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1971/05/25 第68回国会 参議院 参議院会議録情報 第068回国会 社会労働委員会 第17号
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1971/05/25 第68回国会 参議院

参議院会議録情報 第068回国会 社会労働委員会 第17号

#1
第068回国会 社会労働委員会 第17号
昭和四十七年五月二十五日(木曜日)
   午前十時三十九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月二十三日
    辞任         補欠選任
     高山 恒雄君     木島 則夫君
 五月二十四日
    辞任         補欠選任
     木島 則夫君     高山 恒雄君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         中村 英男君
    理 事
                鹿島 俊雄君
                高田 浩運君
                大橋 和孝君
                小平 芳平君
    委 員
                石本  茂君
                川野辺 静君
                高橋文五郎君
                橋本 繁蔵君
                山下 春江君
                佐野 芳雄君
                須原 昭二君
                田中寿美子君
                藤原 道子君
                柏原 ヤス君
                高山 恒雄君
   衆議院議員
       発  議  者  田畑 金光君
   国務大臣
       労 働 大 臣  塚原 俊郎君
   政府委員
       環境庁大気保全
       局長       山形 操六君
       厚生大臣官房審
       議官       江間 時彦君
       厚生省医務局長  松尾 正雄君
       労働大臣官房長  藤繩 正勝君
       労働省労政局長  石黒 拓爾君
       労働省労働基準
       局長       渡邊 健二君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  北川 俊夫君
       労働省職業安定
       局長       道正 邦彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       農林省農政局参
       事官       松元 威雄君
       通商産業省貿易
       振興局貿易振興
       課長       藤原 一郎君
       建設省計画局建
       設業課長     吉田 公二君
       建設省道路局国
       道第一課長    菊池 三男君
   参考人
       国立競技場理事  寺門 威彦君
       日本貿易振興会
       理事       島添 達夫君
       日本科学技術情
       報センター理事  上田 幸雄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法
 の規制に関する法律を廃止する法律案(衆議院
 送付、予備審査)
○労働安全衛生法案(内閣提出、衆議院送付)
○労働問題に関する調査
 (特殊法人の労働問題に関する件)
 (茨城県立中央病院における労働問題に関する
 件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(中村英男君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律を廃止する法律案を議題とし、発議者衆議院議員田畑金光君から趣旨説明を聴取いたします。
 田畑金光君。
#3
○衆議院議員(田畑金光君) 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律を廃止する法律案につきまして提案理由を御説明いたします。
 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律は、昭和二十八年に三カ年の時限立法として制定されたのでありますが、その後、昭和三十一年に本法を存続する議決がなされ、今日もなお効力を有し、電気事業及び石炭鉱業の争議行為に対し適用されているのであります。
 しかしながら、電気事業及び石炭鉱業におきましては、本法制定当初に見られましたような極左的労働運動は今日では全く微弱となり、また暴力的な争議行為も影をひそめ、本法の目的とする公共の福祉を擁護するために電気事業及び石炭鉱業における争議行為を規制するという法の積極的意義は、いまや消滅したのであります。
 そればかりか、本法は憲法第十四条に規定する法のもとの平等、並びに憲法第二十八条に規定する労働基本権の保障、さらには、ILOの精神にも反するものであり、特別に規制する必要性が消滅したと思うのであります。もし国民生活にとって重要なエネルギー源なるがゆえにこれらの産業に従事する労働者のスト権規制を存続せしめるとするならば、いまや国民生活にとって大きな熱源となっております。石油、ガス等の分野にもスト権規制を行なわなければならないということになるのでありまして、全くもって他の民間産業と差別して電気事業及び石炭鉱業における争議行為のみを規制するのはまことに不当であると言わざるを得ません。
 また、本法第一条の目的が憂慮しましたような事態は、労働関係調整法第一条及び第二条によって十分調整できるのであります。本法第二条の電気事業の争議行為の規制につきましては、労働関係調整法第八条、第三十五条の二、第三十六条及び第三十八条等の条項によりまして、その目的が十分達成できるのであります。さらにまた本法第三条における石炭鉱業の争議行為の規制につきましても、鉱山保安法第四条、第五条及び第十二条によって、鉱山の安全の確保について、労使が順守しなければならないことが明記されておりますし、万一石炭鉱業の争議によって、国民経済が著しく阻害されたり、公衆の日常生活を著しく危うくする場合には、労働関係調整法第八条によって公益事業として指定し、これを十分規制し得るのであります。
 すなわち、本法が憂慮しましたような事態が現実に惹起するおそれはきわめて微少となり、また、そのような事態が万一発生した場合も、労働関係調整法等の適用で十分対処し得るのであります。このように法理論並びに実態論の双方から見まして、本法を存続させておくことは、単に電気事業及び石炭鉱業に従事する労働者に対し、いわれのない不当な規制をしいるものであり、これら労働者に法に対する不信感を抱かしむるのみであり、民主的な労働運動の発展を妨げ、労使関係の近代化に逆行するものであります。
 かかる見地より、本法はいまや百害あって一利なく、それが現実にそぐわなくなった以上、これをすみやかに廃止すべきであると信じます。
 何とぞ、本案につきまして慎重御審議の上、御賛同あらんことを希望いたします。
#4
○委員長(中村英男君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する本日の審査はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(中村英男君) 労働安全衛生法案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#6
○石本茂君 私、もうすでに各委員の先生方から質問をされましておりますので、ほとんど言い尽くされていることでございますが、二、三点この法案の条文の中でお伺いしたいと思って質問の時間をいただいたわけでございます。
 で、一番初めに第七十一条の条項に基づきますことでございます。いわゆる「健康の保持増進のための措置」ということで示されておりますいわゆる「国の援助」というところに、ここに示してありますように、第七十一条に示してございますようなこのことについて、具体的に「援助」ということはどういうようなことを具体的に援助されようとしておられるのか、お聞きしておきたいと思うのでございます。
#7
○政府委員(渡邊健二君) 健康診断関係に対しまする国の援助につきましては、四十七年度におきましては巡回健康診断につきまして年間約二十万人の労働者を対象に三千七百万円ほどの予算をもちまして補助をすること、それから特殊健康診断機関に対しまして機械器具の整備の補助金といたしまして約一億円、それから安全衛生融資の中で、こういう健康診断機関に対します融資といたしまして約四億円を予定をいたしております。それから、その他健康診断等のために労災病院に健診センターというものを設置いたしますことといたしまして四十七年度は東京、名古屋の二カ所に各三億円でそういうセンターを設置する予算を計上いたしております。以上のような内容が本年度の国の援助の予算的な内容になっているわけでございます。
#8
○石本茂君 ただいま巡回健康診断ということでございますが、これは労災病院等が中心になってやるのですか、それとも地域にあります保健所などがその実施に当たるわけでございましょうか。
#9
○政府委員(北川俊夫君) ただいま御指摘の中小企業に対する巡回健康診断は、中央災防協会に国から委託しまして、中央災防協会から信頼のおける民間の健診機関に再度お願いする、こういう形で昨年におきましては約十万人の実績を持っております。先ほど局長が説明いたしましたように、本年度におきましては二十万人をその対象にいたしております。
#10
○石本茂君 さらにもう一つ具体的にお聞きしたいんですが、昨年十万人の健康診断をされまして、その結果どれだけのパーセンテージのものが疾病あるいはまた要注意者としてあがっているのでございましょうか。
#11
○政府委員(北川俊夫君) 昨年はじん肺、有機溶剤、鉛等の業務につきまして十万人行ないました。ほぼ一〇%弱の要注意者がありました。
#12
○石本茂君 よくわかりました。ぜひこの方面に国の援助がありませんと、大企業はともかく、中小企業の場合は、やはりどんなによい法律が示されましてもこれはお手あげだと思っておりますので、今後とも特段の配慮をいただきたいと私お願いいたします。
 次にお伺いしたいと思っておりますのは、この条文の八十七条のところに示してございますいわゆる「日本労働安全衛生コンサルタント会」というものについてちょっとお尋ねをしたいのですが、この八十七条の条文をずっと見ておりますと、「日本労働安全衛生コンサルタント会」に入っておりません者は、この仕事をする場面におきまして何となしに、これは私のただ感じでございますけれども、その会に入らなんだらこのコンサルタントの業はできないような印象を受けるのでございますが、これは国との関連におきましてこのコンサルタント会はどういう条件、状態で一体設置されているのでございましょうかお伺いいたします。
#13
○政府委員(北川俊夫君) この「日本労働安全衛生コンサルタント会」は、民法の三十四条に基づまきす公益法人という性格を持つものでございます。その条文の第二項にございますように、「コンサルタントの品位の保持」、「その業務の進歩改善」、そういうことを目的としまして、会員の指導、連絡を行なう自主的な団体でございます。したがいまして、国としましては、それに対してその業務が適正に行なわれるように監督指導を行なうということでございまして、この団体はあくまでも任意団体でございますから、コンサルタントの資格をお持ちの方がたとえこの会合に参加をしておられませんでも、その業務につきましては当然自由に行なえる、こういうものでございます。
#14
○石本茂君 私、もう一つ納得できませんのですが、たとえばこの法律の中に、民法上の、しかも設立することができるというような、設立しなければならぬというようなものじゃなく、いまおっしゃった非常に任意的な一つの団体をつくるということがしかもうたわれていて、さらに、この三項にありますように、その「労働安全衛生コンサルタント会」に入っておらぬ者はそういう名称を使ってはならぬというような、何かこうきびしい取り締まりのような、ではありませんけれども、そういうふうな、何とはなしに、任意につくっていいんだ、しかしその会に入っておらぬ者はそういう文字など使っちゃいかぬというような、こういうきつい印象ですね。それについて私は、何かこう、いい意味にも悪い意味にも通ずるかもわかりませんが、陰があるような気がしまして、わざわざこの法律の中にこのことをうたい出されたことの趣意をひとつ聞かしていただきたい。
#15
○政府委員(北川俊夫君) この種の免許業務につきましては、個々の方々が独立をしていろいろの業務をなされるわけでございまして、その間の連絡調整というものが、全国的にこういう業務を発展させる、あるいはさらに充実させるためには、個々人でなくて、連絡調整のための一つの会というものがぜひ必要だと、こういうふうに行政的判断をいたしまして、民法法人ではございますけれども、こういうことを法律に明記をしまして、その場を積極的に助成、形成さしていきたいと、こういう考えで規定をしたものでございます。こういう例としましては、たとえば司法書士会、あるいは技術士会、そういうものが前例としてございます。いずれも自由な団体として、国がそれに関与するとか、あるいは入らない者に対していろいろ干渉するというようなことはいたしておりません。
#16
○石本茂君 要しますに、こういうふうに理解していいんでしょうか。こういう会を設けまして、そしてこの業務に従事する人々にも、二項に示してありますことを助長していきたい、そうしてよい管理体制ができるようにという意味でございますね――わかりました。
 それでは次にもう一つ――あと二つありますが――お伺いしたいと思いますのは、この九十一条から九十四条までにうたわれておりますところにある、いわゆる「労働基準監督官」のことですとか、それから「産業安全専門官」のことですとか、それから「労働衛生専門官」などのことについて示されております。これはたいへん当然のことだと思っておりますが、これらの人々の必要数というものが、もうすでに何らかの状態で、教育の面で確保されるかっこうになっておりますのかどうか、現にそういう人員が満たされる状態にまでいっておるのかどうか、お伺いをしたいと思います。
#17
○政府委員(渡邊健二君) 九十一条から九十四条までの「労働基準監督官」や「安全専門官」「衛生専門官」等につきましては、現在まででもそれらの職員が置かれておるわけでございますが、もちろん、産業の発展に応じまして事業場も逐次ふえておりますし、労働者も毎年ふえておりますし、それに伴って、われわれも必要な人員を確保すべくできるだけの努力をいたしておるところでございまして、現に、逐次増員はされつつございますけれども、いまある人員で完全に十分かというようなお尋ねがございますと、これで完全に、もう必要な人員をすべて確保されているというところまではなかなか、率直に申し上げて言い切れない状況でございまして、今後ともそれら職員の必要要員の確保にできる限り私ども努力をしてまいりたいと、かように存じておるところでございます。
#18
○石本茂君 私自身現場の仕事をしてまいった者でございますが、どんなよい法律、規則がありましても、そのことに従事する者がおりませんと、やはりいい意味の指導体制も監督体制もこれはできませんので、たいへんまあこの点について心配したわけでございます。そこで、大体まあ現状はわかりましたが、このたび、この法律ができますことによって全国に配置される人員の、人数といいますか、人員数は一体どれくらいを予定されておりますのか。先般高山委員もお聞きになったように思いますけれども、もう一度確かめておきたいと思います。
#19
○政府委員(北川俊夫君) 監督官につきましては本年度七十名増で、総数にしまして二千九百二名でございます。専門官につきましては三十五名増でございまして、本年度二百七十七名。なおそのほかに、今回は産業衛生指導員というものを増員をいたしておりますほか、一般職員としまして約二十名程度の増員を行なっております。
#20
○石本茂君 ひとつ、ぜひ将来、特にこの法律があってよかった、生きていてよかったと言われるのがこの人々のお働きだと思いますので、ぜひひとつ充足ができます方向に向かって御努力くださいということをお願いいたします。
 最後に、一つお伺いしておきたいのは、今度の法律ができますことによって労働基準法の中がかなりあちこちするわけでございまして、その中の第六十三条の第一項に、年少あるいはまた女子労働者のためのものが一つ入るわけでございまして、これはたいへんありがたいことですが、現在私どもの身近にありますいろいろな職場の中を見ておりますと、もう二十数年前にできましたこの労働基準法の適用すらも最低条件すらが満たされておらないものがたくさんあるわけでございます。これは私が申しませんでも、当局の皆さんよく御存じだと思うんですが、そういう状況下にありますので、こういうふうに特定なものについて特別に御配慮願いましても、はたしてこういうことがほんとうに完全に行なわれるのだろうかということを憂慮している一人でございます。時間がありませんから重ねてお伺いをいたしますが、この労働基準法を御検討いただく段階におきまして、従来しばしば私ども気にしておりますのは深夜業務に従事する女子職員、これはやむを得ず従事しなければならない職場があるわけですから、この人々に対する深夜勤務手当等についてぜひ労基法の中の問題を御検討願いたいということをもう十数年、二十年近くこの法律ができたときからお願いをしてきているわけですが、このことについて何か再検討なり御検討いただいているのでございましょうか、その辺を重ねてお伺いしたいと思います。
#21
○政府委員(渡邊健二君) 基準法につきましては、昭和二十二年施行されましてから四半世紀たっておるわけでございまして、先生御指摘のように、現行の基準法ができましたときは、非常に進んだものということで、その後今日まで労働者の労働条件の改善向上にかなりの寄与をいたしてまいっておると考えておりますが、しかし長年月の間にいろいろ社会情勢あるいは職場の状況等変わってまいりまして、その運用等につきましてもいまのままでいいのかどうかという点、いろいろな御意見があることは私ども十分承知をいたしておるところでございます。そこで、これら基準法の実施状況及びその問題点についていろいろな御意見が出ておりますので、それを検討していただく必要があるということで、四十四年以来労働基準法研究会というものを学識経験者の方にお願いいたしまして設けまして、基準法の全般的な問題につきまして、実施上の実情及びその問題点を御検討願っておるところでございまして、今回の法案もその基準法研究会の御検討の結果、安全衛生は人の生命身体にかかわる一番重要な緊急を要するものだということで、まず去年の七月にそれについての報告書をいただきまして、われわれが検討しておるところと相照応するものがございましたので、それらの御意見を尊重し今回の法案を提出いたしたわけでございますが、基準法研究会は、引き続き、その他の基準法上の問題についても検討を続けられております。去年の暮れには、御承知と存じますが、労働時間とか週休制、休日、休暇等について報告書が出されました。その後も、ただいま先生がおっしゃいました女子、年少者の問題であるとか、あるいは就業規則の問題であるとか、災害補償の問題であるとか、基準法の非常に多面にわたります問題、問題ごとにこれを取り上げてただいま検討を続けられておるところでございます。先生御指摘の女子の深夜業あるいはそれに対する割り増し賃金の問題等も当然その検討項目の中に入っておりまして、ただいま検討が続けられておるわけでございまして、それらの検討に際しましてはこれまで各方面から出されております御意見、ただいま先生がおっしゃいましたような問題も含めましてそれぞれの御意見を十分検討しながら研究が続けられておる状況でございます。
#22
○石本茂君 大臣に一言お伺いしたいと思うんですが、いま局長が申されましたように、いろんな経過をたどりまして女子労働者、特に深夜勤務を強制されております職場におりまして、この深夜勤務に関する問題、非常にしばしば今日までいろいろ言ってきたわけですが、今度この法律の目的のところにも示してありますように、快適な作業環境の形成を促進することが目的だと出ておるわけです。もう知っていてくださるように、昼間休んでいたから夜働くのは当然じゃないかと申されますかもしれませんが、周囲は皆寝込んでいるときに、しかも重たい人間の命に携わる仕事の場におります者などは、これは決して快適な作業環境じゃないのであります。でありましたら、この快適ではない作業環境の中に、どうしてもこうしても入り込まなければならない特定な人々のために一体何をなされようとしているのかという――いま申された物理的に、あるいはどう言いますか、生化学的な条件で満たされるものは、これはどんな措置でもできると思うのですが、まあ、心の問題を満たすというようなことを一体どうお考えになるのか。大臣に一言お聞きいたしまして私の質問を終わりたいと思います。
#23
○国務大臣(塚原俊郎君) 御意見をまじえての御質問でありまするが、かねがね申しておりまするように、基本的な姿勢としては人間の尊重であり、そしてまた、福祉の優先であります。快適な職場といういまおことばがございましたが、文字どおりそれをつくらなければなりませんし、この法律もその点を、それを実現するために最大限の努力を払っておるところでございます。しかし現実問題として、ただいま御指摘のような深夜業、あるいはそれが必ずしも快適な職場とは言えないかもしれないが、そういうものに従事する人がおることは事実でありまするので、やはり意味のとりようではありましょうが、深夜の仕事に携わる方でも、その中で快適なものという環境をつくるための最大限の努力は払っていかなければならない問題であると考えます。しかもこれは長年にわたっての問題でありまするし、私も先生をはじめ各方面からその問題についていろいろお話を聞いておりまするので、先ほど局長が答弁いたしましたように、労働基準法研究会その他で検討はいたしておりまするが、それこそこういうものをすみやかに結論を出して、何らかの措置を講じなければならないと、こういうように考えております。
#24
○石本茂君 ありがとうございました。
#25
○須原昭二君 お許しをいただきまして……。実は先般の質問は労働災害一般論を特に御質問申し上げました。したがいましてきょうは提案をされております法案の各条項について、問題点について疑問をただしたいと実は思います。
 前回いろいろの問題でまだ残っておる問題がございますが、若干まだ資料が出てきておりませんから、この点は次回、他の機会においてまた御指摘を申し上げたいと、かように思います。
 まず、この法案を通覧をして私が感じました諸点について、総括的に二、三の問題点を御指摘いたしたいと思います。
 実は、労働安全衛生法、これは御案内のとおり、労働基準法第五章の安全衛生の項を切り離しておるわけです。このように別個の新法を創設をする、このことがはたして今後の安全衛生の対策を進める上においてプラスになるかどうか、この点が私においてはかなりの疑問を持っておるわけであります。その点についての政府の、労働省の見解をまずお尋ねをしておきたいと思います。
 時間の関係もございますから、それに関連をしてもう一点お尋ねをいたしておきたいと思うのですが、その独立立法にした積極的な理由、これは先回私が問題にいたしました労働基準法研究会の報告の中に明文化されております。たとえば、労働基準法を中心とする現行法制に基づく労働災害防止対策は、総合的予防的施策の面で不十分である、産業経済の急激な発展ないし変化に即応することができない。こういうところをとらえられて、実は単独立法にされた積極的な理由があるのではないかと思うわけでありますが、この理由だけでは私は新法の独立法にする合理性にはならないと実は思うわけであります。労働基準法を改正すれば済むことではないか、こういうふうに実は思います。特にその労働基準法の改定をされた積極的な理由、これをひとつ冒頭に明らかにしていただきたいと思います。
#26
○政府委員(渡邊健二君) 今回の労働安全衛生法におきまして安全衛生に関する規定を労働基準法から抜きまして単独立法とすることにいたしました理由といたしましては、従来の基準法で規制をいたしておりますやり方は、直接の雇用関係を規律するという規制のしかたに相なっておるわけでございますが、ただいま先生のおっしゃいましたようにその後の産業情勢あるいはいろいろな企業の形態の変化等々からいたしまして、そういう直接の雇用関係のみを規制するというやり方では災害の的確な防止に不十分になってきておる。すなわちもう少し具体的に申し上げますと、そういう直接の雇用関係の場における災害防止だけではなしに、製造、流通段階における規制を確立する必要がある。あるいは重層下請関係だとか、あるいはジョイントベンチャーといったような特殊な雇用関係下における規制を的確にやらなければ、安全衛生の確保ができないというような状況が出てきておりますこと。さらには特定の有害業務に従事した方につきましては、雇用関係を離れて退職したあとについてまで健康管理をしないと十分な健康管理ができない、こういうような状況がいろいろの職業病の中から出てきておるというようなこと。それから公害の防止が非常に大きな問題になっておりますが、職場における安全衛生と公害というものの関係がだんだん密接になってまいりまして、それらの、以上申し上げました諸点については、直接の雇用関係の規制を前提とする基準法では十分でない、こういうことが基準法と別個の単独立法といたしました第一の問題点でございます。
 それからもう一つは、最近におけるいろいろな技術革新その他の産業事情の変化からいたしまして、災害の的確な防止をはかりますためには、もとより最低基準の確保、こういうことは非常に重要なことではございますけれども、ほんとうに災害防止の実をあげますためには、そういう最低基準の順守、確保のみではこれまたそれで十全ということはできませんので、それにあわせまして技術指針や、望ましい作業環境の標準の作成などによる安全かつ快適な職場環境を形成していくとか、あるいは最低基準の順守を容易ならしめるための技術的な援助、財政的な援助、特に中小企業につきましてはそういうものが必要であって、そういう幅広い災害防止行政を展開する必要がある、そういうことも規制をしなければならない、こういう点でございます。これにつきましては先生もちょっとあげられましたように、基準法の規定をそのまま残しておいて、別個に、必要になったものだけ別な法律にプラスすればいいではないかという、そういう御意見もございますことも十分理解できるわけでございますが、やはり安全衛生というようなものは総合性ということが非常に重要でございますので、そういう意味におきまして最低基準の確立、これも最近の情勢に応じてさらに詳しくしていかなければならない。それにプラス、先ほど申し上げましたようなプラスの要素の必要性、これを総合的に一つの立法として体系化してこれを推進していく。これが災害防止の的確な実効をあげるためには有効であろう、かように考えて、単独の立法としたわけでございます。
#27
○須原昭二君 前もってお願いをしておきますが、なるべく簡要に、ひとつ時間の関係がございますからお願いをしておきます。
 実は、いまお話がありましたように、この労働基準法研究会の報告の中にも、「現実の労働災害の実態に照し、有効な防止対策を講ずるためには最低基準による規則のみによっては十分ではなく、実態に即した指導、勧告を含む幅広い行政を展開することが必要であり、」と、そして「現行の最低基準の確保を中心とする安全衛生対策は限界に来ている。」と。これは、まあいま局長がお話しなった内容と全く一緒だと思うんですね。そこで、じゃ、直接の雇用関係だけを規制していくというわけではないんだと、総合性でいかなきゃいけないと言うんですけれども、現在までの労働基準法というものが完全に守られているかどうかというところに、まず問題点があると思うんです。そこも、たとえば前回御指摘をいたしましたように、キョロカンという名前をつけたら労働大臣はお笑いになったんですが、実際一〇%ぐらいの点検しかされておらない。その一〇%の中でも実は違反率が七〇%も出てきておると、こういう状態なんですね。したがって、現在の法規を守るだけでも十分でない。そういう状態に置きながら、何か、総合性というような名前をつけて、あたかもその責任を回避をするような、法律が不備なような形に持っていくというところに、私は、今度は問題があると言わなければならないというわけであります。その際、ほんとうに今日の労働基準法そのものを企業が守っておるのか、さらに、政府がこれを守らせてきたか、こういうところに一番大きな問題があると思うんですが、その点の反省はどうなんですか。
#28
○政府委員(渡邊健二君) 基準法の厳正なる順守につきましては、私ども、過去、これまで、できる限りの努力をしてまいったつもりでございまして、社会的に見ましてもい、制定直後の、ほとんど理解していただけなかった状況からくると、かなりこれは浸透しておって、中小企業でも、最低の労働基準法ぐらいは守らにゃいかぬという意識はかなり浸透してまいっておると考えております。ただ、非常に多数の企業でございます。中には零細なものもございまして、完全に守られているかということになりますと、私ども監督を実施いたしておりますが、先ほど先生も御指摘のように、まだまだ違反の事例を多数発見いたすわけでございまして、それにつきましては、発見し次第是正をさせ、悪質なものにつきましては送検をするというようなことで順守を確保するよう努力をいたしておるところでございまして、今後とも、まだまだその努力は続けていかなければならないと、かように考えておるわけでございます。
#29
○須原昭二君 一〇%の監督の実態、そしてその中の七〇%の違反率があがっている。こういう現状というものは、労働基準法を現在、企業として守っておらない。いかにいま局長さんが言われても、それは、認識が深まったと言っても、認識であって、実行が伴っていないと思うんです。同時にまた、労働省も、厳密にその違反というものは発見でき得ない。定員の不足等々の問題によって十二分にいっていない、こういう点はお認めになるでしょう。どうですか。
#30
○政府委員(渡邊健二君) まだまだ違反が多いことは先生御指摘のとおりでございますし、われわれも努力はいたしておりますが、企業、労働者の増加等になかなか追いつきがたく、現在の監督官の数等も十分でないことは私どもも痛感をいたしておりまして、毎年、その増員には極力努力をいたしておるところでございます。
#31
○須原昭二君 その点については、後ほどまた御質問いたしたいと思います。
 そこで、基準行政が私は混乱をするんではないかという懸念を持ちます。特に、法案の目的は、労働災害防止のほかに、労働者の健康増進、快適な作業環境の形成等をあげております。つまり、罰則づきの最低基準と、快適環境行政というような指導行政と、ここに二つ合わせて目的を達成しようとする方法、それがいわゆる、あなたが言われる総合的計画的対策の推進ということになると私は思うんですが、これを、両者を一緒にすると、罰則がついているのかついていないのか、きわめて複雑になってくるわけですよ。したがって、労働者側にしても、あるいは使用者側にしても、いたずらに、認識の上から、きわめて混乱をし誤解を生ずる私はおそれが出てくる、こう指摘をせざるを得ないと思うんですが、その点はどうですか。
#32
○政府委員(渡邊健二君) 今回、基準法から独立いたしまして、単独の労働安全衛生法にいたしましたけれども、この法律におきましても、基本は最低基準の順守確保である、それを実行させるための監督、これが基本であることは、私ども厳正にこれを実行するつもりでおるわけでございまして、その点をあいまいにする気持ちは毛頭ございません。罰則等も、むしろ前の基準法よりも厳格になっておるわけでございまして、したがいまして、監督につきましては、あくまでも監督して厳正にやりますが、先ほど申しましたように、災害の有効な防止のためには、それにプラスいたしまして、指導、援助等の幅広い行政をも加えまして総合的に行なう必要があるということで、この法律を出しておるわけでございますが、監督、罰則をもって強制しなければならない最低基準と、指導と、これは明確にいたしながら法の運営に当たってまいる所存でございます。
#33
○須原昭二君 最低基準の確保について、それを最優先に取り上げるということについては、私は特に留意されなければならないと思います。
 そこで、特に私は、そう言われつつもなお信頼できない傾向というものを見のがすわけにはいかないと思うのです。こういうように、安全衛生の最低基準を労働基準法の中から切り離して、快適環境行政と一緒にしてしまうと、監督行政が、勧告行政や指導行政というものに傾斜していく。いまそうおっしゃっておっても、法がずっと運用されていく過程の中においては、そういう指導だとか勧告行政の中へ、中心に拍車をかけていくことにならないかという私は疑念を持っておるわけであります。その点を、ひとつ労働大臣、明確にしておかなければならない問題ですから、特に労働大臣の所見を承っておきたいと思います。
#34
○国務大臣(塚原俊郎君) これは、あくまでも基本は監督であります。いま局長がるる説明した中に、運用の面で指導の面も出てくるということがありましたが、これは当然出てくると思います。しかし、だからといって、これが指導行政にかわるものではございません。はっきり申し上げますが、これはあくまでも監督でありまして、派生的に指導の面が出てくるということはこれはやむを得ないと考えております。基本は監督であります。
#35
○須原昭二君 その点をひとつ十二分に留意をされて、法の運用にずっと当たっていっていただきたい。現時点ではそうお考えになっておっても、日時が違い、皆さんの責任が変わってきますと、だんだんそういう方向へ行くおそれなしとし得ないので、特にこの点は重大に警告をしておきたいと思います。
 それから、問題は国の責任を明示されていないということです。事業者や製造者や施工者やあるいは労働者に対しては、それぞれ労働災害防止のための責務を規定しております。しかし、国や労働基準局、基準行政の労働省あるいは監督署の責任が明示されていない。この点について私は理解に苦しみます。これは片手落ちではないか。なぜ明記をしなかったのか。この点が一つ問題であります。その点はどうですか。
#36
○政府委員(渡邊健二君) 災害防止につきまして、第一次的に事業主が責任を負うべきことは当然でございますが、新法におきましては、そういう使用者の責任を明確にいたしましたほか、さらに、国といたしましても、災害防止基準を省令等によって具体化する事項、あるいは労働災害防止計画の策定、技術上の指針や望ましい作業環境の標準の公表、新工法に対しまする事前審査の活用、それから安全衛生教育とか健康診断とか研究開発の推進等に、各それぞれの条項におきまして、国が積極的な施策を展開すべきことを規定いたしておりますし、また監督官、安全衛生専門官その他行政体制につきましても規定をいたしておるところでございまして、全般を通じまして国の責任についても十分な必要な規定を設けておると、私どもかように考えております。
#37
○須原昭二君 それは十分だという御表現がありますけれども、私はそうは思わないんですよ。ただ、やれやれと言うだけであって、もしやらなければ国はどういう措置をとるとか、どういう財政的措置をとるとか、そういう国の責任というのをまず私は明記をしなければならないと思うんです。そういう点についてきわめて私は不明確だと思うんです。その点を御指摘をして、時間の関係がございますから、その他はあとの段階でもまた付言をしたいと思います。
 それから、罰則なしの国の勧告があるわけですね、こうしなさい、ああしなさいという勧告があります。これは罰則がついておらないんです。今日の経営者の中の実態を皆さんよく御存じだと思うんですけれども、この罰則を伴わない国の勧告が実行されないとき、ただ、やりなさいと言うだけで罰則がない場合には、これはやらない傾向がたくさん出てくるんじゃないかというおそれがあるわけですよ。したがって、そういう点の歯どめ、いわゆる罰則をつけるとか、いろいろな規制をするとか、そういうやはり具体的な措置が私は必要ではないか、そういう点について、もし罰則がないから勧告を守られない、そういう場合は行政責任者としていかなる方法をとられるのか、この点を明確にしてもらいたいと思います。
#38
○政府委員(渡邊健二君) 最低基準の確保につきましてはこれは罰則をもって強制をいたしておるわけでございますが、それ以外の、たとえば届け出があった新しい工法について必要な勧告を行なうとか等々の問題につきましては罰則を課していない条項があるわけでございますが、これは事柄の性格からいたしまして、いわゆる非常に罰則の対象となるようにその使用者の義務内容というものを明確、特定化することが困難な場合が多い等等の事情によるわけでございます。しかしながら、国が勧告等を法律で規定しております以上、行政官庁といたしましては行政指導によりまして、その勧告ができるだけ有効に守られますよう、できるだけ努力をしてまいりたい、また、行政の実績等から見ましても、ある程度われわれは、その成果を十分期待し得ると、かように考えておるわけでございます。
#39
○須原昭二君 まあ、そういうふうに守られるように十分対策を講じたいという、そういう抽象的な答弁では私たちは了承できないんですよ。この点を明確にしてもらわなければならないと思います。どうですか。十分と言ったって、これは表現ですからね、具体的にその内容が明らかにならないんじゃないですか。
#40
○政府委員(渡邊健二君) もし勧告が守られない、その関係で災害等が起きます場合、それに関連いたしまして、使用者に必要な、使用者としての注意義務がなされていなかったということになればそれは一そう、その違反については悪質だということにもなるわけでございまして、そういう意味におきまして、われわれが行政指導といたしまして、強力に必要な勧告指導等を行ないますならば、それに応じまして、使用者をそれに従わせるということは私どもある程度可能であると、かように考えておるところでございます。
#41
○須原昭二君 現実に監督官の行動を皆さん御存じないから、そういうことを言われているんですよ。なかなか聞かぬからやらせようやらせようとすると、今度は企業側がどんな圧力をかけるか。いろいろな手段を講じてこの現場へ行った監督官を監督させないような、そういう方向に――強諌じゃないんですよ、今度はやらせない方向に現実は移行しているんですよ。ですから十分に対策を講ずるというような抽象的な答弁では私は了承できないんです。そこですよ、問題は。その点どうお考えになっていますか。
#42
○政府委員(渡邊健二君) これまでも、一般的な指導等は別でございますが、個別事案につきまして基準局で強力に監督だけではなしに、指導を行ないます場合には、おおむね企業におきましてそれが順守されていると、私どもかように考えておるわけでございまして、特に今度のようにそれが災害につながる可能性があるというような問題につきましては、これは企業側といたしましてもそれをむげに拒否することはできないはずでございますし、特に法律の根拠をもちましてその発動としての監督、指導をいたしますならば、使用者に対しましてこれを順守させることは可能であると考えております。
#43
○須原昭二君 これは非常に問題点なんですよ。いま現実には、そういう指摘をしなければならない職場に対して監督官が行くわけですよ、行って指導するんです。そうするとちょっと待ってください、財政がいまありませんからこうしますとか、もう少し、一カ月待ってくださいというようにだんだん延びていって、最後はどういうところでどういう話が進むか知りませんが、監督官はあそこへ行かぬようにというようなことで、監督官自身がジレンマにおちいって、もう監督なんかやらぬほうがいいわと、こういう方向へ移行しつつあるという現実をやはり本庁は考えなければいけないと思います。その点が重要なんですよ。だから十分に指導する、対策を講ずるという抽象的な論議だけ、――罰則をつけないようではこれはもぬけのから、ざる法になる可能性が多分にあると思うんですが、その点どうですか。
#44
○政府委員(渡邊健二君) たとえば、先ほど申し上げました新しい工法等につきまして届け出があって労働大臣が学識経験者の意見を聞いて必要と思う場合には勧告すると、これは勧告になっておりますが、もし、それを聞かれない、そうしてその新しい工法によって災害の起きる可能性が非常に強いというような場合には、これは監督官として使用停止命令等も発動することもできるわけでございますので、そういうようなものを背景に危険性の高いようなものについてその是正の勧告というものは強力に指導をいたしますならば、私はこれは事、人命に関することでございますので、企業におきましてもそれに従っていただけるものと、かように考えておるところでございます。
#45
○須原昭二君 その点労働大臣、これはきわめて重要な視点なんです。そういう点についていま具体的な措置の問題が初めて出ましたけれども、そういう問題について労働大臣、これはきっしりやらなければだめなんです。ただ、勧告をするだけで企業が守る実体になっていないんですよ、いま。その点のひとつ労働大臣のき然たる態度、これを御表明願いたいと思います。
#46
○国務大臣(塚原俊郎君) この間から監督官、安全衛生専門官その他について員数の問題でもだいぶお話がありましたし、また一方、須原委員が新語を発見されて非常に含蓄のある新語も使われたわけでありまするが、定員増の問題、これは今後皆さん方の御協力をいただいて努力いたしますると同時に、現実において――私はこの前にも申し上げましたが、やはりこの体制でやるためには機動力を発揮する、それから時には抜き打ちもやらなければいけない、というのは、いま言うような監督官がいやんなっちゃうとか、その会社との間に、企業との間になれ合い的なものがあると言わぬばかりの御発言でありまするので、そういうことがあってはこれは絶対相ならぬことであります。しかし今日二千九百何名という限られた数でやるためには、いま言うような機動力の発揮と抜き打ち的なものをやる、そしてあくまでも御批判があったとしてもいままでのようなことのないような強い処置はとらなければならない、私はこのように考えております。
