に大きな問題じゃないかということで、いま大臣がどういうふうに考えていらっしゃるかをお伺いしたわけです。総理府の精神衛生に関する調査が昨年の八月に出されておりますのを拝見いたしますと、六人に一人がいらいらしているということが出ておりました。この原因というのは何だと言えば、いま大臣がいろいろおっしゃった原因のほかに社会的な要因というものが入っていると思うのです。住宅とか交通の問題公害それから物価高というような非常にいまの社会的な要因が悪化してきていらいらし、そうしてノイローゼになってというような、経済の成長第一主義の結果が、直接ではないにしても、一つの原因になっている。労働密度の強化、管理社会ということがその上にいわれるようになりました。四十四年の労働白書を拝見いたしますと、業務上の疾病としては、明確にとらえることは困難であるが、作業の単純化、監視労働からくるストレスの高まりや、環境の人工化からくるいわゆる令房病など、新しい健康障害も最近注目されている。こういうふうに書いているのです。こう考えてみますと、職業病に対する対策というものが技術的に狭い視野で、また科学的にというふうな、そういう見方で対処していくのではとうてい解決はできない、やはり総合的な大きな視野に立って、こういうふうな職業病というものはどういう要因があって、そうしてそれに付随してどういう遠因からくるかというような総合的な分析をしなければ適切な施策というものが出せないと思うのですが、その辺はどういうふうにお考えになっていらっしゃいましょうか。
#192
○政府委員(渡邊健二君) 先生いま御指摘の四十六年八月の総理府の精神衛生に関します調査の結果、われわれも承知いたしております。私どももそういう精神不安定がふえております原因は、社会の急激な発展による生活の複雑化や高度化、あるいは職場における作業方法や何かの高度化、こういうものが関係していると考えるわけでございます。そういう意味におきまして職場におきます精神健康問題は今後非常に重要な問題になってくると考えるわけでございまして、労働省といたしましても、現在御承知と思いますが、産業医学総合研究所というものを三カ年計画で建設を進めているわけでございますが、こういう産業医学総合研究所におきましては、こういう面の研究等もやっていこう、こういう計画でいるわけでございます。しかし、それまでの間におきましても、非常に重要な問題と考えますので、現在、災害防止団体法に基づきます中央災害防止協会の中に大学や研究機関、それからその他の専門家から成ります精神健康委員会というものを設けまして、職場における実際的な精神健康の進め方等について御検討を願っておるところでございます。で、特に、今後、そういう問題に対処しますためには、やはり、職場のいろいろな条件、特に、職場環境を快適化するということが非常に重要なことだと、私ども、かように考えておるわけでございまして、この法案の中にも作業環境の快適化といったようなことにつきまして指針等を設けまして、そういう指導をすることも入っておりますのは、そういう点も含んでおるわけでございます。で、今後とも、こういう専門家の研究あるいは調査、そういうものを踏まえまして、精神衛生面からの対策を進めてまいりたいと、かように考えております。
#193
○小笠原貞子君 それで、きょう、ひとつ、頸肩腕症候群と、それから腰痛症という問題をちょっと伺いたいと思うのですけれども、この頸肩腕症候群、腰痛症というのは、この二十三条にことばとしては出ていないけれども、当然含まれると解釈してよろしゅうございますね。
#194
○政府委員(渡邊健二君) 頸肩腕症候群や腰痛等は、これは、いろいろな原因でなりますわけでございまして、これらのものも、それが業務上に起因したということが明らかな場合には、これは業務上の疾病として取り扱うことにいたしております。
#195
○小笠原貞子君 ところで、労働省として頸肩腕症候群というのは、きのうやきょう起きた病気ではございません。腰痛症もそのとおりだと思う。これは、ほんとうに、非常に苦労な病気なんですね。外科みたいに傷があったとか、血圧みたいに数字でわかるという問題ではありません。わかるのはやっぱり本人だけでございまして、本人がたいへんつらいというような立場に立っているのに、なかなかそれが認められないというような問題もございまして、これについて非常に私も心配するわけなんです。この頸肩腕症候群とか腰痛症とかいうようなものにつきまして、労働省としては、医学的、総合的な研究というものがいままでなされていたのかどうか。なされていたとすれば、どういうふうな実態であったのかということをちょっとお知らせいただきたいと思います。