#47
○須原昭二君 そこで守らせる権限について私は今度はお尋ねしたいんですが、労働基準あるいはまた安全衛生に関する臨検、勧告そして指導といういわば法令に盛られている権限ですね、これは労働省、具体的には労働基準局、これに与えられていると思うんですよ。このことは逆に言えば他の者であってはその権限がないということだ。こう思うんですが、どうですか。
#48
○政府委員(渡邊健二君) 監督の権限であるとか、臨検検査の権限、あるいは使用停止命令を発する権限等は、これは監督官の資格を持っている者でなければないわけでございます。
#49
○須原昭二君 その他の者ではないんですね。
#50
○政府委員(渡邊健二君) その他の事務官等はございません。
#51
○須原昭二君 そのほか、すべての者はないのですね。
#52
○政府委員(渡邊健二君) 監督官がそういう権限を持っているわけでございます。
#53
○須原昭二君 監督官は持っておられるけれども、それ以外は何人たりといえども監督はできないんでしょう。その点を聞いているんです。
#54
○政府委員(渡邊健二君) そのとおりでございます。
#55
○須原昭二君 そういたしますと、監督が質あるいは量ともに十分に行なわれれば、労働災害は防止できると思われるかどうか、この点をひとつお尋ねしたいと思います。
#56
○政府委員(渡邊健二君) もとより、災害防止のためには、最低基準を順守、確保させるための監督官の質量両面における充実が必要であることは申すまでもないことでございますが、なおそのほかに、やはり災害あるいは職業病等につきましては、最近非常に技術的な問題が多くなっております。それらにつきましては、非常に専門的な問題になってまいりますと、監督官もすべての部門についてこれに精通し尽くすということは必ずしも期待できない場合もあるのでございます。安全専門官等専門家の知識、これを借りることが必要であり、またそれらの専門官の助言等が災害防止のために非常に効果的な機能を果たすことも少なくないと、かように考えます。
#57
○須原昭二君 そこでまた問題が出てくるんですよ。監督官でなければ指導監督、勧告ができない、それは特有の権限である。専門官というのはこれは補足をする機関ですね、補助機関ですよ。そういう立場からいうと、監督がなされておれば死なずに済んだという事例がたくさん出てくるわけであります。たとえば皆さんも御案内だと思うのですけれども、埼玉県のある労働基準監督署の管内で、ある監督官のレポートがあります。それを見ますると、昭和四十三年十二月一日から四十四年十一月三十日までの三百六十五日間、一年間ですね、死亡災害が二十件ある。建設業十三件、製造業七件。そのうち、建設業の十三件の死亡事故の中で、災害の発生前の臨検はたったの一件もないと書いてある。製造業では七件あるけれども、一年前に臨検されたのはただの二件だという。また一方、四十一年度における、動力のこの機械を使って労働災害になったのが五十四件四十一年にあった。しかし、四十四年四月一日に安全規則の改正によって動力のこに安全装置を義務づけた、こういう措置をとった。そして四十四年四月以降九カ月間に管内百カ所のそういう動力のこを持っておるような工場を臨検して、安全装置のないものは使用停止処分にした。そうしたら、四十五年における動力のこによるところの労働災害は二十一件に減っているんだ、四割も減っているんです。ですから、権限を持っておるところの労働監督官の配置というものが、行動というものが、最も優先されなければならない私は事例ではないかと思うわけなんですが、特に法令を守らせる具体的な権限は労働省にしかないんですよ、労働基準局だけなんです。そういう状態にあるという実態を考えてするならば、この単独法を別につくらなくても、まずいま現在の労働基準法を厳密に守らせるということが最も優先されるべき私は仕事だと思うんです。そこに単独法を別につくって――そういうことは、何か皆さんのやっていることが足らぬから、人に責任を、その任務を転嫁をしようという傾向ではないか、そう指摘せざるを得ないと思うのですが、この具体的な事例を見てあなたはどうお考えになりますか。
#58
○政府委員(渡邊健二君) その点につきましては、先ほども安全衛生の確保の基本につきましては、最低基準の順守確保、そのための監督が基本であるということは私もお答え申し上げたところでございます。ただ、現実にたとえて申しますと、近ごろ非常に多いジョイント・ベンチャーの問題とか、あるいは重層下請関係の建築、その他の事業場等におきまして、企業が直接の雇用関係でいくと幾つにも分かれている、実際には一緒に仕事をしている、その間の連絡調整が悪い等々のために事故が起きておる。そういう事例は非常に多いわけでございまして、したがいまして、そういうものにつきまして、元請に総括安全衛生管理体制の確立の責任を負わせるといったようなこと、これまた私は、今後ふえていきますこういう複雑な雇用関係のもとにおける災害防止のためには必要なことではないかと考えておるわけでございまして、したがいまして、今回の法案で、そういう新しい事態に対処いたしました多くの規定を設けておりますこと、これは今後安全衛生の確保のためにそれぞれ効果をあげていくものと、かように考えておるところでございます。
#59
○須原昭二君 そこで、先ほども申し上げたように、監督をしていないからこういう事例が出てきているのですよ。監督をすれば効果があがってくるのですよ。この現実をあなたたちは認めなければいかぬわけなんです。そこで、その法を守らせる具体的な権限は、先ほども言ったように、労働省労働基準局にある。その監督が不備であると、労災の一部の一定部分の責任は、これは逆にいえばあなたたちにあると、こういうことになるわけなんです、権限があなたたちにしかないのですからね。したがって、労働者を死に至らしめた責任というものは、労働省も責任を負わざるを得ないと思うのです。したがって、労働省の責務――法で定められた規則を守らせ、災害を防止させるという労働省の責任、責務、それを果たすためには、何といっても、監督官の質と量の拡大が私は不可欠だと思う、不可欠です。何が計画を立てられて、十年間に二千何百人かしらんの人を増員をする、そういう計画が実は内部にあるように聞いておりますが、十年に一度の今日の監督率、そうした状況を解消していけるのかどうか。さらにその実現に何年かかるのか。十二分に――あなたが言うように十二分の対策、あなたのことばをとって恐縮でありますが、十二分な対策というのはここにあるわけですよ。この十二分の対策をするには何年かかるのか、その点をお尋ねしたいと思います。
#60
○政府委員(渡邊健二君) 今後、産業事情もいろいろに変化してまいるでありましょうし、また企業や労働者の増加も続くと考えられますので、私どもといたしましては、もとより監督体制をさらに一そう拡充いたしますためにできるだけの努力はいたしますけれども、何年で十分だということはなかなか具体的には直ちに申し上げることは困難であると、かように考えるわけでございますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、監督体制をより一そう充実し、できるだけ監督の効果をあげますよう今後ともできる限りの努力をしてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
#61
○須原昭二君 できるだけだとか、できる限りだとかというそういうことばではだめなんですよ、この時点に立って。この法律を守らせる。それを十二分に対策、十二分に対策というような抽象論では、私はこの場を過ごしてはいけないんです。何か皆さんはわれわれが質問すると、われわれの質問時間だけ経過すればあとはどうでもいいというような感じがあるからそういう表現が出てくるんですよ。そうでしょう。財源がないというならば、人員が足らぬというならば、労働大臣、これは大きなやはり人命に関する重大な問題ですよ、少なくとも大蔵省に、政府に対してこれだけはどうしても必要なんだと、このぐらいの強い態度で財政当局に当たる私は決意がなくてはならぬと思うんですが、その点は労働大臣どうお考えになりますか。
#62
○国務大臣(塚原俊郎君) 人員も足りないし、さらに日進月歩の経済面における機械その他あらゆるものが非常な発展を遂げていくときに、はたしてそれに対応する力があるかどうかということもこれは問題になってまいるわけでありましで、先ほどからその点の御指摘もあったわけでありまするが、そういうものを踏まえて、もちろんそれはある程度の人数は確保しなければならないことはこれは言うまでもありません。定員増について政府は非常にきびしい態度を持っておりまするが、こういうものは特例中の特例として扱うぐらいの気持ちで明年度の予算には当たらなければならない。
 それから、先ほどから須原委員がその場限りで云々というようなこと、これはそういうことは全然いまの労働省はございませんので、そういうことはお考えになっていただきたくない。むしろわれわれは、与党、野党を問わず、こういう特例中の特例の問題に取り組むためのひとつ御協力を私は、いかなる立場にあるかはわかりませんが、心からお願いし、そして、そういう御批判や悲惨な事件の起こらないような最大限の努力をいたします。
#63
○須原昭二君 まあ、最大限という表現が出てきたんですが、ことばじりをひっつかまえるわけじゃないんですが、労働大臣、ひとつしっかりやってもらいたいと思いますね。
 そこで、そういう不十分な監督の状態なんだものですから災害が起きる。したがって、災害防止指導員だとかあるいは労働者の就労拒否権、こうしたものは皆さんの対策が不十分であるから、不十分である現状を踏まえて、できそうもない――まあ、私に言わせるといまの状態では将来もできそうもないと思うんですが、こういうような時点に立つと、やはり自己防衛の主張だと私は思うんです。労働者がこれは危険だからといって就労拒否権を発動する、そういうことを考えることは、そういう状態であればこそ労働者が自己防衛のために主張してくる要件だと私は思うんですが、その点は局長どうお考えになりますか。
#64
○政府委員(渡邊健二君) 災害の発生の急迫した危険がございますときに、使用者の義務として労働者を退避させなければならないことは、衆議院の修正によりまして法律上も明確化されたところでございますが、しかし災害の発生が客観的に見て差し迫っておりますときに、事業者のそういう義務履行の指示がなくとも、労働者が就労を中止いたしまして現場から退避できること、これは条理上当然のことであると、かように考えます。
#65
○須原昭二君 そこで、危険有害業務に対する就労拒否権についてですが、私は今日までのいろいろの職場の実態を考えますと、労使がいつもこの問題について対立をしているんですよ。危険であるかないかについてはしばしばこの労使の間に意見の食い違いがある場合が非常に多いんです。そういう経験を踏まえておられますか。
#66
○政府委員(渡邊健二君) そういうことが労使の中で問題になる例があるということは承知をいたしております。
#67
○須原昭二君 そういうことならば、そういうことを御認識だという前提に立ってお尋ねをいたしますが、事業者が判断を誤って労働者を死に至らしめた場合ですね。もちろんこれは事業者は当然法的制裁を受ける、しかし労働者はそれで満足できないんですよ。死んでしまって、あれは事業者は法的に罰せられたからいいわというわけにはまいらないわけです。したがって、労働者にとって事業者が罰せられるかいなか問題外なんです。絶対に安全であるという、そういうものがすべてに私は優先すると思うのです。したがって、労働者が自己の判断で行動できる余地、個人というか労働組合というか、その表現は別といたしまして、労働者という本質のものが、使用されているものが自己の判断で行動できる余地を残しておくのが私は当然だと思うのです。その点についてはこの法案の中にどういうふうに規定をされておりますか。
#68
○政府委員(渡邊健二君) それは、ただいまもお答え申しましたように、急迫した危険が客観的に存在する場合には、これは法文等の規定を待つまでもなく、労働者が生命の安全を守りますために作業を中止して退避できること、これは条理上の問題として当然のことであろう、かように考えるわけでございます。
#69
○須原昭二君 その条理上の問題が事、企業なるワクの中に入ってしまうと埋没してしまうんですよ。よほどあなたたちがしっかりして規則なり、政令なり、そうしたものできちんと明確に位置づけなければ企業はそういうものは守らないですよ。条理的だとか、心理的だとか、精神的だとか、そういう訓話的なことでは守らないんですよ。その点について皆さんはどうお考えになっておられますか。
#70
○政府委員(渡邊健二君) 安全について労使に意見の対立があるような場合に、今回の法律で申しますと安全衛生委員会の中でそういう問題は十分に労使で話し合いの場があると思うわけでございます。なお、そういうところで意見がどうしてもまとまらない、労働者の方はこれは明らかに危険があるというような場合でございますれば、たとえば、それなのに使用者が必要な措置をとらないということになれば今度の法律のそれぞれの条項に違反いたしますわけでございますから、申告をいたしまして、監督官に検査を求めで、ほんとうに安全であるかどうかの確認を求めるという処置も可能でございます。もしまた、そういう時間的余裕がない、しかも使用者が今度の二十五条による退避をさせないという急迫した場合に、これはもう一種の緊急避難といたしまして、自分の生命身体の安全を守るために退避することができると、これはもう法律でそういう場合等を制限して書くよりも当然のことであると、かように考えるわけでございます。
#71
○須原昭二君 いま緊急の問題が出たのですが、その認定権も事業者がこうしなければならないのであって、そういう労働者の危険というものは労働安全委員会ですか、その中で討議をすればいいという方向にあなたは逃げようとされておりますけれども、はたして、私はこれから運用していく段階において安全衛生委員会だとかいろいろの委員会の中で討議をするといったって、それはあくまでも企業内におけるところの委員会であって、やはり職制の圧力というものはなみなみならぬ問題点があると思うんですよ。そういう点の認識が私は欠けておると思うのです。そこで安全に取り組む事業者の姿勢に私は疑問があります。労働省は疑問がないとお考えになっていたら、それは認識が間違っておると思うんですよ。監督行政の今日の能力の実態、そうしたものに欠陥がある現状ではどうしてもこの危険有害業務に対する労働者の自己防衛思想ですね、自己防衛の主張というものは何らかの形で私は浮き彫りにされなければならないと思う。その点についてどうですか。
#72
○政府委員(渡邊健二君) 今回の法案におきましては、安全確保に対します使用者の責任につきましては、第三条に掲げられておりますほか、各条におきまして使用者の義務を課しておるわけでございますし、それから衆議院で修正が明確化されました労働者を退避させる義務につきましても、客観的にそういう危険があったのに使用者が恣意的な判断によって退避させなかったということになりますれば、これは使用者が罰則をかけられることにもなりますので、使用者といたしましても、単に漫然とそういう責任を実行しないというようなことはないと思うのでございますが、さらに、ただ非常に緊急の場合で、そういう使用者の指示等々を待つまでもないようなとき、労働者が自己防衛の意味で緊急避難的に退避する。これは先ほども申しておりますとおり、先生のおっしゃるとおり、これは労働者として当然の権利である、かように考えるわけでございます。
#73
○須原昭二君 したがって、その当然な権利というものが法案の中にきちんと明記をされておらないと思うんです。したがって、この法律の内容の大きなポイントは、事業者と労働者の両面から立法が考えられておらない。この点が私は指摘をしておかなければならない問題点ではないかと思うんです。特に、事業者というものは利潤を追求する側のものなんです。労働者というのは、そのために労働力を売る、労働力を提供する側、本質的にこの二つの性格は異なっているんです。利害が対立する以上、ここに私は立法の措置として、両方の側面から、事業者と労働者の側面から立法というものが考えられなければならない。その点が決定的な私は今日のこの労働安全衛生法の欠陥だと思うのですが、その点はどうですか。
#74
○政府委員(渡邊健二君) 災害防止をすべき第一の責務は事業主側にあると思うわけでございます。したがいまして、この法案ではそういう事業主の災害防止のための義務、それを基本といたしましていろいろな規定を設けておるわけでございます。で、先ほど私が申しました、差し迫った危険のときに労働者が緊急避難的に退避できる。これはもう私は自分の生命、身体を守るための、それは人間として当然の権利であって、法律の規定を待つまでもないのであって、それが法律に書いてないから片手落ち、こういうことにはならないのではないか。これはもう条理上当然の、人間として当然のことと、かように考えるわけでございます。
#75
○須原昭二君 人間的にそれは共通の観念だとか、条理だと言ったって、これは現実にはそうなってないんですよ。だから私は一番冒頭に、この間申し上げたように、労働基準法研究会の構成メンバーというのは、労働者の意見が入ってないんじゃないか。ひどいことを言えば、公害の認定の問題でも、これは企業の主張を支持するような学者を入れている。そういうところの研究会の性格が、今日の経営者側から見たような、そういう立法の内容になっている。労働者側の、その側面というものは立法化の中にきわめておそい。そういう現実をわれわれは見のがすわけにはまいらないわけです。少なくとも労働省ですよ。労働者の立場を擁護し、労働者のその生活を守り、災害を守る。あくまでも労働者に益すべき労働省が、そのような態度というものは私は理解できないと思うんです。その点労働大臣どうですか。労働省の任務は何ですか。
#76
○国務大臣(塚原俊郎君) 労働三法ができましたのは終戦直後間もなくでありまして、これになじまなかった面は確かにあると思いますし、社会情勢の激変によっていろんな問題がありましたこともこれまた事実であります。それからやはり労使関係というと、ともすれば相対立したものというような観念にとらわれている方もかなりあるのではなかろうか。今日では私はそういうものは非常に少なくなっている。またそういう面で不当労働行為があってはこれは絶対に相ならぬ。今後はやっぱり労使というものがよく話し合ってコンセンサスを得ていかなければ、それはもう日本の国の前進もないし、それからまた人間としての、人間性尊重、それから明るい職場、満足感、それから人生の意義というものもないわけでありまするから、今日まであったいろいろな御指摘された点は私はこれは否定いたしません。ことに埼玉県の例などは私も驚いて聞いておったわけですが、今後はやはり労使というものは一体となっていかなければ絶対、これは前進はないのでありますから、今日までの御批判は御批判としてちょうだいいたしますが、今後の労働省のあり方は、労使一体となって、そして国の前進のために、また各人間の幸福を求めるために努力するという、それのみであります。それ以外はございません。
#77
○須原昭二君 労働大臣は非常に答弁がうまいですよ。本質論に触れないようにうまく答弁をされる。答弁技術は私は最高だと敬意を払っているのです。特に、私は本質論を言っているのですよ、本質論を。労働者と事業者、労働者と資本家というものの本質論、すなわち利潤追求をする側と労働力をみずから提供してそのかてを得る労働者の側と、これは本質的に対立するものである。したがって企業の、あるいは日本の産業を振興させる側面においては、そういう、労働大臣が言われるような側面もあるでしょう。しかしながら、私が言っているのは、この立法の内容からいって、お互いに権利が違う、お互いの立場が違うものをどう位置づけていくか、いかにして両面から考えていくかというその見方が違っておると、こういう点を言っているのですよ。もう一度ひとつ失礼でありますが……。
#78
○国務大臣(塚原俊郎君) 私は須原委員が指摘されているような意味で答弁いたしておるつもりはございません。そうとられるならば、これはまことに残念であります。ですから、いままでのことはいままでとして、今日までよき慣行が生まれてきていると思います。労働省の立場は一言で言えばこれは働く者の味方であります。ですから、資本という一つの事実、あえて言うならば冷厳なる事実というものがあるとする。一方において労働の価値観というものがある。これをどう調整させるか。それがこれからの日本のあれじゃないんでしょうか。われわれ労働省は働く者の味方に立って労働の価値観というものを意義づけていく。これが労働政策の基本でなければならない。私はこのように考えております。決してその場を逃げようとか、本質論をごまかそうとかなんという気持ちはございませんので、どうぞひとつ誤解ないようにお願いしたい。
#79
○須原昭二君 それでよくわかった。その最後ですよ、労働者の立場に立つということ、この点がいまお話があったから私は了解したいと思う。その点を基準にしてこの立法の措置というものを考えていかなければならない、また運用についても考えていかなければならないという点を指摘をしておきたいと思います。
#80
○委員長(中村英男君) 本案に対する午前中の審査はこの程度といたします。
 午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時十二分開会
#81
○委員長(中村英男君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き労働安全衛生法を議題とし、質疑を行ないます。
#82
○須原昭二君 次は、現在行なわれております、実施をされております災害防止指導員制度についてお尋ねをいたしたいと思います。現在の災害防止指導員制度については、たしかあれは三池炭鉱の爆発事故のあとできたと思うのです。その経験に踏まえて現在の監督制度が不備である、したがってそれを補完をする意味でつくられたと聞いておりますが、その経過と制度をつくった趣旨についてひとつお尋ねをしておきたいと思います。
#83
○政府委員(渡邊健二君) 労災防止指導員は、昭和四十年から発足をいたしております制度でございまして、労働大臣が任命いたします非常勤の方方に中小規模事業場等における労働災害の防止に資するため、これらの事業場の安全管理及び衛生管理に関する指導を行なうことを職務といたしておるわけでございます。
#84
○須原昭二君 ILOの三一号の勧告、たしか二十一項だったと思いますが、これがきめられたとき、ILO三一号勧告がILO総会に付されたとき、政府の代表はこれに賛成をされましたか、反対をされましたか。
#85
○政府委員(渡邊健二君) これは一九二九年、非常に古いことでございまして、ちょっといま手元にその当時の資料はございませんので、至急調べましてお答え申し上げます。
#86
○須原昭二君 それは賛成をしておると私は思っているのです。そこでそのILO三一号勧告の二十一項だったと思いますけれども、それは公の監督に労働者を任ずることを得ると、こういう趣旨を含んでおると思うのですが、その点はどうですか。
#87
○政府委員(北川俊夫君) 先生御指摘の産業災害予防に関する勧告――三一号勧告につきましては、その二十一項におきまして「各国に最も良く適合せる方法、例えば公の監督機関に於ける地位に資格ある労働者を任命すること、」等々の監督の方法についてしるしております。
#88
○須原昭二君 そういう前提に立ちますと、先ほどのいろいろと御質問をいたしました労使との、とりわけ労働者側の問題がここに浮き彫りにされてくるわけです。それを政府はこのILO総会において賛成をしておるわけです。その線を踏まえれば、労働者は、先ほどの私が言ったことについて正しく履行することが当然の義務である、こう私は指摘をせざるを得ないのです。したがって、今日、ILO三一号の勧告の趣旨並びに日本の災害防止指導員制度をつくられた経緯、そのねらい、かつ今日の労働災害の発生状況に対する監督状況をどうお考えになりますか、そういう立場から考えて。
#89
○政府委員(渡邊健二君) 先ほども申しましたように、労災防止指導員は、中小規模事業場におきます安全衛生水準の向上に役立てるよう、それらの事業場の安全管理や衛生管理に関する指導を行なわせることを職務といたしておるわけでございまして、漸次、その趣旨も浸透しつつございますけれども、またその半面、一部では本制度についての理解が必ずしも十分でないことや、あるいは指導員の教育にさらに一そうの向上が望まれること等の問題もございますので、当面といたしましては、その趣旨を生かしつつ、この制度の今後の有効な活用をはかっていくように考えていきたいと、かように考えております。
#90
○須原昭二君 ですから、先ほど申し上げました三一号の勧告は政府が賛成をしておるのだ、わざわざILOの総会で賛成をしておるんですから、そういう点からいうならば、公の監督にいわゆるこの災害防止指導員なるものに労働者を任ずるという方針は間違いないと、こう確認をします。そういたしますと、現在の指導員の中には労働者の代表というか、労働者の立場にある者を加えていない、この点は矛盾ということになるわけですが、その点はどうですか。
#91
○政府委員(渡邊健二君) 現在、労災防止指導員の中には労働組合の御推薦の方も入っておるわけでございます。
#92
○須原昭二君 それは非常にごくわずかな、まれな状態です。まれの状態ですよ。そういう原則をやはり特に留意をして増員……、そちらの方面の人たちの参加を特にわれわれは要望しておかなければならないと思います。その点は要望にしておきましょう。
 そこで、今日の災害防止指導員の役割りに期待されているのは、私からいうならば、あらゆる事業場に対して常に目を見張るということです、一つは。二つ目には、事業場で安全装置について事情を聞き、適切な指導をし、事故のあった場合はその原因究明のための調査を行なうことであると思うんです。そしてその上に、このような活動を保障するための災害防止指導員の身分、資格等の整備も私は必要でないかと思う。その点はどうなっておりますか。
#93
○政府委員(渡邊健二君) ILOのこの勧告におきましても、先ほど安全衛生部長から申し上げましたように、「各国に最良く適合せる方法」によって云々というようなことが書いてあるわけでございまして、それぞれの国の実情に即した方法でそういうことを実施することが勧告されておるわけでございます。で、先ほども申しましたように、わが国においても、そういう趣旨でこの労災防止指導員が置かれ、漸次その趣旨は浸透しつつございますけれども、まだその指導員の能力の一そうの向上が望ましいことやその運用につきましていろいろな問題もございますので、それらを踏まえまして今後実情に即した方法で本制度の活用をはかってまいりたいと、かように考えておるところでございます。
#94
○須原昭二君 したがって、先ほども申しましたように、それらの活動を保証する何らかの明確な身分あるいは資格等についての制度をきちんと位置づけなければ私はならぬと思います。その点はひとつこれまた特に要請をしておきたいと思います。
 次に、「総括安全衛生管理者」の権限についてさらにお尋ねを続けてまいりたいと思います。
 まず企業の目的なんですよ。一般に企業というものは生産活動によって利益をあげる、こういうことを目的とするものであると私は思っております。その点はどういう御認識に立っておられますか。
#95
○政府委員(渡邊健二君) もとより企業はそれぞれ企業の存立の目的がございまして、企業収益をあげるということが企業をつくった目的になっておるわけでございますが、現在の情勢におきましてはやはり労働者が安心して働くと、こういう状況でなければ企業の円滑な運営も期待できませんし、生産の向上も期待できないわけでございます。まして、最近の状況におきましては、あそこが非常に事故が多いということになりますと、労働力の確保自体にも企業としては困難を感ずるわけでございますので、使用者がそれらの意味をも含めまして安全衛生に強い関心を持ち、安全の確保をはかろうとする意欲が逐次高まっておるということは、決してこれは企業のそういう目的と相反するものではない、したがって、指導よろしきを得るならば、現状よりも一そう経営者の方々に安全についての責任の自覚を求めることは可能であると、われわれはかように考えております。
#96
○須原昭二君 それは一応普遍的なものの考え方だと私は思います。そこで、実は企業というものの実態を私たちはつぶさにずっと見て歩きますと、安全対策が一時的にも生産活動の障害になるという事態が多いわけです。そういう場合に生産活動を優先をする、そういう存在がしばしば起こり得る条件があります。そういうところに一連の公害あるいは災害事件などが出ておるわけですが、そういう点はどうお考えになっておられますか。
#97
○政府委員(渡邊健二君) 確かに一局部局部をとらえますと先生のおっしゃるような事態はあり得ると思うわけでございますが、企業というものも長期にわたって存続するものでございますから、企業が経営のいろいろな措置をとるにあたって、そういう目前の短期的な観点からだけ行為するとは限らないわけでございまして、そういう長い目で見ました企業の全体的な利益ということも含めて安全衛生というものにだんだんと目を開くようになりつつあるということは言えるのではないかと思います。ただし、多くの企業者の中に、そういう長期の視点、あるいは経営者としての社会的責任というようなことを十分に認識せずに、非常に目前の問題によって処理するということが絶無であるとは言い切れませんので、そういう場合につきましては、もちろん諸法規によって規定されております、経営者の責任、罰則等によって担保されておりますそれらの使用者の責任をわれわれ監督の責任にあるものといたしましてはこれを厳に適正な履行を求めると、こういう態度で臨んでおるところでございます。
#98
○須原昭二君 十条の「総括安全衛生管理者」は、これは工場長などを充てるということであるらしいんですが、その点はどうかということと、それから工場長は企業のいわゆるその生産計画あるいはまた会社の首脳の指示に従ってその工場に与えられた生産活動についての責任を負っておる、そういう立場の人だと私は思うんですけれども、その点の認識はどのようにお考えになっておりますか。
#99
○政府委員(渡邊健二君) おっしゃるとおり、ここで「総括安全衛生管理者」に予定しております工場長とは、その事業場におきます経営全般についての責任を負う人でございます。ただ、こういう人を「総括安全衛生管理者」にすることにいたしましたのは、むしろこの安全という問題は経営の最高の人がその責任を痛感して安全の確保に当たっていただくということが安全対策を効果あらしめるためにぜひとも必要である、かような観点からでございまして、それから工場長などの事業場の全般的な運営の責任に当たる人に法律上のそういう安全管理責任というものを負わせることによりまして、それらの人が工場全般の運営を指導するにあたって安全というものを絶えず考えて、そして工場の運営に当たっていただく、これが安全体制確保のためには非常に有効なことではないかと考えたからでございます。
#100
○須原昭二君 その両面を考えて工場長が指導をされると、こういう御認識ですが、現実はそういうことにはならないんですよ。たとえば具体的な例を申し上げましょう。これは毎日新聞でしたか、四月の二十日に出ておりましたんですが、昭和三十年に日本電機工業会、こういう代表的な日本の電機工業会という会があるんですが、これはPCBの動物実験、職業病調査を労働科学研究所に三十年に依頼をしておるんですよ。そうしたらその翌年にこの研究所はPCBは肝臓や皮膚をおかすと、実は、久保田重孝さん、これは博士でありますが、こと方が実は研究の結果を指摘をしているわけなんです。そうして三十二年に実態はどうなったかというと、そういうことは全然対策を講ぜずに、そういう指摘があったにもかかわらず、彼ら業者が、業界が全部金を出して調査したにもかかわらず、そして結果がいかぬと言っておきながらそのまま継続をされておる、したがって三十二年に、たとえば、松下電器のコンデンサーの事業部では従業員の半数がPCBの中毒症状を起こしておるという事態まで至っているということをいみじくもこの毎日新聞が指摘をしておるわけです。この間、日本電機工業会あるいは電機各メーカーはPCBは危険であることを知っておるわけなんですよ。知っておっても労働者に周知させない、PCBの使用をとめるなどの措置をしていないのであります。当時は、御案内だと思いますが、絶縁体の一部に使用されているPCBの代替品にかわるものがない、PCBの使用を中止したら、電気製品の生産を中止するか、あるいはまた品質を落とす製品となるからということで看過されておるわけです。この問題は、PCBをやめることが電気メーカーにとって死活の問題である、そういう状態で、みすみすりっぱな結論が出たにもかかわらずこれを労働者に何も発表せずに黙ってやらしておるという現実があるわけです。したがって私が言いたいのは、生産活動と安全対策とがいつも対立をするという視点をわれわれは踏まえなければ、そういう厳密な規定の上に法律を考えなければならないということなのです。したがって、工場長というものは、安全と生産との両方の責任を企業人として負わされるということでありますけれども、その両方を携わるところの工場長というものは生産活動に支障ない限りの、ぎりぎりの最低限の対策しかとらない、時には、先ほどの電機メーカーではございませんけれども、全く対策を講じない。そういう事態が生まれているといって過言でないと思うわけであります。具体的な例を私はあげましたけれども、その点について従来のこれらの経験を踏まえてどうお考えになっておるのか、明確にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
#101
○政府委員(渡邊健二君) この労働安全衛生法案の十条では、事業主は総括安全衛生管理者を選任してその者に次のような事項を総括管理させなければならないといたしまして、「労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。」、「安全又は衛生のための教育の実施に関すること。」、「健康診断の実施その他健康管理に関すること。」、「労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。」等々を「総括安全衛生管者」の行なうべき職務といたしておるわけでございます。で、もしこれらの法律によって課せられました職務を適確に遂行しないでそれに違反がございますれば、これはこの法律にきめられた罰則が「総括安全衛生管理者」自身にかかるわけでございます。したがいまして、「総括安全衛生管理者」はそういう立場からもそういう事項を責任を持って処理すべきことが罰則のもとに義務づけられておるわけでございますので、単に、経営全般の中でそういう事業活動のみを優先的に考えるということでなしに、今後は、こういう法律上自分たちに強制された責任ということで安全問題にも一そうの責任をこの条項によって負わされる、こういうことになっていくであろうと考えるわけでございます。
#102
○須原昭二君 まずそういう問題が起きた場合に、何といっても私はいま工場長の両面の任務からいうと、やはり企業の性格からいって生産活動が優先をされる、これはだれが考えてもそういう状態にあるのですよ。したがって会社から指示された生産活動、これを停止させてまでも労働者の安全を守る意思があるのかどうか。そういう措置をする、そういう監督をする、そういう指導をする、そういう気持ちでありますか、その点は明確にひとつ聞いておきたいと思います。
#103
○政府委員(渡邊健二君) それぞれ事業場におきまして「総括安全衛生管理者」等がとるべき措置はその業種なりその企業の行なっている業務なりによって違ってくるわけでございまして、具体的にはそれは安全衛生規則その他いろいろな具体的な危害防止措置として義務づけられましたことによるわけでございますから、一がいにそれが業務を停止しなければならぬか、それともそれらの規則に定められた必要な防護措置、予防措置、そういうものをとれば足りるのか、それは個々の場合によって違うわけでございますが、われわれといたしましてはそれらの規則によって必要な危害防止基準を定めまして、それを厳正適確に実施するよう厳格な監督をしていくと、こういうことでございます。
#104
○須原昭二君 そうすると、先ほど具体的な例を私、示しましたね、日本電機工業会が調査をし、そしてPCBはだめだ、しかも松下電器なんか従業員の中で半数がPCBの中毒症状を起こしている、こういう事態がはっきりした場合、具体的に事例を言いますが、今日までずっときて、最近PCBが盛んにマスコミの論戦あるいは国会の論議の中で熾烈にやられておりますからこれをどんどんやめてきておりますけれども、もしこういうような事件が出ましたら、それを使用中止させるような強固なる措置をとりますか。
#105
○政府委員(渡邊健二君) 今後もいろいろ新しい物質なり何なり出てくると思うわけでございますが、私どもといたしましては、それが客観的に有害性ということが明確になりますならば、それに対しては、危害防止基準といたしましてそれを防止するために必要な基準を法令をもって定める。具体的には多くの場合、省令であると思いますけれども、そういうことによって定めることになるわけでございまして、それを省令等によって定められれば、これはもう絶対に厳正に守らせるよう監督をするわけでございます。ただ、それがまだ省令制定等の段階にまでは至らないいろいろな研究段階等にあります場合でも、具体的な危険がそれによって急迫しているという場合には、監督官がそういう施設の使用停止処分等を行なうことはできるわけでございます。
#106
○須原昭二君 それじゃ、不当な総括責任者に対する措置の問題でありますが、そういうことを勧告され、あるいはそういう事態が起きながらも何もしなかった、いわゆる総括責任者の任務を放棄しておったという、それらに対してはどのような罰則、その罰則の内容はどうなっていますか。
#107
○政府委員(北川俊夫君) 具体的にどういう条項についてどういう行為があったかによって違うと思いますが、安全衛生の措置が当然この法律できめられておるにかかわらず、「総括安全衛生管理者」がそれを行なわなかった、あるいは行なわせなかったという場合には、この法律の二十条から二十五条の間に使用者の危害防止基準がございますが、それの違反になろうかと思います。そういうことになりますと、罰則の関係は百十九条に該当いたしまして、「六カ月以下の懲役又は五万円以下の罰金」、こういうことになろうかと思います。
#108
○須原昭二君 最高は五万円ですね。
#109
○政府委員(北川俊夫君) そうです。
#110
○須原昭二君 五万円。
 それから懲役は……
#111
○政府委員(北川俊夫君) 六カ月です。
#112
○須原昭二君 六カ月、きわめて私は低いと思うんですよ。そして五万円というのも非常に低いですね。片一方ではそういう工場長というような生産活動と、もう一つはそうした防止策を考える両面がありながら、そして、それで任務を怠った場合には罰則がつく、行政的なそういう法的な制裁を受けても、片一方の労働者は重体になる、あるいはまた死亡する、こういう過酷な条件に追い込まれるわけですよ。だから、責任者が罰せられたからこれで事が済む、こういう軽い問題ではないと思うんです。もし、そういうような不当な責任者がおった、事故が起きた、死んだ。死んだ労働者にとってそんな罰則なんかどうでもいいことなんですよ。したがって、そういう結果によって労働者が犠牲になった場合に、労働者の救済措置というものは法的には明確にされておらないわけです。その点はどうなんです。
#113
○政府委員(渡邊健二君) 業務上の災害によって、もし労働者がなくなられたり、あるいは負傷、疾病にかかられましたならば、多くの場合でございますと労災保険法、労災保険の適用のない方については基準法の災害補償の規定によって必要な補償が与えられるわけでございますが、もとより、補償によって、労働者がすべて補償さえ与えられればいいというわけではないわけでございまして、経営者につきましては、罰則の適用があるから、罰則さえあればもういいんだ、こういうことであってはこれはならないことである、かように考えるのでございます。
#114
○須原昭二君 労災保険というのは、相互扶助の原則の上に立った保険制度なんですよ。それは普通の労災のことなんです。私が言っているのは、この総括責任者の不備によって、無責任によって起きた災害について、労働者に対するほうは特別なやはり救済措置が必要なんだと、私はこういう点を指摘をしているわけなんです。その点を法的には何も規制をされておらない。しからば皆さんのほうで行政的な措置として何らかの方法を考える余地があるのか。特に、これらの問題は企業内で問題が処理されてしまうわけですよ。そういう点を踏まえて、私は老婆心ながら、そういう行政的な措置があるものか、なぜ法的に規定をしなかったのか、この点の理由を尋ねておるわけなんです。
#115
○政府委員(渡邊健二君) 法的な強制、法的な処罰としては、やはり法律上は罰則ということになると思うわけでございます。なお、労働者の方々の救済につきましては、労災保険や基準法の災害補償は、これは無過失責任でございまして、使用者に過失があろうがなかろうが、そういう問題が出るわけでございます。さらに使用者に故意、過失があったということが明確になりますと、労災保険のほかに、いわゆる民法の損害賠償ができることになるわけでございまして、使用者にそういう明らかな故意または過失があったということになれば、労災を越えるいろいろな損害に対しまして、民法の手続による損害賠償の請求が認められる、こういうことになるわけでございます。
#116
○須原昭二君 この点についても、若干、先ほど申し上げたように、やはり立法のたてまえからいって、労使の両面から法律ができておらない。できておらないというよりは不備である、こういうふうにわれわれは認識をせざるを得ないのです。そこで、その点はさらに一ぺん行政措置としても考えていただくように、将来の問題としてひとつ考えていただきたいと思うわけです。