#196
○政府委員(渡邊健二君) これらの疾病は非常にむずかしい問題でございまして、たとえば腰痛などと申しますと、特に業務に起因しなくても、ある程度の中年以上になりますと、そういうものになる場合もあるわけでございまして、それが業務上に起因するかどうかという問題、医学的に非常にむずかしい問題でございます。前からあった問題でございますが、労働省といたしましては、これらの疾病につきましては、専門家に御検討を依頼いたしまして、そうして専門家の御意見に従いまして、業務上の疾病と認定いたします一定の認定基準を設けまして、その認定基準に該当する者については、これは業務上の疾病として、たとえば労災補償で補償するといったような措置も講じております。また、単に、補償だけではなしに、そういうものにかからないように、予防のために、たとえば、頸肩腕症候群でございますと、キーパンチャー等につきましては一定の指導基準を設けまして、一連続が六十分以内、そのあとは十分ないし十五分の休憩を与える、あるいは一日その作業に従事するのは三百分以内、大体たたくキーの回数は四万打数以下といったような、そういういろいろな作業についての予防的な指導基準なども設けまして、こういうような疾病の予防等をはかっているところでございます。
  〔理事高田浩運君退席、委員長着席〕
#197
○小笠原貞子君 それで、私のほうも一体、こういう深刻な問題をどの程度御検討いただいているのかと思って、おたくのほうから資料をいただいたわけなんですけれども、頸肩腕関係で言いますと、昭和四十一年度で五十万の予算が研究費として出ております。四十四年度にまいりますと四十万が出ております。四十五年度は二十万でございます。それからもう一つの研究で三十万、合わせまして五十万。四十六年度でまた三十万でございます。以上、五つのテーマで百七十万円というのをきょう資料でお持ちいただいたわけなんですね。そうしますと、これは一人に渡るのかと思ったらそうじゃなくて、名前が労働安全サービスセンター所長久保田重孝と書いてある。五十万を一人でなく何人かでお分けになっていらっしゃる。そういたしますと、まことにお粗末なんですね。一人に一体どれくらい当たるのか伺ってみればたいへんおもしろい数字になる。三万とか、四万とか、まあ、ちょっとした人のお小づかい程度ということで、「手指作業者の振動障害の早期診断に関する研究」というので、名前はいいのですけれども、出すのはそういうわずかなお金でございまして、これで一体どの程度ほんとうに真剣になって御研究いただけたかどうかということに、ちょっとびっくりしたわけなんですね。そういう点から、やはりお金が多いからいいというわけではございませんが、いろいろ頸肩腕症候群の患者さんを見て、そして、実際に認定していらっしゃるというお医者さんもいらっしゃるわけなんですね。そうすると、そういう方たちは実績を持っていらっしゃるのだから、その方たちの実績から意見を聞くというような方法が講じられてもいいだろうし、また、こういうわずかな予算じゃ何にもできないから、もう少し予算というのも奮発していただいて、やっぱり何人かのチームをつくっていただいて、これがずっと積み重なって四十一年度からやられているのだけれども、さっぱりこの研究の成果というものが私たちにはわからないですね。このまんまのテンポでやられますと、やっぱりこれについての予防対策というものも全然期待できないわけなんですが、その辺のところ、もうちょっと真剣に考えて、予算面でもやっていただきたいし、それから特定のという指定でなくて、実質的にやって実績を持っていらっしゃる方というような方の意見を聞くというような、もっと柔軟な、患者さんたちの立場に立った研究ということを、私は、早急にしていただきたいと、こう思うのです。産業医学研究所ですか、もちろん、それもけっこうだと思います。しかし、それができるまでに、まだすぐあしたからできるというわけじゃなくて、一方ではもう何年かの実績を持っていらっしゃるのだから、それを利用し、吸い上げて生かすということがなされないというのは、まことに残念だと思うのですけれども、その辺のところどういうふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