 さらに、時間の関係がございますから先へ進めましょう。「安全衛生管理者」の権限についてです。「労働省令で定める資格を有する者」とは、これはどういうことですか。
#117
○政府委員(北川俊夫君) 安全管理者につきまして、ここにございます「労働省令で定める資格」とは、一定の学歴、たとえば大学の工学部を出てその後経験年数が五年以上である、あるいは、高等工業、いわゆる工業系の高等学校を出ておりまして実務経験八年以上、そういうことを省令で定める予定にいたしております。
#118
○須原昭二君 ただ単なる安全衛生の技術的な面だけに限定された感じで、労災防止の実効があげられるとは私は思わないのです。現行制度でも「安全管理者」、「衛生管理者」というのはあるんですよ。これが完全にその職務を行なっているかどうか。何か前にやったことが、何もやらずに、結論が出ないままに、これはいかぬ、これはいかぬということで、また新しい名前をつけて出してくるところに私は問題があるような感じがしてなりません。特に、現在の労働安全衛生規則十八条には、「医師である衛生管理者」あるいはまた「医師でない衛生管理者」、二通りありますが、「医師である衛生管理者は、少くとも毎月一回」職場内を点検して歩かなければならない、あるいは、「医師でない衛生管理者は、少くとも毎週一回作業場を巡視」しなければならないと明確に規則にうたってある。しかしながら、現実にはこれが守られてないんですよ。守られてないんです。実態をどうつかんでおられますか。
#119
○政府委員(北川俊夫君) いまの先生の御指摘の「安全管理者」、「衛生管理者」の制度につきましては、法律の条項の書き方としては新たにつくったように書いてございますが、制度はそのまま旧制度を引き継ぐ考えでおります。したがいまして、いま先生御指摘の事業場内の巡視その他につきましても、政省令の段階でそのものの規定を入れると思います。ただ、現実にでは安全管理者、衛生管理者の事業場内の巡視あるいは保護具の点検とか教育に対する助言、そういうものが十分に行なわれておるかどうかにつきましては、御指摘の点もございますように、一部においてそういう活動が不活発であるという事実があることは認めざるを得ません。
#120
○須原昭二君 現実はそういう不備な状態なんですよ。それをきちんとすれば、事、足りることなんです。それをやっていないところに問題があるわけで、そういう点からいって、私は、今度の立法については非常に疑義があると、こう言っているわけです。
 時間の関係がございまして非常に遺憾でありますが、さらに、危険あるいは健康障害の防止策と公害の関係について。法案の第二十七条で、危険の防止あるいは健康障害の防止にあたって、その基準を労働省令にゆだねておるわけです。――云云と書いてありますけれども、具体的には省令にゆだねることにしても、将来、新しい危険あるいは有害物の出現、そうしたことに備えて法律の中にその他の一般条項を私は準備しておかなければならないと思うんです。一般的な条項、こういうものについてどうお考えになっておられますか。
#121
○政府委員(北川俊夫君) 法律的根拠としましては、ここにございますように、二十条から二十五条までの間に事業者がなすべき義務、危害防止基準を定めております。先生御指摘のように、たとえば、新しい有害物が出てきたというような場合にもこれに対応できるように、たとえば、二十三条の第一号で、「原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害」あるいは「振動、異常気圧等による健康障害」ということで、どういう物質ということは政省令の段階にゆだねておりますので、新しいもの、たとえば、今回、PCBというような問題が出てまいりましたけれども、そういう問題につきましては、そのものの毒性あるいは防護措置というものが明確になり次第新たに規則の段階で整備をしてまいると、こういうことでございますので、先生おっしゃるような、そういう委任条項的なものはこの二十七条で十分ではないかと考えております。
#122
○須原昭二君 そうすると、その点は規則のほうでそのつど出していくということに解釈してもいいですね。
 じゃ、そこで公害の問題でありますが、公害の原点は、いろいろさまざまの指摘はございますが、やはり生産現場にこの公害の原点があると言っても私は過言でないと思うんです。そういたしますと、今度の法案で、ただ一つ、――ただ一つと言うと語弊がございますが、まあ、私は、公害防止と直結をさしたということについては、いままでおこり続けてきましたけれども、一応、私は高く評価したいと思います。高く評価しましょう。しかし、その基準が問題なんです。その他、公害諸立法がなされているわけですね。この内容よりも低いものであっては私はならぬと思うんです。少なくとも、公害の原点が職場の中にある、生産現場にあるということについての認識の上に立つならば、ほかの公害諸立法よりももっときついものでなくてはならぬと私は思うんですけれども、その点はどうなっておりますか。
#123
○政府委員(渡邊健二君) 公害の発生源が多くの場合事業場の中である、職場であるということは先生おっしゃるとおりだろうと思うわけでございます。そこで、私どもも、この二十七条の二項を設けました趣旨は、事業場内のことだからといって事業場の中の危害防止だけをすればいいんだ、あとは有害のままで外に出してもいいんだということであってはいけない、やはり事業場の中で必要な危害防止をすると同時に、それが外における公害の発生源にならないような、こういうような配慮をしつつ、両方の関連を考えながら危害防止基準をつくらなければいけない、こういうのがこの二十七条の趣旨であるわけでございます。ただ、具体的な基準自身について申しますと、公害の対象になる人は幼児やあるいは病弱者、あるいは老人等々も含む一般の方でございまして、しかも、そういう有害な環境に曝露するのは公害の場合ですと四六時中生活環境として曝露するわけでございます。そういう観点から基準がきめられます。ところが事業場の中について申しますと、そういう幼児だとかあるいは病弱者というような人はおられない。いわゆる作業に従事される労働者が対象者でございまして、曝露する時間等もそれはやはり作業時間の中に限られるわけでございますので、観点がそれぞれ違う観点から、別に片方をきびしくし、片方を甘くするということでなしに、必要な基準としてその間に違いが出てくるということは、これはあり得るわけでございまして、諸外国の例等を見ましてもそういう環境基準と事業場の中の基準に違いがある場合はあるわけでございます。ただ、先ほどから繰り返し申しますように、公害源にならないという意味で外に有害なままで出すというようなことがないように、基準についてはそういうことを配慮しながら定めてまいりたい、かように考えているところでございます。
#124
○須原昭二君 その点は規則の中でもこれはきちんと位置づけて、やはり公害の原点は生産現場であると、こういう認識の上に強くやっぱり打ち出す必要があると思います。その点を特にこの際要望しておきましょう。
 さらに有害物規制についてです。五十五条、製造等禁止の有害物を示しております。その中にベンジジン等が法文の中に追加されておりますが、ここで問題になるのは、学術研究のために労働大臣の許可を受け製造、輸入する場合は例外としてこれを認める、例外規定が出ておるわけです。企業が企業の目的の利潤追求のために学術研究というような目的を拡大解釈するおそれが十二分に私はあると思います。この具体的な歯どめをどのようにお考えになっておりますか。とりわけこれは通産行政との関連がございまして、きょうは通産省の方においでいただこうと思いましたけれども、時間がないように見えたからやめましたけれども、特にこの歯どめ策はきわめて重大な問題です。この点について労働大臣がこれを許可をするということが、これがこの歯どめのように感じるわけですけれども、労働大臣はよくおかわりになりますから、あまりこれはいまの大臣にとやかく言うわけにはいきませんけれども、この点の歯どめは具体的にどういうふうにお考えになっておられますか。
#125
○政府委員(渡邊健二君) 五十五条のただし書きにございますように、許されますのは「試験研究のため製造し、輸入し、又は使用する場合で、政令で定める要件に該当するとき」、かように相なっておるわけでございます。私どもといたしましては、これは厳格な意味における試験あるいは研究、そういうためである。そのために限って認める趣旨でございますので、政令で定める要件等につきましては、そういう観点に立ちまして厳正な要件を定め、適用に当たりましてもそういう観点から便乗して拡大解釈がされることのないよう厳正な適用をはかってまいりたい、かように考えます。
#126
○須原昭二君 快適環境行政のあり方について、二十八条です。労働省の構想によると、快適環境行政の確立のために二十八条の第一項、技術上の指針の公表、第二項に望ましい作業環境の標準の公表、第三項に事業者またはその団体に対する必要な指導を行なうことを打ち出しております。はたしてこれは、罰則を伴う最低基準でもなかなか守られない状態にあるのに、罰則の伴わないこれらの指針や標準の公表をしても、政府から何らか財政的に実のある援助をしない限り守ろうとしないのではないかというような疑念を私は持ちます。先ほど申しましたように、現在の最低基準の監視だけでも全く不十分であるのに、あまりこうした実効性の乏しい快適環境行政に力を入れるというのは何かアブハチとらずといいますか、そういう危険になる可能性があると思うのですが、この点労働省の姿勢をまず特にお尋ねをしておきたいと思いますが、どうですか。
#127
○政府委員(渡邊健二君) 災害防止のためには最低の危害防止基準を定めまして、それを厳格に遵守させることが当然に基本になるわけでございますが、さらに最低基準だけ守れば絶対起きないかといいますと、やはりいろいろな事由で最低基準に適合しておっても事故が起きる場合があるわけでございまして、そういう事故をなくすためにも、より好ましい作業環境基準だとか、あるいは技術上の望ましい指針を守ることが有効であるわけでございます。さらにまた労働者といたしましても、単に最低基準が守られているというだけでなくて、より快適な作業環境にあるということが労働者の福祉上も望ましいわけでございますので、そういう意味でこの二十八条の規定を設けておるわけでございます。したがいまして、これは罰則をもって強制するというようなものではございませんが、ただいま申しましたような趣旨で、こういうものを公表いたしましたならば、できるだけ行政指導によって、それを実現させるように指導いたしますとともに、また、公表いたしましたこういうものが、労使でいろいろ話し合われる、こういう場合に、そういうように労使の自主的な努力によって、そういう状況を達成できるよう努力していこうという、そういう労使の方々の自主的な努力の一つの指針としての効果もあるのではないかとかように考えるわけでございます。
#128
○須原昭二君 その点は、特にこれからの動きを私も監視をしていきたいと思います。
 それからさらに、中高年齢層に対する配慮として就労制限が六十二条にうたわれておりますね。事業者に対して「中高年齢者その他」云々としてあるわけです。法律というものはあまり「等」だとか、「その他」だとか、そういう抽象的な、具体的に内容がなされないものを明記するというのは法律の概念から言って私はおかしいと思う。この「その他」というような抽象論の表現は私は避けるべきである。特に、私は中高年齢層だけではなくして、この際、「その他」と言うならば、たとえば婦人、年少者について明確に私はうたわなきゃならないと思うのですが、その点はどう考えられておりますか。
#129
○政府委員(渡邊健二君) これは事業場あるいは作業現場の状況によりまして、いろいろな場合が考えられるわけでございまして、先生御指摘のように、婦人だとか、年少者だとかいうようなものがある場合もございましょうし、あるいはまた、年齢にかかわらず、初めて就労する未熟練者等については危険でない職場にまず配置するとか、そういう年齢にかかわりない場合等もございますので、まあ、いろいろな場合が考えられますので、「その他」というふうに法文上は規定をいたしましたわけでございますが、趣旨といたしましては、あくまでもそこに書いてございますように、危害防止の観点から心身の条件に応じて適正な配置をするということにねらいがあるわけでございますので、そういう趣旨に従ってこの条項の適用について指導をしてまいりたいと、かように考えるわけでございます。
#130
○須原昭二君 やはり「その他」の中に、婦人だとか、年少者というのは労働基準法の中でも明記されているわけなんです。ですから当然そこの中から出てくる単独立法ならば、やはり婦人も年少者もきちんとここに位置づけるべきだと私は思います。その点はもしこれが法律がそのまま通るとするなら別としても、これは入れるべきであるし、入れなければこれは規則の中で明確にうたわれて、そういう措置を講じてもらいたいと思います。
 それから作業環境の管理に対する国の責任です。六十四条、六十五条に良好な作業環境を維持し管理するため、事業者に対して努力義務と一定の作業環境の測定あるいは記録の義務を課しております。これは職場内で言うならば労働条件の重要なポイントとして、当然私は団体交渉の対象でもあり、あるいはまた衛生委員会の協議事項にあると思うんですが、そういう協議事項にすべきであると思うんですが、その点は明確にひとつ御意見を承っておきたいと思います。
#131
○政府委員(渡邊健二君) これは、やはり私どもも労働条件の一つだと、かように考えますので、労働条件でございます以上、労使がそれを団体交渉の対象事項に取り上げられる権利は当然にあるものだと、かように考えます。
#132
○須原昭二君 労働組合の団体交渉の対象になる、こういうふうに明言がありました。衛生委員会の協議事項にすべきでありますね、これも。
#133
○政府委員(渡邊健二君) 衛生委員会の所掌事項につきましても、労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関することとか、労働者の健康被害の防止に関する重要事項ということが衛生委員会の職務権限となっておりますので、当然環境測定、環境基準等は衛生委員会の協議事項に入るわけでございます。
#134
○須原昭二君 国に対する義務づけはどうなっておりますか。
#135
○政府委員(北川俊夫君) この条文では、事業主に作業環境の維持管理につきまして義務を負わしておりますけれども、その中身、たとえばどういう作業環境を維持すべきであるか、そういう点につきましては、国が当然健康障害防止の基準として定めることにしております。また、それを事業主がはたしてそのとおり順守しておるかどうか、これを国としては監督の責めを持っておるわけでございます。さらに、先ほど先生御指摘のように、最低基準のみならず、そういう作業環境で、より望ましい作業環境の指針というものを国が出す等々の責務を負っておるわけでございます。
#136
○須原昭二君 健康管理問題です。六十六条、その四項に労働者の健康を保持するために必要があるとき、労働衛生指導医の意見を聞くと書いてありますが、この「労働衛生指導医」の性格がきわめて私は法文の内容から見て不明確だと思います。どんなもので、だれが任命するもので、手当、権限はどういうものか、この点をお尋ねしたいと思います。それからいま一つは、それに関連をして、「産業医」という問題とどういう関係があるのか。
#137
○政府委員(渡邊健二君) 衛生指導医につきましては、この法案の九十五条に規定がございまして、これは都道府県基準局に置かれるものでございまして、「労働者の衛生に関する事務に参画する」ために「労働衛生に関し学識経験を有する医師のうちから、労働大臣が任命する」わけでございます。そういうことで、たとえば、その先生がおあげになりました六十六条の四項にございますように、「臨時の健康診断」をする必要があるかどうかというような場合に、都道府県基準局長がその医師の意見を聞きまして、指導医の意見を聞きまして指示をする、あるいはその他都道基準局長が労働衛生についてその意見を聞いて、必要な意見を参照としながら、衛生に必要な行政措置を講ずると、こういうのが衛生指導医でございます。「産業医」のほうは、これは企業に置かれるものでございまして、企業の中で健康診断その他、企業内の衛生管理に必要な助言を事業主に対してするものでございます。
#138
○須原昭二君 時間あと五、六分でありますから、端的にお尋ねしておきますが、この「労働衛生指導医」の単なる専門家の意見を聞くだけではなくして――これも必要でしょう、必要ですが、それ以外に、やはり労災防止指導員だとか、あるいは労働者の代表、また労働組合があるところは労働組合の代表、そうした意見もやはり聴取する必要が私はあると思います。その点についてどういう御指導をなされるのか、これが第一点。
 それから「産業医」の制度については、これは企業内で、企業のベースでやるわけでありますけれども、その内容については別に変わったことはありませんか、現行法規と。
#139
○政府委員(北川俊夫君) これからの安全、特に職業病の関係は、われわれの能力をさらに拡充しまして、たとえば産業衛生研究所、そういうものを拡充いたしまして基礎固めをするとともに、部内だけではなくて、先生御指摘のように、部外の関係労使、特に労働者の方は現場でいろいろ体験を積んでおられる方でございますから、そういう方々の意見を反映するように、たとえば基準審議会に専門委員として委嘱するとか、あるいは有害物の検討、新たに取り上げるべき検討につきましては、そういう方々と非常に密接の関係がある専門家をお選びする、そういうことで、広く外部の意見を取り入れるように努力をいたしたいと思います。なお、「産業医」につきましては、いままで医師である衛生管理者という制度をこういう表現に変えたわけでございますが、従来の医師である衛生管理者と内容は同じでございます。
#140
○須原昭二君 もう一、二点お尋ねして、時間が来るようですから、議事進行に協力をしたいと思います。
 就業禁止条項の運用のあり方であります。ある特定の労働者がその仕事から排除されてしまうような、そういうやっぱり乱用防止の方法を講じておくべきだと実は思うわけです。同時にまた、就業禁止に伴って出てきたときに、今度は不利益処分を受けるというような場合も私はあり得る。したがって、そういう者に対する考慮はどう考えておられるのか。特に、こうしたことの補償の背景には、病気の再発のおそれがある者や、その原因によって病弱になった者の就業禁止の保護を明記すべきだと思うのですが、この六十八条の運用についてどのようにお考えになっておりますか。
#141
○政府委員(渡邊健二君) 六十八条の病者等の就業禁止でございますが、これはまず第一には伝染病といったようなことでまわりの方にそういう方が就業していると非常に御迷惑がかかるというような人たち、あるいはまあ精神的な疾病の方で、そういう方が就業するとどんな事故が起きるかわからないというような場合、あるいは御本人が就業されることによって病状が悪化するおそれがあるといったような場合でございます。ただ、そういたしましても、就業が禁止されることになりますと、御本人の生活等につきましてはいろいろ不利益な影響があることが考えられますので、私どもといたしましては、この六十八条の就業禁止の運用につきましては、非常に慎重にしなければならないと、かように考えておるわけでございます。
 なお、それらの方々の生活の問題につきましては、それが業務上の方であれば、就業禁止された期間中につきましてはもちろん労災なり基準法の災害補償なりがあるわけでございます。業務上でない場合には、健康保険による傷病手当金等の問題が、保護があると思うわけでございますが、それにいたしましても、なおられたあとの職場復帰等々の問題につきましても、御本人が不必要な不利益を受けられることがないよう、こういう法の規定によって就業が禁止された方につきましては、十分それらの点を考えまして、運用については遺憾のないようにしてまいりたいと、かように考えます。
#142
○須原昭二君 最後の課題になりますが、あと二分ぐらいしかありませんから……。
 下請労災の防止策です。労災防止団体法の一部を導入いたしまして、元方事業者、それから注文者あるいは請負人などに義務を課す責任を明確にされました。しかし私がここで疑問に思うのは、さらにもっと明確にしなければならない問題は、下請でも数次にわたって下請があるんですね。第一次、第二次、第三次、もう数次にわたるところの下請機関があるわけです。それを規制することがまず第一だと思う。それから下請はやはり親企業に対して非常に弱いんですよ。言うなりなんです。したがって、安全衛生の費用や補償なんかについてもやはり条件を認めさせる、そういう指導が私は必要ではないかと思うわけです。特に今日までの下請やその労働者が法律違反を犯してまでも危険有害な業務を断行させられておる現実、そうしたものをよく吟味して、そうした立法措置が必要ではないか。したがって、その下請といっても一次なのか四次、五次までいくのか、この点が明確ではありません。下請企業の労災発生をただ単なる責任者の明確化だけではほんとうの立法措置には私はならない、こう思うんですが、その点は当局はどうお考えになっておりますか。
#143
○政府委員(渡邊健二君) わが国におきましては、建設業とか造船業とか、その他多くの業種におきまして下請を利用した形で事業が行なわれておるわけでございまして、しかもそれが数次にわたる重層下請の形をとる場合が少なくないことも御指摘のとおりでございます。また、そういう場合に元請におきまするよりは災害の発生率も多いわけでございまして、われわれも災害防止のために非常に大きな問題点の一つであると考えております。ただ、下請のこういう形で事業をやるということは日本の産業界全般に及んでおり、一つの産業体制の一形態をなしておるわけでございまして、直ちにこういう下請そのものを禁止するということは日本の産業形態といたしまして非常に問題があるわけでございます。そこで、今回の法案におきましては、そういうことを踏まえつつ、できるだけ下請関係における災害の多発の防止の効果が起きますよう、先生も御指摘になりましたように、元方事業場に下請に対する指導、指示の責任を負わせる、あるいは元方事業場に下請との共同の協議組織、あるいは作業間の連絡調整等々の責任も負わせておるわけでございます。あるいは中間的な下請というようなものにつきましては、これは三十一条等の注文者という立場におきましてのいろいろな使わせる建設物、設備材料等についての安全確保等々の義務を課する等、できる限りこの下請関係における災害防止の規定を設けておるわけでございますが、ただ、先生おっしゃるとおり、下請が弱い立場にあって、たとえば請負単価等々におきましても必要なものが元請から積算されていないというようなために、必要な安全措置が講じられないというような場合もわれわれも確かにあると考えております。これらの点につきましては、私ども、かねてから建設省等と――特に建設についてそういう場合が多いわけでございますが――協議連絡をいたしておりまして、最近も建設省のほうから地方に対して、発注の場合には請負単価の中に、そういう安全、災害防止に必要な経費等も単価の積算の中に十分見込ませるようにというような通牒等も出されておるところでございまして、今後とも単に法文の条文だけでなしに、実質的に下請が安全衛生措置を十分に講じ得るよう行政指導をしてまいりたいと、かように考えております。
#144
○須原昭二君 最後でございますが、前回の質問は労働災害一般論でいろいろと質疑をいたしました。今回は法案の各条項について御質問申し上げましたのですが、それを通覧をして、労働大臣、やはり今度の立法のメリットあるいは独立立法にしたメリットですね、あるいはまた基準行政と勧告行政、この方向へ傾斜していくのではないかという疑念ですね、あるいはまたその立法の内容から見ると、事業者――経営者と労働者の両面からやはり考えておられないのではないかというような疑念、各条項については非常にまだ不備な問題点が多々私はいまの質疑の中からも浮かび上がってくるわけです。こうした問題点について労働大臣、特に今日の労働災害の多い事例、とりわけ労働者の立場を守らなければならない労働省として今後この法案の運用についてどのような決意で臨んでいかれるのか、その点を最後にひとつ決意のほどをお尋ねをして質問を終わりたいと思います。
#145
○国務大臣(塚原俊郎君) 先般と本日と、一般論、各論というような形で数々の質疑応答がなされたわけでありまするが、本日はなまなましいいろいろな事実を御指摘になりまして、いうならばデメリットのほうを心配されたあまり、そういう御質問になったと思います。もちろん、われわれはこの法案が御審議をいただいて通過いたし、法律となりましたならば、十分今日まで御審議願い、また疑問点を持たれた点等も労働省としてはよくわかっておりまするので、この法律の運用につきましては、いわゆるそのメリットを強調するという――いまデメリットから先生は御質問になったと思うんですが、われわれはデメリットをなくして、メリットでこの法律の万全な運用を期す。最大限とか何とかいうとまた御批判をいただきましょうが、とにかく御審議を願って通過いたしました以上、この法律の機能を最高度に発揮させる最大限の努力をいたします。
#146
○高山恒雄君 私はわずかな時間ですから二、三確認的な問題について御質問しておきたいと思います。
 まず、四十六年度の災害死亡者を前年度と対比をいたしてみますと、死亡者で四百八十六名、八・二%減員いたしております。さらに八日以上の休業負傷者を見ますと二万五千九百八十三人、七・三%減員いたしております。合計二万六千四百六十九人の減少ということになるのですが、四十六年度これだけ災害が減少したという理由はどこにあるのか。政府はどう見ておられるのか、この点をお聞きしたいんです。
#147
○政府委員(渡邊健二君) 四十六年度、いま先生が御指摘のように、災害の発生が従来に比べてやや減っておりますことは私ども非常に喜んでおるところでございます。その原因につきましてはいろいろあると存じますので、全部が全部私どもの努力の成果だということは当然申し上げられないと思います。事実といたしまして四十六年、不況でありましたために産業活動がそれまでよりかやや低下した、そういうことも災害減少の一つの原因になっておると率直に言って考えておりますが、ただ、昭和四十年の不況のときもやや減少いたしましたけれども、四十年の不況のときから比べますと、今度の減少の幅はもっと大幅であるわけでございまして、これはやはりかねがね、ここ数年来非常に社会一般といたしまして人命尊重、人間の福祉重視という風潮が浸透いたしてまいりまして、労働関係につきましても安全衛生という意識がかなり深まってまいりまして、民間におきましても企業あるいは労使あるいは関係団体の方々がそういう観点に立って非常に災害防止についての熱意を持たれるようになり、御努力をされるようになったことも減少の一つの原因であると考えております。
#148
○高山恒雄君 いまの御答弁をお聞きしていますと、後者のほうでつまり減少したというならば、これはまあ非常に幸いだと私は思っております。非常に極端に減っていますからね。四十年のときよりも減っておると、こう見てもいいでしょう。したがって、後者の答弁をされた内容でこれだけの減少をしたというならば、私は非常に努力の結果があらわれておると、こういう見方をせざるを得ないんです。ただし、前者の答弁で、不況のときの労働者に対する作業の、何と申しますか、過重労働といいますか、あるいは残業があり、いろんなことがございます。したがって、過重労働というものがそれだけつまり整理されてくれば災害も少ないんだという点も、前者の答弁も私は多分にあると、これがやっぱり四十年のときもそうですよね、何ぽか減っておりますから。その後またずっとふえたんですから。したがって、やっぱり景気のいかんによってすらこれだけの災害の増大現象という事実があらわれてくるわけであります。で、いかに労働者の安全という問題については、過酷な労働をやってはいけないということはこれを見ても私は数字的にやっぱりあらわれておると、こういうふうに考えるわけです。
 そこで、罰則の項ですが、罰則の項で非常にまあ今回は重要視されていろいろ罰則をきめておられます。私、一つの見方をするわけですが、先ほども質問がございましたように、労使の立場における安全衛生という法の運用については非常に至難な点があるわけです、使う者と使われる者の立場における。で、この点の理解が法案上から見ても、基準法でいう対等の立場におけるやっぱり安全衛生ということに心を寄せなければ、労働者を守る法案にならないわけですね。この点を非常に私は重要視するわけです。
 で、この百十九条を見ますと、第十四条、第二十条から第二十五条、三十一条と、たくさんございますが、「次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五万円以下の罰金」と、こうなっております。で、この内容を見ますと、こういう点があるわけですね、たとえば一つの例を申し上げたいんですが、二十五条の内容を見ますと、事業者は労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため、たとえば危険個所への立ち入り禁止処置等、必要な措置を講じなければならないこととしたものであると、こういうふうにあるわけですね。これもさっき質問された方の問題と関連するんですが、管理者の処分ということになるわけです。その管理者の処分で、もしそこに立ち入りを防止しようとするなら相当の金が要る。通行するのには危険だということがわかっておっても、相当の資本をかけなければできないんだというような場合がございます。たとえばそこの工場の管理者は自分の責任において危険だと思うから、あるいは安全委員会でも取り上げたから、これは何としても本社のほうに申告をして、そうして予算を組んで、直ちに通行の安全を期するためにやらなくちゃいかぬと、こういうことになるわけですね。ところが、工場の管理者の範囲内の部分ではなかなかやれないんですよ。やれない。本社に稟議しなくてはできない問題がある。ところが申請をしてもなかなか本社はその予算を組んでくれない。ところが、もしそこで危険が起こったとした場合の罰則はそこの管理者が受けるという、こういう不当なことはないと私は思うんですが、それを規制する方法はどうして考えなかったのか。あるいは考えた点があるのか、この点をお聞きしたいんです。
#149
○政府委員(渡邊健二君) 先生いま例をおあげになりました二十五条等につきましても、具体的にこの「必要な措置」がどういうことをしなければならぬかということは、これは二十七条で言うところの命令で、労働省令で具体的に、たとえばいままでの規則でもございますが、こういう場所には施錠をしろだとか、あるいはこういう場所は立ち入り禁止の表示をすれば足りるとか、具体的な行為はそれぞれ命令で定められるわけでございます。ただ命令で定めましたものを事業所の総括安全衛生管理者等事業所の責任者が実行しようと思っても、まあたとえば本社が必要な予算を認めてくれなかったために実行できないというような場合がもしあったといたしますと、それはやはり百二十二条の規定がございまして、そういう違反があった場合には、下の者が違反をした場合にも「行為者を罰するほか、その法人又は人」――人というのは個人企業でございますが、そういう事業主そのものに対しても罰金刑が処せられることになっておるわけでございまして、先生お話しのような場合には、本社も含めたその事業主の責任も当然追及されることになるわけでございます。
#150
○高山恒雄君 いや、罰金は、これはもう五万や十万円の金は会社出しますよ、たいしたことないからね。個人の腹痛むわけじゃありません、罰金は。まあ懲役一年というやはりそれだけの刑を受けるということになりますと、つまり稟議はしておったんだけれども、本社が予算を組まないためにできないという場合ですね、そのときには、確認いたしますが、かりに本社の事業部長、こういうところまで波及して罰則を加えると、こういうことですか。それは明らかにしておいてください。
#151
○政府委員(渡邊健二君) まあそういう場合に本社のたとえば事業部長なり何なりまでいくかどうかということは、これは刑罰法規の適用の、いわゆる刑事問題になるわけでございますので、よほどそれぞれの事情がその場合に調べられないと、それぞれの権限、当時の事情等はっきりいたしませんと、一がいに申し上げることはなかなか困難であると、かように考えるわけでございますが、もし現場の事業所の責任者が、自分は必要を感じながら必要な危害防止措置がとれないという場合には、やはり責任追及をその現場の責任者が免れようとすれば、必要な防護措置がとられない間はやっぱり作業をやめるというしかないわけでございます。
#152
○高山恒雄君 そういうあいまいな答弁では困るんですよね。たとえば、もう一つ例を申し上げましょう。百名なら百名の宿舎がございます。これが旧来の木造であって、しかも二階建てだと、もう五十年は経過しておる、もし震度六なりの地震がきた場合はこれはもう犠牲者が出る、危険だ、したがって本社に対して稟議をする、なかなかそれが承認にならない。そういう稟議をしておる現在の工場の管理者が罰則を受けるということでしょう。だから、私は、そういう場合に、申告をしておって本社が予算を組まないという場合については、管理者だけの責任じゃないですよ、これは。やっぱりその罰則というものは、どこに責任があるかというその原因が明らかになった場合はそれをやっぱり対象にしていくということにならないと、これは一つの抜け道で、管理者はたまったものじゃないですよ。わずかな月給をもらっておる工場長が管理者になって、そうして、もしそういう災害があったら全責任を負わんならぬ、そうして一年の懲役に行かんならぬといったら、それは管理者はたまったもんじゃないですね。そういう場合には本社の責任の範囲内も追及ができるんですから、むしろ、私は本社が責任を負うべきだと、こう思うんです。その点明らかにしておいてください。
#153
○政府委員(渡邊健二君) ただいま例にあげられましだような場合で、その予算の支出権限が本社にあるということがはっきりすれば、その違反の行為者は本社の支出決定権限がある者と、こういうことになろうと考えます。
#154
○高山恒雄君 先ほども出ましたけれども、工場管理というのは、年間の予算の中のどういう管理をするかということは、おおよそ、これは皆さん常識でおわかりだと思うんですよ。たとえば、十万円以上の場合は稟議しなくちゃいかぬとか、あるいは五万円以上になった場合には本社に稟議しなければ予算が組まれないんだと。工場の管理者というのはその程度ですよ。そういう問題、災害というのは、いかに労使が協議しても、大臣がおっしゃるように、労使の協議の中で安全をみずからが守っていくんだと、こういう姿勢をとってみてもやれない場合があるんです。そういう場合には、やっぱり責任は、明らかにこの法律でしておく必要があるんじゃないかということを私は申し上げておる。それがなければ、――御承知のように、この安全・衛生は金の要る仕事なんですよ、少なくとも。したがって、先ほども意見が出ましたように、営利会社というのは、景気のいいときには、あらゆる生産をやらなくちゃいかぬので安全を守ることはできない、不景気になると、こんな不景気にそういう金は使えないと、ここに日本の安全・衛生の完備のできない大きな欠陥があるわけです。その欠陥を補うのが法律なんです。その法律が規制がしてなければ、労働者を災害から守る、あるいは衛生管理の完備をはかるというようなことにならないんですよ。こういう点をどう今後考えていこうとされるのか。これは大臣、基本的な問題ですが、御答弁願いたいと思うんです。
#155
○国務大臣(塚原俊郎君) せっかくつくった法律でございまするので、いま御指摘のような不明確な点がありましたならば、これは影響するところきわめて大でありますから、その点は局長も先ほど答弁いたしましたように、はっきりした態度で臨むのが当然であろうと私は考えております。
#156
○高山恒雄君 それじゃもうわかりました。
 それでは私、前回質問いたしました点を再度確認いたしておきますが、この基準法との関連で、今度の安全衛生法はドッキング条項としてこうやるということにしておられるのですが、なお、この前の答弁で、私はわからないではございませんけれども、非常にこれは重要な問題でありますので、基準法にいう労使対等の原則、それから人たるに値する生活の擁護のために基準法というものがあるんだと、この原則を踏まえて、そうしてこの安全衛生法案というものは立法化していく、当然別問題ではないという見解を明らかにしておいてもらいたいと思いますが、そう考えてもよろしいかどうか、この点だめを押しておきます。
#157
○政府委員(渡邊健二君) 前回も申し上げましたように、今回の法案の附則四条で、基準法の四十二条が修正をされておりまして、それによりますと、基準法の四十二条は修正後は「労働者の安全及び衛生に関しては、労働安全衛生法の定めるところによる。」かようになっております。したがいまして、労働安全衛生法案に定めます安全衛生の基準というものは、基準法にいうところの労働条件の最低基準になるわけでございます。したがっていま先生がおっしゃいました基準法一条あるいは二条等々の労働条件決定の原則、これは当然、この安全衛生法案にいう労働安全衛生の基準についても適用があるわけでございます。
#158
○高山恒雄君 終わります。
#159
○鹿島俊雄君 私はこの際、大臣にきわめて重要なる一点につきまして、要望を兼ね御所見を承りたいと思っております。
 ただいままで、本案の審議の過程におきまして取り上げましたとおり、最近におきまする目ざましい生産の場の変化に伴いまして、職業病問題は、きわめて複雑、困難なものとなってまいったことは御存じのとおりであります。しかも、その症状もまことに多岐にわたることも御承知のとおりであります。たとえば歯牙並びにその支持組織に病変があらわれる、そういうような場合もしばしばこれは生じておるのが現状であります。したがいまして、本法案第十三条による「産業医」の選任に関しましては、単に医師のみでなく、産業歯科医師としての立場の意見が、職場の健康管理に反映するよう道を開くべきと考えるのでありますが、労働大臣の御所見はいかがですか。
#160
○国務大臣(塚原俊郎君) 鹿島委員の御意見をまじえての御質問でありまするが、おっしゃるとおり、最近、職業病問題が非常に広い範囲にわたっておりまして、その対策はきわめて重要視されております。そのおっしゃったような点のうち、メッキ工場、それから化学工場等、強酸類などを扱う事業場の労働者には、歯牙酸蝕、それから歯齦炎等口腔内の疾病にかかる例が間々見受けられるわけであります。これらの職業性疾病を的確に防止するためには、おっしゃるように、口腔衛生の専門家である歯科医師の御意見も日ごろから伺っておくことが必要であります。
 したがって、本法施行のための政省令を定める段階では、強酸類、弗素、水銀等を取り扱う事業場について、その職場の健康管理に歯科医師の御意見が「産業医」と同様の立場において十分取り入れられまするよう措置することを考えております。
#161
○鹿島俊雄君 ただいまの御答弁で大体了承いたしましたが、この際、一言付言しておきたいことは、およそ医療に関しましては、医師法、歯科医師法の両建てによって、その医療責任分野は画然としておるわけであります。したがいまして、今後とも労働省当局におかれましては、このことを深く銘記されまして、特に医療関係法案の取り扱いにつきましては、その線に沿って適切、妥当な措置がとられまするよう、重ねて強く要望いたしまして私の質問を終わります。
#162
○田中寿美子君 私、前回相当詳しく御質問いたしましたので、あのときにまだ時間足りず残しました問題点、つまり作業環境の中のPCBの問題と、それから一昨日、新聞紙上で発表されておりました新日鉄の八幡製鉄所におけるタール蒸気による発ガンの問題ですね。この二つの問題だけきょうは短かい時間ですからお尋ねしたいと思います。
 まあ、職業病が四十年以来急増しております。特に四十五年には急カーブを描いているわけですね。これのおもな理由は有害物資、――新しい有害物質が導入されてきたことやら、それから新しい技術の導入、それによる作業工程の急激な変化、そういうことからきているんだと思うんですけれども、それで、先に新しい事件のほうの新日鉄八幡製鉄所のタール蒸気による職業性の肺ガンといわれている問題ですね、これは、報道によりますと、新日鉄八幡製鉄所のコークス工場の定年退職者二人が肺ガンで死亡した。それで、職場の従業員たちが心配になってグループをつくって退職者の調査をして歩いた。そうしましたら、昭和十三年入社した人で四十四年三月退職した人が六月に入院して――これは国立病院ですね、肺ガンとわかって三カ月後に死亡しております。もう一人の人は、十五年に入社して四十年に退職して、そして四十五年から症状が出て四十六年の二月肺ガンとわかり七月死亡しておりますね。製鉄所の病院の判断によりますと、タールの蒸気による職業性肺ガンであるというふうに断定しているというふうにこれは新聞紙上では伝えております。
 労働省のほうからも、私がこの福岡医学雑誌ですね、そこに載せられました論文、これは八幡製鉄所病院の労働医学研究課の指導に当たられた元副院長さんですがね、河合博士という方ですが、この方の論文が載っているわけです。私も自分でその論文の写しをとりました。それによりますと、死者が昭和八年から十二年までに二十一人。八幡製鉄関係ですね、コークス工場。昭和二十年から三十年までに六人。二十年までの間の戦時中はとっておりませんね。それから三十一年から三十五年までに四人。三十六年から四十二年までに二人。合計三十三人が肺ガンで死亡しております。昭和二十八年以来もうこのコークスを使わないで重油に切りかえたということで労働省のほうの御説明がありました。しかし、昭和十三年以来十五年間もタールの蒸気にさらされてきていた労働者がたくさんいたわけですね。この事実について労働省は八幡製鉄所から労働基準局に対して報告を受けられたかどうか、まずそれをお伺いしたいと思います。
#163
○政府委員(北川俊夫君) いま御指摘の八幡製鉄所におきます職業ガンの発生は、昭和八年から問題になりましたものでございますので、戦争中の事案は別としまして、戦後、労働基準法の適用があります時代におきましては、そのつど労災保険の適用もございますので、労働基準局へ所要の報告はされておるわけでございます。なお、基準局はこれに対しましてガス発生炉の改善につきまして終戦直後の二十年、それから二十七年の間に数度にわたりましてそれぞれの指示をして、最終的にはいま先生お話しのように、二十八年に肺ガンの発生の防止というものが非常に困難であるという判断のもとに燃料の転換を行なった、こういうことに聞いております。