#198
○政府委員(渡邊健二君) 先生御指摘のように、頸肩腕症候群あるいは腰痛等につきましても毎年研究委託費が出ておりますが、いずれも金額等からいたしまして、われわれも決して十分な額と思っておらないわけでございます。ただ、これは何人かでやっておるのを一人にすると三万か五万じゃないかというお話しもございますが、大体こういうのは、たとえばいまおあげになりました久保田先生のところでございますと、関係の研究者がグループを組んで研究をいたしておりますので、別にそれを一人一人に分けるという形ではなく、そのグループで使われておるわけでございます。確かに不十分ではございますが、予算の制約の中で、しかも近ごろは次々に非常にたくさんのいろいろ職業疾病が出ておりまして、多方面についていろいろ、こういう研究を御依頼しなければ、ならない問題がございますために、十分な額になっていないことは、われわれも非常に遺憾に存じておるわけでございます。が、しかしながら、そういう乏しい予算の中で、われわれがお願いしております専門家の方々に非常に御努力を願いまして、先ほど申しましたように頸肩腕症候群についていいますと、三十九年にはそれらの研究の結果等を参照いたしまして、頸肩腕症候群についての認定基準をわれわれつくらしていただいておりますし、四十四年には先ほど申しましたキーパンチャーの指作業に基づく疾病についての、その他の通達等も出さしていただき、あるいは腰痛症についても、いずれもそういうようなものをそれらの研究を参考にしてつくらしていただいておりまして、私どもは、いまわれわれが通牒等で御指導申し上げておるもの、それが完全にもし事業場で実施されるならば、頸肩腕症候群、いわゆるキーパンチャーのそれなどはある程度防げるのではないか、かように考えておるわけでございますが、今後とも、そういう対策の万全を期しますために、予算をできるだけ取りますとともに、有効な活用方法についても、一そう努力してみたい、かように考えております。
#199
○小笠原貞子君 そちらで十分じゃないとお認めていただいているとおりなんでございますね。私のほうとしても、もうこれは完全だということはなかなか困難だと思うけれども、実情と比べますと、あまりにも、こう離れているもんですから、やはりそこに、ほんとうに、先ほど初めの姿勢で、たいへん人間尊重福祉ということを言われたにしては、実際こうやって伺っていくと、まことにひどいものじゃないかと、この辺で実際問題やってもらいたいと、そう真剣に考えるわけなんです。それで、キーパンチャーについては確かに研究の結果四万回タッチとか、いろいろなものが出てきましたけれども、初めはキーパンチャーで出ましたね、頸肩腕症候群というのは。漸次キーパンチャーだけではなくて、電話交換手から筆記から、一般業種の中から出てくるわけなんです。そうすると、もうこれではほんとうに追っつかない、焼け石に水とまでいかないような対策にしかすぎないわけなんです。私は、職業病の方々のお話も伺いまして、もう人ごとに思えないんですね。ことに、男の方も多いけれども、やっぱり婦人労働者の中に非常に多いわけなんです。いろいろ実情を伺いたいと思ってちょっと聞かせていただいたら、きょうもたくさん傍聴に来ていただいておりますけれども、もう、すぐやっぱり自分のものだというふうに真剣に考えてきょうはおいでいただいたわけなんです。たとえば、おかあさんが、夜中に赤ちゃんが泣いたと、おっぱいやりたいと思って抱こうと思ったら赤ちゃんが抱けないんですね、それでもうだんなさんを起こして赤ちゃんを抱いてもらっておっぱいを飲ませたというような方も私は知っています。また、はしを持とうと思ったら落ちたとか、ハンドバッグみたいなものでも落っことしてしまったとか、ほんとうにもうこの腕なんか要らないと、痛いというような――もうこうやって見たら、どの方がどういうふうな病状だということはわからないですね、みんな外から見た場合には、そういうような苦しみを持っていらっしゃる。