#164
○田中寿美子君 だから、基準監督官の臨検はしたということですね。
 今回この発表がありましてからどういうふうなことをなさいましたか。
#165
○政府委員(北川俊夫君) いま私が申し上げましたのはガス発生炉でございまして、二十八年に使用を停止して以来、アフターケアといいますか、追跡調査を会社でやっておりました。その結果、三十八年以降はガス発生炉に従事した労働者の中からはもはや出ないであろうということで考えておりましたけれども、一昨日の新聞によりますと、このガス発生炉以外にコークス炉の作業員の中から、しかも退職した人の中から死亡者が二名出たということを私たちも初めて知りましたので、当日すぐに現地の基準局にその二名の方の調査とそれからそれ以外の労働者の方の、特に退職者につきまして追跡調査をするように会社に指示をいたしますとともに、先般この委員会で小平先生からも御指摘がございましたけれども、タール関係を扱っておる工場につきましては、ガン発生の可能性というものをこの際やはり十分認識した行政姿勢が必要だろう、こう考えましたので、関係工場につきまして一せいに総点検を行ないたい、こう考えております。
#166
○田中寿美子君 それで、私念のために、つまり、もう使わなくなっていても、過去に何年間か長くタール蒸気にさらされていた人、そういう人には肺ガンの発生するおそれがあるということでございますね。それで、それじゃ全国に八幡製鉄と同じようなコークスの工場あるいは同じような工程をとっているところの工場、事業場がどのくらいあって、そしてそこに働いている労働者あるいはかつて働いていた労働者はどのくらいあったかということは、労働省は把握すべきだと思いましたものですから、その数を要求したわけです。先ほどいただきましたけれども、念のためこれをもう一ぺん説明していただきます。
#167
○政府委員(北川俊夫君) おもな工場としましては、現在ガス発生炉ないしはタール関係の工程を持っておりますのは、大手のガス会社はすべてこれを持っておろうかと思います。それ以外にも製鉄会社あるいは関連のタール製造業者等にそういうものがありますので、正確に把握しておりませんが、通産省等に問い合わせて現在、名簿を作製中でございますが、大体四十社ぐらいというふうに概略の把握をいたしたところでございます。ただ、過去の従業員の数、現在の従業員の数といいますのはまだ個別に当たっておりませんので、把握をいたしておりません。
#168
○田中寿美子君 先ほど総点検をするとおっしゃいましたから、これは早急にしていただき、そして追跡調査をする必要があると思います。それはぜひ具体化していただきたい。
 そこでお尋ねしたいのですけれども、コークス製造の過程で生ずる物質にどんなものがあるか、つまり有害性物質がどんなものがあるかを知りたいわけで、その名称とか化学式がわかれば、私もこのごろ有害物質、化学合成物質が多いものですから、一生懸命に化学音痴ですけれども勉強しておりますのですが、どういう物質があるか言ってみてください。
#169
○政府委員(北川俊夫君) 実は、私も専門でございませんのでちょっと正確にお答えできませんが、コークス炉といいますのは構造としまして燃焼室と炭化室が交互に並んでおりまして、炭化室の中に石炭を装入いたしまして燃焼室の中で燃料ガスを燃やす、その結果、石炭が蒸し焼きになってコークスができる、こういうことのようでございます。したがいまして、その中で出ますいろいろの物質としましては、一番多く出るのは一酸化炭素、これだろうと思います。そのほかに三・四ベンツピレンを含みますタールの蒸気というようなものも出ようかと思います。それ以外にはアンモニア、炭酸ガス、それからベンゼン、トルエン、キシレン、こういうものも同時に出るのではないか、こういうふうに考えております。
#170
○田中寿美子君 いまおっしゃったものの中には発ガン性あるいは発ガン性の疑いがあるベンゼン加工を持っているものがずいぶんあったように思うのです。こういうものがあると推測されるというのではなくて、はっきりと分析をしていただきたいと私ども思いますが。
 そこで、その次にお伺いしたいのは、そのコークスの製造から生ずる有害物質の規制にどういう法令があるか、何があるか、いつできたのかということを知りたいわけです。私、これを見てみましたけれども見つかりませんでしたので……。
#171
○政府委員(北川俊夫君) コークス炉で石炭を蒸し焼きします場合に、その原料である炭粉をまぜる、あるいは取り出すというような関係で、いわゆるじん肺作業職場ということになろうかと思います。
  〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕
これにつきましては、じん肺法の適用を受けまして、作業としましてはじん肺法の施行規則の別表の第十九号の作業に該当する、こう考えております。したがいまして、この作業場では、皆、年に一回の直接撮影ということを行なうことになっておりますので、そういう義務が課せられておりまして、かつエックス線写真の直接撮影のものが保存をされておりますので、先ほど先生おっしゃいましたように、総点検の際に、はたしてそういう肺ガンの疑いがあるかどうかというような点につきましては把握がしやすいのではないかと考えております。それからなお一酸化炭素等につきましては、これにつきましてはいまのところでは有機溶剤等の関係の適用があるんではないか、こう考えております。
#172
○田中寿美子君 いまのじん肺法の十九号は、「粉状の鉱物を燃焼する工程において、炉、煙道又は煙突に附着し、」云々と書いてありまして、「粉状の鉱物を燃焼する工程」というので、別にタールというようなことになっていないわけですね。ですから発ガン性の疑いを持っているタール系の蒸気に対する規制というのは、きちんとしたものがないと思いますが、それは今後どうなさるおつもりですか。新しい労働安全衛生法案で、これはどっかに入れられるのですか。
#173
○政府委員(北川俊夫君) いま御指摘のように、私が申しましたじん肺法の関係は、いわゆる粉末の炭、それを肺内に吸い込んでじん肺になる可能性がある。こういう意味での規制、――先ほど有機溶剤と申しましたけれども、特化則の間違いでして、それによる規制というものは、コークス作製の過程において生ずる有害物についての特殊規制を申し上げたわけでございまして、タールそのものを直接規制する規定というものは現在ございません。ただ、これにつきましては、今回のコークス炉の事案等を契機にしまして総点検をし、かつ内容をよく把握をいたしまして、規制の必要あり、かつその対策としてこういうものが有効であるという結論が出ましたならば、早急に規則の整備をいたしたいと考えております。
#174
○田中寿美子君 いつも事が起こってからそうなりますので、せっかく今度新しい、有害物質に対処するために新しい法律をつくるわけですから、こういうのは相当の労働者が影響を受けているはずでございますので、ぜひ早く研究をして、この規制の中にはっきりと入れるようにしていただかなければならないと思います。
 それで私は、これは環境庁の方にもまた労働大臣の意見もお聞きしたいと思いますけれども、前回にも私申し上げたのですけれども、つまり、労働省の労働安全法案の考え方というのは、全体として健康管理と、それから作業環境の整備と、それから労災の補償と、こういう考え方でございますね。ところが作業環境の整備というところでは、一体それはさっき須原委員も言われたけれども、何もあまり罰則はないわけです。おたくが出された――これはあとでPCBのことでお伺いしたいと思いますけれども、通牒などでも、環境の測定まではありますけれども、一体測定したあとで、その基準よりもひどい、たとえばカドミウムなんかでも、測定せよ、検査せよというような通牒を出していらっしゃいますが、それが出た場合にどういう罰則を伴うのかということが明らかではない。それで私は環境庁にお伺いしたいのは、先ほど須原委員にも御説明がありました、老人や子供までも含む一般公衆に対する環境基準というものはきびしくしなければいけないけれども、職場の作業環境はそれよりもゆるくてもいいのだ、労働時間、八時間なら八時間の間だけ有害物質にさらされているんだからという考え方が貫かれております。国際的にもそうだということです。だけれども、日本は公害第一位の国なんです。それで、一般の環境基準と作業環境基準とを私は違えるべきものじゃない。一家の支柱になる働く人が有害な物質にさらされるということは非常に重大だと思います。その辺を環境庁はどういうふうに考えられるかということ、まず、それから。そして、あとで労働大臣から伺います。
#175
○政府委員(山形操六君) 先生御指摘の、環境庁が環境基準を設定するのにどういう態度で臨んだかという御質問の趣旨と解しますが、私どもは環境基準というのは、大気汚染の環境基準につきましては、住民の生活環境において、公害現象によって一般住民の健康、生活環境がそこなわれることのないような、環境濃度のレベルを示すものだということと、それからこれはあくまで公害防止の目標値であるということが第一点の考え方でございます。この基準は、汚染がこれ以下に維持されることが望ましいというものでありますから、少し超過したといってすぐ住民の健康がそこなわれるというものではないものとしております。しかし、おっしゃるように、病人、病弱者、乳幼児等ありますので、超過した状態が続けば、それらのからだの弱い方々が死亡あるいは増悪した状態等が生じ得ることが考えられますので、この環境濃度のレベルというものを基準以下にしておくことがまず大切でございます。で、これらを維持させるために行政当局はいろいろな対策をやって、そして各事業所等に排水基準をきめてこの環境基準を維持達成させようというのが目的でございます。で、おっしゃるように、環境基準と職場の環境基準とに非常に差があって、これはもっと両方とも一緒になるべきものではないかという御指摘がございました。職場環境のほうは、労働者が通常一日八時間労働して、かつ、一定の水準で健康管理がなされるということを前提として定めたものでございます。したがって、現段階では環境基準のほうがそれよりもはるかにきびしい数値が持たれておるわけでございますが、御存じのとおり、公害対策基本法においても、この環境基準というものは常に適切な科学的判断を加えて必要な改正をやれということが書いてございますので、私どもはそれに従ってこの基準値の見直しと申しますか、改正に努力している最中でございます。
#176
○田中寿美子君 私はその態度をもう一歩進めてほしいと思います。環境基準を設定するときも、労働省も厚生省も環境庁も一緒に協議なさるはずでございます。それぞれ、労働省は職場の環境基準をきびしくするということを発言しなければならないし、それから環境庁は職場に向かって外部の一般の環境と同じぐらいきびしくせよと私は言うべきだと思う。その辺がPCBにしても、カドミウムにしても、有機水銀にしても、全部職場が発生源、企業が発生源ですね。発生源企業でこういうものを出さなかったら環境もよごれないわけでございますから、まず発生源でうんときびしい基準をつくらせるということは、環境基準をよくするためにどうしても必要だと思いますので、その線で今後両方から強く、つまり蓄積していくものはほんとうは許容量があってはならないと私なんか思っているものですから、全然なくする方向に向かわなければならないものが幾らでもあるし、このタールなんかは、これは食品なんかでは発ガン性のものとしてずいぶんこれは注意されているものだと思いますので、そういう点でもっと労働省が早い即応のしかたをしてほしいと思います。これは前回も労働大臣に環境基準と職場の基準について、私はたいへん繰り返しくどく申し上げましたけれども、きょう環境庁の方もおられますので、労働大臣、今後のこれに対する方針を自分ではどうしようと思うということを言っていただきたいのですが。
#177
○国務大臣(塚原俊郎君) 田中委員の御質問でありましたか、どなたかの御質問に、最近の労働行政というものは環境庁の仕事も厚生省の仕事も多分に含まれている、またそういうものを考えてやらなければ今日の事態に対処した労働行政はできないということを私申し上げました。いま問題になっておりまする新しい化学物質等の問題につきましても、環境庁は環境庁の見解がございましたけれども、われわれは労働者を保護するという立場でこの問題に取り組んでいかなければならない。私は、やはりこの問題、しろうとでありまするが、なかなか発見が困難であり、だいぶあとになってから問題が指摘されるというような例が今日まで多かったのではなかろうかと考えております。もちろんアフターケアの問題について十全の措置をとることは当然でありまするが、やはりそれよりも先に、本法でも五十八条でありましたか、事業主に義務づけておりまするけれども、やはり事前にこれを察知するというか、ちゃんと調べるという、国としての権威ある機関をつくることが焦眉の急であろうと私は考えております。こういう観点から環境庁長官などとも、労働行政は非常に企業に関係があり、私どもむしろ先取りするぐらいの気持ちでなければならぬということで、緊密な連絡はとっております。
#178
○田中寿美子君 それで、先ほど須原委員からもちょっと出ておりましたが、つまり環境の整備あるいは快適な環境を整備せよといっても、それを整備しなかったときに罰則がないという問題なんですけれども、公害の場合は公害罪がありますね。それで発生源企業は公害の根源であるということが立証されたら処罰を受ける。だけども、作業環境が労働省の規定する許容基準を越えても別に処罰は受けない、こういう問題がございますね。どういう処罰を受けますか。
#179
○政府委員(渡邊健二君) 職場の作業環境等につきましては、この法律で申しますと大体二十三条の「事業主は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。」、原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏症、病原体による健康障害、放射線、高温云々と、ずっとここに規定をいたしておるわけでございますが、これらの規定によって、労働者の健康障害防止の最低基準というものは、これらを根拠といたしました二十七条に基づくところの省令で具体的に定められるわけでございます。現在で申しますと、特定化学物質等障害予防規則であるとか、あるいは有機溶剤中毒防止規則であるとか、まあたくさんの規則が設けられておるわけでございまして、それぞれの中において一定の基準が設けられておるわけでございます。たとえて申しますと、特定化学物質等障害予防規則でございますと、その六条の二項に局所排気装置でどういうような基準にしなければならないかということがきめられておりまして、それに基づく大臣の告示で、たとえて申しますと、先ほどから例としてあげられております、いわゆるPCB――塩素化ビフェニールでございますと、一立米当たり〇・五ミリグラムをこえないものとする云々という規定があるわけでございまして、これに違反いたしますと、これは新法で申しますと百十九条以下の罰則によって処罰をされることになっております。罰則がないことはございません。
#180
○田中寿美子君 その罰則が非常にゆるいということ。それから、それもほんとに特定の物質だけなんですね。で、長い間接触していればからだを害するというものについて、たいへん規制はゆるいと思います。そこで、いまさっきのタールの蒸気を吸っていた、コークス工場その他で、そういう人に対して六十七条の「健康管理手帳」を渡すということはできないかどうか、つまり前に有害物質でおたくでおっしゃったのは五十五条に関連したもの、五十六条に関連したものくらいでしょう。「健康管理手帳」を渡して、生涯その治療を受けることができると、これに追加していく気持ちはおありになりませんか。
#181
○政府委員(北川俊夫君) 「健康管理手帳」につきましては、当面は五十五条で禁止をしましたベンジジン、ベータ・ナフチルアミン等を考えておりますが、いまおっしゃったように、最近新しい物質で、しかも同じように潜在性があり、かつ重篤な障害を及ぼすものにつきましては前向きに検討いたしたいと思います。ただ、タールにつきましては、先ほどから実態をよく調査してと、こう申し上げておりますが、タールに基づきます肺ガンというのは、八幡製鉄で過去三十三例、発例しておりますけれども、それ以外は世界的にもそう肺ガンの発例というのは多うございません。もし、今回コークス工場の二例がそのとおりとしますと、われわれとしてはやはり視点を改めてこの問題に取り組まなければなりません。おおむねは、タールに基づきますものは皮膚ガンが多うございます。
#182
○田中寿美子君 私皮膚ガンでも大事だろうと思うのです。重大だろうと思います。
 それで、時間がありませんから急ぎまして、PCBの関係なんです。労働基準局から四月の七日に「塩素化ビフェニルを取り扱う労働者の健康管理等について」という通牒が出ております。健康診断を実施せよ、そして適切な健康管理を行なうようにということなんですがね。これの「適切な健康管理」というのはどういうことなのか。それからさらに五月になって、調査された結果の簡単な概要が出ているわけなんですけれども、これもさっき申しましたように、適切な健康管理をせよということが指令してあって、それから作業環境、PCBの濃度を測定せよということですね。その測定した結果が出たのかどうかということと、それから「適切な健康管理」というのはどういうことをさすのかということをお尋ねいたします。
#183
○政府委員(北川俊夫君) PCBの問題につきましては、非常に国の中で関心を持たれてきましたので、私のほうでは昨年四月特定化学物質障害予防規則を制定いたしました際に、先ほど局長御説明しましたように、一応別表の第二類物質ということでその規制をいたしましたけれども、現にPCBを使っておったというものだけじゃなくて、過去に、もうすでにやめたけれどもPCBを使っておった会社についても、その従業員の健康診断を、先生御指摘のように指示をしたわけでございますが、その作業環境の測定あるいは健康診断の結果につきましては、五月ごろまでに、五月中旬だと思いますが、報告をするように指示してございますが、まだ全国的な取りまとめができておりませんので、でき次第、先生のほうに御報告をしたいと思います。
 なお、健康診断につきましては、特定化学物質障害予防規則に基づきまして検診の項目等をきめておりまして、それに対して、それを予防するためにたとえば皮膚障害をなくすためには防具をつけるとか、あるいは洗浄をよくするとか、そういうような指導をいたしておるわけでございます。
#184
○田中寿美子君 それで環境庁の方にお伺いしますけれども、PCBについてはまだ許容基準きめてありませんですね。暫定許容基準、まあ環境基準ですね、環境基準について一般公衆に対する環境基準を大体どのくらいを妥当の線というふうに考えていられるのかということです。で、労働省の特別化学物質の規則ですね、あれには一メートル立方に対して〇・五ミリグラムというのが出ておる、環境庁はこれが妥当だとお考えになるか、暫定基準はどの辺に置こうということになっているのかということです。
#185
○政府委員(山形操六君) PCBの問題、環境庁におきましては、一応、私の所管ではございませんが、先生の御質問の大気の環境ということで私のほうの仕事としてお答えいたしますと、残念ながらPCBの大気に対する測定が、非常に微量でございまして、いまの技術で開発できておりません。したがって水中あるいは食品中と、そういったものについてはできるんでございますが、いま私ども大気中のPCBの測定に、まずどういう器具、器材の問題よりもどうやって、前処理と申しますか、空気をとったらいいかというその前段階の検索と、それからこまかい微量測定にどういう方法を使ったらよいか、この研究調査にちょうどいま入ったところでございますので、御指摘の〇・五ミリグラムパー立米の問題がどうかという点はこれは私批評を差し控えさしていただきたいんでございますが、外国の文献等からいって、おそらくこれについての治験は、大気に関する治験はまだ出ていないと思っております。
#186
○田中寿美子君 だからこの前も私言ったんですけれども、労働省の特定化学物質障害予防規則の中では大気の中の塩素化ビフェニールの許容度をつくってあるけれども、水の中とか、それからいろいろ扱う関係についてもきめなければいけないということを申し上げたわけで、こういうことをもっとこまかくやりませんと、労働者に及んでくる影響というのは重大だろうと思います。
 そこで、これはあまり詳しくやっている時間がないので飛ばしますけれども、先ほど須原委員も指摘されましたが、ずいぶん早くからPCBの有害なことについては研究がされておりますね。前回労働省のお答えは、つい最近になってカネミの油症の問題が起こってから初めてわかったというお答えでしたし、厚生省の環境衛生局長もテレビでもそんなに言っているんですね。ところが実際には労働科学研究所で電気機械メーカーから頼まれたのかどうか、研究をしてその調査論文、研究論文が次々と発表されている、まあ昭和二十四年には三つも四つも発表されておりますね。最初はクロールナフタリンの調査から始まっている。で、クロールナフタリンとPCBとはたいへん化学方程式が非常に近いもので、ほとんど同じような構成の物質であると、そういうことから昭和三十年から一年間にわたって労働科学研究所で職業病の調査として研究、調査しておりますね。それは当然労働省もその結果は聞いておられたと思うんですがね、いかがですか。
#187
○政府委員(北川俊夫君) 初めに御指摘の電機工業会が労働科学研究所に依頼調査した点は最近になりましてその事実を私ども知りましたんですが、その時点では確かに発表されたようでございますが、不勉強で把握をいたしておりませんでした。松下電器の調査に関しましてはこれは大阪府立公衆衛生研究所で二十八年から三十八年までの十年間の調査研究でございました。発表になりましたのはたしか昭和四十四年の研究所の報告書の中に載っておったかと思います。で、私たちがPCBの有害性を把握しましたのは、実は三十八年に、きょう来ておりますけれども、本省の労働衛生課長が神奈川に在任中にコンデンサー工場でその障害を見つけた、そのことを労働衛生の学会等にいろいろ報告をしたということで、むしろそういう公にした点ではわれわれが一番早かったような気もするわけでございます。そういうこともございまして、まだ先生からおしかりを受けておそいではないかということがあろうか思いますが、昨年各省に先がけて特化則の中に許容濃度を取り入れたというふうに私たちは対処をしたわけでございます。
#188
○田中寿美子君 松下電器のコンデンサー工場ですね、豊中の、そこのPCB中毒の症状が発見されていたけれども、メーカーがこれを、この毒性をひた隠しに隠してきたと、こういう状況だったわけですね。四十三年にカネミ油症の問題が起こって初めてその毒性が公にされてきたと、
  〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕
こういうことなんで、たいへん手おくれであるということはもう何べん言ってもしようがありませんけれども、過去にPCBを使用した工場、そこで働いていた労働者もこれはやっぱり私は追跡調査する必要があるし、それからさっき申しましたこれも発ガン性のおそれがあるものだと思いますし、あるいは肝臓障害、じん臓障害を起こすおそれがあるものでしょう。そうするとこれはやっぱり健康手帳を与える対象になるのではないかと思うんですがね、これもそういう前向きに処理してくださいますか。
#189
○政府委員(北川俊夫君) PCBにつきましてはたいへんからだに及ぼす影響等が憂慮されているわけでございますけれども、その人体に及ぼす影響が肝臓障害、そういうところで所見が見られるということは聞いておりますが、発ガン性という点につきましてはまだそういう例、あるいは報告はないのではないかと思います。で、まあ発ガン性でなければ健康管理手帳の対象にしないというわけではございませんけれども、労働者が職場のところでPCBを扱いまして障害が出るというのは、これは皮膚障害が主体でございまして、肝臓障害というのはほとんどないようでございます。いま御指摘の松下電器につきましても、大阪の府立公衆衛生研究所が、十年間に皮膚障害がかなり出たけれども、肝臓障害あるいは血液等に所見が見られたというものは全くないとその報告書に明記されております。同研究所が四十三年に松下電器を調査いたしましたときにも皮膚障害さえもすでになかった、すなわち、完全な防護措置をすれば十分職業病としてはPCBは防ぎ得ると、こういうものかと思いますので、いまのところすぐにPCBについて健康管理手帳の対象にするということは考えておりません。
#190
○田中寿美子君 発ガン性というのはちょっとまだわからないと思いますけれども、あのカネミ油症のあの状況を見ますと、肝臓や――最初は皮膚障害ですね、内部にたくさんおできのようなものができて、そして肝臓やじん臓をおかして副じんをおかす、いま、あなたのほうでは、大阪衛生研の研究の結果では内臓に障害を及ぼさないという研究の結果が出たとおっしゃいますけれども、労働科学研究所の野村茂博士の研究では、動物実験で塩化ビフェニールは吸収されて肺、じん、肝及び副じんに変化を及ぼす、出血もあるというふうに書かれておりますね。ですから動物実験でそういうことがあれば人間にもそういうことがあり得るというふうに疑わなければいけないと思います。しかしこういう専門的な問題はもう論争するのはやめますけれども、最後にひとつぜひお伺いしておきたいと思いますのは、PCBは通産省がこれを製造中止するように業界を指導しました。ですから三菱モンサントも鐘淵化学も、これは大もとの製造は一応中止ですね、回収できるものは使うということらしいけれども。そうしますとそれにかわるべき物質として何を使うかということなんで、そのかわるべきものがやっぱり同じような有害な物質と将来判明するというようなことがあったのでは何にもならないわけです。ですから何を使うのか、そしてその物質に関しては徹底的に検査をし、調査をし、動物実験もし、慢性毒性を見なければ――急性毒性だけではだめで、慢性毒性の検査をして安全であるという保証があって初めて使うということにすべきだ。もう過去のPCBの経験によってそういう主張をすべきだ。これは私は労働省も環境庁もその態度を持つべきだと思うのですが、いかがですか。
#191
○政府委員(北川俊夫君) PCBの代替品につきましては、最近たとえばアルキルナフタリンとか、あるいは芳香族炭化水素というものが使われておるようでございまして、使われる前にその毒性の点あるいは残留性の点等につきましてそれぞれ調査をいたしておるようでございますが、PCBに比べますと残留性等も非常に少ないというふうにいわれております。ただ、先生御指摘のように、二度とPCBのあやまちを繰り返さないという意味から、これが代替品につきまして、その残留性あるいは毒性、特に慢性毒性につきまして調査をするということにつきましては、御説のとおりでございまして、現在環境庁を中心に厚生、労働等が協力をいたしまして、その点につきまして作業の着手にかかっておるところでございます。
#192
○田中寿美子君 環境庁いかがですか。
#193
○政府委員(山形操六君) 環境庁におきましては、PCB等の対策に関する推進会議を持ちまして、各関係省庁と連絡を密にいたしまして目下企画調整局が中心にこの対策を進めております。その中に先生ただいま御指摘の代替品の問題、それから急性中毒のみならず、慢性中毒に関する人体の影響ももちろん含めまして、こまかく基礎的な調査、研究をやるようにテーマがのっておりますので、それらを踏まえて、これからその点に関しましては、特に十分に調査、研究が進められるものと思っております。
#194
○田中寿美子君 最後に、いまの代替物資についての調査、研究なしに次々と使っていくということでまた有害な作用が起こってくるというふうなことを繰り返してまいりますと、せっかく新しい労働安全衛生法をつくったり、それから環境基準をつくったりしても何にもならないわけでありますので、思い切って、いま人間のからだや命を守っていくということのためには、労働大臣、あの複写紙に戻ってもいいくらいの決意を持っていただきたい。ノーカーボンペーパーを使わなければならないという、どんどん合理化を進めていくことから人間の命のほうが犠牲にされている。慢性毒性の検査をして安全性が保証されるまでは、これまで安全であったものを使っても私はそのことをむしろ進歩だと考えなければならないというふうに思うのですけれども、その点は労働大臣の考え方はいかがですか。
#195
○国務大臣(塚原俊郎君) 科学は非常に進んでおりますから、昔に戻らないでも、人体に影響がないということになればそれはどんどん――公害のない、人体に損傷を与えないものなら私はいいと思います。しかし、それがかりに事前の調査で少しでもあるというなら、それは当分それを差し控えておいて前の体制のままいくということがやはり基本じゃないでしょうか。
#196
○田中寿美子君 本気ですか。ほんとうにそう思いますか。
#197
○国務大臣(塚原俊郎君) 私は、うその答弁はいたしておりません。
#198
○委員長(中村英男君) 本案に対する質疑は後刻行なうことといたします。
    ―――――――――――――
#199
○委員長(中村英男君) 次に、労働問題に関する調査を議題とし、政府関係特殊法人における給与問題に関する件の調査を行ないます。
 参考人の方には御多忙のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。
 それでは、これより給与問題につきまして各自五分程度の御発言のあと、委員の質問に対しお答え願いたいと存じます。
 まず、寺門参考人にお願いいたします。
#200
○参考人(寺門威彦君) 国立競技場の理事をしております寺門でございます。
 私のほうは国立競技場法によりまして設立されまして、国から出資されました体育施設を使用いたしまして、体育の普及振興をはかるということを目的といたしております。本年度の職員の定数は二百八名の小さい団体でございます。
 当国立競技場の職員の給与改定につきましては、労働組合のほうからは毎年春闘の時期に要求が提示されまして、労使の交渉が持たれておる状況でございます。ところで、私のほうの国立競技場の資本金は全額国の出資によっておるのでございますが、さらに毎年の事業運営のための運営費につきましても、その四割強は国の補助によっているような状態でございます。このような特殊法人としての特殊な性格並びに公共性等からいたしまして、職員の給与の基準を改定するにつきましては、法律によりまして主務大臣の認可を要する、こういうたてまえにこれは法律ではっきりきめられておるのでございます。また、主務大臣の基準改定に際しましての認可の基準といたしましては、以上申しましたような特殊法人の特殊性、公共性にかんがみまして、現在におきましては人事院勧告に基づきまして公務員給与に準拠する、そういう方式がとられておるのでございまして、このことは特殊法人の特殊な性格並びに公共性等からいたしまして、ある程度これはやむを得ない状況であろう、かように考えるのでございます。
 以上のような仕組みでございますので、春闘の時点におきまして、組合から給与改定の要求が出てまいっておりまするが、現状におきましては、主務官庁の認可が得られるという見通しが全く立っておりません。そういうような状態でございますので、実際問題として有額回答をなし得ない、かような状況でございます。なお、本件に関しまして、労働組合の側からは過般、中労委に対しましてあっせん申請が行なわれましたのでございます。しかしながら、以上申しましたような現在の法律上の制約がございまして、現状におきましてあっせんに応ずることにいたしましても実効を期しがたい。かような判断のもとにあっせんに応じ得られなかったような次第でございます。
 なおまた、以上申し上げましたような内示規定がございますために労使の紛争が長期化し、事業運営上支障を生ずるものではないだろうか、かような懸念もございまするが、この点につきましては、紛争の長期化はあくまでこれは避けてまいらなければなりません。したがいまして、特殊法人の特殊性、公共性に基づく現在の法的各種な制約、これのもとにおきましてやむを得ざる事情を組合にも十分に説明いたしまして、労使常識ある解決をはかってまいるようにしたいと、かように努力しておるような次第でございます。
 はなはだ簡単でございますが、以上で。
#201
○委員長(中村英男君) 日本貿易振興会島添参考人。
#202
○参考人(島添達夫君) 日本貿易振興会の島添でございます。
 日本貿易振興会は、日本貿易振興会法によりまして設立されております政府全額出資の特殊法人でございまして、現在職員数は五百八十四名でございます。給与の平均単価は、管理職を含めました全員が約八万五千円、組合員ベースといいますか、一般職員ベースは、約四百八十名でございますが、ベースは約七万五千円ということになっております。私どものほうの給与につきましては、ただいま寺門さんからお話がありましたように、その基準の決定及び変更につきましては、日本貿易振興会法によりまして通産大臣の承認を要することになっております。また通産大臣は、その承認を行なうことにつきまして大蔵大臣と協議するということになっております。実際の給与基準の変更、すなわちベースアップにつきましては、国家公務員の給与について人事院勧告が行なわれました後に、それに準じた改善につきまして、大蔵省から監督官庁を通じて、監督官庁が大蔵省に協議をいたしました際に、大蔵省として認めることができるという範囲を示されるわけでございます。それに基づきましてベースアップを行なうということになっておりまして、これがいわゆる内示制度でございます。一方、労働組合のほうといたしましては、労働三法の適用を受けておりますので、労働条件は労使の自主的な協議によってきめられるべきで、大蔵省が行ないます内示はそれに対する不当な干渉であり、労働法の精神に反するものとして、春闘段階での有額回答を強く要求しておるわけでございます。これにつきましては、本会は、現行の制度は特殊法人が公共性を持ち、かつ給与等の財源を国の補助金に依存しておりますところからとられている制度であろうと考えておるわけでございますが、問題は労働三法の適用と特殊法人の公共性との調整の問題であろうと思われます。この問題につきまして、さきに労働組合が中労委にあっせんの申請をいたしたわけでございますが、われわれといたしましては、これは制度の問題でございまして、中労委の場で解決をする問題ではないと感じましたので、あっせんはお断わりした次第でございます。ただ本会といたしましては、公共性がある特殊法人の立場から申しましても、毎年この問題につきまして労使の対決という事態に相なりまして争議が繰り返されておるわけでございます。このことは、サービス機関といたしましてのジェトロといたしましても、非常に遺憾に思っておるわけでございまして、われわれといたしましても、この解決のために種々努力をいたしておるわけでございますが、現状におきましては、特殊法人の全体の問題でございますので、当会のみでの解決をはかるということがなかなか困難な実情にあるというわけでございます。
 以上、簡単でございますが、現状でございます。
#203
○委員長(中村英男君) 日本科学技術情報センター上田参考人。
#204
○参考人(上田幸雄君) 日本科学技術情報センター理事の上田でございます。
 日本科学技術情報センターは、科学技術の振興を目的にいたしまして、昭和三十二年に設立されました特殊法人でございます。予算規模の約半数を出資金及び補助金を受けて、現在設立以来約十五年になっておりまして、職員定数は約三百三十名でございます。
 当センターにおきます賃金の改定交渉について申し述べますと、四十六年度の賃金改定につきましては四十七年の三月に妥結いたしました。四十七年度につきましては、三月二十一日に当情報センターと科学技術産業労働組合協議会、いわゆる科労協とが統一いたしまして要求がございましたが、これに関しましては、報情センターの組合は、去る五月六日に中央労働委員会に対しあっせんを申請いたしましたけれども、当センターといたしましては、現在の賃金決定機構の中ではこれに応ずることができないということで、あっせんをお断わりいたしました。
 特殊法人全体について申し上げますと、賃金紛争が相当長期化しておるというのは一般的傾向でございまして、当センターもその例外ではございませんが、当方といたしましては、ただいたずらに手をこまねいているということではなくて、やはり早期妥結には最大の努力をはらっておる現状でございます。しかしながら、御承知のように、特殊法人には、その性格からいたしまして種々の制約があるということをひとつ御了承をいただきたいと思います。まずその第一は、特殊法人の性格からきますところの政府の財政上の制約でございます。これは、情報センターが特殊法人であります以上、この制約は当然のことかと思われます。
 次に、特殊法人の職員給与につきまして。これは第一に申し上げましたこととも関連いたしますけれども、国家公務員に準じた取り扱いがなされておるということでございますが、これにつきましても、特殊法人の性格からすれば当然のことだというふうに考えます。したがいまして、国家公務員のベースアップが人事院勧告に基づいて行なわれるという前提では、情報センターの職員の賃金改定の基準及びこれに伴うところの財政上の措置の見通し等が、この人事院勧告以降に持ち越されるというのは、現在ではやむを得ないというふうに考えます。
 以上のとおりでございますが、情報センターにおきますところの賃金改定交渉が長引いた最大の原因は、この特殊法人全般の賃金決定機構と申しますか、賃金決定のあり方、これにあると思います。この点につきましては、政府におかれましても、年々いわゆる内示の時期を早めるというようなことで種々努力が行なわれておりますし、センターといたしましても、これらを踏まえまして、今後さらに早期妥結に努力をいたしたいと、こういうふうに考えております。
#205
○委員長(中村英男君) どうもありがとうございました。
 それでは、質疑のある方は御発言を願います。
#206
○大橋和孝君 いまいろいろ御説明を聞きましたが、まずひとつ総括的にお話を承りたいと思います。
 先ほど説明もありましたように、この特殊法人の賃金水準は毎年低下しておる。このことは政府も御存じだと思いますけれども、たとえて言うならば、三十三年の三月五日、これは衆議院の科学技術対策委員会で、日本原子力研究所は公務員の二五%アップにするべきだと、あるいはまた三十九年の六月二十六日に参議院の農林水産委員会では、特殊法人は公務員よりは一五ないし二〇%アップするんだと、あるいはまた四十四年の五月十四日には、この特殊法人は公務員よりは一〇ないし一五アップすべきだと、こういうようなことが言われて、認められておるわけでありますけれども、ところが、これは参考人にもお伺いしたいところでありますが、これを参考人の方々は知っておられるのかどうか。知っておられるなら、どういうような改善策をしておられるのか、こういう点も少しひとつ第一番目に伺っておきたいと思います。
#207
○参考人(寺門威彦君) 毎年の給与改定につきましては、現在におきましては人事院勧告に基づきまして国家公務員の給与のアップ率をそのまま適用いたされまして、そのワク内での改定を実施すると、そういう仕組みでございます。したがいまして内示の額一ぱいに私どもは改定をいたしておりまして、そういう見地からいたしますると類似の団体間とも十分均衡をはかっておりますし、総体的に非常に低下しておるというような状況でもないのではないか。その辺は極力さようなことのないように努力をしておるつもりでございます。
#208
○参考人(島添達夫君) ただいま御指摘のございました点は、いわゆる内示が国家公務員の平均のアップ率で予算のワクをつくりまして、それに基づきましてわれわれのほうで労使間で協議をいたしまして、給与をきめるということになっておりまして、事実その点につきましては各特殊法人の中におきまして平均年齢の差、あるいは人員構成の差というものがそれぞれあるわけでございますが、昨年でまいりますと、公務員の三十九歳の場合のアップ率を平均ベースにかけまして、それを財源ワクをつくりまして、それを配分いたしますわけでございます。したがいまして、その年々、あるいは各特殊法人によりまして年齢構成、あるいは人員の分布等によりまして差が出てくるわけでございますが、確かにその点におきましてはジェトロの場合は平均年齢が現在三十四歳でございますので、公務員の場合のアップ率に対して低くなっておる現状でございます。この点はわれわれとしても認めざるを得ないわけでございますが、何ぶん内示の規制というのがございますので、そのワク内におきましてできるだけ妥当な配分をはかるということで努力いたしておるわけでございますが、そういう点は今後の問題点であろうかと考えておるわけでございます。
#209
○参考人(上田幸雄君) いまジェトロの島添参考人からも申し上げましたのと同じ事情でございまして、センターの場合は平均年齢約三十二歳ということでございまして、現在の一律内示、いわゆる一律内示という制度のもとでは総体的に年齢差によるところのギャップというものは出ておりません。この点については、やはり問題もあろうかと思いますが、いまの制度の状況としては特に一法人の云々という問題ではちょっと律し切れない問題であろうかと思います。なお、センターの場合は内示のワクは限度一ぱい使って待遇をしております。
#210