だから、ほんとうにその働く婦人が、いま労働者の中で三分の一からの労働力になっているわけでございますが、そして元気なときは一生懸命働いて、そして、こういう職業病になったら認定してもらうのにまた一苦労で、認定されても、今度はまた会社がそれを認めないというので一苦労で、結局、泣き寝入りというような、ほんとに若いうちだけの使い捨てと、こういうようなことでは、私はやっぱり婦人の立場として許せないんですよね。これは私が言うよりも、どなたがお考えになっても人道的にこういう方たちの立場というものをもっと尊重して真剣に考えていただかなければ、姿勢のときはたいへんよくても実際問題はこの程度だということにつながっていきます。ただ政治不信ということだけではなくて、働く人たちがいつまでも救われませんので、ほんとうに早急にこういった方たちの立場に立って、この職業病というものを真剣に考えていただきたいと、私はほんとにそのことをきょうははっきり御確答をいただきたいと、そう思って来たわけなんです。大臣その点いかがでございますか。
#200
○国務大臣(塚原俊郎君) 世の中が進むにつれまして、冒頭申し上げましたように、非常にいろいろな問題が出ておりまするが、特に職業病という、いま、もっともっと小笠原委員は例を持っておられるんでしょうが、それだけお聞きしただけでも、職場で働いた結果がそうなるということになって、それがほっておかれるということがかりにあるとするならば――先生はあるとおっしゃっておりましたけれども、これは大問題だと思います。ですから労使の双方の話し合いというものももちろん大事でありまするが、今後、激増するであろう職業病――、実はキーパンチャーにつきましては私もこの間現地へ参りましていろいろお聞きしたり、この目でも見てまいりましたし、どれくらいのものであるか、自分自身はできませんけれども、私は私なりに勉強してまいったつもりでありまするが、キーパンチャーに限らず、いろんな問題もありまするから、労働省としてはあくまでも働く労働者の生命と安全を守るというこの基本理念に立って今後も取り組んでまいります。
#201
○小笠原貞子君 ほんとに真剣に御検討いただきたいと思います。
 それで、具体的にまた移りたいと思うんですけれども、きょうも来ていらっしゃいますけれども、日本航空株式会社ですか、日航ですね。日航の羽田の事業所にいらっしゃいます茨田弘子さんとおっしゃいます、年は三十六歳です、三十九年七月に入社されましで、四十三年の十一月に発病になりました。四十五年八月十七日に職業病として認定されました。これも仕事はキーパンチャーではございません。電話の交換手をしていらっしゃるわけなんです。で、その方がたいへん自分が痛いと、つらいと、そして認定されたという中で、何といってもつらいのは、認定されたのに、会社がその認定を認めない。そして、これをもっと働かせろというような立場で、もうひどいんですね、伺ってみると。たとえば、具体的に言いますと、あるとき、係長が茨田に、仕事をやれと強く言っているか。と、下の者に言うわけですね。下の掛長は、はい言っています。と、もっとどんどん言え。と、こう言っておるわけです。もっといじめてやれと、もうかわいそうですよ、手が痛いんだから、その人が答えると、もうかまうものか、部下なんかかばうな。と、こういうことを言っておるわけです。電話だからみんな聞こえちゃうわけなんですね、大きい声で。かばって損をするのはわれわれなんだ。もっとやれ。あまりひどいから、言われた人が黙っていると、あなたのまわりにはえらい人が大ぜいいるんだから大きな気持ちになって安心してたたけ。と、こういうことまで言っていると、その後茨田はへこたれたか。まだへこたれないか、こういうふうなやりとりが現実にされているわけなんですね。そういうような立場の中で、あの人は――外には見えませんから、あの人はなまけ病なんだとか、あの人はずるいとか、いろいろなことで同僚の中から村八分みたいにされたりというような、そういうようなことも、非常に精神的に苦痛になっているわけなんです。日航の場合は、またたいへんひどいことをやっておりまして、安全衛生委員にも大げさにするなと、彼女一人の問題ではないというようなことを言っておりまして、エアポート・グラウンド・サービスというのですか、日航の羽田にありますところのお医者さんに、もし業務上と診断したら大ごとになるからよろしく頼むというふうに、業務上と言うな、そういうことまで言っているわけなんですね。こういうことが事業所の中で公然と行なわれているということまでは大臣も御存じなかったのじゃないかと、そう思うのです。
 これも、きょうは二つずつだけ例をあげることにいたしますが、もう一つは、芝信用金庫の杉浦由美子さんとおっしゃる方、この方もいらっしております。頸肩腕症候群で背中が痛い、腕が痛い、――三田基準監督署へ労災認定を申請中なんでございます。この方も、たとえば、この信用金庫が何と言っているかというと、労災申請にあたっては、認定されても従わないこともあると、こういうふうにはっきり、基準局で認定されても従わないと、なぜならそれは就業規則四十三条「欠勤七日以上にわたる場合は医師の診断書を提出しなければならない。ただし、この場合金庫は、医師を指定することがある」という項目によって東京労災病院へ行けというふうに、医師を指定してくるわけなんですね。そうするとやっぱり自分がつらくてずっとみてもらっているそのお医者さんが一番実際わかっていただいているのに、会社はそのお医者さんだと認めないと、あそこへ行けというふうなことで、そして、しかも露骨に言うことは、あそこへ行けと言っておいて、そのお医者さんに業務の職業病ではないというようなことの圧力をかけているというようなことになりますと、働く人たちにとっては、全然もう立つ瀬がないのですね、こういうふうなことになってまいりますと。だからもう、こういうことまでがいま行なわれているんだから、やはり、よっぽど労働省として、基準局として働く婦人を守るという姿勢で臨んでいただかなかったら安心できないと思うわけなんです。
 それで具体的に医師選択の自由ということの問題で伺いたいと思いますけれども、六十六条の五項、ただし書きの中にもございますね、健康診断のときの医師選択の自由ということが。この項は、たとえば健康診断だけではなくて、具体的にかぜ引いたとか、おなかが痛いとか、ちょっと休まなければならないというようなときにも、近所のお医者さんとかかりつけのお医者さんとかいうような会社の指定外のお医者さんでも当然医者としての診断が出たらそれは認めなければならないというふうに解釈できると思いますし、当然そうでなければならないと思うのですが、その点はいかがでございますか。
#202
○政府委員(渡邊健二君) 医師の指定の問題、いろいろな問題を含んでおると思うわけでございまして、たとえば、就業規則で定められている一般の私傷病の場合の病気休暇の取り扱い等につきまして、使用者が指定する医師の診断書を提出することを就業規則で規定するというような場合につきましては、これは就業規則の適用の問題でございまして、基準法違反云々の問題ではないわけでございます。ただ、常識的に言いまして、現実に、ほんとうに病気にかかっているとすれば、それはそういうものを働かせるような結果になることは、これは問題であるわけでございまして、労使の円満な話し合いで、そういうようなことにならないような妥当な取り扱いがなされることを期待するわけでございます。ただこれが業務上の疾病だと、こういう問題になりますと、これは会社が指定した医師の診断を受けることを就業規則できめておりましても、それにその医師であろうがなかろうが、ともかく医者の診断に基づきまして労災保険等の給付請求がなされまして、行政官庁のほうで必要な調査をし、それが業務上だということに認定されれば、これは就業規則の医師によらないものであろうとも、これは基準法の七十五条でも、使用者はそういう労働者に対しては必要な療養をしなければならないことになっているわけでございますから、これはそういう意味におきまして、就業規則と一応関係なしに、業務上の疾病かどうかということは客観的に認定がされるわけでございます。
#203
○小笠原貞子君 そこのところ、私もうちょっと簡単にお伺いしたいんですけれども、会社の指定したお医者さんでなくても医者として業務上の疾病だというふうに認めれば、それは当然基準局のほうで審査なすっても認められるわけなんですね。そうすれば、会社が就業規則で会社の医師でなければならぬということは押しつけられないわけですね。指定するということは、私あると思うんですよ。やっぱり会社が、うちの会社はこのお医者さんにと、その医者でなければならぬというふうにそこまで言うということは、就業規則でそ
 こまでたてにとって、ほかの医者じゃだめだということは、やっぱり就業規則のほうが行き過ぎているんじゃないかというふうに考えていいわけですね、いまの御説明だと。
#204