○大橋和孝君 先ほども国際会議所あたりはかなり収益が上がってどんどん上向きになっているのにかかわらず、あなたのいまの答弁では明確ではなかったけれども、時間がありませんから私それみんなこまかしいことでお話をしようということは差し控えますけれども、グラフ的にずっと調べましてもいまのような制度でそのまま押していくならば私はだんだんとその差が縮小されて、もうしばらくこれが続けばむしろ公務員以下になっちゃうんだ、国家公務員以下になっちゃうんだという、その傾向も皆さんもう十分御存じだと思います。それをどうこうというこまかしい議論を詰めなくても十分御案内のことだと思いますが、いろんな意味から言いますとただ各特殊法人の中でこういう問題をとらえないで、いままでのしきたりのままで押していけばもうそういうことになることがわかりますし、かなり地方からは有能な人を集めるからそういうふうな賃金も一〇%ないし二〇%の上を保たなければならないという話がずっと昔に行なわれておるわけでありますから、そういうことから考えますと、いまあなた方がおやりになっている事柄は非常に何といいますか、無責任だとわれわれから言えば考えられるわけでありますけれども、そういう点についてはもう少し詰めてやはりあなた方は労働者を働かすための命令を出してああせい、こうせい、いろいろと努力しておられるわけであります。あとからその特殊な点についてはお尋ねしたいと思いますけれども、そういうふうで、人事管理あるいはまた業務の命令なりはかなりきびしくお出しになって、――もっともそれで能率もあがってくることでありましょうが、そういうことをしながら、やはり賃金の面では、こういう規則だ、ああいう規則だとしいって規則をたてにしていつまでもおいておくということは、これは非常に大きな問題であろうと思いますので、こういうような改善策というものを個々にもう少し積極的にしてもらうほうが、これはこういう法人の使命を達成する上において特に必要ではないか。そうでなければこの法人のあり方ということが根本的に問題になるんじゃないか、こういうふうに私どもは委員会の中では受けとめたいと思います。ですからこの賃金の水準を毎年低下していくのを認めながら漫然とおいて、一方では仕事をする上にはああだ、こうだと指導をしていかれる。もちろんそれは指導しなければなりませんが、そういうふうにして人事管理、人事権をもってやっていかれるならば、裏づけとして賃金もいままで私が申したようなぐあいに委員会においてもそういうふうにしなさい、したほうが妥当でありますということも認められておるわけでありますから、やはり賃金水準が年々低下することに対してじっと見ておるという手はないと思います。こういうことについてはひとつ私は考えてもらいたいと思いますが、いかがでございますか。一言だけ、もう時間がありませんから申し上げて、あとからまたお伺いしたいと思います。この点は、次の質問をしますから、そのとき同時に答えてください。
 それから第二の質問は、春闘で組合側は労働委員会へ賃上げのあっせん申請をしておりますけれども、参考人のほうはこれを拒否しておいでになる。先ほどお話になりましたが、参考人がこういうのを拒否される態度は労働委員会の機能を否定するものでありまして、紛争の平和的な解決と正常な労使関係の確立を旨とするところの労働関係調整法の本旨にもとると私は思うのでありますが、どういう法的な根拠でもってこういうものを拒否されるのか。またその辺のところを一言ずつ明快に御答弁ください。
#211
○参考人(寺門威彦君) 初めの賃金水準低下の防止ということでございますが、先ほども申し上げましたように、公務員のアップ率に準拠いたしまして上げておる。ただ問題は、公務員との年齢差が個々にございまして、その辺に確かに若干の問題がある。この点につきましては、毎年私どもも大蔵省などにも十分主張いたしまして極力そういう点の改善をはかっていただくように要望いたしておるような次第でございます。
 それから、いま春闘でのあっせん申請に対しまして拒否いたしましたという、その事情につきましては、先ほども簡単に御説明申し上げましたが、現在の法律上の仕組みが確かに一方におきまして労働三法が適用されておるのでございますが、他面におきまして特殊法人の設置に関する法律におきまして、予算につきましては全部監督官庁の許認可を要する、それから財源的にも全額出資並びに運営費につきましても四割以上は国の補助を受けておる。また給与基準の変更につきましても、主務大臣の認可が必要である。その場合に認可の基準といたしまして、政府のとっております方針が人事院勧告による公務員のアップ率に準拠する、そのワクで認可をしていく、こういうような認可の基準でございますので、これがまだ出ない現在の段階におきましては、認可を受けられる見通しが全くございません。そういう見地からいたしまして、はなはだ遺憾でございますが、有額回答の方途がございません。そういうような実情でございます。
#212
○参考人(島添達夫君) ただいまの御質問でございますが、賃金水準が逐年低下してまいります点は、先ほど申し上げましたような理由に基づくものでございますが、今後とも私どもといたしましては、事態は十分認識しておりますので、関係当局に対しましてこの点につきましての改善を積極的に申し出てお願いしていく所存でございます。
 それから中労委の関係でございますが、これはもちろん労働法のたてまえから申しますと、自主交渉によって労使の関係は解決すべきでありますし、また場合によっては中労委のごあっせんを受けて解決するということもあるわけでございますが、われわれの立場から申しますと、これに有額回答を出しますための予算の使用が現段階では認められておりませんので、有額回答を出して実効のある解決をはかるということが困難でございますので、あっせんを受けましてもこれに対するわれわれの側のといいますか、有額回答を出して解決するという方策がございませんので、やむを得ずあっせんを御辞退申し上げた次第でございます。
#213
○参考人(上田幸雄君) 特殊法人の財政もしくは予算という仕組みは大同小異でございますが、それについて特に私からつけ加えることはございませんが、第一の給与の年々低下の問題につきましては、先ほど冒頭にも申し上げましたように、いわゆる年齢差の問題が非常にクローズアップされております。これがすべてであるとは申し上げませんですが、こういったあからさまな事実に対しては今後関係当局に対して実情を開陳いたしまして、要望いたしたい、こういうように考えます。
 それから中央労働委員会の問題につきましては、全くセンターも国立競技場、もしくはジェトロと同じでございまして、現在の予算制度の中では有額回答を行ない得る仕組みになっておりませんので、あっせんは残念ながらお断わりしたという次第でございます。
#214
○大橋和孝君 有額回答をしなかったのであっせんを断わるという理由が、ちょっと議論が飛躍していると思うんですけれども、何であっせんをしながらその方向に持っていくように努力をしないのか、少なくともあなたのほうではいまおっしゃっているのはやはり労働三法としてはそういうことを認めていると言いながら、何でそれに協力をしないのか、それはもしあなたのほうでやっても効果がないと、こういうようなためにやらないというのがいまの御回答のように思いますけれども、やはりこれは労使関係を調整する上にはそうしなければならなようになっているのだし、それを知っておりながらやらないということはこれは非常に私は問題だと、このことはまた、そういうことをして、あっせんをうまくそういう中労委を使ってむしろ積極的にあなたのほうがされて、そして労使の紛争を繰り返さないようにするということがいわゆる特殊法人の持つところのいろんなサービスの面からもあるいはまた、国民から期待されておるところのいろんな重要な使命からいいましてもやるべきことではないでしょうか。それをやらずにおるということはあなた方はむしろほんとうにその使命を達成することに熱意がないのだと、私どもは解釈しなければならぬと思うのでありますが、そう解釈してもいいんですか。そういうようなことで考えてみますと、あなた方のいまこうした中労委のあっせん問題を非常に軽くけっておられるというということは、非常に大きな意味を持つと思うんですね。あなた方がこういうような、たとえて申し上げるわけですが、国立競技場の問題だって、あのスケート場なんか何千万円という損失になっているでしょう。それをあえてストライキを打たせて、そういうことをやらせながら大きな欠損を抱いて、そしてわずかの当事者能力を発揮して、まあ有額回答をするかしないか、あるいは中労委に提起をしてその問題をうまくやるかやらないかということによってその何千万円という損失が防げるじゃありませんか。あなた方の態度、あなた方のやり方が悪いことによってそんな大きなマイナスになっておるじゃないですか。そういうデータはちゃんと出ているわけですね。そうなればあなた方がそういうやり方が間違っているために大きな損害を与えているわけでありますから、これは国民の側に対しましても、あなた方のやり方に対してはきびしく批判されることではないかと思うのでありますが、そういう点を含めまして私はこの参考人の方々に、どうかひとつ、せっかくあるところの労使のあっせんの場をあなた方のほうから積極的に使って、そして労働組合のほうとよく話し合いをする、こういう原則に立たれるのが当然ではないかというふうに思います。この例をたくさんあげよとおっしゃれば私もたくさん例を持っております。こういうことでいま一例をあげましたが、何千万円という損失を見越しながらも、なぜ紛争を続けさせなければならないか、こういう点からいったら、もっとまじめにこういう問題と取り組むべきではないか。どうですか、この点。
#215
○参考人(寺門威彦君) おことばを返すようでございますが、先ほど申し上げましたような法的な制約がございまして、あっせんを受けましても、事実事態を解決するという見通しが全くございません現状におきまして、額を出し得ない、具体的な回答がなされない、そういう状態でございますので、まことにこれは遺憾でございますが、現在の仕組みでは実効のあるあっせんに応じていくような事情にない、非常に残念ですがそう考える次第でございます。その辺労働組合ともひとつ十分話し合いをいたしまして、現在の仕組み上やむを得ない、そういう制約の面につきましては組合のほうでもできるだけひとつ実情を認識していただくということにさらに一そうひとつ努力してまいりたい、かように考えております。
#216
○大橋和孝君 それは私はあとから一ぺん大臣のほうからも話を聞きたいと思いますが、これは同じような特殊法人で労働福祉事業団なんかではこの紛争解決に努力してこういうことをやっておりますよ。同じようにほかにそういう例があります。それからまた効果がないとか、実効がないとか言っておりますけれども、これは実効があるかないかを判定するのがこの委員会ではないですか。どうしていけないかということをするところなんであるから、それを初めからそういうふうに否定してやらないということは、私は問題だというわけですよ。むしろあなた方は先へ進んで、どういう点で、どこが悪いかというようなことも意見を出させることが必要じゃないですか。これは各参考人がおっしゃっておるような考え方は、非常にこういう問題に対して不まじめというか、非常に考え方がかたくなというか、私ども理解のできない点がありますが、これは労働省の側から見ていただいて、やはりこういうふうな紛争をして、紛争が毎年毎年長く続いて、またいま申し上げたようなぐあいに大きな欠損も生んでいるわけですね。何千万円も損をしながら、わずかなこと、少々の事柄をやるかやらないかということで大損をしておることもあるし、それが国民に対してどれほど不便を与え、またどれほどいろいろなところで支障になっているか、国民からまた批判されているかということを考えますと、これは私は重大な問題だと思うのですね。労働大臣ひとつ御所見を、特殊法人のあり方を……。もう少しこういう問題はもっと前向きにやってもらうべきじゃないかと思いますから、ひとつ御注意の意味を含めてお考えを聞いておきたいと思います。
#217
○国務大臣(塚原俊郎君) 政府関係特殊法人は参考人がそれぞれ申し上げておるように、公共性、特殊性というもの、これは否定することはできません。交付金、補助金等も出されておりまするから、ただいま問題になっておる賃金問題等を含めて、事業運営について制約を受けるということは今日の段階ではやむを得ないことであろうと私は考えております。しからば労働大臣として何をなし得るかということでありまするが、労働大臣としては、もちろん労働三法の保護を受けておりまするし、労働組合法に基づいて組合がどうあるべきか、また団体交渉はどうあるかということについては、われわれは重大関心を持っておるわけであります。それからまた私自身、労働省の関係の法人につきましては、これはもちろん私との関係が非常に深うございます。しかし、労働大臣に就任いたしまして、この問題が長い間非常に問題を残しておるというようなことも聞いておりまするし、私も前々から承知をいたしておりました。また各委員会、衆議院の社労等においても、官房長官とともどもそういった点についての御質問も受けたようなわけで、長い間同じような事態が繰り返されておるというようなことについては非常に困った事態である。しかし今日の段階では、内示の時期を早める、あるいはそれに弾力性を持たせるという従来の努力をさらに積み重ねていくということが今日の段階で考えられる問題ではなかろうか。しかし各方面からの御意見もいま承っておるところであります。
#218
○大橋和孝君 中労委の石井会長が、この数年来この問題をとらえられまして、特殊法人の賃上げ、あるいは調停ないしあっせんがいつでも使用者側のほうから拒否されておると、いままでおっしゃっておるようであります。そのとおりでありますが、これでは中労委が特殊法人の紛争解決に役立てないということを憂慮されて近く政府に進言をされると言っておられるわけでありますが、こういうことに対しまして、やはり政府は、おそらく中労委のこうした問題に対して取り組んでもらえるだろうと思うのでありますが、きょうはちょっと政府のほうで、総理府のほうから来てもらっていないので、十分な政府のほうの意見をただしたいと思いますが、ただしきれないわけですけれども、そういう意味で、大臣のほうで、こういうような問題が起こっておることに対して、どうかひとつ積極的に向いて、私は、各特殊法人の理事者側の方々に、――こういう問題もいま石井会長も考えておるという話も聞いておりますから、どうかひとつ前向きに働いていただいて、そして、ほんとうに中労委の機能をもっと十分に生かす方向で話し合いながら、この紛争を解決の方向に持っていく、こんなふうにひとつ努力していただきたいと思うのです。
 特に、そこでもう一つ伺っておきたいのは、この四月の十六日でしたか、衆議院の社労委員会で、大臣のほうからいろいろ前向きの御答弁をいただいているようでございます。特に、可及的すみやかに本国会中の会期中ぐらいにでも、この特殊法人の賃金紛争の解決の場について政府の見解を示すということもお約束いただいたように聞いておりますけれども、どうぞひとつ、いまのようなぐあいで、石井会長のほうからも、そういうふうなことがあるでありましょうし、またこの紛争というものが、先ほど私が申したように、非常に毎年、行事のように相当長く続けられて、しかも一つも前向きをしないというのは、いかにも日進月歩進んでおるところのいまの経済状態からも、あるいはまたいろいろな状態から考えてみまして、こういうような状態で置いておいてはいけない。これに対して積極的にどうしても解決の道を続けてもらわなければいけない、こういう意味で、私はこの間の大臣の御所見というのは非常にりっぱなものだというふうに思います。けれども、あす一日で期日も一応しまいになってまいりますので、どうぞひとつそこのところはもう少し積極的に政府も督励をしていただいて、そして、このような紛争が続かないように、もう少しいわゆるこの紛争の解決の場を何かうまくつくっていただくように労働省のほうでは御指導を賜わりたいと思います。特にいま参考人もおいでくださっていますけれども、えらいかたい姿勢ではなくて、国民の感情からも、こういう問題に対しては積極的なひとつ方向でやっていただかなければどうしてもいけないと思います。どうぞひとつ理事者のほうとしても、特にその方面のことを考えていただきたい、こういうことをひとつつけ加えてお願いしたいと思います。大臣のひとつ前向きな御所見を賜わって、各理事者三人の代表の方においで願っているが、どうかひとつそういう方々も真剣にやってもらうし、政府のほうからもそういうようにしてもらうということで考えて、解決の場を見出すように努力していただきたい、こういうように思います。
#219
○国務大臣(塚原俊郎君) 先ほどもちょっと触れましたが、内閣官房長官ともどもこの問題について御質問をちょうだいいたし、また春闘、いわゆる春闘のさなかであったと思いますが、労働組合の幹部の方と政労協の方がおいでになって、つぶさにお話も私承りました。各委員会においても御質問もいただいておるし、私が出ない委員会等においてもこの問題が取り上げられているというように聞いております。衆議院の社労で後藤委員の御質問に対しまして、また大原委員の関連質問に対しまして、私、いま大橋委員御指摘のような答弁もいたしましたが、さて、これは百十一あるわけですね。内容が非常に複雑であり、それぞれの省にまたがっており、政府としても大蔵省とか、相談するところがだいぶあります。ただいま会期の問題に触れましたけれども、各方面からの事情の聴取というか、今日までの経過等について、私も一生懸命いま勉強している最中でございまして、非常に複雑で、また困難な問題であるという認識は私は持っております。しかし、だからといって、そのままであってはいけないのであって、よくひとつ、いま大橋委員の御意見もありましたので検討させていただきたいと思います。
#220
○小平芳平君 関連して。労政局長に伺いますが、労政局長、長年労働省にいまして、そういうように賃金紛争が起きた。で、労働組合があっせんを申請する。そこで、かたくなに経営者が、その根本的解決にならないとか、事情はほかにあるんだと言って、あっせんに入ろうとしないものに対して、とにかくあっせんに入るようにということを労働省は指導してきたわけでございますか。それは実際の紛争自体は労働委員会で事情聴取し、あっせん案を出し解決に向かうということが普通ですけれども、労働省としては労働行政、特に労政局の行政の大きな一つの柱として、そういうような紛争が生じた組合が申請をする。それをかたくなに経営者が拒否する。そういう場合は労働委員会の場をむしろ利用して話し合いの糸口をつかもう。合理的な解決を見出そう。このように指導してきたのではないですか。
#221
○政府委員(石黒拓爾君) 労働争議の場合、労使双方、労使のいずれか一方からあっせんの申請があって、相手方がそれを断わるというようなことは間々あることでございます。一般的に申しますと、そういう場合、労働委員会の場を利用してくださることが非常に望ましいと存じますけれども、政府関係特殊法人のような特殊な事情にある場合に、一律にそれを私のほうで指導するというようなこともできかねるというのが実情でございまして、ケース・バイ・ケースというように考えざるを得ないのじゃないかと思います。
#222
○小平芳平君 それはケース・バイ・ケースでありますけれども、労働大臣の先ほどのお話だと、労働省がいろいろ調べるような印象を受けますけれども、労働省がいろいろ調べていることもそれはありましょうけれども、実際の紛争解決は、そのために労働委員会があるのですから、労働委員会に紛争解決はお願いをする。それはケース・バイ・ケースで、政府関係という特別な立場にありますが、現実に起きている紛争、しかも労働三法が適用されている。それをただ手をこまねいて見ているという手はないのじゃないかと思うのです。
#223
○政府委員(石黒拓爾君) 御指摘の点はまことにそのとおりでございますけれども、政府関係特殊法人におきましては、一面において、労働三法の適用を受けていると同時に、その事業団等によりまして、予算あるいは給与準則等につきましてきびしい規制を受けておる。しかも実態の財政上におきましても、補助金、交付金というようなものがなければ運営できないというのが非常に多いわけでございます。そういうような事情にあります場合に、そういう事情に基づいて、一般の原則に従い得ない、したがって人事院勧告に準拠するというのが給与の原則であるという立場に立っております場合に、何が何でも中労委に持っていけといいましても、中労委もこれまたなかなか扱いが困るのじゃなかろうかというふうに考えますので、この場合、私ども中労委のあっせんにぜひ応じてもらいたいというふうに申し上げることもいかがかと存じております。
#224
○大橋和孝君 いま、小平さんからも質問がありましたが、いわゆる特殊法人の中ではやっているところがあるんですね、先ほど私が申したように。したがって、やはりここらでもう紛争さしておるのを見ているよりは、やはりそうしたものをむしろ積極的に利用して、そして解決の糸口をさがしていく、そういうふうなまじめな理事者側の配慮というものが必要であろうと思いますから、私は、労政局長のほうとしては、もっと積極的な指導がなぜできないのか、伺いたいと思います。
#225
○政府委員(石黒拓爾君) 政府関係特殊法人の中でも、たとえば雇用促進事業団は協約に基づいてあっせんに応ずる義務があるということで、一応あっせんに応じた形でございますが、話の中身につきましては、やはり同じようなことでございます。他の事業団等とともにあっせん不成立ということに相なった次第でございまして、今日のこういうたてまえがございます以上、なかなかそれ以上に進展することはむずかしいのじゃないかと思います。
#226
○大橋和孝君 局長さん、ことばを返すようですけれども、そういうような段階であるとするならば、先ほど大臣がお話になりましたように、何か全体の特殊法人に対して、もう少し何かの方法を考えて、毎年毎年紛争を起こさして、しかも理事者側はいままで中労委という労働法の中でも、ほんとうに仲裁的な、何と申しますか、片寄らないいろいろな意見を出そうとしておる、それもけってしまうのだ、そしてそれはやってみてもできないから云々といって、やはり続くのはやっぱり紛争が続いているわけですね。先ほど話したように、紛争が続けばいろいろなところに迷惑をかけておる、こういう状態なんでありますから、やはりこれはひとつ、だれかが責任をとって、あれはこちらでもケース・バイ・ケースで非常にむずかしい、わかりますけれども、やはりこれはひとつ労働大臣なり、労働大臣を補佐されている労政局長が中心になって、政府各機関の、ことに総理府だろうと思うんでありますけれども、そういうふうないろいろな政府の各省にまたがって、むずかしいところは全部それを解消して何とか方法を見つけてもらわないと、数年来ずっと続くわけですね、こういうふうなことが。こういうことに対して、ひとつ積極的に今度こそやろう、ちょうどこの間の答弁でも今会期中に何とかしてやろうという非常に積極的ないいことばが出て、私はあのものを読んで非常に感激しておったんですが、どうぞひとつむずかしい事情だから、そう一ぺんにできないことは、よく大臣の気持ちはわかります。わかりますけれども、もっと労政局長もひとつ一緒になっていただいて、各政府機関が、一緒になって、そして理事者側も苦労していらっしゃるでしょうから、理事者側ももっと前向きに動けるような方法を、ここでひとつがちっとやるということだけは、ひとつ御決意のほどを聞いておきたいと思います。まあ、大臣一人でやるというわけにもいかぬでしょうけれども、ひとつ労働者を守るという意味では、やはり労働省が主軸であります。先ほどからいろいろな議論を聞いておりましてもそうでございますから、どうぞ、そういう立場で各大臣なりあるいはまた各省なり、あるいはまたそのつどその部に当たっておられる大蔵省なり、いろいろなところへひとつ働きかけて、そういうつまらないマイナスの面を十分消していけるようなすべての処置をとる、私は、特にきょう参考人に来ていただいてお願いしたいことは、これはほんとうに労働者を使っている責任者なわけです。一方で使うのは、いろんなことをして、超勤もやらせ、いろいろなこと、――あとからお話は承りますけれども、いろんな督励をして働かせる、賃金の場面で払う段になったら、私は能力がありませんとか、それは公務員にならわなければなりませんでは、法律なり何なりはあるにしても、私はそこのところでもう少し当事者的な能力を働かさぬ限り、こういうようなまずい面は続くわけなんです。どうかひとつ、そこのところをお願いしたいと思いますが、どうですか。
#227
○国務大臣(塚原俊郎君) たいへん複雑困難な問題であります。関係するところも非常に多いので、先ほど申しましたように、ただいま鋭意調べておりますもので、ひとつ検討さしていただきます。
#228
○高山恒雄君 参考人の方に聞きたいのですがね、先ほど賃金の格差の問題がちょっと出ましたが、採用条件は国家公務員と一緒ですか。採用のときの条件は一緒ですか、国家公務員と。この点をお聞きしたい。
#229
○参考人(寺門威彦君) 初任給は国家公務員の理工系の上級の甲ですね、国家公務員の最高の額ですが、それをここに資料がございませんが、昨年の場合で四百円ばかり上回っておるはずでございます。ですから、私どものほうの事務系の大学卒を採用する場合の初任給が国家公務員の理工系の上級の甲ですね、ですから、国家公務員の一番高いレベルをさらに四百円以上、上回っておるはずでございます。ですから、それだけ初任給では勉強している。できるだけいい人がとれるような状態をやっておるつもりでございます。
#230
○高山恒雄君 人事院の勧告で大学卒あるいは高等学校卒業の採用は最低を繰り上げましたね、三年前。そういう採用をしていますか。人事院ではそういうふうに提案をしておりますよ。その点はどうですか。高等学校卒業で初任給の採用条件が変わってきております。現在もそうなっていますか。あんたのほうもそうなっていますか。――それで、人事院の勧告に準ずるということは、これは全くそういうふうになっておるんだから、無理からぬと私は思うのですよ。ただし、先ほども言われるように、こうした特殊法人の労働者に対する団体交渉の場における皆さんの姿勢の問題が問題になろうと思うのですよ。実際に賃金に格差があるのか、年齢的に見てどうなのか、たとえば高卒で入った人が二十八歳になって結婚ができるような賃金に事実上なっておるのか、なっていないのか、そういう論争は内部でしておられると思うのだが、それもなしに人事院の勧告に準ずるということだけをたてにとって事前に内示してもらうという方法もとらないで、それでは労働問題なんていうのはこれは解決つきませんよ、実際問題として。やっぱり労働者との団体交渉の中では格差の点は認める、したがって今度の人事院の勧告に準ずるにしても、これとこれとこれはどうしても是正してもらわなければいかぬ、そうしなければ労働者を使うことはできないのだという姿勢が私は理事長にあってしかるべきだと思うのですよ。そういう交渉もなしに、ただ人事院が最低を出したからそれに準ずるのだというような行き方の姿勢、これは改めるべきだ。
 それからもう一つ私申し上げたいのは、あっせんの例が先ほども出ましたが、あっせんはそれは皆さん方が、労働者側はあっせんを提示しても管理者の皆さん方が賛成されなければあっせんをすることはできないんですよ。それと同様に、あっせん委員が、かりに労働者が数字を示します。そのときに経営者がこれ以上出した場合には、これは人事院の勧告に準ずるということの一つの規定があるから、私のほうではそれを内示してもらっては困ると、ここまでの態度はとれるはずですよ。で、調停じゃないんだから、あっせんですから。あっせんは双方が納得して数字が出るはずですよ。それすら拒否されておって、一体しからばその特殊法人の労働者はどこで是正をしてもらうのか。矛盾点を改革するのか。する場がないと思うんですね。これはやっぱり管理者の何としても是正をする一つの努力、これはしていただくと、それでできないときにはさっき労働大臣がおっしゃったように労働省とも話をして、大蔵省に話をして早期解決をつける方向に努力をする、こういうことが今日の特殊法人には、日本じゃ行なわれてないですよ。ここに問題があると私は思うんです。あっせんはあくまでも労使が納得をしなきゃ数字は出せない。初めて使用者としても労働者としても、これでは納得いかぬといった場合は、調停に切りかえるなら別ですが、切りかえない限りそれは出すわけにはいかぬでしょう。けれども、あっせん過程においてどういう矛盾が出てきたと、この矛盾はどんなことがあっても大蔵省に話をし、労働大臣に話をして、そうして労働者の老後の現状の生活を維持改善してやらなきゃいかぬと、この熱意があるかないかですよ。これをやらなけりゃ、それは全く管理者とは言えないと思うんですね。だから、そういう点までは、私は特殊法人といえども、その管理者が努力をしてやるべきだと、そうして人事院の勧告というものを全然無視するわけにはいかぬでしょう。しかし、場合によっちゃ、交渉のいかんによっては政府が内示するなら、この際やむを得ないといえば、それ以上のものを出しても差しつかえないわけでしょう。大蔵省なり労働省なりが、そういう努力をしていただくならば、上がる場合もあり得ると、そこまではくぎを打ってないわけですから。この点が一つ足らぬのじゃないかと思いますが、どうですか。管理者の方にひとつ……。
#231
○参考人(寺門威彦君) やはりどうも現在の設置の法的制約がございまして……
#232
○高山恒雄君 制約はわかっているんです私は。知っていますよ、そんなことは。
#233
○参考人(寺門威彦君) まあ、われわれとしても……
#234
○高山恒雄君 その努力をやったことがあるんですか、ないんですか。
#235
○参考人(寺門威彦君) 現実的に具体的な数字を出していくことが不可能、そういう事情でございまするので、いまの法的な制約の仕組みの中ではまあせいぜい最善は尽くして努力はいたしますが、中労委の場でのあっせんをお願いいたしましても、現実に先ほど雇用促進事業団があっせんを受けましたが、中身はあっせん不成立に終わったというお話がございましたが、やはりそういうような状況でございますので、いかんとも方法がないんじゃないか、残念ながらそのように考えております。
#236
○高山恒雄君 それは不調に終わったでしょうよ。それは管理者が聞かないから不調に終わるのは当然のことですわ。管理者が不調に持っていかざるを得ないということは人事院の勧告に準じなくちゃならぬという一つの規定があるのでやむを得ない措置なんでしょうよ、それは。しかし、内容の検討は中労委という場において相当の論争がされる。国立競技場の問題、日本貿易振興会の問題、労働者は、一般から見ればほんとうに低位にあるんだ、こういう事態にあるんだということは、むしろ中労委の判定が出ますよ。これは理事者として大いに政府に対して進言をしてもらわにゃいかぬということを言うかもしれませんわ。しかし、数字的なものを出してもらっちゃあ困る、これは先ほど言うように、人事院の勧告があるから、出してもらっては困ると言うことは言えると思うんですよ。私はそこまではやっぱり道を開いて、理事者としては実際の管理を引き受けておるのだからやってやるべきだ、そうしなけりゃ労働者は浮かばれませんよ。どうですか、労働大臣。先ほどの熱意のあるおことばを承っておりますから、私はこれ以上言う必要はないと思いますが、その程度ぐらいは、幾ら一つの縛りがあっても、特殊法人にしても、やっぱり理事者、いわゆる管理者としての責任のある態度をとり、かつまた労働省もそれに対して全力を尽くして、もし理事者でできない点があるならこれをカバーしてやる、そして労働条件の改善をしてやる。こういう行き方に改めるべきだという考え方を持つので、先ほど大臣のおっしゃるように、千何ぼあるんですからね。
#237
○国務大臣(塚原俊郎君) 百幾らです。
#238
○高山恒雄君 この点をひとつ私は大臣のその考え方をお聞きしたいですよ、私の提案が悪いかどうかですね。いやそれは困るとおっしゃるなら、どういう点が悪いか……。
#239
○国務大臣(塚原俊郎君) 高山委員が参考人に御質問なさっている点は、これはちょっと私の関係のあるあれじゃございませんので、私からこうあるべきであると言うことはちょっといま差し控えたいと思います。
#240
○高山恒雄君 いやそれはけっこうです。
#241
○国務大臣(塚原俊郎君) 私は冒頭に申しましたように、労働問題のあり方から私はこの問題を検討するということを申しているのでありまして、各、たとえばジェトロがどうであるとかなんとかということはちょっと差し控えさしていただきたいと、このように思います。
#242
○大橋和孝君 それじゃあ私は、全体的な問題をこれからもう少し詰めさしてもらいたいけれども、いろいろな例はたくさん持っておりますが、時間の都合で、もう時間が非常に迫っておりますから、まず国立競技場の寺門理事さんにお話をお聞きしたいと思います。
 先ほどちょっと抽象的には申し上げておりますが、このおたくのほうの勤務は、なかなか日曜日、祭日なんかも出て、そしてかなり組合のほうには、何と申しますか、使用目的上、休日勤務なんかも相当の比率で行なっておられるようであります。また、これがために非常に増収をされて、四十五年度は増収、――収入の増が三千八百万もあるわけですね。このようなふうな形で非常に増収の状態にある。これはあなたのほうの命令によって労働者がすなおにこれを受け取めて一生懸命働いている、こういうような状態でこういうような成績があがってきているわけでありますが、ところが、その命令はするけれどもいざ賃金を払うときには、これはいろいろな規定があるとかなんとかということで、先ほどの話を聞いていると、その壁を破らないで、あなた自身、この国立競技場の責任者として、何か不合理感じませんか。時間外にも働かせ、そして相当なあれをやりながら、最後に賃金のことに対しては私はあまり知りませんよという形でいいのかどうか。これをまず第一番目に、あなたのお気持ちをひとつお尋ねしておきたい。
 それから第二番目には、私は、この日曜日なんかうんと働いて、お客がたくさん入って競技もよく見てくれたと、こういうようなときには、民間ではまあ大入り袋というようなものを出しているくらいですね。そして非常に労をねぎらっているということは御存じだろうと思うんですね。これは理事者としては、それをまねて大入り袋を出せとは言わぬけれども、その従事員に対してもっとあたたかい気持ちでやってやろうという――いまのような御答弁を聞いていると、あまりにも鉄のような冷たさを感ずるわけですね。だからもう少しそこのところの問題に対して、いまも申したように何とかひとつ考えてもらうことはできないものか。
 それからまた、予算上こういうふうな、いま申したように、三千八百万も増収になっている。あなた、理事者として、これは政府のほうの監督機関のほうに対して、あなたのほうは文部省――大蔵省ですね。こういう資源をいまのような気持ちから、もう少しそれを使わしてくれと言うことはできないものですか。それをやられてけられたんですか。どういう理由でけったのか、こういうようなことを一ぺん、いままでにどういうふうなことをそれに対して措置されたのかということを詳しく聞かしていただきたい。
 それから第四点ですが、これはこの前の、いま先ほど私申し上げましたスケート場の問題、これも金額ではそのときも申しましたが、昨年の内示に基づいて賃金回答があったときに、組合がこれを不服として七十二時間のストをやったわけですね、このときにはスケート場なんかで五日間も営業ができなかった、このために六百万か一千万かしらの赤字が出た、その問題を解決するときには、わずか百万足らずのものであったと、こういうようなことを考えてみると、これは当事者としてはそう簡単に、規則がどうであります、こうでありますということだけで過ごせる問題ではないじゃないか。一方ではこういう収入が減ったということは、それを利用してやろうとする、運動している人たちにも非常に迷惑をかけているだろうと思うんで、その二つの面があるわけですから、これに対してはたいへんじゃないかと私は思うわけですが、こういう問題に対して振り返って考えてみると、また同じような紛争がいま続いているわけですから、その責任の感じ方、どうされるかということをここではひとつ相当明確に意思決定をして、そしてあなたのほうとしてはもっと中央のほうに話しかけて、そして、こういう問題がもう少し処理できるように考えてもらえないか。ところが先ほどの話では、なかなか規約があるからできないという話でありますが、これは文部省関係の団体の理事者が集まっておられるあなたのほうの金曜会というのがあるんですね、これはまたいろんなことを言って、足を引っぱりにかかっている、こういうようなことでありますけれども、組合側はもっと統一要求を要求されたわけですね、法律によるいろいろなことと、ほかの政府関係機関とも話を進めて、法律的にいろんな問題を解決してくれといって、その交渉を理事者側にいろいろ申し上げているはずであります。こういうようなことに対しまして、あなたのほうはこの文部省関係のいろんな特殊法人に対してどういうふうな働きかけをしておられるか、文部省に対して、大蔵省に対してどういうことでやられたのか、何が一体壁になっているのか、どういう返答がきたのか。また、この法律はそれほどまでに大きな縛りを持つものなのか、どうなのか。私はその法律解釈自身にもいわゆる疑義を感ずるわけであります。法律じゃない、何か内規、――規程的なもんですね。
 それから、私はこういうことから考えたら、むしろそのまじめな、そういう方向に努力があればその壁は破れるんじゃないかと思うんです。あなたはそこに責任を感じませんか。あるいはどこにこうやったが、こういうわけでできないということがあるなら一ぺん聞かしてもらいたい。私はまた別な機会に、その壁に対して一ぺんよく話し合いを進めたいと思います。そうでしょう。こんなことをやって何千万円を損しながら、わずかのことで払えないんだと、そして、それを利用している人、国民に対して非常に迷惑をかけていると思う。こういうことが事実やられておって、この法人を置いておく目的がありますか。私はひとつこの話を詰めなければ話が進まぬと思うし、あなたは、そういうところにおられて、責任者として、のうのうとしてもらっておったんじゃ私は国民の側からどうにもならぬ、こういうふうに思う観点から、きびしくこの問題について御質問申し上げるわけであります。いまの五点について御答弁ください。
#243
○参考人(寺門威彦君) 国立競技場の営業業務は確かに朝の八時半から勤務が始まりまして、営業の終わりますのが午後の九時でございますから、どうしても通常の八時間勤務の体制ではまかない切れない、そういう状況でございます。また日曜祭日等も、むしろ一般国民が休んでおるときが利用される時間帯でございますので、日曜祭日等も大体において営業をいたしております。そういう関係からいたしまして、職員にはいろいろと勤務条件はなかなかこれはたいへんでございます。
 そこで、給与の基本につきましては、何べんも話が出ておりますように、人事院勧告による公務員のアップ率に準拠いたしまして、そういう監督官庁の方針に基づきまして現在では改定をせざるを得ないという状況でございますが、それ以外に各種の手当等の面につきましてそういう困難な勤務等に対しましては、それぞれの勤務の状況に対応いたしまして、これは労働組合ともずいぶん話し合いをいたしまして、それに対する対応の方法をいろいろと講じておるような次第でございます。
 ここで一々こまかい内容に触れることは御遠慮いたしたいと思いますが、なおよく働いた場合の大入り袋というお話もございまして、これは確かにああいう一種の興行場でございますから、当然そういうものがあってしかるべきではないかということで、これなども何かそういう方法を現在の会計の仕組みの中でやる方法はないだろうかということでずいぶん大蔵省などとも相談いたしまして研究いたしましたが、どうも民間で行なわれておるような大入り袋のような方法がいまの会計の仕組みでどうにもとりにくいというような結論でございます。しかしながら、それにかわるいろいろな方法等も考えまして、できるだけ職員の労をねぎらうというように努力をいたしておるつもりでございます。
 なお増収の件でございますが、毎年の当初予算の収入と、決算の収入との間にかなりの差が出てまいりまして、これが増収ということに相なりますが、これの処理につきましては予算の総則におきまして、ある使い方の制約がございまして、大体におきまして増収をかりに三千八百万の増収をあげるという場合には、ほとんど三千万程度の支出が当然それに伴ってまいりますし、増収をあげるための支出が当然伴いますので、これにつきましてはまず優先的に増収をあげるための支出ということで、これは大蔵省から認めていただく。で、なおその残額につきましては修繕等引き当て金という科目がございまして、これに積み立てておりますし、この修繕等引き当て金の使い道も実は会計規則で制約がございまして、新営あるいは改築という、そういうような費目にだけこれは使える、そういうたてまえに相なっております。したがいまして、増収分はそういうような費目で大体消化されており、人件費につきましては増収分をこれに振り向けるということは現状では認められておらない、かような次第でございます。昨年の暮れにちょうど四十六年度の給与改定の交渉の時点並びに四十六年度の年末手当の交渉の時点の両方重なりまして、この時点で七十二時間ストがございまして、たいへん御迷惑をおかけしております。非常に遺憾に、私ども責任を感じております。たまたま、そういう一般的な労使紛争の時期でございまして、遺憾ながら、こういう長期ストと相なりまして、国民の皆さんにも非常に御迷惑をおかけしたという点、心からの責任を感じております。なお、文部省関係の特殊法人の連絡会議のようなものがございまして、毎月一回会合いたしております。これはまあ事務的ないろいろな連絡の会合でございまして、各団体間の連絡調整と情報の交換というようなことでございますが、この会におきまして格別労働組合に対する非常に強い姿勢を打ち出すというようなことは現実にはございませんですので、その辺は今後も前進的な姿勢でこういう会合が運営されるように私どももひとつ配慮してまいりたいと、かように考える次第でございます。
#244
○大橋和孝君 いまの御答弁の中で――私、時間がないものですから、まとめて御答弁願っておるわけですが、肝心なところがみな抜けちゃっているわけです。それは、いろいろなことをお聞きしていますけれども、私の聞こうとしている問題点が抜けちゃって、返事がいただけていない。たとえば、私いま申し上げましたのは、三千何百万円という増収がある、この金は、いまあなたがおっしゃったように、非常に、日曜日も働かし、いつもこういうふうにして働かせているわけだから、それを働く人に還元する――ぼくは一つの例で袋の話もしたけれども、それはまあ別問題。とにかく、大入袋じゃないけれども、やっぱり働いた人に対して還元してやる、こういうことのために、あなたは、その三千八百万円を使っていいかということを実際に大蔵省に交渉しましたか。何でそれでいかぬということを言ったのかを言ってください。これはもうちょっとはっきりひとつ御答弁願いたい。