○政府委員(渡邊健二君) 業務上に関しまする限りにおきましては、これは客観的に認定がされるわけでございますから、就業規則によらなくても、届け出られた書類を行政管庁で審査いたしまして、これがほんとうに業務上だというふうに認定をすれば、これは使用者は業務上として取り扱わなければならないわけでございます。
#205
○小笠原貞子君 手続はそうなると思うんです。そこで、私がお願いしたいのは、当然そういうふうに、客観的にこう筋が通って進んでいくわけなんだけれども、会社としては就業規則がこうだから、その医者でなければならぬというふうに圧力をかけて、そうして婦人労働者をいじめているというところを何とか解除したいわけなんですね。だから医師選択というのは当然自由に選べるんだと、就業規則でその医師でなきやならぬというような形で押しつけるというのは、それはおかしいですよと言っていいわけなんでしょう。その辺のところはどうなんですか。そこのところをはっきりさせてほしいと思います。
#206
○政府委員(渡邊健二君) 私傷病の取り扱いになりますと、別に基準法上、そういうあれがございませんので、会社が就業規則等で労使話し合いの上で、しかるべき取り扱いをいたしましても、それが世の常識に非常に反していなければ、別にどうこうということはないわけでございますが、ただ、業務上につきましては、先ほども申しましたように、これは客観的に認定されますれば、就業規則の規定いかんにかかわらず、業務上の疾病として取り扱わなければならないわけでございます。
#207
○小笠原貞子君 それじゃもう時間がありませんので、最後にお伺いしたいと思いますが、人事院のほうにお伺いしたいと思います。いま総理府統計局から三名の女子労働者、これは一般事務の方たちの公務に基因する疾病かどうかという協議事項が去年の暮れに出されていると思います。で、このケース、非常に新しいケースだと思いますが、先ほど来論議したように、総合的な視点から考えていただきたいと、こう思うわけなんで、私実際どういうふうなものかなというので、これをいただいてきまして、ここのところコンピューターに入れるのを、一人一人が書いた、これは国勢調査でございますけれども、この国勢調査を見ながらここの適当なところにコンピューターに入れるために鉛筆で黒く線をつけていくわけですけれども、これは全部やるのじゃなくて、たとえば、「統計局記入欄」の「産業」というところだけの、農、林、漁業、鉱業、建設、製造、卸・小売、こういろいろなのがあって、これを見ながらやっていくわけなんですね。非常にこれ単純なんですね、一つ一つ。単純な作業で、そうして鉛筆を持ってこれを見ながらやっていく。私ちょっと鉛筆を持って三十分間一生懸命やってみましたが、やっぱりおかしくなりますね。指がこうつりましてね。私はこれはほんとうに実際やってみるとたいへんだなというようなことを感じたわけなんですね。こういうような問題がいま出されているとすれば、やっぱり人事院としても総合的な立場で考えていただけるのじゃないかと思うのですけれども、どういうふうにその辺はお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
#208
○政府委員(島四男雄君) 総理府統計局が統計業務の迅速化のために光学式読み取り機を導入したのはたしか昭和四十年だったと思います。それによりまして当然マークシートによる作業等も始まったわけでございます。いわゆるマーク作業と称しております。これはわが国においてマーク作業が始まった最初ではないかと思うのです。四十年、四十五年の国勢調査において行なわれておるようでございます。たいへん事務の何というか促進に役立っているというふうに聞いております。それ自体、非常にけっこうなことだと思うのですが、いま、御指摘のような、それに伴ういろいろの弊害が出るということであれば、人事院としても重大な聞心を持たざるを得ないわけでございます。ところが、そのマーク作業に従事している職員の方は、現在統計局に約五百五十名の方が従事しているやに聞いておりますが、この頸肩腕症候群の症状を呈している方が三十七名おられる。そのうち三名が現在人事院に来ておるわけでございます。