 それからもう一つ、いま申したように、文部省関係のいろいろな理事者では金曜会というのをつくってらっしゃる、こういうものに対して統一要求をしたいという組合のあれもあるんだから、そういうことのあっせんをなぜもっとやられませんか、これが第二点。
 それから第三点は、あなたは、当事者能力として、一方ではいまのような労働のきびしいことをやらなきゃこれはいかぬ使命があるから働いてもらっています。労働者もそういう事情をよくくんで、公のためにひとつ働こうといって働いています。こういうようなときに、あなたは、当事者能力を持たなくて、そういう働いた人に、ちゃんと賃金をある程度やってやろうということを考えないで、そうするためには、いま、何か特殊法人としての規制があってなかなか、人勧がきまってきてある程度のものが出ないと、それができないという状態にあると、これではいけないということを、あなたはどういうような形でいままで交渉をしましたか。それをぶっこわすことはできないのか。あなた自身が当事者能力を持って、そして、働いた人に、もうかった分を少しでもあげられるような方法をしなかったら、これは、働いている者は働きっぱなし、そういうことでは浮かばれないわけでしょう。こういうことをやることが私は責任者だと思うんですが、それに対してどういうことをやりましたか、それが第三点。
 第四点は、またこれをちょっと考えてみますと、役員は民間並みで非常に高いわけですよ。一般の人は公務員並みというんで、格差があるわけですね。逆に働いている人のほうが賃金が安くなるわけだから、これをどうするかということについてもひとつ御返事をいただきたい。
#245
○参考人(寺門威彦君) 増収分の使い道でございますが、先ほど申し上げましたように、予算総則で使い道が一応限定されておりまして、その増収をあげるために直接必要な支出にこれは充てると、そういうことで、職員の給与等はこれの支出項目に含まれておらない、こういう規則になっております。で、まあこれは大蔵省、文部省等にも従来からも話し合いをしておりますけれども、増収分の使い道については、あくまでそういうたてまえであるから、職員給与等に流用することはできないと、こういうふうな返事をいただいております。
 それから、金曜会に対しての統一要求の件でございますが、この金曜会は、先ほども申し上げましたように、これは月一回の単なる連絡会議でございまして、統一的に交渉に当たるような、そういう一つの団体というような形ではございませんです。まあ一つの連絡会議でございますので、金曜会自体が統一要求を受けて交渉に当たるというような、そういう性格のものではないんじゃないかと、私、そういうふうに承知いたしております。
 それから当事者能力の問題でございますが、この点も何べんも申し上げますとおりでございまして、特殊法人の特殊性からいたしまして、法律上いろいろ制約を受けておりますので、私どもに許された範囲内のところで最善の努力をする以外に方法はないんじゃないか、かように考える次第でございます。
  〔委員長退席、理事高田浩運君着席〕
#246
○大橋和孝君 もう非常に歯切れの悪い御答弁をいただいておるわけですが、どうぞひとつ、これはきょう申し上げているのは、何かほんとうに、心から当事者能力をもう少し発揮してもらうような働きをしてもらいたいという気持ちからやっておるわけでありますから、理事者としては特にそういうことを考えてもらって、ほんとうに円満に労使が紛争なしにいけるような方法を積極的に考えてもらいたいと思います。
 じゃあ、私時間がありませんので、次々とまいりますが、ジェトロの問題でちょっとお話をお聞きしたいと思うんですが、春闘における労使の自主交渉の結果ですね、これに基づいて、やっぱり人勧前に予算の流用申請を行なうほうがいいと思っているんですが、これは行なっていられるのか、その辺のところをお聞きしたいと思います。特に承認が期待できないとか、まあ、そういうようなことで、いままで年々見送られてきておると思いますけれども、私は、もしそうだとすれば、やはり大蔵省のほうでどういうようなことでこれがいけないと言われておるのか、少なくとも労働のほうから考えるならば、労使間できめて、そしてこれを承認してもらえば、この春の段階に流用さえ認めてもらえばいいわけですから、これがどういうところに理由があっていけないと、予算上、財政上制約があるとよう言われますけれども、どういうところにあると言われているのか、そういうところをひとつ明確に御返答願います。
#247
○参考人(島添達夫君) ただいまの御質問でございますが、私どもといたしましては、冒頭に申し上げましたように、いわゆる春闘におきまして労使間の紛争が永続するという事態ははなはだ好ましくないと考えておりますので、一昨年来、通産省御当局に対しまして、春闘時と申しますか、人勧前に予算の使用ができるように御配慮を願いたいということをお願いしておるわけでございます。ただし、現在までのところ、これに対しましては、まあ先ほど来お話しになっております公共性あるいは予算、財政上の問題その他から、現在の段階では非常に困難であるということでございまして、私どもといたしましては、この予算の使用ができるということがまず自主交渉の前提条件でございますので、その点について当局の御理解と御配慮をお願いしておると、こういう段階でございます。
#248
○大橋和孝君 その点は、大蔵省なりにその話をしてもらって、そしてできるんですか、できないとすれば、どこにその原因があるのかということだけを、まあ時間がありませんから的確に。
#249
○参考人(島添達夫君) この点につきましては、ただ、ジェトロといたしましてはそういうことでございますけれども、やはり先ほど来お話がございます全特殊法人全般の問題でございまして、やはり政府の御方針と申しますか、そういうものがあるのではないかというふうに考えておる次第でございますが。
#250
○大橋和孝君 あなたが考えられて話をしておられないんですか。あるいは、話をしたら、大蔵省のどこかがこれはむずかしいと言ったのか。むずかしいものだということを想像して、あなたがやっておられないのか、そこら辺をもう少し明確にしてください。
#251
○参考人(島添達夫君) 関係御当局に対してはしばしばお願いしておるわけでございますが、現在のところ認められないということでございます。
#252
○大橋和孝君 ちょっと振興課長おいでになっていましたね。昨年ジェトロの理事長のほうから通産大臣あてに出された文書に対して未回答である。この未回答の理由とその文書についての御見解をお伺いしておきたいと思います。
#253
○説明員(藤原一郎君) 御説明申し上げます。昨年六月ジェトロの理事長から宮澤通産大臣に対しまして御趣旨のような陳情書を出されまして、それを受け取っておることは事実でございます。ただ、それにつきまして、私どもといたしましては先ほどからるる各法人の理事者のほうから御説明ございましたように、給与基準として大蔵省と協議して大臣が承認をするという仕組みになっておりますので、人事院勧告前にその内容について私どもとして承認をするという立場にないということでございます。いま御質問ございましたが、そういうわけでございますので、陳情書の御趣旨はよく了解しておりまして、かねてよりその内容その他についてはジェトロの理事者のほうともいろいろ説明しておりますし、予算の際にも大蔵省と種々話はいたしておりますが、全体の仕組みがそういうことでございますので、御返事を申し上げるという立場にないわけでございます。
#254
○大橋和孝君 だから通産省と大蔵省はその文書について十分話し合ってそれはできないということの結論を得たのですか。
#255
○説明員(藤原一郎君) 御説明申し上げます。
 私どものほうはその文書について特に大蔵省とお話をしたということはございません。
#256
○大橋和孝君 これをもう少し詰めてこの問題を解決するためには、やはりどうしても予算の流用ということができない限り当事者能力が出ないわけですから、ひとつ、通産のほうも大蔵のほうをもって突き上げて、そして話し合いを詰めて、ある程度自主交渉をした結果については流用を認めるようにしてもらいたいと思います。特にそれは努力していただけますね。
#257
○説明員(藤原一郎君) 御説明申し上げます。
 御趣旨の点はよく私どもわかるわけでございますが、特殊法人全体の問題でございまして、ジェトロだけについてなかなか解決は困難であろうかと考える次第でございます。
#258
○大橋和孝君 じゃあ今度ちょっと、もう時間がほんとうに迫って何も言えないのですが、科学情報センターのほうについて一言だけ、これも非常にむずかしい大事な問題があるから、これを何とかしなきゃならぬのですけれども、要約をして質問をしたいと思います。
 先ほどもおたくのほうもこうした関係は十分おありだと思うのですが、非常に職掌柄大事なところだから、やはりおたくのほうにおきましても同じように当事者能力を発揮しないといけない、ことにそういうふうに思います。特に、賃金の問題、内示が非常に組合員の平均をするとわずかな金、いま千円を下回っているというようなことになっているわけでありますから、こういうふうなことで組合側に対するいろいろな不当な賃金の伸びが認められない状態は非常にたいへんな問題だと思いますから、特に、先ほどから議論をしてまいりましたいろいろな問題を含めて、私はこのセンターにおいては十分なひとつ配慮をしていただきたいと思いますが、この辺のところはどうでしょうか。
   〔理事高田浩運君退席、委員長着席〕
#259
○参考人(上田幸雄君) 先ほど申し上げましたように、そこらあたりの事情につきましては、年齢差という問題が改善のすべてではないけれども、極力、関係当局に十分事情を説明して、少しでも今後改善の方向に向かうようお話し申したわけでございますけれども、今後もそういった方針で進んでいきたいと思います。
#260
○大橋和孝君 だから、あなたのほうで特に考えていただきたいことは、やはりこの格差ができないようにするため、あるいはまたこの統一交渉をもう少しいろいろ持つ場を広げるように努力をしてもらって、そうして組合との自主的な中でいろいろな問題を解決できない限り、やはりこうした非常に格差の問題やらいろいろな矛盾が矛盾を生んでいく形になりますから、特に注意をしていただきたい、特に善処をしてもらいたい、こういうふうに要望いたしておきます。
#261
○委員長(中村英男君) それでは、政府関係特殊法人における労働問題に関する件についての本日の調査はこの程度にいたします。
 参考人の方にはどうも御苦労でございました。
    ―――――――――――――
#262
○委員長(中村英男君) 労働安全衛生法案を議題とし、引き続き質疑を行ないます。
#263
○藤原道子君 私は、最初は二時間という予定でしたが、一時間に減らせと言われて、あわてて原稿を半分に減らしてみたのですが、いささかくたびれちゃって十分な質問ができないかもしれませが。また足らざるはあらためて質問をすることにいたしまして、委員長の命令に従います。
 私は、出かせぎ労働者の農業政策の問題についてお伺いしたいと思います。
 農業白書によると、現在、自立経営農家は全農家の約八・五%にすぎない。逆に九一・五%の農家が兼業すなわち農業所得以外に収入の道を求めなければならない状態にある。農家が農業では生活できないという今日の現実は一体どこから生まれたのか、農林省の説明をまずお伺いしたいと思います。
#264
○説明員(松元威雄君) 御指摘のとおり、最近農家の兼業化が非常に進行いたしまして、農業所得のみで所得をまかなうということは非常にむずかしい情勢になってきたわけでございます。したがいまして、専業農家の数は減少いたしまして、それから逆に兼業農家がふえる。そうしますと農業所得、兼業所得を合わせまして、全体の農家所得を増加さしておる、こういう傾向でございます。これは基本的に申し上げますれば、やはり農業をめぐる全体の情勢、さらに基本的には日本経済の成長と申しますか、そういった経済の動きの中で農家が農業だけではなくて、全体に兼業所得を含めて所得増大をはかっていこう、そういう動きのあらわれというふうに考えておるわけでございます。
#265
○藤原道子君 農業では生活ができないという現実があることは、いかに弁解しようとも政府の農政の誤りが原因であることは疑う余地はありません。そこで、農民は農業以外にも収入の道を求め、それが今日の出かせぎという形であらわれていると思うがどうでしょうか。また、出かせぎ者の数は全国でどのくらいか、農林省、労働省からそれぞれ伺いたいと思います。
#266
○説明員(松元威雄君) 御指摘のように、現在農家戸数は現在約五百五十万戸でございます。そういたしまして、農地面積は約、同じく五百五十万ヘクタール程度でございます。そうなりますと、約一ヘクタール程度が平均でございます。こういう経営規模で農業だけで自立していこうということは、これは非常にむずかしいわけでございます。もちろん、農家の中にも経営規模を拡大いたしまして、そうして生産性を上げるといって、農業のほうで自立しようという農家もございますが、一方では全体の経済の中で農業からは多少手を抜いて他産業に所得を求めよう、こういうふうに分化をしてまいるわけでございます。そういう中で、もちろん農業者としますと、少しでも農業の生産性を上げる、農業所得をふやすということにいま努力してまいっておるわけでございますが、そういった全体の経済の中で、農業だけでは自立しがたいというのがあるのはこれはやむを得ない事態でございまして、それに対して出かせぎだけではございませんが、ほかの兼業所得合わせまして所得増大をはかっていこう、こういう対応をいたしておるわけでございます。
 そこで、出かせぎの数でございますが、これは大づかみに申しまして、約五十万人というふうに私たちは了解しておりますが、年々の多少の動きがございまして、大体三十八年以降多少減少しておりましたが、最近これは四十三年以降でございますが、多少増加の傾向にございます。
#267
○政府委員(北川俊夫君) 私、担当でございませんが、いま農林省からお話がございましたように、出かせぎ労働者の数は、労働省も、農林省とお話をしまして、五十万程度というふうに伺っております。
#268
○藤原道子君 またその数は増加の傾向にあるのか、減少の傾向にあるのかをあわせて伺いたい。
#269
○説明員(松元威雄君) 出かせぎ者の数は、全体約五十万と申し上げましたが、これの年々の動向につきましては、別に農林省としましては、農家の就業動向調査というのがございます。これは調査の定義が若干違いまして、数はぴたりと合いませんが、これの動向を見ますと、大体先ほど申し上げましたが、三十八年以降一時減少いたしておりましたが、四十三年以降はややふえるという傾向を示しております。
#270
○藤原道子君 これは昭和四十四年度のあれで見ると、農林省調査では二十八万人となっており、労働省の失業保険支給者から見ると五十八万人となっている。いまの答弁は大体同じ数だと、まあ、これはこの程度にしておきます。
#271
○説明員(松元威雄君) いま先生御指摘の二十八万の数が、私が申し上げました農家就業動向調査でございます。これは定義が違いますものですから、実はこの委員会でもしばしば問題になったわけでございますが、農家就業動向調査では六カ月未満をとらえたわけでございます。したがって、それでは少な過ぎるということで、別に農業センサスでは、これは毎年やっておりませんが、約五十万人というデータがございます。したがって基本的には合っておる。しかしセンサスは五年に一ぺんでございますから、その間調査がないというので、動向によりましたそのほうを使っておる、そういう意味でございます。
#272
○藤原道子君 農政の失敗が出かせぎ者を急増させている。また一面ではこのことが労働政策において数々の問題点を投げかけております。そこで、出稼ぎというものについて、農林、――労働大臣は是認する方向で今後出かせぎ対策を検討するのか、さらに出かせぎにまつわる問題は山積しておりますが、あなた方が認識している問題点とは何と何なのか、具体的に説明をしていただきたい。
  〔委員長退席、理事高田浩運君着席〕
#273
○説明員(松元威雄君) 基本的に申しますれば、出かせぎに依存しないで、農業だけでいわば所得を上げられるということが望ましい、それはそう思っているわけでございます。したがいまして、極力農業所得を上げて、農業だけで生活できるようにいたしたいというふうにいたしております。ただし、その場合地域なりあるいは条件によりまして、なかなかそうはまいらぬ場合がございます。先ほど、私は平均面積一ヘクタールと申し上げましたが、一ヘクタール程度の規模ではなかなか農業だけで所得をまかなうということは困難でございます。また、地域によりましては単作しかできないという地域もございます。そういう場合に冬場の労働をどうするかという問題もございます。したがいまして、基本的方法としますと極力出かせぎはなくしてまいりたいということはそうでございますが、過渡的にはなかなかそうはまいらずに、当面の間は続くであろう。そういたしますればそれに対する対応策を考えなければならぬというふうに考えているわけでございます。
 その場合、問題としますと、私たちの問題意識は、一つはまず基本は先ほど申しましたとおり、なるべく出かせぎをしないようにするという基本でございますが、過渡的には出かせぎすることもやむを得ない事態があるわけでございます。それに対しての第一は、労働条件を適正化するというのが第一でございます。
 それから第二は、やはり出かせぎいたしまするが、地元に農業を持っているわけでございますから、この営農をどうするかというのが第二の問題でございます。
 第三は、留守宅の家庭生活と申しますか、これをどういうふうにするか、あるいはまた留守宅と出かせぎ者間の連絡と申しますか、そういう生活面ということで、労働の面と営農面と生活の面、三つに問題がある。それに応じた対策を講じなければならぬ、そういうふうに考えております。
#274
○国務大臣(塚原俊郎君) 労働省といたしましては基本的にその地にとどまってお仕事をしていただくというのがたてまえであります。したがって、これは農林省とも打ち合わせておりまするが、要は農業基盤の整備の問題等も関連してまいります。ですから、われわれは理想としては現地であくまでとどまってもらう。そのための農村工業導入、この法律案ももう通過いたしておりまするけれども、そういうものによって、家庭問題もありまするから、その土地で、生まれた土地で働いていただくということが一番望ましいのです。しかし現実問題としては、やはり何万人かの方がそれぞれ季節労務者としてお出かけにならなければならないということ、これは事実であります。したがって、われわれはその就労対策について、特に賃金未払い、それから労災の防止ということについては最重点を指向していかなければならないと考えております。
#275
○藤原道子君 地元に工場を建てるというようなことも一、二の計画にあったようでございますが、若干そういう方向もあるけれども、地元にある工場ですか、非常に賃金が安いのですね。これはどういうわけなんでしょう。
 それから、きのう私のところへ、びっくりしたという陳情があったのでございますけれども、岩手県の東山町というところに猊鼻渓というのですか、日本の百景の一つになっている。そこへずっと行くとき、山をおりようとしたら、その辺一ぱいもう全村が、全町ですね、煙とほこりで真白になっている。火事でも起こっているのかと思ってびっくりした、こういう話なんです。ところが、それは開発セメント会社で、そのセメント会社の煙と砂ぼこりが民家に降り積もっている。しかも、そこでは年に一度くらいは亜鉛ぶき屋根のふきかえを、会社が持ってやっているそうです。会社持ちで屋根のふきかえを二年に一回やっている。周囲の山に囲まれて煙は一日じゅう滞留している。これは、この人は三日から五日までいたのですけれども、この煙と砂ぼこり、こういう中で、からだの影響については検診などは一回もない。しかもそのほかに材料の石だとかセメンを運搬するトラックがひんぱんに往復して、人家もまっ白に砂ぼこりをかぶっている。何かなければ会社の費用で、二年に一回は屋根のふきかえをやる、こういうことがあるはずがないと思うのです。ところが、現にそれは行なわれている。しかも検診は一回もない。これは一体どういうことですか。御承知ですか。もし御承知でないなら、これはさっそく調べていただかなければならぬ。岩手県東山町猊鼻渓、いかがでございましょう。
#276
○政府委員(北川俊夫君) 先生御指摘のその事例につきましては、残念ながら把握いたしておりません。いま御指摘の検診というのは従業員の検診でございましょうか。それとも住民検診でございましょうか。その辺のことをお教えいただきましたならば調査いたします。
#277
○藤原道子君 両方でございます。こういうところが放置されているということは非常に危険だと思うんです。こういうことは案外全国的にあるんじゃないでしょうか。私もびっくりいたしまして、きょうは予定してなかったことでございますが、御質問を申し上げた。
 そこで出かせぎ労働者は何といいましてもほとんど建設業者が多いのですね。資料によりましても五十何%は建築業者ということになっております。ところが労働の熟練度、あるいは職場の定着性などから労働の質の面から不当に低い評価しか受けてない。その結果不利で不安定な労働条件がしいられていると聞きます。そこで労働省は出かせぎ者と企業が契約する労働条件について出かせぎ農民を保護する観点から十分な調査をしておいでになるか。あるいはまたその保護対策についてどういうふうに考えておいでになるか、具体的な説明をお願いしたいと思います。
#278
○政府委員(渡邊健二君) 出かせぎされる労働者の方はどういたしましても長年一つの仕事に専念いたしております熟練労働者のようになかなか業務に熟練しておられない方が多いわけでございまして、そういう意味でいま御指摘のような年齢等の割合に賃金が低いとか、こういう場合があるのではないかというふうに考えるのでございます。したがって、適正なやはり労働条件を確保いたしますためには、一つには就労経路というものを正常化いたしまして、安定所を通じた正常な就労経路で就労していただくということ。それから就労ざれるにつきましては、まずできれば、その就労に必要な限度の技能などを身につけていただくようにするならば、比較的有利な条件で就労することも可能ではないか、かように考えるわけでございますが、それらの上に立ちまして適正な労働条件が、労働契約が結ばれ、それに従って適正な労働条件が与えられますよう、不当な労働条件、あるいは法違反の条件があれば就労先におきまして、基準監督機関等によりまして厳正な監督を実施いたしまして、法違反の労働条件がないように、あるいは賃金不払いといったような法違反の現象がないようにしていく、こういうようなことであろうと考えるのでございまして、労働省といたしましてはそういう観点に立ちまして、まず就労の経路の問題、あるいは就労に際しましての技能訓練の問題、さらには就労後安全な形で就労ができますように、安全教育その他必要な就職についての教育の問題、それから就職後の職場におきます適正な労働条件の確保のための監督、こういうものをでき得る限り系統的にやろうということで先般も安定局と基準局、両方の局長の連名通達を出しまして就労経路の把握、就労先の監督機関への通報等々の処置をとることにもいたしたところでございまして、今後ともできるだけそういうふうに総合的に出かせぎ労働者の対策というものを進めていくことが必要である、かように考えておるところでございます。
#279
○藤原道子君 十分な調査も保護もやってないです。いま就労先は建設業が中心で、建築業の請負制度など体質の問題もある。四十四年に東京の上野職安で暴力飯場に出かせぎ労働者を紹介した例がある。またこれらの業者は、業界は親分、子分のつながりを持った経営が行なわれ、隠れた暴力団の有力な資金源ともなっておるということもいわれておりますが、どうですか。これは職安が紹介したのですよ。
#280
○政府委員(道正邦彦君) 先ほど基準局長から御答弁申し上げましたように、出かせぎ対策の根本は就労経路の正常化、すなわち市町村と安定所の連係を緊密にいたしまして、安定所のルートを通じて就職さしてやるということが基本だろうと思います。そういうことで、現在全国的に、県におきましてでございますけれども、平均いたしますと約四割ぐらいが安定所の経路でございます。これをこの際経費を抜本的に改善して上げていこうということで先ほどお答え申し上げたようなことで考えておるわけでございますが、安定所、――いままでの出かせぎ労働をめぐるいろいろな問題が起きておりますが、全体として見ますると安定所を経由して就職していただいた方々については、たとえば賃金不払いなんかもそうでない場合に比べましてはるかに少ないわけであります。ただいま先生の御指摘のような安定所が暴力飯場に紹介をするというケースは私、承知いたしておりませんが、もし具体的に拝聴できれば、即刻調査いたしまして、まことにけしからぬ話でございますから、そういう点は是正はもちろんやりますし、今後そういうことがかりにあったとすれば起きないように万全の対策を講じていきたいと思います。
#281
○藤原道子君 これは四十四年のできごとで新聞にも出ておりますから、お調べください。
 そこで、いま賃金の不払いの問題、それは非常に大きな問題です。出かせぎ者が当面しておる重大な問題の一つなんです。これは建設業の体質そのものと無関係ではない。たとえば、東京の建設業ではある会社が仕事をとった、入札ですね。入札して請け負いました。ところがその入札額の一五%から、多いところでは二〇%くらいをピンはねしてこれを下請へ出した。そうして下請はまた同様のピンはねをして再下請、すなわち孫会社に下請さしている。ですから実際に仕事をする孫下請は元請の入札をしたときの四〇%から五〇%くらい、これで入札の金額の仕事をしなきゃならない。これではよい仕事ができるはずがない。だから手抜き工事ができて事故を起こすあるいは賃金の不払いが起きる、あるいは業者の蒸発が起こる、こういうことがあると聞いておりますが、建設省ではあるいは労働省ではこういうことを御承知でございますか。これはもう世間通念くらいになっておる……。
#282
○説明員(吉田公二君) 建設省でございます。建設業におきまして下請が一つの特異な形態であるという点は先生御指摘のとおりだろうと思います。ただ、しかし建設業の中身と申しますものが、全体の仕事の中で実施する部門が非常に専門的な部門が複雑多岐に交わっておりますので、ある程度の下請というものが組み合わさって仕事が行なわれるという形は不可避な面がございます。ただ、しかし場合によりますと、必要以上に重層して下請が行なわれまして、その結果が末端におきましてただいまお話のような賃金不払いなどの問題を生じる一つの原因になっているという点につきましても、先生御指摘のような点につきまして、私ども承知いたしております。
#283
○藤原道子君 労働省は……。
#284
○政府委員(渡邊健二君) 賃金不払いが下請を含めまして中小零細企業、特に建設関係のそういう中小零細企業に多いということは私ども承知いたしておりまして、まことにこれは遺憾なことだと思っております。そういう賃金不払い等につきましては発見次第厳格にこれは監督すると同時に指導をいたしましてすみやかに不払いを解消させるよう指導をいたしておるところでございます。一そうそれを有効にいたしますためにたとえて申しますと、賃金支払い補償制度と申しまして、数社の、幾つかの業者が集まって自主的にファンドを出し合って、そこで、もしその加盟の中で不払いを起こしますと、そのファンドの中から支払わせるといったような制度も指導によってつくらせておりまして、全国でこれが現在四十あまりできておるわけでございます。こういうものの普及もはかっております。それから建設関係につきましては、建設省関係の当局と労働省と連絡をとりまして、お互いに通報制度をいたしまして、非常に不払いを起こしたようなところは、たとえば公共事業の入札の場合には参加を認めないといったような指導を建設当局でしていただいている。さらには、本年から施行になりました建設業法に基づきまして、賃金不払い等が起きた場合に、元請に立てかえ払いをさせるという勧告ができるというような制度もできておりますので、これも建設当局と連絡をとりながらその活用をはかる。等々のことによりまして、建設関係における不払いを起こさないように、また起きた場合にはすみやかに、労働者に被害が及ばないように是正措置がとられるようにつとめておるところでございます。
#285
○藤原道子君 ほんとうにやっていますか。もしおやりになっていらっしゃるならば、その資料をちょっと出してください。私はそれを要求しようと思う。もしもそういう業者があったならば、今度は請負入札ですか、それに参加させないとか、いろいろ手はあると思うんです。こういうことを、まあ建設省でもそういうことは知っているけれども、特別な高度な技術があるから、そういうもので云々ということばがありましたけれども、それならそれの方法はある。下請に渡すときに、これだけはおれたちのほうでやるから、これだけは引くよということが言われていればいい。そうでなくて、ピンはねをしている。こういう例も、もし出せと言われれば私出してもよろしいけれども、私も承知いたしておりますので。そういう点がないように、働く人を守るというのが、これが特に労働省の任務だと思います。また建設省といたしましても、そういう不正な業者がございました場合には、これはもう入札に参加させないぐらいなきびしい姿勢で、こうしたことのないようにしていただきたい。あるいはまた、いま賃金不払いは親会社が立てかえ払いをする、こういうことを指導しているとおっしゃるけれども、なかなかそれがむずかしい。どれだけ多くの人が泣いているかわからない。こういう点もお考えになりまして、――政治の責任と言いたい。親子が別々になって、子供のことも思うだろう、細君もつらい。しかも、ところによれば消防団を女だけで編成しているところもある。こういうことを黙して出かせぎに来ているんです。その出かせぎ労働者が安心して働けるような方針をとっていただきたい。ことに、出かせぎ労働者は云々ということがありましたけれども、しかし出かせぎ労働者がいなかったら、都市のいろいろな土建業、あるいは生産業が成り立つか。大きな役割りをしているんですから、それを評価して待遇も考えていただきたいことを強く要求いたします。
 それから出かせぎ者の、まあ建設業ですが、不良飯場の問題がある。それから宿泊設備がきわめて非健康的であるという問題があります。たとえば昨年の九月、建設業附属寄宿舎規程を守っているかどうかの全国調査が行なわれておりますが、全体の九〇%が不合格だといわれておりますがそれはどうですか。一体これら生活環境をよくしていこうという意思があるのかないのか、私は労働省を疑わざるを得ない。で、私の記憶ではこの寄宿舎規程違反九〇%というのは十年来変わっていないと思いますがどうでしょうか。また今年じゅうにでも全国の建設業宿舎を一斉検査を実施して、全部の宿舎にこの規程を守らせることを約束してほしい。
#286
○政府委員(渡邊健二君) 建設業の宿舎、俗に飯場といわれておりますが、これにつきましては確かにいろいろ問題があるわけでございます。そこで、労働省といたしましては、昭和四十三年に、従来の第二種の寄宿舎といったものを改正いたしまして、建設業附属寄宿舎規程というものを新たに定めまして、自来それに基づきまして、それに適合するように監督指導を実施しておるところでございます。で、監督の際、非常にまだまだたくさんの違反の事例を発見いたしておりますが、制定の四十三年当時から見ますと逐次違反の状況も軽度になってきつつあるようでございますので、私どもといたしましては、今後ともできるだけすみやかにこの新しい寄宿舎規程、これを周知徹底させまして、違反の状態がないように監督指導をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
#287
○藤原道子君 あなたはだんだんよくなっていると言うけれども、なかなかむずかしいようですよ。だから私が申し上げましたように、全国的な一斉調査をやってほしいということを私は要求いたします。
 そこで、出かせぎ者の労働災害が近年大きな社会問題となっている。さきの労災白書によると、労働災害の発生件数は昭和三十六年の四十八万一千六百八十六件をピークにして、最近では減少の傾向を続けておるといわれている。しかし逆に死亡者の数は増加している。――ここが問題なんです。一般的にいって死亡者が増加すれば、一回の災害で多くの死傷者を出すケースが多くなる。これは非常に重大問題だ。全体的に見て労災を受ける人の数字は比例して増加するものだと思う。したがって、この統計数字は企業が労災害を隠すためにやみからやみに葬った労災件数が除かれているのじゃないかと私は思う。私のこの考えが誤りでしょうか。私はある工場へ行った。工場でけがをした。ところがすぐ係官が飛んできて健康保険のほうへ回した。労災がふえれば掛け金がふえるのですってね、企業者は。だから労災をなるべく出したくない。こういうことで当然の労災が健康保険でごまかされている。こういうことを御承知でしょうか。私はこういう疑いを非常に持っておるわけでございますが、私の考えが誤りであれば幸いだと思いますが、御答弁をいただきたい。
#288
○政府委員(渡邊健二君) 労働災害がなかなか減りませんことは私ども非常に遺憾に存じまして、できるだけの努力をいたしておるところでございます。死者につきましても、四十年以降約六千人台が続きまして、ほぼ横ばいであったのでございますが、昨年四十六年につきましては、幸いに約五百人ぐらい、六千人台を割る好成績をあげたわけでございまして、労災全体につきましても、従来百六十五万前後から七十万ぐらいでございましたものが、四十六年は約一〇%程度減ってまいっております。これにつきましてはもちろん、先ほども高山委員の御質問にお答えいたしましたように、去年不況であったといったようなことも原因の一つであると存じますけれども、ここ二、三年ようやく人間尊重、福祉尊重という観念が社会に普及してまいりまして、災害なぞにつきましてもこれをできるだけ減らさなきゃいかぬ、こういう観念が逐次浸透しつつある、そして関係者の努力が徐々にいま積み重ねられてきたことも影響があったのではないかと、私どもさように考えておるわけでございます。先生御指摘の労災を隠すといったような事例につきましては、私どももそういう事例があるということは耳にいたすわけでございますけれども、これにつきましては――そういう事例が絶無ではないと私ども存じておりますけれども、こういうものが非常に多く、そのために去年の災害が減ったというようなことではないのではないかと、かように考えております。
#289
○藤原道子君 少し甘いと思う。そういう例はこの両方の先生がけっこうあると言ってる。私も会社へ行って労働者の中からそういうことを聞いてるけれども、これを暴露すれば影響しますから、弱い立場の労働者はがまんしちゃう。こういう傾向があることをひとつ頭に入れて今後の監督を進めてほしい。
 それから、労働省は毎年労働安全衛生週間を設けておる、で、労働災害防止行事を行なっておりますが、企業ではこのような表彰行事や労災保険のメリット制などをやるよりも、労働災害を表に出さず、労働者の健康保険で労災保険の始末をしようとしておるということ――まあここにも出てる。これは「働く人の安全と健康」、これの六ページに出ております。こういうことが堂々と出るというところにこういう隠れたことがあるのでございます。私は記念行事やなんかに金をかけるよりも、正しい法律を守るような指導を今後は業者にしてほしいということを強く要求いたしておきます。
 これは少し前の話でございますが、出かせぎ者の労働災害の代表的な事例ともいえるもの、これは昭和四十四年の四月一日の東京荒川放水路の新四ツ木橋の橋脚工事で一瞬のうちに八人の人が死んでおります。そのうちの七人が青森県からの出かせぎ農民です。この人たちが生き埋めになり、とうとい人命が犠牲になった悲惨な事件はまだ記憶に新しいと思うのでございます。ところが、新聞報道によりますと、事件後二年近くも経過したことしの三月八日、建設省の役人をはじめ、関係者及び関係業者が警察に逮捕されたといわれております。そこで、事件から二年もたって逮捕されたこの事情、さらにこれら関係者の刑事犯罪の内容についてお伺いをしたいと思うのです。
#290
○説明員(菊池三男君) 荒川の四ツ木橋におきまして、四十四年の四月一日に新しい四ツ木橋をかける際の橋脚工事のときに、仮締め切りをやって本体のコンクリートを打つという工事のときに仮締め切りがこわれまして、一瞬のうちに八人のとうとい犠牲者を出したという悲惨な事故がございました。それにつきましては、建設省でも直ちに、同じような仮締め切りの工法をやっている工事がほかにも全国的にたくさんございましたので、直ちにそういう工法を使っておるところは一時工事を中止するということをやり、そして、そのまま補強するなり、何らかの形で安全性を確かめてから工事をやったのでございます。そこで、それに対してすぐに技術調査委員会をつくりまして原因調査をやったわけでございます。その結果は一年二カ月ほどたちまして、慎重に調査をやりました結果、原因的には一言で言えば不可抗力であったと、新しい工法でありますけれども、まだ工学的に解明されていない類の事故であり、原因としてはやむを得なかったというような結論になっておるわけでございます。たまたま警察のほうでは、それとまた別個の観点からそこの建設省の監督員、それからそれは特許工法でありましたので、特許権のもの、それから施工者の間組を逮捕いたしまして、それでそれのいろいろなことを調べたわけでございます。私どものほうでは不可抗力ということでございますが、警察のほうはまた別の観点から逮捕し、そしてそれは起訴になりまして、ただいま第一回の公判が始まったところでございます。したがいまして、私どものほうとしては、二年ほどたって逮捕されたのではなくて、警察のほうもそういう調べた結果、逮捕したということで、本人はだいぶん前に釈放されて現在公判中でございます。
#291
○藤原道子君 これは東京新聞、朝日、毎日、読売、全部切り抜きがあるのですけれども、結局設計ミスと手抜きというようなことがいわれているのです。また、建設省と企業、つまり工事請負の間組、建設資材メーカー東京エコン建鉄会社ですか、この工事による手抜きの人災を隠すために証拠隠滅をやったと、これで逮捕されたとありますが、これはどうなんですか。結局役所と企業の癒着がいま社会では大きな問題になっているのです。これを見るとほんとうにそのような気が私にもするわけなんです。これをどうお考えですか。
#292
○説明員(菊池三男君) 逮捕のときには証拠隠滅のおそれをもって逮捕したということが新聞にも出ております。私も見ております。しかしそういう事実は全くございませんし、それから設計の問題にいたしましてもあるいは監督するほうとそれから業者との間でいろんな仕事の打ち合わせ等がございます。そういう公のものも全部ございますので、そういうようなものもすでに警察のほうで全部調べて持って行ってしまったあとでございますので、そういう証拠隠滅をする必要もないし、またそういう事実は全然ございません。
#293
○藤原道子君 そこで事故を起こしたリングビーム工法についてこの工事を請負った間組から建設省に対してこのプレストレスリングビームというのですか、この工法は非常に危険だから一重締め切りだけではなく、二重締め切りのほうが安全で採用したいという質問書が出されたそうですが、これに対して建設省側ではそれを無視して、そして一重締め切りを採用したと聞いておりますが、このような事情があったのでしょうか。
#294
○説明員(菊池三男君) この締め切りの仮締め切りのことは、実は請負者の任意できめる工法でございます。仮締め切りの場合に、非常に重要な場合は、たとえば河川の災害等を起こす危険のあるものにつきましては、指定工法と申しましてこういう工法でやれということを指定いたしますけれども、この場合は指定はいたしておりません。したがって、任意ですから、どういう工法で請負った会社のほうでやられてもよろしいわけであります。ただ、その現場説明のときに、会社のほうから、こういう工法でやってよろしいかというような話があったようでございますが、そのときには、こちらのほうは任意工法であるから、特にどれでやれということを言わないけれども、安全な方法でやってくれというような返事をしております。したがいまして、これをやれというようなことは一切監督するほうの側としては指示しないたてまえになっております。
#295
○藤原道子君 私の調査では、間組から一重では心配だから、危険だから二重締め切りのほうが安全で採用したいという質問書が出た、ところがこれに対して建設省側ではそれを無視して一重締め切りを採用したと聞いておるわけです。ということになれば、一重と二重では工事経費が異なりますけれども、経費をかけても、私たちは、安全を重視するように指導されるのが建設省の役目だと思う。業者のほうが、一重では危険だから二重にしたいと言うのを、建設省が一重でよろしいと言うのは、私には納得がいかない。これは、私間違った資料ではないと思っておりますので、こういうことのないように今後は十分考えてもらいたい。建設省が事故を奨励したようなものです。
 そこで、新四ツ木事件等だけではなくて、この工法を使った工事が数々の事故を起こしておりますことは御案内のとおりなんです。そこで、このような危険な工法について、今後どのように考えておられますか。特許を取り消すのか、それとも工法に改良を加えてやるのか、これはどういうお考えになっておられますか。
#296
○説明員(菊池三男君) 第一点でございます。間組のほうからの、一重締め切りがあぶないから二重締め切りをしたらどうかということに対して、建設省のほうは一重締め切りでやれというふうになっているということでございますが、これは、先ほど申しておりますように、任意工法ですから、建設省のほうとしては、どういうものでやれという言い方はしておりません。
 それから、こういう特殊な工法がその後ずっと使われておるかということでございます。これにつきましては、先ほど申しましたように、この時点までは非常にたくさんの施工の実例がございます。たいへん利点が大きいもんですからずいぶん使われておりますが、この事故以来、特に深い水中、あるいは水中の下が傾斜になっているようなところ、水の下の底が傾斜しているようなところ、そういうところにはこういう工法は危険であるから使ってはいけないということを通達を出しておりますので、その後はこの種の工法は使われておりません。それから、これは特許工法でありますので、特許の取り消し云々ということは、私どものほうはしておりませんけれども、実例としてそういう工法は使われておりません。