先ほども労働省のほうからお答えがございました、例のキーパンチャーの問題につきましては、かなり、もう何といいますか、わが国にキーパンチャーが導入されて相当の年月がたちますので、当然、それに伴う対策といいますか、医学的な研究が進んで、いろいろキーパンチャーの作業基準、どのような作業が適正であるか、環境はどのようにしたらいいかということについて、たしか昭和三十九年に中央労働基準審議会ですか、から答申が出されております。人事院におきましても昭和四十年作業基準を出しまして、さらに、それに追ってキーパンチャー等のいわゆる手指作業に伴う疾病による公務上の災害の認定基準を出しておるわけでございます。そういうキーパンチャーについては、そういう、あらゆる角度から研究が進んで対策が立てられておるわけです。いま申しましたようなこのマーク作業というのはまだ歴史が非常に浅うございます。したがって、どのような作業環境がいいのか、あるいはどういう作業が適正なのか、そういう疾病を出さないためにはどの程度に押えたらいいかということについてまだ実は十分研究がなされておらないというのが実情でございます。ただ、現実に、私のほうに公務傷害の認定を求められておりますので早急に結論を出さなければならぬと思いますが、まあ私のほうはやはりまず当局の健康管理、安全管理の姿勢がどういうことになっておるかということも十分これから調査したいと思っております。それから当然、医学的な見地から、特に、労働医学の見地からいろいろ研究を進めなきゃいかぬ。まあ、それから研究というわけにもなかなかまいりません。早急に結論を迫られておる問題でございますが、従来のキーパンチャーの例等を十分参考にしまして、今後、早急に結論を出したい、このように考えます。
#209
○小笠原貞子君 先ほどから申しておりましたように、職業病というのが、産業の近代化、いろいろなところからの非常に新しいのが出てきておりますですね。だから、そういう新しいものに対しても適切な早く手を打ってほしいわけなんです。で、腰痛症といいますと、何か新聞労働者の重い荷物を運ぶというようなところで腰痛症というのは出ていますけれども、私たち婦人の立場から見れば、施設の中で子供さんをかかえておふろに入れたりというところに腰痛症が出ているということになりますので、同じ一つの病気でもいろいろな多方面にわたる職業から発生する病気がございますし、またいま言ったような一般事務の中でもどんどん出てくるというような状態になりますですね。これから、今後ますますそうなってくると思うんです。そんなときに、やはりもう早くそれに対処していただくと、そして、これはもう非常にむずかしいとおっしゃるかもしれないけれども、客観的に見て、医者の立場から、これは職業病だということになれば、もう早急に認定を出して、そして、その人たちを守るという立場に立っての行政をやっていただきたい。これについての最後に、はっきりお返事をいただきたいということが一つでございます。
 それから、先ほど申しました、日航の茨田さんの場合、それから芝信用金庫の杉浦さんの場合ですね。たとえば、日航の茨田さんの場合は客観的に見て職業病だと認定されているわけですよね、それなのに会社が認定しないんですわ。こういう、たくさんありますんですよ。これは今度また質問しなきゃと思っていますけれども、鉛公害で毎日新聞なんかでも、これはちゃんと鉛公害だと認定されているのに、毎日新聞社が鉛公害だと、職業病だと認めないんですね。会社側ではそんな職業病、出るはずがないとがんばっておるわけですね。そうすると、労使双方円満に話し合えと言ったって、そんな頑迷で、いじわるする資本家のほうに対して、あなたのほうで話し合いなさいと言ったって、なかなか解決つかぬわけです。茨田さんの場合には御主人もなくされましてお子さん一人かかえて、もうほんとうに女の働きで生活をささえなきゃならない。しかも職業病だと完全に認定されているにもかかわらず会社が――大日航ですよね、政府資本、半分ぐらいお金もらっているあの日航で、こういうことをやっているということは、私はほんとうにあきれるよりも腹が立ってくるわけなんですね。