 それから、もう一つつけ加えさせていただきます。ただ、先ほども申しました非常に利点がある工法でございますので、調査技術委員会で出ました結論のたいへん技術的にむずかしい問題につきましては、その後も、建設省の土木研究所におきまして、そういう問題についての研究は進めております。
#297
○藤原道子君 研究を進めているんですか。私はね、あなた方はそれで済むけれどもね、事故の犠牲になった人の命はもう返らないんですから、少しでも危険性があったら徹底的に究明をしていただきたいということを、この際強く要求いたします。
 そこで、技術や工法が日進月歩で進んでいく中で、新しい技術や工法について、それを実施していく場合、労働安全の面から考えなければならない新しい問題ができております。特に、土木関係については、労働省は、技術の研究開発にあたり、建設省と一体になって研究していかなければならないと思いますが、これについて、過去、現在、それに将来、どのように進めていくつもりなのか。両省のお考えを聞きたいと思います。
#298
○政府委員(渡邊健二君) 先生御指摘のように、次々に、工法等についても新しい工法が開発されてくるわけでございまして、そういう問題につきまして、安全上いろいろ十分に気をつけなければならない問題があると思うのでございます。で、今回の法案におきましては、八十八条等におきまして、事業主がそういう工事で新しいものをやろうとするような場合には事前に届け出をさせる、こういうことになっておりまして、さらに、届け出があった計画のうち、高度の技術的検討を要すると考えられる場合には、労働大臣はそれを学識経験者に付議しまして、学識経験者の審査をさせるという規定があるわけでございます。その審査の結果、必要があると認めましたときには届け出をした事業者に対しまして労働災害の防止に関する事項について必要な勧告あるいは要請をするということもできる規定を設けておるわけでございまして、それらの規定の活用によりまして、新しい工法等に対しましては行政側といたしましてできるだけ安全、衛生の面からチェックをしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
#299
○説明員(菊池三男君) 建設省といたしましても、やはり新しい工法というものにつきましては、積極的にやると同時に、安全性等につきましての検討は十分やらなければいけない。たまたまこの新四ツ木の例をとりましても、少し詳しく、こまかくなりますけれども、この工法でやりたいと、これは任意工法ですから業者のほうでやってかまわないのですけれども、そういう場合にも、それの安全性を検討をいたしまして、当初出てきた案ではあぶないということで、数回手直しをしてじょうぶなものにやっておるということでございます。研究所等でいろいろそういう問題について研究を進める一方、監督する事務所におきましてもそういう重要なところにつきましては十分な安全の検査をして仕事を進めていっておるということでございます。
#300
○藤原道子君 出かせぎ労働者は何としても弱い立場にある。それで非常に重要な仕事をさせられておる。こういうことを考えて、建設省にしても労働省にしても農林省にしても真剣にこの人たちの立場を考えて今後の対策を進めていただきたいと思います。まるで下積みの日の当たらない人々ということでございますので、これらの人が希望を持って生きられるような対策、危険はいかなる事情がございましょうとも除去していく、こういうことをひとつお考えになっていただきたい。時間もそろそろ参りますので、そこでお伺いしたいのは、出かせぎ労働者の中で職安を通じている人と、あるいは知人とか友人を通じて就職している者との比較はどのようになっておりますか。
#301
○政府委員(道正邦彦君) 先ほどもお答え申し上げましたが、県によって若干のばらつきがございます。平均でございますと三五%から四〇%くらいが職安経由ということになっておりまして、残余は縁故その他でございます。
#302
○藤原道子君 これは出かせぎ者の地位向上ということであれされた中でちょっと見ますと、職安を通じている人は土建業では一四・一%になっております。それから製造業で四二・五%、合わせますると五六%ですか、ということになりますが、土建業が一番問題になる。その中で職安を通じている人はたった一五・一%、知人、友人、これを通じた人が六二・六%、それから無回答の人が二三・三%ですから、無回答の人もおそらく知人、友人をして就職したものと思うが、これはどうなんでしょうね。
#303
○政府委員(道正邦彦君) 県によって若干ばらつきがございますが、たとえば、一番最近の東京都の調査でございますが、これによりますと、建設業の場合でございましても、建設業の場合は一八・五%、それから製造業は三五・二%で先生御指摘のような傾向がございます。これは対策を立てる場合の基本が、やはり正常な就労経路を通じて就職をしてもらうというのが基本だろうと思いますので、極力安定所を通じ就職していただくように、四十七年度の予算におきましては、かなり予算的にも措置をいたしまして、市町村あるいは県と連絡いたしまして、就労経路の正常化ということについて格段の努力をする考えでございます。
#304
○藤原道子君 業者はなるべく職安を通じないほうを歓迎するんです。
 そこで、私がお伺いしたいのは、出かせぎ労働者手帳っていうのがありますね、これはいまどのくらい出ておりますか。
#305
○政府委員(道正邦彦君) 約半数でございます。
#306
○藤原道子君 半数というと……。
#307
○政府委員(道正邦彦君) 出かせぎに出られる方の半分でございます。
#308
○藤原道子君 五十万の半分だから二十五万。
#309
○政府委員(道正邦彦君) そういうことになります。
#310
○藤原道子君 どうもほんとかどうか疑わざるを得ない。
 そこで、業者がなぜ職安を通じないかということになると、職安を通じないほうが都合がいいのです、かってにやれるから。それで、たとえば気にいった労働者はこの次まで約束しておくんですね。人がほしいとき集まらなければ、知人、友人を頼んで、そうして出かせぎ者を吸収していくと、こういう方向でなかなか業者は考えておる。労働省はお人がいいと思う。
 で、私がお願いしたいことは、いかなることがあろうとも、職安を通じて就職するということをもっと強く指導していただきたい、そうしてすべての労働者がこの手帳がいただけるように。私は、そういうふうにしてもらわなければ、出かせぎ労働者の悲劇は直らないと思う。ことに、この際申し上げておきたいのは、新四ツ木問題で、あのときの被災者に業者が出した金は三百六十万円。ところが、その中の一人は、三百六十万円では納得ができないと裁判を起こしている。ここまで張り切ったのですが、それが業者があらゆる人を通じて、土地の有力者を通じて説得をして、泣く泣く三百六十万円をのんだわけです。それで、まあいろいろな資料があるのですが、問題は、問題が起きますと、業者はいち早く、けがした人や死んだ人よりも、すぐ地元へ人をやるのです。それで、あそこの会社はいい会社だからがまんしなさいよといって家族の説得をする。家族が聞かなければ、土地の町会議員とか市会議員などを通じてその説得に当たる。こういうことが資料にあらわれておるのです。「出稼労働者の権利問題」という中に出ているのです。まず第一に死んだ人よりも家族の説得に当たる、こういうことが行なわれている。それで、家族がいなかの人で弱いもんですから、土地の町会議員だのなんかになると聞かざるを得ないのです。おまえ聞かなきゃ今後おれは知らねえぞなんということでおどかされて、泣く泣くこれを聞いているという例がたくさんございます。
 さらに、この間も、四月に帰る予定であった秋田県の人が、帰るまぎわにぽっくり死んじゃった。ところが、これは職安の所長が紹介したんですけれども、こういう点で職安も責任を持てと交渉して、所長も何とかしますよと回答してるそうですが、これなんかを見ますと鉛中毒――鉛を粉にする職場で、健康診断は一回もやらない。死ぬ一カ月前の四月の残業時間は百八十時間なんです。休めば給料がないんです。だから日曜も祭日もないんですね。それで残業百八十時間をやらして、しかも鉛を粉にする仕事場であるのに健康診断もしていない。こういうことが許されてるんですよ、今日。だから、もっとひとつ愛情ある政治をしてもらいたい。そうして、この人を家族の承諾も得ないで解剖したんですね。そして地元では霊枢車で運んでほしいということを要求したら、運んでやるようなそぶりをして遺体を十八万円かけて霊枢車で運んだけれども、業者は一文も出しておらない。こういうことが堂々と行なわれてるんですよ。――私はいま健康を害しておりますので、あまり委員会で質問もしないんですけれども、こういう話を聞いたら質問しないでいられないからきょうは取り上げた。こういう冷たい業者に働かされておる人たち。それで、業者が人を使って説得する、こういうことが今日も行なわれてるということを労働省では考えていただきたい。労災補償金のほかにどのくらい会社からものをもらったかということを質問したのですが、これは大体二十万円以上の見舞い金をもらったというのはたった一〇%、一円ももらわなかったというのが半数ある、こういうところで働いている。で、相模原というところで土砂くずれのためにみぞに埋まって死んだ人、そこに弁護士と一緒に行ったけれども、その業者は何と言ったか。この辺の相場は一人死ぬと十万円だ、こういうことを平気で言えるような業者に使われておる出かせぎ労働者の立場を私は考えてやってほしい。そういうことは耳に入っておりませんか、労働省。
#311
○政府委員(渡邊健二君) 私どもも土建関係の出かせぎ者等につきましていろいろそういう事例を聞くことがあるわけでございます。で、そういう建設業の一部におきましては、出かせぎ労働者等が短期間にできるだけ収入を得て帰りたいと、そういう気持ちが強いことを奇貨といたしまして、先生おっしゃったような長時間労働をさせるとか、そういうような事例が時にあることもわれわれ監督その他によって発見をいたしておりまして、そういう場合につきましては、もとより法違反があれば厳正にこれにつきましては監督を実施いたしておるわけであります。で、われわれ建設業についてはいろいろそういう問題があると存じますので、一般の監督率よりははるかにこれは優先いたしまして、普通の一般の事業所の監督よりも約三倍くらいの監督率を高めまして、優先して建設現場等につきましては監督を実施し、できる限りそういうような法違反等につきましてはこれを発見いたしまして是正させるようつとめておるところでございますが、今後につきましても、一そう、そういうことで重点的に監督を実施してまいりたいと、かように考えておるところでございます。
#312
○藤原道子君 私は、御信頼申し上げますので、ひとつ気の毒な出かせぎ労働者のために、建設省、労働省あるいは農林省が御相談なさいまして、安心して働けるような対策を立てていただきたい。これを強く御要望申し上げます。
 そこで、労働災害被災者の救済事業制度というようなものをおつくりになるような考えはないでしょうか。労働災害を受けた人たちがどれだけ困っているかということをお考えになっていただきたい。それから月二日以上の有給休暇制度というものはとれないでしょうか。これは無理かもわからないけれども、労働基準法違反をしているんですね。百八十日も残業したりしてからだがもちっこない。けれども業者がやらなければならないというなら、基準監督のほうでこれは見のがしているんですから、それならば月二日以上の有給休暇制度を定めたらどうでしょうかということを考えますが、いかがでしょうか。
#313
○政府委員(渡邊健二君) まず、被災者の救済制度につきましては、現在労災保険制度があるわけでございます。これにつきましても私ども災害によって罹災されたような労働者の補償についてはできるだけ手厚くして差し上げたい。こういう考え方から数次にわたって改正をいたしてまいりまして、最近では四十五年に改正を行なったわけでございますが、しかし各方面からいろいろさらに手厚くする必要があるという御要望もあるわけでございます。したがいまして、これは基準法の災害補償の規定とも相関連する問題でございますので、現在基準法全般について基準法研究会で災害補償の問題も含めて御検討願っておりますので、それらの検討の結果等もあわせまして、今後とも労災保険の給付の改善等につきまして前向きに検討をしてまいりたい、かように考えております。
 それから有給休暇制度の問題でございますが、現在は基準法で一年間に八割以上出勤した者は翌年最低限六日の有給休暇がとれるということになっておりますので、短期間就労の出稼ぎの方々等でございますと、基準法の有給休暇というものの適用がない場合が非常に多いわけでございます。ただ、これにつきましては、昨年の十二月に基準法研究会から出されました問題点の中に有給休暇制度、特に短期の人、一年未満の人についても検討をする要があるということが指摘されておりますので、今後、そういう点についてもひとつ私ども検討してまいりたい、かように考えます。
#314
○藤原道子君 あなたがかりに出稼ぎ労働者であった場合に、こういう重労働でからだがもつはずない。けれども残してきた家内や子供に少しでも金を送ってやりたいと思うから百八十日も残業をする。こういうことなんですから、有給休暇制度を真剣に考えて、労働基準法の中になくても、労働基準法違反を片方はやっているのですから、私はやろうと思えばできると思いますから、ひとつぜひこの点はお願いしたい。大臣いかがですか。
#315
○国務大臣(塚原俊郎君) 季節労務者、出かせぎ労働者に対しましては、先般、各地の代表にも私はお目にかかりまして、家族の状況から、いま先生の御指摘になったような数々の点についていろいろ協議もいたしました。非常にお気の毒な状態にあります。確かにいまの有給休暇制の問題にいたしましても、労災についてはかなり改善されているといたしましても、まだまだ不均衡な面もありまするから、局長も答弁いたしましたように、労働省としては非常に重要な問題としてこの問題に前向きに対処してまいります。
#316
○藤原道子君 ぜひお願いしたい。
  〔理事高田浩運君退席、委員長着席〕
 それから最後にいやなことを申し上げます。労働省がかねてから中央労働災害防止協会に対して職場の快適基準を作成するように求めたということを聞いている。ところがそれがやっとでき上がって労働省へ提出してある。ところが労働省ではそれをマル秘事項としてこれを対外的に発表していらっしゃらない、こういう点。これがほんとかうそかは知りませんが、「労務スタッフ」これに出ております。これで私はびっくりしたのです。これをずっと申し上げるとたいへん時間がかかりますので省略いたしますけれども、報告の概要は、事務所、ビル、工場を対象に実態調査に基づいており、空気調整、温熱条件、気候、照度、――あかりですね、それから気圧、音などをどの程度に規制したらいいかということのあれだそうでございますが、これが労働省でどうもこれを発表すると、まあ、いろいろ問題があるからと思うのか知らぬけれども、せっかくここに作成を委託しながらできたものがマル秘で労働省にそっくりしまわれておるということは、私納得いかないのですが、これが事実かどうかを伺っておきたい。
#317
○政府委員(北川俊夫君) 事務所等作業環境の快適基準につきましては、この法律でも規定しておるところでございまして、そのバックデータといいますか、基礎データといたしまして、去年から実は先生御指摘のように、中央労働災害防止協会を経まして、その方面の見識者に研究をお願いをいたしております。この春、中間的にその報告をいただいておりますけれども、その雑誌に書いてありますようなマル秘事項にしておるようなことは全然ございません。現に部内資料として地方の参考資料で活用もいたしております。ただ、おそらく新聞等で言っておる点で私たち思い当たる点があるとするならば、中間報告的なものでございますので、最終的なものとして発表をしておらない、そういう点があろうかと思います。まとまり次第これはすべてオープンにして、それを事業場内でよりどころにして快適な職場環境をつくっていただく指針になるもので、マル秘にするとかあるいは中で隠して、あっためておくというようなものではございません。
#318
○藤原道子君 よくわかりました。それではよく検討していただいてこれを生かしていただきたい。
 最後に一つ、保健婦さんは、この十二条にありますね、「衛生管理者」、その中へ私は保健婦をやはり位置づけていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。現在、この資料によりますと、電電公社でもずっとこれは置いているようでございますが、これは看護協会の会員だけで六百八十一名現在働いているわけです。非会員を含むともっとふえるだろうと思います。保健婦さんという人の立場をお考えいただければ衛生管理には最適任者だと私は思いますので、いかがでございましょうか。
#319
○政府委員(北川俊夫君) 御指摘のとおりでございまして、保健婦さんの資格を持っておられる方につきましては試験なしに、無試験で「衛生管理者」の資格を与えます。
#320
○藤原道子君 安心いたしました。これはぜひ実現してほしいと思っております。
 きょう、いろいろ憎まれ口をききましたが、私は出かせぎ労働者がどれだけ今日の産業をささえておるかということを考えるときに、いまの悲しみ、苦しみ、家族の気持ちを思うとたまらない気持ちできょうは御質問申し上げましたので、三省とも御相談いただきましてよりよい方向へ進んでいただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
#321
○柏原ヤス君 昨年の末、金沢市の浅野川検診センターで山中漆器の生産に携わっております塗装従業員の健康について調査を行なっておりますが、その報告が労働省に来ておりますでしょうか。
#322
○政府委員(北川俊夫君) 先生御指摘の検診センターの調査につきましては四十六年の十二月に行なわれたものでございまして、労働省のほうに報告をいただいております。
#323
○柏原ヤス君 これは新聞にも取り上げられた問題なので来ていると思います。そこでこれがどうして問題になったか、これは加賀労働基準監督署、ここから浅野川検診センターにこうした人たちの健康調査を依頼した。ところが、その結果が、非常に心配な結果が出たわけなんです。そこで県がこれを取り上げて、公衆衛生課から山代保健所にもう一度調査をするようにということになって調査が行なわれた。ところが、その両者の検査の結果が非常に食い違っているということでこれは問題になったわけでございます。これは、私が申し上げなくてもおわかりになっていると思います。そこで非常にこの両者の検査について疑問が残されていると、こういうふうに新聞でもいっております。また、両者のほうでは、この検査に対しては自信を持ってやったのだと、こう言い合っているわけです。そういう点、労働省としてはどういうふうにこれをお考えになっていらっしゃいますか。
#324
○政府委員(北川俊夫君) 県は地域住民の健康状態の把握ということで、たとえばヘモグロビンの数とか、あるいは赤血球、血圧等につきまして検診を行なったようでございますが、労働省におきましては、労働者二百四十六名、一人親方四十九名ということで、現にこの山中塗りに従事しておられる方々を対象にして検診を行なったわけでございます。その結果、要療養者十八名というような異常な所見が認められておりますので、私たちはその山中塗りに従事しておる労働者、あるいは一人親方の方につきまして、専門的立場から調査をいたしましたので、これに基づいてこういう有機溶剤を使っております職場の環境の改善、あるいは今後の健康管理、そういうものの万全を期していきたい、こう考えております。
#325
○柏原ヤス君 これは私も時間があればその基準の問題とか、――またこれを調査する姿勢というようなものがやはり問題になっているからこういう食い違いがあるんだと思うのです。で、労働省としてもこれはただこのままにしておかないで、今後この検査を受けた人たちが一体ほんとうに悪いのか、それとも心配ないのか、悩んでいると思うんですね。そういう点でさらに取り上げていただいて、御調査していただいて、そして、こうした問題の中からああした職場で働く人たちが安心して仕事に携わっていけるような、そうした手も打っていただきたいと考える次第でございます。その点いかがですか。
#326
○政府委員(北川俊夫君) 有機溶剤を扱っておられます人々につきましては、有機溶剤中毒予防規則によりまして、年に二回定期に健康診断を行なうことになっております。次期の定期健康診断の時期には、そのときには十分先生の御趣旨を踏まえまして、徹底した健康診断が行なわれるように指導いたしますとともに、あわせて作業環境の改善、そういうものを厳密に指導いたしてまいりたいと、こう考えております。
#327
○柏原ヤス君 私くどいような聞き方でございますが、この両者の食い違いに対して、労働省としては取り上げられるお考えがあるかどうか。
#328
○政府委員(北川俊夫君) 前回の健康診断の食い違いにつきましては、これはその点を十分踏まえまして次期の健康診断の実施のときに、そういう相違、食い違いがあったことを踏まえて、綿密な健康診断を基準局としては指導いたしたいと思います。
#329
○柏原ヤス君 それでは直接この問題は、一つの問題としては取り上げないと、こういうふうに考えてよろしゅうございますね。
#330
○政府委員(北川俊夫君) 前回やりました両方の健康診断の食い違いをいまここでとやかくやりますよりも、将来に向かいまして、その食い違いを前向きに取り入れて、健診が十分徹底するように、そういう基盤にいたしたいと、こう申し上げたいと思います。
#331
○柏原ヤス君 そこで、お伺いいたしますが、こういった有機溶剤にはどういうものがあるか、また、どういう溶剤が使われているのか、教えていただきたいと思います。
#332
○政府委員(北川俊夫君) 山中塗りに限定をして、私たちが把握しております内容を申し上げますと、現在のところ、山中漆器の塗装につきましては、吹きつけの塗装が行なわれているようでございまして、それに使用されております溶剤は、アルコール系メタノール及び芳香族炭化水素類、トルエン等、こういうふうに把握をいたしております。
#333
○柏原ヤス君 そういった有機溶剤が人間のからだにどういう害を与えているか、こうした点をもう少しお聞かせ願いたいと思います。
#334
○政府委員(北川俊夫君) いまあげましたような有機溶剤の蒸気を呼吸器から吸入をいたしました場合には、貧血等の健康障害、そういうものが考えられますので、有機溶剤の中毒予防規則におきましては、これらの溶剤を第二種の有機溶剤と、こういうふうに指定いたしまして、換気装置の設置あるいは健康診断の定期的実施、こういうものを義務づけております。
#335
○柏原ヤス君 そこで、こうした有害な有機溶剤が使われているわけですが、無害の溶剤というものが研究されなければならないと思うんですが、これは研究されておりますでしょうか。
#336
○政府委員(北川俊夫君) 有機溶剤は最近非常に多くのものが使われておりまして、それにつきましては、常に、そういう毒性、有害性がだんだん少なくなるというような努力がされております。研究につきましても、たとえば、通産省関係の研究所はもちんでございますが、労働省関係の労働衛生研究所でもその毒性の減少の方向の模索、あるいはいまの段階で毒性に対してどういう対策が最も的確であるかというような研究で、労働者の健康の確保のための方策は、その時点その時点でわれわれなりに最大の努力をいたしております。
#337
○柏原ヤス君 この有機溶剤を使っている職業にどんなものがあるか。
 また、それに従事している人口がどのくらいあるか。これは掌握されておりますでしょうか。
#338
○政府委員(北川俊夫君) 有機溶剤につきましては、いま、先生御指摘のように、塗装それから印刷、接着、こういうものに使用されておりますほかに、これらを製造する事業所とか、油脂それからゴム、化学繊維などの製造の過程で使われるわけでございます。
 その人数につきましては、われわれが把握しております事業所の数から言いますと約十万五千。労働者数にしまして三十九万七千、こういうふうに考えております。
#339
○柏原ヤス君 そうした大ぜいの方たちの健康状態というものが把握されているかどうか、いかがですか。
#340
○政府委員(北川俊夫君) 先ほど申し上げましたように、有機溶剤が集中的に使われております地域においては、労働基準局の指導によりまして定期健康診断を行なっております。その際、有機溶剤関連の診断項目につきまして綿密な調査をいたしております。全国的にそれを集計したものはございませんけれども、そういう各産地ごとの調査によりますと、大体、約一〇%程度の異常者というものが発見されております。
#341
○柏原ヤス君 この健康状態の把握というものが非常に私は大事だと思うんです。それで、いまお伺いしますと、この健康診断のときにこれを把握できると、確かにできると思いますが、その健康診断を受ける人が一〇〇%受けていないわけですね。非常にそういうところに働いている人たちの自覚も薄いようですし、またこれを受けなければならないという啓蒙もされていないので、そうした健康診断を受けた人の中から、この健康状態の掌握というのは私は非常に不備であると思うんですね。そういう点で特にああいうところで働いている人たちが不健康な状態で働いているという現状から考えて、今後もそうした対策をしっかりやっていただくには、やはり現状の掌握というものが非常に大切だと思うんですね。あいまいな掌握の上から考えられる、そうした研究対策というものはいいかげんなものになると思うんです。また、そうしたデータから見れば、深刻な現状というものは労働省あたりではつかんでないというようなことになると思うので、この健康状態の掌握というものを何らかの方法でやっていくべきじゃないかと、こういうふうに思いますが、その点いかがでしょうか。
#342
○政府委員(北川俊夫君) 有機溶剤の検診の結果につきましては中小企業につきまして――まあ、こういう塗り物の関係は中小企業が非常に多いわけでございますが、そういう中小企業につきましては、前回も申し上げましたように、中央災防協会に委託をいたしまして、国の委託費でそういう中小企業の労働者の巡回検診を行なっております。先生御指摘のように、決して法律で特殊検診を義務づけておるから一〇〇%受けるという保証はございませんけれども、漸次そういう健康管理の重要性というものの認識も労使の間で浸透いたしてきておりますし、加えて国のそういう委託業務、あるいは検診機関の助成ということによりまして全体に普及すると思います。また健康診断の結果につきましては、先ほど申し上げましたように局地的に、集中的に有機溶剤を使っておるところの検診につきましては、それぞれ明確に把握をいたしておるつもりでございますし、巡回検診でやりました中小企業の検診につきましても、それぞれ結果を持ち合わしております。ただ、まだそれでも不十分でございますので、先生の御指摘のように、有機溶剤等に関連しての特殊健康診断の結果、あるいはその作業環境の実態把握というものには一そうの努力をいたしていきたいと思います。
#343
○柏原ヤス君 この溶剤を用いている職場の健康管理というものは、どういうふうにされておりますでしょうか。
#344
○政府委員(北川俊夫君) 有機溶剤につきましては、それを扱います労働者に対して、予防規則によりまして年二回の特殊健康診断の実施を義務づけております。
#345
○柏原ヤス君 この健康診断の受診状況はどのようですか。
#346
○政府委員(北川俊夫君) 健康診断につきましては、第一次検診と第二次検診と両方に分かれておりまして、第一次検診では赤血球の比重とか、赤血球数とか、尿中糖、そういうものを検査いたしておりますが、かなり専門的な検査でございますので、ものによっていわゆる先ほど業種をあげましたけれども、業種によってかなり違いますけれども、いまのところ大体六割から七割程度の受診率、こういうふうに見ております。なお、それ以外の点につきまして、法律に規定しておるけれども、受診をしておらないという現実もあるようでございますので、この点につきましては健康診断がさらに普及するように、一そうの監督指導につとめてまいりたいと思っております。
#347
○柏原ヤス君 まあ、せっかくこうした健康診断というものが行なわれているのに、確かに現場へ行ってみますと、非常にそれが徹底しておりません。診断を受けに行く途中でも、こんなものどうってことないよとかなんとか言いながら行く、そういう人もいるそうですし、また、実際、すごく忙しい中で働いているので、たった一日の検査の日には行かれない人も出ているわけなんです。いずれにしても、本人はもちろんのこと、使っているその事業主ですね、そういう人たち、もう少しこれは何かの啓蒙の方法を用いて、せめてこうした受診状況というものが年々ふえていく、そうして、これがいろいろな今後の対策に生かされていくようにしていくべきだと思いますので、何か積極的な啓蒙の方法をお考えになっているかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
#348
○政府委員(北川俊夫君) 今回、この国会で安全衛生法を制定していただきましたならば、これを契機に、いままで、やや徹底をしませんでした、そういう有害物関係の作業従事者についての健康管理は、徹底的に行ないたいと思います。そのための普及宣伝のPRも必要でございますけれども、やはり一番大事なことは、先生の御指摘のように、中小企業が主体でございますから、中小企業が安心して受けられるような健康診断、あるいは、先ほど私が申し上げましたようにまず、呼び水的に、委託検診として、国の費用でそういうところの従業員の方が検診が受けられるようにする。その二つの制度を当面重点的に行ないまして、検診の趣旨が、中小企業の有害業務従事者に対して、さらに一そう徹底するように努力をいたします。
#349
○柏原ヤス君 費用はどのくらいかかりますのですか、この個人一人について。
#350
○政府委員(北川俊夫君) 一次検診と、二次検診では違いますけれども、一次検診では、大体六百円程度というふうに伺っております。
#351
○柏原ヤス君 ちょっと山中のほうで聞いてみますと、千円かかると言ってるんですね。いろいろ、費用も、値段が違うと思いますが、ちょっと高いと思うのですね。あそこで働いている人たちが、ほんとうに健康診断というものが必要なんだ、大事なんだということがわかって受けるんでしたら、あれだけの診断を受けるんですから、六百円あるいは千円でもいいと思うんですけれども、あまり自覚してない。そういう人に千円出せと言うと、もうその千円で首を振っちゃう人もいるわけです。また、聞いてみますと、いろいろと、そういうところで働いている人たちが恵まれてない。いろいろな要求があるようですけれども、せめて、ただでやってもらえないかと、こういう声が非常に強いわけなんですね。こういう費用を国が出すということはたいへんなこととは思いますけれども、何かそういう方法をお考えになっているのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
#352
○政府委員(北川俊夫君) 法律に基づきまして、有害業務の従事者に対する健康診断の実施義務は、使用者に課せられておりますので、その費用は労働者が負担するのでなくて、当然使用者が負担すべきものと考えます。ただ、そうは申しましても、その使用者、事業主のほうが零細でございまして、やはり先生おっしゃるように、一人当たり千円の検診機関の負担が重過ぎるという声はあろうかと思います。したがいまして、先ほど言いましたように、まず、健康診断の重要性を認識させるために、国が委託費を出しまして、補助的な意味で検診が潤滑に行なわれるようなことは考えております。あるいはまた、特殊健康診断機関も、いろいろの検診のための機器等につきまして、たいへん費用がかさみます。ということは、はね返りまして検診の費用、健康診断を受ける費用も高くなるということでございますので、別にこういう検診事業というものは営利を目的とするものでもございませんので、われわれとしましてはそういう健康診断機関の機器の整備のための融資あるいは補助金というものを出しまして検診機関を育成いたしまして、それが間接的に健康診断の費用を引き下げるというような結果になることを期待していろいろの助成をいたしております。
#353
○柏原ヤス君 そこで、溶済による健康障害の防止のための国の研究体制というものはどうなっているんでしょう。また今後どういう体制を整えるつもりかお聞かせいただきたいと思います。
#354
○政府委員(北川俊夫君) 労働省におきましては職業病に関する研究につきまして、従来から労働衛生研究所で実施をいたしております。特に、溶剤関係の健康障害につきましてはたいへん重要な問題でございますので、いろいろテーマを取り上げまして重点的にやっておりますけれども、何ぶんにも溶剤の種類が多く、また他の職業病に関する研究も実施しなければならないというような関係で、決して従来十分と言えないような現状にございます。今回この法律制定を契機に、こういう研究機関につきましては抜本的に充実するという大臣の御方針もございまして、産業医学総合研究所というものを本年度の予算から三年計画で設立することになっておりますので、現在の衛生研究所の活用とあわせまして、長期的には新しい研究所によりましてこういう溶剤による健康障害の予防のための研究を一そう徹底するようにいたしたい。
#355
○柏原ヤス君 そこで、今度この法案が成立いたしますと、こうした職業病というようなものの研究は前進すると、こういうふうに考えてよろしいわけですね。特に機械化とか経済性というものが非常に強調されて、その反面、こうした働らく人たちの職業病というものがふえている、こういう点、今後、陰に隠れている問題を明るみへ出して、そして、それを前進させていきたいと、こう思いますので、その点確認しておきたいと思いますので、一言お願いいたします。
#356
○政府委員(北川俊夫君) 先生の御指摘のように最近は労働災害、なかんずく職業病あるいは有害性物質につきましてはたいへんいろいろの障害が出ております。これからの労働者の職場における健康と安全を守ります中で、いまおっしゃったような有害物につきましての事前のチェック、安全性の確立とか、あるいはもしそれによって健康に障害が起こりました場合の十分な対策、そういうものはますます重要になってきておりますので、この法律の制定を契機にいたしまして、いままでの努力にさらに一そう深みを加えまして職業病対策、あるいはそれの予防というものに万全を期してまいりたいと思います。
#357
○柏原ヤス君 大臣も何かそうしたことにたいへん力をお入れいただくようですが、一言おっしゃっていただきたいと思います。
#358
○国務大臣(塚原俊郎君) 世の中は非常に早いテンポで進んでおりまするので、新原材料、あるいはまた先ほどから問題になっております有害物質等、いろいろ労働者の健康がそこなわれるのではないかというようなことがいま大きな問題になっておると思います。ですからあくまでもわれわれは労働者の健康を守らなければなりません。その健康を確保する立場に立って有害物質の製造の禁止、あるいは許可制度あるいは表示制度の確立、こういうことをやるために労働安全衛生法を提案申し上げまして御審議を願っておるわけであります。これが法律となって世の中に出ました場合に、いま先生数々の御指摘がありましたが、そういう不安を解消するための法の運用というものについては万全を期する考えであります。
#359
○柏原ヤス君 この溶剤などを使っている職場の環境状況、この実態がどうなっているか、これは私が山中の例を見て申し上げているんですが、あそこに団地ができてたいへん近代化したように見えております。ところが、中へ入ってみますと、建物だけは確かによくなっておりますけれども、その中の設備は全く放置されていて少しも改良されていない。結局、そこに費用がないからできないということになっているわけです。まあ家庭工業としてやっている小さな職場、工場の場所ですね、そこへ行ってみますと、ほんとうにこんなところでこんな設備でやっていたんだったら大体長生きはできないなというような中でやっているわけです。そうした環境が非常に悪い。また、安い仕事をやらされているので非常にからだも疲れているわけです。それだけ毒の影響というものは大きいと思いますね。こうした工場で、排気設備がなかったり、また設備が所定の能力に達していない、こういう現状を見てまいりまして、これをどう指導してきたのか、また、どういうふうに対処しようとしていらっしゃるのかお聞かいただきたいと思います。
#360
○政府委員(北川俊夫君) 有機溶剤を使っております事業場につきましては、昭和三十五年以来、作業環境の改善、こういうものを指導いたしております。すなわち、原則的には第一種の有機溶剤につきましては局所排気装置の設置、第二種の有機溶剤につきましては全体換気装置、そういうものの設置について監督指導を行なっておるところでございます。ただ、先生御指摘のように、山中の漆器の吹きつけ塗装等を行なう事業場では、大部分最近では局所排気装置が設置されておりますけれども、その性能そのものにつきまして、監督の際に調査いたしましたところ、一部やはり能力が不十分だという点も見受けられます。これはこっちから厳重に注意をいたしまして、規則で定められておるレベルまでレベル・アップするように監督指導をいたしますとともに、やはり零細企業でございますので、そのための費用負担というものがなかなかたいへんでございます。今回の安全衛生法案の中には、そういう監督とあわせまして監督に基づく作業環境の改善をやりますためには低利の融資が受けられるという制度をあわせて導入をいたしております。これにつきましても従来の監督指導を、直せというような指示あるいは監督だけでなくて、それとあわせてその費用の援助そういうものを積極的に行ないたいと考えております。
#361
○柏原ヤス君 それでこの防止装置とか設備のことですけれども、確かに排気設備ができておりますけれども、あそこに行ってみますとシンナーのにおいがぷーんとしておりますし、一歩入ると目が痛くてあいていられないというような状況ですけれども、完全無害といえる、そういう装置とか設備というのはあるのか。それがその工場に備えられなくても、そういうものがあるのかどうか、この点いかがでしょうか。
#362
○政府委員(北川俊夫君) 有機溶剤そのものが毒性、有害性がございます。それを物に塗るとかあるいは吹きつけ塗装するという場合に、その部分が完全に密閉できるようなことが可能であるならばこれは有害性を完全にシャット・アウトできるわけでございますけれども、いまの塗装技術あるいは吹きつけ技術から見ますと、それを完全密閉するということは、まず不可能な場合がほとんどではないかと思います。したがいまして、有機溶剤の規則にございますように、その毒性、有害性を局所排気でやわらげるあるいは全体換気装置で第二種溶剤については薄めるというようなことによりまして、労働者の健康に障害を及ぼさない作業環境につくり上げていく、こういう方法しかないと思っております。
#363
○柏原ヤス君 時間が参りましたので、まだ、お聞きしたい点、省略さしていただいて、最後に一つお聞きしたいことは、この障害防止措置に非常に費用がかかるということはわかりますが、特に中小零細企業、こういうところでは資金面が非常に少ない、どうしてもこれは配慮してあげなければならないと思うわけです。また融資だけでなくて、補助金の交付というようなことも考える必要があると思いますが、その点いかがでしょう。
#364
○政府委員(北川俊夫君) 中小企業におきまして、有害な作業環境を改善するための費用というものはたいへんばく大なもので、その負担がたいへんだという御指摘につきましては全く同感でございます。したがいまして、先ほども申し上げ、また先生も御指摘のように、本年度からようやく融資制度ということで、二十億のワクで実際のすべり出しをするわけでございますが、あわせて補助金を出すべきではないかという点につきましては、将来私たちも真剣に検討すべき問題、課題と受けとめさしていただきまして、まず当面、本年度はいままでなかった融資制度を十分活用するということによりまして、これらの障害予防のための装置が早急に普及するようにいたしたいと思います。
#365
○柏原ヤス君 最後に大臣に。この補助金の交付という点はいかがでしょうか。
#366
○国務大臣(塚原俊郎君) いままでいろいろ出されました問題点、中小企業、零細企業の方の負担を考えますると、十分そのお気持ちはわかるんですけれども、いま御指摘の点について、直ちにこれをやるということはいかがかと、しかし関係省である特に通産省と、よくそういう問題は御相談をいたしまして、何らかの対策を講じなければならないと、このように考えております。
#367
○大橋和孝君 たいへん時間がおくれましこお疲れのところだろうと思いますけれども、少し続けて詰めの質問をさせていただきたいと思います。
 第一番目には、地方公共団体における清掃あるいは給食の作業につきまして、今度のこの法律はどのように適用があるのか。また今後どのように監督指導を進めていかれる考えか、こういうことをひとつ具体的に御答弁を願いたいと思います。
#368
○政府委員(渡邊健二君) 清掃、給食等の作業につきましては、安全衛生管理体制、それから危害防止措置、それから有害な業務としての特別の項目についての健康診断等、この法律の規定の適用があるわけでございます。これらの作業は、従来ややもいたしますると日の当たらないところとなっていた傾向がございますので、今後は、その作業内容を十分に把握いたしまして、規則等の制定に際しましてはその明確化につとめ、適切な措置をとるように行政運用にあたりまして十分配意していく考えでおります。
#369
○大橋和孝君 退職した者が職業病にかかった場合、すでに旧事業場が解散等消滅したような場合があるわけでありますが、こういうときはもちろんのこと、現在まだ操業中であっても、労働者本人の記録等が十分整備されていない場合も多いと思うのでありますが、最近、金属鉱山製錬所あるいはまた製鉄所のコークス炉等で働いていた労働者が、先ほどの質問にもございましたように、退職後肺ガン等におかされている例があるわけでありまして、これらの労働者の労災補償につきまして労働省は将来どのような措置をお考えになっているのか、詳しく御説明願いたい。