 そこで、最後に、こういうような具体的な問題を私はきょうはお話し申し上げたんで、労働省の立場から、基準局の立場から、たとえば茨田さんに対しても、労災として認定が出ているのに、なぜ会社はそうやっていじめるのかと、もう少し働く婦人の立場に立って会社が処置すべきではないかと、遊んでいるというんじゃないんですね。もう、そういうので、からだが悪くなって何年か休んでいる人、言ったら働きたいと言うんですよね。人間、働きたいんですよね。なまけて金ほしいというんじゃない。働きたいというのに働けないような状態になっているんだから、だから、その仕事が無理ならほかの作業場にかえてもらってもいいと思うんです、日航だっていろんな作業場があるはずなんだから。そういうことをなぜ具体的にやらないのかということを行政の立場から、私は具体的にこの問題をひとつ何とか指導して、向こうの言い分も聞いていただきたいし、それによってまた私のほうも具体的にお願いもすると思いますけれども、まず、きょうの、この段階で、この問題に対して具体的な手を打っていただきたい。
 それから芝信用金庫の杉浦さんに対しても、そういうひどいいやがらせをやっているというようなことは労働行政上黙過できないと思うんで、その辺のところを具体的に手を打っていただくということを御返事いただいて、質問を終わりたいと思います。
#210
○政府委員(渡邊健二君) まず、御質問の前半の問題でございますが、おっしゃるとおり、次々に最近は新しい材料や新しい作業方法に基づきまして新しい職業病が出ております。これらに対しましては、私どもといたしましては、そういう問題がこの業務上の疾病ではないかという疑念が持たれました場合には、専門家にその問題についての御研究をお願いいたしまして、そして、その専門家の御検討によって、できるだけすみやかにどういうものが業務上であるか、そういうものをきめていただきまして、業務上だということになると、それによって一定の認定基準をつくりまして、それに合う人はこの業務上として取り扱うというようなことを個々の病気につきまして次々にやっておるわけでございます。ただ、新しい病気は、なかなかしばらくの間はそういう事例が多くないために、専門家にお願いいたしましても検討に時間がかかるという場合もあるわけでございますが、われわれとしては、できる限りすみやかにそういうことによって必要なる措置を講じたい、かように考えておりますし、将来の問題といたしましては、そういう検討を日ごろから進めるために産業医学総合研究所等、政府としての研究体制も整備充実をいたしたいと、かように考えておるわけでございます。
 それから御質問の後段の点でございますが、先ほども申しましたように、業務上の疾病であるかどうかということは客観的にわれわれ認定をいたしておるところでございまして、業務上の疾病であるということになれば、これは当然に使用者が必要なる療養をさせるようにしなければならないわけでございまして、もし、そういう点について基準法その他の法令違反等があれば、当然これは、われわれとしては是正をさせなければなりませんし、それらにつきましては、個々の事例につきましては私きょう初めて伺いましたので、よく調査をいたしまして、業務上と認定された方につきましては必要な療養が行なわれるように、また、業務上かどうか、いま御申請の方につきましては行政官庁のほうで必要なる調査をいたしまして、すみやかに業務上かいなかの判断をするようにいたしたいと、かように存じます。
#211
○小笠原貞子君 早急にお願いいたします。
#212
○委員長(中村英男君) 他に御発言もなければ、本案に対する本日の審査はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#213
○委員長(中村英男君) この際、参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
 労働問題に関する調査のため、政府関係特殊法人の労働問題について参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#214
○委員長(中村英男君) 異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選などにつきましては、これを委員長に御一任願たいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#215
○委員長(中村英男君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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