#370
○政府委員(渡邊健二君) 退職されました労働者が職業性の疾病にかかられました場合は、これは医師の診断等によって業務との因果関係が認められるようになったときから時効が進行するように取り扱っているところでございます。また、業務上外の挙証につきましては、給付請求書を提出する際に労働者が業務上であることを疎明することになっておりますが、たとえその疎明が不十分でございましても、行政庁が調査をいたしまして、その調査の結果に基づいて業務上外の判断はすることにいたしております。金属鉱山の製錬所におきます製錬の作業、それから製鉄所のガス発生炉作業等に従事していた労働者に肺ガンが発生することがありますことは医学的にもわかっておりますので、不幸にして、そういうような業務上の疾病が発病いたしました場合には、在職中であると退職後であるとを問わずに労働基準法の施行規則三十五条三十一号に該当いたします業務上の疾病といたしまして取り扱い、所要の労災補償を行なうことといたしておるわけでございます。
#371
○大橋和孝君 それじゃひとつ大臣のほうにも御答弁願いたい。いろいろ問題をひとつお尋ねをしておきたいと思います。
 労災防止指導員の法的根拠を明確にするために次期国会でこれを処理するお考えはないかどうか。
#372
○国務大臣(塚原俊郎君) 労災防止指導員制度は民間の学識経験者が有する労働災害防止に関する能力を中小規模事業場の安全衛生水準の向上に役立て、労働災害防止についての企業の自主的努力を期待しようとするものであります。その趣旨は、現在労使に漸次浸透し、効果も発揮されつつありまするが、反面、一部では本制度についての理解が必ずしも十分でないこと、指導員の能力にさらに一そうの向上が望まれていること、こういう問題もありまするので、当面はこれらを解決し、本制度をより定着させることにつとめてまいる所存であります。ただいま御質問の御趣旨につきましては十分わかりました。御趣旨を尊重し、早急に検討をし、その結論を得るようにいたしたいと思います。
#373
○大橋和孝君 第二十五条の解釈につきまして客観的に危険が存在すると判断された場合に、労働者の判断で退避をし、一時的に就労を拒否することが許されると考えられますか、これはどうでございましょうか。その場合、まず危険を予知した労働者が呼びかけて全員を退避させることも当然考えられるが、どうでございましょうか、あわせて御答弁を願いたいと思います。
#374
○国務大臣(塚原俊郎君) 本条は、自己の労働者に対し、労働災害発生の急迫した危険がある場合に、労働者を退避させなければならない事業者の責務を規定したものであります。しかし、お説のとおり、労働災害の発生の差し迫っているときには事業者の義務履行の指示がなくとも労働者が就労を中止し、その現場から退避できることはきわめて当然のことであります。
#375
○大橋和孝君 それから健康診断のことでありますが、健康診断を行なった会社はその結果を産業医及び一般医師は安全衛生についての所見をそれぞれこの監督署あるいは労働組合に通知すべきであると考えます、どうでございましょうか。
#376
○国務大臣(塚原俊郎君) 健康診断の実施結果は、当該事業場におけるその後の健康管理の基本となるべき重要資料でありまするので、事業者はその結果を「健康診断結果報告」として監督署へ通知しなければなりません。また、「労働者の健康障害の防止に関する重要事項」として、衛生委員会に付議されることとなります。産業医及び一般医師の意見のうち、主要なものにつきましても、事業者は当然衛生委員会に報告し、委員会の審議を経てそれにかかる措置を行なうことになります。なお、労働組合についても必要事項を連絡するよう行政指導をいたしたいと考えております。
#377
○大橋和孝君 快適基準の作成あるいはまた実施指導にあたりまして、労働団体、関係産業別労働組合の意見を十分に聞くべきであると思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
#378
○国務大臣(塚原俊郎君) 快適基準は、温度、湿度等について作成する考えでありまするが、これにつきましては個々人によって快適とする範囲に差があり得るのでありまするが、大多数の人々が快適と感ずる一定の範囲が存するので、これを快適基準として公表し、もって職場環境の快適化を促進しようとするものであります。このような快適基準はその性格上、作業ごとに考えられるものであり、またその対象とする温度、湿度等は職場環境の重要な要素でもありまするので、その作成、実施指導にあたりましては、科学的な調査研究の上に立って関係者、なかんずく労働組合の意見をも事前に十分に聞かせていただきたいと考えております。
#379
○大橋和孝君 労働団体が主宰する災防団体の育成に努力する必要があると思うのでありますが、この点はいかがお考えですか。
#380
○国務大臣(塚原俊郎君) 労働災害防止が真にその実をあげるためには、国の施策に加え、労使をはじめ関係者の日常の自主的災害防止活動こそ肝要であると考えます。このような観点から、お説の労働団体が自主的に災防団体を設立し、災防活動を行なうのは好ましいことと考えまするので、そのような場合には、その効果の実があがるよう指導育成につとめてまいりたいと思います。
#381
○大橋和孝君 有害物質等の規制につきまして、従来ややもいたしますと産業保護的な行政におちいりやすい傾向にありましたが、今後、産業の発展に伴いまして、新しく出てくる化学物質について、労働者の安全を守る立場から危険性を迅速に把握をして、的確に規制するよう積極的につとめるべきであると思いますが、所見をお伺いいたします。
#382
○国務大臣(塚原俊郎君) 最近、労働者に健康障害を生ずる有害な物質が増加していることはお説のとおりであります。このため、この法案では危害防止基準条文の整備、製造等の禁止制度拡充に加え、製造許可制度、有害物の表示制度を創設したところであり、それぞれ対象物質の追加等により、これらの制度を積極的に活用していく所存でございます。その場合、有害物質の規制に関与する省庁がかなりの数にのぼり、それぞれの立場から規制を行なっているところでありまするが、労働省としてはこれらの省庁と十分連絡し、調整をはかり、労働者保護の基本原則がいささかもそこなわれることのないよう、十分積極的に努力する考えであります。以上の措置とあわせて、化学薬品等の有害性の調査を事業者に義務づけるとともに、労働省としても産業医学総合研究所の設置等、研究体制の整備を通じて、有害物の研究を促進し、その成果の普及につとめる考えであります。
#383
○大橋和孝君 次に、コンサルタントの試験免除の対象となる人はどのような人でありましょうか。
#384
○国務大臣(塚原俊郎君) コンサルタント試験は、コンサルタントとして必要な知識及び技術の有無を判定するために行なうものであり、したがって、他の国家試験等により、その知識及び技術能力が明らかな者については試験科目の一部または全部を免除することを考えております。これに該当する者としては、たとえば、労働安全コンサルタント試験については技術士、一級土木施工管理技士、労働衛生コンサルタント試験については医師であって労働衛生に教養を有する者などを考えておるのでありまするが、この点については中央労働基準審議会に諮問し、公正な基準を定めたいと考えております。
#385
○大橋和孝君 労働基準法研究会につきまして労働者である専門家を加えるなど、研究の公正を期する考えはないでしょうか。
#386
○国務大臣(塚原俊郎君) 労働基準法研究会は、労働基準法をめぐるいろいろな問題について、客観的、専門的に調査研究を行なうものでありまして、労働に関し法律、経済、安全衛生、婦人問題等に学識経験のある二十名の方々に研究を委嘱しており、現在、鋭意調査研究が進められているところであります。
 研究会の運営にあたりましては、従来から関係労使の意向を十分参酌してきたところでありまするが、今後は、御趣旨に沿い、その点に一そう留意して運営されるよう措置いたしたいと考えております。
#387
○大橋和孝君 補償について遺族の生活状態等を考慮いたしまして、早急にこの保険法の改正を行なうほうがいいと思うのでありますが、そういうお考えはないでしょうか。
#388
○国務大臣(塚原俊郎君) 労災保険の給付につきましては、従来から数次の法律改正を行なって、その水準の向上につとめてきたところであり、本年四月一日からは、給付基礎日額の最低額と葬祭料の定額部分の額を引き上げたところであります。現在では、障害補償、遺族補償については、被災労働者及びその遺族の生活を長く補償する趣旨から年金が中心となっており、その水準もILO百二十一号条約にも達し、国際的に見ても遜色のないものと考えております。
 遺族補償をはじめとする労災保険の給付水準の改善につきましては、多くの要望のあることは承知いたしておりまするが、労災保険の給付水準は労働基準法の災害補償と密接な関係がありまするので、両者の関連を考えつつ、労災の給付改善について前向きに検討することといたしたいと思います。
#389
○大橋和孝君 以上、まとめていろいろ御質問を申し上げたのでありますが、非常に積極的な御答弁をいただいて、非常にありがたく思っておるわけであります。特にいま申し上げたことは、どうかひとつ、労働省においては積極的な姿勢でもって実行していただきたい。これをお願いをいたしまして私の質問を終わります。
#390
○委員長(中村英男君) 本案に対する本日の審査はこの程度といたします。ちょっと速記とめてください。
  〔速記中止〕
#391
○委員長(中村英男君) 速記を起こしてください。
    ―――――――――――――
#392
○委員長(中村英男君) 次に、茨城県立中央病院における労働問題に関する件について調査を行ないます。
 質疑のある方は御発言を願います。
#393
○大橋和孝君 きょうはたいへん時間がおくれてお疲れのところ、あれでございますが、まず、労働省のほうへちょっとまとめてお伺いして、そのうちまた厚生省がおいでになるだろうと思いますから……。ことにきょうお尋ねしたいのは、茨城県立の中央病院の話でありますが、特にまた友部病院というのが二つあるわけでありますが、この問題についてお話を承りたいと思いますが、ここは非常に闘争が長期化いたしておることは御存じだろうと思うのでありますが、こういうようなことは非常に聞いてみますと、非常に理事者側が不誠意と申しますか、非常に団交を行なってないのですね。そしてやはりこの労働の基本的な問題を非常になおざりにしておるというのが、この団交を長引かしておるというふうなことにしたわけです。去年の十一月ごろからですか、二回くらいしかしていない。いろいろ調査をしてみますと、不誠意なような感じがいたしておりますが、最近どうも公立病院の中で労働問題に対してそういうふうな形で、何と申しますか、不誠意な方向で労働組合のいろいろな要求に対して抑圧的と申しますか、何かそういうふうな傾向があちらこちらに見られるようであります。実はこの間、松山のほうに参りましてもそういうことを感じました。非常にロックアウトしたり非常にたいへんなことをしている。でそういうふうな感じがいたすわけでありまして、特にこの茨城の病院につきましてもそういう感じがいたすわけであります。特にロックアウトをしたり、あるいはここはまだロックアウトしていないかもしれませんが、非常に患者を退院させたりして、何かその辺の地域で非常に重要視されている。ことに命の問題ですから、たいへん病院の使命も大事でありますから、そこで起こっておる紛争というものは相当高く重要に評価をしなければいかぬと思います。たとえば去年に行なわれた、あの医者の何というか一日休診というか、一カ月でしたか、何かやりました。あのときなんかの世評からいえば、やはり生命に関係するから医者がそういうことをすることはほんとうに大問題だとして、医師会あたりに大きな非難がとんだわけでありますが、ここの公立病院の使命というのも同じでありまして、ことにこの茨城県の中央病院には相当重症患者がたくさん来ておるということは、茨城の地区では大きい病気になって重症になったとき、ほんとうに助けてもらう場所として、この茨城県の中央病院が位置づけられておるわけです。それで問題を掘り下げてみますと、それほで重要な問題でないにかかわらずもう紛争が長く続く、こういうふうなことでありますと、やはりそういうふうな医師の診療拒否に対するきびしい世論の批判と同じように、こういう中央病院に寄せられている、周囲の住民からすればそうした労働の紛争というものが起こっていることに対しては非常に不安に思う、生命にも関係するという観点から見ますと、私はこれは非常に重大問題だと思うのでありまして、ですからこういうところに紛争が起こったときには、もっと積極的にこれを理事者側から、また労働組合に対してむしろ指導をして、そして、そういう紛争を早く終わらせるように、そのためにはどうしたらよいかということに対して相当力を入れるべきじゃないか。何かそれを言うてくるのが組合のほうが言い過ぎだとか何だとかということでもってほっちゃらけておいて、ことにまた、どんどんと患者を外へ移してしまってやっていくということになっては、やはりこれはたいへんな問題でありますので、どうかひとつこの労働問題が、闘争が非常に長期化しているというような問題について、局長のほうから、その辺の様子をどう把握していらっしゃるか、ひとつ聞かしていただきたい。
#394
○政府委員(石黒拓爾君) 茨城県立中央病院及び友部病院の争議につきましては、先生よく御承知と思いますが、昭和四十五年の二月の協定に端を発しているということで、それから本年の二月ごろからそれが再燃をいたしまして、その間、御指摘のごとく交渉もなかなか進捗しなかったようでございますが、最近はまた交渉を行なっているように聞いております。組合側が夜勤拒否というようなこともやっているということで、かなり紛争がもめているということは、私どものほうでも聞いております。申すまでもなく県立病院の問題は、これは地方公務員法の問題でございますから、直接私どもの所管ではございませんが、しかし、こういう御指摘のように県の基幹的な医療機関というものが、労使関係が不安定であるということは、はなはだ好ましくないことであって、労使双方が誠意をもって話し合いによって早く事態を平穏に戻すということがきわめて望ましいと考えます。
#395
○大橋和孝君 厚生省が来られる前に、もう少し労働のサイドでお話を承りたいのですが、局長がおっしゃいましたように、ここはやはり県の病院ですから、地方公務員ですということは私もよくわかっておりますが、これはこの次の機会にぜひ県の衛生部長なり、あるいはまたその病院長なりおいで願って、そして、その立場を十分聞かしていただきたいと思います。
 私いま、先ほどちょっとくどく申し上げたように、非常に病院のその紛争というものは私はそういう意味で非常に重大なんですね。ところがこれはなかなかどこにネックがあるかよくわからないのですけれども、長引くわけです。これは地方公務員であるから、労働省のほうから積極的にやってもらえないからそういうことが起こるのか、その辺のところ何か労働省では局長あたりどういうふうに把握していらっしゃるか。
#396
○政府委員(石黒拓爾君) 私どものほうもよくわかりませんが、要するに、看護婦の定員充足が非常にむずかしい。これはこの病院に限らず、全国至るところにある問題でございます。そこが一番問題ではなかろうかというふうに考えております。
#397
○大橋和孝君 もちろん今度の闘争は主体がそれにあるし、まあそれでいろんな状態が事故の起こりそうな状態になっているから、起こっていることはよく知っておりますが、ただ私は紛争解決のルートですね。それは、その問題が解決されなかったら、この紛争はおさまらないという見方もありますけれども、これは積極的にもう少し理事者が考えるならば、私はもっとこれは解決していくんじゃないかというふうに思います。特にこの辺の問題ですと、これはあとから厚生省が来られてから話を聞こうと思いますけれども、あちらこちらの病院あたりでも問題が起こっているところを見に参りますと、ついほかにも私は見たんでありますが、結局は三六協定もしないで非常に時間外の長い勤務をさす、こういうことはやはり私どもから見れば看護婦がいないからそうなるのだといえばそれまででありますけれども、労働条件では非常に悪い状態が押しつけられるというか、やらざるを得ぬようになっているんです。こういう面はやはりこれは労働省のほうで相当きびしくいろいろ調査を進めながら、各地域には基準監督署もあるわけですから、そういうところから労働条件の面を十分に指導していただいて、もう少し言うならば看護婦さんがそういう労働条件を犯すようなことまでやらなきゃならぬような状態をいつまでもほっておかないで、それを解消するために、もし看護婦が少なければ看護婦をつくるなり、もっとたくさん養成するなり何なりということをもっと国のほうでもやってもらえるような方向に持っていけるような指導、これはやっぱりどっかから突き上げなければそういうことにならないわけですから、特にこういう県立病院で六百床に近いほど大きな病床を持っていらっしゃるのがもう二百何ぼに減らしてしまう。これはやむを得ないといえばやむを得ないわけですけれども、これは問題になってくるわけでして、それで、中を見てみると、それは労働の強化というか、おそらく私は基準法違反というものがあちらこちらにたくさん見られておるということが、見られるという程度じゃなくて、私はむしろそれが従業員、看護婦なり、あるいはまた事務職員の健康を害してしまうというところまでいっているんじゃないか。これはそうなってきますと、やはり労働者の健康上の問題になってきますから、やはり労働省のほうではこれは相当手広く地方公務員であろうと、国家公務員であろうと働く者の立場から、そういう方々をひとつ御指導願わなければいけないような感じがいたしますけれども、そういう意味ではやはりそれは地方公務員には地方公務員としてのあれがあるでしょうし、国家公務員は国家公務員としての一つのワクがあるわけですから、労働省がそれはどうにもできないといえばできないわけですが、先ほど申したような非常に病院なんかの使命から申して私はもうここらでひとつ労働省もある程度各省に働きかけて、そうしてそういうものがどこにネックがあるか、どこにそれが問題があるかということを労働サイドから、従業員のそういうふうな労働条件の側からひとつ、てこ入れをしていただかなければいけないのじゃないかと思うのですが、そういう意味ではどんなふうにお考えになっておりますか。
#398
○政府委員(石黒拓爾君) 病院は数年前に民間病院でたいへんストライキが瀕発したことがあります。その当時、病院の労務管理が非常にまずいんじゃないかという御指摘もいただきました。私ども所管の分につきましてはその後労働基準局等で努力をしてかなりの改善をみているんじゃないかと思っております。公立病院につきましては、直接の問題ではございませんけれども、これは民間病院に対して範をたれるべき立場にあるわけでございます。私どもといたしまして厚生省あるいは自治省でございますか、関係省にも注意を喚起したいと思っております。
#399
○大橋和孝君 ほんとうに、私どもあちらこちらでこう次々次々と紛争があっていろいろなところを見せてもらっておりますが、そういうところを見せてもらっておりますと、特にそういうふうな非常にあちらこちらに条件は違いますけれども、やはりこの労働者としての地位が守られていないというところに、いろんな紛争が起こってくるように思います。ですから、やはりこの基準の立場を十分にとっていただいて、私は労働省がひとつ、てこになっていただいて、厚生省なりあるいはまた自治省なり、あるいはまたどっかその各関係省と連絡をし、あるいはまた地方の公共的なものに対しましても、特に私は、てこ入れをしていただいて、ほんとうに、この病院というものが国民の生命を守る上に万遺憾のないような労働体制、あるいはまた、そういうふうな仕組みというものを確立をしていただきたい。これがもう先決だろうと思います。これが十分できていなければ、医療看護という問題にも発展するでしょうし、命にも関係するでしょう。あるいはまた働いている労働者自身の生命にも関係するということになるわけですから、非常に大きな問題だと思います。特に、労働省のほうにひとつそれをお願いをしておきたい。大臣、特にひとつお願いをしておきたい。大臣、特にひとつお願いをしたいと思いますから、よろしくお願いいたします。
 それから厚生省もおいで願いましたので、次にちょっと質問を転換さしていただきたいと思いますが、ここの問題はやはり看護婦充足が一つの問題になっておるようでありまして、三年前に百九十七名を入れるようなことを約束をして、労働組合とも話し合いが進んでいるようであります。ところがそれがいまになっても半分も充足されていない。それでその間、労働組合のほうでいろんな調査をしてみておりますと、やはりこの当然、もっとやらなきゃならぬ努力がやられていないんじゃないかというものもあるわけでございますが、この看護婦充足がこのようにむずかしい、こういう状態はやはり医務局なりあるいはまたその厚生省では、もし看護婦さんがそんなに手に入らないものならば、私は看護婦さんの養成に対してもっと国が積極的に乗り出すようにしなければいかぬのじゃないか。私も聞き及んでおりますが、十六階の都立の病院もできましたけれども、まだ半分ぐらいしか動いてないという、これはやはり聞いてみると看護婦さんがいないからだという。やはりこれ考えてみますと、今後、このごろはむしろベット規制をはずして、もっと公立病院なり公的病院を拡充すべきじゃないかという意見が、盛んに行なわれているわけでありますけれども、ベット規制をはずそうが、はずすまいが、肝心のそういう看護婦さんが入ってこないという状態では、これもたいへんだ。私どもも経験しているのでありますが、看護婦さんはなかなか希少価値でありますから、どんどんどんどんとプレミアをつけなかったら動いてくれない。また地方におりますと、小さい病院あたりになりましたならば、どこかに動けばまた給料が上がるわけだから、どんどん動きたいという形もあるわけです。いろいろなことで、それは当然給料が安過ぎるから、手当が安過ぎるから、そういうことになろうと思いますけれども、もう少し手当の面も十分にその人たちにまかなうような、いまのような経済情勢でありますからして、賃金のアップあるいはまた労働条件の改善をしなければなりませんが、いずれにしましても、ここの労働組合はそういうふうなことで管理者といろいろ話し合いを進めておるわけですが、うまくいってないような感じがいたしております。これは医務局のほうでどんなふうにこれを把握していらっしゃるのか、ここの紛争についての御見解を伺いたいと思います。
#400
○政府委員(松尾正雄君) 茨城県のこの両病院におきましては、私どもの受けております報告では、いま御指摘の看護婦さんの定員も全部年々ふやしております。で、定員はやはり増員をしておりまして、ただその充足率が必ずしも一〇〇%いかない。したがいましてその定員はふやしておりますけれども、完全には埋まらない。ただ、埋まらない形でも、歴年見ますと、前よりも実体は、実質はふえておる。こういう形にはなっておるようでございます。したがいまして定員増加とこの充足にはそれぞれ御苦心もあるかと思いますが、努力をしておるというあとは私どもは見えると思います。
 ただ、私ども、なぜこのようにここで集まりにくいのかということについては、まだ突っ込んだ検討もできておりませんが、まあ一つは茨城県全体が比較的看護婦が不足をしておることでございます。したがって県自体につきましても、さらにこの養成力の拡充ということを地元でやりますように、四十七年度におきましても特別の補助金を出すつもりでおりますけれども、そういう形で充足をしてまいりたい。と同時に、しかしやはり個別的な問題といたしましても、何か検討を要すべき問題があろうと存じます。これは例をあげていいか悪いかわかりませんが、国立の水戸にございます水戸病院だとか、あるいは結核療養所でございました晴嵐荘、こういったところの看護婦さんの充足率はほぼ一〇〇%という状態になっております。同じ県内でございます。したがいまして、単に養成力を増すということは、私どもも前々から申し上げておりますように異論もございませんし、また処遇の改善、また定員の増加等によりまして、労働条件の改善ということは一連の動きとして努力いたしておりますが、いまのような状況を見ますと、もう少しやはり県自体につきましても病院自体につきましても、何か個別的にもう少し特性があるんではないか。この点を一歩突っ込んで研究する必要があろうかと存じます。私ども、また必要があれば県ともその辺についてよくほかと比較をしながら、どういうところに問題があるかを詰めていくことが具体的な解決の方法ではなかろうかと存じております。
#401
○大橋和孝君 時間もおそいですから、なるべく詰めて、ちょっと二つ三つ聞いて終わることにいたしますが、ここの病院は――これは保険局のほうにちょっとお聞きしたいのですが、基準看護の特類を受けていられるわけですね。そして、特類といえば最高ですね。今度できまして、もう一床について何ぼかずつの手当てがついているわけですが、こういう状態のものになっておって、ここでは非常にたくさんの付き添いを使っておる。八十名もおるわけなんですね、表なんかでちょっと見てみますと。入院患者数が三百五十五名、これの中で付き添いを八十名つけている。これは健康保険法でいったらたいへんなことなんで、むしろ特類をとっているくらいであれば、私はその付き添いをとるべきじゃない。ところがここはそんなふうにしてやっておる。だから、私はやはりこういう公立病院が病院の範としてやらなきゃならぬのに、こういうことが堂々と行なわれておって、しかも組合からは看護婦のまた充足をしてもっとうまくやろうじゃありませんかという話し合いに対しては、ろくに団交もしない。こういう状態でいくというやり方は、一体この病院の理事者はどう考えていらっしゃるのか。これはやはり保険局のほうではどんなふうに把握していらっしゃいますのか、こういう特類というものが一ぱい出てきていいものなのか。やはりこれは模範としていくところで、こういう特類が一ぱい出てくることになると、特類のためのあれがもう、ちょっと何か不信を買うことになってくるんじゃないかというようなことも考えられるわけでありますが、この辺の問題について、私は、これは争議中でありますから、その問題を特に取り上げるわけではありませんが、もし、こういうことであれば、やはり県立病院というような病院でしたら範をなすように、何とかもう少し努力をしてもらいたい、こういう感じを持つのですが、いかがでございましょうか。
#402
○政府委員(江間時彦君) 基準看護という制度は、先生御承知のとおり、看護要員が一切の看護を行なうということを前提とした制度でございますから、それ以外の人間が制度として看護の中に入り込むということは適当でないということでございます。いまおっしゃいました付き添いというようなものも、本来的には、患者さんあるいは患者さんの家族が、身近にそばにおりたい、あるいは身近に世話をしたいという御要望がありまして、そして、患者さんあるいは家族の方が本来そばにおられる。それが何らかの事情でそばにおれないといった場合に、患者さんもしくは家族の手でそれに相当する人をみずからお見つけになって、そして私的な契約によりましておられるわけでございましょうから、基準看護制度とは全く無縁のものでございます。もし基準看護制度との関係でそういう人がおられるならば、それは明らかに、われわれといたしましてはケース・バイ・ケースでよく調査しまして対処しなければならないということになると思います。
#403
○大橋和孝君 なかなかその看護婦さんの業務を助けていらっしゃるわけでありますから、一ぺん、私はまだ詳しいことは存じませんが、ひとつ御調査を願って、やっぱり県の中で模範病院であるわけですから、そういう病院がせめてそういうことのないようにしていただくことが、将来、公的医療機関に対する国民の信頼、こういうものにつながるわけでありますから、やはりそういうところでりっぱにひとつ範を示していただきたい。
 それから、私は、そういう問題が、まあいろいろ労働紛争の中でよけいそういうことが起こり得るかもしれませんけれども、六百床に近いその病院がどんどんと病床数を減らして二百何ぼに減らしていく。それは、中にはなかなか重症の人が多いということ、これはやはり県の中から期待をされて、たくさん重い病気の人が集まってくるわけですから、こういうのをベッド規制をしていくということになりますと、私はこれも一つの大きな問題だと思うのであります。それから、そのうちで、また労働の問題になりますが、この協定、三六協定なんかも結ばないで、これは理事者側から拒否しているわけであります。組合側はそれを要求しているにもかかわらず拒否をしておる。それでありながら、この時間帯を見てみますと、非常に時間外の時間が多い。たとえば、これを調べてみますと、非常に時間数が多いわけであります。この表で見てみますと、看護婦全体が百五十一名で、延べ時間の時間外労働時間というのが九百十一時間、一人当たり約六時間です。それから一人当たり、職員は十二人おりまして五百三十五時間ですから、四十五時間ぐらいの時間外就労というような形で、非常に時間外の就労が伸びて、労働条件というものが非常に悪いわけであります。また重症でありますから、もう非常に何と申しますか、時間外が多い。こういうふうなことがあって、しかも、これがたとえば調剤をしたりあるいはまた処置をしたりすることが、ほとんど常時勤務と同じほど忙しい。こういうふうな問題も出ているわけでございますから、こういう問題に対しまして、やはり労働条件を十分に監督をして、そうしてほんとうに働く条件を、労働者の条件をよくしていかなきゃならぬのだと、それはまた労働上の問題からもたいへんだと思います。どうかひとつ、局長さんのほうからも御指導を賜わりたいと思いますので、どうぞこういう状態、実態を基準局のほうで、県のほうの監督署のほうへ行って、一ぺん実態を調査してもらいたい。そうして、それをひとつこの次までに御報告をいただきたいと思います。これは私が直接見に行っておりません、聞いただけのことでございますから、特にそういう調査を御依頼しておきたいと思います。
 それから闘争期間中に外泊を命じた患者がたくさんあるようでありますが、そこの中にはたいへん結核菌を出している患者を外へ出しているわけであります。これは結核の問題でたいへんだと思いますが、強制外泊をして四月二十七日から五月の初めごろまで外泊をさした。その中でずっと見ますと、外泊者八十五名中十三名が相当多量の菌の排出者である。こういうようなことを考えてみますと、やはりこれは公的病院にとってはちょっとやはり考えてもらわなければいけない問題だと思います。いろいろ菌を排出する人なんかの調査も聞きましたが、かなりの量を出しておる。こういうようなことを見ますと、たいへんこれは問題がございますので、ひとつお考えを願いたいと思いますが、いかがでございますか。
#404
○政府委員(松尾正雄君) 私どもは、その争議中に、夜間の勤務ができない、いろいろな看護体制ができないという事情のために、やむを得ずいわゆる外泊許可を与えた患者さんがいるようでございます。そういった点について私どもが県を通じまして報告を求めたところでは、いわば主治医が一一排菌状態、からだの状態というものを確認した上で認めておる。決していたずらに出しておるものではございません。したがいまして、その外泊を許した者の中には、その当時においていわゆる排菌者というものはないのだということをわれわれは報告を聞いておるわけでございます。いま先生のお話だと、十三名ほど排菌者がいるという話でございますが、中には命令入所の患者もおられるようであります。命令入所の場合は、これは入所当時は当然排菌者であろうと思いますが、私どもが聞いたところでは、その段階における外泊当時には、もうすでにいまの排菌者じゃなかったというような報告をいただいておりますので、その真偽のほどはまだよく調べてみないと、私どもケースの上で一々当たるわけにもまいりませんので、県の報告では以上のようなとおりでございます。
#405
○大橋和孝君 気がせいてなかなか……、もっといろいろ詰めて話を聞きたいけれども、かいつまんでやらせてもらいますが、実はその点も私はもっとこの人とこの人ともう名前もわかっておりますけれども、言いたいわけですが、それよりは一ぺん局長、これはひとつ現地へどういう状態であったか、もう少し詳しく報告をさせるように、一ぺん話をしておいていただけませんか。そうでないと、いま詰めてもどうもそれは局長がそれを持っておっていただかないから、話が水かけ論になっちゃいますから、私のほうは名前もちゃんと控えておりますから、どれがどれぐらいということはほぼお話しできますけれども、一ぺん局長に調べてもらっておきまして、この話はこの次やってみたいと思います。
 それから、病院の管理がずさんだという点で、私ここで一つ二つお願いをしておきたいと思いますが、昭和四十五年の五月に会計課の職員が五百万円ぐらいの不正使用をしたというので解雇になったりしてるんですね。それからもう一つ、四十六年の十二月には滞納患者の整理なんかで、これは係の職員が百三十八万ぐらい着服したと、これは公にせずにうまく依願免にしたとかいうような話もあります。あるいはまた、そのほか、保母試験なんかをやるといっていろいろ発表したけれども、そういう権利がないのでこれをうやむやにしてしまったといって、新聞で非常に攻撃をされた。いろいろなことがまだまだたくさんありますけれども、たとえてあげればそういうことでありますから、こういうような管理状態でいろいろなことが指摘されてるわけでありますが、こういう問題につきましてもやっぱり大きな病院としては大事なんですから、ひとつこういう問題に対しても現地のほうに様子を聞いて、ひとつ管理体制を十分にしてもらうようにぼくは局長のほうからしていただきたい。
 最後に一点だけお伺いしたいんですけど、これは福島の県立の医大病院です。これも公立病院です。ここでは宿直とか日直の時間において超過勤務の実態が非常に過激なわけです。先ほども、いまちょっとこの茨城の病院でもそれを指摘さしていただいたが、やはりこれは公立の病院――これは県立の医大病院ですから、これも実に模範的なりっぱな病院であるわけですが、ここにもこういう例があるわけです。これも申し上げておきますからひとつこういう問題についても一ぺん調査を願って、やはりこういうことであるとすれば、これもやはりよほどひとつ考えてもらわなければいかぬ問題だということになってくるわけですから、これは、ひいては私は看護婦の養成とか、あるいは各医療従事者の充実をもっと積極的にやらないと、こういうようなところにしわ寄せがいくということが、いろいろ大きな病院で――りっぱな病院でもこういうことになっておるということを考えると、やはり病院の状態がいかに悪いか、これがやはり国民から非常に医者不信、あるいはまた医療不信、こういうようなことになってまいりまして、ほんとうに非常なことになるんじゃないか。この間も、ある医療をよくする市民の会の人に話を聞きましたら、私は真にどの医者にかかるといっても何にも信用ができません、大きい病院に行っても信用がなりません、私はどこにも病気になっても行くところがないので、どうしたらいいのでしょうか、という話を聞きましたけれども、そういうことになるのはやはりここらの病院運営、ほんとうに使命といいますか、こういうようなのが大事じゃないかという前提において私はこの問題をひとつ伺いたいわけですが、宿直、日直のときにここにおきましては業務の実態が非常にきびしいのであります。たとえて申しますと、薬局におけるところの宿直勤務時間中には、平均一日に百一回の調剤投与を行なっているのであります。また放射線科につとめている人におきましては、その一件平均一時間くらい必要である。で、いろいろな角度から交渉するわけでありますが、そういうものが一宿直時間中に二件半ぐらいあるのだというので、まあ考えてみると普通の勤務とあまり変わらないようなことが宿直、日直の勤務の中にどんどんと入ってくる。もしこういう実態であるならば宿直業務とほんとうに言えるのかどうか、むしろこういう場合であったならば交代の勤務制というような形にするのがほんとうではないかということが、こういう地域の労働者の中から出ているようであります。これを見てみますと、非常にこれはたいへんな問題で、いろいろ各年の月ごとに出ております標準を見てみましても、これではやはりいけないのじゃないかなという感じがいたします。そこらのところは那辺に問題があって、那辺にメスを入れるとこれが解決できるか、こういうようなことはひとつ一ぺん、今度も、いまも医療の問題が国会の審議の中に出ておりますけれども、こういう中を含めて考えてみますと、こういうところにもう一つのてこ入れをすべきところがあるんじゃないかというように思いますので、こうした勤務の状態、これをひとつ厚生省あるいはまた労働省のほうでは十分に分析をしていただいて、そうして、そういうものを解決するためにどことどこの方向でこれをやっていくかという問題をひとつ考えていただきたい、こういうふうに思うわけです。
#406
○政府委員(松尾正雄君) いまの福島大学のケース等もよく当たってみたいと思います。おそらくいまの御指摘のようなものが大学病院という、付属病院という特殊性からいろいろな患者が緊急に来るという事態のために起こってくるのか、あるいは少し口の悪いことを申し上げますけれども、大体大学の先生方というのは、少しかって過ぎる。自分の思いのままのところにいろんな診療をやればいい、そういう傾向がないわけでもない。そのことがそういういろんな場所にしわ寄せになっているということもあり得ると思います。これはいろんな形の中でそういうメスを入れなければならぬものがございまして、一つだけ、その末端の現象だけを見れば、そこだけ解決すれば済むという問題でもないように私も存じますので、非常に根は深いかもわかりませんが、医者の考え方自体から、大学病院のあり方自体から、少してこを入れませんと、あるいはそういう流れがきれいにならないということもあろうかと存じますが、ひとつせっかくの御指摘でございますので、われわれも勉強させていただきます。
#407
○大橋和孝君 一ぺん労働省のほうもこういうようなものの時間的なものを調べてください。
#408
○政府委員(石黒拓爾君) 労働省におきましても、宿日直あるいは時間外労働等につきましては、労働基準局に申しましてさっそくに調べます。
#409
○大橋和孝君 もう時間がありませんからこれだけで、私もっと聞きたい材料を持ってきておりますけれども、きょうはこれで終わりますが、特に、茨城の労働問題に対しましては、非常にいまのようなぐあいの労働の条件の非常に悪い、しかも周囲からの希望があるのにベッド数は非常に減らしておる。こういうような状態で非常に紛争が長引いておる。どうぞひとつ厚生省におきましても、労働省におきましても、この問題点を十分に掘り下げていただいて、私はいま先ほど来申し上げましたように、ここの病院だけの問題ではなしに、この問題がどこからきておるかということを掘り下げてもらって、看護婦が不足であれば、もっと看護婦さんをほんとに養成するような機関を国でもってやっていただくとか、何とか抜本的なところに踏み切ってもらわなければ根本的なあれにならない。もし、この茨城の中央病院の看護婦さんがいないから、少ないからといってほかから持ってくるならば、またほかのほうにしわ寄せがいくだけであるわけです。だから、そういうことを考えると、やはりもっとどこでもほんとうにひとしく受けられるような状態をつくることが必要でありますので、私は、この茨城の病院を一つのサンプルとして、そしてほんとうに公立病院、基幹病院がどうあるべきかということをひとつやっていただきたい。
 もう一つ保険局のほうにお願いしたいことは、あるいはロックアウトをしたり、あるいは何かそういうことをして特に特類の看護をとらなければならないために、病床を減らして、そして基準に合わせるという傾向が出てきているように思います。ですから、そういうことから考えますと、この制度をつくってもらって特類で病院のほうに少し手厚く何と申しますか診療費を回して、病院らしいほんとにいい業務をするための制度をつくってもらったことが、逆に看護婦が少ないから、一時はベッドを減らしておいて、そして特類の看護婦をとって、そしてまた付き添いをよけい入れて、そしてまた徐々にこれをやっていくというような形になれば、このせっかくの制度が逆用されるという形も私はあり得ると思うのです。そういうことからいいますと、やはりこの病院のいろいろな例をひとつ十分に調査をしていただいて、今後どこにその手を入れて看護婦さんの充足なり、あるいはまた従事者の充足なりをどこに持っていってそれをしたらいいのか、そういうことを早急にやってもらわなければ、いい制度をつくってもらってもそれがなかなか実行できないものになる。そういうことを私はいまこの病院でつくづく感じているところでありまして、どうかひとつ病院の実態をもっと調査をしていただいて、ほんとに病院がよくなる、茨城病院が、中央病院がよくなるばかりでなしに、全般のやはり病院のあり方がよくなるようなことにひとつ踏み切った施策をしていただきたい。
 抜本改正というものも出てきているようでありますけれども、そこにほんとうの改正があるんじゃないかというふうに思いますから、厚生省に対しましては特にそういうお願いをしておきたいと思いますから、どうぞ厚生大臣にもそれをよく伝えていただきまして、厚生省の中でほんとうに抜本的な医療の制度あるいはまた保険の制度というものを打ち出していっていただきたい。どこに欠陥があるかということをこの病院で突き詰めていただきたい。こういうようなことも考えております。どうぞ労働省のほうもそのほうのあれですから、地方公務員であるからというばかりでなしに、徹底をしてひとつ御調査を願いながら進めていただきたいと思います。それだけです。
#410
○委員長(中村英男君) 他に御発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後七時四十分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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